千束「才能とはなんぞや」【リコリコ】 (37)

千束「チンアナゴー」

たきな「……」

千束「チンアナゴ~♪」

ミカ「……」

千束「チンアナゴ……」

クルミ「……」

千束「ちんあなごぉ!!」

ミズキ「やかましいわぁ!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1664019321

千束「あれぇ、うるさかった」

ミカ「うるさいワケではないが、奇妙な躍りでも踊って、どうした?」

千束「せんせぇ、これ奇妙な躍りじゃないから」

クルミ「いや、どう見ても奇妙だからな」

千束「いやいやいや、これはチンアナゴのポーズだよ」

クルミ「知るか」

千束「そうだよね。たきな」

たきな「えっ、えぇ……まぁ」

ミズキ「んで、そのチンアナゴのポーズやって、アンタは何するつもりなのよ」

千束「んと、これとたきなの『さかなー』を合わせて一発芸的な何かをやります!」

たきな「やりませんから」

千束「えー、やろーよーたきなぁ」

たきな「そんなことやって、何か得になることでも?」

千束「上手くいけばさぁ、お客さんに披露してSNSに発信すれば話題になるかも!」

ミカ「メニューで話題になるのは嬉しいが、そういうのはどうだろうな」

ミズキ「てゆーか、安易にSNSで発信したら、危ない奴に目ぇつけられるわよ」

千束「じゃあさ、じゃあさ、DA本部で披露して楠木さん笑わせよ」

たきな「何を言ってるんですか?」

千束「もしかしたら、それでたきなのDA復帰が叶うかも!」

たきな「恥かくのが目に見えてるのでやりません」

千束「え~」

ミズキ「アンタさぁ、バカも休み休み言いなさいよね~」

ミカ「DAはお笑い機関じゃないんだぞ」

クルミ(ボクからしたら、セキュリティはお笑いレベルだけどな)

千束「ちぇー」

ミズキ「さってとぉ、もうじき開店よ」

クルミ「まぁ、客が来るのはお昼頃くらいだけどな」

ミカ「新作のメニュー考えるのには、丁度いい」

たきな「今度は何を作るんですか?」

ミカ「それは、お楽しみだ」

クルミ「ボクは一眠りするから用があったら……」

ミズキ「アンタも働くんでしょーが!」

クルミ「えぇ……」

千束「……」

 
千束「はぁ」



 
千束「チンアナゴー」

たきな「……」

千束「チンアナゴ~♪」

ミカ「……」

千束「チンアナゴ……」

クルミ「……」

千束「ちんあなごぉ!!」

ミズキ「本日二度目の、やかましいわぁ!」

千束「あぁ、いやぁ、ごめん」

ミズキ「何回も何回も『チン』を連呼するな!」

クルミ「『アナゴ』はどこいったよ」

たきな「今日の千束は何か変ですよ」

ミズキ「コイツが変なのはいつものこと」

千束「酷いなぁ」

ミカ「何か、悩みでもあるのか?」

千束「悩みっていうか、まぁ考え事というか」

ミズキ「アンタが考え事ねぇ」

たきな「それで、何を考えてたんですか?」

千束「なんていうか……自分の才能ってなんなのかなーって」

たきな「才能、ですか」

千束「そっ、才能」

ミカ「……」

千束「あっ、ほら私ってナントカってのに支援されてて」

たきな「アランという匿名の……でしたっけ?」

千束「そう、それ」

ミズキ「あぁ、私に男を支援しないクソのアレか」

クルミ「お前に支援される男が可哀想だ」

ミズキ「あんだとぉ!」

千束「それで、自分の才能ってなんなのかなって考えてたの」

たきな「あのチンアナゴのポーズで?」

千束「そっ、なんか閃くかなって」

たきな「閃きましたか?」

千束「ぜーんぜん」

クルミ「そもそも、自分の才能に見当でもついてるのか?」

千束「最初はポスターに描かれてた、ビキニのお姉さんの……うっふん♥」

クルミ「あっ、ないわ」

たきな「でしょ」

千束「ぐぬぬぬ……」

ミズキ「そういうのはアンタよりも……このアタシ」

クルミ「もっとないわー」

ミズキ「あるわ、ボケェ!」

千束「ちょいちょい、喧嘩はやめやめ」

ミズキ「ムスッ」

クルミ「……」

千束「まぁ、それじゃないのは分かってるんだけどね」

たきな「とすれば、今も千束自身、その才能はなんなのかよく分からないと」

千束「まっ、そんな感じかな」

たきな「そういうのは自分で見つけるより、誰かに見つけてもらうのが手っ取り早いような気もします」

千束「んー、じゃあ先生。私の才能って何?」

ミカ「さぁ、分からんな」

千束「十年一緒にいてぇ」

ミカ「そんな簡単に才能は見抜けるものじゃない」

千束「ぶーぶー」

ミズキ「アタシからしたら、アンタは何かとやかましい。まさに才能だわ」

千束「そんなにやかましいかな?」

ミズキ「あぁもう、やかましいったらありゃしない」

千束「えー、そっかなぁ」

クルミ「ボクは来て間もないから、千束の才能とか分からんぞ」

たきな「わたしも上手くは説明できませんね」

千束「ざぁ~んねん」

ミカ「そろそろ、昼休憩もおしまいだぞ」

ミズキ「さーて、昼からも飲んでますかぁ」

クルミ「忙しくなったら呼んでくれ」

たきな「仕事はちゃんとして下さい」

クルミ「ういー」

ミカ「あとで試作品を食べてくれないか。感想を聞きたい」

クルミ「んー」

ミズキ「あいよー」

たきな「了解しました」

千束「ちなみに、何作ってるの?」

ミカ「アイスキャンディーだ。新商品として、出そうと思っている」

千束「うぉっほー♪」



 
千束「……」

Prrrrr

千束「あっ、もしもしもしもし? 千束だよー」

フキ『あっ、なんだ? なんか用か?』

千束「おぉ、フキさん。なんか苛ついてんねぇ」

フキ『電話の相手がお前だからだよ』

千束「先生からが良かった?」

フキ『なっ、そんなんじゃねぇ!』

千束「図星だなぁ、にししし」

フキ『んで、何か用か?』

千束「さて、その用とはなんでしょうか?」

フキ『切るぞ。もうじきミーティング再開だからな』

千束「ちょいちょいちょい、待って待って」

フキ『ならさっさと用件を言え』

千束「はいはいはいはい」


 

 
千束「あのさぁ、フキから見て私の才能ってなんだと思う?」

 

フキ『あぁ? んなもん決まってんだろ』

千束「おっ、何々?」

フキ『私を苛つかせる才能だ』

千束「ちょっ、何それー! 酷くない!?」

フキ『お前は気付いてない……いや、気付くはずもないわな』

千束「私、フキのこと苛つかせてた? あちゃー、ごめんねー」

フキ『そういうのだよ、ったく』

千束「そっか」

フキ『まぁでも、そういうのがあってこその千束だと私は思う』

千束「おっ、誉めてる?」

フキ『知るか』

千束「それじゃあ、私から見たフキの才能は……」

フキ『つうか、才能とか言われても分かんねぇし、興味すらねぇよ』

千束「私は興味アリアリだけど」

フキ『普段からそんなもん意識すらしてねぇしよぉ』

千束「実際、私も前まではそんなには意識してなかったんだけどね」

フキ『だろぉ? 才能なんて正直どーでもいい。ただ任務こなして、生きて帰って食べて寝て……それだけでいい』

千束「うん」

フキ『大体、お前は才能以外でも恵まれ過ぎなんだよ。先生持ってった時点で』

千束「じゃあ先生に会いに、フキもリコリコに遊びにおいでよ」

フキ『任務外での勝手な外出は無理だ』

千束「それか、バカやらかして左遷されるのもありなんじゃない」

フキ『バカか。たきなじゃあるまいし』

千束「お堅いなぁ」

フキ『お前が柔らかすぎんだよ』

千束「ちなみに先生は分からないって」

フキ『分からない方が幸せかもな』

千束「どういう意味ぃ?」

フキ『うっせぇ、切るぞ』

千束「あー、ちょいちょい待って」

フキ『なんだよ! まだなんかあんのか!?』

千束「あのさぁ、もしさぁ」


 

 
千束「『さかなーとチンアナゴ』を披露したら、たきなをDAに戻してくれる?」

 

フキ『は? なんだそれ』

千束「たきなと私の一発芸!」

フキ『DAはお笑い機関じゃねぇぞ!』

千束「先生にもそれ言われた」

フキ『そんなことでたきなが戻れると思うなよ!』

千束「楠木さんに直接やるからいいもん」

フキ『そん時はDA本部前でお前らを拘束して、私が鉛玉をぶちこむ』

千束「おぉ、恐ろしい」

フキ『今からでも拘束しに行こうか?』

千束「あー、はいはい。この話はやめやめぇー」

フキ『ったく、私のこと舐めてんのか、いい加減にしろ!』

千束「んー、舐めるって言えば、先生が作ってくれたアイスキャンディー舐めてるよ」

フキ『おい! 今すぐそれ持ってこい!』

千束「なーに言ってんの。もうお店閉店したよー」

フキ『デリバリーしろ! 私とお前はファーストだろ!? ファースト特典とかあんだろ、5分で持って来い!?』

千束「ないないないない」

フキ『だったら……』

千束「あっ、もう切るね。私もボチボチ帰りたいし」

フキ『あっ、待てこらちさ』

ピッ

千束「なんか疲れた……」

ミズキ「アンタ、電話長すぎ」

千束「いやー、フキと話が弾んでね」

クルミ「掃除を手伝えー」

千束「はーい。あれ、先生は?」

たきな「用があって出掛けました」

千束「そっかそっか」

 

 

 

 
フキ「サクラ、今から支部(リコリコ)行ってくるわ」

サクラ「もうじきミーティングが始まるッスよ」

フキ「トイレに籠ってるとかで誤魔化せ」

サクラ「無茶苦茶ッスね。私が怒られ」

フキ「そこをなんとかすれば、ファーストに近付けるかもな」

サクラ「嘘付くの下手すぎ……諦めるッス先輩!」

フキ「離せっ、くっそぉぉぉぉ!!」



 
千束「はぁー、ちかれたちかれた」

たきな「ずっと遊んでませんでしたか?」

千束「いやいや、遊んでたのはたきなも同じでしょうに」

たきな「それは、まぁ」

千束「また負けたね」

たきな「言わないで下さい!」

千束「にししし」

たきな「あの」

千束「はい?」

たきな「実はわたしなりに考えてみたのですが」

千束「何を?」

たきな「千束の才能が何かをです」

千束「ほぉマジで」

たきな「はい」

千束「それで、私の才能ってなぁに♥」

たきな「セクシーなポーズ決めても、それじゃないのは確かですから」

千束「ぐぬぬぬ……」

たきな「わたしが思うに、千束の才能は……みんなを笑顔にしたり、楽しませたりすることだと思います」

千束「根拠は?」

たきな「わたしです」

千束「んー?」

たきな「千束やみんなと出会って、わたし自身も変わったと思います」

千束「最初の頃はツンツンしてたね」

たきな「あの頃はDAに復帰することで頭が一杯でしたから」

千束「じゃあ『さかなーとチンアナゴ』でDA制圧しに行く!?」

たきな「逆に制圧されそうなんでやめます」

千束「ちぇー」

たきな「それに、今は無理にDAに復帰したい気もそこまではありません」

千束「あっ、そうなんだ」

たきな「心境の変化ってやつですかね。千束やみんなといる毎日が楽しいです」

千束「ありがと。だけど、たきなの心境変えることなんかやったかな?」

たきな「まぁ、自分の才能というのは自分自身で気付くようなものでもありませんから」

千束「そっか、そうだよね」

たきな「自分で気付かなければ」

千束「お互いで気付けばいい、でしょ?」

たきな「はい」


 

 
たきな「だから千束、これからもよろしくお願いします」

千束「おうよ!」

 

千束「ふふっ」

たきな「千束?」

千束「なーんだ。深く考えることなんかなかったんじゃん」

たきな「深く考えることですかね?」

千束「そうそう。深ーいよ」

たきな「?」

千束「あー、なんかスッキリした」

千束「あっ、そうだ。私、たきなの才能知ってるよ」

たきな「なんですか急に?」

千束「知りたぁ~い」

たきな「も、もちろんです!」

千束「それはね」

たきな「うんうん」

千束「ボードゲームで連敗しまくること!」

たきな「はぁ!?」

千束「みんな一回は勝ってるのにたきなはねぇ」

たきな「相手がクルミだから仕方ないだけです!」

千束「てか、何連敗よ」

たきな「ちょっと負けが込んでいるだけです!」

千束「明日も負けだね」

たきな「明日は勝ちます! 勝つんです!」

千束「期待してるよーん」

たきな「ちさとぉー!」

 

 
おしまい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom