孤独のエレナ Season3 (42)

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「…という事で、新しいミュージックビデオについては大丈夫そうでしょうか?直にマネージャーさんへ詳細お送り出来ると思いますが」


英玲奈「はい。問題ありません」


「ありがとうございます。いやぁ、A-RISEの皆様はそれぞれソロ活動をされてますから、フットワークが軽くて助かります」


英玲奈「言ってしまえば、私達は音楽に携われるならそれで良いので」


「こちらとしても有難い事です。助かってます」


英玲奈「いえそんな…」


「さてと…そうだ。所で英玲奈さん、御趣味とかはあるんですか?」


英玲奈「と、言いますと」


「いえ、何でもA-RISEの皆さんは自主的に苛烈なレッスン等を課してるそうじゃないですか」


英玲奈「ああ、まあ確かに」


「しかし自分の時間も中々確保出来ないとなると、身体を壊したりしませんか?」


英玲奈「そうですね。といってもプライベートの時間が全く無いという訳でもありませんよ。やりたい事はやれてます」


「成程、しっかり住み分け出来てらっしゃるんですね。ちなみにそのやりたい事というのは…?」


英玲奈「……それは」


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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1715004418



<「それでは、また宜しくお願い致します!」


英玲奈「お疲れ様でした、宜しくお願いします」


テクテク


英玲奈「……」



ーーー『ちなみにそのやりたい事というのは…?』ーーー



英玲奈(……それは"飯を食う事"だ)


英玲奈(……なんて言えん。このネット社会、軽はずみな発言1つで『私』への評価は180°変わる)


英玲奈(折角クールなキャラで売ってるんだ、今更そのスタイルを変えるつもりはない)


英玲奈(……だが、それでも)


英玲奈「……腹が」


英玲奈「減った」


ぽん


ぽん


ぽーん


英玲奈「……店を探そう」


https://youtu.be/J7KR1bzsQ6c



時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき


つかの間、彼女は自分勝手になり、『自由』になる。


誰にも邪魔されず、気を使わず物を食べるという孤高の行為


この行為こそが現代人に平等に与えられた


最高の『癒し』といえるのであるーーー。


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東京都渋谷区原宿の『ビーフストロガノフセット』


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https://youtu.be/xmNuX4qXGYE



英玲奈(……しかし、この辺りは若者の為にある通りだな)


<ワイワイガヤガヤ


英玲奈(飯屋と言っても殆どがチェーン店と、派手なピンク色の看板のクレープ屋や……)


英玲奈(……何、綿菓子屋だと?祭り以外で綿菓子屋が常駐する事があるのか?)


<「Lスタ映えするわたがし、いかがですかー」


英玲奈(ははぁ、"映え"目的なのか。成程デカいし派手な色だ……美味いのかアレ)


英玲奈(…ふむ。そう言えばSNS、全然更新してないな。投下するのはいつもライブやイベント告知だけだし)


英玲奈(……たまにはタピオカ?か何かの写真を撮って、挙げてみるか)




ータピ屋ー



英玲奈「……」


「いらっしゃいませ!どれにしますか?」


英玲奈「あ、あの……オススメのタピオカってのはどれですか?」


「ここにあるの全部ですね!」


英玲奈「ほう、成程色んな味が……へぇ……」


英玲奈(ぜんっぜん分からん。ミルクティーしか知らん。マンゴー、キウイ、スパークリング……抹茶!?)


「期間限定でスペシャルイチゴミルクタピオカがありますが……」


英玲奈「あ、じゃあ……それで」


「かしこまりました!580円です!」


英玲奈「はい、1000円からで」


英玲奈(はは、ちょっと高いな……)


「少々お待ちくださいねー!」


英玲奈「……」


英玲奈(まあ、映え料金として……な)


英玲奈(一応これでも甘い物には目が無いもので。和洋問わず)


英玲奈(……しかし、初めて飲むな)


「お待たせ致しました!またどうぞ!」


英玲奈「ありがとうございます」


英玲奈(……おお、甘そう)


英玲奈(さて、何か良い感じの背景は……まあ何でもいいか)


英玲奈「…お」


英玲奈(ただの工事中の壁なんだが…流石都会だ。装飾されてる)


英玲奈「よっと……」スッ


パシャッ


英玲奈「……」ポチポチ


ー原宿。打ち合わせ後。生まれて初めてタピってみたー


英玲奈(Lovetterに送信っと……)


英玲奈(ふっふっふ、大分若者じゃないか。これで流行りに乗ったと言えるだろう)


英玲奈「さて、お召し上がりべびたっぴ、と……」プスッ


ズズーッ


英玲奈「……む」


英玲奈(何と言うか……複雑な甘さだ)


英玲奈(いや…凄い甘いと言ってもいい)


英玲奈(こんな激甘カロリー爆弾を、世のじぇーけー達は好んで飲んでるのか?何とも信じ難いな)


英玲奈「……」ズズー


英玲奈「んごふっ」


英玲奈(しかもたまにタピオカの砲弾が喉奥に着弾してくる)


英玲奈「……」モニモニ


英玲奈(だが……うん、美味い)


<「…あ、あの!A-RISEの統堂英玲奈さんですか!?」


英玲奈「もに……ん?ああ、そうだ」


「よよよ良かったら一緒に写真撮って貰えませんか!?あ、あとサインも!!」


英玲奈「いいぞ。どう撮る?」


「えと、並んで頂けたら……!!」


英玲奈(…ふふ、のどかなもんだな。原宿)


英玲奈(若者だけの街と勘違いしていたから、勝手に疎外感を感じていたが……)


英玲奈(結構過ごしやすい。それは人でごった返すであろう、休日じゃないからそう言えるのかもしれないが)


英玲奈(存外に、刺々しくは無い…とでも言えば良いのだろうか)


英玲奈「……良し、これでいいか?」カキカキ


「ああああありがとうございます!!家宝にします!!」


英玲奈「ははは。別に売ってもいいぞ。値段なんか付かないだろうしな」


「いや付きますぅ!!!てかまず売りませんけど!!」


英玲奈「はっはっは!大事にしてくれると嬉しいよ」


「勿論です、ありがとうございました!!」


英玲奈「ああ。これからも応援頼む」


英玲奈(……あんな若者にも知られていると言うのは、何とも嬉しいもんだ)


英玲奈(ライブは殆ど男性だしな……ふふ)


テクテク


英玲奈(タピオカも程々に飲み終わり、宛もなく飯屋を探して歩いているが……)


英玲奈(ほう、竹下通りを抜けるとまたガラッと落ち着いた通りに入るんだな)


英玲奈(原宿通り……ふむ、オシャレな服屋が沢山だ)


英玲奈(ほう……原宿の革ジャンか)


英玲奈(……私、意外と似合うかも。この時期はまだまだ寒いし……)


英玲奈(ま、バイクは持ってないが)


英玲奈(…入れ墨、ねぇ)


英玲奈(……ワンポイントだけ、とかな。いやいやいや、ドラマ撮影の仕事もたまに来るんだ。一時の気の迷いは駄目だ)


英玲奈(だが東條にこの前の夏会った時、うなじに蝶々がいた様な……アイツ意外とやってるのか?)


テクテク


英玲奈(…む、色々考えてたら裏路地の方に来てしまった)


英玲奈「……ん?」



【ロシア料理 9-й.】



英玲奈「ロシア飯……か」


英玲奈(ロシア料理って何があったっけ?ボルシチ…とかだったか?)


英玲奈(看板は……出てないな。昼少し前だから、まだやってないかな)


<ガチャッ


「よっと……あら、いらっしゃいませ。かしら」


英玲奈「あ、すいません。まだ開いてなかったですよね」


「今丁度開ける所よ。良かったらどうぞ」


英玲奈「本当ですか。それじゃあ……」


英玲奈(……ま、これも縁だろう、いざ!)


カランカラン…


ーーーーーー
ーーーー
ーー


絵里「いらっしゃい。お冷ね」


英玲奈「ありがとうございます」


絵里「決まったらまた呼んでちょうだい」


英玲奈「はい」


英玲奈(……さてさて、ロシア料理)


英玲奈(全然知らないからなぁ。取り敢えずボルシチは頼んでみるか?)ペラッ


英玲奈(となると……所謂主食っていうのは、どれだ)


英玲奈(ふむそうか、ロシアではパンなのか。となると……"ピロシキ"かな?"ブリヌイ"ってのもあるのか?これは寧ろデザートに近いのか……)ペラッ


絵里「……もしかして、ロシア料理は初めてだったかしら」


英玲奈「えぇ実は……どれがどれだか」


絵里「それならお昼のランチセットで、ビーフストロガノフセットっていうのがあるけど、どうかしら?」


英玲奈(ビーフストロガノフ!そういうのもあったな!)


絵里「ビーフストロガノフとボルシチ、デザートに甘いブリヌイが付くわよ」


英玲奈(至れり尽くせりだ……)


英玲奈「じゃあ、それ下さい」


絵里「はーい♪」


英玲奈「……」ゴクッ


英玲奈(さて……一心地ついたな)


英玲奈(普段は飯で冒険する事はあまり無い……が、気になってはいたんだよな)


英玲奈(名前は知ってても食った事がないものが多い。ビーフストロガノフとか、ブリヌイとか)


英玲奈(……何かのアニメのキャラが言ってた様な。何でも、冷えたブリヌイはダメらしい……)


ゴクッ


英玲奈(…あれは、店主の写真か?背景のアレは……確か、ニューヨークのタイムズスクエア…)


絵里「お待たせしました。まずボルシチからね」


ー『おふくろのボルシチ』ー


・真っ赤に近いビーツ由来のスープ

・食感の楽しいいんげん豆

・ちょこんと乗ったサワークリームが可愛い

・ごろごろしたにんじんやじゃがいも、牛肉の塊達

・小さな輪切りのライ麦パンが2つ。後に来るビーフストロガノフに合わせてか、大き過ぎず



英玲奈「ほう……」


英玲奈(予想より赤い。こりゃ美味そうだ)


英玲奈(では、早速)


英玲奈「いただきます」


チャプッ


英玲奈「……」ゴクッ


英玲奈(……美味い!この見た目から酸味が強いのかと思ったが、何とも優しい味だ!)


英玲奈(サワークリームの使い所が分からなかったが…混ぜれば成程、よりまろやかになるんだな)


英玲奈(このごろっとした人参やらジャガイモが良い。スープなのに食い出がある。日本で言うなら、豚汁的な感覚かな)


英玲奈「パンは……」スッ


英玲奈(つけて食べるんだろう、多分)


英玲奈「もぐもぐ……」


英玲奈(成程な……こちとら主食は米だし、あまりパンで物を食う事が無いから新鮮だ。こりゃ、美味い)


英玲奈(では、浸してからこの肉を乗っけて……)


英玲奈「ばくっ、むぐ」


英玲奈(うーん、スープにライ麦ってこんなに合うんだな。知らなかった)


絵里「はい、続いてお待たせ。ビーフストロガノフよ」


英玲奈「おっと、ありがとうございます」


ー『ビーフストロガノフ』ー


・大きめに切られた牛肉

・赤みの強い茶色のルーに、タマネギやマッシュルーム(ハッシュドビーフに似ている?)

・やはりたっぷりのサワークリーム

・付け合せに揚げられたじゃがいも

・地味に嬉しい国産白米



英玲奈「ほう、これは……」


英玲奈(美味そうだ。いや、美味いに違いないな)スッ


ぱくっ


英玲奈「もぐもぐもぐ。」


英玲奈(……美味い!!)


英玲奈(これもサワークリームを混ぜることでどうなるかと思えば、ソースと合わさって丁度いい甘さを引き出している)


英玲奈「ぱくぱく」


英玲奈(別に色の付いた米も食えるが……やはり何だかんだ言って、白米だよな。お陰で怖気付く事無くバクバクいける)


英玲奈(ハッシュドビーフやらとの細かな違い、と言われれば正直よく分からんが……このサワークリームがソレらとの差異を生み出しているな。後引く酸味がたまらん)


英玲奈「おっと、ボルシチ」


英玲奈(味の濃いイメージのあったボルシチだが、これは丁度いい塩梅の味付けだ。箸休めに最適だな)


絵里「私の家族から受け継がれてきたボルシチでね。高級店とかと比べると、安っぽいと思うけど」


英玲奈「そんな。何だか親しみやすくて、とても美味しいです」


絵里「じゃあ、その親しみやすさって何だと思う?」


英玲奈「え?」


絵里「よーく味わってみると分かると思うわよ、多分」


絵里「…お客さん、グルメそうだし」


英玲奈「いえ、そんな事は」


チャプ…


英玲奈「どれ……」


ゴクッ


英玲奈(……ふむ、何かこう、外国らしさがあまり無いんだよな。勿論味付けは海外らしいんだが、その奥に私が知っている何かがいる)


英玲奈(それこそ日本の味噌汁の様に目立ち過ぎない、コイツも料理の名引き立て役ではあると思うが……)


英玲奈(引き立て、味噌汁、大豆……大豆?あっ)


英玲奈「……醤油ですか?」


絵里「おっと、凄いわね。正解♪正直当てられると思ってなかったから、答え合わせして驚かせたかったのに」


英玲奈「成程。お陰で丸みというか、だから私の心地が良い塩梅に仕上がっているというか……」


絵里「私のお母さんがお父さんに言われて渋々入れてみたら、案外合うからって言ってたわ。それを私は受け継いでるって訳」


英玲奈「ははは、凄い勇気だ」


英玲奈(この優しさが醤油から来るなんてな……やはりどこまで行っても、私は日本人なんだな)


英玲奈(だが、海を越えた遠い極寒の地の飯がこんなに沁みるなんて思ってなかった)


英玲奈「もぐもぐ」


英玲奈(1歩勇気を出して飛び込んでみれば、こんなに美味いものが見つけられる。だから飯が好きなんだよな)


英玲奈「ぱくっ、もぐ」


英玲奈(ロシアだから、日本だから。そんなのどうでもいいじゃないか。ここ極東で、この飯で私達は繋がってる)


英玲奈(美味いボルシチとビーフストロガノフがあれば、世界は平和だ)


英玲奈「ずず……」


英玲奈(……ボルシチご飯ってどうだろう)


チャプ


英玲奈「ぱくっ」


英玲奈(……ここは繋がらなかったな、はは)


ーーーーーー
ーーーー
ーー


英玲奈「……ご馳走様でした」


英玲奈(いやあ美味かった。恐れず入った甲斐があったという物だ)


絵里「お粗末さま。ブリヌイも出来てるわよ。あとこれ、サービスでロシアンティー」


英玲奈「え、いいんですか?」


絵里「まだ寒いしね。クイズの正解のご褒美って事で?」


英玲奈「本当ですか?ありがとうございます」



ーブリヌイー


・クレープに似た、小さく薄めの丸い生地が5枚程

・ベリーやソース、シナモンがかかっている

・その横にバニラアイス。一緒に食べれば幸せの味

・ロシアンティーは3種のジャム(イチゴ、マーマレード、ブルーベリー)と共に



英玲奈「おお……これは中々」


英玲奈(まずはロシアンティーでひと休み、と)


英玲奈「ふー、ふー……ずずっ」


英玲奈(……へぇ。結構濃いんだな、ロシアンティーちゃんは)


英玲奈(さて、このジャム達は……入れるのか?)


絵里「あ、ジャムは紅茶に入れてもいいし、本場風に飲むのなら、ジャムを少し口に含んでから飲むとまた美味しいわよ」


英玲奈「成程、どちらでもいいんですね」


絵里「日本では入れて飲むのが主流だけど、向こうでは少しだけ舐めてから飲んだり……あ、何なら紅茶にウォッカ入れたりもするわね」


英玲奈「こ、紅茶にまでですか」


英玲奈(いやはや紅茶にまでウォッカを入れるとは、こりゃ何ともおそロシア。なんて……)


英玲奈(じゃあ、このマーマレードを1口含んで……)パクッ


英玲奈(うーん、程よい酸味。そして紅茶を……)


ゴクッ


英玲奈(おお!茶葉とマーマレードの最高のハーモニー。これを一度に何種類も試せるのが、サービスとは言え素直に嬉しいな)


英玲奈(おっとっと、ブリヌイのアイスが溶けてしまう。これを少し乗せて……)


英玲奈「あむっ」


英玲奈(……おお、もちもちだ!だが意外と軽くて……うん、ホットケーキとかよりも重くはない)


英玲奈(シナモンとバニラアイスはいつも最高のコンビだな。大抵のデザートにはシナモンかけとけば美味くなる)


英玲奈(……はは、暴論)


英玲奈「もぐもぐ」


英玲奈(アイス、シナモン、ベリー。これをもちもちの生地で挟み……)


ぱくっ


英玲奈「…んーっ!?」


英玲奈(ほら見ろ、べらぼうに美味い!!やはり甘い物は素晴らしいな!)


英玲奈(そして口の中を……そうだな、今度はイチゴジャムを含んで)ペロッ


英玲奈「ごく……」


英玲奈(あぁ、この豊かな味わいと、この時間……これは他に替えがたいな……)


英玲奈「もっちもっち」


英玲奈(この食感、癖になる。軽くてもちもちで、食べてて楽しい)


英玲奈(……ロシアンティー、家でもやろう)


ーーーーーー
ーーーー
ーー


<「どうもありがとう、また来てね」


英玲奈「ご馳走様でした、美味しかったです」


<パタン


英玲奈「おっ、店前駐車場に喫煙スペース。1番有難い奴だ……」


カチッ


ジジ…


英玲奈「ふー……」


英玲奈(美味い飯だった。久しぶりに満足感のある食事だ)


英玲奈(いつも弁当だからな……まあ、現場によっちゃ美味いんだが)


英玲奈「……」プカー


英玲奈(……ブリヌイ、冷えてても美味いんじゃないか?)


<カチャッ


絵里「あら、ごめんなさい」


英玲奈「おっと、すいません」


絵里「喫煙スペースは私の為でもあるのよ」カチッ


英玲奈「ははは、成程」


絵里「美味しかった?」プカー


英玲奈「ええ。ロシア料理は殆ど、名前しか知らなかったんですが……まさかこんなに美味しいとは」


絵里「海外料理ってやっぱり少し気後れしちゃうわよね。まあでも半分アジアなんだし、通じる所は沢山あるのよ」


英玲奈「言われてみれば確かに。店長さんはハーフなんですか?」


絵里「クォーターよ。お祖母様がロシアの方でね」


英玲奈「成程……」


絵里「……美味しかったついでに、1ついいかしら?」


英玲奈「え?あ、はい?」


絵里「……サイン、頂ける?統堂英玲奈さんよね?」


英玲奈「あ、はい!ご存知でしたか。ありがとうございます!」


絵里「いつも曲聞いてるわ。新しいMV撮るんだって?楽しみにしてる」


英玲奈「嬉しいです。また別のを撮る時は、このお店を使わせて頂こうかな」


絵里「あら。こんなところで良ければ、いつでもどうぞ♪」


英玲奈「是非。ご馳走様でした」


絵里「また来てね♪」


https://youtu.be/oaxXHIReXLs?si=UE_tPtf0qaN9FgGj


テクテク…


英玲奈「ほっ……」


英玲奈(食った食った。ロシア飯、いいじゃないか)


英玲奈(これでまた1つ、食った事のある飯の国が増えた。次はどうしようかな。どこの国がいいだろう)


英玲奈(ペルーとか、韓国とか…どんな国でも、恐れず入ってみよう。まあ、虫とかは勘弁だがな)


<プルルル


英玲奈「っと」ピッ


英玲奈「お疲れ。ああ、今しがた食事を済ませた所で……うん」


英玲奈「……次は地方?成程。詳細決まったら……そうか、日程は決まってるのか」


英玲奈「分かった。詳しくは会って詰めさせてくれ。今原宿なんだ、マネージャーは……」


英玲奈「……星乃珈琲?ああ、竹下の入口の。分かったよ、今から向かう」


英玲奈「ああ、また後でな……」


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プルルル…


ピッ


英玲奈「統堂だ、お前からかけて来るのは珍しいじゃないか。東條」


『お礼の電話、そういやしてへんかったと思ってね。お米、ありがと!』


英玲奈「ああ、あれか。良い店を教えてもらったお礼だよ。まあ食べた事あるんだろうがな」


『そりゃ何度もね……あ、急にかけちゃったけど大丈夫だった?お仕事やったかな』


英玲奈「いや、さっき撮影が終わってな。今はホテルだよ」


『あ、そうなん?ホテルって事は東京やないんか。今日はどこで?』


英玲奈「沼津だよ……そうだ、東條」


『おお静岡……ほぇ?』


ーーーーーー
ーーーー
ーー


ー沼津駅近くー


ピュー…


英玲奈「うぅ…」


英玲奈(こっちは随分と寒いな。富士山が近いからか、山から吹き下ろしの風が……)


英玲奈(ったく、もう少し着込むべきだったかな…春先だと舐めてたよ)


<プシュー


英玲奈「おっと、乗ります」



ーーー『沼津か……そやね、駅の近く?』


ーーー『そうやなぁ、やっぱ静岡と言えば!のアレがあるやん!あ、えれち知らん?』


ーーー『沼津駅からちょっと歩くんやけどね、何ならバス乗ってもええか』


ーーー『獅子浜に「おでん屋 宜候」ってのがあるんよ。そこ、オススメだよ!』



ブーン


英玲奈(……確かに聞いた事はあった、黒はんぺんなるものを)


英玲奈(何なら東京で見かける事もあったさ。だがご当地の物は、ご当地で食ってこそじゃないか?)


英玲奈(たまにはこうやって仕事のついでだとしても、飯の為だけにバスに揺られて行くのもいい)


英玲奈(……しかし、まずいな。撮影疲れと、適度なバスの揺れで眠くなってきた)


英玲奈(だが、それでも)


英玲奈(……腹は)


英玲奈(減った)


ぽん


ぽん


<ぴんぽーん


英玲奈「降ります」


https://youtu.be/KbhxR-nFFuk?si=Z49LX4jj0CYdc1E-


時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき


つかの間、彼女は自分勝手になり、『自由』になる。


誰にも邪魔されず、気を使わず物を食べるという孤高の行為


この行為こそが現代人に平等に与えられた


最高の『癒し』といえるのであるーーー。


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静岡県沼津市獅子浜の『おでん』(と新鮮な魚介等)


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https://youtu.be/xmNuX4qXGYE


プシュー


<ガラッ


英玲奈「っと……」


ピュー…


英玲奈「うわ、寒……!海が近いからか…?」


英玲奈(この風……慣れるには時間がかかりそうだ)


英玲奈(さて、文明の利器に頼るとしよう。『おでん屋 宜候』は、と)ポチポチ


英玲奈(……私の足なら10分だな、せかせか行こう。ゆっくりはしてられん、何せ寒いからな……)


<テクテク


英玲奈「……」


英玲奈(今回の撮影……割と良かったな。スタッフも明るくて)


英玲奈(一般の方もエキストラの方も暖かくて、ファンの方も沢山いて…)


英玲奈(やはり霊峰富士の力かな……はは、急なこじつけか)


英玲奈(しかし1度くらい登ってみたいものだ。中々時間が作れないからな)


英玲奈(山頂の空気は素晴らしいだろう。そうだ、富士山じゃなくともどこか川のほとりか何かでキャンプなんかして、カレー作り……なんていいんじゃないか?)


英玲奈(……いや、食いに行った方がいいや。なにぶん、現代人なもので)


テクテク


英玲奈「……お」


《おでん屋 宜候》


英玲奈「あったあった、ここだな」


英玲奈「ん?」


《17:00-02:00》


英玲奈「……」チラッ


《現在時、16:30》


英玲奈「あちゃあ……しくった」


英玲奈(出鼻をくじかれてしまった。30分もこの風に晒されるのはまずい……)


<ガラッ


曜「ひゃあ~、今日も寒いなぁ……あれ?」


英玲奈「あ」


曜「いらっしゃいませ!おひとり様かな?」


英玲奈「ええ。すいません早く来すぎてしまって……まだ、ですよね」


曜「んー……まあ、良いですよ!どうぞ!」


英玲奈「え、良いんですか」


曜「寒いですから、どうぞ中へ!」


英玲奈「じゃあ……お言葉に甘えようかな」


英玲奈(こんなのばっかりで、何だか申し訳なくなるな…)


英玲奈(だが、しかし)


ピュー


英玲奈(……この寒さは堪えられん!)


ーーーーーー
ーーーー
ーー


曜「寒かったですよね、暖かいおしぼりです!」


英玲奈「ありがとうございます」


曜「お飲み物は?」


英玲奈「えーと、烏龍茶を」


曜「ハイじゃなくて、普通のですね?」


英玲奈「普通ので。お願いします」


曜「はーい!」


英玲奈(ま、そうだよな。こういう所は普通、酒を飲む所なんだろう)


英玲奈(だが私は下戸だ。前世で余程酒で痛い目にあった事があるらしい。東條曰くだが)


曜「ほい、烏龍茶です!決まったら教えて下さいね!」


英玲奈「ありがとうございます、頂きます」


ゴクッ


英玲奈「……ふう」


英玲奈(冷たい烏龍茶を飲み一息つけて、且つ暖かい店内のお陰で店内を見回すゆとりが出来た)


英玲奈(東京でも何度か見た事のある、木のカウンターとほんの少しのテーブル席)


英玲奈(悪い意味の高級感もなく、ここは素朴で落ち着く。昔ながらの居酒屋なんだろうか)


英玲奈(手書きのメニューが所狭しと壁に貼られているお陰で、お目当ての黒はんぺんを見つける事が出来たが……)


英玲奈(いきなりメインディッシュというのも面白くない。いくらか頼んでみよう)


英玲奈「どれ…」カタッ


英玲奈(この小さな立てメニュー、最近中々見ないな。チェーンの居酒屋でたまに見かけるくらいか)



ー牛すじ串焼きー


ー汁おでんー


ーマグロブツー



英玲奈(おやおやこれは中々……そそるな)


英玲奈「すいません」


曜「はーい」


英玲奈「マグロブツと……コロッケを」


曜「ブツとコロッケですね。あ、今日はカツオのいいのが入ってますけどいかがでしょう?」


英玲奈(カツオ!春先にぴったりだ)


英玲奈「おお、じゃあそれも頂こうかな」


曜「はーい、タタキで良かったですかね?」


英玲奈「お願いします」


曜「はーい、よーそろー!」


英玲奈(……ようそろ?)


ゴクッ


英玲奈(なんだったか……水兵さんの言葉だったかな)


<~♪


英玲奈(……笑顔の眩しい店主の声と、ローカルテレビの音が疲れた体に心地良い)


英玲奈(成程、酒があればこの雰囲気に合わせて飲みたくなる……のかな。分からなくもない)


英玲奈「…ん?」


英玲奈(……待てよ、さっきのメニュー……汁おでんってなんだ?つい通り過ぎてしまったが。普通のおでんとはまた違うのか?)


英玲奈(そもそもはんぺんと言えばおでんだよな?黒はんぺんって……待て待て、よく考えたら牛すじの串焼きも分からんぞ。それもおでんの定番じゃないか)


曜「はい、マグロブツとカツオのタタキです!お醤油はこちらに」


英玲奈「ありがとうございます」



ー『カツオのタタキ、マグロブツ』ー


・どっさりの薬味と厚切りのカツオ。このコゲが美味い

・マグロブツ、割と量多し。沼津スタイル?



英玲奈(……考えても始まらないな)


英玲奈「頂きます」


スッ


英玲奈「あむっ」


英玲奈(…うん!さっぱりとしてしつこくない、中々良いカツオだ。静岡の漁港だものな、そりゃ美味いに決まってる)


英玲奈(このどさっと乗せられた玉ねぎやらネギやらの薬味が良いんだよ。これが無いとな)


英玲奈(さて、マグロブツ……)


英玲奈「もぐもぐ」


英玲奈(も、きっちり美味い。こりゃ新鮮だ、スジもなくて食べやすい…)


曜「ほい!おあとコロッケです!」



ー『網焼きコロッケ』ー


・小さなフライパンに乗せられた2等分のコロッケ

・サイズも大き過ぎず丁度良い。網焼きの跡もしっかり



英玲奈「ありがとうございます。あ、あと」


曜「はいはい?」


英玲奈「黒はんぺんと、牛すじ串焼き…それと」


曜「黒はんぺん、牛すじ串焼き……と」


英玲奈「……この汁おでん、っていうのは?」


曜「あ、お客さん初めて?ウチのは汁にカラシを溶かし込んでるんだけど、大丈夫?」


英玲奈「カラシを溶かし込む……?気になるので、お願いします」


曜「ほい!すぐだから待っててね!」


英玲奈「さく…ありがとうございます」


英玲奈(おおコロッケ、サクサクじゃないか。この素朴な店でこの素朴な味で、いちばん美味い奴だ)


英玲奈(夕方、商店街を通って帰る時に買い食いしたあの味を思い出す……まあ2回位しか買った事無いが。節制してたし)


英玲奈「さくさく」


英玲奈(汁おでん……どういう事なんだろうな。確か、粉とかかけるんじゃなかったか?削り粉だか何とか……)


曜「おまたせ!熱いので気をつけて!」


コトッ



ー『汁おでんと黒はんぺん』ー


・濃口の汁で満たされたおでん。具はさつま揚げ、ウィンナー、大根、竹輪。別皿に削り粉。

・黒はんぺんが3つ、ほんのりと焼き色が入っている。確かに黒い。上には青のりがかけられている?



英玲奈「おお……」


曜「初めてだと結構辛いかも?」


英玲奈「私は辛いの大丈夫なので、いってみます」


ぱくっ


英玲奈「……ふはぁ!」


英玲奈(おお成程これは、割とクるな!)


英玲奈(だがイヤな辛さではなく、しっかり後を引いてくる。これは寒い時に食べたくなるな)


英玲奈「くー……!」


英玲奈(濃口のおでんは初めてだが、こんなに美味いのか。基本おでんはあっさりと食べる物だったから衝撃だ)


英玲奈(この丁度いい辛さが箸を止めてくれない、次の具を次々と取ってしまう)


英玲奈「ぱりっ」


英玲奈(このウィンナーの肉汁!汁の辛みも付随して、良いバルのソーセージを食べてる様だ……はは、褒め言葉か?)


英玲奈「…おっと」


英玲奈(削り粉、かけてみるかな)


<さっさっ


英玲奈「ぱくっ」


英玲奈(うんうん、丸みが出た!これまた一味変わって……うん、普通のおでんと違って、飽きがこない)


英玲奈(粉は魚と……あおさが混ざってるのかな?ご飯にかけても美味そうだ)


英玲奈「しゃくっ」


英玲奈(ああ、こんなおでんの大根がいちばん美味い。しっかり汁が染みてて……ここのはしかも辛い!)


英玲奈「ほっほっ…」


英玲奈(さてさて、黒はんぺんを頂こう)


英玲奈「はむっ」


英玲奈(……美味い!少し焼いてあるからか、魚の香りが物凄く立っている)


曜「黒はんぺんはそのままでも美味しいんだけど、ウチのはちょっとだけ焼いてるんだ」


英玲奈「ほほう」


曜「他のとこだと素揚げしたり、カラッとフライにしたり……海苔を挟んで揚げてるとこもあったな」


英玲奈「海苔を…」


英玲奈(ふふ、そりゃ絶対美味いな…)


英玲奈(よしよし、口の中が少し熱くなってきた所で)


英玲奈「ぱくぱく」


英玲奈(カツオ、マグロ……あなた達は最高です!どうしても刺身は美味いんだよ。この時期はまた特にな)


曜「よし!ほいおまたせ、牛すじ串焼き!それとサービスで、マグロの串焼きね!」


英玲奈「え、いいんですか?」


曜「友達にマグロ、沢山貰っちゃってさ。良かったらどうぞ!」


英玲奈「これは……」



ー『牛すじ串焼きとマグロの串焼き』ー


・牛すじ、甘じょっぱいタレに照らされている。焼き加減丁度よし

・マグロは塩?タレより嬉しい。肉厚。



英玲奈(……こりゃ、凄い事になっちゃったな)


英玲奈(だが、最高だ!)


英玲奈「……よし」


https://youtu.be/6Ndff_Y9gE0?si=blBZL-I2o8Q9ToJ9


英玲奈「あむっ」


英玲奈(おっ、牛すじ柔らかい!噛み切れる牛すじってホントに良いんだよな)


英玲奈(このサクサクとプリプリの比率が素晴らしい。良い焼き方をするな、店主)


英玲奈「あーん」


英玲奈(……このマグロ!少しもパサついてない、ステーキ肉を食べてるかの様だ!)


英玲奈(すかさず、そこでこのおでんの汁を……)


英玲奈「ずず……」


英玲奈「くはっ、ほぉ……!」


英玲奈(ははは、直に来た!だが、この辛さが美味い!)


英玲奈(そうだ。この削り粉、黒はんぺんにもかけてみるか)


<ささっ


英玲奈「はむ」


英玲奈(うんうん!合うじゃないか!魚と魚だからな、相性悪い訳が無い!)


英玲奈「ごくごく……」


曜「おかわり、いるかなん?」


英玲奈「ぷはっ、頂きます。サイダーを貰おうかな」


曜「はーい!」


英玲奈(ちょっと酒感を味わってみよう。まあ酒の味なんかよく知らないが、炭酸入ってりゃ似た様な物だろう)


シュワー…


曜「ほい、サイダーおまたせ!」コトッ


英玲奈「ありがとうございます」


ごくごく…


英玲奈「……ぷはぁっ!」


英玲奈(さあおでん、ラストスパートだぞ)


英玲奈(さつま揚げ、しっとりでしみじみ美味い。噛めば噛む程、魚と紅生姜が合わさって……おっと、忘れてないぞ。カツオくん)


英玲奈「もぐもぐ」


英玲奈(……はは、気付けば魚介ばかりのテーブルになってしまった。まさか陸で魚達のパーティが始まるとはな……)


英玲奈「ずず~……ふはぁっ!」


英玲奈(仕方ない。あのちと寒い海風が、この店に私を呼んでいたんでな。美味い魚の旅にヨーソロー、だ)


コトッ


英玲奈「……ご馳走様でした」


ーーーーーー
ーーーー
ーー


曜「ありがとうございました!寒いので、お気をつけて!」


英玲奈「ご馳走様でした。いや、温まりました」


曜「そりゃ良かった!こっちはまだまだ寒いから染みるよねぇ。あ、バス停分かる?」


英玲奈「ええ、ここを真っ直ぐですよね?」


曜「そ!あ、ちょっと早足で行った方が良いかも。田舎だから、バスすぐ無くなっちゃうからさ。流石にまだあると思うけど」


英玲奈「おっと、じゃあちょっと急ぐかな」


曜「暗いからお気を付けて!またどうぞ!」


英玲奈「ご馳走様でした!」


https://youtu.be/oaxXHIReXLs?si=cBDJPWjHM1GThXL7


英玲奈「…ふぅ」


英玲奈(……はは、全く寒くないぞ。あのおでん、良い辛さだったなぁ)


英玲奈(魚って凄いよなぁ。煮ても焼いても揚げても美味い、すり潰しても美味い。あんな素晴らしい食い物、中々無いぞ)


英玲奈(黒はんぺん、普通のと違って身だけじゃなくて骨も皮も全部練り込んでるから黒いらしい。そんなの栄養満点じゃないか)


英玲奈(朝飯にも昼にも、夜は所謂アテにもなるよな。おいおい、流行りの完全メシって奴か……それは言い過ぎか)


英玲奈「……ん」


<プシュー…


<『お降りの際はお足元にご注意下さい……』


英玲奈「おっと、乗りまーす」


英玲奈(また東條に礼を言わないとな。土産、何にしてやろうか……静岡の名物を使ったちんすこうとか無いかな)


<キキーッ!


英玲奈「どわっ!?」


曜「あ、間に合った!ごめんごめん」


英玲奈「あれ、さっきの……」


曜「これどうぞ!ウチの自家製黒はんぺんと、削り粉!実は自家製は裏メニューなんだ」ガサッ


英玲奈「え、え?良いんですか、そんな良い物を」


曜「いやぁ、あんな美味しそうに食べてもらうの嬉しかったからさ。ついつい飛んできちゃった。お礼として、受け取ってくれる?」


英玲奈「そんな……ありがとうございます、頂きます!」


曜「それも美味しかったら、また来てね!ありがとうございましたー!」ブゥンッ!


<ブーン…!


英玲奈「……」ポカーン


運転手「…お乗りになりますか?」


英玲奈「あっ、はい!すいません、乗ります!」


英玲奈(この風みたいに……いや、突然の嵐の様な店主だったな…)


英玲奈「……ふふっ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「回ったか?」


「行けまーす!シーン12!」


「はいよーい……スタート!」


<『アーティストとして音楽活動しながらドラマ、映画でも活躍する統堂英玲奈が、実際にお店訪問!』


ー"ふらっとElena"ー


英玲奈「こんにちは、アーティストの統堂英玲奈です。今回は、今年の春ドラマの撮影で訪れましたこちら」


英玲奈「東京都は千代田区音ノ木坂にあります、『甘味処 穂のか』に来ています」


<ガラッ


穂乃果「いらっしゃいませー!」


英玲奈「穂乃果さん、お久しぶりです」


穂乃果「英玲奈さんこそ!お元気そうで何より!半年ぶりくらい?」


英玲奈「そうですね、ドラマが丁度半年前位に撮影でしたからね」


穂乃果「そうだったね。いやぁあれからお客さんがひっきりなしで。英玲奈さん様様だよ」


英玲奈「はは、お役に立てたのなら」


チラッ


英玲奈「……なるほど」


穂乃果「ほえ?」


英玲奈「いや、穂乃果さんのお店は所謂、普通の和菓子屋さんだったじゃないですか」


穂乃果「そうだよ?……あっ」



ー【18時~居酒屋穂のか】ー



英玲奈「…始めたんですね」


穂乃果「そーなの!元々やりたかったんだよね」


英玲奈「今回の撮影もどうするつもりなのか分からなかったんです。お菓子を買って何処かで食べるのかと」


穂乃果「ドラマの撮影の時は、店内で食べるシーン無かったもんね。買って何処か行くシーンだったし?」


英玲奈「そうでしたね。さてさて、それじゃあ早速注文しようかな」


穂乃果「はーい!」


英玲奈「えーと……おお、ツマミも中々。じゃあ焼き鳥3種ともつ煮込みを。それと……点心?」


穂乃果「焼き鳥ともつ煮…と、点心ね」


英玲奈「点心とは、居酒屋にしてはちょっと珍しいですね」


穂乃果「ふふふ、穂乃果にはお饅頭の技があるから!生地は沢山あるし!」


英玲奈「成程ね…後はこの、中国産のお茶かな?と、甘いものが欲しいのでザラメも頂こうかな」


穂乃果「ぶはっ、了解!www」


英玲奈「いやぁ失礼、これも仕事なんでね」


<ハハハ…


穂乃果「…ほい、えーと中国のお茶!wあとザラメね!」


英玲奈「おっ、来ました来ました。こりゃ何ともね、いい香りで」


穂乃果「あははっ(笑)」


英玲奈「じゃ、頂きます」


グイッ


英玲奈「っぷはぁ…!こりゃ良いお茶です」


穂乃果「友達の中華屋さんから頂いた12年物のおs……お茶だからね。疲労回復にも効くよ」


英玲奈「おやおや、疲れまで癒してくれるお茶ですよ。これが良いんです」


英玲奈「またこうやって、ザラメを入れて混ぜれば」ササッ


ゴクッ


英玲奈「そう、この甘さが欲しかった!和菓子屋さんなんだから、甘い物を頂かないとね!」


穂乃果「今は居酒屋だけど!」


<ハッハッハ…


穂乃果「っと、ほい!焼き鳥3種と、もつ煮!点心もう少しお待ちを!」


英玲奈「ありがとうございます。来ましたよ皆さん。これがまたこのお茶に合うんだ」



ー牛もつ煮込み 450円ー


ー焼き鳥3種 500円ー



英玲奈「おっとと、見て下さいこのもつ煮!美味いですよ、これは」


ズズッ


英玲奈「…っ、あー!染みますね!」


ぱくっ


英玲奈「……んん!ほろほろですよ!私、このブロック型のもつが好きで」モグモグ


穂乃果「北海道の友達が良いお肉を送ってくれてさ。実はそれ、期間限定なんだぁ」


英玲奈「何と。実は貴重な物を頂いていました。こりゃもう一杯お茶を頂かないと」


穂乃果「ふふ、りょーかい!」


英玲奈「さて、焼き鳥3種です。つくねとかしら、あとハツかな?」


穂乃果「別皿にタレと塩を置いたから、お好きな方をどうぞ!」


英玲奈「聞きましたか?この心遣い。こういうのが1番嬉しいんですよ」


穂乃果「えへへ」


英玲奈「焼き鳥を頼む時はタレか塩か、いつも悩みますからね…では、つくねにタレをかけまして」


あむっ


英玲奈「もぐもぐ……おおう、これは美味い!」


穂乃果「その自家製のタレ、"和三盆"を入れてるんだよね」


英玲奈「和三盆ですか!?まぁた貴重な…」


穂乃果「穂乃果がちょっと前に食べた焼き鳥って、甘さがしつこくてさ。ウチのはどうにか優しい甘さだけを出せないかなって」


英玲奈「それで和菓子作りに欠かせない和三盆を入れてみる……冒険しますね」


穂乃果「中々思ったように行かなかったから半ばヤケで入れただけだけど!」


<ハッハッハ!


英玲奈「それでも、やった事の無い事をやってみるその勇気は素晴らしいですよ。ほんとに」モグモグ


穂乃果「えへへ、ありがとっ。ほい出来た!点心お待たせ!」


ー穂のか特製点心 400円ー


英玲奈「ありがとうございます。来ました、本日のメインディッシュですね」


穂乃果「そんな期待しないで。具は普通だから」


英玲奈「そう言われても、見えます?これ。このツヤと香り。たまりませんよ」スッ


ぷにっ


英玲奈「柔らかい。これは絶対に美味しいヤツです」


パクッ


英玲奈「あっつつ!……うわ、何ですかこのジューシーさは…!」


英玲奈「めっちゃ良いハンバーグ並に肉汁が出て来ます、でもしつこくないと来ました」


穂乃果「その英玲奈さんが飲んでるお茶をくれた友達が、一緒になって考えてくれてさ」


穂乃果「最終的に友達が満足するまで穂乃果もほぼ寝ずに研究してたなぁ……」


英玲奈「穂乃果さんと友人さんの、血と汗と涙が染み込んだ点心でした。美味しい訳ですよ」


英玲奈「しかも、生地がほんのりと甘い、またやりましたね?」


穂乃果「バレたか。酒まんじゅうの生地を使ってるんだ。しかも良い酒種だよ?新潟から買ったお米で1から作ってるからね」


英玲奈「これ、是非持ち帰りたいな。やってます?」


穂乃果「ごめん!それも期間限定なんだよ。ちゃんと色んな人にご満足頂ける物が安定して作れる様になってから、かな」


英玲奈「つまり、穂のかに通う理由が出来る、という訳ですよ皆さん。この味を覚えておいて、次来た時にメニューに常駐していたら」


英玲奈「その時は嬉しくなって、またお茶を頼むんでしょう。もう一杯!」


穂乃果「あっははは!もう、どんだけ気に入ってんの!」


『音ノ木坂の美味しい和菓子と美味しい料理は穂のかへ。お越しの際は番組ホームページをチェックして下さい!』


https://youtu.be/oaxXHIReXLs?si=cBDJPWjHM1GThXL7


スタッフ「……はいカット!OKです!」


英玲奈「…っと」


穂乃果「ありゃ、もう終わりか」


スタッフ「ありがとうございます!お二人とも少々そのままでお待ちください!」


<ガヤガヤ


英玲奈「はぁ……飲み過ぎたな」


穂乃果「もう、大丈夫?英玲奈さん下戸なんでしょ?」


英玲奈「全くもって飲めないという訳では無いからな。これも仕事だから、仕方ないさ」


穂乃果「芸能人ってたいへーん。穂乃果なら絶対ヤダなぁ」


英玲奈「Webだけじゃないぞ?これは地上波でも放映する。これで穂乃果も芸能人だな」


穂乃果「え、ほんと!?今の内にサイン練習しとかないと!」


英玲奈「乗り気じゃないか…」


<ガラッ


スタッフ「あ、お客さんの方ですか?」


「いえ、店主に用事があって伺いました。テレビですか?まさか、穂乃果が何か!?」


穂乃果「何もしてないよ!!あ、海未ちゃん!」


海未「なら良かったです。新しいタネを持ってきました…ん?」


英玲奈「こんばんは……あれ?」


海未「…前にウチにお越し頂いてますよね?」


英玲奈「はい、確か冷やし中華を頂いて……あ、穂乃果の友人って」


穂乃果「何だ、知り合いだったの?この人が例の中華屋さんの友達!ってか幼馴染の海未ちゃん!」


海未「園田です。その節はありがとうございました」


英玲奈「こちらこそ。家で食べる餃子も最高でした」


穂乃果「え!?英玲奈さん、海未ちゃんの餃子持ち帰り経験者!?」


英玲奈「穂乃果がこう言うという事は、やはり相当珍しい事だったんですね」


穂乃果「海未ちゃん、英玲奈さんの事気に入っちゃったんだ!?」


英玲奈「はっはっは!こりゃ自慢出来る事が増えたな!」


海未「あの、何だか恥ずかしいので辞めて頂けませんか!?///」


穂乃果「いーなー、穂乃果未だに貰った事無いよ?お店に行かないと食べさせてくれないしー」


海未「やかましいですよ!……あの、有名な方だったんですね。気付けず、申し訳ありません」


英玲奈「いやいや良いんですよ!気兼ねなく食事が出来て、嬉しかったです」




「海未ちゃん知らなかったの!?テレビいつも出てるじゃん!Ltubeのチャンネルもあるしさ……」


「世俗には疎いんです!未だにスマートフォンも使いこなせていませんから…!」


「そうなのか。あんな良いお店なんだから、SNS位はやった方が良いんじゃないかな…」


<ガヤガヤ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ラ!SSどうか永遠なれ



??最新5作??

彼方「プレシャス・モーメント」

恋「ひっぷほっぷで戦います!」すみれ「え、また?」

曜「サイバーパンク:アイアン・ドラゴン」

果南「金色を遊ぶ」

絵里「これを最後の」にこ「夜にする」

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