コナン「ババア殺人事件!!!」 (16)

コナン『偶然にも、都内の老人ホームの食堂を訪れた俺たちは、無残に殺害されたババアの遺体を発見した……!』

小五郎「蘭! 警察に連絡だ!」

蘭「う、うん!」

コナン(仕出し弁当の割り箸で頸動脈を……計画的な犯行じゃないな……とすると、犯人は外部の人間とは考えられない……)

ヘルパーA「ま、まさかこんなことになるなんて……!」

ヘルパーB「あの人、よく食堂の厨房に勝手に入り込む人だよな……」

ヘルパーC「ひぇぇ……」

コナン(この中にいるはずだ……!)

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目暮「つまり、蘭くんが遺体を発見するまで、誰も被害者の異変に気付かなかったというわけか……」

高木「ええ、どうやらそのようです」

目暮「妙だな。昼休みの時間帯だったのなら、食堂にはたくさん人がいたはずだが……」

小五郎「いえ、それが警部殿。食堂にいた人はヘルパーや我々を含めて、皆テレビを観ていまして」

目暮「テレビ?」

コナン「ヒルナンデスだよ! ねっ、蘭ねえちゃん」

蘭「あそこの壁にかかってるテレビで……皆さん、死んだような目でヒルナンデスを観てました」

目暮「なるほどな。遺体の発見場所と犯行現場が一緒と考えるなら、机を挟んでテレビとは真逆の位置というわけか」

コナン(食堂にいた人たちが皆テレビに夢中になっていたとは言え、不用意に立ち上がれば俺たちが気づかないはずがない……)

コナン(つまり、この中で犯行が可能だったのは……俺たちより犯行現場側に座っていたあの三人……)

ヘルパーC「……」

ヘルパーB「これが原因で今日休日にならないかな……」

ヘルパーA「こんなことに巻き込まれて……昼休みに寝とかないと死ぬのに……」

高木「犯行時の位置関係が分かりました!」

目暮「よし。それでどうだ。犯行が可能な容疑者はしぼり込めたのか?」

高木「『ヒルナンデスが始まってから席を立った人を見ていない』という毛利さんたちの話を踏まえると……こちらの三名になります」

目暮「それでは、それぞれお話をお聞かせ願えますか」

ヘルパーA「話も何も、俺は何も知りませんよ! その子の悲鳴を聞いて、初めてババアの遺体に気付いたんですから!」

ヘルパーB「わ、私もです」

小五郎「あん? おいちょっとアンタ。どうして被害者がババアだって知ってるんだ?」

ヘルパーA「そ、それは……誰だって知ってますよ。いつも食堂の厨房に勝手に入り込むババアですから……」

目暮「つまり、ここにいる全員がババアはそういう人物だと知っているというわけですか」

ヘルパーB「よくは知りません。一方的に昔の話を何度もするので、こっちは相手にしませんね」

ヘルパーC「……」

目暮「そちらの貴方は」

ヘルパーC「はぁ……そうですね……あんまり、つーか、まあ、はぁ、知りませんけど……」

目暮「皆さんの言い方から察するに、ボケ老人だったようですな。被害者は」

ヘルパーA「はい……正直、迷惑に感じることもありましたね」

ヘルパーB「今日もお菓子を食べ終わった後、お菓子がないと暴れて……」

小五郎「まあ、ババアってのはそんなもんだからな」

コナン(お菓子……たしかに、この人たちの弁当箱の横に『イタジャガ』が置かれている……ん?)

コナン「あれれ~? ねえ、おじさん」

ヘルパーC「な、なんだい?」

コナン「どうしておじさんは、カップスープを持ってきてるの? それ、仕出しのじゃないでしょ?」

ヘルパーC「え?」

蘭「ちょ、ちょっとコナンくん! だめでしょ、お父さんたちの邪魔しちゃ」

コナン「だって変じゃない! 仕出しのお味噌汁があるのに、カップスープを飲むなんて」

ヘルパーC「な、何も変じゃないよ。仕出しの味噌汁は不味いから、いつも飲まないんだ」

ヘルパーC「業者がIHのスイッチを入れていかないから、昼休みの頃には冷めちゃってるんだよ」

コナン「へぇー……」

高木「目暮警部! 被害者の喉から、油揚げが発見されました。大量に詰まっていたようです」

高木「犯行時、被害者が悲鳴をあげなかった理由は、油揚げが喉に詰まっていたためと考えられますね」

目暮「ふむ……」

コナン(油揚げ? そういえば、味噌汁に入ってたな……)

ヘルパーC「わ、我々はやってないんだ! 昼休みは貴重な時間なのに、こんなことで失いたくない!」

ヘルパーA「そ、そうだ! 少しでも寝ておかないと……!」

目暮「まあ、落ち着いてください。まだはっきりと分かっていないことが多く……」

ヘルパーC「何が分かってないんだ! こんなもの、外部の人間に決まってる!」

高木「いや、ですけど、大量の油揚げをわざわざ外部から持ち込むなんてこと……」

ヘルパーC「わざわざ持ち込まなくても、今日の味噌汁に入ってた油揚げを使えばいいだろう!!!」

コナン「!!!」

コナン(もしかして……この人……! 待てよ、だとしたら……)

コナン(……! やっぱりそうだ……!)

コナン(おっちゃんを麻酔銃で眠らせて……!)

パシュッ

小五郎「はひぃん」ドサッ

小五郎『いいでしょう。貴重な昼休みを一刻も早く取り戻すお手伝いをしますよ』

目暮「おお! 毛利君! わかったのか! 犯人が!」

小五郎『ええ。たった今ね。ババアを殺害した犯人は……あなただ!』

ヘルパーA「!?」

ヘルパーB「!?」

ヘルパーC「!?」

小五郎『ヘルパーC!』

蘭「えっ!」

ヘルパーA「なんだって!?」

ヘルパーB「お、お前が……!」

ヘルパーC「いや、やってない! ……な、何を根拠に!」

小五郎『貴方は冷めた上に不味い仕出しの味噌汁を飲みたくないと、わざわざカップスープを用意していた』

ヘルパーC「ああそうだ! あんなもの飲んでる奴はガイジだ! それがどうした!」

小五郎『飲んでいない味噌汁の具を……どうして貴方は知っていたんですか?』

ヘルパーC「!!?」

目暮「たしかに! 飲まないと言っていたはずなのに、具に油揚げがあると知っていた……!」

小五郎『飲んでいないはずの味噌汁の具を知っていた。それは何故か』

小五郎『見たからですよ……被害者を殺害するその瞬間! 喉に油揚げを詰め込む時にね!』

ヘルパーC「ち、違う! 単に油揚げと聞いて、味噌汁を連想しただけだ!」

ヘルパーC「やってない! あんなババア! 殺す価値も無い!」

小五郎『認めませんか。いいでしょう。ところで警部殿、油揚げを被害者の喉に詰める場合、どうしますか?』

目暮「どうする? それはどういう意味かね?」

小五郎『どのように詰めるのか、という意味です』

目暮「どのようにって……まあ、味噌汁の中の油揚げを大量に御玉で掬うのは難しいから……」

目暮「手で直接掴むしかないだろうな。幸い、味噌汁は冷え切っているようだし……」

小五郎『そう。被害者の喉に油揚げを詰めるなんて芸当、道具を使っては不可能だ。犯人は直接、腕を味噌汁へ入れる必要があった……』

小五郎『そんなことをすれば、手が味噌汁で濡れるのは必須。だが、手を洗いに行くためにはテレビ横の出入り口を通る必要がある』

蘭「あれ? でも、ヒルナンデスを観ている時は誰も通らなかったけど……」

高木「洗えないとなると、タオルやハンカチで拭き取るしか……!」

小五郎『ところで、貴方のお尻のポケット……少し湿っているようですが』

ヘルパーC「!!!」

小五郎『そのお尻のポケットに入っているんじゃないですか。味噌汁で湿った、貴方のハンカチが!』

ヘルパーC「あの……あのババアが悪いんだ! 俺は孫じゃないって散々言ったのに、しつこく絡んできやがるから……!」

ヘルパーC「ババアの話を聞き流しながら、鍋の底に沈む油揚げを眺めていたら……カッとなって……」

ヘルパーC「気付いたら、油揚げをババアの口に突っ込んで、割り箸で首を…………! でも仕方が無かったんだ!」

ヘルパーC「社会人にとって、昼休みは貴重なのに! やつらは、大切な時間を我が物顔で奪っていく!そして、すぐ忘れる!」

ヘルパーC「あいつらは悪魔だ! 死んで当然だ!!!」

小五郎『たしかに、時間は貴重だ。だが、それは命も同じ』

ヘルパーC「……!」

小五郎『たとえどんな理由が有ろうと、誰かの命を奪っていい理由にはならないんですよ』

小五郎『ババアが、貴方の時間を奪ってはならないのと同じようにね……』

ヘルパーC「う、うわあああああああああああああああああああっ」

蘭「……」

目暮「さあ、行きましょう」

ヘルパーC「うぅ……」

コナン(奪われる時間を取り戻すために及んだ犯行……)

コナン(だが皮肉にも、その犯行によって彼はより多くの時間を奪われることになったのだった……)

おしまい

>>3
小五郎「あん? おいちょっとアンタ。どうして被害者がババアだって知ってるんだ?」
↓訂正
小五郎「あん? おいちょっとアンタ。どうして被害者がババアだって分かるんだ?ジジイに見えるぞ」

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