カイジ「シークレットゲーム?」 (161)

目を覚ます、伊藤カイジ。

「あ? ここ、どこだ」

見覚えのない部屋。意味不明

記憶を辿れば、コンビニで万引きをして帰る途中、何者かに後ろから薬品を嗅がされたことを思い出す

「まさか、拉致?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377150889

心当たりを探る

一番に思い浮かんだのは借金。取り立てのためヤクザがカイジを拉致した可能性

「っが、馬鹿な。ヤバい、最悪・・・・バラサれる!」

内臓摘出。臓器を取り出された挙句、東京湾

その可能性に至り、カイジ震える
圧倒的、臆病

「あ? 何だ、これ」

自分の首に金属の首輪が嵌められていることに気付くカイジは気づいた
ポケットにはPDA。起動すると何やらゲームのルールなる事柄が記してある

カイジは自分が何かのゲームに巻き込まれたことに気付いた

「そうか、ここもお前らの巣か・・・・帝愛!」

人を拉致してゲームを強いる。そんな組織は帝愛以外には考えられない

その時、物音。見れば部屋のドアが開き、何者かが現れる

入ってきたのは女性

ここでカイジ強気

女だとわかったとたんに強気になる

「っが、ざけんな、誘拐犯!」

・・・ざわ・・・ざわ・・・

「ちょ、ちょっと待って、わ、私は」

「ざっけんな、出せ、俺をここから出せ!」

「まって、誘拐犯?
 違うわ、私も誘拐されてきたの
 見て首輪、私にもついてるでしょ」

 否、実はこの郷田という女性、ゲームを企画した組織の人間である
 彼女はゲームマスターとして潜入する際、参加者に紛れ込むため首輪をつけている

(ふふ、これで私も被害者だと思うはず)

しかし、次の言葉を聴いた瞬間郷田は固まる

「黙れ、誘拐判!」

(う、嘘でしょ!?まさか、私が被害者じゃないと見抜いて)

予想外、郷田混乱

「だから、その首輪がなんなんだよ
 それが誘拐と何の関係があるってんだ」

「え?」

・・・ざわ・・・ざわ・・・

カイジは気づいていなかった

つまり、郷田の首に首輪がついているということが被害者であるということを示しているということに

・・・ざわ・・・ざわ・・・

(何なの、この馬鹿は・・・)

郷田、呆れる

このゲームを何度もしてきたが初めての体験

そして郷田が説明を始める

――15分後

「いやぁ、すいません、郷田さん
 俺、気が立ってたもんで」

「別にかまいませんよ伊藤さん
 わかっていただけたのなら」

和解

カイジは当然気づかなかった。郷田が被害者ではないということに

「それで、これから伊藤さんはどうされるおつもりですか」

「ええっと・・まずはこれを食べようと
 安心したら腹が減っちゃて」

「おにぎりですか」

カイジが取り出したのは万引きしたおにぎり

「よかったら郷田さんもどうぞ」

郷田に一つおにぎりを渡す

「・・・・・でも、伊藤さん、これ賞味期限が切れてるみたいですよ」

「な、に」

・・・ざわ・・・ざわ・・・

まさかの賞味期限切れ

食べられない

「あぁあぁああぁあああああぁああぁあ」

カイジ落胆

ボロ、ボロ、涙

「酷い、酷すぎる、こんなことって
 せっかく万引きしたのに」

ボロ、ボロ

(な、何なのこいつ)

・・・ざわ・・・ざわ

当てはまらない

郷田はあらゆる人間を見てきた

しかし、今まで見てきた人間の中にこれと同じ人間はいなかった

「あの伊藤さん。元気を出してください
 私、サンドイッチなら持ってるので良ければどうですか」

泣き止まないカイジにやむ終えず郷田・・・渡す

サンドイッチ

「え・・・くれるの・・サンドイッチ・・・」

「ええ良ければどうぞ」

サンドイッチを受け取ったカイジ・・・かぶりつく

「ありがてえ、郷田さん」

「いえ、別に私は」

「温けえ、なんていい人なんだよ」

ボロ、ボロ

カイジ、再び号泣

(いったい何なのこいつは?)

すべてが当てはまらない

誘拐されて状況が分からないにも関わらずサンドイッチを食べる

今まで郷田が見てきた人間にはいないタイプ

(まさか、誘拐された事を忘れたなんてことはないわよね
 ・・・・さすがにそれはないわね、常識的に考えて)

否、カイジに常識は通用しない

実際カイジは感動によって誘拐されたということを一時的に忘れていた

ありえないレベルの馬鹿

しかし、郷田は気づかない

(なんなのこいつは
 この状況で堂々とサンドイッチを食べるなんて)

気づけない郷田・・・その理由は簡単

それは郷田が有能であるということ

そう、郷田は間違いなく優秀な部類の人間

カイジとは正反対

それゆえ気づけない

カイジのあり得ない非常識に

(伊藤カイジ・・・・最初は馬鹿かと思ったけど・・・
 まさか、あれは演技?!
・・・・要注意人物としてマークしたほうが良さそうね)

サンドイッチにかぶりつくカイジを見ながら郷田は結論をだした

カイジと郷田は行動を開始した

まずは出口を探そうということになる

そして到着

・・・・が駄目

シャッターが閉まっていて出られない

「っがっがっが、なんだよ、せっかく出口を見つけたのに」

地団駄を踏むカイジ

滑稽極まりない様子、しかし・・・・

(こいつ、私を油断させようとしてるのね)

勘違い・・・・郷田、圧倒的勘違い

「あれ、なんだここ」

ここでカイジ発見

シャッターを破った跡

そこにはコンクリート

そのコンクリート掘った形跡がある

かなり深く

つまり、さすがのカイジも気づく

ここからの脱出は不可能

「がぁーーーーーーーーざっけんな
 っがっがっがぁぁーーーがっがっがっがっがっがぁぁーーー」

惨め、滑稽を通り越して惨め

(こいつ、ふざけた芝居を・・・)

しかし、またしても郷田、勘違い

「おい」

ここで一人の男がカイジに話しかける

気づけばその男の他に3人の男女がいた

郷田は自己紹介とルール確認を持ちかける

5人はこれに同意

カイジに話しかけた男は手塚義光、本人は会社員を名乗っている

2人目は矢幡麗佳、女子大生

3人目は赤木しげる、学校には行ってないらしい

4人目はルルーシュ・ランペルージ、大学生

一通りの自己紹介とルールの確認を終える

その結果運良くすべてのルールが分かった

「なるほどなあ、こりゃ運が良かったぜ
 ルールも知らずに攻撃してたら今ごろ死んでったってわけだ」

手塚がニヤつきながら言う

現在は戦闘禁止時間、攻撃するとルール違反である

「ちょっと待って、じゃああなたはこのルールが本当だとでもいうの」

「なんだ、あんたら見てないのか
 そこの隅のところ」

手塚が薄暗いあたりを指差す

そしてそこには・・・・死体

「な、なんだよこれ」

カイジが近寄る

その死体は参加者の一人、姫萩咲実だった

「っが、ざけんなよ
 人の命を何だと思ってやがる
 ゲームとかで殺していいわけないだろ
 許せねえ、絶対許せねえ」

ルールは本当だった

PDAに書かれた条件を満たせなければ、カイジたちの首輪は爆発する

しかし、生還できれば、賞金20億

桁外れの報酬・・・・!

「じゃあ私はここで失礼します」

こう言って出口に向かったのは矢幡

「ちょっと待てよ、失礼って、あんた何言ってんだよ
 ここは皆でいた方が安全」

カイジが止める

「安全?ふざけないでください、伊藤さん、あなたがこの人を殺してないと証明できるんですか」

「は、俺が殺した、ざっけんな」

カイジ激怒

「別にあなたが殺したとは言ってません
 ただその可能性があると言っただけです
 それはここにいる全員に言える事、私は裏切られて殺されるのだけは御免ですから」

そう言って矢幡は出て行った

「あの譲ちゃんの言う通りだな。俺も行かせてもらうぜ」

そう言って出て行ったのは手塚だった

その後アカギも出て行く

本来なら郷田も追いかけて出て行くのが普通

しかし・・・

(カイジから目を離すわけにはいかないわね)

異常にカイジを警戒し郷田その場に留まる

結局残ったのはカイジ、郷田、ルルーシュの3名

「っが、あいつら白状者
 クズ、最低なんだよ、ああいうの
 人を信用しないとか、悲しい奴ら
 それに比べていい人だな郷田さんとルルーシュ君は」

「いえ、そんなことはありませんよ、カイジさん」

ルルーシュが笑顔で答える

しかし、ルルーシュが残ったのにも理由があった

(ふん、カイジ・・・・馬鹿な奴め
 単純なクズだ)

ルルーシュ、心中でカイジを罵倒

(俺がここに残ったのはちゃんと考えがあるのさ
 この俺しか思いつかないような考えがな
 確かに普通なら出て行くのが当然、つまり八幡、手塚、アカギは基本的には正しい)

ルールが事実である以上ここは出て行くが道理

(しかし、俺には奴らを凌駕する策がある
 それは・・・PDAと首輪を手に入れるという策だ・・・この馬鹿共からな
 この場に残った時点で伊藤と郷田は馬鹿確定
 状況を理解できてないアホ、絶好のカモ
 戦闘が解禁されたら・・・・殺す
 隙を見て後ろから刺す)

これがルルーシュの策

(俺の解除条件に首輪やPDAは必要ないがこいつらを殺して奪う価値はある
 まず持っていればこれが必要な奴との交渉に使える
 それに賞金が増えるしな)

 賞金20億はゲーム終了時に生存者で山分け

(さあ、馬鹿共、戦闘開始までせいぜい大人しくしててくれよ
 安心しろ、殺す時は楽に逝かせてやる)

一方、郷田はルルーシュの考えをよんでいた

(ふふ、ルルーシュ君、あなたの考えは分かってるわよ)

重ねて言うが郷田は優秀、カイジのことはともかくルルーシュのような人間はいくらでも見てきた

(さて、蛇が2匹、私はこれからどう動こうかしら)

「郷田さん、ルルーシュ君、みんなで協力して頑張ろうな
(大丈夫、こんないい人達が一緒なら)」

そしてカイジはというと、何も気づいていなかった

その約4時間後、戦闘が解禁される

戦闘が解禁されてから30分、とある一室で老人が笑っていた

「コッコッコ、やはりわしは王、豪運」

老人の手には日本刀がある

確かにろくにナイフすらない一階で日本刀を見つけられるのは稀

「落ちてないわしの運
 そう、わしは王だ」

自らを王と称する老人の名は兵藤和尊

以前は帝愛グループの会長だったが部下であった黒崎に帝愛を乗っ取られ会長の座を追われた

「このゲームで得た賞金を使って帝愛を取り返す
 わしが王であることを知らしめてやるわ
 クキキ、コッコッコッコッコ」

そう言いながら兵藤は部屋を出た

そして発見、手塚

「クゥーコッコッコ、早速一匹発見
 若者、ックッコッコ、殺す」

兵藤のPDAは9、自分以外の参加者全員の死亡

「まあ、わしには条件など関係ないわ
 20億はわしの者、当然皆殺し」

兵藤は後ろから手塚に近づいていく

(クック、気づかれた様子なし
 やはりわしが王)

兵藤が日本刀を振りかぶった

(王はわし)

振り下ろす

しかし日本刀は空を切った

「なんじゃと」

日本刀が振り下ろされた瞬間、手塚は横に避けていた

そして日本刀は床に打ち付けられ衝撃で兵藤の手から離れる

「爺さん、いい武器持ってんじゃねえか」

そう言いながら手塚は日本刀を拾い上げた

「ああ、あ、貴様、いつから気づいて」

「あんたが部屋から出てきたところからだよ
 ぶつぶつ独り言、言ってんだから普通気づくだろ
 じゃあな、爺さん」

そう言いながら手塚が日本刀で兵藤を切りつけた

「ひ、ひいぃぃぃ」

兵藤の肩を切り裂く

「っち、爺さんのわりに動くじゃねえか」

手塚が再び日本刀を振りかぶる

兵藤は背を向けて逃げ出した

「なんでわしがあんな若僧に」

どたどたと無様に逃げる

「鬼ごっこか、いいぜ爺さん」

余裕の手塚

それも当然のこと

手塚は体力も運動能力も兵藤より上

兵藤に追いつくのも時間の問題

兵藤もそのことに気づいている

(わしが死ぬ?
 この王であるわしが?
 ふざけるな、あんな若僧に)

認められない。あんな名も知れぬチンピラに日本を裏から支配する王である自分が殺さるなどあっていいはずがない

その時、兵藤が何かのスイッチを踏んだ

その瞬間、シャッターが下りてくる

罠だった

「なんだ」

手塚、予想外

瞬く間にシャッターにより道が閉ざされた

「運がいいじゃねええか爺さん
 まあいいぜ、日本刀が手に入ったんだしよ」

手塚はシャッターから離れていった

音を聞きつけて他の参加者が来る可能性があるからだ

一方、兵藤はというと

「はぁぁぁ、助かったわい
 クックックク、やはりわしは豪運
 シャッターが下りてくるとはのう」

安堵、圧倒的安堵

「にしても、あの若僧、ふざけおって
 王に刃を向けるとは
 制裁が必要じゃ
 クックコッコッコッコッコ」

ルルーシュは機会を待っていた

(ついに戦闘解禁、これでいつでも馬鹿共を殺せる
 だが油断は禁物、俺は運動が不得意だ
 つまり2人をほぼ同時に不意打ちで殺さなくてはいけない
 まあ、いずれその条件はクリアーされる)


その時ルルーシュの肩に何かが刺さった

「っえ・・・・」

それはナイフ

「なんだと」

気づけば郷田が何本かナイフを持っていた

カイジもわき腹にナイフが刺さっている

「ご、郷田さん、いったい何を」

カイジ、状況を理解することができない

しかし、ルルーシュは状況を把握した

(くそ、この女)

郷田の裏切り

「残念だったわね2人とも
 先手は打たせてもらうわ」

ここでようやくカイジも状況を把握する

「郷田さん、まさか裏切って」

「伊藤カイジ、あなたにはここで死んでもらうわ」

ここでルルーシュ、動く

郷田の第一標的がカイジであることと武器がナイフであること

これらを分析した上でルルーシュはカイジを転ばせた

「ルルーシュ?!何を?」

無様に転ぶカイジ

そしてルルーシュは郷田に背を向け全速力で走り出した

(ふふ、ルルーシュ君は賢いわね
 たしかに彼を追うわけにはいかないわ
 ここで殺すのは伊藤カイジ)

郷田がナイフを投げる

「っが」

カイジ辛うじてそれをかわした

「裏切りやがったのか
 ざっけんな、この蛇」

郷田無言で再びナイフを投げる

(蛇ね、どの口が言うんだか)

ナイフはカイジの頬を掠めた

ここでカイジ郷田の靴が目に留まる

それはハイヒール

(よし、それなら逃げ切れる)

カイジ郷田に背を向け全力疾走

(こいつ、ふざけやがって)

郷田がナイフ4本を投げる

3本は外れ

1本はカイジの肩に掠った

「っち」

舌打ちする郷田

郷田も気づいていた

ハイヒールではカイジに追いつけないことに

(ここで殺し損ねたのは痛いわね)

カイジは郷田から逃げ切ることに成功した

――そして

「っが、ざけんな
 郷田、許せねえ」

郷田から逃げ切ったカイジはとある一室にいた

「くそ、なんで裏切る
 郷田、ルルーシュ・・・
 酷でえ、こいつら安藤や古畑と同じ・・・クズ」

ボロ、ボロ

気づけばまた涙

カイジは床に突っ伏して泣いていた

矢幡麗佳はとある通路にいた

 戦闘解禁のアナウンスが流れる

(私は必ず生きて帰る)

矢幡は死にたくなかった

(私は誰も信用しない、生きて帰るためなら人だって殺す)

矢幡は決意を固める

そこに一人の男が現われた

赤木しげる

「あなた、たしかアカギだったわね」

「顔色悪いぜ矢幡さん」

この時矢幡は考える

(どうする、鞄にはナイフがある
 場合によっては・・・)

鞄に手を入れる

「そう殺気立つなよ矢幡さん
 ちょっと話があるだけですよ」

「話?」

「俺と組みませんか」

アカギはそう言いながら自分のPDAを見せた

【J】『開始から24時間以上行動を共にした人間が2日と23時間時点で生存していること』


「つまり、あなたは私と行動することでその条件を達成しようというのね
 でも駄目ね、そのPDAがあなたのものだという証拠はあるの
 ジョーカーだという可能性があるわ」

「それだけですか」

一瞬の沈黙後アカギが口を開いた

「なにが言いたいのかしら」

「いえ、さっきの死体、調べたらPDAがなかった・・・
 矢幡さんなら死体のPDAで偽装する可能性も思いつくんじゃないですか」

「そ、そうね、その可能性もあるわね」

「くっく、なるほど、あんたか死体からPDAを盗ったのは」

ざわ・・・・ざわ・・・・

「っな、違う、私は殺してない」

実際、矢幡は殺していなかった

矢幡がエントランスに到着したのはカイジ、郷田に続いて3番目

そこで死体を発見

この時、矢幡は死体からPDAを取り出した

「別にあんたが殺したとは言ってない」

「信じるっていうの」

「戦闘禁止の際に殺すのは困難
 PDAを奪って無理やり首輪に付けるにしたって女性のあんたじゃ難しい
 もみ合いになれば戦闘行為ととられる可能性もある」

「そうよ、私は殺してない
でも私はあなたと組む気はない
 それが答えよ」

「強情な人だな
 ならこうしませんか」

アカギは二つのPDAを差し出した
一枚はJ、そしてもう一枚はジョーカー

「あ、貴方がジョーカーの持ち主。それにしても、なんのつもり」

「持っててもらってかまいませんよ矢幡さん」

これにはさすがの矢幡も驚愕

「あなたはそれがないと首輪を解除できない。私が壊しでもしたら死ぬことになるのよ
 その上、ジョーカーまで渡すなんて
 ・・・・・あと教えといてあげるわ私のPDAは8よ」

【8】は『自分のPDAの半径5m以内でPDAを5個破壊する。6個以上破壊した場合は首輪が作動する』

「なるほど」

「わかったかしら、私に渡すのは自殺行為も同然なのよ」

「面白い」

「っえ」

「あんたがそれを壊して、その結果俺が死ぬことになったとしても別にいい」

「何を」

「死ぬときがきたならただ死ねばいい」

アカギが言い放つ

(死ぬのが怖くないっていうの)

矢幡には理解できない

(でも・・・綺麗な目・・・)

その目は一点の濁りをない目だった

「それに首輪の解除はおそらくPDAを使うことにはならない」

「どういうこと」

「まあ、いずれわかりますよ
 でどうします矢幡さん」

矢幡は思案する

(どうする、この男のPDAを持っておけば行動を制限できるはず
それに私一人で行動したとしてはたして生き残れる?)

「PDAはいつ返せばいいのかしら」

「いつでもかまいませんよ」

「・・・・わかった、その話に乗るわ」

利用できるものは利用する。
PDAを握っておけば当面の危険はない。
それが矢幡の判断だった。

「そうこなくっちゃ、話がわかるぜ、矢幡さん」

こうして、矢幡とアカギによる同盟が結成された

兵藤は歓喜していた

「クック、なるほど、そういうことか」

手には拳銃が握られている

「やはりわしは王、神に恵まれておる
 神は日本刀では飽き足らずわしに拳銃を寄越した
 そう、神は所詮わし下僕、奴隷
 わしが王」

確かに1階で拳銃など本来はないもの

極稀に1つ置かれるか置かれないかという物

それを見つける豪運

「コッコ、これであの若僧を殺してやれる
 クック、キッキ、コッココ」

しかし、ここは通路のど真ん中

兵藤は拳銃を手に入れたことにより完全に油断していた

サクっと兵藤の手に何かが刺さる

それはナイフ

「ぐっあ」

兵藤は拳銃を落としてしまう

次の瞬間、4本のナイフが飛んできた

「ぐわぁぁぁぁぁぁ」

兵藤、無様に四つん這いになりそれをかわす

兵藤が頭を上げると知らない少年が拳銃を拾っているところだった

「小僧、それはわしの、ぐぁ」

少年に蹴られ兵藤は転がる

「小僧って言うなよ
 俺は勇治
長沢 勇治だ」

銃声。兵藤、足を撃たれる

「がぁぁぁぁぁぁ、ふざけるな、こんな所でわしが」

2度目の銃声が鳴る

銃弾は兵藤の頭を貫通した
それが王を名乗った老人の最後だった

ルルーシュ・ランペルージはとある通路に立っていた

「くっそ、あの女ぁ」

肩に刺さったナイフを抜きながらルルーシュが叫んだ

「俺の策の上をいったとでもいうのか」

怒りを露わにするルルーシュ

「しかし、俺は逃げ切った
 馬鹿なカイジを餌に使って逃げ切った
 ここから巻き返してやる
 貴様を潰すのは優秀なこの俺だ
 くっはっははっはっは」

高笑いをするルルーシュ

郷田から逃げ切ったことにより完全に油断している

背後から、ガツンっとルルーシュ頭に衝撃が走った

「ぐぁ」

ルルーシュが倒れる


「それで優秀と言うなら笑いものだね」

ルルーシュの後ろにはバットを持った男がいた

「な、んだ、貴様」

「僕は夜神月、真面目な優等生で新世界の神だ」

ガツン、再びルルーシュの頭に衝撃が走る

「俺がこんなところで・・・」

「僕の勝ちだ」

三度の衝撃

ルルーシュは頭をかち割られて絶命した

「ふん、こいつろくな武器を持っていないな」

ルルーシュのPDAと首輪を回収し他の持ち物を調べていた月が呟く

「新世界の神である僕にはバットなんていう野蛮な武器はふさわしくない
 さて長居は無用だ、声を聞きつけて誰かが来るかもしれない
こいつは優秀だと言っていたが大声で笑うなんて真似をして、本当は馬鹿なんじゃないのか」

そう言うと月はその場から立ち去った

伊藤カイジは行動を開始していた

解除条件のチェックポイントまわり

「くそ、とにかく、急いでまわらねえと」

その時、銃声

カイジの肩を掠める

「な、なんだ?」

カイジが振り向くとそこには一人の少年が立っていた

「なんだこのガキ」

「ガキって言うなよ
 俺は勇治、長沢 勇治だ」

長沢 勇治、彼は兵藤から奪った銃を持っていた

「ところでおじさん
 いきなりだけど僕の犬になってよ」

「なんだと」

カイジ、激怒

「何?死にたいのおじさん」

長沢が銃を向ける

「っぐ・・・す、すいませんでした」

「クック」

長沢にカイジを犬にする気はなかった

なんだかんだ遊んで殺す気である

長沢は優越感に浸りたかったのだ

しかし、カイジも伊達に修羅場を潜ってきたわけではない

なおかつ長沢は圧倒的有利な状況によって完全に油断している

「おら、犬、ワンって言ってみろよ」

銃口でカイジの頭をつつく長沢

「っが」

その瞬間、カイジが銃に掴みかかった

「お、お前、何を」

もみ合い

2人は組み合って転がった

そして銃声が鳴る

銃弾は長沢の頭を貫通した

カイジ、一瞬何が起きたかわからない

「何、え・・・」

転がっている長沢の死体

「俺が殺したのか・・・・」

「いや違う、これは事故だ」

カイジ、事故と言い張る

「そうに決まってる・・・俺が殺したわけじゃねえんだ」

カイジは自分にそう言い聞かせていた

郷田真弓は焦っていた

(伊藤カイジが拳銃を手に入れてしまった
 これは問題ね)

これにより郷田がカイジを殺すのは困難になった

(それなら、あの手を使うしかないわね)

郷田がPDAを取り出す

彼女のPDAはディーラーと連絡できるようになっていた

「私よ、いきなりだけどエクストラゲームを申請するわ」

『エクストラゲームですか?』

ディーラーが疑問系で返事をする

「伊藤カイジが拳銃を手に入れた
 これではゲームのパワーバランスが乱れるわ」

「伊藤カイジが拳銃を手に入れた
 これではゲームのパワーバランスが乱れるわ」

『しかし、拳銃を置いたのはこちらですし』

「とにかく、このままでは危険よ
 すぐにでも始めてちょうだい
 内容は――――よ」

『・・・わかりました』

それを聞くと郷田は通信を切った

「ふふ、これで伊藤カイジは終わりよ」

手塚義光は高山浩太と行動していた

「高山の大将、これからどうする」

「俺はジョーカーが破壊できればいい
 お前の条件は首輪を5個作動させることだったな」

「まあ、そうなんだが」


ここで2人PDAが鳴った

2人がPDA確認すると画面に≪エクストラゲーム≫という文字が表示されていた


「なんだ?どうする、大将」

「このままではPDAが使えないみたいだしな
 タッチしろということだろ」


2人が画面にタッチするとカボチャのマスコットキャラクタが画面に現れた

『エクストラゲィーム』

カボチャが喋りだす

「なんだ?」

『こんにちは、僕の名前はスミス
 みんなお待ちかねエクストラゲームの時間だよ』

「別に待ってねえよ」

手塚が突っ込む

『皆はこのゲームをフェアにやりたいよね
 でも実は参加者の中にズルをしてる奴がいるんだ
 誰だと思う?知りたい?』

「うぜえカボチャだな、さっさと教えろよ」

「手塚、少し黙って聞け」


『もぉーそんなに聞きたいの
 仕方ないなぁー
 じゃあ教えてあげる
 それはね伊藤カイジ君だよ』

(伊藤カイジ・・・・)

手塚は一度カイジに会っている

(あの野郎、偽善者の芝居をしてたってわけか)

『とにかく、カイジ君は悪者
 彼はね銃を持ってるの』

「銃だと」

高山もこれには驚く

「大将、黙って聴くんじゃなかったのか」


『ズルいよねカイジ君
 みんなは銃なんて持ってないのに』

スミスの顔が怒った表情に変わる

『今回のエクストラゲーム名づけて《カイジを殺そう》だよ
 内容は文字通り、カイジを殺すってもの
 そしてぇー殺した人には賞金とは別に2億あげるよ

 あと安心してカイジ君を殺して銃を手に入れたからって今度はその人をエクストラゲームで殺そうとしたりはしないから
 カイジ君は皆より早く銃を手に入れてしまった
 だからペナルティーを受けるんだ』

(だったら初めから銃を置かなきゃいいだろ)

手塚の疑問は最もである

『えぇーまだ不安、ならもう一つルールを追加しよう
 今から4時間は銃の使用は禁止
 もし使ったらルール違反で首輪が作動するよ
 カイジ君、気をつけてね
 あとカイジ君は現在1階のB5地点にいるみたい
 はっきり言って今のカイジ君はただのカモ
 狙うなら今だよ』

ここで通信が切れ、PDAが元の画面に戻った

「どうする、高山のオッサン」

「お前は行きたそうだな」

「そりゃそうだろ
 例えるなら銃を持った怪物が今は赤ん坊同然になってる
 それに伊藤がジョーカーを持ってるかもしれないぜ」

「そうだな」

こうして手塚と高山は行動を開始した

エクストラゲームに乗りカイジ狩りを始めたのである

とある一室にアカギと矢幡がいる

「どうするアカギ、私はエクストラゲームに乗ってもいいわよ
 だって伊藤カイジは銃を使えないのよ
 叩くなら今」

「くっく、なるほど」

「今殺しておけばPDAを奪えるし銃を持った危険を取り除ける
 銃だって手に入るわ
 私が生き残る確率は格段と高まる」

「矢幡さん、あんたやっぱり似てるな・・・鷲巣に」

「鷲巣?」

「こっちの話ですよ」

「そう、ならいいんだけど
 ところであなたはどうしたいの」

「くっく、正直気が乗らないな」

「どうして、今なら伊藤は赤子同然なのよ
 危険者もいなくなって
 2億が手に入る」

「そこですよ矢幡さん・・・リスク0で拳銃せしめようなんて図々しいにもほどがある」

「初めからこのエクストラゲームというのは気に入らなかった
 だいたい銃を置いておいてそれを拾った奴を特別だと言って狙わせ、挙句の果てに銃の使用を禁止する
 これじゃなにがなにやら・・・」

「確かにそうね・・・でも」

「それに矢幡さん
 あんたはさっき安全だと言っていたがそれは違うぜ」

「どういうこと?」

「さっきの矢幡さんと同じ考えに至った奴が何人いますかね」

「っあ」

「今の俺たちの武器は鉄パイプとナイフ
 ここまで言えば賢いあんたならわかるよな八幡さん」

「今の状況で他の参加者と戦うのは不利・・・
 でもここで行かないのは・・・」

生き残り優先の矢幡にとって現段階での交戦は避けたかった

しかし矢幡は気づいている、ここで行かないのは致命的・・・

「じゃあ、B5地点に行きましょうか」

「そうね・・・・・・え」

一瞬間が空く

「アカギ、もう一度言ってくれないかしら」

「B5地点に行こうって言ったんだぜ矢幡さん」

「あなた、さっきは行かないって」

「俺はエクストラゲームに乗らないと言っただけですよ」

「でも、他の参加者がいて危険なのよ
 行かないというのも一つの選択肢なんじゃ」

「ずれてる、すべて」

・・・ざわ・・・ざわ・・・

「えっ」

「行くときなんだよ今は
伊藤が死んだとして誰かが銃を持つことは変わらない
 それに、少なくとも銃以上の武器を他の参加者が持ってることはないんだぜ」

「・・・・確かにそうね
 ・・・それに銃が他の参加者に渡ったとしてそれが誰だかわからないのも不利・・・」

「くっく、ようやく冴えてきたな矢幡さん
それに俺は他の参加者ともコンタクトを取れればいいと思ってる」

「仲間にでもするっていうの、危険よ
 わざわざエクストラゲームに乗った奴を仲間に誘うことないじゃない」

「矢幡さん、逆だぜ」

「逆?」

「ここで動かないような奴は仲間にする意味はないってことですよ」

「おそらく矢幡さんは俺が行くと言わなくても最終的には行くことを選択したでしょ」

「そうかしら」

「ここで一切動かないを選択するような奴は二流
 エクストラゲームに乗るにしろ、そうでないにしろここはB5に向かうのが当然なんですよ」

「でも・・・あなたはなんでそんな奴らを仲間にしようと」

「まあ、いずれ分かりますよ」

こうしてアカギと矢幡も行動を開始した

夜神月はとある一室にいた

「馬鹿め、エクストラゲーム、僕はそんなの興味がないな
 ここで動いたら僕が危険だ
 僕の頭脳はまさに新世界には不可欠
 新世界の神である僕が不用意にリスクは侵せない」


月は乗らないを選択

一見賢く見える・・・

しかし、所詮は安全策をとった逃げである

(それよりも、どうすれば、このゲームに勝てるか
 何か在るはず必勝法とまでは言わなくとも勝つ確率を上げる何かが・・・)

そして思いつく協力者をつくるという策戦に

「僕はやはり天才、協力者、そいつを利用すればいい
・・・協力者にするなら女だな
僕は女の扱いには慣れている
女なんて簡単なものだ」

歩き回ること30分

発見、女性

(見つけた・・・・女!
 まだ笑うな堪えるんだ、笑いを堪えるのがここまで大変とは思わなかったよ)

ここで月、笑顔、スマイルで女性に近づいていった

(っふ、女なんて所詮顔のいい男にはころっと付いていくアホばかり
 僕からすればカモ同然)

ここで月は女の使い道について考えた

1つ目

銃弾を避けるとき盾として使う

(まあ、女なんて馬鹿だから僕を守るために進んで盾になるだろうけどね)

2つ目

爆弾を巻きつけて自爆させる

(これなら大人数を一気に殺せる
 上の階に行くほど武器が強くなるなんて僕なら簡単に思いつくこと
 いずれ爆弾も手に入る)

3つ目

PDA入手


(必要なくなったら殺してPDAを奪ってもいい)

4つ目

首輪入手

(僕は女に情が移るなんてことは一切ない
 殺した後は首を切って首輪を回収するさ
 まあ服に返り血がつくのが難点だけどね)

5つ目

先に歩かせて罠対策

(転ばぬ先の杖ということわざがあるが女には杖の役割を果たしてもらう
 万が一キルトラップの類があったとしてもこれなら安全
 女も僕のために死ねるなら本望だろう)

6つ目

女を利用してさらに馬鹿共を騙す

(女が一緒にいるというだけで警戒は自然と薄くなる
 まったく都合のいい生き物だよ女ってのは)

7つ目

毒見

(今のところ毒の入った食事はないが毒が入った食事がないとは言い切れない
 重ねて言うが僕のために死ねるなら女も本望だろう)

8つ目

おとり

(女をおとりに他の参加者をおびき出し女ごと撃ち殺す
 っふ、まだまだ使い道はあるがこの辺にしておくか)

あらゆる女の利用法を考えながら月は緑髪の女性に近づいた

「あのすいません、参加者の方ですか
 僕の名前は夜神月
 良ければ僕と一緒に」

ドンっと言う音が鳴った

「え」

月が自分の腹に小さな穴が開いてそこから血が出ていることに気づいた

そして自分が銃で撃たれたをいうことを理解する

「私の名前は郷田真弓よ
 悪いけど私はぼくみたいな坊やは好みじゃないの」

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

それが月の断末魔だった

「私を利用しようなんて、愚かなガキね
 ふふ、それよりもエクストラゲーム。これでカイジは終わりよ
 私の勝ち、蛇め、ゲームマスターを怒らせたのがいけなかったわね」

ここで郷田のPDAが鳴る

連絡してきたのはディーラー

『郷田さん、これっきりにしてくださいよ
 お客様からも伊藤カイジに対する扱いが厳しいんじゃないかという声が多数ありますよ』

「わかってるわ、こんな無茶なエクストラゲームはこれっきりにするわよ」

『お願いします
 じゃあ私はこれで』

通信が切れる

「ふふ、さて私もカイジ狩りに参加するわ
 伊藤カイジ、チェックメイトよ」

カイジは走っていた

後ろからは手塚と高山が追いかけていている

「おらぁ」

手塚がナイフ3本投げた

そのうち一本がカイジの頬を掠める

「っが、ざっけんな」

カイジが喚く

「高山の大将、伊藤の奴なかなかしぶといぜ」

「向こうも必死だろうからな」

実際カイジは必死だった

(ざけんな、なんだよエクストラゲームって
 なんで俺が狙われるんだよ)

ザクリと鈍い音

「っが」

カイジの背中にナイフが刺さっていた

「やばい、このままじゃ死ぬ
 い、嫌だ、死にたくない」

さらに2本ナイフがカイジの背中に刺さる

(このまま死ぬのは嫌だ、なんで俺がこんな目に)

カイジ走る

ザクリ、四本目のナイフが背中に刺さる

「死にたくない、嫌だ」

カチ・・・走っていたカイジが何かを踏んだ

その瞬間罠発動

シャッターが下りてくる

「まずいぜ、高山のオッサン
 あのシャッターが下りきったら手出しができねえ」

「手塚、ナイフを貸せ」

高山が手塚からナイフを受け取りそれをカイジの足目掛けて投げた

ザク

命中、その場でカイジが転がった

「流石大将、初めからあんたに任せとけば良かったぜ」

「っがぁぁぁぁぁぁ」

一瞬カイジには何が起きたのか分からなかった

転がった際自分の足が目に入りそこでようやく両足にナイフが刺さったのに気づく

「いてぇ、ざけんなよ、っがっが」

カイジは四つん這いになりシャッターを潜る

そして、かろうじて、潜り終える

シャッターが下りきった

「野郎しぶてえじゃねえか」

「別ルートから回り込むぞ手塚」

「はいはい、分かってるって」

再び2人が動き出した

シャッターを潜ったカイジは足を引きずりながら歩いていた

「なんで、なんで俺がこんな目にあう」

そこに現れる、白髪の少年と金髪の少女

アカギと矢幡

(こいつは今にも死にそう、今なら確実に殺せる)

ナイフを取り出す矢幡

カイジが喚きだす

「ひぃぃぃぃぃ、お、お前らも俺を殺そうとするのか
 やめよろ、やめてくれよ」

矢幡がニヤリと笑う

「悪いけど私は死にたくないの」

「やめろ、やめてください
 わかった、俺と組もう、三人一緒なら安全
 何でもしますから」

カイジ、土下座

「ふざけないで」

矢幡がナイフを構える

それをアカギが手で制した

「アカギ、あんたこんなのを仲間にしようなんて考えてるんじゃ、っえ」

矢幡が気づく

アカギのカイジに対する目

その目はまるで子供が興味のなくなったおもちゃを見つめる目

「アカギ君だったよね、君は俺を受け入れて」

「うせろ」

アカギが恫喝した

「え、アカギ君何を」

「期待はずれだ、1分以内に俺から離れろ
いらつくんだよてめえ・・・殺すぞ」

「く、くそ、ざっけんな、ガキ、覚えてろよ」

捨て台詞を残しカイジは足を引きずりながら離れていった

「アカギ・・・あなたはいったい」

カイジが立ち去った後、矢幡口を開いた

矢幡は刺そうと思えばいつでもカイジを刺せた

しかし、できなかった

アカギを見ていると刺してはいけない気がした

おそらく矢幡がカイジを刺そうとしても別に彼が妨害することはないだろう

それでもできない、刺してはいけないと矢幡は感じていた

「行きましょうか八幡さん」

(この男といれば生き残れるかもしれない)

アカギ達と別れ20分経過、伊藤カイジは通路を歩いていた

既に、右足は動かなくなっている

途中で見つけた鉄パイプを杖代わりにしていた

「くそ、冷てえ、なんだよ、あいつら」

ボロ、ボロ

涙がこぼれる

「なんで、俺がこんな目に」

ザクリ

「え」

カイジ、足に違和感

目を落とすと左足にナイフが刺さっていた

バランスを崩してカイジが転がる

「がぁぁぁぁぁぁぁ
 痛てえ」

カイジが頭を上げると目の前に一人の女性がいた

「郷田ぁぁぁぁぁ」

郷田登場

以前郷田はカイジを警戒していた

ある意味では恐れを抱いていた

しかし今の郷田にその感情はなかった

なにせカイジは死にぞこない

「伊藤カイジ、あなたとの駆け引きなかなか面白かったわ」

そう言いながら郷田がカイジの両手にナイフを突き立てた

「ぎゃぁぁぁぁ
 ざけんなよ、郷田、てめえ」

「五月蝿い」

郷田はカイジの首をナイフで切り裂いた

「あっはっはっはっはっは
 所詮この男も私の敵ではなかった
 ふっふふ、あっはっはっはははっは」

DEAD END

こうして伊藤カイジの人生は幕を閉じた

だが、まだゲームは終わらない

この後のことを軽く説明しよう
結果をいうのであれば、ゲーム主催者は破産した。

あの後、アカギは渚と文香という二人の女性を味方に付けて、裏技を用いてPDAを使わずゲームをクリアした。
最終的な生存者は四人。すなわち5億もの賞金を手にしたわけだが、アカギはここで止まらない

その賞金を用いてゲーム主催者にギャンブルを挑んだ
桁外れの大金を賭けた麻雀勝負。
最終的にゲーム主催者は破産し首を吊った

こうして江戸時代から続いていた、人の命をゴミのように弄ぶゲームは消滅した
赤木しげるの無敗伝説が、ここにまた一つ刻まれたわけである

「ククク、じゃあな矢幡さん」

「ええ、また会えればいいわね。アカギ」

そう言いつつも矢幡は今後、アカギと再会することがないであろうということを、心のどこかで分かっていた
日常に歩む矢幡と非日常を好むアカギ。二人は住む世界が違う

(でも私は忘れない。アカギ、貴方のことを)

目を逸らし、背を向けながら、矢幡麗佳は日常へと帰還する
自らをそこへ返してくれた少年のことを思いながら

FIN

後日談

大学の講義が終わり、学生たちが講義室を後にする中で矢幡麗佳は携帯を操作していた
画面には友人から送られてきたメール。内容はカラオケに行かないかというものであり、何ともまあ女子大生らしいものだった

(帰ってきたのね)

そんな文面を目に焼き付け麗佳は安堵の息を漏らす

あの殺人ゲームからの3か月。麗佳は無事に日常へと帰還を果たした
両親からは、何処で何をしていたか問いただされたものの、麗佳はゲームについて話すことはなかった
命を賭けたデスゲーム、互いの破滅を賭けた麻雀、その内容はあまりのも非現実であり言ったところで、信じてなどもらえるはずもないからだ

携帯を操作して、麗佳はカラオケの誘いをキャンセルした
別に彼女はその友人のことが気に喰わないわけではない
しかし先約がある。今日は麗佳にとって特別な日だった

「お久しぶりです、渚さん、文香さん」

綺堂渚と陸島文香
麗佳が足を運んだ喫茶店にいたのは彼女と共に殺人ゲームから生還した二人の女性である

「あ~、麗佳ちゃんだ~」

おっとりとした口調で喋るのは綺堂渚。服装はひらひらとしたゴスロリだ。
喫茶店の中とはいえゴスロリ姿というのは、かなり目立つようだが、本人は気にしている様子はない。

「久しぶりね、麗佳さん」

生真面目な態度で麗佳に接したのは陸島文香。
こちらもゴスロリ程ではないが、バスガイドのような恰好をしているので目立つと言えば目立つ。

「やっぱり、アカギは来てないんですね」

「ごめんさい、麗佳さん。私も彼の事は探してみたのだけれど」

あの伝説の夜、麗佳と最後に言葉を交わしたアカギは煙のように姿をくらましてしまった。
文香の組織の力を持ってしても彼を見つけることはできなかった

「いいえ。かまいません。元々、アカギはこういう馴れ合いには興味がないでしょうから」

「確かに~」

同意したのは渚だった

彼女も事情を抱えていたが、アカギによって、それは解消された

「アカギ君は私たちとは、かけ離れた存在ですから」

どことなく真面目にアカギを語る渚の瞳はどこか遠くを見ているようだった。
おそらくは、あの時のことを思い出しているのだろう
強敵、郷田を簡単に倒した、あの伝説の瞬間を・・・・・。

「正直、私でも勝てる気がしない。それは、身体能力なら私が勝っているんでしょうよ」

文香は特殊な訓練を積んでいるので、並大抵の男であれば打ち倒すことができる。
子供が相手であれば、まず負けることはないに等しい

「でもそんなの彼にとっては何の意味も持たないわ」

しかし、例外はいる、それこそが――

赤木しげる

文香が長年かけて成し得なかった組織を壊滅させた少年。伝説の博徒。

「彼の事を一言で例えるなら、そうね。深海魚かしら。普通の魚じゃ、彼の領域には入れない」

文香にとってアカギはそれほどまでに特殊な存在だった

「私の場合は~、そうですね~。言い方は少し悪くなりますけど、悪魔ですかね。赤木しげるという少年は人の心を見透かす悪魔。いえ、悪魔なんて言葉も生温いかもしれません~」

おっとりとして口調で、しかし何処となく真面目に渚は言った。
悪魔という例えに決して侮辱の意味合いは含まれていないのだろう
ただ渚にとってアカギはそれほどまでに、通常とはかけ離れた存在だった

「麗佳さんにとって、アカギ君はどんな存在だったのかしら」

「私も~気になります~。ゲームが始まってから一番、長く彼と行動を共にしていたのは麗佳ちゃんだよね。やっぱり、恋人って感じかな~」

渚の言葉に麗佳は苦笑しつつ、ゆっくりと首を横に振った

「私と彼はそんな関係ではありません」

恋人などという甘ったるい言葉、アカギには合わない。
赤木しげるにそんなものは必要ない。
これはゲームの最中に聞いた話だが、アカギにとって女など勝負の合間の休憩に過ぎないそうだ。
勝負こそ人生。アカギという少年は偏っている。

「アカギにとって私は恋人どころか相棒にも成りえない。少なくとも私は彼と肩を並べられるほどの人間ではありません」

アカギに匹敵する力量を麗佳は持ち合わせていない

「私にとってのアカギは、そうですね、頼りになる存在であり、同時に憧れと言えると思います」

人は皆、何かしら不自由しながら生きている
大きな権力を持つものであればある程、周り固められ気づけば生きながらに棺の中なんてことはざらにある。

しかし、赤木しげるは違う
彼は何にも束縛されない。世間における常識。そんなものを下らないと称し、切り捨てることができる男だ

「私は彼のようには生きられない。だから、憧れなんです」

手が届かないからこそ、憧れる。そんな理想の存在
それが麗佳にとっての赤木しげるだった

「それでも、もし今後アカギと会う事があれば、私が彼にとってどんな存在だったのか、彼の口から直接聞いてみます」

だから、ねえ、アカギ。貴方は一体どこで何をしているの――窓から空を見上げれば雲一つない青空。この空の下の何処かにアカギがいる
そんな考えが頭に浮かび、麗佳はクスリと笑った
先程は恋人という言葉を否定したが、果たしてそれは正直な気持ちだったのだろうか

それは麗佳自身にも分からない

ただ一つ言えるのは、矢幡麗佳にとって赤木しげると過ごした時間は掛け替えのないものであるということだった

FIN

これにて終了です。読んでいただいた方々に感謝します。
2ちゃんねるにssを投稿するのは初めてということで、ルールなどを色々調べて書きました。
ただ一回に投稿する文章の量や名前の部分は空白にすべきだったのではないかなど、少しばかり不安があります。
おかしな部分があったのであれば、ご指摘いただけるとありがたいです。

乙だけど月やルルーシュは出す必要あったの?
多重クロスはそれぞれのキャラ生かすのが難しいから慣れるまでしない方がいいと思う。

それとここは2chと違って自動でdat落ちしないのであとでHTML化依頼してくれ

>>100のルール追加で4時間は銃の使用禁止って書いてるのに
なんで>>116で銃使用した郷田の首輪は作動しないん?

>>158
HTML化しておきました。ご指摘ありがとうございます。
確かにルルーシュや月はあんまり見せ場がありませんでしたね。
今更ながら原作キャラでも良かった気がします。

>>159
この手のデスゲームものを書くとどうしても出てきてしまう矛盾。というかミス。
とりあえずカイジのみ銃の使用を禁止とでも脳内保管してくれればいいかと、

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom