佐天「能力が、能力が使えたっ!」 (28)

佐天「ずっとずっと、学校や施設に頼み込んで、何度も何度も、特訓してた」

佐天「無能力者が、と笑われた、馬鹿にされた、それでも私は頑張った」

佐天「そしてついに!」

そよそよ

佐天「気持ちいぃー!」

佐天「そよ風だけど、それでも私の能力なんだ!」

佐天「それからは夢中になった、もっと、もっと凄い力が欲しいって」

佐天「今はまだそよ風に、風で紙を浮かすくらいしか出来ないけどこれなら」

佐天「――胸を張ってみんなに話せる!」

御坂「佐天さん! 今度は何したのよ!」

白井「初春、同様の症状が出た人がいないかすぐに調べて下さいまし!」

初春「はいっ! 大丈夫ですよ佐天さん、今ジャッジメント内部にも情報を問い合わせますから!」

佐天「あ、あの、みんな……」

御坂「レベルアッパーのときにもうこんなことしないって言ったじゃない! それなのにどうして!」

佐天「ち、違うんです御坂さん、これは」

白井「……佐天さん、正直に話してくれないと、助けるのが遅くなってしまいますの、お願いしますの」

初春「佐天さん……」

佐天「ち、違う、違うの、私、私……ぐすっ」

たったったっ

御坂「佐天さん!? ちょっと待ってよ! 佐天さん!!」

佐天「あ、あはは、そうだよね、無能力者が能力なんて使ったら、レベルアッパーだと思うよね」

佐天「おっかしいなー、前が滲んで見えないよ……なんで泣いてるんだろ、私」

佐天「こんな」

そよそよ

佐天「こんなしょぼい力じゃ、ダメだよね」

佐天「みんなに認めてもらうなら、もっと、もっと凄い力を!」

佐天「そして……」

御坂『佐天さん! 今度は何したのよ!』

佐天「……認めさせてやる、私のチカラ」

研究員「君が佐天涙子さんだね」

佐天「はい」

研究員「君の先生から話は聞いたよ、無能力から、自力で能力に目覚めたんだってね」

研究員「二週間だ、二週間以内にレベル2になれたら、更に先まで協力しよう」

佐天「ありがとうございます」

研究員「ただし、もし二週間以内に結果がでなければ」

佐天「やってみせます」

佐天(こうして、私の修業は始まった)

佐天「一週間」

佐天「一週間で私はレベル2になった」

佐天「何となく風の流れがわかる、そよ風が扇風機になった」

佐天「まだダメだ、こんなのじゃ認められない」

佐天「そう言えば研究員さんが付き合ってくれる期間も伸びた」

佐天「次は一ヶ月、だそうだ」

佐天「今の私なら、なんとかなる」

佐天「今まで無能力者だって言われつづけたんだ、見返してやる、全てを」

佐天「私は急激に成長した」

佐天「能力に目覚めてから研究所のお世話になって、そこから一週間と二週間と、一ヶ月」

佐天「二ヶ月しないで無能力者からレベル4に成長したんだ、研究員さん達は驚いていた」

佐天「それと、環境が少し変わった」

佐天「研究員さんが一人から二人、二人から五人、五人から十人に増えた」

佐天「設備も、的当てみたいなものからクレー射撃みたいなもの、何だか豪華になった」

佐天「無能力から超能力へ、レベル0からレベル5への大躍進」

佐天「研究員さん達は私の成長に夢中になったのかも知れない」

佐天「あと一つ」

佐天「あと一つで、御坂さんに……」

佐天「成長が止まった」

佐天「研究員さんに聞くとレベル4でも上位に来ていて、レベル5にもう少しというレベルだそうだ」

佐天「ここに来て、止まった」

佐天「なんで、なんでっ! どうして!?」

佐天「こんなんじゃ勝てない、御坂さんを倒せない、見返してやるって決めたのに!」

佐天「研究員さんもドタバタしてるのか、私に付くのは半分以下になった」

佐天「ここまで来て、何も出来ないまま見捨てられる」

佐天「そんなのは嫌、でも、レベルが上がらなきゃ、どうしようもないし……」

佐天「なんだか施設内の風の流れが急変した」

佐天「誰かがこの部屋に向かってる」

佐天「白衣ではない、誰かの風」

佐天「この風は……ドアが開く」

ウィーン

御坂「佐天さん!」

佐天「……え、あれ、なんで御坂さんがここに?」

御坂「大丈夫佐天さん! あいつらに何されたの!?」

佐天「えっ、えっ?」

御坂「無能力者から超能力者への可能性、被験者佐天涙子」

御坂「アイツら、佐天さんをレベル5に仕立て上げようとしていたのよ、それで佐天さんを誘拐するなんて……」

佐天「御坂さん……私……」

御坂「良いのよ佐天さん、今は何も言わないで」

佐天(この人は何を言ってるんだろう……でも、勘違いとはいえ助けに来てくれた)

佐天(……)

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