結標「私は結標淡希。記憶喪失です」 (314) 【現行スレ】



1スレ目
一方通行「バカみてェな三下を顔面パンチしたら記憶喪失になった」
2スレ目
結標「何でコイツと同じクラスなのよ!?」一方通行「それはコッチのセリフだ」
3スレ目
一方通行「もォ今年も終わりか」結標「何だかあっという間よね……」
4スレ目
結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」
結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363437362/)

スレタイ通りあわきんが記憶喪失になってる、一方さんとあわきんコンビのラブコメ?です

※注意事項

>>1の勝手な想像で物語が進むので、設定改変・キャラ崩壊・ご都合主義しかない

新約11巻くらいまでで止まってる知識

基本台本形式

週一更新できるといいね


もうオワコンかもしれないけどシコシコやっていくわ





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1625323149



風が吹き荒れる中、二人の能力者が相対していた。



一人は少年だった。

触れたら折れてしまいそうな華奢な体。
透き通るような白い肌を持ち、肩まで伸ばした髪の毛は、それに同調するよう黒をそのまま脱色させたような白色をしていた。
中性的な顔立ちからして、知らない人間が見れば白人の女性と見間違える人がいてもおかしくないだろう。
全体的に白で統一された容姿だが、瞳は真紅に輝いていて、彼の圧倒的存在感を助長させていた。


一人は少女だった。

腰まで伸びる長い赤髪を二つに束ねて背中に流している、歳相応の顔付き、体付きをした至って普通の少女、いや、至って普通と形容するのは間違えだと感じる。
彼女の右手には軍用懐中電灯という、その姿に似付かわしくない物が握られているからだ。
警棒を兼ねることが出来るそれは使い方によっては凶器にもなるようなもの。
そのような暴力を、まるで手に馴染んだシャーペンを気軽さに持っているかのように、手に持っているからなおさらである。


「――つーかよォ」


白い少年が呆れた様子で口を開いた。


「オマエみてェな格下がこの俺に楯突こォなンざ、本当に面白れェ話だよなァ? ホント馬鹿みてェなヤツだなオマエって女はよォ」


「…………ふふっ」


神経を逆撫でするような言葉を受けても少女は特に気にする様子もなく、不敵に笑う。


「そんなこと言っちゃってもいいのかしら? 今の貴方の置かれてる状況っていうのはお分かり?」


「あァ? 何言ってンだオマエ?」


「……やっぱり分かっていないようね。本当に理解できるような人なら、普通貴方みたいな口答え出来ないはずだもの」


一呼吸を置き、少女は勉強を楽観視する成績不振の生徒へ現実を告げる教師のような口調で語りかける。


「最初はお互いたくさんの仲間達がいたわ。もちろん貴方にも、一人一人が頼もしくて力になってくれるような仲間がいたわけよ。……でもその頼りになる貴方の仲間たちは次第に数が減っていった。一人減ってはまた一人、って具合にね」


手持ち無沙汰になったほうの手で、軍用懐中電灯を適当に触りながら少女は続ける。


「それに比べて私たちは誰一人欠けていないわ。当たり前よね。そういう風になることは、最初から誰もが分かっていたことなのだから。これはそういうものなんだって」


「…………」


少年は特に反論もすることなく少女の方へ顔を向けていた。


「……つまりは多勢に無勢、いや、そういうレベルを明らかに超えてる絶望的な状況……そうね。まさしく貴方は今絶体絶命の状況へ陥っているってわけ」


少女が言った多勢というのは嘘でも妄言でもない。たしかに彼女の周りにはたくさんの人影があった。
その人影は獲物を逃がすまいと少年を取り囲むようにと広がっている。
絶体絶命。彼女が言ったように少年は端から見ればそういう状況にある。




少女の言葉を聞いた少年は、周りの人影をぐるりと見渡した。
そして、


「…………ぎゃはっ」


笑った。泣くこともなく、驚くこともなく、怒ることもなければ絶望することなく。
少年はただ、不気味な笑みを浮かべて笑った。


「ったく、グダグダと何を話すつもりなのかと思ったがただの状況説明かよ、くっだらねェ」


少年は呆れながらため息をつき、続ける。


「たしかに俺は一人だ。仲間と言えるよォなヤツらがいたことも事実だ。オマエにはたくさんの仲間っつゥのがいるってのも現実だ。だけどよォ、違うンだよなァ……オマエは根本的な部分を間違ってンだよ」


「間違っている……? 一体どこを間違っているというのかしら?」


「その考え方だよ」


頭をクシャクシャと掻きながら少年は続ける。


「状況的に考えりゃオマエは有利な状況にあるだろォよ。誰が見てもそれは明白だ。これを見てどっちが勝つか賭けようぜ、って話になったら大穴狙いの馬鹿以外は全員オマエが勝つって方にベットするってぐれェ圧倒的な有利だ」


彼が言っていることはまさしくその通りだ。
例えるなら将棋で全ての駒が揃っている万全な状態と、王将以外の駒全て落とされた危機的な状態、パッと見てどちらが勝つでしょうと言われているようなものである。
大多数の人間は数が多い方が勝つと予想するだろう。それが将棋のルールを詳しく知らない人でもだ。
それくらい当然のことを彼は言っている。


「じゃあ有利、っつゥのは何だ? オマエらに勝ち筋が出てくるっつゥことか? 場の勢いってのがソッチに流れるっつゥことか? ……いや、もっと単純に言ってやる。オマエ自身が強くなるっつゥことか?」


「……そうね。流れってのは結構あると思うわよ。スポーツだってプロの世界もアマの世界も必ず流れがある方が勝つわ。格下が格上に勝ったって事例結構聞くけど、結局それは格下側に流れがあったに過ぎないわ」


「そォだな。オマエの言ってることは本当に間違ってねェ、至極真っ当なことだ。だからこそ違うンだよ」


首を左右に揺らしポキポキと音を鳴らしながら少年は指摘する。


「たとえ流れっつゥのが全部オマエ側にあるとして、オマエが人生の中で最高潮といえる場面で、最高の力を発揮できる最強の状態にあったとしてもよォ――」


少年の呆れた表情が一変し、口元を引き裂くような笑みを浮かべた。



「別にこの俺が弱くなったわけじゃねェだろォが!! どンな状況だろォと覆らないその根本的な部分をわかってねェンだよオマエはッ!!」



「…………そうね。貴方の言うとおりかもしれないわ」


少年の咆哮を受けて少女は肯定する、が。


「でも勝負ごとにはもしかしたら、ってことがあるのよ? 全部が全部、貴方の言うようになるとは思わないことね」


その瞳には敗北の色など一つも見えていなかった。


「チッ、くだらねェ。奇跡なンてモン崇拝したところで何も変わンねェってこと、この俺が分からせてやるよ」






両者が身構える。瞬間、音を上げながら吹き荒れていた風が止んだ。
まるで二人の威圧に怖気付いたかのように。
数秒間、両者の睨み合いが続いた。二人の口が一斉に開く。


「「…………勝つのは――」」


少年と少女の姿が一瞬にして消えた。




































一方通行・結標「「――俺(私)たちドロボウ(ケイサツ)だッ(よッ)!!」」









シュバッ! バッ! ドッ! ズァン!!


吹寄「……何ていうか、別格、よね?」

姫神「うん。私たちがあの二人に割って入るなんて。逆立ちしても無理」

青ピ「これもはやケイドロやないやろ。もうこれただのドラゴンボールやん。出たり消えたりまさしくヤムチャ視点ですやん」

土御門「なぁにカミやんなら余裕で付いていけるだろ。さぁカミやん、ゴー・トゥ・ヘル!」

上条「付いていけるかッ!! そもそも俺からしたらアレはヤムチャ視点どころじゃねえからな? 戦闘力5のおっさん視点だぞ舐めるな!」

青ピ「またまた謙遜しちゃってー、チャパ王クラスの力はあるんでしょー?」

上条「誰だよそれ!? つーか絶対そいつヤムチャより弱いポジションのキャラだろ!? 結局駄目じゃねーかよ!」

吹寄「ちょっとうるさいわよドロボウども!! 捕まったんだから円の中で大人しくしときなさい!!」

上条・土御門・青ピ「「「はーい」」」

姫神「……でも。青髪君が言ってることもよく分かる」

青ピ「おおっヒメやんの同意をいただいたっ!? これはアレですわ、ヒメやんルート確定のフラグが……!」

土御門「そのフラグ差す穴、すでにセメントか何かで埋め立てられてないかにゃ―?」

姫神「いつも通りの日常だったら。何てことないことで笑い合えるような。私たちと何も変わらない感じだけど。『能力有りケイドロ』みたいな『能力』が関わるだけで距離を感じるというか……別人みたく感じる」

上条「そうか? 別に何も変わらないと思うけど? 一方通行は一方通行、結標は結標だろ?」

吹寄「たしかにそうだけど、別人みたいってのは分かるわ。だって――」


一方通行「あはっ、ぎゃはっ! オイオイ遅せェ遅せェぞ格下ァ!? せっかくハンデで反射切ってやってンのによォ、そンなンじゃ百年経っても追い付きゃしねェぞォ!!」

結標「ぐっ、今に見てなさい……すぐに取っ捕まえてその格下呼ばわり辞めさせてやるわよ!!」


吹寄「二人とも、何というか楽しそうに笑ってる気がするわ。あたしたちと一緒のときとはまた別のベクトルの笑顔」

青ピ「まあアクセラちゃんに限っては同意や。能力使ってるときの笑顔はホント恐怖を覚えるわ」

上条「そりゃお前がいつも馬鹿やってアイツ怒らせてるからだろ」

吹寄「ま、だからと言って別に何かが変わるわけじゃないんだけどね」

姫神「そうだね。何も変わらない」

土御門「…………」

上条「どうした土御門? そんなシリアスな顔して?」

土御門「いや、別に何でもないんだぜい。てか何だよシリアスな表情って? そんなものこんな状況でするわけないにゃー」

青ピ「つっちーがシリアスぅ? あはははははっ、なにそれすごぉ似合わなさそうやなー!」

土御門「……よーし、あとでシリアスごっこしようか。タイトルは『突然の仲間の死』。もちろん死人役はお前だ青髪ピアス」

青ピ「ぎゃあああああああああああああっ!! 土御門君がシリアスな顔で手の骨パキポキ言わせとるぅー!? ヘルプカミやん!!」

上条「大人しく死人役になればいいんじゃないかな?」

青ピ「誰にでも手を差し伸べることに定評があるヒーローに見捨てられたっ!? 話が違うでカミやん!!」

上条「誰だよそんな評価してるヤツ」

吹寄「どうでもいいけどあんまり暴れるんじゃないわよ。今はケイドロ中だから」

姫神「と言っても。もうすぐ終わる時間」

土御門「さて、超能力者(レベル5)の第一位(首位)と第八位(最下位)が本気でやり合ったらどちらが勝つのか、って言っても考えるまでもないかにゃー」


―――
――





1.上条当麻補習回避大作戦


February Third Friday 15:40 ~帰りHR前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



ワイワイガヤガヤ



結標「――だーかーらー、あれは絶対に触れてたわよ! だから私の勝ちよ!」

一方通行「あァ? 何言ってンだオマエ? 指の神経ついにイカれちまったンじゃねェの?」

結標「いやたしかにあれはタッチ出来てたわよ! 未だに指に感覚が残ってるし……」

一方通行「一瞬でも俺を出し抜けられた喜びが大きすぎて、脳内で有りもしない感覚を勝手に生み出したってだけの話だろ」

結標「ぐ、ぐぬぬ……絶対、絶対触れてたわよ……」

一方通行「いつまでもよく分からねェ勝敗に拘りやがって。ガキかなンかなのかオマエは?」

吹寄「そこで気を使って勝利を譲ってあげないあなたも十分子供だと思うけど?」

一方通行「ハァ? 何言っちゃってくれてンですかねェこのアマは? アレはどォ考えたって俺の勝ちだろォが」

吹寄「ほらっ、やっぱり子供」

一方通行「……チッ、うぜェ」

姫神「拗ねてる……やっぱり子供?」

一方通行「子供じゃねェ!」

土御門「まあ別にいいんじゃないか? あれは正直どっちが勝ったって言ってもおかしくないくらいギリギリ限界の勝負だったぜい」

青ピ「せやなぁ、まさしく紙一重ってヤツやったな」

上条「たしかにな。実際の勝敗はどっちなのか分かんねえけど、最後はお前に届くか届かないかのところまで追い詰めたのは事実なんだ。そこだけは認めてやってもいいんじゃねえか?」

結標「上条君……」

青ピ「あっ、カミやんがまた一級建築士の力を遺憾なく発揮しようとしとる!」

吹寄「上条当麻……貴様……!」

上条「あれ? 何かよく分からない理不尽がそこにある気がするぞ!?」

一方通行「……いや、別に俺は別に結標の実力を認めてないわけじゃねェよ。俺の移動する位置を完璧に予測してそこに飛んできたわけだからな」

結標「そ、そうなんだ……ちゃ、ちゃんと認めてはくれてたのね……」

一方通行「だが俺が勝ったっつゥ事実は揺るぎ無ェけどな」

結標「……はぁ、わかったわよ。今回は貴方の勝ちよ。もともと触れたか触れてないかなんて曖昧なことをせずに腕を鷲掴みとかにしとけばよかった話だし」

青ピ「どちらが大人か子供かひと目で分かる瞬間やったな」

一方通行「今すぐ捻り潰してやるよオマエ」ニヤァ

青ピ「で、出たッ! アクセラちゃんのデススマイルや! ボクの寿命がマッハで縮んでいくぅ!!」


ガラララ


小萌「はいはーい! 皆さん帰りのホームルームを始めたいと思いますのでとっとと席に着いちゃってくださーい!」


青ピ「よっしゃ天使降臨や! アクセラちゃんに削られた寿命を一瞬でベホマズン!!」

上条「無駄にMP消費させてんじゃねえよ、ホイミでいいだろホイミで」

一方通行「チッ、うっとォしい……」




小萌「――ええと、来週から三学期の勉学を締めくくる期末考査が始まりますが、皆さんテスト勉強はバッチリ出来ているでしょうかー?」


<ナ、ナンダッテー!! <そ、そんな理不尽なことがあるっていうの!? <ああ神よ…… <ふっ、楽しい人生だったぜ……


結標「……あっ、そういえばそんなのあったわね。すっかり忘れてたわ」

一方通行「くだらねェ」

結標「クラスが阿鼻叫喚状態だけど貴方は相変わらず余裕そうね」

一方通行「そりゃそォだろ。俺はそンなどォでもイイテスト如きでうろたえるよォな馬鹿じゃねェよ」

結標「前の期末テストでひどい点数を取ってしまって、冬休みの半分を補習で過ごした一方通行様のセリフじゃないわよね?」

一方通行「そンな記憶、脳みそから刹那で消え去った」

結標「随分と都合のいい脳みそね……」

一方通行「つゥかよォ、まず心配すべきなのは俺じゃなくてアイツだろォがよ」

結標「アイツ……?」


上条「……完ッ……全ッに、わ・す・れ・て・た……!」ガクリ


結標「あっ……、そういえば上条君も補習メンバーの一人だったわね」

一方通行「補習レギュラー言われてるくらいだ。今回もあえなく撃沈して惨めな補習ライフを受けるンだろォな」

結標「……まあ、たしかにただでさえ短い春休みを根こそぎ持っていかれるわけだから惨めと言ったら惨めよね」


小萌「――そういうわけなので、皆さんしっかりテスト勉強をしてから本番に望んでくださいねー」

小萌「あ、あともちろん赤点なんて取ったら問答無用で補習ですからねー。というわけで春休み中の予定は空けといてくださいね上条ちゃん?」


上条「何か既に俺の補習確定してるみたいな口ぶりなんだけど!? まだ戦いは始まってすらいないのに!?」

土御門「そりゃカミやんはこの一年間全ての補習に参加した、不名誉な皆勤賞受賞候補者だからにゃー。もはや補習回避する未来のほうが考えられないぜい!」

青ピ「カミやんが補習を回避するとき、すなわちそれは学園都市が崩壊を起こすときやで!」

小萌「あっ、ちなみに今回のテストはどの教科の先生も難しめに作ると言ってましたので、土御門ちゃんや青髪ちゃん、その他諸々の皆さんも勉強頑張ってくださいねー」

青ピ「なっ、何やって……? 何でこんな時に限って本気出してんここの教師陣……? 人から休日を奪う気満々じゃないですかやだー!!」

土御門「糞ッ! 迂闊だった! 前回のテストがチョロかったから今回も余裕だと思っていたのに……! あの難易度の低さは年末だったからか!!」

上条「…………小萌先生ッ!!」

小萌「!? は、はい何ですか上条ちゃん!?」ビクッ

上条「いいぜ、テメェが俺の春休みが補習で潰れるなんて本当に思っているんなら……、ますはその幻想をぶち――」



ゴッ!!



上条「ころふぁっ!?」

吹寄「先生をテメェ呼ばわりしてるんじゃないわよ!! この馬鹿者がッ!!」

結標「……し、締まらないわね」

一方通行「つゥか、幻想じゃねェからあの右手じゃ壊せねェだろ……」


―――
――





同日 16:00

-とある高校・一年七組教室-



上条「――というわけで俺に勉強を教えて下さい!! 神様仏様第一位様ッ!!」



一方通行「ハァ? 何で俺がそンなことしなきゃいけねェンだよ? つゥか月詠に啖呵を切ろォとしたヤツのセリフとは思えねェよなァ」

上条「そこを何とか頼んます!! お願いしますよアクセラえもーん!!」

一方通行「ぶっ殺されてェのかオマエはァ!?」

上条「マジお願いッ!! このとおーり!!」ドゲザ

一方通行「何だこのヒーロー!? プライドの欠片もねェ!?」

結標「……別にいいじゃない。教えてあげれば?」

一方通行「面倒臭せェ。つゥか、コイツ端から自分のチカラで切り抜ける気ねェから気に入らねェ」

吹寄「たしかにアクセラの言うとおりにね。普段からきちんと勉強してたらこういう自体には普通陥らないもの」

姫神「自業自得。というやつ」

上条「……ようするに自分で勉強して切り抜けろ、と?」

青ピ「せやな」

土御門「そうだぜいカミやん。もしかしたらアクセラちゃんに教わるよりは自分で頑張ったほうが赤点回避率上がるかもしれないぜい」

一方通行「あァ? そりゃどォいう意味だ土御門クン?」ピキッ

土御門「アクセラちゃんの頭は理数系を全て百点を取るという素晴らしいものだけど、同時に文系の教科は悲惨な結果を生み出してしまう、残念なものでもあるんですたい」

一方通行「誰の頭が残念だってェ!?」ピキピキ

結標「まあまあ落ち着きなさいよ。現代文で残念な点数だったのは事実だからしょうがないじゃない」

一方通行「そンな記憶はまったくないンだけどよォ」

結標「そのセリフを言うたびに、どんどん残念になっていくような気がしてならないんだけど……」

土御門「ま、そういうわけで国語の能力が低いアクセラちゃんに教わるくらいなら、素直に教科書見てたほうが能率が上がるかもって話だにゃー。ようするに頼む相手を間違ってるって話」

青ピ「そうやでカミやん。大人しく成績優秀な女子連中に頼みぃ」

上条「……うーん、でも別にそんなお前らが言うようなヤツじゃねえけどな一方通行。前に冬休みの宿題見てもらったときもわかりやすく解説してくれたし……理数系限定だったけど」

一方通行「どちらにしろそれじゃ理数系しか点数取れねェじゃねェか」

吹寄「あっ、ついにあの黒歴史を認めた」

姫神「これも一種の成長?」

一方通行「成長もクソもねェよ。文系の科目は教えンのが面倒なだけだ」

青ピ「何言うとんアクセラちゃん。単に分からないから教えられなぎゃああああああああベクトル操作で髪引っ張るのやめ、禿げ、禿げちゃううううううううう!!」




一方通行「そォいうわけで他ァ当たるンだな。俺以外に適任者がいンだろ、このアホが言うみてェにそこの女三人」

吹寄「そんなこと言われてもこっちも勉強しなくちゃだし、上条当麻を全教科赤点回避出来るまで仕上げてたら自分の足を掬うわ」

姫神「手伝ってはあげたいけど。今回は私も少し余裕がない」

結標「私は別にいいわよ。最終調整なんて前日にぱぱっとやれば大丈夫だし」

吹寄「さ、さすがレベル5。言ってることはただの一夜漬けと意味は変わらないんだけど、余裕感のようなものを感じるわ……」

一方通行「じゃ、決まりだな。勉強はコイツに見てもらえ。よかったな、心強い先生が見つかって」

上条「お、おう。よろしく頼むよ結標」

結標「ええ、任せて。必ず補習回避させてあげるわ!」

青ピ「だったらせんせー! ボクも今回デッドゾーンなんで勉強教えてくらさーい!!」

土御門「にゃー! オレもオレもー!! このままじゃ貴重な休日を地獄のような補習で潰されてしまうんだぜい!!」

結標「え、えっと、さすがに三人同時はちょっとキツイかなー、何て」

吹寄「そうよ馬鹿ども。アンタたちはまだ上条の馬鹿よりはマシなんだから一人で何とかしなさい!」

青ピ「ええっー!? 何を言うとん吹寄さん! ボクらは三馬鹿、デルタフォースやで!!」

土御門「マシなんて言葉は通用しない! オレたちはクラスの最底辺、もはやそういうレベルじゃないんですたい!」

上条「さっきまで散々俺のことを補習レギュラーとか罵ってたくせに、こういう時だけ同レベル宣言かよ!」

結標「うーん、できればみんな補習は回避しては欲しいんだけど。うーん……はっ」ピコン

一方通行(何か知らねェが嫌な予感がする……)




結標「私にいい考えがあるわ――」




結標淡希。超能力者(レベル5)の第八位。能力名『座標移動(ムーブポイント)』。
彼女は5ヶ月以上前の思い出が無い、いわゆる記憶喪失だ。
思い出がない、その頭の中にすっぽりと開いた穴を埋めるために、彼女は思い出作り的なイベントには積極的に参加する『イベントならとりあえず参加しとこ脳』である。
それはクリスマスやバレンタインといった勝手に始まる受動的なイベントはもちろん、自分からイベントを起こして参加したりもする。
つまり――




結標「――どうせだからみんなで勉強会とかしてみない?」



一方通行(――面倒臭せェ女だっつゥことだよクソったれが)



―――
――





February Third Saturday 09:30

-第七学区・とあるファミレス-


一方通行「……ハァ、休日だっつゥのに、何でこの俺がこンなところに出張らなきゃいけねェンだよクソが」

結標「いいじゃない別に。どうせ家に居たって寝転んでるだけでしょ?」

一方通行「あァ? 俺がいつも寝てるだけで休日を過ごしてる思うなよ? 例えば缶コ――」

結標「缶コーヒーを堪能するでしょ? 毎日のように飲んでるのだから今日ぐらいいいじゃない」

一方通行「日頃の鍛錬ってモンは毎日続けるからこそ力がつく。だが一日でもそれを怠ると精度が下がっちまうンだよ」

結標「いつから缶コーヒーを飲むことが鍛錬になったのよ? 貴方はコーヒーソムリエでも目指すつもりかしら?」

一方通行「ケッ、何言ってンだオマエ? 缶コーヒーの飲み比べなンてしたところで、そンな大層なモンになれるわけねェだろォが」

結標「ムカつく! わざわざこっちが話合わせてやったのに、哀れみの目で見てきてるコイツすごくムカつく!」

一方通行「ハイハイ。……つゥかよォ、勉強会とかいうクソくだらねェ行事ってたしか10時からじゃなかったか?」

結標「うん、そうだけど」

一方通行「何で集合時間30分前だってのに俺らはここにいンだよ。オマエの時計だけ30分狂ってンのか?」

結標「ん? 何か問題でもあるかしら? 別に遅れてるわけじゃないからいいじゃない」

一方通行「そォいうことじゃねェンだよなァ。30分も早くここにいる意味を聞いてンだよ俺は」

結標「別に意味なんてないけど」

一方通行「……オマエ、30分あったら何が出来ると思う?」

結標「んーと、何だろ? ……いざ考えてみると思いつかないわね、何なのよ?」

一方通行「決まってンだろ、睡眠だ」

結標「えぇ……」

一方通行「何だその『コイツつまらね』みてェな目は?」

結標「いや、だってあまりに予想通りかつ別に30分使ってやることじゃないだろ、って答えが返ってきたから」

一方通行「オマエ分かってねェよ。睡眠時間30分延長することの重要さについてをよォ」

結標「知らないわよ……あっ、二人来たわ」

一方通行「あン?」


吹寄「おはよっ、早いわねお二人さん!」

姫神「おはよう。まさかもう来てるとは思わなかった」


結標「おはよっ二人とも。別に早くはないわ、さっき来たところよ」

一方通行「さっきっつっても、集合時間の30分前とかいうアホみてェな時間には来てたわけだけどな」

吹寄「時間に遅れないように心掛けるのはいいことよ」

一方通行「限度っつゥモンがあンだろォが」

姫神「別に。30分ぐらい許容範囲じゃ?」

一方通行「チッ、30分の重要性が分からねェのかオマエらは?」

吹寄「分からないことはないけど、別にそれとこれとは話は別じゃないかしら?」

姫神「起きる時間は基本的には毎日変わらない。だから関係ない」

結標「残念ね一方通行。ここに貴方の理解者はいなかったようね」




一方通行「チッ、くっだらねェ。オイ店員!」ギロッ


ウェイトレス「は、ハイっ!?」ビクッ


一方通行「コーヒー一つ。ドリンクバーのじゃねェぞ?」

ウェイトレス「か、かしこまりました!」スタター

結標「……何て顔して頼んでいるのよ?」

一方通行「あァ? 別に普通だろ」

吹寄「逃げるようにこの場を去っていったわね」

姫神「明らかにウェイトレスさんを睨みつけてた」

吹寄「……そういえば今回の主賓である馬鹿三人はまだ来てないようね」

一方通行「そりゃまだ集合時間来てねェからな」

吹寄「でも教えてもらうって立場なんだから、普通は早く来てそれなりに準備とかするんじゃないかしら?」

一方通行「そンなことするヤツらがテスト直前で泣き付くみたいな真似するかよ」

結標「まあ、待ってるのも何だし私たちだけでも先に始めちゃう?」

姫神「賛成。時間は有効活用しなくちゃいけない。時は金なりと言うし」

吹寄「じゃあ結標さん数学教えて! 今回証明とかあって結構難しくて」

結標「いいわよ。じゃあ教科書とかの簡単な問題から慣れていきましょ?」

一方通行「……あァ、眠っ」フワァ

姫神「アクセラ君」

一方通行「ンだよ?」

姫神「現代文とか勉強しとかなくてもいいの? 前回の結果からして。苦手な科目なんでしょ?」

結標「そうよ一方通行。また現代文のせいで補習なんて展開にしないためにも、きちんとやっときなさいよ」

一方通行「面倒臭せェ。今さら何やろォが待ってる結果は同じだ。だったら無理に知識詰め込む必要ねェだろ」

吹寄「ちょっとアクセラ! もしかして諦めるって言うつもり!?」

一方通行「ハァ? 諦めるゥ? 俺がかァ?」

吹寄「さっきの口ぶりからしてそうにしか聞こえなかったんだけど……」

一方通行「何言ってンだ吹寄? そもそも俺に諦めるっつゥ選択肢なンて存在しねェだろォが」

吹寄「えっ?」


一方通行「俺はそンな悪あがきしなくてもよォ、補習なンてモンに参加することはまずありえねェンだよ」


吹寄「…………」

姫神「…………」

結標「…………」

一方通行「?」



三人(ダメだコイツ。前回のテストから何一つ学んでない……!)





一方通行「ま、そォいうわけでオマエらは俺に気にせず勉強してろ」


ウェイトレス「――お、お待たせいたしました。特製コーヒーです」カチャリ


一方通行「ン」スッ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「あァ、コーヒーうめェ……」


結標「……そうだ。私たちも何か頼む?」

吹寄「とりあえずドリンクバーは絶対にいるわね。まだ食べ物って気分じゃないから食べ物はいいと思うけど」

姫神「うん。食べ物はお昼になってからでいい」

結標「了解。じゃあウェイトレスさんドリンクバー三つで」

青ピ「あっ、あとお姉さんのスマイル一つで」

ウェイトレス「……えっ?」

結標「…………」

姫神「…………」

一方通行「…………」ズズズ

青ピ「……ん? あれ? 何この空気?」



ズガシャッ!!



青ピ「ほげぇ!?」

吹寄「ど、どっから湧いてきたのこの馬鹿者ッ!!」

姫神「おはよう青髪君。相変わらず唐突に待ち合わせ場所に現れるね」

結標「もしかして青髪君って空間移動能力者(テレポーター)? それとも光学操作系の能力者かしら?」

青ピ「ボクは正真正銘ただの無能力者(レベル0)だす。そんな高度のことできないだす」

一方通行「喋ってねェと影が薄いだけじゃねェのか? あと、その気持悪りィ口調今すぐやめろ」

姫神「アクセラ君!!」

一方通行「ッ!? な、何だ? いきなり声を張り上げて」ビクッ

姫神「青髪君レベルで!! 影が薄いなんて!! 言っては!! 絶対に!! いけない!! 絶対にッ!!」

一方通行「お、おォ悪りィ」

吹寄「次からは普通に現れなさいよ? このアホ髪バカスが」

青ピ「ふふふっ、ここで『YES』と言ったらボクがボクじゃなくなるんやで? あとバカスのところをエロスにしてもらえると興――」



グリシャッ!!



結標「あっ、ウェイトレスさん。ドリンクバーもう一つ追加で」

ウェイトレス「は、はいかしこまりました」




同日 10:10


吹寄「さて、バカアホマヌケが来たからあと二人ね……ってもう集合時間過ぎてるじゃない!!」

青ピ「吹寄さん。もはや原型を留めてないんですけど」

一方通行「おそらく上条は、インデックスの昼メシとか作ってるだろォから時間には間に合わないな。隣人の土御門もそれに巻き込まれる可能性は高い」ズズズ

結標「別にご飯なんて作らなくてもここに連れてくればいいのに。ここにいる限り空腹に困ることはないと思うし」

姫神「結標さん。それは上条君には絶対に言ってはいけない。色々な意味で号泣すると思う」

青ピ「そういや姉さんら今なんの勉強してん? 数学?」

結標「そうそう。吹寄さんが証明が難しいって言うからね」

吹寄「どうせアンタも分からないでしょ? 結標さんの講義聞いたら?」

青ピ「ちょっと待ってや? 証明なんてテスト範囲にあったっけ?」

吹寄「はぁ……何というかテスト勉強以前の問題ね。まずはテスト範囲を確認するところから始めなさい!」

青ピ「せやな。戦いに勝つにはまずは敵を知ることが大事やしな。ええっと、テスト範囲テスト範囲……ってそんなもん持ってへんで!」

吹寄「……もう帰れば?」ジトー

姫神「一体今日は何をしにここに来たのか。まったくもって分からない」ジトー

青ピ「おっふっ、イイッ!! イイィッ!! 美少女たちの視線がボクに突き刺さるぅぅ!!」



ゴキリッ!!



青ピ「」バタリ

一方通行「うるせェ。俺の昼寝の邪魔をしてンじゃねェよクソゴミが。つゥかイイ加減この流れ飽き飽きしてンだよ」

結標「貴方も貴方で何でファミレスまで来て昼寝をしてるのかしら? というか今はどちらかと言ったら朝よ」

一方通行「来たくて来たわけじゃねェからな。することがねェならもォ、そりゃあ……寝るしかねェじゃねェか」

結標「大人しく苦手科目でも勉強しときなさいよ」

一方通行「俺に苦手科目なンて存在しねェ」

吹寄「……はぁ、何というか男連中は全員やる気を感じられないわね」

姫神「しょうがない。これだからいつもテストでいい結果が出ない」

一方通行「オイ姫神。俺をあの三下どもと一緒にすンじゃねェ」

姫神「学年平均40点強の現代文で10点。その教科だけ学年順位最下位を取った人がいるらしい」

一方通行「……さて、昼寝の続きでもすっか」ゴロン

結標「逃げたわね……というか店の椅子に寝転んでんじゃないわよ! 行儀が悪いでしょうが!」

一方通行「ハイハイわかったよ。いちいちうっせェヤツだな」ボソッ

結標「何?」

一方通行「何でもねェ」

吹寄「もう! 結標さん、やる気がない人は放っておいってあたしたちだけでやりましょ?」

結標「……そうね。じゃあまず証明の基本的なところから――」



上条「――って待てえぇい!!」ダッ





吹寄「……あら上条当麻。何しに来たの?」

上条「何しに、って勉強を教わりに来たに決まってんだろうが!! じゃねえとこの金無し上条さんがファミレスなんてところ来るわけねえだろ!!」

吹寄「あっ、そう。勉強をしに来たの、へえ……」

上条「つーか、もともと勉強を教えてくれって頼んだの俺なのに、何で『お前ここにいるのおかしくない?』的な目で見てきてんだよ!! おかしいだろ!!」

土御門「そりゃカミやんは遅刻しちまったからにゃー。時間に厳しい吹寄様にそんな目で見られてもおかしくない。かくいうオレもそういう目で見られてるんですたい!」

結標「……ところで上条くんたちはどうして遅れたの? やっぱりインデックスちゃん絡み?」

上条「そ、そうなんですよ結標さん。あんにゃろう俺の作った昼食を朝食と間違えて片っ端から食べていくという暴挙に出やがったんですよー」

土御門「それを横で漫画読みながら眺めてたから遅れました! オレは悪くないでーす!」

上条「ふざけんな土御門ッ!! 大体テメェが『目玉焼きって何となく朝食べるイメージ大きいんだぜい』とか言わなかったら、あの大量の卵料理を壊滅させられることはなかったんだぞ!!」

吹寄「それは貴様が昼食に目玉焼きを作るからいけないんでしょ? そもそもインデックスがちゃんと分かるように導いてあげれば済んだ話じゃない?」

上条「導く? あはは……それができれば苦労はないとですよ……うふふ」

土御門「……ところで」


青ピ「」

一方通行「Zzz……」


土御門「コイツラは一体ここで何をしているんだ? 徹夜明けか?」

吹寄「やる気のない馬鹿者どもの成れの果てよ」

上条「そうか。俺らがひどい扱いを受けてるのはコイツらのせいか」

姫神「遅刻した事実は変わらない」

結標「ま、まあこれで全員揃ったわけだし。今から数学やるけど二人はどうする?」

土御門「もちろん受講させていただくぜい! 数学なんてなにそれおいしいの状態だからにゃー!」

上条「聞くまでもねえだろ結標先生! 俺に完璧にこなせる教科なんて一つもないんだからな!」

吹寄「自分で言ってて悲しくならないわけ?」

上条「……言わないでくれ」

結標「それじゃあ始めるわよ。まずは教科書の189P開いて――」


青ピ「」

一方通行「Zzz……」


―――
――






同日 11:30


結標「――つまり、ここはこういう風に考えれば分かりやすいわ」

吹寄「へー、なるほどね。さすが結標さん、丁寧かつ分かりやすい解説」

姫神「うん。おかげで演習問題もスラスラ解ける」

土御門「やっぱりレベル5はパネェっすわ。もはや頭の出来が根本的に違うんだにゃー」

結標「いや、別にそんなことないわよ。普通よ普通」

姫神「この高い解説能力で普通。それなら有名予備校とかの講師は一体どんなレベルになるのか」

吹寄「そんなに謙遜しなくてもいいと思うわ。誇ってもいいんじゃない結標さん?」

結標「もう! そんなに褒めても何も出ないわよ!」テレ

土御門「オレたちは事実を言っているだけだぜい。ほら、あの補習レギュラーのカミやんさえもこの通り――」



上条「先生ッ!! 問1が……というか全部さっぱり分かりません!!」



土御門「――オラァ!!」ズゴッ

上条「ぐほっ!? な、何しやがるテメェ!!」

土御門「お前姉さんの話絶対聞いてないだろ? ここの問題はさっき言ってた条件を当てはめればそのまま解けるぞ?」

上条「えっ、この条件ってここで使うのか。へー、勉強になるなー」

吹寄「……何というか。もう補習受けたらいいんじゃないの?」

上条「えっ!? 何でいきなりそんな辛辣な言葉をかけられなければならないんでせうか!?」

姫神「たぶんこの調子ならあと一週間猶予があったとしても。赤点は免れないと思う」

土御門「諦めるんだ上条当麻。もう楽になればいいさ」

上条「勉強を始めて1時間でこんなにボロカス言われるとは絶対誰も思わないだろうな……」

吹寄「逆にその1時間本当に勉強したのか問い詰めたくなるほどひどいってことよ」

結標「ま、まあまだ時間はあるしじっくりやっていこ? ねっ、上条君?」

上条「め、女神がおる……! 敵しかいないこのファミレスに救いの女神様が微笑んでくださっておる……!」

結標「じゃあ、こっちの問題やってみて。さっき私が言ったことをそのまますれば解けると思うから」

上条「ええっと…………、な、何だったっけそれ?」

結標「……あ、あはは、じゃあもう一回説明するわね」

土御門「さすがの女神様もこれには苦笑い」

姫神「これはひどい」

吹寄「何となく結標さんの顔に後悔の色が見えてる気がする……じゃなくて見えてるわ」


青ピ「……う、うーん。……こ、ここはドコ? 私はダレ?」




姫神「……。唐突に何?」

吹寄「あれ? 青髪ピアスってここに来てたの?」

青ピ「何やこの扱いッ!? 首をゴキッ、とやられてさっきまで生と死をさまよってて奇跡的に復活したボクに贈られる言葉やないで!?」

土御門「カミやんの常軌を逸した馬鹿さ加減で呆れてるからにゃー。ここでお前みたいなヤツが来たらそうなるだろ?」

青ピ「来るも何も結構早い段階からここにおるんやけどなぁボク。キミらが来るよりよっぽど早く」

吹寄「どうでもいいけど勉強しに来たならさっさと教科書なり何なり広げなさいよ」

青ピ「あ、はい……というかちょっとええ?」

吹寄「何よ?」

青ピ「やけにボクだけ責められとるようやけど、そこの白髪はなんなん?」


一方通行「Zzz……」


青ピ「みんなで楽しくお勉強会しとるのに一人端っこで眠っとるやん!? 明らかにボクよりやる気ないって大々的にアピールしとるやん!?」

吹寄「……いや、だってアクセラは普通に頭いいし。ねえ?」

姫神「100点とか普通に取っちゃうくらい普通に頭はいい」

青ピ「えっ、何なんこの扱いの差? 差別やん差別。くっ、イケメンと三枚目ではこれほどの差が生まれてしまうのか……」

吹寄「はぁ? あなた三枚目を名乗れるほど面白いことしてたかしら?」

土御門「さすが吹寄っ! 容赦なく急所を抉っていくぅ!」

青ピ「てか、よくよく考えたらさっきの頭いい発言おかしくない!?」

姫神「えっ?」

青ピ「えっ? やないやろ、だって現文10点やろ10点? 真面目にやってそんな点数取れるんかって、頭にハテナマーク浮かべる10点。やばっ、思い出しただけで笑えてきた。10点ってぷぷっじゅ――」



一方通行「10点10点うるせェぞ、脳みそ10点野郎」ゴガッ



青ピ「ぎゃああああああああああっ!? 頭が割れりんぐぅぅぅぅ!?」ジタバタ

姫神「おはようアクセラ君」

吹寄「いつの間に起きてたの?」

一方通行「あァ? 今起きた……いや、起こされたっつゥのが正解か。アホがゴチャゴチャ騒いでやがったせいでな」

青ピ「ぐぉぉぉぉ、さ、さすがやでアクセラちゃんっ。勉強会中に寝るわ、人をストレス解消の道具にするわ、ホンマやりたい放題やな自分ん」

一方通行「ハァ? 勉強会つってもオマエらが勝手にやってるだけだろォが。あと別に俺はオマエをストレス解消の道具にしてるわけじゃねェよ。蚊を見かけたら叩き潰すことと同じことをしてるだけだ」

青ピ「ボクの存在ってそんな小さな羽虫と一緒なん!? 正直ショックやで!? というかこの勉強会ボクだけ扱い悪すぎやない!?」

土御門「気のせいだろ。いつもこんなもんだと思うぜい」

姫神「うん。至って普通の日常」

青ピ「これをいつも通りの日常と言えるキミらがボクは怖いでえ……」

吹寄「だったら少しは勉強をしようとする意思を見せなさいよ」




一方通行「……あン? そォいやもォそろそろ昼か」

土御門「おっ、本当だにゃー。ひとまず昼休憩と行こうぜい!」

青ピ「ぼ、ボクは何にもやってへんで……それなのにもう休憩の時間なんか……?」

吹寄「今まで休憩してたみたいなものだから、みんながご飯を食べてる横で問題集でも解いてたら?」

青ピ「せんせー! 気絶は休憩に入らないと思いまーす!」

一方通行「そォだな。あァ、店員さンコーヒーおかわり」スッ

青ピ「ちょっとー! 何かツッコンで!? 会話の流れ止まっちゃうからー!!」

吹寄「ついでに昼食でも頼んどきましょ。あたしこの『ふわとろオムライス』で」

姫神「『和風ハンバーグ定食』」

土御門「ふふふっ、ここはテストへ向けての願掛けとして『トンカツ定食』を注文させていただくぜい」

一方通行「テストってたしか明後日からじゃなかったか?」

土御門「細けえことは気にすんなだぜい。願いに時間なんて関係ないにゃー」

青ピ「……ふむ。ではボクは――」

吹寄「えっ、青髪ピアスは昼返上で勉強するんじゃなかったの?」

青ピ「何でや! 食べるに決まっとるやろ! 生命活動を再開するのにもカロリーは必要なんやぞ!」

一方通行「ただの気絶で何言ってンだコイツは?」

青ピ「日常生活でただの気絶とかいうこと自体おかしいんやけどな……」

姫神「結構な頻度で気絶してると思うから。ある意味日常じゃないかな?」

青ピ「イヤやそんな日常!!」

吹寄「あっ、結標さんと上条当麻も何か頼んだら? どうせ上条はライス(小)とか言い出しそうだけど」


結標「……ぐ、ぐぬぬぬ、だ、だったら次の問題はっ!?」

上条「おおっ、これか!? わかったぞ! これはこの公式を使うんだな!? そうなんだな!?」

結標「その公式は別の章のやつで使うやつよ……」


一方通行「……何やってンだよ結標先生。顔色悪りィぞ?」

結標「あ、ああ一方通行起きたのね? 大丈夫よ、ちょっと疲れちゃっただけだから……」

土御門「か、カミやんのあまりの馬鹿さに耐え切れずに……!?」

吹寄「くっ、やはりレベル5の手を持っても扱い切れないということなの!? これが幻想殺し(イマジンブレイカー)……!」

姫神「実質まだ二時間くらいしか経ってないけど。何かもう一日中勉強したみたいな感じになってる」

上条「い、いやあれだよあれ。俺だって必死に頑張ったよ、でも駄目だったんだ。俺の脳みそってのはどうも数学ってやつを受け付けてくれないらしい」

吹寄「何か全力を尽くしてヒロインを守ろうとしたけど、結局駄目だった自分のチカラの無さを悔やむヒーロー風に言ってるけど、要するに数学は嫌いだからできません、ってことよね?」

上条「はい」




姫神「補習決定の瞬間をこの目で見た」

青ピ「もうだめだぁ……おしまいだぁ」

土御門「もういい……! もう……休めっ………! 休め………っ! 姉さんっ!」

結標「……いいえ、そうはいかないわ。ここで私が倒れたら、上条君が……!」

上条「いや、土御門の言う通りだ結標。俺なんかのためにお前がそんな無茶する必要ねえんだよ」

一方通行「無茶させてる自覚があるなら、もっとまともに頭を働かせたらどォだ?」

上条「…………」スピー

一方通行「目ェ背けてンじゃねェよ。いろンなモンからよォ」

吹寄「と、とにかくお昼休憩にしましょ二人とも? 脳にブドウ糖を補給しなきゃ勉強も捗らないわ」

結標「そ、そうね。一度休憩をとってリフレッシュしないと頭も働かないわよね……あっ、そうか!」

青ピ「どうしたんやいきなり?」

結標「上条君、もしかして今日の朝ご飯食べてないんじゃないかしら!?」

上条「えっ、いや、食べたけど」

結標「そんなに多く食べられてないんじゃないかしら!?」

上条「ま、まあたしかに満足するほどは食べてないけど……」

結標「そうよ、そうよね! おそらく上条君は頭にブドウ糖が足りてなかったのよ! そうよ、だからあんなに……」ブツブツ

土御門「……おい、これ姉さん完全に病んでないかにゃー?」

青ピ「せ、せやな。何か目がヤンデレもののヒロインみたいな感じになっとるし」

姫神「上条君はもはやブドウ糖が足りてない。とかそんなレベルまで達してない。という現実を直視していない」

一方通行「つゥかよォ、そこの馬鹿二人さっさとメシ頼めよ。店員さンずっと放置されてて苦笑いしてンぞ」

ウェイトレス「あ、あはは大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ」

結標「あっ、すみません。じゃあ私『シーザーサラダ』で」

上条「俺は……『ライス(小)』でお願いします」

結標「か・み・じょ・う・君!? そんなんじゃ全然足りないわよねぇ!? 定食とか頼みなさい定食とか!」

上条「ひっ、や、か、上条さんのお財布はそんな豪華なものを頼む余裕はないのことよ!?」

結標「じゃあ私がおごってあげるから!! 金銭面は貴方は何にも気にしなくていいのよ!? 勉強に必要な栄養分をここで摂取するのよ!! さあ!!」

上条「ひっ、ひぃぃぃ!?」ガクブル

土御門「ね、姉さんが完全にダークサイドに落ちてやがる! クソっ、このままじゃマズイぞ!」

一方通行「あン? 何か問題があンのか?」

青ピ「だってこのままじゃカミやん一人が昼食を奢られるっていうおいしい思いをするんやで!? 羨ましすぎるでホンマぁ!!」

吹寄「今気にすることは絶対そこじゃないでしょ! 結標さんのほうのことでしょ!?」

土御門「これを放置したら結標→カミやんという謎のヤンデレルートに突入してしまう! これは絶対に避けなければいけない状況だ!」

一方通行「馬鹿馬鹿しィ。訳分からねェこと言ってねェでさっさと注文を確定させろ。いつになったら俺はコーヒーが飲めンだよ」

姫神「アクセラ君」

一方通行「あン?」

姫神「ごー」

一方通行「ハァ?」

姫神「ごーとぅすとっぷ」ジー

一方通行「何で俺が……ハァ、わかったわかった。オーケーオーケーわかったよ」




上条「……あのー結標さん? 奢ってもらうのはありがたいのですが、そんなんじゃ上条さんのお馬鹿は治らないですのよ?」

結標「そんなことはないわ上条君。貴方はやればきっとできる人。だからそのためにたくさんの栄養分を脳みそに送らなきゃ……」

上条「何かその言い回しすごく怖いんですが……」

結標「さあ頼むのよ! 定食とかそういうガッツリしたものを頼むのよ! 頼みなさい! さあ! さあ!! さ――」



ビシッ!!



結標「あいたっ!? な、何よ!?」

一方通行「オマエは馬鹿ですかァ? もしかしなくても馬鹿なンですかァ? やっぱり馬鹿だったりするンですかァ?」

結標「なっ、そんな馬鹿馬鹿連呼するのはやめてちょうだい!」

一方通行「馬鹿を馬鹿っつって何が悪りィンだっつゥの。大体よォ、上条クンは傍から見ても分かるよォな貧乏野郎だが、満足に食いモンが食えてねェから脳が働いてなくて勉強が出来ねェヤツじゃねェってことぐれェわかンだろ」

上条「ぐはっ……! じ、事実だけど地味にダメージが……!」

一方通行「世の中には貧乏生活を強いられながらも、必死に努力して上へ上り詰めた有能がいくらでもいるンだよ」

一方通行「勉学にそンなブドウ糖とか栄養だとか関係ねェ。所詮は才能と努力。今まで努力を怠ってきた三下が、今さら腹一杯メシィ食って大量のブドウ糖を頭に送ったところで何一つ変わンねェンだよ」

結標「…………」

一方通行「オマエはもォ十分頑張った。だから休め結標。昼休みはメシ食って休む時間だ、勉強なンてモンわざわざ休み時間潰してまでやるモンじゃねェンだよ」

結標「……わかった。そうするわ」

一方通行「チッ、手間ァかけさせやがって」

結標「ありがとね。一方通行」ニコッ

土御門「おおっー!! 姉さんが元に戻ったぁ!!」

吹寄「さすがアクセラね。伊達に結標さんといつも一緒にいるわけじゃないわね」

一方通行「ンだそりゃ? それだけ聞くと俺がいつもコイツと一緒にいる見てェな言い方じゃねェか」

吹寄「だってそうじゃない。一緒の家に住んでるわけだし」

一方通行「チッ、うっとォしい」

青ピ「もうこれだけ聞くと、傍から見たら同棲してるカップルにしか見えないんだよなぁ……」

結標「なっ……!?」

一方通行「ハァ?」

青ピ「だって一緒に住んでてお互いのことがよくわかってるんやで? これはもうこいび――」



ガゴン!!



青ピ「とろばぁ!?」ガシャーン

土御門「あ、青髪ピアスううううううううううううううううううっ!?」




結標「わ、わわ、わ、私たちはべ、別にそんなんじゃないから!! 全ッ然、そんなじゃないから///」つ軍用懐中電灯


吹寄「お、落ち着いて結標さん!! みんな分かってるから、ただの馬鹿の妄言だから!!」

姫神「まあ。将来的にはうんぬん」

吹寄「ちょっと黙ってもらえるかしら姫神さん!?」

上条「…………」シクシク

土御門「で、カミやんは何で机に突っ伏して泣いてるんだにゃー?」

上条「……一方通行が、……真実という名の暴力を、……容赦なく振りかざしてくるからッ……!」グスン

土御門「メンタル弱っ!? いつもの並み居る敵を強引な説教で無理やり論破してきた鋼の心を持つヒーロー上条当麻は一体どこにいった!?」

上条「北極海に身を投げ出したい」

一方通行「……つゥかよォ」



ワイワイガヤガヤ



一方通行「早く注文終わらせろよ。いくら温和な店員さんでも、このままじゃ目からビームを出す戦うウェイトレスさンになっちまうぞ」


ウェイトレス「……いえいえごゆっくりぃ」ニコニコイライラ


吹寄「あっ、すみません! ええっと、頼んでないのはあと誰だっけ?」

姫神「たしか上条君」

上条「バリスティック・スライダーから身を投げ出したい」

土御門「面倒臭せえっ! カミやんが別のベクトルで面倒臭くなってやがるっ!」

吹寄「テスト週間という特殊な環境が上条当麻をここまで変えてしまったのね……いいわ、あたしがその腐った根性を叩き直して――」ボキボキ

姫神「待って吹寄さん。今の上条君がそんなの食らったら。真面目にひとたまりもないと思う」

一方通行「あァ面倒臭せェ。オイ三下ァ! オマエの今食いてェモンはなンだァ!? 『トンカツ定食』かァ!? 『焼き肉定食』かァ!? それとも『コーヒー定食』かァ!?」

吹寄「……『コーヒー定食』なんてあったっけ?」

結標「『コーヒー定食』=『コーヒー単品』。つまりいつもの一方通行のことよ」

姫神「なるほど」

上条「…………」

一方通行「どォなンだ? 答えてみろ三下ァ!!」

上条「…………ライス(小)」

土御門「結局そこに行き着くのかよ」


青ピ「」ピクピク


―――
――





同日 13:00


結標「――さて、結標先生華麗に大復活っ!! さあ、勉強を再開しましょ?」

土御門「はーい!」

吹寄「数学は大方確認できたし、別の教科とかがいいわね」

姫神「それなら英語とかがやりたい。今回は文法とかが結構ややこしい」

上条「そうだな。上条さんも英語は全然駄目だからな」

結標「上条君。貴方はまだ数学の範囲全部見てないでしょ? だからもうちょっと数学頑張ってみよ? ね?」

上条「いや、でもこれくらいやれば赤点ぐらいなら回避できんじゃねえかな?」

吹寄「だったら試しにこのテスト勉強用に配られたプリントをテスト代わりにやってみたら? 自分がどれくらいの実力か分かるでしょ」

上条「よし、いいぜ。やってやるよ」ペラッ

姫神「とりあえず半分取れたらいい方。六割取れば安全圏ってところ?」

土御門「そうだにゃー。ウチは赤点のラインは三割未満だからそれくらい取れればまあ安全ぜよ」

上条「…………」

吹寄「あれ? どうしたの? ペンが止まってるけど」

上条「……さ、さっぱりわからないんだけど」

土御門「ふんぬッ!!」ゴッ

上条「ぐばっ!? ま、またかよ土御門っ!?」

土御門「だーかーらー、キミは今まで何をしてきたのかにゃー? 後半にある応用問題ならともかく、0点殺しと呼ばれる問1すらさっぱりとかナメてるとしか思えないんだぜい」

上条「分からねえんだからしょうがねえだろうが!」

吹寄「しょうがなくないわよ馬鹿者ッ!! 結標さんがどんな想いで貴様に勉強を教えていたと思ってるのっ!? 自分の精神を崩壊させながら!」

結標「いや、別に精神崩壊なんてしてないわよ」

姫神「あれは軽く精神崩壊してた」

結標「……と、とにかく上条君。もう一回最初からやりましょ? 現文とかは無勉でもまだ点数取りやすいけど、数学とかは分かってないと本当に悲惨な結果になっちゃうから。そうならないためにも」

上条「お、おう。頑張るよ」

一方通行「…………ハァ」

結標「……何よそのため息は?」

一方通行「オマエ、何にも分かってねェな。こンな無駄な努力いつまでも続けても一向に状況は変わらねェよ」

吹寄「どういうこと?」

一方通行「今のまま結標がいくら丁寧に教えたところで、コイツは何一つ知識を得ることなくテスト当日を迎えちまうってことだよ」

結標「えっ?」




上条「ちょ、それは言い過ぎじゃないですかねー?」

一方通行「言い過ぎなわけあるか。三馬鹿の一人である土御門すら分かりやすいと言った結標の説明を聞いて、何一つ分からねェっつゥ言葉が出る時点オマエは終わりだろ」

上条「おうふっ」ガクッ

土御門「じゃあどうするんだにゃー? 他の人が教えるにしても結標以外の適任者がいないんだぜい」

吹寄「……そうね。正直結標さん以上に上手な説明、あたしにはとても無理よ」

姫神「同じく」

結標「……じゃあやっぱり私がやるしかないじゃない。よし、だったらもっと分かりやすい説明を考えて――」

一方通行「馬鹿。それが無駄な努力だっつってンだろ。大体適任者ならいるだろォが」

結標「適任者……? 一体誰よ。まさか小萌先生を呼ぶとか言うんじゃないわよね?」

一方通行「ンな面倒なことするわけねェだろォが。ここにいンだろォが、学園都市第一位の超能力者(レベル5)『一方通行(アクセラレータ)』。この俺が」ゴキッゴキッ

土御門「あ、アクセラちゃんだとっ!? 本気か!?」

一方通行「ああ」

吹寄「む、無理でしょ……だって現代文10点でしょ?」

姫神「とても人に勉強をうまく教えられるとは思えない」

一方通行「オマエら本当10点10点うるせェな。叩き潰すぞコラ」

結標「……でも貴方どうしていきなり? あんなに面倒臭そうにしてたのに」

一方通行「あァ? チッ、そンなの決まってンだろォが。意味のない茶番を見せ続けられるのがうっとォしいからだ」

姫神「意訳。『これ以上結標が苦しむ姿なンて見たくねェンだよ』。かっこいいよアクセラ君」

一方通行「姫神。ちょっと裏に来い。そのクソみてェな脳みそ頭蓋骨ごと吹き飛ばしてやるから」

姫神「断る」

土御門「でもさぁ、たしかに結標の姉さんがまた精神崩壊しても困るからアクセラにチェンジってのは分かるが、肝心のカミやんにうまく勉強をお前は教えられるのか? 姉さん以上に分かりやすく」

一方通行「無理だな」

吹寄「って駄目じゃないそれじゃ! よくそんなんで『これ以上結標が苦しむ姿なンて見たくねェンだよ』とか言えたわね」

一方通行「俺ァそンなセリフ一言足りとも発してねェぞ! それはそこの脳内バラ色野郎が勝手に言っただけだろォが!」

姫神「私は的確にアクセラ君の心情を言葉にした自信がある」

一方通行「チッ、勝手に言ってろ」

土御門「で、結局どうする気だアクセラ? 分かりやすく教えるのが無理なら、他に何か策があるんだろ?」

一方通行「……オマエら、冬休みに宿題が出てたのは覚えるよな? 結構な量のヤツ」

吹寄「長期休暇に宿題が出るのは当たり前なのだから、覚えてるのは当然でしょ?」

姫神「そういえばあれ。土御門君結局終わらせてなくて居残り勉強してたね」

土御門「にゃははっー、嫌なこと思い出させないでくれにゃー」

結標「あっ、でもその宿題、上条君は終わらせてたわよね? たしか貴方に手伝ってもらったって」




一方通行「そォだ。そこで勝手に絶望してる馬鹿は俺に宿題を『手伝って』もらうことによって終わらせた」


上条「…………」ゼツボーン


吹寄「ふん、どうせ上条当麻のことだから、難しいところはアクセラにやってもらって悠々と終わらせたに決まってるわ。だから、こんな馬鹿みたいな状況に陥ってるわけだし」

一方通行「いや、俺はアイツの宿題に一つも手を出してねェよ」

結標「えっ、どういうこと? 手伝ったんじゃなかったの?」

土御門「……まさか、そういうことか」

姫神「何か分かったの土御門君?」

土御門「昨日の放課後カミやんは最初誰に勉強を教えてくれと頼んだか覚えてるかにゃー?」

吹寄「ええっと、たしかアクセラでしょ? それがどうかしたの?」

土御門「頼んだ、ってことは一度教えてもらったことがあって、それが分かりやすかったってことじゃないかにゃー?」

姫神「そういえば。彼理数系限定なら分かりやすい教え方だとも言ってた」

吹寄「……まさか、いやそんなことありえないでしょ。いや、でも……」

土御門「そのまさかで合ってると思うぜい」

吹寄「アクセラ。あなたまさか上条当麻に勉強を教えて一人で宿題をこなさせた、ってことなの?」

一方通行「ご名答。アイツは俺の監視のもときっちり自分の力で宿題を終わらせた。これは事実だ」

結標「じゃ、じゃあやっぱり貴方は私より教え方がうまいんじゃないの? 私が教えても上条君には悪いけどこのざまなわけだし」

一方通行「それはありえねェよ。俺が丁寧に教えたところで、どォしても一人よがりな説明になっちまう。オマエみてェな相手に歩み寄るよォな説明俺には真似出来ねェ」

吹寄「じゃあどうやって……?」

一方通行「まァ見てろ。馬鹿に勉強を教えるのに最も必要なのは『豊富な知識』でも『猿でも分かるような丁寧な教え方』でもねェ――」




一方通行「――それはただの『恐怖』だ」ニヤリ






上条「…………」ゼツボボーン


一方通行「おら三下ァ! いつまで呆けてやがる、とっとと勉強の準備しやがれ!」

上条「はっ、いけねえいけねえ。ちゃんとテスト勉強しなきゃ」

一方通行「上条クゥン、悪りィが今から講師の交代のお知らせだ。どンな馬鹿にも手を差し伸べる救いの女神様から、勉強なンて教える気がさらさらねェクソったれにな」

上条「お、結局お前が教えてくれるのか。つーか、教える気ねえのかよ!」

一方通行「それはオマエ次第だ。で、オマエは俺に赤点回避の手助けをして欲しいのか? 欲しくないのか?」

上条「そりゃして欲しいに決まってんだろ。頼むよ先生」

一方通行「よォし、じゃあ上条クン、まずオマエのテスト勉強をする目的を確認だ。自分の口で言ってみろ」

上条「そりゃ決まってんだろ。テストで赤点をゼロにして素晴らしい春休みを迎えることだよ」

一方通行「イイねェ、実に人間味溢れる目的だ。だがよォ、それだけじゃ足ンねェンだよなァ」

上条「足りない? まさか俺に100点を取れ、とか無理難題押し付ける気じゃねえだろうな? そんなのどう頑張ってもできねえよ」

一方通行「あァ? 別にそンな100点なンてアホらしい点数必要ねェよ。極論を言えば、全教科オール30点で問題ねェ」

上条「だったら一体何が足りないって言うんだよ?」

一方通行「そンなの決まってンだろォが。優雅な春休みを過ごすために赤点を回避するなンて普通な目的じゃ、一生オマエは赤点地獄の中っつゥことだ」

上条「?」

一方通行「さて、と」スッ つ携帯電話

上条「携帯電話? 一体どこに電話してんだ?」



プルルルルルルピッ!



??『……も、もしもしっ! か、かみじゅ、かみじょうですっ!』


一方通行「オマエはいつになったら電話応対がうまくなるンだァ? インデックスさンよォ?」


禁書『ん? その声はあくせられーただね? どうしたの? とうまなら出掛けてるけど』

一方通行「知ってる。目の前にいるからな」

禁書『そうなんだ。じゃあ何でここに電話を掛けたのかな? もしかして私に用?』

一方通行「そりゃそォだろ。オマエに用がなかったら電話なンてかける意味がねェだろォが」

禁書『別に用がなくて電話してきてもいいよ。私は毎日ひまで退屈な留守番生活を送ってるからね。あっ、でもあんまり長電話し過ぎるととうまに怒られちゃうかも』

一方通行「そンな心配する必要ねェよ。オマエと暇つぶしに長電話することなンざ一生ねェだろォからな」

禁書『むぅ、一生ってありえないかも。そもそも人生ってのは長いんだから、これからあなたの考えが変わって私に何の用もなくても電話を――』

一方通行「ない」

禁書『ぐっ、即答しなくてもいいと思うんだけど……。で、結局何であくせられーたは電話をかけてきたのかな?』

一方通行「ああ、そォだ。オマエアレだ、来週の週末、そォだな。土曜日ぐらい暇か?」

禁書『さっき言った通り私は毎日ひまで退屈な留守番生活を送ってるから、もちろんその日もひまなんだよ』

一方通行「何つゥか、まるでニートとでも話してるよォな気分だ」

禁書『にーと? 何それ?』




一方通行「何でもねェよ。それじゃあその日、三下と一緒にメシでも食いに行こうぜ。店は高級ステーキ店とかでイイだろ」

禁書『えっ!? ごはん!? ステーキ!? お肉!? 行く行く絶対に行くんだよ!!』キーン

一方通行「チッ、いきなり声量上げてンじゃねェようるせェ。ま、なら決まりだ。詳しくはまた連絡するからそォいう予定があるってことだけ覚えとけ」

禁書『ふふん。完全記憶能力を持ってる私に覚えとけなんて言葉を言うなんて、かたはらだいげきつうなんだよ!』

一方通行「どこで覚えやがったそンなわけの分からねェ日本語……まァイイ。そォいうことだからな、じゃあ切るぞ?」

禁書『うん! すごく楽しみにしてるんだよ! またねあくせられーた』ピッ


一方通行「…………」

上条「……………」

一方通行「そォいうことだ上条クン」

上条「一応どういうことか聞いていいか?」

一方通行「来週の土曜日、俺とオマエとインデックスで高級ステーキ店に行く」

上条「勝手に決めんなよ! 俺にも予定っていうものが――」

一方通行「それなら問題ねェだろ。その日はオマエはバイトのシフト入ってねェから、どォせ予定もクソもない暇人だろ」

上条「何で関係者でもないのに俺のバイトのシフトの情報を知っているんでせうか?」

一方通行「関係者にリークしてもらえばその程度の情報いくらでも仕入れることができる」

上条「芳川さんか……」


一方通行「さァてゲームの時間だ上条ォ! もしオマエが全てのテストを赤点回避することが出来りゃ、その高級ステーキ店の代金は俺が持つ」

一方通行「だが、もし一つでも無様に赤点取って春の補習フルコースへ参加確定した場合は、オマエがその代金全部持て」


上条「ちょっと待て! 食欲の神インデックス様相手に少なかろう高かろうのステーキだぞ!? マジで洒落にならねえぞマジで!! おい!!」

一方通行「何をビビってンだ上条クゥン? 簡単なことだろ、テストで全部30点以上取りゃイインだ? そォすりゃオマエもただでステーキ食べ放題の天国を味わえるンだぜ」

上条「ぐっ、ち、ちなみにゲームの拒否権は?」

一方通行「そンなモンあるわけねェだろ。まあ、別に拒否してもイイが、その場合オマエ自身の口からインデックスの野郎にこの話はなくなった、ってことを伝えろ」

上条「そ、そんなっ! 間違いなく俺の頭蓋骨が粉砕するじゃねえか!!」

一方通行「前門の虎、後門の狼。いや、まだ前門の方は野良猫ぐれェだろォな。さて、オマエはクソネコと狼、どっちに挑むつもりだ?」

上条「くっ……いや待てよ?」ボソッ

上条(ここで赤点取っちまって奢るはめになっても、その日に何かしら急用を入れて逃げちまえば……?)

一方通行「あっ、言っとくが急用とか入れたところで日程が延長するだけだぞ? 純粋に逃走するってンなら、俺があらゆるベクトルを操ってオマエを追い詰める」

上条「Oh……」

一方通行「さて、10分間の暗記タイムだァ。数学の範囲の暗記項目を全部覚えろ。そのあとそれのテストだ」

上条「さ、10分っ!? 無茶言うんじゃねえ!! 絶対無理だろこれ!!」

一方通行「安心しろ。テストに出すモンは教科書に書いてる公式とかだけだ。何なら予めテスト問題を先に渡してやってもイイぜェ? ただオマエは覚えるだけだ。簡単だろ?」

上条「にしても10分って……それに何でテスト?」

一方通行「そンなの決まってンだろォが。オマエが覚えたかの確認に加えて、覚えてなかった場合の罰ゲームをするからだ」

上条「罰ゲーム? まさかステーキ奢る以外にも何かする気かよ!?」

一方通行「当たり前だろ。じゃねェとテストの意味がねェ。今回の罰ゲームはそォだな……もしテストで全問正解出来なきゃここのファミレスの代金全部オマエ持ちな?」




上条「いいっ!? 何で全問正解!? 赤点は三割取れればオッケーじゃなかったのかよ!?

一方通行「あン? 予め答えが分かってるテストだぞ? そンなモンで合格ラインを100点未満で設定するわけねェだろ」

上条「あのーすみません一方通行様。今日全然手持ちないんですが……?」

一方通行「知らねェよ。だったら下ろして来い。それ含めてないンだったら皿洗いでも何でもして払え」

上条「無茶苦茶だっ!!」

一方通行「だったら大人しく全部覚えるこった。そォすりゃオマエには何の被害も被らねェよ」

上条「……不幸だ。どうしてこうなった……」

一方通行「何が不幸だ。全部オマエが自分で引き起こした事態だろォが。俺に助けを求めたことを含めて、な」ニヤァ


結標「…………」ポカーン

吹寄「……本当に無茶苦茶ね」

一方通行「馬鹿に勉強をさせるためにはこれくらいやらなきゃいけねェっつゥことだ」

姫神「スパルタ教育は。あまり効果がないと思うけど」

一方通行「人間の脳みそは本来スーパーコンピュータ以上の処理能力を持ってンだよ。それを全部扱えるかどォかは別としてな」

一方通行「そンな素晴らしいモンを持ってるっつゥのにそこの三下は残念ながら一つもそれを使おうとしねェンだよ」

一方通行「だったら無理矢理にでもそれを使ってもらうしかねェじゃねェか。どンな手を使ってでもよォ……」

土御門「ふむ、つまりあれかにゃー? ピンチの状態に追い込みに追い込みまくって、バトル漫画の主人公みたく覚醒させてスーパーカミやんを生み出そうっつー魂胆って感じか?」

一方通行「ああ。ゴキブリは命の危険性感じ追い込まれると、脳みそを活性化させて空を飛べるよォになるらしい。ゴキブリに出来て人間に出来ねェわけがねェだろ」

結標「ちょ、ファミレスでその名前を言うのはやめなさいよ……」

姫神「でも。ヒトとGは違う。そんなにうまくいく?」

一方通行「あァ? まァ、そりゃ人によるだろォな。そンな全員が全員覚醒なンてしたら世の中超人だらけだ」

吹寄「だったら上条当麻もそうなる可能性高いじゃない。普段から勉学から目を背けてたのだからなおさらよ。そんな都合のいいヒーロー物展開起こるわけないわ」

一方通行「そォだな。たしかにリアルってのは残酷だ……だが、残念ながらアイツはヒーローなンだよ」

吹寄「えっ、それってどういう――」



上条「――さいんえーぶんのえーいこーるさいんびーぶんのびーいこーるさいんしーぶんのしーいこーるにあーる」ブツブツ



吹寄「なっ、何ですって!? あ、あの上条当麻が真面目に暗記に取り組んでいるっ!?」

土御門「授業開始の号令から1分後には既に意識が窓の外にあるあのカミやんがかっ!?」

姫神「信じられない。まさかこんな光景に。立ち会う日が来るなんて……!」

結標「ひどい言われようね……」



上条「――ひつようじょうけんとはものごとがなりたつためにひつようなじょうけんじゅうぶんじょうけとはものごとがなりたつためにじゅうぶんなじょうけん」ブツブツ



一方通行「人間には火事場の馬鹿力っつゥモンがある。本当に危機的な状況に陥った人間が潜在的に眠っている力を発揮する、ってヤツだがそれは別に筋力に限った話じゃねェ」

一方通行「危機的状況で本当に頭を使わないといけねェよォになったら、どンな馬鹿でも必死に脳みそ働かせるっつゥことだ」

結標「危機的状況……?」



上条「――インデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイ」ブツブツ



結標「……ああ、たしかにこれは危機的状況ね」




一方通行「この方法で俺は一時的にだがコイツに知識を植え込ンで自力で宿題をさせた。俺の教え方が分かりやすいってほざいてたのはその影響で記憶が狂ったからだろォな」

姫神「ところでその宿題はきちんと出来てたの?」

一方通行「俺がひと通り見たところ中身の正解率はまァそこそこってところだったか。赤点なンてまず取らないだろォってレベルだ」

吹寄「……待って。だったら何で今上条当麻はこんな事態に陥ってるわけ? 冬休みのときにそれだけの勉強はしたってことなのに?」

一方通行「一時的にって言っただろ。生物ってのは使わねェところは次第に退化していってなくなるモンだ。普段からそンな知識を使わねェンだから忘れて退化すンだろ」

姫神「普段どれだけ真面目に授業に取り組んでないか。改めて分かる納得の説明」

土御門「カミやんェ……」

吹寄「あなたも大して変わらないでしょうが。ただマシってだけで」

一方通行「この要領で全教科の必要最低限の知識を身に付けさせる。そォすりゃ赤点回避なンざ余裕だろ」

結標「全教科って……それって貴方の大嫌いな現代文も含まれてるってことだけどいいの?」

一方通行「ああ」

結標「貴方が10点しかとれないのに?」

一方通行「オマエは本気で俺を怒らせたいらしいな」

土御門「でもアクセラちゃん、さっきのカミやんの発言からすると冬休みの宿題は理数系のヤツしか助けてなかったんだろ?」

一方通行「文系の問題に明確な答えなンざねェ。ウチの現文の教師のありがたい言葉だ。つまり、適当に書いときゃ別に問題ねェってことだよなァ?」ニヤリ

結標「駄目だこりゃ」

一方通行「まァそれは冗談だ。今回はさすがに宿題とはわけが違うからな、手始めに範囲内の暗記事項全部覚えさせる。それだけで1、20点取れンだろ」

吹寄「あと1、20点は?」

一方通行「教科書の内容をまるまる暗記させる。あと教師の板書もな」

結標「えっ、貴方ってノートとか取ってたの……? いつも寝ている様子だったから気付かなかったわ」

一方通行「いや取ってねェよ。ただ内容ぐらいは全部この頭に入ってる。それを俺自ら紙に書き出せば問題ねェ」

姫神「アクセラ君のチョーカーには。電極の他に睡眠学習装置でもついてるの……?」

吹寄「そういえばラジオに出たとき、半分寝てて半分起きてるから意識はあるとか何とか言ってったっけ?」

土御門「器用なヤツだにゃー」

一方通行「……ま、そォいうわけでコイツは無様に赤点を取って涙目で補習に行くことなンざねェよ。……ン?」

上条「つーか、これ絶対暗記無理だろ。10分どころか1時間あっても足りねえよ。クソ、ふこ――」ボソッ

一方通行「さて、腹も減ったところだし何か食いモンでも頼もォかなァ? 例えば一番高そォなこれとか」

上条「ッ!? さいんこさいんたんじぇんとさいんこさいんたんじぇんと」

一方通行「こォいう風に適度に『恐怖』で痛みつけてやれば、な?」ニヤァ


こうして一方通行の『恐怖という名のスパルタ教育』は日をまたぎ日曜日にも行われた。
徹底的に教育を受け、半ば廃人化した上条当麻(一方通行曰く『万全の状態』)はテスト当日を迎えるのだった。


結標「……よくよく考えたら、貴方もしかしてやる気満々だったんじゃないの? 暗記の確認用のテストまで用意してきてたし」

一方通行「気のせいだろ」ズズズ




青ピ「」ピクピク


―――
――





February Forth Friday 15:40 ~テスト結果発表日・帰りHR前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



ワイワイガヤガヤ



吹寄「……さて。おそらく今日のホームルームでひと通り全部のテストが返ってくるわね」

姫神「うん。あと残ってるのは化学と現文。どちらも私は自信がある」ニヤリ

青ピ「おおうっ神よっ!! 無勉のボクに赤点回避の点数をっ!!」

吹寄「今さら神様にすがってどうするのよ? というか無勉だったのあなた!?」

青ピ「だってぇー、ボクもぉー、結標先生の授業受けたかったのにぃー、いつの間にかお開きしてたんだもーん。もうやる気なくしてエロゲしかしてなかったわ」

姫神「……で。今のところの成果は?」

青ピ「今んところ赤点はギリギリ回避できとるでー! だから神様に祈ってるんやでっ!!」

吹寄「あっ、そう。そういえば肝心の上条当麻はどうなったのかしら?」

土御門「カミやんの結果は全部今日決まるんだぜい」

吹寄「どういうこと? もしかして今のところ全部回避してるっていうの?」

土御門「さあ? カミやんに聞いても『……今は戦争中だ。口を慎め土御門』って返されるだけだからにゃー。もちろんムカつくから一発ぶん殴っといたけど」

青ピ「何か知らんけどカミやんしばらく見ないウチにキャラ変わったよな。寡黙キャラというかクールキャラというか……中二病にでも発症したんやろか?」

姫神「それは大体アクセラ君のせい。青髪君はいなかったから知らないだろうけど」

青ピ「いなかったというか実際にはおったよな? 気絶してただけで普通にその場におったよな?」

吹寄「うーん、しかし気になるわね上条の途中経過。ちょっとあたしが脅したら教えてくれないかしら?」

土御門「吹寄ぇ、いつの間にお前はそんなジャイアンみたいなキャラになったんだにゃー」

吹寄「じょ、冗談よ! そんな馬鹿みたいな真似するわけないじゃない!」


一方通行「ま、でも例え脅したところでアイツは結果を言えねェよ」


青ピ「おっ、アクセラちゃんと姉さんおかえりー。身体測定(システムスキャン)やっと終わったんかいな」

結標「そうよ。はぁ、疲れたわ……頭痛い」

一方通行「つゥか、何でオマエそンなに疲れてンだよ? この程度の学校の測定なンかたかが知れてるだろ」

結標「何か知らないけど能力の限界ってやつを測られたわ。重さ、距離、正確性、他にも飛ばせるものの大きさとか……いつもより余計に演算したと思う」

一方通行「へっ、情けないヤツ。いつも手抜きして能力使ってるからこォなるンだよ。俺みてェに毎日全力で生きていけばこォはならなかっただろォな」

結標「似合わな過ぎて笑えないわよ、そのセリフ」

青ピ「……何という付いていけない会話。これが高位能力者……!」

土御門「お前がアホなだけだろ」

姫神「うん」

青ピ「ちょっと待って二人とも。冗談やで冗談、まさかあの程度でついていけないわけないやないかーい!」




吹寄「ところでアクセラ、さっきの結果を言えないってどういう意味よ?」

一方通行「あァ? ああ、実はアイツのテストだけ結果発表日にまとめて返却するよォ月詠に頼ンでンだ」

吹寄「どうしてそんな面倒なことを?」

一方通行「考査中に返された解答用紙が赤点だったとしよォ。そォしたら確実にアイツは萎えてやる気がなくなるだろォが。それを防ぐためにだ」

土御門「でもそれってあんまり関係なくないか? どっちにしろ赤点の時点で補習確定なわけだからにゃー」

一方通行「ああ。たしかにこりゃ綺麗事かもしンねェな。でも赤点の数を出来る限り減らせば、少しでも補習の時間が短くなるかもしれねェじゃねェか」

青ピ「……アクセラちゃん」

一方通行「あン? 何だよオマエ」

青ピ「いつからそんな他人のことを思いやる優しいレベル5になったんや……ボクは嬉しいでぇほんま」

一方通行「何言ってンだオマエ気持ち悪っ。死ねよ真面目に」

青ピ「ひどっ!? というかトーンがマジやん」

一方通行「死ね」

結標「そういえば一方通行? 貴方のテストのほうはどうなのよ? 上条君の先生やってたけどあの様子じゃほぼ無勉でしょ?」

一方通行「知らねェ」
 
結標「知らないって何よ? はぐらかしてるつもり?」

一方通行「ンなつもりじゃねェよ。何か知らねェが上条のテスト返却の件を伝えに行ったとき、どォやら月詠の野郎が勘違いしたらしくな。未だに俺の解答用紙も返ってきてねェ」

吹寄「へー、ある意味問題児二人の結果が今日一気に決まるってわけね」

一方通行「俺をあの三下と一緒にしてンじゃねェ」

結標「文系科目に関しては同じようなものじゃない。特に今日返ってくる現代文とか」

一方通行「俺がそンなモンで手こずるわけねェだろォが」

青ピ「おっ、それもしかしてフラ――」



ゴシャ!!



土御門「またか青髪ぃぃぃぃ!?」

吹寄「相変わらず懲りないわね」

姫神「形式美なのだから。これはもうしょうがない」



ガラララ



小萌「はーいみなさーん! ホームルームを始めますので席につきやがってくださーい!」








小萌「――というわけで今日は化学と現代文のテストを返しまーす! つ・ま・り、今回の期末テストの結果が今日分かってしまうということです!」



ワイワイガヤガヤ



吹寄「……よし! 今回のテストは乗り越えたわ!」化69点 現74点

姫神「今回は結標さんのおかげで数学も調子良かったし。上位はいただいた……!」化95点 現90点

土御門「よっしゃーっ!! これで補習回避ぃ!! 舞夏と甘いスプリングバケーション!!」化47点 現51点

青ピ「ありがとう神様!! やっぱり勝利の女神様はボクについてくれてたんやな!!」化34点 現39点

吹寄「神様に祈ったのか女神様に祈ったのかどっちかはっきりさせなさいよ。というか無勉で回避なんてすごくムカつくわね……」

結標「みんな、その調子だとうまくいったみたいね」化100点 現99点

青ピ「うわっ、化け物がおる」

土御門「姉さんこれで100点9つ目か……さすが超能力者(レベル5)っ!!」

姫神「やはり次元が違い過ぎる。私には上位なんて無理な話だった」

吹寄「いや、彼女だけおかしいだけだから。上位にはいけるでしょ……たぶん」

結標「自分の得点教えてあげただけで、まさか化け物とかおかしいとかって言われるとは……」


小萌「はいはーい! みなさん騒ぎたいのは分かるのですが一旦席に座ってくださーい!」



ワイワイガタガタ



小萌「えっと、これから本人たちの希望で上条ちゃんとアクセラちゃんのテストをまとめて返すのですよー」



<おおっーついに上条君たちの命運が決まるのね! <つーかコイツら冬休みの唯一の補習組じゃね? <どうせ補習だろ!



上条「…………」ゴクリ

一方通行「何ビビってンだ三下。オマエはやれるだけのことはやった、あとは胸を張って解答用紙を受け取りに行けばイイ」

上条「あ、一方通行……」

一方通行「まァ、一つでも赤点あったらステーキ奢りだけどな」

結標「さらにプレッシャー与えてどうするのよ」




小萌「じゃあまず上条ちゃんから取りに来てくださいー!」


上条「……は、はい」ガタッ



ざわざわざわざわ



上条(やれることは全部やった。あとは神頼み……いや違うッ!!)


小萌「はい、では上条ちゃんどうぞ!」スッ


上条(神様……、この世界(テスト)がテメェの思い通りの(上条当麻が補習から逃れられない)システムで動いているってんなら――)



上条「まずはその幻想をぶち殺す!!」バッ



現代文  53点
古 文  39点
数 学  32点
英 語  31点
化 学  49点
物 理  40点
世界史  42点
日本史  47点
公 民  49点
家庭科  60点
保健体育 45点


上条「……えっ」

吹寄「……う、嘘っ」

土御門「か、カミやんが……」

姫神「……赤点を」

青ピ「か、回避したっ!?」




上条「や、やったあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」







<うおおおおおおおおやったな上条ぉ!! <まさか上条君が補習に出ない日が来るとはね…… <あれ? 俺ですら赤点取ってんだぜ……何で? <涙拭けよ



結標「……ふふふっ、さすが一方通行先生ね」

一方通行「チッ、当たり前だろォが。学園都市第一位が直々に指導してやったンだ、これで無様な結果だったら八つ裂きにしてたぞ」

結標「そうね。上条君すごく嬉しそう」

一方通行「そりゃそォだ。念願の補習回避に加えて俺の与え続けてきた『恐怖』を全部乗り越えたンだ。喜ばねェ方がおかしい」

結標「貴方……上条君にどれだけ罰ゲームを後付したのよ……?」


上条「っしゃーっ!! うっしゃーっ!! おぉうっしゃー!!」


小萌「上条ちゃん! 上条ちゃん!」

上条「ん? 何ですか先生、今俺は喜ぶので忙しいんですけど」

小萌「喜んでるところ悪いのですが、上条ちゃんは能力開発の単位が足りていませんのでどちらにしろ補習ですよー」

上条「…………………………………………ふぁ?」

土御門「なん……だと……?」

吹寄「くっ、そういえば忘れてたわ」

姫神「そんな……」

青ピ「け、結局こんなオチかーい!」


上条「……う、うそだろ先生……? 俺、俺赤点取ってないのに……」

小萌「…………」ニコニコ

上条「こんなのってねえよ……結局未来は変わらないって言うのかよ……、やっぱり俺じゃあ、幻想は殺せないってのかよ……」ガクッ


吹寄「上条当麻……」

姫神「上条君……」

土御門「カミやん……」

青ピ「カミやん……(あれ? 何この空気!? いつもなら『ぷげらwぷげらwざまぁwww』って感じなのにあれー?)」


結標「……残念ね。まさかあんな落とし穴があるなんて」

一方通行「そォか? どの辺りが残念なのか聞きたいね」

結標「ちょ、一方通行! さすがにそれは今言うべきセリフじゃないと思うんだけど!」

一方通行「いや、だってよォオマエ……上条の野郎はある意味補習を回避してンじゃねェか。ここは喜ぶべきだろォが」

結標「…………えっ」




小萌「……上条ちゃん」

上条「……はい」

小萌「上条ちゃんは今回のテスト、このテストの結果を見る限りよっぽど頑張って来たようですね」

上条「…………」

小萌「先生正直びっくりしましたよー。どうせまた赤点を取って補習をしなきゃいけないのか、なんて先生が絶対思ってはいけないことを思っちゃってたのですよ」

上条「…………」

小萌「だから先生は反省しなきゃいけません。そしてこれからは上条ちゃんはやればできる子ですって、ちゃんと上条ちゃんを信じていきます」

上条「…………」

小萌「そういうわけで上条ちゃん?」


小萌「春休み。ゆっくりのびのびと楽しんで、たくさんの思い出を作るのですよー!」


上条「………へっ? い、今何て……」

小萌「あっ、でもちゃんと宿題はやってくるのですよー? もしやって来なかったら先生本気で怒りますからねー」

上条「……ちょ、ちょっとわけ分からないんですけど先生? 俺って春休みに補習があるんじゃねえのか?」

小萌「はい、そうですー。ちゃんと補習もやりますよー」

上条「じゃあ先生は何でそんな思い出とか何とか……」

小萌「ふふふっ、上条ちゃん? 今回の補習は上条ちゃんの頑張りに免じてなんとなんと!? 自宅で能力開発のプリント10枚なのですよー!」

上条「……ってことは……?」

小萌「はい。上条ちゃんは休み中にわざわざ学校に来る必要はありませーん! あっ、でも来たいのだったら別に来てもいいですけどー」

上条「やっ、やった……」



上条「補習回避きたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



小萌「あっ、ちゃんと補習はありますよ! プリントですプリント! 回避できてませ――ふにゃっ?」

上条「ありがとうせんせええええええええええっ!! 俺担任が小萌先生で本当によかったよおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ダキッ

小萌「ちょ、か、上条ちゃんこんなところでやめっ、というか私と上条ちゃんは教師と生徒であって……でも上条ちゃんが望むなら別に先生は///」



<おいあの野郎何勝手に小萌先生に抱きついてんだゴルァ!! <ぶち殺せ!! <アイツだけ事実上補習回避の上小萌先生とイチャつくなんて理不尽許されねぇ!!





結標「……知ってたの? このこと?」

一方通行「イイや、別に」

結標「じゃあ何で貴方さっき補習回避してるとか言ってたの?」

一方通行「あァ? そりゃ決まってンだろ。月詠の野郎がいかにも私は嘘ついてますよ、って顔でニコニコ笑ってやがったからだ」

結標「えっ、別にいつも通りの笑顔だったような気がしたけど……」

一方通行「俺は今まで嘘で塗れた世界を生きてきたンだ。あの程度の分かりやすい嘘は余裕で見抜ける」

結標「そ、そう……」

一方通行「今回は大方アレだろうな。『今まで私にかけてきた迷惑のお返しですよー』っつゥ感じで勿体ぶってあンな茶番始めたンだろ」

結標「……まあでも、何だかんだ言ってよかったわね。上条君はこれでちゃんと春休みがあるってわけだし」

一方通行「そォだな。ステーキも結局俺が奢るっつゥことになって万々歳だろォな」

結標「それじゃあまた春休みも、みんなで集まってわいわいできるってことよね? ね、一方通行?」ニコッ

一方通行「…………」


吹寄「上条当麻ァ!! たしかに赤点を取らずにテストを乗り越えたのは喜ばしいことでしょうね。でもいくら嬉しくてもやっていいことと悪いことがあるでしょうが馬鹿者がッ!!」

土御門「オーケーカミやん。今から貴様は一年七組の敵だ。恨むなら自分の常識のなさを恨むんだな」

青ピ「イエスロリータ!! ノータッチ!!」

小萌「青髪ちゃん! 先生は大人なのですよー! その、えっと、ろ、ロリとかじゃないのですよぉ……」

姫神「やはり上条君は。もしかして上条君は。そういう趣味の変態ッ……!」ジトー

上条「ぎゃあああああああああっ!! 死ぬっ!! 本気で死ぬっ!! 楽しい春休み送ることなく死ぬっ!! そしてその蔑む目はやめて姫神ぃぃぃ!!」


結標「ふふふっ」

一方通行「…………ハァ」


結標淡希は記憶喪失である。だから積極的にイベントに参加して思い出を積極的に作ってやる、そういう少女だ。
そんな彼女と対局の位置にいる少年一方通行からすると、正直イベントなんてものに巻き込まれるのは御免である。
だから一方通行は彼女の笑顔を見てこう呟いた。



一方通行「……面倒臭せェ」



――――――




~おまけ~


上条「……ふ、不幸だ」ガタリ

土御門「ふん、初の補習回避ではしゃぎたい気持ちは分かるが、それはきちんと常識を考えたはしゃぎ方をするべきだったな」ゴキゴキ

青ピ「せやで。いくらフラグ建築士のカミやんやからて痴漢行為が許されるほど世界は優しくないんや」バキバキ

吹寄「ふう、……ん? そういえばアクセラの点数って結局どうだったのかしら?」

一方通行「あン? 何で俺のテストの結果なンて知りてェンだ? もォ上条の赤点回避っつゥ物語の山場は終わっただろォが」

吹寄「いや、一応ね? どういう結果になったか気になるわけよ」

姫神「うん。私も気になる。非常に」

結標「はっ、そうよ。よくよく考えたらコイツが現文10点取ってたら春休み何も出来ないじゃない……!」ボソッ

一方通行「……何で俺なンかのテスト結果そンなに気にしてンのか知らねェが、見たいなら見せてやるよ。そンな面白いモンじゃねェけどよォ」スッ


現代文  100点
古 文  100点
数 学  100点
英 語  100点
化 学  100点
物 理  100点
世界史  100点
日本史  100点
公 民  100点
家庭科  100点
保健体育 100点


土御門「えっ」

青ピ「えっ」

吹寄「えっ」

姫神「えっ」

結標「えっ」

上条「」ピクピク

結標「う、嘘っ……だって現文10点の一方通行よ……? 何か0が一個多いんですけど……」

一方通行「チッ、オマエらはいつまでくだらねェ過去に囚われてやがンだァ? くだらねェ」

結標「い、一体どんなトリックを使ったっていうのっ!? 一体どんなチートを使ったっていうのっ!?」

一方通行「ったくよォ、俺は第一位の一方通行だぞ? たしかに最初のテストは残念な結果になっちまったがなァ、一度どンなモンかっつゥパターンはそれで確認できたンだよ」

一方通行「確認した、っつゥことはそれに応じた対策を講じりゃそれではい楽勝、ってことなンだよ。分かったかなァ三下どもォ」

結標「た、対策? あ、貴方いつの間にテスト勉強したのよ!? だって、だってずっと上条君に付きっ切りだったじゃない!」

一方通行「は? テスト勉強? 何言ってンだオマエ? だいたいテストっつゥのは今までの授業の復習だろォが。だったら真面目に授業聞いて内容覚えてりゃ何の問題ねェだろォが」

一同「…………」

一方通行「?」



一同「あ、当たり前のことを一番言われたくないヤツに言われたっ!?」



――――――


久々の[田島「チ○コ破裂するっ!」]だから脇汗びっしょびしょだわ


次回『年下たちの恐怖』

読んでる人いて草生えた
投下



2.年下たちの恐怖


February Forth Sunday 12:00

-黄泉川家・一方通行の部屋-


一方通行「Zzz……」



<ワハハハハハハッ!! <ッテミサカハミサカハ



一方通行「Zzz……あン? うるせェな……今何時だと思ってやがる」ムクリ

一方通行「…………」

一方通行「あァ、もォ昼か……」

一方通行「面倒臭せェが一旦起きるか。俺の体がカフェインを欲してやがる」ガチャリガチャリ


-黄泉川家・リビング-



ワイワイガヤガヤギャーギャーワーワー!!



一方通行「……つゥか何だァ? このうっとォしいくらいの騒がしさは?」

一方通行「たしかに今は昼メシ時だろォが、これは異常だろ。どンだけハッスルしてやがンだあのガキは」

一方通行「まァ、俺には関係ねェからどォでもイイがな」



ガラララッ



打ち止め「うおおりゃああっ!! このミートボールはミサカのものだぜっ! ってミサカはミサカは山賊魂を燃やしながら強奪を謀ってみたりっ!」バッ

円周「ふん、甘いよ打ち止めちゃん! 甘々だよ大甘だよ! この程度のスキルで山賊宣言するなんて『木原』を舐めすぎっ!」ガキン


一方通行「…………」


打ち止め「あっ、やっと起きたみたいだね。おはよー! ってミサカはミサカは時間帯に合わない挨拶をしてみたり」

円周「おはよう、そしてお邪魔しちゃってますアクセラお兄ちゃん」


一方通行「…………」



ガラララッ



一方通行「……寝よ」ガチャリガチャリ


円周「あっ、何も見なかったことにして部屋に帰ろうとしてる」

打ち止め「逃すなぁ、追えぇ!! ってミサカはミサカは命令口調しつつ結局自分で追いかけてみたり!」ダッ




-黄泉川家・食卓-


一方通行「……ハァ、何つゥか面倒臭せェ」ズズズ

打ち止め「人の顔見るなり面倒臭い発言はどうかと思うよ、ってミサカはミサカは至極真っ当な指摘をしてみたり」

円周「しょうがないよ打ち止めちゃん。アクセラお兄ちゃんはそーいう人だし」

一方通行「そォいう人、って評価されるほどオマエとそンな付き合いねェと思うンだけどよォ」

円周「そうかなあ? バレンタインのチョコを渡したりするくらいの仲だとは思ってたんだけど」

一方通行「それはオマエが一方的にそォ思ってるだけだろォが。つゥか、俺はオマエのプレゼント受け取った記憶ないンだが」

円周「あれー? そうだったっけー? あれれー?」

打ち止め「まああれはプレゼントというよりイタズラでしたからなー、ってミサカはミサカはポテトフライをかじりながら思い出してみる」モグモグ

一方通行「……その昼メシはコンビニか何かの弁当か。他のヤツらはどこにいった。そしてこのクソガキがここにいる理由はなんだ?」

打ち止め「ヨミカワはアンチスキルのお仕事で、ヨシカワはコンビニのバイト、アワキお姉ちゃんはお友達と遊びに行ってるよ、ってミサカはミサカは説明してみたり」

打ち止め「そしてミサカがここにいる理由、それはここに住んでるからとしか言い様がないのだ、ってミサカはミサカは胸を張って答えてみたり」エヘン

一方通行「オマエのことじゃねェよ。そっちの木原円周のことだ」

円周「えっ、クソガキって私のことだったの? まさか私までクソガキ扱いされてるとは思わなかったなあ」

打ち止め「というかあなたはいい加減二人称を分かりやすくしたほうがいいと思うよ。というわけでミサカのことはクソガキじゃなくちゃんとラストオーダーと呼ぶのだ!」ビシッ

一方通行「名前長いからクソガキでイイだろ」

打ち止め「わーいソッコー拒否されちまったぜ、ってミサカはミサカは自分の名前の長さを少しだけ恨んでみたり」

円周「ふーん、じゃあ私の名前はそこまで長くないから呼んでくれるってことだよね?」

一方通行「呼びづらいからクソガキでイイだろ」

円周「あれ? おっかしいなあ、私の名前は円周率みたいで呼びやすいってことに定評があるのに」

打ち止め「でもでもそれじゃあ駄目だと思う! 同じクソガキだったらこうやって二人でいると、呼ばれた瞬間二人同時に返事する事件が多発すると思うよ、ってミサカはミサカはこれからの展開を予想してみたり」

一方通行「だったらどっちか俺の前から立ち去れ。そォすりゃ問題ねェだろ」

円周「それは無理な提案だね。私たちは常に一緒にいる、いわば二人一つのような存在! これから私が白い服を着て打ち止めちゃんが黒い服を着て悪者をやっつけるような運命があるに違いないんだよ!」

打ち止め「おおっ! いいねえ、そういう展開結構燃えるところがあるかも、ってミサカはミサカはこれからの展開に少し期待をしてみたり!」

一方通行「アニメの見過ぎだクソガキども」




一方通行「……結局どォしてオマエはここにいるってンだよ? 木原の方のクソガキ」

円周「一応名前が区別つくように努力はしてくれるんだね。結局クソガキだけど」

打ち止め「さすがツンデレ界の第一位だねー、ってミサカはミサカはあなたの成長に感心してみたり」

一方通行「誰がツンデレ界の第一位だ。ぶっ殺すぞクソガキ」

円周「まあまあ定番の流れは置いといて、アクセラお兄ちゃんのために私がここにいる理由を『木原』的に説明してあげるとするよ」

一方通行「普通に説明しろよ面倒臭せェ」

円周「ふーん、だったら普通に説明するよ。今日は従犬部隊の社員全員出張に出ててね。私だけ仲間はずれにされたんだよ。以上」

一方通行「……つまり、アレかァ? 今お隣さンは誰一人いなくて閉め出されたオマエは行く当ても無いからここにいると?」

円周「そうそう、さすが第一位だね。理解力がまともで助かるよ」

一方通行「理解力なンてクソほども必要ねェ話だったよォな気がすンだが……」

円周「まあこまけぇこたぁいいんだよ! ってことで一つよろしく!」

一方通行「……ハァ、本当に面倒臭せェ」

打ち止め「ん? 何でそんな露骨に面倒臭いアピールするの? この殺伐とした家にエンシュウが遊びに来たんだよ? 喜ぶべきじゃないかな?」

一方通行「別に元から殺伐となンかしてねェだろ。つゥか、このクソガキが遊びに来たせいで、逆に俺がここを殺伐とした雰因気にするかもしンねェな」ピキピキ

円周「まあまあ落ち着いて。ほら、あったかいお茶でも飲んで」つ旦

一方通行「余計なお世話だッ。てか、人の家のモン勝手に使ってンじゃねェぞクソガキ」

円周「うーん、こんなにおいしいのになあ」ズズズ

一方通行(……クソが、出来損ないでもやっぱり『木原』か。人の癇を障りに障りまくってきやがる)ギロッ

円周「? いやあそんな熱烈な視線を向けられてしまうとこちらも困るっていうかー」テレッ

一方通行「『木原』、マジでうぜェ……」ピキピキ

打ち止め「ぎゃあああっ!? 何か知らないけどとてつもなくキレてるぅぅ!? ってミサカはミサカは今にも電極のスイッチを押してしまいそうなあなたを制止してみたり」

円周「能力に頼らなければ女の子一人どうにかできないなんて、まさしく滑稽ってやつだねー」

一方通行「クソガキィ! よォく聞けェ! トモダチはちゃンと選べェ! こンなゴミクズ間違っても選ンでンじゃねェぞゴルァ!!」

円周「ひどい言われようだねー」

打ち止め「むー、突然何なの? ちょっとそれは言いすぎだと思うよ、ってミサカはミサカは友達を馬鹿にするあなたに少し憤りを感じてみたり」

一方通行「あァ!?」ギロッ

打ち止め「ひっ、……え、エンシュウは親友だもん! ってミサカはミサカは徹底抗戦の姿勢を見せてみる」

一方通行「コイツが……、親友だとォ!?」

円周「そうだそうだー! 親友だぞー!」

一方通行「へェー、こンなにうっとォしいゴミクズ野郎だっつゥのにか?」ピキピキ

打ち止め「そ、そうだよ! どの辺りがゴミクズ野郎なのかさっぱり分からないけど、ってミサカはミサカは肯定してみる」

円周「そうだー! ゴミクズ野郎だゴミクズ野郎だ……あっ、間違えた、親友だ親友だぞお!」

一方通行「……あァーもォ面倒臭せェ。勝手にしろォ。俺ァもォ寝る」ガチャリガチャリ

円周「おっ、デレたよ打ち止めちゃん。やったね私たちの勝利だあ」

打ち止め「いや、単にもう面倒になっただけだと思うけど。まあいいやミサカたちの勝利だわっしょーい!!」

一方通行「くっだらねェ」ゴロン


―――
――





同日 14:30

-黄泉川家・リビング-


一方通行「Zzz……」


打ち止め「――ねえねえ、アクセラレータ! 起きてー! ってミサカはミサカは呼びかけながら揺すってみる!」ユサユサ


一方通行「Zzz……」


円周「アクセラお兄ちゃん! 朝だよー! 起きる時間だよー!」


一方通行「Zzz……」


打ち止め「うーん、やっぱり起きないねー、ってミサカはミサカは予想の範疇だけど少し残念がってみたり」

円周「おかしいなあ、時間的にレム睡眠のはずだから、すんなり起きるのだと思ったんだけど。もしかしていつも寝すぎて睡眠の周期が他の人とは異なるのかなあ?」

打ち止め「たしかにあの人はしょっちゅう昼寝してるからねー。たぶんあれだよね、昼寝し過ぎると夜眠れなくなるあれ! ってミサカはミサカは自信満々に発言してみたり」

円周「そういうのとは違うと思うけど。まあいいや、とりあえず違う方法で起こそう」

打ち止め「違う方法? ってミサカはミサカは繰り返してみる」

円周「うん。人を起こす方法は何も体を揺さぶったり大声で呼びかけるだけじゃないってことだよ」スッ

打ち止め「? スマホなんか出してどうするつもりなの? 大きい目覚まし音とか流したりするつもり?」

円周「違うよ。それじゃあ大声で呼びかけるのと何ら変わらないよ。私の場合はこうやって使うんだよ。……んっと、そうだなー」スイッスイッ

打ち止め「おおうっ、何という華麗な指さばき。まさしくスマートフォンだね、ってミサカはミサカはうまいこと言ってみたり」

円周「別にうまくも何ともないよ。……うん、そうだね。やっぱり安定の数多おじちゃんだよね」スイー

打ち止め「ん? 何でここでキハラの名前が出てくるの? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」

円周「あっ、そうだ打ち止めちゃん。少し私から離れて身構えたほうがいいと思うよ?」

打ち止め「えっ、何で?」

円周「あなたにとってとても怖くて、気持ち悪くて、不快すぎるから、もしかしたら失禁とかしちゃうかもだからね」

打ち止め「失禁って何言ってるのえんしゅ――ッ!?」ゾクッ

円周「――うんうん、そうそうそうだよね数多おじさん。『木原』ならこういう雰囲気を自分で作り出さないといけないよね」ピーガガガ



ガタッ!!



一方通行「ッ!?」カチッ

円周「あっ、起きた起きた」




一方通行「……木原、……円周……?」

円周「そうだよー。みんなのアイドル円周ちゃんだよー」

一方通行「……オマエ、一体何をやりやがった……!」

円周「うん? 何ってあれだよあれ、アクセラお兄ちゃんがあまりにも起きないから打ち止めちゃんと一緒に起こしてたんだよ。ね、打ち止めちゃん?」


打ち止め「えんしゅうこわいえんしゅうこわいえんしゅうこわいえんしゅうこわい――」ガタガタブルブル


円周「あら、やっぱりこうなっちゃったか。だから離れててって言ったのに」

一方通行「クソガキに……打ち止めに何をやりやがったオマエェ!!」

円周「そんな中二病的なシリアス顔にならなくもいいのに。別にただ『木原』的に純粋な悪意ってやつを放ってみただけだよ。ポ◯モンで言うあくのはどうみたいなの。二割の確率でひるむよ」

一方通行「ふざけてンじゃねェぞォ木原円周ゥ!! やっぱりオマエは俺たちを狙うよォに言われた上からの刺客だったっつゥことかァ!!」

円周「私はそんなんじゃないし。もう、はいはいやめやめ。一旦落ち着こうよアクセラお兄ちゃん。誰もこんなシリアス展開期待してないよ。これがドラマとかならチャンネル変えられちゃうよ……あっ、そうだ」スッ



パンッ!!



打ち止め「!? な、何っ!?」ビクッ

円周「やっと正気に戻ったね。ちょっとこのアクセラお兄ちゃんどうにかしてよ。今にでも私の血流を操作して心臓爆破しそうで怖いよ」

一方通行「……ら、打ち止めァ」

打ち止め「わっ、何そのとてつもなく怖い顔ッ!? 何だか知らないけどミサカなら大丈夫だから落ち着いてっ! ってミサカはミサカはとりあえず電極のスイッチを切ることを懇願してみる!」

一方通行「あ、ああ」カチッ

打ち止め「一体何があったの? ちょっとミサカ何があったかイマイチ覚えてないんだけど、ってミサカはミサカは少し痴呆症を心配しながら尋ねてみる」

円周「いやー、その外見で痴呆症はないでしょー。ただちょっと私のイタズラでビクビク状態になってただけだよ」

打ち止め「……よく分からないけどあなたが怒ってたのってそれが原因? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「チッ、ンなわけねェだろォが。ただそこの円周が調子に乗ってたからオシオキしてやろォと思っただけだ」

打ち止め「ふーん、まあ何にしてもありがとうね、アクセラレータ!」ニコッ

一方通行「ッ……くだらねェこと言ってンじゃねェよクソガキ」

円周「わあ、まさしくツ・ン・デ・レ・だ! いやあ、今まで何となくしか感じてなかったけどこれはもうツンデレ判定確定だね、うんうん」

一方通行「…………」カチッ




円周「……あれえ? アクセラお兄ちゃん何で唐突にまた電極のスイッチを押したの? 私には理解できないよ」

一方通行「とりあえずオマエが敵じゃないっつゥのは信じてやろう」

円周「ほんと? それは嬉しい限りだね。でもそんなにあっさり信じちゃってもいいのかなあ?」

一方通行「別に今さらエネミー宣言したところでオマエみてェなガキ怖くねェからな。ま、この話は置いといてオマエが敵じゃないとしても……」


一方通行「とりあえずオシオキは確定っつゥことだ」ニヤァ


円周「……うんうん、分かってるよ数多おじさん。『木原』はこういうときは逃走するにかぎ――」ダッ



ズガン!!



一方通行「チッ、くだらねェ」カチッ

円周「」プスプス

打ち止め「わー、すごく痛そう、ってミサカはミサカは小学生並みの感想を言ってみたり」

一方通行「見た目が小学生だから別にイイだろ。……つゥか、結局オマエらは何でこの俺の至福の昼寝タイムを邪魔しやがったンだ?」

打ち止め「え、えーと何だっけ、ってミサカはミサカは記憶を少しさかのぼってみたり」

一方通行「どォでもイイことなら俺は昼寝を再開させてもらうぞ」ゴロン

打ち止め「えっ、ちょっと待って! えーと、えーと」アセッ

円周「これだよ打ち止めちゃん。このチラシこのチラシ」ピラピラ

打ち止め「おおっ、これだ! ありがとエンシュウ! ってミサカはミサカは素直にお礼を言いつつチラシを受け取ってみたり」

一方通行「チッ、無駄に回復力は高けェな」

円周「それは私が『木原』だからだよ。えっへん!」

一方通行「未元物質(ダークマター)でも体に埋め込ンでンのか……」

打ち止め「これだよこれ! これを食べに行きたくてあなたを起こしたの! ってミサカはミサカはチラシを渡しながら上目遣いで頼み込んでみたり」

一方通行「あァ? 何々……『クレープハウスrablun』ってまたクレープかよ! このネタ前もやっただろォが!」

打ち止め「それなら話が早い。ミサカたちをそこに連れて行ってクレープをごちそうして欲しいのだ、ってミサカはミサカは率直にお願いしてみたり」

円周「私前々からこのクレープ屋さんに友達と行ってみたかったの。お願いアクセラお兄ちゃん」

一方通行「白々しい嘘ついてンじゃねェ。つゥか、何で俺が連れて行かなきゃいけねェンだ、オマエらだけで行って来い」

打ち止め「ええっー、だってミサカたちお金ないしー」

一方通行「ンなモン俺がいくらでも渡してやるよ」

円周「そもそもこんなか弱い女の子二人でそんなところまで行け、って言うのが鬼畜だよね」

一方通行「オマエは中学生だろォが! 今どき学園都市、しかも治安が一番まともな第七学区を一人で歩けないとか言う中学生なンているわけねェだろ!」




円周「別にアクセラお兄ちゃんがそれでいいならそれでいいんだけど。もしかしたら私たちだけで外に出たら、打ち止めちゃんを狙ったテロリストがいきなり強襲してくるかもしれないよ?」

一方通行「そンな都合よくテロリストが現れるわけねェよ」

円周「ほんとに?」

一方通行「ああ」

円周「ちゃんと前例があるのに?」

一方通行「あァ?」

円周「学園都市のトップシークレットの暗部組織『メンバー』。一応聞いてるんでしょ? 前、従犬部隊のオフィスが狙われたこと」

一方通行「…………」

円周「以前は数多おじさんたちがいたからよかったけど、さすがの私一人じゃ守り切る自信はないよ。私、一応『木原』だけどそんなに優秀じゃないから」ニヤリ

打ち止め(何の話をしてるんだろ? ってミサカはミサカは指を咥えながら会話する二人を眺めてみたり)キョトン

一方通行「チッ、分かったよ面倒臭せェ。連れて行ってやるっつゥのクソったれがッ」ガチャリガチャリ

打ち止め「えっ、ほんと!? わーい、久しぶりにスイーツが食べられるぜ、ってミサカはミサカは普段はプッツンプリンしか食べられない不満を今日ここで発散することを心に決めてみたり!」トテチテ

一方通行「この前散々クソ甘いチョコレート食べてたのに何の不満があるってンだ……」

打ち止め「チョコレートとクレープは別腹ってやつだよ、ってミサカはミサカは女子的な返答をしてみたり!」

一方通行「欲望に忠実な胃袋様だな、クソが」ガチャリガチャリ


円周「…………」

円周(……ふふっ、ほんとはあの程度の暗部組織私一人で余裕だけど、やっぱりこう言えばアクセラお兄ちゃんは動いてくれるね)

円周(さすが数多おじさん。アクセラお兄ちゃんのことをよーく分かってるねー)ピーガガガ


一方通行「オイ、クソガキィ! 来るならさっさとしろォ! ボケっと突っ立ってンじゃねェよ!」

打ち止め「早くー! エンシュウー! ってミサカはミサカは己の欲望のために急かしてみたり!」

円周「はあい! すぐに行くよー!」



ガタン



―――
――





同日 15:00

-第七学区・街頭-


一方通行「……あァ、クッソ。ふれあい広場遠すぎンだろ面倒臭せェ」ガチャリガチャリ

打ち止め「でも家からは徒歩15分位だったような気がするんだけど、ってミサカはミサカは前回クレープ屋さんへ行ったことを思い出してみたり」

円周「だらしないなあ。日頃の運動不足がこういうところで影響するってよく分かる模範になれるね」

一方通行「俺杖突きオマエら五体満足オッケー?」

打ち止め「そんなに面倒なら能力使えばいいのに。そしたらすぐに着くしミサカたちも楽しめるしでの一石二鳥だよ、ってミサカはミサカは四文字熟語を混じえて知的アピールをしてみたり」

一方通行「その程度の四文字熟語馬鹿でも使えるぞ。つゥか、そンなポンポン能力使えるかってンだ。いつどこで何があるか分からねェっつゥのによォ」

円周「テロリストの軍勢に襲われたりしたら大変だしね。アクセラお兄ちゃんなんて能力使用モードで30分経ったらただのサンドバックと化するし」

一方通行「オマエをサンドバックに見立ててブン殴りてェが、言ってること自体間違ってねェからなァ」

円周「そいつは危ない危ない。この前数多おじちゃんにもサンドバックにされそうだったからね。もしかしたら私はサンドバック回避能力に長けた『木原』かも」

一方通行「随分とくだらねェ能力だな。つゥか、ガキ相手に何やってンだあのオッサン」

打ち止め「ふふふっ、そりゃミサカたちのイタズラが常に絶えない職場だからね。キハラもサンドバックを殴りたくもなるよ。実際ミサカも結構ゲンコツ食らったし、ってミサカはミサカは頭をさすりながら思い出してみたり」

一方通行「木ィィ原クゥゥン!! ガキを手を上げるたァどォいうつもりだクソ野郎がァ!! スクラップ確定だゴミクズがッ!!」

打ち止め「もう落ち着いて! 別にそんな大したことじゃないから大丈夫だよ! ってミサカはミサカは相変わらずの過保護ぶりに呆れてみたり」

円周「いやあ、これはもうあれですなあ。過保護というよりろりこ――おっとアクセラお兄ちゃん冗談だよ冗談。やだなー冗談だから電極のランプの色を赤色にするのはやめよう」

一方通行「……何つゥかただでさえ歩いてて疲れるってのに、さらにクソガキ二人に囲まれたら10倍ぐらい疲れる気がすンだけど」

円周「それは気のせいだと思うよ。なんたって癒し系ヒロインの円周ちゃんが一緒にいるんだからね。毎ターンSP10%回復だよ」

一方通行「オマエが癒し系だったら、通学路とかでやけに吠えてくるクソ犬でさえ癒し系に思えてくるな」

打ち止め「おっと、元気系マスコットポジションのミサカも忘れてもらっては困るぜ、ってミサカはミサカは元気のないあなたに元気100倍的パワー込めた視線を送ってみたり」キラキラ

一方通行「やっべェ、やべェよ元気100倍光線。俺の気力をガンガン破壊していきやがる」

円周「…………何か物足りないなあ」

打ち止め「何が? ってミサカはミサカは唐突に話題を変えたエンシュウに問いかけてみたり」

円周「キャラ濃いメンバーで構築されたパーティーだけど、決定的に足りないものがあると思うんだ」

打ち止め「ふーん、それは?」

円周「おそらく『ツッコミ』ッ!! もともとアクセラお兄ちゃんがその役目を持っていたけど今じゃこのザマさ」

一方通行「誰がツッコミだ」

打ち止め「おおったしかに一理ある! 何となく感じてたこの感じはツッコミ不在の恐怖ということか、ってミサカはミサカは頷きながら納得してみたり」

一方通行「だったら結標でも呼ンでこい。アイツなら頼めば小さなボケからボケじゃないところまできっと全部ツッコンでくれるからよォ」

円周「だが残念。淡希お姉ちゃんは今お友達とショッピング中というリア充状態。私たちみたいな日陰ものとは縁のないところにいるから呼べないんだよねー」

一方通行「本当だよなァクソ。休みを有意義に過ごしやがって……、何が楽しくて日曜の休日にこンなクソガキどもの子守なンてしなきゃいけねェンだ」

打ち止め「またまたー。そんなこと言って本当は楽しいくせにこのこのー、ってミサカはミサカは肘で小突いてみたり」

一方通行「叩き潰されたくなかったらその俺の癇に障ることは一切やめろ」ギロッ

円周「と、言いつつも内心ウハウハ状態のアクセラお兄ちゃんなのでしあたたたたたたたたたたたたっ!! ふぉっぺたふぃっぱるのふぁめてえええ!」




一方通行「次減らず口叩いたらその邪魔臭せェ頬肉引き千切ンぞ」

円周「そんなことになったら、ほのぼのハートフル日常ストーリーから一転してC級スプラッター映画に早変わりだね」

一方通行「もしこれが本当にほのぼのハートフル日常ストーリーだったら、俺のイライラが止まらねェなンてことないンだよなァ……」

円周「うーん、でも最近はそういう感じの話が増えてきて食傷気味なんだよなあ……やっぱりこういうときはツッコミキャラを投入してキレのあるギャグ展開にっ!!」

一方通行「オマエが何を言ってンのか分かンねェが、とりあえずオマエが黙れば全部解決すンだろォなってことはよォく分かった」

円周「よし。だったら次にすれ違った人をこのパーティーのツッコミ役として抜擢しよう。そうすればマンネリ化を防げるね」

打ち止め「おおっ! あれだね桃太郎的な展開のあれだね! クレープをエサに仲間を増やしていく王道の展開だよね、ってミサカはミサカは古典的な物語を現代風に置き換えてみたり」

一方通行「オイ面倒ごとあまり増やしてンじゃねェぞクソガキども。大体クレープ買いに行くだけでマンネリとかわけ分からねェよ」

円周「マンネリだよ。私たちがおちょくってアクセラお兄ちゃんが殺すぞ的な一言で一蹴するパターンの繰り返し。こんな展開誰も望んでいないと思うよ」

一方通行「やっぱりオマエらが黙ればイイだけじゃねェか。よし黙れ。そォすりゃマンネリ解消みンな幸せハッピーエンドを迎えるわけだ」

打ち止め「ええっー! それじゃあミサカたちがつまんなーい! ってミサカはミサカは文句たれてみたり」

一方通行「だったら俺もつまンねェからオマエら大人しくしてくれ」

円周「おっ、そんなこと言ってる間に通行人A発見。まあ通行人というより行き倒れっぽいかも……まあいいや。早速クレープエサにツッコミ役として引き抜きだあ!」

一方通行「勝手なことしてンじゃねェぞクソガキィ! ……あァ? 行き倒れだと?」



禁書「……ううっ、おなか空いたんだよ」グッタリ



一方通行「」

打ち止め「あっ、あれはインデックスだ! おおーいインデックスー!! ってミサカはミサカは手を振りながら大声で呼びかけてみたり!」

禁書「……ん? あっ、らすとおーだー! それにあくせられーたまで! こんにち……うっ、空腹が……」

一方通行「……こンなところで何やってンだクソシスター。とっとと家に帰れ」

禁書「まさか出会ってすぐにそんな辛辣な言葉をかけられるとは思わなかったんだよ……」

円周「ヘイ彼女! 私たちと一緒にクレープでもどうだーい? 今ならクレープに加えてクレープもつくYO!」ピーガガガ

禁書「えっ、クレープ!? 行く行く行くんだよ!!」キラキラ

円周「というわけでYOUはツッコミ役ネ。それじゃトゥギャザーしようぜ!」

一方通行「オイ、コイツ今誰の人格データ使ってンだ? 見たことねェよこンな奇天烈キャラ。つゥか、いろいろ混ざってンだろこれ」

打ち止め「さあ? ミサカもこればかりは分からないなー、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「オマエはこれの親友じゃなかったのかよ」


―――
――





同日 15:15

-第七学区・ふれあい広場-



ワイワイガヤガヤ



禁書「私の名前はインデックス、っていうんだよ。よろしくねえんしゅう」

円周「よろしくねーインデックスちゃん。では早速……いやあ、しかしアツはナツいねーインデックスちゃん」

禁書「アツ? ああ、おでんの厚揚げのことだね! おいしいよね厚揚げ! 汁がたっぷり染みてると最高かも」

打ち止め「クレープ屋の行列に並んでるときにおでんの話はどうなのかな、ってミサカはミサカは……いや、もしかしたらおでんとクレープがコラボするというびっくり仰天の展開への伏線なのかも!?」



キャッキャキャッキャ



一方通行「何でツッコミ要因補充してンのにボケが増えてンだよ! つゥか、何でまたよりによってこンな面倒なガキが一人増えてンだよふざけンなッ!」

円周「おっ、予想通りアクセラお兄ちゃんがちゃんとツッコミに回った。ふふふ、このためにわざわざボケを一人動員したんだよ」

禁書「ぼけ?」

打ち止め「さすがエンシュウだね。でもツッコミに回るインデックスとかも少し見てみたかったかも、ってミサカはミサカは新たな路線の開拓に努めてみたり」

禁書「つっこみ?」

一方通行「こンな話の流れがまるで汲み取れてねェヤツがツッコミなンて出来るわけねェだろォが」

禁書「むぅ、何かあくせられーた。私のことをそこはかとなく馬鹿にしてるね?」

一方通行「おォよく分かってンじゃねェか。オマエ話の流れ読めてるじゃねェか。やるじゃン」

禁書「えっ、ま、まあね。エッヘン!」

一方通行(困惑した表情のままでドヤ顔してやがる。器用なヤツ)

打ち止め「そういえばインデックスはどうして道端で倒れてたの? ってミサカはミサカは素朴な疑問で話題を転換させてみる」

禁書「うーん話せば長くなるんだけど――」

一方通行「三下。昼メシを作り忘れる痛恨のミス。新たな食料を求めてたびに出た暴食シスター、って感じのいつもの流れだろどォせ」

禁書「ふっ、甘いんだよあくせられーた!」

一方通行「あァ?」

禁書「私はお昼を食べたあと冷蔵庫を開けておやつがないことを早々に気付いたから外に出たんだよ。お昼がないからとかそんな安直じゃないんだよ」

一方通行「なぜ昼メシ食ったあとにおやつがないことに気付けるのか、俺にはどォしても理解が及ばねェよォだ」

円周「アクセラお兄ちゃんアクセラお兄ちゃん」

一方通行「ンだよ」

円周「展開がつまらないからテコ入れしたはいいけど、そしたらメインヒロインの私が空気になってきちゃった。どうしよ」

一方通行「誰がメインヒロインだって? 空気は空気らしく黙って隅っこにでもいろ」

打ち止め「うんうん分かるよエンシュウ。こういう濃いキャラが現れるとミサカたち常識人は一瞬で空気になっちゃうよね、ってミサカはミサカは頷きながら同意してみたり」

円周「だよね。常識人はツライよねー」

一方通行「常識人って言葉を一度辞書で引いてみろよクソガキども」





ワイワイガヤガヤ



円周「……うーん、しかしなかなか前に辿りつけないね。クレープってこんなに人気のあるスイーツだったの?」

禁書「お腹空いた……早くくれーぷが食べたいんだよ!」

一方通行「つゥか、オマエは昨日の昼散々分厚いステーキを、そのブラックホールみてェな口に放り込ンでたっつゥのにもォそンな戯言が言えンのかよ。普通は明日一日何にも食わなくてもイイって展開になるンだがな」

禁書「えっ、そうなの? 普通に生活してたから分からなかったんだよ。あっ、でも晩ご飯のおとうふがとても美味しく感じたんだよ!」

打ち止め「はっ、あまりに脂っこいものを食べ過ぎたからそういうあっさり系が余計においしく感じたんだね、ってミサカはミサカは的確な分析力を遺憾なく発揮してみたり」

一方通行「その前に何で晩メシ食ってンのかをツッコめよ」

円周「ちなみにどのくらいステーキ食べたの?」

禁書「いっぱい食べたんだよ!」

円周「わあー同年代の娘がその場の情景をまったく思い浮かべることが出来ない説明をするとは思わなかったよ」

禁書「?」

円周「というわけで解説要員のアクセラお兄ちゃん。はよ」

一方通行「利益が出てるはずなのにシェフが半泣きになるくらいは食いやがった」

円周「まったく情景を思い浮かべないけどすごいことはわかったよ。さすがアクセラお兄ちゃん!」

禁書「あくせられーた嘘はいけないんだよ。店員さんはちゃんと笑顔で見守っててくれてたよ」

一方通行「オマエから見たらそォ思うかもしれねェな。オマエから見たらな」

円周「ふむ。その小さな体の中の一体どこに大量の食料を詰め込める場所があるのか非常に気になるね。強力な胃酸を持っているのか、それとも一瞬で食べ物を原子力エネルギーに変換してるのか……」

打ち止め「エンシュウがヨシカワみたいなこと言ってる」

一方通行「及第点に達していなくても変態科学者一族の一員ってことか」

円周「ファイブオーバー・モデルケースインデックスとか作ってみようかな? クレージーゴンみたいなの。あっ、でもインデックスちゃんレベル5じゃないや」

一方通行「何を言ってるのかは分からねェが、こンな怪物をこれ以上増やそォとすンじゃねェ」

禁書「怪物はさすがに傷つくんだよ……ただ食べることが好きなだけなのに……」

一方通行「……さァて、いつになったらクレープ買えるかなァと」

禁書「ちょっと無視しないで欲しいんだよ! スルーされるのはつらいものがあるんだよ!」

円周「分かる。分かるよインデックスちゃん。渾身のネタをスルーされたときの虚しさったらないよね」

禁書「えっ、別に冗談とかで言ったわけじゃ……」

円周「いやあ、しかしアツはナツいねー」

禁書「? 厚焼き玉子は私は甘いより少ししょっぱいほうが好きなんだよ!」

円周「…………」

打ち止め「わおっ、華麗なスルーっぷり。というかスルーというよりは自分のネタとして変換しているっ!? ってミサカはミサカはあまりに高度なボケについていけないことを悔しく思ったりぃ!」

禁書「?」

一方通行「何やってンだこのクソガキども……」




一方通行「……しかし、真面目に全然店前にたどり着かねェな。たかが日曜日ってだけでこの多さは異常だろ。どンだけ甘いモンに飢えてンだ学園都市のヤツらは?」

円周「さあ? もしかしたら今学園都市ではクレープが大ブームなんじゃない? 私テレビとか見ないから知らないけど」

一方通行「俺もテレビ見ねェから知らねェ」

打ち止め「テレビ見るけど知らないよ、ってミサカはミサカは流れに乗じてみたり」

禁書「私も毎日てれび見ているんだよ! とくにカナミンが面白いから好きなんだよ!」

一方通行「オマエのテレビの趣味なンざどォでもイイ。テレビしか見てねェクソガキがブームじゃねェっつゥンなら何かキャンペーンでもやってるってことか?」つチラシ


『卒業シーズン!! ラヴリーミトンのゲコ太とピョン子の卒業バージョンのストラップをプレゼントキャンペーン中!!』


一方通行「…………」ギロッ

打ち止め「あ、あははー、何のことやらー、ってミサカはミサカは口笛を吹いてごまかそうと口を尖らせてみるけどできない現実に絶望してみたり」スヒュースヒュー

一方通行「チッ、端からこれが目当てで俺を連れ出しやがったか。ふざけたクソガキだなァオイ」

打ち止め「べ、別にいいじゃん! もともとおやつに甘いものを食べたかったわけだし、そのオマケにストラップが付いてるくらいで本来の目的からはズレてないし!」

一方通行「オマエの場合その本来の目的っつゥのはそのカエルの人形だろォが」

円周「知ってる? 食用のカエルって鳥のささみみたいな味がするらしいよ」

禁書「へ、へーさすがの私もカエルは食べようとは思わないかな?」ジュルリ

一方通行「とりあえずよだれ拭いとけよ」つポケットティッシュ

打ち止め「うっ、そ、そんな話をしたところでミサカの決意は決してゆ、揺るがないかも……、ってミサカはミサカは頭に浮かんだ食用カエルを必死に消そうと抗ってみたり」

禁書「鳥のささみっていうことは唐揚げとかにしたらおいしいのかな?」

円周「世の中には活造りにして食べてる人たちもいるみたいだよ。やっぱり水辺の生き物だから刺し身が美味しいのかなあ?」

打ち止め「……おえっ」

一方通行「とりあえずそこの馬鹿二人。これ以上ゲテモノトークを繰り広げるつもりなら叩き潰してすり身にすンぞ」

円周「うーん、ここは話の流れに乗じて『オマエらを活造りにすンぞ』みたいに言ってくると思ったけど予想と違ったね。まだまだアクセラお兄ちゃんのこと分かってないようだなあ」

一方通行「どォでもイイことを人の理解の判断基準にしてンじゃねェ」

禁書「うん、やっぱり今の気分はクレープなんだよ! 鳥のささみの気分ってじゃないんだよ!」

円周「この『鳥のささみ』という単語はそのままの意味なのかはたまた例のブツを表す隠語なのか気になるよねー。打ち止めちゃん」

打ち止め「……正直どうでもいいよ、ってミサカはミサカは話の発端であるエンシュウを睨みつけながら切り捨ててみたり」ジロッ

円周「打ち止めちゃんがドMの豚野郎が喜びそうな蔑んだ目で親友の私を見てくる……」

一方通行「チッ、しかしこのチラシを見てから、何つゥか、胸騒ぎというか嫌な予感がすンのは何でだろォな」

打ち止め「たぶんインデックスがものすごくクレープを食べて大変なことになるからじゃない? ってミサカはミサカは一番に思いついた予想を言ってみたり」

一方通行「いや、そンな単純なことじゃねェ。そもそもインデックスの常識外れの食欲は、もはや俺の中で常識になっているからどォでもイイ」

円周「これは近年よく見るアクセラお兄ちゃんのデレだね。つまりあれだよインデックスちゃん。今日は好き放題クレープ食べてもいい日ってことだよ」

禁書「えっ、ほんと!? じゃあじゃあメニューの端から端まで――」

一方通行「とりあえず殺すぞクソシスター」




一方通行(しかし本当にこの胸騒ぎは何なンだ? チラシを見てから……いや、正確にはチラシのカエルのストラップを見てからだ)

一方通行(クレープ、カエルのストラップ、クソガキが大好きなストラップ、正確には妹達(シスターズ)全員が好き、つまり元のオリジ……あっ)

一方通行(……いやいやいやいや、そンな安易な展開二度もあるわけねェだろ。もし神様ってヤツがいンならこンな面白みのねェことを繰り返すわけ――)


??「――あっれー? 何で今日に限ってこんなに混んでるわけ? まさかみんなゲコ太ストラップ目当てでッ……!?」


一方通行「神様ってホントクソだと思わねェか!? なァ超電磁砲(レールガン)ッ!?」

美琴「えっ!? いきなり何……って一方通行ぁ!? 何でアンタがこんなところに!?」ビクッ

打ち止め「あっ、お姉様だ! やっほーお姉様ー! ってミサカはミサカは久しぶりの再会に喜びを覚えてみたり!」

円周「ここで超電磁砲が登場かー。シナリオ的には悪くないかな」

禁書「ん? 何でこんなところに短髪が……」

美琴「……というかまたこの面子なわけね。何か新しい子が一人増えてるみたいだけど」

一方通行「超電磁砲。頼むから俺の前から消えてくれ」

美琴「なっ、何でアンタなんかに指図されなきゃいけないわけ!?」

一方通行「オマエアレだアレェ、もォこのネタ前にもやっただろォが! これ以上続けて『お 約 束』とかにされてもこっちが困るンだっつゥの」

美琴「はあ? 知らないわよそんなの! アンタの勝手な事情を私に巻き込まないでよ!」

一方通行「見えてンだよオチがよォ、ちょうどオマエの番になってクレープが売り切れる未来がなッ」

美琴「ふん、今回は50ポイント集めるとかじゃないし、そんな都合よくベタ展開が起こるわけ――」チラッ


禁書「……何? 私の顔に何か付いてるのかな?」


美琴「…………」

禁書「?」

美琴「お願い一方通行ぁ!! 列の順番代わって!!」

一方通行「面倒臭せェ」

美琴「そこを何とかっ! お願いっ!!」

円周「アクセラお兄ちゃんが第三位の頭を下げさせてる。さすが第一位だね」

打ち止め「この場合あの人じゃなくてインデックスの存在が一番大きいんじゃないかな、ってミサカはミサカは冷静に状況を分析してみたり」

一方通行「つゥかよォ、今回はオマエの言う通りストラップを手に入れるために50個クレープを頼む必要がねェ。なのに何でオマエはこォも食い下がってきやがるンですかねェ?」

美琴「普通に考えたらそうだけど、よくよく考えたらこのチビシスターがいるんだったら話は別よ! 50個近いクレープを平然と平らげるようなヤツが目の前にいて売り切れを危惧しない馬鹿はいないでしょ!」

一方通行「ンだァ? さっきとは打って変わった意見じゃねェか。『ベタな展開』は起こるわけねェンだろ? だったら大人しく待ってりゃイイだろォが」

美琴「……え、えっと、その。ど、どうしても……だめ?」チラッ

一方通行「……ハァ? 何だよその上目遣いはァ? クソガキといいこの俺がそンな低能な真似でなびくと思ってンじゃねェよ」

美琴「ぐっ、別にそんなのしたつもりまったくなかったけど何かムカつくッ!」

円周「さすがアクセラお兄ちゃん。女子中学生の上目遣いには少しも反応しない、まさにロリコンのかが――」


ゴッ!!


一方通行「さて、そろそろ俺らの番だな」

円周「あれ? おかしいなあ? 事実を言ったのはずなのに頭が痛いぞ?」ジンジン

打ち止め「エンシュウ。何かすごい目であの人がこっち見てきてるからそれ以上変なこと言わないほうがいいよ、ってミサカはミサカは忠告してみる」




店員「――次の方どうぞ!」


禁書「あっ、私たちの番なんだよ! 早く早く!」

一方通行「チッ、分かってるからハシャイでンじゃねェようるせェ」

打ち止め「わーい、何にするエンシュウ? ミサカ的にはカスタードと生クリームとチョコを合わせたダブルクリームチョコがいいと思うんだ! ってミサカはミサカは提案してみる」

円周「いやーどうかなあ? バレンタインのせいでもうチョコは懲り懲りなんだよねー。ここはフルーティな感じなのがいいなあ」

禁書「どれも美味しそ……いや、美味しかったんだよ!」

打ち止め「さすが完全記憶能力保持者! 前ほとんどのメニューを平らげたからできる断言だ!」

円周「へー、インデックスちゃんって完全記憶能力なんて持ってるんだ。珍しいねえ」

禁書「ふふん。暗記関係のゲームで私の右に出るものはいないんだよ!」フフン

円周「でもそんな優秀な能力があってもそれを活かせるオツムがなかったらなあ……」

禁書「何だか知らないけど、ものすごく残念そうなものを見る目をしてるねえんしゅう」

一方通行「くだらねェこと言ってねェでさっさと食いたいモン選べ。オマエらみてェなのがいるから無駄に後ろのヤツらの待ち時間が増えンだよ」

円周「でも後ろには別に誰もいないよね?」

一方通行「あン?」

打ち止め「そうだよ。お姉様は何にするのー? ってミサカはミサカは問いかけてみる」

美琴「えっ?」

打ち止め「えっ、じゃなくてクレープ食べるんじゃないの? だったら一緒に頼んで食べようよ、ってミサカはミサカはスイーツタイムのお誘いをしてみたり!」

円周「そうそう。どーせ全部アクセラお兄ちゃんの奢りなんだから好きなの頼めばいいよ」

一方通行「は? 何で俺がコイツのまで面倒見なきゃいけねェンだよ」

打ち止め「どうせ一緒に食べるんだからお会計も一緒にしたほうが早いし効率がいいでしょ? ってミサカはミサカは当然のことを言ってみる」

一方通行「チッ、めんど――」

円周「いつも効率効率言ってそうなアクセラお兄ちゃんがまさかこの案を断るわけないよね?」

一方通行「…………」

円周「だってあれだよね。面倒臭いってようするに無駄なことはしたくない=効率よくしたい、ってことだもんね」

禁書「なるほどー。たしかにあくせられーたの口癖は面倒臭いなんだよ」

一方通行「……ハァ、クソが。好きにしろクソガキども」

美琴「一方通行……」

円周「よしデレた。これはもうアクセラお兄ちゃんは完全に私たちの配下に――」



ガッ!!





打ち止め「じゃあじゃあお姉様クレープの食べ比べとかしようよ! ってミサカはミサカは提案してみたり!」

美琴「え、ええいいわよ」

円周「うむ、すごく頭が痛い。これは頭に痛みが長時間残るような絶妙な角度と力で殴られてる。何という悪質なレベル5だ……」

一方通行「オマエのほうが圧倒的に悪質でうっとォしい存在だと思うンだけどなァ……」

打ち止め「どれにしようかなー、ってミサカはミサカはメニュー熟視しながら考えてみたり」

美琴「……打ち止め」

打ち止め「何? ってミサカはミサカは振り返りながら返事をしてみる」

美琴「……ありがとね」

打ち止め「んーん、別にミサカは何もやってないよ、ってミサカはミサカは本当のことを言ってみる」

一方通行「これ冷静に見るとガキに助けられる超能力者(レベル5)の第三位様っていう非常に面白い光景なわけだよなァ……」

美琴「……うっさい」

禁書「じゃあ私はメニューのここからここまでを――」

一方通行「オマエはイイ加減遠慮というものを覚えろ。一個だ一個」

打ち止め「さて、いろいろな問題も解決したところだし、これで安心してゲコ太のストラップをゲットできるぜ、ってミサカはミサカはわくわくどきどきが止まらなかったり!」

美琴「そ、そうね。正直クレープよりこっちがメインだし……!」

一方通行「オマエらあとでクレープ顔面に投げつけてやるから覚えとけよ」


店員「も、申し訳ございません。今回のキャンペーンの品は最後の一つしか残っていませんでして……」


美琴「……えっ?」

打ち止め「な、なんだって……?」

円周「何というベタな上にお約束な展開」

禁書「? 何で二人は絶望の淵に立たされたような顔をしてるの?」

一方通行「アレだ。オマエもクレープが食べられる寸前で、実は売り切れでしたってことになったらこンな顔すンだろ?」

禁書「えっ!? クレープ売り切れちゃったの!?」

一方通行「いや、オマエにこの例えをするのは間違いだったな」




店員「ありがとうございましたー!」


一方通行「……で、この一つだけのカエルのストラップはどォすりゃイインだ?」

打ち止め「……ど、どうするお姉様? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり」

美琴「ほ、本当にどうしようか……」

打ち止め「お、お姉様がもらってよ。知ってるよ、お姉様ゲコ太グッズすっごい集めてるんでしょ? ってミサカはミサカはミサカネットワークの情報を引っ張ってみたり」

美琴「なっ、何でそんな変な情報まであるのよそのネットワークッ!?」

円周「へー。常盤台のエース超電磁砲にそんな趣味があったのかあ。知らなかったなあ」

一方通行「ホントガキ臭せェ趣味だよな。いや、別にまだガキだからイイのか?」

美琴「ガキとか言うな子供扱いすんな!」

禁書「まあでも人形集めはいい趣味だと思うよ。うちの業界にもそういう人形集めてる(魔術的な意味で)人たくさんいるし」モグモグ

美琴「えっ、アンタの知り合いにゲコ太グッズを集めてる猛者とかいるのッ!?」キラキラ

禁書「うーん、そのげこたぐっずってヤツを集めてる人は知らないんだよ」

美琴「……そっか」シュン

一方通行「何だこの食付きよォは? そして落ち込みよォ」

円周「たぶんあれだよ。一人寂しくオタクをしてる人が他の人とそれについて語り合いたい、って感じのアレ」

美琴「……でも打ち止め。このストラップはアンタだって欲しいんでしょ?」

打ち止め「う、うんそうだよ。そのためにここに来たと言っても過言じゃないし、ってミサカはミサカは正直な気持ちを暴露してみたり」

美琴「だったらこれは打ち止めがもらうべきだと思うわ」

打ち止め「で、でもミサカはお姉様みたいなゲコ太コレクターじゃないよ! いわゆるニワカってヤツだからお姉様が持つべきだと思う!」

円周「ここは間を挟んで私がもがもが」

一方通行「オマエは大人しくクレープでも食ってろ」グイグイ

美琴「……ううん、打ち止め。やっぱり私じゃなくてアンタが持つべきよ」

打ち止め「で、でもお姉様」

美琴「こういうのは私みたいにコレクションするみたいな邪な考え持ってる人より、アンタみたいな純粋に欲しいと思ってる子が持つべきなの」

打ち止め「そ、それはお姉様だって同じでしょ? お姉様だって純粋にゲコ太が大好きで――」

美琴「私はアンタたちのお姉様よ。だから少しぐらいいいところ見せたっていいでしょ?」

打ち止め「お姉様……」

美琴「だから受け取ってよ……打ち止め」

打ち止め「……分かった。じゃあこれはミサカがもらうよ! ありがとうお姉様! ってミサカはミサカは笑顔でお礼を言ってみたり!」パ

美琴「どういたしまして」ニコッ





ワイワイガヤガヤ



美琴「…………」

一方通行「よかったのか。クソガキにアレを渡して」

美琴「いいわよ。だって私はあの子たちの姉よ? だから妹のためを想うのは当然よ」

一方通行「チッ、ガキが背伸びしやがって」

美琴「が、ガキ言うなし!」

禁書「短髪!!」

美琴「な、何よ突然?」

禁書「短髪の妹を、らすとおーだーを想うその気持ち。とてもとっても素敵だと私は思うんだよ!」

美琴「……はい?」

禁書「きっとあなたのした良い行いはいつかきっと自分のところに返ってくるから」

美琴「……唐突に何を言い出したかと思えば……アンタってそういうキャラだっけ?」

禁書「むぅ、見くびらないで欲しいかも。私だってシスターなんだから」

一方通行「シスターってそンなカウンセラーみたいな仕事だっけか?」

禁書「かうんせらー? 何それ?」

一方通行「オマエには絶対になれない職業のことだ」

禁書「むむむ、またあくせられーたが私のことをそこはかとなく馬鹿にしてる気がするんだよ」

一方通行「あはっぎゃはっ、ソイツはどォだろォなァ?」

禁書「その悪意のある笑い方は絶対にそうなんだよ!」

美琴「……ふふふっ」

禁書「こ、今度は短髪まで私を笑い始めたんだよ」

美琴「ふふ、ごめんごめん。あまりにアンタたちのやり取りが面白くてね」

禁書「別に面白いことしてる覚えはないかも。変な短髪」

美琴「というかいい加減その『短髪』っていうのやめてもらえない? 私には御坂美琴って名前があるのよ。わかった……『インデックス』?」

禁書「……うん! 分かったんだよ『みこと』!」

一方通行「……チッ、くっだらねェ」


??「――おーい、こんなところで何やってんだよ一方通行!」




一方通行「あァ?」

禁書「あっ、とうまだ!」

美琴「えっ!?」

上条「ん? インデックスに御坂まで……何だこの集まりは?」

一方通行「知らねェよ。気付いたらこンなクソみてェな面子が集まってたンだよ」

禁書「とうま! 今日の私のおやつを忘れてるなんてあまりにもひどい仕打ちだと思うんだけど」

上条「はあ? たしか冷蔵庫にプリンが一個余ってなかったか?」

禁書「えっ? あれってお昼のデザートじゃなかったの?」

上条「既に食ってたんかい! そりゃあるわけねーよなおやつ!」

一方通行「これはひどい」

上条「……で、いつものごとくここにいる一方通行様という神にその手に持つクレープを奢ってもらったと」

禁書「そうなんだよ!」

上条「……昨日のステーキといいいつも本当にすみません一方通行様」

一方通行「もォお礼とか別にどォでもイイっつゥの。このやり取りも何回目か分かったモンじゃねェ」

美琴「……ね、ねえ!」

上条「お、おお御坂。何だよ突然」

美琴「ところでアンタはこ、こんなところで何やってるわけよ。ここら辺にはアンタが行くような場所はないと思うけど」

上条「ひどい言われようだな。まあ、上条さんにもきちんした理由というものがあってだな――」


御坂妹「それはミサカがクレープを一緒に食べましょうと誘ったからですよ、とミサカは会話に割って入ります」


美琴「なっ、何でアンタがこんなところにっ!?」

御坂妹「さっき理由言ったばかりでしょうがきちんと聞いてろよ、とミサカはボヤきながらため息をつきました」

打ち止め「あっ、10032号だ! ってミサカはミサカは突然の下位個体との遭遇に驚きを覚えてみたり」

御坂妹「ちっ、やはり上位個体も一緒だったか。一方通行いるところに最終信号あり、やはりこの言葉は本当だったんですね、とミサカは再度ため息をつきます」ハァ

一方通行「コイツ何か口悪くねェか? 教育方針間違ってンじゃねェか冥土帰し」

円周「おお、気付いたら超電磁砲(オリジナル)、欠陥電気(レディオノイズ)、最終信号(ラストオーダー)と勢揃いになってる。あと第三次製造計画(サードシーズン)の個体がいれば完璧だね」

一方通行「あァ? 今何か言ったかクソガキ」

円周「別に何でもないよー」

一方通行「…………」




美琴「……ほぉ、つまりアンタたちは二人で楽しくデートしてたってこと?」ビリビリ

上条「あれ? 御坂さん何かものすごく怒ってらっしゃるように見えるのですが……?」

禁書「ふーん、そうなんだ。とうまは私がおやつがなくて飢えていたときに、おいしいくれーぷを食べていたと」キラン

上条「それは自分のせいだろッ!」

御坂妹「その通りですよお姉様。あなたがグズグズしてる間にペンダントの時みたく、ミサカはこうやってイニシアティブを取ることが出来るのですよ、とミサカは不敵に笑ってみせます」フフッ

美琴「……ふふふふふ、言ってくれるじゃない妹よ」ビリビリ

御坂妹「待ってるだけじゃ何も始まらないんですよ。これがミサカとオリジナルの差ですよ、とミサカは分かりやすく説明します」

上条「ちょっと待てぃ!! よく分かんねえけどこんなところでケンカはやめろ!」

御坂妹「ケンカなんかしませんよ。そんなことよりミサカはこの手に入れたばかりのこれを愛でる作業に早く戻りたいです、とミサカは本音を吐露します」スッ

美琴「そ、それは……!?」

御坂妹「おや、やはりお姉様もご存知のようですね。『クレープハウスrablun』期間限定キャンペーンで配布される『ゲコ太&ピョン子 卒業式ver』のストラップです、とミサカは懇切丁寧に説明しました」

美琴「…………」

御坂妹「? 何ですかそのリアクションは? お姉様もここにいるということは手に入れたんじゃなかったんですか……あっ、とミサカは驚異的な洞察力で察します」

美琴「しょ、しょうがないじゃない! 最後の一つしかなかったんだし! それなら打ち止めに譲るしか無いじゃない!」

御坂妹「……そうなんですか? とミサカは上位個体へ尋ねてみます」

打ち止め「う、うんそうなんだ。できればミサカはお姉様に譲りたかったけど、でもお姉様に恥はかかせられないし……」

御坂妹「そうですか。それは悲しい出来事でしたね、とミサカはイニシアティブとか言って勝ち誇ってた自分に恥ずかしさを感じました」

一方通行「何だこれ? ストラップ一つでここまで一つになれンのかよ」

円周「さすが遺伝子レベルで同じ姉妹だねー」

上条「ん? 何であの三姉妹は全員どんよりしてんだ?」

一方通行「オマエは会話を聞くってことをしろよ」

上条「いやー、正直それどころじゃなかったからな」ダラダラ

禁書「ふー! ふー!」ガジガジ

一方通行「おやつ一つでこの扱いか……」

上条「で、今どういう状況なんだよ?」

一方通行「あァ、あのクレープ屋の限定でストラップ配ってただろ。アレ、ちょうど俺らのところでなくなってな。クソガキはもらえたが超電磁砲はもらえなかった、っつゥオマエによくありそォな不幸話だ」

上条「たしかに俺にとってはよくある話だな。へー、御坂もあれ欲しかったんだな。あんな顔した御坂見たことねえもん」

一方通行「ま、しょうがねェったらしょうがねェ話だ。オマエがどォにか出来る話じゃねェよ」

上条「……別にそんなことはないんじゃねえか?」

一方通行「あァ?」




美琴「…………」ドヨーン

上条「おい御坂!」

美琴「……何よ?」

上条「お前も何というか俺みたいな不幸な目にあったみたいだな」

美琴「……不幸というかこれは自業自得よ。あれくらいならいつでももらえるでしょ、って思って最終日の今日に来たっていう自分への罰よ」

上条「別にそんな自分卑下することはねえと思うぞ。最終日の今日をお前が選んだのだって何か理由があんだろ? 例えば期間中に何か用事とかがあっていけなかった、とか」

美琴「っ、べ、別にそんなことなかったわよ」

上条「そうなのか? お前はそういうのは初日に行って確実に手に入れるようなヤツだと思ってたけど……まあ、違うなら違うで別にいいさ」

美琴「…………」

上条「お前がストラップを手に入れられなかったのは運が悪かっただけだよ。『不幸』の申し子上条さんが保証してやるよ」

美琴「……もしかしたら慰めてるつもり? そんなことして私が喜ぶと思ってるわけ?」

上条「思わねえよ。だからさ、ほらっ受け取れ」ポイッ

美琴「!? 何よいきなり――ってこ、これはっ!?」パシッ

上条「『不幸』の申し子上条さんからのプレゼントだよ。ありがたく受け取るこったな」

美琴「……『ゲコ太&ピョン子 卒業式ver』のストラップ、な、なんでアンタが……?」

上条「御坂妹と一緒にクレープ屋に行ったから、って理由があるけど別にそんなことどうでもいいだろ? これでお前は『不幸』じゃなくなったんだからな」ニコッ

美琴「……あ、ありがとう」

打ち止め「よかったねお姉様! ってミサカはミサカは自分のことのように喜んでみたり!」

御坂妹「おのれお姉様め、結局美味しいところ全部持って行きやがって、と思うところがありますが同志の喜びは祝福しなければなりませんね、とミサカは拍手を送ります」パチパチ

禁書「おめでとうみこと! きっとみことの気持ちが神の下へと届いていたんだよ!」

美琴「……ふふっ、そうね。アンタの言うとおりちゃんと良いことが帰ってきたのかもね。神様も馬鹿に出来ないわね」

一方通行「……チッ、さすがは三下、いやヒーロー様っつゥことか。くっだらねェ」

円周「…………か」ピーガガガ

一方通行「あ?」


円周「カッコイーッ!! 惚れちゃいそーだぜ当麻お兄ちゃん!!」


美琴「えっ!?」

御坂妹「ッ!?」

禁書「……とうま?」ギロッ

上条「ひぃっ、殺気ッ!?」

円周「やだなあ、冗談だよ冗談。そんなみんな真剣な目をしなくてもいいのに」

一方通行(この場のかき乱し方。コイツ、また『木原』の人格データを取り入れやがったか)

上条「あ、あははは。あまり大人をからかうもんじゃないぞー、どこの誰かは知らないけど」

円周「うーん、それは逆だと思うよ? 『子供』という一番『大人』を掻き回せる立場だからこそ精一杯掻き回さないと」

上条「……えっと、何なんでせうか? いつも昼ドラでも見てそうなこのバイオレンスっ子は?」

一方通行「ただの馬鹿だ。気にする必要ねェよ」


―――
――





同日 16:45

-第七学区・街頭-


打ち止め「いやー、みんなといろいろ話してたらすっかりこんな時間になっちゃったねー、ってミサカはミサカは楽しかったことへの満足感を得てみたり」

一方通行「そォかよ。ソイツはよかったな」

円周「しかしやっぱり外はいいよね、いろいろな経験ができる。今日もいろいろな人を『観察』することが出来たし」

一方通行「あァ? 観察だァ?」

円周「おっと間違えた。いろいろな人と『会えた』だね。日本語がおぼつかなくてごめんねー」

一方通行「……ああ」

打ち止め「ほんと分かるよー、日本語って難しいよね。でも大丈夫! 分からないことがあればミサカのようなきちんと学習装置で日本語を学んだプロフェッショナルに聞けば大丈夫だよ、ってミサカはミサカは自分の胸を拳で叩いてみる」ドン

一方通行「一番おぼつかねェヤツが何言ってンだか」

円周「……そういえば今日って何曜日だったっけ?」

一方通行「突然何だよ? 日曜日だろ」

打ち止め「日曜日……はっ!? ただ今の時間は『16:50』です、ってミサカはミサカはミサカネットワークから時報データを受信してみたり!」

一方通行「何だってンだァ? 急に時間を気にし始めやがって」

打ち止め「大変だよ! 日曜五時は『そげぶマンⅢ 雪原に立つ戦士達編』が始まる時間だぜ、ってミサカはミサカは見たいテレビの放送時間を述べてみたり!」

円周「ようするに、早くテレビの前に正座してアバンタイトルが始まるのを待ってなきゃいけないのに、未だにこんなところ歩いてるのが不味いってことだよね」

一方通行「そォだな。今から走っても必ず五時には食い込むだろォよ」

打ち止め「これはマズイよ。そげぶマンファンとしては是非とも前回のあらすじだろうとアバンは見逃す訳にはいかないのだ、ってミサカはミサカは熱く語ってみたり!」

一方通行「面倒臭せェ。ケータイのテレビ機能でも使って見てろ」

円周「ええー? いくら画質が良くてもこんなちっぽけな画面じゃあの迫力は出せないよ。やっぱり大画面のテレビじゃないとね」

一方通行「注文の多いクソガキどもだ。つまり何が言いてェンだ?」

打ち止め「能力使って早く家まで連れて行って! ってミサカはミサカは手を組んで上目遣いになりながらお願いしてみたり」ウルウル

円周「アクセラお兄ちゃんのチカラを使えばあんな距離3分もいらないよね? カップラーメン作ってから向こうに着いても、少し待ってからフタを開けないといけないくらいの時間には着くよね?」

一方通行「…………」

打ち止め「お願いアクセラレータ!」ウルウル

円周「お願いアクセラお兄ちゃん!」

一方通行「……ハァ、分かったよ。連れて行きゃイインだろ連れて行きゃあ」カチッ

打ち止め「おおっ、早い! あなたがここまで早く承諾してくれるなんて思わなかったよ、ってミサカはミサカはあなたの成長ぶりに驚いてみたり」

円周「本当だね。いつもならこのやり取りをあと3パターンほどしてからじゃないと許してくれないのにね」

一方通行「チッ、うるせェな。ただ俺もさっさと帰ってソファーに寝転びてェだけだ。利害の一致っつゥヤツだよ」

円周「……と訳の分からないことを供述しておりますが、実際はただデレてるだけで――」



ゴガッ!!





一方通行「おらっ、さっさと掴まれクソガキども! 振り落とされても知らねェぞ!」カチッ

打ち止め「じゃあミサカはお姫様だっこがいいー! ってミサカはミサカはあなたの前から飛びついてみたり!」ピョン

一方通行「ケッ、勝手にしろ」

円周「うぉぉぉ、これ確実に脳みそ割れてるよね? 右と左に真っ二つに。名付けるなら右脳と左脳……あれ? 最初から割れてるじゃん」

一方通行「わけ分からねェこと言ってねェでオマエもさっさと掴まれクソガキが!」



ドンッ!!



打ち止め「わっほーい!! すっごい飛んでるー!! ってミサカはミサカは興奮を隠しきれなかったり!!」

一方通行「喋ってンじゃねェ舌ァ噛むぞ!」

円周「ふむふむ。一見脚力や風力がメインに見えるけど、一番は重力かな? あとは状況によって……」ブツブツ

一方通行「……後ろのガキは何ブツブツ言ってやがる」

円周「別にー。下を歩いてる人が今何人いるか数えてるだけだよ」

一方通行「あ、そォ」

打ち止め「ねえねえ、一回ものすごく高く飛んでみてよ。できれば学園都市全体を見下ろせるくらいに、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

一方通行「別に構わねェがあまりに高くてションベンちびらせて、学園都市に黄色い雨を降らせても知らねェぞ」

打ち止め「うえっ、それを言われると何か嫌だな。実を言うと今すごくトイレ行きたいから今回はやめとく、ってミサカはミサカは断念してみたり」

円周「あっ、そういえば今って反射働いてるの?」

一方通行「あァ? そりゃ能力使用モードなンだから当たり前だろ」

円周「ふーん、よっと」ガン

一方通行「……何やってンだよ」

円周「一回反射ってのがどんなのか試してみたくて……うん、骨にすごく響くね。強制的に急ブレーキをかけさせるのに近いのかな? これ」ガンガン

一方通行「地表200メートルから振り落とされたくなかったら、あンま余計なことすンじゃねェぞコラ」

円周「はあい」



ワイワイガヤガヤ



一方通行(……チッ、本当に今日はうっとォしいクソガキどもに振り回される厄日だったなクソッタレが)


――――――


今見てると円周のキャラこんなだっけって思うけど前スレでクソガキキャラにしちゃったからままええやろの精神

次回『卒業したくないんだけど』

1スレ目から見直すとキャラとかブレまくっててあああああああってなる(今もブレていないとは言っていない)

投下



3.卒業したくないんだけど


February Forth Wednesday 15:00

-第七学区・とある喫茶店-



芹亜「卒業したくないんだけど」



鞠亜「……突然呼び出されたと思ったらいきなり何なんだ? せめて前置きくらいないと会話にならないよ」

芹亜「別にこの言葉に深い意味なんてない。ただ卒業したくないんだけど」

鞠亜「まず主語を言え。何から卒業したくないのさ? 自堕落なニートみたいな私生活か? それとも女の子の純潔的なアレか?」

芹亜「……妹よ。お姉ちゃんはお前をそんな歪曲した発想しか出来ないような人間に育てた覚えはないけど」

鞠亜「そんなセリフはきちんと姉の役割をこなしてから言って欲しいんだが。妹に部屋の掃除をさせる姉のどこに育てられる要素があるのか……」

芹亜「いいじゃないか。お前の掃除スキルアップする私の部屋綺麗になる。まさしくWin-Winの関係ってヤツなんだけど」

鞠亜「あんなもんでスキルがアップするわけないじゃないか。『1+1』を何億何万と解いたところで数学が得意になるわけないだろ? むしろ嫌いになる」

芹亜「『塵も積もれば山となる』という言葉があるけど」

鞠亜「積もるような塵さえ出てこないってこっちは言ってんだよ! 適当なこと言って誤魔化そうとすんなあ!」

芹亜「妹が反抗期に入ったっ……!? お姉ちゃんショックで泣きそう……」

鞠亜「反抗期以前の問題だろ。この流れがこれからも続くなら白寿を迎えても同じリアクションをする自信が私にはあるよ」

芹亜「まあ話は戻るけど、卒業したくない」

鞠亜「だから主語を言えって言ってんでしょーが! ここから以下ループとかいうネタでもぶっ込むつもりか!?」

芹亜「-50年後-」

鞠亜「……乗らないぞ。そんなくだらないネタには絶対に乗らないぞ」

芹亜「これがネタじゃなくてマジだったらどうだ? 今私たちは6X歳と6Y歳いうことになるわけだけど」

鞠亜「いつから時間操作の能力者になったんだ? というかネタかマジかなんてないから。議論の余地皆無なのは周知の事実だから」

芹亜「ふふっ、それを分かるのは私たちだけだ。もしかしたら別の視点から見ている人たちは本当に50年の時が経ったと思っているかもしれないけど」

鞠亜「誰だよそいつら? わけの分からないこと言ってないで本題に戻れ」

芹亜「話を逸らしてるのはそっちだろ。律儀なツッコミは話のテンポを悪くさせるだけだけど」

鞠亜「誰がそうさせているんだ誰が……!」

芹亜「人のせいにするのはお姉ちゃんよくないと思うぞ。ツッコむかツッコまないかの決定権は自分にあるわけだし」

鞠亜「その状況を作り出してるのは間違いなくアンタだろうがな」

芹亜「まあまあ。そんなことより私が今いる学校を卒業したくない、っていう悩みの相談に乗って欲しいんだけど」

鞠亜「だから主語を……あれっ!? 主語があるっ!? なぜっ!?」

芹亜「同じネタを繰り返すのにはさすがに見ている人たちも飽きるだろ。きちんとそういうところも配慮しないとな」

鞠亜「本当に誰だよそいつら! というか、さっきから変なコトばっか言ってて気持ち悪いぞ……」

芹亜「そんなマジトーンで気持ち悪いと言わないでくれ。本気で傷つく」

鞠亜「本気で傷ついてるヤツがそんなこと真顔で言ってくるか!」




鞠亜「しかし卒業って学校のことだったのか。意外だったよ、私が絶対に思い浮かべない答えだ」

芹亜「えっ、普通卒業って言ったらソッチ方面にならない? 少なくとも一般的にはそうだと思うんだけど」

鞠亜「いや、単純に『青春』っていうものから対局の位置にいる姉が、そういうことは絶対言ってこないだろうと思ってたからな」

芹亜「青春真っ盛りのJKに向かって何たることを言っているんだこの妹は?」

鞠亜「ほとんど学校に行かず暗い部屋の中で、ブツブツ言ってるのが青春だっていうのならごめん。私の姉は青春そのものだったよ」

芹亜「……いや、別に引きこもりってわけじゃないけど。引きこもりって言われない程度には学校には行ってるけど」

鞠亜「何でそこで折れちゃうわけ? そこまで来たら引きこもり貫けよ。せっかく引きこもり=青春っていう公式成り立ったのに」

芹亜「どんな公式が成り立とうが、私が卒業したくないという事実には変わりはないのだけど」

鞠亜「……というか卒業したくないのならしなかったらいいじゃん」

芹亜「どゆこと?」

鞠亜「前言ってたじゃん。『私はクラスも分からなければ学年も不明の超絶先輩キャラの巨乳美人女子高生!! つまり、私はどの学年にいてもおかしくないということなのだけど!』って」

鞠亜「よく分からないけどその言葉が本当なら『実は二年生でしたー』って感じに言ってもう一年延長してもらえるってことだろ? というかG死ね」

芹亜「……ふふっ、そうだな。たしかにそう言えばもう一年スクールライフを延長、なんてことも可能だよ……以前までの私ならな」

鞠亜「以前までの? 何か変わったっけ?」

芹亜「私の通う学校には昼休みにたまに学内ラジオというものが放送される」

鞠亜「ラジオぉ? 随分と変わったことをする学校だな」

芹亜「私はそのラジオにゲストとして出演してしまったんだ。一時の気の迷いってヤツだけどな」

鞠亜「たしかに迷いまくってるな。引きこもりがそんな青春染みたことするなんてなあ」

芹亜「そのときのパーソナリティーの娘が二年生の放送部の部長だったんだ。あとは分かるな?」

鞠亜「分かるかっ。意味深なことを言えば何でも通じると思うなよ? あと予測出来ても自分の口では絶対言わないからな!」

芹亜「察しの悪い女子は嫌われるよ。女子高生の会話なんて言葉の裏の意味を常に考えながら繰り広げないと、すぐに置いて行かれてしまうからな」

鞠亜「そんな日本語もまともに使えないヤツに嫌われてもどうでもいいよ。だから早くどうなったのか言いなよ」

芹亜「……言ったんだ。二年生の部長が私のことを『雲川先輩』と。ラジオという公衆の面前でな……」

鞠亜「別にいいんじゃないの? その一言で何かが変わるわけじゃないだろうに」

芹亜「変わるさ。これで私は完全無敵の『三年生の先輩』と認識されてしまったのだけど」

鞠亜「そ、そうなのか?」

芹亜「そうだ。今までは『何となく先輩ってのは知ってるけど何年生なのかわからないなぁ』という認識だった。つまりそれはもしかしたら二年生だったという可能性が残されていたということだけど」

芹亜「しかしここで二年生の部長はハッキリと『先輩』と言ってしまった。それで皆の認識は『ああ、雲川先輩って三年生だったんだ』に変わってしまったんだけど」

鞠亜「でもそれってあくまで認識の話だろ? 自分で二年生と名乗ってしまえば問題ないだろ」

芹亜「それはもう無理だな」

鞠亜「何でさ?」

芹亜「私は部長対して圧倒的な先輩オーラを放ちながら接してしまったんだ……」

鞠亜「……あーそりゃアウトですなあ」

芹亜「アウトなんだよ。これでもう私の女子高生ライフは幕を閉じてしまうんだけど」

鞠亜「あっ、でもまだチャンスはあるぞ! 留年してしまえばまだオッケー!」

芹亜「そんな頭の悪いマネは私のプライドが許さない」

鞠亜「……たしかに、プライドを適度に傷つけることを信条としている私もそれはないわ」

芹亜「ところで私卒業したくないんだけど」

鞠亜「もう諦めろとしか言い様がないね。私みたいな才能あふれる天才でもどうしようもない」




芹亜「まあ、そんな話は置いといて」

鞠亜「そんな話って何だよ! 何かマジな感じだったから真面目に話を聞いてた私に謝れ!」

芹亜「この前常盤台に研修行ったってマジ? 研修なんて興味なさそうな格好してるくせに」

鞠亜「たしかに行ったけどその言い方はムカつくな。私はこう見えても真面目だぞ? こう見えても学校では成績トップだぞ? だからこう見えても研修にはちゃんと行くぞ?」

芹亜「まあ真面目ちゃんなのは分かったから。で、何でまた常盤台になんて行ったんだ?」

鞠亜「ああ、あれだよ。本当は別のクラスメイトが行く予定だったんだけど急遽別の研修が入ったみたいで、その代わりに暇だった私が行ってきたってわけ」

芹亜「ふーん、で感想は?」

鞠亜「頭がいい、いわゆる天才レベルが集まる学校って聞いてたけど正直拍子抜けしたね。能力の強度が強いだけでただの世間知らずのお嬢様ばかりだ」

芹亜「そりゃあの学校は能力至上主義だからな。凡人だろうが天才だろうが、無能力者(レベル0)だろうが超能力者(レベル5)だろうが何でも来いのウチとは違ってな」

鞠亜「でもあれはあれでプライドがいい感じに傷つけられてよかったよ。あの偉そうなくせに虫程度で阿鼻叫喚なお嬢様たちにこき使われる感じは」

芹亜「……もしかして妹よ。お前ってMなのか?」

鞠亜「ぶっ!? な、何を言っているんだこの姉はあ!?」

芹亜「いや、だって嬉しそうにプライド傷つけられたとか言ってるからてっきりそうなのかと」

鞠亜「わ、私はプライドを傷つけることによって窮地に対しての免疫をつけてるだけで、決してそういうのに心地よさを覚えてるわけじゃないからな!」

芹亜「はっ!? つ、つまりドMだということか……?」

鞠亜「ちーがーうー!! だからそうじゃないってー!!」

芹亜「まあ、妹を軽くキャラ崩壊させたところで本題に入るけど」

鞠亜「……待てよ。このやり取りはこのやり取りで私の経験値アップの糧となっているんじゃ……?」

芹亜「いいから話聞けよマゾメイド」

鞠亜「本題って何? もう卒業うんぬんの話の時点でもう本題は終わってると思ったんだけど」

芹亜「第五位には会ったか?」

鞠亜「第五位? 食蜂操祈のことか? ……あー、会ってはないけど見かけはしたなあ」

芹亜「どんな様子だった?」

鞠亜「うーん、別に普通に派閥の人たちと楽しそーにお茶会してたよ。まったくのんきなもんだよね」

芹亜「そうか。ありがとう」

鞠亜「……何だ? その第五位さんが何かしたっていうのか?」

芹亜「いや、たしかにアイツはムカつくことしかしてないけど、今のところは何もないけど」

鞠亜「じゃあ何でそんな様子とか聞きたがっちゃうのさ?」

芹亜「何もしてないってことがおかしいってことだけど。アイツの場合はな……」

鞠亜「?」

芹亜(そろそろこの年度も終わって新学期が始まる。このタイミングであの性悪女が動かないわけがない。もし動くとしたら一体どういう手で出てくるのか……)

鞠亜(何か難しいことを考えてる顔してる。これは別に大したことは考えてないな)ズズズ

芹亜「……まあとにかく」

鞠亜「うん?」

芹亜「卒業したくないんだけどどうすればいい?」

鞠亜「結局ループネタやるのかよ!」


―――
――





February Forth Thursday 12:20 ~昼休み~

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



<よっしゃあ昼休みだっ!! <購買部に突撃だああああああっ!! <今日こそ焼きそばパンゲットだぜっ!!



青ピ「おおっ、今日もみんな気合十分やなぁ。よっしゃあボクらも購買部に行くでぇっー!」

土御門「今日もいつもどおりカミやんを盾に群衆に突っ込む、『カミやんメイン盾作戦』で行くぜいっ」

上条「ふざけんなっ! たまにはテメェらも盾になりやがれっ! いっつもいっつも良いパンゲットしやがって、たまには俺だって食ってみたいんだよ焼きそばパン、ソーセージパンetc」

一方通行「くっだらねェ。あらかじめコンビニとか買っとけよ焼きそばパン、ソーセージパンetc」

上条「そんな高いコンビニのパンなんか買えるかっ! 貧乏学生舐めるなよ!」

一方通行「たかだかニ、三十円の違いだろ」

上条「そのニ、三十円が大きいんだよっ! わかんねえだろうなぁ、このブルジョアめっ!」

青ピ「ん? というか何やっとんアクセラちゃん、自分の席でのんきにくつろいだりしてぇ。さっさ購買行くでぇ?」

一方通行「ハァ? 何で俺がそンな豚の餌場に行かなきゃいけねェンだよ」

土御門「豚の餌場か。ひどい例えだにゃー」

青ピ「そんなの決まっとるやろアクセラちゃん! ボクらはスクエアフォースやろ? いつでも四人で一つ、だから購買にも四人で行くのが常識なんやでぇ」

一方通行「だからオマエらと一緒にすンじゃねェっつってンだろ。つゥかオマエらも見ただろォが、期末試験の結果をよォ。見事な百の羅列だったろうが」

土御門「まあ、勉強ができるからと言っても、そいつが本当に馬鹿じゃないかどうかなんて分からないんだけどにゃー」

一方通行「……何が言いたいのかな土御門クゥン?」ピキピキ

土御門「おっ、効いてる効いてる。そこでイラつくってことは、少しは自覚があるってことじゃないのかにゃー?」

上条「お、おい馬鹿何いってんだつち――」

一方通行「ブチ殺す」カチッ

土御門「にゃっはっー、にっげろー! カンカンに怒ったアクセラちゃんが襲いかかってくるぞーっ!」

青ピ「よし、ここで『カミやんメイン盾作戦』を開始っ! 行けっ、カミやんっ! キミに決めたっ!」

上条「ふっざけんなお前らっ!! 俺を巻き込んでんじゃねぇ!!」

一方通行「安心しろォ。オマエら三馬鹿仲良く全員、愉快なオブジェにしてやっからよォ!」



ワイワイギャーギャードカドカガッシャーン!!



吹寄「……はぁ、また馬鹿四人の馬鹿騒ぎが始まったわ」

姫神「平常運転」

結標「あはは、まったく毎日毎日よく飽きないわよねー」

女子生徒「あのぉ、アクセラ君まだ教室にいる?」

吹寄「うん? まだ居るけど。後ろを見ての通り」

結標「どうかしたのかしら? 一方通行に何か用?」




女子生徒「えっと、アクセラ君にお話があるって人が来てるんだけど」

姫神「アクセラ君に話?」

女子生徒「うん。ほらっ、教室前の入り口のところ」

吹寄「ええっと、たしかあの人は……」


芹亜「…………」ニヤニヤ


姫神「……雲川先輩?」

結標「えっ? 雲川先輩ってあの『クラス・学年共に不明の謎の美人先輩』で有名な雲川先輩?」

姫神「そう。その雲川先輩」

結標「何でその雲川先輩が一方通行を?」

女子生徒「さあ? 何か大事な話があるから連れてきてほしいって言ってたけど」

結標「話? 一体何の話なのかしらね?」

姫神「雲川先輩は謎に包まれたミステリアスな先輩。まったく予想できない」

吹寄「……まさか」

結標「まさか? 何かわかったの吹寄さん?」

吹寄「わざわざ教室まで異性を呼びに来てする大事な話なんて、あたしに思い付くのは一つしかないんだけど」

姫神「……吹寄さん。まさか……っ!」

吹寄「そうっ、そのまさかだと思うわ!」

結標「? ちょっとずるいわよ二人だけわかった顔して。なになに教えてよー」

吹寄「……結標さん。心して聞いてちょうだい」

結標「う、うん。何なのそんな深刻なことなのかしら?」

吹寄「そう。もしかしたら雲川先輩は一方通行にこく――」


女子生徒「あっ、わかった! 雲川先輩はアクセラ君に愛の告白をしようとしているんだぁっ!


結標「…………」

姫神「…………」

吹寄「…………」

女子生徒「…………?」




結標「ってえええええええええええええええええっ!?」




一方通行「……あァ? 何ハシャイでンだあの馬鹿女はァ?」


上条「」ピクピク

青ピ「」ピクピク


―――
――





同日 12:40 ~昼休み~

-とある高校・屋上-


芹亜「……わざわざこんなところまでご足労頂き感謝するけど第一位」

一方通行「チッ、まったく心のこもってねェ感謝の言葉だな。うっとォしィ」

芹亜「感謝の言葉なんてこんなものだよ。この世に社交辞令という名の、心の一つもこもってない感謝の言葉がどれだけ溢れているか。知らないお前じゃないだろ?」

一方通行「そンなくだらねェ雑談を延々と繰り広げるつもりなら今すぐ帰るぞ俺ァ。一体何の用だ、統括理事会の一人、貝積継敏のブレイン雲川芹亜」

芹亜「ふーん、まさかお前なんかに正体をバレているなんて、私も結構有名になってきたみたいだけど」

一方通行「ンなわけねェだろォが。俺ァ以前はクソみてェな掃き溜めで生きてきたンだ。知らねェわけがねェ」

芹亜「あんな浅い暗部にちょっと居ただけで一端の裏の住人面してるなんて、井の中の蛙を見事に体現している男だなお前は」

一方通行「……オマエ、俺を誰だか分かって口ィ聞いてンだよなァ?」

芹亜「ああ、そのつもりだけど?」

一方通行「だったらさァ、今すぐそのよく回る舌をぶち抜いて口から赤い液体を吐き続けるマーライオン状態にすることなンざ、余裕で出来る男を目の前にしてるってことを理解しているはずだァ」

一方通行「なのになァ、そこンとこわかってるヤツの態度には見えねェンだよなァ俺にはよォ」

芹亜「……まあたしかに、お前にはそんな芸当が容易にできるようなチカラを持っていることも理解してるし、そのようなことをされたら私は無事ではいられないことだってきちんと理解してるつもりだけど」

一方通行「だったら不必要な発言は控えることだなァ、命が惜しいンだったらな」

芹亜「ま、でもその前にお前も理解、いや気付くべきことがあるってことを知ったほうがいい」

一方通行「あァ? どォいうことだ?」

芹亜「私に呼ばれて教室を出たお前のことが気になって、ここまでついてきている女子生徒が三人いる」

一方通行「……何だと?」バッ

芹亜「屋上の入り口で隠れてこちらの様子を伺っているのは、お前の友達じゃないのか?」

一方通行(姫神に吹寄、それと結標かッ……)

芹亜「やはり気付いていなかったようだな。そんな状態で私をマーライオンなんかにしたら、それこそお前の日常が跡形もなく砕け散ってしまうところだったってわけだけど」

一方通行「…………」

芹亜「まあそれをしてしまえば、お前の憧れる深い深い闇の部分にどっぷりと浸かることができるかもしれないな」

一方通行「俺は……そンなモンに憧れてなンかいねェ。あンなクソみてェな掃き溜めに、二度と戻ろォなンて思っちゃいねェよ」

芹亜「そうだったのか。すまない、てっきりそうなのだと思っていたのだけど」

一方通行「……まァでも、どォしてもその選択肢を選ばなきゃいけねェ時が来たっつゥならよォ」


一方通行「喜ンで堕ちてやるさ、暗部だろォが何だろうがよォ」ニヤァ


芹亜「じゃあ、そんなどうでもいい世間話は置いといて、さっそく本題に移りたいんだけど? そんな時間もないし」

一方通行「……チッ、そォだな。俺としても一刻も早くオマエとの茶番を終わらせてェ」




-屋上入口付近の物陰-


吹寄「……うーん、一体何を話しているんだろ?」

姫神「ここじゃあ距離がありすぎて。会話の内容まで聞こえない」

結標「ねえ、これって不味いんじゃないの? 盗み聞きだなんて……」

吹寄「そんなこと言って気にならないの? 二人が何を話しているのかを」

結標「き、気にならないわけじゃないけど……」

姫神「まあでも。あの様子からして告白してるってことは。なさそうに見える」

吹寄「たしかにそうね。もしあれが告白のシーンならば、二人してあんな邪悪な笑顔浮かべないもの」

結標「邪悪って……まあ否定はしないけど」

吹寄「……しかし耳を澄ませてみても全然会話が聞こえないわね」

姫神「読唇術でも使えれば。会話の内容がわかるんだけどね」

吹寄「近付こうにも、見事に屋上には隠れる場所なんてないときたものよ」

結標「でもほんと、何の会話しているんだろうね、あの二人」

姫神「あの二人の共通点と言ったら。学内ラジオで次回のゲストとして呼んだ側と呼ばれた側」

吹寄「たしか雲川先輩がゲストに呼ぶためにアクセラの携帯に電話したのよね?」 

結標「うん」

吹寄「てことは雲川先輩はアクセラの番号を知っていた、つまりもともと知り合いだったんじゃないかしら?」

結標「うーん、それはないんじゃないかな?」

吹寄「どうして?」

結標「たしかあの時かかってきた電話は非通知での電話だったわ」

姫神「それってつまり。雲川先輩が何らかの手段でアクセラ君の番号を手に入れて。自分の番号がわからないように非通知でかけたってこと?」

結標「うん。そうだと思う」

吹寄「じゃあ知り合いって線も薄くなっちゃうのかー」

姫神「でも。あのときの電話の内容からしたら。アクセラ君は雲川先輩のこと知ってそうだった」

吹寄「だったらやっぱり知り合い? うーん、謎が謎を呼ぶわね」





芹亜「――つまり、かくかくしかじかで卒業したくないんだけど」

一方通行「……あァ? 今何つった?」

芹亜「だから、かくかくしかじかなわけで、卒業したくないわけなんだけど」

一方通行「分かんねェよ。何だよかくかくしかじかって。ンなモン通じるのは創作の世界だけだ」

芹亜「えっ、ここって創作物の世界じゃなかったのか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。現実だ現実ゥ、残念だったな」

芹亜「不便な世界なんだけど」

一方通行「まァでも、言いたいことは何となく分かる。この学校を卒業したくない、そォ言いてェンだろ?」

芹亜「おおっ、さすが第一位! 何という察しの良さ。お前は察しの良さでも第一位だったのか」

一方通行「いや、明日この学校の卒業式だろォが。そンな時に卒業っつゥ言葉聞いたら誰でもそれを連想すンだろ」

芹亜「素晴らしい。私の中でお前の好感度が3ポイントほど上昇したけど」

一方通行「いらねェよオマエの好感度なンてよォ。つゥか、上限何ポイント中の何ポイントだよ」

芹亜「65536ポイント中3ポイント」

一方通行「ゴミみてェなポイントじゃねェか」

芹亜「まあでも、察しが良くて助かっているのは事実なのだけど。また昨日みたいなやり取りをするのは正直疲れるからな」

一方通行「知るかよ。で、俺はそれを聞いてどォすればイインだ? 『あっ、そォ』って言ってやるのが俺的最適解だと思ってンだが」

芹亜「ふむ、では言い方を変えよう。卒業したくないんだけどどうすれば良いと思う?」

一方通行「黙って卒業して行けばイイと思います」

芹亜「やだ」

一方通行「ガキみてェなこと言ってンじゃねェ。つゥか、こンな相談卒業式前日にすることじゃねェだろ。もォ既に卒業式の練習も終えて、卒業する準備も万全っつゥ日だぞ?」

芹亜「私的には全然万全じゃない」

一方通行「誰もオマエのことを言ってンじゃねェよ。この学校全体の動きについて言ってンだよ。今頃準備されている卒業証書の中には、オマエの名前が記入されているモンもきちンとあるだろうよ」

芹亜「……でもそれっておかしくないか?」

一方通行「何がだ?」

芹亜「私は『クラスも分からなければ学年も不明の超絶先輩キャラの巨乳美人女子高生』ということで通っているんだぞ。生徒だけではなく教員に対しても」

芹亜「そんな状況で勝手に私の卒業証書が作られるわけがないんだけど」

一方通行「どォでもイイけどよォ、オマエってこの学校にちゃンと籍置けてンのか?」

芹亜「…………」

一方通行「オーケーオーケー、面白れェこと教えてやるよ不法侵入者」

芹亜「不法侵入者じゃないけど聞こう。何だ?」

一方通行「卒業証書に学年と組を書く欄はねェ。だから、名前だけ知っときゃ卒業証書なンざ作り放題だ」

芹亜「なっ、何でそんなことをお前が知っているんだ!?」

一方通行「卒業式の練習のときにチラっと見えた」

芹亜「あれは確か練習用のレプリカ品のはずだけど。卒業太郎みたいな適当な名前が入ったやつ」

一方通行「ああ、確かにそンな名前だったなァ。まァでも、記入されている名前が違うレプリカ品でもレイアウトは同じはずだ。よって本物も同じレイアウトな可能性が高い」

芹亜「ふ、ふんっ、まあ仮にその話を鵜呑みにするとしよう。だが私はクラスも学年も不明な女っ、それなら卒業生のリストに入っていない可能性が高いけど」

一方通行「ああ、そりゃ簡単な話だ」

芹亜「か、簡単な話だと? 一体どんなっ……?」




一方通行「オマエ、自分が卒業するって確信してるからこンなところで泣き言吐いてンだろ? じゃねェと俺みてェなヤツをここに呼び出す理由がないからな」

芹亜「…………」

一方通行「…………」

芹亜「ところで、私はどうすれば卒業しなくて済むんだ?」

一方通行「勝手に卒業しとけよ。サヨナラセンパイ」ガチャリガチャリ

芹亜「まあ待て。まだ私のターンは終了していないんだけど」ガシッ

一方通行「離せコラ。オマエのターンはもォ既に終わってンだよ、学校生活っつゥなァ。黙って卒業してろクソババァ」

芹亜「私はこんな面白い学校を離れたくないんだけど。私はこんな面白い学校を離れたくないんだけど。大事なことだから二回言ったぞ?」

一方通行「百回言ってもオマエの卒業は覆らねェよ。……つゥかよォ、そンなに残りてェンなら留年すりゃイイじゃねェか。オマエの権力使えば余裕だろ?」

芹亜「そんな留年なんて馬鹿みたいなことするのは、私のプライドがゆるさない。てか、昨日も同じようなこと言った気がするけど」

一方通行「オマエの昨日喋った内容なンて、俺が知るわけねェだろォが」

芹亜「チッ、学園都市最強の第一位様でも、ウチのマゾメイド妹と同じ結論か。所詮はその程度のモノだったというわけだけど」

一方通行「そのマゾメイドの妹さンは相当優秀なヤツなンだろうな。この俺と同じ結論が出るなンてよォ」

芹亜「ただのドMの変態だけど。……つまり、お前もドMというわけか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。そォいや一つ気になったンだが」

芹亜「何か?」

一方通行「留年をプライドが許さないって言ってたが、俺みてェなクソ野郎に泣き付くのはオマエ的にオッケーなのかよ?」

芹亜「別に泣き付いてない。ただ相談しているだけだけど」

一方通行「似たよォなモンだろォが! てか、いつになったら俺ァ開放されるンだァ!?」

芹亜「私がこの面白い学校から離れなくても良い手段、つまり卒業しなくてもいい方法を見つけ出すまで」

一方通行「つまり一生ここで過ごさなきゃいけねェわけか? 詰みだ詰み」

芹亜「詰んではいないだろ。何か良い解決策があると思うんだけど」

一方通行「そォ思うンなら自分で考えろ。俺を巻き込ンでンじゃねェよ」

芹亜「良い案が出るまで昼休みをとってはいけません」

一方通行「給食を残した児童を、昼休み使ってまで完食させようとするクソ教員かオマエは?」

芹亜「へー、暗い過去を持つお前でもそういうネタがあることは知っているんだな」

一方通行「うるせェよ、そンなことどォでもイイから早く俺を……ン? 待てよ」

芹亜「どうかしたか?」

一方通行「いい方法を思い付いた。まあ、俺にとっては全然良くはねェンだけど」

芹亜「唐突だな。そんなあっさり出てきたアイデアなんて信用に値しないと思うけど」

一方通行「妙案っつゥのは、99%のひらめきと1%の努力で生まれるモンだ。だから唐突に閃いてもおかしくねェだろ」

芹亜「パーセントが逆だ逆。まあでも、本来の意味を考えればそれでも間違いではないけど」

芹亜「で、何なんだその画期的なアイデアっていうのは? 期待せずに聞いてやるけど」

一方通行「どこまでも偉そうなヤツだなァオマエは。まァイイ、その方法っつゥのはなァ――」




一方通行「――っつゥわけだ。こォすれば『卒業』は回避出来ねェが、『学校から離れたくない』っつゥ願いは叶えられる」


芹亜「……なるほど、その発想はなかった」

一方通行「笑えねェ冗談だな。統括理事会メンバーのブレインのオマエが、この手段を思い付かねェわけねェと思ってンだが」

芹亜「私のような一般的な女子高生には難しい話だと思うけど」

一方通行「オマエが一般人を名乗るなら、俺も一般人を名乗らなきゃいけなくなるだろォが」

芹亜「お前のような一般人がいるか」

一方通行「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」

芹亜「……まあでも、たしかに私好みのいい案だ。何で私がこれを思いつかなかったのか、という話になると、卒業シーズンという空気感が私の思考能力を低下させたのだろう」

一方通行「似合わねェな。そンな玉じゃねェだろうに」

芹亜「そうでもないさ。ブレインなんてものをやっていても、所詮はちっぽけな一人の人間に過ぎない。だから、ちっぽけなことで右往左往するけど」

芹亜「お前も私と同じようなことを思っているんじゃないか? 学園都市最強の超能力者君」

一方通行「……チッ、くっだらねェ」

芹亜「ひとまずお礼を言わせてもらうけど。これで私の動くべき道が定まったというわけだ」

一方通行「卒業式前日に進路の方向性が決まるなンざ、馬鹿みてェな話だな」

芹亜「なあに。ここから先は、せいぜいブレインとしての権力を乱用させてもらうけど。……それにしても」

一方通行「あァ? まだ何か問題でもあンのか?」

芹亜「いや、君たちをこの学校へ引き抜いてよかったと、ちょっと思っただけだけど」

一方通行「……オマエだったのか。このくだらねェ生活に俺や結標を引き入れやがった張本人は」

芹亜「楽しい生活だろ? お礼を言ってくれてもいいけど」

一方通行「楽しくねェよ」

芹亜「噂通りの素直じゃなさだな」

一方通行「黙れ。つゥか用が終わったンなら帰ンぞ? いつまでもこンな所でグダグダしたくねェからな」

芹亜「ああ、ありがとう。貴重な睡眠時間を奪って済まなかったな、いやコーヒーブレークか? 違うな。お友達との他愛のない時間、かな?」

一方通行「言ってろ」ガチャリガチャリ




結標「……あっ、何か話終わったみたいよ!」

姫神「付いてきたのはいいけど。とくに得られる情報はなかった」

吹寄「てか早く戻ったほうがいいんじゃない? さすがにアクセラに覗き見してたのバレるわけにはいかないもの」

結標「そうね。ってもうこんな時間っ!? お昼食べる時間あるかしら……」

姫神「急いで戻らないと」

一方通行「そォだな。飯どころかコーヒーを飲む時間さえ消え去っちまう」


三人「「「!?」」」


一方通行「おォーおォー、予想通りのリアクションお疲れさン」

吹寄「なっ、き、気付いていたのっ!?」

一方通行「……まあな」

姫神「気付いた上で。ここまで泳がせていたという。ずいぶんと意地悪ねアクセラ君」

一方通行「盗み聞きしてるオマエらほどじゃねェと思うがな」

結標「わ、悪かったわよ。ちょっとした好奇心でやっちゃったのよ」

吹寄「でも安心して頂戴。距離がありすぎて全くと言っていいほど話聞こえなかったから!」

一方通行「そォかよ。そりゃ残念だったな」

姫神「どうせ盗み聞きがバレてるのだから聞くけど。一体何の話をしていたの?」

結標「あっ、それ気になるわ……ま、まさかこ、告白とかじゃないわよね……?」

一方通行「厚かましいヤツらめ。オマエら絶対ェ謝る気も反省する気もねェだろ。あったらそンなくだらねェ質問してこねェはずだからな」

吹寄「そんなことないわよ。本当に悪いと思ってる。だけどまあ、気になるものは気になるというか」

姫神「そう。それ」

結標「は、早く言っちゃいなさいよ一方通行」


キャッキャキャッキャ


一方通行「……ハァ、頭痛てェ」


―――
――





February Forth Friday 12:00 ~卒業式・終了後~

-とある高校・校門付近-


ワイワイガヤガヤ


上条「さーて、終わった終わった。早く帰ってインデックスの飯作ってやらなきゃいけねーなー」


モブ卒業生A「Bちゃんっ! 卒業してからも毎日連絡するからね!」

モブ卒業生B「うん! ときどき会って遊ぼーね!」


モブ在校生A「Cセンパイっ! 絶対に次の大会では一番になってみせるッス」

モブ卒業生C「おうっ! あ、あとは頼んだぞ後輩よおおおおおおおおおっ!」


上条「……やっぱ卒業式だから盛り上がってんなあ。まあ俺は仲いい先輩とかいないからなー」

上条「ま、早く帰れるって考えれば得っちゃ得だな」

上条「……まあ、それはそれで寂しい気がしないでもないな」


芹亜「や、やあ上条」


上条「ありゃ? 雲川先輩じゃないっすか……ってえっ、雲川先輩その格好……?」

芹亜「そう。お前の思ってる通り、今日私はこの学校を卒業したわけだけど」

上条「雲川先輩って三年生だったんすか。何か知らないけど勝手に二年生だと思ってた」

芹亜「……うん。私も本当はそうしたかったんだけど、世界の不条理には逆らえなかったわけだ」

上条「?」

芹亜「……ごほんっ。というわけで、私は卒業しました。だから、何か感動的なシーンを一つでもどうぞ」

上条「そんなこと言われてやっても、ただの茶番になること請け合いだな」

芹亜「まあ私もそんな茶番好きじゃないから、別にやってくれなくて結構だけど」

上条「じゃあ何で言ったんだよ……」

芹亜「いや何となく。でもあれだ、その場のノリって大事だけど」

上条「滅茶苦茶だよこの人。……まあいいや、ごほんっ、じゃあ感動的じゃないけど一つ」




上条「先輩卒業おめでとう。時々する先輩とのよもやま話、結構楽しかったぜ」ニコッ


芹亜「……おっふ。これはなかなか強烈な一撃なんだけど。クリティカルなんだけど」クラッ

上条「お、おいおい大丈夫か先輩? そんなにふらついて……」

芹亜「だ、大丈夫だ。問題ない。ただの立ちくらみだけど」

上条「もしかして卒業式緊張でもしてたんすか? 終わったから急に気が抜けてってやつ?」

芹亜「そういうわけじゃないけど。まあいい、実は私もお前に一言言っときたいことがあるんだけどな」

上条「一言? 何すか?」

芹亜「そんな大したことじゃないんだ。ただこれをお前に言っとかないと、今日ここにきた意味がなくなるけど」

上条「何じゃそりゃ。あっ、もしかしてあれか? 卒業を機会に愛の告白とかしてくれちゃったりして?」

芹亜「ごほっ!? お、お前はいきなり何を言い出すんだっ!」

上条「えっ、いや冗談すよ冗談。卒業式ジョークですよ」

芹亜「……まあでも、お前がそれを望むのならしてやってもいいけど」

上条「えっ、いまなんて……?」

芹亜「しかし、今この場所このタイミングでそれをやってしまうと色々と問題がありそうだけど。だから、またそれは別の機会でやらせてもらうよ」

上条「つまり、どういうこっちゃ?」

芹亜「ごほんっごほんっ。じゃあ、私が一言言いたいっていうくだりに、話を戻すけど」

上条「あっ、どうぞどうぞ」

芹亜「上条。私は今日ここを卒業していなくなるわけだけど」

上条「うん」

芹亜「だが、私は必ずこの学校、そしてお前の目の前に再び姿を現すけど」

上条「何かやられちまった第一の魔王みたいなこと言ってんなー」

芹亜「勝手に変なツッコミを入れないで欲しいんだけど。まあ良い、だから上条当麻っ、だからそれまで私のことを忘れるんじゃないぞ!」

上条「あ、はい」

芹亜「絶対だぞ!」

上条「大丈夫ですって。だいたい忘れたくても忘れられないって、先輩存在感すごいし」

芹亜「むっ、何か気になる言い回しだけどまあいい。それじゃあ、さよならはもちろん言わない。また会おう上条」スタスタ

上条「お、おう。また」


上条「…………」

上条「一体何だったんだ? 言ってることが半分くらいわからなかったぞ?」

上条「……まあいいや。本人が会えるっつってんだから、また会えるんだろ」

上条「ほいじゃ、ま、帰りますか」スタスタ


――――――


雲川先輩めっちゃ頭いいけど書いてる僕くんが無能やからそれと同等かそれ以下の知能しか発揮できないの悲しいね

次回『雛祭り』

今の所週一ペースは守れてるね 偉いね

投下



4.雛祭り


March First Saturday 13:00 ~雛祭り前日~

-黄泉川家・リビング-



黄泉川「――というわけで、これから明日の雛祭りの準備をするじゃん」



打ち止め「おーっ、ってミサカはミサカは高々と拳を突き上げてみたり」

結標「うふふ、楽しみね」

芳川「……はぁ、めんどくさいわ」

一方通行「奇遇だな。珍しくオマエと同意見だ」

黄泉川「そこのローテンション二人組っ! そういうことは思っていても口には出さないっ!」

打ち止め「そうだそうだー、そういうのが場の空気を悪くするんだぞー! ってミサカはミサカは流れに乗じて口出ししてみたり」

結標「そうよ。それに一方通行に関してはいつもいつも面倒臭い面倒臭い言っているんだから、たまには『やったるでー!!』とかを口癖にしたらどうなのよ?」

一方通行「オマエそれキャラ崩壊とかいうレベルじゃねェぞ。俺のアイデンティティー崩壊だ崩壊」

黄泉川「そんなもんをアイデンティティーにしちゃいけないじゃんよ。そんなんじゃ将来本当に駄目な大人になってしまうじゃん」

芳川「ま、言ったところでもう手遅れかもしれないけどね」クスッ

一方通行「うるせェぞ芳川ァ。つーかよォ、大体何で俺が雛祭りの準備なンざしなきゃいけねェンだ? アレはたしか女の行事だっただろォが」

黄泉川「たしかに女の子が主役の行事ではあるよ? でも、別に男が参加しちゃいけない決まりなんてないじゃん?」

一方通行「屁理屈かよ。そンなモンで俺が動くと本気で思ってンのか?」

黄泉川「おう、もちろん!」ニッコリ

一方通行「…………」ギロッ

黄泉川「…………」ニコニコ

一方通行「……ハァ、ったく。わかったわかったやりゃイインだろやりゃあ?」

打ち止め「おおっ、あっさりだっ! ってミサカはミサカはあなたの聞き分けの良さに少し驚いてみたり」

一方通行「張り倒すぞクソガキが」

結標「でも打ち止めちゃんの言う通りよ? どうしたの今日はやけに素直じゃない?」

一方通行「誰が素直だって? これはそォいうンじゃねェよ。これ以上は拒否する方が面倒だ、っつゥことで了承しただけだ。実質強制されたよォなモンだ」

結標「あら、やっぱりいつもの一方通行だったわね」

打ち止め「そうだねー、素直じゃないツンデレータだ! ってミサカはミサカは同意してみる」

一方通行「言ってろ」

芳川「うん? そろそろツンデレ劇場は終わったのかしら」ピッピッ

一方通行「……ところでオマエは何をやってやがンだ?」

芳川「タブレットでネット。キミのいつものやり取りを見るのも飽きてきたから、その間の暇つぶし」スイースイー

黄泉川「へー、お前そんなもん持ってたのか」

芳川「この前バイト代で買った」

一方通行「ほォ、そォか。そォいやいつものやり取りっつったら、この俺の勘に触りやがった馬鹿にはよォ、制裁を加えてやるっつゥのも定番のやり取りだったよなァ?」カチッ

芳川「やめておきなさい一方通行。もしこれを壊されでもしたら、私は少なくとも半年間は部屋に引きこもってやる自信があるわ」

打ち止め「うわっ、駄目だ大人だっ! ってミサカはミサカは素直にオブラートに包むことなく指摘してみる」




黄泉川「はいはい、それじゃあテキパキやって、とっとと終わらせるとするじゃん。明日が雛祭りだからあんま時間は残ってないぞ」

芳川「……というか愛穂? そもそもひな祭りをやるなら、あらかじめもっと前に準備しておくのが普通じゃない?」

黄泉川「えっ、そうなの?」

芳川「そうよ。もともと雛人形は春分、ようするにニ月四日から二月中旬までくらい飾り付けるのが一般的よ?」

芳川「遅くとも、三月三日の一週間前には終わらせとかないといけないわけ。つまり、前日に準備だとだいぶ遅れていることになるわ」

黄泉川「はえー、そうなのかー」

結標「詳しいですね芳川さん」

芳川「さっきググった」

一方通行「どォりでスラスラ言葉が出てきたわけだ」

芳川「いや、勘違いしてもらってわ困るわ。私が調べたのは最低ラインだけよ。一般的にいつ飾れば良いのかは最初から知ってたわ」

一方通行「どォだか」

結標「……ところで黄泉川さん。飾る時期を知らなかったとしても、何で今日準備するんですか? もっと前から準備できそうな日あったと思うんですけど」

黄泉川「おっ、いいことを聞いてくれるじゃん。実はこの雛祭りのセットって全部もらいものじゃんよ」

打ち止め「もらいもの? ただでもらったってこと? こんな高そうなものを? ってミサカはミサカは率直な疑問を浮かべてみる」

黄泉川「おう。これはな、もともと第一三学区で私の知り合いが運営してた養護施設にあったものじゃん」

黄泉川「だけど、その養護施設が退っ引きならない事情で閉園してしまってさぁ。それでそこの施設のものを整理しているときに、この雛祭りセットがあってどうしようかって話になってな」

黄泉川「そんでその知り合いに冗談でちょうだい、って言ったら本当にくれたわけじゃんよ。ちなみにそれが昨日の出来事」

芳川「……要するに、貴女はもともと雛祭りなんてやるつもりなかったけど、たまたま昨日雛祭りセットが手に入ったから急遽雛祭りをやることになって今に至る、って言いたいわけね?」

黄泉川「そうそう」

一方通行「そこはリサイクルショップにでも売っとけよ経営者ァ。施設がぶっ潰れて金も必要だろォによ」

黄泉川「いいじゃん別によー、くれるって言ったんだからさあ。それに打ち止めがいるんだから、雛祭りの一つや二つ、やってやらなきゃなー」

打ち止め「おおっー! さすがヨミカワ! ミサカイベント大好きありがとー! ってミサカはミサカは素直にお礼が言えるいい子!」

黄泉川「あと淡希もそうじゃん。記憶喪失だから雛祭りなんてやった記憶ないだろうし」

結標「そうですね。たしかに記憶にはないです。……まあでも、同級生のみんなはこの歳じゃやらないわよー、って言ってたから素直に楽しめるかわかりませんけど」アハハ

芳川「別にいいんじゃない。雛人形を飾るのに年齢制限なんて存在しないわけだし」




黄泉川「ほいじゃ始めますか。私と桔梗で台座を組み立てるから、他三人は飾り付けの準備をするじゃん」

打ち止め「了解っ! ってミサカはミサカは背筋を伸ばしてしっかり敬礼してみたり」

結標「はーい」

芳川「ちょっと待って。何で私が台座の組み立てとかいう重労働をしなきゃいけないのよ? こういうのは男の仕事じゃないかしら? ねえ一方通行?」

一方通行「あァ? 杖突の身体にナニ重労働させよォとしてンだオマエはァ?」

芳川「何のための電極よ? こういう人の役に立つときに使わないと、電池がもったいないんじゃないかな?」

一方通行「そンな誰でも出来る作業に能力使うなンてよォ、役不足にも程があンだろうが」

打ち止め「だったら能力使用モードに制限かけてあげようか? それなら持続時間も伸びるし、ってミサカはミサカはアドバイスしてみたり」

一方通行「余計なこと言ってンじゃねェぞクソガキ」

黄泉川「まあ別に台座組み立てるくらい二人いれば十分だし、一方通行にそこまでしてもらう必要ないじゃん」

芳川「でも愛穂。正直台座の組み立てなんていう重労働、疲れるからやりたくないんだけど」

黄泉川「この前、バイト始めたから体力ついた、とか言ってたじゃん? その体力を活かすときが来たじゃんよ」

芳川「今日はバイトの休みの日、つまりその失った体力を回復させている日なのよ。それなのに体力を使うなんて――」

黄泉川「つべこべ言わず手、動かすじゃん」ニコッ

芳川「アッハイ」


打ち止め「おっ、話が付いたみたいだね、ってミサカはミサカは飾りを箱から取り出しながら解説してみたり」

一方通行「解説でも何でもなかったけどな」

結標「えっと、男雛様に女雛様、三人官女に五人囃子、随臣と仕丁。へー、総勢十五人か。すごい人数ですね」

打ち止め「よくできたお人形さんだね。材質とか良さそうだし、ってミサカはミサカはいじくりながら分析してみる」

一方通行「ガキの遊ぶお人形さンじゃねェンだ。あンま無茶して壊すンじゃねェぞ」

打ち止め「ぶー、わかってるよそんなことー、ってミサカはミサカはふくれてみたり」

結標「でもホントこれ高そうよ。こういう本格的な雛人形っていくらくらいするのかしら?」

芳川「ピンキリだけど、いいものだと四百万くらいするみたいね。通販サイトを見る限り」サッサッ

結標「よ、よんひゃっ!?」

打ち止め「す、すごいね。も、もしかしたらここにある雛人形もそれくらいするのかな? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり」

芳川「さあ? まあ安いのでも五万六万するみたいだし、決して安いものではないと思うわ」

芳川「それにここにある雛壇はね、何でか知らないけど十段あるのよ。市販品は七段までしか置いてないにもかかわらず」

芳川「つまりここにあるのは特注品。まあ、あとはご想像におまかせするわ」

結標「……触るのに手袋とかしたほうがいいかしら?」

一方通行「別にイイだろ、転売目的で扱うわけじゃねェンだからな。きっちり雛祭りに使って、くたびれさせてやったほうがお人形さンのためっつゥわけだ」

黄泉川「こらこらー、お前たち口ばっか動いて手が動いてないぞ―。桔梗に至っては堂々とネットサーフィンするのはやめとこうじゃん」

打ち止め「……あっ、見てこれ! ミサカはどうせ雛祭りをやるならこれが欲しいっ! ってミサカはミサカはタブレット端末を使いこなしてみせつつ懇願してみたり」

芳川「何勝手に私の持ち物使っているのよ」

一方通行「あン? 何だこりゃ、『ゲコ太とピョン子の雛祭りセット』だァ? こンなところまで展開してンのかこのカエルどもは」

打ち止め「ミサカこれがあれば雛祭りを通常の三倍、いや百億倍楽しめる気がするんだっ、ってミサカはミサカは購買欲をそそらせるアピールをしてみたり!」

一方通行「ここにわざわざ本物が置いてあンだから別にいらねェだろ。却下」

打ち止め「ぶーぶー」

一方通行「……しかしこの雛人形、どっかの超電磁砲は持ってそォだよなァ、何となく」




-常盤台中学学生寮・二〇八号室-



美琴「――へっくちっ!」



黒子「あらお姉さま、もしかして風邪ですの?」

美琴「んー? 別に身体に異常はないし、ただのクシャミでしょ」

黒子「いけませんわお姉さま。そういう油断が病を誘き寄せることに繋がりますのよ」

美琴「ただの風邪でしょ? 平気よ平気」

黒子「だからそれがいけないのだと言っているのですのよ? 大体お姉さまはいつもいつも自覚のある行動を――」

美琴「あー、ちょっと黒子。説教なら後にしてくれる? 私今、この『ゲコ太とピョン子の雛祭りセット』を眺めるのにひっじょーに忙しいから」キラキラ

黒子「……はぁ、またそんなファンシーグッズを買って。ましてや雛人形なんて、そういうのは小学生で卒業するものと思ってましたが」

美琴「黒子。アンタのその常識は間違えているわ。雛祭りに年齢制限なんてないのよ!」

黒子「いや、それは知ってますのよ。ただ、わたくしの周りに雛祭りをやろうなんて人、お姉さま以外いないから言っているんですの」

美琴「そんな狭い範囲の常識、全然常識じゃないでしょ」

黒子「……はいはいわかりました。そういうことにしておきましょう」

美琴「何か引っかかる言い方ねえ……」

黒子「そんなことないですの。それじゃあわたくしはこれからジャッジメントの仕事に行きますので。門限までには帰られると思いますが、何か用があったら連絡してくださいな」

美琴「ほいほーい。……あーかわいっ」キラキラ

黒子「……はぁ、ではいってまいりますの」ガチャ

美琴「いってらー」キラキラ




-黄泉川家・リビング-


黄泉川「――よし、これで土台は完成。あとは飾り付けだけじゃん」

芳川「疲れた。しばらく働きたくないわ」

黄泉川「よくそんなんでコンビニバイト続けられてるじゃんね」

芳川「あれは金銭が発生するから頑張れるのよ。この土台を組み立てる作業に金銭が発生しないのだから、頑張れないのは当然じゃない」

黄泉川「ほーん、じゃあこれあげるから引き続き頑張れじゃん」つ100円玉

芳川「……そんな金額じゃ幼稚園児しか動かせないわよ」

黄泉川「お金はお金じゃん」


打ち止め「おおっー、いつの間にか台ができてるー! 大っきいー、ってミサカはミサカは見上げながら感動を覚えてみたり」

黄泉川「おっ、そっちはどうじゃん? 準備できたか?」

結標「はい、組み立てなきゃいけないものは全部組み立てたと思います」

一方通行「つゥか、人形より他の部品のほうが多くねェかコレ? 人形じゃなくてこっちがメインみてェに見える」

結標「部品って味気ない言い方ね。飾りって言いなさいよ」

一方通行「別に変わらねェだろ」

芳川「飾りの数が多いのはあれね。普通は七段で解決するところを十段もあるわけだから、その分飾り過多になっているのでしょうね」

黄泉川「それじゃあぱぱっと飾り付けして、準備を終わりにするじゃん」

結標「……というかほんと大きいなあこの雛壇。軽く二メートルは越えてるわね」

打ち止め「ひゃあー、こりゃ上のほう飾るのきつそうですなぁ、ってミサカはミサカは自分の身長の低さに歯噛みしてみたり」グヌヌ

芳川「大人の私だって台がないとキツイのだから、別に悔しがることはないんじゃないかしら」

黄泉川「そうじゃんね。ちょっとイスでも持ってくるじゃん」


一方通行「……つーかよォ、結標が全部テレポートさせて飾り付けすりゃイイだろォが」


打ち止め「…………」

芳川「…………」

黄泉川「…………」

結標「…………」


一方通行「?」


打ち止め「おおっ、そういえばアワキお姉ちゃんはテレポーターだったね、ってミサカはミサカは再認識してみる」

芳川「ああ。テレポート使ってる場面なんて全然見ないから忘れてたわ」

黄泉川「あははー、ほんとじゃんねー」

結標「しょ、しょうがないですよ。私もこんな場面でテレポートが活用できるなんて思ってなかったんですから」

一方通行「オマエ本当にレベル5かよ? てか、オマエも散々俺に日常生活で能力を使えって言ってくるくせによォ、自分自身も活かせてねェっつゥンだったら話になンねェよなァ?」

結標「い、いやアレよ? ちゃんと遅刻しそうなときとかにテレポート活用してるから」

一方通行「しょうもない使い道だな」

結標「あ、貴方も似たような物でしょうに……」




結標「そ、それじゃあテレポート使って飾り付けしまーす」

打ち止め「がんばれー! ってミサカはミサカはお煎餅を片手に応援してみたり」ボリボリ

芳川「何かあったら呼んでちょうだい。私タブレットでゲームしているから」チャラチャラ

黄泉川「今日の晩御飯は何にしようかなーと」ガチャ

一方通行「オマエら一気にやる気なくなったな。結標に全部任せとけばイイってなった瞬間から」

結標「別にいいわよ。こんな能力が役に立つっていうのなら、それはそれで嬉しいし」

一方通行「そォかよ。俺には分かンねェことだな」

結標「……ところでこれってどれどう飾ればいいのかしら。説明書が見当たらないのだけど」

一方通行「そォいやそォだな。これだから中古は」

結標「だったらこれ、どういう風に飾ればいいのよ? わからなきゃテレポートの使いようがないわよ」

一方通行「あー、たしかアレだ。一段目に男雛と女雛、その左右にこの街頭みたいなヤツを一本ずつ。男雛と女雛の間にこのお供えに使うよォな台を置く。で、後ろに屏風を置いて終わりだ。次に二段目――」

結標「ちょ、ちょっと待って!」

一方通行「あァ?」

結標「あ、貴方知ってるの!? この雛人形の飾り方!?」

一方通行「まァな」

結標「へ、へー見かけによらずそういう知識はあるのねー」

一方通行「……何か勘違いをしているよォだが、俺はたださっき芳川のタブレットに映ってた雛壇の画像を見て覚えてただけだ。それを思い出しながら口に出しているだけに過ぎねェ」

結標「よくあの一瞬でそれだけのことが覚えられるわよね」

一方通行「オマエもそれくらい出来るだろ?」

結標「いや、普通に無理」

一方通行「……よし、なら訓練をしてやる」

結標「訓練?」

一方通行「そォだ。これから雛人形の並び順を最初から最後まで説明するから、それを全部記憶してみろ」

結標「ええっー、十段もある雛人形よ? 絵で見て覚えるならまだしも、口説明で十通りの組み合わせを一発で覚えろなんて無理よ」

一方通行「安心しろ。俺も知ってるのは七段目までだ。そこから下は情報がねェから適当にやるしかねェ」

結標「それでも七段か。やっぱし何かきつそう」

一方通行「そりゃアレだ、本気で覚えようとしてねェからだろ。オマエくらいの脳みそなら余裕で出来るはずなンだがなァ」

結標「それ本気で思ってる?」

一方通行「ああ」

結標「……ふふっ、わかったわ。何か出来そうな気がしてきたわ」

一方通行「単純かよ」

結標「うるさいわね。早く説明言いなさいよ」

一方通行「ああ。えーまず一段目から――」

一方通行「――で、この火鉢を二つ並べる、これで以上だ」

結標「ふむふむ、なるほどね」

一方通行「あと残ったヤツは適当に八、九、十段目に配置しろ。オマエのセンスに任せる」

結標「最後だけすごい雑ね。まあいいけど」

一方通行「それじゃあ答え合わせだ。覚えたとおりに飾り付けしてみろ」

結標「わかったわ。よっ」ブンッ




シュン、ストトトトトトトン



結標「……ど、どうよ?」ドキドキ

一方通行「……おう。正解だ。どォやら間違いなく覚えられたよォだな」

結標「そ、そう。よかったわ」ホッ

一方通行「まあ、欲を言えば男雛をもう左に八ミリのところに置いとけば、きっちり左右対称の位置に持ってこられてたンだがな」

結標「それは知らんがな」


打ち止め「おおっー、ミサカがアニメを見ている間に雛人形の飾り付けが終わってるー! ってミサカはミサカは巨大な雛壇を眺めながら興奮を覚えてみたり」

芳川「あら終わったのね。へー、すごいわね。これはウン百万とか言われても何も驚かないくらい豪華ね」

黄泉川「ほー、こりゃ壮観じゃんねー。これを見ながら飲む白酒はうまそうじゃん」

芳川「愛穂……貴女もしかして美味しいお酒を飲むために……?」

黄泉川「へ? い、いやそんなわけないじゃんよ。ちゃんと打ち止めと淡希の為を思って雛祭りをしようと思ったじゃん。ま、まあたしかに雛祭りといえば白酒が風流でいいなあ、とか思ってたけどさ」

打ち止め「へー、雛祭りではシロザケっていうのを飲むんだねー。ミサカも飲みたーい、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

一方通行「ガキには二十年早ェ」

打ち止め「ぶーぶー」

芳川「そうね。でも安心しなさい打ち止め。実は子供でも飲めるお酒があるのよ?」

打ち止め「えっ、そうなの!? 何それ何それ、ってミサカはミサカは興味津々なワードに目を光らせてみたり」キラキラ

芳川「甘酒って言って、アルコール度が1%未満だから未成年でも飲むことのできるお酒よ。ま、分類上ソフトドリンクっていう扱いになるんだけどね」

打ち止め「へー、それはそれは名前からして甘そうなものですなぁ、ってミサカはミサカは期待で胸を躍らせてみたり」

結標「甘酒かー、飲んだことないから楽しみね」

一方通行「ケッ、くだらねェ」

結標「逆に貴方は絶対に飲まなそうね」

一方通行「当たり前だ。そンなモン飲むくれェなら泥水すすった方がマシだァ」

芳川「どうでもいいけど、よくブラックコーヒーのことを泥水とか言っている人いるわよね」

一方通行「どォいう意味かな芳川クゥン?」

芳川「別に意味はないわ」

黄泉川「ほいじゃー、とりあえず準備は終わったということで解散するじゃんよ。晩飯準備できたら呼ぶから待っててくれ」

結標「了解でーす」

打ち止め「アワキお姉ちゃーん、一緒にゲームしよー、ってミサカはミサカは暇つぶしの方法を提案してみる」

芳川「はぁ、やっと終わったわね。部屋に戻ってネットしよ」

一方通行「オマエタブレット買ったンだろ? それでやりゃイイだろォが」

芳川「馬鹿ね。タブレットはあくまで部屋を離れる用、自室にいるのならPC使ったほうがいいに決まってるじゃない。使いやすさは雲泥の差よ」

一方通行「知るかよ」


―――
――





March First Sunday 18:00 ~雛祭り当日~

-黄泉川家・リビング-



黄泉川「――それじゃあ料理もできたことだし、雛祭りを始めるとするじゃん!」


打ち止め「よっしゃああっ! やっと始まったぜ、ってミサカはミサカは待ち焦がれたイベントの開始に歓声をあげてみたり!」

円周「うおお」


一方通行「うるせェぞガキどもッ!! つーか、何で木原のクソガキまでここにいやがるッ!!」

芳川「キミも十分うるさいけどね」

円周「科学あるところに『木原』ありっ! イベントあるところに『円周』ありっ! つまりそーいうことだよ」

一方通行「帰れ」

結標「別にいいじゃない一方通行。人数多いほうが楽しいし」

一方通行「オマエコイツをパーティーを楽しくする人数にカウントしねェほうがイイぞ? プラマイゼロどころかマイナスの10くらいだ」

結標「それもう人数ゼロになっちゃうじゃん……」

一方通行「ゼロどころかマイナスだ。ただ負の感情しか生まねェ」

結標「どういう状況よそれ」

一方通行「……朝礼の校長の長話中とか」

結標「マイナスしょぼっ!?」


打ち止め「ところで雛祭りって何をやるのー? ってミサカはミサカは率直な疑問を投げかけてみたり」

芳川「雛祭りに特に決まってやることなんてないわ。雛人形飾った後は、雛祭りの定番の料理で適当にパーティーとかするのが一般的かもね」

黄泉川「ちらし寿司にはまぐりのお吸い物、デザートに雛あられに菱餅を用意したじゃん」

芳川「見事なテンプレねえ。というか雛あられと菱餅ってデザートと言えるのかしら?」

黄泉川「何じゃん? そんな文句言うなら食わなきゃいいじゃんよー」

芳川「誰も文句なんて言ってないわ。ただ疑問に思ったから質問しただけで」

円周「うーんたしかに雛あられって、デザートというよりおやつって感じだねー」ボリボリ

打ち止め「たしかにそだねー、ってミサカはミサカは同意してみる」ボリボリ

黄泉川「あっ、お前ら夕食前にお菓子を食べるなじゃん」

芳川「別にいいでしょパーティーなんだから。好き放題食べれば」




黄泉川「さーてさっそく豪華な雛人形を眺めながら、白酒で晩酌と行くじゃんよ」トクトクトク

一方通行「まァたババァが酒で暴走すンのか……」

黄泉川「何だ一方通行? 私と一緒に酒飲みたいのかー?」

一方通行「オマエまだシラフだよなァ? 教育者がそンなこと言ってイイのかっつゥの」

黄泉川「あははー、冗談じゃん冗談っ! ……んっ、かぁーうめぇー!」ガタン

一方通行「始まった始まった」ハァ

打ち止め「ところでミサカもお酒が飲みたいんだけど。昨日言ってたアマザケってやつー、ってミサカはミサカは要求してみる」

芳川「甘酒はこれよ」ゴトッ

打ち止め「おおっー、ヨミカワが飲んでるやつと違ってなんか白い! あれ? ヨミカワが飲んでるのはシロザケだけど透明で、これはアマザケってやつで白くて……あれ?」

円周「打ち止めちゃん深く考えちゃだめだよ。これはあれだよ、コンパンとトランセルの進化先が実は逆だった! みたいなヤツだよ」

一方通行「何言ってンだこのガキ」


結標「へー、これが甘酒かー。なかなかおいしいじゃない」

打ち止め「おおっ、甘いー! ジュースとかとはまた違った感じがするねー、ってミサカはミサカは食レポしてみたり」


円周「飲み物飲んだレポートって食レポっていうのアクセラお兄ちゃん?」

一方通行「知るか」

円周「何かつれないねー、せっかくの雛祭りだよ? もっと楽しそうにしてもいいのに」

一方通行「オマエがいなけりゃもォ少しは楽しめるだろォよ」

芳川「何嘘言っているのよ。いてもいなくてもキミはこんな感じじゃない」

一方通行「精神衛生上の話だ」

円周「うーん、アクセラお兄ちゃんなかなか心を開いてくれないねー。どうしたらいいのかなー桔梗おばちゃん?」

芳川「そうね、悪いけど私じゃわからないかな。この子ちょっと頭おかしいから。あと円周ちゃん? 『桔梗おばちゃん』じゃなくて『桔梗お姉さん』よ」

一方通行「誰が頭おかしいだって? つゥかナニ無様な若さアピールしてンだオマエ? 『桔梗ババァ』じゃないだけマシだと思ってろよ」

芳川「よろしい。ならば戦争よ」クワッ


黄泉川「きっきょーう!! 楽しんでるうううううっ!?」ガシッ




芳川「あっ、愛穂!? 貴女もう出来上がっちゃっているの!? ペース早っ!?」

黄泉川「あっれれー桔梗? もしかして全然飲んでないじゃーん? こんな楽しい日に飲まないなんて損じゃん! こっち来て一緒にのもーぜ!」

芳川「い、いや私明日朝からバイトだし。ちょっとアルコールは控えときたいんだけど」

黄泉川「なーに固いこと言ってるじゃんよ? 安心しろ、私も明日はお仕事じゃん!」

芳川「それ何の解決にもつながってないんだけど。そんなセリフ聞いてもまったく飲もうとか思えないんだけど」

黄泉川「つべこべ言わずこっちに来て飲めー! 私のお酒が飲めないのかー!」

芳川「……はぁ、わかったわよ。一杯だけよ?」

黄泉川「よーぅし、それでこそ桔梗じゃん!」

一方通行(アイツはもォ終わったなァ……明日のバイト)

黄泉川「おっ、一方通行ぁ! お前も楽しんでるかー!」

一方通行「酔っ払いが。静かにしろ近所迷惑だろ」

黄泉川「このマンションは防音設備しっかりしてっから安心じゃんよー。それよりオマエもこっちきて飲め飲めぇー!」

一方通行「だから俺は未成年だっつってンだろォが。イイ加減にしやがれクソ野郎が」

黄泉川「ほーん、ならこれ飲めこれ飲め甘酒ぇ! これなら子供でも安心して飲めるお酒、いやジュースじゃん!」

一方通行「俺は言わなかったか? そンなクソみてェな飲みモン飲むくれェなら泥水すすったほうがマシだってよォ」

芳川「うるさーい! つべこべ言わずに貴方も飲みなさーい!」

一方通行「芳川ァ。オマエソッチ側に行くの早すぎンだろ」

芳川「黙りなさい。こうなってしまったら、もうとことん飲むしかないのよ!」

黄泉川「おおっーよく言った桔梗ー! いいぞいいぞー!」

一方通行「ヤケになってやがる。これがヤケ酒ってヤツか」

芳川「いいから早くこっちに来て飲みなさい! こうなったら貴方も道連れにしてあげるわ!」

一方通行「うっとォしいッ! この酔っ払いどもめェ!」


円周「……へー、ああいうふうになったら第一位でも困っちゃうんだねー。これは面白いなあ」ピーガガガ




打ち止め「どうしたのエンシュウー、ってミサカはミサカはうきうきな気分で話しかけてみたり!」

円周「別にー。それより打ち止めちゃん、何か心なしか楽しそうだね」

打ち止め「そりゃ楽しいに決まってるよー! だってパーティーなんだしー、ってミサカはミサカはアマザケが入ったグラスを掲げながら返答してみたり!」

円周「……へー、甘酒っておいしい?」

打ち止め「甘くておいしいよー。コーラやオレンジジュースと違った優しい甘さというか何というか……とにかく変わった味なんだ、ってミサカはミサカはアマザケを飲みながら説明してみる」

円周「ふーん」

打ち止め「そんなに気になるならエンシュウも飲んでみたら? ってミサカはミサカは勧めてみる」

円周「いや、やめとくよ。これを飲んで楽しむより、この状況を『観察』したほうが楽しそうだからねー」

打ち止め「そっかーおいしいのになー、ってミサカはミサカはアマザケをコップに注ぎながら残念がってみる」

円周「……ちなみに打ち止めちゃん、その甘酒何杯目?」

打ち止め「うーんと、五杯目っ! ってミサカはミサカは手のひらを広げてパー作ってみたり!」

円周「へー、面白いから止めないけど飲みすぎじゃないかなあ?」

打ち止め「えー、そんなことないよ! アワキお姉ちゃんだって同じくらい飲んでると思うよー、ってミサカはミサカは普通アピールをしてみる」

円周「よくわからないけど、甘酒を五杯飲むのは普通の子供じゃないんじゃないのかなあ」

打ち止め「ええっー? ってミサカはミサカは驚きつつコップを口へ運んでみる」

円周「……よし、面白そうだから淡希お姉ちゃんの様子でも見に行ってみよう。淡希お姉ちゃあん!」テクテク


結標「あら? どうかしたの円周ちゃん」

円周「……あれ? 何か普通だなあ」

結標「普通? 一体何を期待して私に話しかけたの?」

円周「いやあ、打ち止めちゃんがいつもの三割増しでテンションが高いから、淡希お姉ちゃんもそれくらい変化してるかなあ、って」

結標「それってパーティーしてるからじゃないの? あの子イベント大好きだから」

円周「明らかにそーいう感じじゃないんだよなあ」

結標「ふーん」ゴクゴク

円周「あっ、甘酒だ。おいしい?」

結標「うん。何か変わった感じのジュースよね。変わった感じがするのは、お酒っていう名前があるからそのプラシーボ効果的な感じなのかしらね?」

円周「ちなみに今何杯目?」

結標「さあ? 数えてないから覚えてないわ」

円周「そんなに数えないほど飲んで飽きないの?」

結標「まだ飽きてはこないなー。ほら、今日の料理って塩辛いのが多いじゃない? だからそれで相殺されているんじゃない?」

円周「その理屈はおかしい気がするけどまあいーや。それじゃあ淡希お姉ちゃん、面白くなってきたらまた教えてねー」

結標「面白い? 今も十分面白いと思うけど?」

円周「面白いと楽しいは違うんだよなあ。私は行くよ。またね」タッタッタ

結標「……変なの」





~1時間後~



一方通行「……おェッ、や、やっと解放された」

一方通行「あのクソババァども、何つゥモン飲ませやがった。甘すぎンだろ気絶するかと思った」

一方通行「クソが、甘酒なンて二度と飲むかよ」


円周「アクセラお兄ちゃあん!」タッタッタ


一方通行「あン? オマエまだ居たのか」

円周「面白いよねー雛祭りって。いやあ、参加してよかったよ」

一方通行「は? どこにそンな面白い要素があるっつゥンだ?」

円周「うーん、みんなの面白い一面が見れるところかな?」

一方通行「面白い一面だァ? 何を言って――」


打ち止め「アマザケウメー! ってミサカはミサカははがないをゃしりケみマアらザみた飲で」ケラケラ


一方通行「あン? 何だありゃ?」

円周「打ち止めちゃん」

一方通行「いや、それは見りゃ分かる。クソガキの様子がおかしいことについて聞いてンだよ」

円周「あれはねー、酔っ払っているんだよ。あそこで面白いことになってる愛穂おばちゃんや桔梗おばちゃんみたいにね」


黄泉川「あっはっはっはっはぁー!! よく見たら雛人形の顔面白っ! めっちゃ面白っ!」ケラケラ

芳川「……おえっ、もう飲めない。勘弁……」グター


一方通行「何だと? まさかあのババァどもガキに酒盛りやがったのか!?」

円周「うーん、半分正解で半分不正解かな?」

一方通行「どォいうことだ?」

円周「まず甘酒って何かわかる?」

一方通行「甘い未成年でも飲める酒だろ? それが何だってンだ」

円周「そう。アルコール度が1%未満なら法的には未成年でも飲んでだいじょーぶ、って感じなんだけどそこに罠があるんだよねー」

一方通行「……1%未満っつってもアルコールは入っているっつゥことか?」

円周「そおそお理解が早くて助かる助かる。甘酒には米を原料にするものと酒粕を原料にするものがあるんだ。前者だとアルコール度は0だけど後者だといくらか入っちゃうんだよねー」

円周「ちなみに今ここにあるのは後者のほう。ラベル見る限りは1%未満になってるねー。さっきちょろっと舐めてみたけど、大体0.92%ぐらいかなーって思うよ」

一方通行「黄泉川ァ……あの野郎買うモン間違えやがったなァ」ギリリ

円周「いや正解でしょ。こっちのタイプの甘酒を買ってきてくれたおかげで、こんなに面白い状況になっているんだから大正解だよ」

一方通行「それはオマエが『木原』だからそォ思ってンだろォが! 一般人からしたら迷惑極まりねェンだよ!」

円周「そーともいうねー」




一方通行「チッ、とにかくあのクソガキを落ち着かせるか。さてどォすっか――」



結標「あっくせられーた♪」ダキッ



一方通行「ッ!? 結標ェオマエもか!?」

結標「あっれー? 何かたのしくなさそーねー一方通行?」

一方通行「そりゃなァ。こンな面倒臭せェ状況になって楽しめるほど人間出来てねェンだ。つーか離れろくっつくンじゃねェ!」

結標「えー? やだー? 一方通行も一緒にたのしもーよー」

一方通行「オマエが離れりゃ楽しンでやるよ」

結標「うっそだー、どーせ私が離れたらどっか逃げるつもりでしょ? 淡希お姉さんはわかってますちゃーんとわかってますよ」

一方通行「チッ、うっとォしい。イイから離れやがれクソがッ!」

結標「あーまたそんな汚い言葉遣いしてー、そんな悪い子にはメッ、ですよ!」

一方通行(こ、コイツは黄泉川、いやヤツ以上に厄介だ。これがアルコールのチカラっつゥことか……!)

結標「……そーだ! ねーねえ一方通行ー!」

一方通行「何だよ」


結標「――キス、しよ♪」


一方通行「ッ!?」

結標「……ねえねえしよーよー?」

一方通行「…………」

結標「むー、なーに黙っているんですかー? ……! そうだ、だった無理やりちゅーしちゃうぞー!」

一方通行「……オイオイ、ソイツァ洒落にならねェぞ。やめろ」

結標「あっ、これってあれだ! ツンデレだツンデレ! ってことはしてほしーってことだよね? りょーかいりょーかい!」

一方通行「ふざけンなっ! こンなときにくだらねェこと言ってンじゃねェ酔っ払いがっ!」

結標「酔ってませーん、それじゃあいきまあーす!」


一方通行(……ぐっ、仕方がねェ。使いたかねェが能力を……ッ)スッ





結標「…………」

一方通行「……あン?」

結標「…………Zzz」

一方通行「……はァ、寝やがったか」

結標「…………むにゃ」Zzz

一方通行「……とりあえず部屋ァ運ぶか」カチッ


打ち止め「ああっー! アクセラレータがアワキお姉ちゃんをお姫様だっこしてるーあははははははっ、ってミサカはミサカは笑しをてみ指りさ大たしてい!」ケラケラ


一方通行「こっちはこっちでアルコール入るとムカつき度が十割増しだな」

打ち止め「ミサカもいひひ、お姫様抱っこしてー! ってミサカはミサカはて願懇みしりた」

一方通行「オマエも大人しく夢の世界に行きゃあやってやるよ」

打ち止め「わーい、それじゃあミサカもれっつごーどりーむふふっ、ってミサカはミサカはZzz」

一方通行「……雛祭り、最悪のイベントだったな」

円周「そう? いろいろ楽しめたけどなあ?」

一方通行「それはオマエだけだろ。つーかとっとと帰れ」

円周「はいはいー。打ち止めちゃんも寝ちゃったし、私がいる意味あんまなさそーだしね。帰るとするよ」

一方通行「そりゃよかった。光の速さで出ていけ」

円周「そんなことしたら地球どころか銀河系がヤバくなっちゃうよ……あっ、そうだアクセラお兄ちゃん」

一方通行「何だ?」

円周「いくら淡希お姉ちゃんが酔い潰れてるからって、寝込みを襲っちゃたりしちゃダメだよー」

一方通行「するかよ」

円周「ありゃあ? 今のアクセラお兄ちゃんなら、面白いリアクションをしてくれると思ったんだけどなあ」

一方通行「そりゃ残念だったな。つーわけで帰れ」

円周「はいはーい、帰りますよー。またねアクセラお兄ちゃん!」タッタッタ

一方通行「二度と俺の前に面ァ見せンなよ」


円周「…………」

円周(……ふふふ、ありがとーね乱数おじさん。おじさんのおかげでなかなか楽しい雛祭りになったぜー)ピーガガガ



―――
――





March First Monday 07:00 ~次の日~

-黄泉川家・結標の部屋-



結標「Zzz……」



ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!



結標「Zzz……んん? あ、朝?」

結標「…………」

結標「……私、いつの間に寝てたのかしら?」

結標「昨日、甘酒飲んだりしてたときから記憶が……ッ!?」ズキッ

結標「あー、何か頭痛がすごいわ。昨日はしゃぎすぎたのかしらねー」

結標「…………んー、なーんか忘れてる気がするのよね」

結標「昨晩、とてつもなくすごいことをやったような、やってないような……」

結標「…………」

結標「まあいいや。今日は学校だし、おーきよ」



-黄泉川家・リビング-


ガラララ


結標「おはようございまーす」

黄泉川「おおっ、おはようじゃん淡希!」

結標「元気そうですね黄泉川さん。昨日あんなに騒いでたのに」

黄泉川「ま、ちょっと体調不良って感じはするけどなー。伊達に酒をいつも飲んでないってね」

結標「すごいですねー。私なんかなぜだか昨日の後半くらいから記憶がないんですよねー」

黄泉川「へ、へー、そうなのかー。ま、それはそれだけ楽しんだってことじゃん?」

結標「そうなんですかねー?」





ガラララ



一方通行「…………」ガチャリガチャリ

黄泉川「よお一方通行! おはようじゃん!」

一方通行「おォ。相変わらず朝からうるせェヤツだ」

黄泉川「元気が取り柄だしなー」

一方通行「そォかよ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、一方通行おはよう」

一方通行「……おォ」

結標「……うん? 何で目を逸らして挨拶しているのよ?」

一方通行「別に。いつも通りだろ」

結標「そうだっけ?」

一方通行「そォだろ」

結標「……嘘ね」

一方通行「嘘じゃねェ」

黄泉川「…………」



黄泉川(あ、あははー、昨日あったことは黙っといたほうがいいじゃんかねー? あの子たちのためにも)



結標「……ねえ、やっぱり目を合わせてくれないわよね? 私何かしたのかしら?」

一方通行「さァな」

結標「?」

黄泉川「あははー……」


――――――


ひな祭りやったことないからこれがひな祭りで合ってんのかは知らん

次回『漫画ではよくあること』

前回までが前スレ書き終えたあとくらいに書き溜めてたやつを直したやつで今回からのは禁書3期が放送してるときに書き溜めたやつの直したやつ

投下



5.漫画ではよくあること


March First Wednesday 12:30

-とある高校・校門付近-



ワイワイガヤガヤ



結標「さーて、学校終わった終わった。今日は午後の授業が先生の会議だからなしなんて、ラッキーよね」

一方通行「そォだな。平日の昼間っから昼寝に勤しめるなンて、今日はイイ日だな」

結標「たまには別のことしなさいよ。趣味を作るとか」

一方通行「そォいうオマエは何か趣味あンのか?」

結標「えっ、ええっと……ど、読書とか?」

一方通行「どォせファッション誌か漫画だろォが。そンなモンが読書って言えンのか?」

結標「うーん、あっ、あとテレビ鑑賞とか!」

一方通行「バラエティとかドラマしか見てねェだろ」

結標「ゲームとかもやるわ!」

一方通行「クソガキのセーブデータのレベル上げの作業しかしてねェだろォが。つゥか、いつまであのゲーム続けるつもりだ? いい加減何か新しいの買えよ」

結標「いや、まだクリアしてないし」

一方通行「真面目かよ。……はァ、オマエの挙げた趣味、どれもこれも俺の昼寝と大差ねェよォな気がするのは気のせいなのかァ?」

結標「ぐっ、そ、そんなことないわよ。少なくとも昼寝よりは有意義だと思うのだけど……」

一方通行「俺にとって昼寝は有意義なものだと思ってンだがなァ」

結標「ぐぬぬ」

一方通行「大体なァ、趣味っていうのは個人の――ッ!?」ゾクッ

結標「? どうかした?」

一方通行「……いや、何か急に悪寒っつゥか、寒気っつゥか、そンな感じのモンを感じた」

結標「やだ、もしかして風邪? たしかにまだ季節的にも寒いし」

一方通行「いや、そォいうのとはまた違うンだけどよォ……」





<しまっていこー!! <おおおおおおおおおっ!!



結標「あら? もうこんな時間から野球部が練習をやっているわよ」

一方通行「この時間じゃロクにメシを食えてねェだろォに、ご苦労なこった」

結標「あれじゃない? 十秒チャージ」

一方通行「あンなモンで足りるのか?」

結標「いっぱい食べたとか?」



カキーン!! <あぶないでーす!! 気を付けてー!!



一方通行「おそらくそれ、腹ァ壊すぞ」

結標「それじゃあカロ〇ーメイト的なものを一緒に……って一方通行あぶな――」

一方通行「ああ」カチッ



キュイーン、ポーン!!



<うわっなんか球が跳ね返ってきたぞ!? <どうなってんだ!?



結標「……ふう、何だ気付いてたのね。野球部が打った特大ホームランがこっちに飛んできてたの」

一方通行「オマエじゃねェンだから当たり前だ」

結標「私だってちゃんと気付いて危ないって知らせようとしたじゃない」

一方通行「俺は打球の音が聞こえた瞬間こっちに来ると確信していた」

結標「どんな耳してるのよ貴方」

一方通行「別に。普通だろ」





-第七学区・通学路-


結標「……しかし、打った打球がピンポイントにこっちに飛んでくるなんて、まるで漫画みたいな展開よね」

一方通行「そォなのか? あンま読まねェから知らねェンだ」

結標「うん。よく土手とか歩いていると飛んでくるみたいなのがあるわね。ギャグ漫画なら頭に当たって気絶したりするわ」

一方通行「ンだァ? あのまま脳天に直撃して気絶したほうが面白かったみてェな言い方だな」

結標「そんなこと言ってないわよ。バトル漫画やスポーツ漫画ならノールックで取ったり避けたりしてるし」

一方通行「あっそ」

結標「すごく興味がなさそうね」

一方通行「すごく、じゃなくてまったく、だな」

結標「どう違うのよ?」

一方通行「0か1かっつゥヤツだ」

結標「私との世間話は興味ゼロってことですかい……まあ知ってたけど」ハァ

一方通行「ま、そォいうこ――」



むぎゅ



一方通行「あァ?」



つるーん!



一方通行「――ごぱっ!?」ドカッ


結標「一方通行ぁ!?」

一方通行「ごはっ、ごほっ、がはっ!」

結標「ど、どうしたのよ一体? いきなり大リーガー並のオーバーヘッドキックを見せたと思ったら背中から地面に叩きつけられるなんて……」

一方通行「丁寧な説明アリガトウ。どォやら、何か変なモンを踏ンじまったよォだ」ピキピキ

結標「何かを踏んだ……? これって……」



バナナの皮『靴裏から摩擦を奪った』





結標「……見ての通り、バナナの皮ね……ぷぷっ」

一方通行「オマエ今間違いなく笑っただろ?」

結標「いえ……別に……ぷふっ」

一方通行「オマエには後で制裁を加えるとして、まずこのゴミクズにやってやる必要があるよなァ」カチッ



ドグシャッ!!



バナナの皮『』



結標「おー、バナナの皮が木っ端微塵に消え去っていったわ」

一方通行「ったく、一体どこの誰がこンなモン捨てやがったンだ。そもそもお掃除ロボは一体何やってやがンだ」

結標「おそらくあれね。私の話を興味ゼロとか失礼なことを言った罰よ」

一方通行「それはアレか? オマエが俺の足元にバナナの皮をテレポートさせた、っつゥことを自首したととっても構わないンだよなァ?」

結標「やだなー冗談よ冗談。……そういえばこれもそうよねー」

一方通行「あン? 何がだ?」

結標「バナナを踏んですってんころりん、っていうのも漫画とかでよく見るわね。まあ、漫画に限らずの定番ネタだけど」

一方通行「チッ、そンなクソみたいな展開が二度も続くなンてなァ。今日はツイてねェ」

結標「あっ、そうだ。ちょっと銀行寄っていきたいんだけどいい?」

一方通行「あァ? 金下ろすだけならコンビニで十分だろ」

結標「何か最近キャッシュカード調子が悪くてね。だから新しいの再発行しようと思って」

一方通行「学園都市製のキャッシュカードをぶっ壊すなンて、どォいう使い方してやがンだオマエ」

結標「べ、別にそんな変な使い方してないわよ! 何もしてないのに壊れたのよ、っていうかまだ壊れてないし!」

一方通行「それは機械をよく壊すやつの常套句なンだよなァ」

結標「ぐっ、と、とにかく銀行寄るから! 付き合ってちょうだい!」

一方通行「ヘイヘイ、わかったよ面倒臭せェなァ」






ワーワーキャーキャー!!




結標「あら、何の騒ぎかしら? 用水路の橋のところが賑やかね」

一方通行「さあな。どっかの馬鹿が飛び込みショーでもして盛り上がってンだろォよ」



幼女A「わー!! 幼児Aくんが川に落ちたー!!」

幼児B「あいつ泳げないんだぜ!? やべえよやべえよ」

幼児C「誰か男の人呼んでー!!」



幼児A「……あぼっ、……かぼっ、た、たすけ……」バシャバシャ



結標「あっ、大変! かわいい男の子が用水路で溺れてるわ!」

一方通行「……チッ」カチッ

結標「えっ、ちょ、一方通行!?」



ドン!



結標「…………」



幼児B「わーすげえアイツ! 水の上に走ってるよ!」

幼女A「私知ってるー! あの人シノビだよー! NARUT○で見た」

幼児C「白髪で目が赤いからあれだ、カカシ先生だ!」






幼児達「「「「ありがとうカカシ先生!」」」」



一方通行「誰がカカシ先生だ! 気を付けて遊べよ! 次はねェからなガキどもが!」



結標「…………」

一方通行「待たせたな。行くぞ」ガチャリガチャリ

結標「……ねえ」

一方通行「何だ?」

結標「珍しいわね。自分からああいうことするなんて」

一方通行「……そォだな。自分でもそォ思う」

結標「じゃあ何でやったのよ?」

一方通行「知らねェよ。何かカラダが勝手に動きやがったンだよ、悪りィか」

結標「別に悪いなんて言ってないわ。むしろ良いことだと思うわよ」

一方通行「チッ、何か喉が乾きやがった。そこの自販機でコーヒー買ってくる」ガチャリガチャリ

結標「あっ、私も何か買おうかな」タッタッタ


-自販機の前-


一方通行「…………」

結標「ん? どうかしたの? 買わないの?」

一方通行「何だァ? このクソみてェな自動販売機はァ? ブラックコーヒーだけピンポイントに売れ切れてやがる」

結標「あら本当ね。もしかしたら貴方みたいな人が買い占めていったのかもしれないわね」

一方通行「ハァ? 俺はそンなことしねェよ。こンな複数の種類を全部買い占めるなンて無駄なことするわけねェ。普通はお気に入りを一つ決めて買い占めるモンだ」

結標「買い占めはするのね……」

一方通行「チッ、次の自販機行くぞォ……」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ってよ!」タッタッタ


-次の自販機の前-


一方通行「は? またブラックコーヒーだけ売り切れだとォ!?」

結標「うわぁ、すごっ。よっぽどブラックコーヒーが好きなのね、これを買った人」

一方通行「クソが、次だァ!」ガチャリガチャリ


-次の次の自販機の前-


一方通行「オイッ!! またかクソ野郎がッ!!」ガンッガンッ

結標「ちょ、ちょっと自販機叩かないでよ! 防犯センサーに反応したらどうするのよ!?」

一方通行「何ですか何なンですかァ!? この三下みてェな展開ィ!? もしかして俺の右手に能力無効機能追加されてンじゃねェか!?」

結標「いや、もしそうなら貴方能力使えないでしょ」




一方通行「……あァ、コーヒー飲みてェ」ガチャリガチャリ

結標「諦めて別の缶コーヒーを買えば? 微糖とか。おいしいわよ?」←さっきの自販機で買った

一方通行「そンな甘ったるいモン飲めるかってンだ。あれはコーヒーへの冒涜だ」

結標「それならコンビニで買ってくればいいんじゃない?」

一方通行「残念ながらここらへんにコンビニはねェ。あるとしたらもォ、オマエの目的地の銀行の近くにしかねェ。だったら大人しくまっすぐ目的地に向かったほうがイイ」

結標「そうね。そのほうが私も助かるし」

一方通行「あァーイライラするゥー」

結標「貴方ってそこまでカフェイン中毒者だったっけ?」

一方通行「いつもなら何てことねェ。だがこの飲みたいって時にねェのが腹が立つ」




ブルルルルルルルルルルン!!




結標「うん? 何かバイクか何かのエンジン音が近づいてくるわね」

一方通行「あァ?」




女性「きゃああああああああっ!! ひったくりよおおおおおおおおっ!!」


風紀委員「何だって!? 貴様ぁ!! まてえええええええっ!!」タッタッタ


ひったくり「ひゃっはああああああああっ!! 俺のバイクに追いつけるヤツはいねェぜええええええええええッ!!」ブルルルル




結標「うわっ、ひったくりだ。初めて見た」

一方通行「…………アハッ」カチッ

結標「あっ……」





ドンッ!! ガシャーン!! ドカッ!! バキッ!! ゴシャ!!





結標「うわぁ……」






ひったくり「」

バイクだったもの「」プスプス



女性「ありがとうございました!!」

風紀委員「ご協力感謝します!」



一方通行「チッ、ストレス解消にもならねェな」ガチャリガチャリ

結標「無茶苦茶するわね。わざわざあんなにしなくてもいいんじゃないかしら?」

一方通行「アレくれェやらなきゃヤツに恐怖を植え付けられねェだろォが。二度と犯罪を起こそうなンて微塵も思わせねェくれェの恐怖をよォ」ニヤァ

結標「あはは……」

一方通行「……しかし、さっきから変なことばっか巻き込まれてる気がすンなァ」

結標「たしかにそうね。今思えば、川でおぼれているこどもを助ける、ひったくり犯に遭遇してそれをとっちめる、どちらもよく漫画とかで見る光景ね」

一方通行「あと欲しい飲み物が売り切れ続出してンのも、漫画とかにあるネタか?」

結標「うーん、飲み物に限らなければそういうのもあるかなー?」

一方通行「一体何が起こってンだ? まさかこれが全部ドッキリとかで、あとからプラカードを持った木原クンでも現れるンじゃねェか?」

結標「何で木原さん? まあでも、ドッキリ疑ってもしょうがないくらいには事件が集中しているわよね」

一方通行「何か嫌な予感しかしねェな。もしかしてさっきの悪寒はこの事態を察知してたからなのか?」

結標「ベクトル操作って未来予知もできるの?」

一方通行「できるわけねェだろ」



ポツン



一方通行「あン?」




ポツン、ポツン、ザアアアアアアアアアア!!



結標「ちょ、やだ雨!? しかも結構強い!!」

一方通行「今日の降水確率0%じゃなかったか?」

結標「うん、たしかそう。って言ってる場合じゃないわ。どこかで雨宿りしましょ!」

一方通行「ちょうどイイところに屋根付きのバス亭があるじゃねェか。あそこに行くぞ」カチッ

結標「了解!」シュン





-屋根付きバス亭-




ザアアアアアアアアアアアアアア!!




一方通行「……しかしすげェ雨だな。ゲリラ豪雨ってヤツか?」

結標「うわぁ、結構濡れちゃったなあ……貴方は大丈夫?」

一方通行「能力使ったときに全部反射したから問題ねェ」

結標「相変わらずの便利能力ね」

一方通行「ところで結標。こういう事態も漫画によくあンのか?」

結標「こういう事態? 突然雨が降ってきて雨宿りするっていうの?」

一方通行「それ以外ねェだろ」

結標「そうね。定番って言ったら定番ね。特にラブコメとか……はっ!」

一方通行「あン? どォかしたか?」

結標「い、いや、何でもない!」

一方通行「?」

結標「うーん、あとラブコメで突然の雨と言ったら服が濡れて下着が透けるとか……って私濡れてるやばい!!」サッ

一方通行「何ハシャイでンだオマエ?」

結標「……よし! 大丈夫ね。よかったわ、透けにくい紺色のセーラー服で」

一方通行「くだらねェ。そンなどォでもイイことで取り乱してンじゃねェっつーの」

結標「何よ? 乙女にとっては重要なことなんですー!」

一方通行「…………ふっ」

結標「……ちょっと。何で鼻で笑ったのよ?」

一方通行「さあな」

結標「……知ってる? 漫画とかで主人公の男の子が女の子にデリカシーのないこと言うと、たいていその女の子にぶん殴られるっていう定番ネタがあるのよ?」つ軍用懐中電灯




ポツン……ポツン……




一方通行「……おっ、雨止ンだ。馬鹿やってねェで行くぞ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ちなさい! 話はまだ終わってないわよ!」タッタッタ




-銀行までの道中-


一方通行「……クソが。また売り切れてやがる」←自販機8連敗中

結標「すごいわね。これはもう偶然で片付けられる現象じゃないわ。やっぱりドッキリなのかしら?」

一方通行「だとすると相当手の込ンだイタズラだよなァ? 今日、俺らがこっちの方面に寄り道するのを分かってねェとこンなこと出来ねェぞ?」

結標「そうよね。この寄り道だって私が急に言い出したことだし」

一方通行「こンな芸当ができる暇人……、やっぱり木原の野郎しか思い浮かばねェな」

結標「どんだけ木原さんを疑ってるのよ。ドッキリを受けた経験でもあるのかしら?」

一方通行「別に。ただこォいうことをやりそうで、俺らの行動を予測できるやつなンざ木原しかいねェ。ただの消去法だ」

結標「へー、やっぱり木原さんってすごいのねー」

一方通行「さっきの説明で何でそンな感想が浮かぶのか、理解出来ないねェ」

結標「いや何となく」

一方通行「馬鹿かオマエは」

結標「むっ、馬鹿って言ったほうが馬鹿なのよ!」

一方通行「じゃあオマエも馬鹿っつゥことだ。残念だったな」

結標「かわいくないわね……ん?」


幼児弟「おにいちゃーん、じゃあ蹴るよー!」

幼児兄「よしバッチコーイ!」


結標「……はぁ、いいわぁ。サッカーでもしてるのかしら?」ウットリ

一方通行「は? 何言ってンだオマエ?」

結標「やっぱり触れ合うならああいう純粋な子がいいわよねー。貴方みたいなのと触れ合っても癒されないもの」キラキラ

一方通行「……よく分からねェがアンチスキルに通報しといたほうがよさそうだな」スッ

結標「ちょ、貴方は何か勘違いしているわ! もしかして私が邪な心であの子たち見てるとでも思っているの!? 違うわよ!」

一方通行「いや、挨拶しただけで通報される時代ですし」

結標「何じゃその理不尽! ……あっ、ボールが道路に飛び出していった」

一方通行「……まさか」



幼児弟「ボールボール!」トテトテ



自動車『ブウウウウウウウン!!』



幼児弟「よし、ボールとった……ッ!?」



自動車『キキイイイイイイイイイイ!!』




ガシャアアアアアアアアアアアン!!







バタン!



運転手「うわっ!? やっちまった!! だ、大丈夫か!? ……ってあれ?」




車『』プスプス


一方通行「ったくよォ、まず道路に出るときは右左確認してから出やがれ」

幼児弟「う、うん。ありがとお兄ちゃん……」

幼児兄「弟ー! だいじょうぶかー!」トットット


運転手「あれ? たしかにぶつかったよなあ? あれー? 何で俺の車だけ壊れてんの?」


一方通行「ほら、ガキども、さっさと行け。車には気を付けろよ」


幼児兄「ありがとお兄ちゃん!」トテトテ

幼児弟「ありがうございました!」チテチテ


一方通行「……オイ、運転手」

運転手「はいっ!?」

一方通行「オマエはただ運転ミスで壁に突っ込ンで自損した。俺やあのガキどもは関係ねェ。イイな?」

運転手「はいっ! ありがとうございましたぁ!」

一方通行「じゃあな。安全運転しろよ」ガチャリガチャリ



結標「…………」

一方通行「……なァ、これも漫画みてェな展開か?」

結標「よくわかったわね。その通りよ」

一方通行「また勝手にカラダが動きやがった。気付いたらあのガキを助けに行っていた」

結標「……もしかして貴方、ヒーローとかに憧れてたりしない?」

一方通行「ハァ? 何で俺がそンなモンに憧れなきゃいけねェンだ?」

結標「だってさっきからヒーローみたいなことばかりしてるじゃない。カラダが勝手に動くのも深層心理ではヒーローに憧れてるとかで……」

一方通行「馬鹿馬鹿しい。俺にはヒーローなンて似合わねェよ。薄汚れた悪党がお似合いだ」

結標「そう? そんなことはないと思うけど」

一方通行「オマエは何も分かってねェ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ってよ。……あっ、分かった照れてるんでしょ? 褒められ慣れてないから!」

一方通行「ホンっト俺のこと分かってねェよなオマエッ!」


―――
――





同日 13:00

-第七学区・某銀行-



ウイーン



一方通行「……はァ、やっと着いたか」

結標「そうね。何だかいろいろあったから長かった感じがするわ」

一方通行「もォさすがにねェよな? 漫画にありがちな展開なンてな?」

結標「うん。今のところ思いつくものは、これと言ってないわね。大丈夫だと思うわ」

一方通行「だったらとっとと手続き済ませてこい」

結標「はいはーい」タッタッタ

一方通行「……はァ、コーヒー飲みてェ」



~10分後~



結標「お待たせー。手続きは終わったわ。三日後くらいに新しいのがウチに届くらしいわ」

一方通行「……おォ」

結標「……どうしたの? そんな深刻そうな顔して。もしかしてカフェイン切れ?」

一方通行「違う。いや、たしかにコーヒーは早く飲みてェがよォ」

結標「じゃあ何なのよ?」

一方通行「気付かねェか?」

結標「何が?」キョトン

一方通行「この銀行に来てる客の中に、明らかに客じゃないですよ、っつゥ気配を放ってるヤツがいる」

結標「そんな人がいるわけ? ……あっ、わかった! あそこのイスで飲み物飲みながらくつろいでるおじさん。たぶんあれは仕事をサボる目的でここにいるわ」

一方通行「違うな。アレはおそらく呼び出し待ちのヤツだ。さっき番号札を持ってたのを見た」

結標「……だったら誰なのよ? ストレートに答えを教えなさいよ、もったいぶっちゃってさ」

一方通行「銀行に来る客や従業員以外のヤツなンざ、ほかに一つしかねェだろォが」

結標「?」



強盗A「おらっ、銀行強盗だ!! お前ら静かにしろ!!」つ拳銃

強盗B「おらっ、このカバンのありったけの金詰めろコラ!!」つ拳銃

強盗C「おらっ、お前は人質だ!! 来いガキィ!!」つナイフ

幼女「うわーん!! ママー!!」





結標「……ああ、たしかにあったわねこういう展開」

一方通行「これも漫画か?」

結標「うん、あったあった。バトルものはもちろん刑事ものに探偵もの」

一方通行「やはりそォか。つゥかオマエどンだけ漫画読ンでンだよ、幅広いジャンル読みすぎだろ」

結標「まあ広く浅く手を出してるつもりではあるわ。何かで面白いって情報が入ったらとりあえず読んでみるみたいな」

一方通行「オマエみたいな人間の為に、ステルスマーケティングっつゥのがあンだろうな」

結標「何よそれ?」

一方通行「何も考えねェ馬鹿を釣り上げる為の宣伝方法」


強盗A「おい!! そこのガキども何くっちゃべってんだ!! 黙ってさっさとそっちの壁際に集まりやがれ!!」


結標「ところでこれ、どうするつもり? ヒーローさん?」コソコソ

一方通行「別にあの人数を制圧するのに一秒とかからねェ。だが、あの人質と武器が面倒だ」コソコソ

結標「何で? 一秒とかからないなら大丈夫じゃない?」

一方通行「馬鹿かオマエ。その一秒でヤツらが牙を剥かねェとは限らねェだろうが」

結標「そうか。あの拳銃なんて下手に撃たれたら危ないわよね」

一方通行「そォいうわけだ。オマエも協力しろ」

結標「……わかった。あの武器と人質の女の子をこっちにアポートすればいいのよね?」

一方通行「ああ、まず俺が前に出てヤツらの注意を集める。その後俺が後頭部を掻く振りをして電極のスイッチを入れる。それがアポートの合図だ」

結標「……了解」ゴクリ


強盗B「早く金詰めろオラァン!!」

銀行員「…………」コソコソ

強盗A「ん? ちょ、お前何やってんだ!?」

銀行員「ひぃ!?」ピッ



ウイーン、ウイーン!! ガラララララララ!!



警備ロボA『ピピピ、ヒジョウジタイハッセイ。ヒジョウジタイハッセイ』

警備ロボB『ギンコウゴウトウヲカクニン。ギンコウゴウトウヲカクニン』

警備ロボC『タダチニセイアツシマス。タダチニセイアツシマス』



結標「わっ、入り口のシャッターが閉まって、警備ロボが出てきた!」

一方通行「チッ、余計なことを……!」ギリリ


強盗C「ひっ、クソが近づくなッ! このガキがどうなってもいいっつーのかよ!!」

幼女「ふええええええん!!」


一方通行「クソっ、作戦変更だ。合わせろ」カチッ

結標「えっ、ちょ、待ってどういう――」





ガッシャーン!!



警備ロボABC「」プスプス


強盗A「へっ? 何だ? いきなり警備ロボが吹っ飛びやがった? 一体何が……?」アゼン

強盗B「さ、さあ?」アゼン

強盗C「おらもわからんだ」アゼン

銀行員「俺も俺も」アゼン


結標「うわぁ、何やってるのよアイツ……」アゼン


一方通行「今だァ!! 結標ェ!!」


結標「あっ、なるほど! そういうことね」スッ



シュン!



強盗A「……あれ? 俺の拳銃どこいった?」

強盗B「あっ、俺のもどっかいった」

強盗C「ひえっ、俺にいたっては人質のガキまで消えやがった!?」


結標「おじさんたち?」


強盗達「「「うん?」」」


結標「捜し物はこちらかしら?」つ拳銃×2+ナイフ

幼女「ありがとお姉ちゃん!」



強盗達「「「なっ、なにいいいいいいいいいいいっ!?」」」



一方通行「……さてと」ガチャリガチャリ


強盗A「うわっ、何だお前体白過ぎ、キッモ」

強盗B「何だこいつヒョロガリじゃねえか、弱そっ」

強盗C「目ェ赤っ! 徹夜明けかな?」


一方通行「……はァ、何つゥか」



一方通行「スクラップの時間だァ、クソ野郎どもが」カチッ



―――
――





同日 13:30

-第七学区・某銀行-



ドンドン!! ガシャーン!!



黄泉川「突入!!」


ドタドタドタドタ


鉄装「う、うおおおおおおおおおっ……って、あれ?」

黄泉川「どうしたじゃん鉄装?」

鉄装「あ、あれー? 何かもう制圧されているんですけど……?」

黄泉川「なっ、そんな馬鹿なっ! さっき通報があったばっかりじゃんよ」

鉄装「いやっ、たしかにそうなんですけど……」

黄泉川「まあいいじゃん。とにかく強盗を確保!」


警備員達「「「了解!!」」」



銀行員「……あ、あのー」


黄泉川「あっ、ここの職員の方じゃん? 一体何があったじゃん?」

銀行員「いやー、さっきまでここいたんですけどねー、二人の学生さんが強盗たち見事に制圧してくれましてねー」

黄泉川「学生? ジャッジメントか?」

銀行員「いえ、そんな感じではなかったと思うんですか……」

鉄装「ちなみにどんな子たちだったんですか?」

銀行員「ええと、二人とも高校生だと思うんですが、一人は白髪で線の細い少年でしたね。それなのに銀行強盗を一発でノックアウトしてしまうくらい強くてねー」

黄泉川「……もう一人は?」

銀行員「赤髪でおさげの女の子でしたね。見た感じ能力はテレポーターじゃないかなー?」

黄泉川「……ちなみにその子、変な懐中電灯持ってなかったじゃん?」

銀行員「あっ、そうそう持ってました持ってました!」

鉄装「……黄泉川さん、もしかしてその二人組のこと知っているんですか?」

黄泉川「えっ、ま、まあ知ってるというか何というか……」アセッ


黄泉川(あいつら一体なにやってんじゃん……!)




-通学路-


一方通行「……どォなってやがる。まさかコンビニでも売り切れてやがるなンてよォ」

結標「これはもう呪いね。さんざん自販機でスルーされたブラック以外の缶コーヒーの」

一方通行「わけのわからねェこと言ってンじゃねェ」

結標「……ふう、しかしお腹空いたわ、お昼とっくに過ぎてるし。さっきのコンビニで何か買っとけばよかったな」

一方通行「寄り道なンかせずに帰ってりゃ、今頃ソファの上で寝転ンでいただろうな」

結標「そうだ。どうせだからどこかでご飯食べていかない? このまま帰ったら二時とかになってそうだし」

一方通行「オマエなァ、さっきから漫画みてェな事件に巻き込まれてるっつゥ状況で、よくそンなことが言えンなァ」

結標「どうせ貴方が解決してくれるんでしょ? だから大丈夫よ」

一方通行「俺の手に余る事件が起きたらどォするつもりだ?」

結標「そのときは私が手伝ってあげるわよ。さっきみたいにね♪」

一方通行「チッ、お気楽なヤツだ――ッ!?」ブルッ

結標「うん? 今度はどうしたの?」

一方通行「……いや、さっきからカラダにまとわりついてた悪寒が急に消え去りやがった」

結標「ふーん、ってことはもう事件は起きないってこと? たしか悪寒がするって言ってからよね? 事件が起き始めたの」

一方通行「かもな。まあ、油断は出来ねェがな」

結標「じゃあ大丈夫でしょ。ファミレス行きましょファミレス!」

一方通行「……しょうがねェな。付き合ってやるよ」

結標「おっ、珍しく素直?」

一方通行「ファミレスのコーヒーはあンま飲む機会ねェからな。まだ飽きてねェ」

結標「はいはいそうですね飽きてないですねー」

一方通行「チッ、うっとォしィ言い方だな」

結標「じゃあ早く行きたいからテレポートで行きましょ? もちろん貴方も一緒に連れて行ってあげるわ」

一方通行「ハァ? オマエそンなのでテレポート使うンだったら最初から使えよ。そォしたらもっとスムーズに移動出来ただろォが」

結標「いやいやテレポートだって疲れるのよ? 結構演算複雑だし。貴方の能力と違ってポンポン使えるものじゃないのよ」

一方通行「制限時間ねェくせに何言ってやがンだ。それにオマエのテレポートより絶対ェ俺のベクトル操作のほうが演算複雑だぜ?」

結標「わかったわかった、そういう話はファミレスに着いたらゆっくり聞いてあげるから、ね? 早く行きましょ?」スッ

一方通行「覚えてろよオマエ」




シュン!!




―――
――





同日 同時刻

-第七学区・とあるビルの屋上-



上条「――いいぜ、テメェが何でも思い通りに出来るってなら、まずはその幻想をぶち殺す!」



バキン!!



魔術師「あべし!?」バタリ


上条「……ふう、やっと終わったか」

土御門「お疲れカミやーん!」

上条「これでよかったのか土御門?」

土御門「上出来上出来。これで術式は解除された。安心して日常生活を送ることが出来るぜい」

上条「ところで、こいつの行ってたすげえ魔術って、一体どんなヤツなんだ? 急にここに連れてこられたから聞いてなかったけど」

土御門「ああ、これは最近日本の魔術師によって作られた魔術でな。『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』っていう名前の魔術だ」

上条「……は? 何だって?」

土御門「だから『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』だ。要するに、漫画とかでよくあるような展開が実世界に及んでしまうっていう魔術なんだぜい」

上条「何か今まで見た魔術の中で一番しょぼそうな感じがするな」

土御門「ところがそうでもないぜい。世界の事象を捻じ曲げるなんて天使降臨レベルのパワーがないと出来ないからにゃー。夏休み中にあった『御使堕し(エンゼルフォール)』と同レベルだな」

上条「嘘くせー設定だな」

土御門「まあ、今回は簡易的な術式で、しかも照準もズレてたみたいだから、ハッキリとは言えないけどこの学園都市にいる誰か一人が、その影響を受けてたくらいで済んでるかもしれないにゃー」

上条「おいおい大丈夫なのかよ」

土御門「今のところとくに大きな事件が起きた、みたいなニュースが流れてないから大丈夫じゃないか?」

上条「楽観的だな。いいのかよそんなんで」

土御門「へーきへーき。まあ、いざとなったらカミやんがどうにかしてくれるだろ?」

上条「俺はそんな何でもできる人間じゃないっつーの。……ってか、さっきこの術式の照準がズレてたって言ってたよな? じゃあこいつは誰を狙ってどんな目的で魔術を使ったんだ?」

土御門「話によると、最近流行りの異世界転生ものに憧れて、自分を対象に魔術を使って異世界に行くつもりだったらしいぜい」

上条「あー、たしかに今じゃありがちな設定だな。つーか、そんなこと出来るなんてすげえ魔術だな……」

土御門「だから言っただろ? 『御使堕し(エンゼルフォール)』クラスだって」

上条「ああ、そりゃ納得だな」




土御門「ま、とにかく助かったぜい。こいつの魔術を解除するには、魔術のプロフェッショナルが最低あと二人は必要だったからにゃー」

上条「しかし最近魔術師多くなってきたな。この前も学園都市の人間を全て雛人形にしてしまうとかいう魔術を使おうとするヤツとかいたし」

土御門「おう。実はカミやんが知らないところでも、結構魔術師がこの学園都市に侵入してるんだぜい」

上条「へー、まじかよ」

土御門「マジだぜい。例えばこの前のバレンタインの前日なんか、世界中のバレンタインを中止させる大型術式を使おうとするヤツなんかもいた。その時はたまたま一緒にいた魔術師と対応したが」

上条「何じゃそのくだらねえ魔術」

土御門「そいつも結構デカイ魔術だぜい。なんたって世界の行事を根本的に破壊する術式だからにゃー。仮に成功させられてたらどうなっていたか……」

上条「世界からバレンタインが消え去っちまってた……ってことか?」

土御門「そうそう。ま、こんな感じに魔術師が増えてきてて、オレだけで対応できるやつは対応してるけど、今回やひな祭りのやつみたいな強力な術式になると、どうもカミやん便りになってしまうんだにゃー」

上条「何で急に学園都市に攻め込んでくる魔術師が増え始めたんだ?」

土御門「さあな。だが何か大きな事件が起きる、その前触れじゃないかとオレは見ている」

上条「ふーん、大きな事件……」

土御門「そんなわけで現状オレ一人じゃなかなか厳しい状況ってわけだ。だからと言って、いつまでもカミやんに頼ってばかりじゃ悪いとも思っている」

上条「別に気にすんなよ。俺に出来ることがあるなら何でも言ってくれ」

土御門「サンキューカミやん。でもそうはいかない。だから、そんな状況を打破する対策を取ることにしたんだ。いたって単純な対策だけどにゃー」

上条「何だよそれ?」

土御門「ま、それはこれからのお楽しみってわけで……さて、腹も減ったし一緒に飯でも行こうぜい。もちろんカミやんのおごりでな」

上条「は? ふざけんな何で俺が……?」

土御門「さっき何でも言ってくれって言ったじゃないか。オレ今月ちょっと厳しいんだにゃー」

上条「俺だって厳しいんだよ! テメェに食い物おごれるほどの余裕なんてひとかけらもねえよ!」

土御門「えー? バイトしているんだろカミやーん?」

上条「そのうえで厳しいっつってんだよ、知ってて言ってるだろお前?」

土御門「オレラーメン食べたい!」

上条「おごらねえぞ? 絶対おごらねえからな?」

土御門「それは『押すなよ? 絶対に押すなよ?』的なやつかにゃー?」

上条「違うわ!!」


――――――


今更やけど1スレ目から見直そうって人いたらまとめサイトとかで見たほうが良いよ痛々しいレスしまくってるから
まあそもそもこのレスを見てるやつすらいるんか怪しいがね

次回『天草式』

ゲームで忙しいンゴ

投下



6.天草式


March Second Friday 15:00

-第七学区・とあるビルの屋上-


??1「……よし、ここまでは手筈通りなのよな」

??2「はい。魔術的な妨害と科学的な妨害、どちらも確認出来ません」

??1「じゃあ、あとは時間通りに目的地へたどり着くだけだ。この調子なら問題なく任務完了できそうなのよな」

??2「しかし油断は禁物です。ここは学園都市、言わば私たち魔術サイドから見れば天敵の本拠地。何があるかなんて私たちでは予想しきれませんよ」

??1「真面目だなー。大体そんなこと心配する必要、もうないと思うのよな」

??2「なぜですか?」

??1「そんなことが起きるっていうのなら、俺たちがここに侵入した時点で起きているとは思わないか?」

??2「……言われてみればそうですが」

??1「ということは、俺たちは歓迎されている、そうとも思わないか?」

??2「いや、その理屈はおかしいです」

??1「そうか、おかしかったか。ま、つまり何が言いたいのかというと、あんまり気を張りすぎているとすぐに参ってしまうぞ、ってことよな」

??2「ですが、油断をしていて隙だらけのところをグサリッ、なんてこと私は嫌ですよ?」

??1「誰も油断をしろとは言ってない。ほどほどに頑張ってろって言っているのよ」

??2「……はい。わかりました」

??1「それでいい。さて、それじゃあ再確認だ。一応、これは非公式で隠密な任務だ。現地人と接触するなとは言わないが、いざこざや騒ぎは絶対に起こさないこと」

??2「了解です」

??1「……ではそろそろ出発といくよな。時間に遅れてしまっていけないからな」

??2「はい」



ダッ!



―――
――





同日 16:00

-とある高校・校門付近-


一方通行「さて、やっと学校が終わりやがった。さっさと帰って昼寝だな」

一方通行「……いや、まずコーヒーを一杯飲ンでからの昼寝だな」


上条「――おーい、一方通行ぁ!」タッタッタ


一方通行「あン?」

上条「あれ? 結標のヤツがいないな。どうしたんだ?」

一方通行「ヤツは吹寄や姫神と帰った。おかげで悠々自適と帰れるわけだ」

上条「ふーん」

一方通行「ところで俺に何か用か? わざわざアホみてェな大声上げながらこっちに来やがったンだ。それなりに重要な用に思えるが」

上条「えっ、そんなアホみたいに声出してたか?」

一方通行「そンな部分に食い付いてンじゃねェ。先に用を言え。それにオマエはアホみたいじゃなくアホだから問題ねェ」

上条「ひでえ言われようだな、まあいいや。一方通行、ちょっと買い物に付き合ってくんない?」

一方通行「買い物だァ? またおひとり様限定の特売か何かか?」

上条「そうそう。今日は何と豚ロースがタイムセールでお得なんだ! 何と300gで五円だぞ!? これはもう行くしかねえよな!」

一方通行「それ本当に豚肉なのか? クズどもの人肉でも売ってンじゃねェのか?」

上条「怖えこと言ってんじゃねえよ! あそこは信頼できる安心安全のスーパーなんですう!」

一方通行「知るか。どォでもイイわそンなモン」

上条「まあ、そういうことなんで買い物付き合ってくんね? 上条さんちの食卓の笑顔と財政の為にも」

一方通行「……はァ、まァどォせ暇だから構わねェが」

上条「さっすが一方通行様! ありがてえ!」

一方通行「ところで何か見返りがあンだろうな?」

上条「見返り……?」

一方通行「当たり前だろ。前回は家に上げてもらった上に、泊めてもらったっつー恩があったが今回は何もねェ。ただただ俺の帰宅時間を遅らせるだけのクソ作業っつーことになるわけだ」

上条「……つまり手伝う代わりに何かしろと?」

一方通行「当然だ」

上条「…………」

一方通行「…………」




上条「……よし! だったら上条さんが肩たたきをしてやろう! 10分間! しっかり!」

一方通行「小学生からの親へのプレゼントかよ。いらねェよそンなモン、別のにしろ」

上条「じゃああれだ! 上条さんの超絶美術センスでお前の似顔絵を描いてやる!」

一方通行「だから小学生からの親へのプレゼントかっつってンだ! いらねェンだよそンなモン!」

上条「ええっと、じゃあ、じゃああれだ」アセアセ

一方通行「……はァ、面倒臭せェヤツだ。だったらアレだ、缶コーヒー一本奢れ。それで許してやる」

上条「なっ、缶コーヒー一本……だと?」

一方通行「ああ」

上条「おいおい缶コーヒーってあれだぞ。スーパーでも七十円くらいすんだぞ? キツイって」

一方通行「あァ? オマエ七十五円で豚肉が買えンだぞ? 安い買い物だろォよ……まァ、豚肉の相場知らねェから適当な発言だが」

上条「うーん、そうか。たしかにそう考えたら安いなー、って思ったけどそれって実質ただ働きじゃね? お前なら缶コーヒー一本買うくらい屁でもないだろし」

一方通行「……チッ、人がせっかく気ィ使ってやってるっつーのに水差しやがって。何でそォいうところだけ鈍感じゃねェンだオマエ?」

上条「鈍感? 俺が? 何で?」

一方通行「……はァ、だったら合理的な理由を一つ作ってやる。あれだ、よく言うだろ。他人の金で食うメシはうめェ、ってな。つまりそォいうことだ」

上条「よくわからんけど、お前がそれでいいんならそれで」

一方通行「……チッ、我ながら思うな。俺らしくねェことしてるってな」ボソッ

上条「ん? 何か言ったか?」

一方通行「死ねクソ野郎っつったンだよ」

上条「なんで!?」

一方通行「さァな」

上条「うーん、しかしおしいなあ」

一方通行「何の話だ?」

上条「ああ、もし結標が居たら三人分ゲットできたのになー、って思ってな」

一方通行「そォか。まァその場合は俺がその場に居ねェだろうから、結局二人分になるけどな」

上条「逃げる気まんまんかよ!」

一方通行「当たり前だ。誰があンな面倒臭せェ女とスーパーで買い物なンざするか」

上条「ひでえ言われようだな結標」


??1「……おっ、来たよな。おーい、上条当麻!」

??2「!!」ピクン


上条「えっ、た、建宮!? それに五和、だったっけ?」

建宮「久しぶりだな。イタリアの時以来よな」

五和「ご、ご無沙汰しております」ペコリ


一方通行(……何だこのクワガタ頭と地味女。一体何者だ……?)




上条「あっ、紹介するよ。こっちの大男が建宮斎字。女の子のほうが五和だ」

建宮「君は上条当麻のお友達かな? 建宮だ。よろしく!」

五和「五和です。宜しくお願いいたします」

一方通行「……一方通行だ」

五和「あくせ……られーたさん?」

建宮「外国の方か? どこの国なのよ?」

一方通行「何で馬鹿どもは揃いも揃って同じリアクションしやがンだ?」

上条「いや、しょうがねえだろ。その通り名を名乗っている限りずっと同じようなことになるぞ」

建宮「通り名? あー、なるほどニックネームってことか。うんうんかっこいいニックネームよなアクセラレータって」

一方通行「馬鹿にしてンのか? このクワガタ野郎が」ギロッ

上条「落ち着けよ一方通行。そんな安い挑発、というかおちょくられただけで青筋立てるなっつうの」

五和「きょうこう……建宮さんもですよ。初対面の方にそんなちょっかいかけるのやめてください」

建宮「ちょっかいなんてとんでもない。ただ仲良くなろうとフレンドリーに接しているだけよな」

一方通行(……コイツ、土御門や青髪ピアスと同系統のヤツか。面倒臭せェ)

上条「ところで二人とも、何で学園都市に?」

建宮「ちょっと用があってな」

上条「用? お前らの言う用って言うと、何か嫌な予感しかしないんだけど……」

建宮「ああ、大丈夫なのよ。今回は事件があったから来た、ってわけじゃないからな。安心してくれて構わないのよな」

上条「そんなことを言われると、逆に安心できないのはなんでだろうな」

建宮「そりゃあれだけ事件に巻き込まれてたらそうもなるだろうよ」

上条「……てか用事はまだ終わってないんだろ? 俺となんかと喋ってていいのかよ?」

建宮「ああ。実は用事って言ってももう終わったようなもんなのよな。なあ五和?」

五和「は、はい。問題ないです」

建宮「だから時間が少し余ってな、どうせ学園都市に来たんだから、それならってことでお前に会いに来たってわけなのよ」

上条「へー、そうなのか」

建宮「ま、こっちが本命とか思っているヤツもいるのよな」

五和「ちょ、建宮さん!」

上条「?」




建宮「ま、これでひと目お前に会えたんだから、あとは適当に観光でもして帰るとするよな」

上条「……ほう。つまり、お前らは今『暇』ってことだよな?」

建宮「特にすることがない、ってことが暇になるのならそうなのよな。何か他に用事あったっけ?」

五和「いえ。あとは学園都市から離脱するだけですが……」

上条「だったらさ、お前ら買い物に付き合ってくんない?」

五和「買い物、ですか?」

建宮「そりゃ別にいいけど何でなのよ? そんな人数が必要なくらい持ちきれない量の買い物をするのか?」

上条「違うんだ。実はスーパーで豚肉のタイムセールがあってな。何とお一人様限定で300g五円! それが欲しいんだ! たくさん!」

五和「……それ本当に豚肉なんでしょうか? いくら何でも安すぎるような気が……」

建宮「そんなもんにすがらなきゃいけないほどの財政状態なのか……?」

上条「…………まあな」ズーン

建宮「……あー、わかった手伝おう。学園都市のスーパーを観光するのも悪くないのよな」

上条「えっ、いいのか?」パァ

建宮「あ、ああ。別に行きたい所なんてないからな。なあ五和?」

五和「そうですね。私たちに手伝えることがあるのなら、是非」

上条「ありがてぇ……ありがてぇ……」


一方通行「……で、イイ加減話ィまとまったかァ?」


上条「うわっ、びっくりした! 急に喋りかけてくんなよ、つーかどうした? ずっと黙ってるなんて」

一方通行「悪りィが知らねェ人間、ましてや外部の人間を混じえて会話出来るよォな出来た人間じゃねェンだ俺ァ」

上条「別に気にしなくてもいいのに」

建宮「そうそう、気にしなくてもいいのよな」

五和「いや、私たちの立場的には気にしていただけるほうが助かると思うんですが……」

建宮「五和ぁ! お前ひどいやつなのよな」

五和「えっ、何で!?」

建宮「人見知りで輪の中になかなか入れなさそうな少年に救いの手を差し出す、それが俺たちのすべきことではないのか!」

五和「!」

一方通行「オイオイ何ですかこれはァ? 何で出会って五分も経ってねェよォな初対面のヤツに、いきなり人見知り判定されてやがンだァ?」

五和「……わかりました」

一方通行「あン?」




五和「一方通行さん! さあこちらに来て一緒に談笑しましょう! 大丈夫です、心の殻は一人で破るものではありません、みんなで一緒に少しずつ割っていくものですから!」


一方通行「だから何で出会って五分のヤツにそンな励ましの言葉なンて泣けるセリフ吐かれなきゃいけねェンだ!」

上条「はっはっはっはっ!」

一方通行「何一人で大爆笑してンだこの三下はァ!?」

上条「えー? だってさ、さっきまで会話なんてできねえなんて言ってたくせに、普通に会話してんだもん。そりゃ笑うって」

一方通行「どこをどォ聞けば普通の会話に聞こえンだよ。耳が腐ってンのかオマエ」

建宮「……そういえば上条よお。さっき言ってたタイムセールってのは何時開始なんだ?」

上条「四時半だけど……ってやばい! こんなことしてる場合じゃねえ! 早く行っていいポジションを取らねば!」

五和「ポジション? 買い物に行くんですよね?」

上条「あれは買い物という名の戦いなんだ。五和も気を引き締めていったほうがいいぜ」

五和「わ、わかりました。頑張ります!」

一方通行「……つゥか上条よォ」

上条「何だよ?」

一方通行「この豚肉購入メンバーは今、ここにいる愉快でクソな二人組が増えたわけだろ?」

上条「クソではないと思うがまあそうだな」

一方通行「だったら俺、もォいらなくね?」

上条「何を言っているんだ一方通行ぁ! お前がいるだけで手に入る豚肉は1200g! 1kgを超える大台に乗ることが出来るんだぞ! その意味、わかるな!?」

一方通行「知るか」

上条「よおし、今日は豚肉を手に入れてぇ、しゃぶしゃぶパーティーだぁ!」

五和「しゃぶしゃぶですか……この時期でしたら菜の花とか春キャベツを入れるとおいしそうですね」

一方通行「オマエせっかく手に入れた大量の肉を一晩で消費するつもりかよ」

建宮「まあ上条さんちにはあのシスターさんがいるのよな」

一方通行「どのみち消える肉なら、豪華に消費してやろうって魂胆か……そンなだからすぐ財政が窮地に陥るンじゃねェのか」

上条「……うるせえな。いいからさっさと行きますよ。いざ行かん戦場へ!」

建宮「おーう!」

五和「お、おー!」

一方通行「何だこのノリ。ついていけねェ」


―――
――





同日 16:30

-第七学区・とあるスーパー-


モブA「うおりゃあっ!! 邪魔をするなあっ!! 肉ぅうううう!!」

モブB「邪魔なのはあんたよ! うるさいしっ!!」

モブC「うるせえんだよ貴様らがあああっ!! ひゃっはああああっ!!」



ガシャーンガヤガヤガヤドパァン!!



上条「……くそっ、出遅れた!」

建宮「おーおー、こりゃすげえのよな」

五和「はい。言われた通り、本当に戦場のような迫力ですね」

上条「そうだ。蹴る殴るはもちろん、能力者による能力攻撃は当たり前。しかも店員でさえ、店に危害がなければいいよ、とさじを投げている。まさしくここは戦場だ」

上条「こんな戦場で豚肉を手に入れるなんて至難の――」


建宮「ほら、取ってきたのよ」つ豚肉

五和「同じくです」つ豚肉


上条「って早っ!? えっ、何が起こったの!? 俺が解説している最中に!?」

建宮「ま、戦場と言っても有象無象が勝手に暴れてるだけの、所詮はお遊びの場なのよな」

五和「人と人の間を気付かれないようにすり抜けて行けば、簡単に突破することができますよ」

上条「へーなるほどー。つまりこっそり近付いて、間をそーと抜けて、パパっと取れば楽勝っつーわけか」

建宮「そういうことなのよな。我らが天草式十字凄教にかかればこんなミッション、屁の河童なわけなのよ」

五和「ちょ、ちょっと建宮さん! ここでその名前は……!」

建宮「おっ、悪い悪い、つい口が滑ってしまったのよな」

五和「気をつけてください!」

上条「よーし、俺も同じようにしてゲットするぜ。まさしく忍のように……!」

五和「頑張ってください!」

建宮「骨は拾ってやるのよな」

上条「失敗する前提かよ! ……よし、行くぜ」ソー


モブD「おっ、何コソコソしてやがるウニ野郎!」

モブE「小僧! 俺と遊んでいこうぜ!?」ボキパキ


上条「oh……」



ドガッ、バキッ、メリッ、ガァン!!



上条「」ピクピク

五和「だ、大丈夫ですか!?」

建宮「ま、何の心得のないうえものすごーく不幸な上条当麻が俺たちと同じように出来るわけないのよな」




一方通行「……おォおォ相変わらず馬鹿みてェにハシャイでンなァ、ここにいる連中は」ガチャリガチャリ


建宮「おっ、やっと来たか。随分と遅かったのよな」

一方通行「見ての通りの杖突だからな。当然だ」

建宮「おっと、そいつは失礼」

一方通行「で、今どォいう状況だ?」

五和「はい。私と建宮さんは目的のものは入手出来ました。しかし、上条さんは……」

上条「……我が人生に一片の悔いなし」

一方通行「いや悔いれよ。安物の豚肉欲しさに終える人生だぞ」

建宮「そういうわけで、あと必要な数は二つってわけなのよな」

五和「どうしましょうか? また私たちで取りに行きます?」

一方通行「いやイイ。俺が行く」ガチャリガチャリ

五和「えっ、そ、そんな無茶です! そんな身体であの中に割って入って豚肉を取ろうなんて!」

建宮「そうなのよな。ここは俺たちに任せて先に行くのよな」

五和「こんな状況でボケないでください建宮さん! てか、先ってどこに行けばいいんですか!」

建宮「いやーつい」

一方通行「まァ俺のことが心配だっつゥ考えを持ってンなら今すぐそれを捨てろ。この程度の状況、一つも問題ねェ」ガチャリガチャリ

五和「で、でも……」

一方通行「それにもォ一度、俺直々が再教育してやらねェといけねェからな」

五和「再教育? 一体どういう……?」

一方通行「せっかく俺が安心安全かつ友好的な買い物のやり方を教育してやったっつゥのによォ、たった一カ月でその恩を忘れて暴れまわってるなンて涙が出る話じゃねェか」カチッ

五和「……言っている意味がちょっと――ッ!?」ゾクッ

建宮「ッ!? コイツッ!?」ゾクッ



モブA「邪魔だ邪魔だ――うおっ!?」ゾクッ

モブB「これは私の肉よ――ひぃっ!?」ゾクッ

モブC「全部ぅ!! 破壊してや――あがっ!?」ゾク




一方通行「あはっぎゃはっ! 相変わらず面白れェことやってンじゃねェかオマエらァ!」









モブD「あ、あの白い髪に赤い目、何かよくわからん機械の杖……間違いない、ヤツだ……!」ガタガタ

モブE「バレンタイン前日に颯爽と現れて、圧倒的なチカラでこの場を支配した化け物……!」ブルブル

モブA「や、ヤツは『バレンタインイブの白い悪魔』……! う、うわあああっ!?」ガタッ

モブB「う、嘘よ……あれは夢だったと思ってたのに……」ガクブル

モブC「うわああああああママあああああああああ!!」ドンドンッ





一方通行「さァて、補習の時間だァ。安心しろォ、1分間で分かるよォに丁寧に教育してやっからよォ」ニヤァ





~1分後~



モブA「はい順番でーす! 順番を守ってお肉をお取りくださーい!

モブB「やっぱり買い物は平和じゃないとね。こんなすがすがしい気持ち久しぶりだわ……」

モブC「やっぱり平和が一番だよなぁ……」



一方通行「……終わったぞ」つ豚肉×2

上条「お、おう。また何か恐ろしいことやったのか……」

一方通行「至って普通のことを言っただけだ。静かに皆様のご迷惑のかからないように買い物しましょう、っつゥ当たり前のことをなァ」

建宮「これはお見事なのよな。あれだけの連中を凄みと口だけで鎮圧するなんて、そう易々とできることじゃないのよな」

五和「…………」

一方通行「さて、用は済ンだンだ。さっさと帰る……いや、ちょっと帰り道に飲む用のコーヒーでも買って来る」ガチャリガチャリ

上条「お、おう」

五和「……あの、上条さん」

上条「何だ?」

五和「あの人、一体何者なんですか? 一般人があんな肌に突き刺さるような殺意、普通は出せませんよ?」

上条「あはは、まああれだ。只者じゃないって思ってくれれば大丈夫だ」

建宮「見た目からすでに只者じゃないのよな」

上条「いや、それはお前が言うなよ」

五和「……ふふっ」

建宮「あっ、何笑っている五和! お前だってたまにアレな恰好しているときあるのよな!」

五和「なっ、いや、あれたまたまあのときに最適な服の組み合わせがあれだっただけだからしょうがなくで、いつもあんなわけでは……!」

上条「アレな恰好ってどんなだよ?」

建宮「ああ、上半身の裸の上にブラウス一枚で――」

五和「ちょ、やめっ、ストップ!! ストップ教皇代理いいぃぃっ!!」


―――
――





同日 17:00

-第七学区・とある公園-


上条「ほい、自販機で買ってきた飲み物だ。今回のお礼……になるかわからないけどな」スッ

建宮「おっ、ありがたくいただくのよな」

五和「ありがとうございます!」

一方通行「わざわざ自販機の高い飲み物買ってくれるなンて、優しさあふれるお礼だよなァ」

上条「ぐっ、つーかお前絶対のその缶コーヒーいらねーだろ! 何だそのレジ袋に入った大量の缶コーヒーはッ!?」

一方通行「あン? いるとかいらねェじゃねェンだよ。対価を得るにはそれ相応の対価っつゥモンが必ず存在する。ただで肉が手に入ると思うなよ」

上条「ぐぬぬぬ……くそー、スーパーでお礼の飲み物買い忘れるなんて……不幸だ」

一方通行「それはただの不注意だ」

上条「くっ、……そういや二人はいつまで学園都市にいるつもりなんだ?」

五和「時間もいいくらいですし、そろそろ離脱しようかと」

建宮「用事はもうないからな」

上条「……ところでお前らの用事って結局何だったんだ?」

建宮「うーん、まあもちろん秘密、禁足事項ってやつなのよな」

五和「すみません、私たちから話すことは出来ないことなんです」

上条「いや、別に謝ることはねえよ。ただ気になったから聞いた世間話みたいなものだし」

一方通行「……よくわからねェが、それは部外者である俺がこの場にいるから喋れねェのか?」

五和「いえ、……いや、それもたしかにあるんですが、もともとこれはまだお話することができない情報なので」

上条「一体何が起きるってんだ……? この学園都市に……!」

建宮「そんな身構える必要はないのよな。それを防ぐための任務ってわけだ」

上条「よくわかんねーけどあんま無茶はすんなよ? 何かあったら神裂が悲しむぞ」

建宮「へっ、それはお前もな、って言って欲しいのか?」

上条「何で俺? まあいいや、悪いけどちょっとトイレ行ってくるから、俺の荷物見ててくれないか?」

五和「わかりました。いってらっしゃい」

建宮「ほいほーい、それじゃあ荷物は命をかけて守るのよな」

上条「そんなもんに命かけんなよ。じゃ、行ってくるよ」タッタッタ


五和「…………」

建宮「…………」

一方通行「……オイ、上条がいねェ間にオマエらに聞きたいことがあンだが?」

建宮「何なのよ、そんな改まって」

一方通行「オマエら一体何者だ?」




五和「……それはどういう質問なのでしょうか?」

一方通行「別に他意はねェ。そのまンまの意味だよ」

建宮「学園都市の外から来た正義のエージェント! なんて答えても、許してはくれなさそうなのよな」

一方通行「ソイツは今まで聞いた会話の内容からして何となく察しはついている。正義かどォかは知らねェがな」

五和「それ以上、何を答えればいいのでしょうか?」

一方通行「俺が聞きてェのはそンなどォでもイイことじゃねェ。俺が聞きてェのはオマエら自身のことだ」

建宮「そいつはどういう意味だ? 俺たちの個人情報でも聞きたいか? 五和のスリーサイズとかか?」

五和「えっ、何でそんなもの知っているんですか建宮さん!? いつ!? いつその情報を入手したんですか!?」ググッ

建宮「いやー冗談冗談建宮さんは何にも知らないのよな。だから首を絞めるのはやめてくれ……」

五和「だったらそんな笑えない冗談やめてください!」


一方通行「……この学園都市には超能力っていうチカラがある」


建宮「おっ?」


一方通行「薬品投与や頭に電極ぶっ刺して電気を流したりして、その末に得られる能力だ。まァ全員が全員満足にチカラを手に入れられるわけじゃねェがな」

一方通行「俺はそォいう能力者と何もやってない一般人。そいつらの感じ? 雰囲気? 何かそォいうので何となくわかる」

一方通行「あくまで何となくだから、そういう専門の能力者や機械、そういうモンに比べりゃ正解率は低いが、俺ン中ではそれなりに信用できる感覚だと思っている」

一方通行「その感覚がよォ、教えてくれてンだよ。オマエらが超能力者でもただの一般人でもない、何か別の存在だってことをよ」


五和「ッ」

建宮「ほう。その当てもない感覚で俺らをそういう別の存在だと決めつけてるというのか?」

一方通行「ああ」

建宮「……でもそれってあれよな? ここで俺らは別に普通の一般人です、って答えればどうなるんだ?」

一方通行「別にどォもならねェよ。ただそォですか、としか俺は言わねェ。深堀をするつもりも毛頭ねェ」

建宮「じゃ、そういうことで」

一方通行「うっとォしいヤツだな」

建宮「出会って一時間ちょっとで、そんなこと聞いてくるヤツよりはうっとおしくはないと思うのよな」

一方通行「チッ」

五和「……あの」

一方通行「何だ?」

五和「その感覚ってやつはどういうのなんですか? どういう感覚があなたの中で引っかかったんですか?」

一方通行「……答えづらい質問だな。あくまで感覚だから言葉にしづらいが……そォだな。例えるならオマエらは一般人過ぎる、っつゥ感覚だな」

五和「一般人過ぎる……? それって一般人ってことじゃないですか?」


一方通行「ああそォだ。だが一般人っつってもなァ、そいつらは一人一人違う考えを持ち、違うことをやっているから、千差万別の色がある。無理やりの言葉だが赤いヤツや青いヤツみたいな感じだな」

一方通行「だが、オマエらから感じるのは無色透明な一般人、まるで作られた一般人像を演じている、そォいう風に感じた」

一方通行「だから、オマエらはただ一般人を演じるための何かをやって、今ここに立っている、っつーように考えて、質問したっつゥわけだ」


五和「…………」

一方通行「ま、そりゃそンな顔するだろォよ。わかるよォに説明してるつもり皆無だからな」

建宮(……ほう、そんなことまでわかるのか。さすがは上条当麻の知り合いなだけあるのよな)




~10分後~


一方通行「……そォいや上条のヤツ遅せェな」

建宮「たしかにそうだな。ウンコか?」

五和「……下品ですよ建宮さん」ジトッ

建宮「えっ、ウンコって下品なのか一方通行少年?」

一方通行「知るか」

建宮「冷たいのよな。……あっ、もしかしたらアレかもしれんのよな」

五和「アレ、とは?」

建宮「五和の隠れたエロスに気付いてそれを慰めよ――」



ドゴッ!!



五和「だから下品ですっ!! というかセクハラですよ!!」

建宮「ぐ、ぐおっ……は、鼻が……」ズキンズキン

一方通行「アホくさ」


~さらに10分後~


一方通行「……まだ帰ってこねェのか。本当に遅せェな」

建宮「あっ、これはアレだろアレ!」

五和「……また下品なネタですか?」ジトッ

建宮「違う違う。これは真面目な話だ」

一方通行「何だ? 言ってみろ」

建宮「上条当麻は不幸だろ? たぶんあいつあれだ、トイレで大をしてて紙がないことに気付いて、動けなくなっているのかもしれないのよな」

一方通行「……たしかにそれはありえるな」

建宮「だろ?」

五和「……でも、その場合救援要請をしてくるのではないでしょうか? 携帯電話とか持っているのですよね?」

一方通行「ちなみに携帯だが、上条の置いて行った鞄の中に入っているな」

建宮「二重の不幸だったってわけなのよな」

一方通行「そォと決まったら公園のトイレに向かうぞ。たしか外れのほうに一軒あったはずだ」ガチャリガチャリ

建宮「待ってろー上条当麻! 俺たちが神の救いの加護を与えに行くのよなー、紙だけに」

五和「……神を馬鹿にしてないですか教皇代理」

建宮「いやいや冗談なのよな。みんなを笑わせるためのゴッドジョークなのよな」

一方通行「つまんねェダジャレにカミサマを巻き込ンじゃねェよ」


―――
――




-第七学区・とある公園外れのトイレ-


建宮「おーい、上条当麻ー! 助けに来たぞー!」


シーン


建宮「……あら? 返事がないのよな」

一方通行「つゥか、誰もトイレを使ってねェな。……ン? 何だこりゃ? やけに床が濡れンなァ」

建宮「うーむ、これは外したか? ほかに近くでトイレとかあるか?」

一方通行「コンビニとか行きゃあるだろォが、わざわざここを差し置いて行こうなンて思う距離にはねェ」

建宮「それにコンビニだったら、紙がなくても店員さんが気付いてくれるのよな」


五和「……念のために女子トイレも見てみましたが、誰もいませんでした」

建宮「五和。もし女子トイレにいたらどうしてたのよ?」

五和「ええっと、とりあえず謝ってここを後にします」

一方通行「そこは普通に通報しとけよ」


建宮「てか、トイレにいないとしたら一体どこに行ったんだ?」

一方通行「さァな。アレじゃねェか、誘拐とかでもされたンじゃねェのか」

五和「そ、それは本当ですか!?」

一方通行「真面目かオマエ。冗談に決まってンだろ」

建宮「まあでもあながち間違いじゃないかもな」

一方通行「どォいうことだ?」

建宮「アレよ。上条当麻が大好きなゲイストーカー的なヤツが一人のときを見計らって……みたいな?」

一方通行「そンなレアケースあるわけねェだろ。まだあの右手を研究したい研究者が、みたいな方がまだ現実味がある」

建宮「ははははっ、たしかにそうなのよな。まあそんなことあるわけ――」




五和「たっ、大変です!! 今すぐ助けに行かないと!!」クワッ






建宮「……あのー、五和さん?」


五和「私は東の方面を探します! 建宮さんは北、一方通行さんは西の方を頼みます! 何かあればすぐに連絡をします! ではっ」ダッ


一方通行「……何だアイツ。あンな冗談を真に受けて……もしかして馬鹿か?」

建宮「あー、あれだ。恋は盲目、みたいな。ぶっちゃけると五和は上条当麻のことが好きなのよな」

一方通行「そォか。どこに上条が行ったかどうかの手がかりもないくせに、よくも分からず路地裏の方へ走っていくという馬鹿みたいな行為は、その恋のせいだと?」

建宮「しょうゆうこと」

一方通行「相変わらず手広いこったあの三下は」


上条「――おーいっ! みんなー!」タッタッタ


一方通行「あァ?」

上条「わりーわりー。遅くなっちまった」

建宮「うん? お前トイレに行ってたんだよな? 随分と時間がかかったのよな?」

上条「あー、ちょっと不幸があってな」

一方通行「不幸だ? やっぱ紙でも切れてたのか?」


上条「いやー、最初にここのトイレ来たら清掃中になっててさあ。次に近くのコンビニのトイレ行ってみたら行列が出来ててな。それを何回繰り返してたら遅くなっちまった」


建宮「そいつは災難だったのよな」

一方通行「……どォりでトイレの床がびしょ濡れになっていたわけだ」

上条「いやー、危なかったぜ。危うくこの歳になってウンコ漏らすところだったよ」

建宮「ほら、やっぱりウンコって普通に使うのよ。全然下品じゃないのよな」

一方通行「そりゃ野郎だけの会話に下品もクソもねェからな」

上条「? そういや五和がいないじゃん。どこ行ったんだ?」


一方・建宮「「あ……」」



―――
――





同日 同時刻

-第七学区・路地裏-



タッタッタ



五和「くっ、まさか私たちがいながらあの人に危害を及ばせてしまうなんて」

五和「しかし、逆に私たちがいてよかった。必ず助け出してみせます、上条さん!」



ドン!



五和「ッ!? すみません! 大丈夫ですか!?」


スキルアウトA「痛ってえ!? 何だあ!?」

スキルアウトB「ん? 何だこの娘、結構かわいいじゃん」

スキルアウトC「ねえねえお姉ちゃんお暇? ちょっとお兄さんたちと遊ばない?」


五和「ごめんなさい、私ちょっと急いでて」

スキルアウトA「は? 人にぶつかっといてそれはないじゃん」

スキルアウトB「そーそー。こういうのは誠意を持った謝罪じゃないとねー」

スキルアウトC「誠意を持った謝罪と言ったらもう、あれしかないよねー」クイクイ


五和(くっ、この人たちが俗に言うスキルアウトというヤツらでしょうか? やっかいな連中と関わってしまいました……)


五和「本当に申し訳ございませんでした。申し訳ないのですが、私は本当に急いでて、急がないと私……」

スキルアウトB「そんなこと言ってー、本当はそんなに急いでないんでしょー?」

スキルアウトC「ちょっとだけ遊ぼうよー、そんな時間取らせないからさー」

スキルアウトA「つーかよお、人にぶつかっといてごめんなさいで済むわけねーだろうが! あいたたたぶつかったところが急に痛み出したー」

スキルアウトC「そいつはまずいなぁ。これはもう責任を取ってもらうしかなさそうですなぁ」ニヤニヤ


五和(ど、どうする私? 今なら誰も見ていない。ならば、一瞬で制圧すれば……いや、もし誰かに見られていたら)


建宮『騒ぎやいざこざは起こさないこと』


五和(だ、だったら逃げる……駄目だ、この人たち場慣れしてる。いつの間にか退路が断たれている……くっ、どうすれば)


スキルアウトA「おいおいどーしたぁ? 急に黙り込んでさあ!」

スキルアウトB「それってあれじゃん? つまりオッケーってことでしょ?」

スキルアウトC「そうかそうか。ならさっそく」ワキワキ


五和(……やるしか、ないのか……!?)キッ



??「――何だあ? この渋滞は?」





五和(ッ!? だ、誰ッ……!?」


スキルアウトA「あん? 何だこのチビ?」

スキルアウトB「もしかして、俺たちと一緒に遊びたくなっちゃったかなー? おチビちゃん?」

スキルアウトC「いやいやすまねえなあ。テメェじゃまだ早すぎると思うぜチビ助」


??「……おいおい、何勘違いしてくれちゃってんだテメェら? 私は何でこんな人気のないはずの路地裏で、人が通れないような渋滞が起きてるんだって聞いてんだ」ピキピキ


スキルアウトA「ああんっ!? なに調子に乗ってんだクソチビィ!? ガキは手を出されねーと思って調子に乗ってんじゃねえぞ!!」

スキルアウトB「わるいねーチビちゃん。俺たちもあまり優しくないんだよねー」

スキルアウトC「つーわけだ。チビガキは少女漫画でも読んで発情してなぁっ!」


??「…………あン?」ピキピキ


五和(殺気ッ!? でもこの殺気って……ッ!?)



黒夜「チビチビうるせェンだよクソ野郎どもがァ!! 私には黒夜海鳥っつゥ名前があンだよ、あァン!?」ゴパァ





ドガガガガガガガガン!!





スキルアウト達「」プスプス


五和「…………」

黒夜「あっ、そこのおねーさん大丈夫? 何もされなかった?」

五和「は、はい。ありがとうございました」

黒夜「駄目だよー? こんな薄暗い路地裏に女の子が一人で通ったら。今みたいなクソ野郎どもが涎垂らしながら群れてきちゃうよ」

五和「す、すみません。気を付けます」

黒夜「ほんと危なかったねー。私が来なかったら今頃おねーさん、トラウマ確定の4Pが繰り広げられてたかもねえ。三穴責めも余裕だねー」

五和(……な、何なのこの子? 見た目は小学生なのに、何て下劣な発言、それに……強い……ッ)

黒夜「あ、あと一つ、お姉さんに忠告しとかなきゃいけないことがあるんだよねー」

五和「な、何でしょうか……?」

黒夜「お姉さん。外の人間でしょ?」

五和「ッ!? ……ど、どうしてそれを」

黒夜「わかっちゃうんだよねー、そういうのはニオイでさあ。まあ外部の人間ならなおさら言っとかなきゃいけないんだよね」

五和「…………」スッ



黒夜「……殺意っていうのはさあ、もっとちゃんと隠しとかないといけないよ? この学園都市ではさ」




五和「さ、殺意……ッ!? な、何のことでしょうか」

黒夜「殺意っていうのはね、ちゃんと隠さないとすーぐ出てきちゃうんだよね。ちょっとこいつ死なないかな、なんて思ったらすぐ出ちゃう」

黒夜「お姉さんさっきの三人組のこと、少しでも殺ってしまおうって思わなかった?」

五和「……い、いえ、そんなこと」

黒夜「あれー? おかしいなあー、たしかに感じたんだけどなー。お姉さんから明確な瞬殺してやろう、っていう意思がさ」

五和「…………」

黒夜「ま、いいや。じゃ、私は行くとするよ。お姉さんもこんな汚い裏通りなんて歩かずに、ちゃんとキラキラした表通りを歩きなよ」

五和「は、はい。ありがとうございます」

黒夜「あ、あともう一ついい?」

五和「……何でしょうか?」



黒夜「そのショルダーバッグの中に隠してる槍、もーちょっと上手に隠した方がいいんじゃないかなー?」



五和「なっ……!?」

黒夜「次会うときは、助ける側と助けられる側じゃなくて、殺す側と殺される側になってることを祈ってるよ、強そうなお姉さん? じゃねー」テクテク


五和「…………」ダラッ

五和(な、何なんですかあの子……? あんな小さな身体で、鋭い殺意で、全てを見通してて……)


ピピピピッ! ピピピピッ!


五和「!?」ビクッ

五和「……な、何だ教皇代理からの電話か」ピッ

五和「五和です」

建宮『おっ、五和。今すぐ戻ってこーい、上条当麻が見つかったのよな』

五和「そ、そうですか。それはよかったです。すぐに戻ります」

建宮『うん? なーんか五和、声が震えてないか?』

五和「えっ、そ、そうですか? 自分じゃわかりません」

建宮『ほほう。もしやあれだろ? 上条当麻がヤバイことになってるのを勝手に想像してガクブル震えてたな? さーすが恋する乙女なのよな』

五和「す、すみません。気を付けます」

建宮『……わかった。すぐに戻ってこい。戻り次第学園都市を出るぞ』

五和「了解です。では……」ピッ


五和「……ふう」

五和(今回のことは、建宮さんには黙っておこう)

五和(何だか嫌な予感がする。もし、これを話したら何だかとんでもないことが起こりそう……そんな予感がする)

五和(……これが学園都市)


五和「……絶対に、負けない……!」ダッ


―――
――





同日 18:00

-第七学区・とある公園-


建宮「ほいじゃ、今日はこれで帰るとするのよな」

上条「おう。肉の件ありがとな。助かったぜ」

建宮「あれくらいで礼を言ってくれるならお安いもんなのよな。まあ、インデックスと楽しいしゃぶしゃぶパーティーになるといいな」

上条「……ははっ、そうだな」

五和「…………」

一方通行「……オイ、五和っつったか」

五和「は、はい」

一方通行「オマエ、上条を探しに行ってから随分としおらしくなったじゃねェか。何かあったか?」

五和「い、いえ。特に何も……」

一方通行「そォか……」


建宮「それじゃあまた会おう!」

五和「失礼します」


上条「……行っちゃったな。嵐のように現れて、嵐のように去っていく、ってこういうことなんだろうな」

一方通行「は? 何か違うンじゃねェ?」

上条「えっ、違う?」

一方通行「俺からすれば、何事もなかったかのように現れて、何かクソみてェなモン抱え込ンで去って行ったよォに見える」

上条「? ……つまり、どういうことだ?」

一方通行「チッ、気にすンな。じゃあ俺も帰るぞ」ガチャリガチャリ

上条「おう、肉の件サンキューな。またな一方通行!」タッタッタ


一方通行「…………面倒臭せェ」


――――――


こんなところで天草式の人たち出してていうのもあれやがしばらく再登場しない、というかこのスレ内ではもう登場しません!w
というか再登場まで書くための気力保つのかよってくらい先やで

次回『ホワイトデー準備』

まだ読んでる人いたのか・・・(困惑)

投下



7.ホワイトデー準備


March Second Thursday 14:00

-黄泉川家・リビング-




テレビ『――さあて、今日も始まりました。今日もお得な情報いっぱいでお送りいたします』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――何と、あの『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』に新作が登場!! その名は『脳を活性化させる一八の未元物質が入った能力上昇パン』です!! これで皆さんもレベル5!!』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――最近流行りの健康法です!! その名も窒素健康法です!! 何かこれを行うと超健康になれると噂です』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――某ラーメン屋の『大盛ラーメン一時間20キロ完食チャレンジ』とかいう無理ゲーがついにクリアされました。何とクリアしたのは中学生くらいの少女でしゅうどうふ――』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――来週はいよいよホワイトデー。モテモテだったキミは準備は出来てるかなー? できてないキミにオススメの――』




一方通行「……ホワイトデーか」





同日 14:30

-黄泉川家・芳川の部屋-


一方通行「――つゥわけで、ホワイトデーってどォすりゃイインだ?」

芳川「……はぁ。まあ答えてあげてもいいんけど、一つ質問いい?」

一方通行「何だ?」

芳川「何でホワイトデーのことを私に聞くのよ? キミには上条君とか男の子のお友達がいるのでしょ? そっちに聞くのが普通じゃないかしら?」

一方通行「あァ? あンな馬鹿どもに聞いてどォするっつゥンだ。第一こンなモンで相談しよォモンなら絶対ェ舐めた態度取りやがる」

芳川「要するに、お友達に相談するのが恥ずかしいのね」

一方通行「そォじゃねェ。面倒臭せェことは避けるのは普通の考えだろォが」

芳川「はいはい、わかったわかったわ。で、何で私がその相談相手になったのかしら?」

一方通行「たまたまオマエだけがこの家に居たから」

芳川「……じゃあもし淡希が居た場合、そっちに行ってたのかしら?」

一方通行「そォなるな。まァでも、アイツは記憶喪失だからロクな情報引き出せねェかもしれねェな」

芳川「…………」

一方通行「どォした?」

芳川「いえ、私に相談しに来てよかったわね、って思って」

一方通行「……どォいう意味だ?」

芳川「さあね。で、ホワイトデーの何が聞きたいのかしら?」

一方通行「ホワイトデーで何をすりゃイイのかが分からねェ。いや、何となくプレゼントを送りゃイイのは分かるが……」

芳川「そこまでわかってるなら話が早いわね。バレンタインデーにもらったものに対するお返しがするのがホワイトデー。別名、お菓子会社の陰謀」

一方通行「面倒臭せェことしてくれやがったなァお菓子会社」

芳川「というか、キミはてっきりホワイトデーのこと知ってると思ってたのだけど」

一方通行「あァ?」

芳川「だってバレンタインで私がお返しをキミに要求した時、何の違和感もなく会話してたじゃない?」

一方通行「あー、アレはお返しなンて要求するなンざがめついヤツだな、って思っての発言だ。ホワイトデーのホの字も頭になかった」

芳川「あ、そう。まあいいわ、ということで私のお返しは学舎の園のあの店のチョコレートセットで」

一方通行「だから男の俺に入手困難なモン要求すンなっつーの」




芳川「……そうだ。これ知ってるかしら? ホワイトデーのお返しはバレンタインの金額の三倍の値っていうの」ニヤッ

一方通行「そうなのか。面倒臭せェルールだな、手作りのヤツとかどォ調べりゃイインだよ価格」

芳川「ちなみにあの店のチョコレートセットは私のコンビニで買ったヤツに比べれば、三倍どころか十倍くらい違うわ」

一方通行「どンだけ安物だったンだよオマエのチョコ」

芳川「いや、そこはあの店のチョコレートセットの金額が高い、ってリアクションするところよ」

一方通行「知るか」

芳川「というわけだから、あの店のチョコレートセットを買えばほとんど文句は言われないと思うわ」

一方通行「そォか。ソイツはイイこと聞いた。そこでまとめて買えばラクでイイ」

芳川「あっ、あとホワイトデーにはこんなルールがあるのよ」

一方通行「まだあンのか」

芳川「渡すお菓子の種類によって意味があるのよ。キャンディだったら『あなたが好き』、マシュマロだったら『あなたが嫌い』、クッキーだったら『友達でいましょう』。ほかにもあるけどこれがメインね」

一方通行「へー、本当に面倒臭せェイベントだなァ、ホワイトデー」

芳川「例えばだけど、淡希にキミからキャンディとか渡したら面白くなりそうだと思わない?」

一方通行「ハァ? そンなことしたら俺が結標のこと好きみてェなことにならねェか? 何が面白れェンだよ?」

芳川「淡希のリアクションとか。どんなリアクションするのか気にならない?」

一方通行「蔑まれながら飴玉を床にばらまかれて終わりだ。何も面白くねェよ。オマエからしたら面白いのかもしれねェが」

芳川「………はぁ」

一方通行「何だそのため息」

芳川「別に。ちなみにだけど、チョコレートは特に意味なんてないからキミみたいな人にはピッタリなプレゼントだと思うわ」

一方通行「……そォか。よォするに俺はクソ高いチョコレートをまとめ買いすりゃイイわけだな」

芳川「キミがそれでいいと思うならそうね」

一方通行「何か引っかかる言い方だな。まァイイ、俺の好きなよォにやる。もともと俺の問題だしな」

芳川「そう」

一方通行「ま、とりあえず礼は言っておく。……その、アリガトよ」

芳川「そんなツンデレありがとうはいらないわ。だからあの店のチョコレートセットが欲しいわ」

一方通行「どンだけ食いてェンだよあの店のチョコレート」


―――
――





同日 15:00

-黄泉川家・リビング-


一方通行「オイオイ、どォいうことだ。芳川の言うあの店っつゥのはおそらくコイツだろォが、通販を取り扱ってねェだと?」

一方通行「……つゥか、学舎の園の菓子屋がほとンど通販に対応してねェのかよ。男はどォやったらこの中の菓子を食えるンだよ」

一方通行「チッ、頼みたくねェがヤツを使うしかねェか」つ携帯電話



-第七学区・とある公園-



美琴「――ちぇいさっー!!」グルッ



ドゴッ!! ガコッ



美琴「……よし! ヤシの実サイダーゲット! 今日は何だかいいことありそうね」



<ハナテココロニキザンダユメモミライサエオキザリニシ-テ♪



美琴「ん? 電話……? げっ!?」ピッ

美琴「もしもし?」

一方通行『今さっき「げっ」っつゥ声が聞こえたのは気のせいか?』

美琴「き、気のせいじゃない? ところで何か用? わざわざアンタが電話してくるなんて珍しいわね」

一方通行『オマエにちょっと頼みてェことがあってな』

美琴「頼みたいこと?」

一方通行『ああ。これはオマエにしか頼めェことだ』

美琴「な、何よそんな改まって……」

一方通行『学舎の園の中にチョコレートで有名なあの店があるだろ』

美琴「……あー、たぶんあの店ね。それがどうかした?」

一方通行『ちょっとそこの店でチョコレートのセット買ってきてくれねェか? 二十セットくらい』

美琴「……何? もしかして私をパシリか何かにしようとしてる?」

一方通行『そォいうわけじゃねェよ。ちゃンと金は払う。何なら少し色を付けてもイイ』

美琴「大体、何で私がそんなことしなきゃいけないのよ? 自分で買いに行きなさいよ」

一方通行『それが出来りゃやってるっつゥの。学舎の園に男子禁制とかいうクソみたいなルールがなけりゃいくらでも行ってやるよ』

美琴「……! だったら良い案があるじゃない!」

一方通行『……オマエの言いたいことは大方予想できるが何だ? 言ってみろ』



美琴「アンタ、もう一回女装、やってみる?」キラキラ



―――
――




March Second Wednesday 17:30 ~ホワイトデー前日~

-第七学区・学舎の園入口-


美琴「よし、じゃあ行くとしますか。ね、百合子ちゃん?」

一方通行(以下女装)「オマエは……ホント楽しそォだよなァ!? クソがッ!!」

美琴「そりゃそうよ。楽しくなけりゃ、アンタなんかを学舎の園の中へ入れる手伝いなんかしないっての」

一方通行「チッ、覚えてろよクソガキ……」

美琴「はいはい、それじゃあ早く入りましょ? 時間もそんなにないし」

一方通行「つーか今度は大丈夫なンだろうな?」

美琴「何が?」

一方通行「招待状だ。前みたいにまた仮の招待状で、ID求められても困るンだが」

美琴「大丈夫よ。ちゃんとVIP待遇のきっちりした招待状よ。ほら」スッ

一方通行「……本当に大丈夫なンだろうな、これで」

美琴「少しは信用しなさいよ。まあ、たしかに前のは本当に悪いとは思ってはいるけど……あ、そうだ。何なら一緒に入場してあげましょうか? それなら安心でしょ」

一方通行「付いてくる、っつゥ救済の案を挙げるってことは、何か不安要素があるっつゥ心理が働いてるからだ。違うか?」

美琴「……よーし、じゃあ行きましょー!」

一方通行「図星か。信用を得たいなら用意周到に、不安要素を全て潰さなきゃなァ」カチッ


-学舎の園・入口ゲート-


係員「――次の方どうぞ。あっ、御坂さん」

美琴「ど、どうもです」

係員「わざわざこっち側通らなくてもいいのに」

美琴「あ、あははちょっといろいろありましてね」ピッ

係員「? はい、次の方」

一方通行「……鈴科百合子だ。常盤台二年の御坂美琴、よォするにさっき通ったヤツの招待で来ました(以下姫神ボイス)」

係員「あ、御坂さんのお友達ね」

美琴「あはは、そ、そうですー」

係員「それじゃあ招待状を出してください」

一方通行「はい」スッ

係員「…………」

一方通行「…………」

美琴「…………」ゴクリンコ

係員「……はい、通ってだいじょうぶよ」ウイーン

一方通行「アリガトウございます」ガチャリガチャリ

美琴「……ふぅ」

係員「……あっ、そうだ鈴科さん?」

一方通行「あァ?」

美琴「!?」ビクッ

係員「次来るときはちゃんと制服で来た方がいいわよ? この中で私服って結構目立つから」

一方通行「はい。気を付けまァす」ガチャリガチャリ



-学舎の園・エントランス-


美琴「……はぁ、何だかすっごくドキドキしたわ」

一方通行「やっぱり確証がなかったンだな。そのリアクションを察するに」

美琴「う、うるさいわね。だって私招待なんてされたことないし」

一方通行「そりゃそォだな。だが仕組みくらいは知る機会ぐらいあると思うがな」

美琴「ぐっ……」

一方通行「まァイイ。で、目的地のあの店っつゥのはどこにある?」

美琴「ああええっと、たしか製菓店が集まってるエリアの結構奥側よ」

一方通行「そりゃまた面倒な立地だこった」

美琴「裏の方にひっそり建っている、みたいな感じだし。もしかしたら初めてじゃ見つかり辛いところにあるかもしれないわね」

一方通行「クソみてェな店ェ選びやがって芳川の野郎め……」

美琴「ま、そこんとこは安心しなさい。学舎の園の店は全部この頭の中に入ってるわ。隅から隅まで案内できるから、美琴センセーに任せなさい」

一方通行「そンなモン頭に入れるスペースがあンなら、招待状の仕組みの一つくらい入れとけっつゥ話だよな」

美琴「まだ言うか。アンタって意外と陰険でねちっこいのね」

一方通行「意外でもねェだろ。見た目通りのクソ野郎だろ?」


ピーンポーンパーンポーン♪


一方通行「あン? 何だこりゃ」

美琴「この音楽は呼び出しの放送ね」


放送『――常盤台中学二年御坂美琴さん。至急、常盤台中学第三能力開発室へ来てください。繰り返します――』


一方通行「……オマエ、何か呼び出し食らってンぞ」

美琴「私? 何で?」

一方通行「教室の窓ガラスでも割ったのか?」

美琴「割るか! てか割ったら素直にすぐ謝りに行くっての」

一方通行「自販機に蹴り入れてジュースパクってるヤツの言葉だ。信用ならねェ」

美琴「いや、だからアレは自販機のほうが悪いのよ! 私の万札を飲み込んだんだから!」

一方通行「どォでもイイが早く行った方がイインじゃねェのか? 至急って言ってただろ」

美琴「そうね。じゃあぱぱっと行ってくるから、ちょろっと待っててちょうだい」

一方通行「待たねェよ。どれだけ時間がかかるのか分からねェからな。先に店行っておく。何ならさっさと買い物を済ませてここから離脱する」

美琴「あっ、じゃあもし店にたどり着いたら私の名前を出してちょうだい。私の名前で二十セット予約しといたから」

一方通行「ほォ、オマエにしては気ィ利かせてンじゃねェか」

美琴「感謝しなさいよー、普通に行っても買えないんだからねー、あのチョコを二十セットなんてね」

一方通行「アリガトよ。それはそォと早く行って説教されて来た方がイインじゃねェか?」

美琴「だから私何もやった記憶ないって……、それじゃ行ってくる!」ダッ

一方通行「元気なヤツだ。さて、俺も行くか……いや、まだ行けねェよォだな」



一方通行「――隠れてねェで出てきたらどォだ? 第五位」




食蜂「……あらぁ、やっぱり気付かれちゃってたぁ? さすがの索敵力ねぇ第一位さん?」

一方通行「何の用だ? 俺は今から買い物しなきゃいけねェから忙しいンだよ」

食蜂「明日のホワイトデーの買い物かしら? 女装してまでこんなところに来るなんてアナタも大変ねぇ」

一方通行「そォいうわけだ。俺は急いでいるから行かせてもらうぞ」

食蜂「何だかつれないわねぇ、せっかくお邪魔虫さんがいなくなってくれたのだから、ちょっとだけお茶でもしない?」

一方通行「……さっきの放送はオマエの差し金か?」

食蜂「そうよぉ。たぶん御坂さんはあと一時間くらい戻ってこれないと思うから、少しくらい付き合ってくれてもいいんじゃない?」

一方通行「関係ねェ。ヤツが居ようが居まいが俺は買い物して帰るだけだ。オマエの存在を介入させる隙間なンてねェよ」

食蜂「そう、それは残念ねぇ。せっかく面白そうな話題を持ってきたっていうのにぃ」

一方通行「面白そうな話題だァ?」

食蜂「うん。アナタなら絶対に食い付くと思うわぁ」

一方通行「……言ってみろ」

食蜂「学舎の園にある隠れたコーヒーの店の話、とか」

一方通行「……くっだらねェ。そンなモンに食い付くわけねェだろ。大体、そンなモン知ったところで俺じゃ通えねェだろ」

食蜂「今女装して絶賛学舎の園に侵入している人のセリフじゃないと思うのよねぇ」

一方通行「今回も緊急事態だからやっているに過ぎねェ。そう何回もこンなことするかよ」

食蜂「うーん、だったらこの話題はどうかしらぁ?」

食蜂「学舎の園の絶景、パンチラスポット! とか?」

一方通行「……おォーおォーすげェすげェ、どっかのピアス付けたエセ関西人が聞いたら頭から飛び込ンで食い付きそうな話題だなァ」

食蜂「これならアナタも食い付くんじゃなぁい? 私の情報網からアナタがロリコンだってことはわかっているわぁ」

一方通行「何だその信憑性皆無の情報網はァ? 俺はロリコンなンかじゃねェっつゥの」

食蜂「えぇー? でもそんなこと言ってるけど実はー?」

一方通行「違うっつってンだろォがクソガキがッ! 大体よォ、仮に俺がロリコンだとしてもそンな情報もらっところでさっきと同じ理由で意味ねェだろォが」

食蜂「だから同じように女装してウォッチングすればいいんじゃないかしら?」

一方通行「生憎だが、俺は女装してガキのスカートの中覗き見るよォなクソ野郎じゃねェンだ。話にならねェよ」

食蜂「そう、ならばこれはどうかしらぁ」

一方通行「もうやめろ。いくらオマエが話題を出したところで俺が食い付くわ――」



食蜂「結標さんの記憶喪失について、とかどうかしら?」ニヤリ



一方通行「…………」ピクッ

食蜂「あっ、やっとまともな反応を見せてくれた。これに関しては興味深々のようねぇ」

一方通行「オマエ、アイツに一体何をするつもりだ?」

食蜂「話が飛躍してるわよぉ。別に私は彼女をどうにかしようなんて思ってないわぁ。ただ、彼女に関してちょっとお話がしたいなぁ、って思っただけだゾ☆」

一方通行「……イイだろ。案内しろ、その茶会の会場によォ」ギロッ

食蜂「ウフフ、そうこなくっちゃ♪」


―――
――





同日 18:00

-学舎の園・とある喫茶店-



ウエイトレス「――こちらエクレアとミルクティー、こちらがアイスコーヒーになります」ゴトッ



食蜂「ありがとう」

ウエイトレス「ではごゆっくり」

一方通行「…………」ズズズ

食蜂「あらぁ? ストロー使わないのぉ? 変な飲み方ねぇ」

一方通行「……そォいや、前に超電磁砲にも同じこと言われたな。これで別に問題ねェだろ」

食蜂「景観に配慮されてない飲み方だと思うのだけど」

一方通行「知るかよ。つゥか、そンなどォでもイイこと喋る為にこンなところに来たわけじゃねェだろ。さっさと話を進めやがれ」

食蜂「もぉ、せっかちねぇ。まあたしかにグダグダして御坂さんが戻ってきたら嫌だしぃ、急ぐに越したことないのよねぇ」

一方通行「ついでにそのうっとォしい喋り方もどォにかしてくれると助かるンだが」

食蜂「それは無理な話なんですケド。これが私の自然体で居られる喋り方なんだゾ☆」

一方通行「だったら敬語で話せ。年上は敬えよクソガキ」

食蜂「アナタが言うな、って言った方がいいのかしら?」

一方通行「チッ、話ィ始めろ」

食蜂「そうねぇ、じゃあまず手始めに、結標さんとは仲良くやってる?」

一方通行「仲が良いの定義が何だか知らねェが、別に何の問題もなく過ごしてるとは思っている」

食蜂「そ。なら、楽しい? その生活」

一方通行「……俺に相応しくねェモンだとは思うが」

食蜂「ふーん、つまり楽しいってことかなぁ? いいわねぇー楽しくて」

一方通行「何勝手なこと言ってンだオマエ」

食蜂「じゃあ楽しくないわけぇ?」

一方通行「…………」

食蜂「駄目よぉ、そんな遠回しな言い方でどっちつかずの答えを出して、話を逸らしても私にはアナタの考えてることが手に取るように分かるのよぉ?」

一方通行「チッ、分かったところで何だってンだ」

食蜂「別にぃ。あっ、一応言っておくけど特に言いふらしたりしないわぁ。言いふらしたところで何も面白くないのよねぇ」

一方通行「そォかよ。そりゃ残念だったな面白くなくて」

食蜂「じゃあそんな楽しい楽しい生活を送っている一方通行に質問です」





食蜂「いつまでこの『偽り』の生活を送っていくつもりなのかしらぁ?」






一方通行「……どォいう意味だ?」

食蜂「そのままの意味よぉ。アナタのこの日常はいずれ破綻することは確定しているわぁ。なのに流されるままこの日常に甘んじているアナタは一体、いつまでこれを続けるつもりのかなぁ? っていうコト♪」

一方通行「破綻する、だと?」

食蜂「ふふっ、本当は分かってるクセに、そうやって分からないフリをする。そうやって守っているのよね、アナタ自身を」

食蜂「だったらそんなアナタにきっちり説明してあげるわぁ。アナタの逃げ場をなくしてあげる」

一方通行「…………」

食蜂「まず、その話をするには結標さんの記憶喪失について説明しないとね」

一方通行「アイツの記憶喪失、だと?」


食蜂「そう。そもそも記憶喪失っていうのは三つのパターンがあるのよぉ。一つは元ある人格から記憶が消え去るパターン、まあこれが一番よくあるヤツよねぇ」

食蜂「例を言うならお酒の飲みすぎで昨晩の記憶がない、みたいなのがそうよねぇ。もっともポピュラーな記憶喪失かも」

食蜂「ちなみに、このパターンなら何かしらの刺激が脳に走ったら、もしかしたら記憶が蘇る可能性があるかもしれないわぁ」


一方通行「……二つ目は?」


食蜂「二つ目は記憶が跡形もなく破壊されるパターン。これはそのままの意味よぉ。脳に記憶そのものが跡形もなく消滅していまうのよ」

食蜂「身近な実例が思いつかないから省くけど、この場合は文字通り破壊されたことになるから、どんな刺激があろうと記憶が戻ることは決してないわぁ」

食蜂「これは滅多なことじゃ起きないから、一番珍しいパターンだと思う。ま、私の超能力を使えばそんなのも余裕なんですケドね」


一方通行「オマエそンなことやってンのかよ。趣味の悪りィヤツだ」

食蜂「出来ると言っただけでやったことがあるとは言ってないわよぉ。それに別に命を取るわけじゃないんだから、それくらいいいんじゃないかしらぁ?」

一方通行「人にとっては記憶は命と同価値足りえる場合だってある。やってることは人殺しに等しいぞ」

食蜂「それはアナタには言われたくないんですケドぉ」

一方通行「チッ、そォだったな。で、最後の三つ目は何なンだよ」

食蜂「最後の三つ目、これは結標さんに当てはまる症状よぉ」

一方通行「結標の?」


食蜂「三つ目は元の人格が記憶の奥底に押し込まれて、代わりの人格が意識を乗っ取る、っていうパターンよ」

食蜂「よく聞く事例だと、カッとすると周りが見えなくなって暴れだして、そのあと『自分はいったい何をやったんだ?』みたいな人いるじゃない? あれも一種の記憶喪失ってワケ」

食蜂「結標さんはそのロングバージョンってことになるのかしらぁ? 元の人格が記憶の引き出しの奥底に押し込まれて、代わりに今の人格が結標さんを演じているのよぉ」





一方通行「…………」

食蜂「さて、ここまで説明すれば私の言いたいことが嫌でも分かってくるんじゃないかしらぁ?」

一方通行「……そォだな。要するにアレだろ。アイツの記憶喪失が治った場合、半年前の人格、今のアイツとはまったく関係のない結標になっているっつゥことだろ?」

食蜂「そうよぉ。ちなみにこの三つ目パターンの記憶喪失っていうのは、一つ目のやつと同じでちょっとしたことで記憶が戻ってくるかもしれないわぁ」

一方通行「つまり、もしかしたら明日記憶が戻っているかもしれないし、一年後に戻ってくるかもしれない、そォいうことか?」

食蜂「まあ、その記憶が戻るトリガーが何かによるかな。それが普段の彼女にまったく関係ないものなら戻らないし、身近だけど出会ってないものならすぐにでも戻る可能性があるしぃ」

一方通行「……で、こんなところでわざわざそんな記憶喪失の説明会開いて、一体オマエは何が言いたいンだよ?」

食蜂「それ、本気で言ってるワケ? だとすると本当にアナタは理解力のない間抜けな人間ってことになるのよねぇ」

一方通行「何だと?」

食蜂「分かってないのなら教えてあげる。彼女が記憶を失ったのは去年の九月一四日。原因はアナタ、一方通行との交戦での頭部へのダメージ」

食蜂「つまり、半年前の結標さんからしたら、アナタは同じ家に住む居候同士でもなければ同じ高校に通うクラスメイトでもない」

食蜂「ただの、自分に危害を加えた『恐怖』の対象でしかない」

一方通行「……ああ。たしかに俺はあの時アイツと接触し、明確にオマエを倒すと宣言し、圧倒的なチカラで叩き潰した」

一方通行「そンなヤツがいきなり目の前に現れて、恐怖を覚えねェほうがおかしい」

食蜂「よかったわぁ、ちゃんと理解してくれてるのねぇ。だったら、改めて聞かせてもらうわぁ」


食蜂「アナタはいつまでこの偽りの中を過ごしていくつもりなのかしらぁ? いくらアナタが今の彼女と思い出を作っていっても、たった一つのきっかけで全てが壊れてしまう」

食蜂「そんな辛い結末が待っている物語を、アナタはまだ紡いでいこうと言うのかしら」


一方通行「…………」

食蜂「……そう。それがアナタの答えなのねぇ。ふふっ、カッコイイじゃなぁい?」

一方通行「ッ!? オマエ俺の思考を……!」

食蜂「ただその考えは逃げに過ぎないわぁ。与えられた選択肢を選ぶことなく保留にして、自分で答えを出そうとしない受け身な考え」

食蜂「まあでも、アナタがそれで良いと思っているなら、それもある意味一つの答えかもしれないしねぇ」

一方通行「…………」

食蜂「さて、これでお開きとしましょうかしらぁ? そろそろ御坂さんが来てもおかしくない時間だしぃ」

一方通行「……そォだな。これ以上オマエと話すことなンてねェ」

食蜂「あ、そうそう。最後に一ついい?」

一方通行「あン?」

食蜂「もし結標さんの記憶が戻ってしまって、アナタが前の結標さんのほうがいいなぁ、なんて思ったりしたら私に言ってちょうだい。私の能力を使って――」



ガシッ!



一方通行「…………」ギロッ

食蜂「あらぁ、女の子の胸ぐら掴むなんていけな――」


一方通行「人の記憶を玩具扱いしてンじゃねェぞ。クソガキが」


食蜂「ふふっ、冗談よぉ。そんな怖い顔なんかしちゃダメだゾ☆」

一方通行「……チッ」パッ





<ありがとうございましたー!



一方通行「……オイ、最後に一ついいか?」

食蜂「何かしらぁ?」

一方通行「オマエは何のために俺と接触したンだ? オマエの今日の行動が何一つ解せねェ」

食蜂「最後って言うから何かと思ったらそんなことなのねぇ。ふふっ、気になるぅ?」

一方通行「別に」

食蜂「ええっー、何その素っ気ない答え? アナタから聞いてきたことでしょー?」

一方通行「どォせオマエは真面目に答えねェだろォが」

食蜂「そんな決めつけはひどいゾ☆ ま、その通りなんだケド」

一方通行「だろォよ。答える気がねェならさっさと消えろ」

食蜂「はいはーい! あっ、でも一つだけ教えてあげるわぁ。私がなぜこんな場をセッティングしたのか。それは――」



食蜂「――――同情よ」



一方通行「……どォいう意味だ?」

食蜂「それじゃあごきげんよう、鈴科百合子さん☆」タッタッタ



一方通行「……チッ、無駄な時間食っちまった。行くか」




美琴「……ちょっと待ちなさい」

一方通行「……居たのか超電磁砲」

美琴「まあね。あんな性悪女の時間稼ぎなんて、ちょちょいと終わらせてやったわ」

一方通行「その余った時間で覗き見かァ? いい趣味なこった」

美琴「勘違いしないでよね。私が来たのはついさっきだし、別にアンタたちの会話なんて一言たりとも聞いてないわよ」

一方通行「そォかよ」

美琴「で、何話してたのよ? って聞いても教えてはくれないでしょうけど」

一方通行「わかってンじゃねェか。その理解の良さに敬意を表して教えてやる。どォでもイイよォな世間話だ」

美琴「嘘くさ。世間話ならそんな顔して喫茶店出てこないっつーの」

一方通行「元からこンな顔だ」

美琴「そうですかい。じゃ、アンタもそんな時間もないと思うし、ちゃっちゃと用事済ませちゃいましょうよ」

一方通行「……ああ」


―――
――





同日 19;00

-第七学区・とある公園-


一方通行「……はァ、やっとあのクソみてェな格好から開放された(以下一方ボイス)」

美琴「まーた捨てちゃったのね、勿体無い。まだ入る機会があるかもしれないんだから、どうせなら取っとけばいいのに」

一方通行「ねェよそンな機会。金輪際」

美琴「それってフラグってやつ?」

一方通行「ねェよ。チッ、しかしチョコレートでも二○セットもあったら流石に重ェな」ガチャリガチャリ

美琴「そりゃそうよ。というか一体何で買って……もしかして明日のホワイトデーのためとか?」

一方通行「まあな」

美琴「へー、アンタって意外とモテるのねー」

一方通行「不本意だがな」

美琴「……そのもらったバレンタインって全部、まさかの本命?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。顔も知らねェ頭ン中がピンクな一部のヤツらを除けば、全部義理だ」

美琴「そんなヤツらのためにわざわざお返しを用意するなんて、マメなやつ」

一方通行「は? 返さなくイイのか? これ」

美琴「当たり前じゃない。わけのわからない人からもらったものに対して、お返ししてやる義理なんてないじゃない」

一方通行「言われてみりゃそォだな」

美琴「アンタ今までのホワイトデーって、もしかして律儀に全部返してたわけ?」

一方通行「いや返してねェ。つゥか、今までバレンタインやホワイトデーなンかをするよォな世界で生きていなかったからな。もらったことねェからそンな概念すらねェよ」

美琴「だから女装してまでたっかいチョコレート買うなんて迷走してるのね」

一方通行「値段の三倍ルールに対応するには、これくらいの金額のチョコレートが必要だろォが」

美琴「どこの誰だかが勝手に決めたルールに騙されてどうするのよ。大切なのは気持ちよ気持ち」

一方通行「芳川め……クソみてェな情報握らせやがって」

美琴「で、その話を聞いてアンタはどうするわけ? その大量のチョコレートセット」

一方通行「あァ? まァ買ってしまったモンは仕方がねェよ。とりあえずもらった分は全部返す」

美琴「律儀ね。返さなくても誰も文句は言わないだろうに。何というか、似合わないわね」

一方通行「ホント、何やってンだろォな、俺は……」

美琴「でも、血みどろの殺し合いなんかをやっているときよりはよっぽどマシよ」

一方通行「…………」




美琴「じゃ、私行くわ。打ち止めによろしく言っといてね」

一方通行「何でアイツの名前が出てくンだ?」

美琴「どうせ打ち止めの分もその中に入っているんでしょ?」

一方通行「……ああ」

美琴「あっ、あとアンタ性悪女に何言われたか知らないけどさ、気にしないほうがいいわよ。アイツは適当なこと言って人を困らせて楽しんでるだけだから」

一方通行「適当、か……」

美琴「とにかく、アイツの言ったことをいちいち気に留めてちゃダメよ? ストレスで白髪増えるわよ」

一方通行「もともと白髪だっつゥの。つーかオマエ、もしかして俺を励ましてるつもりか?」

美琴「べ、別にそんなことしてないわよ。ただ食蜂と会ってからのアンタは何か変だから。うまく言葉には出来ないけど」

一方通行「そォかよ」

美琴「ま、アンタが変だろうと私には関係ないし、何でもいいんだけど」

一方通行「だったら放っておけよ」

美琴「じゃ、今度こそ行くわ」

一方通行「ああ、アリガトよ。わざわざ付き合ってもらってよ」

美琴「………‥」

一方通行「? どォした?」

美琴「やっぱ変よ。アンタから『ありがとう』の言葉が出るなんて」

一方通行「オマエ叩き潰すぞ」


―――
――





同日 20:00

-黄泉川家・リビング-



ガラララ



一方通行「帰った」

結標「あら、おかえりなさい。随分と遅かったのね。晩ご飯冷めてるわよ」

一方通行「おォ。他のヤツらは?」

結標「黄泉川さんと打ち止めちゃんはお風呂に行ってて、芳川さんは部屋にいると思うけど」

一方通行「そうかよ」

結標「ところでどこ行ってたのよ? 貴方がこんな時間まで出歩くなんてよっぽどよね」

一方通行「別に。オマエには関係ねェよ」

結標「そう言われると気になっちゃうのよね。その荷物は何? 随分と大きな紙袋だけど」

一方通行「それもオマエには関係ねェ」

結標「……あっ、もしかしてあれ? エッチな本的な……?」

一方通行「そンなモンこンなデカイ紙袋一杯に買うわけねェだろォが」

結標「実はコレクションをする趣味があったりして」

一方通行「ねェよ。つゥか、俺の部屋入ったことあるよなオマエ?」

結標「押入れの中は見たことないわ」

一方通行「はァ、馬鹿なこと言ってンなよ。部屋に荷物置いてくる」

結標「ごゆっくりー」

一方通行「その言葉の意味、あえて聞かねェようにする」ガチャリガチャリ





『いつまでこの『偽り』の生活を送っていくつもりなのかしらぁ?』





一方通行「……結標」

結標「何?」

一方通行「いや……何でもねェ」ガチャリガチャリ

結標「? 変なの」


――――――


食蜂さんがもし馬鹿なこと言ってたらそれはワイが馬鹿なだけだからゆるして・・・

次回『ホワイトデー』

今回ちょっと長め

投下



8.ホワイトデー

March Second Thursday 07:30

-とある高校・昇降口-



シーン



一方通行「ふァー、ねっむ。……よし、この時間帯ならまだ人は少ねェ。絶好のチャンスってヤツだ」

一方通行「バレンタインの時、俺の靴箱にモノぶち込みやがったヤツは全員で十人」

一方通行「一年が四人、二年が二人、三年が一人。残りは送り主不明のヤツ、コイツらと卒業して居なくなった三年はどォしようもねェから放っておく」

一方通行「返せるヤツ全員の靴箱の位置は既に確認済。靴箱に入れてきたンだから、靴箱に返してやるのが礼儀っつゥモンだよなァ」

一方通行「靴箱にチョコレートを入れる動作は三つ。開ける、入れる、閉める」

一方通行「これを普通にやったら時間を食ってしまい、他人に見られる危険性が高まってしまう。だが……」



一方通行「この俺のベクトル操作を使えば、そンな動作を七回繰り返すくれェ簡単なンだよッ! 一瞬で終わらせてやるぜェ!」カチッ



バッ!




ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン! ダダン!




モブ生徒A「うわっ、何だっ!? この変な物音は!?」

モブ生徒B「うるさっ! 靴箱叩いて遊んでるのかしら?」

モブ生徒C「一体誰がこんなことを………」




一方通行「……ケッ、ミッションコンプリートってヤツだ。クソったれ」カチッ




―――
――





同日 07:50

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


上条「じゃ、学校行ってくるよ」

禁書「うん! いってらっしゃいとうま!」

上条「あ、そうだ。これを渡すのを忘れてた」ゴソゴソ

禁書「えっ、何かくれるの?」

上条「おう。こいつだ」スッ

禁書「……何それ? クッキー?」

上条「そうだ。上条さんお手製のクッキーだぜ」

禁書「なるほど。昨日とうまがコソコソ作ってたのはこれだったんだね」

上条「コソコソって言うなよ」

禁書「ところで何でいきなりクッキーをくれるなんてことしてくれるの? 別に今日はバースデイでも何でもないんだよ」

上条「あー、お前らには馴染みがないかもしれないけど、今日はホワイトデーっつって、バレンタインのお返しをする日なんだ」

禁書「へー、ホワイトデーそういうことだったんだ。てれびで見たけどよくわからなかったんだよ」

上条「つーわけで、こいつはバレンタインに対するお返しだ。インデックス、チョコレートありがとな」スッ

禁書「うん、どういたしまして。そしてありがとうなんだよ! よし、早速いただいて」

上条「お前さっき朝飯食ったばっかだろ!」



-第七学区・通学路-



上条「ふんふーん♪ この時間なら遅刻なんてまずないだろ。やっぱ早起きって素晴らしーい!」


舞夏「うーい、上条当麻ー!」ウイーン

上条「よお舞夏。こんな時間にこんなところにいるなんて、もしかして上条さんのホワイトデー目当てか?」

舞夏「別にそんなつもりはなかったけど、もらえるものならもらっとくぞー」

上条「何だ違うのか。まあいいや。ほらっ、上条さん特製のクッキーだぜ」

舞夏「ありがとなー。へー、手作りなのか。これはまた何で?」

上条「市販されてるホワイトデー仕様のお菓子って高いんだよなー。それなら自作したほうが安上がりっつーことでの手作りクッキーってわけ」

舞夏「ふーん、てっきり私に対抗意識を燃やしてたのかと」

上条「お前に対抗意識燃やしても勝ち目まったくねーよ。ワンパンだよワンパン」

舞夏「それじゃあ私は行くとするぞ。上条当麻も勉強頑張れなー」ウイーン

上条「うーい、お前もなー」


―――
――





同日 09:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



ガラララ



ヴェーラ「おはようございます」

ナンシー「おはようございまーす!」



数多「おう、お前ら二人ちょっと来い」


ナンシー「はい?」

ヴェーラ「何でしょうか」

数多「ほら、お前らにこいつをくれてやる」スッ

ナンシー「……あっ、これってもしかしてホワイトデーのプレゼントじゃないですか?」

ヴェーラ「いいんですか? こんなものをいただいて」

数多「いいんだよ。人の厚意は素直に受け取っとけ」

ナンシー「あ、ありがとうございます社長!」

ヴェーラ「ありがたく頂戴します」


円周「ふーん、今日はホワイトデーなのかあ」



ピンポーン



円周「おっ、打ち止めちゃんかな?」タッタッタ



ガチャ



打ち止め「おはようございまーす! ってミサカはミサカは元気いっぱいに挨拶をしてみたり!」

円周「うおおはぁようっ!! 打ち止めちゃん!」

数多「朝っぱらからうるせぇぞガキども」

芳川「おはようございます木原さん。今日もよろしくお願いします」

数多「どうもでーす。あっ、そうだ。芳川さんこいつを」スッ

芳川「あら、もしかしてこれホワイトデーの?」

数多「ええ。あといつ会えるかわからないんで、黄泉川さんの分も渡しといてくれませんか?」スッ

芳川「わかりました。わざわざありがとうございます」

数多「いえいえ」




打ち止め「……ねえねえキハラ?」

数多「あん?」

打ち止め「ミサカの分のプレゼントは? ってミサカはミサカは手のひらを差し出して要求してみる」

数多「えっ、お前からバレンタインもらったっけか?」

打ち止め「あげたよぉ! ミサカ渾身のスーパースウィートチョコレートを! ってミサカはミサカはバレンタイン当日とのことを思い出しながら熱弁してみたり」

数多「……あー、そういやもらってたなぁ。あのゲロ甘いヤツ」

打ち止め「その表現には納得いかないけどちゃんと思い出してくれたんだね、ってミサカはミサカはそっと胸を撫で下ろしてみる」

打ち止め「というわけでプレゼントを寄越せー! ってミサカはミサカは再度要求してみたり!」

数多「チッ、だったらこれでいいだろ。ほら、チョコボールだ。しかも銀のエンゼルが当たってるレアモンだぞ」

打ち止め「えっ、何ですでにエンゼルの有無がわかってるの? ってこれ食べ残しじゃん! こんなのいらないよ、ってミサカはミサカは抗議してみる」

数多「我慢しろ」

打ち止め「ううっ、あんまりだー、ってミサカはミサカはチョコボールを食べながらしょぼくれてみたり」ショボーン

数多「…………」

円周「うわぁ、いい歳こいたおっさんが幼女を泣かせたー。全世界のロリコンを敵に回したね」

数多「……チッ、しょうがねーな。ほらよっ、やるよ」スッ

打ち止め「えっ? くれるの……?」

円周「って、あげるんかあい!」

数多「いつまでもくよくよされてもうっとおしいからな」

打ち止め「あ、ありがとうキハラぁ! ってミサカはミサカは満開の笑顔でお礼を言ってみたり!」

円周「てか、用意してたのに渡すのを渋るなんて意地悪なおじさんだねー」

数多「違げえよ。こいつはもともと近所のババァに渡す用のヤツだったもんだ」

円周「……あー、あの犬飼ってるおばさん?」

数多「そうだ。別にあのババァには渡さなくても問題はねえだろうと判断したまでだ」

円周「数多おじちゃんは熟女より幼女を取ったってわけかー」

数多「語弊のある言い方はやめろクソガキ」


打ち止め「うんまーい!! ってミサカはミサカは思わぬチョコレートの美味しさに感想を叫んでみたり」

数多「うるせぇ!」

円周「ところで数多おじちゃん。私もチョコレートあげたよね? 私のホワイトデーは?」

数多「お前からは何ももらってねーなぁ。たしかポリバケツさんにあげたんじゃなかったか?」

円周「あっ、そうだった。ポリバケツさーん、ホワイトデーのお返しちょうだあい」テクテク

数多「アホか」


―――
――





同日 09:40 ~一時間目-ニ時間目間休み時間~

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「――で、あたしたちに話って何よアクセラ」

姫神「まあ。だいたい予想はつくけど」

結標「そうなの?」


一方通行「おォ、オマエらに渡すモンがある。ホワイトデーのお返しっつゥヤツだ」スッ


結標「あっ、なるほど。昨日の大荷物はそれだったのね。道理で隠そうとするわけだ」

吹寄「へー、まさかアクセラが自分からそういうことするなんてね。珍しいというからしくないというか」

一方通行「うるせェな。黙って受け取ることも出来ねェのか」

姫神「ありがとアクセラ君。……ん? こ。これは……!」

結標「どうしたの姫神さん?」

姫神「二人とも。このチョコレートよく見て」


吹寄「えっ、何なの……、ッ!? こ、これはあの有名な店のチョコレートセット!?」

結標「ええっ!? 有名な店って世界で学舎の園にしか出店してないっていうあのッ!?」

姫神「間違いない。雑誌とかでよく見るあのパッケージ。まったく同じ……!」

吹寄「開店後10分で売り切れで、何か政界の要人とか某国の王族などのVIPにしか予約とかすることが出来ないとか、いろいろ聞いたことあるわ!」


一方通行(へェ。そンなすげェモンだったンだな。つか、それを20セット予約できる超電磁砲は一体何者だ? あっ、レベル5の第三位か)


結標「あ、貴方一体どうやってこんなすごいものを……?」

一方通行「あ、ああ。常盤台に通ってる知り合いに買ってきてもらった」

姫神「なるほど。さすがレベル5第一位。人脈も広いのね」

吹寄「一生縁のないものだと思ってたけど、まさかそんなものを食べられるなんて……アクセラありがと!」ニコッ

一方通行(オイオイ吹寄のあンな笑顔初めて見たぞ。何なンだこの店のチョコレートセット……!)


上条「……あのー」


吹寄「何よ? 大した用じゃないなら後にしてくれる?」

上条「あのですね。一方通行のチート級のプレゼントで盛り上がってるところで本当に申し訳ないんですが、私めもホワイトデーのプレゼントなるものを持ってきてましてね」

結標「えっ、そうなんだ。何持ってきたのかしら?」

上条「本当みすぼらしくて申し訳ないのですが、手作りのクッキーのようなものを持ってきましてね、はい」

吹寄「クッキーのようなものって何よ。クッキーじゃないのそれ?」

上条「いえ、紛れもなくクッキーでございます、ははぁー」

一方通行「何だこの流れ」

姫神「……上条君」

上条「はい、何でしょうか?」

姫神「私。上条君がこんなものを作ってくれてきたなんて。とっても嬉しいわ」ニコッ

上条「……お、おう。こちらこそもらってくれてほんとありがとう」




吹寄「……ふむ、しかし」


一方通行のプレゼント←三人とも同じチョコレート

上条当麻のプレゼント←三人とも同じクッキー



吹寄「……もっと空気読めないのかしら?」



上条「えっ、何が!?」

一方通行「さァ?」



吹寄(だいたいこっちは本命チョコレートを渡してるっていうのに、全員同じって……)チラッ



結標(一方通行からのプレゼントかぁ、すごく嬉しい!)キラキラ

姫神(上条君からの手作りクッキー……!)キラキラ



吹寄「……はぁ、まあいっか。本人たちがそれでいいなら」



上条「何だったんだ一体?」

一方通行「知るかよ」


土御門「おっ、みんなして集まって何してるんだ? もしかしてホワイトデープレゼント会でもやってるのかにゃー」

青ピ「女性陣の皆さん! この愛の貴公子青髪ピアスが、最高のホワイトデープレゼントをお渡しまっしょう!」

吹寄「……いや、あなたたちには何も求めてないから。別にいらないから」

青ピ「ひどい吹寄さん! せっかく用意してきたって言うのに!」

吹寄「どうせロクなもんじゃないでしょうに」

青ピ「まあまあそんなことを言わずに。どうぞこれを!」スッ

吹寄「……何これ? 大量のウエハースチョコ? 何よこの謎チョイス」

青ピ「ああ、食玩のカードが入ってるヤツ。大人買いしたらいっぱい余っちゃってなあ。まだまだ一杯あるでえー」スッスッ

吹寄「あたしはゴミ回収係じゃないわ! そんなプレゼントじゃ愛の貴公子の名前が泣くわよ!」

青ピ「いや、別に愛の貴公子じゃないですし……」

吹寄「自分で言った言葉は最後まで責任を持ちなさい!」

土御門「ちなみにぶっちゃけるとオレ、今日のホワイトデー何も用意して来てないんだぜい。すまん」

吹寄「別にいらないけど、それはそれでムカつくわね」

土御門「オレのホワイトデーは舞夏に全力だからにゃー。他に回す金なぞないっ!」

一方通行「ああそォだ。ちょっとイイか土御門」

土御門「何だ?」

一方通行「コイツをオマエの妹に渡しといてくれ。俺もバレンタインの日一応もらってたからな」スッ

土御門「…………」

一方通行「あン? どォした」





土御門「――キエエエエエエエエエエエエイッ!!」ドガッ



上条「あっ、一方通行の超高級チョコレートが叩きつけられた! もったいなっ!」

吹寄「えっ、そこ!?」

一方通行「何をしやがるンだ土御門ォ?」

土御門「貴様ぁ、オレと舞夏の恋路を邪魔するつもりか。一方通行、貴様は今からオレの敵だ」

一方通行「へっ、上等だァ。この俺をどォにか出来ると思ってンのかァ? 三下がァ!」

上条「あっ、そういえば俺、さっき舞夏にクッキー渡したわ」

土御門「おらぁ!!」ドゴッ

上条「ぐほっ!? な、何しやがる!」

土御門「オマエラ・コロス・スベテ・マイカノ・タメ」

吹寄「いい加減にしろ」


ゴッ


土御門「ひでぶっ」ガタッ


青ピ「おおっ、さすが一年七組のドン。つっちーを一撃で沈めるなんて……」

吹寄「誰がドンよ!?」


結標「あら、青髪君じゃない。どうしたのその大量のウエハースチョコ」

姫神「どうせまた。食玩か何かのやつ」

青ピ「正解! どうや二人とも? 一袋くらいいる?」スッ

姫神「いらない」

結標「私も今日はいいわ」

青ピ「なんやつれないなー。ボクのホワイトデーは誰も受け取ってくれへんわ。寂しいホワイトデーやでー」

吹寄「そんなこと言うくらいだったら、もっとまともなもの持ってきなさいよ」

青ピ「まあでも、あんなモテすぎてお返しが大変、ってなるくらいなら実際はこれくらいがええんやろうな。ムカつくけど」

結標「えっ?」

姫神「どういう――」




一方通行「オイ。この前のバレンタインの返しだ。大人しく受け取れ念動使い」スッ

念動使い「えっ、私にくれるの? 別にいいのに……ってこれあの店のチョコレートセットじゃない!? うわっ、やばっ!? すごっ!」

女子生徒A「うわーいいなぁー、あたしもアクセラ君にチョコあげればよかったー」

女子生徒B「私にも一個食べさせてよ」

念動使い「やなこった。ありがとねアクセラ君!」

一方通行「……おォ」


上条「バレンタインありがとな。これお返し」スッ

女子生徒C「あっ、クッキーじゃん。ありがと上条」


上条「これホワイトデーのお返しな。受け取ってくれ」スッ

女子生徒D「えー、別にお返しなんていいのにー」


上条「上条さんお手製のクッキーを受け取ってくれ」

女子生徒E「これ手作り? 上条君こんなの作れたんだすごーい」



結標「…………」←同じチョコレート

姫神「…………」←同じクッキー




結標・姫神「「よく見たらこれ全部同じヤツ!?」」




吹寄「今さらっ!?」



―――
――





同日 10:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



円周「――数多おじちゃーん、例の物が出来たよー」


数多「やっと完成したか。遅せーぞ」

円周「えー、これでも超特急で作ったんだけどなあ」

数多「あれぐらい五分で作れ」

円周「カップうどんじゃないんだからさあ」

打ち止め「ところでエンシュウ。一体何が出来たの、ってミサカはミサカはテレビを間近で凝視しながら質問してみたり」ジー

数多「そんな近くで見てっと目が悪くなるぞ」

円周「うーん、まあ見てからのお楽しみと言うか……」

打ち止め「えっ、そんなに面白いものなの!? ってミサカはミサカは興味を持ちつつ興奮を覚えてみたり」

円周「うん。すごく面白かったよ。勉強にもなったし」

打ち止め「うぇー、勉強するのか。それは嫌だなぁ、ってミサカはミサカは渋い顔をしてみる」

円周「別にそういうのじゃないんだけどなあ。で、数多おじちゃん。あれいつやるの?」

数多「今から」

円周「おー、さすが数多おじちゃん行動が早い」

打ち止め「何か面白そうだからミサカも行くー! ってミサカはミサカはテレビを消して立ち上がってみたり」ピッ

ヴェーラ「社長、どちらへ?」

数多「ちょっとホワイトデーのプレゼント渡してくる」

ナンシー「えっ、さっきの会話ホワイトデーのプレゼントの話だったの? まったく予想つかなかったんだけど……」

数多「暇ならお前らも見に来るか? 面白れーモンが見れるかもしれねーよ」

ナンシー「……じゃ、じゃあ行こうかなー」

ヴェーラ「ちょっとナンシー。あなたまだ仕事がたくさん残ってるでしょ」

ナンシー「いいじゃないちょっとくらい。休憩よ休憩」

ヴェーラ「……もう!」

ナンシー「とか言いながらヴェーラも付いて来ようとするのね」

ヴェーラ「私は良いのよ。ナンシーと違って仕事早いから」

ナンシー「嫌味な言い方ね」




-ファミリーサイド・屋上-


ヴェーラ「……なにこれ?」

打ち止め「うおおっ、かっこいい! ってミサカはミサカは率直な感想を述べてみる」

ナンシー「あっ、懐かしい。これペットボトルロケットじゃない? 子供の頃作って飛ばしたことあるわ」

数多「それはそんなしょうもねえモンじゃねえよ。こいつは超小型の巡航ミサイルだ」

ヴェーラ「…………えっ、なんて言いました?」

数多「だから超小型の巡航ミサイルだっつってんだろ」

打ち止め「おおっ、ミサイルってあれだよね? びゅーんって飛んでどかーんってなるやつ、ってミサカはミサカは擬音を駆使して説明してみたり」

円周「違うよ。ばしゅーんからのぼぉん! だよ」

数多「どっちでもいいわ。それよりきちんと機能すんだろうなこれ?」

円周「うん。数多おじちゃんの言う通りに出力、角度、座標設定etc。完璧にこなしましたあ!」

打ち止め「へー、エンシュウってこんなものを作れるんだー、ってミサカはミサカは素直に尊敬してみたり」

円周「作るっていうかただ設定しただけだよ。誰でも出来る簡単な作業だねー」

ヴェーラ「……ところで、このミサイルとホワイトデーに一体何の関係が……?」

数多「ああ。それを今から見せてやる。まずはこいつを使う」つ お得用マシュマロ一袋

ナンシー「マシュマロ? たしかホワイトデーでは『あなたのことが嫌い』の意味をもつお菓子でしたっけ?」

数多「そうだ。こいつをミサイルに括り付ける」スッ

数多「そして発射」ポチッ




ピシューン!




打ち止め「うわーマシュマロが飛んで行っちゃった。勿体無いなぁ、ってミサカはミサカは指を加えてみたり」

ヴェーラ「ところであのミサイルはどこに飛んでいったのですか?」

数多「ああ、お前ら木原病理ってヤツ覚えてるか?」

ナンシー「バレンタインの日に来られた木原一族の方でしたっけ? あの窓ガラスを割らずに窓ガラスを割って侵入してきた」

ヴェーラ「そっちは乱数さんでしょ。車椅子に乗ってた女性の方よ。で、その人がどうかしたのですか?」

数多「あの糞女バレンタインの日に、未元物質チョコレートとかいう産業廃棄物を渡しに来ただろ? まあ受け取ってはねーけど」

数多「だがあの女の中ではその時点でバレンタイン成立=ホワイトデーのお返しがもらえると思ってやがるから、必ずまたここに現れるはず」

数多「だからその前に先手を打った、ってわけだ」

ヴェーラ「……つまり、あのマシュマロ(ミサイル)は今その木原病理さんのところへ向かって飛んでると?」

数多「おう。アイツの住んでるマンションのベランダの窓、そこに直撃するように設定してある」





<ドッゴーン



円周「あっ、着弾したみたいだね。予定通り」

数多「よし、それじゃあ撤収ぅー。ナンシー、ヴェーラ。そこの玩具片付けとけ」

ヴェーラ「あっ、はい」

ナンシー「何か今頃向こうではテロリストとか何とかで騒ぎになってそう……」



ピピピピッ! ピピピピピッ!



数多「あん? ……チッ、電話か」ピッ

数多「もしもし」

??『どうも数多クーン! 最高のホワイトデーのプレゼント、ありがとうございましたー!』

数多「やっぱこの程度じゃ死なねえか。木原病理よぉ」

病理『私、焼きマシュマロというものを初めて食べたのですが、なかなかいけますねー』

数多「そりゃ喜んでくれて何よりだ。次の機会があったら、ガトリングレールガンの弾をマシュマロ替えてブチ込んでやるから楽しみにしてな」

病理『おー、それはそれは素晴らしいですねー。来年を楽しみにしてまーす。ではではー』ピッ


数多「…………」

ヴェーラ「…………」

ナンシー「…………」ゴクリンコ


数多「さーて、仕事に戻るぞー」スタスタ

円周「打ち止めちゃん、今日は何して遊ぶ?」テクテク

打ち止め「うーん、そうだ! 今日は強くてニューゲームの人生ゲームをやろう、ってミサカはミサカは画期的なアイデアを繰り出してみたり」トテチテ




ヴェ・ナン((な、何事もなく帰っていったあああああああああっ!?))



―――
――





同日 13:00

-第七学区・とあるファミレス-



ワイワイガヤガヤ



浜面「えー、本日はご多忙の中お集まりいただき――」




フレンダ「――結局、サバが最高の食材というのは揺るぎない事実な訳!」フンス

滝壺「何でふれんだはこんなに興奮しているの?」

麦野「この前連れて行ってあげたレストランのコース料理で出た、魚料理のサバのムニエルが相当お気に召したみたい」

絹旗「えっ、そんなところ行ったんですか!? ずるいです、私も超行きたかったです!」



浜面「……あのー」



麦野「はあ? 誘ったけど、アンタは映画見に行くとか言って断ったじゃない」

フレンダ「ま、でもああいうレストランはお子様にはまだ早いって訳よ。ファミレスでじゅーぶんじゅーぶん」フフン

絹旗「その程度のことでマウントを取っているつもりでいる人が行けるなら、超大人な私でも行けると思うんですが」

フレンダ「うん? それはどういう意味かな絹旗ちゃーん?」

滝壺「大丈夫。そんなふれんだを私は応援している」



浜面「ちょっとすんませーん! 話、聞いてもらってもいいですかねー!」



麦野「何だよさっきからうるせえなあ浜面ァ」

浜面「いえ、本当に申し訳ないですが、少しお時間をいただきたく」

絹旗「何というか、敬語で喋る浜面って超少しキモいですね」

浜面「少しキモいのか超キモいのかハッキリしろよ!」

フレンダ「あっ、私のメロンソーダなくなってる。ちょっと浜面行ってきて」

浜面「お、おうちょっと行って……って人が話をしようって時に雑用頼むなよ!」

滝壺「大丈夫。私はノリツッコミに勤しんでいるそんなはまづらを応援してる」

浜面「しなくていいから話を聞いてくれ……」




麦野「で、話って何よ? まあどうせホワイトデーのお返しがある、みたいなありがちなヤツだろうけどな」

浜面「えっ、何でバレてるの!? 俺のサプライズっ!?」

フレンダ「そりゃ今日は三月十四日。ホワイトデーの日にアンタがキモい挙動を取ってたら、そりゃもうね」

絹旗「で、浜面は何を持ってきたんですか? まあ、超期待なんてできませんけど」

浜面「え、ええっと……なけなしの金で買ったデパートのそこそこの菓子屋の菓子詰め合わせ」スッ

麦野「うわっ、ふっつー」

絹旗「まあでも、浜面にしては超努力したほうではないでしょうか?」

フレンダ「ま、所詮は浜面って訳よ」

浜面「すぎのこ村を買ってきたヤツに言われたかねえよ!」

フレンダ「何ぃー? すぎのこ村を馬鹿にしたなぁ? あれ見つけるのすっごく苦労したんだからね!」

浜面「ウケ狙いでそんなもん買おうとするからだろ!」

フレンダ「称賛もされないしウケもしないものよりは遥かにマシって訳よ」

麦野「いや、お前のすぎのこ村もそんなウケてはないよ?」

フレンダ「しょ、しょんなー!?」

浜面「く、クソ……たしかに俺のは面白みもねえただのお菓子の詰め合わせだ。駄目だ、勝てねえ……」

絹旗「えっ、今のでどこか負ける要素ありましたか? 何でこんなに超悔しがっているんですか?」

滝壺「大丈夫だよはまづら」

浜面「た、滝壺……」

滝壺「面白くないものでも大事なのは気持ちだから。どんなに面白くないものでも気持ちがこもっていれば大丈夫だから」ニコッ

浜面「何か一番ひでえっ!?」

麦野「まあいいや。食後のデザートっつうことで食ってやるか」

絹旗「へー、マカロンとか入ってますよ。さすがそこそこの店の詰め合わせ」

フレンダ「まあそこそこ美味しいね。悪くはないって訳よ」

滝壺「普通だね。ありがとうはまづら」


浜面(ぐっ、案の定ボロクソに言われているがそれは別に構わねえ。俺の狙いはただ一つ……!)



滝壺「……ん? なにこれ?」つ飴玉





浜面(き、来た……! 俺があとから入れた、駄菓子屋で買った飴玉だ……!)

フレンダ(なっ、あ、あれはキャンディー!? ホワイトデーでの意味は『あなたが好きです』!)

絹旗(私や麦野、フレンダの分には入っていない……? ってことはまさか浜面!)

麦野(……チッ、ヘタレ野郎かと思ってたけど結構攻めるじゃん。さーて、どうなるのか……?)


滝壺「……はまづら。これ……」

浜面「た、滝壺! こ、このキャンディーが俺のきも――」




滝壺「このお菓子の詰め合わせの内容物じゃないよね? 異物混入ってやつだよ。お店に連絡しといた方がいいよ」




浜面「えっ、あ、うん。そうだな」


絹旗「…………」

フレンダ「…………」

麦野「…………」


滝壺「……? どうしたの三人とも? 私の顔に何か付いてる?」


絹旗「……いえ、何でも。ぷぷっ」

フレンダ「ふふふふ何でもないって訳よ」

麦野「くくく、べ、別に……ふっ」

浜面「」



滝壺「?」



―――
――





同日 14:00

-第七学区・とあるホテルの一室(グループの隠れ家)-



ピー、ガチャン



黒夜「うーす、って誰もいるわけないか」

黒夜「ま、集合時間の二時間以上前だからそりゃなあ」

黒夜「そんな時間に来て何やってんだ私は」

黒夜「…………」

黒夜「時間もまだあるし、昼寝でもして暇でも潰すか」ゴロン



黒夜「…………」



黒夜(そういや今日ってホワイトデー、だったよなぁ)

黒夜(ひと月前のバレンタインで私は番外個体のヤツに嵌められて、海原のクソ野郎にイタズラという名目で手作りチョコレートなんかを渡すなんてことがあったが)

黒夜(あのクソ野郎は果たして私にお返しなんてものをしてくれんだろうか?)

黒夜(いや、別に期待なんてしてないし、欲しいとも思ってないんだけど)

黒夜(ただこっちだけ痛手を負って、向こうだけ何もないっつーのもおかしな話だよな)



ガチャ



黒夜(……よし、何も用意してなかったらヤツのドタマをかち割ってやる。いや、でも待てよ)

黒夜(そんなことをしたら、まるで私がお返しが欲しいヤツのように見えないか?)

黒夜(いやいやいらねえよそんなモン! ただくれなかったらムカつく、それだけだ!)

黒夜(でももしかしたらめっちゃ良いものもらえたりして……って何考えてんだ私!)

黒夜(これじゃまるで私がプレゼントをすごく欲しいみたいな――)




海原「おや黒夜じゃないですか。珍しいですね、こんなに早く来ているなんて」






黒夜「っておわっ!? う、海原ァ!? いつの間に現れやがったッ!?」

海原「今さっきですが。どうしたのですかそんなに取り乱して」

黒夜「な、何でもねーよ。アンタこそどうしたんだよ、こんな集合時間二時間以上前から来やがって」

海原「自分は特に異常がなければこれくらいの時間には来ていますが。ご存知ではなかったでしょうか?」

黒夜「んことなんて知るわけないだろ」

海原「まあ、いつも集合時間ギリギリに来ている黒夜には知るすべはありませんか」

黒夜「喧嘩売ってんのか?」

海原「そんな売ってもつまらないものなど、売る道理はありませんね」ガサゴソ

黒夜「うっとおしいヤツ。……何こそこそやっているのさ?」

海原「番外個体さんのお菓子のストックがここにはなかったはずなので、補充をしているんですよ」

黒夜「チッ、あのクソ女なんかの為にご苦労なことで。何が良いんだかあんなヤツ」

海原「彼女はそういう存在ではありませんよ。自分が守りたい人の、その周りの世界の中の一欠片。ただそれだけです」

海原「まあ、あの人から見たら彼女のことなんて毛先ほども知らない存在でしょうけどね」クスッ

黒夜「ふーん、そっか。でもさぁ、あの女を守ることとあの女のパシリになることは全然違うと思うんだけど、そこんとこどうよ?」

海原「パシリとは失礼ですね。これは彼女を守ることの一環としてお菓子等を買っているだけです」

黒夜「あー、そう。ま、別にどうでもいいんだけどね」

海原「……そうだ。貴女にちょっと用があるのを忘れていました」

黒夜「何だよ?」

海原「先月貴女からバレンタインのチョコレートをいただいたので、ホワイトデーのお返しを渡そうと」

黒夜「ふぇっ!?」

海原「えーと、確かこの辺に……」ゴソゴソ

黒夜「い、いや私そんなつもりで渡したんじゃねーっての! ありゃイタズラだから! だからそういうの求めてないから!」

海原「いえ、イタズラであれ何であれ、もらったものに対してお返しはしないと」ガサガサ

黒夜「だからいらねェっつゥの! 話聞けェ海原ァ!」

海原「……あっ、ありました。どうぞこちらを」スッ




つ5円チョコ




黒夜「……なにこれ?」

海原「ふふっ、しょせん貴女程度ではこの程度のものがお似合いだと思い、用意させていただきました。どうぞごゆっくりお召し上がりください」ニッコリ

黒夜「…………」

海原「おや、あまりにも感激しすぎて声も出ませんか?」ニヤリ

黒夜「…………び」

海原「び?」






黒夜「びえええええええええええん!! 何で私ばっかこんな扱いなんだああああっ!! あんまりだああああああああああっ!!」




海原「なっ!? 何ですかこれは、マジ泣き……!?」



黒夜「リーダーに性的な目で見られ、ビリビリ女に玩具にされて、その上に海原にまで弄ばれてええええええええっ!!」



海原「え、えっと……、本気なんですかこれ?」

番外個体「うわぁー、何か女の子を泣かせてやがるクソ野郎がいるー。まじひくわー」

海原「み、番外個体さん!? い、いつから……!?」

番外個体「さて問題。ミサカはいつから居たでしょうか? 『1.最初から 2.はじめから 3.スタートから』。どれでしょーか?」

海原「全部最初からじゃないですか! 一体どこに隠れていたんです!?」

番外個体「ずっとお風呂場でスタンバってました」

海原「また貴女は何かイタズラをしようと……」

番外個体「それがミサカの存在意義でもあるしね♪」

海原「なんですかその陰湿な存在意義は」

番外個体「ま、女の子泣かすようなヤツには言われたくないけどにゃーん?」

海原「……はぁ。それについては誤解があるんですよ。いや、誤解と言うのとも違う気がするんですけど。まあ自分が悪いことには変わりないんですが」

番外個体「ほうほう。このクソ野郎確定の状況を打破できるような理由があると?」

海原「打破できるかはわかりませんがね」


黒夜「ひぐっ、ひぐっ、もうやだこのグループ。みんなして私をイジメやがって」

海原「黒夜。ちょっとよろしいでしょうか?」

黒夜「……ひっぐ、なにさ?」

海原「今貴女に渡したヤツはあれです、冗談です」

黒夜「……冗談?」




海原「はい。ちょっと面白いかなと思ってやってみたんですが、まさかマジ泣きされるとは思わなくて……申し訳ないです」

黒夜「……ふ、ふざけンじゃねェ! 何が冗談だ、何が面白いだ、ふざけンなッ!」

海原「だから、お詫びと言っては…‥いえ、違いますね。これは詫びではないです。貴女に最初から渡そうと決めていたものです」

海原「都合のいいことを言っている自覚はありますが、受け取ってはいただけないでしょうか黒夜?」スッ

黒夜「これが……本当のやつ?」

海原「はい……」

黒夜「……チッ、うっとォしィ野郎だ。しょ、しょうがねェから受け取ってやるよ」スッ

海原「ありがとうございます」

番外個体「うわっ、ちょろっ」

黒夜「な、何か言ったかなァ? 番外個体クゥン?」グスン

番外個体「そんな涙目で睨まれても怖くないんだけど。やっぱかわいいねークロにゃんは♪」

黒夜「ぐっ、今回ばかりは言い返す言葉がねェ」

番外個体「あ、そうだ。海原ー、ミサカの分のホワイトデーはぁ?」

海原「もちろん用意してありますよ。自分のあらゆる人脈を使って手に入れた、あの店のチョコレートセットを!」

番外個体「あれ? ミサカには5円チョコくれないの? 面白愉快で泣けるサプライズはないわけー?」

海原「番外個体さんにそんなことするわけないじゃないですか。そんな面白くもないサプライズ」

黒夜「……は? 何言ってンだオマエ。何で私にやってそのクソ女にはやらねェンだよコラ」

海原「いえ、番外個体さんにはその分野ではかないませんからね。それにバレてるドッキリをやるほど自分も愚かではありませんよ」ニッコリ

黒夜「た、たしかにそォだけど、何か納得いかねェ!」

番外個体「あの店のチョコうめー」モグモグ


―――
――





同日 15:00

-第七学区・スクール隠れ家-


砂皿「…………」カチャカチャ

誉望「……ところで砂皿さん?」

砂皿「…………」カチャカチャ

誉望「砂皿さん?」

砂皿「…………」カチャッ

誉望「ちょっと無視ないでくださいよ。相変わらず愛想がないっスね」

砂皿「……何だ? 気が散るから手短に話せ」

誉望「おっ、悪口言ったら反応してくれた」

砂皿「貴様が五月蝿いから返事をしただけだ」

誉望「はいはいそーっスね。えっと今日ホワイトデーじゃないっスか?」

砂皿「それがどうした?」

誉望「砂皿さん彼女さんへお返ししたんスか? あの外にいる、えっと……ステファニーさんでしたっけ?」

砂皿「……だからあれはそういうものではないと言っているだろう」

誉望「またまたー、隠さなくてもいいのにー。本当は付き合ってるんでしょー?」

砂皿「くどいぞ」


ガチャ


海美「お疲れー。楽しそうに何を話しているのかしら?」

誉望「あっ、お疲れっス。砂皿さんが彼女さんにホワイトデーのお返ししたのかなー、って話してたんス」

海美「ああ、ステファニー・ゴージャスパレスさんに? それは気になるわね」

砂皿「だから違うと言っている」

誉望「往生際が悪いっスよー。素直にゲロっちまった方が楽なんじゃないですか?」

砂皿「今ここで撃ち殺してやろうか。ゼロ距離なら貴様でも防げまい」スッ

誉望「あははー、冗談冗談ホワイトデージョークっすよ」

海美「教えてくださいよー砂皿さーん!」キッ

砂皿「ッ、能力者め、そんなものを使っても貴様に話す口など持たん」

海美「もう、強情ね。まあ別にいいけど」




誉望「あっ、そうだ。これどうぞ心理定規さん」スッ

海美「あら、これってホワイトデーの? ありがとう誉望君」

誉望「いえいえ。大したもんじゃないですけど」

海美「……たしかに。私の渡したやつの金額を三倍した数字よりは安そうよね」

誉望「えっ!?」

海美「冗談よ。ありがと、うれしいわ」ニコッ

誉望「あはは……」

砂皿「…………」

海美「ん? 何か言いたそうな顔ね、砂皿」

砂皿「受け取れ能力者」ポイッ

海美「っと。あら、まさかあなたからお返しがもらえるとは思わなかったわ」

砂皿「ただの社交辞令だ。それ以上の意味はない」

海美「そうね。それ以上の意味は私たちにとっては必要ないしね。まあでも……」

誉望「でも? どうかしたんすか?」

海美「私にお返しをしたということは、必然的に彼女にはお返しをしたということになるわね」

砂皿「!?」

誉望「おおっ! たしかに!」

海美「砂皿―ステファニーの心理距離は友達以上恋人未満の数値だったわ。ただの他人の私に渡してそんな彼女に渡さない理由がないものね」

砂皿「勝手なことを言うな。能力者め」カチャ

海美「私を撃つつもり砂皿さん?」キッ

砂皿「くっ……!」

海美「……ところで垣根はここには来てないのかしら?」

誉望「そうですね。今日はここにずっといましたけど見てませんよ」

海美「そう。あの野郎もしかして日付変わるまで逃げるつもりかしら。電話にも出ないし」

誉望「やっぱ垣根さんにもバレンタインあげたんスね。しかし垣根さんのホワイトデーのプレゼントってすごそうっスよね。あの店のチョコレートセットとかめっちゃ買ってきそう」

海美「それくらいのをくれないと私絶対に許さないから」

誉望「一体何があったんスか……?」

海美「別に。ガキの相手は疲れるってだけ」

誉望「?」



チャララー♪




海美「電話? あら、噂をすれば何とやら」

誉望「垣根さんスか?」

海美「そう……もしもし?」ピッ

垣根『よお心理定規。何か用か電話なんかしてきて』

海美「別に用なんかないわ。暇つぶしに電話しただけ」

垣根『そんな理由で俺に電話してきてんじゃねえっつーの』

海美「あらごめんなさい。いっつも暇そうにしてたから、今日もてっきり暇なんだと思ってたわ」

垣根『喧嘩売ってんのか?』

海美「別に」

垣根『チッ、まあいい。ところでお前、今日の夜空いてるか?』

海美「唐突ね。特に用事はないけど? どうかしたのかしら、私に用事?」

垣根『えっと、あれだ。お前今夜一緒に飯でも食わね? よかったらだけど』

海美「……えっ? 今何て言った?」

垣根『だから飯食わねえかっつってんだよ。何回も言わせんなよ面倒臭せえ』

海美「いえごめんなさい。あなたがそんな食事のお誘いなんてしてくるなんて思わなかったら。一体どういう風の吹き回しかしら?」

垣根『チッ、つまんねえ詮索はするな。イエスかノー、それだけ答えろっつーの』

海美「そうね。特に何もすることないからいいわよ」

垣根『……そうか。それじゃあ第三学区のスクールのアジトに六時半に集合っつーことで。じゃあな』ピッ

海美「えっ、ちょ、どこの何の店に……って切りやがったわね。せっかちなヤツ」

誉望「どうかしたんスか?」

海美「垣根に夕食のお誘いを受けたわ。どこの何の店に食べに行くのかは教えられずに切られたけど」

誉望「へー、そうなんスか」

海美「ま、どうせあれよ? 焼肉食べたいけど一人じゃ入れないし、一緒に行く友達もいないから私に泣きついてきたに決まってるわ」

誉望「ふーん」

海美「そーいうわけだから、来たばかりで悪いけど私帰るわね? じゃ、あとよろしくね」

誉望「よろしくされても、別に今日も何もないでしょうけどねー」

海美「そんなことを言ってると、別の暗部組織に襲撃されちゃうかもしれないよ?」

誉望「不吉なこと言わんでくださいスよ……」

海美「じゃ、お疲れ様ー」


ガチャ


誉望「……砂皿さん」

砂皿「何だ?」カチャカチャ

誉望「さっきの話、あれって絶対垣根さんのホワイトデーのお返しの食事ですよね?」

砂皿「知るか。子供の色恋沙汰など興味ない」

誉望「ちぇー、さすが彼女持ちで大人な砂皿さんは言うことが違うスよねー」

砂皿「だからアイツは違うと言っている」


―――
――





同日 16:00

-とある高校・一年七組教室-


小萌「――というわけで、今日のホームルームは終わります」

青ピ「気をつけ、礼」


<ありがとうございましたー


結標「ふぅ、今日も終わったわね。帰りましょ一方通行」

一方通行「ちょっと待ってろ。少し用があるヤツがいる」

結標「用、って誰に?」

一方通行「見てりゃわかる」ガチャリガチャリ


女子生徒A「せんせさよならー」

女子生徒B「さよならー!」

小萌「はい、さようならー」

一方通行「……オイ、月詠」

小萌「はい? 何ですかアクセラちゃん?」

一方通行「ホワイトデーだ。何も言わずに受け取れ」スッ

小萌「えっ、もしかしてアクセラちゃん、わざわざ用意してくれたんですかー? 先生のために」

一方通行「何も言うなっつっただろォが。別にオマエの為にじゃねェよ。ついでだついで」

小萌「ってこれって有名なあの店のやつじゃないですかー!? せ、先生はそんなつもりでバレンタインを渡したつもりはないのですよー!」

一方通行「うぜェ。いらねェならゴミ箱にでも放り込ンでろ」

小萌「むむむむ、わかりました。ありがとうございますアクセラちゃん」ニコッ

一方通行「チッ、ぐだぐだ言わずにさっさと受け取れっつゥンだ」


上条「あっ、小萌せんせー! 俺のプレゼントも受け取ってくれー!」タッタッタ


小萌「上条ちゃんまで持ってきてくれたのですか? もー、そんなつもりで配ったんじゃないのにー」

上条「一方通行に比べたらしょぼいけど、上条さんの真心がこもった手作りクッキーなんで是非受け取ってくだせえ」

小萌「プレゼントに豪華もしょぼいもないんですよー。大事なのは気持ちなのですー。だから大丈夫ですよ、上条ちゃんの気持ちは気持ちはきちんと伝わりました」

上条「うわっ、そうまじまじと言われると何か照れくせーな」

小萌「上条ちゃんありがとうございました」ニコッ


結標「…………」

一方通行「終わったぞ。帰るか」

結標「まさか小萌先生の分まで用意してるなんて……一体何が貴方をそこまで駆り立てたのよ?」

一方通行「さァな。俺にも分かンねェ」

結標「……もしかして熱でもあるんじゃ……?」

一方通行「ねェよ、そンなモン」


―――
――





同日 17:00

-黄泉川家・リビング-



ガララ



一方通行「帰ったぞ」

結標「ただいまー」


打ち止め「あっ、アクセラレータにアワキお姉ちゃん! おかえりなさい、ってミサカはミサカは迎えの挨拶をしてみたり」

円周「二人ともおかえりー。そしてお邪魔してます」ピコピコ

一方通行「本当に邪魔だな。さっさと隣へ帰れ」

円周「やだよーだ。今イイところなんだから」ピコピコ

結標「何やってるの? ゲーム?」

打ち止め「うん! 学園都市クエストがいつまで経ってもクリアーできないから、エンシュウにやってもらってるの、ってミサカはミサカは説明してみる」

円周「そうそう。今さっきラスボスのアクセラお兄ちゃんを倒してクリアーしたところだよ」

結標「えっ、クリアーしたの? すごいわねー、いくら戦っても勝てなかったのに……」

一方通行「は? 俺がいつ負けたっつゥンだよ。ふざけたこと言ってやがるとぶち殺すぞガキが」

打ち止め「やだなーゲームの話だよー。そんな本気にしないでよ、ってミサカはミサカは振り上げた右腕を引っ込めることを勧めてみたり」

一方通行「ンだァ? ゲームの話だと? このゲームはクソゲーだな。全然原作再現出来てねェ」

円周「えっ、でも結構負けてるじゃんアクセラお兄ちゃん。当麻お兄ちゃんに数多おじちゃんに。あと、スキー場で一回第二位にやられてるし」

一方通行「随分と物知りだなァ、褒めてやるからこっちこい。頭撫でてやるからよォ」カチッ

円周「頭を撫でるのに何で電極のスイッチを入れてるの?」

結標「へー、貴方って上条君と戦ったことあるんだ。喧嘩か何か?」

一方通行「……まァ、そンなところだ」

打ち止め「あとヨミカワにも負けてるよねー。よくゲンコツ食らって伸びてるし、ってミサカはミサカは自分が食らった記憶を思い出して頭を押さえてみたり」

一方通行「アレはこっちがやられてやってンだよ。本気でやれば余裕でやれるし」

円周「でも電極スイッチ入れた時点で負けみたいなものだよねー」

結標「で、結局どうやって倒したの? ゲームの一方通行」

円周「簡単だよー。まず木原一族の仲間になります。木原神拳を取得します。アクセラお兄ちゃんをボコボコにします。以上」

一方通行「それは真っ当なクリアーの仕方なのか?」

円周「ゲームに実装されている時点で、それは正規の仕様なのだあ」

打ち止め「すごかったよねー木原神拳最終奥義。ダメージが9999でカンストしてたし、ってミサカはミサカはあの時の衝撃を思い出しながら語ってみる」

一方通行「絶対ェ正規の方法じゃねェ。チーターっつゥヤツじゃねェのか」

円周「オフラインゲームだからセーフ」



打ち止め「ところでアクセラレータ、ってミサカはミサカは唐突に呼びかけてみる」

一方通行「あン? ホント唐突だな」

打ち止め「ミサカ、ホワイトデーのお返しのプレゼントが欲しいんだけど、ってミサカはミサカは手のひら差し出して要求してみる」

一方通行「ああ、そォか忘れてた。ほらよ」スッ

打ち止め「えっ!? ……何で?」

一方通行「何でって、ホワイトデーだからだろ。つゥか、オマエが要求してきたンじゃねェか、何でそこで疑問を持ちやがる」

打ち止め「いや、だって素直にあなたがプレゼントを渡してくるなんて、今まで前例のないことだから、ってミサカはミサカは動揺を隠しきれなくなりながらも説明してみる」

結標「まあたしかにそうよね。ツンデレ一方通行らしくない行動よね」

一方通行「いつから俺はツンデレとかいう訳の分からねェモンになったってンだ」

円周「まあそれは最初からとしか……いや、待てよ。もしかしたら小学生の頃は素直で純粋な少年だったかもしれない……!」

結標「素直で純粋な一方通行……」


一方通行(ショタ)『ボク淡希お姉ちゃんのこと大好きー!! 一緒にベクトル操作の実験しよー!!』


結標「……素晴らしい!」グッ

一方通行「何勝手に一人で盛り上がってンだオマエ。残念ながら小学生の頃から俺はこンなだよ」

打ち止め「へー、そうなんだ。何か想像できないなーあなたがミサカと同じくらい小さいころなんて、ってミサカはミサカは想像力のなさに歯噛みしてみたり」

円周「でもあれだよね。小学生の頃からこんなってことは、あれから全然成長出来てな――」


ゴッ!


円周「おごごごごごごごごご、これ絶対つむじ増えたっ……! つむじが二つでダブルサイクロン……!」

一方通行「つーわけでオマエにはホワイトデーのプレゼントはきちンと渡した。だからこれ以上変なモン要求してくンじゃねェぞ」

打ち止め「うんそうだね。何はともあれあなたからのプレゼントは素直にうれしいかも。ありがとうアクセラレータ、ってミサカはミサカは笑顔でお礼を言ってみたり!」ニッコリ

一方通行「……おォ、大事に食えよ」

打ち止め「了解、ってミサカはミサカはさっそく包装紙を破いて開封作業に入ってみたり」

一方通行「言ったそばから雑に扱いやがって……」

円周「ねえねえアクセラお兄ちゃん」

一方通行「何だ」

円周「私の分がまだなんだけど」

一方通行「あるわけねェだろ。オマエからは何にも受け取ってねェンだからよォ」

円周「あれー? おかしいなあ? たしか私はずなんだけどなあ? あれー?」

一方通行「オマエの薬品入りチョコレートはきっちりオマエに突き返してやっただろうが」

円周「……そういえばそうだった! くそう、何で薬品なんて混ぜちゃったんだろうひと月前の私」

一方通行「知るか」

円周「ちっ、こうなってしまったら仕方がない。『木原』的にここは撤退するぜ」スタタタ

一方通行「おォ。そのまま帰って二度と来ンな」

結標「ばいばーい。また遊びにおいでー」ノシ

打ち止め「じゃあまた明日ー! ってミサカはミサカは手を振って見送ってみたり」ノシ


―――
――




同日 17:10

-第七学区・とある公園-



美琴「…………遅い!」


美琴(まったく、珍しくアイツからの呼び出しだっていうのに何で時間に遅刻するかな)

美琴(でも、今日の呼び出しってことはアレよね。ほ、ホワイトデーの……)

美琴(……も、もももしかしたら、もしかしたらって展開あったりして……な、なんて)



上条「おーい、御坂ー!」タッタッタ



美琴「なっ、アンタちょっと遅いわよ! 10分遅刻よ10分!」

上条「わりーわりー。ちょっといろいろあって」

美琴「アンタが決めた時間なんだから、そういう不足の事態を含めて時間を決めなさいよ」

上条「いやー、こっちもこれからバイトとかあるから、この時間しかないって思ってさ。すまねえ」

美琴「もう! まあいいわ、30分のとか1時間の大遅刻とか、挙句の果てには約束すっぽかすなんてことなかっただけマシよ」

上条「ははは、そんなことないって言えないのが情けねえ……」

美琴「で、よよ用事って何よ。私をこんなところに呼び出して」

上条「ああ。お前バレンタインの時にチョコくれたじゃん。だから、そのお返しにプレゼント渡そうと思ってな」

美琴「えっ、あ、そう。そうだったんだ。そういや今日ホワイトデーだったわねー、忘れてたわー」アセッ

上条「そうなのか。そういうイベントを忘れるくらい忙しかったんだな御坂。悪いなそんな時に呼び出したりして」

美琴「い、いや別にそんなことないわよ。気にしないでいいって」

上条「そうか。だったら喰らえ、上条さんお手製スペシャルデリシャスファンタスティックただのクッキーだ!」スッ

美琴「……要するにただのクッキーってわけよね。いろいろ言ったけど」

上条「そうです。超高級チョコレートとかじゃなくてすみません」

美琴「べ、別にいいわよそういうのは金額じゃないし。というかアンタクッキーとか作れたのね、意外」

上条「上条さんほどの料理スキルがあれば、レシピを片手にクッキーを作ることなど造作のないことだぜ」

美琴「それって別に大した自慢にはならないんじゃない?」

上条「ま、まあな」

美琴「ふーん、まあいいわ。ありがと、ありがたくいただくわ」

上条「おう。じゃあ俺バイトあるから行くわ。またな御坂」タッタッタ

美琴「あ、うん。また……」


美琴「…………」




同日 同時

-柵川中学女子寮・佐天涙子の部屋-


佐天「……ふむふむなるほど。テレポーターは三次元から十一次元へ物体を特殊変換する能力、つまり別次元に干渉できる能力である」

佐天「つまり、並行世界や異世界に物質を転移することが出来てもおかしくはない。またはその逆もまた然りである。

佐天「こういった理論を実証するための研究が密かに行われているという噂」

佐天「ふーん、何かすごそう! 今度白井さんに教えてあげよう、と」



チャララー♪



佐天「はい、もしもし」

美琴『あっ、佐天さんこんにちは。ちょっと電話いい?』

佐天「いいですよー、どうかしました?」

美琴『さっきアイツにホワイトデーのプレゼントってことで、手作りクッキーもらったんだけど』

佐天「ああ上条さんにですか? へー、そうなんですか。それは良かったですねー」

美琴『それが素直に良かったと言えるかどうか微妙なのよ』

佐天「どういうこと……あっ、たしかクッキーって」

美琴『そうなのよ。ホワイトデーでクッキーの意味って『友達でいましょう』じゃない? これってやっぱりそういうことなのかな……』グスン

佐天「あー、えーと、その……、た、たぶん大丈夫じゃないですか?」

美琴『……何で?』

佐天「たぶんですけど、上条さんはそういうつもりで渡したんじゃないと思います。今から名探偵涙子がバリバリの推理をしながら説明します」

美琴『お、お願いします!』

佐天「まず、上条さんがホワイトデーのクッキーの意味を知っているかどうか、それは正直どっちの可能性もあります。なのでこれは置いておきます」

美琴『置いておくんだ……』

佐天「まず御坂さんから聞いてた話からの推測です。上条さんは大変モテモテな人です。事実バレンタインデーにたくさんのプレゼントをもらっていました」

美琴『う、うん。全部義理ってアイツは言ってたけど……』

佐天「いえ、おそらくそれは勘違い。間違いなく本命も混じっているでしょう。まあ、その話は今とは関係ないので置いておきます」

美琴『置いておくなら何で話すの……?』

佐天「いやー、何と言うかいたずらごころっていうかなんというか」

美琴『もう! こっちは真面目に話してるのよ!』




佐天「えへへごめんなさいごめんなさい(御坂さんをからかうのは面白いけどこれ以上はやめとこ)。では続きを」

佐天「大量のバレンタインプレゼントをもらったということは、必然的にホワイトデーに大量のお返しをしないといけないことになります」

佐天「別に返さなくてもいいんですけど、御坂さんから聞いた感じでは上条さんは律儀に返しそうな人だから、間違いなくそういう事態になるでしょう」

佐天「そして上条さんは結構家計が厳しい家庭の方です」

美琴『そうね、いつもスーパーの特売特売言ってるし、バイトしてるらしいし』

佐天「そんな上条さんに大量のホワイトデーのプレゼントを買う余裕はないはず。そこで上条さんは考えました」


佐天「お菓子が買えないなら作ればいいじゃない、と」


佐天「普通に買ったら少し割高になるものでも、業務用のスーパーとかで材料を買い込んで大量生産すれば安上がりになります」

佐天「しかもクッキーは、作る手間もそんなに面倒臭くなく簡単なので、大量生産にはうってつけのお菓子です」

美琴『な、なるほど……』

佐天「ほかにも手作りできるお菓子の種類はありますが、難易度、メジャーさ、それらを考えればクッキーがベスト!」

佐天「だから上条さんはホワイトデーにクッキーを作ることを強いられていた、つまりそんなホワイトデーのお菓子の意味なんて考えてる暇はなかったはずです」

美琴『…………』

佐天「そういうわけなんで、大丈夫ですよ御坂さん。そんな心配なんて無用です」

美琴『……あの、佐天さん?』

佐天「なんでしょう?」

美琴『どのみち大量生産されたクッキーってことは、結局そういう義理的な意味になるんじゃ……』

佐天「…………」

美琴『…………』



佐天「だ、大丈夫ですよ御坂さん! おそらく上条さんはホワイトデーのお返しを全部クッキーで済ませてる=本命の相手なんていないはずなので、まだまだチャンスはありますよ!!」



美琴『い、一体それはどういう推理で導き出された答えなの……!?』

佐天「……め、名探偵涙子ちゃんの勘、ですかね?」

美琴『駄目じゃない!!』


―――
――





同日 17:30

-第七学区・ファミリーサイド付近のコンビニ-


ウイーン


御坂妹「ありがとうございました、とミサカは感謝の挨拶をします」

芳川「ありがとうございましたー」


御坂妹「…………」ソワソワ

芳川「ふふっ」

御坂妹「何ですか? いきなり意味深な笑みを浮かべて、とミサカは怪訝な表情を浮かべます」

芳川「そろそろ彼が来るから、一見無表情な貴女でも内心ウキウキワクワクなんだろうなあ、とか思ってたら面白くて」

御坂妹「勝手に人の心を妄想して笑うのはやめていただきたいのですが、とミサカは注意を促します」

芳川「あら、間違ってた?」

御坂妹「そうですね。正確にはドキドキワクワクです、とミサカは訂正します」

芳川「大して変わらないじゃない。ちなみにだけど私は今ウキウキワクワクしてるわよ。割と」

御坂妹「あなたのことなど知りませんよ。というかなぜです? とミサカは問いかけます」

芳川「ホワイトデーに踊らされてる人からイイものがもらえるかもしれないからよ」

御坂妹「?」


ウイーン


上条「とあっ! よし、ギリギリセーフッ!」ダッ


御坂妹「……何か一カ月前も同じような光景を見たような、とミサカはデジャヴを感じ困惑します」

芳川「というかいい加減遅刻しそうだからって、正面入り口から入ってくるのやめたら? お客様が居たら失礼よ」

上条「あははすみませんつい」

御坂妹「そもそもギリギリセーフでたどり着いても、仕事の準備ができてなければアウトなのでは、とミサカは正論を述べてみます」

上条「ぐっ、たしかに」




芳川「何でもいいけどとりあえず準備してきたら?」

上条「う、うっす。……あっ、そうだ、二人に渡すものがあるんだけど」

芳川「おっ、お待ちかねのホワイトデーのプレゼントよ」

上条「へっ? そんな期待しても大したもん出ないすよ?」

芳川「別に私はそうでもないんだけどね……ねえ?」

御坂妹「なぜこっちを見るんですか、とミサカは横目で睨みつけます」

上条「まあいいや。俺が作ったクッキーなんすけど。本当に大したもんじゃなくてすんません」スッ

芳川「いえいえ、そんな気にしなくて大丈夫よ。嬉しいわありがとう」

上条「ほら、御坂妹も」スッ

御坂妹「あ、ありがとうございます、とミサカは受け取りながらお礼を言います」

芳川「しかし、男の子でわざわざ手作りするなんて珍しいわね。お料理が好きなのかしら?」

上条「いえ、単純に金無しなんで安上がりのもんで済ましてるだけですよ」

芳川「なるほど。手作りせざるを得ない状況になるくらいもらっているわけか。さすが、ね?」

御坂妹「だからなぜミサカを見るのですか、とミサカは再度問いかけます」

芳川「別に意味はないわ」ニヤニヤ

御坂妹「ぐっ……」

上条「じゃあ着替えて準備してきまーす」テクテク


上条(しかし、結局雲川先輩やイギリスの連中には渡せなかったなぁ)

上条(まあイギリスの連中がここに来ることなんて稀だからしょうがないとしても、雲川先輩くらいは運良く会えるかと思ったけど)

上条(……よくよく考えたら、上条さんに運良くなんてことあるわけなかったな。こんなことなら卒業式の時に連絡先聞いとけばよかったなー)



―――
――





同日 18:30

-第三学区・スクール隠れ家-


海美「さて、そろそろ時間かしらね」←私服

海美「一体何を食べに行くっていうのかしらね? というかこれ垣根の奢りよね? 何かそういうところケチ臭そうだから割り勘とか言ってきそう……」

海美「サイフここに置いといてやろうかしら」


~10分後~


海美「……遅い。あれ? 待ち合わせ時間六時半よね? もう10分も過ぎているのだけど」

海美「もしかして六時半ってあれ? 明日の朝六時半って意味? いや、でもたしか今夜って言ってたはず……」



ガチャ



垣根「おぃーす。待たせたな」

海美「……ふう、よかったわ」

垣根「あん? 何の話だ?」

海美「ええ、私が時間を間違えたわけじゃなくてあなたが無様に遅刻した、ってことがわかったからよかった、って話よ」

垣根「誰が無様だとテメェ」

海美「……ていうか、ちょっといいかしら?」

垣根「何だよ」

海美「あなたの私服ってそんなフォーマルな感じの服装だったっけ?」

垣根「いや違うけど。今日の為に買った」

海美「今日の為? あなた一体今夜どんな店に行くつもりなのかしら?」

垣根「まあ見てのお楽しみっつーところだ。それじゃあ行くぞ」スタスタ

海美「え、ええ」





-第三学区・とある高級ホテル前-



海美「……こ、ここって」

垣根「そう。学園都市の中でもトップクラスの、いわゆる最高級ホテルっつーヤツだ。その最上階にあるフレンチレストラン、そこが今日のメシ食う場所だ」

海美「ちょ、ちょっと聞いてないわよこんなところでご飯を食べるなんて!」

垣根「あん? 言ってなかったっけ?」

海美「言ってなかったわよ! こ、ここに来ることがわかってたら、こんなみすぼらしい格好してこなかったわよ!」

垣根「てか何で今日はオフの格好してんだお前? いっつもキャバ嬢が来てそうなドレス着てんのに」

海美「あれはあくまで仕事着よ。普段から着てるわけじゃないし。だいたい今日は焼き肉とかファミレスとかそういうしょっぼい店に行くと思ったから、こういう服装で来たわけだし」

垣根「誰も焼き肉やファミレスなんて行くって言ってないだろ」

海美「さっきも言ったけど高級レストランに行くなんて一言も聞いてないからね」

垣根「まあいいや。それじゃそろそろ時間だ、行くぞ」

海美「よくないわよ。ちょっと一度戻って着替えてくるわ。こんなみすぼらしい格好で店に入りたくないわ」

垣根「知るか。予約の時間が来るっつってんだろ。そんな戻ってる時間はねえ」

海美「嫌よ」

垣根「……ったく、しょうがねえなぁ」ファサッ

海美「こんなところで能力を使って何をする気? もしかして私の家まで送ってくれるのかしら?」

垣根「そんな面倒なことするか。お前、気を付けしろ気を付け」

海美「? こう?」

垣根「……数値はこんなところか。行くぜ、未元物質(ダークマター)物質化、ドレス」


キュイーン


海美「こ、これは……」←白ドレス着用

垣根「よし、我ながら上出来だな。色は味気ねえ白だが、これなら別に浮かねえだろ」

海美「…………」

垣根「どうした? もしかして気に入らねえって言うつもりじゃねえだろうな? その場合全裸で入店コースっていうもっとみすぼらしいことになるけどよお」

海美「いえ、そういうわけじゃないわ」

垣根「じゃあ何だってんだよ」

海美「ただ素敵なドレスね、って思っただけよ」

垣根「……お、おう。そりゃそうだ、誰が作ったと思ってやがる。つーか時間が来てんだ、こんなところでゴチャゴチャ言ってねえで行くぞ」

海美「そうね」クスッ





-第三学区・とある高級ホテル最上階フレンチレストラン-



ウェイター「――二名でご予約の垣根様ですね。こちらの席へどうぞ」


垣根「おう」

海美(うわっ、ほんとにこのレストランで食事をするのね。まるで夢でも見てるようだわ……)

垣根「どうした? 顔強張ってんぞ? 緊張してんのか柄にもねぇ」

海美「まあね。この店に来るのは初めてだし」

垣根「援交してるときにパパに連れてきてくれるみたいなことなかったのかよ」

海美「援交じゃないし、援交言うなし。たしかにこういうレストランに連れてきてくれる人は居たけど、このレベルのヤツは初めてよ」

垣根「……へー」

海美「だいたいこんな場所で下品な発言やめてくれない?」

垣根「じゃあ何て言えばいいんだよ? パパ活?」

海美「意味的にはそっちのほうが合って……だから、そういう発言をやめなさいと言ってるの」

垣根「へいへい」



ウェイター「こちらが席になります」



海美「!!」

垣根「ほう、こいつは絶景ってヤツだな」



ウェイター「どうぞお掛けください」スッ



海美「すごい、ここって窓際の特等席じゃない!?」

垣根「当たり前だ。俺に相応しい席っつったらここしかねえだろうが」

海美「相応しいかどうかは知らないけど、……へえ、いい夜景ね。ビルの窓からの光がたくさんでまるで星空みたい……」

垣根「この光一つ一つにちんけでカスみたいなヤツらがせこせこ働いてると考えると、笑えて来るよな」

海美「……台無しよ」ハァ


―――
――





同日 19:00

-黄泉川家・リビング-



ガラララ



芳川「ただいま」

打ち止め「おかえりなさい! ってミサカはミサカは出迎えの挨拶してみたり」

結標「おかえりなさい。さっき連絡あったんですけど黄泉川さん今日アンチスキルの仕事で、遅くなるらしいですね」

芳川「ええ、私のほうにも連絡がきたわ。だからこれを買ってきたわ」スッ

打ち止め「おお、コンビニのお弁当だ! ってミサカはミサカはレジ袋の中身に興味津々になってみる」

芳川「別に大したもの入っていないわよ。ただの弁当におにぎりくらい」

打ち止め「こんな時間にコンビニ弁当を食べるだなんて新鮮かも」

結標「そうかもね。いつもはちゃんと黄泉川さんが作ってくれるし、遅くなってたら出前頼んでたものね」

芳川「悪かったわね。安物のコンビニご飯で」

結標「いえ、別にそんなことを言ってるわけじゃ」



ガラララ



一方通行「コーヒーコーヒーっと、あン? 帰ってやがったのか芳川」

芳川「帰ってたのよ一方通行」

打ち止め「今日の晩ご飯はコンビニの弁当だよ、ってミサカはミサカは報告してみる」

一方通行「どォでもイイ」

打ち止め「どれが食べたい? 唐揚げ弁当とかのり弁とかあるけど、ってミサカはミサカはあなたの言葉を無視して話を進めてみる」

一方通行「オマエらで適当に食ってろ。余ったのもらう」

結標「無欲ね。というより選ぶのが面倒臭いとか言うつもりかしら?」

一方通行「御名答」




芳川「だったらこのサラダを残しておきましょ。そうすれば野菜分の足りてない彼にはいい栄養補給になるんじゃない?」

一方通行「ふざけンなァ! そンなモン買ってきてンじゃねェぞ芳川ァ! 嫌がらせかコラ」

芳川「何でもいいって言ったのはキミじゃない? 自分の言葉には責任を持ちなさい」

一方通行「クソったれが」

結標「安心して一方通行。それ私が選ぼうとしてたやつだから」

芳川「駄目よ淡希甘やかしちゃ。こういうヤツには厳しくしてやらないと付け上がるだけよ」

結標「いや、私は普通にこれが食べたいだけなんですが……」

一方通行「そォいうわけだ。無様な作戦失敗だな芳川ァ」

芳川「こんなこともあろうかと野菜スティックなるものを買ってきているのだけど」スッ

一方通行「よし、せっかくだから俺はこの唐揚げ弁当を選ぶぜ」スッ

結標「えらくあっさり選んだわね……」

打ち止め「のり弁に入ってる磯辺揚げうまー、ってミサカはミサカはちくわを頬張りながらコメントしてみる」モグモグ

一方通行「……そォだ。芳川、これ受け取れェ」ポイ

芳川「よっと。あら、随分と手荒なホワイトデーじゃない?」パシッ

一方通行「オマエ俺を騙しやがったな? 三倍返しが絶対みてェなこと抜かしやがって」

芳川「誰も絶対とは言っていないわ? キミが勝手にそう解釈して動いただけじゃない?」

一方通行「チッ」

結標「……なるほど。やけに今日の一方通行は準備がいいなあって思っていたけど、芳川さんが裏で動いていたのね」

芳川「人聞きの悪いこと言うわね。ただ彼が私にホワイトデーとは何なのかを尋ねてきたから答えてあげたに過ぎないわ」

一方通行「オマエに聞いたのは最大の失敗だったわけだなァ。反省しねェとな」

結標「うわっ、反省するって言葉がここまで似合わないヤツっているのかしら?」

一方通行「頭ァ叩き割るぞオマエ」

芳川「ま、とにかくありがとね一方通行。ありがたくこのチョコレートセットはもらっていくわ」

一方通行「覚えてろよクソババァ」

芳川「はいはい」


―――
――





同日 20:30

-第三学区・とある高級ホテル最上階フレンチレストラン-


垣根「ふぅ、なかなかうまかったな。さっきの肉料理」

海美「それはそうよ。どれだけランクの高い店だと思っているわけ」

垣根「まあでも量は少なかったな。もうちょっと欲しかった」

海美「何というか、その発想が貧乏人臭いわね。ここはそういう店じゃないのよ? わかってる?」

垣根「うっせーな、わかってるっつうの。ただ素直な感想を言っただけじゃねえか」

海美「思っていてもそれは言わないようにするのがマナーよ」

垣根「チッ、面倒臭せー店だなおい」

海美「……それで、何であなたは今日、その面倒臭い店で食事をしようなんて言い出したのかしら?」

垣根「あん? ああ、あれだよ。まず食事をしようって誘ったのは、これがホワイトデーのお返しっつーことだからだ」

海美「えっ、これがホワイトデーのお返しだったの?」

垣根「つか気付かなかったのかよお前」

海美「……言われてみれば、ここまでの行動すべて何をとってもあなたらしくない行い、たしかに気付くポイントはあったわね」

垣根「お前何か失礼なこと言ってんだろ?」

海美「別に。というか何でお返しが食事なわけ? 普通にプレゼントをくれればよかったんじゃない?」

垣根「はあ? お前、俺を誰だと思ってやがる。垣根帝督だぞ? 俺に常識的なホワイトデーなんて似合わねえ。っつーわけで食事に誘ったっつーわけだ」

海美「なるほどね。で、わざわざここを選んだ理由は?」

垣根「ま、それはあとで教えてやるよ。……そろそろだな」

海美「何?」

垣根「サプライズってヤツだ。窓の外を見やがれ」

海美「サプライズをサプライズって言ってやったら意味ないんじゃない?」

垣根「いいから見ろっつーに」

海美「はいはい、……!? こ、これは……!」


モブA「お、おい見てみろよ窓の外。何か巨大な真っ白な花火が上がっているぞ?」

モブB「てかあれって花火なの? 全然消える様子がないんですけど……?」


モブC「すごい……いろいろな形に次々と変化していく」

モブD「どういう原理なんだあれ?」




海美「…………」

垣根「俺の未元物質(ダークマター)に常識は通用しねえ」

海美「あの花火、あなたの仕業?」

垣根「当たり前だ。あんな芸当俺以外じゃ出来ねえよ」

海美「相変わらず趣味が悪いわね。真っ白な花火なんて華やかさの欠片もないわ」

垣根「悪かったな」

海美「……でも」

垣根「あ?」



海美「綺麗ね……とっても」



垣根「……へっ。テメェも十分趣味悪りいじゃねえか」

海美「誰かさんといつも一緒にいるおかげでね」

垣根「人のせいにするなっつーの」



ウェイター「失礼いたします。こちらデセールになります。あの店のチョコレートを使用した、『ブロンディ・オ・ショコラノワール・エ・ショコラブラン』です」スッ



海美「あら、すごいわね。あの店のチョコレートを使っているなんて、さすがね」


ウェイター「こちらのチョコレートは垣根様よりお持ち込みいただいたものです」

垣根「おい余計なこと言ってんじゃねえよ」

ウェイター「申し訳ございません。出過ぎた真似をいたしました」

海美「へー、あなたがわざわざ、ねえ」ニヤニヤ

垣根「チッ、そんな顔で見んなうっとおしい」


ウェイター「ではごゆっくり」




同日 21:00

-第三学区・とある高級ホテル前-


垣根「……ふぅ、やっぱ何か食った気がしねえな」

海美「あれくらいでちょうどよかったわよ。だいたいああいう店はお腹一杯にするのが目的じゃないわ」

垣根「コスパが悪いっつーヤツだな」

海美「……やっぱりあなたには似合わないわね、ああいう店は」

垣根「チッ、まあもう来ることもねえから別にいいけどよお」

海美「そういえばまだ聞いてなかったわね。何でこの店を選んだのかを」

垣根「ああそうだ。これを言っとかなきゃ俺のホワイトデーは終わらねえんだった」キリ

海美「な、何よいきなりそんな真面目な顔して……」

垣根「ああ。これは今日絶対にお前に言っときたい言葉があってな」

海美「……えっ、そ、それって」アセ

垣根「よーく聞け心理定規……いや、 獄彩海美」

海美「ちょ、急に本名で呼ばないでちょうだい、き、気持ち悪い……!」ドキン

垣根「チッ、うるせえな別にいいだろ面倒臭せぇヤツめ。まあいい、よく聞け心理定規」

海美「……は、はい」ドキドキ






垣根「ざまあみろクソガキが!」






海美「……え?」


垣根「お前バレンタインのときに散々俺をガキ扱いしやがっただろうが。だがよお、今日のホワイトデーのお返しを思い出してみろ!」

垣根「高級ホテルで食事。サプライズの花火。こんなもんそこらのガキじゃ出来ねえ。つまり俺は超絶完璧な大人っつーわけだ」

垣根「思い知ったか心理定規! この俺の『大人』なホワイトデーっつーのをよお!」


海美「…………はぁ」

垣根「あん? 何だその残念なものを見た後のため息みてえなのは?」

海美「別になんでもないわ。私ちょっと気分が悪いから先帰らせてもらうわ」

垣根「そーか。じゃあここでお開きだな。お前絶対今日のことを、かけがえのないひと時として記憶の中に永久保存しとけよ」

海美「……そうね」

垣根「あん?」

海美「たしかに楽しいホワイトデーだったわよ。こんなの初めてだったし、たぶん忘れることもないわ」



海美「ありがとうね、垣根」ニコッ



垣根「……お、おぉ」


―――
――





同日 21:30

-黄泉川家・リビング-



ガラララ



黄泉川「ただいまじゃん! いやーすごかったすごかった」


結標「おかえりなさい黄泉川さん。すごかったって何がですか?」

黄泉川「何か九時前くらいに真っ白な花火が上がってたんだけど、それがどういう仕組み知らないけど10分くらいずっと形を変えながら空に滞在してたじゃんよ」

結標「へー、学園都市の新しい技術なのかしら?」

一方通行「こンな時期に花火を上げるなンて酔狂なヤツがいたモンだな」

黄泉川「しかしみんな遅くなって悪かったじゃん。コンビニ弁当を晩飯にさせちゃって」

結標「たまにはいいですよ。黄泉川さんも今日くらいゆっくりしてください」

黄泉川「ほんと悪いじゃんねー。しかし一方通行、お前がこの時間にこんなところにいるなんて珍しいな。いっつも部屋かソファで寝てんのに」

一方通行「あン? 居たら悪いかよ」

黄泉川「別に。なんなら久しぶりに将棋でもするかー?」

一方通行「そンな勝ち負けの決まったゲームなンざしたくねェよ」

黄泉川「まあ私も正直疲れてるからやりたくないけどな」

一方通行「だったら誘ってくるなよ」

結標「あっ、黄泉川さんお茶でも入れてきましょうか? それともコーヒーがいい?」

黄泉川「ありがとうじゃん。お茶で頼む」

結標「はーい」テクテク

一方通行「……黄泉川」

黄泉川「何じゃん?」

一方通行「疲れてるっつったな。だったらコイツでも食ってろ」スッ

黄泉川「うん? おっ、何これチョコレート?」

一方通行「疲れてるときには甘いもの、ってな」

黄泉川「……ぷふっ」

一方通行「あァ?」




黄泉川「ぷわっははははははははははははははははっ!!」

一方通行「な、何を笑ってやがる!?」

黄泉川「くふっ、い、いやーだってお前がそんな似合わないセリフを言うなんて思わないじゃん?」

一方通行「チッ、俺だってわかってンだよ、らしくねェなンてよォ」

結標「そうよね。ほんと、今日の貴方はいろいろと変わってるわよね。お茶置いときますね黄泉川さん」ガチャ

黄泉川「おっ、ありがとじゃん」

一方通行「皆まで言うな。面倒臭せェ」

黄泉川「これってあれか? 今日ホワイトデーだから、バレンタインのお返しってやつ?」

一方通行「そォだよ。分かったら黙って受け取ってろよ」

黄泉川「はいはいありがとじゃん。へー、これってあの有名な店のチョコレート? すごいじゃん」

結標「ほんとすごいですよね。どんな手を使って手に入れたのやら……」

一方通行「言ったじゃねェか。常盤台の知り合いに頼ンだってよ」

結標「ほんとかしらね?」

一方通行「嘘は言ってるつもりはねェ」

黄泉川「しかし、今日はお疲れじゃんね。お前たくさんもらってたから今日一日大変だったんじゃないか?」

一方通行「まァな」

黄泉川「そうか。……で、どうだった? 今日のホワイトデーの感想は?」

一方通行「……‥…」





一方通行「二度と御免だ。こンなクソイベント」




―――


心理定規ちゃんとゴーグル君の名前が解禁されてたから改名させたけど違和感すげンだわ

次回『焼き芋大会』

とくに書くことねーや

投下



9.焼き芋大会


March Forth Saturday 20:00

-黄泉川家・食卓-



一方通行「ハァ? 明日焼き芋大会に行って運営を手伝えだァ?」

黄泉川「そうじゃん」

結標「その焼き芋大会ってどういうのなんですか?」

黄泉川「ああ、町内会の主催のヤツじゃん。近くのでっかい公園を借りてやる子供向けな感じの」

一方通行「つーか、何でそンなモンの手伝いに行かなきゃいけねェンだ?」

黄泉川「いやー、実は私もその大会の係員の一人だったんだけどさー、ちょっとアンチスキルの仕事で緊急なヤツが入ってな」

結標「なるほど。それで代わりに私たちに行ってこい、と」

黄泉川「そうそう」

一方通行「オイ、その大会とやらは町内会でやってるヤツだろ? だったらその役員の中に暇なヤツくらい何人かいるだろ。ソイツらに頼めよ」

黄泉川「いやー、そうしたいのはやまやまなんだけどなー、こんな夜分に連絡するのも悪いし、ぶっちゃけると私、町内会の中では結構若年者だから頼み辛くて……」

一方通行「えっ? オマエの年齢ならもっと上の――」



ゴッ!



結標「それにしても何で私たちなんです? 芳川さんは出られないんですか?」

芳川「残念。私はバイトよ。まあ、休みだとしても行きたくはないけどね」

黄泉川「薄情な親友じゃんね」

一方通行「……まあ他に頼めるヤツが居ねェことはわかった。だが欠員は一人だろ? だったら一人だけ行かせりゃイイだろォが。俺を巻き込ンでンじゃねェ」

黄泉川「運営するのは大人たちだからな。その中に子供一人に行かせるのは酷だろ? だから二人で行けば怖くない、って感じじゃん」

一方通行「そォか。だったら結標はしっかりしているから問題ねェ。安心して任せられる」

結標「何よ? 私が行くことは確定しているわけ?」

一方通行「どォせ暇だろうが」

結標「それは貴方にも言えることじゃない? ちなみに昼寝で忙しいはなしね」

一方通行「クソが」




打ち止め「はいはーい!! だったら代わりにミサカが行くよ、ってミサカはミサカは挙手して志願してみたり」

一方通行「一番の不安要素は黙ってろよ」

打ち止め「ぶーぶー」

黄泉川「そういうわけだから、二人とも頼むじゃん。手伝ってくれたら焼き芋一個ただで食べさせてくれると思うからさ」

結標「……まあ、別に明日はすることないからいいですよ。参加する側じゃなくて、運営する側ってのも面白そうだし」

一方通行「つゥか、金取るのかよこの焼き芋大会」

黄泉川「ちなみに参加費三百円じゃん」

一方通行「俺らの日当三百円かよ」

打ち止め「三百円か……それならミサカのお小遣いでも大丈夫そうだね、ってミサカはミサカは明日の予定が出来たことを喜んでみたり」

一方通行「チッ、オマエも来るのかよ」

打ち止め「うわっ、露骨に嫌な顔するね。慣れない環境の中だったら知り合いが一人でも多い方が気が楽になったりするよ、ってミサカはミサカは知ったようなことを言ってみたり」

一方通行「慣れない環境だろうと気なンて重くならねェよ」

芳川「あら。スキー旅行の行きの時、車の中で風斬さんと二人きりになってものすごく動揺してたキミがそれを言うのかしら?」

一方通行「何だと?」

結標「そういえばメールでSOS出してきてたっけ。あれは面白かったなあ……」

一方通行「変な記憶呼び起こしてンじゃねェよ!」

黄泉川「じゃ、二人ともよろしくじゃん」

結標「はい」

一方通行「面倒臭せェ」


―――
――





March Third Sunday 13:00

-第七学区・とある公園-


一方通行「……はァ、今日ほど面倒臭せェと思ったことはねェな」

結標「そのセリフ、今までに何回も聞いたことあるような気がするのは気のせいかしら?」

打ち止め「よーし、今日は焼きまくるぜー! ってミサカはミサカは背中に大きな気合の炎をまとっている気分になってみたり」

結標「そういえば今日は円周ちゃんいないのね。いつもこういうイベント事のときって一緒に付いてきてるイメージあるけど」

打ち止め「誘ってみたんだけど、何か今日は実験で忙しいとか言ってて断られちゃったんだ、ってミサカはミサカは説明してみる」

結標「そう。それは残念ね」

一方通行「うぜェのがいなくてせいせいするがな」

結標「……あっ、設営のテントが見えてきたわ。たぶんあそこが会場じゃない?」

打ち止め「よーし、ならばいざ突撃じゃー! ってミサカはミサカは指をさしながら駆け出してみたり」タタタ

一方通行「走ンな! コケて怪我でもされたら面倒だ」

打ち止め「コケないよーだ! ってミサカはミサカは気にせずダッシュ!」ダダダ

結標「子供は元気よねー」

一方通行「うっとォしいだけだ」


結標「こんにちはー」

係員1「おやこんにちは。話は聞いてるよ、黄泉川さんの代理の方たちだね?」

結標「結標です。至らぬ点が多々あると思いますが、本日はよろしくお願い致します」ペコ

係員1「これはご丁寧に。こちらこそよろしくね」


打ち止め「おおー、アワキお姉ちゃんが家では見せたことないような大人な対応をしてる、ってミサカはミサカは動揺を隠しきれずにいたり」

一方通行「やっぱ俺いらねェよォな気がして仕方がねェンだが」

打ち止め「そうだね。あなたが出ていっても何もできなさそう、ってミサカはミサカは同意してみる」

一方通行「オイ、それはどォいう意味だクソガキ」

結標「何やってるのよ一方通行。こっちに来て自己紹介しなさいよ」




一方通行「一方通行だ」

打ち止め「打ち止めでーす! ってミサカはミサカは自己紹介してみる」

係員1「はいよろしく。ちなみにこの子は……」

打ち止め「ミサカはお手伝いさんじゃなくて、このなけなしの三百円を持ってきて焼き芋を食べに来た参加者でーす、ってミサカはミサカは百円玉三枚を見せつけてアピールしてみたり」

結標「すみません。この子一人じゃここまで来れるかわからないので、先に連れてきちゃったんですよ」

係員1「なるほど。……そうだ、始まるまで暇だろ? なら君も手伝ってくれないかな? そうしたら参加料をタダにしてあげよう」

打ち止め「えっ、ほんと? 手伝う手伝うー! ってミサカはミサカはやる気アピールを発してみたり」

結標「いいんですか?」

係員1「構わないよ。それに始まるまで一時間もあるんだ。君たちもこの子が目に届く範囲にいたほうが助かるんじゃないかな?」

結標「ありがとうございます。ところで私たちは何をすればいいんですか?」

係員1「そうだね。君たちは机と椅子の設営を手伝ってもらおうかな」

結標「机と椅子を?」

係員1「そうそう。長机とパイプ椅子があるからそれを運んで、組み立てて並べてほしいんだ。すでにやってる係の人がいるから詳しくはその人に聞いてくれ」

結標「分かりました」

係員1「あと君たちはお客さん、要するに子供たちの対応も手伝ってもらおうと思っているのでそのつもりでいてくれ」

一方通行「は?」

打ち止め「了解! 子供の対応なんて全部ミサカに任せなさい、ってミサカはミサカはお姉さんアピールをしてみたり」

係員1「いや、君はそのときはお客さんとして参加してくれればいいよ」

打ち止め「そっかー、それは残念だね、ってミサカはミサカは指をくわえてみる」

係員1「じゃ、頼むよ」

結標「分かりました」


-机・椅子設営場所-


係員2「おっ、黄泉川さんとこの居候さんたちだね。今日は来てくれてありがと」

結標「いえ。ところでどういう風にやればいいです?」

係員2「ああ、あそこに積んである長机とパイプ椅子をこっちに持ってきて、組み立てて並べていくんだよ」

係員2「並べ方は長机を二つ横に並べて一つの島を作る。一つの島には左右三つずつ合計六つのイスを並べる。このセットを十セット作ることになる」

一方通行「つまりこれは六十人が定員の大会っつーことか?」

係員2「まあそれくらいだね。椅子の予備はあるからある程度は許容できるよ。まあでも、今頃の子供はこういう古臭いイベントに参加したがらないからねー、埋まることはないと思うよ」

結標「もしかしたら人がまったくこない、みたいなことになるってことですか?」

係員2「いや、それはないよ。近くの養護施設の子たちが来たりする予定だから、ある程度は席は埋まるよ。人が居なくて中止はまずないね」

一方通行「俺たちのやることは無駄にはならねェってことだな」

結標「ちょっと一方通行言い方悪いわよ?」

係員2「ははは、いいよいいよ。それじゃあ並べていこうか」




結標「……しかし、机と椅子が積んである場所から設営場所までそこそこ距離があるわね」

打ち止め「そうだねー。いちいち何回も往復しなきゃいけないんだね。それにミサカにとっては結構重そう、ってミサカはミサカは自分の細腕を見ながらげんなりしてみる」

一方通行「面倒臭せェ。結標、ここはオマエの能力を有効活用する場面だ」

結標「私の?」

一方通行「ああ。長机二本、パイプ椅子六つを一セットになるよォにして、設営場所まで移動させろ。そォすりゃあとは組み立てるだけの作業になる」

結標「また私ばかり働かせるつもりね? 雛祭りのときみたいに」

一方通行「能力の有効活用だ」

結標「貴方でも出来るでしょうに」

一方通行「出来るが、オマエがやるより絶対に遅くなるだろうから無駄な時間を過ごすことになる。なにより電極のバッテリーの無駄遣いはしたくねェ」

結標「私だって脳のブドウ糖大量消費するんですけど?」

一方通行「この後クソ甘ェ焼き芋食うンだからプラマイゼロだろ」

結標「……はぁ、わかったわ。やりますやらせていただきますよ」

打ち止め「おおっ、アワキお姉ちゃんの超能力ショーの開幕だぜ、ってミサカはミサカは目を輝かせながら胸をときめかせてみたり」キラキラ


結標「係員2さーん」

係員2「どうかした?」

結標「かくかくしかじかなんでだいたいの配置予定を教えてもらませんか」

係員2「へー、君ってテレポーターなんだ。すごいねえ。それじゃあこれが配置図だ」ペラッ

結標「ありがとうございます」

係員2「がんばってくれ」


結標「えーと、この配置だと島と島のスペースがだいたい2~3メートルくらいになるのかな?」

結標「まあ、細かい調整は組み立てるときにすればいいから、適当に飛ばせばいっか」スッ



シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! シュン! 



結標「ざっとこんなもんか」


打ち止め「おおっー! さすがアワキお姉ちゃん鮮やかなお手並みだ! ってミサカはミサカは称賛の拍手を送ってみたり」パチパチ

一方通行「へェー、前より演算の速度上がってンじゃねェか?」

結標「それはそうよ。雛祭りの時に散々能力使わせられたのだから。配置から片付けまで」

係員2「お見事だねー。この分じゃ設営はすぐに終わりそうだね」

打ち止め「よーし、それじゃあ組み立てよー! ミサカに続けー! ってミサカはミサカは隊長気分で先陣を切ってみたり」タッタタ

一方通行「オマエ組み立て方分かンのかよ?」ガチャリガチャリ

打ち止め「知ってる? ああいうのって適当にやっても誰でも組み立てられるように設計されているんだよ? だからやったことなくてもだいじょーぶ! ってミサカはミサカは博識ぶってみたり」

一方通行「誰でも、っつゥ範疇にクソガキは含まれてねェだろ」


―――
――






同日 13:30



ワイワイガヤガヤ



結標「あっ、設営が終わったと思ったら、いつの間にか結構人が来てるわ」

係員2「あれは近くの養護施設の子たちだね」

一方通行「ざっと見た感じ三十人っつゥところか」

打ち止め「見たところそれ以外の人たちもいるよ。見た目中学生とか、高校生の人たちもぽろぽろ見かけるね、ってミサカはミサカはざっと公園を見回してみたり」

結標「たぶん兄弟とか近所で仲良くしてる小さい子の付き添いでしょうね」


係員1「おっ、終わったみたいだね。じゃあ君たちにはこれからやることをざっと説明するよ」

結標「お願いします」

係員1「まずこの焼き芋大会の流れなんだけど、君たちが作ったブースで子供たちがサツマイモに濡れ新聞とアルミホイルを巻く」

係員1「そのあと別の係員が作った焚火で芋を焼く。だいたいこれが一時間くらい。その一時間の待ち時間に子供たちはゲームとかして遊んで時間をつぶす」

結標「ゲームですか?」

係員1「ボールを用意してるからドッジボール大会でも開こうと思っているけど、まあ強制とかじゃないから適当に自由にしてもらって構わないよ」

係員1「で、それで一時間くらい経ったら完成すると思うからまたブースに戻って実食。終わったらお土産にお菓子を渡して終わりって感じ」

結標「なるほど。それで私たちのやる仕事っていうのは?」

係員1「君たちはブースでの焼き芋の準備とゲーム中の子供たちを見守るのが役目だよ。あっ、ちなみに焼き芋の準備のときに君たちも自分の分も作っておいてくれ」

係員1「焼き芋の準備のときはHとIの島を君たちは見ていてくれ」

係員1「まあ、あとは終わった後の片付けも手伝ってもらおうかな。遠めで見たけど君はなかなか便利な能力を持っているようだ」

結標「ありがとうございます。任せてください」

係員1「それじゃあ時間までゆっくりしてていいよ」

結標「わかりました」


結標「――というのが私たちの役割よ」

一方通行「面倒臭せェ」

結標「言うと思ったわ」




一方通行「ただでさえこのクソガキの子守で面倒だっつゥのに、他のガキどもに構ってる暇ァあるかよ」

打ち止め「大丈夫だよ。ミサカは平気だから安心して自分の仕事に臨むといいよ、ってミサカはミサカは胸を張ってみる」

一方通行「オマエが一番安心できねェっつってンだろォが」

結標「しかしだんだん人が増えてきたわね。あれならブースのほとんどは埋まりそう」

一方通行「こンなくだらねェ行事によく参加できるモンだ」

結標「あら、こういうイベントで思い出を作っていくのが普通じゃない? ましてやあの年代の子たちになると」

打ち止め「そうだそうだー!! そういうわけだからミサカをもっとイベントごとに連れてけー!! ってミサカはミサカは抗議デモのごとく要求してみたり」

一方通行「うるせェ――ッ!?」ゾクッ

打ち止め「ん? どうしたの、ってミサカはミサカは首をかしげてみる」

一方通行「……このニオイ」

結標「ニオイ? ああ、たしかに焚火の葉っぱが燃える特有のニオイはするわね」

打ち止め「おおっーたしかにそうだ。何か悪いものを肺に吸い込んでる気がしてすごいねー、ってミサカはミサカは深呼吸しながら言ってみたり」スー

結標「焼いてるのは落ち葉とかだから身体に悪いものはないと思うけど、深呼吸するのはやめときなさい」

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

結標「ちょっと一方通行? どこに行くつもりよ」

一方通行「トイレ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、そう。でもそっち――」

一方通行「すぐ戻る」ガチャリガチャリ

結標「……うん」


結標「…………」

打ち止め「どしたのアワキお姉ちゃん?」

結標「いや、アイツトイレがある方とはまったくの逆方向に歩いていったのよ」

打ち止め「そうなんだ。だったら教えてあげればよかったんじゃ、ってミサカはミサカは当然のことを聞いてみる」

結標「何か……、そういうこと言えるような表情じゃなかったのよ、アイツ」

打ち止め「へー、あれじゃないかな。おしっこ漏れそうなんだよきっと、ってミサカはミサカは名推理を披露してみたり」

結標「それって名推理なの?」





フレンダ「フレメアー! お姉ちゃんここのベンチに座って休んでるから時間になったら教えてー」

フレメア「えー、お姉ちゃんも一緒にやろうよバイオハザードごっこ。お姉ちゃんがゾンビ役で私が配属初日の新米警官役」

フレンダ「ごめんねー。私そんなバイオレンスな遊びに付き合えるほど元気じゃないって訳よ。昨晩遅くまで出かけてた疲れが今になってたたってきてだるい」

フレメア「にゃあ。今日一緒に焼き芋大会に行くことは約束してたはず。それなのに遅くまで出かけてたなんて、大体お姉ちゃんが悪い」

フレンダ「私にもいろいろあるって訳よ。だからほんとマジで休ませて。遊びならまた今度付き合うからさー」

フレメア「もう! しょうがないなあ。ここは私が大人になろう。私一人でバイオハザードごっこやるよ。ゾンビ役は……ここにいる人たちみんなだ!」タッタッタ

フレンダ「はいはい、怒られない程度に頑張ってねー……ふう、やっと静かになった。ちょっと仮眠でも取ろう」ゴロン


一方通行「オイ」


フレンダ「……ゲッ、だ、第一位!?」

一方通行「オマエ、こンなところで何をしてやがる」

フレンダ「えっ、ええっと……」アセッ

フレンダ(や、やばい。こんなところで第一位と遭遇するなんて思ってもみなかった訳よ。ど、どうする私……!?)

一方通行「他のアイテムの連中もいるのか?」

フレンダ「い、いやいないと思うよ。今日はプライベートでここに来たって訳よ」

一方通行「暗部組織のオマエの言葉なンざ一ミリも信用できねェな」

フレンダ「別に信用してくれなくてもいいよ。アンタがいくら警戒しようが他のメンバーはここには来ないから無駄骨を折るだけって訳」

一方通行「まァイイ。で、オマエはこンな場所で何をやっている。まさか焼き芋大会に参加しに来た、とかいう似合わねェ言葉を言うわけじゃねェだろォな?」

フレンダ「えっ、何で分かったの?」

一方通行「……はァ、面倒臭せェ」

フレンダ「ベクトル操作って相手の思考を読むチカラでもあるの? うんたらかんたらのベクトル操って解析、みたいな?」

一方通行「ンなモンねェよ。ここが焼き芋大会の会場で、その会場のベンチで寝てるヤツならたぶン参加者だろう、そォ思っただけだ」

フレンダ「ってことは、アンタもこの焼き芋大会に参加するつもりな訳?」

一方通行「不本意だがな。それに俺は参加者側じゃなく運営側だ」

フレンダ「へー、似合わなっ」

一方通行「だから不本意だっつってンだろ。家主に頼まれて仕方がなく手伝っているだけだ」

フレンダ「あーそう。ま、正直アンタが何でここにいるのかとかどーでもいいけど」

一方通行「オマエはどォして焼き芋大会なンて参加してンだ? オマエこそ柄じゃねェだろこンな平和ボケした催し」

フレンダ「私がいつでもどこでも暗部モードだとか思わないでよ? まあ私だって不本意だってところは一緒だけどね」

一方通行「あン?」

フレンダ「あそこを見て」スッ


フレメア「ふりぃずっ! バンバンッ!」

子供1「うわあ、やられたー」

フレメア「ゾンビはやられたー何て言わない! 『あうぅん……』って感じで死んでいく!」

子供2「それってゾンビがやられたときのセリフだっけ?」

子供3「というか何で鬼ごっこしてたのにいつの間にかゾンビごっこになってんの?」




一方通行「……あのガキ、オマエの妹か何かか」

フレンダ「そ。あの子の付き添いで来てる訳よ。昨晩も暗部のお仕事があったから今日ぐらいゆっくり休みたいんだけどね……おっと、仕事があったなんか言っちゃいけなかった、忘れて忘れて」

一方通行「忘れろと言われて素直に忘れられるわけねェだろ」

フレンダ「まあアイテムの存在自体がトップシークレットだし、それを知ってるアンタに知られたところで何てことないんだけどね」

一方通行「随分なトップシークレットだなオイ」


結標「一方通行ー! そっちにトイレないわよー! ってあら?」

打ち止め「あっ、何かどっかで見たことあるような外国のお姉さんとお話している。これはレアなケースですなあ、ってミサカはミサカは分析してみたり」


一方通行「チッ、面倒なのが来やがったか」

フレンダ「げっ、座標移動(ムーブポイント)まで来てんのかよ」ボソッ

結標「えっと、確か貴女は浜面君の上司の方でしたっけ? たしかスキー場の雪合戦の時に爆弾使ってた」

フレンダ「そ、そうそう。フレンダっていうんだけど、改めてよろしくね結標さん」

結標「うん、よろしく。で、こんなところでこのフレンダさんと何を話してたのよ貴方は?」

一方通行「別に。たまたま会ったから喋ってただけだ。コイツもこの焼き芋大会に参加するそォだ」

結標「へー、そうなんだ。焼き芋好きなんですね」

フレンダ「いや違う違う。私は――」


フレメア「ばんばん! くらえっ、頭蓋骨爆散キック。とあっ」バッ

打ち止め「甘いぜ! ミサカにはお姉さまの最強DNAが受け継がれているので、そんな攻撃見てから回避余裕なのだ、ってミサカはミサカは左右にステップしながら回避行動に移ってみたり」シュバッ

フレメア「何だと!? まさかお前はウイルスの適合者!? こーなったら……必殺RPG-7発射!!」


フレンダ「……あの子の付き添いよ。別に焼き芋なんかに全然興味はないって訳よ」

結標「妹さん? 随分と元気な子ね」

一方通行「つゥか、いつの間に仲良くなりやがったンだこのクソガキ。まだ出会って一分とかそンなモンだろ」

結標「まあ、子供ってそんなもんだし」



係員1『えー大変長らくお待たせいたしました。まもなく焼き芋大会を始めますので集合をお願いしまーす』



結標「あっ、そろそろ始まるそうよ。私たちも戻らなきゃ」

一方通行「面倒臭せェ」

フレンダ「あっ、そうか。アンタたちは運営側なんだっけ?」

結標「そうよ。まあ楽しめるかどうかは分からないけど、楽しんでいってくださいね」

一方通行「オイ、クソガキ行くぞ。いつまでも馬鹿みてェな遊びしてンじゃねェ」

打ち止め「ふんっ、今日のところは許してやろう、ってミサカはミサカは偉そうな態度でこの場を立ち去ってみたり」

フレメア「にゃあ。こうなったら決着は焼き芋大会の決勝戦でつけてやる」

フレンダ「焼き芋大会に決勝戦なんかないでしょ。てか結局仮眠取れなかった訳なんだけど。サイアクなんだけど」


―――
――





同日 14:00



係員1「では皆さん。もらったサツマイモに濡れた新聞紙を巻いてから、そのあとにアルミホイルを巻いてください」

係員1「何かわからないことがあったら、近くにいる係のお兄さんお姉さんに聞いてねー」



<はーい!! <わかったー!! <ラジャー



-H・Iの島-



フレンダ「……えっと」

一方通行「何でオマエらがピンポイントにこっちの島に来ンだよ」

フレンダ「し、知らないよ。何かこっちの島に行ってくれって係のおじさんに言われた訳よ」

結標「まあいいじゃない。知り合いは少しでも多い方が貴方にとっていいんじゃない?」

一方通行「知り合いが居りゃイイっつゥモンじゃねェだろォが」


フレメア「にゃあ。また会ったなちびっこ! あの時の決着をここでつけてやる。この焼き芋大会という大舞台で!」

打ち止め「受けて立つぜちびっこ! このスウィーツマイスターのミサカに焼き芋で戦いを挑むなんて十年早いぜ、ってミサカはミサカは腕組しながら胸を張ってみたり」


子供1「やったれフレメアちゃーん!」

子供2「負けるな打ち止めちゃーん!」

子供3「焼き芋大会に勝敗があるのか知らないけど、二人ともがんばれー!」


一方通行「……あァ、頭痛てェ」ズキズキ

結標「まあわからなくはないけど我慢しなさい」

フレンダ「アンタたちも苦労してるんだね」ハァ


子供4「ねえねえお姉さん」

結標「何かな?」

子供4「どうすればいいのかわかんないや。教えて」

結標「いいわよ。お姉さんに任せなさい」

一方通行「……オイ」

結標「何よ?」

一方通行「オマエ、大丈夫か?」

結標「大丈夫って何が?」

一方通行「焼き芋の作り方なンて教えてよォ」

結標「その質問の意図が分からないけど、大丈夫よ。きちんと教えてもらったし」

一方通行「ならイイが」

子供5「お姉ちゃん早くおせーてー」

結標「はいはーい」




結標「まずはテーブルに置いてある新聞紙を一枚とります」

結標「次にこれを水が入ったトレイに浸します」

結標「この水を浸した新聞紙をサツマイモに巻き付けます」

結標「そして、このアルミホイルをサツマイモにグルグルして巻きます」


子供6「なるほどなるほどー」

子供7「わかりやすーい」


一方通行(さすがに料理音痴レベル5の結標でも、焼き芋の作り方ぐらいまともに説明できるか。これなら安心――)


結標「あっ、あと最後にひと工夫するとおいしくできるわよ」

子供8「ひと工夫?」

子供9「なんだろう」

結標「アルミホイルを巻いたサツマイモにこれを塗りたくりまーす」



結標「てってれー♪ ガーソーリーンー!」



ズガン!!



結標「痛いっ!? な、何するのよ一方通行ぁ!?」

一方通行「それはコッチのセリフだ馬鹿野郎が!! 一体どォいう思考をすれば焼き芋にガソリンを塗りたくるっつゥ答えが導き出されンだ!?」

結標「あれよ。焼き芋っていうくらいだから圧倒的な火力で焼いてあげればきっとおいしいはずよ。だから火力を助けるために、サツマイモにガソリンを塗れば火力アップでおいしさアップ!」

フレンダ「えぇ……」

一方通行「オマエそンなことしたら火力が出すぎて焼き芋通り越して灰になるぞ! それどころか下手すりゃ結構なボヤ騒ぎになるかもしれねェ!」


子供4「なるほどガソリンを塗るのか」

子供5「うわー変なにおーい」

子供6「でもこれでおいしくなるなら……!」


一方通行「塗るンじゃねェガキどもッ!」


子供達「!?」ビクッ

フレンダ「ちょ、ちょっとアンタ子供にそんな怒鳴り方したらダメでしょ! ごめんねー君たち、このお兄ちゃんはみんなの安全の為に大声を出しただけで、怒ってる訳じゃないよー」

結標「そんな怖い顔にしちゃだめよ? 子供たちがおびえちゃうわ」

一方通行「誰のせいだ誰の」




打ち止め「……なるほど、さすがアワキお姉ちゃん。ガソリンはどうかと思うけど塗るというアイデアはいいと思うな。つまりアレが使える、ってミサカはミサカは意味深なことを言いつつポケットの中を探ってみたり」ゴソゴソ

フレメア「いいこと思いついた。大体、これを使えば焼き芋を最高のすうぃーつに出来る!」ゴソゴソ


打ち止め・フレメア「「じゃーん! このチョコレートを溶かして塗りたくればあっという間に、おいしいおいしいチョコレート焼き芋の出来上がり!!」」バッ


打ち止め「…………」

フレメア「…………」

子供1「おおっ、見事に息ピッタリで同じアイデア繰り出した!?」

子供2「あらかじめ打ち合わせをしていたかのようなミラクル!?」

子供3「しかも持ってるチョコレートのメーカーも同じだし」

打ち止め「おのれまねっこめー!! ミサカのグレイトなアイデアをパクったなー!! ゆるさーん、ってミサカはミサカは訴訟を辞さない覚悟で糾弾してみたり!」

フレメア「それはこっちのセリフだまねっこめー!! にゃあ!! ゆるさーん!!」 

打ち止め「こうなったらどっちがこのアイデアを持つにふさわしいか」

フレメア「勝負をして決着をつけるしかないし! ぎゃおー!!」


一方通行「ハイ、そンな奇抜なモン没収ゥ」ヒョイ

フレンダ「チョコレートなんて入れたら、焼き芋の良さが丸ごと消し飛んでしまうって訳よ」パシッ


打ち止め「ああっー!! ミサカのチョコレートがあ!! ミサカのグゥレイトォなスウィーツがあ!! ってミサカはミサカはジャンプしてチョコレートの奪還を試みてみる!」ピョンピョン

一方通行「返してやるよ。この焼き芋大会が終わった後でなァ」

フレメア「にゃあ! 返してお姉ちゃん! これがないと焼き芋大会で優勝できない!」

フレンダ「焼き芋大会に優勝なんてない訳よ。みんな仲良く一等賞。いい思い出ができた人が優勝って訳」

結標「あのー、ちょっと四人ともいい?」

フレンダ「何?」

結標「もうみんな準備ができて焚火のほうに行ったわよ? だから早く準備してくれるとありがたいんだけど」

一方通行「どォでもイイが、責任の一端を担っているオマエにだけは言われたくねェよ」

結標「な、何でよ!?」

一方通行「とりあえずそこに置いてあるガソリンが入ったポリタンクを、元あった場所に戻せば理由が分かるかもしれねェなァ?」

打ち止め「……で、結局これどうやってやればいいんだっけ? 焼き芋の準備って、ってミサカはミサカは腕を組んでみる」

フレメア「さあ? 私もわかんない。にゃあ」

一方通行「オマエらは今まで何を聞いていたンだ?」

フレンダ「はぁ、二人とも見てて。こうやってサツマイモに濡れた新聞紙を巻いて……はっ!」

フレンダ(これの新聞紙の間にサバ缶のサバを入れれば、落ち葉で蒸し焼きしたサバというまだ試したことない食べ方を開拓できるんじゃ……!?)

一方通行「オイ」

フレンダ「な、なにかな?」

一方通行「オマエもそっち側に行く気かコラ」

フレンダ「な、なんのことやら……」スヒュー

一方通行「そのセリフが言いてェなら、その手に持ったサバ缶をしまってから言いやがれよサバ女」


―――
――






同日 14:30


子供A「ドッジボールする人集まれー!」

子供B「わーいやるやるー!」

子供C「この俺の球で全滅DA!」


子供1「じゃあゾンビにちなんでゾンビ鬼ごっこしようよ」

子供2「ゾンビ鬼ごっこって?」

子供3「捕まった人が鬼になるのは同じだけど、捕まえた鬼の人がそのままでだんだん鬼が増えていくっていうヤツだっけ?」

子供1「そうそう。ゾンビみたいに増えていくからゾンビ鬼」

子供4「だったらボクがゾンビをやるよ。がおー、みんなゾンビにしてやるー」

フレメア「おのれゾンビめ! 私が全滅させてやる。にゃあ!」

子供5「遊び方が違うよ! 逃げなきゃダメじゃん!」

打ち止め「ふっ、逃げているだけではいつまで経っても戦いに勝つことは出来ぬのだよ、ってミサカはミサカは歴戦の勇者のような口ぶりになってみたり」

子供6「いや、だからそういう遊びじゃないんだってば」



ワーワーギャーギャー!!



一方通行「……うるせェヤツらだ」

結標「まあ子供だし。それに元気なのはいいんじゃない?」

一方通行「うっとォしいだけだろ」

結標「特に元気に駆け回ってる男の子、相手をやっつけようとボールを一生懸命投げてる男の子、いいわよねぇ……」ウットリ

一方通行「何を言っているンだオマエは」


係員1「結標さん。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけどいいかな?」

結標「あっ、はい。大丈夫です、すぐ行きます」

一方通行「俺は行かなくてイイのか?」

結標「別にいいんじゃない? 私を名指しだし。ゆっくりベンチにでも座って子供たちを見守っててちょうだい」

一方通行「そォか。じゃあお言葉に甘えて」ゴロン

結標「誰が寝ていいって言った?」

一方通行「チッ」



打ち止め「うぉぉぉぉ、ゾンビだぞぉぉぉ、血ぃ吸わせろぉぉぉ、ってミサカはミサカは迫真の演技をしながら全速力で追いかけてみたり」シュバババ

フレメア「にゃあ!! 大体ゾンビが全力疾走するなんて反則だ!! ルール違反だ!!」

打ち止め「いつからゾンビが全速力で走れないと錯覚していた? ってミサカはミサカは的確なコーナリングで追い詰めてみる」キキィィ

フレメア「なん…‥だと……?」

子供7「ていうか血を吸うのはゾンビじゃなくてバンパイアじゃね?」




一方通行「……元気だなァ。面倒なくらい元気だなァ」

フレンダ「ちょっとゴメン。隣いい?」

一方通行「無理」

フレンダ「な、何でさ!? いいじゃん空いてるんだから!」

一方通行「何で俺が座っているベンチに来やがったンだ? 別のとこ行け」

フレンダ「いやー、だって他のベンチ誰かしらに座られてんじゃん? 知らない人の隣に行くはちょっとアレだからここに来たって訳」

一方通行「迷惑な話だ。つゥか、座るだけならあそこのパイプ椅子並べたブースに行きゃイイだろォが」

フレンダ「私は別に座りたいわけじゃない。ちょっと昼寝をしたい訳よ」

一方通行「なおさら向こうでイイだろ」

フレンダ「あんな目立つところで昼寝するのはやだ」

一方通行「そンな変わンねェだろが」

フレンダ「違うって。まあまあお仕事の邪魔しないから」スッ

一方通行「オマエの存在そのものが邪魔なンだよなァ」

フレンダ「じゃ、おやすみ」

一方通行「話聞けよオマエ」

フレンダ「…………」

一方通行「…………」

フレンダ「……ねえ、ちょっといい?」

一方通行「結局邪魔すンのかよ」

フレンダ「ちょっとくらいいいじゃん」

一方通行「寝ろよ。そのつもりでここに来たンだろ?」

フレンダ「何かね、いざ寝ようと思って目をつぶってみるとあら不思議、なぜだか眠気がなくなってたんだよね。よくあることでしょ?」

一方通行「少なくとも俺にはねェよ。てか寝る気がねェなら向こうに行け」

フレンダ「……はぁ、しかしあーやって元気にやってる子たちを見ると、私は一体何をやっているのかなぁー、って思う訳よ」

一方通行「何勝手に話を続けてンだよ。話聞けコラ」

フレンダ「アンタって一応暗部出身でしょ? それなのに今はこーいう平凡な日常を送れてるなんて、羨ましい限りって訳よ」

一方通行「……オマエは暗部を抜けたいと思ってンのか?」

フレンダ「さあ? わかんない」

一方通行「ハァ? オマエが羨ましいつったンだろォが」

フレンダ「羨ましいからと言っても、そうなりたいと思うこととイコールじゃないよ」

フレンダ「私は暗部で何十人もの人を殺してきたし、それについては何とも思ってない。むしろ殺すことは快感を覚えるくらい大好きって訳」

一方通行「とンだクソ野郎だな」

フレンダ「アンタだけには言われたくないんだけど。まさか自分は違うとか言うつもり?」

一方通行「…………」




フレンダ「ま、暗部にいるヤツなんて基本クソ野郎しか居ないから、アンタの言ってることは正しいっちゃ正しい訳よ。でも、そんなクソ野郎な私でも、さっきみたいにたまに思うことがあるのよ」

フレンダ「こういう平凡な日常を過ごす度、楽しむ度、安心する度、何で私は暗部なんかに堕ちたんだろう、ってね」

一方通行「後悔してるっつゥことか」

フレンダ「いや、ところがそうでもないよ。いざお仕事してるときの充実感は、まさしく『生きてる』って感じがして楽しいし、たっかい法外のギャラをもらった時だってやっててよかったって思う訳」

一方通行「で、オマエは一体何が言いてェンだ?」

フレンダ「別にぃ。ただちょっと愚痴りたかっただけよ。アイテムじゃこんなこと絶対に言えないし、アンタみたいなこっちの事情知ってる知り合いいないし。ただそれだけって訳よ」

一方通行「くっだらねェ。そンな愚痴言うくらいならやめちまえ」

フレンダ「あはは、笑えない冗談だね。それがどれだけ難しいことか、知ってて言ってるんだよね?」

一方通行「ああ」

フレンダ「ちっ、暗部ってのは底なし沼みたいなものよ。沈むのは簡単だけど、這い上がろうすることがどれだけ難しいか。難しいどころか不可能と言ってもいいかもしれない」

フレンダ「みんながみんなアンタみたいなラッキーなんて起きる訳ないってこと。わかる?」

一方通行「…………」


フレンダ「ま、ついでに一つ忠告しておくけど。間違ってもまたあの泥沼に足突っ込もうなんて思わないことね。絶対にもうラッキーなんてもの起きやしない訳よ」

フレンダ「今暗部間ではあることが噂になっているの。近いうちに暗部組織で抗争が起こる。下手したら暗部組織一つを残して全て壊滅する、なんてことがあるかもしれない」

フレンダ「そんな状況に軽々しく突っ込んでもみなさいな。今度こそアンタは一生泥沼、もしかしたら死んでしまうかもね♪」


一方通行「……ふわァ」

フレンダ「……えっ、あれ? 何でこの空気であくび? わけわかんない」

一方通行「悪りィ。あまりにもどォでもイイ話だから、つい眠気が」

フレンダ「ふふふ、さすが第一位って訳よ。こんな話を聞いても何一つ取り乱さないなんてね」

一方通行「取り乱すだァ? オマエは大きな勘違いをしてンだよ」

フレンダ「勘違い?」

一方通行「ああ。俺は暗部組織に堕ちよォなンて欠片も思ってねェし、オマエら暗部の連中がどンな馬鹿騒ぎしよォがどォでもイイと思っている。まァだけど一つだけ言えることがある」



一方通行「もし俺の身内に指一本でも触れてみろ。全員まとめて俺が叩き潰すぞ」



フレンダ「……そう、それは残念」

一方通行「残念、だと?」

フレンダ「うん。もしアンタが暗部に堕ちるってなったら、ぜひともアイテムに味方して欲しかったなーとか思ってた訳よ」

フレンダ「そうしたらこれから起きるであろう抗争でも、私の生存率はぐっと上がるしね。ま、麦野はいい顔しなさそうだけど」

一方通行「チッ、自分勝手なヤツだ」

フレンダ「当たり前じゃん。暗部において一番重要なのは自分が生き残ること。他人のことなんて気にするな、それが暗部での鉄則」

一方通行「そォかよ。だったらせいぜい死なねェよォに頑張ってくれ」

フレンダ「ハイハイ頑張りまーす。じゃ、お仕事邪魔したね。また後で」

一方通行「……ああ」




一方通行「…………」

結標「ただいまー。はぁ、疲れた。何かいろいろ雑用頼まれちゃった。あんまり能力って見せびらかせない方がいいのかもね」

一方通行「能力が世の為人の為になってンだ。よかったじゃねェか」

結標「そうなのかしら?」

一方通行「まァ、俺が同じ立場になったらブチ切れるだろォがな。なにコキ使ってくれてンだコラ、ってな」

結標「うん、知ってた」

一方通行「そォかよ」

結標「で、とくに問題はない?」

一方通行「知らね」

結標「知らね、って貴方今まで何やってたのよ。ちゃんと子供たちを見守ってなかったの?」

一方通行「忘れてた」

結標「まったく。どうせまた昼寝とか何とかやってたんでしょう?」

一方通行「気にすンな」

結標「いや、気にするなとかそういう問題じゃないでしょ」

一方通行「ハイハイ悪かった悪かった」

結標「…………」

一方通行「あァ? 何だよ」

結標「貴方、何かあった?」

一方通行「別に、何もねェよ」

結標「そう。ならいいんだけど」

一方通行「…………」


―――
――





同日 15:00


打ち止め「はふはふっ、おおっー甘くておいしい! さすが焼き芋そのままでも見事なお味ですな、ってミサカはミサカは噛みしめてみる」

フレメア「にゃあ。大体チョコレートがいらないなんてわかってた。しんぷるいずざべすと!」


結標「ほんと、おいしいわね。なるほど、石焼き芋のおじさんはこんなすごいものを売っていたのか」

一方通行「……甘ェ」

フレンダ「あら? 第一位は甘いものが苦手な訳?」

結標「そうなのよ。甘すぎるものを食べたときは気絶するくらい嫌いなのよ」

一方通行「余計なこと抜かしてンじゃねェよ」

フレンダ「へー、それはあれだよね。病気だよ病気」

一方通行「ンだとオマエ!」

フレメア「にゃあ。お兄ちゃん好き嫌いしちゃだめだよ。大きくなれないよ」

一方通行「あァ?」

打ち止め「そうだそうだー! ってミサカはミサカは便乗してみたり」

結標「ぷふっ」

フレンダ「にひひっ、たしかにそうだね。第一位様とあろうものが食べ物の好き嫌いなんかしてたら駄目って訳よ」

一方通行「人間っつゥのはなァ、摂取しちゃいけねェモンを摂取したときにはよォ、拒絶反応が出て身体に重大な問題を起こすンだよ」

フレンダ「それって毒物か何かを摂取したの時の話じゃない?」

結標「ただの好き嫌いを小難しく言い換えただけよ」

打ち止め「つまりピーマンは毒だった……? ってミサカはミサカは驚愕の事実に気付いてみたり」

フレメア「グリーンピースも毒って感じの味がする。にゃあ。やっぱり食べなくて正解」

一方通行「好き嫌いしてンじゃねェクソガキども」

結標「お前が言うな」




係員1『それでは、本日はお集まりいただきありがとうございました。これで焼き芋大会のほうを終わりとさせていただきます』

係員1『お土産としてお菓子の詰め合わせをご用意しておりますので、お帰りの際はお持ち帰りいただくよう、宜しくお願い致します』


打ち止め「おおっー!! こんなにいっぱいお菓子をもらえるなんて、ってミサカはミサカはサプライズに歓喜してみたり」

一方通行「オマエそれを家に持ち帰ってすぐ食うつもりじゃねェだろォな」

打ち止め「な、何のことやら……」

一方通行「オマエの今日のおやつは焼き芋で終わってンだよ。これ以上の食い物は余計な間食だ」

結標「そうよ。晩ごはん残したら黄泉川さん怒るわよ」

打ち止め「ひえっ、それは非常に困るなあ、ってミサカはミサカは諦める決意をしてみる」

フレメア「ふふふ。それに関しては私は大丈夫! 大体このお菓子を食べても夕飯なんてよゆーで完食できるのだ!!」

フレンダ「アンタこの前パフェとかクレープとかいろいろ食べた日、夕飯食べ切れずに食堂のおばちゃんに怒られてたでしょ?」

フレメア「な、なぜその機密情報をお姉ちゃんが!? 一体どうして!?」

フレンダ「寮監さんに聞いた」

フレメア「にゃあ。まさかそんなところに繋がりがあるなんて……」

フレンダ「そりゃそうでしょ。一応、アンタのここでの保護者なんだから」

一方通行「…………」

打ち止め「お互い大変だね、ってミサカはミサカは仲間意識を持ってみたり」

フレメア「うん。われわれが今考えるべきことはただ一つ!」



打ち止め・フレメア「「いかに晩御飯を食べなくて済むようにしておやつをたくさん食べるか!!」」

一方通行・フレンダ「「いや、おやつを食べずに晩御飯を食えよ!!(食べなさいよ!!)」」



結標「だから貴方が言っても正直お前が言うな、って感じなんだけど」




フレンダ「じゃ、私たちはこれで。残りの係員の仕事頑張ってね」

結標「うん、ありがとう。気を付けて帰ってね」

フレンダ「こんな時間からこの平和な第七学区に危険なんて早々ないって訳よ。それに私を誰だと思ってる訳?」

結標「えーと……爆弾魔?」

フレンダ「あれ? 私のイメージってそれだけ? いや、間違ってはないけど、あれ?」


フレメア「にゃあ。今度会ったときは、フロントスープレックスで即死させてやるから覚えていろよちびっこ」

打ち止め「ふんっ、そんなものお姉様流まわし蹴りで見事に迎撃してやるぜ。覚悟しておくんだなちびっこ、ってミサカはミサカは宣戦布告してみる」


結標「この子たちは仲が良いのか悪いのか、さっぱりわからないわね」

一方通行「クソガキなだけだろ」

フレンダ「それじゃあ第一位、次会うときは敵じゃないことを祈ってるよ」

一方通行「それはオマエら次第だ」

フレンダ「そうだねー。結局、こればかりは神のみぞ知るってところな訳かな?」

結標「?」

フレンダ「結標さんもまた……いや、もしかしたらもう会うことはないかもしれないね」

結標「何で? きっと会えるわよ。学園都市はそんなに広くないわ」

フレンダ「……そうだね。それじゃ、また会おうね。フレメア、行くよ」

フレメア「にゃあ。またなちびっこ! あっ、あと私にはフレメアという名前があるから覚えておけ!」

打ち止め「ミサカにも打ち止めって名前があるんだからそっちも覚えておけちびっこ! ってミサカはミサカは怒りの自己紹介をしてみたり」


結標「……さて、片付けの手伝いに行きますか」

一方通行「面倒臭せェ」

結標「今度こそ貴方が能力使って頑張りなさいよね。大まかな移動なら私の方が効率いいかもだけど、細かい片付けとなると逆に貴方の方が効率的でしょ?」

一方通行「オマエよりはマシってだけで非効率なことには変わりねェよ」

結標「ベクトル操作による超高速机・椅子の折り畳み! みたいなの出来ないわけ?」

一方通行「やってもイイが、それで机・椅子がブッ壊れても責任は持ってくれるっつゥことだよなァ?」

結標「……じゃあいいです」

一方通行「ま、効率的に使える部分くらいはチカラァ使ってやるよ」

結標「珍しいことを言うわね。自分からそういうこと言ってくるなんて」

一方通行「焼き芋分の働きくらいしねェとな」

結標「本当珍しいわね」

打ち止め「じゃあミサカは終わるまでおやつを食べながら待ってるね、ってミサカはミサカはキャ○ツ太郎の開封作業に取り掛かってみる」

一方通行「だから食うなっつってンだろ。オマエも焼き芋分の働きをしろクソガキ」


――――――


学園都市に町内会なんてあるのか知らんけどままえやろの精神
ここまで禁書3期放映中くらいに書いてて心折れた分を直したやつで次からはスレ建てのタイミングで書いてたつまり現在進行系で書いてるやつ

次回『花見(前編)』

こっから前中後編の長編
なんで花見なんかにこんなに尺使ってんですかねぇ・・・


投下



10.花見(前編)


March Third Wednesday 12:30 ~昼休み~

-とある高校・一年七組教室-




青ピ「花見に行こうや!!」ドン




吹寄「……いきなり何? うるさいわよ?」

一方通行「同感だ。つゥか、何でオマエらはいっつも俺の席の周りに集まってくンだ? 別のところ行けうっとォしい」

姫神「それはアクセラ君と結標さんの席が隣同士だから」

一方通行「だったら吹寄か姫神の席で食ってろよ」

吹寄「だってこの辺りの席の人たちはみんな学食行くんだもの。つまり空席だということだから席の確保が容易なのよ」

土御門「にゃー、オレたちはれっきとした理由があるんだぜい。アクセラちゃんといると楽しいからにゃー、おちょくる的な意味で」

青ピ「そうそう。ボクらは何も面白みのない昼食の時間に彩りを付けるために、アクセラちゃんにちょっかいかけながらご飯食べてるんやでー」

上条「テメェら、その自分たちのたちの部分に、まさか俺を含めてるんじゃねえだろうな?」

青ピ「何をいまさら。ボクらデルタフォースはいつでも一緒、一心同体!」

土御門「さらに言うなら、オレたちはスクエアフォースでもあるから、アクセラも一緒に昼休みを過ごすのは当然だということですたい」

一方通行「だから一緒にすンじゃねェって何度言えば分かる。そろそろ愉快なオブジェ展覧会を開催した方がイイかもしれねェよなァ三馬鹿諸君?」

上条「げっ、また俺が巻き込まれるパターン!? ゆっくりほのぼのメシくらい食わせろよクソったれ!」

土御門「カミやーん。俺たちにほのぼのな昼休みなんて存在しないんだぜい?」

青ピ「せやせや。ボクらがほのぼのな昼休みを過ごす為にはなぁ、ボクら四人が美少女化して日常系四コマ漫画のキャラみたいなきゃっきゃうふふ、みたいなことにならんとできへんのやでぇ!」

一方通行「昼時に気持ち悪りィモン想像させンなクソ野郎がッ!!」





ワイワイギャーギャー!!



吹寄「うるわいわねえ、お昼ぐらい静かに食べられないのかしら?」

姫神「それは今更な話」

結標「さっき青髪君が言ってたけど、花見いいわね! 私花見行きたいわ!」

吹寄「花見かー、今年は早咲きだから今がシーズンになるのかしら?」

姫神「たしかそう。ニュースでは今週末くらいから満開とか言っていた」

青ピ「そうそう。だから今週末くらい一緒に行かへん? って誘おうと思って机叩いたんよ。なのに何でこんなことになったんやろ?」ボロッ

吹寄「それは貴様らが馬鹿だからじゃないかしら。ねえ上条当麻?」

上条「何で俺が主犯みたいな言い方なんだよ? 俺むしろ被害者なんだけど」ボロッ

一方通行「いや、被害者は俺だろ」

土御門「実行犯が何か言ってるにゃー」ボロッ

結標「一方通行! 花見行きましょうよ花見!」

一方通行「花見だとォ? そンなの勝手に通学路に咲いてる桜でも見とけよ」

結標「それは花見とは言わないんじゃないの? 世間一般的な意見として」

一方通行「知るか」

土御門「しかし満開時に行くなんて人が多そうだにゃー。ましてや週末だし」

青ピ「だからこそ行くんやろ! 人が多そうだから行くのやめよう、って思っている人多そう読みの週末花見決行やッ!」

姫神「そんなことを考える人が多いのなら。世の中人込みの大渋滞なんて起こらない」

吹寄「ま、こういうので大切なのは場所取りよ。いかにいい場所を確保するかが楽しい花見ができるかを左右するわ」

結標「なるほど。つまり私が花見決行一日前から場所を確保しておけばいいわけね」

一方通行「やっぱり馬鹿だろオマエ。春が来ているとはいえまだ夜は寒いンだぞ? そンな寒空の中で一晩過ごすつもりか?」

結標「あははー、やっぱ駄目かしら?」

一方通行「そンなモンで風邪ひかれて寝込まれたら、コッチが困るンだっつゥの」

結標「……もしかして、心配してくれてるわけ?」

一方通行「してねェよ。ただ風邪で寝込まれたあとに起こるであろう、俺への被害が面倒だから止めてるだけだ」

姫神「相変わらずのツンデレ」

吹寄「素直じゃないわよね」

一方通行「うるせェぞクソアマども」




吹寄「まあ行くことは決定としていつ、どこへ行くのかを決めましょ?」

土御門「場所は第七学区の桜公園でいいんじゃないか? メジャーなところだから人も多そうだけどにゃー」

姫神「メジャーじゃなくていいところは知らないの? いろんな隠れた飲食店を知っている。土御門君なら知っていそうだけど」

土御門「あるにはあるけど、第七学区からは結構遠めのところになるな。電車とバス乗り継いで、バス停から結構歩く感じになるけどいいか?」

土御門「それに花見の為に作られたところじゃないから、コンビニとかが遠かったりするからいろいろ不便だぜい」

吹寄「……それを考慮するなら、早めに桜公園のほうの場所を確保して花見したほうがよさそうね」

姫神「うん。帰りの時間を考えなくてもいいのが大きい」

結標「場所はそれでいいとして日程はどうする? とりあえず今週末やるとして土曜日か日曜日よね? 私はどっちも大丈夫だけど」

青ピ「もちろんボクも両方大丈夫やで! なんたって言い出しっぺなんやからなー」

姫神「私は日曜日の午前中にちょっと行くところがある。といっても昼まではかからないくらいの用だけど」

土御門「オレは土曜日の昼から以外だったらいつでもいいぜい」

上条「悪りぃ、俺土曜日のほうは夕方にバイトあるから無理だ。昼開始の夕方解散ならできないことないけど」

吹寄「あたしは土曜日は一日用事があるからダメね。だから日曜にやってくれるならありがたいんだけど」

一方通行「俺は両方とも昼寝で忙しいな」

結標「……つまり、日曜日の午後からなら問題ないってことよね?」

吹寄「そうね。じゃあ日曜日の午後からってことで」


みんな「はーい!」


一方通行「ちょっと待て。俺の意見がまったくと言っていいほど反映されてねェ」

吹寄「当たり前でしょ。昼寝なんてただの暇つぶしでしょ? また別の日にやりなさいよ」

一方通行「暇つぶしだとォ? 何を言ってやがンだ、昼寝っつゥのは趣味、生活の一部、いや人生――」

土御門「場所と日時が決まったところで何をするかを決めようぜい」

吹寄「そうね。花見と言ったら飲み食いよね。花より団子という言葉もあるわけだし」

姫神「それなら私がお弁当でも作ってくるよ。店屋物やお菓子だけじゃ味気ないし」

青ピ「おっ、ヒメやんの手作り弁当やってえ!? そいつはめっさ楽しみやなぁ! なぁカミやん?」

上条「おう。姫神料理うまいからな。すっげぇ楽しみ」

姫神「がんばります!!」ガタッ

上条「うわっ、急にどうした!?」

土御門「姫神も結構単純だにゃー」

結標「お弁当を用意してがっつり食べるってことは、時間帯は夕方になるのかしら?」

青ピ「そりゃそーでしょ! 夕方どんちゃん騒ぎして、最後夜桜を見て帰宅。これが最高の花見プラン!」

土御門「どんちゃん騒ぎするためにはいろいろ余興が必要ですなー、ピアス君」

青ピ「そうですねー。これは我々で用意をする必要がありますねー、カミやん君」

上条「えっ、俺も用意するのか?」

土御門「当たり前だろ上条当麻ぁ!! 貴様まさかただで花見に参加できると思っていたのか!?」

青ピ「働かぬものに食わすメシはなぁい!! それ世界の定理ッ!!」

上条「ぐっ、お前らに言われると何か納得いかねえけど正論だ……わかったよ手伝やいいんだろ余興の準備!」




吹寄「……準備するのはいいけど、変なもの持ってこないでよ? わかっているんでしょうね上条当麻?」

上条「俺に忠告するより先に、そこのアホ二人に言った方がいいと思うんですけど吹寄さん!?」

一方通行「…………」ムスッ

姫神「どうしたのアクセラ君? 会話に参加もしないで」

一方通行「別に。何でもねェよ」

結標「勝手に話が進んでいくから拗ねてるだけよ」

姫神「なるほど」

一方通行「勝手なこと言ってンじゃねェぞコラ」

吹寄「あっ、姫神さん。お弁当作り大変そうだからあたし手伝いに行くわ。材料の買い出しとかお弁当持っていくのとか大変でしょ?」

姫神「それはありがたい。どうせヤツも来ると思うから荷物は多くなりそうだし」

吹寄「ヤツ……?」

姫神「私の宿敵」

結標「吹寄さんがお弁当手伝うのなら、私も手伝いに行こうかしら? どうせ暇だし!」



みんな「「「「「「それだけはやめろッ!!」」」」」」

結標「みんなしてひどいっ!!」ガーン



吹寄「お弁当はこっちに任せてくれていいから大丈夫よ。それにあなたには、いえあなたたちには重大な役割があるわ」

結標「役割? それは一体……?」


吹寄「結標さんとアクセラ、あなたたちには花見の場所取りをお願いするわ!!」


結標「おおっ! たしかにそれは重要な役割! 何か一番しょぼい役どころっぽいけどたしかに重要!」

一方通行「ちょっと待て! 何で俺がそンな三下みてェな役割やらなきゃいけねェンだ!?」

土御門「アクセラちゃーん。働かざるもの食うべからず、何の役目もないニート野郎は姫神特製弁当を食う権利はないんだぜい!」

一方通行「つーか、花見自体参加するとは言ってねェぞ!」

結標「どうせ参加することになるんだしいいんじゃない?」

一方通行「どォせって何だ!? それは一体どォいうことだオイ!」

上条「お前参加しないのか?」

一方通行「当たり前だろォが。俺は昼寝で忙しいっつっただろ」

青ピ「よくよく考えたら昼寝で忙しいって面白い言葉やなぁ、あははは」

一方通行「そのニヤケ面今すぐ凹ませてやろォかクソ野郎が」

姫神「アクセラ君。いいことを思い付いた」

一方通行「あァ?」

姫神「アクセラ君は昼寝をしたいんだよね? 日曜日は」

一方通行「そォだな」


姫神「だったら花見の会場で場所を取ってから。そこでゆっくり昼寝すればいい。そうすれば場所も取れて昼寝がこなせる。完璧な一石二鳥」




一方通行「お、おォ」

上条「す、すげえ。一方通行を言葉でねじ伏せた」

土御門「そうか? 割といつも言葉でねじ伏せられてるような気がするけどにゃー」

青ピ「まああれよ。実はみんなと花見したいけど素直になれないツンデ――」



ガシッ!



一方通行「で、青髪ピアス君。オマエの死体は桜の木の下に埋めとけばイイのかァ? なァ?」ニヤァ

青ピ「あ、あははははだめだよアクセラくーん。綺麗な桜の木の下には人の死体が埋まってるなんて、あんなの迷信やでー」

一方通行「迷信かどォか、ちょっと試してみようぜ?」グググッ

吹寄「やめなさいアクセラ。こんなヤツの汚い血で桜を汚しちゃダメよ」

青ピ「イタイイタイ! アクセラちゃんのベクトル握力と吹寄さんの容赦ない言葉の暴力で二重に痛いっ、でも感じちゃう!!」

一方通行「うわっ、気持ち悪っ」パッ

吹寄「今更ね」

結標「ところで場所取りって何時くらいに現地に行けばいいのかしら?」

一方通行「オマエさっき一日前とか自分で言ってなかったか?」

結標「いや、あれは場の勢いから出た適当な発言というか……」

土御門「まあ、あそこの公園は結構広いから、そんな早く行かなくてもいい場所は取れるとは思うけどにゃー」

上条「でもこの前ニュースで見たぞ。花見の為に朝五時からゲーム機片手に場所取りしてるヤツ」

土御門「安心しろ。そいつはガチ勢だ。まともに張り合う必要性は皆無だ」

結標「五時か……頑張ればいけそうね!」グッ

一方通行「やっぱり馬鹿だろオマエ」

吹寄「まあ五時は早すぎだとしても、いい場所取る為なら昼くらいに行けばいいんじゃない?」

青ピ「でも満開日やからそれじゃあ遅いかもわからんよなぁ」

一方通行「そンなに心配なら俺の代わりに朝五時から待機しててくれよピアスクン」

青ピ「ボクには花見を盛り上げるための余興の準備があるから」

一方通行「クソの役にも立たねェ余興なンて準備の必要ねェだろ」

青ピ「なんやてっ!? だったらやってやらぁ、アクセラちゃんがあっと言わせるような余興をッ!!」

一方通行「そォかよ。そりゃ楽しみだ」




結標「ちなみに花見の開始時間は?」

吹寄「夕食もかねてだから、まあちょっと早いかもだけど五時くらい? 次の日学校だから終わりが遅くなりすぎてもあれだし」

結標「昼十二時に来たとしても五時間待機か……長期戦ね。雑誌とかいっぱい持っていけばいいのかしら?」

吹寄「それかいい機会だし公園の散歩とかでもして時間潰せばいいんじゃない? そこそこ広いところだし。場所取りは片方でも居ればいいわけだし」

姫神「何なら二人で桜並木道を歩いてみては? 平たく言うならお散歩デート」

結標「ちょ、姫神さん何を言っているのよッ! こんな状況でッ!」

姫神「おっと口が滑った。てへ」

一方通行「……つゥか、場所取りに行ってンのに二人で出歩いたら意味ねェだろ。アホか」

結標「…………」

姫神「…………」

一方通行「あン? 何だコレ?」

青ピ「アクセラちゃん。何というか、某最強のスルースキル持ちを見て呆れてたけど、キミも大概なんだよなぁ……」

一方通行「ハァ? 何言ってンだコイツ?」

上条「さあ?」

土御門「要するにアクセラちゃんも馬鹿野郎ってわけだにゃー」

一方通行「言っている意味はよく分からねェが、とりあえず喧嘩売ってるっつゥことで構わねェンだよなクソ御門クン?」

土御門「そうだ。さぁ、能力なんて捨ててかかってこい!」

一方通行「やなこった」カチッ

土御門「よし、カミやんあとは任せたッ!」ダッ

上条「だから俺を巻き込むんじゃねえッ!」

吹寄「……はぁ、ストップストップ収集付かなくなる前に話をまとめるわよ」


吹寄「花見の会場は第七学区の某桜公園。日時は今週末の日曜日の午後五時集合」

吹寄「各員の役割は、姫神さんとあたしでお弁当係。三馬鹿は特には求めてはないけど余興の準備係。結標さんとアクセラで場所取り」




青ピ「ひどい言われようやなぁ。せっかく盛り上げようとしたのに」

土御門「そうだにゃー。カミやんに裸踊りでもさせて盛り上げようとしたのに」

上条「絶対やらねえぞ? 俺の幻想殺しでそのくだらねえ余興全部ぶっ壊してやるよ」

姫神「……少し見てみたいかも」ボソッ

上条「あれ? 何か聞きたくない言葉が聞こえてきたんですが姫神さん!?」

結標「吹寄さん。ここ以外のメンバー連れてくるのあり? たぶん話聞いたらうちの打ち止めちゃん付いてきそうなんだけど」

吹寄「別にいいんじゃない? 人数多い方が楽しいし」

一方通行「それを認めるとなると、上条さンちのリーサルウェポンが来るっつゥわけだな」

上条「あっ、やべえ。忘れてた……」

土御門「お弁当全滅の危機だにゃー」

姫神「大丈夫。それを想定して多めに作るつもり」

結標「さすが姫神さんね!」

上条「ありがとうございます姫神様!」ハハァ

姫神「くるしゅうない」

一方通行「はァ、だがその想定を上回るのがあのシスターだ……しょうがねェ。俺も何か適当に買ってくるか」

上条「ありがとうございます一方通行様!!」ハハハァ

姫神「……むっ」ジロッ

一方通行「ンだァその面ァ? 人がせっかく食料防衛に手ェ貸してやろうって言ってるのによォ」

姫神「別に」





キーンコーンカーンコーン



結標「あっ、予鈴」

吹寄「話は大体まとまったし。あと何かあったらまた話しましょ」

姫神「わかったわ。さて。今のうちに何作るか考えとかなきゃ」

青ピ「とりあえずあれとあれを用意して……」ブツブツ

土御門「やっぱり罰ゲーム的なのがあったほうがいいかにゃー。じゃああれを……」ブツブツ

上条「こいつら絶対悪だくみしかしてねえ」

一方通行「くだらねェ」

結標「今から楽しみよね。ね、一方通行?」ニコッ

一方通行「今から億劫だよ」

結標「それは楽しみだ、という解釈でいいのかしら?」

一方通行「オマエの思考回路はどォなってやがる」


吹寄「あっ、そうだ結標さん」コソッ

結標「何かしら?」

吹寄「姫神さんじゃないけど、せっかく二人きりの状況なんだからこのチャンス活かしたほうがいいとあたしも思うわ」

結標「えっ、いやそんな急に言われても……」アセッ

吹寄「どうせなら告っちゃえば?」

結標「!?」ブッ

吹寄「ま、それは冗談だけど。ちょっとくらいは頑張ってみてもいいんじゃない? じゃね」タッタッタ

結標「えぇ……」


―――
――





同日 19:30

-黄泉川家・食卓-



結標「――というわけで、今週末の日曜日に花見に行くことになったんですよ」


黄泉川「おっ、いいじゃんねえ花見。綺麗な桜を肴にこう酒をぐいっと」

一方通行「オマエは酒が飲めれば何でもイインだろォが」

黄泉川「そんなことないぞー。やっぱシチュエーションっつーのは大事だと思うのよ。飲み屋で飲む酒と桜を見ながらの酒、また味わいが違うじゃんねえー」

打ち止め「なるほど、シチュエーションか。部屋の中で食べるお弁当と公園とかで食べるお弁当の味が違う現象みたいな感じだね、ってミサカはミサカは一例を挙げてみる」

黄泉川「もちろんお前らと団欒しながら飲む酒もうまいぞー!!」

一方通行「うるせェ黙れ酔っ払い」

芳川「でも淡希。その日ってたしか満開の予報が出てたわよね? 人が多いんじゃない?」

結標「はい。だから早めに行って場所を確保するのが私と一方通行の役目なんですよ」

芳川「ふーん。まあ、せいぜい早く出ることね。学園都市には花見ガチ勢が結構いるから」

結標「そ、そうなんですか……? 昼くらいに行こうかと思ってたんですけど……」

芳川「それくらいなら主要な場所が抑えられてる可能性があるわね。残ってるとしたら、端っこのしょぼくてトイレもコンビニも遠い不便な場所」

結標「な、なんと!?」

一方通行「面倒臭せェ展開になってきやがったな」

芳川「そこそこの場所でいいのなら九時くらいに行くのが安全だと思うわよ」

打ち止め「詳しいねヨシカワ」

芳川「まあね。研究者時代にこの時期は花見してたからそれなりに知ってるわ」

結標「九時か……学校行く日と同じくらいの時間に起きて、行動しなきゃいけないわね」

一方通行「別に場所とかどこでもよくね?」

結標「嫌よ。場所取り係になったからには出来る限りいい場所を確保したいわ。レジャーシートが敷けないみたいな場所は絶対にごめんよ」

一方通行「ま、別に出遅れてたとえ場所がなくてもアレだ。俺がちょっとチカラ使って脅してやりゃ、連中快く場所空けてくれると思うぜ?」

黄泉川「うん? 何か悪事が聞こえてきた気がするんだけど、気のせいか?」ジロッ

一方通行「気のせいだろ」

黄泉川「あんまり無茶するなよお前ら。一応、その日は私のいる班のアンチスキルが見回りしてると思うから、ちょっと問題でも起こしてみろ。いくら身内でも容赦しないじゃん」

結標「き、気を付けます」

一方通行「チッ、厄介なヤツが居やがる」

結標「……ってことは黄泉川さん当日はお仕事ってことですか?」

黄泉川「そうじゃんね」

結標「それは残念ですね。一緒にどうかな、って思ったんですけど」

一方通行「ソイツは朗報だな。面倒なのがいなくて清々する」

黄泉川「なんだー? 生意気なことを喋る口はこいつかぁー? このこのー」ツネッ

一方通行「いふェえ、はひひやはるッ!?(痛てェ、何しやがるッ!?)」




芳川「ちなみにだけど淡希。私もその日はバイトと時間が被ってるから行けないわ」

結標「そうですか」

芳川「ま、休みでも行かないけどね」

結標「何でですか? もしかして面倒臭いとかどっかの白髪みたいなこと言うつもりじゃ……?」

一方通行「へェー、ソイツは奇遇だなァ」ヒリヒリ

打ち止め「大丈夫? ほっぺたが真っ赤に腫れてるよ? ってミサカはミサカは急激な肌色の変化に心配してみたり」

一方通行「あの野郎一体握力いくつだ? 本気でつねりやがってよォ」

黄泉川「覚えてないけど、リンゴくらいなら握り潰せるじゃん」

一方通行「怪力ゴリラババ――」



ゴンッ!!



芳川「うーん、面倒臭いっていう気持ちがあるのは否定はしないけど、理由は別にあるわ。子供たちの集まりに大人が混じるのって正直あれだからよ」

結標「な、なるほど。その発想はありませんでした」

芳川「子供には分からないでしょうね。この気持ち」

黄泉川「別にいい気がするけどなー。引率みたいなもんじゃん?」

芳川「高校生の花見に引率が付くなんて聞いたことないわよ?」

一方通行「行きたくねェな、そンなモンが付く花見なンてよォ」

黄泉川「花見なんて学生がはっちゃける行事の筆頭だからな。節度のある花見をするように指導しなきゃいけないじゃん」

打ち止め「指導? 節度のある花見にするための指導って何なの? ミサカはミサカは率直な質問をしてみたり」

黄泉川「そうだなー。例えばアルコールの入ったジュースを飲もうとしたら取り上げたり、アルコールの入った炭酸の麦ジュースを飲もうとしたら取り上げたり」

一方通行「両方酒じゃねェか。それしか基準がねェのかよ節度のある花見っつゥのはよォ」

黄泉川「そりゃそうだろ。花見の飲み会なんてはっちゃけるのが普通じゃん? 未成年がアルコールを飲まなきゃ、好き放題してくれりゃいい。あくまで常識の範囲内でだけどな」

一方通行「随分と適当だな。アンチスキル」

黄泉川「そこまでギチギチに締め付ける気はないってだけじゃん」

結標「あっ、そうだ。打ち止めちゃんはもちろん来るわよね?」

打ち止め「……ふふふっ、残念ながらミサカはここでノーと答えさせてもらうぜ、ってミサカはミサカはハードボイルドを気取ってみたり」

芳川「貴女ハードボイルドの意味知ってる?」

結標「珍しいわね打ち止めちゃん。貴女がこの誘いに乗ってこないなんて……花見はあんまり興味なかった?」

一方通行「どォりで話に食い付いてこねェわけだ」

打ち止め「おっと勘違いさせちゃってるね。ミサカはあくまでアワキお姉ちゃんたちとは一緒に行けないって言いたかったんだよ、ってミサカはミサカは追加の説明を入れてみる」

一方通行「あァ?」

打ち止め「同じ日の同じくらいの時間帯にキハラたちも花見をするんだ。それにエンシュウから誘われたからそっちのグループで花見するよ、ってミサカはミサカはさらに追加説明してみたり」

結標「へー、木原さんたちも花見するんだ」

一方通行「嫌なヤツと鉢合わせしそォだ」

打ち止め「そういうわけだから一緒にいけないんだ。まあ、ちょくちょくそっちの方にも顔出してちょっかいかけるとするよ、ってミサカはミサカは二つの組織をまたにかける女スパイの気分になってみたり」

一方通行「何がスパイだ。コッチの菓子とか食いモン目当てに寄って来る乞食の間違いだろ」

打ち止め「へへー、やっぱりバレてた? ってミサカはミサカは舌を出しておどけてみたり」テヘペロ




結標「ところで一方通行? 当日何時に行くのがいいと思う? やっぱり九時がいいかしらね?」

一方通行「面倒臭せェ、そンなに九時に行きてェならオマエだけ先に行ってろよ」

結標「ええっー、それは嫌よ。行くなら一緒よ? 一人で長時間寂しく待機なんて絶対嫌っ!」

一方通行「だったら昼頃行くか?」

結標「でもそれだったらいい場所取れない可能性が……」

打ち止め「こうなったらジャンケンで決めればいいよ! このままじゃどうせいつまで経っても埒が明かないんだからさ、ってミサカはミサカは解決案を提示してみたり」

一方通行「……ほォ、面白れェじゃねェか。この俺にジャンケンを挑もうなンて百年早ェンだよ」

結標「何よ、随分な自信じゃない? 誰がやっても平等に三分の一の確率で決まる勝負なのに」

一方通行「俺を誰だと思ってやがる? あらゆるベクトルを観測できるこの俺が、オマエの出す手を見抜けねェわけねェだろォが」カチッ

結標「なっ、理屈はよく分からないけど能力を使うつもりね!? 汚いわよ!」

芳川「たぶんあれね。ジャンケンの手を出すときの微妙な筋肉の動きとかを観測して勝つつもりよ。要するにやることは後出しと一緒」

一方通行「ケッ、チカラ含めて俺の実力だ。オマエにとやかく言われる筋合いはねェ」

黄泉川「だったらここに何かのパーティーで使ったジャンケンカードがあるじゃん。これでやれば公平だろ」

一方通行「は? 何でそンなモンがあンだよ?」

黄泉川「何か隅っこに転がってた」

芳川「なるほど。これを使えばベクトル操作の能力で、相手が何を出すのかを知ることはほぼ不可能ね」

結標「ナイスアシストです黄泉川さん! よし、これで純粋な運の勝負よ一方通行!」

一方通行「チッ、調子に乗るなよ格下がァ! この俺が普通にやったところでオマエなンかに負けるわけねェだろォが!」スッ

結標「ジャンケンに格下格上なんて関係ない! それじゃ行くわよ!」スッ



一方・結標「「ジャンケン、ポン!!」」バッ



―――
――





March Forth Sunday 09:00

-第七学区・とある桜公園-



結標「よし、着いた。ここが桜公園ね」

一方通行「何で俺がこンな朝早くからこンな場所に来なきゃいけねェンだ」

結標「ぶつぶつうるさいわよ。大人しく敗者は勝者に従いなさい」

一方通行「たかだかジャンケンごときに勝ったぐらいでそこまで偉そうに出来るなンて、ある意味才能だな」

結標「そのたかだかジャンケンに負けてゴチャゴチャ文句垂れてるヤツに言われたくないわね」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」

結標「しかし、桜すっごい迫力ね。これが満開の桜ってやつか……綺麗」

一方通行「ふーン、あちらこちら見回して見ると、例の場所取りガチ勢とやらが結構居やがるな」

結標「芳川さんの情報は正しかったってことね。信じてこの時間に来てよかったわ。昼頃に来てたらほとんど埋まってたんじゃない?」

一方通行「この桜の量ならどこにレジャーシート敷こうが同じだっつゥの」

結標「……まあ、それはたしかに思う。ちょっとだけだけど」

一方通行「つまり、わざわざいい場所を取る必要はなくなったっつゥわけだ。じゃ、一回家帰って寝直してからまた昼頃来るとするか」ガチャリガチャリ

結標「まあ待ちなさい。せっかく来たのだから、ちゃんと場所取りしましょうよ」ガシッ

一方通行「オマエもさっきどの場所でも同じっつってただろォが」

結標「いや、もしもの話をしましょ? もしここで帰ってまた昼間に来たとしましょう。すると大盛況でレジャーシートを敷く隙間すらありませんでした」

一方通行「考えすぎじゃねェのか?」


ガチ勢「それが考えすぎではないぞ!!」


一方通行「あン?」

結標「誰っ!?」


ガチ勢「今日は日曜日に加え満開日だ。さらにこの時間の段階で場所取りしているグループの数がそこそこ多いッ!!」

ガチ勢「もちろんそのグループは夜に花見をするグループではなく、昼で解散するグループかもしれない。だが経験からしておそらくあの中では半分くらいだッ!!」

ガチ勢「さらにこの週末にはこの公園周辺で桜祭りと言って出店が出ているため、集客力がかなり高まっているだろうッ!!」

ガチ勢「以上のことからして、この時間ここにいるのならば場所取りをしない理由は皆無ッ!! では、レッツ花見ライフッ!!」スタスタ


一方通行「……何だったンだ今の?」

結標「さ、さあ? 例の花見場所取りのガチ勢の人じゃない?」




一方通行「よくわからンがアイツが言うことを信じるなら、昼間に来たら場所がなくなっている可能性が高いっつゥことか」

結標「ほ、ほら私の言った通りじゃない。やっぱり場所取りはしとくべきよ」

一方通行「あンな見ず知らずの不審者の言うことを聞くつもりかオマエは?」

結標「見ず知らず不審者じゃないわ、ガチ勢の人よ」

一方通行「俺からしたらほぼ同じ意味なンだがな……まァイイ、花見ガチ勢か。お手並み拝見と行くか」

結標「しかしいい場所と言ってもどういう場所がいいのかさっぱり分からないわね」

一方通行「ネットで見る限りだと、桜が綺麗に見える場所、トイレとかゴミ箱が近い場所、座る場所が荒れてなく座りやすい地面の場所、とかだそうだ」ピッピッ

結標「へー、なるほど」

一方通行「あと、俺らは夜桜の予定だから足元が見やすい街灯とかの下がイイらしい」

結標「…………」

一方通行「あァ? どォかしたか?」

結標「いや、さっきまで文句しか言ってなかったヤツがこういろいろ調べてくれてるのに違和感が……」

一方通行「人がせっかく働いているっつゥのに、何でそンなこと言われなきゃいけねェンだ?」

結標「あはは、ごめんごめん。でもあれよね。なんだかんだ言って貴方も花見が楽しみだったってわけよね?」

一方通行「どこをどォ思考すればそンな考えが出てくる? 勘違いすンじゃねェぞ。オマエに適当な場所を闇雲に取られて、俺まで他のヤツから総スカン食らいたくなかったから調べただけだ」

結標「はいはいそうですねー、私はそんなことをやりそうな馬鹿ですよーと」

一方通行「チッ、癇に障るヤツだ」

結標「……うーんざっと見た感じ、さっき貴方が言ったポイントに当てはまりそうな場所は大体取られているようね」

一方通行「そりゃそォだ。わざわざこンな時間に来るヤツがゴミみてェなポイントを陣取るわけねェからな」

結標「やっぱりガチ勢ってすごいのね。ほら見てみてよあそこ。わざわざ寝袋まで持ってきて場所取りしてるわよ。一体いつからあそこに待機しているのかしら?」

一方通行「あンなのカワイイモンだ。アッチにはテント張ってる馬鹿が居やがるぜ?」

結標「あそこまでしないといい場所は取れないってことね。甘く見ていたわ花見の場所取り……」

一方通行「まァ、俺が脅せば一発で」

結標「だからやめときなさい。黄泉川さんのお世話になりたくないでしょ?」

一方通行「だったら金でも積むかァ? コンビニのATMで五万くらい下ろしてくっかァ?」

結標「それも黄泉川さんならきっとアウトって言うからやめときなさい。というか嫌にリアルな数字よね五万って」

一方通行「買収の何が悪いのか理解に苦しむねェ。俺たちは場所を取れる、相手は五万円儲かる。まさしくWin-Winの関係だっつゥのに」

結標「まあそうなんでしょうけど……あっ、あれを見てよ一方通行」

一方通行「あン?」ジロッ



黒服1「…………」

黒服2「…………」

黒服3「…………」



結標「黒いスーツにサングラス、まさしくいかにもな人たちが場所取りしてるわよ。しかも結構良さそうな場所」

一方通行「ほォ、いかにもな三下どもだな。まさしく花見の場所取りにピッタリなヤツらだ」

結標「やっぱりあれくらいの人たちじゃないといい場所が取れないのね」

一方通行「……つゥかアイツら、どっかで見たことあるよォな気がする顔だな」

結標「えっ、ほんと? うーん……」ジィ




黒服1「……あっ、一方通行さんに結標さん、おはようございます!」

黒服2「ちわっす!」

黒服3「そちらも花見の場所取りですか? お互い大変ですねー」


結標「……あっ、思い出した! たしか木原さんの会社の!」


マイク「どうも。コードネーム:マイクです」

オーソン「オーソンっす」

デニス「デニスと申します」


一方通行「……つゥことは、ここは木原の野郎が来る予定の場所か?」

オーソン「そうっす。夕方五時スタートの予定です」

結標「ふーん、偶然にも同じ時間ね。じゃあここら辺の近くで場所取れば、打ち止めちゃんとも一緒に花見できるわね」

一方通行「オイやめろ。何で花見の時に木原の顔なンて見なきゃいけねェンだ。この位置から真反対の場所に行くぞ」

結標「ここから真反対だと、さっき貴方が言ったトイレやゴミ箱に近いって条件に全然合わない位置になりそうよ」

一方通行「俺の平穏の為には背に腹は代えられねェ」

結標「ほんと貴方嫌いよね。木原さんのこと」

一方通行「普通の思考していたら、ヤツを嫌悪しねェヤツはいないはずなンだがなァ」

結標「じゃ、そういうわけなんで私たちは行きます」

マイク「場所取り頑張ってください」

デニス「花見の場所取りは戦争ですからねえ。ご武運を」

結標「ありがとうございます」




結標「さて、じゃあ別の場所を探すとしますか」

一方通行「もォこの際普通に座れりゃどこでもイイだろ。トイレなンて歩かせりゃイイし、ゴミなンてオマエが飛ばせばすぐ運べる」

結標「貴方の言うことには納得しかねるけど、この空いてる場所からしてそうせざる負えないようね」

一方通行「何だその言いようは? そンなに気に入らねェならゴミは俺が大気圏外に向けてぶっ飛ばしてやるよ」

結標「宇宙にゴミをばら撒くのはやめなさいよ」

一方通行「もともとデブリだらけなンだから問題ねェだろ。そもそも大気圏の摩擦でゴミが燃え尽きるっつゥの」

結標「まあトイレとゴミ箱は度外視するとしても、せめて街灯とかは欲しいわよね? 足元とか見づらいと何かと不便だし」

一方通行「それなら楽な条件だ。街灯のある道沿い歩いて行きゃどっかあンだろ」

結標「そうね。じゃあ、その辺適当に歩いてみましょ」

一方通行「ああ。しかし、吹寄のヤツよくもこの俺にこンな面倒事押し付けてくれたな。覚えてろよアイツ」

結標「まあいいじゃない。どうせ上条君たちと余興の準備をしろって言われても嫌がるでしょ貴方」

一方通行「それはもちろン全力で逃げる。チカラァ使ってでもなァ」

結標「かと言って女子二人に混じってお弁当作りを手伝え、って言われても嫌でしょ?」

一方通行「まァな。まあ馬鹿三人に付き合うよりはマシだろォけどよ」

結標「じゃあ場所取りしかやることないじゃない」

一方通行「まだやることは残ってるだろ」

結標「何よ?」

一方通行「家で昼寝して集合時間が来るまで待機」

結標「まだそんなこと言っているの貴方は? いい加減諦めなさいよ」

一方通行「オイ結標」

結標「何よ?」

一方通行「面倒だからあの場所でイイだろ。街灯もあるし、地面も平面に近いから座りやすいし、広さもそこそこだ」

結標「うーん、まあトイレまで片道五分くらいかかりそうなところだけど、いいんじゃないかしら? 景色もまあ良さそうだし」

一方通行「場所も場所だから人が少ないのも俺からしたらポイントが高いな。ま、時間が経てばここにも有象無象で溢れかえるンだろォが」

結標「じゃ、ここら辺にしましょ。シート敷くから手伝って」ゴソゴソ

一方通行「ハイハイ」ガサガサ


結標「……よし、これで場所は取れたわ」

一方通行「やっとこの場所取りっつゥクソみてェな作業から解放されンだな」

結標「残念ながら花見が始まるまでが場所取りです。絶対に逃がさないわよ」

一方通行「わかってるようるせェな。逃げやしねェよ」

結標「本当かしら?」

一方通行「当たり前だろォが。あっ、そォだ。ちょっとコーヒーが飲みたくなってきたから自販機行ってくる」

結標「とか言って逃げるつもりじゃないでしょうね?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。どれだけ信用されてねェンだ俺は?」

結標「逃げたら絶交だからね?」

一方通行「その程度で絶交されるなンてクソみてェな信頼関係だなァオイ」


―――
――





同日 11:00

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



青ピ「――というわけで、長い話し合いの末にボクらの用意する余興が決まりましたぁー!」



土御門「いえーい!」

上条「ちょっと待てコラ」

青ピ「なんやカミやん。何か不満でもあるんかいな?」

上条「不満しかないわ! お前ら本気で『アレ』を花見の会場でみんなの前でやるつもりなのかよ?」

青ピ「むしろああいう場でやってこそやん。それにインデックスちゃんもやる気になってるし」

禁書「なんだかよくわかんないけど頑張って歌うんだよ!」

上条「なんだかよくわからないものを頑張ろうとするな! 大体お前歌とか歌えんのかよ?」

禁書「むむっ、とうま! 私は声とか歌を使った魔術のプロフェッショナルなんだよ! だから歌は大大大得意かも!」

青ピ「魔術……?」

上条「あ、あははいやいや何でもない何でもない気にしないでくれ。つーか、お前が歌おうとしてる歌はそういうのまったく関係ないヤツだろうが」

禁書「そこのところは大丈夫! だって毎週欠かさず観てるし、何より私には完全記憶能力があるからね。バッチリ歌えるんだよ」フフン

上条「くっ、なんつう自信満々の顔だ」

土御門「カーミやーん、諦めて大人しく受け入れたほうがいいんじゃないか?」

上条「……い、いやでも」

土御門「だったら代わりに姫神ご所望の裸踊りでもやるかい?」

上条「ぐっ……、わかったよ。やりますよやらせていただきますよ」

青ピ「さすがカミやん。わかってくれると思うとったで」

禁書「ねえねえとうま」

上条「何だよ?」

禁書「そろそろお昼の時間なんだよ。お腹が減ってきたかも」

青ピ「ほな練習は昼メシ食べてからにしよーか。腹が減っては戦はできぬ、ってね」

土御門「よし、ならラーメン食いに行こうぜラーメン。近くに最近見つけたうまいラーメン屋があるにゃー」

禁書「わーい、らーめんらーめん♪」

上条「ラーメンは二杯までだからなインデックス。そんな手持ちないんだからな、わかってんだろうな?」

禁書「ちゃーはん♪ ぎょーざ♪ からあげ♪ ほいこーろー♪」

上条「サイドメニューは二つまでにしろ!」

禁書「はーい!」

青ピ「なんや貧乏貧乏言うとるわりには結構許容してへんか?」ボソッ

土御門「カミやんはなんだかんだ言って甘いからにゃー。それにインデックスに慣れすぎて感覚が軽くぶっ壊れてるのかもしれない」ボソッ

青ピ「カミやんェ……」

上条「なに二人してコソコソ喋ってんだ? さっさと行こーぜ?」


―――
――





同日 12:00

-第七学区・とある桜公園-



ワイワイガヤガヤ



一方通行「Zzz」



結標「ただいまー、お昼買ってきたわよー、って寝てるし。この騒がしい中よく寝られるわね……」

結標「ちょっと起きなさいよ一方通行! お昼ご飯買ってきたわよ!」ユサユサ


一方通行「Zzz――あァ? ……チッ、俺の睡眠を妨げやがってクソが」


結標「相変わらずの寝起きの悪さね。ほら、お昼買ってきたわよ」つコンビニ弁当

一方通行「別に腹なンて減ってねェよ。だから俺の昼寝の邪魔をするなよ」

結標「周りはお花見昼の部で大騒ぎしてるっていうのに、よくこの状況で昼寝しようなんて思うわね」




<うわー桜満開すごいねー!! <昼間から飲む酒うめええええ!! <ここで一曲歌います!!




一方通行「……おォーおォー、いかにもなヤツらがハシャギ回ってンなァ」

結標「えっと、鮭弁とからあげ弁買ってきたけど貴方どっちがいいかしら?」

一方通行「だから腹減ってねェっつってンだろ。いらねェよオマエ一人で食え」

結標「なっ、い、嫌よ何で私が二人分のお弁当食べなきゃいけないのよ!」

一方通行「オマエが勝手に買ってきたンだろォが」

結標「大体、夜にもたくさん飲み食いするっていうのにここでそんなに食べたら、絶対、その、体重が……」ボソッ

一方通行「あァ? 別に誰もオマエの体重の増減なンざ気にしねェだろ」

結標「私が気にするのよ! ったく、貴方って本当にデリカシーってのがないわよね」

一方通行「今さらそンなこと言われてもなァ」

結標「……はぁ、まあいいわ。私鮭のほう食べるから唐揚げのほうよろしく」カパッ

一方通行「勝手に決めンな、つゥかいらねェっつってンだろォが」

結標「どうしても今食べないっていうのなら私にも考えがあるわ」

一方通行「あン?」


結標「この唐揚げ弁当、今から私直々に美味しく味付けして食べさせてあげるわ。どんな手を使ってでも、ね」ニヤッ


一方通行「いただきまァす」カパッ

結標「はい、よろしい」ニコッ




一方通行「……はァ。自分のウィークポイント晒し上げまでするとは、どンだけ弁当食わせてェンだよオマエ」モグモグ

結標「いや、なんかこのまま引き下がったら負けた気がして」パクパク

一方通行「何つゥか、オマエも超能力者(レベル5)らしくなってきたな」

結標「何でよ?」

一方通行「負けず嫌いっつゥか、我が強いっつゥか」

結標「そ、そうなのかしら……、まあでも貴方にはさすがに負けるけどね」

一方通行「誰が負けず嫌いで我が強いヤツだってェ?」

結標「だって事実よね? 負けるの嫌いだし、何が何でも自分のこと押し通そうとするし」

一方通行「チッ、そォかよ」

結標「……そういえばさ」

一方通行「何だよ」

結標「まだ二人しかいなくて、食べてるものもこんなショボいコンビニのお弁当なんだけどね」

一方通行「買ってきたのはオマエだろォが。で、それがどォかしたかよ」

結標「これもある意味花見をしてる、ってことになるわよね?」

一方通行「桜見ながらメシを食う、っつゥ行為が花見って言うならそォだろォな」

結標「場所取りって一見損な役回りっぽいけど、昼間の桜の木を見ながらご飯食べられるならある意味役得よね」

一方通行「そォか?」

結標「そうよ。だってみんなが来るのは夕方からだからみんなが見られるのは夕方からの桜だから。私たちは長くいろんな桜を楽しめるってこと」

一方通行「……まァ、大半の場所取りしてるヤツらは寝てたり本読ンでたりゲームしてるから、そンなこと思ってるヤツは少数派だろォよ」

結標「別にいいわよ。少数だろうが多数だろうが私が良ければ」

一方通行「つゥか、オマエいつからそンなお花サン大好き女になったンだ?」

結標「別にそういうわけじゃないわよ。ただ、せっかく花見に来たんだから桜の景色楽しまなくっちゃねって感じよ」

一方通行「へェー」

結標「貴方も少しは景色を楽しんでみたらどう? すぐに昼寝しようとせずにね」

一方通行「……まァ、別にそれはやってもイインだけどよォ」

結標「あら、貴方にしては意外な答えね。何かしら屁理屈こねて突っぱねると思ったのに」

一方通行「俺を一体何だと思ってやがる」

結標「あはは、ごめんごめん」

一方通行「……たしかに、こォいう風に揺れる花とか木々とか見ると落ち着くよなァ」

結標「そうね。わかってるじゃない」

一方通行「落ち着くからか知ンねェけどよォ」カクン

結標「うん?」

一方通行「……こう、自然と、睡魔が――Zzz」

結標「結局寝るんかい! ていうか、お弁当食べ差しにしたまま寝るな!」


―――
――





同日 14:00

-とある高校女子寮・姫神秋沙の部屋-


吹寄「………ふう、今頃場所取り二人組は仲良くやってるかしらね」

姫神「やっぱり場所取りを二人に任せたのは。そういう意図があったからなのね」

吹寄「まーね。って言っても、あの選択肢三つだったら消去法で結局はああなりそうだけど」

姫神「アクセラ君だったらなんやかんや言いながらも。余興とかなら渋々参加してくれそうな気がする」

吹寄「たまによくわからないノリの良さを見せるわよねアクセラって」

姫神「ふふふ。そうね」

吹寄「ま、二人のことは置いといて、姫神さんも花見中に隙を見つけてガンガンアタックしなさいよね」

姫神「うっ。それは……」

吹寄「花見の宴会って言ってもずっと同じ場所にいなきゃいけないってことはないんだから、連れ出して二人きりになっても構わないわけだし」

吹寄「今日は桜祭りで屋台とか出てるみたいだし、一緒に回ってみたりすればいいんじゃないかしら?」

姫神「なんとも難易度の高い要求。そんなことができるのなら。こんな状況にそもそもなっていない」

吹寄「そんなこと言ってたらいつまで経ってもこのままよ?」

姫神「む……。それはそう」

吹寄「だったら今日のお花見は上条当麻を誘って一緒に屋台に行く。これがミッションよ♪」

姫神「……なんか楽しそうね。他人事だと思って」

吹寄「何言ってるのよ。ちゃんと姫神さんのこと考えてるわ」

姫神「本当に?」

吹寄「だって実現できたら姫神さん、嬉しいでしょ?」

姫神「……まあ。たしかに」

吹寄「じゃあ決まりね! 頑張ってね姫神さん。出来る限りのことはあたしもサポートするわ!」

姫神「ありがとう。じゃあ。なんとかやってみるとする」

吹寄「よし、そうと決まればささっとお弁当の準備済ませて、結標さんたちと合流しましょ」

姫神「うん」


―――
――





同日 15:00

-第七学区・とある桜公園-


結標「…………」←来るときに買ってきたファッション誌を読んでいる

一方通行「…………」←寝たらなぜかどつかれるので仕方無しに漫画雑誌読んでいる



ワイワイガヤガヤ



結標「……気付いたらこの辺りも人が増えてきたわね」

一方通行「そォだな」

結標「やっぱり早いうちから場所取りしてて正解だったってことね」

一方通行「ここまでのことをしないといけねェとは、ホント面倒臭せェイベントだよなァ花見ってヤツはよォ」

結標「その分楽しいわよ。きっと」

一方通行「だとイイがな」

結標「何よそれ。少しは楽しもうという意思を見せたらどうかしら?」

一方通行「チッ、くっだらねェ」

結標「もう……」


『せっかく二人きりの状況なんだからこのチャンス活かしたほうがいいと思うわ』


結標「…………」


『どうせなら告っちゃえば?』


結標「……はぁ、そんなこと言われてもねえ」ボソッ

一方通行「あン? 何だよ」

結標「えっ、いやなんでもないわよ、あははははは!」アセッ

一方通行「?」


結標(大体二人きりと言っても周りには他の花見客とかいるわけだから、言うほど二人きりって状況じゃないわよねこれ)

結標(そんな公衆の面前で恋愛マンガみたいな熱烈な告白なんかしたら、恥ずかしすぎて死ぬってレベルじゃないわよね)

結標(そもそも二人きりって状況、私たちの場合別に珍しくないのよね。登下校とか結構二人きりのこと多いし)

結標(だからか二人きりの状況の活かし方がぜんぜん思いつかないわ……)




結標「……はぁ」

一方通行「さっきから何ため息ばっかついてンだ、うっとォしい」

結標「別に。あっ、もうこんな時間か。おやつでも食べよっと」ガサゴソ

一方通行「あと二時間弱か。もう少しでこの場所取りとかいう苦痛から解き放たれるっつゥことだよな」

結標「むっ、私といる時間が苦痛って言いたいのかしら?」

一方通行「薄寒い空の下の固い地面の上で、長時間座ったりしながら本読ンだりぼォっとし続けるのは苦痛だろォが。オマエの有無は関係ねェ」

結標「あー、たしかにね。私もそろそろキツくなってきたわ、クッションとか持ってくればよかった」

一方通行「チッ」

結標「まあまあそう機嫌を悪くしないでちょうだい。そうだ、ポッキー食べる?」つポッキー

一方通行「いらねェよ。大体そンなモンで機嫌がよくなるわけねェだろォが」

結標「何? 私のポッキーが食べられないっていうのかしら?」

一方通行「甘いモンはいらねェ」

結標「安心してちょうだい。これは大人なビターなヤツだから」

一方通行「そォだとしてもいらねェよ」

結標「むー、だったらこの突き出したポッキー行方は一体どうなるっていうのよ?」

一方通行「自分で食えばイイじゃねェか」

結標「なんかムカつくから貴方が食べなさい! はい、あーんしなさいあーん」

一方通行「やるわけねェだろ!! 馬鹿言ってンじゃねェぞクソアマが!!」



ワーワーギャーギャー!!



モブ(なんだあのバカップル……糞がッ!)


―――
――





同日 16:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


数多「――さて、お前ら食いモンとか酒とかの準備は出来ているな?」

ヴェーラ「問題ないです」

ナンシー「バッチリです」

数多「ならそろそろ行くとするか。おいクソガキども! そろそろ行くぞ準備出来てんだろうな!?」

打ち止め「別に準備するものなんて特になかったから大丈夫だぜ、ってミサカはミサカは両手のひらを見せて手ぶらアピールをしてみる」

円周「私も特には言われてなかったけど、いろいろと準備はできてるよー」ゴチャゴチャ

数多「あん? 何をそんなに持っていこうとしてんだよ」

円周「えっとね、よく掘れるシャベルに掘削用の手持ちドリル、それに岩盤破砕用のダイナマイトにー」ゴソゴソ

数多「お前一体どこに行くつもりなんだ? 一人だけ炭鉱にでも行こうってか?」

円周「違うよ数多おじちゃん。これは桜の木の下に埋まってる死体を掘り起こすための道具だよ」

打ち止め「ひっ」ビクッ

数多「お前人の話聞いてたか? 花見に行くっつってんだよ穴掘り大会に行くなんて一言も言ってねえんだよこっちはよ」

円周「でも数多おじちゃん、『木原』的には桜の花びらの鮮やかさと、地面に死体が埋まってるかどうかの関連性はぜひとも調べないといけないよね?」

数多「んなもん調べてどうするってんだ?」

円周「……さあ?」

数多「ノープランかよ。飲み食いしている隣で砂埃撒き散らされてもこっちは迷惑なんだっつーの。どうしてもやるなら別のところ行けや」

円周「うーん、ここで私だけハブられるのはあまりよくないなー。わかったよこの死体発掘セットは置いとくよ」ガタッ

数多「いい子だ」

打ち止め「……ねえねえキハラ? 本当に埋まってるの……? その、死体……、迷信じゃなかったの? ってミサカはミサカは恐る恐るたずねてみる」

数多「何でそんなこと聞くんだよ」

打ち止め「だってその答えによっては花見に行きたい度がガクっと下がるかもしれないから、ってミサカはミサカは震えながら答えてみたり」ガクブル

数多「あー……まあ埋まってると言えば埋まってるし、埋まってないと言えば埋まってはいないだろうな」

打ち止め「えっ、それどういうことなの!? ってミサカはミサカはあまりにも曖昧な回答に驚きながらも返答してみたり」

円周「この辺りの土地は大昔戦で死体が放置されてたり、死体処理場だったりしたような場所だから、土に還ってるって意味では埋まってるってことだよ」

打ち止め「はえー、なるほど。つまり桜の木の下に生々しい死体が埋まってるってことはないんだね? ってミサカはミサカは確認をとってみる」

円周「まあ誰かが新しく埋めたりしてない限り、そんな生々しいのは出てこないだろうねー」

打ち止め「う、埋まってないよね……?」

円周「……ふふふ、さーてそれはどうか――」



ゴッ



数多「いい加減にしろクソガキが! いつまでここで足踏みさせるつもりだ!? 埋まってねえからさっさと行くぞ!」スタスタ

円周「ぐごごごごごごあともうちょっと力が強かったら、私が桜の木の下に埋まる死体になってたよ危ない危ない」

打ち止め「大丈夫エンシュウ? ってミサカはミサカは心配そうに眺めてみたり」


―――
――





同日 16:30

-第七学区・とある桜公園-



吹寄「あっ、いたいた! おーい結標さんアクセラー!!」タッタッタ



結標「吹寄さんに姫神さん! 早いわねもう来たの?」

姫神「場所取りの待ち時間。退屈にしてると思って」

吹寄「本当に大変だったでしょ? 何時くらいからここにいるの?」

一方通行「どっかのアホが馬鹿の言葉を真に受けたせいで九時からだ」

結標「何言ってるのよ。九時に来たからこそ、こんなそこそこ良い場所を取れたんじゃない」

姫神「……逆算すると。だいたい七時間半か。なかなかのハードさ」

吹寄「す、すごいわね。本当にありがとうね二人とも!」

結標「いや、これが私たちの仕事だし全然いいわよ……しかしお弁当の量すごいわね」

姫神「あのシスターが来るなら当然」

一方通行「……そォいや俺の方でも何か適当に食いモン買うっつってたの忘れてたな。コンビニでも行ってくるか」

吹寄「別に今行かなくても大丈夫じゃないかしら? これだけあればしばらくはもつだろうし、買いに行くなら近くに屋台とか出てるからそこに買いに行けばいいと思うわ」

一方通行「ああ、そンなモン出てるっつってたな」

結標「吹寄さんたちが来たことだし、あとは上条君たちが来ればお花見始められるわね」

吹寄「あいつらちゃんと集合時間に来るのかしら?」

姫神「間に合わない確率のほうが高そう」

一方通行「まァ、大体の遅刻の原因のインデックスのメシ作りっつゥのが今回はねェから、多少の希望は持てるかもなァ」

結標「他にもたくさんあった気がするけどね。遅刻の理由シリーズ」

姫神「驚異の信号赤率。おばあちゃんの道案内。財布とか携帯を家に忘れるetc……」

吹寄「ちゃんと早めに出てれば間に合うんだから、そんなのを言い訳にするなんて甘えよ甘え」

一方通行「信用のねェヒーローだこった」


~35分後~


吹寄「…………遅い!」イライラ

姫神「予定調和」

結標「ま、まあまあ落ち着いて吹寄さん」

吹寄「大丈夫。あたしは至って冷静だから」イライラ

結標「そうには見えないんだけど……」

一方通行「ったく、何でこォ面白いよォに毎回同じ展開繰り返してンだアイツらはよォ」





上条「おーい!」タッタッタ



結標「あっ、上条君たち来たわ!」


吹寄「ちょっと上条当麻ぁ!! 5分遅刻よ5分!!」

上条「ぎゃあああ申し訳ございません!! 言い訳なんですが驚異の赤信号率、おばあちゃんの道案内、財布とか携帯を家に忘れるetc……とかやってしまいましたすんません!!」


一方通行「フルコースじゃねェか」

姫神「これはひどい」

結標「よく5分遅刻で済んだわね。逆にすごいわ……」

土御門「にゃー、カミやんが居てくれると吹寄の雷の避雷針になってくれるから助かるぜい」

青ピ「ほんまやなぁ。カミやんさまさまやでえ」

一方通行「オマエらも少しは反省しとけよクソ野郎どもが」

青ピ「まあボクらは悪くないしなぁ」

一方通行「連帯責任っつゥ言葉ァ知ってるか?」



上条「許してください頭突きだけは勘弁してくれー!!」ドゲザ

吹寄「なっ、ちょっとわかったから土下座はやめなさい! こんな人目の多い場所で!」



一方通行「甘えとか言ってたくせに許すのかよ」

結標「まあ、あんな勢いで謝られたら怒る気も失せるわよね」

土御門「さすがの吹寄も、大量の見物客の前で説教ショーができるようなメンタルは持ち合わせてなかったことだにゃー」




禁書「ねえねえあくせられーた」

一方通行「あァ?」

禁書「本日はお招きいただきありがとうございますなんだよ」ペコリ

一方通行「別に俺が呼ンだわけじゃねェぞ。つゥか、何だァ? 今日はやけに礼儀正しいじゃねェか」

禁書「そういうわけだから早くご飯が食べたいんだよ!」

一方通行「と思ったら別にそォでもなかったな」

禁書「あいさのお弁当すっごく楽しみ!」

姫神「楽しみなのは良いけど。一人で全部食べようとはしないでね」ジトー

禁書「うっ、き、気をつけるんだよ」

青ピ「ほな、吹寄さんの説教も終わったことやし、ぼちぼち始めるとしますかー」

姫神「ちょっと待って。今準備する」

上条「姫神手伝うよ」

姫神「……ありがとう。じゃあ飲み物の準備をお願い」

上条「了解!」


ワイワイガヤガヤ


青ピ「――ではみなさん飲み物は回りましたかー?」


土御門「イエーイ!!」

吹寄「大丈夫よ」

姫神「うん」

一方通行「何でオレンジジュースなンだよ? コーヒーに替えろ」

結標「最初くらい我慢してみんなに合わせなさいよ」

禁書「えっ、これまだ飲んじゃいけなかった?」

上条「おいお前何先飲んでんだよ!? 紙コップ貸せ、すぐ入れるから!」


青ピ「ほな、もう一年生もほぼ終わりやからお疲れ様っちゅうことで、カンパーイ!!」




「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」




――――――


リア充爆発しろみたいな表現使おうとしたんやがあれってもう死語なんやなって
ワイくんの文章年齢透けてそう

次回『花見(中編)』

いまさらやけど花見なんてしたことありません(半ギレ)

投下



11.花見(中編)


March Forth Sunday 17:30

-第七学区・とある桜公園-


禁書「おいしい! これもおいしい! あいさのお弁当ほんとおいしいね!」ガツガツムシャムシャ

姫神「当然」フフン

上条「もうちょっと落ち着いて食べろよ。喉詰まらすぞ?」

禁書「ふふん、私はそんなドジは踏ま――ごほっごほっ!?」

上条「ほら見ろ言わんこっちゃない」

土御門「華麗で迅速なフラグ回収だったにゃー」

吹寄「言ってる場合じゃないでしょ! ほら、インデックス飲み物よ!」

禁書「――ぷはっ! し、死ぬかと思ったんだよ……ありがとうせいり!」

青ピ「まあでも、そないがっつくのもわからんこともないけどなー」パクパク

上条「たしかに。ほんと姫神って料理うまいよなー」モグモグ

姫神「……あ。ありがとう」テレ

一方通行「どっかの誰かさンとは大違いだな」

結標「……うるさいわね。私だって練習していずれは上達してみせるわよ」

一方通行「やるなら一人で練習しろ。俺を味見役とかにしよォとかするンじゃねェぞ」

結標「えぇー? 味見くらいいいじゃない付き合ってよ」

一方通行「殺す気かオマエ」


土御門「――さーて、そろそろオレたちの余興で場をさらに盛り上げてもいい時間帯じゃないかにゃー?」

青ピ「せやな。花見のオープニングを飾るにふさわしいモン見せたるわー!」

上条「いっ、あれ本当にやるつもりか? こんな場所で」

青ピ「当たり前やんカミやん。キミは三時間にも及ぶ猛特訓を無駄にするつもりかいな?」

上条「ここでやらずに済むなら全然無駄にするけどな」

結標「結局何をするのよ余興って?」

土御門「それは見てからのお楽しみだにゃー。じゃあちょいと準備してくるぜよ」テクテク

青ピ「やったるでー! お花見会場を沸き上がらせてやるんや!」テクテク

上条「……はぁ、やるしかねえのか。いくぞインデックス! 出番だぞ!」

禁書「! ふんふぁかった!! いふいふ!!(うんわかった!! いくいく!!)」モガモガ

上条「弁当は置いてけ」




吹寄「……あの馬鹿ども、一体なにを企んでるのかしら?」

結標「さあ? 全然わからないわね」

姫神「でもろくなことじゃなさそう」

一方通行「ま、この前あンだけ大口叩いたンだ。せいぜい楽しみにさせてもらおうとするか」


打ち止め「おおっーい! お花見やってるー!? ってミサカはミサカは手を振りながら駆け寄ってみたり」トテチテ


結標「あっ、打ち止めちゃんに円周ちゃん。いらっしゃい」

円周「あれー? なんか人数少ないお花見会だねー。しかもアクセラお兄ちゃんハーレム状態だー。やったじゃん」

一方通行「何アホなこと抜かしてンだこのクソガキは? 他のヤツらは余興の準備とやらで席外してンだよ」

打ち止め「余興? 何か始まるの? うおおーっ!! 最高のタイミングでこっちに来れちゃった、ってミサカはミサカは興奮してみる!」

円周「スタートで滑り散らかしたかいがあったねー」


吹寄「……ねえ結標さん。この子は?」

結標「ああ、この子はウチの隣に住んでる木原さんっていう人の親戚の子で円周ちゃんっていうのよ」

打ち止め「エンシュウはミサカの親友なんだよ、ってミサカはミサカは補足説明してみたり」

吹寄「へー、そうなんだ。吹寄制理っていうんだけど、よろしくね円周ちゃん?」

姫神「姫神秋沙。よろしく」

円周「制理お姉ちゃんに秋沙お姉ちゃんだねー、打ち止めちゃんから話は聞いてるよ。よろしくー……ん?」

姫神「?」

円周「んー?」ジー

姫神「? 私の顔に何か付いてる?」

円周「……へー、秋沙お姉ちゃんって変わったチカラを持っているんだねー珍しい」

姫神「!?」

結標「あれ? 姫神さんって能力者だったの?」

吹寄「あたしも知らなかったわ」

姫神「……いや。私は身体測定(システムスキャン)で判定されている通り。レベル0の無能力者」

円周「ふーん、そっか、そういうことね。ごめんねー私の勘違いだったよ」

姫神「うん。大丈夫だよ。気にしていない」

一方通行「…………」




~10分後~


打ち止め「アイサお姉ちゃんの料理おいしいね! ってミサカはミサカは素直に感想を言ってみたり!」

姫神「ありがとう」ニコッ

結標「ところで打ち止めちゃんたちはこっち来てていいの? 木原さんところでお花見してたんじゃないのかしら?」

円周「あー、ちょっとね。私たちもオープニングセレモニーってことで二人でちょっとした余興をしたんだー」

打ち止め「それでちょっと会場の空気を微妙にしちゃったんだ。だからちょっとこっちに避難してきたってわけだよ、ってミサカはミサカは説明してみる」

一方通行「何やったんだよオマエら」

円周「えっとねー、私と打ち止めちゃんでちょっとまんざ――」



青ピ「おまたせしましたーん!! これからボクらぁのショータイムが始まりますよ―ん!!」



結標「あっ、戻ってきたわ」

土御門「よっこいせ、っと」ガタン

吹寄「何よそれ」

土御門「カラオケセットですたい。あとでカラオケ大会でもやろうぜい」

吹寄「そんなもの用意して一体なにをす――ッ!?」




禁書(カナミンコスプレ状態)「あっ、らすとおーだーにえんしゅうだ!! おーい!!」ノシ




姫神「!?」

一方通行「あン?」

打ち止め「おおっー!? 超機動少女カナミン(マジカルパワードカナミン)の格好してる!! すごい!! ってミサカはミサカは称賛の声を上げてみたり」

円周「おおー、やっぱりこういうコスプレは外国の人が着たほうが画になるよねー」

結標「お、思い切ったことをやってきたわね……」


上条「……なぁ、これでウケてるんだからもうやめないか?」

青ピ「はぁ? 何言うとんねんカミやん!! ウケとるってことは流れがこっちに来とるってことや!! 攻めなくてどうするんや!!」

土御門「ここまで来て言うことじゃないぜい。諦めろ」


吹寄「…………」ズンズンズン


青ピ「うん? どしたん吹寄さん? 何かよ――」



ドゴッ!! バキィ!! ガン!!





青ピ「ごふっ!?」土御門「ぐはっ!?」上条「おぼっ!?」



吹寄「貴様らあんな小さい子にいかがわしい格好させてどういうつもりよ馬鹿者どもが!!」



土御門「ご、誤解だにゃー吹寄! そんな吹寄が思ってるようなことは起こっていないぜい」

青ピ「そうそうつっちーの言う通りやで、なあカミやん?」

上条「あ、ああ。たしかに提案したのはこっち側、つーかこいつらだけだけどノリノリで了承したのはアイツだ。俺はどっちかと言ったら反対派でしたよ」

青ピ「あっ、カミやんなに一人だけイイ子ちゃんアピールしとるん!? ずるいでボクら仲間やろ!?」

上条「うるせえ変態ども!! 上条さんは健全な出し物を望んでんだよ!!」

青ピ「健全ですぅー! カナミンは女子小学生と大きなお友達から大きな支持を得ている健全なアニメなんですぅー!」


吹寄「……はぁ、まあいいわ。無理やり着せたわけじゃないことはわかったから」

上条「えっ、今のやり取りのどこにそんな要素が!?」

土御門「ついに吹寄がデレたのかにゃー?」

吹寄「違うわよ! 大体、貴様らのやり取りなんて少しも当てにしてないわ」



禁書「――マジカルパワード……カナミン!!」ビシッ

打ち止め「うおおおおかっけえー!! ねえねえミサカにもそのステッキ貸してー!! ってミサカはミサカは目を輝かせながらお願いしてみたり」



吹寄「あれを見たら無理やりじゃないってことはあたしでもわかるわ。無理やりやらされてる子があんなノリノリにポーズ決めるわけないもの」

上条「……あはは、たしかに」

土御門「それじゃ吹寄のお許しも出たことだし、そろそろ余興のほうを始めるとしようぜい」

吹寄「? コスプレしたインデックスを見せびらかすのが余興じゃなかったの?」

青ピ「んなわけないやろー、そんなんじゃデルタフォースの名が泣くでえ」

上条「泣かせとけよそんなもん」

青ピ「よし、ほなインデックスちゃんやるでー! 準備してやー!」

禁書「了解なんだよ!」




青ピ「――では始めます! ポチッとな」ピッ



スピーカー<チャーチャチャチャチャー♪ タタター♪



打ち止め「おおっ、これはカナミンのオープニングテーマだ!! ってミサカはミサカは聞き覚えのあるBGMに心を踊らせてみたり」

結標「あー、なるほどね。コスプレしたインデックスちゃんが歌うっていうやつね」




禁書『~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~~~♪」←~には適当な魔法少女的な歌詞入れて遊んでください




一方通行「結局あのガキ任せであの馬鹿三人は何にもやらねェのかよ」

姫神「インデックスの後ろで待機してるから。あの三人もなにかやるみたい」

円周「なにか両手に持ってるねー。あれはペンライトってやつかな?」

吹寄「ペンライト……?」




禁書『~~~~~~~~~~~、~~~~~~~~~~~♪』


上条・青ピ・土御門「「「ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!!」」」シュバッシュバッシュバッ




打ち止め「うおおっ、なんか後ろで変な踊りみたいなのやってる! ってミサカはミサカは実況してみる」

円周「あれはいわゆるヲタ芸ってやつだね」

結標「知ってるの円周ちゃん?」

円周「うん。乱数おじさんのカビにやられた人たちがあんなのやってたよー」

結標「よくわからないけど詳しくは聞かないことにするわね……」




禁書『~~~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~、~~~~♪~♪~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「カナミン!! ミン!! ミンミンミンミン!!」」」バッバッバッバッ


禁書『~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「カーナミン!! カーナミン!! マジカルパワードカーナミン!!」」」グワングワングワン



ざわ……ざわ……



一方通行「……当たり前だがすげェ注目浴びてンな」

結標「まあしょうがないわね。あれだけ騒いでたら嫌でも見ちゃうわよ」

姫神「別にあそこに立って。一緒に歌ったり踊ったり。しているわけじゃないけど。恥ずかしくなってきた」

吹寄「頭痛い……」



禁書『~~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「ハイ!! ハイ!! ハイ!!」」」シュバッシュバッ

禁書『~~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「ハーイ、ハイ!! ハーイ、ハイ!!」」」シュババババ

禁書『~~~~~~~~~~~♪ ~~~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「ハーイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!!」」」シュバーンシュバーン

禁書『~~~~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「ハイ!! ハイ!! ハイ!!」」」グルグルグルグル

禁書『~~~~~~~~~~♪』

上条・青ピ・土御門「「「ハイッ!!」」」バッ



打ち止め・円周「「いえーい!!」」

一方通行「うるせェぞクソガキども」

打ち止め「せっかくのライブなんだから楽しまなきゃ損だよ、ってミサカはミサカは正論を言ってみる」

一方通行「全然正論じゃねェだろ。もっと楽しむものをしっかり選べ」





<ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!!



吹寄「ん? なんかいろんな方向から掛け声みたいなのが聞こえて――」




通りがかりのヲタク集団「ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!! ハイ!!」シュバッシュバッシュバッ




吹寄「」

姫神「いつのまに……」

円周「もしかしてフラッシュモブってやつ?」

一方通行「ただの便乗して騒ぎたい豚どもだろ」

結標「うわー、すごいわ。本当のアイドルのライブみたいね」



禁書『――マジカルパワード……カナミン!!』ビシッ




<ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!




一方通行「……うるせェ。この俺直々に黙らせてやろォか」ピキピキ

結標「気持ちはわからないことはないけど落ち着きなさい」


―――
――





同日 17:50


禁書「すっっっっごく楽しかったんだよ!!」←修道服に着替えた


上条「……そうか。そいつはよかったな」ゲンナリ

姫神「おつかれさま」

打ち止め「インデックスって歌が上手なんだね、ってミサカはミサカは意外な特技に驚きを隠せなかったり」

禁書「ふふーん。私は声とか歌を使った魔術のプロフェッショナルなんだから当然なんだよ」ドヤァ

吹寄「まじゅつ……?」

上条「あははー何でもない何でもない気にしないでくれあっははー」アセッ

円周「なるほどね。何かにおうなぁと思ったらそっちサイド人だったかー納得納得」

結標「? 何の話?」

円周「何でもないよー」

一方通行「…………」

青ピ「アックセラっちゃーん! どうやったボクらぁの余興? おもろかったろ?」

土御門「アクセラちゃんもこっち側に来とけば一緒に楽しめたんだけどにゃー」

一方通行「あァ? あンなクソみてェな真似、この俺がやるわけねェだろォが」

上条「まあたしかに」

土御門「カミやんはわかってないにゃー? アクセラちゃんはツンデレだからな。内心は一緒にやりたかったって残念がって――」

一方通行「あンま馬鹿なこと言ってるとそのグラサン、レンズなしに改造してやるぞクソ御門クン?」

土御門「にゃはははー、そいつは勘弁」


円周「……さーて、面白いもの見せてもらったし私たちも何かお礼をしてあげないといけないよねー。ねえ打ち止めちゃん?」

打ち止め「お礼? どうするつもりなのエンシュウ、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

円周「この場をさらに盛り上げるために私たちも余興をやろう」

打ち止め「え゛っ!? あのキハラたちの空気を微妙な感じにしたアレをまたやるつもりなの!? ってミサカはミサカはあのときのことを思い出してみたり」

円周「大丈夫だよ打ち止めちゃん。あれは数多おじちゃんたちがオッサンだったから受けなかっただけで、ここにいる人たちには受けると思うよ。たぶん」

打ち止め「……今たぶんって言わなかった? ってミサカはミサカは疑いの眼差しを向けてみる」

円周「気のせいだよー」

結標「打ち止めちゃんたちは結局なんの余興をやったのよ?」

円周「何って……ただの漫才だよ」




打止・円周「「どうもー!!」」テテテテ


打ち止め「打ち止めです! ってミサカはミサカは元気よく自己紹介してみたり」

円周「円周でーす!」


打止・円周「「二人合わせて、『円周率は3』でーす!! どうぞよろしくお願いしまあす!!」」


青ピ「うおお!!」パチパチパチ

土御門「待ってましたー!!」ピューピュー

一方通行「どォいうコンビ名だよ」

結標「円周率は円周ちゃんのことでしょうけど3はよくわからないわね」

姫神「ミサカのミを3にして。昔ニュースとかになってた円周率は3で教える。っていう誤報にかけたんじゃ?」

吹寄「あー、なるほどね納得」


円周「いやあアツはナツいですねー」

打ち止め「いやアツとナツが逆! というか今春なのになんでそのネタ使っちゃったの? ってミサカはミサカは問いかけてみる」

円周「そう言われると思いましてなんと! なんと! 春バージョンのネタも考えてみましたあ!」

打ち止め「おおっーさすがエンシュウだー! ってミサカはミサカは称賛の拍手を送ってみる」パチパチパチ

円周「じゃあいくよ。いやあポワはハルいですねー」

打ち止め「いやポワとハルがぎゃ……ってポワってなに!? ってミサカはミサカは突然現れた謎の名詞に驚愕してみたり」

円周「打ち止めちゃん。『ぽわい』は名詞じゃなくて形容詞だよー」

打ち止め「そんなのどっちでもいいよ! 『ぽわい』って何かってミサカは聞いてるの! ってミサカはミサカは頬を膨らませて怒りアピールしてみたり」プンプン

円周「何かって言われても『ぽわい』は『ぽわい』だよ。春はぽわいよねーって使うよ」

打ち止め「むー説明されてもわかんない。もういいよぽわいは。漫才続けようよ? ってミサカはミサカは呆れながら促してみ――」

円周「春ですねー。お花見とかいきたいよねー」

打ち止め「わっ、急に来たっ。そうだねーシーズンですからねー、ってミサカはミサカは同意してみる」

円周「花見に行きたすぎてちょっと下見に行きましてねー」

打ち止め「そうなんだ。たしかに下見とか大事だよねー、いつ行ったの? ってミサカはミサカは質問してみる」

円周「去年の12月」

打ち止め「12月!? 冬じゃん!? 季節全然違うじゃん!? そんなタイミングで下見して一体なにがわかるのさ!? ってミサカはミサカは息を荒げなからも問いかけてみたり」ゼェゼェ

円周「うーん、そうだねー。冬には桜の花は咲かないってことがわかったよ」

打ち止め「えぇ!? そんなの下見しなくてもわかることじゃん常識じゃん……ってミサカはミサカは衝撃的な答えに思わずため息が出たり」ハァ

円周「ああでも、桜の木に雪が積もってたから満開の桜に見えなくはなかったよー」

打ち止め「いらないよそんなフォロー」




円周「そうだ。私、食レポしてみたいんだー」

打ち止め「また急に話が変な方向に飛んだね、ってミサカはミサカは話の展開の急さに戸惑ってみる」

円周「せっかくの花見だから桜にちなんだ食べ物を食べて食レポするから、何を食べてるのか当ててみてよ」

打ち止め「なるほど、食レポクイズだね。いいよ受けて立つよ、ってミサカはミサカは肩を回してやる気アピールをしてみる」クルクル

円周「じゃあ始めるよ。わーおいしそうですねー。さっそくいただきまあす。ボリッボリッ」

打ち止め「ボリッボリッ? 硬いものかなー? 桜えびとか使ったおせんべいかな? ってミサカはミサカはさっそく予想してみたり」

円周「うーん、苦くて独特な味ですねー。特に皮の味が濃いですよー」

打ち止め「苦い? 皮? なんだろ? 思いつく食べ物がないわけじゃないけど桜に全然関係ないしなー、ってミサカはミサカはお手上げムードになってみたり」

円周「じゃあ次は葉っぱの部分を食べてみましょう。この部分は一般的にも食べられる部分ですからねー。もしゃもしゃ」

打ち止め「葉っぱ? キャベツとかそういう野菜かな? 春キャベツみたいに桜キャベツっていうのがあるのかもしれない、ってミサカはミサカはキャベツに皮がない事実を無視しながら推測してみる」

円周「うーん、やっぱり普通に食べると青臭いですね。やっぱり塩漬けにしないとねー」

打ち止め「塩漬け……? も、もしかして……まさかアレ? ってミサカはミサカは思いついてしまった答えに困惑を隠せなかったり」

円周「では最後に花びらを食べてみましょー。もきゅもきゅ」

打ち止め「はい!! 答えは『桜の木』ー!! てか桜にちなんだというか桜本体じゃん!! 食べ物じゃないじゃん!! ってミサカはミサカは出題内容に抗議してみたり」

円周「はい。正解は『桜の木』でしたあ! よくわかったねー。さすがクイズ王を名乗るだけあるよ」

打ち止め「そんなの名乗ったこと一度もないよ! ってミサカはミサカは否定してみる」

円周「ところで花見に来たら一度やってみたかったことがあるんだあ」

打ち止め「いっつも突然来るね。何かな? ってミサカはミサカは不安を抱きながらも聞いてみる」

円周「一度綺麗に咲いてる桜の木の下を掘ってみて、死体が埋まってないか確認してみたいんだー」キラキラ

打ち止め「うぇー、なんでエンシュウはそんなグロテスクなことを目を輝かせながらやりたい発言できるの―? ってミサカはミサカは怪訝な表情を浮かべてみたり」

円周「私は桜の木の下を掘る人やるから打ち止めちゃんはなんか一緒にいる人やってよ」

打ち止め「なんか一緒にいる人って曖昧な感じの役だなー。一緒に掘る人役でいいと思うんだけど、まあいいか、ってミサカはミサカはしぶしぶ了承してみる」

円周「わあい、今日は絶好の死体掘り日和だあ! 掘るぞ掘るぞー! ザッザッ」

打ち止め「死体掘り日和ってどんな日なの? 晴れの日? 雨の日? お昼? それとも夜? ってミサカはミサカは疑問符が止まらなくなってみたり」

円周「ザッ! ザッ! ガッ! おっ、なんか出てきた! ……これは箱? 棺桶かなあ?」

打ち止め「えっ、桜の木の下の死体ってそんな感じで埋まってるの!? ってミサカはミサカは意外な事実に面食らってみたり」

円周「ではさっそく開けてみよう。ガチャリ」

打ち止め「死体が入ってるかもしれないのに箱を開けるのに躊躇がなさすぎるよ、ってミサカはミサカはその迷いのなさが怖い」

円周「なにが出るかなあ♪ なにが出るかなあ♪ うん? これはビック○マンシール? しかも古いやつだ」

打ち止め「なんでそんなものが入ってるの? ああ、もしかして生前大事にしてたものと一緒に埋葬するっていうあれかなー、ってミサカはミサカはドラマで見た知識をひけらかしてみる」

円周「他にはなにか入ってないかなあ? おっ、これは写真だ。小さい男の子が写ってるね」

打ち止め「たぶん息子さんの写真とかだろうね。やっぱり子供って親から見たら大事なものだしね、ってミサカはミサカは推理してみる」

円周「あとは……あっ、手紙が出てきたよー、ほら」スッ

打ち止め「手紙? 一体何が書かれてるんだろ? ってミサカはミサカは好奇心に負けて手紙を開けてみたり、べりっ」

打ち止め「なになにえっと、『10年後のボクへ』……ってこれ10年後の自分への手紙ぃ!! これ棺桶じゃなくてタイムカプセルじゃんッ!! ってミサカはミサカは今日一番の声量で吠えてみたり!」

円周「これじゃあ死体掘り大会じゃなくて同窓会だね。どやぁ」

打ち止め「いやドヤ顔するほどうまくはないから! もういいよ!」


打止・円周「「ありがとうございましたあ!!」」





パチパチパチパチパチ



結標「……うん、頑張ったね二人とも!」

青ピ「いやーロリ二人がイチャイチャ漫才してるところ見てたらこうふ――ぶべらっ」ドガァ

一方通行「棺桶に入れてそのまま桜の木の下に埋葬してやろォか変態野郎」

姫神「ところどころに。光るところはあった。ような気がする」

土御門「まあたしかにちゃんと漫才っぽくなってたと思うぜい」

吹寄「そうね。きちんとネタを作ってやり切るなんてエライわ」

禁書「おふわははらはったへほ、おはっはほおほうほんはお!!」モガモガ

上条「口の中に物がなくなってから喋れ!」


打ち止め「……うわーん! やっぱり微妙な空気になっちゃったじゃん! だめだったじゃんエンシュウ! ってミサカはミサカは涙ながらに文句垂れたり」

円周「やっぱりだめだったかあ。しょうがない。空気が元に戻ってそうな数多おじちゃんたちのところに撤退しよう」タッタッタ

打ち止め「あっ、ちょっとまってよエンシュウー! ってミサカはミサカは追いかけてみたり」トテトテ


結標「……二人ともいっちゃったわね」

一方通行「うるせェのが消えてせいせいするな」

結標「ところで一方通行様的にはさっきの漫才はどうでした?」

一方通行「内容の良し悪しはよくわからねェけど、あのクソガキの長ったらしい語尾がテンポ崩してるってことはわかる」

結標「あー、なるほどね」


―――
――





同日 18:00



青ピ「――さあて、盛り上がってきたところでお次の余興です! じゃーん、みんなで楽しく王様ゲームをやりまひょー!」つ割り箸



土御門「うおお」

結標「漫画とかでよく見るやつだわ!」

姫神「定番だね」

禁書「王様ゲームって何とうま?」モシャモシャ

上条「当たりと番号書かれたくじを引いて当たりを引いた人が王様になって、他の人になんでも好きな命令できるってゲーム」

禁書「えっ、なんでも!?」

上条「常識の範囲内のなんでもだぞ」

吹寄「王様ゲームか……ゲームに乗じていやらしいことをしてやろうって魂胆が見え見えね」ジトー

青ピ「いやいやそんなわけないですよ吹寄さん。紳士であるボクがそないな卑劣極まりないことするわけないやん」

吹寄「どうだか……」

結標「それならそういう命令は禁止にすればいいんじゃないかしら?」

吹寄「それもそうね。そうしましょ」

青ピ「ヴェ!? ……せやな。健全で楽しい王様ゲームにしましょ」

一方通行「さっきのヴェは何だよ」

土御門「まあぶっちゃけ王様になっていやらしいことしようとしても、相手はランダムだからにゃー。下手したら男×男の地獄絵図が生まれるからリスクがでかすぎるぜい」

結標「それはたしかにキツいわね……」


青ピ「ほなさっそく始めるようや。みんな割り箸選んで選んでぇ」スッ


禁書「これにするんだよ!」スッ

上条「こういうのって当たり引いたことないんだよなぁ。一回くらい引いてみてえなぁ」スッ

姫神「反対に。命令の対象にばかりされそう」スッ

吹寄「でもいざ王様になってもやってほしい命令なんて思いつかないわね」スッ

土御門「ま、なんでもいいわけだから気楽にいこうぜい」スッ

一方通行「面倒臭せェ。これ俺が王様引いたら王様ゲーム終了って命令してもイイか?」スッ

結標「百パーセント白けるから絶対にやらないでよ?」スッ


青ピ「よし、みんな選んだな。ほな――」




「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」






青ピ「おっ、いきなりボクかラッキーやなあ」

吹寄「いきなり当たってほしくないヤツが王様になったわね」

青ピ「まあまあそんな警戒せんでもええでー、吹寄さんが思うとるようなことはせんせん」

一方通行「それだけ信用がねェっつゥことだろうな」

姫神「残念ながら」

青ピ「みんなしてひどいなぁ。ほな、最初の命令は軽いジャブってことで」スッ



青ピ「この場にあるあらやる飲み物や調味料を絶妙な割合で配合した、スーパーデリジャスグレイトワンダフルエナジードリンクを一気飲みしてもらうでえ!!」ババーン



結標「うっ、すごいニオイ……」

土御門「なんとも形容し難い色をしてるにゃー」

吹寄「そういえばこの馬鹿はこういう方面でも馬鹿だってこと忘れてたわ」

一方通行「そこら辺の泥水すすったほうがマシだな」

禁書「……さ、さすがの私もそれは口にしたくないかも」

姫神「あの暴食シスターが。そんなことを気にするなんて。あれは相当やばい……!」


青ピ「さて、このスーパ(ryドリンクを飲むのは4番の人やでー!」


上条「うわぁ、絶対に飲みたくねーなぁ……ん? 4番?」

上条「…………」つ4番の割り箸

青ピ「…………」つスーパーデリジャスグレイトワンダフルエナジードリンク

上条「…………」

青ピ「…………」ニッコリ

上条「……あはは」スッ






上条「」チーン



土御門「無茶しやがって……」

姫神「残念ながら。予定調和」

青ピ「じゃあカミやんが再起不能になったんで、次はカミやん抜きでやりますか」スッ

禁書「王様ゲーム……まさかこんな過酷なゲームだったなんて思わなかったんだよ」

一方通行「いや、全部が全部あンな命令じゃねェだろ、たぶン」




「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」




結標「あっ、次は私ね! どうしようかなー?」

吹寄「まあ結標さんなら無茶な命令はしないでしょ」

一方通行「そォとも限らねェぞ。『私の作った料理食べろ』なンつゥ命令が下された瞬間、上条クン2号が誕生することになるぞ」

結標「そんなにその命令をして欲しいならしてあげようか?」ギロッ

一方通行「スンマセン、勘弁してください」



結標「じゃあ私の命令よ。1番の人はこの王様ゲーム中ずっと語尾に『にゃん』をつけなさい!」



姫神「まあ。こういう命令なら」

吹寄「というかこれ土御門が対象だったらほぼダメージないじゃない」

土御門「たしかにそうだにゃー。でも残念ながらオレは5番だから対象じゃないぜい」

禁書「じゃあ誰が1番なのかな?」


一方通行「…………」つ1番の割り箸


青ピ「あっ……」

吹寄「ぷふっ」

姫神「おお。これは面白い展開」


一方通行「……ちょっと用事思い出したから帰るわ。じゃあな」ガチャリガチャリ

結標「まあ待ちなさいよ1番の人」ガシッ

一方通行「離せ腐れ王。俺には大事な用事があるンだよ」

結標「どうせお風呂入って寝るとかそんなんでしょうが。許さないわよ」

一方通行「クソが! 学園都市第一位の超能力者(レベル5)のこの俺が何でこンな真似をしなきゃ――」




青ピ「王様の」ニヤニヤ

姫神「命令は」ニヤニヤ

吹寄「絶対」ニヤニヤ

土御門「だにゃー」ニヤニヤ

禁書「えびふらいおいしいんだよ」モグモグ


一方通行「クソ野郎どもがァ……」ギリリ


結標「じゃ、改めて命令するわ。1番の人は語尾に『にゃん』をつけなさい!」

青ピ「そういや1番の人の名前ってなんやったかなぁ? ちょいと自己紹介してほしいでー」

土御門「おっ、そいつはいい考えだにゃー。じゃあ1番の人お願いしまーす!!」



一方通行「…………お、俺の名前は、あ、一方通行(アクセラレータ)だ……、にゃン」



青ピ「ぶふっ、ぶわっはははっははははははははははははっ!!」

土御門「ひぃーひぃー腹痛い!! 腹痛い!!」

吹寄「ふふふ、ま、まあに、似合ってるんじゃない? っく」

姫神「まさしく。王様ゲームらしい楽しい展開。ぷふっ」

一方通行「オマエらあとで絶対ブチのめすから覚えてろよ……にゃン」

禁書「あくせられーた?」

一方通行「あン?」

禁書「何で語尾に『にゃん』なんてつけてるの?」

一方通行「オマエは王様ゲームに参加しているンじゃなかったのか? ……にゃン」


青ピ「いひひひ、さてひとしきり笑ったところで次のくじ引きましょか」

上条「……あー、死ぬかと思った」

吹寄「あら、上条当麻。復活したのね」

上条「今どういう状況なんだ? やけに笑い声が聞こえてきたけど」

土御門「それはアクセラちゃんに聞いてみると一番よくわかると思うぜい」

上条「? どうなってんだ一方通行?」

一方通行「……オマエに喋ることなンざねェよ引っ込ンでろ三下……にゃン」

上条「……にゃん? あー、誰かに語尾に『にゃん』つけろみたいな命令されたのか。かわいそうに」

一方通行「何でオマエはそういうところだけ察しがイインだよォにゃン!? もしかして知ってて聞きやがったなクソ野郎がにゃあああああン!!」カチッ

上条「ぎゃあああなんか当ててしまってすまん!! すまんから電極のスイッチ切ってくれえええ!!」





「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」



吹寄「あら、今度はあたしね」

上条「おっ、次は吹寄が王様か」

土御門「一体どんな冷徹非道な命令が下されるんだにゃー? 恐ろしいぜい」

吹寄「なっ!? あたしはあなたたちと違ってそんな命令しないわ!」

青ピ「ならどんな面白おかしい命令が飛び出すんやろうなぁ」

結標「楽しみね」

一方通行「俺に被害が及ばなかったら何でもイイにゃン」

姫神「なんかにゃんの語尾が。普通に定着してきてない? アクセラ君」

吹寄(……しかしいざ王様になってみても何にも命令が思いつかないわね。どうしようかしら?)

禁書「……どうかしたのせいり?」

吹寄「な、なんでもないわ。よし、だったらあたしからの命令よ」



吹寄「5番の人が今ここにあるゴミをゴミ捨て場に持っていきなさい!」

ゴミ『塵も積もれば山となるってなぁ!!』



上条「あー、なんつーか吹寄らしい命令だな」

青ピ「ぶーぶー、そんな命令してなにがオモロイんやー! ぶーぶー」

吹寄「う、うるさいわね! 何でもいいでしょ!? てかあたし王様よ? 文句言わないでちょうだい!」

結標「ところで5番って誰なのかしら?」

姫神「5番は私」つ5番の割り箸

土御門「おお、よりもよって女子にこの命令が下ってしまったのか」

吹寄「ご、ごめんね姫神さん」

姫神「問題ない。それじゃ。ゴミを捨てに行ってくる。よっと」スッ

禁書「うわー、重そうなんだよ。本当に大丈夫なのあいさ?」

姫神「……大丈夫。持っていけないことはない」フラッフラッ



上条「……よし! 姫神、俺も一緒に行くよ」





姫神「えっ? いいよ。私一人で大丈夫だから」

上条「何言ってんだそんな足をふらつかせて。無理すんなって」

姫神「でもこれは。王様ゲームの命令だから」

上条「……なあ王様、俺もゴミ捨て手伝ってもいいだろ?」

吹寄「えっ、ええ別にいいわよ」

上条「王様の許可が下りたな。じゃ、行こうぜ姫神」ニコッ

姫神「……うん。ありがとう」ニコッ



一方通行「ケッ、さすがは上条だにゃン。大したヒーローっぷりなこったにゃン」

禁書「……はぁ、まあとうまはああいう人だからね。しょうがないんだよ」

青ピ「まさしく一級フラグ建築士やでー」

土御門「まあもともとフラグは建ってる相手だから、その言葉を今使うのはちょっと微妙だけどにゃー」

結標「ねえ、吹寄さん」ボソッ

吹寄「な、なに結標さん?」

結標「さすがね。ああいう展開になることを予想してあの命令を出したのね」

吹寄「えっ?」

結標「えっ?」

吹寄「…………」

結標「…………」



吹寄「……そ、そうよ! まさしく計画通り、ってやつよ!」

結標「うおお吹寄さんすごい!」



一方通行「何二人盛り上がってンだにゃン。あの馬鹿二人はにゃン」

禁書「……なんか私の中でね、あくせられーたが『にゃん』って言ってるのに違和感がなくなってきたかも」ゴモゴモ

一方通行「オイやめろにゃン」





青ピ「じゃ、姫神ちゃんたちが帰ってきたから続きやるでー!」スッ




「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」




一方通行「……おっ、アハッ、俺が王様かにゃン」

上条「今度は一方通行か」

結標「変な命令しないでよね」

一方通行「オマエが言うンじゃねェにゃン。何だよ『にゃん』をつけるとかいうクソみてェな罰ゲームはにゃン」

結標「何言ってるのよ? こういうのは王様ゲームでは定番よ? 漫画で見たから間違いないわ」

一方通行「フィクションの世界じゃねェか!」

吹寄「もういいからアクセラ? さっさと命令しちゃいなさい」

一方通行「おォ。じゃあ俺の命令はこれだにゃン」




一方通行「1番の人が7番の人に全力でデコピンしろにゃン」




青ピ「うわー暴力なんてサイテー」

土御門「ゲームの楽しい空気ぶち壊しだにゃー」

一方通行「ハァ? これくらい問題ねェだろ、別に全力でぶん殴れって言ってるわけじゃねェンだからにゃン」

結標「ま、まあそうだろうけど」

上条「ちなみに1番は俺なんだけど、7番の人って誰だ?」つ1番の割り箸



吹寄「……あたしよ上条当麻」ギロッ



上条「」

姫神「おお。これは」

青ピ「カミやんがついに一年七組の最高戦力に反旗を翻すのか……盛り上がってまいりました!!」

土御門「いけいけカミやーん! お前のゲンコロフィンガーを見せてやれい!」

禁書「よくわかんないけどがんばれーとうまー!」モシャモシャ

一方通行「ぎゃはっ、適当に考えた命令だったが結構盛り上がってンじゃねェかにゃン」

結標「まあ、約一名絶望に満ち溢れた表情してるけどね」





吹寄「…………」

上条「……ええと、吹寄さん?」

吹寄「なによ?」

上条「い、今から全力デコピンすんだけど、これはあくまで王様ゲームの命令であって」

吹寄「それくらいわかってるわよ。早くしなさい」

上条「……本当にやっていいんでせうか?」

吹寄「王様の命令は絶対よ? いいから早くやりなさい、やらないなら逆にあたしがデコピンするわよ?」

上条「いぃぃ!? やります!! やらせていただきます!!」


吹寄「……ふう」スゥ

上条「じゃ、じゃあ行きますよ?」

吹寄「き、来なさい……!」ギリッ


結標「…………」ドキドキ

姫神「…………」ジー

禁書「…………」モグモグ

青ピ「…………」ワクワク

土御門「…………」ニヤニヤ

一方通行「ふわァ」



上条「――あああああああああああああッ!! 吹寄さん!! 申し訳ございませええええええええええええええええええええええええん!!」パッ



バチン!!



吹寄「痛ッ……!」グラッ

上条「があああああああああおでこ硬ったああああああああああああああああああ!? 指があああああああああああああああああああああああああッ!!」ゴロンゴロン



結標「だ、大丈夫吹寄さん?」

姫神「おでこ。切ったりとかして。傷とか出来てない?」

吹寄「え、ええ大丈夫。あれくらい平気よ」

青ピ「おおー、驚異の防御力やなぁーさすがやで」

土御門「まさしく吹寄おでこDXだにゃー」

一方通行「どォでもいいけど、オマエら地面にのたうち回ってる三下を少しは心配したらどォだにゃン」

姫神「まあ。上条君なら平気だろうし」

土御門「心配するだけ損だにゃー」

禁書「とうま! このたこさんウインナーすごく美味しいんだよ! とうまも食べる?」

上条「…………不幸だ」






「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」




青ピ「おっ、またボクやんラッキーやで! 日頃の行いがええからやろうなぁ」

一方通行「寝言は寝て言えにゃン」

吹寄「次は一体どんなひどい命令をする気かしら? また変なドリンク飲ませるみたいな二番煎じしようと思ってるんじゃないでしょうね?」

禁書「飲むなら美味しい飲み物が飲みたいかも」モグモグ

上条「それじゃ罰ゲームにならねえから面白くないだろ」

青ピ「まあさすがに同じネタを繰り返すなんて馬鹿なことせーへんわ。さーて、あんまドギツイ命令すると吹寄さんに怒られそうやからこれくらいのライトなのにしよーかな」



青ピ「3番の人が1番の人に食べ物をあーんするんや!!」



吹寄「……まあ、これくらいならいいか」

禁書「あっ、1番は私なんだよ! 早く食べさせてほしいかも!」つ1番の割り箸

上条「お前さっきからずっと食ってばっかじゃねえか!」

姫神「じゃあ。3番は誰?」

一方通行「……チッ、また俺かよにゃン」つ3番の割り箸

結標「!?」

吹寄「あー、まあこれはしょうがないわね」

姫神「ドンマイ」



一方通行「面倒臭せェからさっさと終わらせるかにゃン。オイクソシスター口開けろにゃン」つからあげ

禁書「あーん!」

一方通行「ほら食えにゃン」スッ

禁書「んっ……おいひいんはほ! あふぃあふぉあふへはへーは!(おいしいんだよ! ありがとあくせられーた!)」モガモガ

一方通行「口に物入れたまま喋ってンじゃねェにゃン」



結標「…………いいなあ」ボソッ

青ピ「……おかしいなぁ。本当は他の女子連中が恥ずかしがりながら食い食わせする展開を期待してたのになぁ」

土御門「打って変わってのほのぼの展開だったにゃー」






「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」




土御門「おっ、今度はオレかい?」

吹寄「変な命令するんじゃないわよ?」

土御門「わかってるにゃー。ちゃんとやっていいラインは心得てるつもりですたい」

一方通行「本当だろォなにゃン。オマエの言ってることは全然信用できねェンだよにゃン」

土御門「信用されてないにゃー。ま、いっか。じゃあオレの命令行くぜい」スッ




土御門「6番の人は王様ゲーム中、このミニスカメイド服+ネコミミを着用するんですたい!!」つミニスカメイド服セット+ネコミミ




青ピ「うおおおおおおおおおおおおおボクは7番だから高確率で女の子のメイド服が見れるうううう!!」つ7番の割り箸

上条「わっ、俺2番かこえー。つーか、これ吹寄的にアウトになるんじゃねえのか?」つ2番の割り箸

土御門「にゃー、これはアウトとは言わせないぜい。吹寄はさっきインデックスがやったカナミンのコスプレを許容したからにゃー」

吹寄「あ、あれはインデックスが望んで着てるから――」

禁書「おおっー! 何かまいかが着てる服に似てるんだよ! ちょっと着てみたいかも! でも私は3番だから違うんだよ」モグモグ

土御門「最年少のインデックスが着たいと言ってるのに、大人な我々が恥ずかしいなどと言って拒否するのどうなのかにゃー?」ニヤリ

吹寄「ぐっ、まあいいわよ。言っておくけどあたしは6番じゃないわよ」つ5番の割り箸

結標「私も4番だから違うわね」つ4番の割り箸

姫神「私も違う」つ1番の割り箸

結標「……ってことは」チラッ



一方通行「…………」つ6番の割り箸



青ピ「あっ……」

吹寄「えぇ……」

結標「……ぷぷっ」

上条「ありゃあ……」

姫神「今日はよく当たるね。アクセラ君」

禁書「?」モグモグ





一方通行「…………あばよ、クソ野郎ども」カチッ



結標「あっ、逃げるつもりよ!」

姫神「まあ。これはしょうがない」




一方通行「こンな茶番、付き合ってられ――」グッ




バガン!!




一方通行「なっ!? 能力が使えねェだと!?」


ヒラヒラ


上条「? なんだこのヒラヒラした紙吹雪みたいなの? どっかで見たことある気がする」



土御門『攪乱の羽(チャフシード)』。電波攪乱兵器の一種だぜい」




一方通行「またかクソがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」ドンドン




上条「まあまあ落ち着けって一方通行」ポン

一方通行「さり気なく右手で触って能力封じてンじゃねェぞ三下ァ!!」

青ピ「そない怒らんでもええやんアクセラちゃん。ほな、行こうや」ニヤニヤ

一方通行「あァ!? どこ行こうってンだゴルァ!!」

土御門「お着替えタイムだぜーい」ニヤニヤ



~しばらくして~






一方通行(ネコミミミニスカメイド)「クソッタレが……」



結標「きゃあああああ!! 前から見てみたかった一方通行の女装姿!!」キラキラ

上条「おおっ、なんだ結構似合ってんじゃねえか」

姫神「元の顔立ちが中性的だから。女物の服でも違和感がないね」

禁書「たしかにあくせられーた女の子みたいなんだよ!」モガモガ

吹寄「ぷふっ、そうね女の子みたい」クスクス

土御門「みんなに大好評で何よりだにゃー。こっちも準備してきた甲斐があるってもんだぜい」


青ピ「……なあアクセラちゃん」

一方通行「あァン!?」

青ピ「ボクって実は『男の娘』もいける口なんよなぁ」ワキワキ

一方通行「オラァ!!」スッ



パコン



青ピ「おうふっ、アクセラちゃんの能力なしヘナチョコパンチが女の子らしさが出ててよきッ!!」

一方通行「クソがッ!! まだチャフの効果切れてねェのかよ長げェよ!!」

土御門「ああ、能力使われて逃げられても困るから、登場シーンの前くらいにもう一回撒いといた」

一方通行「余計なことしてンじゃねェぞクソ野郎がァ!!」

結標「ねえ一方通行?」

一方通行「何だよ!?」

結標「一つ忘れてることがあるでしょ?」

一方通行「あァ?」

結標「私が王様になったときの命令よ」

一方通行「あっ……」

結標「ね?」ニコニコ

一方通行「…………」



一方通行「オマエらあとでホントにぶっ潰してやるからにゃああああああああああああああああああああああン!!」







「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」




姫神「あっ。私が王様」

上条「次は姫神か。くそーやっぱなかなか王様引けねーなぁ」

青ピ「ヒメやーん! いっちょ面白い命令頼むでー!」

姫神「……了解した。そこまで言うなら。期待に応えよう」ニヤリ

土御門「おっ、なんか嫌に自信満々やなぁー楽しみだぜい」

姫神「では……」スッ




姫神「4番と7番の人が。このポッキーを使って。ポッキーゲームをしてもらう」



青ピ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

土御門「きたああああああああああああああああ!!」



姫神「ちなみにルールは。王様である私と二人の勝負。途中でどっちかがポッキーを折ってリタイアしたら二人の負け」

姫神「負けたら罰ゲームとして。青髪君が作ったドリンクの残りを。二人に飲んでもらう」

吹寄「ちょ、ちょっと姫神さん!」

姫神「大丈夫。さすがにマウストゥマウスはマズイと思うから。二人の鼻頭が接触したら。クリアとする」

吹寄「……まあ、それならいーか」

姫神「だけど鼻頭で済ますか。またその先を目指すかは。本人たち次第とします」ニヤリ

禁書「うーん、私は5番だから外れだね。ポッキー食べたかったかも」

上条「お前はそればっかだな」

一方通行「結局、4番と7番って誰なンだにゃン? 俺は違うぞにゃン」つ2番

結標「私も違うわ。なんか焦ってそうだったから吹寄さん?」つ1番

吹寄「違うわよ。不健全なゲームにならないように止めようとしただけよ。ちなみにあたしは6番よ」

上条「俺は3番だな。まあこういうゲームはあんまりやりたくないから、当たらなくてラッキーだぜ」



青ピ・土御門「「……ん?」」



青ピ「……えっと、つっちーって何番?」

土御門「……4番なんだけど。ちなみにピアスクンは?」

青ピ「7番……」

姫神「…………」つポッキー

青ピ・土御門「「…………」」


姫神「……王様の命令は絶対」ニヤリ





~見苦しいシーンなので割愛~



土御門「オエエエエエエエエエ!! 何が楽しくて野郎とゼロ距離顔面しなきゃいけないんだオエエエエエエエエエ!!」

青ピ「それはこっちのセリフやでオロロロロロロロロロロ!!」



吹寄「ふん。いい気味よ」

一方通行「あはっ、ぎゃはっ!! 俺を散々おもちゃにしてくれたバチが当たったよォだにゃン!! ざまあねェにゃンッ!!」

禁書「すごく嬉しそうだねあくせられーた」パクパク

上条「うぇ、これやるほうも地獄だろうけど見る方も地獄だな」

姫神「世の中には。こういうのを見たりして。楽しむ女子がいるらしい」

結標「へー、そうなんだ」



青ピ「――はぁ、はぁ、オェ……じゃあ、気を取り直してくじ引くでー」フラッ



上条「そんな状態になりながらまだやるつもりなのかよ」

吹寄「もうやめたら? いろいろダメージを受けた人もいるだろうし、これ以上やっても素直に楽しめる気がしないわ」

土御門「だにゃー、そろそろ潮時かもな」

結標「そうね。ドキドキ感とかはすごいせいか知らないけど、すごい疲れた気がするし」

一方通行「オマエは特に何も罰を受けてねェだろォがにゃン」

青ピ「ぐぬー、ボク的に思い通りの展開には出来なくて残念やが、みんながそう言うならしゃーないなぁ。ほな次ラストにしましょ」スッ

姫神「まあ。もう一回くらいなら。いいか」

吹寄「しょうがないわね」





「「「「「「「「王様だーれだー!!」」」」」」」」







禁書「うん? とうまー、なんか割り箸に赤い印が付いてるんだよ」

上条「お前それ王様の当たりくじじゃねえか! チクショウ、やっぱ俺じゃ王様引けなかったか」

結標「王様になって何の命令するつもりだったのかしら?」

上条「いや、ただ当たりを引きたかっただけで、別にそのあとのことは考えてなかった」

吹寄「じゃあインデックス。王様になったのだから命令を言ってちょうだい」



禁書「うーん、だったらやきそばが食べたいんだよ!! あくせられーた買ってきて!!」



一方通行「ハァ? 何言ってンだオマエにゃン? ルールきちンと理解してねェようだにゃン?」

禁書「?」

姫神「1から7までの番号を言って。その番号を引いてた人がその命令をやる。さっきまであなたもやってたでしょ?」

禁書「なるほど。だったらあくせられーたと7番の人は焼きそば買ってきて!」

一方通行「だから何で俺だけ名指しされなきゃいけねェンだにゃン!? 潰すぞクソガキが!」

吹寄「もういいじゃない。7番の人と焼きそば買ってくれば?」

一方通行「納得いかねェにゃン。何でルールガン無視しやがるクソ王にパシりさせられなきゃいけねェンだにゃン」

青ピ「まあ最後の命令ってことやしサービスってことでええやん」

一方通行「……やっぱり納得いかねェにゃン」

上条「ところで7番の人って誰だ?」


結標「……えっと、私」つ7番の割り箸


一方通行「……うわァ」

結標「うわぁ、とは何よ? どっちかと言ったら女装してにゃんにゃん言ってるヤツと一緒に歩かないといけない、私のほうがうわぁだわ」

一方通行「その半分はオマエのせいだってこと忘れるなにゃン」

吹寄「はい! じゃあ二人とも屋台の方に行って焼きそば買ってきてちょうだい」

上条「ああ、焼きそば代出すよ。いくら王様の命令は絶対だからって言って、金まで出させるわけにはいかねえからな」

一方通行「チッ、いるかよそンな端金にゃン。結標、とっとと行って終わらせるにゃン」

結標「はいはい。じゃあちょっと行ってくるわね」

吹寄「ふふっ、ごゆっくりー」

禁書「いってらっしゃいなんだよ!」

一方通行「……つゥか、服着替えてイイかにゃン? こンな格好他の知り合いに見られたらマズイにゃン」

青ピ「何言うとんねんアクセラちゃん!! お使いが終わるまでが王様ゲームや!!」

土御門「ま、それに今のアクセラちゃんなら、ちょっとくらいの知り合いになら見られてもバレないと思うからへーきへーき」

姫神「それはたしかに言えてる」

一方通行「クソ野郎どもがにゃン……」


――――――



一方さんが幻想殺し宿したんじゃないかっつうくらい罰ゲーム喰らいまくってるけどままえやろ

次回『花見(後編)』

インデックスさん登場シーンを書いてるときにはスフィンクスさんの存在を高確率で忘れているけど日常シーンで一緒に居ないってのはおかしいから一応おるということにしておこう

投下



12.花見(後編)


March Forth Sunday 18:30

-第七学区・とある桜公園・桜祭り会場-



ワイワイガヤガヤ



一方通行「クソが……何で俺がこンなことしなきゃいけねェンだにゃン」ガチャリガチャリ

結標「ちゃんと私の命令律儀に守ってて偉いわね」テクテク

一方通行「守らねェとオマエグチグチ言ってきてうるせェだろにゃン」

結標「私って貴方から見たらそんなふうに映ってるわけ?」

一方通行「さァにゃン」

結標「もう……しかしいろいろな屋台が出ててすごいわね」

一方通行「おかげで人が多くていけねェにゃン。つゥか――」


モブ客1(メイド服……?)ジロジロ

モブ客2(うわー、肌しっろ。外国の人?)ジロジロ

モブ客3(ネコミミメイドか。ふっ、尻尾がついてないから70点だな)ジロジロ


一方通行「この服装のせいでやけに注目浴びてうっとォしいにゃン」ギロリ


モブたち「!!」スタコラサッサー


結標「関係ない人たち睨んでどうするのよ?」

一方通行「ヤツらがジロジロ見てきやがるのが悪いにゃン」

結標「しょうがないわよ。ただでさえ白髪赤眼で目立つのにネコミミメイド服だし」

一方通行「これもしかしてバレてンじゃねェのかにゃン? 俺が男だって」

結標「うーん、どうだろ? まあでも土御門が言ってたみたいに、知らない人ならたぶん女の子だとは思うだろうけど」

一方通行「チッ、女装好きの変態野郎なンて思われたくねェぞ俺はにゃン」

結標「大丈夫よ、変態野郎なんて思われないわよきっと。ああ、そういう人なんだなあ、くらいでしょたぶん」

一方通行「どっちにしろ俺からしたら不本意なンだよクソッタレにゃン」

結標「でしょうね」

一方通行「チッ、面倒臭せェ状況になる前にとっとと焼きそば買って帰るにゃン」

結標「はいはい」



黄泉川「おっ、淡希に一方通行じゃん! よーす」





一方通行「!?」

結標「あっ、黄泉川さんどうも」

黄泉川「おーおー、一方通行の格好からしてどうやらお花見をしっかり楽しんでるようじゃんねえ。よかったよかった」

一方通行「あァ!? 楽しンでるわけねェだろォがにゃン!」

黄泉川「にゃん? ああ、王様ゲームでもやってんのか? そいつは災難だったな」

結標「すごいですね黄泉川さん。よくわかりましたね」

黄泉川「ま、アンチスキルの飲み会とかでもたまーにやったりするからな。だからなんとなくわかったじゃん」

結標「なるほど」

一方通行「つゥか、アンチスキルって一応教師の集まりだったよにゃン? そンなヤツらがこンないかにもな不健全なゲームやっててイイのかにゃン?」

黄泉川「お前らが思ってるような命令はさすがにやらないさ。そのへんはちゃんとわきまえてるじゃんよ」

結標「例えば黄泉川が王様になったらどんな命令するんですか?」

黄泉川「私? うーんそうじゃんねー。私だったら腕立て伏せ100回やれ! とかかな?」

結標「それはなかなかにハードですね……」

一方通行「オマエとは絶対ェ王様ゲームやらねェぞ」

黄泉川「えぇー? 今度ウチでご飯食べてるときとかやろうよー?」

一方通行「するかボケ!」

結標「……ところで黄泉川さん。さっき普通に一方通行って呼んでたけど、こんな格好でよくわかりましたね?」

黄泉川「そりゃそうだろー。なんせ一緒の家に住んでる同居人じゃん?」

結標「あーたしかにそうですね」

黄泉川「それにこんな目立つ容姿のやつ、この学園都市に二人や三人居てたまるかっての」

一方通行「……そいつは俺のことを馬鹿にしてるっつゥことでイインだよにゃン? 黄泉川クゥン?」

黄泉川「なははごめんごめん。でも特徴的なのは事実じゃん?」

一方通行「チッ」

黄泉川「……おっと、そういや見回りの途中だった」

結標「そういえばそうでしたね。すみませんなんか喋っちゃって」

一方通行「サボってンじゃねェよアンチスキルさンよォにゃン」

黄泉川「じゃ、花見楽しめよー」ノシ

結標「黄泉川さんもアンチスキルのお仕事頑張ってください」ノシ




一方通行「……チッ、いきなり知り合いに会うとは思わなかったにゃン」

結標「たしかにね。でも黄泉川さんだったからよかったんじゃない?」

一方通行「まァな。もしアレが木原とかクソガキどもとかだったら俺は理性を抑えきれる気がしねェにゃン」

結標「黄泉川さんのお世話になるようなことはやめなさいよほんと」

一方通行「それはこれからの運次第だにゃン」

結標「運って……はぁ、だったら早く焼きそば買って、王様ゲーム終わらせて着替えないとね」

一方通行「たまにはイイこと言うじゃねェか結標クン。この格好をする時間を伸ばせば伸ばすほどよくねェことが起こる確率が高まるンだにゃン」

結標「そうね……」



ワイワイザワザワ



結標「この人混みだからどこに誰がいるかわかったものじゃないしね」

一方通行「ハァ、ホント人混みっつゥのは慣れないにゃン」

結標「じゃ、早く行ってパパっと終わらせて帰りましょ? インデックスが待ってるわよ?」

一方通行「つゥか、何であの野郎は俺を名指しで指名しやがったンだにゃン?」

結標「……ふん。それはあれでしょ? 貴方がいつもいつもインデックスに優しくしてあげてるからでしょ?」

一方通行「優しくしてるつもりはねェにゃン。ぎゃあぎゃあうるせェからメシィ与えて黙らせてるだけだにゃン」

結標「それが優しさっていうんじゃないかしら?」

一方通行「……オマエ何か怒ってないかにゃン?」

結標「別に!」

一方通行「チッ、まァイイ。とにかくさっさと焼きそば買って――」




??「――あら? もしかして鈴科さんではないでしょうか?」




一方通行「ッ!?」

結標「すずしな?」





婚后「やっぱりそうでしたわ! 奇妙な格好をしているので最初気付きませんでしたのよ」

湾内「お久しぶりですわね鈴科さん」

泡浮「鈴科さんも桜祭りへ来られていたのですね」


一方通行(こ、こいつらたしか超電磁砲の知り合いの常盤台のガキどもッ!?)

一方通行(クソがッ! まさかよりにもよって俺の女装姿のときの知り合いに出会うなンて、ツイてなさ過ぎるだろオイッ!?)


結標「? 常盤台の制服? 貴方の知り合い?」


一方通行(しかもこの場に俺が女装をして、『鈴科百合子』っつゥ女を演じていたことがあるという事実を知らねェヤツがいやがる)

一方通行(何より最悪なのは『鈴科百合子』の声は俺がベクトル操作で作った姫神の声だっつゥところだ)

一方通行(目の前にいるガキどもは俺の地声を知らねェ、結標は俺が姫神の声を使っていることを知らねェ)


結標「?」

三人「?」


一方通行(……つまり、下手に声を出すと俺の人生が終わるってことだ)


結標「……どうしたのよ? 突然黙り込んで?」


一方通行(……さて、どォする。どォやってこの状況を切り抜ける?)

一方通行(無難なのは俺は『鈴科百合子』なンて女じゃなくて『一方通行』だ、って感じに人違いだってことにするか?)

一方通行(……いや、一見安牌な方法に見えるが一つ欠点がある。それは俺の見た目だ)

一方通行(白髪赤眼で肌が白い人間なンざ、黄泉川が言ったとおり学園都市中探しても多くないだろう)

一方通行(まだその段階なら人違いで済ませられるが俺には決定的に他のヤツらと違う特徴がある)

一方通行(この首についてる電極付きのチョーカーとこのメカメカしい特注品の杖だ)

一方通行(これら全部の特徴を持ったヤツが俺以外に学園都市の中に存在するのか? いや、それは否だ)

一方通行(だからこそ、こいつらは俺がいままで一度も着たことないメイド服を着ていても、俺のことを『鈴科百合子』と断定して話しかけてきたンだ)

一方通行(そンな状況で俺は『一方通行』だって名乗っても、おそらく素直にハイそォですかとはいかねェだろう)

一方通行(常盤台のヤツらは能力だけじゃなく学力も高水準だ。そこら辺で馬鹿騒ぎしてる三下どもとはオツムが違う)

一方通行(下手したら『一方通行』=『鈴科百合子』という公式がガキどもの中で生まれてもおかしくはない)

一方通行(そォした場合ヤツらは共通の知人である超電磁砲に問い詰めるだろう)

一方通行(その場合超電磁砲が真実を話すかどうか、っつゥ話になるが間違いなくヤツは暴露するだろう)

一方通行(なぜなら俺と超電磁砲は別にそンな仲のいい関係でもないただの知り合い、ってか過去のことを考えれば仇敵と言ってもイイか)

一方通行(そしてそこの三人と超電磁砲はおそらくトモダチだろう)

一方通行(その場合どちらを取るかっつったら、間違いなくヤツはトモダチのほうをとる)

一方通行(暴露の仕方はどォいうのかはわからねェが、いずれのパターンでも俺は女装して男子禁制の場所に侵入した変態野郎の烙印を押されるだろう)

一方通行(……つまり、人違い作戦は使えねェっつゥことだ)


婚后「……? どうかしましたか鈴科さん? 全然喋りませんけど」

湾内「もしかしてわたくしたちの声が聞こえてなかったのでしょうか? この騒がしさですし」

泡浮「そうかもしれませんね。ではもう一度呼んでみましょう。鈴科さん! 聞こえますでしょうか?」




一方通行(あと思いつく作戦は何だ? コイツらをチカラを使って一瞬で気絶させる、いやこンなことしたら変態野郎よりも最悪なクソ野郎になる)

一方通行(チカラを使って逃亡するか? いや、俺だけ逃げても結標を置いていくことなるから無理だ。残ったアイツがこの三人に俺が『一方通行』だっつゥことを伝えるかもしれねェからな)

一方通行(だったら結標ごと逃亡するのはどォだ? ……ダメだ。逃亡したあとに何であンなことをしたンだという結標からの質問対して、有効な回答が出てこねェ)

一方通行(……こォなったら、強引だがこれで行くしかねェ……!)


結標「……? ちょっと貴方? 話きいて――」

一方通行「ゴホッゴホッ!! ゴホッゴホッ!!」

結標「? ど、どうしたのよいきなり咳なんてして?」

湾内「咳? 風邪でも引いているのかしら」

婚后「たしかにすごいガラガラ声ですわ」

泡浮「だから喋れなかったのですわね」

一方通行「ゴホッゴホッ結標ゴホッゴホッ!! ゴホッゴホッ!!」

結標「な、なによ!?」

一方通行「ゴホッゴホッ!! 先にゴホッゴホッ!! 焼きそば屋ゴホッゴホッ!! 行っててくれゴホッゴホッ!!」

結標「……先に行ってろってこと? 何でよ?」

一方通行「イイからゴホッゴホッ!! 先に行ってろってンだクソ野郎ゴホッゴホッ!!」

結標「? よくわからないけどわかったわ。じゃ、先行ってるわよ?」テクテク


一方通行(…………よし行ったな。あとは)カチッ


婚后「あら? お連れの方が行ってしまいましたわよ?」

泡浮「ところで大丈夫ですか? さっきから咳が治まらないようですけど……)

湾内「も、もしかして救急車とか呼んだほうがよろしいのでしょうか?」オロオロ

一方通行「あーあー、ゴホン! 悪りィもォ大丈夫だ。ちょっと砂埃かなンか吸ったみてェでむせてただけだ(以下姫神ボイス)」

湾内「あらそうでしたのですね。それなら安心ですわ」




一方通行「オマエらはこンなところで何やってンだ? って、さっき桜祭りとか何とか言ってたか」

泡浮「はい。今日桜祭りがあると聞きまして、寮の門限延長申請を出してここに来ましたのよ」

婚后「本当は桜の木の下に座してお花見会といきたかったのですが、さすがにこの人多さだとそこまでは出来ませんでしたわ。残念です」

一方通行「あァ、ここには花見場所取りガチ勢がいるから、オマエらみたいなのじゃたしかに厳しいかもしれねェな」

湾内「がちぜい、さん? この辺りの桜の場所を管理している方でしょうか?」

泡浮「なるほど。その人にお願いしないと場所が貸していただけないのですね」

一方通行(これが世間知らずのお嬢様ってヤツか。面倒だからツッコムのはやめておくか)

婚后「ところで鈴科さんはどうしてそんな奇妙な服装をしているのでしょうか? 丈の短いスカートをしたメイド服のようなものに加え、猫の耳を模したカチューシャなどをして」

一方通行「ああ。これはな、花見でやったゲームのちょっとした罰ゲームみたいなモンだ。別に俺の趣味とかじゃねェから安心しろ」

婚后「はあーそうなんですの。高校生のお花見というのはそういうことをするものなのですね」

一方通行「まァ全員が全員やってるわけじゃねェと思うけどな」

泡浮「勉強になりますわね」

湾内「桜祭りに来てよかったですわ」

一方通行(チッ、そろそろ話切り上げねェとな。前はクソガキに能力使用モードに制限付けさせてたからよかったが、今は普通の能力使用モードで変声してるから電池残量が心配だ)


一方通行「……ま、そォいうわけだから俺は行くとす――」



美琴「あっ、婚后さんたちいたいた! おー……い?」タッタッタ



一方通行「あっ」

美琴「あっ」


黒子「……お姉さま? どうしたんですかいきなり手を上げたまま固まって」

佐天「もしかしてだるまさんが転んだでもしてるんじゃないですか?」

初春「またまたー、佐天さんじゃないんだからそんな急に変なことしないですよー」


一方通行(クソがあああああああああああッ!! 抜かったッ!! こいつらがいるっつゥことは超電磁砲とその連れもいるっつゥことだろォが何やってンだ俺ェ!?)

美琴(えっ、ええええええええええっ!? あれ一方通行よね!? なんで学舎の園の中じゃないのに女装してるのアイツ!? なんでっ!? どうして!?)


婚后「あら、御坂さんたちどうかなさりましたか?」

佐天「婚后さんたちがやりたがってた金魚すくいの出店が見つかったので呼びに来たんですよ」

初春「なんとなく金魚すくいって夏祭りのイメージあるんですけど、探してみれば案外あるものなんですね」

黒子「……ところでそちらの奇抜な格好をなさった方は婚后さんたちのお知り合いですの?」

湾内「はい。鈴科さんと言って、一ヶ月ほど前に学舎の園で会いましてお知り合いになりましたのよ」

婚后「御坂さんのお知り合いの方でしたから、てっきり貴女たちも知っているかと思っていましたわ」

佐天「うーん、鈴科さんかー。聞いたことないねー」

黒子「わたくしも聞いたことありませんわね」

初春「まあ御坂さん知り合いの人多そうですから、知らない人がいてもしょうがないですよね」




美琴「(ちょ、ちょっと一方通行ぁ!? アンタ何でこんなところで女装してんのよ!? も、もしかして私のせいで女装癖に目覚めて――)」

一方通行「(ンなわけねェだろ殺すぞオマエ! こちらとら罰ゲームでクソみてェな服着せられてンだよ!)」

美琴「(あー、なるほど。それでその状態で婚后さんたちに会っちゃって仕方無しに『鈴科百合子』になったってわけね。……よかった、私のせいじゃなくて)」ホッ

一方通行「(まァ、そもそもオマエが『鈴科百合子』なンておぞましいモン生み出さなきゃ、こンなことにはならなかったンだがな)」


佐天「御坂さん御坂さん! その人誰なんですか!? あたしたちにも紹介してくださいよ!」

美琴「えっ? え、ええ、ええっとこちら鈴科百合子さん。ちょっとした知り合いよ」

初春「初春飾利です! よろしくおねがいします」

佐天「佐天涙子でーす!」

黒子「…………」

美琴「……? どうかしたの黒子?」

黒子「いえ、どこかで見たようなお姿だと思いまして……はて、どこでしたっけ?」

一方通行「ッ!?」

美琴(そ、そういえば初詣のときに『一方通行』の姿でこの子たちと会ってたんだっけ!? すっかり忘れてたやばい!!)

佐天「うーん、言われてみればなんかそんな気がしないこともないような気がするなー」

初春「それするのかしないのかどっちですか? まあたしかに私もなんか引っかかってる気がするんですよねー」

婚后「あら? 貴女たち鈴科さんと知り合いでしたの?」

黒子「いえ、そういうわけじゃないんですが……ふむ」ジロッ

美琴「あ、あははー、多分気のせいよ気のせい」アセッ

一方通行「そォだ。俺はオマエらのことなンて知らねェからな。気のせいだ白井」

黒子「……うん? どうしてわたくしの名字を知っているんでしょうか? わたくしはまだ自己紹介していないと思うんですけど」

一方通行「あっ」

美琴(ちょ、ちょっとなにやってんのこの馬鹿ッ!?)

黒子「どうしてわたくしの名字を知っているのですか? 鈴科百合子さん?」ジロッ

一方通行「……あ、アレだ。超電磁砲からオマエのことを聞いててよォ、それで知っててつい呼ンじまったンだ」

黒子「なるほど、たしかにそれはありえますね」

美琴「ほっ」

黒子「変に疑った目を向けてしまって申し訳ございません。職業柄こういうことには敏感で……。あっ、紹介が遅れましたわね」

黒子「わたくしは常盤台中学一年で風紀委員(ジャッジメント)をさせていただいています、白井黒子と申します」

一方通行「おォ。よろしくよろしく」

黒子「ちなみに御坂美琴お姉さまとはルームメイトであり、将来を誓い合った仲ですのでお見知り置きを」

美琴「だからアンタは勝手に変なことを初対面の人に言うなッ!!」




美琴「――じゃ、私たちは行くわ」

婚后「鈴科さん。また学舎の園にぜひ遊びに来てくださいね?」

湾内「アフタヌーンティーでもしながらゆっくりお話したいですわね」

佐天「いいなぁー、そのときはあたしたちも誘ってくださいよ!」

泡浮「ふふふ、もちろんですわ」

初春「あ、アフタヌーンティー……ああ、お嬢様っぽくていいですねー」

黒子「では、ごきげんよう」



ワイワイガヤガヤ



一方通行「……やっと行ったか(以下一方ボイス)」カチッ

一方通行「クソッタレが。土御門の野郎のせいでとンでもねェ目に遭っちまったな。あのクソ野郎絶対許さねェ」ギリリ

一方通行「……まあイイ。さっさと結標のところに行くか」


結標「あっ、いた! 一方通行!」タッタッタ


一方通行「あン?」

結標「ちょっと何やってたのよ遅いわよ。もう焼きそば買ってきちゃったわ」つ焼きそば

一方通行「あァそォか。すまねェな」

結標「ところでさっきの常磐台の子たち誰なのよ?」

一方通行「あァ? 知らねェよ」

結標「えっ? でもあの子たち貴方に話しかけてたじゃない?」

一方通行「人違いだった。どォやら俺の女装した姿に似た知り合いがいるらしくて、そいつと間違えて俺に声をかけたらしい」

結標「へー、貴方に似ている女の子ってすごいわね。その人貴方の生き別れの妹さんだったりするんじゃない?」

一方通行「俺にそンな小説の物語にでも出てきそうな設定の身内なンざいねェよ。はァ、目的のモン買ったなら戻ンぞ?」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」タッタッタ

一方通行「こンな危険を呼ぶ服、さっさと脱ぎ捨ててェ」

結標「……ところで一方通行?」

一方通行「何だ?」

結標「『にゃん』の語尾、また忘れてるわよ」ニヤリ

一方通行「…………にゃン」


―――
――





同日 19:00

-第七学区・とある桜公園-



青ピ『そげぶマ~ン♪ そげぶマ~ン♪ ララララそげぶマ~ン♪』



結標「ただいまー!」テクテク

一方通行「チッ、クソみてェなお使いだったにゃン」

吹寄「おかえり二人とも」

結標「今何やってるの? カラオケ大会?」

吹寄「そうよ。ごめんね、二人を待とうって言ったんだけど馬鹿どもが勝手に始めちゃって」

結標「別にいいわよ。どうせ王様ゲームは終わりってわかってたしね」

一方通行「オイ、インデックス。ご所望の品だにゃン」つ焼きそば

禁書「わーい! ありがとうなんだよあくせられーた!」

一方通行「……さて、王様の命令もこなしたところで、さっさとこのクソみてェな服脱ぎ捨てねェとにゃン」

土御門「あっ、アクセラちゃんお疲れだぜい!」

一方通行「チッ、土御門ォ。オマエのせいで本当に疲れたにゃン」

土御門「どうかしたのか? 小太りのハゲ散らかしたオッサンにでも一発どう? って誘われたりでもしたのかにゃー?」

一方通行「……そっちのほうがまだマシだったにゃン。みぞおちに一発入れてやりゃ済む話だからにゃン」

土御門「よくわからんが楽しんでいただけてなによりですたい」

一方通行「どこをどォ聞いたらそンな言葉が出てくるンだにゃン?」

結標「……そういえば、姫神さんと上条君が見当たらないけどどうかしたのかしら?」

吹寄「ああ、二人なら屋台のある方へ言ったわよ。すれ違わなかった?」

一方通行「イイや、知らねェにゃン」

吹寄「そう。あとで結標さんたちももう一回屋台とか回ってもいいわよ? さっきのは王様ゲームの命令だったからゆっくりできなかったでしょ?」

一方通行「チッ、行かねェにゃン。二度とゴメンだにゃン」

吹寄「……何かあったの?」

結標「ええ、女装したせいで知らない女の子たちに人違いで話しかけられたみたいよ」

土御門「ぷふっ、そ、そいつはすごいにゃー」

一方通行「笑うンじゃねェ殺すぞにゃン。……まァイイ、とにかくさっさと着替えるにゃン」ガチャリガチャリ


青ピ「おっ、アクセラちゃん帰ってたんやなー」


一方通行「おォ」

青ピ「ちょうどいいタイミングやったなぁ。カラオケの出番、次がアクセラちゃんの番やったんや。ほい、マイク」ポイッ

一方通行「ハァ? 何で俺が歌なンざ歌わなきゃいけねェンだにゃン。つゥか、勝手に曲入れるなよ。帰ってくるの間に合わなかったらどォするつもりだったンだにゃン?」パシッ

青ピ「でぇーじょうぶだ、アクセラちゃんたちが帰ってくるのが見えてから曲割り込ませたから」

一方通行「クソみてェなことしてくれてンじゃねェにゃン」

青ピ「まあまあ。ちゃんと今アクセラちゃんにピッタリの曲入れといたから安心しぃ」

一方通行「あン?」




一方通行「今の俺にピッタリの曲にゃン? 一体何の曲――」



『はっぴぃ にゅう にゃあ/芹沢文乃(伊藤かな恵)&梅ノ森千世(井口裕香)&霧谷希(竹達彩奈)』



一方通行「なっ!? コイツは……!」

結標「ぷふっ、な、懐かしいわね」

吹寄「あー、冬休み前の打ち上げでカラオケ行ったときのヤツね」

土御門「にゃっははーまさしくピッタリな曲だぜい! ナイス選曲だ青髪ピアス!」

青ピ「アクセラちゃんの萌え萌えにゃんにゃんライブの始まりやでー!!」

一方通行「ふざけンなッ!! 何で俺がこンなクソ曲歌わな――」

青ピ「あっ、この曲すぐ始まるやでー」



タータタタンタータタタタンタ♪ タータータータータタタタタタタタタン♪



一方通行『にゃあ♪』



青ピ「うん?」



一方通行『ンでンでンでェ♪(にゃあ)にゃァンでェ♪ かまってかまって欲しィのォ♪』


一方通行『イイ子じゃないとォきのわたしィ、カワイィとかありえなァい♪』


一方通行『それそれそれェ♪(にゃあ)らァあぶッ♪ もらってもらってくださいィ♪』


一方通行『非常事態が日常ですゥ♪ 好きって言ったらジ・エンドにゃン♪』



土御門「なっ、なにぃ!? 何のテレもなく完璧なリズムで歌いこなしてるだと!?」

青ピ「そ、そんな馬鹿な!? ネコミミメイドのアクセラちゃんが赤面状態でたどたどしく歌うっていう、おもしろおかしいシチュのはずだったのに!?」ガクッ

結標「まあ、一方通行の頭なら一回曲歌えば完璧に歌えそうではあるわね」

吹寄「それに二回目だから恥ずかしさとかも半減だろうし。完全に馬鹿二人の負けってことかしら?」





一方通行『わがままそのままねこまンまァ♪ 上から目線のてンこ盛ィ♪』


一方通行『三毛ブチィ♪ トラシロォ♪』


結標「はやくしろっ♪」


一方通行『うェるかむねこまねきィ♪』


青ピ「なんかしらんけど姉さんまでノリノリやんけ!? つっちー!! どうやら遊んでる暇はなさそうやで!!」

土御門「たしかに、一般人どもに負けるわけにはいかないにゃー」

吹寄「何の勝負よ?」


一方通行『ちょォしにのっちゃだめェ♪ にゃンたら優しすぎるのだァいキィラァいィ♪』


ダン! ダン!


結標・土御門・青ピ「「「みゃーん♪」」」


一方通行『はァァァぴィにゅうにゃァ♪ はァァァじめましてェ♪』


一方通行『キミにィあげるゥ最初のオォォバラァン♪ 逃げるからァ追い掛けてェまァるい世界ィィ♪』


ティロティロ♪


一方通行『ラァアアアッキィニューフェェイス♪ ちィィかづいてるゥ♪』


一方通行『わたしだけェェ見つけなさいィィ♪ 拾いたいなら拾えばァァァ♪』


一方通行・結標・土御門・青ピ『「「「いーじゃン(ん)♪」」」』



<ぎゃははははははははははははははははははっ!!



一方通行(……あン? 何か聞き覚えのあるクソみてェな笑い声が聞こえて――)チラッ





数多「ぎゃはははははははっ!! 何だぁ? クソガキが花見してるって聞いて何してっかなぁって様子見に来たらよぉ、馬鹿みてぇな格好して馬鹿みてぇな曲歌ってやがるじゃねえか!!」

打ち止め「おおっ!! あれは伝説の『はっぴぃ にゅう にゃあ』だっ!! ってミサカはミサカはもう一度伝説を目の当たりに出来て感動を覚えてみたり!」

円周「くそう。こっちはこんなにおもしろい展開になってたのかあ。つまんない数多おじちゃんのところになんて戻らなきゃよかったよー」


一方通行『』


結標「あっ、打ち止めちゃんたち。それに木原さんもいる……あっ」

吹寄「あれが噂の木原さんね……なんか怖い雰囲気ね」

青ピ「ひえー顔面に刺青入れてるなんて裏の人やないんかい?」

土御門「…………」



一方通行『……木ィィィィィ原くゥゥううううううううううううううううううううううンッ!!』



キィィイイイイイイイイイン!!


吹寄「わっ」

土御門「うるさっ!?」

結標「ちょっと一方通行マイクマイク!!」

青ピ「耳がッ!? 耳がああああああああああああああああああッ!?」


一方通行「木原ァ……今見たこと」カチッ





一方通行「忘れろっつってもどォせ忘れねェだろォからなァ!? 記憶ゥこの俺が直々にその腐った脳みそグチャグチャにしてェ、命もろとも跡形もなく消し去ってやるよォおおおおおおおおおおおッ!!」バッ

数多「ぎゃはっ、面白れェ。少しは強くなったか見てやるよ。来やがれクソガキィ!!」





ドガン!! ズガガガガガガガ!! バギィン!! ゴォウ!! ドドドドド!! ベキン!! ゴパァ!!





<ぎゃああああああああ!! <なんだなんだ喧嘩か!? <ああああああすごい突風で桜の花びらとか食べ物とかいろいろ飛んでいくううううう!?


打ち止め「ちょ、ちょっと二人ともやめてええ!! ってミサカはミサカは精一杯呼びかけてみたり!!」

円周「おおー、まさか桜の満開日がそのままシーズン終了日になるなんて思わなかったなあ。さすが学園都市だねー」


結標「ちょっと一方通行落ち着きなさい!! このままじゃもう騒ぎどころか大事件に発展しちゃうわよ!!」

禁書「ああっ、私の焼きそばが飛んでいった!?」

吹寄「な、なんというかすごいわね……」アゼン

青ピ「つ、つえー……あのアクセラちゃんをまるで駄々こねる子供みたいにあしらうなんて。一体何者やあの人ぉ」

土御門(ふっ、さすがは木原数多だな。間違いなくヤツも敵に回したくない相手の一人だ)


―――
――





同日 19:10

-第七学区・とある桜公園・桜祭り会場-



<ドッッゴオオオオオオオン!!



上条「うわっ、何だ!? 何かすげえ音が聞こえたぞ!?」

姫神「あの方向は。私たちがさっき。花見をしていた場所辺り」

上条「マジかよ。何事もなければいいけど……」

姫神「たぶん大丈夫。そろそろアクセラ君が戻っているはずだから。なにか事件みたいなのがあれば。解決してくれてると思う」

上条「……そうだな。それに結標もいるし何とかなるか」

姫神(まあ。でもあんな騒ぎ起こせる人って。私の中では一人しかいないけど。黙っておこう)


上条「……しかし、もう三月も終わりで一年生も終わりってことは、もう二年生になるってことだよな?」

姫神「そうだね。ところで。上条君?」

上条「何だよ?」

姫神「補習の常連メンバーだったくらいの成績だったけど。二年生に進級できるの?」

上条「がっ、そ、そりゃ大丈夫だったよ! 一方通行や結標に期末試験の勉強手伝ってもらって最後の補習回避できたおかげでな!」

姫神「へー。正直心配してたから。ホッとした」

上条(でも最後のテストもダメだったら本気でヤバかったなんて言ったら、なんか怒られそうだから黙ってよう……)タラッ

姫神「どうしたの?」

上条「いやなんでもねえよ。だけどもう二年生かぁ……なんかあっという間だった気がするよ」

姫神「私も。この学校に転入したのが九月だから。余計に早く感じる」

上条「まぁ、俺も夏休み前半以前の記憶がないからだろうなぁ……」ボソッ

姫神「なにかいった?」

上条「いや、なんでもないんだ気にしないでくれ!」アセッ

姫神「?」

上条「で、でもあれだよな。あっという間に感じるってことは楽しい学校生活を送れてるってことだよな?」

姫神「うん。合ってると思う」

上条「だよな。ほんと楽しかったと思うよ。辛いこととかもたくさんあったっけどさ」




姫神「……上条君」

上条「何だ?」

姫神「私がこうやって。楽しい学校生活を送れてるのは。上条君がいてくれたから。だから。改めてお礼が言いたい」

上条「お礼? なんでそんな……」

姫神「上条君があのとき。私を助けに来てくれなかったら。今こうして生きていられたかも。わからない」

上条「…………」

姫神「……だから。その。ありがとうございました」ペコリ

上条「……ははっ」

姫神「? 何かおかしいこと言った?」

上条「いやーごめんごめん。おかしくて笑ったわけじゃないんだ。そこはわかってくれ」

姫神「じゃあ。なんで?」

上条「俺はな、別にお礼を言われるために助けたわけじゃないからな。だからいざお礼なんて言われたから、なんか笑っちゃってさ」

姫神「……それって。やっぱり。おかしいと思って。笑ったってことにならない?」ジロッ

上条「あれ? そうなりますかね?」

姫神「うん」

上条「……マジで?」

姫神「うん」

上条「姫神様のありがとうございましたを笑ってしまってスンマセンっしたぁ!!」

姫神「……だめ。ゆるさない」ムスッ

上条「そ、そこをなんとか……」

姫神「…………ふふ」

上条「?」

姫神「ふふふ。冗談。面白くて。ちょっとからかっちゃった」クスッ

上条「……ははっ、人が悪いですよ姫神さん」

姫神「ごめんなさい。ふふっ」

上条「くそぅ……まあ、でも」

姫神「うん?」







上条「こうやって姫神が笑顔で笑ってくれるならさ、真面目な顔してお礼なんか言われるよりずっと嬉しいよ。俺にとってはさ」ニコッ





姫神「…………ッ」

上条「……あら? なんかスベった?」

姫神「…………」プイッ

上条「あのー、なんでそっぽを向くんでせうか? そんなに俺変なこと言いましたかね?」

姫神「……ごめん。今。私。そっち。向けない」

上条「?」

姫神「…………」

上条「…………あのー?」

姫神「……よし。いこう」

上条「いく? どこか行きたいのか?」

姫神「上条当麻君」

上条「うおっ、なんだいきなりフルネームで呼んで?」

姫神「あなたに。話がある」

上条「お、おう」



姫神「私は。あなたのことが――」



婚后「あら? その声もしかして鈴科さんですの?」






姫神「!?」ビクッ

上条「すずしな?」

婚后「……あら? 全然違いましたの」

上条(常盤台の制服だ。御坂の知り合いだったりするのか?)

姫神「……私に。何か用?」

婚后「申し訳ございません。貴女の声が先程出会えた知り合いの声に似ていて、思わず声をかけてしまいました」

姫神「そう。別にいい。勘違いは誰にでもある」


湾内「婚后さーん! どうかなさいましたかー?」

泡浮「早くいかないと御坂様たちと離れてしまいますわ」


上条(御坂様? やっぱり御坂の知り合いか)

婚后「ごめんなさいすぐ行きますわ! それでは失礼致します」ペコリ

姫神「うん」



<ドウシタンデスカイキナリハナレテ? <イエスズシナサンソックリノコエノオカタトオアイシマシテ <ソンナグウゼンガアルノデスワネー



上条「なんだったんだ?」

姫神「さあ?」

上条「ところで姫神。結局話ってなんだったんだ?」

姫神「話?」

上条「ほら、さっき何か言いかけてただろ?」

姫神「…………」

上条「?」

姫神「!!!?!!!?」バッ

上条「うおっ!? いきなりまたそっぽ向いてどうした姫神!?」

姫神(私は!! さっき!! 一体!! なにを!! しようと!! していた!?)

上条「……あのー、姫神さん?」

姫神「……ごめんなさい。さっきの話。なしで」

上条「お、おう? わかった」

姫神(恥ずかしすぎて。とても顔が。見れない)カァ

上条「?」



―――
――





同日 19:30

-第七学区・とある桜公園・外れ-



一方通行「…………」ゴロン ←普通の服装に戻っている



結標「あっ、いた! こんなところで一人寝転がって何やってるのよ?」

一方通行「……結標か」

結標「そろそろお開きの時間だから、みんな片付けとかやってるわよ? 私たちも行きましょ?」

一方通行「悪りィ、今日は疲れてンだ。もう少しここに居させてくれ」

結標「……もう、しょうがないわね」スッ

一方通行「あン? 何で俺の隣に座りやがンだ?」

結標「うん? サボり仲間が欲しいんじゃないかと思って、一緒にサボってあげてんのよ」

一方通行「いらねェよそンなモン。グチグチ言われるのは俺一人で十分だ」

結標「別にいいでしょ? たまには私だってそういう日があるってことよ」

一方通行「……チッ、勝手にしろ」

結標「…………」

一方通行「…………」ボー

結標「……着替えたんだ」

一方通行「あァ?」

結標「ネコミミメイド服」

一方通行「当たり前だろォが。俺を何だと思ってやがる」

結標「似合ってたわよ? 私の思ったとおりね」

一方通行「世界で一番言われても嬉しくねェ褒め言葉だな」

結標「ふふっ、そうね。ごめんなさい」

一方通行「散々な花見だったなクソッタレが」

結標「あら? 楽しくなかったのかしら?」

一方通行「当たり前だろォが。朝から場所取りさせられて、クソみたいな罰ゲーム食らわせられて、馬鹿みてェな曲歌わせられて、木原のクソに調子に乗られたうえにやられて」

結標「いや、最後のは貴方がいきなり暴れだしたのが悪いんじゃないかしら?」




一方通行「……とにかく、俺が楽しめる要素皆無だったっつゥことだ」

結標「ふーん、まあいいじゃない。それでも」

一方通行「ハァ? 何言ってンだオマエ?」

結標「苦労することでみんなが笑ってくれるなら、それでもいいじゃないってことよ」

一方通行「いつから俺はそンなドM野郎になりやがったってンだ?」

結標「別にそうは言ってないわよ。最高の場所とは言えないけど、場所取りしてあの場所を確保したことによってみんなが花見を楽しめた」

結標「それだけで私は、休日なのに朝早く起きてここに来てよかったと思ってるわよ」

一方通行「お気楽クンはイイねェ。俺にはどォやってもあンな格好で醜態晒されたことをそォいう風にやってよかった、っつゥ感想に持っていくことが出来ないねェからな」

結標「……でも、貴方は本気で断らなかったじゃない」

一方通行「ハァ?」

結標「だってそんなことを言うくらい嫌だ、っていうことならそういう状況になったときって本気で嫌がって断るじゃない?」

結標「それか、本気で怒ってどんな手を使ってでもこの場から立ち去ろう、なんてことしようとしたんじゃないかしら?」

一方通行「何言ってやがる。アレはオマエらがあの手この手で俺の退路を塞いで――」

結標「だけど断ってはなかったわよね? 本気で逃げようともしてなかったわよね? 逃げられる場面ならいくらでもあったっていうのに」

一方通行「…………」

結標「いくら王様の命令は絶対、って言っても所詮はゲーム。本気で嫌がるのだったらみんなだって潔く引き下がってくれるはずよ。貴方だってそれくらいはわかるでしょ?」

一方通行「……ああ。甘い連中だよ本当に」

結標「わかってるじゃない。そう、わかっているのに断らなかった、ってことはそういうことでしょ?」ニコッ

一方通行「……馬鹿馬鹿しい。そンなわけねェだろが、くっだらねェ」

結標「はいはいそうですねー」

一方通行「ンだァ? そのクソみてェな口ぶりはよォ?」

結標「何でもないですよー、別に」

一方通行「チッ」

結標「……ところでこの辺って全然人がいないのね。ちょっと中心にいけば花見客がごった返してるっていうのに」

一方通行「ここら辺は街頭やら電灯やらが少なくて暗い上に桜もそンなに生えてねェし、中心部から遠いから桜祭り会場やトイレとかに行くのにも不便だからな」

結標「あー、言われてみればそうね」

一方通行「わざわざこンなクソみてェな場所で花見しよォなンざヤツはまずいねェだろ」

結標「なるほど。つまり、人混みの大嫌いな貴方にとってはオアシスみたいなものってことね」

一方通行「まァな」

結標「でもさっきの説明、一つだけ間違えてるところがあるわよ?」

一方通行「あン?」




結標「貴方はここをクソみたいな場所って言ったけど、貴方が思うほどここは悪いところじゃないわよ?」

一方通行「……なぜそォ思う?」

結標「向こう見てちょうだい」

一方通行「……桜公園の中心部か。桜並木が街頭や電灯とかの灯りに照らされてライトアップされてやがンな」

結標「そう。ちょっとしたイルミネーションみたいなものよね? こんな風景が見られるのだからいい場所だと思うわよ私は」

一方通行「イルミネーションって言うには地味で淡い光だと思うがな」

結標「いいじゃないそれで。たしかに、誰かがお客さんを喜ばすために緻密に計算して色彩鮮やかにした灯りもいいかもしれない」

結標「でも、ただその場を明るくするためだけの灯りが集まってできた、偶然見つけた光の集合も素敵だと私は思うわよ?」

一方通行「……そォかもな」

結標「あら、珍しいわね。貴方がこういうのに同意してくるなんて」

一方通行「別にイイだろォが。俺の勝手だろ」

結標「ふふっ、ごめんごめんつい」

一方通行「うっとォしいヤツだ」

結標「…………あれ?」

一方通行「あァ?」

結標(……今って、二人きりでいて、綺麗な夜景を一緒に見てて、なんというか……いい雰囲気な気が)



『せっかく二人きりの状況なんだからこのチャンス活かしたほうがいいと思うわ』



結標(これって……いわゆるチャンスってヤツ……?)


一方通行「……どォかしたか? 急に馬鹿みてェにフリーズしやがってよ」

結標「あっ、うん何でもない何でもない気にしないでちょうだい!」アセッ

一方通行「?」


結標(な、なんかそういう状況って気付いちゃったせいか知らないけど、なんかすごく恥ずかしくなってきた……!)

結標(あれ? 私ってさっきまでどうやって喋ってたっけ? どんな顔してたっけ? どうやってアイツの顔見てたっけ?)

結標(や、やばい、心臓がドキドキしてきた、顔が熱くなってきた、どうすれば、私はどうすれば――)



『どうせなら告っちゃえば?』





結標「――って絶対無理ッ!!」


一方通行「あァ? 何だいきなり?」

結標「ご、ごめんなさい! 変な声が出ちゃった! な、何でもないわ! 気にしないで!」

一方通行「何か顔赤けェぞ? まさか風邪でも引いたンじゃねェだろォな?」

結標「ち、違うの!! そんなんじゃないから!! ほんと大丈夫だから!!」

一方通行「……チッ、まァイイ。オイ、他のヤツらンところ戻ンぞ」スッ

結標「あ、あら休憩はもういいのかしら?」

一方通行「オマエみてェなのが隣に居られたら休めるモンも休まらねェよ」

結標「……ちょっと、それはいくらなんでひどいと思うんですけど?」

一方通行「黙ったと思ったらいきなり大声上げるようなやつが隣りにいて、オマエは心休まンのかよ?」

結標「そ、それはごめんなさい」

一方通行「……はァ、それにアレだ。風邪引いてるかもしれねェヤツを、いつまでもこンな寒空の下に居させるわけにはいかねェからな」

結標「…………」

一方通行「だから、とっとと戻って片付ける終わらせてウチに帰……あン? どォした?」

結標「……ふふっ、いえ。やっぱり貴方はツンデレってヤツよね、って思ってね」

一方通行「ハァ? そンなくだらねェ単語使って俺をわかった気でいるンじゃねェよ」

結標「そうかしら? 私的にはドンピシャだと思うのだけど?」

一方通行「ケッ、オイさっさと行くぞ」ガチャガチャ

結標「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」


青ピ「おおっーい!! アクセラちゃんに姉さーん!!」ボヨンボヨン


一方通行「あァ?」

結標「あら青髪君。片付けはどうしたの?」




青ピ「姉さんら遅いでほんま。もう終わってしもうたよ」ボヨンボヨン

結標「あっ、そうだったの。サボっちゃってごめんなさい」

青ピ「ええってええって、二人のおかげでぎょーさん笑わせてもろうたし。特にアクセラちゃんとか」ボヨンボヨン

一方通行「今度は全力でブン殴るぞオマエ?」

青ピ「あははーすまんすまん」ボヨンボヨン

結標「ところで青髪君。その手に持ってる大きな風船? は何なのかしら?」

青ピ「ああこれ? よくぞ聞いてくれました! これは水ヨーヨーの出店に一つだけ浮いてたキングサイズの水ヨーヨーだぜ!」ボヨンボヨン

結標「へー、よくそんなの取れたわね。すごいわ」

青ピ「せやろせやろ?」ボヨンボヨン

一方通行「くっだらねェ。行くぞ結標」ガチャリガチャリ

結標「あっ、うん」テクテク

青ピ「あーん、ちょっとまってや二人とも――ってぎゃああああズッコケて水ヨーヨーがすっぽ抜けたあああああああああッ!?」スポン

結標「なにそのやけに説明口調な悲鳴!? って一方通行危ないっ!?」

一方通行「あァ? なン――」



パンバシャアアアアンン!!



一方通行「だよ……」ポチャンポチャン

結標「あっ」

青ピ「いっ」

一方通行「…………」ポチャンポチャン

結標「だ、大丈夫一方通行?」

青ピ「すまんアクセラちゃん! わ、わざとじゃないんやわざとじゃ……」アセッ

一方通行「……青髪ピアスクゥン?」ポチャンポチャン

青ピ「は、はいぃ!!」


一方通行「死体確定だこのクソやああああっくしょンッ!!」


青ピ「……くそやくしょん?」

結標「あ、一方通行?」

一方通行「…………は」




一方通行「はっくしょン!!」




――――――


はっぴぃにゅうにゃあってもう10年以上前の曲なんやなって
おっさんなのバレちゃうねぇ

次回『風邪』

週2更新とかにしたいけど全然書き溜めのマージンが全然取れねんだワ

投下



13.風邪


March Forth Monday 07:30

-黄泉川家・一方通行の部屋-



一方通行「――ゴホッ! ゴホッ!」



芳川「……熱は38.5℃。結構な高熱ね。まあ症状からしてただの風邪でしょうけど」

打ち止め「大丈夫? ってミサカはミサカは心配そうに見つめてみたり」

一方通行「……ああ。ちょっと咳が出て、喉が痛くて、鼻水が出て、身体がだりィだけだ。問題ねェ」

黄泉川「いや、そんなに症状が一度に出てる時点で問題だから」

結標「やっぱり原因は昨日水かぶったせいかしらね?」

芳川「それに昨日は比較的に寒い日だったわ。そんな中、長時間外に居たのだから免疫力が低下してしまってても当然ね」

打ち止め「アワキお姉ちゃんは大丈夫なの? 一緒に場所取りとか行ってたんでしょ? ってミサカはミサカは質問してみる」

結標「ええ、私の身体はとくに異常はないわよ」

芳川「まあ、普段から食事をあまり取る方じゃない上に運動とかもしないモヤシ君が、そんな過酷なことをしていたのだからしょうがないわね」

一方通行「好き勝手なこと抜かしてンじゃねェぞ芳川ァ。……よっと」ガチャリ

黄泉川「ちょ、ちょっと一方通行! いきなり立ち上がってどうするつもりじゃん?」

一方通行「決まってンだろ。学校行くンだよ」

黄泉川「馬鹿言ってんじゃないじゃん! そんな身体で行けるわけないじゃんよ!」

芳川「キミなら学校サボれるって言って喜んで休むと思ったのだけど、いつからそんなに学校が好きになったのかしら?」

一方通行「あァ? 何勘違いしてンだ。オマエらがいつもサボるなサボるな言ってるから従ってやってるだけじゃねェか」

黄泉川「サボると休むは全然違うじゃん!」

一方通行「チッ、グチグチうるせェヤツらだ。大体こンな風邪なンてなァ、俺のチカラァ使えば余裕なンだよ」スッ

芳川「!? 打ち止め! 能力使用モードの制限をかけなさい! 早く!」

打ち止め「えっ、な、なんだかよくわかんないけどわかった! ってミサカはミサカはミサカネットワーク上に制限指示を送ってみたり」ビビッ

一方通行「どォいうつもりだオマエら!? 人がせっかく風邪を治そうとしてンのによォ!」

芳川「……一方通行。今何をしようとしてたのか言ってみなさい」

一方通行「あァ? 決まってンだろ。俺の能力で風邪のウイルス皆殺しにしてやるンだよ」

芳川「一方通行。悪いけどそれは許可できないわ」

一方通行「何だと?」

芳川「キミが能力をどういう使い方をして風邪を治そうとしているのかはわからないけど、今のキミが能力を使うのは危険すぎるわ」

一方通行「オマエ、この俺がチカラの使い方ァミスるって言うつもりか!?」


芳川「そうよ。キミの頭は今、高熱に侵されて思考能力が低下している。いくら演算はミサカネットワーク上でやってくれるとはいえ、演算の指示を出すのはキミのそんな頭」

芳川「出す指示を少しでも間違えれば能力は機能しない、いや、機能しないだけならまだいいわ。間違って能力が意図しない方向へ暴走してしまうかもしれない」

芳川「身体に関するベクトル操作は電子顕微鏡レベルの緻密さが求められる。以前キミが言っていたことよ」

芳川「今のキミにそれができるとは私には到底思えないわ」




一方通行「…………」

芳川「てなわけで、今日は一日寝てなさい。学園都市製の薬を飲んで一日寝てれば風邪なんて治るわよ」

結標「そ、そうよ一方通行。今日はゆっくり休んだほうがいいわ」

打ち止め「ミサカもそう思うよ、ってミサカはミサカは同意してみる」

黄泉川「身体を休めて風邪をしっかり治すことも学生としての立派な務めじゃん」

一方通行「……チッ、わかったよ。うるせェ女どもだ」

結標「あのー、私も休んだほうがいいですか? 看病とか必要だと思うし」

一方通行「あァ? いらねェよ看病なンてよォ。ガキじゃねェンだから」

結標「でもなんか心配だし……」

黄泉川「まあただの風邪だし、淡希がそこまでする必要はないじゃん」

芳川「下手に一緒にいて貴女に風邪が感染っても困るしね」

結標「……そうですね。わかりました」

打ち止め「ふふふ、安心してアワキお姉ちゃん! 代わりにミサカがしっかりと看病してあげるから、ってミサカはミサカは胸に拳を当ててしっかり者アピールしてみたり」

一方通行「話聞いてなかったのかクソガキ。オマエに風邪ェ感染ると面倒だ。さっさと木原ンところにでも行ってろ」

打ち止め「ぶーぶー」

芳川「付きっきりの看病はしてあげられないけど、バイトの休憩中くらいは様子見にきてあげるわ」

黄泉川「頼むじゃん桔梗。私も合間で様子見に来たいところなんだけど、今日は忙しくてちょっと抜けられそうにないじゃん」

一方通行「だから看病なンていらねェっつってンだろが。薬ィ飲ンで一日中寝てるだけだっつゥのにオマエらから借りる手なンざねェンだよ」

黄泉川「ほら、熱冷まシートとか交換したり、体拭いてあげたり」

一方通行「いらねェよ」

結標「でも寝てる間に病状が悪化してたらどうするつもりなのよ?」

一方通行「ほっとけ。最悪死ぬだけだ」

打ち止め「ええぇー!? 死んじゃ嫌だよ!! ってミサカはミサカは率直な気持ちを伝えてみたり」

一方通行「あくまで最悪の場合の話だ、そンな簡単に死ぬかよ。つゥか、オマエらいつまでこの部屋に居座るつもりだコラ。早く休ませろよ」

黄泉川「あはは悪い悪い。じゃ、私らは退散するとしようじゃん」

芳川「薬ここに置いとくから適当なもの食べてから飲んでおいてね」

結標「……学校から帰ったらまた顔出すわ」

打ち止め「死なないでね、ってミサカはミサカは懇願しながら部屋を後にしてみる」


ガチャ


一方通行「……ったく、休めやら寝とけやら、自分でほざいてたくせに、うっとォ……しィヤツらだ」ゼェゼェ

一方通行「頭ン中、ガンガン、金槌で、叩かれてる……みてェだ」ゼェゼェ

一方通行「クソ……が……」ガクッ



ドサッ!



―――
――





同日 08:20

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「えっ、アクセラが風邪で寝込んでる!?」

結標「ええ、そうなのよ」

土御門「馬鹿は風邪を引かないって話だったけど、あれは迷信だったのかにゃー?」

姫神「いや。アクセラ君は普通に。頭はいいよ?」

土御門「頭がいいと馬鹿かどうかはまた別の話だぜい」

青ピ「せやせや。アクセラちゃんはクラスの四バカ(スクエアフォース)の一員なんやで? それなのに風邪に負けるなんてなさけ――」


ゴッ!


吹寄「風邪の直接的な原因のあなたが偉そうに言ってんじゃないわよ!!」

青ピ「ぶびばべん……」

上条「しかし一方通行が風邪引いて寝込むなんて全然想像できないな」

吹寄「そうね。不健康そうな見た目だけど、病気らしい病気にかかってるところなんて見たことなかったし」

土御門「アクセラちゃんはちゃんと病気にかかってるぜい。中二病っていう心の病がな」

青ピ「これは重症ですねぇ」

吹寄「心配してる人もいるんだから、少しは考えて発言しなさいよ馬鹿ども!」

姫神「大丈夫? 結標さん」

結標「…………」

姫神「結標さん?」

結標「あっ、ごめんなさい! ちょっとボーッとしてたわ」

吹寄「アクセラのことでも考えてたのかしら? たしかに心配よね」

結標「い、いや別にそんなんじゃないわ! というか二人とも深刻な顔し過ぎよ、所詮はただの風邪なんだから」

上条「風邪だからって心配しちゃいけないってことはないだろ。心配なもんは心配だ」

結標「もう上条君までそんなこと言って……、あっ、そろそろHRの始まる時間だし席着いとかなきゃ。じゃ、またあとでね」タッタッタ


吹寄「……結標さん」

姫神「こっちも。割と重症みたい」

土御門「ま、ほんとに風邪なら一日も寝てれば治るだろうし、大丈夫だろ」

青ピ「さすが学園都市製の風邪薬やで!」

上条「でも高いんだよなぁ。上条さんちで風邪が流行った瞬間家計に大打撃だぜ」

土御門「カミやんは風邪とか引かないからへーきへーき」

吹寄「インデックスならともかく、上条当麻ならたしかに平気そうね」

上条「さっきまであんなに真面目な発言をしていた吹寄さんまでひでえ!?」


―――
――





同日 09:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


円周「はえー、アクセラお兄ちゃん風邪引いちゃってるんだ」

打ち止め「そうなんだー。今頃部屋で寝てるんじゃないかな? ってミサカはミサカは推測してみる」

数多「宴会で大はしゃぎして次の日体調崩して学校お休みなんて、ほんとガキだなぁアイツ」

打ち止め「もー、たぶんキハラもその体調を崩した原因の一つだと思うよ、ってミサカはミサカはジト目でにらみながら物申してみたり」ジトー

数多「あ? 何で俺なんだよ」

円周「そういえば昨日、数多おじちゃんアクセラお兄ちゃんボコボコにしてたからねー。そら体力も奪われて風邪引いちゃうよ」

数多「おいおい、あれはただの自己防衛だぜ? 悪いのは先に仕掛けてきたあのクソガキだ」

円周「ところでアクセラお兄ちゃんは強くなってたの? 試してやるみたいなこと言ってたけど」

数多「あぁ? あー、前よりはマシにはなってたんじゃねえのか? まあ、俺に勝つのはまだ百年足りねえけどな」

打ち止め「キハラってなんでそんなに強いの? ってミサカはミサカは素朴な疑問を投げかけてみたり」

数多「そりゃお前決まってんだろ。俺が『木原数多』だからだ」

打ち止め「答えになってないよ、ってミサカはミサカは頬を膨らませてみる」

円周「ねえねえ数多おじちゃん! 私とアクセラお兄ちゃんだったらどっちが強い?」

数多「今風邪で寝込んでるほうのクソガキ」

円周「えー? 即答ー?」

数多「だってお前弱いし」

円周「うーん、おかしいなあ。私も毎日『木原』を勉強しているつもりなのにねー」

数多「『木原』は勉強して身に付けるようなもんじゃねえんだっつーの。いい加減わかれよ」

打ち止め「なにしゃべってるのか全然わかんないからテレビでも見よっと、ってミサカはミサカはリミコンのスイッチを押してみる」ピッ

円周「ねえねえ打ち止めちゃん。あとでアクセラお兄ちゃんのお見舞い行こうよ」

打ち止め「えぇー? やめといたほうがいいよー。あの人看病されるのすごく嫌がってたからそういうことすると多分怒るよ、ってミサカはミサカは警告してみる」

円周「それはあれだよ。押すなよ絶対に押すなよみたいなやつだよきっと。本当は看病してほしいに決まっているんだあ」

打ち止め「本当かなー?」

円周「ま、それに今のアクセラお兄ちゃんになら怒られても怖くないし、どっちにしろ私は行くことはケッテー! って感じなんで」

打ち止め「もーエンシュウったらほんとイタズラ大好きだね、ってミサカはミサカはため息をついてみる」

円周「よーし、そうと決まったらお見舞いの準備だあ。数多おじちゃん、ちょっといろいろ買ってくるからカード貸して?」

数多「自分の金で買えクソガキ」


―――
――





同日 10:30 ~三時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-


青ピ「いやー今日行って明日行けば春休みやでー! うおお遊ぶぞおおおおおおおおおお!!」

吹寄「昨日あんなに遊んだのにまだ遊び足りないのかしら?」

青ピ「なにいうとん吹寄さん、ボクは三六五日二四時間常に遊びのことしか考えてないんやでー?」

姫神「その時間と労力を。勉強方面に持っていけば。医者でも弁護士でもなれそう」

土御門「いやいや無理無理。青髪ピアスがいくら勉強したって、頭の中にそんな知識が身に付くわけないにゃー」

青ピ「なんやとつっちー? 失礼な。ボクだって本気出せば何にでもなれるで! 魔法少女にでも美少女戦士にでも」

上条「性別自体変わってんじゃねえか」

青ピ「ま、そんなどうでもいい話置いといて、春休みもまたみんなでどっか行って遊ぼうや!」

姫神「なんとなく。来るとは思ってた」

吹寄「ほんとそればっかよねあなたって」

土御門「どこか行くって具体的にはどこ行きたいのかとか決まってるのかにゃー?」

青ピ「もちろんノープランや!」

上条「だろうな」

青ピ「それを今からみんなでじっくり決めていくんやでー!」

吹寄「……はぁ。まあそれは別にいいけど、こういうのは普通全員が揃ってから決めるものじゃないかしら?」

姫神「そうだね。今日は。アクセラ君が休んでるから」

上条「たしかにここで決めてもアイツが嫌だっつったら駄目だしな」

土御門「でもアクセラちゃんなら何だか言って了承してくれる気がするにゃー」

上条「それはわからんでもない」

青ピ「……ん? そういやいつもならこんな遊びの話題を出すと、真っ先に食いついてくるお方が全然会話に乗ってこーへんなぁ」

土御門「姉さんはどっかいきたいとことかないのかにゃー?」

結標「…………」

土御門「姉さん?」

結標「……えっ? ああ、ごめんなさい。えっと、何の話してたんだっけ?」アセッ

姫神「完全に上の空」

土御門「姉さんの頭の中にはもうアクセラちゃんしかいないようだにゃー」

吹寄「しょうがないじゃない。今日はもうそっとしておきましょ」

上条「そうだな」

結標「?」

青ピ「ほな、また授業中にスペシャルなお遊びプランを考えておくでー」

吹寄「授業中は勉強に集中しなさい馬鹿者!」


―――
――





同日 11:00

-黄泉川家・一方通行の部屋-


一方通行「…………おァ?」ムクリ

一方通行「…………」

一方通行「……そォいや風邪でぶっ倒れてそのまま寝てたのか」

一方通行「今何時だ? ……一一時か。俺にしては早起きじゃねェかよ」

一方通行「……クソが。まだ頭がボーっとしやがる」

一方通行「……ああ、薬飲ンでなかったな。面倒臭せェが何か適当に食って飲むとするか」ガチャリ

一方通行「あー、クソ。身体がフラフラしやがる。特注品の杖じゃなかったらまともに歩けてねェなこりゃ」ガチャリガチャリ

一方通行「……風邪ェ治ったら、真っ先に青髪ピアスの野郎を川に放り投げてやる」


ガチャ


-黄泉川家・リビング-


一方通行「……クソッタレが。まさか部屋からリビングまでがこンなに遠いなンてなァ」ゼェゼェ

一方通行「チカラァ使えりゃ楽なンだろォが、心配性のヤツらのおかげでまだ能力使用モード絶賛使用禁止中と来たモンだ」

一方通行「早く薬飲ンで、ベッドに横たわりてェぜ」



<ワイワイギャーギャー!!



一方通行「……あン? 何かキッチンの方が騒がしいな。クソガキの野郎、木原のところ行かずここで遊ンでやがんのか……?」

一方通行「言う事聞かねェガキには説教が必要だな。余計な体力を使わせやがってよクソ