千川ちひろ「スタンプログインボーナスは本日で終了となります」 (13)

モバP(以下P)「最後ですか」

ちひろ「はい。最後のスタンプです。ぺたんっ」

P「ありがとうございます」

ちひろ「いえいえ」

P「……なんか、ちひろさん普通なんですね」

ちひろ「え?」

P「最後だから、こう、なんか、あると思うじゃないですか?」

ちひろ「そんなもんですか?」

P「なんだかあまりにも普通で」

ちひろ「おや? もしや私責められてますか?」

P「あぁ、そういうつもりじゃないんですけど」

ちひろ「どういうつもりなんですか」

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P「あー……」

ちひろ「 ? 」

P「いや、あまりにもいつも通りの笑顔で」

ちひろ「素敵でしょう?」

P「あまりにも自然にスタンプ押してくるもんだから」

ちひろ「クセになってるんですよ、Pさんにスタンプ押すの」

P「……なんだろうなあ」

ちひろ「私からしたらPさんこそなんなんだって感じですけど?」

P「ちょっと嬉しかったんですよ。いつも通りで」

ちひろ「良かったじゃないですか」

P「でもやっぱり寂しいんですよ。いつも通りで」

ちひろ「めんどくさい人ですねぇ」

ちひろ「こう言ったらなんですけど、たかがログインスタンプじゃないですか」

P「そう言われるとそうなんですけどね」

ちひろ「別に明日から会えなくなるわけじゃないですし」

P「いやホントそうなんですけどね」

ちひろ「なんならPさん『スタンプいらねぇ!』って言ってた時もあったじゃないですか」

P「それはイベントの日程がやばかったり徹夜明けだったりした時のことじゃないですか」

ちひろ「あれは傷つきました」

P「うん、それはごめん」

ちひろ「でもPさんにも意外と繊細なところがあるんですね」

P「たまにはそういう時だってありますよ」

ちひろ「じゃあまたスタンプ再開しますか?」

P「出来るんですか?」

ちひろ「出来ませんね」

P「じゃあ何故聞いた」

ちひろ「Pさんの泣いて懇願する様子が見たくて……」

P「とりあえず笑顔のまま話すのやめてもらえます?」

ちひろ「プロデューサーさん」

P「なんですか?」

ちひろ「最後だから言うんですけど」

P「……」

ちひろ「このスタンプなんですけどね」

P「……」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「私物なんです」

P「溜める必要あった?」

────
───
──


──
───
────

P「zzz……ん」

P「……夢かい」

P「あー……12月14日……そういやあの日も12月の14日だったか」

P「何年前だ……」


ドドドドド! コンコンガチャン!


「ぱぱーっ!! おはよーっ!!」

P「おはよう、今日も元気だな」

「うん! あさごはんだよ! ままがよんでるよ!」

P「すぐ行くよ。ありがとう」

「うん! さきにいってるね!!」

P「ふあぁぁぁ……」

ちひろ「おはようございます」

P「おはよう。相変わらず朝に強いなぁ……」

ちひろ「ふふ、相変わらず朝に弱いですね」

「ぱぱ! おはよー!」

P「おぉ、おはよう。2回目の挨拶も元気でいいぞ」

「うん! まま! てーぶるふいてきた!」

ちひろ「ありがとう。じゃあ今度はこのサラダを──」

「まま! きょうの! まだもらってない!」

P「ん?」

ちひろ「あらごめんなさい。ちょっと待ってね」

「はやくはやくーっ」

ちひろ「はいっ。今日のスタンプ ぺたんっ♪」

「わぁーい!」

P「……?」

ちひろ「早起きのよい子にはスタンプをプレゼント。明日は何色かなー?」

「きみどりがいい!!」

ちひろ「うふふ、どうかしらー?」

P「嫁がログインスタンプをやめられなかった件について」

ちひろ「ちょっと、人を中毒者みたいに言うのやめてくださいよ」

P「だって、なぁ……?」

ちひろ「こうして次の世代へと受け継がれていくのだ……みたいないい感じの話になりません?」

P「そうはならんかなあ」

ちひろ「あの子はあんなに喜んでくれてるのに」

P「うっ、そうだな。良いことだよな」

ちひろ「あなたはスタンプであんなに喜んでくれませんでしたしね?」

P「……失って初めて解るありがたみってあるよね」

ちひろ「なに黄昏てんですか」

「まま! は みがいてきた!」

P「よーしよし。じゃあパパからもスタンプを──」

「いらない」

P「えっ」

「ぱぱのすたんぷ かわいくない」

P「えっ」

ちひろ「ふっ」

P「……ちょっと今から可愛いスタンプ買ってくる」

ちひろ「仕事行ってください。打ち合わせあるんでしょう?」

P「父親には! いつだって! やらねばならぬ事がある!」

ちひろ「それは今ではないですし、スタンプでもないです」

P「うぅ……じゃあ行ってくるよ」

ちひろ「はい。今日の帰りは遅くなりそうですか?」

P「たぶん早く帰れると思うけど、また連絡する」

ちひろ「そこらへん結構マメになりましたよね」

P「……昔、連絡をサボっていたら分刻みで同僚から電話をかけられ続けたプロデューサーがいたらしい」

ちひろ「あら、きっとその同僚さんはとっても仕事の出来る人だったんですね」

P「……うん、そうね。超絶有能なアシスタント様だったよ」

ちひろ「ふふ、お仕事がんばってくださいね」

P「あぁ、いってきます」

ちひろ「はい。いってらっしゃいプロデューサーさん。お気をつけて」

以上です

ちひろさんの言葉
中々クるものがありましたね


ボツ会話


P「俺にもまたログインスタンプ押そうとか思わないんです?」
ちひろ「朝起きたら隣に顔があるのに必要なんです?」
P「あー……生存確認が目的だったのか」


ちひろ「そんなにスタンプが欲しいのなら首筋に──」
P「新婚時代の話はやめよう? お互い致命傷になる」


P「スタンプ集めきったら何か特別なプレゼントとかなかったんですかね?」
ちひろ「あったじゃないですか」
P「え?」
ちひろ「そう! プレゼントは わ・た・し」
P「え? もう一回言ってみて?」


「ぱぱ ログイン ってなに?」
P「義務」
「ぎむ? ぎむ ってなあに?」
P「裏切らないことさ」
ちひろ「なに話してるんですか」

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