まどか「これが私の、ゼロレクイエム」 (565)


魔法少女まどか☆マギカとコードギアスのクロスSSです

ギアスやCの世界などについて、このSS内だけの設定がいくつかありますので、ご了承ください

次から始めます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362405751


ミタキハラ

カレン「本当にこんなところに麻薬組織が潜伏してるんですか?」

ゼロ「この周辺で集団自殺があったらしい。ディートハルトはリフレインの仕業だろうと言っていた。私もそう思う」

C.C.「今更麻薬組織なんてどうでもいいじゃないか。今はブリタニア、だろ?」

ゼロ「黒の騎士団の存在意義は強きをくじき弱きを助けることだ。それは組織が拡大した今も変わらない」

C.C.「……それに、わざわざ麻薬組織風情のために紅蓮やらガウェインやらまで動かす必要はないだろう」

ゼロ「ステルスのあるガウェインが隠密行動に最も適しているし、制圧力は紅蓮が一番高い。それだけだ」

C.C.「どうだか。新しい玩具に乗りたいだけじゃないのか」

ゼロ「黙れ。そろそろ着くぞ。あの工場だ」


ドォォォォン!

カレン『黒の騎士団だ! 無駄な抵抗はやめ……て……?』

仁美「あら?」

ゼロ(子ども……? まさかここまでリフレインがはびこっているのか!)

仁美「あなた達も同志ですのね! さぁ、そんな無粋なものから降りて、ともに旅立ちましょう!」

カレン「可哀想に……。正気じゃないのね……」

C.C.(何か妙な気配を感じるな……)

ゼロ『売人を探せ!』

カレン『はい!』

ブゥン…

カレン「な、なに!?」


ハコの魔女の結界

ゼロ「なんだこれは……! C.C.! ギアスか!?」

C.C.「いや、ギアスなら私には効かないはずだ。これは……」

使い魔「ウフフ」

ゼロ「ぐぅぅっ! なんなんだ……! 頭に何か……!」

ゼロ(俺……は、多くの人を殺し……、シャーリーの父親も……)

ゼロ(そしてシャーリーまで俺は……! 罰、なのか。これは……)

カレン『ゼロォォォォォ!!』

ガシャァン!

カレン『しっかりしてください、ゼロ! こんなやつら……!』

カレン『消し飛べぇぇぇ!!』ギュイン!ギュイン!

使い魔「」シュウウ…

ゼロ『すまない、カレン!』

ゼロ(そうだ。俺はもう引き返せない。止まることも許されない!)

ゼロ「C.C.! ハドロン砲を使うぞ! 標的はあの箱!」

エリー「」エ?ハドロンホウ?

ゼロ「発射!」

ギュオン!


カレン「変な空間が消えていく……」

ゼロ「大したことはなかったな」

C.C.「カレンがいなければやられていたくせに」

ゼロ「黙れC.C.」

「あれ? 魔女の反応が消えた?」

ゼロ「ん? 誰か来たようだな」

C.C.「あれだけ派手にハドロン砲を使えば人も来るだろう」

マミ「おかしいわね……」

まどか「もう誰かが倒したのかな」

ほむら「ミタキハラの魔法少女は私たちだけのはずよ」

杏子「グリーフシードも見当たらないな」

さやか「なんだ無駄足かぁ」

ゼロ(また子どもか。どうする、隠れた方が……)

さやか「あー! ナイトメアだ!」

マミ「えっ!?」


ゼロ(見つかったか……。いや、焦るな。見つかったところでまだこちらにはギアスがある)

まどか「なんでこんなところに……」

杏子「ナイトメアってなんだ?」

ほむら「これは……」

マミ「これは黒の騎士団リーダーが乗るガウェイン!? こっちは黒の騎士団最強のエース機、紅蓮弐式じゃない!」

さやか「く、詳しいですねマミさん……」

ほむら「機体名なんて公開されていたかしら……?」

マミ「え、えぇ。されてるわよ」

マミ(言えない……。あんまりかっこいいからキュゥべえに調べてきてもらったなんて……)

杏子「なぁ、ナイトメアってなんだよ」

ゼロ(な、なんだあの女! なぜガウェインのことまで……!)

C.C.「どうするんだ、ルルーシュ」

ゼロ「仕方ないだろう。ギアスを使う」

ほむら「……」

さやか「ほむら? どうかしたの?」

ほむら「ゼロ! いるなら出てきたらどうかしら?」

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

C.C.「ほう……」


マミ「ぜ、ゼロがいるの!? ここに!?」ワクワク

ほむら「まさかナイトメアを放っておく訳ないでしょう。おそらく今も乗ってるんじゃないかしら」

C.C.「バレバレだな」

ゼロ「黙れ。さっさと忘れさせて帰るぞ」

バシュッ

ゼロ「初めまして、お嬢様方。私がゼロだ」

マミ「ゼロ……! 本物のゼロだわ! まさか会えるなんて!」

まどか「ま、マミさん、落ち着いて……」

さやか「そうだよ、マミさん。あいつテロリストだよ!」

ゼロ「違うな。間違っているぞ! 我々黒の騎士団は全ての弱い者の味方であり、無秩序なテロリストではない」

ほむら「どうかしらね」

さやか「何人も殺してるくせに……!」

ゼロ「議論を交わすのもいいが、我々は忙しいのでね。そろそろ失礼したい」

ゼロ「ゼロが命じる! 今日ここで見たことを全て忘れよ!」キィーン!


さやか「……ん? 今何かした? あいつ」

ほむら「さぁ。一瞬魔力に似た力を使ったような気もするけれど……」

マミ「ゼロに会えるなんて……! さ、サインもらった方がいいかしら!」

まどか「マミさんがこんなにゼロを好きだったなんて知らなかったよ……」

杏子「なーなー。ナイトメアって食えるのか?」

ゼロ(なぜだ!? なぜギアスが効かない!?)

ゼロ「C.C.!!」

C.C.「私にもわからん」

C.C.(全員コードユーザー……? まさか、そんなはずは……)

QB「理由を知りたいかい?」

C.C.「……。いつの間にガウェインの中に……」

QB「彼女たちは魔法少女なのさ。だから魔力やその類いのものに対する耐性は人一倍だ。さっきの力がなんなのかはわからないけれど、彼女たちの魔力耐性に弾かれたんだね」

C.C.「魔法少女だと?」

QB「そうさ。君も僕が見えているなら僕と契約すれば……」

QB「……」

QB「いや、すまない。少女というには歳をきゅぶ!?」

C.C.「お前、死にたいならそう言え」ゲシゲシ


さやか「ほむら、ゼロを捕まえよう」

ほむら「……そうね。私はまどかさえ無事なら日本だろうとエリア11だろうとどちらでもいいし」

まどか「む、無茶だよ! やめようよ……」

杏子「あたしは乗ったね。おもしろそうじゃん」

マミ「ダメよ! ゼロは必要な存在なのよ!?」

さやか「だからマミさん……」

ほむら「捕まえればゼロの素顔が見れるわよ」

マミ「!!」

マミ「ゼロの素顔……。いえ、ダメよ。ゼロは仮面を被っているからこそゼロなのよ。ヒーローの素顔を見るなんて言語道断……。あぁ、でも見てみたい……」ブツブツ

ほむら「今のうちよ」

まどか「いいのかなぁ……」

さやか「いいに決まってるでしょ! 私たちは正義の味方なんだから!」

杏子「まどかはそこでマミを見張ってな」

ゼロ(な、何者なんだこいつらは! ナイトメアと戦うつもりか!?)

ゼロ「C.C.、カレン! 撤退だ! 間違っても子どもたちに武器は使うな!」

カレン『はい!』

キュルルルルッ!

さやか「逃がすか!」シュンッ


蒼い影が走る。
魔法による劇的な加速は、科学の結晶たるナイトメアの速度を軽く凌駕し、いとも簡単にその巨体を追い抜いた。

カレン『回り込まれた!? この子たちほんとに人間!?』

ほむら「もちろん違うわ」

カレン『!!』

後方に陣取ったほむらの言葉にカレンは背筋が寒くなるのを感じた。
まるで感情もなく、自らを人外と述べる少女がいるだろうか。

ほむら「ナイトメアにRPGって効くのかしらね」

盾から取り出したのは対戦車グレネード。
普通の中学生が持っているものでは、ない。

ドォォン!

従来の兵器とは一線を画するナイトメアといえど、戦車をひっくり返すほどの衝撃に足止めを余儀なくされる。

カレン「ぐっ……!」

カレン(このままじゃ……!)

カレン(この子たちならきっと避ける……。なら威嚇のためにスラッシハーケンで!)

──バシュッ!

ほむら「!」サッ

勢い良く射出された鋼鉄の爪をほむらは難なく回避する。
だが。

ほむら「……しまった! まどか!」

まどか「え……?」

カレン(あの子の後ろにさっきの二人が!? ダメ、止められない……!)

スパァン!

一閃、ナイトメアの重量にも耐えるワイヤーが断ち切られる。
数多の剣を従えたさやかがそこに立っていた。

さやか「あたしの大事な親友と先輩を狙うなんて……許さない!」

カレン「くっ……!」


ゼロ『カレン! 今助ける!』

杏子「おっと、アンタの相手はあたしだよ」

ガウェインの前に立ちはだかるのは佐倉杏子。
彼女が祈るように手を合わせると、無数の鎖の壁がガウェインの巨体を取り囲んだ。

ゼロ『次から次へと!』

杏子「魔女を倒したのはアンタたちか?」

ゼロ『魔女……? 先ほどのあれか!』

C,C.『魔女が魔女を倒すとは、とんだ皮肉だな』

杏子「やっぱりそうか。なら、人の狩場を荒らすハイエナに手加減は無用だよな!」チャキ

杏子の好戦的な笑みにゼロは焦る。
かといってこのような少女に攻撃することはできない。

ゼロ『早く突破しろ!』

C.C.『やっている!』

杏子「へへっ、あたしの魔法をそう簡単に破れるとは思わないことだね」

ゼロ(くそ! こんなイレギュラー想定していない! どうすれば……!)

ゼロ『くっ……! ひとまず空へ! 空中ならやつもうかつには動けまい!』

杏子「へぇ、こいつ飛べるのか」

杏子「けどそんなこと、させるかよ!」ジャララ!

杏子が槍を振るうと、それはいくつもの節に分かれて伸びていく。
一瞬で元のサイズからは想像できないほどの長さとなった。

ゼロ『あの槍……、多節槍か!』

杏子「おらぁ!」ジャラララララ!

鎖によって繋がれた多節槍は、生きているかのようにガウェインの体に巻き付いてがんじがらめにしてしまった。

ゼロ『なにぃ!?』

C.C.『参ったな、ルルーシュ。縛られてしまった』


ほむら「と、いう訳で」

さやか「捕縛かんりょーっ!」

ゼロ「俺が……、こんな少女たちに……。あり得ない……!」

C.C.「縛るのも縛られるのも好きではないんだがな」

カレン「せめて、ゼロだけでも……!」

マミ「な、なんで私まで縛るの!?」

杏子「突然『ゼロを全力で見逃しなさい!』とか言って襲い掛かってきたからだろ」

まどか「さっきのマミさん怖かった……」

ほむら「大丈夫よまどか。中二病は私が捕まえておくから」

マミ「誰が中二病よ!」

杏子「さて、じゃあゼロとやらの素顔を拝ませてもらおうか」

ゼロ「や、やめろ! 今すぐ解放しろ!」キィーン

さやか「さっきからなんなの、それ」

まどか「でもちょっと頭が痛いような……」

ゼロ(フハハハハ! 効いてる効いてる!)

杏子「その目だな。えぐりとってみるか?」

ゼロ「鬼か!」

ほむら「あなたも似たようなものでしょう」


QB「た、楽しそうだね、みんな……」ボロッ

まどか「どうしたのキュゥべえ、そんなに汚れて……」

QB「ちょっと年増にね……」

C.C.「もう一度言ってみろ」ギロッ

QB「き、きれいなお姉さんとSMプレイをしてきたのさ!」アセアセ

ほむら「散れ淫獣」パァン!

QB「きゅぶぁ!?」ヒョイッ

QB「危なかった……。冗談じゃないかほむら……」

ほむら「これ以上まどかの精神に悪影響を及ぼすようなら絶滅させるわよ」


QB「で、この人たちを捕まえてどうするんだい?」

まどか「この人たち知ってるの?」

QB「まぁ、あれだけ有名になればね。それに戦争の中心にいる人物だからというのもある」

杏子「どういうことだ?」

QB「戦時中は魔法少女が増えるからね。その戦争の概要を把握するのは当然のことだよ」

さやか「なんで戦争すると魔法少女が増えんの?」

QB「考えてもご覧よ。君たちが一番強く何かを求めるのは何かを失ったときだよね。そして、戦争というのは人が最も何かを奪われるときだ」

ほむら「その弱みにつけこむのがあなたの仕事よね」

QB「人聞きが悪いなぁ。ギブアンドテイクだよ」

ほむら「詐欺師はみんなそう言うわ」


C.C.「そろそろ私たちのことも思い出してくれたら嬉しいんだがな」

さやか「そういえばそうだった」

まどか「でもほんとにどうするの、この人たち……」

ほむら「さやかに乗せられて捕まえたけれど、こういうのってどこに通報すればいいのかしら。警察?」

さやか「軍じゃないの?」

C.C.「子どものいたずらと思われて終わりだろうな」

さやか「む、テロリストのくせに生意気」

C.C.「お前は子どものくせに生意気だな」

さやか「むっかー! アンタたち負けたんだよ!」

C.C.「いや?」

カレン「まだ負けてない!」ズバッ!


ほむら「仕込みナイフ!? いつの間に……!」

カレン「ごめんね!」ドンッ

まどか「きゃぁ!」

さやか「うぎゃっ!」

ほむら「まどか!」

さやか「ちょっと、あたしは!?」

杏子「マミが大人しくリボンを出してれば!」

マミ「そ、そう言われても……」

C.C.「この黄色いの借りてくぞ」ヒョイッ

マミ「え?」

まどかたち「え?」

マミ「えぇぇぇぇぇ!?」


ゼロ『ガウェインで紅蓮ごと運ぶ! 捕まれ!』

カレン『はい!』

ゴゥッ

ほむら「待ちなさい! 時間停止!」カチッ

ほむら「んっ!」ピョンピョン

ほむら「……」スタスタ

ほむら「はぁぁぁぁ!」タッタッタッ

ほむら「とう!」ジャンプ!

ほむら「くっ!」スカッ

カチッ

ほむら「はぁ、はぁ……。届かなかったわ……」

さやか(時間止めてる間ずっとジャンプしてたのか……)

杏子(武器使えばいいのに)


まどか「どうしよう、マミさん連れていかれちゃった……」

さやか「テロリストめ……! 許せない!」

杏子「しかしなんでマミを……」

ほむら「おそらく機体名をペラペラしゃべっていたからその情報の入手経路を聞いたりするんじゃないかしら」

ほむら「あとは私たちの秘密とか……ね」

まどか「だ、大丈夫かな……」

QB「仕方ない。僕が様子を見てくるよ。可能なら脱出の手引きもね」

さやか「頼んだよ、キュゥべえ」

ほむら「ちっ! お願いするわ」

まどか「ほむらちゃん、お行儀悪いよ」


黒の騎士団 タンカー

マミ「わ、私を連れてきてどうするつもりかしら?」ドキドキ

ゼロ「緊張しなくていい。何もとって食ったりはしないさ。少し聞きたいことがあるだけだ」

マミ「聞きたいこと……?」

ゼロ「……紅蓮はともかく、ガウェインのことまで。どこで知った?」

マミ「キュゥべえに聞いたのよ」

ゼロ「キュゥべえ……?」

マミ「さっきもいたのよ。白い不思議な生き物」

C.C.「あぁ、あれか……」

マミ「あなた、キュゥべえが見えるの?」

C.C.「まぁ、な」

ゼロ「それと、君たちの異常な戦闘能力はなんだ。それにもそのキュゥべえとやらが関わっているのか?」

マミ「私に聞くより、直接聞いた方がいいんじゃない?」

マミ「いるんでしょ、キュゥべえ」


QB「やれやれ。わざわざバラすことないじゃないか。せっかく助けにきたのに」

ゼロ「なっ!? どこから入った!」

C.C.(もう驚かないぞ)

QB「……まさか、君にも僕が見えるのかい?」

ゼロ「見えるもなにも、そこにいるだろう!」

QB(へぇ……。僕に選ばれた訳でもないのに僕が見える人間がいるなんてね。さっきの妙な力と関係あるのかな)

マミ「え……? ゼロって少女?」

C.C.「さすがにそれはない」

QB「……まぁ、いいさ。知りたいのは魔法少女のことだったかい?」


……………………
………………
…………

ゼロ「そんなものが存在していたのか……。普通なら信じられんところだが……」

ゼロ「実際に戦ったあとではな」

C.C.「私にもなれるんだよな? ん?」

QB「えっと、うん、そう……かもしれない、こともなくはないよ」

ゼロ「まぁ、今はそのことはいい」

C.C.「よくない! 私が少女なのかどうかの重要な問題だ!」

ゼロ「どちらでもいいだろう」

C.C.「じゅ・う・よ・う・な問題だ!」


ゼロ「C.C.には一旦退室してもらった」

ゼロ「それで、本当に重要なのは魔法少女が他にもいるかどうか、だ。特に、ブリタニアに」

QB「ブリタニアは巨大な国だからね。いくらでもいるよ」

ゼロ「ならば実戦投入されれば……!」

QB「いや、さすがに戦争には出てこないよ。魔法少女のことはほとんど知られていないからね」

ゼロ「そうか、ならいい」

ゼロ(……待て。ブリタニアは魔法少女を知らない。だが俺たちは知っている。ならば……)

ゼロ「フハハハハ! 掴んだぞ! ブリタニアを倒す糸口を!」

ゼロ「巴マミ! 黒の騎士団に入団する気はないか?」

マミ「え!? い、いいんですか!?」キラキラ

ゼロ「ブリタニアと戦う意志があるならば、だが」

マミ「はい! 戦います!」

QB「マミ、そんな簡単に決めないでくれ。君には魔法少女の仕事もあるんだ」

QB「それに、ミタキハラの仲間はどうするんだい? もうすぐワルプルギスの夜がくるんだよ?」

マミ「そ、そうだったわね……」

マミ(どうしよう……。みんなのことは放っておけない。でも黒の騎士団にはずっと憧れてたし、ナイトメアにも乗ってみたいし……)

マミ(ナイトメア……? そうだ!)

マミ「ゼロ! 入団に一つ条件を付けたいんですけど……」


二週間後 ミタキハラ

まどか「もうあれから二週間だよ……。マミさん大丈夫なのかな……?」

杏子「とっくに殺されてたりな」

さやか「杏子っ!」

まどか「嫌だぁ……。もう嫌だよ、こんなの……」

ほむら「大丈夫、大丈夫よ。あのマミがやられる訳ないじゃない」

ほむら(マミ……。早く帰ってきなさい……! もうワルプルギスの夜も目前なのよ)

ほむら(まさかキュゥべえが……)

「おーい! みんなー!」

さやか「!!」

まどか「マミさん!?」

マミ「ただいまー!」

ほむら「そんな、まさか……。マミが乗ってるのって……」

ほむら「ガウェイン!?」

杏子「下りてくるぞ!」

シュゥゥゥ…ガシャン

マミ「心配かけてごめんなさい。巴マミ、ただいま戻りました!」

さやか「ほ、ほんとに心配したんですよ!」

まどか「よかったぁ……。マミさんに何かあったら私……」

ほむら「で? もちろん説明してくれるのよね?」

マミ「そうね……。どこから説明しようかしら」

杏子「とりあえず、このデカブツはどうしたんだよ」

マミ「あぁ、それはゼロから借りたのよ」

まどか「借りた……?」

ほむら「無断で拝借……って意味じゃないわよね。操縦は誰が?」

QB「僕だよ」ヒョコッ

さやか「マジか」

QB「マジさ。このくらいの機械操作なんて僕には訳ないからね」

ほむら「どうしてこんな大変なもの借りてきたの? というか、よく貸してくれたわね」

マミ「それなんだけど……」


ほむら「は……?」

さやか「黒の騎士団に入る代わりに借りてきたぁ!?」

マミ「ワルプルギスの夜への対抗手段になるかなって……」

ほむら(確かに私もナイトメアで挑んだことはなかったけれど……)

さやか「借りパクしようか」

ほむら「よしなさい、正義の味方」

杏子「でもこんなのがあっても動かせなきゃ意味がないだろ。この白いのは協力しないだろうし」

マミ「ふふ……。なんのために私が二週間も向こうにいたと思ってるの?」

まどか「まさか……」

マミ「もちろん動かし方を教わってきたわ。複座だから、もう一人必要なのだけれど……」

まどか「わ、私はちょっと……」

さやか「乗ってみたい……けどダメだ! テロリストのナイトメアになんか乗らない!」

ほむら「はぁ、仕方ないわね。私が……」ウズウズ

杏子「はい! 乗る! 乗ります!」ピョンピョン

ほむら「ぐぬぅ……」


マミ「違うわ、佐倉さん! 右よ!」

杏子「右ってこっちだろ?」ガチャガチャ

マミ「そっちは左! 右はお箸を持つ方の……きゃあっ!」ガシャン!

杏子「ははは、悪い悪い。いやぁ、ナイトメアって難しいな」

マミ「もうっ! 佐倉さんクビ!」

杏子「なんだよー……。でもあたし以外乗りたがらないじゃん。ならあたしが乗るしか……」

ほむら《その必要はないわ》ファサァ

杏子《わざわざテレパシーで……》

ほむら《マミ、あなたは私を乗せるべきよ。乗せなさい。乗せて。乗せろ。の・せ・ろ》

マミ《わ、わかった! わかったからそんな怖い声出さないで……》

杏子《どんだけ乗りたいんだよ……》


……………………
………………
…………

ほむら「ざっとこんなものよ」ファサァ

杏子「すげ……」

マミ「普通に私より上手ね……」

ほむら「世界一軍事兵器を所有する魔法少女としてこれくらい当然よ」

さやか「全部盗品だろ」

ほむら「黙りなさい」

まどか「ほむらちゃんすごい!」

ほむら「それほどでもないわ」ニヘラ

さやか「クールになりきれてないぞ」

マミ「これであとはワルプルギスの夜を待つだけね」


今日のところはこの辺りで

>>1で言い忘れてしまいましたが、コードギアスはキュウシュウ戦役後、まどマギ側は本編ではさやか契約直後にあたるところからです
まどマギ側の時間軸はサニーデイズライフ的な時間軸と考えてください

次もこれくらいの時間の更新になると思います
できるだけ毎日来るつもりですが、書き溜めも決して多くないので不規則になるかもしれません


ほむら「ついにこの日がきた……」

マミ「ガウェインのエナジーフィラーも交換したし、準備は万端ね」

ほむら(やっとガウェインで戦える。こんな軽い気持ちでワルプルギスの夜を迎えるのは初めて)

マミ「それじゃあ、作戦を確認するわよ」

マミ「まず、私と暁美さんはガウェインで空中に待機。鹿目さんたちは地上で待機ね」

マミ「ワルプルギスの夜が現れたら鹿目さんの矢で足止めしている間に私たちがハドロン砲をお見舞いするわ」

杏子「あとは弱ったところをあたしとさやかで叩く、だな」

マミ「えぇ、ガウェインもできる限り援護するから、思う存分暴れてちょうだい」

まどか「使い魔は私に任せて!」

さやか「これはもう勝ったも同然じゃないですかね」

ほむら「油断してはダメよ。相手は最強の魔女なのだから」

ほむら(でも確かにここまで好条件なのは初めて。勝てるかもしれない……)


ほむら「来る……!」



マミ「なんて禍々しい気配なの……」



杏子「どっからでもきやがれ!」



さやか「これが終わったらもう一度ゼロを……!」



まどか「みんな! 気をつけて!」

ほむら「今度こそ……!」

アーッハッハッハッハッハ!!!


ワルプルギスの夜「アハハハハハハハ!!」

マミ《鹿目さん!》

まどか《はいっ!》

まどかが弓を展開する。
その手にあるのは光の矢。
限界まで弦を引き、勢いよく、放つ。

放たれた矢は一本が二本に、二本が四本に、と幾重にも分裂していく。
ワルプルギスの夜に至った時、それはすでに光の奔流と化していた。

ドドドドド!

ほむら「いくわよ、マミ!」

マミ「えぇ、ハドロン砲は任せて!」

マミ「最大出力! ハドロン・フィナーレ!!」

ほむら(語呂悪いわね)

ギュオン!


さやか「よぉし、私たちも……」

杏子「いや、ちょっと待て」

まどか「えっ……?」

ワルプルギスの夜「アハハハ…ハハ…ハ…ハ」ボロボロ

さやか「……え?」

マミ「えっ」

ほむら「えっ」

ワルプルギスの夜「」 シュゥゥゥ…

ほむら「嘘でしょ……?」

マミ「これは喜んでいいのかしら……」

まどか「や、やった! やったよ、さやかちゃん! 杏子ちゃん!」

杏子「あー……、そうだな」

さやか「私たち何もしてなくね?」

杏子「言うな。悲しくなるだろ」

QB「まさか、ワルプルギスの夜が一撃で倒されるとはね。さすがに驚いた」

杏子「なんか倒してほしくなかったみたいな言い方だな」

QB「そういうつもりじゃなかったんだけど……。まぁ、まずはおめでとうと言っておくよ」


マミ「みんな、お疲れさま」

さやか「何もしてないですけどね」

杏子「だからやめろって」

まどか「ほむらちゃん、やったね!」

ほむら「そうね……」

ほむら(ワルプルギスの夜の気配が完全に消えてる……。本当に終わったんだ)

ほむら「終わった。終わったんだね……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「まどか……。まどかぁ!」ダキッ

ほむら「よかったぁ……。よかったよぉ」

まどか「えへへ、よしよし」

QB(しかし、本当になぜこんなにあっさり……。ハドロン砲ではダメージは与えられても一撃で倒すなんて芸当は不可能なはずだ)

QB(何者かの介入があったとしか思えない)


ミタキハラ某所

C.C.「わざわざこんなところまで出向いて魔女退治とは、恐れ入る」

ルルーシュ「全ては魔法少女を手に入れるためだ」

C.C.「どうだか。あの子たちが心配だっただけだろう?」

ルルーシュ「違うな。間違っているぞ。俺はそんな優しい男じゃない」

C.C.「いいや。お前は私が出会った誰より優しい男だよ」

ルルーシュ「……うるさい」

C.C.「照れるな照れるな」

C.C.「しかし、魔法少女にギアスは効かないのに魔女とやらには効くんだな」

ルルーシュ「魔法少女は魔女を倒す存在なんだろう? それが意味するのは魔女が魔法、つまり魔力に弱いということだ」

ルルーシュ「そしてあの生き物はギアスを魔力に類するものと言った。だから魔法少女に効かずとも魔女には有効なのだろう」

QB「なるほどね」

ルルーシュ「っ!!」


ルルーシュ(しまった! 今は仮面をしていない……!)

QB「安心していいよ。僕には君の正体を言い触らす気はない」

QB「君の力のことも、ね」

ルルーシュ「ちっ……!」

QB「ワルプルギスの夜がああも簡単に敗れたのは君たちが手を出したからだったんだね」

ルルーシュ「だったらどうだと言うんだ」

QB「どうという訳ではないけれど、あのワルプルギスの夜をたやすく打ち負かす力に興味があるんだ」

QB「二週間前、君はあの子たちに時折命令口調で話し、その度に不思議な力を発動させていた」

QB「それと今の君たちの会話を合わせて考えるとなんとなく君の力がわかってきたよ」

QB「君は相手に自らの命令に従わせる力を持っている。その力の名が、ギアス」

QB「そしておそらく君はその力でワルプルギスの夜に『死ね』と命令した」

QB「違うかい?」


ルルーシュ「答える義理はないな」

QB「それはもうほとんど答えているようなものじゃないか」

C.C.「ゼロともあろうものが、こうもあっさり手の内を看破されるとはな」

ルルーシュ「黙れ、C.C.」

QB「どうやら僕の推測は正しかったようだね」

QB「ギアスか。なかなか興味深い力だ。まだこの星に僕たちの知らない力があっただなんて」

C.C.「まるでなんでも知ってるみたいな言い種だな」

QB「まぁ、何千年もいれば自然とね」

ルルーシュ「何千年……だと?」

C.C.「お前、散々人を年増呼ばわりしておきながら私よりはるかに年とってるじゃないか」

QB「生憎だけど僕には年齢という概念がないからね」


QB「とりあえず今回はちょっとした挨拶……いや、宣戦布告かな。僕たちはこれから全力でギアスについて調査をする」

QB「その過程で君たちが敵になるようならそれなりの対応をさせてもらうよ」

ルルーシュ「好きにしろ。俺の復讐の障害にならない限り邪魔はしないでおいてやる」

C.C.「私はあまり喜ばしくないんだがな」

QB「まぁ、マミが君たちに協力すると決めた以上また会うこともあるだろう。そのときにはいろいろ話を聞かせてくれたら嬉しいよ……」スゥッ

ルルーシュ「出たり消えたり忙しいやつだ」

C.C.「それで、これからどうするんだ」

ルルーシュ「ガウェインを回収するついでにマミと話をしていく。できれば他の魔法少女にも協力してもらいたいが……」

C.C.「あの様子じゃ難しいだろうな」

ルルーシュ「まぁいいさ。一人でも十分な戦力だ」

C.C.「あんな中学生を欲しがるなんて、ロリコンめ」

ルルーシュ「黙れ!」


ゼロ「無事ワルプルギスの夜を倒したようだな、巴マミ」

マミ「ゼロ!」

さやか「ずいぶん余裕じゃん、テロリスト」

ゼロ「仲間を迎えにきただけだ。武装なんて必要ないだろう?」

さやか「ありゃ。なめられちゃってますね、あたし」

さやか「戦ってない分魔力有り余ってるんだからね!」ダッ

マミ「美樹さんっ!」バッ

さやか「なっ……! どいてよマミさん!」

マミ「私たちがワルプルギスの夜に勝てたのはゼロがガウェインを貸してくれたおかげ。そうでしょ?」

さやか「それは……」

さやか「でも……、だからって悪者を見逃していい理由にはならない!」

マミ「そうかもしれない。だけど、私は黒の騎士団が悪だとは思わない」

さやか「どうしてですか!」


マミ「私はたった二週間だったけど黒の騎士団の人たちを陰から見てきた」

マミ「みんな、自分の国を取り戻したいって心から思ってる人ばかりだったわ。それって悪いこと?」

さやか「人を殺してる!」

マミ「それはブリタニア軍も同じじゃない。それに私は、これ以上人を死なせないために黒の騎士団に参加するの」

さやか「どういう……ことですか」

マミ「私のリボンなら死人を出さずにナイトメアを無力化できる。治癒魔法で怪我人を治すこともできる」

マミ「正義の魔法少女なら、より多くの人のために魔法を使うべきだと思うの」

マミ「だから美樹さん。ミタキハラはあなたに預けるから、私のことは気にせずここの人たちを守ってあげて?」


さやか「でも……、それじゃああたしは……」

杏子「さやか、マミは一度決めたら簡単には曲がらねぇぞ。お前もよく知ってるだろ」

さやか「うん……」

ゼロ「話はまとまったようだな。では巴をしばらく借りる。すまないな」

ほむら「待って」

ゼロ「なんだ」

ほむら「私も行くわ」

まどか「ほむらちゃん!?」

さやか「何考えてるんだよほむら!」

ゼロ「魔法少女が増えるのならこちらは構わないが……」

ほむら「そのことなのだけれど、私はもう前あなたたちと戦ったときやマミのようには戦えないの」

杏子「どういうことだ?」

ほむら「私の時間停止はもともとワルプルギスの夜を乗り越えると使えなくなるものだったのよ」

まどか「そんな……」

ゼロ「ふむ……。なら、我々にメリットはないように思えるが?」

ほむら「いいえ、まだメリットはあるわ」

ほむら「マミ、私のナイトメアの操縦、どうだったかしら」

マミ「そうね……。初めてとは思えないレベルだったわ」

ほむら「実はあれね、魔法を使っていたのよ」

マミ「魔法……?」


杏子「ずっこいぞほむら! なんであたしが乗ってるときに教えてくれなかったんだよ!」

ほむら「乗りたかったんだもの」

杏子「てめえ……」

ゼロ「つまり、その魔法を使った操縦技術がメリットだと?」

ほむら「えぇ。並みの操縦者なんて目じゃないわ」

ゼロ「いいだろう。ただし、入団テストは受けてもらう。構わないな?」

ほむら「それでいいわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「ごめんなさい、まどか。私はもうここにいてもまともに魔女とは戦えない」

ほむら「それならせめて、残った力でマミを守りたいの」

ほむら(それに、黒の騎士団ならこれからの私に必要なものが手にはいるかもしれない)

まどか「そっか……。ほんとは行ってほしくないけど、ほむらちゃんが決めたんならしょうがないよね」

まどか「絶対、戻ってきてね。約束だよ?」

ほむら「えぇ。約束、ね」


ゼロ「では少々手狭だが二人ともガウェインに乗ってくれ」

C.C.「おい、まさかお前レディ三人とあのコックピットに乗るつもりか?」

ゼロ「何か問題があるのか?」

C.C.「大ありだ。男はガウェインの手のひらに乗れ」

ゼロ「……は?」

C.C.「マミ、そしてほむらだったか?早く乗るといい」

マミ「え、えぇ……」

ほむら「そうね」

ゼロ「おい待て! 手のひらってどういう……」

C.C.「つべこべうるさいぞ。これだから童貞坊やは」ムンズ

マミ「ど、童貞……///」

ゼロ「ふ、ふざけるな! おい、C.C.!」

C.C.「はっしーん!」ゴウッ

ゼロ「ま、待て! C.C.ぅぅぅぅぅ!!」


まどか「行っちゃった……」

さやか「マミさん……、ほむらまで……」

杏子「せっかくワルプルギスの夜を倒したってのに、なんか釈然としないな」

さやか「あたし、やっぱゼロを許せない……」

さやか「そうだよ、きっとマミさんはあいつに何か吹き込まれたんだ」

まどか「さやかちゃん……?」

さやか「だってそうじゃないとマミさんがテロリストの仲間になるはずないじゃん!」

さやか「ほむらはそれに気づいてたからついていったんだよ」

杏子「落ち着け、さやか。そんな想像の話なんかしてもしょうがないだろ」

さやか「しょうがなくない!」

さやか「ほむらはもう時間停止は使えないんでしょ……。ならあたしが助けださないと」

さやか「ゼロを……倒さないと」

まどか「ダメだよさやかちゃん!」

さやか「あの二人は戦場に出るのになんであたしはダメなの!?」

さやか「あたしももう決めた。止めても無駄だよ」

まどか「マミさんやほむらちゃんと戦うことになるかもしれないんだよ!」

さやか「っ!!」


さやか「……それでも、あたしは自分の正義を貫く」

さやか「ゼロさえ倒せばまた元通りの五人に戻れるはずだから」

杏子「ったく……。そういやアンタも言い出したら聞かないやつだったね」

杏子「まどか。あたしもさやかのバカに付き合うことにするよ」

まどか「え……」

杏子「こいつを一人にしておく訳にはいかないしな」

さやか「どういう意味よ、それ」

杏子「一緒にいてやるって意味だよ。で、どうするつもりなんだ?」

さやか「黒の騎士団と戦うんだから……、ブリタニア軍に志願すればいいのかな」

杏子「そりゃ無理だろ……」

まどか(さやかちゃんと杏子ちゃんまでいなくなっちゃうの……?)

まどか(私はどうすれば……)


黒の騎士団 潜水艦倉庫

ゼロ「ここならある程度ナイトメアを動かしても問題ない」ブルブル

ゼロ「暁美ほむら、君にはこの無頼でカレンと紅蓮の相手をしてもらう」ガクガク

ほむら「勝てる訳ないじゃない。どうして黒の騎士団屈指のエースパイロットが相手なのよ」

ゼロ「君たちのことを知っているのは私とC.C.以外にはカレンだけだからな。それに誰も勝てとは言っていない」ガクブル

ゼロ「三分だ。三分間紅蓮の攻撃を凌げれば合格だ」ブルブル

ゼロ「両者とも攻撃方法は打撃とスラッシュハーケンのみ。私が勝敗は決したと判断すればそこで試験は即終了」ガクガク

ゼロ「異存はないな?」

カレン「はい」

ほむら「……えぇ」

カレン「ところで……、ゼロはなぜそんなに震えてるんですか?」

ゼロ「ガウェインの最高速度を生身で体験すれば誰でもこうなる」プルプル

カレン「はぁ……?」


ゼロ「それでは二人とも準備はいいな?」

マミ「暁美さん頑張って!」

ゼロ「はじめっ!!」バッ

キュルルルッ

カレン(速い……! 無頼でこんなスピードが出せるの!?)

ほむら『攻撃してこないのかしら、カレン先輩?』

カレン『もう入団したつもりって訳?  余裕じゃない!』

カレン『そこだぁ!』バシュッ

ほむら『当たらないわ』ガキン!

カレン(スラッシュハーケンが弾かれた!? ほんとに中学生が操縦してるの……?)


三分後

ゼロ「そこまで!」

ほむら「ふぅ……」バシュッ

カレン(まさか本当に三分間耐え抜くなんて……)

ゼロ「いいだろう。暁美ほむら、合格だ!」

マミ「暁美さんっ!」ダキッ

ほむら「ちょ、ちょっとマミ……」

カレン「すごいわね、あなた。あなたの入団がもう少し早かったら紅蓮のパイロットの座をとられてたかもしれない」

ほむら「そんな……」

カレン「これも魔法少女の力なのね」

ほむら「!!」

マミ「どこでそのことを……?」

ゼロ「私が話した。中学生相手の入団テストなど言語道断だと珍しく反対されてな」

カレン「当たり前じゃないですか……」

カレン「最初はゼロがおかしくなったのかと思ったけど、あの日のことを考えるとあながち嘘とも思えなくて」

カレン「だからもう一度確かめてみようと思ったの」

マミ「あの……、そのことは……」

カレン「大丈夫。心配しなくても誰にも言わないよ」

カレン「そもそも誰も信じないでしょ」クスッ


ゼロ「君たち二人には私の私兵として動いてもらう」

ゼロ「中学生を団員に加えたと知られたら私の倫理観が問われかねないから、他の団員との接触は極力さけるように」

ゼロ「戦場ではツーマンセルで行動してくれ」

ほむら「マミが魔法少女の力で戦って、私がナイトメアでそれをサポートすればいいのね」

ゼロ「そういうことだ。それからマミ、君にはこれをプレゼントしよう」

マミ「これは……、ゼロのマスク!? あ、ちょっと違う……」

ゼロ「素顔を晒して戦うのは具合が悪いだろう。それで隠すといい。そして……」

ゼロ「これから戦場での君の名は! 魔法少女マギカだ!」バッ

マミ「マギカ……! 素敵です!」キラキラ

ほむら(まるでマミが二人になったようだわ)


今日はこの辺りで

さやかの発言で不快にさせてしまったのなら申し訳ありません
ただ、私は特定のキャラを卑下するつもりはありません


ユーフェミア『行政特区日本です!』

マミ「行政特区……」

ほむら「言い方が変わるだけでブリタニアに管理されるのは変わらないじゃない」

マミ「そうなのかしら……」

ゼロ「巴、暁美。入るぞ」プシュッ

ほむら「返事を聞いてから入ってもらえるとありがたいのだけれど」

ゼロ「ニュースを見ていたのか。ちょうどいい。我々は特区へ向かう」

ほむら「潰すの?」

ゼロ「どうかな。ユーフェミア次第だ


マミ「私たちもついていけばいいのね」

ゼロ「話が早くて助かるよ」


ゼロ「他の団員は式典会場近くの林に待機する。君たちもその周辺にいてくれ」

ゼロ「これが君たちの初陣になるかもしれない。覚悟はしておくんだ」

マミ「いよいよ……なのね」

ほむら「私はもうとっくに覚悟なんて決めてるわ」

ほむら(もともとまどかのためなら人だって殺すつもりだったんだもの。今さらね)

ほむら「それより私のナイトメアは無頼で決定なのかしら」

ゼロ「すぐに用意できる機体がそれしかなかった。今回は我慢してくれ」

ゼロ「なるべく早く新しいものを用意するよう手配はしておく」

ほむら「仕方ないわね……」

ゼロ「出発は追って連絡する。期待しているぞ、魔法少女」


フジサン周辺 行政特区日本

まどか「すごい人だね……」

詢子「それだけ日本人に戻りたい人がいるってことさ」

まどか「ママもやっぱり日本人がいいの?」

詢子「まぁ、そうじゃなきゃこねぇって。エリア11になってからイレブンだからー、ってだけで仕事もらえなくなったからな」

まどか「でも今は普通に働いてるよね」

詢子「お貴族様にはできない仕事を代わりにやってたらいつの間にか、ね」

詢子「あいつら、まともにプレゼンもできねぇんだ。笑っちまうだろ?」

まどか「あはは……」

まどか(私もぷれぜんってよくわかんないや)

知久「二人ともー! そろそろ受付僕らの番だよー」

まどか「はーい」


式典会場

ザワザワ

「ゼロだ!」「ゼロが現れたぞ!」

ゼロ「ユーフェミア・リ・ブリタニア。折り入って話がしたい」

まどか「ゼロ……」

詢子「おーおー、また派手な登場だこと」

まどか「ママはゼロのこと……黒の騎士団のこと悪者だと思う?」

詢子「そうだねぇ。変化を望む人には正義の味方だろうし、現状に満足してる人には悪者だろうさ」

まどか「正義の味方でもあり悪者でもあるの?」

詢子「人にはそれぞれ信じる正義と許せない悪があるんだ。だから、戦争なんてものがいつまでもなくならない」

詢子「少しでも相手を理解しようとすれば。たとえ理解できなくても、相手を信じてお互い絆を結ぼうとすれば、許せないことなんてないはずなんだけどね」

詢子「この行政特区日本も、副総督が私たち日本人を信じてくれた結果のはずだ。あとはそれを私たちも信じるかどうか。それだけさ」

まどか「ママは変化がいいの? それとも今のまま?」

詢子「私かい? 私はねぇ……」

詢子「まどかとタツヤ、それからパパがいてくれればそれだけでいい、かな」


ユーフェミア「日本人を名乗る皆さん! お願いがあります!」

詢子「ゼロとの話はついたみたいだな」

ユーフェミア「死んで頂けないでしょうか!」

まどか「え……?」

詢子「おいおい、なんの冗談だ……?」

ユーフェミア「自殺してほしかったのですけど、ダメですか」

ユーフェミア「兵士の方々、皆殺しにしてください! 虐殺です!」

パァン!

詢子「まどか! なにがあったかわかんねぇがとにかくヤバイ! 逃げるぞ!」

まどか「う、うん!」

まどか(どうして……? ユーフェミア様は私たちを信じてくれたんじゃなかったの?)


ダダダダダ!

ゼロ『黒の騎士団総員に告げる!』

ゼロ『ユーフェミアは敵となった! 行政特区日本は我々を誘き出す卑劣な罠だったのだ!』

ゼロ『自在戦闘装甲騎部隊は式典会場に突入せよ! ブリタニア軍を壊滅し、日本人を救い出すのだ!』

ゼロ『急げ!』

ゼロ『ユーフェミアを……見つけだして、殺せ!』

ほむら「私たちも行くわよ」

マミ「殺す、か……」

ほむら「今さら怖じ気づいたの?」

マミ「そういう訳じゃないんだけど……。捕縛じゃ、ダメなのかしら……」

ほむら「たとえ生け捕りにしても世間が彼女を生かしておかない。私たちが手を出さなくてもいずれブリタニアが処刑するわ」

ほむら「それなら黒の騎士団が虐殺者ユーフェミアを討ち取ったって事実を作った方が今後の活動がしやすくなる」

マミ「そう……ね」

ほむら「どうしても嫌だと言うならナイトメアの無力化に専念すればいい」

ほむら「ほら、行くわよ。仮面を被りなさい」

マミ「えぇ……」

ほむら「式典会場まで無頼で運ぶわ。着いたあとは私が盾になるからあなたは魔法で敵のナイトメアを」

マミ(マギカ)「わかってるわ」

ほむら「行くわよ!」

キュルルルルッ!


まどか「はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ

詢子「大丈夫か、まどか。まだ走れるか?」

まどか「だ、大丈夫……」

まどか「きゃっ!」ガッ

ズサァ

詢子「まど……っ!」

倒れた娘に駆け寄ろうとした詢子の目に入った巨大な影。
ナイトメア。

ユーフェミア『日本人ですね? 逃がしませんよ!』

詢子(ハッ……! これが“騎士の馬”だと? 笑わせんな……)

詢子(どう見たって“悪夢”じゃねぇか……!)

まどか「あ……」

ユーフェミア『死んでください!』

詢子「まどかっ!!」バッ

ダダダダダ!


まどか「マ……マ?」

詢子「よかっ……た。あんたには当たってない……みたいだな……」

まどか「ママっ! なんで……どうして!」

詢子「何……言ってんだ。親が子を守るのは当たり前のことだろうが……」

まどか「でもママがぁ!」

詢子「いいんだよ……。娘を守って死ぬ……なんざ、母親冥利に尽きるってもんだ……」

詢子「あぁ……、でも……」

詢子「あんたと一緒にお酒……、飲みたかった……なぁ……」

まどか「ママ……?」

まどか「ママ!! いやぁぁぁぁぁ!!」


マギカ「レガーレ!」

シュルシュル

『なんだ!? 急にナイトメアが動かなく……!』

ほむら《わりとノリノリね》

マギカ《ねぇ、暁美さん?》

ほむら《何かしら》

マギカ《魔女の気配は感じる?》

ほむら《……? いいえ、全く》

マギカ《そう……。やっぱりそうなのね》

ほむら《どうして?》

マギカ《もしかすると副総督がこんなことをし始めたのは魔女のせいかもしれないと思ったのよ》

マギカ《でも魔女の気配がないってことはこれは彼女の意志なのね……》


「ママ!! いやぁぁぁぁぁ!!」

ほむら「!!」

ほむら(まどか!? 来ていたの……!?)

ほむら《マミ、ごめんなさい。緊急事態が起きたわ。あとはお願い》

キュルルッ

マギカ《えっ。え? 暁美さん!?》

『ゼロがいたぞ! 殺せ!』

ダダダダダ!

マギカ「ぜ、ゼロじゃないわよ!」

マギカ「絶対領域!」

キンキンッ!

マギカ「あ、危なかった……」


ユーフェミア『一人生き残っていたのですね』

まどか「ママ……、ママぁ……」ギュッ

ユーフェミア『日本人は皆殺しです! 死んで……』

ほむら『ユーフェミアァァァッ!!』

ガキンッ

ユーフェミア『きゃっ!』

ユーフェミア『日本人ですね? 無礼でしょう! 私はユーフェミア・リ・ブリタニアですよ!』

ほむら『よくも……よくもまどかのお母さんを! お人形の皇女のくせに!』

ゼロ『待て。彼女は私がやる』

ほむら『ゼロ……!』

シュンシュンッ…バラバラ

ユーフェミア「くっ……」バシュッ

ユーフェミア「虐殺です。日本人は全て皆殺しです……!」

ダダダダダ!

ゼロ「……」スタッ

ユーフェミア「あら! 日本人かと思っちゃった」

ユーフェミア「ねぇ。考えたんだけど、一緒に行政特区日本の宣言を……」

ユーフェミア「あれ? 日本……?」

ゼロ「あぁ。できればそうしたかった。君とともに……」


ほむら「まどか!」バシュッ

まどか「ほむらちゃん……。ママが……」

ほむら「ごめんなさい……。私、近くにいたのに……」

ほむら「っ! そうだ、ソウルジェムを出して!」

まどか「どうして……?」

ほむら「いいから! 早く!」

まどか「わ、わかった……。はい……」スッ

ほむら(やっぱり真っ黒ね……)

ほむら「待って、今私のグリーフシードで……」

シュゥゥゥ


ほむら「お母さんのことは……残念だったけれど、あなたが無事でいてくれてよかった」

まどか「ママ、私を庇って……」

ほむら「そう……。立派な最期だわ」

まどか「私、魔法少女だから庇う必要なんてなかったのにね」

ほむら「何を言って……」

まどか「私が盾になるべきだったんだ。ママがいなくなっちゃうくらいなら……」

ほむら「……っ」ギリッ

まどか「私なんかよりママに……」

ほむら「やめて!」

まどか「」ビクッ


ほむら「魔法少女だって死なない訳じゃないんだよ!?」

まどか「でも……!」

ほむら「あなたのお母さんの死を無駄にしないで!」

まどか「あ……」

ほむら「あなたを守ろうとした人の想いを、無駄にしないで……!」

まどか「そんな……つもりじゃ……。ごめんなさい……。ごめんね、ママ……」

ほむら「……私も怒鳴ったりしてごめんなさい。辛いのはあなたよね……」

ほむら「あとでゼロにあなたの保護をお願いしてみる」

まどか「そうだ、パパとタツヤがまだ……」

ほむら「私が探しておくわ。だから今は、私と一緒にナイトメアへ」

まどか「うん……。ありがと……、ほむらちゃん」

ほむら(でもこの惨状じゃきっと二人も……)


ゼロ『黒の騎士団総員に告げる! 虐殺者ユーフェミアは死んだ!』

ゼロ『我々の……勝利だ!』

「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」

まどか「……」

ほむら「まどか……」

ほむら(あの後黒の騎士団が占拠した式典会場に来るまで、たくさんの死体を見た)

ほむら(その中にはまどかのお父さんや弟さんも……)

マミ「鹿目さん……。やっぱり辛いわよね」

まどか「いえ……、大丈夫、ですよ?」ニコッ

ほむら「……っ」

マミ「……無理はしちゃダメよ」

まどか「無理なんて……」

マミ「私も目の前で両親を失ったから、あなたの気持ちはわかるつもり」

マミ「我慢しなきゃって気持ちもわかる。でも今泣いておかないと、後になったら泣きたくても泣けなくなっちゃうわよ」


まどか「うぅ……」ジワッ

まどか「私、だけが……生き残ってしまいました……」

マミ「あなただけでも、生き残ってくれた」

まどか「私、一人ぼっちになっちゃいました……」

マミ「私たちがいるわ」

マミ「あなたのお母さんやお父さんの代わりはできないかもしれない。でも、一緒にいてあげることはできるから」

マミ「ね? 暁美さん?」

ほむら「えぇ」

まどか「う……うぅ……。あぁぁぁぁぁぁ!!」


……………………
………………
…………

まどか「ひっく……、ぐすっ」

マミ「落ち着いた?」

まどか「はい……。すみません……」

ほむら「謝る必要なんてないのよ。私たちは仲間でしょ?」

まどか「うん……。ありがと……」

マミ「それじゃ、ゼロに鹿目さんのことを伝えておきましょうか」


式典会場一室

ゼロ「そうか……。間に合わなくてすまなかったな……」

まどか「いえ……」

ゼロ「……っ」ギリッ

C.C.「おい」スッ

ゼロ「……大丈夫だ」

ゼロ「何か、飲み物でも用意させよう。C.C.!」

C.C.「私を見た使い走りにするつもりか? ずいぶん偉くなったんだな」

ゼロ「うるさい」

C.C.「全く……。私をなんだと思ってるんだ」

ガチャ

C.C.「玉城! ジュース四つピザ三つ! 三十秒!」

C.C.、テメエオレヲナンダトオモッテヤガルー!


ゼロ「さて、鹿目まどかと言ったか。君も魔法少女だったな?」

まどか「えっと……」

ほむら「まどかは絶対戦わせないわよ、ゼロ」チャキ

ゼロ「確認しただけだ。本人が望まないなら無理に戦わせるようなことはしない」

C.C.(ルルーシュは今傷心中だからギアスユーザーがそんなこと言えるのか、とはつっこまない。あぁ、私はなんて優しいんだろう)

ゼロ「だが我々はこのままトウキョウ租界へと攻め込むことになるだろう。警護に人員を割く余裕は……」

マミ「そんな、なんとかなりませんか」

ゼロ「ラクシャータやディートハルトに預ける手もあるがそうなると事情の説明が面倒だな……」

ガチャ

「それには及ばないわぁ」


ゼロ「なっ! ラクシャータ!?」

ラクシャータ「はぁい、ゼロ。これ、玉城からジュースとピザ、預かってきたわぁ」

C.C.「ご苦労」

ゼロ「違うだろう! 何故お前が……」

ラクシャータ「予備のナイトメアから無頼が一機減ってるのよねぇ。何か知ってるぅ?」

ゼロ「ぐっ……」

ラクシャータ「それに、今日見たことない動きをする無頼がいたのよねぇ」

ゼロ「ばれていたのか……! 何故……」

ほむら(逆にどうしてばれないと思ったのかしら)

ラクシャータ「それから〜」

ゼロ「もういい。何が言いたい?」

ラクシャータ「魔法少女について、教えてちょうだいな」

ゼロ「……どこから聞いていた」

ラクシャータ「C.C.が玉城をパシった辺りから、かねぇ」

ゼロ「C.C.!」

C.C.「知らん。なんでもかんでも人のせいにするものじゃないぞ」


ラクシャータ「で〜? 魔法少女って何なの? あの無頼を動かしてたのはぁ?」

ほむら「……私よ」

ラクシャータ「ふぅん。あんたみたいなお嬢ちゃんがねぇ」

ゼロ「魔法少女とは魔女を狩る者。希望を振り撒く奇跡の存在、だそうだ」

ラクシャータ「ゼロはその奇跡の存在を戦争利用する訳ねぇ」

ゼロ「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。彼女たちは正義の味方であり、我々と志を同じくしている。ただそれだけだ」

ラクシャータ「ものは言い様ねぇ」

ラクシャータ「魔法少女なんていうからには、魔法が使えるわけ?」

マミ「えぇ、まぁ……」

ラクシャータ「ちょっとやってみてちょうだいな」

マミ「いいのかしら……」

ほむら「いいじゃない。もう今更よ」

マミ「じゃあ失礼して……」バッ

ユーメーヲカナーエテー ヒトリデサーガシテータホーシーノー

マミ「と、とりあえず変身してみました」

ラクシャータ「……なるほどねぇ」


ラクシャータ「ねぇ? あんたたち、あたしと取り引きしない?」

マミ「取り引き……?」

ゼロ「おい、勝手に……!」

ラクシャータ「あたしにあんたたちを調べさせてくれたら……。専用機、作ってあげるわよぉ?」

ほむら「っ!」

マミ「専用機……!」

ラクシャータ「今日一日見ててわかったわ。あんたに無頼じゃ明らかにスペック不足。最低でも月下クラスが必要よねぇ」

ほむら「専用機……」

ほむら(そうよ……。魔法が使えなくなった今、より強力な武器が必要になる)

ほむら(だから、ナイトメアを手に入れるために黒の騎士団に入った)

ほむら(でも……、魔法少女の力を調べさせるなんて……)

ゼロ「残念だがラクシャータ、この二人はこれからトウキョウ租界に攻め入るために必要不可欠な戦力だ。今研究室に引っ張り込まれるのは困るな」

ラクシャータ「融通きかないわねぇ」


まどか「あの……」

ラクシャータ「ん〜? なぁに?」

まどか「私の体で良ければ……、調べてください」

ほむら「まどか!?」

ラクシャータ「あんたも魔法少女?」

まどか「はい」

ラクシャータ「ふぅん……。まぁ、こっちとしては願ったり叶ったりなんだけどぉ。いいのぉ?」

ほむら「ダメよ! まどかには指一本触れさせないわ!」チャキ

まどか「ほむらちゃん、いいの」

ほむら「何を言って……! さっきも言ったじゃない! お母さんが守ってくれた命を粗末にしないで!」

まどか「ううん、粗末にしてる訳じゃないよ。ブリタニアと戦うのは怖いけど、これなら私もほむらちゃんの役に立てる」

まどか「ほむらちゃんにはずっと守ってもらってたから、私も何かお返しをしたいの」

ほむら「だからって……! こいつが非人道的な検査や実験をしないとは限らないじゃない!」

ラクシャータ「安心しなさいな。あんたの人権はちゃんと保証するわ」

ラクシャータ「プリン伯爵とは違うのよ、あたしは」

まどか(プリン……?)

ほむら「信じられるわけないじゃない」

ラクシャータ「もし少しでもこの子が嫌がったらそこでその行為は即終了する。この約束が守られていないと思ったら、あたしを殺しても構わない」

ほむら「くっ……」

マミ「鹿目さん、本当にいいの?」

まどか「はい。ママにもらった命、友達のために使いたいんです」

ほむら「まどか……」

>>87
訂正

× ラクシャータ「安心しなさいな。あんたの人権はちゃんと保証するわ」

○ ラクシャータ「安心しなさいな。この子の人権はちゃんと保証するわ」


ゼロ「勝手に話を進めるんじゃない!」

ラクシャータ「何よぉ。この子たちの戦闘力が上がればゼロにとっても喜ばしいことじゃないのぉ?」

ゼロ「それは確かにそうだ。だが暁美ほむら。巴はともかく、君が専用機を手に入れれば黒の騎士団に残る理由はなくなる」

ゼロ「その後、絶対に寝返らない保証はない」

ほむら(ナイトメア目当てってことは見透かされてたか……。私に無頼しか与えなかったのはそういう訳だったのね)

ほむら「ずいぶんな言い種ね」

ゼロ「君たちを敵に回すと厄介なのは身をもって学んだからな」

ほむら「でもあなたたちと共に戦う理由ならある……、いえ、できたわ」

ゼロ「ほう?」

ほむら「ブリタニアはまどかの幸せを奪った。私にとって、十分すぎる理由よ」

まどか「ほむらちゃん……」

ゼロ「……いいだろう。専用機の開発を許可しよう」

ほむら「案外あっさり折れるのね」

ゼロ「君が鹿目まどかを心から思っているのは見ていればわかる。ならば、その言葉も本心だろうと思っただけだ」

ほむら「そう。……感謝するわ」

ゼロ「裏切りのリスクと君を強化するメリットを天秤にかけた結果だ。感謝する必要はない」

ラクシャータ「ゼロってツンデレ?」ヒソヒソ

C.C.「あぁ。それもかなり重度のな。私も苦労している」ヒソヒソ

ゼロ「嘘を言うんじゃない!」

C.C.「あながち嘘でもないだろうに」


今回はこの辺りで

レスありがとうございます
大変励みになります

>>82
すみません、もう一つ訂正

× C.C.「私を見た使い走りにするつもりか? ずいぶん偉くなったんだな」

○ C.C.「私を使い走りにするつもりか? ずいぶん偉くなったんだな」


トウキョウ租界近郊

ゼロ「では私とC.C.は先にガウェインでトウキョウ上空へ向かう。暁美と巴も準備をしておけ」

ほむら「えぇ」

マミ「いよいよ始まるのね……」

まどか「ほむらちゃん……、マミさん……」

ほむら「そんな心配そうな顔をしないで。私たちなら大丈夫だから」

マミ「そうそう。だてに何年も魔法少女やってないわ」

まどか「でも……、ううん、二人が戦うって決めたんだもん。私が邪魔しちゃ、ダメだよね……」

ほむら「私はあなたが待っててくれるだけで帰ってこれるわ」

マミ「私も、暁美さんがちゃんと守ってくれれば大丈夫かな」クスッ

ほむら「……あの時は緊急事態だったのよ」

ラクシャータ「まどかちゃーん、ちょっといいかしらぁ?」

まどか「は、はーい! ……それじゃあ、ほむらちゃん、マミさん、いってらっしゃい」

ほむら「いってきます、まどか」

マミ「お留守番は、よろしくね?」


ゼロ「コーネリア、正面からの戦いにとらわれたお前の負けだ」

ピーッ
ドドドドド!

マギカ「街が……!」

ほむら「……頭おかしいんじゃないかしら、あの人」

ゼロ『暁美、聞こえるか』

ほむら「問題ないわ」

ゼロ『藤堂の部隊が正面から侵攻する。君たちはそちらの援護を頼む』

ほむら「目立たない方がいいのではなかったの?」

ゼロ『この混戦でそうも言っていられないだろう。マギカさえ守ってくれればお前も暴れていい』

ほむら「別に暴れたい訳じゃないのだけれど……。わかったわ。今から向かいます」

ゼロ『では頼んだぞ』

ほむら《マミ、ゼロから指示があったわ。正面突破よ》

マギカ《待って、怪我人を治してからじゃダメかしら? 結局行政特区ではほとんどの人がすでに亡くなってて助けてあげられなかったから……》

ほむら《……。重傷者だけにしておきなさい。それも生命維持ができる程度に抑えて》

マギカ《ありがとう……。すぐに終わらせるわ!》バッ

ほむら(全く、あなたは本当に……)


アッシュフォード学園

「この学園は黒の騎士団が占拠した!」

ドタドタドタ!

まどか「あの、私にも何かお手伝いできることはありますか……?」

ラクシャータ「進んで無力な学生たちに銃を向けたいって言うんなら、いくらでも仕事はあるわよぉ? それでも手伝う?」

まどか「あぅ……」

ラクシャータ「それでいいの。ほんとはあんたみたいな子はこんなとこにいちゃいけないんだよ」

ラクシャータ「それにぃ、あとでたっぷり調べさせてもらうんだからさぁ? んふふふふ」ニヤリ

まどか(私ほんとに大丈夫かな……?)

玉城「ラクシャータぁ、ゲフィオンなんとかの設置終わったってよー……?」

まどか「あ……」


玉城「おいおい、なんでこんなとこにガキが!?」

ラクシャータ「よりによってめんどくさいやつに……」

玉城「ここは子供のいていい場所じゃねぇんだ、さっさと帰りな!」

まどか「ひっ……」

ラクシャータ「あんたさぁ、そんなこと言ってカレンちゃんはいい訳ぇ?」

玉城「あ、あいつは……仕方ねぇだろ……」

ラクシャータ「あんたより強いもんねぇ」

玉城「ちげぇよ! いや、違わないけど、そうじゃねぇ!」

玉城「皆カレンだって戦うべきじゃねぇと思ってる。でもあいつは誰よりも強い意志で戦ってるから……」

玉城「だから、仕方ねぇんだよ」

ラクシャータ「……ふぅん。あんたってお馬鹿さんだけどただの馬鹿じゃないのねぇ」

玉城「馬鹿だけどってなんだよ! ともかく、早くお家に帰んな、嬢ちゃん!」

ラクシャータ「この子はあたしの研究材……じゃなくて助手だからいいのよ。あんたこそさっさと持ち場に帰りなさいな」

まどか(研究材料って言おうとした!)

まどか(私の人権は!? 保証されてるんだよね!?)


『卑怯者!!』

まどか「」ビクッ

『人質のつもりか!?』

まどか「あれは、ガウェインとニュースでやってた……?」

ラクシャータ「ランスロットさ。プリン伯爵の虎の子だねぇ」

まどか(プリン……)

ラクシャータ「こうしちゃいられないわぁ! まどかちゃん、ちょっと待っててねぇ」

カッカッカッ

まどか(行っちゃった……。待っててって言われてもなぁ)

まどか(ほむらちゃんとマミさん、大丈夫かな……。危ない目にあってなければいいけど)

まどか(さやかちゃんと杏子ちゃんに何も言えないままこんなことになっちゃったから、二人とも心配してるかもしれないなぁ)

まどか(ママ……パパ……タツヤ……)

QB「まどか、ちょっといいかい?」

まどか「キュゥべえ……?」


マミ《お待たせ、暁美さん》

ほむら《……結局ほぼ全員を治療して回って。私の言葉は聞こえてなかったようね》

マミ《ご、ごめんなさい……》

ほむら《ゼロも政庁に向かったそうよ。私たちも急ぎましょう》

キュルルルルッ

ほむら(こんな戦い早く終わらせて、まどかの側にいてあげないと……)

ほむら(あの子だけは、私が……!)

>>104
度々申し訳ありません
訂正

× マミ

○ マギカ


エリア11 ブリタニア政庁

C.C.「……!」

C.C.『おい、戻ってこい!』

ルルーシュ「わかっている。そろそろ政庁の守備隊が……」

C.C.『違う! お前の妹がさらわれた!』

ルルーシュ「冗談を聞いている暇はない。今はコーネリアを人質として、本陣に……」

C.C.『私にはわかる! お前の生きる目的なのだろう! 神根島に向かっている!』

ルルーシュ「神根島……?」

C.C.『それと、もう一つ』

C.C.『あの鹿目まどかも一緒だ!』

ルルーシュ(ゼロ)「鹿目まどかも……? どういうことだ!」

ジェレミア『オォォォォォル・ハイル・ブリタァァァァァニア!!』


ゼロ『暁美! 敵の飛行型だ!』

ほむら「わかってるわ!」

ほむら《マミ!》

マギカ《了解!》

マギカ「レガーレ・ヴァスタアリア!!」

仮面の魔法少女、マギカの手からリボンが伸びる。
そしてジークフリートに絡み付くと、そのまま地面に引きずり下ろした。

ジェレミア『ぽぺ!』

だが、ナイトメアフレームよりさらに巨大な機体をマギカの体躯で抑えるのは無理があった。
ジークフリートは再び浮上すると、空中で高速回転することで魔法のリボンを断ち切る。

マギカ「くっ……!」

ジェレミア『ゼェロォォォォ!!』


ほむら「行かせないわ!」

キュルルルルッ

ほむら「私の無頼もミサイルを搭載しているのよ」

ほむらは魔法でナイトメアを自動操縦にし、コックピットを開けて身を乗り出す。
盾から取り出したのは無骨な地対空ミサイル、ハンドアロー。

ほむら「食らいなさい!」

ドシュッ!

撃っては捨て、また新しい砲身を取り出して連射する。
不安定な足場で発射されたにも関わらず、ミサイル群は一直線にジークフリートへと向かった。

ジェレミア『見えた』『見えた』『見えた』『見えた』『見えた』

しかしジェレミアはその全てを回避し、撃破してしまう。

ほむら「なんなのよ、あいつは!」

マギカ《暁美さん!》

マギカの悲鳴に顔を上げると、ほむらの眼前には高速回転をするジークフリートが迫っていた。
反射的に盾に手が伸びる。

ほむら「しまっ……!」

だが、もう時は止まらない。


マギカ「間に合って……っ! アイギスの鏡!」

ガキン!

マギカが魔法少女のトップスピードで無頼の足元まで疾走し、魔法の鏡でジークフリートの突進を跳ね返す。

ジェレミア『奇怪! 不可解! 私が鏡に弾きました!』

ほむら《助かったわ、マミ。ごめんなさい……》

マギカ《そういうのは後で。今はあれをなんとかしないと》

ゼロ『暁美、あいつを12ストリートに誘い込めるか?』

ほむら「やってみるわ」

ほむら《マミ、ソウルジェムは大丈夫?》

マギカ《えぇ、まだ》

ほむら《なら私がなんとかあいつの動きを止めるから、強力なのを一発お見舞いして、あっちの12ストリートの方へぶっ飛ばしてくれるかしら》

マギカ《任せて。でも止められるの?》

ほむら《大丈夫、策はあるわ》


ほむら『こっちよ、オレンジ!』

ジェレミア『そ、そそそ、その名で呼ばないでくださいぃ!』

地を走る無頼のあとを、宙を舞うジークフリートが追う。
段違いのスペックも相まってすぐに追い付かれそうになった。

ほむら『まだよ!』

バシュッ!

ビルにスラッシュハーケンを撃ち、即座に巻き戻して無頼も空中へ舞い上がる。
その勢いのままジークフリートに飛び乗った。

ジェレミア『なんと!』

ジェレミアが怯んだ隙に再びスラッシュハーケンを飛ばし、ジークフリートの上から離脱する。

ジェレミア『だが効かず!』

ほむら『周りをよく見てみなさい』

ジェレミア『!?』

ジークフリートの周囲には幾十はあろうかという大量の爆弾の数々。
先ほどの一瞬に盾からばらまいたのだ。

ドドドドド!

スイッチの押された一つが爆発すると、周りの爆弾も次々と誘爆していく。
あっという間に大爆発へと繋がった。

ジェレミア『ぐぉぉぉぉぉぉ!!』

ほむら《今よ!》

マギカ《えぇ!》

爆風の中、リボンを足場にマギカが自らの倍以上はある大砲を構えていた。

マギカ「ティロ・フィナーレ!!」

ドォォォォン!


ジェレミア『理解不能! まるで魔法……!』

ゼロ『待っていたぞ』

ジェレミア『むっ! あなた様は、ゼロ!』

ジェレミア『ゼェェェロォォォォ!!』

ギュオン!

ジェレミア『当たらず! この、ジェレミア・ゴットバルトには!』

ゼロ『違うな、オレンジ君。もう当たっている』

ドドドドド!

ジェレミア『卑怯……! 後ろをバック……!』

ゼロ『潰れろ、古き者よ』


ルルーシュ「邪魔者は消えた。神根島へ!」

C.C.「ほむらに伝えなくていいのか?」

ルルーシュ「なんの話だ」

C.C.「鹿目まどかのことだよ」

ルルーシュ「今そんな時間は……」

C.C.「似ている、と思ったんだろう?」

ルルーシュ「っ!」

C.C.「あいつはお前によく似ている。戦う理由も、目的のためなら手段を選ばないことも」

C.C.「だから、あの時専用機の開発を許可したんじゃないのか?」

ルルーシュ「……知ったような口を」

C.C.「知っているさ。私はC.C.だからな」


ゼロ『暁美』

ほむら「何かしら。次はどこへ向かえばいいの?」

ゼロ『落ち着いて聞け。鹿目まどかが拐われた』

ほむら「なんですって……?」

ゼロ『アッシュフォード学園の生徒と一緒に連れていかれたようだ。すぐに向かって確認してくれ』

キュルルルルッ

マギカ「あ、暁美さん!? またぁ!?」ポツーン

ほむら「犯人は誰!?」

ゼロ『それは私が追っている。彼女は必ず連れ戻す。約束しよう』

ほむら「信じて、いいのね?」

ゼロ『ああ』

ほむら「……わかったわ。アッシュフォード学園に向かいます」

ゼロ『感謝する。では切るぞ』


ほむら《キュゥべえ! 聞こえているんでしょう!?》

QB《どうしたんだい。そんなに声を荒らげて》

ほむら《まどかは無事なの!? あなたならわかるでしょう!》

QB《……もう気づいたのかい? 思ったより早かったね》

ほむら《何を言って……。まさか、あなたが……》

QB《僕一人ではないけれど、間違ってはいないね。彼女の身は預からせてもらった》

QB《安心していい。彼女の安全は保証するよ》

ほむら《インキュベーター……!!》

QB《やっぱり知っていたのか。なぜ君がそのことを知っているのかも気になるけれど、今はそれどころじゃないからね》

ほむら《あなた、何を企んでいるの……?》

QB《人間という種族に少し興味が湧いた、とだけ言っておくよ》


アッシュフォード学園

キィィィィ、ガシャン!

団員「お、おい! 何者だ!」

ほむら「黙りなさい……!」ゴッ

団員「ひっ」

ほむら「ラクシャータ!!」

ラクシャータ「そんな大声出さなくても聞こえてるって」

ほむら「まどかは!? あなた、一緒にいたんでしょう!?」

ラクシャータ「私がランスロットに夢中になってる間にどこか行っちゃったみたいなんだけどねぇ。困ったわぁ」

ほむら「何を暢気に……! 拐われたのよ!」

ラクシャータ「はぁ……? あんたこそ突然何を……」

ロイド『こぉんばんはー!』

ほむら「っ!」

ダダダダダ!

ラクシャータ「まさか、あのプリン伯爵が前線に出てくるなんて……」

ほむら(プリン……?)


「ここは退け! 持ち出せないデータは処分しろ!」

ラクシャータ「ほら、あんたも逃げるんだよ!」

ほむら「くっ……、でもまだ何か手がかりが……!」

ラクシャータ「わかんない子だねぇ!」

「レガーレ!」

ほむら「なっ!?」ギュッ

マミ「あ・け・み・さ・ん?」

ほむら「バカ、こんなことしてる場合じゃ……!」

マミ「鹿目さんの件ならキュゥべえから聞いたわ。あの子が何を考えてるのかはわからないけど、ゼロがいなくなったってことは連れ戻しにいってくれたんじゃないの?」

ほむら「それは……」

マミ「ならきっと大丈夫。ゼロを信じましょう」

ほむら「でもあいつはゼロがかなうような相手じゃ……!」

ガコン!
ガガガガガ

ニーナ「……」

ミレイ「ニーナ……?」


ロイド「あれは……!」

ロイド『一時休戦だ! あれを撃っちゃいけない!』

ラクシャータ(ロイドをマジにさせるような代物か……?)

ラクシャータ「あんたたちも撃つんじゃないよ!」

ロイド『完成させたのかい、ニーナ』

ニーナ「検証は不十分です。爆発させられるかはわかりません。でも、私は……!」

セシル『ロイドさん、あれは……?』

ロイド「ウランを使った爆弾だよ。彼女の理論通りならこのトウキョウ租界そのものが死滅するかも」

セシル『そんな……!』

ニーナ「……ゼロ、ゼロはどこ……? 教えて……。ユーフェミア様の仇、ゼロはどこにいるのよぉぉぉぉぉ!!」

ほむら(……うわぁ)

マミ「っ! いけない!」

マミ「レガーレ!」

ビシッ

ニーナ「……! そんな、体が動か……な……」ガクッ


ロイド「せ、セシル君!」

セシル『はい!』

ミレイ「ニーナ!」

ラクシャータ「彼女は?」

マミ「気絶させただけです。とりあえずはこれで……」

「お、おい、今あの子の手からリボンが……」

「手品か何かか……?」

マミ「あ……」

ラクシャータ「……さっさとずらかった方が良さそうねぇ。ほら、行くよ!」

マミ「は、はい」タッ

ほむら「ちょっと、マミ、これほどいて……」ズルズル


黒の騎士団本陣

ディートハルト「ラクシャータ、無事だったか」

ラクシャータ「まぁねぇ。ゼロがいなくなったんだって?」

ディートハルト「現場に指揮を任せただけで……。ところで、後ろの二人は?」

ほむら「……」

マミ「えっと……」

ラクシャータ「この子たちはあたしの助手だから気にしなくていいわぁ」

ディートハルト「助手、ねぇ」

ディートハルト「まぁ、いい。戦況は不利だ。我々は撤退する」

神楽耶「ゼロ様は!? 他の者はどうするのです!」

ディートハルト「今神楽耶様まで捕らえられる訳にはいきません。我々だけでもここは退くべきです」

神楽耶「そんな……」

ラクシャータ「ま、それがいいでしょうねぇ」

神楽耶「ゼロ様……、本当に私たちを……日本を見捨てたのですか?」


神根島 黄昏の間

まどか「んっ……。ここ……は?」

QB「起きたね、まどか」

まどか「キュゥべえ……? あれ、私、トウキョウにいたはずじゃ……」

QB「君と会わせたい人がいてね。ちょっと来てもらったんだ」

QB「V.V.、約束通り魔法少女を連れてきたよ」

V.V.「これが魔法少女か。見た目は普通の女の子だね」

まどか「子ども……?」

V.V.「僕の名前はV.V.。ギアス嚮団の嚮主をやっている」

まどか「ギアス……嚮団?」

V.V.「そう。僕はこのキュゥべえとある取引をしたんだ」

V.V.「ギアスについての情報を共有する代わりに、魔法少女の情報をもらう、というね」


まどか「待って、わかんないよ。ギアスって何……?」

QB「そうだね、君には知る権利がある」

V.V.「ギアスとは王の力。人の願望を形にした超常の力さ」

V.V.「君が少しの間一緒にいたゼロ。彼もギアスを持っているんだ」

V.V.「絶対遵守のギアス。世界を思い通りにしたいという願いから生まれたギアスだ」

まどか「人の……願い……」

QB「どこかで聞いた話だとは思わないかい?」

まどか「……! 魔法少女の魔法……!」

QB「そう。マミは命を繋ぐ願いから拘束の魔法を。さやかは癒しの願いから治癒の魔法を。そして杏子は人を惑わせる願いから幻惑の魔法を。魔法少女の魔法は、自身の願いを元に発現する」

QB「もうわかっただろう?」

QB「ギアスとは魔法少女を起源とする力なんだ」


まどか「魔法少女が起源の力……」

QB「ここからは嚮団の研究と僕の知識に基づく仮説なんだけど。大昔、魔法少女の力に気づいた科学者なり医者なりがいた」

V.V.「きっと強烈に惹かれただろうね。なにせ、条理を覆す力だ」

QB「だから、魔法少女の力を盗むことにした」

まどか「盗むって……、そんなことできるの……?」

QB「できない。……と、僕ですら最近まで思っていたよ」

V.V.「けれどその人物は成し遂げた」

QB「ソウルジェムを別の人間の体内に植え付けたんだ」

まどか「そんな……!」

V.V.「最初からうまくいった訳じゃない。拒絶反応を起こした被検体からソウルジェムを取りだし、また別の人間に移植した」

QB「何度繰り返してもダメだった。そこで彼は次の手段は考えた」

QB「ソウルジェムを砕いてその欠片を移植したのさ」

まどか「そんなことをしてその魔法少女はどうなっちゃったの……?」

QB「無事ではすまなかっただろう。ソウルジェムは魔法少女のたま……力の源だからね」

まどか「ひどい……!」

V.V.「力を失ったとはいえ、元は魔力の塊だ。欠片でもソウルジェムは微量の魔力を帯びていた」

QB「それが普通の人間の体に適合したんだろうね。彼はようやく生み出したのさ」

QB「いわば魔法少女の複製品、“ギアス”をね」


QB「彼は微調整を繰り返し、拒絶反応の出ないギリギリのラインを見つけ出した」

V.V.「そしてついに自分の体に植え付けたんだ」

QB「本来なら少女にのみ与えられる力なんだけど、微弱なギアスならば性別、年齢は関係ないことはすでに研究でわかっていたからね」

V.V.「もちろん適性の有無はあったけどね。魔法少女ほど、顕著ではないだけで」

QB「そして彼は力の一片を手に入れた。彼の能力まではわからないが、それは有意義な生活を送ったことだろう。使えば使うほど、まるで魔力が体に馴染んでいくかのように強化されていくことにも快感を感じていた」

QB「けれどある日彼は気づいたんだ」

V.V.「観察していた被検体の中に、能力を失っているものがいたことに」

V.V.「能力を失う条件があることを知った彼は動揺した。自分もそうなるかもしれないからね」

V.V.「だけど、その被検体を調べるうちに、それが退化ではなく進化だと知った」

V.V.「コードの発現だ」


まどか「コード……?」

V.V.「不老不死となり、ギアスを発現させることができる力のことだよ。僕も持っている」

QB「魔法少女の欠片、魔力が完全に人体と融合し、本来の魔法少女の不死性さえも手に入れたのさ」

QB「またその被検体は魔力を取り込むことで魔力に対する耐性や魔力そのものを生成する力をも得ていた」

V.V.「その魔力を他人に分け与えてギアスを発現させるんだ。最初にその人物がやったようにね」

QB「ギアスが消えてしまった理由ははっきりとはわからない。だけど、きっとコードを発現させたギアスユーザーは、ギアスを多用して自分の願いを完全に叶えてしまったんだろうね」

QB「そしてかつて自分が心から願ったことを忘れてしまった。魔法少女がそうであるように、自らの願いを否定することによって能力を封印してしまったんだと考えられる」


V.V.「話を戻すけど、ギアスの乱用で地位も名誉も欲しいままにしていた彼はその新たな力に焦がれた」

V.V.「なんとしても自分も不死の力を得たいと思ったんだ」

V.V.「でもこれはギアスの研究ほど難しいものではなかった」

QB「同じく魔力を取り込むに至ったギアスユーザーなら譲り受ける、もしくは奪い取ることが可能だったのさ」

QB「彼はその被検体からコードを奪い取り、不老不死を得た」

V.V.「それからは人々にギアスを与えることを生業としていたようだ」

V.V.「自分の願いを叶える代わりに力を与えるという契約の下でね」

QB「その人間はとことん貪欲だよね。魔法少女の力は願いを叶えてあげる代償の力なのに、彼は自分の願いを叶えさせる見返りにしてしまった」

V.V.「その後彼はコードを誰かに譲ったのか、それとも奪われたのかまではわからないけれど、こうして現代までその力は受け継がれてきたのさ」


まどか「ギアスがなんなのかはなんとなく、わかった。信じられないけど、魔法少女がいるんだしそういう力があってもおかしくないと思う……」

まどか「でも、どうして私をここに連れてきたの……?」

QB「簡単なことさ。僕はギアスについて調査する内に、ギアス嚮団を見つけた」

V.V.「驚いたよ。キュゥべえはわずか数日で僕らのことを探し当てたんだ」

QB「そしてお互い情報交換をするうちに一つの疑問が生じた」

QB「オリジナルの魔法少女にレプリカのギアスを与えたらどうなるのか、という疑問がね」

まどか「……っ」ゾクッ


QB「君は魔法少女としてかなりの素質を持っていた。なら、ギアスにもそれなりの適性を持っているかもしれない」

V.V.「事実、君は相当高いR因子を有している。見た限りルルーシュやナナリー以上だ」

QB「そういう訳なんだ。まどか、協力してくれるかい?」

まどか「そんな、嫌……、やめて……」

QB「どうしてだい? もしかしたら、とても便利な力が手に入るかもしれないよ?」

まどか「そんな歪んだ力、いらないよ!」

QB「合意の上が良かったんだけど……。仕方ないね。V.V.、やっていいよ」

V.V.「鹿目まどか、僕と契約してギアスユーザーになってよ!」

まどか「いや、いやぁぁぁぁぁ!!」


シャルル「兄さん」

V.V.「ああ、シャルルか」

シャルル「どうですか、魔法少女とやらは」

V.V.「実に面白いよ。僕らが何年も研究してきたことが一瞬でわかったしね」

シャルル「兄さんが楽しそうで何よりです」

V.V.「そうかい?」

シャルル「えぇ。それで、その魔法少女は?」

V.V.「ギアスを与えたら気絶したよ。だから実験はまた今度だね」

QB「君がブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアだね。お会いできて光栄だ」ヒョコッ


シャルル「貴様はぁ……?」

QB「僕はキュゥべえ。魔法少女を生み出すのが僕の仕事だ」

シャルル「ほぉ。マスコットというやつか」

QB「その言い方が適切かはわからないけれど……」

V.V.「そうだ、シャルル。ルルーシュが魔法少女を黒の騎士団に入れていたらしいよ」

シャルル「ッハッハッハッハ!! あやつめ、やりよるわ!」

V.V.「それで提案なんだけど、ブリタニア軍にも入れてみたらどうだい?」

シャルル「魔法少女をですか? ふむ……」

シャルル「そういうことならば手配しておきましょう」

QB「なら僕から是非推薦したい魔法少女がいるんだけど……」


中華連邦 朱禁城

神楽耶「ほむら、マミ! 大変ですわ!」

マミ「どうかしたの?」

神楽耶「ゼロ様が……! ゼロ様が!」


『ブリタニア政府によって、黒の騎士団のリーダーであるゼロの死刑執行が発表されました。なお、先日のトウキョウ決戦において捕らえられた反抗勢力の……』

ほむら「なんですって……?」

マミ「そんな……!」

ディートハルト「まさか。あの方が亡くなられるはずがない」

神楽耶「私もそう思いたいです……。けれど……」

ほむら「待って……。じゃあまどかはどうなるの……? あの人が連れ戻してくれるんじゃなかったの……?」

マミ「暁美さん……」

ほむら「っ!」ダッ

マミ「あ、暁美さん! どこに……!」

神楽耶「今は一人にして差し上げましょう。まどかさんはほむらの大切なお友達なのでしょう?」

マミ「えぇ……」


バンッ

ほむら「ラクシャータ!」

ラクシャータ「はいはい、なぁにさ」

ほむら「私の体を使いなさい!」

ラクシャータ「はぁ?」

ほむら「魔法少女の研究がしたいのでしょう! 私の体を使いなさいと言っているの!」

ラクシャータ「あんなに渋ってたのに、どういう風の吹き回し?」

ほむら「まどかは……今一人なの。私が一緒にいるって約束したのに……!」

ほむら「ゼロはまどかを助けてくれなかった。……いや、そもそも誰かに頼ろうとしたのが間違いだった」

ほむら「まどかは私が救い出す! だから、私の専用機を作りなさい、ラクシャータ!」

ラクシャータ「んふふふふ、りょぉかぁい」


ミタキハラ 鹿目家

さやか「帰ってないか……」

さやか「まどか……。やっぱりあの時、止めておくべきだったんだ……」

杏子「んなこと言ったって、仕方ねぇじゃねぇか。誰もあんなことになるなんて思わないって」

さやか「まどかのママもパパもタッくんも遺体で見つかったって……。でもまどかは……!」

杏子「行方不明、なんだろ。魔法少女だし、生きてても不思議じゃないが……」

さやか「あの子、きっと泣いてる……。あんなに家族のこと大好きな子だったんだから……」

さやか「こんな時こそ、あたしがまどかの側にいてあげないといけないのに……っ!」

さやか「守ってあげなきゃいけないのに!」

杏子「さやか……」


ロイド「こぉんにちはぁ!」

さやか「っ! 誰!?」

ロイド「そんな警戒しないでいいよぉ。怪しい者じゃないからさ」

セシル「思いっきり怪しいですよ、ロイドさん」

ロイド「あれ、そう?」

杏子「あんたたち、あたしらに何の用だ?」

セシル「突然ごめんなさいね。私たちはナイトオブセブン枢木スザク卿の専属チーム、キャメロットと申します」

さやか「枢木スザクって……」

杏子「ブリタニア軍……」

セシル「あなたたちにお願いがあって来ました。魔法少女の力を貸して頂きたいんです」

さやか「えっ!?」


杏子「てめぇら、なんで魔法少女のことを知ってやがる!」

ロイド「皇帝ちゃんからの直々のご命令なんだよねぇ。ミタキハラにいる美樹さやかと佐倉杏子って魔法少女をスカウトしてこいってさー」

さやか「ブリタニア皇帝が直々に……?」

セシル「協力していただけませんか?」

杏子「急に言われてもな。だいたいあんたらブリタニアは……」

さやか「……やります」

杏子「は!?」

さやか「やらせてください!」

杏子「おいおい、さやか……?」

ロイド「おーめでとぉ!」

セシル「あ、あれ。意外とあっさり……」


さやか「その代わり、お願いしたいことがあるんです」

セシル「何でしょう。お給料ならもちろん払わせてもらうわよ?」

杏子「マジか!」

さやか「いや、そうじゃないです。この前の、行政特区の事件から行方不明になってる鹿目まどかって女の子を探してほしいんです」

セシル「行政、特区の……」

さやか「その子、今一人だから……。私が守ってあげないと……っ」

セシル「そう……」

杏子「なぁ、飯は出るか?」

ロイド「セシル君の料理ならいくらでも食べさせてあげるよぉ〜」


セシル「私が言うのもなんだけど、あれは私たちブリタニアの起こした事件よ? その私たちを信用できるの?」

さやか「……あたしは、あれがユーフェミア様の意志だとは思ってません」

セシル「え……?」

さやか「きっとゼロが何かしたんです。だって、ユーフェミア様がおかしくなっちゃったのはゼロが来てからじゃないですか!」

さやか「あいつ、私の先輩にも何かしたんだ……。だからあの時のもゼロが仕組んだに決まってる!」

セシル「……きっと、この話を聞いたらスザク君喜ぶわね」

さやか「え?」

セシル「いいえ、なんでもないの」

セシル「わかりました。こちらでできる限りの捜索をするとお約束します」

セシル「では、また後日詳しい話をしに伺いますので」

ロイド「よろしくねぇ〜」

セシル「……ロイドさん、私の料理ならって、どういう意味ですか?」

ロイド「あ、いや、別に変な意味じゃなくてね……」


杏子「良かったのか、さやか」

さやか「何が?」

杏子「あいつも言ってたけど、まどかの家族を奪ったのはブリタニアだ。そんなやつらに手を貸すのはお前の正義にかなってるのか?」

さやか「あの事件の裏には絶対ゼロの仕掛けがある。あの後あそこにいたコーネリア様の腹心が裏切ったって事件もあったらしいし、ゼロは怪しすぎるよ。倒さなきゃいけない」

さやか「それにあたしは別にブリタニアに忠誠を誓う訳じゃない。ゼロを倒すためにブリタニアを利用するだけ」

さやか「もし……万が一、ゼロが何もしていなかったら、あたしはすぐにでもブリタニアを裏切るよ」

杏子「マミたちが帰ってこないってことは黒の騎士団に残ってるんだろ。本当に戦うことになるかもしれないぞ」

さやか「そうだね……。でも、それはまだゼロが生きてるってことでもあるでしょ?」

杏子「まぁ、確かに他に残る理由はないよな……」

さやか「なら、あの二人も私が連れ戻す」

杏子「……そうかい」

さやか「あんたは無理してこなくてもいいんだよ。今ならここのグリーフシード取り放題だしね」

杏子「そうなんだけどなぁ……。なんでかね、あんたを一人にしておけないんだ」

さやか「な、なによ……。あたしってそんなに危なっかしい?」

杏子「自覚してない分余計にな」

さやか「なっ! ひどーいっ!」

杏子「まぁ、とにかく。あたしはさやかについてくよ」

さやか「あ、ありがと……」


まどか(ギアス……。人の願望を力に変える呪われた力)

まどか(私はそれをあのV.V.って子に植え付けられた)

まどか(次起きた時、私はそのギアスの力に目覚めているかもしれない……)

まどか(私の、願い……。なんだろう)

まどか(魔法少女になった時はエイミーを助けたいって願いだった)

まどか(この願いは私のギアスとは関係ないのかな)

まどか(私が今心から望む願い……)


詢子『人にはそれぞれ信じる正義と許せない悪があるんだ。だから、戦争なんてものがいつまでもなくならない』

詢子『少しでも相手を理解しようとすれば。たとえ理解できなくても、相手を信じてお互い絆を結ぼうとすれば、許せないことなんてないはずなんだけどね』


まどか(私は……もう誰にも戦争なんてしてほしくない)

まどか(あんな、虐殺なんて悲しいことは起きてほしくない)

まどか(そのために、私にできること……)

まどか(私は、みんなの絆を……結びたい)


中華連邦 某所

まどか「んっ……?」パチッ

V.V.「ようやく起きたね、まどか」

まどか「あなたは……V.V.……」

V.V.「覚えていてくれて嬉しいよ。お目覚めのところで悪いけど、早速君のギアスを確認しよう」

V.V.「何も難しいことはしない。ただ君がギアスを発動させればいいだけだ」

V.V.「とは言っても僕にはギアスは通じないからね。実験台を用意させてもらった」

少年A「……」

少女「……」

まどか「まだ子どもじゃない!」

V.V.「だから?」

まどか「あなた……!」

V.V.「ついでだし教えておくけど、ギアス嚮団にいる子どもたちは皆身寄りのない孤独な子どもばかりだ」

V.V.「放っておいてもそのうち野垂れ死ぬ。なら僕らの研究に役立つ方が彼らも幸せだろう」

まどか「そんな訳ないじゃない! みんなあなたに無理矢理力を与えられて!」

V.V.「今はそんなことどうだっていいじゃないか。早く君のギアスを見せてよ」

まどか「……嫌です。絶対にギアスなんて使わない。あなたの思い通りにはならない!」

V.V.「強情だなぁ。仕方ない。確か、他人の体を操れる子がいただろう。連れてきてよ」


少年B「……」

まどか「何を……させる気なの?」

V.V.「この子は他人の意識をそのままに体を操るギアスを持っている。その力で最初の二人に君の前で殺し合いをさせようと思ってね」

まどか「……っ!?」

V.V.「さぁ、思う存分戦わせるんだ」

少年B「……」キィーン!

少女「い、嫌……」

少年A「やめ……!」

二人の子どもの体が不自然に動き出す。
V.V.にナイフを渡され、お互いを殺そうと攻撃し始めた。

まどか「や、やめさせて! どうしてこんなことを……!」

V.V.「君のギアスを見るためだと最初から言ってるじゃないか。さぁ、ギアスで止めないと、どちらかが死んでしまうよ?」

まどか「ダメ……、そんなの絶対ダメ!」

まどか(殺し合いなんて……させない!)キィーン!


まどかの左目に鳥のようなギアスの紋様が浮かぶ。
それに呼応してまどかを中心に薄桃色の結界が広がり、相手の喉を掻き切らんとする二人を包み込んだ。

V.V.「結界型のギアスか! 効果は!?」

まさに殺し合いをしようとしていた子どもたちの手からナイフが滑り落ちる。
その二人にギアスをかけた少年も首を傾げた。

少年B「V.V.様、二人を操れません……」

V.V.「どういうことだ……? ギアスを打ち消すギアスか?」

少年B「二人の相手を殺したくないという強い想いにギアスが弾かれているようです」

V.V.「殺したくない……? 戦意を失わせるギアスということかな?」

まどか「はぁっ、はぁっ……」

まどか(使っちゃった……。呪いのよう
な力を……)

まどか(でも……)

少年A「良かった……」

少女「助かったよぉ……」

まどか(これで、良かったのかな……)


V.V.「さてまどか。僕の見立てでは君のギアスは『戦意を喪失させるギアス』だ」

V.V.「この予想が正しければ、限定的ではあるけれど、非常に強力なギアスだ。何故だかわかるかい?」

まどか「……」

V.V.「敵の戦意だけを奪い、一方的に殲滅することができるからだよ」

まどか「っ!!」

V.V「それもその時かかっている別のギアスすら上塗りするほどの影響力。期待以上かもしれないよ、まどか」

まどか「……私はあなたのためにギアスを使ったりしない」

V.V.「僕があげた力だというのに、ひどいね」

まどか「私は望んでなんかない!」

V.V.「まぁ、いい。時間はいくらでもあるんだ。ゆっくり君の能力を調べていこう」


だが、V.V.の目論見はすぐに崩れることとなる。
前回同様まどかの優しさにつけ込んで実験をしようとした時だった。

V.V.「なぜギアスが発動しないんだ! 結界に入っているはずなのに!」

離れた場所に二人の子どもを配置し、お互いを銃で狙撃させる。
そのうちの一人をまどかのギアス圏内に置いて戦意を喪失させようとしたのだが、まどかがギアスを使っても殺し合いを止めようとはしなかった。

V.V.「まだ条件があるのか……?」

まどか(どうして……? このままじゃあの子たちが死んじゃう……!)

まどか(私の願いを聞いてくれるんじゃないの……?)

まどか(……あ。そうか。私の願いはみんなの絆を繋ぐこと)

まどか(一人じゃ、絆は結べない)

まどか(なら……!)キィーン!


V.V.「何を……!? 結界がさらに広がった!? こんな広範囲の結界見たことが……」

最初の二倍以上に広がった結界が離れたもう一人のところまで届き、ようやくまどかのギアスが発動する。

少年「あ……」

少女「私は……何を……」

まどか(やっぱり……。私のギアスは『戦意を喪失させるギアス』じゃない)

まどか(『人と人の絆を結ぶギアス』なんだ)

V.V.「敵対しあう者を両方結界内に入れないと発動しないのか……?」

V.V.「なんて使い勝手の悪いギアスだ。期待外れだったようだね、まどか」

V.V.「君はどうも役立たずのようだ 」


まどか(そう言ってV.V.は私を閉じ込めた)

まどか(用済みってことかな。ギアスを使わなくていいならこの方がマシなのかもしれない)

まどか(ご飯はちゃんとくれるし、キュゥべえが時々グリーフシードを持ってきてくれた)

まどか(キュゥべえが言うには)


QB「僕は君のギアスに興味を失った訳じゃないからね。まだ無事でいてもらいたいのさ。それに、契約もまだあるしね」


まどか(……らしい。あんなことした割には味方なのか敵なのかわからないや)

まどか(キュゥべえの言ってた契約ってなんだろう……?)


まどか(私は一人、そんなことを考えながらギアス嚮団での日々を過ごし……)

まどか(そして、一年が過ぎた)


今回はこの辺りで

次回からR2の内容に入っていきます


一年後 太平洋

ラクシャータ「んふふふふ。紅蓮は大丈夫そうねぇ」

マミ「すごい……。あのラウンズを一撃で……」

ラクシャータ「行動不能にしただけだけどねぇ」

ラクシャータ「でも、やっぱりランスロットは手強いかぁ。今のうちにラウンズを潰しておきたいけど……」

ラクシャータ「……あんたたちはいけそう?」

ほむら「えぇ」

マミ「もちろんです」

ラクシャータ「それじゃ、いってみよっかぁ」


神楽耶「目標はラウンズの機体の破壊。その後、カレンさんの援護にまわってください!」

ほむら「了解」

マミ「承知! ……なんちゃって」

神楽耶「お二人とも、お気を付けて!」

ラクシャータ「舞い上がりなぁ! ホムリリィ! キャンデロロ!」

ほむら「ホムリリィ、発艦!」

マミ「キャンデロロ、発艦!」

バシュ!


ロイド「うわーぉ、新手だぁ」

セシル「こちらの準備も整っています」

ロイド「そう? じゃ、こっちもいってみよぉ」

セシル「では……。美樹さやか、佐倉杏子。状況を確認します」

セシル「新総督は未だ旗艦に取り残されている模様。枢木卿が救出に向かいましたが、敵ナイトメアと戦闘に突入。また、別の敵性ナイトメアが二機こちらに向かっています」

セシル「敵機を殲滅し、枢木卿を補佐して新総督を救出せよ!」

さやか「イエス、マイロード!」

杏子「任しときな」

セシル「オクタヴィア、オフィーリア、発艦!」

さや杏「「発艦!」」

ロイド(さぁ、ラクシャータ。どちらが魔法少女にふさわしい機体を作れたか、勝負しようじゃないか)


ホムリリィ

紅蓮の系譜を継ぐほむら専用KMF。
カラーは紫。頭部が三角帽のようになっているのが特徴。
紅蓮のような輻射波動機構はなく突破力こそ劣るものの、飛翔滑走翼による機動力に関しては勝るとも劣らない性能を持っている。
随所にマミのリボンでできた特殊素材が使われており、魔力の伝導率を上げる工夫がなされている。
主な装備は廻転刃刀、飛翔滑走翼の基部に搭載されたミサイル。
輻射障壁による防御も可能。
また、コックピットの開閉が容易で、ほむら自身が兵器を使用して戦うこともできる。


キャンデロロ

神虎の構想を流用したマミ専用KMF。
カラーは黄色。頭部を覆うボンネットが特徴。
神虎とほぼ同等のスペックを誇るが、ホムリリィ同様魔力伝導率を高める工夫が施されているので、マミでも魔法によるサポートで十二分に扱える。
主な装備は天愕覇王荷電粒子重砲、廻転刃刀。
圧倒的な攻撃力を誇る反面、輻射障壁機構を搭載する余裕がなくなってしまったため、防御の際は絶対領域やアイギスの鏡が使用される。
また、マミのリボンやマスケット銃を召喚して戦うこともできる。


オクタヴィア

ランスロットの系譜を継ぐさやか専用KMF。
カラーは青。ハート型のエリザベスカラーと羽織ったマントが特徴。
機動力に長け、フロートシステムと各所のブースターで自在に空を駆る。
コアルミナスの一部に杏子の鎖を利用した特殊素材を使用しており、機体の細部まで魔力を行き渡らせることができる。
主な装備はメーザーバイブレーションソード(MVS)、ソードハーケン。
ブレイズルミナスによる防御も可能。
また、さやかの剣を召喚して戦うこともできる。


オフィーリア

同じくランスロットの流れを引く杏子専用KMF。
カラーは赤。頭部の炎のような飾りが特徴。
フォートレスモードへの可変機能も取り入れており、自由度の高い機体になっている。
コアルミナスはほとんどが特殊素材となっていて、出力も非常に高い。
主な装備はMVS(ランスタイプ)、ハドロンスピアー、ハーケンブースター。
ブレイズルミナスによる防御も可能。
また、杏子の槍を召喚して戦うこともできる。


神楽耶『新たに敵性ナイトメア二機捕捉! お二人の方へ向かっています!』

ほむら「なら蹴散らすまでよ」

マミ《油断しないで。来るわよ!》

さやか『えぇぇぇぇぇいっ!!』

ガキンッ!

ほむら「っ!」

マミ《暁美さん!》

杏子『アンタの相手はあたしだ!』

マミ『くっ……!』

ほむら《私は大丈夫だから、自分の敵に集中しなさい》

マミ《わかってる!》


マミ『剣での近接戦闘は得意じゃないんだけど』ジャキッ

杏子『ようやくやる気になったのかい?』チャキッ

マミ(見たことない機体ね……。あっちも新型かしら)

杏子『様子見とはずいぶん余裕だ……な!』

マミ『っ!』

オフィーリアの瞬間的な加速にマミは息を飲む。
MVSの切っ先をかろうじて回避し、廻転刃刀で反撃に出た。

杏子『おっと!』

杏子はそれを柄で弾くと再び切りかかる。

杏子『チャラチャラ踊ってるじゃねぇよウスノロ!』

マミ『うすっ……!?』イラッ

マミ『言ってくれるじゃない!』

キャンデロロは後ろに飛び、一度距離をとった。
追撃しようとした杏子は何かに気付き足を止める。


マミ『あら、残念。そのまま突っ込んできたら真正面からぶつけてあげたのに』

マミ『天愕覇王荷電粒子重砲、発射!!』

ギュアッ!

キャンデロロの胸部から高エネルギーの光線が発射される。
天愕覇王荷電粒子重砲。
紅蓮可翔式の輻射波動砲とほぼ互角の威力を誇る強力な一撃だ。

杏子『ふんっ! そっちがそのつもりなら受けて立つまでさ!』

オフィーリアの両腕から巨大なメギドハーケンが飛び出し、連結した。
そして、その先端に膨大なエネルギーが集まっていく。

杏子『くらいな! ハドロンスピアー!!』

ギュォン!


ほむら(派手にやってるわね……)

さやか『隙あり!』

マミと杏子の戦いに気をとられたほむらにオクタヴィアのMVSが襲いかかる。

ほむら『くっ!』ガキン!

さやか『まだまだぁ!』

MVSとソードハーケンの猛攻にほむらは防戦一方に追いやられてしまう。
反撃の機会を伺うも、剣戟に次ぐ剣戟になかなか手が出せない。

ほむら(魔法少女の反応速度でも防ぐのが精一杯だなんて……。この人、強い……!)

ほむら『でも……!!』

ほむら『こんなところで! 負けられないのよ!』


バシュッ

つばぜり合いの中、ホムリリィの飛翔滑走翼の基部にあるポッドが開き、大量のミサイルが発射される。

さやか『なっ!? こんな至近距離で!?』

腰のブースターを全開にし、すぐさま離脱するオクタヴィア。
だがミサイルはその後をホーミングしていく。

ドドドドド!

ほむら『ちょっとは効いたかし……っ!?』

爆発による煙の中にはほとんど無傷のオクタヴィアがいた。
その手に展開されているのは——

ほむら『ブレイズルミナス……!』

さやか『……アンタ、正気じゃないわ。ビビったぁ』

ほむら『手強いわね……』


ぶつかり合う紫と金色の光線。
未だオフィーリアとキャンデロロの拮抗は続いていた。
だが、それも傍目から見た場合の話だった。

杏子(こいつ……、エナジー全部撃ち尽くすつもりかよ!? 光線の出力が半端じゃねぇ……!)

杏子(このままじゃ押し負ける……?)

ピピッ

セシル『二人とも! 枢木卿が総督を救出しました! すぐにアヴァロンに帰投してください!』

杏子「でもよぉ!」

セシル『紅蓮がそちらに向かったらさすがに勝てないでしょう? 機体が壊されたらロイドさんが泣くから帰ってきて』

さやか《杏子、あたしたちもう軍人なんだから、命令には従わないと》

杏子「……ちっ!」

しぶしぶ撤退を受け入れた杏子はハドロンスピアーを僅かにずらし、天愕覇王荷電粒子重砲の軌道を反らす。
お互いの光線は機体を掠めて消えていった。

杏子『アンタとの決着はまた今度だ!』

捨て台詞めいたことを叫び、フォートレスモードに変形してオフィーリアはその場を離脱した。

マミ『待ちなさい!』

ほむら《深追いは危険よ》

マミ『くっ……』

さやか『あたしも、次はアンタを倒すからね』

ほむら『私はあなたに興味ないのだけれど』

さやか『……負けそうだったくせに』バシュッ

さやかも、杏子のあとを追って戻っていく。

マミ《強かったわね……》

ほむら《そうね。ブリタニアに私たち魔法少女の動きについてこれるパイロットがラウンズ以外にもいるなんて》

マミ《ふふっ。悔しい?》

ほむら《……いいえ。どうでもいいわ》ファサァ

ほむら(私の目的はまどかを救い出す、ただそれだけなのだから)


アヴァロン

セシル「お帰りなさい」

ロイド「いいデータが取れたよぉ」

さやか「すみません、杏子が……」

セシル「いいのよ。特派の頃からここは結構その辺適当だから」

杏子「もーちょっとで勝てたのによー」

さやか「嘘つけ。危なかったじゃん」

スザク「そうだね。杏子はちょっと押され気味に見えた」

さやか「スザクさん!」

スザク「お疲れ様、さやか。杏子も」

杏子「けっ」

さやか「スザクさん、今日もすごかったです!」

スザク「ははは……。照れるな」

ナナリー「あの、スザクさん……」

さやか「!!」


スザク「あぁ、ごめんごめん。ちゃんと紹介するよ」

スザク「さやか、杏子。こちらエリア11の総督に就任されたナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下だ」

さやか「お、おおお、お会いできて光栄です皇女殿下!」ビシッ

杏子「まだガキんちょじゃん」

さやか「こら杏子!」

ナナリー「いえ、いいんです。本当のことですから」

ナナリー「年も近いようですし、ナナリーと呼んでください」

さやか「さ、さすがにそれは……」

杏子「おー、よろしくな、ナナリー」

さやか「杏子ぉ!」

スザク「さやか、ナナリーは事情があって皇女として扱われることにあまり慣れてないんだ。だから、普通に接してあげてくれないか?」

さやか「す、スザクさんがそういうなら……」

さやか「み、美樹さやかです。よろしく……な、ナナリー」

ナナリー「はい。よろしくお願いします、さやかさん」ニコッ

杏子「佐倉杏子だ。食うかい?」つ うんまい棒

ナナリー「杏子さんですね。ありがとうございます」

さやか「い、いいのかな……」


黒の騎士団 タンカー

ラクシャータ「お疲れ〜」

ほむら「ゼロは! ゼロはどこ!?」

マミ「暁美さん、落ち着いて……」

神楽耶「ゼロ様なら、紅蓮のエナジーフィラーを交換させたらそのまま日本へ帰ってしまいましたわ」

神楽耶「全く、妻に一言もなしなんて、失礼しちゃいますわね!」

ほむら「くっ……!」

藤堂「神楽耶様、お久しぶりです。おや、そちらは……」

マミ「あ、しまった……」

神楽耶「藤堂、無事で何よりです。こちらは私の友人で、怪しい者たちではありません」

藤堂「そうですか……。もしや、先ほどの戦闘は君たちが?」

ほむら「えぇ」

藤堂「そうか。若いのに素晴らしい技術を持っている。私は藤堂鏡志朗。君たちの名前を聞いてもいいかな?」

ほむら「暁美ほむらです」

マミ「巴マミです。あ、あの、失礼ですが、“奇跡の藤堂”さんですよね!」

藤堂「そう呼ばれることもある。尤も、今奇跡を枕詞に持つのはゼロだがな」

マミ「そんな! 黒の騎士団での活躍もすごいじゃないですか!」

藤堂「いや、黒の騎士団での戦績はゼロの采配あってのものだ。そもそも厳島でのことも、私一人で成したことでは……」

ほむら「……奇跡の藤堂がこんな腑抜けとは、とんだお笑い草ね」

マミ「暁美さん!?」


藤堂「腑抜け、とは?」

ほむら「人は奇跡の代償を支払わなければならない。それが人智を超えたものだろうと、人為的なものだろうと」

藤堂「代償……か」

ほむら「ゼロなら、あれは奇跡ではない、とかなんとか言いそうだけれど。私はそうは思わない」

ほむら「あなたは誰もがブリタニアには勝てないと思っていた条理を覆した。たとえそれが緻密な情報戦と戦略を尽くした必然の結果だとしても、あなたが成したことは希望を捨てきれない人にとって奇跡に他ならない」

ほむら「奇跡は必ずその歪みを生むわ。エリア11での激しい抵抗活動と犠牲者こそがその証拠」

ほむら「厳島の奇跡と呼ばれるあの出来事がなければ日本人はもっと大人しく屈していたでしょう」

ほむら「日本でのレジスタンスの活動、そしてもっと言えば黒の騎士団の存在さえ、元を辿ればあなたが起こした奇跡に繋がる」

ほむら「それをあなたが『私が起こしたものではない』だなんて、逃げ道を作っているだけじゃない。謙遜、なんて聞こえがいいだけで何の意味もないわ」

ほむら「堂々とするべきよ。あなたは未だ、ゼロと並ぶほどの日本の希望なのだから」

藤堂「ふっ……。ゼロも言っていたよ。私には奇跡を起こした責任がある、とな」

藤堂「確かに、私には大きな責任がある。日本に夢を残した責任が。だからこそ今こうして再びブリタニアに立ち向かっている」

藤堂「散っていた卜部や仙波のためにも、私は泥臭く抗い続けなければならない」

藤堂「……私もまだまだ未熟だ。一回りも二回りも年下の少女に諭されるとは」

ほむら「そうでもないわ……。私も、それなりに濃い時間を生きてきているから」


トウキョウ租界 ブリタニア政庁

ローマイヤ「今度はこちらの原稿通りお願い致します」

ナナリー「私は総督として……」

ローマイヤ「総督は王様ではございません。あくまで皇帝陛下の代理として各エリアを治める者」

ローマイヤ「今回の特区日本に関しては善処致しますが、今後、全て事前にご相談ください」


杏子「けっ。なんだよ、あのおばさん。偉そうに」

ナナリー「いえ、私が相談もせず勝手に行動したのがいけないんです……」

杏子「でもさぁ、ナナリーのしゅーにんえんぜつ?なんだから何しゃべろうとナナリーの勝手じゃん」

ナナリー「そう簡単にはいきませんよ。大人の世界、というものです」

杏子「大人ねぇ。めんどくさい世界だな」


杏子「しっかしあのおばさんむかつくな……」

杏子「あ、なぁなぁ、さやか。あたしどっかであいつ見たことあるなぁ、と思ってたんだけど。魔女の使い魔だよ。あのメガネ飛ばしてくるやつ」

さやか「あぁ、あの下半身だけの魔女の使い魔ね……」

ナナリー「魔女……?」

さやか「あっ、いや! な、なんでもないなんでもない!」

さやか「それより、ごめんね、ナナリー。あたしたちがイレブンじゃなかったら、ナナリーのことちょっとは守ってあげられるのに……」

ナナリー「さやかさん、イレブンじゃありません。日本人、ですよ」

さやか「あ……」

ナナリー「それに私は大丈夫です。一人でがんばると、決めましたから」

ナナリー「お二人は、行政特区日本、支持してくださいますか?」

さやか「もちろんだよ!」

杏子「そうだな。あたしらはアンタの味方だ」


数日後 黒の騎士団 潜水艦

ほむら「……」ズンズン

マミ「ま、待って暁美さん! そんな血相変えてどこへ……」

ほむら「ゼロのところよ」

マミ「ゼロ? 帰ってきているの?」

ほむら「えぇ。藤堂さんがさっき会ったって」

マミ「そう……。って、いつの間にそんなに藤堂さんと仲良く……!」

ほむら「ここね」


ゼロ私室

ほむら「入るわよ!」バシュッ

ゼロ「……ドアは返事を聞いてから開けるものだ」

ほむら「その女が一緒にいるのなら、どうやら本物のようね」

C.C.「……」

ゼロ「おお、暁美に巴か。無事で良かっ……」

ほむら「歯を食いしばりなさい」

ゼロ「は……? いきなり何を……ぐはっ!?」

身長の差をものともしないほむらの回し蹴りがゼロのこめかみ(正確には仮面だが)にクリーンヒットする。
蹴りの勢いで仮面が外れ、その素顔が顕になった。


ルルーシュ「ぐっ……」

ほむら「あら、思ったより男前ね。まぁ、それも今から私がボコボコにするのだけれど」

マミ「あ、暁美さん!? レガーレ!」

ほむら「くっ!? ほどきなさい、マミ!」

マミ「ダメよ、落ち着きなさい!」

ルルーシュ「巴、いいから離してやれ」

マミ「でも……」

ルルーシュ「鹿目まどかのことだろう、暁美。気がすむまで殴ればいい。お前にはその権利がある」

ほむら「……殊勝な態度ね」ハラッ

ほむら「魔法少女の拳は重いわよ」


ほむら「はぁっ……はぁっ……」

ルルーシュ「てっきり……死ぬまで殴られるのかと……思ったよ」ボロッ

ほむら「あなたを殺してまどかが帰ってくるなら躊躇わずに殺すわよ」

ルルーシュ「はっ……。そうだろうな……」

マミ「あの、傷を……」

ルルーシュ「いい……。すまないな、鹿目まどかはお前の友人でもあるんだろう?」

マミ「それは……はい」

ほむら「で? 何があったのか教えてくれるのよね?」

ルルーシュ「……そう、だな。お前たちには教えるべきか……」

C.C.「いいのか?」

ルルーシュ「まぁ、他の団員と関わることもないだろうし……」


ほむら「私、神楽耶や藤堂さんとはよく話すわよ」

ルルーシュ「は……?」

マミ「私も神楽耶さんと、あと最近は千葉さんとも仲良くさせてもらってます」

ルルーシュ「ちょっ、ちょっと待て! 他の団員と関わるなと言っただろう!」

ほむら「そうは言っても仕方ないじゃない。隠しきれるものでもないでしょう」

マミ「専用機を頂いてからは嫌でも目立っちゃいますし……」

ルルーシュ「俺がいない間に……そんなことに……」

ほむら「自業自得よ」


ルルーシュ「ま、まぁ、いい。一応お前たちには話しておこう。わかってるとは思うが他言無用だからな」

ほむら「えぇ」

ルルーシュ「まずそうだな……。俺はブリタニア人だ」

ほむら「見ればわかるわよ」

ルルーシュ「だが、ただのブリタニア人ではない。俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。元ブリタニア皇族だ」

マミ「え……?」

ほむら「……待って。この前発表された新総督の名前って……」

ルルーシュ「そう。ナナリー・ヴィ・ブリタニア。エリア11新総督にして……俺の実の妹だ」

マミ「そんな……」


ルルーシュ「それがブラックリベリオンの時の誘拐事件に繋がるんだが……」

ルルーシュ「一年前まで俺とナナリーは正体を隠してアッシュフォード学園に通っていた。俺たちは八年前に死んだことになっていたんだ」

ほむら「八年前……。日本とブリタニアの戦争があった頃ね」

ルルーシュ「ああ。政治の道具として日本に預けられていた俺たちはそのまま用済みとばかりに捨てられ、アッシュフォード家を隠れ蓑に暮らしていた」

マミ「それでアッシュフォード学園に……」

ルルーシュ「だがあの男は……、シャルルは再びナナリーを政治利用するために拐った……!」

ほむら「そう言えばアッシュフォード学園の生徒が一人一緒だと言っていたわね」

ルルーシュ「そうだ。あの日、俺の妹も拐われていた」

ほむら「だから一人で追ったのね」

ルルーシュ「ああ。ナナリーは俺の全てだった。この黒の騎士団も、ナナリーが幸せに暮らせる世界を作るためのものだった……」

ルルーシュ「今はもう、そうも言っていられなくなったがな」


ほむら「でも待って。まどかを拐ったのはキュゥべえよ。ブリタニアとは関係ないわ」

ルルーシュ「その辺りは俺にもよくわからないが……。どうなんだ、C.C.」

C.C.「どうもこうも、お前と同じなんじゃないのか? 魔法少女の力が欲しいんだろうよ」

ほむら「じゃあブリタニアはキュゥべえと手を組んだということ?」

C.C.「ブリタニア……、まぁ、一応そうなるのか」

ルルーシュ「ロロの言っていたギアス嚮団か?」ヒソヒソ

C.C.「さあな。何でも私に聞くな」ヒソヒソ

ほむら「そんな……。まどかが魔法少女の被検体にされているというの……?」

マミ「許せない……!」


ルルーシュ「暁美、そして巴。俺は鹿目まどかを連れ戻すという約束を違えるつもりはない。だからせめてそれまで、力を貸してくれないか」

ほむら「……まぁ、ブリタニアに近づくには結局ここが一番の近道であることには変わりないものね」

マミ「私は元よりそのつもりです!」

ほむら「ただし約束して。今度の行政特区を、あんな悲惨な終わり方にはしないと」

ルルーシュ「もちろんだ。日本人は俺が……ゼロが救ってみせよう。だから、安心してついてきてくれ」

C.C.「おやおや。やはりこの子たちには優しいじゃないかルルーシュ。記憶をいじられてもロリコンなのは変わらなかったようだな」

ルルーシュ「うるさいぞC.C.!」


今回はこの辺りで

スパロボはやってないので、もし結末が被ったりしたら申し訳ありません……
多分ないとは思いますが

>ナナリー「さやかさん、イレブンじゃありません。日本人、ですよ」
 さやか「あ……」
完全に思考停止してブリタニアに染められてるじゃないですかやだー


シズオカゲットー 行政特区日本設立予定地

ナナリー『日本人のみなさん、行政特区日本へようこそ。たくさん集まって下さって、私は今、とても嬉しいです。新しい歴史のために、どうか力を貸して下さい』

ほむら「……ねぇ、マミ」

マミ「言いたいことは分かってるわ、暁美さん。私も今ちょっと自分の目を疑ってるところ」

ほむら「枢木スザクの後ろに控えてるのって、あれ絶対……」

マミ「……えぇ、美樹さんと佐倉さんね」

ほむら「どういうこと?」

マミ「私が知りたいわよ……。とりあえずテレパシーで……」

マミ《美樹さん、佐倉さん》

さやか《おわ!? マミさん!?》

杏子《やっぱ来てたか……》


マミ《あなたたち、どうして……?》

杏子《ま、早い話がスカウトされたんだよな。軍人にならないかって》

さやか《魔法少女の力を借りたいんだって。なんでも皇帝が直接命令したとか》

ほむら《……魔法少女の、力?》

さやか《あたしたちもよくわかんないんだけどね》

さやか《そうだ、こんな機会あんまりないかもしれないから聞きたいんだけど……》

さやか《まどか、今黒の騎士団にいるの?》


ほむら《え……?》

さやか《セシルさん……あ、私たちの上司みたいな人ね、が調べてくれたんだけど。まどかが最後に目撃された時黒の騎士団と一緒にいたって……》

ほむら《待ちなさい。まどかを拐ったのはブリタニアではないの……?》

さやか《はぁ? そんな訳ないじゃん!》

ほむら《だってゼロに頼んでまどかを保護してもらって……》

ほむら《……っ。あぁ、そういう……こと、なのね》

さやか《ちょっと、ほむら! ゼロがまどかをどうかしたの!?》


ほむら《あなた、最初からゼロのこと信用してなかったものね。大事な友達がそんな人に保護されるのが嫌だったって訳?》

さやか《何を……!》

ほむら《あなたいつも言ってたわね。『まどかを守るのはあたしだ!』って……》

ほむら《それで自分の手元に置こうと思ってまどかを拐ったんでしょう!?》

マミ《暁美さん……?》

さやか《何それ!? あたしがそんなことする訳ないでしょ!》

ほむら《とぼけないで! キュゥべえが一人じゃないって言ってたのはあなたのことだったのね》

ほむら《思えば私の邪魔をするのはいつもあなたとキュゥべえだった……》

ほむら《そんなに私がまどかとの約束を果たすのが嫌なの!?》

杏子《ほむら! いいから落ち着け!》


さやか《さっきから聞いてれば……! アンタこそまどかのこと隠してるんでしょ!?》

さやか《まどかは家族を失って傷ついてたはずなのに、アンタが連れ回して!》

さやか《あたしまどかが最後に目撃された場所知ってるんだよ!? トウキョウ租界! しかもよりによって戦争のときに!》

さやか《まどかが戦いとか殺し合いとか、何よりも嫌いだってことはアンタだって知ってるでしょ!》

さやか《それなのにそんなところに連れていくなんて、信じられない!》

さやか《……ねぇ。ゼロに何かされたんでしょ……? そう言ってよ……》


ほむら《あなたこそわかってるの? まどかから家族を奪ったのはブリタニアなのよ!》

さやか《あれはゼロが仕組んだことでしょ! スザクさんだってあれはゼロの仕業だって……!》

ほむら《あなた、そればっかりね。ゼロが、ゼロが、ゼロが!》

ほむら《あなたが誰を恨もうが勝手だけれど、あなたの妄想に私たちを巻き込まないでもらえるかしら》

さやか《なっ……!》

ほむら《その枢木スザクにしたってユーフェミアの騎士じゃない。そんな人の言った言葉が妄想じゃないってどうして言えるの?》

杏子《ほむら! さやかも! いい加減にしろ!》


ゼロ『日本人とは、民族とはなんだ? 言語か? 土地か? 血の繋がりか?』

スザク「違う! それは……心だ!」

ゼロ『私もそう思う。自覚、規範、矜持。つまり文化の根底たる心さえあれば、住む場所が異なろうともそれは日本人なのだ!』

マミ《!! 暁美さん、時間よ!》

杏子《時間!? なんのことだ!》

ブシュゥゥゥゥ

杏子《くっ……! 煙幕!?》

ほむら《さやか……美樹さやか。あなたが私の邪魔をするなら、容赦はしない。次会った場所が戦場だったなら、私はあなたが相手でも戦うわ》

さやか《あたしだって、そのつもりでここにいる。アンタを倒してまどかを連れ戻す!》


杏子《おいさやか! 今はナナリーを!》

さやか《そうだった……!》

さやか「ナナ……総督!」

さやかがナナリーの車イスを押し、杏子がその後ろで曲者がいないか目を光らせる。
だが煙幕が晴れた時、杏子が見たのはあまりにも予想外の光景だった。

杏子「な、なんだよ、これ……!」

ゼロ『全てのゼロよ! ナナリー新総督のご命令だ! 速やかに国外追放処分を受け入れよ!』

ゼロ「ゼロのみなさん! 新天地へ行きましょう!」

ゼロ「皆で国外追放されようぜ! 俺たちはゼロなんだからよ!」

ゼロ「そうだ! 国外追放だ!」

ゼロ「私、やっぱりあの人頭おかしいと思うわ」

マギカ「まぁ、普通は思い付かないわよね……」


ゼロ「あ、あれに乗るのか……?」

ゼロ「でも氷だろ……?」

ゼロ「溶けちゃうんじゃない?」

ゼロ「大丈夫よぉ。あの海氷船はねぇ、特製の断熱ポリマーと超ベルチェフィルムでばっちり氷をガードしてるから」

ゼロ『どこであろうと心さえあれば我らは日本人だ! さぁ、新天地を目指せ!』

ゼロ「一年前はラクシャータに連れられて成り行きで中華連邦に亡命したけれど、今回は自分の意志でこの土地を離れるのよね」

マギカ「そうね……。黒の騎士団に参加して、大きな戦争を経験して、自分のナイトメアを手に入れて、ついにはゼロの正体まで知ってしまった」

ゼロ「私はまどかを助けるためにゼロについていく。あなたはどうするの、マミ?」

マギカ「どうするって?」

ゼロ「ゼロへの憧れだけではこの先戦ってはいけない。この戦いから下りるなら、今が最後のチャンスだと思うわよ」


マギカ「そう、ね……。最初は軽い気持ちだった。それは否定しないわ」

マギカ「でも、前にも言ったと思うけど、私はできる限り誰にも死んでほしくない」

マギカ「戦っている人を助けるには、自分もその戦場に立たなければならない。そして、私は戦場でも身を守り、敵を撃退……無力化するだけの力がある」

マギカ「なら、やれるだけのことはやりたいじゃない?」

マギカ「もう、救えたはずの命を失って後悔したくないの……」

ゼロ「ここに残ったら、美樹さやかや佐倉杏子といずれ戦うことになるわ。それでもあなたはゼロについていけるの?」

マギカ「美樹さんや佐倉さんもきっと自分の考えがあって行動してる。それが私とは違う道を行くものであっても、先輩として認めない訳にはいかないわ」

マギカ「もしあの子たちが敵になるなら、先輩の威厳を見せつけるまでよ」

ゼロ「……そう。ならもう何も言わないわ」

マギカ「それじゃ、行きましょう。新天地へ」


中華連邦 蓬莱島

藤堂「……うむ。おおよそ掴んだ」

ほむら「それ、藤堂さんの新しいナイトメアの取説ですか?」

藤堂「あぁ。斬月、というそうだ」

ほむら「なんだか、藤堂さんより先に私たちが専用機をもらってしまって申し訳ないですね……」

藤堂「何を言う。君たちは力があり、そして捕縛されることもなかった。有効に活用できるところに物資を回すのは基本中の基本だ」

藤堂「それに、私が乗っていた月下もれっきとした専用機だったよ。やつも最後までよく戦ってくれた」

ほむら「……そうでしたね」クスッ

藤堂「そうだとも」


藤堂「さて。後は戦闘空母か。斑鳩にガウェインのシステムを移した訳だな」

ラクシャータ「蜃気楼にも使ったけどねぇ。何しろ本体は海中から引き上げた時点でボロボロだったから」

千葉「一緒に沈んでいた機体は?」

藤堂「ナイトギガフォートレスとかいうやつか」

ラクシャータ「あたしも探したんだけどねぇ……」

ほむら「私、多分それと戦いましたよ」

藤堂「そうなのか? よく生き残れたな……。砲撃した三番隊は全滅だったというのに」

ほむら「大きい敵とは戦いなれてますから」

藤堂「……魔法少女の使命、か」

ほむら「っ!! え、どこでそれを!?」

ほむら「まさか……!」

ラクシャータ「てへぺろ☆(・ω<)」

ほむら「あなたねぇ……!」

マミ「千葉さーん! 野菜切り終わりましたー」

千葉「ありがとう、巴」

ほむら「マミもなんとか言ってやりなさい!」

マミ「いいじゃない。もう今更よ」ドヤッ

ほむら「」イラッ


斑鳩艦内

ゼロ「なに!? 政略結婚?」

神楽耶「えぇ、皇コンツェルンを通して招待状が届いたのですけど」

神楽耶「新婦はこの中華連邦の象徴、天子様。私を友人として招きたいと」

藤堂「そして新郎はブリタニアの第一皇子」

ラクシャータ「オデュッセウスとかいう人」

ディートハルト「用意していた計画は間に合いません。まさか大宦官が……」

ゼロ「いや、ブリタニアの仕掛けだろう」

扇「だとしたら、俺たちは……」

ゼロ「最悪のケースだな」

ゼロ(チッ……。この手を打たれる前に天子を抑えるつもりだったのに……。まさかこんなに早く、あんな凡庸な男が……)

玉城「何心配してんだよ。俺たちはブリタニアと関係ないだろ?」

カレン「はぁ?」

玉城「国外追放されたんだからさ」

オペ子1「あの……、罪が許された訳じゃないんですけど」

オペ子2「それに政略結婚ですし……」

オペ子3「中華連邦が私たちを攻撃してくる可能性も……」

玉城「じゃあ何かよ!? 黒の騎士団は結婚の結納品代わりか!?」

神楽耶「あら、上手いこと言いますね」

C.C.「使えない才能に満ち満ちているな」

ほむら「その機転を少しは戦闘に回せばいいのに」

玉城「暢気こいてる場合か! 大ピンチなんだぞ、これは!」

ラクシャータ「だからさぁ」

扇「それを話してるんだよ今!」

ディートハルト「ゼロ。この裏には……」

ゼロ「あぁ。もう一人いるな。険悪だった中華連邦との関係を一気に……、こんな悪魔みたいな手を打ったやつが」


中華連邦 迎賓館

オデュッセウス「ンデュフフフ」

天子「うぅ……」ガクガク

スザク「天子様は納得しておられるんでしょうか?」

セシル「向こうがそう言っているからには信じるしか……。それに、これは平和への道の一つだし……」

さやか「平和のために好きでもない人と結婚だなんて……」

セシル「政治的な話だからね……。今日は招待客として楽しみましょうよ」

杏子「おぉぉぉ!! スザク! これ全部食っていいんだよな!」キラキラ

スザク「全部って……。ほどほどに、ね」

杏子「すっげぇ!  うめぇ!」

パシャッ

杏子「んむ?」

アーニャ「いい食べっぷり」

セシル「アールストレイム卿、迎賓館の中ではメールをうっても……」

アーニャ「これは記憶」

セシル「あ、日記ですか?」

ロイド「だったら、記録だねぇ〜」


「神聖ブリタニア帝国宰相、シュナイゼル第二皇子様、ご到着!」

ジノ「スザク、アーニャ」

アーニャ「」コク

スザク「うん。さやかと杏子も、おいで」

さやか「え?」

杏子「まだ食ってる途中なのに……」

ナイトオブラウンズ三人がシュナイゼルの前に跪く。
さやかと杏子も見様見真似で従った。

ジノ「お久しぶりです。皇帝陛下がこの地ではシュナイゼル殿下の指揮下に入るように、と」

シュナイゼル「ナイトオブラウンズが三人も。頼もしいねぇ。あぁ、ただ……」

ジノ「……? 何か?」

シュナイゼル「ここは祝いの場だ。もっと楽にしてくれないと」

ジノ「わかりました」スッ

シュナイゼル「おや、そちらの子たちは?」

スザク「自分の部下で、美樹さやかと佐倉杏子です」

シュナイゼル「あぁ、皇帝陛下が自ら引き入れさせたという……。若いのにいろいろ大変だろう。スザク君の元で頑張ってくれ」

さやか「イエス、ユアハイネス!」

杏子「い、いえす、ゆあはいねす」

シュナイゼル「ハハハ。愛らしいお嬢さんたちじゃないか」


「皇コンツェルン代表、皇神楽耶様、ご到着!」

天子「神楽耶!」

スザク「神楽耶……? っ、何!?」

ザワザワ ヒソヒソ

神楽耶「……」

ゼロ「……」

カレン「……」

ほむら「……」

マミ「……」

カノン「ゼロ……! 堂々と!」

ジノ「紅蓮のパイロットまでいるじゃないか」

シュナイゼル「これはこれは」

さやか「……ほむら、マミさん」

ダダダッ


シュナイゼル「やめませんか、いさかいは。本日は祝いの席でしょう」

「ですが……」

ゼロ(シュナイゼル……、やはりあなたが黒幕か)

シュナイゼル「皇さん。明日の婚姻の儀ではゼロの同伴をご遠慮願えますか?」

神楽耶「それは……致し方ありませんわね」

「ブリタニアの宰相閣下がおっしゃるのなら……。引けぃ!」

ザッ

さやか《……どういうつもり?》

ほむら《どういうつもりも何も、私たちは神楽耶の警護としてきただけよ》

さやか《信じると思う?》

ほむら《残念だけれど、あなたが信じてくれると思って何かを話したことなんてほとんどないわよ》

マミ《暁美さん、あんまり挑発しないの》

ほむら《事実を言ったまでよ》


ゼロ「シュナイゼル殿下、一つチェスでもいかがですか?」

シュナイゼル「ほう」

ゼロ「私が勝ったら枢木卿を頂きたい」

スザク「なに……?」

ゼロ「神楽耶様に差し上げますよ」

神楽耶「まぁ! 最高のプレゼントですわ!」

ゼロ「楽しみにお待ちください」

ゼロ(スザクさえいなくなればここにいる全員にギアスがかけられる。逆転のチェックメイトだ)

シュナイゼル「では、私が勝ったらその仮面を外してもらおうかな」

ゼロ「……いいでしょう」

ほむら(第二皇子ということはゼロのお兄さんよね……。大丈夫なの……?)

シュナイゼル「はは、楽しい余興になりそうだね」


別室 ゼロ、シュナイゼル対局中

ジノ「紅蓮のパイロットは分かるんだが、残りの二人は何者なんだ?」

さやか「あたしたちの仲……同類です」

ジノ「同類……? イレブンってことか?」

スザク「あの子たちも魔法少女なのかい?」ヒソヒソ

さやか「はい……」ヒソヒソ

ほむら《魔法少女の秘密をバラしているなんて、ずいぶん無用心ね》

マミ《暁美さん、それブーメランブーメラン》

さやか《うるさいな! テロリストは黙ってて!》

杏子《で? お前らの本当の目的はなんなんだよ。まさかチェスしにきただけってことはないだろ》

ほむら《さぁ。どうかしらね》ファサァ

マミ《仮に目的があったとしても、あなたたちに教える訳にはいかないわ》

さやか《マミさんまで……。いい加減に……!》

ニーナ「ゼロ!! ユーフェミア様の仇!!」


スザク「やめるんだニーナ!」

ほむら《……うわぁ。あの時の……》

マミ《ちょっと、暁美さん! ドン引きしてないで止めないと!》

ニーナ「どうして邪魔するのよ!? スザクはユーフェミア様の騎士だったんでしょ!?」

ニーナ「あなたはやっぱりイレブンなのよ!」

ほむら《マミ、前みたいにリボンでちゃっちゃと終わらせたら?》

マミ《こんなとこで使える訳ないでしょ!》

ニーナ「必要だったのに! 私の女神様!!」

ほむら《でもだってなんて言うか……、うわぁ……》

杏子《言っとくが、まどかのことになるとほむらもこんな感じだからな》

シュナイゼル「すまなかったね、ゼロ。余興はここまでとしよう。それと確認するが、明日の参列はご遠慮願いたい。次はチェスなどではすまないよ」


中華連邦 ギアス嚮団本拠地

コンコンッ

まどか(ノックの音……? 誰……?)

ジェレミア「入っても構わないかな、レディ? いや、マジカル・ガール、というべきか?」


ジェレミア「失礼する。私はジェレミア・ゴットバルトという」

まどか「あなた、魔法少女のことを……?」

ジェレミア「V.V.様から少しな。それにおそらく私は戦ったことがある」

まどか「戦ったって……もしかして黒の騎士団の!?」

ジェレミア「やはりあれは魔法少女だったか。どこからともなく爆弾を取り出したり、大砲を取り出したり、と奇っ怪な相手だった」

まどか(爆弾……大砲……。ほむらちゃんとマミさんだ!)

まどか「そ、その二人は無事なんですか!?」

ジェレミア「さあ、どうだろうな。何分敵兵のことだ。まぁ、私が倒せなかったほどの戦士。そう易々と敗れたりはしまい」

まどか「そう、ですか……。良かった……」


ジェレミア「……それで。私が君に会いに来た理由だが」

ジェレミア「魔法少女よ、私と是非手合わせを願いたい」

まどか「え……?」

ジェレミア「近々ルル……ゼロの暗殺任務があってな。その際に魔法少女と相見えるかもしれない」

ジェレミア「前回は遅れをとったが、今度はそうはいかん。そのために君と戦ってみたいのだ」

まどか「それって、私にほむらちゃんとマミさんを倒す手伝いをしろってことじゃないですか」

ジェレミア「そうなるな。だが君はイレブン、私はブリタニア人だ。あとはわかるだろう」

まどか(な、ナンバーズがブリタニア人に逆らうと何をされてもおかしくないんだよね……。でも……でも!)

まどか「……できません」


ジェレミア「何?」

まどか「マミさんは魔法少女になってすぐで何もわからない私に戦い方を教えてくれた恩人です」

まどか「ほむらちゃんは、最初はちょっと怖いなって思ってたけど、でもいつも私を守ってくれたとっても優しい子です」

まどか「そんな二人を裏切るなんて、私にはできません!」

ジェレミア「……ふむ。友情……、いや、これもまた一つの忠義!」

ジェレミア「先ほどの非礼を詫びよう。敵地にてなお友を想うその意気やよし!」

ジェレミア「私は君のその友への忠義を尊敬する。ナンバーズかブリタニア人かなど忠義の前では些事に過ぎない」


ジェレミア「イレブン、いや、日本人の魔法少女よ。名を聞かせてくれ」

まどか「あの、えっと……。鹿目、まどかです」

ジェレミア「鹿目か。君はその忠義を全力で貫きたまえ。私には、できなかったことだ……」

まどか「え……?」

ジェレミア「いや、なんでもない。ともかく、君と剣を交えるのは諦めよう」

まどか「ほ、本当ですか?」

ジェレミア「ああ。君の忠義に敬意を表してな」

まどか「じゃ、じゃあ、ほむらちゃんたちとも戦わないでくれませんか……?」

ジェレミア「ふむ……。すまない、それは承諾しかねる」

まどか「そんな……」

ジェレミア「私は彼女たちに敗北を喫した。このまま負けっぱなしというのは男として、騎士として、許すことはできない」

ジェレミア「だが命を奪うようなことまではしない。これは誓おう」

まどか「そう、ですか……」


まどか(それからジェレミアさんがたまに私のもとへ来るようになった)

まどか(よくわからないけど、私は気に入られたらしい。たまに忠義の魔法少女なんて呼ばれたりするのはちょっと恥ずかしいな……)

まどか(ほむらちゃんとマミさんの敵なら本当は仲良くするべきじゃないのかもしれない

まどか(でも、悪い人には見えないんだよね……)

まどか(それに、時々見せる何かを悔やむような目。この人は、何をこんなに後悔しているんだろう……)

まどか(そういえば、ほむらちゃんもたまに悲しそうな目をしてたっけ)

まどか(いつか、訳を話してくれる日がくるのかな)


今日はこの辺りで

明日は諸事情で更新することができません
申し訳ありません


ジェレミアはブレが多いギアスキャラの中で、敵であった時から一貫して王族の為っていう忠義を貫いたからね

>ゼロ(スザクさえいなくなればここにいる全員にギアスがかけられる。逆転のチェックメイトだ)

えっ、魔法少女に効かなかったの忘れてるの?


それにしてもほむらがさやかに負けず劣らずのピエロっぷりで笑える
ゼロが虐殺を引き起こした張本人ってわかってたのかと思ったらそうでもないらしいし、どうなるか今から見物


>>227
ご指摘ありがとうございます
スザクを引き抜けば部下ももれなくついてくる……ってことでなんとか脳内補完お願いします


翌日 婚姻の儀 式場

ゼロ「感謝する、星刻。君のおかげで私も動きやすくなった」

星刻「……っ!」

ゼロ「動くな!」チャキ

星刻「黒の騎士団にはエリア11での貸しがあったはずだが?」

ゼロ「だから、この婚礼を壊してやろう。君たちが望んだ通りに」

ゼロ「ただし、花嫁はこの私がもらい受ける」

星刻「天子様……っ! この、外道が!」

ゼロ「おや、そうかい? フハハハハハハハ!!」

ほむら(えらく楽しそうね……)

星刻「ゼロ、天子様を返す気はないのか」

ゼロ「星刻、君なら天子様を自由の身にできるとでも? 違うな!」

ガシャァン!

星刻「ナイトメアまで用意していたか……!」

藤堂「ふっ。まさか斬月の初仕事が花嫁強奪の手伝いとはな」

ゼロ「藤堂、シュナイゼルを」

藤堂『あぁ、わかった』

シュナイゼルを確保しようとした斬月の手を、上空からのスラッシュハーケンが弾く。

藤堂『もう来たのか』

スザク『殿下は渡さない!』

ほむら「マミ、あなたは神楽耶と一緒に天子様を。私はホムリリィで出るわ」

マミ「えぇ。気をつけて!」


藤堂『暁美か』

ほむら『はい』

藤堂『君は紅蓮たちの援護へ。私はランスロットをやる!』

スザク『まさか、藤堂さん!?』

さやか『うおぉぉぉぉぉ!!』

藤堂『!! 暁美! 一機そちらに行ったぞ!』

ほむら『っ!? あの時の青兜!』

ガキン!

さやか『ようやくわかったよ。アンタ、ほむらだったんだね』

ほむら『……なるほど。そういうことなのね、美樹さやか。なら……』

さやか『アンタは』

ほむら『あなたは』

さやほむ『『ここで倒す!』』


ホムリリィから牽制のミサイルが発射される。
さやかは機体に到達する前に、ソードハーケンで叩き落とした。

ほむら『はぁっ!』

ハーケンを巻き戻す一瞬の隙に急接近して回転刃刀を突き立てようとするが、オクタヴィアのブースターで回避されてしまった。
だが辛うじてフロートシステムの片翼の破壊に成功する。

さやか『そんな!?』

ほむら『落ちなさい!』

返す刃で完全にフロートを破壊し、オクタヴィアは地に叩き付けられそうになるが——

さやか『こなくそ!』

オクタヴィアの足元に音符の魔方陣を展開し、落下スピードを遅らせて軟着陸する。


ほむら『これで終わりよ、美樹さやか』チャキ

さやか『なめるなぁ! スプラッシュスティンガー!!』

オクタヴィアの右手に特大のサーベルを召喚し、全力で投擲する。

さやか『あたしの剣は、どこにだって届く! 逃げたって無駄なんだから!』

サーベルは一直線にホムリリィへ向かったが、それを遮るように黒い影が飛び出してきた。

藤堂『はっ!』ガキン!

制動刃吶喊衝角刀の鋭い斬撃がサーベルを弾く。

ほむら『藤堂さん、防いでくれなくても大丈夫でしたよ。そんな苦し紛れの攻撃』

藤堂『そう言うな。魔法少女の力を知っておきたかったのだ』

藤堂『だが、これなら十分戦えそうだな。この斬月で!』

さやか『馬鹿にするな!』

ピピッ

セシル『さやか、ここは中華連邦の領土内だから、これ以上の戦闘は問題になるわ』

さやか「ぐっ……」

セシル『今ランスロットを回収したから、迎えにいきます。動いちゃダメよ』

さやか「くそっ!!」ダンッ

さやか(前は勝ってたのにっ! あれがほむらの本気って訳……?)


トレーラー内

神楽耶「黎星刻、将来を言い交わしたお方ですか?」

天子「いえ、あの、そういうのでは……。ただ、約束を……」

神楽耶「許嫁の?」

天子「その……、外に出たいと、六年前に」

マミ「そんな昔のことを? 運命ですね!」

天子「そ、そうかしら……」

マミ「素敵です! あの、その人とのこと、もっと教えてください!」

天子「ま、マミ……?」

マミ「あ、えっと、だって私、恋とかしたことなくて! そういうの、憧れるっていうか……」

神楽耶「まぁ、もったいない! マミなら引く手あまたでしょうに……」

マミ「そ、そんなことないわよ……」

神楽耶「そうですわ! マミも、ゼロ様の愛人になるのはいかがですか?」

マミ「えぇ!?」

神楽耶「あ、でもそうなると三人官女ではなくなってしまいますわね……。うーん……、四天王? なんだか無粋な響きですわ……」

マミ「あ、あの、ゼロの愛人はちょっと……」

マミ(だって、それってブリタニアの皇子の側室ってことだもの……)

神楽耶「そうですか? 残念ですわ……」


灌漑開拓地

カレン『くらいなぁ!』ギュィン!

星刻『受けてみよ!』ギュアッ!

ドォォォォン!

天子「きゃっ!」

マミ「二人とも、大丈夫!?」

神楽耶「えぇ、なんとか……。今のは……?」

マミ「わからない……。私、ちょっと外の様子を見てくる。神楽耶さんは天子様をお願い」

神楽耶「わかりましたわ」


マミ「藤堂さん! 何があったんですか!?」

藤堂「巴、ちょうどよかった。今斬月もホムリリィも補給中でな。すぐに紅月の助太刀に向かってくれ」

マミ「カレンさんの……? わかりました。相手は?」

藤堂「中華連邦の黎星刻だ」

マミ(あ、天子様の……)

藤堂「乗っているナイトメアは神虎。君のキャンデロロの元になった機体らしい」

マミ「なんだか戦いにくそうな相手ですね……。いろんな意味で」

藤堂「だが今は君しかいないんだ。頼んだぞ」

マミ「はい!」


バシュッ!

マミ「!! そんな!?」

星刻『このような真似はしたくないが、私には目的がある。天子様だ。天子様を!』

マミ(カレンさんが……負けた?)

マミ(そんな、じゃあ、誰も敵わないじゃない……)

ほむら《マミ! あなたの銃ならそこから神虎に攻撃できるわ!》

マミ《無茶言わないで……。カレンさんが捕まってるのよ……?》

ほむら《紅蓮を縛っているワイヤー二本と神虎の刀。たった三ヶ所すら撃ち抜けないの!? あなたは巴マミでしょう!》

マミ(っ!!)

マミ(そうだわ……。私は巴マミ。またの名を……)

マミ(魔弾の射手(Pistolera della pallottola magica)!!)


マミ『待ちなさい!』

星刻『まだ可翔型が残っていたか……!』

マミ『あなたの相手はこの魔弾の射手、巴マミが……っ! 絶対領域!!』

ドン! ドン!

オペ子3『敵の増援……大部隊です!』

星刻『香凜か。助かる』

マミ『くっ……! 爆煙でエイムが定まらない……!』

ゼロ(捕虜になる……? そんな!)

ゼロ「カレン! 無線はまだ生きているか!」

カレン『すみません、失態を……』

ゼロ「そんなことはいい!」

C.C.「……」フッ

ゼロ「諦めるな! 必ず助けてやる! 下手に動くな!」

カレン『は、はい!わかっています! 諦めません!』


ゼロ『総員、戦闘準備! ここで決着を着ける!』

藤堂「ふっ……。やはりゼロは心得ているな」

ほむら「どうしたんですか?」

藤堂「たとえ一兵卒だとしても、救える者は救わなければならない、ということだよ」

藤堂「それに、紅月はエースだ。エースの不在は士気に関わるからな」

ほむら「それらしいこと言って、みんなカレンさんが好きなだけでしょう」

藤堂「そうかもしれんな。……準備はいいか、暁美」

ほむら「えぇ」

藤堂「では……行くぞ!!」

バシュッ!


藤堂『神虎は、この斬月が!』

ほむら《マミ!》

マミ《暁美さん、私……》

ほむら《今度こそ、あなたの出番よ》

マミ《え……?》

ほむら《敵は射程ではこちらに勝ってると思っているわ。目にものを見せてやりなさい》

マミ《……えぇ!》

マミ(私だって……!)

マミ『無限の魔弾よ! 私に道を開いて!』

キャンデロロの背後に召喚されたのは無数のマスケット銃。
銃口は全て中華連邦の鋼髏(ガン・ルゥ)部隊に向けられている。

マミ『Pallottola magica ed infinita!!』

ドドドドド!!

星刻『なに!?』

藤堂『よそ見とは余裕だな!』ガキィン!

星刻『ぐっ……! 怯むな! あれほどの攻撃、連発はできまい!』

星刻『進め! ここで我らが止まれば全滅するぞ!』


ザザァ…

ほむら(水が……! 運河が決壊した……、いえ、させたのね。星刻の仕業か)

ゼロ「フハハハハハハ! 星刻、運河の決壊がお前の策か? しかし、水量は減らしておいたんだよ」

星刻『とるに足らぬと考えたな。故にゼロ、君の負けだ』

ズブゥ

玉城『な、なんだぁ!?』

千葉『地面が!』

星刻『我らに勝利をもたらすは、我が国の大地そのもの! ゼロ、お前の負けだ!』

藤堂『勝敗はまだ決していない!』ガキィン!

ギュアッ!

星刻『さすがは奇跡の藤堂! しかし、敵の主力はここで止まった! 全部隊、進軍開始!』


ゼロ『藤堂は部隊の救出と左右編成の指揮をとれ! 斑鳩は迂回しつつ敵をひきつける! 第4予定地点へ先行せよ!』

ほむら『神虎は私たちが引き受けます。藤堂さんはみんなを!』

藤堂『助かる、暁美、巴。だが無理はするな。足止めだけでいい』

マミ『はい!』

ホムリリィとキャンデロロ、二機のナイトメアが神虎の前に立ちはだかる。
スペックに大きな差はない三機だったが、カレンとの戦いを見た二人には神虎が強大な敵に思えた。

星刻『先ほどの銃撃、確か君が放ったものだったな。度肝を抜かれたよ』

マミ『お褒めにあずかり光栄だわ』

マミ(本当ならすぐにでも天子様と会わせてあげたい……。でもきっと、ゼロには何か考えがある。だから今は!)

マミ『ティロ・ボレー!!』

ドン! ドン! ドン!

星刻『速いな。だが!』

三発の射撃をフーチの回転で防ぐ。
そしてその勢いのまま、フーチをキャンデロロに投げつけた。

ほむら『させない!』

キャンデロロに巻き付く前に、ホムリリィが回転刃刀でそれを弾く。

ほむら『敵は一人じゃないのよ』

星刻『くっ……!』

星刻(頼む、あと少しだけもってくれ……!)グフッ


天帝八十八陵

ほむら「……ひとまず、ここまで来れば安心かしら」

マミ「そういえば、攻めてこなくなったわね。神虎も動かないし」

ほむら「ここ、歴代天子の墓なのよ」

マミ「なるほど、それで向こうは攻撃できない訳ね」

ほむら「えぇ。攻めてくるなら正面からでしょうけど、この斑鳩は艦首にハドロン砲を積んでいるし、当分は大丈夫でしょうね」

マミ「じゃあ、私天子様たちのところに戻っていいかしら。心配で……」

ほむら「……そうね。いってらっしゃい。藤堂さんには私から言っておくわ。いざとなったらテレパシーで呼ぶから」

マミ「ありがとう。行ってくるわね!」タッタッタッ

ほむら「……本当に、優しいわね。あなたって」

ドォォォン!

ほむら「っ!!」

ほむら(あれは……! 中華連邦が星刻たちを攻撃してる!?)

ほむら(仲間割れ……? ……あぁ、そういえば星刻たちはクーデターを起こしたのだったわね)

ほむら(もろとも潰そうって訳?)


ジノ「君かい? クーデターの首謀者は」

星刻『ブリタニアはどけ! これは我が国の問題だ!』

ジノ『でも、国際的にはあっちが国の代表だからさ』

ジノ『それに、君が紅蓮を捕まえたんだって? 借りがあったんだよ、こっちには。あのナイトメアとパイロットに』


アヴァロン

カレン「……」

さやか「うわ、エロい縛り方……」

杏子「スザクのやつ、こんな趣味してやがったのか……。これは今後ナナリーに近づける訳にはいかないな」

さやか「スザクさん……、見損ないました……」

スザク「……あの、ちょっと黙っててくれないかな」


ドォォォン! ドォォォン!

神楽耶「くっ……! これは……!」

マミ「爆撃!? そんな、ここは攻撃できないんじゃ……」

ほむら《マミ、天子様に悟られないように聞いて》

マミ《もしかしてこの攻撃……》

ほむら《……えぇ。やつら、天子様を見捨てたわ》

マミ《っ! そんな……!》

ほむら《星刻たちと私たちをここで一辺に潰すつもりみたい。ブリタニアに助力まで求めて、ね》

ほむら《できればあなたにも出撃してほしいのだけれど》

マミ《えぇ……。でも天子様が……》

天子「っ、もうやめて!」ダッ

マミ「あっ! 天子様っ!」

神楽耶「天子様!!」ダッ

ほむら《マミ!? どうかしたの!?》

マミ《天子様が……、神楽耶さんまで。ちょっと、すぐには向かえないかも》

ほむら《……わかったわ。こちらは私たちでなんとかするから、あなたは天子様を守りなさい》

マミ《えぇ!》


神楽耶「退きなさい! 天子様が! 天子様を!」

マミ「神楽耶さん、私が!」

神楽耶「マミ! 天子様は艦首へ向かいました!」

マミ「艦首って……この上!? 案外肝っ玉ね、全く!」バッ

ソウルジェムを構え、魔法少女に変身した。

神楽耶「ま、マミ……? あなたは……」

マミ「説明はあと!」タッ

梯子を昇る手間も惜しみ、一気に跳躍して艦首へ上がる。


天子「もうやめて! こんな戦い……!」

ドン! ドン!

マミ「っ! 砲撃が!」

天子「きゃあっ!!」

マミ「ぐっ……! 天子様!!」

星刻『お逃げください、天子様!』

天子「星刻……?」

マミ(あれは、神虎……? 天子様のために……)

星刻『せっかく外に出られたのに、あなたはまだ何も見ていない。ここは私が防ぎますから……』

天子「でも、あなたがいなきゃ……! 星刻! 私はあなたとっ、あなたと……っ!」

星刻『……もったいなきお言葉。されど……』

ドン! ドン! ドン!

星刻『ぐあっ……!』

星刻(私は救えないのか。守れないのか。あれから六年、全てはあなたのために準備してきたというのに……!)

星刻『誰か……、誰でもいい! 彼女を救ってくれ!!』


ゼロ『わかった』

マミ「聞き届けましょう!」

ゼロ『その願い!』

マミ「絶対領域!」

ゼロ『絶対守護領域、展開!』

ドォォォン!


ゼロ『おや、奇遇だな、巴。私の与えた仮面はどうした?』

マミ「あっ! 忘れてました……」

ゼロ『まぁ、いい。ないとは思うが万が一私が攻撃を防ぎきれなかったときは君がその二人を守れ』

マミ「はい!」

ゼロ『中華連邦、並びにブリタニアの諸君に問う。まだこの私と、ゼロと戦うつもりだろうか』

ドン! ドン!

ゼロ『なるほど、それが大宦官としての返答か!』

ゼロがキーボードを操作し、蜃気楼の周囲にエネルギーシールドが展開される。
綿密な計算の元展開されたシールドは全ての砲弾を無効化してしまった。


セシル「ロイドさん、あれは……」

ロイド「うん、やられたね」

ニーナ「ガウェインのドルイドシステムを流用したんですか……? 信じられません、どんな人が……」

さやか(マミさん……)


ラクシャータ「ナイトメアフレーム、蜃気楼。その絶対守護領域は世界最高峰の防御力なのよぉ」

ラクシャータ「……もっとも、範囲は狭いとはいえ生身で絶対守護領域と同等以上の防御力を持つ女の子がその隣にいるんだけどねぇ」

ほむら(あのバカ……! マギカの仮面してないじゃない! いくらもう顔を知られたからって無防備すぎるわよ!)


ゼロ『拡散構造相転移砲、発射!』

ドドドドド!

ゼロ『哀れだな、星刻。同国人に裏切られ、たった一人の女も救えないと』

マミ「ぜ、ゼロ!? 言い過ぎじゃないですか!?」

ゼロ『だが、これでわかったはず。お前が組むべき相手は私しかいないと』

星刻『……だからといって部下になる気はない』

ゼロ『当たり前だろ? 君は国を率いる器だ』

ゼロ『救わねばならない。天子も、貴公も。弱者たる中華連邦の人民全てを』

星刻『そのナイトメアでこの戦況を変えられると思っているのか?』

ゼロ『いいや。戦況を左右するのは戦術ではなく戦略だ』


一方、上空ではナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグとほむらが戦闘を繰り広げていた。

ほむら『このっ!』ガキン!

ジノ『なかなかやるじゃないか。紅蓮以外にここまでできるやつがいるとは思わなかったよ』

ほむら『それはどうも!』

ジノ『じゃあこれはどうだ?』

トリスタンの両腕からメギドハーケンが射出される。
それを見てほむらは即座に理解した。

ほむら(太平洋でマミが戦ったナイトメアの攻撃と同じ……!)

ほむら(ということは強力なハドロン砲が来る。けれど私のナイトメアにキャンデロロみたいな武装は……)

ほむら(やるしかない。一か八か、輻射障壁で防ぐ!)


ギュォン!

ほむら(来た……っ! 輻射障壁!)

ギュィィィィン!

ほむら『ぐっ……!』

ジノ『受け止めるつもりか? けど、いつまでもつかな』

ほむら(ダメ……、破られる……!)

ほむら(せめてマミの絶対領域が……)

ほむら(……そうよ。絶対領域。魔法。なんで忘れてたのかしら)

ほむら(私には魔法がある。時間停止がなくとも、機械操作の魔法が)

ほむら(何回ものリープの中で培ってきたこの魔法は、誰にも負けない!)

ほむら(魔法で輻射障壁の出力を限界以上に引き上げる。さらに、魔力の障壁を輻射障壁に重ねて強度を上げる!)

ほむら『まどかを救い出すまで! 負ける訳にはいかないのよ!!』


ジノ『っ! なんだ!? 急に障壁が紫がかって……?』

バチッ!

ほむら『はぁ……はぁ……』

ジノ『ふ、防ぎきっただと!?』

藤堂『ナイトオブラウンズ! 覚悟!』

ジノの一瞬の隙をついて、斬月が戦闘に割り込む。

ジノ『ちっ! 藤堂鏡志朗か!』

藤堂『暁美! 大事ないか!?』

ほむら『はい……、なんとか』

藤堂『よくぞ耐えきった。後は任せろ』

ほむら『ありがとう、ございます』


マミ「暴動……ですか?」

ゼロ『ああ。先ほど大宦官どもの腐った考えを中華連邦全土にリークした。元より不満が溜まっていた人民はこれを機に行動を起こしたという訳だ』

星刻『まさか……、あいつらが裏切ることを読んで……』

ゼロ『そう。君のもう一つの策略、クーデターに合わせた人民蜂起』

ピッ

ゼロ『扇、地上部隊を出せ。一気に叩くぞ』

扇『わかった!』

ゼロ『さて。巴、君は天子を斑鳩の中へ。神楽耶様が心労で倒れる前にな』

マミ「はい!」

ゼロ『星刻、君はどうする?』

星刻『……決まっている! 大宦官は、この手で!』


神楽耶「マミ! 天子様!」

天子「神楽耶……」

神楽耶「心配いたしました。今後はこのような無茶は……」

天子「ごめんなさい……」

マミ「まぁまぁ。無事だったんだから、ね?」

神楽耶「そうですわ、マミ。ほむらが先ほど戻ってきたそうです。お会いになってはいかがですか?」

マミ「暁美さんが? そうね、無理させてしまっただろうし、謝っておかないと」


ほむら「あ、マミ……」グッタリ

マミ「暁美さん! ど、どうしたの!? フラフラじゃない!」

ほむら「ちょっと、魔力を使いすぎただけよ。さすがにラウンズは手強かったわね」

マミ「ラウンズと……。ソウルジェムは大丈夫なの?」

ほむら「えぇ、もう浄化はしてあるわ」

マミ「ごめんなさい、私も出ていれば……」

ほむら「いいのよ。今は天子様の無事が第一でしょ」

マミ「でもあなたにそんな無茶を……」

ラクシャータ「ほぉんと、無茶苦茶だわぁ」


ほむら「ラクシャータ、検査終わったのね。ホムリリィは大丈夫だった?」

ラクシャータ「あちこちもうボロボロ。輻射障壁機構に関しては取り替えるしかないわねぇ。全く、どんな使い方したらああなるんだか……」

ラクシャータ「でもまぁ、大破させなかっただけマシか。一応、こっちでも輻射障壁の出力上げておくわぁ」

ほむら「手間かけさせるわね」

ラクシャータ「別にいいわよぉ。これがあたしのお仕事だしぃ?」

ラクシャータ「あんたたちに死なれたらこっちも寝覚め悪いしさぁ」

ほむら「ありがとう。助かるわ」

マミ「暁美さん、少し休んだらどう? ただでさえ今日は戦闘続きなんだし」

ほむら「そうね……。ブリタニアは撤退したようだし、ちょっと横になろうかしら」

マミ「よし、じゃあ空いてるお部屋、探してくるわ!」


蓬莱島

ディートハルト「ゼロ、天子の婚姻が無効になったと世界中に喧伝する必要があります」

ゼロ「そうだな……」

ディートハルト 「その場合、同時に日本人の誰かと婚姻していただくのが上策かと考えますが」

ゼロ(分かりやす過ぎるが妥当な手だ。藤堂、いや玉城辺りにでも……)

神楽耶「なりません!」

ディートハルト「神楽耶様、これは高度に政治的な問題で……」

神楽耶「単純な恋の問題です! 政治で語るようなことではありません!」

C.C.「ふっ……。そうだな」

神楽耶「マミもそう思いますわよね!?」

マミ「え!? え、えぇ。天子様のお相手は天子様が決めるべきだと思います! 暁美さん!」

ほむら「ちょっ、ちょっと、私に振らないでよ……。えっと、そうね……。私も本当に好きな相手と結ばれるべきだと思うけれど……。身分とか、あと性別とか関係なく……」

ディートハルト「何の話だ! 私たちは戦争をしているのですよ?」

千葉「お前は黙っていろ」

ディートハルト「お前!? 参謀に向かって!」

ラクシャータ「んふふっ」

ディートハルト「くっ……。ゼロ! ご裁許を!」

神楽耶「ゼロ様ならわかっていただけますよね?」

ゼロ「そ、それは……」

玉城「ゼロー、ちょっといいか?」

ゼロ「っ! すまない、少し失礼する!」

タッ

ほむら「……逃げた」

マミ「逃げたわね」


ゼロ(まさかC.C.や巴たちまで反対するとはな……。星刻たちならギアスを使えば簡単に賛成するのに、一体どこに問題が……)

玉城「ゼロー、昨日の件だけどよぉ。あれ、まだ会議中?」

玉城「いやぁ、カレンのことは俺も心配してるよ。でもよ、そんな時だから俺の肩書きがさ。黒の騎士団が一つにまとまらないとヤバいだろ? ヒラのまんまじゃ後輩連中にも示しがよ」

ゼロ「玉城」バシュッ

玉城「わかってくれたか!? 俺たち親友だもんな!」

ピッ

シャーリー『あっ、ルル? もー、やっと出た。ほら、会長の卒業イベント。教室だとリヴァルから会長に筒抜けに……』

ルルーシュ「シャーリー、ちょっといいかな?」

シャーリー『ん? 何?』

ルルーシュ「その、あるカップルを別れさせたいんだけど、周りを説得させるには……」

シャーリー『その二人は別れたがってるの?』

ルルーシュ「いや、政治的要因……、つまり家の問題で」

シャーリー『そんなのダメだよ!!』

シャーリー『恋はパワーなの! 誰かを好きになるとね、すっごいパワーが出るの! 毎日毎日その人のことを考えて、詩を書いちゃったり早起きしちゃったりマフラー編んじゃったり滝に飛び込んでその人の名前叫んじゃったり! あたしだって……!!』

シャーリー『……その、ルルにはないの? 誰かのためにいつも以上の何かは……』

ルルーシュ(……! あ……、そうか。俺も……、俺もナナリーのために世界を創り変えようと思った)

ルルーシュ(暁美もそうだ。鹿目まどかのために自らの命すら顧みず……)

ルルーシュ「想いには世界を変えるほどの力がある。そうなんだな、シャーリー」

シャーリー『え? う、うん』

ルルーシュ「ありがとう、君に聞いてよかった」

ピッ


ゼロ「天子よ!!」バッ

ゼロ「新たな未来はあなた自身のものだ!」

ゼロ「力の源は心にある。大宦官たちに対して決起した人々。私たち黒の騎士団も心の力で戦ってきた!」

扇「あぁ……! あぁ、そうだな!」

ディートハルト「心の……力?」

神楽耶「さすがゼロ様!」

ほむら「……テンション高いわね」

マミ「そうね……」


今回はこの辺りで

クライマックスに向けて多少の改変が入っていく予定です
結末は原作とは全く違うものになると思うので、気長に見守っていただけると嬉しいです


ほむら「何か用かしら、ゼロ」

マミ「問題でも起きたんですか?」

ゼロ「いや、大したことではないんだが……」

ゼロ「カレンのこともあって一度エリア11に戻ろうと思っている。その護衛に一人ついてきてほしい」

ほむら「いやよ、めんどくさい」

マミ「ちょっと暁美さん!」

ゼロ「まぁ、話は最後まで聞け。エリア11で私が拠点とするアッシュフォード学園にも、何人か部下がいるんだが……」

ゼロ「その中に、キュゥべえと手を組み鹿目まどかを拐ったと思われる組織につい最近まで所属していた者がいる」

ほむら「っ!」

ゼロ「いい機会だから何か知らないか聞き出そうとほむら「連れていきなさい!」

ゼロ「……そう言ってくれると思っていたよ」


マミ「それじゃあ、私はお留守番かしら」

ほむら「あ……。ごめんなさい、マミ」

マミ「いいのよ。そりゃ、私も行きたいけど……。暁美さんが一番、鹿目さんのことを心配してるのはわかってるから」

ほむら「ありがとう……」

ゼロ(蜃気楼に一緒に乗ることになるから、正直巴じゃなくてよかった)

マミ「気にしないで、ね?」ドーン

ほむら「……お土産買ってくるわ」ペターン


ほむら「ちょっと、こんな狭いところに乗るなんて聞いてないわよ」

ゼロ「仕方ないだろう。フォートレスモードで水中を移動できるのは蜃気楼しかないんだ」

ほむら「水中じゃなくてもいいじゃない」

ゼロ「それだとすぐ見つかってしまうだろう。忘れているかもしれないが、我々はお尋ね者なんだぞ」

ほむら「ぐぬぅ……」

C.C.「こいつに何か変なことをするような度胸はないさ。安心しろ、ほむら」

ほむら「それもそうね……」

ゼロ「おい! 暁美も納得するな!」

マミ「気をつけてね、暁美さん」

ほむら「えぇ。必ずまどかの情報を手に入れて戻ってくるわ」

ゼロ「……では、そろそろ出発するぞ


移動中 蜃気楼内

ほむら「……やっぱり狭いわね」

ルルーシュ「一応、コックピットは他のナイトメアより広く作られているんだがな。二人で乗るにはさすがに狭いか」

ほむら「まぁ、いいわ。まどかのためだもの。我慢しましょう」

ルルーシュ「割りきるのが早くて助かるよ」

ルルーシュ「アッシュフォード学園では目立つ行動は避けてくれ。あそこには枢木スザクがいるからな」

ほむら「あぁ、そういえば私、面が割れていたわね……。というか、何よそれ。超危険地帯じゃない」

ルルーシュ「俺を見張るためだろう。スザクは一年前のゼロが俺だと知っているからな」

ほむら「疑われてるってこと? 大丈夫なの?」

ルルーシュ「抜かりはないさ。優秀な部下に影武者を任せてある」


エリア11 アッシュフォード学園地下

ザバァッ

ロロ「おかえりなさい、兄さ……っ!?」

ルルーシュ「暁美、起きろ。着いたぞ」

ほむら「え……? あ、私寝てたの……? ふぁ……」

ルルーシュ「全く、緊張感というものが……」

キィーン!

ルルーシュ「」

ロロ「兄さんに悪い虫が……。殺さないと」カチャッ

ロロ「……っ!? いない!? そんな、どうして……」

ほむら「おあいにく様、時間停止には慣れているのよ」ファサァ


ロロ「なっ!? ギアスが効かない!? ぐぅっ……!」

シュンッ

ルルーシュ「……ないのか、って暁美? どこへ……」

ほむら「ここよ」

ルルーシュ「さっきまでここに……。そうか、ロロ! ギアスを使ったな!?」

ロロ「に、兄さんを守ろうと思って……」

ルルーシュ「彼女は味方だ。攻撃する必要はない」

ロロ「うん……。わかったよ」

ほむら「ずいぶんなお出迎えだけれど、今のはどういうことなのかしら? ギアス、と言ったわよね」

ルルーシュ「あ、あぁ……」

ルルーシュ(どうせギアス嚮団のことを話さないといけないんだ。いっそギアスのことも教えてしまうか……?)


……………………
………………
…………

ほむら「絶対停止? マミの考えそうな話ね。荒唐無稽だわ」

ルルーシュ「元時間停止能力者の君が言えることではないと思うがな。だが俺の体感時間が停止しているのを実際に見ただろう」

ほむら「あなたたちのサプライズかもしれないじゃない」

ルルーシュ「つまり演技だと?」

ほむら「えぇ。そう考えるのが妥当じゃないかしら?」

ロロ「兄さんに偉そうに……!」

ルルーシュ「ロロ。まぁ、確かにもっともな指摘だ」

ロロ「でも兄さん……」

ルルーシュ「もう一度、実演してやってくれないか?」

ロロ「……兄さんが言うなら、いいけど」


キィーン!

ルルーシュ「」

ほむら「……ふぅん。本当に止まっているみたいね」

ロロ「だから……そう、言ってるでしょう……」

ほむら「このシスコン童貞」

ルルーシュ「」

ロロ「あ、あなたねぇ!」

ほむら「むっつりスケベ。なんとか言いなさいよ」

パチ-ン!

ルルーシュ「」

ほむら「……本当だったようね」

シュンッ

ロロ「はぁっ、はぁっ……。あなた、何様か知らないけど兄さんになんてことを!」

ルルーシュ「どうだ、信じる気になったか……って痛い! 頬が痛い!」

ロロ「兄さん! やっぱりこの人危ないよ!」

ほむら「いきなり銃を向けてくる人に言われたくないわ」


ほむら「あなたは何の力も持っていないのかしら」

ルルーシュ「俺が? どうしてそう思う」

ほむら「あなたが起こしてきた奇跡とやらを考えればそう思っても不思議ではないと思うけれど」

ルルーシュ「……俺はギアスなんて持っていないよ」

ルルーシュ「奇跡なんてない。全ては計算と演出だ」

ほむら「……そう」

ほむら(何かを隠している……? 都合の悪いことでもあるのかしら)


さやか『あれはゼロが仕組んだことでしょ!』


ほむら(まさか……ね)

ほむら(でももしそうだとしたら、私は……)


翌日

ほむら「で、どうしてゼロともあろう人が絶賛ラブコメ中なのかしら?」

ロロ「咲世子が安請け合いをするから……!」

ほむら「……まぁ、いいわ。あの人の頭が理解の範疇を越えていることはとっくに知っていたし」

ロロ「あなた、口が過ぎますよ」

ほむら「そう言われても……ねぇ」

ほむら「それより、ロロ・ランペルージ。あなただそうね。ギアス嚮団とかいう組織にいたのは」

ロロ「……そうですけど」


ほむら「あなた、鹿目まどかという名前に聞き覚えはあるかしら。もしくは、魔法少女という単語に」

ロロ「魔法、少女……。そういえば、V.V.がそんなことを言っていた気がする」

ほむら「そのV.V.っていうのは?」

ロロ「嚮団のトップ、嚮主ですよ。ギアスを与える力を持ってるんです」

ほむら「魔法少女という言葉を聞いたのはいつ頃?」

ロロ「僕が兄さんのところへ送られる直前だったから……、一年くらい前かな?」

ロロ「魔法少女の存在でギアスの謎が一気に解けたとかなんとか。本物の魔法少女が来たとも言ってたような……」

ほむら(時期はぴったりね。できればまどかだっていう確証がほしいけれど……)


ルルーシュ「このままでは、世界を壊し世界を創造することなど不可能だ。キューピッドの日。今日のイベントで女たちとの関係を一気に清算する」

ロロ「おかしな女に捕まらないためにも必要です」

ルルーシュ「ああ。幸いこのイベントは教師も参加できる。ヴィレッタに俺の帽子を奪ってもらう」

ヴィレッタ「それは……おかしな誤解を招くだろう。この件は咲世子が責任を取るべきで……」

咲世子「申し訳ありません。私はイベント途中でルルーシュ様の影武者を」

ヴィレッタ「なら、シャーリーでいいだろう。あれは相当お前に惚れているぞ。お前を守るために私を撃ったこともある」

ルルーシュ「だから、もう巻き込みたくないんだ」

ほむら「意外ね。あなた、同級生を心配するような人には見えないけれど」

ルルーシュ「俺は何度もシャーリーを巻き込んでしまった。これ以上彼女を苦しめる訳にはいかない」

ほむら「……あなたも好きなの?」

ルルーシュ「なっ!? 俺の気持ちは今関係ないだろう!」

ほむら「分かりやすいわね……。そんな調子でよくゼロなんてやってられるものだわ」

ルルーシュ「う、うるさい!」


……………………
………………
…………

ほむら「……とかなんとか言ってたくせに、結局そのシャーリーって人とくっついたのね」

ルルーシュ「成り行きだった。仕方ないだろう」

ほむら「まんざらじゃなさそうなのがまたむかつくわ」

ルルーシュ「それで暁美、鹿目まどかのことで何かわかったのか? ロロと話をしたんだろう?」

ほむら「えぇ。少なくともギアス嚮団に魔法少女がいるのは間違いないみたいね。まどかという確証はないけれど、可能性は高いわ」

ルルーシュ「それならやはり場所が特定でき次第攻めこむか……」

ほむら「攻めこむって、黒の騎士団で?」

ルルーシュ「ああ。俺もV.V.には借りがあるからな」

ほむら「そう……。そのときは必ず私もついていくから」

ルルーシュ「わかっているさ」


翌日

ヴィレッタ「ルルーシュは? デートか?」

ロロ「G列車のテストに行きましたよ」

ヴィレッタ「ならちょうどいい。ロロ、お前は何故寝返った? 嚮団から派遣されている以上……」

ロロ「なんですか、その質問は。僕と兄さんの仲を妨げる……」

ピーピー!

『B7から本部へ。礼拝堂付近で不審者を発見。B5、B9が確保に向かいました』

ヴィレッタ「ジェレミア卿……!? 何故……!」

ロロ「校内放送を! 他の生徒を対象エリア外へ!」

ロロ「咲世子、クラブハウス玄関で迎え撃ってください!」

咲世子『承知いたしました』

ロロ「僕も出ます。暁美、あなたは?」

ほむら「……まぁ、私も一応護衛で来てる訳だし、働かないといけないわよね」

ほむら「ずっと地下に缶詰めで体が鈍りそうだったし、いい機会だわ」


ロロ「咲世子!」

咲世子「……!」

ジェレミア「むっ!」

ロロ「時を奪う……!」キィーン!

ロロ「咲世子、暁美! 僕がジェレミアを止めている間に!」

咲世子「はい!」

ほむら「……」チャキ

パンッパンッ
キンッ

ほむら(……銃は効かないか。なら……!)

銃を盾に戻し、代わりに手榴弾を取り出す。
投げるタイミングを見極めようと咲世子の様子を伺った時だった。


キィーン!

ロロ「っ!? そんな!」

ジェレミアの機械仕掛けの左目が開き、ギアスキャンセラーが発動する。

ジェレミア「ふっ!」

そして、切りかかる咲世子の後ろに回り、逆に切り伏せた。

ロロ「僕のギアスが効かない……!?」

ジェレミア「ロロ・ランペルージ! やはり籠絡されていたか」

ロロ「ぐあっ!」

ほむら(ロロがねじ伏せられた……。今投げる訳にはいかないわね……)

ジェレミア「故に私が送られてきたのだ」


ジェレミア「魔法少女! 近くにいるな?」

ほむら(くっ……。やはり気づかれた)

ジェレミア「トウキョウ租界での借り、忘れてはおらんぞ。出てきて戦うがいい!」

ヴィレッタ「ジェレミア卿!」

ジェレミア「ヴィレッタ!? お前もルルーシュに取り込まれたのか……!」

ヴィレッタ「……ルルーシュはイケブクロにいます!」

ロロ「……!」

ヴィレッタ「お願いです、ジェレミア卿。私を解放してください!」

ジェレミア「……引き受けた」


ロロ「兄さん、気をつけて! そっちにジェレミアが向かってる。嚮団の刺客なんだ。僕のギアスが効かなかった」

ルルーシュ『あいつが生きていたのか……? 刺客とはどういうことだ』

ロロ「わからないけど、兄さんの命を狙ってる。僕らもイケブクロに向かってるから、兄さんもジェレミアを!」

ルルーシュ『……わかった』

ピッ

ほむら「ギアスに改造人間。もうなんでもありね」

ロロ「……魔法少女が一番特異だと思いますよ」


イケブクロ

ロロ「兄さん……!」タッタッタッ

シャーリー「ロロ……?」

ロロ「シャーリーさん……? 暁美、あなたは先に兄さんのところへ!」

ほむら「えぇ」タッ

シャーリー「答えて、ロロ。あなたはルルのことが好き?」

ロロ「好きだよ。たった一人の兄さんだもの」

シャーリー「……あなたは味方なのね、ルルの」

シャーリー「お願い! 私も仲間に入れて! 私もルルを守りたいの。取り戻してあげたいの、ルルの幸せを。妹のナナちゃんだって一緒に!」

ロロ「っ!!」


駅 ホーム

ほむら「いた……!」

ルルーシュ「機械の体、ギアスキャンセラー。執念だけは一流だな、オレンジ君」

ジェレミア「執念ではない、これは忠義」

ほむら「動かないで!」チャキ

ジェレミア「……魔法少女か。だが銃では私は止められんぞ。忠義を果たすまで、私は止まる訳にはいかない!」

ルルーシュ「気に入らないな。あの皇帝のどこに忠節を尽くす価値がある!」

ギィンギィン!

ジェレミア「……っ! ゲフィオンディスターバー……!」

ルルーシュ「ほう、よく勉強しているじゃないか。ならばわかるだろう」

ルルーシュ「サクラダイトに干渉するこのシステムが完成すれば、環状線の都市機能を全て麻痺させられる。つまり、トウキョウが静止する」

ルルーシュ「ありがとう。君はいいテストケースとなった!」

ルルーシュ「さぁ、話してもらおう。嚮団の位置を。V.V.の居場所を!」


ジェレミア「私には……理由がある。忠義を貫く覚悟が。確かめなければならぬ真実が!」

ルルーシュ「馬鹿な……! 動けるはずがない!」

ジェレミア「ルルーシュよ、何故ゼロとなりブリタニアに歯向かおうとする!」

ルルーシュ「それは……俺がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだからだ!」

ジェレミア「……!」

ルルーシュ「あの日、皇帝は母さんを見殺しにした! そしてナナリーは目と足を奪われた……!」

ほむら(シスコンに加えてマザコンか……。救いようがないわね)

ジェレミア「知っています。私もあそこにおりましたから」

ルルーシュ「なに……?」

ジェレミア「初任務でした。敬愛するマリアンヌ后妃の護衛……。しかし、私は守れなかった。忠義を果たせなかったのです」

ルルーシュ「それで純血派に……」

ジェレミア「ルルーシュ様、あなたがゼロとなったのはやはりマリアンヌ様のためであったのですね……」

ジェレミア「我が主はV.V.ではなくマリアンヌ様……。これで、思い残すことは……」

ルルーシュ「待て!」

ルルーシュ「ジェレミア・ゴットバルト。貴公の忠節はまだ終わってないはず。そうだな?」

ジェレミア「あぁ……。イエス、ユアマジェスティ……っ!」


……………………
………………
…………

ルルーシュ「ああ。ジェレミアを先行させた。障害があれば彼が排除する。……戦うなよ、もう味方だからな。俺の護衛にも暁美が付いている。心配はいらない」

ほむら「……待って。あそこに誰か倒れてる」

ルルーシュ「何……?」

その人影に近づいたルルーシュは思わず息を飲んだ。
シャーリー・フェネット。
腹部に銃弾を受け、血溜まりに沈む彼女がそこにいた。


ほむら「ひどい……」

ルルーシュ「誰が……こんな……っ!


シャーリー「あ……。よかった、最期にルルに会えた……」

シャーリー「私ね、記憶が戻って……、すごく怖かった」

シャーリー「偽物の先生、記憶がない友達。みんなが嘘ついてる。世界中が私を見張ってるような気がして……」

シャーリー「ルルはこんな世界で戦ってたんだね……。たった一人で」

シャーリー「だから私は……、私だけはルルの本物になってあげたいって」

ルルーシュ「シャーリー……」

シャーリー「私、ルルが好き……」

シャーリー「お父さんを巻き込んだって知っても、嫌いになれなかった。ルルが全部忘れさせてくれたのに、それでもまた……、ルルが好きになった。記憶をいじられても、また好きになった……」

ルルーシュ「ダメだ……、死ぬな、シャーリー!」キィーン!

シャーリー「何度生まれ変わっても、きっとまた……ルルを好きになる。これって、運命なんだよね?」

ルルーシュ「死ぬな……! 死ぬな!」キィーン!キィーン!

シャーリー「だから、いいよね、ルル……。生まれ変わっても、またルルを好きになっても……。何度も……、何度も好きになるから……」

ルルーシュ「シャーリー……! シャーリー!」


ルルーシュ「暁美……、暁美ぃ! シャーリーを、シャーリーを助けてくれ!」

ルルーシュ「魔法少女の力ならまだ助かるだろ!? 頼む……!」

ほむら「……やってみる。できる限りのことはやってみるわ」スッ

ほむら(とはいえ私は治癒魔法なんてほとんど使ったことはないし……。きっともう……)


マミ『私はできる限り誰にも死んでほしくない』

ルルーシュ『だから、もう巻き込みたくないんだ』


ほむら(……私も、大概毒されてるわね)

ほむら(助けてみせる……!)


……………………
………………
…………

ほむら「はぁっ……はぁっ……」

ルルーシュ「暁美! シャーリーは!?」

ほむら「とりあえず、血を止めて生命力を底上げした……」

ほむら「でも危険な状態には変わりないわ。早く、救急車を!」

ルルーシュ「あぁ、それは今呼んだ……」

ルルーシュ「ありがとう……っ。ありがとう、暁美……!」

ほむら「……マミなら、きっともっと上手くやったでしょうけどね」

ロロ「……兄さん?」

ルルーシュ「ロロ……」

ロロ「危なかったね、兄さん。シャーリーの記憶が戻っていたんだ。拳銃を手に兄さんを追いかけていたから……」

ルルーシュ「っ!」

ほむら「この……!」


ルルーシュ「暁美。……よくやってくれた、ロロ」

ほむら「あなたねぇ! ……!」

制止するルルーシュの手が固く握りしめられているのを見て、ほむらはその考えを理解した。
納得は、できなかったが。

ほむら(どうして……! あれだけ泣いて助けてくれって叫んだ相手を殺そうとしたやつが目の前にいるのに……)

ロロ「うん、兄さんの敵は僕が排除しなくちゃ」

ロロ(ジェレミアでも、暁美でもない)

ロロ(兄さんは僕が守るんだ……!)


今回はこの辺りで

今回の投下分で書き溜めが尽きてしまいました
なので、更新速度が格段に落ちてしまいます
三日に一度くらいはちゃんと更新したいと思います


ジェレミア「鹿目まどかですか。確かにギアス嚮団におりました」

ルルーシュ「本当か!」

ジェレミア「はい。小さな体に忠義を宿した気高き少女でした」

ほむら「やっと……、やっと見つけた……!」

ルルーシュ「これで決まったな。ギアス嚮団。すぐにでも乗り込むぞ!」

ほむら「えぇ……!」

ジェレミア「このジェレミア・ゴットバルト、ルルーシュ様の命とあらば、全力で!」

ルルーシュ(シャーリーの命を脅かしたギアス……。その根源たるギアス嚮団、もはや許しはしない。殲滅してくれる……っ!)

ルルーシュ(これが王の力だというのなら、力ある者は一人で十分だ!)


ほむら「ところで、あのシャーリーって人はどうなったの?」

ルルーシュ「……未だ意識不明だそうだ。普通ならすでに死んでいてもおかしくない状態で、すぐに輸血したんだが……。意識が無事戻るかどうかもわからないらしい」

ほむら「そう……。ごめんなさい、私の力が及ばなかったばかりに……」

ルルーシュ「何を言っている。君がいなければシャーリーはあそこで死んでいた。感謝してもしきれない……」

ほむら「そう言ってもらえると助かるわ……」

ルルーシュ「本当のことだ。君には、大きな借りができてしまったな」

ほむら「私もまどかを連れ戻す手助けをしてもらっているし、お互い様よ」


ルルーシュ「そのことなんだが、暁美。今から俺たちは零番隊を動員してギアス嚮団を攻める。だが、この作戦には巴は参加させない」

ほむら「……どうしてかしら」

ルルーシュ「今回我々が行うのは戦闘ではない。殲滅だ」

ルルーシュ「彼女が、そんな作戦に参加できると思うか?」

ほむら「それは……。確かに、そうね……」

ルルーシュ「彼女も鹿目まどかのことが心配だろうが、我慢してもらうしかない」

ルルーシュ「ギアス嚮団は殲滅する。これ以上、ギアスは存在してはならない」

ほむら「ロロも殺すの?」

ルルーシュ「……あぁ」

ルルーシュ「最後まで利用してボロ雑巾のように捨ててやる……!」


中華連邦 ギアス嚮団

ルルーシュ「もう遅い! 既にこれはお前と俺の戦争になった!」

ドォォォォン!

C.C.『V.V.の現在地は特定できた。全員、ポイントα-7を包囲!』

C.C.『ほむら、お前は鹿目まどかを探しに行け。居場所はジェレミアから聞いたな?』

ほむら『えぇ。ありがとう』

C.C.『幸運を祈っているよ』

ほむら『……やめてちょうだい。柄でもない』

C.C.『ふっ……』


ほむら(ジェレミアが言っていた場所はポイントαー4……。他の零番隊員が来る前に助け出さないと!)

ほむら(まどか……!)


……………………
………………
…………

ドォォォォン!

まどか「きゃぁっ!」

ほむら『まどか!!』

まどか「え……? ほむらちゃん……?」

ほむら『えぇ! 遅くなってごめんなさい』

ほむら『助けにきたわ!』


バシュッ

ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃん……。来てくれたんだね……」

ほむら「当たり前じゃない……! あなたに何かあったら私……」

ほむら「QBに何かされなかった? V.V.には?」

まどか「えっと……」

ほむら「……されたのね。何をされたの?」

まどか「ギアスを……無理矢理」

ほむら「ギアスを?」

まどか「うん……。ほむらちゃんはギアスを知ってるの?」

ほむら「ギアスユーザーを一人……、いえ、二人知っているわ」

ほむら「絶対停止のギアスとギアスキャンセラーよ」

まどか「ギアスキャンセラーって、ジェレミアさん!?」

ほむら「えぇ。ジェレミアがまどかの居場所を教えてくれたの」


ダダダダダ!

ほむら「! いけない、他の隊員がくるわ!」

ほむら「まどか、ホムリリィの中へ」

まどか「う、うん……」

『暁美、ここは制圧したのか?』

ほむら『えぇ。あなたは他の場所をお願い』

『わかった』

ほむら「……行ったみたいね」

まどか「今の、黒の騎士団の人……?」

ほむら「そうよ。ゼロはギアスユーザーを一人残さず殺すつもりだから、あなたがギアスを持っていることは絶対に知られちゃダメ。いい?」

まどか「う、うん……」

ほむら「それで……、言いたくなかったらごめんなさい。まどかは、どんなギアスを持っているの?」

まどか「人と人の絆を結ぶギアスみたい……」

ほむら「絆を……。あなたらしいギアスね」

まどか「私はいらないよ、こんな力……」

ほむら「え……?」


ピピッ

ゼロ『暁美、鹿目まどかは見つかったか?』

ほむら「おかげさまで」

ゼロ『ならすぐに上に来てくれ。V.V.がジークフリートで出てきた』

ほむら「ジークフリート……!?」

ほむら(トウキョウ租界の時あれか……! でもあれはジェレミアの機体だったんじゃ……)

ほむら「まどかを連れて戦闘なんてしたくはないんだけれど……」

まどか「私なら大丈夫だから、ゼロを助けてあげて」

ほむら「……わかったわ」

ゼロ『来れるか?』

ほむら「えぇ。すぐに行きます!」

ほむら「まどか、ごめんなさい。ちょっと揺れるわよ!」

ゴォッ!


ギアス嚮団本拠地上空

ゼロ『一斉掃射!』

ダダダダダ!

ゼロ『……ちっ。電磁装甲は健在か』

ほむら『ゼロ!』

ゼロ『ちょうどいい、暁美。ロロに今から特攻させる。お前はその援護をしてくれ』

ゼロ『やつに近づく前に死なれたら困るからな』

ほむら「了解」

ほむら「ごめんなさい、まどか。ここから先にはあなたには刺激が強すぎる」

ほむら「少し眠っていてもらえるかしら」スッ

まどか「えっ……? あ……」トロン

まどか「スー……スー……」

ほむら「……ごめんね、まどか」


V.V.『今度はロロかな? 君も僕を裏切ったんだね』

V.V.『僕にギアスが効かないって知ってるくせに』

ガキン!

ロロ『ぐっ……! まだだ、パージすれば……!』

V.V.『へぇ。じゃあ、これでどうだい?』

ジークフリートのスラッシュハーケンが三つ同時にヴィンセントに襲いかかる。

ロロ(防げない……!? そんな、まだ兄さんの……!)

ほむら『ロロ!』

ギュィィィン!

ホムリリィが二機の間に割って入り、輻射障壁でスラッシュハーケンを受け止める。
ラクシャータによって出力があげられている上に魔力で強化された輻射障壁は巨大なスラッシュハーケンを簡単に弾いた。

ロロ『暁美……! ありがとう!』

ほむら『……いいえ。ゼロのためにために戦うんでしょう?』

ロロ『うん……! やってみせる! 兄さんのために!』

ほむら『……』

ほむら(ゼロのため、か……)


ガシッ

ロロ『取りついたよ、兄さん!』

バチバチッ

ジークフリートの電磁装甲が取りついたヴィンセントを襲う。

ロロ『あがぁっ!!』

V.V.『ハハハッ!』

ゼロ『よくやってくれた、ロロ。では、ここで君とは……』

ドン! ドン!

V.V.『っ!?』

V.V.『誰だい? ジークフリートの弱点を知っている攻撃……!』


ロロ『ごめんなさい、兄さん……』

ゼロ『いや、いい』

ゼロ(まさかコーネリアがここにいようとは)

コーネリア「ここで滅せよ、ユフィの仇!」

ゼロ『ここまでだ、V.V.!』

V.V.『くっ……!』

ドォォォォン!


……………………
………………
…………

まどか「ん……? あれ、戦いは……?」

ほむら「もう終わったわ」

まどか「私、どうして……」

ほむら「……ごめんなさい。あなたにあんまり戦いを見せたくなかったからちょっと魔法で眠ってもらったの」

まどか「そっか……。もう、私なら大丈夫って言ったのに」

ほむら(本当ならあそこでロロの機体はジークフリートを巻き込んで爆散するはずだったんだもの。見せられる訳ないじゃない……)

まどか「ところで、今は何をしているの?」

ほむら「ゼロを探しているのよ。急に蜃気楼ごといなくなって……」

ゼロ『暁美、聞こえるか』

ほむら「ゼロ? あなた今どこに……!」

ゼロ『説明は後だ、すぐにα-7に来てくれ』


ほむら「ゼロ、来たわよ」

ゼロ「あぁ、暁美。よかった」

ほむら「よかった、じゃないわよ。突然消えたと思ったら何を……」

C.C.「ひっ……! あ、あなたも私のご主人様なんですか……?」

ほむら「……は?」

ゼロ「ご覧の通りだ」

ゼロ「助けてくれ……」


今日はこの辺りで

短くてすみません


エリア11 ブリタニア政庁

スザク「怖がらなくてもいい。君はすぐに自分の意思を失い、僕の質問に答える」

スザク「……このリフレインで」

カレン「お兄ちゃん……っ!」

スザク「従ってもらう、命令に……」

カレンにリフレインを投与しようとした時、スザクの脳裏に友の姿が浮かぶ。
人の意思を無視し、尊厳を踏みにじった憎き友の姿が。

スザク「……っ!? お、俺は、あいつのようには……!」

杏子「おい! スザク、てめえ何してやがる!!」

さやか「ナナリーに言われて様子を見に来てみれば……」

スザク「……杏子、さやか」


カレン「っ! 離して!」バッ

さやか「スザクさん……。どういうつもりですか」

さやか「間違った過程で得た結果に意味はない、っていつも言ってたじゃないですか……!」

さやか「あれは嘘だったんですか!?」

スザク「くっ……。違う……! 僕は……、俺は……!」

カレン「何が違うっていうのよ……!」

杏子「……とりあえず、そいつから離れな。スザク」

スザク「……あ、あぁ」


ナナリー「……そうですか。スザクさんが……」

杏子「ああいうことはしないやつだと思ったんだけどな」

さやか「スザクさん……」

ナナリー「私もスザクさんを信じたいです。でも、スザクさんは私に何かを隠してる……」

ナナリー「お兄様のことを……」

さやか「あたし、スザクさんがわからないよ……」

杏子「……ちっ」


蓬莱島 ゼロ私室

ルルーシュ(やった……! ブリタニアのこの動きは皇帝が不在だということ)

ルルーシュ(あの時、あの空間に取り残されたようだな。あいつの言っていたことは気になるが、今はナナリーの安全を喜ぶべきか)

C.C.「あの……、私は何をすれば……」

ルルーシュ「そうだな。服を裏返しに着て、歌いながら片足で踊ってもらおうか」

C.C.「はい、ご主人様」ゴソッ

ルルーシュ「えっ……。よ、よせ! 冗談だ!」バッ

C.C.「きゃあっ」

C.C.「ご、ごめんなさい。ひどいことしないで……」

ルルーシュ(完全に戻っている。ギアスに関わる前の、奴隷の少女に)

ルルーシュ「……安心しろ、俺は君にひどいことはしないよ」

C.C.「……」ビクビク

ルルーシュ「約束する」

ピピッ

ジェレミア『ルルーシュ様』

ルルーシュ「ジェレミアか、どうした。……そうか。わかった、すぐに向かう」

C.C.「ご主人様……?」

ルルーシュ「少し、用事ができた。ほむらとマミを呼んでおく。何かあったら彼女たちに言うといい」


ほむら「……あの人、私たちのこと雑用係か何かと勘違いしているんじゃないかしら」

マミ「まぁまぁ。あなたもC.C.さんのこと気になってたでしょ?」

ほむら「それは……まあ」

まどか「記憶喪失……なんだよね」

マミ「そう、らしいわね」

ほむら「ゼロも結局詳しい事情は教えてくれなかったけれど」

マミ「……私、鹿目さんを助けにいったとき何があったのかすら知らないんだけど?」

ほむら「藤堂さんにも内緒よ。あなたは、知らない方がいい」

マミ「まぁ、深くは聞かないわ。鹿目さんが無事に戻ってきてくれただけで、私は十分だもの」

ほむら「……ごめんなさい」


バシュッ

C.C.「ひっ……」

ほむら「安心して。私よ」

C.C.「あ……。ほむら……さん?」

ほむら「えぇ。最初に会って以来ね」

マミ「えっと、初めまして……? 巴マミです」

まどか「鹿目まどかです」

C.C.「初め……まして」

ほむら「体調はどう? C.C.」

C.C.「しーつー……?」

ほむら「あー……」

まどか「そっか、記憶が……」

ほむら《でも、C.C.ってどう考えても偽名よね》

マミ《そうね……。なんて呼べばいいのかしら》

まどか《しーちゃん、とか?》

マミ《ふふ。かわいいわね、それ》


C.C.「あの……?」

まどか「なぁに、しーちゃん」

C.C.「しーちゃん?」

ほむら「とりあえずの、あなたの名前。こう呼んでも構わないかしら」

C.C.「お、お好きなようにお呼びください」

マミ「そんな話し方しなくていいのよ?」

まどか「私たち、あなたとお友達になりたいなって」

C.C.「友達……」

まどか「嫌……かな」

C.C.「い、いえ! 嬉しい、です」

マミ「違うでしょ? 友達なんだから」

C.C.「……うん! 嬉しい!」ニコッ

まどか(かわいい)


エリア11 ブリタニア政庁

スザク「……すまなかった」

カレン「何言ってるんだ!!」バキッ

カレン「やっていいことと、悪いことがあるだろ! いい人気取って、勝手にお仕舞い!?」

カレン「収まらないんだよ……! 紅月カレンを、安く見るなぁぁっ!!」

杏子「……止めねぇのか?」

さやか「殴られて当然のことを、スザクさんはしたでしょ」

さやか「それに、スザクさんが絶対に手を出すなって、言ったから……」

杏子「さやか。アンタももう気づいてるだろ」

杏子「スザクは、いつでも正しい正義の味方じゃない。この前の行動なんて……」

さやか「……」


蓬莱島 ゼロ私室

オォォォォォ!!

C.C.「」ビクッ

ピッ

『どうも〜! 新進気鋭の一人お祭り娘、ミレイ・アッシュフォードでーす!』

C.C.「ひぃっ! ごめんなさい……!」

ほむら「あぁ、テレビ……」

まどか「記憶喪失って、テレビが何かも忘れちゃうの?」

マミ「さぁ……? 確かエピソード記憶とか意味記憶とかあるらしいけど……」

ほむら「これはテレビって言ってね、別に怖いものじゃないのよ」

C.C.「テレビ……」


バシュッ

C.C.「っ!」サッ

ゼロ「食事を持ってきたんだが……」

C.C.「……」

ゼロ「……」

ほむら「ゼロ、仮面」

ゼロ「あぁ……」スッ

ルルーシュ「俺だよ」

C.C.「あ……」

ルルーシュ「これはピザっていうんだ。お腹空いただろ?」

ほむら(女の子にピザって……)

ルルーシュ「記憶をなくす前、好きだったんだよ。何か、問題が?」

ほむら「……いいえ」

ほむら(声に出してないのに……)

ルルーシュ「いいんだよ、食べて」

C.C.「はい……!」

パクッ パクッ

ルルーシュ「おいしいか?」

C.C.「はい! すごくすごく!」

マミ(かわいい)


エリア11 ブリタニア政庁

ロイド「戦術兵器に戦略兵器を載せる気かい?」

ニーナ「それだけの理由はあります。一次制圧圏内に含まれる物質は、F.L.E.I.J.A.のコラプス効果によって完全に消滅しますから」

セシル「待って! スザク君にそんなものを撃たせるつもり!?」

さやか「……どういうことなんですか?」

アーニャ「同じ民族を虐殺」

さやか「そんな……!」

杏子「てめぇ、どういうつもりだ!?」

ニーナ「イレブンは黙ってて。あなたたちには考えも及ばない高度な話なの」

さやか「なっ……!」

ニーナ「スザク? まだイレブンと同族意識があるの?」

ニーナ「私はあなたにF.L.E.I.J.A.を委ねたい」

スザク「僕に……背負えと?」

ニーナ「ユーフェミア様の騎士でしょ、あなたは」

ロイド「あはぁ〜」

ロイド「ニーナ君。この矛盾はさ。スザク君だけじゃない。君を殺すよぉ」


超合衆国憲章批准会場

ルルーシュ「外には出るなよ」

C.C.「あ、はい……。あと、その……」

ルルーシュ「なんだ」

C.C.「いってらっしゃいませ」

ルルーシュ「はぁ……? ふっ……」

ルルーシュ「いってきます」

C.C.「はい!」

ルルーシュ(……かわいい)


シャルル『ゼロよぉ!!』

シャルル『ゼロよ……。それで儂を出し抜いたつもりか』

シャルル『だがぁ、悪くない。三極の一つ、EUはすでに死に絶えた』

シャルル『つまり、貴様の創った小賢しい憲章は、世界をブリタニアとそうでないものに色分けする』

シャルル『単純、それ故に明快』

シャルル『必竟、この戦いを制した側がぁ、世界を手にいれるということ』

シャルル『いいだろう、ゼロ。挑んでくるがよい』

シャルル『全てを得るか、全てを失うか』

シャルル『戦いとは元来、そういうものだぁ』

シャルル『オォォォォル・ハイル・ブリタァニア!!』


ゼロ(皇帝が生きていた!?)

C.C.「あの、お帰りなさい……」

ゼロ(いけないり。すぐにナナリーを助けなければ。いますぐに!)

ゼロ(コーネリアスのカードをこちらに……、いや、人質が通じる相手ではない)

ゼロ(ジェレミアとロロを使って……、ダメだ、やつにギアスは通じない)

ゼロ(ゼロの正体がルルーシュだと世界中に明かしてしまうか? しかし、リーダーが敵国の皇子だと知れば黒の騎士団は崩壊する)

ゼロ(ナナリーを助けても、受け入れる国がなければなんの意味もない!)

ゼロ(暁美と巴を……。いや、彼女たちの話だと向こうにも魔法少女がいる。それもかなりナナリーに近い位置に。簡単に確保できるとは思えない……)

ゼロ(くっ! どうすればいい!)

C.C.「こ、これ、ご主人様の分、とっておきました。朝ごはん、とられていなかったようでしたから……」

C.C.「あの……、これ……」

ルルーシュ「うるさい!」

C.C.「きゃあ!!」

皿が割れ、破片が散らばる。
C.C.の残したピザも、地面に落ちてしまった。


ルルーシュ「……はっ。おい!」

C.C.「ひっ! ごめんなさい、今綺麗にしますから……!」

ルルーシュ「そうじゃない! ……血が出ているじゃないか」

C.C.「え……? あ……」

C.C.「平気です、これくらい、いつもより全然平気です」

ルルーシュ「いつもよりって……!」

C.C.「でも、寒い時は助かるんです。ヒリヒリ熱いから……」

C.C.「寒いと手足が動きにくくて仕事が……」

C.C.「だから、平気です。外から痛い方が、中より痛いより……」

C.C.「……ご主人様、寒いんですか?」

ルルーシュ「ん……? あぁ、そうなのかもしれないな……」

ルルーシュ「……お前は、中から痛い時、どうしていたんだ」

C.C.「私は……、あ……」

C.C.「ともだち……」

ルルーシュ「え?」

C.C.「友達なら親や兄弟と違って後から作れるし……。ここに来て、私にも初めてそういう味方ができました……」

ルルーシュ「味方……?」

C.C.「はい……。ほむらにマミ、まどか……。大切な友達、味方です」

ルルーシュ「味方……。そうか、友達…… 」

ルルーシュ「最後は友達だけが、味方になってくれる。そうなんだな……!」


今回はこの辺りで


一つだけ訂正
>>339

× ルルーシュ「少し、用事ができた。ほむらとマミを呼んでおく。何かあったら彼女たちに言うといい」

○ ルルーシュ「少し、用事ができた。暁美と巴を呼んでおく。何かあったら彼女たちに言うといい」


太平洋

藤堂「七號作戦、開始!!」

南「斑鳩浮上!」

玉城「よっしゃいくぞぉ!!」

朝比奈「今度こそ!」

千葉「取り戻す!」

ジェレミア「我が忠義を! ルルーシュ様とナナリー様のためにも!!」

ほむら「まどか、今終わらせる。あなたを苦しめた世界を!」

マミ「この戦いが全てを決するのね……」


エリア11 トウキョウ租界

ゼロ『ナナリー総督を押さえれば、我が軍の勝利だ!!』

ゼロ『ジェレミア、暁美、巴。お前たちは私の援護を』

ジェレミア『イエス、ユアマジェスティ!』

マミほむ『了解!』

マミ《ゼロを狙ってくるならまず来るのはランスロット。美樹さんや佐倉さんも来るでしょうね》

ほむら《美樹さやかも佐倉杏子も大した敵じゃないわ。問題はナイトオブラウンズがいるか否かよ》

マミ《ナイトオブラウンズか……。暁美さんも苦戦するほどだものね》

ほむら《ナイトオブスリー。もしいるなら私が……!》

マミ《ダメよ。トリスタンのハドロンスピアーに対抗するには私のキャンデロロでないと》

ほむら《……そう、ね》


ゼロ『やはり来たかスザク!!』

スザク『聞こえるか、ゼロ! 戦闘を停止しろ!』

スザク『こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば……』

ゼロ『お前の言うことなど信じられるか! ジェレミア!』

ジェレミア『イエス、ユアマジェスティ』

ガシャァン!

スザク『っ!? ジェレミア卿!? どうして……!』

ジェレミア『枢木スザク、君には借りがある。情もある。引け目もある。だがここでは……』

ジェレミア『忠義が勝る!!』

スザク『くっ……! あなたにどんな事情があろうと……!』

ジェレミア『受けよ! 忠義の嵐!』


さやか『ゼロォォォォ!!』

ギルフォード『姫様!!』

オクタヴィアの突進をギルフォード操るヴィンセントが受け止める。

さやか『ぐっ……! アンタ、ブリタニア軍人でしょ!』

ギルフォード『我が主君はコーネリア皇女殿下ただお一人! 姫様が望まれるなら国の一つや二つ、喜んで裏切ろう』

さやか『何言ってんのよ、アンタ!』

オクタヴィアはMVS、ヴィンセントはニードルブレイザーでつばぜり合いを繰り広げる。
操縦技能ではギルフォードが圧倒的に勝っているが、マシンスペックと魔法でさやかもその攻撃に対応することができた。

さやか『くそ……っ! 杏子!!』

杏子『おう!』


二つの戦闘の間をくぐり抜け、オフィーリアが蜃気楼に肉薄する。

杏子『覚悟しな、仮面野郎!』

ゼロ『ふん!』

杏子は自前の槍を召喚し、斬りかかる。
だがその刺戟全てを絶対守護領域が弾いてしまった。

杏子『ちっ! 硬いな……』

杏子『ならこいつはどうだ!!』

オフィーリアは瞬時にメギドハーケンを展開し、ハドロンスピアーを発射する。

ゼロ『それがどうした!』

同じく蜃気楼も拡散構造相転移砲を撃ち出す。
空中で二つの光線がぶつかり合った。

ほむら『ゼロ!』

ゼロ『私はいい。お前と巴はジェレミアの援護に回れ!』

マミ『でも……!』

ゼロ『ここで確実に枢木スザクを潰すのだ! 行け!』

ほむら『……了解』


スザク『ジェレミア卿、自分はこんな戦いを終わらせたくて……!』

ジェレミア『ならば君にできるというのか!? 我が君の苦悩を消し去ることが!』

ほむら『枢木スザク!!』

ランスロットがサザーランド・ジークの砲撃をかわした隙をついて、ほむらが攻撃をしかける。
間一髪でブレイズルミナスで防がれるが、キャンデロロがさらなる攻撃に出る。

マミ『ティロ・ドッピエッタ!』

スザク『魔法少女か……!』

ホムリリィの回転刃刀を受け流し、マミの銃撃をハドロンブラスターで弾き飛ばす。

ジェレミア『捕らえた!!』

だが、即座に後ろに回ったサザーランド・ジークの電磁ユニットについに捕らえられてしまう。

スザク『何!? ぐあっ!!』


ほむら『終わりよ……!』

ジノ『おっと、させないぜ!』

そこに増援のトリスタンがメギドハーケンを飛ばす。
止めを刺そうとしたホムリリィはサザーランド・ジーク共々後退を余儀なくされる。

ジノ『ナイトオブラウンズの戦場に敗北はない』

スザク『すまない、ジノ!』

ジノ『こういう時は素直に喜べよ。……ん? ジェレミア卿?』

ジノ『オレンジ疑惑は本当だったようだな』

ジェレミア『オレンジ? ふふふっ。それは我が忠誠の名前』


マミ『ナイトオブスリー! 私が相手よ!』

ジノ『おや。中華連邦の時の奴はお相手してくれないのか』

マミ『レディの前で他の女の話? 紳士のすることじゃないわね!』

マスケット銃を召喚し、撃つ。
ブレイズルミナスで弾きながら、ジノは首を傾げた。

ジノ『確かに、おっしゃる通り。しかし不思議な攻撃だな。どこから出した?』

マミ『女性の秘密に踏み込まないのも紳士のたしなみだと思うけれど?』

ジノ『それもそうだ。まさか敵にたしなめられるとは、私もまだまだかな?』

ジノ『お礼に、こちらからも一発!』

メギドハーケンの先端からハドロンスピアーが発射される。

マミ『来たわね……。天愕覇王荷電粒子重砲、発射!』

いつかの太平洋のように、紫と金色の光線が衝突する。

ジノ『おもしろい……!』


杏子『なんだよ、こいつ! 全然攻撃が当たらねぇ!』

ゼロ『どうした、来ないのか? ならばこちらから行くぞ!』

蜃気楼の前腕部からハドロンショットが撃ち出される。
オフィーリアはそれをブレイズルミナスで防ぎつつ一度後退する。
そこへ……。

アーニャ『どいて、杏子』

ゼロ『っ!』

モルドレットが現れ、絶対守護領域ごと蜃気楼を鷲掴みにして押し出す。

杏子『なっ! あたしの獲物!』

ジノ『杏子。ゼロはアーニャに任せるんだ』

杏子『くっ……』


アーニャ『あなたのシールドが上か、私のシュタルクハドロンが上か』

ギュォン!

ゼロ『くっ……!』

シュタルクハドロンと絶対守護領域の衝突は数秒間拮抗するが、突如アーニャの異変によって幕が降りる。

アーニャ『こんな……時に……!』

ゼロ『なんだ……? っ!?』

しかしゼロが気を反らした一瞬に、蜃気楼の四肢が拘束される。

ルキアーノ『ゼロぉ、ブラックリベリオンは失敗に終わる定めだったようだな』

ゼロ『またラウンズか……!』

ルキアーノ『教えよう。大事なものとはなんだ? それは命だ』

ルキアーノ『硬いだけのナイトメアフレームなど』

ナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリーのパーシヴァルがブレイズルミナスを展開したクローを絶対守護領域に突き立てる。

ゼロ『くっ……! 先ほどのシュタルクハドロンでエナジーが……』

玉城『おらぁぁぁぁ!!』


ゼロの危機に玉城率いる地上舞台が華麗に参上し、援護をする。

玉城『ゼロを離しやがれ! てめぇらはゼロの親友、この玉城真一郎様が相手に……』

ルキアーノ『ふん』

玉城『うわぁぁぁぁ! くっそー! なんで俺はいつも!』

しかし、ルキアーノのハドロンショットの前にあっけなく蹴散らされる。

ほむら『下がってなさい、玉城!』

ルキアーノが玉城に気をとられた瞬間に、ホムリリィが回転刃刀を手に突撃する。

ルキアーノ『次々と生け贄が……! やっぱり戦場はいい!!』

回転刃刀をクローで受け止め、ルキアーノはほむらに問いかける。

ルキアーノ『お前の大事なものはなんだ? そう、それはいの……』

ほむら『まどかよ!』

ルキアーノ『な、なに!?』


ほむらの予想外の返答にルキアーノは油断してしまう。
その隙を逃さず、ホムリリィはクローを上に弾き、さらに攻撃を繰り出す。

ルキアーノ『ちぃっ!!』

それをパーシヴァルは左手のミサイルシールドで防ぐ。
そしてハドロンショットでホムリリィをなんとか後退させた。

ゼロ(よし、今なら!)

パーシヴァルがホムリリィに苦戦しているのを見てゼロは拡散構造相転移砲を撃とうとする。
だが。

ルキアーノ『待っていたよ、ゼロ。攻撃する瞬間にはシールドを張れまい』

ルキアーノ『さぁ、お前の大事なものを飛び散らせろぉ!』

ほむら『くっ……! ゼロ!!』


思わず目を反らしてしまったほむらだが、いつまでも爆発音がしないのを不審に思って前を見た。
その時ほむらが見たのは、日輪を背負うが如く神々しい真紅の機体だった。

カレン『ゼロ! 親衛隊隊長紅月カレン、ただいまをもって戦線に復帰しました!!』

ほむら『カレンさん……』

カレン『ありがとう、ほむらちゃん。ゼロを守ってくれて』

ほむら『え、えぇ……。あなたも無事でよかった……』

そこからの紅蓮はすさまじかった。
紅蓮聖天八極式として戦線に復帰した紅蓮とカレンは、パーシヴァルの武装を悉く破壊し、輻射波動で爆散させてしまった。

ほむら『すごい……』

スザク『カレン、退くんだ!』

ジノ『カレン、やっぱりシュタットフェルトの名前より紅月を選んだ訳か』

カレン『えぇ。だからジノ、戦場で会えたことを喜ぶべきかしら。悲しむべきかしら』

ジノ『そうだな……。楽しむべきってのはどうだい?』

ジノ『スザク! カレンとの決着は残しておいてくれよ!』

カレン『だってさ、スザク』

スザク『……すまない、ジノ。そんな余裕が許される相手じゃなさそうだ』


ランスロットと紅蓮の攻防に、その場にいた者は目を奪われる。
いや、攻防というよりは、それはすでに蹂躙であった。

スザク『ち、違いすぎる……。マシンポテンシャルが……!』

ニーナ『F.L.E.I.J.A.を使ってよスザク!! あなたも助かるのに!!』

スザク『ダメだ、これは……あくまで脅し。使ってしまったら……。っ!! 勝てない……!』

右腕を残し、肢体を破壊つくされたランスロットはもはや紅蓮の輻射波動を防ぐ術はない。
紅蓮の右腕が迫るのを見て、スザクは思う。

スザク(そうか、ここで死ぬことが償いなんだ……。受け入れるしかない……。ここで、俺は……)


ゼロ『生きろ!!』


スザク『俺は……、生きる!』


ルルーシュ『……ロロ』

ロロ『兄さん……?』

ルルーシュ『ナナリーと……話をさせてくれないか? 咲世子と繋がらなくってさ……』

ロロ『……兄さん、間に合わなかったんだ。ナナリーはあの光の中に……』

ルルーシュ『そんなことを聞いてるんじゃないんだ。ナナリーと話したいだけなんだ……』

ロロ『でも、ナナリーは死んだんだ。死んだんだよ、兄さん』

ルルーシュ『嘘をつくなぁぁぁっ!!』

ルルーシュ『なぁ……、ロロ。ほんの少しでいいんだ、ナナリーと話をさせてくれ……』

ほむら(ひどい……。何が起こったの……?)

マミ(トウキョウが一瞬で……?)

杏子(F.L.E.I.J.A.……。これほどかよ……っ!!)

さやか(スザクさんがこれを……? そんな……)

その日、ナナリー総督がいたであろうブリタニア政庁を含め、トウキョウ租界が完全に消し飛んだ。
F.L.E.I.J.A.という、新たな脅威によって。


今日はこの辺りで

上で話が出ていましたが、やはりトリップはつけた方がいいのでしょうか


斑鳩

まどか「ほむらちゃん! マミさん!」

ほむら「まどか……」

まどか「よかっ……、よかった……。私、あの光が見えたときから怖くて、ずっと、怖くて……」

まどか「無事で、よかった……っ」

マミ「千葉さんがいち早く気づいてくれたから逃げられたの……」

ほむら「心配かけて、しまったわね」

まどか「そうだよ……! 心配したよ!」

まどか「……私、二人の邪魔はしないでおこうって思ってた」

まどか「でももう、ダメだよ……。やめようよ……」

まどか「もういいから……。私のためにブリタニアと戦うなんて、やめてよ」

まどか「私、ほむらちゃんまでいなくなったら、耐えられない」

ほむら「あ……」

まどか「マミさんも、あんな桁外れの爆弾があるなら何もできないじゃないですか……」

まどか「あんなの、誰も止められませんよ……」

マミ「そう、よね……」

マミ「私もね……、さっきから震えが止まらないの……」

マミ「怖い……!」


まどか「見滝原に帰ろう……?」

ほむら「このタイミングで抜けても、誰も文句は言わないでしょうね……」

マミ「みんなは……、ゼロはどうするのかしら」

ほむら「……ゼロももう戦えないかもしれないわよ」

ほむら「マミも聞いたでしょう。ゼロの叫び」

マミ「『全軍でナナリーを探し出すんだ!』……。聞いててこっちの胸も痛くなるようだったわ」

ほむら「事情を知っている私たちは、ね」

マミ「あれで信用を落とすようなことがなければいいんだけど……」

まどか「どうなっちゃうのかな、これから……」


ドォォォォン!

まどか「きゃあっ!」

マミ「な、なに!?」

『蜃気楼が鹵獲された! 戦闘可能な部隊は追跡して撃ち落とせ!』

ほむら「蜃気楼が……!」バッ

まどか「ダメぇ! ほむらちゃん行かないで!!」

ほむら「……っ」

マミ「暁美さん、もう、やめておきましょう……」

マミ「私たちがいなくても、ゼロならきっとすぐ……」

藤堂「ゼロは……もういない」

ほむら「!」


ほむら「藤堂さん……。どういうことですか」

藤堂「ゼロは我々を裏切っていた。今しがた、ブリタニアの第二皇子が来てゼロの正体を明かしてみせてくれたよ。奇跡の男などではなくただのペテン師だ、とな」

ほむら「……それで、敵の言うことをはいそうですかと信じた訳ですか」

藤堂「ゼロ本人からの言質もとった」

ほむら「今ペテン師と断じた人間の言葉を、ずいぶんあっさり信じるんですね」

藤堂「……何が言いたい」

ほむら「藤堂さんはもっと思慮深い方だと思ってましたよ」

藤堂「……」


扇「藤堂将軍、言ってやったらどうですか」

藤堂「扇……」

扇「ゼロは行政特区日本での虐殺事件の真犯人だ、と」

まどか「え……?」

藤堂「おい、扇! 鹿目はあの事件の……!」

扇「なら、尚更知っておくべきじゃないんですか」

マミ「真犯人って……、あの時日本人を虐殺したのはユーフェミアたちじゃないですか!」

扇「彼は相手に命令を強制させるギアスという力を使って、ユーフェミアに虐殺を命じた」

扇「実行犯がユーフェミアなら、ゼロ……いや、ルルーシュは首謀者という訳だ」

まどか「そん、な……」


ほむら「待って。仮にそんなことができたとして、証拠はあるんですか」

扇「シュナイゼルは彼がユーフェミアにギアスをかけたことを認めた瞬間の音声を録音を用意していた」

ほむら「またシュナイゼル。あなたたちは今まで導いてくれたゼロじゃなく敵対してきた人を信じるのね」

ほむら「音声なんていくらでも偽造できるでしょうに」

扇「ちっ……。子どもに何が分かる!」

ほむら「少なくとも、あなたたちが短慮だってことはわかるわ」

扇「もういい! 行きましょう、藤堂将軍。ラクシャータにも説明しなければいけません」

ほむら「待ちなさい!」

藤堂「……すまない」

まどか「ゼロが……お母さんを……?」


ほむら「以前、ゼロはギアスを持っていないと言っていたけれど……」

まどか「……V.V.は、ゼロも持ってるって言ってた」

ほむら「V.V.が?」

まどか「なんのギアスかは言ってなかったけど……」

マミ「待って、待って! ギアスって何!?」

ほむら「あぁ、ごめんなさい。魔法少女とはまた別の超能力みたいなものよ」

マミ「そんな力が……」

まどか「V.V.が言うには魔法少女とギアスは同じものなんだって」

ほむら「……まぁ、今はそれはいいわ」

ほむら「私は体感時間を止めるギアスを知っているわ。そんなことができるんですもの、命令に従わせるくらいなら可能かもしれない」

ほむら「でも、だからといってそれが即虐殺犯に繋がる訳じゃ……」

まどか「……わからないよ。もう、何が正しいのかわからない……」

ほむら「まどか……」

まどか「ごめん……!」ダッ

ほむら「まどか!」

マミ「今は、そっとしてあげましょう? 一人で考える時間も必要だわ」

ほむら「……」


アヴァロン

ジノ「本気でスザクに皇帝陛下を暗殺させるおつもりですか」

シュナイゼル「ジノ、君は今のままでいいというのかい?」

さやか「ね、ねぇ……。なんでジノさんが捕まってるの……?」ヒソヒソ

杏子「わかんねぇよ。スザクも帰ってきたと思ったらまたどっか行っちまったみたいだし……。何がどうなってやがるんだ」ヒソヒソ

セシル「さやか、杏子」

さやか「セシルさん!」

セシル「ちょっと、ついてきてもらえる?」


さやか「ここって、ナイトメアの……」

ロイド「はぁい、よく来てくれたねぇ。二人とも」

杏子「ロイドまで……。とりあえず、説明をしてくれ」

杏子「なにがおきてるんだ。スザクはどこへ行った?」

セシル「枢木卿は神根島へ……。皇帝陛下を暗殺しに」

さやか「暗殺……!」

杏子「なんでそんなこと!」

ロイド「シュナイゼル殿下はスザク君に皇帝陛下を殺させ、新たな皇帝になるつもりなんだ」

ロイド「つまり、クーデター」

さやか「そんな……!」


セシル「枢木卿……、スザク君にこれ以上重い十字架を背負わせる訳にはいかない」

ロイド「だから君たちが、彼を止めてくれないか」

杏子「なに……?」

ロイド「今このナイトメアフレーム用のカタパルト周辺には僕たちしかいない」

ロイド「今しかないんだ。殿下に気づかれる前に、君たちを送り出せるのは」

さやか「でも、そんなことしたら……」

セシル「そうね……。私たちもヴァインベルグ卿のように捕らえられてしまうかもしれない」

ロイド「でも大丈夫、スザク君の機体を整備できるのは僕たちしかいないからさ」

杏子「殺される心配はねぇ、って訳か」

ロイド「そぉいうこと」


さやか「分かりました。行きます……! あたしも、スザクさんと改めて話をしたかったんです」

杏子「あぁ。あの野郎、一発ぶん殴って目ぇ覚まさせてやらないと」

セシル「……ごめんなさい。ありがとう」

ロイド「それじゃ、早く早く!」

さやか「はい!」


「シュナイゼル殿下!」

シュナイゼル「騒がしいようだね。何事かな?」

「ご報告が。先ほどキャメロットのロイド・アスプルンドとセシル・クルーミーが無断でナイトメアを二機、出撃させたようです。行き先は、恐らく神根島かと……」

シュナイゼル「ほう。彼らが……」

「追跡隊を今……」

シュナイゼル「いや、いいよ。スザク君の意志は固い。今さら女の子二人が向かったところで意味はないさ」

「イエス、ユアハイネス」

シュナイゼル「……わかっていたさ、ロイド。でも、もう遅い」


斑鳩

まどか「……」

まどか(ゼロがお母さんを……? でも、それもまだ確証は……)

C.C.「まどか……?」

まどか「あ……。しーちゃん」

C.C.「どこか、痛いの……? 手の届かないところなら私が……」

まどか「ううん、大丈夫……。ごめんね、心配かけちゃった?」

C.C.「そう……。あの、私にできることならなんでもするから!」

C.C.「だって、私たちは友達……」

アーニャ「C.C.! 久しぶりね!」

C.C.「ひっ……」

アーニャ「ちょっと、C.C.?」

まどか「や、やめて! しーちゃんにひどいことしないで!」

アーニャ「しーちゃん? あ、まさかあなたまた……!」

C.C.「ごめんなさい……!」


……………………
………………
…………

C.C.「……お前ぐらいだな。この私をいつもひっかき回そうとするのは」

まどか「え……? しーちゃん?」

C.C.「もうしーちゃんではない。今、彼女に記憶を戻されたからな」

まどか「しーちゃん……?」

アーニャ「あ、もしかしてあなた、鹿目まどか?」

まどか「えっ、あ、はい……。あの、どうして……?」

アーニャ「あら、私ったらすごいラッキー! あなたも、ちょっと一緒に来てくれない?」

まどか「一緒にって、ちょっと待ってください! どこへ……!」

C.C.「待ってくれ。せめてチーズくんだけは……」

アーニャ「もう、仕方ないわね。早く取ってらっしゃい」

まどか「え? えぇ!?」


神根島

ブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアがいるこの島に、二人の少年が、同じ目的で来ていた。
ルルーシュはギアスを駆使し、シャルルの護衛で来ていたブリタニア軍を翻弄する。
スザクはナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインと剣を交えていた。
全てはシャルルを殺すために。

スザク(ルルーシュ! それは僕の十字架だ……!)

だが、ルルーシュがブリタニア軍に反乱を起こさせていると察して、スザクはそれを止めようとビスマルクに背を向け走り出す。
その時、ルルーシュに操られたナイトメア部隊がそこを爆撃し、地面が崩れてスザクは崖下へと落下してしまう。

スザク「ぐあっ!」

さやか「スザクさん!?」

杏子「上から落ちてきやがったぞ、こいつ!」

ちょうど神根島に到着しスザクを探していたさやかたちがその下でスザクを受け止めた。

さやか「ケガは……ないみたいだね」

杏子「でも気絶しちまったみたいだな」

さやか「目を覚ますまで待ってようか。下手に動いて見つかったら大変だし」

杏子「そうだな……」


……………………
………………
…………

杏子「ん……? しまった、さやか! 隠れろ!」

さやか「え……? な、モルドレッド……!」

スザクの介抱をしていた二人の近くに、モルドレッドが着地する。
スザクを抱えて逃げようとしたが……。

まどか「さやかちゃん! 杏子ちゃん!」

さやか「まどか……? まどか!」

まどか「こんなところで会えるなんて!」

杏子「まどか……。よかった、無事だったんだな……!」

さやか「どれだけ心配したと……! えぇい、さやかちゃんにハグさせろぉ!」

まどか「ごめんね……。ほむらちゃんが助けてくれたから……」

さやか「ほむらが……? そっか……。あいつ、本当にまどかを探してたのか……」

アーニャ「ちょっとー。盛り上がってるところ悪いけど、この子も起きたし行くわよー」

スザク「さやか、杏子! 君たちまで、どうしてここに……」

アーニャ「あーもう、話はあとあと。ルルーシュに会いに行くんでしょ、あなたも」

スザク「……わかった」


斑鳩

ほむら「まどか! まどか、どこ!?」

マミ「そんな、またいなくなるなんて……。テレパシーも届かないし……」

ほむら「くっ……! やっぱり、目を離すべきじゃなかった……!」

QB「困っているようだね」

マミ「キュゥべえ……!」

ほむら「っ! あなた、どの面下げて……! いえ、今はそんなことより、またあなたが拐ったの!?」

QB「今回は僕じゃない。だから君たちにまどかの居場所を伝えておこうと思ってきたんだ」

ほむら「知っているの!? どこ!?」

QB「今彼女は神根島という島にいる。連れていったのはナイトオブシックスだ」

マミ「ラウンズがどうして……」

ほむら「理由は今はどうでもいいわ。私はすぐそこへ向かう」

ほむら「あなたはどうするの、マミ」

マミ「戦うのは、怖いわ……」

マミ「でも、鹿目さんがもっと怖い思いをしているかもしれない」

マミ「助け出さないと……! 行きましょう!」

ほむら「えぇ!」


QB「案内は僕がしよう」

ほむら「……まさか、あなたとホムリリィに乗ることになるとは思わなかったわ」

マミ《行くわよ!》

ほむら《えぇ!》

バシュッ!

藤堂「なに!?」

ディートハルト「ホムリリィとキャンデロロが出撃した!? くそっ! こんな時に何を……!」

扇「止めさせろ! すぐに!」

神楽耶「いえ、その必要はありません」

藤堂「神楽耶様、しかし……」

神楽耶「先ほど、シュナイゼル殿から援軍の要請がありました」

扇「神根島への、ですか」

神楽耶「はい。彼女たちは元はゼロ様の直属だった兵です。ゼロ様がいない今、勝手ながら私が先だって出撃させました」

神楽耶「他の戦闘部隊も、すぐに用意させてください!」

扇「わ、わかりました!」

神楽耶(ほむら、マミ)

神楽耶(何があったのかはわかりませんが、私にできることをさせていただきました)

神楽耶(どうかご武運を!)


神根島

スザク「Cの世界?」

C.C.「既存の言葉で言えば集合無意識。人の心と記憶の集合体、輪廻の海、大いなる意思」

C.C.「神と呼ぶ者もいる」

まどか「神……」

杏子「あたしは親父の職業上、そういう胡散臭いのは信じないんだけどね」

アーニャ「あー、もうダメ。こんなに壊れてちゃ……」

アーニャ「C.C.、お願い」

C.C.「本当に行くのか?」

アーニャ「当然でしょ? 私とあなたを待っているのよ、彼は」


C.C.「はぁ……」

C.C.が手を差しのべ、ルルーシュの母、マリアンヌが乗り移っているアーニャがそれを取る。

アーニャ「あなたも、行きましょ!」

まどか「えっ!?」

思考エレベーターを起動し、Cの世界へと向かう直前、マリアンヌはまどかの手を掴む。
まどかが何が起こったのか理解する暇もなく、二人の意識はCの世界へ飛び立った。
意識を失った二人の体が地面に倒れる前に、スザクとさやかが咄嗟に受け止める。

さやか「まどか!? まどか! どうしたの!?」

C.C.「あいつ、なんで鹿目まどかまで……」

さやか「ねぇ! アンタまどかに何したのよ!」

C.C.「その二人は今、Cの世界にいる」

杏子「Cの世界……」

C.C.「ルルーシュも、あちらにいるはずだ」

スザク「ルルーシュも……」

さやか「あたしも連れていって! まどかを連れ戻さないと……!」

さやか「ほむらが助けたのに、私の前でまどかがいなくなるなんて、あいつに顔向けできない!」

スザク「C.C.、僕も向こうの世界へ送ってくれ。たとえ愚かだと言われても、立ち止まることはできない!」


太平洋上空

ほむら「キュゥべえ、一つ聞きたいことがあるわ」

QB「なんだい?」

ほむら「まどかの家族を殺したのは……、ユーフェミアに虐殺を命じたのは、ゼロなの?」

ほむら「どうせあなたのことだもの。知っているのでしょう?」

QB「その通りだよ。ゼロはユーフェミアにギアスをかけた」

QB「日本人を殺せ、というね」

ほむら「……っ! そう……」

ほむら「なら……、ゼロは私が殺す」

QB「それならちょうどいい。ゼロ、もといルルーシュ・ヴィ・ブリタニアも今神根島にいるからね」

QB「彼は彼で、ブリタニア皇帝を殺害するつもりだ」


ほむら「どうしてブリタニア皇帝が神根島に……」

QB「どうして……か。ねぇ、暁美ほむら」

QB「君は、集合無意識というものを知っているかい?」

ほむら「聞いたことくらいはあるけれど……」

QB「まぁ、そうだろうね。中学生程度の知識では知らなくても仕方ない」

ほむら「いちいち癪にさわる言い方するわね」

QB「集合無意識、学術的な言い方だと集合的無意識、普遍的無意識と言ったりもするんだけれど」

QB「群衆や民族、もっと言えば人類全体に共通したイメージや価値観のことを言うんだ。世界中の神話や祭事に共通点が見られるのはこれの影響だと言われている」

QB「だけどそれは本当にあくまで学術的な意味にすぎない」

QB「実際の集合無意識にはイメージだけじゃない、過去を含めた全人類の記憶や感情、意思が蓄積されている」


ほむら「それがブリタニア皇帝にどう関係があるというの?」

QB「ブリタニア皇帝は神根島で、Cの世界と呼ばれる人間の思考世界に干渉し、全人類の意識を集合無意識と一体化しようとしているんだ」

ほむら「つまり……、意識の共有?」

QB「簡単に言うとそうだね。誰でも全人類一人一人の思考や感情を共有できる。その状態はやがて、自己と他者の境界を曖昧にし、そして最後には一つの思念体が残る」

ほむら「人類がたった一人に集約されてしまうということ……?」

QB「そう。けれどそれは言うなれば究極の淘汰、つまりは進化だ」

QB「これこそがブリタニア皇帝の計画、ラグナレクの接続」

QB「おめでとう。君たちは三人の人間によって、僕らの仲間入りをする訳だ」

ほむら「仲間入りって……まさか」

QB「そのまさかだよ」

QB「僕たち、インキュベーターはかつてラグナレクの接続を成し遂げ、一つの思念体へと進化した存在なのさ」


黄昏の間

ルルーシュは知った。
父の野望を。
母の真意を。
ブリタニア皇帝は集合無意識、神を殺し、嘘も欺瞞もない死者も生者もないありのままの世界を創ろうとしていた。
それが、ラグナレクの接続。
ルルーシュの反逆は全て、C.C.のコードをシャルルの元へ届けさせるために利用されていたのだった。

ルルーシュ「つまり、俺は初めから世界のノイズで、邪魔者で……。ふふっ、どう思う? お前たちは」

C.C.「……気づいていたのか、私が現れると」

ルルーシュ「元に戻っていることもな。必要なんだろう、この計画に」

シャルル「その通り。故に、枢木よ。ここまで追ってきても意味はない」

スザク「でしょうね。あなたはすでに不老不死だと聞きました」

スザク「だから聞きたい。あなたが創ろうとしているこれは……」

シャルル「そう。ナナリーもユーフェミアも望んでいた、優しい世界だ」


さやか(いない……! まどかがいない!)

柱の影に隠れたさやかと杏子はルルーシュたちのやり取りを横目に、まどかを探していた。
だが、その姿は黄昏の間に見当たらなかった。

杏子《まどかは本当にここに連れてこられたのか?》

さやか《C.C.さんの言葉を信じるなら、だけど。でも、まどかがいるって嘘をついて私たちをここに連れてくる意味なんてないでしょ?》

杏子《それもそうだが……》

さやか《まどかは一度あの人たちの仲間に拐われてるらしいし、絶対何かあるはず……》

さやか《だから、まどかに何かある前に見つけ出さないと……!》


シャルルとマリアンヌは未来を見ていなかった。
ラグナレクの接続により死者とも一つになれることを知っていた彼らは、すでにルルーシュとナナリーの生死など気にかけてはいなかったのだ。
ルルーシュはそれを否定する。
押し付けた善意を、悪意だと断じる。

ルルーシュ「お前たちは、俺とナナリーを捨てたんだよ!」

ルルーシュ「未来など見ていないんだ!」

シャルル「未来はラグナレクの接続、その先にある。ナナリーの言った優しい世界は……」

ルルーシュ「違う!!」

ルルーシュ「お前たちが言っているのは自分に優しい世界だ! でも、ナナリーが望んだのは、きっと……他人に優しくなれる世界なんだ!」

シャルル「だとしても、それが何だ。すでにラグナレクの接続は始まっている」

ルルーシュ「どうかな。俺はゼロ。奇跡を起こす男だ」

コンタクトを外し、ギアスを発動させる。

シャルル「ギアスなど儂には通じぬ。他の者にしても……」

ルルーシュ「いいや。もう一人いるじゃないか」

シャルル「ぬぅ……? っ!!」

ルルーシュ「そうだ。Cの世界は人類の意思。そして人は平等ではない。共にお前の言葉だ」

ルルーシュ「平等ではないが故の俺の力を知っているな」

シャルル「愚かなりルルーシュ! 王の力では神には勝てぬ!」

ルルーシュ「勝ち負けじゃない! これは願いだ!」

ルルーシュ「神よ! 集合無意識よ! 時の歩みを止めないでくれ!!」

シャルル「できるはずがない! 神に、人類そのものに!」

ルルーシュ「それでも俺は! 明日が欲しい!!」キィーン!

ルルーシュの両目にギアスの刻印が浮かぶ。
ルルーシュの願いは、神に届いたのだ。
シャルルとマリアンヌが時の歩みを阻む邪魔者だと判断したCの世界は、二人を消し去ることを決めた。

ルルーシュ「お前たちは知っているのか、ナナリーの笑顔の意味を!」

マリアンヌ「笑顔……?」

ルルーシュ「なぜわからないんだ! ナナリーは目も見えず歩くこともできなかった。だから、世の中には自分一人でできないこともあるって知っていたんだよ、ナナリーは! ナナリーの笑顔は、せめてもの感謝の気持ちだったんだ」

シャルル「そのようなごまかしが……」

ルルーシュ「それを嘘だとは言わせない! 言わせてなるものか! お前たち親は、俺とナナリーを捨てたんだよ!!」

シャルル「この賢しき愚か者がぁぁぁ!!」

ルルーシュ「お前の世界は俺が否定する! 消え失せろ!!」


ほむら「……! これは!」

さやか「ほむら……。遅かったね。アンタのことだからまどかの居場所にすぐ現れるもんだと思ってたんだけど」

杏子「というか、よくここまで来れたな」

ほむら「キュゥべえが連れてきてくれたのよ」

マミ「これは何が起こっているの……?」

杏子「よくわかんねぇけど、世界を止めようとした皇帝の計画をあのルルーシュってやつがぶっ壊したんだよ」

ほむら「そう……。ラグナレクの接続は失敗したのね」

QB「……それはどうかな」

シャルル「これで勝ったと、思ったか? ルルーシュよ」

ルルーシュ「っ!?」


ルルーシュたちの背後から、全身を保ったシャルル・ジ・ブリタニアが現れる。
片手には、気を失ったまどかを抱えていた。

ほむら「まどか!」

ルルーシュ「なぜだ……! お前は神に、Cの世界に否定されたはず! なぜ消えていない!?」

QB「あれは僕が彼に用意した予備の体。クローンみたいなものさ」

ルルーシュ「だがシャルル・ジ・ブリタニアは神に敵とみなされた! 皇帝のクローンであるならば同じように消されるはずだろう!」

QB「ただ無策に予備を作る訳ないじゃないか。あの体には魔女の結界を応用した、世界の干渉を弾く結界が張ってある」

さやか「魔女……? なんでここで魔女が出てくるの?」

シャルル「簡単なことよ、魔法少女。魔女が、キュゥべえによって生み出されておるからだ」

マミ「え……?」


杏子「どういうことだよ、おい!」

シャルル「今、実際に見せてやろう」

ほむら「まさか……っ! やめなさい!!」

シャルルは抱えていたまどかの腕を掴み、吊り上げる。
右の手のひらに刻まれたコードの刻印が光り始めたとき、変化は訪れた。

まどか「がっ……! あああああああああ!!!」

突如まどかが苦痛の声を上げる。
C.C.が式根島でスザクに使ったショックイメージと同様のものを、まどかは今シャルルから受けているのだ。

ルルーシュ「やめろ! その子は何の関係もないだろう!」

シャルル「関係がない? 違うなぁ、間違っておる!」

シャルル「鹿目まどか、この小娘こそ! 第二のアーカーシャの剣よ!」

ルルーシュ「何……!?」

シャルル「魔法少女とは、キュゥべえが宇宙のエネルギー不足を解消するために作り出したシステム」

シャルル「第二次性長期の少女に希望を与え、その希望が絶望へと変わる瞬間に発生する感情エネルギーを得ることこそがキュゥべえの真の目的よ」

シャルル「そして、絶望した魔法少女の成れの果てが……」

杏子「魔女……?」

さやか「そんな……、あたしたちもいつか魔女に……?」

マミ「嘘よ……! そんな訳……」

QB「事実だよ。君たちの魂をソウルジェムに変え、魔女になるとき生み出す感情エネルギーを回収するのが僕の使命だ」


シャルル「儂はこのCの世界で自分の記憶を眺めておるとき、あることに気づいた」

シャルル「特定の1ヶ月の記憶が複数あるということに」

シャルル「調べてみれば他の人間の記憶も重複しておった」

シャルル「異なことよ。儂はその謎を解き明かそうとした。その矢先よ、キュゥべえが儂の前に現れたのは」

シャルル「そして暁美ほむら、貴様の存在を知り、合点がいった。貴様の時を巻き戻す魔法が原因だとな」

ほむら「……っ!」

シャルル「暁美ほむら、貴様のその1ヶ月の記憶は全て違っており、だがほぼ全て同じ結末を迎えておった」

シャルル「鹿目まどかの魔女化という結末をなぁ」

QB「鹿目まどか。彼女がなるであろう魔女は救済の魔女。その性質は慈悲。この星の全ての生命を強制的に吸い上げ彼女の作った新しい天国へと導いていく」

QB「その名を、クリームヒルト・グレートヒェン」

シャルル「その天国こそ! 嘘偽りのない、優しい世界よ!」


シャルル「そろそろ絶望に染まりきる時間よ」

まどか「タツヤ……。パパ……! ママぁ! あああああああああ!!!」

ほむら「そんな……、私の魔法のせいでまどかが……?」

ほむら「せっかく……、せっかくワルプルギスの夜を乗り越えたのに……」

さやか「魔女になるなんて……。何が正義の味方だよ……。あたし、悪者になっちゃうんじゃん……」

マミ「キュゥべえは私を騙していたの……? 友達だと、思ってたのに……!」

杏子「はっ……! 結局親父が正しかった訳だ……。あたしは、人を惑わす魔女……なんだ」

まどかだけでなく、ほむらたちのソウルジェムもみるみる絶望に染まっていく。

QB「鹿目まどかのエネルギーを回収させてくれるというからブリタニア皇帝に協力していたけれど、これは思わぬ収穫だ。一度に五人分を回収できるなんて」

シャルル「さぁ! 今度こそ新しい世界が始まる!」

パリーン!


ルルーシュ「絶望……? 魔女化だと? 俺たちを捨てただけでなく、こんな少女たちをも貶めようというのか!」

ルルーシュ「ふざけるな!!」

ルルーシュ「お前の世界は俺が否定する! こっちを見ろ! 魔法少女!!」

シャルル「無駄よ。魔法少女の魔力耐性にはギアスではかなわぬ」

ルルーシュ「言ったはずだ! 勝ち負けではない、これは願いだと!」

ルルーシュ「お前たちの祈りを、絶望で終わらせたりはしない! お前たちは誰も呪わない、祟らない! 憎しみは全て俺が受け止める!」

ルルーシュ「だから頼む! 最後まで自分を信じてくれ!」

ルルーシュ「希望を、捨てないでくれ!!」キィーン!

ルルーシュの言葉が、まどかに、ほむらに、さやかに、マミに、杏子に響き渡る。
絶望に満ちた目に、微かな希望が灯る。

シャルル「何ぃぃぃぃぃ!?」

QB「なぜだ……! エネルギーの回収はすでに終わった。彼女たちは一度確かに魔女に変わったはず!」

QB「魔女……? そうか……!」

QB「魔法少女に効かなくとも、魔女にはギアスは通じる。ソウルジェムがグリーフシードに変わるその瞬間にギアスが発動したのか!」


ほむら「あ……、ぐっ……。生き、てる……?」

さやか「なんだろう……。もう何もかもどうでもいいと思ってたはずなのに……」

マミ「心が、温かい……」

杏子「これは……、ソウルジェム? いやグリーフシードか……? 魔力は普通に使えるみたいだが……」

ほむら「っ、まどか!」

シャルルが手を離し、地面に倒れたまどかに駆け寄る。

ほむら「まどか、大丈夫!?」

まどか「あ……。ほむらちゃん……」

ほむら「よかった……!」

まどか「ほむらちゃん、あのね……。タツヤもパパも、ママもいなくなっちゃって、もう私には何も残ってないんだ、って気持ちになったの」

まどか「でも『希望を捨てないでくれ』って声が聞こえて、私にはほむらちゃんやさやかちゃん、マミさんに杏子ちゃんっていう大切な友達がいるんだって、思い出したんだ……」

ほむら「まどか……。ありがとう……!」


ルルーシュ「さぁ、シャルル・ジ・ブリタニア! お前の負けだ!」

シャルル「ぬぅぅぅ! この愚か者がぁ!!」ガシッ

シャルルがルルーシュの首を掴む。

スザク「っ!」チャキッ

ルルーシュ「スザク! 手を出すな!」

ルルーシュ「お前はもう終わりなんだよ!」

シャルル「何……!? 体が、消えていく……! Cの世界に飲み込まれるだと!?」

シャルル「キュゥゥゥゥゥべえぇぇぇぇぇ!!」

QB「魔女にはならなかったけれど、エネルギーは回収できた。僕らの契約はすでに達成された」

QB「だから君の体への結界も解かせてもらうよ。この結界はそれなりにエネルギーを消費しているんだ」

QB「契約が達成されてしまえば、あとは君自身の問題だ」

シャルル「貴様ぁぁぁぁ!」

ルルーシュ「消え失せろ!!」

シャルル「ぬぁぁぁぁぁぁっ!!!」

そして。
キュゥべえの結界は解除され、ブリタニア皇帝は完全に世界から消滅してしまった。


……………………
………………
…………

ルルーシュ「C.C.、お前も逝くのか」

C.C.「死ぬ時くらいは笑って欲しいんだろ?」

ルルーシュ「……」

C.C.「お前たちこそ、これからどうするんだ? シャルルたちの計画を否定し、時の歩みを進めることを選んだ。だが……」

スザク「あぁ……。ルルーシュはユフィの仇だ」チャキッ

ルルーシュ「だから?」

ほむら「まどかの両親の仇でもあるわ」

まどか「……っ!」

ルルーシュ「知っていたのか、お前たちも」

ほむら「扇要の言っていたことは本当なのね?」

ルルーシュ「そうだ。俺がユーフェミアにギアスをかけ、日本人虐殺を命じた」

ほむら「ユーフェミアを庇っているのではなく?」

ルルーシュ「あぁ。ユーフェミアに罪はない。全て俺が起こしたことだ」

ほむら「……っ。なら、ここで……!」


まどか「ほむらちゃん!」

スザク「止めろ! ルルーシュを殺すのは僕だ!」

ルルーシュ「……そうだな。俺を殺すのはスザク、お前だ」

スザク「覚悟を決めたということか? ルルーシュ」

ルルーシュ「覚悟など、とうの昔に決めている」

ほむら「何を勝手なことを……!」

ルルーシュ「暁美。鹿目は、お前の友は、自分のために大事な人が殺人を犯すことを望むと思うのか?」

ほむら「っ! それ、は……」

まどか「嫌だ……。絶対嫌だよ、ほむらちゃん!」

ほむら「でも……! ならこいつを許すというの!?」

まどか「許せないよ……。許せない! 私の家族を……! 宝物を奪った人だもん!」

まどか「助けてもらったって言ったって、そのことは変わらない……!」

まどか「……だけど、だからこそ、そんな人のためにほむらちゃんの手を汚させたくない」


ほむら「もう、汚れているわよ……。とっくに……」

マミ「嘘よ。あなたは黒の騎士団の活動で人を殺してなんかいない」

マミ「ずっと見てたもの。私は知ってる」

C.C.「ギアス嚮団の時も、虐殺には関わっていなかったな」

ほむら「……そんなの、綺麗事よ。あの作戦に参加していた時点で……」

ルルーシュ「お前には鹿目まどか救出というやむを得ない目的があった」

ルルーシュ「それに、俺はスザクに殺されるんだ。無念を晴らすことはできるだろう?」

ほむら「くっ……!」

スザク「それじゃあ、いいんだな、ルルーシュ」

ルルーシュ「まぁ、待て。俺の、俺たちの戦いはまだ終わっていない」

スザク「何……?」


杏子「この期に及んで命乞いかよ」

ルルーシュ「そうじゃない。俺たちの目的はまだ達成されていないはずだ。ナナリーとユフィの望んだ、優しい世界を創るという目的は」

スザク「……創れるというのか。君に」

ルルーシュ「創ってみせる。いや、創らなければならない」

ルルーシュ「それが死ぬ前にできる最後の償いだ」

ルルーシュ「俺は、新たなブリタニア皇帝となり世界を征服しよう」

さやか「世界征服って……、そんなことしてどうして償いになるっていうの! ?」

ルルーシュ「できる限り悪逆で、残酷で、狡猾な方法で世界を手中に納める。そして恐怖政治を敷こう」

ルルーシュ「そうすることで、世界の憎しみは全て俺に向けられるだろう」

ルルーシュ「俺が世界共通の敵となった時。その時スザク、お前が俺を殺せ」

ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという敵を倒した時、世界は協調へと動くはずだ」

スザク「君の死んだ世界……、それこそが」

ルルーシュ「優しい世界、という訳だ」

ルルーシュ「言うなればこれは俺の死を最大限利用するユーフェミアたちへの鎮魂歌」

ルルーシュ「ゼロレクイエムだ」


スザク「……いいだろう。やってみようじゃないか」

スザク「僕と君が力を合わせてできなかったことなんてないしね」

ルルーシュ「君たちはこれで納得してもらえるか?」

まどか「……」

ほむら「私も近くでそれを見届けるわ」

ルルーシュ「それはダメだ」

ほむら「どうして!?」

ルルーシュ「俺の近くにいるということは、君も世界の敵となるということだ。そんなことは、断じて認める訳にはいかない」

ルルーシュ「もちろん、黒の騎士団に戻ることも許さない。これからの戦場は常にF.L.E.I.A.の脅威に晒されることになる」

ルルーシュ「君たちはもう、あんなものに関わってはいけない」

ルルーシュ「帰るんだ、君たちの街へ」

ほむら「……っ!」

マミ「暁美さん……」

杏子「仕方ない……か」

まどか「……」

さやか「まどか……?」

まどか(これで、いいの……?)

まどか(私は、どうしたいの……?)


今日はこの辺りで

一つ訂正です
>>426
× F.L.E.I.A.
○ F.L.E.I.J.A


ミタキハラ

マミ「帰って、きたのね……」

ほむら「久しぶりね、この街も」

杏子「あたしらはたまにこっちにも帰ってきてたけどな」

まどか(でももうここには……)

ほむら「まどか、良かったら……私の家に来る?」

まどか「え……?」

ほむら「一人であのお家に帰るのは辛いでしょうし……」

まどか「それは……そうだけど、でも大丈夫」

まどか「私だけいつまでもくよくよしてる訳にはいかないもん」

ほむら「まどか……」

まどか「だから、大丈夫」

まどか(大丈夫にならないと、ママたちが安心できないよね)

マミ「寂しくなったらいつでも遊びにきてね。私たちは仲間なんだから」

まどか「はい」

ほむら「……」

さやか「……」


ほむら「美樹さや……さやか」

さやか「ん……」

ほむら「あの、私……あなたに言わないといけないことが……」

さやか「ほむら、ごめん!!」

ほむら「え……?」

さやか「あたし、あの時一年もまどかが見つからなくてイライラしてた。それでゼロがまどかを保護したって聞いて頭に血が上ってあんなこと……」

さやか「ほんとごめん!!」

ほむら「そんな……。謝らなければならないのは私の方よ」

ほむら「私も断片的な情報だけであなたがまどかを隠してるって勘違いして……。よく考えればわかったはずなのに」

ほむら「ごめんなさい……。ひどいことも、言ってしまったわ」

さやか「いいんだよ、そんなの」

さやか「……あたしたち似た者同士だね」

ほむら「え?」

さやか「まどかが大事で、こうだって決めたら周りが見えなくなる」

さやか「これからは二人でまどかを支えていこう、一緒に」

ほむら「えぇ。……少し頼りないけれど」

さやか「お、言ったな〜? そんなこと言うやつには、こうだぁ!」コチョコチョ

ほむら「ちょっ、ちょっとさやか! やめ……っ!」


マミ「ふふっ。あの二人はもう大丈夫ね」

杏子「ったく。心配させやがって」

マミ「とりあえずは一件落着なのかしら」

杏子「まだまだ問題は残ってるけどな。まどかのこと、ルルーシュのこと。それから……」

マミ「私たちのソウルジェムのこと」

杏子「本当にソウルジェムなのかも怪しいところだけどな。ほとんどグリーフシードじゃねぇか」

マミ「でもこれから魔力が生まれてるのは確かね」

QB「それはソウルジェムであり、グリーフシードでもある。そして同時に君たちも魔法少女であり、魔女でもある」

マミ「っ!」


杏子「キュゥべえ、てめえ……! 自分から殺されにくるとは見上げた度胸じゃねぇか」

QB「ほむらから聞いてないのかい? 僕を殺しても無駄だよ」

杏子「ちっ……!」

マミ「佐倉さん、気持ちはわかるけど今は抑えて」

QB「マミは分別があって助かるよ」

マミ「黙りなさい。気安く話しかけないで。あなたは必要なことだけ話せばいい」

QB「やれやれ……。ずいぶん態度が違うじゃないか」

マミ「もうあなたは私たちの敵よ。さぁ、教えなさい。私たちは今どういう状態なの?」

QB「どういうも何も、さっき言った通りさ。魔法少女でもあり魔女でもある 」

杏子「だからそれがどういう状態か教えろって言ってんだよ」

QB「……わからない、というのが正直な答えだね」

杏子「はぁ?」

QB「理屈としては恐らく、一度絶望し魔女になった君たちにギアスによって希望、つまり人間としての理性が植え付けられた」

QB「だから君たちは魔女になったにも関わらず魔法少女の姿を保っていられる」

QB「言ってみれば魔女の魔力で魔法少女の魔法を使っているようなものだ。もしかしたら、結界も張れるかもしれないね」

杏子「他人事みたいに言いやがって……」


マミ「……一番大事なことがまだだわ」

マミ「私たちが今後、また魔女になるようなことはあるの?」

QB「……ないだろう。残念だけどね」

杏子「てめえはほんっとに……!」

QB「君たちは彼のギアスで絶対に絶望できない状態になっている。ギアスの継続時間にもよるけれど、君たちの魔女化の可能性はなくなったと考えていいだろう」

QB「まぁ、君たちのエネルギーはすでに回収した。もう一度、なんて欲張ったりはしないさ」

マミ「そう。もういいわ、消えなさい」

QB「……君、なんだかほむらに似てきたね」


杏子「……行ったか。このこと、あいつらには伝えるのか?」

マミ「そうね……。やっぱり知っておくべきだと思うわ」

マミ「キュゥべえも言っていたけど、私たちはもう決して希望を捨てない。こんな現実だってきっと乗り越えられる」

杏子「あぁ……、そうだな」

マミ「でもそれはもう少し先に。今は鹿目さんが元気になるのが先決よ」

杏子「……相変わらずだね、アンタも」


鹿目家

まどか「ただいま……なんて」

まどか(誰もいない……。それはわかってる)

まどか(ママたちはもういない。受け止めなくちゃ、事実を)

まどか(一年間考える時間だけはたくさんあった。ほむらちゃんたちを、そして天国のママたちを安心させるためにも、私は強く生きなくちゃいけない)

まどか(でも……)

まどか「やっぱり、辛いなぁ……」

溢れそうになる涙を堪え、一年ぶりの我が家を眺める。
あの日家を出たときのまま、家はあった。
一面のガラスは暖かい太陽の光を取り込み、いつも知久が掃除していたように埃の一つも見当たらない。

まどか(……あれ?)

まどか(なんでこんなにきれいなんだろう?)

まどか(一年間誰も……)


ガチャッ

まどか(っ!?)

まどか(い、今のってドアの開く音!?)

まどか(ど、どうして……。まさか、泥棒……?)

まどか(どうしよう!? 警察呼んだ方がいいのかな!?)

ヒタッ ヒタッ

まどか(こここ、こっちに来てる!?)

まどか(襲われたらどうしよう……! ってそうだ、私は魔法少女なんだから、いざとなったら……)

まどか(よ、よぉし! 負けるもんか! 私たちの大切な家を守るんだ……!)


ガチャッ

まどか「だ、誰ですか!?」

「鹿目……さん?」

まどか「え……?」

家に入ってきた人物、それは泥棒などではなく、まどかもよく知る人物だった。

まどか「早乙女先生?」

和子「鹿目さん!」ダキッ

まどか「うわっぷ! 先生……?」

和子「やっぱり! やっぱり生きてた!」

和子「夢じゃない……! あぁ……!」ギュウッ

まどか「せ、先生、ちょっと苦しいです……」

和子「え? あ、ごめんなさい! つい嬉しくて……」

まどか「いえ、いいんです……」

和子「あぁ、でも本当に良かった……! いつ、帰ってきたの?」

まどか「ほんのちょっと前です。嵐のあと行方不明になってたほむらちゃんやマミさんも一緒に」

和子「そう、あの子たちも無事で……。あぁ……、奇跡みたい!」


まどか「早乙女先生はどうしてここに……?」

和子「……詢子にね、よく言われてたの。『もし私らに何かあったらまどかやタツヤのこと、よろしく頼む』って……」

和子「タツヤ君はいなくなっちゃったけど、あなただけでも生きてる可能性があるなら……って思って。家が荒れてたら帰ってきたとき余計辛くなるだろうから……」

まどか「先生……」

和子「鹿目さんは詢子たちのこと、もう受け止められた?」

まどか「それは……」

和子「無理なんてしちゃダメ。私だって、まだ詢子がいないなんて信じられないんだもの……。あなたたちくらいの子ならなおさら」

和子「辛いときは辛いって言っていいの。みんなきっとあなたを支えてくらるから」

まどか「あ……」


マミ『一緒にいてあげることはできるから』


まどか(そっか……。頼っていいんだ……)


和子「私、これからもこのお家に来ていいかしら?」

まどか「いいんですか……?」

和子「今後のことが決まるまではせめて、ね?」

まどか「ありがとうございます……」

和子「私だってどうせ独り身だもの。遠慮しないでね」

まどか「……あ、でも三十過ぎでさらにこぶ付きなんていよいよ貰い手が」

和子「か・な・め・さ・ん?」

まどか「え、えっと、なんでもないです……」


まどか「そういえば、先生はどうしてミタキハラに残ったんですか?」

和子「うーん……。理由はいろいろあるけど、やっぱりここを離れたくなかったからかしら」

まどか「ミタキハラを?」

和子「えぇ。行政特区日本に参加したら特区内に住まなきゃいけないでしょう?」

和子「生徒たちの中にもこっちに残る人は結構いたから、教師の私が離れる訳にはいかないかなって」

まどか「さやかちゃんとか、ですよね」

和子「そうね。美樹さんは上條君が残るからって理由だったらしいけど。ふふっ」

まどか(仁美ちゃんも似たようなこと言ってたっけ)

和子「だから私はあの事件に巻き込まれずにすんだの。詢子は『あのユーフェミアってやつは信用できる。私が言うんだから間違いない』、なんて言ってたわね……」

和子「詢子が人を見誤るなんてめったになかったのに……。どうしてこういう時に限って……」

まどか(違うんです……。ママの目は間違ってなかったんですよ……?)


一ヶ月後

杏子「あいつ、マジで皇帝になっちまいやがったな」

マミ「そうね……」

まどか「……本当に死ぬつもり、なのかな」

さやか「まどかはゼロ……ルルーシュに死んでほしくないの?」

まどか「どう、なんだろ。わからない……」

まどか「でも、死んで償える罪なんてない……と私は思う」

さやか「そっかぁ。あたしには難しすぎてわっかんないなぁ」

さやか「ほむらはどう思ってんの」

ほむら「……私は今でも憎い」

ほむら「だけどそれはまどかの家族をあの男に殺されたも同然だから……」

ほむら「まどかがあいつの死を望まないなら、私がとやかく言う資格はないわ」

まどか(私はあの人に死んでほしくないの……? でもあの人はママたちを……)

まどか(いや、だからこそ……なのかな。ママたちの仇だからこそ、死なんて曖昧な贖罪ですませてほしくない)

まどか(そう、なのかな……)


今回はこの辺りで

本当はもう少し進めたかったのですが……
私の実力が及ばないせいで申し訳ありません


鹿目家

和子「はぁ……。今日も疲れたー……」

まどか「お疲れ様、早乙女先生。お酒飲みますか?」

和子「お願いするわ」

まどか「……ねぇ、先生?」

和子「どうしたの?」

まどか「もし、ママの仇を討てるって言われたら、先生はどうしてた?」

和子「仇? 物騒ね……」

和子「でも、そうねぇ。私は仇なんてとても……」

和子「……ただ、ユーフェミアにはせめて一言、謝ってもらいたかったかしら」

まどか「謝る……?」

和子「えぇ。誠心誠意謝罪して、できればその後ちゃんと行動で示してほしかった」

和子「あの後すぐ殺されたから……」

和子「まぁ、虐殺なんて恐ろしいことを考える人に反省しろだなんて、無理な話かもしれないけどね」

まどか「謝罪……」

まどか(そうだ……。私まだ、あの人に謝ってもらってない)

まどか(ちゃんとママたちのこと、謝らせたい……!)


巴家

さやか「突然話があるなんてどうしたの?」

まどか「うん……。ごめんね、集まってもらって。マミさん、お邪魔してすみません」

マミ「いいのいいの。お茶も淹れたから、ゆっくり話して?」

まどか「ありがとうございます。あの、私……」

まどか「もう一度、ルルーシュさんに会いたい」

杏子「はぁ?」

ほむら「……会って、どうするの?」

まどか「私……ううん、残された人たちに、そして何よりあの日殺された人たちに、ちゃんと謝ってほしい」

ほむら「謝るって……。そんなことで許すっていうの?」

まどか「違うよ。許せる訳ない」

まどか「でも、これはけじめ。謝って、その気持ちをこれからの行動できちんと示す」

まどか「死ぬなんて身勝手な方法じゃなくて、ルルーシュさんにできることすべてをしてほしい」

まどか「できることはまだまだあるはずだから……」


QB「でも彼は今着実に憎しみを集めはじめている。生き残っても殺されるのは時間の問題だと思うよ」

マミ「きゃあっ!」

杏子「てめえこの……!」

さやか「マミさんの家から出てけ!!」

QB「そんなゴキブリみたいに言わなくてもいいじゃないか……」

QB「それに仮に彼が死ぬのを阻止したとして、優しい世界とやらはどうなるんだい?」

QB「世界の敵となりつつある彼にもはや他に方法はないと思うんだけれど」

まどか「……考えは、あるよ」

さやか「考え?」

まどか「ルルーシュさんが殺されなくて、しかも優しい世界に一歩近づく方法」

QB「あるというのかい? そんな理想的な手段が」

まどか「……私のギアスで、世界を包む」


マミ「鹿目さんの……ギアス?」

杏子「ギアスってあの、ルルーシュが使ってた力だろ…… ?」

さやか「まどかもギアスを持ってるの!?」

まどか「うん……。ごめんね、言っておかなきゃって思ってたんだけど……」

まどか「私のギアスは人と人の絆を結ぶギアス。私はこの力で世界中の人々の絆を結びたい」

ほむら「まどか、あなたギアスなんていらないって言っていたでしょう……? 使いたくなんてないんじゃないの?」

まどか「確かに、これは魔法少女を犠牲にして生まれた呪われた力で……、今となっては私の家族を奪った力でもあるけど」

まどか「でも、皮肉にもルルーシュさんがこの力は人を救うこともできるって教えてくれた。私たちを助けることで」

まどか「なら、私はこの力でできることをしたい」

まどか「正義の魔法少女ならより多くの人のために魔法を使うべき……。そうですよね、マミさん」

マミ「……えぇ。そうね」


QB「君のギアスで世界を包む……? なるほど、確かにこれ以上ない効果的な方法かもしれない」

QB「だが机上の空論だ。君は地球がどれだけの大きさか本当にわかっているのかい?」

QB「表面積で言えば五億九百九十四万九千平方キロメートル、東京ドーム約109億個分だ」

ほむら「バカにしてるでしょう。バカにしてるわね?」チャキ

マミ「家の中で銃はやめてちょうだい、暁美さん」

QB「ギアス嚮団での様子を鑑みても君のギアス圏はせいぜい半径1キロメートル」

QB「それでも十分規格外なんだけどね。でも地球を覆うには遠く及ばない」

QB「不可能だよ。人間にできることじゃない」

まどか「キュゥべえ、何を言ってるの? 私たちの状況を一番よくわかってるのはあなただと思うんだけど」

QB「君たちの状況……? なっ!? まさか……!」

まどか「そうだよ。私は人間じゃない。魔法少女の姿をした魔女」

まどか「この魔女の無尽蔵の魔力でギアスを強化するの」


QB「……いや。それでもまだ足りないはずだ。地球を包み込むほどの魔力なんて、ワルプルギスの夜ですら持ち合わせて……」

ほむら「まどかはワルプルギスの夜をはるかに超えるほどの強力な魔女になるのよ。あなたが知らない訳ないでしょう」

まどか「私は一度魔女化したとき、自分がどういう魔女でどういう力を持っているのか理解した」

まどか「救済の魔女は自分の真上に地球と同じ大きさの結界を作り出してそこに人間を吸収する」

まどか「わかる? 私はこの地球と同サイズの結界を作ることができるの」

QB「な……。君は前ブリタニア皇帝と同じことをするつもりかい?」

まどか「同じじゃないよ。私はその結界を作る魔力でギアスを発動させる」

まどか「魔法少女とギアスが同じ力だっていうのなら、できるはずだよね」

QB「理屈は通ってる……のかな。まぁいいさ。君たち人類の問題だ、好きにしてくれ」


杏子「じゃあ、パパッとギアスをかけてさ、平和な世界を創ってやろうぜ」

ほむら「……いえ、まだダメよ」

さやか「どうして?」

ほむら「ルルーシュの側にはギアスキャンセラー、つまりギアスを無効化するギアスを持ったジェレミアがいる。彼をどうにかしない限り、少なくともルルーシュの周囲にいる人物にギアスはかけられないわ」

杏子「なんでもありかよ、ギアスってのは……」

まどか「……ジェレミアさんも、私が説得してみる」

マミ「できるの……?」

まどか「多分、ですけど。あの人も、ルルーシュさんには死んでほしくなんてないはずだから……」

まどか「ねぇ、キュゥべえ。ここからジェレミアさんまでテレパシーで私の声を届けられる?」

QB「僕が中継すれば可能だろう。ギアス能力者は僕の姿を認識できるようだしね。でもそこに僕のメリットは……」

ほむら「できるならやりなさい。あなたのスペアがなくなるまで魔法少女無双してもいいのよ?」

QB「……全く、君たちは本当に野蛮だね」

QB「いいよ、わかった。やるさ。やればいいんだろう」

ほむら「初めからそう言いなさい」


アヴァロン

QB「君がジェレミア・ゴットバルトだね」

ジェレミア「む……? 貴様は確か、いつぞやV.V.と共にいた……」

QB「僕の名前はキュゥべえ。今はただの中継役だ」

ジェレミア「中継とは何のことだ。そもそもどうやってアヴァロンに……」

QB「鹿目まどかが君と話したがっている」

ジェレミア「何……?」

QB「まぁ、ともかく聞いてあげてくれ」

まどか《ジェレミアさん……? 聞こえますか?》

ジェレミア「……!!」


ジェレミア《頭に直接……。そうか、魔法少女の力か》

まどか《はい。今はそこにいるキュゥべえの力も借りてますけど……》

ジェレミア《なるほど、理解した。して、話とはなんだ。私も暇では……》

まどか《ルルーシュさんと、ゼロレクイエムのことです》

ジェレミア《っ! なぜ、君がそれを……》

まどか《ルルーシュさんとスザクさんが実行を決めたとき、近くにいたんです》

ジェレミア《そうか……。では、ゼロレクイエムがどういうものかも知っている訳だな?》

まどか《はい。そして私は、それを止めたいと思っています》

ジェレミア《なんだと……? いくら君といえど、我が君の計画の邪魔立てをするというのなら、容赦はせんぞ》

まどか《ジェレミアさんは……! ジェレミアさんは、それでいいんですか……?》

ジェレミア《……どういう意味だ》

まどか《ルルーシュさんが……、自分の大切な人が死のうとしてるんですよ?》

ジェレミア《陛下が決められたことだ。臣下たる私は王の御意に従うのみ》

ジェレミア《陛下が自ら命をなげうつことで悲願を達せられるのなら、是非もない》


まどか《そんなの……おかしいです》

ジェレミア《わからんよ、子どもには》

まどか《なんで、大切な人の死を願えるんですか……! そんなに忠義が大切なんですか……?》

まどか《ジェレミアさんにとって、ルルーシュさんは死んでもいいような……その程度の存在なんですか!?》

ジェレミア《……ないだろう》

ジェレミア《その程度な訳がないだろう!!》

ジェレミア《ルルーシュ様は皇族であるというだけでも、皇帝であるというだけでもない! もはやマリアンヌ様の代わりでもない!!》

ジェレミア《私が忠義を尽くし、この身が朽ちるまでお守りすると誓った唯一無二の主君だ!》

ジェレミア《それをその程度などと言わせはしない……! 言わせてなるものか!》


まどか《じゃあ……! なんで止めてあげないんですか……》

ジェレミア《あの方は、正しすぎるのだ……》

ジェレミア《あの方の願いはどこまでも正しく、そしてあの方は誰よりも優しい》

ジェレミア《あの方がその願いを叶えるためには、ご自分が犠牲になるしかなかったのだ……》

ジェレミア《私には、ルルーシュ様を救うことは……》

まどか《……なら、間違えばいいんです》

ジェレミア《何……?》

まどか《正しすぎるルルーシュさんの分まで、ジェレミアさんが間違えてあげればいいじゃないですか》

まどか《正しいことだけがハッピーエンドを運んでくれる訳じゃない……。ずるい嘘をついたり、誰かを裏切ったり、でもそれが、後になってみれば正解だってわかるかもしれない》

まどか《……なんて、実はママの受け売りなんですけど》

まどか《ほむらちゃんから聞いちゃったんです。ジェレミアさんは昔、ルルーシュさんのお母さんを守れなかったって……》

まどか《私、もうジェレミアさんには失ってほしくないんです! あんな、悲しい目を……してほしくないんです》

ジェレミア《……あるというのか。我が君を救い、なおかつ優しい世界を創る方法が》

まどか《私の考えを、聞いてください……》


……………………
………………
…………

ジェレミア《ギアスを、世界に……》

まどか《優しい世界は私が必ず創ってみせます。だから、協力していただけませんか?》

ジェレミア《……よもや、私が裏切りを唆されるとはな》

まどか《あう……》

ジェレミア《本当に……、本当にルルーシュ様を救えるのだな?》

まどか《……はい》

ジェレミア《一つ、聞いても構わないか?》

まどか《なんでしょうか?》

ジェレミア《非常に言いにくいのだが……、確か君は行政特区の事件でご家族を亡くしたと記憶している》

ジェレミア《もう知っているだろうが、あの事件はルルーシュ様が引き起こしてしまったものだ。なぜ、そのルルーシュ様をそうまでして救おうとするのだ?》

まどか《……ルルーシュさんは死んで世界を創り変えることが償いだって言ってました》

まどか《でも、死んで償えることなんて、きっとないはずです》

まどか《少なくとも私は謝るっていう一番簡単で、一番大切な償いをしてもらってない》

まどか《ルルーシュさんには自分の罪を背負って、最後まで世界のために尽くしてほしい》

まどか《言ってみれば、これが私の復讐なんです》


ジェレミア《……そうか》

ジェレミア《わかった。協力しよう》

まどか《い、いいんですか!?》

ジェレミア《私も、もう主君を失いたくない……!》

ジェレミア《だが一つ条件……というか、少し待ってもらいたい》

まどか《待つ……?》

ジェレミア《あぁ。君も知っているだろう。我が国の帝都ペンドラゴンにF.L.E.I.J.A.が落とされた》

ジェレミア《もはや問答の余地はない。我々はシュナイゼル率いる旧皇帝派や黒の騎士団と戦うことになるだろう》

ジェレミア《万全を期するために、ギアスキャンセラーの封印は待ってもらいたいのだ》

まどか《最終決戦……という訳ですね》

ジェレミア《そうだ。恐らく、これが最後の戦いとなる》

ジェレミア《決戦後、追って連絡しよう》


巴家

まどか「……という訳みたいなんだけど」

さやか「ほ、ほんとに説得しちゃったの……?」

杏子「すげぇな、まどか……」

マミ「戦いが終わるまで待つ……か」

ほむら「いいえ、待つ必要はないわ」

まどか「え……?」

ほむら「こちらから乗り込んでやりましょう」

さやか「マジで言ってるの……?」

ほむら「大マジよ。この戦争は必ずルルーシュが前線に出てくる。というより、出ざるを得ない」

マミ「今ルルーシュさんがいるのは確か……」

さやか「そうか、日本!」

ほむら「えぇ。超合衆国への参加に関する議会が行われたけれど、交渉は決裂。その最中に帝都の爆撃があったから、彼らはまだ日本に留まっている」

杏子「シュナイゼルってやつはそこを叩くつもり、って訳か」

ほむら「そう。だから、この戦場でなら確実にルルーシュに会える」

まどか「あ……」


ほむら「会いたいのでしょう、まどか。会って、目の前で世界を塗り替えてやりましょう」

まどか「でも、危険すぎるよ! F.L.E.I.J.A.だって……!」

ほむら「それじゃあ、こうしましょう。乗り込むのは勝敗が着いたあと」

ほむら「それなら両者とも戦力は落ちているだろうし、F.L.E.I.J.A.の残弾もそう多くないでしょう」

ほむら「後々各国への抑止力とするなら、私たちに使う余裕なんてないはずよ」

さやか「それでも、撃ってきたら?」

マミ「……私が撃ち落とすわ」

まどか「マミさん!?」

マミ「来るとわかっているなら、私の砲撃で弾頭ごと消し飛ばせる」

マミ「もう誰も傷つけさせたりはしないわ!」

杏子「ははっ! 言うじゃねぇか、マミ」

杏子「いいぜ、あたしはほむらとマミに命を預ける」

さやか「あたしも……二人なら信じられる」


まどか「そんな、ダメだよ! 私のわがままなのに……」

ほむら「まどか、何度も言わせないでちょうだい」

ほむら「私たちは仲間よ」

まどか「……!」

まどか「本当に……いいの?」

マミ「くどいわ、鹿目さん」

まどか「……ありがとう、みんな」

まどか「私と一緒に、戦って!」

杏子「おう!」

さやか「さやかちゃんにどーんと任さない!」

マミ「私たちにとっても、これが最後の戦いね」

ほむら「まどかは私が必ず守るわ!」


今日はこの辺りで

毎度のことながら遅れて申し訳ありません
ついにクライマックスですが、お察しの通り遅筆ですのでまた時間がかかってしまうかもしれません
もちろん全力で書きますが、多少の遅れが出ても目を瞑ってもらえればありがたいです


風見野 教会跡

杏子「人気のない場所って、わざわざ家にしなくても……」

マミ「や、やっぱり辛いわよね!? 場所変える!?」

杏子「……もういいよ」

さやか「んじゃあ、やっちゃってよほむら」

ほむら「……」サッ

ズズンッ

さやか「……いやぁ、相変わらずすごいねぇ」

まどか「ほんとほむらちゃんの盾は何でも入るんだね」

杏子「まさか、ナイトメア四機も収納してたなんてな」

ほむら「前は巡航ミサイルとか大量の地雷なんかも入れてたことがあるし、まだ可愛い方よ」

ほむら「ちなみに、万が一のときのためにエナジーフィラーもいくつか入っているわ」

さやか「うわぁ……」

マミ「じゃあ、エナジーも問題なさそうね」

ほむら「キュゥべえ、今戦況はどうなっているの?」

QB「……君たちは僕を雑用係か何かと勘違いしてないかい?」

QB「ルルーシュがダモクレスに乗り込んだようだよ。シュナイゼルが落とされるのも時間の問題だろう」


ほむら「そう。なら、そろそろ出発した方がよさそうね」

杏子「よっし、では出陣と行きますか」

ほむら「まどか、あなたは私のホムリリィに」

まどか「うん、ありがとう」

マミ「前から思ってたんだけど、ホムリリィって紅蓮とかと同じ前傾姿勢のコックピットよね……?」

マミ「どこに鹿目さんを乗せてるの?」

ほむら「私、ホムリリィの操縦は全部魔法でやってるから操縦桿とか握ってないの。だからスペースはありあまってるのよ」

さやか「なんだと……?」

杏子「あたしたちは必死こいてマニュアル覚えて、それでも足りないとこを魔法で補ってたっての……」

ほむら「キャリアの差よ。……あ、でもさすがにラウンズ相手のときとかはちゃんと操縦してたわね」

さやか「ずっるーい!」

杏子「あたしたちの努力は何だったんだ……!」

QB「君たち行かないのかい? 終わっちゃうよ?」


太平洋

ルルーシュ『私は神聖ブリタニア帝国皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアである』

ルルーシュ『シュナイゼルは我が軍門に下った。これにより、ダモクレスもF.L.E.I.J.A.も、全て私のものとなった』

ルルーシュ『黒の騎士団も私に抵抗する力は残っていまい。それでも抗うというのならば、F.L.E.I.J.A.の力を知ることになるだけだ』

ルルーシュ『我が覇道を阻むものはもはや存在しない! そう、今日この日、この瞬間をもって、世界は我が手に落ちた!』

ルルーシュ『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 世界よ! 我に従え!!』

ジェレミア「オール・ハイル・ルルーシュ!!」

「オール・ハイル・ルルーシュ!!」
「オール・ハイル・ルルーシュ!!」
「オール・ハイル・ルルーシュ!!」

さやか「ちょぉっと待ったぁ!!」

ほむら「あなたの覇道、ここまでよ!」

ルルーシュ「なにっ……!」


「皇帝陛下! ナイトメアが四機、こちらに向かっています!」

ルルーシュ「見ればわかる!」

ルルーシュ(何故だ……! 何故今になって邪魔をする! 魔法少女!)

ルルーシュ『何をしにきた、魔法少女。今さら君たちにできることなど何もない』

ほむら『あら、それはどうかしら』

まどか『たとえ何もできなくても、私はあなたの前に立ちはだかりましたよ。ルルーシュさん』

ルルーシュ『その声……。なるほど、君もいるのか、鹿目まどか』

まどか『はい。あなたと話をしに来ました』

ルルーシュ『はっ! 話だと? 今や世界を手にした私に、君と話すことなどない』

まどか『私たちの前で悪人を演じたって無駄ですよ。私たちはあなたの考えを知ってるんですから』

ルルーシュ『ちっ……』

「陛下……?」

ルルーシュ「……残りの部隊を彼女たちに向かわせろ。容赦はするな!」

「イエス、ユアマジェスティ!」

『全軍、全力で敵機を殲滅せよ! オール・ハイル・ルルーシュ!!』

『『『オール・ハイル・ルルーシュ!!』』』


さやか《わわっ! なんかいっぱい来るよ!》

杏子《問答無用って訳かい》

まどか《……私も、戦うよ!》

ほむら《ちょっ、まどか!?》

コックピットを開き、まどかはホムリリィの肩に立つ。

ほむら《まどか! 危険よ、戻りなさい!》

まどか《ほむらちゃんなら、敵の攻撃全部避けられるでしょ?》

まどか《私が攻撃を手伝うから、ほむらちゃんが私を守って。ね?》

ほむら《……!》

ほむら《わかったわ。私があなたを守る!》

マミ《鹿目さん、ちょっとごめんね》

マミのリボンがまどかの体をホムリリィに固定した。

マミ《これで多少の激しい動きも大丈夫。行きましょう!》

まどか《はい!》


ガレスやウォードの大軍が五人に襲いかかる。

杏子『へっ! 上等、かかってきな!』

まずオフィーリアが先行する。
自前の槍を召喚し、突撃をかけた。

杏子『うらぁ!』

近くのナイトメアから手当たり次第に斬り倒していく。
囲まれたときは四基のハーケンブースターで次々と撃破していった。

杏子『ちっ。思ったより数が多いな』

杏子『いいぜ、お前らまとめて相手してやる。これでも喰らいなぁ!!』

群がるナイトメアたちに無数の槍が襲いかかる。
コックピットをうまく外し、かなりの数のナイトメアを行動不能にしてしまった。

杏子『あたしを倒そうなんざ、十年早いっての!』


さやか『杏子、 なかなかやるじゃん』

さやか『よぉし、あたしも!』

さやかもMVSとサーベルを手に、敵軍につっこんだ。

さやか『みんなまとめて吹き飛ばしてやる!』

全身のブースターで回転斬りを行い、周囲の敵を凪ぎ払う。

さやか『まだまだぁ! スプラッシュスティンガー!!』

大量の剣を投げ、回転斬りを避けたナイトメアに追い討ちをかけた。

杏子《調子よさそうじゃねぇか、さやか》

さやか《もうトーシロなんて言わせないよ》

杏子《ははっ。そうだな》


マミ『もう。久しぶりにナイトメアに乗ったからってはしゃいじゃって』

マミ『華麗に、優雅に。だって私たち、魔法少女ですもの』

『な、なんだあのナイトメアは……!』

『まるで、踊っているかのような……ぐぁぁぁぁ!』

撃つ。撃つ。撃つ。
マスケット銃を、天愕覇王荷電粒子重砲を、撃つ。
戦場を舞うキャンデロロの姿は言うなれば、そう、魔弾の舞踏。

『くっ……! 皇帝陛下のためにぃぃぃぃぃ!!』

激しい弾幕で誰も近づけない中、一機のウォードが決死の特攻をかける。
弾丸の雨をかいくぐり、キャンデロロの目前まで迫る。

マミ『あら、ダンスのお誘い? 光栄だわ』

マミ『でも……、ごめんなさいね。ちょっと離れてもらえる?』

魔力を帯びて黄金に輝く右脚がウォードの胴を捉える。
そのまま、ウォードは大きく後ろに飛ばされてしまった。

『オール・ハイル・ルル……フラれたぁぁぁ! ちくしょぉぉぉぉ!!』


まどか《私たちも。行こう、ほむらちゃん!》

ほむら《……なるほど、手伝うってこういうことだったのね》

ホムリリィの手には、まどかのものと同じ弓が握られていた。

まどか《えへへ。私も皆と戦いたくて、考えてみたの》

まどか《この子に、ホムリリィに私の力を分け与える。だから、一緒に戦おう、ほむらちゃん!》

ほむら《えぇ!》

まどかは自分の弓を構え、弦を引く。
ホムリリィもそれに合わせ、射撃の体勢をとった。

まどほむ『マジカルアロー!!』

光の矢が放たれ、次々とナイトメアを倒していく。
ほむらは、その弓を初めて使った気がしなかった。

ほむら(これならいける……!)

ほむら《一気に片付けるわよ!》

まどか《うん!》


大竜胆

神楽耶「あれは、ほむらとマミ……?」

C.C.「戻ってきたのか。まぁ、あれで終わりと言われて納得しろというのが無理な話だよな……」

神楽耶「C.C.さん、あなた捕まってるんですのよ? 何か言い逃れの一つでもありませんの?」

C.C.「……なぁ、神楽耶。お前、本当はルルーシュの真意に気づいてるんじゃないのか?」

神楽耶「何のことでしょう」

C.C.「とぼけるつもりならそれでいいがな。まどかたちは止めようとしているぞ」

神楽耶「っ!」

C.C.(あいつらは、どこまで考えているんだろうな……)


扇「ホムリリィにキャンデロロ……! あの子たちが助けにきてくれたのか!」

斑鳩を放棄し、新たな本陣である大竜胆に向かっていた扇は、ホムリリィに通信を入れる。

扇「暁美! ありがとう、助けにきてくれたんだな!」

ほむら『助け……? うぬぼれるのも大概にしてくれるかしら』

扇「な、何……?」

ほむら『これは私たちが、私たちのために起こした行動よ。決してあなたたちのためではない』

ほむら『そもそもこの状況は、あの時の、ゼロを切り捨てるというあなたたちの判断が引き起こした展開なのだということを忘れないでちょうだい』

ほむら『確かにあの人は誉められた人間じゃないけれど、だからといってあなたたちが何も考えず被害者面ばかりしているのは正直虫酸が走るわ』

扇「……」

ほむら『……まぁ、何も知らないあなたたちに理解しろというのは酷かしらね』

扇「っ!」

ほむら『ただ、私たちはもうあなたたちとは関係ない。それだけは覚えておくことね』


ルルーシュ(なんだこれは……! 戦略がまるで意味を成さない!)

「ぜ、全滅……。ナイトメア四機相手に全滅しました……」

「た、ただコックピット及びパイロットは全機無傷です……」

ルルーシュ「手加減されているとでもいうのか!」

ルルーシュ「魔法少女……。その危険性は知っていたが、ここまでとは……!」

「陛下! ご指示を!」

ルルーシュ「……F.L.E.I.J.A.だ。F.L.E.I.J.A.を撃て!」

ルルーシュ(使いたくはなかったが……。もはやそのような余裕もない)

ルルーシュ(救った命をこの手で奪うとは。なんとも因果なことだ)

ルルーシュ(すまない、魔法少女)

「F.L.E.I.J.A.、発射用意!!」


ドシュッ!

ダモクレス最下部の砲口からF.L.E.I.J.A.が発射された

さやか《来た……! F.L.E.I.J.A.だ!》

杏子《マジで撃ってきやがった!》

ほむら《マミ!》

まどか《マミさん!》

マミ《えぇ!》

マミ(皆が信じてくれてる……。体が軽い。何も恐れるものはないわ)

キャンデロロの前に、ティロ・フィナーレよりもさらに巨大な砲台が出現する。

マミ『ボンバルダメント!!』

膨大な魔力の込められた砲撃がF.L.E.I.J.A.弾頭を貫いた。

マミ『……さよなら』

ドォォォォン!

臨界状態にあったウランごと、F.L.E.I.J.A.は消滅してしまった。
砲撃は直線上のブレイズルミナスを突き破り、ダモクレスの砲口をも破壊する。

ルルーシュ「なっ……! でたらめだ……!」


ほむら『さて。お話を聞く気にはなったかしら』

ルルーシュ『ぐっ……! いいだろう、聞こうではないか』

ほむら『さぁ、まどか』

まどか『うん』

まどか『ルルーシュさん。私たちはあなたのゼロレクイエムを止めにきました』

ルルーシュ『止めにきた……だと?』

まどか『はい。私は、あなたの考えを認めない』

まどか『死んで償うなんて、そんなの自分の罪から逃げてるだけです!』

ルルーシュ『言ってくれる。ならば、君にできるというのか? 優しい世界を創ることが』

まどか『できます。私の、人と人の絆を結ぶギアスで』

ルルーシュ『君のギアス……?』

まどか『私のギアスで世界を包んで、皆の絆を結ぶ。そして、お互いを思いやって、お互いに優しくなれる世界を創ります!』


ルルーシュ『ギアスによる平和など……! それではシュナイゼルの恐怖による強制的な平和と何も変わらない!』

ルルーシュ『人は、自分たちの意志で! 平和を掴みとるべきなんだ!』

まどか『私はあなたのように人の意志をねじ曲げたりしない! ただ、みんなが仲良くなれるよう背中を押してあげるだけです!』

ルルーシュ『……では君は、家族を奪ったこの俺を許すというのか? のうのうと生き延びることを認めると?』

まどか『のうのうとなんてさせない。あなたには己の罪に一生苛まれながら生きてもらいます』

まどか『知ってますか? 優しい人って罪を責められるより、責められない方が苦痛なんですよ』

まどか『あなたはもう誰にも断罪されない。でも、自分だけは己の罪を意識し、その重さに苦しみ続ける』

まどか『そして、あなたに大切な人を奪われた人たちのためにその身を捧げてもらいます』

ルルーシュ『今さら……俺に何ができるというんだ。何も……』

まどか『何もできないなんて、そんな訳ない。それはあなたがそう思い込んでるだけ』

まどか『まず、みんなにちゃんと謝ってください』


ルルーシュ『謝るだと……? そんな簡単なことが償いになる訳……』

まどか『でもあなたはその簡単なことすらしていない』

ルルーシュ『っ!』

まどか『何が償いになるかなんて問題じゃないんです。償うために何をしていくかが大切なんです』

まどか『死んで償うなんていうのは本当に最後の手段です。あなたにできることはまだまだあるはずだから』

ルルーシュ『ずいぶん簡単に言ってくれるな。俺の罪は償いきれるほど軽いものではない』

まどか『そうですよ。だから、一生苦しんでもらうんです』

まどか『苦しんで、もがいて、世界のために尽くすのがあなたにできる最大の償いです』

まどか『ゼロという奇跡でその罪を誤魔化すことも、悪逆皇帝として死ぬことも許さない』

まどか『もうゼロの仮面は必要ない。あなたにはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして、全ての罪を背負ったまま生きてもらいます』

まどか『これが私の復讐』

まどか『これが私の、ゼロレクイエム』


今回はこの辺りで
お待たせしてばかりで申し訳ありません
できるだけ早く、最後まで書き上げて投下したいと思います


おかしい……
ラストは決まってるしすぐ書き終わるだろうと思ってた自分に小一時間説教したいです

お待たせして本当に申し訳ありません
とりあえず、キリのいいところまで投下します


ダモクレス

ルルーシュ(どうする……! このままではゼロレクイエムを達成することができない……)

ルルーシュ(スザクに……、いや、アルビオンは先ほどの紅蓮との戦闘で破壊されてしまった。いくらスザクでも量産機で魔法少女五人の相手は……)

ルルーシュ(ジェレミア……。そうだ、ジェレミアに!)

ルルーシュ「ジェレミアに通信を繋げ! 今すぐ!」

「それが、サザーランド・ジークはモルドレッドとの戦闘で大破を……」

ルルーシュ「なっ……!」

「……! そのモルドレッドから入電です!」

ルルーシュ「えぇい、敵味方も判断できないのか、アーニャは! 無視しろ!」

「いえ、発信元はモルドレッドですが、相手はジェレミア卿です」

ルルーシュ「何? 繋げ!」


ピピッ

ジェレミア『陛下。陛下より賜ったサザーランド・ジーク、失ってしまい申し訳ありません』

ルルーシュ「よい。それよりよく生き残ってくれた」

ジェレミア『勿体なきお言葉』

ルルーシュ「状況はわかっているな?」

ジェレミア『はっ。魔法少女ですね』

ルルーシュ「あぁ。しかも鹿目まどかはギアスまで持っている」

ルルーシュ「彼女のギアスはゼロレクイエムの障害となる。鹿目がギアスを使う前に、ギアスキャンセラーをかけつつ接近し……殺せ」

ジェレミア『……恐れながら、陛下。そのご命令には従えません』

ルルーシュ「何……!?」

ジェレミアは懐からナイフを取りだし、それを左目に機械の仮面ごと突き刺した。

ルルーシュ「ジェレミア! お前、何を……!」

ジェレミア『陛下! どうか……! どうか生きてください!』

ジェレミア『私は、主君の命に従い主君の望みを叶えることこそが忠義だと信じておりました』

ジェレミア『ですが、私も人間なのです……! あなたを失わずにすむ方法があるのならすがりたい!』

ルルーシュ「俺を裏切るというのか、ジェレミア……!」

ジェレミア『あなたが生きてくださるのなら、私の忠義などいくらでも投げ捨てましょう』

ルルーシュ「……っ! もういい! 通信を切れ!」

「い、イエス、ユアマジェスティ!」


モルドレッド

ジェレミア「……オール・ハイル・ルルーシュ」

アーニャ「あなた、血が……」

ジェレミア「気にせずとも良い。私はそう容易く死にはしない」

ジェレミア「左目もギアスキャンセラーももう使い物にはならないだろうが……、最後に貴公を救えてよかった」

アーニャ「……そう」

ジェレミア「おっと……。鹿目らに知らせておかなければ。また通信を貸してもらってもいいかな?」

アーニャ「好きにして」

ジェレミア「すまない。では……」


ピピッ

ほむら『ラウンズが何の用……って、あなたか』

ジェレミア「あぁ、事情があってな。鹿目はいるか?」

まどか『は、はい!』

ジェレミア「おぉ、鹿目。こうして顔を見て話すのは久方ぶりだな」

まどか『……! ジェレミアさん、その目……!』

ジェレミア「案ずるな。大したことはない」

ジェレミア「この傷は我が最大の汚点となり、だが同時に、最大の誉れともなるだろう」

ジェレミア「主君を救った誉れに……」

ジェレミア「私は私のなすべきことをした。あとは君に全てを託す」

ジェレミア「さぁ、ゆけ。忠義の魔法少女よ」

まどか『はい……!』


ダモクレス

ルルーシュ(くそっ! まさかジェレミアが……!)

ルルーシュ(どうすればいい! どうすれば……!)

バシュッ

ナナリー「お兄様!!」

ルルーシュ「なっ!? ナナリー!? どうやってここへ……!」

その疑問はナナリーの姿を見て解消された。
服はボロボロになり、肘は皮が破け血が滲んでいた。

ルルーシュ「まさか、ここまで這って……?」

ナナリー「はい。命に替えてもお兄様を止めるのが私の使命だと思っていましたから」

ナナリー「……ですが、それもわからなくなってしまいました」

ナナリー「お兄様は、死ぬおつもりだったんですか……?」

ルルーシュ(しまった……! 今の話を聞かれていたのか!)

ルルーシュ「何を……」

ナナリー「もう、嘘はつかないでください!」

ルルーシュ「……っ」


シュナイゼル「ゼロ様、今排除いたします」チャキ

ナナリーを敵とみなしたシュナイゼルが射殺しようとする。

ルルーシュ「っ! 止めろっ! 手を出すな!!」

シュナイゼル「かしこまりました」スッ

ナナリー「お兄様……」

ナナリーは残った力を振り絞って兄の元まで這う。

ナナリー「お兄様、手を……」

傷だらけの手がルルーシュに差しのべられる。
ここでナナリーの手を取れば、今まで必死に隠してきたことが全て水の泡となってしまう。
だが……。

スッ

ナナリー「……!」

ルルーシュ(振り払える訳がないじゃないか……!)

ルルーシュは屈してしました。
一度は乗り越えた最愛の妹に。
まどかの言う生き残れる道を知ってしまったがために。


ナナリー「憎しみの象徴として自らを……。やっぱり、そうだったのですね」

ナナリー「それは、私の歩む道だったのに……」

ルルーシュ「お前に、そんなことさせられるはずがないだろ……!」

ナナリー「……お兄様はずるいです」

ナナリー「私は、お兄様だけでよかったのに……」

ルルーシュ「俺は、世界を壊し、世界を創るつもりだった……」

ルルーシュ「それがどうだ。まだ年端もいかない少女たちに打ち負かされ、断ち切ろうとした妹の手も振り払えない……」

ルルーシュ「俺は、自分が助かる道を選んでしまった……! 俺は、弱いな……」

ルルーシュ「この弱さも、鹿目の言っていた俺の罪の一つなのだろうか……」

ルルーシュ「すまない……。C.C.……、スザク……」

ルルーシュ「ユフィ……っ!」

バシュッ

スザク「……」


超合衆国 大竜胆

扇「……どういうことですか」

神楽耶「言葉通りの意味です」

扇「あのゼロが、平和のために行動してる……? 馬鹿馬鹿しい!」

扇「彼の目的は世界征服ですよ。あの独裁を見てもこれは明らかです」

神楽耶「確かに今の皇帝ルルーシュの行動は悪行そのものです」

神楽耶「ですが、彼がゼロとして本当にブリタニアの打倒……、世界平和のために動いていたのも事実です」

藤堂「確かに、彼のブリタニアへの怒りは本物でした。だが、ゼロにとってあれはゲームだった、と本人も言っております」

扇「そうだ! 俺たちのことだって駒としか……!」

神楽耶「……あなた方は、中華連邦と戦ったときのことを忘れてしまったのですか?」

扇「中華連邦……?」

カレン「……っ!」

神楽耶「彼は……、捕虜となったカレンさんのためにその場で決戦を挑んだんですよ? あの決戦の勝算は、決して高いとは言えなかったはずです。たかが駒のために、そんな危険を犯すとは思えません」

藤堂「……」

扇「そ、それだって、有用な駒を取り戻すための……」

神楽耶「では、あの時ゼロ様がおっしゃった言葉も嘘だと言うのですか!?」

神楽耶「カレンさんへの叫びを、ただの演技だと!?」

扇「ぐっ……」

カレン(そうだ……。あの時ルルーシュは、私に『必ず助けてやる』って言ってくれた……)

カレン(その前にも、一緒にアッシュフォード学園に帰ろうって……)

カレン(君は生きろ、って言ってくれたことだって)

カレン(なんで、忘れてたの……!)


神楽耶「彼が皇帝としてやってきたことや、ギアスを使って行ったことは決して正しいこととは言えません」

神楽耶「しかし! 我々の中に、ギアスをかけられた者が本当におりますか!?」

扇「な……」

藤堂「……それは、確かに私も思っていました」

扇「藤堂将軍……!」

藤堂「シュナイゼルが言っていたギアスをかけられた者の症状は一時的な記憶の欠落……」

藤堂「だが、少なくとも黒の騎士団の中に明らかな異常行動をとった者も、記憶が欠落している者もいない」

扇「現在だって効力が続いているのかもしれない!」

藤堂「それなら、こうしてルルーシュに反抗させているのがそもそもおかしい。それに……」

藤堂「お前は、己の日本を救いたいという想いが! ギアスによる紛い物だと思うのか!」

扇「……!」

神楽耶「ゼロ様は本当に我々のことを駒だと思っていたのでしょうか……?」

扇「じゃあ、F.L.E.I.J.A.のことはどうなんですか……! トウキョウ租界のとき、彼はF.L.E.I.J.A.のことを知っていたと……」

神楽耶「それだって、普通自国の重要な施設や非戦闘員の集まる街のど真ん中であんな殺戮兵器を使うなどと誰が思いますか。警告をはったりと判断した可能性は大いにあります」

神楽耶「それはそれで責任があるとは思いますが、問答無用で追い出す理由にはなりません」

扇「なぜ……! 今になってそんなことを!」

神楽耶「今になって? 私がいない間にゼロ様の追放を決めたのはどなたでしたでしょうか」

扇「……!」

神楽耶「……いえ、これはただの言い訳ですね。私も一度己の想いを捨て、ゼロ様と戦うことを選んだ身」

神楽耶「ですが、ほむらやマミ……。彼女たちを見て、このままではいけないと、思ってしまったものですから」


カレン「神楽耶様……! 私、もう一度ルルーシュに……会ってきます!」

カレン「私やっぱり、ルルーシュの口から、ルルーシュの言葉で、あいつの本心が聞きたい!」

神楽耶「えぇ。行ってきてください。私の分も、彼に……」

カレン「はい!」

バンッ

玉城「待てよ!」

カレン「玉城さん……」

玉城「俺も行くぜ」

扇「玉城、お前まで……!」

玉城「俺はゼロの親友だ。俺があいつを信じてやらなくてどうすんだよ!」

玉城「俺はもう流されねぇ! てめえのダチを信じるかどうかは自分で決める!」

カレン「扇さん、ごめんなさい……」

カレン「今までありがとうございました」

扇「な……」

玉城「よっしゃ、行くぜカレン!」

カレン「ふふっ……。何様よ!」

扇「そんな……。俺が間違ってたっていうのか……! そんなはず……!」


ナイトメア格納庫

ジノ「……カレン」

カレン「ジノ。私、行くよ」

ジノ「行って、どうするんだ」

カレン「話をする。もう嘘はつかせないし、私もつかない」

カレン「私は、ルルーシュが好きだから」

ジノ「そうか……」

ジノ「あーあ……。やっぱりルルーシュ先輩には敵わないか。結構本気だったんだがなぁ」

ジノ「ナイトメアはどうする? 紅蓮は……」

ラクシャータ「暁ならまだ何機か残ってるわよぉ」

カレン「ラクシャータさん!」

ラクシャータ「あたしもさぁ? 扇の言うこと全部信じてた訳じゃないんだよねぇ」

ラクシャータ「ほむらちゃんたちもなんとなく感づいてたみたいだし。ゼロが善人か悪人かは別にしても、あたしはゼロのこと嫌いじゃなかったからさ」

カレン「えぇ!? ラクシャータさんもルルーシュのことを!?」

ラクシャータ「やぁね、違うわよ。面白い男だったってだけよ」

ラクシャータ「だから、あんたは他人なんか気にせず自分のやりたいことをしなさいな」

ラクシャータ「あんたもね、お馬鹿さん」

玉城「うるせぇ! 馬鹿って言うな!」

カレン「それじゃあ、行ってきます!」

玉城「ぜってぇゼロ……いや、ルルーシュの野郎に本音を吐かせてくるからな!」


ほむら《条件は全てクリアされたわ、まどか》

まどか《うん》

ほむら《大丈夫?》

まどか《平気だよ。自分で決めたことだから》

まどか《結界を張るのに少し時間がかかると思うの。だから……》

ほむら《えぇ。その間、何があろうとあなたを守るわ》

まどか《えへへ……。ありがとう》

ほむら《……私は、あなたが救われる世界を求めて戦い続けてきた。でも、結局あなたは自ら世界を変えることを選んだ……》

ほむら《あなたは、強いわね……》

まどか《そんなこと……。みんながいてくれたからだよ》

ほむら《ふふっ……。そうね、ありがとう》

まどか《……じゃあ、始めるよ》

ほむら《えぇ。明日のために》

まどか《明日のために……!》

キィーン!


ダモクレス

スザク「ルルーシュ」

ルルーシュ「スザク……」

スザク「話は聞いていた。君への通信は全部僕にも繋がるようになっていたからね」

ルルーシュ「あぁ……。俺が裏切らないようにな……」

スザク「そして、やはり君はこうして裏切った」

ルルーシュ「……」

スザク「忘れたとは言わせないぞ、あの約束を……!」

スザク「ゼロレクイエムを果たすという約束を!」

スザク「あの子……、鹿目まどかがギアスを持っていたとは迂闊だった」

スザク「ギアスは絶大だ。魔法少女の力をもってすれば、さらに強力なものとなるだろうな」

スザク「本当に全人類の絆が結ばれれば、誰も君を……、人を殺せなくなるかもしれない」

スザク「そうなる前に……!」チャキッ


ドォォォォン!

突如、ダモクレスに衝撃が走る。
ルルーシュたちのいた部屋も大きく揺れ、スザクはバランスを崩し突き立てようとした剣を落としてしまう。

カレン『ルルーシュゥゥゥゥゥ!!』

スザク「カレン……!? まさか、あそこからまた戻ってくるなんて!」

ルルーシュ「巴がブレイズルミナスに開けた穴から入ってきたのか……!」

カレン『ルルーシュ! あなた、何がしたいの!?』

カレン『世界征服なんて嘘なんでしょ!? スザクと、何をしようとしてるの!?』

カレン『私、あなたのことが好き! だから、あなたの本当の気持ちが知りたい!』

カレン『今、あなたのところへ行くから! 私にも教えて!』

カレン『私も、あなたと戦わせて!!』

玉城『てめえの考えなんて俺には分からねぇかもしれねぇ』

玉城『でもな! てめえのことだ、どうせ一人でうじうじ考えて出した答えなんだろ!?』

玉城『一人で全部決めちまうなんて寂しい真似すんなよ!』

玉城『俺に……俺たちにも頼ってくれよ! 俺をお前の本当の親友にさせてくれよ……!』


ルルーシュ「カレン……玉城……」

スザク「きっと、あれはギアスのせいじゃないんだろうね」

スザク「君を本気で慕う者がいたって訳だ……。枢木神社でのことがなければ、君は本当に正義の味方になれたのかもしれないな」

スザク「……でも、もう遅いんだ。僕たちは、生きていてはいけないんだよ」

ルルーシュ「……そう、だな」

ナナリー「お兄様……?」

ルルーシュ「ゼロレクイエムは鹿目たちが成し遂げてくれるだろう……。悔しいが、あの子たちなら大丈夫だと思えてしまう」

ルルーシュ「だからもう思い残すことはないさ。最後にナナリーと話もできた」

ルルーシュ「一度希望を抱いて殺される……。ふふっ……、これくらいの惨めさが俺にはふさわしいのかもしれん」

ルルーシュ「さぁ、殺せ。スザク」

スザク「……あぁ」

剣を拾い、再びルルーシュに向き合うスザク。

スザク「君を殺したあと、僕も死ねればよかったけど……。ギアスキャンセラーが消えた今、それも叶いそうもない」

スザク「鹿目まどかの創る世界を、君の代わりに見届けるよ」

ルルーシュ「あぁ」

ルルーシュ「……すまなかった」

スザク「っ! ……今さら、遅いよ」


その時、ルルーシュたちを温かい風のようなものが包む。

スザク「これは……」

ルルーシュ「鹿目の結界……?」

スザク「始まってしまったという訳か」

スザク「だけど、効果が発揮されるまでにタイムラグがあるようだね」

ルルーシュ「おそらく、結界が完成した瞬間……、つまり世界を覆ったその時に初めて効果が出るのだろう」

スザク「よかったよ。君を殺す時間があって」チャキッ

ナナリー「け、剣を引きなさい! 枢木スザク!」

剣を振るおうとしたスザクに、ナナリーが叫んだ。

ナナリー「引かなければ、今ここで! 私もこの引き金を引いて命を断ちます!」

傷だらけの震える手で、ナナリーは銃口を自らの胸に当てていた。

スザク「ナナリー……! 何を!」

ナナリー「私はお兄様を殺すつもりでここまで来ました。銃はそのために途中で拾ったのですが、役に立ちましたね」

ナナリー「私は本気です、スザクさん。お兄様がいないのならば、この世界に未練はありません」

ルルーシュ「よせ、ナナリー! 俺にはお前が命を懸ける価値なんて……!」

ナナリー「それでも! お兄様は私のお兄様です!」

ルルーシュ「ナナリー……」

スザク「どうして……! どうしてみんな、ルルーシュを庇おうとするんだ!」

スザク「こいつは……! こいつは!」

スザク「ユフィを……っ!」

ナナリー「命を断つことだけが、償いだと考えている間はきっとわかりません」

スザク「ナナリー、君だってルルーシュを殺しにきたと言っていたじゃないか! それは断罪のためじゃないのか!?」

ナナリー「私はお兄様を止めたかっただけです。これ以上罪を犯す前に……」

ナナリー「ですが、お兄様に罪をあがなう意志があるのなら、私はそれを支えたいです」


スザク「それでも僕は、この男が許せないんだ……!」

ナナリー「スザクさん。スザクさんは、ユフィ姉様が虐殺を始めた時殺そうとしましたか?」

スザク「は……? する訳ないだろう!」

ナナリー「なぜですか」

スザク「それは、ルルーシュに無理強いされていたから……!」

ナナリー「スザクさんはそのことを初めは知らなかったはずです。なぜですか」

スザク「……っ」

ナナリー「ユフィ姉様がそんなことする訳ないと思ったからじゃありませんか?」

スザク「そうだ……。だから、ルルーシュの力のことをV.V.から聞いて……」

ナナリー「その時、スザクさんは同じようにお兄様がそんなことする訳ないとは思わなかったのですか?」

スザク「それ、は……」

ナナリー「あれは、お兄様の意志じゃありませんでした」

ルルーシュ「っ! おい、ナナリー! 言うんじゃない!」

ナナリー「嫌です……! お兄様はなぜ全て一人で抱え込もうとするのですか!」

ナナリー「私はもう知ってしまいました。それを、黙ってなんていられません」

ナナリー「スザクさん、あの時お兄様がユフィ姉様にギアスをかけてしまったのは不運な事故だったんです」

スザク「事故だって……?」

ナナリー「ギアスが暴走したんです。ギアスの制御が効かなくなり、その時口にした言葉が命令になってしまった……」

スザク「そんな話……! 今さら言われて信じられる訳ないだろ!」

ナナリー「私が嘘をつく人間に見えますか」

スザク「ぐっ……」

スザク(そうだ。ナナリーはこんな嘘をつく人間でも、つける人間でもない)

スザク(そもそもさっきまで本気で戦争をしていたんだ。そんな嘘をつく理由がない……)

スザク(事実だというのか……?)


スザク「……ルルーシュ。今の話は事実なのか」

ルルーシュ「俺が頷いて、それで信じるのか?」

スザク「っ!」

スザク「だが……! もしそうなら僕はどうしたらいい! 君への怒りだけでここまで来たんだ!」

ルルーシュ「そのまま俺を憎めばいい。俺がユフィを殺したことに変わりはない」

スザク「ルルーシュ……」

ルルーシュ「シュナイゼル!!」

シュナイゼル「はっ」

ゼロに命じられたシュナイゼルが素早くナナリーから銃を奪い取る。

ナナリー「そんな……! ダメ……っ!」

ルルーシュ「さぁ! やれ! スザク!!」

スザク「ルルーシュゥゥゥゥゥ!!」

ダンッ

カレン「させるかぁぁぁぁ!!」


剣を持ったスザクに、間一髪部屋にたどり着いたカレンが飛びかかった。

スザク「なっ!? この……っ!」

スザクはとっさに危機を感知し、カレンに回し蹴りを放つ。
腕でガードするも、カレンの体は大きく吹き飛ばされた。

カレン「きゃあっ!」

玉城「おらぁっ!」

次いで玉城がタックルをしかける。
だがスザクはそれを難なくかわした。

玉城「どわっ!?」

スザク「くそ……っ! どいつもこいつも!」

スザク「ルルーシュ! 覚悟!」

剣を構え、ルルーシュに突進する。
ナナリーは目の前で起こるであろう惨劇に思わず目を背けてしまう。

玉城「言っただろうが……!」

玉城「俺にだって意地があんだよ!!」

ルルーシュとスザクの間に玉城が強引に割り込む。
ルルーシュを貫くはずだった剣は、玉城の右肩に深々と突き刺さった。

スザク「なっ……!」

玉城「へっ……へへっ。捕まえたぜ……、裏切りの騎士さんよ」


QB「いやはや。まさか本当に上手くいくなんてね」

ほむら「失敗すると思ってここまで連れてきた訳? 性格悪いわね」

QB「普通に考えれば、たった四機で疲弊しているとはいえ一国の軍を蹴散らせると思う方がおかしいと思うけどね」

QB「まぁ、この際人類が平和になろうがなるまいが僕には関係ないさ」

QB「どんなに平和になろうとこの星の少女たちから感情の起伏がなくなる訳じゃないからね」

QB「僕はこれからも魔法少女を生み出し続けるだけだ」

ほむら「……そう。気づいてないのね」

QB「ん? なんのことだい?」

まどか《結界が完成するよ、ほむらちゃん!》

ほむら《わかった。今そっちに寄越すわ》

ほむらはホムリリィのコックピットを開く。

QB「どうしたんだい?」

ほむら「あなた、元は集合無意識なのよね?」

QB「元、という言い方が正しいかはわからないけれど、集合無意識が中核にあるのは確かだよ」

ほむら「そう。あなた、Cの世界でゼロがやったことを聞いたかしら?」

QB「時の歩みを止めるな、と集合無意識にギアスを……っ!?」


ほむら「ようやく気づいたのね。お馬鹿さん」

QB(まずい……! 今すぐこの体を放棄して……)

マミ「レガーレ!!」

マミの全力の魔力が込められたリボンがキュゥべえをがんじがらめに縛り付ける。

QB「そんな……まさか!!」

マミ「私の魔法は拘束の魔法……。今、あなたの魂をその体に拘束したわ!」

QB(まずい……! まずいまずいまずい!)

ほむら「その反応なら私の推測は正しかったようね」

ほむら「集合無意識はギアスの影響を受ける……。つまり! まどかのギアスはあなたの端末を通じてインキュベーター本体に届く!」

ほむら「まどか!」

ほむらはキュゥべえを外のまどかめがけて放り投げた。

まどか「おっとっと」

QB「ま、まどか……」

まどか「キュゥべえ。私は、あなたとも絆を結びたい」

まどか「もう人類にひどいことはできないように」

QB「や、やめ……」

まどか「鹿目まどかが紡ぐ……。新たなる、真の絆を!」

キィーン!


ダモクレス

ルルーシュ「……!」

スザク「ギアスが発動した……?」

まどかのギアスが効果を発揮したことを、ルルーシュたちはすぐさま察知する。
一際強く自身の変化を感じたのは、スザクだった。

スザク「は……ははは。これが絆だっていうのか……?」

目の前に憎むべき男がいる。
殺さなければならない男がいるのに、スザクの心はルルーシュを殺すことを是としない。
思いやり、慈しむ対象として見てしまう。
カレン、玉城、シュナイゼルという今まで敵対してきた相手にも愛情が湧いてくる。

スザク「狂ってる……!」

スザク「これじゃ殺せない……! ユフィの仇が討てない!」

スザク「くそっ! くそぉぉぉぉぉ!!」

ルルーシュ(これが、鹿目まどかのギアス……)

ルルーシュ(こんな理不尽な絆を……理想を人に押し付ける。それが、このギアスの本質……!)

ルルーシュ(これが鹿目の望んだ世界なのか!)


今回はこの辺りで

残るはエピローグだけで、それもほぼ半分は書き終わってるので今回よりは早く投下できると思います
……多分。きっと、おそらく

最後までお付き合いいただければ幸いです


書き込もうと思ったその日に繋がらなくなる現象……

とにもかくにもお待たせしました
これが最後の投下です


二ヶ月後

魔女結界

キリカ「織莉子! 早く早く! 久しぶりの獲物なんだから!」

織莉子「え、えぇ。わかってるわ」

織莉子「ちょっと前までは入れ食いのように魔女が出現してたのに、突然パッと減ったわよね……」

キリカ「三ヶ月くらい前からだっけ。でもなんかキュゥべえがグリーフシード持ってきてくれるから浄化には困らなかったね」

織莉子「キュゥべえといえば、あの子もなんだか最近変というか……」

キリカ「……! 織莉子、近いよ!」

織莉子「えぇ!」

二人が魔女のいるであろう部屋に飛び込んだとき、思わぬ光景を目の当たりにした。

ほむら『そっちに行ったわよ!』

マミ『了解! レガーレ・ヴァスタアリア!』

マミ『よし、捕まえた!』

魔女の結界を、二機のナイトメアが縦横無尽に疾走していたのだ。

キリカ「は……?」

織莉子「な、何これ……?」

ほむら『……! マミ、魔法少女がいるわよ』

マミ『え!? もしかして新しく縄張りを張ってた子……?』

キリカ「え、えーと。よくわからないんだけど」

キリカ「キミたちも魔法少女ってことでいいのかな?」

ほむら『そうよ』

織莉子「あなたたちだったのね。ここ最近の魔女を狩っていたのは」

ほむら『狩る、というのは正しくないけれど』

キリカ「なんだ、水くさいじゃないか。同じ魔法少女のよしみ、言ってくれればグリーフシードくらい分けてあげたのに」

ほむら(まさか、あの呉キリカからこんな言葉を聞くとは、ね)

ほむら(まどかのギアスはちゃんと機能している)

ほむら(地球を覆うほどの魔力で行使されたギアスは魔法少女の魔力耐性すら貫いて、文字通り全人類の絆を結んだ)

ほむら(あれから、世界で戦争や紛争はもちろん、些細な揉め事すらめっきり起きなくなった)

ほむら(世界は、平和になった)


キリカ「しかしまさかナイトメアに乗ってる魔法少女がいるとはね」

ほむら「いろいろあったのよ」

マミ「そうだ! 二人ともこれから時間はあるかしら」

マミ「私たちの仲間があと三人いるんだけど、紹介したいの」

マミ「一緒にお茶しましょ?」

織莉子「いいわね。私もお紅茶は好きなの」

マミ「ほんと!? なんだか仲良くなれそう!」

キリカ「五人もいたのか……。道理で魔女が見つからない訳だよ」

ほむら「あなたたちのテリトリーを荒らしたみたいになってごめんなさい。……全く、キュゥべえがいたらこんなことにはならなかったのに」

キリカ「あれ? キミたちのところには来てないのかい?」

キリカ「私たちの前にはよく現れていたよ。どういうつもりか知らないけど、グリーフシードを持ってね」

ほむら「そう……」

ほむら(キュゥべえも変わったということね。私たちの前に姿を見せないのは罪の意識でも芽生えたからかしら)

マミ「じゃあ、私の家へ行きましょう。美國さんのために最高のお茶を用意しないと」

ほむら「コーヒー派でごめんなさいね」

×美國
○美国


巴家

まどか「わー! この街に他の魔法少女がいたんだー」

杏子「まぁ、一年以上フリーみたいなもんだったからな」

キリカ「なんだか照れ臭いね」

さやか「あれ、じゃあもしかしてあたしの後輩?」

織莉子「契約してから一年ほどだから、そうなるのかしら」

さやか「ふむふむ。ならばあたしがいろいろ教えてしんぜよう。何でも聞きたまえ!」

杏子「調子に乗るな、馬鹿」

さやか「あー! 馬鹿とはなんだ馬鹿とは!」

キリカ「キミたちは仲がいいんだね。羨ましいよ」

織莉子「あら。私だけじゃ不満なのね……」ションボリ

キリカ「えぇ!? ち、違うよ織莉子! 織莉子は私にとって唯一無二絶対無二だよ!」

織莉子「ふふふ。冗談よ」

キリカ「もー。おどかさないでくれよ……」

ほむら(相変わらずね、この二人も)

>>530
ご指摘ありがとうございます
ずっと美國だと思ってました……


ピンポーン

マミ「お客さんかしら。ちょっとごめんなさいね」

ピッ

マミ「はい、どなたでしょう?」

QB『あ、インキュベーターと申しますー。お邪魔してもよろしいでしょうか?』

マミ「……は?」

まどか「ぷふっ……」

さやか「アッハハハハハ!! 『インキュベーターと申しますー』だって! アハハハハハハ!」

杏子「あ、あいつもこんなユーモアあることできんのかよ……」

ほむら「前散々に言われたこと、気にしてるのかしら」

マミ「と、とりあえず出てくるわ……」


QB「いやぁ、五人とも久しぶりだね。織莉子たちのところへはよく行っていたけれど」

QB「……さやかはどうしてそんなに笑っているんだい?」

さやか「ど、どうしてってアンタのせいでしょ……。ひーっ、ひーっ。お腹痛い……」

ほむら「あなたの珍妙な登場の仕方のせいよ」

QB「だって君たち、勝手に入ったら怒るじゃないか」

まどか「ふふっ。キュゥべえも変わったんだね」

QB「君のおかげだよ、まどか」

QB「さて。今日君たちのところへ来たのは知らせたいことがあるからなんだ」

杏子「二ヶ月ぶりに顔出したと思ったら、また藪から棒に」

QB「うん。その二ヶ月のことも含めてね。次君たちに会うときにはちゃんと報告できるようにしようと決めてたんだ」

QB「単刀直入に言うと、君たちの魂を人間の体に戻すことができるかもしれない」

まどか「……!」

さやか「本当!?」


QB「本当さ。この二ヶ月、これ以上魔女を増やさないようグリーフシードを配りながら、その方法をずっと探してきた」

QB「これはまだ仮説の段階ではあるんだけどね。君たちはコードというものを覚えているかい?」

まどか「しーちゃんやV.V.が持ってた……?」

QB「そう。あれはギアスよりもさらに魔法少女に近いものだ。そのコードの性質の一つに、他人に譲渡したり他人から奪い取れるというのがある」

QB「なら、魔法少女の力もまた切り離すことが可能なんじゃないかと考えたんだ」

さやか「それがどうやったら魂が戻ることになるの……?」

QB「つまり、ソウルジェムから魂を奪い取り、それを再び君たちの体に譲り渡す訳さ」

ほむら「そんなことで本当に人間に戻れるの?」

QB「前例はない。確証もない。けれど、つい最近まで僕は魔法少女の力を他人に植え付けることが可能だということすら知らなかった」

QB「なら、他に知らなかったことがあってもおかしくはないだろう? 試してみる価値はあると思うんだ」


QB「僕はこれから本格的に魔法少女を人間に戻す研究をするよ。もちろん、これだけで人類に対する償いにはならないけれど……」

QB「それでも、今を生きる魔法少女たちは救える」

杏子「……あのキュゥべえが、丸くなっちまったもんだな」

QB「あ、そうそう。魔女の捕獲の方は順調かい?」

ほむら「えぇ。この街は魔女の数だけは多いもの」

マミ「私のリボンで魔女に封印をかけて、暁美さんの盾の中で保護してるわ」

杏子「万が一封印が解けたときのために、自分の結界の中だと錯覚するよう幻惑の魔法もかけてある」

QB「なるほど。どうやら大丈夫そうだね。僕も頑張らなくちゃいけないな」

QB「魔法少女を人間に戻す方法と同時に、魔女を人間に戻す方法を探すのをね」

マミ「っ!」

杏子「馬鹿! この二人はそのこと……!」


キリカ「あー……。魔女化のことなら知ってるから気にせず続けてくれ」

まどか「え……?」

織莉子「実は私の魔法が未来視なの。それで……ね」

マミ「じゃあ、魔女になるとわかってて戦ってきたってこと……?」

さやか「あ、あれ。あたしよりすごいんじゃないの? この二人……」

QB「まぁ、そういう訳だから話を戻すけれど。魔女を人間にというのはそれなりに現実味を帯びてきている」

QB「なんといっても、君たちが生きた証だからね。君たちの場合、魔女化すぐという特殊な事情もあっただろうけれど……」

QB「それでも、不可能じゃないと証明してくれた。少しでも可能性があるなら、僕はそれに賭けたい」

まどか「ありがとう、キュゥべえ」

QB「やめてくれ、まどか。これは僕が始めてしまったことなんだ。僕が責任をとらないと」


ほむら「宇宙のエネルギーはどうするつもりなのよ」

QB「それも追々考えるさ。実はね、僕らだけじゃなく、この星の人類にも知恵を出してもらいたいと思っているんだ」

QB「僕の技術をこの星に提供する。その代わり宇宙の危機を一緒に救ってほしい、ってね」

QB「今回のことでわかったんだけど、この星の科学者はとても柔軟な発想力を持っている」

QB「僕にはないものだ。だから、僕が予想もしなかった方法を出してくれるんじゃないかと期待しているんだ」

さやか「な、なんかキュゥべえ変わりすぎ……」

QB「僕も人類とは友好的な関係を築きたいと思えるようになったからね」

QB「まぁ、ともかく。僕は解決策が見つかるまでは魔法少女たちにグリーフシードを配り歩くことにするよ」

ほむら「お互い、共存できるようになればいいわね」

QB「あぁ。僕もそう思っているよ。心からね」


まどか「キュゥべえ行っちゃった……」

マミ「あの子にも思うところがあるのね、きっと」

さやか「今のあいつなら、感情も持てそうだよね」

杏子「案外、もう持ってたりしてな」

キリカ「あのー、ちょっといいかい?」

まどか「あ、ごめんね! ほったらかしにしちゃって……」

キリカ「いや、いいんだ。大事な話だったみたいだし」

キリカ「それより、コードとかギアスとか何の話だったんだい?」

ほむら「そうね……。話すと長くなるから、そのうち教えてあげるわ」

マミ「同じ街の魔法少女として、秘密は作りたくないものね」

さやか「あたしの武勇伝を楽しみにしておくように!」

キリカ「はぁ……」

ほむら「そうだ……。織莉子、ちょっといいかしら」

織莉子「えぇ。えっと……、暁美さん?」

ほむら「ほむらでいいわ。あなたの未来視の魔法で見てもらいたいことがあるの」

織莉子「……私利私欲のためならお断りよ?」

ほむら「もちろん違うわ。実は……」


……………………
………………
…………

キリカ「それじゃあ、そろそろお暇しようか。織莉子」

織莉子「そうね。巴さん、とても美味しいお茶だったわ」

織莉子「次は、私がごちそうさせてください」

マミ「ほんと? 嬉しいわ。是非伺うわね」

杏子「魔女を見つけたらできるだけあたしらにも連絡してくれ。捕まえにいくから」

キリカ「了解だ。グリーフシードはキュゥべえがくれるみたいだし、私たちもキミたちの計画に協力しよう」

まどか「これからもよろしくね。キリカちゃん、織莉子ちゃん」

さやか「二人も魔法少女が増えるなんて、百人力だね!」

キリカ「二人が百人って。もしかしてさやかは馬鹿なのかい?」

さやか「な、何をぅ!? そりゃ、賢くはないけど……って何いわせんだ!」

キリカ「ははは、やっぱりキミたちは面白いね」

キリカ「それじゃあ、また会おう」

織莉子「お邪魔しました」


まどか「ねぇねぇ、ほむらちゃん。織莉子ちゃんに何を見てもらってたの?」

ほむら「ふふっ……、ひみつ」

まどか「えー、気になるなぁ」

ほむら「ちょっと恩を売っておこうと思っただけよ」

まどか「あー! 私利私欲はダメって言われてたのにー!」

ほむら「え、ち、違うわよ! きっと彼も気にしてるでしょうから……」

まどか「彼?」

ほむら「もう、いいでしょう、まどか」

まどか「誤魔化そうとしてるー!」

ほむら「そんなことないわ。それで、まどか。早乙女先生とはどう?」

まどか「え? あぁ、うん。先生ね、私の家に住むことになったの」

ほむら「親戚の方は?」

まどか「おじいちゃんとかは引き取るって言ってくれたんだけど……。私、やっぱりみんなといたいから」

まどか「そしたら先生が説得してくれて。ママの方のおじいちゃんは早乙女先生のこと昔から知ってるから、『先生にならまどかを任せられる』って」

ほむら「そう……。よかったわね」

まどか「うん。早乙女先生には感謝してもしきれないや」


ほむら「じゃあ、これからも一緒にいられるのね」

まどか「えへへ。不束者ですがよろしく願いします」

ほむら「えっ!? こ、こちらこそ末永く……!」

さやか「何二人でイチャイチャしてるんだ〜?」

さやか「抜け駆けは許さんぞ、ほむら! まどかはあたしの嫁になるのだ〜!」

まどか「きゃあっ! もう、さやかちゃん!」

ほむら「やめなさい、さやか! まどかのどこ触ってるの!? やめなさい!」

さやか「ん〜? よぉし、じゃあほむらもあたしの嫁だぁ!」

ほむら「なっ!?」

まどか「さやかちゃんってば……もう」

さやか「はっはっはっ!」

ほむら(……平和。そう、とても平和)

ほむら(まどかは自分のしたことに気づいていない。以前の呉キリカならグリーフシードを分けるどころか、出会い頭で襲いかかってきてもおかしくはなかった)

ほむら(明らかに呉キリカの人格が……意志が矯正されている)

ほむら(でも、このことに気づけるのは私だけ。呉キリカ自身、きっと自分が変わったことにも気づいていないだろう)

ほむら(なら、私はこのことを胸の奥底へしまおう。まどかはもう十分苦しんだ。これ以上まどかは苦しむべきじゃない)

ほむら(彼女の罪は、私の胸の内だけに……)


神聖ブリタニア帝国 暫定帝都

ナナリー「お兄様」

ルルーシュ「あぁ、ナナリー。今、戻ったのかい?」

ナナリー「はい。日本との平和条約も無事締結することができそうです」

ルルーシュ「それはよかった。やはりナナリーに任せて正解だったよ」

ナナリー「いえ、シュナイゼル兄様が一緒でしたから。藤堂さんも大変よくしてくださいましたし」

ナナリー「お兄様こそ、ご公務の方は順調ですか?」

ルルーシュ「あぁ。ナナリーたちがサポートしてくれるからな」

ナナリー「お兄様の尽力がなければ今の平和はありませんよ」

ルルーシュ「それこそ、俺一人の力じゃない。鹿目のギアスがあったから、ここまでスムーズに事が運んでいる」


ルルーシュ(鹿目のゼロレクイエムはスザクのような人間の意志を曲げてしまった)

ルルーシュ(鹿目は優しすぎた。憎しみの余り殺意を抱く人間のことを彼女は理解できなかったんだ)

ルルーシュ(そんな人間が仇敵と絆を結ばされた時のことなど、想像もできなかったんだろう)

ルルーシュ(優しさは時に人を傷つける……)

ルルーシュ(だが、多少の犠牲は俺のやり方でも、シュナイゼルのやり方でも出ていたはずだ)

ルルーシュ(今の状況は死者がいない、という意味では一番正しいのかもしれない)

ルルーシュ(あの場にいた人間……、いや、鹿目のギアスを知っていた者以外はこの世界が変わったことすら理解していないようだった)

ルルーシュ(そもそも、俺やスザクのように誰かを殺したくなるほど憎む人間なんていうのは、一般的に見ればごくごく少数の異端者だ。それを矯正するのは世界平和のためには必要なことだともいえる)

ルルーシュ(結局、世界が平和に……、協調に進みつつあるのはやはり鹿目のギアスによるところが大きい)

ルルーシュ(あれがなければブリタニアが穏便に超合集国に参加することも、元植民地エリアと和平を結ぶことも難しかっただろう)

ルルーシュ(彼女のギアスが善か悪かなんていうのは見方次第ということか)


ナナリー「お兄様?」

ルルーシュ「ん?」

ナナリー「何だか、難しい顔されていたので……」

ルルーシュ「いや、少し考え事をしていただけだよ」

ルルーシュ「それより、藤堂はどうだった? ちゃんと首相をこなせていたか?」

ナナリー「それはもちろん。ご本人は、『政治のなんたるかについて、まだまだ神楽耶様やルルーシュ陛下から教わることも多い』っておっしゃってましたけど」

ルルーシュ「あれほどの男がまだ学ぼうとするとは。やはり大した男だよ、藤堂は」

ルルーシュ(日本列島を取り戻し、名実共に独立を果たした合衆国日本の最初の首相には藤堂が就任した)

ルルーシュ(黒の騎士団内では扇を、という声も多かったそうだが、本人が辞退したらしい)

ルルーシュ(神楽耶様が俺の考えを看破して全て話してしまったからだそうだ。俺との絆を結ばされ、俺の真意を理解してしまった以上一度殺そうとした俺と会うのは良心が許さないという)

ルルーシュ(あれしきのことで負い目を感じるのなら、トップの器ではなかったということだろう)

ルルーシュ(藤堂が首相というのも、シビリアンコントロールの観点からすればふざけた話だが、現状彼以上に日本を率いれる者はいない)

ルルーシュ(藤堂なら、必ずや日本を立ち直らせることができるだろう)


ルルーシュ(超合集国最高評議会議長は引き続き神楽耶様が務めている。若いながら、しっかりとした意志と決断力で支持を集めているようだ)

ルルーシュ(今でも俺の妻を自称しているそうだが……)

ルルーシュ(合衆国中華は天子が治め、それを香凛がサポートしている)

ルルーシュ(星刻はあの戦いのあと、天子に看取られこの世を去った。だいぶ無理をしていたようだ)

ルルーシュ(星刻の死後、天子は自らの考えをはっきりと主張するようになった。彼女なりの最愛の従者への手向けなのだろう)

ルルーシュ(従者といえば、ジェレミアは結局俺の元に戻ってはこなかった。俺は許すつもりだったのだが、彼自身が自分を許せなかったそうだ)

ルルーシュ(どこまでも忠義に厚い男だ。ジェレミアがいなければ俺はここまで来れなかった)

ルルーシュ(彼は今アーニャを引き取り、オレンジ農園を営んでいる。最初に聞いた時はあまりの徹底ぶりに呆れたものだ)

ルルーシュ(カレンは、再びアッシュフォード学園に通っている。リヴァルと生徒会で学園の盛り上げ役をやっているそうだ)

ルルーシュ(カレンだけでも、また学園に通えるようになって本当によかった……)

ルルーシュ(玉城は定期的にやってきては、俺やシュナイゼルに教えを乞いている)

ルルーシュ(政治家になるのだそうだ。かつての玉城なら一笑に付しただろう)

ルルーシュ(だが彼は変わった。状況に流されるのではなく、自ら状況を変えようとするようになった)

ルルーシュ(彼なら、いつかきっと藤堂を支える立派な政治家になれるだろう)

ルルーシュ(そしてスザク……。スザクは……)


ナナリー「そうです、お兄様。私、日本へ行った際にさやかさんたちにお会いしてきました」

ルルーシュ「彼女たちに? そうか。元気そうだったか?」

ナナリー「はい。魔法少女……というのですか? 興味深いものを見せていただきました」

ナナリー「それで、ほむらさんからお兄様に言伝てを預かってきたんです」

ルルーシュ「言伝て……? なんだか怖いな」

ナナリー「ふふっ。いい知らせだ、とおっしゃってましたよ」

ナナリー「『十日後、彼女が意識を取り戻す』、だそうです。あ、でもお会いしたのが三日前ですから、一週間後ですね」

ルルーシュ「……そうか。それは、本当にいい知らせだ……」

ナナリー「お兄様……?」

ルルーシュ「ナナリー、すまないがその日の予定を全てキャンセルするようシュナイゼルに伝えておいてくれ」

ナナリー「す、全てですか!?」

ルルーシュ「あぁ。今は、一刻も早く彼女に会いたいんだ……」

ナナリー「わかりました。伝えておきますね」

ルルーシュ「ありがとう」


一週間後 帝立病院

ルルーシュ「……あぁ。君たちはそこで待っていろ。中まで護衛はいらない。友人だと言っただろう」

バシュッ

ルルーシュはある病室に入る。
この病院で一番広く、明るい部屋だ。
ルルーシュが皇帝になった時、ちょっとした職権乱用で彼女をここに移したのだ。
そこで深い眠りについているのは……。

ルルーシュ「シャーリー……」

イケブクロでの事件の後、シャーリーはエリア11で応急措置を受けた。
それから、フェネット夫人の意向により故郷であるブリタニア本土の病院へと転院していたのだ。

ルルーシュ「最初はペンドラゴンの病院にいたんだがな……。シュナイゼルが狙うなら帝都だろうとわかっていた」

ルルーシュ「さすがに都民全員を移動させることは不可能だったから、君をこの地方の病院へと移すことしかできなかった」

ルルーシュ「これも、俺の罪だ」

峠はとうに越え、シャーリーの傷はほぼふさがっていた。
それでもなお意識を取り戻さないのは、一度致死量の血を流してしまったのが原因だと医者は言う。

ルルーシュ「今でも、君が生きているのが信じられないと言っていたよ」

ルルーシュ「シャーリーは知らないだろうが、あの時暁美ほむらという少女が君を助けてくれたんだ」

ルルーシュ「彼女が君の生命力を上げてくれたから、俺の『死ぬな』というギアスが発動したんじゃないかと思う」


ルルーシュ「……あの時、俺の本物になりたいと言ってくれただろう? 本当に嬉しかったんだ」

ルルーシュ「あの頃俺を……、ルルーシュを慕ってくれてたのはカレンやロロ、咲世子くらいのものだったから……。C.C.はそういう関係ではなかったし、学園のみんなは皇帝のギアスにかけられていた」

ルルーシュ「キューピッドの日は成り行きで言ってしまったからな……。もう一度ちゃんと伝えたい」

ルルーシュ「俺は君のことが……好き、なんだ」

シャーリー「ルルそれほんと!?」ガバッ

ルルーシュ「おぉぉぉぉぉぉ!? シャーリー、お前いつから聞いて……!」

シャーリー「『最初はペンドラゴンの病院にいたんだがな……』くらいから」

ルルーシュ「初めからじゃないか! なんで寝たふりなんて……」

シャーリー「実はルルが来るちょっと前に起きたんだけど、自分がどういう状況なのかわからないまま部屋に誰かが入ってきたから思わず……」

ルルーシュ「じゃ、じゃあ今までの全部……」

シャーリー「う、うん……。聞いちゃった……」

ルルーシュ「……帰る」

シャーリー「ああ! 待って、待ってルル!」


シャーリー「聞いちゃったのはごめん。でも、聞かせて。さっきのはあの時の返事、ってことでいいんだよね……?」

ルルーシュ「……あぁ」

シャーリー「やった……!」グッ

シャーリー「……って、すごく今さらなんだけど。ルル、その格好どうしたの……?」

ルルーシュ「え? あぁ、これか。あれからもいろいろあってさ、今はブリタニア皇帝なんだ」

シャーリー「は……? ほんとに何があったの!?」

シャーリー「ていうかちょっと待って! ルルが皇帝ってことは私皇妃様……?」

ルルーシュ「ぶっ!? ひ、飛躍しすぎだ!」

シャーリー「あっ! そ、そうだね! な、何言ってるんだろ私。アハハハ……」

ルルーシュ「……しゃ、シャーリーさえ良ければ俺は——」

バシュッ

ミレイ「ルルーシュ! シャーリー!」

ルルーシュ「うわぁぁっ!?」


シャーリー「か、会長!? ……いいとこだったのに」

リヴァル「会長! もー、一人で先行かないでくださいよぉ」

ルルーシュ「二人ともどうしてここに……」

リヴァル「俺たちだけじゃないぜ」

バシュッ

カレン「全く……。会長もリヴァルも、兵士の相手全部私に押し付けて……」

ルルーシュ「カレンまで……どうして」

カレン「私は……、その、会いたかったから……。ルルーシュに……」

ルルーシュ「え……。あ、あぁ、そういえばあの時……」

カレン「ちょっ、ルルーシュ! 余計なこと言わないでよ!」

シャーリー「……ルールー?」ムスッ

ミレイ「あらあら? なんだか面白いことになってるわね」

ミレイ「お姉さんも混ざっちゃおうかなぁ?」

リヴァル「会長ぉ!」


ルルーシュ「あーもう! だからみんなはどうしてここに……!」

ミレイ「スザクくんがね、教えてくれたのよ」

ルルーシュ「スザクが……?」

ミレイ「そう。今日ここに来ればルルーシュに会える、ってね」

ミレイ「ルルーシュ、ちゃんと自分の過去を精算できたのね」

ルルーシュ「……! 会長、記憶が……!」

ミレイ「うん、戻ったみたい。二ヶ月くらい前に急に」

リヴァル「なんで記憶が変わってたのか、今でもわっかんないんだよな……」

ルルーシュ(二ヶ月前……。そうか、鹿目のギアス……!)

ルルーシュ(より真の絆に近いかつての記憶を、鹿目のギアスが思い出させたということか)

ルルーシュ(……感謝、しなければいけないな)


リヴァル「カレンからさ、お前の本当の考え、聞いちゃったんだ」

ルルーシュ「そうか……」

リヴァル「やっぱさ、お前すごいよ。平和のために命をなげうつなんて、誰にでもできることじゃない」

ルルーシュ「……俺は、結局成し遂げることはできなかったがな」

リヴァル「それでいい。俺は、お前の犠牲で得た平和な世界になんて暮らしたくない」

ルルーシュ「リヴァル……」

カレン「私だってもうルルーシュがいない世界なんて考えられない!」

ルルーシュ「あ、あぁ……。ありがとう、カレン」

ミレイ「ルルーシュは私のおも……家族みたいなものだから。だから、勝手に死ぬなんて許さないわよ」

ルルーシュ「……今、おもちゃって言おうとしませんでした?」

シャーリー「話がよくわかんないけど、私もルルには生きていてほしいよ」

ルルーシュ「……あぁ」

リヴァル「あれ? ルルーシュ、お前泣いてる?」

ルルーシュ「なっ!? 馬鹿言え! 俺が泣く訳……」

ミレイ「ん〜?」ニヤニヤ

ルルーシュ「ぐっ……! ちょっと失礼する!」

バシュッ

シャーリー「あ! ルルー!」

カレン「いじめすぎですよ、会長」

ミレイ「ふふっ。久しぶりだったから」

ミレイ「……ねぇ、カレン。ロロはどうしてるか、知ってる?」

カレン「……っ。ロロは……もう……」

ミレイ「そっか……。偽物の記憶でも、あの子も大事な生徒会の仲間だから、また会いたかったな……」


ルルーシュ(不覚だ……! あんな醜態を晒すなんて)

ルルーシュ(……だが、みんな元気そうでよかった。シャーリーも意識を取り戻したし……)

ルルーシュ(これで心置きなくあの計画を……)

スザク「ルルーシュ」

ルルーシュ「……! スザク」

スザク「勝手にみんなを呼んだこと、怒ってるかい?」

ルルーシュ「まさか。嬉しかったよ」

ルルーシュ「それに、改めて決心もついた」

スザク「それはよかった。ちょうどさっき、ロイドさんたちから連絡があったんだよ」

ルルーシュ「終わったのか!」

スザク「あぁ。今こっちに向かってると言っていたけど……」


ロイド「どぉもどぉもご両人、噂のロイドで〜す!」

セシル「ロイドさん! ここ病院ですから、お静かに!」

ラクシャータ「全く、相変わらず常識のない男だねぇ」

ニーナ「ルルーシュ、スザク。久しぶり」

ルルーシュ「あぁ、久しぶり。四人揃って登場とは、本当に終わったようだな」

QB「僕もいるんだけど、忘れないでほしいな」

ルルーシュ「キュゥべえ、お前もいたのか。いよいよ勢揃いだな」

スザク「C.C.はどうしたんですか?」

セシル「ふふっ。病院なんて辛気くさいところに行きたくない、とか言ってたけど……。本当はルルーシュ陛下の逢い引きを見たくなかったんじゃないかしら」

ルルーシュ「あ、逢い引きとはなんだ逢い引きとは!」

ルルーシュ「そんなことより、どうなったんだ? 研究は」

ロイド「それはもう。このキュゥべえちゃんが来てから捗る捗る」

ラクシャータ「この子の知識や技術を使えば本当にあっという間だったよ」

ルルーシュ「キュゥべえが突然来て、『人間と共存共栄したい』と言い出した時は何事かと思ったがな」

QB「不可視性を解除したところで、僕の話を聞いてくれそうなのは君くらいだったからね」

ルルーシュ「だが、お陰でギアスを科学的に解明することができた」

ルルーシュ「これでギアスの存在を公開し、俺が証言すれば……」

スザク「ユフィの無実を証明することができる……!」


ルルーシュ「あぁ。このことを世界に明かすことで俺は皇帝の座を追われるかもしれん」

ルルーシュ「だが、いつ譲位しても問題ないように準備を進めてきた」

ルルーシュ「鹿目は謝罪からと言った……。だが、俺はまずユフィの無実を証明し、己の罪を白日の元に晒さなければならない」

ルルーシュ「……これでようやく、ユフィの雪辱を果たせる」

スザク「ルルーシュ、僕は君を許した訳じゃない。でも、君がユフィを陥れようとしたんじゃないことを知って、そして本気でユフィの汚名をすすごうとしているのを見てきた」

スザク「だから、僕も自分の気持ちに……君への気持ちに決着をつける」

スザク「もう……憎しみ合うのはやめよう。前に、シャーリーに言われたんだ。僕はルルーシュを許せないんじゃない、許さないだけだ、って」

スザク「僕は、君を許せる道を探そうと思う」

ルルーシュ「スザク……。ありがとう」

セシル「よかった……。スザク君もこれで前に進めそうね」

ロイド「君は進まなくていいのかい?」

セシル「何のことですか、ロイドさん」

ロイド「いやぁ、君がそれでいいならいいんだけどぉ。ねぇ、ラクシャータ」

ラクシャータ「気安く話しかけるんじゃないよ、プリン伯爵」

ニーナ「研究してる時はあんなに息ぴったりだったのに……」

ルルーシュ「……っと、そろそろ病室に戻らないと」

QB「上手くやりなよ」

ルルーシュ「なっ……!? どういう意味だ! というかお前にそんなこと言われたくない!」


バシュッ

シャーリー「あー! ルルやっと帰ってきたー」

ルルーシュ「あぁ……、ん? 他のみんなは?」

シャーリー「リヴァルは飲み物を買いに。会長とカレンは私のお母さんに連絡してくれてる」

ルルーシュ「そうか」

シャーリー「ね、ねぇ、ルル?」

ルルーシュ「何だ?」

シャーリー「さっきの、私さえ良ければ……何?」

ルルーシュ「そ、それは……」

ルルーシュ「俺は結婚もやぶさかではない……と」

シャーリー「えー! 何その言い方ー!」

ルルーシュ「ぐっ……! いいだろう……。シャーリー! 結婚してほしい!」

シャーリー「えぇっ!? そ、そんな堂々と!?」

ルルーシュ「い、言えと言ったのはシャーリーだろ!」

シャーリー「そ、そうだけど……。うぅ……!」


ルルーシュ「……なぁ、シャーリー。お前は、皇妃になりたいか?」

シャーリー「そ、それって俺と結婚したいかってこと……?」

ルルーシュ「あー……。いや、なんというかな……」

ルルーシュ「俺は、近く皇帝ではいられなくなるかもしれない。それでも、俺と一緒にいてくれるか……?」

シャーリー「……なぁんだ、そんなことか」

シャーリー「私が好きになったのは、皇帝でもなんでもない、普通のルルだよ?」

シャーリー「今さら皇帝じゃなくなったって、私の気持ちが変わる訳ないじゃない」

ルルーシュ「シャーリー……」

シャーリー「な、なんか恥ずかしいなこれ……」

ルルーシュ「……ありがとう。シャーリー、愛して……」

ミレイ「ニヤニヤ」

リヴァル「ニヤニヤ」

カレン「……」ムスッ

ルルーシュ「だから……! 何なんですか会長ぉぉぉぉ!!」


合衆国日本 見滝原 暁美家

ミレイ『先日、神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア陛下が、虐殺皇女などと呼ばれるユーフェミア・リ・ブリタニア元皇女の起こした日本人大虐殺の黒幕だったことを告白なされた事件について、新たな情報が入りました』

ミレイ『あまりに突拍子もない話でしたが、証拠として示された『ギアス』の科学的根拠が信用に足るものであったことなどから、超合集国最高評議会は正式にユーフェミア元皇女の無実を認め、ルルーシュ陛下に退位を求めることを決定しました』

ミレイ『ルルーシュ陛下が退位なされた場合、次期皇帝の最有力候補はルルーシュ陛下の妹君であらせられるナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下となりそうです』

まどか「ルルーシュさん、ちゃんと約束守ってくれたんだ……」

ほむら(……あれは約束というのかしら?)

まどか「これでママたちも少しは報われるかな……」

ほむら「そうね……」

ピンポーン

ほむら「ごめんなさい、まどか。ちょっと出てくる……」

ガチャ

C.C.「中学生の一人暮らしなのに鍵もかけないとは、無用心にも程があるだろう」

ほむら「な、な……っ!」

まどか「しーちゃん!」

C.C.「あぁ、しーちゃんだ。久しぶりだな」


ほむら「C.C.、あなたどうして日本に……。ルルーシュの側にいなくていいの?」

C.C.「お前もしーちゃんと呼んでいいんだぞ?」

ほむら「うるさいわね。質問に答えなさい」

C.C.「私はギアス解明のために散々協力させられたからな。今は休暇中だ」

まどか「じゃあ、ずっとこっちにいるってこと?」

C.C.「あぁ。当分はな」

ほむら「どこに泊まるのよ」

C.C.「……? 泊めてくれるだろ?」

ほむら「なんで私が……!」

C.C.「そう固いこと言うな。私たちは友達だろ?」

ほむら「それはあなたが記憶喪失だった時の話で……」

まどか「ほむらちゃん、そんな言い方ってないよ……。友達になったらずっと友達でしょ?」

ほむら「ぐぬぅ……」


C.C.「そういう訳だ。まぁ、お前が断るならマミのところへ行くまでだが」

ほむら「……あの子は高校受験してないことに気づいて今てんやわんやだから、やめてあげて」

C.C.「じゃあ、泊めてくれるな?」

ほむら「はぁ……。わかったわよ、もう……」

C.C.「よし。腹が減ったな、ピザが食べたい」

ほむら「いきなり図々しいわね……。そんなものないわよ」

C.C.「頼めばいいだろう」

ほむら「中学生の一人暮らしだからお金がないんです」

C.C.「それなら心配はいらない。ルルーシュのカードを盗ん……借りてきた」

ほむら「……ならいいけど」

まどか(いいのかな……)

ほむら「じゃあ注文してくるわ」

C.C.「ピザハットだぞ」

ほむら「はいはい」

ガチャ


C.C.「……なぁ、まどか」

まどか「ん? どうしたの?」

C.C.「ギアスは王の力……。それは人を孤独にするものだと、私はずっと思っていた」

C.C.「だが、少し違っていたな……」

C.C.「お前も、ルルーシュも、こんなに人に想われている。お前のギアスがあったからじゃない。ギアスが発動する前から、ルルーシュを想うやつらが動き出していたんだ」

C.C.「この世界も捨てたものじゃなかった」

C.C.「私も、もう少し生きてみようと思う」

まどか「えっ!? しーちゃん死ぬつもりだったの!?」

C.C.「人はいつか死ぬ……死ななければならない。私はそれを今だと思ってただけさ」

まどか「だ、ダメ! そんな、死ぬなんて……!」

C.C.「ふふっ。だからもう少し生きてみると言っただろう?」

まどか「あっ、そっか……」

C.C.「心配しなくても、きっとお前より長生きするよ」

まどか「えー! 私の方が長生きするもん!」

C.C.「じゃあ、勝負をしよう。負ける気はしないがな」

C.C.(ルルーシュ、まどか……。お前たちが創った優しい世界、私が最後まで見届けてやろうじゃないか)

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