異世界人との付き合い方 (2)
ママ「私たちは、悪人なのよ。殺されて当然なの」
パパ「そう、人を殺し、騙し、傷つける。この世の悪で、許されない存在だ。だけどね、お前はそうじゃなくていい」
ママとパパは、僕を囲んで抱きしめる。
パパ「お前は、いきなさい」
ママ「一緒にいてあげられなくて、ごめんね」
パパとママの顔が涙でぐしゃぐしゃになっている姿を見て、僕はなんとかしないとと思った。
でも、僕も顔が熱くなって、なにも言えない。うめき声がでるだけ。
「なんで僕だけなの、パパとママ一緒がいい」
「それはだめだよ」
澄んだ海風のような声が、吹き抜ける。
僕の背後に、そいつはいる。
そいつは、ぼくを連れていこうとする悪者。
「悪人はこの世界にいらないんだ」
「パパとママは悪なんかじゃない。ぜったいちがう」
「かわいそうに、騙されているんだ。私が見せてあげるよ」
カチャリと金属音がする。
そして、耳をつんざくような爆発音が響いた。
「ほら、悪人だ。顔をあげてごらんよ」
顔をあげると、そこには真っ赤な花弁が二輪あった。
「それが君の父親と母親」
「よかった、世界はまた一つ平和に近づいたよ」
そいつは、悲しそうにほほ笑んだ。
僕はそいつに連れられて、その場を去った。
あとから聞いた話だとそいつは、世界でも指折りの異世界人で、どうしようもなく強いらしい。
そいつがパパとママを殺した。
僕のどうしようもない復讐が芽吹く。
憎悪が精神を毒する。
「おはよう、カケル。早く起きないと、遅刻するよ」
夢ででてきたのと同じ声で、呼びかけられる。
僕は、夢から覚めた。
そして、まだ目的を達していないことを悟るのだ。
「今から、起きるよ」
復讐の相手が、この家にいるというのに、僕はまだ。
「あと僕はカケルじゃない」
「もう。法律上、便宜上、周囲からもそう呼ばれているのに、私にはだめなのね」
そいつは拗ねたような声で、遠ざかっていく。
そう、少なくともお前だけは、知っているはずだ。
自身すら忘れてしまった、僕の本当の名前を。
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