ベルトルト「ユミルさまといっしょ」(490)


※ユミベル 逆転なし
※軽いSM描写・もしかしたらエロ有

前回の「ユミルさま」その後の短い話をいくつか投下する予定です。
もしもの設定、夢見がちな話など前回と毛色が違う話が出てきます


ライナー「ベルトルトお前、それ!」

ベルトルト「どうかした?」

デートしてから二週間と四日過ぎた日の入浴後、

着替えていると声を潜めたライナーが慌てた様子で肩をつつく。

取り乱しているからなにかと思ったら、彼の指先は肩の鬱血痕を指していた。

歯形は消えたけど、強く噛まれたためか内出血していてそれがまだ残っている。

ベルトルト「ああ、ユミルにつけられたものだから安心していいよ。暴力とかじゃない」

ライナー「そうか……いや、完全に安心はできないんだが……」

若干顔を赤くしたライナーが目を逸らす。やっぱり彼は純情だ。

ベルトルト「気づいたのも今、君が初めてだよ」

ライナー「そんなに目立つのに、よくばれなかったな」

ベルトルト「うまく隠してきたからね。少し大変だったけど」

ライナー「隠すのが大変なら、治しちまうこともできるだろう?」

ベルトルト「……それはしたくない」

確かに巨人の力を使えばすぐに治るけど、彼女がつけてくれた痕を簡単に無かったことにしたくない。

だから自然に消えるまで力を制御して、意図的に治らないようにしていた。

ライナーの言うとおり隠すのは大変でばれたときのリスクも大きいけど、これは譲りたくなかった。

ちっぽけな独占欲だろうか。

ベルトルト「ごめんね、ただのわがままだ。君は心配してくれてるのに」

ライナー「いや、お前がそう決めたなら俺の口出しする問題じゃない。お前達の間の話だ。

……ただ、あまりエスカレートしたりして過激なことをやりすぎるなよ。傷痕が痛々しい」

ベルトルト「うん、わかってるよ。ユミルも大怪我はしないようにしてくれてるから」

ライナー「そうか……」

ライナーはまだ鬱血痕を見ているけど、もう何も言わなかった。


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ライナー「クリスタ!」

クリスタ「あ、二人ともお風呂入ったんだね。私たちも今からなの」

風呂場から寮へと続く道の途中、ライナーがいきなり意中の人の名前を呼ぶ。

見ればユミルとクリスタがあちらから歩いてくるところだった。

呼ばれたクリスタがこっちに近づいてくる。まだ濡れた髪を見て、風呂上りだと判断したんだろう。

ベルトルト「あれ、女子寮の風呂場ってこんなところ通らないよね?」

クリスタ「私たち水汲み当番だったの。だからちょっと遅れちゃって……

ここ近道だからってユミルが。ユミルは近道とかいっぱい知ってるんだよ」

友人の特技をちょっと誇らしげに語る。それにしても近道をいっぱい知ってるなんて、ユミルは本物の猫みたいだ。

ライナー「ほう、ユミルも水汲みをサシャにやらせるのはやめたんだな。感心だ」

クリスタ「うんっ、私と一緒にやろうって誘ったの。そうしたらやってくれるようになって」

ライナー「クリスタはすごいな」

ユミル「今日限りの気まぐれかもなぁ」

クリスタ「ユミル、なんでそんなこと言うのよ」

ユミル「それよりクリスタ、そいつの側は危ないぞ。こっちこい」

ライナーと話が弾むクリスタの頭に手を置いて言う。

クリスタを取られたみたいで、ちょっと面白くないのかな。

あの対人格闘のときもそうだった。ライナーにクリスタを取られて、それで僕とペアを組んだ。

クリスタ「もう、そんな言い方して……お喋りしてるだけだよ」

ベルトルト「ユミル、ライナーなら大丈夫だってば。前にも言ったけどああ見えて純情だから」

ユミル「……まあいい。ベルトルさん、今夜散歩に行かないか」

彼の名誉のために庇っておくと、体を反転させて軽く胸倉を掴むようにしながら誘いをかけられた。

ライナーとクリスタはユミルの向こう側で話し込んでいる。

ベルトルト「行きたいな。どこまで歩くの?」

ユミル「兵舎裏手の森だよ。見せたいものがあるんだ……何も特別なことしないぞ。本当に散歩して、それ見て帰ってくるだけ」

ベルトルト「それでもいいよ。君と出かけるならなんだって楽しいから」

ユミル「なら、兵舎の……食堂裏でいいか。消灯してから30分後な。明かりは適当に持ち出すから」

ベルトルト「分かった、じゃあまた」


夜の散歩はたまに一人でしていた。どうしても眠れないときに、兵舎周りの人目につかないところを少しだけ。

でも今日は入ったことの無い森が行き先で、その上ユミルが一緒だ。

糸口の見えないもやもやした感情と眠れない頭を抱えながらの散歩じゃないんだ、わくわくする。

ユミル「おいクリスタ、そろそろ行かねえと風呂場閉まるぞ」

クリスタ「はーい。じゃあライナー、ベルトルト。またね」

ライナー「ああ、また明日」

ベルトルト「じゃあね」

クリスタに呼びかけながら僕の胸倉を離して、するりとライナーの横を抜ける。

一連の動作がとてもしなやかで、やっぱりユミルは猫みたいだった。

メンテ入るらしいので、今日の投下ここまでです
47、48話改めて読み返したらユミベル熱が下がらなくなって書いてしまいました

新作期待
>>1はこのシリーズの他には何か書いてるの?

投下再開 期待レスうれしいです、ありがとうございます

>>13 これと前回以外だと
ライナー「俺の同郷がこんなに可愛い」と、今日終わらせた ベルトルト「営業」を書きました
酉無いので、スレ間のID被りでしか証明ないですが
投下終了とかの文体もこれだとギャグに馴染まなかったので変えてあります

「営業」の人だったのか!さっき読み終えてきました。面白かった、乙でした!

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指定の時間に食堂裏に行くと、ユミルは既に来ていた。

資料室の待ち合わせではいつも待たせてしまうから十分前には来たはずなんだけど、まだ遅かった。

手にランタンを持って、食堂裏の勝手口から4メートルほどの森の入り口に立っている。

ランタンは兵舎内の見回りに使うような小さいものではなくて、兵舎外の見回り用の大きいタイプだ。

ベルトルト「ごめんね、いつも待たせちゃって」

ユミル「今日は私が早く来てるんだ。これを調達する必要もあったから」

これ、とランタンを目の前にひょいっと掲げてみせる。中ではもう火が灯っていた。

ベルトルト「大きいランタン……深いところに入るんだね」

ユミル「ちょっとだけな。そんなに奥までは行かない……入るぞ」

ユミルが背を向けて歩き出す。砂交じりの土がざくざく音を立てた。

森に入って少し進むと、湿気が多くなってきたのか地面がざくざく鳴ることが少なくなってきた。

背後の景色が木々に覆われて、兵舎が見えなくなってきた頃に切り出す。

ベルトルト「ユミル。あの……これ」

カーディガンのポケットから首輪を取り出す。

狭いところに押し込めていた鎖がジャラジャラと垂れ下がった。

ユミル「首輪持ってきたのか。何もしないって言ったのに」

ベルトルト「散歩だから必要かと思って、持ってきちゃったんだ」

ユミル「ふーん……」

少し前の夜に交わした会話。首輪をつけて散歩してみたい、って。

それが部屋を出るときに頭を掠めて、ポケットに入れてきていた。

でも、唖然としたユミルの口ぶりからするといらなかったんだろうか。

純粋に散歩を楽しみたかっただけの彼女に卑しいところを曝け出してしまったみたいで、沈黙が痛い。

ベルトルト「ごめん、いらなかったよね……わあっ!?」

ユミル「ベルトルさんはよく分かってるな、えらいえらい」

申し訳なくて少し下げた頭を両手で引き寄せて、ガシガシと撫でられる。

教えたとおりの行動ができた犬や馬を撫でるときのやり方だ。

ああ、持ってきてよかったんだ。ユミルが嬉しそうで僕も嬉しい。

ユミル「着けてやるから、そこにしゃがめよ」

ベルトルト「うん」

少し湿った短い草むらに膝立ちになった。ユミルの手が首の周りで動いている。

顔が近づいて、機嫌をよくした彼女の口角が上がっているのがよくわかった。

初夏の夜の、纏わりつくようなぬるい空気に晒された首筋に首輪が巻きつく。

撫でるために一旦地面に置いたランタンが、オレンジ色の灯りで辺りを照らしていた。

ベルトルト「夜の森って緊張するね。今日は月明かりが強くてよかった」

満月より少しだけ欠けた月が、周りの雲も光らせるくらい強い光を発している。

兵舎に近いこの森に危険な獣はいないけど、明かりは多いほうが心強かった。

ユミル「さあ、よかったのかね……」

ベルトルト「よくないの?」

ユミル「まあいい、行けば分かる……できたから立てよ」

少し引っ張られる感覚がして金具が留まる。

立ち上がると、鎖を引いてユミルが僕を先導した。

前を向いた彼女の髪にはデートの日に買った白い髪留めが留まっていた。

光沢のある布でできた小さくて可憐な花の装飾が、月明かりで浮かびあがるようだ。

ベルトルト「髪留め着けてきてくれたんだ」

ユミル「二人きりだからな」

ベルトルト「うん、二人きりだね……やっぱりすごく似合ってる。きれいだよ」

ユミル「髪留め一つでそこまで浮かれるなら、着けてきてやった甲斐があるよ……そこ、木の根が出てる。転ぶなよ」

今日の投下終了です
あと特に他に書いたSSのベルトルトはMってわけではないです

>>16 ありがとうございます、あれ何か最後の方迷走した感ありましたね

ユミベルに目覚めたのは間違いなく貴方のせい
責任とってまたニヤニヤさせてください

>>1です、スレ一覧から消えちゃってるみたいなので一回上げてみます

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ユミル「このあたりだったかな……」

森に入ってからゆっくりめの足取りで歩いて、二十分位経っただろうか。

高い木が多い、少し開けた場所に出た。

地表の植物も背は低いものの密生していて、入り口近くより地面も空気ももっと湿っぽい。

草から出る水分が影響しているんだと思う。

ユミル「ベルトルさん、灯り消すぞ」

ユミルが手に持ったランタンの炎を消した。光源が無くなって、辺りが暗くなる。

頭上にも調度よく葉が繁っていて月明かりは遮られているから、真っ暗に近い状態。

ユミル「暗くないと見えない。しばらくじっとして、目を慣らしておけ」

ベルトルト「わかった」

それからは会話らしい会話もなくお互い傍でじっとして夜の森を見ていた。

草木の葉が擦れ合うのに混じって呼吸の音まで聞こえてきそうなくらい静かな時間だ。

目線さえ合うことはなかったけど、それでも隣り合っているだけで居心地がよかった。

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ユミル「お、あった……あれ、見てみろ」

指差す木の方に夜に慣れた目を凝らすと、木の根元をぐるりと囲んで僅かに発光するものがある。

感覚を開けた小さなものがぼんやりと青白く光っていて、途切れ途切れの輪を描いている。

月明かりが強いことにユミルが懸念を示していたのは、これを見せたかったからか。

薄明るい小さな光は、他の明かりがあればすぐ掻き消されてしまいそうだ。

ベルトルト「何か光ってる……きれいだね。あれ何?」

ユミル「キノコだよ。名前は知らないけど、偶にああやって輪になって生えることがあるらしい」

ベルトルト「はー……キノコって光るんだ」

ランタンは消えていて、月の光も僅かにしか届かない。光るものはキノコの輪だけだ。

踏まないように気をつけて近づいてみると大小様々に生えたキノコらしいカサの輪郭がわかる。

草の上に二つほどの新たな輪があるのも見つけた。木の根元だけに発生するわけじゃなさそうだ。


ベルトルト「ユミル、上見て。星が見えるよ」

初めの輪から先に行ったところで木の隙間が少し開いていて、枝葉の切れ目から星が見える。

星の中には、キノコと同じ青白い光をしているものもある。

ベルトルト「この輪も星が降りてきたみたいだね。青白い色でさ」

ユミル「……」

ベルトルト「……なに?」

ユミル「このあいだからベルトルさんが恥ずかしい奴すぎて、ちょっと面食らってた……正直私より乙女思考だ」

ベルトルト「そ、そんなことない……ユミルだって乙女だよ。ちゃんとその髪留め着けてきてくれたし」

ユミル「その発言が恥ずかしい奴なんだ。大体、好きな男泣かして喜ぶ奴のどこが乙女だよ」

ベルトルト「それ言ったらお互い様だよ。……ねえユミル今、好きな男、って」

ユミル「……あーもう、うるせえ……そろそろキノコも堪能しただろ、帰るぞ」

僕にこれ以上喋らせないためにか、ユミルが鎖を強く引いて入り口側に近寄らせる。

まるで聞き分けのない犬を強引に連れ帰ろうとする飼い主だ。

彼女が手に持ったランタンにマッチで火を灯すと、橙色の光が一気に広がってキノコの弱い光はほとんど見えなくなった。

前書いた物へとかのレスありがとうございます、短いですが今日の投下終わりです

>>25 ありがとうございます、ニヤニヤしてもらえて嬉しいです
「ユミルさま」してるユミル×実力あるのに若干へタレベルが好きです


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来た道をそのまま反対に辿っていく。ユミルに先導されていた最初とは違って、今はほぼ横並びで歩いている。

キノコの輪があった場所から離れるにつれて、徐々に月の明かりが届くようになってきた。

前にのびる鎖が照らされて、僅かに光っている。

ベルトルト「首輪以外は普通に二人で散歩してるみたいだったね。

ワンって鳴けとか、四つん這いで歩けとか言われたら大変だなって思ってたよ」

ユミル「あそこまでそれで行くのはきついだろ、明日も訓練があるってのに。

それに何言っても「ワン」としか言わないのとあれ見てもつまんないし」

ベルトルト「そうだね……ワン」

ユミル「……今のはちょっと可愛かったな。一言二言ならいいもんかもしれない」

可愛い、と頭上に置かれた手が穏やかに往復する。

犬の真似は小突かれるかと思ったけど、撫でてもらえて得した気分だ。

二人きりで浮かれているから、普段の僕ならちょっとしないようなことができる。


ベルトルト「ユミル、あのキノコのことはなんで知ったの?」

ユミル「あそこで見た後図書室で調べた。あの生え方は珍しかったから……名前は分からずじまいだけどな」

ベルトルト「そうじゃなくて場所だよ。あのキノコの生えてた場所」

ユミル「……たまたまだ。今日みたいに一人で散歩に出た日に、たまたま」

ベルトルト「危ないよ、あんな暗いところに女の子一人でなんて」

ユミル「あそこまで入ってくつもりもなかったんだけどな、考え事してたらつい」


ベルトルト「考え事?」

ユミル「人生について、とか。……なんてな、冗談だよ。私がそんなに真面目に見えるか?眠れなかっただけだ」

ベルトルト「……そうなんだ」

ユミルは笑顔を作っていたし口調も軽かったけど、冗談にはとれなかった。

彼女は本当に人生について深く考え込むあまり、あんなところまで歩いていってしまったんじゃないかと思えた。

いままでの僕の夜の散歩もそうだったからだ。頭が答えの出ない自問自答で埋め尽くされて眠れなくなって、ふらふらと歩いていた。

それでもユミルの事情を詮索する気にはなれない。僕たちは互いに暴かれたくない大きな秘密を抱えているのを承知の上で一緒にいる。

ルールで決めたわけでもないけど、それを聞き出そうとするのはしてはいけないことだろう。


ユミル「……そういやあれ、妖精の輪って呼ぶんだってよ。本に載ってた」

重たくなった空気を飛ばすように、ユミルが話題を変えて話し出す。

ベルトルト「へえ、可愛い名前だね。妖精の輪なんて」

ユミル「名づけた奴には妖精が輪になって踊った跡に見えたんだってよ、

メルヘンチックだよな。きっとベルトルさんみたいな乙女思考の奴がつけたんだ」

ベルトルト「また乙女って言う……いくら僕でもそこまでメルヘンな頭してないよ」

ユミル「星がどうとか言ってたくせに」

笑いあって、他愛もない話をしながらの帰り道はあっという間だ。

行きは淡々と歩いたけど、帰りは二人とも饒舌だった。

今日の分終わりです。感想ありがとうございます
明日は用事があるので投下できなさそうです、すみません

>>1です
>>42のところ、ユミルの台詞がちょっとおかしいのでこっちに訂正お願いします


ユミル「……そういやあれ、妖精の輪って呼ぶんだってよ。本に載ってた」

重たくなった空気を飛ばすように、ユミルが話題を変えて話し出す。

ベルトルト「へえ、可愛い名前だね。妖精の輪なんて」

ユミル「名づけた奴には妖精が輪になって踊った跡に見えたらしい、

メルヘンチックだよな。きっとベルトルさんみたいな乙女思考の奴がつけたんだ」

ベルトルト「また乙女って言う……いくら僕でもそこまでメルヘンな頭してないよ」

ユミル「星がどうとか言ってたくせに」

笑いあって、他愛もない話をしながらの帰り道はあっという間だ。

行きは淡々と歩いたけど、帰りは二人とも饒舌だった。


開けた場所は月明かりで歩けるくらいに明るくて、ランタンを消した。

乾いた地面のざくざくいう音が戻ってくる。森の出口はもうすぐそこだ。

ベルトルト(あ、首輪……)

兵舎の扉が見えるくらいになった頃、首に嵌るもののことを思い出した。

ユミルと居るときは自然になりすぎて忘れていたけど、誰かに見られたらまずい。

ベルトルト「ユミル、一回止まって」

ユミル「どうした、忘れ物か?それなら明日に――」

ベルトルト「違うんだ。首輪外してなかったから」

ユミル「ああ、すっかり忘れてた……ここで外すか。その辺誰も居ないよな?」

ベルトルト「うん、見える範囲にはいないよ」

ユミル「なら早く外すぞ、しゃがめ」

食堂裏は開けていて少し離れたところの井戸ぐらいしか遮蔽物がないから、誰かがいればすぐに分かるだろう。

周りに人影が無いのをもう一度確認してから、着けた時と同じように短い草むらに膝立ちになる。


ユミル「危なかったな。このまま歩いてくところだったよ」

ベルトルト「「忘れてた」か、ユミルでもうっかりするんだね」

ユミル「……ベルトルさんの犬役がはまりすぎてるのが悪い」

会話をしながら手際よく首輪を解くユミルだったけど、革でできたベルトを外したときに手を止めた。

首筋で動いていた手がいきなりシャツのボタンに伸びる。

第二、第三ボタンと外して、生地を除けると片方の肩が見えるようになった。

ベルトルト「どうかした……?」

ユミル「ここ、噛み痕まだ消えないのか」

彼女の指先が鬱血痕を押して、体の内側で鈍い痛みが生まれる。


ベルトルト「うん。深いところで内出血してるみたいだ」

ユミル「歯型は消えにくいっていうな。だけどこんなに保つもんなのか」

そこにあるのを確かめるように何度もぐにぐに押している。自分の痕跡が残っているのが嬉しそうだ。

ベルトルト「ん、あんまり押すと痛いよユミル」

ユミル「好きだろ?」

膝をついた僕を見下しながら口端を吊り上げて笑ってみせる。

妖艶なその表情に見蕩れている隙を突いて、肩口にユミルの顔が埋まった。歯型の痕にキスをしている。

二三度触れた後、つけられた時みたいに舌で押してから体が離れた。


ベルトルト「……な、何もしないはずじゃ」

ユミル「このくらい何かしたうちに入らないだろ、生娘じゃあるまいし……ほら、散歩お終い。帰って寝る」

ベルトルト「待って、まだ服ちゃんとしてない」

ユミル「ボタンくらい歩きながらやれ。置いてっちまうぞ」

狼狽える僕をよそにさっさと行ってしまおうとするユミルを立ち上がって追いかける。

首輪はいつの間にか、カーディガンのポケットに捻じ込まれていた。

今日の投下終わりです。
途中ネット接続の調子悪くて間開きすぎました、ごめんなさい

投下再開です、待っててくれる方がいるのがありがたいです


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ベルトルト「こっち側は蒸し暑いね、寝つけるかな」

湿っぽくても気温の低かった森の中と違って、兵舎の周辺は蒸し暑い。

眠気は感じるものの、果たして纏わりつくシーツとぬるい空気の中で寝られるだろうか。

ユミル「そこの井戸で水でも被ったらどうだ?誰かやった奴がいるみたいだぞ」

ユミルの言う通り、井戸の周りの地面には小さな水溜りができていた。

寝苦しさが我慢できなくなった誰かが水浴びに来たようだ。

ベルトルト「良さそうだけど遠慮しておくよ、タオル持ってないから」

ユミル「そりゃ残念だ、思いっきりぶっかけてやろうとしてたのに……ふぁ」

いたずらっぽく笑っていたユミルが欠伸を噛み殺す。彼女ももう眠たいみたいだ。

ベルトルト「眠たそうだね。早目に部屋まで帰ろうか」

ユミル「そうする、ベルトルさんも寝にくいだろうが寝とけよ……そっちはそろそろ来る頃だ。こっちの道で行こう」

教官の巡回ルートを避けると、散歩に誘われたあの廊下の近くに出た。

あの時クリスタがここを通り抜けるのが近道だって言っていたから、もうすぐ女子寮なんだろう。

また明日会えるのに、彼女と分かれるのはいつだって名残惜しい。

ユミル「ここまででいい、見つからねえように上手く帰れ」

ベルトルト「うん……ねえユミル、この散歩に誘ったときに「見せたいものがある」って言ってただろ」

ユミル「ん?ああ、言ったよ」

ベルトルト「妖精の輪、僕と見たいと思ってくれたんだね。ありがとう」

ユミル「……今日のベルトルさんは最後の最後まで乙女だったなぁ」

少し呆れたみたいに微笑んで肩を撫でる。眠気のせいだろうか、普段より表情が柔らかい。

いつもこうして分かれ道で撫でてくれるのが好きだ。寂しさがなりを潜めて大人しくなる。

ユミル「ほんとに眠い……もう私は寝るぞ。じゃあな、おやすみ」

ベルトルト「おやすみ、また明日」

離した手をそのまま振りつつ、ユミルが背を向けた。僕も手を振って答える。

言いつけ通り上手く帰るには長居しない方がいいんだろうけど、背中が見えなくなるまでの間は彼女を見送ることにした。


「ユミルさまといっしょ」終

一個目お終いです。
大体こんな感じの誰かの一人称視点で二人が仲良くしてるだけの話をいくつか投下する予定、
前回であったハラハラパートがほぼなくて甘ったるいかもしれないです

>>1でエロありとか書きましたが、ユミルがベルトルトの尻をどうにかするとこから書かなければならないので
その話の投下が後の方になりそうです

ジャン「銀の糸」

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ジャン「うなじ貰ってくぜっ」

モブ「あ、そんな所に模型あったのかよ!」

モブ「くっ、ジャンてめえ!」

ジャン「はん、見えてないほうが悪いんだよ!」

マルコ「ジャン、お前またそんな言い方して……!」

これは自慢じゃないが、俺は眼がいい。単純な視力もそうだが一度に見られる範囲も広いと自負してる。

これが立体機動の訓練時には随分役に立つもんだ。

コニー「獲物の気配がする、こっちか!?」

サシャ「匂いもこっち、方角はあってます!詳しい場所はジャンに案内してもらいましょう!」

ジャン「おいコラ、何度も言っただろうが!ついてくんな馬鹿共!」

……狩猟民族共の野生的なモンには負けるが。


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ジャン「……寝られねぇ……」

この日は寝苦しい夜だった。

ぬるい空気がいつまでも部屋に澱んでいて、汗でベタベタした肌にシーツが張り付く。

寝ようとはしたが不快感のほうが勝った。

井戸の冷たい水でも浴びたら、ちょっとはマシに寝られるかもしれない。

夜間徘徊が教官にばれでもしたら最悪罰則で憲兵団行きが遠ざかるが、一度この不快感を拭いたい。

そう思ったらもうどうしようもなかった。タオルだけ持ち、こっそり扉を開けて部屋を抜け出す。


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ジャン「はぁ……さっぱりしたな」

幸い誰にも発見されること無く井戸までたどりつき、目的を果たせた。

水を浴びて少しは快適になった気がする。この涼しさが続くうちにさっさと宿舎に戻って寝たいとこだ。

ジャン「……あ?」

井戸の向こう、斜め前方にある森の入り口より少しだけ入ったところに人影がある。

ジャン「あれは……ユミルにベルトルト?」

あいつら、夜の散歩帰りってやつか。

羨ましい。俺もいつか星空の下、ミカサと手を取り合って……

ジャン(……? 何か変じゃねえか?)

目の前の光景に何かひっかかるものを感じて妄想が中断する。

視線と意識をあいつらのほうに集中させた。

ベルトルト「~~~~~~~~」

ユミル「~~~~~~」

会話はよく聞こえないが、月明かりで鈍く光るものが二人の間にある。

銀色の糸か紐状に見える何かが、ユミルの手とベルトルトの首元を繋いでいる。

目を凝らせばベルトルトの首には赤い輪が嵌っていて、あれは、まさか。

ジャン(首輪!? あいつら何やってんだ!)

見てはいけないものを見た気になって、慌てて井戸の影に身を隠す。

桶を持ったまま、少しだけ顔を出して向こうの様子を伺った。

ベルトルトが警戒するように辺りを見回している。隠れて正解だったな。

誰も居ないことを確認して跪くベルトルトの首元で、ユミルが何かしている。首輪を外すのか、更にきつく締めるのか。

……あの二人が付き合ってんのは知ってる。なにせ片想い中だったベルトルトの相談に乗ったくらいだ。

恋人同士で主従関係を作って楽しむ嗜好があるのも一応知ってる。何がいいのかはわからねえが。

ただそれが一度に現れ、しかも結びつくなんて誰が想像したか。

ジャン(人って分からねえもんだなぁ……あ、首輪外れた。そりゃそうか、ここから先は兵舎だ)

呆然としてるうちに赤い輪が外れ、ユミルが銀の糸を回収する。糸じゃなくて鎖かもしれねぇな、首輪に繋がってるくらいだから。

ジャン(……んなことはどうでもいいか……って!)

(脱がせてる……誰か来たらどう言い訳するつもりだ)

大胆な行動にギョッとした。ベルトルトの服がはだけられて、肩口が露出している。

あの周到なユミルがいて教官の巡回時間とルートを知らねえはずはないが、それ以外のイレギュラーはあるものだ。

現に今こうして俺がいる。

背中にじっとり汗をかいていた。この気温のせいだけではないのは確実だ。

感想ありがとうございます、投下終了です。ジャンの話は明日で終わります

前回のスレで出た「同期にSMバレ」ネタをやるならジャンだと決めてました


ユミルの手はずっとベルトルトの肩に触れ続けている。撫でるわけでも、それ以上脱がすでもなく押すような小さな動きを繰り返していた。

時折ベルトルトが身動ぎする。くすぐったいのか?

ジャン(ずっと肩触ってるだけだな……だが、それにしちゃ雰囲気が怪しいんだよ!)

おかしな場所を触ってる訳じゃねえが、二人の間に流れる空気は紛れも無く人前で出されるべきものではなかった。

一風変わった恋人同士の光景に心臓が早まる。別に覗きの趣味は無いつもりだが、初めて目の当たりにするそれから何故か目が離せない。


ジャン(はぁ……いつまでもここにいても埒があかねえ。俺が居ることを悟られたらやばい、なんとかして脱出しねえと)

目が離せない理由はもう一つあった。脱出のタイミングを計るためだ。

やっても俺に何一つメリットは無いから、言い触らすつもりなんてハナからない。

だが、あの二人が万一口封じを講じたら恐ろしいことになるんじゃねえか。

片や暫定成績第三位、片ややたらに、しかも悪い方に頭の回る女。

まあベルトルトのやつは穏やかな気性だが、それでも実力は高い。敵に回さねえに越したことはない。

口封じは大袈裟でも、ここで俺が覗き見ていたことを気づかれたら色々まずい気がする。


ジャン(星空でも見上げてくれないもんか……そうすりゃ動けるのに)

遮蔽物のほぼ無いこの場所では、迂闊に動けばすぐ発見される。あいつらに見つからなくても教官が来る可能性だってあった。

早めに逃げ出したかったが、今ベルトルトの視線が動けば見つかる。

何だって見つけちまったのか、何で隠れたりしたのか。

唯の恋人同士なら放っておいたところだ、銀の糸なんて見えてないふりして早目に帰りゃよかった。


ジャン(……お、これは)

ユミルが動いた。身を屈め、ベルトルトの視界を遮るように首筋に顔を埋めてキスをしている。

もう今しかチャンスは無いと悟って、足音を立てないよう駆け出す。

横目で伺うと、ユミルはまだ口付けを続けていた。明日はきっとベルトルトの首筋を直視できない。

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ジャン「あー、疲れた……クソ、結局何しに行ったんだ、俺は」

相変わらずぬるい空気の澱むベッドだったが、構わず倒れこんだ。

男子寮まで走ってきたからか、さっきの出来事のせいか。浴びた水はもうとっくにぬるくなって、汗と混じっている。

不快なぬるさは拭えなかったが、色々な疲労感のせいでぐっすり眠れそうな気分ではあった。


「銀の糸」 終

ジャン「銀の糸」それから

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ジャン(昨日ベッドに入ってからの記憶が無え……よっぽど深く寝たんだな。結果オーライって奴か?)

そうでも思わないとやってられねえ。今朝もマルコに起こされたが、普段より手こずったと言っていた。

あいつは優等生らしく早起きだ。昨日の夜もお行儀よく寝てたな、羨ましいこった。


マルコ「…ン、ジャン!」

ジャン「……あ?どうしたよマルコ」


マルコ「どうしたはこっちの台詞だよ、ぼんやりして。技巧のレポート持ったか?今日使うだろう」

ジャン「ああ、忘れるとこだった。ありがとよ」

机の上にあったレポートを教本の間に挟みこむ。たまにやる二人一組での意見交換で使うんだったか。

今日もマルコとペアなんだろう、大概隣の奴とだからな。

マルコ「寝不足か?よく寝ていたように見えたけど……ともかく、工具で怪我したりしないでくれよ」

ジャン「分かってるよ。そんなヘマしねえって……行こうぜ」


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マルコ「後ろの席しか空いてないな。ジャン、あそこでいいかい?」

ジャン「ん、どこでもいい」

席に着いて、あとは教官が来るのを待つばかりだ。相変わらず前のほうにはアルミンが陣取っていた。

その横にエレンとミカサ、いつもの光景だ。……あの野郎、またミカサに世話を焼かれて邪険にしてやがるな。

どうせレポートのことでも心配されてるんだろう。


教官「技巧の講義を始めるぞ、起立」

三人組を眺めているうちに教官が入ってきた。一通り挨拶を済ませて着席する。

教官「それでは、まず諸君らのレポートを用いての意見交換だ。ペアで意見を交換、まとめて発表してくれ」

皆が横を向こうとしたとき、教官から指示がとんだ。

教官「待った、今日は前後の席でペアを組むように。いつもより多様な意見が得られることだろう」

不意の組み合わせ変更で、幼馴染と組めずにミカサがしょんぼりしている。少し丸まった背から哀愁が漂っていた。


マルコ「ライナー、よろしく頼むよ」

ライナー「マルコのレポートは期待できるな。参考にさせてくれよ」

マルコのペアはライナーか。……ってことは、俺のペアは。

ベルトルト「僕のペアはジャンだね、よろしく」

ジャン「……よろしくな」

やっぱりそうか、こいつらでかいから教室使う講義は後ろの席固定だもんな。昨日の今日で、俺はなんて間が悪いんだ。

ベルトルト「それじゃあ早速、レポート交換しようか……ジャン?大丈夫?」

ジャン「! ああ、悪い。ほら、レポート」

心配そうに見ているベルトルトに向かって、教本の間から抜き出したレポートの束を差し出した。相手のものも受け取って目を通す。

ジャン(さすが、成績が良いだけあってよくまとまってるな……だが)

俺のレポートをじっと見ているベルトルトの首筋が気になって今一集中できない。

昨日の光景が蘇る。ユミルが口付けていた場所。そのうちありもしない首輪まで見えてきそうだった。

ジャン(そもそもなんで、俺がこんなに動揺させられなきゃならねえんだ……!)

自分で思ってたより恋愛ごとに対する免疫がなかったのか?冗談じゃない、純情野郎はライナーだけで十分だ。


ジャン(またこいつのインナーが、襟がやたら開いたタイプだしよ。俺やマルコみたいにシャツならまだよかったのに)

深く開いた襟ぐりからは、首筋どころか鎖骨まで見えている。私服はきっちりシャツ着てるくせに。

……そういや座学は私服で受けるのに、なんで技巧は訓練服なんだ?

技巧も私服だったなら、こんな一方的に気まずい思いせずに済んだだろうに。

ベルトルト「……あの、ジャン」

ジャン「ん?」

またしても心配そうな顔をしたベルトルトから声がかかった。レポートに注がれていた視線が外れて、俺の顔に向いている。


ベルトルト「さっきから止まってるけれど、どこか分かりにくい所あったかい?」

ジャン「いや、レポートは分かりやすいよ。……なあ、なんで技巧って私服で受けないんだろうな?」

ベルトルト「え、えっと……立体機動装置も扱うし、機械油で汚れたりするからじゃないかな? 多分」

いきなりの、しかも関係無い質問にベルトルトが困惑している。俺も何で口に出したのか分からない。

ジャン(……追及されたらぼんやりする頭のせいにするか。それも、もとを正せばこいつのせいだからな)

あの時すぐに去らなかった自分のことを棚に上げているのには気づいちゃいたが、それは見えてないふりを決め込んだ。


「銀の糸」それから 終

二個目の話終わりです


ベルトルト「もしもこの世界にキリンがいたら」

※夢見がち、ちょっと暗い話

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ライナーが室長の定例会でいない日の夜、僕とエレン、アルミンはそれぞれ好きなように過ごしていた。

僕は適当な本を読んでいて、エレンは明日提出の兵法のレポートを確認している。

アルミンは、この間古書店で見つけたという外の世界の本を熟読していた。

その日大事そうに本を抱えて帰ってきた彼によく外の世界の本なんて買えたね、と聞いたら

なんでも通いつめた結果店主との間に友情を結んだらしく、店に隠してあったのをこっそり売ってもらったんだという。

アルミンは可愛らしい容姿をしているけど、その実熱い男だから情熱が通じたんだろう。

ひょっとしたら古書店の店主も彼と似たような人なのかもしれない。

アルミン「はあ……キリンかあ」

エレン「きりん?アルミン何だそれ」

食い入るように読んでいた本から顔を上げて、アルミンが発した言葉にエレンが反応した。

感嘆するような言い方だったから、「きりん」はすごく素敵なものなのかもしれない。

興味をそそられて、僕も本を閉じた。アルミンのほうに寄っていく。

アルミン「キリンはね、外の世界のどこかにいるっていう動物だよ。とっても背が高くて、首が長いんだ。いつか見てみたいなあ」

ベルトルト「どれくらい大きいの?」

アルミン「えーっと……大体5mくらいあるらしい」

エレン「5m級か、でかいな……」

アルミン「巨人みたいに言わないでよ」

エレン「……そうだな、悪かったよ」

この挿絵の生き物だよ、とアルミンが僕らに見やすい様に本を開いてみせる。

地色は黄色くて、不揃いな石畳のように茶色の模様。

長い首には馬のようにたてがみがあって短い角を頭から生やしている。

少し眠そうにしている眼は黒い色で、長い睫毛に縁取られていた。

今までに見たこともない姿をしていて、夢の中に出てくる奇抜な生き物のような印象を受けた。

外の世界にいるらしいけど、故郷では名前を聞いたこともなかったからずうっと遠いところにいるんだろうか。

世界のどこかにこの生き物がいるのなら、確かに一度逢ってみたいかもしれない。


エレン「首の長い馬か鹿、って感じだな」

ベルトルト「それに派手な色と模様してる。すごく目立つだろうね」

アルミン「そう思うよね、でも実は木々の間に紛れるための迷彩になっているんだって」

エレン「どうやって鳴くんだろうな、馬っぽいのか?」

アルミン「それも書いてあったよ、めったに鳴かないから、鳴き声は未だ不明」

    「性格はおとなしく臆病で神経質、だけど猛獣にも勝てるくらい強いらしい。この長い脚で蹴るんだよ」

エレン「へえ、なんかベルトルトみたいな動物だな」


アルミン「ベルトルト?」

ベルトルト「そうだね、僕は臆病なところがあるから」

エレン「! ああいや、悪く言ったわけじゃなくてさ……」

エレンが気まずそうに頭に手をやる。

滅多に下がらない眉が微妙に八の字を描いている、困らせてしまったみたいだ。

エレン「確かに性格は大人しいけど、対人格闘強いだろ?実際組んだときはリーチのある蹴りが厄介だったし」

アルミン「ああ、それでベルトルトっぽいって言ったんだ。エレンらしい着眼点だね」

エレン「背も高いしな、目つきもなんとなく似てる気がしねえか?」

アルミン「それは分かるなぁ、睫毛の長いところなんか似てると思う」

ベルトルト「……そうかな、自分じゃよく分からないなあ」


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その後も、アルミンは意気揚々とキリンの話を続けた。

舌は青黒い色をしていて、高いところの木の葉を巻き込んで食べること。

子供のときに、もうすでに2mほどの高さがあること。とても短い睡眠時間のこと。

キリンが終わると、他の動物の話も沢山話してくれた。猛獣のライオンとか、厳ついゴリラとか。

どれも興味深い話で、彼の語り口も相まって僕とエレンは夢中で聞いていた。

特にエレンは外の世界に憧れているから、そののめり込みようといったらすごかった。

最後にはアルミンと二人で興奮しすぎて、帰ってきたライナーに心配されるほどだ。


ベルトルト(ゴリラって、前ユミルがライナーを例えて言ってたな。あの事故があった対人格闘のとき)

当時は気にも留めなかったけど、ユミルも外の世界の生き物を知っているんだろうか。

二人を宥める彼の横顔を見やると、確かにどことなく厳つくても優しいゴリラに似ているように思えた。

今日の投下終了です、感想ありがとうございます。暗い話はこれ一個で終わります。

まだいくつか甘ったるい話もあるので、長いですがよかったらお願いします。
開発編は本当に最後になりそうです


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アルミンの話を聞いた次の日、僕とユミルは図書室に居た。

午後の訓練が急に中止になったので、二人で座学の課題でもしようと思って誘ったんだ。

天気のいい日で中止にする理由はないように思われたけど、急遽三兵団に訓練兵団を加えての重要な会議があって

春に来た新人教官ともう一人を残して教官たちが出払ってしまう……ということで中止になったらしい。

ベルトルト「急に決まった重要な会議か、何があるのかな」

ユミル「どうせろくでもないことだろうよ……ちょっと眩しいな、カーテン閉めてくれ」

ベルトルト「うん」

すぐ背後の窓際で纏められたカーテンを開いていると、葉を広げた大きな木の陰があった。

黒い影に木漏れ陽の作る白い斑模様が白黒逆のキリンに見えて、昨日の話を思い出す。


ベルトルト「昨日、キリンに似てるって言われたんだ」

ユミル「キリン?」

ベルトルト「ああ……ユミル、キリン知ってるの?」

ユミル「……いや、知らないな。どんなのだそれ?」

ゴリラを知ってるならキリンのことも知ってると思っていきなり言ってしまったけど、そうではなかったみたいだ。

僕も昨日初めて存在を知った外の世界の生き物なんだから、今急に言われた彼女が分からないのも無理はないか。

ユミルは、アルミンとは別の本かなにかでゴリラだけを知ったのかもしれない。


ベルトルト「動物なんだって。アルミンの本に載ってた」

ノートの片隅にキリンを描く。昨日挿絵を見たきりだけど、割と似せて描けた。

ベルトルト「外の世界のどこかにいるらしいよ。すごく首が長いんだ」

アルミンにしてもらったキリンの話をする。

子供のうちから背が高くて、大人になると5mにもなることや、臆病な性格のこと。

教えてもらったことは全部憶えていて話したように思う。

ユミル「ベルトルさんに似てるな。性格、目つき……こんな見た目して強いとこもそっくり」

ベルトルト「それ、エレンも言ってたよ」

ユミル「なんかな……あいつと被ったってなるとなんか複雑だ。思考が単純ってことだろ」

ベルトルト「エレンが聞いたら怒るよ……背の高いイメージで被せやすいのかもね、僕とキリンは」

ユミル「子供の時点でベルトルさん並のでかさだもんな」


ぽつぽつと会話をしながら座学の課題を埋めていった。

プリントの裏表にわたって巨人の倒し方について、交戦中起こり得る数々の状況下での行動について問いかけられる。

ユミル「最後の課題、仮想的が5m級か。キリンと同じだな」

ベルトルト「はは、それもエレンが言ってたよ。5m級だって」

ユミル「またかよ……」

目を落としたプリントに印刷されている5m級巨人の絵の横に、キリンの親子を描いてみた。

同じ大きさでも、外の世界に巨人じゃなくてキリンが闊歩していたらきっと世界は楽しいのに。

巨人なんて生き物はどうして生まれてしまったんだろう。


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ユミル「……眠くなってきた」

課題を終えて本を読んでいたら、ユミルがうとうとしはじめた。

今日は過ごしやすい日で、昼寝にもってこいだ。夏の日には珍しく日差しが穏やかで、涼しい風がよく吹いている。

ベルトルト「少し寝る?日陰の席に移動しようか」

ユミル「ここで寝るのもいいが……この天気だ。外行かないか?」

ベルトルト「それなら、良さそうな木陰があったよ。さっき見えたんだ」

後ろの窓を示すと、ふらりと立ち上がった。僕も席を立って彼女の横に並ぶ。

顔の両側へ分けられた髪が、窓から入ってくる風に揺らされている。

ユミル「いいな、風もよく通りそうだし。行くか」

ユミルはあの木陰が気に入ったようで、荷物をまとめて外に出ることになった。

ユミル「ん。なんだ、ベルトルさんも落書きとかするんだな」

ベルトルト「あっ……」

プリントを畳む間際、キリンの親子がまだいるのに気づいてそっと消した。

ユミル「消さなくていいのに。上手に描けてたぞ?」

ベルトルト「そうもいかないよ、教官に提出するものだから」

僕も本心では残しておきたいけど、落書きが見つかったら怒られるから仕方ない。


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間近で見ると、木は図書室から見たときよりも更に大きく見えた。

キリンはこんなに大きな木の葉を食べるのだろうか、青黒い舌を使って。

木陰に座ると、芝生がふかふかしていて気持ちいい。日当たりのいい場所だから、木も芝生も生育がいいのかな。

ユミルはもう寝る準備を始めるように横たわっていた。

ベルトルト「それにしてもいい天気だね……ジャンの言ってた通りだ」

ユミル「あいつ天気予報なんてできるのかよ」

ベルトルト「……僕の寝相を使ってね……」

ユミル「前言ってたやつか、寝相で占いができるって。天気の占いだったんだな」

ベルトルト「うん。ちなみにジャンだけじゃなくて、ライナーやエレンもできるよ」

ユミル「当たるのか?」

ベルトルト「よく当たる、って評判だって。ライナーが教えてくれた」

木漏れ日の暖かさに僕も眠たくなってきて、ユミルと少し距離をとって寝転ぶ。

この距離なら彼女に危害を加えることもないだろう。

ユミル「便利なもんだな……そこまですごいと生で見てみたい。もっと近くで寝てみるか」

ベルトルト「やめておきなよ。この間なんかライナー抱き抱えて、軽い膝蹴り繰り返してたらしいから……君にそんなことしたくない」

好奇心に満ちた目をしてこちらに来ようとするのを、手の動きと言葉で止めた。

この前夜中に起こしてきたライナーの必死な顔を思い出したからだ。

不幸中の幸いで当たりは軽かったらしい、怪我をさせなくてよかった。

ユミル「……ああ、そんな目に遭うのは勘弁だ」

ベルトルト「だろ?だから、僕と昼寝するにしてもこのくらいの距離がいいよ」

ユミル「うん……一緒に住むようになったら、大きいベッド買う必要があるな」

ベルトルト「……え、一緒に住む?ユミル?」

ユミル「まだ先の話だよ……おやすみ」

いきなりプロポーズめいたことを言われて戸惑う間に、ユミルはさっさと寝てしまった。

声をかけても肩を叩いても反応しない。寝つきがいいんだな、うらやましい。

ベルトルト「……先の話……」

ユミルの言葉を反芻する。

彼女の想定する未来の中に僕がいるのは喜ばしいことだけど、僕はそれを裏切ることしかできないんだろう。

世界のどこかにいるというキリンに逢うことも、彼女と一緒に暮らす家の大きなベッドで昼寝をすることも、僕にはできない。

ベルトルト「……僕ももう寝ちゃおう」

深く考えたら泣いてしまいそうだ。先のない人生を考えたら悲しくなってきて、現実から逃れるように眠ることにした。

普段寝つきはとても悪いけど、この陽気の中ならきっとすぐに眠れる。考える事から逃げられる。

暗いうえにセンチメントルトであれな感じですが、今日の投下終わりです。

キリンの話は明日で終わって、次からはいちゃいちゃした話のはずです。


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夢を見た。

僕とユミルが一緒に暮らしていて、二人で買った大きなベッドで昼寝をする夢。

今日みたいな天気のよくて、涼しい風の吹く日だ。

ユミルがドア側で、僕はやっぱり壁際だった。

夢ではよくあることだけど、自分を上から見下ろしているのは改めて意識すると変だ。

夢の中の僕も寝相が悪くて壁側に転がっていく。


彼が目覚めたときには、くっつくように隣にいたはずのユミルがずいぶん遠かった。

突然上からの視点が消失して、幽体離脱が終わったように自分の視点に戻る。

幽体離脱なんてしたことないから想像だけど。


ユミル「おー、起きたかベルトルさん」

髪を解いたユミルがこっちを見ている。彼女もついさっき起きたようだ。

半分寝たままの頭で答えようと思っていたら、急に頭上に暗い影が差す。

風が吹き込むように開けておいた窓から、カーテンを割ってキリンが首を出したからだった。


ベルトルト「ここにキリン……? わぷっ」

突然出現したそれに目を奪われる間に、顔を青黒い舌で舐められる。

往復するように二舐めほどして、キリンは悠然と帰っていく。

唾液でべとべとになった僕を見て、ユミルは心底楽しそうに笑っていた。

ユミル「ベルトルさん、でかいから子供のキリンだと思われたんじゃないか。……ほら、顔拭け」

ベルトルト「まさか……黄色くもないし、模様だってないのに」

ユミルが渡してくれたタオルでキリンの唾液を拭く度に視界がぼやける。もうすぐ目が覚めるんだ、と頭の隅で理解した。


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ベルトルト「ん……」

目を覚ますと、木の陰に入ったままだった。寝たままの場所で起きるなんて珍しい。

ユミル「おー、起きたかベルトルさん」

隣には離れていたはずのユミルがいた。夢と同じ台詞。でも彼女は髪を纏めていて、夢よりずっと早く目覚めていたみたいだ。

手には白いハンカチがあって、じわりと汗が滲む僕の額を拭ってくれている。

デートした日に持っていたものと同じデザインの、裾がレース状になっていて山吹色で花の刺繍が入ったハンカチだ。

ベルトルト「おはよう……まだちょっと眠いや」

ユミル「熟睡してたもんなぁ。眠いなら横になってていいぞ」

その言葉に甘えて、寝転がったまま返事をした。ユミルは上半身を起こして座っている。

ベルトルト「うん、久しぶりにこんなに寝たよ。君は早く起きたんだね」

ユミル「寝ながらゴロゴロ転がって、当たってくるから。それで起きちまった」

ベルトルト「っ、ごめん」

ユミル「いいよ、寝相が悪いのは承知の上だ。向こうに転がってくベルトルさん戻すのもそれなりに面白かったし」


そこまでしてくれていたのか。ユミルは女の子にしては背が高いけど、僕みたいなのを動かすのは大変だっただろうに。

ベルトルト「面白いのかな……本当にごめん、ずっと起きて面倒を見ててくれたんだね。ありがとう」

ユミル「謝らなくていい。飼い主だからな、面倒くらいみてやるよ」

ユミルがハンカチを芝生に置いた。寝癖を直すような手つきで頭を撫でてくれる。

一箇所髪が跳ねているところが、撫でるたびに引っ張られてピョコピョコ動いた。

慈愛を感じる優しい眼差しと手つきに、大切にされていると自惚れてもいいんだろうか。

ユミル「やっぱり大きいベッド買わないとな。面白いけど、毎日これじゃ睡眠不足になりそうだ」


彼女の語るずっと先の未来に僕がいるのが、嬉しいけど心苦しい。

僕には決して来ないだろう、幸せな未来の話だ。

ベルトルト「……ああ、そうだね」

それでも、兵士のふりができる今のうちだけでも、未来を肯定させてほしいと誰にでもなく願った。

普通に大人になってユミルと暮らす幸せな生活も、夢の中だけだから許してほしい。

その幸せな夢を彼女と共有したいと思うことも。

ベルトルト「……ユミル、僕さっき夢を見たんだ。君と、大きいベッドとキリンの夢」


「もしもこの世界にキリンがいたら」 終

感想ありがとうございます、三個目おしまいです。

次回投下の話、時系列無視しての話でも大丈夫でしょうか。
独立した話ですが、未来の話→訓練兵時代の話の順での投下なので分かりにくいかもしれないです
未来の話は幸せなユミベルと104期が書きたかっただけの話です。

>>1ってこのシリーズ以外に何か書いてる?よかったら教えてほしい

投下再開します

>>149 これ以外だと>>15に書いた「営業」と「俺の同郷がこんなに可愛い」
あとそれ以降にアルミン「脱線104期」を書きました。全部ギャグか日常系です
今書いてるのはこれと、ベルトルトがキリンになる話です


ベルトルト「一周後の幸せな世界」

※ご都合設定

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―854年 春 ウォール・ローゼ トロスト区近くの街


十一年前、一匹残らず巨人が消えた。支配から脱却した人類は、着実に活動領域を壁の外へ広げている。

元巨人の僕も、そんな平和な世界でユミルと一緒に暮らしている。

二人のお金を合わせてこの街に少し広い家を借りて、大きなベッドも買った。

借家だからいつか引っ越す時には手間がかかるだろうけど、僕たちが一緒に寝るには必要なものだ。


ユミル「出かけるのか?」

ベルトルト「うん、修理が今日の午後終わるって言ってたから」

今日は休日で、仕事中に壊してしまった腕時計を修理から引き取りにいくところだった。

四年前に訓練兵団を卒業して、今は三兵団の事務を統括する総務部で事務員なんてやっている。

週休二日でほとんどがデスクワーク。この街に支部があるので通勤も徒歩で楽なものだ。

背の高い僕は、ランプの油さしや高いところの資料を取るのに脚立を出してこなくてもいいので重宝されている。

常に戦闘と死の危険が付き纏う以前に比べて、なんとも呑気な部署だった。


ユミル「今日の夕飯何食べたい?「なんでもいいよ」は無しで」

リビングと直結した台所で、ユミルがエプロンをしながら問いかける。食事当番は交代制だ。

最近の彼女は優柔不断な僕の先手を打って、「なんでもいい」を封じてくる。

食糧事情は以前と大きく変わり、塩味のついたものが食べられるようになったし料理の幅も広がった。

パンはしっとり柔らかくなったし、少し値が張るうえに精製度は低いけど砂糖だって手に入る。


ベルトルト「えっと……あ、ハンバーグ食べたいな」

ユミル「ハンバーグ?」

ベルトルト「昨日職場の前にね、ハンバーガーの屋台が出ていて。おいしそうだと思ったんだけど買わずに帰ってきちゃったからさ」

ユミル「……ベルトルさん」

ベルトルト「ん?」

ユミル「ベルトルさんは私の犬だな?」

ベルトルト「う、うん」

この関係も変わっていなかった。彼女は僕の恋人で、ご主人様だ。

ソファで支度をする僕のところまで歩み寄ってきて、首に腕を絡める。家庭的な白いエプロンと鋭い視線が不釣合いでドキッとした。


僕の目を見据え、神妙な声を作って話し出す。

ユミル「あのな、犬にタマネギを食べさせると死んじまうんだと。この前もその件で新聞にな、「犬にタマネギをやるな」って」

ベルトルト「……分かったよユミル、ハンバーグは作るのが面倒くさいんだね」

ユミル「ああ」

タマネギを刻むのが面倒くさいのか、微妙に成り立っていない理屈で僕を丸め込もうとする。

理由を言い当てられても変に取り繕ったりしないところがユミルらしかった。


ベルトルト「じゃあ、トマト煮がいいな。鶏肉で作ったの」

ユミル「そっか、ならそれにしようぜ」

トマト煮にもタマネギは入っているけど、面倒くさくない切り方だからかユミルは気にも留めない。

腕を解いて台所に戻っていき、トマトやらニンジンやらを取り出す彼女の後姿を眺めていると幸せになる。

付き合って五年、一緒に暮らし始めて三年。僕はそろそろ結婚を意識しだしたけど、彼女はどうなんだろう。

同期はもう早い人だと結婚している。一番最初は当然というか、フランツとハンナ。三日前にはミーナの結婚式の招待状が届いた。

相手は同じ班だったトーマス。籍はまだ入れてないようで、ミーナの名字はカロライナのままだった。


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ユミル「ベルトルさん」

靴を履き終わり、立ち上がったところで呼び止められる。

一緒に暮らすうち、一人が出かけるときは玄関で見送るのが習慣になっていた。

ユミル「パンが無かった。買ってきてくれないか?……ついでにこれも出しといてくれ」

薄いピンク色の封筒が二つ、招待状の返信だ。二人揃って出席に丸をつけてある。

ミーナもトーマスも社交的だったから、式には沢山の同期が集まるだろう。


ベルトルト「パンはどのくらい買う?」

ユミル「とりあえず今日の夕食と、明日の朝のだけあればいい。明日また私が買ってくる」

ベルトルト「わかったよ。いってきます」

ユミル「ん、夕飯までには帰って来いよ」

どちらからともなく軽いキスをしてから家を出る。

僕か彼女か、誰が始めたか忘れたけどこれもいつのまにか習慣になった行為だった。

いつも感想ありがたいです、投下終了です。
ミーナもマルコもカルラさんも皆生存させたくて、ループ説採用の無理矢理幸せ設定になりました。


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――843年 春 「故郷」

ベルトルト「ライナー、おはよう」

ライナー「おう、ベル!早いな」

ベルトルト「お父さんもお母さんも、大人の集まりがあるからお外で遊んできなさいって」

ライナー「俺んとこもだ。朝飯食べたらすぐ追い出されちまった」

アニ「ライナー、ベル!」

ベルトルト「アニ、おはよう」

アニ「おはよ」

ライナー「おじさんも、おはようございます」

アニ父「おはよう。二人とも、アニと遊んでてくれるかい?おじさんは大人の集まりがあるから」

ライナー「まかせてください」

アニ「お父さん、それ早く終わる?」

アニ父「……どうだろうな、難しい話だから。アニ、仲良くいい子にしてるんだぞ」

アニ「はーい」

ライナー「……村の大人はほとんど集まりに行っちゃったな」

ベルトルト「なんの話してるんだろうね?難しい話って」

アニ「お父さん帰ってきたら聞こうっと……ね、なんかして遊ぼうよ」



「おーい!」



ベリック「なあ、お前ら聞いたか?巨人が世界中からいなくなったんだってよ!」

ライナー「べリック、お前今までどこにいたんだよ」

アニ「巨人ってあんなにうじゃうじゃいたのに……ウソでしょ」

ベリック「ほんとだって!集会所で大人たちが話してるのこっそり聞いたんだ!」

ベルトルト「じゃあ、これからは村の外も安全なの?」

ベリック「ああ、もう怯えなくていいんだ!……おっと、これ俺が言ったの内緒だぞ!大人にばれたら怒られる」


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アニ父「アニ、帰るぞ。お昼ごはん食べよう」

アニ「お父さん!おかえりなさい」

アニ父「ただいま。ほら、三人も一回帰りなさい。もう君らのお父さんお母さんもお家に戻ってるよ」

ベルトルト「はい」

ライナー「またな、アニ」

アニ「じゃ、またね」

ベリック「そういやベルトルト、今思い出したんだけどな」

ベルトルト「なあに?」

ベリック「子供は皆、明日診療所で注射されるらしいぜ……泣くなよ?」

ベルトルト「ええ……やだな、なんの注射?」

ライナー「前にもあったよな、村の子供皆が注射されたの。あの時もお前泣いて大変だったよな」

ベルトルト「あ、あのときはアニも泣いてたもん……ねえべリック、それ痛いやつかな?」

ベリック「どんな注射かまでは聞こえなかったけどよ、巨人に関係あると思うぜ俺は。大人たち皆、すごく真剣に先生の話聞いてた」


ライナー「巨人?巨人がどう関係あるんだよ」

ベリック「だからそれは知らないって……でも、泣いてる大人もいたぐらいだし……大事な話なんじゃねえかな」

ライナー「泣いてた?大人には巨人が消えるのが悲しいことなのか?」

ベリック「嬉しがってる人もいたから違うと思う。アニの親父さんも泣きながら笑ってた」

ベルトルト「泣きながら笑ってるの?変なの…… はあ、注射やだなあ」


次の日、ベリックが言った通り村の子供みんなが診療所で注射を受けて、やっぱり僕は怖くて泣いた。

付き添う父も母も泣いていた。普段僕を宥めすかして泣き止ませる二人が、僕より長く泣いていた記憶がある。

どこの家もそうだった。大人はそれぞれの子供を抱き締めて、嬉しそうに笑いながら泣いた。


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二軒隣の郵便局で用事を済ませ、パン屋に入った。いつ来ても焼きたてのいい匂いがするこの店は僕とユミルのお気に入りだ。

夕飯に食べる固めのパンと、朝食用の柔らかなパンを選んで勘定場に持っていく。

恰幅のいいパン屋の女将さんが袋に詰めていくのを待ちながら、巨人が忽然と消えた日のことを思い返していた。


ベルトルト(未だになんで巨人が現れたか、なんで一斉に消えたか。全部分からずじまいなんだよな)

大きくなって分かったことは、注射器の中に入っていた薬の正体だけだ。

僕らが打たれた注射のうち、一回目は巨人化の素質を目覚めさせる薬、二回目はそれを打ち消す薬だった。

それ以外のことは何も分からない。故郷の目的も子供達だけを巨人化させた理由も、何一つ解明されず巨人と一緒に消えた。


ベルトルト(でもそれでいい。少なくともあれから故郷は普通の村に戻ったし、僕らは人を殺さずに済んだ)

巨人が消えなければ、故郷でも特殊な巨人になれたべリック、ライナー、僕は前の世界と同じ845年、人類に進撃することになっていたんだろう。

そして途中でベリックが喰われ、代わりにアニがやってくる。

巨人によってシガンシナは陥落し、僕らは人類に紛れ訓練兵団を卒業して、エレンをさらって故郷を目指す。

前の世界ではその過程でアニを失い、ライナーを失った。もう少し後に僕も死んだ。エレンに殺された。

死んだからその後がどうなったか分からないけど、誰かが失敗して世界は巻き戻ったらしい。


巻き戻るたびに少しずつ改変される世界の性質は、今回は幸福に繋がっている。

今の世界は、前の世界の大筋をなぞりながらも巨人がいないという一点の差異が決定的な違いをもたらしていた。

シガンシナの悲劇は起きず、104期は無事に卒業を迎え、僕らは身の内の巨人を喪って普通の人間みたいに生きている。


ベルトルト(べリックは元気にしてるかな。たまに手紙が届くけど)

現在彼は故郷で暮らしていて、月に一回僕たち三人に手紙をくれた。

行事の様子や、彼の家で家畜が子供を産んだことなど故郷の情景が主に綴られている。

村の近辺でしか咲いていない花を押し花にして同封してくれたこともあった。

ベルトルト(先月、たまには帰って来いって書いてたな。夏の休暇に帰ろうか……そのときはユミルと一緒がいいな)

両親に紹介したら驚くだろうか。その前にプロポーズをしておきたい、どうやって伝えようか……

「お兄さん、お会計!」

ベルトルト「……ああっ、すみません!」

夢中になりすぎて、もうとっくに袋詰めを終えた女将さんに注意されてしまった。

大きい声で謝ったので後ろのお客さんがくすくす笑っている、恥ずかしい。早くお金を払って出よう。

投下終了、この話がちょっと長引きそうです。
十割妄想ですがお付き合いくだされば嬉しいです。

乙!和む…!
この世界では当然わた…ミカサもエレンと結婚しているはず。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おーい、ベルトルト!」

パン屋から時計店への道で不意に名前を呼ばれた。

振り返ればエレンとアルミンがいて、すぐさまこっちに駆け寄ってくる。二人とも背が伸びたけど、子供みたいに無邪気だ。

屋台で昼ご飯を買って食べていたらしく、紙包みを手に持っていた。

エレン「でっかいからすぐ分かるな。今日は仕事休みか?」

ベルトルト「うん。君たちも休暇?」

アルミン「そうだよ、壁外調査の報告やら何やらがやっと片付いたから。ミカサは半日仕事で、後から合流するんだけど」


エレンとアルミン、ミカサの三人は今も調査兵団に所属している。外の世界の探検という夢を叶えるためだ。

憲兵団は貴族の生活領域で要人の護衛、駐屯兵団は治安維持に街の整備と前とそう変わらない仕事内容だけど

調査兵団は大きく変わった。戦闘の必要性がほぼ無くなり、外の世界の調査に専念できるようになった。

巨人のいない世界での壁外調査は進みがよく、調査兵団は帰るたびに何かしらの成果を持ち帰る。

あるときは人類の活動領域を広げ、あるときは食糧事情を改善した。新種の動植物も大量に発見された。

以前の扱いとはうって変わって、人類の発展に貢献する英雄だと持て囃されている。


ベルトルト「君達とミカサ、三人は調査兵団で活躍してるって総務部でも評判だよ」

エレン「総務で?」

アルミン「エレン、三兵団に月々来る月報は総務部の発行だよ。君も世話になってるだろ」

エレン「へえ、そうなのか」

アルミン「その他にも福利厚生、給与計算……いろいろやってくれてるんだよ」

不思議そうにしているエレンにアルミンが丁寧に解説を入れる。

月報製作、給与計算に資料整理。総務部には細々した仕事がなんでも回ってきた。

酒の席では雑用兵団なんて冷やかされることもあったくらいだ。


エレン「働き者だな……ベルトルトも月報の記事書いたりするのか?」

ベルトルト「先月、君たちが壁外調査であげた成果についての記事を書いたよ。ほら、新種の植物見つけただろう」

エレン「あれ書いたのか! また何か書いてくれよ……いつかキリンも見つけてやるから」

巨人の居ない世界になっても、変わらず意思の強そうな瞳で僕をじっと見つめてくる。

この世界でも僕たちはアルミンからキリンの話を聞いていたし、僕はキリンに似ていると言われていた。


ベルトルト「うん、楽しみにしてるよ。……エレン、君は調査兵団の仕事が本当に似合ってるね」

エレン「楽しいんだ、調査の度に新しい世界に会えるのが。俺たちは自由なんだって感じる」

今や彼のモチベーションは巨人駆逐ではなく、外の世界の探検に向けられている。

エレンもアルミンも、瞳にさしていたどこか暗い影は取り払われて未知への好奇心で輝いていた。


アルミン「ベルトルトも仕事が好きなんだね。話してたとき楽しそうだったよ」

ベルトルト「好きだよ。君たちの活躍を記事にできるのが一番嬉しい」

この世界では僕たちと彼らはちゃんと友達になれた。三年間同じ屋根の下で暮らす間、楽しいことが山ほどあった。

今はなかなか会えないけど、総務部には月報製作のために壁外調査の結果報告資料が上がってくる。

資料に刻まれた三人の名前と活躍の記録を見るごとに、友人が元気でいるのを知って安心できた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アルミン「エレン、そろそろミカサが仕事終わる時間だよ。迎えに行くって約束しただろ」

エレン「ああ、もうそんな時間か……じゃあベルトルト、俺たち行くよ。またな」

ベルトルト「またね……そうだ、ミーナの結婚式には出るの?二ヵ月後だけど」

アルミン「もちろん出るよ、幸い壁外調査とも被らないしね。ミカサも出たがってる」

女の子らしいよね、とアルミンが柔らかに微笑む。


エレン「終わったら三人で里帰りするんだ。マリアまでは遠いから、休暇とって……あんまり会わないと母さんが心配するからな」

アルミン「ふふ、エレンだって会いたいくせに」

エレンの口から「母さん」という言葉が出たとき、心臓を掴まれる感覚がした。

僕たち三人とユミル。104期で巨人だった人は皆前の世界を憶えていたけど、君はどうかなんてエレンにはまだ聞けていない。

巨人への憎しみや母親の死をもしも憶えていたら、不意に思い出させてしまったらと考えると怖くて身が竦んだ。

普通の友達でいたい。ただそれだけのために、僕はまた彼らに隠し事をしている。


ベルトルト「……そうなんだ、里帰り楽しんできてね……じゃあ僕はこっちだから」

上手く笑えているだろうか。やっとそれだけ絞り出して、時計店への道を急ぐ。

いつかは決着をつけなきゃいけないことだけど、今はどうしても傷を抉る勇気が出せなかった。

レスありがとうございます、投下終了です。
今回は暗いけど話自体は幸せに終わらせるつもりです。

>>181 ミカサも幸せに暮らしてます、結婚はまだですが


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ベルトルト「こんにちは、修理を依頼していたフーバーです」

「……いらっしゃいませ」

小さな時計店の低いドアを背を屈めて潜り抜ける。初めて来た時には頭を強かにぶつけてたんこぶを作った。

雰囲気はいいけど立て付けの悪い店が揺れて、中にいた老年の時計職人と目つきの悪い店員に睨まれたっけ。

ベルトルト「やあジャン、腕時計取りに来たよ。師匠さんはお出かけ?」

ジャン「爺さんは遅い昼飯食いに行った。悪いが最終調整がまだだ、そこ座って待っててくれ」

ガラスケースを挟んで、ジャンの対面に置かれた椅子に座る。工具を操る手先がよく見えた。


ベルトルト「君と再会したときは驚いたよ。時計の修理頼んだ店員がジャンだったんだから」

ジャン「俺だって驚かされたぜ。小せえ店に馬鹿でかい客が来たと思ったらお前だった」

この店は店長のお爺さんとジャンしか店員がいない。本当に小さな店だ。

彼にはフランツたちの結婚式以来会っていなかったけど、先週仕事帰りに駆け込んだここで再会した。

僕をチラリと睨んだ目が、一瞬後に見開かれた様子を今でも思い出せる。


ベルトルト「ジャンは相変わらず器用だね。君は立体機動装置の整備も得意だった」

ジャン「……立体機動か、懐かしい。兵士になってりゃ今でも飛んでたんだろうな」

平和になって兵士の数がいらなくなった今はジャンみたいに街で就職する人も増えた。

僕の他に兵団に所属しているのはエレンたち三人と、憲兵のマルコ、駐屯兵になったライナー。親しい友人ではこれだけだ。


ベルトルト「前の君は憲兵志望だった……どうして時計屋になろうと思ったんだい?」

ジャン「大した理由はねえよ。ここは家から近いし、仕事は性にあってる。

憲兵は高給取りだがお偉いさんの相手は面倒だ。……第一この世界はどこでも安全なんだ。前と違ってな」


彼が憲兵になりたかったのは安全な内地で暮らすためだった。安全が手に入った今、あえて憲兵になる理由がなくなったのか。

ジャンはこう見えて孝行息子だから、実家に近い職場で両親の側にいてやれるのもいいのかも。本人に言ったら絶対照れ怒りするけど。

ベルトルト「憲兵といえば、マルコは元気?」

ジャン「ああ、真面目に憲兵やってるよ。飲みに行っても程々にしか酔わねえ、真面目すぎるくらいだ」

ベルトルト「マルコらしいや……でもよかったよ。元気に生きてるんだ」

ジャン「そうだ、マルコは元気に生きてる」

噛み締めるようにジャンが復唱する。彼もまた前の世界を憶えている人だった。


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ベルトルト「……結婚しよ」

ジャン「はぁ?」

竜頭で時刻を調整していたジャンが顔を上げた。頭がおかしいんじゃないか、って顔で僕を凝視している。

ベルトルト「……えっと、ごめん。ジャンに言ったわけじゃなくて」

ジャン「そうだったらご退場願ってたとこだ。……ユミルにだろ。リハーサルか?人の職場で」

ベルトルト「どうやって言うかも決まってないから、まだ言えないよ。伝えたくはあるんだけど」

ジャン「お前ら長いよな、もう同棲三年目だろ?」

ベルトルト「どっ、同棲だなんて、そんな……」


ジャン「照れんな。修理依頼に来たとき自分で言ったんだろうが……その、まだあの関係は続いてんのか?」

ベルトルト「うん。相変わらず」

ジャン「ちっとは焦るとかしろよ。同棲よりこっちのが照れるだろ、普通は」

ベルトルト「ジャンにはもうばれちゃってるし。第一、今聞いてきたの君だろ」

ジャン「開き直りやがったな、一年前はあんなにアタフタしてたのによ」

彼は訓練兵の時分に僕とユミルの本当の関係を偶然目撃していたらしい。

そのことは卒業まで誰にも話さないでいてくれたけど、一年前、ついに僕にだけ暴露した。

フランツとハンナの結婚式の二次会、ひどく酔っ払った彼に店外に連れ出され一部始終聞かされたときには一瞬で酔いが醒めた。


ジャン「結婚なあ……いつ頃意識し始めたんだ?」

ベルトルト「ぼんやりとは考えてたんだけど……はっきりプロポーズしようって思ったのは三日前かな」

ジャン「ミーナの結婚に影響されたか、お前も案外単純だな」

ベルトルト「ジャンは?今好きな人とかいないの」

支払いを終えて、領収証を書き出した彼に尋ねる。

そもそもあの日彼が泥酔したのは、初恋が完全に砕け散ったからだ。

エレンに理想の結婚式を語るミカサと「まだ早い」と言いながら満更でもなさそうなエレンを

哀れにも目撃してしまった彼は鬱憤を晴らすかのように飲んだくれ、手近にいた僕に絡み続けた。

ジャンの目撃者体質は一生治らないんだろうな。

投下終了です。明日投下分でやっと家に帰っていちゃつきだす筈です

安定の不憫ジャンだwww
家政婦は見た、ならぬジャンは見た、ですねw
ユミル様とベルトルさんのいちゃこら早く読みたいな
プロポーズ大作戦頑張れベルトルさん!

とりあえず乙

他の上位陣の卒業後とリヴァイ班がどうなったか知りたいです。あと巨人消滅後の訓練生活も気になります。


ジャン「まだ本気になれる相手は見つかってねぇよ……初恋は実らねえもんだっていうが、ありゃ真実だな」

ベルトルト「はは、僕は初恋の人と同棲してるけどね」

ジャン「……結構いい根性してるよなお前……ほら、時計と領収証」

受け渡し用の木皿に腕時計と領収証を載せて渡される。彼らしい細身で尖り気味の筆跡は変わらないままだ。

時刻はまだ夕方で、ゆっくり歩いても夕飯には間に合う。


ベルトルト「ありがとう、じゃあまた」

椅子を引いて立ち上がると、ジャンもガラスケースの向こう側から出てきた。

彼も僕も、訓練兵時代からほとんど背丈が伸びていない。

ベルトルト「見送ってくれるんだ、丁寧だね」

ジャン「同期のよしみだ……なあ、新居の時計買うときは俺の所来いよ。いいの見繕ってやる」

三白眼が上目遣いにこっちを見る。身長差のある相手に軽口を叩くとき、彼はよくこの仕草をした。

ベルトルト「気が早いよジャン……でも期待してる。またね」

ジャン「おう。あんまり壊すんじゃねえぞ」


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時計店のある大通りから一本裏に入り、緩い坂道を登った先に僕たちの家はある。

このあたりは似たような造りの借家が六軒ほど建ち並んでいた。

空はオレンジから紺色に変わっていくところで、どの家からも夕飯の匂いがする。

ベルトルト「ユミル、ただいま」

ユミル「お帰り。手洗ってこい」

ベルトルト「はい……パンここに置いとくよ」


出かけたときのようにキスをしてから洗面所に向かう。

キスをしたり、手を握ったり。僕らの間では挨拶の度に軽いスキンシップをとるのが習慣になっていた。

ベルトルト(ん?なんか気持ち悪い)

手を水に浸すと、手首に違和感があった。

時計の革ベルトと肌の間に水滴が挟まってジメっとする。

ベルトルト(わっ、腕時計外さなきゃ)

水濡れさせたらまた壊れてしまう。石鹸で泡だらけにする前に気づいて助かった。


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台所に戻ったら、ユミルはパンの用意をしていた。

薄くてよくしなるナイフで固めのパンを斜めに切っていく。

トマト煮の匂いに香ばしい匂いが混じって、空腹感が増した。

ベルトルト「……ユミル」

ユミル「なんだ、腹減ってるのか?……あーん」

エプロン姿になんとなく甘えたくなって、邪魔しないように後ろから抱きついたら催促だと思われたようだ。

ベルトルト「あー……むぐ」

パンの切れ端を開けた口に押し込まれる。彼女はよくこうやって「餌付け」をした。


ユミル「それやるから大人しく待ってろ」

ベルトルト「ん……何か手伝うことあるかい?」

ユミル「ああ、食器出しといてくれるか」

作り付けの食器棚からスプーンと木のお椀、パンを盛る皿を取り出す。

二人で暮らし始めてから買ったお揃いの食器だ。

ベルトルト(これがあると、一緒に暮らしてるって感じだな)

その前は僕はライナーと、ユミルはクリスタと同居していたから

お互い彼らとお揃いのデザインのものばかりだった。


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並べた食器に料理が盛られて、夕飯の用意が調う。

ベルトルト「いただきます」

ユミル「どうぞ……そういや手紙が来てた」

ベルトルト「手紙?」

ユミル「ベルトルさんが出てってすぐに届いたぜ。ソファのとこに置いてる」

ソファには三通の封筒がある。渋い緑の封筒は、ベリックがいつも使うものだ。

ベルトルト「ベリックからだ……他は何だろう」

ユミル「家賃の支払い明細と、サシャから私宛に。あいつ、たまーに手紙寄越すんだよ」


ベルトルト「サシャか、元気にしてるかな」

ユミル「元気そうだぞ。最近食った美味いものの話ばっか書いてた」

ベルトルト「あはは、サシャらしいよ」

彼女は故郷のダウパー村で狩猟民の生活を続けていた。

最近狩猟民族の人達は野生生物の肉、毛皮などの加工品を街の市場で売っている。

高い技術をもって作られた製品は評判で、売れ行きは好調だという。


ユミル「宛名、"フーバーさん家のユミルへ"だってよ」

ベルトルト「フーバーさん家か、家賃の明細とかもそれで来るよね」

ユミル「一応世帯主はベルトルさんだからなぁ……前は名字が無くてもよかったが、今は面倒だ」

ベルトルト「行政がしっかりしてるから」

シガンシナ・ウォールマリアの悲劇は起きなかったので、戸籍の管理はしっかり行われている。

名字を名乗らない彼女は「そういう民族の出」で通しているらしいが、役所の手続きなんかで面倒なことは残るようだ。


ベルトルト(ユミルの名字か……ユミル・フーバー……)

心の中でこっそり呟く。フワフワした響きだ。結婚したらこう名乗ってくれるだろうか。

ユミル「……ベルトルさん?何一人でモジモジしてんだ?」

ベルトルト「い、いや、なんでもない!……これ美味しいよ」

ユミル「そっか、よかったな。おかわりあるぞ」

挙動不審になる僕をユミルが面白そうに笑っている。

ずっとこうやって一緒にいたいと今日の夜にでも伝えたいけど、どうやって言えばいいのかまだ決まらない。

気持ちばかりが逸っていた。

今日の分投下終了です、感想ありがとうございます

>>205-206 ジャン好きなのでつい力が入ります

>>207 幸せ104期が書きたいので追々書いてくつもりです、リヴァイ班や訓練もそのときに

昔の時計店って指輪も売ってたんじゃなかったっけ
ジャンのお店で結婚指輪買うのかなワクワク

どういう理由で消えてしまったのか分からないが
ノリに乗って筆が進んでる時にパソコン固まると死にたくなるよな

復旧できた分だけ投下します

>>226 まさにそれでした


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風呂上り、タオルで髪を乾かしながらベリックからの手紙を開ける。

メインの話題は春の祝祭のことと、去年産まれた子羊が立派に大きくなったこと。

手紙の最後には先月に引き続きたまには顔を出せと書いてあった。

ユミル「幼馴染からの手紙か。マメだなそいつも」

横でサシャの手紙を読み返していたユミルが話しかけてきた。

僕より先に入ったから、もう髪は大体乾いている。解いているからかいつもより長く見えた。


ベルトルト「心配してるのかもね、ベリックは僕たちの中で一番年上だから。ライナーより一つ上で」

ユミル「前聞いたよ……どう思うんだろうな、自分を喰った奴が大事な幼馴染と暮らしてるってのは」

ベルトルト「女の子と住んでるのは書いたけど、まだ君だってことは知らせてないんだ。勝手に書いたらいけないと思って」

同棲の件を書いた翌月、彼からの返信にはそのことが多めに書かれていた。

内気な僕が女の子と同棲するようになったことに大分驚いていて、結婚はするのか、式には呼べよと結ばれていた。


ユミル「……いつかは知らせなきゃいけないんだろうな。このままベルトルさんと暮らすなら」

ベルトルト「……」

あの世界でベリックが喰われたのは仕方の無いことだったとは思う。

そうしなければ巨人化能力者は人に戻れなかったから、僕らも誰かを喰って人の姿をしていた。

ただ今の世界は違う。巨人なんてどこにもいないし、殺されても仕方の無い事情なんてない。

巨人のいない世界で、巨人に喰われた恐怖を憶えている彼は何を考えるだろう。


ユミル「返事、いつ頃出す?」

ベルトルト「三日ぐらい後……どうして?」

ユミル「そのベリックに手紙でも出そうかと……撥ねつけられるかもしれねぇが」

ベルトルト「……僕からも前の世界のことを書いておくよ。彼はほとんど何も知らないまま終わってしまったから」

ユミル「……巨人はいなくなった筈なのに、まだ色んなもんが残ってるな」

気丈な彼女が滅多に見せない悲しそうな表情をしている。

平和な世界で幸せに暮らしているはずなのに、僕達には時たまこうして影が差し掛かってきた。


ベルトルト「……僕もエレンと決着をつけなきゃいけないな」

ユミル「あいつは憶えてないかもしれないぞ?余分な傷作るだけだったら――」

ベルトルト「勿論それは怖いよ……それでも黙ったまま友達面してるのはよくないと思うんだ、お互い」

ユミル「いつ話すつもりなんだ」

ベルトルト「次会ったときにするよ。もしかしたら明日かもしれない」


ユミル「……ベルトルさん、強くなったな。思い出した時とは大違いだ」

ベルトルト「あの時は迷惑かけたね、ごめん」

ユミル「気が触れたかと思って冷や冷やしたよ……こんな傷跡まで作って」

ユミルが左腕の上のほう、線状の傷跡にそっと触れる。

一年前の夏の日、眠る寸前に僕の記憶は蘇った。

超大型巨人として沢山の命を奪ったことから、エレンに殺される間際まで鮮明に。

彼女は錯乱して自傷行為に走る僕を抱き締め、お前はもう巨人じゃない、巨人なんてどこにもいないと一晩中言い聞かせてくれた。

深く切りつけた腕は塞がるのに時間がかかって、まだ跡が残っている。


ベルトルト「血は蒸発しなかったし、傷もきれいには治らなかったね」

ユミル「当たり前だろ。巨人じゃないんだから」

傷跡から手を離したユミルが肩にもたれかかる。僕のほうから首を傾げて髪に頬ずりしても嫌がらない。

目の前にある三通の手紙を見ながら、二人で何も言わず寄り添っていた。


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ユミル「……今日はもう寝よう。難しいことは明日だ、今考えるとドツボにはまる」

肩が軽くなる。先に口を開いたのはユミルだった。

提案は逃避に近いものだったけど、今はそれ以上の解決策が見つかりそうにない。

ベルトルト「うん、そうするよ……このままだと徹夜しちゃいそうだ」

ユミル「それでいい。ベッド行くぞ」

ベルトルト「明かり消して戸締りしてくよ、先行ってて」

ユミル「ああ、頼んだ……早くな」

頭をポフポフ撫でて立ち上がり、一足先に二階の寝室へ向かっていく。

彼女は少し笑っていて、もう悲しそうな表情はしていなかった。

投下終了です、色々レスありがとうございます
暗い話してるのはもうこれきりで、後は解決に向かうつもりです
再開は明後日、エロありなので気をつけてください

>>225 知らなかった、ありがとうございます
ジャン「リア充爆発しろ」とかこれのおまけで書きたいです

つ、ついに開発トルトさんが...


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寝室に入るともうユミルは胸まで布団を被っていた。布団を捲って彼女のすぐ横に潜りこむ。

同棲を始めてから寝相も少しはましになってきて、近くで寝ている人に危害を加えることはなくなった。

未だにベッドから墜落したり遠くへ転がったりもするけど、彼女の横で目覚められる回数が増えてきた。

ベルトルト「ん、ユミルいい匂いする……」

ユミル「ベルトルさんもすんだろ、同じ石鹸使ってるんだから」

ベルトルト「でもなにか違うよ。君のほうがずっといい匂いだ」

ユミル「こら、くすぐったい……最近ますます犬じみてきてるんじゃないか」


首筋に顔を寄せても大して怒られなかったのをいいことに体に腕を回した。

ユミルも自由になっているほうの手で頭を撫でてくれる。

ユミル「今日はやけにくっつきたがるな、発情期?」

ベルトルト「そ、そんなのじゃ」

ユミル「春だもんなぁ。よしよし」

ベルトルト「……だから違うって……」

彼女とは色々してきたのに、直球のからかいには今でも弱い。

恥ずかしさで赤らむのが分かって顔を伏せると手の動きが止まった。

ユミル「……やっぱり私を煽るのが上手いよ、ベルトルさんは」

ベルトルト「え?」


肩に回した腕が退かされる。ユミルが起き上がって、僕を押し倒すような形で上に乗った。

片手はベッドにつかれ、もう一方の手は頭の横で指を絡めて手を繋いでいる。

膝は僕の脚の両側に置かれているものの胴はぴったり密着していて、押し付けらた胸がつぶれるように形を変えている。

訓練兵のときより少し大きくなったそれは、寝る前で下着を着けていないからかとても柔らかく感じた。

ユミル「恥ずかしがる時の顔好きだ。可愛い」

ベルトルト「あ、耳はっ」

耳元で囁いた後、咥えられて甘噛みされる。吐息が間近で聞こえて心拍数が跳ね上がる。


ユミル「心臓すごいな、くっついてるからよく聞こえる……ん」

呼吸を整える暇もなく、耳から離された唇が深く口づけてきた。

舌が絡むその間にも、ユミルの手は別のところに動いていく。

ベルトルト「んぅ、っ、ふぁ」

二人の隙間に入り込んだ手が胸をカリカリ引っかくように服越しに刺激している。

上着とインナー、二枚の布越しとはいえ彼女に「開発」されたそこは敏感に反応した。


ベルトルト「はぁっ、あ……」

ユミル「ふぅ……はは、もうこんなに硬くしてる。やっぱり発情期だったんだな」

ベルトルト「っ、君が色々触るから」

血液の集まったそこを脚の内側でさすられて腰が震えた。

口ごたえに反応したのか、ユミルは上半身を上げて僕を見下ろす。

怒ってはいない。どうやっていじめようかと愉しんでいる眼をしている。


ユミル「嫌なら今からでもやめるけど……どうする?」

ベルトルト「……い」

ユミル「聞こえないなー」

外のガス灯が弱く刺し込むだけの室内は薄暗いけど、彼女の顔も上気しているのが分かった。

服の膨らんだ所に触れるか触れないかのところで手を弄ぶように動かしている。

ベルトルト「……つ……続けて、ほしいです」

ユミル「うん、素直でいい子だ」

焦らすようなそれがもどかしくて、一刻も早く触ってほしいと思う。

ちゃんと口に出してねだると、胸の上に重みが戻った。手を繋ぎなおし、満足気な笑みを浮かべて撫でてくれる。

投下ここまでです。昨日は寝落ちしてしまいました、ごめんなさい

>>238 この話のベルトルトさんは開発済トルトさんです、ややこしくてすみません
この話終わった後に開発される話やるつもりです


一頻り撫でると、ユミルが上から退いて脇に座ったので僕も上半身を起こした。

ユミル「腕疲れてきた……ベルトルさん、起きようか」

疲労を飛ばすように手首を振っている彼女を後ろから抱きすくめる。

ベルトルト「体重かけないようにしてくれてたよね。ありがとう」

ユミル「ああ、別に苦しめるのが目的じゃないし」

ベルトルト「もう少し乗っても大丈夫だよ?僕大きいから」


ユミル「確かにでかいな。……こっちの方も」

悪戯っぽい笑い方をした顔をこちらに向けて、膨らんだままのそこにお尻を押し付ける。

ベルトルト「き、君はまたそういうことを……大きいっていうのは体格のことで、これは関係ない――」

ユミル「関係ないことないだろ、今してるんだから。……やりにくいから上脱がすぞ」

欲情していることを認識させられて、顔だけでなく体の内側全部が熱い。

それをよそにユミルが腕の中で体を反転させ、服に手をかけた。


普段着のシャツについているものと違って、木でできた大きめのボタンは少ない手間で外れる。

抱きすくめていた腕を解くと袖を抜いて寝巻きの上衣が取り払われた。

インナーは訓練服の下に着ていたものと同じ形で、首筋から鎖骨までが大きく開いているものだ。

ユミル「この前つけたのも薄くなってきたな、付け直さないと」

鎖骨の下に口付け、強く吸って痕をつける。できた鬱血痕を薄明かりで確認するのが分かった


そのまま鎖骨に歯を立て、甘噛みしながら問いかけられる。

ユミル「なあ、こっちも使っていい?」

ベルトルト「……そこは」

こっち、といいながら触れる先は臀部だった。

訓練兵の時に使えるようにされて以来、僕は幾度か道具を介して彼女に抱かれている。

ユミル「嫌?」

ベルトルト「……嫌じゃないけど、優しくしてほしい」


ユミル「激しいのは嫌いか?」

ベルトルト「あの、激しくされると足腰立たないし、次の日まで残るから……ごめん」

ユミル「……あー、そんなこともあった気がする」

同棲を始めて一月くらいの話だ。その日はお互い盛り上がってしまって、翌日まで腰がだるかった。

二人して休日をほとんどベッドで過ごした記憶がある。

ユミル「まぁ明日仕事だし仕方ないか、手加減してやるよ」

ベッドのヘッドボードにある引き出しから、平たくて円い缶が取り出される。

掌に収まるサイズのそれはクリーム状の潤滑剤だ。

投下ここまでです。エロ書くの遅いせいで焦らすようなマネになってごめんなさい
明日分でやっとベルトルトがどうにかなります


もたれかかるところが欲しくてヘッドボードに背を預けた。

ユミル「ベルトルさん、下も取るぞ」

返事を待たずウエスト部分を掴んで、下着とズボンを一まとめに脱がされる。

以前ユミルは僕の服を脱がせていくのが好きだと言っていたので、こういうことをするときに僕から脱ぐことはほぼ無かった。


ユミル「それじゃ触れないだろ、もっと脚開けって」

ベルトルト「あ……ごめんね……」

どうしても恥ずかしくて閉じがちになる両脚を、ユミルが入り込める程度に広げた。

晒された先端に既に透明な液が滲んでいるのを見たくなくて目を伏せる。

脚の間にいるユミルも何も言わないけど、はしたない様子を見取って口元が笑っている。


ユミル「慣らしてくから力抜いててくれ」

持っていた缶の蓋を軽く捻って開け、中のものを掬いとった。

白濁したクリームをたっぷり纏った指先が脚の間、一番奥に触れる。

小刻みな動きで塗りつけ、固いそこをほぐしはじめる。

撫でるような動きから徐々に第一関節の途中までを入れ、拡げていく。

ユミル「一本くらいならもう入るか?人差し指入れるぞ」

ベルトルト「ん、わかった」

僅かな抵抗感と共に第二関節までが差し入れられる。異物感はあるものの十分慣らされているから痛みは無い。

最初のうちは痛かったけれど、何度か使われるうちに彼女の細い指をすぐ受け入れるようになっていた。


ベルトルト「、は……」

ユミル「そうそう、深めに呼吸しとけ。もっと奥まで入れるから」

話しかけながらどんどん深くまで入れられる指が、内部をほぐしつつ探っている。

彼女のほうも慣れたもので反応する一点をすぐに見つけた。

ベルトルト「あ、ひう、ぁ」

わざと掠めるようにしていた指を止め、間接を曲げて圧迫される。

曲げた指の質量が腸壁に隔てられた前立腺を腹側に押した。

いきなり襲った強い刺激に、シーツを握る力が増す。


ユミル「柔らかくなってきたし、指増やすな」

ベルトルト「うんっ、ん、ひゃっ」

根元まで入っていたのが一息に引き抜かれて嬌声が漏れた。

缶に中指を突っ込んで、一本目の人差し指と同じくクリームを纏わせている。

二本をすり合わせるように動かしてよく絡ませ全体に広げた後、潤滑剤を追加して更に滑りのよくなった二本の指が入ってきた。

中で自由に動かせるくらいにはなっていたものの、指一本では拡がりきらずまだ狭かったところが押し拡げられる。

ベルトルト「ひぁっあっ、うぁ」

ユミル「……可愛いなぁ」

揃えて出し入れされたり、入れたままバラバラに動かしたりと緩急をつけて好き勝手に与えられる刺激に自然と腰が浮いた。

先端から先走りがトプ、と零れ落ちて後ろまで伝っていく。

体温で蕩けたクリームと混じって、指が動くたびにグチュグチュ音を立てている。

投下ここまでです。SSでも本編でもすごい勢いであだ名増えてますね。

あと
ベリック「信じて送り出した超大型幼馴染が年上女のM調教にドハマリして結婚まで考えてるなんて…」
ってタイトル思いついたんですけど使いようがないのでここで言わせてください

…なんだろう、男女の絡みなのに百合モノ読んでるような気分なのは…
いいと思います!!乙!

投下再開です
今回受トルト耐性ない方には気持ち悪いかもしれないので注意してください


ユミル「……もう我慢できないって感じだ」

ベルトルト「……ふっ、ぅ、ユミル……」

指を入れていない方の手が先走りを垂らす鈴口を抉るように弄り、裏筋を伝い落ちる雫を掬い上げる。

前へ触れている最中も中で指が蠢くのは止まらず、ユミルの両手を体液がベトベトに汚していく。

ヘッドボードに預けた背中がずり落ちる。絶え間なく感じる快感に姿勢が保てない。


ユミル「はは、中もトロトロ……ベルトルさん、奥触ってほしい?」

クリームがたっぷり入り込んでドロドロになったそこを鋏の形にした指が拡げている。

体の中を覗かれている羞恥と、これからされることへの期待で腰が疼いた。

ベルトルト「……ん……」

ユミル「わかった。……指じゃ届かないから、あれ使わないとな」

首を縦に振ったのを見とめたユミルがヘッドボードの引き出しを開け、棒状の玩具を取り出す。

僕のもたれかかっている所より右の位置にあるそこはこういった時使う物の収納場所だ。

弾力のある柔らかな材質でできたそれを後ろから抜いた指で満遍なく触り、潤滑剤を塗してゆく。

性器を象ったそれが彼女の手で白濁にまみれていくのがひどくいやらしく映った。


ユミル「これだけ慣らせてれば大丈夫だと思うけど、一応な……じゃ、挿入れてくぞ」

薄明かりの中でもヌラヌラてかるのがわかるほどヌメりを帯びた玩具の端が押し当てられ、ゆっくりと割り入ってくる。

ユミル「……腹の中進んでくの分かる?」

ベルトルト「……う、……ひ、ぐ!」

中程まできたくらいだろうか、ユミルが手を止め、僕の腹を触診するみたいに抑えながら聞く。

頷いた途端に深く突き入れられた。

順調に進む侵入が最奥に当たって止まったのを感じとったのか、抜き差しする動きに切り替わる。


ベルトルト「や、そこ、やだっ」

ユミル「やだ、ねぇ。散々よがっといて」

嘘をついたことを咎めるみたいに動かし方が激しいものになる。

玩具に刻まれた段差が中壁を刺激して、追い詰められる感覚が強まっていく。

ベルトルト「っ、ユミル、も、駄目……っ」

ユミル「イっていいぞ、手にかけてもいいから」

攻め立てる右手とは対照的に、優しい動作で暖かな左手が先端を覆う。

いつも頭を撫でるみたいに撫でられて、体が二度三度震えた。


ベルトルト「……はぁ……ふぁ……」

ユミル「いっぱい出したな……ほら、こんなにベタベタにして」

こちらに掌を広げ、出された精液を見せつけながら紙で手を拭いている。

彼女が受け止め切れなかった飛沫は僕自身の内股に飛び散っていた。


ユミル「ぽーっとするのもいいけどさ……そろそろ私のほうも構ってくれよ」

惚けた僕を抱き寄せて、熱を孕んだ声で耳打ちする。

近づいた髪と首筋からは石鹸に混じってうっすら汗の匂いがした。

投下終了です、こんなに長くエロやるつもりじゃなかった
開発編もこんな感じに受トルトですけど大丈夫でしょうか

>>273 個人的にユミベルは妙なおねショタ感があると思ってたんですが、百合ユミベルって素敵ですね


ユミル「……こっち、触って」

僕の手をとり、寝間着のショートパンツの内に導く。

湿り気を帯びた下着に宛がわれた手が分泌液で滑った。

ベルトルト「……すごいね、グチャグチャだ。冷静に見えてたけど、こんなに」

ユミル「……すぐさっきまでベルトルさん犯してたってのに、興奮してないわけないだろ」

ベルトルト「っ!」

玩具が挿入ったままなのを犯す、の言葉で実感する。

虚脱感がある間は気にならなかったものが違和感を訴えだした。


ベルトルト「ね、ユミル、これ……」

ユミル「まだだ……挿入れたまましてみようぜ?」

ベルトルト「~~~~!?」

抜いていいかな、と頼むのを遮られた。口端をサディスティックに歪めた顔に胸が締め付けられて息が上がる。

ユミルはもう玩具のことなんて忘れた様子で避妊具の用意に移っていた。

ユミル「硬いままだし、そのまんま使えそうだな……じっとしてろ」

封を破り、硬さを持ったままのそこへ被せる。服の脱ぎ着と同じく、これも彼女が支配していた。

下の衣服を脱ぎさったユミルが僕に背を向けて両脚を跨ぐ。

太股で挟まれて、互いの器官が密着している。


ベルトルト「……今日は後ろからするんだね」

勝手な言い分なんだけど、顔が見えにくい後ろからするのは寂しくてあまり好きじゃない。

いつもは膝の上に座って向き合う、所謂対面座位が大半だ。

結合する以外にも頭を撫でてもらったり、キスしたりができるから。

ユミル「そんなに寂しがるなよ……後ろって言ったって首ひねればキスできる距離だろ。ほら、チュー」

ベルトルト「……っ……は、んむっ」

ユミル「!……んぅ、くっ……はぁ」

冗談混じりで突き出された唇にすぐさま食いつく。

後ろを弄られている間は一切できなかったのを取り返すように夢中で舌を絡めた。


ユミル「っはぁ……なんだ、寂しがりが悪化してないか?」

ベルトルト「っ……そうかも」

胸の下に腕を通してユミルの体を抱える。

自分でもおかしく思うくらいに積極的なのを寂しさのせいにしたけど、僕は本当に発情期なのかもしれない。

ユミル「……もう挿入れてもいいぞ」

ベルトルト「うん、いれる……ね。痛かったら」

ユミル「分かってる、いいから」

許可を皮切りに入口へ侵入した。擦りつけていたお陰で粘りと潤いが増して、スムーズに入っていく。

ゴムの膜を隔てても温かい内襞が絡むのが感じとれた。

挿入しやすくするためにずり落ちていた背中を伸ばして深く座りなおす。


ベルトルト「後少しで全部だけど……大丈夫?痛くないかな」

初めて挿入れた時に比べれば格段に楽になったものの、いっぱいに拡がったそこを見ると心配になる。

これまで結合部を見ることが少なかったから尚更だ。

ユミル「っ……心配性だな、今までなんともなかっただろ」

ベルトルト「だって、こんなに拡がってる……」

ユミル「こっから赤ん坊だって出てくるってのに……いい、から、さっさと全部挿入れろ」

ベルトルト「……ん、わかった」


(……赤ちゃん……)

ユミルの言ったその単語が頭に残る。

これは本来子供をつくる為の行為だとか、ユミルは僕と結婚して子供を産んでくれるのかな、だとか。

最後まで挿入を進める間、そんな考えがずっと離れなかった。

今日の投下ここまでです、感想ありがとうございます

丁寧なエロパートだなぁ……ふぅ。


ユミル「おい、ベルトルさん……他事考えるなんざ余裕だな。他の女のことでも考えてたか?」

別のことに気をとられていたのを察したのか、少し不機嫌な声がした。

ベルトルト「違っ、あ、ユミル、それ止めっ……」

ユミル「……それとも男?あんたそっちも使えるもんなぁ」

最後まで入ったはずのそれを更に深く入れ込むように体重をかけられる。

何度も繰り返されて僕の体が沈むたび、奥に届いたままの玩具の持ち手がマットレスに押されて中を柔らかく突き上げる。

彼女の内側に侵入しているのに自分のほうが犯されているようで背徳的だった。


ベルトルト「っ、ごめんなさい、う、違う、からっ」

ユミル「はぁ、お仕置きだ……駄目だろ、こっちに集中してないと……っあ」

ユミルのほうも奥を自分で突く形になっていて、僕にお仕置きを施しながらも言葉の端々に快楽の色が混じっていた。

前後二箇所から来る快感と、彼女の姿にあてられて頭の中心がくらくらする。

目にじわじわ涙の膜が張っていくのだけがいやに冷静に分かる。


ユミル「ふぁ……お仕置き終わり、好きに動いていいぞ」

ベルトルト「っ……うん」

僕の声が泣き声混じりになってきたところで許してもらえた。

自分から腰を動かして突き上げる。動くたびに胴を抱きかかえている腕の上で柔らかな胸が跳ねた。


ベルトルト「服の中、手入れてもいい?」

ユミル「ぅ、すっ、好きにしろっていったろ……」

薄い生地の寝巻きの裾から右の手を入れ、膨らみに触れた。大きめだけど、僕の手も大きいからぎりぎり納まる。

フニフニした感触を楽しむうちに尖りはじめた先端を手のひらで撫でると、ビクリと震えて前かがみになった。

強めに抱き締め、うなじに唇を寄せる。

ユミル「あっ、息熱……ぅ」

ベルトルト「っ、ふぁ、ユミル……」

ユミル「ベルトルさんも、大分できあがってるな……もう一回、しよう」


ユミルが再びキスするためにこっちを向いた。

誘うように突き出された舌を吸って、互いの口腔や舌を舐めあうみたいに徐々に深く口づける。

ユミル「んっ、う……ふぅっ……!」

ベルトルト「……っ、あ、うっ……あっ」

舌の先を弱く噛まれて微かな痛みを覚えた直後、彼女の中が一際強くうねり締め付けた。

締め上げるような動きをする内襞の中で何度か痙攣し、絶頂を迎える。

引き出したそれに纏わる薄い膜には白濁が溜まっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

べとつく体を拭くためのタオルを寄越しながら尋ねられる。

ユミル「……で?結局なんで途中で黙ってたんだよ」

ベルトルト「え?」

ユミル「挿入れてるとき。痛くないか、ってうるさいくらい訊いてたくせに急に黙り込んだだろ?」

ベルトルト「ああ、あれ……赤ちゃんのこと考えてたんだ」


ユミル「赤ちゃん?……ゴムに穴が空いてたとかやめろよ」

ベルトルト「それは大丈夫だよ、そうじゃなくて……君は僕と結婚して、子供産んでくれるのかなぁって」

ユミル「……それ、プロポーズ?」

ベルトルト「……あっ……」

ユミル「色気無いな、やった後体拭きながらって」

事後でぼんやりしていたとはいえ迂闊だ。大切な言葉をこんな時に伝えてしまったなんて、情けなさすぎる。

ユミルも脚を拭いながらケラケラ笑っていた。


ベルトルト「ち、近いうち!近いうちにちゃんとしたのするから……今のは忘れてほしい」

ユミル「嫌だ。プロポーズ忘れろって、酷いこと言うなベルトルさん」

ベルトルト「……だってこんなのがプロポーズになるなんて」

ユミル「……二回目も受け取ってやるからさ。そう泣きそうな顔するな」

ベルトルト「……ありがとう……」

ユミル「いい台詞考えとけよ」

何の気なしに放たれた受け取ってやる、というのはもう成功だと思っていいのだろうか。

今日の投下終了です、感想ありがとうございます。
本当に嬉しいです

>>291 自分で書いててねちっこいな、と思ってたので丁寧って言ってもらえて嬉しいです

おつおつ
最近このスレの投下が終わるの見届けてから寝るのが日課になってる


ここのベルユミの関係性はいいなぁ

ユミルがベルトルト犯してる時間のが逆より長いっていう…


ユミル「……風呂入りなおしてくる」

ベルトルト「僕も後で入るよ。シーツ替えておくね」

ベッドに入ったときは太陽の匂いがしていたシーツは、汗や色々な体液ですっかり汚れてしまっている。

ユミル「なんなら一緒に入るか?洗ってやるぞ」

ベルトルト「……前それやって狭いって言ったのユミルだよ」

全体に部屋は広めの物件なのに、風呂場だけはそんなに大きくなくて二人で入るのは無理があった。

いちゃつくならまだしも、純粋に体を清める目的には不向きだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

浴槽に残しておいた湯は冷めていたけど、体のべとつきがなくなって快適だ。

汚れたシーツとタオルもついでに濯いできた。

ベルトルト「ふぅ、さっぱりした……布団あったかいなあ」

ユミル「お帰り。さ、今度こそ寝ちまおうぜ……疲れた」

シーツと同じ太陽の匂いがする布団の中はユミルの体温で暖まっていて、じわりと温もりが包み込む。

ベルトルト「早く寝ようって言ったのにあんなことしちゃったね」

ユミル「ベルトルさんが煽ったんだろー……」

他愛ない話をしているうちに、事後独特の疲労感に襲われる体に眠気が圧しかかる。

意識を淵に引き込まれるみたいに眠りについた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベルトルト「……朝?」

夜明けとほぼ同時に目が覚めた。

レム睡眠っていうんだったか、眠気を残さないタイミングで起きられたからすぐに頭が働きだす。

支度を始めるには早く、二度寝するには短い時刻で手持ち無沙汰だ。

ベルトルト(……あ、ベリックに手紙書こうかな。下書きくらいはできるだろうし)

まだぐっすり寝ているユミルを起こさないようにそっとベッドを抜け出す。

ベルトルト(寝顔可愛い……)

眠り込んでいる間は鋭い目が柔らかく閉じられていて、いつもよりあどけなく見える。

微妙に開かれた唇にひとつキスを落とし、部屋の隅にある小さな机に向かう。

春が来てから新調した空色の便箋四枚に長い長い話を何とか収めることができた。


(ベリック、君に聞いてほしい話があります。僕が一緒に住んでいる女の子と、前の世界の話です)

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(……これが、君がいなくなった後の顛末です。僕が言うのもなんですが、どうするかは君の意思で判断してほしいと思います)

彼がいなくなってから僕が死ぬまで、知りえたことは殆ど伝えられたはずだ。

今日の夜に清書して、ユミルの手紙ができたら同封して送ればいい。

ベルトルト(そろそろ着替えて、朝ごはん作って……遅番のはずだからユミル起こすのはもうちょっと待とうかな)

机の上に置いた腕時計は午前5時30分、正確に時間を刻んでいる。


前編終わり

未来編前編終わりです。
出てこなかった104期とかエレンと仲直りとかプロポーズ二回目を後編でやって、開発編行くつもりです。
長引いててすみません、後編は3時頃投下予定です

>>300 遅い時間の投下なのにありがとうございます、健康には気をつけてください
>>301 関係性いいですか、嬉しいです
>>302 ユミベルなのでどうしてもアレですね

・後編


腕時計が修理から帰ってきて三週間経つ。

四日前にベリックから送られてきた今月二回目の手紙には、前の世界での出来事への思いが真摯に綴られていた。

ユミルのことは悩んだものの許すつもりだ、今俺は生きているんだからとりあえず一度二人で会いに来い……

と述べた後の追伸には、"前も言ったが、式には呼べよ"とあった。


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町の中心に設置された時計台から、十二時の鐘が響き渡る。

石造りの建物を突き抜けて聞こえるその音が、ここの昼休み開始の合図だ。

ベルトルト(お昼の鐘だ。ご飯食べに行こうかな)


資料庫の整理に一段落つけて、廊下へ通じるドアを開けた先に彼は居た。

真ん中で分けた黒髪に、自由の翼のエンブレム。

ベルトルト「エ、レン」

エレン「よっ、また会ったな」

気安く片手を挙げて挨拶してくれているのに、緊張で口内が急速に渇く。

舌が貼り付いて上手くまわらない。最近めっきり流していなかった冷や汗が噴き出す。

これじゃまるで前の世界の僕だ。

エレン「お前、汗すごいぞ?この中暑かったのか?」

ベルトルト「いや、気にしないでくれ……」

次会ったときには過去に決着をつけると決意したくせに、いざエレンが目の前に来ると怖くてたまらない。


ベルトルト「…………」

エレン「? ほんとに大丈夫か?」

ベルトルト「あ、ああ……」

エレン「そっか、なら俺行くな。体調崩すなよ」

もたもたしているうちに背中が遠ざかっていくけど、この問題を先延ばしにするわけにはいかない。

ベルトルト「っ、エレン、待ってくれ!」

なんとしても呼び止めようとして、数年は出してなかったような大音量が出た。

体をビクリと跳ねさせてエレンが立ち止まる。

エレン「!! い、いきなり大声出すなよ。驚いただろ」

ベルトルト「ごめん。……今時間いいかな?話したい事があるんだ」

エレン「いいけど、そう長話はできないぞ?夕方には帰らないと兵長にどやされる」

ベルトルト「うん、昼休み中に終わらせる……屋上に行こうか。風が気持ちいいよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

石造りの分厚い柵に肘を置いて階下を見下ろすと、大通りを行き交う人々が良く見える。

あの日のシガンシナも破られるまではこうだったんだろう、なんて不吉な発想が浮かんだ。

四年間勤務してて、今まで一度も思ったこともないのに。

ベルトルト(――駄目だ、こんな弱気でどうする。決着つけるんだろ)

エレン「ベルトルト?すげぇ顔してんぞ……悪いところあるのか?」

ベルトルト「体調が悪いわけじゃないんだ……あ、そうそう報告書読んだよ。リヴァイ班の方達も元気でやってるんだね」

体調が悪くないなんて嘘だ。緊張がピークに達したのか吐き気までしてきた。

平静を装って、無難な話題を付け足す。少しは空気が良く、話しやすくなってほしい。

エレン「ああ、皆元気だよ。この前もペトラさんとオルオさんがさ――」

パッと顔つきが明るくなり、エレンの尊敬する調査兵団の先輩方の近況を知らされる。

年を追うごとに深まるリヴァイ班の方々の絆の深さ、見た目が一向に老けないリヴァイ兵長、ブロンドに白髪が交じりはじめたエルヴィン団長。

巨人が居ない世界でのハンジ分隊長は動物の飼育に熱心らしい。


エレン「……で、お前の用事は?調査兵団の話聞きたかったわけじゃないんだろ?」

さっきまで楽しげに話していたのに、ケロリと顔色を変えて核心に切り込んでくる。

場の雰囲気が和らいだかと油断したけど、目論見は外れていた。

腹を括って真剣に向き合うしか道は無いみたいだ。

ベルトルト「……巨人のいた世界のことだ……エレン、君はいつ思い出した?」

エレン「……二年前の今頃、シガンシナに帰省してた時」

ベルトルト「……僕や君みたいなのも含めて、この世界に巨人は一匹もいなくなった……それでもやっぱり巨人は憎いかい?」

エレン「正直、思い出した時はぶっ殺してやると思った……でもな、これ見ろ」

ベルトルト「ん?」

彼が財布から取り出したのは一枚の写真だった。エレンと、彼に瓜二つの女性が仲睦まじく写っている。

この人は。


ベルトルト「……お母さん、だね」

エレンの大切な家族。僕の蹴り壊した壁の破片で殺したも同然の人だ。

エレン「そうだ。俺の母さん……思い出して苦しんでたら隣にいてさ、抱き締めながら宥めてくれて」

「ガキのときにもあったんだ。怖い夢見たときはいつもそうしてくれた」

「その時とは違って、俺のほうが大きくて……母さんの中身は変わらないけど、いつの間にか小さくなってた」

「……で思ったんだ。隣に生きてる母さんがいる。いつまで元気で会えるか分からないのに巨人の幽霊憎んでる場合じゃないだろって」

写真を眺め、滔々と語る。大切な人が生きていることを喜ぶように目が細まっているの、彼は気づいているだろうか。

エレン「だから、今はお前達のこと殺すとか思ってねえよ……折角両方とも人間のまま友達になれたんだから――」

ベルトルト「君は、本当に友達でいてくれるのか?超大型巨人の脱け殻と」


エレン「……チッ」

ベルトルト「痛っ!」

肯定してくれた彼を試すような言動をしてしまった罰なのか、足首を鋭く蹴られた。

対人格闘が得意だっただけあって相当痛い。

エレン「超大型の脱け殻なんて、そんなやつとは友達にならねえ」

ベルトルト「……そうだね、やっぱり」

エレン「ベルトルトだろ、お前は。人間のベルトルト……そいつなら俺の友達だよ」

ベルトルト「……エレン……」

エレン「お前も俺たちのこと未だに「悪魔の末裔」とか思ってんのか?」

ベルトルト「ううん、思ってない。巨人も悪魔も、もういないよ」

投下終了です。未来編、連休中には終わらせたいです

「未来編」「開発編」って、火の鳥みたいな壮大さすら感じられてステキすぎるw
楽しみにしてます。

心臓と童貞と処女を立て続けに捧げちゃうベルトルさんか…胸熱


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベルトルト「フーッ……」

エレン「おい、落ちるなよ」

意気込んだ割に話し合いは呆気なく済んで、ため息と共に全身の力が抜ける。

柵に上半身を預け寄りかかると、隠れていた小さなカフェが見えた。

テラスに金髪の人が一人で座っている席がある……また来てるんだ。

ベルトルト「エレン、時間あるなら一緒にお昼ご飯食べようか。あそこのカフェで」

エレン「いいけどベルトルト、ああいう店好きなのか?……女向けじゃ」

白を基調にした小さく洒落た店構えに、豊富な観葉植物。

いかにも女性客が好みそうな清潔で可愛らしい佇まいだから、エレンが訝しむのも分かる。


ベルトルト「僕の趣味っていうより……ほら、テラス席の一番外側」

エレン「んー?……あ、なるほどな。行こうぜ」

エレンもよく知っている金髪を指すと合点がいったようで、僕より先に階段を降りていった。



ベルトルト「今日はどういう用事で来たの?」

エレン「兵団中の書類纏めて提出とか、そういう雑用……結婚した人がいるんだけどさ、書類いっぱい出さなきゃいけないんだな」

ベルトルト「そうだね……ふふ、君とミカサの書類が来るの楽しみだな」

エレン「ミカサみたいなこと言うなよ。昨日その話してからソワソワしてるんだ、まだ早いっていうのに」

資金とか、住む所とか……とモゴモゴ言っている様子を見るに、彼も結婚自体には乗り気なんだろう。

エレンが目線を外して耳を赤くするのは照れているときなんだ、とアルミンがいつか言っていた気がする。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カフェは昼時ということもあってそれなりに繁盛していた。

ここは先にカウンターで商品を受け取り、席を探す方式の店だ。

僕は卵、エレンはハムの挟んであるサンドイッチと飲み物を買って外へ出る。

テラス席の一番外側に一人で陣取る、金色の後頭部をつついて声をかけた。

ベルトルト「やあライナー。相席良いかな」

エレン「よう、久しぶり」

ライナー「……お前たちか。エレンは久しぶりだな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エレンはサンドイッチの一口目を咀嚼する間、ずっとライナーの腕のエンブレムを見ていた。

エレン「んぐ……お前ら二人とも意外なとこに就職したよな」

ベルトルト「うん、まさかライナーが駐屯兵なんて考えてもなかった」

ライナー「俺もだ。お前が腕貫着けた事務屋になるなんてなあ」

薔薇の紋章を背負ったライナーは、日々治安維持と町の修繕に励んでいる。

彼は人々と町を守る駐屯兵に、僕は兵団を支える総務部に入ったのは無意識の罪滅ぼしだろうか。


エレン「……な、ひょっとしてここってライナーの趣味か?」

ベルトルト「この席はライナーのお気に入りなんだよ。斜め向かいの雑貨屋にクリスタが勤めてるから」

そこの二階に住み込みで働いているクリスタは、勤め始めてすぐに評判の看板娘になった。

兵団を卒業してから一年間はユミルも一緒に住んでいたけど、僕が連れ出してしまったから今は一人だ。

ベルトルト(懐かしいな、クリスタよりユミルのほうが渋ったんだよね。一人にしておけないって)

最後には店主の老夫婦とクリスタ三人がかりで説得するのを僕がオロオロ見守るだけだった。

ベルトルト「今日も何か買ったの?」

ライナー「ああ、石鹸を……」

ベルトルト「君、二週間前に会ったときも石鹸買ってたじゃないか」

ライナー「……生活必需品だ、無くなったら困る」

ライナーはしょっちゅうあの店で買い物をする。

訓練兵のときに恋をした彼が、告白のタイミングを探り続けてどれだけ経つだろう。

通いつめて言葉と品物のやり取りだけなんて、ちょっと純情がすぎやしないか。

感想ありがとうございます、投下終了です。

>>318 開発編は壮大どころかアホっぽいノリのエロ予定です

>>320 大体そんな感じです、処女と引き換えの童貞卒業


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「ありがとうございましたー」

サンドイッチを包んでいた紙をクシャクシャに丸めて入り口のくず入れに捨てる。

ライナーはまだ雑貨店の入り口を見ていた。

ライナー「お前も何か買いに行ったらどうだ、ユミルの勤め先でもあるんだろ」

ベルトルト「いいよ。今何も切れてないし、第一今日ユミルは休みだ」

エレン「この辺住んでる知り合い多いんだな。お前らと、ユミルにクリスタ……」

ベルトルト「ジャンの勤め先もこの大通りにあるんだよ、端のほうの時計店。今度会いに行ってあげたら?」

エレン「えー、俺が行っても喜ばねぇだろアイツ」

ベルトルト「さあ、分からないよ」

ライナー「ハハ、同窓会が手軽でいいな」


「待て!」


和やかな空気を引き裂いて鋭い声が飛ぶ。

声の聞こえた右側へ顔を向けると、逃げる男とそれを追う黒い影。


エレン「今の声は……ミカサ!?どうした!」

ミカサ「エレン!そいつを捕まえて!強盗!」

エレン「わ、分かった!」

ライナー「ベルトルト、俺たちも行くぞ!」

ベルトルト「うん」

がむしゃらに走ってきた男が兵服を見てたじろぎ、少し速度を落とす。

前にはエレンとライナー、後ろにはミカサ。

急旋回して三名の兵士を辛うじて避けた泥棒は細い裏路地に逃げ込んだ……かと思うと転がり出てきた。

後ろにでんぐり返しする途中みたいな見覚えのある姿勢で気絶している。

ライナーに目をやると、彼も僕を見て口をパクパクさせていた。

アニ「……男三人もいるんだ、これくらい止めなよ」

ライナー「アニ……」

ミカサ「市民の方、協力感謝する……あ」

裏路地から出てきたのは想像通り、僕たちの幼馴染であるアニだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アルミン「ま、待ってぇ……」

エレン「アルミン、お前ら大変な目にあったな。先に帰ったかと思ってたぜ」

アルミン「ミカサが君を待って一緒に帰るっていうからさ……はぁ、疲れた」

ライナーが男へ手錠をかける頃、ヘロヘロになったアルミンが追いついてきた。

疾走するミカサを懸命に追いかけていたようだ。

まだ気絶している男を逃げないよう中心に置いて、奇妙な同窓会が始まる。

ライナー「すまん、情けないところ見せちまった」

ミカサ「気にしないで、市民を守るのは兵士全般の義務だから」

エレン「アニもこの辺に住んでるのか?」

ベルトルト「いや、二つ隣の町に住んでたはずだけど……」

アニ「今日は部屋を見に来たんだよ。引越しするから」

ベルトルト「引越し?」

アニは知り合いが多すぎるという理由でこの町を避けて、そこに部屋を借りていたはずだ。

彼女に言わせれば「同期はたまに会えば十分」らしい。


アニ「訓練所の職員が来て、トロスト区で対人格闘の教官やらないかって。ここからだったら送迎の馬車もつくみたい」

アルミン「へえ、高待遇じゃないか。キース教官の推薦?」

アニ「そ。悪くない条件だから、考えとくって言ったよ」

訓練所は今や一種の教育施設としての側面も持っている。

家庭教師や私立の学校はまだ高価で、貴族の子弟のためのものだ。

そこへいくと訓練所は無料ではなくなったものの格安で、少しだけど給金も出る。

さらに安定した職である各種兵団への就職も可能ということで、今でも多くの子供たちが入団する。

授業内容は座学が少し増えて、立体機動から巨人殺しの技術が大分削られた。


ライナー「おっかない教官だ、もう対人格闘はさぼれないな」

アニ「アンタもあの頃みたいに転がしてあげようか?」

ライナー「勘弁してくれ!……おいベルトルト、なんで嬉しそうなんだ?」

ベルトルト「ふふ、懐かしいなって」

アニをからかったライナーが足技を出すふりで脅かされる。幼い頃何回も見た光景に顔が綻んだ。

投下終了です、いつもお付き合いありがとうございます。
明日で何とか終わらせたいです

>>1
ヒャッハー!!ユミル様の続ききてた!!
プロポーズ仕切り直しと開発編を全裸待機。
できれば故郷訪問&ベリック再会編も…とワガママ言ってみる。


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ベルトルト「失礼します、お疲れ様です」

あの後目を醒ました男はライナーが引き取って詰め所に戻り、エレンたち三人は調査兵団の本部、アニは不動産屋へと各々解散した。

僕も支部へ帰って、資料庫の整理を終わらせたところだ。時計台に背を向けて大通りを下ってゆく。

ベルトルト(残業にならなくてよかったな……あ、あそこにいるのって……)

15mほど先にある乗り合い馬車の停留所に見知った顔があった。

こんなに立て続けに同期と会うなんて、何かの導きだったりして。

馬車を待つためのベンチに横から歩み寄ると、こちら側を見ていたサシャが先に気づく。

サシャ「ベルトルトじゃないですか!会うのは久しぶりですね」

コニー「お?おー、ベルトルト!元気してたか?」

ベルトルト「久しぶり。こんな時間まで街に居るのは珍しいね」


サシャ「ミーナの結婚式があるでしょう?その衣装なんかを買ったんですよ。去年のは知り合いに譲ってしまったので」

コニー「聞いてくれよ。俺はシャツ一枚買うだけなのにこいつすげー時間かかるんだぜ」

ベルトルト「女の子の買い物ってそういうものじゃないかな」

サシャ「ええ、ベルトルトが正しいです。女の子はそういうものです」

コニー「まじかよ、今度サニーと買い物行く約束してんだよな。あいつもそうなんかな……」

サシャ「妹さんもおそらくそうですよ、女の子ですもん」

味方を得たサシャが得意げに胸を張る。

膝の上にある紙袋に大きく印刷されたロゴマークはフォーマル衣装を売る店のものだ。

……不備があって直前で慌てて買いに行かないよう、帰ったら僕たちも手持ちの衣装を見直したほうがいいかもしれない。


コニー「そういやお前、あんだけ悩んで結局黄色のドレス買ったじゃねえか。赤っぽいのがいいって言ってたから一緒に探したのに」

サシャ「だってあれはシュッとしてて、食べたらお腹苦しくなりそうですもん。その点こっちはヒラヒラしてますからね」

コニー「お前そういうとこ芋女のまんまだよな……」

サシャ「食べるのが楽しくなくなったら人間お終いですよ。……ところで、ベルトルトの式はいつですか?」

ベルトルト「え?」

サシャ「え、って。同棲してましたよね?そろそろ結婚も視野に入るころかと……」

ベルトルト「……考えてるししたいけど、うんと先だと思う」

サシャ「そうなんですか?」


コニー「結婚ってややこしいもんな、村でも花嫁の家で遅くまで話し合いしてるぜ」

サシャ「言われてみればうちもそうですね。花婿さんは立派な獲物を狩るのに苦労してます」

本当に、したいと願うのは簡単だけどするまでは遠い。

資金だって沢山要るし、色々な話し合いも必要。その上僕はまだちゃんとしたプロポーズすらしていない。

ベルトルト「……」

コニー「おい、ベルトルト?元気出せよ、お前は獲物持ってかなくていいんだぞ?」

サシャ「そんなに落ち込まないでください……なんかすみません」

ベルトルト「いや、君たちのせいじゃないんだ。……あ、馬車来たね。じゃあまた」


思考の沼に落ちていくうちに、蹄の音が停留所目指してやってきた。

運賃を支払い、馬車の垂れ幕を捲り二人が乗り込む。郊外行きの馬車には、他の乗客はいないみたいだ。

コニー「またな。頑張れよ、お前らならいけるって!」

サシャ「ええ!楽しみにしてますね。花嫁さんのユミルはきっと綺麗ですよ」

ベルトルト「! ……ありがとう、またね」

走り出した馬車から投げかけられた最後の一言で、脳内の妄想が活発になる。

花嫁衣裳に身を包んだユミルなんて、絶対素敵に決まってる。それを現実にするために必要なことは何だ。

ベルトルト(決めた……今日、今日の夜にプロポーズしよう。ユミルも待ってくれてるんだから)

夕陽がどんどん落ちて、夜が迫っている。大通りの石畳に躓きそうになりながら、早足で家を目指した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベルトルト「ユミル、ただいま」

ユミル「っ、ベルトルさん、馬鹿!」

ドアを開けたところに居た彼女にいつものようにキスをすると、胸を押されて強引に剥がされる。

ベルトルト「どうしたの、一体?」

いつもの習慣を突き放された意味が分からず尋ねると、口から答えが返ってくるより先に小さな影が動いた。

クリスタ「お、お帰りなさいベルトルト……お邪魔してます」

ベルトルト「クリスタ?」

クリスタ「仕事の終わり頃に偶然会って、お喋りしてたらこんな時間まで……ごめんね」


長い睫毛を気まずそうに伏せた視線が僕たちの足元をうろついている。

いたたまれない雰囲気が流れる中、ユミルの手が僕へとのびてきた。

ユミル「いいんだよクリスタ。犬みたいに飛びついてくるこいつが悪い」

ベルトルト「い、痛い、ユミル痛いって!ごめんなさい」

クリスタ「ユミル、離してあげて!? 痛そうだよ?」

ユミル「しつけだよ、しつけ。こういうのも必要だ」

コニーが教官によくやられていたみたいに顔をぎりぎり掴まれている。持ち上げられてはないけど結構痛い。

指の間から見えた彼女の横顔は赤く染まっていて、この痛みには照れ隠しが多分に含まれているのが感じ取れた。

投下ここまで、感想ありがとうございます
連休で終わらせるとか言ったのにいいプロポーズが書けずに明日まで延びます、すみません
明日これの終わりと、いけたら開発編の最初を投下する予定です

>>338 幼馴染達と両家顔合わせ的な小ネタはあるんですが、ベリックがどうあがいても捏造なので投下見合わせてました
これ書いといて今更ですけども

やった!続ききてた!
ベルトルさん、あなたはやればできる子だとお姉さん信じてるよ!

>>346
二次創作なんてそんなもんですよ。
小ネタでもいいのでお願いします(土下座)
さ、三回回ってワンと鳴けば宜しいでしょうか?(チラッチラッ


ユミル「……今日はクリスタも夕飯を食ってく、文句ないな?」

ベルトルト「君の親友に文句なんてあるわけないよ。ゆっくりしてってね、クリスタ」

クリスタ「お世話になります。ユミル、お手伝いするよ」

ようやく離してもらえた頃には室内の雰囲気もくだけて穏やかになっていた。

今日の食事当番はユミルで、メニューは芋の入ったオムレツ。僕が帰ってくるまで焼かずに待っていてくれたらしい。

ユミルが調理をし、僕が食器を出している横でクリスタが布巾で食卓を清めている。

クリスタ「やっぱり二人のお家だと椅子も背が高いね……って来るたび毎回言ってる気がするけど」

ユミル「ごめんな、クリスタちゃんは足つかないもんなー。小さい椅子買っといてやろうか?」

クリスタ「ちょっとはつくよ!二人みたいにぺったりつかないだけ」

僕たちに合わせて買った家具は小柄な彼女には大きすぎて、遊びに来るたび使いづらそうにしている。

小さい子扱いでからかうユミルとむくれるクリスタは仲のよい姉妹みたいだ。

たまに遊びに来るライナーやアニは、ユミルから見たら僕の兄妹に見えているんだろうか。そうだったら嬉しい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

食事の跡を片付けたテーブルでお茶を飲みながら、会話に花が咲いていた。

僕も今日会った同期たちのことを語ったところ、クリスタが自分も二週間ぶりにライナーに会ったと話し出した。

クリスタ「……でね、ライナーって綺麗好きなんだよ。いつも石鹸やブラシを買ってくれるの。お家もピカピカなんだろうね」

ユミル「あいつお前に会いたいだけだろ。いいか、何かされそうになったら叫ぶんだぞ」

クリスタ「ライナーはそんなことしないってば。頼れるいい人だって知ってるでしょ」

変わらない彼の不審者扱いに足をゆらゆらさせながらクリスタが膨れる。

よかったねライナー、なかなか好印象だよ。って、今度会ったときに教えてあげようかな。


クリスタ「そういえばこの前ね……わっ、もうこんな時間!ごめんね」

僕の方へ更に話を回しかけたときに壁の時計が目に入ったらしく、大きな目を丸くして驚いている。

振り返ると時計は21時を指していた。夕飯を食べ終わったのが19時だったから、二時間喋り通しだったわけか。

クリスタ「私そろそろ帰るね。長いことお邪魔しました」

ユミル「待てよ、お前一人で帰るんじゃ危ないだろ。ベルトルさん、私クリスタ送ってくるから」

ベルトルト「僕も行く、女の子だけで夜道歩くなんていけないよ」

クリスタの肩を抱いて出て行こうとするユミルを慌てて捕まえる。

荒れた人の居る酒場なんかは中心部に行かないとないけど、ガス灯しかない暗い道では何と出くわすか分からない。

そんな中に二人だけで送り出せるほど能天気ではないつもりだ。


クリスタ「気をつけて帰ってね、おやすみなさい」

ユミル「お休み、また明日な」

雑貨店の二階までクリスタを無事送り届けた。

窓から大きく手を振る彼女へ二人で手を振り返しながら、大通りを逆戻りしていく。

こんな時間になると大通りにあるような店は全部閉まっていて、表に出ているのは僕たちだけ。

ベルトルト「……手、繋ごうか。今なら誰も見ないよ」

ユミル「そうだな。たまにはこういうのもいい」

繋いだ手の指を絡めて、普段は歩かないような道の真ん中なんて歩いてみたりした。

この繋ぎ方に慣れて、自分からできるようになったのはいつだっただろう。


三階建てアパートの角で曲がって一本裏に入った。僕らの家に続く緩い坂道をガス灯の黄色い光が照らしている。

路上にはまるで人気が無く、世界で二人きりになったみたいだ。

手を繋いで、ここには二人きり。話を決めるなら今だ、と頭の隅で感じ取る。

ベルトルト「……少しいいかな」

手を体側へ引き、止まってもらう。強張った咽喉から出た声もやはり強張っていた。

これからいう言葉を彼女は受け取ってくれる、と分かっていても緊張する。

ユミル「どうした」

僕の様子から察したのか、それきり言って急かすでもなくずっと見つめている。

静か過ぎるこの場所のせいで、触れ合っている手から伝わる脈動まで鮮明に分かった。


ベルトルト「……ん……」

深呼吸を一回、唾液を飲み込んで咽喉を湿らせ、ユミルを見据えて宣言する。

ベルトルト「……ユミル、僕と結婚してほしい。これからもずっと、一緒にいてくれないか」

ユミル「……ああ、いいよ。一緒にいよう」

穏やかな表情と声音。即答と言っていいほどの速さで返された返事。

当然のごとく受け入れられ、胸が一杯になるのを感じて抱きしめると彼女も抱き返してくれる。

誰も居ないのをいいことに心臓と体温が落ち着くまでそのままにしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

坂道を登っていく間、僕らは取りとめも無く話し続けた。

プロポーズ中の緊迫感が吹き飛んでしまったみたいにやりとりは気軽だ。

手はずっと繋いだまま、二人の間で揺れている。

ユミル「しかし、ほんとに私でいいのか?後悔するなよ」

ベルトルト「告白したとき言ったよ、君じゃなきゃ駄目なんだって」

ユミル「ベルトルさんよりうんと年上だし」

ベルトルト「知ってるよ」


ユミル「沢山いじめるぞ」

ベルトルト「お願いします」

ユミル「ははは……変態」

ベルトルト「それはお互い様だと思うな」

目を合わせ笑いあう。もうすぐ坂道が終わって、家の玄関が見えてくるころだ。


ユミル「明日から資金貯めるか、何しろ結婚には金がかかる」

ベルトルト「うん。お金貯めて、式挙げて……いつかは家も買いたいね。君と、子供と暮らせるくらいの家」

ユミル「持ち家に子供か、夢があるな」

ベルトルト「夢のある話ならいくらでもできるし、したいことも山ほどあるよ」

だって世界はこんなにも平和で幸せになったんだから。


ベルトルト「一周後の幸せな世界」 終

未来の話終わりです。3時くらいに開発編の最初だけ投下予定です

>>349-350 気を遣わせてしまってすみません、朝になって>>346での誘い受けに気づいて後悔しました
開発編終わったら小ネタ投下します

寝オチしました、本当にすみません
投下再開です


ユミル「こいつをケツにブチ込む」ベルトルト「ちょっと待って」

※男側の受描写多数

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水玉模様の本体、ファスナーの取っ手にボンボンがついた大き目でシンプルながら可愛らしいポーチ。

それの口からは形容しがたくえげつない物が出てきて、ベッドシーツの上に置かれていく。

ユミル「いっぱい時間取ったから、楽しもうな」

ベルトルト「……優しくしてね……」

現在僕らは初めてのデートで入った連れ込み宿にいて、目の前のユミルは僕を抱くための道具をいい笑顔で準備していた。

早くもふらつきはじめた頭が勝手に回りだす。発端は何だったかな。確かあの日、いつもの空き教室で――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユミル「今更だけど、ベルトルさんって童貞だったよな?」

行為の後、膝の上に横向きで座っていたユミルが問いかける。

彼女とは何度か体の接触をもったのに、体の中に侵入することは未だなかった。

あれだけのことをしておいて経験無しっていうのも変わった話だ。

ベルトルト「……そうだけど」

ユミル「じゃあ、犬らしく尻尾つけてみようか」

そう言うと立ち上がり、備品棚の上に置いていた水玉模様のポーチを降ろす。

ポーチの口から出した手にはフサフサした毛並みのつくりものの尻尾が握られていた。毛色は僕の髪と同じ黒い色。

……僕が童貞なのと、犬の尻尾をつけることの関連が見出せない。


ベルトルト「じゃあってどういうこと?ぬいぐるみの尻尾つけるのになにか関係が……」

ユミル「こうしたら分かるか?」

ベルトルト「え?……っ、あの、ユミル……それ、なんでそんな形して」

ユミルが尻尾の根元を握っていた掌をずらしていくと、男性器を模したものが現れる。

なんだってそんな邪悪な造形をしているのだろうか。

ただの装飾用なら服にでもつければいいけども、これは体に挿入れて使うものだ。

ユミル「最初のデートで言っただろ、私に挿入れる前にベルトルさんの後ろのはじめてもらうって」


ベルトルト「そういえば言ってたね……それ使うんだ?」

ユミル「生えてればそっちでやったけど、生憎無いもんで。それに可愛いと思うんだ、犬尻尾着きのベルトルさん」

ベルトルト「それも首輪みたいにわざわざ買ってきたの?」

ユミル「元々首輪とセットになってたんだよ。毛色も丁度いいだろ?」

愛犬を可愛がるみたいに撫でながら、半透明で薄桃色をしたそれを頬にぐりぐり押し当てくる。

妙な弾力と柔らかさを兼ね備えた感触が生々しく不気味だ。

尻尾の方ならまだしも、男性器を口の近くに持ってこられるのはあまり歓迎できない。

投下ここまでです。時間軸は訓練兵時代なので前の話と前後してます

ジャン「これは俺からのサービスだ!持ってけ!」
つ【結婚首輪】

おめでとう乙!みんなに幸せになるといいよ…!


ベルトルト「待って、待ってユミル」

ユミル「ん?」

ベルトルト「そんなに大きいの、絶対挿入らないよ」

喋っている口に入れられそうになるのをかわしながらなんとか抗議した。

毛色は丁度いいかもしれないけど、初めてなのに挿入部が大きすぎる。

「本物」の一般的なサイズか、少し大きいくらいはあるんじゃないだろうか。

そんなもの挿入りそうもないし、仮にできたとして無事でいられるとも思えなかった。

だってユミルがしきりに撫でているそこは挿入れるための器官ではないじゃないか。


ユミル「大丈夫、指から順番に慣らしてってやるから。いきなりなんて乱暴はしない」

器具を離した細い指先で唇をつつかれる。

彼女の手や指先は大好きなんだけど、自分の内側に入ってくるとなると全く想像できない。

ユミルが黙りこくる僕の首に腕を回し、耳に軽く口付ける。

ユミル「……私にベルトルさん抱かせてよ」

処女と引き換えに童貞卒業させてやるから、と蠱惑的に囁かれた提案に顔が紅潮した。

ベルトルト「…………」

首を縦に振り肯定を表しても返事はされず、こちらを見る目の鋭さは変わらない。

今望まれているのはきっと、言葉での服従だ。


ベルトルト「……分かった、君に任せるよ」

ユミル「なーんか上からだな。もうちょっといい言い方できるだろ?賢いんだから」

言い方が悪くて、頬と顎の境目を平手でペチペチはたかれた。

彼女はこう言えと台詞の指示をすることはない。僕が自分で考えて、満足させる言葉を言わなければいけない。

ベルトルト「……ユミルに、その……僕のこと、抱いてほしいです」

ユミル「……うん、それでいい。よくできたな」

自分から強請る恥ずかしさにはまだ慣れない。

耳に口を近づけ、聞こえるか聞こえないかの声でやっと絞り出す。

それでもちゃんとできていたらしくて顎の下を撫でて褒めてもらえた。


ユミル「早速明日からやってみるか」

ベルトルト「いきなり明日?」

ユミル「決めたなら早いほうがいい。とりあえず二本まで、我慢できたらご褒美やるから頑張れ」

ベルトルト「初めから二本も!? 無理だよ」

ユミル「指の一本くらいなら医者でも挿れることあるって聞くし……最初はどうしたって辛いだろうけど」

ベルトルト「うう……」

ユミル「時間かけて慣れてくれば平気だって。やり続けて拳が入るくらいになった奴もいるっていうしな」

ベルトルト「こ、拳?それ死んじゃうんじゃないか……?」

ユミル「……そこまでやるつもりはないから安心していい。ド変態じゃあるまいし、普通の範囲でやるだけだ」

おぞましい想像をして血の気が引いた。一転冷たくなった顔面を冷や汗が流れ落ちる。

ユミルにも伝わったのか優しくフォローしてくれたけど、この行為の普通の範囲ってどこまでだろう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユミル「そろそろ消灯直前だろうし帰らなきゃな」

ベルトルト「……うん」

時間を超過してまで何をしていたのか詮索されないよう、お互い消灯時間には部屋にいることにしている。

放置してあった玩具をユミルがポーチにしまっていく。

薄桃色の根元から入れ、フサフサの尻尾がそれを覆い隠す。

最後にファスナーを閉めれば、もうすっかり普通の女の子の持ち物になった。

ユミル「……それじゃ、明日また同じ時間にここで」

彼女が針金を器用に動かして資料室の鍵を閉めるのをぼんやり見ていた。

その日はどうやって宿舎に帰ったか憶えていない。

いつものように途中まで一緒に帰ったんだろうけど、道中の記憶がさっぱりだ。

気づいたら部屋のベッドに寝ていて、アルミンが灯りを消すよと皆に言っていた。

投下ここまでです

>>368-369 ジャンの勤め先が怪しいお店みたいになってて吹きました

最初から普通の範囲を越えてると思うの

先生!この話でのベルトルさんは尻以外ではどの辺まで開発済みですか!?
気になって働けません!(`ロ´;)ゞ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日の夜、入室して間もなく仰向けに押し倒された。

座った姿勢で、完全に気が緩んでいたとはいえ身長も体重も差があるのにあっという間のことだった。

やはりユミルも普段の訓練では本気を出し切っていないのだと思う。

まるでこれから無理矢理乱暴されるみたいに、馬乗りになった彼女に組み敷かれ両手首を押さえつけられている。


ユミル「ベルトルさん、今日何するか分かってるよな」

ベルトルト「……う、うん」

ユミル「じゃ、やろっか」

覆いかぶさってくるユミルは鋭い捕食者の目をしていた。笑みをつくる口から覗く犬歯に噛みつかれそうでドキドキする。

彼女は僕を抱きたいと言って、今からするのはその下準備だ。

これからすることについて全く何も知らないわけじゃない、体の何処をどうやって使うのか位は把握している。

それを思うと若干の抵抗はあるものの、昨日自分の意思でこれを了承し、あんなふうに強請ったんだから今更反故にするつもりはない。

ベルトルト「……うん。そうだね、しよう」

ユミル「……へぇ、随分あっさりだな。もっと抵抗するかと思った」

ベルトルト「もしかして、それでこんなことを? 逃げないから安心してよ」


笑ってみせると、両手の拘束が緩んで外れた。上体を起こし、僕の腿に座ったユミルは早速ベルトの金具を外している。

上着から小物に至るまで、最中の衣服の脱ぎ着は全て彼女が支配していた。

ベルトルト(……あ、あれ出しておかないと)

自由になった右手で上着の内ポケットを探り、出しそびれていたものを掴んで差し出す。

ベルトルト「ユミル、これ……」

ユミル「ん?……ああ、首輪。脱がせる前にそっち着けとくか」

ズボンの前をくつろげている途中のままにして、首輪装着のために頭のほうまで歩いてくる。

散歩に出かけた夜から、二人きりで逢うときにはいつも持ってくるようにしている。

いつだったか、ユミルがそれについて「よく躾けられてる」と嬉しそうにしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あまり長くない鎖が僕の首からユミルの手元までで柔らかな弧を描いている。

衣服を取り払った両脚の間に座る彼女は、横に置いていた例のポーチから茶褐色の小瓶を出し蓋を回していた。

瓶の中身は傷口の保護・保湿を目的にした軟膏だ。訓練中に擦り傷など作った人が良く使っている。

ユミル「なあ、見えるか?……今からこれが挿入るんだぞ」

僕の太腿に左手を掛けてこちらに身を乗り出し、乳白色をたっぷり纏わせた右の人差し指を見せ付けてくる。

はじめてここで逢った日に蜂蜜を舐めたことを仄かに思い出したけど、匂いも味も濃密だった蜂蜜とは違ってこっちは無味無臭だ。


ユミル「触るから、深呼吸して力抜いてろよ」

ベルトルト「……分、かった」

指先が後ろに触れ、軟膏を塗りこめていく。体温で融けてじわりと広がるのがわかる。

ゆっくり深く息をすることに集中して、羞恥と緊張で固くなる体から力を抜く。

ベルトルト「、あ」

次第に塗りこむ場所が内側にずれ、内壁へも僅かに触れ始めた。滑りにまかせて、指の入り幅が往復する度に増えていく。

ほんの先端だったのが、関節部分の引っ掛かりを感じるまでに深くなっていた。

考えていたよりも易々と侵入を許す体に驚きを覚える。

ベルトルト「っ、こんな、すぐ入って……」

ユミル「一本ならこんなもんだろ。……このまま根元までいけちゃいそうだな」

思案の後、一旦止めた往復を再び少しずつ進められた。固い関節を超え、根元まで末広がりに太くなっていく。

指一本とはいえ全て入る頃にはそれなりの異物感があって、腰の奥が苦しい。

投下ここまでです、昨日できなくてすみませんでした
後ろ開発される人書くの難しいので投下量少なめです

>>379 そういえばそうでしたね
>>382 前回ラストで額とか肩をされた以上のことはないと思ってます

余談ですが、調べたら乳首開発された男性は薄毛、抜け毛の軽減や汗かきの改善などが見られるらしいです

>>393
髪の毛が?


ユミル「次、中指足すな」

人差し指を一旦引き抜き、中指と揃えて再び宛がう。

二本の指先が侵入を試みるが、太さの増えた分だけ押し拡げられる径も大きくなっていた。

ベルトルト「、痛……っ」

ユミル「……ゆっくり拡げてくか」

痛みを訴えると挿入が浅いところで止まる。

ユミルは我慢強く潤滑剤を足して塗りこめ、一本目と同様に入れる深さを増していく。

ベルトルト「……っ、ん」

ユミル「あと少しだ、深呼吸してろ……これ挿入ったらご褒美あるから頑張れよ」

浅い呼吸を繰り返す僕と目を合わせ、片方だけ立っている膝を撫でて意味ありげに「ご褒美」を仄めかす。

撫でられると気分が落ち着き、体が弛緩した。そのおかげか挿入が少しスムーズになり、指の叉で侵入が止まる。


入りきった二本指はそのままじっと留まっていた。痛みは無いけど圧迫感が強い。

腹の血管がドクドクしているのがやけにはっきり分かった。

ベルトルト「……もう動かさないの?」

ユミル「動かすが、最初から大きくはしない。慣れさすのが先だ」

根元まで咥えこませたまま、可動域を広げるためか小刻みに上下させていた。

内部の神経というのは敏感で、小さくゆっくりとした動きも如実に分かる。

ユミル「うん……段々よくなってきた」

よくまわった潤滑剤と体の慣れで上下運動が大きくなり、たまに指を回転させて拡げる。

入念に解していくと次第に動ける範囲が増えてきたらしく、その場だけで動いていたのが往復運動に切り替わった。

緩慢な動きでずるずると腹の内側を這っていく。これまでに無い異質な刺激を受けて、背中が粟立ち悪寒が走る。


ベルトルト「ユミ、ル、っなにこれ」

ユミル「内臓弄くってるわけだからな……最初は気持ち悪いかもしれないけど、後々気持ちよくしてやる」

ベルトルト「……内臓って、ユミル、怖い きもちわるい」

半ばまで引き抜かれ、また入れられる。体内を動き回る強烈な異物感にうわごとが零れ出る。

ベルトルト「っ、ぐ……う、」

ユミル「ごめんな、気持ちいいとこ見つかるまでもうちょっと我慢してくれ」

抜き出されては探るように様々に角度を変えて差し込まれ苦しさが募る。

繰り返す中で指がある一点に当たった途端、そこからじわりとした感覚が生まれた。


ベルトルト「、今の」

ユミル「……ここ、気持ちよかったのか?」

ベルトルト「そう、だと思う……っ、あ」

つつくように、短めの感覚で連続して緩く触られる。

ユミルは指先がそこに触れると体が震えるのを見て取り会心の笑みを見せた。

力加減を強め、腹側に押し込むように指を操る。反応を返す度、教え込むように鎖が引かれた。

ベルトルト「ふ、うぁ……っ」

ユミル「……初めてでこれなら素質あるかもな、ベルトルさん」

内部を進んでいく指にはまだ慣れないものの、さっきの箇所を押され、関節が挿入口を擦ると快感を感じて背中が反る。

ユミルが見てぽつりと感想を漏らしたそこは、触れてもいないのに勃ち上がっていた。


ユミル「……こっちはここまでだ」

ベルトルト「……え……?」

体は昂ぶっているままなのに指が抜きとられて、思わず未練がましい声が出る。

最後までされると思っていたけど、それはあの尻尾を使うまでとっておくつもりだろうか。

ユミル「起きられるか?約束のご褒美やるよ」

ベルトルト「…………うん」

消化不良の行為で体中の熱を持て余しているし、後ろには未だに違和感が居座っていた。

触れられ続けた内側は未だに痺れていて、体を造り変えられてしまったような感覚だ。

投下ここまでです、5時って夜じゃなくて朝ですね

>>394-395 容赦ない生え際いじりがベルトルトを襲う!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユミルが部屋の隅から椅子を出してくる。

ユミル「脚開いて、ここ座っとけ」

違和感を憶えっぱなしの腰とがくがくする足を引きずり、椅子まで向かった。

脚の間で膝をついたユミルが口端を吊り上げた扇情的な表情で見上げてくる。

ユミル「……頑張ったご褒美に口でしてやるよ」

ベルトルト「えっ……あ!?」

言うが早いか先端に口付け、舌で触れた。そのまま内に含むと、全体の半ばまで咥えこんでゆく。

歯が当たらないようにと目一杯開かれた口の中で舌が動き回っている。

口に入っていない部分には手を添えて扱いていた。


ベルトルト「く、ふぅ、っ……あ、は……」

ユミル「はぁ……顎疲れるな……んむ」

ベルトルト「ひゃっ、う」

ぽってりと開いた唇に唾液とも先走りともつかない液体が糸を引いていた。

素早く息継ぎを終えたユミルは今度は咥えこむことはせず、側面や裏側を舐めしゃぶりはじめた。

零れてくる先走りを啜る時、髪が口へ入らないよう折々手で除ける様子がいやに艶っぽい。

ベルトルト「はぁっ、あ、う……ぁ」

一通り弄りきると再び口内へ入れ、口をすぼめ動きを一層激しくさせて唇と口内で擦る。

擬似的な挿入に見える行為は触覚は勿論、視覚からの刺激も強くて射精感が一気に高まった。


ベルトルト「も、出ちゃうから、離れてユミル」

ユミル「はへお」

ベルトルト「しゃべったら……ほんと、駄目だってば!離して……! っ!」

声の響くほんの少しの振動ですら直に伝わる。

このままじゃ口に出してしまうと頭を持って退かそうとしたら軽く歯を立てて阻止された。

先のほうだけを口内に収め、わざと大きく音を立てて舐めたり吸ったりして弄ばれる。

ベルトルト「あ、っあ、すごっ、こんなのっ……!」

先端の割れ目を舌先で抉られ、吸い上げられて限界を迎える。

ユミルは目を閉じ、口の中でビクビクと震えながら送り出された精液を一滴も零れることなく受け止めている。



ユミル「……なあ、これ」

ベルトルト「……?」

全て出終わるとユミルが立ち上がり、僕の肩に手を掛けて目線を同じにした。

よく見えるように大きく開けてみせた口内は精液で汚れている。

白濁色の粘つきが口中にぶちまけられていて、舌の上には特に多く溜まっていた。

ベルトルト「あっ、ご、ごめんね……っん……!?」

深く口付けられ、蹂躙するように舌が動く内に唾液と混じりあったそれが流しこまれていく。

逃げないようにと背中に手がまわり、しっかり抱き締められている。

ベルトルト「……うえ……」

腕が解け唇が離れた後も、ユミルは僕の口端に親指を入れて中をまじまじと見ていた。

口移しされた精液は舌に絡みついて生臭いし苦いし、少ししょっぱい。変な匂いと味がする。

ヌルヌルした感触が気持ち悪い。


ユミル「それ飲め」

ベルトルト「……!」

簡潔に、強く命令された。端に引っ掛けていた親指を外し、顎に手を添え、口を閉じられる。

合わさっていた目線ともう片方の手は喉に移り、飲み下す動きを待っている。

ユミル「…………んっ……」

口中に充満する独特の味に流石に躊躇いはあったものの、なんとか生温くてドロドロのそれを飲みこんだ。

食道を通り、胃に落ちていくのがはっきり分かる。青臭さが鼻に抜けて残滓が喉にひっかかる。

再び口を開けさせて全部飲んだことを確認したユミルは鎖を引き、頭を撫でた。

ユミル「いい子だ。……今度の休日、続きしような」

ベルトルト「……うん」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベルトルト(……こんな感じだったなあ)

真昼間から連れ込み宿に入ることになった顛末がありありと思い出せた。走馬灯にも似ているかもしれない。

ユミルは変わらず器具だの潤滑剤だのを用意して楽しそうだ。

待機、感想ありがとうございます。投下ここまでです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 22:11:42   ID: 9OfcGd3_

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