諸葛亮「どう考えても仕える陣営を間違った」 (32)

昨日、VIPで書いていた 諸葛亮「どう考えても就職する陣営を間違った」 の加筆・修正を加えて書いていくものになります。

演義基準で色々な三國志要素が入ってます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377014308

諸葛亮「本当はどの勢力に所属せずに気ままに農民をしていたかったのに」

諸葛亮「水鏡先生が秘蔵の菓子を食べたことを根に持って、劉備様に「伏龍」と「鳳雛」を告げたばかりに面倒なことに成って」

諸葛亮「いつも私とホウ統の三番手であった徐庶が、門下時代の仕返しに劉備さまに私の本名を告げて曹操陣営に言ったことで、劉備様が三度私の元に訪ねてきた」

諸葛亮「……三度来ようと断りたかったけど、外で待っている鬚と虎に何されるか分かったもんじゃなかったからなー」

諸葛亮「虎の方は家に火をつけようとするし」

諸葛亮「まぁ、私も? 幼いころに火計の実験に嫌がらせをしてきたガキの家に火をつけたけど、まー、これは時効だし? ね?」

諸葛亮「しかし、徐庶のヤツ。母親を人質に捕られて出て行ったようだけど、劉備陣営の体質がイヤになって逃げ出したんじゃないだろうね」

諸葛亮「流浪が長かった所為か、資金や兵糧の流れがメチャクチャ。天下に覇を唱える群雄としての最低限の質もない」

諸葛亮「……はぁ。いや、文句を言っても仕方ない。とりあえず頑張ろう」

諸葛亮「無能だと思われるのは別にいいけど、無能だと殺されてしまうかもしれない」

諸葛亮「とりあえずは、私のことを嫌っている鬚と虎をどうにかしないと……」

諸葛亮「……………………………………火計の巻き添えは最終手段。うん」

兵士「諸葛亮様! 夏侯惇率いる数万の兵がここ新野に向けて進行中とのこと」

兵士「劉備様がすぐに来るようにとのことです」

・軍議室

劉備「おお、よくきてくれた先生。さっそくだが隻眼将軍がこちらへと向かってきているらしいんだ。なんとかしてくれ」

諸葛亮「はぁ、とりあえずやれることはしますよ。ええ」

関羽「むっ。軍師殿は少々覇気が足りないのではないか」

張飛「ガハハハァァ。策なんていらねぇ。このオレ様が夏侯惇など蹴散らしてくれるわ!」

諸葛亮(……一応、貴方の嫁さん繋がりで親戚になるわけですが? この人に何を言っても無駄か)

諸葛亮「率いる将は夏侯惇ですか。して、それを支える参謀は?」

兵士「いえ、名のある将は夏侯惇だけのようです」

諸葛亮(うわぁ、ウチの陣営って舐められてるなー。徐庶を引き抜いたからって、誰も軍師に付けないとか)

諸葛亮(でも、程昱や荀彧や荀攸や賈クといった神算鬼謀の軍師としてつけられてたら、即効で逃げるしか無かったけど)

諸葛亮(劉備軍と曹操軍だと、兵士の質が文字通り雲泥の差だ)

諸葛亮(鬚と虎。――なんか影の薄い龍を巧く使いこなすしかないか)

諸葛亮(龍は聞いてくれるとして、問題は鬚と虎だけど……。なんとかしようか)

諸葛亮「こほん。私に妙策がございます。皆さんが従ってもらえれば間違いなく勝てるでしょう」

諸葛亮(負けたら無能軍師として鬚か虎に殺される姿を幻視した……っ)


諸葛亮、将に策を説明する

劉備「先生。その策は巧くいくのだろうか?」

諸葛亮「キチンと私の言ったとおりに動いてくれれば必ず成功します」

諸葛亮「では、劉備さまは夏侯惇を釣る囮役。頑張ってください」

劉備「う、うむ。まかせておけ!」

諸葛亮(さて、皆さんが戦っている間は暇なので、今のうちに財政管理やその他諸々の内政事項をしておかないと)

諸葛亮(あの人たちがいると作業をする事も儘ならない。戦で静かになった時を見計らってするしかないんだよなー)

諸葛亮(この作戦だと約2日は稼げるはず)


博望坡の攻防。
諸葛亮が提案した火計により、曹操軍は敗走。
劉備軍は徐庶が抜けて以来の大勝を収めた。

関羽「さすがは「伏龍」諸葛亮殿だ。見事な策であった。まぁ、拙者は貴殿の才能には初めから見抜いていたのだがな」

張飛「逃げまとう曹操軍の奴らを殺し回るのは最高だったぜ!」

趙雲「お見事でした。さすがは神算鬼謀のお人です!」

諸葛亮「……」

諸葛亮(よし。なんとか鬚と虎の信用は勝ち取れた気がする。龍は……なんかあまりに重い尊敬の念の気が)

劉備「さすがは先生だ! このような大勝は我が人生で初めてだ」

諸葛亮「……それは、ええ、良かった、デス、ね」

諸葛亮(しかし、あまりの杜撰ぶりに2日徹夜して3割も内政における作業を纏められなかった)

諸葛亮(このままだと将来過労死するかもしれない……)

劉備「それでは宴会を始めようぞ」

諸葛亮「……劉備様。まだするつもりですか。もう5日連続ですよ」

諸葛亮「未だに先の戦後処理も済んでないのですが」

劉備「先生。そんな細かいことをきにしてどうする! 騒げる時に騒ぐものだ。人はいつ滅びるか分からぬからなっ!」

諸葛亮(おお、流石に居候していた勢力が次々と潰れていった人の言葉には重みがある)

諸葛亮(ただ、そんなのだから今まで流浪をしてくるハメになったのでは?)

諸葛亮(ズキ。ぅぅ、このままでは……私がまずもたない)

諸葛亮(ここは余命短い劉表が死んだ後に荊州を奪ってもらい、荊州人材を加える必要がありそうだ)

諸葛亮(この乱世に中立を貫き、争いを避けたて文官は荊州へと流れてきている)

諸葛亮(人材蒐集家の曹操が垂涎するほどの人材の宝庫する荊州を手に入れれば、劉備軍は圧倒的に強化され、私の負担も軽減されるハズ……ッ)

・数日後、劉表私邸

劉表「うぅぅ、劉備殿。我が生命は、もう長くない。才能なき我が子より、劉備殿が、この荊州を治めてくれないか」

諸葛亮(キタ――。劉備殿、頷いて下さい。それで全てが巧くいきます。天下三分の計も予想よりもずっと早く実現することに)

劉備「劉表殿っ、なにを弱気なことを!」

劉備「この劉玄徳。劉表殿より受けた万を超える御恩を報いておりませぬ。その上に、この荊州をいただく事などできませぬ」

劉備「流浪するしかなかった私を迎え入れてくれた御恩を帰すためにも、私は、劉表殿のご子息を支える覚悟です!!」

l劉表「お、おおおお。劉備殿……グスン」

諸葛亮(……………………え。この人、何を考えてるんだろう。せっかく話を蹴るなんて)

諸葛亮(まさか劉備様には。私にすら思い浮かばない深い考えが)

諸葛亮(あ、うん。それはないな)

諸葛亮「あの、劉備様? なんで劉表さまの話を蹴られたのですか」

劉備「ほら、一度目で頷くなんて人として、なんか駄目だろう? うん」

劉備「先生も三度訪ねてやっと立ち上がってくれたのだ。この誘いも何度か断って、それでもしてくれるようなら受けようと思う」

諸葛亮「……」

諸葛亮(確かに私は劉備様に三度来てもらいましたよ? しかしそれとこれは状況が違いすぎるのですが。人材と一州を劉備様にとっては同じように扱われるのか)

諸葛亮(これでは、たぶん二度目はないな。蔡瑁が手を回し、この話を劉表殿が劉備様に話をする事は二度とないだろう)

劉備「ああ、そうだ。実は劉琦殿が先生に相談したいことがあるらしい。相談に乗ってやってほしい」

劉備「将来は荊州の主にある人だからな。売れる恩は売っておいて欲しい。頼んだぞ先生」

諸葛亮「……はぁ。やれと言われたらしますけどね」

諸葛亮「解せない。私は相談乗るように劉備様に言われて来たのに、監禁されるとは」

諸葛亮「劉琦さま。どうやら心が病んでるようですね。一度天下に名を轟かせる華佗に見てもらっては?」

諸葛亮「では、私は失礼しますので開放して下さい。今直ぐに」

劉琦「ままま、待って下さい諸葛亮どの! 今まで何度も伺いに赴いたのに、無視されたため、その、相談が終わるまで、部屋からは出れないようにしただけですからっ」

諸葛亮「劉琦様。それを世間一般で監禁というのですよ?」

諸葛亮「どうせ相談事は疎まれている義母に関することでしょう?」

諸葛亮「方法は簡単です。何かと理由をつけて誅すればいいんです。蔡瑁一派は反対するでしょうが、長兄が継ぐのが世の習わし」

諸葛亮「次兄が継げばお家騒動で、袁紹の後継者問題と同じく末永く愚者として語り継がれるでしょう」

劉琦「そんなこと出来るハズがありませんっ。疎まれているとはいえ、あの人は義理の母なのですからっ」

諸葛亮「……ハァ、なら江夏へと行けばいいんじゃないですかね」

諸葛亮「あそこはちょうど孫権が敵である黄祖を八つ裂きにして殺して空白。赴任するにはちょうどいいでしょうね」

諸葛亮(ただ今は孫権に民と物資を全て持って行かれて、文字通り空の状態ですがね)

諸葛亮(この軟弱な人には、それぐらいの試練がちょうどいいでしょう)

劉琦「わ、私に太守という大役。務まるでしょうか?」

諸葛亮「(しらんがな)大丈夫ですよ。貴方は劉表殿の子供なのですからね」

劉琦「分かりました。江夏へ赴任しようと思います!」

諸葛亮「ええ。江夏で頑張って下さいね(棒」

今回はここまで。
次は長坂坡から赤壁前哨戦まで行きます

○劉琦に監禁されてから数十日後

兵士「いいい、いっ一大事! 不審者を捕らえ尋問したところ、劉表殿は死亡しており、後継者は劉琮となったとのこと」

兵士「更にっ。劉琮は曹操へ降伏状を送り、かつ、荊州九郡を無条件で譲り渡したとのこと!」

諸葛亮「なん……だと」

劉備「先生が珍しく驚いている。いや、私も十二分に驚いているのだが」

劉備「どうせ劉琮に進めたのは蔡瑁だろう。おのれ、蔡瑁めっ。亡き劉表殿のご意思を無視するとは――」

諸葛亮「……」

諸葛亮(荊州には優秀な人材が居るはずなのに、無条件で荊州九郡を譲り渡した?)

諸葛亮(うわぁ、信じられない。荊州の知恵者の質が疑われる……)

諸葛亮(荊州の文官の質は私が思っていた以上に低かったと割り切ろう。うん。)

諸葛亮「それで劉備様? 劉表殿の弔門にかこつけて、蔡瑁一派を皆殺しにしますか?」

関羽「兄者。いまこそ絶好の機ですぞ。散々煮え湯を飲まされた恨みを晴らすべきです」

張飛「ガハハァハア。蔡瑁のヤロウ。ぶっ殺してやるぜ」

劉備「落ち着け。私は劉表殿から息子を頼むと頼まれた身だぞ。恩ある劉表殿のご子息に刃を向けて、領地を奪うなど私には出来ぬっ。出来ぬのだっ!!」

諸葛亮(……今更だけど、この人は天下を統一する気はあるのだろうか?)

諸葛亮「しかし劉備様。前方には曹操軍は近くまで迫ってきております。そして後方には襄陽……蔡瑁達の軍勢がいます」

諸葛亮「下手すると挟撃で兵少き我が軍は全滅間違いありません」

諸葛亮「ただ一つ襄陽に攻め入り、蔡瑁たちを殺し、荊州を奪うのなら話は変わりますが」

劉備「いや、だからさ。絶対に襄陽には攻め入らないから」ト

諸葛亮「……(イラッ」

諸葛亮(落ち着け。劉備様の訳がわからない理論は今日昨日始まったことではない)

諸葛亮(荊州の文官も、劉表が死んだのなら、それを利用し、劉備様を襄陽まで誘いだして首を刎ね、曹操に渡すぐらいの策を講じればいいものを)

諸葛亮(ただ、そうなる前に一応は阻止しますがね。一応、我が主なので)

諸葛亮「……では、劉琦殿が居る江夏へ行きましょう」

劉備「江夏だと。どうして江陵ではないのか」

諸葛亮「確かに荊州の重要拠点である江陵を確保できればいいのですが」

諸葛亮「曹操の軍師たちは(荊州の文官と違って)とても優秀ですから、江陵をミスミス渡すとは思えません」

諸葛亮「それに劉琮が降伏した以上は、江陵を確保する前に戦があると想定するべきです」

諸葛亮「江陵は重要拠点であるため防御も高いでしょうから、籠城戦で無駄に日数を削れば、曹操に後ろから突かれる可能性があります」

諸葛亮「ただ劉備様が江夏ではなく、どうしても江陵に行きたいと仰るならば話は違いますが……」

劉備「よしっ。劉琦殿がいる江夏へ往くぞっ!」

民「劉備様ー。ここから出て行くって本当かぁ」

民「あいら達。劉備様と離れたくねぇ」

民「ワシ等はずっと劉備様について行きたんじゃ」

劉備「おお、民達よ。お前たちの気持ちは、この劉玄徳。しかと受け止めた!」

諸葛亮(何か物凄くイヤな予感がする)

劉備「民達よ! 我らはこれから江夏へと向かう。付いて来たいものは支度を始めよ」

民達「「「おおぉぉおおおお――!!」」」

諸葛亮(い、いつの間に、こんなに民が。しかも付いてくると言うのか。……劉備様の魅力は妖術の類かもしれない)

諸葛亮(とはいえ、これほどの民を連れて行くのは無謀。一応諫言しておこう)

諸葛亮「劉備様。今の状況、分かってます?」

諸葛亮「前からは曹操軍が、後ろからは劉琮軍が。正に前門の虎、後門の狼の状態ですよ」

諸葛亮「一刻も早く江夏へ向かわなければ駄目な時に、なぜ民を連れて行くことに?」

劉備「だって、民達が一緒に行きたいって言うからには仕方ないだろう」

劉備「大丈夫大丈夫。曹操も民を無闇矢鱈に殺しまくるなんてことはしないだろうからな。はっはっはは」

諸葛亮(この人は徐州の件を一切合切忘れているのか……)

諸葛亮(うぅう、胃が痛い。下手すると今宵、劉備軍は終わるかもしれない)

短いですが、今回はここまで
次回は曹操が登場し、趙雲がちょっと活躍する……かもしれない

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