女「君が思っているよりも、ボクは……」 (1000)

女「ねえ、ねえ……起きてくれ」

男「んあ……」

女「ふふっ、昨日は早く寝なかったのかな」

男「……」

女「どうしたんだい、そんな顔をして」

男「なぜ俺の部屋にいる」

女「なぜって、気持ちよく寝ている君を視姦して、起こしても起きないようなら襲おうとしていたところだよ」

男「起きて良かった」

女「うん、アッチも起きてるよ」

男「え……うおっ!」

女「男の子なんだから、気にすることないよ」

男「いつもは気にしなくても、今はするだろう……」

女「おや、いつもと状況が違うのかな?」

男「お前なぁ」

女「ふふっ、そうだね。ボクのいる前で自慰は流石に無理だよね」

男「いや、しねえよ」

女「大丈夫だよ、ボクは興味があるから目の前でじっくりと見せてもらえれば」

男「なんで見ようとしてんだよ」

女「この口振りから察すると、君は朝に一度用を済ますのかな?」

男「察するな。そんなことはねえよ」

女「ふむ、素直に答えてくれてありがとう」

男「しまった……で、なんだよお前」

女「ん?」

男「なんでここにいるんだって聞いてるんだよ」

女「ああ、そのことか」

男「急に来られたらこっちも迷惑だっつーの」

女「パンツ一丁で寝ているから、誘ってるのかなと思ったのだけれど」

男「暑いからな!」

女「それはそうだよ。夏なんだから」

男「本当に最近は熱帯夜だ」

女「うん、ボクも最近はノーパンで寝るよ」

男「ノーパン!?」

女「もちろんパンツは穿いてないけれど……」

男「ズボンは着てるよな」

女「? 着てないよ」

男「なっ!」

女「ふふ、驚いたかな? 冗談だよ」

男「……別に驚いてねー」

女「すごい食いつき方をしていたけれど」

男「……はぁ」

女「今日、ボクがここに来た理由はただ一つ」

男「なんだよ」

女「君と、夏休みを思う存分堪能しようと思ってね」

男「……だからって朝に殴りこんでくるとはどういうことだ」

女「大げさな言い方だなぁ」

男「昼ごろに来ればいいのに……ふわぁ」

女「でも、高校二年の夏は一度しかないんだ」

男「そりゃな」

女「だから、ボクは君とたくさん遊ぶために、朝にお邪魔したんだ。さ、早く着替えてくれ」

男「は? なんだ、外にでも行くつもりかよ」

女「うん、そのつもりだよ。察しが良くて助かる」

男「暑いから嫌だね。俺は涼しい部屋で夏休みを優雅に過ごしたい」

女「でも、君はエアコンをつけないよね」

男「お前が来るからだろ」

女「ふふっ、ボクがエアコンに弱いこと、気にしてくれてるんだね」

男「……ちっ」

女「まあ、君が嫌というのなら、ボクは諦めるよ」

男「諦めてどうすんだ?」

女「そうだね。夏休み中は君とは会わない……かも」

男「そりゃまた両極端な答えだな」

女「ただ、そうなると宿題も一緒にはできないね」

男「!」

女「まあ、いいよね。君は涼しい部屋で夏休みを満喫したいんだから」

男「……わかったよ、遊ぶ。遊んでやるよ」

女「そう来なくっちゃ」

男「で、予定とかはもう決めてあるのか」

女「うん。今から海に行くよ」

男「海か……って、今日かよ。急だなおい」

女「ふふっ、いきり立ったが挿入だよ」

男「思い立ったが吉日だ。なんにも合ってねー」

女「ツッコミ、ありがとう」

男「お前と毎日いたら嫌でもこうなる」

女「いやあ、それほどでも」

男「誉めてない」

女「それで、水着はあるのかな?」

男「多分押し入れのどこかにあるはず」

女「良かった。ボクは楽しみにし過ぎていたから……」

なんのためらいもなく、ヤツは短いスカートをまくりあげ、

女「水着できちゃったんだ」

ヤツの下半身は、パンツではなく、水着であった。

……何故スクール水着なんだ。

あとなんだそのハニカミながら舌を出した顔は。

男「いきなりそういうことするな」

女「おや、反応が悪いね」

どんな反応を期待してたんだ。

さらにヤツはヒラヒラとスカートをはためかせ、

女「スクール水着なのだけれど、どうかな」

どうかなと言われても。

仕方なく、質問をする。

男「なんでスクール水着なんだ」

女「泳ぎやすいからね」

男「とりあえずスカートを元に戻せ」

まるでありがたみのない水着チラが気に食わない。

女「うん、了解」

まくしあげたスカートを戻して、クルリと一回転した。

意味は特にないだろう。

俺は押し入れではなく、タンスの中を覗いた。

女「へえ、ここにパンツがあるんだね」

男「見るな。お前は外で待ってろ」

パンツをまじまじと見るな。

女「そこに水着が入っているのかい?」

男「多分……入ってない」

女「なるほど、着替えのパンツを持って行くんだね」

男「いちいち言うな! ほら、さっさと玄関に行け」

女「ふふ、そうだね。うっかりエッチな本を見つけたら大変だし」

ヤツはゆっくりと部屋のドアに向かった。

女「じゃあ、玄関で待ってるね」

ニッコリと笑って、部屋をあとにした。

男「……」

本当に、食えないヤツだ。

そしてなぜエロ本の存在を示唆した。

玄関にやって正解だった。

押入れには……いや、言わないでおこう。

言ってもしかたのないことだ。

夏は毎年妹と必ず一度はプールに行くので、水着はある。

これは去年買った水着……だと思う。

押し入れには色々な荷物の後ろに少しばかりのエロ本がある。

さっき出たところを見たが、もう一度周りを確認する。

男「……ふう」

ヤツはもう部屋にいない。だから心おきなく水着を探せる。

エロ本の内容は……いや、言う必要はないか。

男「……お、あったあった」

去年のまま変わらず、袋の中に入っていた。

トランクスっぽい水着。

男「俺も着替えていくか……」

一丁だったパンツに手をかけ、そのまま下におろした。

妹「お兄ちゃん、女さんとどこに行……」

男「あ」

妹「……きゃああああ!」

……部屋に入るときはノックをしてくれ、妹よ。

妹の誤解を解くのに、数分を要した。

どうやら納得してくれたみたいだった。

もしも誤解されたままだと押入れの前でパンツを脱ぐ意味不明の兄になってしまうところだった。

そして、プールに行く事を伝えると、とても不機嫌そうな顔をしていた。

多分、一緒に行きたいのだろう。

妹「私も行きたい!」

男「今度な」

妹の行きたい攻撃をすかさず避けて、ヤツの待つ玄関に向かった。

ヤツは俺を見るとニヤッと口の端をつり上げた。

女「ここから妹くんとの仲睦まじい会話が聞こえたよ」

筒抜けか。

男「そうかい」

女「『私もイキたい!』って、どういうことかな?」

違う。

違わないが違うぞ、それは。

その間違え方はダメだろ。

男「勘違いするな」

女「でも、言っていただろう」

男「字を変えるな、ややこしい」

俺は軽くため息をついた。

いつもこんな具合で、話がそれる。

男「で、海までどうやって行くんだ?」

ここから海は、歩いたら一時間以上はかかるぞ。

女「歩いて行こうかなと思っているのだけれど」

……歩くのか。

男「ここから一時間以上かかるんだぞ?」

女「いいじゃないか。時間はたくさんあるしそれに、」

君とたくさん話したいから。

ヤツは微笑んでそう言った。

まあ、別に。

コイツがそうしたいならそれで、いいんだが。

……暑いだろうなぁ。

女「君と二人乗り、というのもいいけれど、イケナイことだから」

お前の言い方だと、ちょっと違うように聞こえるんだが。

男「じゃあ、行こうぜ。海までの道分かるか?」

俺はさっぱりわからない。

女「うん」

このあたりなら、わかるんだよな、コイツは。

人間ナビみたいなやつだ。

女「それでは、行こうか」

男「おう」

玄関を開けると、空気が歪むような熱風が一気に体を通り抜けた。

一週間の運命を表現してるかの如く、セミが力強く鳴いている。

ああ、夏だ。どうしようもなく夏だ。

女「ふふ、真っ盛りだね」

ヤツは珍しく麦わら帽子をかぶりだした。

特に気にしていなかったが、一応補足。

今日のヤツは白いワンピースを着ている。

が、スカートは短い。

ミニスカートのワンピース。

そういえば、制服も恐ろしく短い。

見たことはないが、ヤツ曰く『穿いていない』らしい。

まあ、さっきと同じく冗談だとは思うんだが。

そんなこんなで、今はヤツの提案通り、歩いて海に向かう。

男「暑いな」

俺も帽子くらい持ってくればよかった。

ジリジリと日差しが突き刺さってくる。

女「そうだね。ボクはムラムラするよ」

男「は?」

女「スクール水着が汗で密着して、しめつけられているんだ」

大げさに息を荒くさせて、自分の体を抱きしめるヤツ。

女「新しい世界が見える!」

男「戻ってこい」

隣にいたくないぞ、今のお前。

変な世界を開くな。

女「そうだね」

ヤツはなにもなかったように元に戻った。

暑いのに元気だな、こいつは。

汗はかいてるけど、笑顔のままだ。

女「そういえば、水とかは持ってきたかな」

男「あっ」

妹の相手をしてて、用意をしっかりしてなかった。

女「どうやら、持っていないみたいだね」

男「まあ、どっかで買えばいいだろ」

女「いや、その必要はないよ」

肩に掛けていた地味なバッグから、ペットボトルを取り出した。

中は透明。まあ、水だろう。

女「ちょっと、余分に持ってきたからさ」

そして、それを俺に差し出した。

おい……飲んだ形跡があるんだが。

男「……飲んだ?」

女「ふふっ、少しだけ飲んでしまった」

飲んだ、と言っても量はそれほど減っていない。

男「他にないのか?」

女「あとはボクの分だけだよ」

そっち口つけてないじゃないか。そっちをくれよ。

男「ちっ……」

まあ、しかたない。

こっちはもらう側だからな。

男「礼は言わないぞ」

女「それって、言ってるようなものだよね」

うるせえ。

女「この太陽の照りようだと、日焼けしてしまうね」

男「ああ、間違いなくな」

妹がとにかく焼ける体質で、毎回行く度に黒くなる。

でも、夏が終わるとだんだんと元に戻っていく。

不思議な体質だ。

女「際どい水着で、変な日焼け跡を残すのもいいね」

男「恥ずかしくて学校に行けなくなるぞ」

女「それを考えると、すっごく興奮するね」

こいつ、目がマジだ。

女「ボクはあまり焼けない体質でね」

男「ふーん」

女「だからなにも塗らないんだ」

確かに、コイツは白い。

妹は塗っても焼けるぞ。

人それぞれなのかもしれないな。

女「ふふっ、黒くなるのも、ちょっと元気があるように見えて素敵だけどね」

確かに、焼けた妹はいつもより活発に見える。

まあ、通常でもうるさいしやかましいけど。

女「白いのを塗っている女の子達……か」

男「おい」

なにを考えている。

真面目な顔で。

女「いやあ、海の人気のないところでお盛んなカップルもいるだろうから」

その手の上下運動をやめろ。

あと壁に手をつけて腰を振るのもだ。

女「そんなに見つめないでくれよ」

ヤツの顔が暑さで若干赤くなってるのがまたムカつく。

男「やめろそういうのは」

人に見られたらどうする。

女「どういうのならいいのかな?」

男「どういうのでもダメだ」

どうであれ誤解されかねん。

女「ふむ、君はどうやら見られているプレイは恥ずかしいみたいだね」

みんなそうだろ。

女「ふふ、一つ勉強になった」

メモを取るフリをするな。

そんな情報、誰が欲しがる。

その後もヤツの行き過ぎた下ネタトーク(これがいつも通り)が続いた。

海が遠くで、見える所までやってくると、様々な人の声が聞こえてきた。

女「人がたくさんいそうだね」

男「ああ」

女「ナンパされたらどうしよう」

男「え」

なんだ、そんなこと気にしてるのか、コイツは。

自意識過剰なやつだ。

女「君が」

男「俺かよ!」

逆ナンの心配をするな。

海に着くと、たくさんの人で溢れていた。

なんというか、やはりみんな考えることは同じなんだな。

プールもあるけれど、やっぱり夏は海、なのか。

女「思っていたほどではなかったかな」

男「そうだな。これなら案外泳げそう」

女「そうだね。一つお願いがあるんだけれど」

男「なんだ?」

女「ローションを塗ってくれないかな」

なにも塗らないんじゃないのかよ。

そして、なぜローションを持っている。

男「誰が塗るかよ!」

塗る必要はまったくないだろ。

女「塗る……ヌルヌル……」

またおかしな方向に行こうとしてやがる。

男「とりあえず場所確保するぞ」

女「性行為できる場所を、だね」

無視。

小さなレジャーシートを置いて俺たちはそこに荷物を置くことにした。

最近は盗難もあるから気をつけないといけない。

女「さて」

ヤツは荷物を置くなり、ワンピースをおもむろに脱ぎ始めた。

すかさず目をそらしたが、下に水着を着ていることを思い出して、やめた。

女「んー、いいね。素敵だよ」

気持ちよさそうに体を反らせ、準備運動を始めた。

男「……」

胸、小せえなぁ。

凹凸のない胸のあたりに名前と中学時のクラスが書いてあった。

……成長しなかったんだな。

女「む、どこを見ているのかな?」

準備運動を絶やさず、ヤツは俺の顔をじろりと見た。

大丈夫だ、別にお前の体に見惚れている、ということはない。

女「君の好みは、巨乳の年上だものね」

男「おうおう、そうだな」

俺もゆっくりと服を脱ぎ始め……

男「……は!?」

なぜ知っている!?

一瞬聞き流しそうになったぞ!

女「さて、準備完了!」

男「ちょ、ちょーいまて」

海に勇み足で向かおうとしているヤツを止める。

女「おや、ボクを精子させるなんてどういうこおかな?」

男「制止だ」

間違いにもほどがある。

お前、仮にも女の子なんだからやめとけよ……。

女「それで、どうしたんだい?」

体を伸ばしながら、俺の方へとやってくる。

男「なぜ俺の好みを知っているんだ」

女「ああ、本当に好きなんだね」

なっ!?

鎌かけられただと!?

女「君がよく目を奪われている女の子を見ればすぐにわかることさ」

ニコッと笑って、俺の心をグサリと貫いた。

音も立たぬ、大ダメージ。

サイレントキルだ。

恥ずかしい。

聞かなきゃよかった。

やっぱり、胸とか見てるのって、バレてんだな……。

第三者にバレてるのが一番キツい。

見られてる本人の場合、自意識過剰で済ませたりする……。

いや。

もうこういう考えが既にクズだな。

女「準備はできたかな?」

男「ああ、大丈夫だ」

心は折れていたが、その間に服を脱いでいた。

女「ふむ、トランクスか。モッコリしないね……」

本気でガッカリするな。

男「何を求めてやがる」

女「もちろん君のモッコリだよ」

正直だな。

女「それで準備貞操はした?」

体操だろ。

男「してない」

女「もとい、前戯」

男「もうツッコまないぞ」

女「ボクは君に突っ込んでもらわないとイキたくてもイケないよ!」

男「やめろ!」

大声で言うな!

男「準備体操は今からする! 泳ぎたいなら先に行ってこい!」

女「先にイってこい?」

なぜいつもそうなる!?

女「え、えっと、とりあえずイジればいいのかな?」

股のあたりを自分で見るな!

男「もういい! そこで立ってろ!」

女「勃たせるものがない」

ちげえ!

男「待ってろ!」

女「精子」

男「静止だあっ!」

気が狂いそうになる!!

海に入るまでにバカみたいな会話で汗をかいちまった。

さっきヤツからもらった水を飲む。

女「じゃあ、先にイって待ってるね」

結局字を変えないまま、ヤツは波打つ海に走っていった。

なんだか急に行ってしまったが、まあいいだろう。

男「……ん」

そういえば、間接だな、これ。

……まあ、気にしてないけどな。

準備体操を終え、俺も海に向かった。

女「あははっ」

波打ち際で一人できゃっきゃしていやがる。

寂しいヤツだ。

いや、むしろたくましいと言うべきか。

女「あ、来たね」

目立つように手を挙げて、俺を呼んでいる。

男「おう」

それに返事をすると、周りの他人が一斉にこちらを見てきた。

男「!?」

なんだ、この空気。

そんな中、ヤツは俺の方へ向かってくる。

ああ、なるほどな。

あいつの水着がスクール水着だからだ。

そりゃあ海に泳ぐのにスク水なんて場違いだからな。

女「ねえ……」

ぼそっと、耳の近くでヤツが呟いた。

流石のコイツも、驚いたか?

女「色んな人に見られて濡れそうだよ、ボク」

ベクトルが違った!

見られることに、喜びすら感じていやがる!

男「こんなことで濡れるな」

女「え、海水で濡れるってことだよ?」

『色んな人に見られて』必要ねえだろ!!

男「お前、本当に強心臓だな……」

女「そんなことないよ。だって……」

何か言うのかと思うと、そこで閃いたような顔をして、

女「さ、お兄ちゃん早く遊ぼっ」

と、のたまったのだ。

男「はぁ!?」

無邪気な笑顔を見せて、ヤツは俺から走って離れた。

なるほど、中学生の妹と遊んでいると思えば周りも自然と……!!

ってなるわけないだろ!

もっと変な目で見られてるし!

スク水で海に来る妹がいるか!!

その後。

泳ぎが驚くほど上手いヤツに翻弄されつつ、遊ぶんだ。

ヤツが持参したビーチボールはまともに空気を入れる気がないようなので使わなかった。

空気入れるところ舐めるな。あと吸うな。

遊んでいる途中、

女「残念ながらスクール水着だからポロリはないよ」

と、ドヤ顔で言っていた。

いや、それ以前の問題だろ。

ポロリできる胸なんかないだろ。

時を忘れて遊んでいると、腹が減り始めた。

時間もちょうど昼飯頃になっていた。

女「海の家でご飯を食べようよ」

目をキラキラと輝かせて、人だかりのできた建物を指さした。

男「海の家? 高いし大して美味しくないし量も少ないだろ」

ちっちっち、とヤツは人差し指だけを横に振った。

女「ふふ、それがいいんじゃないか。お腹に残るものよりも、思い出に残るものだよ」

満面の笑みを俺に向けて、建物に向かうヤツ。

男「おい」

女「ん?」

俺の声に首を傾げている。

男「財布取りに行くぞ」

金がなきゃ、思い出も残せないぞ。

レジャーシートをしまい、とりあえず荷物を全部持っていくことにした。

大したものは持ってきてないしな。

海の家にできている人だかりに近づいてみると、圧倒的にオトコが多く、異様な風景だった。

女「男の人がたくさんいるね」

男「そうだな」

アロハシャツのサーファー風のオトコの店員が俺たちの席にヌルそうな水を置き、注文を聞いた。

ヤツがだんまりを決め込んでいたので、俺が仕方なく焼きそばを二つ頼んだ。

店員が余所に行くと、テーブルに膝を手をつきながら体を前傾させながらヤツは、

女「次の予定なんだけれど」

と、小さな声で言った。

男「顔が近い」

女「ごめん、わざとだ」

わざとかよ。

女「夏休みはまだたくさんあるけれど、間を置かずどんどん楽しみたいと思ってるんだ」

男「ふむ」

女「だから、明日はカラオケにでも行こうかなと思って」

男「カラオケ!?」

夏関係あるのか!?

女「ダメかな?」

カラオケ……。

男「イヤだ」

行きたくない。

女「おや、どうしてだい?」

コイツはわかっているくせに。

こんな言い方をする。

俺は歌が下手で、どうしようもない。

過去に一度、コイツと一緒に行ったことがある。

ヤツは歌が果てしなく上手い。

自分が恥ずかしくなるくらいに。

男「音痴だからだ」

女「そうかな」

なんだよ。

女「君は下手ではないと思うよ。ただ、ちょっと声が震えているだけで」

それに。

女「ボクは君の歌、大好きなのだけれど」

と、真剣な眼差しでヤツは言った。

嘘つけ。

女「まあ、君が嫌なら、強制するのはいけないよね」

前傾していた体をしょんぼりしながら元に戻して、さきほど置かれたぬるい水をちょこっと飲んだ。

急に静かになって、なんだか空気がどんよりとした。

周りは俺たちと違って、活気づいている。

雰囲気に耐え切れず、俺の方が折れた。

男「……わかった。行こう。その代わり俺の下手な歌に付き合ってもらうからな」

女「……本当かい?」

ここまで言って嘘なわけないだろ。

男「本当だ。……俺の歌を笑うなよ?」

女「もちろん。笑うわけがないよ」

ヤツは嬉しそうに笑った。

女「あ、笑ってしまった」

いや、今は別にいいけどな。

女「あ、あとね」

持ってきたバッグからチラシのようなものを出した。

女「夏祭りがあるらしくて」

ちょいちょい、とチラシを指さしてアピールしている。

男「なるほど。これに行くと?」

女「うん。まだ先のことなんだけれど」

妹が行きたがりそうなイベントだな。

男「花火もあるのか。盛大な祭だな」

女「花火は今年からみたいだよ」

ああ、道理で聞き覚えがないわけだ。

女「夏祭りの間、他にも色々なことをしようよ」

うむ。充実した夏休みになりそうだ。

男「いいんじゃないか」

コイツにしては、珍しく良い提案だった。

女「夏休み中に初体験するのもいいね」

男「おい」

一言で台無しだ。

女「え? 君はしたことがあるのかな?」

男「何をだ」

女「これだよ、これ」

ヤツは自分の唇に指を当てて、離した。

男「……?」

女「キス、だよ」

急にわけのわからん話に発展した。

男「……」

女「その様子だと、したことはないみたいだね」

確かにしたことはない。

女「良かった。ボクもしたことがないんだ」

ニコッと笑った。

女「じゃあ、二人で初体験といこうか」

男「なんでそうなる」

女「ふふ、一夏に初体験しておくのも、一興だと思うけれど」

バカ言うな。

女「そんな目で見ないでくれ。まるでバカと言わずして言われているようだ」

現に思ってるけどな。

女「まあ、とにかく」

ヌルい水をゆっくりと飲みきって。

女「とっても楽しみだね」

俺の目をじっと見て、ヤツは微笑んだ。

どうやらキスの話はおしまいらしい。

見つめられているのもなんだか変な気分なので、とりあえず周りを見渡した。

一人の店員が焼きそばを持ってこちらに向かっている。

さっきの店員ではない……ん……?

あれは、もしかして……。

?「はい、焼きそば二つお待たせしましたー!」

元気よく声を出して焼きそばを置いたのは、さっきのサーファーみたいな店員ではなく。

?「あれ……先輩!?」

高校の後輩であった。

男「よ、よう後輩」

別に中学の後輩というわけではない。

帰宅部である俺の、唯一の後輩。

文化祭実行委員で知り合った後輩である。

夏休み前にに文化祭がある高校も、珍しいよな。

後輩「わー先輩! こんなところで出会うなんて運命を通り越して偶然です!」

それは良い表現なのだろうか。

男「どうしたんだ、こんなところで」

まさかこんなところで出くわすとは。

後輩「実は、私のお友達のヘルプで来てるんです! だから、デリバリーヘルプです! デリヘルです!」

男「ちょっと声量を落とせ」

略すな危険。

後輩「ふふふ、嬉しすぎて私、胸がはちきれそうです!」

後輩は嬉しそうにピョンピョンと体を弾ませる。

さらに、彼女の胸もそれに乗じて弾む。

ああ、なるほど。

オトコがたくさんいるのは後輩目当てのやつばかりだからか。

童顔で巨乳で、学校でも人気だからな、後輩は。

俺たちの席に長居し過ぎたためか、さっきのサーファー風の店員に呼ばれている。

後輩「あっ、ごめんなさい。先輩との蜜月の時は終わりみたいです」

勝手なことを言うな。

後輩「また、夏休み中に連絡します! 遊びましょうねー!」

太陽のように明るい笑顔で、力強く手を振って、後輩は仕事に戻った。

男「さて、食うか」

案外美味しそうな焼きそばだ。

女「ずいぶんと、胸を見ていたね」

男「え」

思い返すと、確かに胸を見ていたかもしれない。

いや、あれはその、ほら。

無意識に見ちまうというか。

女「胸が好きだね、君は」

ニヤリといやらしい顔をしてやがる。

手を合わせて「いただきます」。

ヤツはしっかりとした声で言って、割り箸をわった。

俺も手を合わせて心の中でヤツと同じことを言って、割った。

女「うん、うん……!」

ずるずると美味しそうに頬張っている。

女「んー! 普通!」

親指を立てて、高らかに言った。

男「失礼だぞ」

女「お世辞にも美味しいとは言えないから」

正直者め。

普段はひねくれているくせに、こういう時だけ正直なやつだ。

女「ほら、君も食べなよ」

促されるまま、俺もずるりと焼きそばを口に持っていった。

男「! こ、これは……!」

美味しく……ない。

不味くも……ない。

なんとも言えず、コイツの言葉を借りると、普通だ。

女「ね?」

火を見るよりも明らか、といったような顔である。

ああ、お前が正しかったよ。

量もそれほど多くなく、ただ金だけを無駄に支払った気がしつつ、俺たちはごちそうさまをした。

そして、また海に突撃した。

日が傾きはじめて、歩いて帰ることを思い出し、すこし憂鬱になった。

けれど、遊び疲れるってのは、なかなか良い感覚かもしれない。

いつもは時間を持て余しているうちに夏は終わり、宿題はできていないことが多かった。

ヤツと出会うまでは。

……まあ、この話は長くなるので言わないでおこう。

女「夕日、綺麗だね」

そっと、彼女はそう口にした。

俺も頷いて、しばらく夕日を眺めた。

……この状況、なんだかむず痒い。

帰りになってさらに俺のド肝を抜いたことといえば、ヤツの着替え方である。

あの、体を隠す小学生などが使う巻きタオルを持ってきていたのである。

女「スーパーマン」

と、一番上のボタンだけをつけて、仁王立ち。

ガキか。

男「じゃあ着替えてくるぞ」

女「それはズルいよ」

男「は?」

いきなりどうした。

女「ボクはここで着替えるんだ。だから、君もここで着替えないと」

その理屈はおかしいだろ。

男「俺はそんなタオル持ってないんだぞ」

女「タオルを巻けばいいじゃないか」

と言って、ヤツはタオルのボタンを全てつけた。

俺のはボタンはついてない。

あと、巻いたら拭けないだろ。

男「付き合ってられん。行ってくる」

女「ふふっ、やっぱりね」

男「って、ついてくるなよ!?」

何を平然とついてきてやがる!?

女「君の着衣を見ようと思って」

立派な変態だ。

男「着替えて待ってろ」

巻きタオルつけたままついてくるな。

女「今、この巻きタオルを取ると、大変なことになってしまうよ」

どういうことだ。

女「ほら、あそこを見てくれ」

顎で指示した方を見ると、荷物がある。

それがどうし……あれ。

なんだあの紺色の物体は。

あれは……。

男「!?」

スクール水着!?

ごめんなさい。寝ます。

オチまで話はまとまってるので、もし良ければ保守お願いします。

朝に書けたら書きます。

明日は半日家にいないので、携帯から少しずつ書けたらと思います……。
ここまで見ていただきありがとうございました。

保守

思ったより寝てしまった。
自分で保守しなくても良かったんだね。

ありがとうございます。
今からPC開けて行けるところまで行きます。

男「お前……!」

女「全裸です。きゃっ☆」

きゃっ☆ じゃねええええ!

男「戻れ、早く!」

女「おや、どうしてかな?」

巻きタオルを内側からワサワサするな!

こうなったら力づくでも……。

女「その手はなんだい?」

男「ッ……!」

触れない……!!

コイツは今、全裸だ。

変にどこか触ったりできない。

女「ふふ、どうしたのかな?」

肩あたりなら平気だが、それでも、だ。

女「いいよ、君にならどこを触られても感じるから」

感じるな!

この言い草だと、どこかしら触ったら声を出しそうだ。

さらに触りづらいじゃねえか。

こうならヤケだ。

男「俺が悪かった。頼むから戻ってくださいお願いします」

俺は、意地を捨てて、何も悪くないのに深々と頭を下げた。

女「ふふ、了解」

そういうと、ヤツは突然巻きタオルのボタンを外した。

男「は!?」

そして、巻かれたタオルを外したのである。

男「ッ……! ……?」

ヤツの姿は、既に衣服を着ていた。

女「もう、着替えているんだけどね」

ニッコリとして、俺は騙されたのであった。

はあ。

勘弁してくれ。

男「ただいま」

怒濤の夏休み初日に学校以上に疲れた体で俺は帰宅した。

妹「……おかえり」

ひょこっと、妹が居間につながるドアから顔を出した。

男「ただいま」

ん、なんか機嫌が悪いな。

海に連れて行ってやらなかったのが、相当嫌だったのだろうか。

男「ごめんな、今日は」

とりあえず謝っておこう。

妹「別に、大丈夫だよ」

ん?

靴を脱いで、妹に近寄ると、ゆっくりと距離を置かれる。

な、なんだ?

男「お、おい?」

妹「き、気にしないで」

俺が一歩近寄ると、妹も一歩離れる。

いや、気にする。

男「ど、どうしたんだよ」

こんな反応されて気にしないなんて無理だぞ。

グッと妹に近づく。

すると、目を見開いて俺をまじまじと見て

妹「な、なんでもないからー!!」

と言うや否やダッシュで二階の自分の部屋へ行ってしまった。

な、なぜだ……めちゃくちゃ引かれている。

やっぱり連れていってやればよかったか……くっ。

妹に避けられて、落ち込んだ夜は過ぎて。

次の日のことである。

女「やあ」

玄関を開けるなりヤツはアクビをした。

女「ふふ、昨日の疲れがまだ残っているみたいだ」

男「ちゃんと寝たのか」

女「うーん、あまり」

そうか、と返事してヤツの顔を見る。

本当に、日焼けしないんだな。

昨日と変わらず白い。

女「おや、ボクの顔に何かついているかな?」

男「白いな」

女「え、誰かの体液がかかったのかな」

取り違えるな。

男「そうじゃなくて、肌! 焼けてないんだな」

女「あ、そっちか」

そっちしかねーよ。

女「たくさんすれば少しくらいは黒くなると思うんだけど」

男「半日遊んで焼けないんじゃ無理じゃないか」

それ以上やっても結果は同じかもな。

女「そうかもね」

ニコッと笑って、背を向けながら、顔はこっちに向けて。

女「それじゃあ、行こ?」

カラオケに行くのは久しぶりだ。

コイツと行ったのが俺にとって前回になるわけだが。

ああ、既に緊張している。

受付から部屋の番号の書いてある紙を渡される。そして、その番号の部屋に俺たちは入った。

ヤツは早速マイクを持って、

女「マイクを持つとついついやってしまうね」

男「擦るな」

あと股間に見立てるな。

入るなり何をしてるんだお前は。

そういうのは女子がやるもんじゃない。

女「それにしても、ドキドキするね」

男「何が?」

女「密室に二人きりだよ?」

と言って、ヤツはゆっくりと俺との距離を縮める。

女「変なことになるかもしれない」

どんどん近づき、体が触れ合いかける。

既に息はかかっている。

男「暑苦しい」

俺はヤツの頭にちょこんとチョップをかます。

女「んっ……もっとぉ」

男「変な声を出すな」

叩かれて喜ぶとはなんというやつだ。

女「急に手を出すなんて」

服をズラして肩を見せるな。

男「お前が悪い」

女「『お前が悪い……そうやって誘惑するから!』」

男「妄想やめろ」

タチの悪い妄想だ。

女「ああ、襲われる! 服を脱がれ押し倒され……!」

男「やめろソファーで暴れるな!」

パンツ見えるぞ!

動きまくるヤツを止めようと近づくと、

女「本当に近づいてきた!」

近づいちゃ悪いか?

女「ああ、ダメだよ……こんなところで淫らだよ……」

男「ぐっ……もういい!」

俺はヤツを後目に曲を入れた。

女「おや」

ピタリと動きが止まる。

男「……時間がもったいねーから歌うぞ」

女「……うん、君の言う通りだ」

ヤツはしっかりと背筋を伸ばして。

俺のボロボロな歌を聴いていた。

できれば恥ずかしいのでもうすこし姿勢を崩して聴くなら聴いて欲しい。

すいません、出ます。

携帯からゆっくりと投下していきます。

多分普通に1時間おきに投下になるかもしれないので、もしよろしければこまめに保守していただけると嬉しいです。


本当にごめんなさい。

一曲目終了。

ヤツはニコニコしながら拍手を送ってきた。

逆に嘲笑の方がマシな気がする。

女「やっぱり君の声は素敵だよ。やっぱり来て良かった」

男「うるせー」

俺は酷く落ち込んだ。

下手だ、俺。

女「次はボクの番かな?」

男「ああ、そうだ」

ああ、俺は更に落ち込むぞ。

こいつの歌唱力にひれ伏すのだ……。

歌い始めると、ヤツの雰囲気は一変して。

コイツは、コイツでなくなる。

いや、ヤツに変わりないんだが。

歌い終わると一息ついて、

女「ふう、恥ずかしかった」

舌を少し出して、照れたような顔をした。

男「言葉もない」

女「誉めてる?」

男「ああ」

この上なくな。

俺はヤツの歌を気にせず歌いまくった。

下手でもとにかく、だ。

美声と汚声が順々に聴こえる。

もちろん美声はヤツで、汚声が俺だ。

喉が嗄れようがお構いなく。

今日一日を楽しむことにした。

そんな俺を見て同調するようにヤツもノリノリになる。

尻を振るな。

腰も振るな。

振るなら左右に振れ。前後に振るな。

歌い続けていると、突然ルームの電話が鳴った。

もうそろそろおしまいか。

女「ちょうど歌い終わったし、ここでお開きにしようか」

男「ああ、そうだな」

女「くぱぁ」

男「なんだ」

急に変な擬音を発した。

女「お開き」

くだらん。

カラオケ店に出ると、ヤツは喉をさすった。

女「いやあ、喉が痛いね。イラマチオされたらどうなるんだろ」

いきなりストレートに言うな。

女「試してみないかい?」

桃色のホテルを指さすな。

男「晩飯時だな、何か食うか?」

女「ボクを食べちゃう?」

男「……じゃあ帰るか」

女「冗談だ。でも、妹くんがご飯を作ってるんじゃないかい?」

あ。

多分作ってるな。

女「その顔だと、きっと作っているね」

男「ああ、多分な」

女「じゃあ、帰ろう。明日もあるんだから」

男「明日?」

明日も、どこか行くのか?

女「うん」

夏休みは始まったばかりだっていうのに。

こいつはどんどんと予定を入れていくな。

まあ無計画な俺も俺だが。

女「こうやって、きつい穴のものもあれば」

男「……」

女「こんな、ゆるゆるで指がすぐに入ってしまうものもある」

男「おい、その言い方やめろ」

さっきと話は変わって、次の日のことである。

俺達はボーリングにやってきた。

女「穴があるとついつい、ね」

指を入れたり出したりを繰り返すな。

ヤツの言葉を遮るように、俺は二投目を放った。

……おっ、スペアだ。

男「ほら、お前の番だぞ」

女「おっと、つい穴の挿入に気を取られていた」

挿入とか言うな。

女「おや、スペアじゃないか。凄いなぁ」

ボールを持ちながらうんうんと頷くヤツ。

男「ほら、早く投げろよ」

女「うん。だけど、その前に」

男「ん」

なんだ?

女「ゲームの合計のスコアが勝った人の言うことを聞くのって、どうかな」

と、こちらを向いて提案してきた。

男「……別に構わんが、下ネタは無しだぞ」
女「うん、もちろん……さ」

男「なんだその間は」

こいつ、何か企んでたな。

女「あはは。冗談さっ」

その言葉と同時に、ゆっくりとボールを放った。

それはしっかりとした軌道で真ん中を通り、全てのピンを倒した。


女「おや、これはハッサムかな?」

男「ストライクだ」

進化させるな。

女「あるさ、さっき、約束しただろう」

男「……」

覚えてるけども。

なんつーか、恥ずかしい。

スコア数は言わないが、こてんぱんに負かされたことが、恥ずかしい。

勝ち目なんて最初からなかったというほどの差だ。

男「わかったよ、なんでもやってやる」

女「そ・れ・じゃ・あ……」

ヤツは俺の方に近づいて、

女「今度、銭湯にでも連れていってよ」

俺の予想とは遥かに違うものだった。

男「そんなんでいいのか?」

女「んーじゃあ、そこで一線を越えようか」

まさか。

男「わかった。ただし銭湯の方だけだからな」

女「もちろん、混浴だからね」

なにがもちろんだ、なにが。

ボーリングは昼ちょっと過ぎに終わり、俺達は、俺の家で宿題をすることにした。

俺の家の前に着いた頃、ヤツはハッとした顔をして、

女「勉強道具持ってくるから、少し待っててくれ」

そう言って、ミニスカートをヒラヒラとはためかせ、ヤツは一度家に戻った。

それにしても、結構速い速度なのにまるで見えないな、パンツ。

後輩「うふふ、先輩エッチー♪」

男「!」

今帰ってます。


帰ったらすぐに続きを書きますのでもうしばらくお待ちを!

声の方を振り向くと、口を手で抑えてニコニコしている後輩だった。

男「お前、なんでこんなところに」

後輩「先輩の匂いを頼りにここまで来ちゃいました!」

見え透いた嘘だ。

男「……いつからつけてた?」

後輩「ついさっき見かけたので、尾行してたのです!」

屈託なく笑い、彼女は手を合わせて、

後輩「あのですね、先輩、明日は空いてますか?」

男「明日? ……まあ」

空いてるけど。

後輩「よかった、じゃあ私と付き合ってください! ……あっ、つ、付き合うってそういうことじゃなくて……」

男「わかってる。どこに行くんだ?」

後輩「もうすぐ夏祭りじゃないですか?」

ギュッと手を握られ、

後輩「だから先輩と浴衣を買いに行こうと思ったんです♪」

なるほど。

浴衣、か。

そういえば、夏祭りには浴衣という醍醐味もあったな。

ん、でも待て……。

後輩「じゃあ、明日先輩の家に行きますね!」

男「おう」

夏祭りって、アイツと……。

男「ちょ、ちょっと待っ……」

後輩「それではー!」

一昨日と同じく、元気よく手を振って、後輩は走り去っていった。

……まずいぞ、これは。

浴衣を買うってだけならいいが。

多分、後輩は俺と夏祭りに行くつもりなのだろう。

女「はぁはぁ……お股セックス」

下品な言葉と共に、ヤツは戻ってきた。

女「……ふふっ、わざわざ外で待っていなくてもよかったのに」

男「別に、待ってたわけじゃねえ」

というか、早くないか。

まだそんなに経ってないと思うんだが。

女「じゃあ、後輩くんと喋っていたのかな」

男「!」

女「ずっと尾行していたからね、彼女」

気づいてたのか、コイツ。

女「それじゃあ、やろうか」

男「おう……」

所変わって俺の部屋。

ついに、夏休みの宿題大掃除が幕を開けた。

……が。

憂鬱でしかたない。

海に行って、カラオケ行って、ボーリングの後に宿題。

宿題、やりたくねー……。

すいません、少々お待ちを。

男「だめだ、わからん」

女「まだ始めて数分だよ?」

男「とか言いつつ、お前は何をしてるんだ」

宿題やってるようには見えんのだが。

女「君のお部屋探索」

男「真面目にやれ!」

女「ボクはいたって真面目さ! パンツ発見!」

男「そっちに集中するな!」

あとまじまじと見るな! 触るな!

パンツは一昨日も見ただろ!

女「これ、君のニオイがするよ……!」

ニオイを嗅ぐなー!!

変態を家にあげるのは、本当に大変だ。

大変な変態だ。

ヤツが嗅いでいるパンツを取り返した。

女「あっ」

名残惜しそうな声を出すな!

女「まだ口に含んでないよ」

何を仰る変態さん!?

男「誰がさせるかよ!」

同級生にパンツを口に含まれるってどんな状況だ!

何も魅力を感じねーよ!

女「わかった、じゃあ一舐め!」

男「シャレにならねえ!」

宿題もやらずになんだこの展開は。

もうわけがわからん!

しかし、まあ。

普通に宿題をするのもつまらないし。

別にいいか。

……いや、宿題に手を出してないのはよくないがな。

あれ、俺のやる気が宿題にちょっと傾いた?

……アイツ、やるな。

女「それじゃあ、始めようか」

男「なぜ脱ぐ」

宿題を始めるんじゃないのか。

ナニを始めようとしてるんだ。

女「暑いからね」

ちゃんと下に何か着ているんのなら、文句は言わない。

女「んっ……よいしょっ」

薄めのタンクトップだ。

こうやってみると、小柄な少年みたいだ。

胸は……うん。

女「いやん」

自分で脱いだくせに恥じるな。

女「さて、と」

セミロングの髪を結び、小さいポニーテールにした。

……別に可愛いとは思ってない。

女「わからないことがあったら、聞いてくれ」

男「既にわからん」

女「どれどれ」

と言って、俺のわからない問題を覗いた。

女「これ、一年生の時の問題だよ」

そうなのか?

へ、へえ……。

な、情けないな、俺……。

女「で、でもここは先生もしっかり教えてなかったからね」

男「でも、お前はわかるんだろ?」

女「うん。えーっと、ここなんだけど」

俺の隣にちょこんと座り、解説を始める。

教えてもらう時は、意図せず密着度が凄い。

女「……ってことなんだ。わかった? ……どこを見てるんだい?」

男「ああ、すまん」

ヤツ自身、密着していることに気づいていないみたいだ。

女「ちゃんと見てくれないと困るな」

ふくれっ面はとても近い。

どうやら解説しているのに見ていないことを怒っているようだ。

そりゃそうだよな。俺でも怒る。

女「ボクを」

男「お前かよ!!」

解説じゃねーのかよ!!

女「こんなに露出しているんだから、見て欲しい!」

男「見るか!」

露出狂か!!

女「脚はいつも出しているけれど、腕は珍しいから」

そうだよな。いつもミニスカだ。

男「そういや、どうしていつも短いスカートはいてるんだ」

気になっていることを聞いてみる。

女「スリルがあるから、かな」

男「は?」

女「ほら」

ヒラリヒラリとスカートをはためかせて、

女「見えるか見えないか、興奮するだろう?」

ああ、そうだった。

こいつはこういうやつだったな。

さっきも言ったじゃねーか。

変態なんだった。

男「見えたらどうすんだ」

はためかせるのはそろそろやめろ。

女「今日は白です」

聞いてねーよ。

女「ノーパンでも良かったんだけどね」

男「できればいつでも穿いててくれ」

嘘でも本当でも、とりあえず言っておこう。

見られる前に、な。

女「君がそう言うなら」

とヤツはニッコリと笑った。

女「じゃあ、明日はしまパンだね」

男「いらない情報をありがとよ」

女「水玉も捨てがたいね」

パンツの柄の話をおおっぴらにするな。

女「熊さんもいいかもね」

どこの子どもだ!

俺の妹か!!

まあ、こんな具合で宿題が終わるはずもなく。

女「今度に持ち越しだね」

男「そうだな」

軽く伸びをすると、自然と欠伸が出ちまった。

男「ふわぁ……」

女「ふふ、お疲れ様」

お前こそ、な。

女「じゃあ、また明日」

男「おう」

ヤツの投げキッス(もちろん避けた)をしながら帰る姿を見送り、玄関に入ると、

妹「家まで送ってあげればいいのに」

と、妹に睨みつけられた。

男「そこまでする筋合はない」

妹「うわー、お兄ちゃんひどっ!」

昨日とはうってかわって普通の妹。

男「そういえば、どうして昨日は慌ててたんだ?」

お兄ちゃん、めちゃくちゃヘコんだぞ。

妹「そ、それは……別にいーじゃんっ」

顔を赤くして、妹は台所に向かった。

歯切れが物凄く悪いんだが、まあいいか。

男「……あ」

さっきヤツは『また明日』って言っていたな。

明日は後輩と浴衣を買いに行くんだった。

すっかり忘れてたな。

あとで電話しておこう。

妹「はーい、今日は肉じゃがです」

男「おう」

妹の得意料理、肉じゃが。

今日のは出来がいいじゃないか。

男「美味い」

妹「でしょー?」

ニヒヒと笑う妹。

男「よし、俺の嫁になれ妹!」

と、冗談を言う。

妹「え……」

男「……?」

ありりー?

まさか、外したか?

妹「な、何言ってんの……バカ……」

……あれ、なんだこのオチ。

もっと笑い飛ばしてくれないと困るんだがな。

妹よ、そんな顔を隠すのはやめろ。

言ったこっちが恥ずかしい。

男「……こほん」

一息置いて、俺はゆっくりと「ごちそうさま」と手を合わせた。

妹はさっさと皿を持って行ってしまった。

……悲しくはない。

男「電話するか」

ヤツに、電話しないと。

女『イフイフ』

男「……は?」

電話が繋がるやいなや、よくわからん言葉を言い放つ。

女『もしもしって、ことさ』

ああ、なるほど。

if if、か。

そんなことはどうでもいい。

男「明日のことなんだが」

女『ああ、言ってなかったね。明日は……』

男「いや、そうじゃなくて」

女『え?』

キョトンとした声。

男「明日はその、用事があるから遊べそうにない」

女『……』

少しの沈黙。

女『……君に用事?!』

なんだその驚きは。

女『失礼、まさか君に用事ができるなんて……』

これは明日雪が降るね。

とヤツは電話越しに笑った。

どれだけ俺をかわいそうなやつだと認識してるんだお前は。

男「ってことだ。だから明日は……」

女『遊べない、だね』

男「……そうだ」

急に口を挟んできやがった。

女『明日は何の用事があるんだい?』

う。

まさか聞いてくるとは。

男「別にいいだろ、そんなことは」

女『君のことは知っておきたいのさ。ホクロの場所までね』

ファンか。

男「……後輩と、ちょっとな」

女『ああ、なるほど』

納得したようだ。

女『君は本当に、後輩くんに好かれているね』

男「ああ、そのようだな」

文化祭実行委員ってだけの繋がりなんだがな。

女『君にはそういう力があるのかも』

男「んなわけあるか」

あったらどれだけいいか。

女『うん、わかった。明日は君に出会わない程度に行動するよ』

なんか行動範囲を制限させちまったようだ。

そこまでしなくてもいいんだが。

女『では、そろそろ切るよ。まだご飯を食べていなくてね』

男「ん、そうなのか?」

女『言っていなかったかな、夏は……』

と、ここで。

ヤツの言葉は止まった。

女『……いや、なんでもない。それじゃあ』

えっ。

男「ちょ、ちょっと待て……」

電話はあちらから、切られてしまった。

男「……なんだってんだ」

途中で言うのをやめ。

しかも、強引に切ってきた。

男「……」

歯切れが、悪い。

妹にしても、アイツにしても。

ちゃんと言えよな……。

あーなんかうやむやにされて気分があまり良くない。

さっきのはなんだったんだ。

雲がかかったような気持ちだ。

オマケに雷さえ鳴ってる。

男「……風呂だ」

風呂でスッキリするしかない。

体の汚れは心の汚れ、だ。

……多分。

俺は風呂が好きだ。

気分が悪くても風呂に入りたい。

シャワーでは物足りない。

というわけで今、風呂場に向かっている。

さっきのことなど忘れて、ウキウキして

男「風呂ー!」

と、開口一番。

妹「へっ!?」

妹に遭遇。

妹「きゃ、きゃあああああああ!!」

なんでこうなるんだ……。

妹に土下座する日が来るとはな。

……もうこれ以上のことは言わない。

風呂から出てきた俺は、清々しい気持ちにはなれなかった。

さっきまでの忘れていた気持ちは、体を拭いている間にどんどんと戻ってきた。

アイツが言いかけた言葉は、なんだったのか。

男「……考えても答えは出ない、か」

男「さて、と」

明日に備えて寝るとするか。

ピンポーン。

そんな音が小さく聞こえた。

妹「お兄ちゃーん」

男「ん……」

妹「お兄ちゃんー!」

なんだ、妹よ。

朝っぱらから元気よく俺の名前を呼んで……。

妹「お兄ちゃん! 後輩さんが来たよ!」

ごめんなさい、寝ます。


昨日は保守していただき本当にありがとうございました。

今日も外に出てしまうので、携帯から細々と書いていくことになりそうです。


できるだけ、早く帰ろうと思うので、良ければ保守、お願いします。

それでは、ここまで見ていただきありがとうございました。

男「!」

寝ぼけていた感覚は一気に覚め、俺はベッドから起き上がる。

時間を見ると、もう十時。

男「妹、なんで起こしてくれなかったんだ!」

と、少々投げやりに言ってみる。

俺は妹に起こしてなどとは言ってないのに。

嫌な兄だ。

妹「私に言わないでよ! それに……」

それに?

妹「無許可でお部屋に入るなって言ったのは、お兄ちゃんでしょ」

男「あ……」

そういえば前にそんなこと言ったな。

妹「私、八時くらいにドアの前で起きなよって言ったもん」

え、そうなのか。

男「起こす時は全然部屋の中に入っていい。ごめんな」

妹「謝ることないよ。私の声が小さかったのかも」

妹……なんてイイヤツなんだ!

妹「お味噌汁とか温めるから、その間にお兄ちゃんは身だしなみを整える!」

男「えっ」

妹「髪の毛ハネちゃってるよ?」

触ってみると、重力に逆らうように毛先が真上を向いていた。

男「教えてくれてありがとな。直してくる」

妹「はいはいー」

あまりクシを入れたりはしないのだが。

ハネ方が尋常ではなく、このまま外に出たら確実に笑われるような感じであった。

男「昨日は髪乾かしてねたはずなんだがなぁ」

しかし、一度入れただけですんなり直った。

ホッとして、次は顔を洗う。

ふう。

案外すぐに終わってしまった。

そして鏡を目線を移すと。

後輩「はわわわ……先輩のパジャマ……」

男「ぬおっ!?」

後輩「はっ、おはようございます、先輩っ♪」

男「な、なんでお前……」

後輩「あ、あの可愛い可愛い妹さんにあげてもらったんです」

だからと言ってなぜここに来た。

後輩「先輩のパジャマ……というか、パンツ」

男「見るな」

後輩「そうですね! ヨダレが止まらないので見るのはやめておきます!」

ヨダレもやめろよ……。

まさか、夏休み中に女子にパンツ姿を見られるとは。

アイツもコイツも。

もっと恥じれよ。

なんでどっちも無反応なんだよ。

後輩「先輩、着替えますか? 見ててもいいですか?」

男「着替えは普通見ないもんだぞ」

後輩「えっ、見ちゃいけませんか!?」

当たり前だ。

妹「お兄ちゃん……ご飯できたよ」

妹は、パンツ姿の俺を見るとすかさず目をそらした。

これが普通の反応だぞ、後輩よ。

男「ん、了解」

そういうと、妹は早足で居間に行ってしまった。

後輩「もしかして、妹さんがご飯作るんですか?」

男「ん、まあな」

後輩「う、羨ましい! 私も先輩に毎日お味噌汁作りたいです!」

男「いつか作ってくれ。俺は着替えるから」

後輩「はーい♪」

……。

男「だから出てけよ! なんで見る気満々なんだよ」

後輩「う、空気になってたのにバレちゃいました」

なれるか!

とよくわからんコントをやった後。

男「ごちそうさまでした」

妹の美味しい朝ごはんを。

後輩「えへへ……」

後輩にガン見されながら食ったのであった。

男「諸々の準備をしたいから玄関で待っててくれ」

後輩「はい! 漏れ漏れの準備ですね!」

垂れ流しかよ。

後輩と出かけるのは、実はこれで二回目だったりする。

一度は、文化祭実行委員の買い出し。

あの頃は大人しかったんだがなぁ……。

男「本性はアレだったとは」

俺の周りの女子は、何故変態ばっかりなんだ……。

男「うん、諸々オッケー」

……。

男「漏れ漏れ、オッケー……」

何を言ってるんだ、俺は。

男「おまたせ」

後輩「お股せ!?」

アイツと考えが同レベルだ。

男「とりあえず、浴衣っつっても色んな店があるが、どこに行くんだ?」

後輩「うふふ、見つけたんです、可愛い浴衣!」

男「ほほう」

後輩「それを買いに行こうと思ってます」

あ、でも。

後輩「先輩の好みがあったら言ってくださいね。私、そっちにしますから♪」

男「え、いいのか」

お前が良いと思う浴衣の方がいいだろ。

後輩「いやあ、先輩に可愛いって言われるのが一番嬉しいですから」

ごにょごにょ喋るな。

すいません、出ます。


こっから携帯での投下になりますので、ゆっくりと書いていきます。

三度、保守をお願いしてしまったごめんなさい……。

後輩「なんでもないです。えへへ……」

男「?」

よくわからんが、とりあえず後輩の目当ての浴衣がある店に行こう。

後輩「やっと私のターンですね!」

男「どういう意味だ」

後輩「先輩のお家では大人しくしてましたからね!」

あれでおとなしい!?

嘘だろ!?

後輩はムフフと笑い、

後輩「私凄いですよー」

意味あり気な言葉。

……なにが凄いんだ。

男「まあ、とにかく早く行こうぜ。可愛い浴衣なら売れちまうかもしれないぞ」

後輩「そですね! じゃあ行っきましょー!」

勢いよく、腕を組まれた。

後輩「あっ」

すぐに離れて。

後輩「あはは、調子乗っちゃいました」

こういうとこはしっかりしてるな。

にしても胸が当たった……いや、なんでもない。

後輩「先輩と一緒にどこか行くのって、文化祭以来ですね」

男「そうだな」

後輩「あの頃の私はとっても静かでしたよね」

そうだったそうだった。

言葉数も少なくてこっちも困った。

会話が全然無くて、気まずかった。

ヤツと一緒にいると、こっちから話さなくても続くんだが。

珍しくこちらから話しまくった覚えがある。

後輩「先輩会話続けようと必死で可愛かったですよっ♪」

ニヤニヤと笑って、俺を見ている。

男「仕方ないだろ、お前だんまりきめこんでたし」

後輩「あの時は、まだ先輩のことよく知らなかったから」

だからなのか。

まあ、最後には仲良くなれたんだよな。

そして、その日を境に、後輩はこの下ネタキャラになったわけだが。

ムッツリからオープンになったのは成長なんだろうか……?

後輩「じーっ」

男「ん」

ボーッと後輩を見ていたら、見つめ返された。

男「な、なんだ」

後輩「先輩、何考えてます?」

男「いや、お前も変わったなと思って」

後輩「あっ、気づきました?」

気づいたって、様変わりしたからな。

後輩「今日は思い切って勝負下着で来たんですよ!」

!?

いや、そっちじゃなくてだな。

後輩「やっぱり先輩はえっちぃですね♪」
男「ちょっと待て」

後輩「えへへ、捕まえてくださーい☆」

おい、走るな!

海のカップルか俺達は!

勝負下着についてはちゃんと言っておかないと。

追いかけてみると、後輩のやつ、意外に速い。

でも。

追いつけないわけではない。

男「おいっ」

肩を掴む。

後輩「ひゃっ」

ビクっと体を縮ませて。

後輩「せ、先輩、速いですねー」

振り向いて、白い歯を見せた。

爽やかな笑顔だ。

男「勝負下着のことじゃない」

後輩「へ?」

本当にわかってないんだな。

男「買い出しの時と今じゃ雰囲気が違うってことだ」

後輩「あーなるほど!」

ポンッと手を叩いて、納得した。

が、そのあと首を傾げて

後輩「んー、先輩なら下着見抜けると思ったんですけどねー」

見抜けるかよ。

後輩「色はなんだと思います?」

男「は?」

後輩「勝負下着ですよっ!」

いや、多分そのことだと思ったが。

後輩「えへへ、わかりますか?」

男「わかるかよ」

後輩「じゃあ、テキトーに答えちゃってください!」

勝負下着だろ……。

色は限られるはず。

個人的には赤か、黒か……。

って、本気で考えてどうする。

テキトーに、何も考えずに。

男「えーっと薄ピンクとか」

女「えっ……」

うっ、テキトー過ぎたか。

女「せ……正解です!」

うぇっ!?

>>509 訂正。
ごめんなさい間違いです。
女→後輩に変更してください。

ごめんなさい、これから数時間投下できそうにないです。


帰ったらすぐに書きますので少々お待ちください……

今から帰ります。


もうしばらくお待ちを!

後輩「先輩もしかして、透視とかできちゃいます!?」

男「んなわけあるか!」

当てた自分が一番驚いてるんだから。

後輩「そういえば、どうして薄ピンク色、なんですか?」

男「えっ……」

何も考えずにテキトーに言ったから。

別に理由なんてものはないんだが。

男「な、なんか似合いそうだなと思っただけだ」

苦し紛れな答えだ。

後輩「ほ、本当ですか?」

な、なんで目を輝かせてるんだ?

男「あ、ああ、そうだぞ」

後輩「……えへへへ」

その不気味な笑い声はなんだ。

男「……?」

後輩「つまり先輩は、私の下着姿を想像したってことですよね?」

男「!」

後輩「似合ってる……えへへへへ」

喜び過ぎだろ!

逆に想像されたことには嫌がれよ!

後輩「あ、似合ってるかどうか、先輩の目で確かめますか?」

男「ノーサンキューだ!!」

脱ぎそうになった後輩を止めつつ、俺達は目当ての店に辿り着いた。

『浴衣祭り!』という文字が大きく書かれており、人もたくさんいる。

後輩「はう! こんなに人がいるとは思いませんでした!」

男「お前の目当ても誰かが買っちまってるかもしれないぞ」

後輩「そ、そうですね! 早く行きましょー!」

みんな、浴衣買うんだな。

俺も甚平、買おうかな。

人波、というほどではないが人口密度の高い店内を進む。

後輩「あー!!」

後輩が大きな声を上げた。

男「どうした?」

後輩「ううっ……先輩……」

涙目をして、俺の方を向いた。

後輩「か、買われちゃったみたいです」

ありゃりゃ。

一足遅かったか。

後輩「やっぱり可愛いから買われちゃったんですね」

鼻をすすりながら、後輩は視線を落とした。

男「まあ泣くなよ。まだたくさんあるんだから」

他にも色々あるじゃねえか。

後輩「そ、そうですよね! よーっし、探すぞー!」

というか、コイツなら。

おかしすぎなければ全部似合いそうだし、可愛いと思うんだけどな。

後輩「うーん……」

色んな浴衣を見ても、後輩は一向に首をひねったままだ。

後輩「んー……」

男「ダメか?」

後輩「なんだか、知らず知らずのうちに目当てだった浴衣と比較しちゃうみたいです……」

そんなに良かったのか、その浴衣。

男「……ん?」

この浴衣……。

ヤツに似合いそうな――。

後輩「先輩?」

男「!」

後輩「その浴衣が、いいんですか?」

男「えっ……あ、いや」

後輩「?」

男「な、なんでもない。気にするな」

何を考えてるんだ俺は。

後輩の浴衣を探してるんだぞ。

今ここにいないヤツのことを考えるなよ。

後輩「……?」

男「えーっと、後輩は明るいから、こういうピンクとかが似合うと思うぞ」

後輩「ピンクですか? えへへ、下着もピンクの淫乱だと思ってるんですか?」

何故そう持っていく。

後輩「大正解です!」

正解かよ!

淫乱ピンク。

後輩「もー先輩の頭の中の私、ピンク色に染まっちゃってるんじゃないですかー?」

男「そんなことはない」

明るい色で可愛い、と考えるとピンクが真っ先に出るだけで。

男「ん、こういうのいいんじゃないか?」

後輩「それですか? でもピンクじゃないですよ?」

男「別に俺はピンクにこだわってないからな」

うん、結構可愛い模様でいいじゃないか。

男「あ、でも、俺の好みだからな、これは」

後輩「え……先輩の好みですか?」

男「え? うん」

そうだけど。

言うとその浴衣を手にとって、

後輩「ちょ、ちょっと着替えてきます!」

急いで更衣室に駆けて行った。

男「お、おう」

もういない後輩に、俺は遅れて声を出した。

気に入ってくれたのだろうか。

しかし急過ぎてちょっと焦っている。

値段を見てみると、案外安い。

男「ふーん」

これなら高校生でも安心の値段だな。

男物の浴衣や甚平を見ていること数十分。

後輩「せんぱーい!」

ん、後輩の声だ。

後輩「えへへ、着付けしてもらってたら遅くなりました」

男「そうか」

後輩はもじもじと体を揺らして、

後輩「えーっと、どうですか?」

と聞いてきた。

水色の浴衣を身にまとった後輩。

凄い。

胸のあたりがめちゃくちゃ盛り上がってる。

男「可愛いと思うぞ」

後輩「……」

あれ、黙ったぞ?

なんか悪かったか?

後輩「どうしましょう先輩」

男「あん?」

後輩「……嬉しすぎてニヤニヤしちゃいますよぉ!!」

後輩は。

顔を真赤にして喜んでいた。

恥ずかしそうに顔を手で抑えて、数秒。

後輩「ふー……」

男「大丈夫か?」

後輩「えへへ、大丈夫です!」

クルリと一回転して、

後輩「これ、買います!」

男「え、いいのか?」

後輩「はい! だって、先輩、可愛いって言ってくれたじゃないですか」

確かにそうだけども。

自分で立てます。

自分の遅筆が招いたことです。

沸く前に終われれば良かったです、ごめんなさい。
しっかりと完結したいと思っていますので、どうかなにとぞ。

後輩「だから、買います!」

そんな理由でか。

男「まあ、後輩が良いならいいんだけどな」

最後に決めるのは後輩だし。

別に、いいんだけどな。

それにしても。

胸、デカいなぁ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月09日 (月) 12:18:47   ID: A8P8qtBp

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