少年「トイレに死神がいた……」 (908)

少年「……っ、……ふぉぅ」ギュルルル…


少年「……ふぅ」ジャゴォォーー


少年「スッキリしました……」

少年「さっさと、手を洗って戻りましょうか」パタン

——————————
サーッ…

少年(ああ……水が冷たい)パチャパチャ

少年(それにしても)パチャパチャ

少年(誰もいないトイレというのは、中々怖いですね……)パチャパチャ

少年(目の前の鏡が、特に不気味ですし……)キュッ

少年(鏡に知らない人が映っていたりして……)チラッ

黒い男「よう」

少年「」

少年(ちょっと……え?)

黒い男「……」

少年(ちょっ、待っ、え?)

黒い男「……どうした?」

少年(落ち…落ちつこう)

少年「ど、どどどちら様ですか?ふ、不審者ですか?」

黒い男「……初対面にいきなり不審者って聞くか?普通」

少年「すす、すみません。で、あなたは?」

黒い男「俺か?俺は死神ってんだ」

少年「……はい?」

死神「もう一回言おうか?俺は死神だ」

死神「どこからどう見ても死神。また、黒いサングラスがとても似合う、格好良い死神だ」

少年「……自分で言いますか?普通」

死神「事実だしな。自他共に認める、渋くて格好良い死神だ」

少年「僕は認めてませんよ」

死神「お前が認めなくても、他の奴らが認める。残念だったな」ニヤリ

少年「どうでもいいですよ……とりあえず、一度叫ばせて下さい」

死神「いきなり何だよ。別に構わんが、まさか俺に嫉妬したからか?」

少年「違いますよ……ではお言葉に甘えて……」スウッ


少年「不審者ーー!!」ギャー

死神「本当に失礼だな、お前」

少年「事実じゃないですか。 見ず知らずの小学生に話しかける怪しい大人を、不審者と言わず、何と言いますか?」

死神「死神」

少年「言いませんよ」

死神「言うだろ……じゃあ逆に問うが、お前本当に小学生か? 今のまくし立て方とか、丁寧語とか、小学生とは思えないのだが」

少年「小学生ですよ」

死神「見た目はな。 だが中身は?」

少年「小学生ですよ、どこぞの探偵じゃああるまいし」

死神「でも真実は」

少年「いつも一つですよ。 僕が小学生で、あなたが不審者という、ね」

死神「だから不審者じゃねえよ」

少年「にしても、何故助けが来ないのでしょうか」

死神「お前の声が届いてないんだろ、多分」

少年「な……何で」

死神「今は授業中だし、ガキ共が騒いでいる状況だろ。 それに何より、お前、声小さい」

少年「そんな……僕は一体どうなって」
死神「不審者じゃないから危害は加えねーよ。 さっさと教室戻りな」

少年「(よかった……)じゃあ戻ります」

死神「あ、信じてないようだから、もう一回言う。 俺は死神だからな」

少年「はいはいわかりました。 では」

死神「チッ……絶対信じてねーなあの少年」

——教室——
ガララ……

先生「あら少年君。 おなかは大丈夫?」

少年「はい、大丈夫です」スタスタ

同級男A「あっ! ウンコから帰ってきやがったー!」

同級男B「クソくせぇーーっ!」

先生「こら!静かにしなさい!」

ギャーギャー
ギャーギャー

少年「……」ガタン

霊能女「あら、お帰り」

少年「やあ……疲れましたよ、色々な意味で」

霊能女「何かあったの?」

少年「自称死神の不審者に遭遇しました」

霊能女「えっ」

死神「だから不審者じゃねえよ!」

少年「」

霊能女「えっ」

少年「何で教室の後方に、黒いサングラスが似合う不審者がいるのでしょうか」ヒソヒソ

死神「それは良い意味で捉えていいのか?」

霊能女「少年君、あの人が今言った……?」ヒソヒソ

少年「はい。 本当に死神かどうかは、分からないのですが」ヒソヒソ

霊能女「……本物、みたいね。 それっぽい力を感じるし」チラ

少年「えっ」

霊能女「え、気づかなかった?……それに」ヒソヒソ

先生「そこの2人ー、前を向きなさーい」

同級男A「おばけコンビヒューヒュー!」

同級男B「ヒューヒュー!」

霊能女「……みんな見えてない、でしょ?」ヒソヒソ

少年「……ですね」ヒソヒソ

死神「良い意味で捉えていいんだな……?」

食事してましたスイマセン……
誰ひとり見てないだろうな、と思ったら、沢山の嬉しいレスがあって手がプルプルしてますスイマセン……

落ち着いたら続きをゆっくり投下します

——放課後、教室——
ワイワイガヤガヤ

少年「……それで、死神は本当に死神ですか?」

死神「いい加減しつこいぞ少年。 死神は死神だ」

霊能女「トイレに死神か……」

死神「トイレの死神様、ってか?やかましいわ!」

少年「何と言いますか、力が無さそうな死神様ですね」

霊能女「そこらへんにいる霊にも負けそうな死神様ね」

死神「トイレに居たのは偶然だし、霊にも負けそうな死神は死神じゃあないだろ!糞だろ!」

霊能女「トイレの守護神とか?」

少年「誰ですかそれ」
死神「聞いたことねーよ、誰だよ」

霊能女「適当に言っただけよ」

少年「あ、そうですか」

霊能女「冗談はさておき、死神さんは何故ここに?」

死神「ああ、そりゃ勿論仕事だよ」

少年「仕事?」

死神「この資料に載っている人間達を直接見て回って、生かすか[ピーーー]かを決める仕事だ」

少年「なるほど」

死神「ん? 怖がらないのな」

少年「そういう小説を読んだことがあるんですよ。 それに、“死”を体験した事なんてないので、稚拙な想像しか出来ませんし」

死神「“稚拙”を使うガキが稚拙な想像しか出来ない、ってどういう事だよ」

霊能女「死神さん」

死神「ん?」

霊能女「そういうことになっているのよ……」

死神「そうか。 じゃあしようがないな」

?「少年くーーん!」

少年「ん? ああ、幼馴染ですか」

幼馴染「はい!幼馴染です! 少年くんと霊能女ちゃんは、またおばけさんとおはなし?」

霊能女「一応、ね」

幼馴染「どんな人?どんな人?」

少年「黒いサングラスを掛けた阿部寛似の、自称渋くて格好良いお兄さんです」

死神「自称を訂正しろ。 自他共に認めるに修正しろ」

幼馴染「……よく分かんないけど、すごい人なんだね」

霊能女「簡単に言うと、自分に酔ってる、黒いサングラスを掛けた、トイレの阿部お兄さんね」

死神「色々間違っているぞ。 間違いありすぎて新しい世界が広がりそうだ」

幼馴染「そんなことより、一緒に帰ろうよ! 霊能女ちゃんも!」

死神「そんなことって……」

少年「そうですね。 そろそろ日が暮れそうですし」

霊能女「私で良ければ」

少年「……という訳で、僕たちは帰りますね」

死神「……そうか。 じゃあまた機会があれば」

霊能女「そうね。 いつまた会えるか分からないけど」

幼馴染「死神さん! 見えないけど、さよーならー!」フリフリ

死神「じゃあなぁ!ガキ共!」



死神「……じゃあ、トイレに戻るか」

——トイレ——
シー…ン

死神「……よう、一日中トイレに篭もっても、現実は変わらない。 何したって死ぬんだ」

?「……」ガタガタ…

死神「久しぶりだぜ。 会う前から『こんな人間、必要ないな』、って思ったのは」

?「……」ガタガタ…

死神「いつものように、この学校を含めた十数校の、至る所に仕込んだ盗撮映像を鑑賞して」

?「……」ガタガタ…

死神「気色の悪い息遣いで、舐め回すように画面を凝視して」

?「……」ガタガタ…

死神「絶頂に達してれば良かったじゃねえか?」

?「……」ガタガタ…

死神「……ちょいと表現がおかしかったか。 別にどうでもいいが」

?「……」ガタガタ…

死神「ああ、ちなみに、共犯者共もみーんな、死を待つのみみたいだぜ。 死神さん達満場一致」

?「……!」ビクゥッ

死神「別に、俺達は子供なんか好きじゃあないんだが、盗撮ってのはまずいだろ……」

死神「ましてや誘拐して性的暴行なんて論外だ」

死神「……世の中の為になる人間なら、生かす。 どうでもいい人間は、おさらば」

死神「こん中にゃ、勝手な主観が入ってくるけども。 そういうことになってる以上、諦めて受け入れな」

ペド「……」ガタガタ…

死神「あと、此処はお前の居場所じゃあない。 さっさと帰りな“不審者”さんよ」

ペド「……」ガクガク…

——帰宅——
バタン

少年「ただいまです……」

ヤッパリウワキナンジャナイノ!?
チガウ!ソンナワケナイダロ!

少年「……また、ですか」ゲンナリ

少年(懲りないなぁ、父さんも。 母さんも)

少年(いつか、死ね!とか殺す!とか言い出しそうだ)

少年(さっさと部屋に避難しましょうか……)

——自室——
ペラ…

少年(部屋が2階で良かった……1階の口論が聞こえにくいおかげで、静かに読書できます)ペラ…

少年(うん……この“砂漠に〜”のくだりは、いつ読んでもいいですね)ペラ…

少年(……)ペラ…

少年(……確かに、目の前の人間を救えないのに、世界を救うなんて出来ないですよね)ペラ…

少年(国のトップは、色々な人を救い続けているのでしょうか?……)ペラ…


少年(……僕は、人を救い続けることが出来るのでしょうか?)

僕は本を読み続けた。
この小説は、今までに何度も読んでいた小説だったが、飽きたことはない。
その後も黙々と読み続け、読み終わった頃には、既に日付は変わっていた。
小説を棚に片づけ、汗の染みが変色しているベッドに横になる。


ふと考える。
小学校も残り2ヶ月程で終わり。
その残りの2ヶ月ちょっと、僕はどう過ごそうか。

いじめられているクラスメートを助ける?
霊能女さんと一緒に、いつも通り霊と交流する?
幼馴染と将来の夢について語り合う?
それとも、今日会った死神について、もっと知ってみる?

約2ヶ月。 長いようで短い期間。
この期間で、僕の世界は広がるのか?広げられるのか?
……明日から、何をしようか。


そんなくだらないことを考えているうち、「ハハッ」と睡魔が僕を誘惑してきた。
僕は抵抗する暇もなく、夢の王国の入口を通過。
そのまま、どんな落下系アトラクションも真っ青の速さで、僕は眠りに落ちていった。

今日はここまでとさせていただきますです。

初めてSSを書いたんですが、レスが付くってヤバい、かなり嬉しいですね…
まだ体がブルブル震えてますorz

あと、稚拙な文でごめんなさい。 でも、頑張って完結させたいと思ってます。

読んでくれた皆様、ありがとうございます。 そして、今後とも宜しくお願い致します。

一応こてす


夢を見た。多分、未来の夢。

僕と見知らぬ男女達が、笑顔でぜんざいを食べている。
そんな平和な夢。

ひ弱そうな男子高校生が、黒く奇妙な化物から逃げる。
そんな恐ろしい夢。

真っ白な空間。そこにとある男女が、何処にでも居そうな大学生の目の前で、キスをする。
そんなよく分からない夢。

そして、おじさんがナイフ片手に、他人に訴えかけている夢。

変な夢だ。言うなれば、カオスな夢だ。
ただ、これらはいつか起こりそうな気がした。

でも起きたらこんな夢なんて忘れてしまうに違いない。
それに、未来のことを知ったところで、今を生きる僕には関係ないことだ。


それでも、ナイフのおじさんが言った、
「世界を変える為ならば!私は!天変地異をも起こして見せよう!」
だけは、忘れられそうにない。


——霊能女・自宅——

霊能女「……ん」ムクッ

霊能女「んんーっ、……おはよう」ノビーッ

シー…ン

霊能女「あら、珍しい。 霊が全く居ない」

霊能女「まあ、いっか……顔洗ってきましょうか」スタスタ


——————

——霊能女・居間——

霊能女「おはよう」スタスタ

霊能父「お、起きたか。 おはよう。 今日は休みだから、ゆっくりできるな」

霊能女「ああそっか。 ん、お母さん、髪にタオル巻かなくていいの?」

濡女子「おは。 今日はそこまで濡れてないから、巻かなくてもいいのよん」

霊能父「……それは濡女子にとっちゃ、中々ヤバいんじゃないか?」

濡女子「そうでもないみたいよん。 ていうか結婚してから、この要素が邪魔でしかたがないのよん」

霊能女「それは濡女子としてどうなのよ……」


濡女子「それより、何食べるのん?」

霊能女「んー、食パン」

濡女子「分かったわー。 じゃあ適当に座っててー」

霊能女「はーい」スチャ

霊能父「霊能女。 今日は少年君と遊ぶのかい?」

霊能女「うん。 多分、他にもいると思うけどね」

霊能父「そうか。 じゃあ日が暮れる前にちゃんと帰ってくるんだぞ?」

霊能女「暮れても、霊達がついてるから大丈夫でしょ」

霊能父「それでも、だよ」

霊能女「あーわかったわ」


濡女子「はい、出来たよん」

霊能女「ありがと、お母さん」

——霊能女・玄関——

霊能女「じゃあ、行ってくるね」ガチャ

濡女子「はーい行ってらっしゃーい。 ん、そうだ、霊能女ちゃん」

霊能女「なに?」

濡女子「公園の近くに、古びた家あるじゃない?」

霊能女「うん、人が住んでなさそうな」

濡女子「そ。 劇的にビフォーアフターしそうな所」

霊能女「あそこがどうしたの?」

濡女子「いや、遊ぶならついでに行ってみたら?ってことよん」

霊能女「気が向いたらね」

濡女子「絶対に『なんということでしょう』って言うわよん? 絶対」

霊能女「絶対に言わないわ。 一応期待はするけど」

濡女子「ふふ。 じゃあ、行ってらっしゃーいよん」

——公園——

霊能女「おはよう」スタスタ

少年「おはようございます。 みんな今来たところです」

幼馴染「一番早かったのは私だからね!」フンス

友人「俺は二番目だぜ!」

霊能女「あら、そうなの。 本当に元気ね」

幼馴染「霊能女ちゃんは元気じゃないの?」

霊能女「大丈夫、元気よ」フフッ


友人「少年はちゃんとクソのにおい取ったかー?」ププッ

少年「しつこいですね……朝しっかり体を洗いましたよ」

友人「朝シャン、ってやつかーすげー」

霊能女「何がすげーなのかしらね……」

友人「あ、後さ。 借りてた本返すよ。 ちょっと難しかったけど、中々感動したぜー。 魚の話のくせに」

少年「そうですか。 確かに魚の話のくせに感動しますよね」

幼馴染「どんな話ー?」

少年「人間臭い魚達の話ですよ」
友人「流れに身を任せる魚達の話だよ」

幼馴染「ふーん」

霊能女「興味なさそうね」フフッ


霊能女「少年君、さっきからあそこのトイレから、変な気配を感じるんだけど」

少年「はあ……、トイレ、ですか」

霊能女「試しに見に行って貰える?」

少年「分かりましたけど……大体予想つきましたよ」スタスタ

友人「お、トイレ行くのか? ついてっていいかー?」

少年「いえ、すぐに済むので待っていて下さい」

友人「分かったー」


スタスタ…

少年(僕の予想は……)スタスタ

少年(黒いサングラスを掛けた)スタスタ

少年(自称、自他共に認める)スタスタ

少年(阿部寛似の)スタスタ

少年(渋くて格好良い、)カコカコ

少年(ムーンウォークの練習中の)ピタッ

少年(死神!)クルッ


死神「おお、少年。 また会ったな」スイー


少年「やっぱりですか! でも本当に、ムーンウォークの練習をしてるとは!!」

午前の投下はここまでです。

午後も少しは投下したいのですが、もしかしたら出来ないかもしれません…
そのときは明日の夜にさせていただきます。

書き溜め出来ればなぁ…


今日も読んでくれた皆様、ありがとうございました。

——公園、トイレ——

少年「何でこんな所にいるんです? ストーカーですか?」

死神「相変わらず失礼だな、少年。 しようがないんだ、今日も仕事なんだよ」

少年「トイレに居ることが仕事ですか。 言うなれば、トイレ警備員ですかね」

死神「邪魔なだけだよなそれ。 気まずい空気になるに違いねえ」

少年「ただでさえ、トイレって嫌な空気ですしね」

死神「でもそりゃあ換気すればいいだろ」

少年「分かってますよその位」

死神「そうかい。 とりあえず今は仕事中だ。 さっさと連れの所に戻りな」

少年「言われなくても、行きますよ。 では」

死神「おう、じゃあな」


少年「お待たせしました」スタスタ

友人「遅いぞ! 早く遊ぼうぜ!」

少年「はいはい」

幼馴染「何するー?」

霊能女「ん……じゃあ、あそこの古い家に行ってみない?」

友人「いいなそれ!」
幼馴染「おー! 行ってみよ行ってみよ!」
少年「構いませんよ」

霊能女「決まりね」

友人「俺が一番だー!」ダッ

幼馴染「いいや、私だー!」ダッ


霊能女「……で、どうだった?」スタスタ

少年「それは勿論、」スタスタ

少年「トイレには警備員、ではなく死神がいましたよ」スタスタ

霊能女「そう。 でも何であんな所に……?」スタスタ

少年「仕事だから、だそうですよ」スタスタ

霊能女「釈然としないわね……」

——古びた家前——

友人「俺いちばーん」ヘラ

幼馴染「追いこせなかったよお……」ハァ

友人「俺に勝とうだなんて100年早いわー!」ハッハー

幼馴染「うー! 悔しい!」ムカ

スタスタ…

少年「……2人共、速いですよ……」

霊能女「逆。 私たちの方が遅いんじゃない?」

友人「そりゃあ、歩いてたら遅いに決まってるぞー」

少年「確かにそうですね。 いやあ、若いって羨ましいです」

霊能女「……少年君、あなた本当に小学生?」

少年「僕は小学生ですよ、もう少しで中学生になりますが」

幼馴染「うーん、同い年とは思えないなぁ……」

友人「それがコイツだよ」

少年「僕ですー」

友人「お前だったのか」

少年「暇を持て余した」
友人「神々の」
霊能女「あーはいはいそういうのいいから」

友人「チッ……」

ソーッ

少年「じゃあ、開けますよ……」ヒソヒソ

友人「いや、俺が開ける! 一生のお願い!」ヒソヒソ

霊能女「随分勿体ない使い方ね」ヒソヒソ

幼馴染「そんなのどうでもいいじゃん……」ハァ

少年「……分かりました。 ではお願いします」ヒソヒソ

友人「サンキュー!」

幼馴染「しーっ! 声大きいよ!」ヒソヒソ

霊能女「別にいいんじゃ……」ヒソヒソ


友人「せー……」ガチャ


友人「のっ!!」グワッ

霊能女「……!」
幼馴染「おお!……?」
少年「……え」


おとなしげな青年「…………」ジッ


ガキ4人「…………」

おとなしげな青年「……不法侵入、ダメ、絶対」ジッ

少年「あ、ごめんなさい」


友人「あれ、川のお兄さんだ」

幼馴染「川のお兄さんだ! こんにちは。 何でここにいるの?」

おとなしげな青年「こんにちは……ここ、僕の家。 ……川男でも、家は持ってるよ」

霊能女「川男? へえ、そうなの」

川男「そうだよ……君、濡女子さんとこの、娘さんだよね?」

霊能女「え、お母さんと知り合い?」

川男「まあ、ね……」

幼馴染「そういえば、霊能女ちゃんのお母さん、どういう人なの?」

友人「それ、俺も気になる!」

霊能女「まあ、いつも湿ってるのが特徴かしら」

友人「どういうことだ?」

少年「そういうことですよ」

幼馴染「意味わかんないよー!」

霊能女(さすがに、“妖怪”とは言えないわ……)ハァ


川男「まあいいや……みんな、上がっていいよ」

少年「え、いいんですか?」

川男「別に……構わないよ」

少年「ありがとうございます。 じゃあ、おじゃまします」

幼馴染「おじゃましまーす!」

霊能女(……お母さん、なんということでしょうって、言わないわよ絶対)


——川男宅・居間——

川男「はい……お茶だよ」コトッ

少年「ありがとうございます」

川男「ん……どういたしまして」

幼馴染「川男さん、手を洗いに行ってもいい?」

川男「いいよ……ここを出て、すぐ左だから」

幼馴染「ありがとー!」タタッ

霊能女「ああ、私も」
少年「では、僕も」

友人「俺はいいやー」

少年「駄目ですよ、ちゃんと手を洗わなくちゃ」

友人「へいへーい」タタッ


——川男宅・洗面所——

ジャー

少年「そういえば、『行ってみよう』という話だったのに、結局家の中まで入っちゃいましたね……」

霊能女「そうね」

友人「別にいいだろー。 じゃ、お先に戻る!」

幼馴染「ちゃんと手洗ったの?」

友人「あーらいましたー」ベーッ

幼馴染「むっかつくー! 待てー!」ダッ


少年「子供ですね」クスッ

霊能女「実際子供なんだけど……」

少年「まあ、とりあえず、手も洗ったことですし、居間に戻りますか」

霊能女「そうね。 っと、ちゃんと水止めないとね」キュッ

少年「偉いですねー」

霊能女「……馬鹿にしてるわね、少年君」


——川男宅・居間——

川男「お茶だけじゃ物足りないだろうから……ぜんざいも、どうぞ……」

友人「おお! うまそー!」

幼馴染「川男さん、ありがとーございます!」

川男「ん……どういたしまして」

少年「頂きます……んん、おいしいです」

霊能女「そうね。 とてもおいしいわ。 お茶も」

幼馴染「あー、あったかーい……外寒いから、ホントにあたたまるぅー」ポー

友人「訂正する! 『おいしそー』じゃなくて『メッチャうまい』!!」

川男「良かった……気に入ってくれたなら幸いだよ」

霊能女「ふふ……、っわっ」ピチャ

霊能女「あ、ごめんなさい……少しこぼしちゃった」ショボン

川男「いいよ……気にしないで。 ……手は大丈夫かな?」

霊能女「少し当たったけど……大したことないわ」

少年「一応、手を冷やした方がいいんじゃないですか?」

霊能女「そうするわ……」スッ

幼馴染「ここから出てすぐ左だからねー」

霊能女「いや、知ってるわよ」


霊能女(本当に、居間のすぐ隣なのよね……洗面所)スタスタ

霊能女(さっさと戻って、……?)スタ…



黒髪の美女「グヒヒ……今日も近所の家から、風呂の残り湯を盗み採れたわ……!」

黒髪の美女「この袋の中にある、人の垢を嘗めとることが私の生きがい……!」

黒髪の美女「今回も、風呂のお湯を残してくれた近隣住民の皆様に感謝して……」

黒髪の美女「いっただっきまーすっ!!」ヤホーイ


霊能女「…………」

霊能女「……な、」ワナワナ

霊能女「なんということでしょう……!」

——川男宅・洗面所——

霊能女「あ、あ、あなたは……誰?」

黒髪の美女「ん? あれ、濡女子さんとこのお嬢じゃないの。 何でここに?」

霊能女「べ、別に誰がどこに居ようと構わないでしょ? で、あなたは?」

黒髪の美女「私は垢嘗だけど。 それより、私の至福のひとときを邪魔しないでね」

霊能女「あ、ご、ごめんなさい……ちょっと手を冷やしに来ただけで、邪魔しに来た訳じゃ」

垢嘗「ふーん、そう。 じゃあどうぞ」

霊能女「え、ええ……」サーッ


垢嘗「居間の方がさっきからうるさいけど、あんたの連れ?」

霊能女「ええ、まあ……普通の小学生2人と、変な小学生1人ね」

垢嘗「そうかい。 んー、私も後で居間に行こうかな」

霊能女「そう……ならまた後で。 邪魔してごめんなさいね」

垢嘗「謝るのは一回だけでいいわよ。 かまへんかまへん、ってね」


——川男宅・居間——

霊能女「『なんということでしょう』って、つい言ってしまったわ……」

少年「ん、おかえりなさい。 少し遅かったですね」

霊能女「まあ、ちょっとね……」

川男「もしかして……垢嘗さんに、……会った?」

霊能女「え、ええ……」

川男「あらら……変なもの見せて、……ごめんね?」ペコ

垢嘗「む、変なものとは何だ変なものとは!」ノソ

霊能女「きゃっ」ビクゥ

幼馴染「今度はきれいな人が出てきた!」

垢嘗「嬉しいこと言ってくれるじゃない、おじょーちゃん」ウフフ

川男「とにかく……子供に見せるのは、やめよう」

垢嘗「事故だったのよ、しょうがないじゃないの」

川男「そうなの……?」

霊能女「ええ」コクン

少年「信用ないですね、垢嘗さん」

垢嘗「酷いものね……」


垢嘗「で、あなた達、何するつもりかしら?」

友人「人生ゲーム。 誰か準備手伝えよー」イソイソ

川男「おっと……ごめんよ」

垢嘗「へえ、私も参加するわ」

幼馴染「じゃあ6人でやろーう!」


少年「人生ゲームがあるとは、ちょっと予想外でした」

川男「……川男でも、人生ゲームは持ってるよ」

少年「そうなのですか」

——川男宅・居間——

カララララ…

友人「よっしゃ9だ!」

友人「1、2、3……9! ええと、」

少年「『強盗に襲われた! 一回休み』……はあ!? まじかよ!」

幼馴染「あーあ、また休みだねー」ケラケラ

友人「ちくしょー……でも、後で一番になってやる!」

垢嘗「ふん、私を抜かそうだなんて、100年早いわよ」

霊能女「確かに、圧倒的よね。 一桁違う……」

少年「何なんですか一体……」

垢嘗「さあ? 日頃の行いがいいからじゃないの?」

川男「それはない……時々、つまみ食いしてる」

垢嘗「げぇっ、ばれてた!」

友人「何やってんだよー」ゲラゲラ


川男「強盗といえば……最近、近所によく現れるやつ」

垢嘗「あー、あれね。 犯人がみんな、おかめの面を付けてるっていう」

幼馴染「テレビでよく見るよー」

友人「『おかめ強盗』とか言ってたよな、テレビで」

川男「それだね……毎週日曜日に、いきなり現れ……あっという間に……」

幼馴染「お金だけを取っていくんだよね?」

川男「そう……この町も銀行あるから、……他人事かじゃあないよ」

霊能女「銀行に居たら、実物見れたりして、ね」

前回寝落ちしてごめんなさい。
あと、今回もあまり投下出来ませんでした…
眠気で何書いてるか分からないし…

一旦止めて、寝ます。

非常に訳分かんなくなっていますが、読んでくれた皆様、ありがとうございます…


垢嘗「でもさ、最近そのおかめ強盗って、この辺りの豪邸も襲い始めたみたいよ。 お、7だ」

少年「そうなんですか。 テレビを見ないので、そういうことは全く知らないのですが」

友人「俺でも知ってるのに、お前知らねーの?」

少年「すみませんね……あと垢嘗さん、どれだけお金を得れば、気が済むのですか?」

垢嘗「グヒヒ……まだまだ!」

幼馴染「すごいなー。 何回も良いマスに止まってるよ」

霊能女「そうね……でも、そのおかめ強盗は、何で豪邸も襲うようになったのかしらね」

川男「本人達にしか……分からないことだね」

幼馴染「川男さんでも、知らないことってあるんだねー」

川男「そりゃあ……そうだよ。 ……君たちは、僕に対して……一体どんなイメージを持ってたんだい……?」ガク


少年「銀行だけだと、セキュリティーが強化されて、襲いにくくなった……とかでは?」

友人「気が変わったんじゃねーのー?」

霊能女「お面を般若にでもかえたんじゃない?」

垢嘗「『怖さを増したので、やることも変えます!』、うーむ、これは違うでしょ」

幼馴染「おかめも充分怖いよ……気持ち悪いよ」

少年「見方次第ですよ。 いつかおかめをかわいいと思うかも……」

幼馴染「私、むりー……」

少年「ううむ、そうですか」


友人「でも結局、関係ないんじゃねーの?」

川男「銀行に……いなければ」カララララ…

霊能女「どの道子供は、何も考える必要は無いわね。 あら川男さん、また子供生まれたみたいよ」

幼馴染「川男さんはよく子供のマスに止まるね」

垢嘗「一体どんだけセッ……むぐっ」
川男「自重しなさい。 子供の前。 夢を壊す」ジー

垢嘗「あーあー分かりましたー。 そんなのどうでもいいじゃんに……」


垢嘗「……あなた達が気をつけるべきなのは、不審者のことよね」

幼馴染「学校で、何度もお話があったね」カララララ…

友人「ああ、そうだっけかー?」

幼馴染「話、ちゃんと聞いておこうよ…… うっ、いまいち良いマスじゃないなあ」

霊能女「ふふっ、当たるのはそんなものでしょう。 垢嘗さんは例外で」

垢嘗「私、すごい?」

川男「……口裂け女みたいに、言わない……」


少年「話が脱線しますね。 事故起こしすぎな程。 それで、不審者がどうしたんです?」カララララ…

垢嘗「その不審者、女子を誘拐して、暴力を振るらしいからね。 あなた達は向こうからしたら、絶好のターゲットよ」

垢嘗「だから、子供だけで行動するのは、危ないわよ」

霊能女「そうね……気をつけるわ。 あら、お金ゲット」

友人「ビリに……なってたまるか……!」


——川男宅・玄関——

幼馴染「今日はありがとーございました!」ペコリ

少年「勝手に侵入しようとして、すみません……」

川男「いいよ……気にしないで。 ……休日は普通、近くの川にいるから……話を聞きたい時は、おいで」

垢嘗「その言い方、不審極まりないわよ」

川男「む……失敬な」

霊能女「ふふっ。 おじゃましました」ガチャ

垢嘗「っと、あなた達、家まで送るわ」

友人「別にいいだろー」

霊能女「不審者に狙われたくないから、お願いするわ」

友人「不審者なんて、倒せるだろ」

少年「相手は大人です。 無謀ですよ」

友人「ぐえっ」

垢嘗「じゃ、送るわね」

川男「気をつけて……じゃあね」フリフリ

少年「さようならー」フリフリ

一旦置きます。
と言っても、見る人はいないかな…。 あと、毎度毎度寝落ちしてごめんなさい。


その後、垢嘗さんは私たち4人を家が近い順に送ってくれた。

公園の近くに住んでいる友人君とはすぐにお別れだった。彼は「遊び足りねー!」と、しつこく喚いていたけど、少年君が明日があると言うと、大人しくなった。
彼が一番小学生らしい性格だなと思った。

公園から少し離れた場所に、幼馴染さんが住む家がある。私達が家の前に着くと、待ってましたと言わんばかりに幼馴染さんの両親が、文字通り飛び出してきた。
垢嘗さんは彼らに何度も感謝の言葉を述べられて、ちょっと戸惑っていた。

少年君の家はすぐ近くなのだが、彼は「今は帰りたくないですね……」と言った。理由はおそらく、彼の両親が口論しているからだろう。確かに外まで丸聞こえの口論である。
それを聞いて、咄嗟に私は「うちに泊まる?」と言ってしまった。ほとんど無意識で。
少年君は半ば涙目になって、何度も感謝の言葉を言ってきた。私はちょっと戸惑っていた。

垢嘗さんはそれから終始ニヤニヤしながら、私の住む家に送ってくれた。
お母さんは私が時間内に帰って来たことに安堵したようだ。そして、ニヤニヤした垢嘗さんとボーとしている少年君を見て、同じようにニヤニヤし始めた。
そして、
「二名様ごあんなーい」「へーい」
うちの両親は軽い。


——霊能女・自室——

少年「なんか……すみません。 我が儘で上がり込んで」

霊能女「気にしてないわ。 お母さん達も歓迎してたし」

少年「垢嘗さん、まだ下で世間話でしょうか?」

霊能女「じゃないの。 ていうか3時間経ってない?」

少年「本当ですね……垢嘗さんも泊まるつもりかもしれません」

霊能女「あー……ありそう」


<フタリトモーオフロイイワヨーン

少年「……だそうです」

霊能女「じゃあ先に入れば? 私は後でいいわ。 あら、着替えは?」

少年「持ってきてますよ? 一旦家に入った時、水を飲むついでに詰めてきました。 両親は見向きもしていなかったので、案外ばれずに」

霊能女「ああ、『水飲んで来ます』て言ったときか。 だからリュックを背負っていたのね。 忘れてたわ」

少年「じゃあ荷物ごと持って行きますね」ガチャ

霊能女「はいはい」

バタン

霊能女「……」

霊能女「……少年君、どこで寝るのかしら」


——霊能女宅・廊下——

少年「すみませーん、お風呂はどこですか?」

濡女子「少年君が先? お風呂は廊下の一番奥。 タオルも準備してあるからねん」

少年「分かりました。 ありがとうございます」タタッ

濡女子「はーい」



垢嘗「ちびっこの癖に丁寧語って、可愛いのか可愛くないのか際どいわねー」

霊能父「それが少年君だよ」ハハッ

濡女子「養子にしたいわねー。 私から見たら可愛いわよん」

垢嘗「随分入れ込んでるわね。 どうしてかしら」

霊能父「それはさ、霊能女は霊が見えるから、結構嫌われてたんだ、周りから。 でも少年君はあの子と普通に接してくれたみたい」

垢嘗「へえ、じゃあ、えーっと、友人って子と幼馴染って子は?」

濡女子「少年くんと遊び出してからね。 あの子達も優しいわー」

垢嘗「へーえ、なるほど」


——霊能女宅・廊下——

少年「その前に、トイレに行きましょうか」

少年(入浴中に行きたくなったら、大変ですからね……)ガチャ


死神「ズビー…………フゴッ」Zzz…

少年「」

死神「んおっ……んん?」パチッ

少年「……」

死神「よお、少年……よく会うな」

少年「……もう何も言えません」


死神「本当よく会うなあ、お前」

少年「ストーカー」ボソ

死神「偶然だろ」

少年「ショタコン」ボソ

死神「ガキはあまり好きじゃあない」

少年「変態」ボソ

死神「どの要素が? 渋くて格好良い、すなわちダンディーな俺のどこが?」

少年「トイレの死神様」ボソ

死神「“トイレの”は要らない。 あと、今回の仕事ではしようがないんだ」

少年「仕事をしない仕事人」ボソ

死神「それ結局仕事してねえじゃねえか!」

霊能女「イタい奴」ボソ

死神「事実死神だ! イタいとは失礼な!」

少年「……あれ、霊能女さん?」

霊能女「はい、霊能女です。 トイレの前で呆然としてたら、そりゃあ気になるわよ」

霊能女「で、これ見て私もびっくりした」

死神「おい、これとか言うなよ」


少年「で、何でここにいるんです? ストーカーにしか思えません」

死神「あー、これは仕ご」
少年「寝てましたよね。 絶対仕事じゃないですよね」

死神「冗談だ。 今回は寝床を探してたんだ」

霊能女「人の家のトイレを、勝手に寝床にされてもこまるんだけど」

死神「あ、ここお前の家か。 じゃあ何で少年がいるんだよ」

少年「泊まらせていただいてます」

死神「ふーん。 お熱いですこと」ケラケラ

霊能女「そんなんじゃ……!」ウグ

死神「おお? どうなんだ?」

少年「そういうのは今度にしてください。 死神はさっさと出て行ってください。 早く入りたいんです」

死神「あー、すまねーな。 じゃ、適当に寝床探すか……」

霊能女「一件落着したなら、私は居間に行ってくるわ」スタスタ


死神「ああそうだ、少年」

少年「一体何ですか……」

死神「明日は不審者に気をつけな」

少年「……どういうことです?」

死神「そういうことなんだよ」

少年「……釈然としませんね」

死神「そういうことはそういうこと。 じゃあな」

少年「そうですか。 では」

死神「次こそはトイレ以外の場所で会おう」

少年「できるだけ遭遇しないよう気をつけます」

死神「ひっでえな……」スー


——外——

死神「ひっでえなちくしょー……」

死神「……明日か」

死神「明日で仕事は終わり。 さて、いかにも不審者なアイツはどうするやら」ポツ

ザー…

死神「……お、通り雨か。 ひでえけど、すぐ止むか」

一旦一息
一息しまくりな気がしますけど…


——霊能女宅・浴室——

チャポン

少年「ふ…………ひぃーー……」グテー

少年「いやあ、温まります」

少年「……2日で、一気に加速してきましたね、生活が」

少年(卒業まであと2ヶ月あるかないか、急展開の連続ですね……)

少年(僕は特に、生活を変えようとしていないのですが)

少年(死神を見た昨日。 いきなり急展開になりましたね)

少年(小説でも、こんなにポンポンと話は変化しないと思います)

少年(……笑えてきますよ、本当に)

少年(たった2日間で、こんなにぎっしりイベントが詰まりますかね?)

少年「……別に、いいですかね。 そんなこと」


——霊能女宅・居間——

霊能女「お母さん、少年君の寝る場所どうすればいい? 2階の空き部屋でいいかしら」

濡女子「ああ、そのことなんだけどん……」

垢嘗「私、今日泊まらせてもらうのよね」

濡女子「それで、その空き部屋、ていうか物置部屋に、垢嘗を置きたいのよん」

霊能父「置くって……物じゃないんだからさ……」

濡女子「だから、少年君はあなたの部屋でよろしくねん」ニヤ

霊能女「……えっ、は?」

濡女子「サビースにもいーちど言うわん。 少年君はー、あなーたの部屋でぇー、寝かーせなさぁいん」ニヤニヤ

霊能女「……」イラ

垢嘗「別にいいじゃないの、好きな人と寝られて」ニヤニヤ

霊能女「そんなんじゃないわよ! ……さすがに抵抗あるのよ」

濡女子「己を解放したまえー。 ナームナーム」

霊能女「くわああああああっ!」ギャース

霊能父「落ち着け! イラっとする気持ちは分かるが、我慢してくれ!」


少年「霊能女さん、お風呂いいですよ」ポカポガ

霊能女「あら、出たのね。 じゃあ」スタスタ



少年「……で、垢嘗さんも泊まるのですか?」

垢嘗「ええ。 そしてあなた達の垢を嘗めさせてもらうわ……!」ジュル

少年「うへえ」ゾゾ…

霊能父「垢嘗、相変わらずだな、そういうところ」

濡女子「生きがいだしねん、それが」

垢嘗「まあね」

濡女子「あと、少年君。 今日は、霊能女ちゃんの部屋で寝てもらえるん?」

少年「あ、はい、分かりました……でも霊能女さんが嫌かもしれないですよ?」

濡女子「大丈夫、特に問題は無かったわよん」

霊能父(暴れまくってたことを伏せるか……)


——霊能女宅・浴室——

シャー

霊能女「あーもー、幽霊さん達に変な知識つけられ過ぎたかも……」

霊能女「れ、冷静になるのよ、私……」

霊能女(……)

シー…ン

霊能女(きた)

霊能女「……本当に、要らない知識つけてきすぎよ」

女幽霊『いいじゃない、いずれ分かることなんだし』

霊能女「それでも……さすがに、子供に大人の汚い話を聞かせるのはどうなのよ……」

女幽霊『気にしないの。 いいじゃない、減るもんじゃあるまいし』

霊能女「それなら無知の方が良かったわよ」


女幽霊『まあまあ。 とりあえず、頑張ってねー。 うひゃはははー』スゥーッ

霊能女「……ぐぬぬ」




霊能女「……はぁ」

霊能女「のぼせる前に出ちゃいましょ」ザバァ


——霊能女・自室——

濡女子「はい、お布団。 敷いたりは出来る?」

少年「もちろんです、これ位は出来ないと」サッサッ

濡女子「本当にしっかりしてるわねん、じゃあ任せるわね」

少年「はは。 大丈夫です」サッサッ

霊能女「出たわよ」ガチャ

濡女子「お帰りん。 じゃあ入ってこよっとねん」タタッ

バタン

霊能女「……」

少年「……すみません、眠いので。 おやすみなさい」ムニャ

霊能女「もう敷いて……って寝るの早いわね」フフッ

霊能女「今までの冷やかしは、何だったのかしら……焦りすぎよね。 私も」

霊能女「じゃ、寝ましょっと。 おやすみなさい」パチン

今回はここまでです。

見てくれてる人がいるっていうのは、本当に嬉しいです。眠気が吹き飛ぶくらい。
ありがとうございます!
自分が勝手に書いてるものなので、勝手にやっとけ、とか言われたらそれまでですが…

次は半日後、14時以降にゆっくり投下していきます。

読んでくれた皆様、本当にありがとうございました!


私は、幽霊が見える。
事故で生死を彷徨ったとか、霊的なものと接触したとか、そういう後天的な原因でなったわけではない。
父も霊能力があり、母は妖怪。この二人の間に生まれた以上、オカルトチックな能力が備わってもおかしくない。
彼らの馴れ初めは知らないが、人間と妖怪の夫婦とは珍しい。その子供の私も珍しい、のだと思う。

霊が見える。それだけではなく、幽霊と交流することも出来る。
物心ついたときから、私はそこいらで彷徨っている幽霊と交流していて、当時はこれが普通のことだと思っていた。
周りは冗談だと思って、笑いながら「今日はどんな人とはなしているのかな?」なんて言って。
それに対し、当時の私は「えー聞こえないのー?」と疑問に思っていた。

この能力——霊が見えること——が特別であり、普通のことではないと気付いたのは、小学3年生の秋だった。
私の当時のクラスメートに「俺、お化け見えるんだぜ!」なんて自慢している男子がいた。
霊が見えることなんて、当たり前なのでは?と思っていた私は、「それは自慢でも何でもない」とその男子に伝えた。
その男子は「は?これスゲーことだろ。 皆見えなくて俺だけ見えるんだぞ!」と言い返してきた。
そのとき初めて、私は“霊が見える”というのが普通ではないと気付いたのだ。
ちなみにその男子は、その後皆の注目を浴びようと嘘を吐いていたことがばれ、“嘘つき”というレッテルを貼られていた。
また、その男子は私が霊を見れることを知らなかったらしく、「皆見えなくて〜」という部分も結果的に嘘となった。


この能力——霊が見えること——によっていじめられ始めたのは、小学4年生の春あたりからだった。
相も変わらず幽霊と交流していた私。しかし、周りから見れば“独り言を呟き続けるキモい女”でしかない。
いつしか、幽霊と交流する度に濡れ雑巾を投げつけられ、私が触れたものは「呪われている」という理由で忌み嫌われるようになった。
給食は“お供え物”という名目で、私だけ白米数粒しか配られなかった。
さすがに先生も気付いて、「馬鹿なことは止めなさい!」と呼びかけたのだが、改善することはなかった。
ちなみにその先生も、私を敬遠していた。

いじめに関して、私は親に相談はしなかった。
別にどうでもよかったし、幽霊からもっと酷い出来事を大量に聞いていた私は、これは特に酷くはないなと判断したのだ。


この能力——霊が見えること——によって死神が見えるようになったのは、小学5年生の夏だった。
その頃もいじめは続いていた。でも私は幽霊と交流し続けた。

ある日、公園でいじめのリーダー格の女子が、家族と共に歩いているところを見た。
そしてその後ろに、禍々しい空気を発する黒いサングラスを掛けた女性がいた。
私は女子が離れていくのを確認し、立ち止まったままでいるその女性に話しかけた。
その女性は、「私が見えるんね」と少し驚き、死神であるということ、明日に女子の母が死ぬことを私に教えてくれた。
そして次の日、女子の母が死んだということが分かり、私は驚いた。

ちなみにそれ以来、いじめは沈静化した。だからと言って、友達が出来るわけでもなく、変わらず一人であった。

この能力——霊が見えること——に関係なく私に接してくれる人達、“友達”に会ったのは、小学6年生に進級したときだった。
毎回進級するごとにクラス替えがあり、周囲の同級生たちは期待と不安を胸に騒ぎ合っていた。
私は特に楽しみでもなかったので、じっと新しい教室の隅で座っていた。

その時に「霊能女さんですね? 僕は少年と言います。 これから一年よろしく、です」と少年と名乗る男子が私に話しかけてきた。
いきなり話しかけられたことに私は驚いて、椅子ごと倒れてしまった。すごく恥ずかしくて、彼に馬鹿にされると思った。
しかし少年は笑って、「何やっているんですか。面白いですね」なんて言ってきて。
私はさらに恥ずかしい気持ちになったが、なぜか嬉しくもあった。


それから彼とは意気投合した。彼も霊が見えるらしく、共に幽霊と交流するようになった。
そして、彼の友達である、友人君や幼馴染さん達とも話すようになった。
自然と私には“友達”が出来ていた。そして、皆といることの楽しさを知った。


彼は不思議だ。
説明はしにくいが、とにかく不思議だ。
小学生とは思えない態度で、でも時折年齢相応の反応をして。
私が今見ている寝顔は、とても可愛らしく。発想は大人びていて。
相手が誰であっても、呆れながらでも、驚きながらでも、楽しく話して。

彼は不思議だ。
諦観というか、達観というか、とにかく何かを悟っているような。
彼なら、何かとても大きなことを成し遂げそうな。
そんな気がする。

私はそれを手助けしたいと思う。友達として。
彼が私に対してどう思っていようが。
勿論、大切な友達である友人君や幼馴染さんも助ける。
でも、今を楽しくしてくれた彼、
私にとっての救世主であり、一番大切な友達である、少年君を。私はずっと手助けしていきたい。


そんな決心をしている私に、世界的な人気物の黒ネズミっぽい睡魔は「ハハッ」と手招きして……
夢の国日帰り旅行へと、私は飛んで行った。

うわあああ書き溜めもう尽きたあああごめんなさい!
そして14時から8時間遅刻してしまいました…反省します

一応きりがいいところなので一旦区切ります。
出来るだけ早く再投下出来ればいいのですが、もしかしたら明日になるかもしれません…

ひっでぇ地の文でしたが、読んでくれた皆様、ありがとうございました。


——幼馴染宅・和室——

Zzz…

ピピピピッ、ピピピピッ、ピピガチャ

幼馴染父「おはよう!」

幼馴染母「んーおはよ……」ウトウト

幼馴染兄「親父、日曜日なのに、よく目覚ましかけようなんて思うよな……」ウトウト

幼馴染「うーん、眠いよお……」ウトウト

幼馴染父「休日の朝にだらけていたら、一日中だらけてしまうぞ? さあ起きた起きた」ガバッ

幼馴染兄「さみぃよ……マジさみぃ」ガクガク

幼馴染母「あー、まだ8時ぃ……?」ノソー

幼馴染父「もう8時じゃないか。 往生際が悪いぞー?」

幼馴染「ん……ふああっ……」ノビー


——幼馴染宅・居間——

パチン

幼馴染父「いただきます」
幼馴染母「いただきまーす」
幼馴染兄「ふぁ……っきます」ムニャ
幼馴染「いっただきまーす」


幼馴染父「幼馴染。 今日も遊びに行くのか?」

幼馴染「うん、そーだよ。 少年君たちと公園」

幼馴染母「気をつけなさいよ? 最近この辺りに、よく不審者が出てるみたいだから……」

幼馴染兄「ドントウォーリー。 俺が公園まで連れて行ってくるわ。 今日部活あるから」

幼馴染父「そうか。 頑張れよ!」

幼馴染兄「何に対しての頑張れ?」


幼馴染母「正直言うと、公園で遊んでる時が一番不安なんだけどね」

幼馴染兄「公園は俺の管轄外」

幼馴染父「じゃあお父さんが見守ってあげよう!」

幼馴染「そこまでしなくても、私は大丈夫だよー……」

幼馴染母「それでも心配しちゃうわ」

幼馴染「いいから! 別に大丈夫だって」

幼馴染父「そうか……? うーむ」ショボン


——幼馴染宅・玄関——

幼馴染母「何かあったり、時間になったら、早く帰ってくるのよ? お兄ちゃんもね?」

幼馴染「分かってるよ! 大丈夫だってばー」

幼馴染兄「俺は部活終わり次第、さっさと帰るよ」

幼馴染「あ、お昼になったら、ご飯食べに帰ってくるね」

幼馴染父「分かった! 2人共、いってらっしゃい」

幼馴染「いってきまーす!」
幼馴染兄「行ってきまー」


——公園——

幼馴染「着いたー。 あ、やっぱりみんないるなあ」

幼馴染兄「皆早いな。 それに、お前ら本当に仲いいよなー」

幼馴染「まーねー。 みんなといると、すごく楽しいよ!」

幼馴染兄「そうか。 そういう友達を大事にするんだぞ」

幼馴染「もちろん!」

幼馴染兄「ん、じゃあ俺は学校行くから。 じゃーな」

幼馴染「うん、ばいばーい」


タタタッ

幼馴染「みんなおはよー!」

少年「おはようございます」

友人「おっす。 なあ幼馴染。 こいつら昨日一緒に寝たらしいぜ?」

幼馴染「えー! ホント!?」

霊能女「いや、少年君を泊めたってこと」

友人「結局ラブラブだー! ヒューヒュー!」

少年「勘違いも甚だしいですね……」

霊能女「ていうかこれ、分かってて冷やかしてるわよね」


幼馴染「で、どうしてその話になったの?」

霊能女「公園に集まるとき、友人君が先にいたの。 で、私たちが一緒に来てたから、」

少年「友人が『お前らラブラブだな! ヒューヒュー! まさかのお泊まりかー?』なんて言いまして、」

友人「まさかの大当たり! ホントにラブラブでした!って訳だ」

幼馴染「なるほどー。 実際少年くんと霊能女ちゃんって、仲いいもんね」

少年「そういう関係じゃあ、ありませんよ。 それを言ったら、友人や幼馴染の家にもお世話になりましたし」

幼馴染「そういえばそうだね」


霊能女「あら、じゃあ少年君は毎回、『家に居たくない』なんて言って、お世話になってるの?」

少年「いや、そんなことは……」アセ

友人「いや? 俺ん時は『今日家にいたら、僕は確実に終わりになります』とか」

少年「それは……夫婦喧嘩のとばっちりが怖かったので」

霊能女「荒れてるのね……でも“終わり”って大げさな気がするわよ」

幼馴染「私は『僕にオアシスを下さい』って言われて」

少年「幼馴染の家族は、全員優しいですから、羨ましくて……」

霊能女「オアシスを下さい……口説き文句じゃない? それ」

霊能女「とりあえず、少年君はもう少し自重した方がいいんじゃないかしら?」

少年「う……気をつけます」

書き溜めがもう切れた…だと…?
というわけで今回はここまでです

出来れば明日も投下したいなと
でも今週、来週は諸事情により投下ペース落ちます、ごめんなさい…

最後に、読んでくれた皆様、毎回ありがとうございます。

かなり遅れましたごめんなさい…
あと、レスをしてくれる人や読んでくれる人、本当にありがとうございます


投下します


幼馴染「えと、今から何する?」

友人「んー、一応そこに空き缶あるぜ」

霊能女「じゃあ、缶蹴りする?」

友人「いいのか? 俺、負ける気しないぜ」ニヤ

幼馴染「缶蹴りしよう! 今日こそ友人くんの自信をへし折ってやるー!」

少年「では、僕が鬼をしますよ。 10秒数えますので……」
友人「わかった! 逃げろー!」タタッ

幼馴染「絶対逃げ切るもんね!」タタッ

霊能女「あの2人、速いわよ……」

少年「早くしないと、捕まえますよ? いーち、にーい、」

霊能女「おっとっと」タタッ


——公園・トイレ——

死神「今日で終わりだな」

ペド「……っ」

死神「そんな日に、何でお前はこんな所にいるのだろうな」

ペド「……お、お前には分からないだろ、分かるはずがない」

死神「どうだかね。 どうせ、死ぬ前だから何したって許される、とか思ってんだろ?」

ペド「ど、どうだかねぇ……」

死神「……どうでもいい、とりあえずさっさとお前が死ぬのを見届けて、仕事終わったー!なんて言いたいんだが」

ペド「よくそんな事が言えるな」

死神「そういう仕事だ、今更そんな事言われてもな」


死神「さて、お前はここで閉じこもって、どうするつもりだ?」

ペド「ひ、ひひ……そんなの、みておけば分かる」

死神「そうかい。 しっかし、気持ち悪い笑い方だな」

ペド「そ、そんなのどうだっていいじゃないか!」

死神「いや、だって不快だし。 今まで会った中で、一番鼻息荒いし。 あと、興奮しすぎだ」

ペド「ふ、ふん。 気にするなよ。 あと、今は興奮していない。 しっかり理性を保ってる」

死神「日頃から本能の塊の癖して、よく言えるな。 理性の欠片も無いようにしか見えない」


ペド「……フヒッ、頃合だ」

死神「あ?」

ペド「今から動くんだよ。 あと、俺の性癖をお前に認めさせて、人生を終えたいね」

死神「心底どうでもいい。 気持ち悪い目標を教えてもらい、有り難うございません」チッ

ペド「ふん。 未熟な身体を支配したときの、あの快感は素晴らしいものなのに……っと、ちょっと想像しただけで、大分キたな」

死神「すまないが、俺とお前は絶対分かり合えない。 引いた」

ペド「フヒッ、そうかい。 じゃあどうでもいいや、人生最後の瞬間まで、好きなことさせていただくとするよ」


————

サテ、ドコニイルノデショウカ

幼馴染「ふふふ……少年くんには分からないはず」

幼馴染「これなら、友人くんにも勝てるね!」

幼馴染「この暗い茂みの所でなら、絶対見つからないはず!」




ペド「でも、俺には見つかっちゃったねー」ニヤ

幼馴染「え……?」

ガシッ…


幼馴染「ーー! ーー!」モゴモゴ

ペド「ほらほら暴れない暴れない。 おじさんに捕まった以上、どうやっても逃げられないからねー」フヒヒ

ペド「いやあ、お嬢ちゃんがこんなところで1人になってくれるなんて、嬉しい誤算だ」

ペド「じゃあこれから、おじさんと一緒に、おじさんの家に行こうか」

ペド「いっぱいイイことしてあげるからねー?」グヘ

幼馴染「ーー! ーー!」ゾゾ

ペド(……今したいところだが、ここは道路からよく見えてしまう)

ペド(今のところ、通行人はいないが、もしものことがある)

ペド(うまく逃げつつ、家に避難しよう。 家ならば危険はない。 その間が関門だ……)

ペド(あと、俺の死ぬタイミングが分からない……くそっ、面倒だ)

ここまでです。色々ぐちゃぐちゃでよく分からないかも…すみません…

次はおそらく来週になると思います

では、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました


ペド(……っ、トイレに行くか? しかし、あのチビ達の動向から、ここから離れるべきだ)

幼馴染「ーー! ーー!」モゴモゴ

ペド「とりあえず、このガキをバッグに突っ込んで、と」ググッ

ペド「ちっ、冷静に計画を立てるべきだった……」タタッ

————

少年「……、どこでしょうか」

少年「ん、あそこにいるのは……誰でしょうか。 変な歩き方ですね」

————

友人「見つかってないな、俺最強じゃん!」

霊能女「で、その後ろに私がいる、と」ヌッ

友人「うわっ! びっくりさせんなよー」

霊能女「あら、それはごめんなさいね」

友人「多分許す。 それで、何でこっち来たんだよ」

霊能女「ん、ちょっと気になる事があって……」


————

友人「……つまり幼馴染がジジイに捕まった、と」

霊能女「ジジイはさすがに言い過ぎよ。 今は向こうの茂みで立ち往生してるみたい」

友人「じゃあ、そいつを止めないとな」

霊能女「ちょっと待って。 どうやって止めるのよ」

友人「ボコボコにするに決まってるだろ! あんなガリガリ、俺1人で楽勝だし!」

霊能女「馬鹿! どうやっても勝てないわよ!」

友人「俺最強だしー喧嘩強いしー!」ダッ

霊能女「あの馬鹿は……とりあえず、少年君呼びましょ……」


少年「ううむ……見つかりませんね」キョロキョロ

霊能女「少年君!」タタッ

少年「あ、霊能女さん、見つけました!」カン

霊能女「足元に缶があったら、取りようがないわよ」

霊能女「って、そうじゃなくて! 缶蹴りは一時中断してちょうだい!」

少年「……? 一体何があったのです?」

霊能女「簡単に言うわね? 幼馴染さん捕まった、分かった?」

少年「簡略化し過ぎです。 意味が分かりません」

霊能女「あー……とりあえず来て!」ガシ

少年「うわっとっと!?」ズサー


————

友人「おい、そこのジジイ」

ペド「“おじさん”ならここにいるけど……何だい?」

友人「おジジイさん、その緑の袋。 何が入ってるんだ」

ペド「なあに、ポイ捨てされたゴミを入れてるだけだよ」

友人「いいや、それは嘘だな嘘つきジジイ。 人間、というか幼馴染が入ってるだろ」

ペド「な、何を言っているんだい? それはおかしいんじゃあないかな」アセ

霊能女「何がおかしいのかしら。 私は見たわよ。 おじさんが幼馴染さんを捕まえた所」

少年「ああ、そういうことですか。 何となく把握しました」

ペド「……っち、くそっ」ダッ

友人「あっ、ジジイ! 待ちやがれー!」ダッ

霊能女「くっ……」ダッ

少年「……道路に出るつもりでしょうか?」ダッ


——公園沿いの道路——

ペド「はっ……はっ……っ!」

ペド(くそっ、うまく走れな……!)ガシッ

友人「捕まえたぞ! クソジジイ!」

ペド「フヒッ!? このガキめ……!」

友人「てめえっ! 幼馴染を放せ!」ゲシッ ゲシッ

ペド「つあっ! こん、のクソがぁ!」ゲシッ

友人「ーーってえ!」フラ

少年「てえりゃあ!」ドン

ペド「のわっ!」フラ パッ

少年「幼馴染! ぐえ」ガシ ズテン

ペド「……ちっ」ダッ

霊能女「ま、待ちなさ……って、もうあんな所に……」


少年「……いてて。 霊能女さん、友人は?」

友人「お、俺は何ともなかったけど。 蹴られたけどな、イテテ」

霊能女「……だそうよ。 少年君こそ大丈夫? 幼馴染さんをキャッチしようとして失敗してたけど」

少年「おかげで地面に頭を打ってしまいましたよ……タックルして体勢崩れてたせいで失敗しました」ハハ…

霊能女「あと……幼馴染さん?」ガサゴソ


幼馴染「あ……あ……」ガタガタ

霊能女「幼馴染さん? 大丈夫よ、あのおじさんは逃げて行ったわ」

幼馴染「え……本当?」ガタガタ

少年「ええ、本当です」

友人「おーい、大丈夫か?」

幼馴染「う……ふぇ……うわあああああああん!」ダキッ

幼馴染「グスッ…怖かったああああ!」ポロポロ

霊能女「おっと……はいはい、大丈夫大丈夫。 もう怖くないわよ」ポンポン


少年「……では、霊能女さんは、幼馴染を家に送っていって下さい」

霊能女「え、少年君達は?」

少年「周囲を探しに行きます。 あと、通報してもらえます?」

霊能女「……分かったわ。 気をつけてね」

友人「おう、大丈夫だ」


少年「犯人が逃げたのは、この方向ですね」

友人「おう。 見つけたら、今度こそ絶対捕まえて、ボコボコにしてやる!」

少年「危険ですよ……気持ちは分かりますが」

友人「早く行こうぜ!」ダッ

少年「そうですね、行きま」
キキィ−−−−−ッ  ダァン

少年「……何があったのでしょうか?」

友人「どの道同じ方向だから、とにかく行くぜ」


————

ペド「はっ……はっ……」ダッ

ペド(畜生め……! 小学生だからと言って、油断していた!)

ペド(いくら小学生でも、数的には俺の不利だった……)

ペド(最後の最後で、失敗してしまった……! くそがっ!)

ペド「っち、このまま、死んでたまるか……!」ダダッ


……

死神「あーあー、まともに周囲を見ずに走ってるよ。 あいつ」

死神「何が“イイモノ”なんだか……馬鹿馬鹿しい」

プァー

死神「……ん? あんな速度で走って、スピード違反は大丈夫なのか? あの車」ジー

死神「……」ジー

死神「……?」ジー

死神「……何で“お面被って”乗ってんだ? あの乗員達」


ペド「ぬあ……っ! あれ、なんで逃げてたか?」ピタッ

ペド「何勝手にビビってたんだ……お?」キョロキョロ

プァー  パパッパー

ペド「!? 何でこんな、交差点のド真ん中にいるんだ!?」

ペド「フヒッ……信号すら、まともに確認してなかったか……って」

パッパー

ペド「おっと、俺の目の前に車が突っ込んで来る」


ペド「なのに、走馬灯が流れない不思議」ニヤ

キキィ−−−−− ダァン

ペド「さらば、このせかい」

今回はここまでです

やはり、良い評価のレスをしてもらえると、凄く嬉しいです。
最初みたいに、手が震えるということは無くなりましたがww

次回の投下は今夜〜明日あたりでしたいと思います。
少し前に「毎日投下しちゃる」とか言いながらの、この始末…。
ごめんなさい…

最後に、今回も読んでくれた皆様、ありがとうございました!

お面被る? どういうこと?


——とある車内——

お面A「ふっは、今日も無事に、銀行からお金を拝借できたっすね!」

お面B「そうだねえ。 何事もなく終わった時の味気なさは異常だけど」

お面C「それがいいんじゃあないか、母さん。 どれだけスリルを味わいたいんだ」

お面B「いいじゃない。 普通の生活じゃあ、スリルなんて味わえないわよ?」

お面C「はいはい……リーダー、お面取っていい?」

お面D「駄目だ。 この盗んだ車を廃墟に捨てて、それぞれ自宅に帰り着くまでは我慢しろ」

お面A「“家に帰るまでが遠足”理論っすね!」

お面B「何が理論よ……」ハァ


ブロロロロロ


お面C「A先輩。 車速すぎじゃない?」

お面D「……確かに。 A、事故は起こすなよ? 本が読めなくなる」ペラ

お面A「大丈夫っすよ。 何事も正確な性格っすから」

お面B「よく言うわね! 前だってこの位スピード出して、歩道に突っ込んだじゃないの!」

お面C「車捨てて逃げた時かー。 なかなか楽しかったけどね」

お面D「拝借した金がパーにならないようにな」

お面A「了ー解ー」


お面A「んにゃ? 車道に歩行者が飛び出したっすね」

お面B「信号無視? 馬鹿?」

お面A「そうっすね」

お面C「でも、僕達が通り過ぎる時には、反対側まで行けるでしょ」

お面A「そうっすね」


ブロロロロロ


お面A「ちょ! あいつ、止まりやがったっす!」パパッパー

お面B「はあ!? 何やってんの!?」

お面C「あ、これ見事に事故るわ」

お面A「言ったそばからこれっすか! 絶対呪われてる!」パッパー

お面D「ぶつかったら、すぐに逃げよう。 お金は後で分配する」

お面B「分かったわ。 じゃ、せーの」


おかめ強盗「轢いてソーリーまじゴメン!!」キキィ−−−−−


お面A「俺に憑いた呪いごと、成仏してくださいっすー!」


ダァン


————

友人「この辺か。 あ、やっぱり事故があったのか」

少年「被害者が先程の不審者かもしれませんよね……行ってみますか」

友人「おう」


…………

ザワザワ

友人「うっわあ、やじうま多い!」

少年「いや、僕達も野次馬ですよ……って、あれ。 死神?」

友人「ん? 死神?」

少年「あ、そうでした。 友人には見えませんか」

友人「霊感ないし、どうでもいい」

少年「ははっ、まあ、とりあえず死神みたいなのが見えましてね……おーい」


死神「あ? ありゃあ……ガキ共か」


死神「よう。 何しに来たんだ?」

少年「いえ、先程、ちょっと不審者と公園で一悶着ありまして。 追いかけたら、ここに……」

死神「ふーんへーえほー。 成る程成る程。 じゃあ言うが、あれは俺が担当してた奴で、変態な」

死神「まあつまり、お前達と一悶着起こした不審者は、あれだ」

少年「!! ……やはり、ですか」

友人「少年。 どうした?」

少年「はい、あの事故の被害者は、先程の不審者のようです」
友人「……呆気ねーな」

少年「本当にそうですね……恐らく、犯人は逃げたのでしょうね」

死神「お面被った変な集団だったぜ」

少年「お面……?」

友人「お面、ってあれじゃね? あーあれだ、えっと……“おかめ強盗”!」

少年「……そうかもしれませんね」

少年「……本当に、呆気なく終わりましたね」

死神「仕事終わったー!」

午後分の投下はここまでです。

次回はまとめみたいなものなので、今の量よりも少なくなると思います。
あと、明日の夜に投下します。

>>133さんの疑問が、今の投下で解決できたら幸いです。


読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。


————


私はその後、霊能女ちゃんと共に家に帰った。
公園の出来事がこわくてこわくて、全身に力が入らなかった。
霊能女ちゃん、そんな私を連れて帰るのは、かなり苦労したのだろうなあ。


家に着いて、私の様子がおかしいことに気付いたお父さんとお母さんは、霊能女ちゃんの話を聞いて、顔が真っ青になっていた。
お母さんは「けがはない? 変なことされなかった?」など、いろいろ私に聞いてきた。
お父さんは「帰ってきてくれて良かった……!」と、泣きながら言った。
私も、よかった…帰れた…なんて思って。涙をがまんできなくて。
2人にだかれながら、おいおいと泣いた。


夜には、部活から帰ってきたお兄ちゃんが、話を聞いて、「俺が部活に行く前に、しばらく公園に居れば…!」と自分が何も出来なかったことをくやんでいた。
私はみんなに「大丈夫」って強がってみたけど、それからしばらくの間、こわさから1人で居ることが怖くなってしまった。
1人でいると、また背後から誰かにおそわれそうで。


結局、私の家族が私に対して、さらに“過保護”になってしまった。



私は次の日から一週間位は、学校に行けなくなってしまった。
クラスのみんなや先生、少年くん、霊能女ちゃんに友人くんは私を心配してくれた。
とても嬉しかったけど、事件のこわさが強くて、安心して学校へ行けなかった。


後でけいさつの人から聞いた話では、私をおそった人は、以前から似たようなことをしていたらしい。
その人の部屋から、ひどい(具体的には分からないけど)写真や動画が山ほど出てきた、と言っていた。
さらに信じらんないことに、その人の押し入れには、弱々しくなってしまった女の子が2人いたそうだ。
その女の子達は、何とか家族の下へ帰れたらしいけど、私以上にこわかったに違いない。


結局、犯人は近くの大通りで車にぶつかって死んだ。
その少し前に、となり町で銀行強盗事件があったそうで、その銀行強盗が乗っていた車にぶつかったとの事。
偶然にも、川男さん達との話で出てきた事が、現実になってしまったみたい。



残り少しの小学校生活のうちの1週間を、丸々潰してしまった。
それは中々辛くて、落ち着いて学校に行けるようになるまで、学校に行きたくてしようがなかった。


学校に久々に行ける日。
まだ1人で登校出来ないので、すぐとなりの中学校に通うお兄ちゃんと、一緒に登校することにした。
本当は朝練習があるらしいけど、お兄ちゃんは「問題ない」と言った。大丈夫なのかな?


私はできるだけ早く、今回の出来事を忘れてしまいたい。
あと、あの時助けてくれた3人にしっかり「ありがとう」と言いたい。


学校に着いて、私は急いで私のとなりの教室に向かい、助けてくれた3人を呼び出す。
3人は、私の登校をとても喜んでくれた。
私はまず「おはよう」とあいさつ。
そして、しっかり「ありがとう」と彼らに感謝した。

ここまでです

次回は明後日でよろしくお願いします。

今回も読んでくださり、ありがとうございました。


————

『幼女の数だけ酷くなれるよ、吐き捨てたチューインガムのように、見るものすべてを怯えさせるね、明日もきっと君を襲うよー

……そんな人間だったので、死刑
死因は轢死、所謂“死神補正”により即死。
以上』


……

死神「報告書なんて、こんなもんでいいだろー。 はい終了」ノビー

女死神「あら、仕事終わったのかしら?」

死神「うげ、お前か。 いや、ちゃんと仕事したからな? 誤解はすんなよ」

女死神「分かりましたから。 報告書、私がまとめて上に届けましょうか?」

死神「お、サンキュー。 それは助かる」


女死神「最近、仕事が多くて疲れますわね」ハァ

死神「本当にそう思うぜ。 休みてえなあ、くそー」

女死神「まあ、でも、明日からはフリーですから、ゆっくりできますわ」

死神「何だと? まじか……羨ましいぜ」

女死神「あら、貴方もフリーじゃなかったかしら? 確か」

死神「いや、知らねえ。 聞いてねえ」

女死神「まあ、そうですか。 書類ついでに確認してきましょうか?」

死神「サンキュー。 助かるぜ」


————

女死神「やはり、貴方もフリーでしたわ」

死神「よっしゃあ、自由だーー!」

女死神「ふふっ。 それで、貴方はどう過ごされるの?」

死神「んー……あ、そうだ。 ガキ共をからかいに行くかな!」

女死神「からかいに、って……貴方も子供みたいですわね」

死神「へっ、俺はいつまでもガキの心を装備してるんだよ」

女死神「それ、呪われた装備品なのでは?」

死神「呪われた装備は微妙に強いんだぜ?」

女死神「でも、まともに行動できないでしょう……えー、少々気になったのですが、その子供達はどのような……?」

死神「んー、変な奴」

女死神「……漠然としすぎですわ……」


女死神「……少々気になりますわ。 ついて行っても宜しいかしら?」

死神「今の説明に、興味をそそるようなことなんてなかったとおもうのだが……
まあ、構わねーよ」

女死神「有難う御座います。 では、明日……ですわよね?」

死神「ん」

女死神「分かりました。 明日また」

死神「へーいよ」

遅刻してしまいました、ごめんなさい。
今日はここまでです。


次回は金曜日で。 頑張って投下量を増やします…最近少ないので。

最後に、読んでくれた皆様、ありがとうございます。


——学校——

幼馴染「おっはよー」ヒョコ

友人「よーっす」
少年「おはようございます」

霊能女「おはよう。 今日は大丈夫?」

幼馴染「とっても元気だよ!」

霊能女「そう。 良かった」

幼馴染「小学校にいられるの、あとちょっとしかないからねっ! これ以上休んでいられないよー」

友人「えー、俺はさっさと卒業したいな」

幼馴染「えー。 今をもっと楽しもうよー」

少年「まあ、人それぞれからね」


同級男A「あ、幼馴染! そっちのクラス、もう子役ちゃん来てるか?」

幼馴染「うん、今日来てるよ」

同級男A「よっしゃー! 行ってくるぜー!」ダッ

同級男B「あ、ちょっと待てよー!」ダッ

幼馴染「ひゃっ」ササッ

友人「幼馴染ー。 ドアの所にいないで、さっさと教室に入れよー」

幼馴染「え、でもー……」

少年「まだ朝のお話が始まらない時間ですし、別に良いのでは?」

幼馴染「そうだね、そうするー」


ワイワイガヤガヤ

幼馴染「このクラスって、インパクトがある人が多い気がするね」

霊能女「そうかしら。 あまり気にしたこともないけど」

幼馴染「だって、何でも出来ちゃう小僧くんに、すごく器用な同級Cくん。 あと……この2人」

少年「え、僕ですか? 霊能女はともかく……」

霊能女「それ、どういう意味かしら?」

少年「察して下さい。 でも幼馴染のクラスだって、子役さんがいるじゃないですか」

幼馴染「あー、そうだね」

友人「凄いよなー。 色々」


同級男C「よっし、できたー!」ガタッ

友人「うわっ! びっくりした……!」ビクッ

幼馴染「同級Cくん、どうしたの?」

同級男C「ん、ちょっとね。 折り紙でバラを作ってたんだ」

霊能女「また? これで何個目よ」

同級男C「さあ? オラ覚えてないや」

少年「でも凄いですよね。 とても形が綺麗ですし」

友人「ホントになー。 俺、よく飛ぶ紙飛行機なら作れるけど、これには勝てねーや」

同級男C「紙飛行機とバラって、勝敗のつけようがないじゃん……」


小僧「あれ、どうしたんだい?」ヒョコ

同級男C「お、アンタかい。 A達から少しだけ解放された気分はどうだい?」

小僧「どうでもいいよ。 どういう意味だい?」

友人「いや。 毎日のようにいじめられてるからさ」

霊能女「それを少年君が止める、と。 いつもの光景になってるけど」

小僧「別にいじめとは思ってないんだけれど……嫌なレッテルは極力貼らないで欲しいな」

少年「あ……すみません」

小僧「いや、責めてるわけじゃないよ。 ただ、“いじめられてる”訳じゃあないよ。って言いたかったんだ」

同級男C「オラから見たら、アンタがそう見えたんさ。 暴力とかされてるし」

友人「お前、抵抗してないし」

小僧「別に、それは気にしなくていいよ」

少年「……ですが」

キーンコーン…

小僧「ほら、席に着こう」

少年「……そうですね」

幼馴染「じゃ、じゃあ戻るねー」タタッ

霊能女「ええ、また後でね」


——小学校・校庭——

死神「よっし、せっかくの休みだし、遊ぶぜー!」

女死神「おー! ……それで、小学校ですのね……」

死神「だって言ったじゃないか。 ガキ共をからかいに行くって」

女死神「それは分かっていますわ。 でも、今は授業中では?」

死神「いいじゃねーか。 からかうのに時間なんて関係ねーよ」

女死神「せめて、昼頃にしません? その方が……」

死神「えー。 つまんね」

女死神「完全に子供ですわ……さすが子供心装備のオジサンね」

死神「あとは黒いサングラスを付けてる。 故に格好良い」ギーコギーコ

女死神「……」

死神「無言は肯定とみなすぜ。 さすが俺だ、格好良い」ギーコギーコ

女死神「ブランコこぎながらそんな事言わないで! 見た目とのミスマッチから、総じて気持ち悪いですわ!」


——授業中——

先生「〜〜〜だから、この長さとこの長さは“比例する”と、言います。 みんな、分かったかな?」

子供達「はーい!」

先生「はい、それでは、今日のまとめをしますよー」


小僧「…………」カキカキ

同級男A「ねみー……」ポイッ

小僧「……っ」コツン


少年「また……っ。 消しカスを飛ばし当てて……!」ボソ

霊能女「冷静になりなさいよ、少年君。 本人よりも気にしてどうすんのよ」ボソ

少年「……うぅ」

同級女A「まーたお話? 仲いいね2人共」

霊能女「そ、そうかしら」クルッ

同級男C「後ろから見て、いっつも2人でおしゃべりしてるし。 好きなんだろー」ニヒヒ

霊能女「そ、そそ、そんな関係じゃないから!」アセ
少年「席が隣ですからね。 話す機会も多くなりますからね」

同級女A「うわーお」ニヤ


同級女A「どうせ、同級男A達がしていることを止めたいんでしょ」

少年「そうですよ」

同級男C「やっぱりね。 日常茶飯事だから、予想しやすいよ」

霊能女「本当にね」

少年「じゃあ、皆さんも一緒に手伝って下さいよ」

同級女A「それは無理だなー。 色々怖いもん」

同級男C「オラの母さんが、後で説教するんじゃない?」

霊能女「ああ、先生が」

少年「うーん」

今回はここまでです。

投下が飛び飛びですね…反省


次回投下についてですが、少し時間を下さい。
私情?により、投下が難しいので、
早くて木曜日にします。

今回も読んでいただき、ありがとうございました。

>>168についてですが、
遅くても木曜日に投下します。
私情は私生活に訂正させてください。

需要は無いのかもしれませんが、完結するまで頑張ります。


——校庭——

死神「あー暇だー。 おい女死神」

女死神「ん、どうしました?」

死神「暇だから、一発してくれ」

女死神「は、はあ!? な、何を言ってますの!?」

死神「いいだろうが。 一回くらい」

女死神「嫌ですわ! 何で、こんな、所でっ……!」

死神「えー、つまんね」

女死神「い……意味、が分かりませんわ……!」

死神「別に、減るもんじゃあないだろうが」

女死神「私の大事なものが無くなりますわ! いい加減にしてください!」

死神「えー」ドタドタ  スイー  ドタドタ  スイー

女死神「駄々こねながら、滑り台で遊ばないで下さいません!?」

女死神「って、先程から遊具に夢中になってますわよね!? いい年して、何やってますの……」

死神「子供なめんなよ!」

女死神「どう見ても、オジサンでしょーがっ」



死神「いーっぱつ! いーっぱつ!」

女死神「うう……」

死神「一番面白いネタを頼むぜー」ヒュー

女死神「……え、ネタ?」

死神「えっ。 ネタはネタだろう。 一発ギャグのネタ」

女死神「一発、ギャグ?」

死神「そりゃあな。 え、何お前、変なこと考えてたのか?」

女死神「 」カァァァ

女死神「うにゃああああ!」ダッ

死神「何でこっちに来るんだよ! お前の誤解のせいじゃあないか!」ダッ

女死神「あああああ!」カァァァ

死神「一発ギャグしとけば良かったのによ……うあっ、落ち着けぇ!」


——授業終了前——

少年「先生、結局気付かなかったようですね」

霊能女「しょうがないでしょ……」

同級男C「いくら教師でも、消しカスが飛んでるのなんて、すぐに分からないよー」

同級女A「むしろ、しゃべり過ぎで、あたしたちが怒られたという、ね」

同級男C「実の息子には厳しい! オラに対して、差別だー」

霊能女「だからこそじゃない? 立派に育ってねー、みたいな」

同級男C「うげえ」

地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

すみません、中途半端な投下で…
今夜きりのいい所まで投下します。

あと、僕は西の方に居るので、地震の影響はありません。
大丈夫です。


——校庭——

ピンポンパンポン

『給食の時間になりました。 給食当番は廊下に並び、速やかに給食を取りに行きましょう』

死神「お、やっと昼になったか。 おい、女死……神? あれ?」キョロキョロ

女死神「……」ズーン

死神「うわ、ブルーになってやがる……いや、木陰で暗いからブラックか?」

女死神「はあ……私の馬鹿、みっともないですわ……」ハア

死神「うわあ……近寄りたくねえ。 おい、落ち込むんなら、あそこのトイレにでも篭もっとけ」

女死神「うぅ……」トトト スゥーッ

死神「壁をすり抜けるシーン、ホラーだろあれ……」


——教室——

ピンポンパンポン

『給食の時間になりました。 給食当番は廊下に並び、速やかに給食を取りに行きましょう』

同級男A「よっしゃ給食!」
同級男B「いやっほう!」


友人「じゃ、俺当番だから行くわ」ガタッ

同級男D「ほーい。 あ、俺ごはん大盛りでしてくれよー」

友人「分かったぜ」


同級男C「あ、オラも給食当番だ」

同級女A「はいはい、行ってらっしゃーい」

霊能女「……」ガタッ

少年「あれ、霊能女さん? 当番じゃなかったはずですけど……」

霊能女「別に、トイレとか手を洗ったりとか、何をしてもいいでしょ?」

少年「そ、そうですね」

霊能女「ん」スタスタ


同級女A「何ぼーっとしてるのさ」

少年「いえ……霊能女さん、怒ってましたよね?」

同級女A「いや、いつもと変わらないんじゃないかな」

少年「そうですかね。 ちょっととげとげしい、と言いますか」

同級女A「気にするほどでもないでしょ」

少年「うーん」


同級男A「おら、ぞうきんソード!」ペチン

同級男B「効かんわー! バリアっ!」

同級男A「あ! てめーずりーよ!」


少年「またやってますね……」

同級女A(展開が予想出来るわ……)


同級男B「小僧を倒せば、バリアが消えるしー」

同級男A「何だとー! じゃあ、小僧に攻撃だー!」ベシ

小僧「……っ」

同級男A「おらおらおらー!」ベシベシ


少年「あーもう!」

少年「そこの2人! ちゃんと席について下さい!」

同級男AB「は? いやーだ」

少年「ついて下さい!」

同級男AB「……」スタスタ  ドスン


同級女A「予想通りでいつも通りすぎて、ため息が出るわ……」ハア


——女子トイレ——

ジャー

霊能女「珍しいわ。 いつもなら、トイレに何グループかは居るのに」

霊能女「はあ……少年君は過剰に反応しすぎよ……小僧君は気にしてないのに」

??「」ブツブツ

霊能女「もー、いらいらするわ。 少年君を手伝いたいけど、相手は遠慮がち」

??「」ブツブツ

霊能女「どうしましょう……私は何をすればいいのかしら……」

??「」ブツブツ

霊能女「ブツブツうるさいわね! 誰よ!」クルッ

女死神「……何でございますか?」ゲソ

霊能女「……うわあっ!」ビクッ
霊能女(また変なのに会っちゃった……)

今回の投下はここまでです。
次回は月曜夜までの辺りになりそうです。

今回の地震、皆さん大丈夫でしたか?

被災者の方々の無事を祈ります…。

一週間放置してごめんなさい!
今夜投下します!


霊能女「ええと、どちら様?」

女死神「あら……私が見えるのですか?」

霊能女「ええ……私、霊的な物は見えるので……」

女死神「そうなのですね」
女死神(彼が言っていたのは、この子かしら?)

霊能女「それで、あなたはどちら様?」

女死神「ああ、ごめんなさいね。 私は女死神ですわ」

霊能女「“死神”やってるの?」

女死神「ええ。 “死神”ですわよ」

霊能女「へえ。 じゃあ、黒サングラスの死神って知ってるかしら」

女死神「知ってますわ。 私の同僚ですのよ」

霊能女「そうなのね」

女死神「あら、お知り合いだった?」

霊能女「ええ、まあ……」


霊能女「それで、何でブツブツ言ってたの?」

女死神「私の変な勘違いで恥をかいたのですわ。 ああ、穴があったら入りたい……」

霊能女「だ……大丈夫よ。 ミスは誰でも有り得るわ」

女死神「でも、やはり恥ずかしいですわ。 もう少し、落ち着いていれば……うわあああん!」

霊能女(な……中々特徴的な人ね……)

霊能女「と、とりあえず……私は教室に戻るわね」

女死神「は、はい……ではさようなら……」



スタスタ

霊能女(と、トイレに死神がいたわね……禍々しいオーラ付きの)


——教室——

ワイワイガヤガヤ

霊能女「あら、まだ給食配膳中なのね」ガララ  スタスタ

少年「やあ霊能女さん。 お帰りなさい」

同級女A「いつも通り、この人はキレてましたー」

少年「いや、キレてないですよ……注意をしたのです」

同級男C「オラは給食当番だから、その時いなかったもんなー。 見たかったなー。 ほい、置くよ」スタスタ

少年「ああ、ありがとうございます。 あと見せ物じゃないのですが」

同級女A「野次馬はどこにでもいるのよ。 やじうまは」

霊能女「注意で野次馬……無駄じゃないのかしら」

同級男C「無駄に全力を尽くすのは、いいと思うんだけどなー」

少年「野次馬に全力を尽くしてどうするのですか……もっと、まともな事にしましょうよ……」



——校庭——

キーコキーコ

死神「ふんっ! ふんっ!」

死神「……っ! きたっ!」

死神「でえりゃぁぁあああ!」スポーン


トサッ


死神「よしっ! 花壇越えた! 50m位は行ったんじゃねーのか!?」キーコキーコ

死神「よっと」スタッ

死神「もっと行くには……ブランコの勢いを上げるべきか?」ピョンピョン

死神「靴はこれしか無いからな……今度買うかな」ピョンピョン

死神「やっべーな……靴飛ばしハマったぜ」ヒョイ


死神「よっと……ふんっ!」キーコキーコ

死神「ふんっ! ふんっ!」キーコキーコ

死神(今だっ!)キーコキーコ

死神「でえりゃぁぁああああああいっ!!」スポーン


ヒュー

スコーン  キャッ!イタイ!!


死神「うっは、やっべーな。 誰かに当たっちまったわ」ゲラゲラ

死神「よっと……仕方ねえ、取るついでに謝っておくか」


ピョンピョン  ピョンピョン



死神「すんませーん。 怪我とか大じょ……何だお前か」ハア

女死神「凄く痛かったのですが。 何やってたら、靴なんて飛びますの?」ムカー

死神「ああ、あれだ。 ブランコで靴飛ばし。 面白いぜ」

女死神「貴方は何がしたいのかしら? 傍目から見たら、馬鹿ですわよ」

死神「失敬な。 何ならお前もするか?」

女死神「やはり馬鹿ですわね。 貴方の脳内、一度位覗いてみたいものですわ」

死神「きゃーへんたいだー。 とりあえず、靴返してくれ」

女死神「いちいち腹が立ちますわね……! はい、靴」スッ

死神「サンキューベリーベリーマッチョ」パシ

女死神「うーっ……」イライラ


キーンコーン…

死神「お、昼飯の時間過ぎたか」

女死神「え? よく分かりましたわね」

死神「いや、ああ、まあ……仕事でな、仕方ない」

女死神「仕事でこの学校に?」

死神「ああ、そうだ。 ほら、お前も担当してたじゃあないか。 あの、幼児に暴行する奴ら」

女死神「あ、なるほど。 つまり、あなたが担当していた人は、ここに頻繁に来ていた、と」

死神「そういうことだ。 嫌でも覚えたぜ」

女死神「私、初日から死刑判定出して、悠々自適に過ごしていましたの。 だから、あの方々が学校にいたとしても、覚えられる訳がないですわー」

死神「ちゃんと真面目に働けよ!」

女死神「メリハリが大事ですわよ」フフッ


女死神「それで、これからどうしますの?」

死神「ガキ共をからかいに教室へ行く」

女死神「気付きます?」

死神「2人、俺らが見える。 そして、中々良い反応をする」

女死神「へえ。 じゃあ早速、行きましょうか」
女死神(多分、1人は先程の可愛らしい女の子ですわね)

死神「おう。 “善は急げ”だー!」

女死神「からかうのが善だとは、絶対に思いませんわ……」


——昼休み・教室——

少年「ぐぬぬ……」

霊能女「少年君、流石に考えすぎ。 落ち着いて」


ガララ

幼馴染「遊びに来たよー!」

友人「よっす」
同級男C「暇だー」
同級女A「やあ、朝ぶりねー」

幼馴染「この席借りまーす」トスン

友人「ああ、幼馴染。 あそこの正義漢は無視していいぜ」

同級女A「何それ、“せいぎかん”って」

友人「いや、同級男Dが言ってた。 多分辞書にものってないと思うぜ」

同級男C「蔑称ってやつかな? ほら、熱血漢とか言うじゃん。 それに正義を付けた感じじゃん」

幼馴染「べ…べっ……え?」

同級女A「“べっしょう”? 何それ。 どういう意味なの?」

友人「アイドンノー(I don't know)」キリッ

同級男C「」ブフッ
幼馴染「ちょっと! 変な顔しながら英語言わないでー!」アハハ

友人「アイドンノーアイドンノー」ガタッ

同級女A「ちょ、立ち上がって、何を」アハハ

友人「アイドンノーアイドンノーアイアイドンノー」パンパンパンパン

幼馴染「あはは! 何それー!」アハハ

同級男C「うおおお! アイドンノーアイドンノーアイドンノーア!」ガタッ パンパンパンパン

同級女A「手拍子、い、いら、ないでしょうが!」アハハ ゼーハー


————

少年「はあ……小僧君は本当に、このままでいいのでしょうか」

霊能女「本人の意思を尊重すべきだと思うけど……、……あなたは?」

少年「止めるべきだと思ったのですが……」

霊能女「そう。 確かにエスカレートしそうだから、止めたほうがいいかもね」

少年「ところで、どうして小僧君は被害を?」

霊能女「え、知らなかったかしら」

少年「ど忘れしました。 もしくは知らないか」

霊能女「……。 えっと、隣のクラスの子役さんが、『小僧くん格好イイ』とか何とか言ったの」

少年「確かに、容姿は素晴らしいですし、勉学、スポーツも完璧ですしね」

霊能女「それで、嫉妬した同級男A達がからかい始めたの。 馬鹿馬鹿しいわね」

少年「なるほど……」


アイドンノーアイドンノー アハハ

霊能女「さっきから後ろの方で、何してるのかしら」クルッ

少年「さあ、何でしょうか」クルッ



友人「アイドンノーアイドンノー」パンパンパンパン
同級男C「アイドンノーアイドンノー」パンパンパンパン
幼馴染「あはは、おなかいたいー」アハハ
同級女A「ちょ、っと、スト、ストップー」アハハ

死神「アイドンノー! アイドンノー!」ギュルルル
女死神「回りすぎですし、何馬鹿なことをしていますの!? 少年ハートじゃなくて、馬鹿ハートですわよね!?」ギャーギャー



少年「うわあ……馬鹿がいますね……」

霊能女「どっちも馬鹿馬鹿しいわね……」

今回はここまでです。遅れてしまい、大変申し訳ございません。

きりのいい所で終わらせるつもりなのですが、いつも死神の登場で終わってる気がします。
キャラを可愛く見せたいです…

次回の投下の前に、朝または夕方に報告しても良いですかね?
明らかに予定と実際の投下がズレているので…
我が儘ですみません。

いきなりですが今夜9時に投下します
大変遅れてしまい、申し訳ございません。

今日からしばらくは時間に余裕があるので、放置してしまう事は無いと思います。


————

死神「迷えるガキ共よ……何かお困りごとかな?」

少年「貴方が来たことです」

女死神「ごめんなさいね? お邪魔してしまって」

霊能女「あ、いや、大丈夫よ? ただウンウン唸ってるだけだったし」

死神「トイレの時みたいにか」

少年「止めてください。 あれは下の方で、今回は上の方です」

死神「いや、上の方って意味わかんねーよ」

少年「考えないで、感じて下さい」

女死神「尚更何のことか分かりませんわよ?」

霊能女「あー……、女死神さん。 ちょっと説明するわね?」

女死神「助かりますわ。 疑問を疑問のまま残したくないので」


霊能女「————。 こんな感じね」

女死神「つまり、いじめを受けている子を助けたいけども、本人は助けなくていい、と」

霊能女「そんな感じね。 12月からだったから、かれこれ2ヶ月位そのまま」

女死神「珍しいですわね」

霊能女「え?」

女死神「普通であれば、知らないふりをするでしょう? 率先して助けようとする子は珍しいですわ」

霊能女「そ、そんな物かしら?」

女死神「仕事の関係で、多くの人間を見てきましたの。 その上で判断しましたの」

霊能女「ふーん。 あれ、大人でもそういうのってあるのかしら?」

女死神「いじめる人はいじめますし、いじめられる人はいじめられますわ。 大人だから変わるわけではないですわよ」

霊能女「面倒なのは、変わらないのね……面倒くさいわ」


死神「そんなに深く考えんなよ、ガキの癖に悩みすぎだ」

少年「子供ならではの悩みですよ」

死神「いーや、お前の悩みは年相応な筈がない」

少年「個性ですよ。 個性」

死神「そんなマイナスな個性は、すぐに無くしな。 ガキは何も考えずに遊んどきゃいいんだよ」

少年「ですが……」

死神「はいこれで終了! めんどくせーよ、これ以上は」

少年「……そちらが勝手に割り込んだじゃないですか……」

死神「割り込んでなんぼの商売だしな」

女死神「いや、違いますわ!」

死神「ほれ、割り込んできただろ? これが“死神”な」

少年「……」

死神「ほらほら、さっさとそこのガキ集団に突っ込んできな」

霊能女「……そうね。 少年君、これでお開きにしましょ?」

少年「……。 分かりました」スタッ


友人「アイドンノーアイドぅえっ」ウップ

霊能女「何むせてんのよ……」

同級男C「まだだっ! アイドンノー世界一まであとちょっとなんだあああアイドンノーアイドンノーア!」

同級女A「やりすぎ止まりなさい!」

幼馴染「おなかいたいー、あはは、あは」ハアハア

少年「もうこれは収拾つかないですね……」

同級女A「あ、2人共。 話し合いは済んだー?」

霊能女「邪魔されたから、解散したわ」

友人「うえっぷ……ん? 邪魔されたって誰にだよ」

少年「おじさんの霊ですね」

友人「ああなるほどな。 また霊か」

霊能女「まあ……そうね」



死神「“おじさん”に、ダンディーが付いていない! 名誉毀損だ!」

女死神「いい加減うるさいですわ! お黙りなさい!」


ガララ

同級女B「Aちゃーん」

同級女A「ん、何ー?」

同級女B「あたしたちと外で遊ぼーよ!」

同級女A「オッケー! 今行くよー」

同級女A「んじゃ、私は外行ってくるから。 またねー」

幼馴染「はーい……」ションボリ


同級女B「ああ。 あとさ、小僧くん体育館裏に呼び出されてたよ」

友人「ホントか!?」ガタッ

同級男C「行ってみよー!」

少年「こ、小僧君は大じょ」
霊能女「そろそろ腹立ってきたわ。 どれだけ彼に拘ってるのよ……」

少年「不安ですから」


——同時刻・体育館裏——

小僧「……面倒だなあ。 うん」

同級男A「来たな! チキるかと思ったぜ」

同級男B「でも、来てもボコボコにするのは変わらねーし」

同級男E「今日お前ボコして、その腹立つ態度を買えてやんよーだ!」

小僧「あーはいはい、分かったよ……大体心情理解したよ。 僕にとってはどうでもいい」

同級男A「何だとコラ。 ふざけんじゃねーよ!」

同級男E「死ね! うんこ!」

小僧「うるさいな……トカゲでも捕まえて時間潰したいけど、今は冬だもんなー……」


同級男B「子役は何で、こんなうぜーやつが好きなんだろ」

同級男A「知らねーよ! でもこいつ腹立つし、ムカつくからボコす!」

同級男E「ここがお前の墓場だー!」

小僧「物騒な……解決法は1つしかない、か……」ハア

ダダッ

同級男F「でえええいっ!!」ヒュン

バチンッ

小僧「っ……痛……」ヨロ

同級男E「ボールが当たった! 同級男F、ナイス!」

同級男F「顔面に当てたかったけどなー、後頭部だった!」

同級男A「よし、くらえええええっ!!」ダッ

小僧「……あーもー!」ムカ

今回はここまでです。
グダグダな展開になってしまった…

次回は明日で。
今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

今日の投下は、23時からにします。
あと、1レスだけ地の文有りです。


——廊下——

ダダッ

少年(小僧君、大丈夫でしょうか……?)ダッ


タッタッ

霊能女「は、速い……」

友人「いーや。 俺のほうが速いぜ」

同級男C「いやいや……今そんな張り合いはいらないって」

友人「あれ、幼馴染は?」

霊能女「来るか来ないかは、幼馴染さん次第でしょ?」

同級男C「俺達は野次馬で行くしなー。 で、お前もか?」

霊能女「私は、少年君が何か変な事をやらかさないか、監視を……」

友人「小僧の心配もしろよオイ」

霊能女「もちろん、小僧君の心配もしてる。 けど……」


————

少年達が教室を出て、小僧がいるという体育館裏へと急いでいる時、
幼馴染は、廊下から自分の教室を覗いていた。

その教室には、本を読んでいる男児と、黒板前で談笑をしている数人の女児がいる。
幼馴染は一度、先を行った少年達の方向を向き、一拍置いてから教室の中へ入っていった。

そして、教室にいる数人の児童達の内、無言で本を読み進める男児の前に立ち、

「何を読んでるの?」

と声をかけた。

声をかけられた男児は、目線を目の前に広がる文字の世界から、目の前に立つ少女へ移動させる。
そして、何も言わずに、その本の表紙を幼馴染へと向ける。

「えと……、ま……“魔法の声”?」

幼馴染が題名を言ったのを確認した男児は、目線を文字の世界へと戻し、再び読み進める。

幼馴染は、何かを言おうとするが、何も言うことがなかったのか、ただ男児の隣の席——自らの席——に座り、じっと彼の姿を見つめていた。


幼馴染「ねえ、気弱くん。 そのページ、……」

気弱「……」

気弱(死ね、キモイ、くさい、ノロマ、病原菌……か)

気弱「いや、いいよ……気にしないで」

幼馴染「でも……」

気弱「……」ペラ

幼馴染「……」

気弱「……」ペラ

幼馴染「……前にも言ったけど、何か……何でもいいから、私に話してね?」

気弱「……」コク  ペラ

幼馴染「じゃ……、ちょっと出かけるけど、一緒に行かない?」

気弱「……」

幼馴染「いや、あの、無理なら……断っていいよ?」

気弱(……止めてよ。 断れないじゃないか)
気弱「……行くよ」

幼馴染「そっか、良かったー」

気弱「……」



——トイレ前——

死神「ありゃあ、もう病気の類だわ」ガハハ

女死神「止めようとしている所は良いですわ、でもそれが裏目に出たら……」

死神「確かにな。 少し前の時代なら、ガツンといって、和解ーなんて、漫画みたいな展開なんだけどな」

女死神「本当に。 最近のネチネチしたものは、気分が悪くなりますわ……」

死神「時代だなー」ハア

女死神「時代ですわねー」ハア

死神「そして、俺達の仕事も増える、と」

女死神「本当に。 最近はすぐ死にたがる人間が増えてますわよね」

死神「時代だなー」ハア

女死神「時代ですわねー」ハア

死神「ちくしょー……サービス残業までしないといけないなんて、俺達をいじめるつもりか!!」

女死神「上の方も、大忙しみたいですわよ?」

死神「そうなのか」


死神「っあー……イライラするぜ」

女死神「せっかくの休みなのに、イライラしては駄目ですわよ?」

死神「しようがないだろ」

女死神「うーん……また、彼らの所へ行きます?」

死神「……そうだな、そうしよう」

女死神「またからかうつもりですの?」

死神「それしかすること無いぜ」

女死神「……」ハア

死神「時代だなー」ハア

女死神「今の何が時代を感じる要素ですの!?」

死神「いや、まあ、あの、えー、んー、あーっと、そのー、ね?」

女死神「……わけが分かりませんわ」


——体育館裏への道——

同級男C「うわお、雑草が生い茂って通りにくい」

霊能女「ここの雑草抜きって、凄く面倒だったわね……」

友人「止めろよー! あんな面倒な事思い出したくねーよー!」

同級男C「くっそう……トカゲがいないと、すげーつまんねーよー。 ここー」

霊能女「同級男C君って、何匹もトカゲを捕まえては、虫かごに入れて教室に置いてたわね」

同級男C「オラ、捕まえるのが得意だからな!」

友人「あと虫もな。 虫かごが虫で埋め尽くされてた時は、ホントに気持ち悪かったぞ」

同級男C「捕まえる技術がアンタらとは違うんだよー」

霊能女「言い方が腹立たしいけど、事実なのよね……」


友人「あとは角を曲がっ……あれ、少年?」

霊能女「どうしたのかしら、角でぼーっとして」

同級男C「豆腐の角に頭ぶつけたのか?」

霊能女「何言ってるのよ」

友人「ちょっと見てみ……」ポカン

霊能女「友人君までどうしたの……よ……」ポカン

同級男C「見えない豆腐にやられたのかい? ……うわお」



小僧「はあ……はあ……」ゼーゼー

同級男ABEF「」バタンキュー

今回の投下はここまでです。
次回は明日の予定です。

淡々と進行していますが、何か疑問やおかしい所、批評等あればお願いします。
では、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

今日の投下は23時の予定です。

乙や楽しみといったレスが本当に嬉しいです!ありがとうございます!


——体育館裏——

小僧「お前たち!」ブワッ

同級男F「ちょ、うわあ!」

同級男E「吹き飛ばされ……っ」

同級男B「小僧から風が吹いてるー!」

小僧「『黙って倒れてろ』!!」ゴウッ


同級男A「う……うわああああ!」バタ

同級男B「あああああああ……あ……」バタ

同級男EF「あ……う……」バタ



小僧「ありがとう、“妖精さん”」フッ

小僧「……はあ……はあ……」ゼーゼー

小僧「ちょっと、やりすぎたかな」ゼーゼー

小僧「……? 誰かいる?」クルッ


少年「」ポカン

友人「」
霊能女「」
同級男C「うわお」


少年「……はっ」ハッ

少年「小僧君、大丈夫でしたか!?」タタッ

小僧「見れば分かるよね? 少年氏、キミは度が過ぎるよ……」

少年「ですが……」

小僧「いいや、もう。 僕の問題は済んだ。 もう、起こらないよ」

少年「え?」

小僧「これで、終わりなんだ。 僕のは、ね」

少年「??」


小僧「で、いつからいたのかい?」

少年「僕は……先程。 来たときには、同級男達が既に倒れていて、つい呆然と」

小僧「そうか、そうか」ホッ

小僧「じゃあ、そこの」


霊能女「」ワタシ?
友人「」オレ?
同級男C「」オラ?

小僧「他に誰がいるのさ……」


霊能女「」コノヒト
友人「」コイツ
同級男C「」コレ

小僧「何それぞれを指してるのさ……三角関係?」

3人「違う!」

小僧「それはともかく、そこの3人は、少年氏の後かな?」

3人「」コク

小僧「そうか、そうか」ホッ


タタッ

友人「お前、4対1で勝てたのか!? すげーな!」

同級男C「うわお。 としか言えなかったよ」

霊能女「一体、どうやって?」

少年「そうですよ。 どうして同級男達を打ち負かしたのですか?」

小僧「あー、まあ……」アセ

小僧(本当のことを言っても……信じれないかな? 2人はともかく……)

友人「」ワクワク
同級男C「」ワクワク

小僧(こっちの2人には、なー)

小僧「えと、日頃からトレーニングをね。 こういう時の為に」

友人「へえー。 すげーなー」

同級男C「面白いよ!」

小僧「へへっ」テレ


幼馴染「みんな〜」タタッ

気弱「……」タタッ

霊能女「ああ、幼馴染さん」

同級男C「遅かったなー。 と……」

友人「あ、お前……」

気弱「」ビク

小僧「気弱氏! どうしてここに?」

気弱「えと……あっ……」

幼馴染「うわあ、同級男Aくん達。 どうしたの!?」

友人「小僧が1人で倒したんだってよ」

幼馴染「え! うそ!」

同級男C「うそじゃないよ。 じゃあ何でこの4人は倒れてんのさ?」

幼馴染「あ、そうだね。 あ! じゃあ、保健室に運ばないと」

小僧「いや、大丈夫。 昼休みが終わる前に、起きるよ」

少年「え、ですが……」

小僧「いいのさ。 これで」

友人「何だ? その自信」


小僧「あ、あと少年氏」

少年「はい」

小僧「今言っておくよ」

少年「何です?」

小僧「視点を広くしなよ。 本当に苦しんでいる人は他にいる。 真に救われるべき人が、ね」

幼馴染「」ピク
友人「……」

少年「それって……」

小僧「そういう事。 今ここに思い当たる人が何人かいるだろうけど、あえて君には伝えてないようだね」

少年「え?」キョロキョロ

小僧「あと1つ。 君もそのつもりだったのだろうけど……」

小僧「僕は救うよ。 1つ1つ岩を取り除いて、岩に閉じ込められた仲間を救うんだ。 自分を犠牲にしてでもね」

少年「……」

少年「……僕も、救いますよ。 がむしゃらに。 今もそのつもりです」

小僧「そうか、そうか」ハハ


友人「よし、祭りは終わり! 帰るぞ!」スタスタ

幼馴染「祭りなんて言わないの!」スタスタ

同級男C「じゃ、祭りっぽいもの」スタスタ

幼馴染「変わらないよ!」スタスタ



霊能女「一件落着、かしらね」スタスタ

少年「釈然としませんが、そうみたいですね」スタスタ



気弱「……」

小僧「気弱氏!」

気弱「」ビク

小僧「そんなに怯えないでよ」

気弱「……ごめん」

小僧「いやいや。 えと、あとちょっとだよ。 僕は最後までやり遂げる」

気弱「……」

小僧「僕は、勧善懲悪の話が好きなんだ。 現実がそうでないのなら、自分が中心になって、そうする」

小僧「気弱氏が苦しまないように。 悪が再び気弱氏を苦しめることがないように」

気弱「。 ごめん、ごめん……」ボソ

小僧「いやいや、謝らないでよ」ハハ


死神「ありゃ、もう終わりか?」

少年「うわっ! びっくりしましたよ」ビク

女死神「あら? 予想とは逆でしたわ。 あの子が大変なことになったと思いましたわ」

霊能女「何気に酷いわね」

女死神「そんなものですわよ」

少年「とりあえず、帰っては如何です?」

死神「あー? ……まあ、そうか」

女死神「あら、もうお開き?」

死神「そうだな。 ……」チラ



小僧「」ジッ

気弱「? どうしたの?」

小僧「ん? ああ、いや。 何でもないよ」



霊能女「? あら、どうしたの?」

死神「いや、何でもない。 女死神、どっか行くぞー」ヒュ

女死神「え? ちょ、待ってー!?」ヒュ


少年「と、飛んで行きましたね」

霊能女「まさに嵐ね……」


——空——

死神「いやー、休みはいいねえ!」

女死神「あのー、まだ昼ですわよ?」

死神「まあな。 そうだ、今からどこか行こうぜ」

女死神「え? まあ、いいですわよ」

死神「了解。 そうだ、女死神」

女死神「何ですの」

死神「あの、小僧とかいうガキ。 ありゃ、面白いぜ」

女死神「……ああ、あの子、私達が見えているようでしたわね」

死神「あと、あのガキから、ある異質な力を感じ取れた」

女死神「あれは……“妖精さん”ですわね」

死神「そうだ。 やらかしてやがったよ。 あのガキ」

女死神「そもそも、この区域にもいましたのね……妖精さん」

死神「妖精さんが来ちゃったよ」

女死神「ああ……仕事が増える予感。 そしてサービス残業の予感」

死神「これは時代のせいには出来ない。 俺達の暇の為に」

女死神「一応新人や同僚、上司の為にも」

死神「潰すか」

女死神「そうですわね」

今回の投下はここまでです。
久しぶりに1日ペースの投下かな?量は少ないですけど…

次回の投下は明日の予定です。
最後に、読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。

今回の投下は23時30分頃の予定です。

場合によっては、日付が変わってしまうかもしれません…


——放課後・校門前——

同級男C「じゃあオラはこっちだから。 じゃーな」

同級女A「じゃあねえー。 アンタら、仲良くな!」

霊能女「それはどういう意味かしらー?」

同級女A「そういう意味だよーん。 にひひ」クスクス

同級女B「あっ、ちょっと! 速いよ〜」タタッ

霊能女「な……っ、『そういう意味』って……!」ポッ



幼馴染「霊能女ちゃーん。 おーいてーくよー?」

友人「ハリーアッツハリーアッツ」

少年「それはハリーアップじゃあないですか?」

霊能女「あ、ちょ、待って!」タタッ


————

死神「いやあ、夕方の喫茶店は落ち着くわー」

女死神「今日は比較的空いてますわね」

死神「ん、そうだな」

女死神「それにしても、不便ですわ。 お店に入る度に、姿を晒して良いかの申請をしなければならないなんて」

死神「どうせ直ぐに許可下りるじゃねえか。 あれだ、駅の改札の感覚だよ」

女死神「あれは、切符を通せば良いじゃない。 最近だと、“タッチでポン”で済むそうですし」

死神「あーそうか。 確かに不便だな」

女死神「それに、入った時に変な恰好だったら……」

死神「いや、それは愚痴になれない。 お前、いつも服良いし」

女死神「あら、ありがとう」ポッ

死神「俺はいつもスーツにサングラスだぜ」

女死神「良いと思いますわよ。 SPみたいで」

死神「SP、か……。 俺、誰も守るやついねーぞ」

女死神「じゃあ、私を守って」

死神「嫌だよ面倒くさい」

女死神「貴方はもう少し空気というか、女心というか……はぁ」シュン


死神「どうしようかなー、これから。 お、これうめえな」ズズ

女死神「んー、ショッピングはどう?」

死神「ううむ、それは夜にしようぜ」

女死神「何故夜、ですの?」

死神「何となくに決まってんだろ」

女死神「何となくで決めないで欲しいですの!」

死神「と言われても……」

女死神「あーもー! 決めましたわ! 引っ張ってでも連れて行きますわ!」

死神「な……っ! ノーセンキューノーセンキュー!」

女死神「黙りなさい! 行きますわよ!」グイ

死神「やめろーしんでしまうー」グエッ

女死神「“死神”の癖に!」

死神「分かったから分かったから! 首は止めろ! 周りの目が痛い!」


——帰り道——

幼馴染「みんな、ありがとうね? いつもいつも」

霊能女「気にしないで。 それに、ああなったのは私達の責任だし……」

幼馴染「いやいやいやいや、3人に悪い点なんてないよ! 気にしないで?」

友人「それに、友達だしな」

少年「そもそも、以前から一緒に帰ってましたし」

幼馴染「そうだね。 でももう一度。 みんな、ありがとう」ニコッ

友人「おうよ」


幼馴染母「お帰りいいい幼馴染ちゃああああああん!」ガチャ

幼馴染「た、ただいまー」

幼馴染母「大丈夫だった? 何も無かった?」

幼馴染「何もなかったよー。 みんなのおかげだよ」

幼馴染母「そう。 良かったー。 ありがとうね? みんな」

霊能女「感謝されるほど、何かした訳でもないけど……」

幼馴染母「いいのよ。 こうして自分の大切な子が、無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいのよ」


——公園——

友人「ちょっと遊んでいこうぜ」

霊能女「18時までまだ時間はあるわね。 良いわよ」

少年「何をしますか?」

友人「あそこの鉄棒で遊ぶとか?」

霊能女「どう遊ぶのよ。 あと、私スカートなのだけれど」

友人「あー、そうだな」

少年「この公園は、あまり遊具がありませんしね……」

友人「そうだよな。 新しい公園を作るより、今ある公園に新しく遊具を作ってほしいぜ」

少年「確かにそうですね」

霊能女「大人の事情なんじゃないの?」

友人「大人の事情は逃げだろ」


友人「すまん、やっぱり帰る」

少年「? どうしてですか?」

友人「家の手伝いを思い出したんだ。 母さん、中々忙しいみたいでさ」

霊能女「そうなの」

友人「おう。 じゃ、すまんが俺はこれで」

少年「分かりました。 また明日」

友人「また明日なー」タタッ


霊能女「……」

少年「……」

霊能女「結局、2人になったわね」

少年「本当ですね」

霊能女「ええと、幼馴染と幼馴染のお母さんって、雰囲気が似てたわよね」

少年「ああ、霊能女さんもそう思ったのですか」

霊能女「ええ。 どこが具体的にはーは言えないのだけれど」

少年「分かります」

霊能女「あと、さっきのというか、子供に対して、親ってああ思うものかしら」

少年「どうでしょうか。 僕の所は、そういう事が無いので……」

霊能女「あ……ごめんなさい」

少年「いえ、気にしなくても大丈夫ですよ」


霊能女「ねえ、少年君」

少年「何ですか?」

霊能女「ほら、あそこを見て」

少年「どの辺りですか?」

霊能女「私が指さしてる方向よ。 木が密集してる辺り」

少年「はい、……おや? 小僧君、何故あそこに?」

霊能女「さあ? 何をしているのかしら」

少年「謎ですね……」

霊能女「あ、木に手を付けたわね」

少年「あの木は何の木でしょうか」

霊能女「気になる木ね」

少年「ううむ……、! 消えて……!?」

霊能女「え、何で!? いきなり消えたわよ!?」

少年「訳が分からないですよ」


————

少年「ここ、ですよね?」

霊能女「確かにここ……のはずよ」

少年「小僧君、何故ここで消えて?」

霊能女「本当に訳が分からないわね」

少年「整理すると、『小僧君がこの木に手を付けて』『消えた』」

霊能女「あまり整理できてないわよ」

少年「すみません……」

霊能女「別にいいけどね。 そうだ、試しに手を付けてはどうかしら」

少年「それか、思い切り突っ込む、というのはどうですかね」

霊能女「そんなことをしても、魔法の乗り場に出るわけじゃあないわよ?」

少年「確かにそうですよね。 とりあえず、手を付けましょう」ピタ

霊能女「後先は考えないの? いいか、別に」ピタ

少年「ん? この木、変な感触が……」ヒュ

霊能女「本当ね、って少年く……」ヒュ

今回の投下はここまでです。
次回は明日もしくは明後日です。はっきり言い切れないです。

やはり書き溜めは必要ですね…
2回書いている途中で白紙になったり1回居眠りしたり、
まともに書けませんでした。
計画性がなくて、本当にごめんなさい。

最後に、読んでくださった皆様、ありがとうございました。

今回の投下は23時を予定しています。
前回の二の舞にならないようにします。

また、僕の体調に異常は全く無いので、ぶっ倒れる事は無いと思います。
心配かけてしまってごめんなさい。


——不思議空間——

少年「……っつ」フラ

霊能女「んん……っ」フラ

少年「あ、霊能女さん。 大丈夫ですか?」

霊能女「ええ、ちゃんと生きてるわ。 怪我もないし」

少年「そうですか。 良かったです」

霊能女「少年君は?」

少年「他人の心配が出来る位なので、大丈夫ですよ」

霊能女「良かったわ。 それにしても……」

少年「ここ、何処ですかね」

霊能女「分からないわ。 見た目、木に囲まれてる感じね」

少年「学校の体育館と似ています。 広さや高さが」

霊能女「確かにそうね」


少年「おや、あれは……」ジーッ

霊能女「小僧……君、かしらね」

少年「それ以外に思い当たる節がないのですが」

霊能女「それは言わないで欲しいわ」

少年「ごめんなさい」

霊能女「ん。 ……行ってみる?」

少年「勿論です」

霊能女「オッケー」

タタタッ


————

タタタッ

少年「小僧君、ですよね?」

小僧「うわあっ! 何でここに……!?」ビクッ

霊能女「公園で見かけたからよ」

小僧「見かけたからって、追いかけるかい? 普通」

少年「普通とか常識とか、この歳で気にしたら、将来、頭が柔軟にならないと思いますよ」

霊能女「何でこの時だけ、子供ぶるのよ……」

小僧「それに、どうやってこの空間に……?」

霊能女「この空間って、普通と違うものよね?」

小僧「そのはず……なのだけれど」

少年「それなら、僕たちはオカルトチックな事物に対応できるので、入って来れたのでしょう」

小僧「そんな不思議発言、平然と言わないでよ」


霊能女「それで、ここってどういう空間なのよ?」

小僧「……分かったよ。 こんな所に来れたのだから、嘘偽りなく説明するよ」

少年「ありがとうございます」

小僧「ここは“妖精さん”の空間。 僕たちの世界ともう1つの世界の中間」

霊能女「……えと、ごめんなさい。 妖精さんの時点で意味が分からないわ」

小僧「そうか。 まず、“妖精さん”って言うのは……」


「僕のことだぁよ」


少年「!? 誰ですか、あなたは」


霊能女「それで、ここってどういう空間なのよ?」

小僧「……分かったよ。 こんな所に来れたのだから、嘘偽りなく説明するよ」

少年「ありがとうございます」

小僧「ここは“妖精さん”の空間。 僕たちの世界ともう1つの世界の中間」

霊能女「……えと、ごめんなさい。 妖精さんの時点で意味が分からないわ」

小僧「そうか。 “妖精さん”って言うのは……」


「僕のことだぁよ」


少年「!? 誰ですか、あなたは」


妖精「僕は妖精だぁよ。 はじめましぃて」フワフワ

霊能女「え、ええ、はじめまして」ペコ

小僧「やっぱり、見えるんだね……」

少年「いつも放課後に、霊的なものと話してるのですけど」

小僧「どうにも信じれなくてね……最近までは」

霊能女「最近まで?」

妖精「僕が小僧くんと接触してからだろぉうね」クルクルー

小僧「うん。 それから見えるようになって、9割方信じるようになったんだ」

少年「残りの1割は何ですか」

小僧「万が一のことを考えて」


霊能女「でも、どういう経緯で会ったの?」

妖精「通りかかった小僧くんを、強引につれこんだのぉさ」フワフワ

少年「妖精なのに危ない事しますね……」

妖精「しょうがないんだぁよ。 上の命令でぇね」クルクルー

霊能女「そういうこと、なのね」

妖精「そういうこと、なんだぁよ。 偶然だし、ある意味必然だぁね」フワフワ

小僧「まあそれで、あーだこーだ話をして、」

妖精「そして契約したのだぁよ」フワフワ

少年「契約?」

妖精「そ。 色々能力を与えちゃいまーぁす、てぇいうね」フワフワ

少年「なるほど……」

霊能女「セールスマンね……」


少年「じゃあ、小僧君は契約したのですか?」

小僧「まあ、そうだね」

妖精「契約と言うか、一方的に能力を配る感じだぁね」フワフワ

霊能女「そういう話には大抵、デメリットがあるものだけれど……」

妖精「それはなぁいよ。 どこぞの淫獣みたいに、『力やるから戦えよ』とかいわなぁいよ」フワフワ

少年「淫獣?」

妖精「こっちのはなぁし」クルクルー


妖精「よし、じゃあ小僧くぅん」フワフワ

小僧「ああ、はいはい」スタスタ

霊能女「?」

少年「何を?」

妖精「メンテナンス、ってやぁつ。 はい、おでこ出してぇー。 手が冷たいと思うけど、気にしないでぇー」フワフワ

小僧「分かってるよ」スッ

妖精「んー」ピト

妖精「異常……ナぁシ。 力は……順調に上昇してるぅね。 あ、能力使ったね?」フワフワ

小僧「あ、少し」

妖精「自衛? それとも、前に言った“計画”?」フワフワ

小僧「両方とも」

少年「……今日のあの出来事ですか?」

小僧「ネタばらし。 そういうこと。 能力で無傷のまま気絶させたのさ」

霊能女「ああ、だから……納得いったわ」


妖精「はぁい。 メンテナンスしゅーりょぉー」スッ

小僧「ありがとう」

妖精「いいのぉいいの。 義務だからぁね。 ああ、外が暗ぁいね。 早めにかえりなぁよ」フワフワ

小僧「ん」

妖精「それと、そこの2ぁ人」クルクルー

少年「はい」
霊能女「何かしら」

妖精「契約すぅる?」フワフワ

2人「また今度機会があれば」

妖精「んー……分かったぁよ」フワフワ

妖精「それじゃ、みんなを外に移すかぁら。 皆さんさよならぁー」フワフワ

シュン


——公園——

少年「……ん」

霊能女「戻った……?」

少年「みたいですね。 あれ、小僧君が……」

霊能女「薄暗くて見にくいけど、あそこ。 公園の入口に小僧君がいるみたい」

少年「みたいですね。 帰ってるようです」

霊能女「それじゃ、私達も帰る?」

少年「そうですね。 それにしても、色々ありすぎて、頭がパンクしそうです」

霊能女「オカルトチック過ぎて、逆に『あ、そ』って思っちゃった」

少年「僕たちは既にオカルト耐性がついているのですがね」ハハハ

霊能女「そうね」フフ



————

少年「あー、また険悪な雰囲気の家庭に戻っていくのですか……」

霊能女「ちゃんと帰りなさいよ?」

少年「そうですけど……でも……」

霊能女「ちゃんと帰りなさい!」

少年「はい! ごめんなさい!」


霊能女「少年君は何でそこだけ不真面目なのよ」ハア

遅くなり、ごめんなさい。
今回の投下は今日23時の予定です。


卒業式まであと3週間。
1月に入ってから、1日1日が速く感じる。

ある日、月に一度の全校集会で、校長先生は、
『1月は行く、2月は逃げる、3月は去る』
という話をしていた。
真面目に聞いていた訳ではなかったから、詳しくは覚えてない。
確か、この時期はあっという間に過ぎてしまう、なんて話だったと思う。

1日1日を大切にしましょう、ということなんだろう。
でも、俺はそんなことは気にせず、毎日だらだらと遊んでいる。

卒業なんてどうでもいい。
毎日遊べれば、それでいい。
だから、

「……何書けばいいんだよー」

将来の夢も、残りの小学校生活の過ごし方も、作文に書けるほど考えてない。


——教室——

先生「はいみんな! 卒業まで残り3週間!」

先生「だから、残りの小学校生活、どういう風に過ごすのか。 あと、卒業文集に載せるので、将来の夢などを作文に書いてくださーい」

児童達「えーーーー!!」ブーブー

先生「2枚配るから、1枚は過ごし方、もう1枚は将来の夢などを書いてねー」

同級女B「先生ー」

先生「はい、何ですかー?」

同級女B「など、ってことは、何でも書いていいの?」

先生「そうよ」

同級女B「小学校の思い出でもいいの?」
先生「大丈夫よ」

同級女B「はーい」


先生「あと、これは土日あるから……、来週の月曜日にみんな出してねー」

児童達「はーい」

ガヤガヤ


同級男D「なあ友人、何書く?」

友人「えー、分からん。 何書けばいいんだよー」

同級男G「適当でいいでしょ」

同級男D「そうだけどなぁ……」

友人「将来の夢って、どうせ変わるしなー」

同級男D「お前らの将来の夢って何なんだ?」

友人「決めてないな。 同級男G、お前は?」

同級男G「サッカーが好きだし、幼稚園から続けてるから、サッカー関係かな。 サッカー選手とか」

同級男D「へえ」

友人「そんなお前は?」

同級男D「俺は建築士かな」

友人「やっぱり、夢持ってるんだなー……」


——休み時間——

スタスタ

友人「なあ」

少年「はい、何でしょうか」

友人「お前らってさ、将来の夢って何かある?」

同級男C「うわお、唐突」

霊能女「何で?」

友人「いや、さっきの作文ので、さ」

同級男C「ああ。 そういうことね」

同級女A「テキトーでいいじゃないの?」

友人「……確かにそうだけど。 ただ、テキトーで書き続けられる自信がない」

少年「なるほど……」


同級女A「私は美容師、かなー」

霊能女「どうして?」

同級女A「私さ、いっつも同じ美容院に行ってるのね」

同級男C「普通じゃね?」

少年「人それぞれですよ」

友人「俺は親に……」

同級女A「聞いてないから言わなくていいわよ」

同級女A「それで、切ってもらってるとさ、何か凄いなーって」

同級女A「で、やってみたいなーと思って、将来の夢になったわ」

友人「何となく気に入ったのか?」

同級女A「ん、まあ、そんな感じかな」


友人「同級男Cは?」

同級男C「ない」

少年「即答ですか」

霊能女「凄い速さだったわね」

同級男C「だって、無い物は無いんだし」

友人「じゃあ、テキトーに書くのか?」

同級男C「いや、思い出を書くよ」

霊能女「なるほど。 友人君もそうすれば?」

友人「残念ながら、思い出のほうが書けない」

少年「何故です?」

友人「簡単だ。 忘れた」

同級男C「思い出を忘れるとは面白いなー」

中途半端ですが、一度中断します。
日中に再開予定です。
我が儘言って申し訳御座いません。


同級男C「じゃあ、少年。 アンタの夢は何だい?」

少年「僕ですか? 僕は……」

少年「……首相、ですかね」

霊能女「……うわお」

同級女A「何ていうか、納得」

少年「あれ、反応薄くないですか?」

友人「大体予想出来るからなー。 コイツは真面目そうな仕事につきそう、とか」

霊能女「確かに」

少年「まあ、リアクションを求めてた訳ではないですけど。 しかし、『あー』みたいなリアクションは、地味に辛いです」

同級女A「あー……」


友人「何で首相になりたいんだ?」

少年「人を助けたいのですよ。 国ごと良くすれば、多くの人達が助かると思うので」

同級男C「でもさ、簡単になれるものじゃないだろ?」

同級女A「お金を持っている人勝ち、とかそんなこと言ってたよ? 確かテレビかな」

少年「それを丸ごと覆してみせますよ。 格差社会を改善してみせます」

友人「できるか……? 難しいはずだけど」

少年「やってみせますって」

同級女A「んー……あ、そうだ、霊能女ちゃんは?」

霊能女「……考え中」

同級男C「アンタもかい」

霊能女「“夢”だけじゃなくて、“夢”の後のことも考えよう、って」

友人「そうか……なるほど」


友人「それぞれ自分の考え持ってるんだなー。 一部除いて」

同級男C「一部って何さ、一部って」

同級女A「アンタは?」

友人「ん? まだはっきり考えてない。 だから、さっきのプリント、全然書いてないんだよなー」

少年「土日を挟むそうですから、余裕はあるでしょう」

同級女A「そうだ、土曜日さ、みんなで集まって、作文書かない?」

少年「遊ぶついでに、ですか?」

同級女A「うん」

霊能女「悪くないわね」

同級女A「でっしょー? あ、同級女BちゃんとCちゃん呼ぶけど、いい?」

友人「いいけどさ……どこでするんだ?」

同級女A「アンタの家。 広いでしょ?」

友人「俺かよ。 まあ、別にいいけどな」

同級男C「オイラは無理。 用事あるから」

同級女A「分かったー」

今回の投下はここまでです。
次回は今夜の予定です。

もしもし云々は、充電器の寿命が原因だったので、これからももしもしから投下します。
また、月曜日から投下の回数がさらに少なくなると思います。

最後に、皆様、読んでくださって有難うございました。

申し訳御座いません。
本日中に投下出来そうにないです。
明日、投下します。


——放課後・帰路——

幼馴染「ねえ」

友人「ん?」

幼馴染「今日、学校で作文の宿題出たんだけどね」

霊能女「これからの過ごし方とかかしら?」

幼馴染「うん、それなんだけど……」

友人「書くことがないって?」

幼馴染「……うん」コク

少年「それなら、土曜日に友人の家で、みんなで作文をするそうなので……」

幼馴染「え、行く行く!」

友人「早いな」

幼馴染「ついでに、遊ぶよね?」

霊能女「そうみたいね……」

友人「いいじゃねーか。 遊びたいから遊ぶ、で」

少年「遊びが優先になりそうですね」


——放課後・帰路——

幼馴染「ねえ」

友人「ん?」

幼馴染「今日、学校で作文の宿題出たんだけどね」

霊能女「これからの過ごし方とかかしら?」

幼馴染「うん、それなんだけど……」

友人「書くことがないって?」

幼馴染「……うん」コク

少年「それなら、土曜日に友人の家で、みんなで作文をするそうなので……」

幼馴染「え、行く行く!」

友人「早いな」

幼馴染「ついでに、遊ぶよね?」

霊能女「そうみたいね……」

友人「いいじゃねーか。 遊びたいから遊ぶ、で」

少年「遊びが優先になりそうですね」


幼馴染「そうだ、ちょっと川のほうに寄らない?」

少年「え、いいですけど」

霊能女「ごめんなさい。 今日は早く帰らないといけないの……」

友人「すまん、俺も」

幼馴染「そっかー」

霊能女「あと、あなた達も早めに帰りなさいよ? 前みたいなことがあったら……」

幼馴染「はーい、気を付けるね」

友人「少年、しっかりな」

少年「分かってます」

幼馴染「じゃあ、また明日ねー!」

友人「じゃーなー」

霊能女「またね」

少年「はい、また明日」

今回はここまでです。
短い上、さらに二重になってしまい、本当に申し訳御座いませんでした…

次回の投下は今の所未定です。
一週間以内に出来るよう努めます。
短いながらも、読んでくださった皆様、有難うございます。


——河川敷——

幼馴染「やっぱり、たくさん人いるねー」

少年「放課後に遊びに来る人が多いですからね」

幼馴染「んーと、今日は川のお兄さん達いるかなー?」

少年「休日は大抵いるはずですけど」

幼馴染「あ、でも、今日はまだ平日だったね」

少年「だから、いるかどうかは分かりませんよ?」

幼馴染「さがせば見つかるよ!」

少年「……そうですね、探しますか」


スタスタ


「水切りしよーぜ!」

「おっけー、分かったー」

「俺、今日こそ一番になるからな!」

「じゃあ、最下位はバツゲームな!」

「えー! やっべ……」



幼馴染「楽しそうだねー」

少年「? どうしました? いきなり」

幼馴染「えと、あそこ。 楽しそうだなーって」

少年「ああ。 そうですね」

幼馴染「……卒業しても、みんなで、ああいう風に遊べるかなー?」

少年「ん……どうでしょうね。 先のことは分かりませんよ」

幼馴染「できれば、みんなずーっと。 一緒がいいな」

少年「ですね。 僕もそう思います」


ワイワイ

「おにーさん今日もお話ありがとー!」

「はいはーい。 また来てね」


少年「おや?」

幼馴染「あ! 川のお兄さんだ!」タタッ

少年「ちょっと、待って下さいよー」タタッ

幼馴染「少年くん、私よりも遅かったのー?」

少年「そんなはずは……ないですよっ」ダッ

幼馴染「あはっ! スイッチ入ったー」タタッ


タタッ

幼馴染「川のお兄さんこんにちはー」

「ん?」クルッ

幼馴染「あ! 日焼けの方のお兄さんだったんだ」

川男黒「やあ。 黒い方だよ」

少年「こんにちは、川男黒さん。 久しぶりです」

川男黒「ん。 久しぶりだねー」

幼馴染「あれ? 少年くん、そんなに来てないの?」

少年「あー、そういえばあまり来ていないですね……」

川男黒「別に、たくさん来ないと罰ゲーム、ってわけじゃないしね。 気が向いたら、でいいよ。 いつでもウェルカムだよ」


川男黒「ところで、どんな用かな? いつも通りお話でいいかな? 何なら哲学や政治の話、時事問題の対応の仕方とか、古文での単語の見分け方もいけるよ! それとも、今の生活や学校、社会の愚痴っすか?! 何でもごっざああぁぁぁぁああれっ!!」ペラペラ

幼馴染「ストップ、ストップ! おーちーつーいーてー」

少年「スイッチ入ってますよー? 喋りたいのは分かりますが、とりあえず落ち着いて下さい」

川男黒「おっとごめんよ。 ついテンションが上がってねー…。 助かるよ」

少年「いえいえ」

川男黒「で、用は何かな?」

幼馴染「えっと……あのぉ……将来、について……」

川男黒「ん、分かったよ。 まかせなさい!」

今回はここまでです。
次回もまた未定です。

すみません、現在ボケて何言えば良いか分からないので、短いです。
最後に、今回も読んでくれた皆様、ありがとうございました。


幼馴染「えと、将来の話っていうのは……」

少年「? 明日その話をするつもりではなかったのですか?」

幼馴染「そうだけど、一応、大人の人の考えとか、聞いてみようかなー。 ってね」

少年「ああ、そういうことですか。 なるほど」

川男黒「なるほどね。 それで、話の内容はどんな?」

幼馴染「あのね、将来の夢っていうのは、絶対に決めておかないといけないのかなー、って」

川男黒「うんうん。 個人的には、ないと生きていけないわけじゃないから。 今はゆっくり考えててもいいよ」

川男黒「でも、持っていた方が、それに向かって、効率よく動けるし、やる気も出るね」

幼馴染「そっかー」


少年「横から1つ。 夢を変えることは、避けるべきですか?」

川男黒「別にいいと思うよ? 人それぞれだけどね、いろんな選択肢を持って損は無いよ」

川男黒「『絶対にこうなる』ってはっきり決めているのであれば、変えるべきじゃないね。 そうじゃないなら、気楽にしていいでしょ」

少年「そうですか。 ありがとうございました」

川男黒「偉そうなことを言える立場じゃないんだけどねー」

少年「いえいえ。 あ、すみません、もう1つ」

川男黒「ん?」

少年「花屋って、男性でも……?」

川男黒「そりゃあ大丈夫だよー。 世の中にたくさんいるよ、男性店員や店長」

幼馴染「少年くん、どうしてー?」

少年「実は、友人が『花屋になってみようかなー、でも男だしなー』って悩んでいたので。 明日もそれを言うでしょうし」

幼馴染「そっか。 友人くんのとこ、お花屋さんだからね」


川男黒「ああ、そうだ。 今世界で活躍しているスポーツ選手ってさ、小さい頃から『これになる!』って決めて、その実現の為にとっても努力して、続けてたみたい」

幼馴染「へーえ。 でも、私は『一番になりたい』って思えることは無いなあ」

川男黒「それでもいいさ。 気楽に、のんびり。 何かと急かす世の中だけど」

川男黒「ただ、覚えてた方がいいのは、礼儀とか実現への努力や集中。 大事なことだからね」

少年「はい」

幼馴染「何か、ちょっと言っていることが難しい……かも?」

川男黒「ごめんね。 善処、まあえっと、気を付けるよ」


幼馴染「川のお兄さんは、子供の頃どんな夢があったの?」

川男黒「え。 えっとねー、どうだったかなー」

幼馴染「もしかして……」

川男黒「……今と変わらずぐだぐだしてた気がするよ」

少年「失礼かもしれませんが、それっぽいです」

川男黒「うぐっ……で、でもさ。 そんなぐだぐだな奴でも、こうして気楽に生きてるしさ! 気にするほどじゃないっすよ! あははーダイジョブダイジョブっす!」アハハー

少年「落ち着いて下さーい」

幼馴染「またスイッチ入ってるよー」

川男黒「おっと失敬」


川男黒「で、でも! 今の歳でも、夢とか、新しく始めようとか、出てくるからね」

川男黒「例えば、片割れだって、最近近所の会社に就職して、『お金貯めて、大勢で海外旅行したいな』なんて言って、頑張ってたし」

少年「片割れって、川男さんですか?」

川男黒「そうだよ」

幼馴染「ほえー。 頑張り屋さんだねー」

川男黒「うん。 あ、俺だって! 半年前から『ロマンを求める』ていう目標を作って、実際に活動してるっすからね!」

少年「クールダウンですよ」

川男黒「ソーリー、申し訳ない」

幼馴染「活動って、どんな活動なのー?」

川男黒「スリル満点の活動だよー。 これ以上は企業秘密ー」

幼馴染「えー」


少年「幼馴染。 そろそろ帰りましょうか」

幼馴染「んー? あ、確かに暗くなってきた」

川男黒「気を付けてね」

幼馴染「お兄さん、今日はありがとう!」

川男黒「こちらこそ。 そうだ、前に何かで見たんだけど、

夢のある者  希望がある
希望のある者  目標がある
目標がある者  計画がある
計画がある者  行動がある
行動のある者  実績がある
実績がある者  反省がある
反省がある者  進歩がある
進歩がある者  夢がある」

川男黒「心に留めておいて。 損はないから」ハハッ

少年「はい。 ありがとうございました」ペコ


————

川男黒「んー、『ロマンはどこだ』の方が良かったかな? でも、その小説知らないかもなあ」


今回の投下はここまでです。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。

今回の投下、何でこんな話になったのだろう……

書き忘れました。
次回は土曜日の予定です。


————

ついに見つけた。
数十年、いや、数百年?
死んで、蘇って、今なお彷徨って。
彼は、いつまで続けるつもりなのだろうか。


これも何かの縁か。
あの時、彼が終わらない旅へと発ったあの時。
その時にもアイツはいた。
奴は気づいているのか?
いや、別に構わないか。


もう逃がしたりはしない。
この年、この月で終わらせよう。
あたしは、もう、疲れてしまったんだ。


————


————

小学校の卒業式まで、あと二週間程となった日曜日。
僕は、川男さんの家を訪ねに来た。
理由は、ただ暇であったから。
周りは卒業式目前にお祝いとして、それぞれ出かけているのだろう。
卒業式後でもいいと思うのだけれど。

先週は結局、作文をさっさと書こうと言ったくせに、終始遊んでいた。
なので、次の日に泣きを見たのは言うまでもない。
時間のかかる宿題、特に作文は、早めに片付けるべきだと分かったのは、良い収穫であったと……思う。

さて。
今日はどんな出来事があるだろう。
そんなことを思いながら、僕は川男さんの家に入っていった。


——川男宅・玄関——

少年「おじゃまします」

川男「やあ……いらっしゃい」

垢嘗「あら、よく来たわね」

少年「こんにちは。 今日は時間があったので」

垢嘗「ふーん。 ん、珍しく1人なのね」

少年「ええ。 皆さん、卒業前ということで、それぞれ家族でお出かけのようです」

川男「ああ……もうそんな時期か」

垢嘗「早いものねー。 1月から3月まであっと言う間」

少年「そうですね……」

川男「本当に。 ……さっ、上がって」

少年「はい」


——川男宅・居間——

川男「はい……ぜんざいと、お茶。 ……熱いから、気を付けてね」

少年「ありがとうございます」

垢嘗「まぁたぜんざい? 洋菓子でもいいじゃないの」

川男「別に……いいじゃないか」

垢嘗「時代はグローバルよ、グローバル」

川男「ローカルも……捨てがたい。 ……いやむしろ、この時代だからこそ。 ……ローカルは大事だ」

少年「和でも洋でも、僕は好きですし嬉しいですよ」

垢嘗「んんー」モゴ

川男「あ……どもった」

少し置きます


垢嘗「そういえば、あの子、大丈夫?」

少年「あの子って、どの子ですか?」

垢嘗「えと、んー、前に来たときの、濡女子さんとこのお嬢さんじゃない方」

少年「幼馴染ですかね」

垢嘗「そうそう、その子。 不審者に捕まったとか何とか」

川男「1月の終わり頃……だったかな。 ……少し、騒ぎになってたし」

少年「幼馴染は、最近は大分落ち着いてきたようです。 トラウマも持ってしまいましたが」

垢嘗「あらら……」

川男「そっか……」


垢嘗「あっ、そうだ。 あんた達の、というより、そこの小学校の卒業式。 行くから」

少年「え?」

垢嘗「私は暇だからっていう理由だけどさ。 こいつがね」

川男「僕と黒の方……小学校側から、“地域の人”っていう立場で来て欲しいって……よく頼まれるんだ」

少年「ああ、そういえば。 集会や学校行事で、よく来ていましたね」

垢嘗「こいつ。 卒業式も、“地域の人”代表で行ってんのよ。 でしゃばりすぎ」ペシン

川男「いっ……何で叩くのさ」ムス

垢嘗「何となく」

川男「理不尽だ……」


少年「ふう。 御馳走様でした」

川男「お茶……まだあるから」

少年「あ、はい」

垢嘗「じゃあ、私のに入れてー。 ほい、湯のみ」コトン

川男「はいはい……」

垢嘗「あっりがとーぉん」ニコ

川男「ん……」

少年「……」

少年「はぁー……」

垢嘗「どうしたのさ、溜め息なんて吐いて」

少年「いや……平和ですねー、と」

川男「? ……どうしてだい」

少年「何と言いますか、ほのぼのとした空間で」

垢嘗「そうかねえ。 意識したことないけど」

少年「僕の家庭は荒れに荒れているので。 父親もですが、母親が大変酷くて」

垢嘗「苦労してるのね。 いっそ、この家に移住しない?」

少年「え?」

川男「垢嘗。 ……ヒモ化しつつある君が言う事じゃないよ……」

垢嘗「くっ……仕事見つけたからって、いい気になりおって……」グヌヌ

川男「……でも事実なんだけど」


少年「ああ、川男さんって、定職に就いたんでしたっけ」

川男「うん……そうだよ。 ……黒の方から聞いたのかな?」

少年「はい。 川男黒さんから」

垢嘗「あいつ、本当に色々喋るわねー」

川男「確かにね……」

少年「それで、どんな仕事に?」

川男「ん……自慢できる程の職業ではないよ。 ……世間的には、普通のサラリーマン……じゃないかな」

少年「そうなのですか」

川男「うん。 ……そうだ、まだ早いかもしれないけど……なりたいものがあるなら……それに向けて、準備した方がいいよ」

川男「同僚で……それに関して後悔した、っていう人が……いるからさ」

少年「はい、分かりました。 えと、わざわざありがとうございます」ペコ

川男「いや、礼をされるようなことじゃ……」

垢嘗「……耳が痛い話だわー」ウヘェ


少年「すみません、ちょっとトイレ借りますね……」

川男「いいよ……場所は分かる?」

少年「あ、はい、一応」

垢嘗「いってらっしゃいな」


————

トタトタ

少年「トイレ……」トタトタ

少年「…………」トタトタ

少年「…………」トタ…



「よーっこいせ。 また日曜から仕事かよー面倒だなー」



少年「」バン

死神「とりあえず、頑ば……うおっ!」ビクッ

少年「やっぱり……トイレに死神……」

死神「お、奇遇だな。 少年」

少年「いや……トイレのストーカーだ……泣きたいですよ……」ハァ

死神「おい。 出会い頭にストーカー言うな! 確かにトイレでよく会うけどよ!」

今回はここまでです。またも遅れてしまい、ごめんなさい…

一応、エンディングまで考えているのですが、どうも時間が無くて…
次回の投下はGW中に出来そうですが、それ以降は、1〜2週おきになりそうです。

最後に、読んでくださった皆様、今回も有難うございました。


少年「すみませんが、そこをどいてくれませんか?」

死神「何言ってるんだ。 先客は俺だよ」

少年「先客? 侵入者の間違いでは?」

死神「人聞きの悪いことを言いやがって……」

少年「事実でしょうが」

死神「立場によりけりだろう、事実はいつも」

少年「真実はいつも1つですよ」

死神「事実と真実は違うぞ。 辞書で調べてみろ。 今持ってきてるからよ。 ほれ」スッ

少年「……」パシ  ペラ

少年「殆ど変わりませんよ。 ほら」

死神「え、まじか。 ……うわ、あんまり変わんねーじゃん、意味」

少年「自信満々に言ってましたよね、先程」

死神「言うな……言うなー!!」ウワアアア



死神「まあいい。 退くわ。 ほら」ヒュ

少年「どうも」スタ

バタン


死神「……ううむ、来たは良いが、する事がないしなあ」

死神「あ、仕事中……」

死神「……別にいいか。 適度の休憩は必要」

死神「うん、その通りだ。 うん」コクコク

少年『何をブツブツ言っているんですか。 先程から』

死神「何でもないっつ。 やべ噛んだチクショー」


少年「ふひいい……」スカー

死神「お前のその言動、何故か腹立たしいな」

少年「何でですか。 いいじゃないですか」

死神「む……」

スタスタ

少年「……え、付いてくるのですか?」

死神「いいじゃないか、いいじゃないか。 減るもんじゃああるまいし」

少年「僕の精神が削り取られます」

死神「なぜだ」

少年「いちいち煩わしいです」

死神「なんと」

スタスタ


——川男宅・居間——

少年「戻りましたー」

川男「ん。 ……後ろ、どちらさま?」

死神「渋くて超格好良い、死神だ」

垢嘗「……へえ。 ナルシストなお客さんね」

死神「黙れボン・ボン・ボン」

垢嘗「ちょっと! 2つ目のボンはキュッに直して! そこまでイってないわよ!」

死神「じゃあ……凡・凡・凡。 平凡の凡を用いての凡・凡・凡」

垢嘗「ゴルァ! ふざけんな! どう見てもボン・キュッ・ボンでしょうが!」

死神「自意識過剰だな」

垢嘗「鏡見て出直して来い! ふざけんじゃないわよ!」

死神「あなたのお腹にボン・ヴォヤージュ」

垢嘗「顔面に膝蹴りくらわすわよ!?」ムキー



少年「すみません、連れてきて大丈夫でしたか……?」

川男「いや。 ……別に何人連れてきても構わないよ」

少年「あ、そうですか」

今回の投下はここまでです。
次回は明後日もしくは日曜日の予定です。

今回のような量だと、なんか物足りない気がしますね…
ゆっくり書く時間が欲しい!
さらば5/5さらばハッピバースデイディア俺


最後に、短めでしたが読んでくださった皆様、ありがとうございました。


————

少年「あーあー、まだ終わらないのですか。 あの2人の口論は……」

川男「ん。 ……本当に」

少年「世間話よりも長い口論なんて、聞いたこと無いですよ」

川男「世の中は……広いんだよ」

少年「いや、それとこれとは話が違いますよ」


垢嘗「私のプロポーションにどんだけ文句あるのよ!」

死神「うるせえ! 何故か知らんが不快だ!」

垢嘗「なっ……理不尽よ!」


少年「……うわ、うわぁ……」

川男「確かに……理不尽だ」


垢嘗「不快って……! あっ、まさかあんたさ」

死神「む、何だよ」

垢嘗「童貞なんじゃないのー!?」ブフッ

死神「っな!?」ブーッ


少年「反撃に出ましたね」

川男「酷い反撃……だね」


垢嘗「あー、やっぱり、童貞なんじゃないのぉー?」ヒヒヒ

死神「ど、どど、童貞じゃねぇーにょ! やっべ、また噛んだチクショー!」

垢嘗「その反応! 正に童貞!」

死神「ふっざけんな! 詭弁じゃあないか! それに、今日はよく噛む日なんだよ! なっ、少年」

少年「僕に話を振らないで下さい!」


垢嘗「それなら……証明してみなさいよ」

死神「何をどう証明すんだよ」

垢嘗「童貞じゃないなら……これは分かる?」

死神「?」

垢嘗「異性とのキスの味」

死神「」ブーッ


少年「」ブーッ

川男「……何言ってんの」


垢嘗「あら〜? 分からないの〜?」

死神「ぐぬぬ」


垢嘗「それなら……証明してみなさいよ」

死神「何をどう証明すんだよ」

垢嘗「童貞じゃないなら……これは分かる?」

死神「?」

垢嘗「異性とのキスの味」

死神「」ブーッ


少年「」ブーッ

川男「……何言ってんの」


垢嘗「あら〜? 分からないの〜?」

死神「ぐぬぬ」


死神「んー、あー、しー、ぎー」

垢嘗「あらららら? 分かんない? 分かんないわよねー、童貞ちゃん」

死神「あ、あああれだ! キスの味はー、キスの味はー」

垢嘗「キスの味はー?」

死神「ママの味」

垢嘗「それはミルキーのヤツじゃないのおおお!」

死神「正直に白状しますー、どうせ童貞ですー」


少年「すみません、庭に行ってもいいですか?」

川男「いいよ……いや、今すぐ逃げて。 ……恐らく今から……チェリー戦争が始まるから……」

少年「はい、そうさせていただきます……」ソロー


死神「む、じゃあお前はどうなんだよ!」

垢嘗「そ、そりゃあもちろん……ね?」

川男「なんで……僕を見るのさ」

死神「おやあ? もしかして……?」

垢嘗「ふ、ふん! 私みたいにー? 美女のカテゴリーに含まれる人はね、大抵経験者なのよ!」

死神「何だよその“大抵”って」

川男「……」

垢嘗「ちょ、ちょっと! そんな目で私を見るな!」

死神「飼い主に見捨てられてやがる! おいおい、やっぱりー?」

垢嘗「私をペット呼ばわりしないで! あとその“やっぱり”ってどういう意味!?」


死神「じゃあ俺からも問題」

垢嘗「ど、どっからでもかかって来なさい!」

死神「……男性の性器の大きさ」

垢嘗「」ブーッ


川男「……」

死神「おい、そんな目で俺を見るな!」

川男「いくらなんでも……それはないよ」

死神「いいじゃないかいいじゃないか」

川男「セクハラおじさんと何ら大差ないよ」

死神「そこまで言うか!」

川男「逆。 …優しく言って“セクハラおじさん”」

死神「何……だと……」


垢嘗「んー、ぷー、っー、せー」

川男「初めて聞いたよ……ぷーって唸るの」

死神「察してやれ」

川男「君も大概……」

死神「みなまで言うな」

垢嘗「そ、そう! 思い出した!」

死神「思い出した? 思いついたの間違いだろ」

垢嘗「うるさい! えーっと、男性器の大きさはー」

死神「大きさはー?」

垢嘗「13……km」

死神「ねーよ! でけーよ! バケモンじゃあねえか! キモイ!」

垢嘗「そこまで言うの!?」

死神「全力で袋叩きにして、やっと釣り合うレベルの間違いだろ!」

川男「僕もそう思う」

垢嘗「ひ、酷いわねあんた達!」


死神「……結局お前もチェリーなのな」

垢嘗「そうよ。 悪かったわね」

死神「いや……何かどうでもよくなった」

垢嘗「は?」

死神「喋りすぎ。 ちょっと疲れた」

垢嘗「はあ……拍子抜けだわ。 私も凄くどうでもよくなったわよ」

死神「よし、それじゃあ、おしまいおしまい。 和解和解」

垢嘗「……はいはい」


川男「かつて無い……無駄な時間だったよ」

川男「……庭に行こう」スタスタ

今回の投下はここまでです。
次回は出来れば水曜日に。

下ネタ回でした。苦手な方、ごめんなさい。
軽い下ネタが一番書きやすいんです…

最後に、今回も見てくださった皆様、ありがとうございました。


————

古びた家、その庭に1人、子供がいた。
容姿も性格も、そこまで突出した事はない少年。

彼は今、小さな鞄の中に丁寧に仕舞い込んでいた文庫本を取り出し、読んでいた。
彼は、趣味が読書ということもあり、時間さえあれば、すぐに本の世界へと旅立っていくのだ。

天気は良好。
気温は、薄着であっても快適な、まさに春と言える温度。
彼にとっては、絶好の読書日和である。
他人の家に入って、勝手気ままに読書とは、如何なものか、と指摘したくなるが。


しかし、そんな彼の至福のひとときは。
残念なことに。
彼が想像しうる以上の、奇想天外な邪魔によって。
彼の中に広がる、本が創り出した小さな宇宙ごと。
消し飛んで行くこととなる。


————

チュン  チュン

少年「……」ペラ

少年「……ん」ペラ

少年(もう半分……何て言うか、あっと言う間だ)

少年「本の世界から登場人物を呼び出すなんて、羨ましいと思うのですがね……」

少年「『魔法の声』、かぁー……」



ヒュルルルル…


少年「……」ペラ

少年(……ん)ペラ

少年(このままだと、明日で読み終わってしまいますね……)

少年(……別に、いいですね)ペラ


ヒュルルルル、フワフワ

少年「……?」


スタ

少年「……?」ペラ

空からの女の子「……やっと」スタスタ

少年「ど、どちらさま……ですか?」

空からの女の子「やっと……!」スタスタ

少年「は? ……はい?」

空からの女の子「みつけたわ! とうとう……!」ギュ

少年「いや、だから、どちらさまですか!?」

空からの女の子「もう終わりにしよ! あたし、もう何年も探して探して……!」ギュウウウ

少年「いや、何のことです!? とりあえず、離れ……!」

ポタ…ポタ…

少年「小雨まで降り出しましたし、本当、離れて下さい! 本が濡れ、濡れてしまいますって!」

今回はここまでです。
次回は日曜日の予定です。

やはり少ないですね……。
その分次回は多く、できればいいなあ。

最後に、読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。


————

サアァァァ…

少年「落ち着きましたか?」

空からの女の子「ご、ごめんなさい。 あたし……」

少年「気にしないで下さい。 事情は知りませんけど……」

空からの女の子「……」

少年「それにしても」

サアァァァ…

少年「あんなに天気が良かったのに、唐突ですね……」

空からの女の子「あ……そう、だね」


少年「ところで」

空からの女の子「え、何?」

少年「先程から気になっていたのですが、貴女と僕、会ったことありました?」

空からの女の子(……あれ?)

空からの女の子「あたし、知らない?」

少年「申し訳ないのですが、面識は……」

空からの女の子「あ、そう。 じゃあ、初めまして、だね」

少年「さっきのは……」

空からの女の子「ごめんね、あたしの勘違いだったみたい」

少年「はあ」


空からの女の子「そうだ、初めましてだから、自己紹介するね」

空からの女の子「あたしは天降女子」

少年「あ、あも、?」

天降女子「あもろうなぐ。 漢字で言うと、“天”から“降”ってきた“女”の“子”」

少年(そのまんまですね)

天降女子「あなたは、少年、だよね?」

少年「はい、そうですけど……」

天降女子「けど?」

少年「何故、僕の名前を知っているのですか?」

天降女子「えと、まあ、ね? 察して?」

少年「は、はあ」


ガララ

川男「おや……雨」

少年「ああ、川男さん。 どうしました?」

川男「何となくだよ……。 ……縁側……もう少し広くすべきだなあ……」

少年「縁側に屋根があって、助かりましたよ」

川男「それは良かった……。 ……ちょっと昔に、ふと思い立ってしたことが……こんな時に役に立つとは……」ハハ

少年「いいですよねー。 昔の行動が現在の助けになる瞬間って」

川男「? ……ああ、そういうことか。 ……確かに、いいね」

少年「そうですよね? 何か、自然にこみ上げてくるものがあって、それがキます」

天降女子(変な意味に聞こえる……)


川男「ところで……この子は?」

天降女子「ふぇ?」

少年「ああ、こちらは天降女子さん。 つい先程会いまして」

川男「……不法侵入者?」

天降女子「ち、違うのよ!? そんなことは……」

少年「あー、えと、信じてくれますかね……」

川男「空から真っ逆さまに落ちてきた……とか?」

少年「そうですけど……えっ?」

天降女子「えっ?」

川男「当たった……。 ……天降女子って聞いて、思い出したよ……。 ……少し有名だし」

少年「そうなのですか?」

天降女子「えっ? あれ? んー?」ムムム


川男「こんな所で長居するのも……それに、雨降ってるから……室内に入ろうか」ガララ スタスタ…

少年「そうですね。 天降女子さんも……」スッ

ガシッ

少年「おお!?」

バタ

少年「痛、っっ……天降女子さん?」

天降女子(……む。 やはり、似ているけど、違う……)

天降女子「あ、ごめんね。 いきなり引っ張って」

少年「いえいえ。 とりあえず、入りませんか?」

天降女子「う、うん……」

今回の投下はここまでです。
次回はまだ未定、水曜日あたりに様子見します。

寝落ちしました…すみません。

読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。


——川男宅・居間——

ガララ

川男「雨が……降ってきた。 ……垢嘗、奥の部屋。 ……急いで」

垢嘗「洗濯物を取り込めばいいのね? 了解ー。 手伝いなさいよ?」タタッ

川男「はいはい……。 ……分かってるよ」

タタッ

死神「雨? マジで? 嫌だなあ」

ガララ

少年「戻りましたー……あれ?」

死神「よお。 あの2人は今お取り込み中だ」

少年「ああ、なるほど、そうですか」

ガララ

天降女子「おじゃましまーす」

少年「庭から入るのは、ちょっと変ですねー」ハハ

天降女子「そうね」フフ




死神「……お前、なんでここにいるんだ」


少年「え?」

死神「お前じゃあない。 隣の女だ」

天降女子「……何。 いちゃ駄目なの? あたし」

死神「ああ、駄目だ」

天降女子「何よー。 別に
死神「ガキに何もしてないだろうな?」

天降女子「……あの人と同じ。 効果なし」

死神「……」スタスタ

ガッ

天降女子「……レディの襟元掴むのは、どうかと思うのだけれど?」

死神「知るかよ」

天降女子「それに、この羽衣。 新品なんだけど」

死神「……」

ガスッ

少年「……!」

天降女子「……ったぃ」ズキ

天降女子(壁にぶつけるなんて、いくら何でも酷いでしょ……!)


死神「……まだやっていたのか」

天降女子「それがあたしの存在理由であって、彼との約束」

死神「その所為で、俺の仕事は増え、アイツは成仏出来ない訳だが」

天降女子「それが、彼が望んだ事なのよ! 邪魔しないで!」

死神「本当にアイツが望んだのか? 自分の都合の良い方向に解釈したのではないのか?」ググ…

天降女子「……ぐぅっ……確かに彼は言ったの! 面と向かってはっきりと、ね!」

死神「あぁ!?」


少年「ちょっ……放しましょうよ!」

死神「お前には関係ない!」

天降女子「関係大有りよ! それも中核付近ギリギリ逸れる辺り!」

死神「日本語ぐちゃぐちゃだな!」

天降女子「伝わればいいの、伝われば!」

死神「とにかくだ! 少年、お前は知らなくていいことだ」

少年「いや、それより、天降女子さんを放して下さい」

死神「それは出来…」

ゲシッ

死神「ぐっ……!」パッ

天降女子「っ……! 腹がガラガラだったわよ……!」ゼーハー

死神「クソッ」チッ


死神「ふーっ……ふーっ……」

天降女子「ハァ……ハァ……」

少年「と、とりあえず落ち着いて下さい」タタッ

死神「邪魔だ少年。 間に入っても何も変わらねーぞ」

天降女子「変わるわ」

ササッ

死神「……何やってんだ」

少年「え、え?」

天降女子「ご、ごめんなさい。 ちょっと後ろ借りるね」ボソ

少年「え、いいですけど……」

死神(何て奴だ。 身代わりにしてやがる)


死神「一々癪に障る女だな」

天降女子「ふん。 知るもんか」

死神「……ああ、もういい」

天降女子「?」

死神「実力行使だ」チャキ

少年「そ、それ。 鎌……ですか?」

死神「死神と言えば鎌だろう。 決まってるだろうが」

天降女子「……!」

死神「最善の手はな、少年を外し、お前を仕留めることだ」

天降女子「そ、そんな事
死神「本気だからな」

天降女子「」ゾゾ…


バン

死神「!?」

少年「」ビクゥッ

天降女子「」ビクゥッ

垢嘗「シャラップ」

川男「……出来れば、静かに運動して欲しいな。 ……あと、僕の家を殺害現場にしないで」

死神「……チッ」スウ…ッ

少年(鎌が、消えましたね……)

川男「君達の事情は……知らない。 ……だから、どう止めるべきかは分からないが」

川男「とりあえず……座って」

死神「……」

天降女子「……」

少年「分かりました」

垢嘗(あ、収まった)

今回はここまでです。
次回は木曜日の予定です。

物語もそろそろ後半。
広げ続けた風呂敷をたたむ段階に入ってきましたねー。
これからも書いてくぜー

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


————

川男「さて……何であのような状況に?」

垢嘗「それなりーの理由があるんでしょ? 言いたくないならさっさと和解しなさいよ」

死神「黙秘権を行使。 和解はしない」

天降女子「あたしも和解はするつもりなんてない」

垢嘗「和解“は”?」

天降女子「……この際だから、話しちゃうわ。 少年くんにも伝わるように」

少年「……僕、ですか?」

死神「おい、止めろ」

天降女子「ある意味では当事者なんだし」

死神「ガキには早い話だ。 もっと未来を……」

天降女子「関係ない。 あたしは、彼に会いたいの。 他なんてどうでもいい」

垢嘗「……」


天降女子「いくらアンタがギャーギャー言おうと、あたしは話すのを止めないわよ。 さっさと辿り着きたいのよ。 彼まで」

死神「ど阿呆が……。 もういい、分かった。 少年は聞こえないところまで連れて行くから、ワーワー喋っとけ」

少年「……死神、僕も聞きますよ」

死神「あ?」

少年「だって、気になるじゃないですか」

垢嘗「そういう所は子供なのね……」

死神「……聞いて後悔しても知らねーからな」

川男「あっさり……引き下がったね」

死神「こういう時は、当人の意志を尊重するもんだよ」

少年「僕の意志に関係なく、トイレに現れてそのまま付いて来るのはどういうことですか?」

死神「そういうことだよ」

少年「結局どういうことですか!」


天降女子「……まあ、いいでしょ。 じゃあ、昔話というか、思い出話というか」

死神「お前の主観なんざ要らねーよ」

天降女子「相変わらず酷い。 ……えっと、あたしとコイツと、とある人の話をするわね。 主観無しで淡々と話すから、ちょっと長いかもね」

川男「大丈夫。 ……ぜんざいとお茶の用意はしてる」

垢嘗「準備いいわね」

死神「何でぜんざいだよ……」

天降女子「まあいいでしょ。 じゃ、話すわ」

天降女子「あれは何年、何十、いや、何百年も前のことだったかしら……」

————

————

今回の投下はここまでです。
短い上、木曜日に投下出来ず、申し訳ございません。
土日は出来そうです。

次回から少しの間、回想に入ります。少年が空気です。

最後に、読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。

また寝てしまった……
今夜投下します


———回想———
———空———

天降女子「あーあ、今日はどんなことしよっかなー?」

天降女子「近所のあの子をいじり倒す?」

天降女子「地上巡り?」

天降女子「それともー?」

天降女子「男釣って命抜き取って遊ぶー?」

天降女子「ど・お・し・よっ・か・な・あ・?」フフフー



天降女子「んー……退屈」

天降女子「地上の男釣ってこようかなあ?」

天降女子「よしっ! 思い立ったらなんとやら!」タタッ

天降女子「待ってなさいよっ! 今日の馬鹿な獲物!」ヒュー


———地上・草原———

青年「よ……っと」ボフン

青年「あー、やっぱり良いですねえ。 ここ」

青年「いい景色、いい香り」

青年「いい香り……」ホワホワ…

青年「今日は何が起こるのかなあ?」フフフー

青年「ふわ、眠く……」



青年「スー…………スー…………」グーグー


——————

天降女子「うーん、今日は捕まらないなー」

天降女子「男が何処にも居ない! これはおかしい!」

天降女子「逆に女ばかり遭遇するし。 いや、いいんだけどね……」

天降女子「この山には、さすがに誰もいないかなぁ」

ガサガサ

天降女子「あーもー、枝とか草とか、鬱陶しいわ! もう!」

天降女子「空からピンポイントで来れば良かったぁー」

天降女子「あーもう! 嫌なる!」ムカ


ガサガサ

天降女子「あ、開けた所に出た」

天降女子「えい、よっと」

サアアア

天降女子「きゃっ、なかなか風があるけど……」


天降女子「うわあ……!」

天降女子「すご……綺麗な景色」

タッタッ

天降女子「あははっ、広いし綺麗だし」

天降女子「あはははー!」クルクルー

天降女子「あはははー!」ピョンピョン

天降女子「あはははー!」ダダダッ

ガッ

天降女子「あははぁぎゃっ!」ズテーン


天降女子「ーー!」

天降女子「っ痛たーっ! もう!」

天降女子「一体何なのよー!」クルッ



青年「スー………スー………」



天降女子「うわーお、獲物、発見」

天降女子「中々ツイてるものだねえ……」フフフ

天降女子「……でも、寝てるわね」

天降女子「どうしたものかねー」


天降女子「頬……」ツンツン

青年「ん……スー……スー……」

天降女子「つねる」ムニー

青年「んむ……」グー

天降女子「首筋……」

青年「んに……」

天降女子「……」スー

青年「んんー……」

天降女子「ふひひ……」ゴソゴソ

青年「んー……?」パチ

天降女子「あ、起きた」

青年「な、何をしているどちら様です?」

天降女子「あ……(ほわぁあーーぁ! やっと起きてくれたけど、タイミング悪すぎでしょうが!)」


天降女子「あ、えーと、その……」

青年「……」

チラッ

天降女子「わ、わらわと、イイこと、しないか?」

青年「……えっ?」

天降女子「えっ」

青年「えっ」

天降女子「いやだから、わらわが気持ちいいことをしてやる、っていう……」

青年「ああ、そうですか。 お断りします」

天降女子「えっ」

青年「えっ」

天降女子「は?」


青年「言いたいことが色々あるので、1つ1つ言っていきます」

天降女子「う、うむ」

青年「1つ、その一人称、事実と異なりますね」

天降女子「ぅえ?」

青年「1つ、胸を隠しなさい」

天降女子「あ、うう……」シュッ

青年「1つ、跨がないでください」

天降女子「は、はあ……」ノソ

青年「1つ、誘惑には乗りません」

天降女子「なん……ですと……?」

青年「1つ、今日は早く家に帰って、寝なさい」

天降女子「は? え? は?」


天降女子(誘惑しても、効かなかった……!?)

青年「最後に1つ、僕は既婚者で一途です。 誘惑なぞには屈しませんよ」

天降女子「……!」

青年「はい、帰ってくださいねー。 また来ていいですから」

天降女子「え!」

青年「ふふっ。 ではお帰りくださいね」

天降女子「く、どチクショー! また来てやるんだから!」

ピュー

天降女子(初めて失敗した! ムキー!)ムカー



青年「……よし、また寝ようか……」

グー

今回の投下はここまでです。
次回は木曜日を予定しています。

回想はあと2回程続きます。
蛇足がどんどん増えて、ラストまでの道のりがさらに遠く遠く…ヒエエ

では最後に、読んでくださった皆様、今回もありがとうございました。


——————

青年「……ふあーあ、今日も妻に怒られちゃいました」ハハハ

青年「別に、1日中この草原に居たって悪いことじゃないのですがねー」

モフン

青年「とっても趣深いのですがねえ、この空も、景色も」

青年「ああ、また、眠く、な……」

青年「」スー


ザッザッザッ

男「ほうほう、これは素晴らしい」

男「素晴らしい、そして美しい」

男「此処で飲む酒はさぞかし美味いだろうなあ」

男「さてさて」

ガスッ

青年「……あ痛っ」

男「起きたか」

青年「起こされた、の間違いです」

男「その程度、気にするな」

青年「気にしますよ。 それで、どちら様で?」

男「なに、只の通りすがりだ」

青年「はあ、そうですか」


——————

天降女子「く、くううううっ! 今日こそ、あいつの魂を取ってみせる!」

ガサガサ

天降女子「あ、またやっちゃった」

天降女子「クセになっちゃったなー。 この道から行くの」

天降女子「空から行けば良いものを……ほんと馬鹿」

天降女子「よ……っと」

天降女子「ほら、青年! また来てやったわ……よ……」



青年「−———」アハハ

男「———」ガハハハ



天降女子「あ、あの男、誰よ!」


天降女子「こらー! わらわという者がいながら……!」

青年「いやいや、ただ世間話をしてただけですよ。 あと、素でいいです」

男「ほー、別嬪さんじゃねーか」

青年「健気なものです。 自分、既婚者なのですが、気にせず色気飛ばしますし」

男「戴けば良いものを……。 別に、何人と関係持とうが、悪いこたァねえのに」

男「何なら、俺が戴こうか?」

天降女子「あ、アンタには興味ないし、襲われたら魂抜き取るけど?」

男「知ってる。 故に興味なんてないし、実際に戴こうなんて、考えただけで吐き気がする」

天降女子「ちょ、そこまで言う!?」


——————

青年「ああ、いつの間にやら、夕日が」

男「おや、本当だ」

天降女子「ふん……ていうかそれだけ時間を無駄にしたってことだよね」

青年「無駄なんかじゃないです。 一瞬一瞬が、この夕日よりも眩しい経験となるのですよ」

天降女子「何、説教?」

青年「違いますよ。 ちょっと最近、死にそうだけど死なない気分で、浮かれてるのです」

天降女子「え? どういう意味? よく分かんない」

青年「何と言いますか……そろそろ死ぬなー、と思う一方で、永遠にこの場所でのんびりできるなー、とも感じているのですよ」

男「……ほう」

天降女子「……やっぱり良く分かんないや」

青年「大丈夫ですよ。 自分でも分からないですし」

男「そんなもんだろうよ」ハハハ


青年「妻が待っている、というか呼ばれてる気がするので……」

男「お、帰るのか」

青年「そうさせていただきます」ペコ

天降女子「あ! ちょっと……」

青年「ではお二方ー仲良くー」ピュー



天降女子「ドチクショー、逃げた!」

男「ハハハ、ざまあみやがれってんだ」

天降女子「あ゛?」ギロッ

男「ふん」


男「じゃあ俺もさっさと……」

ガシッ

男「ぅおっと。 何だよ」

天降女子「あんた、何者?」

男「通りすがりだよドアホ。 それ以上でもないし、それ以下でもないぞ」

天降女子「単刀直入に言うから。 あんた、人間ではない」

男「……その通り。 ていうかお前もだろうが」

天降女子「そうよ。 あとさ、あんた、もしかして“死神”じゃないの?」

天降女子「時々人々が話していた。 死にそうと言っていた人は、殆どが死ぬ。 そういう人は必ず、死の一週間程前の範囲で、新たな知り合いが出来ているとか何とか」

男「……ああ、俺は死神だよ」

天降女子「ふぅん。 獲物の横取り?」

男「仕事だよ。 獲物ではなく対象者だ」


死神「と、言うわけで、だ」

天降女子「?」

死神「今日から一週間後、奴は死ぬから」

天降女子「勝手な……!」

死神「ドアホ。 仕事だよ仕事。 審議すんの面倒だから、さっさと判決出そうってことで。 あいつは死にまーす」

天降女子「ギリッ」

死神「フン。 何だよその目は。 好きな人が奪われて、『キィーーッ!』って感じになってんぞ」

天降女子「事実よ! キィーーッ!」


死神「お?」

天降女子「な、何よ」

死神「天降女子でありながらぁ? 獲物にぃ? 恋しちまったぁ?」

天降女子「……はっ! さっき『事実』って……! 嘘嘘嘘嘘! そんな馬鹿な!?」

死神「天降女子でありながらぁぁああ?」

死神「人間にぃぃぃぃいい?」

死神「恋しちまったぁぁぁぁぁぁぁぁあああ?」

天降女子「うるさい! このッ、うるさーい!」ポカ

死神「痛ってえ! テメ、ゴルァ、何すんだよ!」

天降女子「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」ポカポカ

死神「なんだコイツ、意味わかんねえ!」


死神「ドチクショー、逃げる!」

天降女子「あ、待てコラ!」



天降女子「……はあああ……」

天降女子「やっちゃった? 嘘、本当に?」

天降女子「あたし、彼が、好き……?」

天降女子「……あああ、思い当たる節有りすぎ……」

天降女子「今まで、執念で行ってたつもりだったのだけど。 本音……」

天降女子「はあああ、帰るかな……」

今回の投下はここまでです。

恋愛みたいなのは苦手です…何度書いても稚拙
また、何度も寝落ちしてました。ごめんなさい。

続きは明日投下します。

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

確かにどの辺りで好きになったのか分からん
天降女子が何者かまだ分からん


——————

青年「ふあーあ、今日もいつも通り……」

ボフン

青年「草の布団でお休みしましょうかー」

青年「ん、今日も良い天気です」

青年「……あれ、今日は誰も来ませんね」

青年「まあ、いいで……」


ザ ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

青年「!」ガバッ

青年「頭に……何か……?」

ブツ…


青年「? 声?」

青年「一体……何が……?」

すみません、少し、今後の話の整理をしたいので、今回はここまでとさせていただきます。
また、次回の投下は未定で、終わり次第連絡します

>>407
指摘ありがとうございます。
確かに、そういう描写ができてない…
気をつけます。


——————

ザッザッザッ

天降女子「今日こそはあいつの鉄壁のガードを崩してやるんだから!」

ザッザッザッ

天降女子「……こうして、山を登るのも、なかなか良いかもね」


「んお、天降女子じゃねーか」


天降女子「……げっ」チッ

死神「出会い頭に舌打ちとは、躾がなってないなあ。 誰だよこんな悪女育てたのは」

天降女子「黙秘」

死神「生意気な」


死神「そうそうそういえばさ、お前があいつに惚れたのは、どういう?」

天降女子「んー、見た目とか、情趣が分かる所とか」

死神「……」

天降女子「今まで会った男は皆襲ってきて……その度に魂抜き取ってるのだけど……でもあいつは違うなーって」

死神「……可哀相な子ですこと」

天降女子「どういう意味?」

死神「そういう意味。 あー、時代が時代だしなーしようがないと言えばしようがないよなー」

天降女子「うわー、問答無用で殺したい」


死神「お前に限ったことじゃあないんだが……」

天降女子「あ゛?」

死神「ドスの利いた声を出そうが、怖くねーよ。 あのな、この時代はな、表面ばかり見て、目には映らないことは感じようとしないんだ」

死神「いや、これから先もそうかもしれねーけどな。 だが、目には映らない何かに気付いたら、世界は素晴らしいものに感じるはずなんだ」

死神「見せかけ、装飾ばかりに目を取られずに、真のものに目を向けるべきなんだがなあ」

天降女子「……で?」

死神「……さあ? 俺も何を言いたかったんだろうな?」

天降女子「何それ、馬鹿じゃないの?」

死神「うるせえ、一々言うな」


天降女子「……! そういえば! 今日はあんたと会った日から何日目!?」

死神「ん? 5日位は都で遊んで、ここに来てないから、職務怠慢で大目玉喰らったりしてたから……」



死神「あ、今日は最終日だっ」
天降女子「はああああ!? 最後!? 嘘!?」

死神「うるせえうるせえうるせえ、今日が最後。 御陀仏。 はいチーン」

天降女子「い、急がなきゃ! どいてっ!」ゲシッ

死神「ぅげえっ!」チーン


タタタッ

死神「チーン言ったらチーンされた……ああ」ズキーーン

死神「あンの処女ビッチめ……」


——————

タッタッタッ

天降女子「……ついたっ」


カリカリカリ…


天降女子「……? 地面に……線? いや、模様?」

天降女子「木の枝で書いた……にしては、深く抉れてるみたい」


カリカリカリ…


天降女子「これを……アイツが?」


カリカリカリ…


天降女子「! いた!」タッタッタッ


天降女子「やあやあやあやあやあやあ!」

青年「貴女は挨拶を忘れてしまわれたのですか? ご愁傷様」カリカリ

天降女子「ん、悪ふざけに決まってるじゃん」

青年「ひどい冗談ですね」カリカリ

天降女子「あんたもひどい言い方ね」

青年「はは、そうですかね」カリカリ

天降女子「で、何これ?」

青年「ん、おまじないと言いますか、何と言いますか……」

天降女子「言いたいことは分かったよ」

青年「そうですか」カリカリ…


青年「こうやって、頑丈な木の枝で、地に溝を作って……」カリカリ

天降女子「模様は適当?」

青年「決められています。 ……ふう、やっと終わりました」

天降女子「ふーん、で?」

青年「予め用意していた、砂と小石を、溝に注ぎます」ザラー

天降女子「何のためなの?」

青年「跡を残す為ですよ」

天降女子「へえ。 それで、跡を残すのは何で? 意図が分からないんだけど」


青年「理由、ですか?」

天降女子「うん」

青年「このまじない、いや、魔法陣の、ですか?」

天降女子(魔法……?)
天降女子「う、うん」

青年「決まっています」

青年「死を逃れる、いや、不死となる為ですよ」

天降女子「へえ、不死ね……」


天降女子「……えっ?」


天降女子「ちょ……あんた、ふ、不死って」

青年「そのままの意味ですよ。 いや、そのままとは違いますね」

天降女子「い、一体、何で?」

青年「……約束を守るため、です」


青年「2人、子供……まあ、僕と妻の子供です」

青年「その2人のうち、1人が病を患っていまして、生まれた時から」

青年「それで、その子は数年という短い命でした」

青年「上へと旅立つ前、約束をしたのです」

青年「『私は少ししかいられなかったけど、お父さんはずーーっといてよ、やくそく』と」

青年「だから、ずーーっと、長く生きるために……」

青年「不死に、なるのです」

天降女子「……」


天降女子(……なんか、釈然としないというか、もやもやするというか……)ムム

青年「……そこで、頼みたいことがあるのですが」

天降女子「……ん? あぁ、何?」

青年「今から、儀式を行います。 それで、あなたには、僕の血を引く人間」

青年「そういう人々を、血筋が途絶えない程度……そうですね、その位で」

青年「魂を取って、この魔法陣に供え続けて欲しいのです」

青年「これは、あなたにしか頼めない大事なことなのです」

天降女子「ん、いいわよ。 私の得にもなりそうだし」

青年「ははっ、良かった」

青年「じゃあ、始めま……」
死神「オラァ!」バキッ

天降女子「!!」


死神「釈然としねえ! 不可解! 不審!」

青年「……チィ」

天降女子「ちょ! いきなり殴るなんて、酷いじゃないの!」

死神「黙れぃ!」

天降女子「」ビクッ

死神「お前は馬鹿か! 疑問を持たなかったのか? 辻褄が合うと思ったのか? 今の話で納得出来たか? 馬鹿!」

天降女子「うっさい! 黙れ!」

死神「……お前の身に何があったんだよ、青年」

青年「はあ、僕は至って正常です」

死神「……何だと」


死神「まあいい。 とにかく、お前を止める。 不死になられてたまるかよ」

青年「……そうですか。 でも手遅れですよ」ブブ

死神「……? 何だ、一瞬……」

青年「もう、準備は済んでいるのです。 だから、止めることは不可能ですよ」ブブブ

死神「何、だと」

青年「天降女子」ババ…

天降女子「え?」

青年「必ず、実行して下さいよ。 約束です」ババババ…

天降女子「! 分かった!」

青年「では、すぐに去って下さい! 危ないです。 早く!」

天降女子「うん、分かった!」ダッ

死神「あ、ちょ、おい!」

青年「ひとまず、さよならといきましょうか……」フッ

死神「き……消えやがった」


————

天降女子「ここまで。 横から死神があーだこーだ蛇足入れて来たけど、こんなものかな」

川男「……」

少年「……」

垢嘗「え、終わり?」

天降女子「うん」

川男「……不可解、不可解、不可解」

死神「……」

少年「川男さんも思いますよね……」

川男「……うん……不可解だし、……矛盾も有りすぎるし」

天降女子「え」

少年「先程のやり取りも、矛盾が出てきます」

川男「……死神、って言うのかな。 ……君の意見や記憶……嘘偽り無くお願いするよ」

死神「今までもこれからも、嘘はつかねーよ」

垢嘗「それが嘘だったりして」ププ

死神「シャラップ!」

川男「まあいいや……どんどん質問するから」

少年「2人、答えて下さい」

死神「大丈夫だ」

天降女子「いいけど……」

少年「ではまずは……」

今回はここまでです。
次回は金曜日の予定です。

回想終わり!でもまだ引っ張ってる!
長い!ひゃあん!

今回も、読んでくださった皆様、ありがとうございました。


少年「まずは、先程のやり取りで、死神が成仏出来ないとか言っていたのですが」

死神「よく聞いてたなそんなの」

少年「何故成仏出来ないと言ったのです?」

死神「んー。 さっきの過去話の終わりにさ、天降女子がどこか行った後、青年が消えたって言っただろ?」

川男「……だね」

死神「俺にとっては、アレ、失敗して死んだと思ったんだよ」

垢嘗「そりゃ、思うわよねー。 どうでもいいけど」

死神「ただ、天降女子が奴の指示に従わなければ、の話みたいなんだよ。 これはな」

垢嘗「どういうこと?」


死神「コイツが魂を提供する度に、奴は生き長らえていけるみたいなんだよ」

天降女子「“みたい”じゃない。 事実。 ていうかそれ、どこ情報よ」

死神「俺の同僚が調べてたんだよ。 お前の動向」

天降女子「キャーこわーい」ギュ

少年「っい!」

垢嘗「少年に抱きつかない。 変な声出てたわよ」

死神「せんせー、こいつ殺す。 いいですかー?」

川男「どうどうどう、……落ち着いて」

死神「ひっひっふーひっひっふー……。 とりあえずだ。 このバカが犬みたいになってる限り、アイツは生き続けるんだよ」

死神「あー大問題。 恐ろしい大問題」

少年「何故です?」


死神「まずいだろ。 不安要素バリバリだが、不死の前例が出来ちまうのはよ」

垢嘗「ん、そうね」

川男「じゃあ……。 ……この子が来たのは、それが理由で、……少年君はその人の血を引いているんだね」

天降女子「ザッツライト」

今回はここまで。
えげつないスケジュールゆえに気力が尽きかけてるので、少なめになってしまいました…ごめんなさい
次回の投下は一週間後です。

読んでくださった皆様、ありがとうございました


死神「蛇足かもしれねーけど。 俺からしたら、最後の日のアイツの様子。 おかしいと思ったんだよな」

少年「それは、ひっ、どのような感、っう、じでしたか? ぁっ」
天降女子「」フー

垢嘗「何ベタな悪戯してんのよ」

死神「どうも、アイツじゃないというか……雰囲気やら何やら」

少年「気のせい、というわけではないので、ぅあ」
天降女子「」コチョコチョ

垢嘗「だから……あ、脇弱いのね」

死神「いや、気のせいではないな。 もっと禍々しいというか何というか……」

少年「そうで……ぃひぃ」
天降女子「」コチョコチョ



死神「何やってんだテメー」ゲシッ

天降女子「あ痛っ」


少年「ていうか、そもそも、天降女子さん、貴女は一体何歳なんですか。 数百年前って流石に……」

天降女子「女性に年齢聞くのはタブーなんだけどねー」

垢嘗「子供は許されるでしょ」

死神「そういえばコイツ、まだガキだったな」

川男「え……今更かい」

死神「違和感ねえだろ」

少年「それで、貴女は一体何者ですか?」

天降女子「あ、聞いちゃう? それ、聞いちゃう?」

死神「因縁に関係なく殴りてえな、うぜえ」

天降女子「えーっとねー、あのねー、200超えたら忘れた!」

少年「は? 冗談は存在だけにして下さいよ」

垢嘗「何気にキツいこと言うのね」


天降女子「え、しょうがないじゃない。 私、妖怪だし」

少年「だから冗談は存在だけにして下さいって言ったじゃないですか」

川男「少年君……本当だよ」

少年「ど、どういうことですか?」

垢嘗「妖怪よ。 ついでに言うと、私達もね」

少年「……嘘」

少年「洗面所借りますね。 洗面します」ガタッ

死神「逃避したな。 ていうか知らなかったのかよ」

垢嘗「だって、言ってなかったし」

死神「なるほどな。 おろ、俺の時はさほど驚いてなかった気がするぞ」


川男「……んと、2人に聞くよ」

天降女子「はいー?」

川男「……当時、魔法というモノは……存在したのかい……?」

天降女子「さあ」

死神「それは知らねえ。 だが、どう考えても、奴が分かるわけが無いんだよ」

垢嘗「へえ。 何で?」

死神「西洋あたりの担当の同僚に聞いても、『外に漏れるわけが無いね、徹底してるから』の一点張り。 あいつ、相当確信があったな」

川男「そう。 ……じゃあ、何故その人は……そんな方法を知ったのだろう」


川男「それに……天降女子さんの本性……というより、……魂を抜き取ることを知っているのも……」

天降女子「あ、そんな話してなかったのに、知ってたよね」

死神「……! 俺が会わなかった数日、確実に奴に何かあった、と?」

川男「そりゃ……そう思うね」

垢嘗「んー、明らかに人が変わってるわよねー。 何となくだけど、そう思う」


少年「ただいま戻りました……」

垢嘗「あらお帰り」

少年「顔洗って整理しました……」

死神「何を」

少年「頭を」

天降女子「へえ」

少年「とにかく、3人は妖怪、と」

川男「うん」

垢嘗「ええ」

天降女子「yes」

死神「外人気取りか」バシ

天降女子「痛っ、理不尽な」


少年「すみません、そろそろ時間ですし、帰りますね」

垢嘗「あら、そう?」

少年「はい、今日はありがとうございました」

川男「じゃあ……またね」

少年「おじゃましました」キィー パタン



天降女子「なら、あたしも……」

死神「その前に……」チャキ

天降女子「なあにこれえ」

死神「鎌。 かける、じゃなく、構える」

天降女子「何するつもり?」

川男「……暴れないでくれ」

死神「心配するな。 連行だよ連行。 逮捕?拘留?拉致?軟禁? そんな感じで見張りつける。 今日みたいにやらかさないようにな」

天降女子「物騒な! 助けてー。 ヘルプミー、ヘルプみうわあああああ!」バビューン

死神「世話なった! あばよ!」ビュオ



垢嘗「さらば、嵐」

川男「……ついでに雨も止んでたね」


——少年宅——

少年「ただいま……」ガチャ

少年(……やけに静かですね)

タンタンタンタン


——2階・部屋——

ペラ…ペラ…

少年(この主人公も、大変ですね……)

ダンダンダン

「開けるぞ」コンコン

少年「……父さん」

少年父「ん。 伝えたいことがあるからな、ちょいと聞いてくれ」

少年「……はい」

少年父「実はな」



少年父「父さん達、離婚する」


少年「……」

少年(……へえ、今更ですか)

少年(……え?)

今回はここまでです。
次回は土曜日の予定です。

反省が次に活かせていない…投下がまた遅れてしまいました。ごめんなさい。
気をつけます。

物語はようやく後半に入りました。
既に後半だったかもしれませんが…
もうしばらくお付き合いいただければ、ありがたいです。

今回も、読んで下さった皆様、ありがとうございました。


少年「離婚……ですか?」

少年父「そう、離婚。 離婚という語の説明は」

少年「必要ないです」

少年父「ふむ。 離婚に至った経緯の説明は」

少年「……聞きます」

少年父「ふむ。 大方、少年の予想通りだろう。 いつも自分は母さん、あ、もちろんお前から見て、だからな。 まあ、母さんと喧嘩をしていたわけだ」

少年父「理由は、最初は自分の不安定な収入について、だったよ。 ああ、その頃は少年の将来を心配していたというのに。 互いに」

少年「……」

少年父「しかし、それから、母さんが自分の粗探しを始めたのだよ。 母さん自身のことは、勿論、棚に上げて」


少年「粗探し……?」

少年父「そう、粗探し。 説め」
少年「いりません」

少年父「……」


少年父「まあ、粗探しっていうか、自分の身だしなみから始まり、マナー、衛生、果ては生活リズム、性格までダメ出ししてくるって事をな」

少年父「1回のミスで1ヶ月引っ張られたら、そりゃ、嫌気がさすだろう?」

少年「そして、浮気ですか」

少年父「……おぉう、彼女は子供にまで広めるのか。 恐ろしいこと」

少年「で、それは事実ですよね」

少年父「濡れ衣だよ」

少年「言っていましたよ。 『私は見た! 彼が女を侍らせている所を! あれは浮気だそうよそうに違いない!』って」

少年父「……ひっでえ」

少年「浮気をしてる人が、すぐに『はい、しました。 申し訳ない』なんて言うはずないですけど。 しているのですか?」

少年父「……自分が最近読んだ小説の冒頭には、『不倫する奴なんて馬鹿だ』ってあってだな」

少年「引用ですか。 すぐに引用する癖、何とかしましょうよ。 それに、その小説の主人公は、結局不倫したじゃないですか」

少年父「おっと、そうだった」

ちょっと確認


少年「……まあ、清々しますよ。 毎日懲りずに口論口論。 それが何年も続いていたのですから」

少年父「すまない」

少年「それで、いつ出るのですか?」

少年父「よく分かったな。 自分が家を出ること」

少年「大体予想は出来ますよ。 で、いつ出るのですか?」

少年父「明日」

少年「あ、明日?」

少年父「そう、明日。 自分が昔読んだ小説には『善は急げ』とあったしな」

少年「いや、それ、ことわざですし。 本もそれ、辞典とかその辺りでしょうが。 何、小説だなんて言っているのですか」


少年父「でも、凄いよな。 結婚は手間や時間とか、大量に時間を費やすのに、離婚は紙1枚で済んでしまうんだよ」

少年「結婚も紙1枚で済むのでは?」

少年父「分かってないな」

少年「は?」

少年父「結婚にこぎつけるまでにはさ、出会い、一目惚れ、告白、デート、エロワンクッションに、プロポーズ」

少年父「その位かかるんだよ」

少年「もう何も言うまい……何なんですか一体」

少年父「その代わり、離婚は嫌いになる。 はいおしまい」

少年「うわあ、うわあ……」

少年父「どうよ」

少年「何ですか、一体。 子供に平気で離婚の話して。 普通は発狂しますよ」

少年父「お前なら大丈夫だと信じていたよ」

少年「今までで一番嬉しくない『信じていた』です。 酷いですね」


少年「すみません、まだお風呂に入っていないので、失礼しますよ」スクッ タッタッ

少年父「おお、すまん」

バタン

少年父「……ああ、小学校までは上手く続いていたのにな……」

少年父「自分も、父親として、人として、まだ未熟だ」

少年父「『年を取っても、馬鹿は馬鹿。 情報通の大人しめな子供が、一番立派だったりするんだぜ』 あれ、これ、何の引用だったか」


少年父「……」スッ

少年父「手紙ってのも、意思を伝えるには良いもんだよな」

少年父(この本とこの本の間に挟んでーっと)

少年父「うらららーらー。 うらららーらー」

少年父「しっごっとっはっ くーびになぁーりー」

少年父「かっぞっくっとーは りっこんりーべーつ」

少年父「あぁー 悲しいモンだぁーねぇー」

少年父「うらぁー ワシはひっとりっぼっちぃー」


少年父「ああーん そっこーはっ[ピーーー]よー」


アァー…


————

少年父「うらぁー そこは」

ガチャ

少年「うるさいですよ! お黙りなさい!」

少年父「はい、すみません」


————

少年「ふぁ……」

少年父「おお、すまん。 眠いか」

少年「そうですね……そうします」

少年父「あ、そうだ。 出るの、明日っていうより、夜明けだな」

少年「早いですね」

少年父「ああ。 善は急げだ」

少年「善……なんて酷い」

少年父「言葉のあやってやつだ。 気にしないでおくれ」

少年「そうですか……ああ、最後に。 僕は父さんが嫌いですよ。 大嫌いです。 出て行って清々しますよ。 ……それでも、元気にいってらっしゃい」

少年父「言ってる事が滅茶苦茶だ。 じゃあ、自分からも」

少年父「『未来は神様のレシピで決まる』」

少年「この期に及んでまた引用ですか」

少年父「それでも、いいモンじゃないか? この言葉はさ。 『流れに身を任せる』っていうのも」

少年「……」

少年父「まあ、深く考えずに生きろ、って事だよ。 お前が意識しなくとも、お前で救われる人がいる筈だ。 みんな助けるなんて無茶はすんなよ」

少年「……!」

少年父「父親は何でもお見通しだよ。 お前の事も、社会の事も。 頑張ったら、未来も見える筈だよ」

少年父「神様が案外、スケッチブック片手にのんびり気ままに生活している青年だったりするのも、全部」

少年父「父親はすげーからな。 後半は知らんが」

少年「知らないのですか。 ちょっと感じた羨望を返して下さいよ」


少年父「……まあ、母さんなら大丈夫だろう。 実家が金持ちだし」

少年「……そうですね」フワァー

少年父「じゃあ、おやすみ。 そんで、さよならだ」

少年「おやすみ……なさ……」

少年父「寝るの早いなー」



少年父「あ、そうだ、これもメモして、机に置いておこう。 置き土産置き土産」カキカキ

少年父「よし、こんなもんか。 じゃあな、少年」


バタン

今回の投下はここまでです。
次回は水曜日の予定です。

関係ないことなのですが、
バーベキューは、火の後始末と筋肉痛と腹痛にご注意下さい。

今回も読んでくださって、ありがとうございました!


——翌朝——

チュン チュン

少年「っく、ぁ」

ジリリリリリリリ

少年「……んー」ゴロン

ジリリリ カチャン

少年「……」

少年「朝……ですか……」ボー


ムクッ

少年「ふあ……あぁー」ノビー

少年「おっはよう……ございますー……」ボー

少年「……」

少年(ああ、そういえば、もう出て行ったのでしょうか)

少年「よい、しょっと」スタッ スタスタ

少年「トイレついでに確認しましょうか」

少年「……っと、机に何でしょう、紙?」

少年「うわ、ご丁寧に封筒に入れて……と思ったら、封筒空じゃないですか」

少年「……あった。 まさか封筒の下、重ねているとは思いませんでしたよ」


少年「えっと……」ペラ

『おはよう少年。 この手紙を発見した時には、自分はもう出て行っていると思う。
実はこの手紙の他に、もう1つ封筒に入った手紙がある。
しかし、まだそれを見つけ出す必要は無い。
いずれ時が来れば分かる。

まあとりあえず、今まで母さんと喧嘩をしていて、申し訳ない。


少年「何を今更……」

『離婚して、申し訳ない』

少年「……」

『毎日こっそりお前の分の駄菓子を食べていて申し訳ない』

少年「あれ、貴方の仕業でしたか! ちくしょう」

『今まで本を譲っていたが、時々アダルトな本を紛れ込ませていて、申し訳ない』

少年「貴方って人は、なんて馬鹿なんだ」


『他にも色々やらかしたが、割愛。
本当に申し訳ない。』

少年「何勝手に割愛しているのですか。 何様ですか」

『お父様は、旅立ちます。 少年の健やかな成長を心からお祈りします。』

少年「何様って言うのを予測しないで下さいよ。 馬鹿にされているようで不快極まりないです」

『PS お前にこの言葉を贈ろう。 もちろん引用だが。』

少年「この期に及んでまた引用ですか」

『“怖れるな。そして、俺から離れるな”』

少年「いいですけど! 確かにいいですけど! 引用の引用じゃないですか、もしかしてこれ!」


少年「何だか、馬鹿馬鹿しく思えてきましたよ……」

パサッ

少年「こんなことを書けるのであれば、心配するだけ無駄な気がしますよまったく」


「ほらー、早く降りてきなさーい。 遅くなるわよー」


少年「まだ十分余裕あるのですが……母さん……」


「お友達も待たせちゃうかもしれないわよー」


少年「何でそのような嘘をつくのでしょうか……まだ来てませんって」ハァ  ガラガラ

少年「……こちらに来ている、見覚えのある3人」

少年「嘘から出たまこと。 急がないと」ダダダ


今回の投下はここまでです。
次回投下は今夜もしくは明日の予定です。
>>455に関してですが、引用はしていません。
勝手に作ったものです。
他は本当に引用です。

今回も読んでくださって、ありがとうございました。


——学校・教室——

先生「——ということで、卒業式が終わったら、学校創立30周年記念のタイムカプセルを埋めます!」

子供達「わぁーー!」

   「楽しみー!」

   「どんな感じになるんだろうねー」

   「先生ータイムカプセルはいつ掘り出すのさ?」

先生「えっと、10年、はい、10年後です!」

   「10年ー!?」

   「大人だよおとな! 早くならないかなー」

先生「じゃあ、10年後の自分に向けて、手紙を書いてみましょう!」

子供達「はーい!」



ザワザワ

少年「10年後の自分……どうなっているのでしょうか……?」

霊能女「10年っていうと、大体22歳、ってところかしら」

少年「うーむ、困りました」

同級女A「っていうか、これさ、卒業文集で書いたのを、それっぽくすればいいよね」

同級女B「Aちゃん、それはさすがに寂しいよ……」

同級女A「何で?」

同級女B「何でって……」

同級男C「ほら、未来の自分がさ、10年待ってようやく見れた手紙に、変化もなくただただ、『今日はいい天気ですね』ってあったら、どう?」

同級女A「嫌ね……あ、なるほど」

同級男C「な?」

確認


友人「ていうかさ、卒業文集のやつに将来の夢書いたしさ、『将来の夢は叶いましたか?』でいいんじゃないかー?」

同級女A「そう、それが言いたかったの! お天気の例で納得しかかったけど!」

少年「いや、天気の例で納得しかかったのはおかしいですよ」

霊能女「ぶれぶれにぶれぶれ。 ぶれまくりだったわよ」

同級男C「う、うるせー! オラちょっとやっちゃったって分かってたよ、くそー」

少年「大丈夫ですよ、次があります」

友人「次っていつだよー」

同級女B「まあまあ……とりあえず、これ、書こうよ」



同級男A「できたー! おらー、一番だー」

同級男B「おー」



同級女A「え、速い」

友人「すっげー。 俺まだ何にも書いてないんだけど」

同級男C「奇遇だね。 オラも」

友人「オー、ナッカーマ」

同級男C「オー!ナッカーマ!イエー」スッ

友人「イエー!」パチン

同級女B「……ついていけないよ」

霊能女「奇遇ね、私もよ」

同級女B「おお、仲間だー。 あっ、ここでハイタッチかな?」

同級女A「いや、無理して合わせなくてもいいでしょうが」

少年「そもそも、こんな状態で間に合うのでしょうか……」


小僧「少年氏、そんなことを言いつつ、もう書き終わったのではないかい?」

少年「小僧君。 何故分かったのですか」

小僧「今のくだりの間、ずっと鉛筆を動かしてたしね。 妖精さんの能力の賜物だよ」

少年「能力の無駄使いですね」

小僧「確かに。 言い返せないね」

霊能女「あら、小僧君。 貴方はもう書き終わったの?」

小僧「まあね。 真面目にやったからね」

霊能女「すごいわ」

小僧「いやいや……大したことじゃないよ」

少年「謙遜しなくてもいいですよ」

小僧「いや、謙遜するようなことじゃないよ。 手紙書くだけじゃないか」

少年「現代人は手紙を書くことが減ったとか何とか、誰かが言ってたような気がします」

霊能女「誰よ。 でも、そうかも。 現代はメールとか電話で済むし」

小僧「確かにそうだね。 って、現代とか何とか、君たち本当に小学生?」

少年「もう少しで中学生です」
霊能女「その言葉、そっくりそのまま返すわね」

小僧「君たちは息が合っているのか合っていないのか、よく分からないよ」


先生「ほらー、早くしないと、時間がなくなっちゃうよー。 早くしなさーい。 この時間で回収するからー」

友人「やべえ、書かないと」

同級男D「友人、まだ書いてなかったのかよー」

同級男G「C」

同級男C「ん?」

同級男G「ナイスブロックだったよ」スッ

同級男C「おう」ガシッ

友人「てめーら、俺をだましたな!?」カキカキ

同級男G「だます? いいや、おと、おと、えーっと」

小僧「陥れる?」

同級男G「そう! 陥れる! 俺たちは陥れたんだよね! 友人を遊ばせて、ギリギリでヒイヒイ言わせる為に!」

同級男C「アーッハッハッハッハッ!」

友人「ち、ちくしょー!」

同級女A「くっっっっっだらない! 馬鹿か!」

霊能女「同感よ。 すごくくだらないわね」

同級女B「え、えっと、Dくんも、みんな書き終わったの?」

同級男D「もちろん。 友人のあの言葉、『将来の夢は叶いましたか?』でピンときたんだよ」

同級男G「同じく」

同級男C「オラはそこから、『将来の夢は見つかりましたか?』にした」

同級女A「みんな話しながらも、ちゃんと書いてたけど。 友人、アンタだけだ。 書いてなかったのは」

友人「な、何だとォーーー!?」ズガガァーーン


キーンコーン

先生「はーい、じゃあ、集めるからねー」

ワイワイガヤガヤ

友人「ふ……ふはは、終わった、終わらせたぞ!」

同級男A「お前おせーよ! うるせーよ!」

同級男B「(お、おいA! こ、小僧だ、やばい)」

同級男A「(ち、ちょっと離れるか)」ソソー

友人「?」

少年「一応、以前のあれが効いているみたい……ですね」

霊能女「結果オーライ? でいいんじゃない? ほら、出すわよ」

少年「そうですね……分かりました」


同級男C「ほい」

先生「はい、これで全員出したみたいね。 どれどれ」ペラ

同級男C「何でよりによってオラのを見るのかな!?」

先生「我が子が何を書いたのか、親は気になるのよねー」

同級男C「10年待てばいいじゃん!」

アハハハ


同級女A「楽しみだなー」

同級女B「え、何が?」

同級女A「色々ー」

少年「10年後……どうなっているのでしょうかね」

霊能女「さあね。 ま、生きてればいずれ分かるわよ」

少年「ですね」

今回の投下はここまでです。
次回は今夜もしくは明日の予定です。
休みの間なので、投下をできるだけしたいと思っています。

タイムカプセルネタは個人的にホットな話題なので書きました。
自分は何て書いたか忘れました。
変なことを書いていなければいいのですが。

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。
レスしてくれる方、とても嬉しいです。
本当にありがとうございます。


——火曜日・学校・廊下——

友人「あー。 疲れたー。 卒業式の練習面倒くさい」

幼馴染「我慢しなよー。 先生も言ってたよ、『人生で一度しかない小学校の卒業式なんだから、大切にしなさいよー』って」

友人「そうだけどよ……」

少年「まあまあ。 やるからには頑張りましょう」

友人「だからさー。 嫌なんだから、頑張りたくないんだよ。 卒業の言葉とかさ、言わされているようで、本当に嫌なんだよ」

霊能女「実際、言わされているのだけれど。 ま、諦めなさいよ」

友人「俺に味方はいないのか……」

タッタッタッ

同級男D「ここにいるぞー!」

友人「おおおー! 仲間だー!」

同級男D「そうともさ! 俺だってそう思っていた! 言わされてるようで、嫌なんだよな」

友人「だろ? やっぱり嫌だよなー」

同級男D「だいだいの奴はみんなそう思っているだろ。 な、霊能女」

霊能女「なんでそこで私に振るのよ……。 とりあえず2人とも、諦めなさい」

友人「えー」

同級男D「えー」


友人「それにしても、何かイベントとかないかなー」

少年「友人。 普通はテレビ関係者が学校に来ることだけでも一大イベントなんですよ」

友人「でもさ、最近はそれも来ないんだぜ? 暇だ」

霊能女「普通が一番よ」

同級男D「普通じゃないのが言ってもな」

幼馴染「それはひどいよ」

霊能女「酷いわ」

友人「……お前……」

同級男D「ごめん、本当にごめん。 すみませんでした」


幼馴染「あ、テレビで思い出したけど、卒業式の時はテレビ来るのかなー?」

少年「来るのでは?」

幼馴染「かなあ」

同級男D「だって、子役だろ? バラエティーにドラマ、CMにひっぱりだこだろ、今」

霊能女「舞台とかもね」

友人「それでも勉強できてる、というより学校に来てるんだろ? すげーなー」

霊能女「へえ。 相当凄いわよね、それ」

幼馴染「向かうところ敵なしだー」


    「小僧君はいる?」


幼馴染「あれ、子役ちゃんだ」

友人「噂をすれば」

少年「僕たちのクラスの中を覗いて、どうしたのでしょうか」

霊能女「どうしたも何も、小僧君を呼んでるようだけど」

同級男D「何かありそうだ」


小僧「はい、どうしたんだい?」

子役「あ、あのさ、今日の放課後でいいからさ、体育館裏に来てほしいんだ。 どうしても、言いたいことがあって……」

小僧「今では、駄目なのかな」

子役「そう……あー、うん、そうだよ」

小僧「……分かりました。 放課後ですね? すぐ行きますよ」

子役「あ……ありがとう」


友人「oh……」



友人「聞いたか? 今」

少年「……な、なるほど」

友人「聞いたか? 今」

霊能女「へえ」

友人「聞いたか? 今」

幼馴染「ほ、ほわぁー」

友人「聞いたか? 今」

同級男D「聞いた」

友人「聞いたか?」

同級男D「聞いた!」

友人「聞いたか!?」

同級男D「聞いたぞ!」

友人「おーー! 小僧に春到来!」

少年「何気にそういう表現は知っているのですね」

友人「これあれだろ! 告白告白!」

幼馴染「ひゃーー」カアッ

少年「赤飯の作り方知ってます?」

霊能女「市販でも買ってなさい。 あと貴方達、飛躍しすぎ。 事実確認が出来ていないわ。 だから……」

幼馴染「だ、だから……?」

霊能女「盗み見するわよ」

少年「貴女も張り切ってますね」

今回の投下はここまでです。
次回は今夜または明日夜の予定です。

告白未経験者に告白の様子が書けるのか、非常に不安です。
いっそ、ネタに走ろうかな……

最後に、今回も読んで下さった皆様、ありがとうございました。


——放課後・教室——

「せんせーさよーなら、みなさんさよーなら」

ワイワイガヤガヤ

少年「挨拶の声と今の喧騒の差が酷いですね」

霊能女「面倒なんでしょ」

少年「真面目に取り組んで、損は無いのに、何故やろうとしないのでしょうか」

霊能女「だから、皆面倒なのよ。 納得しなさい。 何度も同じこと言わせないで……」

少年「むぅ……」

友人「そんなことより行こうぜ」

同級男D「もうターゲットは行動している。 早く動け—!」

同級女B「で、でも……そういう時は、そっとしておいたほうが……」

友人「いいや、この覗きはあいつらの為にもなるんだ」ニヤニヤ

霊能女「自分の為でしょうが。 顔がニヤついてる」

同級女A「ああ、覗きをする私をお許しくださいなーとりあえず」

同級男C「許しを請うつもりはさらさらないんだなあ」


少年「それにしても」

霊能女「どうしたの?」

少年「1、2、3……けっこういますね」

霊能女「ていうか、大体の人がいるわね」

少年「何故でしょうか」

霊能女「さあ。 広まるの、速すぎない?」


——体育館裏——

霊能女「いや、この人数はさすがに……」

友人「うわ、野次馬すごいな。 ちょっと広めすぎた、か?」

同級女A「広めすぎって言うか、学年全体に広まったみたいよ」

友人「やっちまったな……」

同級女A「内心面白いって思ってるでしょ」

友人「そりゃあ、そうだろ」

同級男C「当事者達はもういるのかな」

少年「いま……せんね」

同級男C「お? どうしてだろ」

同級女B「さ、さあ……」

タッタッタッ

幼馴染「みんな来てたんだ!」

友人「よっす、幼馴染。 と、お、気弱じゃないか」

気弱「う……」コク

同級女A「本当に、どんどん増えていってるわ」

同級女B「……本当にあるのかな?」

同級男D「あるはずなんだけどな……」


フワッ

『ハーイ、boy and girl』

霊能女「出たわね」

女幽霊『ちゃんと、現れたーとか、やってきたーとか、そういう言い方に訂正なさいな。 現象みたいに言わないの。 傷ついたわ』

霊能女「あーはいはいごめんなさいね」

女幽霊『いつもはあたしが殴られそうになるけど、今日は逆ね』

少年「それで、どうしたのですか?」

女幽霊『おっと、君のことを忘れてた。 見えるんだったね』

霊能女「何を今更……」

女幽霊『まあ、この霊能女を、宜しく御願いします……』ペコリ

少年「はあ……」

霊能女「……飛躍しすぎでしょうが!」ブン

女幽霊『おっと、顔はまずいって。 殺す気か!』

霊能女「もう死んでるじゃない」

女幽霊『それを言ったら……アレじゃない……』

少年「それで、今日はどのような件で来たのですか?」

女幽霊『あ、そうだった。 単刀直入に。 彼らは校庭の倉庫裏よ。 体育館はまずいからって、変更したみたい』

霊能女「! ありがとう」

少年「ありがとうございます」

女幽霊『いいってことよー』


友人「また交信かー?」

霊能女「そんな感じよ」

少年「友人、ちょっと耳を」

友人「ん?」


少年「出来るだけバレないように、人数減らして、校庭の倉庫裏です」ボソ

友人「……分かった」コク


少年「すみません、お手洗いに行きますね」

霊能女「あ、私も」

友人「おお、分かったー」


友人「幼馴染」ボソ

幼馴染「え、何?」

友人「気弱と倉庫裏な。 伝えて」ボソ

幼馴染「」コク


幼馴染「気弱くーん」

気弱「?」

幼馴染「ボソボソ」


友人「……よし」


友人「今日じゃなさそうだし、帰ろうかな」

幼馴染「うん……」

同級女A「いつまでたっても来ないし、いいか」

同級女B「そ、そうだね……」

同級男C「つまらないなあ」

同級男D「むー、おかしいな? まあいいや、帰ろうか」

友人「あ、俺ちょっとトイレ」

幼馴染「私はもうちょっと気弱くんと話してるね」

同級女B「うん、分かったよ。 じゃーねー」

幼馴染「じゃーねー」



友人「……よし」

タタタッ


——校庭・倉庫裏——

小僧「放課後すぐに場所を変更させたけど、何があったのかい」

子役「あ、いや、ちょっとね……」

小僧「そっか」



コソコソ

霊能女「ちょうど、みたいね」

少年「そうみたいですね」

霊能女「予想すると、3人来ると思う」

少年「誰が来るのでしょうか」

霊能女「友人君、幼馴染さん、気弱君」

少年「有り得ますね」

霊能女「少年君も予想しない?」

少年「何でも、いいですよね?」

霊能女「? ええ、対象は何でもいいけど」

少年「屋上に、死神」

霊能女「え」

少年「2人です。 あの、屋上から顔出してますし。 あの辺りですね。 ほら」

霊能女「……あ、いた」



死神「いやあ、青春だねえ」

女死神「どうしてこう、話を飛躍させるのでしょう、どの方も」

死神「いいじゃねーか」

女死神「たまったものではないですの」

死神「あ、ガキ共」

女死神「ああ、これは、バレてますの」

死神「よく気付くな……」


タタタッ

友人「すまん、遅くなった」

霊能女「大丈夫、まだ始まってないわ」

幼馴染「よかったー。 あ、静かにしないと」

気弱「……」

友人「目標は、バレない」

霊能女「シンプルね」


小僧「それで、用事とは?」

子役「う、うん、用事っていうか、言いたい事があるの」

小僧「は、はあ」



友人「始まるか?」

幼馴染「……」ドキドキ



子役「聞いてくれる?」

小僧「もちろん」

子役「ありがとう。 小僧君はさ、何でもできるよね」

小僧「そんなに、何でもできるって訳じゃないよ」

子役「それでも、勉強もスポーツも凄く出来るし、優しいし、本当に凄いよ」

小僧「優しくなんてないよ」

子役「優しいよ。 今だって、ちゃんと私の話を対等に聞いてくれてる」

小僧「大人だって……」

子役「聞いてくれないよ。 かわいいかわいいしか言わなくて、話なんて聞いてくれない」

子役「それに、気弱君を助けているのも知ってるよ」

小僧「……それは」

子役「ほら、他の人のことも想ってくれてる。 小僧君は優しいよ」


子役「私はね、そんな君に惹かれたんだ」

子役「惹かれた、って言うと恥ずかしいけどね。 でも、本当に惹かれたんだよ」

子役「ずっと。 学校にいても、家にいても、仕事の時も。 ずーっと、君のことを考えてたよ」

子役「いつからか、なんて分からないけど、自然と、君にね」

小僧「そっか……うん、ありがとう。 本当にありがとう。 こんな僕のことを想ってくれて」

子役「“こんな”なんて言わないでよね?」

小僧「あ、ご、ごめん」

子役「あははっ」


子役「小僧君」

小僧「はい」

子役「私は、小僧君、君の、き、君が」

子役「す、好き、です。 好き、好きです!」

子役「私は、君が、好きです!」


子役「うぅっ」グスッ

小僧「……ありがとう」

子役「……」グスッ ヒグ

小僧「僕は、貴女のことを、たくさん知ってるわけじゃないんだ。 むしろ、知らないことの方が多いと思う」

子役「……」グスッ

小僧「でも、貴女を気になってたんだ。 長い間。 誰にも知られないように、隠していた」

小僧「今、貴女のことを知りたい。 たくさん知りたい。 一緒にいたい」

小僧「だから、貴女の告白に答えるよ」

小僧「僕も、貴女が好きです」

小僧「こんな僕で良ければ、いっ」
子役「うわああああああっ」ブワッ ガシッ

小僧「おっ……ととと」フラッ

子役「ありがとう、ありがとう……嬉しいよぉぉ……」

小僧「こちらこそ……」

子役「“こんな”なんて言わないでよねっ……!」


————


子役「ごめん、今更かもしれないけど、謝りたいことが……」グスッ

小僧「? 何かあったかな」

子役「……私のせいで、A君達からいじめられてたんだよね……」

小僧「……ああ」

子役「聞いたんだ。 私が小僧君が好きってことを、クラスの友達に話してたのが、聞こえてたみたいで……」

小僧「それはしょうがないよ。 貴女のせいじゃない。 だから、謝る必要なんてない」

子役「……でも」

小僧「“私のせい”なんて言わないで」

子役「う、うわあああん……」

小僧「」ポンポン



子役「小僧君」

小僧「はいはい」

子役「いつも、人を呼ぶ時はさ、〜氏、ってつけてるでしょ? 私を呼ぶ時は、普通に、呼んで欲しいな」

小僧「……子役、って?」

子役「ん」ギュッ

小僧「分かったよ」

子役「義務だよ? 絶対だからね。 約束!」

小僧「ん」ギュッ

子役「えへへ」ニィー

小僧「ははっ」ニィー


————

幼馴染「ふえええ……良がっだ、良がっだよぉー」ビエー

友人「ほら、ハンカチ。 拭けよー」スッ

幼馴染「ありがどうー。 ふえええええ……」ビエー

少年「用意がいいですね」

友人「馬鹿か。 俺をなめんなよー? 用意周到は俺を表してるんだぞー」

幼馴染「ディッジュもあるー?」グスッ グスッ

友人「ない……」

気弱「ん……」スッ

幼馴染「ありがどうー」ヒグ エグ

少年「……」

友人「用意周到は無しで」

少年「ははっ」

霊能女「……」ギュッ

少年「? どうしました?」

霊能女「……少し、腕、借りるわ」

少年「いいですよ」

霊能女「ありがと」



女死神「良かった、良かったですわ……」ホロリ

死神「泣くのはいいが、鼻水は汚いからな、拭けよ」

女死神「出てません、のッ!」ブン

死神「痛ぇ」バキッ

今回はここまでです。
次回は今夜か明日の予定です。

500突破で凄く嬉しい、筈ですが……
なんでこうなった……
書いちゃったよおおおおおおおおおやっちゃったよおおおおおおうわあああああああああ!
恥ずかしいよおお死にそうや

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがどうございました。


——水曜日・少年宅——

少年「……は?」

少年母「だから、唐突だけど、この家出るわ」

少年「唐突すぎますよ……」

少年母「学校には休むって伝えてる。 さっさと部屋とかの片付けしときなさい」

少年「家具はどうするのですか?」

少年母「あー、後で処分処分。 新居は実家だから、家具は必要なし」

少年「……そういえば、一度も行ったことがないですよ。 どこにあるのですか?」

少年母「遠い所。 さ、早く動きなさい。 荷物は最小限にね。 本とか、あんなに要らないでしょ。 向こうにもあるから」

少年「……」

少年母「ほら、さっさとやる!」

少年「はい……」トボトボ


——自室——

少年「はあー……」ボフン

少年(あの人は一体何を考えてるのでしょうか……。 唐突すぎどころの話じゃないですって)

少年「……」ムクリ

少年「片付け……ますか」

少年「服は……」ガサガサ

少年(着ない物と、着る物を別にして……)

ガサガサ

少年「ふう、この位、ですかね……。 着る方が少ないですが、まあいいですかね」

少年(机の物は……ほとんど要りませんね。 教科書やノートも、使わないでしょうから、必要分の文房具に、鞄で充分ですね)

少年「よいしょ」ガシャガシャ

少年「大きな袋に入れますかね。 よっと」ガサガサ

少年「後は……本棚ですか」


少年(……考えてみれば、ここの棚にある本は全て、あの引用好きから貰った本なのですよね……)

少年(とりあえず、整理しますか)

スッ スッ スッ…

スッ

少年(……この封筒)

ガサガサ

『12歳のガキへ』

少年(……これは、以前読んだ手紙に書いてあった……ですかね)

『今、この手紙を見ているとなると、恐らく、引っ越し作業をしている時であろう』

少年「……は? 何で分かって……」

『これから起こる出来事は、お前にとって、辛いものになるかもしれない』

『だが、我慢して、乗り越えてほしい。 流れに身を任せろ』

少年(一体、これは何のアドバイスでしょうか……)

『次は、“18歳のお前へ”でまた会おう。 18になるまで読むなよ』

少年(次?)

ペラ

『18歳のお前へ』

少年(これですか……。 とっておきましょう)


————

少年「この位、ですかね」

少年「袋2つに鞄、よくこの位に減らせましたね……」

少年「本を持って行けないのが非常に残念ですが……」

「終わったら降りなさいよー。 もう夕方なんだから、早く行くよ」

少年「分かりましたー」

少年「……今までありがとうございました」ペコ

タタッ

今回はここまでです。
次回も同様です。

終わりがちょっと見えてきました。
でもまだまだ続きます。

皆様、今回も読んでくださってありがとうございました。


ブロロロ…

——バス車内——

少年「……どこで降りますか」

少年母「んー? 駅前で降りる」

少年「それから、電車に乗る、と」

少年母「……まあ、そうね」

少年「そうですか」

少年母「ん……」


ブロロロ ガタン ブロロロ…


少年母「んー……やっぱり、運賃高くなるわね、気にしないけど」

少年(気になってるじゃないですか)


ツギハ、〇〇エキマエ ツギハ、〇〇エキマエ


少年「ここですか?」

少年母「着いたわね。 ほら、降りるよ」

少年「はい」

少年母「あ、大人1人子供1人で」

ピッ


——都心部——

少年母「ありゃー、けっこう遅い時間ね」

少年「着くのは、かなり遅い時間になりそうですか?」

少年母「……まあ、そうね。 真夜中とか。 それでも大丈夫?」

少年「大丈夫です」

少年母「そう。 良かった。 じゃあお母さん、ちょっとお手洗い行ってくるね」

少年「あ、はい……」

少年母「……じゃあねー」ボソッ

少年「?」

タタッ

少年「? 何か言ったのでしょうか。 聞こえませんでした……」

少年「……行ったことも無い場所で、1人って、なかなか不安になりますね……」

少年「はあ……」


————

ワイワイガヤガヤ

少年「遅いですね……空が真っ暗ですよ」


ワーヒサシブリ! イマカラフタリデノミニイコウ!
イイネ、イコイコ!


少年「色んな人がいますね……」


ラフメーイカージョーダーンジャナィ!

ポアダポアダポアポアダポアダポアポアダポアダポア!


少年「あ、歌ってる人もいますね」


キョウモシゴトデヘマシタヨ…
マア、オツカレサマ

アソコノオンナノコタチヲツカマエヨーゼ
ア、アノコチョータイプ

ガッコーオワッター
ゲーセンイコウゼ


少年「……遅いですね」


————

少年「おかしいですね……いくら何でも……」

少年(遅い……)


ウワーモウコンナジカン!?
モウヒヅケカワッテルヨー シゴトアルノニー


少年(……嘘、でしょう……え、本当に?)


————

少年「……」ウトウト

「あれ、この子、夕方もいたよね?」

「え、そう?」

少年「……?」

OL1「ほら、あの時、久しぶりに会った時にも、ここにいたよ」

OL2「ああー、あの時。 確かに」

OL1「ねえ君。 こんな遅い時間まで、どうしたの?」

少年「人……母を待っています」

OL1「え、あの時から!?」

OL2「うわーお。 そして受け答えがよくできてる。 上司にタメ口使っちゃったアンタ、見習いなさい」

OL1「うるさい! それ、今言うことじゃないでしょ……」

OL2「はいはい……ていうか、待つにしても、さすがに遅いわ」

OL1「うん……君、この辺りの道、分かる?」

少年「恥ずかしながら……」

OL2「そりゃそうだ」

OL1「うーん……」


OL2「これ、明らかに置いてけぼりじゃない?」

少年「……!」

OL1「それは、ない、と思う……」

OL2「そう?」


チャラ男A「あー今日は疲れたー」

チャラ男B「可愛かったなー」

チャラ男A「2人ともな」

チャラ男B「メアドゲットでも万々歳ー!」


OL1「あ、あの人たちもいたよね」

OL2「おーい、そこの若いの、ちょっと来ーい」


チャラ男A「うお、キレイな女の子」

チャラ男B「はいはい、何かー?」

OL1「今日の夕方にも、ここにいたよね?」

チャラ男A「いたけど、あれは夜と言うべきじゃね?」

OL1「あ、そうだっけ。 あはは」

チャラ男B「夕方にここに来て、暗くなった辺りで離れたけどな」

OL2「そう。 じゃあ、この子の母親、分かる?」

チャラ男A「いやいや、このガキ知らないのに、親なんて分かるわけないって」

OL1「どういう姿とか、分かる?」

少年「……えと、腰まである位の長髪に、上は白、下はかなり短い青ズボンで、バックは2つ……すみません、服の名称を知らなくて……」

OL1「いやいや、大丈夫大丈夫! 気にしないで」

チャラ男B「あー、あの人かな? A、駅の改札口で、そんな人いたよな?」

チャラ男A「ん? ……ああ、確かに一致するな。 あの人、子供いたのか……」

チャラ男B「……? この少年は、その人の子供?」

OL1「そうみたい」


チャラ男B「その人、普通に改札抜けて、電車に乗ってたけど」

OL1「!」

OL2「嘘、信じらんない。 子供を置いて行くなんて」

チャラ男A「なあお前、どの辺りから来たか分かるか?」

少年「えと、●●のバス停からずっと……」

チャラ男A「うわ、結構遠いな……」

少年「あと、そのバス停まで、数十分程歩きました」

OL2「こいつはくまった……くまー」

OL1「ふざけてる場合じゃないんだけど……」

チャラ男B「これはかなり堪えるな……」

OL1「お父さんは?」

少年「つい最近離婚して、どこで何をしているか分かりません……」

チャラ男A「ガキ、泣いていいぞ……」

少年「いえ、あの人達ならやりかねない気がしていたので、大丈夫です」

OL2「胸糞悪いわね……ったく、最近の親は……」


OL1「貴方達、この子を預かれる? 置いて行くのはどうかと思うし……」

チャラ男A「俺は無理だな……今日は帰らないつもりだったし」

チャラ男B「俺もだな。 こいつと同じ。 しかも電車で来たし、このガキの家と真逆だし」

OL1「うーん、私もちょっと……もう終電終わってるよね?」

OL2「だろうね。 あ、同じく私もアウト」


「……」


OL1「あ、そうだ! あの人なら……」パカ

OL2「どうしたのよ」

OL1「今日この人、飲みに連れて行かれてたから、きっとまだ大丈夫なはず」

チャラ男A「大丈夫な感じ?」

OL2「多分」

OL1「あ、もしもし? 今大丈夫? ……良かったー。 じゃあ、〇〇駅前に。 お願いしまーす」

チャラ男B「大丈夫的な?」

OL1「ん」グッ

OL2「おおー」

OL1「2人共ありがとねー。 わざわざ時間とっちゃって」

チャラ男A「いや、超余裕超余裕」

チャラ男B「あ、また何かあったとき用に、メアドでも……」

OL「「間に合ってまーす」」

チャラ男「「oh……」」


————

ブロロロ

OL1「あ、来た来た。 こっちこっちー」フリフリ

ヴゥー キッ

OL1「ごめんねー、こんな遅くに」

「いや……大丈夫。 ……かなり長い間あって、さっき終わったところ」

OL1「……飲酒運転?」

「飲酒運転ダメ、絶対。 ……飲んでませんって」

OL1「はいはーい。 じゃあこっち来て」

バタン

OL1「ちょっと、この子を泊めてあげて」

「どの子……? ……あれ」

少年「あれ、川男さん」

川男「……年君じゃないか」

OL1「ありゃ、知り合い?」

OL2「世間は狭いわね」

今回はここまでです。
遅くなり、申し訳ございません。
次回も同様に、今夜もしくは明日の予定です。

>>520の訂正
川男の発言、“少年”が“年”だけになってました。訂正します。
“川男「……少年君じゃないか」”です。
最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


ブロロロ

——車内——

OL1「さすが川男くんだよ、こういう時も頼りになる」

川男「偶然だよ……今日は。 ……あと、普通は迷惑の部類に入るから」

OL1「はーい、気をつけまーす」

OL2「あの、私も乗せてもらって宜しかったのですか?」

川男「ああ……構いませんよ」

OL1「2人とも、堅苦しいのはナシね」

OL2「アンタは昔からそう……あーまあいいや」

川男「ははっ」

OL1「あ、そうだ、ついでだから川男くん、私達も泊めてちょーだい」

川男「……」

OL2「……」バシッ

OL1「あ痛っ」

OL2「アンタ……どんだけ甘えてんのよ。 配慮位しなさい」

川男「あー……いいや、別にいいよ……」

OL1「やったー! あ、襲わないでよ?」

OL2「……」ガッ

OL1「あ痛っ。 グーで来るか……」


川男「あ……静かにね? ……少年君、寝てるから……」

少年「……」スー…

OL1「ごめんなさーい」ヒソ

OL2「にしても、この子も可哀相に。 置いてかれるなんて……」

川男「そういえば……事情を聞いてなかったね。 ……一体……どうしてかな?」

OL1「えっとね、」


————

川男「……なるほどね」

OL1「状況証拠から推測した感じだけどね」

川男「……」

OL2「しっかし、何でなんだろうね。 実の息子を置いていくなんてさ」

川男「それは……本人にしか分からないことだから……」

OL1「ま、そりゃそうだよね」

川男「……ん、着いた。 ……ここから家まで少し歩くよ。 ……少年君は僕がおんぶして行くから」

OL1「はいはーい」

OL2「先導お願いしますね」

川男「うん……よっと」ノッシ


——川男宅——

ガチャ

川男「……ただいま」ボソッ

OL「「おじゃましまーす……」」ボソッ

垢嘗「誰もいないと思った?」

OL「「」」ビクッ

川男「やあ……垢嘗。 ……まだいたのかい」

垢嘗「いーや、今から。 ちょっち行ってきまーす」

川男「はいはい……」

バタン

OL1「……今の、どちらさま?」

川男「……垢嘗のことかな。 ……長い付き合いだよ。 ……昔からの馴染み。 ……勝手に住み着いてきたけど」

OL2「なるほど」ニヤ

川男「……付き合いって言っても……考えているようなものじゃないからね」

OL2「そういうことにしておきます」フフッ

川男「……誤解を招く表現だった」ハァ


川男「それじゃあ……2人はここ、居間に」

OL1「はいはーい」

OL2「ありがとうございます」

川男「僕は……少年君を空いた部屋に寝かすから……」

OL1「んー」

タッタッタッ

OL1「広いなーここ」ゴロン

OL2「失礼だけど、住めるのここ? って思ったけど……」

OL1「中はキレイ。 これだと劇的にビフォーアフターしそうにないね」

OL2「風情があって、いいんじゃない?」

OL1「だねー」


——部屋——

少年「……」スー… スー…

川男「それにしても……」

川男(状況証拠と言っても、故意に置いて行ったと確信出来る……のかな)

川男(今まで聞いてきた話でも、親が子を置いていく話は何度かあったけど……)

川男(大抵、山道や人気のない場所にするようだけど)

川男「何で、あんな風に……? つい置いてきたーなんて……有り得ないな」

川男(まあでも、少年君が無事で良かった……)

川男「……まあいいや……そんな事を考えても仕方ない。 ……少年君、おやすみ」

少年「……」スー… スー…


——居間——

OL1「ねえねえ、さっきの人。 綺麗な人だったよねー」

OL2「どうしたの唐突に。 何、嫉妬」

OL1「え? ち、違うよ! そうじゃなくて」

OL2「ん、さっき飲んでた時、気になってる人の話してたけど、もしかして……」

OL1「にゃー! 言わないで言わないで! ここ敵地! アウェイだよアウェイ! 聞こえちゃうー」カアッ

OL2「いいのいいの! 分かった以上、逃げ場はないわよー」ジリジリ

垢嘗「そうよそうよ、そういう話で盛り上がってこそよ!」ジリジリ


OL1「ひやあああ! い、いつの間にお帰りになりゃりゃりゃりゃ」

垢嘗「今今、居間に着いたの今」


川男「こら……静かに。 ……少年君が起きる」

垢嘗「あ、ただいまー。 少年?」

川男「おかえり。 ……ちょっと訳あり」

垢嘗「ふーん、で。 この2人は? 若いの侍らせて、何? 何かとんでもないことでもしようと?」

川男「……君の発想がとんでもない。 ……ヒモになる前にヒモで吊ることを推奨するよ」

垢嘗「誰がやるか、そんなこと。 で、そこのお二方、汗とか気になるでしょ」

OL1「え? た、確かに」

垢嘗「風呂でも入ってきなさいよ。 着ている服も、洗って乾かして、すぐに着れるようにするから」

OL2「いいのですか?」

垢嘗「女に二言は無ーい!」

OL1「ありがとうございます!」

川男「汗流したかったけど……我慢するか」ハァ

OL1「そ、そんな。 そこまで遠慮しなくても。 気にしませんから……」オロオロ

垢嘗「覗いたら駄目よ」

川男「するわけがないよ。 ……君の部屋の電化製品を廃棄するしかないね」

垢嘗「止めて、それは、冗談きついわ」

今回の投下はここまでです。
時間取りすぎました。すみませんでした。
次回は明日、もしくは明後日の予定です。

今回も皆様、読んでくださってありがとうございました。


————

死神「あーあーあー、疲れた。 非常に疲れた」ドサッ

女死神「お疲れ様ですわ。 今回の仕事はいかがですの?」

死神「面倒臭い。 肩こりが激しく悪化して、何か、こう、ムキムキーってなる感じ」

女死神「ムキムキー、ですか

死神「そ。 終いには、両肩から硬い突起物が生えてきそう」

女死神「もうそれ只の化け物ですわ」

死神「だな。 とりあえず、その位面倒」

女死神「はあ……お疲れ様ですわ」

死神「まあ、性格げすいし周囲に悪影響しか及ぼしてないから、死は確定した」

女死神「あら? 面倒というのは、生死の判断では?」

死神「違う違う。 仕事始めに会ったが早々、絡まれたんだよ」

女死神「日頃の行いが悪いから……」

死神「違う、決してそんな事はないだろ。 で、いきなり訳も分からず計画に付き合ってなんて言い出すし」

女死神「計画?」

死神「らしい。 とりあえず、自分の家を夜間できれいに撤去しろなんて無茶振りしだしてな。 しようがないから色々協力呼びかけて、さっき終わったんだよ」

女死神「さっき終わった、って……もう朝ですの」

死神「うげ、まじかよ」


死神「とまあ、そんな感じで。 また行かなきゃなー、あー嫌だ」

女死神「そんな貴方にお知らせですの。 また妖精さんの反応がありましたわ」

死神「過労で殺す気かよ……」

女死神「まあまあ。 どうしても、という時は、手伝いますわ」

死神「あーりーがーとーよー」

女死神「……やっぱり止めましょう」

死神「ありがとうございますなので取り消さないでお願いします」

女死神「……本当に、大変なのですね……」

死神「それはそうだ。 変な馬鹿の付き添いに妖精さん、天降女子の馬鹿、その他諸々……うげえ」

女死神「お疲れ様ですの」


女死神「まだ時間はあります?」

死神「まあな。 そこまでバタバタする必要はなさそうだ」バタン

女死神「床で寝たら体痛めますわよ。 あ、そうですの」

死神「んあ?」

女死神「えっと、確かこの辺りに……あ、ありましたわ」

死神「何だそれ……マッサージに使うベッドじゃねーか。 誰だよ、職場に持ち込んだ奴は」

女死神「さあ。 一時期、誰かがマッサージ師を担当していて、頻繁にマッサージさせろーって言ってましたわね……誰でしたっけ」

死神「俺じゃあない」

女死神「同じく」

シーン

死神「……まあいいか。 よっと」ガチャ グテン

女死神「まさかのうつ伏せ」

死神「何言ってんだよ。 顔の位置に穴が空いてたら、そこに顔をうずめようとするのは、当然のことだろうが」

女死神「よく分かりませんわ」


女死神「折角ですし、マッサージしますわよ」

死神「おお、ありがとよ」

女死神「はいはーい」

スィー

死神「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ……」

女死神「ふふっ、呻き声が凄いですわね」ギュウウ…

死神「言うなよ、おおおお……」

女死神「脚、結構キてますわね……」ススーッ

死神「まあ゙あ゙あ゙なぁぁ……」

女死神「では、ちょっと上へ参りまーすの」ズズーッ

死神「おおおお……」


女死神「力加減はいかがですの?」

死神「……もう少しちよく」

女死神「ちよく?」ググッ

死神「強くぅぅあ」

女死神「……」グッグッ

死神「……あー」スー

女死神「指圧の心は母心ー」グーッ

死神「……何だよそのババア臭いの」

女死神「失礼ですわ」トントントントン

死神「……このベッド持ってきたの、お前だな」

女死神「何のことですの」トントントントン

死神「何か上手いし……さっきのは嘘だな」

女死神「ノーコメントですわ」

死神「その反応、図星だな」


女死神「はい、ここまでですわ」

死神「ん、ありがとうよ」グデー

女死神「そのベッド、気に入ってますわね」

死神「いや、何というか、落ち着くんだよ」

女死神「変な方ですわね」

死神「うるせえ。 ……そういえばよ、ここってさ、何で人間の会社みたいな見た目なんだ? ていうか完全にそうだよな」

女死神「人間を対象にしているからではないですの?」

死神「そういうことになっているのか……?」

女死神「いきなりどうしたのですの?」

死神「いや、何となくだ」

女死神「そうですか」

死神「んー、人間以外はどうなるのか……」

女死神「珍しいですわね。 考え込むなんて」

死神「……お前はさ、ここ、この職場について、分からないことは結構あるだろ?」

女死神「言われてみれば、そうですわね」

死神「周りで噂になっている様なんだが。 生物を対象にした死神はいるのかーとか、もし別の世界、所謂平行世界にも死神はいるのかーとか」

死神「もし死神がいたとして、こういう職場が存在するのかとか、本当に色々」

女死神「……ふむ」


ガチャ

死神同僚A「ちーっす」

死神同僚B「仕事終わったー。 って、死体がいる……」

死神「うるせえ。 俺は生きてるわ」

死神同僚B「分かってるよ」

死神同僚A「そんじゃ、報告書出してくる」

女死神「はいはい、いってらっしゃい」

死神「……今、上のアホ、寝てるよな」

女死神「アホ言わないように。 連日の激務で寝てなかったようで」


オラオキロ!

ガッシャアアアアアン

ギャー

死神「……やりやがった」

女死神「ご愁傷様ですわ」


死神同僚A「ただいまっす」

死神同僚B「ついでに上司を持ってきましたー。 そこの死体、これ寝かせるから退いてよ」

上司「」グデー

死神「これ呼ばわりしやがった……よっと」

死神同僚B「はいじゃあ寝かせまーす」

ガシャンガシャン

死神同僚A「これにて一件落着っすね」


死神「そういえばお前ら、噂、知ってるか?」

死神同僚A「もちろんっす」

死神同僚B「とりあえずは」

女死神「知っている方、多いですのね」

死神同僚A「まあ、そうっすね」

死神同僚B「それで、部屋の隅にある、あの開かずの扉」

死神「あの、人がギリギリ入りそうな奴か」

死神同僚A「あれも大概怪しいっす」

女死神「確かに。 何なのでしょう」

死神「お前覗け」

死神同僚A「お願いするっす」

死神同僚B「ほら、行った行った!」グイグイ

女死神「あー分かりましたわ! 行きます!」

ガバッ

死神上司「俺も気になるから早く!」

女死神「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! 分かりましたから!」

ガチャ

死神「……普通に開きやがった」

死神同僚A「拍子抜けっす」

死神上司「ふぁ……で、どうだ?」

女死神「……一面、一面、扉だらけでした」

死神「はあ?」

今回はここまでです。
次回は少し時間を置いてからです。

書こうとする度小さな予定が入ると悲しいですわ
時間が欲しいですの

今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


——木曜日・川男宅——

チュン  チュン

少年「ん、ふあぁ……」ムクリ

少年「あれ、ここは……?」

少年(確か、川男さんの車に乗って……)

少年「……川男さんの家、ですかね」

ススッ タン タン タン

少年「この部屋から出てみますか。 トイレにも行きたいですし」

タン タン タン

少年「廊下のフローリング、冷たいですね……3月ですし、まだ朝は肌寒いですね」



少年(やはり、ここは川男さんの家ですね)

コンコン

シーン

少年「入ります……よ……」



死神「……」

少年「……」

死神「……ん?」クル

少年「またですか。 つい最近も同じ展開でしたよ。 ふざけてますよね」

死神「いや、今回は違うと思うぞ? 朝だし、考え込んでるし」

少年「トイレでですか。 何でここに」

死神「俺のオフィスからこの世界に来ると、何故か毎回トイレにいるんだよな。 帰りはドアなのに」

少年「オフィス? この世界? 違う世界にオフィスがあるのですか?」

死神「ちょっと違うな。 違う次元、というか上の次元だな。 死神だし」

少年「はあ……」

死神「上の次元だから、この次元の奴らは見えないんだよ」

少年「見えてますけど」

死神「訂正する。 この次元の奴らの大半は分からない。 見えるのは霊や神などの存在と密接な関係にあるのと、仕事の対象者」

少年「ん……」

死神「説明しにくいんだよ。 こういうの。 漠然と、こんな感じかー、みたいに思っとけ」

少年「はい」


死神「そういうお前は、何でここにいるのだよ」

少年「トイレに行くためですよ」

死神「そうじゃねえよ。 何でこの家にいるのだよ」

少年「夜に1人で居たところを、川男さんに保護して貰いまして」

死神「1人? 何やってんだオメー」

少年「いや、置いていかれまして……親に」

死神「あーあ、何てこった」

少年「それはどういうことに対する発言ですか?」

死神「思い当たる話だったから」

少年「……教えて下さい」

死神「企業秘密だ。 あとプライバシーとか」

少年「適当な気がしますね、その言い方」

死神「しようがないだろ。 言えねえし」


少年「そういう貴方は、何の考え事を? 協力しますよ」

死神「いや、そういう悩みじゃない。 明け方だったか、ちょいと問題が出来てな。 同僚達と考えてたんだよ」

少年「協力、させてくれませんか?」

死神「無理だな。 俺達でしか解決出来ないかもしれないしな」

少年「そうですか……」

死神「……1つ聞く。 お前の経験の中に、この世界のものとは思えないような事はあったか?」

少年「いや、無かった……? ん?」

死神「どうだよ」

少年「……“妖精さん”、ですかね」

死神「!」ピク

死神「……少年、詳しく教えろ」

少年「いいですけど……えっと、小僧君は知ってます?」

死神「知ってる。 体育館裏の」

少年「はい。 なら、力のことは?」

死神「体育館裏」

少年「何故力を持っているか」

死神「大方、妖精さんだろ」

少年「なら簡単に説明できます。 小僧君は定期的に“妖精さん”の空間に行っているそうです」

死神「“妖精さん”の空間、だと?」

少年「はい。 小僧君が言うには、『僕たちの世界ともう1つの世界の中間』だそうです」

死神「……よく覚えてたな」

少年「印象深かったので」

死神「そうか。 ありがとよ、少年。 予想以上の答えだ」

少年「役に立てましたか?」

死神「いい感じにな」


死神「それじゃ、俺は現地で激務だからな。 おさらばだ」

少年「そうですか。 頑張って下さいね」

死神「おう。 じゃあな」

スタスタスタ

少年「……」

少年「あっと、トイレトイレ……」

バタン

今回はここまでです。
次回は2、3日以内に。

すみません、状況説明が全然出来てませんね……精進します。

最後に、皆様、今回も読んでくださってありがとうございました。


ジャー

バタン

少年「ふう。 すっきりしました」

少年「今は何時、でしょうか……」

イッチニー サンシー

少年「ラジオ体操? 庭を見てみますか」

タッタッタッ


——居間——

少年「川男さー……ん」ピタッ


OL1「」スースー

OL2「」スー


少年「……昨日の人達? いや、昨日という表現は相応しくないですかね」

タッタッタッ

OL1「」ガシッ

少年「! うっ、あ、足」ビクッ

OL1「……川男しゃーん……またミス……助けてー……」スースー

少年「……寝言ですか。 ……足、離してくれませんかね……」

OL1「」スースー パッ

少年「良かった、すぐに離してくれました」

少年「川男さーん」


——庭——

ガラガラ

少年「川男さん」

川男「ん? ……ああ、少年君。 ……おはよう」

少年「おはようございます。 泊めてもらって、ありがとうございました」ペコ

川男「いいよいいよ。 ……感謝すべきは……そこで寝ている2人だよ」

少年「そういえば、この2人が何故ここに?」

川男「泊めてーって……」

少年「そういうことですか」

川男「……よし、今から垢嘗起こして体操するけど……君はどうする?」

少年「体操?」

川男「ラジオ体操」

少年「……そうですね……やります!」

川男「そっか。 ……じゃあ、少し待ってて」


————

垢嘗「……」ボー

川男「ほら……垢嘗。 ……どうせ碌に寝ていないだろうけど。 ……ラジオ体操しないと……身体が鈍るよ」

垢嘗「んー。 兄ちゃん私だいじょーぶぅ……」

少年「兄ちゃん?」

川男「いや……血の繋がりはないよ。 ……昔から一緒にいて……小さい頃はよくこんな感じに」

垢嘗「……んー。 兄ちゃん、眠いよー」ダキッ

川男「甘えてたけどね……」

少年「川男さんの方が年長なのですか?」

川男「……実はそう」

少年「へえ、そうなのですか」

川男「うん。 ……よし、そろそろ始めよう。 ……垢嘗、起きて」ペチペチ

垢嘗「……んんー、眠……い」

川男「やあ……起きた?」

垢嘗「あ、あれ、またやっちゃった?」

川男「目が覚めたかな?」

垢嘗「にゃにゃにゃ、め、目の前っち」アタフタ

川男「ラジオ体操するよ。 ……ほら、早く」

垢嘗「う、……うん」カアア

少年「……なんか、凄いですね」


——居間——

垢嘗「……」ズーン

少年「そこまで落ち込まなくても……」

垢嘗「なんたる失態……」ズーン

川男「少年君。 ……恐らくしばらくこのままだから……そっとしておいて」

少年「はあ。 分かりました」

川男「うん。 ……じゃあ、少年君は隅で寝ている方を起こして。 ……僕はソファーで寝ている方を起こすから」

少年「分かりました」


少年「起きて下さーい」ユサユサ

OL2「……んー」

少年「起きて下さい」ユサユサ

OL2「……んん、ぅー」ムクリ

少年「あ、起きましたね」

OL2「あら、おはよう。 ……あ! 時間は!」

少年「えっと、6時……23分位です」

OL2「あー良かった。 起こしてくれて、ありがとう」

少年「どういたしまして」

OL2「で、向こうも起こしてるみたいだけど……」


川男「ほら……起きなって」ペチペチ

OL1「んーん、ほっぺ……くすぐったいー」ムニャムニャ

川男「あー……全然起きない……」



少年「苦戦してますね」

OL2「昔も凄かったけど……治らないみたいね」



川男「……起きてー」ポンポン

OL1「……にゃー、頭はぁ……こども扱いしないでよぉ……」ムニャムニャ

川男「……幼児退行? ……おーい」パチン パチン

OL1「んもー、……驚かさないでよぉ……仕返しにゃー」ガバッ

ダキッ

川男「! ……ちょっと」

少年「大胆ですね」

垢嘗「……」

OL2「……」スクッ タッタッ

OL2「起きろ、馬鹿! チョップ!」ベシ

OL1「! 痛い……、ふぁ、おはよう……」パチ

川男「やっと起きた……おはよう」

OL1「あれ、近い……あれ、何で抱きついて……」

OL2「やっぱりアンタ、寝ぼけてたのね。 寝ぼけたアンタが川男さんに抱きついたのよ」

OL1「えっ……」

OL1「えええええーー!?」カアアア


————

OL1「……」ズーン

垢嘗「そこまで落ち込まなくてもいいじゃないの」

少年「ついさっきまで、同じように落ち込んでいた人が言うことではないですね」

垢嘗「う、うるさい!」

川男「こらこら……朝早くから騒がない」コトン

OL2「小学校の教科書に載ってた、理想的な朝食そのままだ……。 健康的」

OL1「朝いっつもバタバタで、食事に気を配れないんだよねー」

川男「早く起きなよ……」

OL1「それが難しいんですー」ムー

垢嘗「あははっ。 じゃあ、冷めない内にいただきます」

「いただきます」


OL1「ふおおお、凄くおいしい!」

OL2「羨ましいわ。 家事出来て頼りになって謙虚で……あー、そんな男性、私も欲しいわー」

垢嘗「でも、見た目はイマイチ」

OL1「ええー! そんなことないですよー」

OL2「上の……下あたり?」

垢嘗「えーそう?」

川男「どうでもいいじゃないか……」

少年「川男さん、モテますね」

川男「違うよ……絶対に違う」

少年「若いですねー、モテモテで」

川男「……年下に『若いですねー』なんて言われたのは初めてだよ」


川男「少年君。 ……今日はこれから学校だよね」

少年「はい」

川男「今の内に……言っておくよ。 ここに住んでいいよ……というより、ここに住みなよ」

少年「え、でも……」

川男「引っ越し先が分からない以上……そうするしかないと思う。 ……元の家も引っ越ししたから……入れないだろうし」

少年「……ありがとうございます」

川男「勝手に決めてしまったけど……大丈夫?」

少年「はい。 これからも宜しくお願いします」

川男「そっか……よかった」


垢嘗「おいそこの男性2人!」

川男「何さ……早く食べないと冷めるよ」ズズッ
少年「僕もですか」

OL1「この中でお嫁さんにするなら!?」

川男「」ブボボッ

垢嘗「出すなー! 戻せー!」

少年「僕は未成年なので、黙秘権を行使します」ズズッ

OL2「霊能女ちゃん」

少年「」ブボボッ

垢嘗「出すなー! 戻せー!」

少年「ゲホッ ……貴女は霊能女の知り合いですか?」

OL2「知らない。 垢嘗さんからお手紙ついたのよ」

少年「そこは読まずに食べましょうよ」

OL2「ループするから駄目ー。 で、結局どうなのかな?」

少年「よく一緒にいる親友です。 いきなりその名前が出て、驚いただけです」

OL2「ほほう。 脈有りね」

少年「……」ハァ


OL1「川男さん! 結局、どうなのかな?」

垢嘗「ハリー、ハリー」

川男「……ごちそうさま」ガチャ スタタタ

OL2「あ、逃げた。 しかも速い」

OL1「むむう」

垢嘗「残念」

少年「ごちそうさまでした。 皆さん、出勤時間は大丈夫ですか?」

OL1「大丈夫だよ。 いつもなら、まだ寝ている時間だし」

垢嘗「よく間に合うわね。 ちなみに私は、時間は気にしないでいいの」

川男「ヒモだから」スタスタ

OL2「あ、戦場に戻って来た」

垢嘗「ひ、ヒモじゃないわよ。 あ、何そこ、『勝った……』みたいな顔してこっち見んな」

OL1「えー何のことですかー?」

垢嘗「ぐぬぬ」

川男「そんなやり取りしてないで……早く準備終わらせて。 ……置いて行くよ?」

OL1「えっ、すみませーん」パクパク

OL2「私も車で送ってもらって、本当に良いのですか?」

川男「大丈夫。 ……車でパパっと」

OL2「ありがとうございます」ペコ

垢嘗「それじゃ、早めに言っておくわね。 行ってらっしゃーい」

少年「本当に早い……」

川男「ん。 ……行ってきます」

今回の投下ここまでです。
しばらく寝たり作業したら次回投下します。


——学校——

霊能女「珍しく昨日休んだわね」

少年「ええ、すみません」

友人「明日金曜日だぜ? 卒業式だぜ? 休むなんてもったいない」

少年「前は面倒とか言ってましたよね」

友人「しらんなあー」

霊能女「誤魔化した……」


幼馴染「でも、昨日休んだのはもったいないよー。 ホントに」

少年「何かあったのですか?」

霊能女「小僧君がまたやらかしたのよ」

少年「やらかした?」

友人「あいつ昨日、気弱をいじめてたグループをまたメッタメタにしてたんだよ」

幼馴染「『中学になっても気弱君をまだいじめるようなら、また僕が倒すからな』とか言ってたよー」

少年「ああ、小僧君は別の中学に進学でしたね」

幼馴染「うん。 頭いい人ってすごいねー」

霊能女「多分、妖精さんの力を持ったのって、気弱君を助けるためかなー、って思ったのだけど」ボソボソ

少年「確かにそうかもしれませんね」ボソボソ

友人「何ボソボソ話してるんだ?」

霊能女「き、気のせいよ」

幼馴染「気のせいに出来ないレベルだったよ」


幼馴染「あ、そういえば。 子役ちゃんも小僧くんと同じ中学校に行くって」

友人「イチャイチャしやがって……」

霊能女「え、それは前々から分かってたことみたいよ? 偶然みたい」

少年「凄いですね……子役さん」

霊能女「学校と仕事を見事に両立してて、凄いわ」

幼馴染「あの2人がこのまま一緒だったら、小僧くんもテレビに出たりしてー」

友人「ないな」

霊能女「断るでしょうね」

少年「それはない気がします」

幼馴染「えー」

投下終了レス忘れてた!ごめんなさい!
時間が出来たので、今日ゆっくり投下します


————

「「せんせーさよーなら」」

友人「終わったー! 卒業式の準備で早く帰れるっていいな」

同級男D「だな。 どうする? 昼ご飯食べてから、公園でサッカーするか?」

友人「おう。 何人か呼ぼう」

同級男D「分かったー」

友人「少年ー」

少年「はいー?」

友人「今の話聞いたなら、言いたいことは分かるかー?」

少年「大丈夫ですよ」

同級男C「以心伝心だ」


同級男C「ああ、そうだ。 少年ー。 母、じゃなかった、先生が職員室に来てとか言っていたよ」

少年「えっ」

友人「少年、何をやっちゃったんだー?」ニヤニヤ

同級男C「そういうのじゃないみたいだったぞ」

友人「ちえっ、つまらないな」

少年「他人の不幸で喜ばないでくださいよ……」

友人「気をつけまーす」

少年「返事の時点で気をつけていないですよね」

友人「おう」

少年「そこは否定して下さいよ……」

同級男C「それじゃ、職員室に1人ご案内ー」

友人「後で来いよー」

少年「分かりました」


——職員室——

先生「ん、ちゃんと来たわね」

同級男C「ちゃんと連れてきた」

少年「ちゃんと連れられてきました」

先生「よろしい。 それで、少年君。 昨日は何で休んだの?」

少年「え? 連絡があったはずですが」

先生「ええ。 確かに、連絡はあったわよ。 でも、ちょっと聞き取りにくくてねー」

同級男C「歳だよ」

先生「黙りなさい」

少年「そうですか。 昨日休んだのは、引っ越しするためで……」

先生「……!」


先生「おかしいわね。 インフルエンザって聞いたのだけれど…」

少年「あれ、先程、聞き取りにくかったって……」

先生「確かに、聞き取りにくかったわ。 早口だったからね。 でも、全く聞こえなかったわけじゃないわ」

同級男C「これを、鎌をかける、と言う」

先生「いらないことは言わないの」

同級男C「はい」

先生「で、昨日の連絡と今言った理由が一致しないのだけれど……何かあったの?」

少年「特には……」

先生「本当に?」

少年「大したことは……」

同級男C「……」

先生「……そう。 分かった。 特に無いのならいいわ。 今から先生、明日の卒業式の準備するから、2人共帰っていいわよー」

少年「あ、分かりました。 先生、さようなら」ペコ

先生「気をつけて帰りなさいよー」


バタン

同級男C「……母さん、知り合いを当たってみるよ」

先生「ん。 あの人あたりなら知ってるだろうから、話してみて」

同級男C「分かった」

先生「じゃあ、今から準備するから。 確か冷蔵庫に何品かあるから、好きに食べててね」

同級男C「ん」

一区切りします


——深夜・ファミレス——

サングラスA「遅くなったっすー」

サングラスC「遅いですよ先輩。 子供より時間を守れないなんて、駄目な大人だ」

サングラスA「可愛げのない子供っすね」

サングラスB「そんな事言ってないで、さっさと座りな」

サングラスA「子に甘い親! かーっ、こうして社会が悪くなって行くっすね!」ストン

サングラスC「強盗の方が社会の悪化に繋がるよ」

サングラスA「両方当てはまってるじゃないか! 何墓穴掘ってるっすか」

サングラスD「落ち着け。 よし、全員揃ったか」

サングラスB「見ての通り」

サングラスD「では、作戦会議を始める」
サングラスC「わー」


サングラスA「で、今回のターゲットは?」

サングラスD「……ここだ」スッ

サングラスC「お、もう把握してたんだ」

サングラスD「数分あれば特定できる」

サングラスB「仕事速いねー。 私が依頼してちょっとしたら、もう終わってた、と」

サングラスC「流石。 ……で」

サングラスA「地図から見ても分かる位、金持ちなんすね」

サングラスC「敷地広すぎ……」

サングラスB「へえ。 いいじゃない」

サングラスD「時刻は明日23時。 ここから普通通りだ。 車に乗り、面をつける」

サングラスABC「了解」


サングラスD「その前に、寄り道をしていいか?」

サングラスA「? どうしてっすか?」

サングラスB「構わないよ」

サングラスC「勿論」

サングラスA「?」

サングラスC「先輩。 リーダーと、ターゲットから察して」

サングラスA「えーっと。 ……ああ、なるほど」

サングラスD「A。 ……構わないか?」

サングラスA「そっすね。 大丈夫っす。 やっぱり、リーダーも親っすね」

サングラスD「そんな大層な親じゃあないさ。 ガキが誇れる、立派な親じゃあない」

サングラスB「……」

サングラスD「最後に、狙いの金品の場所は……」


————

サングラスD「……以上だ。 もう一度、確認する事は無いな?」

サングラスABC「……」コク

サングラスD「よし、これにて、『おかめ強盗  作戦会議』を終了する」

サングラスA「お疲れ様っすー」

サングラスB「やば、明日仕事やばい」

サングラスC「明日と言うより今日だね。 ふあ、さっさと帰って寝よう……」フアー

サングラスB「じゃ、失礼ー」タッタッタ

サングラスC「母さん、速いよ」タッタッタ


サングラスA「ついでにここで何か食べよう。 リーダーは?」

サングラスD「いや、帰るとする」

サングラスA「了解っす」

タッタッタ

サングラスA「……ファミレスで何も頼まないで帰るのは、営業妨害じゃあないのかな? さて、何食べようか」



————

サングラスD「……お前か」スタスタ

「誰でしょう?」

サングラスD「女死神」

女死神「御名答。 よくお分かりで」

サングラスD「父親はな、何でも知ってるものなんだよ。 お前の同僚に、うちの馬鹿と同じ様な喋り方をする奴がいるのもな」

女死神「それは貴方に限った事ですわ」

サングラスD「かもな。 それで、何用で?」

女死神「……貴方は予定通りに死にますわ」

サングラスD「当然。 そうなっているからな」

女死神「怖くはないのかしら?」

サングラスD「いや? そうでもないな。 流れに身を任せていれば、いずれ、死に辿り着くからな。 怖がるだけ無駄だ」

女死神「はあ……」

サングラスD「で、分かったか? 平行世界の存在」

女死神「あの光景は、平行世界の存在を裏付けるものと判断しかねますが」

サングラスD「そうか。 まあ、いずれ分かる」

女死神「……貴方、本当に何でも知ってますわね。 一体、何故ですの?」

サングラスD「いずれ分かる。 時期は、ガキが大学生のあたりだな」

女死神「ガキ……?」

サングラスD「あのガキだよ」

女死神「……少年君、ですの?」

サングラスD「いずれ分かる」スタスタ



女死神「……いずれ分かるばかり言って……腹立ちますわ」ムカ

今回はここまでです。
次回は今夜または明日の予定です。

日に日に遅くなってますね…ごめんなさい、気をつけます…
忙しい時期が頻繁にあるので、投下できないことがありますが、必ず完結します。

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

明日と言って何日経ってんだと自分に言いたい
今からちまちま投下します

その前に訂正
>>588
サングラスD「時刻は明日23時。

サングラスD「時刻は明後日23時。
です。
なので、>>590は木曜日→金曜日に変わった時刻
訂正した“明後日”は土曜日となります。


——金曜日・小学校体育館——

『一同、起立』

ガタガダガダ…

『只今より、○○年度、●●市立◎◎小学校、卒業証書授与式を行います』

『一同、礼』

スッ

『着席』

ガタガダガダ…

『学校長の言葉』

校長「えー、卒業生の皆さん。 卒業、おめでとう」








————

『卒業証書、授与』

〜♪〜♪

『1組、————』

「はいっ!」

スッ

ペコリ

タン タン タン…

『—————』

「はいっ」

スッ

ペコリ

タン タン タン…


————

『————』

幼馴染「はいっ!」

スッ

幼馴染(卒業証書……もうここで勉強したり遊んだりできないんだ……)ウルッ

ペコリ

タン タン タン…

幼馴染両親「」ウッウッ

幼馴染(あっ、お父さんとお母さんだ! あはっ、泣いてるー)ウルウル


————

『以上、1組、39名』

『2組、————』

「はいっ」

スッ

ペコリ

タン タン タン…


————

『—————』

小僧「はい」

スッ

ペコリ

タン タン タン…

小僧(一昨日に、やっと気弱氏をいじめていたヤツらを裁けたし)

スタスタ

小僧(もう、心残りはないね)

スタスタ

子役「……」コソコソ

小僧(……?)

子役「……」フリフリ

小僧(ああ、手を振ってたのか)フリフリ

子役「!」パァ

小僧(分かりやすい)クス

スタスタ


スタスタ

小僧「?」ビク

ビュウウウー…

「ん、今の風」ヒソヒソ

「ちょっと強かったわねー。 今日は穏やかな天気だし、不思議」ヒソヒソ


小僧(今、勝手に力が……)

小僧(……まあ、大丈夫かな)

スタスタ


————

『————』

少年「はい」

スッ

ペコリ

タン タン タン…

少年(……思えば、色々ありましたね……。 特にここ最近では)

少年(この経験が、いつか活かされればいいですね)


————

『———』

友人「ゔうっす!!」

スッ

ペコ

タン タン タン…

友人(あー卒業だなー。 やっと卒業だー。 部活楽しみだな……)


————

『—————』

霊能女「はい」

スッ

ペコリ

タン タン タン…

霊能女(……緊張する。 うぅ……)

スタ スタ

霊能女(あああ、足がちょっと震える……よく皆平然と歩けるわね……)チラ


少年「……」シーン

幼馴染「ぅぅ……ひっく」グス

友人「ふう」ストン


霊能女(何というか、性格出てるわね)フフッ

霊能女(あ、落ち着いたわ。 勝手だけど、ありがと。 泣いてるのを考えたら、ごめんなさいの方がいいかもしれないけど)

スタスタ

————

『以上、2組、38名』

『計77名』

————

今回の投下はここまでです。
次回は土曜日の予定です。

小学校の卒業式、全然思い出せない……友人みたいな態度で迎えるんじゃなかったと今更後悔
全く進まない!でもやってやんよへっへ

内容に関してですが、
『友人』や『幼馴染』と書くと違和感があったので、『————』としました。
全体的に見て、日に日に分かり難くなっている気が……ごめんなさい。


最後に、読んでくださった皆様、ありがとうございました。


————


——教室——

グスッ ヒグッ エグッ

先生「みんな、卒業おめでとう」

先生「先生はっ、みんなの担任になれたことを誇りに思いますっ!」

「えぐっ、うわぁぁぁぁん……」

「せんせぇー……」

同級女A「ほ、ほらみんな! 泣いてばかりじゃなくて、笑おう? 笑顔で卒業だよ」ウルッ

「でも……」ヒグッ

同級女B「Aちゃんだって泣いてる……でしょ?」エグッ

同級女A「こ、これは目にホコリが入ったから……入ったからよ!」

同級男C「ベタな誤魔化しありがとうございますー」

同級女A「う、うるさい!」ゲシッ

同級男C「いってえ。 暴力反対だ馬鹿!」

同級女A「言葉の暴力反対!」

同級男C「ぐぬぬ」

アハハハ


霊能女「先生!」

先生「何? 霊能女さん」ウルウル

霊能女「皆が元気で卒業出来たのは、先生のおかげです。 せーのっ」

「「「「先生! ありがとうございました!」」」」

先生「」ブワッ

霊能女「はい先生」スッ

先生「こ、これは?」グスグス

霊能女「クラスの皆の寄せ書きです。 大事にしてくださいね!」

先生「みんな、みんな……ありがとう……!」

ウワァァァァァァァン…


——教室——

ガヤガヤ

友人「すげー、卒業アルバム」ペラペラ

同級女A「あっ、これ前に撮った写真じゃない? 授業中の」

同級男C「ぷっ。 友人寝てるじゃないか」

友人「いや、カメラマンが来た時は起きたけど、眠かったんだよ!」

霊能女「折角の機会だったのだから、意地でも起きておけばいいのに……」

友人「う、うっせー! 他の写真はしっかり撮れてるからいいだろ!」

少年「確かに、他はキレイに映ってますね」

友人「だろ?」

同級女B「本当だー……」


同級女B「あ、修学旅行のページ」

少年「見開き1ページですか。 たくさん撮ってますね」

同級女A「正直、ネズミの方に行きたかったなー……」

友人「まだ言ってるよこいつ」

霊能女「何だかんだで楽しんでたけどね」クスッ

同級男C「鍾乳洞のはしゃぎようは凄かったな」ゲラゲラ

同級女A「べ、別にいいじゃないのよ!」

同級女B「石を削って化石を見つける時なんて、アンモナイトの欠片があっただけで、1日中はしゃぎ回ってたよね」

同級女A「」カアアア

友人「あーあったな。 面白かったな、あれ」

霊能女「普段はクールぶっているけど、イベントではテンションが上がるタイプね」

同級女A「うー!」ポカポカ

霊能女「いたたっ」

少年「霊能女」

霊能女「え?」

少年「ブーメラン発言ですよ、それ」

霊能女「えっ」


友人「そういえば、小僧は?」

同級男C「また少年……友人かよ!」

同級女B「多分、子役さん待ち? 一緒にいた時に取材の人が来てたから……」

霊能女「大変ねー」

少年「それは誰に対してですか?」

霊能女「いろいろ、よ」


ペラッ

少年「ああ、これ、以前書いた作文ですね」

友人「お、マジだ」

同級女A「みんないろいろ書いてるわね」

霊能女「まあ、一緒に書いていたし、内容についてこれといった驚きはないわ」

同級女B「忘れた頃に見たら、すごく懐かしく感じるかもねー」

同級男C「そもそも、この文集そのものを忘れたらどうしようもないだろー」

友人「それを言ったらおしまいじゃねえか」


トテトテ

幼馴染「みんな〜」タタッ

気弱「……」タタッ

霊能女「ああ、幼馴染さん」

同級男C「よーっす。 と……」

友人「あ、お前……」

気弱「」ビク

友人「気弱。 小僧は今いないぞー」

気弱「えと……あっ……」

幼馴染「違うよー。 そうじゃなくて……」


少年「……あれ、既視感が……」

霊能女「奇遇ね、私もよ」


友人「最後のページ?」

幼馴染「うん。 最後のページって、空白でしょ?」

同級女B「あ、本当だー」

幼馴染「だからさ、ここにみんなでメッセージを書こうよ!」

同級女A「どういう風に?」

幼馴染「えっと、例えば私の卒業アルバムには、私以外のみんなが私に向けてメッセージを書いてー、って感じで」

少年「なるほど」

霊能女「それなら、本人は帰るまで自分の卒業アルバムを見ない、っていうのはどう?」

幼馴染「それいいね!」

同級男C「ナーイスアイディーア!」

友人「オーナーイスアイディーア!」

同級男C「ナナナナー」
友人「ナナナナー」

「……」

同級男C「イスアイディーアー!」サッ
友人「イスアイディーアー!」サッ

パチン

幼馴染「あははははっ!」

霊能女「また始まった……」ハア

同級女B「ただハイタッチしただけじゃん」クスッ


少年「では、小僧君を呼びますか」

友人「そうだなー。 人数多ければ多いほど面白そうだし」

同級男C「じゃ、少年よろしくなー」

少年「はい、行ってきます」

霊能女「あっ、ちょっと待って。 私も行くわ」

同級女A「おー行ったれ行ったれ!」

同級女B「Aちゃん……それ、おじさん臭い言い方だね」

同級女A「え゛」

気弱「い、いや……だいじょ……ぶだと」

同級女A「気弱くんナーイスフォロー!」ガッシ

気弱「ちょ……」カアア

同級女B「わざわざ抱きつかなくても……」

幼馴染「あはは……。 あっそうだ。 2人共、小僧くんもだけど、」

霊能女「子役さんもでしょ? もちろん呼んでくるわよ。 心配無用よ」

幼馴染「うん。 じゃあよろしくねー」

少年「はい、行ってきます。 すぐに戻りますよ」

きりのいいところでここまで。
次の投下は明日。

最近日に日に忙しくて、ちょみちょみとしか書き込めませんでした。ごめんなさい。
だいぶ終わりが近いのに何故か遠い……。

あと、暖かかったり寒かったりする日が続いているので、体調の管理には十分気を配って下さいね。

では、今回も読んでくださって、ありがとうございました。
レスもありがとうございます。


——校門前広間——

ワイワイガヤガヤ

少年「……だいぶ混雑してますねー」

霊能女「本当に。 見つけられるかしら?」

少年「子役さんに関しては、周辺にテレビ局の人が集まっていると思いますよ」

霊能女「それなら逆に目立って、分かりやすいかもね」

少年「じゃあ、軽く探しますか」

霊能女「ちょっと待って」

少年「どうしました?」

霊能女「手」

少年「手?」

霊能女「手をつないで行けば、はぐれないで済むでしょう?」

少年「肩掴んでも大丈夫でしょうに」

霊能女「肩は歩きにくいわよ。 手の方が、ら、楽だし、スムーズだし……手つなぎたいし」

少年「最後の方、ボソボソとして聞こえませんでしたよ。 とりあえず、はい、手」ニギッ

霊能女「あっ」カアッ

少年「じゃあパパっと見つけてしまいましょー」

霊能女「お、おー!」


少年「えーっと、小僧君ー。 子役さーん」

霊能女「うーん、大人の壁で把握が出来な……」

グイッ

霊能女「あ、あれ? あれれー」

少年「えっ、ちょっ、何で引っ張られて……?

グイグイ

本気眠ので落ちすみません


垢嘗「卒業おめでとーう」グイッ

霊能女「いたたたた……ちょ、離し……」ジタバタ

川男「垢嘗……離してあげなよ」

垢嘗「あー、もういいかな」パッ

霊能女「ふぅ。 あ!貴女は……」

濡女子「霊能女ちゃああああん! 卒業おめでとおおおおん!」ギュッ

霊能女「」ムギュ

濡女子「楽しく小学校生活を終えることが出来るか、本当に心配だったけどん!」

濡女子「あっはあああん、我が子の晴れ舞台を見れて、何年も生きた甲斐があったわあああん!」

霊能父「こらこら、離さないと霊能女が意識を離してしまうよ」

濡女子「うー……」パッ

霊能女「苦しかった……」


霊能女「あ、少年君は!?」ハッ

霊能父「現在進行で手を繋いでいるじゃないか」

霊能女「あ」

少年「」ゼェーハァー

濡女子「うふふ、微笑ましいわねん」

垢嘗「片方はそれどころじゃないけど。 何でかしら?」

川男「垢嘗が強引に引っ張ったからでしょ……人が多いのに……」

霊能父「ぶつかり過ぎた、と」

少年「その通りです……」ゼェーハァー

川男「ほら」

霊能女「ごめんなさい……」ショボン

垢嘗「あー、ごめんね」

少年「だ、大丈夫ですよ」ゼェーハァー


霊能女「それで、何で私たちを捕まえたの?」

濡女子「世間話していたらん、貴女達が視界に入ったからよん」

霊能女「それだけ?」

濡女子「それだけ。 垢嘗こき使って捕まえちゃったん」ウフフ

垢嘗「こき使われてお嬢誘拐しちゃいましたー」ヘラヘラ

霊能女「はあ、ふざけないでよ……。 今急いでるの」

濡女子「あーごめんねごめんね、興奮しないでん。 髪の毛濡れちゃうわよん?」

霊能女「それはお母さんの事でしょ」

濡女子「あ、本当ねー」ビチョ

霊能父「ちょ、濡れてる濡れてる! タオルで吸うぞー」

濡女子「あらありがとん」

川男「今の会話中に……興奮するような要素無かったんだけど」


少年「そうだ、川男さん。 地域の人の祝辞で出てましたね。 とても感動しました。 ありがとうございました」ペコ

川男「そう言ってもらえると……うれしいね」

垢嘗「聞こえのいい言葉を羅列しただけじゃない」

濡女子「分かってないわねん……」ハア

霊能父「まあまあ……」ハハハ…

霊能女「それじゃ、私と少年君はまた行くから」

濡女子「あら残念。 帰ったら質問責めするからねん。 首を洗って待ってるわん」

霊能父「なぜ首を洗う」

濡女子「あとアルバムも見せてよん」

霊能女「はいはい分かったわよ。 帰ったらねー」タッタッ

少年「また手をつな……おっとっと」タッタッ



垢嘗「あー若いわねー。 はあ……」

濡女子「長い間生きてるくせに、処女な垢嘗も、まだまだ若いわよん」

垢嘗「褒めてるの? それとも遠まわしに『売れ残り』って言ってるの?」

濡女子「んー、ノーコメントなのら」ニヤニヤ

垢嘗「ド畜生殴らせろ!」

川男「くだらな……いや低レベルな挑発に乗らないの……」

霊能父「はははっ。 相変わらずの光景だ」

川男「暢気な事を言っているのも……相変わらずで」

霊能父「はははっ。 違いないな」


霊能女「人が多くて、見通しが悪いわね」キョロキョロ

少年「校門前はどうですか?」

霊能女「そういえば行ってなかったわ。 行きましょ」

少年「それでは。 僕が先に行きますので、ちゃんとついて来て下さいね」

霊能女「いや、手繋いでるからついて来れるわよ」フフッ

少年「ですね」アハハ


——校門前——

「どうもありがとうございましたー。 子役ちゃん、夕方頃に流れると思うから、楽しみにしててね」ペコ

子役「ありがとうございましたー」ペコ


少年「あ、いました」

霊能女「本当? ん、本当だ」

少年「ああ、近くに小僧君もいますね」

霊能女「ナイスね」

少年「ちょっと呼んでみましょう。 おーい」

クルッ フリフリ

霊能女「気づいたわ。 行きましょ」フリフリ

タッタッ

ここで切ります。
次回は水曜日の予定です。

確かにある程度纏まってから投下の方がいいですね……。読みにくいですし
以後、書きためて投下していきます。

読んで下さって、ありがとうございました。


少年「小僧君ー。 子役さーん」タッタッ

子役「少年君に、霊能女さんだ」

小僧「お二方、どうしたんだい?」

霊能女「えっと、教室のほうで、幼馴染さんの提案でちょっとやろうってことでね……」

子役「何をどうするのか全く分からないよ」

少年「ちゃんと説明しますね。 卒業アルバムの最後のページは空白になっていて、好きに書けるようなんです」

小僧「ああ、今袋に入れて……あったあった」ガサゴソ

子役「これの最後のページ?」ソソッ

小僧「えーっと……」ペラペラ

霊能女(うわっ、2人の距離が近い!近すぎる!)キャー

小僧「これ?」

少年「それです。 霊能女、どうしました?」

霊能女「あれ。 ちょっとおかしかった?」

子役「どれ、私が診断しよーではないかー」

小僧「いや、止めよう。 面倒になっちゃいそうだから」

霊能女「ていうか、何で医者みたいに?」

子役「今度あるドラマに影響されてまーす。 私も出るから見てね!」イエイ

少年「宣伝ですか」


小僧「で、最後のページ開いてどうするのかい?」

少年「ここに自分以外の参加者にメッセージを書いてもらいます」

子役「あ、分かった! それ書いてもらって、帰ってから見ましょー、って感じだよね?」

霊能女「あら、その通りよ」

小僧「なるほど。 面白そうだね」

子役「それを今から?」

少年「はい。 そのメンバーに2人も、という訳です」

子役「おっけい! で、その会場は?」

霊能女「教室よ」

子役「よーしっ! 善は急げだし、小僧君、ダッシュだよ!」ダダッ

小僧「あっ、速い……。 それじゃ、先に行くよ。 子役を見失いたくないから」ダダッ


霊能女「……いちゃいちゃして」

少年「すごいですね」

霊能女「いいなぁ」ボソボソ

少年「何か言いました?」

霊能女「え? いいいや、な何でもない……」

少年「では戻りましょうか。 ある程度は人も減りましたし……」

ギュッ

少年「……えと、別に手はもう必要では……」

霊能女「気分」

少年「はあ……。 いいですけど。 では戻りますか」

霊能女「ええ」

少量ですがここまで。
祝日なので次回投下は今日にします。

子役の登場シーンを見直して叫びたくなりました。
あああああああああああ

今回も見てくださった皆様、ありがとうございました。


——教室——

少年「只今戻りましたー」

霊能女「ごめんなさい。 帰りにまた親に捕まって……」

幼馴染「遅ーい。 でもこの2人を連れてきて、ありがとう!」

友人「よーし。 じゃあ、始めるか?」

幼馴染「そうだね。 えーっと、今いるのは10人、だよね?」

同級女A「10人でする? 他に呼ぶ?」

友人「いやいいだろ。 書く数多くなると大変だしな」

同級男C「同じくそう思う」

幼馴染「よーし、始めよー。 おーい、そこのみんな、始めるよー」

子役「はいはーい」


————

幼馴染「ここが私で、そこが気弱くん。 その右は同級女Bちゃんね」

同級女B「分かったよー」

友人「よし、これでいいかな。 ちゃんとそれぞれの机にアルバムをセットしたかー?」

子役「ひーふーみー……うん。 ちゃんとセットしてあるよ」

幼馴染「それじゃあ、位置についてー」

小僧「位置につかなくてもいいでしょ……競争じゃないんだから」

同級男C「小僧よー。 人生はいつだって競争なんだぜー? 少し遅ければ、お金を先取りされることだってあるんだよ」

同級女A「12歳が人生語り出した……」

少年「例えも分かりにくいですね」

同級男C「何でそんなに毒吐くの? そんな子に育てた覚えはない!」

同級女A「誰があんたの子だよ」


幼馴染「始めるよー?」

少年「C君。 大人しくしましょう」

同級男C「大丈夫だ、うん」

幼馴染「よーい……」

……

幼馴染「どんっ」パンッ

霊能女「わー」テクテク

子役「わー」テクテク

気弱「……わー……」テクテク

少年「え、何ですかこの気の抜けた一体感」


————

友人「おいCの奴、同級女Aのアルバムに何書いてるんだよー」

同級男C「まだ書いてないから! 誤解を招く発言は止めてくれよ」

同級女A「ちょっとー、気になるじゃん」

同級男C「いやだからまだ書いてないって。 変にハードル上がったじゃないか!」

————

気弱「……」カキカキ

幼馴染「気弱くんは何て書いてるのー?」

気弱「!」ビクッ

幼馴染「あ、ごめんね? 集中してたのに」

気弱「……だ、大丈夫。 小僧君に……ありがとう……って」ボソボソ

幼馴染「そっか。 小僧くん嬉しいだろうねー。 感謝って、言う方も言われる方も嬉しくなるからさ」

気弱「う、うん……」

幼馴染「へっへー。 気弱くん優しいねっ」

気弱「へ? あ……りがと……」


————

霊能女「……」

小僧「どうしたのかい? 子役のところで」

霊能女「あ、いや。 小僧君、すごいこと書いてるなーって……」

小僧「なっ! ちょ、何見てるのさ!」アタフタ

霊能女「書いてたら視界に入ったのよ! どうしようもないわよ!」

小僧「よし、ならば内密に……」

霊能女「別にいいじゃない。 彼女、後で見るんだから」

小僧「子役に見られるのはいいけど、それをバラされるのはよくないから。 恥ずかしくてヤバいから」

霊能女「……分かったわ。 多分、内密にするわ」

小僧「多分ってなんだ。 せめて極力にしてくれよ」


————

少年「うむむ……」

同級女B「ちょっと、少年君後が待ってるよ……」

子役「待ってまーす」

少年「ああ、すみません……。 ちょっと退きますね」ソソッ

子役「いや、まあ、横からでも書けるけどね」

同級女B「そもそもこれって、霊能女さんのアルバムだよね。 ぱぱーっと書けると思うけど……? いつも一緒にいるから」

少年「かえって書けないんですよ。 いつも一緒にいると、逆に文字で伝えると恥ずかしいですし、改めて伝える事がなくて、筆を起こすのが……」

子役(もうあなた達付き合っちゃいなよ……)


同級女B「それなら一言、ありがとう、とかはどうかな?」

少年「いや、それは薄情と思いますけど」

同級女B「んー、じゃあ、手紙書くみたいに色々書くのはどう?」

少年「そこまでスラスラ書けません……。 ちょっと気恥ずかしくて……」

子役「あーもーしゃらくさい! ぐちぐち言うなら無心でありのまま書け!」

少年「は、はい!」

カキカキ

同級女B「そういえば、子役ちゃん。 小僧くんの分は書いた?」

子役「え、ま、まだ、です。 最後に……」

同級女B「何で最後にしたの?」

子役「え、えと、実は……」

同級女B「実は?」

子役「あまりにも書きたい事伝えたい事が多すぎて、逆に何を選別して書けばいいのか分からないの……」ヒソヒソ

同級女B「なるほど。 ブーメラン発言とノロケ発言のダブルパンチだね。 すごくいらっと来た」

子役「と、どうすればいいの……かな?」

同級女B「とりあえずさっさと、無心でありのまま書けばいいと思うよ」ニコッ

子役「笑ってない、目が笑ってないよ」ビクビク


————

幼馴染「みんな書いた?」

友人「みたいだな」

幼馴染「りょうかい! 急いで閉じるー!」ダダッ

パパパパパッ

子役「は、走りながらアルバムを閉じた……!?」

同級女A「迫真の解説ありがとう」

少年「もうこれは持って行ってもいいですか?」

幼馴染「うん。 終わったからねー」

同級女B「さすがにおなかが空いてきた……」

小僧「紅白饅頭食べないのかい?」

同級女B「それは家に帰ってから。 ……ねえ、最後に写真撮っていこうよ。 校門で」

幼馴染「最後の思い出にいいねー。 賛成! みんなは?」

「賛成ー」

子役「決まりだね。 よし行こう!」タタッ

気弱「……」タタッ



少年「最後、ですか……」

霊能女「小学校最後ね。 何か未練でもあるの?」

少年「いえ……。 霊能女、僕は有意義な生活を送れたのでしょうか。 誰かを救えたのでしょうか」

霊能女「知らないわよ、そんなの。 私は貴方じゃないから。 でも、私は貴方に救われた。 貴方と、みんなといて有意義だったわ」

少年「そう……ですか」

霊能女「気負わないの。 ほら、行きましょ」

少年「……はい!」

タッタッタッ

今回はここまでです。遅れてすみませんでした……。
次回投下は、明日は恐らく無理なので、火曜日に。

22:30から23:30は混雑する時間帯なのでしょうか?アクセス出来なかったのですが……。

次回は久しぶりに地の文メインの予定です。いつも以上に痛々しく進行していくと思われます。

今回も読んで下さった皆様、ありがとうございました。


「撮るわねーん」

霊能女のおばさんはそう言って、新品のようなデジタルカメラを構える。
俺の右には少年が、左には同級男Cが並んで立っている。
少年を挟んで向こう側には、小僧と気弱がいる。
また、前には女子達が屈んでいて、いつ撮られても大丈夫なように、目線をカメラに合わせて待っている。
皆、いつもと比べて表情が晴れやかだ。

はい、ポーズ!と聞こえた瞬間に、俺を含めた10人は各々好きなポーズをとった。
俺はピースだと面白みに欠けると思い、右手を正面に突き出すという、シンプルかつ格好いいポーズにした。

シャッター音が鳴り、無事に撮れたことを確認した時、隣のCの野郎が、
「あの構えをカッコイイと思うとか、まだまだ幼稚だなあ」
と小さく呟いたのを、俺は聞き逃さない。


幼馴染「今撮った写真、見せてもらえますかー?」

濡女子「いいわよん。 ほらこれ、ちゃんと撮れてるわよねん?」

同級女A「あ、見る見る。 おおー、きれいに撮れてる」

同級女B「私も見るー」

同級男C「横からどれどれ……あー、友人このポーズはないな」

友人「何だと!? いいじゃねーかこれ。 さっきも言ってたけど、これのどこが幼稚なんだよ」

同級男C「これアレだろ。 あの特撮アニメのポーズじゃん」

友人「お前は何も分かっていない。 あれを馬鹿にするのは中途半端にしか知らない奴だ! すっげーぞ、かっけーんだぞ!」ゲシッ

同級男C「あーあーすみませんー。 だから蹴るなお願い」


その後、少し離れた所で談笑していた保護者勢も来て、何枚も何枚も撮る羽目になった。
卒業式は子供の晴れ舞台なので、記念として形に残したいのは分かる。 母さんもそう言っていたし。

「写真もうちょっと撮らせてー」
「それじゃあ、小僧君と子役ちゃん、一緒に撮るわよー」

でもそろそろ終わって欲しい。 昼飯も未だに食べていない上、もう小さい針が2という数字にピントを合わせる時間だ。
子供勢は疲れの色が見え始めている一方、大人勢はまだまだやる気に満ちている。
我が子の大事な式のことを、何としても形に残しておきたいのだろう。 始めはまだ良かったが、今はしんどい。
あと、俺は昼飯を食べ次第、同級男D達とサッカーをする約束もしている。
熱を上げ続けているこの状況で、どう帰ろうか……。 空気を読めず、妙によそよそしい感じになるのは御免だ。

そんな風に迷っていると、
「ねえ、そろそろお腹すいたー」
「あらそうねえ。 もうこんな時間なの。 お昼ご飯が遅くなっちゃったわねえ。 すみません、私たちはこれで……」
という幼馴染親子のファインプレー。
これを機に、これで解散、ということになった。 わがままな言い方だけれど、助かった。

こうして、俺達は少し曖昧な感じで小学校から旅立っていった。
旅立ったと言うより、下校したの方が正しい言い方のように思える。

今回はここまでです。書きためる時間がない……
休日なら何とか出来るかなと思います。

地の文形式より台本形式の方がやりやすいのですが、次回も地の文入ります。

今回も読んでくださってありがとうございました。
今回少なかった分、出来るだけ早く投下できるよう、頑張ります。


皆と別れ、一人歩き慣れた道を進む。
川男さん達とは別々に帰ることにしたのは、単なる気まぐれだった。
ただ、歩いている途中、
「あの家に、まだ誰も居ないのだろうか」
とふと思い、元々の自宅の様子を見ることにした。

父は唐突に出ていって、消えた。
熱せられた水の粒のように、あっという間に。
母は引っ越しという名目で、家を捨て、僕を置いて、消えた。
コンロの炎のように、簡単に。

こんな状況で誰かがいるとは考えられないが、ありきたりなドラマのように、何事もなかったかのように二人が喧嘩でもしているのではと甘い期待を持っていた。

まだまだ子供だな、と思いながら、足を進めていった。


真っ白だった。
何も無かった。
嫌々ながらも描き続けた画用紙は、どうやら誰かに捨てられたらしい。
目の前に映るは、誰も手を付けていない、汚れさえ付いていない白の画用紙。

僕は今日、行き慣れた小学校を卒業した。

僕は今日、住み慣れた我が家を失った。


ガチャ

垢嘗「ん?」

少年「……」

垢嘗「少年じゃん。 どうしたのよ。 とりあえず、上がりなさい」

少年「……すみません」

パタパタ


垢嘗「さて、どうしてそんなしけた顔をしているか話しなさい。 しけりすぎて不味そうよ」

少年「……帰り際、元々住んでいた家に行ったのです」

垢嘗「ふむ。 それで? 誰も居ないだろうに」

少年「……誰も居ないどころか、家さえ無くなっていました」

垢嘗「ふむふむ……。 ……え? 家が無い?」

少年「はい」

垢嘗「文字通り?」

少年「文字通り」

垢嘗「……」


垢嘗「……ごめんね、こういう時にどう言えばいいか分からなくて」

少年「いいですよ……変に励まされても、こちらが逆に気を使ってしまいますし」

垢嘗「……川男も言っていたけど。 あんたはここに住みなさい」

少年「……」

垢嘗「あと、気を使わない。 実の両親ではないけど、私たちを家族だと思って接して」

少年「……そう簡単には割り切れませんよ」

垢嘗「……ごめん」

少年「……」

垢嘗「……」

少年「……」ソソーッ

垢嘗「? 何を……」

少年「不束者ですが……よろしくお願い致します」

垢嘗「か、そんないきなり畏まらなくていいから!」アタフタ

少年「ですが……」

垢嘗「と、とにかく! これからよろしくね」

少年「はい。 よろしくお願いします!」


少年「ところで、川男さんはどちらに?」

垢嘗「今買い物行ってるわよ」

少年「あ、そうなのですか」

垢嘗「うん。 ところで、そのアルバムは何?」

少年「これですか? これは卒業アルバムですよ」

垢嘗「ほう。 見せてよ」

少年「駄目です。 僕もまだ見ません」

垢嘗「どうしてよ」ブー


少年「元々していた約束に加えて、自分ルールです」

垢嘗「どういうことよ」

少年「約束は、“家に帰るまで見ない”です」

垢嘗「もしかして、家が無いからずっと見ないつもりじゃ……」

少年「違いますよ。 それに、ここが僕の家でしょう?」

垢嘗「……そうよね。 そうそう! ここが我が家! でも、何で見ないの?」

少年「そこで自分ルールです。 “明日まで見ない”と決めました」

垢嘗「なんと! どケチ!」

少年「いやいや……。 これ僕のですから、権限は僕にあります。 垢嘗さんにどケチと言われましても……」

垢嘗「ぐぬぬ」


少年「明日見るときに呼びますから……」

垢嘗「我慢ならない! うおー、見せろー!」ガバッ

少年「ちょ、危ないですって!」


川男「……ただいまー」ガチャ


少年「抱きついたって無駄ですー!」

垢嘗「あーっ! 当ててんのよ、当ててんのよ!」グイグイ

少年「何やってるんですかー!」

川男「……うるさいなあ……。 ……何やってんの」

少年「ちょ、川男、さん、助け」

垢嘗「私がアルバム一番乗りよ! にゃあああっ!」ギュー

川男「……垢嘗のパソコン、処分しようかな……」

垢嘗「あ、それは止めて。 ほんと止めて」パッ

少年「助かっ……」ガクッ

川男「あ、落ちた」


川男「……垢嘗、理由は後で、食事の時に聞くよ……」

垢嘗「……はい」

垢嘗(やばっ、微妙に怒ってるよ)ビクビク

川男「……今から料理するから……言い訳するならちゃんとしたものを用意するんだよ?……」

垢嘗「はい……。 少年にもちゃんと謝ります。 だからお願い許してパソコンだけは止めて」ビクビク

川男「……場合によるよ」

垢嘗「ちゃんと手伝います!」

川男「……助かるよ。 じゃあどんどんこき使うから……」

垢嘗「はい、喜んで!」アセアセ

垢嘗(アルバムで少年の赤裸々告白を聞いてニヤニヤするのは明日にお預けね……。 我慢……)

今回の投下はここまでです。
次回は出来れば水曜日に。

お久しぶりで、遅くなりました。すみませんでした。
もしもしもネット接続も瀕死で時間もなかった……。危うくHTMLオチ

年が変わるまでに、出来るだけ多く投下出来ればと。

最後に、久しぶりながらも読んで下さった皆様、ありがとうございました。


————————————————————


——川男宅・部屋——

少年(何で僕は、ここで寝ているのでしょうか)

少年(二人の好意には感謝してもしきれないほどですが、何かが間違っていなければ……)

少年(皆のように、家族と一緒に成長していけた、はず、ですよね)

少年(……)


少年「どこから、何が間違っていたのでしょうか……」ボソ

少年「……」

少年「……あの人達の仲を良くしていけなかったから?」ボソボソ

少年「人を救うなんて決意をしたから? 中途半端な決意だったから?」ボソボソ

少年「もっと皆と親しくなれなかったから? 僕は見放されるような子供だったから?」グスッ

少年(何で……、何で?)

少年(別にあの人達がいようといなくとも、関係ないはずだったじゃないですか)

少年(別にあの人達が喧嘩しようが何しようが、どうでもいいって思ってたはずだったじゃないですか……)


少年(……でも、幼馴染みたいに、本当の家族として、楽しくしていきたかったですよ……)



————————————————————


——川男宅・居間——

バタン

垢嘗「少年、寝てたかしら」

川男「……ん。 ……もう、寝てたよ……」

垢嘗「……それにしても、大丈夫かねぇ。 なんというか、色々と」

川男「……分からない。 ……多分、心の中に……溜め込んでいると思う」

垢嘗「勝手に自分なりの答えを出すと思っているけどねー。 私達が何と言おうと、あの子はその意見に納得しないだろうし」

川男「……」

垢嘗「酷だけど、あの子自身が乗り越えないといけない壁だと思ってるわ。 あ、立ってるついでにお茶よろしく」

川男「……はいはい……」スタスタ

垢嘗「……」

垢嘗「……あ゛あ゛ー」グテー


川男「……どうしたのさ、台に突っ伏して……」

垢嘗「いやー、正直分かんないわ。 人間のよくわからない微妙な感情なんて、妖怪の私にわかる訳がないわよ」

川男「……今の垢嘗の言いたいことも……ちょっと分かりにくかったよ」

垢嘗「気にしないで」

川男「……はいはい」

垢嘗「あー……人間の生活に適応しているとか、人間くさいとか言っても、結局妖怪は妖怪なのよねー」

川男「……そうだね。 ……人間の生活に適応しているとは 到 底 思えないけど……その通りだ」

垢嘗「何故到底を強調したのよ。 まあいいわ。 この話はお手上げ。 さっさと寝て、明日アルバムでいじるに尽きるわ」スクッ

川男「……変なこと言ったら駄目だからね」

垢嘗「大丈夫に決まってるわよ」

川男「……」

垢嘗「それじゃ、おやすみー」

バッチーン!


川男「……もうちょっと、優しく扉を閉めて欲しいね」



————————————————————


——土曜日・朝——

ジュワァー シャッシャッ

川男「……朝食、出来た。 ……皆を起こそう」


——川男宅・部屋——

川男「……」スッ

カチッ

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』

少年「うわああっ!」ビクゥゥゥッ!!

川男「おお、強力……。 ……おはよう」

少年「あ、おはようございます。 って、今のは何ですか!? びっくりしましたよ!」

川男「……これ、会社の同僚に貰った目覚まし時計。 ……中々面白そうだったから……」

少年「奇声で起きるって、何か嫌ですね」

川男「……朝食出来たから……冷めないうちに食べてね」

少年「ああ、ありがとうございます」


——川男宅・垢嘗の部屋——

コンコン

川男「……ノック二回したから入るね」ガチャ

川男(ここに置いて……と)スッ

カチッ

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』

垢嘗「ふにゃああああああっ!?」ビクゥゥゥッ!!

川男「……二人とも、リアクションいいなあ……。 ……おはよう」

垢嘗「うっ、ううっ……」ビクビク

川男「……あれ。 ……おはよう?」

垢嘗「バカあああっ!!」ガバッ

川男(……怒って布団にこもっちゃった)


川男「……ごめんね?」

垢嘗「兄ちゃんの馬鹿兄ちゃんの馬鹿兄ちゃんの馬鹿……」グスッ ブツブツ

川男「……駄目だこれ……。 ……朝食出来てるから、冷めないうちにね……」

垢嘗「うーっ……」グスッ

川男「……ラジオ体操はもうしちゃったから……鈍りたくないなら、自分ですること。 ……いい?」

垢嘗「……」グスッ

川男(……今度は別の目覚まし時計にしよう……)

今回はここまでです。
次回は出来れば土日中に投下しようと思います。

何となく一日過ごしていると、自分の周りの至るところにネタがあるのは面白いです。
このSSにも時々そういうのを入れてたりするのですが、入りきらないことが多々あります。
でもそれで単独SS書こうとしたらこのSSが疎かになりそうで怖いです。
ていうか書く時間が欲しいです。頑張ります。

最後に、読んでくたさった皆様、ありがとうございました。
自分の分までクリスマスを 楽 し ん で くださいね。


————————————

少年「……あれ、もうお昼ですか」

垢嘗「アルバム暴露大会よ!」

少年「あー……、分かりました。 今部屋から取ってきますね」

垢嘗「逃げようと思わないことね」

少年「そんなことしませんよ。 待っててください」

スタスタ

垢嘗「……そういえば川男、出勤かー。 昼ご飯、作ってくれてるかしら」

垢嘗「あらやだ何もない。 やっば……」アセ


少年「はい、持ってきました」

垢嘗「大儀である」

少年「何言っているのですか……。 ではまず最初のページからですね」ペラ

垢嘗「お、これは……」


少年「ああ、これは入学式の写真ですね」

垢嘗「皆ちっこいわね」

少年「それはそうですよ」

垢嘗「さて、どれが少年かなー? これかしら?」

少年「違いますよ」

垢嘗「これ?」

少年「それも違います。 ノーヒントで頑張ってくださいねー」

垢嘗「何だと」


————————————

垢嘗「うわー、どれなのよー。 少年っぽい面影の子いないのだけれど」グデー

少年「時間、かかっていますね……。 面影あるはずなのですが」

垢嘗「テレフォン使用許可を……」

少年「……まあいいですかね。 許可します」

垢嘗「やった!」スタスタ

少年「……誰に電話するのでしょうか」


————————————

濡女子「おじゃまするわよーん」

垢嘗「どうぞどうぞ上がってー」

霊能女「どうも、少年君」

少年「……な、なるほど」

霊能女「?」

少年「いえ、何でもないですよ」


垢嘗「それじゃ、濡女子さんはこちらでー……」

濡女子「家に上げてすぐキッチンに誘導。 ……事情は察したわん。 とりあえず、自分で作れるようになりなさいねん」

垢嘗「はい……」

濡女子「まあいいわん。 今は向こうへ行って、子供たちと遊んでいなさいねん」

垢嘗「はいはいー、ではではー」

濡女子「切り替え早いわねん……」



霊能女「それで、本題は?」

少年「ああ、垢嘗さんにノーヒントのクイズを出していて、垢嘗さんが一向に分からず満身創痍という有様で……」

霊能女「どんな?」

少年「入学時の僕はどれか、という問題ですよ」

垢嘗「そう! そういうことで、助太刀頼むわね」

霊能女「……答え、教えてあげなかったの?」

少年「言われてませんし」

霊能女「あー、そう……。 まあいいわ。 垢嘗さん、これが少年君よ」

垢嘗「は?」

少年「正解です」

垢嘗「は? は? 速くね? 驚きで昨晩の垢を戻しそうだわ」

霊能女「そんなこと報告しなくていいわよ……」


垢嘗「それにしても……へぇー、これが」

少年「はい、それが当時の僕です」

垢嘗「言われてみれば……あーなるほど」

霊能女「案外ぱっと見で分かったけど……」

垢嘗「さすがお嬢。 少年の正妻」

霊能女「な、なあっ!? ぶ、ふふ、ふざけないでよー!」カアッ

垢嘗「オーオーナイスリアクション」ブフッ

霊能女「ああああーもう!にゃあああああ!」ブンブン

少年「何言ってるのですか……」ベチン

垢嘗「痛ったあああ! ちょ、アルバムの角は冗談じゃないわよ!」ジンジン

霊能女「少年君! それ貸して! だぁあああっ!」ベキッ

垢嘗「づああああああああっ!」ズギャァァン

今回の投下はここまでです。
次回は年明け、5日までに投下出来れば。

全然投下できず、すみませんでした。
こんなペースで終わるのか本当に不安です。
天邪鬼の仕業なんだこれはきっと……。
とりあえず、楽しくやっとけば何とかなるかなと思いましたとさ。

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。
良いお年を。


少年「歓迎遠足、運動会、修学旅行……」

霊能女「よくまあ、写真が残っているわね」

少年「凄いですね」

霊能女「私のところなんて、アルバムに保管しても、そのアルバム自体を無くすから……」

垢嘗「元も子もない。 あと、びちゃびちゃになったりとか?」ヒリヒリ

濡女子「何か言ったかしらん?」

垢嘗「いえ何も」

少年(図星ですか)

濡女子「しょうがないわよん。 そういう性質なのよん、私。 嫌ぁね、ホント」

垢嘗「自らのアイデンティティ否定してるよ……」

霊能女「前も言ってた、というより、いつも言ってるわ。 普段の状態なら制御出来てるのに、いちいちリアクション大きいのよ」

濡女子「親をいじめないで欲しいわん」


垢嘗「へぇ、授業風景の写真もあるの」

霊能女「って言っても、これは皆意識しているから真面目に見えるのよ。 実際はうるさいの何の……」

少年「否定はしません」

垢嘗「そんなものかしらね」

濡女子「え? 授業参観の時はん?」

霊能女「同じよ。 いい子ぶっちゃうのよね」

垢嘗「ふーん」


濡女子「もうちょっとしたらできるから、待っててねーん」

垢嘗「はいはーい」

少年「それなら一旦片付けましょうか」

霊能女「待って。 天然ものの心霊写真があるわ、これ」

垢嘗「よく判ったわね。 まあ、当然かしらね、霊を見れるんだし」

少年「どれどれ……これ、ですか?」

霊能女「そう、これ。 いつも見るあの幽霊ね」

垢嘗「いつもいるって……なんじゃそりゃ」

霊能女「ご丁寧にピースサインして……」ハァ

垢嘗「愉快な幽霊ですこと。 ってこれ、よく見かける幽霊だし……」

少年「目立ちたがり屋ですね」アハハ


「いただきます」

濡女子「今度からは自分で作りなさいよん? そんな何度も来れるわけじゃないんだからん」

垢嘗「気をつけまーすよー」

濡女子「ハァ……」

少年(僕も作れるようにしましょう……)

霊能女「……色々作れるようになりたいわ」

濡女子「手伝っている間に覚えると思うわよん。 大丈夫大丈夫」フフッ

垢嘗「へーなるほど」

濡女子(こっちはあまり大丈夫とは思えないわん……)


————

垢嘗「ありがとうねー、ワガママに付き合わせちゃって」

濡女子「全くよん。 でも、楽しかったしいいわよん」

垢嘗「お嬢の照れっぷりというか、恥ずかしっぷりは……」

霊能女「あああああ! 言わないで!」

垢嘗「別に本人の前で寄せ書きを見ようが構わないでしょうに」

少年「まあまあ……後で見ることにしますよ」

霊能女「少年君! 言ったら駄目だから! そこの人にだけは言わないでー!」

垢嘗「そこまで言わなくてもいいじゃないのよ……」

濡女子「まあ、確かにそうねん。 コイツがこれを知ったら、ずっとうちの子をからかい続けそうだしねん」

垢嘗「な……何ぃ……? 尚更気になる」

霊能女「じゃ、じゃあ帰るね! 少年君、じゃあね」

少年「はい、さよなら」


垢嘗「よし、早速見ようか」

少年「その前に掃除などやりましょう」

垢嘗「あ、ぅ、うぐぅ……はい、やりますよー……」

少年「そろそろ川男さんが帰ってくるのでしょう? それに……」

垢嘗「あー言いたいことは分かったから。 うー、でも中身、気になるなあ」

今回は中途半端ですがここまでです。
二月末までに1〜2回出来ればと

今回もありがとうございました。

うわあっという間に3月
一度も投下できず、申し訳ありません。
今から投下します。


————

川男「……ただいま」

垢嘗「おかえりおかえりー。 ご飯にする? お風呂にする? それとも」

川男「……それ全部……僕がすることだよね……。 ……垢嘗、何でもいいから……何かできるようになりなよ」

垢嘗「ふふふ……。 ところがどっこい、ご飯は出来ているのだよ!」

川男「は? ……すみません、家を間違えたようで……失礼します」

垢嘗「ホント失礼ね」

川男「いやいや、そんなことがあるわけがない。 何物だ」

垢嘗「私以外の何者でもないわよ、ふざけんな」

川男「そんな馬鹿な、そんな馬鹿な……」

垢嘗「落ち着きなさいよ。 黒い方みたいになってるわよ」

川男「おっと……危ない……」


——川男宅・居間——

少年「ああ、川男さん。 おかえりなさい」

川男「……うん、ただいま。 ……本当だ……夕飯が出来ている……」

垢嘗「ふふん、どうよ。 ほら、さっさと着替えて食べましょう」

川男「……う、うん」


————

川男「……それで、これは何があったの?」

垢嘗「それはもちろん、私が本気出して……」

少年「昼間に霊能女と霊能女のお母さんを呼びまして、その際に作ってもらったんです」

垢嘗「はぅあ!」

少年「昼だけでなく、結局夜の分まで作ってもらいまして……申し訳ないです」

川男「……なるほど……今度、濡女子さんにお礼を言わないとね……。 ……で、垢嘗?」

垢嘗「あ、あははー……あー味噌汁おいしいなー」ヘラヘラ

川男「……自信満々に嘘をついて……平気で味噌汁啜ってる口はどの口だ……!」ガシッ

垢嘗「ふいいいい! いはいいはいほっへいはい!」アウアウ



少年「嘘って……。 あ、でも垢嘗さん、夕食作り手伝ってましたよ。 昼は任せっきりでしたけど」

川男「……」パッ

垢嘗「ふはっ。 痛い……」

少年「踏んだり蹴ったりですね。 そして、口は禍の門ですね」

垢嘗「殴られて鷲掴みされてもう散々よ。 あれ、肉……」

少年「大変美味しゅうございました」モグモグ

垢嘗「な、何……だと……?」



川男「……ああそうだ。 ……少年君、今日の夜……22時に公園前って……黒が」

少年「川男黒さんが、ですか?」

川男「……うん」

垢嘗「珍しいわね。 黒い方から少年って。 ていうか、接点あったのね」

少年「まあ、一応……」

川男「……夜遅いし、あまり行かせたくはないけど……」

垢嘗「私は夜道に慣れてるから平気だけど。 ま、確かに不安ね」

少年「いえ、大丈夫ですよ。 僕も慣れていますし」

垢嘗「こら」


——公園前——

少年「……ここで、いいのでしょうか?」

少年(川男黒さんが見当たりませんが……)

少年「……ちょっと、早かった……のでしょうか」


ブウゥゥゥゥ……ン


少年「……車、ですかね。 川男黒さんでしょうか」


少年「……違ったようですね。 そして、遅いですね」

少年「もしかしたら反対側の入口とか、ですかね。 見に行ってみますか」クルッ


「どうも」ガバッ


少年「!! ンーー、ンーーーー!」モガモガ

「ちょ、そっち持って」

「はいはい。 せっかく被せた袋、取れないようにしてくださいっすよ」

「大丈夫大丈夫。 さっさと連れて行くよ」

少年(な、何が、何が!? 見えない! え、え?)


————

ガバッ

少年「」プハッ

「無事誘拐成功」

「あー疲れた。 疲れたっす」

「お疲れ様、二人とも」

「……」

少年「あ……え、え? ここは……」

「……車の中だ」

少年「……! あ、貴方たちは、誰なんですか」ビクッ

「何を言ってるのさ。 僕達の顔を見れば、分かるでしょ」



お面A「どうも、巷で有名な、おかめ強盗っす。 今回は趣向を変えて、お前を盗みに来たっすよ」


少年「お……おかめ、強盗……」

お面A「どうもっす。 いきなり連れ去られた気分はいかがっすか?」

少年「は、え……あ……」

お面B「あっはは。 流石に驚きすぎて何を言えばいいか分かってないわねえ」

お面C「パニック起こしてるね。 落ち着くまで待っておこう」

お面A「おー優しい。 その間、勝手に自己紹介でもするっすか?」

お面B「意味わかんないわ馬鹿」

お面A「いいじゃないっすかー。 じゃあまず、マイネームイズお面A」

お面A「愉快な強盗団の先鋒、素顔はおしゃべり好きのお面Aでございます。 以後お見知りおきを」

お面B「ついて行けないからフォローはしないわ。 散らかした発言はちゃんと片付けなさいよ」

お面C「同じく」

お面A「ぐへっ」



お面B「私はお面B。 そこのチビの母親ね」

お面C「チビ言うな母さん。 あ、そこのチビじゃないからね、お面Cだからね」

少年「は、はあ……」

お面C「駄目だ、ついて行けてない。 どうしてくれるんですか先輩」

お面A「知らないっすよ。 ガム食べてるから関係ないっす」クチャクチャ

お面B「ガムを今すぐ吐き出せ。 無関係装うんじゃないよ」

お面A「そこ拾ってくるっすか。 本当に都合のいい女っすね」

お面B「後で公園で決闘するわよ。 アンタのその腐れた口を銃弾でブチ抜くわよ」

お面A「あらやだ怖い。 助けてリーダー! ああ、この人がリーダーっす」

お面C「はいこれで自己紹介終わり。 お疲れさまでしたー」

お面D「……」ハァ…

少年「……」


少年「あ、貴方たちは……何故僕を……」

お面A「『誘拐したのか?』っすか。 勿論、人質に……」

少年「!」ビクッ

お面B「ってのは冗談。 ただ、アンタに話があってね」

少年「話……?」

お面D「……お前、最近、親に捨てられて、家も失ったそうじゃないか?」

少年「!! なんで、それを」

お面A「ふっふふー。 リーダーはね、何でも知ってる、凄いリーダーなんすよー?」

お面D「ある程度は、な。 それで少年、親の居場所を知りたくないか?」

少年「し、知っているのですか!」

お面B「勿論。 なぜって? 今からそこに突撃するからよ」


少年「!!」

お面C「おーおー、また驚いてるね。 いい反応で楽しいよ。 先輩、そこのガムの紙下さい」

お面A「紙? ちょっと待つっす。 今ガム吐くっすから」

お面C「いらねーよ馬鹿」

お面A「えー」チッ

お面C「と言いつつ紙をくれる先輩は面白い」

お面B「それで、よ。 アンタの親、ここからある程度距離のある所で悠悠自適に過ごしているわ」

お面A「しかも豪邸」

お面D「しかも実家」

お面C「しかもキナ臭い」オリオリ

少年「そう、ですか」


お面A「あ、連れて行かないっすよ」

少年「え? さっき人質って……」

お面C「さっき、それは嘘だって言ったよ」

お面B「あと、あまり会わせたくはないわね。 特に今は」

お面A「夢は夢のまま、とっておかせるっすよ。 現実は非情、母親は異常」

少年「そんな」

お面D「……お前は、母親に関して色々な思いを持っている。 本人に言いたいことが沢山あるだろう」

少年「……そうです」

お面D「だからこそ、だ。 あれは……あまりにもどうしようもない。 あれは今、少年に居られると困るようでな」

お面D「少年、お前を母親に会わせることは、お前を殺すことと大差ないんだ」

少年「……それ、どういうことですか」

すみません、今回はここまでです。
次はちょっとした説明回。 明日の予定です。

1年もかかってしまった

今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

説明回なんて言うんじゃなかった…
手が止まってしま

遅れてしまい、すみませんでした。
投下します


お面D「少し長くはなるだろうが、聞いてくれ」

お面D「まず、お前の母親がどのような人間であるか、から話そうか」

少年「……分かりました」

お面D「はっきり言うと、結婚詐欺師だ」

お面A(本当にはっきり言ったっすね)

お面D「“母親”なのに“結婚詐欺師”というのは、矛盾していると感じるだろうが……事実だ」

お面B「騙されやすい男を狙っては関係を持ち、贅沢に贅沢を重ねて、最後は捨てる。 という感じ?」

お面D「そうだな。 被害に遭った男達は、数十人に上る」

お面D「中には、借金まみれとなって全てを失った者や行方不明になった者もいる」

お面A「どいつもこいつも騙されてオトされて、そして人生の階段からも落とされたっすか」

お面C「哀れなもんだね」


お面D「そんな中、お前の父親は、母親にしつこく迫り続けた結果、結婚にこぎつけた」

お面D「そしてお前が生まれた訳だが、母親にとって、結婚も出産も、非常にまずい話だったろう」

少年「何故、ですか?」

お面B「だって、今後、金を騙し取れなくなるし、下手すれば逮捕……なんて可能性だってあるわけよ。 馬鹿みたい」

お面D「……妊娠中に、腹の中のお前を使って、脅迫まがいのこともやっていたようだがな」

お面B「あら、そう」

お面D「まあ、頃合いを見て、時が来たらお前を捨てる、という感じだろうな」

少年「そんな……」


お面C「今話している限りだと、スキがあるし、バレやすいと思うけど」

お面D「いや、違う。 奴の母、つまり、お前の祖母もまた似たように、詐欺や恐喝を生業としている」

お面C「うわあ。 少年、心底同情するよ」

お面D「警察のお偉いさんの中で、そいつに弱みを握られている奴なんて普通にいるからな」

少年「それってつまり……」

お面D「どれだけ不審に思っても、明確な証拠があったとしても、警察は取り扱ってはくれない。 ってことだ」

お面C「というより、潰される?」


少年「僕が邪魔なのは、僕の存在があると、騙すことが出来ないからですか」

お面D「そうだろうな。 詐欺でなくとも、好きな女に子供がいたと知ったら、大概の奴は離れる」

お面B「それでもいいって言ってくれる男なら、本物ね」

お面C「その例え、すごく身近な話な気がする」

お面B「言わなくてよろしい」

少年「つまり、邪魔だから殺す、もしくは消す、ということですか」

お面D「……だな」

お面A「物騒っすねー」


少年「……昔、両親は仲が良くて、3人で公園に行ったり、遊園地で遊んたりしていました」

少年「しばらくしてから最近まで、ずっと仲が悪くなり、僕もうんざりしていました」

少年「家から抜け出したりもしていましたし……」

少年「それでも、心のどこかでは、また仲が良くなって、家族皆で楽しく暮らしたい。 という気持ちがありました」

少年「でも、今の話を聞くと……もう、……っ」

お面C「……初対面の強盗の話だよ? 別に信じなくとも……」

少年「いえ……。 リーダーさん、僕の母もしくは祖母は、裏社会みたいなものとも繋がっていますか?」

お面D「ああ。 立場が中々でかい奴らだからな。 裏の人間をこき使うことも出来るほど」

少年「そうですか。 それなら、一晩で家を消すことも出来ますよね?」

お面D「……場合によるが、出来ないこともないな」

お面A「そんなこと出来るんすか? やり方、凄く気になるっすね」

少年「……」


少年「……初対面でも、強盗でも、構いません。 僕は貴方たちを信じますよ」

お面C「え? まじで?」

少年「他にも色々と気になることはありますが……」

お面C「信じる分には構わないけど、君将来騙されるよ」

少年「ですね。 あー、本当に泣きたいですよ。 もう、何ででしょうね。 あー……」

お面A「……」

お面C「……ほい、バラ」ポイ

少年「え?」

お面C「ガムの包みで作ったバラ。 同情を込めて。 申し訳ないけど、こういう時、どう励ますかなんて知らないから」

少年「あ、ありがとうございます……」


お面A「うわ、それずっと作ってたんすか。 あんな話の中でも? 冷酷っすねー非情っすねー」

お面C「悔しいけど認める」

お面B「あはは! ん、それじゃあそろそろ……」

お面D「だな。 すまんな少年、勝手に誘拐して」

少年「……」

お面A「あれ、もういいんすかリーダー?」

お面D「……ああ」

お面B「それじゃあ、車停めて、降ろしますか」

お面A「おしまいおしまい。 チャンチャン」

少年「……」ジー

お面C「……? どうしたのさ、バラをじーっと見て」

少年「……お面C、でしたっけ」

お面C「ん、はいはい、何かな?」



少年「お面C、貴方は、同級男C……ですよね?」

今回の投下はここまでです。

説明となると手が全く動かないですね。
そしてあーだこーだしているうちにスレの3/4を使ってました。1年でって…

最後に、皆様、今回も読んでくださってありがとうございました。


お面C「な、何を言っているのかな?初対面でしょ」

少年「本当に初対面ですか?」

お面A「……何でそういう考えを持ったのか、聞いてみたいっす」

少年「えっと、この……バラ。 僕の友達に、折り紙でバラを作る人がいるんです」

お面B「ふむふむ。 それで?」

少年「その友達のものとそっくりなんです。 よく見てるので何となく分かります。 形が綺麗ですし」

お面C「それだけ?」

少年「それだけです」

お面C「はあーぁー。 なんだそれ。 バラなんて作ろうと思えば出来るし、第一、そっくりってなんだよそっくりって」

お面C「どの位似ているかなんて知らないけど、それが根拠なんて馬鹿馬鹿しいね」


少年「……」

お面C「まだ納得しないの。 しつこいなあ」

少年「……僕は水曜日、どのような理由で学校を休みましたか?インフルエンザですか?」

お面C「何を唐突に。 建前はインフルエンザだろう」

お面A「え、よく知ってるっすね」

お面C「そりゃそうだよ。 だって調べたし」

少年「そうですか。 何故?」

お面C「は?」

お面B「え?」

少年「もしお面Cが同級男Cでなかった場合、つまり僕と接点がない場合」

少年「貴方達が知るべきことは、僕の母に関する情報くらいでしょう」

少年「僕は『ターゲットの子供』でしかないのですから、僕に関する情報なんて必要ないのでは?」

お面A「まあ、そうっすね」


少年「調べたということは、少なくとも僕の情報が欲しかったのでしょう」

少年「それでも、水曜日に・僕が・インフルエンザを理由に・休んだ、ということまで調べますか?」

少年「それも建前とまで言って」

お面B「……」

少年「そういえば、学校には欠席理由を疑っている人がいました」

少年「奇しくも疑った人物と今ここにいる人物は、『Cの母』という点で一致しています」

少年「でしょう、お面B“先生”?」

お面B「!」

お面C「!」

お面A「……なんか、すごいっすね」パチパチ


少年「……と、つらつらと推理していきましたが……」

少年「正直、取ったほうが早いです」ヒョイ

C「あっ」ペロン

少年「ほら、やっぱり」

同級男C「ち、ちくしょう、油断した……」タジ

お面A「……勇気あるっすねー、一歩間違ったら銃でドカンだったのに」

少年「えっ」

お面D「……」ハァ…

少年「えっと、そ、そういうことで、Bさんは先生で確定ですね」

お面B「あー、まさか素性がバレるなんて……」カパッ

先生「正解よ、少年君」

お面A「なんすかこの、同窓会での『私誰でしょう、あててごらん』『あちゃー正解』みたいな雰囲気」

今回はここまでです。
おかめ強盗のうち二人の正体がバレましたが、バラしかたが強引だな……
彼らの目的は?あとの二人の正体やいかに!とか恥ずかしい予告を言って、今回はおしまいです。

今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


お面A「で、わざわざ正体を当てて、どういうつもりっすか?」

少年「どうするも何も、ただ気になっただけです。 赤の他人のはずなのに、どうしてここまで干渉するのか」

同級男C「結局、他人じゃなかった訳だけどね」

少年「最初、おかめ強盗と知った時は、殺されると思っていました。 僕の人生はここでおしまいか、って」

お面A「親に捨てられ、家を失った時点でおしまいじゃないっすか?」

少年「確かにそうですね」ハハ…

先生「で、今はどうなの? 親の本当の姿を知って、私達の正体を知って」

少年「泣きたい気持ちがぶっ飛びましたよ。 最近、自分の周りで大暴露がありすぎな気がします」

同級男C「衝撃の事実とか大暴露って言葉、テレビでよく聞く陳腐な言葉だよね」

お面A「今言う事じゃないっすよ、それ」


先生「とにかく、もう話は終わり。 もう、少年君が変に時間取るから、車を止める地点過ぎたじゃない」

少年「す、すみません……」

お面D「……」

お面A「んー、折角だから、この強盗一味の話でもするっすかね」

少年「え? いいのですか……?」

同級男C「どういう風の吹き回し?」

お面A「台風」

先生「何も上手くないわよ。 0点、落第、退学」

少年(今のご時世だと苦情が山のように来そうなことを……)

お面A「辛辣過ぎっすよ! 台風って風強いじゃないっすか!」

同級男C「確かに強いけど……それだけだよ。 季節も違うし」


お面A「と、とにかく! 俺達の話を特別にしてやるっす。 異論無いっすよね?」

先生「え、い、いや、何もないけど……」

同級男C「さっきの推理に免じて」

お面D「……」

同級男C(いや、だって、なあ)チラ

少年「……」キラキラ

先生(この笑顔……初めて見たわ。 断れない……本当、好奇心強いのね)ウグ

お面A「よし、じゃあするっすよー」

少年「お、お願いします」


お面A「まず、目的! 私腹を肥やす一部のあんぽんたんを痛い目に遭わすことっす」

少年「あれ、銀行を襲撃していたのはどうしてですか?」

先生「ん、銀行襲撃も豪邸襲撃も目的に則ってるわよ」

少年「そうなのですか。 ですが、元々地道に努力して、富を築いた人だっているのでは?」

お面A「見境なくやってる訳じゃないっす。 勿論ターゲットは限定してるっすよ」

同級男C「だから、“私腹を肥やす一部のあんぽんたん”ってこと」

少年「なるほど」

先生「ま、正義気取れるような身分じゃないけど。 私達がやっているのは犯罪だから」

お面A「っすね」


お面A「次、動機!」

先生「授業の発表じゃないんだから、そんな『調べた理由』とか『感想』みたいに言わなくていいわよ」

同級男C「それ、伝わる?」

お面A「伝わったっす。 小学校の授業参観で遭遇したっす」

少年「……?」

お面A「まあ、そうは言っても、俺はロマンを求めて始めたもんなんすけどね。 テキトーな動機っす」

少年「えっ」

お面A「えっ」

少年「いや、あの、目的がはっきりしているのに? そんな動機ですか?」

同級男C「だって、なんとなく始めたし。 始めた上で、目的というか方針決めていったし」

先生「私はただスリルが欲しかったっていうので始めたし」

少年「え……」

先生(呆気にとられてる、というより拍子抜けしてる? いや、呆気にとられてるで合ってるか)


お面D「……少年、現実はそんなもんだ。 小説みたいに、大層な動機を持っている奴なんてそんなにいない」

少年「は、はい」ビク

同級男C(いきなり喋ったから驚いたな、こいつ)ブフッ

お面A「で、いきなり喋ってどうしたっすか?」

お面D「……お前は俺が喋ってはいけないとでも言いたいのか」

お面A「滅相もございませんっす。 で?」

お面D「下ろす場所に着いた」

先生「到着? お疲れ様でしたー」ガチャ


——公園前——

バタン

お面A「さっさと表の世界に帰るっすよ、片割れの家に直行するっすよ」

少年「そう言われましても、実は元々知人に呼ばれて、公園にいたんですよ。 だから待たないと」

同級男C「へぇ。 不運だったね、そんな中で捕まるなんて」

少年「いえ、逆にそれで真実を知れたので……」

先生「あ、感謝しないでよ。 誘拐されたのに感謝するっておかしいから」

少年「は、はぁ……」


お面A「ほらほら、さっさと帰るっす」シッシッ

少年「あの、先程も言ったのですが……」

お面A「そんなの別にいいっすよ。 もう済んだことなんすから」

少年「? 何でですか?」

お面A「もうその“知人”に会ってるってことっす」

少年「え、ええ? 知人って……先生でも、同級男Cでもないですよ」

お面A「ヘヘッ……気づかなかったっすか。 推理はまだまだっすね」

少年「……!」

先生(あ、言っちゃうの)

お面A「お、察したっすか?」スッ



川男黒「お面A改め、川男黒だよ。 どうもどうもー、っす」ハハハッ

今回はここまでです。

このSSは基本平和です。 作中の人物達の大体は退屈しています。
物騒な理由なんてないんです。
そんな感じです、今後はそうでもないけど

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

15分位したら投下します


少年「え、な、何故……?」

川男黒「何故って……なってはダメなのかな?」

少年「いや、そうではなくてですね……」

川男黒「なったものはしょうがないね」

先生「なに他人事のように言ってんのよ」

同級男C「むしろ率先してなったけど。 もっと言えば、このグループ立ち上げたのも……」

川男黒「言うなよ、恥ずかしいじゃないっすかー」

少年「……」ポカーン

川男黒「と、いうわけで、帰るっすよー。 何回言わせるっすか」シッシッ

少年「そ、そんな勝手な……」

先生「全く以てその通り」

川男黒「何言ってんすか! 勝手じゃない強盗なんて強盗じゃないっすよー」

少年「落ち着いてください」

川男黒「おっと失敬」


お面D「……その前に、ほら」スッ

少年「あ、はい……これは、手紙ですか」

お面D「……お前の父親からだ」

少年「え? 何故これを持っていたのですか?」

お面D「それは……」


先生「はぁ。 少年君、私達が今から、少年君の母親の所へ突撃するっていうのは分かったわよね」

少年「はい」

先生「まあ、それで母親の身辺調査をしてたのよ」

同級男C「だからさっき、あんなブラックな事を暴露できたんだよね」

先生「で、その過程で、あなたの父親に行き着いたわけよ」

同級男C(ああ、そっちに持っていくの……)

同級男C「それで少年の父親からも情報を引き出そうとして色々と問い詰めたわけだ」

先生「そしたらたっぷり吐いてくれたわ。 そのついでに手紙を託されたのよ」

少年「そうだったのですか。 分かりました」

川男黒「よし、もう要件は無いっすね! 急がないと計画が狂うっすよー!」

お面D「大丈夫だ。 落ち着け」ガスッ

川男黒「あぐえっ」ゴンッ

同級男C「ん、じゃあなー少年」

少年「あ、はい、また今度」


ブロロロロロ…………


————

川男黒「……はぁ。 リーダー、何で正体を明かさなかったのさ」

お面D「……あー」

同級男C「本来一番会うべき、いや、会いたがってたのはオメーだろ」

先生「とんだヘタレね。 カリスマも糞もないわ。 家庭訪問の時のあのヒョロヒョロに元通りね」

お面D「ここぞとばかりに畳み掛けんな」

同級男C「もうさ、じゃあいつやるの」

川男黒「今でしょ」

お面D「今正体明かしても意味無いだろうが……。 正体知り合ってる間柄だろう」

先生「just nowじゃないわよ。 この機会って事。 本当は分かって言ってるのだろうけど」


お面D「……確かに、今、だな」ボソッ

同級男C「? どうしたのさ」

お面D「いや、大したことじゃない」

川男黒「そうっすか。 それじゃ、行きますかね」

先生「どこに?」

同級男C「お、とうとうストレスで馬鹿になったね」

先生「なぁーに言っちゃってんのかなー?」グリグリ

同級男C「いだだだだだ、頭痛いから、そこはあかんて」ギャー

川男黒「じょ、冗談っすよね? 本当に忘れてたりは……」

先生「冗談に決まってるじゃない。 ボケたのよ、ボケ」

同級男C「え。 マジ? 今のが? ボケぇ?」

先生「親を馬鹿にするのも大概にしなさいよ?」

同級男C「はい」

すみません、中断します。
明日続きを投下します。

18:45あたりで続きを投下します。

投下予告をsageてどうすんの馬鹿
それでは投下します。


————

少年「」ポケー

少年「……嵐のように去って行きましたね」

少年「……あっ、手紙」スッ

少年(暗くて、よく見えないですね……)

少年「明かり……明かり……」スタスタ

少年「……あれは、トイレ、のようですね」

少年「……」スタスタ

少年(……あ、まさか)


少年(入口から覗いてみますか)チラ


死神「あーだりーめんどくせーよー。 何アレ面倒臭すぎだろー。 あー今日で終わりだけど行きたくねー。 隈やべ」ボソボソ


少年「ほらやっぱりいましたよ!」


死神「うわっ! 誰だ、ってお前……」ビク

少年(逃げますか)ダッ

死神「あっ、お前、ちょ、待てよ」ダッ


ダッダッ

死神「おいこら待てよ」

少年「待てと言われて待つ奴がいますか、いや、いません」

死神「それじゃ、待つな」

少年「了解しました」

死神「てめ、都合良く解釈しやがって! ガキかお前」

少年「ガキですよ」

死神「そうだったな畜生め」


ダッダッ

少年(一度トイレに逃げ込んで……)

少年「たあっ」バタン

死神「個室に逃げ込んだか。 おい、なんで俺を見て逃げた」ダンダン

少年「それは勿論、貴方に会うと碌な事がないからですよ」

死神「全くだ」

少年「あ、自覚はあったのですね」

死神「違う。 こっちのセリフだって事だ。 しかしまあ、こんな渋くて格好良い死神様を見て逃げるなんて……」

少年「“死神”を見たら逃げるでしょう。 だって“死神”ですよね?」

死神「あーそうだった」


少年「こちらも質問します。 何故ここにいるのですか?」

死神「仕事」

少年「そういえば以前、仕事があると言っていましたね。 何日目ですか?」

死神「最終日で、そろそろ終わりだ。 ん? お前、何で俺の仕事の期間を知っているんだ?」

少年「あ、えと、そういう小説を読んだことがありまして……」

死神「なんだその小説。 無駄にリアリティあるというか……。 うわなんか怖い」

少年「僕も自分で言ってぞわっとしました。 でも最終日って……まだ仕事中ですよね。 サボりですか」

死神「多分まだ大丈夫だ」


少年「と言われましても……本当に大丈夫なのですか?」

死神「要らない心配だ。 とりあえず、アレだ、今の時間は?」

少年「あそこです」スッ

死神「ドア越しで『あそこ』とか言われても、把握できるわけないだろうが!」

少年「そうでした。 確か、トイレ入口から見て、右奥にあると思います」

死神「そうか。 えーっと……」スタスタ

少年「……」

死神「見てきた。 只今、だいたい23時46分をお知らせしますー。 まだ日付は変わっていないな」

少年「そうでしたか」

少年(そういえば先程の……とても濃い時間でしたが、それだけしか経っていなかったのですね)

死神「……お、どうした?」

少年「いえ、何でもないです」


死神「逆に聞くが、少年は何でここにいるんだ」

少年「簡潔に言うと、知人の呼び出しで拉致未遂、です」

死神「は? もう一度言う。 は?」

少年「自分でも唖然としますよ。 でも事実なのです」

死神「っは。 本当にお前には碌な事がないな」

少年「……確かに、そうですね」

死神「ありゃ、言ったらいけない事言ってしまった? すまない」

少年「いえ、別にいいですよ」


少年(……そうでした、手紙手紙……)ペラッ

シーン……

死神「お、死んだか」

少年「何物騒な事を言っているのですか」

死神「お、生きてた」

少年「はぁ……」ジッ

『やっほー元気? 絶望してない? 18歳宛ての手紙を読んでないよな? お前のことだし大丈夫だろうがな』

少年(うわっ、凄く軽いですね……)

『手紙越しとはいえ、恥ずかしいけど暴露する! 俺ことお前の元父親は、死にそうだ』

少年「はあ……え?」


『行方知れずだしどうでもいいだろうけど、事実なんだよなー。 分かりきってたことだがなー』

『本当はこの手紙を書くつもりなんて無かったけどな、やっぱり息子に隠し事して死ぬのは不本意だ』

『だから、例の手紙に関することも含めて、洗いざらい吐いてやる。 覚悟しろ』

少年「……」ゴクッ

『近くに知人がいるなら、そいつと一緒に読むといい。 人じゃなくてもいいぞ? 蛾でも犬でも、幽霊でもな』

少年(意味が分からないですが……)ガチャ

死神「出たな少年。 さあかく……お? どうした」

少年「この手紙……一緒に読んでもらえませんか?」

死神「お、おう……」

今回はここまでです。
昨日は投下直後に投下できない状況に陥ってしまいました。
簡単に言うと、[田島「チ○コ破裂するっ!」]中家族帰宅みたいな感じです。

投下がバラけてしまってすみませんでした。

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

——同時刻・少年の母の実家——

キィー…

バタン

少年母「はぁー。 ただいま」

祖母「おや、久方ぶりじゃないかい。 どういう風の吹き回しだい?」

少年母「そんなこと、どうだっていいでしょうが。 私がここに戻ってきたことを知らなかったの?」

祖母「ッハ。 知っているわけがないねぇ」

少年母「そう、ならいいか。 そんなことより、今日はあまり狙いやすい獲物がいなかったわ」

祖母「当たり前じゃろ。 今は休日だし、狙い目のやつなんざ、街から出て行っただろうに」

少年母「かしらね。 かといって、クソ性獣共からは何も出てこないし」

祖母「ハン。 まだまだ未熟だねえ」

少年母「だって私、まだ若いし。 心身共に皺くちゃなアンタとは違うのよ、クソババア」

祖母「ケツの青いなんちゃって売女には言われたくないわ。 脳みそあるか?」

少年母「ふん、言ってろノータリン」

祖母「ズル賢いと言え、下賤な便器め。 それで終わりか? 知識がノミ並みの大きさだな。だから口下手なんだ」


祖母「それで? 意味なく戻ってきたわけではないのだろう?」

少年母「ん。 ほら、結構前、十数年前に半ば強引に結婚した男がいたでしょ?」

祖母「さあ、どうでもいいわいそんな奴」

少年母「はあ……それでさ、最近離婚したのよね」

祖母「金はどうした」

少年母「えーっと……」

祖母「馬鹿女め。 どうせ碌に取れなかったんだろうよ」

少年母「うるさい。 向こう側が予想外に策士で、全く奪えやしない」

祖母「……」

少年母「……何、そんな目で私を見るな」

祖母「救いようもない阿呆め。 大方、金は取られて、親権はお前に、完全に縁を切られ搾取は出来ない」

祖母「仕方なく餓鬼を捨ててここへ逃げ込んだ、じゃろ」

少年母「よくお分かりで、という訳で……」

祖母「ハン、誰が助けるかこんな精液溜まりをよ」スクッ


祖母「それじゃ、今から仕事だから、当分帰ってこないから。 じゃあな」スタスタ

少年母「え、ちょっと……どこ行くのよ」

祖母「だから言ったろう、今から仕事だ、って」バタン

シー・・・ン

少年母「そ、そんなぁ……」


————

ブロロロロ…

川男黒「リーダー、まだ着かないっすか? と言うより、ゆっくり行ってる気が……」

お面D「いや、これでいい。 全て計画通りだ」

お面C「本来、23時って言っていたのに。 約1時間の遅刻だよ」

お面D「大丈夫だ。 むしろこれでいい。 ……ああ、これでいいんだ」

お面D(流石に記憶が曖昧になっているな……。 いや、記憶する必要は無いのか。 全ては予定調和なのだろう)


お面B「ならいいけど。 ほら、さっさとお面を被りなさいよ。 仕事よ」

お面C「さーて、今回はちょっと私情混じりの仕事だけど。 真剣にやっていこう」

お面A「はい装着。 そしてC、ちゃっかり仕切ってんじゃないっすよ」

お面C「いいじゃないか」

お面B「二人のやり取りからは、全然真剣さが感じられないわ」

お面A「感じるのは不安、っすけどね」

お面D「……?」

お面C「なんだよ、ビビってる?」

お面A「違うっす。 何となく、今回の仕事はただで済むようなものではないような気がしたっす」

お面B「誰かさんにとっては、元々特別な仕事みたいなものでしょ」

お面D(やはり、聡いな。 そこは妖怪、だからか?)


————

『まず始めに、俺の事。 残念ながら、俺はお前のことをなんでも知っているわけじゃあない』

少年「知ってます」

『だが、大方当たっていたろう? お前の心を見透かした時なんて、お前驚いてたもんな』

死神「ほう、お前も驚くことがあるのだな」

少年「ありますよ。 人並みに」

死神「嘘つけ。 平均以下だろ」

『で、だ。ネタばらしをすると、元々聞いていたのさ。 何もかも』

少年「……?」

『今疑問に思っただろう。 だが事実なのさ、お前が2、3歳になる頃には今までの全てを聞かされた』

少年「……」

死神「うげ、気味悪ぃ。 なんだそれ、預言者か何かか? あんなもん、嘘っぱちだってのに」

『預言者じゃあない。 もっとデカイモノだ。 何よりも、何よりも』

死神(おいおい……、何で俺の発言に返答出来てんだ。 いやらしい偶然だ)


『少年、お前が小さい頃、覚えていないだろうが、とある宿に泊まったことがあるんだ』

『そこには、宿主含めて少し変わった人々がいてな。 そいつらは宿の常連らしいが、その中でも特に変わった男がいた』

『スケッチブック片手にのんびり気ままに生活している青年でな、ぱっと見普通の男だ』

『しかし、周りからは“神様”なんて言われてた。 何を言ってんだこの常連は、と思ったよ』

『だから偶然同時期に泊まりに来た大学生と二人で、青年に会って話しかけようとした』

『するとそいつは開口一番に俺達の名前と、俺達にまつわるありとあらゆる事をペラペラ喋りやがった』

『何もかも言い当てられて、俺も大学生も、愕然とした。 「こいつはヤバイ」ってな』

『で、そいつは「何もかもが自分が導いたから。 全ては自分の描いた物語だ」と言った。 言い切りやがった』

『だから、未来の事も見通す事は出来るのかと聞いたら、俺達やお前の未来に関する事を事細かに話し始めた』

『最初は完全に疑っていた。 だが、それから数年間、俺にも例の大学生にも、奴が話したまさにその出来事が起こり続けた』

『そう、今もそれは続いている。 俺がこの手紙を書いていることも、お前がこの手紙をこの時間に読んでいることも』

『共に読んでいる奴がお前の母親の担当である死神であることも、現実・非現実の何もかも全て、神様とやらに聞かされたんだ



少年「」ゾワァ…!

死神「……はは、今まで幾度となく奇妙な事に巻き込まれたが……こいつは……」


『少し話が偏ったな。 まあそれだけ大きな要件だったわけだが』

少年「……何もかも……作られていた……」

『少年に渡していた、ある年齢になれば見てもいい、という手紙も、この事があったから書けたんだ。 いや、書かされたのだろう』

少年「……あの手紙に、こんな背景があったのですか」

死神「この手紙に書いてあるのが本当なら、俺の今までの過程はそいつのシナリオ通り、ってか? ハハッ、笑えねえ冗談だ」

少年「笑っているじゃないですか」


『次に、死にそうって事だが……。 簡単に書くなら、死神が憑いた、って事だ』

少年「し、死神ですか!?」

死神「!」

『死神は死神でも、そこにいる死神ではないぞ』

死神「そんな事はどうでもいい! おい少年、これを書いたお前の父親なんだろ? 今どこにいるんだ!」

少年「落ち着いてください。 あとどこにいるのかなんて分かりません」

死神「チッ、クソ……やべぇな」


少年「先程からどうしたのですか? らしいといえばらしいですけど」

死神「馬鹿言ってる暇なんてないぞ……。 お前、天降女子を覚えているか?」

少年「はい、ある程度最近のことですし」

死神「言ったことは?」

少年「一応……覚えてはいますが……。 でも、以前捕まえていませんでしたか?」

死神「実はな……逃げられた。 それも今朝」

少年「そうですか……。 ちょっと待ってくださいどうしてですか大変な事じゃないですかそれ」

死神「同僚の不手際。 だからちゃんと縛って閉じ込めとけって言ったのにアイツは……」

少年「……」

今回はここまでです。

駆け足気味ですがご容赦ください。
終わりそうで終わらないまま一年半って

最後に、今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。

ちょっと投下しますよ・・・


——少年の祖母視点・車内——

ブロロロ…

祖母「あーあー、面倒見切れないわ、あれは。 我が娘ながら情けない……」

部下「とは言っても、追い出さないのですね」

祖母「本当にそう思うのか」

部下「一応は」

祖母「お前はまだまだ未熟じゃな」

部下「も、申し訳ございません……」

祖母「……残念だが、あれには身代わりになってもらうのさ」


部下「身代わり……? 何故です?」

祖母「なあに、後であの家に強盗が襲撃するらしいからねぇ。 あれの存在で、どれほど被害が減らせるか試すのさ」

部下「実験、ですか」

祖母「そうじゃな。 倉庫の警備が大概戦闘部隊に流れるからねぇ……」

部下「最近は暴力団との抗争が多いですし、血気盛んな者はそちらに志願するそうですね」

祖母「それなら、孤児とか身寄りのない人間を拉致して教育して警備させるしかない、って訳じゃが。 経験が浅いのが、どれだけ使えるか試すのさ」

部下「その実験体は素人の女ですが、大丈夫ですか?」

祖母「まず最低ランクのを試しとけば、それを最低基準としてやっていけるだろうよ。 一応、別の部下を手配して結果を見る」


ブロロロ…

祖母「ん、今の車……」

部下「珍しいですね、住宅地のはずれの道というのに、すれ違うなんて」

祖母「……あれが、強盗の車だったりしてな」

部下「かもしれませんね」

祖母「……まあいい。 見逃そう。 どうなるもんかね」


——おかめ強盗視点・車内——

お面C「ん、今の車」

お面B「いいなー車。 今のご時世、高いものに手を出すって勇気がいるのよね」

お面A「持ってても使うっすか? そもそも使えます?」

お面B「バカにしないで欲しいわちくしょう。 移動手段はいつも徒歩。 だって仕事場近いし」

お面A「そしてペーパードライバー。 っすよね?」

お面B「おめでとう。 正解者には正義の鉄拳をプレゼント」ガスッ

お面A「何が正義だ。 不純すぎっす」ヒリヒリ

お面C「私が生きているのは近所の学校のおかげ。 さあ、皆で感謝をしようではないか」

お面B「大げさな……」

お面D「……着いたぞ」

お面C「! 了解」

お面B「よし、一丁やりますか」

お面A「気合入れていくっすよ。 陽気なギャングの愉快なパレードの始まりだー、ってね」

もう少ししたらもう少し投下します
隠れてやっているので


————

死神「くそっ……。 もしお前の父親があいつの血を引いているのなら、確実に天降女子に狙われる」

少年「母方の可能性はどうなのですか?」

死神「それはない。 お前の母親のルートは関係ないはずだ。 もしそうなら、今頃その親は死んでるはずだ」

少年「逆に、死んでいないからその線は薄い、ということですか」

死神「ああ。 泣いて喜べ、お前の祖母は立派な裏社会の大物だ」

少年「泣いて悲しみますよ」

死神「それに……」ペラッ

『その通り、俺はその男の血を引いている』

死神「ほらな。 この野郎、俺が紙を変えるタイミングまで把握してやがる」


『言っておくが、俺は色仕掛けに引っかかるほど馬鹿ではない』

少年「母にはしつこく迫ったのにですか?」

『それとこれとは話が違う、ということで』

少年「信用ならないことこの上ないですね」

『死ぬのが分かっていて、それも死ぬ直前で、尚性に拘る必要があるか? 俺はそう思わない、誰もそう思わない』

少年「自分の子孫を残そうと必死になって、性欲が増す、という事例はないのでしょうか」

死神「性欲だなんて……。 子供の若者離れか」

『性欲だなんて……若者の子供離れか』

少年「何だこの人達。 大真面目でその発言は苛立ちますよ」


『ただ、恐らく俺が死んだ直後に、俺の魂を奪うつもりなのだろう。 死神よりも先にな』

死神「だろうな。 チッ、早く居場所を教えろってんだ」

『わざわざ色仕掛けで魂を抜き取ろうとする相手だ、やろうと思えば誘惑しなくとも魂を取れるだろう』

『そして俺の魂は贄とされ、災禍が起こる』

死神「つまり、これは防ぎようもない事実とでも言いたいのか。 神様ってやつも糞展開しか書けないのか、つまらないな」

少年「それに、災禍って……もしかして、僕の先祖が甦ると危険だと言うのですか」

死神「漸く察したか? 現場を見た俺だからこそ、やばいと指摘していたんだ。 あれはただ事じゃあなかったからな」

少年「なるほど」


『……今更だが、本当に信じてくれているのだろうか? 書いている俺でさえ、ふと思ってしまう』

『事細かとはいえ、常識的に考えると“変人青年の戯言かもしれない”というのに。 出来すぎだとしても、偶然かもしれない……』

『通じてくれているのだろうか』

少年「……今更弱音吐き始めましたね」

死神「これも時間稼ぎに見えてしまうが……信じているぞ」

少年「よくまあ、見ず知らずの人間を信じれますね」

死神「伊達に“死神”やってねえよ。 裏切られるなんてよくあることだから、自然と目は肥えてくる」

少年「裏切り? “死神”内でもそういった事はあるのですか」

死神「違う。 対象者の監視で、7日間近くにいなければいけないのだが、その間にな。 人間に利用されたり道具にされたり」

少年「所詮人間はそんなものでしょう? 死神にとっては」

死神「子供っぽくない子供はお前くらいだろ」


————

少年母「あーもー! あのクソババア、娘に対して酷すぎない?! 助けてくれたっていいじゃない!」

少年母「その分私って凄いよね。 最後まで愛情たっぷりだもん」

少年母「捨てちゃったけどねー!」アッハハハ

カタカタッ

少年母「はははは……は……」

少年母「何今の物音……。 うええ……」

ダンッ!

少年母「ひぎっ!」

少年母「なによ……やだ、私の状況、ヤバすぎ? まさか幽霊、強盗?」ガタガタ

少年母「い、一応棚に立てかけてある棒と……」

少年母「何故かテーブルに置いてある銃……も、持っておこ」

少年母(この状況で銃があってラッキーだけど……)

少年母「もしかしてあのババア、知ってて……? 私、ハメられた? うえぇ」

少年母「やだぁ、もう……。 気のせいだったらいいのに、気のせいでありますように……」ソーッ

今回はここまでです。
乙レス等ありがとうございます。
次いつ予定が空いて余裕ができるのかは分かりませんが、頑張ります。

今回も読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。


——少年の母の実家・二階外——

お面A「うっわ、何て無防備な豪邸っすか。 外壁登るも何もなし、敷地内に地雷があるわけでもなし」

お面C「加えて建物の二階に罠があるわけでもないし、窓の鍵は開けっ放し」

お面B「不気味ね……。 ここまでザル警備のはずがないのだけど」

お面D「……以前は警備がいたぞ」

お面A「いないってことは……ここを捨てた、って事すか」

お面B「ま、こんな場所は他にごまんとあるんでしょうよ。 庶民の敵」

お面C「犯罪者って、大抵の人にとって敵扱いされてるんだけど、それについて何かコメントは?」

お面B「……」

お面A「さっさと侵入するっすよ」


——家内部——

お面D「この部屋は……」

お面A「物置部屋っすかね」

お面B「と言っても、ダンボール箱ばかりで興味はそそられないわね」

お面C「つまらないなあ」

お面A「つまらなくてなんぼっすよ、人生そんなものっす」

お面B「一丁前に人生悟ってんじゃないわよ」

お面D「……」カチャカチャ

お面A「リーダー、その扉、開かないっすか?」

お面D「そうだな」

お面C「強行突破一択でしょ。 漫画みたいにこう、ドーンと」

お面A「そんなうまくいかないっすよ。 人生もそんなも……」

ダンッ!

お面D「……ッう」ヨロッ

お面B「扉に突進するなんて、普通痛くてしようとは思わないけど。 蹴るとか鈍器とか……、まあ結果オーライ?」

お面C「うまくいったね」

お面A「……そうっすね」


————

少年母「さっきの音……。 に、二階から……よね」

少年母(怖いけど、い……行ってみよ。 行くしかない)ソー

少年母「ほんと、誰か引っ掛けとけば、様子を見に行かせたのに」

少年母(元夫も、一週間前から相手してるあの変な男も、なんでこういう時にいないの!?)

少年母「あーもー使えない奴ら! 金と使い勝手のない男なんて、ただの発情猿じゃない!」


「使えなくて悪かったな」


少年母「ひっ……!」ビクッ


「あの頃は何も知らなかった。 何も知らず、他の男の例に漏れず、お前のケツを追っかけて」トン トン

「結婚し、子供をもうけて、幸せを謳歌するつもりだった。 はずだったんだ。 今となっては恨めしい」トン トン

少年母(階段から……誰?)

「俺は全てを知った。 あの日からだ、あの日から俺の人生から仮初の幸せが消えた。 そして真の事実だけが残った。 それ

も残酷な」トン トン

「あの男が悪いのか? お前が悪いのか? お前と逢引していた男が悪いのか? 違う、悪いのは俺だ」トン トン

「愚かな自分が悪い。 それで終わりだ。 ならば、何故俺はここにいる? この女に何の用がある?」トン トン

「未練か? 復讐か? いや、違う」トン…


少年父「久しぶりだな……。 清算しに来たぞ」


少年母「あ……アンタは……!」

眠いのでここまでです。すみません。
午後か明日続きを投下できればいいのですが、場合によっては年を越すかもしれません。
その時は報告します。

読んでくださった皆様、ありがとうございました。

ちょっとしてから投下します。


————

お面C「リーダーは、何でわざわざお面を外していったのかな」

お面B「おかめ強盗としてでなくて、少年の父親として、彼自身として決着をつけたかったんでしょ」

お面A「お面が邪魔なだけじゃないっすかね」

お面B「訂正。 それの方が納得できるわ」

お面C「そっか。 それじゃ、リーダーの言う通り、金目の物でもかっぱらっていこう」

お面B「まず二階を片っ端から調べていきましょう。 一階に行っても邪魔になりそうだし。 念押しされたし」

お面A「……」


お面A(リーダーは、このお面を俺達に託して行った)

お面A(二人は分からないだろうけど、俺には解る)

お面A(リーダー、あんたからは死のオーラが出てる。 いつ死んでもおかしくないような予感がするんだ)

お面A(死神までいるんだろう。 ファミリーレストランでの会議の時に、近くで監視をしている死神がいたから……)

お面A(だが、あんたは自分が死ぬのを判っているんじゃないか? もっと言えば、この強盗団を結成した時には既に)

お面A(諦観そのもの……。 昔から近所付き合いをしていたけど、いつからか変わってしまった)

お面A(何があったのかは知らない。 何故あんたが俺達と強盗団を作ったのかも分からない)

お面A(お面を託した意味もあんたしか分からない。 俺達は……置いてけぼりだ)

お面A(『ロマンはどこだ』……。 俺達のロマンはここにある。 あんたのロマンはどこにあったんだ)

お面A「……」

お面A「なあ……あんたの視界には、何が映っているんだ?」


————

『そろそろこの手紙も終わりに近づいてきた。 流し読みしなかった事に感謝する』

死神「……時間稼ぎだったか……」

少年「裏切られましたね」

死神「分かりきってたことだ」

『機は熟した。 時は過ぎ、死神は仕事に向かい、女は終わりへと赴く』

『役者は舞台に上がる。 広大な舞台の中、人々は多大な我欲を胸に、見るに耐えない演技を続ける』

死神「これは……俺に行けって事か?」

少年「恐らく……。 場所は敷地が広い所だと思います」

死神「あの女……確か、実家の話をしていたな……。 あー、少年。 すまんが、俺は行く」

少年「はい、分かりました。 死神も気をつけて」

死神「気をつけるのはお前の方だ。 こんな遅くまでガキが外に出るんじゃあない。 もっと言えば、お前、変人だぞ」

少年「そのままお返ししますよ、変人さん」

死神「返せる立場かよ。 傍から見れば、夜中の公園で、手紙を読みながらぶつぶつつぶやく変な子供だぞ」

少年「あー……」


死神「ま、冗談はこれだけとして。 じゃあな、少年」ザッ

少年「さようなら。 ……」ペラ

『少年、俺はじきに死ぬ。 だが、陳腐な物語は終わらない』

『手紙としてでしかないが、俺はお前と共にある』

『お前を置いていってしまって、すまない。 不甲斐ない俺を恨んでも憎んでも構わない』

『だが、お前は俺の大切な息子だ。 いつだって、お前がどう思ったって、これは変わらない』

『俺が伝えたいことは、前に渡した手紙に少しずつ書いておいた』

『さよならはいらない。 また会おう。 父親より』

少年「……」

少年「……」

少年「……また会いましょう」グシャッ


————

少年父「余計な会話は要らない。 早く終わらせよう」カチャ

少年母(じゅ、銃……!)ダッ

少年父「……やはり逃げるか。 死期を延ばして何になる」タッ



少年母「何で銃を持ってんの、アイツ! 信じられない!」ビクビク

少年母(リビング奥の部屋に入ったはいいけど……どうせ来る)

少年母(扉を開けた瞬間に近くの棚を倒して、こ、殺すしかない……!)グッ

少年母「う、後ろから押せば、扉に向かって倒れる……。 この棚が壁につけて置いてなくてよかった……!」


————

少年父「……」スッ

ガッ

少年父「ここなんだろ。 諦めて死んでしまえ」

ガチャッ

少年母「ああああああああああああああああああああっ!!」ドンッ

少年父「!!」ガラガラガラ

少年母「いったっ!」カシャ

少年父「ぐ……おおっ……」ググ…

少年母(棚のせいで身動きが取れない今なら……!)スッ

ダァン!!

少年父「ぐ、が……ぁ、あ……」フラ

ガシャァアアァァァ……


少年母「」

少年母「っ、はあ、はあ……はあ」

少年母「はあ……。 ああ……」ヘタッ

少年母「こ、殺した……? ……終わった?」ハア ハア

少年母「あ、こ、腰が……抜け」



ダァン!!



少年母「                 え?  」

少年母「あ……血が」


ダァン!!
ダァン!!
ダァン!!

少年母「   」

バタッ……


少年父「」コヒュー コヒュー

少年父「お。 終わり だ」コヒュー コヒュー

少年父「これで いいんだろう?  これ が  お前の 物語の  流れならば」コヒュー  コヒュー

少年父「  重いなあ。   痛いなあ。    ああ……。   死  か……」コヒュー

少年父「             ……少  年……。  」


少年父「   」


————


ダァン!!

お面C「やった……みたいだね」カチャカチャ

お面B「……ん。 こっちも漸く金庫を見つけられたし、任務完了かしら」

お面A「っすね」

カチャカチャ

カチッ

お面C「来た」

お面B「よくやったわ。 それじゃあ、さっさと中身かっ攫っていきましょ」

お面C「はいはい」ガチャ

お面A「……札束と……ファイル?」

お面B「Cはお金をこの袋に入れてて。 ……ファイルもついでに入れちゃいましょ」

お面A「いいんすかね。 これを持って行っても」

お面C「いいでしょ。 どうせ、捨てられた場所の金庫なんだから、これを取って行っても何も悪くないよ」

お面B「それじゃ、さっさとリーダーと合流して……」


ダァン!!
ダァン!!
ダァン!!

お面A「!!」


お面B「……何で、何でまた銃声が鳴るの?」

お面C「……。 前か後かがリーダーが撃ったもの。 逆に……」

お面A「それって」

お面B「撃たれた……? リーダーがやばい! 行かないと!」

お面A「ちょっと待つっす! 他に敵がいたら……」

お面B「蹴散らすまでよ! もし返り討ちにあっても、旅は道連れよ」

お面C「死んでも構わないよ。 それだけのことはしているんだ。 それに、リーダーを見捨てる選択肢があると思ってるの?



お面A「……思うわけがないっす、あるわけがないっす。 分かった、行くっすよ!」ダッ


————

死神「ちっ、空を飛んでも、どっち方面に行けばいいのやら……」キョロキョロ

ダァン!

死神「ん、銃声か。 そこまで遠くない……。 もしかしたら……」

死神「行ってみるか」スゥーッ

————

「……うへぇ。 血まみれだーここ」

「こっちが少年くんのお母様? 悲惨……、元は綺麗だったのかしら? あたし程じゃないけど」

「で、こっちの、下敷きになっている方が……お父様の方ね。 ビンゴ」

「何事も手順。 父親の方を優先して戴きましょ。 ていうか、少年くん、彼に似てるもん。 手をかけられない」

「初めて会った時、初めて淫欲を表さなかった彼。 格好良い彼。 情趣のわかる彼……。 あはぁ」

「あ、いけないいけない、早く魂を取って、彼にあげないと……」


雨降女子「ごめんねーお父様。 あたし、雨降女子のために使われちゃってー!」キャハハ


————

お面A「……せーのっ」

お面B「よいしょーっ」

お面C「ん、棚をどかしてくれてありがとう。 ……リーダー」

お面B「あれは少年君のお母さんね。 見たところ、四発受けたように見えるわ。 露出の多い服だから、判りやすい」

お面A「なら、リーダーは棚の下敷きになって撃たれて、その後、死ぬ前に撃ち殺したって事っすか」

お面B「……安らかに眠って。 ……この遺体はどうする」

お面C「持っていったところで、どうにもならないよ。 楽にしてあげよう」

お面A(魂が無い……?)

お面B「A、早く逃げましょう? さっきの銃声で、近所の人が警察に通報していたらまずいから……」

お面C「そうしよう。 ……」

お面A「……っ。 さようなら、リーダー……」


————

女死神「これまた凄惨な最期ですわね。 その瞬間を見ていなかったので、どうとも言えませんが……」

女死神「随分不思議な方でしたわ。 経歴を見ると、ダメ人間なのかと思いましたが……」

女死神「……。 回想に耽る必要はないですわね。 さっさと魂を保管して……」

女死神「……! ない」

女死神「魂が無い! ど、どうしてですの?」

スタッ

死神「クソッ、間に合わなかったか……」

女死神「あ、貴方、何故ここに……!?」

死神「仕事だ。 お前も仕事のようだな」

女死神「そ、そうですわ……。 いや、そうじゃなく! 大変ですの、この方の魂が!」

死神「ああ、分かってる。 大方、雨降女子の所為だろう」

死神(さっきの手紙の、終わりへと赴く女ってのは、雨降女子の事か)

死神「……嫌な予感がプンプンするぜ……」

今回の投下はここまでです。
次回は2〜3月になるかもしれません。 出来ればその間に少しでも投下したいですが……。

見直してみたら、少年父が悲惨な境遇になってら。 使われてばかりで。
雨降女子は一年半振りの登場です。 ですね。

最後に、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
2012年、ありがとうございました。

今35まで読んだ。伊坂幸太郎?

2350あたりで投下します

>>872
死神や抜粋の多くは伊坂幸太郎作品からです。
書いてるうちにだいぶずれてきましたが……


————

雨降女子「……これが少年くんのお父様の魂。 彼の血を引く魂、子孫の魂」

雨降女子「前回が何年前だったかは忘れたけど、『次で完成される』なんて変な事言ってたよね」

雨降女子「……とうとう会える。 終わるんだ。 終わって、始まるのね」

雨降女子「さ、早くあの魔法陣に供えないとね」


——とある山——

雨降女子「……ふう、相変わらずこの山は手入れがなってないなあ。 誰よ、管理者は。 ……ま、山なんて、手入れするものではないのだけど」

雨降女子「数十年周期の供えなのに、よくまあ魔法陣の場所を忘れないものだわ。 あたしすげえ」

雨降女子「あ、でも、機械みたいでなんか嫌だなー。 自然と覚えてるって」

雨降女子「それじゃ……」スッ

ズズズ……

雨降女子「な、何? 魔法陣の中から、ん……と、扉? 凄く、物々しい感じだけど……」

雨降女子「え、なにコレ、え?」

雨降女子「あ、怪しい……。 誰か出てくるとか?」


……

雨降女子「……何も変化なし。 となると……入れ、と?」

雨降女子「うわ、嫌だなー。 こういう、無謀なことをするのは、いたいけな少女のすることじゃないっての」

雨降女子「……いいわ、やってやろうじゃん、やってやろうじゃないのよ」

雨降女子「開けるわよー……、ってい!」ガチャ バン


————


「……ついに完成した。 これこそが俺の求めていたものよ……」

「これは実験だ。 だが、過程と結果が解れば、期間の長さなど……関係のないことだ」

「その為には……あの世界を侵略せねばなるまい……」

「手駒はまだ十分な量ではないな……」

「……妖精をより多く使う。 これならば数日程度で量を稼げるな」

「楽しみにするがいい……!」


——数日後・川男宅——

少年「……」ボーッ

垢嘗(黒い方から呼び出された日から、というよりあの日帰ってから、ずっと呆然として……)

垢嘗「ねぇ、煎餅あるけど、食べる?」

少年「……あ、はい……」ボーッ

垢嘗「……また生返事」

垢嘗(黒い方に、変な事を少年にしたのかと問い詰めても、訳の解らない返事ばかり……)

垢嘗(二人共、自分の中から何かが抜け落ちたような、そんな感じ)

垢嘗「少年、気晴らしに散歩にでも行きな。 何があったか知らないけど、ずっと呆けているよりはいいでしょ」

少年「……はい」スッ スタスタ

垢嘗(動きはするのね)

垢嘗(……どんな言葉をかけるべきか、分からないわ。 あそこまで滅入ってる状態の人に)


スタスタ

「あ、少年君。 数日ぶりね」

少年「……あ、 」

霊能女「……どうしたの? そんな生気のない顔をして」

少年「……あ、いえ。 特にないですよ」

霊能女「嘘。 本当に『特にない』時は、そんな顔するはずがないもの……」

霊能女「……散歩してた、のかしら? それなら、一緒に歩かない?」

少年「……ん、いいですよ」


——公園——

霊能女「それで、どうしたの? 悩みか何か、あるんじゃないの」

少年「……いえ、大丈夫です。 僕は何もないですから」

霊能女「……」

少年「……」

霊能女「……そう、ならいいわ。 そういうことにするわ。 しつこく聞くのもどうかと思うし……」

霊能女「……でも、たまには頼って。 相談にも乗るわよ」

少年「……すみません」

霊能女「あ、いえ、謝らなくていいわ。 気にしないで、ね?」


友人「お、いつもの二人だ。 久しぶり」

霊能女「そうね、久しぶり。 卒業式以来……かしら」

友人「そうだなー。 俺、いっつも公園で友達と遊んでたから、頻繁に会えるもんだと思ってたけど」

霊能女「私はインドア派だから」

友人「インドア? 何だそれ」

霊能女「外で遊ぶよりも、家で過ごす方が好きってこと」

友人「あー、なるほどな。 でも、少年はどっちも好きだろ? 少年が来ないのは意外だ」

少年「それに関しては申し訳ありません……」

友人「ん、そうか。 仕方ないか、うん。 うん?」

腹痛
少し間を空けて続きを投下します。


友人「なあ、少年からマイナスオーラが出てるけど……。 何かあったのか?」ヒソヒソ

霊能女「わ、分からないのよ……。 そっとしておいてるけど、大分深刻みたいで」ボソボソ

少年「……? どうか、しましたか?」

霊能女「な、何でもない何でもない! 確かに友人君が耳打ちしてきたけど、そんなに疑うようなことではないわ」

友人「そ、そうだそうだ」

少年「そ、そうですか」


友人「あー、えーっと。 少年、気晴らしに遊ぼうぜ! まだすることは決めてないけどさ」

少年「はい、いいですよ」

霊能女「いつものメンバーは? D君とかG君とか」

友人「大体のやつは用事があるって理由で駄目だったよ。 入学の準備じゃねーの」

霊能女「それってつまり、今まで一人で遊んでいたの?」

友人「違うに決まってるだろ! この公園のあっちの方、砂場とかアスレチックがある所で遊んでたんだよ」

霊能女「一人で?」

友人「一人から離れろ! 幼馴染達とだよ! 幼馴染と小僧と気弱の三人な」

少年「……珍しいですね」

霊能女「確かに」

友人「幼馴染は俺が誘って、幼馴染が気弱をどうにかして誘ってきたんだ。 小僧は先に公園に居たけどな」


霊能女「友人君、もしかしたら幼馴染さん達を待たせてるでしょ? じゃあ、早く行きましょうか」

友人「もしかしなくても、な。 そうだぞ二人共、ベンチでのんびりするのもいいけど、遊んた方が楽しいぞー」

少年「そうですね……」スクッ

ビュオオオオオオオ……

友人「おおっ」

霊能女「きゃっ、砂が……」

少年「いつっ……。 砂もですけど、落ち葉が結構飛んできましたね……」

友人「強い突風だったなー。 あー、びっくりした。 まあいいか、行こう」


友人「ん、幼馴染と気弱と……。 あれ、小僧がいない」

霊能女「本当ね。 って二人共どうしたの!? 何箇所も切り傷ができてるじゃないの!」

気弱「う、あああ……」フルフル

少年「さっきの突風に因るものでしょうか……。 気弱君、何故そこまで怯えて……?」

幼馴染「あ……皆」

友人「どうしたんだよ、幼馴染は幼馴染で呆然としてたみたいだし。 何があったんだよ」

幼馴染「えっと、ね。 小僧くんが突然頭抱えて、うううーーって言い出して……」

霊能女「うん、それで?」

幼馴染「それで、いきなり風が小僧くんから吹いてきて……消えちゃったの」

少年「消えた……!?」

幼馴染「消えちゃったの! ど、どうしよう……」

友人「……ま、マジかよ」

今回はここまでです。
次回はこの連休中に。

受験後も終始忙しいなんて聞いていないです。 おかしい
疲労を披露する気はないですが

今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


————

死神「困ったもんだ。 困ったもんだなあ」

女死神「そうですわね」

死神「何で罰を受ける羽目になったのだろうなあ。 辛いよなあ」

女死神「そうですわね」

死神「雨降女子が勝手に魂を持って行きやがったせいだよなあ。 ひでえよなあ」

女死神「そうですわね」

死神「公私共にダメージがあるわけなんだよなあ。 迷惑だよなあ」

女死神「そうですわね」

死神「私の方は雨降女子の脱走、公は失態を犯したんだよなあ。 面倒だなあ」

女死神「泣き面に蜂ですわね」

死神「な? という訳で、大目に見て、せめて罰は無しという……」

死神上司「辛いのは分かった。 だが、駄目ですー」


死神「辛いのは分かった? 分かってない、絶対分かってない」

女死神「本当にそう思いますわ」

死神上司「お? 何でだ?」

死神「顔、腹が立つ程に笑っているからだよ」

死神上司「え、マジで? ちょ、鏡貸せ鏡」

死神同僚A「ほいっす」スッ

死神上司「あらら、笑ってるねえ。 これ」

死神同僚B「他人事のように……」ガシッ

死神上司「あふ、おま、ほほわしづかみすんな」アフアフ


死神「それに……」コトッ

死神同僚A「お、ありがとうっす」

女死神「お茶を入れたり、印刷頼まれたり、マッサージしたり……。 いいようにこき使われる意味が解りませんわ」

死神上司「そりゃ、それが罰だからだよ。 いいじゃない、たまには」

女死神「罰? これが罰? ミスにかこつけて、雑用押し付けてるだけではありませんの?」

死神上司「……、……。 上からそうしろと……」

死神「おい今の間はどういうことだこら」


死神同僚B「まあ待て落ち着けひっひっふー」

女死神「落ち着かせるつもりなら、それなりの態度でやって欲しいですわね殴るぞ」

死神同僚B「はいはい聞いて聞いて。 一応言っておくと、今回やらかした件はさ、本来なら大失態ものなんだ」

死神「……、そうだな」

死神同僚B「場合によってはクビ。 まあ、消されてたわけだ」

女死神「例の女の脱走も含めたら、全員抹消されてもおかしくないですわね……」

死神同僚A「でもまあ、そこのがうまく上と掛け合ってくれたお陰で、何とか今も働けてるっすよ」

死神「え、そうだったのか!?」

死神上司「そうだぞー? 俺のミラクルな交渉で首が繋がったんだぞー? 感謝しろよ? 条件付きだけど」

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