岸辺露伴「ゴルゴ13、ねえ・・・」 (33)
(ゴルゴ13風の次回予告のつもり)
リアリティを作品の真髄と考える漫画家・岸辺露伴は特殊能力(スタンド)「ヘブンズ・ドアー」により、ある警察高官の記憶を盗み見る。
そこで彼の住む杜王町に超A級スナイパー・ゴルゴ13が来たことを知るが・・・!?
岸辺露伴「ゴルゴ13、ねえ・・・」
これから話すエピソードはぼくの作品「ピンクダークの少年」の取材のため、ある人物の記憶を読んだときのことだ。
あの傑作の読者なら知ってると思うが、ぼくの漫画に命を吹き込む要素は「リアリティ」だ。
リアリティを漫画に落とし込むには、第一義的に、そのコト・モノを知る必要がある。知らないことを描くことはできない。
だから実体験、生きた情報を得るためヘブンズ・ドアーを仕掛けた。そうしたら現実離れしたリアリティのあるプロフェッショナルに関する記憶に出会したってわけだ。
闇の世界に生きる殺し屋とでも言えばわかりやすいかな。そいつの力量はぶっとんでいたがこれっぽっちの嘘っぽさもなかった。
ま・・・ いくら殺し屋でもスタンド使いには敵わないだろ・・・ そう思った人もいると思うが、機転、強運、用心深さ、身体能力、経験知、状況・・・・ そういうのもある。
この岸辺露伴が偶然に知ってしまった超A級スナイパー『ゴルゴ13』が杜王町で何をしたのか、目的は何だったのか、ぼくは彼から何を得たのか。
彼のおかげでぼくが味わった恐怖と思いもよらぬ収穫は実際に体験したからこそ、ものになったんだ。
岸辺露伴は動かないシリーズ二次創作『岸辺露伴は倒さない』 / ゴルゴ13シリーズ二次創作『三者三様』
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PART① 杜王町の夜は更けて
――――杜王町、ジャパン
すっかりと暗くなった時間帯である。人気の無い通りを1人の男性が歩いている・・・・・
男「・・・・・」 スタスタスタ
男「・・・・ん? 誰かそこにいるのか。」
「S警察署副署長、大治亮だな。ヘブンズ・ドアー」
「うがっ!?!」 パラパラパラ
露伴「まったく手間取らせやがって、こっちは寒い中を10時間も前から待ち伏せてたんだぞ! まあ漫画のためなら多少のことは厭わない、さっそくお前の記憶を読ませてもらおうか」
このとき、ぼくは2つの問題を抱えていた。1つ目は「ピンクダークの少年」に警察官の新キャラクターを登場させることだ。
もちろんミステリーだから既出の警官キャラはいる。だが既出キャラとどういう関係にあるのか、どう接するのか、そもそもどのような人物なのか、絵空事ではいけない。
幸か不幸かぼくは今まで警察のお世話になったことはあまりない。(知り合いに警官の遺族はいるがこいつはスカタンだ)
よって警察組織内の人間関係がどのようなものなのか調べなくてはならない。だからS警察署に5日ほどの密着取材を申し込んだのだが・・・・・
これがまるで話にならない! どうも年配者は漫画を軽んじるきらいがあるがこいつらは特にそうだった!
やれ個人情報がどうの、捜査秘密がこうのといって1時間ほどの対面取材で済ませろと言ってきやがった!
こっちはたった5日の観察で我慢してやると言ってんだぞ! 上っ面だけでリアリティが出るわけないだろうが!
担当者の泉京香もぼくのほうを宥める始末だった。どっちの味方なんだこんにゃろ!
2つ目は・・・ あんまり思い出したくないんだが・・・ 余計なことに首を突っ込んで怒らせるべきではない相手を怒らせてしまったことだ・・・
そいつは異様なまでに公正な勝負にこだわる奴で、ぼくの見立てでは、どうもギリシャ神話の神みたいなのに憑依されてたようだ。
つまらないかけっこでそいつを本気で怒らせてしまった・・・ 身体を鍛え上げるためならコロシも躊躇しない奴を、だ・・・
そいつはぼくの住所までは知らない。でもぼくが岸辺露伴だということは教えてしまっていた。
だから気休めに過ぎないかも知れないが家の防犯対策をしっかりしたものにしておこうと思ったんだ。
ま、要するにそういうわけだ。副署長なら警察官の経験も長い。警察組織の実態だって知っているだろうし、リアリティのある材料になるはずだ。
防犯対策だっていくつか有効なテクニックを入手できるだろう。誓っても良いが目的は本当にその2つだけだったんだ。
露伴「ヘブンズ・ドアーでぼくの密着取材を許可させようかとも思ったが、なんだか負けたって認めるようで気分が悪いからな。」
露伴「どれ。『手帳をなくした阿呆がいて私まで捜索にかり出された。お前は辞表で済むだろうがこっちはマスコミ対策もあるんだぞ。幸い、すぐ見つかった』だって。こっちはどうだ、『交通安全教室に誰を派遣しようか。下手くそだと苦情が来るので考え物だ』ねえ。こいつなりに苦労があるんだな」
露伴「おお、防犯セキュリティ講座の記憶があったぞ。庭木の伐採、庭に砂利をひく、照明の設置、なるほどな。アイデア防犯グッズもいろいろあるものだ」
露伴「・・・ん? 『署長とM県警本部まで呼び出しだ。行ってみると本部長、県内の署長・副署長、警察庁のお偉方まで来ていた。あのゴルゴ13が入国してM県の杜王町に向かったらしい』だと・・・」
露伴「『あらためてGの資料を読まされた。こんなの放っておくしかないだろう。何が起こるのか考えたくもない』だって・・・ ゴルゴ13、ねえ・・・ 何者だろう」
露伴「えっ、なんだこいつ!? こいつもスタンド使い、なのか・・・・・? こいつはリアリティの宝庫かもしれない。とにかく記憶をメモして、ぼくに会った記憶は消さなくては・・・・・」
数分後、大治副署長にこのことを忘れさせてからぼくは帰宅した。スケッチブックはメモで一杯だった。
PART② スタンド使いとスペシャリスト
帰宅したぼくはメモを読み返した。なんというか、とても信じられないような現実離れした凄みに気圧されてその日は寝れなかったな。
海外治安情報で聞いた武力衝突、戦闘、大事件、そのいくつかが彼たった1人が引き起こしたものだって、仮に誰かが言ってるだけなら到底信じないだろう。
だがヘブンズ・ドアーの能力はぼくが一番よくわかってる。これは本当のことなんだ。少なくとも警察はそう記録した。
露伴(読めば読むほどに真実味が感じられる。こんな突拍子もないアクション映画じみた資料を、だ。シティーハンターやファブルみたいなスペシャリストが実在するというのか?)
(数年前に南米で公安部隊と盗賊集団とで衝突が起きた。ハイジャッカーから身代金を横取りしようとしたんだが、ゴルゴが両者とも殲滅したこととなっている(ガリンペイロ)。)
(アメリカの地下駐車場で新興教団の信徒達が内輪もめを起こし、銃撃戦となったと報道された。ところがゴルゴを襲って返り討ちというのが真相だと。サブマシンガンやアサルトライフルで武装した連中をリボルバー1丁で十数人倒したって、線状痕が証拠になっているらしい。もちろん教祖もあの世行き、本部も焼け落ちてそれっきりだ(死臭の聖者)。)
(自称デューク・東郷、通称ゴルゴ13、大治副署長の記憶から顔写真もわかったが何という鋭い目つきだ。まるでカミソリじゃあないか。そして墓石のような冷たさだ。)
(・・・・・ スタンド使いじゃないというなら、こんなことが可能なのか? 集団を相手にしただけじゃあない。おおよそ2キロメートル離れた操縦室のハイジャッカーを横風の中で狙い撃ちしたとか(AT PIN-HOLE!)、ヘリコプターからプールの波を撃って跳弾で当てたとか(硝子の要塞)、オリンピックの金メダリストだって無理難題だろう)
(そんな人物が・・・ 「ひょっとしたらこの杜王町にいるかもしれない」「目的はまったくわからない」。まあ吉良吉影のように快楽が目的じゃあなさそうだ。)
(ぼくは知らんぷりすべきか、それとも何かすべきなのかな・・・・? だがどこで何をしているのかさえわからない・・・・ とはいえ恐怖を感じないわけにはいかない・・・)
(スタンド使いはひかれ合う、か・・・ 考えすぎだと思いたいが、あるいは・・・ ぼくは品行方正に生きてきたとはいえ逆恨みってこともある・・・)
(他人に助けを求めるようでシャクだが承太郎さんにでも相談するべきかも知れない。財団なら何か知ってるだろう。スタンド使いかどうかわかるだけでも不確定要素が減るからな・・・ )
PART③ 下準備最終段階 (ゴルゴ13サイド その⑥)
――――某所、USA
ショーン・鍛冶屋「いやあ久しぶりだねえ。あのゴルゴ13からお呼びが掛かるなんて、俺もまだまだ引退できねえな。で、何をすりゃあ良いんだい?」
ゴルゴ13「・・・ある人物を詳しく知りたい。経歴や資産状況と言った誰でもわかることももちろんだが、それでは不十分だ。」
ショーン「そりゃあ百も承知だぜ。なにせ俺が仕事するんだからな。どこだってハッキングして丸裸にしてやるよ。」
ゴルゴ13「SPW財団だ。どういった”技能”があるのか調べろ。その他にも警察、役所、銀行、そういった公的機関も探れ。」
「!! ・・・・・・数日かかるぞ。終わったら合図を出すからまた来てくれ」
――――某所、USA、数日後
ショーン「こっちの役者さんはSPW財団じゃあ把握してないな。ただし日本のS警察署では近々逮捕に踏み切るらしい。」
ゴルゴ「・・・・・・」
ショーン「そんでこっちの漫画家だが、こちらは当たりだね。誰でも本みたいにできて、それにはその人の記憶が載っているんだとさ。さらには岸辺がそこに命令を書き込むと必ず遂行するんだと。」
「誰だってこいつに掛かれば個人情報も秘密もあったもんじゃあない。おまけに操り人形に早変わりだ。ただし触れてない相手には効果が出ないらしいとも書いてあったぞ。」
「だがあんたもスタンドは成長するってこと知ってるだろ? この情報は古い可能性もあるね」
「それから金に困っている。出版社にかなり前借りしている。もっとも本人は金銭には無頓着で、ひたすら”リアリティ”ってのを追い求める性分だ。最近の動向はそこに書いてある。」
G「お前は今、”その人の”と言ったな。対象は人間に限るのか?」
ショーン「! いやそういう限定は何も書いていない。もしかしたら動物でも可能かもしれない」
G「・・・・ ・・・・」 何か考え事をしている
ショーン「な、なあ・・・ お節介かもしれんが、こいつはスタンド能力持ちの中でも上位クラスだぜ・・・ こんな野郎をどうやって狙おうっていうんだ・・・?」
G「・・・俺は岸辺露伴を標的だと伝えた覚えはない。また他人に作戦を教えるほどの自信家ではない。」
ショーン「おっとそうだった。俺としたことが。悪かったね」
※ショーン・鍛冶屋は日系人の情報セキュリティー技術者である。要するにハッカー。ゴルゴが不定期に仕事を委託するほどの腕前。登場回は「ホワイトハッカー」「AIメティス」。
デイブと一緒にいる場面もあるので互いに「ゴルゴはこいつを雇ったんだな」とわかってるはず。ゴルゴが誰を雇ったか他人(まあ信頼できるけど)に知られるなんて珍しいよね。
PART④ 岸辺露伴! 空条承太郞と電話する! その1
承太郎さんに連絡したぼくはその日、指定された電話ボックスにいた。予想もしなかった超A級ワンマン・アーミーの情報にしばらく圧倒されていたが、落ち着いて考えてみればこれ以上の漫画のネタはそうそうあるものじゃあない。彼はリアリティそのものと言っても過言ではない。もっと知りたいという欲求でどうにかなりそうだった。理性は危険だと訴えてくる。でも漫画家の本能が理性を押さえつけるんだ。
公衆電話(本物)《とうおるるるるるるるる とうおるるるるるるるる》
露伴「はい、もしもし」
承太郎《露伴先生か。俺だ、承太郎だ。先生あんた、とんでもねえ野郎のことで相談くれたみてーだな》
「やっぱり”とんでもねえ野郎”なんだな! 奴の能力とかわかるのか!? いやそもそもスタンド使いなのか?」
「知ってることを全て教えてくれ! 洗いざらいだ!」
《落ち着きな。まず野郎がスタンド使いか否かだが、”わからない”。財団でも調査や接触を試みたことがある。まず野郎にビジョンを見せたら反応しないこともあるが反応することもあった。見えてるのかどうかいまいちよくわからねえ。まあ仮にスタンド使いでないなら、今までの仕事はどう為し得たのか俺が知りてぇくらいだがな。》
「う~む」
《偽の依頼を用意して呼び出そうとしたらどういうわけかバレた。偽の依頼人はやられた。》
「バレた? 今現在、SPW財団は彼と敵対してるのか?」
《あわてるな。そのときはヒットチームを送り込んだが返り討ちにされた。何人かスタンド使いもやられたらしい》
「そういうことなら、やはりスタンド使いじゃないか・・・」
《ところがそうとは限らねえ。今まで野郎がスタンドを使う場面を見た者はいない。ビジョンへの反応も野郎の異常なまでの用心深さを考えれば、ビジョンが見えたというわけではなく、自身が見張られていることに気づいただけとも説明できる。》
《その一方、スタンド使いだとバレないよう見えない振りをしているとも考えられる。用心深さ、勘の鋭さ、悪運の強さ、狡猾さ、観察眼、生きようという意志、そういうのがズバ抜けてやがるんだ。》
《本人に言わせりゃあ”ウサギのような臆病者”らしいが臆病者のように慌てふためくことも、呆然と立ち尽くすことも、決してない》
「あれだけの実力がありながら自身を臆病者と呼ぶのか」
《野郎に関する財団の資料はおそらくあんたの知ってる資料の何十倍もある。その財団は現在、野郎を放っておく方針だ。敵にも味方にもならねえってことだ。スタンド使いであろうがなかろうが敵対するメリットは乏しい。将来なにかしら役に立つ可能性もあると判断されたってことらしい。》
《俺は特別科学戦闘隊の指揮官にも意見を求めた。仮にゴルゴ13と戦ったら勝利できるかと問うと、状況次第だが決して容易ではないと答えられた。だが指揮官が一瞬、青ざめたようにも見えた。》
《そういうわけで仮にあんたがヘブンズ・ドアーで野郎の過去・経歴を調べ上げようってんなら、悪いが協力は出来ねぇ。数年前には野郎を小説のネタにしようとした何とかいう女流作家がミサイルをぶち込まれたこともある。結託した軍将官と丸焦げだ。そのために自腹で島1つを買い上げ、飛行場を建設し、戦闘機を準備した。それが敵対者への態度だ(ミステリーの女王)。》
「あ、ああ。承太郎さんに迷惑はかけないよ。ぼく個人の問題だからね」
《それから気がかりなのは奴の目的・・・・ これも不明だ。だがバカンスを楽しもうってんじゃないはずだ。杜王町に国家レベルで重要な人物は居ないはず。物資の調達とも思えない。杜王町に標的が居るという仮定に基づいてしまうが、恨みによる依頼があったと推測できる。》
《そして”スタンド使いはひかれ合う”・・・ あんた 、漫画か何かのことで逆恨みされてるってことはねえのか》
「正直に言えばないわけじゃないんだ。この間、つまらない諍いを起こしてしまった。でも大金があるような奴じゃあないな」
《だがゴルゴの存在を必要以上に喋ってまわるのは避けろ。全くの無関係という可能性も高い。言いふらしたことが奴にバレたら敵対したと見なされかねない。あんたの他に恨まれていそうな奴、アンジェロの前例がある仗助、親父のためとはいえ例の弓矢を使った虹村の弟、その辺にしとくのが賢明かもな》
「わかった。用心に越したことはないな。2人にはぼくから教えておこう」
《おう》ガチャリ
危険だ。あまりに危険すぎる。しかし究極のリアリティを知ってしまったなら漫画のネタにするのが使命なのも事実だ。
どのような生い立ち、どのような育てられ方をすればあんな芸当が可能なのだろう・・・ 活動の判断基準はなんだろう。仕事にどんな意義を見いだしているのか。
まあクソッタレ仗助に教えてやる義理もないのだが、あんなのでも死ぬのは夢見が悪い。それにどうせ億泰から伝わるんだ。教えてやろう。
PART⑤ 岸辺露伴! 空条承太郞と電話する! その2
――――カフェ・ドゥ・マゴ、ジャパン
露伴「かくかくしかじか、まるまるうまうま、なんたらかんたら・・・・・ そういうわけでその似顔絵スケッチの奴が杜王町にいる可能性がある。目的は不明だがお前らが標的かもしれん。」
露伴(2人しか呼び出してないのに何で4人いるんだ? こいつら仲良いな)
億泰「射すくめられそうな目つきだな~。 こんなのがどっかから撃ってくるかも知れねぇのかよ~」
仗助「まあ恨みは数えきれねえほど買ってるけどよ。こんなエキスパートに頼むってなると思いつかねぇな」
億泰「写真の親父に比べりゃ~生きてる人間だってだけ儲けモノかもな」
康一「でも害意とか敵意ってのは伝わってこないかな? ぼくに向けたものじゃないってだけかも」
由花子「必要以上に恐れることはないわ。彼の持ち味は遠距離からの狙撃。ということは不意を突かれなければ、スピードのあるスタンドなら止めることができる」
「そりゃあまあそーだけどよぉ」「四六時中気ィ張っていろってのかったりィーな」
由花子「康一くんのエコーはスピードがやや足りない。たった今から私のとなりに居なさいな。ライフル弾など飛んできても掴み取ってあげるわ」
康一「う、うん。ありがとう」
由花子「問題は露伴先生よ。康一くんが巻き添えを喰ったら嫌だから私達の50メートル以内には近づかないで頂戴」
露伴「おいィィィ!? こっちは危険を承知で教えてやったんだぞ? お礼くらい言ったらどうだ!」
露伴「もう頼まれても近づいてやるもんか、絶対に近寄ってやらないからな! フン!」
PART⑥ 泉京香は取材を受ける その1
泉京香「先生ェ~ 原稿を受け取りに来ましたぁ~ それからぁ 次の読み切りのテーマ決めと~ 先生は午後から警察署の取材ですね~ 頑張って下さ~い」
露伴「次の読み切りは期限まで余裕あるよね。裏世界のスナイパーを主人公としたミステリーを描こうと思う・・・ って『頑張って下さい』? 君、来ないの?」
京香「ゲーリー・ライトニングみたいな、ですか~(HAPPY END) なんだかノワールな漫画になりそうですねぇ~」
京香「それと連絡なかったですかぁ。取材には私も行くつもりだったんですけど~ 編集長が私に取材を受けろって言うんです~ 外国で新しく発行される漫画雑誌らしいんですけど~ 漫画家の相棒・編集者について特集されるんですってェ~ 」
露伴「それで、君が」
京香「そうなんです~ この泉京香、天才漫画家岸辺露伴の相棒として恥ずかしくないよう頑張ってまいります~」
―――― 数時間前、編集室
編集長「あ~ 泉くん? 突然で悪いんだけどさあ、取材受けてくれない?」
京香「え、私が受けるんですかぁ」
編集長「そうなんだよ~ さっき社長室から電話あってさあ、日本の漫画を影で支える仕事人、漫画家の相棒・編集者に聞くってテーマで外国の雑誌記者が来るんだって~ フィリピンだったかな」
編集長「いろいろ準備されるとありのままさが失われるとか何とかで本人には直前に伝えろってリクエストされてたんだとさ」
編集長「第一弾は岸辺露伴らしいから泉くんが一番担当長いでしょ。頼むよ」
京香「でも私今からその岸辺センセに原稿もらいに行かなきゃなんです~ 取材にも付き合わないといけないし、それに通訳とかつくんですか~」
編集長「ああこっちから連絡しておこうか。それに日系人で日本語ペラペラだってさ。それにダンディだぜ」
京香「それを早く言って下さいよ~ 是非私にお任せ下さ~い」
PART⑦ 泉京香は取材を受ける その2 (ゴルゴ13サイド その⑤)
その日の午後 応接室
「取材に応じて下さりありがとうございます。カルロス・コバヤシです。本日は岸辺露伴先生の担当者、泉さんにお話を伺います。」
京香「カルロスさんですねェ~ こちらこそよろしくお願いしますぅ~」
「まずは泉さんと岸辺先生との出会いはどういったものでしたか?」
京香(う~ん、ダンディって感じじゃあないかなぁ~ でも何かオーラが違うわねェ~)
京香(っていけない、いけない。取材に集中しなくっちゃ)
・・・・
・・・・
・・・・
「では続いて苦労談をお尋ねしたいと思います。やはりリアリティの追究に振り回されることもあるのでは。」
「振り回されっぱなしですよォォォ~~~!!!」
・・・・
・・・・
・・・・
「今までのお話だと、岸辺先生には他人を操る術があるようにも聞こえますね。他に何かそんな事例があるのですか」
京香「そうですねェ~ ああ、一度先生のご自宅にコソ泥が入ったことあるんですけどぉ~ 2人組だったのに返り討ちでした~」
京香「どうやって反省させたのか教えてはくれなかったんですけど~ 露伴先生はお一人だったのに2人とも縛り上げられててェ~ しかも先生の取材にもすッごく大人しく協力してたのですよ~ 本当にどうやって説得したんでしょうねェ~ ”私たちは先生の資料です”って自己紹介までしてましたァ~」
京香「他にも別の漫画家の先生がシワクチャとかトリガラとかいう妙ちきりんな単語をどっかで聞いてきたんですけど、たぶんその先生の聞き間違いで何の意味もない言葉のはずなんですけど、その意味を取り憑かれたかのごとく調べまくってたんですよォ~ 何がそんなに気になるのか正気の沙汰じゃなかったのに、露伴先生がお話しするとものの数十秒で落ち着いちゃいましたねェ~ 本人は催眠術みたいなものって言ってましたけど、めっちゃ便利な特技ですよねぇぇ~~」
「それは凄いですね。漫画の読者も先生の催眠術で操られているようなものでしょうか。」
京香「いや、それは先生の実力です! そんなチャチなものじゃ断じてありません。そんなのじゃここまでの人気作家にはなれません!」
・・・・
・・・・
・・・・
「それではそろそろ時間が来たようです。本日はお忙しい中、ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました~! またいらして下さ~い!」
PART⑧ 用心深い誤算
露伴サイド
泉京香「先生ェ~ 取材がどんなものだったか聞きたいですってェ~? 変なこと言ってませんよ~」
露伴「ヘブンズ・ドアー」
京香「ぐへ」 ぱらぱらぱら ばたんきゅー
露伴「用心深いに越したことはない・・・ 奴がぼくの探りを入れたってことはないだろうな・・・ カルロス・コバヤシ? 奴ならデューク・東郷だろう。どうもこいつは別人だな」
「こっちが渡された名刺の記憶か。顔写真も全然似てないぞ。他人に探りを入れさせたのかな。・・・いや、奴の用心深さなら自分でやるはずだ。また聞きでは正確さが欠けかねない」
「この雑誌出版社も聞いたことあるぞ。どうやら本物の取材だったようだ。取り越し苦労だったか。」
「それにしても”他人を操る催眠術”ねえ。それなりにいい線じゃないか。泉君の前で使いすぎたかな。しばらく自重しよう。」
露伴「よし。おい起きないか、おい」
京香「う~ん・・・ あれ・・・」
露伴「君ねぇ立ちくらみでもしたのかい? 今日はもう帰って寝た方が良い。激務続きなんだろ」
京香「あー・・・ どうもすいませんでしたぁ」
露伴(少し神経質になっているようだ。何でもかんでもゴルゴ13に結びつけようとしている。考えすぎもリアリティを損なうもんだ)
ゴルゴサイド 2日前 (ゴルゴ13サイド その④)
――――某コスプレショップ
ゴルゴ「トマス・フィールの紹介で来た東郷だ。話は聞いているな?」
店主「ああ、貴方が。伺っています。ついでに貴方がとても用心深いとも聞いています。まずは私が先を歩くので奥へどうぞ」
店主「それからメイクに使う器具に材料を検分して下さい。毒物でも危険物でもないですから。」
ゴルゴ「うむ・・・」
・・・ ・・・・
ゴルゴ「確認した。それでは始めてもらおう。この写真の男にしてくれ。雑誌記者だ」
店主「はい。それでは」
・・・・ ・・・・・
店主「出来上がりました。鏡をご覧ください。不自然な個所はないはずですが、確かめてください」
ゴルゴ「いいだろう・・・ 通気性や動きも申し分ない。報酬は受け取ったな」
店主「いただいております。終わったらまたこちらへどうぞ」
・・・ ・・・・・
女子高生A「あれ~ さっき入ってったちょっとキツめのイケメンおじさん、出てこないね~ 代わりに冴えないおっさんが出てきたし」
女子高生B「だからファザコンって言われんのよ。ここは出入口2つあっから向こうから帰ったんしょ」
A「何になるんだろうね、ターミネーターかな? サイヤ人かな?」 B「しらねーし」
※ トマス・フィールは特殊メイクで別人の顔に変えてくれるスペシャリスト。普段はハリウッドにいる。登場回は「ティモールの蹉跌」「デリートG Gの消去」など。
コスプレショップ店主は二次創作で本物の作品には登場しない。
PART⑨ 漫画家の家へ尋問に行こう その1
そして「その日」がやって来た。予測はしていた。自宅の防犯設備をあれこれと整えた。ムカつくが役に立たなかった。
もちろん毎日油断せず周囲に気を配っていたさ。とはいえ気をつけていても必ず存在を察知できるわけではない。
・・・不思議な奴だった。直前まで全く気配がなかったのにいざ居るとわかると威圧的なまでの存在感を放ってくる。
そしてこのぼくから逃げるため、こすっからいことしていきやがった。
露伴(あれ以来パトカーやら見張りの警官やらが多くなったな。すこし覗かせてもらったが行方知れずのようだ。ぼくとは無関係だったのだろうか。だとすればとんだ一人芝居だ。収穫もすさまじかったが、そのままそっくり漫画というのは流石に不味いか)
露伴(そのままそっくりは不味いとはいえ改変でリアリティが損なわれてはいけない。ゲーリーのパクりにならないよう注意して・・・ )
露伴(それにしても今日はやけに静かだ。自分の家なのに不思議に思えるほど他人の気配がない)
カチッ
露伴「え?」
??「そのまま微動だにするな。俺に何もするな。いくつかの質問に答えろ」
露伴「誰だ貴様ッ この岸辺露伴に何の用事があるッ!」
??「俺は微動だにするなと言った。言っておくが今、あんたの後頭部に銃口が軽く触れている。引き金は極限までゆるめてある」
??「あんたが振り返ったり、俺をどうにかしようとすれば、その衝撃で俺の意思と無関係に発砲されるだろう」
露伴 (おいおいおい おいおいおいおいおい! 完璧に不意を打たれた! このままではこいつの言いなりだ、なんとかしてこちらが主導権を握らなくては!)
露伴 (十中八九こいつはゴルゴ13、そしてぼくが標的というのなら既に仕事を終えたはず、質問があるようだしぼくは標的ではなく情報源だ。今のところぼくを殺める利点はない。)
露伴 (なるべくなら生かしておきたいはず。ある程度は”事故”がおきないような保険があるだろう。まずは落ち着くんだ。)
露伴 (そしてぼくはクソッタレとアホとプッツンと康一くんにしか話してない。承太郎さんもか。彼らからゴルゴに漏れたとは考えられない)
露伴 (つまりぼくに正体を知られているとゴルゴは知らないはずだ。こちらはお前のことを知っていると教えてやれば動揺を誘えるはず!)
露伴 「それで正体を隠したつもりか! ぼくはお前のことを知っているぞゴルゴ13! お前はゴルゴ13、そうだろう!」
ゴルゴ「・・・」
露伴 (なっ 全く動揺が感じられん、どういうことだ? やせ我慢か? しかしぼくがスタンド使いだとは知っているはず)
露伴 (ならばどのようなスタンドなのか調べたことだろう。流石にその前知識が外れたら冷静ではいられまい! 嘘でも何でもハッタリにはなる!)
露伴 「残念だったなゴルゴ13、調査が甘すぎたようだぞ。ぼくに銃弾は効かない。ぼくはスタンド使いだからな。そんなものつかみ取ってやる!」
ゴルゴ「試してみるか? 俺を本にするのと銃弾とどちらが早いのか・・・」
露伴 (ぐうう 動揺も狼狽もしていないのか。冷静沈着の権化のようだ。だがこっそりと仕掛けてやればどうだ・・・)
露伴 (ううむ、こいつが気絶すると決まったわけではない・・・ 気絶したにせよ引き金を極限までゆるめてあるならその拍子にぼくの後頭部に・・・)
露伴 (ビジョンで物理攻撃を仕掛けても大差なさそうだ・・・ 悔しいがこちらが不利なようだ)
露伴 「仮の話だが、お前の要請を断ったらどうする。ぼくはNOを突きつけてやるのが好きなんだ。あるいはぼくがお前に嘘をつくかもしれないはずだが」
ゴルゴ「お前が二度と漫画を描けなくなるだけだ。それに俺は真実を伝える声色と作り話の声色とを聞き分けることができるつもりだ」
露伴 「・・・わかった。質問に答えてやる。」
ゴルゴ「手数料だ。受け取れ」 100万円の札束をポイッ
露伴 (見下されているようにも感じるが、こいつなりの義理の通し方か・・・)
PART⑩ 漫画家の家へ尋問に行こう その2
ゴルゴ「お前は××県にある集落、通称”富豪村”へ担当者・泉京香と行っただろう。そこに伊勢丹出張所もあったな。入店したか?」
露伴「いいや、していない。」
「・・・では□□製薬会社CEO、久須典志の別荘はどうだ?」
「そこにも行っていない。ぼくが入ったのは売り出し中の一軒だけだからそれ以上聞いても無駄だぞ。」
「続いての質問だ。トニオ・トラサルディーを知っているな。そいつは・・・・」
「それはだな、・・・・ ・・・・」
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
ゴルゴ「お前は通っているジムで新人モデル・橋本陽馬と知り合ったな。今でも交流があるのか」
露伴「交流というほどじゃない。ランニングマシンでの勝負を挑まれただけだ。そいつが騒動を起こしたのでぼくまで強制退会さ。」
ゴルゴ「・・・そいつもスタンド使い、または何かしらの能力持ちなのか?」
露伴「スタンド使いとはちょっと違うな。ぼくの見立てでは、ギリシア神話のヘルメスに憑依されたのだと思う」
ゴルゴ「神話・・・ そんなおとぎ話を俺に信じろと言いたいのか。根拠を言え」
露伴「お前! こっちは銃口を突きつけられているんだぞッ! こんな状況でおとぎ話なんか喋るわけないだろうがッ 少しは考えろ!」
露伴「根拠ならこの目で見たんだ、橋本陽馬の筋肉が・・・ 肩甲骨、ふくらはぎ、耳の後ろ、そのあたりの筋肉が翼の形になっていた」
露伴「お前はそんなの見たことがあるのか、断言してやろう、『ない』! 決してあり得ない!」
ゴルゴ「わかった。それでは・・・・・」
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
(いったいこいつは何が聞きたいんだ? 何故こんなにたくさんの質問をぼく一人に聞くのだろうか? いつもこんな感じなのかな。寡黙な人物だと思い込んでいたが)
(あっそうか、こいつはぼくのスタンドの発動条件を知らないんだ! だからぼくの視界に入ることも恐れている。見られた瞬間に操られるかも知れないと恐れているんだ。)
(同様に何を知りたいのかを把握されるとか、その後の行動を予測されるとか、そういったことも避けたいと考えている)
(まあどっちにせよそんなのは避けたいだろうが・・・ スタンド使いを相手に用心深くなっていると言うことか・・・ 声色もどこか不自然なのはボイスチェンジャーかな・・・)
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
「お前の家が火事になったのはスタンド攻撃によるものか? そうだとすればどのような能力だ?」
「原因はスタンドじゃあない。まあ火事が起きたとき、おそらくスタンドによるイカサマを仕掛けられてはいたがな。・・・だから広い意味ではスタンド攻撃になるのかなぁ」
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
(ん、こいつはどうやって帰るのだろう? 来るときにはぼくに知られなかった。だが帰るときは、既にぼくに知られている。そしてどこかに隙が生れる)
(少なくともどこかの時点で、奴がぼくをピストルで即死させることはできなくなるはずだ。それともそういうスタンドを持っているのだろうか)
(スタンド使いではないという場合、帰りゆくゴルゴにヘブンズ・ドアーを仕掛けたら、ぼくの勝ちだ。)
(そんなヘマするはずが無いじゃあないか・・・・ 仮にゴルゴがスタンド使いだとしてもヘブンズ・ドアーで相討ちする危険も考えただろう)
(どっちにしたって最初から用済みになればぼくを消すつもりだとしか考えられん・・・ ならば一か八か、様子を伺って・・・)
ゴルゴ「質問は以上だ。邪魔をした。それから治療費だ」 もう一つ100万円の札束をポイッ
「治療費?」
バチバチバチ ビリリリ ジジ ジジジ
「が・・・・! あ、ぐ・・・」バタン
「スタンガン・・・・・ ・・・・ ・・」
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
京香「先生、先生、いらっしゃらないんですか~!」 玄関をドンドン ドンドン
露伴「ううん、泉くんか。・・・・・ちょっと待て、今開けるから」 ガチャリ
京香「先生、お休みだったんですかぁ~ 今日は読みきりのストーリーを詰めるって仰ってたんで。」
露伴(こいつにゴルゴのことを聞いても意味ないだろうな。巻き込んでも面倒なことになりそうだ)
露伴「そうだな、そうしよう。さっさと詰めよう。ただし裏世界のスナイパーは取りやめだ。テーマの決定から始める」
京香「ええ~ 資料も一杯集めたですよ! いつものことなんだけど仕方ないですねェ~」
PART11 神に挑んだ者 その1
――――数週間前、ジャパン、某所
暗くなった道を橋本陽馬はランニングしていた。この数日は”邪魔者”の処理に時間を取られて十分な訓練ができなかった。
それが腹立たしかった。しかし不満を感じたところで肉体は鍛えられない。それにストレスは体に悪い。
何のことでも無いではないか、そう自分に言い聞かせて日課のロードワークに専念した。やはり運動は良い。肉体を鍛え上げるのは雑念を取り除く。
気分がハイになってきた。
だが”邪魔者”はどこまでも纏わり付いてくるものだ。
若衆A「兄貴、あいつじゃないですか」
若衆B「真面目くさった面でランニングしてますよ。間違いねえ」
組員「よし、撮影も忘れんな。鉄パイプ持ったな。やるぞ」
A&B「へい」
陽馬「・・・・うん? 何だい君は。すまないが道を空けてくれないか。通れないじゃないか。」
A「うるせえ! 食らえ!」ボカッ
B「こん畜生め!」ドカッ
陽馬「うぐっ がっ」
ガスッ ボカッ ゲスッ ドカッ ゴツッ ゴスッ ボコッ ・・・・・
組員「よっしゃ、その辺で良い。映像を確認すっぞ。それが条件だからな。」
A&B「へい」
組員「おう、撮れてるな・・・ ん?」
A「へ?」
B「あ・・・ ああ?」
陽馬「・・・貴様ら何の真似だ。脚の骨が折れたりアキレス腱が傷ついたりしたら、走れなくなるじゃあないか。」
3人「ばっ 化け物だ~ 逃げろ!」バタン ブロロロロ
陽馬「ちっ 自動車じゃあ追いつけないか。警察に言うのも事情聴取とやらで時間を取られるだろう。それにどうも疑われている節がある。」
陽馬「放っておくことに、しよう。明日も、走らなきゃあ、いけないんだからな」
・・・・ ・・・
・・・ ・・・・
依頼者H「3人がかりで失敗したですって? それじゃあ娘の仇を取れなかったってことじゃないか」
依頼者S「ああ・・・ どうすればいいんでしょう・・・ 」
組員「手付金はお返ししやす。それと申し訳ねぇんですが映像を見ていただけますか。あいつは俺たちには手に負えねえ。」
組員「言い訳がましいんですが、あっし達の失敗にご納得いただけるかと思いやす。」
依頼者H「よくわからないが、つけてくれ。」
《・・・貴様ら何の真似だ。脚の骨が折れたりアキレス腱が傷ついたりしたら、走れなくなるじゃあないか。》
《ばっ 化け物だ~ 逃げろ!》
依頼者S「・・・あなたたちは確かに陽馬をメッタ打ちにしている。脛を折ったように見える。それなのにすぐに起き上がってきた。これは一体?」
組員「あっしにも分かりやせん。しかし化け物に顔を知られちまったんだ。こいつを”処分”したいという点では同じと言うことです」
組員「世界で最も確実な方法ってのを親父から聞いたことあります。カネはあっし達も負担しやす。そいつを呼んでみるってのはいかがでしょう。」
依頼者「役に立つのかどうかわからんが、とにかく呼んでもらおうか。そいつを見てからでも良いんだろう。頼りがいがないならキャンセルすりゃあいい」
PART12 神に挑んだ者 その2 (ゴルゴ13サイド その①)
組員「ミスターデューク・東郷、よく来てくれました。あっしがあなたをお呼びしました。しかし本当の依頼人はこちらの早村夫妻、それと沢木夫妻です」
組員「ただしあっしにも関係がある話なんで同席させていただきたいのですが」
ゴルゴ「・・・いいだろう。用件を聞こうか」
早村夫「私たちが始末して欲しいのは橋本陽馬です! こいつが私たちの娘を殺したに違いないのです、お願いです、仇を取って下さい!」
沢木夫「倅もだ! こいつ以外には考えられん! だからあなたを呼んだ、必ず、絶対にこいつを」
ゴルゴ「最初から順を追って、誰か1人が話せ。」
組員「そんじゃあ不肖ですがあっしが・・・ こちらのご夫妻方は、それぞれ娘さんと息子さんをこの男・橋本陽馬ってのに殺されてるんです。」
組員「もっとも書類上は行方不明ってことになってます。見つからないんです。」
組員「生前、早村の娘さんがご夫妻に相談したところによれば、娘さんはこいつにかなりのカネをくすねられてたみたいで。しまいにゃカードもすっからかんとか」
組員「沢木の息子さんは宅配業者のバイトをしてたんですがね。どうも早村の娘さんのお部屋・・・ こいつも同棲してたんですが・・・ そこへ配達してからいなくなった」
ゴルゴ「・・・・」
組員「それから動機なんですがね。常人には理解しかねますが、トレーニングの邪魔をされたっていうことらしいんで。」
組員「これも娘さんの話なんですが、くすねたカネはトレーニングの器具やらプロテインやらに化けてたらしいです。ついには賃貸の部屋の壁・天井にボルダリングの石をつけられたって」
組員「マンションの外壁にまでね・・・ ちょっとした名所になりましたよ。陽馬は駆け出しのモデルで役者もやってますからね。流石に事務所にクレーム入ってとり外したようですが」
ゴルゴ「たかが駆け出しのモデル。何故俺を呼んだ。お前達でケリをつけられたはずだ。」
組員「・・・それはこの映像を見ていただきましょう。」
《・・・貴様ら何の真似だ。俺の骨が折れたりアキレス腱が傷ついたりしたら、走れなくなるじゃあないか。》
《ばっ 化け物だ~ 逃げろ!》
ゴルゴ「・・・話はわかった。普通の人間ではないと言うことか。標的についてもっと詳しく聞こう」
早村妻「まだ娘のマンションに住んでいます。行方不明の恋人の帰りを待つとか何とかいってますが、要するに娘のカネで仮住まいしてるんです。」
沢木妻「それから・・・ ○○ジムで騒ぎを起こしたらしいです。ランニングマシンで走りながら窓ガラスにダンベルを投げつけたとか。いかれてるんですよ。」
沢木妻「本人はその窓から落っこちたんですが、なんでも漫画家の岸辺露伴と勝負したとか公正さが失われたとか喚いてたらしいです。」
「露伴のほうはそのままどっかに逃げていったようです。2人ともジムは退会処分です。2人は知り合いだったんでしょうかね。」
組員「いかがでしょう、ミスターデューク・東郷。依頼を引き受けていただけますか?」
ゴルゴ「口座の入金を確認次第、仕事にとりかかろう。」
「「あ、ありがとうございます。何卒よろしくお願いします!」」
PART13 神に挑んだ者 その3 (ゴルゴ13サイド その②)
依頼から数日後・・・・・
ゴルゴ(・・・映像に加工の跡はない。鉄パイプを振り下ろす速度、当たった音、部位、回数を考えても橋本陽馬はよくて不随、死んでいてもおかしくない)
ゴルゴ(しかし脛を折られてもすぐに立ち上がってきた。意識もあった。ヤクを疑ったが呂律が回っていないわけではない。目もとろんとしていない)
(医師(PRIVATE TIME)に映像を見せたが同意見だった。こいつは何かがおかしい。橋本陽馬は普通の人間ではない。)
(何かしらの秘密があるはずだ・・・ どれほど身体を鍛えても限度がある。走るどころか動けるはずもない)
(だが橋本陽馬を調べても、取り憑かれたようにトレーニングに勤しんでいるということ意外にはこれといった不審点がないのも確かだ。)
(岸辺露伴のほうから調べたほうが妥当かも知れないな・・・)
PART14 奇妙な町へ (ゴルゴ13 サイド③)
さらに数日後・・・・・
ゴルゴ(岸辺露伴の住まう杜王町だが奇妙なことが多すぎる。)
ゴルゴ(何もしていないのに物が飛んでいった・引き寄せられた。壊れた物がいつの間にか治っていた。全国平均の5倍以上の行方不明者の報告・・・)
(名所アンジェロ岩は住人も気がつかないうちにそこにあった。何かが爆発したような気配があったが何の痕跡もなかった。イタリア料理で虫歯が治った。)
(双子がいないはずなのに全く同じ姿形の人物を同時に別の場所で見かけた。飛び降り自殺した若い女を岬の岩がボヨヨンとはじき飛ばした。)
(1個1個は勘違いかもしれんが、とにかく多発している。どのように説明できる? 相互に関連があるように思えん・・・ )
「・・・スタンドか? 複数人のスタンド使いがそれぞれの能力を発動させたと考えれば説明はつくな。スタンド使いはひかれ合う習性があるとも聞いた」
(橋本陽馬がスタンド使いだと仮定すれば、すぐさま快復したように見えたあの映像も肯ける。どのようなスタンドか不明のままでは返り討ちに遭うだけだ)
(そしてこの仮定に基づけば岸辺露伴もまたスタンド使いではないかと推定できる。常人がスタンド使いから逃げおおせるなど考えにくいからな。)
(岸辺露伴も以前の自宅が火事になった直後に背中を壁に擦り付けながら歩くという奇行を目撃されている。有名漫画家だから少しばかり騒がれた。これも変人の奇行ではなく、スタンド攻撃を受けたためにそうせざるを得なかったのではないか? 岸辺露伴がスタンド使いか否か確かめる価値はあるだろう。もしそうであれば橋本陽馬のスタンド能力も聞き出せるかも知れない)
(質問したところで自身のスタンドの特徴を教えるはずがないが、その研究をしている財団があったな・・・ SPW財団・・・ 別のルートからも探りを入れるか・・・)
PART15 破邪顕正
邪魔者が消えた道はなかなか心地よかった。メッタ打ちにされたはずの肉体は3日もしないうちに元通りに快復した。
病院へ行く必要さえなかった。自分でも驚きだった。だが凡人とは鍛え方が違うのだ。
鍛え抜いたこの体ならそういうものかも知れないな、と橋本陽馬はすこし得意な気持ちになった。
追い払ったチンピラ達はその後姿を見せない。行方不明者の捜索とやらでしつこかった警察も決定的な証拠はつかめないようだ。
モデル業も役者業もそれなりだ。トレーニングの時間が取れないのは困りものだが生活費は掛かる。いつまでも貯金が続くわけでもない。
陽馬(俺のロードワークは誰にも邪魔させん。邪魔者がいれば、今まで通り、処理するだけだ)
ウズッ
陽馬(うグっ!? 右肩が? これは銃撃か? だが問題ない。肩が傷ついても走れないわけではない。とはいえこちらが不利だ、一旦逃げるべきだ)
ピシュ ピシュ
陽馬(がアアア 膝だ、膝を撃たれたぁ! これではトレーニングができない! 走れない! なんてことをしやがるんだ畜生が!)
陽馬「だが俺を甘く見るなよッ! 俺の肉体は鍛え上げられている、銃創などすぐに治癒してみせるッ! 」
陽馬「・・・どういうことだ、治る気配がまるでない? それにとても熱い、激痛も感じる、チンピラの時とは明らかに違う、何が起こったのだ。血も流れている。」
プスッ プスッ
陽馬「がああ、 脚の動脈がっ 俺の肉体がっ」
陽馬「とにかく物陰へっ 這ってでもッ 隠れなくてはならない! このままではマズい・・・」
陽馬(あ、あ、・・・ 意識が遠のいてきた、出血も止らないようだ・・・ 鍛え方が足りなかったのか・・・? )
ゴルゴ「・・・」
コポ コポ コポ コポ
シュボ! ポイッ
ボオオオオオオ・・・・・・ オオオオオ・・・・・!
ゴルゴ(カトリック、プロテスタント、日本仏教、チベット仏教、神道、修験道・・・ 各地の宗教の最高峰と呼ばれる指導者に製作させた、いわば破邪の銃弾だ)
ゴルゴ(多神教の神1柱が、ましてや気まぐれに取り憑かれただけの人間が、抗えるものではなかったな・・・・)
ゴルゴ「俺に取り憑こうとしても無駄だ。そのくらいの準備はしてある。」(聖遺物やらお札やらお経やら)
ゴルゴ「これ以上人間に関わるな。互いに不幸になるぞ。」
???「やああああ!」 ヒョン ヒョン ヒョン
ゴルゴ「姿が見えないのはハーデスの隠れ兜か。振り回したのはハルペーだな。ここまでにしておくんだ。俺はあんたではなく橋本陽馬を倒せと頼まれた」
ゴルゴ「ここで俺とやり合うのは本意ではないはず。オリュンポス山へと帰ってくれないか。それにあんたには伝令や道案内の役目があるんじゃないのか」
???「・・・・・」 ヒュン
ゴルゴ「タラリア、有翼のサンダルか・・・ 飛んでいったな・・・」
ゴルゴ(帰る振りをして不意打ちということもあり得るが、全く気配もない。しばらくは用心が必要だろうが依頼は完了か・・・)
PART16 再開する日常
読み切りを書き終えたぼくはネタ探しにテレビをつけていた。見る番組を決めているわけではないが、時たま面白そうな題材に当たることもあるものだ。
だがその日は日常が・・・ つまり世界最強のプロフェッショナルや筋肉お化けなど気にしなくてもいい日々が・・・ 戻ってきたことがわかったんだ
TV「続いてのニュースです。○○市で銃弾を撃ち込まれたような跡のある焼死体が発見されました。警察では身元の確認を進めていますが、数日前から行方のわからないモデルの橋本陽馬さんとみて捜査を進めています。」
露伴「! そうかこれだったのか。富豪村やトニオさんの店は目くらましだ。こいつが標的だったんだ」
露伴「ぼくや康一君が狙われてたんじゃなかったんだ。やれやれだな。ぼくは単なる情報源か・・・」
TV「関係者の話によると、橋本さんは交際相手で行方不明の女性の消息について何か知っているとみられ、事情聴取を受けていたとのことです。警察では詳しい経緯を調べています。」
露伴(ゴルゴを知ったことでぼくは数日間、余計なことで怯えたり無意味に高揚したりとろくな目に遭わなかった。)
(だが超一流のプロフェッショナルのリアリティをいくらか会得できた。創作意欲によい刺激だった。生産的なひらめきを与えてくれた)
仮の話として、ぼくが大治副署長の記憶を覗かなかったら・・・・ ぼくはゴルゴの尋問にわけもわからず答えるだけ。気絶させられそれっきりだったはず。
そうなっていたなら収穫はゼロだ。成果は何もなし。まあ200万円は貰えたかもしれんが。
だが偶然にも覗いたがため、恐ろしいワンマン・アーミーにしばらく震えることにはなったが、そいつの尋問も情報収集に利用できた。その意味ではラッキーだった。
知らぬが仏という言葉もあるが知らぬは一生の恥ともいう。今回は後者が正しかったようだ。知らなければリアリティもわからないのだ。
露伴「家に忍び込まれたことも話すとマズいと思っていたがもう大丈夫だろう。康一君だっていつまでも気にするのはうっとうしいはずだ。電話してやろうか」
エピローグ 死神の残り香
――――カフェ・ドゥ・マゴ、ジャパン
億泰「先生よ~ 今回は大変だったなー。 でも誰も死ななくてよかったぜ~」
露伴「まあな。君たちも無事で何よりだ。」
億泰「ところでよ先生、俺ぁ馬鹿なのかいまいちよくわかんねえんだけどよ、リアリティってのは存在感てのと一緒なのかなあ」
露伴「それは時と場合に因るな。どれだけ存在をアピールしても嘘っぽさがあるならリアリティはない。でもなんでそんなこと聞くんだい?」
億泰「いやね、なんかとんでもなく存在感のある女学生が転校してきたのよ。顔が濃いんだが色白で美少女と言えるね。」
康一「転校じゃなくて中等部への短期交換留学だよ。フランス人だっけ。」
仗助「顔が濃いのは人のこと言えねぇだろうがよ」
3人「「「あっはははは!!!」」」
露伴「へえ。フランスから来たのか。」
億泰「存在感だけじゃねえんだぜ先生。実家はデカい病院、頭は数カ国語を喋れる天才、腕っ節は強くて学生ライフル選手権の優勝者。他のスポーツも芸術もピカ一。史上最強のマドモアゼルだの聖なる怪物だのすげえ言われようよ」
康一「性格も良いよね。悪い噂も聞かない」
由花子「何よりあの目つきが気に入ったわ。ぶっちぎれた生存本能の持ち主の目つきよ。死線を生き延びたものだけが放つ瞳の輝きだわ。それがわからない凡人には目つきが悪いように見えるのでしょうけど」
仗助「グレートな女子中学生だぜ。絶対スタンド使いだと思ったんだがなあ」
露伴「なんだ、違うのか。」
億泰「ああ、ほら。向こうを歩いてるぜ。うちの女学生を引き連れてよ」
露伴「ふうん、人気だな・・・ 」
ぶどうヶ丘中等部女学生A「ファネット・ゴベールさん、本日の放課後は予定がありまして?」
ファネット・ゴベール「今日は両親へのお土産を下見しようかと思っているのよ。どこかいいお店を知らない?」
ぶどうヶ丘中等部女学生B「それでしたらカメユーデパートはいかがかしら。」
ぶどうヶ丘中等部女学生C「サンジェルマンも良いと思いますわ。焼き菓子が有名ですの」
露伴「うごおぉ!?」
A&B&C&ファネット「・・・・?」 振り向く
仗助「ああ、驚かしちまってすまねぇ、この人ちょいとむせちまってよ」
由花子「ごめんなさいね」
康一「なにやってんですか先生」 ヒソヒソ
露伴(あのカミソリのような目! こいつらボンクラだ、どう見たってゴルゴの血縁者だろう、似顔絵をスケッチしてやったろうが!)
露伴(しかし・・・ 墓石のような冷たさはないかな・・・?)
カキーン・・・!
億泰「おい危ねえぜ! ボール、気をつけな!」
A「きゃあ!」 B「ひいい」 C「ああ」
ファネット「おっ」 ひょい
仗助「グレート! グローブなしでよく捕れたな。」
由花子「動体視力と反射神経が研ぎ澄まされているわね。」
康一「あれ早人くんじゃないか」
早人「ごめんなさい、すいません。当たりませんでしたか」
ファネット「平気よ。でも気をつけなさいな。向こうの公園に居るお友達が打ったのね」
早人「そうですけど」
ファネット「じゃあグローブを構えて動かないように言ってあげなさい。」
早人『おーい! このお姉さんがグローブを構えてそこを動くなってー! 』
友達『わかったー!』
ファネット「周辺に人はいないわね・・・・ ほらっ」 ビュン!
友達『うわ』 ボスン!
早人「す、すごい」
ファネット「人のこと言えないけど今度から野球はもっと広いところでね。このこと先生に言わないでよね。」
早人「・・・言いません。ありがとうございました」
億泰「見たかよあのコントロール! あの球速!」
仗助「聖なる怪物は流石だぜ」
露伴「・・・・どう育てられたらあんなのができあがるんだ。あいつは女子中学生だろう。」
康一「先生、駄目ですよ。あの人は一般人です。ヘブンズ・ドアーで過去を暴こうなんて、そりゃわかりますけど、絶対駄目ですよ」
露伴「あ、ああ・・・ しないさそんなこと・・・」
露伴(ありゃ絶対にゴルゴの縁者だ。見たい・・・ 見てみたい! だがもう関わり合いになりたくないな。なに、今のシーンだけでもリアリティは得られたさ)
露伴(さっそくピンクダークの少年に取り入れよう)
END
ルール違反やマナー違反があったらご指摘下さい。
次回から気をつけますんでご容赦を。
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