タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part8 (673) 【現行スレ】
このスレは、誰かが書いたタイトルからSSを書くスレです。
(例:タイトル「○○○○」)
誰がタイトルを投下しても、SSを書いてもOKです。
たった一文のあらすじ程度のものでも、数レスにわたる短編SSのようなものでも、何でもお書きください。書ける内容に制限はありません。
ただし、板のローカルルールに則って、R-18内容を含むものを書くことはタイトル・SS共にご遠慮ください。
他の人とタイトルが被ってしまっても大丈夫です。気軽に書き込みましょう。
前スレ↓
タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573460059/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1657890120
前スレ>>983
タイトル「スイカの種」
伊藤「えーお世話になってます、伊藤と畠中で、オズワ〇ドですお願いしまーす」
畠中「お願いしまーす」
畠中「伊藤ちゃんさぁ、突然だけど、スイカって知ってるよね?」
伊藤「……ん、まあ日本人だからね。夏になれば一玉買って帰るくらいのことはするけど」
畠中「最近思ってるんだけどさ、スイカって食べるの面倒くさい食べ物ランキング1位だと思う勢力、思わない勢力だと、君もそっち側なんだよね?」
伊藤「……そっち側ってどっち側のそっち側なの?あんまわかんないけど」
畠中「図らずも俺たち同志だったというわけか」
伊藤「どっち側のそっち側なのかピンと来てないんだけど」
畠中「でもポンとは来てるわけだよね?」
伊藤「……えー、効果音の問題ではないと思うのですが皆さんどう思います?」
畠中「スイカってさ、中に種があるわけじゃない?その種が不規則に入ってるから、どうしても食べてる時にかみ砕いちゃうんだよね」
伊藤「あーまあ確かにそうだね。まあ俺は特別食べにくいとも思ってないけど」
畠中「だから食べにくいオブザイヤー受賞しちゃってるんだよね」
伊藤「え、俺さっき食べにくい食べ物ランキングって聞いた気がするんだけど」
畠中「でさぁ、『この食い物が食べにくい!』第一位のスイカをなんとか食べやすく、法律か何かで是正できないかなって考えてたんだよ」
伊藤「まあ法で縛れるものじゃないですけどね」
畠中「まず一つ方法として、スイカを1ミリの厚さに切ったら種も取りやすいと思うんだよね」
伊藤「種の取りやすさの代わりに食感が犠牲になってるんだけど」
畠中「そう?」
伊藤「なんで1ミリのクラッカーみたいなスイカ食わなきゃなんねぇんだよ。そもそも手がべたべたになるからね」
畠中「やってみなきゃわかんないだろ!どうして君はできそうもないことを無理ってすぐ決めつけるんだ!」
伊藤「え、今の俺が悪い?一ミリも悪くないと思うけど」
畠中「あとこれは商売の話なんだけどさ、夏にスイカの種を抜いて種無しスイカだけにして渡すバイト始めたらガッポガッポじゃない?」
伊藤「誰がやるのそのバイト。単純作業で秒で飽きると思うんだけど」
畠中「だぁい丈夫!細かい、小さなことでも喜べる小学生を時給500円で雇うから!」
伊藤「ガッポガッポどころか警察警察(マッポマッポ)来るわ!法律違反だから!あんま労基なめんなよボケフルーツが!」
畠中「……スイカは野菜ね?」
伊藤「細かいわ!」
畠中「君さっきから聞いてると反対派っぽく聞こえるんだけど、君は食べやすい派の反対派のアンチなの?」
伊藤「わざわざ2回否定しなくていいから!食べやすいとも食べにくいとも思わねぇよ」
畠中「でもメロンは種が1列になってるわけ、スイカはそれに比べてあの体たらく」
伊藤「体たらくってスイカ農家に失礼だから!」
畠中「世界に冠たるワーラーメロンもベジタボー・スタンダードにアジャストしなきゃいけないよね」
伊藤「なんだワーラーメロンって。ウォーターだろ。急に発音良くして帰国子女みたいにしなくていいから」
伊藤「大体今種無しスイカってのもあるからね?」
畠中「種のないスイカなんてスイカじゃないだろ?そうだろう!」
伊藤「え、どうだろうなんで怒ってんの」
畠中「伊藤ちゃんわかってないね。スイカはね、あの面倒くさい種取りを蒸し暑い中、扇風機の風だけで涼みつつ外の虫の音をBGMにとるのがいいんだよ」
伊藤「でもそれ食べにくくない?」
畠中「食べにくいのがいいんだよ。食べにくいとこにむかつきつつ食べにくさを許容して食べて、そのあと食べにくいって文句言いつつ過ごすのが夏の醍醐味なんだから」
伊藤「いやお前が一番面倒くさいわ。一旦やめさせていただきます」
前スレ>>977
タイトル「殺人事典」
「この世界には殺人事件が毎日起こっている」
「突然殺されて、
命を強制的に終わらせられる被害者の事を思うと俺は怖い
想像しただけでゾッとする」
「だから俺は、そんな殺人の被害を少しでも減らすために殺人事典を作る事にした」
「まず、殺人とは何なのか、殺人の種類なんかを徹底的に調べ上げた」
「そして世界の名立たる殺人鬼や、あまり知られていない小さな殺人事件を記して」
「いや、こんなんじゃ駄目だ」
「殺人の事を知るには実際に殺人をしてみなくては、読者に真の殺人を教える事は出来ない」
「俺は世界中の殺人鬼の起こした事件を模倣して殺しを行った」
「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しまった」
「大分殺人の事が分かってきた、これなら読者に十分殺人の事を伝えられるだろう」
「よし、仕上げに俺オリジナルの殺人事件を起こし、それを記して完成だ」
「この事典を読んで、少しでも殺人の犠牲者が減るといいなぁ」
タイトル「スイカVSメロン」
タイトル「グリーン・マイケル」
タイトル「リーヅモピンフタンヤオ」
タイトル「伊勢貝転成」
タイトル「一者一様」
タイトル「一発一中」
タイトル「僕が望んだ未来」
タイトル「死なせ屋」
タイトル「自殺幇助師」
タイトル「歩けメロス」「泳げメロス」「飛べメロス」
>>37 「歩けメロス」
セリヌンティウス(もう俺のことなど忘れ、身体を休めて歩け。な?)
メロス「て、言っててくれないかな~…」
「その後、この二人の姿を見た者はいなかったと言う」
(ナレーション:とある王様)
タイトル「High Saw Death」
タイトル「貴様の名は。」
タイトル「臭殺」
タイトル「ワライジヌ」
タイトル「笑死」
タイトル「使い捨ての命」
タイトル「命のポイ捨て」
タイトル「須加丹半島」
タイトル「禿茶瓶」
タイトル「火葬研の女」
タイトル「仮装研の女」
タイトル「仮想研の女」
タイトル「いりょくぎょーむぼーがいをやってみた」
タイトル「しょうらいのゆめはけいむしょにはいりたいです」
タイトル「西岐の三方」
タイトル「博多の塩」
タイトル「ナリカワリ」
タイトル「ナスリツケ」
タイトル「平仮名戦隊あマン」
タイトル「あの一番」
タイトル「日本語における五十音を平仮名で表記した場合に最初に現れる文字戦隊あマン」
タイトル「ちびっこ戦隊こどもマン」
タイトル「異形少年」
タイトル「異形と少女」
タイトル「獄中讃歌」
タイトル「シケイシュウノサイゴ」
タイトル「小心者と傷心者」
タイトル「異形と少年」
タイトル「異形少女」
タイトル「ココニイタアカシ」
タイトル「キミガイタアカシ」
タイトル「甘テラス」
タイトル「尼寺ス」
タイトル「海女テラス」
タイトル「押すプレイ」
タイトル「推すプレイ」
タイトル「雄プレイ」
タイトル「殺人免許証」
タイトル「自殺免許証」
タイトル「犯人免許証」
タイトル「遺体免許証」
タイトル「米丼」
タイトル「ホワイトワイシャツ」
タイトル「ドラざえもん」
タイトル「銅鑼右衛門」
>>201 タイトル「米丼」
とある企業会議室―
議長「―はい、Aさん」
社員A「つまり、新しい商品名には分かりやすさが必要かつ重要であると思われます」
議長「なるほど」
社員B「確かに、アピールするのに一般の方々には理解しがたい難しい名前はNGだろう」
会議は進み―
議長「親しみやすさ、呼びやすさ、分かりやすさ…日本人の心と日常に訴える響き」
議長「それでは、わが社の新開発食品のメニュー名は以下のように決定いたしました!!」
社員一同 (拍手)
議長「米丼!」
社員一同 (普通にご飯でよくね、ソレ?)
※野中〇次
マンガ「課長バ〇一代」な雰囲気を想像すると、分かりやすいかと思います
タイトル「イツワリ」
タイトル「ITSUWARI」
タイトル「オスワリ」
タイトル「Sit down」
タイトル「新世紀江波ンゲリヲン」
タイトル「起動せんしガンダム」
>>254
「は?今、何と…?」
「だから「ば」だよ、ば!」
「いやいや!そりゃ僕だって漢字くらい読めますよ!波の字を「は」とか「ば」って
読み方ある事くらい知ってます」
「…なら納得しろ、《上》からの指示だ」
「あ。納得。て言うか先輩!最初にそれ言ってくださいよ、もう」
二人の看板屋の先輩と後輩が、明らかな誤字であろうとした字の間違いに気付きながらも
会社のお偉方さん達の「今はこういうのがウケるんだ!」とする、「謎の圧」に負け、今
この二人の仕事人としてのプロ意識と、自身の生活を守る為の会社への忠誠、帰属意識
との戦いがここに終結していた―
「先輩、今なら俺ビッ〇モーターで働ける気がしました」
「ああ。俺もだ…」
タイトル「42.915km」
タイトル「真正規江波ン下痢音」
タイトル「田所恐怖症」
タイトル「ドラゑもん」
タイトル「目利井さん」
タイトル メリーさん「メリークリスマス」
タイトル「大悟も歩けば棒に当たる」
タイトル「将来の夢は藤井聡太を超える9冠を取ることです」
タイトル「Windows21はいつ発売されますか」
タイトル「線分AB上のメリークリスマス」
タイトル「葛西報知器」
タイトル「家裁報知器」
タイトル「簡裁弁」
タイトル「小荒野町」
タイトル「念じ報告書」
タイトル「肥後欲」
タイトル「賛成党」
タイトル「虚無欲」
タイトル「中性党」
タイトル「想像のフリーレン」
タイトル「シン・タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ」
タイトル「きかんしゃトーマスときゃくしゃジョン」
>>356 タイトル「想像のフリーレン」
「そうそう、この間俺が聞いた噂ではさ~」から始まる噂話が噂話を呼び
もうオカルト的な用語「友達の友達から聞いたLV」に至って、ついこの間まで
ピンシャンしていた人でさえもあっという間に天国の門の先へ―
信じるか信じないかは、ご想像にお任せします。
タイトル「鯉の病」
タイトル「己斐の病」
タイトル「故意の病」
タイトル「節の病」
タイトル「不死の病」
タイトル「父子の病」
タイトル「電源を斬る」
タイトル「電源をKILL」
タイトル「家族条約」
タイトル「家族契約」
タイトル「鯉のマイアヒ」
タイトル「己斐のマイアヒ」
タイトル「故意のマイアヒ」
タイトル「ひろしま!」
タイトル「嘔吐マチックトランスミッション」
タイトル「横浜県神奈川市」
タイトル「自己皇帝感」
タイトル「きるらぶっ!」
タイトル「Kill Love??」
タイトル「蟷螂にOh No」
タイトル「蟷螂に小野」
タイトル「灯台下倉敷市」
タイトル「東京都東京郡千代田村大字丸の内」
タイトル「神吹雪」
タイトル「アタック2355」
タイトル「アタック0655」
タイトル「First Live」
タイトル「ファースト・ライブ」
タイトル「セカンド・シティ」
タイトル「灯籠に鉄球」
タイトル「凡才カバボン」
タイトル「ここは何のスレッドですか」
タイトル「俺のものはお前のもの、お前のものもお前のもの」
タイトル「この将棋部には問題がない!」
タイトル「中目黒のさんま」
タイトル「房総のフリーレン」
タイトル「馬場抜き」
タイトル「竹取化物語」
タイトル「伊勢市転生」
タイトル「伊勢湾転生」
タイトル「九蘇歩危駅」
タイトル「九蘇歩危町」
タイトル「九蘇歩危市」
タイトル「タワゴト」
タイトル「ザレゴト」
タイトル「生徒会には一存がある」
タイトル「生徒会には役員共がある」
タイトル「オシゴト」
タイトル「マルゴト」
タイトル「メニューには究極がある」
タイトル「メニューには至高がある」
タイトル「箱の中にて」
タイトル「箱の中に手」
タイトル「箱の中見て」
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タイトル「全児童選択完走機」
タイトル「目黒のさんまvs三崎のまぐろ」
タイトル「エセ神宮」
タイトル「隣の芝は増上寺」
タイトル「あいうえお かきくけそさし すせそたち」
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タイトル「ASMR配信者の幼馴染に俺の耳が狙われている件」
タイトル「たちつて党」
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タイトル「佐志須瀬荘」
タイトル「さしす世相」
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タイトル「-√○」
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タイトル「マーソン・ナコトモ・アラーナー」
タイトル「マーソン・ナコ=トモ・アラーナー」
こっちの方が良いかも?
タイトル「放射線状のメリークリスマス」
タイトル「放射線状のアリア」
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タイトル「うどん丼とそば丼どっちがいい?」
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タイトル「藍上王」
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タイトル「たちつて糖」
タイトル「仮想圏の女」
タイトル「下層圏の女」
タイトル「東京土地時占拠」
タイトル「診察薄幸」
>>568 「仮想圏の女」
バカでかい引き違い戸が僕の部屋の東側にあって、そこからは駅から登ってくる坂道を見おろすことができる。商店街のある通りとは違うが、両脇にはアパートが何棟も何棟も連なっていて、時間帯によってはまったく人通りの絶えないときがあった。
僕はいつも7時35分に目を醒ます。働いていたとき、かならずその時間に起床していたので、その癖がいまだに抜けないのだ。そしてうがいをして顔を洗い、しっかり香りを立たせた紅茶を淹れ、少しの牛乳を注いで飲む。このときハムエッグを焼くと、ちょうどいい具合に茶葉を抽出できたくらいにみごとにカリカリにできあがる。それにミニトマトやニンジン、あるいはレタスなどを添え、パンとヨーグルトを用意すれば朝食の完成だ。気分によっては、スープをつけてもいいだろう。僕はこれを毎朝かならず用意している。そして目玉焼きのカリカリになった白身をサクサクと咀嚼し、バリパリのレタスで黄身を包んで食べるのだ。ここで噛まれて鳴るシャキシャキとした感触で僕は完全に目を醒ます。最後にミルクティーを飲み干し、ヨーグルトを完食すれば、また今日も彼女と僕にうってつけの日だ、と確信する。
僕が朝食を食べ終えるのはいつも8時15分前後のことだが、彼女が朝この坂道を下っていく時間帯は必ずしも一定ではない。8時20分のときもあれば8時30分をまわることもあるし、あるいは8時50分になる直前にあわてて降りていく姿も見たことがある。だがいずれにしたって、髪のセットの丁寧さあたりに差はあれど、朝焼けみたいに淑やかに光るナチュラルな色合いの茶髪は変らないし、すっきり無駄のない頬と、そのすぐ上にある、洞穴に差しこむ一条の光のような睫毛、陶磁器みたいに澄んだ瞳はいつだって僕の目を引きよせてしまう。若干の遠目にうつるときには、服越しでもわかる脚線美と、すばらしくバランスの取れたくびれにかたちのよさが明白な乳房に夢中なのだが、だんだん距離がつまり、顔が見えるようになってくると、それまで見ていた身体を忘れて、その整った顔以外見えなくなる。飴のようにぷっくら艶のある唇に、僕は吸い込まれそうになる。
彼女が帰ってくるときも同様だ。彼女が駅からこの坂を通って帰るのは、早くても19時10分、遅ければ21時30分ごろだ。となると基本道は暗いわけだが、幸いにも人通りは多いおかげで、街灯も多く立っていて、やって来る彼女を見るのに不都合はない。このときも朝と大きくは変らないのだが、しかし一つだけ、はっきり違う点がある。というのは、かならず彼女が影に入る、ということだ。いくら外套が多くたって、坂道全部を照らすには至らない。だから、街灯の照らすスポットとスポットの間で、彼女の姿は暗闇に溶けかかる。そのたびに僕は、彼女がここからいなくなっていしまわないかと怯えるのだ。彼女は平日ほぼ毎日、同じ時間にこの坂道を昇り降りしているのだが、それはすなわち予定外の邂逅や足止めを、ほとんど食っていないということを意味する。例えば飲み会やデートなど。だから、そのような普段とは違う時間の割き方をするようになれば、僕はこの巨大な引き違い戸の前で、彼女をひたすら待ちぼうけをすることになってしまうわけだ。僕の人生はいま彼女のことを考えることでほとんどが占められているから、想定外に見られなくなれば、それはもう恐ろしいったらありゃしない。だからどうかお願いだ、僕の下から離れないでくれ、と坂道を上がり、暗闇のなかを歩いていく彼女の後ろ姿を見ながら僕は祈っている。それとともに、彼女の、この坂道を往来していないときの姿を、僕はいつも考える。例えば朝。オーバーサイズのTシャツと短パンで目醒める。朝食はレタスとトマトとハムのサンドイッチ。服は寝ていたときと同じだ。食べ終えると歯を磨いて髪のセット、化粧に入る。これにきっと30分は費やすだろう。そしてそうにもかかわらず、自分の肉体の全体にかかる美しさは、僕ほど理解してはいないはずだ。朝に恋人は考えない。いまはたぶんそれどころではないのだろう。時間を自分のために使う、僕の理想的な女。
会社への往路、彼女は周囲のことなど何も気にしていない。気にする必要もないからだ。会社でも同様、彼女は揺るがぬ自分自身をもって、周囲にカリスマを振りまいて、勤務時間をすごす。ぶれない心で同僚や顧客、取引先と対峙する彼女に挑戦しようとする気はまず起こらない。彼女の目は澄んでいて、曇らない。その目があらわす快晴が、濁った心根の人間たちをひるませるのだ。
さて家に帰ると、彼女はため息をつきながら、まず風呂に入る。ベルトを緩めて、ソックスを脱いだ次にブラウスをはだけて洗濯機に入れ、ボトムスも脱ぐとあとは下着のみを身につけた状態になる。ボディバランスの露わになった自分を、彼女は洗面所の鏡に映してみる。といっても、肯定的な感情からではない。むしろ、鏡のなかの自分を敵視するというのが近い。彼女のすばらしい均整は、奇蹟的なバランスでできている。乳がもう少し大きくても小さくても、くびれがあとちょっとなだらかだったりくっきりとしてたり、足の肉づきがちがっていれば、違和感のある体になっていたかもしれないのだ。彼女は人の目など気にしないが、自分の覚える違和感は許しがたかった。その不均整に気づくと、それをすぐさま殺したい欲望に駆られる。自分のイメージと異なってゆくのが彼女は怖かった。いま、イメージ通りにうまくいっている。それをみすみす変えるのは惜しい。この自分こそがもっとも傷のない、理想に近い私なのだ。ここから離れ、劣化することは、煉獄で苦しむに等しいことだ。下着を脱いで、全裸になる。隠れていたところが、彼女の前に露わになる。それらはきれいな桃色だ。まだ、使い古されていない。私は、まだ誰に従属もせず、気高く生きている。永遠の命を得たかのように、今の私を何としてでも守り抜く――。
僕は彼女がそう生きていることを確かに知っている。
>>568 「下層圏の女」
「人」として「下層」と言う話なのか?「居住区域」が単に「下層にある」だけの話なのか?
とした些細な疑問の始まりからこの話は次第に流転していく…
結局、卑しい人間性があるから低い地域にそうした卑しい連中同士で寄せ集まるだの、
高い地域に住まう人間達はすぐ低地に住まう者達を嘲笑うから逆に人間性の方は低いのだ、
などとした人の深層にある意識的な差別意識の問題やら何やらと。
オチとしては最終的に主人公は「女」である事から話は一気に飛躍し
「下層にいた女」は、実は「上層圏出身の女」であると、とある異性にバレて
結婚した後の二人は「中くらい」な幸せを手に入れた、とかいうラブコメ的な話になって幕。
そして、この作品はそれなりに多少の話題作にはなったもののこのオチのせいで
続編の話の製作が非常に困難を極めている、との噂がまた下層に広まったと
上層部の連中が頭を抱えてしまい、その逆転的な現象を今度は「中間層の連中」がさらに台無し
にするグラウンドゼロな計画が立てられて、一番最初の「下層圏の女」は後に
全てを無に帰さす「ジョーカー」的な存在として語り継がれたという
タイトル「THE FURIKOME SAGI」
>>569「診察薄幸」
「つまんないみたいですね」
白髪が汚く混じった、眼鏡の茶釜みたいな医者が、手元のカルテに何かを片手で記入しながら言った。左手は白衣のポケットにしまったままだ。
「ええ、ほんとに」
女は頬に左手を添え、うつむきながら返した。センターで分けた髪が揺れる。その陰で、切れ長の目が瞬いた。その目は医者を捉えてはいない。「どうしても、私だけみんなと一緒じゃない気がするんです。いや、仲間外れとか、そういうんじゃなくて」
医者は何も言わなかった。同じ姿勢で、カルテに視線を落としている。彼は女が続きを言うのを待っていた。だが女はそこで話を止めてしまうつもりだった。だから、しばらくの間、診察室には沈黙が漂った。「で?」医者がしびれを切らして声を出した。眼玉だけを動かして女を見た。
「いえ、あの、」女はどぎまぎしつつ、「みんな、楽しそうで、いいなあって。月に1回くらい昔の友達と会ってお茶するんですけど、そこでみんないいニュースを持ってくるんですよ。結婚したとか、彼氏と同棲はじめたとか、NISAで元手の6倍くらいに増やせたとか、お母さん元気だとか」
「へえ」
医者はもう女には興味がなかった。この女、周りのことばっかりじゃないか。もっと自分に目を向けやがれ、医者はまたねじのような目で女の様子をうかがった。女は目だけを医者に向け、あとは全体的に前傾して訴えていた。上目遣いだが、恨みがましい。
「そんなに周りがうらやましいなら、周りとおんなじようにやろうとしたらどうですか」
医者はつっけんどんに言った。それは女を怒らせたらしく、
「できたらしてますが。彼氏だって作ろうとしましたよ、もちろん結婚も考えて。でも、何回か会って、ホテルにいったら、それっきりです。投資もしたし、自己研鑽もしたし、服とかお化粧とか、その辺も頑張りましたよ。でもこうなんですよ。いまじゃついに保証人になってた人が蒸発して、借金の最速までされて、しかも会社は保険料とか年金を払ってない。誰のせいですか、これは」
「知りませんよ」
医者はもうカルテしか見ていなかった。「不幸を訴えられても、私はどうにもできませんからね。胸が詰まるっていうから見てあげたのに、あなた関係ないじゃないですか」
女は目を瞠った。なんです、と医者は面倒そうに言った。「いくら精神科でもね、あなたが悪くなきゃどうにもならないんですよ。私医者ですからね。じゃあ、そこに入って」
医者は臙脂色のスクラブの袖がのぞく右手で、コンクリートの独房のような部屋の、医療用ベッドを指した。
>>528「溶解ウォッチ」
叔母が小包をくれた。とにかく開けてみんしゃい、とせかすので包みを解くと、なかには時計があった。
銀色に輝く、ピカピカの新しい腕時計。少し重いが、文字盤には精密に螺鈿細工のような加工がされていた。
後ろでせんべいを食べていた父がいいじゃないか、と言った。トイレから戻ってきた母も時計を誉めた。
お礼を言った後僕は、
「でも叔母さんこれどうしたんですか、誕生日でもないし、就職したのでもないですよ」
「もらったのよ」
間髪入れずに叔母が言った。
「もらった?」
僕は訊ねた。
「そうだよ」
叔母さんは続けた。「息子夫婦が近くに住んでてね、そこに嫁さんのいとこが一緒に住んでるのよ。
そのいとこが作ったんだって。いろんなもの作ってるみたい」
「でもそれをどうして僕に」
「だって時計はあるんだもの、これ以上あっても、ねえ? 隆くんなら使うかもしれないし、あげちゃおうと思って」
「ありがたく頂戴します」
そう返して箱に時計を収め、元どおりに包みを結びなおした。
帰ってから時計をとり出し、ベルト部分を持って文字盤を改めて確かめた。
天の川のような模様が、金色や銀色、結晶型の小さな部品で表現され、なるほど確かに見事だった。
角度を変えると、砂丘の朝のようにきらめいた。個人がこれを作りあげたかと思うと、実に見事なことに思えた。
手首に巻いて、感触を確かめる。金属らしく、ひんやりしている。手工業の腕前とは思えない精巧さだ。
僕は安心しきって腕を下ろし、しばしぼんやり仰向けに寝転んでいた。
するといつの間にかうとうとしていたらしい、記憶がすこし飛んでいた。
僕の目がさえたのは、太ももから股関節にかけて明らかな違和感を覚えたからだった。驚いて下半身のほうを見た。
感触でいえば液体の流れる感じだ。おねしょか? とあわててもいたものだ。
だが決して洩らしてはいなかった。服の鼠径部のあたりから、銀色の液体が垂れていた。
それがマットレスにもついているようなのではね起きると、やはりベッドに銀色のたまりができ、一部は皮膚にもついていた。
どうしたことだ、どうしたことだとうろたえていた。その最中、左手首にさっきとは異なる違和があることに僕は気づいた。
左手首を確認すると、腕時計はまだそこにあった。しかしそれは、ベルトや文字盤のフレームなどの大部分が融け、
底の抜けた製氷皿のようになった残骸でしかなかった。肌には銀色の染みもついてしまっていた。
僕は起きあがったまま固まっていた。信じがたい現実と、突如降ってきた出来事への対処の必要とが、
次に僕は何をすべきかを、考えられないようにしてしまっていたのである。
>>573 「THE FURIKOME SAGI」
ごく一部でマイナーながら話題性を集めた前作の「THE ORE・ORE SAGI」劇場版にまさかの続編がw
打(ぶ)つ、差す(指す)、振り込むなどは将棋や麻雀でも使われる言葉である事にかこつけた
駄洒落的展開込みで描かれる、基本バラエティ色が豊かなコメディー調な作品ではあるものの麻雀、賭博の辺りの話が
展開し盛り上がった先に差し掛かると「コレ明らかに「〇イジ」や「ア〇ギ」ぢゃね~か!」とする、あまりの盗作っぷりが
炎上系の悪い方面性での話題となり、公開後即日お蔵入り決定となる銀幕界の裏(逆)神存在として有名化する
運良く見れた通りすがり客たちは一言
「騙されたような気分だ…」
と、(映画)会場に振り込め詐欺をかまされたような気持ちだ、こぼしたとか。
>>11「グリーン・マイケル」
膝くらいの高さの草むらのなかを、マイケルは駆ける、駆ける、なだらかに傾斜する、どこまでも同じような青さがつづく草原を走り抜ける。
とうにヘルメットは捨てた。通信機器も、役に立たないし邪魔だから手放した。
護身用の武器も、ナイフを除いてすでに彼の手元にはない。
あとは軍のユニフォームと水筒、そしてマイケルの肉体のみが残る。
朝焼けがどんどん薄くなり、空は青に変わっていく。
湿度も上がってくる。
「操作利きません! 制御不能、制御不能!」
森林地帯での訓練中、マイケルの乗る訓練機がコントロールを失った。彼はひとりで乗っていた。
無線をとった教官は怒鳴って報告を求めた。
「各種計器!」
「異常なし!」
「燃料!」
「異常なし!」
「油圧!」
「異常なし!」
「密閉!」
「異常なし!」
「回路!」
「異常なし!」
教官が苛立ちながら言った。
「じゃあ何が異常なんだ!」
「何ら以上ありません!」
マイケルは報告した。
「一切のアラートも、数値の異常も異音も振動もありません!
だめなのは、ただ操縦不能なことだけです!」
教官は檄を飛ばし、マイケルは何とか体勢を立て直そうと努力した。
しかし訓練機はどんどんバランスを崩し、深い森のなかへ消えてしまった。
マイケルからの通信が途絶すると、教官および同じグループの訓練生たちは絶望に似た感情を覚えた。
マイケルが消息を絶った森は深い。いちど迷いこめばまず出られない、広大で暗い森だ。
調査隊も入る気配のない、世界最大の陸の孤島。そこにマイケルは消えたのだ。
もうあいつは帰ってこない、そう全員が確信していた。
しかしマイケルは気丈だった。訓練機は巨木の間に突っ込んで壊れたが、奇跡的にコックピット部分はほとんど無傷だった。
そこからマイケルは転げ落ちると朽木の根に頭をぶつけ、しばらく昏倒していた。
目を醒ますと、彼はすぐ立ちあがった。そして、薄暗い森のなかをすたすた歩きはじめた。
諦めたから、そうしたのではない。むしろ、なんとしてでも生き延びてやるぞ、と信じていたから、早々に歩きはじめられたのだ。
彼は水のにおいを頼りに歩いた。しかしなかなか水源は見つからない。
だんだんと、携帯食料と水筒の中身が減ってきた。懐の軽くなるのを、彼は汗をかきながら感じていた。
このままおれは死ぬのか、と何度か頭を予感がよぎった。しかしそのたび、彼はわずかに感じる水のにおいを希望にした。
きっと、この先に、水が、生きる希望があるんだ。そこには生き物もいる、食えそうなものもたぶんある。そこに至るまでは死ねない。
一昼夜、二昼夜、さらに何日も歩いた。
もう自分の身体に、自由があると思えなくなってきたころ、彼はようやく開けた場所に出た。
そこには無限の曠野があった。青々と、草の群叢が風に揺れる。まだ夜は明けきっていなかった。
だから相当暗い。だが、彼の目はかつてないほどらんらんと輝いていた。というのも、草原のなか、
正確に測れないが結構な距離のところに、植物とは違う、粘り気のある光を放つエリアがあったからだ。
水だ! あそこに水場があるぞ!
マイケルは疲労も忘れて駆けだした。朝露が脛にかかった。背の低い草を蹴散らしながらマイケルは草原を突っ切る。
近づくごとに、その水場の様相が察せられるようになる。びっしりと苔が繁茂しているらしい。
柔らかい線上のものが、そのなかで揺れている。
しかし知ったことか! 墜落してからおれはずっと、あれを求めてきたんだぞ!
マイケルはさらに力を振り絞った。スピードをあげ、なだらかな草原を駆け抜ける。
希望などもう彼の頭から吹き飛んでいた。すべてこれで解決だ、危機は過ぎた、
もはや何も異常はない、おれはオール・グリーンだ!
延々と続く森と草原を、緑の深いカーキ色の迷彩服のマイケルが、一心不乱に突き進んでいる。
ちょっと長いな
>>30「僕が望んだ未来」
パパ、パパ、これ焼けたよ、と娘が、ししとうをトングで指しながら言った。
娘はししとうを僕の紙皿に載せてあげようと手を伸ばしたが、網に手を乗せようとしたので僕は娘を制止して、
「大丈夫だよ、教えてくれてありがとう」
とトングを渡し受けてししとうを取った。まだ硬いところが残っているが、そんなのはどうだってよかった。
息子はずっと肉ばかり食べている。
妻はナス美味しいよ、かぼちゃ美味しいよ、と野菜に誘っているが、ぜんぜん見向きもされていない。
せっかく焼いたんだから食べてよー、と僕は息子に声をかけるが、息子は生返事をするばかりで、
特に言うことを聞く気はなさそうだ。
とても幸せだった。職場で出会った妻とは、結婚してもう15年近くなる。息子は今年で小学校を卒業する。
10年前、リビングのカーペットの上でおねしょをした赤ちゃんが、こんなに大きくなったのかと思うと、
なかなか感慨深い。今年小学校に入った娘も、1歳のときに罹ったインフルエンザで入院したとき、
妻と一緒にその生死を考えたときと較べれば、なんて健康に育っただろう。
きっと、何となくでもあり、確信でもあるが、子どもたちはすくすくと育って、しっかり自立してゆくだろう。
そして彼らが巣立ったあと、僕らは25年越しに、青春をやり直すことだろう。
こんな未来が見えているのに、妻と結婚した時点でこうなってほしかっただろうに、どうしてだろう、
心底からこれをこいねがったように感じられないのだ。そんなはずがないのは僕が一番わかっていることだ。
このいまを、そしてその先にのびる未来を信じずに、どうして子育てなんかできるだろう?
これが理想的な生活でないわけがないのだ。
炭はもうくすぶるのをやめ、灰になって一部は宙を舞っていた。子どもたちは家の中に戻り、僕はひとりで、
バーベキューの後始末をしている。完全に火が消えるのを待ちつつ、大学のとき、たった3週間だけだが、
懇ろな関係だった女のことを思いだしていた。その女は、本人の言うことを信じるのなら、大学の同期だった。
というのは、僕は他の場所でその女をただの一度も見たことがないし、噂も聞いたことがなかったからだ。
その女とは喫煙所ではじめて会った。6限のはじまる時間帯で、当初僕のほかには誰もいなかった。
しばらくして、女がやってきて、たばこを吸いはじめた。会話はなかった。
僕が3本目を吸おうか悩んで、女が2本目を灰にしたとき、唐突に、僕は女が気になり始めた。
その黄昏れ方がいやに様になっていたからだ。それに顔もよかった。
「飲みにいきませんか」
僕は口に出していた。もちろん意識なんてしていない。
「んあ?」
と女は言った。「私に?」
「そうそう、あなたに」
平然と僕は返した。「仲良くなれそうな気がして」
「まあ、こんな時間に喫煙所に来る人は多くないからね」
女は煙草をジャケットのポケットにしまい、「じゃあ行く? まだ早い?」
「早くないです」
僕は答えた。「行きましょう」
女はファッションと、渋谷系と、クラブと、学生ローンの話をした。
僕はプレゼミの話と、ロックと、アルバイトと、貧乏自炊の話をした。
直接にかみ合いはしなかったが、間接的な互いのつながりを僕らは感じた。
そのまま2軒目に向かい、ハイボールとツマだけを頼んでまた話した。
ここでも、お互いをちょびっとだけ掠め続ける会話をした。
そうしているうちに、僕らはずっとくすぐり合っているような気持ちになった。べったりとは重ねないが、ずっと肌には触れている感覚。
宴もたけなわになって、僕はいい気になり女に言った。
「家行っていいですか」
「いいよ」
女は即答した。その言葉に甘え、僕は女の家に行った。その晩、僕らは性交した。
次の木曜日(前のときは火曜日だった)、同じような時間帯に喫煙所にいくと、また女がいた。
今度は他にも人がいたが、同じように声をかけ、そして同じように飲みにいき、同じようにセックスをした。
翌週も、そのまた翌週も同様に過ごした。互いの産毛を触りあうような関係性は、堕落したようで、気持がよかった。
向こうも、僕の人格の敏感なところをわかっていたし、僕も女の触れられるとくすぐったい部分を知っていた。
これ以上かみ合う人はそういないと思っていた。
その翌週に喫煙所にいくと、女はいなかった。あれ、いつもならいるのに、そう思いつつ2時間待ったが、女は姿を見せなかった。
木曜日にもいなかった。次の週の火曜日、木曜日、さらに次の火曜と待ってみたが、女はいない。
そしてついに、僕は卒業まで、その女を見ることはなかった。唐突に、快感をもたらす3週間の付き合いを残して、忽然と姿を消してしまったのだ。
そうだ、僕はいまでも、一瞬ではあるが、あの女が脳裏をよぎることがある。あのまま付き合っていたら、どこまで行けただろう?
相性はどんな他人よりも、よかったはずなのだ。ふたりでひとつになれていたらよかったのかなあ、と思える。
あの女といたかったんだ、そうに違いないんだ。そして人格を愛撫する関係になるのが、一番よかったんじゃないか。
しかし、僕はその道には行かず、こうして妻と二人の子どもを健全に、きちんと養う人生に乗っている。
タイトル「万能役」
タイトル「胃痛嘔吐マチック」
タイトル「襟軋る」
タイトル「完全海部苦役」
タイトル「デスメタモルフォーゼ」
タイトル「起床予報士」
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タイトル「生徒会の一存にも穴はある!」
タイトル「この『この美術部には問題がある!』には問題がある!」
このSSまとめへのコメント
豊丸「イグ~イグ~」