浜田「松本さんは実は雛見沢出身だったと小耳に挟んだのですが」 (45)


浜田「本当ですか本当なら雛見沢とは一体どんな所でしたかよければ是非教えてください……」

浜田「え、お前尼ちゃうん?」

松本「あハイそうですよ。ハガキの人もよくわかりましたね」

浜田「いやw お前ずっと尼おったやんけ」

松本「実はその辺、あんまり詳しく知らないんですよね」

浜田「は? なんで?」

松本「ほら、貴方も小3で引っ越してきたでしょ? それと一緒で、うちも僕が小さい頃に引っ越してきたんですよ」

松本「兄貴がギリ覚えてるくらいですかね」

浜田「はーなるほど……物心つく前に越して来たのね」

松本「そうそうそんな感じです」

浜田「じゃああくまで戸籍上の出身地であって、その雛見沢にはあんまり思い入れないって事ですね」

松本「そんな事ないですよ。あんな村、今すぐ滅んだらいいんですよ!!」

浜田「なんでやねんw」ペチン


ドゥドゥッドゥー

ガキガキガキノツカーイ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1676895041


松本「いやマジで、クソっすよ。ホンマに」

浜田「自分の生まれ、そない言ったるなよ~」

松本「確かに記憶こそないですけどね。でも、オカンがよう言ってたんですよ」

松本「人志聞くのやと。あの村は鬼の住む村なのやと」

松本「あんなとこは人の住むとこやあらへん。あんたも大人になっても、雛見沢にだけは行ったらアカンのやでって」

松本「そんな話聞かされて育ったら、そらイメージ悪くなるじゃないですか」

浜田「ふぅん……向こうでなんか、イヤな事でもあったんかなぁ」

松本「うろ覚えですけど、どうも喧嘩別れっぽいですね」

松本「なんかあっちの奴等と、派手にやりあったっぽくて」

浜田「へぇー。まぁ、秋子ならあり得るかぁ」

松本「オカンも当時は若かったでしょうしね」

浜田「でもそいでも、わざわざ尼に越してくるってよっぽどやで?」

浜田「一体誰と揉めてん?」

松本「園崎さんとです」

浜田「誰やねん」

松本「ヤクザの組長です」

浜田「 」


浜田「秋子、それは……w」

松本「なんか、向こうに園崎って言う偉っそうなヤクザがいたんですって」

松本「んであなたも知ってるでしょうけど、ウチのオカンもあんな感じでしょ? もう、モロにかち合ったみたいで」

松本「最初はメンチの切りあいから始まって……すぐこのダラズがぁー!ってなって」

浜田「なんやねんダラズってw」

松本「w」

松本「でもまぁ、割とそんな感じみたいですよ。ほんまに」

浜田「秋子それはアカンわ……よりにもよってヤーさんに手出したらアカンわ」

松本「しかも相手は組長クラスですからね。根回し即村八分ですよ」

浜田「しゃーないわ……そればっかりは……」

松本「鬼ってそういう意味やったんやなって」


浜田「でもさ、言うてもそれ、上の世代の話やろ?」

浜田「あんたさんには直接関係のない話やんか。向こうも代替わりしてるやろし。そこまで悪く言ったらんでもええんちゃうの?」

松本「違うんですよ浜田さん。実は僕、大人になってから一回雛見沢行ってるんですよ」

浜田「えっそうなん?」

松本「だからこっちはその結果を踏まえて言ってるんですよ。雛見沢はクソやって」

浜田「じゃあ行くなや」

松本「はい? どういう意味ですか?」

浜田「いやどういう意味じゃなしに。行くな言われたのに行ったお前が悪いんちゃうんかい」

松本「その辺、詳しく聞きたいですか?w」

浜田「勿論」

松本「ほんとに聞きたいですか?」

浜田「ええからはよ言えや」

松本「わかりました。なら言いましょう」


すぅ~


松本「お前のせいじゃーーーーーーーーッ!!」

浜田「!?」


松本「言うに事欠いてこのガキャほんま…………!」

浜田「なんでなんでwwww まっちゃんなんでwwwww」

松本「死ね! はうぅにお持ち帰りされろ!」

浜田「待って待ってwwww死ぬ前に理由聞かせてえやwwww」

松本「貴方のような人を向こうの言葉でダラズって言うんですよ」

松本「ほんともう、お願いしますよ!」

浜田「ほんとすいません……」

松本「忘れたとは言わせませんよ――――あれは昭和58年の6月でした」

松本「あの時何があったか、覚えてますか」

浜田「なんかあったっけ……」

松本「……」ジー

浜田「あ……俺らが”NSC”卒業した年?」


松本「あの時は僕ら仕事なんて全然なくてね。毎日バイトしてなんとか食いつないでたんですけど」

松本「でもこいつはすーぐにサボろうとするんですよ。だるいだのしんどいだの文句ばっか言うて」

浜田「ナッハッハwwww」

松本「ただでさえ金欠で、舞台衣装やなんや色々いるのに、なのに相方は全然真面目に働かない」

松本「どう考えても僕一人のバイト代で足りるわけがないがないんですよ。あの当時、どうやってやりくりしてたと思いますか?」

浜田「え、吉本から借りてたんちゃうん?」

松本「ちゃうわボケ! 俺が出稼ぎ行ってたんじゃ!」

浜田「どこに?」

松本「雛見沢言うてるやろこのダラズがぁーーーーーーーーッ!!」


松本「死ねっ! 何度も瀬戸際をループしろ!」

松本「100年くらい」

浜田「ほんとすいません……ダラズで」

松本「こちとら一人で二人分稼がなダメですから、嫌々でも行かざるを得なかったんですよ」

浜田「ちなみに、なんのバイトですか?」

松本「ベビーシッターですね」

浜田「あれっ、意外と普通の仕事やな」

松本「そうですか?」

浜田「だってヤクザだらけの街やろ? なんかもっと、危なっかしい仕事させられるとか思てたのに」

松本「ハハっ。なんぼ金欠やからって、そんな事しませんよ」

浜田「んでギャラは?」

松本「5000万です」

浜田「ごッ…………!?」


浜田「待て待て待てwwwwベビーシッターで5000万!?」

松本「マジですよ。少なく見積もっても四桁万円は確実です」

浜田「絶対ヤバイ仕事やん!」

松本「全然やばくないですよw ただ子供の面倒みるだけじゃないですか」

浜田「だからそれだけで5000万も出るわけないやろって」

松本「あ、でももちろんルートは特殊でしたよ?」

松本「所謂バイト雑誌に載ってるようなやつじゃなくて」

浜田「ほら見ろ。やっぱり裏のバイトやんけ」

松本「だからそーゆーのじゃなくて……コネでたまたま取れただけです」

浜田「誰のコネやねん」

松本「オカンです」

浜田「えぇ……」


浜田「秋子が……5000万……?」

松本「正確に言うとオカンの姉からの依頼ですね」

松本「伯母さんからオカン、からの僕って感じで」

浜田「んでも、なんで5000万も出せるねん?」

松本「あのーこれは、僕らみたいな工業地帯出身には馴染みのない話なんでしょうけど」

松本「雛見沢ってほんとに山奥の秘境みたいな場所にある土地で、そういうトコってちょいちょいあるんですって」

松本「立ち退き的なのが」

浜田「はあはあなるほど……」

松本「で、その立退料が5000万くらいで、しかもそれは国から出るお金なので」

松本「もちろん満額貰えるわけじゃないでしょうけど、立ち退きさえすれば出るのは確実なので」

松本「……まぁ、ちょっと期待できるじゃないですかw」

浜田「ナッハッハw せやなw」


松本「ただそこで一個問題がありまして」

松本「立ち退き料を貰う為には村全体の合意が必要なんですけど」

松本「ところが今度はそれのせいで、村の中で賛成派と反対派とで争いが始まってしまったんです」

浜田「おー、なんかそーゆーのニュースで見た事あるわ」

松本「で、伯母さんはそのデモ的な運動に参加しなくちゃいけないので」

松本「だからその間うちの子の面倒を見て欲しいと、親戚を伝ってうちんとこに言ってきたわけです」

浜田「ええ説明や。非常に分かりやすい」

松本「どうもリーダー格やったみたいですね。賛成派閥の」

浜田「人望ある人なんやな」

松本「んで反対派の筆頭が、よりにもよって園崎で」

浜田「また園崎……w」


松本「正直ちょっと私怨入ってると思うんすけどねw」

浜田「ナッハッハw ほんまやw」

松本「まぁ要するに、因縁の相手と決着をつけるのに忙しいからって、僕の所に話がきたわけですよ」

浜田「でもその村の争いって、こっちゃ関係ない事やんか」

松本「え? なんでですのん」

浜田「いや別に一緒になって戦え言うてるわけやないし、ちょっとの間子供の面倒見て欲しいってだけやろ?」

浜田「そんなん、言うてくれたら全然俺も行ったで? めっちゃおいしいバイトやんけ」

松本「そんな事ないですよ――――引き受けた事、全っ力で後悔しましたよ!」

浜田「なんでw」


松本「やはりあの村は滅びるべきですよ……ほんと、ダラズの集まりですよ!」

浜田「やめやめやめw」

松本「考えられへん村ですよ、マジで」

浜田「なんやねん、何があったんや」

松本「いいですか浜田さん、雛見沢ってほんまにものすごい山奥にあって」

松本「新大阪から新幹線で向かって、ローカルに乗り換えて、さらにそこからバスで何時間もかかる場所にあるんですよ」

松本「もう向かうだけでクッタクタなんですよ。着いた時点で疲れ切ってるんです」

浜田「田舎はそんなもんやろ」

松本「こっちは節々がえらい事になっとんねん。少しは愛想よくしてくれやって話じゃないですか」

浜田「あ、わかった。よそ者や言うてハブられたんやろ?」

松本「半分正解で半分ハズレですね」

浜田「どこがハズレてんねん」

松本「着いてすぐ中学生にシバかれかけまして」

浜田「えぇ!?」


松本「めちゃめちゃ追いかけ回されましたからね。なんか金属バット片手に持ったやつに」

浜田「なんでんな事になんねんw」

松本「知りませんよそんなのw こっちが聞きたいですよ!」

浜田「うそつけw お前絶対なんかやったやろw」

松本「やってませんてw ちょっとは信じてくださいよw」

浜田「言うて田舎の中学生やろ? ちょけてただけちゃうん」

松本「でしょうね。なんかずっとヘラヘラしてましたし」

浜田「んなもん逆にシバキ回したったらよかったてん。俺やったら絶対やってるわ」

松本「そこまではしませんけど、今思うと”アカンで”くらい言ったるべきやったかもしれないですね」

浜田「そらそうや」

松本「ただ、まぁ、何分いきなりやったので、後手に回ってしまったと言うか」

浜田「ビビんなやw 中学生相手にw」

松本「いやぁお恥ずかしいっすw」

松本「なんかずっと”あひゃひゃひゃー!”って叫んでたもので」

浜田「まっちゃんそれ、逃げて正解」


松本「そうですか? 叱れば収まったと思いますけど」

浜田「無理。確実にややこい奴や」

松本「でも、風景はさすがでしたよ。住人はクソですけど」

浜田「のどかやった?」

松本「なんか最近知ったんですけど、文化遺産的なのに登録されてるらしくって」

松本「歴史的建造物って言うんですか? そんなのがいっぱいあって」

浜田「へぇー。ええやん」

松本「で、僕の滞在してた家も、結構そんな感じで」

松本「ほら、僕らの実家もある意味そんな感じだったじゃないですか。なもんで、意外と抵抗なかったって言うか」

浜田「よかったがな」

松本「んでガー入ったら、例の姪っ子が出迎えてくれて」

松本「沙都子って言うんですけど」

浜田「かわいかった?」

松本「かわいかったって言うか……むしろこっちが可愛がられたって言うか」

浜田「意味わからん。お前が世話するんやろ?」

松本「正直見た瞬間、全てを察しましたね」

浜田「どう言う事やねん」

松本「小学生やって聞いてたんですけどね……まだ10歳くらいのはずなんですけど」

松本「思っきり、ド金髪でw」

浜田「ああ……そっち系ね……」


松本「正直、してやられた感と言いますか」

浜田「押し付けられたなw」

松本「あでもね。意外と礼儀正くはあったんですよ」

松本「僕の事ずっと”おじさま”って呼んでましたし」

浜田「おじさまて」

松本「マジですよ。第一声から”ご機嫌麗しゅうヒトシのおじさま~”って」

浜田「夫人かw」ペチン

松本「いやほんまなんですってw 終始ずっとお嬢言葉なんですよ」

松本「こう、リアクションする度に、手の甲を頬にあてながら”ンオッホッホー”ってやりよるんです」

松本「ずっとあけおめことよろみたいな口調でしたし」

浜田「うわぁ、痛い子や……」

松本「アホやこいつ、思いましたよw」


松本「今思うと、そう言う意味で金髪やったんかもしれないっすね」

浜田「いやでも、小学生ってそんなんしよるやん」

浜田「ごっこ遊びみたいなもんや。アホ扱いしたらアカン」

松本「僕らも仮面ライダーごっことかしましたしね」

浜田「せやろ?w 女の子はそれが夫人になんねん」

浜田「テキトーに合わせたれや。おままごとくらい」

松本「あじゃあ僕はキャラ間違えてたって事ですね」

浜田「そーゆー事や」

松本「馬乗りになってボコボコにすべきではなかった。と言う事ですね?」

浜田「――――当たり前や!!」


浜田「ガキ相手に何さらしとんねんお前!?」

松本「ガチってしまいましたね。久々に」

浜田「ガチってしまいましたやあらへんやろ自分の姪っ子に……」

松本「ついでに白状してしまいますけど、しつけとかでは断じてないです」

松本「純粋にぶち〇ろそうと思ってやりました。だってダラズでしたもん」

松本「だってダラズでしたもん」

浜田「なんで二回言うねん」


【CM】

メシくってくる


デデデデデデデデデデデーン

浜田「なんで、そんな事になんのかなぁ」

松本「嫌な出来事でしたね」

浜田「何で他人事やねん」

松本「いやだってね、口調こそお蝶夫人入ってましたけど」

松本「やっぱり見た目通りのクソガキでしたよ。あんなもん、生まれながらの”悪”ですよ!」

浜田「だからってお前自分の姪っ子によぉ」

松本「いーやそこは譲れないっすね。まだまだ殴り足らんくらいっすよ」

浜田「今んとこみんなお前の方が”悪”やと思ってるけど、その辺覆せる自信あんのか?」

松本「あーあるね! 理由を知ったらみんな完ッ全にまっちゃんカワイソウってなるね!」

浜田「ほな言ってみろや」

松本「殺されかけたんです」

浜田「 」


浜田「なんで、なんすか……w」

松本「順を追って説明しましょう。まず初日から盛大にカマされまして」

浜田「はいw」

松本「夕飯にカレー作ってあげてたんですよ。いっぱい食べれるようにってこんなおっきい寸胴鍋まで用意して」

浜田「あらっええ話や」

松本「んならいきなりおじさまお手伝いしますわ~……”とみせかけてドーン!!”ってやられて」

浜田「wwww」

松本「カレー全部バッシャー鍋ガッラーなって。床ベッチャベチャで肉とかベッローンなってて」

松本「慌てふためいてパニクってる僕を見て、ずっと”あひゃひゃひゃー!”って笑っとるんです」

浜田「ややこい奴やwwww」

松本「正直、貴方ならこの時点でやってるじゃないすか」

浜田「うん、確実に馬乗りやな」


松本「でも僕は優しいおじさまを演じたかったので、ええよええよ~言うてたんですよ」

松本「内心ブチギレでしたけど」

浜田「うんw」

松本「んでこぼれたカレー全部片づけて、あーやっと終わったーって風呂入ってゆっくりしようとしたら」

松本「ガチャってあけた瞬間天井からタライがドガッバーって」

浜田「ンナハハハハwwwww罠やwwww」

松本「僕もううずくまってイッタァ……ってなってるんですよ。ちょっとこの辺とか切れてるんですよ」

松本「したら後ろからまたあひゃひゃひゃひゃっー! て……」

浜田「いじめられてんねやん!w」



松本「こんなんが、ずっと続いてて」

浜田「お前しょっぱなからやられたい放題やないかw もっとはよイかなアカンやろそれ」

松本「だから優しいおじさまを演じたかったんですって……いつものように笑顔でいたかったんですよ」

浜田「よう我慢できたなオイ」

松本「でも、限界あるじゃないすか。言うて所詮、尼のオッサンじゃないすか」

浜田「はいw」

松本「もうこっちは準備万端なわけですよ。次なんかやられたら即動ける状態なわけですよ」

松本「ただでさえスタンバッてる状態の僕に、あのクソガキ何しやがった思います?」

浜田「なになにw」

松本「”おじさま~今日は学校でおはぎを作ってきましたのよ~どうぞお食べくださいませ~”」

松本「食べたら中に針入ってるんですよ」

浜田「wwwwwwwwww」


浜田「仕留められかけてるやん!w」

松本「気ぃついたらマウントポジションとってましたね」

松本「電話線でこの辺ぐるぐる巻きにして、”お前もおはぎ食えや!”って鼻ん中にあんこサッパーやってて」

浜田「ナハハハハハwwwwめっちゃおもろいわお前の姪っ子wwww」

松本「ね? 僕全く悪くないじゃないですか」

浜田「せやなw まっちゃんカワイソウw」

松本「なのにあの村の連中は、ハナから僕が悪やと決めつけてですね」

浜田「ん? 村の連中?」

松本「めっちゃ大事になったんですよ。なんか学校の担任とか児童何とかセンターのおばはんとか出てきて」

松本「なんか……ドメスチックバイオレンス的な事言い出して」

浜田「やられてる側やん!w」

松本「あのガキ逆ギレなのかなんなのか知らないですけど、至る所である事ない事言いふらしまくってるんですよ」

松本「だって言われましたもんなんかPTAみたいな奴に。”沙都子ちゃんの顔に痣らしきものがあるのですがどう言う事ですか”って」

浜田「馬乗りなるからやんけ」

松本「違うんですよ浜田さん。それよう見たら、僕がさっき鼻に突っ込んだおはぎなんですよ」

松本「自分でほじくってこの辺にガー広げてたらしくって。だからうっすくなったあんこが丁度アオタンっぽい色になってるんですよ」

松本「ご丁寧に余ったもち米とかこの辺につけたりとかして」

浜田「自作自演やんけw」


松本「ね? 考えられへんクソガキでしょ?」

浜田「えらいもん引き受けてもうたな」

松本「でもね……実はそっちよりもヤバイのがいて」

浜田「だれや」

松本「雛見沢村民ですよ」

浜田「全員かいw」

松本「ああいう時の田舎って怖いですよ。集団心理とでも言いましょうか」

松本「ロクな証拠もないのに、魔女裁判に近い事されましたからね。ヒトシカエレ・デモンストレーションとでも言いましょうか」

浜田「デモンストレーションて……」

松本「マジですよ。なんかみんなで決起集会? みたいな事やってたらしくて」

松本「段取り決めてたみたいな動きで、めっちゃ囲まれて”カーエーレ!カーエーレ!”ってやられてたんですよ」

浜田「うわわ、えらいこっちゃ」

松本「んでよう見たらこう、ちょうど立ち退きの件で使ってたのがあったんでしょうね」

松本「掲げられてるプラカードの、立退反対の”立退”がうまいこと”ヒトシ”に置き換えられてるんですよ」

浜田「それで集まってたんかいw」


松本「ホント滅茶苦茶やられましたからね。カエレだのコロスだの言われまくって」

松本「玄関とか常になんか置かれてましたし。使用済みコンドームとか、すっごい臭いのする系の何かを」

浜田「タチ悪いなぁ……」

松本「だからそんなんやられ続けてたら、ほんまに段々マジで殺されるんちゃうかって思えてきて」

浜田「んなアホなw」

松本「だってそうじゃないですか! 住人以外誰も来ない山奥の奥の奥ですよ!?」

松本「僕、下手したら埋められて行方不明扱いされるかもしれなかったんですよ!? ただでさえ【ピーッ】ばっかですし、あんなトコいたら絶対ヤバイじゃないですか!」

浜田「あー……せやな」

松本「その日のうちに即夜逃げ実行ですよ。もう、バイト代の事とか完ッ全に頭から抜けてましたよ!」

浜田「ンナッハッハッハw 全員【ピー】なんかいw」

松本「んでとりあえず展望台までカブで逃げたんですよ」

松本「ムカつく事に、やっぱりさすが夜景だけはすごく綺麗なんですよ。住んでる奴は汚ればっかな癖に」

浜田「やめーいうねんw」ペン

松本「それ見てたら段々”俺、こんな所で何やってんねやろ”……ってブルーなってきて」

浜田「大変やな」

松本「孤独と絶望に押しつぶされそうになって、心が壊れそうになっている」


松本「そんな僕に、救いの手を差し伸べてくれたのが――――」


浜田「お?」

松本「梨花ちゃんですよ」

浜田「誰やねん」


松本「ふっと見たらいつの間にか目の前おって」

松本「んで一瞬ヤバってなりましたけど、でも他の奴らと違って、梨花ちゃんだけすっごい優しいんですよ」

浜田「だから梨花ちゃんって誰やねんって」

松本「沙都子の同級生です」

浜田「ガキやんけ!w」

松本「いやほんまめっちゃ優しいんですって。ずっと”ヒトシカワイソカワイソなのですー”って励ましてくれましたし」

浜田「ええ歳こいて小学生にお前よぉw」

松本「何を言うてるんですか浜田さん梨花ちゃん舐めたらあきませんよ」

松本「園崎より強いっすからね」

浜田「え!? ヤクザより!?」


松本「もちろん腕力的な事言ってるんじゃないですよ――――権力的な意味でですよ」

浜田「余計すごいやんけ!w」

松本「なんか村の長の跡取り娘らしくって。だからほぼ長老みたいなもんですよね」

松本「その証拠に、泣きついたら一発で収まりましたからね。”僕に任せるのですにぱー!”とか言って」

浜田「番長やないか……」

松本「んでね、こっからが肝心なんですけど」

松本「そもそも梨花ちゃんは、何故僕みたいなよそ者にそこまでしてくれたのかって、思いません?」

浜田「だからカワイソウやったからちゃうん」

松本「あのねー浜田さん…………僕ね、あの時ほど吉本入ってよかったと思った事はなかったですよ」

浜田「吉本関係あらへんがな」

松本「何を言ってるんですか大アリですよ」

松本「いいですかもう一度思い出してください――――昭和58年の6月」

松本「あの当時、ド新人もええとこの僕らに、唯一いっこだけ仕事があったの、覚えてますか?」

浜田「えっ仕事? NSC卒業したばっかやろ?」

松本「……」ジー

浜田「……あ! あった!」

松本「そうですよ! 思い出したでしょう!」


浜田「――――”君スタ”か!」


※お笑い君こそスターだ!


松本「視聴者だったんですよ! あの番組の!!」

浜田「おおwwww」

松本「あれ確か全国初でしょ? 僕らの」

浜田「せやせや。ギリ素人って事で無理矢理出させられたんや」

松本「アレ正直クッソだるかったじゃないですか。東京大阪間何度も行き来するの、めっちゃめんどかったですし」

浜田「せやなw」

松本「でも……しんどくてもがんばった甲斐あったんですよ。おかげで、画面の向こうの梨花ちゃんにバッチリハマってたんですよ!」

松本「だって言われましたもん”この子らは売れると思ったです”って」

浜田「ンナハハハハwwww何様やwwww」

松本「なんか漫才めっちゃ好きで、あの年で演芸番組とか見まくってたらしくて」

松本「でも小学生でそんな話できる奴、周りにおらんくって、寂しかったんですって」

浜田「あるある。そういうのあるわー」

松本「僕なんてずっとチャンピョンチャンピョン呼ばれてましたからね」

松本「”100年経ってもヒートシはmeのチャンピョンなのデス~”って」

浜田「外人かwwww」




浜田「”チャンピオン”な」

松本「ちょっとなまりキツイ所ありましたけど、そんなのは些細な出来事じゃないですか」

浜田「お偉いさんにハマったのはデカイな」

松本「梨花ちゃん様様ですよね。おかげでデモもすっかり収まって」

松本「沙都子なんか、梨花ちゃん直々におもっきしシバかれたらしくてw」

浜田「天罰やw」

松本「いやほんと権力者の口利きってデカイですよ。梨花ちゃんのツレって事で、あんなに嫌ってた奴等も段々優しくなってきて」

松本「んで最終的に、年一でやる村のおっきいお祭りに誘われるまでになりましたからね」

松本「ワタナガシって言うんですけど」

浜田「ええやん。馴染んでるやんけ」

松本「最後にそこで梨花ちゃんと漫才する事になったんですよ。”僕とざいまんやるのですヒートシー”言われて」

浜田「おおw」

松本「なんだかんだ結構本気でやってましたよ? 二人でコンビ名まで決めましたからね」

松本「ベルンカステルずって言うんですけど」

浜田「若手やwwww」


松本「そこはノリで引き受けた部分ありましたけど、でも嬉しい誤算と言いますか」

松本「梨花ちゃんもお笑い好きなだけあって、こう、間とか完璧なんですよ。全然僕のボケについてこれてるって言うか」

浜田「ほぉー」

松本「そんなレベルですから、もう、それはそれはすごいネタ出来上がって。しかも村の学校とかで試したい放題で」

松本「ちょっと合わせで軽くやっただけでドッカンドッカンウケるんですよ。【ピー】共みんなニッパーなってるんですよ」

浜田「さっきからその”にっぱー”ってなんなん?」

松本「持ちギャグですよ。梨花ちゃんの」

浜田「ツカミまで持ってんのか……」

松本「ね? 盤石でしょ?」

浜田「完璧やん」

松本「ただ一個だけ問題がありまして」

浜田「なんや」


松本「――――本番中にコンビ解散してしまいまして」


浜田「おい!!」


浜田「何しとんねんおのれら」

松本「そこは本職なんでね。なんぼ恩人でも譲れない部分あって」

浜田「どっちか我慢せえやよりにもよって本番中によぉ」

松本「いやでも、あれは僕悪くないです。完ッ全に僕カワイソウです」

浜田「なわけないやろ。お前も少しは合わせろや余所もんの癖に」

松本「じゃあそこまで言うなら一つ例を出しましょう――――想像してくださいあなたは本番前の若手漫才師です」

浜田「はい」

松本「ツライ下積みを経てようやく初舞台の日が来ました。そこそこデっカイ箱に満員御礼でした」

松本「自分らの番が来ました。出囃子が鳴りました。ハイドーモ言いながらセンターマイクへ走っていきました」

松本「で、客前に出た瞬間、自分の相方が、もしも――――”ネタと一切関係のない事をし出したら”」

松本「あなたならどうしますか?」

松本「いつもの様に、笑顔でいてくれますか?」

浜田「……まっちゃんカワイソウ!」

風呂


松本「僕それリアルにやられましたからね。脂汗半端なかったっすよ」

浜田「なんで急に裏切られてんねんw」
 
松本「知らないっすよw 心の中でずっと”梨花ちゃん!?”って叫んでましたよ」

松本「その声はまるで風の様にすりぬけてですね」

浜田「ナハハハハw アホやこいつw」

松本「だから僕は空気壊さん為に、急遽アドリブでツッコミに回って」

松本「それでも一生懸命ツッコんでたんですけど、肝心の梨花ちゃんが明らかにやる気ないんですよ。”興味がなくなった”とかそんな事ほざき出して」

浜田「ボケたかったんちゃうの」

松本「にしても唐突すぎるでしょw そんなん、なんぼ僕でも対応できないっすよ!」

浜田「せやなw」

松本「だから僕もイラっと来て、つい”お前さっきから何してんねん”って耳打ちしたんですよ」

松本「したら梨花ちゃん、なんて言ってきたと思います?」

浜田「何言われたん……」

松本「めっちゃ目ぇクワ!って開いて――――”消え失せろこの三流芸人が!”って言われて」

浜田「wwwwwwww」


松本「……あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”!? なって」

浜田「売れる思った言うてたやんけwwww」

松本「沙都子よりムカつきましたからね。ぶっちゃけ」

浜田「本番中にやる気無くすのはアカンな」

松本「そうでしょうそうでしょう!? しかも向こうから誘ってきといてですよ!」

松本「だからもうプッチーンきて、舞台の上で、客ガン無視で、ガチンコの罵り合いなって」

松本「10歳すぎたばっかの女の子と、20歳目前のええ大人がですよ」

浜田「恥やw」

松本「しかもアイツなまりキツいでしょ? 興奮したんか知らないですけど、後半何言ってるか全然聞き取れないんですよ」

松本「僕がガキの癖に偉そうにすんな言うたら”実際はmeの方が100年程上なた~め~”とかワッケワカラン事言い出して」

浜田「んなはははwwwwアホやwwwwアホが二人おるwwww」

松本「んであのガキ、挙句の果てに東京カエレとかぬかしやがったもんですから」

松本「だからもう、ほんまの意味でもうええわってなって、ほんまに帰ったったんです」

松本「その辺の軽トラパクって」

浜田「どっちもダラズやで」


浜田「梨花ちゃんは、なんで急にやる気なくしたんやろ」

松本「知りませんよもう。甘やかされて育てられたんじゃないですか?」

浜田「ボンボンやな」

松本「ていうかあの村住人全体がそんな感じなんですよ」

松本「揃いも揃っていきなりキレ出すし意味わからん因縁ばっかつけてくるし」

松本「尼以下ですよ、マジで」

浜田「やめろw」ペシ

松本「惨劇でしかなかったですね、ええ」

浜田「ままもうえーやん。もう行く事ないねんから」

松本「まぁ、そうなんですけど」

松本「ただ、どうしても一つ言っとかないといけない事があるんですけど、いいっすか」

浜田「なんや」

松本「実はあの村……あなたの生い立ちにも深く関係してて」

浜田「うそやんwwww」


浜田「俺、雛見沢とか縁も所縁もないで」

松本「それはわかってます。ただ、貴方も間接的に惨劇に巻き込まれてると言いますか」

浜田「なんやねんさっきから惨劇って」

松本「あのー僕、さっきから雛見沢の人の事、すっごい悪く言ってるじゃないですか」

松本「あれ、実はわざと大げさに言ってて」

浜田「あら、なんでや」

松本「【ピー】だらけの腐れ田舎もん共って言うのは本心なんですけど、実はそれって、ちゃんと理由があるんです」

松本「科学的な意味で」

浜田「ほお! それは気になるな」


浜田「詳しく、説明してもらえますか」

松本「平たく言うと風邪みたいなもんです。その土地の風土病って言うか」

松本「普段は何の問題もないですけど、稀に症状が重くなったら、そうやって意味わからんキレ方したりする人が出てくるんですって」

松本「それが、雛見沢にしか存在しないすごく珍しい風邪なので、村にちなんで”雛見沢症候群”って言われてるんですよ」

浜田「はぁーそんなんあんねや」

松本「でね、風邪ですから、当然感染りますよね」

浜田「うん」

松本「感染したら、そいつもその病気になってしまいますよね」

浜田「うん」

松本「僕、雛見沢出身じゃないですか。じゃあ僕もそれ持ってるわけじゃないですか」

松本「だったら僕の近くにいたら感染するじゃないですか。一緒にいる時間が長ければ長い程、より可能性は高まるじゃないですか……」

浜田「何が言いたいんですかさっきから」

松本「僕の身近で、雛見沢症候群っぽい人が一人だけいるんですよ」

松本「誰やと思います?」チラ

浜田「誰やってそんな急に言われても……」


松本「……」ジー


浜田「…………え、俺!?」


松本「ハッキリ言います――――あなた完ッ全にL5です」

浜田「いやwwww違う違う違う! なんやL5って!?」

松本「レベルファイブの略じゃないですか。末期って事ですよ!」

浜田「ちゃうわwwwwそれ言ったらお前の方がそうやんけ!」

松本「いやだから個人差あるんですって。風邪と一緒で」

松本「僕は、出なかった側なんですよ。だから今後もずっと出ないんですよ」

松本「貴方なんかもう常時L5なんですよ。小学校の時からずっと頭ん中が惨劇状態なんですよ」

松本「だから痔瘻なんですよ」

浜田「ふざけんなよお前wwwwケツ関係ないやんけwwww」ゲシ

松本「じゃあ確かめてみましょう。ちょっと作り笑いしてみてください」

浜田「なんで?」

松本「ええから」


浜田「……あひゃひゃひゃひゃ!」


松本「ほら完全にL5じゃないですか!」

浜田「ふざけんなよお前wwwwww」ペチン


松本「あ、L5った」

浜田「ちゃうわ! ツッコミや!w」ペチン

松本「ほら今また僕にL5りましたね?」

浜田「うるさいな!w」ペチン

松本「みんな言ってますよ? 貴方こそが吉本イチのL5芸人やって」

松本「聞く所によると全てのカケラでL5達成したそうで」

浜田「しつこいねんお前!w」ペチン

松本「初めましてみなさんダウンタウンのL5ってる方とL5られてる方です」

松本「工業高校とL5学園の出身ですどうぞよろしく」

浜田「ンナハハハwwwwL5言いたいだけやこいつwwww」

松本「wwwwww」


松本「だって現在進行形で惨劇起こしてるじゃないですか。芸能界と言う村で」

浜田「俺、L5なんかなぁ」

松本「治したいですか?」

浜田「え、治せんの?」

松本「もちろんですよ昭和58年からあるんですから」

浜田「じゃそれ先言えや」

松本「いやでも言ったら嫌がるかなって思って。ちょっとオカルト入ってますし」

浜田「どう言う事やねん」

松本「雛見沢症候群自体は科学的に解明されてるんですけど、肝心の当事者達がそう思ってなくてですね」

松本「なんか、未だにタタリ的な風に思ってるらしくって」

浜田「田舎もん共ほんま……」

松本「だからお祓いするんですよ。オヤシロ様って言うんですけど」

松本「よくある村の風習なんですけど、オヤシロ様に頼んだらほんまにL5なくなるんですって」

浜田「そんなんせんでもさ……ワクチンとかそんなんないの?」

浜田「風邪って普通そういうので治すやんか」

松本「あ、そっちがいいですか」

浜田「あるんかい」


松本「じゃあお取り寄せしますか? 吉本経由で」

浜田「そんな出前感覚で……」

松本「でも手に入れるのは簡単なんですけど、一個だけ副作用があるのは知っててくださいね」

浜田「なんや」

松本「打ったらすぐL5は落ち着きます。キレたり暴れたりは一切しなくなります」

松本「ただ、どうも逆に落ち着きすぎてしまうんじゃないかって説があって」

浜田「ええよもう。それでええからさっさとくれや」

松本「ほんまにやります?――――常にお嬢言葉になってしまうらしいんですけど」

浜田「できるか!wwww」


浜田「それおまえの姪っ子やんけw」

松本「何十年越しの原因発覚ですよねw」

浜田「どーりでキャラ固まり過ぎてると思たわ」

松本「MCとかできなくなりますよ? ジャンクスポーツとか」

浜田「ジャンスポ降りるのはイヤやなぁ……」

松本「じゃ、オヤシロ様に何とかしてもらいましょう」

松本「大丈夫ですって。僕もちゃんと付き添いますんで」

浜田「田舎もんら近づけさすなよ」

松本「大丈夫ですボディガード代わりに後輩もいっぱい連れて行きましょう」

松本「ていうかもう、この番組でいきますか? それならスタッフもいっぱい連れていけますし」

浜田「ええやんそれw カメラ回ってたら無茶されへんやろw」

松本「囲まれたらパクった軽トラ突っ込ませますんで」



浜田「お願い、できますか」

松本「わかりましたじゃあ6月のスケジュール開けといてくださいね」

松本「次の綿流しに合わせますんで」

浜田「たのんだで」

松本「あ――――やっぱダメです」

浜田「なんでやねん」

松本「すいません、肝心な事言うの忘れてました」

浜田「なんや」



松本「雛見沢村、とっくの昔に無くなってました」


浜田「帰るで!!」



ガキガキガキノツカーイ!!


【おわり】


尼崎のカケラから来ました
本当にありがとうございました

https://imgur.com/0X71sEP

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom