その音を擬音で例えるならガシャリか、或いはバキリか
ただ、衛宮士郎にとってそれは黒衣の男の銃声よりも爆音に思えた


衛宮士郎は眼の前で割れたガラスに気を取られ背後のガラスを踏んでいた


黒衣の男と白衣の男が同時に此方を向く
｢待ちなさいアーチャー!!｣

少女の声が校庭に響き黒衣の男の肩が反応する

だが彼は其れを確認する事も無く、転がるように逃げ出した

士郎｢こ、此処まで逃げれば｣

士郎は校舎の三階にまで逃げてきていた、大丈夫だろうとタカをくくり教室から廊下を見る

既に白衣の男が其処まで来ていた、士郎が息を切らして走ってきた道のりを殆ど変わらぬ時間で、しかも呼吸は全く乱れていない様に思える

男と眼が合った

士郎｢う、わ｣
白衣の男｢此処で見たことは忘れておけ、無関係の命まで取りたいとは思わん｣

殆ど腰を抜かしていた士郎だったが槍使いの言葉に僅かに反応する

士郎｢関係有れば、[ﾋﾟｰｰｰ]ってのか？｣
白衣の男｢……否定はしないな｣
士郎｢だったら俺は……｣

しかし言い終わるより早く、一発の銃声が言葉を掻き消してしまう

少女｢ちょっとアーチャー！一般人を巻き込むつもり!?｣
アーチャー｢……｣

怒鳴る少女の声に覚えがあり思わずそちらを見返す

士郎｢お前、まさか遠坂!?｣
遠坂｢うそ、衛宮君!?｣

驚く二人を他所に戦士二人は再び臨戦態勢に入る

白衣の男｢此処で続きをするつもりか、あの二人を巻き込んだらどうする!?｣

アーチャー｢例え、どれだけの犠牲が出ようとも構わない｣

遠坂｢え？｣
士郎｢な!?｣

アーチャー｢混沌を、滅ぼす為ならば！｣

放たれた弾丸を槍がそらす、逸れた先で士郎の腕が軽く裂ける

士郎｢しまっ!?｣

彼は反射的に其れを押さえると、これまた反射的に逃げ出した

白衣の男｢まて、未だ答えを聞いて｣

白衣の男追い縋ろうとするが黒衣の男、アーチャーが其れを許さない

再び弾けた火花に背を向けたまま士郎は帰宅した

士郎｢……結局逃げ出してしまった｣

自宅で士郎は漸く落ち着きを取り戻した
裂けた腕に包帯を巻き出血が滲んでこない事を確かめる

士郎｢何だったんだあれは｣

未だに校庭の戦いが頭から離れない、そして白衣の男言葉も


｢未だ答えを聞いていなかったな｣


背後から声を掛けられた

その場を飛び退き、偶々手元に有ったポスターを丸めて剣のように構える
その先で白衣の男が立っていた

白衣の男｢二度目だが、彼処で見たものは全て忘れておけ｣
士郎｢嫌だ｣

きっぱりと要求を断る

士郎｢アンタが誰かを殺すって言うなら俺は其れを止めたい、だから忘れられない!｣
白衣の男｢そうか、残念だが俺はお前を殺さないといけない｣

白銀が胸へ向けて延びる

大丈夫だ、イメージするものは常に最良の先
進化し続ける自分自身、限り無く精密に想像した其れを現実の自分に上書きする
頭から指の先まで、ポスターまでをも強化し、迫る線の先を強引へ叩き付ける

自分の代わりに畳に穴が空くのが見えた

白衣の男｢少しはできるのか、ならば遠慮は要らんな｣

一旦ここまで、次回はセイバー召喚までは進めたい

鯖達は多作品混合でございます
だからランサーはランサーで別の作品かもしれないし、セイバーもセイバーで別の作品かもしれません


と言うかアーチャーも何き風じゃないかもしれません(棒)

槍使いは未だ真名に繋がる情報出してないからね、仕方無いね

不死身だったり死亡フラグクラッシャーだったりする


元ネタは強いて挙げるなら子ネタスレから

続き行きます

生身の人間が英霊に抗おうとしてもその結果はタカが知れている
それは自らを限界近くまで『強化』した士郎を以てしても変えられなかった

経験が、其処から来る技量が全く不足している

何度と無く吹き飛ばされ、其れでも強化した体でダメージを軽減し何とか粘り続ける

しかし遂に最後、吹き飛ばされた先で土蔵の扉をぶち抜いて袋小路に叩き込まれる


士郎｢がっ……｣
白衣の男｢……終わりだな｣

白衣の男が銀色の槍を士郎に突きつける、端から見れば完全に詰みである
だが、士郎は諦めてなど居なかった

この土蔵こそが彼の逃亡の最終地点、反撃のためのターニングポイント

士郎「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」

魔翌力が迸る
不完全な回路を焼きながら士郎のすべてが術式として出力される
地面に浮かぶのは淡い緑色の光を放つ魔方陣

それは彼が唯一養父以外の人物から学んだ物
純白の姉から送られた切札

魔翌力の奔流が風となって土蔵に納められていたカードの束を吹き上げる

槍使いは只其れを見ているだけだった

士郎｢来れ—｣

術式は完了した
カードの嵐の中に長身痩躯の男が佇んでいるのが分かる
英霊だ、しかしその姿は現代の一般人と大差ない

???｢……｣

男が空中を舞うカードを一枚キャッチし手にした小箱に納める、鼓動のような待機音を上げ始めた其れをへそほどの位置にセットすればベルトが出現し位置を固定する


硬直から解けた槍使いが槍を振るう

男が小箱のレバーを引く

【ｵｰﾌﾟﾝｱｯﾌﾟ】

金属音と共に槍は弾かれた

蒼く半透明な壁が男と槍使いの間で槍を弾いていた
其れに槍使いは眼を丸くして驚愕する

白衣の男｢いまの感触、その輝き、まさか!?｣

???｢ｳｪｰｲ｣

男が突進する様に壁を突き抜ける
すると槍を阻んだ筈の壁は最初からそうあるべきだったかのように男の全身に絡み付き鎧を形作る
甲虫を模したような鉄仮面、蒼く照り返す革鎧、そして銀に輝く鎧を上半身を中心的に着込んだ騎士姿

白衣の男｢オリハルコン!!｣

【ｻﾝﾀﾞｰ ｽﾗｯｼｭ】
【ﾗｲﾄﾆﾝｸﾞｽﾗｯｼｭ】

一閃、イカヅチを纏った刃が槍使いを捉える
僅かに腕の表皮を斬ったにすぎないが電流のダメージは通ったはずだ

白衣の男｢オマケに電気の魔術剣か、成る程準備無しでは勝てないな｣

そう言って白衣の男は退場していった

>>18
×【ｵｰﾌﾟﾝｱｯﾌﾟ】
○【ﾀｰﾝｱｯﾌﾟ】

戦いを終えた騎士が変化を解き、ゆっくりと士郎に向き直る

???｢……君が俺のマスターかい?｣
士郎｢あぁ｣

しっかり頷いて自らのサーヴァントに手を差し伸べる

士郎｢助けてくれるか、セイバー｣
セイバー｢君次第さ、兎に角宜しく｣

こうして少年の聖杯戦争は開幕する

本日はこれにて終わり
よしなに

黒木君がアーチャー？　キャスターじゃ無いの？

しかし、アルトリア・セイバーに召喚獣のナイツ・オブ・ラウンドをぶつけたら、どんな反応を魅せただろうか。

ランサーの正体わかったかもしれん、多分コイツ剣の方が強いぞ

鯖一覧(仮)

剣：剣の鬼札
槍：鎧の魔槍士
弓：魔銃の射手
騎：鬼札の祖
暗：死徒
魔：富士見の娘
狂：畏怖

※この配役は予告なく変更する可能性があります

投下開始

士郎がサーヴァントを召還したころ

間桐家

この家の人間ではない黒い服の青年がこの家の礎ともいえる『蔵』の前で何かを待っていた
やがて生白い蟲が蠢く、暗く湿っぽい其処から少女が一人出てくる

彼女が待ち人だったのか青年が駆け寄って心配するように問いかける

青年「桜、無理はしてないか!?」
少女「ライダー…大丈夫、今日は短かったから」

大丈夫と語る少女、間桐 桜の顔色は目に見えて悪い

ライダー「だがやはり…」
桜「大丈夫、ほら貴方のマスターは私じゃないでしょ」
桜「早くいかないとお爺様が怒るわ、だから」

桜の言葉にライダーは不服そうな顔をしていたがやがて彼女に背負向けて歩き出そうとする






が

ライダー「だれだっ!?」

ライダーが手に持った石を投げつける
その先では間桐の物ではない赤黒い蟲が桜に近づくように這いずっていた

石が直撃し鮮血のような赤い体液をまき散らす蟲に桜が小さく息を呑み後ずさる

桜「ら…ライダー、今の百足みたいなのって…」
ライダー「間桐の蟲じゃなかった、何処かの使い魔…なのか？」

険しい顔で『血溜り』を睨み付けるライダーとその背に隠れる桜
異常を察したのか蟲蔵から無数の蟲たちが這い出し

その先で突如現れた『別の』蟲達に襲われる

桜「ひッ」
ライダー「気配遮断!?」

『蟲が気配遮断を以て間桐に侵入した』

信じがたい事態が発生していた

魔：富士見の娘

……ドラまたさん？

蟲蔵から出てきた蟲たちをあらかた殲滅した『蟲』たちは続けてライダーと桜を取り囲むように這い寄ってきた

ライダー「くっ」

【ﾁｪﾝｼﾞ】

ライダーが一歩前に出るとそのへそほどの高さに『ハート』を模したようなベルトが出現する
其処にカードを通せばその姿が黒い霧のようなものに覆われその姿を蟷螂を模した鎧姿へ変化した

【ﾌﾛｰﾄ ﾄﾞﾘﾙ ﾄﾙﾈｰﾄﾞ】
【ｽﾋﾟﾆﾝｸﾞﾀﾞﾝｽ】

手にした弓状の武器にベルトのバックルをセットし続けざまに三枚のカードを読み込めば黒い旋風が巻き起こり
ライダーの体を上空に運ぶとともに『蟲』達を一箇所に寄せ集める

そしてライダーが一度空中で膝を抱えるように身を縮めた後、その体を伸ばす勢いに旋風の回転を加えてさながらドリルのように蟲の群れに蹴りを叩き込んだ

ライダー「…」
桜「ライダー…」
ライダー「シンジのことが心配だ、少し様子を見てくる」

【ｽﾋﾟﾘｯﾄ】

ライダーは人の姿に戻りその場を後にする


桜は蟲達の残した血溜りを見ていることしかできなかった

翌朝より桜の姿を見た者は居ない

本日は以上です

少しレス返し

>>27
本家ではありえない統率のとれた彼らに愕然とするアルトリアさん

>>28
槍には槍の利点も

>>32
(仮)

衛宮士郎によってセイバーが召喚されて数刻
間桐が襲撃され、桜が姿を消したほんの少しの後

衛宮家

士郎がセイバーをこれから如何するかを考えている時に彼女はやってきた


凛「うそ…」
士郎「遠坂？」

門に前に立っていた少女、遠坂 凛が目を丸くしてセイバーと士郎を見比べている

凛「衛宮君貴方聖杯戦争に参加する気なの!?」
士郎「え…な、聖杯？」
セイバー「え？」
凛「え？」

凛「ちょっと、なんで聞き返してくるのよ！」
セイバー「あれ、だって君俺のことキチンと召喚したよね!?」
士郎「いや、助けてくれる人を召還する魔術って教わっただけで聖杯とかって…ええ?!」

士郎が言うにはこういう事だ

曰く、魔術は養父に触りだけ教わったのみである
曰く、それ故に魔術師達の常識なんて物は知らない
曰く、サーヴァントの召還は義姉に養父の没後教わった
曰く、義姉の名は

士郎「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

遠坂は頭を抱える
おそらく、否確実に彼はハメられている

大方弱い魔術師である彼をマスターにすれば一枠相手にするのが楽なマスターが出来ると言った所か

こんな具合にアインツベルンの目論見を推測、士郎にサーヴァントとの契約を破棄し協会に保護を求めるように勧める

が

士郎「嫌だ」

何を何度説明しても始終がこの調子である

遠坂の周囲の空気が剣呑とし始める

士郎「放っておけば誰かが犠牲になる、もしかしたらそれは俺の知っている人かもしれない」

それでも士郎は臆さない

臆せない

士郎「そんな時に俺に何もできないのは嫌なんだ！」
セイバー「でもその為に君の周りが犠牲になるかもしれない」

退がらない士郎をなだめたのは意外にもセイバーであった

セイバー「俺の先輩は恋人を戦いに巻き込んで死なせてしまった、君にも同じ様な事が無いとは限らない」

誰かを守ろうとして自分が犠牲になることを彼は厭わない
そんな士郎を見てセイバーは自分に似ていると思った
だからどうすれば彼が迷うかも何となく分かる

きっと彼は自分の起こした行動で誰かを傷つけたくはないはずだ

実際士郎は何も言い返せないでいた
誰かを巻き込んでしまったときそれを守りきる技量が未だ無い事は先の槍兵との戦いで思い知っている


セイバー「保護を求めるにも、正式にこの戦争に参加するにも教会に行かないといけないんだよね？」
凛「ええ、一人で行けないなら送っていくわよ」
士郎「……」
セイバー「行こうマスター、着くまでにしっかり考えて答えを出してほしいんだ」

彼は自分に似ている、だから後悔させたくはない

はたして聖杯に呼ばれた自分は後悔していなかったのだろうか

この願いは後悔に入るのだろうか

だがこの思いを後悔とするなら

一人でもこんな思いをさせてはいけない

これで彼がマスターを降りてしまっても

きっとそれだけは後悔しないはずだ

本日はこれまで

冬木教会

孤児院としても機能している筈の其所は妙に暗く埃っぽい

言峰｢成る程、では君の参加を認めよう｣

妙に威圧感のある神父からの質疑応答を終え疲れきったように士郎が息を吐く
結局士郎の出した答えは『参加する』だった
その答えに凛は僅かに顔をしかめ、セイバーは一言｢判った｣と答えただけだった

言峰｢さて、これでアサシン以外のサーヴァントとマスターが参加を表明した、程なく本格的に戦いが始まるだろう｣

凛と士郎が重々しく頷きそれを側でセイバーが、入り口に佇んだアーチャーが見つめている

その後殆ど知識の無い士郎の為に最低限の注意事項を説明され解散となった

立ち去る彼ら、否、士郎に言峰が声を掛ける

言峰｢喜べ少年、君の望みは今叶う｣

その声に士郎は訳が判らないように、セイバーは何かの敵を見るような眼で振り返る

そしてしばらくセイバーと言峰がにらみ合い、セイバーが先に眼を逸らし教会の外に出ていった
アーチャーも何かの念が篭った眼で言峰を振り返りセイバーに続く
最後に凛に促され士郎が立ち去っていった

???｢久し振りね、シロウ｣

協会を出てすぐ、紫色のコートを着た少女に声を掛けられる

士郎｢イリヤ！｣
イリヤ｢あーまた呼び捨てにするー、私の方がお姉さんなのにー｣
凛｢ッ!?アインツベルン！｣

士郎が久しぶりの再開に顔を弛める傍らで凛が『難敵』の出現に全身を強張らせる

それに応じるようにアーチャーが銃を抜きセイバーがイリヤを守るように立ち塞がる

アーチャー｢……｣
セイバー｢……今は未だ戦いたくない｣

その光景を見てイリヤは微笑む

イリヤ｢教えた通りにできたんだ、シロウ偉い｣

そのイリヤの背後で白い何かが姿を表しつつあった

イリヤ｢二人のサーヴァントも見れたし私のも見せてあげる、おいでバーサーカー！｣

そしてそれは現れた
魔翌力も殺気も生命力すらも感じない、ただ存在感だけが凄まじい白い塊
今までこの世界の地上に存在したどんな物とも異なる純白の暗黒物質
あらゆる可能性を秘めた其がイリヤの背後に鎮座している

サーヴァントにあるまじき実在感に気圧され凛が半歩後ずさる

凛｢なによアレ…本当にサーヴァントなの？｣

アーチャーが無言でセイバーからバーサーカーに照準を移す

凛｢!?駄目アーチャー！｣

制止したときにはもう遅い、発砲された弾丸を止める術はない

鈍い音と共に鉛がバーサーカーの体にめり込む

ただそれだけだった

吹き出す血も、苦悶の声も、怯んだ身じろぎも、全くのリアクションがない、まさしく其処に有るだけ

なのに

その場にいる全員が嫌な予感を感じていた

【畏怖すべき可能性の化身(IF)】


唐突にバーサーカーの体についた銃創が蠢く

傷口がまるで歯車のような形に変化し伸びるようにアーチャー目掛けて突き出される
内部は捻れたように歯車状の溝が続いており…

士郎｢ライフリング？｣

構造把握に長けた士郎がまずそれに気づく

瞬間マズルフラッシュ、一拍遅れて炸裂音が響きアーチャーの額に紅い花が咲いた

本日はこれまで


ウルトラな化物をご用意致しました

バーサーカー 真名イフ

タイプ･アウンノウン
終りを迎えた地球の断末魔の声を聞き駆け付けたU-1の一体
駆け付ける過程で時空を越えてしまい現代、それも平行世界の日本に現れてしまった

特性は『因果応報』
あらゆる外部影響を取り込み模倣し、自らを排除せんとするものを逆に排除し尽くした
最終的に少女が涙ながらに奏でた笛の音を取り込み全身を神々しい姿の楽器に変え、光の巨人の手でも宇宙に戻される


後に宝石翁に観測され其を模したオルゴールが作製され畏怖、或いはIFをもじったイフと名付けられる
これを譲り受けたアインツベルンが触媒として使用、バーサーカーが召喚された

当然ながら完全に再現するには至らず【原初の一】も持たない

宝具
【畏怖すべき可能性の化身(IF)】
バーサーカーのU-1としての特性『因果応報』
本来的にはEXクラスだが再現しきれずにBクラス程度に
つまりAランク以上の特性、神代魔術、神造宝等は劣化する
一度の戦闘を終える毎に元の白い塊に戻されると言う制約が加わっている

令呪を消費して以前に得た特性を再会得可能

キャスターのキャスティング……富士見の娘だがアリャ嘘だったスマン

投下開始

アーチャーの体が銃弾の勢いに流され僅かに浮き、ゆっくりと傾く

そして一拍の間を置いてその場に倒れ伏し赤い血溜まりに沈んでいく

凛｢う…そ…｣

呆然としたように呟いて凛がその場に膝を着く

バーサーカーの銃口がすかさずそちらを向いた

イリヤ｢やっちゃえバーサーカー！｣

マスターの実に大雑把な指示に従い銃口が火を吹く

【チェンジ】

凛を捉えたかに見えた銃弾は寸前で青い壁に阻まれていた
その壁を潜り抜け騎士が姿を表す

セイバー｢ウェェェェイ!｣

【タックル キック】

突進のカードで加速し蹴りのカードで一撃
バーサーカーは勢い良く吹っ飛び転がって行く、銃口は天を向いてしまい役に立ちそうもない

だが塊の下部に葦のようなものが生えたのを士郎もセイバーも見逃さなかった

士郎｢まずい、一気に決めるんだセイバー！｣
セイバー｢わかってる！｣

【マッハ サンダー スラッシュ】

高く飛び上がったセイバーの手の中で雷撃を纏った剣が眩いばかりの光を放つ
その輝きを遥か頭上からジャンプの勢いも合わせた高速でバーサーカー目掛け叩きつけた

一撃の元両断され爆散するバーサーカー

だが


気配は消えない

爆炎を裂き、眩いばかりの光を帯びた斬撃がセイバーを襲う

セイバー｢ウェ!?｣

手の剣で防ごうとするが炸裂音と共に其れを弾かれ無防備なまま攻撃を受けてしまう

士郎｢セイバー!｣

そして煙の中からそれは現れた

左腕に銃を、右腕に鎌のようにも見える剣を融合させたような歪なヒトガタ

バーサーカー｢■■■■■■ーッ｣

叫ぶと同時に剣を振るえば鎌鼬のように雷撃が放たれシロウに向かう

セイバーは未だダメージから復帰していない
自分で避けなくては、だが





避ければ未だ背後で放心している凛が斬撃を受けてしまう


士郎｢避けれるかよッ!?｣

苦し紛れに空を見る



月が出ていた

???｢…はね、……の…放に………かった｣???｢しょう…ねー…｣

あぁ、あれはあの日の月だ

俺が■■■■■を目指すようになったあの日の

これが走馬灯なら以外と期待はずれだ
ぼんやりとしていて振り返るには物足りない


そうだそう言えばあの日に俺は


あれ

走馬灯に割り込むスキル【足袋死拓(デッドマンズ・ソックス)】

次に気がつくと俺は中学の体で、中学の制服を着て、知らない中学の教室の自分の席に座っていた




｢……なんでさ｣

本日はこれまで、よしなに

｢あぁ、しゅじんこうよ死んでしまうとは情けない……いや、走馬灯に割り込んだから『未だ』死んじゃいないか
おはよう、こんにちは、こんばんは、始めまして久しぶり、現実での時間軸は解らないが歓迎するよ衛宮君
いや、べつにスキルを使えば解らないこともないんだぜ、挨拶くらいきっちりやれって言うのなら『相手視点での時刻を知るスキル【今汝(ユアクロック)】』があるからね
うん、今はこんばんはが正解みたいだな、まったく僕を何時まで待たせるつもりだったんだい？
かれこれ二十七日が経過したじゃないか｣

教卓の上に『座った』、教壇に立ったのではなく飽くまでも『教卓の上に座った』少女が一気に話し掛けてくる
突っ込みを入れる間もなく、余計な口を挟む間など更に無く
すべての台詞をいい終えた彼女は 微笑むような/蔑むような/見下すような/羨むような 無表情で此方を見つめていた

年のほどは『今の』衛宮士郎と同じ程に見える、つまり中学生相当か
セーラー服にカチューシャ、黒く長い髪が眼を引く、履き物は黒いニーソックスに上履き、書かれているのはクラスと名前

『3-C ■■■』

名前は黒く塗りつぶされて判別できなかった

士郎｢えっと……君は？｣
■■■｢あぁ僕はキャスターのサーヴァントとして召喚された■■■ ■■■、親しみを込めて■■■と呼びなさい｣

名前は聞こえない、だが決して声が聞き取りづらい訳ではない、むしろ自然と耳に染み込むような気さえする程だ
だが名前だけが何かに遮られたように聞き取れないのだ

■■■｢おっと、令呪の効果か、逆らえなくもないがマスターが通した僅かばかりの『我』を無下にしてもしょうがない｣

そういってキャスターは『英霊になった■■院さんで英霊院さん』と名乗った

士郎｢……なんでさ｣

英霊院さん｢マスターが令呪で名乗りを禁止したんだよ、全く僕の名前を知ったところで誰も何も出来はしないのに、小心なマスターだ｣
士郎｢は、はぁ｣

適当に相づちを打つ、相手は英霊を名乗った
迂闊に行動しても返り討ちが関の山だ

英霊院さん｢兎に角今のマスターが全く優勝の器じゃ無くってさ、だから君に『媚び』を売りに来たのさ｣
士郎｢はぁ……はあ?!｣

つまりこのキャスター……英霊院さんはこう言ったのだ『現マスターを捨てると』
驚いて立ち上がった際に向こう脛を机に打ち付けのたうつ士郎を放置して彼女は朗々と語る


英霊院さん｢何故かって？マスターがモブキャラだからさ、記憶喪失の元NPCでもなければ小を切り捨てた正義の味方でもない、だから僕は『主人公』の君が頼りなのさ｣
士郎｢俺が主人公？主人公なら英霊の方が良いんじゃないか？｣

｢あぁ確かに彼らは彼等の物語において主人公だったさ
特にセイバーとアーチャーは素晴らしい一級の主人公『だった』さ
アサシンは……アレはただのチートだ、語るもおこがましい程に最強で最弱の化け物、主人公だけどラスボスの要件も満たしているからね
それでも今回は君が頼りだ『この世界』は紛れもなく『君の物語』だからね
っても君の本職はエロゲ主人公でバッドエンドもある、『勝つべくして勝つ』主人公には程遠い
だから君はそのエロゲ体質を改善しないといけない
それ以上に今現実に居るバーサーカーをどうにかしないと生けない
このままじゃ次は教室じゃなくて道場逝きだ｣

英霊院さん｢と言うわけで第一回『聖フラスコ計画』サブタイは『味方の有効活用』だ｣

黒板にやたらポップな書体で主人公についての蘊蓄がつらつらと書き連ねられる

士郎｢味方の活用？｣
英霊院さん｢そう、あの場面、実はもうバーサーカーへの対抗手段が三つもある｣

と言うわけで本日はこれまで、良しなに

これって真名はあえていっちゃだめ的な感じ？
3兆4021億9382万2311年と287日生きてる人と考えるのをやめた人(？)なんて相手にできるかwwww

いったい誰がラスボスなんだ…

候補
イフ
英霊院さん
桜
アサシン？
ムッコロ

辺りか？

>>86
合ってる確信がある鯖なら別に構いませんよ

>>88
???｢……解せぬ｣

では投下します

英霊院さん｢じゃぁ君はこれからちょっとだけ時間の戻った現実に帰る｣
士郎｢本当に何でもアリですね…｣
英霊院さん「頑張っといで、期待しすぎない程度に待ってるぜ…っと、その前に渡すものがあった」
士郎｢はい？｣
英霊院さん｢ちょっとこっちに顔を近づけて、そんで目を瞑ってくれ｣
士郎｢え、ちょ!?｣
英霊院さん｢はいはい、抵抗しない『誘導のスキル【右手をご覧ください(リーディングライト)】』｣

キャスターがそう宣言した瞬間士郎の体が無意識に彼女の指示に従ってしまう

いや、だがこれはまずい
彼が本当にエロゲ体質主人公ならこれは逆に【見える地雷(シボウフラグ)】だ

士郎もそれを感じ取って何とかしようと焦ってはいる、が無情にも体は反応しない

閉じた視界の向こう側で何か温かく柔らかい瑞々しい物が唇に触れた

士郎が去った後の教室、さっきまで士郎が座っていた席の隣の席の机に赤い染みが滲み出す

???｢行ったようだな｣
英霊院さん｢いつから覗き見していたんだい｣

響いてきたのは男の声、どこぞの神父のような声はただ発せられるだけで周囲の気温を一度下げる

英霊院さん｢まったく、読んだのは士郎君だけなんだけど｣
???｢もはや私は『何処にでも居て何処にも居ない』そういう存在だ、そう成ってしまった、そう成り果てた｣

声は朗々と語る

???｢だから私は私である限り何処にだって居られる、例え誰かの夢の狭間でも、例え死の間際の一瞬の馬上でもいい｣
英霊院さん｢やっぱり君はただのチートだ、語るもおこがましい程に最強で最弱の化け物、主人公だがそれ以上にラスボスが似合ってるぜ｣
???｢貴様が言えたことかキャスター｣
英霊院さん｢僕のことは親しみを込めて■■■さんと、ゴホン、英霊院さんと呼びなさい｣

ク…

ク…ハハ……

クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

正直な話「あんしんいん」と「あじむ」は読みが違うから大丈夫な気がするけど

それは如何なる感情からの笑いだったのだろうか

険しい顔のキャスターを男の笑いが取り囲む

???｢こいつは愉快だ、傑作だ！我々と最も遠くもっとも近しい貴様に親しみを込めろだと!?やめろ、笑い過ぎで腹が捩れる、反吐まで出そうだ｣
英霊院さん｢そいつはどうも、チートのアサシン｣

笑いがやむ

先ほどまで赤い染みの広がっていた席に白いコートの少女が座っている、黒く均一に切り揃えられたつややかな黒髪
中学生相当の肉体のキャスターよりもさらに一回り以上小さい体躯、血玉の如き紅い瞳

彼女の口から『男』の声が滑り出す

アサシン｢貴様あの少年に、『何を渡した』｣
英霊院さん｢簡単さ君が大好きな物、君を倒す物、その資格を持つ物｣
アサシン「アレには必要無い物だ。否、既に持っている」
英霊院さん｢いいや必要だね、今回のような聖杯戦争では、特に｣

あのスキル【人間(ノーマライズ)】は必ず彼を助ける

本日はこれまで

>>93
名乗りは『真名』が直接分かるようなワードを指すということで
『あんしんいんさん』は『安心院』につながりやすいが『えいれいいんさん』から直接『安心院』にはつながらないと

士郎は遠坂に近寄り耳打ちする

士郎｢義姉さん……いや、イリヤを止めたい、力を貸してくれ｣
凛｢……勝算は有るんでしょうね｣

返答する遠坂の目は冷たい

凛｢見ただけでわかるわ、アレはサーヴァントとしてはいけない規格外の存在……只協力しただけじゃ勝てないわ、ソレとも正体でも知って｣
士郎｢……真名はイフ、受けた特性を吸収して撒き散らす怪物だ｣
凛｢……え?｣
士郎｢信じてくれ遠坂、策なら有るんだ｣

遠坂が目を丸くして驚く

凛｢何ソレ……何でアンタがそんなこと知って……｣
アーチャー｢……｣

いつの間にかアーチャーが凛の背後に立ち無言で士郎の顔を見続けている…いや、睨んでいるようだ
見定めるように、射竦めるように視線が士郎の心を抉る

士郎｢もう一度言う、信じてくれ｣



ため息を吐いて遠坂が首を振った


凛｢アーチャーに睨まれても引かないのね、良いわ信じてあげる…作戦任せるわ｣

イリヤ｢作戦会議は終わり？｣

イリヤはこちらを待っていた
当然だあのサーヴァントは此方から仕掛けないと動くことが出来ない

其所に


【タックル】
【スラッシュ】

セイバー｢ウェェェェェイ!!｣

セイバーが突進を食らわせる

そしてバーサーカーがその【突進】を会得するより早く斬り付けた

忽ち足と刃の付いた触手が生えセイバーを取り囲むように襲い掛かる、が


凛｢大サービスよ、持っていきなさい！｣

遠坂が放った魔術とアーチャーの弾丸がソレを総て弾き落とす
バーサーカーの表面に宝石のような結晶が浮き上がり触手の何本かが銃口を得る、だがその間にセイバーは撤退済みだ

【マッハ サンダー キック】
【ライトニングソニック】

剣を地面に突き刺したセイバー、その仮面の表面を覆う透明なパーツが紅く発光し力を増して行く

そして音速の助走を経て飛び上がりイカヅチを纏った蹴りを叩き込む

バーサーカーに突き刺さる一条の矢と化したセイバー
撒き上がる爆煙
未だだ、未だ仕上げには行けない

凛｢アーチャー【宝具の開帳を許可するわ】｣


間髪入れずに叫んだ遠坂の手の甲で、既に失われている一画が発光しアーチャーを縛る力が一時的に解放される


アーチャー｢……動いた……｣

爆煙を突き破って触手が伸びる、先端は銃口、射線上はアーチャーが
そうはさせまいと丸腰のセイバーがそれらを掴み取る、結果放たれた銃弾は狙いが逸れアーチャーの足元の地面に打ち込まれれるだけに終わった


アーチャー｢ソイル、我が力!!｣

腕の円筒を胸の前で構えると緑色の宝玉が沈み込み、代わりに螺旋の溝が刻まれた円錐が飛び出す、やがてソレからは黒い四枚の風車が突き出し周囲に散らばる魔翌力ごと大気を円筒内に取り込んで行く

円筒の繋ぎ目から解凍されたように蒸気が漏れだし、その姿を粒子状に分解、再構築が開始される

腕輪、そこから伸びるチューュブ、連結されたフラスコ、内部で脈打つ黒い肉塊、三発の弾倉、そしてそれぞれに対応したバレル


アーチャー｢【魔銃】、解凍｣

風が収まる、既に散らされた煙の向こうでは無数の触手を携えた宝石まみれの怪人がセイバーと取っ組み合っていた

士郎｢セイバー、離れてくれ！｣

セイバーが触手を強引に引きちぎり離脱する
バーサーカーは追撃するように全身から宝石魔術を打ち出すが寸前で剣を手にしたセイバーによって弾かれた

その隙にアーチャーが宝具を行使する

アーチャー｢お前に相応しいソイルは決まった！｣

アーチャーがバーサーカーを指差し宣言すると彼の腰のベルトで三発の弾丸が存在を主張するように輝きを増す

「"すべてを焼き尽くす" ファイアーレッド」
「"すべてを凍てつかせる" アイスブルー」
「そして"闇を貫く閃光" ライトニングイエロー」

軽く指で弾いただけで吸い込まれるようにシリンダーに収まる弾丸は曲芸的であり芸術的にもみえる

次第に肉塊の鼓動は加速し連動して円錐の回転も速くなる

——吼えろ!【 トライディザスター】


上空に向けられた銃口から三条三色の光が放たれる
弾けた光はやがて一つの像を結ぶ

召喚獣｢■■■■■ーッ!｣


それは一頭の牛の型をしていた
角は三本、それぞれに炎が冷気が、そしてイカヅチが宿っている



召喚獣｢■■■■■■■■ッ!｣

それら総ての力が三位一体となりバーサーカーへ殺到する

爆発四散するバーサーカー、今度こそ仕上げるときだ

士郎｢思い描くのは最速の自分｣

魔術回路に火を点す
回路は焼き切れては枝分かれしながら再生を繰り返し無尽蔵に衛宮士郎を塗り替えようとする
その一本一本に神経を通わせ意味を付け関連を付け整理する
体内に時計が投影される感覚

——セカイは塗り替えられた


士郎｢【固有時制御・二倍速】｣

本日はこれまで、良しなに

そういや投影は出来ないんだよな
英霊院さんの願いは大体想像つくな

>>113


投影は可能ですが【剣製】は出来ません
代わりに自己強化に特化してます

士郎｢【固有時制御・二倍速】｣

体内で時間の法則が滅茶苦茶に荒れ狂うのを正し、外との時差の中を走る

世界が鈍化する、自分が加速する

バーサーカーの猛攻を瞬時に掻い潜りその体に強化した拳を叩き込む

この強化はダメージを稼ぐためではない、ただ自分の拳を保護するためだけのもの

そう、狙いはダメージではないのだ

士郎の加速した一撃を受け、バーサーカーもまた加速する
単純な加速ではない、魔力を消費した上で更に加速度的に消費を上乗せする

存在するだけで魔力を湯水のごとく浪費するこのバーサーカーにとってこの魔術は正しく【毒】でしかない

事実イリヤは汗を流しながら消費される魔力の流れを、其れによる疲労感を耐えている

士郎｢【固有時制御・三倍速】!!｣

ならば更に加速する

士郎の体に掛かる負担も半端なものではない

すでに戦いはサーヴァントをおいてけぼりにしてイリヤと士郎の我慢比べに突入していた