貴志祐介「え、どうしてそう思うの？ 」

編集者「あのですねえ......あの作品の舞台がどんな様子かってことはもちろんわかってますよね？ 」

貴志祐介「一面真っ赤な岩だらけだね」

編集者「ほら、そこです。そんな場所、どう頑張っても用意できないじゃないですか」

貴志祐介「今だったらCGでも使えばいけるでしょ。発売した時からもう何年たったと思ってるんだい？ 」

編集者「まあ、そういう考えも無くはないでしょうけど、きっと違和感しか残りませんよ」

編集者「ただでさえ実写映画でのCG使用は憚られるというのに、上映中ずっと使うのは......」

編集者「まだ、アニメーションとして作った方が楽じゃないかと」

貴志祐介「なら、アニメ化しようよ」

貴志祐介「本当は主演を佐藤浩一、堀北真希のお二人さんにやってもらえたら最高だったんだけど、贅沢は言えないしね」

貴志祐介「うん、アニメ化アニメ化。いやー、めでたいね」

編集者「あのー、一人で盛り上がっているところ悪いのですけど、あくまで実写映画化よりはましなのであって、アニメ化もあり得ないと思いますよ」

貴志祐介「なっ......それは一体どういうことなんだ！ 」

貴志祐介「あの『新世界より』だってアニメ化不可能と称されていたにも関わらず、深夜アニメだったが２クール分をやりとおしたのだぞ？ 」

貴志祐介「だったら、クリムゾンの迷宮だっていけるはずじゃないか」

編集者「まあ、落ち着いてください。理由を話しますんで」

貴志祐介「......分かった。とりあえず、色々考えるのは聞いてからにしよう」

編集者「ありがとうございます。じゃあ、順を追って説明していきますね」

編集者「一つ目。描写があまりにもえぐい。しかも、新世界よりでは削ることのできたそれらも物語の中核を担う伏線に繋がっているものが多く、テレビ放送するものにしてはちょっとあれなんですよね」

貴志祐介「......否定はしない」

編集者「二つ目。ドナルド似のマスコットをミッキー似のマスコットが撃ち殺してしまうところ、あれはまずいですね。某国からの圧力がビシビシ伝わってきますよ、きっと」

編集者「まあ、これについては別のマスコットを用意すればいいだけの話ですので、そこまで問題はないでしょう」

編集者「ただ、次のはそうとも言えないのです」

貴志祐介「それは......一体......」

編集者「貴志さん......もし、この作品がアニメ化したとして、売れると思いますか？ 」

貴志祐介「売れる？ そりゃあ勿論売れるだろう。なんたって、新世界よりもアニメ化のおかげで相当売れたからな。この作品も同じ運命をたどってくれることに違いない」

編集者「確かに、原作はそうなるでしょう。えぐい内容とはいえ、話の流れとしては素晴らしい作品であることには変わりがないのですから、認知度が上がることに比例して売れ行きが伸びるというのは当然の話でしょうね」

編集者「しかし、ここで、アニメを制作する会社の立場にたって考えてみてほしいのです」

貴志祐介「言っている意味が？ 」

編集者「先生、聞き直すようで悪いのですが、ドラマ化とアニメ化、その二つの大きな違いって分かりますか？ 」