安価とコンマで異世界転生!その10 (979) 【現行スレ】

~前回までのあらすじ~
異世界に転生した男は仲間を募り、
世界を救うことを目標に行動する
仲間が突如救世主や魔王の力に目覚めたり、
彼も多くの神を奉ずる教団を創立したりしているが、実際に神の奇跡を代行することができる
現在はフェニックスの素材を手に入れるため極北への旅路の中におり、旅の中で出会った魔法人形にヒトの感覚を取り戻させるため魔獣の肉をオークションで落札した所である

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1707211251

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・男
【筋力】124【HP】68【素早さ】200【MP】114【顔面】30(神の力)【歌唱力】74【料理】111【中華料理】97【画力】26【加護】13
【刀術】・閃火斬(火属性武器でのダメージ+6、それ以外で+3)
『平凡人』(戦闘能力以外最低保証50)
『魔法の才能』(魔法習得難度易化)
『多芸』(感覚系ステータス+20)
『万能通訳』、『降神術』(神の依り代に適性)
『マグネリレーション』
武器:レジストソード(攻撃翌翌翌力3.5、魔法生物特効)防具:ミレニアムアーマー
習得魔法:上級火魔法 上級氷魔法 闇魔法 上級風魔法 回復魔法 光魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法 耳鼻咽喉キャンセラレーション 海割りの奇跡
所持:麻薬(1回分)"人は空を羽ばたけるのか?"鳥人間強制改造本ドラゴンキラー(ドラゴン系にダメージ増)、上級氷魔導書、13時間時計、魔王のデモウイルス、サファイアの原石、厨二っぽい太刀(攻撃翌力3、炎属性)、ベヒーモスの角剣
(経験値10/40……レベル31)

・中華
【筋力】133【素早さ】191【HP】43【MP】75【中華料理】112【顔面】76【加護】10【運命力】29【求心力】33
『救世主の資格』(【運命力】と【求心力】追加)
『魔王の資格』『神格』
『器用』(回数で壊れるアイテムを一回多く使え、罠や精密機械などに関するコンマ判定にボーナスが付く)
武器:デモンズスピア(攻撃翌力4) 防具:ミレニアムアーマー
装飾品:銀の腕輪(筋力+5)
習得魔法:上級火魔法 上級水魔法 上級光魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法 回復魔法
所持:危険な国三選、13時間時計
(経験値22/38……レベル29)

・氷魔【筋力】162【HP】??+36【MP】177【素早さ】151【料理】37【歌唱力】27【ダンス】1【顔面】37【加護】20
『消費MP1/2』、『ポリシーブレイク』
『究極氷魔法』消費【MP】:240(120)
『メルティング』、『氷魔法上位混合』
武器:ホークワンド(魔法ダメージ+5) 防具:ミスローブ
装飾品:冷却懐中時計(氷ダメージ+5)
習得魔法:極大氷魔法 氷空魔法 超上級水魔法 上級風魔法 超上級回復魔法 マナ電流互換改 着火魔法 照明魔法 洗濯魔法 水質検査魔法
所持:異性にモテる為の本(所持継続一日以上で【顔面】+5) 雷の魔導書、13時間時計
(経験値12/47……レベル38)

・やる気
【筋力】157【HP】57【MP】129 【素早さ】174【顔面】36【加護】20
『[ピーーー]気』(殺せると思った相手へのダメージ二段階上昇)
『魔王の資格(80%)』(不完全ながら能力値上昇、魔物の言語が分かる)
武器:スパイラルランス 防具:ミレニアムアーマー
習得魔法:超上級水魔法 土魔法 回復魔法 着火魔法 照明魔法 マナ電流互換改 洗濯魔法 水質検査魔法 上級闇魔法 天候操作魔法 ジャミングウェイブ 解錠魔法
所持:氷の上なら狙った場所に届くカーリングストーン爆弾
(経験値0/36……レベル27)

・ぶりっ子
【筋力】122 【HP】??+32【MP】140【素早さ】102【料理】73【歌唱力】44【ダンス】51【加護】10
【顔面】58
『誘惑』(【顔面】以下の【MP】の生物をたまに行動阻止)
『やりくり術』(アイテム値段を二割引)
『ドジっ子』(ランダム攻撃の対象から外れ、【顔面】+10)
『毒手』(攻撃を命中させた相手に永続スリップダメージ)
『従者式格闘術』(後出しでかばいダメージ上昇)
『風より速く動く術』
武器:ドラゴンキラー 防具:ソードブレイカー 緋色の法衣(炎や熱系の魔法や攻撃の無力化+魔法だった場合魔翌力吸収 )
習得魔法:上級水魔法 上級氷魔法 光魔法 回復魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法
必殺技:ぴゅん太郎
所持:化粧品(試供品)、13時間時計
(経験値30/39……レベル30)

・怪盗
【HP】??+1【筋力】120
【MP】136【素早さ】355
【歌唱力】53
『盗む』
武器:丁半槌 防具:ソードブレイカー
習得魔法:上級火魔法 風魔法 回復魔法
所持:アダマンタイトの曲刀、雷の力を吸収する杖
(経験値6/34……レベル25)

・狙撃少女
【筋力】122【MP】137【素早さ】??+6
武器:守人のパチンコ(攻撃翌翌翌力3.5、攻撃前に属性魔法を使用して属性付加可能、三発)
習得魔法:水魔法 光魔法
所持:スパークナイフ(攻撃翌力2.5、雷属性)アンチオールスナイパー(攻撃翌力8、一発)
(経験値11/39……レベル30)

【所持アイテム】竜毒血清、毒竜管、人造人間の子宮、金属、不思議な赤石、銀の鎖鎌、危険物の魔導書(乙種)人間サイズの蛇の胴体パーツ、邪教典、硫酸の入った瓶、筋トレメソッド本、13時間時計×3、純金小判×5 レア珍獣の生息地(本) 忘却されるまで封印した機械(本)無限に重なる葉っぱ、ホームセンター便利グッズ紹介本 回復スライム、氷スライム レインボースライム 探し物の位置を指し示すコンパス(『4回』、不良品)、牛スライム、文字を書き込んだら対になるものに文字が浮かび上がる一対の巻物、壊れたものを何でも直すレンチ、黄金の番人像、世界樹の露(三回分)、なんでも開けるドアノブ型生命体、クイックポーション、超回復ポーション、仮死薬、とろける濃厚牛乳、タンブルウィード×5、オークションカタログ、ある兄弟の話、ベヒーモスの解体肉、葡萄龍の逆鱗、刺客蛸、フェニックスの稚児の肉
【ギルドの資金】80090795

神官によってその場を解散され、
全員が中華と合流した


ガーゴイル妹「あの、私たちもついていっていいんですか?」

中華「報酬、まだでしょ?それにさ、こんなに肉があるんだから食べていきなよ」


馬車にひかせるような量の肉を台車に積まれており、十分振る舞える量であると分かる


司書コピー「それで、いくら使ったんですか?」

男「784万」

司書コピー「……は?」


【ギルドの資金】72230795

氷魔「……まぁ……正直使いすぎではありますが……私も咎めなかったので責任があります……」

やる気「そういう訳で、最終的にあそこにいたメンバー4人、全員の意志っすね」

司書コピー「……申し訳ないって感情がよく分かりましたよ。私のためにそんな金額使わせて」

男「そう言うな。俺たちもうまい肉が食える!win-winだろ?」

ぶりっ子「それに、人の命はそんなに安くありませんよぉ」

ガーゴイル妹「……最初は不安で仕方ありませんでしたが、素敵な人たちですね」

ガーゴイル姉「ああ……そうだな。で、この人たちは誰なんだ?」

ガーゴイル妹「あなたを助けに来た人たちですよ!!なんで分かってないんですか!!」

本日はここまでです
ありがとうございました

先日のホテルに再びチェックインし、
中華はさっそく調理を始めた


やる気「久しぶりにいい肉が食えるっすね!」

怪盗「太らないといいんですけど」

狙撃少女「あの蛸の肉だったら大丈夫そうですけどね」


そう話していると、ガーゴイル妹が話を切り出す

ガーゴイル妹「あの、本当にありがとうございました」

男「仕事だし……ってか、俺はほとんどなんもしてないけど」

ぶりっ子「お姉さんも、神官が助け出してくれたようなものですしねぇ」

氷魔「……そういえば……どうやって助け出したんですか……?」

怪盗「あの神官の人が、よく分からない魔法でコカトリスを封印したみたいです」

ガーゴイル姉「あれは光魔法と……空間操作系の複合だなぁ。魔力で勝っていれば、そのまま消滅させることもできる」

披露された知識に感じ入っていると、
その妹は話を戻す


ガーゴイル妹「ではなくて、報酬の話です」

狙撃少女「ああ、そのことですか」

男「金でも、あるいはそうでなくても……働きに見合ったなにかをくれるならそれでいい」

ガーゴイル妹「>>下1」

ガーゴイル妹「金山の採掘権を差し上げます」


そう言うと、彼女は丸められた書類を取り出した
簡易につけられた封が切られて開けば、
そこには金山を採掘する権利について記されていた


氷魔「……金山……!?」

ガーゴイル妹「およそ800万、これで取り返して下さい」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「えっと、お姉さんはそれでもいいんすか?」

ガーゴイル姉「こいつがやると言ったならやる。そもそも、私は不動産の類は持たない」

ぶりっ子「本当に金山が掘れるなら、800万なんて端金ですねぇ!」

ガーゴイル妹「そうかもしれません。ですが、金山があっても私が姉を取り返せていたかは定かではありません」

男「ありがたく受け取ろう。採掘の方法は考えておかなければならないが……」

ガーゴイル妹「人手はないのですか?」

怪盗「ここにいるのでギルドメンバーは全員ですが……」


確かにギルドメンバーは少ないが、
頼れる人手自体は確かにあった


狙撃少女「教団の方々に働いていただくのはいかがでしょうか?」

ガーゴイル妹「……きょ、教団?あなたたち、なにかヤバいことをしているのではありませんか?」

男「見てみるか?神の力を……」

そう不敵に男が笑うと、キッチンから声が届く


中華「やめなよ、大体気絶するじゃないか。夕食があるんだからね」

男「すまん!……という訳で、証明はできない」

ガーゴイル姉「申し訳程度の威厳すら一瞬しか持たなかったな」

氷魔「……実際……ここでは力を発揮するのは難しいでしょうね……内陸ですし……」

ガーゴイル姉「はっはっは、神を見せてくれるってんなら面白いが、天使に会うのだけはごめんだな」

やる気「嫌いなんすか?」

ガーゴイル姉「そうとも、あいつらほとんどの人間には優しいが、私らのような錬金術から産み出された生命は軽蔑してるのさ」

本日はここまでです
ありがとうございました

ぶりっ子「でも私たちもまだ天使には会ったことないと思いますよぉ」

ガーゴイル姉「もしいたらぶん殴ってやれ」

怪盗「嫌ですよ!?」

狙撃少女「……この感じで捕まったんでしょうか、道化師に」

ガーゴイル妹「お察しの通り……」

男「そういえば聞いてなかったな。なんで捕まったんだ?」

ガーゴイル姉「>>下1」

ガーゴイル姉「恋人を人質にされて彼と引き換えに……」

氷魔「……えっ……」

ガーゴイル妹「恋人なんて、また作ればいいのに……そう思いません?」

やる気「いやいやいやいやいや!それで、その恋人さんは、無事帰ってきたんすか?」

ガーゴイル姉「ああ、もう返してもらった」

ぶりっ子「それはよかったですねぇ、でも、会いに行ってあげたほうがいいんじゃないんですかぁ?」

ガーゴイル姉「もう別れたしな」

怪盗「えっ、どのタイミングですか!?ないですよね、そんなタイミング!」

ガーゴイル姉「彼を返してもらうときに決まってるじゃん。私は、私より強い人間しか恋人にしないと決めているんだ」

狙撃少女「はぁ」

ガーゴイル姉「身柄の交換が行われたテントの裏で、あいつはどんな大立ち回りを見せてくれるのかと思えば、なにもせず帰りやがった」

司書コピー「無理もないと思いますが……」

ガーゴイル姉「私だったらあいつを連れて逃げることだってできたさ。でも私の恋人やってるんなら、そこは私よりうまいことできるかと期待してたんだがなぁ……」

本日はここまでです
ありがとうございました

そんなことを話しているうちに、
中華は肉をほとんど調理し終えた
ベヒーモスのそれだけはあまりに量が多いので、
保存して持ち歩くこととなった


中華「はーいみんな席についてね」


否応なしに高級宿を選択させられたとはいえ、
大所帯であれば高級な部屋でなければ全員で座って会食は不可能だっただろう


男「超楽しみ」

中華「今日は沢山肉が手に入ったからね、コース方式で出していこうと思うよ」


言われてみれば、キッチンからはまだなにがしか音がする
準備中のものもあるのだろう


氷魔「……中華さんは……食べないんですか……?」

中華「メインディッシュからは一緒に食べるよ。それまではつまみ食いで腹を満たす」

やる気「先に食ってるってことっすね」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「そういうわけで前菜、刺客蛸だよ」


野菜と一緒に盛り付けられた、
海鮮サラダのようなヘルシーな料理が配膳される


ぶりっ子「おぉ!おしゃれですねぇ!」

怪盗「こういうのが出る店で優雅にワインでも飲みながら食べるのがいいんですよ!……あれ、ワインは?」

ガーゴイル姉「貰ってるよー」

怪盗「ちょっと!それ私のですよ!?」

狙撃少女「盗んだものでしょう!?」

結局二人でワインは分けあいながら食事をすることとなった


男「いい食感だな」

司書コピー「そうですね、触覚のほうが強いのでかなり好みです」


実質的には生まれたばかりの彼女だが、
優雅にナイフとフォークを使いこなしている


氷魔「……さて……これで魔獣の肉を取り込んだことになりますが……なにか変化はありますか……?」

司書コピー「まだないですね」

やる気「しかし、この街でよく他の食材を揃えられたっすね」

中華「買い置きのものもあるけど、確かに骨が折れたね」


と、厨房から声が聞こえる


ぶりっ子「すごいですねぇ、私としては、ヘルシーでおしゃれなものが食べられたので大満足ですよぉ」

中華「それはよかった。では次だ」


そう言って彼は別の料理を持って現れる

本日はここまでです
ありがとうございました

それはベヒーモスの解体肉のステーキだった


怪盗「中華料理じゃないんですね?」

中華「コースだし、洋風料理もやってみようかなって」

やる気「ステーキは大好きっすよ!」


やる気はものすごい勢いでステーキにかじりつく


司書コピー「それでは、私も……」


彼女もまたステーキを切ってほおばる
そして嚥下し、体に取り込んでいく


狙撃少女「どうでしょう、変化ありました?」

司書コピー「>>下1」

司書コピー「身体の中で何か熱が滾ってる感じが出てきた」

男「え、大丈夫か?」

司書コピー「悪い物ではなさそうですが……」


そう彼女は付け足す
悪い影響が発生するのでなければ、問題ないだろう


氷魔「……どんな反応が起きるのでしょうか……少し楽しみです……」

非常にジューシーな肉塊に、誰もがかじりつく
高級な肉のようにとろける訳ではないが、
噛めば噛むほど肉汁が溢れ出す


やる気「肉汁すごいっすね、ドリンク飲んでるみたいっす」

氷魔「……どうやら魔力が含まれているようです……MPを回復するポーションのような作用がありますね……」

ぶりっ子「それって、ベヒーモスは全身を巡る体液がそれぞれ魔力に満ちてるってことですよねぇ」

怪盗「恐ろしい生き物ですね、見た目は暴力装置でも、魔術を使いこなしますし」

本日はここまでです
ありがとうございました

すみません遅れました


食べやすいサイズ感で出されたため、
ボリューミーな肉でもすぐに食べきってしまった


中華「……よし!それじゃあメインディッシュだ!」


彼は全員分のメインディッシュを持ってきた
配膳し、一斉にクロッシュを外すように促す
蓋が外されると、そこには財宝のように輝くフェニックスの稚児の肉が、トマトの果汁を配合したソースで味付けされた状態で現れた

狙撃少女「す……すごい、これ本当に食べ物ですか?」

男「量が限られているだけに、希少な鉱物のようですらあるな」

中華「よし、じゃあいただこう。みんな、ナイフで一切れ切り離そう」


全員で丁寧に一切れ分を作り、きらびやかなそれをおずおずと口内へ放り込む


氷魔「……うまい……!!」

やる気「なんすかこれ!こんなもの食べたことないっす!!」


そして、誰もが衝撃とともに、
喜びに満ちた感想を述べる

その味はまさしく究極で、
口内では燃えるような脂が踊っている
人類ではなく、神に与えられる食べ物なのではないかと考えるほどだ


司書コピー「……これはっ!」

ぶりっ子「ど、どうしましたぁ?」

司書コピー「熱が全身を駆け巡っています……!くっ……くぅぅっっ……!!!」

怪盗「!?」


次の瞬間、彼女は全身からまさに太陽のごとき眩い光と熱波を放った

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「大丈夫ですか!?」


閃光が収まっていき、
全員の視界がはっきりとしてくる
そこに立っていたのは______


司書コピー「……生まれ変わったような気分です。いや、本当に私は今……生まれたのかもしれません」

男「その姿は……!?」


どう見ても普通の人間と同じ姿だった彼女だが、
今や炎でできた羽衣を纏い、
全身から暖かな光を放つ神々しい存在に変じていた

ガーゴイル妹「元から魔力が溜まっていたところに、フェニックスの魔力を強く浴びたので変質したようですね」

司書コピー「今なら、分かります。私は人間の感覚を全て……そして、人ならざる感覚もまた得ました」

中華「よかった……んだよね?」

司書コピー「ええ、私はみなさんのおかげで、ついに自分を完全に持ったのです」

氷魔「……あれだけした甲斐があったというものです……」

司書コピー「私はもはや、司書のコピーなどではありません。そうですね……言うなれば、>>下1」

すみません寝落ちしました


司書コピー「爆炎の魔法使い」

氷魔「……なんか……私の対みたいなものになりましたね……」

炎魔「リスペクトです」

氷魔「……あ……ありがとうございます……?」

やる気「いいんじゃないすか?かっこよさそうっすし」

炎魔「でしょう?」

ぶりっ子「ちなみに、魔法は使えるんですかぁ?」

炎魔「いえ、使えません」

怪盗「それなのに、魔法使いなんですね」

炎魔「大丈夫です、デカい花火を打ち上げることぐらいならできますよ」

狙撃少女「比喩ですか?」

炎魔「比喩です」

ガーゴイル姉「まぁ、フェニックスの力があるし……わざわざ魔法を詠唱しなくても、大抵のものは爆発させたり燃やしたりできるだろうな」

男「うらやましいなぁ、俺もそういう体質になりたいものだ」

ガーゴイル妹「人間は、戦えば戦うほど成長するものですが……私や彼女は違いますよ。あなたたちがしてあげたように、与えられた物体が大切なのです」

炎魔「極端な話、『この世の全て』を手に入れたら私は頭打ちです。しかしみなさんはどこまでも強くなれますよ」

中華「そういえば話は変わるけど」

炎魔「はい」

中華「フェニックスの力があるってことは、飛べるの?」

炎魔「飛べます!」


彼女はそう言うと、
不思議な紋様の刻まれた、炎でできた翼を出現させた

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「うおっ、すげぇ」

炎魔「これが全能感というやつですね、今の私ならなんでもできちゃいそうです」


彼女は少し浮かぶと、翼をしまって着地した


氷魔「……そういえば……デザートは冷めていませんか……?」

中華「大丈夫。温かくして食べるものじゃないし」

炎魔「そういえば、食事中でしたね。食べ終えましょうか」

一行はフェニックスの稚児の肉を食べ終え、
中華はデザートを運んできた


中華「という訳でデザート、葡萄龍の逆鱗だよ」


一つの逆鱗から『実』を取り出し、
それらを分けたものが運ばれてくる


ぶりっ子「いいですね、すごくコース料理のデザートっぽいですよぉ」

怪盗「優雅に食べたいですね」

狙撃少女「それでは、いただきます」


どう見ても葡萄にしか見えないその鱗を、
おずおずと口に運ぶ


男「……うまい!芳醇な甘味が暴力的なまでに弾けている!」

中華「確かにこれは……すごいね!」


一体の魔獣が、生涯をかけて溜め込んだ栄養や魔力が込められたその葡萄は、全身を活性化させるようなエネルギーに満ちている

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「全身が喜ぶのを感じます」

氷魔「……本当に葡萄みたいですね……かなり甘いですが……」


一行はあっさりとデザートを平らげ、
その日の食事を終えた


やる気「いやぁ、こんなに食事で満足したのは初めてっすね」

ぶりっ子「ですです、私は幸せ者ですよぉ」

怪盗「まったく、今日はいい日ですねぇ」


どうやらワインをずっと飲んでいたので酔ってしまったようで、顔が真っ赤だ
向かいの席にいるガーゴイル姉は全く酔っていない


狙撃少女「あの、お酒はその辺にしておいた方が……」

怪盗「いや、まだ飲めますよぉ」

ガーゴイル姉「随分酒に弱いんだな」

ガーゴイル妹「姉さんがザルなだけです」

男「ほら、今日はもう終わり!な?」


男はワインの瓶を奪い、栓をした


怪盗「>>下1」

怪盗「むーこんな時に、ワインやを出してくれる魔物が居れば良いのにー」

中華「まさか、ワインを出す魔物なんているわけないだろう?相当酔ってるな……」

怪盗「落札した本に書いてないですかー?」

男「あぁ、禁域の話?まぁ、ドアノブみたいな奴もいるんだし、いてもおかしくはないが……」


男はそう言って冒険記を開く
以前の持ち主の趣味か、奇妙な生物や物体の登場するページには皺が多く、よく読まれていることが分かる

そうした皺などから奇妙な描写を斜め読みしていき、
ワインを出すような存在がいないかを探した


氷魔「……まさか……いたんですか……?」

男「いや、流石にワインを出すような化物はいなかったな」

怪盗「つまんないですねぇ!」

男「でも、>>下1を出す生物は存在するらしい」

男「純金の卵を出す生物は存在するらしい」

やる気「へぇ、どんな生き物なんすか?」

男「乱獲されたら困るから教えないって書いてある。乱獲っていうか、禁域に人が立ち入りまくるのが嫌みたいだけど」

中華「なるほど……まさか?」

ぶりっ子「金の烏骨鶏、ですかぁ?」

中華「ああ、もしかしたら禁域に潜んでいるのかもしれない……あまり進んで行きたい場所じゃないけど」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから、ガーゴイル姉妹は依頼の全手続きを終えたので去っていった
男たちも、時間的にもそろそろ眠ることとなる


狙撃少女「怪盗さんはもう寝ちゃいましたね」

男「勝手なもんだな。だが、酒は飲んでたしそんなもんだろう」

中華「あれだけのものを食べたんだし、寝てるうちに体が成長したりして」

氷魔「……いいですね……」

~翌日・陰週月曜日~


やる気「いい朝っすね……」

ぶりっ子「おはようございまぁす」


日当たりのいい部屋なので、
日光によって目覚めることができる
彼はカーテンを引き、窓を開く


やる気「……!?」

ぶりっ子「どうかしましたぁ?」

炎魔「おはようございまーす!!」


いつの間にか外に出ていたらしく、
開けた窓から突貫してくる


怪盗「うわぁ!なんですか!」


眠りこけていた怪盗も、あまりの物音に目覚める


狙撃少女「びっくりしました、その……非常にアグレッシブになりましたね」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「随分機嫌がいいな」

炎魔「はい、世界が輝いて見えます」

男「そうなのか?」

炎魔「今まで単なる物体でしかないと思っていたものにも、意味があったように思えるのです」

中華「随分極端に感受性が上がったものだね」

炎魔「私が今ここにいるのにも、きっとなにか意味があるんですよ!」

やたらテンションの高い彼女をよそに、
チェックアウトするため受付までやってきた


受付「代金ですか?昨日、女性のお二方が払っていかれましたよ」

氷魔「……え……随分気前がいいですね……」

やる気「礼言う前に逃げられたっすね」

ぶりっ子「まぁ、ラッキーってことで行きましょう!」

本日はここまでです
ありがとうございました

この街ですべきことはあらかた終わったため、
一行は馬車を探すことにした


怪盗「そういえば、輸送ギルドの支部が昨日のオークション会場の近くにありました。そこに行きませんか?」

男「確実そうだな、行ってみよう」


目的地を目指し、例のオークション会場の付近を通ると、会場の付近に>>下1がいた

道化師「……………………」

狙撃少女「え……」


そこには、先日オークションの進行をしていた道化師が横たわっていた
まだ息はあるようだが、
全身を痛めつけられたようだ


中華「どうして?」

氷魔「……話を聞きますか……?」

やる気「待つっす、こいつらには自爆するタイプもいるっすからもうちょっと慎重になるべきっすよ」

炎魔「私なら大丈夫だと思いますよ」

男「……浚われない?」

炎魔「もちろんです」

ぶりっ子「いいんじゃないですかぁ?」


合意が取れたため、炎魔は道化師に話しかけた


炎魔「そこの方、こんな所でなぜ寝ているのですか」

道化師「寝たくて寝ているように見えますか……」

炎魔「どうやら元気はまだあるようですね」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「落とし前でも取らされたんじゃないですかね」

炎魔「そうでしょうか?」

道化師「いや……まだ落とし前をつけさせられてはいない」

狙撃少女「あの組織の落とし前、普通に死にそうですからね」

炎魔「じゃあなんでこんなことになってるんですか?」

道化師「そういえば、あなたたちはもういなくなった後でしたね……」

男「俺たちがいなくなった後?となるとあれか」

中華「揮毫だね」

道化師「我々はオークションに……かの司祭の熱狂的な信者が訪れるという情報を掴んでいた」

氷魔「……そうですか……」

道化師「ですから我々は、内通者を用意し……その値段を吊り上げる予定だったのです」

やる気「ひでぇっすね」

道化師「しかし奴ら……ある程度までは応戦したものの、あっさり諦めてしまったのです」

ぶりっ子「読めてきましたよぉ」

道化師「結局、落札したのは我々ですから、我々が保管することになったのですが……先ほど、奴らから襲撃に遭ったのです」

やる気「道化師連中が、数人に襲撃された程度で負ける訳なくないっすか?」

道化師「あなたたちが我々をどう評価しているのかは分かりませんが……我々の敗因は、奴らが>>下1を使ってきたことです」

道化師「とある兄弟の本に描かれてる様な魔獣を使役して来たことです」

怪盗「ってことは、禁域の生物ですね。いやぁ、関わりたくない!」

男「全くだ、カルト的人気の司祭と、それを信奉する禁域の関係者……非常にきな臭い」

狙撃少女「しかしながら、彼らを助ける義理はないことが幸運でしたね」

男「そうだな、こいつらを助ける義理はないが……一応、うちのギルドの目的は世界平和だ。いざとなれば禁域の魔獣を使役できる奴らの存在は……あまり歓迎できない。傲慢なことだが」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「じゃあ、そいつら倒すの?」

男「優先的な目標じゃないし、警戒にとどめておくのもいいかな」

氷魔「……そうですね……私たちは……まず極北の地を……目指さなければなりませんから……」

やる気「そういう訳で!」

道化師「ひぃっ!?」


彼は道化師の眼前に槍を突き立て、
見下し、威圧する


やる気「その狂信者共がどこに行ったのか、分かる範囲で教えるっす」

道化師「>>下1」

道化師「地下水道のエリアのどこかだと思う」

ぶりっ子「下水ですかぁ?」

道化師「いや、下水じゃない。この大陸には、天然の巨大な地下水道が広がっているんだ」

男「……でかい地震でも来たら最悪だな」

道化師「そして……奴らはそれを拡張し、ねぐらとしている」

怪盗「つまり、この大陸のどこへでも行けるってことですね?」

道化師「時間は馬車より遥かにかかるが、そういうことになる」

狙撃少女「もしかしたら、旅の最中でその地下水道への入り口も一つは見つけられるかもしれませんね」

男「ああ、そうだな。情報提供に免じて、生かしておいてやる」


一行は這いつくばる道化師を尻目に、
輸送ギルドの支部へと歩いていった


中華「で、ここが輸送ギルドだね」


そこには、赤いレンガ造りの簡素な建物があった

隣に倉庫のような建物があり、
そちらの方が整備されている


氷魔「……すみませーん……」

受付「はい、ご依頼ですか?」

やる気「そっすね、俺っちらが移動するための馬車を手配して欲しいっすよ」

受付「なるほど、それでしたらすぐにご用意できます。ポイントカードはありますか?」

ぶりっ子「ポイント……カード?」

受付「なければお作りすることもできますが」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「なんか特典とかあります?」

受付「輸送距離に応じてポイントがつきます。あと、初回は街一つぶんの移動はタダになりますよ」

男「いい感じですね、じゃあ作ります」

受付「はい……あぁ、一応聞きますが、みなさまはギルドですよね?」

中華「そうだね」

受付「よかったです。ギルド名義で作成するものなので」

一行はポイントカードを作成し、
手配された馬車に乗り込んだ


御者「どこまで行かれます?」

氷魔「……ここから北にひたすら……日が落ちるまでには適当な街に降ろしていただけると助かります……」

御者「分かりました。ではお乗りください」

やる気「ちなみに、どの街まで行けそうっすか?」

御者「>>下1」

御者「ここからなら、『図書の街』に着くだろう。調べ物があるなら利用するも良し、美人の『AI市長』に会うも良しだ」

炎魔「おお、図書の街ですか!ぜひ行ってみたかったんです!」

ぶりっ子「調べものも、できるならしたいですしねぇ」

怪盗「しかし、AI市長ってなんですか?」

御者「知らないんですか?……旅の方であれば無理もないですね。AI市長とは、まぁそのままの意味で、市長がAIなんですよ」

狙撃少女「AIとはなんですか?」

御者「人工知能……と言われているが、あれが本当に人によって作られたものなのかは疑問だね」

本日はここまでです
ありがとうございました

馬車は走りだし、
数日滞在した金満な街から遠ざかっていく


男「つまり、人間ではない存在……知性そのものが市長を行っているということですか」

御者「そうですね。図書の街というぐらいですから、知識や教養を人々は重んじます」

中華「奇妙なことだけど、住民性には合ってるってことだね」

御者「そうですね。あと、AI市長ならではの特長もあるみたいですよ」

氷魔「……そういえば……美人と言っていましたが……」

御者「そうそう、一つの知能を複数のインターフェイスで共有している……つまり、肉体的には沢山いるんですよね、市長」

やる気「怖くないっすか?」

御者「まぁ、それも感性だよね。でも、このお陰で市長が直接民の声を聞いて、市政に反映できているらしいよ」

ぶりっ子「そう考えると、すごいですねぇ」

御者「とはいえ、やっぱり不気味に感じる人はいるし、いまいち何考えてるのか分からないみたいで、不満な人もいるらしいよ」

それから三時間ほど馬車に乗っていると、
図書の街が見えてきた


怪盗「なんですかあれ!?」

狙撃少女「塔ですね……結晶体でてきてます」


その街の中央には、そびえ立つ巨大な塔があった
太陽の光を乱反射し、
神々しさすら感じる光を放っている


御者「あれが世界最大の図書館です」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「あんなもの、どうやって作ったんだ?」

御者「実は、それがよくわかっていないらしいんです」

中華「え?」

御者「言い伝えでは、ずっと昔に高名な魔術師が大勢の建築家を引き連れて建造したと聞きますが……」

氷魔「……その頃から……図書館だったんですか……?」

御者「いえ、違うはずです。あの街が街と呼ばれるようになったのは、ここ数十年のことですから。あの塔は、それよりずっと前からあったのです」

やる気「それが、今は図書館なんすね」

御者「ええ、色んな本がありますよ。この世に存在する書物の半分は、あそこで読めるとも言われています」

ぶりっ子「あれだけ高ければ、それほどの本も収まりそうですねぇ」

御者「実は、それだけじゃないんですよ」

怪盗「それ、とは?」

御者「確かにあの塔は高いですが、地下にも続いているんです。これは噂ですが、地下には>>下1があるとか」

御者「魔神を封印してるとか」

狙撃少女「魔神……!?」

男「もしかしてあの塔が作られた目的も、魔神の封印だったりするのか?」

御者「噂話に憶測を重ねる形ですが、ありえる話でしょう」

中華「……そんな所に街、作っちゃったんだ」

御者「この大陸は、開拓がどんどん進んでいますからね。金になるんでしょう」

本日はここまでです
ありがとうございました

塔はどんどん近づいていき、
一行はついに街に到着した


氷魔「……ポイントカードの特典で……」

御者「はい、分かりました」


馬車が去っていき、街に放り出される
絢爛豪華なカジノの街とは異なり、
小綺麗で気品のある街だ


やる気「どこ行くっすか?」


>>下1……どこへ行く?
1.今晩の宿を探す
2.巨大図書館
3.市長を探してみる

ぶりっ子「……ここもなんか高級感ありますし、先に休めの宿探しときません?」

怪盗「賛成ですね」

狙撃少女「そうですね、じゃあその辺の方に聞いてみましょうか」


男は通行人に声をかける


男「すみません、この街に安くていい感じの宿はありませんか?」

通行人「うーん、俺はこの街のもんだから、宿に注意は払ってないなぁ。……あ、そうだ。公民館に宿案内のパンフレットがあるぜ」

男「そうなんですか?ありがとうございます」

通行人「おう、公民館はすぐそこだ」


通行人の案内に従い、一行は公民館へとやって来た
玄関を通ると、街の案内図と受付があった


中華「あの、ここに宿をまとめたパンフレットがあると聞いてきたのですが」

受付「えぇ、ありますよ。これですね」


受付の女性は、『パンフレット』を取り出した


氷魔「……あの……これ……」

受付「情報の充実度には自信がありますよ」

氷魔「……これ……パンフレットなんですか……?」


そこに置かれたのはどう見ても本だった
しかも、かなり分厚く、一般的な辞書の半分ほどのサイズだ

やる気「返却したほうがいいやつっすよね?」

受付「パンフレットですから、持っていっても構いませんよ?」

やる気「いや、ちょっと荷物増やしすぎるのもアレなんで……」


街の常識に面食らいながらも、
『パンフレット』で宿の情報を調べることにした


ぶりっ子「すごい、それぞれの宿の毎年の納税額まで書いてありますねぇ!」

怪盗「ノイズでしかないですけどね……きちんとかいつまめば、十分で確度の高い情報が得られるのはいいところですが」

本日はここまでです
ありがとうございました

予想外に時間を取られたが、
無事自分たちにも使いやすい宿を特定できた


狙撃少女「いいところですね、それなりに自然もあります」


そこは、街はずれの宿だった
土地が安いため、部屋の大きさの割には料金が安いのだ


炎魔「さっそくチェックインです!」

看板娘「あ、いらっしゃいませ」


居眠りをしていた彼女は扉が開くのを聞いて、
慌てて挨拶をする


男「あー、全員入れる部屋あります?八人いるんだけど」

中華(思いっきり寝てたな……)

看板娘「そうですね、>>下1」

看板娘「今はあいにく4室のスイートルームしか空いておりませんね」

男「うっ、スイートルームか……」

看板娘「一部屋六人までなら入れますが……」

氷魔「……それなら……二部屋宿泊するしかなさそうですね……」

看板娘「いいんですか?」

やる気「今からまたパンフレット読むのは骨が折れるっすよ」

本日はここまでです
ありがとうございました

とりあえず部屋は取り終えたので、
一行は街に繰り出すことにした


ぶりっ子「物静かでおしゃれな街ですねぇ!」

怪盗「そうですけど……どこ言ってもあんな分厚い本読まされるんじゃ疲れちゃいそうですね」

狙撃少女「目が疲れそうです」


>>下1……どこへ行く?
1.巨大図書館
2.市長を探してみる
3.自由安価

男「……なんだかんだ、旅で疲れてるな」

炎魔「そうなんですか?」

中華「そうかも」

氷魔「……でしたら……カフェがありますよ……」

やる気「いいじゃないっすか、たまにはまったりするべきっすよ」

ぶりっ子「この街のカフェですから、調べものなんかもできそうですしねぇ」

そのまま、一行はカフェに入っていった
まだオープン数年なのだろう、
相当新しい雰囲気をしている


怪盗「本、本、本……」

狙撃少女「壁一面に本ですね」

男「目的の本は、どう探したものかな」

炎魔「なにか探してるんですか?」

男「……まぁ、実際そうかと言われれば噂だが。地下にいるらしい魔神について知りたくてな」

本日はここまでです
ありがとうございました

店員「魔神についての本をお探しですか?」

男「え、あぁ、そうですけど。まず注文いいですか?」

店員「はい、構いませんよ」

中華「みんな、注文決めた?」


中華がそう聞くと、
一人ずつメニュー表を指差して注文していく


店員「……はい、かしこまりました」

店員が去ってから五分ほどして、注文が運ばれてくる


氷魔「……おや……それは……?」


料理だけでなく、何冊かの本もそこにあった


店員「こちらの店では、食事とともに本の貸し出しも行っております」

男「ってことは、魔神の本も?」

店員「はい、リクエストがありましたら、それに従うようにしております。なければ、私どもの判断で選んでおります」

そうして全ての物品を提供すると、
店員はまた別の業務へと向かった


やる気「お、冒険モノっすね」


出された緑茶を飲みながら、彼は本を楽しんでいる


ぶりっ子「どうやら、みなさん大体趣味通りの本をもらっているようですねぇ」

怪盗「ぶりっ子さんはなんの本を……隠さないで下さいよ!?」

男(まぁ、大方の予想は付くけど……そういえば、炎魔はどういう本を出されたんだろう?)


>>下1……炎魔に貸し出された本とは

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「……!?」


ちらりと本のタイトルを見やると、
そこには、『フェニックスの力を得た者の末路』と書かれていた


狙撃少女「どうかしましたか?」

炎魔「あ、いえ!なんでもないですよ!」


非常にショッキングな本だが、
どうにか平静を取り繕おうとしている

炎魔は神妙な面持ちで本を読んでいる
どうにかフォローを入れてやりたい、
と男は思ったが、その本のことが周りのメンバーに知られて大事になることを考えるとなにも言えなかった
それよりも、自分に貸し出された魔神についての本を読むことに専念すべきだと考えた


男「はぁ……」


魔神についてそのものの知識についてはそこそこに触れ、世界にいるとされる様々な魔神を考察している本のようだ
彼は目次から、塔の地下に眠る魔神についてのページを開いた


>>下1……大まかな記述

中華「どう?なにか分かった?」


彼は自分に渡された紀行本を一旦閉じ、
男に問いかける


男「……分かったような、分からないような……難解だ。なんかの喩えか?」

中華「どういうこと?」

男「全ての魔神がそうであるのかは分からないが、塔の地下にいる魔神……奴は、道化師と何らかの関係があるのは間違いないだろう」

中華「へぇ」

男「そして、奴らの組織の行動原理……それに関して考察するにも足る内容が書かれている。伝承だから、完全な内容かは分からないが」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「それで、どうしたいの?」

男「……うぅん、魔神に会えば、いくつかの因縁について決着を着けるか、より深く知ることができそうだが……」


男は言葉を濁す


中華「リスク?」

男「あぁ、リスクだ。かつて俺たちが会った魔神のように、話のできる奴じゃなさそうだしな……」

それから一行は、飲み物やデザートを食べるとともに書物を読み、店を出るのは夕方だった


【ギルドの資金】72225295


氷魔「……宿に戻ったほうが……いいかもしれませんね……」

やる気「今日は休んでばかりになっちゃうっすね」

ぶりっ子「まぁまぁ、たまにはいいじゃないですかぁ」

男「そうだな」

本日はここまでです
ありがとうございました

宿に戻ると、看板娘から声をかけられた


看板娘「あの、お部屋の準備はできていますが……それぞれ何人で泊まられるのですか?」

怪盗「そういえば、決めてませんでしたね」

狙撃少女「四人組を二つ、ということですから……」

男「男性三人と炎魔、あと女性四人でいいんじゃないか?」

男の提案通りの四人ずつに別れ、
宿泊することとなった


中華「……うん、いい部屋じゃないか」


スイートルームというだけあり、
設備は豪華で、整えられた植物たちが植わる庭もよく見える


やる気「俺っちはこういう部屋が一番好きっすね」


彼は備え付けのお茶菓子に早速手をつけながらそう語る

一方、女子部屋


氷魔「……魔力が溜まっています……発散したいですね……」

ぶりっ子「え?」

氷魔「……体を休め……おいしい食事を摂っていると……魔力がどんどん溜まっていくんです……」

怪盗「上がるんですか?魔力が」

氷魔「……別にそんなことはないですね……もて余す感覚だけが……私を焦らせます……」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「そういうこともあるんですね」


彼女はそう言いながら、
巨大なライフルのメンテナンスをしている


ぶりっ子「しかし、そんな大きなライフル……重くないんですかぁ?」

狙撃少女「やっぱり重いです。メンテナンスもありますし、非常に肩が凝ります」

怪盗「そういえば、狙撃が得意なのは知ってますが、なにか上手になったきっかけとかあるんですかね?」

狙撃少女「>>下1」

狙撃少女「望遠鏡やスコープで遠く、遠くを見ていくうちに的や目標物に自然と当たる様になったのは覚えています」

氷魔「……遠くを……」

狙撃少女「えぇ、私は遠くを見るのが……知れないモノを知ることができるのが、好きなんですよ」

ぶりっ子「探求心があるんですねぇ」

狙撃少女「そうなんですかね?……ともかく、私が頼み込んでみなさんに同行させてもらっているのにも、そういった私の趣味が関わっているんですね」

それからしばらくすると、夕食が届いた
どうやら、ピザのようだ


怪盗「おお、ピザですよ!私チーズ好きなんです」

狙撃少女「ピザは初めて食べますね。……こんなに濃厚な物体、食べても大丈夫なんですか?」

氷魔「……けっこうおいしいですよ……ローブに付くので……あまり食べませんが……」

ぶりっ子「ううっ、太りそう……でもおいしいんですよねぇ」

本日はここまでです
ありがとうございました

一方、男子と炎魔の部屋


炎魔「これがピザですね」

男「ああ、ピザだ。パーティの時なんかに食べることが多いな」

中華「どんな食べ物でもお腹が空いてると美味しそうに見えるものだけど、ピザは特にだね」

やる気「あー分かるっす、それ。早速食べるっすよ」


やる気は付いてきたピザカッターを淀みなく操り、
綺麗にピザを切り分けた

そして四人はピザを食べる


炎魔「ピザ……うまい!」

男「そうかそうか……ん!?」


そう言った次の瞬間には、
炎魔はピザ一枚の半分ほどを食べてしまっていた


中華「ま、待った!分け合おう!」

炎魔「おっと、すみません。あまりにおいしくて」

驚異の食欲に驚かせられながらも、
四人は夕食を終えた


やる気「ほんじゃ、風呂入るっすよ!」

中華「そうだね、早めに入ろうか」

男「……あっ、先行っててくれ。ちょっとだけ用事がある」

中華「そうかい?ま、なるべく早く来てくれよ」


そう言って二人は浴場へと向かっていった

男「……さて、炎魔」

炎魔「な、なんですか?」

男「俺には、お前と話さなければならないことがある」

炎魔「あっ、ああ……ピザ食べ過ぎました。ごめんなさい」

男「違うわ!」


深刻な表情をしていたものの、
炎魔が変なことを言うのでいつもの雰囲気に戻されてしまった


炎魔「じゃあ、なんですか?」

男「フェニックスの力を得た者の末路がどうとかって本を読んでいただろう。なにかお前の命に関わることがあるのなら、言ってくれ」

炎魔「>>下1」

炎魔「…私って『女性』なのか『男性』なのか分からなくなってしまったくらいですね」

男「……性別?」

炎魔「はい。フェニックスになった者は狩られたり身を隠したり、表で行動したりしてたみたいですが、その中で『性別』が雌雄同体みたいな記述しか載ってませんでした」

男「そ、そうか。命に関わることがないならよかった……いや、待て。これから風呂じゃないか」

炎魔「そうですね」

男「そうですね、じゃないだろう!?いいか、世界には男湯と女湯があるんだ」

炎魔「あぁ……」


特に何も言われなければ、
そのまま女湯に入っていたのだろうか


男「もしお前にアレが付いてるなら女湯に入るのは困難を極める。だが、今の外見は完全に女性だから、男湯に入ろうものなら場が騒然としてしまう」

炎魔「そうかもしれません」

男「……で、どうするんだ?」

炎魔「隠します」

本日はここまでです
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男「隠すって、どうやって?」

炎魔「炎を出します。そうすれば分かりませんよね?」

男「怪しすぎるだろ!?」

炎魔「そうでしょうか……」

男「……仕方ない。交渉だ」

炎魔「交渉?」

男「そうだ。炎魔もついてこい」

男は炎魔を連れ、カウンターへと向かった
そこには看板娘ではなく、宿屋の店主がいた


店主「どうかされましたかな?」

男「不躾なのですが、頼みがありまして」

店主「ふむ、なんでございましょう。なるべくご期待に添えるようにいたしますが」

男「こちらの方なのですが……」

炎魔「ああどうも。炎魔です。私、両性具有なんです」

店主「なんと!それはそれは……」

男「えぇ、ですから浴場に入ると誤解を招いてしまうのです」

店主「そうかもしれませんな」

男「そこで、浴場の営業が終わった後すぐに彼女が入浴するための時間を設けていただきたいのです。無茶なお願いですが……」

店主「分かりました。お一人ならばいいでしょう」

本日はここまでです
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そうして約束を取り付けられた男は、
急いで風呂へと向かった


中華「やっと来た」

やる気「ほら、早く脱いで入るっすよ」

男「すまんな、急ぐわ」


全裸になった三人は早速浴場へと入っていく
そこはそれなりに広く、
スイートルーム四つ分ほどの面積があった

それから三人は頭と体を流し、
いざ入浴という段階になった


中華「……あれ?」

やる気「どうしたっすか?」

中華「あそこの風呂、見たことないね」

男「電気とか、水とかじゃないな。なんか書いてあるぞ」


そこにはこの宿オリジナルの湯があり、
そしてその名前も掲載されていた


>>下1……湯の名前

そこには、モフモフの湯と書いてあった
実際、なにやら毛玉のような物体がいくつか浮いている


やる気「なんすか、あれ」


そのサイズはバスケットボールほどで、
片手で持てるギリギリのサイズ感だ


男「入れば分かるさっ!」


男はそう言うと湯船に飛び込んだ

本日はここまでです
ありがとうございました

すみません遅れました


男に続いて二人も恐る恐る入っていく
浸かった感じはかなり普通の風呂であり、
浮いているモフモフの違和感が募る


中華「なんなんだろう、これ……」


そう言って一つのモフモフを掴む
すると、『それ』と目が合った

モフモフ「………………」

中華「ぇ………………」


二人は見つめあい、ただ沈黙する


やる気「どうしたっすか?」

中華「これ……」


彼はモフモフの顔をやる気に向ける
その顔は子猫のようであり、
客観的に見て非常にキュートだろう

やる気「おぉ、これ動物だったんすね」

男「なかなかかわいいじゃないか。これと戯れる湯ということだな」


そう話していると、店主がカートにモフモフを入れて入ってきた


中華「あれ、どうしたんですか?」

店主「モフモフの交代だ。あんまり浮かべとくとこいつらものぼせるんでね」

やる気「このモフモフ……球体の毛玉みたいな生き物はなんなんすか?」

店主「>>下1」

店主「よく分からんが気がついたら存在し増えている謎の存在だ」

男「え……?」

店主「空から降ってきたんだ。庭にな……」

中華「確かに謎の出自ですね」

店主「それで、娘が飼いたいっていうもんだから仕方なく餌やって、洗って……そんときに風呂が好きだってのが分かった」

やる気「だから、浮かべてるんすか?」

店主「最初はそんなつもりなかったさ。娘が店先にモフモフを置いて接客してたら、やたら評判がいいもんでな」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「はぁ」

店主「で、風呂に入れてみたらどうだってことでやってみたが……名物になった」

中華「謎の存在……なんですよね?なんか変なこととかしてないですか?」

店主「いやぁ、ないなぁ。大体なんでも食うし、暴力的でもないし」

やる気「すごい生き物っすね」


そう言ってやる気は近くのモフモフを掴んで店主に渡す

すみません寝落ちしました


それから三人はモフモフの湯を楽しみ、
満足して部屋に戻ってきた


炎魔「じゃ、私もお風呂行ってきますね」

男「おう」

中華「あれ?そろそろ浴場は閉じるみたいだけど」

男「まぁ、色々あってな。炎魔だけ入ることになってるんだ」

やる気「事情は分からないっすが……まぁなんかありそうだし不思議ではないっすね」

三人が寝る準備をしていると、炎魔が帰ってきた


炎魔「うーん、さっぱりしましたね」

中華「それはよかった」

炎魔「みなさんも、あのモフモフと話しました?」

やる気「あぁ、モフモフ……え?いや、話はしてないっすよ?」

男「なんか言ってたのか?」

炎魔「>>下1」

炎魔「「この女、チ○コがある!」って言われました」

男「ぶっ」

中華「え……?」

やる気「ちん……え……?」

炎魔「そういえば皆さんにはお話ししていませんでしたね!私には______」

男「ちょっと黙れ!夜に大声でそんなこと話すな!聞かれたらやべぇぞ!」

男は咄嗟に炎魔を取り押さえ、口を塞いだ


炎魔「んんっ!?」

男「いいか、冷静に話せ……今はいいが、いつか後悔することになるから、なるべく冷静になってくれ」

炎魔「分かりました」


男は炎魔から離れる


中華「それで、本当なの?『その話』……」

炎魔「ええ、本当です。どうも、フェニックスの力によるもののようです」

本日はここまでです
ありがとうございました

男は必死に炎魔を制していたが、
実は隣の女子部屋には聞こえていた


怪盗「……とんでもない話が聞こえてきましたけど!?」

狙撃少女「私たちが誘っても断ったのは……もしかして、男性だから……?」

氷魔「……4:4で合わせる為に男さんが部屋を分けたのかと思いましたが……まさか……本当に男女分けだったとは……」

ぶりっ子「でも……男の子だったら、もっと早くバレてると思うんですよねぇ」

怪盗「どうします?確かめます?」

狙撃少女「え、流石にデリカシーがないですよ」

氷魔「……でも……これから炎魔さんと顔を合わせるたびに……男の子なのかな……って考えなきゃいけないのは嫌ですね……」

ぶりっ子「聞けば教えてくれそうですけどねぇ」

怪盗「じゃあ、確かめましょう!」


怪盗は部屋から出ていった

狙撃少女「えっ、どうします?」

氷魔「……代表者が現れたのなら……着いていきましょう……」

ぶりっ子「そんな気負うことでもないと思うんですけどねぇ」


三人も怪盗に続いて男子部屋に向かう


怪盗「なに話してるんですかー?」

やる気「うわっ!どうしたんすか急に!」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「……聞かれたか」

怪盗「ってことは、本当に?」

炎魔「はい、私には生えてますよ」

氷魔「……男の子だったんですね……」


三人も続いて入室する


中華「待った、そりゃ語弊がある。炎魔さんは『両方』だ」

炎魔「理由はよく分かりませんが、フェニックスの自己完結性から来ているのかもしれませんね」

やる気「へぇ~」

ぶりっ子「そういえば、排泄とかするんですかぁ?」


真面目な顔でとんでもないことを聞いている


炎魔「ないですね」

狙撃少女「え?じゃあ食べたモノはどこに行くんですか?」

炎魔「>>下1」

炎魔「火炎放射のエネルギーとなるのです」

氷魔「……魔石の類を食べたら……火力出そうですね……」

炎魔「ええっ!?嫌ですよ!おいしい物だけ食べてたいです!」


冗談めかして話す氷魔に、露骨に頬を膨らませて返す


中華「もし必要なら、僕が魔石料理を作ろう!」

男「ははは、そりゃ期待できるな」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「それより、気になるのはあのモフモフが喋ったってことじゃないっすか?」

氷魔「……話したのですか……?」

男「ああ、炎魔が話しかけられたと」

ぶりっ子「へぇ、なんで私たちの時は黙ってたんでしょう?」

怪盗「こうは考えられませんか?『炎魔ちゃんだけはモフモフの声を聞くことができる』……とね」

狙撃少女「充分ありえます。ラジオのチャンネルが合ったように、たまたま聞き取れるのかもしれません」

中華「……ちょっと不気味になってきたね、あのモフモフ」

男「俺もそう思っていたところだ」

ぶりっ子「炎魔ちゃん、あのモフモフ……仲間内でなんか話してませんでしたか?」

炎魔「えぇ?そうですね……>>下1」

炎魔「もっともっとモフモフが欲しいねぇ、って言ってましたよ」

怪盗「意外と平和的ですね」

狙撃少女「侵略を企んでいるのかと思いましたが、違いそうですね」

男「なんか増えるらしいし、もっと増殖するつもりかもしれないがな。だとしたら……」

中華「侵略とかしてきてもおかしくはないけれど、なにかした訳じゃないし、とりあえず安全と見てもいいね」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから一行は再び部屋に分かれ、眠った


~翌日・陰週火曜日~


氷魔「……揃いましたね……」


全員が朝食を終え、部屋を出てロビーに集まる


やる気「ほんじゃ、チェックアウトするっすよ」


スイートルーム代は高く付いたが、
他に手がなかったので仕方ないだろう


【ギルドの資金】72285295

怪盗「じゃ、張り切って行きましょう!」

狙撃少女「どこにですか?」

男「時間はいっぱいある。図書館の塔に向かおう」


乱反射するその塔は非常にシンボリックで、
この街はそれを中心に造られている
十分ほど歩けば、塔の前に着いた


中華「しかし、本当に大きな塔だ。本当に魔神がいるなら、これだけの物で封じるのも頷けるね」

ぶりっ子「うちの屋敷のちんけな地下でも封印できてましたけどねぇ」

氷魔「……しかし……高低差はなかなかのものでした……それが重要なのかもしれません……」


そんな仮説を検討しつつ、一行は図書館に入っていく


炎魔「すごい……!」


どこまでも続いていくような螺旋階段が上へ上へと伸ばされており、
沿った壁面には無数の本棚が並んでいる
そして数メートルおきに足場で階層が作られており、
それらの階層ごとにもジャンルで分けられた本が本棚に入れられて陳列されている


氷魔「……これだけの本があれば当分飽きない……いや……永住できますね……許されるなら……」

本日はここまでです
ありがとうございました

本を探そうと思った所で、
階段の前で準備運動をしている大男が目についた


やる気「何してるんすか?」

大男「本回収のバイトだよ。体力に自信のない人やご老人は、上階まで本を探しに行くのが大変だからな」

ぶりっ子「なるほど……」

怪盗「これからどうします?」


>>下1……図書館での行動
1.本を探す
2.地下に行ってみる
3.自由安価

男「よし、なんか本探すか」

大男「この図書館は上階に行けば行くほど、専門的なジャンルの本が増えていくぜ」

狙撃少女「ということは、一階や二階ではあまりめぼしい本はなさそうですね」

大男「そうだな……冒険者ならば、いらないかもしれん」


情報提供に感謝し、一行は階段を上り始めた

中華「二階は……いわゆる生活雑誌だね」


階段脇の本棚を見ながら上っていく
雑誌は目を引くように作られているため、
モザイクアートのような色彩を放っている


やる気「男さん、こういうの読んだらいいんじゃないすか?」

男「えっ、俺?」

やる気「最近は大丈夫っすけど、前はちょくちょく生活の基本的なこととか知らなかったじゃないっすか」

男「ま、まぁな……」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「えっ、そうだったんですか?」

ぶりっ子「そうですねぇ」

狙撃少女「すごくしっかりしてるイメージがあるんですけどね」

男「マニュアル人間だからな、俺は」


そんなことわ話しながら階段を上っていく
そんな彼らの目を引いたのは、>>下1のジャンルの本棚だった

怪盗「お、面白そうなやつありますよ」


一行は七階の本棚の前で立ち止まった
そこは、神話・宗教のコーナーだった


炎魔「難しそうなコーナーですね?」

中華「でも、僕たちはなるべくこれらについて学ばなければならないと思うよ」

氷魔「……さて……どれを読みましょうか……」

怪盗「これおすすめです、これ」


彼女は飛び上がり、
専用の足場を使わずに一冊の本を取ってきた


やる気「なんすか……胡散臭い本っすね」


タイトルには『神格の上げ方』と仰々しく刻まれている


怪盗「なにが胡散臭いってんですか!」

やる気「……これ読んで嬉しいの神だけっすよ?うちには一人いるっすけど……売るつもりでこんなもん出版する奴が怖いっすよ」

氷魔「……神がごく僅かなのは言うまでもなく……自由に動き回れる柱ともなれば……さらに一握り……」

本日はここまでです
ありがとうございました

ぶりっ子「考えてみれば、超怪しいですねぇ」

狙撃少女「……そもそも、それをメソッド化して伝承できるような人物がいるのでしょうか?」

男「確かにな。だが、その答えは出すことができるぞ」

中華「うん、著者は書いてあるね」


本を開いた1ページ目、そこにはタイトルともに著者の書かれた頁だった


>>下1……著者の名前

そこにはピリッポス2世と書かれていた


氷魔「……変わった名前の……人ですね……」

男「なんでだ……?」

氷魔「……え……?」

男「いや、なんでもない……」


都合のいいことに、彼はその王について知っていた
そして、それが自分のいた世界の人間であることも当然分かっていた

ただ困惑しながら、次のページを開く
本来これを読むべきである中華を気にかけながらも、
目次のようになっているその頁に目を通す


やる気「おっ、面白いことが書いてある感じっすか?」

男「ああ、面白いかも」


いくつかの章に分けられており、
その始まりは著者の独白だった


ぶりっ子「まさか、本物ですかぁ?」

素早くそれを開くと、
彼がいかにして神へと至ったのかが記されていた
かつて王であったことも語られており、
『本人』のものであることは間違いなかった


男「つまり______」


彼は転生し、この世界でも覇道を歩んだのだろう
そして、その果てが神だったのだ


怪盗「なんですか、急に?」

男「本物だ、これは」


論理的に確信したが、
いざ理由を聞かれれば勘だと答えることになる

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「そうなんですか?」

男「ああ、まぁ勘だが」

中華「えぇ……」

男「そんな顔をするな、とりあえず中華は読むべきだ」


そう言って彼に本を渡すと、
怪訝な顔をしつつも中華は本を読み出した


氷魔「……勘……ですか……」

やる気「俺っちもなんか本探してくるっすかね」

怪盗「私も!」


二人は恐るべき速さで階段を上っていった


ぶりっ子「どうやったら、人間の体であんなスピードが出せるんでしょうかぁ……」

狙撃少女「いつか私の弾丸よりも早く走るのではないかと恐れています」

本日はここまでです
ありがとうございました

去っていく二人を見失うと、
残った男と中華以外のメンバーは周りの本を見始めた


男「どうだ、中華。なにか自分の神格を上げる方法は見つかったか」

中華「うん、いくつか書いてある。章ごとに違うやり方が記されているみたいだ」

男「それはいい。それで、なにか自分でもできそうなものはあったか?勿論、最大限バックアップしよう」

中華「>>下1」

中華「ひたすら座禅して無の境地に至れって」

男「無か……」

中華「ひたすらやればできそうじゃない?」

男「どうかな。料理のことを考えずにいられるかい?」

中華「それは……どうだろう?」

男「まぁ、料理のことを考えながらでも無の境地に至れるのであれば何ら問題はないな。ただ……」


そこまで言って男は顔を曇らせる

中華「……どうした?」

男「いやぁ、いらぬ心配をしたのさ。まさか中華が料理のことを忘れる訳ないしな」

中華「態度は豪快だけど、結構繊細だよね」

男「褒めてる?」

中華「七割くらいは」

男「ははは、そうか。……うん、中華なら座禅だってやれそうだ」

本日はここまでです
ありがとうございました

わけもなく空気感をしっとりさせていると、
怪盗が降りてきた


氷魔「……結構早かったですね……」

怪盗「変なことに興味はないのです」

ぶりっ子「やっぱり、上に行くほど変な本が増えるんですねぇ」

狙撃少女「それで、なんの本を持ってきたんですか?」

怪盗「ふっふっふ……>>下1」

怪盗「『真作と贋作の見極め方。これを知っていれば贋作でも本物と瓜二つ!!』」

男「なにかを偽造する気満々じゃないか!」

怪盗「し……失敬な、偽物掴まされないように勉強するだけですよ!」

???「こら、図書館ではお静かに、ね?」


注意する声の方を見ると、
浮遊するホログラムの女性がそこにいた


男「すみません。ところで……あなたは?」

市長「ここの市長をやっております」

男「ああ、あなたが」

氷魔「その姿は……?」

市長「かりそめの姿です。この塔は魔力が非常に豊富なので、素体がなくともホログラムで現れることができます」

やる気「んー……なんすか?」


彼もまた、本を取って戻ってきたようだった


市長「市長です」

やる気「ああ、話は聞いてるっすよ。異常に美人なんで、そうじゃないかと思ってたっす」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「そうだ、市長さん」

市長「いかがなさいました?」

男「この図書館について、知りたいことがあるんですが……質問しても?」

市長「ぜひどうぞ。しかし、私は司書ではございませんので、専門的なことはお答えできない可能性もあります」


非常に機械的な一文だった
そもそも、統合的AIにも答えられないほどの専門的質問とやらはあるのだろうか


男「……この図書館の地下に、魔神が封じられているとの噂がありますが……真実ですか?」

市長「>>下1」

市長「いますけど、とてもおとなしい子ですよ」

怪盗「それはよかったです」

市長「みなさまで三組目ですかね」

狙撃少女「?」

市長「あの魔神を倒すつもりでやってきた方々です」

中華「まぁ……悪いやつだったら、実際倒すつもりだったね」

氷魔「……まぁ……魔神って自由ですからね……」


かつて一行が遭った魔神は、
邪悪なものとしてこの世に喚ばれ、
しかしヒトの如く哲学的にもものを考えられる存在だった


市長「他の魔神に会ったことがあるのですか?」

やる気「そっすね、超危険っすけどコミュニケーションは全然取れるし、打ち解けることもできる感じだったっすよ」

市長「ふむ……やはり、現存する魔神の多くは、最初に与えられた使命については忘却しているか、あるいは……ともかく、さらにそれ以外の魔神も、話せば分かる者が多いと推察できます」

ぶりっ子「まぁ、安全じゃなかったらその上にこんな大きな図書館作りませんよねぇ」

市長「……図書館ができたのは、魔神を確認する前だったんです」

怪盗「適当ですね~」

市長「そうですね、なにぶん私が市長になる前のことですから」

狙撃少女「あなたなら、そういったことはしないと?」

市長「勿論、その通りです。元々、私はかの魔神を観測し、情報を集めるためのAIとして製作されたのです。ベースの思考から、リスク管理にはかなりシビアであることが求められていたのですね」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「……なんで、それが市長に?」


明らかに繋がらない
最初から街を統御するために造られたAIだとばかり一行は思っていたが、そうではないようだ


市長「この街を守るには、それしかなかったのです。少なくとも、私の計算によれば」

中華「いや、どうやったんですか?」

市長「『開発』を進めようとする資本家やその手先を欺き、この街に手出しできないようにしました。彼らは魔神と戦うつもりだったので」

氷魔「……深く立ち入らないほうが良さそうな話ですね……」

市長「そろそろ予定がございますので、私は行きますね」


そう言って彼女はその場から消滅した


やる気「すごい人だったっすね……いや、AIっすね」

ぶりっ子「そうですねぇ、なんかちょっと怖かったですよぉ」

怪盗「そういえば、やる気さんはなんの本を持ってきたんですか?」


問われると、本を胸のあたりまで持ち上げて返事をする


やる気「これっすか?>>下1っす」

やる気「埋蔵金伝説の本っす」


表紙には光り輝く金の延べ棒の絵が踊り、
内容もまたロマンを求める者を駆り立てるようなものだった


狙撃少女「こういうのが好きなんですか?」

やる気「嫌いじゃないっす。なんか、懐かしい気分になったんすよ」

男「そりゃまたなんで」

やる気「うちの親父が、探してたんすよね」

中華「実在する自信があったのかな」


そう聞くと、彼は意味ありげに笑う


やる気「半分、そうだったと思うっす。実際言い伝えは確かにあったんすよ。俺っちらの祖先が、未来に託したという埋蔵金が」

氷魔「……鵜呑みにはしていなかった……ということですか……?」

やる気「鵜呑みにせざるを得なかったんすよ。一族の誇りとして、かつての栄華を象徴する埋蔵金が、『やっぱり無かった』なんてことはあっちゃいけないっす」


寂しそうな目で、彼は遠くを見ている
話しぶりから、ホームシックの類でないことは明らかだ

本日はここまでです
ありがとうございました

ぶりっ子「かわいそうな話ですねぇ」

やる気「そっすね、でも埋蔵金探しに行ったのは宝探しみたいで楽しかったっす。いい思い出っすね」

怪盗「だから、それに興味を持ったんですね」

やる気「怪盗も好きそうっすよね」

怪盗「ええ!そういったロマンと生きるのが私ですから!」


それから一行は、三人の本をそれぞれ一緒に閲覧し、
夕方まで時間を過ごした

狙撃少女「もう夕方ですね」

男「今晩の宿についてだが、さっきあたりを付けておいた」

中華「ありがたいね」

男「例のパンフレットがここにもあったからな。一階の受付に置いてあった」


それから男は、ギルドの面々を宿まで連れていった
それは住宅地の中にあり、いかにも普通の宿だった

本日はここまでです
ありがとうございました

一行が宿に入っていくと、カウンターに店主がいた


店主「おお、冒険者の方々ですか?」

氷魔「……はい……そうですが……」

店主「うちは冒険者の方を割引で泊めてるんですよ、部屋も沢山空いてます!」

やる気「へぇ、そりゃいいっすね。……部屋が沢山空いてるってことは、あんまり冒険者来てないんすか?」

店主「ええ、実はそうなのです」

ぶりっ子「なんでですかぁ?いい街だし、いい宿だと思うんですけどねぇ」

店主「>>下1」

店主「何者かわかりませんが、最近冒険者を狙う恐ろしい集団がいるみたいで…」

怪盗「冒険者を……?」

狙撃少女「市民や商人ならともかく、武力のある冒険者を狙うとは、変わってますね」

店主「ええ。動機はともかく、それでまだ捕まっていないのが恐ろしいのです」

男「だが、俺たちはまだ遭っていないな」

中華「本拠地でも分かれば、倒しにいきたい所だね」

店主「そうしていただけるとありがたいのですが……それもそれで不安です」

氷魔「……彼らが……不死鳥より強いのでなければ……倒せなくてはいけませんから……」

炎魔「戦いですか……面白いんですか?」

やる気「人によるっすねー……炎魔は楽しめると思うっすよ」

ぶりっ子「私はなるべく戦いたくないですけどねぇ」

怪盗「スリの腕はそこまででもないので、直接対決しなきゃ盗めないものもありますから、手段として楽しんでますよ」

本日はここまでです
ありがとうございました

嘆く店主を尻目に、一行は部屋に向かった
いわゆる大部屋であり、全員宿泊できる


狙撃少女「夕飯はいつですか?」

男「ああ、今回は頼んでないんだ。中華に作ってもらおうかと思って」

中華「いいのかい?冷凍してあるとはいえ、肉は早めに使いたかった所なんだ」

氷魔「……期待できますね……」

男「厨房は手狭だが、本格的なキッチンのある宿はほぼない。許してくれ」

中華は充実した様子でキッチンへと入っていった


やる気「城下町に帰れば毎日食えるんすけどね」

ぶりっ子「今日図書館で調べたんですけどぉ、ここ、かなり極北に近いですよぉ」

怪盗「そうなんですね、あとどのくらいですか?」

ぶりっ子「ここからさらに北の港から行けるらしいですねぇ」


まだ夕食までは時間があるようだ


>>下1……どうする?
1.中華の料理を手伝う
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す

男「どうだ、炎魔。その力には慣れたか?」

炎魔「はい、日常で暮らすぶんには!」

男「そうか。……明るくなったな」

炎魔「前の方がお好きですか?」

男「いやぁ、そういうんじゃないさ。俺の好みはさておき、楽しそうでなによりだ」

炎魔「そうですか!」

男「……で、炎魔。これからどうするんだ?」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「え、どうするって……?」

男「既に人間の感覚は得たし、ここは図書の街だ。ここで暮らすのがベストなんじゃないか?」

炎魔「うーん……そうかもしれないんですけど、私の元になった司書さんにも会ってみたいんですよね」

男「……あんまりネガティブなことは言わないようにしていたが。そもそも生きているのか?」

炎魔「それは分かりません。でも、諦めたら私はきっと後悔します」

男「……そうか」

炎魔「なにか面白いですか?」


それを聞いて、男は笑顔になった


男「いや、すごいと思ったのさ」

炎魔「そうですか」

男「炎魔がそう言うなら、探し出そうじゃないか。君の元になった存在を」

炎魔「あの、説明してくれませんか?細かい機微は私にはまだ分かりません」

男「君が自発的に、しかも感情的に発言したんだ。勝手なことだが、進歩と言っていい」

炎魔「そうですか?」

男「そうとも、性格が変わっても、心根まで変わるのは難しい。だが、君は間違いなく変わった。意識的でない行動からも分かる」

炎魔「それを聞いて、すごいと?」

男「ああ、嬉しかった」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「私も嬉しいです!」


そう言うと、体から炎が炸裂した
燃え移るタイプの炎ではないようだが、
とても心臓に悪い
また、部屋の気温が上がった


男「そ、そうか……だが、人前であまり燃えないほうがいいぞ。怒られるか、心配されるかだからな」

炎魔「はい!そういえば私、この力を得てから新たな特技を習得したんです!」

男「話の展開が強引だな……でも気になるな、なにができるようになったんだ?」

炎魔「>>下1」

炎魔「少ししょぼいですが、『破魔の炎魔』と『焼魔』を覚えました」

男「めちゃくちゃ強そうだけど」

炎魔「『破魔の炎魔』はその名の通りですが……」

男「いや、分からんよ!?」


大したことではなさそうに話を進めようとする彼女を止める
むしろ、そちらの方が分からない


炎魔「私の体と炎で立ちふさがり、邪な力の侵食を阻む技です」

男「肉壁かぁ。あんまり使わせたくないな」

炎魔「しかし、この肉体はもはやか弱い人形のものではないのですよ」

男「ほう」

炎魔「神聖なる不死鳥の力は、あらゆる災いを跳ね退けるのです!」


そう言って羽ばたくようなポーズを取る
飛べば様になるものを、立ったままポージングしている


男「……まぁ、そういうならそうなんだろう。でも気分的に嫌だな」

炎魔「そして『焼魔』はなんと……魔物に非常によく効く炎を放つ技です!予想だにしなかったでしょう!」

男「いやいやいや、聞いたまんまだよ。随分面白くなったな」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「人間とかには効かないので、みなさんを巻き込んだりしても大丈夫です!」

男「それは便利だな。ただ……状況次第で中華とやる気は燃えそうだ」

炎魔「ええっ!?魔物だったんですか!?」

男「いや、魔王の力を持ってるんだ。平時はともかく、力を解放してるときに撃つと燃えるかも」

炎魔「まだ改良が必要ですね……」

男「気に病むことはない。それよりも、もっと自分の人生を楽しむ技術を磨いたらどうだ?」

そんなことを話しているうちに、
夕食の時間となった


中華「はーいお待たせー」


彼は山盛りの肉を運んでくる
大皿から自由に取って食べる方式のようだ


氷魔「……すごい量ですね……」

やる気「よっしゃー!」

本日はここまでです
ありがとうございました

積まれた肉をものすごい勢いでやる気が食べていく
他のメンバーも適宜を肉を取って食べている
女性陣はどちらかといえば野菜を多く食べる傾向にあるが、炎魔は肉しか食べていない


ぶりっ子「魔神ってなんなんでしょうねぇ?」

男「本来、俺たちとは関係のない存在だ。だが、清算を要求されることにはなるかもしれないな」

怪盗「面倒な奴らですねぇ」

中華「魔獣も食べた、幻獣も食べたとなると……魔神の味も気になるね」

狙撃少女「えっ、急になんですか?」

中華「いや、魔神の話してたじゃん?」

炎魔「おいしそうでした?会ったことあるんですよね?」

男「……とてもじゃないけど、食べる気分にはならんなぁ」

氷魔「……いかにも危険そうなものでも……食べてみればおいしいこともあります……」

やる気「チャレンジ精神っすね」

中華「そう、何事もチャレンジしてみればできるかもしれないんだ。ね、炎魔?」


彼は野菜をフォークで刺し、渡す


炎魔「お野菜ですか……?」

ぶりっ子「苦手なんですかぁ?」

炎魔「味覚がろくにない頃は、むしろ好んで食べていたんですが……」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「私にも苦手な野菜はあります。彼女を責めることはできません」

狙撃少女「おいしいのに……」

男「だが、野菜が苦手なやつに野菜を食わすのは一筋縄ではいかんぞ」

中華「やっぱり?」

氷魔「……説得……というのもありきたりで効果は薄いですし……」

中華「じゃあ、うちに伝わる秘伝のメソッドで食べさせるしかないね!」

男「そんなものがあるのか!どうやって食べさせるんだ!?」

中華「>>下1」

中華「肉を野菜で巻いて食べる方法だよ! キャベツロールとかピーマンの肉詰めより手軽で巻くだけだからね!」


そう言って彼は肉と野菜を合体させた
そして、それを再び炎魔に食べさせようとする


炎魔「うっ……うー……ええいっ!」


一瞬渋る様子を見せたが、最後にはそれにかじりついた

恐怖の表情のまま、恐る恐るそれを咀嚼する
そして、どうにか嚥下した


ぶりっ子「どうですかぁ?」

炎魔「ま……まぁ、これだったら、食べてもいいですね!」

怪盗「そういえば、私もおばあちゃんにやってもらったような思い出がありますね」

狙撃少女「なんか、こういう一面があると安心します」

すみません寝落ちしました


微笑ましい夕食を終え、中華は洗い物を始めた


男「野菜をうまいと感じるかどうかと年齢には関係があるらしいな。歳を取ればとるほどうまく感じるという」

氷魔「とすれば……炎魔さんは生後数日……厳しいですね……」


>>下1……どうする?
1.中華の洗い物を手伝う
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す

男「そういえば……」

やる気「なんすか?」


大量の肉を平らげて満足げなやる気に話しかける


男「あのベリアルとかいうやつ、最近は刺客とか寄越してこないな」

やる気「そうっすね……夢にまで干渉できるなら、なんらかの方法で攻撃してきもおかしくはないんすけど」

男「あっち側にも事情があるのか?」

やる気「それは分からないっすけど……まず、ここじゃ手出しできないんじゃないすか?あの市長、底が知れないっすからね」

男「ああ、市長が工作している可能性はありそうだ。だが、オークションの時は?」

やる気「ピエロの奴らと関係があるかもしれないっすね。だとすれば、接点はあったっすけど」

男「揮毫を強奪した奴らと繋がっている可能性もあるな。まぁ、ここ二つの街だったら理由付けはできそうだが……もっと攻めてきたら怖いな」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「不安なら、調べてみたらいいんじゃないっすか?この街になら多分資料もあるっすよ」

男「そうだな。そういえば、俺は読んでないんだが……」

やる気「埋蔵金っすか?」

男「ああ、そうだ。なんか取れそうなやつあったか?」

やる気「正直な話、金脈の採掘権持ってるならいらないんじゃないすか?」

男「まぁ……それを言われると苦しい。だが、ロマンとして気になる。なんかないか?」

やる気「>>下1」

やる気「貪欲な王様が飛行船一杯の金銀財宝をとある地方の地底奥深くに埋めたって話が載ってたっす」

男「おぉー……面白そうだな」

やる気「もしこの大陸にあるとすれば……探せなくはなさそうっすよ?」

男「そうか?結構難しそうだが」

やる気「巨大地下水脈の話があったじゃないすか。もしかしたら、それと関係してるのかもしれないなって思ったんすよ」

男「なるほどね。一国の王ともなれば、その存在は知っていてもおかしくはない」

やる気「まぁ、その王様じゃなくても、水脈の存在を知ってる権力者なら利用しそうっすよね」

男「ああ、あり得る……本格的に気になってきたな」

やる気「大陸にいくつか入り口があるって話っすし、調べてみるのもよさそうっすね」

男「ああ、調べたほうがいいことを洗い出せたよ。ありがとう」

やる気「礼には及ばないっす。単なる世間話なんで」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから洗い物を終えた中華を全員で労い、眠りについた

~翌日・陰週火曜日~


中華「今日はどうするの?」

男「今日も図書館に行こうと思う。昨日は自由に本を探したが、今回はきちんと情報に狙いを定めてやるよ」

氷魔「……いいですね……最近……よく分からないことが多いですから……」


行動指針を決定し、一日お世話になった宿に別れを告げた

【ギルドの資金】72270295

そして、再び図書館へやってきたのだった


やる気「それで、どれについて調べるんすか?」

男「大魔王ベリアルとやらのことを知っておきたいな」

ぶりっ子「そりゃまた随分上まで上がらないといけなさそうですねぇ」


脇に見える書庫にある本のタイトルをちらちらと流し見しながら、ひたすら階段を上る
そして、ついにそれらしい本を見つけた


>>下1……その本のタイトル

十分は階段を昇り続け、
周りの本はどんどんニッチになってきた
どれもが独自ジャンルのような本で、
分類分けがあまり機能していない


怪盗「あ、これいいんじゃないですか?」


梯子を使って取るべき高さの本を、
アクロバティックに宙返りしながら回収する


狙撃少女「タイトルはなんですか?」

怪盗「『魔王年代記』です!」

本日はここまでです
ありがとうございました

もはや何階なのかも分からない高層で、
読書スペースも閑散としていたために、
全員でそこに座ってそれを読むことにした
幸運にも、それは二冊あったのだ


炎魔「魔王、めちゃくちゃいますね……」


有史以来、その資格を得た者は100名を超える
しかし、『大魔王』の称号を持つ者はごく僅かだった


男「かなり最近にまで及んで、色んな魔王のことが書いてあるが……流石に、うちの二人については書かれてないな」

中華「魔王って人間じゃないイメージがあったけど、結構人間もいるね」


いわゆる魔物の中で、特に強い者が魔王であるという認識は古来から人間たちの中であるものだ
しかし、本質的には魔を統べる者でしかないため、
その力や資質を認められれば、種族はあまり関係ない


氷魔「……人間の魔王は……むしろ多すぎますね……魔族の中でも……様々な種族から輩出されていますが……」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「あれ……?」

ぶりっ子「どうしたんですかぁ?」

やる気「ベリアルってやつ、確かに載ってますけど……300年前に死んでるっすよ?」

怪盗「えぇ!?」


衝撃の真実だった
誰もが、それに対し様々な仮説を考える


狙撃少女「ベリアルの名を騙る別人かもしれませんね、今のベリアルは……」

中華「ありうるね、でも……もしかしたら、本当に死んでたかもしれないよ?」

男「復活したということか?」

氷魔「……それも有力です……もし復活したとしたら……復活前の死因について……知っておいたほうがいいかもしれませんね……」

やる気「なるほど……それなら書いてあるっすよ」


魔王ごとに、知られているものはその死因まで記されている


ぶりっ子「で、そのベリアルはなんで死んだんですかぁ?」

やる気「>>下1」

すみません寝落ちしました


やる気「食中毒っすね」

怪盗「……そんなことでぇ!?」

やる気「みたいっすよ?なに食って死んだのかが分からないっすけど」

狙撃少女「なにか、奴にとってはとてつもない毒になってしまう食べ物があるのかもしれませんね……」

男「知ることができれば、なにかに使えるかもしれないが……」

使い道の定かではない情報を手に入れた一行は、魔王年代記を読むのをやめた


中華「よし、次の本を見に行こう」

氷魔「……次は……なんですか……?」

男「地下水道への入り口を知りたい。この地域の地理系の本なら、なにか書いてあるかもしれないと思っていてね」

炎魔「探検したいですね」

やる気「危険っすけどね」

ぶりっ子「地理誌とかなら、結構下ですねぇ」

怪盗「どういう人が読むんでしょうか?」

市長「お答えしましょう」


素朴な疑問に答えたのは市長だった
しかし、彼女が現れたのは完全に虚空からであり、この塔の全てを掌握していることを誇示するかのようだった


狙撃少女「心臓に悪いですね……」

市長「そうですか?では、なにか予告をつけることにしましょう。ご指摘ありがとうございます」

本日はここまでです
ありがとうございました

皮肉にしか聞こえないが、AIとはそういうものだ
紛れもなく本心である


男「それで、地理誌って誰が読むんですか?」

市長「私です。市民の多くにも、目を通してもらっています」

中華「そんなに人気なのかい?」

市長「安全で、不満の出ない開発のためです。こちらでできる限りのシミュレーションはしますが、市民からのフィードバックもかなり多く……ここは世界で最も地理誌が読まれている街なのです」

氷魔「……それなら……好都合です……」

市長「どういうことでしょうか?」

やる気「俺っちらは、この大陸の地下にあるという地下水脈の入り口を探してるんすよ」

市長「ああ、それですか」


どうやら、彼女は知っているようだ
特にそれを聞いて驚いた様子もない


ぶりっ子「どこにあるんですか?」

市長「>>下1」

市長「この都市の下↓にあります」


そう言って彼女は下を指差す
地下なので、当然この都市の下にあるだろう


怪盗「具体的に、どこから入れるんですか?」

市長「いくつか入り口は繋げてありますが……一番近いものだと、この図書館の地下深くでしょうね」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「では、行ってみましょうか」

市長「それと、伝えておかなければならないことが」

男「なんですか?」

市長「この塔の地下から地下水脈へ行けることについては、他言なさらぬように」

中華「……なんで、僕たちには教えてくれたんですか?」

市長「先日のうちに、あなたたちについては調べました。色々と胡散臭いこともしていますが……悪意のある人達ではないことは分かったので」

氷魔「……そうですか……信用していただけるなら……それで……」

市長「地下に繋がる扉は施錠されています。鍵を渡しておきましょう」


彼女は男に鍵を渡してきた
この図書館にいるのはホログラムのはずだが、彼女は鍵を持てている
しかし、そのことを追及するのはやめることにした


男「どうも、ありがとうございます」


一行は彼女と別れ、長い螺旋階段をひたすらに下り、一階に降りた
そして、一階にある地下行きへの扉を開き、薄暗い螺旋階段をまた降りていく

すみません寝落ちしました


すると、煉瓦造りの地下階段に、土が露出するとともにトンネルが開けられている場所がある
若干の湿り気も感じ、ここが地下水脈の入り口なのだと分かる


中華「よし、行こうか」

氷魔「……なにが潜んでいるか……分かりませんから……気をつけましょう……」

そこは、まるで坑道か、あるいは下水道のようだった
洞穴の中央にはいつでも水が流れていて、
この空間自体の崩落は、トンネル端の木製の柱で防がれている
そして、その光景がひたすらに続いていく


ぶりっ子「どこまで続くのでしょうかねぇ」

やる気「話じゃ、大陸全土を結んでるって話っすよ。疲れたら切り上げて出口から出たほうが賢明っすね」

怪盗「お宝の匂いがします!」

それから半刻ほど歩くと、
興味を惹かれるものが現れた


狙撃少女「あっ、あれ見てください」


彼女が指す先には、小屋があった
ここが坑道のように作られたとしたら、
作業員や監督の拠点だろう


男「よし、入ってみようか。中になんか居たら嫌だし、警戒しておこう」


臨戦態勢に入ったまま、代表して男が入口のドアを開ける


>>下1……小屋の中の様子

鉱夫「……ん?」


小屋に備え付けられた、年季の入った木製の椅子には、ラフな格好の鉱夫が腰掛けていた


中華「あ、こんにちは」

鉱夫「おう……今は昼ってことか」

氷魔「……そうですね……その様子ですと……かなり長く地下にいらっしゃるようで……」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「しかし、とんでもない広さの地下道っすね、これ全部おっさんがやったんすか?」

鉱夫「そんな訳ないだろう。まぁ、関わりはしたがな」

ぶりっ子「今は休憩中ですかぁ?」

鉱夫「まぁ、そんなところだ」

怪盗「しかし、なんのためにこんなに地下道を広げてるんですか?」

鉱夫「>>下1」

鉱夫「・・・『宝船』、それの発掘のためだとよ」

狙撃少女「『宝船』?こんな地下に、船ですか?」

鉱夫「まぁ、水脈だからな。それにかこつけて呼ばれてるだけさ」

男「……と、いうことは……埋蔵金の類か」

鉱夫「ああ、そうとも。だが、掘れども掘れども出てきやしない。当たり前さ、何百年も前の代物だからな」

中華「……でも、大陸全土にこのトンネルはあるんでしょう?そんなことさせたら、絶対赤字ですよね」

鉱夫「そこが不気味な所さ、俺たちの雇い主は金に糸目をかけちゃいない」


そもそも、これだけのトンネルがあれば交通の便としても利用可能なはずである
実際、オークション会場を襲撃した集団はこれを利用している


氷魔「……しかも……その存在を公表していませんね……」

鉱夫「ああそうとも。だから、なにか後ろめたい秘密があるだろうし、金じゃ買えない『何か』が宝船の正体なんじゃないかって思ってる」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「見つけたいっすね、それ」

鉱夫「冒険者だろうし、そう言うと思ったよ。勘弁してくれ」

ぶりっ子「でかい仕事ですからねぇ」

鉱夫「全くだ、しかもこうしてサボってもほとんどバレないしな」

怪盗「こんな大きなトンネル、監督しきれないでしょうね」

狙撃少女「……そろそろ行きますか」

一行は鉱夫に別れを告げ、
どこまでも続く地下道に戻った


男「そういえばここ、虫とかいないなぁ」

中華「だね。いいのがいれば捕りたかったけど」

氷魔「……嫌です……出会ったら即氷漬けです……」

やる気「でも、実際虫はいないのに、かんか怯えてないっすか?」

氷魔「……この地下水脈……魔力が漂っているんですよ……もしかしたら……ここ自体に魔法がかけられているのかも……」

ぶりっ子「そうなんですかぁ?」

怪盗「もしそうなら、気になりますね……そいつが、宝船発見の鍵を握っているのかも?」

炎魔「なるほどー、なんか空気が淀んでるとは思ってたんだよ」

狙撃少女「地下というだけではないのですか?」

炎魔「うん、どんよりした魔力が溜まってる」

男「ほう……」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「それならさ、その魔力がどこから来てるかって分かる?」

炎魔「大体であれば」

氷魔「……そうなんですか……!?……それはすごいですね……」

やる気「じゃあ、辿ってみるっすよ」

炎魔「分かりました!こっちの方です!」


炎魔はみなを先導して歩き始める
ときに交差するその道を、迷うことなく歩いていく

しばらく歩いていくと、光が見えた
微弱なものであり、
外に繋がっているわけではなさそうだ


ぶりっ子「なんでしょう?」


近づくと、そこには光る小さな物体が落ちているのが分かった


怪盗「光り物!いただき!!」


彼女は喜び勇んでその物体を手に取る
それは>>下1だった

狙撃少女「ばっちいですよ、捨てなさい」

怪盗「いやいや、見てくださいよ!これ!」


それはエメラルドのような光を放つ、卵だった
一体なんの生き物の卵なのかは分からないが、
とにかくそれは卵だった


男「じゃあ炎魔にあっためてもらうか。一応鳥だし」

炎魔「じゃあ、私の子供ですね!」

中華「そこまで入れ込まなくても……」

氷魔「……でも……割れたら困りますし……大切にしなきゃいけませんね……」


炎魔は大切そうに卵を懐に忍ばせ、
さらに洞穴を進んでいく


炎魔「そろそろ、魔力の発生源ですね」

やる気「さて、なにがあるんすかねぇ?」

ぶりっ子「怖いですねぇ、なんかいたらどうしましょう」


話しながら歩いていると、炎魔が恐る恐る口を開いた


炎魔「通りすぎました」

怪盗「通りすぎた……?」

炎魔「はい、なんというか……すり抜けたような……」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「つまり、それがある空間の入口に行くと、出口から出てしまうということでしょうか」

炎魔「そんな感じです」

男「おぉー……すごい結界っぽい」

中華「どうしようね?どうにかして破らないといけなさそうだけど」

氷魔「……作戦を考えましょう……今日は多分そろそろ夕方ですし……一旦上に上がりましょう……」


ちょうど、近くに上へと昇っていく梯子があった
一行はそれを昇って外に出る
そこは>>下1だった

地面にある蓋のようなものを開け、一行は外に出る


やる気「さて、ここは……」

市長「……あなたたちでしたか」


そこには、AI市長がいた
様々な机と、そこに置かれた書類が部屋に所狭しと並んでおり、どうも彼女の仕事部屋の一つらしい


ぶりっ子「なにしてるんですかぁ?」

市長「そうですね、平たく言えば雑用でしょう」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「そりゃお疲れ様ですね」

市長「……しかし、なぜそこから出てきたのです?」

狙撃少女「え?」

市長「ここはあの図書館のすぐ近くです。かなり時間が経っているのに、全く移動していませんね?地下になにかいたのですか?」

男「いや、いなかったが……もしかしたら、魔力の根源のことといい、空間が歪んでいるのかもしれないな」

市長「なんと、それは大変ですね……」

中華「そういえば、市長にとっては死活問題かもしれないね。ここの地下が、データの通りではないことは……」

市長「ええ、いつ襲撃者が現れるか分かったものではないので」

氷魔「……魔物に……狙われているのですか……?」

市長「魔物も来ますが、特別狙われているということはありません。むしろ、人間が危険ですね」

やる気「その様子じゃ、市長に就くときに相当軋轢を生んだっぽいっすね」

市長「一応言っておきますが、私の支持率は八割を超えています」

やる気「じゃなくて、なんか相当乱暴な方法でその座までたどり着いたせいで権力者に恨まれてるんじゃないすか?」

市長「やはり……気付かれていましたか」

ぶりっ子「ですが、私たちにとっては都合がいいかもしれませんねぇ」

怪盗「そうです。私もあなたも、地下は検める必要がある……協力していただけませんか?」

市長「あなたたちが完全に信用できるなら、合理的な話でしょうね」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「つまり、私たちは万全の信頼が置ける存在ではない……と?」

市長「それを言えば、本当に信じられるのは私たちだけですが……そんなところでしょう」

男「会って一日だしな。データの集積なら探せばあるかもしれないが」

市長「ええ、データは十分……しかし、それだけで量りきれないこともあると、私を造り出した人は言ってしました」


まるで表情が動かないので、本心かどうかは分からない
しかし、製作者に対しては、彼女も悪からず思っているようだった


中華「こればっかりはね」

市長「そこで、見せていただきましょう。データでは量れないものを……」

氷魔「……なにを……見せるのですか……?」

市長「>>下1」

市長「…めg、魔神の封印を解いて仲間にして見せて下さい。 信用は置いておいても『善性』は保証されます」

やる気「今なにか言いかけなかったっすか?」

市長「気のせいでしょう。私がエラーを起こすとでも?」

ぶりっ子「……まぁいいです。その魔神を仲間にすればいいんですねぇ」

怪盗「危険じゃないんですか?」

市長「正直、失敗するとはあまり考えていません。ですが、もし失敗するようなら……あなたたちごと再封印するかもしれませんね」

狙撃少女「そうと決まれば早速……」


話しかけた狙撃少女を、市長が遮る


市長「もう夜になりますよ。今日はここで休み、明日行くべきです」

男「そうだな。……ここで?」

市長「市庁舎には宿泊施設があるのです。ルームサービス等は、全て私たちがやっています」

中華「へぇ……いくら?」

市長「無料です。ただし、誰でも利用できるというわけではありませんよ」

氷魔「……私たちは……大丈夫なのですよね……?」

市長「ええ、皆様もご存知かと思われますが、この街で宿を探すのは少し手間です。ですから、訪れた要人は市庁舎に泊めることになっています」

やる気「へぇ、そうなんすね」

市長「とはいえ、外交は途絶の傾向にあるため、あなたたちが最初の利用者となります。ぜひフィードバックをお聞かせ下さい」

本日はここまでです
ありがとうございました

部屋を出ると、別の市長が現れて鍵を渡してくる


ぶりっ子「あ、どうも」

市長「ここを進んで突き当たりを右に曲がればエントランスです」


指示に従い、エントランスホールに入ると、
やはりと言うべきか、
カウンターに市長が三人ほどいた


怪盗「……ちょっと不気味かも?」

市長「「「ようこそいらっしゃいました」」」


揃って同じ抑揚、おなじポーズで礼をする
一般的かつ大きな宿のそれを模倣して三人配置されているのだろうが、忙しくもないのに三人いても奇妙なだけだ


狙撃少女「完璧なタイミングですね」

男「……部屋に行こう、なんか不安になる」


一行はエントランス脇の廊下に入り、
すぐそこにあった101号室に入った
他に客はいないので、当然101号室なのだ

部屋に入ると、そこは普通の部屋だった
要人専用、というだけあって、スイートルーム基準での普通だ


中華「なんかあるよ?」


部屋の壁には一つ、40インチほどのモニターが取り付けてあった
隣にあるボタンを押すと、画面が点いて市長が映る


市長「こちらはルームサービスです。なにかありましたら、このモニターからお知らせ下さい」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「いやぁ、どこ見ても市長っすねぇ」

市長「人間じゃないので、過労がないのです。これはアドバンテージですよ」

ぶりっ子「お腹が空きましたぁ」

市長「承りました。ただいま夕食を届けに参ります」


すると、わずか二分ほどで夕食が届いた
いつ調理をしたのだろうか……?


怪盗「高級料理によくある『例の蓋』で閉じられてますね?」

狙撃少女「中身を確認してみましょう」


>>下1……夕食のラインナップ

男「おっ、これは……」

中華「中華料理……とはちょっと違う料理がいっぱいあるね?」


男とやる気には、東洋食が出された
主食は米で、肉や魚がタレで味付けされている


やる気「こりゃうちの地元の料理っすね……そんなことまでリサーチされているとは……」

中華「僕の皿には……中華料理だね。やっぱり、人に合わせたものが出てるみたいだ」

氷魔「……これは……おしゃれですね……」


女性陣にはいわゆるフレンチや、地中海系のシーフード料理が配膳されている


ぶりっ子「いいですねぇ……心が満たされますよぉ」

怪盗「……ワインないかな」

狙撃少女「ありません」

男「ルームサービスに言えば持ってきてくれるんじゃないか?」

怪盗「なるほど!」

狙撃少女「どうして言っちゃうんですか!」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗はルームサービスにつなぎ、ワインを持ってこさせた
その最中、炎魔は自分の食事を見ていた


炎魔「肉!肉ですね!……これ、なんですか?」


彼女は、小皿に入ったウグイス豆を覗き込んでいる


中華「ウグイス豆だね、野菜だけど、甘く味付けがしてあるものだから……君でも食べられるんじゃないかな?」

炎魔「そんなものがあるんですね」


彼女は一つそれを口に運ぶ
どうやら、苦手な感じではなかったようで、
普通に咀嚼している


氷魔「……早速食べましょう……食事のサービスはいいですね……」

やる気「そっすね」

本日はここまでです
ありがとうございました

一行は料理に舌鼓を打ち、満足してディナーを終えた
特に、ふるさとの料理を食べられた男とやる気は、かなり精神的な充足を得ている


ぶりっ子「流石のおもてなしですねぇ」

怪盗「毎日これれもいいれふぇ……」

狙撃少女「呂律回ってませんよ!?この人お酒飲むの下手すぎませんか……?……しかも、口にめちゃくちゃ食べかす付いてますし……」


狙撃少女は、仕方なく備え付けの紙で怪盗の口を拭いた

男「水飲ませとこうか」


余っていた水をカップに注ぎ、怪盗に飲ませる
酔っ払いの始末に奮闘していると、
部屋のモニターが起動した


市長「ディナーがお済みのようですので、デザートをお届けします」

中華「いいね、メニューはなんだい?」

市長「>>下1」

市長「綿栗鼠のモンブランです。」


画面に何種類かのモンブランが表示される
いずれも色彩豊かで、お洒落さを感じるだろう


ぶりっ子「モンブラン!?いいですねぇ!」

氷魔「……すごい……食いつきますね……」

市長「この時期、栗鼠が集めた栗がとても甘いので色々なバリエーションが出来ます。」

やる気「へぇ、そうなんすね。季節感のあるデザートってのは風流で好きっすよ」

市長「共通して甘い綿菓子を乗せたりしています」

すみません寝落ちしました


そうしていると、今度はモンブランが届く
カバーを外せば、そこには先ほど見せられたものが確かにあった


怪盗「おしゃれぇ……」

狙撃少女「お洒落ゾンビですね」

男「モンブランなんて、最後に食ったのは何年前だろうか……」

中華「こういう料理は勉強したことがないけれど、それでも、すごい技巧が凝らされているのが分かるよ」


料理人だけあってか、この内の誰よりも優雅にモンブランを食べている


氷魔「……最近は……食べすぎて……太りそうですね……」

ぶりっ子「スイーツで太るなら後悔はないですよぉ」

炎魔「私も、こういう甘いものは好きです!」

市長「ご満足いただけましたか?」


モニターが点き、市長が現れる
相変わらず、ニュースキャスターのように機械的だ


ぶりっ子「はいっ、最高ですぅ!」

市長「それはよかったです。料理をするのは初めてだったので」

怪盗「すごいですね~」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「いやあ、至れり尽くせりって感じですね」

市長「まだサービスは残ってますよ。ここには浴場もあるので」

男「ああ、夕食の後に風呂の時間が来るタイプね」

市長「そうなりますね」

中華「じゃあ、早速浴場に行こうか!」

炎魔「う、うーん……」

市長「……炎魔さん、でしたね?どうかなさいましたか?」


男たちはこの世界でギルドとして活躍してそれなりの期間を経ており、その情報は集めようと思えば集められるほどだ
しかし、炎魔はつい最近その姿になった、イレギュラーの存在である


炎魔「実は私、雌雄同体なんですけど……」

市長「あぁ……失念していました。そういえば、フェニックスの血族はそうした特徴があるという言い伝えがありましたね。対処しましょう」

炎魔「えっ、対処?どうやるつもり?」

市長「>>下1」

市長「混浴場を作り、簡易ながらサウナを設置します。」

氷魔「……え……今からですか……?」

市長「組み立て式の風呂……ユニットバスというものをご存知ですか?」

やる気「そんなんあるんすか?」

市長「ここの浴場は、とてつもなく大きなそれです。念のために全ての資材は用意してあるので、三十分もあれば準備できます」

ぶりっ子「用意良すぎですねぇ」

本日はここまでです
ありがとうございました

急遽始まった突貫工事
一行は追加で半刻、部屋にいることを余儀なくされた


怪盗「サウナも増えるんですね~」

狙撃少女「私は入ったことないので、気になりますね」


30分、なにをして過ごそうか、男は考えることとなった


>>下1……なにをする?
1.中華と話す
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.市長と話す

男「市長?いるか?」


モニターに問いかけると、映像の市長が姿を表した


市長「はい、なにかご用ですか?」

男「いや、暇だしなんか話でもしないか?」

市長「そういうことでしたら、なにか語って聞かせましょうか?」

男「いや、そういうんじゃないんだよね。コミュニケーションさ、コミュニケーション」

市長「つまり……世間話ですか?」

男「身の上話でも俺は構わないけど、そういうことだな」

市長「そういうことでしたら、話題を提供できますよ」

男「おお、よかった」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「私も、街の噂を収集しているのです」

男「ってことは、噂話か」

市長「そうです。例えば、どこそこの家は、昔処刑場があった場所だとか、あるいは誰と誰が付き合っているとか……」

男「いいね、世間話らしい」


きちんと話せば、きちんと返してくれる
男は元々現代人なので、AIの相手はできるほうだった


市長「これも、噂話なのですが……>>下1」

市長「神様や人外の生物は強い存在ほど戦いに向いてなさそうな平和的・消極的な性格らしいです」

男「そうなのか?」

市長「だからこそ人類が滅びずに繁栄してるとも言われていますよ」

男「……じゃあ、世界のために尽くす必要とかないのかな」


ある種、男にとっては自らのレゾンテートルを揺るがす情報だった
あくまで噂だが、不安にもなるだろう


市長「ふむ、データより鈍いですね。言っておきますが、あなたの理念は不要ではありませんよ」

男「そうか?」

市長「つまり、彼らに働きかけることができる存在……人類は、ある意味世界でもっとも危険なのです」

男「意図が掴めてきたな」

市長「私が言いたいのは、上位の存在が安全なのではなく、人類は危険であるということです」

男「……しみじみ思うよ」

市長「あと、私のような人工知能やプログラム的存在も先程の例に漏れますので、気をつけたほうがよいのではないでしょうか」

男「そうか。……市長は、少なくともこの街の人間には誰よりも優しいさ。だから、安全だと思うけどね」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「……?」


彼女は不思議そうな顔をしている
おかしなことを言った訳ではないはずだが……


男「どうした?」

市長「傾向のデータと照合しましたが……あなた、私を口説いてませんか?」

男「違うが!?」

市長「そうですか?では、あなたは変わった人ですね」

男「まったく、きちんと俺を学習してくれよな?」

市長「そうですね、非常に興味深いです」

男「……なんか、ちょっと前の炎魔相手してるみたいだ」

市長「どういう意味ですか?」

男「感情があるんだかないんだかよく分からない感じだ。まだフェニックスの力とかないときだな」

市長「そういえば、それも聞いておくべきことでした。感情とは、どうやって手に入れるものなのですか?」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「うーん……市長だったら、感情のある人との会話やふれあいを行うだけで感情は手に入るでしょ」

市長「そうですか?」

男「目的と理念がはっきりしてるからね。……というか、俺に言わせてもらえば、感情あるでしょ?市長」

市長「……確かに、目的はあります。しかし、それに照らし合わせてでしかものを評価することはできません。喜怒哀楽はないでしょう」

男「……ま、すぐに分かるよ、すぐにね」

そんなことを話しているうちに30分が経過した


市長「準備ができました。ごゆっくり入浴を」


そう言い残してモニターの電源は切れた


中華「よし、じゃあ行こうか!」

氷魔「……地下にいると……特に風呂へ行きたくなりますからね……」

そして、三人は男子風呂へと辿り着いた


やる気「広いっすねぇ」


大部屋をさらに6つほど組み合わせたサイズの、巨大すぎる風呂だった
特別な人しか入れない割には広すぎると言えるだろう


男「しかも、高級感すらあるな。ユニットバスを使うと、なんか微妙な感じになるんだが」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「そうだね……あれ!?」

やる気「なんすか?ボディタオル忘れたっすか?」

中華「違う違う!あれ見て!」


彼の指差す先には、先日見たモフモフの謎生物がいた
なぜかここにもいるようだ


男「あれは……モフモフ!?なぜここに!?」

市長「お答えしましょう」


三人は気付いていなかったが、風呂場にもモニターがあるらしく、市長が起動した


中華「え!?風呂覗かれるのここ!?」

市長「……女性体だと都合がいいのでこの姿をしていますが、私に性はありません。ご安心を……」

やる気「そ……そういう問題っすかね?」

市長「それより、その生物ですが……いろいろあって、宿の方に譲ってもらいました」

男「市長は知らないのか?あのモフモフがなんなのか」

市長「>>下1」

市長「禁足区域からの生命体か、宇宙からの生命体の可能性があるくらいしか情報が無いので、現時点での調査は難航してます」

中華「まぁ、だよね。喋らないし鳴かないし」

やる気「でも、炎魔さんは話が聞けたみたいっすし、チャンネルが合えば意志疎通できそうな気もするっすね」

市長「それはいいことを聞きました。今度やってみましょう」


そう言って市長はモニターを切った


男「……まぁいいや。ゆっくりしよ」

すみません寝落ちしました


一方そのころ、炎魔は混浴場にいた


炎魔「一人でこのサイズのお風呂を使うなんて、とっても贅沢な体験ですね!」


彼女はとても楽しそうに頭を流し、
鼻歌を歌いながら体を流した


炎魔「さて、どの風呂に入りましょうかね~」

炎魔「なんでしょうか、このお風呂?」


彼女は様々な風呂を試して楽しんでいる
細かな風呂の違いには気付かないが、
電気風呂など、明らかに異質なものは特に楽しんでいた


炎魔「!?」


すると、扉が開く音がする
混浴場に、誰かが入ってきたのだ


>>下1……誰が入ってきた?

もちもち「………………」

炎魔「え……!?」


そこには、もちもちの生き物がいた
姿はおおよそ人型と言っていいが、
その身体は小さく、三頭身ほどの存在だった


もちもち「………………」


そして、そのまま水風呂へと入っていった
シャワーを浴びるでもなく、いきなり水風呂に入っていくことから、
まともではなさそうなことが伝わる

炎魔「え……な……なんなんでしょうか……あれ……」


もちもちは未だ水風呂にいる
浸かっているのではなく、ただ浮いている


もちもち「………………」


炎魔は意を決してそれに話しかけることにした


炎魔「あの、なんかもちもちされてますけど……あなたはなんなんですか?」

もちもち「>>下1」

もちもち「もちもち」(もちもちはもちもちだよ。モフモフとは永遠のライバルだよ。)

炎魔「へぇー……あのモフモフのライバルなんですね」

もちもち「もちもち」(君はどっち派?)

炎魔「え~?迷いますね。でも、もちもちかもしれませんね」


モフモフには、結構横柄な口調で両性であることを指摘された過去があるのだ
そうした要因からの発言だった


もちもち「もちもち」(嬉しいよ。よければもちもちしていってね)

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔は心ゆくまでもちもちで遊び、
そのまま風呂を出た


炎魔「いい湯でしたね~」


部屋に戻ると、もう他のメンバーは揃っていた


氷魔「……随分……長く入っていたのですね……」

炎魔「なんか、もちもちがいたので」

ぶりっ子「もちもち?モフモフならいましたけどぉ」

炎魔「そのモフモフのライバルらしいですよ」

怪盗「ええーっ、いいなぁ!私も触りたかったです!」

狙撃少女「確かにそうですが……正体は分かってませんからね」

男「会わせたらどうなるんだろう?」

中華「嫌なこと考えるね」

市長「先程、混浴場でもちもちを捕まえました」


普通にモニターをつけて話に入り込んでくる
ルームサービスというより、オペレーターの類だろう


氷魔「……どうでした……?」

市長「もちもちでした」

やる気「そりゃ、そうだろうっすけど……」

市長「すみません。恐らく、もちもちには、自らをそう形容させる能力があるのかもしれません」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから一行は一日を終え、眠ることにした
どうやらこの部屋には照明を薄暗くする機能があるらしく、リラックスして眠れそうだ


???「男よ……」

男「……んん?」


夢の中で、語りかけてくる者がいた
既に何度かあるような体験だが、いつまでも慣れない
それに意識を集中させると、だんだんとその輪郭がはっきりしていく
彼に語りかけているのは>>下1だった

盗賊淫魔「聞こえているようですね……」


目の前にいるのは、盗賊風の衣装を纏った女性だ
だが、男はその正体に一瞬でたどり着いた


男「お前淫魔だろ、なに企んでやがる」


夢に現れる性質や、特徴的な翼……そして、何度もその仲間に会っていることから、彼女が淫魔であることが分かった


盗賊淫魔「企むだなんてとんでもない……ちょっとお話をしにきただけです」

男「……さて、どれのことを聞こうとしているのやら……別に、お前になにか話して俺に得があるわけでもないだろ?」

盗賊淫魔「聞いても怒られなさそうなことを聞くつもりで来てますよ」

男「……仕掛けてこないのか?」

盗賊淫魔「だって、ミルク持ってるじゃないですか。腐ってますけど、まだチーズじゃないんで手出しできないです」

男「ああ、そんなの買ったなぁ……」

盗賊淫魔「まぁ、バリアとしての性能は落ちるので無理やり突破してもいいんですが……私、それやるとお腹壊しちゃうんでやめておきます」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「ああ、そうなの……」

盗賊淫魔「それより、あなたが預かっていた人形はどうなったんですか」

男「無事、心を手に入れたが」

盗賊淫魔「まさかとは思いましたが、本当にそうだとは……」

男「聞きたいことはそれだけか?」


そう言って臨戦態勢に入ると、
淫魔はすぐに逃げていった

~翌日・陰週水曜日~


ぶりっ子「んー……いい朝ですね」

怪盗「今日は決戦ですよ!」

狙撃少女「緊張しますね……」

炎魔「ふっふっふ……ついに私が実力を見せる時が来たようですね!」

男「期待してるぞ」

手早くチェックアウトし、市長に招かれて図書館の地下階段を降りていく
地下水道に入るよりもさらに下に下っていくのだ


市長「この先です」


そこには、傷んだ鉄製の門があった
押し開けるだけで力を使いそうだ


中華「物々しいね、やっぱり」

市長「えぇ、かつてはひどいものでしたから」

氷魔「……行きましょうか……」

やる気「おっす!」


やる気が扉を開くと、擦れた不快な音が鳴り響く
中に入れば、そこはレンガで作られた要塞の一角のような場所だった


ぶりっ子「いますねぇ」


そして、その中心に魔神はいた


>>下1……魔神の姿

魔神「……ひっ」


魔神らしきものは、一行が訪れるや否や、部屋の隅っこに隠れてしまった
敵意は一切感じず、不意打ちを狙っているというわけでもなさそうだ


怪盗「……あれ、本当に魔神ですか?」

狙撃少女「あれで、とんでもない力を持っている可能性もあるので油断はできませんが」

男「目的は仲間にすることだ、相手にそのつもりがなさそうなら、こちらから歩み寄ろう」

瓦礫のようなものをどかし、物陰から少女を出す


少女「……………………」


やはり、襲ってくることはなかった
それどころか体が震えており、表情も明らかに怯えていることを表していた


中華「というか、どう見ても女の子だよね」


白髪で長髪の少女は、今すぐにでもその場から逃げ出したそうな表情をしている
だが、その人数差と部屋の死角のなさから、なにもできずにいるようだ

本日はここまでです
ありがとうございました

氷魔「……ぞろそろと取り囲むのもよくなさそうですね……」

やる気「そっすね、誰か代表して話したほうがいいんじゃないすか?」

炎魔「はい!私!私いきます!」

ぶりっ子「元気ですねぇ、いいんじゃないですか?」


少し話し合いをして、やはり炎魔が行くことになった

炎魔「はーい、お話いいですか?」

少女「……………………お話……?」

炎魔「そうです!まずはお話をして、それから仲良くなるのが人間のやり方です!」

少女「……そう……なの……」


うつむきがちだが、話すことはできるようだ


炎魔「じゃあ、そうですね。……なんであなたはここにいるんですか?」

少女「>>下1」

少女「も、もともと『シズオカ』にいて、魔神さんの力を引き継いでしまって…」

炎魔「なんですかそれ?」

少女「あぁ……土地の名前です……」

炎魔「それで、魔神の力を引き継いでしまったために封印されていたんですね」

少女「そ、そうなります……」

炎魔「……しかし、随分若いですね!何年も経過したようには見えませんよ」

本日はここまでです
ありがとうございました

少女「そうなんですか……?」

炎魔「ええ、お世辞ではなく、本当に少女の姿をしているので!」

少女「でしたら……それも魔神の力なのかもしれませんね……」


少なくとも、年単位で時間は経過しているようだ


炎魔「ところで、これまでに色んな人がやってきたかと思いますが……大丈夫でしたか?それほど気弱だと、不安ですね」

少女「>>下1」

少女「今はどちらもいないですけど、大きいモフモフさんやもちもちさんが一緒だったのでなんとか……」

炎魔「えっ、あいつらそういう存在だったんですか!?」

少女「少し前に、小さな姿に分裂して……ここから出ていったんです」

炎魔「……どうしてでしょうね?」

少女「……ここで暮らすのには飽きたのでしょう。なにもないですし……私は封印をかけられているので出られませんが……」

そこまで言われると、
思い出したように表情を変えて炎魔は語りかけた


炎魔「そう、それです!外に出るつもりはありませんか!?」

少女「……うぅん……出てみたい気持ちもありますが……怖いですね……外……」

炎魔「確かに、あなたは外では魔神として恐れられていますが……その姿を知る者はいません。少なくとも、討伐されるようなことはないはずです!」

少女「そうですか……?」

炎魔「まぁ、かわいいですから……変なのに絡まれたりするかもしれません。だけど、私たちがいれば絶対安心です!守ってみせますよ!」

本日はここまでです
ありがとうございました

少女「……強いんですか……?」

炎魔「そりゃ強いですよ!フェニックスの力がありますからね!」

少女「ふふ……面白い人ですね」


どう見ても信じていないが、
個人的な信用の方は勝ち取れたと見える
やや不服ながらも炎魔はそれを受け入れた


炎魔「……ま、それでいいでしょう!では、私たちと行きますよ!」

それから、炎魔は待機しているメンバーの元へ少女を連れていった


怪盗「どうなりました?」

炎魔「ついてきてくれるみたいです」

狙撃少女「それはよかったです。じゃ、外に出ましょうか」

少女「あの……私封印されてるはずなんですけど……出られるのでしょうか?」

男「それに関しては、市長が解除してくれているはずだ。安心してくれ」

入ってきた扉をまた押し開けると、
そこでは市長が待っていた


市長「お久しぶりです」

少女「……え……っと……誰ですか?」

市長「やはり、この姿では分かりませんでしたか」

少女「もしかして……前に来たAIさん?」

市長「ご明察、随分お待たせしましたね……」

少女「なにか、ありましたっけ?」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「個人的に、待たせたのです。あなたが無害であると確信してから、問題なくあなたを外界に出す方法を模索していたもので」

少女「ええっと……ありがとうございます?」

市長「礼は不要です、私はAIなので」


そう言う市長だったが、
その笑顔にはかつてなく人間味があったように思われる


中華「いやぁ、本当によかった……」

それから全員で市庁舎の応接間に通された


市長「……というわけで、あなたたちが悪人ではないことが示されましたね」

氷魔「……分かっていたんでしょうに……」

市長「まぁ、そう気を悪くなさらず。地下の探索については協力致しますので」

やる気「頼んでおいてなんなんすけど……職務は大丈夫なんすか?」

市長「ご心配なく、ここ数日はタスクが少ないのです」

ぶりっ子「それならよかったですぅ」

怪盗「……聞いてませんでしたが、どうやって地下を調べるんですか?」

市長「無論、出向いて実地調査です。人間には備わっていない感知機能があるので、多くのことが分かるか、なにが分からないかは分かります」

狙撃少女「ええっと、さっき連れてきた女の子はどうしましょうか?」

少女「………………」

市長「別の私と一緒にいてもらいましょう。彼女には知るべきことが多すぎますから、ある程度は伝えねばなりません」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから一行は市長を連れ、地下に戻ってきた


炎魔「私の探知によれば、あっちのほうに魔力が流れてくる根源があるんですけど」

市長「確かにそのようです。しかし、そこに辿り着くことだけができないのですよね?」

男「その通り」

市長「ということは……結界でしょうか」

中華「結界だと、なにかあるのかい?」

市長「結界は魔力を発さないので、あることを確定させるのは難しいのです」

氷魔「……しかし……触媒がありますよね……」

市長「そうです、結界を解除するには、結界を貼るための触媒をいくつか破壊するなり、動かすなりしなければなりません」

ぶりっ子「触媒って、どんなものなんでしょう?」

市長「多くの場合は紙切れですが、複数の魔法陣で強力な結界を構成していたり、岩が触媒だったりすることもあります」

怪盗「なるほど、どうにか探り当てられませんかねぇ?」

市長「これほど大きな地下空間ですから、一人でやった可能性は低いはずです。誰かから聞き出せればよいですが、そうでなければ地道に探すほかないでしょう」


となれば、思い当たる存在がいるだろう
そう、小屋の鉱夫である


狙撃少女「鉱夫には会いましたね。彼がその作業に従事したかどうかは分かりませんが、情報は得られそうです」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「では、会いに行ってみましょうか」


一行は前日と同じ時間帯に小屋を訪ねた
すると、やはりそこには鉱夫がいた


鉱夫「どうした、二日連続で」

男「聞きたいことがあって……」

鉱夫「なんでぇ」

中華「なんか、結界を貼るための触媒が地下にある可能性が高いらしいんですけど、そういう変なもの知りませんか?」

鉱夫「>>下1」

鉱夫「そういや虹色に光る変な石を見かけたな」

氷魔「……回収しなかったのですか……?」

鉱夫「若造ならやりかねんが、俺はやらんさ。派手な鉱石にゃ、きつい毒があるのも多いからな」


それは、多くの犠牲者を見てきた眼だった


ぶりっ子「ちなみに、どこにあるかは分かりますかぁ?」

鉱夫「そうだな……分からん。だが、ここの地下は広いようで狭いし、狭いようで広い。歩き回ればいずれ見つかるんじゃないかと俺は思うぜ」

得られたヒントは、触媒の見た目だけだった
しかし、確実に前進している
一行は小屋から出て、地下水道の探索に戻った


市長「石が触媒とは、面白いですね。なぜ光っているのかは分かりませんが」

怪盗「気を隠すなら森の中……地下なら石があっても普通ですからね」

狙撃少女「絶対見つけます」

本日はここまでです
ありがとうございました

だが、地下の地図があるわけではない
市長もその全貌を解析できていないので、
闇雲に歩き回ることだけが、今できることだった


男「あれ、もしかして……」


だが、意外にも一つめのそれは見つかったらしい
そこに現れたのは、虹色の石を持ったゴブリンだった


中華「ちょっといいかい?」

ゴブリン「オマエラ ダレ」

彼は両手で大きなそれを抱えながら聞いてくる


氷魔「……私たちは……冒険者です……」

やる気「で、さっきゴブリンに話しかけたのが魔王っすよ」

中華「やる気もでしょ」

ゴブリン「ソウカ」

ぶりっ子「で、今私たちはその虹色の石を探してるんです!どうにか譲ってくれませんかねぇ」

ゴブリン「>>下1」

ゴブリン「やってもいいがその代わり処女をよこせ」


彼はゴブリンの言葉でそう喋った


ぶりっ子「え?なんですかぁ?」

中華「ひどいねこりゃ」


しかし、魔王の力を持っている中華とやる気には聞き取ることができた
言わぬが花ということもあるので、よほどぶりっ子が聞きたがらなければ二人はその発言について教えることはないだろう

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「無理そうなんですか?困りましたね」

やる気「なんならぶんどってもいい気がするっすね」

狙撃少女「え……今日はなんだか暴力的ですね」

中華「まぁ、やむなしかな……」

男「だが、強奪というのはやはり傲慢な気もするな……」

ゴブリン「コレ タイセツ」

ぶりっ子「そうなんですねぇ」

市長「……仕方ありませんね。ゴブリンさん」

ゴブリン「?」


市長は一歩、歩み出てゴブリンに話しかける


市長「確かにその石……大変価値のあるものです。ですが、その状態ではまったくもって高級ではありません」

ゴブリン「ホントウカ?」

市長「ええ、それは破砕して、粉末にしたときに価値が出るのです」

ゴブリン「フーン」

市長「ですから、私たちがそれを破壊して差し上げます」

ゴブリン「……ワカッタ」


彼女はうまくゴブリンを言いくるめられたようだ

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「よし、任せてください!」


すると、突然炎魔が市長の隣に歩み出た
腕を組んで自信ありげだが、
なにを考えているのだろうか


市長「え、どうされました?」

炎魔「私が破壊します!さぁ、その石を固定しておいて下さい!」

ゴブリン「ア アア……」


彼も若干引いている様子だが、
虹色のそれを地面に立てて抑えてくれた


炎魔「よし、いいですね……ちぇあああああっ!!!」


腰を深く落とし、綺麗な瓦割りのフォームでその拳を石に叩きつけた


>>下1……どうなった?
1.無事破壊される
2.無傷
3.自由安価

金属がぶつかるような、
乱暴な音が地下空間に反響する


怪盗「おおっ……!?」

炎魔「っっ……たぁ~~!!痛すぎです!」


ただし、石は全くの無傷だったし、
炎魔は真っ赤になった右手を抑えながらその場で羽ばたくのみだった


狙撃少女「かなり硬いようですね。石をいただけていたとしても、これでは……」

男「明らかに人間の手で出せない音出してたし、炎魔が非力って訳でもなさそうだしな」

市長「硬いものを壊すなら、いい方法があります」

中華「へぇ、どうするんだい?」

市長「なるべく熱してから、強く冷やすのです。これでものは脆くなります」


流石にAIだけあって、
課題を打開する能力が非常に高い
彼女の言うことに従ってみるべきだろう

本日はここまでです
ありがとうございました

氷魔「……ということは……炎魔さん……」

炎魔「なっ、なんですか?すみません、痛くて聞いてませんでした」

氷魔「……構いません……とにかく……あの石を熱してください……」

炎魔「分かりました!いきますよ!!」

やる気「待つっす、炎出されると酸素がなくなっちゃうっすから、炎は出さずに温めて欲しいっす」

炎魔「それもそうでしたね、では……」

炎魔は我が子を温める鳥のように、石を抱き抱える
そして、体温を上げられるだけ上げ始めた
すぐさま周りには陽炎が上ったので、かなりの温度になっていることが分かる


ぶりっ子「ひぃ……とんでもないパワーがありますねぇ」

怪盗「店売りのパンが冷えてたら、焼き直してくれそうでいいですね」

狙撃少女「もっとまともな運用を考えませんか……?それじゃ道具ですよ」

怪盗「冗談です。極北の寒さもマシになりそうで嬉しいですよ、私は」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「この辺でいいんじゃないでしょうか?」


そのまま地面に石を置く
湯気すら立ち上るそれの前に、氷魔が立つ


氷魔「……それでは……いきます……極大氷魔法……!!」


彼女の両手から氷の波動が迸る
石だけでなく、洞窟の中じゅうに氷が張っていく

男「相変わらず、すごい衝撃だな……!」

氷魔「……今です……もう一度……!」


彼女がそう合図すると、炎魔が後ろから現れる


炎魔「今度こそ!ぶっ壊れなさーい!」


高跳びの選手のように全身をしならせ、
回転のねじりを加えて全力で石を殴った

本日はここまでです
ありがとうございました

すると、石は見事に破砕され、弾け飛んだ


中華「やった!」

炎魔「ゴブリンさん!壊せました……よ……?」


ゴブリンはといえば、
先程の氷魔の魔法によって凍りついていた


やる気「ま、あんなやつは放っておくっすよ。しかし、なんなんすかね?この石は」

市長「解析してみましょう」


彼女は粉々になったそれのかけらや粉末を手に取って調べている
手触りを確かめたり、硬度を検討したり、
果ては口に入れたりもした


ぶりっ子「うひぃ、なんてことしてるんですかぁ」

市長「大丈夫です。私はただのAIなので」

怪盗「……そういうことにしておきましょう。それで、その虹色の石がなんなのか分かりましたか?」

市長「>>下1」

市長「極僅かに生命反応が感じられますね」

狙撃少女「ということは……」
 
市長「何らかの生物が生きたまま加工された魔道具でしょう」


鉱物かと思ったが、どうやら鉱物ではなかったらしい
あるいは、鉱物のような生物か


男「残酷なもんだな」

市長「結界の構成に使うアイテムとしてはとても利にかなっていると思います。霊的ですし、丈夫ですし、小さい」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「これはかなりいい手がかりだね」

市長「ええ、生体反応を探ることで結界の触媒を見つけられそうです」

氷魔「……できそうですか……?」

市長「今すぐは無理そうです。あらゆる生体反応が反応してしまいます。さっきの鉱夫さんのような人や、そこのゴブリンにも」

やる気「じゃ、一回帰るっすかね」

一行は元来た道を戻り、
市長のオフィスへと帰ってきた


少女「あ……お帰りなさい」

ぶりっ子「なにか困ってることはありませんかぁ?」

少女「今は特にありません」


彼女は先ほどに比べればかなりリラックスした様子で、
心から休息できていることが分かる

怪盗「彼女も、ここのホテルに泊めるんですか?」

市長「はい、お金もないでしょうし、行くあてもないので……今のうちはそのつもりです」

少女「すみません、私からもなにかしてあげられればよいのですが……」

市長「あなたは施す側ではなく、施される側ですよ。そのことを覚えておいてください」

狙撃少女「罪悪感に潰された人間は、見ていて辛いものがありますしね」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから市長が解析作業に入るとともに、
ギルドの一行は宿泊する部屋に向かった


男「なんだかんだうまく行きそうでよかった」

中華「そうだね、魔神と戦闘になるかもしれないと思ってたときは大変な心労だったけど……」


まだ夕食までは時間がありそうだ


>>下1……なにをする?
1.中華と話す
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.市長と話す
9.少女に会いに行く

男は備え付けのモニターの電源を点け、
市長と対面する


市長「どうされました?」

男「世間話だ」

市長「ああ、そういえばそういう方でしたね」


嫌な物言いだが、顔に嫌味らしさはまったくない
本心からそう言っているのだ

男「解析は順調ですか?」

市長「とりあえず、この生体のかけらを探知できるようにはしています」

男「それならよかった」

市長「真に私が知るべきなのは、その生物の正体なのですが……」

男「それは……少し辛抱してくれ。世の中は本質じゃない所で回るが、最後にものを言うのは本質だ」

本日はここまでです
ありがとうございました

それからしばらく、無言でいた


市長「……違和感があります」

男「え?」

市長「私が大抵、誰かと話しているとき……相手はなにか命令をしてきます。そうでないなら、用はないのでいなくなるのですが」

男「あぁ、相手がAIならそうなる人が多いね」

市長「それ以外にも、あなたからは多くの違和感を感じています。なにかが少し違うのです」

男「空気が読めないってこと?」

市長「違いますが……質問があります。>>下1」

市長「封印されてた少女と同じ『世界』で暮らしてました?」


薄々、彼女の言う違いが異世界によるものなのだと勘づいてはいた
だが、それを告白するつもりはなかった
それらしくはぐらかしていたが、核心に迫られたのだ
この世界に来てから、体験したことのない緊張感が全身に走る


男「……世界?なんのことだ?」

市長「なにか心当たりはあるようですね。彼女は、こことは異なる世界の……『シズオカ』という場所から喚ばれたそうなのです」

高度なAIにとぼけても仕方ないのだ
彼女は大抵の嘘は見破れる存在である


男「……そりゃ、とんだ偶然だ」

市長「ということは、あなたも?」

男「ああ、ちょっと離れてるが、その辺りといえばその辺りだ」

市長「なんと興味深い……色々、お聞かせ願えませんか?向こう側について……」

男「……いいが、条件がある」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「なんでしょう」

男「みんなには言わないでくれ。俺と市長と……あの少女だけの秘密だ」

市長「……分かりました。では、お風呂の後に私のオフィスまでお越しください」


彼女はそう言ってモニターの接続を切った
そろそろ夕食の時間だ

それから、一行は先日と同じ食事を摂った
方向性として正しい献立なのかが先日まで確定していなかったので、
まだ他のバリエーションは開発中だそうだ


氷魔「……そろそろお風呂ですね……」

やる気「あのお風呂にいる存在も、少女の友達だと分かれば安心して触れ合えそうっすね」

ぶりっ子「そうですねぇ」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから男は風呂に入ったが、
先ほど市長に看破されたことが深刻に心へ陰を落とし、中華ややる気と下らない話をしたような気もするが、まるで覚えていなかった


男「失礼します」


そして、彼は市長のオフィスへとやってきた
訳は言わず、こっそり抜け出してきたのだ
そこには、あの少女もいた


市長「お待ちしておりました。ソファにおかけになって下さい」

少女「………………」


彼女は男をじっと見ている
市長から既に男の正体を知らされているのだ


市長「さて、では異世界について調査するとしましょうか」

男「ああ、なんでも聞いてくれ」

市長「では、大きく違うところを教えてもらいましょう。その辺りの前提を理解していないと、聞いても分からないことが多いですからね」

少女「そうですね……」

男「まず、あっちに魔物はいない。あと、魔法もない。多分、神もいないんじゃないかな」

市長「……真実ですか?」

少女「そうですね……私もそう認識しています」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「では、平和なのですか?」

男「こっちよりは平和かも。でも科学が魔法みたいなものだから、結局戦えば人は沢山死ぬ」

少女「街や地方を丸々一つ吹き飛ばすような兵器がありますからね……」

市長「そんなバカな……眉唾な古代兵器でもそうありませんよ、それほどの破壊規模のものは」

男「なんと、量産されている」

市長「……なぜ滅んでいないのでしょうか」

男「使ったら滅ぶからだ。だからこっちよりちょっと平和なんだよね」

市長「なるほど、参考になります」

少女「それはよかったです……参考?」

市長「なんでもありませんよ」

男「怖……」

少女「私からも男さんに聞きたいことがあるんですが……」

男「おう、なんでも聞いてくれ。この世界に来てから、まだ日が浅いだろうしな」

少女「>>下1」

少女「…私の年号は『平成15年』でした。男さんはいつの『平成』で来ましたか?」


一瞬、なにを言われているのか分からなかった
しかし、すぐに男はそれを理解した


男「どうかな、一つ前かもしれないぞ」

少女「えっ!?……そんなタイプには見えませんが」

男「それは正しいな、俺は『平成』より後だし」

少女「ええっ!?そ、そんな!未来人!?」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「ああ、15年以上先の未来から俺は来ている」

市長「なんと興味深い……空間のみならず、時間をも超越してここにいるのですね」

少女「へぇー……」

男「まぁ、言うほど世界は変わってないさ。ちょっと厳格になったくらい」

少女「ないんですか?空飛ぶ車とか」

男「ないねぇ。飛ぶ車も、コールドスリープも、宇宙エレベーターもない」

市長「面白い空想ですね、私も研究してみたいです」

少女「宇宙エレベーターは無理そうですが……」

市長「そうですね。ですが飛ぶ車やコールドスリープは魔法も応用すればできそうです」

男「というか、封印なんてコールドスリープみたいなもんじゃないか?」

市長「伝説の強力な魔法使いがやるような封印であれば、そういう効力もあるかもしれませんが……普通はそうもいきませんね」

本日はここまでです
ありがとうございました

少女「……私はどうなのでしょうか……?」

男「魔神の力じゃないか?」

市長「そうでしょうね。それより、あなたたちの世界の発明が知りたくなってきました」

男「思い付くだけ教えるけど……こっちの世界には市長ほど高性能のAIはいない。あんまり参考にならないか、そもそも世界の仕組みが違うかもしれないけど……いいですか?」

市長「構いませんよ」

それから、男は様々な発明品について話した
とはいえ、その構造まで知っているわけではないので、こういう機械があるとか、こういう兵器があるという話しかできなかった


男「こ……こんなところですかね」

市長「面白いですね」

少女「ほとんど、私も知っているものでした」

市長「特に、>>下1は作ってみたいところです」

市長「全自動大根おろしや手動式包機とかの調理器具全般は作ってみたいところです」

男「平和的でよかった」

市長「強力な兵器は抑止にこそなれ、平和は作らないというのは分かりましたから」

少女「そうですね、私もそう思います」

男「しかし、調理器具か……中華が喜びそうだな」

市長「そういえば、料理人の方がパーティにいらっしゃいましたね。試作品完成の暁には、ぜひ使用感を教えていただきたいものです」

本日はここまでです
ありがとうございました

夜も更けてきたので、そろそろ解散することになった


男「そろそろ寝たいしな」

市長「そういえば男さん、言っておきたいことがあります」

男「……なんですか?」

市長「あなたはギルドの方々に対し、できるだけ誠実でいようとしているようですが……そのつもりなら、あなたが異なる世界から来ていることを告白すべきです」

男「……それは、あまりにも……大きすぎる特徴だ」

少女「ですね」

市長「みなさんとの関係が変わることを恐れているのですか?」

男「そう……ですね」

市長「……みなさんは、あなたを信じてついてきたはずです。それこそ、関係が変わってしまうかもしれないようなことをあなたに打ち明けた人だっているでしょう」

男「……それでも、怖い……みんなを信じるのが、俺のするべきことだと分かっていても、それでも……」

市長「……意外です」

男「俺のこともAIだと思ってました?」

市長「首尾一貫していたので」

男「……俺は、ここに来る前は誰も顧みることをしなかった。だから、人付き合いと呼べるものはほぼなかった」

市長「だから、今のようになったのですね」

男「他人を大切にする。それだけでどれだけ人生が豊かになるかということを実証しているんです」

市長「それは、自分を大切にしないということではありません。……辛いと思ったなら、恐れず打ち明けて下さい」

本日はここまでです
ありがとうございました

男は心に重大なしこりを作ったまま部屋に戻り、眠った


~翌日・陰週金曜日~


中華「……おっ、早いね」

男「相変わらず中華も起きるのが早い。まぁなんだ、眠れなかったんだ」

中華「もしかして……」

男「!?」


なにかを察したような彼の顔に、不安がよぎる


中華「……恋!?」

男「違うわ!」

そして準備を整え、再び地下へ向かうのだった


市長「あの生体結界を探査するレーダーを製作しました」


彼女はラジコンの操縦桿のような物体を操作している
周期的に音を放っており、ダウジングマシンのようなシステムのようだ


氷魔「……音で分かる……ということでしょうか……」

市長「小さいながら、モニターもつけています。二つの機構で効率的に探せますよ」

そして、レーダーを携えながら歩き始めた
ここで新たな情報が手に入る


やる気「お、音が大きくなってきたっすね?」

市長「……おかしいですね。かなり離れているはずなのですが、いつの間にか接近しています」

ぶりっ子「地下全体に空間の歪みがあるってことでしょうかぁ」

怪盗「その可能性は高そうです」

もう少し近寄ると、道端にそれは落ちていた


狙撃少女「あ、ありましたね」

男「時間はかかるが、この前のようにして破壊するか」


例のごとく、炎魔に温めてもらい、
それから氷魔が冷やして破壊した


炎魔「楽しいですね、これ」

市長「よかったです。結構負担を強いているので」

炎魔「みなさんの役に立てるのが嬉しいんですよ」

中華「空間が歪んでいて、結界を構成するあれへの接近が容易ってことは……この近くから外に出たら、ものすごい遠くの街に出たりするのかな」

氷魔「……その可能性はかなりあります……オークション会場を襲撃した集団が逃走のために用いた理由も分かりますね……」

本日はここまでです
ありがとうございました

それからさらにレーダーを伝って生体結界のパーツを探して歩いた


市長「……また、動いてますね」


手元のモニターではパーツが動いている様子が映し出されている


やる気「……あれっすね」


>>下1……パーツはどうなっていた?

リビングアーマー「ガコン……ガコン……」


そこにいたのは、がらんどうの騎士
ひとりでに動き回る鎧で、リビングアーマーと呼ばれる存在だ


ぶりっ子「げ……填まってますね……」


そして、その胸の辺りには丁度いい穴が開いていて、
そこにかの生体結界のパーツがつけられていたのだ

怪盗「あれって、意志疎通できるんですか?」

やる気「多分できるっすね。ただ……」

狙撃少女「なにか問題があるんですか?」

中華「ちょっと、堅物な感じかも。交渉とかできるかな……」


目的もなくただ彷徨っているように見えるそれだが、
実の所かなりの威圧感を放っている
新米冒険者が出くわしたら、
とりあえず逃げるべき相手だろう

すみません寝落ちしました


炎魔「とにかく、話してみましょう!」

中華「うーん、分かった。じゃあ、話しかけてみるね」


一撃で首をはねられないよう注意しながら、注意はリビングアーマーに近寄る


リビングアーマー「………………」

中華「あの~すみませ~ん……その胸の石をいただくことってできませんか……?」

リビングアーマー「>>下1」

リビングアーマー「・-・・ -・- --・ ・・-- ・- --・-・ ・・-・・ ---- ・・- ・-・・ ・-・-・ -・ ・・ (かわりのいしとこうかんだ)」

中華「……?なにを言っているんですか?」

やる気「あぁ、モールス信号ってやつっすね」

男「分かるのか、モールス信号が」

やる気「実家じゃ必修っすよ。ともかく……代わりになる石と交換して欲しいみたいっすね」

氷魔「……石といえば……アレがありましたね……」


彼女はバッグから、深紅に輝く魔石を取り出した
今やその効力を失っていると目されるものの、
あらゆるモノの方向をねじ曲げる凶悪な赤石だ


ぶりっ子「確かに!めちゃくちゃ綺麗ですし、いいんじゃないでしょうか」

怪盗「……えっ、なんですかそれ。見たことないんですけど」

本日はここまでです
ありがとうございました

リビングアーマー「(それならいいだろう)」


カタカタと身を震わせて信号を発するリビングアーマーは、破砕音を立てて胸部から結界のパーツを出した


氷魔「……それでは……失礼して……」


そして、氷魔が赤石を窪みに嵌め込む
すると、変化が起こった


リビングアーマー「ガ……ガガ……!!」

すると、洞窟内が深紅の光に照らされる
そして、その光が晴れると、
そこには赤熱する鎧があった


リビングアーマー「(力が満ちてくる。……ありがとう)」


その顔があるべき場所にはなに一つありはしないが、
上機嫌であることが誰にでも分かるほど楽しげにそれは去っていった


狙撃少女「……うまくいったようですね!」

それから、またもその結界パーツを破壊した


市長「……そろそろ、あの結界の先に進める頃だと思いますよ」

炎魔「ついにですね!」

男「なにがあるんだろうな?」

市長「まず間違いないのは……この結界の本体です。それを破壊すれば、完璧に結界の効力は消え去るでしょう」

中華「へぇ~」

本日はここまでです
ありがとうございました

話しながら、結界の本体まで移動することにした


氷魔「……術師がいる可能性も……高いでしょうか……」

市長「低くはありません。外へ抜ける穴が結界の中にあり、かつ自分の結界ならすり抜けられる使い手であればこれ以上なく安全ですから」

氷魔「……そうだと……困りますね……結界が弱まっているのは明らかのはず……」

市長「えぇ、戦闘も覚悟すべきです。ということで、これを」

彼女は氷魔に瓶を渡した


氷魔「……ポーション……でしょうか……」

市長「はい。後々、魔力を回復させる効能が効くはずです」

氷魔「……ありがとう……ございます……」


氷魔はそれをちびちびと飲みながら歩いた
しばらく歩けば、結界のある場所の前だった


ぶりっ子「これは……」


以前まで視認できなかった道があり、
その先には目に見える水色の膜……結界の本体があった

市長「あれを破壊すれば結界は完全に壊れます」

やる気「っしゃ!任せるっすよ!」


彼は槍を片手に走りだし、結界に飛びかかった
それは膜に食い込み、ひびを入れた


怪盗「流石の破壊力!」

やる気「うりゃぁぁっっ!!」


そして、ひびに向かって鈍器のように槍を叩きつけると、それは砕け散った

砕け散ったそれは、ふわりと浮かんだかと思えば、
氷魔に流れるように吸い込まれていった


狙撃少女「え?大丈夫なやつですか?」

市長「さっきのは結界のかけらを魔力として補給できるようになる薬なので、安心してください」


彼女が持つ予備の瓶には、
効力が持つのは二時間だと書いてあった
それから、砕けた結界の奥へと進んでいく


>>下1……結界の先にはなにがあった?

炎魔「……空気が違います。これは……」

男「さ……最悪……多分禁域だぞここ……」


男たちにはそこがなんなのか分かってしまった
あの極寒の地に比べれば寒さこそないものの、
大気の組成すら違うのではないかと思わせる異様な空気


市長「ここがそうなのですか?話には聞いていましたが……ふむ、ほほう……面白いデータが取れそうです」

中華「能天気なことで……」

すみません寝落ちしました


氷魔「……ここから先は……理が通用しません……警戒しましょう……」


だが、少なくとも通路の見た目自体はこれまで歩いてきた地下道と変わらなかった


やる気「なにかを隠すために結界が張られているとばかり思ってたっすけど、これもしかしたら破っちゃいけないやつだったのかもしれないっすね」

ぶりっ子「でも、破っちゃったなら責任は取らないといけませんよねぇ……憂鬱ですぅ」

警戒しながら歩いていると、梯子があった
行き止まりになっていて、周りにはなにもない


怪盗「えっ、この上どうなってるんですか?」

市長「全く分かりません。結界が空間を歪ませていた可能性も高いですし、私たちのいた街の近くに出る可能性は低そうです」

狙撃少女「……ですが、行くしかありませんね」

本日はここまでです
ありがとうございました

禁域特有の緊張感に包まれながら、梯子を上っていく


男「これでお宝がありました、とかで終わってくれればいいんだけどな」

中華「いや~……厳しいんじゃない?」

氷魔「……そろそろ上りきりますよ……」


>>下1……梯子の上にはなにがあった?

むせ返るほどの紙の匂いが漂う
そこは大きな書庫のようだった


やる気「……書庫?市長、ここ知らないっすか?」

市長「ふむ……データにありません。うちの市内ではないと見ていいでしょう」

ぶりっ子「どれどれ……うわっ、すっごい古い本ですねぇ……しかも、やたら難しいですぅ」


一冊の本をぶりっ子が手に取ってみせる
確かに古そうであることが全員に伝わるし、
表紙に書いてある文字列は、現代では使われていない古代のものだった

男「……でも読めるな」

怪盗「え!?なんて書いてあるんですか?」


彼はいつの間にか手に入れていた万能通訳の力で、そのタイトルを読み取った


男「『封魂の魔術』……だな」

狙撃少女「よく分かりませんね」

市長「……もう本当だとしたら大変ですよ」

炎魔「そうなんですか?」

市長「ええ、そのタイトルは『禁書一覧』にあったと記録しています」

男「……というと?」

市長「とてつもなく危険な魔術……その極意が記されているとみていいでしょう」

中華「と、とんでもないね……」

氷魔「……名前から察するに……生き物の魂を瓶などに封じ込め……保存や使役を行う……といったものでしょうか……」

市長「伝承にはときおり、そのような魔術もありますから……おそらく、その類でしょう」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「へっへっへ、いただいていきましょう」

ぶりっ子「悪い顔してますねぇ」

炎魔「本に化物とか封じられてないといいんですけどね」

怪盗「……あ、そういうのあるんですか?」


何冊か抱えていた本を、恐る恐る本棚に戻した


男「お、この本……」


男は、禁書となった魔術書の中のうち、ある一冊に惹かれた
そのタイトルは、>>下1

『鍵』の書とあった


狙撃少女「なにか、気になる本でもあったんですか?」


禁書となるほどに危険な魔法、その秘伝が集積されているとおぼしきこの書庫において、『鍵』とは些か迫力に欠ける名詞だった
だからこそ、その内容が男は気になったのだ


男「ああ、『鍵』の書というらしい。解錠魔法といえば、上級の魔法使いなら使える者も少なくはないが……禁書になるほどの『鍵』って、なんなんだろう?」

本日はここまでです
ありがとうございました

男は早速『鍵』の書を読み出した
知らない言語が沢山記されているが、
問題なく読み進めていく


氷魔「……鍵……?」

男「あぁ、普通になんでも開ける鍵魔法なんかも載っているが……?」

中華「なにかあったの?」

男「よく分からない。何らかの『鍵』で虚空に扉を開けて、どこかへと行こうとする実験が多いな」

やる気「へぇ、面白そうっすね」

男「最終的には、次元を超えて異世界に行くことを目指しているらしいな」

市長「異世界、ねぇ……」

男「………………」

ぶりっ子「どうかしましたかぁ?」

男「いや、なんでもない」

怪盗「それで、どうやったらその『鍵』は作れるんですか?」

男「複雑な手順を踏む必要があるな……例えば、>>下1とか」

男「禁域の深部にいる虹色の球体の連なりに啓示を受けるとか」

狙撃少女「?」

男「不思議そうな顔しないでくれよ!俺だってよく分からんのに」

炎魔「よく分かんないですけど、多分それは生きてるんでしょうね」

市長「それよりも恐ろしいのは……それが記されている事実ですね。どうにかそこへたどり着き、そしてそれを記した者がいるということです」

中華「魔術師っていうのは、やっぱりすごい執念があるものなんだね」


言われてみれば、一文字一文字に、なんらかの妄執が込められているような気がする

本日はここまでです
ありがとうございました

氷魔「……すごい価値のある書庫です……誰のものなのでしょうか……」

やる気「確かめてみるっすか?」

市長「そうですね……誰のものでもなければ、面白いのですが」


市長は書庫の入り口である、古びた木製のドアを開く


>>下1……どこに続いていた?

その瞬間、異様な空気が外から流入するのを誰もが感じた


ぶりっ子「……!?」

市長「データにありません……!」


そこは海辺だった
だが、その海は紫に染まっており、
父なる海とは呼びがたい恐ろしいものだった
足元は緑が占めているが、踏み出してみれば、
それは植物の茂る大地ではなく砂であることが分かる

怪盗「上も下も、全部おかしいです!」


空を見やれば、ジュースのように黄色が満ちており、
帝王のように黒き太陽は一行を見下していた


狙撃少女「これが……禁域……!?」

男「確かに、禁域じゃこれぐらいあってもおかしくはないが……あそこが最後の禁域のはすで、ここは明らかに違う場所のはず……なんだが……」

中華「増えたか、あるいは……」

氷魔「……現実と隣りあった……禁域が染み出してきた時空に……入り込んでしまった……といったところでしょうか……」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「探索したい気持ちはやまやまっすけど……これ、一介のパーティが単独で首を突っ込んでもいいんすかね?」

ぶりっ子「難しいところですね……」

市長「いずれにしても、脅威度は知っておく必要があります。そのためには、わずかにでも調査をせねばなりません」


そこにいるのは、ただの高性能AIではなく、市長である
自らの街で調査をするつもりであるからこそ、
ここで退く判断はなかった

意を決して、一行は外へと踏み出した
太陽は鬱陶しいほどに輝いていたが、
どこか肌寒かった
市長は砂や水を採集し、いろいろと考えている


怪盗「なにもかも異常なこの世界で、私たちが来た小屋だけが普通ですね」

狙撃少女「この世界にとっては異物なのでしょうね。嘆かわしいことです」


波打ち際の数メートル内側を歩き続け、奇妙な模様の岩場までやってきた
そして、いくつかの岩の上には>>下1

いくつかの岩の上では、様々な形のドアノブが群生していた


男「あっ、あれは!」

市長「ご存知なのですか?岩にドアノブが付いているようにしか見えませんが」

男「俺たちも持ってるんだ、禁域のドアノブ」

中華「そうそう、なんでも開けてくれる生き物なんだ」

市長「そ……そんなものを持っていたのですか!?早く教えて欲しかったですね」

炎魔「……あれも生きてるんでしょうか?」

本日はここまでです
ありがとうございました

氷魔「……確か……生きていたはずです……なにを食べているのか……そもそも新陳代謝があるのかも怪しいですが……」

市長「検証したいですね、あれでもモノは開くのでしょうか」

やる気「うーん、なんか開きそうなものがあるといいんすけど」

炎魔「私開けます?」

男「………………」


こう、笑えない冗談はあるものだ
笑えなくしたのは男なのだが


炎魔「そ、そんな神妙な顔しないで!?」

市長「……人体も開けられるのですか?」

ぶりっ子「そうですねぇ」


市長は驚きながらも、
自生しているドアノブを採集した


怪盗「どうやら、そこの川がこの海に注いでいるようですね」


海沿いを歩き続け、川を見つけた

川の水もやはり紫だった
その濃さは海に比べればすこし淡いが、
それでも毒のように見えて気味が悪い


狙撃少女「川の流域に文明があると、本で読んだことがあります」

男「俺も聞いたことがある話だ。……あまり、会いたくないが」

中華「やっぱり、色合いが全体的におかしいね……」

本日はここまでです
ありがとうございました

川があれば、そこには木が生えるのも道理だ
オレンジ色の木々が林を形成し、川の脇を固めている


炎魔「燃やしてやりたくなりますね、こんな森」

氷魔「……さすがに……蛮族の所業ですね……」

やる気「ん!?」


川沿いを歩く一行の頭上を、飛翔体が過ぎ去った
普段ならただの鳥だろうと思うところだが、
ここは禁域であり、あらゆるものに油断ならない
その飛翔体は>>下1であった

振り向き、空を見れば、奇妙な魚が飛んでいた
翼が生えてこそいるものの、見た目は鳥よりも魚に近い


男「深海には、ああいう魚が住むそうだな」

市長「ええ、あれは深海魚です」

ぶりっ子「深海魚って飛ぶ……わけないですよねぇ」

怪盗「まぁ、襲われる感じではなさそうでよかったです」

本日はここまでです
ありがとうございました

奇妙な飛翔体に思いを馳せながら、ただ歩く
川のせせらぎは不気味なほどにこちらと同じで、
心の拠り所となった


狙撃少女「あ……家でしょうか?」


そこには白い立方体がぽつんとあった
明らかに人工的であり、無機質だが文明的だ


市長「困りましたね、知的生命体との接触は、もう少し下調べをしてからのほうがよかったのですが」

男「……淡白だが、異様さは薄いな」

中華「もしかしたら、僕たちの世界と関係あるかもしれないね」

氷魔「……入り口はありませんが……」


立方体をぐるりと回って、氷魔はそう溢す


やる気「なけりゃ作るっすよ」

市長「でしたら、どうぞ」


市長はドアノブを立方体に装着する
やる気はそれを確認し、引き開けた


>>下1……立方体の中身

そして、その瞬間けたたましい音が鳴り響いた
まさか、警報器でもあったのかと身構えたが、
それが発せられたのは市長の体だった


ぶりっ子「え?」


驚く間もなく市長は扉に体当たりし、
それを閉じてドアノブを取り外した


市長「……危うく死ぬところでしたね」

怪盗「え……なんかあったんですか?なんもなさそうでしたけど」

本日はここまでです
ありがとうございました

市長「プルトニウムがありましたよ」

男「……そりゃ死ぬわ」

市長「一度帰りましょう。念のため、治療をすべきです」

狙撃少女「いや、なにもダメージを受けていませんが……」

市長「なんと説明すればよいか……猛毒で、溶けない呪いのようなものです。本体があり、接近するだけで致死性があります」


そう説明すると、男以外の全員は青ざめた


男「治せるのか?治療と言ったけれど」

市長「こう、細かい原理を説明すると長くなるのですが……蘇生魔法が治療効果を持つということが分かっています」

来た道を戻る最中、炎魔は不安そうに口を開いた


炎魔「私も死ぬんでしょうか」

市長「フェニックスの力が本当にあるなら、死なないと思いますよ。影響もあまりないかと」

中華「……まったく原理が分からない。けど、すごいんだなぁ」

氷魔「……しかし……どうしてあんなものが……」

やる気「さぁ……」


それは誰にも分からなかった
だが、男だけはいくつかの仮説を持ってはいた


ぶりっ子「しかし、そんなわけ分からない……毒?みたいのも治療法が分かってるんですねぇ」

市長「自立学習を始める前に、私を設計した人物が入れたデータの中にあったのです。なぜそんなことを知っていたのか……」

本日はここまでです
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一行は不気味な世界を後にして、
地下水道を歩き、ようやく市長のオフィスに戻ってきた


怪盗「早く治療を受けたいですね」

市長「ええ、別の私に連絡を取って、優秀な術師を手配しておきました」


どこまでも用意のいい彼女が合図をすると、
部屋の扉が開いて術師が入ってきた


>>下1……術師の外見

蘇生術師「どうも」


その姿を見て、炎魔以外の全員が絶句した
ライオンの着ぐるみを着たその人物は、
それこそ王者のように威風堂々と部屋に入ってきたのだ
自分の衣装が奇怪であることなど、
一切気にしていなかった


炎魔「かっこいいですね!」

蘇生術師「それほどでも……ある」

狙撃少女「あるんですね……」

市長「彼は外見から他人に敬遠されることが多いそうですが……腕は確かです」

男「へぇ……まぁ、シャーマンなんかは野生派の人も多いしな」

蘇生術師「別にシャーマンじゃないが……ともかく、市長に頼まれたのならやってやる」

中華「そういう制度?」

蘇生術師「いや、我が姿を見ても態度を変えなかったのは市長のみ。仕事も貰っていて、恩義がある」

氷魔「……人間でないので……偏見もないのですね……」

本日はここまでです
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それから、蘇生術師は一人ずつ蘇生魔法をかけていった
最後に、念のため炎魔にもかけることにした


蘇生術師「きえーい!」

炎魔「ぬはぁーっ!」


その背中からは火柱が迸った
だが、それ以外に変化はなさそうだ


蘇生術師「吸血鬼が闇の力を吸収するみたいな原理だ」

蘇生術師は市長から報酬金を貰い、
笑顔で帰っていった


市長「という訳で治療は終わりました。また宿泊部屋にお戻り下さい」


一行は素直に従い、部屋に戻った
そして、夕食が届くのを待つ


>>下1……なにをする?
1.中華と話す
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.市長と話す
9.平成の少女に会いに行く

男「いるか?」

平成少女「はい、なんですか?」


いつも特に理由もなく他人の部屋を訪ねるのが恒例となっていたが、
今日ばかりは話しておくべきことがあった


男「色々あって、今日は禁域ってところに行ったんだが……それで、面白いものを見つけたんだ」

平成少女「そうですか……ちょっと部屋片付けるので待ってて下さいね……」

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しばらくして部屋に通された
市長に貰ったのか、雑貨がいくつか置かれている


男「清潔感があるな」

平成少女「そりゃあ、そうでしょうよ。それより、面白いものってなんですか?」

男「禁域は異空間みたいなところなんだが……そこで、プルトニウムの入った真っ白な立方体を見つけたんだ」

平成少女「プルトニウム?」

男「……お前は知っとけよ……」

平成少女「なんか、サイエンスな感じはしますね!」

男「ああ、危険な物質で、作るのは偶然では難しい」

平成少女「誰かが作ったんですね?」

男「そうだ。そして、危険だから残りかすの部分は廃棄されるんだが……それが、俺たちが見つけたプルトニウムの正体じゃないかと思うんだ」


やけに整然とした立方体の不自然さも、
それが禁域由来でないことを支持しているように思われた

平成少女「つまり……どういうことですか?」

男「誰かが廃棄したんだ」

平成少女「そんな科学技術を持った人がいるんですか?……もしかして、あの市長を制作した方でしょうか?」

男「可能性としてありうるが……市長はプルトニウムのデータは持っていたが、その利用法については知らなかった」

平成少女「へ、へー……」

男「つまりだ、プルトニウムを利用できる世界……俺たちがもといた世界から、あの禁域は繋がっているんじゃないかと、俺は考えたんだ」

すみません寝落ちしました


平成少女「元の世界に帰れるかもしれない……ってことですか?」

男「ああ、そうだ」

平成少女「でも、私たちも違う時代から来ましたし……同じ時間に帰れる保証はありませんよね」

男「その通りだ。そこで、どうしたい?帰りたいのか、そうじゃないのか」

平成少女「>>下1」

平成少女「正直な所悩んでいます」


消え入りそうな声でそう告げた


男「……そうか。たっぷり悩んで欲しい」

平成少女「……急かさないんですか?説得も」

男「俺だってそうだし」

平成少女「……意外です。この世界が好きそうでしたから」

男「ああ、好きだ。……はぁ……いや、それより、君はなぜ?」

平成少女「別に、元の世界でもいい暮らししてたわけじゃないですからね」

男「……そうか。こっちにいれば、望みはあるだろうな」

平成少女「そう……だといいんですけど。怖いです」

男「市長を頼ろう。彼女ならきっと、守ってくれる」

平成少女「私が怖いのは、そのことなんです」

男「市長は悪いやつじゃないと思うが……」

平成少女「そうではなく、環境に失望し、諦めていた私にチャンスがある……その状況でもなにもできずに、ただ庇護されるだけの無能だったらと思うと、私は……」

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慣れない環境でメンタルが不安定になっているのは言うまでもないが、そもそも彼女本人がネガティブな性質のようだ


男「……つまり、自分に自信がないんだな」

平成少女「軽く流してくれますね……」

男「いやいや、そういうわけじゃないさ。自分でもやれるってとこを見せられれば、自分に自信が持てるんだろ?」

平成少女「まぁ、そうですが……」

男「どうだ、モフモフやもちもちを世のため人のために役立ててみるとかは」

平成少女「確かに、私の言うことは聞いてくれますが……」

男「それは自分の力じゃないって言いたいんだろう?」

平成少女「……はい」


そのくらいは考えたことがあるのだろう
だからこそ、男はその不安に向き合うことにした


男「俺だって、かつてはなーんもできない人間だった。でも、仲間を集めて……そらなりにやれる雰囲気を出してた」

平成少女「へぇ、そうなんですね」

男「やれる雰囲気で、必死に頑張ってたら……実際、それなりにやれる人間になった!神を宿すこともできる!」

力説して見せると、少女も少しは心から聞いてくれているようだ


平成少女「なんでもいいから、やれってことですか?」

男「そうだ、自分はやれるんだと思うことが大切だ」

平成少女「……そう、ですか」

男「……ま、平成15年の人間なら、頑張りすぎないことの大切さは分かってるだろ?やりたいようにやればいいさ」

本日はここまでです
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平成少女「……分かりました」

男「嫌になったらどうにか俺に連絡つけてくれ。帰れるかどうかやってみる」


それから男は自分たちの部屋に戻った
どうやら、もう夕食は届いているようだ


やる気「お、戻ってきたっすね」

男「すまんな、ちょっと話しすぎた……それで、夕食の献立は何かな?」

やる気「>>下1っすよ」

やる気「お寿司っすよ」

男「おっ、マジか!いいね!」


テーブルの上には、大量の寿司が並べられていた
専用の容器に入ったそれらの彩りは眩しく、
鮮度も良好であることがうかがえる


ぶりっ子「すごいですよねぇ。それに、どうやって新鮮な魚をここまで運んできたのかも気になりますぅ」

確かに、この街はかなり内陸の位置にある
いくら運送ギルドが急いだとしても、
これだけの鮮度の魚を用意するのは難しいはずだ


市長「お答えしましょう」


モニターに表示された無機質な顔が喋り出す
しかし、市長と付き合う中で、
不気味さは感じなくなっていた


怪盗「びっくりした……」

市長「養殖によって、魚は調達しています。ただし、スペースの都合上……あまろに広い距離を動き回らなくてはならない魚や、まだ養殖法が確立していない魚はご用意できませんでした」

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狙撃少女「お寿司……食べたことないです!」

男「……それにしても、見事な出来だ。素晴らしい職人がいるのだろうか?」

市長「文献を参考に、私が握りました」

炎魔「なんでもできますね!」

市長「お褒めにあずかり光栄です」


市長は愛想よく笑ってモニターを切った

それから、一行は寿司を食べ始めた
この世界における寿司といえば、海沿いの街でしか食べることのできない料理であり、そのくせ高い
なので、寿司を食べられるのは非常に貴重な経験なのだ


中華「やっぱり、市長は料理もできるんだね」

氷魔「……なにか……できないことはあるのでしょうか……?」

やる気「あー、それ気になるっすね」

ぶりっ子「欠点の一つでもあったほうが、可愛げがありますよねぇ」

本日はここまでです
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それから話は、市長ができないことはあるのか、という議題になった


怪盗「……戦えるんでしょうか、市長?」

狙撃少女「どうなんでしょう、それなりにはやれそうですけど」

男「これで腕っぷしまで強かったら、俺たちもちょっと肩身が狭いよな」

中華「聞いてみる?」


問いかけつつ、返事は聞かずに中華はモニターのスイッチを入れた

市長「……お代わりでしょうか?」


モニターが完全に起動すると、
落ち着き払った様子で質問をしてきた


氷魔「……あ……いえ……」

やる気「そういやお代わりも欲しいっすね、同じ大皿もう一つ頼むっすよ」

市長「承りました。今すぐご用意します」

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市長はなにやら操作して通達している


ぶりっ子「そういえばぁ、市長に聞きたいことがあるんですよぉ」

市長「なんでしょうか?観光案内なら得意ですが」

怪盗「市長って戦えるんですか?」

市長「>>下1」

市長「機械の身体ですので、相手の生死を問わなくて良いのであれば可能です」

狙撃少女「お……恐ろしいこと言いますね」


人間が筋肉を操作してやるような、細やかな手加減はできないということだろう


炎魔「確かに、鉄の塊に殴られたら普通の人は死にますね」

市長「そうですね、別に武器も内蔵されていますが」

男「やっぱ、ビームとか出るのか?」

市長「最初は搭載を検討していましたが……燃費と威力の兼ね合いから、その案は却下されました」

中華「ドラゴンの熱線とかも、よっぽど強いドラゴンじゃないと乱発できないもんね」

市長「……あと、私はどれも同じ見た目ではありますが、兵装に関しては差異があることもあります」

氷魔「……単なる警備に……殺人兵器を持ち出すのは……やりすぎですしね……」

本日はここまでです
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市長「そうですね、無駄は減らしています」


できる市長の顔をして、冷静に告げた


ぶりっ子「それでですねぇ……市長さんにできないことなんてあるのか、って話をしてたんですよぉ」

市長「なるほど……実は、市民にも聞かれたことがありますよ」

ぶりっ子「なんかあるんですかぁ?」

市長「大抵のことはできますが……実は、>>下1だけはできません」

市長「芸術だけはできません」

怪盗「はぁ、なるほど……」

狙撃少女「絵や文学ができないのですか?」

市長「完全で、完璧で、合理的なことしか私は目指せないのです。芸術の美しさとは、理論的な点数では表せないものですから」

男「型を破れないのか」

市長「そうですね、適切な表現だと思います。私は、型を真似ることはできても、それを創造することはできないのです」

中華「なるほどねー……」


中華はなにか複雑そうな顔をしている
おそらく、料理と芸術との関係を脳内で模索しているのだろう


市長「見てください、これが私の制作した音楽です」


彼女はモニターにいくつかの五線譜を映した
非常に整ったよい楽譜で、それらが一つの曲を構成していた


男「いいんじゃないか」

市長「……誰もが知るコード、恋のクリシェ、メジャーな楽器……私には、それしか使えません」

本日はここまでです
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それから、芸術について軽く論じて夕食は終わった
そのまま一行は入浴の時間となった


やる気「今日はとんでもない目に遭ったっすね~」

男「全くだなぁ。だが、面白いものも見られた」

中華「あの大きな書庫とか、すごかったよね」


今でも、あの異様なほど緊張感のある書庫がありありと思い出される

やる気「しっかし、これからどうするんすかね……」

男「ああ、この禁域の話にどこまで踏み込むかだな」

中華「僕たちの目的は、あくまで極北……禁域は、さらに大きな問題な気がするよね」


成り行きで動くのはいつものことだったが、
流石に自発的に指針の変更を図らなくてはならないと、三人は思い始めた
女性陣でも、氷魔やぶりっ子はそのような気持ちが高まりつつあるのだ

本日はここまでです
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それから自分たちの部屋に帰ると、氷魔たちがなにやら本を読んでいた


やる気「んー……?なに読んでるんすか?」

氷魔「……実は怪盗さんが……こっそり……あの書庫から本を持ち出していたんです……」

男「相変わらずだし、反省してないなぁ。まぁいいけど……なんて本?」

怪盗「読めないです!」

男「ああ、そういえばそうか……」


男は本のタイトルを上から覗き込んだ
そこには、>>下1と書いてあった

凍てつく波動と書いてあった


ぶりっ子「で、なんて書いてあるんですかぁ?」

男「凍てつく波動だって」

狙撃少女「なんですか、それ……」

氷魔・炎魔「……凍てつく波動……!!」


二人が顔を見合せて目を輝かせている
確かに、とても好きそうだ

中華「強そうではあるね」

男「中身は読んだのか?」

氷魔「……あまりに古すぎる言葉は……読めていません……一部しか理解できていませんね……」

やる気「波動ってのが、なんか強そうっすよね。魔法っぽくもなければ、術とも一線を画してる感じがあるっすよ」


簡単なことから解説するのがやり口のようで、
まずはその他の準備を抜きにした凍てつく波動の撃ち方が記載されている

本日はここまでです
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男「まず、精神を集中してその場に立つ」

炎魔「はい」


別に指示をした訳ではないが、彼女はその通りに動くようで、男の方を見て次の指示を待っている


男「……両手の平を対象に向け、腰を落とす」

炎魔「はい」

男「あとは凍てつく波動を放つだけ!って書いてあるぞ」

炎魔「それが分からないんでしょう!!」

男の頭は軽く叩かれる


男「まぁそう怒るな」

ぶりっ子「でも、実際どうやるんですかぁ?」

男「俺にはできないんだが……それぞれ打ち消し合う組み合わせの魔力を体内でぶつけ合って、純粋な魔力を精製する過程が必要らしい」

氷魔「……確かに……高度です……」

本日はここまでです
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怪盗「盗んでおいてなんですけど、これ禁書なんですよね?」

狙撃少女「もし発動していたら……と思うと怖いですね」

中華「そもそも、凍てつく波動ってなんなんだろうね?」

やる気「そりゃあ、なんか冷気が出るんじゃないすか?」

炎魔「そんなものが禁書になると思いますか!?」


奇妙はポーズをしながら炎魔は叫ぶ


男(……『アレ』じゃないのか?凍てつく波動って……)


かなり心当たりのある男だったが、
念のため本で確認することにした


>>下1……凍てつく波動の効果

そして、男は確認した
やはり、『アレ』だった


男「凍てつく波動は、その名で誤解されがちだが、攻撃を行う技法ではないんだ」

氷魔「……え……そんな……!」

男「指先から迸る波動によって、敵の強化、弱体、状態異常を全て解除する……それが凍てつく波動なんだ」

炎魔「思ったよりめちゃくちゃトリッキーですね!」

ぶりっ子「それが、禁書なんですかぁ?」

男「そうだな、理由は推測だが……肉体の強化や、バリアの類がこれのせいで用をなさなくなったからじゃないか?」

ぶりっ子「それはそうだと思いますけどぉ、それってそんなに問題ですかねぇ?」

怪盗「単純に、そういう魔法を否定しすぎるから禁書に指定されたのか、あるいは……」

狙撃少女「なにか心当たりがあるんですか?」

怪盗「お伽噺ですけどね、魔法のバリアで侵略を防いでいた魔法都市が昔あったとかなんとか」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「もしこんなの使われたら、丸裸じゃないですか!」

中華「そうだね……その都市が訴えたからなのか、その都市が滅んだからなのか……全く関係ない可能性もあるけどね」

やる気「俺っちとしては、かなり好みの技っすね」

氷魔「……そうなのですか……?」

やる気「奇策を力でねじ伏せることができるっすからね。魔王に向いてるっすよ」

ぶりっ子「覚えておいて損はなさそうですが……覚えるのも難しそうですねぇ」

怪盗「ええ、魔法ではなさそうですが、魔力の操作は要求されますし……魔法に長けた方でなければ覚えられないかもしれませんね」

氷魔「……ここのみなさんなら誰でも……少し努力すればできるようになるとも思いますが……」

狙撃少女「とにかく、便利なので誰かには覚えてもらいましょう」


それから一行は、誰が凍てつく波動を覚えるべきかの会議を始めた
寝るまであまり時間はなかったので、
それは手早く遂行された


>>下1……誰が凍てつく波動を覚えることになった?

問題はそう簡単ではなかった
便利なのは確かだが、氷魔や炎魔でなければ一朝一夕で習得できるような技ではなかったのだ
しかし、氷魔はあまり乗り気でなかったし、炎魔は使いこなせる自信がないと言っていた


男「どうしたものか……」


そう悩んでいると、市長がモニターを起動させた


市長「お悩みですか?私に分かる可能性があるなら、なんでも聞いてください」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「怒らないで聞いてほしいんだけど」

市長「感情なんてありませんよ」


それが疑いようのない真実であるかのように市長は言ってのけた


男(嘘つけ……)

中華「禁書を一冊持ち出したんだ」

市長「……そうですか」


かなり険しい顔をしている
これで感情がないと言うのだからすごいものだ

中華「それで、そこに書いてある凍てつく波動を覚えようってことになったんだけど……誰が覚えたらいいかなって」

市長「事情は分かりました」

氷魔「……助かります……」

市長「やはり、魔力の扱いに長けた______「私、やります!」


オフィスからの中継に、突如新たな人影が映りこんだ
一瞬映像が不明瞭になったが、すぐにピントが合って、
そこに平成少女がいることが明らかになった

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「ん?なんすか?」

平成少女「その技、私覚えたいです!」


かつてないほど積極的な態度だ
よい傾向であると言えるだろう


市長「……だ、そうですが」

ぶりっ子「市長は異論ないんですかぁ?」

市長「いろいろ頑張ってみたい、と先ほど報告されたので。自主性に任せています」

完全に保護者の顔だった
一行のうち誰も意欲的に習得しようという感じでもなかったため、平成少女に任せることにした


平成少女「いいんですか!?頑張ります!今から受け取りに行きますね!」


禁書を彼女に受け渡した一行は、
その未来に期待しつつ、眠ることにした

~翌日・陽週日曜日~


怪盗「あー……朝ですね」


寝起き特有のがらがら声で彷徨い、
水を一杯飲み干してベッドに腰かけている
朝にも酒にも弱いらしい


狙撃少女「今日、どうするんですか?」

男「一旦市長と話して、問題なさそうならこの街を一旦出ようと思う」

本日はここまでです
ありがとうございました

一行は市長のオフィスにやってきた


市長「おや、みなさんどうされましたか?」

中華「実は、相談があって……」

市長「はい、なんでしょうか」

氷魔「……昨日の調査で……禁域についての初期調査はできたかと思います……私たちにも元の目的がありますので……一度旅に戻りたいのですが……」

市長「>>下1」

市長「それがいいぞ。禁域の奥に向かうと命取りだ」

やる気「ありがたいっすね」

市長「なんでもすぐに解析できる訳ではありませんから、みなさんを待たせてしまうかもしれませんしね」


一行が支度をして宿を出ようとしていると、平成少女が部屋に入ってきた


平成少女「も……もう行っちゃうんですか……?」

ぶりっ子「本当の目的はこの街にはないんですよねぇ」

平成少女「その、なんとなくみなさんずっとここにいるものだと思ってました」

怪盗「あはは、確かにここには長く居ましたね」

狙撃少女「お陰様で、あなたにも会えましたね」


準備を終えた一行は出立しようとする


平成少女「……あの、またここに帰ってきますか?」

男「俺たちは冒険者だから、絶対は無理だな……生きてたら、な」

本日はここまでです
ありがとうございました

すみません遅れました


平成少女「約束、してください」


少女は毅然と、そう言ってのけた


男「……そんなに?」

平成少女「それはもう。約束してくれないなら、男さんの秘密バラしちゃいますよ」

男「えっ!?わ……分かった。約束するよ」

彼女にとっては、男は同じ世界からやってきた唯一の仲間だったのだ
それが手の届く位置から消えるということは、
ある種の暗闇に放り込まれるようなものだった


平成少女「約束ですからね!」


必死そうな少女にしばしの別れを告げて、一行は宿を出た


中華「男の秘密って、なに?」

男「んー……大したことじゃないよ」

氷魔「……その割には……慌てていたようですが……」

男「いや、ほんとほんと!少なくとも、みんなが知って傷つくことじゃないよ!」

手配した馬車に乗り、北の港を目指す


御者「しかし、北の港へ行きたいだなんて久しぶりのお客だ」

やる気「確かに、その先には極北しかないっすし、街もないっすからね」

御者「見たところ冒険者みたいだが、まさか極北まで行くつもりかい?」

ぶりっ子「そうですよぉ」

御者「そりゃすごいね。強いギルドには見た目だけじゃない『華』があるもんだが、確かにそれを感じるよ」

本日はここまでです
ありがとうございました

図書館の街は大陸の中ではかなり高地だったようで、馬車はひたすら坂を下っていく
あるとき視界が開けて、一つの港町が下に見えた


怪盗「あそこが北の港ですね!」

狙撃少女「旅も終盤……」

男「ようやくだな」


どこからかカモメの鳴き声がこだましている

午後の昼下がり、一行は北の港に到着した

【ギルドの資金】72262295


御者「それじゃ、頑張ってくれよ!」

中華「応援ありがとうございます」


御者は馬を引いて去っていった


氷魔「……では……船の予定を調べましょうか……」

本日はここまでです
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船着き場には一つ大きな建物があり、
そこで諸々の取引をしている
普通の街ならば貿易の精査をするような建物であったり、乗船を管理する建物だったり、その他様々な施設が必要となるが、ここはほとんどそういった施設が必要ないので、一つの建物にすべて集まっている


やる気「……そういう訳で、極北行きの船を探してるっす」

局員「なるほど、事情は分かりました」

ぶりっ子「次はいつになるんですかぁ?」

局員「そうですね、次極北行きが出るのは>>下1です」

局員「明日になります」

怪盗「分かりました」

狙撃少女「とりあえずチケットは買っておきましょうか」


一行は極北行きのチケットを購入した
砕氷船は丈夫で大きく作ったものの、極北まで行く人が少ないとのことなので、かなり割安のチケットが手に入った


【ギルドの資金】72260295

それから一行は建物から出て、
これからの行動について考えていた


男「宿取るか?」

中華「いや、この街に旅人はほとんどいないし……満室の可能性はないんじゃないかな」

氷魔「……同意見ですね……」

やる気「じゃ、ぶらつくっすかね」

本日はここまでです
ありがとうございました

一行は街に繰り出した
とはいえ、娯楽施設などはなさそうだ


ぶりっ子「レストランがありますねぇ」

炎魔「というより、定食屋でしょうか」


そして、流れるようにその店へ入っていった


店主「らっしゃせー」

怪盗「店長!なんかおすすめのメニューありますか?」

店主「>>下1」

店主「あん? うちには一つしか出すもんねーよ」


地方の地元に根差した店にはありがちなことだが、
店主の態度が驚くほど悪い
だが、そういう店の料理は大抵うまい


狙撃少女「ひっ」

男「じゃあそれで、八人前で頼むよ」

店主「あいよ!」

応答すると、持っていた新聞をカウンターへやって、厨房へと入っていった


ぶりっ子「な……なんですかあの態度ぉ」

男「そう怒るな、飯屋の価値は味で決まるものさ」

中華「そうだね……まぁ、都市に店出すならああはいかないけど」

氷魔「……一つしかない……というのは随分な自信のようにも思います……」

やる気「一品でやってけるほど美味いってことっすよね」

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「刺身っぽいなぁ」

怪盗「港町だからですか?」

中華「それもあるけど、刺身おろしてる時の音がするよ」


その発言に反応し、耳をそばだてる者もいた
だが、聞こえるのは潮騒とそれぞれの息づかいばかりで包丁の音は聞こえなかった


狙撃少女「なにが聞こえてるんですか……?」

不思議がっていると、店主が海鮮丼を持って出てきた


店主「あいよぉ!」


刺身の数々は非常に鮮やかだった
色味からして新鮮であることが伝わってきている


男「いただきます」


それを口に運べば、その感触にただ驚いた
歯を弾き返すかのようにいきいきとした食材だが、見事な技巧でそれが膜のように薄く刺身となっているのだ

中華「とんでもない技術だ!どこで修行を!?」

店主「親父にみっちり叩き込まれたのよ!」


醤油をつけても変わらず美味だった
そもそも薄く切ってあるので、あまりつけすぎると痛い目を見るが、節度を守れば問題なかった


氷魔「……こういう食べ物も……あるのですね……」

ぶりっ子「うーん、確かにこれはすごく美味しいですねぇ」

店主「折角漁師が獲ってきた魚だからな。あいつらも食いに来よるし、それを台無しにするような真似できんのよ」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「だから都会に店出してないんすね」

店主「俺も若い頃は都会に出ようと思ってたがな。親父にここを継いでくれと言われちまって……すっぱり諦めたよ」

中華「……それも、料理人としての幸せってやつなのかな」


出された料理はすぐに平らげられた


怪盗「はぁ~食べました」

狙撃少女「あの、この辺に観光できる所ってありませんか……?」

店主「>>下1」

店主「こんな田舎に洒落たところなんてあるか」

男「ま、まぁ……」

店主「自然を感じるんだ自然を」


とりあえず店主のアドバイスに従って海辺にやってきた
海岸には冷たい波が打ちつけている


氷魔「……いい波……いい風ですね……」

やる気「なに言ってるんすか!?だいぶ寒いっすよ、ここ!」

ぶりっ子「そうですねぇ……海水浴って感じじゃなさそうですしねぇ」


極北からの海流が海岸に届き、その冷気の一端を感じとれる


炎魔「私がその気になれば温水にだってできますよ!」

怪盗「まぁ、それは検討しましょうか」

狙撃少女「釣竿でもあればよかったのですが……」

本日はここまでです
ありがとうございました

潮風に吹かれて談話していると、
海からの贈り物がやってきた


男「おい、なんか漂着したぞ」

中華「なんだろ?」


それは近くの岩場に乗り上げ、返す波には乗れず留まることとなった


>>下1……漂着物の正体

女性「ぅ……くっ……」

氷魔「……これは……!!」


岩場に打ち捨てられていたのは、
一人の女性と、彼女が抱える赤子だった
久しく感じていないタイプの緊張感が一行に走る


やる気「大丈夫っすか!?」


考えるよりも早く彼は跳び、両腕で二人を掬い上げた

赤子「ぁー……あぁー……」

ぶりっ子「まずい!赤ちゃんが弱ってます!」

怪盗「ミルク買ってきます!」


彼女は持ち前の身のこなしで風のように街へと戻っていった


炎魔「ここは、私の出番でしょうね!」


彼女は実体のない炎の翼を現出させると、
それで身を寄せ合う二つの命を包み込み、自分の体も密着させた

本日はここまでです
ありがとうございました

母親「はぁぁ……ふぅぅ……」

炎魔「よし!呼吸が安定してきています!」

狙撃少女「すごいです!……あなたがいなければ、相当生還率は下がっていたはず……」


岩場は休めるような環境ではないが、
それでも手を尽くしたことによって確実に回復していっている

怪盗「買ってきました!」


驚くべき速さで怪盗は戻ってきた
瓶に詰められたミルクと、魚の練り物で作られた団子を持っている


狙撃少女「食べさせながら街に戻りましょう!」


彼女は母親を負い、それを後ろから炎魔が暖め、残りのメンバーが手分けしながら買ってきたものを食べさせた

日の暮れないうちに宿まで辿り着き、
大きめの部屋を二つ取った
そして、そのうちの一つに全員が集まり、
母子を介抱していた


母親「……はっ!」

男「やった!目覚めた!」

母親「子供は……私の子供は!?」

中華「今は寝ています。お返ししましょう」


中華は安らかに寝息を立てる赤子を母に返した


母親「あぁ……よかった……!」

そこでようやく母親の表情は和らいだ
子供を抱き、涙を流して微笑んでいる


氷魔「……どうにかなりましたね……」

やる気「喫緊の問題は解決したっすけど……」

母親「みなさん、ありがとうございます!なんとお礼を言えばいいのか……!」

ぶりっ子「お礼なんていりませんよぉ。それより、どうして海に流されてたんですかぁ?」

母親「>>下1」

母親「大波で船がひっくり返ってしまいました」

怪盗「ええっ!?」

狙撃少女「他にも流されている人がいるかもしれないということですね?」

母親「いえ……恐らく、その可能性は低いでしょう」


嫌な想像がよぎる
そして、それは事実となって突きつけられるのだ


男「まさか、作為的なものだったのか?」

すみません寝落ちしました


母親「はい……海中の怪物が、高波を使って船をひっくり返したのです」

中華「なんだって!?」


それは、これから極北に向かう自分たちにとっても無視できない情報だった
極寒の海に放り出されれば、
よほど幸運でなければ生きていられない


母親「夫は、私たちを守って身代わりに……」

涙ながらに語るその姿は非常に痛ましいものだった
彼女らには、生還を喜ぶこともできないのだ


氷魔「……大変不躾なお願いなのですが……」

母親「なんでしょうか……」

氷魔「……私たちとしても……その怪物の情報が必要です……なにか特徴など覚えていらっしゃれば……教えていただけたらと……」

母親「>>下1」

母親「鯨の様な一角を持った怪物で、咄嗟に見た時は槍を持った人型がそばにいました」

ぶりっ子「……つまり、どういうことなんでしょう?」

怪盗「一角の怪物と、槍を持った人型のなにかがいるってことじゃないですか?」

狙撃少女「もしかしたら、変身しているのかもしれませんよ」

男「……ともかく、嫌なことを思い出させてしまった。忘れてくれ」

本日はここまでです
ありがとうございました

母親「いえ……お気になさらず」

中華「家はあるんですか?」

母親「はい、この港町にあります」

氷魔「……これから生きていくのは……困難が多いでしょうけれど……私たちも応援しています……」

母親「ありがとうございます。みなさん優しい方なので、この子の世話も、少しお願いしようと思っています……」


彼女は軽く赤ちゃんを撫でた

それから一行はその母親を見送り、
宿屋の前に立っていた


やる気「さて、どうするっすか?海洋生物で、しかも魔獣っぽいっすよ」

ぶりっ子「この事故を港の機関が把握してないはずがありません。なにか手がかりを持っている可能性が高いですねぇ」

怪盗「そうですね、行ってみましょうか」

狙撃少女「そうですね……明日の便は欠航かもしれませんけど」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから一行は港の管理局まで行き、
受付に問い合わせることにした


男「船が一隻転覆したそうだが、知っているか?」

局員「えぇ、明日の便の返金処理でしたら受け付けておりますよ」

男「……いや、いい。それより俺たちは見ての通り冒険者でな、どうにか奴を倒したい。情報が欲しいんだ」

局員「そういうことでしたら……少しお待ちください」

その若い局員は、彼よりも年季が入っていそうな局員を連れてきた


中華「あなたは?」

副局長「副局長をやらせてもらっている」

氷魔「……呼ばれたということは……知っているのですか……?……あの魔獣とおぼしき存在について……」

副局長「>>下1」

副局長「少し前から討伐の役に立つだろうと、正体を調べていた。まだ情報は少ないが……亡霊に近い存在だということまでは分かった。」

やる気「そうなんすか!?」

ぶりっ子「亡霊系の敵とはあまりやり合ったことないですよねぇ」

怪盗「聖水でもぶち撒けたい所ですが……海じゃ意味なさそうですね」

狙撃少女「スナイパーライフルなら、よほど深くに潜られない限り撃てますよ」


狙撃少女は自信ありげに語る


男「撃つといっても、亡霊だからな。当たらないんじゃ意味なくないか?」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「銀の弾丸、というやつですよ」

男「なるほど!それなら亡霊にも当たるだろうな」

中華「じゃあ、後はどう狙うかだね」

氷魔「……よほど高速で動き回られなければ……狙撃少女さんなら当てられそうですね……」

炎魔「じゃあ、私がそこだけ海を干上がらせる!」

やる気「できるんすか!?」

炎魔「……無理かも!」

流石に不死鳥の力があるとはいえ、限界はあるようだ


男「でも、そのアイディアは実にいい感じだね」

ぶりっ子「おっ、アレですか?」

男「ああ、海を割ってやるしかないだろう。そうすれば動き回れはしまい」


明日の便への乗船がどれほどキャンセルされるのか、本当に出港するのかは怪しいが、人が乗り込めば乗り込むほど奇跡を行使する際の魔力の消費は押さえられる

副局長「こりゃたまげた、そんなことができるのか」

男「これでもかってほど魔力使うので、かなり厳しい制約の下ですが」

炎魔「神降ろしだけじゃないんですね、できること」

男「奇跡を代行するだけだから、あの時よりはかなり魔力の消費は抑えられるんだ。それでも人間一人じゃ賄えないし、無理にやろうとすれば反動で死にかねない」


少女神の奇跡は規模こそ小さいものの、それでも一人で使うとしばらくまともに動けなくなるレベルの反動がある
海神の奇跡を一人で使えば、体が即座にバラバラになるだろう

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「じゃあ、人は欲しいですけど……」

男「明日の便を予約してはいるが、もしあの亡霊魔獣が出なければ、無理のない範囲で遅らせてくれても構わない」

副局長「それは……普通のお客様が乗るかによるね……」

狙撃少女「そうですね。実際、会わないに越したことはありませんから」


自分たちの意志を伝えた一行は、
再び宿へと帰ってきた
決して豪華ではない宿だが、潮風がほどよく入り、
田舎らしい温もりを感じる

部屋は男女で分けられ、
バルコニーでそれぞれの部屋が繋がっていた


氷魔「……潮騒が……心地よいですね……」


バルコニーにはいくつかの椅子とテーブルが備え付けられており、ゆったり寛げる仕様だ


やる気「あっ、窓はなるべく閉めといたほうがいいっすよ」


男性部屋からやる気が顔を出して、忠告をする

氷魔「……夜は冷えますからね……」


素直に窓を閉めて、椅子にかけ直す


やる気「金属製の武器使ってると、潮風で錆びちゃうんで、そっちっすね」

氷魔「……あぁ……私には盲点でしたね……」

男「お、夕陽が綺麗じゃないか」


二人が話しているのでふと窓辺を見た男が、
美しい夕暮れに気がついた

本日はここまでです
ありがとうございました

談話する二人の脇を通って、
バルコニーの縁に腰かける


やる気「おセンチの時間っすか?」

男「ひっどい物言いじゃないか。実際そうだが」

氷魔「……ふふ……」


冷徹な海が太陽を呑み込んでいく


まだ夕食までは時間がありそうだ


>>下1……なにをする?
1.中華の料理を手伝う
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.自由安価

バルコニーを通って、女子部屋を覗く
別に、特段目を見張るものがあるわけでもない
大部屋なら一緒に泊まるし、貴重な光景でもない


ぶりっ子「な~に~見~て~る~ん~で~す~か~!!」

男「うおっ」

ぶりっ子「覗きじゃないですかぁ!しばき回しますよぉ!?」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「そう怒るなって、別に隠すものもないだろ?」

ぶりっ子「死にたいんですかぁ?」

男「……すまん」


どことなくバイオレンスな気配を感じて、
謝罪しておく


ぶりっ子「どうせ暇なんでしょう?」

男「ああ、暇だ」

ぶりっ子「じゃあ>>下1しませんかぁ?」

ぶりっ子「肩もみしませんかぁ?」

男「凝ってんの?」

ぶりっ子「そりゃあ凝りますよぉ、色々持ってますし、心労もありますしぃ」

男「本当かなぁ」


笑って受け流しながら、
男はぶりっ子の肩に手を当てた
よく効く場所とそうでない場所は人によってばらつきがあり、最初にもむ時は確認が必要なのだ


ぶりっ子「ひぅっ!?」

両肩が盛大に跳ねる
感覚が崩れるのでやめてほしい所だ


男「どうした?」

ぶりっ子「す……すみません、なんかびっくりしちゃって」

男「あー、慣れてないんだな、マッサージはされるにも慣れがいるぞ」

ぶりっ子「そ、そうなんですねぇ……」

男「そうだ。マッサージで気持ちよくなってるご老人は、揉まれの道を何年もかけて極めたとすら言える」


そんなことを言いながら、
つぼになっていそうな場所を探り当てる
あとは押し込んでほぐすだけだ

本日はここまでです
ありがとうございました

耐性がどの程度あるか分からないが、
強く押し込んでみる


ぶりっ子「ぎゃあっー!!」

男「怪鳥みたいな声出てんぞ」

ぶりっ子「誰のせいだと思ってんですかぁ!?もっと優しくしなさいよぉ!私はデリケートなんですよぉ!」

男「注文の多いやつめ……」


仕方ないので、もう少し力を抑えて揉んでみる

ぶりっ子「あーそうです、そういう感じで……」


男はようやくぶりっ子の望む力加減を探し当て、
マッサージを続行する


男「ここにも極北にもマッサージや整体の店はないだろうし……そう考えると、俺っていいことしてるんじゃないか?」

ぶりっ子「じゃあみんなも揉みます?」

男「手ぇパンパンになるからやめとく」

それからしばらくの間もみほぐし、
男はようやく手を休めた


ぶりっ子「終わりですかぁ?」

男「ああ……肩もみなんて何年ぶりだろうな。すぐ疲れるんだよ、これ」

ぶりっ子「まぁ、色々気を遣ってるのはなんとなく分かりましたよぉ」

男「マッサージ師が一番マッサージ師を求めてる、なんて話もあるしな……俺はそこまで高尚な肩もみはできんが」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから夕食の時間になった
あまり魚料理は作らない中華だが、
今日はやたら豪快な魚料理を出した


怪盗「な、なんか……派手ですね?」

中華「香辛料もたくさん使うし、魚もほぼ全部の部位を食べられるようにしてあるんだ」

狙撃少女「すごいですね……スパイスの香りが強烈で、よだれが出ます」

この街の特色に、水が安いというものがある
口内の辛味を流すためにいくらでも水を飲めるため、
中華は特に辛味の強い料理を提供したのだ


炎魔「ぎゃーっ!辛いっ!」

男「すげぇ!辛みで火吹いてる奴初めて見た!」


炎魔は驚異的な辛さに耐えきれなかったようだ
彼女は本当に炎を扱える生命体なので、
口から火柱が出ている

本日はここまでです
ありがとうございました

一行は辛みと格闘しながら、魚料理を食べ終えた


炎魔「お腹がちゃぽちゃぽです」

中華「炎魔さんには辛すぎたみたいだね、今度からはもっと抑えるよ」

氷魔「……舌が灼けるようでしたね……」

やる気「俺っちは結構好きっすよ、これ」

ぶりっ子「私もですねぇ、むしろこれくらいが丁度いいですぅ」

中華がいろいろと聞き取りをして、
細かいメモ書きを作成しつつ、夕食の時間は終わった


怪盗「ヘルシーでよかったですね」

狙撃少女「こんなに辛いものを食べたのは初めてです」


まだ就寝までは時間がある


>>下1……なにをする?
1.中華の後片付けを手伝う
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.自由安価

辛いものを食べると体が熱くなるのはよくある話だ
男もその例に漏れず、
火照りを冷まそうとバルコニーへ出たのだ


男「あちー……」

炎魔「あっ、男さん」

男「おお、炎魔。もう元気か?」

炎魔「ええ、この通り!」


彼女は炎の翼を広げてバルコニーの外に浮かんでいた

本日はここまでです
ありがとうございました

男「便利な体してるよなー」

炎魔「おかげさまで」

男「よせって。それより、極北に行ったらフェニックスに会えるぞ」

炎魔「実質、お父さんみたいなものですよね」

男「そうか……?」

炎魔「もし会えたら、>>下1」

炎魔「火力勝負、です!」


そう言って彼女は右手を突き出し、
炎をそこから迸らせて見せた
それは花火のように美しく、
生命の営みのように豪胆だった


男「はは、いいね」

炎魔「冗談だと思ってませんかー?」

男「まさか、俺はいつでも本気さ。もしギャンブルだったら、君に賭けよう」

炎魔「疑いはないんですか?」

男「炎魔は誰より無垢で無邪気だけど、やると言ったことはやる、そういう雰囲気がある」

炎魔「有言実行の女、というわけですね!」

男「そうだね。人間としては俺なんかと比べ物にならないほど若いし、伸び代がいくらでもある」

炎魔「……どっかで突き放してください!ひたすら褒められると恥ずかしいです!」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「人は褒めて伸ばすタイプなんだ」

炎魔「んんーっ……!」


炎魔は空中で全身を限界まで張り詰めさせている


男「本当に伸びそうだからやめなさい!」

炎魔「楽しそうじゃないですか?褒められたら物理的に伸びて『私褒められると伸びるタイプなんです』って言うの」

男「妖怪だよそれ……」

可憐で荘厳な少女のままでいて欲しいというエゴから、男は炎魔の奇行を止めた


炎魔「……覚悟、決めなきゃですね!」

男「そうだな……」

炎魔「もし私が挫けたら、そのときはよろしくお願いします!」


炎魔は相変わらずの笑顔で告げたが、
その裏には太陽のように眩しい彼女の黒点が見えた

本日はここまでです
ありがとうございました

そして彼女は滑空しながら女子部屋に消えていった
男は夜風の只中に残されて、
数分月を見上げてから部屋に戻り、眠った


~翌日・陽週月曜日~


男「……ん、船が出るまであとどのくらい?」

中華「あと一時間強ある。のんびりいけるよ」

氷魔「……ぼちぼち……チェックアウトの準備をしましょうか……」

チェックアウトを済ませ、
だいぶ早めに港の管理局までやってきた


やる気「局員さーん」

局員「どうなさいましたか?」

やる気「今日の極北行きの便、俺っちら以外に何人ぐらいお客が乗るんすか?」

局員「そうですね、>>下1」

局員「1人でもいたら珍しい方ですよ」

ぶりっ子「そりゃ都合がいいですねぇ」


当然といえば当然のことである
この港町がただでさえ辺鄙極まりないのに、
もはやほぼ未開の地である極北に向かおうとする者などほぼいないだろう


局員「みなさんのような物好きの冒険者がいなければ、乗船券も売ってなかったでしょうね」

本日はここまでです
ありがとうございました

乗船だけなら既にできると局員が言ったため、
一行はそのまま船に乗り込んだ


怪盗「甲板は冷えますねー……」


容赦のない北風に鳥肌が立つ
しかし、乗組員たちは寒さなど恐れず出航の準備をしていた


狙撃少女「そうですね。……おや」

規律正しく動く乗組員たちに指示を飛ばす者がいた
それは、つい先日会った副局長だった


男「副局長さん。他のお客さんはいなさそうですね?」

副局長「幸か不幸かな」

男「よかったと思っていただけるよう頑張るのが我々の仕事です」

副局長「では、報酬のことでも考えるとするかな」

男「あれば嬉しいですが……まぁ、なくても構いません。人のためにやることなので」

忙しそうなので世間話はせず切り上げて、
与えられた船室に向かうことにした
それぞれに個室が割り当てられており、
どれも明らかに広めだ


中華「大きな船でよかった」


中華のように、早速部屋でくつろぐ者もいれば、


やる気「つっても、なんもないっすねー……部屋」


やる気のように、船室を荷物置きとしか思っていない者もいた

本日はここまでです
ありがとうございました

すみません遅れました


氷魔「……ふぅ……」


甲板では氷魔が本を読んでいた
高い船なので、濡れる心配はまったくない


男「この寒いのに、よくもまぁ甲板で……」

氷魔「……丁度いいと思っているのですが……」

狙撃少女「………………」

男「……?」


一方、狙撃少女はただ水平線を見て立ち尽くしていた


やる気「なにしてんすか?」

狙撃少女「遠くを見ています。……そうすると、視力がよくなるらしいですよ」

男「まぁ、そういう話もあるが……」


なにもない水平線で効果があるのかは疑問だった
そんなことを話しているうちに出航の用意が整い、船は水をかき分け、極北に進み始めた


>>下1……極北に着くまでに一角の亡霊に出会えたか

寒さはどんどん激しくなり、
甲板に出ていたメンバーも氷魔以外は震えることも多くなり始めた頃
突如として船が大きく揺れた


氷魔「……おおっと……これは……!」

中華「出たのかいっ!?」


中華や冷え性の女性陣、
そしてどこにいたのか炎魔も船内から飛び出してきた


やる気「……いるっす!」

本日はここまでです
ありがとうございました

海を見れば、巨大な一角を持った鯨のような存在が船を角で突き刺そうとしている
一度揺れたことを考えると、
この船は少なくとも一発はそれを耐えているということである


ぶりっ子「で、でかすぎませんかぁ!?」

男「水から出せば、ただの魚だッ!船員の皆さん、海神様に祈ってください!」


男が呼び掛けると祈ろうとする者もいたし、
パニックでそれどころではない者もいた

副局長「ひるむなっ、みんな!祈るんだ!」


やはり、見ず知らずの冒険者が言うよりも慣れ親しんだ上司が言うほうが耳に届く
慌てふためきなにもできないでいた船員たちも、みな祈り始めた


怪盗「さっすがー!」

狙撃少女「……さぁ、私たちも祈りましょう」

炎魔「そうですね!」

本日はここまでです
ありがとうございました

男が精神を統一し、目を見開く
その背後には、既に海神のビジョンが浮かんでいた


男「『海割りの奇跡』ッ!!」


念を亡霊に叩きつけるように叫ぶ
するとたちまちそこから海が二つに割けていく


狙撃少女「いきますよっ!」

炎魔「がってん承知ー!」

船のへりに狙撃少女は脚をかけ、
そのまま中空に身を投げ出す


狙撃少女「的が大きくて助かりますね!」


そのままスナイパーライフルで銀の弾丸を撃ち込み、
巨大な亡霊に命中させる


一角「オォォォォォ……!!」


それは大気を震わせる唸りを上げ、苦しむ

炎魔「よっと……!ライフルおっもいですね!?」

狙撃少女「性能とトレードオフです。それより、ちゃんと支えておいてくださいねっ!」


割られた海の間に吸い込まれていくように落下する鯨のような亡霊は、
銀の弾丸を避ける為に人型に変貌した
一方の狙撃少女は浮遊する炎魔に負われた体勢のまま、
構わずライフルのリロードをしていた



中華「やはり、的を小さくしてきたね!」

狙撃少女「このライフルの前では、視認に足る体躯であれば誤差に過ぎません」


お世辞にも安定感があるとは言えない少女の上で、
彼女は落下する人間大の的に狙いを定める


炎魔「さぁ、やっちゃってください!」

狙撃少女「はい!……そこですっ!」


彼女が放った弾丸は、あらゆる悪条件を貫通し、
人型の亡霊を貫いた


氷魔「……素晴らしい……!」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「よし、降りるぞ!海神サマ、頼みます!」

海神「はーい」


船の下の海もゆっくりと割れて、海底に着く
そこでは二発の弾丸を食らった亡霊が槍を持って苦しんでいた


亡霊「ォ……ォォ……!」

男「やい亡霊野郎!なんだって船を襲うんだ!?」

亡霊「>>下1」

亡霊「不幸な運命になる魂に……死という安らぎを与える為に……」

やる気「不幸?冗談きついっすね、うちはラッキーで生きてるんすよ」

亡霊「どうだろうな……私には……お前たちから死臭すら感じるぞ……」

ぶりっ子「ええっ!?」

亡霊「ここで死ねば……魂は海に還る……邪悪なる者と対峙するということは……魂すらも煉獄に焼かれる覚悟がいる……」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「……だったらなんだと言うんだ」

亡霊「今のうちに死んでおくべきだ……」


そう言ってゆらゆらと立ち上がろうとする亡霊だったが、そこに炎魔が飛び掛かった


炎魔「おおっと、そりゃいけませんね!」

怪盗「ナイスです!」

海神「……私がなにかするまでもなさそうですね」


炎魔に続いて臨戦態勢になっていた海神だが、
その警戒を解いたようだ
心配なので男もなにかしようと考えたが、
海神の様子を見てそれをやめている


亡霊「あ……暖かい……」

炎魔「そうです!あなたがずっといた深海に、こんな暖かさはないはずです……」

亡霊「私は……私はっ……」

切なげな表情を浮かべる亡霊に、
炎魔は慈母のごとく寄り添った


炎魔「他者を殺めてまで頑張る必要はありません……あなたにも、救いは必要です」

亡霊「私が……導かねば……」

炎魔「思い出してください。……あなたも、導かれるべき存在です」

亡霊「………………」

炎魔「海面は、陽光に照らされて輝くのです……悲しみの底から抜け出して、父なる海に還りましょう……」


そう囁かれると、亡霊はゆっくりと、
溶けるように、消えていった
いつでもわんぱく少女のようだったはずの炎魔の顔と声には、
司書の紛い物だったときのような思慮深さが滲んでいた

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「……消えていった……」

海神「ううむ、やっぱり私の見込んだ通りでしたなぁ~」


誰に吹き込まれたのか、
珍妙な口振りで海神は語り、頷く


男「なんかしましたっけ」

海神「私の眷属になれば人間の感覚あげるって話です。もしあの子が眷属だったならなぁ~!私の格も爆上がりってもんですよ」

男「……なんか、似てるしな」

海神「あぁ……確かにそうかも?でも、前に会ったときとはすっかり変わっちゃいましたね」

男「根っこの所は変わってないみたいだけどね。今、海神サマも見たでしょ?」

海神「うーん、なおのこと口惜しい……」


男は久しぶりに実体化した海神としばらく話し、
それから船を海上に戻してもらった


中華「いやぁ、どうにかなったね」

氷魔「……この船……凄まじく頑丈ですね……」

本日はここまでです
ありがとうございました

そして、ついに一行は極北へと辿り着く
船は流氷を砕き、堅い凍土の上に作られた港へ接岸する


やる気「ついに来たっすね!」

ぶりっ子「防寒具……なんで買ってこなかったんでしょう……」

怪盗「私も同じ気持ちです……」


ぶりっ子と怪盗は寒さに震えている

乗組員たちは積荷を降ろし、逆にいくつかの物資は港から船に運び込まれていく


狙撃少女「そういえば……向こうとこちらをわざわざ行き帰りしているのならば、理由があるはずですね」

男「ああ、やはりあの積み込まれていく箱じゃないか?」


話していると、近くに副局長が見えた
どうやって淹れたのか、コーヒーを飲んでリラックスしている


狙撃少女「副局長さん、あの港から積み込まれているものはなんでしょうか?」

副局長「>>下1」

副局長「溶けない氷さ」

中華「えっ、そんなのあるの?」


食材の冷蔵に利用したいので、
中華はそれに非常に反応した


副局長「ああ、極北で取れる……特殊な魔力を含んだ氷なんだ」

男「確かに、中華みたいな人は欲しがりそうだし、値段が付きそうだ」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから、一行は港にやってきた
先ほどまでいた街は、鄙びてこそいたものの、
まだ街らしさがあったといえる
だが、この港にはキャンプのようなものがいくつか用意されているだけだ


氷魔「……基地……といった感じですね……」

やる気「そっすねー……でも、探査とかしてる人多そうっすし、色々聞けそうっすね」

それらのキャンプ地の中に踏み込むと、
防寒具を着て作業をしている人が何人かいた


ぶりっ子「すみませぇん、お時間いいですかぁ?」

隊員「……ん、冒険者か。寒そうな身なりをしているな」

ぶりっ子「そうですねぇ、冷え性なので困りますぅ」

怪盗「私たち、不死鳥を探して極北まで来たんです。どこにいるか知りませんか?」

隊員「>>下1」

隊員「極南にいるらしいよ」

狙撃少女「……へ?」

隊員「いやぁ、確かに極北にいるって言い伝えはあるけど……火の鳥なんだから、北より南にいるほうがそれらしいでしょ」

男「……極南は、寒くないんですか?」

隊員「いや、寒いよ。だって極北の隣だし」

男「え?ええ?世界が球形だとしたら、ちょうど一番遠いんじゃないのか?」

隊員「そうか、世界地図ってあんまメジャーじゃないのか」

本日はここまでです
ありがとうございました

彼は寛大にも一つのドーム状の拠点に一行を案内し、世界地図を見せた


中華「これが……」

隊員「世界地図と呼ばれるものはいくつもあって、眉唾物な地理が記載されたものも多いんだけど……実測した感じ、これが一番もっともらしいよ」


男にとって奇妙だったのは、
世界がやけに細長いことである
相当縦長のスクロールが、地図としてそこにはあったのだ

男「なんか……縦長?」

隊員「我々の認識では、世界はこのようになっている」


彼は、地球儀に相当するそれを私物の棚から取り出した
この世界でなんと呼ばれているかは分からないが、
男の知る限りそれは『メビウスの輪』だった


男「細長い世界が、ループしているということですね?」

隊員「基本的には、そうだね。……なんか、特定の位置から特定の場所に踏み入るとか、特別な儀式を使うとか……胡散臭いけど、そういう方法で環状世界の外に出られるって話もあるよ」

氷魔「……このような形状ならば……極北と極南は……隣り合っていてもおかしくはありませんね……」

隊員「そうだね、でも注意すべきことがいくつかある」


指を立て、注意を促してきた


やる気「なんすか?やっぱ過酷なんすか?」

隊員「それが一つだ。いくら冒険者とはいえ、正気とは思えない行為だな。……次に、極北と極南の境界についてだ」

本日はここまでです
ありがとうございました

ぶりっ子「なんかあるんですかぁ?」

隊員「さっき言った、『特定の位置』があるんだ」

怪盗「はぁ」

隊員「どこからかは分からないが、境界を特定の座標からまたぐと、異界に飛んでしまう」

狙撃少女「よく知ってますね……」

隊員「こんなとこの調査に来るのはよっぽどの地理オタクだけだからね」

炎魔「では、その異界とはどんな場所なのか分かりますか?」

隊員「>>下1」

隊員「見た目はあまり変わらないが、一歩歩けば百歩先に進んでたり、一時間たったと思っても一分しか時間が過ぎてなかったりする」

男「迷い込んだら終わりか……?」

隊員「かもね。生還した人がいるから言い伝えがあるけれど、逆に言えば、その生還者以外は消えたってことだし」


彼は笑って言う
マニアには、得意分野の話ともなれば過激になるものと、彼のようにいやに淡々となるものがいる

本日はここまでです
ありがとうございました

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「あの、まったく関係ない質問なんですけど」

隊員「うん?」

中華「僕、料理人なんですよ。極北ではみなさん、なにを食べているんですか?」


隊員の男性は、ゴミ箱を指した
日持ちする乾燥肉が入っている


隊員「持ってきた保存食を食べることが多いねぇ……でも、ここで食べ物を獲得することもあるよ」

中華「へぇ、なにをとるんですか?」

隊員「>>下1」

隊員「海を泳ぐ鳥かな」

氷魔「……ペンギンでしょうか……」

隊員「あぁ……そう思うよね。実は違うんだ」


基地にある黒板に、
彼は魚と鳥の中間とも呼べる存在を描き出した
奇妙なことに、爬虫類らしさはまったくなかった


やる気「なんすか、その生き物」

隊員「『シガイチョウ』だね。死んでるんじゃないかと思うほど痩せてるからみんなそう呼んでる」

ぶりっ子「可食部なさそ~」

隊員「確かに量はないけど、栄養は詰まってる。消化がゆっくりで、腹の中にあるものによっては、化学反応でちょっとおいしくなってたりするよ」


一行はそうした説明を受け、隊員に礼を言ってから、
極北のさらに北へ進まんとした
しかし、外に出るともう夕方だった


怪盗「寝床探さないとまずいよ!」

狙撃少女「そもそも、宿なんてあるのでしょうか……?」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「すみません」


男はまたも近くを歩いている人間に声をかけた


女性「はい?」

中華「僕たち、どこか泊まれる場所を探しているんです。極北に来るのは初めてで……」

女性「あぁ……>>下1」

女性「巨大なかまくら式の宿屋ならあるよ」


彼女はやや遠くにある、大きな建造物を指した
確かにかまくらの形をしている


氷魔「……あれ……宿屋だったんですね……」

やる気「雰囲気があっていいじゃないっすか!」

ぶりっ子「ってことは、あれ全部雪で出来てるんですかぁ!?」

女性「そうだね。溶けないもん」

一行は女性にも感謝を告げ、
宿屋に向かって氷と雪の道を歩き始めた


炎魔「むむむ……むむ……」

怪盗「なにしてるんですか?」

炎魔「精神統一です。宿でもし私の心が不意に昂ったら、かまくらが溶けちゃうかもしれないので……」

狙撃少女「確かにそうですね。でも、炎魔さんって精神統一とかしても興奮するイメージがありますよ」

炎魔「そうですか?じゃあ、面倒ですし自然体で行きますか!」

本日はここまでです
ありがとうございました

宿に着くと、そこが巨大なドームの中にくつろぐスペースや睡眠用のスペースがあるという奇妙な形態の宿であることが分かった


看板娘「まさか、ご宿泊ですか!?」


一行が入ると、ファッショナブルなもこもこの防寒具を身に付けた看板娘が現れた


男「そのまさかだけど、なんかまずいかな?」

看板娘「いえ、そういうことではなく……珍しいことに、本日はもう一組お客様が来ていて……たまに一組宿泊される程度なので、珍しくて」

中華「そうなんだ。どんな人たちなんだい?」

看板娘「>>下1」

看板娘「それが明らかに大人の保護者のいない子供達の集団で……」

氷魔「……え……それはまずくないですか……」

やる気「そっすね、なんか泊められる制度とかあるんすか?」

看板娘「相場の十倍のお金を出されたうえに、場所が場所だけに野宿させる訳にもいかないので断りきれずに……」


看板娘は眉をへにゃりと曲げてやるせなさを醸している


ぶりっ子「えぇ……?」

怪盗「不思議ですね……私たちは今日の船で大陸から来ましたが、子供は乗ってませんでしたよ?」

看板娘「そうなんですか!?」

狙撃少女「まず間違いなく、極北から来ているようですね」

炎魔「でも、たくさんお金出したんでしょ?ってことは魔物とかじゃない可能性が高いよね」

男「なんか衝撃与えるとかして、お金が実は雪玉でした……とかじゃなければ、まぁそうなるな」

中華「……さっき調査の隊員が話してたことが引っ掛かるなぁ。異界と関係があるのかも?」

本日はここまでです
ありがとうございました

耳をすませば、
かまくらの奥から子供たちの声が聞こえてくる


看板娘「私どもとしても、お客様を疑いたくはないのですが……」

氷魔「……えぇ……少なくとも……あなたがたから彼らに干渉するのは好ましくありませんね……」

やる気「そういう訳で、俺っちらが調べてやるっすよ」

看板娘「ありがとうございます!」


そして、一行はこれからどうするかの作戦会議を始めた


>>下1……これからの対応
1.子供たちに突撃して話を聞く
2.払われたお金の真贋を確認する
3.一旦外に出て極北の人々に聞き込みをする
4.自由安価

炎魔「じゃあ行きましょう!」

ぶりっ子「ちょっとぉ!?」


炎魔は迷うことなく宿の奥へと飛んでいった


怪盗「ど……どうします?」

男「……もう行くしかなくね?行くべ」

狙撃少女「あ……はい」

炎魔を追いかけていくと、
二人の子供と戯れているのが見えた
『子供の集団』と看板娘は言っていたため、
そこにいるのが全員ではないと考えられる


少女「そりゃっ!」

炎魔「はーっはっはっは!甘い甘い!」

少年「わー!すごーい!」


少女が次々と投げつける雪玉を、
飛行しつつ回転しながら華麗に避けている

本日はここまでです
ありがとうございました

中華「早速楽しんでる……」

氷魔「……子供の相手は……得意そうですもんね……」


炎魔は空中で大きく体を捻ると、そのまま着地した


少女「チャンス!」

炎魔「いよっ……捕まえましたー!」


目ざとく投げられた雪玉をサイドステップで躱し、
そのまま少女の後ろに回り込んで抱きすくめる


少女「ぐえー……」

少年「足も速いんだね!」

やる気「いやーお見事っすね」

炎魔「あっ、みなさん来たんですね」

少女「友達?」

炎魔「そうだよ」

少年「よろしくおねがいします……」


少年は控えめなタイプらしく、
恐る恐る挨拶をしている


ぶりっ子「よくできた子ですねぇ」

怪盗「みんなはどこから来たの?」

少女「>>下1」

本日はここまでです
ありがとうございました

少女「私たち極東と呼ばれる地域から来たの」

狙撃少女「極東……?そんな所あるんですね」

少女「近所の古寺の近くにある洞窟で皆で肝試しをしていたら気がついたらここにいたの」

男「えぇっ!?なんてこった!」

少女「もう寒くて寒くて……家もどこか分からないし、困っちゃった」

中華「ど……どうしよう?何者なのかはのく分かったけど」

氷魔「……このことは……報告すべきですね……」


一旦少年少女に別れを告げ、
あっという間に看板娘の所まで出戻りした


やる気「とりあえず、一番重要なことは分かったっす」

看板娘「そうなんですか!?」

やる気「どうやらあの子ら、遠くから瞬間移動的な方法ですっ飛ばされてきちゃったらしいっす」

看板娘「よりにもよって、極北までですか……」

ぶりっ子「困りましたよねぇ」

看板娘「しかし、なにか企みがあるわけではなさそうですね。そこは安心です」

炎魔「はい!一緒に遊んだこの私が保証します!」


炎魔は胸を叩いて鼻息を荒くしている

本日はここまでです
ありがとうございました

報告を終える頃、
出掛けていた宿屋の主人が帰宅してきた


主人「……ん?今日は二組目も来たのか」

看板娘「それより……あの子供たちの正体が分かったんです」

主人「そうか、なんだって?」

怪盗「どうも、テレポートしてきちゃったらしいですよ?極東っていうとこから……極東ってどういうとこか知ってますか?」

主人「>>下1」

主人「自然と調和した独特の文化な地域というぐらいしか知らないな」

狙撃少女「へぇ……そういう感じなんですね」

男「だが、あいつらをどうするかという問題は残ったままなんだよな……」

主人「気にすんな、うちで面倒見るさ。金はかなり貰ったし、次の定期便が来るまでは預かってやらんとな」

中華「太っ腹だね」

主人「どうせ客なんぞほとんど来ねぇんだ、話し相手が増えて得したぜ」

そう言って主人は裏手に去っていった
一行も自分たちが泊まる巨大かまくらの一角に集まり、寛ぎはじめた


氷魔「……落ち着きますね……かまくらは……」

やる気「雪の中とは思えないほど暖かいっすね」


遠くから響く子供の笑い声を聞きながら、
雪の上でただリラックスする時間は、
童心を思い出させてくれるだろう

すみません寝落ちしました


中華「しまった、ここじゃ料理できない」

ぶりっ子「ま、じきに夕飯も運ばれてきますよぉ」

怪盗「かまくらが溶けたら終わりですからね」


まだ夕食までは時間がありそうだ


>>下1……なにをする?
1.中華と話す
2.氷魔と話す
3.やる気と話す
4.ぶりっ子と話す
5.怪盗と話す
6.狙撃少女と話す
7.炎魔と話す
8.凍てつく波動の魔導書を読む(誰が読むかも)
9.子供たちに会いに行く
10.自由安価

男は子供たちの様子でも見に行こうかと考え、
巨大なかまくらの中を歩き出した


男「……?」


しばらくすると、楽器の音が聞こえてきた
これがなんなのか男は知っていた
それは、篠笛の音色なのだ


篠笛少年「……ふぅ」


それを吹いていた少年の元に辿り着くころ、
丁度彼は演奏に区切りをつけた

男「……篠笛吹ける子供なんて、初めて見たな」

篠笛少年「そうですか?」


謙遜の態度ではない
彼の知り合いにも篠笛が吹ける者がいるのだろう


男「そうとも。しかしなぜ一人なんだ?」

篠笛少年「一人も好きなので。……それに、ここはよく音が響きます。楽器をやるにはいい場所ですから」

男「確かにそうだな。……俺もなんか持ってりゃよかったなぁ」

本日はここまでです
ありがとうございました

篠笛少年「歌ってはいかがですか?」

男「なんか恥ずかしいからやめとくわ」

篠笛少年「そうですか……」


少し残念そうな少年を尻目に、かまくらを歩く
かまくらの中にいくつものかまくらがあり、
それらを巡っていくだけでも楽しい


少女「っ!」

男「え……?」


遠くに一人の女の子が見えたかと思えば、
こちらに向かって突如走ってきた
魔物ではないので、
臨戦態勢をとるべきか男は迷っている
そうしているうちに、少女は走りながら口を開いた


少女「>>下1」

少女「向こうににゃんこの大群が!」

男「へっ!?」


そう言いながら彼女は僕の隣を過ぎ去っていった
しかし、目の前には一面真っ白な雪があるばかりで、
猫などいるようには見えなかった


???「にゃぁぁぁ……」


だが、ここで男はそれに気付いた
景色が揺れているように突如見え出したのだが、
その原因は雪と見紛うほど白い猫の大群であった

本日はここまでです
ありがとうございました

男「おわぁぁぁーっ!!」


そして、彼はもこもこの雪崩に潰された
一直線に走る猫の群れは、彼を引き倒していったのだ


少女「ふぅ」


先ほど隣を過ぎていった少女がどこからか現れる
男は全身の雪と毛を払い落として、
どうにか立ち上がった

男「いやぁ、ひどい目にあった。無事かい?」

少女「ええ、私は平気です」


彼女は猫の大群からどのようにしてか逃れたらしく、
まるでさっきと変わらない状態だった


男「あの猫、なに?」

少女「>>下1」

少女「分からない」

男「そうか……」

少女「突然雪の中から次々出てきたの」

男「ふぅん……だが、面白いものを見たな」


猫が去っていった方角を見て、
男はしみじみとそう感じ入った


少女「真っ白で綺麗だったから、一匹や二匹だったら欲しかったなぁ」

男「猫派?」

本日はここまでです
ありがとうございました

少女「狸派よ」

男「狸……そういえば、直接見たことはないな」

少女「この辺りっていないの?」

男「確か……極東から来たんだっけ?多分極東とかその近くにしかいないんじゃない?」

少女「ふーん、そういえば、異国では犬派と猫派があるって聞いたわね」

男「じゃあ、そっちじゃ違うの?」

少女「ええ、極東じゃ狸派と狐派が主よ」


確かに対立的なイメージのある動物だ、と男は納得した
だが、それらは家畜化された動物ではない


男「飼ってるの?」

少女「うーん、普通の狸や狐は飼われてないわ」

男「あぁ、やっぱりそうなんだ」

少女「でもアレよ?化け狸とか化け狐はよく飼われてるわ。まぁ、庶民はほとんど飼ってないけれど」

奇妙な極東文化の話を聞いてから、
男は自分たちのかまくらに帰った


中華「ご飯届いたよ」

男「おっ、マジか。食おう食おう」


雪の上に堂々と置かれた木製のテーブルに料理が並んでいる


氷魔「……魚が多いのは……流石といったところでしょうか……」

やる気「温かそうな汁物もあるっすよ!こりゃ嬉しいっすね!」

本日はここまでです
ありがとうございました

肉の出汁が効いたワイルドなスープを啜り、
男は自分の考えを口にした


男「子供たちはなんらかの転送機構でこっちに来たっぽいが……送り返せる機構もあるんじゃないか?」

ぶりっ子「あるとは言い切れないですけどねぇ」

男「そうだな。……俺としては、そいつを探し出して、さっさと子供たちを帰してやりたい」

怪盗「むしろ、そうしないとどうなるか分かったもんじゃないですしね」

男「じゃあ、飯が終わり次第色々聞きに行こう」


一行は食事を通じてゆっくりと体を温め、
それから子供たちの所へ向かった
子供たちは丁度集まっており、
男たちがやってきたのに反応して、
代表らしき子供が一人歩み出てきた


代表少年「なにか用ですか」

狙撃少女「私たちは、みんなを極東へどうにかして返したいと考えています」

その発言に、子供たちはどよめいた
特有の落ち着きのなさが発露している


男「そこで……まずは君たちがどのようにしてここまで転送されてきたのかを知りたい」

代表少年「なるほど……」

男「直接送り返す方法があれば楽なんだが、君たちが飛ばされてきた極北の地点に……なにか不審なものはなかったか?」

代表少年「>>下1」

代表少年「ドアノブがいっぱいあった」

中華「えぇっ!?」

代表少年「うちらの住んどる場所にドアノブなんてあらんし……物の怪の類いかと思ってひたすら逃げたんよ」


過程はやや違うが、結論が合っていた
そのドアノブは物の怪とも呼べる存在なのだ


氷魔「……禁域を経由して……ここへ来たのかもしれませんね……」

やる気「ほぼ確定っすね。まぁ、ドアノブだけ出てる可能性もなくはないっすが」

すみません寝落ちしました


それからまた一行は作戦会議を始めるはめになった


ぶりっ子「ど、どうしますぅ?」

怪盗「帰したいって言いましたけど……禁域は私たちでも安全に動けるとは言い難いですね」

炎魔「意外とどうにかなるんじゃない?」

狙撃少女「そうかもしれませんが……慎重になるべきでしょう」

男「そうだな……」


>>下1……一行の決断
1.禁域とおぼしき場所の探索をして子供たちを素早く帰還させる
2.別の方法を考える
3.自由安価

中華「いやぁ、どうしようね?」

男「……俺たちと子供たちだけで物事を解決するにも限界がある」

氷魔「……ここは……やはり諦めますか……?」


そう聞かれた男の顔は、少しも曇っていなかった


男「いや、極北の環境に強い戦士を探そう。そうすれば少しでも安全に探索ができる」

やる気「なるほど……いればいい感じっすね」

本日はここまでです
ありがとうございました

それから男は、宿屋の主人を訪ねた


主人「ん……どうされました?」

男「実は、人を探す必要ができまして」

主人「ははぁ、そうですか。とりあえず上がってくださいな」


主人は宿のエントランスにある従業員用の扉を開き、
その奥にある部屋に男を招き入れた

そこはかまくらではなく、普通の部屋だった


男「普通の部屋もあるんですね」

主人「でなければ、もしかまくらが溶けてしまったら、私どもの家までなくなってしまいますからね」

男「……それで、いきなり本題なのですが」

主人「はい」

男「極北の探索に慣れている戦士……ご存知ありませんか?俺たちはそうした人に協力を仰ぎたい」

主人「>>下1」

主人「それならば「境界」の変動を監視しているあの男ですな」

男「心当たりがあるんですか?」

主人「ええ、探査のために多くの人が極北に来ておりますが……彼は仕事柄、奥地に踏み込むことも少なくありません」


それなら頼れそうだ、と男は思った
だが、境界とはなんなのかが気になった


男「境界ってなんですか?」

主人「この世界はある程度流動的だと彼は言っていました。極北と極南の境界も、いつ観測するかによって位置が違うそうです」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「へぇ、そうなんですね」

主人「彼は確か、探査基地の端に小屋を立てて一人で暮らしていますよ」

男「そうですか、では明日訪ねてみます」


男は主人に礼を言って、自分たちのかまくらに戻った


ぶりっ子「どうでしたぁ?」

男「訪ねるべき相手は分かった。明日言ってみて、反応がよければ子供たちを改めて誘おう」

それから一行は眠ることにした
かまくらの中は温かく、
極北とは思えないほど暖かかった
どこからか差し込んだ月光が、
かまくらの雪に反射して薄明かりの中で眠るのだ


~翌日・陽週火曜日~


怪盗「んぉ……」

狙撃少女「あの……寝相どうなってるんですか……?」

ベッドがなく、
敷き布団で眠るタイプの宿だったため、
寝相の悪いものはいつにもまして凄まじい体勢になっていた


男「……やば」


怪盗は寝相が悪く、枕に片足を、
足のあるはずの場所に頭を置き、
もう片足を狙撃少女のベッドに突っ込んでいた


怪盗「うん……?」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗はばつが悪そうに目覚める


中華「……なんか、もっとヤバいやついるよ?」

氷魔「……え……?……どこの布団にもいませんが……」

中華「違う違う。あそこだよ」


彼の指差す先には、
空中で全身をフィギュアスケートのようにダイナミックに捻りながら空中で眠る炎魔がいた


やる気「……寝袋かなんかで拘束しないと、野宿しただけで行方不明になりそうっすね」

朝っぱらから大声を出すわけにもいかず、
炎魔をどうにか起こすのにはみな苦労した


ぶりっ子「ほら、行きますよ」

炎魔「あぁい……」

怪盗「揶揄され損でしたね、私」


一旦チェックアウトして、外れの小屋を目指す
子供たちについての調査代として、
宿泊代は無料にしてもらえた

基地の外周に沿って歩いていると、
遠くに小屋が見えた
いくら小屋といっても、
極寒の気候ではそれなりの小綺麗さがなければまともに住めはしないと一行は考えていた


狙撃少女「本当に住んでるんですかね、人」


その小屋は小さくボロボロで、
物置と言われたら信じてしまいそうなほどだった

本日はここまでです
ありがとうございました

男「誰かいますかー?」


外から小屋に呼び掛けても返答はない
扉をノックしても、反応はない
むしろ、鍵もかかっていないのかノックで扉が開いてしまった


極北戦士「なにか用か?」


どうやらいつの間にか一行の後ろにいたようで、
話しかけてくる
恐らく出掛けていたのだろう
みな焦って振り向く


>>下1……極北戦士の外見

そこにいたのは、まさしく雄大なる極北を象徴するかのような巨体
純白の体毛に全身を覆った彼は、
シロクマの獣人であった


中華「大きい……!」

氷魔「……実は私たち……あなたに折り入って頼みがございまして……」

極北戦士「そうか。とりあえず上がっていけ……と言いたいが、人間にはこの小屋では外と変わらんな……」

本日はここまでです
ありがとうございました

仕方ないので、
一時的に近くの建物に入って話をすることにした
調査で来ている人の迷惑にならないよう、
注意しなければならない


ぶりっ子「実はぁ……禁域、または禁域の装置によって極北に子供たちが十人転送されてきちゃってるんですよぉ」

極北戦士「なんと……それは問題だな」

怪盗「そこで、その地点を調査して……どうにか子供たちを返す方法を見つけたいのです」

狙撃少女「ですが……それには子供を連れていく必要があります。私たちも極北の気候や土地には不慣れで……」

男「それだけではなく、危険な禁域と関わる可能性もある。極北について十分な知識があり、強い戦士を俺たちは探していたんだ」


男はまっすぐ極北戦士を見つめる


中華「……そういう訳なんですが、護衛を受けていただけますか?もちろん、報酬は出します」

極北戦士「>>下1」

極北戦士「こんなところに居ては子供達にどんな危険があるか分からない。直ぐにでも協力しよう」

氷魔「……ありがとうございます……!」

やる気「じゃあ、誰か一人すぐに連れてくるっすよ!」


彼は急いで宿へと戻っていく
五分ほど置いて、二人で戻ってきた
代表の子供がその背中に負われている


炎魔「ちゃちゃっと探して、無事に帰しちゃいましょう!」

本日はここまでです
ありがとうございました

一行は準備を整え、調査隊のキャンプから出て本格的に極北の地に足を踏み入れた


代表少年「この前とはまるで違って見える……」


生きるか死ぬかの状況で見る世界と、
最低限の余裕がある状態でみる世界は違うものだ
極地ともなれば、
その違いはより感覚的に現れるだろう


極北戦士「……そうだな。時にひどく残酷に見えることもあるが……基本的には美しいとすら思える」

銀世界と形容すべきものはみな見てきたが、
その光景は銀ほど鈍くはなかった
純白の鏡のような大地が茫漠としているのだ


ぶりっ子「安全なら観光にでも来たい場所ですよ、本当に……」

極北戦士「計画としてはあるらしい。調査隊の資金も無限ではないからな」

怪盗「危険じゃないんですか?」

極北戦士「安全とは言いがたいな……だが、この土地では生息できる魔物もそう多くはない。対策も立てやすいだろう」

代表少年の微かな記憶と、
それを現実的なものに手繰り寄せる極北戦士の土地勘によって、極寒の大地においても少ない苦労で目的地を目指すことができている


狙撃少女「火魔法で暖を取りたいですね……」

極北戦士「洞穴でやるべきだな。寒いのは魔獣どもも同じだから、感知力に優れた魔獣を誘き寄せてしまう」

男「どうしてもヤバそうだったら極北戦士さんに抱えてもらおうか。非常に暖かそうだ」

極北戦士「本当に緊急の時ならばやぶさかでもない……基本的には、不意の事態に対応するために身軽でいたいがな」

本日はここまでです
ありがとうございました

半刻ほど歩くと、代表少年が声を上げた


代表少年「多分、この辺りです」

中華「結構登ったね……」


舗装はおろか整備もされていない大自然なので起伏が激しいが、ほとんど下ることなく上に登っていった結果としてそこに辿り着いた


極北戦士「ふむ……アレか」


彼はある一点を指差した
そこには、>>下1があった

そこには光る石柱があった


氷魔「……なんでしょう……あれ……」

やる気「なんか知ってるっすか?」

極北戦士「分からないな」


鼓動のように、
強く光ったり淡く光ったりを繰り返すそれは、
幻想的な極北の風景といやにマッチしていた

ぶりっ子「手がかりであることは間違いなさそうですがぁ……」


ただ立ち尽くしていると、炎魔がその間を抜けた
そして、誰かが声をかける間もなくそれに触れた


炎魔「こういうのは触れてみたりすると……おおっ!?」


一際強くそのモノリスが明滅すると、
炎魔の姿はそこから消え失せてしまった

すみません寝落ちしました


怪盗「え?」

狙撃少女「消えちゃいましたね……?」

男「『おおっ!?』じゃないぞあのバカ!くそっ、どうせこれが転移装置だ。行くしかなくなった!」


男も迷うことなく石柱へ手をつける


極北戦士「ま、待て!君にもリスクがあるだろうっ!」


制止は既に遅く、男も光の点滅とともに瞬間移動した


>>下1……移動先

男「痛って!」


転移後、彼は二メートル程の高さから落下した
振り返れば鈍く光る石柱はまだあり、
近くで炎魔も警戒をしている


炎魔「あ、来たんですね」

男「そりゃそうなるだろ。……あれ?ここ、まさか」

炎魔「そうなんですよ……ここ、本の街なんです」

そこは、市長のオフィスにほど近い公園だった
モノリスが出現したためか、
即席のフェンスで封鎖されている


男「……よし、市長に会ってくる」

炎魔「どうしてですか?」

男「どういう訳か、こいつは極北と繋がってるんだ。すぐ故郷には帰してやれなくても、市長に子供たちの面倒を見てもらえるんじゃないかと思ってな」

炎魔「じゃあ、今すぐ戻ってみなさんに伝えますね!」

男「いや、待つんだ!」

男は炎魔の服の首元を後ろから掴み、
どうにか手綱を握る


炎魔「おっと!」

男「極北からこっちに来れるのは間違いないが、こっちから極北に行けるかは分からない。もし仲間の誰かが石柱で来た場合にそのことを伝える役割を頼みたい」

炎魔「あ、確かにそうですね」

男「ああ、一応連絡は取れるがな」


男はバッグから一対になる巻物を取り出した


炎魔「持ち合わせがいいですね」

男「炎魔が転移したから急いで片方用意したんだ。本当に焦らせる」

炎魔「す、すみません……」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「ま、いいさ……そういう訳で話つけてくる」

炎魔「行ってらっしゃーい!」


男はフェンスを跳び越え、街中へ駆け出した
そして十分後、市長のオフィスまでやって来た


男「市長ー?いますかー?」

市長「なにかご用でしょうか……!?」

市長はこちらを見て面食らっている
その姿はいつもと違って完全にホログラムだった


男「今、そこの公園に石柱ありますよね。あれ転移装置みたいで……極北から飛ばされて来たんですよ」

市長「なんと、そうでしたか……」

男「……そもそも、あんなのに触れなきゃいけなくなる事情がありまして……」

それから男は子供たちについて説明をした


市長「中々興味深い事象ですね」

男「ああ……それで、もしよければ子供たちを預かって欲しいんだ」

市長「……構いませんが、ここは託児所ではありませんよ?」

男「分かっています、だから用事が終わったらすぐに戻ってきます」

市長「……そう言うとは思っていましたよ」


彼女はため息をつきながらそう言ってみせた

本日はここまでです
ありがとうございました

男が巻物に連絡事項を書くと、
了承する旨が書き込まれた


男「じゃ、一回石柱見てきます」

市長「はい」市長「行ってらっしゃいませ」


男が部屋から飛び出すと、
そこにホログラムではない市長もいて、
彼女も別れの言葉を贈ってきた

公園に戻ると、代表少年と炎魔がいた


男「お、来てたか」

代表少年「ここ、どこなんですか?」

男「極北のちょっと南だ」

炎魔「それで、交渉は……」

男「引き受けてくれたよ。みんな、市長が住まわしてくれるそうだ」

本日はここまでです
ありがとうございました

しばらく待っていると、子供たちは全員やってきた
極北戦士は、仕事もあるので一旦帰るように勧めた


やる気「そういう訳で、子供たちをよろしくお願いするっす」

市長「承りました。移住者を想定したデータも取れますしね……」

平成少女「こんなすぐ会うことになるとは思ってませんでしたよ」

ぶりっ子「ほんとびっくりですよねぇ」

それから一行は、再び石柱の前までやってきた


怪盗「ここから無事に極北に戻れればいいんですけどね」

狙撃少女「知らない場所に飛ばされちゃったらどうします?」

男「……人生、なるようになるさ」

炎魔「非対称な転移装置なんて作らないと思いますけどね~」


意を決して、取り囲んだモノリスに皆で触れる
するとやはりそれは明滅し、人々を転送していく


>>下1……どこに転移させられた?

風鳴りと寒気が身を責める
男たちは、元の極北の地へと戻ってきていた


中華「おっ、戻ってこれたね」

氷魔「……助かりましたね……」

やる気「これで、子供たちのことは一旦気にせずに探索できそうっすね」

ぶりっ子「そうですねぇ、この石柱が対称ってことは、極東に行ける転移装置もありそうですしねぇ」

本日はここまでです
ありがとうございました

怪盗「ええっと……ここ、それなりの標高ですよね?」

狙撃少女「そうですね、極北でもかなり寒い部類の場所だと思いますよ」

男「もっと登ってみるか」

怪盗「そう!それが言いたかったの!」


寒いというのに、怪盗は元気だった
果たして本当に冷え性なのか、と男は思った


中華「危険だけど、望みがありそうだ」

一行は恐る恐る登山を再開した
いつ吹雪に襲われてもいいように、
洞穴を一つ一つ数えながら、
確実に雪と氷を踏みしめていく


氷魔「……私が寒いと思ったのは……人生で三度目です……」

やる気「あ、氷魔でも流石に寒いんすね」

氷魔「……私も……人の子なので……」

炎魔「暖めます?」

ぶりっ子「炎魔ちゃあぁぁん……こっちの耐性のない人たちを暖めてくださぁい……」

炎魔の炎は不思議なもので、
それがなにかを燃やして灰にしてしまうことはなくとも、温かみだけは確かにあった


怪盗「なんか……霧が出てきましたよ?」

狙撃少女「困りましたね……方向感覚まで奪われるのはまずいです」

男「……まぁ、壊れてるけど俺たちにはコンパスがある。地磁気がイカれてなければ帰れるさ」

中華「食材も見当たらないなぁ」

本日はここまでです
ありがとうございました

相変わらず中華は食材を探している
よく謎の動物や茸を採集しているが、
男たちはそれで腹を壊したことはない


氷魔「……霧を抜けます……!」


怯むことなく進めば、それを抜けることができた
恐れて動きを緩めていれば、
寒さと恐怖に蝕まれていただろう


やる気「ここは……!」

そこには息を呑むほどの絶景が広がっていた
一行が霧だと思っていたものは雲の層であり、
それを抜けた天空の世界には、
果てなく澄んだ大空のみが雪山から見えていた


炎魔「なんて綺麗!」

ぶりっ子「こりゃいい思い出になりますねぇ!生きて帰れればですけどぉ」

怪盗「……あれ、山の上のほうになにかあるよ?」

狙撃少女「確認しましょう」


狙撃少女はスコープを覗き、
山の上にあるそれを視認した


>>下1……なにがあった?

男「どうだ?」

狙撃少女「塔、ですね……いえ、それだけじゃありません」

中華「こんな所に塔?しかもそれだけじゃないの!?」

狙撃少女「火の鳥が……煌々と……燃え盛っています」

氷魔「……そ……それは……まさか……」

やる気「ついに辿り着いちまったっすね、フェニックスの元に……!」

本日はここまでです
ありがとうございました

ぶりっ子「え……行きます……?」

怪盗「行くしかないでしょう!」

狙撃少女「この目標を果たせば、とりあえず積んであるタスクに集中できますしね」

ぶりっ子「わ……分かりましたよぉ……怖いなぁ……」


一行はさらに斜面を登り続け、
天を衝くそれの入り口までやってきた
ごうごうと不死鳥の鳴き声が響き渡る

青銅製の門は重く冷えていて、
数人がかりで押して開いた


怪盗「さて……やっぱり、一筋縄ではいかなそうですね」

狙撃少女「螺旋階段にでもなっていれば楽だったのですが」


中は入り組んでおり、
まさにダンジョンの様相を呈している


炎魔「燃えてきましたね」

本日はここまでです
ありがとうございました

男「というか、空間おかしいな」


外から見るとひどく劣化した塔だったが、
中に入れば瑕瑾は見られない
また、広さも外見から予想されるそれを逸脱している


中華「なにが起きてもおかしくないね」


>>下1コンマ……探索判定
1~20……階段発見
21~40……魔物出現
51~60……極光カウンター+1
61~80……トレジャー!
それ以上……!?

丁度抜けてましたが極光カウンターのほうでした


探索を始めると、
薄暗いダンジョンに突如オーロラがかかった


氷魔「……どういうことですか……これは……?」

やる気「綺麗っすけど……ここ屋内っすよね?」

???「ようこそ、不死鳥の尖塔へ」

そして、オーロラから人型の存在が現れた
全身に外套を纏い、仮面を被っており、
その性別や年齢が一切分からない


ぶりっ子「あ……あなたは?」

極光「名に頓着はしない。一意に定めたければ極光と呼ぶといい」

怪盗「敵ですか?それとも……味方?」

極光「少なくとも味方ではない。今はね」

本日はここまでです
ありがとうございました

そう言ってその存在は空間から消滅した
どこかから流れてきたオーロラも消え去り、
寒々しい暗闇に戻ってしまった


狙撃少女「なんだったんでしょうか」

男「なぜ宣言したのかは分からないが、味方じゃないことは明言された。……気をつけよう」


一行は気を引き締めて探索に戻った



>>下1コンマ……探索判定
1~30……階段発見
31~50……魔物出現
51~60……極光カウンター+1
61~80……トレジャー!
それ以上……!?

???「ボゴッ……ボゴッ……!」


ひたすら歩き続けていると、
水中で溺れるような音を漏らしながら、
鈍い光を放つ『ドラゴン』が現れた


中華「な……なんだ!?」


それがドラゴンであると思ってしまったのがなぜなのか、男には分からなかった
ゲル状の肉体を透明で伸縮性のある皮膜が覆っており、そこら中が膨張したり縮小したりしている

氷魔「……皮膜は竜のようですが……原型はありませんね……」

ゲルドラゴン「ジュゴォォォッ!!!」


四肢をのたくらせ、右翼と腹で歩き、
尻尾を振り回して叫ぶ
その口からは淡く光るゲル状の魔力が漏れ出している


やる気「気持ち悪いっす!なんか……これを同じ生物として認めたくないっす!」

本日はここまでです
ありがとうございました

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・男
【筋力】124【HP】68【素早さ】200【MP】114【顔面】30(神の力)【歌唱力】74【料理】111【中華料理】97【画力】26【加護】13
【刀術】・閃火斬(火属性武器でのダメージ+6、それ以外で+3)
『平凡人』(戦闘能力以外最低保証50)
『魔法の才能』(魔法習得難度易化)
『多芸』(感覚系ステータス+20)
『万能通訳』、『降神術』(神の依り代に適性)
『マグネリレーション』
武器:レジストソード(攻撃力3.5、魔法生物特効)
防具:ミレニアムアーマー(ダメージを1/3)
習得魔法:上級火魔法 上級氷魔法 闇魔法 上級風魔法 回復魔法 光魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法 耳鼻咽喉キャンセラレーション 海割りの奇跡
所持:麻薬(1回分)、"人は空を羽ばたけるのか?"鳥人間強制改造本、ドラゴンキラー(ドラゴン系にダメージ増)、上級氷魔導書、13時間時計、魔王のデモウイルス、サファイアの原石、厨二っぽい太刀(攻撃翌力3、炎属性)、ベヒーモスの角剣
(経験値10/40……レベル31)

・中華
【筋力】133【素早さ】191【HP】43【MP】75【中華料理】112【顔面】76【加護】10【運命力】29【求心力】33
『救世主の資格』(【運命力】と【求心力】追加)
『魔王の資格』『神格』
『器用』(回数で壊れるアイテムを一回多く使え、罠や精密機械などに関するコンマ判定にボーナスが付く)
武器:デモンズスピア(攻撃力4)
防具:ミレニアムアーマー(ダメージ1/3)
装飾品:銀の腕輪(筋力+5)
習得魔法:上級火魔法 上級水魔法 上級光魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法 回復魔法
所持:危険な国三選、13時間時計
(経験値22/38……レベル29)

・氷魔
【筋力】162【HP】??+36【MP】177【素早さ】151【料理】37【歌唱力】27【ダンス】1【顔面】37【加護】20
『消費MP1/2』、『ポリシーブレイク』
『究極氷魔法』消費【MP】:240(120)
『メルティング』、『氷魔法上位混合』
武器:ホークワンド(魔法ダメージ+5)
防具:ミスローブ(ダメージ半減)
装飾品:冷却懐中時計(氷ダメージ+5)
習得魔法:極大氷魔法 氷空魔法 超上級水魔法 上級風魔法 超上級回復魔法 マナ電流互換改 着火魔法 照明魔法 洗濯魔法 水質検査魔法
所持:異性にモテる為の本(所持継続一日以上で【顔面】+5) 雷の魔導書、13時間時計
(経験値12/47……レベル38)

・やる気
【筋力】157【HP】57【MP】129 【素早さ】174【顔面】36【加護】20
『[ピーーー]気』(殺せると思った相手へのダメージ二段階上昇)
『魔王の資格(80%)』(不完全ながら能力値上昇、魔物の言語が分かる)
武器:スパイラルランス(攻撃翌力6)
防具:ミレニアムアーマー(ダメージ1/3)
習得魔法:超上級水魔法 土魔法 回復魔法 着火魔法 照明魔法 マナ電流互換改 洗濯魔法 水質検査魔法 上級闇魔法 天候操作魔法 ジャミングウェイブ 解錠魔法
所持:氷の上なら狙った場所に届くカーリングストーン爆弾
(経験値0/36……レベル27)

・ぶりっ子
【筋力】122 【HP】??+32【MP】140【素早さ】102【料理】73【歌唱力】44【ダンス】51【加護】10
【顔面】58
『誘惑』(【顔面】以下の【MP】の生物をたまに行動阻止)
『やりくり術』(アイテム値段を二割引)
『ドジっ子』(ランダム攻撃の対象から外れ、【顔面】+10)
『毒手』(攻撃を命中させた相手に永続スリップダメージ)
『従者式格闘術』(後出しでかばいダメージ上昇)
『風より速く動く術』
武器:ドラゴンキラー(攻撃翌力3)
防具:ソードブレイカー(ダメージ1/3) 緋色の法衣(炎や熱系の魔法や攻撃の無力化+魔法だった場合魔翌翌翌力吸収 )
習得魔法:上級水魔法 上級氷魔法 光魔法 回復魔法 マナ電流互換 着火魔法 照明魔法
必殺技:ぴゅん太郎
所持:化粧品(試供品)、13時間時計
(経験値30/39……レベル30)

・怪盗
【HP】??+1【筋力】120
【MP】136【素早さ】355
【歌唱力】53
『盗む』
武器:丁半槌 防具:ソードブレイカー(ダメージ1/3)
習得魔法:上級火魔法 風魔法 回復魔法
所持:アダマンタイトの曲刀、雷の力を吸収する杖
(経験値6/34……レベル25)

・狙撃少女
【筋力】122【MP】137【素早さ】??+6
武器:守人のパチンコ(攻撃力3.5、攻撃前に属性魔法を使用して属性付加可能、三発)
習得魔法:水魔法 光魔法
所持:スパークナイフ(攻撃力2.5、雷属性)アンチオールスナイパー(攻撃力8、一発)
(経験値11/39……レベル30)

・炎魔
能力値不明
『破魔の炎魔』(邪な影響から味方をかばえる)
『焼魔』(魔物系にしか効かないが、攻撃力6)
『不滅の肉体』(基本的に死なない)
武器:なし
防具:なし
(経験値0/34……レベル25)

【所持アイテム】竜毒血清、毒竜管、人造人間の子宮、金属、不思議な赤石、銀の鎖鎌、危険物の魔導書(乙種)人間サイズの蛇の胴体パーツ、邪教典、硫酸の入った瓶、筋トレメソッド本、13時間時計×3、純金小判×5 レア珍獣の生息地(本) 忘却されるまで封印した機械(本)無限に重なる葉っぱ、ホームセンター便利グッズ紹介本 回復スライム、氷スライム レインボースライム 探し物の位置を指し示すコンパス(『4回』、不良品)、牛スライム、文字を書き込んだら対になるものに文字が浮かび上がる一対の巻物、壊れたものを何でも直すレンチ、黄金の番人像、世界樹の露(三回分)、なんでも開けるドアノブ型生命体、クイックポーション、超回復ポーション、仮死薬、とろける濃厚牛乳、タンブルウィード×5、オークションカタログ、ある兄弟の話、ベヒーモスの解体肉
【ギルドの資金】72260295

戦闘開始!
怪盗の【素早さ】355
ゲルドラゴンの【素早さ】50


ぶりっ子「あの気持ち悪いのに攻撃しなきゃいけないんですかぁ!?」

怪盗「なんも盗めなさそうですし、嫌ですねぇ」

狙撃少女「まぁ、やるしかありませんね……」


狙撃少女はパチンコを引き絞り、連射する
ぶりっ子と怪盗も嫌々ながらそれに続いて攻撃する


下1コンマ下一桁×7.5……連携攻撃のダメージ

22ダメージ!ぶりっ子はレベルアップ!


ぬちょ、と嫌な音を立てて攻撃は命中した
ゲルドラゴンは怯んだようにも見えたが、
単にバランスが悪いので傾いただけのようだ


男「あんま効いてなさそうだな……」

中華「腐ってもドラゴンだしね」

氷魔「……ドラゴン……というよりゲルが本体の気もしますが……」

ゲルドラゴン「クルルルル……」

やる気「気圧されていても始まらん。どうにか倒すぞ」

中華「そうだね……!」


二人は魔王の力を解放し、
自らの獲物を構えて突貫する


男「微力ながら助太刀する!」


三人は渾身の一撃をゲルドラゴンに叩き込んだ


>>下1コンマ×2+3……連携攻撃のダメージ

49ダメージ!三人ともレベルアップ!


ゲルドラゴン「ブピィッ!」


流石に効いたようだが、まだ動けるようでもある
体の孔という孔からゲルを漏らし、
それでも生きている


ぶりっ子「なんなんですかあの生き物ぉ!」

怪盗「いちいち生理的嫌悪感を煽ってきやがりますね」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「物理的手段でうまくいかないのなら、すべきことは一つです」

氷魔「……そうですね……私の出番といった所でしょうか……」

炎魔「私も参加していいですか!?」

氷魔「……構いませんよ……では……」


二人は敵に向かって構えをとり、そして口を開く


炎魔「焼魔ッ!」

氷魔「究極氷魔法……ッ!!」


>>下1コンマ下一桁×21+10……魔法のダメージ

31ダメージ!


二人の放った魔力の奔流は凄まじいものだったが、
相反する属性の合体技であるため、
それに慣れていない二人の魔力は打ち消し合って本来の威力を発揮できなかった


ゲルドラゴン「コキィィッ……」

炎魔「あぁっ!すみませんっ!私が余計なことしなければ!」

氷魔「……お気になさらず……私も慣れていませんから……」

本日はここまでです
ありがとうございました

ゲルドラゴン「ギャギャギャギャギャ」


水音混じりの駆動音のような響きがあり、
そのおぞましい竜の口や耳から、
凄まじい勢いでゲルが射出された


男「げえっ!こっち来た!」


正体不明の液体が、岩をも砕かんばかりの威力で男に命中する


>>下1コンマ……ゲルのダメージ

ミレニアムアーマーがダメージをカット!
26ダメージ!


中華「大丈夫!?」

男「……かなり臭いし痛いが、まだやれる!」


あえてオーバーに食らい、ゴロゴロと地面にその体を擦り付けてゲルを落とした


氷魔「……あれでいて……攻撃力まであるのですか……」

やる気「……だが、奴も流石に弱ってきている」


先ほどよりも体を多く引きずっている
竜の肉体の耐久力もまた有限であり、
いずれにせよ勝利はそう遠くないだろう


ぶりっ子「もう一踏ん張りってとこですねっ!」

炎魔「実戦って、思ったより大変ですね……!」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女「とにかく撃ち込んで倒しましょう」


やや焦って狙撃少女はパチンコを構える
遠距離にいるので、
多少焦っても直接的に危機に陥ることはない


炎魔「こっちなら魔力がうまくコントロールできなくてもいけそうですね!」

狙撃少女「え、ああ、そういうことですか。いいですね……では行きますよっ!」

炎魔「焼魔っ!」


炎魔は狙撃少女の後ろに立つと、
発射寸前のパチンコの弾に魔力を込める
そして、それは真っ赤な軌跡を描いて放たれた


>>下1コンマ下一桁×11……連携攻撃のダメージ

22ダメージ!二人ともレベルアップ!


ゲルドラゴン「ベシャッ!」


反射的にゲルを飛んでくる弾にぶつけられ、
その威力は多少減衰した状態で命中した


狙撃少女「くっ……!」

男「まだやるのか、あいつ……」

本日はここまでです
ありがとうございました

やる気「もう虫の息だな」

中華「次こそとどめにしよう」


二人は再び槍を構え、その先端で敵を見据える
そして鈍重なゲルドラゴンに向かって駆け出し、
その先端を突きつける


>>下1コンマ下一桁×14.5……連携攻撃のダメージ

すみません寝落ちしました


116ダメージ!二人はレベルアップ!


奇妙な生態に翻弄され続けた一行だったが、
ついに会心の一撃を叩き込むことに成功する
竜鱗を貫き、ゲル生命体の核へとその双槍を命中させたのだ


ゲルドラゴン「プシュゥゥッ……」

氷魔「……や……やりましたね……」

萎びて溶けたそれの死体は、
まるで幻だったかのように薄くまばらに散った


ぶりっ子「いやあ、強かったですねぇ」

怪盗「ちゃんとした実戦は久しぶりだし、カンが鈍ってたかもね」

狙撃少女「そうかもしれませんね。精進しなければ……」

炎魔「みなさん強かったと思いますけどねぇ?」

戦闘が終わったので一人ずつレベルアップさせていきます

男は1レベル、中華は2レベルアップです

>>下1コンマ……男の成長
>>下2コンマ……中華料理人の成長

~男の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+3
41~60でMP+3
61~80で素早さ+3
81~90で全能力+4
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

~中華料理人の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+3
41~60でMP+2
61~80で素早さ+4
81~90で全能力+4
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

本日はここまでです
ありがとうございました

男の【MP】117

中華は一回分再抽選です
>>下1コンマ……中華料理人の成長
>>下2コンマ……中華料理人の成長

~中華料理人の成長テーブル~
01~40で全能力+6
41~60で習得『料理習熟・地』
61~80で習得『戦飯』
81~90で上記全て
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

~中華料理人の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+3
41~60でMP+2
61~80で素早さ+4
81~90で全能力+4
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

中華の【筋力】139【素早さ】197【MP】81

中華は一回分再抽選です
やる気は二レベルアップ!

~中華料理人の成長テーブル~
01~40で全能力+6
41~60で習得『料理習熟・地』
61~80で習得『戦飯』
81~90で上記全て
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

~やる気青年の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+3
41~60でMP+4
61~80で素早さ+4
81~90で全能力+5
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

すみません安価出し忘れました
>>下1……中華料理人の成長
>>下2……やる気の成長

本日はここまでです
ありがとうございました

中華は『戦飯』を習得しました
前日の食事によって戦闘にボーナスがかかるようになります

やる気の【HP】60


>>下1……やる気の成長
>>下2……ぶりっ子の成長

~やる気青年の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+3
41~60でMP+4
61~80で素早さ+4
81~90で全能力+5
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

~ぶりっ子の成長テーブル~
01~20で筋力+3
21~40でHP+2
41~60でMP+5
61~80で素早さ+4
81~90で全能力+5
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

やる気の【素早さ】178
ぶりっ子の【MP】145

成長安価だけだと物寂しいのでちょっと話進めます


男「回復したいな」

中華「僕あんまり魔法使わないから回復するよ。回復魔法っ!回復魔法っ!」

男「あー……効くわ。ありがとう」

氷魔「……こういう戦闘を繰り返したら……確実に消耗してしまいますね……」

本日はここまでです
ありがとうございました

リロールが発生しなければこれが最後のレベルアップです

>>下1コンマ……狙撃少女の成長
>>下2コンマ……炎魔の成長

~狙撃少女の成長テーブル~
01~20で筋力+5
21~40でHP+2
41~60でMP+5
61~80で素早さ+2
81~90で全能力+4
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

~炎魔の成長テーブル~
01~20で筋力+2
21~40でHP+3
41~60でMP+4
61~80で素早さ+3
81~90で全能力+4
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

炎魔の【素早さ】153

狙撃少女は次にリロールですね



やる気「しっかし、この塔にはあんな化け物ばっかりいるんすかね」

ぶりっ子「だったら最悪ですけどぉ……フェニックスはあんなに美しかったですよぉ?」

怪盗「さっきは綺麗なオーロラが出てましたもんね」

本日はここまでです
ありがとうございました

炎魔「私、もっと頑張らないと……」

狙撃少女「らしくないですね、元気はどこに行ったんですか?」

炎魔「さっき、あまりうまくいかなかったし……フェニックスにも勝ちたいし」

狙撃少女「……別に、気にしなくていいんじゃないですか?これからうまくいけばいいんですよ」

炎魔「そう、でしょうか……分かりました!」


彼女はとりあえず見かけ上は立ち直ったようだ
実際の所はまだ不安定だが、
これから次第では大丈夫である


狙撃少女の成長がリロールします

>>下1コンマ……狙撃少女の成長

~狙撃少女の成長テーブル~
01~40で全能力+6
41~60で習得『弱点の見極め』
61~80で習得『ブルズアイ』
81~90で素早さ+2
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

狙撃少女は明日、更なる高みへと昇る可能性が出てきましたね


男「……この塔、あまり寒くないな」

中華「吹雪を凌げるからじゃない?」

氷魔「……それもありますが……それだけでさなさそうです……」

やる気「外から見た感じと広さも違うっすし……多分、外の空間と完全に隔絶されてるっすね」

本日はここまでです
ありがとうございました

狙撃少女が救世主になる可能性が出てきました


>>下1コンマ……狙撃少女の成長


~狙撃少女の成長テーブル~
01~30で全能力+10
41~60で習得『弱点の見極め』『ブルズアイ』全能力+6
61~90で『救世主の資格』
それ以上またはゾロ目で何かが起こる

狙撃少女の【筋力】128【MP】143【素早さ】???+12

狙撃少女は『弱点の見極め』を習得しました
弱点のあるエネミー相手に自動でその弱点を狙うようになります

狙撃少女は『ブルズアイ』を習得しました
敵の弱点を突くか、攻撃のコンマ下一桁が『0』だったときにもう一度攻撃できるようになります(ただし、一ターンに一度のみ発動)

狙撃少女(……私は後衛なんだから、守られてるぶんは活躍しないといけない……!)


彼女は密かに闘志を燃やし、更なる成長へと繋げた


ぶりっ子「もう充分休憩しましたねぇ」

怪盗「早くいかないと日が暮れちゃうよね!」

炎魔「そうですね、敵が現れても次からはガンガンぶっ倒していきましょうっ!」


>>下1コンマ……探索判定
1~50……階段発見
51~60……極光カウンター+1
61~80……トレジャー!
それ以上……!?

本日はここまでです
ありがとうございました

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