モバP「幻想の魔王」 (60)
モバマスSSです。
P「さてと…帰るか」
P(経費削減で、電車で移動してるが、都会だったら車より、早くて時間が計算出来るからむしろいいな)
P「ちひろさんにお土産買って帰るか」
P「最近忙しいし、仕事してる間に甘い物は必要だしな」
P(なににしようかな……ん?)
P「なんだあれ?」
P「晴れてるのに傘差してるのか」
P(地下だから太陽浴びるってことはないと思うんだが…)
P「まぁ、気にしなくていいか」
P(人が余り通らない所にいるから気にしなくていいだろうし)
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P「しかし、お土産ってなると少し迷うなぁ…ん?」
P(まだ、あそこにいるけど一体どうしたんだろうなぁ…)
?「……」キョロキョロ
P(まさかとは思うが、迷ってるのか?)
P「あのー…もし良かったら…」
?「ひっ!?」ビクッ
P「大丈夫ですか?」
?「え?あ、あの、その、や」
P「や?」
?「闇に飲まれよっ!」バッ
P「あ…行っちゃったよ」
P(何かしてたのか?だとしたら悪いことしちゃったな)
P「それにしても闇に飲まれよってどういう意味なんだろう…。
最近の子はそんな言葉が流行ってるんだろうか」
P「ま、逃げられちゃったし、お土産の吟味でも続けるか」
P(あ、でも、その前にラーメン食べてもいいかもなぁ…美味しそうだし)
P「色々あって、目移りするな駅地下は」
どうも、古典シリーズを書いている者です。
前々から蘭子がいつ入った?と言われていましたのでそのお話を。
一応入った時期は、楓さんより前です。
モバP「久々に酒でも飲もうかな」
より前の話です。
P「とりあえず、こんなもんでいいか」
P(まぁ、俺たちが食べなくても幸子たちも食べるだろうし)
P「それじゃ帰るか……ん?」
?「……」キョロキョロ
P(まだ、地下から出てなかったのか。間違いなく迷ってるよなあれは)
P「すみません?大丈夫ですか?」
?「ひっ!?あ、あなたはさっきの…」
P「あの…、道迷ってるんですか?」
?「ふ、ふん!我が煙に巻かれるなど有り得ぬ。ただ、この未知なる迷宮に対する攻略法を…」
P「迷ってるんですね」
?「わ、我が真言を理解できるのか!?」
P「少しだけなら」
P(と言うか、住所を書いた紙を握りしめていたから分かるって)
?「我が真言を理解するとは、我が眷属と同等の瞳を持つものが…」
P「まぁまぁ、それで、どこに行くんですか?」
?「う、うむ…実はこれなのだが」
P「はい。えーっと…あぁ、ここですか」
?「…分かりますか?」
P「えぇ、ちょっと遠いですが、タクシーで行きますか」
?「……」コクン
P「えーっと付いてきてくれます?」
?「知らない人には、付いていきません…から」プィッ
P(確かにそうだよなぁ…)
P「ならさ、親に電話してくれませんか?」
?「ここは、不思議な魔翌力によって我が通信機が阻害されているのだ」
P「ここ、地下なんで圏外なんですよ」
?「あ……」カァァ
P「それじゃ、地上に上がって電話しましょうか」
?「…うん」
地上
?「あ…」
P「通じましたよね。それじゃ電話してみてくれ」
?「……分かった」コク
?「あ、あの、お母さん?…うん、その…はい。ありがと」
P「通じましたか?」
?「……はい。ありがとうございます」
P「また、迷わないように一緒にいますね」
?「我が左にいることが出来ることを光栄に思うことね」
P「はぁ…。そう言えば、どこから来たんですか?」
?「我が御霊は火の国に君臨したのだ」
P「火の国…?」
P(どこだろうなぁ…)
P「あ…肥国か。ってことは熊本辺りかぁ…」
?「いかにも」
P「そう言えば、お名前は?」
蘭子「我が真名はブリュン…んんっ!我が名は神崎蘭子よっ!」
P「神崎さんですか」
蘭子「いかにも、神の名を冠する我こそ、魔王にふさわしいのだ」
P(何を言いたいんだろうか分からないなぁ…)
蘭子「あ…」
P「どうしました?」
蘭子「…どうやら、迎えが来たようだ。それでは、また会おうアディオス」
P「あ、さよなら」
P(世の中には不思議な人がいるんだなぁ…)
P「さてと帰るか」
事務所
P「闇に飲まれよっ!」
ちひろ「いきなり何を言ってるんですか…」
P「あ、すみません。間違えました。これお土産です」
ちひろ「あ、ありがとうございます」
幸子「いきなりどうしたんですか?」
P「お、幸子おはよう」
幸子「おはようございます。お土産ですか?」
P「あぁ、幸子も食べていいぞ」
幸子「本当ですか?ありがとうございますね。ふふん♪」
ちひろ「幸子ちゃん嬉しそうですね」
幸子「当然です。か、勘違いしないで下さいよ。ボクは甘いものが好きなんですからっ」
ちひろ「はいはい。そうですよねー」
幸子「な、なんなんですかもうっ!」
P「さてと買い物にでも行くか…」
ちひろ「備品ですか?文房具類などはまとめて買ってますけど…」
P「気にしないで下さい。それじゃ行ってきますね」
幸子「買い物ならボクも付いていっていいですか?」
P「ん?別にいいけど。何か買いたいものでもあるのか?」
幸子「ま、まぁ、ありますよ」
P「そうか。それなら一緒に行くか」
幸子「えぇ、そうしましょう。今行きましょう。すぐ行きましょう」グイグイ
ちひろ「二人共行ってらっしゃーい」
幸子「何を買おうと思ってるんですか?」
P「ん?スケジュール帳をもう一つ買おうと思ってな」
幸子「なくなっちゃったんですか?」
P「いや、気分の問題でさ。それに、皆がもっと有名になると信じて大きめな物を買おうと思ってさ」
幸子「すぐにでもボクが予定を一杯にしてみせますからねっ!」
P「おう、頼むな幸子」
幸子「えぇ!任せて下さい。ボクはカワイイので!」ドヤァ
P「そう言えば幸子」
幸子「なんですか?」
P「幸子は何を買おうと思ってついてきたんだ?」
幸子「あ、あぁ、そうですねぇ、えっと…」
幸子(どうしよう…何にも考えてなかった)
P「高くないものなら買ってやるけど…」
幸子「そうですね。えーと……これです!」キョロキョロ
P「ん?万年筆か」
幸子「そ、そうです万年筆です」
P「ちゃんと書き易さで決めろよー」
P(確かノートの清書が趣味って言ってたし、ちょっと背伸びしたい年頃なのかな)
幸子「は、はいっ」
P「どうだー?」
幸子「これがいいですね」
P「そうか、分かった」
幸子「…いい値段しますけど平気なんですか?」
P「まぁ、3000円位なら安いもんだと思うよ」
幸子「それじゃ、ボクが手帳を買ってあげますねっ!」
P「無理しなくていいぞ?」
幸子「平気ですよ。これくらいしないと罰が当たりますから」
P「そっか…そりゃありがとな」
幸子「もっと、褒めてもいいですよっ!」
P「そろそろ戻るか」
幸子「そうですね♪」
P「……ん?」
幸子「どうかしました?」
P「いや、ちょっとな」
幸子「…なんだか面白い恰好した女の子がいますね」
P「…そうだな」
P(さっき会ったばかりだけど)
蘭子「あ」
P「どうも」
蘭子「わ、煩わしい太陽ね」
P「…ん?」
幸子「…んん?」
蘭子「あ、えっと…こんにちは」
P「こんにちは」
幸子「知り合いなんですか?」
P「知り合いというほどじゃないなぁ…」
P(さっき数言話しただけだし)
幸子「そうなんですか」
P「買い物ですか?」
蘭子「いかにも」
幸子「しかし、凄い恰好ですね」
蘭子「我の正装よっ!」
幸子「正装ですか。こんな場所で正装する必要があるんですかね?」
P「何でも東京には旅行で来てるらしいからな」
蘭子「いかにも。我の魂は火の国で芽吹いたのだ」
幸子(一体どこなんだろう…?)
蘭子「あの…さっきは、どうもありがとうございました…」ペコリ
幸子「何かしたんですか?」
P「ちょっと道案内をしただけだよ」
幸子「まぁ、確かに東京駅に初めて来た時は迷いましたね…」
蘭子「……」コクコク
P「それじゃ、俺達は帰るか」
幸子「そうですね。ボクも帰ってレッスンしなきゃならないですし」
蘭子「何かやってるんですか?」
P「えぇ、ちょっと」
幸子「早く帰らないと置いていきますよ」
P「悪い悪い。それじゃ、また機会があれば」
蘭子「闇に——」
P「えぇ、やみのまです」
蘭子「あっ…はいっ!」
幸子「しかし変わった人でしたね」
P「そうか?」
幸子「悪い人じゃなさそうですけどね」
P「俺もそう思うよ」
P(悪いこととかやろうとしてもすぐに顔に出ちゃいそうだよなぁ…)
幸子「そんなことより、ボクは早く事務所に戻ってこの万年筆を使ってみたいんですけど」
P「インクは俺が使ってるのがあるから使っていいぞ」
幸子「ありがとうございます。この万年筆もボクに使われて幸せものですね!」
P「そうだなー」
幸子「むっ、気持ちが籠ってないですね」
P「ははは。ごめんごめん」
事務所
ちひろ「あ、お帰りなさい。目当ての物は見つかったんですか?」
P「えぇ、バッチリと」
幸子「バッチリでしたよっ!」ドヤァ
ちひろ「それは良かったですね。あ、プロデューサーさん一つよろしいですか?」
P「はい。どうかしましたか?」
ちひろ「えぇ、お仕事の依頼がありまして…」
P「あ、はい。了解しました。ちなみに誰に対してなんですか?」
ちひろ「えーと、幸子ちゃんと卯月ちゃんにですね」
幸子「ボクにですか?やっぱりボクはカワイイですからね。ふふーん」
P「ちなみに、どんな仕事なんですか?」
ちひろ「えぇ、なんでも、ご当地キャラクターの紹介やらなんやらだそうです」
P「分かりました。それじゃ、それから先は俺が詰めますね」
幸子「それじゃ、ボクはレッスンに行ってきますね」
ちひろ「えぇ、行ってらっしゃい」
P「なるほど、司会のアシスタントみたいなことをやるんですね」
ちひろ「そうみたいですね」
P「てっきり、スカイダイビングのロケかと思いましたよ」
ちひろ「卯月ちゃんがいるからそれはないと思いますよ…」
P「まぁ、確かにそうですよね」
卯月「なんのお話ですか?」
P「あ、卯月来たのか」
卯月「はい!お電話貰ったんで急いで来ましたっ」
P「わざわざありがとな。お茶でも飲むか?」
卯月「はい。いただきます」
P「飲みながら聞いてくれ。今回の仕事はさ——」
卯月「なるほど。分かりましたっ、頑張りますね!」
当日
P「二人共緊張しないでいこうな」
卯月「はいっ!島村卯月頑張ります」
幸子「当然ですよ!」
司会「それでは、本日のアシスタントを紹介したいと思います」
卯月「島村卯月ですっ!よろしくお願いしますね!」
幸子「輿水幸子です。こんなカワイイボクに出会えて皆さんは幸せものですね」ドヤァ
ワーワー
P(順調だな…。さてと、俺も下で見てるか)
P「しっかし、色んなご当地キャラクターがいるんだなぁ…」
P(俺には多すぎて把握出来ないなぁ…あ、でも何匹?かは分かるなぁ)
P「幸子もいくつか知ってるって言ってたし…お、熊本のキャラだ」
P(名前忘れたけど…マズいな。俺も年かな)
?「あ……」
P「ん?あ、神崎さんこんにちは」
蘭子「煩わしい太陽ね!」
P「なるほど、こんにちは」
蘭子「うん…。舞台で振る舞う、かの偶像は…」
P「えぇ、昨日会った輿水幸子ですよ」
蘭子「……いいなぁ」ボソッ
P「何がですか?」
蘭子「…はっ!今、貴様は私が偶像に憧れていると考えたな!断じて違う。私は火の国の使者に——」
P「なるほど、あのキャラの隣にいたかったんですね」
蘭子「いかにも」
P「なるほど…。まぁ、とりあえず一緒に見ませんか?」
蘭子「別に…構いません…けど…」
司会「それじゃ、皆さん、また会いましょうねー」
卯月「皆さんありがとうございましたーっ!」
P「お、終わったみたいですね」
蘭子「宴の後は乾いた風が吹く」
P「なんか物寂しいものがありますよね」
幸子「あ、こんな所にいたんですね。どうでしたかボクのステージでの立ち振る舞い!」
卯月「あ、お疲れさまです。私も頑張ったんですよー。褒めて下さい」
P「二人ともお疲れ様。後で甘いものでも買ってやるから」
卯月「約束ですからねっ」
幸子「…ん?そちらにいるのは神崎さんですか?」
蘭子「ど、どうも…」
P(幸子のことあんまり得意じゃないのかな…)
幸子「……Pさん、少しいいですか?」チョイチョイ
P「どうした?」
幸子「火の国ってもしかして…熊本のことなんですか?」ヒソヒソ
P「そうらしいぞ」
幸子「なるほど…。神崎さんちょっといいですか?」
蘭子「……?」
幸子「ボクはカワイイですからこれあげます!」
蘭子「あ…いいんですか?」
P「いいのか?あげちゃって」
幸子「いいんですっ!ぬいぐるみ貰っても置く所に困ってましたしっ!」
卯月「えー、でも…」
卯月(自分から欲しがってた気がするんだけどなぁ…)
幸子「し、島村さん。いいんです、ボクがいいって言うからいいんです」
P「偉いな幸子」ナデナデ
幸子「なっ、こんな所で撫でないで下さいよっ」
蘭子「あの、そのありがとう…ございます」ペコリ
幸子「気にしないでいいですって」
P「そうだ。時間があるなら四人でご飯でもどうだ?」
卯月「いいんですか?」
P「お金は気にしなくていいぞ」
幸子「ボクがカワイイおかげですね」
蘭子「……いいんですか?」
P「神崎さんがいいなら。まぁ、知らない人とご飯行っちゃいけないって言うなら無理にとは言いませんけど」
蘭子「ふっ、先ほどした契約により、最早、貴方達と私の間には特別な契約が結ばれたのだ」
幸子「け、契約ですか?」
蘭子「いかにも。視ることは出来ず、触ることの出来ないものだが、確かに存在するものよ」
P「えーと、もう知らない間柄じゃないってことですか?」
蘭子「そ、そうっ…!」コクコク
ちょっと中断します。
レストラン
卯月「それじゃ、何を食べようかなぁ…」
幸子「ボクはこのパフェを頼みますね」
蘭子「えーと…」チラッ
P「遠慮しなくても平気ですよ?」
蘭子「…輿水さんと同じもので」
P「了解。それじゃ頼みますね。すみませーん」
卯月「えーと、神崎さんだっけ? 今いくつなの?」
蘭子「わ、私はこの世に生を受けてから14年になるだろうか…」
幸子「ボクと同じ年なんですね…」
P「14歳って凄いなぁ…」
卯月「私は凄くないってことですかプロデューサーさん!?」
P「まぁ、二人に比べたらさ」
卯月「う…。まぁ、確かに二人とも可愛いですけど!」
P「いや、違う。そういうことじゃないんだけどさ」
卯月「あ、違うんですか?」
P「まぁな。卯月も可愛いから安心しろ」
卯月「いや、そんな…えへへ」テレテレ
蘭子「輿水…幸子…うーん…」
幸子「ボ、ボクの名前がどうかしましたか?」
蘭子「あっ!」
幸子「ど、どうしましたか?」ビクビク
蘭子「どこかで聞いた思えば、まさか、天使のように空から舞い降りた偶像なのか?」
幸子「え、あ、まぁ…確かに結構な高さから飛んだことはありますが…」
P(俺も練習とか言って一緒に飛んだなぁ…懐かしい)
蘭子「やはり、そなたか…」キラキラ
幸子(もの凄く、キラキラした目で見られてますね)
蘭子「空から舞い降りた姿はさながら天の使い。フフ…思わずこの呪われた瞳が踊ってしまったわ」
蘭子「いつか、魔王として共に舞ってみたいものよ」
幸子「えーと、あなたもスカイダイビングしたいんですか?」
幸子(ボクはもう飛びたくないですけど…)
蘭子「え、いや…そういうわけじゃ…」
P「もしかして…神崎さんステージに立ってみたいんですか?」
蘭子「え? いや、私はそんな…」
P「でも、幸子と共演してみたいって言ったじゃないですか?」
蘭子「き、気のせいです!」
P「そうですか。それじゃ、話を変えましょうか。神崎さんはどんな魔王になりたいんですか?」
蘭子「我が大望を聞くのか?」
P「ちょっと興味がありまして…嫌なら別にいいですけど」
蘭子「我が言霊を理解する数少ない者に伝えるのはやぶさかではないぞ。まずだな——」
P「ふむふむ…」
卯月「紙取り出して何してるんですか?」
P「ちょっとな。それでどんな風なんですか?」
蘭子「加えて背中には——」
蘭子「——以上が、我の真なる姿よ」
P「なるほど、あんまり絵に自信ないけどこんな感じですか?」
幸子「色んな特技持ってるんですね…」
幸子(棒人間に特徴を書き込んだだけですけど)
P「特技って言えるレベルじゃないよ。いやさ、少しでも衣装さんや向こうにイメージを具体的に伝えられないかなって、ちょっとだけ練習してたんだよ」
P(実際にはまだ役立ってないけどな)
卯月「上手いですねー。私より上手いですよ」
幸子「今度ボクの意見を取り入れて下さいねっ!」
P「いや、そこまでの権限はないかなぁ。まぁ、ライブの時なら話は別だけどさ」
幸子「それじゃ、ライブ出来るように頑張りますね。このボクが頑張ればあっという間ですよ!」
P「そうか、期待してるぞ。あ、神崎さんこんな感じですか?」
神崎「うんっ…!…すごーい」キラキラ
P「それは良かったです。まぁ下手の横好きなんであれですけど」
P「よろしければ差し上げますよ?」
神崎「中々いい供物よっ」
P「あ、それじゃ、ちょっと貸して貰っていいですか?……はい、どうぞ」
神崎「……?」
幸子「事務所の電話番号ですか?」
P「そうそう。もし落としても連絡が来るようにってな」
卯月「流石に落とさないと思いますけど…」
P「悪い悪い。あ、そうだ。これも何かの縁だから二人も小さく名前書かないか?」
幸子「神崎さん、いいんですか?」
蘭子「むしろ、我が力が高まるというものよ」
卯月「それじゃ失礼しまーす」
卯月(と言うか…もし、こんな衣装作るんだったら、どのくらいお金がかかるんだろう…?)
ピリリリリ
蘭子「…っ!?」ビクッ
蘭子「あ、は、はい…。あ、お母さん?うん…うん…それじゃ」
蘭子「最後の審判が近いようだ。それでは帳が上がる前に闇に溶けるとしよう」
P「お疲れ様です、神崎さん」
幸子「えっ、あ、お疲れ様でした」
卯月「じゃあねー」
事務所
幸子「なんで神崎さんの言葉を普通に理解してるんですか?」
P「なんとなくニュアンスで」
卯月「きっと宇宙人とでも仲良く出来そうですね」
ちひろ「三人共お帰りなさい」
P「えぇ、お疲れ様です」
卯月「今日のお仕事はもうこれで終わりですかプロデューサーさん?」
P「そうだぞ。送ろうか?」
幸子「そう言えばボクも…」
P「幸子も送っていくぞ」
卯月「ありがとうございますね」
幸子「カワイイボクを送れるなんて幸運ですねプロデューサーさんは」
P「それじゃ、行くぞー」
幸子「ちょ、ちょっと無視しないで下さいって!」
車内
卯月「それじゃ、お疲れ様でしたー。さよなら幸子ちゃん」
幸子「えぇ、お疲れ様でした」
P「また明日から頑張ろうな」
卯月「はいっ!それじゃ、お疲れ様でしたー」
幸子「…一つ聞いていいですか?」
P「どうした?」
幸子「プロデューサーさんは神崎さんをアイドルにしたいんですか?」
P「なんでそう思ったんだ?」
幸子「なんとなくですけどね。でも、そう思ったんですよ」
P「…どうだろうな」
幸子「どうだろうなって…」
P「神崎さんがやりたいと言えばスカウトはすると思うよ。まぁ、神崎さんが言い出すか分からないけど」
P(確か、東京にだって旅行に来ただけだったし)
幸子「ボクの時と違って随分おざなりなんですね」
P「そうか?」
幸子「そうですって」
幸子(ボクの時はもっと積極的だったですよね?)
P「幸子はさ」
幸子「はい?」
P「絵に描いた餅で自分の腹を一杯に出来るか?」
幸子(絵の餅なんて食べられないじゃないですか。それともPさんはヤギかなにかですか?)
P「ま、気にするなって。お、着いたぞ。明日は朝早くないから起こさなくていいよな」
幸子「えっ…、いや、明日学校が早くてですね。そのなんていうか…」
P「分かった。電話してやるよ」
幸子「えぇ、ボクに電話出来るなんて幸せ者ですねっ!それでは」
事務所
P「お疲れ様です」
ちひろ「お疲れ様です。さ、今日もあと少しですよ」
P「そうですね。頑張っちゃいましょうか」
ちひろ「えぇ!今ならスタドリサービスしますんで」
P「ありがとうございます」
カタカタカタカタ
P「そう言えば一ついいですか?」
ちひろ「はい?なんですか?」
P「ちひろさ——」
ピリリリリ
ちひろ「あ、ちょっとすみません。はい。こちら、はい?輿水幸子さんのプロデューサーに代わってくれですか?」
P「どうかしましたか?」
ちひろ「すみません、少々お待ち下さい」
ちひろ「いやですね、女の子の声で幸子ちゃんのプロデューサーさんに代わって下さいっていう電話が来たんですけど」
P「女の子?」
ちひろ「はい。どうしますか?」
P「一応こっちに回して下さい。強ち心当たりがないわけじゃないんで」
ちひろ「そうなんですか?分かりました。一番です」
P「どうも、はい。こんばんは」
蘭子「…こんばんは。…電話合ってます…か?」
P「はい。合ってますよ。神崎さんですよね?」
蘭子「いかにも、神の名を冠する魔王よっ!」
P「それで、どうかされましたか?忘れ物ですかね?」
蘭子「えっと…あの…」
P「はい?」
蘭子「私も…あんな風になれますか?」
P「あんな風に?」
蘭子「こんな…喋り方だし、話すのもそこまで得意じゃないし…でも…でもでもっ!」
P「分かりました。電話ですとなんですので、どこかで待ち合わせさせて貰ってもよろしいですか?」
蘭子「は、はい…」
P「それでは、都合の良い日を教えて下さい」
蘭子「えーっと……」
ちひろ「どこからのお電話だったんですか?」
P「えぇ、ちょっと、魔王になる前の堕天使さんからです」
ちひろ「ラジオネームか何かですか?」
P「まぁ、そんな冗談は置いておいて前途有望な子からの電話ですよ」
ちひろ「…どこかでスカウトしてきたんですか?」
P「スカウト…そう言っていいんですかねぇ…。あ、明日会ってきますね」
ちひろ「あ、そうなんですか?」
翌日
P「えーと…ここかな」
店員「いらっしゃいませ」
P「あ、えと…先に来てる人が…あ、いました。失礼します」
P「こんにちは神崎さん」
蘭子「こ、こんにちは…」
P(今日は親御さんもいるのか…予想はしてたけど)
蘭子母「こんにちは。あなたがえーと…」
P「私はプロデューサーをやっていますPと申します。本日はわざわざご足労いただいてありがとうございます」
蘭子母「なるほど。あなたが。お話を聞く前にお礼を言わせていただきますね」
P「…と言いますと?」
蘭子母「昨晩、蘭子に聞いたのですが、駅で迷っていた所を助けていただいたらしくて」
P「いえ、たまたまですよ」
蘭子母「それでもお礼は言わせて下さい。本当にありがとうございました」ペコリ
P「いえいえ、こちらこそ」ペコリ
蘭子母「蘭子が一人で来れるから心配しないでって言ってたんで平気だと思ったんですが…」
蘭子「お、お母さん…」カァァ
蘭子母「それで本題なのですが…、ウチの蘭子をアイドルに。そう言うお話でしたっけ?」
P「えーとですね…」チラッ
蘭子「あのね、お母さん…私がやってみたいって言ったの」
蘭子母「蘭子が?またどうして」
蘭子「えっと…それは…」
P「夢を形にしてみたいんだそうです」
蘭子母「え?」
P「神崎さんはアイドルになって自分の夢を叶えたいそうです」
蘭子母「そんな夢があるの蘭子?」
蘭子「……うん」コクン
蘭子母「魔王がなんたらとか言ってたけどそういうことも考えてたのね。人生は一度きりだからやりたいことは応援するけど。プロデューサーさん一つ聞いてよろしいですか?」
P「はい」
蘭子母「夢を叶えたいなんて言う人は一杯いると思うんですよ。それこそ星の数ほど。だけど、叶えられるのはそれこれ一握りだと思うんですが?」
P「えぇ、そうですね。他の人に比べて何か特化していないと生き残ることは難しいでしょう」
蘭子母「自分の娘にこういうことを言うのは心苦しいですが、正直テレビで見るアイドルの方々に比べて、特別歌が上手いや踊りが上手いってことはないと思うんですが…」
P「まぁ、彼女たちもプロですからね。毎日レッスンしているわけですからそこはしょうがないと思いますよ」
P「ただ、私は少なからず神崎さんにも分があると思っています」
P「何かに熱中出来る人間は強いんです。例えそれが、直接人生に役立つことじゃなくても」
蘭子「……」
P「熱中するって言うのは凄いエネルギーを使うんです。努力する資質は育まれているんです。それは一つの才能ですから」
蘭子母「でも、それだからって活躍するとは…」
P「その資質を持って、アイドルに最高のパフォーマンスさせるために努力させるのが私の、プロデューサーの役目ですから」
蘭子母「そういうものなんでしょうか…?」
P「えぇ、一歩踏み出す勇気があれば問題ないと思います」
蘭子「…お母さん。私やってみたい…。ダメ…かな?」
蘭子母「自分から言い出すなら最後まで頑張りなさいよ」
蘭子「……うんっ!」パァァ
蘭子母「それじゃ、よろしくお願いします」
P「あ、少しだけ娘さんとだけお話させて頂いてよろしいですか?」
蘭子母「構いませんよ。それじゃ、向かいのデパートにいるから終わったら蘭子はそっちに来てね」
蘭子「うん」コクン
蘭子母「それじゃ。失礼します」
P「はい。ありがとうございます」
蘭子「あの…その、ありがとう…ございます」
P「別に思ったことを言っただけなんで」
蘭子「ふっ、私のことを、あぁも理解しているとは思いもよらなかったわ」
P「親御さんの前だと普通なんですね」
蘭子「うぅ…」
蘭子「と、時にだ。少しばかり尋ねたいことがある」
P「なんですか?」
蘭子「私が構築せしものは、幻想世界の空想ばかりぞ?それでも役に立つと言うのか?」
P「勿論。自分の世界を作るってのは結構大変なことなんだよ。もう、そこまで行くなら一つの特技だと思いますよ」
P「それに、アイドルのことを偶像って言う辺り、もしかしたら、神崎さんの中だと、アイドルも幻想世界の産物なのかもしれないし」
蘭子「あ、いや、その…うぅ」
P「それにこれはプロデュースする上で大切にしてることなんですけど…」サラサラ
『选举莫取有名,名如画地作饼,不可啖也』
蘭子「……?」
P「要は惑わされずに自分の目で見てスカウトするってことです」
P「どうせアイドルになるんだったら、空想で満足せずに、その空想を現実にしましょうね」
蘭子「至極当然。我は神の名を冠する魔王ぞ!」
P「私は、魔法使いでもなんでもないですが、かぼちゃを馬車に変えるように、ネズミを白馬に変えるように、あなたを魔王にでも、シンデレラにでもしてみせますね」
蘭子「ふ、ふふふっ、私が魔王になる時、それは即ち、あなた共に頂点に立つ時よ!」
終わりです。
書いてて思いましたが、蘭子をスカウトする話って余りないですね。
輿水幸子(14)
http://i.imgur.com/WistCe9.jpg
神崎蘭子(14)
http://i.imgur.com/05RJnHE.jpg
島村卯月(17)
http://i.imgur.com/onkXokr.jpg
『选举莫取有名,名如画地作饼,不可啖也』
と言うのは『三国志』の魏書にある故事の一つです。
>>1 乙です!出来たらその内、蘭子メインで一本書いて欲しいです。
蘭子を書くにはまず『熊本弁』と言う魔壁が立ち塞がってきますからね
蘭子メインのSSが少ないのも多分コレで挫折しちゃう人が多いんじゃないかと思ってる。
>>59
書きますよ。少なくとも出ている人全員はとりあえず一本は書きたいと思っているんで。
まぁ、正直自分も上手くかける気がしません。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません