セレス「二人仕掛けの夢模様」 (222)

 ――昼 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド


葉隠「ふっふっふ、オレっちが怪しげな露天商のオバチャンから
   100万円で買った水晶玉のようなガラス玉を打ち返せるワケないべ!」

大和田「まぁた騙されたのかよ、アイツ」

霧切「桑田くん、気をつけて その球を打つことになる
   バッターのアナタが一番危険よ」

朝日奈「大丈夫だよ! だって桑田は超高校級の野球選手なんだよ?
    ガラス玉ぐらい屁でもないって!」

不二咲「そう言われてみると……イケそうな気がしてくるね!
    頑張って! 桑田くん!」

大神「次は我が打席に立つのだ 良し悪しなど考えず
   気楽に打てばいい」

腐川「男なんてどいつもこいつも常時
   股間のバットとタマ振り回してんだから
   握った棒くらい上手に振りなさいよね! このニワトリ頭!」

桑田「いや止めて!? あと最後のヤツなに言ってんの!?」


 ―しばらくお待ちください―

葉隠「ふっふっふ、オレっちが怪しげな露天商のオバチャンから
   100万円で買った水晶玉のようなガラス玉の代わりに使う
   ただのソフトボールを打ち返せるワケないべ!」

桑田「あ、そのくだりから続けるのね……」

霧切「桑田くん、気をつけないで あの球でアナタがデッドボールになって退場してくれれば
   定員割れを起こした私達のチームに、いまレフトで守備をしてる苗木くんが
   あっ……いま可愛い欠伸してた……チームに加わるはずよ!」

朝日奈「ダメだよ! だって桑田は超高校級の野球選手なんだよ?
    ソフトボールの硬さぐらい屁でもないって!
    砲丸くらい持ち出さなくちゃ!」

桑田「殺す気かっ!」

不二咲「そう言われてみると……逝けそうな気がしてくるね!
    頑張って! 桑田くん!」

大神「次は我が打席に立つのだ 良し悪しなど考えず
   気楽に打てばいい」

腐川「男なんてどいつもこいつも常時
   股間のバットとタマ振り回してんだから
   握った棒くらい上手に振りなさいよね! このニワトリ頭!」

桑田「大神と不二咲はマジでブレねーな
   腐川は早くブレてくれ!」

葉隠「桑田っちは今から三振確定だべ! オレの占いは――」

葉隠「三割あたっっっるぅうううううう!」

桑田「うわズッけぇ! 打ち返してやっっ――らぁああああ!!!!」


 >カキーン

ふwwwwwかwwwwwwwwわwwwwwwwww

 ――同刻 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド>外野


石丸「センターだ! セレスくん!」

セレス「ふぅ……午後のダージリンティーは格別ですわ」

石丸「セレスくぅううううん!? またキミは体操服にも着替えずに
   木陰で涼んでいるのかねっ!」

苗木「はぁ……はぁ! 大丈夫! ボクが捕るよ!」

石丸「ま、待ちたまえ! まさかレフトから捕るつもりか!?」

苗木(捕るしかない! あの軌道のまま進めば
   ボールの着地点はセレスさんの近くじゃないか!)

苗木「とっ――どけぇえええええええええええ!」


 >パシンッ

苗木「あいたっ! うぅぅ、後頭部が割れるぅ……あ」

セレス「……」

苗木「だ、大丈夫みたいだね 良かった」

セレス「お役目、ご苦労様でしたわ わたくしのナイト」

セレス「褒美なんてございませんわよ? わたくしに仕え
    わたくしの盾となれる栄誉そのものが、苗木君にとっては至上の褒美でしょう?」

やった!!!スレタイ詐欺じゃない!!!!

苗木「ナ、ナイトとかソコらへんはよく分からないけどさ
   セレスさんが無事だったのはスゴく嬉しいよ」

セレス「~~っ! そ、そうでしょうね
    コホン……さっさと定位置へとお戻り下さいな」

苗木「うん、そうする 舞園さーん! ボール投げるよ――」

セレス「……」

セレス(お茶の味が分からなくなりましたわ)

 1時間後――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>第78期生教室


セレス「苗木君 暑いですわ」

苗木「はいはい、いま扇ぐよ」

苗木「いつも通りこのレースがヒラヒラついた扇子でいいよね?」

セレス「はい」

苗木「ほんと、セレスさんは凝り性だね 団扇なら支給されてるのに
   わざわざ私物を持ち込むなんてさ」

セレス「器財と環境、それに人材 この三大要素がわたくしの夢には必要不可欠なんですの」

朝日奈さんもっとだしてほすい・・・

苗木「んー……器財は、扇子とかそのティーカップとかってこと?」

セレス「はい わたくしを女王として着飾ってくれる
   衣装たちもソレに該当しますわね」

苗木「環境は――言うまでもなくなくお城の中、だよね」

セレス「えぇ、洋城を私有地として住まうのが条件ですが――」

セレス「長く入り浸ることになる この学園の内装を洋城とし
    卒業するまでの別荘地にしてさし上げたいモノですわね」

苗木「ははっ、また嘘か本当か分からないこと言って セレスさんは」

セレス「とはいっても、比較的いまは満ち足りていましてよ」

セレス「環境はなくとも、それ以外の2つはクリアしているのですから」

セレス「今はその叶えられた2つの夢を ただ静かに感受いたしましょう」

苗木「セレスさんの夢になれたのは嬉しいな――でも、少しだけ
   悲しいかも」

セレス「あら、どうしてでしょうか」

苗木「セレスさんはさ、ドコにいても同じで
   授業や娯楽施設とか、みんなの輪の中でも」

苗木「その場その場で変わる別々の感覚を
   セレスさんと共有できないのが、少し残念だなって」

セレス「……」

セレス「必要ありませんわね」

セレス「苗木君 アナタはわたくしのナイトです」

セレス「ナイトは自らの意志で当主に仕え、自らの意志で当主の言葉に賛同して
    自らの意志で当主の刃となり盾となり――初めて意義を持つのです」

セレス「わたくしの言葉に反感をもつのであれば、いつだって
    わたくしとの縁を切っても構いませんわよ」

セレス「それは、苗木君の自由ですわ」

苗木「……セレスさん」


 >セ、セレスくん! どこに向かう気かね! もうすぐ大事な会議が――

 >体調が優れないので早退させていただきますわ ご機嫌よう


霧切「扇子をあおいでハァハァしてる苗木くん可愛いわ……」

山田「それを見てハァハァできる霧切響子殿も
   なかなかマニアックですな!」

桑田「室内温度あげんなよぉオマエら……」

霧切さんってどのssでも苗木すき過ぎだろw

 10分後――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>第78期生教室


石丸「諸君! 二週間後に控えた合同体育祭
   その各種目に参加するメンバーを決めようではないか!」

十神「ただ決めるのではないぞ 
   勝つためのメンバーを構成する貴重な案件だ」

十神「“どの生徒も必ず、一度は種目に参加し 同時に、一度しか参加できない”という
   煩わしいルールもあるが、決められた条件で最善を尽くす」

石丸「そうだな! やるからには勝とう! 努力の名のもとに!
   種目は手元にあるプリントを参考にしてくれたまえ!」

十神「現段階で勝利に直結した提案を出せるヤツはいるか?」

朝日奈「十神~、このパン食い競争のパンをドーナツにしちゃダメかな?」

十神「持参したドーナツで我慢しろ」

山田「応援旗のイメージキャラクターにはぜひ
   我が輩の考えた最強のオリキャラを――」

十神「いらんから机のスミにでも描いてろ」

大和田「単車なしのケンカってのもイマイチ気分のらねーよな」

十神「どいつもこいつも勝つ気はないのか!?」

朝日奈「あるよ! 少なくともドーナツにすれば士気向上の素じゃんか!」

十神「それはキサマだけだろうこの年中ドーナツ女がっ!」

大神「いま何と申した?」

(あ・・・十神しんだな・・・)

十神「」←気絶

石丸「さ、さて……気を取り直して対策を立てようか」

舞園「どの種目にも定員が決められていますよね」

舞園「それと皆さん一度しか参加できないから、運動が得意な人だけを選抜して
   全ての競技に参加させることも出来ません」

苗木「うん、そうなんだよね」

霧切「得手不得手が顕著に現れる才能の集まりよ」

霧切「全員の適材適所がハッキリして当てはめやすく
   苗木くんは可愛いわ――だけど同時に」

霧切「私達が選んだ種目の選手とその割り当て
   つまり対戦カードが相手に読まれやすくなる諸刃の剣でもあるわ苗木くん可愛い」

舞園「同感ですね」

不二咲「相手は77期生の先輩達なんだよねぇ……勝てるのかなぁ」

桑田「よくてあっちは筋肉マネージャーにボインの体操選手だろ?
   こっちは実戦で鍛えられた戦刃ちゃんや大神ちゃんがいるんだぜ? 楽勝っしょ」

これはどっちに同感してるんだよww
可愛いのほうか

十神「そうとも限らんぞ」

戦刃「……体育祭は 火器なし格闘術なし、だから
   走るだけなら……負けちゃうかも」

山田「相当ならしたバトルマニアとも聞いていますぞ 肉体強度は計り知れませんな」

十神「そうだ 対人戦闘ならまだしもこれは競技だ
   力の矛先は人間じゃなくコースや道具である場合がほとんど」

十神「これだから脳筋どもは」

大神「いま何と申した?」

十神いいいいいいいいいいいい!!

十神「」←気絶

江ノ島「脳筋言ったそばから脳筋丸出しのリプレイする御曹司とか
    ちょーウケうぷぷぷぅ!」

大和田「まぁ相手が誰かってのはハッキリしてんだろ
    オレらだってやりやすいぜ」

葉隠「だべ、みんな才能持ちだからな」

霧切「相手の長所は積極的に妨げるのよ? 苗木くん
  相手の短所は徹底的に突く に越したことはないわよ苗木くん」

霧切「逆に自分たちの長所を邪魔されないように気を配り、特に苗木くん
   自分たちの短所はみんなで補う、苗木くんの短所は私が補いつくすから安心してね?」

石丸「そうだな そういった方針で選抜していこうではないか!」

朝日奈「それにしてもこの綱引きとかリレーって
    名前は普通だけど所々、ルールが歯抜けしてたり改造されてるよね」

十神「既存のルールで縛ってしまえば、ごく一部の才能の発揮が困難になってしまう
   ――からだそうだ 自由度が高いというのも困りものだろうが……まったく」

十神の耐久力すげえwww
そうか・・・十神くんは超高校級のサンドバックだったんだね!

苗木くんの短所は私が補いつくすから安心してね?

苗木くんの短小は私が覆いつくすから安心してね?          









ごめん・・・吊ってくる

苗木(……セレスさん)

苗木「……あのさみんな! 少し提案があるんだけど――」


 3時間後――夜 希望ヶ峰学園>南地区
 寄宿舎>セレスの部屋


セレス(……先ほどは、少し取り乱してしまいましたわね)

セレス(わたくしがあのような失態を演じてしまうとは
    この学園にくるまでは、考えすら及びませんでしたわ)

セレス「……苗木君」

セレス(もし、本当にナイトをやめてしまったら……?)

セレス「――それでも、わたくしはセレスなのです
    私の思い描いた理想に、誰かの思想が入り込む余地はありませんわ」

 >PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi――


セレス(あら、内線電話……?)

セレス「こういった発達した文明の機器
    というのも、あまり好きではありませんが」

セレス「はい、セレスティア・ルーデンベルクですけれど」

苗木『――あっ、セレスさん こんばんわ』

セレス「!……ごきげんよう、苗木君」

苗木『――うんっ……えっと、体調は大丈夫?』

セレスの部屋にイタ電して
やすひろたえこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
って叫んで切りたい

セレス「別に、どうもありませんわ」

苗木『――良かった……それでね
   再来週の体育祭の話なんだけど』

セレス「出ませんわよ」

苗木『――ははっ、言うと思った』

セレス「苗木君にしては察しがよくて助かりますわ それで、用件は以上でしょうか?」

苗木『いやいや待って! まだあるから切らないで!』

セレス「はぁ……なんですの? 
    お昼時の問答を蒸し返す気はありませんわよ」

苗木『えっと、セレスさんが体育を嫌うのは
   ナイトを自分の手足として動かすことが目標だからなんだよね
   だからセレスさん自身は動きたくない』

セレス「はい 私が何もせずとも、万事を叶える従者がいてこそですが」

苗木『ソレでもいいから参加して欲しいんだ 体育祭の種目に』

セレス「矛盾していましてよ苗木君」

セレス「動くことを求められる場で動かなくていいとは」

セレス「まさか、運動能力を競う粗暴な場で
    わたくしに棒立ちを強要なさるおつもりですか?」

苗木『ううん、ボクがセレスさんを抱えて走るから
   棒立ちなんてしなくていいよ』

セレス「二人一組の競技、といったところですわね
    そんな都合のいい競技が果たしてあるのでしょうか」

苗木『いや、ただの二人三脚だよ ところどころルールが抜け落ちた』

苗木『選手2人の足首を結ぶ
   ヒモの長さについての規定が特にないみたいなんだ』

苗木『そのヒモをウンと長くすれば、抱えて走る位は出来ると思う
   ヒモの素材は突っ張ったり肌がキズつかないように
   伸縮性があって柔らかいモノにすればなんとか』

セレス「そんなムチャな事が……? 確認はとりましたの?」

苗木『うん 大丈夫だよ』

セレス「……ちなみに“抱える”というのは
    “背負いながら”走るという意味ではありませんわよね?」

背負ったらあぶねーべ

苗木『それが良いかなって思うんだけど、やっぱり難しいかな……』

セレス「そうですわね 美しくありませんし――やはりここは
    “横抱き”ですわね」

苗木『横抱き? それってどんな抱え方なの? セレスさん』

セレス「いわゆる“お姫様だっこ”ですわ」

苗木『お、おおおお姫様だっこ!?』

セレス「えぇ あら、不服ですの?」

苗木『め、滅相もないっ……けどさ……』

セレス「……かなりの腕力を要しますし 苗木君の負担も大きい
    ですが――その条件でよければ、参加いたしましょう」

苗木『ほ、ほんと!? セレスさん!』

セレス「アナタのナイトとしての資質を、直に感じられるチャンスですもの
    私が逃すわけありませんわ」

苗木『やった! じゃあ明日から練習ガンバろうね!
   みんなにはボクから言っておくよ』

苗木『おやすみ!』

セレス「まったく、わたくしからは切るなと言って
    自分からはすぐに切りますのね」

セレス「……おやすみなさい 苗木君」

練習……移動は全部お姫様だっことかか

>>62いい羞恥ぷれいだb

 次の日――昼 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド


苗木「よし! やろう、セレスさん!」

セレス「お手柔らかに」

苗木「とは言ったけどさ……ど、どこに触れて持ち上げたら」

セレス「膝裏を右腕でかかえながら、背中に手を回すイメージで
    やってみましょう」

不二咲「いいなぁ、苗木くん」

桑田「おっ、不二咲も抱っこされたい系女子? 俺がやってやろうか」

不二咲「あんなに力持ちで」

桑田「だっこしたい側かよ!」

 次の日――昼 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>“幸運科”教室


狛枝「積み荷という制約はあるものの
   紐の長さを調節して実質“単独”による徒競走を可能に、か」

狛枝「それなら連携も必要ないし、普通に二人三脚するより速いのかもね」

苗木「あとセレスさんって、まるでお人形みたいに軽くてさ
   積み荷って感じは全然しないんだ」

狛枝「華奢な身なりに違わずといった所かな――ところで苗木クン」

狛枝「敵のボクに戦略をバラしていいの?」

苗木「あ」

狛枝ああああああああああああああああああああ
オレだああああああああああああああああああああああああああああああああああ
一発殴らせてくれええええええええええええええええええええええ

 次の日――朝 希望ヶ峰学園>南地区
 寄宿舎>玄関前


苗木「今日も自転車で登校、っと」

苗木「ん? セレスさーん、おはよう!」

セレス「あら、ごきげんよう 珍しい所でお会いしましたわね」

苗木「今日はちょっと早めに学校に着きたくてね」

セレス「そうでしたか――」

セレス「ジー」

苗木「自転車が気になるの? セレスさん
   良ければ学校まで送ってくけど」

セレス「白馬にのって出直してきてくださる?」

苗木「」

セレス「白馬にのって出直してきてくださる?」
クソワロタ

 次の日――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>第78期生教室


不二咲「戦刃さん この場所のトラップが起動した場合の軌道
    イメージグラフィックを確認してもらってもいいかな?」

戦刃「……うん 入射角度も予測着弾点よく出来てると、思う」

不二咲「じゃあこの通りにプログラミングするね」

苗木「しょ、障害物競争の陣営は凄まじいね 色々と」

戦刃「私も……障害物を自作することになるとは、思わなかった」

不二咲「山田くんは別の意味でスゴいよ しょ、正直
    近寄りがたいかな」

山田「ちひろタンに言われるとネタぬきで泣きたくなりますな……」←左右田対策の同人誌制作

苗木「その気持ち分かるよ……山田クン」


 次の日――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>第78期生教室


苗木「室内での練習に向いた種目でよかったよ」

セレス「わたくしはずっと室内でもよろしいですわよ?」

セレス「突発的な砂煙を浴びるくらいなら、雨の湿気の方がマシですから」

苗木「ちなみに、体育着になるという選択肢は……?」

セレス「万が一にも有り得ませんわ」

苗木「だよねー」

そうだは障害物なのかやっぱり

 次の日――昼 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド


桑田「あー、マジしんど……舞園ちゃんと一緒じゃなきゃ
   速攻サボってるわ」

苗木「あはは……リレーの練習ってそんなにキツいんだ」

桑田「そりゃオメー 練習に縁がない男だぜ俺は
   肺活量ならアイドルにも劣るって」

苗木「その点でいえば、朝日奈さんも主戦力だね」

桑田「そだなー、本人は『水中の超高校級が陸上で張り合うなんて~』
   ってブーたれてっけどな」

舞園「桑田くーん! アポっちゃ――
   じゃなくてサボっちゃ駄目ですよー!」

桑田「うわ、なんだ今の悪寒」

アポったら死ぬわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

桑田「んじゃ、呼ばれてるから行くわ」

苗木「うん またね」

桑田「おう――舞園ちゃあああああん! 今いっくよぉおお!!!」

苗木「さ、さすがは野球選手 あっという間に向こうへ
   あ、コケた」

江ノ島「速いだけでもぉバテてちゃうとか ペース配分が苦手な
    男ってドン引きどころか絶望的すぎて、抱かれたくない超高校級ランキング
    堂々の第一位おっっっめでとー!」

江ノ島「ちなみに、統計は私とアタシとわたしとオレとボクと私様を対象に取りましたので
    寸分の狂いもありません ご心配なく」

苗木「アンケート立ち上げた本人が多重投票とかヒドいアンケートだね……
   じゃあボクが反対票いれとくよ……」

江ノ島(抱かれたくないに反対→つまりは抱かれたい
    →しかもアンケートの趣旨はNo.1決定→つまり苗木は世界で一番
    桑 田 に抱かれたい)

江ノ島「……」

妹様自演すごいですね^^:

苗木「ちょ、江ノ島さん? なんでそんなにボクから離れるの?
   まるで避けるみたいに」

江ノ島(希望もちだけでもアレなのに、ホモとかマジ天敵だわコイツ)

苗木「え、江ノ島さん? 希望なんてカケラもない
   冒涜的な勘違いしてない?」

苗木「ま、待ってぇえ! 江ノ島さーん! って逃げ足はやっ!」

 次の日――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド


苗木「よっと」

セレス「幾分かは小慣れてきましたわね」

苗木「そ、そうかな」

セレス「えぇ、走行中の抱かれ心地も及第点といっていいでしょう
    ちなみに――」

セレス「わたくしの抱き心地はいかがなモノでしょう」

苗木「ブッ」

録音すべき、そうすべき

セレス「聞きましたわよ? 今回の件に関しては
    九割方、苗木くんが持ち出した案であると」

苗木「あ、あはは……そう、だね……」

セレス「あぁ、私に仕えるだけでは飽きたらず
    よもやナイトはわたくしの柔肌に触れたいがために
    このようなエセ二人三脚を申し出たのですね」

セレス「とまぁ――そんな葛藤で、近頃は眠れぬ夜を過ごしておりますの」

>>89
左右田「ソニアさんいがいはちょっと・・・」

苗木「ぐ、ぐぅう……」

セレス「とまぁ――話を戻しますが、どうですの?」

セレス「苗木君が自ら望んで得た、わたくしの
    抱・き・ご・ご・ち・は……」

苗木「~~っ!!」

セレスの言葉責めぱねえwwwwwww

セレス「あら、答えられませんの?」

苗木「え、えっとね? セレスさん
   ボクは別にセレスさんを抱っこしたいから
   あんな提案をしたわけじゃなくてさ――」

セレス「クスッ――分かっておりますわ」

苗木「えっ」

セレス「アナタがそういった邪な動機で、わたくしの側にかしずく事など
    万が一にも有り得ませんわ」

セレス「苗木君はわたくしのナイトですもの」

苗木「も、もうセレスさんは、いつもそうやってからかって……!
   どこまで本気かが分かりにくいよ」

セレス「あら、主君に仕える事そのものが
    ナイトにとっては至上の目的、以前も申した通りでしょう?」

苗木「いや、そっちじゃなくてさ」

セレス「とにかく、キッカケが潔癖であれど
    わたくしを抱えた感想も清廉されたモノとは限りませんわ」

苗木「えっ」

セレス「再三にしてお尋ねしますが、どうでしょう
    わたくしの抱き心地は もう逃がしませんわよ?」

押して引いて押して引いて押しこむこの駆け引きはギャンブラーですわ

苗木「う、う……」

セレス「はい? 聞こえませんわよ?」

苗木「――嬉しくないわけないだろ!」

セレス「!?」

苗木「セレスさんみたいな美しさと愛らしさを兼ね備えた女の子を
   こうやって抱っこ出来るなんて幸せ以外の何者でもないよ!」

苗木「なにより架空に生きる天使か妖精ってくらい、浮き世だったその妖しさはなんなの?
   神秘的すぎるよ! なんなんだよ!」

セレス「あ、あの……苗木君……?」

苗木「儚げで、触れたら消え入ってしまいそうな危うさ! それでも
   こうして手をとれば、たちまち伝わるセレスさんの熱と感触が
   セレスさんの存在を伝えてくれるんだ!」

苗木「セレスさんは消えたりなんかしないって!
   生きた人なんだって!」

苗木「妖精のようだけど 妖精とは相反した、人ならではの魅力もいっぱい詰まってる
   そのギャップにボクはいつだって辛抱たまらないよ!」

セレス「あの、もう本当に……」

苗木は物理いがいにこんな情熱をひめていたんか・・・

苗木「抱き心地の良し悪しでいったらパーフェクトだよ!
   出来ればずっとこうしていたいよ! あぁ、時間なんて――」

苗木「この世から無くなってくれればいいのに!!!!」

セレス「」

苗木「はぁ……! はぁ……!」

苗木「……」


 >ワイワイガヤガヤ


苗木「……ん?」

罪木「み、澪田さーん あのお2人は何をやってるんでしょうか……」

澪田「しっ、見ちゃ駄目っすよ 詳しいイチャイチャ模様は
   あとで唯吹がモノマネしてあげるっす!」

罪木「はわわ! 澪田さんの手で前が見えませーん!」

西園寺「うっわ、なにアレ
    体育祭が差し迫ってるのに文化祭でする演劇の練習とか
    最近の下級生は月数もまともに数えられないのかなー」

左右田「つーかプロポーズじゃね……今の」

苗木「」

いい自爆だったぞセレスwwwwwwww

苗木「セ、セレスさん……」

セレス「い、いいから練習を再開して下さいな」

苗木「うん――ゆ、ゆっくり走るね」

セレス「……先程は軽率でしたわ 必要以上に煽ってしまって」

苗木「ううん、勢い任せだったけどさ……さっきのはボクの本心だから」

苗木「今回はセレスさんに言われたから頑張って答えたけど
   自分だけじゃきっと言えなかったよ」

苗木「背中を押してくれてありがとね セレスさん」

セレス「……はい」

セレス「本当、アナタは生まれながらにしてのナイトですわね 苗木君」

 それからというもの、長いと思ってた体育祭の準備期間は

 慌ただしくも楽しい時間となってあっという間に消化された。

 明日はついに本番。 勝てるかどうかは分からないけど、

 最後までセレスさんと色んなことを共有していきたいと思う。

 すべてが順風満帆、このまま何事もなく明日に繋がってくれれば――。

このまま何事もなく明日に繋がってくれれば

ヒドイフラグをみた

 ――朝 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>一階廊下


苗木「あっ、セレスさ――っんわぁ!」

セレス「はぁ、何をしてますの? こんな場所でつまずくなんて」

苗木「はは、ゴメンゴメン……ん?」

苗木「セレスさん なんかいつもと違うような……」

セレス「あら、お気づきになりまして?
    ソックスを少し長くしましたの」

苗木「へー、デザインが同じでも 長さは色々なんだね」


 >キーンコーンカンコーン

苗木「あっ、予鈴だ! セレスさん、行こう」

セレス「っ――!」

苗木「……セレスさん……?」

セレス「はい?」

苗木「やっぱり、どこか違うよ……もしかして
   体調が悪かったりする?」

セレス「いいえ? 苗木君の見当違いですわ
    先に参りますわよ?」

苗木「あっ、待って!」

苗木(気のせい、だったのかな――でも何だろう)

苗木(この胸騒ぎは――)

女の子の日・・・おっとだれかきたみたいだ

 数時間後――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>第一グラウンド


セレス「なにをたそがていますの?」

苗木「セレスさん そ、そんな風に見えた?」

セレス「落ち行く夕陽を遠目に眺めて微笑を浮かべていれば
    それはもうイコールでしょう」

苗木「あ、ははっ……何だか恥ずかしいな」

苗木「……ちょっと考えごとをしてたんだ」

セレス「明日のこと、でしょうか」

苗木「うん」

セレス「なるようになる、よりは
    なるようにすると考えるのが勝利の鉄則でしてよ」

苗木「うん、セレスさんの心得で 勝てるように頑張るつもりだよ
   ボク達は二人で戦うんだ」

苗木「一緒に勝とうね セレスさん」

苗木「……セレスさん?」

セレス「ハァ……ハァ……ぅ……くぅ……」

苗木「え……!?」

苗木「セ、セレスさん!!!!」

苗木「セレスさん? 聞こえる?
   ど、どうしてこんな――セレスさん! セレスさん――」

 10分後――放課後 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>保健室


苗木「……」

罪木「あ、あのぅ……苗木さん」

苗木「!――セ、セレスさんは……!?」

罪木「ヒ、ヒドい打撲と擦り傷ですぅ……膝周りだけ執拗に狙って
   鉄パイプのような物に、何度も殴打された痕があって……うぅう」

苗木「お、殴打された……?」

罪木「そ……それと、たぶん昨日つけられた傷だと思います……
   どれも比較的、新しく見えたので」

罪木「もう少し診ないと分かりませんけど……
   骨にヒビが入ってる可能性もあるので、しばらくは絶対安静ですぅ……」

苗木「……ありがとう、ございました セレスさんは今……」

罪木「お、起きてますよ……どうぞ――」

ソックス長かったのも傷をかくすためだな

セレス「……」

苗木「……」

セレス「聞かれる前に答えておきますけれど
    わたくしの体を痛めつけた愚図どもの素性は分かりかねます」

セレス「暗闇の帰り道で視界が不明瞭なうえに、頭には白と黒色の被り物
    全員が無言でわたくしを叩くものでしたので、性別すらなんとも」

苗木「なんで……」

セレス「まったく、何が目的であんなことをしたのか
    どんな過激派であっても、正当化に必要なプロパガンダの一つや二つ
    かかげて然るべきでしょうに」

苗木「……なんで、なんだよセレスさん」

セレス「……質問の意図が分かりかねますわ」

苗木「なんでもっと、早く教えてくれなかったの……?」

苗木「痛いなら痛いって、辛いなら辛いって 言ってくれればいいのに……」

苗木「そんな大事なことを隠して、なんになるのさ……!」

セレス「……いつも言っておりましてよ」

セレス「ナイトがわたくしの手足となって動くのが
    わたくしの夢であると」

セレス「その為、ナイトには常に万全のコンディションを
    保っていただかなくてはなりません 身も心も」

セレス「……今回は失敗しましたけれど
    ナイトの心を良好に保てるのなら、苦痛の一つや二つ
    いくらでも隠し通してみせましょう」

セレス「おわかりですか?」

セレス「わたくし一人を縛るだけに過ぎないケガで、ナイトの手足まで縛ってしまう」

セレス「――などという半端は、絶対にあってはならないのです」

セレス「このセレスティア・ルーデンベルクには」

セレス「さぁ、明日は共に頑張りましょう?
    わたくしはここに泊まることになっていますので、苗木君はおかえり下さいな」

セレス「警備員も動員してくれるそうなので、ご心配なく」

苗木「……ダメだ 棄権しよう、セレスさん」

セレス「する必要なんてありませんわ」

苗木「……」

セレス「はぁ、ケガを知られたのは予想以上の痛手になりそうですわね……」

苗木「セレスさんは明日、ずっとここで休んでるんだ」

苗木「あとはボクたちが何とかするから」

セレス「……! 待ちなさい! な、苗木君――」

セレス「……苗木君」

>>130最後の三行かっこよすぎわろた

 次の日――朝 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>合同大グラウンド


桑田「やっべ、もう疲れた……」

舞園「まだ開会式しか終わってませんよ」

苗木「……」

石丸「どうした、元気がないじゃないか! 苗木君!」

苗木「う、ううん――大丈夫だよ」

十神「放っておけ セレスの事は仕方ないとはいえ
   早々に戦力低下をもたらした戦犯者なんだからな」

石丸「そのような言い方こそ士気の低下を招くぞ!」

石丸「それに戦力なら大丈夫だとも 苗木君の早期連絡の甲斐もあって
   生徒会の方から一人、応援を出してもらえることになった!」

桑田「マジ? どうせなら可愛い女の子きてくんねぇかな」

石丸「名前はたしか“斑井一式”といったかな」

山田「おっ、中二チックで退廃的なネーミングですな
   我輩は興味ありませんが、二次元であれば
   美少女でも差し支え 斑井「誰が美少女だ」

斑井一式ってだれだよオリキャラ?→画像検索→うわあああああああああああああああああああああ

こんななのと組まされんのか苗木

大神「ただ事ではない気配を感じて来たが
   ……お主がセレスの代理か」

斑井「俺の名前は斑井一式だ 超高校級のボディガードをしてる」

霧切「待って
   こんな筋骨隆々というより筋肉ダルマと苗木君という名の天使を組ませてしまったら
   天使という名の苗木君の身体が弾け飛んでしまうわ! ていうか私が組みたいから退きなさい」

霧切「そう苗木君は私と組むべきなのよ! ここまで言えば分かるわね?」

斑井「なんだこの本音と建て前を逆転させるどころか
   混ぜ合わせて話す女は……」

十神「だまれ、行くぞ 借り物競争は第一種目なんだからな」

霧切「ちょっ、触らないで! 体操服のびるから!
   襟を引っ張りながら引きずらないで! 苗木くうーん!」

葉隠「よっしゃ行くべ!」

腐川「白夜様! 私も引きずってくださぁあい!」

苗木「……」

斑井「浮かねー顔だな 他のヤツらは応援に行ったぞ」

苗木「……うん」

斑井「まぁ、テントの中って落ち着くよな この学園に来る前は
   俺も毎年、ここでサボったもんさ」

苗木「……生徒会の人って、ほんとに体育祭に出られないんですね」

斑井「まぁな、俺みたいなのは稀だ」

斑井「学園が認めたはいいけど
   立候補する生徒会のメンバーが他にいなかったから
   出たかった俺が消去法で選ばれたんだからな」

弐~八式「「「「「「「がんばれー」」」」」」」

苗木「……体育祭が好きなんですね」

斑井「やつg……お前になら話しても良いか」

斑井「好きだぞ 八つ子全員がジャンケンして
   ここに来たがる位には」

斑井「空気というか、一体感? 結束? みたいなのがな
   メシも無性に美味いし」

斑井「そういうのって、体育祭以外でなかなか味わえるものじゃないからな」

苗木「……」

八つ子全員がジャンケンして


なにそれ可愛い

>>148
ヤバイwwwwwwwwwジワジワくるwww

苗木「ボクも、分かります」

苗木「……分かって欲しい人がいたんです」

苗木「分かち合いたくて、ここまで来たのに……」

苗木「ボクはもう、どうすればいいか……」

斑井「知らねーよ」

斑井「知る気もねーし 知ったとしても、お前が言うソイツのこと
   耳にしただけの俺が、まともな返事できるワケねーだろ」

斑井「答えを決められんのは、じかにソイツを見て
   ソイツの言葉を聞いてきたお前しかいねーよ」

斑井「それで無理なら、お前ら二人で決めれば良いんじゃねーのか」

苗木「……あ」


 斑井さんが指をさした先にある本科の校舎

 開け放たれた一枚の窓のそばには、風にリボンを揺らすセレスさんが佇んでいて

 何故か、無性に悲しそうな顔をしているように見えた――。

 セレスさん……!

斑井「……あー 行っちまったよ……」

斑井「なにやってんだオレは」

斑井「こりゃもう競技にでれないかも分からんね……」

斑井「出たかったなぁ……(´・ω・`)」

 ――同刻 希望ヶ峰学園>東地区
 本科敷地内>合同大グラウンド>体育倉庫前


江ノ島「……」

戦刃「いいの?」

江ノ島「はぁ? 人違いじゃね? 私は飯野(いいの)さんじゃなく
    江ノ島盾子ちゃんなんだよ! 一文字もあってねーんですけどー
   エノクマジュンコのがまだマシなレベル」

戦刃「……だって、一昨日 セレスちゃんを襲わせたのって
   盾子ちゃんでしょ?」

江ノ島「襲わせたとか人聞き悪っ 襲わせてあげたいと思い立った果ての
    限りなく清らかな悪行なんだけど? 正義の反対は
    また別の正義なら周りに回ってもはや正義なんだけど?」

江ノ島うぜえええええええええええええええええええええええ

戦刃「うぅ……盾子ちゃんのイジワル……」

江ノ島「飽きたしめんどいからネタバラシしちゃうと
    苗木とセレスティアなんちゃらの仲をよくするためのキューピット行為だから
    無視してどうってことないっつの」

江ノ島「この先の展開なんか簡単にお見通しなんだから」

戦刃「……仲良くさせて、なにか得があるの?」

江ノ島「そりゃあ希望でブクブク肥え太った家畜を
    食いちぎった方が絶望させ甲斐があるってもんでしょ?」

戦刃「……」

江ノ島「苗木が好きな残姉ちゃんの取り分は
    後々に考えてあげるから 今は我慢しなよ?」

江ノ島「セレなんとかに嫉妬して、セなんちゃらの筋肉や処女膜ブチやぶったら
    残姉ちゃんのも道ずれだからね?」

江ノ島「まぁ苗木と私のイヤがることなんか残姉にできっこないっか
    うぷぷぷ、うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」

戦刃「……」

戦刃(……頑張ってね 苗木くん
   私は、応援してるから)

 五分後――朝 希望ヶ峰学園>東地区
 本科校舎内>二階廊下


苗木「セレスさん!」

セレス「苗木君……? どうしてここに」

苗木「あの、ボク……」

セレス「ちょうど良かった 聞いていただきたい事がありましたの
    部屋に何度も電話しましたのに、無視するなんて ヒドい人ですわね」

苗木「あ、ソレは……ゴメン……でもね、セレスさん――」

セレス「苗木君」

セレス「今は、聞いて下さいませんか?」

苗木「……うん、分かった セレスさんの言葉を聞かせてほしい」

セレス「ありがとうございます」

セレス「……二週間前」

セレス「アナタがわたくしに、この催しモノへの参加を促して
    わたくしが参加を決めた時……」

セレス「初めに言った、ナイトを見定めるという意義だけが
    わたくしを動かしていましたわ」

セレス「そして、今この時に至っても
    その想い以外の何かが芽吹くハズはない」

セレス「そう思っておりました」

セレス「ですが、苗木君と一緒に過ごすうちに わたくしは段々
    嫌い嫌いでどうしようもなく……捨て去ったはずの
    “普通”に、抵抗がなくなっていきました」

セレス「“夢”に生きるわたくしが、このセレスティア・ルーデンベルグが――
    でも、今になって思えば それはある意味、当然といえるのでしょう」

セレス「わたくしがセレスになったそもそものキッカケは
    “自分”を好きになりたかったから」

セレス「普通だった安広多恵子を好きになりたいがために
    セレスという夢で自らを着飾ったのですから」

セレス「でも――上手くいかないものですわね?」

苗木「セレスさん……」

セレス「結果は見ての通り、いくら名前を偽ってみても
    豪華な衣装を身に着けてみても、わたくしは多恵子を好きになりきれなかった」

セレス「それどころか嫌いになっていったのだから、笑い種ですわ」

セレス「苗木君……今一度、お願いします」

セレス「わたくしは、ワタシを好きになりたい」

セレス「苗木君とであれば、叶えられる気がするんです」

セレス「だから、ですからどうかっ――」

苗木「――わかった 行こう、セレスさん」

セレス「……! ホントに、ですの?」

苗木「うん 一緒に出場しよう――
   ボクもセレスさんと競技に出たい」

苗木「まずは、出来る限りセレスさんの体に負担がかからない方法を
   罪木さんや運動部の人に聞く所から始めよう
   と、その前に――」

苗木「涙の跡、拭うね ハンカチで良かったらだけど」

セレス「グスッ……あら、気が利きますのね――どうぞ」

苗木「じゃあ失礼して……セレスさん?」

セレス「何でしょうか?」

苗木「こんなこと言ったら怒るかもしれないけどさ
   ボクは早速好きになれそうだな 普通のセレスさんも」

セレス「~~っ!」

苗木「いつものポーカーフェイスもいいけど、さっきの感情的な顔が
   その……グッときた うん」

セレス「レ、レディの泣き顔を見た感想としては
    最低ランクですわ……! E-に格下げですわね」

苗木「うっ」

セレス「……ふふっ、冗談ですわ 行きましょう?
    わたくしのナイト様」

苗木「……うんっ」

苗木「じゃあ、持ち上げるね――痛くない?」

セレス「えぇ、これくらいへっちゃらですわ……」

苗木「辛かったらいつでも言ってね セレスさん」

セレス「はい……苗木君」

苗木「なに?」

セレス「一度だけ、安広多恵子と呼んで下さいな」

苗木「……いいの?」

セレス「えぇ」

苗木「た、多恵子……?」

セレス「……」

苗木「痛っ! 無言で頬つねらないでぇー!」

セレス「い、いきなり下の名前で呼ぶからですわ!」

苗木「で、でもセレスティアって外国だと下の名前だよね?
   その慣れだよ! 他意はないからつねるのをやめてぇー!」

さるったから携帯に


セレス「ま、まぁ……驚いただけで不快ではありませんでしたし
    これで良しとしましょう」

苗木「あ、ははっ……良かった……なんかさ」

セレス「はい?」

苗木「ボクもセレスさんも気分が浮ついてるよね
   このまま行っても、石丸君を説得できるのかな」

セレス「問題ありませんわ よくも悪くも実直なお人柄でしょう?
    いつも通りの顔で騙くらかしてみせます――なにより」

セレス「苗木君に沢山の素顔を見せてしまいましたもの」

セレス「そうして養った英気を無駄にするのは、非効率ですわ」

 それからボクは、設営された自陣のテントにセレスさんを寝かせ
 色々な人に声をかけた

 まずは斑井さんへゴメンナサイ。 といっても

 後々ある騎馬戦に参加できることになったらしく

 二人三脚より楽しそうだと逆に喜んでいた。

 次に仲間たちへの復帰報告をした。

 運動部のみんなに対策を聞いて周りながら
 これからの相談もついでに行う。

 霧切さんは相変わらずだった。

 最後に、罪木さんに色々と話を聞いてもらった。

 だけのつもりが、わざわざこっちの陣地まで来てくれて

 体育祭が終わるまで、セレスさんの経過を見守ってくれた。

 ありがとう罪木さん。

 でも『競技以外の移動には車椅子を使わなくちゃダメですぅう!』

 って注意された、ごめんなさい……。

 そんなボクにとって色々と思い出深い体育祭から、
 もう一週間の時が過ぎようとしていた。

 結果は惜しくも準優勝(といっても、元々2チームしかないけど)

 午後の部までは勝ち越していたはいた――でも

 ボクとセレスさんの二人三脚でイーブンにまで追いつかれ
 後のリレーでついた黒星で決着となった。

 超高校級といっても過言じゃない優勝トロフィーは、

 素人目のボクからみても、喉から手が出るほど欲しい逸品だったけれど

 打ち上げで寄った食堂で、約10年ぶり(らしい)の餃子をいただくセレスさんや

  怪我が大事に至らなかったのも手伝ってか、いつもよりハシャいで見えたセレスさん

  最後には疲労でウトウトするセレスさん

 そういった、今までにはない新しいセレスさんを発見できたことが
 ボクにとってはトロフィーよりも価値がある出来事だったから――。

 そして今――朝 希望ヶ峰学園>南地区
 寄宿舎>玄関前


苗木「セレスさーん! おはよう!」

セレス「21秒の遅刻ですわ これからは毎朝、共に登校するというのに
    先が思いやられますわね」

苗木「ぬ、抜け目ないなぁセレスさんは――あ、足の包帯
   もう取れたんだね」

セレス「えぇ、完治しましたわ これで思う存分
    苗木君の自転車を足に使えます」

苗木「足って……セレスさんにしては俗な言い回しだね
   じゃあはい、後ろにどうぞ」

セレス「では失礼して」

 セレスさんが座ると同時に、自転車にかすかな重みが加わる。 この重みが

 体育祭以来、少しづつ希薄になりつつあるセレスさんの感触だと考えると

 ペダルを漕ぐ足にも自然に力がはいった。

苗木「今日は涼しいね」

セレス「まさか、今日は扇がなくて済む――などとお考えですか?」

苗木「ははっ、バレた?」

セレス「エスパーでなくとも容易く看破できますわ」

 あっ、若干ドヤ顔で笑ってるな。

 あれから少しだけ和らいだポーカーフェイスのおかげもあって

 ボクは最近、セレスさんの声色だけで、
 今している表情が分かるようになっていた

 嘘を言ってるかどうかも、なんとなくだけど――

セレス「わたくし位の格好となると、いつもの扇子でも暑いくらいですもの」

苗木「ならさ たまには普通の団扇も試してみない?
   意外と涼しいかもしれないよ」

セレス「……」


 空を仰ぐと青い空。 見る人によっては普通で、とてもありふれた景色だ。

  不意にセレスさんがクスリと笑った。

 ボクは――きっとセレスさんも空を見上げている。

 見てはいないのに、分かってしまう。

 そんな不思議な連帯感が、いまのボクたちを包んでいた。

セレス「えぇ、悪くない案でしてよ わたくしのナイト様
    だって――」

セレス「アナタと一緒であれば……」

セレス「現実味のない夢も、どんなに普遍的な出来事も――全部」

セレス「夢模様に変わる筈ですから」


おしまい

皆さん乙でした! 餃子はチーズ入りが一番だとおもいます!

というわけで
ネタバレだらけだった今スレ最大のネタバレをいま解禁します! ――それは

スレタイは二人(ふたり)じゃなく二人(ににん)って読むんだよ!

もう! つぎ間違えちゃオシオキだからねプンプン!
でもキムチ入りの餃子も好きです!

 ではおやすみなさい!

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