劉鳳「瓜核、聞きたいことがあるのだが...」 (30)

・時系列はTV版最終話後のssです。


劉鳳「よし、今日の見回りはこれくらいでいいだろう」

劉鳳(己の因縁とも決着は着け、まだ完全ではないものの、本土からの介入もほぼ鎮圧し、カズマとの決着も着けた)

劉鳳(もう、振り返るべきことはない...筈なのだが、なんだ?この胸に残るしこりは...何かを忘れている気が...)

「ママぁ、西瓜買ってよ、西瓜!」

「そうねえ...最近暑いし、ちょうどいいかもね」

劉鳳「西瓜...そうか、今はもう夏なのか」

劉鳳(西瓜...そうだ!)


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――――――――――――――――――

イーリャン「6×7は?」

イーリャン3・4(以降、イー3・イー4)「42!」

イーリャン「うん、正解。じゃあ、6×9は?」

イー3「55!」

イー4「54じゃないの?」

イーリャン「イー4が正解だね。イー3は、もう一度復習しておくように」

瓜核「お、なんだ?勉強を教えてんのか?」

イーリャン「うん。この子たち、ずっと無常や本土の人にこき使われてたらしくて、常識的なことをあまり知らないんだ」

瓜核「あんな難しいアルター使ってんのにか。意外なこともあるんだな」

イーリャン「だから、お兄さんの僕が教えてあげないといけなきゃと思ってね」

瓜核「ハハッ、随分立派なこと言うようになったじゃねえか。きっと隊長も喜んでるぜ」



コンコン

瓜核「お?誰だ?」

劉鳳「俺だ。劉鳳だ」


劉鳳「すまない、急に押しかけてしまって」

瓜核「いいってことよ。それにしても、お前がウチに来るなんて珍しいじゃねえか」

劉鳳「いや、大した用事ではないんだが...ふと、今まで気になっていたことを思い出してな」

瓜核「気になってたこと?」

劉鳳「ああ。お前の西瓜のことなんだが...」

瓜核「西瓜だって?」

劉鳳「お前は年中、肌身離さず大量の西瓜を持ち歩いていた。だが、どうやってあんな数の西瓜を手に入れていたんだ?あのペースで使い続ければすぐに無くなる筈だが...」


瓜核「なんだ、そんなことか。簡単なことさ。ホーリー本部で俺が栽培してたんだよ」

劉鳳「栽培...だと?」

瓜核「ああ。市販で売ってたやつは、どうしても新鮮さに欠けちまってな。まあ、不味くもないし、アルターにも使えるから悪くはないんだけどな。
けど、農薬も使わず、西瓜栽培のプロの俺が作った西瓜の方が美味いし、調子が出るんだ」

劉鳳「だが、本部には西瓜を栽培するスペースは無かった筈だ」

瓜核「最初は、俺の部屋を改造して、自室栽培してたんだけどな。西瓜の数が足りなくなった時に隊長に相談したら、あっさり部屋を一つ貸してくれたんだよ」

劉鳳「隊長が...!?」

瓜核「隊長、ああ見えて植物観察が好きだったんだ。それで、元々、植物栽培スペースなんて部屋を創ってたから、そこを借りたのさ」

劉鳳(そういえば、隊長の部屋にはいつも植物が置いてあった気がするな...)

―――――――――――――――

テクテク

劉鳳(成る程...瓜核の西瓜は、自分で栽培していたのか)

劉鳳(しかし、あいつはアルターだけでなく、食事も全て西瓜だった。それをふまえると、作るペースが早すぎる気がするのだが...そこは、あいつの育て方がいいということにしよう)

劉鳳(だが、まだ足りない。まだ何か見落としているような...)

「おせーぞ、ボンクラ。早く運ばないと日が暮れちまうだろ!」

「そんなこと言ったって、しょうがないッスよ!こんな大きい物、網か箱でもないと一気には運べないですって!」

劉鳳(大きいもの...網...箱...)

劉鳳「―――そうか!」

―――――――――――――――

瓜核「勉強はもう終わったのか?」

イーリャン「ううん、今は休憩時間」

瓜核「そうかぁ。よし、俺が特別にデザートを作ってやるよ!」

イー3「本当!?」

瓜核「おう。瓜核特製、西瓜ケーキだ」

イー4「西瓜ケーキ?」

瓜核「それだけじゃねえぞ。西瓜シャーベットに、西瓜シュークリーム、それに西瓜の輪切りも作れるぜ!」

イーリャン「西瓜ばっかり...それに、輪切りって特製もなにもないよね」



コンコン

劉鳳「瓜核、いるか?」

瓜核「どうしたんだ、忘れ物でもしたか?」

劉鳳「いや、聞きそびれていたことを思い出してな...」

瓜核「聞きそびれていたことだと?」

劉鳳「ああ。お前の西瓜のことだ」

瓜核「またかよ。それで、なんなんだ?」

劉鳳「お前は西瓜を触媒としてアルター能力を発動しているが、網を持っていない時は、一体どこから西瓜を取り出しているんだ?」

瓜核「なんだよ、そんなことか。簡単なことさ。懐にしまってあるんだよ」

劉鳳「懐...?あの大きな物質を入れる程のスペースは無い筈だが...」

瓜核「そこで、俺の能力の出番よ。見てな」

瓜核「『瓜核ミニマム』!」

劉鳳「西瓜が...縮んだ...!?」

瓜核「こういうことよ。まあ、わずかだが体力を使うからな。だから、基本は網を背負ってんだよ」

劉鳳「なるほど...すまなかったな、瓜核。何度も些細なことを聞きに来て」

瓜核「いいんだよ。そういう、どうでもいいことを考える余裕ができたってことだからな。そいつはいいことなんだぜ、劉鳳」

――――――――――――

テクテク

劉鳳(瓜核の能力は便利だな。攻撃、防御、ワープ...なんでもありか)

劉鳳(しかし、瓜核本人も分かっていなかったようだが、あのワープはどういう原理なのだろうか。爆弾はまだわかる。盾も、西瓜の皮であるからわかる。だが、何故西瓜でワープなのだろうか)

劉鳳「まあ、考えていても仕方ないな」

劉鳳(...だが、まだ何かが引っかかる...一体、何が引っかかっているんだ...?)

「お、劉鳳じゃねえか。こんなとこで何してやがる」

劉鳳(疑問...ではないな。ならば、何だというのだ...?)

「無視してんじゃねえぞ、劉鳳!」

劉鳳(西瓜...西瓜...駄目だ、どうにも連想できん。俺は、一体何を言いたいんだ...!?)

カズマ「いい加減にしやがれ!」バキッ

劉鳳「ぐはっ!...何をするカズマ!」

カズマ「てめえがシカトきめこむからだろうが!」

劉鳳「む...スマン。少々考え事をしていてな」

カズマ「...なんだ、素直に謝りやがって、気持ちワリイ。暑さにやられたのか?」

劉鳳「俺は至って正常だ。それはおいておくとして、カズマ。お前、また顔のヒビが増えたか?」

カズマ「まあ、な。こないだも本土の奴らとケンカしたからよ」

劉鳳「...少しは、休んだらどうだ?」

カズマ「余計な心配だって言ってんだろ。それに、今さらやめるワケにはいかねえのよ。そう、あいつらに約束もしたしな」

劉鳳「...そうか」

劉鳳(俺も他人のことは言えないがな...俺たちはいずれ、アルターの塊となって...ッ!)

劉鳳「そうか...そういうことか!」

――――――――――――――――

かなみ「こんにちは、瓜核さん」

瓜核「よう、お嬢ちゃん方。どうだい、会社の方は」

橘「好調ですよ。最近は、本土にも対等に交易できていますし」

瓜核「そうか。そいつはいいや!」

イーリャン「桐生さん、ここの問題なんだけど...」

水守「あら、お勉強?」

イーリャン「うん。あの子たちに教えるのなら、僕もそれなりにできないといけないからね」

瓜核「しっかし、不思議だよなあ。俺とイーリャン、それに橘はともかくとして、敵対してた奴らがこうして談笑できてるなんてな」

水守「...そういえば、イーリャンさんには怖い目にあわされたものね」

かなみ「私も劉鳳さんに家を壊されたし...」

瓜核「あの時は、奴さん、そうとうキレてたからなぁ...なんでか知らねえけど、カズマにやたら執着してたんだよなぁ」

かなみ「カズくんもそうでした。なんでか分からないけど、劉鳳さんを見ていると腹が立つって」

橘「彼ら、僕が助け出した時も、一切協力しようとしませんでしたし」

瓜核「結局、理屈じゃねえってことなのかもな。あいつらも俺たちも」

イー3「―――!」ピクッ

イーリャン「どうしたの?」

イー3「本土からの刺客、確認。後、10分程でここに到着する模様」

瓜核「なにぃ?なんたってそんな近くまで!?」

イー4「デザートに夢中で、知覚忘れてた」

橘「はぁ...仕方ない。ここはどうやら...」

瓜核「俺たちの出番みてえだな!お嬢ちゃんたち、イーリャン達と隠れてな」

かなみ「で、でも...」

瓜核「心配すんなって。こう見えても、元ホーリー部隊のA級とB級隊員だ。そんじょそこらの奴らには負けねえさ」

―――――――――――――――――

橘「こんなところにぞろぞろと...一体なんの用ですか?」

役員「こちらに預けているイーリャン達を受け取りに来た。大人しく引き渡さなければ、実力行使となるが」

瓜核「はいそうですかと仲間を引き渡せるか!」

役員B「彼らもネイティブアルターのようですが...」

役員「よし、こいつらも捕えよう。ロストグラウンドの悪魔たちが来る前に片を付けてしまおう」

橘「カズマたちがいなければ容易だと思ってるんですか」

瓜核「元・ホーリー部隊を舐めるなよ!いくぞ、瓜核ダイナマ...」



劉鳳「待て瓜核ぇぇぇ!絶影!!」

シュウウウ

劉鳳「危ないところだった...」

橘「僕ら、出番ありませんでしたね」

瓜核「全くだ。一人であっさり全部片付けちまうもんな」

劉鳳「瓜核...お前に忠告しておかねばならない」

瓜核「忠告だって?」

劉鳳「お前は、これから無闇にアルターを使うな」

瓜核「な、なんでだよ!?」



劉鳳「お前は、アルターを使いすぎると西瓜になってしまうからだ!」


瓜核・橘「...はぁ?」

劉鳳「俺やカズマの身体が、アルターによって蝕まれ、金属化してるのは知っているな」

橘「知ってますけど...」

劉鳳「カズマのシェルブリットも、俺の絶影も、アルターによって創りだすのは金属だ。だから、俺たちの身体は金属になりかけている。だが、瓜核。お前が創りだすのは、西瓜そのものだ。
西瓜爆弾、西瓜の盾、西瓜ワープ...形は違えど、西瓜に関連するものばかりだ」

瓜核「だから、俺は将来西瓜になっちまうと...?」

劉鳳「そういうことだ」

橘「なるほど、一理ありますね」

瓜核「心配してくれんのは嬉しいけどよ、そいつは余計なお世話ってやつだ」

劉鳳「何故だ?」

瓜核「仮に西瓜になっちまうとしてもよ、俺は西瓜が大好きだからな。そうなるなら、むしろ本望ってやつだ」

劉鳳「...そういうものなのか?」

瓜核「そういうもんだ」

カズマ「...なんだ?もう終わっちまってたのか?」

劉鳳「ああ。大した数でもなかったからな」

カズマ「チッ、先走りやがって」

劉鳳「貴様が遅いだけだ」

カズマ「んだと!?」

劉鳳「事実を言ったまでだ!」

瓜核「おい、こんなところでケンカしようとすんな!俺の西瓜畑が...」

水守「橘さん、瓜核さん、もう終わって...劉鳳!?」

かなみ「あっ、カズくん!」

劉鳳「み、水守!?」

カズマ「かなみ!?」

かなみ「あははっ、カズくん、カズくん!」ガバッ

カズマ「だああぁぁ、飛びつくな!」

かなみ「久しぶりなんだからいいでしょ?」

水守「劉鳳、たまには連絡くらいしてくれてもいいでしょう!?」

劉鳳「す、スマン...」

橘「思わぬところで全員集合しましたね」

瓜核「そうだ、これを記念して、西瓜割り大会しようぜ。俺の出血大サービスだ!」

水守「そうですね、ちょうど夏だし」

イーリャン「僕は賛成」

劉鳳「...俺は遠慮して」

カズマ「なんだ?俺どころか、かなみや黒髪ネーチャンにも負けるかもしれねえってビビってんのか?」

劉鳳「望むところだ。その言葉、そっくりそのまま返してやる!」

カズマ「吠え面かくんじゃねえぞ!」

かなみ「そんな、競うようなものじゃないと思うんだけどなぁ...」

瓜核「よおし、お前ら、俺の西瓜をとくと堪能しな!」






劉鳳(そういえば、俺やカズマが金属で、瓜核が西瓜だとしたら...橘はいったい何になるんだろうか...?)




終わり

これで終わりです。
スクライド小説版で、瓜核とイーリャンの影も形もないのは何故なのだろうか

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