・時系列はTV版最終話後のssです。
劉鳳「よし、今日の見回りはこれくらいでいいだろう」
劉鳳(己の因縁とも決着は着け、まだ完全ではないものの、本土からの介入もほぼ鎮圧し、カズマとの決着も着けた)
劉鳳(もう、振り返るべきことはない...筈なのだが、なんだ?この胸に残るしこりは...何かを忘れている気が...)
「ママぁ、西瓜買ってよ、西瓜!」
「そうねえ...最近暑いし、ちょうどいいかもね」
劉鳳「西瓜...そうか、今はもう夏なのか」
劉鳳(西瓜...そうだ!)
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イーリャン「6×7は?」
イーリャン3・4(以降、イー3・イー4)「42!」
イーリャン「うん、正解。じゃあ、6×9は?」
イー3「55!」
イー4「54じゃないの?」
イーリャン「イー4が正解だね。イー3は、もう一度復習しておくように」
瓜核「お、なんだ?勉強を教えてんのか?」
イーリャン「うん。この子たち、ずっと無常や本土の人にこき使われてたらしくて、常識的なことをあまり知らないんだ」
瓜核「あんな難しいアルター使ってんのにか。意外なこともあるんだな」
イーリャン「だから、お兄さんの僕が教えてあげないといけなきゃと思ってね」
瓜核「ハハッ、随分立派なこと言うようになったじゃねえか。きっと隊長も喜んでるぜ」
コンコン
瓜核「お?誰だ?」
劉鳳「俺だ。劉鳳だ」
劉鳳「すまない、急に押しかけてしまって」
瓜核「いいってことよ。それにしても、お前がウチに来るなんて珍しいじゃねえか」
劉鳳「いや、大した用事ではないんだが...ふと、今まで気になっていたことを思い出してな」
瓜核「気になってたこと?」
劉鳳「ああ。お前の西瓜のことなんだが...」
瓜核「西瓜だって?」
劉鳳「お前は年中、肌身離さず大量の西瓜を持ち歩いていた。だが、どうやってあんな数の西瓜を手に入れていたんだ?あのペースで使い続ければすぐに無くなる筈だが...」
瓜核「なんだ、そんなことか。簡単なことさ。ホーリー本部で俺が栽培してたんだよ」
劉鳳「栽培...だと?」
瓜核「ああ。市販で売ってたやつは、どうしても新鮮さに欠けちまってな。まあ、不味くもないし、アルターにも使えるから悪くはないんだけどな。
けど、農薬も使わず、西瓜栽培のプロの俺が作った西瓜の方が美味いし、調子が出るんだ」
劉鳳「だが、本部には西瓜を栽培するスペースは無かった筈だ」
瓜核「最初は、俺の部屋を改造して、自室栽培してたんだけどな。西瓜の数が足りなくなった時に隊長に相談したら、あっさり部屋を一つ貸してくれたんだよ」
劉鳳「隊長が...!?」
瓜核「隊長、ああ見えて植物観察が好きだったんだ。それで、元々、植物栽培スペースなんて部屋を創ってたから、そこを借りたのさ」
劉鳳(そういえば、隊長の部屋にはいつも植物が置いてあった気がするな...)
―――――――――――――――
テクテク
劉鳳(成る程...瓜核の西瓜は、自分で栽培していたのか)
劉鳳(しかし、あいつはアルターだけでなく、食事も全て西瓜だった。それをふまえると、作るペースが早すぎる気がするのだが...そこは、あいつの育て方がいいということにしよう)
劉鳳(だが、まだ足りない。まだ何か見落としているような...)
「おせーぞ、ボンクラ。早く運ばないと日が暮れちまうだろ!」
「そんなこと言ったって、しょうがないッスよ!こんな大きい物、網か箱でもないと一気には運べないですって!」
劉鳳(大きいもの...網...箱...)
劉鳳「―――そうか!」
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瓜核「勉強はもう終わったのか?」
イーリャン「ううん、今は休憩時間」
瓜核「そうかぁ。よし、俺が特別にデザートを作ってやるよ!」
イー3「本当!?」
瓜核「おう。瓜核特製、西瓜ケーキだ」
イー4「西瓜ケーキ?」
瓜核「それだけじゃねえぞ。西瓜シャーベットに、西瓜シュークリーム、それに西瓜の輪切りも作れるぜ!」
イーリャン「西瓜ばっかり...それに、輪切りって特製もなにもないよね」
コンコン
劉鳳「瓜核、いるか?」
瓜核「どうしたんだ、忘れ物でもしたか?」
劉鳳「いや、聞きそびれていたことを思い出してな...」
瓜核「聞きそびれていたことだと?」
劉鳳「ああ。お前の西瓜のことだ」
瓜核「またかよ。それで、なんなんだ?」
劉鳳「お前は西瓜を触媒としてアルター能力を発動しているが、網を持っていない時は、一体どこから西瓜を取り出しているんだ?」
瓜核「なんだよ、そんなことか。簡単なことさ。懐にしまってあるんだよ」
劉鳳「懐...?あの大きな物質を入れる程のスペースは無い筈だが...」
瓜核「そこで、俺の能力の出番よ。見てな」
瓜核「『瓜核ミニマム』!」
劉鳳「西瓜が...縮んだ...!?」
瓜核「こういうことよ。まあ、わずかだが体力を使うからな。だから、基本は網を背負ってんだよ」
劉鳳「なるほど...すまなかったな、瓜核。何度も些細なことを聞きに来て」
瓜核「いいんだよ。そういう、どうでもいいことを考える余裕ができたってことだからな。そいつはいいことなんだぜ、劉鳳」
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テクテク
劉鳳(瓜核の能力は便利だな。攻撃、防御、ワープ...なんでもありか)
劉鳳(しかし、瓜核本人も分かっていなかったようだが、あのワープはどういう原理なのだろうか。爆弾はまだわかる。盾も、西瓜の皮であるからわかる。だが、何故西瓜でワープなのだろうか)
劉鳳「まあ、考えていても仕方ないな」
劉鳳(...だが、まだ何かが引っかかる...一体、何が引っかかっているんだ...?)
「お、劉鳳じゃねえか。こんなとこで何してやがる」
劉鳳(疑問...ではないな。ならば、何だというのだ...?)
「無視してんじゃねえぞ、劉鳳!」
劉鳳(西瓜...西瓜...駄目だ、どうにも連想できん。俺は、一体何を言いたいんだ...!?)
カズマ「いい加減にしやがれ!」バキッ
劉鳳「ぐはっ!...何をするカズマ!」
カズマ「てめえがシカトきめこむからだろうが!」
劉鳳「む...スマン。少々考え事をしていてな」
カズマ「...なんだ、素直に謝りやがって、気持ちワリイ。暑さにやられたのか?」
劉鳳「俺は至って正常だ。それはおいておくとして、カズマ。お前、また顔のヒビが増えたか?」
カズマ「まあ、な。こないだも本土の奴らとケンカしたからよ」
劉鳳「...少しは、休んだらどうだ?」
カズマ「余計な心配だって言ってんだろ。それに、今さらやめるワケにはいかねえのよ。そう、あいつらに約束もしたしな」
劉鳳「...そうか」
劉鳳(俺も他人のことは言えないがな...俺たちはいずれ、アルターの塊となって...ッ!)
劉鳳「そうか...そういうことか!」
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かなみ「こんにちは、瓜核さん」
瓜核「よう、お嬢ちゃん方。どうだい、会社の方は」
橘「好調ですよ。最近は、本土にも対等に交易できていますし」
瓜核「そうか。そいつはいいや!」
イーリャン「桐生さん、ここの問題なんだけど...」
水守「あら、お勉強?」
イーリャン「うん。あの子たちに教えるのなら、僕もそれなりにできないといけないからね」
瓜核「しっかし、不思議だよなあ。俺とイーリャン、それに橘はともかくとして、敵対してた奴らがこうして談笑できてるなんてな」
水守「...そういえば、イーリャンさんには怖い目にあわされたものね」
かなみ「私も劉鳳さんに家を壊されたし...」
瓜核「あの時は、奴さん、そうとうキレてたからなぁ...なんでか知らねえけど、カズマにやたら執着してたんだよなぁ」
かなみ「カズくんもそうでした。なんでか分からないけど、劉鳳さんを見ていると腹が立つって」
橘「彼ら、僕が助け出した時も、一切協力しようとしませんでしたし」
瓜核「結局、理屈じゃねえってことなのかもな。あいつらも俺たちも」
イー3「―――!」ピクッ
イーリャン「どうしたの?」
イー3「本土からの刺客、確認。後、10分程でここに到着する模様」
瓜核「なにぃ?なんたってそんな近くまで!?」
イー4「デザートに夢中で、知覚忘れてた」
橘「はぁ...仕方ない。ここはどうやら...」
瓜核「俺たちの出番みてえだな!お嬢ちゃんたち、イーリャン達と隠れてな」
かなみ「で、でも...」
瓜核「心配すんなって。こう見えても、元ホーリー部隊のA級とB級隊員だ。そんじょそこらの奴らには負けねえさ」
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橘「こんなところにぞろぞろと...一体なんの用ですか?」
役員「こちらに預けているイーリャン達を受け取りに来た。大人しく引き渡さなければ、実力行使となるが」
瓜核「はいそうですかと仲間を引き渡せるか!」
役員B「彼らもネイティブアルターのようですが...」
役員「よし、こいつらも捕えよう。ロストグラウンドの悪魔たちが来る前に片を付けてしまおう」
橘「カズマたちがいなければ容易だと思ってるんですか」
瓜核「元・ホーリー部隊を舐めるなよ!いくぞ、瓜核ダイナマ...」
劉鳳「待て瓜核ぇぇぇ!絶影!!」
シュウウウ
劉鳳「危ないところだった...」
橘「僕ら、出番ありませんでしたね」
瓜核「全くだ。一人であっさり全部片付けちまうもんな」
劉鳳「瓜核...お前に忠告しておかねばならない」
瓜核「忠告だって?」
劉鳳「お前は、これから無闇にアルターを使うな」
瓜核「な、なんでだよ!?」
劉鳳「お前は、アルターを使いすぎると西瓜になってしまうからだ!」
瓜核・橘「...はぁ?」
劉鳳「俺やカズマの身体が、アルターによって蝕まれ、金属化してるのは知っているな」
橘「知ってますけど...」
劉鳳「カズマのシェルブリットも、俺の絶影も、アルターによって創りだすのは金属だ。だから、俺たちの身体は金属になりかけている。だが、瓜核。お前が創りだすのは、西瓜そのものだ。
西瓜爆弾、西瓜の盾、西瓜ワープ...形は違えど、西瓜に関連するものばかりだ」
瓜核「だから、俺は将来西瓜になっちまうと...?」
劉鳳「そういうことだ」
橘「なるほど、一理ありますね」
瓜核「心配してくれんのは嬉しいけどよ、そいつは余計なお世話ってやつだ」
劉鳳「何故だ?」
瓜核「仮に西瓜になっちまうとしてもよ、俺は西瓜が大好きだからな。そうなるなら、むしろ本望ってやつだ」
劉鳳「...そういうものなのか?」
瓜核「そういうもんだ」
カズマ「...なんだ?もう終わっちまってたのか?」
劉鳳「ああ。大した数でもなかったからな」
カズマ「チッ、先走りやがって」
劉鳳「貴様が遅いだけだ」
カズマ「んだと!?」
劉鳳「事実を言ったまでだ!」
瓜核「おい、こんなところでケンカしようとすんな!俺の西瓜畑が...」
水守「橘さん、瓜核さん、もう終わって...劉鳳!?」
かなみ「あっ、カズくん!」
劉鳳「み、水守!?」
カズマ「かなみ!?」
かなみ「あははっ、カズくん、カズくん!」ガバッ
カズマ「だああぁぁ、飛びつくな!」
かなみ「久しぶりなんだからいいでしょ?」
水守「劉鳳、たまには連絡くらいしてくれてもいいでしょう!?」
劉鳳「す、スマン...」
橘「思わぬところで全員集合しましたね」
瓜核「そうだ、これを記念して、西瓜割り大会しようぜ。俺の出血大サービスだ!」
水守「そうですね、ちょうど夏だし」
イーリャン「僕は賛成」
劉鳳「...俺は遠慮して」
カズマ「なんだ?俺どころか、かなみや黒髪ネーチャンにも負けるかもしれねえってビビってんのか?」
劉鳳「望むところだ。その言葉、そっくりそのまま返してやる!」
カズマ「吠え面かくんじゃねえぞ!」
かなみ「そんな、競うようなものじゃないと思うんだけどなぁ...」
瓜核「よおし、お前ら、俺の西瓜をとくと堪能しな!」
劉鳳(そういえば、俺やカズマが金属で、瓜核が西瓜だとしたら...橘はいったい何になるんだろうか...?)
終わり
これで終わりです。
スクライド小説版で、瓜核とイーリャンの影も形もないのは何故なのだろうか
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