アニ「魔法書なんてこりごりだ」(112)
※キャラ崩壊、ベルアニです。よくある猫化です。昼休み更新です。
…訓練兵時代。休日とある森の中。
アニ(……)ペラペラ
アニ(……)ペラペラ
アニ(……)パタン
アニ「……はぁ」
アニ(朝から何読んでるんだろ、私)
アニ(2日の連休、かといって外の調査する計画もたててなかったから)
アニ(資料室の本に何かないかと探ってたら、やたら古びた書物があるから借りてきたけど)
アニ(そもそも、資料室の担当はアイツ。今のところ何もないって言ってたけど)
アニ(これだけ古びた書物なんだ、何かあるかもしれないし見逃したのかもと思ったのに)
アニ(何で……中はファンタジーな小説なの。少女が猫に変身してしまって行方不明になるとか)
アニ(巨人ならともかく猫なんてあり得ない)
アニ(……)
アニ(最後のページについてた、これ)ペラッ
『この紙の魔法陣にあなたの血を一滴垂らしてください。不思議な世界にご招待いたします』
アニ(不思議な世界ねぇ。この退屈な世界から出られるってなら、案内してもらおうじゃないの)ピッ、ポタッ
カッ!!
アニ「けほっ、けほっ」
アニ(何……何が起きた? 紙から一瞬光が発したけれど)
アニ(血液による科学反応? なるほど、失われた過去の技術か。試す人がいなくて検閲に引っかからなかったのか)
アニ(あれ……さっきの紙、消えた? ってか本がやけに大きく…………!?)
アニ(私の、服? え、だって、私はここに)
アニ「にゃー?(どういうこと?)」
アニ「」
アニ(……)
アニ「にゃー(あー)」
アニ(……)
アニ「にゃ、にゃうー(ちょ、ちょっと)」
アニ(……)
アニ「ニャァァアア!!(嘘でしょぉお!!)」
アニ(ちょ、さっきの本! 全部読んだけど、何か見落とした!?)
アニ(うう、ページめくりにくい……なにこの手、本気で猫なの、肉球とかあり得ない)
アニ(戻り方とか、えっと……)
アニ(……待って。この話がそうだとしたら)
アニ(いやいやいやいや、あり得ないから。きっとどっかに書いてあるから)
…1時間後、昼過ぎ。
アニ(……疲れた。お腹空いた)
アニ(何か食べたい……けど、ゴミあさりはしたくないね)
アニ(仕方ない……食堂で誰かに恵んで貰うしか。クリスタあたりなら何かくれるだろう)ヒョィ
アニ(お、動くのは問題ないね。何かあれば逃げることはできるか)
アニ「……」チラッ
→アニの服と本
アニ(……大丈夫、ここには誰も来ない。問題は、私が元に戻った時だけど)
アニ(本の通りなら……うう、考えたくない)
…食堂。
アニ(良かった、まだ人がいる。クリスタは……)
「……私のパンを狙おうとは、不届き者ですね」
アニ「にゃ?(は?)」
サシャ「捕まえました!!」ガシッ
アニ「にゃ、にゃにゃ!(うわっ、サシャ止めて!)」
ユミル「なんだその猫」
サシャ「私のパンを狙ってたんです。私にはわかります!」
アニ「ニャー!(お願い、おろして!)」
ユミル「図星みてぇだな。反抗しやがって」プニプニ
アニ「ニャ!(下ろせ!)」
ユミル「おお、いい肉球だ。どっかの飼い猫か?」プニプニ
クリスタ「どうしたの? その子」
アニ「にゃっ!(クリスタ!)」
ユミル「おっと、優しそうな人間見つけたからってそうはさせねぇぜ」
アニ「……」ギロッ
ユミル「……やけに人わかりがいい猫だな。やっぱ飼い猫か」
クリスタ「迷子かな? おいで、何か食べさせてあげる」
ユミル「おいおい、お前自分の飯与えるつもりか?」
クリスタ「パンのひとかけらくらいどうってことないよ。サシャ、いい?」
サシャ「食べてさしあげようと思いましたけど、クリスタがそういうなら」
クリスタ「こらっ」
サシャ「じょ、冗談ですよ」
クリスタ「ほらおいで。……わっ、すごいこの子、軽い」
ユミル「まぁ小さめだな」
クリスタ「ふふ、あったかいし柔らかい。それに、綺麗な毛並み」
サシャ「飼い猫さんでしょうねぇ。にしてもクリスタが抱えると」
ユミル「ああ……猫まで神聖な生き物に見えてくるぜ」
クリスタ「もう。でも大人しくていい子だね、この子」
ユミル「黄金色の毛に」
サシャ「蒼い瞳……」
ユミル「ク、クリスタ、お前」
サシャ「この子のお母さんでは!?」
ユミル「どこの馬の骨と……」
サシャ「お父さんが猫……ですか」
クリスタ「そんなわけないでしょ。ほら、お腹空いたよね? ご飯にしようね」
サシャ「……女神です」
ユミル「ああ……羨ましい、あのクソ猫っ」
自給自足。昼休みはこっち、調べ物しながら書くあっちは夜更新
ミーナ「クリスタ、それ……猫?」
クリスタ「うん。お腹空いてるみたい」
ミーナ「へぇ……うわぁ、美人さんだぁ」
クリスタ「でしょ? どこから来たんだろ」
ユミル「躾されてる猫なんだ。どっかの貴族の飼い猫なんじゃねぇの」
クリスタ「それなら飼い主さん、きっと困ってるね……」
サシャ「でもなんでこんなところに? ご飯なら街の方がたくさんあるでしょうに」
ユミル「バカなんじゃねぇの」
猫アニ「……」ギロッ
ユミル「……言葉わかんのか? ひょっとして」
ミーナ「飼い猫ならあり得るかも?」
ユミル「ふむ」
クリスタ「よいしょっと……はい、猫ちゃん。あーん?」
猫アニ(う……)
クリスタ「おいしいよ?」
猫アニ(……背に腹、だからね)パクッ
クリスタ「食べてくれた!」
コニー「なんだ、猫か?」
クリスタ「うん、迷子みたいなの」
コニー「へぇ……おお、すっげー柔らけえ!」
エレン「どうかしたのか? って、猫?」
アルミン「こんなところに? 珍しいね」
クリスタ「すっごいお利口さんなの。まだ食べる?……ほらっ!」
ユミル「お前あげすぎなんだよ」
クリスタ「でも……」
ユミル「ちっ……しゃーねぇな」チギリ
コニー「めっずらしいこともあるもんだな」
ユミル「こうでもしなきゃクリスタが食わねえだろ。ほら猫、感謝して食え」
猫アニ(……)
ユミル「あ? 私のパンが食えねぇってのか」
クリスタ「ユ、ユミル……脅しちゃダメだよ」
サシャ「いらないなら私が!」
猫アニ(……)パクッ
サシャ「あぁっ!!」
ユミル「ぷっ。こいつ性格わりい!」
「なになに、どうしたの?」
「わぁ、猫じゃん! かわいいー!」
猫アニ(……)
「撫でさせてー! わっ、ふっかふか!」
「私も触りたーい」
猫アニ(……)
クリスタ「や、あのね、猫ちゃんは」
「すごーい、柔らかい!」
「私も私もー」
猫アニ(…………)
クリスタ「あのね、その……」
猫アニ「ニャァァー!(ああ、鬱陶しい!)」フーッ!
クリスタ「……うん、あまり触られるの好きじゃないから」
「えー、じゃあこれ食べる?」
「私もー、人参食べるかなぁ」
クリスタ「えっと……そんな風に押しつけちゃ」
猫アニ「フーッ!フーッ!(静かに食べられないのか、あんたたちは!)」
クリスタ「うう、猫ちゃん怒らないで」
猫アニ「フーッ!(もういい、少しは食べられたから)」ピョン
クリスタ「あっ!」
猫アニ(来るべきじゃなかった。ここはとっとと……)
ガシッ
ミカサ「……捕まえた」
猫アニ(……)
ミカサ「……」
猫アニ(どっからわいて出たんだよこの猛獣……この体じゃさすがに勝てる気がしないし)
ミカサ「……パン、食べる?」
猫アニ「にゃ?」
アルミン「ミ、ミカサ?」
ミカサ「食べる? パン」
エレン「そういやミカサ、むかし野良猫拾ってきたことあったよな」
ミカサ「……うん」
エレン「だいぶ弱ってて……結局死んじまったけど」
ミカサ「うん……」
猫アニ(……)
ミカサ「……」
猫アニ(……)パクッ
ミカサ「! た、べた……」
エレン「おお」
ミカサ「もう少し、たべ、る?」
猫アニ(……)パクッ
ミカサ「!!」
アルミン「お利口さんだね」
エレン「だな」
アルミン「そういえばこの子、どっちだろ」
エレン「ん?」
アルミン「女の子、かな?」
エレン「じゃねえの? ついてねぇし」
猫アニ「」ピタッ
エレン「ほらここ」
猫アニ「」
アルミン「あ、」
猫アニ「ニャー!」キック!!
エレン「うわっ!」
猫アニ「ニャー!ニャー!(だから!あんたは!女の子との話し方を!)」
エレン「ちょ、何すんだよ!」
ミカサ「エレン!」ドンッ!
エレン「おわっ!」
ミカサ「……今のはエレンが悪い」ギュゥ
猫アニ「」
アルミン「……うん、まあ」
ミカサ「猫さんは女の子」ギュゥ
猫アニ「」
アルミン「はは……ってミカサ! 絞めてる!絞めてる!」
ミカサ「はっ!」
猫アニ「」グデー
ミカサ「猫さん! しっかりして……!」
猫アニ「」グデー
アルミン「……大丈夫、息はある」
アルミン「骨も大丈夫そうだね。急に抱きつかれてビックリしたのかな」
ミカサ「ごめんなさい……」
エレン「で、どうすんだこいつ」
コニー「ミカサに任せるとまた絞めるんじゃねぇの」
ミカサ「でも……」
クリスタ「えっと、じゃあ私が……」
ミーナ「あ」
ユミル「なんだ?」
ミーナ「ハンナ、猫アレルギーだったかも……」
ユミル「んじゃ女子寮は無理だな」
ミカサ「でも、この子は女の子」
ユミル「動物に男も女もねえよ」
ライナー「なんだ? 何集まってんだ」
ユミル「ちょうどいい。これ預かってくれよ」
ライナー「ん? 猫、か」
ユミル「どっかの飼い猫が迷い込んだみてぇでよ」
クリスタ「きっと……飼い主さん、困ってるよね」
ユミル「猫アレルギーがいるから女子寮じゃ無理なんだわ」
ライナー「はぁ……」
ユミル「飼い主が貴族なら……お礼もたんまりじゃね?」
クリスタ「ちょ、ちょっと」
ユミル「肉とかお礼にくれたりしてなぁ」
サシャ「!!」
ライナー「預かるだけなら構わんが……教官に許可は貰わんとな」
ユミル「おう。任せたぜ」
ライナー「おい」
クリスタ「だ、大丈夫、私も行くから!」
ミカサ「私も行こう」
ライナー「あ、ああ……」
…男子寮。
ガチャ
マルコ「あ、おかえり……って、それ」
ライナー「迷子らしくってな。教官の許可は取ってある。女子に猫アレルギーがいるらしく預かったんだが」
マルコ「そ、そう……」
ジャン「お前が子猫なんか抱えると、犯罪臭ぇぞ」
ライナー「そういうな。それにこれで成猫らしい」
マルコ「これで? 小さいね」
ライナー「うむ。起きてる時は利口だったそうだが」
ジャン「オレは面倒みねぇからな」
マルコ「寝てるの、かな?」
ライナー「ミカサが抱き上げて気を失ったらしい」
ジャン「!?」
マルコ「あー……やっちゃったのか」
ライナー「うむ。エレンはこいつに嫌われたらしく、俺が預かることになってな」
ジャン「……水飲ますならこれ使えよ」
ライナー「お? いいのか?」
ジャン「面倒はみねぇぞ」
マルコ「ふふ」
ライナー「フッ。ありがたく借りるとするよ」
…2段ベッド上。
ライナー「よっと。読書中にすまんな」
ベルトルト「……なにそれ」
ライナー「預かりもんだ。ま、毛布で包んで……こんなもんか」
ベルトルト「また君は、そんなこと引き受けて」
ライナー「今回はミカサからの頼みだ。珍しいだろ」
ベルトルト「珍しいとか、そういう問題じゃ……」
ライナー「明日、街に届けに行くらしいからな。それまでだ」
ベルトルト「……」
ライナー「にしても、ちっけぇな」
ベルトルト「ずいぶん……綺麗な毛並みだね」
ライナー「ユミルの見立てじゃ、どっかの貴族の飼い猫じゃないかって話だが」
ベルトルト「……そう」
ライナー「んじゃ昼寝すっから、こいつ起きたら起こしてくれ」
ベルトルト「……うん」
・・・・・
アニ(……)
「巨人だ! 巨人が攻めてきたぞ!」
アニ(……違う)
「やめて! 殺さないで!!」
アニ(……私は)
「うわぁあああ! 来るな! 来るなぁぁああ!!」
アニ(……やめて、そんな目で)
アニ(見ないで!!)
ベルトルト「……大、丈夫?」
猫アニ「……」
ベルトルト「猫でも、うなされることあるんだね」
猫アニ「……」
ベルトルト「えっと……」
猫アニ「……」
ベルトルト「……」
猫アニ(なんで……コイツが?)
猫アニ(てかここ、どこ……変なにおいするけど)
ベルトルト「…………アニ?」ボソッ
猫アニ「にゃ?」
ベルトルト「そんなわけないよね。ライナー、起きて」
ライナー「……んん」
ベルトルト「この子、起きたから」
ライナー「ん? ああ……」
ベルトルト「……」
ライナー「あー……起きたか。ケガはなさそうだな」
ベルトルト「ケガ?」
ライナー「どうもミカサが抱きしめて絞めたらしくてな」
猫アニ(あーーー!! 思い出した!!)
猫アニ(そうだ、ミカサに抱きしめられて……というか絞められて、気を)
猫アニ(ってことは何? ここは、ひょっとして)
猫アニ(男子寮、なの……)
ライナー「ふむ。暴れる様子は――」
猫アニ(くさっ! 毛布くさっ! つか部屋全体くさっ!!)
ライナー「……」
ベルトルト「……暴れるかも」
猫アニ(なにこれ、なんなのこの部屋! 汚い! 汚いよっ!)
ライナー「落ち着け、な?」
猫アニ(汚いっ! 臭いっ! 男部屋って、噂には聞いてたけど!)
ライナー「どうどう……」
猫アニ(こんなとこ! いてられるわけないだろ!!)ピョン
ライナー「うおっ!」
猫アニ「……」スタッ
コニー「お?」
マルコ「おや、起きたのかな」
ライナー「すまん! 暴れだした!」
マルコ「え?」
猫アニ(なんだい……あんたたちも阻もうっていうの)フーッ!
マルコ「え、あ……うん、大丈夫、落ち着いて」
猫アニ(そこをどきな。邪魔をするなら容赦しないよ)フーッ!
マルコ「……だいぶ興奮してるな」
コニー「扉閉まってるから逃げはしねぇだろうけど」
猫アニ(あ)
マルコ「窓も……うん、大丈夫だね」
猫アニ(嘘……だろ? こんな汚くて、臭い部屋に?)
ライナー「そおれ!」バフッ
猫アニ「みぎゃ!」
コニー「おお、毛布で捕獲か」
ライナー「よーし、暴れるな」
猫アニ「ニギャァァァァア!!(くっさ!くっさ!!)」
ライナー「よしよし……うおっ!」
猫アニ(誰がっ! こんな毛布なんかで!!)
ライナー「逃げた! そっちいったぞ!」
エレン「うわっ!」
アルミン「エ、エレン!?」
猫アニ(嫌だっ! なんで、こんなとこなんかに!)
ジャン「おい、利口じゃなかったのかよ!」
猫アニ(窓開けて! 開けてよ!!)カリカリ
ライナー「落ち着け、な?」
猫アニ(来るな! 来るな!!)
コニー「うはははは!」
猫アニ(どこか……せめて、どこか落ち着けそうなところに)
マルコ「あ、また上に」
ベルトルト「……」
猫アニ「……」
ベルトルト「……えっと」
猫アニ「……」スルッ
ベルトルト「ええっ!?」
ライナー「お」
コニー「止まったな」
マルコ「三角座りのベルトルトの膝下か」
アルミン「そういえば猫は狭いところ好きって言うよね」
ベルトルト「は、はぁ……」
猫アニ「……」
ジャン「よし。落ち着いたな」
ベルトルト「え」
マルコ「うーん、ごめん……」
ベルトルト「ちょ……」
アルミン「えっと……片付け、しようか」
ベルトルト「ね、ねぇ」
ライナー「とりあえず……今は頼んだ」
ベルトルト「……」
ベルトルト「……」ペラッ
猫アニ「……」
ベルトルト「……」パタン
猫アニ「……」
ベルトルト(動けない……)
猫アニ「……」
ベルトルト(次の本取りたいけど……)
猫アニ「……」
ベルトルト(はぁ……2周目するか)
猫アニ「……」
ベルトルト「……」ペラッ
猫アニ「……」スルッ
ベルトルト(あ、出てきた)
猫アニ(……何読んでんの)
ベルトルト「……読むの?」
『マリア カンラクニ トモナウ ケイザイノ ヘンカ』
猫アニ(へぇ……ちゃんと調査してんじゃん)
ベルトルト「……」ジー
猫アニ(どうしたもんかね……あ、そうだ)チョイチョイ
ベルトルト「?」
猫アニ「……」チョイチョイ
ベルトルト「"マリア"?」
猫アニ「……」ツンツン
ベルトルト「……"ア"?」
猫アニ「……」ツンツン
ベルトルト「……"ニ"…………ん?」
猫アニ「……」コクコク
ベルトルト「え」
猫アニ「……」ツンツン
"ア" "ニ"
ベルトルト「う、そ……」
猫アニ「……」ジー
ベルトルト「え、まって、ほんとに?」
猫アニ「……」シーッ
ベルトルト「え? え?」
ライナー「お、仲良くやってるじゃないか」
ベルトルト「え、あ……ラ、ライナー」
ライナー「なんか教官が人手が欲しいとか言ってるみたいでよ」
ベルトルト「待って、そんなことより――」
猫アニ「……」グイッ
ベルトルト「ちょ、何するの、ア――」
猫アニ「……」ゲシッ
ベルトルト「いたっ」
ライナー「お前は行くな、ってことじゃないのか」
ベルトルト「……」
ライナー「まぁそいつ1人にするわけにもいかんし……」
ベルトルト「……うん、待ってる、ね」
ライナー「すまんがそうしてくれると助かる」
ベルトルト「いって、らっしゃい……」
「よーし、お前ら行くぞ」
「猫は?」
「ベルトルトに任せた。どうも懐いたらしい」
「へぇ、やるじゃん」
「休日に働かせるなっての」
「まぁまぁ、けど人手がいるって何するんだろうね」
…パタン。
ベルトルト「……」
猫アニ「……」
ベルトルト「みんな、行っちゃったみたい」
猫アニ「にゃ」
ベルトルト「はぁ、どうなってるの」
猫アニ「……」ピョン
カリカリ
ベルトルト「扉……外、行きたいの?」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「まぁ……ここで話すわけにもいかないか」
猫アニ「にゃ」ピッ
ベルトルト「窓? 開けるの?」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「ああ、君が逃げ出したようにみせかけるのか」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「これでいい?」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「……ふふ」
猫アニ「にゃ?」
ベルトルト「ごめん、なんかおかしくて」
猫アニ「にゃ!!」
ベルトルト「ご、ごめん、外行こう。でもバレないようにしないと」
猫アニ「……」ピョン
ベルトルト「……」
猫アニ「……」
ベルトルト「首元は……くすぐったいんだけど」
猫アニ「……」フンフン
ベルトルト「……楽しいの?」
猫アニ「……」テシテシ!!
ベルトルト「わ、わかったから、引っ掻かないで」
ダカラサー
エー、ウソー
チョットー、コッチキテー
ベルトルト(……よし、今なら)タタッ…
猫アニ「……」
猫アニ(でかい体なのに器用なもんだよ。普段の影の薄さも役に立ってるのかね)
猫アニ(にしても……コイツ、いつもこの目線で見下ろしてるの? 全然足元見えないんだけど)
ベルトルト「……」
猫アニ「……」ジー
ベルトルト「な、なに?」
猫アニ「……」テシッ
ベルトルト(うう、だいたい何が言いたいかわかるよ。ここは何も言わないでおこう……)
猫アニ「……」ブスー
…森の中。
猫アニ「……」
ベルトルト「アニの服……本当に、君なのか」
猫アニ「……」チョイチョイ
ベルトルト「本? って、この本って」
猫アニ「……」
ベルトルト「巻末のアレ、ひょっとして試したの?」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「そんな……そんなことって」
猫アニ「……」
ベルトルト「元に戻る方法は……」
猫アニ「……」フルフル
ベルトルト「……まずいな。そろそろ日が暮れる。君がいなくなったと気づくまで時間もそんなにないか」
猫アニ「にゃうー……」
ベルトルト「謝らなくていいよ。とりあえず……もう1回、読んでみよう」
とある森の中、休日に本を広げて暇をつぶしていた少女は、巻末に不思議な紙が挟まれていることに気づきました。
『この紙の魔法陣にあなたの血を一滴垂らしてください。不思議な世界にご招待いたします』
日々の生活に退屈していた少女は、細工のされた指輪で指に傷をつけ、血を一滴ぽたりと垂らしました。すると――
ベルトルト(ん……?)
魔方陣から眩い光が溢れ、光は少女の体を包み込みました。
そして目を開けると、少女の体は小さな子猫になっていたのです。
ベルトルト(あれ……こんな話、だったっけ)
猫アニ(違う、これは……)
驚いた少女は、猫の手で何度も本を見直しました。しかしどこにも元に戻る手がかりは書かれておりません。
お腹の空いた少女は、猫の姿のまま食堂へと歩いていきました。するとどうでしょう。
自分の食事が狙われると思った女の子に、食べられてしまいそうになりました。
ベルトルト(まさかこれ、サシャ?)
猫アニ(これ、あの時の……)
そこを助けてくれたのは、黄金色の髪に蒼い瞳の小さな女の子でした。
ベルトルト「……アニ、これって」
猫アニ「……」
ベルトルト「内容が、変わってるね」
猫アニ「……」
ベルトルト「元の内容……覚えてる?」
猫アニ「……」コクン
ベルトルト「確か、街の少女が猫になって、家に帰ろうとするけど追い出されて」
ベルトルト「雨の中歩いていたら、男の子に助けられて……だよ、ね」
猫アニ「……」
ベルトルト「えっと……」
猫アニ「……」
ベルトルト「ま、まさか……」
猫アニ「にゃー……」
ベルトルト「……」
猫アニ「……」スッ
ベルトルト「待って、それは、その」
猫アニ「にゃ」
ベルトルト「仕方ないじゃないよ、その、えっと」
猫アニ「にゃ!」
ベルトルト「た、確かに時間もないけど!」
猫アニ「ニャァァア!」
ベルトルト「だから! う、あぁああ!」
カッ!!
アニ「……」
ベルトルト「」
アニ「……戻っ、た?」
ベルトルト「」
アニ「戻った……戻ったよ!」
ベルトルト「」
アニ「ベルトルト……?」
ベルトルト「」
アニ「?」
ベルトルト「」
アニ「………うわぁぁあ!!!?」ドンッ
ベルトルト「げふっ」
アニ「見るな! 見るな!」
ベルトルト「ご、ごめっ」
アニ「謝るな! 見るな!」
ベルトルト「目、瞑ってるからっ!!」
アニ「後ろ! 向いて!」
ベルトルト「は、はいっ」
・・・・・
アニ「……」
ベルトルト「……」
アニ「……」
ベルトルト「……」
アニ「……ノーカンだから」
ベルトルト「は、はい」
アニ「ていうか初めてじゃないから」
ベルトルト「え……そう、なんだ」
アニ「お父さんだから。初めてじゃないから」
ベルトルト「…………」
アニ「違うから。違うから。猫だし、ノーカンだから」
ベルトルト「はい……」
アニ「てか、危険そうな本なら言っておいてよ」
ベルトルト「いや、まさかそんな効果があったなんて」
アニ「はぁ……酷い目にあった」
ベルトルト「あ」
アニ「なに?」
ベルトルト「この本の、巻末の紙はなくなってるけど……」
アニ「けど?」
ベルトルト「確か、似たような本が後1冊あって」
アニ「…………で?」
ベルトルト「題名がマホウショ ソノ2、で……紙が、挟まってたような」
アニ「……」
ベルトルト「いや、その」
アニ「内容は?」
ベルトルト「これと、ほぼ同じ、だったと思います……」
アニ「…………はあ」
ベルトルト「……」
アニ「どういうこと……」
ベルトルト「ひょっとしたら……巨人化の失敗作、だったり」
アニ「解読はできそうなの」
ベルトルト「無理だよ……素材が少なすぎるし、魔方陣に書かれてる言葉は適当だし」
ベルトルト「紙に何らかの薬品が仕込まれていたんだろうけど」
ベルトルト「にしても本の内容が変わるだなんて、本当におとぎ話の魔法みたいだ」
アニ「ふむ」ピッ
ベルトルト「な、なにを?」
アニ「……治るね」シュゥゥゥゥ…
ベルトルト「……良かった」
アニ「そのもう1冊に挟まれてるやつ」
ベルトルト「うん」
アニ「破り捨てといて」
ベルトルト「え……」
アニ「巨人化の失敗作だろうが何だろうが、人が何かに変わるだなんて知られちゃ困る」
ベルトルト「確かに……」
アニ「はぁ……」
ベルトルト「……」
アニ「……帰る。お腹空いた」
ベルトルト「う、うん」
ベルトルト「……」
ベルトルト「……」
ベルトルト「…………だ、だめだ、思い出しちゃ!」
…明け方。
ベルトルト(……)ウトウト
ベルトルト(……)
ベルトルト(だめだ、うたた寝くらいでしか眠れない)
ベルトルト(結局猫は器用に自分で窓開けて逃げ出して、就寝前まで外に探しに行ってたことになったからお咎めなしにしてもらったけど)
ベルトルト(うう……)
ベルトルト(みんなまだ寝てるけど、資料室開けてもらって処分しに行くか……)
…資料室。
ベルトルト(あった、これだ。昨日のは……あ、返してある)
ベルトルト(……)ペラリ
少女は少年に飛びかかり――
パタン。
ベルトルト(…………)
ベルトルト(なんで、内容が変わるんだ……)
ベルトルト(なんなん、だ……この本は)
ベルトルト(とにかくもう1冊の方……ああ、やっぱりこっちにも紙が)
ベルトルト(小さく破り捨てて、食堂でこっそり燃やしてしまおう)ビリッ
ベルトルト(……)ビリビリ
ベルトルト「……いたっ」ピッ
ベルトルト(うう、これだから古い紙は嫌なんだ、木くずとか含まれてるから…………あ)ポタッ
カッ!!
…食堂入口。
ライナー「……今度は黒猫か」
マルコ「大きいねぇ」
ユミル「昨日のは散々暴れ散らかしたんだって?」
ライナー「ああ。部屋ん中滅茶苦茶にしてくれたな」
アルミン「けどこの子は大人しいね」
マルコ「大人しいというか……」
アルミン「されるがままというか……」
クリスタ「おっきいけど可愛いなぁ」
ミーナ「おめめクリクリしてるー」
ミカサ「……」プニプニ
黒猫「にゃいにゃー、にゃうにゃにゃー」ウルウル
ライナー「……今日はこのまま街に連れてくのか?」
ユミル「この後外出申請出してくるってさ」
ライナー「ふむ……」
アニ「……なに? このでかい黒猫」
ライナー「昨日のに続いて、貴族の飼い猫じゃないかって話だが」
マルコ「お利口だけど、人の言葉がわかるのかなぁ」
ユミル「そういやベルトルさんは?」
マルコ「朝からいないんだ。ひょっとして、責任感じて昨日の猫を探しに行ってるのかも……」
アニ「……」スッ
黒猫「にゃ、にゃいぃ…」
ユミル「ぶっ、さっきからこの猫変な声で鳴くのな」
クリスタ「喋ってるみたいだね」
アニ「……あんたバカだろ」ハァ
黒猫「……」
アニ「……」ギロッ
黒猫「……」ダッ
ミカサ「あ」
ライナー「おい」
クリスタ「行っちゃった……」
ユミル「猫もビビるってか? おっかねぇな」
アニ「……」
クリスタ「探しに行こう」
アニ「どうして」
クリスタ「だって、飼い主さん困ってるだろうし」
アニ「飼い猫って決まったわけじゃないだろ。それに意外と近くに住んでるかもしれない」
クリスタ「でも……」
ユミル「ま、昨日の猫も腹減ってたらまた来るだろうが、来ないってことは飼い主見つかったのかもな」
クリスタ「……」
アニ「餌付けなんかしないでよね」
ライナー「ん? お前猫嫌いだったのか?」
アニ「ああ、大っ嫌いだよ」
ライナー「そ、そうか」
アニ「……なに」
ライナー「いや、何でもない……」
…森の中。
アニ「……」
黒猫「……」グスッ
アニ「ったく……なんで、また」
黒猫「……」グスグスッ
アニ「朝からいないって言ってたけど……服、運んできたの」
黒猫「……」コクン
アニ「はぁ……さては破る時に指切ったんだろ」
黒猫「……」コクン
アニ「私が巻いた種だ……責任、取るけど」
黒猫「……」ブンブン
アニ「じゃぁ何? ライナーとでもする? 呼んでくるけど」
黒猫「」
アニ「ほらね。まぁ猫相手だ、ノーカンだから」
黒猫「……」
アニ「にしても、その大きさは猫じゃないだろ……」
黒猫「にゃぁ…」
アニ「なりたくてなったわけじゃない? はっ、どうせ私はあんたに比べて小さいよ」
黒猫「にゃ……」
アニ「ふふ。いい気味だ、どうせなら夜までその姿でいる?」
黒猫「にゃ!?」
アニ「嘘だよ。ったく……」
黒猫「……」
アニ「……ねぇ」
黒猫「にゃ?」
アニ「ちょっとだけ、さ……」
黒猫「にゃ……?」
アニ「その……」
黒猫「……」
アニ「……触っていい?」
黒猫「にゃ!?」
アニ「ほら、こっちきてよ」
黒猫「うなー……」
アニ「ほらほら」
黒猫「……」ポフン
アニ「わー……」モフモフ
黒猫「……」
アニ「あはっ、柔らかい」
黒猫「……」
アニ「あったかいなぁ……」ナデナデ
黒猫「……」ゴロゴロ
アニ「……なに喉鳴らしてんのさ」
黒猫「!?」
アニ「……」ナデナデ
黒猫「……」ゴロゴロ
アニ「あんたさ、もうこのままでいたら?」
黒猫「うにゃっ!?」
アニ「冗談。あー、堪能した」
黒猫「……」
アニ「……じゃ、目瞑ってるから。ささっと済ませて」
黒猫「ニャ!? ニャニャ!?」
アニ「仕方ないだろ。あんた抱えてやったら元に戻った時に酷いことになりそうだ」
黒猫「にゃ?」
アニ「その……服」
黒猫「!」
アニ「わかったら! とっととする!」
アニ「……」
黒猫「……」
アニ「……」
黒猫「……」
アニ「……この、ヘタr――ンむっ」
カッ!!
……そして少年は元に戻ることができましたが、その後少女に蹴り飛ばされたのでありましたとさ。
少女は帰る前、空に向かって珍しく大声で叫んだそうです。
『魔法書なんてこりごりだ!』……と。
さて、このページにあなたの血を1滴垂らしてみましょう。あなたを素敵な世界にご招待致します。
新しい物語は、あなたが作るものですから。
<完>
ワタシハ ネコニ ナリタイ。オワルヨ。
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良かった
やっぱ猫アレルギーきつい
猫好きだから余計に