縦ロール「女王と私と時々電気」 (39)

超電磁砲のゲコラーNo.2 食蜂派閥の縦ロールさんのお話

コミックスでしか読んでいないので、本誌の方で矛盾する情報があっても目をつぶってください

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AM6時。
時間通り、いつものように起床する。
目覚まし時計は女王を起こしてしまうことになるので使わない。
ベッドの中で体を伸ばしたあと、視線を横へと向ける。

となりのベッドでは、女王が規則正しい寝息を立てている。
こちら側を向いて寝ているため、女王の美しいお顔を見ることができる。
盛り上がったタオルケットの形からは、女王の素晴らしいプロポーションが見て取れる。
いつもの光景ではあるが、やはり魅入ってしまう。

しかし、これ以上女王が眠る姿にうつつを抜かしている訳にはいかない。
朝食の前に身だしなみを整え、さらに女王の身支度を手伝わなければいけないからだ。
ベッドから体を起こし、もう一度伸びをして体をほぐす。
まずは洗顔をしてしまわなければ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ドレッサーの前での作業は慎重に。
下手に大きな音を立てて、女王の眠りを妨げてはいけない。
髪をいつもどおりの形にセットし、軽くメイクを施す。
制服もしっかりと着こなした。
自分の支度を全て終えて、ようやく女王の目を覚ます段階に至る。
いつものように、女王の肩に手をかけ、ゆっくりと揺する。

縦ロ「女王、朝です」

食蜂「うーん……もぉ?」

縦ロ「ええ、さぁ、支度をしましょう。 まずは顔を洗ってきてください」

食蜂「今日はサボっちゃおうかしらぁ……あとで出席したことにしておけばいいだけだしぃ」

縦ロ「そう言いつつも、ちゃんと出席なさる女王を、私は誇りに思っています」

食蜂「……起きればいいんでしょお」


むくり、と起き上がった女王のお御髪は、寝癖がつき乱れている。
眠そうな表情と相まって、寝起きムードをこれ以上ないくらいに醸し出しているが、それでもなお気品が感じられるのが、やはり女王が女王たる

所以だろう。
ベッドに腰掛ける女王に近づき、ヘアバンドで女王の髪をまとめる。
これで女王の長いお御髪も洗顔の邪魔にならなくなる。
髪をまとめ終わると、女王は洗面台へと向かっていった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


洗顔を終えて、すっきりとした表情で女王が戻ってくると、制服へと着替える手伝いをする。
女王が脱いだ服を受け取り、たたむ。
目の前には下着姿になった女王がいる。

その姿を見ると、いつものように、思考の底辺をドロリとした欲望が這いずりはじめる。
しかし、このようなことで動揺する段階は、とうの昔に過ぎ去った。
クローゼットから女王の制服を取り出し、女王へと手渡す。
制服から漂う芳香が、欲望のエサになるのがわかる。

そしていつものように、女王が私に見せつけるように、扇情的な動きで制服を身にまとっていく。
私はいつもどおり、その様子を舐めるように、ねぶるように見つめる。
着替え終わった女王は、ドレッサーに腰掛ける。
私は女王の背後に立ち、後ろから女王のお御髪の手入れをする。
鏡越しに見る女王の表情は、いつもどおり。

すべての支度を終えてから、朝食へと向かうため部屋を出る。
扉を開け、女王が外へ出てから、私も外へ出て扉を閉める。
閉める時に、いつも目にするはずのベッドが視線にとまった。

女王と私。
ルームメイト。
二つ並んだ同じベッド。

ふと、一年以上前――私と女王が出会った頃のことを思い出した。

短いけど続き投下しておきます。

常磐台で春先から話題になっていることがあった。
レベル5が一人、そしてレベル5認定が近いと思われる生徒が一人、入学してくるというのだ。

名門常磐台といえども、これほどの逸材が一度に入学してくるなど前代未聞。
どんな生徒が来るのか、そして既存の派閥との関係はどうなるのか。
入学式の日まで、この話題で持ち切りだった。

そして明日がその入学式。
今日は新入生の入寮期間最終日になる。

今まで同室だった先輩は、今年の春で卒業した。
そのため私の部屋には空きができ、そこに新入生が入ることになったのだ。

既にダンボールに詰められた荷物は届いており、部屋の隅に積まれている。
しかし、その持ち主である新入生本人が未だに姿を現していない。
外の景色は夕焼け色に染まりつつあり、外出していた生徒たちが帰宅してくるざわめきも聞こえてくる。

予定では午後1時過ぎには到着の予定だったはずだ。
何かトラブルに巻き込まれたのだろうか。
しかし、手元にある同居人となる人物の情報に目を向け、その可能性は低いだろうと考える。

食蜂操祈
レベル5 第5位
能力名“心理掌握(メンタルアウト)”

これだけの実力者が、そうそう簡単に、ここまでの遅刻を犯してしまうようなことはないだろう。
それに「レベル5は人格破綻者の集まり」といったような噂もあるように、学園都市の能力ヒエラルキー最上階に属するものは、少々特殊だとい

うのが一般的な認識である。
時間など意に介さない人物である可能性も大いに考えられる。

結局ここで待っているのが最善だろう。

縦ロ(全く……面倒なルームメイトを持ってしまったみたいですね……)

「それはちょっと失礼だと思うんですけどぉ」


急に扉が空いたと思ったら、間髪いれずに声が飛んできた。
驚いてそちらを向くと、常磐台の制服を着た少女が入口に立っていた。
先ほど唐突に言われた言葉と、今の状況がうまく噛み合わない。
しかし、今現在の状況を考えると、彼女が誰なのかということはおおよそ想像がつく


縦ロ「あなたが食蜂操祈さん?」

食蜂「そうでーす」


そう言いながら彼女は遠慮せずにズカズカと部屋に入り込んでくる。
「こっちが私のベッドですよね?」と言うやいなや、派手にベッドに倒れ込んだ。


食蜂「はぁーあ、疲れちゃったー」

縦ロ「…………」

参った。
覚悟はしていたが、まさかここまで常識外れな人間がやってくるとは。


食蜂「そんなに常識はずれだとは思わないんですけどねぇ」

縦ロ「っ! …………あなた」


しまった。
この娘は精神系の頂点、心理掌握。
頭の中を覗かれているということを考えるべきだった。
そういえばさっき、部屋に入ってきた時も、私の思考に答えるような形で会話を始めていた。


縦ロ「まだ入学したばかりで知らないのかもしれないけど、この寮内での能力の使用は厳禁ですよ?」


もっとも、この寮に入るときに重々言い渡されたはずだったのだけど。


食蜂「そんなこと言われてもぉ、操作と違って読み込みって使わないようにする方が難しいんですよぉ?」

縦ロ「じゃあその難しいことをやってください」

食蜂「まぁ、頭の隅には置いておきますけどね?」

だめだ、とても常磐台にふさわしい生徒だとは思えない。
こんなのとこれから共同生活をしなくてはいけないのだろうか。
部屋替えの申請はどこで受け付けているのだろう。


食蜂「あ、それは原則禁止だそうですよぉ?」

縦ロ「ですよねぇ……って」


睨みつけると、さわやかな笑顔を返してくる。
正直言ってここまで人を憎たらしいと思ったのは久しぶりだ。
いや、むしろ初めてかもしれない。


食蜂「でも、同室なんですから仲良くしてくださいね? 先輩♪」


ああ、神様。

私はもうダメかもしれません。

今回はここまでになります。

食蜂「せんぱーい、今日暇ですかぁ」


問われても返事はしない。
私の思考を読んでいる以上、返答はわかっているはずなのだ。
この同居人のために、無駄な労力を使いたくなかった。

ちなみに私は現在、課題のための本を読んでいる。
いちいち頭を覗かなくても、この様子を見るだけで状況がわかりそうなものだが。


食蜂「ねぇ、昨日からずっとそんな感じじゃないですかぁ、私何か悪いことしましたっけ?」


白々しいにも程がある。
入学式から一週間。
彼女の傍若無人ぶりは留まるところを知らない。

気が乗らない授業は休む。
教師の記憶改竄は日常茶飯事。
あろうことか能力測定のデータさえ、彼女が観測係に適当な情報を吹き込んだとしか思えない、めちゃくちゃなものになっていたそうだ。

もっとも、それを問題にしようとするような教師は、すぐに察知されて改竄の対象になるし、生徒の方は彼女の行動に比較的寛容なようだった。
品行方正なお嬢様を養成するこの学校でも、能力者特有のおごりとでも言うべきか、「能力こそ全て」といったような輩は少なからず存在する。
そう言った連中にとっては、食蜂の行動は問題にするようなものではないらしい。
むしろ羨望の的となっているフシさえある。

私はそのような彼女の行いを快く思っていない人間だ。
だが、彼女の振る舞いをなんとかしようと手は打ってみたものの、その試みはことごとく叩き潰されてしまった。
私の目論見は丸見えなのだから、当然といえば当然なのかもしれないが。
おかげで3日目には諦めがつき、もう彼女の蛮行には口を出さないことにした。

それでいい気になったのか、彼女は私をからかって遊ぶことにしたらしく、寮以外の場所でもやたらと絡んでくるようになった。

突然抱きついてくる。
なぜかいつも私の目的地に先回りしている。
食事中に割り込んできて、私の友人の違和感を消去し、気づけば自然な雰囲気で溶け込んでいる。
私の違和感を消さなかったのが、私をからかっていることの証明だろう。

周りからは仲のいいルームメイトだと思われているかもしれないが、こっちとしてはいい迷惑以外のなにものでもない。
そして今日も今日とて私にちょっかいを出してくるのだった。


食蜂「ねー、せんぱぁい……暇だったら学舎の園を案内してくださいよぉ」


だから課題があるということはわかるでしょう。
そう脳内で返事をする。
しかし、彼女は一向にその意図を汲み取ろうとはしない。


食蜂「…………そうですか」


声のトーンが低くなるのがわかった。
私が声に出して返事をしようとしなかったことに腹を立てたのだろうか。
そう思って、チラリと彼女の顔色を確認しようとした次の瞬間。

私はベッドの上に仰向けで倒れていた。


縦ロ「……え?」

食蜂「先輩……せめて返事くらいは声に出して伝えてください」

怒気を含んだ声が、私に覆いかぶさっている食蜂から放たれる。
私が座っていた椅子に目をやると、先ほどとかわりない状態で、本などが置かれていた。

どうやって私をここまで運んだのだろう。
そのような疑問と同時に、彼女に対する怒りがこみ上げてきた。


縦ロ「どういうつもりですか」

食蜂「あはっ、やっと喋ってくれましたね」

縦ロ「質問に答えなさい」

食蜂「先輩が頭の中で考えるばっかりで、喋ってくれないのがいけないんですよぉ?」


何を言っているのか。
人の頭の中を勝手に覗いておいて、こちらには普通の受け答えを求める。
自分勝手にも程がある。
だいたい、今までだって頭の中で思っていることに対して、勝手に返答をしてきたではないか。


食蜂「最初からコミュニケーションを放棄するのと、コレは全然違いますから」

縦ロ「違いがわかりませんね」

食蜂「私がわかっていればいいんですよぉ」

だめだ。
私の忍耐力にも、限界というものがある。
堪忍袋の緒が切れた、というものだろうか。


縦ロ「いいかげんにしてください、貴女の我儘に付き合わされるのはもう懲り懲りです」

食蜂「そんなに我儘に付き合わせた覚えはないんですけどぉ」

縦ロ「貴女が普段行っているのがわがままそのものです」


そう、そのへんにある小物を私に取らせる。
目覚ましを自分で買うことなく、私に起こさせる。
服を脱ぎ散らかして、私に片付けさせる。

同室であるということ、先輩であるということで、簡単に引き受けてしまっていた自分も悪いとは思う。
それでも彼女の行いは許容できないレベルにまで達していた。


縦ロ「以前から言おうと思っていましたが、最近の貴女の放蕩ぶりは目に余ります。 なぜそこまで自分勝手な振る舞いができるのか、不思議で

なりません」

食蜂「そうですねぇ……」


当然の疑問を口にすると、彼女はいきなり静かになった。


食蜂「……例えば、相手の思考が否応なくわかってしまう状態になったら、先輩ならどうしますぅ?」

縦ロ「それは……」

突然の質問。答えに窮する。現在日常的に“読まれ”てはいるが、“読む”立場というものになったことはない。
相手の考えていることがわかってしまう……
読まれることに対する苛立ちばかりが先行していたために気づかなかったが、それはとても恐ろしいことなのではないだろうか。


食蜂「私、結構最近までこの能力を完全に使いこなせたわけじゃなかったんですよぉ。

   だから、それまでは本当に否応なくほかの人の頭の中が分かっちゃったんです。本当に無差別に。

   最初はほかの人の考えとか、そう言うのに逆らって反感を買うのがこわくってぇ……振り回されながら生活してたんですよ?

   でもぉ、いろんな人のバラバラな意見、全てを尊重して生きるなんて、無理な話じゃないですかぁ。

   だから決めたんです、自分の意志を曲げずに、好きなこと、したいことを堂々とやってやろうって」


彼女がゆっくりと、しかし一気に話した内容は。それなりに私の心を揺さぶるものだった。
なるほど、彼女がこうなってしまった原因は理解できた。

これが本当だったらの話だが。


食蜂「あ、ひどぉい」

縦ロ「だって、制御できるようになったら普通読まないようにしておくでしょう?」

食蜂「いままでずっと見える状態で生活してきたんですよぉ? 今更見えなくなったら、他人が怖くて引きこもりになっちゃいますよぉ」


そう言われるとそうかもしれない……と思ってしまう。
私がそういった状況になったことがない、そしてこれからもならないだろうから、私には一生理解できないかもしれないが。

食蜂「とにかく、先輩が伝えたいことは、私の能力に頼らず、先輩が自分の口で伝えてくださいね?

   私の能力頼りのコミュニケーションなんて、つまんないじゃないですかぁ」

縦ロ「本当に自分勝手ですね、貴女は」

食蜂「そういうふうに生きるって決めましたから♪」


思わずため息が漏れる。
事情を理解しても、おいそれと受け入れられるものではない。


食蜂「で、学舎の園を案内して欲しいんですけどぉ」

縦ロ「お断りします」

今回はここまで

食蜂「立てちゃいました☆」

縦ロ「……何をですか」

食蜂「だからぁ、派閥ですよ」

縦ロ「そうですか、良かったですね」


私はそう言って、読んでいた本へ視線を戻す。
彼女が入学して一ヶ月、彼女の自分勝手な行動にも慣れてきた。
というよりも感覚が麻痺してきたのかもしれない。
自分が楽をするということ以外には、さして害のある行動もしていないわけだし、いちいちその行動に目くじらを立てるのも疲れたのだ。


食蜂「えー……もうちょっとリアクションがあってもいいと思うんですけどぉ」

縦ロ「貴女の行動はだいたい耳に入ってきますから」

食蜂「それって、私のことをそれだけ気にかけてくれてるってことですよねぇ?」

縦ロ「耳に入れたくなくても入ってくるんです」


こんなやりとり、彼女にとってはなんの面白みもないだろうに。
一体いつまで、私にベタベタしているつもりなのだろうか。
いい加減私をからかうのに飽きて欲しいものだ。

縦ロ「派閥を立ち上げたのなら忙しくなりそうですね。私などにかまっている暇などないんじゃありませんか?」

食蜂「そうなんですよぉ、前よりもちょっと忙しくなっちゃってぇ、それで先輩に是非ウチの派閥 「お断りします」

食蜂「……人の話は最後まで聞いてくださいよ」

縦ロ「派閥の勧誘以外のお話でしたら聞きますけど」

食蜂「…………」

縦ロ「さ、用がないのでしたら、読書の邪魔はしないでください」

食蜂「薄情モノ……」


彼女に与することで得られる実益……少なくはないだろう。
現在学園都市に6人しかいないレベル5の一人、その派閥となれば入りたい人間は10や20ではきかないはずだ。
私のように勧誘されるというのは、一般的には幸運なのかもしれない。
しかし


縦ロ「どうせ派閥に入るのなら、御坂さんのような方の派閥に入りたいですし」


御坂美琴。
今最もレベル5に近いと言われているレベル4。
風の噂によると、彼女のレベル5認定は上層部では決定されており、もうすぐ正式に認定されるらしい。
努力を積み重ねて、学園都市最高の能力者の一角に名を連ねる。
直接会ったことはないが、おそらく人格的にも優れた人なのだろう。
どうせ長いものに巻かれるなら、そんな人の下につきたい。

食蜂「…………ふーん、じゃあいいです」


そう言って彼女はベッドに潜り込んだ。
思わず彼女の方を見てしまう。
明らかに機嫌を損ねているようだ。
こんな態度を見るのは初めてだった。
レベル5同士というのが、一体どういう関係なのかはわからないが、序列がついているということで多少なりともライバル意識があるのだろうか。

まぁ、これで静かになるのなら何も問題ない。
私は部屋の電気を消し、スタンドライトの灯りの下で読書を続けることにした。

この時期はいそがしくてなかなか……
今週いっぱいで一旦暇になるので、また来週の日曜に更新したいと思います

あれ、この設定だとみさきちは現時点では第四位じゃね?
と思ったのは内緒にしておくぜ

>>35
そのつもりだったんだけど、最初の方で五位って書いちゃってたよ……
忘れてください

課題が終わらない+お盆まで家を離れることになったので、次はお盆くらいになりそうです……

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