未央「誰か私を、助けて」 (208)

私も含め、みんなが走っている。
前に進もうとみんなは全力だ。

当然私も全力で走っている。スタート地点も同じ。
でも、差はみるみると広がっている。

こんなはずじゃないのに、私だって全力なのに。
なのに、どうして?

みんなはもう見えないぐらい、遠いところまでいってしまった。
私はそれでも走って、走って、走って、必死に走り続ける。

でも、もうそれも限界だ。

私はついに力尽きて、倒れそうに―――

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未央「うわぁ!」

そこでやっと目が覚める。体は汗でびしょびしょだ。

未央「はぁ……はぁ……」

荒くなった息を、少しずつ整えていく。
そうしてある程度息が整ったあと、私はつぶやいた。

未央「……また、この夢」

もう何度目だろう。この夢は。
ここのところ同じ夢しか見ていない気がする。

なぜこんな夢ばかり見るのか……心当たりは、ある。
きっとあの夢は、今の自分の状況を示したもの、なんだと思う。

しまむーとしぶりんは、そこそこ有名なアイドルとして活躍している。
対して自分はまだテレビはおろか、まともな仕事をもらったこともない。

私たちは同じ時期にアイドルとなって、同じようにレッスンを受けていたはずだ。

それが今は……。

未央「……でも、私は絶対に倒れたりなんか……諦めたりなんか、しないよ」

そう一人で、つぶやいて、事務所に向かうのだった。

【事務所】


事務所に着いたあと、ホワイトボードで予定表を確認する。
うん、いつもどおりレッスンだ。

その時いつも私は、しまむーとしぶりんの予定は見ないようにしている。
見たって多分、テンションが下がるだけだし。

……最初のころは、しまむーとしぶりんの仕事の予定が増えると
まるで自分のことかのように喜んでいた。



いつからなんだろう。仲間の予定が増えても嬉しくなくなったのは。


どうしてなんだろう。いっしょにみんなで、喜べなくなったのは。



考えても、答えは見つからない。
いや、見つけたくないから目をそらしているだけだ。


これ以上は考えていても無駄だと感じた私は、
逃げるようにレッスン場へと移動した。

【レッスン場】


レッスン場へと移動した私は、さっそくトレーナーさんにレッスンをしてもらう。

何度も繰り返したレッスンだ。難なくダンスをこなしていく。
歌もそれなり、表現も結構できている。

よし、今日もいい感じだ。

トレーナー「わー……! 凄くいいね!」

未央「えへん! そりゃそうですよ! 伊達にレッスンしてませんから!」

トレーナー「うんうん、これなら有名なアイドルになるのも、そう遠くはないね!」

その台詞も何回聞いただろうか……だいぶ前から聞いている気がする。

私はまだ有名になれていない。
あと何回聞いたら、果たしてみんなと肩を並べるくらいに有名になれるのか。

未央「う……うん! そのとーおり!!」

未央「もう、バーンと!超有名アイドルに!なっちゃいますから!」

こんなのただの強がりだ。
心の中ではそんなの無理だって思ってる。

なれるんだったらとっくの前に―――――



――いや違う、絶対にトップアイドルになれる。

私なら絶対になれる。


……でも、あんなに努力したのに、あんなに頑張ったのに

私はまだこんなところに立っている。


いや、違う、違う、違う。私はなれる、なれる、なれる。



朝に諦めないと言った私はどうした。


私は絶対に諦めないんだ。しまむーと、しぶりんと、3人で同じステージに立つんだ。


みんなで一緒に歌うんだ、踊るんだ、笑うんだ。



夢だったアイドルをこんなところで、捨てるもんか



よし……もう大丈夫だ。
さっきの弱気な私は、もういない

「まだ」普段通りの私でいられる


……まだ?


つまり、それって――――

トレーナー「――ちゃん、未央ちゃん?」

未央「……えっ?」

トレーナー「ぼーっとしてたけど、大丈夫?」

未央「あ……すいません!」

全然声が聞こえてなかった……。
まずいまずい、今はまだレッスン中だ。
気をちゃんと引き締めないと。

トレーナー「疲れた? それなら休憩いれるけど……」

未央「大丈夫大丈夫! まだまだ元気全開です! ほら!」

私は体を、ブンブンと動かして元気なアピールをする。

トレーナー「だったらいいんだけど……じゃあレッスン、再開しますね」

未央「はい! ドーンと来い!」


そこからは、いつもと同じようにレッスンを進めていった。

今日はここまでにします

トレーナー「はい! これでレッスン終了!」

未央「うぃー……疲れたー……」

あとは着替えて事務所に戻って、予定を改めて確認。
明日の準備とかをしたら帰宅、って感じかな。

トレーナー「今日もお疲れ様! 未央ちゃん!」

未央「うん、お疲れ様ー!」

お別れの挨拶をしたあと私は着替えて事務所に向かった。

【事務所】


事務所の扉の前までやってきた。
軽快に開けて入ると、そこには久しぶりに見る仲間の姿があった。

いや、実際に会うのは久しぶりなだけで、テレビとかじゃたまに見かけたりはしてたけど。

卯月「あっ、未央ちゃん、久しぶりだね!」

凛「久しぶり、未央」

二人が気づいてこっちに声をかけてきた。
とても嬉しそうな声だ。

未央「……うん! しまむー、しぶりん、ひっさしぶりー!」

でも私は、素直に喜べず、愛想笑顔をするしかなかった。


このままだと笑顔が偽物だとバレる。


そう思った私はバレないように、私は質問をしてごまかすことにした。

未央「そういえばこんなところで、どうしたの? 」

こんなところというのもおかしいが、二人は基本的にはテレビやラジオの収録なんかで事務所にはいないはずだ。
だから実際に、約1ヶ月ぐらい会えなかったわけだし。

卯月「うん、ちょっとここでミーティングをしてて」

凛「デレラジの内容について、ちょっともっとここはこうしたほうがいい、って話をしてたの」

卯月「いつも同じ内容だと視聴者が飽きるから、そうならないようにね」

デレラジ、しまむーとしぶりん、そしてみかねえがパーソナリティとして進行していくラジオ番組だ。
当然そこに、私の名前はない。

未央「……そ、そーなんだ! うんうん、二人とも真面目だねー」

なぜか私は少し言葉に詰まりながらも、なんとか言葉を返した

卯月「えへへ、真面目だなんてそんな……」

凛「いや、卯月は真面目、だと思うよ」

卯月「凛ちゃんまで……凛ちゃんのほうが真面目だよ?」

凛「でも卯月のほうがこの前……」

そうして二人の褒め合い合戦のようなものが始まった。
よかった、私の少しだけ不自然な対応には気づかなかったようだ。


……うん、二人の邪魔をこれ以上悪いし、まずいことになる前にそろそろ確認をして帰ろう。

そう思って動こうとした瞬間、今度は向こうのほうから質問がきた。

凛「未央のほうは、どう?」

とりあえずここまで、また夜くるかも

……まあ、多分、聞かれるだろうとは予想していた。
でも私は言いたくないから、わざとらしく質問の意味がわかってないふりをする。

未央「どうって?」

こんなことしたって、数秒の時間稼ぎにしかならないのに。

凛「最近の仕事とか……どうなのかなって」

未央「……まあ、いつもどおりだよ」

そう、いつもどおり。
何も変わってない。昔から、今まで。
変わったのは私のステータスぐらい。

凛「……そっか」

やめて、そんな同情するような目で見るのは。
どうせ私の気持ちなんてわからないんだから。

卯月「……え…えっと、その……」

なに? その悲しそうな目は。
なんだかんだいって自分は売れてるくせに。

凛ちゃんに負けないように一緒に頑張ろうなんていって、結局私だけ置いてけぼりにしておいて。




卯月「み、未央ちゃんもあともうちょっとしたら、魅力がみんなに伝わって、きっとたくさんお仕事くるよ!」








……あと、もうちょっと?



半年もこの状態だったのに、あとちょっと?


二人が有名になってからいつもあとちょっとって、毎日そう言い聞かせていたのに、またあとちょっと?


一体何回繰り返してると思ってるの?


そのちょっとって、あと何回繰り返したらくるの?




あとちょっとあとすこしもうすこしもうすぐ


そんな似たような言葉を、何回も何回も何回も何回も









なんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいも
なんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいもなんかいも
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして
くりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえしてくりかえして

















それで、この結果











あははっ、は、ははっ










そのとき、私の心のどこかで押さえつけていた感情が

少しずつ溢れ出してきた。

ここまで、感情の表し方ってムズイ

また暇みつけたら更新します

アイドル達がセルフプロデュース状態で事務員(ちっひー?)がスケジュール管理って所か?
Pが居てちゃんみおがこの状況だとPが無能と言うか見る目が無い気がする

質問がありましたので答えておきます

アイドルにプロデューサーはまだついておりません。
大体>>24と同じように、セルフプロデュースで、事務員やトレーナーさんが
スケジュールを管理等々を行っている感じです。
まあこの辺は正直適当なので各々の想像におまかせします、すいません。

ssは今日の夜か明日の夜あたりにすこしだけ更新したいと思います。



未央「……ねえ、あとちょっとって、いつ?」


私はそうやって、強めの口調でいってしまった。

卯月「あ……え、と、それは……」

卯月は悪くないのに、ただ励ましてくれただけなのに。
私にはその言葉が皮肉にしか聞こえなくなっている。

未央「ねえ、いつになるの? 明日? 明後日? 1週間後? 1ヶ月後?」

徐々に溢れ出す量は増えていく。

凛「ちょ……ちょっと未央……」

未央「しぶりんはいいよね、アイドルを始めてからすぐにCDデビュー、あっという間に有名人で」

だめだ、止まらない。溢れ出した感情はどんどん暴走をしていく。

未央「しまむーだって今はしぶりんと肩を並べるぐらいの有名人」

いや、違う。そもそも、止めようと私はしていない。



私はどこかで、この二人に我慢をしていたんだ。



こうして不満を、愚痴を、文句を、嫉妬を、理不尽を

ぶつけたいと、ずっと思っていたんだ。

未央「なのに、私は!?」

未央「あとちょっと、あと少し、もうすこししたら」

未央「そうやって頑張ってきて、もう半年も経った!」

未央「なのに二人との距離はちっとも縮まらない、どんどん広がっていくだけ!」

未央「いつも二人で仲良さそうに一緒に仕事をしているのを、ただ見つめているだけ!」

未央「いつの間にか二人だけで仲良くなっちゃってさ! ははっ、仲良きことは美しきかなってやつ?」

未央「どうせ私のことなんか、どうだっていいって思ってるんでしょ!?」

そうだ、どうせ二人は私のことなんか。
ならここで本当のことを聞いてしまえば、いっそ楽になる。

未央「ねえ! 本当のことを! 本当の気持ちを言ってみてよ!! 本当の――――」






パシン!









そのとき、乾いた音が鳴り響いた

凛「……」

未央「……え?」

卯月「……り……凛……ちゃん?」

状況を飲み込むのに、数秒かかる

そうか……今、私、しぶりんにビンタされたんだ……

そっか、そうだよね、私なんかどうだっていいもんね。
こんな理不尽な文句ばっかりいうやつなんか。そりゃそうだ。

これは完全に嫌われたね。
どうでもいい人から嫌いな人にランクアップだよ。





……そっか……嫌われちゃったか……







未央「……っ!」


私は逃げるように、事務所から飛び出していった。

全力で暗くなった町を走る。
行くあてなんかどこにもない。
ただ走って、走って、走り続ける。

理由は分からない。でも、走る。



未央「はあっ……はあっ……」



ポタッ……ポタッ……



突然涙が出てきた。
拭っても拭っても、全然止まる気配はない。
むしろ止めようと思えば思うほど涙の勢いは増していく。



どうだっていい、さっきそう思ったばっかりなのに。



走ってどれぐらいたっただろうか。
短いようでもあれば、とても長いような気もする。

息は切れて、足はもうガクガク――――限界だ。


……あれ? どこかで似たような状況があったような。

あ、そうか、夢だ。夢でもこんな限界近くまで走ってたっけ。
ってことは、もしも夢と一緒だとすると……

その時、急に足から力が抜ける。
当然、体は重力の力に引き寄せられ、倒れていく。

未央「―――まずっ」

この倒れ方は、地面に思いっきり顔面がぶつかる。
最悪なことに地面は凸凹としたコンクリート。
しかもさらにこのスピードだ。かなりの怪我になるだろう。

少なくとも、顔は傷だらけ、傷跡も残るかもしれない。
もし傷でも残ってしまったら、アイドルとして活動できないかもしれない。


そうなったら、私はアイドルを諦めなければいけない。




未央(……でも、それでも、いいかもね)




どうせこのままダメなアイドルとして過ごすなら、なにか仕方ない理由でやめてしまったほうが区切りがつく。






そう、これでいいんだ。これで。








あ、地面が、目の前に――――

今日はここまでです。
また更新できそうになったら報告します。



「危ないっ!」


ガシッ


――――来なかった



「ふぅー……大丈夫? この辺は走ったりすると―――――ん?」



大丈夫だった。そうわかった瞬間。



未央「ひっ……ぐ……うぅ……ううぅ……えぐっ」



私は知らない人の胸元で、泣き始めてしまった。

やっぱりアイドルをやめたくなかったんだろうか。
それともただ、今までの溜まったものが、ここで出てしまっただけなのか。
もしくは転ばなかっただけという安堵感なのか。

分からない。


でも



「……」



そんなわけのわからない私を

その人はなにも言わずにただ、背中をポンポンと叩いてくれた。

「落ち着いた?」

しばらく経ったあと、そのお兄さんはそう言ってきた。

未央「……はい」

お兄さんの外見をそこで改めて見た。
さっきまでは胸にうずくまる感じだったから顔は見えなかったけど。

……うーん、大体見た感じの年齢は、20代後半から30代前半といったところか。
とにかく、これ以上迷惑をかけるわけにもいかない。

未央「えっと、とにかくすみませんでした! それじゃ―――――」

その時、足に痛みが走った

未央「―――っ」

どうやらさっき転びそうになったときに、足をひねったようだ。
とてもじゃないが、しばらくはまともに歩けそうにない。

「えーと、君、多分だけど、足を怪我してるよね?」

どうやらお兄さんにもバレたみたいだ。

「とりあえず、迷惑じゃなければ肩を貸すよ」

この状態では、残念ながら肩を借りるしかなさそうだ。

未央「……さっきから、いろいろとすいません」

「ははっ、まあそういう時もあるさ」

「あと、別に敬語じゃなくてもいいよ、俺もそのほうが気が楽だし」

そういって、お兄さんは私に肩を借した。

「とりあえず、ベンチに座った方がいいな……近くの公園にむかうけど、いいか?」

未央「はい……じゃ、なくて、うん、大丈夫」

私はお兄さんに肩を借りながら公園までむかうことになった。

移動中に、お兄さんが話してきた。

「で、とりあえずなんだけど、名前のほうを教えてもらってもいいか?」

そうだ。そういえばまだ自己紹介もまともにやってないや。
ここはいつもの私らしく……

未央「えーと、本田未央15歳。高校一年生ですっ! 元気に明るいキャラで、いつも頑張ってまーっす!」

「あ……うん」

あれ、なんか変な反応された。
いやまて私。さっきまで泣いてた少女が、いきなりいつも元気で明るいとか言ってきたらどう思う。 

うん、矛盾してるね。カラ元気と思われるね。

未央「あ、その、これは別に嘘とかじゃないから! いつもは本当に元気だから!」

うわー、自分で言っておいてなんだけど、すごい嘘っぽい。

嘘だと思われたかな……?

「……ぷっ、あははっ」

笑われた。

未央「ちょ、なんで笑うの?」

「いやー、なんか思った以上に面白い子だと思ってさ」

今のところのどこに面白いところがあったのだろうか。
私にはさっぱりだ。

「君って、確か結構前に駅前で、ゲリラアカペラライブとかやってたよな?」

……え?

まさかあんなに前のことを覚えている人がいるなんて……
それも、しまむーやしぶりんじゃなくて、私のことを。

未央「……おー、よく覚えてるねー。はっ、お兄さん、もしかしたら天才!?」

「これでも、アイドルには詳しいんだ。あとそこまで無理に持ち上げなくていい」

未央「へえー……あ、まさか、アイドルの追っかけやってる人だったり?」

まあそれでも私を覚えている理由にはならないけど。

「いや、前まで仕事で……お、着いたぞ」




……仕事?


うーん……アイドルと関係する仕事……


芸能関係……ディレクター……




「おい? どうした? 大丈夫か?」



おっと、これ以上余計な心配をかけるわけにはいかない。

とりあえず考えるのはあとにしよう。

ここまでです。更新するときは報告するとかいっといてやってませんね。すいません。
次はたぶん3日以内には更新するかと。

進めば進むほど自分の文章力が減っている気がします。

【公園】


私はベンチまで連れて行ってもらった。

んしょっ……と、さっきよりは幾分か楽になった気がする。
でもまだ普通に歩くのはやっぱり難しそうだ。

「よいしょ……少しは楽になった?」

そういってお兄さんは私の隣に座った。

未央「ん……さっきよりずっと楽になったよ、もう、凄く!」

そういって私はいつもの元気アピールをする。

「うん、嘘はやめよう」

あらバレた。まあそうだよね。

「まあでも、座ってればそのうち回復するか」








「じゃあそれはいいとして……良ければさっきの、理由を聞かせてくれないか?」

……さっきのって、泣いたこと、だよね……

未央「……えっと」

「あぁっと! すまんすまん、言い忘れてたけど、別に嫌ならいいんだ」

言わなくてもいい。そう言ってくれた、けど。
でもこの人には、なんだか話してもいい気がした。

そう思った私は、今までの経緯を話すことにした

今もアイドルとして頑張っていること

その努力が報われる気配がないこと

それによって私のいろいろな悪い感情がどんどん溜まっていったこと

そのせいで友達と喧嘩になってしまったこと


といっても最後のは喧嘩というよりは、私が勝手に喋るだけ喋って、嫌われただけだけど


「……そっか、話してくれてありがとう」


まさか初対面の人に、ここまで話すなんて、自分自信も思ってなかった。
といっても向こうは少しだけ知っていたけど。

どうせ再開することなんてないから話したのかな?
誰かにこの想いを聞いてもらって、少しでも楽になりたかったのかな?


多分、両方だ。


「それは辛かったな……何て言っても、体験したわけでもないお前が、わかったふりするなって感じになるよな」

未央「おっ、結構鋭いねー」

多分なにか労わりの言葉をもらっても、今の私は素直に受け取らなかっただろう。
意外と人の心を見る目はあるようだ。


「……なあ、本田さん」

未央「あ、わざわざ苗字で言わなくてもいいよー」

「じゅあ、未央さんはどうし」

未央「さん付けもなしでいいよ!」

「……未央はど」

未央「あ、やっぱりさん付けで!」

「……わざとやってるだろ」

未央「えへ、バレた?」

「……はぁ、まあいいけどな、ここからは真面目に聞くぞ?」



お兄さんはひと呼吸したあと、こう聞いてきた



「君はどうして、アイドルになったんだ?」


未央「……それは、夢だったから」

「どうして、夢になったんだ?」

未央「昔アイドルを見て、私もやってみたいって思ったからだよ」

「……今も、それだけの理由でアイドルをやってるのか?」

未央「……それだけ?」

「やってみたいって思っただけだろ?」

「俺だったら、その気持ちだけで、そんな長いあいだ頑張ることはできない」

「どうして君は、そんなに頑張れるんだ?」

未央「……」


今の理由は……

仲間と、しまむーとしぶりんと、一緒にライブをしたいから。

一緒の舞台に立ちたいから。


未央「……今は仲間と一緒の舞台に、立ちたいからだよ」

「どうして?」

未央「どうしてって……」




――どうして?

どうして私は、こんなに?

ここまでです。すいません。中途半端ですいません。
次はきっと今週中には更新できる。

――――――――――――――――――――――――――――


『このままじゃ私たち、アイドルになれない……』


『あと70人も集めないと……』





『――――大丈夫』



『さっきだってチャンス、もらえたんだし、諦めなかったらなんとかなるよ』



『だから、がんばろ?』





『凛ちゃん……うん! 私も頑張ってみるね!』





『それでさ、どうせダメならダメで、最後はアイドルらしいことをしたいって思うんだ』


『……! じゃあさ、こういうのはどうかな……』


『アカペラライブ……それなら、みんなでできるね』




『(未央ちゃん……震えてる……)』


『(凛ちゃんも……顔色が……)』


『(そっか……本当は二人も怖いんだ……なら)』



『ね、二人共』




『笑顔、笑顔! えへへっ!』



『じゃあみんな、いっくよー!』




あ……どうしよう

みんなで歌うの……気持ちいい―――



できることなら―――……


こうしてずっと――――……


――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――





あの時の試験――――本当は私、諦めかけていて


―――でも、二人はそうじゃなくて




どうして私が、頑張れるのかって?



それは――――





――――――――――――――――――――――――――――

未央「自分に負けたくない」



未央「違う、いや、それもあるけど」



未央「一番の、本当の理由は」







未央「二人に、負けたくないから」





「…………」





そっか、そういえば、そうだった

私、根っからの負けず嫌いだった


未央「そうだ、だから私も諦めないんだ」


なんで忘れていたんだろう。

これが私の、一番の武器だった。

これがあったから、走り続けてきたんだ。


未央「二人は今だって、トップアイドルを目指して走り続けてる」


それなのに、こんなとこで挫けてたら、二人に笑われちゃう。


未央「だから私は、私も、走り続けるんだ」


未央「二人に追いつこうって、ここまでやってきたんだ」


それなのに私は、何か勘違いをしていた。


二人がいるから、走り続けてこられたようなものなのに。

二人との競争があって、走ってこられたのに。

未央「……っ」


そんな二人に、私はひどいことを言ってしまった。

こんなのだめだ。このままじゃだめだ。



未央「……ごめん! ちょっと行ってくる!」


「……おっと、待て待て」

「君、そんな足じゃ行くの辛いだろ」


未央「で、でも、今すぐ行かないと……」


そうだ、今すぐ行かないと、手遅れになるかもしれない。

今の時点で、もう手遅れなのかもしれないけど、それでも。



「だから俺が付き合って……ん?」



「……いや、大丈夫だ、ここで待ってれば」



……大丈夫? それはどういう意味だろう?



「んじゃ、お邪魔虫は、ここらで退散させてもらうよ」




未央「あ、ちょっと……!」


なんの説明もなしに、お兄さんは去っていった。

さっきの言葉の今は、一体……?



そう思ったすぐあとに、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

卯月「未央ちゃーん!」

凛「未央ー!」



しまむーとしぶりん……?

まさか、私を探しに……?



卯月「あ、あそこ!」

凛「え……あ!」



こっちに向かって二人は走ってきた。



凛「はぁ……はぁ……探したよ」

卯月「もう……私たちの話も聞かないで……」


未央「しぶりん……しまむー……」


私は急な出来事で、何を言えばいいのかわからなくなる

とにかく、今一番にしないといけないのは……謝ることだ


未央「あの! 二人とも……」






凛「ちょっと待って」



謝る前に、止められた。


凛「私がなんであそこで怒ったか、わかる?」


未央「それは……」


私が嫉妬して、ひどいことを言ったから。

そう思ってたけど。


凛「別に、文句言われるのも、嫉妬されるのも、いい」


凛「でも、『どうだっていい』なんて私は、いや私たちは、一度も思ったことはない」


でも、二人は……今日だって……。


卯月「えへへ、今日もミーティングだって言ってたけど、本当は……」


まさか、ミーティングじゃなくて、本当は……


凛「ちょ、そ、それは言わなくていい」


卯月「え? でも言ったほうが未央ちゃんにもちゃんと気持ちが……」




凛「と、とにかく! 私たちは未央のことを忘れたり、ないがしろにしたことなんて一度もない」




凛「だって」








凛「私たち三人そろって『ニュージェネレーション』でしょ?」



それは、いつの日か私たちが決めた、ユニット名。

三人でユニットを組むときの名前にしようと、決めたんだっけ。

まだ、覚えててくれたんだ。


卯月「だから、言いたいことがあったら、別になんでも言ってくれていいよ」

卯月「あ、でも、今日の絶交みたいなことはダメ」



未央「二人とも……」


また涙が出てくる。なんだか今日は泣いてばっかりだ。



未央「ごめん……本当にごめんね……」





何やってるんだ、私。

二人に負けっぱなしじゃないか。



こんなんじゃ、ダメだよね。

ごめんね、こんなダメな私なのに、こんなに優しくしてもらって。










卯月「もう! 謝る必要もないよ?」






卯月「だって私たち、親友だもん!」










今日、私が頑張れる理由が、もう一個増えた。







親友だから、だね




正直、予想外な答えだった。

自分としては、約束したからとか、トップアイドルになりたいからとか。

もしくは一緒に歌いたい、踊りたい、そんな感じの答えが返ってくると思った。

いや、それらもあるんだろう、でも、それを押しのけた一番の理由。



「負けたくない……か」



それに、あの二人との信頼関係。

わざわざ探しにくるなんてな。



「親友……」



前も、似たような言葉をよく聞いた。

『仲間』という言葉を。


久しぶりだ。こんなに、女の子を輝かせたいと思ったのは。

ある意味、一目惚れだ。


初めてみた瞬間から、この子は輝けると思っていた。

それがさっきの話し合いで、確信に変わった

あの子は輝ける。

でも、今のままじゃだめだ。


「……久しぶりに、再開しようか」



俺が前まで、やっていた仕事。


アイドルプロデュースを。

すいません! 予定より超遅くなりました!
正直サボってました! 本当にすいません!

とりあえず今日はここまでです。

【事務所】

あれから1週間が経った。

二人と仲直りした私は、この気持ちを忘れないようにしながら
アイドルを続けるようにしている。

しかしあんなことがあってもアイドルの方はなんの変化もなし。
ちょっとぐらい何か覚醒みたいな感じであっても良かったのに……。

そう思っていたとき、ちひろさんに声をかけられた。


ちひろ「あ、未央ちゃん! 今日はとても良いニュースがあるわよ!」


まさかこのタイミングは……!

そう思って私の期待はマックスになる。


ちひろ「実はね……?」


実は……?

ど、どうなるの……?

そんなに溜められると、私……うぅ!

は、早く早く!






ちひろ「未央ちゃんに専属プロデューサーがつくことになりました!」

……プロデューサー?

期待していたものとは違った。
う、嬉しいような、そうでもないような……。

そもそもプロデューサーがいるとどうなるんだろう?
仕事をとってきてくれたりするのかな?

だったらもの凄く嬉しいけど……。




ちひろ「しかもただのプロデューサーじゃなくて……」


「あ、ちひろさん」



ちひろさんが話している途中に、今話題になっていたその人は来た。



ちひろ「あ、プロデューサーさん、おはようございます!」

P「どうも、おはようございます」


この人がプロデューサー……?


P「お、君は……」



……あれ? どっかで見たことあるような……?

うーん……結構最近だと思うんだけど……

最近……最近といえば……?

って、あ、ああああああ!


未央「お、お兄さん!?」

P「おー、覚えててくれてたか、そうそうお兄さんだ。ただ、そのいい方は誤解されるからやめてくれ」

ちひろ「あれ? 未央ちゃんと兄妹なんですか?」

未央「あぁあぁ、違います違います! 一応知り合いで、私が名前を知らなかったからそう読んでただけです!」



しかしまさかこの人がプロデューサーになるなんて……

だ、大丈夫なんだろうか?


未央「え、えぇーと……失礼なのを前提で聞くんですけど……だ、大丈夫なんですか?」

P「本当に失礼だな、おい」

未央「あはは、いやぁ……そんな褒められても……」

P「いや、褒めてないが?」

未央「テンプレとしてやったほうがいいかと思って」

P「……まあ、さっきの質問だが、大丈夫だ、これでも一応元プロデューサーだから」



あー、なんか仕事で私のこと知っているとか言ってたなぁ。

プロデューサーだったのかー。ふむふむ。



ちひろ「ふふっ、これだけ仲が良さそうなら、プロデューサーさんに任せても大丈夫そうですね」

P「仲が良いというか、馬鹿にされてるというか……」

未央「あ、もしも大丈夫じゃなさそうだったらどうするつもりだったんですか?」


興味本位でちひろさんにそう聞いてみた。


ちひろ「金を巻き上げるだけ巻き上げて、捨ててました」ニコォ

P「……お、おおぅ……」

未央「……なんか、ごめんなさい」


やっぱりちひろさんは怖い。

それだけ事務所のアイドルたちを大切にしてるというのもあるんだろうけど。

そう考えるとちょっと嬉しかったりもした。



P「ま、まぁ話はこれぐらいにして、そろそろ活動を始めよう!」

そういってプロデューサーは私に目配せをする。

未央「え……あ、は、はい!」

ちひろ「ふふっ、頑張ってくださいね、二人共」



ちひろさんに見送られながら、私たちは外に出て、車に乗り込んだ。

……プロデューサーは、少し汗をかいていた。

今日はここまで。あまりの更新の遅さに俺がビックリ。
構想は固まってても文章にしようとすると難しいものですね。

【車内】

無駄な話もいいけど、とりあえずは気になってることを質問しようと話しかけた。

未央「ところでお兄さん」

P「あ、そうそう、これからはプロデューサーと呼ぶようにな」

そういえば、そうだった。
これからはプロデューサーなんだ。

未央「りょーかい、プロデューサー」

P「ん、完璧だ」

こんなことで完璧も何もないと思うが。
まあいっか。悪い気はしないし。

未央「で、質問なんだけど」

P「なんだ?」

未央「活動って、なにをするの?」

P「あぁ、そういえばまだ言ってなかったな」

そういってプロデューサーは器用に運転しながら
私の質問に答える。

P「まずはレッスン場にいく、そこに俺のツテで特別コーチが来る」

P「特別コーチが来るまで軽いミーティング、来たらレッスン開始だ」

未央「……特別コーチ?」

P「ああ、とっておきのな」

とっておきのコーチ……誰なんだろう?

未央「そのコーチって、私も知ってる人?」

P「知ってるな、知ってなかったら俺がちょっとショックだ」

未央「へえ……ねえねえ教えてよ!」

P「それは来るまでのお楽しみだ」

そういったプロデューサーは少し笑顔だった。
うーん、分からない……。

私は頭を悩ませながらレッスン場まで向かうことになったのだった。

すいません。さっきのちょっと嘘です。
本当はここまでで投下終了です。本当にすいません。

【レッスン場】

頭を悩ませながらプロデューサーと話していたら
あっという間にレッスン場についてしまった。

P「到着っと」

未央「うーん……むむぅ」

P「……まずはミーティングからだぞ?」

未央「だってプロデューサーが気になるようにいうから……」

P「悪い悪い、まあでも、もうすぐわかるんだし、な」

未央「りょーかい」

そう言って私は頭を切り替える

未央「で、ミーティングって具体的に何話すの?」

P「まあまずは明日からのスケジュールを軽く話すよ」

P「細かいところは表を渡すから、そっちのほうで確認してくれ」

未央「お、ついにいよいよだね……!」

今までプロデューサーというのがいなかったこともあり
ついすごいことをするんじゃないかと期待する

P「まずは未央の様子にもよるが、大体2週間はほとんどレッスンにする予定だ」

P「そしてそのあとは調整をして……いきなりだがフェスをやってもらおうと思う」

未央「……オーディションや営業とかじゃなくて?」

P「ああ、お前ならやれると思ってな」

未央「おー、嬉しいこといってくれるねー、で、その相手は?」






P「……島村卯月さんだ」



未央「へー……島村卯月さん……ってしまむー!?」

未央「ど、どうして?」

P「どうしてもなにも、俺がそうしたほうがいいと思ったからだ」

まあ、そりゃそうか……。

それにしても、まさかいきなりしまむーと
直接対決することになるなんて……。



未央「……」


P「……嫌だったか?」


未央「……ふっふっふ」

未央「あーっはっはっはっは!」

未央「むしろその逆! ついに、ついにこの時が来たかって感じだよ!」

本当、そのとおり。
ついに、しまむーと同じ舞台まで立てるようになる……!

未央「プロデューサー君、良くやった! 私盛り上がってきたよ!」

P「よし、お前ならそういうと思っていた! あとその上から目線はやめろよ!」

未央「まあまあ細かいことは気にしない!」

P「そうだな、っておい」

未央「それよりもプロデューサー」

P「ん?」

未央「これって、勝てる勝負だから、やるんだよね?」

もしかしたら、いい経験になるからとか
そういう理由の、負け前提の話しだったりするかもしれない。

P「当然だ」

そういって、プロデューサーは大きくニカッと笑った。

未央「そっか……でも、どうして勝てるって?」

P「それは……トップシークレットだ」

未央「え~!」

P「はははっ、すまん、まあ時間がもうすぐだしな」

P「あと少ししたら、は……コーチが来ると思うから、レッスンの準備するぞ」

未央「は~い」

そうして私は、更衣室へとレッスン用の服装へと着替えにいったのだった。

今日はここまで
誰がコーチとして来るのか、全くの謎ですね!


サーセンバレバレっすね。

未央「着替え、終わりましたー」

そう言いながら私はレッスン場へと戻ってきた。

P「お、思ったより早いな」

未央「だって誰が来るのか気になるじゃん!」

P「ははっ、そうかそうか」

プロデューサーがそう言葉をした、少しあとぐらいに足音は聞こえてきた

P「お、きたな」

未央「ついに……!」

リズミカルに足音をさせながら人影がこっちに向かってくる。
もうすぐではっきりと顔がわかると思うぐらいに距離が縮まった瞬間。

「すいませー……きゃ!」

派手にすっ転んだ。

未央「だ、大丈夫ですか!」

P「あははっ」

未央「笑ってる場合じゃないですよ!?」

結構今の転び方は痛いはず……。
そう思った私は急いでその人の元に向かって手を貸す。

未央「お、起き上がれますか?」

「う、うぅ……ごめんね……?」

そう言ってその人は顔をあげた。

未央「……?」

……この顔、テレビでよく見るような……。

未央「あ」

「?」




未央「も……もしかして、天海春香、さん?」





春香「もしかしなくても、そうだよ?」

そういって、天海さんは眩しい笑顔でこっちを見た。







未央「え、えぇえええええ!?」

天海春香といえば、超有名アイドル。
テレビを見ている人で知らない人はほとんどいない人。

アイドル界でも憧れの存在となるような人だ。

未央「な、なななんでこんなところに……?」

春香「プロデューサーさんから、未央ちゃんって人のコーチをして欲しいって言われたからだけど……」

ぷ、プロデューサーさん?

それって……。

未央「あの……まさかプロデューサーって、天海さん、いや、天海先輩の、プロデューサーだったり……」

P「あぁ、元だけどな」

そ、そんな……プロデューサーが実はそんなに凄い人だったなんて……。

P「まあでも言っておくと、俺は何もやってないよ。やったのはきっかけ与えることだけだ」

春香「またまたそんなこといって~、プロデューサーさんが一番頑張っていたくせにー」

P「何言ってるんだ。努力といったら、お前だろ?」

二人は仲良さそうに、そう話す。

……はっ、こんなことをしている場合じゃない。

目の前にはあの大先輩、天海春香さんがいる。

なら、私には私のやらないといけないことがあるじゃないか。

未央「すいません、 天海先輩! お願いがあるんです!」

私は普段とは違う、真面目で緊張した面持ちでそういった。

春香「ん? 何かな?」

いつもと違う私の様子を見て、プロデューサーは少しシリアスな空気になる。
そのプロデューサーの空気を読み取ったのか、天海さんも同様に、真面目な表情になった。

そうなった途端、急に喋りにくくなる。
でも、勇気を出して、言わないと。

未央「天海先輩……私に……私に……!」

春香「……うん」
















未央「サインください!」







そう言った瞬間、二人がまるで芸人のように倒れた。

今日はここまでです。
おぅ……全然進んでないですね。すいません……。

そんなやり取りをしたあと、プロデューサーは今からするレッスンの説明を始める。

あとサインは普通にもらった。

P「さてと、じゃあ早速だが……まず、どれくらい動けるのかが見たい」

P「だから未央、まずは軽く今までやってきたレッスンをやって見せてくれないか?」

レッスンは今までかなりの数をやった。自信がある。
なので私は迷いなく二つ返事をした。

未央「了解!」

春香「うわぁ! 未央ちゃんの歌やダンス、楽しみだなー」

天海先輩も見ていると考えると緊張する。
でも、しっかりとやりきってみせる!


P「よーし、じゃあ始めてくれ」



そうして私のレッスンは始まった。

右にステップ、ターン、今度は左、次からテンポを上げて前に出て……。

そんな調子でとりあえずダンスレッスンを一区切りまでこなした。
最高とまではいかないが、それなりに出来は良かった……と思う。

未央「ふぅ……」

春香「わぁー! すごーい!」

未央「ほ、本当ですか?」

春香「うん! すごいよー! 私だったらあんなダンスしたら、転んじゃうもん」

やった、あの春香先輩に褒められた!

P「……」

でも、プロデューサーはあんまり反応がない。

未央「え、と、ぷ、プロデューサーは?」

P「……いや、すまん、いいとは思うよ」

未央「やっ――――」

P「でも、それはダンスのみに関してだ」

未央「……?」

P「確かにダンスはいい出来だ、でもな、それだけじゃだめなんだ」

未央「ダンスじゃだめ、ってことは歌も、ってこと?」

P「うーん、そういうことじゃないんだよ」

P「お前はダンサーでもなければ、歌手でもない、アイドルなんだ」

未央「……アイドル」

P「……まあ、これからさっきと同じことを春香にもやらせる、それを見るんだ」

P「そしたら多分、違いがわかるさ」

未央「うーん……りょうかいでーす」

どういうことなんだろう……?

ダンスでも歌でもない。もっと、他の物……。

アイドル……アイドル……。


春香「……え、さっきと同じレッスン、私もやるんですか?」

P「そうだ、似たようなの、やったことあるだろう?」

あ、春香先輩もさっきの似たようなの、やったことあるんだ。

春香「えー、でも未央ちゃんの前だと緊張するなー……」

P「あんだけ大勢の前ですっ転ぶお前がなに言ってるんだ……」

確かに……春香先輩はよく転ぶけど……。
あれってわざとじゃないのかな?

春香「そ、それとこれとは違うんですよ!」

P「違うって……まあ、一人のファンの前でライブするとでも思って、頼むよ」

春香「うー……わかりました」

P「よし、じゃあ見せてやってくれ、お前の【アイドル】を」

春香「……はい!」

春香「という訳で、未央ちゃん! やるからには負けないからね!」

いきなり話しかけられた私は、少し驚きながらも返事をした。

未央「は、はい!」

春香「よーし、じゃあ天海春香、いっきまーす!」

そうして春香先輩のレッスンは始まった。

春香先輩は危なげなくダンスを踊る。

確かに、凄い。一つ一つの動きが、私よりレベルが高い。

多分、私とは比べ物にならないほどの練習をしてきているんだろう。





でも、本当に凄いのは、そこじゃない。


あんなに激しい動きをしてるのに、とても笑顔で。

とても楽しそうで。

とても幸せそうで。


とても―――――――輝いている



見てると、思わずこっちまで動きたくなるような。

ムズムズして、ドキドキして。

こっちまで釣られて笑顔になっちゃって。

こっちまで楽しくなっちゃって。

春香先輩の動きに、目が引き込まれていく。



そうか、これが、アイドル。

よくわかんないけど、何かわかったような気がする。

矛盾してるけど、今の私の認識は、きっとこれが一番正しい。



そうしていつまでも続くように感じた
短いけどとても長く感じる、春香先輩のレッスンが終了した。

すいません、超遅くなりましたね。
別にアキバズトリップとか、ゴッドイーターをやっていたわけじゃないんです、決して、ええ。

今度はもっと早めに更新するようにします。多分。
待っててくださった方は本当に申し訳ありません。

あと、ナナは可愛かった。

春香「よ……っと、はい、終わり」

未央「凄い……凄いです! 春香先……じゃなくて、天海先輩!」

そういって私は拍手をした。

春香「ありがと♪ あと、名前で大丈夫だよ?」

未央「りょーかいです! 春香先輩!」



P「それで……自分に足りないものはわかったか?」



自分に足りないもの……それは……。


それは…………。


未央「……わかった……けど、わからない……みたいな?」

P「よし、上出来だ」

未央「えぇ!? これで上出来なの!?」

P「一回見ただけで何か理解できそうになったんだ、上出来だろ?」

P「それを何回も繰り返せば、わかるようになるじゃないか」

うーん、それもそうなの……かな?

P「よし、こっからは春香と未央、二人でマンツーマンでレッスンだ」

春香「あれれ? プロデューサーさんはいないんですか?」

P「様子を見て大丈夫だと思ったからな、それに、俺は俺でそれなりに準備をしないと」

そっか……確か2週間後ぐらいにフェスだから……。
それの準備をしないといけないよね。

衣装とか、曲とか……あとは打ち合わせとかがあるんだろう。
私はプロデューサーをしたことないからよくわかんないけど。

P「それじゃあそろそろ行く……っと、その前に」

P「未央ー、ちょっとこーい」

未央「? はいはーい、なんでしょー?」

P「いっておくが、春香に来てもらうのは今日だけだ」

春香先輩といったら、超が付くほど有名アイドル……。
流石にそう何回も来てはもらえないのかー、残念。

P「だから、お前は春香から盗めるものを、できる限り盗め、いいか?」

あの春香先輩から……。

未央「……オッケー! まかせろー!」

P「よしよし、いい返事だ」

プロデューサーは頭をポンポンしてきた。
ちょっと恥ずかしい。

P「じゃああとはお前たちに任せた! 頑張ってくれ!」

プロデューサーは、そう言葉を残してレッスン場を去っていった。





春香「よーし、じゃあ頑張ろうか! 未央ちゃん!」

未央「……はい! 春香先輩!」


そうして、私のレッスンは始まったのだった。

本日はここまで。

ちゃんみおssもっと増えろ。

春香「ここでターンして……はい、レッスン終わり!」

未央「ぜぇ……ぜぇ……も、もう無理……」

最後までレッスンをした私は、もう立てないぐらいにヘロヘロだった。

春香「だ、大丈夫? 未央ちゃん」

春香先輩が心配してこちらに声をかけてくる。

……同じレッスンをしたとは思えないぐらいには元気そうだ。

未央「だ、大丈夫……です……多分……」

春香「ほ、本当? ものすごく辛そうな感じだけど……」

未央「す、少し、休憩したら、回復するので……」

スタミナには自信があったのに、これである。
というより、春香先輩の体力はどうなっているのだろうか?

春香「いやー、それにしてもやっぱりすごいね! このレッスンに最後まで付いてこれるなんて!」

未央「い、いや、春香先輩に比べたら……」

春香「そこはやっぱり先輩だし、私がフラフラだったら格好つかないでしょ?」

春香「それに、私はこのレッスンを何度もやってるから」

このレッスンを何度も……。

……次から私もこのレッスンと同じ量をやらないと。

春香「アイドルらしさか……うん、いいんじゃないかな」

未央「あれ、曖昧ですね」

春香「正直、私もよくわかってないんだ、えへへ」

そう言われて、少しずっこけそうになる

春香「でも、もう大丈夫そうだね」

未央「……え?」

春香「だって、最初と目が違う」

春香「何か見つけたって感じの目をしてるからね!」

春香先輩は親指をグッと出しながら、笑顔で言った。





未央「……は――」





春香「で! それよりも!」


春香「未央ちゃんはプロデューサーさんのこと、どう思ってるのかな~?」






未央「――い?」




返事を遮られたうえに、なにか変な質問をされた。

春香「いやいやー、だって頭撫でられた時顔赤くしてたし」

春香「ちょっと気になっちゃっただけだから」

気になったからそういうのを聞くのはどうなんだろう。
いや、先輩に対してこう思うのは失礼なんだろうけど。

未央「……あれは、いきなりだったからちょっと驚いただけですよ」

春香「えー、じゃあなんとも思ってないの?」

未央「うーん……いい人だと思ってるだけですねー」

確かに気は結構合うし、いい人には違いないし。
私の悩みを受け止めてくれた人でもあるけど。

……別に変な感情を持ってたりはしない、はず。

春香「はー、そっかー……」

なぜか残念そうである。

P「おーい、レッスン終わったかー?」

噂をしたらというやつか、プロデューサーが帰ってきた。

春香「あ、はーい、終わってまーす」

そう言ったあと、小さな声で話しかけてきた。

春香「さっきの質問したこと、プロデューサーさんには黙っていてね?」

未央「あ、はい」

なんでなんだろう?
怒られたりしちゃうからかな?

考えてるうちにプロデューサーが話しかけてきた。

P「なんか盗めたか?」

うーん……一応真似はしてみたけど……。

未央「はい! 微妙でありました!」

P「じゃあこれからのレッスンで、フェスまでにその微妙を良くするぞ」

未央「りょうかいであります!」

P「……その喋り方はなんだ?」



未央「これが今回のレッスンで盗んだものあります!」

P「……」

未央「……」

春香「……」

P「じゃあ春香、車で送っていくから帰るぞー」

春香「あ、はーい」

未央「無視された……というか私おいてけぼり!?」

P「あぁ、忘れてた、すまん」

未央「いや、わざとでしょ?」

P「だって、どういった反応したらいいかわからんかったからな」

未央「そこは、『うわー、面白いなー! わははっ!』みたいな」

P「……本当にその反応欲しいか?」

未央「わざとらしくて、逆に虚しくなるから嫌だ」

P「だろうな」

未央「でも、もうちょっと優しい反応があっても私は良かったと思うなー?」

P「そうか、じゃあ」

P「ウワー、イマノ、トテモオモシロカッタデスヨ」

未央「すっごい棒読み!」

P「俺の演技力じゃこれが限界だ」

未央「そんなことないでしょ! ほらもう一回!」

P「ウワー、イマノ、トテモ―――」

春香「……ふふっ」

P「―――どうした、春香?」

春香「いえいえ、なんでもないですよー」

P「そうか……っと、そろそろ時間も遅いな」

P「コントはおしまいだ、未央、流石にそろそろ帰らんと親が心配するぞ」

未央「はーい」

そうして、今日の長いアイドル活動は終了した。

ここまで

書けば書くほどなに書こうとしてたか、わからんくなってくるね
やっぱ長文ssは自分にはあんまし向いてないのかもしれん

【自宅】

ジリリリリ

未央「……ふぁ?」

変な声を出しながら、私は目覚めた。

未央「んー……っと」

軽く伸びをしたあと、私は目覚まし時計を切った。
ここのところは悪い夢はみない。
うんうん、いいことだ。

未央「それにしても、昨日は充実してたなぁ……」

目覚ましの隣に置いてある春香先輩のサインを見て、ついそう呟く。
……やっぱり昨日は夢じゃなかったんだなぁ。

未央「……よーし! 今日もアイドル活動、いっちょ頑張りますか!」

そう気合を入れて、私は軽快に準備をして事務所へと向かった。

【事務所】

未央「おっはよーございます!」

挨拶をしながら私は事務所の扉を勢いよく開けた。

P「おー、おはよう、未央、今日も元気だな」

未央「ふふん、なんたって元気が取り柄ですから」

P「ほー、そりゃあいいことだ」

そうやって軽くプロデューサーが挨拶を交わしたあと、今日の予定を話してきた。

P「そうそう、今日は朝からレコーディング会社にいる作曲家と作詞家に会いにいくから」

未央「作曲家に?」

P「あぁ、未央のファーストシングルの音楽ができたからな」

私のファーストシングル……。

未央「へー……て、え、ほ、本当に!?」

P「本当だ……というか持ち歌なかったら、フェスで対決なんてできないだろ?」

P「それに、その歌と、歌に合わせたダンスの練習もしないといけないしな」

未央「ま、まあそうだけど……そっか……」

ついに私にも持ち歌が……。
そう考えると、ワクワクしてきた。

未央「ね、ねえ! じゃあ早くその作曲家のところにいこうよ!」

P「うーん……そうだな、ちょっと時間が早いが……」

P「……よし、行くか!」

未央「やった! じゃあ早速ゴーゴー!」

P「おー……って、ひ、引っ張らなくてもいくから!」


私はプロデューサーの手を引っ張って事務所を飛び出した。

【レコーディング会社】

P「おはようございます! 本日はよろしくお願いします!」

未央「お、おはようございます! ほ、本日はよろしくお願いします!」

き、緊張して少しつっかえてしまった。

相手は男性と女性が一人ずつだ。
プロデューサーの話によると、男性が作曲家、女性が作詞家らしい。

作曲家「あぁ、よろしく、君が例の子だね、話はプロデューサー君から聞いたよ」

作詞家「そうそう、期待の新人だってね」

知らないうちに、プロデューサーはそんなことを言っててくれたらしい。
期待の新人……うん、いい響きだ。嬉しい。

作曲家「それでね、音楽のほうは完成しているんだけど……」

作詞家「実は歌詞のほうはまだ何も書けてないんですよ」

まだ何も書けていない、ふむ、それはまずいんじゃ?
そう声に出しそうになったが、失礼だと思い我慢した。

P「そうなんですか?」

作詞家「えぇ、でも何も考えずにそうしたわけじゃないんですよ?」

作詞家「今回はそこの、未央ちゃんと相談しながら作ってみたいと思って」

未央「…ふぇ? 私?」

つい素っ頓狂な声を出してしまった。

作曲家「この人はよく本人の話を参考にして歌詞を作っているんだ」

作曲家「あんまり気負わず気軽にやってくれるだけでいいよ」

作詞家「うん、だから半日だけ未央ちゃんを貸してもらってもいいかしら?」

P「それは……うーん」

それを聞いてプロデューサーが悩んでいる。
やはり私なんかの情報が混じった歌詞だと心配なんだろうか。
少し考え込んだあと、答えを出した。

P「……はい、大丈夫です、こき使ってください」

OKのようだ。

未央「……えぇ!? いいの!?」

しまった、つい普通に驚いて叫んでしまった。

P「あぁ、そのほうがインパクトが強く出ると思ってな」

P「フェスの勝利にもつながるだろう」

戦略を考えた上での判断だったらしい。
私の歌詞作成能力に期待をしてというわけではないようだ。

P「それに、未央はなんだかんだでやってくれるやつだと思ってるからな」

前言撤回、なんだかんだで微妙に期待もされていた。
少しプレッシャーである。

未央「……わかりました! やります!」

私はそんなもの吹き飛ばすように返事をした。

作詞家「ありがとう! じゃあ早速だけど、こっちの部屋でお願いね♪」


そうして、私は5時間ほど初めての作詞……とまではいかないが。
それに近いものを作業したのであった。

ここまで

あんまり話が動いてないね、反省。


でも数あるちゃんみおssでも文章の多さは自身ある。
あくまで文章の多さだけだけど。


未央「うぅ……終わったー……」

作詞家「いやぁー、すっきりしたわー」

やっとのこと歌詞が完成した。
いや、普通に考えたらむしろ5時間で作ったのはすごい早いのかな?
うーん、そもそもの基準がわかんないや。

P「お、終わったか」

プロデューサーはいつ来たかわからないトレーナーさんと話していた。

トレーナー「あ、私は完成した音楽を聴いて、ダンスの振り付けの細かい調整をね」

あっちもいろいろと仕事をしていたらしい。

P「で、そっちのほうはどんな感じだ?」

未央「ふっふっふー……もちろん、完璧だよ!」

作詞家「半分ぐらいは私のアドバイスのおかげだけどねっ」

未央「そこっ、余計なことは言わない!」

歌詞を作っているあいだに、こういった軽口を言い合えるぐらいには仲良くなってしまった。
作詞家なのにコミュニケーション能力が高いのである。

P「ほー……まあ肝心の内容は、レッスンまでの楽しみにさせてもらうよ」

P「ちなみにタイトルは?」

未央「タイトルはねー……『ミツボシ☆☆★』だよ!」

P「ミツボシ……」

未央「あ、一応詳しく説明すると、ミツボシのあとに星の記号が三つ並んでるんだよ」

P「ふむふむ……して、そのタイトルの意味とは?」

このタイトルに込められた意味、それは。

未央「……今の私と、これから目指す私……かな?」

P「……うん、わからん」

あらら、まあこんな説明じゃそうだよね

未央「まあまあ! 歌を聴いて、歌詞を知ったら大体わかるから!」

P「……そうだな、そうと決まればダンスも完成したことだし、早速レッスンだ!」

未央「おー!」

作詞家「頑張れよー」

作曲家「頑張ってねー! 未央ちゃん」

未央「はい! どうもありがとうございました!」

P「ありがとうございました」

そうして、私の初のシングル曲の練習を開始することとなった。

すいません、ここまでです

スキー旅行に行ってたのであまりかけませんでした
と、いう言い訳ですすいません。

スキー楽しかったです

【レッスン場】

P「さて、レッスンを始めるわけだが……」

そういってプロデューサーは時間を確認する。

P「今回、フェスまでには時間がない」

確か二週間レッスンをしたあと、フェスがあると言っていた。
その台詞から一日経っているので、一週間と六日間ということになる。

……うん、確かに時間はあまり残されていないように思える。

P「それにはいろいろと事情があってそうなったんだが……」

P「まあその話は、とりあえず置いておく」

気にはなったけど……時間がないと言われている時に
わざわざ長くなりそうな話を追求して聞くのもどうかと思うのでやめておいた。

P「そんな状況のなか、今回フェスまでにダンスと歌を覚えてもらわないといけないわけだが……」

P「覚えるだけじゃない、勝つためにはその質をできる限り高めてもらう」

P「……できるか?」

プロデューサーは挑発するように私に言った。

私は当然……。

未央「……もっちろん!」

自身満々に答えた。

P「流石だ! じゃあレッスンに入るぞ!」

未央「よし、どんとこい!」

              *


私は常に笑顔を絶やさず、ダンスを続ける。

P「ワンツー、ワンツー、ワンツースリーフォー」

というかプロデューサー、レッスンを見る能力もあるとはびっくりした。
元々あの765プロでもレッスン指導をしていたのだろうか、丁寧で分かりやすい。

P「右足遅れてるぞー」

っとと、そんなこと考えてたら少し遅れていた。

今はレッスンのことだけに集中しないと。


そうして二時間近くレッスンをしたあと、軽い休憩に入った。

              *
P「ふむ……」

プロデューサーがなにか考え込んでいた。

未央「どうしたの? プロデューサー」

まさか私のレッスン内容がひどくて悩んでいるとかだろうか。
そうだとしたら、結構ショックだ。

P「いや……未央、さっきのところ、ダンスを間違えてたよな?」

ギクッ、バレてた。
割と自然な動きで、それっぽい感じで誤魔化したんだけど……。

未央「い、いやぁ……覚えるのはちょっと苦手で……お、怒ってる?」

P「あ、すまんすまん、そういうじゃないんだ」

P「……むしろ、未央がさっきに間違えたところ、ほとんど分からなくてな」

P「それほどまでに、間違ったままでも自然にダンスが繋がっていたんだ」

未央「ふむふむ……つまり私の誤魔化しは案外通用すると」

P「……よし、今回はダンスより歌に力を入れよう」

未央「……え?」

P「未央、ダンスのことだが……最悪間違えてもらっても構わない」

未央「えっと……え、いいの?」

P「あぁ、大丈夫だ」

P「ただし、さっきみたいに自信をもってそのまま踊れ」

P「そしたら多分、審査員も観客も間違いに気づかない」

P「初めてのシングル発表ってこともあるから、絶対といってもいい」

未央「そ、そんなに?」

私の誤魔化しテクニックのレベルがそこまで高いとは……さっすが私!
……うーん、何かこの言い方だと微妙に嬉しくない。

P「よし、休憩はここまでだ、レッスンを再開するぞ!」

未央「あ、うん! よーし、こ―――」

そう私が気合を入れた、というときにプロデューサーが遮るように言葉を発する。

P「……っと、あと最後に一つ」

未央「―――っとと、ち、ちょっとプロデューサー、タイミング悪いよもう!」

P「悪い悪い、言いたいことがあってな」

P「お前の作った歌詞だけど……」

あ、そういえばまだ感想聞いてなかった。
ど、どうだったのかな……?

P「……俺は未央らしい、凄く良い歌詞だと思うよ」

P「これはもう、フェスの勝利も確定だって思うぐらいにな」

そうニヤリと笑いながら、大袈裟に褒めた。

未央「……ふっふーん、だよね! これはもう勝ち以外見えないよね!」

P「あぁ、その通りだ! よし、いくぞ!」

未央「おー!」

そうして意気投合をしたあと、レッスンを再開したのだった。


まあこんな内容のレッスンを、毎日続けて。

……ついに、フェス前日となったのだった。

今日はここまでです、サーバー回復してよかった

一気に進んでますね、すいません
ただこれ以上一日ずつやっても途中100%
だれるのと蛇足感が半端なくなるので

なのでフェス前日までのとこは外伝的な感じで
少しだけ書きたいと思います。

『フェス、五日前』



【事務所】

未央「おっはよー! プロデューサー!」

P「おはよう、今日もいい挨拶だな」

未央「もっちろん!」

もうすぐフェスもあるし、当然私のテンションは高い。
やる気が満ち溢れている状態だ。

P「今日もレッスン……の前にだ」

P「神社に行きたいと思う」

神社、フェスに勝てるように祈願するということだろうか。

未央「それって、勝てますようにー! ってお願いにいくために?」

P「まあ、簡単に言ったらそうなる」

未央「へー……プロデューサーもそういうことするんだね! ちょっと意外かも」

P「そうか?」

未央「うん、なんか、雰囲気が」

P「雰囲気ってアバウトだな……」

P「……とにかく、意気込みを入れるという意味でも、行っておいて損はないさ」

意気込みか……確かにここで気合を入れ直すのもいいのかもしれない。
フェスまであと五日だし、気持ちもより引き締めていかないと。

P「よし、じゃあ時間も勿体無いし、そろそろ行くぞ」

未央「あ、はーい」

【神社】

神社に到着した私たちは、早速五円を賽銭箱に入れたあとお願い事をした。

私は当然、次のしまむーとのフェスに勝てるように。
多分プロデューサーも同じようなことをお願いしてると思う。

勝てますように……勝てますように……。

……いや、これだと自信がないみたいだ。

勝つ……勝つ……。

……あれ? これはお願いじゃなくて宣言だ。

えーと、なんていえばいいんだろう。


自信満々でなおかつお願い――――



「あー! ハニー!」



―――後ろからハニーという言葉が聞こえた、カップルかなにかだろうか。


気になって後ろを振り向く。
金髪で、とても美人だ。
あと、なんというか、凄いオーラがある。


P「……美希?」


……プロデューサーが反応した。美紀という名前らしい。
ということはプロデューサーの彼女?


美希「久しぶりー! なの!」


そう言って彼女は勢いよくプロデューサーに抱きついた。


P「うおっ、み、美希、抱きつくのはやめろって毎回言ってるだろ」

美希「またまたー、嬉しいくせにー」


プロデューサーは顔を赤くして美希という女性を引き剥がそうとしている。

……なんか、凄くモヤモヤする。
うーん、こんな気持ちは今までなかったのになあ。

とりあえずプロデューサーに声を掛ける。


未央「えーと……その人って彼女? プロデューサー」

P「あー、違うよ、ほら美希離れて、自己紹介だ」

美希「えー……しょうがないの」


美希さんはそういって渋々といった様子で離れた。
よく見るとなんだか見覚えが……。


美希「ミキは星井美希、アイドルやってるの!」


星井美希……あ。


未央「あ、アイドルって、765プロの……?」

美希「うん、そうなの!」


まさかこんなところで会えるとは……。
でも春香先輩の時もあり、驚きで声を張り上げたりすることはなかった。


未央「……あれ?」


その星井先輩にハニーと呼ばれている。
ということは……。


未央「プロデューサー……ハニーってどういうこと?」


私はそう言いながら、厳しい目つきでプロデューサーを見た。
アイドルに手を出してるなんて……。


P「い、いや、これは違うんだ、未央」


まるで浮気がバレた夫のように、プロデューサーは慌てながら反論する。


P「これは勝手に美希がそう呼んでいるだけであって……」

美希「だって、ハニーはハニーだもんね!」

P「お前のハニーになった覚えはない!」


ふむ……プロデューサーは仕事には誠実な感じがする。
だから、言っていることも多分本当なんだろうと思った。


まあここは何も―――









美希「というか、別に美希がハニーをどう呼んでも、あなたには関係ないって思うな」







―――今の言葉に、何故か少しイラっとした。





未央「……いやいや、私は関係ありありだよ」

未央「なんたって、今プロデュースされているのは私だからね!」


うちの事務所のとある子の言い方を少し真似して、ドヤ顔で言い放った。


美希「……それと呼び方の話、どう関係あるの?」

……うーんと、あー……なんだろう。

未央「えーっと……と、とにかく! それだと私が気になるの!」

美希「どうして?」

どうして……どうしてと言われても。
よくわからない。

美希「あ、もしかしてあなたもハニーが好きなの!?」

未央「い、いや、そういうわけじゃ……」

美希「じゃあ別に美希がハニーをどう呼ぼうと勝手なの!」

P「おいおい、それは違うだろ……未央、お前も何か言い返してくれ」

まずい、このままだと言い負けてしまう。
これで負けるのは非常に悔しい……。




……ええい、ままよ!




未央「……あー、そうだよ! 私もプロデューサーが好きなの!」




P「そうそう、未央も俺が好き……はぁ!?」




美希「……へぇ」

星井先輩の目つきが少し変わった。
こちらを観察しているようだ。

美希「……うん、あなたも、いいライバルになりそうなの」

美希「名前、教えてもらってもいい?」

未央「……本田未央」

そういって星井先輩と目を合わせる。
その間にはバチバチと効果音が出ていることだろう。

美希「……美希のことは美希って読んでくれていいの」

未央「……ありがとうね、こっちも未央って気軽に読んでくれていいよ」

そういって、私も相手も少しだけ笑う。

美希「ふふっ、今日のところは帰るの」

美希「……未央、次に会うときを楽しみにしてるね」

未央「……こっちこそ、楽しみにしてるからね!」

そう言って、美希先輩は去っていった。

……よし、今回は勝ったような気がする。



P「……」

あれ、なんだかプロデューサーがこっちを見ている。
何故だろうか……うーん……。





あぁ


あぁぁあああああ!


未央「ぷ、プロデューサー! さっきのあれ違うからね!」

P「あ、そ、そうなのか、よかった」

未央「あれは負けたくない勢いで、言っただけだから」

P「そ、そうだよな、そんなはずないよな、未央が俺を好きだなんて」

未央「うんうん、そうそう!」

良かった、誤解は解けたようだ。
危ない危ない……。


そうして誤解が解けてしばらくしたあと
改めてお願いをし直した。





さっき、プロデューサーに否定されたとき、少し悲しい気持ちになったのは、気づかないことにした。

『フェス、五日前、ライバル登場? 編』終了

はい、ゴリ押しさーせん。

ということで今日はここまでです。
次からは前に言ったとおりフェス前日になります、多分。

【事務所】

ついに、フェスも明日となった。

P「今日は会場の確認のあと、リハーサルって予定になってる」

P「……総仕上げだ!」

未央「……うん!」

【フェス会場】

未央「ここで……フェスをするんだね……」

しまむーとの直接対決をここで……。
そう考えると、凄く燃えてきた。

P「あぁ、そうだな……ん?」

向こうから人がやってきた。
あれは……しまむーだ!


卯月「どうも、こんにちは!」

卯月「未央ちゃんと……プロデューサーさん? ですよね?」

未央「こんちわー! しまむー!」

P「こんにちは。はい、未央のプロデューサーをやらせて頂いているものです」


うお、しまむーに凄い丁寧だよ。私とは大違いだ。
いや、でも最初は私にもさん付けだったし、普段はこんな感じなのかな?


卯月「え、ええっと……その、未央ちゃんと話すみたいな感じで大丈夫ですよ?」

P「ん、そうか、ありがたい。さっきのは疲れるからな」

そんなこともなかった。


未央「しまむーもリハーサル?」

卯月「うん、そうだよ」

当たり前の答えが返ってきた。
なぜ聞いたのか自分で少し疑問である。

こんなことを私は聞きたいんじゃない。いや、言いたいんじゃない。

未央「……しまむー、私、負けないから!」

私はしまむーに、そう宣戦布告した。

卯月「……うん! でも、私も負けるつもりはないよ!」

しまむーも負ける気はないようだ。
そうこなくては。

P「……そろそろ俺たちの出番だな、いくか」

未央「あ、うん!」

今回のフェスは多数のアイドル対決が行われる。
その中の一つの対決が私としまむーというわけだ。

P「まあ、今日は流れの確認をするだけなんだけどな」

未央「あれれ、歌ったり踊ったりとかはしないんだね」

てっきり軽くライブっぽいことをすると思ってた。

P「ただのライブならそうなんだけどな」

P「今回の場合はフェスだ。あんまり力を見せたりするのは良くないだろ?」

未央「それもそっか」

それで力の差がすごいあるのが分かったりすると
本人のやる気とかにも関わってきちゃうし。

P「……明日は本番だ、大丈夫か?」

未央「うん! もっちろん! なんでもこいって感じだよ!」

……本当はそんなことない。今も緊張と恐怖でいっぱいだ。
まともに舞台の上にたったこともない。ましてやライブなんか。

P「……いいことを教えてやる」

その事を知ってか知らずか、プロデューサーは話してきた。

P「怖いと感じるのは、失敗するというイメージがあるからだ」

P「考えてないつもりでも、必ずそのイメージは頭の片隅にある」

P「それが大舞台になればなるほどな」

失敗するイメージ……。

P「じゃあどうすればいいか」

未央「ど、どうすれば……?」

P「それは人それぞれだ」

ガクッ。

未央「それじゃあ意味ないよプロデューサー!」

いいことを教えてくれるんじゃなかったの!?

P「……うーん、まあとにかく、楽しめ!」

未央「……楽しむ?」

P「お前が楽しかったら、客も楽しい」

P「楽しくなったら緊張も無くなるし、恐怖も感じない」

P「精一杯、ライブを楽しんでいけばいいさ」

ライブを、精一杯楽しむ……。

P「それに今回の採点の基準は、ほとんど観客だ」

P「審査員もいるが、オマケみたいなもんだ」

未央「そっか……つまり、楽しんだもん勝ちってことだね!」

P「そのとおり!」

それなら私の得意分野だ。
なんだかいけそうな気がしてきた!

P「よし! それじゃあ行ってこい!」

未央「うん!」







P「リハーサルだけどな!」

未央「そういえばそうだった!」


今日はまだリハーサルだった。

今日はここまでです全然話し進んでませんすいません

今更ながら地の文ないほうが良かったんじゃなかろうかとか思ってます
でも頑張ります

夏ぐらいにはガリガリ書いて終わらせたいです

リハーサルが終わった夜、私はベッドの上で寝付けずにいた。

未央「……明日は、初めてのライブ。 ……もっと細かく言うとフェスだけど」

プロデューサーは言っていた。精一杯に楽しんだらいいと。
じゃあその為にはどうしたらいいんだろう?

未央「うーん……」

私がアイドルになってからやってきたことを思い出して見れば、何かわかるかもしれない。


今まで私はなにをやってきたか……。

最近だとプロデューサーとのレッスン。

それよりちょっと前には、春香先輩やトレーナーちゃんとのレッスン。

ヒーローショーの営業……キャラ作り……学校の文化祭……ってそれは違うか。


そういえば春香先輩のレッスンを見たときは……。

私も一緒に動きたくなるような感じで、見てるだけで体が凄いウズウズしたなあ……。

自分も一緒に歌いたいというか、動きたいというか。


……あ、そうか!

歌いたくなるなら、動きたくなるなら……!




……よし、私なりの観客のみんなと一緒に楽しむ方法を見つけた。

後は私が、その気にさせるほどのパフォーマンスが出来るかどうか。



つまり、レッスンの成果を見せるだけだ。

【フェス当日】

P「さて、いよいよきたな……!」

ついにフェス当日。
出番が来るまで待つのみとなった。

P「ここからは俺は何も手助けできないが……大丈夫か?」

未央「うん! バッチシだよ!」

イメージはもう出来上がっている。
あとは、見ているみんながノってくれるかどうか。

未央「だから安心して大丈夫! プロデューサー!」

P「……そうか、良かった」

P「じゃあ安心して、未央の応援をさせてもらうよ」

係員「すみません、本田さんそろそろ出番です」

ついに出番のようだ。
必死に高鳴る胸を抑える。

P「……っし、じゃあいくぞ!」

未央「おー!」

さて! 次のフェスは……!


彼女のダブルピースにやられた人は数しれず?
普通といいながらもその可愛さは普通ではない!

島村卯月!


元気が魅力的なパッション娘! その実力とはどれほどか?
今回初めて名前を聞く人もいるであろう、隠されたダークホース!

本田未央!


さあ! このライブバトル! どちらに勝利の女神は輝くのか!?

先攻は島村卯月のライブから始まります!

どうぞぉ!


ワァァアァァァ! ウヅキチャアアアン! オレダケッコンシテクレェェエエ!



卯月「皆さん! おはようございます!」

卯月「今日は―――――

未央「……しまむー、慣れてるなぁ」

P「まあ、そりゃあな」

しまむーがお客さんに自己紹介をしている。
天然で少し笑いも取り、好印象な感じだ。

未央「……だ、大丈夫かな私」

やばい、リハーサルの時よりも遥かに緊張してきた。
本番で初めてなんだから、当たり前かもしれないけど。

P「おいおい、さっきバッチシって言ってたじゃないか」

未央「ほほほ本番となると緊張が思ってよりも大きいくて」

P「リハーサルの時も言っただろ、楽しんでいけばいいって」

未央「そ、そうなんだけどさ」


やっぱり分かっていても足が震える。


P「……それっ」

いきなりプロデューサーが急に私のほっぺを引っ張った。
これ以上引っ張ったら顔の形が変わってしまうかもしれないぐらいに。

未央「ひ、ひひゃいよ!」

ちなみに今のは痛いよと言ったつもり。

P「ははっ、悪い悪い。何だかグニーってしたくなってな」

そう言ってプロデューサーは引っ張るのをやめてくれた。

未央「もう、プロデューサーはー」

別に嫌なわけでもなかった私は、軽く注意するだけで終わった。


……いつの間にか足の震えは止まっていた。

未央「……ありがとね」

P「ん? 何のことだ?」

プロデューサーは知らないふりをした。
素直じゃないなぁ。


そう思った直後、タイミングがいいのか悪いのか。

まあ悪くはないと思うけど。


係員「次、本田さん。お願いします!」



私の出番がやってきた。







P「よし、行ってこい!」


私の背中をポンと叩く。
それをきっかけに私は動き出す。



未央「うん!」




さあ、ライブの開始だ。




未央「どーもみんな! 初めまして! 本田未央、15歳でーす!」

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