結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」(975)



1スレ目
一方通行「バカみてェな三下を顔面パンチしたら記憶喪失になった」
2スレ目
結標「何でコイツと同じクラスなのよ!?」一方通行「それはコッチのセリフだ」
3スレ目
一方通行「もォ今年も終わりか」結標「何だかあっという間よね……」

スレタイ通りあわきんがなんやかんやでレベル5になる、一方さんとあわきんコンビのラブコメ?です

※注意事項

>>1の勝手な想像で物語が進むので、設定改変・キャラ崩壊・ご都合主義がたくさんあります

基本台本形式

週一更新(目安)


あとは以前と大体同じなので、それらを踏まえた上でよろしくおねがいします

では、肩の力を抜いてどうぞご気楽に見てやってください



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363437362



プロローグ.暗躍するプラン


夜の学園都市。辺りはひっそりと静まっており、聞こえるのはビルの間を通る風の音ぐらいだった。
冬だということで肌に突き刺さるような冷気が外には流れている。
空に映るのは三日月、都市の明かりに負けずに輝きを見せる一等星たち。静けさの中で唯一の賑やかさを演出していた。

そんな中、第七学区にあるとある学校のとある男子寮。
その一室のベランダの手すりに一人の少年が寄りかかっていた。
金色に染めた頭と青いサングラスが特徴の、アロハシャツの上に学生服を羽織った少年。
左手に握られた携帯電話は彼の耳元に当てられている。


「……これで満足か?」


少年は吐き捨てるようにそう言い放った。その表情には苛立ちのようなものが見える。


『ふむ、よくやってくれたよ。これでプランの成果を確認することができた』

「そのふざけたプランはいつになったら完遂するんだ? 動くこちら側からしても迷惑で適わない」

『何、いずれ終わるさ。近いうちにな』

「推定寿命が千年を超えるお前にとっての近いうちとは、一体いつなんだろうな?」


皮肉を述べる少年の表情はさらに険しくなっていた。


「今回の件、死人が出てもおかしくはなかった。お前がどういった意図でこれを行ったかは知らんが、先に言っておくぞ」


怒りの口調のまま少年は続ける


「俺たちであまり遊ばないことだな。やりすぎはお前の身を滅ぼすことになるぞ」


『…………』


電話の向こう側からの言葉はなかった。
おそらく向こう側では憎たらしく笑う電話主がいるだろう。
少年は舌打ちをし、再び口を動かした。



「で、次は何の用だ? わざわざお前の方から連絡を寄越すなどよっぽどのことがあったのだろう」

『学園都市を賑わすような出来事が起こる。これからな』


唐突な言葉に少年は顔をしかめる。


「何だそれは。大覇星祭、一端覧祭は既に終わり、残っているのは入試ぐらいか」


小学校から中学校。あるいは中学校から高等学校。
その中間点にある入試。時期的にもそろそろで今も受験生が血眼で机に向かっていることだろう。
ある種の戦争のようなもので祭のような楽しさはないが、盛り上がることには間違いない。


「お前がこのような俗事に関してのことを話すとはな。何のギャグだ」

『何を勘違いしているんだ? 誰もそんなことは言っていないだろう』

「……ならなにが起こるというんだ。もったいぶらずに早く言ったらどうだ! こちらも暇ではないんだぞ!」


少年は声は荒らげた。しかし電話の向こう側の人物の声は変わらず平坦なものだった。


『ふふふっ、まあそう焦ることではない、すぐにわかることだ』

「楽しみにしておけ、そういうことか」

『ああ。ではそろそろ切り上げるとしよう。ではな』


プツン。通話が切れて、スピーカーからはむなしく電子音が聞こえてくるだけだった。
少年は通話終了のボタンを押し、携帯電話を制服のポケットの中へと落とす。
サングラスを中指で押し上げて、夜空に写る光たちを眺めながら少年はつぶやいた。


「……ふざけやがって」


学園都市の夜。様々なものが暗躍する黒。少年もその闇の中をただもがくしかない。
それが彼へと課せられた使命なのだから……。




1.始業式

January second monday 07:00

-黄泉川家・結標の部屋-



ピピピピ! ピピピピ!



結標「……んっ…………」ゴロリ



ピピピピ! ピピピガチャ!



結標「…………朝?」

結標「…………」

結標「……そっか、今日から学校か……」

結標「…………」

結標「……起きよ」ムクリ



-黄泉川家・リビング-



ガラッ



黄泉川「おっ、おはようじゃん淡希」

結標「おはようございます黄泉川さん」

黄泉川「……ずいぶんと眠そうじゃんねー」

結標「昨日まで雪山でスキーやらなんやらしてましたからね」

黄泉川「ははっ、でもその体に残った疲れが、スキー旅行は楽しかったっていうことを照明してくれる証拠じゃん」

結標「そうですね、ふわぁ」

黄泉川「ま、それでも始業式の校長の話の時に寝ていい理由にはならないじゃん」

結標「あはは、見抜かれてますねー」

黄泉川「朝ご飯出来てるから顔洗ってきな」

結標「はーい」テクテク



結標「……あー、さっぱりした。でも眠いことは変わらないわね」

芳川「…………」ズズズ

結標「……相変わらずいつの間にかリビングに居ますよね、芳川さんって」

芳川「あら、随分な言いようね淡希」

結標「冗談ですよ。おはようございます芳川さん」

黄泉川「ほいコーヒー。少しぐらいは眠気が覚めると思うじゃん」スッ

結標「ありがとうございます」

芳川「そういえば他の子たちはどうしたのかしら?」

黄泉川「打ち止めはまだ寝てると思うじゃん。淡希と同じくスキー旅行で疲れているんだろ」

結標「一方通行は……って、言うまでもありませんね」

芳川「そうね。だって……」


一方通行「…………Zzz」


芳川「……ソファーの上に白いのが一人転がっているものね」

結標「アイツ今日から学校だって言うことわかっているのかしら?」

黄泉川「さすがにそこまで馬鹿じゃないじゃん。冬休み中だって補習期間は真面目に学校行ってたぐらいだし」

芳川「そうね。似合わないくらい真面目だわ。彼のことだから補習はサボり、宿題はスルーなんて当たり前のようにすると思ったけど」

結標「芳川さんの中でアイツはどんなキャラだったんですか……? まあ、何となくわかりますけど」

黄泉川「ま、時間になったらちゃんと起きるじゃん。ほっとけほっとけ」

結標「そうですね」ズズズ

芳川「さて、今日のニュースニュース」ピッ


―――
――




同日 7:55

-黄泉川家・結標の部屋-


結標「……よし、準備完了っと」

結標「そういえばアイツは起きたのかしら?」

結標「そろそろ出なきゃ結構つらくなる時間よね」

結標「……さすがに起きているわよね……?」


-黄泉川家・リビング-


一方通行「…………Zzz」

結標「と思っていた私が馬鹿だったわ……」

芳川「あら、まだ起きてなかったのね。愛穂はとっくに出発したというのに」

結標「これはもう起こすしかないですね。ちょっと一方通行ぁ!」ユサユサ

一方通行「…………Zzz」

結標「おーきーろー!」ユッサユサ

一方通行「Zzz……あァ? ンだよ……」

結標「貴方今日学校よ? 早く起きて準備しなさいよ」

一方通行「うっせェなァ……わかったからあと五時間眠らせろ」



ゴッ!



結標「起きろって言ってんでしょうが」

一方通行「はい」



一方通行「……くそったれが。何で学校なンてモンに行かなきゃいけねェンだァ?」←とりあえず制服に着替えた

芳川「それはキミが学生だからじゃないかしら?」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」

結標「そろそろ出ないと本気で不味いから早く朝ご飯食べて!」

一方通行「いらねェよ。コイツだけで十分だ」つ缶コーヒー

芳川「……栄養失調起こしてもしょうがない食生活よね、キミって」

一方通行「そりゃねェだろ。なりたくても黄泉川の野郎が無理やり食わせて来るンだしよォ」

結標「……そういえば貴方って黄泉川さんにも弱いわよね。打ち止めちゃんとは違ったベクトルで」

一方通行「弱くねェよ。ただ面倒だから従っているだけだ」

芳川「……本当は怖かったりして」クス

一方通行「怖くねェよぶち殺すぞクソババァが」スッ

芳川「はいはいわかったから電極のスイッチ入れるのはやめてよね、ご近所様に迷惑だから」



一方通行「チッ」カチャリ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「あァ、コーヒーうめェ」

結標「……って、ちょっと! コーヒー飲んで和んでる場合じゃないわよ! 遅刻するわよ遅刻っ!」

一方通行「遅刻なンてするわけねェだろ。音速で空から行けば五分もいらねェ」

結標「私は貴方と違ってそんな芸当できないの!」

一方通行「そォかよ。だったら行くとするかァ」

結標「もう、じゃあ芳川行ってきますっ!」ドタドタ

芳川「ふふっ、いってらっしゃい二人とも」

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

結標「少しは急ぎなさい一方通行!」

一方通行「ったく、急かすンじゃねェよ」カチ



ドンッ!



―――
――




同日 08:20

-第七学区・通学路-



タッタッタッタッタ



結標「……ぜぇ、ぜぇ、ギリギリになりそうね」タッタッタ

一方通行「そォだな。全ての信号機に引っかかるなンて三下のよォな不幸に遭わなければな」シュー

結標「さすがにそれはないんじゃない普通」

一方通行「どォだか。今のところ三連チャンだぜ?」

結標「……偶然よ偶然」

一方通行「だとイイがな」シュー

結標「……しっかし貴方は楽そうねっ、低空飛行してるだけでっ」タッタッタ

一方通行「楽なわけねェだろォが。風や慣性、重力、空気抵抗その他諸々――それらのベクトル全部きっちり演算しながら飛行してンだよ」

一方通行「しかもオマエのノロマな速度にわざわざ合わせてやってるしなァ」

結標「はぁ、はぁ、すっごくムカつくわねえ、殴りたくなるくらい」

一方通行「今殴っても反射されるだけだけどな、ぎゃはっ」

結標「この野郎……って、あら?」



信号:赤




一方通行「おっと、赤信号か」カチ

結標「またか。ホントついてないわねえ」

一方通行「まァクールになれよ」

結標「クールになれる状況じゃないんだけど」

一方通行「…………」

結標「…………」



信号:青(パッ



結標「よし、変わったわ!」ダッ

一方通行「オラ走れ走れェ、遅刻になンねェよォになァ」カチ

結標「言われなくても……ッ!?」タッタッタ

一方通行「あァ?」シュー


信号:赤



一方通行「……どォいうことだ」カチ

結標「そ、そんな……こんな連続で引っかかるなんてことあるの?」

一方通行「さァな。事実引っかかってンだからありえるンだろけどよォ」

結標「ぐぬぬぬ、もどかしいわね……」

一方通行「まァまァ落ち着け。まだ慌てるよォな時間じゃねェ」

結標「遅刻しそうだってさっきから言ってんでしょうが」


???「ぜぇ、ぜぇ……おっ、二人とも今登校か!」


一方通行「あン?」

結標「この声は……」

上条「いやー、二人がいるってことはまだ安全圏ってことだよな。よかったよかったー」

一方通行「よォ上条、寝坊か。目覚ましでもぶっ壊れてたのかァ?」

上条「そうなんですよー、携帯の電池もなんか知らないけど切れててなぁー不幸だ」

結標「相変わらずの不幸ね」

一方通行「便利なのか不便なのかわかンねェ右手だなァ」

上条「本当だよ、今だって連続で信号に引っかかってるからな」


一方・結標「「……え?」」



上条「ったく、なんでこう都合の悪い時限定で信号に引っかかりまくるんだろうな? つーか学校までの道のり信号多すぎだろ」

一方通行「……オマエ、さっきから信号に引っかかってンのか?」

上条「そうなんだよ。聞いてくれよ、今のところ連続五回目だぜ? ホント笑えねえよ」

結標「……ってことはそこの道を通ってきてたってこと?」

上条「そういうことだな。こっちから行った方が近道だったんだけど……まあ信号に妨害されてりゃ意味ねえわな」

一方通行「…………」

結標「…………」

上条「……? どうかしたか二人とも。しかしここの信号長ぇなぁ」

結標「ええ、そうね。このままじゃ本当に遅刻しそうだわ」

一方通行「……さァて、遅刻はしたくねェから俺は先に行くぜェ」カチ

結標「貴方まさか――」

上条「えっ、なにを言って――」



ドンッ!



上条「……と、飛んだ!?」



結標「くっ、信号に引っかからないように空中から行く気ねアイツ……」

上条「そんなに時間がヤベーのか……」つ携帯電話

上条「って、本当に時間がやばい!」

結標「……ふふふ、アイツだけセーフなんて何の面白味のない結末は許されるわけがないわ」ブツブツ

上条「えっ、何を言って――」

結標「じゃあ上条君、先に行ってるわね♪」



シュン



上条「て、テレポートっ!? うわっ、しかもあんな遠いところまで、ずっりぃっ!」

上条「……あれ? 結標って自分のテレポートってできたのか?」

上条「今まで見たことなかったからてっきりできねーのかと思っていたが……」

上条「……つーか、何で信号変わらねーんだよ! このままじゃ遅刻確定じゃねえか!!」



上条「クソッ、不幸だぁあああああああああああああああああああっ!!」



―――
――




同日 08:30

-とある高校・一年七組教室-



ワイワイガヤガヤ



青ピ「しっかしカミやんたち遅いなぁ、一体何してんやろうなー」

吹寄「さあ? いつも通り『不幸だー』とか言って信号にでも引っかかってるんでしょ」

青ピ「まあそうやろうけどな。そしたら土御門君も一緒に『不幸だにゃー』言うとるんかな?」

吹寄「言われてみれば土御門もいないわね」

青ピ「不幸なカミやんのお隣さんなんて土御門君も難儀やなー」

吹寄「無視して勝手に行けばいいのに」

姫神「……そういえばアクセラ君たちもまだ」

青ピ「ホンマやな、何かあったんやろうか」

吹寄「朝、黄泉川先生とは普通に会ったから事件的なことはないんじゃないかと思うけど」

姫神「単純にアクセラ君の寝坊?」

青ピ「たしかにそれはありえるなー。いつも眠い眠い言うとるし」

吹寄「結標さんもそれに巻き込まれたってわけね」



青ピ「冬休み気分が抜けてないんやなー、子供やねーアクセラちゃ――」



ドグシャ!



青ピ「――んごぱぁ!!」ドンガラガッシャーン

一方通行「誰が子供だってェ?」

姫神「あっ。青髪君が吹っ飛んでいった」

吹寄「あら、アクセラおはよっ」

一方通行「おォ。どォやら間に合ったみてェだな」カチ

姫神「どうしたの? 寝坊?」

一方通行「寝坊じゃねェよ。まだ十分間に合う時間帯だった」

吹寄「ちなみに何時に起きたのよ?」

一方通行「八時前くれェ」

姫神「ファミリーサイドからここまでだったら。結構危ない時間帯じゃない?」

一方通行「能力使えば車より早く行けるぜ?」

吹寄「そりゃそうでしょ。あなたの能力を使えば学園都市の端から端だって分単位で行き来できるわけだし」



姫神「……そういえば結標さんは?」

一方通行「さァな? 今頃三下と一緒に仲良く信号待ちでもしてンじゃねェか」

吹寄「置いて来たわけ?」

一方通行「ああ。上条なンかと一緒に登校してたら遅刻確実だからな」

姫神「結標さんかわいそう」

吹寄「マラソン大会の時みたいに抱えて連れてきてくれればよかったのに」

一方通行「ンな面倒臭せェことするかよ」

青ピ「あーあ、おしいことしたなぁアクセラちゃん」

一方通行「あァ?」

青ピ「そこで『一緒に行く』っていう選択肢選んどけばイベントCG回収できたかもしれへんのに」

一方通行「何言ってンのかさっぱりわからねェが、とりあえず俺をおちょくってるっつゥことはわかる」

吹寄「このゲーム脳は……」

青ピ「ちなみにそろそろチャイムがなる時間なんやけど……」

一方通行「つゥことで悪りィが、結標には初日早々遅刻っつゥ烙印を押されてもらうっつゥことになるわけだ」



シュン



結標「ぜぇ、ぜぇ、ざ、残念でしたぁ。そう簡単に遅刻なんてしないわよ」



吹寄「あっ、結標さん!」

姫神「今のはテレポート?」

結標「お、おはよう二人とも」ゼェゼェ

青ピ「姉さん自分をテレポートさせることできたんやなぁ」

結標「前まではできなかったんだけどね」

姫神「前までは?」

結標「うん、実は――」



キーンコーンカーンコーン



結標「あっ、もうチャイム鳴っちゃったわね」

一方通行「そりゃギリギリだったしな」

吹寄「じゃあまた次の休み時間ね」



ガラララ!



小萌「はぁーいみなさーん、席に着くのですよー」



ワイワイガヤガヤ



小萌「皆さんおはようございます。そして明けましておめでとうございますなのですよ」



<おめでとうございまーす!



小萌「では今日の予定を話す前に出席をとるのですよ。まず――ちゃん!」


―――
――




小萌「――次、土御門ちゃん!」



シーン



小萌「? 土御門ちゃんはどうしたのですー?」

吹寄「そういえば土御門も来てなかったわね」

青ピ「姉さんらカミやんと会ったんやろ? そんとき土御門君おらへんかったん?」

一方通行「いやいなかったぞ」

結標「うん、上条君一人だったわね」

吹寄「スキー旅行帰りで風邪でも引いたんじゃない?」



ざわざわ



小萌「……ええっと、じゃあ次上条ちゃん!」



シーン




小萌「……むむ、じゃあ上条ちゃんはちこ――」



ガラララ!




上条「その遅刻待ったぁあああああああああああああああああああッ!!」




小萌「ふぇっ!?」ビク

吹寄「うるさい上条! もっと静かに教室に入れないのか貴様は!」

一方通行「待ったァ、つっても遅刻は遅刻だろ」

小萌「そ、そうですよ上条ちゃん! 始業のチャイムは鳴ったのですから、出席に間に合っても遅刻は遅刻なのですよー!」

上条「くっ、不幸だ……」

青ピ「カミやん、つっちーはどしたん?」

上条「土御門? あいつ来てねえのか?」

吹寄「……どういうこと?」



上条「いや、俺が部屋を出たときは既に留守だったから、てっきり先に学校に行ったのじゃないかと」

一方通行「つまり、サボリっつゥことかァ?」

姫神「もしかしたら何かあったのかも」

結標「それなら何か連絡してくるんじゃないかしら?」

上条「……つーか、二学期の始業式のときもあいついなくなかったか?」

一方通行「前例あンのかよ」

小萌「ま、まあ土御門ちゃんについてはあとで確認を取ってくるのですよ。今はとにかく静かにしてください」

上条(……また何か面倒なことにでも巻き込まれてんのかなーあいつ)ボー

小萌「上条ちゃん早く席につくのですー」

上条「あ、すんません」ガタ


小萌「では出席確認が終わったところで今日の予定を話すのですよ」

小萌「九時から始業式が始まるので、その十分前くらいには体育館に集合なのです」

小萌「それが終わったあとは各教室でホームルームをして今日は終わりなのですよ」

小萌「では早めに体育館に行くとしましょう」




ワイワイガヤガヤ



青ピ「しゃっー! 半ドンキター!」

一方通行「その前に地獄の校長の長話があるンだがな」

結標「どうせ貴方は寝るんだから話なんて聞かないでしょ? というか黄泉川さんに怒られるわよ」

一方通行「おいおい、校長の話中に能力使わなきゃいけなくなったじゃねェか。絶対ェ持たねェよバッテリー」

姫神「ちゃんと起きとけばいい」

一方通行「面倒臭せェ」

吹寄「別に座っとくだけなのに何が面倒なのかわからないわね」

青ピ「その退屈な時間が面倒やからなー逆に」

上条「何で長いんだろうなー校長の話って」

姫神「ああいうのには。どうやらマニュアルがあるらしい」

結標「それってほんとなの?」

姫神「テレビで見た」

一方通行「あの綺麗ごとはただのコピペっつゥことか、面白れェ話だなァオイ」

上条「……はぁ、こんな時だけは羨ましい限りだぜ土御門」


―――
――




同日 09:10

-とある高校・体育館-


校長『ええー、今日から三学期に入るということでぇ――』


一方通行「…………Zzz」コクリコクリ


結標(案の定寝てる……)

吹寄(起こした方がいいのかしら……?)

青ピ(帰ったら積んでるエロゲー消化せーへんとなー)

上条(今日の昼飯はどうすっかなー? つか、冷蔵庫に食材残ってたっけ?)

姫神(……あ。黄泉川先生)



ゴッ!



一方通行「ッ!? 何しやがるッ?」

黄泉川「いい加減起きるじゃん♪」ニコ

一方通行「ハァ? 面倒臭せ――」

黄泉川「起きるじゃん♪」ニコ

一方通行「お、おォ……」


上条(よ、黄泉川先生怖えー)

吹寄(お、恐ろしさしか感じない笑顔だったわ)

姫神(痛そう…)

結標(まあ、自業自得ね……)

青ピ(とりま帰ったら一発いっとこうかなぁ)


一方通行「……チッ、うっとォしい」


―――
――




同日 11:25

-とある高校・一年七組教室-


ワイワイガヤガヤ


青ピ「っしゃー、やっと始業式おわたー!」

上条「ああー疲れたー」

姫神「アクセラ君。頭大丈夫?」

吹寄「すごい音してたわよ」

一方通行「あァ? 別にたいしたことねェよ」

結標「日常的に結構食らってるしね」

一方通行「つゥか、辺り見渡したら普通に俺以外に寝てるヤツいたじゃねェか。明らかに俺のことだけ見てただろ黄泉川」

上条「身内のよしみっつーことじゃねえか? この場合逆の方向の話になるけど」

一方通行「迷惑極まりねェよしみだなァ」

結標「それに貴方見た目がこれだから、何かしてたらいやでも目立ってしまうんじゃないかしら?」

姫神「思い切って髪を染めてみたらどう? 黒に」

上条「うわー、一方通行の黒髪かー。全然想像つかねえな」

吹寄「似合わない、ってことはなさそうだけど違和感がすごそうね」

結標「ためしに白髪染めでも買ってやってみたら?」

一方通行「やらねェよ」

青ピ「ぷはっ、こんな歳で白髪染めを勧められるなんて自分おもろいでぇ」

一方通行「オマエの青髪毛根ごと全部引き抜いて、青髪ピアスから丸禿ピアスに改名させてやろうか?」

青ピ「いやどす」



上条「しかし、結局土御門のやつ来なかったな」

姫神「どこで何をやっているのやら」

吹寄「どうせメイド喫茶とかにでも行ってるんじゃないの?」

結標「さすがにそれはないんじゃない。土御門君もそこまで馬鹿じゃないでしょ」

一方通行「…………」

青ピ「どうせあれやでー、宿題が終わってなくて来たくても来れないんやでえ」

吹寄「お前は宿題終わっているんでしょうね?」

青ピ「何言うとん終わっとるに決まっとるやんけ。まあもちろん全部家に置いてきたんやけどなぁ!」

結標「えっ何で?」

青ピ「そりゃ小萌センセと甘い時間を過ごすために決まっとるやないか!」

上条「またお前はそんなこと言ってんのかよ」

青ピ「うっさいでぇカミやん。ボクらぁ一般人はカミやんと違ってぽんぽんフラグを建てるなんてことできへんのやから、こういうところできっちりせえへんと」

吹寄「どうでもいいけど努力する方向間違ってるわよ」



姫神「そういえば忘れてたけど結標さん」

結標「ん、何?」

姫神「今朝話してた結標さんの能力についてなんだけど」

青ピ「そういやそんな話しとったなぁ」

上条「前までは自分自身のテレポートはできなかった、っつー話だったか?」

結標「うん、そうなの。よく知らないんだけど私にはトラウマがあったのよ。記憶喪失前のね」

吹寄「? 記憶喪失前のことなのに記憶喪失してからもトラウマがあったってこと?」

上条「何だか頭痛くなってきた」

結標「あくまで体が覚えてたってだけよ。だからそのトラウマが邪魔して今まで自分の体を飛ばせなかったのよ」

青ピ「それは不便やなぁ、テレポーターなのに」

結標「でも昨日の雪合戦大会がきっかけでトラウマを克服することができたわけよ……だから」



シュン



上条「消えたッ!?」

青ピ「一体どこにッ!?」

姫神「黒板の前」



結標「……おかげでこういう風に自分自身のテレポートもできるようになったわけ」

吹寄「へー、よかったじゃない!」

姫神「便利そう」

一方通行「…………」

青ピ「ん? どしたんアクセラちゃん、さっきから全然会話に参加してないで」

姫神「どこか具合でも悪い?」

一方通行「あァ? 別に何でもねェよ。面倒臭せェから口を動かさなかっただけだ」

結標「休み時間くらい積極的に会話に参加しなさいよ。ただでさえグループワークとかの授業に鳴ったらまったく喋らないんだから」

吹寄「たしかに私たち以外の人とグループになったりしたら会話ゼロの状態になってしまうわよね」

青ピ「アクセラちゃんテラコミュ障!」



ガン!



青ピ「ぎゃあああああああああッ!! 弁慶がぁ!! 弁慶がぁぁ!!」

上条「ほんと学習しねーよなぁお前って」

一方通行「チッ、くだらねェ」



ガラララ



小萌「はぁーい、ホームルーム始めちゃいますからちゃっちゃと席に着いちゃってくださーい!」


―――
――




同日 12:20

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



女子委員長「気をつけ、礼」



<ありがとうございました!



青ピ「放課後が来たでー!」

小萌「あっ、青髪ちゃんはちゃんと今日中に学校へ持ってきてくださいね」

青ピ「……え」

小萌「ちゃんと全部終わらせているんでしょ?」ニコニコ

青ピ「あ、はい。取ってきます」スタスタ


吹寄「結局あの馬鹿は何がやりたかったわけ?」

姫神「さあ?」

上条「あれがあいつにとっての幸せなんじゃねーの?」



結標「……ふぅ、さて帰るとしましょうか」

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

結標「あ、一方通行一緒に帰りましょ」

一方通行「悪りィな。少し寄るところがあるから一緒に帰れねェ」

結標「そう、寄り道くらいなら付き合ってあげるわよ」

一方通行「いやイイ。オマエに余計な時間は使わせたくねェからな」

結標「余計な時間って……どうせコンビニとかでしょ? それくらい大丈夫よ」

一方通行「違うっつゥの、もっと遠い場所だ。下手したら昼過ぎるかもなァ」

結標「うっ、たしかにそれは嫌ね」

一方通行「つゥことで吹寄たちとでも一緒に帰っててくれ。じゃあな」ガチャリガチャリ

結標「あ、うん」


結標「…………」

吹寄「あれ結標さん、一人で突っ立ってどうかしたの?」



結標「ちょっとね。一方通行が先に帰っちゃったのよ」

吹寄「なっ、それはどういうことかしら」

結標「何か用事があるとか言ってたわ」

吹寄「ふーん、何か怪しいわね」

姫神「うん。怪しい」

結標「怪しい? 何が?」

姫神「一人でコソコソしてるところ」

結標「別にコソコソはしてないと思うけど」

吹寄「その用事って何か聞いてないの?」

結標「いえ、少し時間がかかるかもしれないとは言っていたわ」

姫神「ますます怪しい」

結標「うーん……そう言われてみると怪しいように感じてきたわ」

吹寄「で、どうするの? 追いかけたりするわけ?」



結標「……いや、別にいいかな。アイツが何をしようと勝手だし、追いかけたら追いかけたで彼怒りそうだし」

吹寄「ま、そうよね」

結標「先に帰ってろ、って言ってたし今日はささっと帰るとしましょ」

吹寄「そうだ、どうせだしこれから三人でお昼でも食べに行かない?」

姫神「それは名案」

結標「いいわね。どこにいく? 地下街?」

吹寄「そうね、いつものファミレスとかじゃつまらないものね」

結標「そうと決まれば早速行くとしましょ──」


小萌「あっ、結標ちゃんちょっといいですかー?」


結標「何ですか先生」

小萌「悪いとは思いますが、ちょっと話すことがあるので職員室に来てもらえますー?」

結標「えっ、今からですか……?」

小萌「はい。楽しそうにランチの話しているところで本当に悪いと思っているのですが……」

結標「むむっ、それってどれくらいかかりますか?」

小萌「大丈夫ですよ。すぐに終わりますよ」

結標「そうですか、よかった……ちょっと二人とも待っててもらえ――」



黄泉川「――小萌先生ちょっといいじゃん?」


姫神「あっ。黄泉川先生」

小萌「何ですかー?」

黄泉川「ちょっと昼から必要な資料がまだ集まってなくってさ、今から緊急で手伝ってくれない?」

小萌「黄泉川先生! そういうのはあらかじめ前日から済ませておくことですよー!」

黄泉川「わ、わかってるじゃん。次から気をつけるから今日は手伝って! このとおーり!」

小萌「まったく……ええと、結標ちゃん」

結標「何だかすごく嫌な予感がするけど、何でしょう」

小萌「黄泉川先生が緊急事態のようなのでちょっと手伝ってきます。出来れば終わるまで待っててほしいのですよー」

結標「……どれくらいかかるんですか?」

黄泉川「だいたい二十分くらいかなー?」

吹寄「に、二十分……」

結標「結構かかりますね……」

小萌「生徒を待たせちゃいけないのでちゃっちゃと終わらせましょう! さっ、行きますよ黄泉川先生!」テクテク

黄泉川「あははー、悪いな淡希ー」

結標「いえ、構いませんけど……急いでくださいね?」

黄泉川「了解じゃん!」


結標「……はぁ、ごめんね二人とも」

吹寄「別に大丈夫よ。お昼が遅くなるだけだし」

姫神「うん。どうせ今からお店に行っても混んでいるから。これくらい時間を遅らせた方がいい」

結標「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ」


―――
――




同日 12:40

-第七学区・とある病院-


冥土帰し「……さてそろそろ昼食の時間としようかな?」



ガラララ



冥土帰し「……少し来るのが早いんじゃないかな?」

一方通行「…………」

冥土帰し「どうせならこれから君も一緒に昼食でもどうかな? この時間帯なら君もまだだろう」

一方通行「いらねェよ。それより例のものを早く寄越せ」

冥土帰し「まったく、君のせっかちさは相変わらずだね?」

一方通行「時間を無駄にしたくねェだけだ」

冥土帰し「…………ふぅ、まあその前に少しいいかい?」

一方通行「何だ?」

冥土帰し「君がこれを使って何をするのかなんてことは聞きはしない。その代わり一つだけ言っておこう」

一方通行「…………」



冥土帰し「あまり無茶をするな。君のやろうとすることは本来関わるべきでないものに首を突っ込んでいるようなものだ」

冥土帰し「君が面白半分でやっているわけじゃないことはわかっている。しかしこれは君の手に余るようなものだ」

冥土帰し「学園都市第一位の超能力を持った怪物と言われていても、君は一人の弱い子供であることには変わりないんだ」

冥土帰し「これのせいで日常が崩壊し、皆が傷つき、全てが壊れていくようになっていくかもしれない」

冥土帰し「そうなる前に僕たち大人に相談するんだ。決して一人で全てを抱え込もうなんてこと絶対に思うんじゃない」

冥土帰し「君がどんな状況に陥っても、どんな絶望の淵に立たされても、僕たちは絶対に君を救ってみせる」

冥土帰し「子供を守るのが大人の役目だからね?」


一方通行「…………チッ、つまンねェ話をぐだぐだ喋ってンじゃねェよ。ンなことはなっから端っからわかってンだよ」

一方通行「だけどよォ、俺ァ気付いちまったンだよ。このままじゃいけねェってことになァ」

一方通行「俺はかつて一万人以上の人間を殺した大罪人、どォしようもねェゴミクズだ」

一方通行「闇に片足突っ込むのは俺だけでイイ。アイツらみてェな善人が巻き込まれていいわけねェンだよ」


冥土帰し「……自分を犠牲に皆の日常を守る、そういうことかな?」

一方通行「ああ」

冥土帰し「君らしい考えではあるけど、一つ忘れていないかな?」

一方通行「何がだ?」





冥土帰し「その日常は君がいてから初めて成り立つものだ。君がいなくなればそれはまったくの別物となる」




一方通行「…………ああ、だからさっきから言ってンだろわかってるって」

一方通行「俺はアイツらの前から消える気なンてさらさらねェよ。だから俺は決めたンだよ」


一方通行「アイツらを絶対に守る。そのために俺は学園都市最強の超能力者(レベル5)になる」


冥土帰し「…………」

一方通行「……俺ァもォ行くぞ。邪魔したな」

冥土帰し「……一方通行」

一方通行「あァ?」

冥土帰し「もう一度言っておく。無茶だけはするな」


一方通行「…………何回も言わせンじゃねェよ、わかってンだよ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 12:50

-とある高校・一年七組教室-


結標「……しかし小萌先生遅いわね」

姫神「資料集めがよっぽど手こずっていると見える」

吹寄「そうね。資料ってやつが相当な量なんでしょうね」

結標「何かごめんね二人とも……」


小萌「――お待たせしました結標ちゃん!」

結標「あっ、小萌先生終わったんですか?」

小萌「はい。無事黄泉川先生を送り出すことができましたよー」

結標「じゃあ先生早く行きましょう。これ以上二人を待たせるわけにはいかないし」

小萌「そうですね。では職員室に行きましょう!」

吹寄「いってらっしゃい」

姫神「ごゆっくり……」


―――
――




-とある高校・職員室-



ガラララ



結標「失礼します」

小萌「こっちに来てください」テクテク

結標「はい」テクテク


小萌「……どうぞ座ってください」

結標「失礼します」スッ

結標「で、何ですか話って?」

小萌「はい。それがですね、これについてなんですけど」スッ

結標「……何です、この封筒?」

小萌「結標ちゃん宛てのものです」

結標「誰からですか?」

小萌「……統括理事会からです」

結標「と、統括理事会? 学園都市の上層部じゃないですか」

小萌「はい、今日の朝学校に届いていたようで……」



結標「わ、私何か悪いことでもしましたか……? まったく覚えがないんですけど」アセ

小萌「いえそんなことはないはずです! 結標ちゃんがいい子なのは先生がよぉくわかっていますから!」

結標「先生……」

小萌「とにかく開けてみましょう! でないと何が起こっているのかわかりません!」

小萌「それにもし何かあっても先生が絶対に守ってあげますから!」

結標「……わかりました! いざ!」ビリッ

結標「…………」ペラ

小萌「…………」ソワソワ

結標「…………」

小萌「……ど、どうでしたか?」

結標「……え、ええとよくわからないんですけど」

小萌「ちょっと見せてください……えっ、こ、これは……」



結標「な、何なのよこれ……?」



―――
――




同日 同時

-第七学区・とある病院・ロビー-


ガヤガヤ


一方通行「…………」

一方通行「…………」ペラッペラッ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……ふゥ、コーヒーうめェ」

一方通行「…………」ペラッペラッ


御坂妹「何をやっているのですか、とミサカは病院のロビーで一服しているあなたに問いかけます」


一方通行「あン? オマエか。コンビニのバイトはどォした?」

御坂妹「今日は休みです。その代わりここの手伝いをしています、とミサカはため息をつきながらぼやきます」ハァ

一方通行「そォかよ、大変だなオマエも」

御坂妹「ところであなたはこんなところで何をやっているのですか、とミサカは再度問いかけます」

一方通行「別に何でもねェよ。オマエには関係ねェ」



御坂妹「むむ、そう言われると非常に気になってしまいます、とミサカは胸にもやもやしたものを感じながらあなたを睨み付けます」

一方通行「何で俺が睨み付けられなきゃいけねェンだ」ペラッ

御坂妹「……何を読んでいるのですか、とミサカはあなたの持つファイルを指差してみます」

一方通行「何でもねェっつってンだろォが、イイからどっか行け」

御坂妹「…………」ジー

一方通行「……チッ、うっとォしい」ズズズ

御坂妹「……! 隙有りっ! とミサカはあなたからファイルの強奪を試みます」バッ

一方通行「ッ!? オマエッ……!」

御坂妹「能力がないと本当に駄目駄目ですね、とミサカは呆れながらもファイルを開きます」パラッ

一方通行「返しやがれッ!」バッ

御坂妹「おっと、そんな動きではミサカを捉えることはできませんよ、とミサカは軽やかなステップであなたの魔手から逃れます」

一方通行「くそったれが」

御坂妹「ふむふむなになに? とミサカは奪い取ったファイルの中を舐めまわすように眺めま……え」

一方通行「…………」



御坂妹「何ですか……これ、とミサカは恐る恐る尋ねます」

一方通行「……見りゃわかンだろ」

御坂妹「…………超能力者(レベル5)、七人全員のデータ……ですか?」

一方通行「ああ」

御坂妹「……冥土帰しが夜遅くまで調べ物をしていたのはこれだったのですね、とミサカは昨晩のことを思い出します」

御坂妹「しかし……こんなに細かい詳細まで調べ上げるとは……さすが冥土帰しと言えますね」ペラッペラッ

一方通行「だから言っただろォが、オマエには関係のないことだとな」

御坂妹「まったく関係ないとは言えませんよ」

一方通行「あァ?」

御坂妹「我らのお姉様の個人情報が流出しているのですから、それはミサカたちの情報が流出したのと等しいのでは、とミサカはお姉様のスリーサイズ欄を見て勝利を確信します」ニヤッ

一方通行「ハァ? ンなどォでもイイ情報まであンのかよ。余計なモン入れやがって」

御坂妹「あなたが頼んだのではないのですか? とミサカは変態一方通行に軽蔑のまなざしを送りながら問いかけます」

一方通行「その視線はあのオッサンに向けやがれ。俺は興味ねェよそンな情報」

御坂妹「なら何を思ってこれを手に入れたのですか? とミサカは疑問を浮かべます」

一方通行「俺が知りてかったのは超能力者(レベル5)全員のチカラの情報だ」

御坂妹「何でそんなものが必要なのですか? とミサカは首を傾げます」

一方通行「…………」



御坂妹「あなたは第一位という圧倒的なチカラを持つ最強の能力者。そのようなものを知ったところで利益になるとは思えませんが……」

一方通行「……俺は知ったンだよ。自分の弱さってやつをな」

御坂妹「弱さ、ですか?」


一方通行「ああ。俺は決して最強なわけじゃねェ。最強なら俺はアイツらを巻き込むなンてことなかったンだ」

一方通行「だから俺は強くなる。超能力者(レベル5)全員をまとめて相手にしても、アイツらに指一本たりとも触れさせることなく守り通すために」


御坂妹「……一つよろしいですか? とミサカは確認を取ります」

一方通行「何だよ」

御坂妹「何かキャラが違いませんか? とミサカは率直な感想を述べます」

一方通行「ハァ? 別に違わねェだろ」

御坂妹「いいえ違いますよ、とミサカは即座に切り捨てます」

御坂妹「普段のあなたはこのようなことは決して考えません。あなたにはいつも『面倒臭せェ』とか『くだらねェ』とかつぶやいて面倒ごとを避けている傾向がありました」

一方通行「……そォだな、違いねェ」

御坂妹「何かあったのですか? とミサカは少しばかり心配してみます」

一方通行「さァな……つゥかオマエまでどォした? いつも通り憎まれ口をたたけよ」

御坂妹「いえ、何でもないのならいいんです、とミサカは再びファイルに視線を移します」パラララ

一方通行「チッ、イイ加減返しやがれそれ」

あれ?このスレで六位設定とかあったけ?
オリジナル?



御坂妹「…………あれ?」

一方通行「あァ? どォかしたか」

御坂妹「……一方通行に質問なのですが、学園都市にいる超能力者(レベル5)の人数は全員合わせて何人でしたでしょうか? とミサカは質問します」

一方通行「何言ってンだオマエ。俺たちレベル5は全員で七人だろォが」

御坂妹「……はい、そうですよね」

一方通行「ついに頭が狂ったンじゃねェか? 一度調整でも受けたらどォだ」

御坂妹「いえ、ミサカの方は正常です、ご安心ください。ただ……」

一方通行「ただ?」



御坂妹「このファイルの中に超能力者(レベル5)が八人いるんですが、とミサカはありのまま見たことを話します」



一方通行「…………………………………………は?」



御坂妹「嘘はついていませんよ。まだエイプリルフールはきていませんから、とミサカはカレンダーを見ながら――」

一方通行「オイ、それを寄越せ」バッ

御坂妹「はい、とミサカは素直にファイルを渡します」スッ

一方通行「…………」パラララ



一方通行「…………オイオイ、コイツはどォいうことだ」







一方通行「結標のヤツが――」


結標「わ、私が――」






一方・結標『――超能力者(レベル5)だとォ(ですって)!?』






今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます
誰だお前、と思ってる人が大半でしょうけどみなさんお久しぶりです!
少しだけですが書き溜めができたのでスレ立てました

就活とかいう学生殺しのせいで投下スピードはだいぶ遅くなると思います
なのでこのスレは1スレ目のようにほのぼの短編中心を目指していきたいです

これからもよろしくおねがいします
ではではノシ

>>44
一応六位の情報もある設定ですが、出てこないのでその情報は活用されることはありません


みなさんこんばんは
一週間後の予定でしたが早く書けたので投下します



2.翻弄される超能力者(レベル5)たち


January second monday 13:00

-第七学区・とある病院・ロビー-


一方通行「結標が……超能力者(レベル5)だと……?」


御坂妹「結標淡希。『残骸(レムナント)』の件での首謀者である外部の科学結社、その協力者。現在は記憶を失っており、至って普通の学生生活を送っている」

御坂妹「……彼女ですよね。ミサカが働いているコンビニによく足を運んでくれる……とミサカは常連客の一人を思い出してみます」

一方通行「ああ」

御坂妹「彼女は大能力者(レベル4)だと認識していましたが、どうやら違ったようですね、とミサカは自己の情報収集能力の未熟さを知りました」

一方通行「いや、アイツはレベル4だ」

御坂妹「ではこの資料はどういうことなのでしょうか、とミサカはあなたに説明を求めます」

一方通行「……チッ、それこっちのセリフだくそったれが」ガチャリガチャリ

御坂妹「どこへ行くつもりです? とミサカは唐突に歩き出したあなたに問いかけます」

一方通行「これを作った本人に聞きに行く。こいつがどォいうことなのかをよォ」

御坂妹「……無駄だと思いますが、とミサカは意味深な発言をします」

一方通行「あァ? どォいうことだ」

御坂妹「冥土帰しは午後から出張です。だからミサカがこうして手伝いに駆られているのですよ、とミサカは懇切丁寧に説明しました」



一方通行「間が悪りィにも程があンだろ。俺は上条じゃねェっつゥのによォ」

御坂妹「そういうわけで、また後日来てもらうか直接電話していただくしかありませんよ、とミサカは帰宅を促してみます」

一方通行「そォか。電話っつゥ手があったか。だったら早速――」スッ

御坂妹「よっと」パシッ

一方通行「……オイ何しやがる。返しやがれ」

御坂妹「病院内の通話はマナー違反ですよ。するなら外に出てからお願いします、とミサカはここの職員らしく注意してみせます」

一方通行「わかったよ。だから返しやがれ」

御坂妹「どうぞ、とミサカは奪い取った携帯電話をリリースします」スッ

一方通行「チッ、だったらとっとと外に出るぞ」

御坂妹「え、ミサカもですか? とミサカは目を丸くさせます」

一方通行「ハァ? オマエが知りたいっつったンだろォが」

御坂妹「正直ミサカはどうでもいいのですが、とミサカは思ったことを率直に述べてみます」

一方通行「どォでもいいだと?」

御坂妹「はい」



御坂妹「なぜなら、超能力者(レベル5)だろうと大能力者(レベル4)だろうと彼女が彼女であることに変わりありませんから」




一方通行「…………」

御坂妹「とミサカはちょっと良いことを言ってみます」ドヤァ

一方通行「……ケッ、自分で良いこととか言ってンじゃねェよ、台無しじゃねェか。……まァそォだな」


一方通行「そンな当たり前のことを言えるよォになったっつゥことは、オマエも少しは成長したってことか」


御坂妹「当然です。ミサカだって生まれて長いのですから、とミサカは今までの長い人生を思いだしてみます」

一方通行「生まれて一年も満たねェガキが何言ってンだか」

御坂妹「むっ、ガキと言ったほうがガキなんですよ、とミサカは反論してみます」

一方通行「そォいうところがガキだっつってンだよ」

御坂妹「くっ、これについては反論ができません、とミサカは白旗を上げます」スッ

一方通行「まァイイ、じゃあ俺はもォ帰るとするわ。今日は午前で終わりって言ってあるからな。あンまり遅せェとオマエらの上位固体様がうるせェ」

御坂妹「そうでしょうか。今現在は新しくできた友達とやらと遊んでいるのであなたのことなど頭から消えているのでは? とミサカは推測します」

一方通行「だとイイけどな……。ああそォだ、オイ10032号」

御坂妹「何でしょうか?」

一方通行「一応言っとくがこの話は他言無用だ。もちろンミサカネットワーク上にもだ」

御坂妹「……わかりました。あなたの言うとおりにしましょう、とミサカは要求に素直に応じてみます」

一歩通行「……? エラく素直じゃねェか」

御坂妹「ミサカも面倒ごとはあまり好きじゃない、そういうことですよ」


―――
――




同日 14:00

-第七学区・地下街・とある飲食店-


吹寄「れ、超能力者(レベル5)になったぁ!?」


結標「ちょ、ちょっと吹寄さん声が大きい」

姫神「しかしこれは。驚かない方が異常」

結標「その割にはあまり表情の変化はないけど」

姫神「私も一応驚いている。ただ吹寄さんのように外に出さないだけ」

吹寄「……しかし結標さんがレベル5かぁ。何というか……すごいわね」

結標「まだあまり実感とか湧かないけどね」

姫神「やっぱりうれしかったりする?」

結標「い、いや特にそうは感じないわね。別にレベル5になりたいと思ったことはないし」

吹寄「しかしこれはすごいことになったわね。クラスにレベル5がいるってだけですごいのに、これで二人になるってことだもの」

結標「お、大げさよ。これといって何も変わってないんだし」

姫神「結標さんからしたらそうかもしれない。だけど周りはそうは思わない」

結標「そうなの?」



吹寄「超能力者(レベル5)っていうのは学園都市じゃ憧れの的、一種のアイドルみたいなものよ」

結標「あ、アイドルって……」

吹寄「まあそんな感じだから、結標さんはもっと誇ってもいいと思うわ」

姫神「うん」

結標「うーむ、そうは言っても……ねえ?」

吹寄「でもレベル5になったってことは、一応はアクセラと同じ位置に立てたってことよね?」

結標「順位の問題を抜けば……まあ」

吹寄「少しはアクセラの見る目も少しは変わるんじゃないかしら?」

姫神「もしかしたらもっと親密になれるかも」

結標「え、そ、そうなの……かな……?」

吹寄「家に帰ったら真っ先にアクセラに報告すればいいんじゃない?」

姫神「たぶん彼も喜んでくれると思う。素直にじゃないと思うけど」

結標「そ、そうね。じゃあそうしてみるわ」

吹寄「そうと決まればそろそろお開きね」

結標「あっ、そうだ。一応だけどこの話はまだできるだけ言いふらしたりとかしないでね」

姫神「どうして?」

結標「何かまだ正式に発表はされてないみたいで、機密事項らしいわ」

吹寄「そ、そんな重要な情報だったのね……」

姫神「口外したら消されてもおかしくないレベル」

結標「まあそんな大げさに考えなくていいわよ。近いうちにこの情報は発表されるらしいわ」

吹寄「……わかったわ。これはあたしたちだけで留めとくってことね」

姫神「了解した」

結標「じゃ、また明日ね」ノシ

吹寄「ばいばい!」

姫神「……ばいばい」


―――
――




同日 14:30

-第七学区・とある公園-


一方通行「…………」ピッガチャン

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

一方通行「…………」←ベンチに座る


一方通行「……はァ、さァてどォすっかな」カチャ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……ふゥ」


一方通行(一体どォして結標がレベル5なンかに……?)

一方通行(この資料を作った冥土帰しに電話をかけたのはイイが、一向に出る気配はねェ)

一方通行(どォする? 馬鹿正直に聞くか? 結標本人に……)


一方通行「…………」ズズズ


一方通行「普通に考えて無理、っつーか無駄だろうな」フゥ



一方通行(俺でも知らなかった情報をアイツが知っているわけがねェ)

一方通行(それよりこの情報の真偽を確かめる方が先なンじゃねェか?)

一方通行(大体いつアイツの強度が上がったってンだ。普通は身体検査(システムスキャン)を一度受けねェと強度の上がり下がりなンてわかりもしねェ)

一方通行(たしかアイツの期末考査の時点ではまだレベル4判定だった)

一方通行(それ以降はまだ一度も身体検査を受けてねェはずだ……つまり)



一方通行「この情報はガセ、っわけか」ボソッ

美琴「何がよ」



一方通行「…………ああ、何だ超電磁砲か。何か用か?」

美琴「何だとは何よ、ていうか別に用なんてないし」

一方通行「じゃあ何でこンなところにいるンですかねェ」

美琴「べ、別にいいじゃない! 私がどこにいようとアンタには関係ないでしょ!」

一方通行「はァ、くっだらねェ」

美琴「ところでガセって何のことよ?」

一方通行「何でもねェよ。オマエには関係ねェ」

美琴「ふーん、まあ別にどうでもいいけど」

一方通行「だったら話しかけてくンなよ」

美琴「アンタが変な独り言言うからでしょ? 黙って座ってるだけなら私だってスルーしてたわよ」トンットンッ



一方通行「……で、オマエはその自動販売機の前で何やってンだ」

美琴「見てわからないの? のど渇いたからちょろっとジュースを飲もうかと思ってるのよ」サッ

一方通行「なら何で自販機の前で構えているンですかねェ」

美琴「そりゃこういうこと……よっ!」ダッ



ガン!! ガラララガシャン!



美琴「……おっし、ヤシの実サイダーゲット!」スッ


一方通行「あァもしもし風紀委員(ジャッジメント)ですか? 自販機蹴り倒してジュースを強奪してる馬鹿が一人――」


美琴「ちょ、ちょっとタンマ!」バシッ

一方通行「おっと」

美琴「……えっと、あれ? 通話状態、じゃない……?」

一方通行「チッ、安心しろ。冗談だ冗談」

美琴「あ、ああ冗談ね、よかった」アセ

一方通行「ったく、オマエら姉妹は何で人の持ちモンを強奪するっつゥ考えしか浮かばねェンだよ」

美琴「い、いつもそんなものをとってるわけじゃないわよ! ……って姉妹?」

一方通行「何でもねェよ気にするな。つゥか、いつまでそれ持ってるつもりだ」

美琴「あっ、ごめん」スッ



一方通行「チッ」ズズズ

美琴「…………」ゴクゴク

一方通行「…………」

美琴「…………」

一方通行「オイ、まだ何か用ォか?」

美琴「ベ、別に用なんかないって言ってるでしょ!」

一方通行「だったら何でここにいるンだよ」

美琴「何よ。私がいるのがそんなに不味いっていうわけ?」

一方通行「チッ、話になンねェな」ガチャリガチャリ

美琴「どうしたの?」

一方通行「家に帰ンだよ。オマエがいると落ち着かねェ」

美琴「何よそれッ! 随分な言いようね……!」

一方通行「オマエが無意味に俺の近くにいるからだろォが」

美琴「無意味じゃないわよ!」



一方通行「じゃあ何の意味があるのか懇切丁寧に説明してみろよ」

美琴「ぐっ、その、ええと……って、あ、アンタには関係ないでしょ!」

一方通行「関係あるから聞いてンだろォが……まァ、どォでもイイけどよォ」

美琴「どうでもいいなら聞くな!」

一方通行「はァ……、ああそォだ。超電磁砲、一つ質問イイか?」

美琴「ん、何よ」



一方通行「超能力者(レベル5)って全員で何人いたっけか?」



美琴「……はぁ? アンタ何言ってんの? そんなの七人に決まってるでしょうが」

一方通行「そォ……だよな」

美琴「アンタそんなこと聞くなんてどうかしちゃったんじゃない? もしかしてまだ頭の怪我治ってないんじゃ……?」

一方通行「残念ながら俺ァ正常だ……本当に残念ながらな」

美琴「……?」

一方通行「じゃあな超電磁砲」ガチャリガチャリ



上条「──ありゃ? 御坂に一方通行じゃねえか」




一方通行「あン?」

美琴「あっ、あ、あ、アンタ! ぐ、ぐぐ偶然じゃない!」

一方通行「ハァ?」

上条「何してんだ二人して。しかし珍しい組み合わせだな」

一方通行「そォいうオマエは何してやがンだ?」

上条「何って見りゃわかんだろ? 買い出しだよ買い出し」ガサリ

一方通行「買出し……つゥことは今帰り道か何かっつゥことか?」

上条「そういうことになるな」

一方通行「…………ああそォいうことか」

美琴「……何よ」

一方通行「たしかにこれは俺には関係のねェ話だったなァ」

美琴「……う、うるさい///」

上条「?」


───
──




同日 15:00

-第七学区・ファミリーサイド・十三階廊下-


キンコーン←エレベーターの音


結標「よし、着いた着いた」

結標「さあて、アイツは帰っているかなーと」テクテク


打ち止め「あっ、アワキお姉ちゃんだ! おかえりなさーいー! ってミサカはミサカは手をぶんぶん振りながらあいさつしてみたり」ノシ

円周「おかえりー淡希お姉ちゃん!」ノシ


結標「打ち止めちゃんに円周ちゃん、二人揃ってどうしたの?」

打ち止め「これからコンビニにお菓子を買いにいくところなんだよ、ってミサカはミサカは質問を簡潔に答えてみたり」

円周「数多おじちゃんが連れて行ってくれるらしいから、外で待ってるんだ」

結標「へー、何だかんだいって打ち止めちゃんも木原さんのところに慣れてるのね。最初は苦手とか言ってたけど」

打ち止め「もしよかったらアワキお姉ちゃんもコンビニに行く? ってミサカはミサカは旅の仲間は多いほうがいいの言葉に基づいて勧誘してみたり」

結標「んーどうしようかなー。そういえばアイツはもう帰ってるの?」

打ち止め「あの人のこと? まだ帰ってきてないみたいだよ、ってミサカはミサカはビビッと電波を察知してみる」ビビッ

円周「そもそもあの扉、朝見たときから動いた形跡はないね」



結標「そんなことわかるの?」

円周「そりゃ私も『木原』の一員だもん。それくらい見とかないと駄目なんだよ」

結標「……『木原』って探偵一族か何かなの?」

円周「うーん、全然違うかなー。『木原』っていうのは――」


数多「円周ちゃーん?」


円周「あ、数多おじちゃん準備終わった?」

結標「木原さんこんにちは」

数多「よぉ結標さん。んだぁ、あのクソガキは一緒じゃねぇのか?」

結標「はい。用事あるって言って先に帰っちゃって」

打ち止め「ええっーそれはひどいね! レディを置いて先に帰るなんて、ってミサカはミサカはあの人のだめだめさに腹を立ててみたり」

円周「これはアクセラお兄ちゃんにはおしおきだねー、ジャッジメントタイムだね!」

結標「いや、別にそこまで怒ることでもないから」

数多「ったく、あのクソガキは相変わらずっつーことか」

結標「一方通行に何か用ですか?」

数多「いや、別に特にはねぇけど。まあ強いて挙げるなら雪合戦大会のことをネタにおちょくるくれーかな?」

結標「あはは、あんまり無茶するとこのマンションがなくなりかねないのでほどほどにしといてくださいよ?」



数多「さーてガキどもぉ、とっととコンビニ行くぞ。こちとら忙しい中わざわざ時間作ってやってんだからな」


打止・円周『はーい!』タッタッタ


結標「いってらっしゃいねー」

数多「……そうだ、結標さん」

結標「何ですか?」


数多「超能力者(レベル5)に昇格おめでとさん」


結標「…………えっ」

数多「何で知ってんだ、っつー顔してんじゃねぇか。予想通りの反応だ」

結標「何で知ってるんですか? この情報は機密事項って聞きましたけど」

数多「あぁ? 機密事項だぁ? んなもん俺には関係ねぇよ」

結標「関係ない、ですか……?」


数多「そりゃそうだろ。なぜなら俺は『木原』だからなぁ」


結標「……『木原』って本当に何なんですか?」

数多「知りたいか?」

結標「……まあ、一応は」

数多「そうか。だったら教えてやってもいいけどよぉ、でもそうしたら――」



数多「テメェは二度とここには戻ってこられなくなるかもしれねぇぜ?」ニヤァ



結標「ッ!?」ビクッ

数多「はっ、冗談だよ冗談。んな大層なもんじゃねぇよ『木原』なんてなぁ」

結標「そ、そうなんですか……」


結標(……嘘だ。とても冗談を言っているような目じゃなかった)


数多「まあ『木原』ってのは簡単に言うとゴキブリみてぇなもんだ」

結標「ご、ゴキ……!?」

数多「エサのあるところにはどこでも現れる、意地汚ねぇクズどもの集まりだ」

結標「…………」

数多「ま、言ってもわかんねぇだろうけどな」



打ち止め「キハラー! エレベーター来たよー早くー! ってミサカはミサカはボタンを押しながら急かしてみたり」

円周「そうだよ数多おじちゃーん! 早くしないとエレベーターがなぜか止まっちゃって階段でおりないといけなくなっちゃうかもよー!」


数多「ったく、うっせぇんだよクソガキども! 黙ってろ!」

結標「……えっと」

数多「じゃ、俺は行くとするわ。ガキどもが騒がしいからな……あ、あと最後に一つ」

結標「何ですか?」


数多「お前に群がってくるクズどもの言うことは信じるんじゃねぇぞ」


結標「えっ」

数多「そいつらの話を聞いても何の得にもなりゃしねぇ、最悪こっちが食いつぶされるだけだからな。つまり――」




打止・円周『はぁーやぁーくぅー!!』





数多「わぁってんだよ! 少しは静かにできねぇのか! ……ああ面倒臭せぇ、結標さんよぉ!」

結標「は、はい!」

数多「お前はクソガキの言うことだけ信じてろ。それ以外はクソって考えてもいい」

結標「一方通行の……ですか?」

数多「ああ、そうすれば間違いねぇよ」

結標「…………」

数多「つーわけで俺の話も信じねぇようにするこったな」

結標「えっ、ちょ、ちょっとそれじゃあ私どうすれば……?」

数多「自分で決めるんだな、自分のことはよぉ」

結標「…………」



<モォーキハラナニハナシテタノー、ッテミサカハミサカハ ウルセェヨオマエラニハカンケイネェオトナノハナシダ ウワーモシカシテアマタオジチャンアワキオネエチャンノコトヲネラッテンノー、ロリコーン ンナワケーダロコロスゾエンシュウ!






結標「一方通行を信じろ、か……」


―――
――




同日 16:00

-第七学区・ファミリーサイド・十三階廊下-


ピンポーン←エレベ(ry


一方通行「さて、結標のヤツはさすがに帰ってきてンだろォな」ガチャリガチャリ

一方通行「…………」スッ

一方通行「…………」ガチャガチャ

一方通行「…………」ガチャッ


-黄泉川家・玄関-


一方通行「…………」キョロキョロ

一方通行(結標の靴はある。だが他のヤツのはねェ)

一方通行「つゥか、あのクソガキ。今日は早く帰れるっつってたのに、まだ木原ンとこで遊んでやがンのか」

一方通行「まァ、今はどォでもイイか」ガチャリガチャリ

一方通行「結標は……リビングか?」ガラララ



-黄泉川家・リビング-


ガララララ


一方通行「…………」

結標「あっ、おかえりなさい一方通行」

一方通行「おォ」

結標「随分と遅かったじゃない。一体どこで何をやってたのよ」

一方通行「ちょっとな……いろいろあンだよ俺にはな」

結標「ふーん、何か怪しいわね」

一方通行「そォかよ」ガチャリガチャリ

結標「……何よ、つれないわね」

一方通行「いつも通りだろォが」ガチャ

一方通行「……チッ、コーヒーラスト一本かよ」ハァ

結標「買いに行くの?」

一方通行「あァ? そォだな、こいつを飲ンでから行くとするか」カチャ

結標「貴方って缶コーヒーに関してだけは面倒臭いって言わないわよね」

一方通行「気のせいだろ……」ズズズ



結標「…………」

一方通行「……そろそろこの銘柄も飽きてきたな。ここいらで新境地を開拓する必要があるかァ?」

結標「じゃあ思い切ってこのコーヒー牛乳でも飲んでみたら?」スッ

一方通行「そンなコーヒーのよさを根こそぎ破壊しつくしたよォなモン勧めてきてンじゃねェよ」

結標「冗談よ冗談」

一方通行「ったく……」ズズズ

結標「…………」

一方通行「…………」

結標「ねぇ一方通行?」

一方通行「あァ?」

結標「ちょっと話があるんだけど……いい?」

一方通行「それは今話さねェといけねェことか?」

結標「う、うん。できれば……」

一方通行「…………話せ」



結標「うん、ありがと。ええっとね、実は私――」

一方通行「待て」

結標「ん、どうしたのよ?」



一方通行「まさかとは思うがオマエ、『実は私超能力者(レベル5)になったの』とか言わねェだろォな?」



結標「…………え」

一方通行「……あン?」

結標「な、何で……」

一方通行「どォかしたか?」

結標「どうして……」



結標「どうして貴方までそのことを知っているのよ……?」



一方通行「…………」

結標「…………」



一方通行「……チッ、面倒臭せェことになってきやがったなァ……くそったれが」



――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださったみなさんありがとうございます

一方通行が軽く厨二とシリアス入ってるのは前スレの垣根戦の最後を見ればわかるかと
あれをなかったことにしたいお

前スレでインデックスさんより空気だった御坂さんを出してみました
軽くキャラ崩壊してるのは気のせい
あと一応木原クンも名前で呼称するようにしました
ほかの木原を出す予定はありませんけど……

ではではノシ

ちょっと訂正
>>4>>60の最初にある曜日が間違ってた

×January second monday

○January First monday

まあ誰も気にしてないと思いますが一応……


早く書けた(ry



3.約束


January First Monday 19:00

-黄泉川家・リビング-



黄泉川・打止『淡希(アワキお姉ちゃん)がレベル5になったぁ!?(ってミサカはミサカは突然のビッグニュースに驚愕してみる)』ガチャ



一方通行「……食事中だァ、うっせェぞ馬鹿ども」モグモグ

打ち止め「いやいやいや、こんなの聞かされたら普通驚くよ、ってミサカはミサカは驚いて落としてしまった箸を拾いなおしてみる」スッ

結標「それ、ちゃんと洗いなさいよ?」

黄泉川「しかし淡希がレベル5かぁ……いやー、こりゃめでたい話じゃんねぇ」

結標「あ、ありがとうございます」

打ち止め「お祝いパーティーしようよパーティー! ってミサカはミサカは提案してみる」

結標「いや、そこまでしてくれなくてもいいわよ」

黄泉川「遠慮しなくてもいいじゃん! 何なら今すぐケーキでも買ってこようか」

打ち止め「おっ、いいねケーキいいねぇ! ってミサカはミサカはじゅるりと舌なめずりしてみたり」ジュルリ

芳川「はいはい二人とも、めでたいのはわかったから少し落ち着いて」



芳川「……淡希、ちょっといいかしら?」

結標「何でしょうか?」

芳川「おそらくだけどこのことは機密事項だと思うのだけど、私たちなんかに話しても大丈夫なのかしら?」

結標「ええと……一応機密事項ということにはなってます」

打ち止め「え、そんな大事なこと言っちゃってもいいの? ってミサカはミサカは少し戸惑ってみたり」

結標「まあ駄目なんだろうけど吹寄さんたちにはもう話したし、なぜか木原さんには知られてたし……」

結標「というわけで、もうどうでもいいやということで話しました」

黄泉川「じゃあこのことはできる限り外には出さないほうがいいってことじゃん?」

結標「そういうことになりますね」

打ち止め「だったらこの話はミサカたちでストップだね、打ち止めだけに、ってミサカはミサカはうまいこと言ってみる」ドヤッ

一方通行「別にうまくねェからそのムカつくドヤ顔やめろ」

芳川「ところで淡希。レベル5になったということだけど、順位はいくつなのかしら?」

結標「まだ詳しい情報が集まっていないらしくて、現状では第八位ということになっているそうですよ」

芳川「……情報が集まってない、ね」

打ち止め「……ん? どうかしたの、ってミサカはミサカは不穏な表情を浮かべているヨシカワに尋ねてみる」

芳川「いえ、何でもないわ」

一方通行「…………」



黄泉川「ってことはあれか、もしかしたらもっと順位は上になる、って可能性もあるってことじゃん?」

結標「たぶんそういうことだと思いますけど」

打ち止め「アワキお姉ちゃんは何位くらいがいいの? ってミサカはミサカは素朴な疑問をぶつけてみたり!」

結標「別にこのまま八位でいいわよ。レベル5ってだけであれなのに、もっと順位が上がったりなんかしたら注目されてしょうがないわ」

芳川「順位が上がったからってそんなに変わらないと思うけどね。まあ、その点については安心してもらって構わないわ」

結標「? どういうことですか?」

芳川「ここに順位は高くてもそこまで人気じゃないレベル5の先輩がいるのだから」

一方通行「捻り殺されてェのか芳川」

芳川「彼が第一位のレベル5だということは学校じゃ知れ渡ってると思うけど、別に大勢に囲まれるような人気者ではないでしょ?」

結標「そうですねぇ、どちらかと言ったら避けられてるような気がします」

一方通行「オイふざけたこと言ってンじゃねェぞ。つゥか何だよ避けられてるって」

打ち止め「顔が怖いから避けられてるんじゃないの? 普段から不機嫌そうな顔してるし、ってミサカはミサカはあなたの日常での印象を思い出してみる」

一方通行「誰の顔が怖いってェ?」ギロ

打ち止め「そ、その顔だよその顔! ってミサカはミサカはすかさず指摘してみたり」ビシッ

芳川「まあたしかに多少は注目されることもあるかもしれないけ、所詮は一過性のものよ。しばらく経てば普通の日常に戻るわ」

芳川「それにいちいち高位能力者だからといってもてはやしてる学校とは違うでしょ、貴女の通ってる学校は。ね、愛穂?」

黄泉川「そうじゃん。レベル5だろうと何だろうと、ビシバシいくのがウチのルールじゃん!」

結標「……そうですよね。私の考えすぎだったかもしれませんね」

黄泉川「だからレベル5になっても別に甘やかしたりしないじゃん」

結標「わ、わかってますよそれくらい」

黄泉川「例えば校長の長話中に居眠りなんて絶対に許さないし」

一方通行「チッ、うっとォしい校風だなァウチの学校はァ」

結標「というか常識的に寝ちゃ駄目でしょ」

打ち止め「ということはアワキお姉ちゃんは一位でも二位でもなれるってことだね、ってミサカはミサカは楽観的な発想をしてみる」

結標「さすがにそんな高位能力じゃないわよ、私の『座標移動(ムーブポイント)』」


―――
――




同日 22:00

-黄泉川家・芳川の部屋-


芳川「…………」カタカタカタ

芳川「……ふむ、このマシーンはなかなかの高評価ね」

芳川「よし、一個ポチった」カチ



コンコンコン



芳川「どうぞ」



ガチャ



芳川「……ふふ、来ると思っていたわ」

一方通行「そォかよ」

芳川「で、何か用かしら?」

一方通行「来ると思っていたなら言わなくてもわかンだろォが」

芳川「そうね。まあ確認のために一応聞くけど……」


芳川「淡希が超能力者(レベル5)になったこと、についてよね?」


一方通行「……ああ」



一方通行「この格上げについてどォいう意図で行われたのか、一時期そっち側にいたオマエの意見が聞きたい」

芳川「そうは言われても困るのだけどね。私はあくまでキミのレベルアップの研究をしていたわけで、そんな大層なことはしていないわ」

一方通行「だが感じてンだろ? 今回の件について違和感を」

芳川「……感じない、と言ったら嘘になるわね」

一方通行「別に答えを導き出せとは言わねェよ、オマエは自分の考えを適当に話してくれればイイ。あとは俺が勝手にまとめる」

芳川「なら淡希がレベル5昇格したやっほーい! そう言えばキミは許してくれるのかしら?」

一方通行「真面目にやれ。そこのパソコンぶち壊すぞ」

芳川「適当でいいって言ったのはキミじゃない」

一方通行「俺が言ってるのはテストの問題文とかに出てくる適当だ。いい加減っつゥ意味じゃねェよ」

芳川「それくらいわかってるわよ。冗談じゃない冗談。私だってそこまで馬鹿じゃないわ」

一方通行「チッ、くだらねェこと言ってンじゃねェよ」

芳川「まったく、相変わらず面白味のない子ね、キミは」

一方通行「オマエは相変わらず面倒臭せェババァだな」



芳川「……さて、まず結論を導き出す前の過程を楽しむとしましょ?」

一方通行「過程だァ?」

芳川「キミも気になっているであろう、どうして彼女が昇格できたか、それについて考えてみましょう」

一方通行「……大して意味変わらなくねェか?」

芳川「そうかしら? 可能という根拠と実行しようという意思は大きく違うと思うけど」

一方通行「……チッ、そォかよ」

芳川「まず、彼女はなぜ超能力者(レベル5)になれたか、ね」

一方通行「決まってンだろォが。自分自身の転移を可能にしたからだろォが」

芳川「あら、さすがにそれはわかってたのね」

一方通行「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」

芳川「そうね。以前話したように彼女はレベル5に認定されてもおかしくないほどのチカラを持っていた」

一方通行「だがアイツは空間移動能力者(テレポーター)として致命的な欠点があった。自分の体をテレポートできねェ、っつゥな」

芳川「これが克服された、ってことはレベル5相当のチカラを手に入れたということ。それをわざわざレベル4と認定しておくのはおかしいということね」

一方通行「……でもよォ、それについて少し疑問があるンだが」

芳川「何かしら?」



一方通行「能力判定っつゥのは『身体測定(システムスキャン)』で規定の数値を測ってから行うモンだろォが」

芳川「……そうね、それが普通よ」

一方通行「一番最後にアイツが受けた身体測定は二学期の期末考査の時だ。だがそのときのアイツの強度はレベル4だった」

芳川「たしかにいきなりレベル5、って通達がくるのもおかしな話ね」

一方通行「一体どォいう経緯でアイツは格上げしたっつゥンだ」

芳川「大人の事情、じゃないかしら?」

一方通行「ハァ?」

芳川「淡希をレベル5にしたい、だから無理やりレベル5にした。そういうことじゃないかしら」

一方通行「オマエ真面目考えろよ。遊んでンじゃねェンだぞ」

芳川「ごめんなさいごめんなさい。じゃあ例えばの話だけど聞いてくれるかしら?」

一方通行「あァ?」

芳川「身体測定ってのは何をすることを言うのかしら」

一方通行「ンなモン能力の数値を測定するに決まってンだろォが」

芳川「そうね。じゃあテレポーターの測定方法は?」

一方通行「……詳しくは知らねェが、おもりとかを飛ばして飛距離や正確性、対応重量を測ったりすンじゃねェのか?」

芳川「細部は異なるけど大体は合ってるわ」



一方通行「つゥかさっきから例え話なンて言ってねェじゃねェか。質問ばっかでよォ」

芳川「ごめんなさいね、少し確認を取ってみようと思ってね」

一方通行「ケッ、大体わかってるからとっとと例え話とやらを話しやがれよ」

芳川「わかったわ。あくまで例えばの話よ」

一方通行「ああ」



芳川「例えばそうね、あの雪合戦をした場所が能力の測定場所としてみてはどうかしら」



一方通行「雪合戦の会場が、か?」

芳川「そう。何なら雪合戦大会という行事自体が身体測定だとしてもいいわ」

一方通行「どォしてそォなる」

芳川「理由は簡単よ。彼女がトラウマを克服したのがその雪合戦大会だからよ」

一方通行「……そォいえばそォだったな」

芳川「キミが言ったテレポーターの強度設定に必要な数値、全部その雪合戦で測れると思わない?」

一方通行「いや無理だろ」

芳川「そうかしら?」


一方通行「大体アイツの最大射程は八〇〇メートル越えだろォが。あの会場の端から端どころか観客席入れてもそンな長くねェよ」

一方通行「さらに最大重量の四五〇〇トン強。そンなモンアイツが一度でもテレポートさせたかァ? させてねェだろ」

一方通行「正確性はたしかに測れるかもしれねェが、どォ考えてもそれらの項目は測り切れねェだろが」


芳川「……そうね。キミの言うとおりだわ……でもね」

一方通行「でも何だ?」

芳川「研究者側の立場からしたらそんなことハッキリ言ってどうでもいいのよ」

一方通行「は? どォでもいいってそりゃどォいうことだ」

芳川「私たちが見ているのはその能力値の最大点じゃなくて、その演算能力を見ているの」

一方通行「演算能力……?」


芳川「例えばテレポーターが物を飛ばすときにする演算、それは距離が遠ければ遠いほど、重量が大きければ大きいほどより複雑になっていくわ」

芳川「正直重さは一〇〇キロ、距離なら八〇メートル越えればかなり辛いんじゃないかしら?」

芳川「しかし今回の雪合戦で淡希はそれを行ったわ。軽々とね」

芳川「人間五人を飲み込めるほど巨大な雪の塊を、遥か上空へと一気にテレポートさせる」

芳川「ハッキリ言うと怪物じゃないかしらね。他のテレポーターから見れば」



一方通行「…………」


芳川「さらに彼女の能力は座標移動(ムーブポイント)。普通の空間移動とは違って始点や終点が固定されない強力なチカラ。それゆえに演算負荷がかなり大きくなる」

芳川「そしてテレポーターの強度を決める最大の要因である自分自身の転移。それすらこの雪合戦で成功させた」

芳川「以上のことからあの会場自体が試験会場だったと推測できるわ」


一方通行「……いや、そンなわけねェ。そンなことがあったとしても正確な数値は――」

芳川「一方通行」

一方通行「あァ?」

芳川「私最初に言ったわよね。彼女がレベル5になれたのは大人の事情じゃないかって」

一方通行「…………」

芳川「能力の強度を決めるお偉いさんたちが彼女をレベル5にしたいのだったら、そんな簡易的な測定でも誰も文句は言わないわ」

一方通行「…………」

芳川「たぶんだけど、あの会場をもう一度見てみれば周りに計測器とかがたくさん置いているはずよ。まあ、今から見に行ったとしても無駄だと思うけど」

一方通行「雪合戦が……身体測定……」ブツブツ

芳川「ん、どうしたの?」



一方通行「……チッ、そォいうことかよ」

芳川「えっと、何の話?」

一方通行「よォやく合点がいった。あの雪合戦の全てがなァ」

芳川「?」

一方通行「ふっざけンじゃねェよ……、舐めやがって……!」ギリリ

芳川「……何に対してキミがそんなに怒っているのかがさっぱりなのだけど」

一方通行「何でもねェよ。帰る」ガチャリガチャリ

芳川「ちょっと、どういう意図で彼女がレベル5にされたかっていう話はいいの?」

一方通行「ああ、俺の中で勝手に解決した。もォ大丈夫だ」

芳川「それじゃあ私のほうが逆に気になるんだけど?」

一方通行「……オマエは知らなくてイイことだ」

芳川「そう言われると知りたくなるのが人の性なんじゃないかしら?」

一方通行「深入りはするべきじゃねェンだよ。これ以上首を突っ込まないでくれ、……頼む」

芳川「…………」

一方通行「…………」

芳川「…………はぁ、わかったわよ。これ以上は聞かないわ」

一方通行「……アリガトよ」



ガチャリ



一方通行「邪魔したな」

芳川「……一方通行」

一方通行「あン?」

芳川「頑張るのはいいけど、ほどほどに、ね?」

一方通行「……わかってる」ガチャリガチャリ

芳川「おやすみ一方通行」

一方通行「……おやすみ」



バタン



芳川「…………」


―――
――




同日 22:30

-黄泉川家・リビング-


一方通行「……寝る前にコーヒーでも飲むか」ガチャリガチャリ



ガラッ



結標「……あら、まだ寝てなかったのね」

一方通行「オマエか」

結標「どうしたの、コーヒー?」

一方通行「ああ」

結標「ちょっと待ってね。今淹れるから適当に座ってて」カチャ

一方通行「変な工夫してダークマタードリンクにすンじゃねェぞ」サッ

結標「失礼ね、コーヒーぐらい普通に淹れられるわよ」ガチャガチャ

一方通行「野菜炒めただけで化学兵器を製造することができるヤツのセリフとは思えねェよなァ」

結標「……私泣いてもいいかしら」コトコトコト

一方通行「ご自由にィ」

結標「ひどいわね……」カチャリ

一方通行「…………」

結標「……はい、できた! どうぞ」カタリ

一方通行「……見た目は普通じゃねェか」

結標「当たり前じゃない。普通に淹れたんだから」



一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……ふゥ」ゴクリ


結標「……ど、どう?」

一方通行「別に悪くはねェよ。至って普通のインスタントコーヒーの味だ」

結標「そ、そう、よかった……」ホッ

一方通行「ンだァ? その安心のし様はァ? アレだけ大丈夫と豪語してたのは一体何だったンですかねェ」

結標「う、うるさいわね! いいでしょ別に!」サッ

一方通行「くっだらねェ」ズズズ

結標「…………」ゴクゴク

一方通行「なァ結標?」

結標「ん、何かしら?」

一方通行「オマエはどォ思ってンだ?」

結標「どう、って何が?」

一方通行「レベル5になったことだ」



結標「ああ、そのことね」

一方通行「それ以外何があるってンだ」

結標「あ、あるわよ何か……たぶん」

一方通行「……で、どォ思ってンだよ。オマエ自身は」

結標「……正直に言っていい?」

一方通行「構わねェよ」ズズズ

結標「何というか……不安、ね」

一方通行「不安?」

結標「そう。それが私の中で一番大きい感情だわ」

一方通行「どォしてそォ思う」

結標「どうしてって……そりゃ不安だからに決まってるじゃない」

一方通行「…………」ジッ

結標「……そうね。ちゃんと言うからその睨んでくるのやめてくれないかしら?」

一方通行「別に睨ンではねェよ」

結標「だったらそんなじっとこっち見つめないでよ。何か不安になるでしょ!」

一方通行「オマエらが人の目ェ見て話せってうるせェから実行してやってるっつゥのに、いざやるとこの扱いかよ」

結標「いや、どう見ても貴方は睨み付けてたわ。まるで獲物を狩る狩人の如く」

一方通行「あっそォ、で何なンだよその不安の原因ってのは」



結標「えっとね……何か怖いのよ」

一方通行「怖い?」

結標「うん。レベル5になったら今までの楽しかった日常がなくなってしまいそうで」

一方通行「…………」

結標「たしかに黄泉川さんや芳川さんは大丈夫と言ってくれたわ。けど、それでも不安なのよ」

一方通行「……そォか」

結標「ねぇ、貴方がレベル5になったときってどうだったの? やっぱり嬉しいとか思ってたの?」

一方通行「俺はガキの頃から最強だったからな。よくわかンねェよ」

結標「そう……」

一方通行「でも一つだけ言えることがある。嬉しいなンて気持ちは一ミリたりともねかったよ、あの時は」

結標「どうしてよ?」

一方通行「想像してみろよ。世界中の人間が自分の敵に回るっつゥ面白ェ情景をよォ」

結標「……え」

一方通行「そンなモンをガキの頃から見てきたンだ。人格が破綻したって何もおかしくねェ」

結標「……何というか、ごめんなさい」



一方通行「だから今の内に言っておく。レベル5っつゥのは極端だ」

結標「極端……って?」


一方通行「富や権力や地位。欲しいモンは何でも手に入る、誰もが羨ましがろうとするチカラ」

一方通行「その反面、嫉妬、遺恨、寄生、裏切り……、目に映るもの全てが敵に見えるかもしれねェ」


結標「…………」


一方通行「あくまで俺の経験に基づいた言葉だ。他のヤツらの話を聞けばまた違った言葉を返ってくるだろォ」

一方通行「オマエがこれからどォいう人生を歩むかなンて誰もわかンねェ。その先が天国か地獄なンてなァ」

一方通行「だから覚悟しておけ。地獄みてェな……俺みてェなくそったれな人生を送ることになるかもしれねェっつゥ未来に対してのなァ」


結標「……な、何かレベル5になりたくなくなってくる話ね」

一方通行「本当はこれ以上増やすべきじゃねェンだよ。超能力者(レベル5)なンてくだらねェ幻想に踊らされる俺たちみてェなのはな」

結標「…………」

一方通行「…………」

結標「……ねぇ、一方通行?」

一方通行「何だ」

結標「……私、どうすればいいと思う?」



一方通行「どォもしなくてイイ」

結標「……え、どういうことよ?」

一方通行「オマエは何も気にせずいつも通りの生活を送っていればイイ」

結標「ちょ、ちょっと! あんな話聞かされた後にそれはないんじゃないかしら?」


一方通行「だから言ってンだろォが。あくまで可能性の話だ。レベル5の中にも普通に学園生活を送ってるヤツだっている」

一方通行「その反対にくそったれな闇の中でもがき苦しンでいるヤツだっていンだよ」


結標「貴方は……、どっちなのよ?」

一方通行「……さァな」

結標「…………」

一方通行「まァ何が言いてェかというと、明日からドン底に叩き落される覚悟もしておけっつゥことだ」

結標「……貴方もしかして私を泣かせたいわけ?」

一方通行「そンなつもりねェよ」

結標「じゃあ何でそんなマイナス方面の話ばっかするのよっ!」

一方通行「うっせェな。さっきからもしもの話だっつってンだろォが。気にすンじゃねェ」

結標「そ、そんなこと言われたって……無理よぉ……」グスン

一方通行「あァうっとォしい、泣くンじゃねェよ。ただ一つ、これだけは覚えとけェ」

一方通行「オマエがどンな絶望の淵に立たされよォが、例え世界全体がオマエの敵に回ろうとなァ」






一方通行「オマエは……オマエとその周りある世界は全部俺が守る。絶対だッ!」







結標「…………、え……?」ウル

一方通行「チッ、くそったれが。だから泣くンじゃねェ、俺が悪かった」

結標「ほ、本当に守ってくれるの?」

一方通行「オマエの日常は絶対に壊させねェ。約束する」

結標「……約束よ?」

一方通行「ああ、約束だ。だからオマエはいつも通り馬鹿みてェに笑って過ごしてりゃイインだよ」

結標「……う、うん。わかったわ」

一方通行「これで少しはその不安とやらは和らげられたのかァ?」

結標「……たぶん大丈夫よ。まだちょっとはあるかもしれないけど」

一方通行「そォか。だったら今日はもォ寝とけ。明日からどンな世界が待ち受けているかわかったモンじゃねェからなァ」

結標「……変わらないわよ」

一方通行「あァ?」

結標「だって貴方が守ってくれるのでしょ?」ニコ

一方通行「……チッ、くだらねェこと言ってねェで早く寝ろ」

結標「はーい、おやすみなさい一方通行!」

一方通行「ああ」



ガラッ




一方通行「…………」

一方通行「……さて、俺も部屋に戻って寝るとすっかな」ガチャリ



ガラッ



芳川「ニヤニヤ」ニヤニヤ


一方通行「」


芳川「オマエは俺が守る(キリ いいわねぇ、かっこいいわよキミ」

一方通行「……オマエ。いつからここにいたァ?」

芳川「キミが『コーヒーでも飲むかァ』とか呟いてリビングに入った辺りからよ。淡希も最後まで気付かなかったみたいだけど」

一方通行「最初からじゃねェかふざけンなッ!」

芳川「いやー、あんな意味深なセリフを言ってから部屋を出て行くんだもの。気になってつい盗み聞きしちゃったわ」

一方通行「今すぐ忘れろ。じゃねェとその頭蓋骨こじ開けて、脳みそを直接弄くることになるぞ?」

芳川「はいはい、わかっているわよ。誰にも口外はしないし、する気ももともとないわけだし」

一方通行「チッ、もし漏らしたときはわかってンだろォな?」

芳川「ええ、そのときは頭叩き割ろうと体を真っ二つにしようと構わないわ。でもそういうのは淡希にも言ってあげるべきじゃないかしらね」

一方通行「くっ、そォいえば……!」

芳川「……まあ頑張ってちょうだいね、ヒーローさん?」

一方通行「茶化してンじゃねェぶっ殺すぞォ!」

芳川「じゃ、改めておやすみなさい」テクテク

一方通行「ふざけンじゃねェぞ、クソ野郎がァ……!」


――――


黒・歴・史確定ね(二回目)

今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

今回は説明乙回となんちゃってシリアス回となりました
前スレで暗部なんかと絡ませるから……

予定では5話くらいまで一方さんの厨二病が続くと思われるのでよろしくおねがいします


次回『役割』


今まで予告とかしてたのすっかり忘れてたわ
ではではノシ

>>93
> 一方通行「さらに最大重量の四五〇〇トン強。
「四五〇〇キロ」のことだよね?
4500tも転移できたらもはやレベル6だし。


>>109
うわあああああああ盛大にしくったあああああああああああああッ!!

× 一方通行「さらに最大重量の四五〇〇トン強。そンなモンアイツが一度でもテレポートさせたかァ? させてねェだろ」

○ 一方通行「さらに最大重量の四五〇〇キロ強。そンなモンアイツが一度でもテレポートさせたかァ? させてねェだろ」

ですね、すみません


早く書け(ry



4.役割


January second Tuesday 08:15

-とある高校・一年次階廊下-


一方通行「……オマエわかってンだろォな」ガチャリガチャリ

結標「何がよ」テクテク

一方通行「昨日のことだ。絶対ェ誰にも言うンじゃねェぞ」

結標「ああ、私がレベル5になったことね、わかってるわよ。一応これ機密事項よ?」

一方通行「そォじゃねェだろ」

結標「えっ、違うの? じゃあ何なのよ?」

一方通行「そ、それァ、アレだ。昨日の夜、俺がオマエにした約束のことだ」

結標「……あー、そのことね。って何で黙ってなきゃいけないのよ」

一方通行「オマエはわかってねェよ。アレは俺たちがレベル5同士だからこそできた約束だ。そォ易々と他人に話してイイモンじゃねェ」

結標「別にそうは思えないけど?」

一方通行「そンなこと思えなくてもそォなンだよ」

結標「……ははーん?」

一方通行「あァ?」



結標「さては貴方、あのとき言ったセリフが今になってすごく恥ずかしくなったのね?」

一方通行「ハァ!? べ、別にそンなことねェしィ、俺の生き方に恥じることなンざ一つもねェしィ!」

結標「そう。じゃあこのことは遠慮なくみんなに話すことにするわ」

一方通行「まァ落ち着け。早まるンじゃねェよ」

結標「あら、別に早まってるつもりはないけど?」

一方通行「そもそもアイツらに話すメリット……いや、そもそも意味がねェじゃねェか」

結標「意味ならあるわよ」

一方通行「何だよそれァ?」

結標「休み時間のみんなとの雑談に使うネタの一つとして」

一方通行「オイオイ待ちたまえよ結標クゥン。そンなことのために俺の名台詞を使うンじゃねェよ」

結標「別に名台詞ってほどじゃあないじゃない? あとよくよく考えてみると使い古されたセリフの組み合わせだったし」

一方通行「ハァ? わけわかンねェよ、マジでわけわかンねェよ!」

結標「こっちからしたら貴方のその反応がわけわからないわ」

一方通行「……そォいうわけだ。アレは話のネタとかに使わない方向でこの話は終わりだ」

結標「どういうわけよ」



結標「というかさっさと認めちゃったらー? 実はあのセリフマジで恥ずかしかったんすよー、って」

一方通行「だがらさっきから言ってンだろォが! 別に恥ずかしくなンざねェってよォ!」

結標「……ふーん、あくまでそういう態度とるっていうんだ?」

一方通行「どォ言われよォと俺の態度が変わることなンざねェよ」

結標「そうですか、へー」

一方通行「……ンだよその態度ァ?」

結標「あっ、青髪君だ!」

一方通行「ハァ!?」



結標「……おーい、青髪君おはよー! 実は面白い話があるんだ――」



一方通行「スンマセン、マジで勘弁してくれませンかスンマセン」

結標「やっと本性を現したわね」

一方通行「……あン? 青髪ピアスの野郎はどこだ?」

結標「嘘に決まってるじゃない。貴方を釣るためのね」

一方通行「ふざけンじゃねェよ! 嘘ついてンじゃねェよ!」

結標「貴方もさっきまで素直にならないという嘘ついてたのだからお互い様でしょ」

一方通行「いや、アレだよアレ。人には黒歴史っつゥモンがあってなァ、そォいうモンはほじくり返しちゃいけねェンだよ」

結標「歴史というほど前のことではないわよね」

一方通行「気にしちゃいけねェ」



一方通行「だから本気でやめてもらえませンかねェ? お願いしますよォ三百円あげますからァ」

結標「貴方さっきからキャラ崩壊が凄まじいわね、まあいいけど」

一方通行「お願いしますゥ」

結標「……わかったわよ。一応貴方に守ってもらうっていう約束だし、これが原因で守ってもらえなくなったら私が困るものね」

一方通行「随分と聞き分けがイイじゃねェか。さすがレベル5認定されるだけあるな」

結標「こんなことでレベル5が決まったら、そこら中にレベル5いるわよ。レベル5のバーゲンセールよ?」

一方通行「とりあえずこの話はオマエの墓まで持っていけよォ? 絶対ェ話すなよ、フリじゃねェからな絶対だぞォ?」

結標「わかってるから、その必死すぎて起こってるキャラ崩壊を今すぐ直しなさいよ」

一方通行「チッ、わかりゃイインだわかりゃあ」

結標「戻ったら戻ったでまたムカつくわね」

一方通行「ほら結標、受け取れ」チャリン

結標「何?」

一方通行「三百円」

結標「何で?」

一方通行「さっき言ったじゃねェか、『三百円あげるから』って」

結標「あれ本気だったのね。ていうかいらないわよ、これ貴方の缶コーヒー用の小銭でしょ?」

一方通行「大丈夫だ。まだ五百円玉が残ってる、気にすンな」

結標「そういう問題じゃないわよ」

一方通行「別にそこまでかたくなに拒否することねェじゃねェか。それでジュースなりなンなり買えばイイ」

結標「うーん、まあわかったわ。ありがたくいただいとくわね」

一方通行「そォしろ」



結標「どうせだし今から何か買いに行こうかな? まだ時間は少しあるし」

青ピ「ええなぁ、ボクにもそれ奢ってくれやぁ」

結標「…………」

一方通行「…………」

青ピ「…………」

一方通行「オマエ、いつからここにいた?」

青ピ「いつからやと思う?」

一方通行「……俺が結標に『オマエわかってンだろォな』って言った辺りからか?」

青ピ「正解」

一方通行「最初からじゃねェか。最近流行ってンのかよ、最初からいましたっつゥの」

結標「……ええと青髪君? 最初からってことは全部聞いてたってわけ?」

青ピ「モチのロンやで!」グッ

一方通行「…………」

結標「…………」



一方通行「記憶ぶっ飛べゴルァああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」カチ



ドグシャァ!!



青ピ「あびゃりゅっ!!」

結標「青髪君が四回転ジャンプしながら吹っ飛んでいったッ!?」



青ピ「」ピクピク


結標「いつも以上に滅茶苦茶ね」

一方通行「ついカッとなってやった。反省はしていない」

結標「そんなニュースとかの常套句風に言われても」

一方通行「まァ、これは十中八九青髪ピアスクンが悪りィ。平然と見えねェところで人の話盗み聞きしてたからな」

結標「どう見ても貴方の方にも過失があると思うけど」

一方通行「ハァ? ふざけンじゃねェ。オマエが何と言おうとそれでも俺はやってねェよ」

結標「ついにこの話をなかったことにしやがったわ……というか真面目に青髪君大丈夫かしら……?」

一方通行「大丈夫だろ。オラァ、とっとと起きろ青髪ピアス」ゲシゲシ

結標「起こし方雑すぎじゃないかしら!?」


青ピ「」ピクピク


結標「…………」

一方通行「…………」

結標「お、起きないわね」

一方通行「ああ、起きねェな」

結標「…………」

一方通行「…………」



結標「ちょ、ちょっとぉぉぉっ! これって不味くなぁぁぁい!?」

一方通行「あァ? 何が不味いのかサッパリ理解できねェな」

結標「とぼけてんじゃないわよ、どう見ても不味いじゃない! どれくらい不味いかと言ったら今すぐここにコナン君が飛び込んできてもおかしくないくらい!」

一方通行「くっだらねェ、落ち着けよ結標」

結標「昨日私を守る発言したヤツが今殺人の容疑者になっているのよ! 落ち着いていられるか!」

一方通行「容疑者じゃねェよ、そのまま現行犯だろ」

結標「そんなどうでもいいところツッコンできてんじゃないわよ! どうするのよこれ!」

一方通行「どォするも何も……決まってンだろォがンなモン」スッ

結標「えっ、何をしているのよ……?」


一方通行「起きねェっつゥならしょうがねェ、だから木っ端微塵に粉々にして証拠隠滅するに決まってンじゃねェか」カチ


結標「ちょ、貴方何言って――」

一方通行「ぎゃはっ、解体ショーの時間だァ!!」バッ



青ピ「ちょ、タンマタンマ! スンマセンボクが悪かったですー!!」ガタッ



結標「…………あれ? 無事だったの青髪君?」

青ピ「何言うとるん、ボクを誰だと思ってんねん。伊達にいつもアクセラちゃんにぶっ飛ばされてねーねんで」

一方通行「チッ、あともう少しでこのうっとォしい野郎を始末できるところだったンだがなァ」カチ

青ピ「あれ? ちょっとアクセラちゃん? それ冗談よなぁ? 本気で言うとらへんよなぁ!?」

一方通行「…………さて、そろそろ時間だァ、教室行くぞ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待って」タッタッ

青ピ「何さっき間ッ!? ちょ、何か言ってやアックセラちゃーん!」


―――
――




同日 08:25

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「――あら、二人ともおはよっ」

姫神「おはよう」


一方通行「おォ」

結標「おはよう吹寄さん、姫神さん」

吹寄「さすがに今日は遅刻しそう、みたいなことはなかったわね」

結標「そうね、今日はさすがにすぐに起こしたわ。寝起きはすっごく不機嫌そうだったけど」

姫神「容易に予想できる」

一方通行「くっだらねェ……」ガチャリガチャリ


上条「おっす一方通行」

土御門「おはようアクセラちゃーん!」

一方通行「……さすがに今日も遅刻っつゥ不幸イベントはねェか」

上条「当たり前だろ、二日連続遅刻なんて絶対するわけねーよ」

土御門「まあ、俺が起こしにいかなかったらどうなってたかわからないけどにゃー」

上条「うっ、たしかにそうだけど……」

一方通行「土御門は今日から復帰か」

土御門「復帰と言っても別に風邪とかで休んでたわけじゃないけどにゃー」

上条「そうだ、お前昨日何やってたんだよ?」

土御門「ちょっと野暮用だにゃー。俺にはいろいろやることがあるんだぜい」



青ピ「いやいや騙されたらあかんよ二人とも! どうせ宿題終わってなかっただけやでーこれ!」


上条「おう青髪、やけにトイレ長かったな」

土御門「もしかして大のほうだったのかにゃー?」

青ピ「ちゃうねんちゃうねん、実は廊下で通り魔に会ってなー」

上条「通り魔?」

青ピ「そうそう。あれはボクじゃなかったら危なかったかもしれへんなー」

一方通行「むしろオマエじゃなかったらその通り魔は発生しなかったンじゃねェか?」

青ピ「通り魔の特徴は白い頭でー、女の子もドン引きするぐらい体が細かったでー」

上条「それってどう見ても一方通行だろ」

土御門「何があったんだ?」

一方通行「何もねェよ。コイツがただ馬鹿だっただけだ」カチ


青ピ「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたッ!? 何これ体中が痛いッ!?」


土御門「いやーこれを見るとスキー旅行の日を思い出すにゃー。懐かしい思い出だぜい」

上条「懐かしいっつってもつい二、三日前くらいの話じゃねーか」



青ピ「思い出話しとらんで助けてや!! ちょ、体も動かへんやん!! マジでヤバイ!!」

上条「とりあえず謝っとけよ」

土御門「にゃー、俺たちレベル0じゃ助けようがないんだぜい」

青ピ「ふひひサーセ――あっ冗談ですスミマセン、マジでごめんなさいゆるしてくださぁい!!」

一方通行「チッ、朝から無駄な電力使わせてンじゃねェよ」カチ

上条「しかし青髪ピアスってタフだよな」

土御門「病院で『またあのツンツン頭か』とナースに噂話されるほどのカミやんがそれを言うのかにゃー?」

上条「いや、でも最近は入院なんてしてねーぞ? 面倒ごとにもあんまり巻き込まれなくなってきたし」

青ピ「よかったやんカミやん。一時期出席率がすごいことになってはったしなぁ」

土御門「そろそろ何かに巻き込まれてもおかしくないぜい」

上条「土御門、お前が言うと洒落にならねーからやめてくれ」

一方通行「チッ、くっだらねェ」ガタン

土御門「そうだそうだアクセラちゃん」

一方通行「あン?」


土御門「聞いたぜー、結標の姉さんがレベル5に昇格したってなー。こりゃビックリ――」


ゴォウ!!


上条「おわっ!?」

青ピ「なんやッ!?」



一方通行「…………」

土御門「おおーと危ない危ない。てか、アクセラちゃん顔が怖いぜい? スマイルスマイル♪」

一方通行「土御門テメェ……!」ギリリ

土御門「いくら強力なチカラを使っても、そんな単調な攻撃じゃあ当たるものも当たらないにゃー」


青ピ「つ、つっちーの顔の横にアクセラちゃんの腕が……」

上条「……な、何が起こってんだ?」


土御門「まあ安心しろ一方通行。さっきの言葉はカミやんたち以外には聞こえていないにゃー」

一方通行「何が安心しろだ。つゥか、どこからその情報を仕入れた?」

土御門「俺がどういう人間かよーく思い出してみればおのずとわかると思うぜい?」

一方通行「どォいうつもりだ土御門」

土御門「守り通せない秘密を無理に守る必要はないってことですたい」

一方通行「…………」



ガラララ



小萌「――はーいみなさん、朝のホームルームを始めるので席に――って、ちょっとアクセラちゃんに土御門ちゃん何をやってるんですかー!?」



土御門「おっと時間切れだにゃー。とっとと席に着くとしようぜアクセラちゃーん?」

一方通行「…………チッ」カチ


小萌「喧嘩は駄目ですよー二人ともー」


土御門「すみませーん先生! ロリのバストの許容範囲について語り合ってたらちょっとヒートアップしてしまいましたー!」

小萌「そんな変な話でそこまでヒートアップしないでくださーい!」


吹寄「ったく、アイツらは何でこう馬鹿なことしか考えられないんでしょうかねー?」

姫神「そういう生き物だと思うしかない」

結標「一方通行……?」


―――
――




同日 09:35

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



青ピ「気をつけ、れいっ!」



<ありがとうございましたー



上条「……へー、結標ってレベル5になったんだなぁ」

結標「う、うん。そうなのよ」

姫神「全然驚いていない?」

上条「だってレベル4がレベル5になっただけだろ? 別にそんな騒ぐことでもねーだろ」

吹寄「なっ、貴様それ本気で言っているのわけ? レベル5よレベル5!」

結標「ちょ、ちょっと吹寄さん声大きいっ!」

吹寄「あ、ご、ごめんなさい」

上条「うーん、たしかにすげーと思うよ。そりゃクラスメイトが成果を上げてるんだから祝福してやるのは当然だとは思ってる」

上条「でもさ、逆にそれで結標を萎縮させちまうのは違うんじゃねえか?」

吹寄「えっ」

上条「何つーか……結標も嫌なんじゃねえのか? こう騒がれるのって」

結標「えーと、まあうん……」


上条「そもそもレベル5になったからって結標自身が変わったわけじゃねえだろ?」

上条「結標が『レベル5になったんだぞすげーだろ』って言ってんならこれでいいかもしれねえけど、違うんだったら今までと変わらず馬鹿みたいに接してやるべきだろ」

上条「それが俺たちクラスメイトがしてやるべきことなんじゃねえのか?」



吹寄「…………」

青ピ「……カーミやーん?」

上条「何だよ」

青ピ「まーたいつもの説教が始まってるでー」

上条「え?」

姫神「うん。朝っぱらからする話じゃないと思う」

上条「マジでか?」

吹寄「……上条」

上条「ひぃすみません吹寄様ぁ! わたくしめのような大馬鹿野郎が偉そうな口を叩いてしまってぇ!」ドゲザ

吹寄「……別にいいわよ。上条の言ってることは正論だし。それにあたしだってそんなつもりはなかったし」

青ピ「というかカミやんビビリすぎやでー? さすがの吹寄さんもそうぽんぽんと頭突きをかましてくるよぉなお方じゃないやろ」

上条「い、いやついクセで」

吹寄「何よ! そのいつもあたしが頭突きしている女みたいなセリフは!」

上条「ひぃぃ許してくださいぃ!」ドゲザ



ワイワイガヤガヤ



結標(……ふふ、たしかに黄泉川さんや芳川さんの言う通りだったわね。何も心配なんてすることなかったわ)


結標「……って、あれ? 一方通行がいない……? それに土御門君まで」


―――
――




同日 同時

-とある高校・一年次廊下-


土御門「何だアクセラちゃーん? わざわざ教室の外まで呼び出して」

一方通行「オマエはどこまでわかってンだ?」

土御門「わかってる? 何のことだかサッパリだにゃー」

一方通行「とぼけてンじゃねェよ。結標のことだ」

土御門「結標がレベル5になったことを俺が知っていたことかにゃー?」

一方通行「それも含めてだ。どこまで知っていやがる?」

土御門「……例えばだ」

一方通行「あン?」


土御門「例えばお前が知っている以上の情報を俺が持っているとしよう。で、それをお前に教えたとする。それでお前はどうするつもりだ?」


一方通行「何ィ?」

土御門「所詮お前はただの超能力者(レベル5)、それ以上でもそれ以下でもない。そんなお前が今回の情報を知ってどうすると聞いているんだ」

一方通行「…………」

土御門「何もできないさ。だから教える必要がないわけだ」

一方通行「…………たしかに」

土御門「ん?」

一方通行「たしかに何もできねェかもしれねェ。俺なンかがどォにかできるよォな問題じゃねェかもしれねェよ」



一方通行「だけどよォ、そンなンで俺がただ指をくわえて見てなきゃいけねェ理由にはならねェだろォが!」


土御門「……ああ、たしかにそうだな」

一方通行「教えろ土御門。今アイツの周りで起きている状況をッ!」

土御門「…………」

一方通行「…………」

土御門「……ふふっ、やーだよぉーだ!」

一方通行「ハァ?」

土御門「誰がお前なんかに教えるもんですたい! 面倒臭くてしょうがないにゃー!」

一方通行「……土御門ォ」プルプル

土御門「おっ? おっ? もしかして効いてる効いてるー?」

一方通行「俺ァ真面目に話してンだよ。ふざけてンじゃねェぞゴルァ!」

土御門「ふざけてないぜい。大真面目だぜい!」

一方通行「どこが……!」

土御門「きちんと真面目にお前を止めてるじゃないですかにゃー」

一方通行「ハァ? わけわかンねェよ」

土御門「お前はこれ以上知る必要がないってことだぜい」

一方通行「どォしてだ!」



土御門「例えば俺の知っている情報を全てお前に話したとする。そうしたらお前は必ず死ぬ」

土御門「それだけじゃない。お前の守ろうとする世界さえも跡形もなく壊されてしまうだろう」

一方通行「…………」

土御門「どうしてかわかるか?」

一方通行「……さァな」



土御門「お前が必ずこちら側に堕ちてくることを決心するからだ」



一方通行「ッ!?」

土御門「それだけのことだからだ」

一方通行「オイ!! 一体ィ何が起きてやがンだッ!! 教えろ土御門ォ!!」

土御門「落ち着け一方通行」

一方通行「落ち着いていられるか! そンなクソみてェな状況になってるってのに俺ァ!! 俺ァ!!」

土御門「お前は結標淡希を守るんじゃなかったのか?」

一方通行「……ッ」

土御門「だったら俺の知っていることは知る必要のないことだ」

一方通行「……くそったれが。なら俺はどォすればイインだよ」

土御門「お前はお前の役割を果たせばいい」

一方通行「俺の役割……?」

土御門「ああ。こんな汚い裏の世界のことなど考えることなく、この平和ボケした世界を満喫すればいい」



一方通行「……指くわえて見てろってか」

土御門「そうじゃない。もし仮に結標……、オマエたちの日常を脅かす何かが目の前に現れたときは、お前がそのチカラを振るえばいい」

一方通行「当たり前だ。このチカラはそのためにあるンだからよォ」

土御門「だがそのチカラは絶対に使わせないさ?」

一方通行「ハァ?」

土御門「なぜなら、この件を処理するのは俺たちこちら側の人間の役割だからだ」

土御門「わざわざお前の手をわずらわせることなんてない。その前に俺たちが終わらせてやる」

一方通行「……オマエ」

土御門「なぁに心配するな。汚れ仕事はもともとこっちのもんだ。気にする必要はない」

一方通行「別に心配なンざしてねェし」

土御門「ふっ、相変わらずのツンデレっぷりで嬉しいにゃー!」

一方通行「急にキャラ戻してンじゃねェよクソ野郎が! あとツンデレなンかじゃねェよ俺ァ!」



キーンコーンカーンコーン



土御門「おっともう時間か。教室に戻るぞ一方通行」テクテク

一方通行「ああ」ガチャリガチャリ

土御門「そうだ。最後に一つ」

一方通行「ンだよ」

土御門「今回の新しい超能力者(レベル5)の増員。このことは思ったより学園都市内で波及しているようだぜい」

一方通行「…………そォか」

土御門「ま、あくまで噂程度のものだと思うから、安心しておけばいいにゃー」


一方通行「…………」

一方通行(俺の役割を果たせ……か)

一方通行「チッ、くっだらねェ」


――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまでに見てくださった皆さんありがとうございました

結標←一方通行「平和を楽しめ」
一方通行←土御門「平和を楽しめ」

この流れは自分ながらに笑ったw
とりあえずこのよくわからないシリアスパートは一旦終わります
しばらくほのぼのが書ければいいなと思ってますが……


次回『広がっていく噂』


ちなみに次の話は一方さんたちは出ません
ではではノシ

〔余談〕
禁書WIKIで吹寄さんのページを開いて口調のところを読んでみた。

『上条に対してはなぜか二人称はフルネームor「貴様」』

私はそのページをそっと閉じた。


週一投下なんで投下しまーす


          Level5
5.広がっていく噂


January Second Tuesday ⅩⅩ:ⅩⅩ

-第七学区・とあるファミレス-


初春「――八人目の超能力者(レベル5)……ですか?」

佐天「そうそう。今ネットで噂になってる都市伝説の一つなんだけどさぁ」

黒子「またその手の話ですの? こりずにまあいろいろ調べてきますわよねぇ」

佐天「でも今回のはいつものより信憑性高そうじゃないですか?」

佐天「『七人だと思われていた超能力者(レベル5)だが実は幻の八人目(エイトマン)がいたっ!?』ですよ!」

黒子「変わりませんの。所詮はくだらない噂が一人歩きした結果でしょうに」

初春「エイトマン、ってことは男の人なんでしょうか?」

佐天「さあ? ただそう書かれていただけで詳しくは書かれてなかったけど」

黒子「胡散臭さしかありませんの」

佐天「むむー、こうなったら初春隊員! 今すぐ『書庫(バンク)』にアクセスして調べるのだー!」

初春「いやですよ。だいたい仕事でもないのにそんなこと許されるわけないじゃないですか」

佐天「そこをどうにかー!」

初春「無理ですって」

佐天「どうしても?」

初春「はい」

佐天「ちっ、使えないなー」

初春「ちょっと! 使えないとは何ですか使えないとはー!」プンプン




黒子「はぁ、いいですの佐天さん?」

佐天「何ですか?」

黒子「そういう噂話を見て楽しむのは結構ですが、それを解明するみたいなことはやめたほうがいいんじゃありませんの? 大覇星祭のときのこともありますし」

佐天「いいじゃないですかー! 別に首突っ込もうとか思ってるわけじゃないし、ただ調べるだけで――」

黒子「それがすでに首を突っ込んでるということになるのですよ」

初春「そうですよ! ただでさえ問題に巻き込まれやすいんですから佐天さんは!」

佐天「うう、ここには敵しかいないよー、助けて御坂さーん!」

初春「そういえば御坂さん遅いですね。どうかしたんでしょうか?」

黒子「野暮用があるから少し遅れるとはおっしゃってましたが……」

佐天「おっ、これはもしかして例の上条さんかなー?」

黒子「なっ、なんですっとー!?」ガタン

初春「ちょ、ちょっと白井さん!」

黒子「おのれ腐れ類人猿めぇ! よくもお姉様をっ!!」

初春「ちょっと声が大きいですよ!? 注目浴びちゃってるじゃないですかー!」

佐天「その点を言ったら今さらって感じがするけどねー」ズズゥー



黒子「……すみません二人とも。わたくしにも少し野暮用ができましたの」

初春「そんなものできてませんから今すぐ席に座ってください!」

佐天「ちょっとドリンクバー行ってくるねー」テクテク

初春「佐天さん!? そんなのんきに飲み物取りに行ってないで一緒に白井さん止めてくださいよ!」

佐天「ええっー? 普通に考えて無能力者(レベル0)が大能力者(レベル4)を止められるわけないじゃん」

初春「大丈夫です。私は低能力者(レベル1)ですから!」

佐天「初春の能力とかこの状況じゃ実質レベル0と変わんないじゃん」

初春「ううっ、たしかにそうですけど……」

黒子「では皆さん。ごきげんよ――」


美琴「おっまたせー、って何やってんの?」


佐天「あっ、御坂さん!」

初春「やっと来てくれたんですねっ!」

美琴「ん? ホント何この状況?」



黒子「……ォォおお姉さまぁああああああああああああああああああっ!!」ガバッ




美琴「ッ!? ちょ、ちょっと黒子! は、離れなさい!」

黒子「ああー会いたかったですのお姉様! 黒子は! 黒子は大変寂しゅうございましたぁ!」

美琴「寂しかったって今朝会ったばっかりじゃないのよ!」

黒子「くんかくんかお姉様の慎ましいお胸ぇ、はあはあ」

美琴「」ピキ

美琴「いい加減にしなさい黒子ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」



バチバチィッ!!



黒子「おおぅ!! イッツアワァァァァァァァァァァルド!!」ビリビリ


佐天「いつも思うんだけど、そろそろここ出禁になってもおかしくないよねー」

初春「そこは店員さんの優しさに甘えときましょうよ」

佐天「それが優しさかどうかはわからないけどねー」



~しばらく経って~



美琴「……いい加減落ち着いた?」ムスッ

黒子「はい。本当に申し訳ないと思ってますの。少しお姉様分欠乏症にかかってしまっていました」プスプス



佐天「さて、白井さんが落ち着いて、御坂さんも来たことですし、あの話に戻すとしましょうか」

美琴「あの話? なになにー?」

初春「またその話をするんですかー?」

佐天「だって気になるじゃん!」

黒子「どうせガセ情報に決まってますの」

美琴「……? 何の話をしているの?」

佐天「レベル5の話ですよ。それも幻のエイトマン!」

美琴「エイトマン……? 八人目ってこと?」

佐天「そうです! 実は超能力者(レベル5)は八人いるらしいんですよー!」

黒子「信じないでくださいねお姉様。所詮は噂です」

佐天「現超能力者(レベル5)で第三位の御坂さんはこの噂について何か知りませんか?」

美琴「うーん、ちょっと聞いたことはないわねー」

初春「ほら佐天さん。レベル5の御坂さんも知らないんですからそれはガセですよ」

黒子「当然ですの。だいたい八人目なんていたら未だに知られていないのがおかしいくらいですわ」

佐天「ちぇー、面白い都市伝説だと思ったんだけどなー」

美琴「…………」



一方通行『超能力者(レベル5)って全員で何人いたっけか?』



美琴(……もしかしてアイツが言ってたのって)


黒子「? お姉様? どうかなさいましたか?」

美琴「……別に、何でもないわ」

佐天「じゃあ次の噂話行ってみましょうかー!」

初春「まだあったんですかぁー!?」


―――
――




同日 ⅩⅩ:ⅩⅩ

-第三学区・アイテム隠れ家-


フレンダ「……ああー、結局年明けは暗部の仕事がなくって暇って訳よ」グデーン


絹旗「こうして超ニートが生まれるのでした」カタカタ

浜面「てかお前いつも『楽がしたい』とか言ってねかったか?」

フレンダ「暇すぎて何もないよりは忙しい方がマシじゃん」

麦野「でもアンタの場合忙しかったら逆のこと言うんじゃない? 『暇すぎる方がマシって訳よ!』って感じに」

浜面「つーか、前スキー場で仕事したばっかじゃねえか」

絹旗「浜面は超何もしてませんでしたけどね」カタカタ

浜面「な、何だと!? い、いや何かやったはずだ! たぶん!」

麦野「ただ雄たけびを上げながら自爆していっただけじゃねえか」

フレンダ「しまいには海原とかいうやつとすり替わっていた訳だし、何もしてないところか足引っ張ってた訳よ」

浜面「くそっ、反論できねえのが悔しいぜ……」

滝壺「大丈夫だよはまづら。はまづらは私たちをスキー場まで運ぶという仕事をちゃんとしてくれたよ」

浜面「た、滝壺ぉ……!」ウル

フレンダ「でも浜面が私たちのアシになるのは当然じゃん。火を点ければ爆弾が必ず爆発するみたいに」

絹旗「それ以外してないってことは何の付加価値もないものということですね」カチ

浜面「ひでぇ!」

滝壺「んー、言われてみればそうかも……」

浜面「滝壺さん!?」



フレンダ「ああー本気で暇だー!」ゴローン

麦野「たしかにそれは同意するわ。暇だから浜面に一発芸でもさせて遊ぶか」

浜面「これだけの仕打ちを受けさせてなおこの追い討ちか……」

麦野「誰も笑わなかったら指一本ずつ焦がしていくから♪」キュイーン

浜面「それ指一本じゃ済まないよねっ!? 腕一本確実に持って行かれるよねっ!?」

滝壺「頑張ってはまづら。私ははまづらのギャグセンスを信じるよ」

浜面「ハードルがくっそ上がってんじゃねえかチクショウ!」

フレンダ「……そういやどうでもいいけど絹旗さっきから何やってんのー? パソコンの前に座ってさ」

絹旗「普通にネットですよ。最新の映画情報とかを探すべく掲示板とかを超見て回っているところです」

フレンダ「掲示板? 普通に映画で検索とかすれば出てくるんじゃないの?」

絹旗「何を言っているんですか? これだから素人は……」ヤレヤレ

フレンダ「何かすっごく腹が立つんだけど」

絹旗「私の見るような映画は超検索しても必ず上の方には上がってきませんよ。B級ならまだしもC級レベルになったら」

フレンダ「あっ、そうか。絹旗のは趣味が悪すぎて検索サイトのほうも規制をかけているのかー」

絹旗「それは私に喧嘩を売っているということで超よろしいですね?」

フレンダ「面倒臭いから売り切れってことでー」

絹旗「あなたは暇じゃなかったんですか……?」



浜面「く、くそう。やってやる、そんなに言うならやってやるよ! も、物真似やりま――」


麦野「やっぱいいや。どうせシラけるだけだし」

浜面「人が覚悟を決めたそばからこれかよ!」

絹旗「そもそも浜面の物真似なんて誰も見たくないでしょうしね」

フレンダ「まだ一発屋芸人の寒いネタ見たほうがマシって訳よ」

滝壺「大丈夫だよはまづら。そんなフルボッコなはまづらを私は応援してるから、たぶん」

浜面「滝壺さん!? ついにたぶんとかいう大変不安になる言葉が付いたんですけどぉ!?」

絹旗「それだけ浜面のギャグセンスに誰も超期待していないということですよ……ん?」カチカチ

フレンダ「どうかした絹旗ー?」

絹旗「いえ、少し超気になることが掲示板に書かれてあったのですが……」

浜面「少しなのかすごくなのかどっちなんだよ」

フレンダ「何のー、その気になることってさー?」

絹旗「はい、これです」カチ

フレンダ「なになにー? 『七人だと思われていた超能力者(レベル5)だが実は幻の八人目(エイトマン)がいたっ!?』だって」

滝壺「ほんとなのむぎの?」

麦野「んなわけねーでしょうが、私たち超能力者(レベル5)は七人だ七人。『ガセだろ死ね』って書き込んどけ」



フレンダ「しかしこれすごいねー。学園都市の都市伝説の一つに追加されてんじゃん」

浜面「都市伝説? 『脱ぎ女』とか『幻想御手(レベルアッパー)』とかか?」

絹旗「レベルアッパーについては実際にそれに関係する事件がありましたよね。事件解決に第三位が超関わってるって話ですが」

麦野「さすが第三位様。学園都市の平和のためにごくろうなこった」

フレンダ「私が相対したときはそんな学園都市のヒーローみたいには見えなかったけどね」

滝壺「うん、そうだね」

浜面「へー、お前ら第三位と戦ったことでもあんのか?」

絹旗「浜面がまだいなかったときの話ですよ。あの頃のアイテムは超輝いてましたよねー」

フレンダ「だねー仕事もそこそこ多かったし」

麦野「一番人を殺した数が多かった期間だったのかもしれないわね」

浜面「おい何だこの俺のせいで仕事が減ってるみてえな雰囲気は」

滝壺「…………」

浜面「ついに応援すらしなくなった!?」

フレンダ「結局、浜面は浜面って訳よね」

浜面「(´・ω・`)」



絹旗「で、この八人目についてはどうしますか麦野?」

麦野「どうするって何が?」

絹旗「もし気になるようでしたらこちらで調べておきましょうか? どうせ超暇なので」

麦野「あー、別にどうでもいいわ。そんなあからさまなガセネタ野郎のことなんて」

浜面「どうしてガセだなんてわかるんだ? もしかしたらレベルアッパーのときみたいに本当にいるかもしれねーじゃねえか」

麦野「そもそもそんな八人目のレベル5なんていたら普通に私の耳に届いてるはずよ? でもそんなの一度も聞いたことないわ」

フレンダ「たしかに聞いたことはないねー」

滝壺「……もしかしたら最近増えたのかも」

麦野「たしかにそれなら私の耳に届いてなくてもしょうがないけど、時期が時期でしょう? ほぼありえないわね」

フレンダ「何で?」

麦野「身体測定(システムスキャン)をしねーと能力判定できないでしょ? 今そんなのやるなんて外部から転入生でも来ない限りありえないわ」

浜面「じゃあその転入生がそうなんじゃねえのか?」

麦野「残念ながらここ最近外部からきた学生の人数はゼロ。上のヤツらが隠してるとかならもしかしたらあるかもしれないけど」

浜面「たしかにそれを言ったらどうしようもねえ話になってくるな」

麦野「そーゆーこと。だから絹旗。別に調べるなら調べるで構わないけど、あとで無駄だったー、って言って後悔すんじゃないわよ?」

絹旗「……了解です」

フレンダ「まあ結局、私たちが暇だってことは変わらないって訳よ」ダラーン


―――
――




同日 ⅩⅩ:ⅩⅩ

-第三学区・スクール隠れ家-


垣根「……八人目の超能力者(レベル5)だぁ?」

ゴーグル「そうっス。今何かと話題になってる裏情報っスよ」

垣根「チッ、すっげぇどうでもいい情報だな」

心理定規「そうかしら? 少しは興味深い情報だと思うけど」

ゴーグル「掲示板とかでは『七人だと思われていた超能力者(レベル5)だが実は幻の八人目(エイトマン)がいたっ!?』って書き込まれたりしてるらしいス」

垣根「ハイそれダウト」

心理定規「ロマンというものがないわね貴方は」

ゴーグル「そうっスよ垣根さん。夢あるじゃないですか謎のレベル5だなんて」

垣根「あぁ? 何言ってんだテメーら。俺が嘘っつったのはそっちじゃねーよ」

ゴーグル「? どういうことっスか?」

垣根「さっきテメーが言った八人目(エイトマン)っつー部分が嘘だって言ってんだよ」

ゴーグル「……あんまり変わらなくないですか? 垣根さんが言ってるのってエイトじゃなくてセブンだろってことっスよね?」

垣根「違げーよ。馬鹿かお前は?」

心理定規「……ふーん、もしかして垣根、その謎の八人目の正体に検討がついているのね?」

垣根「そうだ」

ゴーグル「えっ、マジっスか!?」



垣根「俺が思うにその八人目(エイトマン)……いや、八人目(エイトレディ)っつったほうがいいか?」

ゴーグル「レディ……女ってことっスか」

垣根「ああ。おそらく八人目は『座標移動(ムーブポイント)』、結標淡希だ」

心理定規「……へぇ、彼女が。たしかにそれだけの実力はあるわね」

ゴーグル「でもどうしていきなりそいつが昇格してんスか?」

垣根「……チッ、おいテメェ、その掲示板とやらはよく見るのか?」

ゴーグル「は、はい。一応情報収集には使います」

垣根「その噂は最近出てき始めただろう。ここ二、三日の間ぐらいからな」

ゴーグル「ちょっと待ってください、……!」カタカタ

ゴーグル「た、たしかにそうっス! 一番最初の書き込みは一月五日の十九時五十八分です!」

心理定規「ジャスト三日以内ね」

ゴーグル「でもどうしてわかったんですか?」

垣根「……あームカつくからあんま話したくねーが、その日俺たちは雪合戦大会に出てただろ?」

心理定規「ああ、本来そこで貴方は第一位を倒してメインプランになる予定だったはずだけど、どっかの垣根が舐めプしてたせいで駄目だったあの雪合戦ね」

垣根「うるせえ俺もそれくれえわかってるっつーの。次は必ず潰す」

心理定規「どうせ負けちゃう未来しか見えないわ」

垣根「殺すぞテメェ」

ゴーグル「……け、結局その雪合戦がどうしたんスか?」



垣根「ああ、そこで座標移動は自分自身の転移を成功させやがったんだよ」

ゴーグル「『空間移動能力者(テレポーター)』が自分自身をテレポートさせるのは普通なんじゃないんスか? ましてレベル4以上になれば」

心理定規「彼女はそれができなかったのよ。それゆえにレベル5級の能力を持ちながらも今までレベル4認定だったってわけ」

ゴーグル「そうだったんスか」

垣根「だからその八人目ってのを聞いて真っ先にそれが思いついたわけだ。つまりどうでもいいってことだ」

心理定規「あら、せっかくお仲間さんが増えるというのに嬉しくないの?」

垣根「俺はザコには興味がねーよ。だいたいレベル4から上がってきたんだから必然的に第八位、よくて五、六位くらいの中途半端なレベル5になるだろ」

ゴーグル「自分の順位が脅かされないから平気ってことっスね」

垣根「ま、あの程度の常識的な能力で俺の『未元物質(ダークマター)』を潰せるわけねーけどな」

心理定規「それってもしかして敗北フラグかしら?」

垣根「負けるわけねえだろ。俺はなぁ、アイツに負けてから未元物質の強化に力を入れてんだよ」

ゴーグル「垣根さんのあのハンパないチカラがまだ強化されるって言うんスか!?」

心理定規「具体的にどういう強化をしているのかしら?」

垣根「未元物質はこの世にねえ物質を生み出すチカラだ。今まで俺はそれを既存の現象と組み合わせて使っていた」

垣根「でもそんなもんじゃねーはずなんだ。俺の未元物質には常識が通用しないんだからよ」

ゴーグル「……つまりどういうことっスか?」



垣根「そうだな……今やってるの未元物質の精製だ」

心理定規「……それいつもやってるじゃない。能力を使用するたびに」

垣根「ああ言い方が悪かったか。もっと具体的に言うなら未元物質の可視化、具現化っつーところか」

ゴーグル「?」

垣根「わかってねーって表情だな。しょうがねえ見せてやるよ」バサッ

心理定規「出た、垣根さんのメルヘンチックな翼だ!」

ゴーグル「まるでチョコボールのくちばしに描かれている天使のような神々しい翼だ!」

垣根「お前らあとで殺すからな。よっと」



シュイーン



ゴーグル「これは……なんですか?」

心理定規「バラ、ね。花びらから茎まで全て真っ白なバラ。趣味悪っ」

ゴーグル「バラなんか生み出してこれがどうかしたんですか?」

垣根「それをどっか適当な壁にでも投げてみろよ」

ゴーグル「これをっスか? よっと」ヒョイ



ドガァァァン!!



心理定規「」

ゴーグル「」




シュー



心理定規「…………」

ゴーグル「…………た、たしかあれって一応核にも耐えられるシェルターとかじゃなかったっけ?」

心理定規「そう、他の暗部からの襲撃を防ぐために造られた特別製ね」

垣根「ま、こういうわけだ」

ゴーグル「どういうわけっスか!」

垣根「他にも未元物質製の盾とか銃とか……最近はああいうものを作ってるってことだ」

心理定規「最近は武器を工作して遊んでるってことね」

垣根「違う違う。アレはあくまで俺が強くなるまでの過程に過ぎねーよ」

垣根「それにあんなおもちゃ作ったところで第一位にも勝てやしねーし、わくわくもしねーだろうが」

ゴーグル「武器を作ってるわけじゃないってことは何を作ってんですか?」

垣根「そうだな。今は具体的には言えねーしできるかわからねーけど」




垣根「アイツのトラウマを生み出すことができりゃあ俺の勝ちだな」ニヤァ




砂皿「」ピクピク


―――
――




同日 ⅩⅩ:ⅩⅩ

-第七学区・とある路地裏-



削板「すごいパァァンチッ!!」



ゴバシャァッ!!



横須賀「ぶるがりぃ!?」ドカン


不良達『横須賀さん!?』


削板「ふん、オレのすごいパーンチをまさか二十発も耐えられるようになるとはな」

横須賀「……がはっ、ふ、ふん。この『内臓潰しの横須賀』を舐めてもらってはこま――」


削板「すごいパーンチ」



ドグッシャァッ!!



横須賀「るぼるぶぅ!?」ボカン


不良達『横須賀さんっ!?』


削板「しかぁし! その程度の根性じゃあオレには勝てんぞ!!」



原谷「あのーすみません」

不良A「何だ!」

原谷「そろそろ俺、帰ってもいいですかねえ?」

不良A「何だとテメェ! 横須賀さんが頑張ってるっつーのにテメェは帰るっつーのかよ!」

原谷「いや、俺そもそも関係ないし。たまたまあんたらにカツアゲされてただけだし」

不良B「うるせえぞカツアゲされてるくせに生意気な!」

原谷「知らないですよ、早く帰ってゲームの続きがしたいんですよー!」


削板「すごいパーンチ?」



ゴボオォォオン!!



横須賀「何で疑問系なぐぼらぁ!?」


不良達『横須賀さんっっ!?』


原谷「俺がここにいる意味絶対ないよね!?」


~すごパ十発後~


横須賀「……無念、がくっ」

不良A「ちくしょう覚えてやがれぇ!」

不良B「ほら横須賀さん行きますよ!」

不良C「次はボッコボコだぞグルァ!」



ドタバタドタバタ




削板「根性がある限り何度でもかかってくるがいい!! そのたびに俺がぶっ飛ばしてやる!!」

原谷「あのー、たびたびありがとうございました」

削板「おう、怪我はねーか少年!」

原谷「いやー、こう何度もレベル5の人に助けてもらうなんて俺も運が良いのか悪いのかわかりませんね。あはは」

削板「運など関係ない。日頃の行いがいいやつほど根性があるのだ!」

原谷(何言ってんのかわからないが、つまり俺は根性が日頃から足りていないということだろうか……)

原谷「……そ、そういえば削板さんはレベル5なんですよね? さっきも言ったとおり」

削板「いかにも! 超能力者(レベル5)の七人のうち第七位! ナンバーセブン削板軍覇だがっ!!」

原谷「近ごろレベル5に八人目がいる、みたいな噂が流れているんですよ」

削板「ほぉ、それは初耳だ」

原谷「そうなんすか。てっきりレベル5だからその手の話は詳しいのかと」

削板「しかし八人目か。どんなやつか知らんがきっと根性に満ち溢れた若者なんだろうな!!」

原谷「ははー、そうすねー」

削板「もしそうならオレもうかうかしてられないぜ! 順位を抜かれてナンバーエイトならないようにしないとな!」



削板「そうと決まれば今日から猛特訓だっ!! 根性ォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ダッ



ドッカーン!!



原谷「……無茶苦茶だ」


―――
――




同日 ⅩⅩ:ⅩⅩ

-学び舎の園・とある喫茶店-


店員「お待たせいたしました。エクレアとショートケーキでございます」

食蜂「くすっ、ありがとぉ」

縦ロール「女王! また貴女はそんなにたくさんのスイーツを!」

食蜂「ええっーいいじゃん別にー。ていうか別に多くないしぃ」

縦ロール「駄目です。最近はお正月だとかこつけてお餅ばかりお食べになられていたではないですか!」

食蜂「だってお餅おいしーんだもん」

縦ロール「女王はお餅の恐ろしさを知らない過ぎるのです! そしてお菓子の恐ろしさも!」

食蜂「育ち盛りの女子中学生なんだから、しっかり育つように食べたほうがいいんじゃないかしらぁ?」

縦ロール「それが裏目に出て体が横に成長したらどうするおつもりですか!」


取り巻きA「(また太られたのね)」ヒソヒソ

取り巻きB「(自制ができないのかしらね)」ヒソヒソ


縦ロール「そこ! うるさいですよ! ううっ……」

食蜂「もぐもぐ、うん、やっぱりここのエクレアは最高ねぇー」

縦ロール「女王!」

食蜂「そんなことよりぃ、今日はいったい何のための集まりなのかしらぁ?」



縦ロール「……はい。今日は冬期休暇を終え、三学期が始まったので、これからの派閥全体の予定を立てるための集まりです」

食蜂「ふーん、そういうのはアナタが勝手に決めちゃって構わないのにぃ」

縦ロール「いけません。この派閥のトップである女王が話し合いに参加しなくてどうするというのですか!」

食蜂「そんなことより何かおしゃべりしましょ? せっかくの女子会なのだしぃ」

縦ロール「だから女王! 女子会などではありません!」

食蜂「そこのアナタぁ? 何か面白い話題ないかしらぁ」

取り巻きB「え、ええっと……」

縦ロール「話題は三学期からの予定についてです! あと貴女も女王の話に耳を傾けない!」

取り巻きA「あ、そうだ。食蜂様、一つ気になる話があるのですが」

食蜂「えっ、なになにぃー? 話して話してー!」

縦ロール「貴女! 余計なこと言って女王の気をひかないでくださる!?」

食蜂「もう、少しうるさいゾ、えい☆」ピッ


縦ロール「」ピタ


取り巻き達『…………』アゼン

食蜂「どうぞアナタ続けて続けて♪」

取り巻きA「あ、はい。ええと……」



取り巻きA「どうやら私たちの派閥の中である噂が流れているんですよ」

食蜂「うんうん」モグモグ

取り巻きA[その噂の内容が『七人しかいない超能力者(レベル5)ですが、実は八人目がいた』と、このようなものなのですが」

食蜂「……へー、それは興味深いわねぇ」

取り巻きB「食蜂様はご存知ではありませんか? この謎の八人目のレベル5について」

食蜂「うーん、どうかしらぁ。その八人目さんがもともといたのか、新しく出てきたのかによって話が変わるのよねぇ」

取り巻きA「? 実は八人目がいた、とあるのですからもともといたのではないのでしょうか?」

食蜂「そうねぇ、その噂が百パー正しいと言えるならそうだけど、実際はただの噂だものぉ」

取り巻き「い、言われてみれば……」

食蜂「噂ほど信用のないものはないわ。まあ、気になるよぉならこっちで調べとくけど」

取り巻きB「い、いえそんな! 食蜂様自らそのようなことせずとも……!」

食蜂「別に構わないわぁ、実は結構興味が湧いてきたし。何かわかったら教えてあげるわぁ」

取り巻きA「あ、ありがとうございます!」



食蜂(うふふっ、さぁて結標さん? アナタはこれから一体どういう道を歩むのかしらねぇ)



―――
――




同日 ⅩⅩ:ⅩⅩ

-第七学区・街頭-


土御門『というわけで、あとはよろしくたのむぜい海原』

海原「わかりました。後処理はこちらに任せて置いてください」

土御門『しかし悪いなー合流できなくて。こっちは宿題が終わらなくて学校で居残りでさぁ』

海原「大丈夫ですよ。貴方がいなくてもこの程度の仕事、完璧にこなしてみせます」

土御門『それはそれで寂しい気がするぜい。あ、あともし少しでも大変だと思ったらすぐ連絡寄越してくれ。援軍を送ってやるからにゃー』

海原「……他二人をですか?」

土御門「そうだにゃー」

海原「結構です。どうせ連絡しても来ませんよ。仮に来たとしても片方は邪魔しかしませんから」

土御門「そうだな。――おおっと、すまない。小萌先生が呼んでるからまたかけ直すにゃー。頼むぜい海原」

海原「了解です」ピッ


海原「…………さて、と」

海原「御坂さんの様子が心配ですが、こちらはこちらで大変になりそうですからね」

海原「行きますか――」

<ヒビキアウーネガイガイマメザメテクー♪

海原「おやっ」ピッ


海原「もしもし、何でしょうか?」

海原「えっ、買い溜めのお菓子がなくなったのですか?」

海原「わかりました。これから仕事なのでこれが終わったらすぐに持って行きますよ」

海原「……えっ、大丈夫です、一人で大丈夫なので貴女はそこで待っていてください」

海原「…………はい、では」ピッ


海原「…………」

海原「さて、改めて行くとしますか」


―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

主要メンバー以外のレベル5総出演ですね(ただし第六位、テメーはダメだ)
食蜂さんサイドと削板さんサイドのクオリティが低いのは>>1の原作の読み込みが甘いせい


次回『とある高校の昼休み』


いよいよ次から短編(時系列順)集となります
なので10レス投下とかがザラになると思いますがよろしくおねがいします
ではではノシ

みなさんこんにちは>>1です
盛・大・に・ネ・タ・切・れ・し・た
このままではポンポン進んであっという間に二年生とかになりかねません
日常パートのネタを募集したいです。欲しいキャラ要望とかでも構いません
全部反映できるかわかりませんが、おねがいします

※ならなぜスレ立てたし、というツッコミは(ry

今一月第二火曜だっけ?
……あれ、第二月曜(>>4)って成人の日で普通は学校休みじゃ

>>174
すみません、それはミスです
いちおう>>83でお願いします


みなさんこんにちは
今日から学校だけど気にせず投下しまーす\(^o^)/



6.とある高校の昼休み


January Second Wednesday 12:20 ~昼休み~

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



女子委員長「気をつけ、礼!」



<ありがとうございました!



青ピ「あぁー、やっと昼休みやでー」

上条「授業ってこんなにきつかったっけ?」

土御門「年末まで補習で学校に来てたカミやんが言う言葉かにゃー?」

上条「補習には慣れてても久しぶりの授業ってのはやっぱり慣れてねーんだよ」

青ピ「言うてて悲しゅうならんの自分?」

上条「うっせぇ。よし、だったら上条さんは宣言しますよ!」



上条「三学期は補習ゼロで終わらせて、すがすがしい気持ちで二年生を向かえてやるよ!」




青ピ「なお、次の中間テストで撃沈される模様」

土御門「ここまで信用のない宣言はないぜい」

上条「テメェら見てろよ。ぜってー赤点しのいでやっからな!」


吹寄「でも上条。貴様は能力開発の単位足りてないじゃない」


上条「…………え」

青ピ「せやな。その右手のせいでカミやんは完全無欠の無能力者やからなー」

土御門「どちらにしろ補習が待ち構えているというわけだにゃー」

上条「…………不幸だ」



ワイワイガヤガヤ



結標「……楽しそうねえ」

一方通行「馬鹿が集まると騒がしくて敵わねェな」

結標「いいじゃない賑やかで」

一方通行「うっとォしいだけだ」

姫神「結標さん。一緒に食べよう」

結標「あっ、いいわよ。一方通行も一緒にどう?」

一方通行「先に食ってろ」ガタン

結標「どこか行くの?」

一方通行「飲みモン買ってくる」ガチャリガチャリ



結標「……じゃあ先にいただいときましょ」カパッ

姫神「そうだね」ガタン

青ピ「アックセラちゃーん! 一緒に食べ……ありゃ? アクセラちゃんは?」

結標「一方通行なら自販機に飲み物買いに行ったわ」

青ピ「なんやって!? こんなことならパシリ頼めばよかったわー」

姫神「それに応じるとは。到底思えないけど」

結標「他の人たちはどうしたの?」

青ピ「昼食目当てに戦場に出て行ったでぇー」

姫神「おそらく上条君だけ。戦果なしで帰ってくる」

結標「もはや予想じゃなく断定なのね」

青ピ「ふーむ、ってことはカミやんたちはアクセラちゃんと合流してるかもしれへんなぁ」

結標「そうね。自販機と購買は同じ方向にあるわけだし」

姫神「ところで青髪君。あなたの昼食は?」

青ピ「今日は下宿先のパン屋の売れ残りを持ってきたんやでえ」ドン

結標「おおっ、いっぱい持ってきてるわねえ」

姫神「あんぱん。カレーパン。クロワッサン。メロンパン……種類が豊富」



青ピ「今ならパン屋を開けるかもれしれへんなぁ」

結標「いや、普通に足りないでしょ」

姫神「これ全部食べるつもり?」

青ピ「んなわけないやん。面倒やから全部まとめて持ってきただけやし」

結標「これ絶対食べきれないわよね?」

青ピ「せやな。まあ、残ってもおやつとかにするし大丈夫やろ。よかったら姉さんらも食べる?」

結標「じゃあジャムパンもらうわね」ヒョイ

姫神「私はソーセージパンで」ヒョイ

青ピ「ソーセージ……うっ」

姫神「……どうかした? ソーセージは駄目だった?」

青ピ「いや、別にいいんやでぇ、別にぃ。ボクのソーセージやから大事に食べてーやぁ」

姫神「? うん。ありがとう」パク

青ピ「はうぅ!」

姫神「?」モグモグ

青ピ「これはいいっ!!」グッ

結標「何となくだけど一方通行がいたら電極のスイッチが入っちゃいそうよね、何となくだけど」


―――
――




同日 12:30

-とある高校・購買-



ワーワーギャーギャー!!



一方通行「……相変わらず人がゴミのよォに集まる場所だなァここァ」

一方通行「まァ俺には関係ねェがな」チャリン



ピッ、ガタン!



一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……ふゥ、さて教室に帰るとすっかァ」ガチャリガチャリ


土御門「おっ、アクセラちゃんじゃないか」


一方通行「……チッ、嫌なヤツに出会っちまったなァ」

土御門「随分な言われようだにゃー」

一方通行「こンなところで何してやがる」

土御門「購買に来たらすることは一つじゃないか?」

一方通行「……その手に持つサンドイッチは戦利品っつゥことか」

土御門「そのとおりだぜい」



一方通行「オマエ一人か?」

土御門「いーや、他にもカミやんと吹寄が来てる、けど……」



吹寄「くっ、いつもより壁が厚いわね……!」

上条「あーくっそ、不幸だ……」



土御門「あの通り頑張って食料を手に入れようと努力しているんだにゃー」

一方通行「さすが暗部の人間は違うな。この程度の障害はどォってことねェってことか」

土御門「何のことだかわからないにゃー」

一方通行「チッ」



吹寄「よしっ! 『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』ゲットぉ!!」



土御門「お疲れ吹寄ぃ!」

一方通行「争奪するまでなく売れ残ンだろ、ンな不味そォなパン」

吹寄「ちゃんとおいしいわよ! しかも能力上昇するし!」

土御門「てか、それって通販で売ってるやつじゃなかったにゃー? 何で購買で売ってるんだ?」

吹寄「さあ? 私も今日初めてここで見たから知らないわよ」

一方通行「どォせアレだァ、教員側があまりにも能力の平均値が低すぎるのを危惧して、苦肉の策として導入されたモンの一つだろ」

吹寄「でも平均は前よりだいぶ上がっているとは思うけど。あなたたち二人がいるおかげで」

一方通行「所詮二人だけだ。大して変わらねェよ」





上条「よっしゃぁああああああああああああああああっ!! 焼きそばパン取ったぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」




土御門「な、何だと!?」

吹寄「そ、そんなっ! 上条がパンを買えたですってっ!?」

一方通行「珍しく右手が仕事しなかったわけか」

上条「へへっ、上条さんだって日々成長してるってわけですよーと」

土御門「今日は雪でも降るんじゃないかにゃー」

吹寄「雪じゃ普通すぎるわ。人工衛星でも降ってくるんじゃないかしら」

上条「お前ら……さすがの上条さんでもそこまで不幸じゃ――」ツルン



ステーン!



上条「痛っ!?」

一方通行「なァにオマエは何もねェ場所で転ンでンだよ」

土御門「そういうのはドジっ娘属性の娘がやる役割だぜい。男のドジなんて誰得だにゃー」

吹寄「……そういえば上条、焼きそばパンはどこにやったのよ?」

上条「へっ?」




           ┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨

                    vymyvwymyvymyvy、
                ヽ(゚∀゚)vヽ(゚∀゚)yヽ(゚∀゚)v(゚∀゚)っ
           ⊂( ゚∀゚ ) と( ゚∀゚ ) 〃ミ ( ゚∀゚ )っ ( ゚∀゚ )つ

             ゝηミ ( ゚∀゚ )っ ミ) ⊂( ゚∀゚ ) .(彡η r
              しu(彡η r⊂( ゚∀゚ ) .ゝ.η.ミ) i_ノ┘
.                 i_ノ┘  ヽ ηミ)しu
                     (⌒) .|
                      三`J
  

                 ((@@@)←焼きそばパン




上条「ぎゃああああああああああああああああああっ!! 俺の焼きそばパぁああああああああああああああン!!」




                    vymyvwymyvymyvy、
                ヽ(゚∀゚)vヽ(゚∀゚)yヽ(゚∀゚)v(゚∀゚)っ
           ⊂( ゚∀゚ ) と( ゚∀゚ ) 〃ミ ( ゚∀゚ )っ ( ゚∀゚ )つ

             ゝηミ ( ゚∀゚ )っ ミ) ⊂( ゚∀゚ ) .(彡η r
              しu(彡η r⊂( ゚∀゚ ) .ゝ.η.ミ) i_ノ┘
.                 i_ノ┘  ヽ ηミ)しu
                     (⌒) .|
                プチ>  三`J ←焼きそばパン
  




上条「不幸だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」





吹寄「……あーあ、これはもう駄目ね」

土御門「ドンマイとしか言いようがないにゃー」

一方通行「さすが幻想殺し。抜け目のねェ」


―――
――





同日 12:40

-とある高校・一年七組教室-


結標「――そういうわけで上条君は戦果なし、と?」

上条「…………はい」シクシク

青ピ「あちゃー、見事予想通りやったなー。これでも食って元気だしぃ」つコッペパン

上条「サンキュー青髪」モグモグ

姫神「しかし今回は。お金を払ってからという……」

吹寄「最後の最後で油断するからこうなるのよ」

上条「ええっ!? これ絶対油断とか関係ないですよねっ!?」

一方通行「わかってンなら誰かに買いに行かせるとかしろよ」

上条「いや、そんなパシリみてーなことはしたくねーんだよな」

土御門「この場合はパシリとは言わないんじゃないかにゃー?」

一方通行「まァ、この面子でまともに働いてくれるヤツなンざ限られてるからなァ」

青ピ「働いたら負けだと思ってる」(キリ

吹寄「思うな」

一方通行「つゥか、次から結標一人で買いにいかせりゃイインじゃねェのか?」

結標「えっ、私?」

一方通行「オマエのチカラァ使えば、あの群衆の中でも余裕で人数分の食料確保できるだろ」



吹寄「そういえばそうね。視認さえすればどこからでもアポートできるものね」

土御門「さすがは座標移動(ムーブポイント)! 俺たちのできないことを平然とやってのけるっ!」

結標「いや、まだ何もやってないけど」

一方通行「オマエが行けばみンなに食料が行き渡る。つまりみンな幸せ」

結標「貴方、たぶん私をパシリか何かに仕立て上げようとしてるでしょ?」

一方通行「ンなこたァねェよ。誰も面倒だからついでにコーヒーを買ってきてもらおう、なンて思ってもねェよ」

結標「普通に思ってるじゃない! というか貴方の能力でも余裕でパシリ可能なんじゃないかしら?」

一方通行「俺にここの生徒を蹴散らせってかァ? さすがこっち側に来ただけあって順調に人格破綻してきてンじゃねェか」

結標「え、や、違うわよ! 別にそんなことを言ってるわけじゃ――」

吹寄「はいはーい二人とも落ち着いて落ち着いて」

結標「吹寄さん?」

吹寄「別に結標さんをパシリにしようなんて誰も思ってないわよ」

上条「そうだぞ。そもそも俺がメシ買えなかったのは俺のせいだしな」

青ピ「せやでぇ、アクセラちゃんも冗談で言ったんやろ?」

一方通行「…………おォ」

結標「さっきの間は何よ」



吹寄「ところで結標さんって毎日お弁当よね」

結標「うん、そうだけど」

吹寄「毎朝自分で作ってたりするの?」

結標「えっ」

一方通行「あァー、残念ながらコイツに料理は無理だ」

結標「ちょっと一方通行ぁ?」

姫神「そうなの?」

青ピ「へー、意外やなぁ。姉さん料理得意そうな雰囲気醸し出しとんのになぁ」

上条「美人で高位能力者という万能なお姉さんにも苦手なもんとかあったんだな」

結標「えっ、び、美人なんてそんな……」テレッ



ゴッ、ガッ、バキッ!



上条「痛ってぇっ!? な、何しやがるんですか!?」


吹寄「またか貴様は……」ゴゴゴゴゴ

青ピ「カミやーん、フラグ立てる場所間違えとるでー?」ゴゴゴゴゴ

土御門「そろそろカミやん病の病原菌を滅菌したほうがよくないかにゃー?」ゴゴゴゴゴ


上条「えっ、ちょ、何なんですかこの展開ぃ!?」




ゴキッ、ボキッ、グシャ、グパァ、ゴリュ、メメタァ!



一方通行「ちなみにコイツには切りにくい鶏肉を柔軟剤で柔らかくしようとした経歴がある」

姫神「これはひどい」

結標「な、何で貴方はそう躊躇なく人の恥ずかしい話を……!」カァ

姫神「鶏肉。確かに切りにくいよね」

一方通行「他にも野菜を炒めるだけでダークマターが――」

結標「ちょっとぉ! これ以上はやめてぇ! 私のライフポイントがぁ!」



吹寄「成敗ッ!!」



バキィッ!!



上条「おぐっ……」バタリ


土御門「さすが吹寄、見事なお手前だにゃー」

青ピ「一生ついていきますぅ!」


上条「ふこ……うだ……」


――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

別になんにもないただの日常でしたね
まあこんなもんしか書けなくてサーセン


次回『あなたの好みはどっち?』


最後にAA使ってしまって、携帯の方はほんとスミマセン
あとたくさんのアイデアありがとうございました
引き続きなにかあったら書いてみてください

ではではノシ

乙! やっぱほのぼの学生生活っていいもんだな。

ところで余計なことかもしれんが、
>>185 青ピ「なお、次の中間テストで撃沈される模様」
と書いてあるんだが、3学期に中間テストってあるのか?
学校によるのかもしれんが、少なくとも俺の通っていた学校ではなかった。

>>198
あっ、やべえ今調べたらなかったorz

×青ピ「なお、次の中間テストで撃沈される模様」

○青ピ「なお、次の期末テストで撃沈される模様」

に補完しといてくだしあ

焼きそばパン踏み潰した軍勢ひょっとしなくても勃っk……


早く(ry


   Younger or older
7.あなたの好みはどっち?


January Second Thursday 13:45 ~休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



青ピ「なぁなぁ、彼女にするなら年上か年下どちらがええ?」



上条「は?」

一方通行「あァ?」

土御門「年下ッ!!」

一方通行「いきなり何ほざいてやがンだオマエは?」

青ピ「いやいや、ちょろっと疑問に思うたから話題に出してみよーかと思うてな」

上条「つーか、この会話半年くらい前にもやらなかったか?」

青ピ「半年もあれば趣味趣向も少しは変わっとるやろ」

上条「まあ、たしかにそうかもしれねえけど」

一方通行「……あァ、そォいえば用事あるの思い出したわ。じゃあな」カチ

土御門「カミやん」

上条「お、おう」ガシッ

一方通行「クソがァァああああああッ!! どォいうことだ。能力使用モード使ってんンのに能力が使えねェ!! 何なンだよその右手はァ!!」

上条「何って……ただのゲンコロですが」

青ピ「よし、ナイスやでカミやん! 今回の主賓をみすみす帰らせたら悪いからなぁ」

一方通行「ふざけンじゃねェ、クソ野郎がァ!!」




ワイワイガヤガヤ



吹寄「……何やってんだか、あの馬鹿どもは」

結標「いつものことでしょ?」

姫神「いや。今回の青髪君はグッジョブ」

結標「どういうこと姫神さん?」

姫神「これはあなたにも大変関係ある話。そうでしょ結標さん」

結標「?」

吹寄「あなたの恋するアクセラの好みがハッキリわかるってことよ」

結標「…………いやいや、どうせアイツのことだからちゃんと答えないわよ、たぶん」

吹寄「まあ、そこは他のメンツのトークスキルによるわね」

結標「ふーん、アイツの好み、か……」


青ピ「さて、まず率先して答えてくれた土御門君からやな」

土御門「年下一択なんだぜい! 年上なんてアーリーエーナーイー」

上条「テメェは義妹なら何でもいいんだろうが」

土御門「年下サイコー! ひんぬーサイコー! ロリサイコー! 義妹ばんざーい!!」

一方通行「コイツ……脳にウジでも沸いてンじゃねェか?」

上条「教室で堂々と叫ぶなよ」



青ピ「じゃあ次ボク言ってみましょーか!」

上条「お前って趣味変わんのかよ?」

一方通行「コイツはもともと何だったンだ?」

土御門「たしか――」


土御門「落下型ヒロイン義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘、とかだったかにゃー」


上条「うわっ、よく覚えてたなお前」

一方通行「よォするに女なら何でもイイってことかよ」


青ピ「それだけじゃないでー、他にも従姉妹ハトコ赤髪青髪緑髪ツインドリルお団子ヘア昇天ペガサスMIX盛り未手入れヘア魔女っ娘作業着褐色露出狂サングラス研究員不良クーデレデレデレヤンデレイカダンサーミュージシャン中二病高二病脱力系男の娘くノ一殺し屋OLビッチ女教師保健室の女医さん巨人小人妖精女神天使っ娘悪魔っ娘読書家陰湿女騎士魔王陸上部サイボーグとかもいけるんやでー」


上条「だから明らかに一つ女じゃねえやつが混じってんじゃねえか」

一方通行「人外とサイボーグはどォ違うだよ」

青ピ「何言っとんアクセラちゃん! サイボーグは人外やないでー、きちんと人の心が残っているから人なんやでー」

一方通行「果てしなくてどォでもイイ」

青ピ「『私の腕パーツ壊れちゃったのぉ、だからあなたの手で予備のパーツに換えて、お・ね・が・い♪』とか言われたら萌えるやろーが」

一方通行「知らねェよ」



青ピ「じゃあ次はカミやんやな」

一方通行「オイ待て」

青ピ「何ぃや?」

一方通行「結局、オマエは年上と年下どっちがイインだよ?」

青ピ「そんなの決まっとるやん、どっちも最高やでー!!」

一方通行「アリかよそれ」

土御門「改めて、カミやんはどうだ?」

上条「俺か? うーん、そうだなーやっぱ年上かな?」


姫神「」ガタン

結標「ひ、姫神さん!?」

吹寄「だ、大丈夫よ姫神さん! あの年上っていうのは自分の年齢以上だから! 同級生も含まれてるから……たぶん」ボソ


一方通行「意外だな。暴食シスターっつゥ戦略兵器家に住まわしてるくらいだから、てっきりそっちの趣味があるかと」

上条「なっ、そんなモンあるわけねーだろ! だいたいあいつはそういうのじゃねえよ!」

土御門「ほんとかにゃー? 実は本当はそっちのほうが――」



上条「その幻想をぶち殺すッ!!」ゴォウ



土御門「よっと」



スカッ




土御門「甘いぜいカミやん。そんな目をつむってでも避けられそうなパンチじゃ無駄無駄ァぜよ」

上条「クソッ、軽快なステップで避けやがって……」

青ピ「ふむ、相変わらずカミやんは年上趣向か……ってことはまだ寮の管理人のお姉さんタイプとかが好みなん?」

上条「まあ、そうだな。たまに憧れたりとかする」



姫神「」ガタン

結標「姫神さん!!」

吹寄「だ、大丈夫よ姫神さん! あれはたぶん姉とかに憧れるあれと同じよ! だからまだ希望はあるわ!」


青ピ「さーて、じゃあ最後にアクセラちゃんを――ってあれ?」

上条「どうした青髪?」

青ピ「カミやん、手ぇ離してへん?」

上条「へっ……あっ」


一方通行「さァて、そろそろ風が俺を呼ンでいる時間だな」カチ


青ピ「カミやん! 逃がしたらあかんで!」

一方通行「ぎゃはっ、遅せェ、遅せェぞ! そンなンじゃ百年遅せェぞ三下ァ!!」ドン

上条「くそっ、間に合わねぇ!」



一方通行「俺のォ、勝ちだァ!! オラァ!!」ガッ




一方通行「…………あれ?」

上条「…………」

青ピ「…………」

一方通行「…………オラァ!!」

上条「…………」

青ピ「…………」

一方通行「な、何で能力が使えねェンだッ!?」



ヒラヒラ



一方通行「あン? 何だこの宙にいっぺェ浮いてる銀色の紙みてェな物体はァ!?」



土御門「『攪乱の羽(チャフシード)』。電波攪乱兵器の一種だぜい」



一方通行「は? 電波攪乱……だと?」

土御門「だにゃー、お前の電極に届く能力使用時の代理演算のための電波、少しばかりジャミングさせてもらったぜい」

上条「何でそんなもん学校に持ってきてんだよお前は」

青ピ「まあ、何はともあれこれでアクセラちゃんの趣味を聞くことができるわぁ」



一方通行「くそったれェ!!」




青ピ「というわけでアクセラちゃんの性癖はどっちなん? 幼女? 熟女?」

一方通行「何だよその両極端な選択はァ? 年上か年下かじゃねェのかよ。あと性癖とか言うンじゃねェ」

上条「で、どっちなんだ一方通行?」

一方通行「じゃあどっちでもいいで」



ドン!!



青ピ「ふざけるんやないでぇアクセラちゃん! 人が真面目に聞いとんのに何やその答えはぁ!?」

一方通行「両方って言ったヤツは誰だったっけかァ!?」

青ピ「ボクは両方愛せるからそう言うたんで!」

一方通行「じゃあ俺も両方愛せるで」

青ピ「心がこもってなーい!」

一方通行「どォしろってンだよ!」

土御門「どちらか答えればいいと思うにゃー」

一方通行「チッ、……じゃあ年下で」


結標「」ガタン

吹寄「結標さんっ!?」

姫神「やはりアクセラ君は。ロリコン……?」



土御門「ほぉ、その心は?」

一方通行「別にねェよ。正直どっちでもイイ」

青ピ「だから違うねん! ちゃんと考えーやアクセラちゃん!」

一方通行「何でだよ。きちンと片方決めてやったじゃねェか」

青ピ「て・き・と・う・や・な・い・か・い!!」

一方通行「チッ、わかったよ……」

上条「…………」

青ピ「…………」

土御門「…………」

一方通行「…………年下で」



ドン!!



青ピ「なんも考えとらんかったやろっ!?」

一方通行「い、いや、か、考えてたぞ……?」

一方通行(何だコイツ……何で俺が適当に黙っていたことがわかったンだァ……?)

青ピ「今、何でわかったんだァ……? って思うとるやろ」

一方通行「…………おい、こいついつから『読心能力者(サイコメトリー)』になったァ?」

上条「さあ?」

土御門「俺らに聞かれてもわからないにゃー」



一方通行「……まァアレだな。要するに真面目に考えて答えを出せってことか?」

青ピ「せやで。初めからそうしてくれればスムーズに展開が進んでくれたんやでー」

一方通行「…………」チラ



時計『13:53』



一方通行(あと二分か……)

青ピ「あっ、ちなみにこの時間中に答えられなかったら、次の休み時間まで持ち越すことになるでぇ」

土御門「授業終了の瞬間に開幕チャフシードかますぜい」

一方通行「クソが……」

上条「まあ何つーか、頑張れ」

一方通行「…………」


一方通行(さて、年上と年下どっちがイイか、っつゥ話だったか)

一方通行(そもそも俺に正直恋愛感情なンてモンは存在しねェ。つまり、俺にとってうっとォしくねェヤツが対象になるっつぅことか)

一方通行(……面倒だから年下でイインじゃねェか?)

一方通行(いや待て、年下っつったら――)




打ち止め『ねえねえ! 動物園ってところに連れて行ってー! ってミサカはミサカは上目遣いでお願いしてみたり!』



禁書『あくせられーた! おなかへったんだよ!』



美琴『何よ! アンタには関係ないでしょ!』



御坂妹『またコーヒーですか……いい加減ブラックがかっこいいという風潮を真に受けるのはどうかと思いますが、とミサカは腹の中でこっそり笑って見せます』



円周『アクセラお兄ちゃーん! このマンションで毒ガスを蔓延させるのにはどういう方法が一番いいか一緒に考察しよー!』











一方通行(…………うっとォしいヤツしかいねェ)



一方通行(ヤベェよ。俺が知ってる中で年下クソ面倒臭せェヤツしかいねェよ)

一方通行(こんなヤツらといつも一緒にいるとしたら、いつか脳の血管が破裂しちまうぞ)

一方通行(…………まァ、それに比べりゃ年上は――)




黄泉川『野菜を残すんじゃないじゃん! ちゃんと食べないと大きくなれないじゃんよ!』



芳川『うふふっ、私ねえ、働いたら負けだと思っているのよ』



結標『早く起きなさいよ一方通行ぁ!』




一方通行(…………こっちのほうが遥かにマシだな)

















小萌『あれ!? 先生はどうしたんですー!?』



一方通行「…………よし、決めたぞ」

上条「おっ、やっとか」

土御門「『まったく、小学生は最高だぜ!』か『幼女! 幼女!』か……運命の分かれ道だにゃー」

上条「どっちもロリコンじゃねえか」

青ピ「今度はちゃんと決めたんやろうなー?」

一方通行「当たり前だろォが。時間がねェ、すぐ答えンぞ」



一方通行「俺は年上が好きだ」



結標「!!」ガタッ

吹寄「おおっ!」

姫神「意外な答え」



土御門「ほほう、これはどういう方向転換だにゃー?」

上条「たしかに。さっきまで年下年下言ってたのに」

青ピ「アクセラちゃんはロリコンじゃなかったんやなー」

一方通行「誰がロリコンだ」



キーンコーンカーンコーン



親船「はい! 開始のチャイムは鳴ってるわよ! 早く座って!」


一方通行「そォいうわけだ。じゃあな」

上条「おう」

土御門「次の休み時間だにゃー」

青ピ「ほななぁ、熟女趣味のアクセラちゃーん」

一方通行「だからどォしてそォ極端なことになってンですかねェ!?」


―――
――




同日 17:00

-第七学区・とある公園-


一方通行「――つゥことがあったわけだ」

美琴「……で、何でそれを私に話すわけ?」

一方通行「あン? 何でってアレだろ。また性懲りもなくオマエが、ベンチに座って一服してる俺に絡ンできたからだろ」

美琴「それはアンタが『面倒臭せェ』とか一人で呟いてたからでしょ?」

一方通行「まァ、そォいうわけで残念だったな超電磁砲」

美琴「? 残念って何が?」

一方通行「オマエの大好きな三下は年上趣味だ」

美琴「べ、別に好きじゃないしっ!! …………え」

一方通行「イイ加減素直になっとけよ。ツンデレなンて現実じゃうっとォしいだけだ」

美琴「えっ、ちょっとどういうことよ。アイツが年上趣味って……」

一方通行「そのままの意味だ」

美琴「」

一方通行「おっ、絶望に満ち溢れた表情してやがるなァ」

美琴「」

一方通行「…………」ズズズ

美琴「」

一方通行「あァ、コーヒーうめェ」



美琴「……ふ、ふんだ! そんなの私に関係ないわよ!」

一方通行「おっ、思ったより立ち直るの早かったなァ」

美琴「うっさい。だいたい恋愛に年上とか年下とか関係ないし。恋人イコール趣味の人じゃないし」

一方通行「たしかにそォかもしれねェな……つゥかやっと認めたか」

美琴「認めてないわよ!」

一方通行「あァハイハイそォですかァ……あン? ありゃ三下じゃねェか」

美琴「えっ、どこ!?」



上条「わざわざ日本まで来なくてよかったのに」

女性「いえ、さすが年賀状だけでは……、とりあえず今回は私だけでも代表で挨拶にと思いまして」

上条「そんな気を使わなくていいって……まあ、今日はゆっくりしていけよ。インデックスのヤツが喜ぶと思うから」

女性「はい、そうさせていただきます」

上条「じゃあ今日の夕食はちょっと豪勢にいってやらねーといけねえかなー?」

女性「いえ、そんなお気を使わずに! 普通で結構です!」




一方通行「……誰だあの露出狂女はァ? しっかしデケェなァいろいろと」

美琴「…………」プルプル

一方通行「あァ? どォした超電磁砲」

美琴「…………そ」

一方通行「そ?」






美琴「そんなに巨乳がいいのかこんのエロ野郎ォがぁあああああああああああああああっ!!」ビリビリ







<ウワッナンダビリビリカッ!? テキシュウデスカッ!? イ、イヤチガッ ドウヤッタラソンナフウニナルノヨチクショー!! オ、オチツケオマエラ…アアモウ







上条「不幸だァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」







一方通行「……年上か年下か」

一方通行「…………」

一方通行「俺ァ一体どっちなンだろォな?」ズズズ


――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

本当は女子パートもやりたかったけど、他二人がどっちかいまいちわからんからやめた
というか全開空気だったからみこっちゃんをできるだけ起用してたら今度はインさんが……


次回『常盤台高校の風神・雷神』


何人の方がこのサブタイを勘違いなさるのでしょうか……
ではではノシ

>>203
ち、違うし、あれはコッペパン的な何かだし(震え声)


早(ry

AA乱発するから携帯の方はすみませぬ



8.常盤台高校の風神・雷神


January Second Sunday 10:00

-黄泉川家・リビング- 



ガラララ



一方通行「……あァ、よく寝た。眠っ」ガチャリガチャリ

結標「凄まじくセリフが矛盾してるわよ」

一方通行「事実だからしょうがねェだろォが」

結標「ま、いいけど。おはよっ一方通行」

一方通行「おォ」

打ち止め「おはよー! お寝坊さんだね! ってミサカはミサカは時計を見ながら挨拶してみる」

一方通行「あァ? 寝坊どころか早起きのレベルだろォが。つゥか、日曜日くれェゆっくりさせろ」

結標「何か食べる? 一応、貴方の朝ご飯は残ってあるけど」

一方通行「いらねェ。どォせサラダやら納豆やらのオンパレードだろ? 朝からそンな気色悪りィモン食いたくねェ」

結標「納豆はともかくサラダは気色悪くはないでしょ」

一方通行「緑黄色野菜は敵だァ」

打ち止め「たしかにピーマンは恐ろしいよねー、ってミサカはミサカはうなずきながら同意してみたり」ウンウン

結標「あはは、じゃあコーヒーでも淹れとくわねー」

一方通行「あァ」




一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……ハァ、コーヒーうめェ」

打ち止め「…………」ジー

一方通行「何だクソガキ」

打ち止め「何だか今日は暇そうな雰囲気を醸し出してるよね? ってミサカはミサカは考察しながらあなたを見つめてみたり」

一方通行「こっち見ンな。あとそれは考察って言わねェ」

結標「どうかしたの打ち止めちゃん?」

打ち止め「たまにはあなたと遊びたいかも、ってミサカはミサカは暗に遊べと要求してみる」

一方通行「オマエの思考駄々漏れの口癖のせいで全然暗じゃねェけどな」

打ち止め「というわけで一緒に遊ぼうよ! ってミサカはミサカは手を差し伸べてみる」スッ

一方通行「お断りだァ。つゥか、今日は木原のところのガキはどォした?」

打ち止め「エンシュウなら今日は実家に帰ってるみたいだよ?」

一方通行「実家ァ?」

結標「円周ちゃんはもともと木原さんの家の子じゃないでしょ? だから、今は実際に住んでるところに戻ってるらしいわ」

打ち止め「『すぐにバラバラにして戻ってくるねー』って言ってたからすぐに戻ってくると思うよ。バラバラって何をかな? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「知らねェ方がイイと思うぜェ」



打ち止め「というわけで今日はミサカは暇なのだ! 遊べぇ! ってミサカはミサカは命令口調になってお願いしてみる」

一方通行「命令なのかお願いなのかハッキリさせろよ」

結標「別にいいじゃない今日くらい。いつも学校行ってて構ってあげられてないんだし」

一方通行「つい最近まで冬休みだったってこと忘れたかァ?」

打ち止め「正直、冬休みはスキー旅行とかあったからあまりあなたと遊んだ記憶がない、ってミサカはミサカはぶーたれてみたり」ブーブー

一方通行「チッ、面倒臭せェ。つゥか結標ェ、オマエが遊ンでやれよ」

結標「えっ、私?」

一方通行「どォせオマエも暇だろ? ガキに構ってやってなかったのはお互いそォだっただろォが」

結標「ふっ、残念でした。私はもうすでに打ち止めちゃんサイドよ!」

一方通行「ハァ?」

結標「すでに遊ぶ約束をしてるってわけよ」

一方通行「くっ、抜かった。コイツらが同じ部屋にいる時点でそれを想定しとくべきだったか……!」

打ち止め「ふふふ、諦めてこちら側に来るがよいアクセラレータよ! ってミサカはミサカはラスボス風に勧誘してみる」

結標「そうよ。貴方の睡眠ばかりで何の充実感のなさそうな生活にピリオドを打たさせてもらうわ」

一方通行「面倒臭せェヤツらがタッグを組みやがった……」

打ち止め「どうするの? このままじゃぼっちだよぼっち? ってミサカはミサカは軽く煽ってみたり」

一方通行「ぼっちは構わねェがオマエの態度が気に食わねェな」



一方通行「……はァ、まァイイ。もォ面倒臭せェが付き合ってやるよ」

打ち止め「おおっ! ついに難攻不落の第一位が落ちた! ってミサカはミサカは飛び跳ねながら喜んでみたり」

結標「まあ、難攻不落って言うほど防ぎきった経歴はそんなないけどね」

一方通行「うるせェぞ結標ェ!」

打ち止め「やっぱりアオガミが言ったとおりあなたってツンデレだね、ってミサカはミサカは――」

一方通行「俺ァツンデレじゃねェ! あと青髪ピアスクゥン!? 月曜日は覚えとけよゴルァ!」

結標「月曜日は祝日だから休みじゃない」

一方通行「…………火曜日は覚えとけよォ!!」


一方通行「……で、結局何して遊ぶってンだ? おままごととか言ったら張り倒すぞ」

打ち止め「馬鹿だなー、そんな子供っぽい遊びをミサカがするわけないじゃないかー、ってミサカはミサカは鼻で笑ってみたり」フン

一方通行「ガキが何言ってンだか」

結標「じゃあ何をやるのよ?」

打ち止め「久しぶりにゲームしようよゲーム! ってミサカはミサカは妙案を思いついてみたり」

一方通行「思いついたって、今考えたことかよ」

結標「ゲーム、ってことは『学園都市クエスト』のこと?」

打ち止め「うんそうだよ。今押入れかどこかで埃を被っているであろう学園都市クエストだよ! ってミサカはミサカは解説してみたり」

一方通行「誰にだよ」

結標「たしか『常盤台の風神・雷神コンビ』に勝てなくて諦めたんだっけ?」

打ち止め「そうだよ。あいつら本当に強すぎるよ、ってミサカはミサカはあの壮絶な戦いを思い出してみたり」

一方通行「あいつらってオマエの姉じゃねェのかよ、雷神の方は」

打ち止め「違うよゲームの話だよ、ってミサカはミサカはゲームと現実の区別がついてないあなたに怒りを覚えてみたり」

一方通行「何でゲーム知識ゼロだっつゥのに怒りを覚えられねェといけねェのかわかんねェンだけど」

結標「……姉ってどういうこと?」

一方通行「何でもねェからオマエは黙ってろ」

結標「ひどい!」

打ち止め「で、学園都市クエストは……『高性能ゲーム機 A-STAR』はどこだっけ、ってミサカはミサカは辺りを見渡して探してみたり」

結標「……ああ、それならたしか――」



シュン



打ち止め「消えたっ!? ってミサカはミサカはありのまま今起こったことを――」

一方通行「長くなりそォだから話すな」




シュン



結標「お待たせ」つ『高性能ゲーム機 A-STAR』


打ち止め「おおっ! 懐かしきA-STAR!」

一方通行「相変わらず無駄にデケェゲーム機だなァオイ」

結標「年末に部屋を掃除してたとき出てきたのよね」

一方通行「……ああ、そォいやあったなァンなモン」

結標「ああ、って何で知ってるのよ?」

一方通行「そりゃ、あの日昼メシができたのを知らせるためにオマエの部屋に行ったか――あっ」

結標「ああ、そういえばそうだ――あっ」

一方通行「…………」

結標「…………」

打ち止め「? どうしたの二人とも固まって? ってミサカはミサカは頭に?マークを浮かべてみる」

一方通行「…………チッ」

結標「…………///」

打ち止め「?」



結標「ま、まあとにかくゲーム機を起動しましょ? でないとゲームなんてできないんだから」

打ち止め「そうだね! ってミサカはミサカはケーブルをコンセントに挿し込んでみたり」カチ

一方通行「つゥか、それ動くのかよ? 長い間ほっとかれてたンだろ? ぶっ壊れてンじゃねェか?」

結標「馬鹿ねえ、これ学園都市製よ? そう簡単に壊れるわけないじゃない」

打ち止め「そうだよ! ナパーム弾が直撃しても壊れないんだよ! ってミサカはミサカは箱に書いてあったセールスポイントを読み上げてみたり」

一方通行「いや、俺は外部の話をしてンじゃなくて内部の話をしてンだよ」

結標「はい、スイッチオン」ピッウォーン



テレレーレーレーレーレー♪



―――――


『学園都市クエスト』


.  はじめから
ア つづきから
.  オプション


―――――



打ち止め「おっ、始まった始まった、ってミサカはミサカはコントローラーを手にわくてかしてみたり!」wktk

結標「おー、懐かしいわねこの画面」

一方通行「……って学園都市クエストってRPGかよ」

結標「知らなかったの?」

一方通行「当たり前だろ。てっきり俺を遊びに誘うくれェだからパーティーゲームか何かかと思ったじゃねェか」

打ち止め「残念ながらうちにはこれ以外ゲームはありません、ってミサカはミサカは非常な現実を伝えてみる」

一方通行「ふざけてやがンな、ホント現実ってヤツはァ」



打ち止め「とりあえず進めなくなったとこまで行くね、ってミサカはミサカは軽快なコントローラー捌きをしてみる」カチカチ

一方通行「……つゥか俺寝てイイかァ? どォ見てもやることねェじゃねェか」

結標「駄目よ。見てコメントするだけでも十分楽しいでしょ?」

一方通行「他人のプレイ見て楽しむなンざァ、マゾヒスト君かよ?」

結標「マゾもサドも関係ないと思うけど……」

打ち止め「あっ、来たよ。ここでミサカは詰まったんだ、ってミサカはミサカは報告してみる」

結標「ほら、貴方もしっかりこれ見て打ち止めちゃんにアドバイスしなさいよ。第一位の脳みそ持ってるんでしょ?」

一方通行「オマエも第八位の脳みそ持ってるじゃねェか」



―――――



九月三〇日(月)午後五時〇〇分 常盤台高校 格技場 ~放課後~



風神「…………来ましたわね」



ザッ



らすとおーだー(以下らすと)「…………」

R子「…………うう」

風神「よく逃げずにやってこられましたわね。ほめて差し上げても構わなくてよ?」

らすと「そんなことより、本当に約束は守ってもらえるのよね?」

風神「ええもちろんですってよ。もし貴女がわたくしに勝つことが出来れば、そこにいる無能力者(レベル0)を能無しと言ったことを撤回して差し上げます」

らすと「約束だよ!」

R子「ら、らすとおーだーちゃん。やっぱりやめようよ、勝てっこないよ」

R子「相手は常盤台高校のトップに立つ、風神・雷神コンビの一人だよ」

らすと「……わかってるよ。でもね」


らすと「私はそんなどうでもいいことで我慢したくない! R子ちゃんを傷つけたこいつのことは絶対にゆるせない!」


R子「らすとおーだーちゃん……」



―――――




一方通行「おォおォ、カッコイーこと言うじゃねェかクソガキのクセに」

打ち止め「いやぁ、それほどでもー」

結標「いや、別に貴女のことをほめているわけじゃないわよ、たぶん」

結標「しかし、常盤台中学ってあんな嫌な人ばかりなの実際?」

一方通行「いや、一応言っとくがこれ常盤台高校な。ゲームの中の架空の学校だからな」

結標「わ、わかってるわよ。で、実際の常盤台の人はどうなのよ?」

一方通行「さァな。まァ、選りすぐりのエリートが集まったお嬢様学校なンだから、こンなやつがいてもおかしくはねェ」

打ち止め「でもお姉様は違うよね? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみる」

一方通行「だとイイがな。アイツも何だかンだ言って超能力者(レベル5)だからな。どこかしら人格が破綻しててもおかしくはねェ」

結標「あれ? それって私の人格も破綻してるってことにならないかしら?」

一方通行「自覚してねェだけでどっか破綻してンじゃねェ?」

結標「本当にっ!? どのあたりが破綻してる!?」

一方通行「知らねェよ」

打ち止め「……ってことはお姉様は内心無能力者(レベル0)とかを見下しててもおかしくないってこと!?」

一方通行「いや、それはねェだろ。アイツのターゲットはそのレベル0なンだからよォ」

打ち止め「そっか、そういえばお姉様はあのヒーローさんのことが……ってミサカはミサカは言葉を濁してみたり」



―――――



風神「よろしい! ではかかってきなさい! この常盤台高校二年! 空力使い(エアロハンド)で、強度は大能力者(レベル4)! 常盤台の風神ことK后M子!」



風神「逃げも隠れもしないから、どこからでもかかってきなさい!!」



らすと「!!」キッ



タタタターン♪






               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP:214 正常.┃
               ┃AP:355 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛

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                  '´//ヾ/`i
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                  | (li」゚ ー゚「!7z_
                 ノリ .く})V)!i//
              .  `' -ソ/_jゝ´

                    し'ノ

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃常盤台の風神が現れた▼                      ..┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                      ..┃  
 ┃                                       ┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




結標「おおっ、懐かしい戦闘画面!」

一方通行「で、コイツに勝てねェのか」

打ち止め「んーん、風神のほうは何とか倒せるよ、ってミサカはミサカは事実を言ってみる」

結標「そうなんだ。じゃあおそらく次に出てくる……」

打ち止め「うん、雷神のほうが倒せないんだ、ってミサカはミサカは忌々しいライバルのことを思い出してみたり」

一方通行「ライバルだったのかよ」

打ち止め「あくまでミサカの中ではだけどね」


結標「ところでステータスは今どんな感じになってるの?」

打ち止め「こんな感じだよ! ってミサカはミサカはステータス画面を開いてみたり!」カチ





             ┏━━━━━━━┓
┏━━━━━━━━┫¥ 10032  ..┃
┃ らすとおーだー . .┣━━━━━━━┫
┠────────┨     攻撃: 82┃
┃ 電撃使い(レベル3)..┃     防御: 79┃
┃   性別:女    ..┃   .素早さ: 124┃
┃   LV :36    ┃    .知力: 159┃
┣━━━━━━━━┫ .能力技能: 199┃
┃E花形ヘアピン    .┃  ...攻撃力: 102┃
┃E黒星学校制服(冬)┃   .守備力: 99┃
┃E赤色ブレスレット   ┃   .最大HP:214┃
┃E黒星学校制服(冬)┃  ..最大MP:355┃
┃Eスニーカー    .┃  Ex:    4862┃
┗━━━━━━━━┻━━━━━━━┛



結標「……ふむ、私が見ないうちにかなり強くなってるわね」

打ち止め「えへへー」

一方通行「何がどォ強くてどォ弱いのかサッパリなンだが」

結標「説明書でも読む?」スッ

一方通行「読ンだところでわかるとは思えねェけどな」スッ

打ち止め「さーて、ぱっぱと風神のやつを倒すぞー! ってミサカはミサカは意気込みつつボタンを操作してみたり!」



~十分後~








               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP: 94 正常.┃
               ┃AP:227 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛

                    ___
                  '´//ヾ/`i
                  iNli.「``"i !
                  | (li」゚ ー゚「!7z_
                 ノリ .く})V)!i//
              .  `' -ソ/_jゝ´

                    し'ノ

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃常盤台の風神の能力発動!                    ...┃
 ┃『噴出』攻撃!                              .┃
 ┃手から風が噴射され、大岩が吹き飛ばされる!         ..┃
 ┃ボフゥン!!                              ..┃  
 ┃らすとおーだーはひらりと身をかわした!             ..┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛





               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP: 94 正常.┃
               ┃AP:217 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛

                    ___
                  '´//ヾ/`i
                  iNli.「``"i !
                  | (li」゚ ー゚「!7z_
                 ノリ .く})V)!i//
              .  `' -ソ/_jゝ´

                    し'ノ

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃らすとおーだーの能力発動!                    ..┃
 ┃『電撃パンチ』                               ┃
 ┃らすとおーだーの拳に電撃がまとわれる!             .┃
 ┃ゴッ!!                                 ..┃  
 ┃常盤台の風神に89のダメージ                    .┃
 ┃常盤台の風神をたおした▼                       ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




トゥルルル~♪



打ち止め「ほら倒せた、ってミサカはミサカは得意気になってみる」フフン

結標「うん、たしかにきつくはなかったようね」

打ち止め「問題は次だよ次、ってミサカはミサカはボタンを連打してみたり!」カチカチ





―――――



らすと「これで私の勝ちだね!」


風神「――はぁ、はぁ、な、何て強さですの? わたくしのほうが強度は上だというのに」

らすと「能力だけで人を判断するから足元をすくわれるのよ!」

風神「くっ、これは何かの間違いですわ、そう! これは夢ですわ!」

らすと「約束どおり早くR子ちゃんに謝ってよ!」

風神「うふふふっ、夢、夢……」

らすと「……この、いい加減にし――」



バリバリィ!!



らすと「ッ!?」

R子「な、なに!?」アセ


??「私の相棒を随分と可愛がってくれたようじゃない」


らすと「……あ、アンタは……?」

R子「と、常盤台の雷神……!」ガクガクブルブル

雷神「貴女、K后さんをたおすなんてなかなかやるじゃない。ほめてあげるわ」

風神「……み、M坂さん」

雷神「大丈夫K后さん?」

風神「え、ええ……すみません、わたくしたちの名を汚してしまって」

雷神「別にいいわよ。そんな不幸な日もたまにはあるわ」

らすと「風神! 早くR子ちゃんに謝ってよ!!」

雷神「謝らなくていいわK后さん」

らすと「何でアンタが出てくるわけ!? アンタに関係ないじゃない!!」

雷神「何を言っているの? 私とK后さんは常盤台の風神・雷神コンビ……いわば一心同体よ」

雷神「そんなに謝って欲しいのなら私を倒してみることね」



―――――




一方通行「うわァ、この世界のお姉様性格悪りィな」

打ち止め「それミサカも最初思ったよ。でもまあフィクションだからいいかなって割り切ったんだ」

結標「……よくわからないけど、このキャラって実際に常盤台中学にいるミサカさんのお姉さんがモデルなんでしょ? 軽く風評被害とかになったりしないのかしら?」

一方通行「そこら辺は一応許可得てンじゃねェのか?」

結標「じゃあ貴方もこのゲームに出ているけど、許可とか申請されたわけ?」

一方通行「…………は? これ俺出てンの?」

結標「うん、学園都市の中で唯一の超能力者(レベル5)として登場するわよ」

打ち止め「そうだよ。一応このゲームのラスボスなんだよ、ってミサカはミサカは説明してみたり」

一方通行「オイ聞いてねェぞ! どォいうことだくそったれ!」

打ち止め「……どうやら何も聞かされていないみたいだね、ってミサカはミサカはあなたの様子から察してみたり」

結標「この調子じゃ、ミサカさんのお姉さんも無許可かもね」



―――――



らすと「常盤台の雷神かなんだか知らないけど、R子ちゃんとために絶対に勝ってやる!!」


雷神「ふん、いいわ。常盤台高校二年M坂M琴。能力は『電撃使い(エレクトロマスター)』、強度は大能力者(レベル4)!」


雷神「私の超電磁砲(レールガン)を止められるものなら止めてみなさい!」



タタタターン♪



―――――



一方通行「オイ、さっき超電磁砲っつったぞ」

結標「もはや特定されてるわよね、ミサカさんのお姉さん」

打ち止め「お姉様かわいそす(´・ω・`)」






               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP: 94 正常.┃
               ┃AP:217 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛
                    _
                   .'´  `ヽ
                  | トレノノノ゙i.}

                   州(l ゚ -゚从
              .     ⊂[iヘV+}]つ
                     く/_l_|
                   〈_,八_〉


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃常盤台の雷神が現れた▼                      ..┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                      ..┃  
 ┃                                       ┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




一方通行「……連戦か。たしかにこれは辛れェな」

打ち止め「でしょー、あの風神命中率低いけど攻撃力は地味に高いんだよねー、だから無駄にダメージ受けちゃう、ってミサカはミサカ愚痴ってみたり」

結標「結構運要素が強いわね」

一方通行「さらに超電磁砲がどれだけ強いかも結構問題だな」

結標「回復アイテムとかないの?」

打ち止め「一応あるけど……」

結標「だったらとりあえず回復しましょ? 話はそれからよ」

打ち止め「了解ー、ってミサカはミサカはタタッと操作してみたり」カチカチッ







               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP:194 正常.┃
               ┃AP:217 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛
                    _
                   .'´  `ヽ
                  | トレノノノ゙i.}

                   州(l ゚ -゚从
              .     ⊂[iヘV+}]つ
                     く/_l_|
                   〈_,八_〉


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃らすとおーだーは救急セットを使った                ...┃
 ┃らすとおーだーの体力が100回復した▼             . ┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                      ..┃  
 ┃                                       ┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛






               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP:  9 正常.┃
               ┃AP:217 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛
                    _
                   .'´  `ヽ
                  | トレノノノ゙i.}

                   州(l ゚ -゚从
              .     ⊂[iヘV+}]つ
                     く/_l_|
                   〈_,八_〉


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃常盤台の雷神の能力発動!                     ..┃
 ┃『電撃の槍』                               ...┃
 ┃十億ボルトの電撃の槍がらすとおーだーに襲い掛かる!   ...┃

 ┃ピキューン!!                              .┃  
 ┃らすとおーだーに185のダメージ                  ..┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




一方通行「」

結標「」


打ち止め「……ほらね、ってミサカはミサカは諦めのため息をついてみたり」ハァ




一方通行「オイ、何だこれチートじゃねェか!」

結標「絶対勝てるわけないじゃない! 何『185のダメージ』って!? ヒットポイントの九十パー近く削られてるんですけど!?」

打ち止め「だから詰んだって言ったんだよ! ってミサカはミサカは文句たれてみたり」

一方通行「ひとまず回復だァ。もしかしたらアレは最初だけかもしれねェ」

結標「そうね。開幕ぶっぱかもしれないものね」

打ち止め「かいまくぶっぱ……?」

一方通行「とりあえず回復してろ」

打ち止め「りょ、了解! ってミサカはミサカは最強回復アイテムを選んでみたり」





               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP:214 正常.┃
               ┃AP:217 (゚∀゚).┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛
                    _
                   .'´  `ヽ
                  | トレノノノ゙i.}

                   州(l ゚ -゚从
              .     ⊂[iヘV+}]つ
                     く/_l_|
                   〈_,八_〉


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃らすとおーだーは冥土帰し秘伝の薬を使った           ...┃
 ┃らすとおーだーの体力が全回復した▼               . ┃
 ┃                                       ┃
 ┃                                      ..┃  
 ┃                                       ┃
 ┃                                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛







               ┏━━━━━━━┓
               ┃らすとおーだー ┃
               ┃───────┃
               ┃HP:  0 瀕死.┃
               ┃AP:217..(´Д`)┃
               ┃LV: 36    ..┃
               ┗━━━━━━━┛

       _ __                       _
     .'´ , , `ヽ                           ヽ
    | ノソレノノノ}                             、\
   ,.イ l ll(|.. 0│ _ヽノし'/                    ヽ\
    'ソ州从i、_ノ  ,ィ ⌒ヾィ,___________ - ─二  ヾ 、
    ,く{¨¨ ̄{__]二..ヲ   ‐--÷÷÷≠≒≠≒≠≒≠二  ○ ) )
   (_ノ }______i_{  ,ゝ、,,ノ(゚~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄─二_彡"
'⌒ ヽ<んムム〉  /`Y'Yヾ`                  ≡= ̄′
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;;;⌒`(___/ {____)   . _、,、,、 ゝ,._  ,、 、。;、゛;,. ,゚'.,;:`:;,.,"ノ´
,,;;;⌒`)⌒)     `~~~'''"''"'"~``゙~`゙`゙`~'''"¨゙'"~~゙;;:'".;'゛
 _ ________    ____ _  _ __  __  _
===================──── -   ─────   ===
 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ┃常盤台の雷神の能力発動!                     ..┃
 ┃『超電磁砲(レールガン)』                       ..┃
 ┃音速の三倍を超える速度でコインが打ち出される!      ..┃

 ┃キュパァァン!!                             .┃  
 ┃らすとおーだーに325のダメージ                  ..┃
 ┃らすとおーだーは倒れた▼                        ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




一方通行「」

結標「」

打ち止め「」




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  ┏┛┏━━━┛  ┏┛┏┓┗┓  ┃  ┗┓┏┛  ┃┃  ┏━━━━┛
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┃  ┃┏━━━┓┃  ┃    ┃  ┃┃            ┃┃  ┗━━━┓
┃  ┃┗━┓  ┃┃  ┗━━┛  ┃┃  ┏┓┏┓  ┃┃  ┏━━━┛
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  ┃  ┗━┛  ┃┃  ┃    ┃  ┃┃  ┃    ┃  ┃┃  ┗━━━━┓
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  ┏━━━━┓  ┏━┓    ┏━┓┏━━━━━━┓┏━━━━━┓
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┃  ┃    ┃  ┃┃  ┗┓┏┛  ┃┃  ┗━━━┓  ┃  ┃  ┏┛  ┃
┃  ┃    ┃  ┃┗┓  ┗┛  ┏┛┃  ┏━━━┛  ┃  ┗━┛┏━┛
┃  ┃    ┃  ┃  ┗┓    ┏┛  ┃  ┃          ┃  ┏┓  ┗┓
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  ┗━━━━┛        ┗┛      ┗━━━━━━┛┗━┛  ┗━━┛




結標「……まあ何ていうか」

一方通行「無理、だな」

打ち止め「ですよねー、ってミサカはミサカはやけくそになってみたり」

一方通行「とりあえずよくわからねェが、レベル上げと大能力者(レベル4)くれェのチカラをつけなきゃ話にならねェな」

結標「た、たしかにそうかもしれないわね」

一方通行「つゥわけで育成頑張れクソガキ」

打ち止め「ええっー面倒臭ーい! ってミサカはミサカはコントローラーをブン投げてみる」ポイ

結標「じゃあどうするのこれ?」

打ち止め「アワキお姉ちゃんがんばっ! ってミサカはミサカは両手をぐっとさせてみる」

結標「えっ」

一方通行「頑張れ淡希お姉ちゃン」

結標「え、えっ!? い、今名前で――///」

一方通行「あン?」

打ち止め「?」













この日から結標淡希の日課にレベル上げが追加されたのであった。













結標「あ、一方通行の弟キャラか…………いいわね」グッ

一方通行「何馬鹿なこと言ってンだこの格下はァ?」


――――



※このゲームはフィクションです。実際の登場人物とはなんら関わりがありません
 だから名前とかが似ててもまったく関係ありません


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

懐かしき学園都市クエストですね
相変わらずAAは組み合わせるだけでも大変ですわ


次回『暗部』


軽くシリアル入るかもです
ではではノシ


土曜日なんで投下します



9.暗部


January Second Monday 13:00 ~成人の日~

-黄泉川家・リビング-



テレビ『――ええー、本日は成人の日ということあって、街中には振袖や袴を着た新成人の人たちがたくさん見られます』



黄泉川「へー、そういや今日は成人式の日かぁ」

芳川「あら、もうそんな時期なのね」

一方通行「ま、俺らには関係ねェ話だがな」

黄泉川「何言ってるじゃんよ、二十歳なんてもうあっという間にくるぞ?」

芳川「そうよ、気付いたらもう過ぎてるわよ二十歳は」

一方通行「ほォ、経験者は語るってかァ。さすが年寄りの言葉は――」



ゴッ!!



一方通行「がはっ、何しやがるッ!?」

黄泉川「口には気をつけるじゃん」

芳川「私たちは年寄りじゃないわよ。大人なのよ」

一方通行「ハイハイ、そォですか。ったく、ババァはうるせ――」



ゴッ!!




結標「成人式かぁ……」

打ち止め「ミサカも振袖とか着てみたいな! ってミサカはミサカはあなたに目でおねだりしてみたり」キラキラ

一方通行「二十年早ェ」

結標「半年ぐらいの記憶しかないのに、あと三年で成人式なのね」

黄泉川「さすがにそのときになったら記憶は戻ってると思うじゃん」

芳川「そうね。ゆっくり回復を目指していけばいいと思うわ」

結標「……そうですよね」

一方通行「…………チッ」

打ち止め「どうしたのー? そんな不機嫌そうな顔して、ってミサカはミサカは下から顔を覗き込んでみたり」

一方通行「何でもねェよ」

打ち止め「?」

一方通行「……はァ、ちょっと散歩に出てくる」

黄泉川「散歩? お前が散歩なんて珍しいじゃんね」

芳川「今日は雪でも降るんじゃないかしら?」

一方通行「降るかよ」

結標「何でいきなり散歩……?」

打ち止め「たぶんあれだねー、振袖の女の子とかを見に行くつもりなんだと思うよ、ってミサカはミサカは散歩に出る理由を予想してみたり」

一方通行「青髪ピアスみてェなこと言ってンなよ」



ガラララ



一方通行「……じゃあ一、二時間くれェで戻る」ガチャリガチャリ

結標「いってらっしゃい一方通行」

打ち止め「いってらっしゃーい、ってミサカはミサカは見送りのあいさつをしてみたり」

芳川「さて、ネットでもするとしましょうか」テクテク

黄泉川「夕食の時間までには帰ってくるじゃん」

一方通行「一、二時間で帰ってくるっつってンじゃねェか」


―――
――




同日 13:30

-第七学区・街頭-



ワイワイガヤガヤ



一方通行「……たしかにテレビで言ってた通り、振袖や袴を着たヤツらがのさばってやがンな」

一方通行「ケッ、せいぜい警備員(アンチスキル)のお世話にならねェ程度にハシャぐこったなァ」

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

一方通行「……おっ、あの自販機新作の缶コーヒーが出てやがる」

一方通行「ためしに一本いってみるか」ガチャリガチャリ



ピッ、ガチャン!



一方通行「…………」カチャ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……! おォ、悪くはねェじゃねェか」

一方通行「暇だからって寝ずに散歩に出た甲斐があったじゃねェか」

一方通行「どォせだからここで十本くれェ……いや、コンビニ行ってまとめ買いを……ン?」



佐天「おおっー! 成人式だから振袖とか着てる人がたくさんいるよ初春!」

初春「わかりましたからそんなに走らないでくださいよ、佐天さーん!」

黒子「お姉様は着てみたい振袖のデザインとかあったりしますか?」

美琴「んーそうねぇ……ゲコ太の柄とかないかな?」

黒子「……お姉様、浴衣じゃないんですよ?」

美琴「そ、それくらいわかってるわよ! ってかまだ私たちには早すぎるでしょこの話!」

佐天「でもお正月とかに振袖着る人とか多いらしいですから、私たちにも着ようと思えば着れますよ?」

初春「お正月はもう終わっちゃいましたけどねー」



一方通行「……オリジナルとその連れか。祝日だから集まって遊ンでやがンのかァ?」

一方通行「はァ、ガキは楽しそォでイイねェ、ホント」

一方通行「…………おっと、アイツらに見つかると面倒臭せェことになりかねねェ」



一方通行「見つかる前に退散退散っと――ッ!?」ゾク



一方通行(何だッ!? この体中を締め付けるよォな感覚ァ!?)

一方通行(クソが、俺の体震えてるだとォ!? 何だってンだこりゃァ!?)

一方通行(いや、待て。この不快感どこかで……)



-第七学区・物陰-


海原(ふむ、今日も御坂さんが楽しそうでなによりです)

海原(最近グループの仕事が多くて御坂さんを見守る時間がどうしても少なくなりがちでした)

海原(神経を擦り切るような仕事をした後ですが、あの笑顔を見るだけで癒されます)

海原(ああ御坂さん。いつまでもその美しい笑顔でいてください……)



海原「…………何か用ですか? 一方通行」



一方通行「こンなところでナニをやってンのかなァ? 海原クン?」



海原「……何と言われましても、御坂さんを見守っているとしか言いようがありませんね」

一方通行「何だただのストーカーか」

海原「ストーカーとは何ですか! 自分をそのような下賎な輩と一緒にしないでいただきたいですね」

一方通行「ハイハァイ、捕まったストーカーはみンな同じこと言うンですよォっと」

海原「……やれやれ。貴方とならわかり合えると思っていたのですが……どうやら自分の勘違いだったようです」

一方通行「そォだな。俺は一つもそンなこと思ってねかったから勘違いだな」

海原「さて、御坂さんウォッチングの続きをしましょうか」

一方通行「超電磁砲は鳥と同類なのかよ」

海原「あれ? 御坂さんが消えた……?」

一方通行「そりゃ、目ェ離してりゃすぐに見失うだろ。まして今日は祝日、街中の人通りは多い」

海原「……謀りましたね一方通行」

一方通行「一応、アイツらの姉だからな」



海原「…………」

一方通行「…………」

海原「まあ、いいでしょう。今日はこの辺で諦めましょう」

一方通行「そォだな。このまま超電磁砲ウォッチングをするのを一生諦めてくれ」

海原「ところで貴方はこんなところで何を?」

一方通行「あァ? 別に、普通に散歩だ」

海原「つまり暇、ということですね?」

一方通行「嫌な予感がするから暇じゃねェ」

海原「せっかくなので自分とティータイムでもいかがでしょうか?」

一方通行「俺にそっち系の趣味ないンでェ」

海原「当然、自分にもありませんよ」

一方通行「だったら何で誘ってくるンですかねェ……?」

海原「知りたくないですか?」

一方通行「……何をだ」


海原「自分たち……『暗部』のことを」


一方通行「ッ」

海原「ふふっ、では付いてきてください。静かで紅茶の美味しい喫茶店を知っているので」

一方通行「…………」


―――
――




同日 14:00

-第七学区・とある隠れた喫茶店-


海原「……さて、何からお話しましょうか?」

一方通行「…………」ズズズ

海原「何か聞きたいことでもありますか? 自分に話せる範囲のことならお話しますよ」

一方通行「結標の周囲に何が起こってやがる」

海原「……いきなりそれを聞いてきますか」

一方通行「オマエの知っていることを話せ」

海原「ふふっ、困りましたね。ちなみに貴方はどこまで掴んでいますか?」

一方通行「……それを知ったら、俺が暗部堕ちを決意する、それほど不味い状況だと土御門のヤツから聞いた」

海原「ほう、そうなんですか。たしかにそうかもしれませんね」

一方通行「教えろ。今アイツの周りで何が起こってやがる」

海原「…………」

一方通行「…………」

海原「……正直に言ってもよろしいでしょうか?」

一方通行「あァ、覚悟はできてる」

海原「…………」

一方通行「…………」



海原「正直に言うと、自分もあまりわかっていません」ニコ


一方通行「……オイオイ、これだけ場を盛り上げてそれはねェだろ。これが新喜劇だったら客全員すっ転ンでるぞ」

海原「おっしゃることはよくわかりませんが、自分の持っている情報は貴方と大差ありませんよ」

一方通行「チッ、そォかよ」

海原「安心していますか? これを聞けなくて」

一方通行「黙れ。その化けの皮引き剥がすぞ」

海原「ふむ、よくわかりましたね。自分が偽者の海原光貴だと」

一方通行「オマエから気持ち悪りィ臭いがプンプンすンだよ」

海原「そうですか。次からは気をつけるとしましょう」

一方通行「チッ」

海原「では自分が持っている情報、というほどのものではありませんが、お教えしましょう」

一方通行「あァ? 俺と大差ねェンじゃねかったのかよ」

海原「差がないだけで、貴方よりは深く知っている自信はありますよ」

一方通行「……話せ」



海原「結標淡希。学園都市超能力者(レベル5)第八位の座標移動(ムーブポイント)。彼女を核とした計画があります」




一方通行「……ほォ、それは耳寄りでくそったれな情報だなァオイ」

海原「どういったものかはまだわかりませんが、上層部が彼女の存在を必要としている計画だということはわかっています」

一方通行「一体結標のヤツに何をやらせるつもりなンだ」

海原「……おそらくですが、世界を動かすような計画、と自分は推測しています」

一方通行「世界を動かす……アイツがか?」

海原「はい」ニコ

一方通行「…………さっぱりわからねェな。テレポーターはたしかに珍しい能力だ。だが、俺や垣根みてェなヤツに比べればあまりに普通過ぎる」

海原「そこでなぜ第二位の名前が?」

一方通行「……よくは知らねェが俺と垣根は何らかのプランに組み込まれているンだろ?」

海原「……その情報をどこで?」

一方通行「雪合戦大会のときにアイツが言っていた。俺がサブプランでオマエメインプランだってな」

海原「…………」

一方通行「このことから俺たちは上のヤツらのくだらねェ思いつきに躍らせれてンだろ」

海原「……垣根帝督がそこまで話していたのですか」

一方通行「何なンだそのプランってヤツは?」

海原「正直に言いましょう。自分のような下っ端にはわかりません」

一方通行「だろォな」

海原「土御門さんなら何か知っているかもしれませんが……、教えてもらえる保障はありませんしね」

一方通行「ああ」

海原「…………まあ、とにかく今言えるのは」


海原「貴方と垣根帝督は何らかのプランに組み込まれている」

海原「そして結標淡希はそれとはまた別にプランに組み込まれている」

海原「これぐらいでしょうかね」


一方通行「チッ、クソ面倒臭せェことになってやがンなァ」ズズズ

海原「同感ですね。物事は単純なほうが楽に過ごしていけますからね」



海原「……さて、そろそろ結標さんについての話は結構でしょう。他に聞きたいことはありませんか?」

一方通行「オマエの正体、っつったら?」

海原「教えませんよ」ニコ

一方通行「知りたくもねェよ」

海原「そうですか。残念です」

一方通行「教えてェのか教えたくねェのかどっちだよ」

海原「まあ、そうですね。聞きたいことがないというのなら……」

一方通行「チッ、無視かよ」


海原「……ふむ、ならば自分たち暗部組織について話しておきましょうか」


一方通行「オマエら……グループとかのことか?」

海原「はい」

一方通行「そンな面白れェ情報話してくれるなンざ、随分と太っ腹じゃねェか海原クン?」

海原「何、重要機密を話す気はありませんよ。まあこの組織の存在自体がトップシークレットではありますけど」

一方通行「……どォしてそンなモンを俺に?」

海原「貴方に関係することでもありますし、貴方にとって非常に興味のあること、だからでしょうかね」

一方通行「…………」



海原「まず重要機密の暗部組織について話しましょう」

海原「自分たちトップシークレットの暗部組織の中で、今活発的に動いている組織は全部で五つあります」



海原「『グループ』、『スクール』、『アイテム』、『メンバー』、『ブロック』、以上で五つです」



一方通行「……そいつらが今暗部の中で幅を利かせてるヤツらっつゥことか?」

海原「そう考えてもらって構いません。昔は『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』という組織も存在しましたが、どういうわけか今は解散してしまいました」

一方通行(……猟犬部隊……、たしか木原の所属していた組織だったか……)

海原「……何か心当たりがあるようですね?」

一方通行「……まあ、つまりアレだァ」


一方通行「オマエら全員叩き潰せば学園都市も少しは平和になるってことかァ?」ニヤァ


海原「…………」

一方通行「ぎゃはっ」

海原「……まあ、仮にそうなったとしてもあまり変わらないと思いますがね。それに――」



海原「貴方一人でどうにかできるほど暗部というものは浅くはありませんよ」ニコ



一方通行「……チッ、わかってンだよそれくらい」



海原「そうですか。では一つ一つ特徴というものを説明しましょう」

一方通行「つゥかイイのかよ。そンな情報ぺらぺら話してよォ?」

海原「問題ないでしょう。今話しているのはさわりの部分。企業でいう会社説明会のようなものです」

海原「会社説明会で企業機密を話す馬鹿な社員はいませんでしょう?」

一方通行「…………」


海原「ではまず自分が所属している『グループ』です」

海原「統括理事会の直属で、主に表に出回らない裏の仕事します」

海原「例えばそうですね、最近というほどではありませんが上層部に反乱を企てる『武装無能力集団(スキルアウト)』の鎮圧、とかですかね」

海原「構成員は四人。リーダーである土御門さん、そして自分もだということは知っていますね?」


一方通行「ああ、で、他の二人は誰なンだ?」

海原「残念ながらそれは教えることはできません。重要機密ですから」ニコ

一方通行「チッ、そォかよ」



海原「次に『スクール』ですかね。貴方もよく知っていると思います」


一方通行「ああ。第二位の垣根帝督がリーダーで、『心理定規(メジャーハート)』っつゥ精神操作系の能力を持ったドレスの女」

一方通行「あと変なリング被った野郎に、雪合戦にまでわざわざ重火器持ってきてた……おそらくアイツは狙撃手ってところか」


海原「その狙撃手……砂皿緻密は残念ながら正規の構成員ではありませんね」

一方通行「ハァ?」

海原「基本、スクールの四人目はよく変わるんですよ。おそらく補充要員として雇っているのだと思います」

一方通行「……そォかよ。で、そいつらの目的は?」

海原「はい。彼らの目的はいまいちわかりませんが、おそらく垣根帝督の意思がそのまま彼らの行動する理由だと思います」

一方通行「垣根のために作られた組織、ッつゥわけか」

海原「そうだと思います。それ以外に目的がまったく見えないんですよね」

一方通行「チッ、くっだらねェ」



海原「では次に『アイテム』ですね。主に学園都市内の不穏分子を消すことを業務としています」


一方通行「第四位の麦野沈利を中心とした組織だろ?」

海原「そうです。しかし、おそらくですがこのアイテムが暗部組織の中で一番戦力が高いと言えますね」

一方通行「スクールよりもか?」

海原「……たしかに第二位の話を持ち出せばスクールがトップかもしれません。しかし総合的に見ればアイテムが一番でしょう」

一方通行「…………」

海原「さて、構成員についてです」


海原「第四位の麦野沈利はもちろんですが、貴方もご存知だと思う『暗闇の五月計画』の被験者である絹旗最愛」

海原「爆発物などの道具を利用した戦いを得意とするフレンダ=セイヴェルン」


海原「そして、アイテムの中で一番恐ろしい存在。おそらく彼女に苦しめられた貴方が一番わかっていると思いますが……」

一方通行「滝壺っつゥヤツか……」

海原「はい。彼女は貴方のような超能力者(レベル5)に対抗するための、対能力者のチカラを持っているようですね」

一方通行「それが何なのか未だにわからねェがな」



海原「残る『メンバー』と『ブロック』ですが……残念ながらあまり情報が集まっていません」

一方通行「どォしてだ?」

海原「先に挙げた三つの組織より動きが少ないからです。その良い例があの雪合戦大会ですね」

一方通行「……確かにそォだな」

海原「あのような表舞台に自分たちのような者が出ること事態が異質だということです」

一方通行「…………」

海原「しかし安心してください。構成員の人数はわかっています。基本、この五組の暗部組織は全て四人組で構成されています」

一方通行「たった四人か?」

海原「はい、そうです。理由はわかりませんが、どうやら四人組というのが決まっているみたいですね。おそらく組織として一番動きやすい人数なのでしょう」

一方通行「…………」


海原「以上で基本的なことの説明は終わります。何か質問はありませんか?」

一方通行「…………」

海原「……ないのでしたら、今日はこれで終わりにしましょう」

一方通行「そォだな。俺も考える時間が欲しい」

海原「あっ、そうだ。一つ言い忘れていました」

一方通行「何だ?」





海原「近いうちにこの暗部組織間で抗争が起こるでしょう」




一方通行「抗争だァ?」

海原「はい。おそらく規模はかなり大きくなると思います。もちろん表の住人を巻き込む可能性も出てきます」

一方通行「…………」

海原「ですが心配はしないでください。そうさせないために自分たちがいるのですから」

一方通行「オマエらが?」

海原「はい。何とか自分たちが裏で抗争が勃発しないように働きかけています」

海原「なので、しばらくは大丈夫だと思いますので、安心していてください」

一方通行「……オイ」

海原「何でしょうか?」


一方通行「しばらくは大丈夫だっつってンのに、何でオマエは近いうちに抗争が起きるっつった?」


海原「……ふふっ、よく気付きましたね」

一方通行「超能力者(レベル5)ナメンじゃねェぞ小僧が」

海原「すみません、貴方を少し見くびっていたようですね。……では理由をお話しましょう」


海原「正直に言いますと、いつこの抗争が起きてもおかしくない状況にあります」

海原「しかし、この程度であれば自分たちでどうにかすることが出来る範囲です」

海原「ですがこの勃発してもおかしくない緊迫した状況を、一気に壊してしまうある条件があります」



一方通行「…………何だその条件ってのは」

海原「……それはですね」ニコ




海原「一方通行。貴方の暗部堕ちです」




一方通行「…………どォいうことだ」

海原「そのままの意味です。例えば、貴方が何かを守るためにこちら側に堕ちてくるだけで全てが動き出します。今まで止まっていたもの全てがです」

海原「この影響は学園都市の中だけでは踏みとどまらないかもしれません。もしかしたら日本、いや世界全体に影響が及ぶかもしれない」

一方通行「…………」

海原「それほど貴方という存在が大きいということです。全て貴方次第ということになります。わかりましたか?」

一方通行「……チッ、くだらねェ」

海原「ではそろそろここを出るとしましょう。御代はこちら側で払っておきますので気にしないでください」

一方通行「……ああ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 15:00

-第七学区・とある隠れた喫茶店前-



チャリンチャリーン



一方通行「…………」

海原「……さて、これで解散としましょう。時間も良い頃合になってきたころでしょう」

一方通行「…………」

海原「どうやら動揺されているようですね。仕方ありませんか、このようなことを聞かされたのですからね」



プップー!!



海原「……おや、こちらの迎えが来たようです」

一方通行「アレは……グループのヤツか」

海原「ええ、街中で見かけてもかかわない方がよいですよ? お互いにとって」

一方通行「……そォだな」

海原「……そうだ。最後に一つ、面白いことを教えて差し上げましょう」

一方通行「何だよ」

海原「気になっていますよね。なぜ自分がこのようなことを貴方に話したか」

一方通行「関係があるからだろ?」

海原「そうですね。しかし自分はそれ以外の理由でこのことをお話しました」

一方通行「ハァ?」



海原「土御門さんはどうやら貴方をこちら側のことに関わらせたくないようですが、自分は違います」

海原「おそらくいくら自分たちが努力したところで抗争は始まります。確定事項と言ってもいい」

海原「どうせそうなるなら貴方が堕ちてきて抗争が始まったほうが、こちらも余計な手間をなくすことができます」

海原「さらに言うなら、超能力者(レベル5)最強の貴方がグループ側についてもらえればこちらとすれば大助かりなのですから」


一方通行「……どォして俺がグループに堕ちると決め付けてやがる。もしかしたら違う組織に行くかもしれねェだろォが」

海原「はい。たしかにそうです。しかしこれは決定事項なんですよ」

一方通行「どォいうことだ?」


海原「我々グループは現在四人組で構成されていますが、実は土御門さんと自分以外は正規の構成員じゃないんです」


一方通行「…………」

海原「本来この二つの席に座るはずだった人間がいるんですよ」

一方通行「……そォいうことか」


海原「そうです。そのうち一人は察しの通り貴方……『一方通行』です」


一方通行「……俺がそっちへ行く道筋はもォできてるっつゥことか」

海原「はい。そしてもう一人は、貴方に最も近い位置にいる人。そう言えばわかりますか?」

一方通行「…………オイ、まさか」

海原「そう、そのまさかです……」

一方通行「…………」


海原「では、また会えることを神にでもお祈りしておきましょうか」ガチャ

一方通行「……そォだな。お互い死なねェよォに祈ってよォぜ。くそったれな神様によォ」



ガチャン、ブルルルーン!!



一方通行「…………」

一方通行「舐めたことほざいてくれンじゃねェか海原ァ」



ピピピッ! ピピピッ!



一方通行「…………」ピッ



一方通行「……もしもし」

結標『ちょっと一方通行。貴方どこまで散歩行っているのよ?』

一方通行「……悪りィ、ちょっと喫茶店で茶ァ飲ンでた」

結標『うわぁ……似合わないわねぇ』

一方通行「で、わざわざ電話までして何か用か?」

結標『いや、別に……ちょっと帰りが遅いかなー、って思って』

一方通行「チッ、別に遅くはねェだろォが。いちいち電話してくンな」

結標『ご、ごめんなさい。でもそんな言い方はないと思うんだけど』

一方通行「うっせェな、用がねェなら切るぞ?」

結標『あ、う、うん……』

一方通行「…………そォだ結標」

結標『何?』

一方通行「オマエは……いや何でもねェ」

結標『?』

一方通行「じゃあな」ピッ


一方通行「…………」



一方通行「…………コンビニでも寄って帰るか、くそったれが」ガチャリガチャリ



――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

アイテムとかスクールが出る話だと思った? 残念! ただの暗部説明会でした!
禁書wikiにスクールの説明だけ詳しくかかれてなかったから適当に考えたったwwサーセン


次回『ドッジボール』


何気に一スレ目から一年以上経ってたんだな……時の流れは残酷やでえ
ではではノシ


早めに書けたので投下します

※微妙にオリキャラ、的外れな設定注意です



10.ドッジボール


January Third Wednesday 13:10 ~五時間目・体育~

-とある高校・体育館-



黄泉川「――はい、今日もいい天気じゃんねー」



ザーザー、ザーザー、ザーザー



一方通行「窓の外からよォ、空から地面に液体が叩きつけられるよォな音がスゲェすンだけど……」

結標「一方通行。たぶんツッコンだら負けよ」

吹寄「今日の天気予報は晴れだったはずなんだけどね」

青ピ「最近……というか八月くらいから学園都市の天気予報当たらんなったよなぁ」

土御門「あくまで予報予測だからにゃー。はずれることだって十分にありえるんだぜい」

姫神「傘持って来ていてよかった」

上条「……うわぁ、絶対俺の置き傘パクられてるよ。帰る頃になったら消えうせてるよ」

一方通行「カギぐれェ付けとけよ」

上条「んなもんに金なんてかけられるかよ!」



ワイワイガヤガヤ



黄泉川「はーい、お前ら静かにするじゃん!」


シーン


黄泉川「今日の体育の授業は予定していた『超次元サッカー』を雨が降っているから中止するじゃん」

黄泉川「そして運よく体育館を借りることができたので、この中でできる運動をしようと思うじゃん」

黄泉川「というわけで今日はこれをするじゃん!」



黄泉川「体育の自由時間の定番! ドッジボールじゃん!!」



<おおっー! <懐かしいー! <俺の得意競技キター! <俺一人で全滅させてやるぜ!



一方通行「ドッジボール?」

上条「お前ドッジボール知らねえのか?」

青ピ「うわー、アクセラちゃんおっくれってるー!」

吹寄「本当に知らないわけ? 小学生のときとかにやらなかった?」

一方通行「そンなモンで遊ぶ環境がねかったンだからしょうがねェじゃねェか。あと青髪ピアスは殺す」

結標「記憶喪失してる私でも知ってたわよ?」

一方通行「大体何なンだよドッジボールってよォ」



黄泉川「ドッジボールっていうのは二チームに分かれて行う競技じゃん」

黄泉川「それぞれ各チーム内野と外野を決めてから競技が始まるじゃん」

黄泉川「基本的には相手の内野の人にボールをぶつけてアウトにすることが目的で、当てられた人は外野に出て行くじゃん」

黄泉川「先に相手チームの内野を全滅をさせた方のチームが勝ち、って感じのゲームなんだけど」


一方通行「なるほど。オマエのわかりにくい説明からするに相手にひたすらボールを投げつける競技なンだな」

上条「まあ、聞いて覚えるより実際にやって覚えたほうが早いと思うぜ?」

土御門「そうだにゃー。もともと気付いたら知っていたみたいなゲームだしな」

吹寄「簡単だし、アクセラくらいの人ならすぐ覚えられると思うわ」

姫神「うん」

一方通行「……まァ、覚えるのは簡単なンだろォがなァ、どちらにしろ俺には向かねェ競技だよな」

結標「ああそうか、二学期は陸上競技とかばっかりだったから何とか杖付きでも対応はできたけど、今回はそうはいかないのね」

黄泉川「その点は大丈夫じゃん。三学期からは能力使用モードを許可してやる」

一方通行「……オマエ、それマジで言ってンのか?」

黄泉川「大マジじゃん」

結標「よかったじゃない一方通行!」

一方通行「一体どォいう風の吹き回しだァ?」

黄泉川「別にー、たまには許してやってもいいかなーって思ってな」

青ピ「何でやぁ! それで被害をこうむるのはボクらやんか!」

土御門「そうだそうだー。ゲームっていうのは対等な条件だから面白いんだぜい! 誰かがチートを使うだけでその場の空気が一気にさめるんだにゃー」

上条「いや、そもそも一方通行が杖付きの時点でフェアではねーだろ」

一方通行「あぎゃはっ! ザマァねェなァ三下どもォ! これで今までの借りが返せるっつゥわけだァ!」

吹寄「体育の授業の時に散々からかわれたから、ここで恨みを晴らすつもりなのね」

姫神「特に持久走の時とかひどかった」

結標「まあでも、授業終わったあとすぐボコボコにしてるから恨みもくそもないと思うのだけど……」

黄泉川「二十人一組で二チーム作るんだけど、安心しろ。もうメンバーは決めてあるじゃん」

一方通行「面倒臭せェことなりそォな予感がビンビンじゃねェか」

青ピ「センセー! ちなみにその選出基準って何ですかー?」

黄泉川「パソコン使って適当にランダムに……」

土御門「まさしく適当だにゃー」

吹寄「せいぜい上条が一緒にならないように祈るとしましょう」

上条「人を貧乏くじ扱いするのはやめてもらえませんかっ?」

結標「上条君、運動神経いいからどちらかと言ったら一緒のチームの方がいいんじゃないの?」

上条「む、結標ぇ……」ブワッ

吹寄「運動神経は良くても運がなさ過ぎるわ。前行ったボウリングがいい例よ」

結標「……そういえばダントツでスコア低かったような……」

土御門「つまりドッジボールならボールを取りこぼしたり、手が滑って相手にパスなんてことがカミやんにとっては日常茶飯事なんだぜい」

結標「たしかにそれは嫌ね」

上条「結標さんッ!?」



――何だかんだでチームに分かれて試合開始。


Aチーム


一方通行「……まァ、何つゥか……不幸だァ」

上条「あのー、人のセリフ勝手に取らないでくれないか?」

姫神(やった! 上条君と同じチーム)


残りその他Aモブ達『頑張るぞー』


Bチーム


土御門「にゃー、これはこれは」

青ピ「素晴らしい組み合わせやなぁ、ほんま」

吹寄「さあてあなた達、あたしの指示に従いなさい! 絶対に勝利に導いてあげるから!」

結標(……一方通行と同じチームが良かったなぁ……(´・ω・`))



残りその他Bモブ達『やったるぞー』



黄泉川「Bチームボールからスタートな。ほいじゃー試合開始ー!」スッ



ピイイイイィィィィィィッ!!



吹寄「覚悟しなさい上条当麻! 一瞬で沈めてあげるから!」


上条「何で俺名指しッ!?」

一方通行「うっとォしいからじゃね?」

上条「まったく覚えがないんですがぁ!?」

吹寄「食らいなさい!」バッ


ゴォオウ!!


上条「うわっ危ねっ!」バッ

一方通行「おーおー、何つー剛速球だ」

吹寄「外野っ! 頼むわよ!」

青ピ「オーケーオーケー。内野&外野の挟み撃ち作戦やなー」バシッ



バシュウバシュウバシュウ!!



上条「何か俺ばっか狙われてるような気がするんですけどーっ!!」バッダッ



一方通行「安心しろォ。オマエのおかげで他のヤツラは狙われてねェわけだから」




バシュウ!!



B内野1「よっとっ! ……ん?」


一方通行「ふわァ……眠っ……」ボリボリ


B内野1「隙有りだぞアクセラぁぁぁ!!」バッ


一方通行「あン?」



バシュウ!!



一方通行「ほォ、俺を狙ってくるなンざ随分と面白ェことしてくるじゃねェか」カチ

一方通行「だがよォ、能力使用モードの俺に歯向かうっつゥことは自殺行為だってことがわか――」















  r┐
  | 二[][] 匚] 厂}
  凵 l |  匚]/ / _n__

     |__|  匚.../└i┌z」
                 ∪
      /!/{  / ヾ--r
   _  /     ̄    <_
 _>`´    アクセラ  ___<_
  >    r‐'" ̄ ̄ ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ 二
/ ,    |  `ヽ/       ヽ  三,:三ー二
 ̄/    |    `         ヽ ̄ ̄ ̄
 / /⌒ヽ,|  ミ }   ボール   }

 レ l d     _}          } ------
  | ヽ、_,   _,:ヘ   ;      '"ー------
  |/|  \   ノ`      '"/ 三三三
   ヽ/l/|` ー------r‐'" '"   ̄ ̄
      |└-- 、__/`\-:、

     __,ゝ,,_____/ \_」 \



Bモブ1「あっ」

上条「えっ」




一方通行「…………」

黄泉川「顔面はセーフじゃん!」

上条「……あれ、能力使用モードはどうしたんだ一方通行?」

一方通行「…………オイ」

黄泉川「何じゃん?」


一方通行「これ能力使用モードじゃねェじゃねェか! マラソン大会の時の中途半端能力使用モードだろこれェ!?」


黄泉川「あっ、バレた? この授業の時間内は少し制限させてもらってるじゃんよ」



~その頃~



打ち止め「ぷぷぷっ、今ごろ能力が使えると思ったら使えなかった。何が起こってるか(ryとか言ってることかな? ってミサカはミサカはおせんべいをかじりながら笑みをこぼしてみたり」

円周「ねえねえ木原おじちゃん! このおせんべいをこの角度で削って音速の三倍で射出すればダイヤモンド切断できるかな?」

数多「食べ物で遊んでんじゃねーよクソガキが」



~~~~~



一方通行「クソがっ、あの野郎が俺のチカラを許した時点で警戒するべきだったンだよ。気ィ抜きすぎだろ俺ェ」

上条「大丈夫か一方通行……?」

一方通行「あァ、別に何ともねェよ」ドクドク

上条「俺が思うにその鼻から出てきてる赤い液体は鼻血だと思うんだが……」



一方通行「こンなモン俺のベクトル操作で……って、できねェンだったァ!」

姫神「はい。ティッシュ」スッ

一方通行「あァわざわざ外野からすまねェな」ゴソゴソ

姫神「構わない。それより棄権したほうがいいんじゃ?」

一方通行「この程度で俺がくたばるわけねェだろ」

姫神「いや。そういう意味じゃない」


一方通行「……さァて、反撃と行こォかなァっと」スッ

B内野1「ん? ……げっ、俺!?」



一方通行「さっきはよくもやってくれたなクソ野郎がぁ!!」バッ



B内野1「くそっ、これ……は?」



ひょろひょろー



B内野1「…………」ポスッ


一方通行「あ」


土御門「……弱っ」プププ


B内野1「…………」バッ



バシュウ!!



A内野1「うわっ、やられた」


一方通行「oh……」


―――
――




土御門「――よっと。もらったにゃー!」バッ

A内野2「くっ、だけどこの距離なら余裕で避けられる」ダッ

土御門「あっ、手が滑った」ポイ

A内野2「えっ」



バン



A内野3「ぐえっ」


B外野1「な、何だあれは! どう見ても視線は真っ直ぐ向いていたはずだ!」

B外野2「それをあんなに鮮やかに目標を変更できるのか!? いや、あのサングラスの下の目はすでにアイツをターゲットにしていたってことかっ!?」

青ピ「解説乙」


土御門「にゃっはっはー、悪い悪い。油断してたからつい手が滑ってしまったにゃー」

上条(相変わらず悪趣味なフェイントだな……)







A内野4「っ、来た!」



パシッ



A内野4「よし取った!」


A外野1「おおぉーい! こっちだこっちー!」


A内野4「了解。そらっパス」ポイ



ヒューン



結標「……ふふっ」ニヤリ


シュン


B内野2「あっ、結標さんが消えたっ!?」


パシッ


結標「よし、ゲット!」


B外野4「何いぃ!? 高めに投げられたパスを自らテレポートをすることによってパスカットだとぉ!?」

B外野5「何と言う無茶苦茶! 理不尽な戦闘力っ! さすがは大能力者(レベル4)っ!」

青ピ「解説乙」







吹寄「食らえっ! 必殺フォークボールっ!」シュバッ



ズキュゥゥゥゥ!!



A内野6「競技違うだろぐはっ!!」バキッ


B外野1「フォークボールとドッジボールと関係ないことを叫ぶことによって相手の集中力を削いでいるのかっ!?」

B外野2「それに全然落ちてないドストレートなところが――」


吹寄「失礼なっ! ちゃんと落ちてるわよ!」





青ピ「近距離もらった! おらっ、くたばれアクセラちゃん!」バッ


バシュウ!!


一方通行「よっと」サッ


青ピ「なっ、あの球を避けたやと!?」


B外野1「す、すごい! 三メートルもない至近距離の球を最小限の動きで避けた!?」

B外野2「あらかじめどこに球が来るかわかってないとできない動きだぞ!?」

青ピ「キミらぁ、解説するのはええけどきちんと働きぃや」


一方通行「こっちは能力使用中に音速を超える速度で移動してンだよ。超能力者(レベル5)の動体視力舐めンじゃねェ」


土御門「まあ、身体能力は女子以下だけどにゃー」


一方通行「うるせェ殺すぞ土御門」




~そんなことしながら数十分後~



Aチーム残りメンバー


上条「ぜぇ、ぜぇ、何とか生き残ったか……」

一方通行「これはひどい」

A内野7「ううっ、最後まで残っちゃったよー」

A内野8「端っこにいなかったらよかったー」


Bチーム残りメンバー


吹寄「ふふふ、最後まで無駄な抵抗をしてきたようだけど、もうラッキーはこれ以上は続かないわよ」

土御門「だにゃー、そろそろ観念したほうがいいと思うぜカミやん」

結標「何か悪役っぽいセリフよね。別にいいけど」

B内野3「戦況は圧倒的にこちらが有利だな」

B内野4「俺の気流操作能力を利用したスーパーショットで殲滅してやるぜ」←空力使い(エアロハンド)レベル1

B内野5「私の念動能力(テレキネシス)も負けないわよ」←念動使い(テレキネシスト)レベル1


一方通行「チッ、レベル1の能力でも、こォいう競技に利用するだけならうっとォしいな」

上条「事実上無能力者ばかりのこちらのチームは不利というわけですねー、不幸だー」

A内野7「上条君、そろそろボール取らないと不味いと思うんだけど」

上条「ま、まあそうだな。ボール奪わねーと防戦一方だしな」

一方通行「つーわけで頑張れヒーロー」

上条「へっ?」

A内野8「そりゃそうよー。だって向こうのチームの剛速球に対抗できそうなの上条君くらいだもん」

上条「あっ、いや、そうだな、はは」

一方通行「頑張って不幸を乗り越えて来い」

上条「はぁ、わかったよ。どちらにしろやらなきゃいけねーだんからな。今まで避けることに専念してたけど、何とかしてみるよ」


B内野4「おらっ、相談は終わったかっ!?」


上条「いつでもきやがれコンチクショー!」


B内野4「くぅぅらええええっ!!」バッ



シュブァァン!!



B外野1「こ、これは微量ながら風を操ってボールの挙動が不規則になっている!?」

B外野2「取れない! こんな球は絶対に取れないぜ!! 取れるほうがおかしい!!」

青ピ「ほんまどんだけ解説好きなんキミら」



上条「…………」



シュブァァン!!



上条「……! そこだっ!」



バシン!!



B内野4「な、何ぃ!? 取っただとう!?」


上条「油断してんじゃねえよ! おらっ!!」バッ



ソゲブゥ!!



B内野4「ぐわっ!」


土御門「チッ、さすがカミやん。あの程度じゃ通用しないか」

吹寄「ちょっと、こぼれ球拾いなさい! 早くしないと外野に出るわよ!」

B内野3「よし、俺が」バッ



コロコロ



B内野3(やばい、ボールがラインを越えそうだ。まあ、審判の黄泉川先生は反対側だし、なぜか外野の方にも人が回ってないようだから少々大丈夫か)

B内野3「おらっ、ボールいただきぃ!!」



パシッ



B内野3「……あれ?」


姫神「……ふふっ」ニヤ


B内野3「……ひ、姫神さんんん!? い、いたのかぁぁ!?」

姫神「私のとりえは影が薄いこと。これくらいしか役に立てない」ポイ



パスン



B内野3「ぐほっ!」


B外野1「こ、この一瞬で二人がアウトだと!?」

B外野2「一体何が起こってやがるんだ、この体育館にっ!?」

青ピ「思うたんやけど、キミら一回もボール触ってへんよな?」



土御門「にゃー、一気に人数追いつかれたぜい。どうする吹寄」

結標「くっ、ごめん。私がテレポートして取りに行っていれば……」

吹寄「大丈夫よ結標さん、問題ないわ。言っちゃ悪いけどこちらのほうが戦力は上だから……!」

B内野5「そうよ。ここは私に任せて!」バッ



パシュウ!!



A内野7「この程度なら避けられ――」バッ


B内野5「甘いわ! まっがーれ!」



クイ



A内野7「な、曲が――」



バシン



A内野7「あうっ!」


B内野5「そしてその球をすかさず外野に向けて方向転換!」バッ


青ピ「ナイスやでー」パシッ


B外野1「強い! 念動能力強すぎるぞ! しかもアフターサービスもばっちりだと!?」

B外野2「ドッジボールという競技のために生まれた能力と言っても過言ではないっ!?」

青ピ「……なぁ、このボールあげるから投げてみい」

B外野1「いや、遠慮しとく」

B外野2「俺らが投げてもパスにしかならないからな」



黄泉川「――おおーい、あと十分くらいでチャイム鳴るから、早くケリつけてくれー」


青ピ「おっ、時間がないようやな」


吹寄「青髪! 外野対外野の挟み撃ち攻撃よ!」


青ピ「了解了解! これターンで終わらせるでー!」バッ



バシュウバシュウバシュウバシュウ!!



A内野8「あー、目が回るー」


B外野3「それ!」バッ


A内野8「あっ、しまった」


吹寄「よし! これでアクセラと上条の二人だけ」

土御門「勝ったな……」


一方通行「……チッ、舐められてやがンな」

上条「どうする一方通行。ここは潔く負けを認めるか?」

一方通行「オマエはそォしたいのか?」

上条「……俺はお前と同じ気持ちだぜ」

一方通行「そォか……」


一方通行「だったら何とかしてあの馬鹿ども叩き潰すぞ」


上条「えっ」

上条(あ、あれー!? てっきり面倒臭いって言うと思ってたのにあれー!?」



一方通行「で、上条。オマエはアイツらのうち誰か一人でも一撃で叩き潰せる自信があるか?」

上条「ねーよ。大体全員こっち向いてるし、吹寄と土御門は普通に無理だし、結標にいたってはテレポートで逃げ出すし」

一方通行「だったらあの念動力野郎か狙い目は」

上条「狙い目っつっても普通に難関だけどな」

一方通行「……上条。超電磁砲の電撃を見切れるオマエの動体視力と反射神経を見越して作戦がある」

上条「何だか過大評価してるような気がしてならねーが聞いてやる」



結標「……何相談してるのかしら?」

B内野5「さあ?」

吹寄「どうせ最後の悪あがきの方法でも考えてるのでしょ?」

土御門「……何だかいやーな予感がするんだぜい」


一方通行「……わかったか?」

上条「……わかったけど無茶苦茶言うよなお前」

一方通行「俺なら余裕でこなせる仕事だ。オマエは俺に勝ったンだから余裕でできンだろ」

上条「いやー、あれはたまたまですよたまたま」

一方通行「イイからさっさと投げろ」

上条「了解ですよーと。そりゃ!」バッ



ソゲブゥ!!




B内野5「! 狙いは私ね、舐められたものね。ふっ!」バッ



キュン!



B外野1「か、上条の鋭い投球が空中で停止した!?」

B外野2「応用性が高すぎるぞ念動力っ!」

青ピ「もうツッコマんで」


B内野5「ふふっ、お返しをさせてもらうわよ上条君!」バッ



パシュウ!



上条「…………」


B内野5「ポツンと立ってるだけなんて舐めてるとしか思えないわね。それじゃあ遠慮なく、まっが――」



上条「! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ガシッ



バキン!!



B外野1「なっ、なんだと! 上条が球が曲がる前に右手でキャッチした!?」


上条「――このぉ!!」バッ


B外野2「そしてその球を投げ返した!」

青ピ「今度は実況かいな」



ソゲブゥ!!



B内野5「ッ!!」


B外野1「このままじゃB内野5がアウトに!」

B外野2「だが、やつがやられても他の三人が強すぎる! 特に結標淡希!!」

一方通行「違げェよ」

B外野1・2『ッ!?』

一方通行「狙ってンのはあの念動力野郎じゃねェよ」



一方通行「本当の狙いは――」



クイッ



結標「ッ!?」



一方通行「あのうっとォしいテレポーターだ」


B外野1・2『た、球が曲がったぁあああああああああああああああああああっ!?』



バシッ



結標「うっ、な、何で……?」


一方通行「たしかにそいつの念動力は強力だ。異能力者(レベル2)扱いされてもおかしくねェくらいにな」

一方通行「それでも低能力者(レベル1)だっつゥことは、チカラの強さの割りに演算能力が足りてねェっつゥことだ」

一方通行「だが、それでもあンなレベル2染みた挙動をしてるっつゥのはなぜか……」


一方通行「それはチカラに法則性を作って、演算を簡略化させてるからだ」


B内野5「!!」


一方通行「簡単に言やァ、九九の要領と同じだ。『6×7』をいちいち6を七回足すのは面倒だから、そのまま『42』っつゥ答えを覚える感じになァ」

一方通行「同じようにいちいち演算式を立てるのが面倒、いやできねェからあらかじめ一定の法則を自分の中で立てておく。マニュアルを作っておくみてェなモンだな」



吹寄「……よ、よくわからないけどじゃあ何で結標さんのところで曲がったのよ」

一方通行「そりゃ簡単だ。そいつがマニュアル通りの動きしかできねェからだ」

B内野5「…………」

一方通行「まずは投げた球を曲げる。そのあとに外野に向けて球を動かす。おそらくこの一連の動作をパターン化しているンだろう」

一方通行「逆に言えばこれはどンなことがあってもこれはやり通す、っつゥことにならねェか?」

土御門「……ふっ、そういうことか。まんまとやられたな」

吹寄「どういうことよ?」

結標「要するに外野に向けて球を動かすときの動作を利用して私を狙ったということね」

一方通行「まァこれはあくまで中断できねェっつゥのを前提とした作戦だったがなァ」

B内野5「……ふふっ、さすが超能力者(レベル5)ね。まさかここまで見破られるとは思わなかったわ」

一方通行「そォいう簡略化はあまりお勧めしねェぞ。イコール成長を放棄するっつゥことになるからな」

B内野5「そうね。次からはそうするわアクセラ君」


黄泉川「おおーい! お前らドッジボールしてるってこと忘れてないかー?」


吹寄「あっ、そういえば……、先生、あと何分くらいですか?」

黄泉川「チャイム鳴るまであと三分弱ってところかなー。まあこの時間で今日の授業終わりだから少々過ぎても大丈夫じゃん」

吹寄「よし! それだけあれば楽勝ね! さあ続きを始めましょ!」

土御門「おっしゃー! 姉さんが倒れてもまだまだこっちが有利だってことには変わらないにゃー!」


一方通行「チッ、面倒臭せェ」

上条「どうする一方通行。正直アイツらの球受け止められる気がしねーぞ」

一方通行「大丈夫だ。勝算はある」

上条「本当か?」

一方通行「まァ、手順が面倒だけどな」

上条「…………努力してみるわ」


―――
――





バシュウバシュウバシュウバシュウ!!



上条「くっ」バッ

一方通行「チッ」バッ


土御門「にゃろー、さすが一方通行。俺のフェイントも通用しないかー」

B内野5「私のはとっくに見破られてるし、さっきの二の舞になっちゃいけないからダメよ」

吹寄「大丈夫。ここまでくればもうゴリ押しよっ!!」バッ



ゴオォウ!!



上条「――くっそぉ!」スッ



バシィ!!



吹寄「なっ、取った!?」


上条「こんにゃろぉ!!」バッ



ソゲブゥ!!



B内野5「しまっ、能力が間に合わ――」



バシッ



B内野5「あぐっ」


上条「よしっ!」


土御門「カーミやーん、油断は禁物だぜい」バッ

上条「なっ、土御門っ!!」




バシッ



上条「くっ」


吹寄「よし! あとはアクセラ一人!」

土御門「もらったにゃー」


一方通行「…………ほらっ、パスだァ外野ァ」バッ


A外野1「お、おう」パシッ


吹寄「外野対外野の挟み撃ちね。いい手だわ」



バシュウバシュウバシュウバシュウ!!



土御門「でもそういうのは――」


上条「おらっ」バシュ



バシィ!!



土御門「強いアタッカーが外野にいないと話にならないぜい」


上条「くっ」




土御門「さて、時間もないしアウトになってもらうぜアクセラちゃん――」バッ



バシュウ



一方通行「……そォだな」


B外野1「な、なぜ一方通行は動かないぃ!? いや、動けないのかぁ!?」

B外野2「しかも何でアイツはセンターラインの真ん前に立っているぅ!? 前線に立ちすぎだろぉ!!」

青ピ「うおっ、急に喋りだしたなぁ自分ら」



キーンコーンカーンコーン



一方通行「たしかに時間がねェ……けどなァ」ニヤァ



バシィ!



土御門「ッ!?」

吹寄「えっ!?」

結標「なっ!」


B外野1「と、止めたっ!? あのアクセラが土御門の剛速球を片手で止めたっ!?」

B外野2「しかも何だアレはっ!? まるで手のひらに張り付いているようにボールが地面に落ちないぞっ!?」



吹寄「そ、そんな……まさか」


一方通行「ぎゃはっ、そのまさかだァ!!」バッ


吹寄「能力使用モードが――」

土御門「回復してる……!?」



ギュオオオオオオオオオオオン!!



B外野1「な、なんなんだあの挙動はっ!?」

B外野2「回転だ! ものすごい勢いで回転しているんだ!!」


土御門「ぐっ、動きがまったく読めな――」



バシッ



土御門「ぐおっ!?」



キュイーン! ボッ!!



吹寄「――えっ」



バシッ



吹寄「あぐっ!」




B外野1・2『だ、だ、だ、ダブルアウトだとぉぉぉぉっ!?』



青ピ「キミらぁ何しにきたんほんまマジで」


一方通行「オマエらからしたら『ただ常套手段だから外野対外野の挟み撃ちをした』よォにしか見えねェかもしれねェが実は違う」

一方通行「あれはオマエら二人を一箇所に固めるよォに誘導するための作戦だったンだよ」

一方通行「俺のベクトル操作の回転球でいいよォにダブルアウトできるようにな」


黄泉川「というか何でお前能力使えるじゃん!」

一方通行「あァ? そりゃもォ授業の時間が終わってるからだろ」カチ

一方通行「どォせアレだろ。この時間帯を能力制限してくれってきっちり伝えたンだろ」

黄泉川「そ、そうだけど……」

一方通行「アイツらだって馬鹿じゃねェ。言われた仕事はきっちりこなす。だから予定通りチャイムがなった瞬間俺に能力が返ってきたわけだ」

吹寄「くっ、こんなところまで計算してドッジボールをしていたということか……」

土御門「にゃー、いつもどおり余裕勝ちできると思ったんだけどにゃー」

一方通行「ぎゃはっ、そォいうわけだ。能力使用モードに許可が出た時点でオマエらの負けは確定していたっつゥわけだよ」


結標「だったら次から授業終了後五分ぐらいまで能力使用モード制限すればいいんじゃないの?」


一方通行「えっ? 何だって?」


黄泉川「そうじゃんね。じゃあ次からそういうことで」


一方通行「えっ? 何だって?」


上条「諦めろよ一方通行」ポン


一方通行「……不幸だ」



――――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

実際にできるかどうかわからん超絶理論が働いていた気がしたけど気にしない方向でお願いします
雪合戦以来の効果音バトルで書く方はいいストレス解消にあったわww

       カミノビータ
次回『11.一方増毛』


一スレ目で誰かが提案していた案を使うときがきたぜ
ではではノシ

週一更新でーす


.   カミノビータ
11.一方増毛


January Third Friday 12:30 ~昼休み~

-とある高校・一年七組教室-


結標「…………ねえねえ一方通行?」

一方通行「あン?」

結標「貴方ちょっと髪の毛伸びすぎじゃない?」

一方通行「ハァ?」

結標「だって襟足とか肩を乗り越えて背中ゾーンにまで侵入しているんだもの」

上条「言われてみればそうだな。後ろから見れば普通に女子、って感じだしな」

姫神「転入した時と比べれば。かなりのスピードで伸びてる」

土御門「というかいくらなんでも伸びるスピード早過ぎないかにゃー?」

上条「このままほっとけば普通に腰ぐらいまで伸びるんじゃねえか?」

吹寄「……たしか男の人って髪の毛は肩ぐらいまでが伸びる限界じゃなかったかしら?」

一方通行「いや、たぶン俺には関係ねェと思うぞ。もともとこの能力のせいでホルモンバランス狂って男か女かわからねェ体になってンだよ」

上条「……つまりどういうことだ?」

一方通行「だから男だからとか女だからとか基本関係ねェっつゥことだ。たぶン髪の毛普通にこれからも伸び続けるンじゃねェか?」

青ピ「……ふむ、つまりアクセラちゃんはリアル男の娘――」


ゴッ


青ピ「」バタッ

上条「青髪ぃ!」

土御門「それは言っちゃいけないことだったにゃー」



結標「まあ、そういうわけで髪の毛切ったほうがいいんじゃない?」

一方通行「面倒臭せェ。別に長くても困らねェだろォが」カチ

上条「うっとおしくねえのか?」

一方通行「昔から長かったからな。もォ慣れた」

吹寄「昔も放置していたわけ?」

一方通行「気が向いたら切ってた。まァでも腰まで伸びたことはねかったと思うが」

姫神「いっそのこと伸ばし続けてギネス記録を目指してみるのは?」

土御門「たぶん受理されないと思うぜい。何たってここは学園都市。オリンピックにパワードスーツ着た人が出場した時みたいな視線を受けると思うにゃー」

一方通行「大体伸ばすつもりはねェよ面倒臭せェ」

結標「だったら切りなさいよ」

一方通行「……面倒臭せェ」

上条「面倒臭せェ言い過ぎだろ」

結標「……こうなったら私が直々に切ってやりましょうか……」シャキーン

一方通行「結標さァン。危ないから刃物を持つのをやめてくださいませンかねェ」

結標「冗談よ冗談。じゃあ髪の毛全部テレポートで抜き去ってしまいましょうか?」

一方通行「オマエが手ェ加えるってところが変わってねェンだが……」


―――
――




同日 19:00

-黄泉川家・食卓-


黄泉川「うーん、たしかに伸びたって言ったら伸びてるじゃんね」

芳川「そうねえ、知らない人が見たら女の子に間違えてもおかしくないくらいは長いわね」

打ち止め「うーん、ミサカはどっちでもいい気がするけど、ってミサカはミサカは今食べてるカレーライスの方に夢中になってみたり」パクパク

結標「はい、多数決で髪を切ることに決定しましたー」


黄泉芳川打止『わー』パチパチパチ


一方通行「オイ待て」

結標「何?」

一方通行「何だこれ。多数決っつっても誰も行くとは言ってねェぞ」

結標「残念ながら貴方に決定権はありませーん」

一方通行「その垂れ下がった髪の毛一束引き抜くぞコラ」

打ち止め「まあいいんじゃないかなイメチェンってことで、ってミサカはミサカは適当に言ってみたり」モグモグ

一方通行「イメチェンだァ?」

打ち止め「うん。あっ、ちなみにミサカネットワーク内でアンケートとってみたら約三割が切った方がいい、一割が切らなくていい、残りがどうでもいいだったよ」

一方通行「果てしなくどォでもイイ情報アリガトウ」



黄泉川「じゃあとりあえずこれ渡しとくな」スッ

一方通行「あァ?」


つ千円札×2


一方通行「……何で二千円?」

黄泉川「安いところならそんなもんだろ?」

一方通行「床屋じゃねェンだぞ! さすがの俺でも美容院ぐれェ行くぞォ!?」

黄泉川「別にいいじゃん床屋でも」

一方通行「ふざけンじゃねェ! 誰がスポーツ刈りなンかにするかよ!」

芳川「一方通行のスポーツ刈り……ぷぷっ、いいわねえ、やりなさいよ」

一方通行「ハイさっきの反応でやらない決心がさらに固くなりましたァ」

芳川「いいじゃない。どうせキミのことだから驚異的スピードでまた髪の毛伸びるんでしょ?」

一方通行「髪は元に戻っても俺の傷ついた心は元には戻らないンですけどォ?」

結標「貴方が傷ついた心とか言うと面白いわね」

一方通行「わかってンだよ。こちとらテメェらのボケを裁くのに必死なンだよ」

結標「スルーすればいいのに」

一方通行「うるせェ」

打ち止め「まあでも、あのときのあなたの髪型をもう一度見てみたい気もするなー、ってミサカはミサカはあの夏のころを思い出してみたり」

一方通行「あァ、あの時のか……つゥかオマエはミサカネットワーク上に記憶が転がってるから見放題じゃねェのかよ」

打ち止め「ミサカは今のあなたが見たいの、ってミサカはミサカは正確に答えてみたり」



一方通行「……ハァ、わかったわかった。明日休みだから切りに行ってくる」

結標「やっぱり貴方って打ち止めちゃんには弱いわよね」

一方通行「弱くねェよ。あとこれはたまたまだ。たまたま気が変わって髪切りに行く気になっただけだ」

結標「はいはいそうですね、たまたまですよねたまたま」

一方通行「ンだァ、その癇に障る態度はァ」

芳川「まあキミのツンデレっぷりは今に始まったことじゃないしね」

一方通行「誰がツンデレだってェ?」

芳川「そろそろ認めたら? 『私はツンデレです』って」

一方通行「そンなに死にてかったのか芳川ァ。悪りィな気がついてやれなくて」カチ

芳川「あら、ちょっと今日は沸点低いわよ? 落ち着いたらどう?」

打ち止め「やっぱりあなたっていじられることで輝けるよね、ってミサカはミサカはあなたの役割を分析してみたり」

一方通行「これは俺の役割じゃねェ。どっちかと言ったらあの三下の役割だ」

打ち止め「でもスキー旅行の時はあなたは結構いじられてたよね。あの二人に」

一方通行「うるせェぞクソガキ!」

黄泉川「そうだ一方通行。髪切るなら第七学区のはずれに安い店があるじゃんよ。なんと千円で全部やってくれるじゃん」

一方通行「だから角刈りにもしねェっつってンだろォが!」


―――
――




January Third Saturday 10:00

-第七学区・街頭-



一方通行「…………あン?」


一方通行「あれ? たしかここじゃねかったっけか、俺の行き着けの美容院」

一方通行「美容院どころか建物すらねェンだけど」

老人「これこれ、そこの方」カツンカツン

一方通行「あン?」

老人「こんなところで立ち尽くして何をしておられるのじゃ?」

一方通行「……オイジイさン、ここらに美容院がねかったか? ひっそりとやってた小せェ店なンだけど」

老人「ああー、あの店なら潰れたよ」

一方通行「は?」

老人「最近は不景気じゃからのぉ、社会の荒波に流されたということかのう」

一方通行「……チッ、ふざけてやがンな」

老人「……そうじゃ若者。髪を切るならここの近くにある床屋がええぞ。千円で全部やってくれる」

一方通行「俺ァ床屋には行かねェよ」

老人「おっほっほっほ、実はあそこの見せにはむふふな本が置いてあるんじゃよなー」

一方通行「どォでもイイ」

老人「なんじゃ、お前さんのは髪の毛と一緒に枯れ果ててしもうとんか?」

一方通行「何一つ枯れ果ててねェよ! イイ加減黙らねェと残り少ない希望を全部引き抜くぞォ!?」

老人「おうおう怖い怖い。それじゃーのー」カツンカツン


一方通行「チッ、うっとォしいジジィだぜ」

一方通行「…………」

一方通行「さて、どォすっか……」

一方通行「…………」

一方通行「とりあえずあそこかァ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 10:30

-第七学区・とある公園-



ピッ、ガタン



一方通行「やっぱり疲れたときは公園のベンチで飲む缶コーヒーだよなァ」スッ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……うめェ」

一方通行「…………」

一方通行「さて、聞き込み調査といきますかァ」ピッ



-とある高校学生寮・上条の部屋-



プルルルル! プルルルル!



禁書「……とうまー! ケータイデンワーが鳴ってるよー!」


上条「悪りーインデックス! 今洗い物してて手ぇ離せねーから代わりに出てくれー!」


禁書「う、うん、わかったんだよ! ええっと……これだ!」ピッ

禁書「も、もしもしかみじょうです!」

一方通行『あァ? 何やってンだオマエ?』

禁書「その声はあくせられーただね? 何か用かな?」

一方通行『……アレ? 悪りィどォやら電話先間違えたよォだ』

禁書「これはとうまのケータイデンワーだから間違えてないと思うよ」



一方通行『じゃあ何でオマエが出てくンだよ』

禁書「今とうまは手が離せないんだよ」

一方通行『そォかよ』

禁書「何か用なら聞くけど」

一方通行『そォだな、少なくともオマエには用はねェから早く上条を出せ』

禁書「むー、あくせられーたは何でそんなに人に対して冷たくするような口調なのかな? 癖か何かなのかな?」

一方通行『癖じゃねェよ。これが俺自身を表すアイデンティティみてェなモンだ』

禁書「嘘はいけないんだよあくせられーた。あなたは本当はもっと優しい人でしょ?」

一方通行『…………死ねクソシスター』

禁書「ほらっ、また誤魔化すようにわざと暴言を言った」

一方通行『…………』


上条「おーいインデックスー? 誰からだー?」


禁書「あっ、どうやらとうまの洗い物が終わったみたいなんだよ! 代わるねー」

一方通行『…………』

禁書「とうまー、あくせられーたからー!」

上条「一方通行? 何だこんな休みの日に……もしもし」

一方通行『よォ、やっと来たか三下ァ』

上条「……あれ? 何か怒ってませんか一方通行様?」

一方通行『怒ってなンかねェよ。それより聞きてェことがあンだけどよォ』

上条「何だよ」

一方通行『オマエ行きつけの美容院とかねェか?』

上条「美容院? 結局お前髪切るのか」

一方通行『理由は聞くな。早く教えろ』

上条「美容院かぁ……正直上条さんにはそんな場所に行くお金がないんですよ。だから第七学区のはずれにある千円でやってくれる床屋に――」

一方通行『またそこかよ! 流行ってンのかその床屋!』

上条「へっ、またって何だよ」

一方通行『チッ、手間かけさせたな。ああ、そォだ。テメェのところのクソシスターに百回死ねって言っといてくれ。じゃあな』ピッ

上条「えっ、ちょ、まっ」


上条「…………」

禁書「あくせられーた何だって?」

上条「……お前、あいつに何言ったんだよ?」

禁書「ふぇ?」


―――
――




-第一一学区・とある倉庫-



スキルアウトA「ぐわっ」バタッ

スキルアウトB「がはっ」バタッ



土御門「……ふぅ、さてこちらリーダーシスコン軍曹! Bエリア制圧完了だにゃー」


『――ジジ――こちら海原。A、F、Gエリア制圧済みです』


土御門「おーおー、頑張るねー海原ちゃーん」


『からかわないでください――ジジジ――引き続きDエリアの制圧に向かいます』


『はいはーいこちら――ジジ――ありゃ、電波悪いねー、まいっか。Dは終わったから援護要らないよー』


土御門「だってな海原。他のエリアに行ってくれ」


『了解です――ジ――』


土御門「ほいじゃー、Cエリアはどうかにゃー?」


『――ジジジジ――はーいこちらCエリアー。とっくに制圧済みだけどメンドイから休憩中ー。どぞー』


土御門「……だったら休憩は終了だ。他のエリアの援護に向かえ」


『ええっー、だって普通に考えて私要らないじゃーん。他のヤツらで十分対処できるじゃーん』


土御門「リーダーの命令だ。行け」


『チッ、面倒臭せェ――ジジジジジ――おおっとっと! 馬鹿どもが物資取り戻しに来やがった。こりゃ撃退するしかねーよな?』


土御門「……わかった。引き続き防衛を頼む」


『あはっぎゃはっ!! 全員まとめて首フッ飛ばしてやっからかく――ジジジジジジジジジジジジジ』



土御門「…………俺も次のエリアにむか――」



ブーブーブー



土御門「電話? 誰からだ」ピッ

土御門「もしもし」

一方通行『おォ土御門。ちょっとイイか?』

土御門「何だアクセラちゃん? 休日だから俺に会えなくて寂しいのかにゃー?」

一方通行『馬鹿言ってンじゃねェよ。それより聞きてェことが一つある』


スキルアウトC「おらぁ! 死ねー」バッ


土御門「何だ? 出来る限り手短に頼むぜい」スッ


スキルアウトC「何ッ!?」



パァンパァンパァン!



スキルアウトC「ぐはっ」バタリ


一方通行『……銃声か? 随分と楽しいそうなことしてンじゃねェか土御門』


スキルアウトD「へへへっ」

スキルアウトE「殺す」

スキルアウトF「絶対に逃がさない。絶対にだ!」



土御門「そういうわけだから早くしてくれないかにゃー? 怖いお兄さんたちに囲まれて俺っちちびりそうなんだぜい」

一方通行『じゃあ手短に言う。オマエの行きつけの床屋……じゃねェ美容院教えろ』


バキッ、ゴキッ


スキルアウトD「あべしっ!」


土御門「そりゃまた何でだ? 姉さんに言われたから切るのかにゃー?」

一方通行『結標は関係ねェよ。俺の意思だ』


ゴッ、ガギィ


スキルアウトE「ひでぶっ!」

土御門「ふむ、美容院かー。実は俺イギリスの美容院で髪切ってんだぜい」

一方通行『イギリスだァ? 似合わねェな。もっとマシな嘘つきやがれ』


ガシュ、ドッ


スキルアウトF「だばらっ!」

土御門「嘘じゃないんだぜい! こう見えて土御門さんはグローバルに活躍するスーパーマンなんだにゃー!」

一方通行『チッ、だったらそれを信じるとして、緊急事態で学園都市で切らねェといけなくなったときはどォする?』


スキルアウトG「うわあああああああああっ! 死ねえええええええええええええええええええええっ!!」



ドカン、ドカン、ドカン!



土御門「チッ、ショットガンとは古臭いもん持ってきやがって……」

一方通行『あァ? ショットガンが何だって?』

土御門「何でもないにゃー。そうだなー、学園都市だったら第七学区の端っこにある床屋がお勧めだぜい」

一方通行『……オマエそれもしかして一回千円のところか?』


パァン、パァン、パァン!


スキルアウトG「おばぁ!」

土御門「そうそう。よく知ってるじゃないか、さすが第一位!」

一方通行『チッ、そのまま死んでしまえ土御門。じゃあな』ピッ

土御門「えっ、ちょっとどういうこと!? アクセラちゃーん!?」


プー、プー


土御門「…………」ピッ

土御門「さて、こちら土御門。Eエリアクリアー」


―――
――




同日 10:40

-第七学区・とある公園-


一方通行「チッ、あァくそったれが。どいつもこいつも同じ店勧めやがって」

一方通行「どォせ青髪ピアスの野郎も同じこと言うのが目に見えてるからな」

一方通行「電話するだけ電話代が無駄だなくそったれが……」


一方通行「…………」

一方通行「ハァ、どォすっかなァ」


一方通行「ネットとかで調べて出ンのは大抵有名所。つまり人がクソ多いっつゥことだ」

一方通行「あンま人の多い場所で髪は切りたくねェンだよなァ。見世物でも見るよォな目でヤツらは見やがる」

一方通行「クソ、どォする……?」


??「……んん? まーたアンタかぁー」ハァ


一方通行「……あァ? またオマエか超電磁砲」

美琴「何でアンタはいつもいつもこの公園に現れるわけ?」

一方通行「そりゃァここは俺の休憩場所って決まってるからだろ」

美琴「ああそう……、で、今日は休日だけど何でこんなところにいるのよ?」

一方通行「なァ超電磁砲。俺の髪長げェと思うか?」

美琴「唐突ね。まあ長いんじゃない? 男の中で見たら……」

一方通行「そォか……」

美琴「どうしたのよ? 髪でも切るつもりなの?」

一方通行「まァな。別に切る必要はねェとは思ってンだけどなァ」

美琴「いや、さすがに切った方がいいと思うけど」



一方通行「で、いつも行ってた美容院に行ったら潰れててなァ、髪切る場所がなくて困ってンだよ」

美琴「……別に美容院くらい掃いて捨てるくらいあるじゃない」

一方通行「俺は人の少ねェ静かな場所がイインだよ」

美琴「アンタは髪切られるところは見られたくないって人?」

一方通行「馬鹿どもには見られたくねェな」

美琴「……まあ私もわからないことはないけど」

一方通行「自意識過剰かよ」

美琴「アンタには言われたくないわよ。というかレベル5なんだからちょっとぐらいそうは思ってもいいじゃない」

一方通行「そォだな。ところでオマエはどォいう美容院に行ってンだ?」

美琴「私? 私は学校指定の美容院よ」

一方通行「そォか。てっきり千円で行ける第七学区のはずれにある床屋にでも行ってるのかと思った」

美琴「何で私がそんなところに行かなきゃいけないのよ」

一方通行「あァくっそだりィ」

美琴「ふむ……!」ピカン

一方通行「どォした?」

美琴「そんなに静かな場所行きたいなら連れて行ってあげるわ」

一方通行「ハァ? どこだよそれ」

美琴「私の行ってるところよ。ちょっと変わったオッサンはいるけど結構静かな方よ」

一方通行「そォか。そりゃ助かるが、オマエの学校指定っつゥことは『学舎の園』の中っつゥことだよな」

美琴「そうだけど」

一方通行「俺は入れねェじゃん」

美琴「ふっふっふ、ここは美琴先生にまっかせなさーい!」

一方通行「ひどく不安になるのはどォしてだろォな」

美琴「というわけで私についてきなさい。それじゃあ美容院行く前にちょっとセブンスミスト寄るわよ?」

一方通行「……何で服屋?」

美琴「いいからいいからー♪」

一方通行「?」


―――
――




同日 11:20

-第七学区・セブンスミスト前-



ウィーン



美琴「さあて、服も着替えたことだし、早く学舎の園に行きましょ?」

???「……オイ」

美琴「何? 美琴さんセレクトの洋服が気に入らないって言う気?」

???「いや、そォじゃなくてよォ」

美琴「じゃあ何よ? ああ、学舎の園の許可ならさっきぱぱっと取ったから大丈夫よ安心して」

???「だから、そォじゃなくてよォ」

美琴「あっ、美容院の方もちゃんと予約取れたわよ。昼からならいつでもオッケーだって」

???「そォでもなくてよォ」

美琴「もーあんまり文句言われるといくら私でも怒るわよ?」

???「オマエは結構な頻度でキレてンじゃねェか。つゥか違う、そォじゃねェ」

美琴「だから何なのよ。ハッキリ言ってちょうだい」

???「――ェ」ボソッ

美琴「えっ? 何だって?」

???「――ねェ」ボソッ


美琴「ちょっと聞こえないんだけど。もうちょっとハッキリ言ってくれないかしら――鈴科百合子ちゃん?」




















一方通行(女装)「何で俺が女装してるンですかねェ、っつってンだよクソ野郎がァ!!」













――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

今回から続き物の『学舎の園』編の始まりですね。と言ってもあと2話で終わりますけど
とりあえず一スレ目からやりたかった百合子ネタをやっとすることができますね
というかこのスレ美琴出番が多すぎるか……?


次回『学舎の園』


新キャラばっかで苦戦してまーす
ではではノシ


何か地震がきてびびったわww

週一投下でーす



12.学舎の園


January Third Saturday 11:50

-第七学区・学舎の園入口-


美琴「さて、着いたわよ」

一方通行「どォしてこォなった」

美琴「はい、これ」スッ

一方通行「あン? ンだァこりゃ」

美琴「招待状よ。まあ、ちょっと簡易的なものだけど」

一方通行「コピー用紙……って簡易的にもほどがあるだろ」

美琴「しょうがないじゃない! 本当は学舎の園の中でちゃんと手続きしないと駄目なところを何とかしたんだから!」

一方通行「ハイハイそォですねェ……」

美琴「まあ、これをゲートの係員の人に見せれば難なく学舎の園に入れるわ」

一方通行「つゥかよォ、さすがにバレンだろ。見たこともねェよ、こンな声の低い女なンざ」

美琴「喋らなかったらいいんじゃない?」

一方通行「常盤台のお嬢さまは無理難題をおっしゃる」

美琴「冗談冗談。とにかく声を限界まで高くしたら?」

一方通行「だからバレるだろ(裏声)」

美琴「ぷっ、たしかにこれは……」



一方通行「チッ、仕方がねェな……」ピッ

美琴「ん? 携帯なんか出してどうする気? まさかボイスチェンジャー機能でも使うんじゃないでしょうね?」

一方通行「ンなモン使ったところで逆に怪しまれるだけだ。どっかの探偵漫画みたくマスクとかに仕込まねェとな」ピッピッ

美琴「じゃあ何なのよ」

一方通行「もっと出来のイイボイスチェンジャーだ」ピッ



プルルルルル、プルルルルルピッ



打ち止め『もしもしー? どうかしたの、ってミサカはミサカは電話越しのあなたに問いかけてみたり』

一方通行「一つ頼みがある」

打ち止め『唐突だね、何? ってミサカはミサカは耳を傾けてみる』

一方通行「能力使用モードに制限をつけてくれ」

打ち止め『制限? それって体育の時間に使ってるアレのこと?』

一方通行「ああ。ただし制限するものは違う。制限するのは――」


打ち止め『……ふむふむ、了解了解。じゃあそういう風に指令出しとくね、ってミサカはミサカは言われたことを実行してみたり』

一方通行「頼む」

打ち止め『じゃあ準備ができたらまた連絡するね、ってミサカはミサカは通話終了ボタンをポチっと――ツーツー』


一方通行「……さて」


美琴「…………誰と電話してたわけ?」

一方通行「あン? ただのクソガキだ」

美琴「打ち止めのこと? 何でまた」

一方通行「ちょっとな……」

美琴「えらく言葉を濁らせるわね、まあいいけど。で、結局その声はどうするわけ?」

一方通行「こォする――」カチ



キュイーン



一方通行「――あーあー(姫神ボイス)」

美琴「えっ!? こ、声が変わった!?」

一方通行「そォいうわけだ。これならさすがにバレねェだろ(以下姫神ボイス)」

美琴「た、たしかにこれならばれないと思うけど……一体どういう仕組みよそれ」


一方通行「声ってのはよォするに声帯を動かすことで起こる空気の振動だろ?」

一方通行「だったらその空気を伝わっていく振動を弄くってやれば、声の一つや二つ変えられるだろ」

一方通行「知ってるヤツの声の質を数値化して、それに合わせればあっという間にそいつと同じ声っつゥわけだ」

一方通行「まァさすがにオリジナルと同じ声を出すってのは難しいが、知らねェヤツならまずわからねェだろ」


美琴「へ、へー相変わらず無茶苦茶な能力よねーアンタのベクトル操作」




ピピピッ! ピピピッ!



一方通行「おっと電話か……」カチ


一方通行「もしもし(一方ボイス)」

打ち止め『もしもーし! ってミサカはミサカは元気に電話の挨拶をしてみたり』

一方通行「うっせェぞクソガキ。用意はできたか?」

打ち止め『うんバッチシだよ! でもね、一つ忠告しておかなきゃいけないことがあるの、ってミサカはミサカは人差し指を一本立てて言ってみる』

一方通行「立てられても見えねェよ。何だ?」

打ち止め『正直、この声のベクトル操作は結構演算が複雑で、杖なしモードに比べてかなり電力を消費しそうなの』

一方通行「制限時間が思い切り短くなるってことか」

打ち止め『そうそう。だいたい杖なしが十二時間なのに比べて、今回のはその四分の一……三時間くらいしか持続しそうにないよ、ってミサカはミサカは対比をしつつ説明してみる』

一方通行「あれ十二時間ももったのかよ」

打ち止め『何に使うか知らないけどそこんとこは気をつけてねー、ってミサカはミサカは忠告終了!』

一方通行「了解だァ。そォだ、お土産に高そうなケーキでも買ってきてやるよ」

打ち止め『えっマジでか!? ひゃっほーい!! ってミサカはミサカは突然のラッキーに胸を躍らせてみたり!』

一方通行「じゃあ切るぞ」

打ち止め『ケーキ楽しみにしてるよー、ってミサカはミサカは――』ピッ


一方通行「…………」

美琴「……電話終わったー?」

一方通行「ああ」

美琴「じゃあさっさと入るとしましょうか」

一方通行「ちょっと待て。一つ疑問があるンだけどよォ」

美琴「何?」

一方通行「鈴科百合子って何だよ? どっからこンな名前持ってきたンだァ?」

美琴「んーと、何となくよ何となく。何となく思いついたからそれを書き込んだけよ」

一方通行「オマエは何となくで鈴科って苗字が思いつくのかよ」

美琴「何よ、だったら田中花子とかいう前時代的な名前にしてあげましょうか?」

一方通行「正直名前なンざどォでもいい。こン中に入れれば問題ねェ」

美琴「なら聞かないでよ!」

一方通行「うっせェなァ、ちょっと気になっただけじゃねェか」

一方通行「つゥかこっちには時間がねェンだ。さっさと行くぞ超電磁砲(以下姫神ボイス)」カチ

美琴「ほいほーい、じゃあ私は先に行ってるわねー」タッタッタ


―――
――




-学舎の園・入り口ゲート-


係員「――はい、次の方」

一方通行「どォも」

係員「では招待状を出してください」

一方通行「お願いしまァす」スッ

係員「ええっと……常盤台中学二年生の御坂美琴さんに招待された、鈴科百合子さんね?」

一方通行「ハイそォです」

係員「うーん、これ仮招待状なんだけどね」

一方通行(仮招待状だァ?)

係員「一応だけどIDとかの確認させてくれないかな?」


一方通行(何ィ!?)

一方通行(オイオイ聞いてねェぞIDが必要なンてよォ、どォいうことだ超電磁砲ッ!?)

一方通行(大体、鈴科百合子なンて生徒は存在しねェ。イコールIDなンて存在しねェ)

一方通行(たしかに俺はIDは持ってはいるが、それは俺自身の……一方通行としてのID……!)

一方通行(出せば通報される、確実に通報される……いろンな意味で)


係員「?」


一方通行(どォする……、いっそベクトル操作を使って逃げ――いや無理だ、今は制限されている)

一方通行(普通に逃げても逆に怪しまれるだけだ、かといってID出しても変態扱いだ)

一方通行(くそったれが、俺は上条じゃねェっつゥのに何でこんな不幸なことにィ……!?)




係員「……ええと鈴科さん?」

一方通行「……は、ハイ!?」

係員「IDを出してくれないかな?」

一方通行「……え、えェと」

係員「もしかしてID忘れちゃったかな?」

一方通行「……! は、ハイ! そォなンなンすよID家に置いてきちゃって――」

一方通行(しめた……! 超電磁砲には悪りィがこれでここから脱出でき――)


係員「だったら登録番号とかわかる? 他にも携帯電話の電話番号とかでも大丈夫だけど?」


一方通行「」


一方通行(……お、終わった。俺の人生全てが終わった)

一方通行(くそったれが。俺はまだ何もできちゃいねェンだぞ? なのにこンな理不尽なことで……)

一方通行(……もォ覚悟決めるしかねェ)


一方通行「……じゃあ登録番号言います」

係員「はい――ッ!」ビクッ


一方通行「……×××――」


係員「――どうぞお通りください」


一方通行「○△□――……ハァ?」



係員「失礼いたしました。どうぞお通りください」

一方通行「通ってもイイのかよ?」

係員「大丈夫です。どうぞお通りください」

一方通行「? ならそォさせてもらう」

係員「ごゆっくりどうぞ」

一方通行「…………」ガチャリガチャリ


一方通行(何だァ? 急に対応が変わりやがって、どォいうことだ)

一方通行(さっきまであンなに一生懸命身分照明を求めてきてたのによォ)

一方通行(まるで人格が変わったかのよォだったな……)

一方通行(そして一瞬だけだが感じたあの感覚は……)


一方通行「…………」

一方通行「チッ、まァイイ。俺ァ上条じゃねェからな」

一方通行「どォやら俺には幸運の女神様が味方についていたらしい」

一方通行「…………」

一方通行「チッ、くっだらねェ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 12:10

-学舎の園・エントランス-



美琴「…………遅い」ブツブツ



一方通行「待たせたな」ガチャリガチャリ

美琴「遅い! たかがゲートくぐるだけでどんだけ時間かけてんのよ!」

一方通行「うるせェよ! 大体こっちはなァ、オマエのせいで危うく変質者にされかけてたンだぞ!」

美琴「? どうしたのよ」

一方通行「オマエのくれた招待状はどォやら仮だったよォでなァ、この場合IDの提示が必要って話じゃねェか!」

美琴「…………ああー、たしかそうだったわねえ、あはは」

一方通行「あはは、じゃねェよ」

美琴「ごめんごめん。じゃあお詫びにお昼奢ってあげるから、ね?」

一方通行「そンなモンで許してもらえると思ってンのか? つゥか昼飯って何だよ?」

美琴「何、ってもう十二時過ぎてんだからお昼ご飯食べるのは当たり前でしょ?」

一方通行「言ったよなァ、俺には時間がねェって」

美琴「別にいいでしょ? 髪切るのだってそんな時間かかんないし。パーマとかかけたりするんなら話は別だけど」

一方通行「つっても二時間ぐれェかかるじゃねェか!」

美琴「それじゃあどこ行く? パスタとかどうよ? それかラザニアとか」

一方通行「人の話を聞け超電磁砲っ! つゥかそれ両方パスタだろォが!」

美琴「早くしないと置いていくわよー?」タッタッタ

一方通行「何ィ? 待ちやがれクソガキが!」ガチャリガチャリ

一方通行「……ったく、あのコイツといいあのクソガキといい、どォしてこォ人の話をかねェンだよ」

一方通行「チッ、さすがは遺伝子レベルで同じ姉妹だけあるってかァ、くそったれが……」


―――
――




-学舎の園・街頭-


美琴「……うーん、やっぱりこの時間はどこも混んでるわねー」テクテク

一方通行「……オイ」ガチャリガチャリ

美琴「何? 百合子ちゃん」

一方通行「今さらだけどよォ、ここって制服着とかねェといけねェンじゃねェのか?」

美琴「どうして?」

一方通行「さっきから目に入るヤツらのほぼ全員が制服着てンじゃねェか。そォ思ってもしょうがねェじゃねェか」

美琴「よっぽどみすぼらしい格好じゃなきゃ大丈夫よ。何のためにこの美琴様直々に洋服を選んでやったと思ってるのよ」

美琴「それにそんなんじゃ制服がない大学生とかはここに入れないってことになるでしょ? まあ、スーツ着て来いって言われたらしょうがないけど」

一方通行「まァアレだな。どちらにしろ目立って敵わねェな。ジロジロと馬鹿どもが見てきやがる」

美琴「服装もそうだけど、アンタのその頭からして目立ちまくりじゃない。それに変わった杖とか使ってるし」

一方通行「うっとォしい」

美琴「まあいいじゃない。目立つのとか慣れてるんじゃないの?」

一方通行「ンなわけねェだろ。いつも目立たねェよォに裏路地とか通ってンだよ。その代わりにクソ野郎どもによく出会うわけだがな」

美琴「あ、それ私もわかるわ。ことあるごとに絡んできやがるわよね、アイツら」

一方通行「俺とオマエじゃ絡む目的が違うだろォがな」

美琴「でもそのおかげであの馬鹿と出会えたわけなのよね……」

一方通行「相変わらず人助けに熱心な三下なこった」

美琴「あの頃のことを思い出すだけで……何だかムカついてきたわ」ビリッ

一方通行「何があった、オマエらの初遭遇時」



美琴「ところで何か食べたいものの希望とかある? 大抵のものなら学舎の園の中で食べられると思うけど」

一方通行「時間のかからねェモン」

美琴「ならカップ麺でも食ってなさいよ」

一方通行「できることならそォするが」

美琴「少しは食事を楽しむということを心掛けたらどう?」

一方通行「不味くなけりゃどォでもイイわそンなモン」

美琴「はぁ……だったら空いてるところを適当に入るとしましょ」

一方通行「何ならメシ抜きでも俺は生きていける」

美琴「私はちゃんと食べたいのよ! 別に今ダイエットとかしてないし……」

一方通行「ダイエットしてるときでも食った方がイイと思うがな。栄養失調起こして倒れたりしたら元もこォもねェし」

美琴「今さっきお昼抜きでもいいって言ったヤツのセリフとは思えないわね」

一方通行「食わないといけねェものを食わねェのと、食わなくてもイイものを食わねェのは大きく違うぞ」

美琴「まあたしかにそうだけど……って、今はそういう話をしてるんじゃない!」

一方通行「ハイハイそォですねェ……っと、あそこ空いてンじゃねェか?」

美琴「ええっと……喫茶店か。ま、いっか」

一方通行「ちなみにオマエは何がよかったんだ? パスタか?」

美琴「別に何でもよかったわよ。ただ学舎の園にはおいしいパスタが食べられる店があるからどうかなって勧めてみただけよ」

一方通行「パスタが食いてェならそォ言えばイイのに」

美琴「だ・か・ら・何でもよかったって言ってるでしょう!」ビリッ

一方通行「危ねェ! 今反射使えねェンだぞ!? 殺す気か!」

美琴「だ、大丈夫よ! ちゃんと手加減はしてるから…………せいぜい五万ボルトくらいよ」ボソッ

一方通行「何だかスタンガンクラスの電圧が聞こえたのは気のせェですよねェ!?」



美琴「い、いいから行くわよ!」ガシッ

一方通行「引っ張ンじゃねェ! こっちは杖付きなンだから変に引っ張ンじゃねェ、こけンだろォおあァ!?」



バタン



美琴「あっ」

一方通行「…………」ムクッ

美琴「え、ええと……ごめん」

一方通行「オマエ殺す」カチ

美琴「あ」



一方通行「って能力使えねェンだったァああああッ!?(一方ボイス)」



ざわ……ざわ……


一方通行「……あン?」

美琴「ちょ、ちょっと声戻ってるわよ!? 能力能力!(小声)」

一方通行「おっと」カチ

一方通行「あーあー(以下姫神ボイス)」

一方通行「よし、これで問題ねェ」

美琴「ふぅ、危ないところだったわね。これはボロが出る前に学舎の園を出たほうがいいかもね」

一方通行「当たり前だろォが。ここに居続けることは俺にとってリスクしかねェからな」

美琴「じゃあちょっと急ぐとしましょ」

一方通行「そォだな。つゥことでとっとと美容院に……」

美琴「お腹空いたから早く喫茶店に行きましょ!」ガシッ

一方通行「急がなきゃいけねェってわかってンなら急がせてくれませンかねェ!? あと引っ張ンじゃねェ、イイ加減学習しろゴルァ!」


―――
――




同日 12:20

-学舎の園・とある喫茶店-



店員「ご注文をどうぞ」



美琴「サンドイッチのスタンダード一つ、あと飲み物にミルクティーをお願い」

一方通行「アイスコーヒー」

美琴「……アンタ料理のほうは?」

一方通行「いらねェ、コーヒーだけで十分だ」

美琴「お腹空いても知らないわよ?」

一方通行「いらねェ心配してンじゃねェ。必要ねェンだよ俺には」

美琴「……まあいいけど」


店員「サンドイッチのスタンダードがお一つ、ミルクティーがお一つ、アイスコーヒーがお一つでよろしいでしょうか?」


美琴「うん、大丈夫よ」


店員「かしこまりました。では少々お待ちください」ペコスタスタ


美琴「…………アンタ、ホントに食べるもの頼まなくて大丈夫なわけ?」

一方通行「しつけェな、大丈夫だっつってンだろ」

美琴「まあいいならいいんだけど。というかお詫びに昼食奢ってあげるって話だったじゃない?」

一方通行「そォいやそォだったなァ」

美琴「つまり私はアイスコーヒー一杯しか奢らないってことになるわよね?」

一方通行「そォなるな」

美琴「…………」

一方通行「…………?」



美琴「……はぁ、ま、別にいいけどね」

一方通行「何言ってンだオマエは?」


店員「お待たせいたしました。ミルクティーとアイスコーヒーでございます」スッ


美琴「ありがと」

一方通行「ン」


店員「サンドイッチのほうはもう少しお待ちください」ペコスタスタ


美琴「はいストロー」スッ

一方通行「いらねェ」ズズズ

美琴「ちょ、そのまま飲むの?」

一方通行「悪りィかよ」

美琴「缶コーヒーとかコーヒーカップとかならいいけど、そのグラスで直飲みはちょっと……」

一方通行「オマエはわかってねェ。コーヒーっつゥモンはこォやって少しずつ口に含ンでゆっくりと味わっていくモンなンだよ」

美琴「聞くだけなら一流っぽい飲み方ね。でもそれならストローで飲んでも大丈夫じゃないの?」

一方通行「ストローだったら一度に口に入る量が変わるだろォが」

美琴「そんなに変わらないわよ」

一方通行「わかってねェなァ、超電磁砲……」ヤレヤレ

美琴「ぐっ、別に負けてはないのに何これムカつく……てかそういう細かいとこまで見なきゃ第一位として君臨できないわけ?」

一方通行「ンだァ? オマエ第一位にでもなりてェのか?」

美琴「別にぃ、なりたいなんて思わないわよ。私は第三位くらいでちょうどいいわ」

一方通行「そォだな。オマエはこれくらいが限界だ」

美琴「何よ? 私はこれ以上上がりませんよとでも言う気?」

一方通行「……まァな。アイツとオマエじゃ差がありすぎる」

美琴「アイツって第二位のこと?」

一方通行「そォだ」

美琴「……どんなヤツなの第二位って?」

一方通行「何つゥかアレだ。自分を最強とでも思ってるよォなナルシストクン?」

美琴「それだけ聞くと滑稽に聞こえるわね」

一方通行「だが、能力は最強クラスのチカラだろォな。応用性で言えば俺と同等……いや、俺以上かもな」

美琴「ふーん、何でもできるアンタのベクトル操作の能力より万能ねえ、想像もつかないわ」

一方通行「まァ、ソイツはオマエとは一生縁のねェところで生きているヤツだ。別にする必要もねェよ」

美琴「…………」ズズゥー

一方通行「…………」ズズズ



美琴「……ねえ、一つ聞いていい?」

一方通行「何だ?」


美琴「超能力者(レベル5)に八人目って本当にいるの?」


一方通行「…………」

美琴「どうなのよ」

一方通行「……どこで聞いた」

美琴「噂好きの友達がいてね、その子からちょっと」

一方通行「そォか……で、何で俺に聞いてくる」

美琴「アンタ前私に聞いてきたじゃない。超能力者(レベル5)って何人だったか、って」

一方通行「……あァ、あの時か」

美琴「実はそのとき知ってたんじゃないの? その八人目のことを」

一方通行「…………」

美琴「で、信じられないから私に聞いてきた、違う?」

一方通行「…………」

美琴「…………」

一方通行「そォだな……」



一方通行「仮に俺が『いる』っつったらオマエはどォする気だ?」




美琴「…………」

一方通行「…………」

美琴「……別にどうもしないわよ、ただちょっと気になっただけ」

一方通行「……チッ、だったらそンなことでいちいち聞いてくンじゃねェ」ズズズ

美琴「で、結局いるのいないのどっち?」

一方通行「どォでもよかったンじゃねェのかよ」

美琴「どうでもいいとは言ってないじゃない。気になるものは気になるし」

一方通行「……ったく、面倒臭せェな」

美琴「面倒臭いって何よ!」

一方通行「そのままの意味だ」

美琴「ふーん、まあアンタがそこまで隠そうとするくらいだからいるんでしょうね。その八人目さん?」

一方通行「オマエがそォ思うンならそォじゃねェか? オマエン中ではな」

美琴「まあいいわ。いたところで私には関係ない話だし」

一方通行「……そォだな」


店員「お待たせいたしました。サンドイッチのスタンダードでございます」スッ


美琴「あっ、やっときたわね。もうお腹ぺこぺこよ」

一方通行「…………」ズズズ


店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


美琴「大丈夫よ」


店員「ではごゆっくり」ペコスタスタ



美琴「いただきまーす」

一方通行「さっさと食えよ。俺には時間がねェンだ」

美琴「何よ、食事くらいゆっくりさせなさいよ」モグモグ

一方通行「それは今まで急いできたヤツのセリフだ」

美琴「急いであげたじゃない。時間短縮のために空いてる店に入って……」

一方通行「オマエやっぱりパスタの店行きたかっただろ? 絶対ェ根に持ってンだろ?」

美琴「別に持ってないわよ。パスタなんていつでも食べられるし」

一方通行「ったく、うっとォしい野郎だ……」ズズズ

美琴「うっとおしいとは何よ!」

一方通行「面倒臭せェ野郎だ」

美琴「誰が面倒臭いですって!?」

一方通行「うっせェよ、オマエだオマエ。つゥかメシの時間ぐれェ静かに──」


??「──あら? もしかして御坂さんじゃありません?」


一方通行「……あァ?」

美琴「……あっ、婚后さん! それに湾内さんと泡浮さんじゃない」


婚后「こんにちは御坂さん」

泡浮「こんにちは」ニコ

湾内「今日もいい天気ですね」ニコ


一方通行(ンだァ、常盤台の制服……っつゥことは超電磁砲の連れか?)



婚后「……あら? そちらの方はどなたかしら?」

美琴「ああ、私の……ええと、ちょっとした知り合いよ。今日は学舎の園の中を案内してあげてるのよ」

湾内「あら、そうでしたの。道理で見かけない方だと思いましたわ」

泡浮「お名前は何と言いますの?」

美琴「えっと、あく……じゃなくて鈴科百合子っていうの」

泡浮「鈴科さんですね。わたくし泡浮万彬と申します」

湾内「湾内絹保ですわ」

婚后「わたくしは常盤台中学二年の婚后光子です。以後お見知りおきを」

一方通行「……おォ」

美琴「婚后さんたちはここで何してたの?」

婚后「わたくしたちは今から昼食をとるためにこの辺りを歩いていましたの」

泡浮「先ほどまで少し雑事をしていたのでこの通り出遅れてしまいました」

湾内「空いているお店などを探していたら、偶然御坂様がお目にかかったので」

美琴「大変ね……そうだ! よかった一緒にどう?」

一方通行「え?」

泡浮「よろしいのですか?」

一方通行「え?」

湾内「それは助かりますね。ありがとうございます」

一方通行「え?」

婚后「ま、まあ、御坂さんがそこまで言うならやぶさかではありませんわ」

一方通行「え?」


―――
――




店員「お待たせいたしました。ハムエッグでございます」


湾内「ありがとうございます」ニコ

婚后「……ふむ、たまにはこういう店で食べるのも悪くはありませんわね」モグモグ

美琴「雑事って何やってたの?」

泡浮「常盤台への入学試験の準備の手伝いですわ」

美琴「あー、そういえばもうそんな時期ね。大変ねー」

湾内「いえいえ、これもよい経験ですわ」



ワイワイガヤガヤ



一方通行「どォしてこォなった」


一方通行(ありのまま今起こったを話すぜ。超電磁砲が美容院に連れて行ってくれるっていうからついて行ったらいつの間にか女子会が始まってた。何を――)


湾内「ところで鈴科さん」

一方通行「…………」ブツブツ

湾内「鈴科さん?」

一方通行「あ、あァ俺か。何だ?」

婚后「俺? 変わった喋り方をするのですね貴女」

美琴「あははー、そういうヤツなのよコイツー」


美琴「(アンタ少しぐらい口調変えなさいよ! 一応女子って設定でしょうが!)」ボソ

一方通行「(うるせェよ。俺のアイデンティティであるこの口調に文句付けてンじゃねェよ)」ボソ

美琴「(自分の声を女子に変えてるヤツのセリフとは思えないわね)」

一方通行「(緊急事態だからしょうがねェだろォが)」

美琴「(だったら口調も変えなさいよ、緊急事態なんだから!)」



湾内「……あ、あの」

一方通行「あ、あァ悪りィ何だ?」

湾内「鈴科さんは高校生なんでしょうか?」

一方通行「……ああ、そォだが。どォしてだ?」

湾内「いえ、女性にしては身長がお高いと思いまして」

泡浮「たしかにそうですわね。モデルさんのようですわ」

一方通行(そりゃまァ男だしなァ)

婚后「わたくしはてっきり大学生かと思いましたわ。制服ではなく私服を着ておられるので」

一方通行「あァ……制服はアレだ。クリーニングに出してンだよ」

婚后「こんな時期にですか?」

一方通行「あ、アレだアレ。ドブに落ちたンだよドブに」

美琴「ぷっ」

一方通行「何だよ」ギロ

美琴「ごめんごめん、何でもないわぷぷっ」

一方通行(あとで覚えてろよこのクソガキが)

湾内「それは災難だったですわね」

泡浮「月曜日までに間に合うといいのですが」

一方通行「オマエらが気にすることじゃねェよ」



婚后「ところで鈴科さんはわざわざ学舎の園まで何をしにきたのでしょうか?」

一方通行「髪を切りにきた」

婚后「髪?」

一方通行「ああ、髪」

婚后「……それだけですか?」

一方通行「それだけだ」

湾内「わざわざここに来たのですから、どこの美容院にいくか決めておられるのですか? ここにはたくさん美容院がありますよ」

美琴「ああ、それは常盤台指定のあそこに連れて行くつもりよ」

婚后「え゛っ、あそこですか?」

一方通行「あン? 何だその反応はァ?」

湾内「ええと……あそこの店主がちょっと」

一方通行「どォいうことだ?」

泡浮「わたくしたちの行く学校指定の美容院があるのですが、そこの店主がちょっと変といいますか、油断ならないと言いますか……」

婚后「本当にあの時は危なかったですわ。危うくこの綺麗な黒髪が虹色アフロヘアーに変えられるところでしたもの」

一方通行「……オイ、超電磁砲?」

美琴「な、何よ?」

一方通行「何つーところに連れて行くつもりだったンだオマエは……!」

美琴「べ、別にいいじゃない! たしかにあの人はちょっと変かもしれないけどそれでも腕は確かよ! 店もそんなに人が多いってわけじゃないし」

一方通行「ふざけンじゃねェぞアフロなンかにされた途端、俺の人生軽く詰むぞ!」

美琴「ちゃんとしてれば問題ないわよ……たぶん」

一方通行「たぶンって言ったよなたぶンって!?」



一方通行「……つゥか俺には時間がねェっつゥ深刻な問題があるンだよ。早く連れてけよその美容院とやらに」

泡浮「あらそうでしたの。それならこんなところで談笑している暇はありませんわね」

美琴「そうね。じゃあ私たちはそろそろ行くわ」

一方通行「やっとかよ」

婚后「鈴科さん。決して油断しないでくださいね。少しでも油断したらその綺麗な白髪が面白おかしくなってしまいますから」

一方通行「そォか。忠告アリガトよ」

美琴「じゃあここの支払いは私がやっとくからね」

湾内「そ、そんな悪いですわ」

美琴「いいっていいって。ついでよついで」

泡浮「それじゃあお言葉に甘えさせていただきますわ」

一方通行「俺ァ先に出とくぞ超電磁砲」

美琴「りょうかーい、ちょっとだけ待っててねー」

湾内「鈴科さん。短い時間かもしれませんが学舎の園をぜひ楽しんでいってくださいね」ニコ

泡浮「またお会いできるといいですね」ニコ

婚后「今度お会いした時に髪型が急激に変化していないことをお祈りいたしますわ」

一方通行「おォ」



一方通行(まァ、もォ二度と会うことなンざねェだろォがな……)



――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださったみなさんありがとうございました

婚后さんのキャラがちょっとおとなしめになりすぎてて湾内さんと泡浮さんのキャラの書き分けができてなくてワロタwwワロタ……
あとお前ら青ピとか20000号とか百合子ネタ期待しすぎだろそんな展開考えてもなかったわ
あくまで女装は学舎の園に進入するための手段であってだな……


次回『美容院』


超電磁砲SのOPかっこよすぎて鼻水吹いたわ
ではではノシ


週一投下でーす



13.美容院


January Third Saturday 13:00

-学舎の園・常盤台中学指定美容院-



ピヨピヨ



美琴「こんにちはー」

一方通行「……たしかにガラッとしやがるな」

美琴「あれ? あの馬鹿店主がいない……?」

一方通行「あァ?」

美琴「いつもならそこで携帯ゲームしてるんだけど、おーい坂島さーん?」

一方通行「……オイ、あそこでヘッドホンつけてパン食ってるアイツは何だ?」

美琴「ん?」



坂島「ふんふふんふふーん♪」シャカシャカ



美琴「…………おい」

坂島「ふふふーん……ん? あれ御坂ちゃんじゃーん? 来るの早くなーい?」

美琴「昼過ぎに行くってちゃんと連絡しといたじゃない」

坂島「ええー、まだ一時だよ一時ジャスト。学校とかならまだギリ昼休みっしょ?」

美琴「ここは学校じゃないでしょうが」



坂島「……で、そこに立っている白髪の子が御坂ちゃんのお友達?」

美琴「うん、静かで人の少ない美容院を希望してたから連れてきたわ。客を連れてきたんだから感謝しなさい」

坂島「ウチの店けなされた上に感謝を求められるとは思いもしなかったなぁ」

一方通行「…………」

坂島「じゃあそこに座って。ええっと――」

一方通行「鈴科だ」ガチャリガチャリ

美琴「じゃ、私はそこで雑誌でも読んでるから。何かあったら呼んでね」

一方通行「何かあったら、って何があンだよ」


坂道「ほいじゃー鈴科ちゃん、本日はどういう髪型に? 個人的にはアロンジュとかいいと思うなぁ、もちろん地毛で」

一方通行「俺は音楽家になるつもりはねェよ」

坂道「あれ? 一人称俺なんだ? 君面白いねぇ。あっ、髪飾り取っとくねー」ヒョイ

一方通行「人の口癖面白がってンじゃねェ」

坂道「君の声質一見大人しそうなのに、口調は結構荒いよね」

一方通行「もォ俺の口癖の話はするなうっとォしい」

坂道「つれないなぁ、じゃあとりあえずリーゼントとか似合いそうだからリーゼントね」

一方通行「一体さっきのやり取りだけでどォしてそンな前時代の遺物みてェな髪型の名前が出てくるンですかねェ?」

坂道「一人称俺プラスドスの利いた口調。これはもうリーゼントにするっきゃないでしょ」

一方通行「どォしてそォなる。普通に切れ、全体的に短くなるよォになァ」

坂道「えー切っちゃうのぉ? もしかして失恋しちゃった?」

一方通行「してねェよ! 変な勘を働かせてンじゃねェ!」



坂道「んーまあ短くするにしても、どれくらいか具体的に言ってもらわないとこっちも困っちゃうかなー?」

一方通行「……後ろ髪が肩にかからねェ程度だな」

坂道「わぉ、思い切っちゃうなぁ。もしかして心は男の子とかだったりするのかなぁ?」

一方通行「くだらねェこと聞いてンじゃねェよ。イイからとっとと切れ」

坂道「はいはーい、じゃあ切っちゃうねー」チョキチョキ

一方通行「…………」

坂道「…………」チョキチョキ

一方通行「…………」

坂道「……ところでパーマとかかけたりする? 今なら――」チョキチョキ

一方通行「だから切るだけでイイっつってンだろォが!」

坂道「ええっ、ほんと鈴科ちゃんここに何しに来たのぉ? 美容院に行って切るだけって」チョキチョキ

一方通行「別に構わねェだろォが」

坂道「それじゃあ俺がつまんないじゃん」サッサッ

一方通行「知るか」

坂道「いや、わりとマジで切るだけなら床屋とか行ったほうがいいよ? 美容院なんかより数段安いし」チョキ

一方通行「美容院の店主とは思えねェセリフだなァ」

坂道「そんな変わんないって、床屋でも切るのめっさうまい人とかいるし」チョキチョキ

一方通行「どォでもイイ」

坂道「ちなみに第七学区のはずれに一軒床屋があるんだけどさ。そこの店主がまた腕がいいんだわー」チョキチョキ

一方通行「……それってアレか? 一回千円でやってくれるってところ」

坂道「そうそう。しかしあのテクニックなら普通に万単位はとれるのに、随分と気前のいい店主だよねぇ、ほんと」チョキチョキ

一方通行「一体何なンだよその店はァ」



坂道「そういえば御坂ちゃーん?」

美琴「……何?」ペラッ

坂道「御坂ちゃんは髪切っていかないのー?」ジャキジャキ

美琴「いいわよ別に。私十二月に切ったばっかだし」

坂道「あー、そーいえばそーだったね。たしかあれはクリスマスデートの前だったっけねー」パッパッ

美琴「なっ!?」ガバッ

一方通行(……あァ、あの時か)

坂道「あのときの御坂ちゃんは乙女だったねぇ、結局どうだったのクリスマスデート」サラリ

美琴「でででデートじゃないわよ馬鹿! べべ別に、ただあのときは余ったチケットを消費したに過ぎないし、だから何にもあるわけないしぃ!」

坂道「そっかー、残念だったねぇー何もなくて」チョキチョキ

美琴「だからぁ! 何もないのが普通なんだってばぁ!」

一方通行「くっだらねェ」

坂道「鈴科ちゃんは恋愛とか興味なさそーだよね、御坂ちゃんと違って」チョキチョキ

美琴「何よ! その私が興味津々みたいな言い方!」

一方通行「……たしかにそォだな。恋愛なンざ考えたこともねェ」

坂島「もったいないねぇ、こんなに美人さんなのに」チョキリ

一方通行「ハァ!?」ビク

美琴「ぷっ」

坂島「でもねー、恋愛には興味なくてももう少し髪は丁寧に扱ったほうがいいと思うよ? 一見さらさらだけど実はダメージ結構受けてるよ?」サーサー

一方通行「ンなモンどォでもイイ」

坂島「髪は女性の命だよ? いい素材持ってるんだから大事にしなきゃ駄目だよー?」チョキチョキ

一方通行「……お、おう」

美琴「ぷぷぷっ」


坂道「……ところでさあ」

一方通行「あァ?」

坂道「鈴科ちゃんはチョンマゲ希望だったっけ?」

一方通行「さっき髪を大事にしろっつったヤツのセリフじゃねェだろそれ」


―――
――




同日 14:30

-学舎の園・街頭-



ピヨピヨ



坂道「また来てねー」ノシ



一方通行「……あァ、やっと開放された」

美琴「お疲れー、よかったわね普通に終わって」

一方通行「実際アフロとかにされたヤツいンのか?」

美琴「さあ? 私は見たことはないけど、たぶんないんじゃない?」

一方通行「あったら間違いなく問題になってるだろォしな」

美琴「何だかんだ言ってあのオッサンもプロだしね」


美琴「で、その髪型はあの時のか……」

一方通行「あァ、クソガキが見てェっつってたから仕方なくな」

美琴「ふーん、髪を切ったのは打ち止めのためだったのね」

一方通行「別にクソガキのためじゃねェよ。俺もそろそろ髪がうっとォしいと思ってたところだったンだよ」

美琴「切らなくてもいいと思ってるとか言ってなかったっけ?」

一方通行「……まァイイ。これで俺のミッションは終了だァ。あとは適当にケーキとか買ってここを出るだけだな」

美琴「打ち止めへのおみやげ? へー優しいとこあるじゃない」

一方通行「勘違いすンじゃねェよ。アイツにはこの電極のこととかで世話になってるからな。その借りを返すだけに過ぎねェよ」

美琴「ふーん、まあそれくらいなら付き合うわよ? こっちも暇だし」

一方通行「そりゃアリガテェこった。ならここから最短距離で行けるケーキ屋に連れて行ってくれ。面倒臭せェから」

美琴「何が面倒なのかわからないけど了解了解」


―――
――




同日 14:45

-学舎の園・とあるケーキ屋-


美琴「──ありゃりゃー、結構混んじゃってるわねー」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」

美琴「まあもう三時近いからね」

一方通行「つゥかケーキってモンはこンなに種類があるモンなのかよ」

美琴「そりゃ学舎の園だし、外のお店とは段違いよ」

一方通行「さすがお嬢様学校の巣窟だけあって、無駄に高いモンのオンパレードだなァオイ」

美琴「まあ、そうでもしないと成り立っていかないところだし」

美琴「で、打ち止めにはどういうケーキを買ってあげるの?」

一方通行「アイツの好みなンざァ知ったこっちゃねェからな。特に決めてねェよ」

美琴「何かないの? 九月くらいからずっと一緒にいたんでしょ?」

一方通行「知らねェモンは知らねェよ」

美琴「うーん、だったら私が代わりに選んであげようか?」

一方通行「ハァ? 何でオマエが」

美琴「私の妹なんだから味の趣味嗜好は似通ってるはずでしょ? 多分」

一方通行「……そォいうのは普段の食生活によって変わンじゃねェのか?」

美琴「たしかにそうかもだけど、根本的なところは一緒なんだから大丈夫でしょ」

一方通行「まァ確かにそォだな。アイツもガキだからオマエと趣味が似通ってもおかしくはねェ」

美琴「まるで私がお子様趣味だと言わんばかりのセリフね」

一方通行「違うのか?」

美琴「違うわよ!」



美琴「じゃあ私が選んであげるから……というか私が奢ってあげるわよ」

一方通行「どォしてそォなる」

美琴「だってアンタお昼コーヒーしか頼んでないじゃない。何だか借りを返した気がしないのよ」

一方通行「別にオマエが気にすることじゃねェよ」

美琴「これはあくまで私の自己満足よ。大人しくアンタは奢られてなさいよ」

一方通行「……チッ、わかった、好きにしろ」

美琴「ちょっと待っててねー、すぐ選んでくるから」

一方通行「俺の電極の電池が切れる前には戻ってこいよ」

美琴「善処するわ」タッタッタ

一方通行「戻ってくる気ねェだろオマエ」


一方通行「……はァ、ケーキなンざ買ってくるなンて言わなきゃよかったかもなァ」

一方通行「まァ、それも今さらな話だがな」

一方通行「…………」

一方通行「あァ、コーヒー飲みてェなァ……」

一方通行「…………」




一方通行「……何の用だ第五位」ギロッ




食蜂「……ふふふ、あれぇ気付かれちゃってたぁ?」スッ



一方通行「オマエからはよくわかンねェが気持ち悪りィモンを感じンだよ、オマエ自身気付いてねェよォだがなァ」

食蜂「もぉうなんなのよぉ、乙女に向かって気持ち悪いなんて言ったらダメなんだゾ☆」

一方通行「うっとォしいから普通に喋れ」

食蜂「私はこれが普通の喋り方よぉ、操祈ちゃんの個性なんだゾ☆」

一方通行「だからそのうっとォしい語尾をやめろっつってンだろォが!」

食蜂「アナタの言ってることがよくわかんなーい。私はフツーに喋ってるのにぃ」

一方通行「消えろクソガキ」

食蜂「ひどぉい! それが恩人に対しての態度なのかしらぁ?」

一方通行「恩人だァ?」

食蜂「アナタが学舎の園の入り口で困っていたのを助けてあげたのは、実はこの私なんだゾ☆」

一方通行「……あの不自然な態度の変わりよォ、やっぱりオマエが原因か」

食蜂「あら気付いてたのぉ?」

一方通行「言っただろォが。オマエからは気持ち悪りィモンを感じるってなァ」

食蜂「……まぁ、そういうわけで、アナタが変態扱いされるのを免れることができたのも私の洗脳力のおかげよぉ、第一位さん?」

一方通行「ッ!?」キョロキョロ

食蜂「大丈夫大丈夫、安心してちょうだい。ここにいる人たち私たちを認識することはできない、そういう風に私がしたから♪」

一方通行「胸糞悪りィ能力だな」

食蜂「自覚はしてるわぁ、でもそーいうの関係ないわよねぇ? だって私の改竄力ならその胸糞悪いという感情を快感に変えることだって簡単なんだからぁ♡」

一方通行「そォかよ」

食蜂「ま、それでも例外はいるわぁ。例えばあそこでケーキを選んでる御坂さん。彼女のまとってる電磁バリアーが邪魔で私の干渉力を受け付けないのよねぇ」

食蜂「そしてアナタもその例外の一人よぉ。『反射』という絶対的な防御力を持つ一方通行さん?」

一方通行「…………」

食蜂「でもでもぉ、今はその圧倒的なチカラは使用不可。私がこのリモコンのスイッチを押すだけでアナタは操り人形状態」

一方通行「……で?」

食蜂「ん?」



一方通行「俺はどンなリアクションをとればイインだァ? 泣いて許しを請えばイイのかァ? 靴舐めて絶対服従宣言すりゃイイのかァ?」

食蜂「くすっ、それも面白いけどぉ、今はそんな気分じゃないわぁ」

一方通行「だったら何の用だ? 用がねェならとっとと失せろ」

食蜂「用がないと話しちゃいけないのかしらぁ?」

一方通行「いけねェなァ、生憎だが俺はオマエが大嫌いだからなァ」

食蜂「残念ね。私は結構アナタのこと好きなのにぃ」

一方通行「心にもねェこと言ってンじゃねェよ。精神系最強の能力を持ってンなら自分の心操ってからそォいうセリフ吐け」

食蜂「そうねぇ、次からはそうするわぁ」

一方通行「…………チッ」

食蜂「そーいえばどうしてアナタはこんなところにいるのかしらぁ? たしか甘いものは苦手じゃなかったぁ?」

一方通行「お得意の読心能力でも使ったらどォだ? オマエなら一発だろ?」

食蜂「ダメよぉ、アナタ今脳みその中空っぽにしてるでしょ? そーいうのはいくら私でも読めないわぁ」

食蜂「…………まぁでも」スッ

食蜂「私が本気を出せば表層から深層まで全ての心理を文字通り掌握することも可能よ。そんなにして欲しいならしてあげてもいいケドぉ?」

一方通行「…………」

食蜂「……ふふっ、今はやめておくわぁ」

一方通行「あン?」

食蜂「今やったら後ろにいるお姫様に怒られちゃいそうだもん☆」



美琴「……アンタぁ……!」ギリリ




食蜂「こんにちは御坂さん♪ 今日もいい天気よねぇ」

美琴「ふざけんじゃないわよっ! アンタはまた私の知り合いに……!」

食蜂「別にぃ何もしてないわよぉ。そんな言いがかりを付けられても私困っちゃうんだゾ☆」

美琴「この野郎っ……」ビリッ

食蜂「あっ、あと御坂さん。今はあんまり大声とか出さないほうがいいわよぉ」


アレハミサカサマトショクホウサマ? フタリシテイッタイナニヲヤラレテイルノデショウカ? ケンカデショウカ?


美琴「ッ!?」

食蜂「ちょっと手が滑って能力解除しちゃった。てへぺろ☆」

一方通行「オイ超電磁砲、少しは落ち着いたらどォだ」

美琴「でも……!」

一方通行「あァいうヤツと対峙するときは冷静になることだ。じゃねェと自分の足元すくわれかねねェからな」

美琴「…………」

食蜂「さぁて、そろそろ私もお暇しちゃおうかしらぁ?」

一方通行「さっさと俺の視界から消えろ」

食蜂「また会えるときを楽しみにしてるわねぇ、鈴科さん♪」

一方通行「そン時はそのうっとォしい口調を直せ。話はそれからだ」

食蜂「そのケーキ打ち止めちゃんに喜んでもらえるといいわねぇ」

一方通行「……ッ」

食蜂「くすっ、やっと心を見せてくれたわねぇ。ばいばぁい♪」タッタッタ



一方通行「……チッ、俺もまだまだだなァ。木原のクソ野郎のよォにはいかねェか」

美琴「…………食蜂操祈。一体何のためにコイツと接触しにきたってのよ」

一方通行「帰るぞ」ガチャリガチャリ

美琴「ちょ、ちょっとアンタ待ちなさいよ! 急にどうしたのよ!」タッタッタ



ピーピーピー!!



美琴「……ん? これ何の音?」

一方通行「そォだな。言うならシンデレラの魔法が切れる鐘の音みてェなモンだな」

美琴「うわっ、似合わない言い回しね……」

一方通行「わかってンだよ、言われなくてもなァ!」

美琴「要するにその電極の時間切れの合図ってことでしょ?」

一方通行「そォいうわけだ。つゥことで今から外に出るまで喋らねェから」

美琴「わかったわ。じゃあ行きましょ、外の世界へ」

一方通行「ああ」カチ


―――
――




同日 15:15

-第七学区・とある公園-


一方通行「……あァ、やっとクソみてェな女物の服から開放されたわ」

美琴「お疲れー、こっちからしたらまさかアンタが女装をしてくれるなんて思ってもみなかったわ」

一方通行「そォだな。俺もンなこと思ってもみなかった」

美琴「でも結構似合ってたわよー、最後の性悪女以外はみんな気付いてなかったようだし」

一方通行「嬉しくもねェよ、ンなこと褒められてもよォ」

美琴「しかし着てた服全部捨てるなんてもったいないわね。普通に持って帰ればいいのに」

一方通行「馬鹿言うな。あンなモン持って帰った瞬間、皆から軽蔑の視線を送られるのは俺なンだぞ」

美琴「……彼女のプレゼント! とかにすれば?」

一方通行「ンなモンいると思うか?」

美琴「いないんじゃない?」

一方通行「即答かよ」

美琴「だってそんなのいたら私なんかとこんなことしないでしょ?」

一方通行「そォいうモンか?」

美琴「そういうもんでしょ?」

一方通行「……ハァ、まァ俺には縁のねェ世界の話だけどな」

美琴「もしかしたらあの馬鹿と一緒で自分だけが気付いてないだけ、って可能性もあるわよ?」

一方通行「……そォかもな」

美琴「うわっ、否定しないの?」

一方通行「否定しよォがしまいが関係ねェよ。言っただろ、俺には住み着くことも許されねェ世界だってな」

美琴「…………」



美琴「……じゃ、そろそろ私は帰るとするわ」

一方通行「世話になったな超電磁砲」

美琴「学び舎の園に行きたくなったらいつでも言いなさい。美琴先生がまたコーディネートしてあげるから」

一方通行「行くわけねェだろクソが」

美琴「だったら次から髪切る時はどうするわけ?」

一方通行「…………それまでに新しい店探しとく」

美琴「そ、まあぜいぜい頑張ってちょうだいね」

一方通行「ああ」

美琴「ほいじゃ……ぷぷっ、ば、ばいばーい!」ノシ

一方通行「ハァ? オイ、今何で笑った?」



タッタッタ



一方通行「…………」

一方通行「…………まァイイか」

一方通行「……さァて、俺もバッテリーが切れる前に帰るとするかァ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 15:45

-黄泉川家・リビング-



ガラララ



一方通行「……戻ったぞ」ガチャリガチャリ


打ち止め「わぁーいおかえりー! ってミサカはミサカは元気にお出迎えしてみたりー!」トテチテ

一方通行「出てきてねェじゃねェか。あとうるせェから少しは黙ってろ」

結標「おかえりなさい一方通行。随分と頭がスッキリしたじゃない」

一方通行「まァな。髪の毛を切ることをオマエらに強いられていたからなァ」

芳川「もうツンデレなんてやめて、『打ち止めのために切りました(キリ』って言えばいいのに」

一方通行「そろそろ俺のためにオマエを叩き潰す必要があるかァ?」

黄泉川「んー、個人的にはもう少し短くしてもよかったじゃんよ。こうバリカンでぐいっと」

一方通行「だから坊主なンかにはしねェつってンだろォが」

打ち止め「で! で! で! おみやげのケーキはぁ? ってミサカはミサカは目をキラキラさせながら催促してみたり!」

一方通行「ほらよ」スッ

打ち止め「わー、ありがとうさぎー! ってミサカはミサカは懐かしのネタでお礼を言ってみたり!」

一方通行「オマエらの分もあるから適当に食ってろ。俺はいらねェ」

黄泉川「おっ、いいじゃん? 悪いねー」

芳川「ごちになりまーす」

結標「ありがとー……って、これって『PASTICCERIA MANICAGNI』のケーキじゃない!」

一方通行「ぱすてぃ……何だって?」

芳川「『PASTICCERIA MANICAGNI』。イタリアで有名なケーキ屋ね。日本じゃ学舎の園でしか出店してないわ」

打ち止め「そんなものどうしてあなたが持っているの? ってミサカはミサカは素朴な疑問を浮かべてみたり」

一方通行「あ、ああアレだよアレ。アレをアレなンだよ」

黄泉川「あれあれ言い過ぎて何が言いたいのか全然わからないじゃん」

芳川「ところで一方通行?」

一方通行「ンだよ」



芳川「このケーキがここにあるのと、キミの頭に付いている花形の髪飾りは何か関係があるのかしら?」




一方通行「……ハァ? 髪飾りィ? 何を言って――」スッ


つ『花形の髪飾り』


一方通行「」


打ち止め「わぁーかわいい髪飾りだねー、ってミサカはミサカは素直な感想を言ってみる」

一方通行「」

結標「……一方通行、まさか……?」

一方通行「」

黄泉川「?」

一方通行「」

芳川「これはどういうことかしらね?」ニヤニヤ


一方通行「…………ブツブツ」


芳川「えっ? 何だって?」



シュバァァァ!!




一方通行「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかか――ッ!!」




打ち止め「ぎゃああああああああっ! 久しぶりにキレたー!! ってミサカはミサカは本気で逃走をしてみたり!」ダッ

芳川「これは……プラズマ……!? 風の吹いていないこの室内でどうやってこんなものを……!?」

黄泉川「おおっー、何かこんなの昔漫画でみたことあるじゃん。たしかげんきだ――」

結標「そんなこと言ってる場合じゃないですよ黄泉川さん! 早く逃げましょう!」




一方通行「圧縮圧縮ッー!! 空気を圧縮ゥ!! 跡形もなく全て消し去ってやるよあぎゃはははははははははっ!!」




※暴れだした一方さんは通りすがりの科学者にフルボッコされました。



―――――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

>>1が美容院に言ったことないのが丸わかりの回でしたね
散髪なんて床屋で十分だし(震え声)

あと自分超電磁砲は単行本派なので今美琴と食蜂さんがどんな関係なのか知りません
なのでもしかしたら今回のやり取りは変に見えるかもしれませんがご了承ください


次回『木原家の一日』


就活が忙しすぎてオワタ……
ではではノシ

一方通行「くかきけこかかかk…」
木原数多「うるせぇんだよクソガキがァ!!」ボコッ
一方通行「グヘェ」
木原「ふんッ!!」
一方通行「」チーン


ですね
わかります


投下しまーす!



14.木原家の一日


January Fourth Tuesday 09:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


数多「ふわぁー、火曜日っつーのはどうしてこう面倒臭せぇんだろうな?」

円周「何言ってるの数多おじちゃん。数多おじちゃんは年中無休で面倒臭いって言ってるよね?」

数多「そうだったか? そりゃ気付かなかったわ」

円周「もー、数多おじちゃんはおっちょこちょいだねー」

数多「こういう場合はおっちょこちょいって言わねぇんじゃねえのか?」



ピンポーン!



円周「……あっ、打ち止めちゃんだ!」タッタッタ

数多「走んじゃねぇよクソガキ! オフェスに埃が舞うだろうが」スタスタ

円周「はいはーい。今出るよー!」ガチャ


打ち止め「おっすエンシュウ! ってミサカはミサカは朝の挨拶をしてみたり!」


円周「おはよー打ち止めちゃん! 今日も相変わらず変な語尾だねー」


芳川「おはようございます木原さん」

数多「あぁどうも」

芳川「今日もこの子をよろしくおねがいしますね」

数多「はいはいわかってますよ。積まれた金の分は働きますから」

芳川「では今日は三時くらいに帰れると思うので……」

数多「了解でーす」

打ち止め「いってらっしゃいヨシカワ! ってミサカはミサカは手を振って見送ってみたり」ノシ

数多「いってらっしゃい桔梗おばちゃん!」ノシ

芳川「はいはい行ってきます。あと円周ちゃん、おばちゃんじゃなくてお姉さんよ」



数多「……さぁて、今日の仕事の確認でもすっかなー」ペラッ

打ち止め「キハラー! 人生ゲームしようよー、ってミサカはミサカは箱からボードを取り出しながら誘ってみたり」

数多「お前さっきの俺の呟ききちんと聞いてたか?」

円周「そうだよ打ち止めちゃん! 数多おじちゃんだって忙しいんだよ!」

数多「さすが円周ちゃん。よぉくわかってんじゃねぇか」

打ち止め「うぅ、ごめんなさいキハラ」

数多「わかればいいわかれば。さて、とっとと仕事のかく――」

円周「数多おじちゃんコンビに行こうよコンビニー!」

数多「あれれー? お前さっき俺が忙しいって自分で説明してたよなぁ?」

円周「そんな資料とにらめっこするばかりじゃ体に悪いよ? というわけで散歩がてらにコンビニだね!」

数多「まだにらめっこ始まって十秒も経ってねぇんだけど。さらに言うなら始まってすらねぇんだけど」

打ち止め「いいねーコンビニ! 今から出ればヨシカワに追いつけるかも、ってミサカはミサカはおそらく今マンションから出たであろうヨシカワを思い浮かべながら言ってみたり」

数多「何でコンビニに行くってことになってんだよ。いい加減にしろクソガキども、こっちは仕事があんだよ仕事」

打ち止め「いっつも部下に全部任せてるくせにこういう時だけ仕事して逃げようとしてるよねキハラって、ってミサカはミサカはジト目で睨みながら言ってみたり」ジトー

円周「そうだよねーうんうんわかってるよ数多おじさん。『木原』ならこういうとき相手をジト目で見て精神を不安定にさせるんだよね」ジトー

数多「うるせぇぞテメェら! 目障りだ俺の視界から消えろ!」

打ち止め「はーい」トテチテ

円周「ムカつくから数多おじちゃんの部屋荒らしとくねー」テクテク

数多「一ミリでも物の位置がずれてたらぶち殺すぞ」



数多「…………はぁ、頭痛ぇ……、バファ○ンどこやったっけか?」ゴソゴソ



ガチャ



マイク「おはようございます!」

オーソン「おはようございます!」

ヴェーラ「おはようございます!」


数多「おうこんな時間に来るたぁ中々やる気があんじゃねぇか」



<ワーワーヤッチャエヤッチャエ! <フハハハハハハッ オカシノタメナラミサカハアクニモナレルノダ ッテミサカハミサカハ



ガシャン! ガチャガチャ! ドコーン!



ヴェーラ「……何をやっているのですか?」

数多「……あー、あのクソガキどもが遊んでやがるだけだ。ほっとけ」

マイク「とりあえずオフェスの掃除を始めますね」ガチャガチャ

オーソン「自分は車の整備に行ってきます」

数多「じゃあ俺はガキどもの掃除でもしてくっかなぁっと」スタスタ


<ウワァーヤセイノアマタオジチャンガアラワレター!! <コレハマズイ ッテミサカハミサカハセンリャクテキテッタイヲ <トットトカタヅケロクソガキドモ!!



ゴチン!!



ヴェーラ「…………」

ヴェーラ「私も掃除しよ」ガチャガチャ



―――
――




同日 10:00 ~朝礼~

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


数多「――さーて今日のテメェらのお仕事の説明をはっじめまーす!」


マイク「…………」

オーソン「…………」

ヴェーラ「…………」


数多「まずマイク。テメェはいつものババァの飼ってる犬の散歩。それが終わったら第五学区のいつもの大学にいって清掃活動な」

マイク「了解です」

数多「次にオーソン。荷物が届いてる。これを『屋台尖塔』の方に届けろ」

オーソン「はい」

数多「ヴェーラは事務だ。資料やらなんやらが溜まってっからな」

ヴェーラ「わかりました」


数多「ほいじゃ、さっさと働けクズども」



三人『イエッサー!』




数多「……さて、仕事だ仕事」カタカタカタ

円周「何やってるの数多おじちゃん? こんな時間からえっちぃサイトでも巡回してるのー?」

数多「んなわけねぇだろうが。どう見ても仕事をしている真面目なサラリーマンだろうが」

打ち止め「顔に刺青入れてるサラリーマンなんて見たことないよ、ってミサカはミサカは指摘してみる」

数多「こまけぇこたぁいいんだよ。ガキどもは隅っこで遊んでろ」

円周「人生ゲーム飽きちゃったよ。ちょっと力の量をいじればルーレットなんて普通に調整できるし」

打ち止め「だからミサカはテレビゲーム版の人生ゲームが欲しい! ってミサカはミサカは借金まみれの経歴を隠しながら要求してみたり」

数多「ったく、そこまで遊びごときでマジになってんじゃねぇよ。わぁったわぁったいつか買ってやるから隅っこで遊んでろ」

打ち止め「わぁーい話が最初に戻っちゃったよ、ってミサカはミサカは無限ループの怖さを味わう勇者のような気持ちになってみたり」

円周「どうせだからあの隅っこの壁をぶち壊して打ち止めちゃんたちの部屋につながるトンネルを作ろうよ! そしてらいつでも遊べるよー」

数多「おいおいふざけんなよクソガキ。無茶して怒られんのは俺なんだぞ?」

打ち止め「そうだよエンシュウ! ミサカもヨミカワには怒られたくない、ってミサカはミサカは体をぶるぶると震わせてみたり」ブルブル

円周「そっかー残念だねー」

数多「……はぁ、おいヴェーラ」

ヴェーラ「何でしょうか社長」

数多「人生ゲームのテレビゲーム版を注文しといてくれ」

ヴェーラ「わかりました……ええと」カタカタカタ

ヴェーラ「……いろいろ種類がありますがどうしましょうか」

数多「あー、とりあえず一番新しいの買っとけ、面倒臭せぇ」

ヴェーラ「了解です」カチ


―――
――




同日 12:00 ~昼休み~

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



打ち止め「――はーい! お昼の時間だよー! ってミサカはミサカは空腹を感じながら時間報告してみたり」



数多「るせぇな、適当にカップ麺でも食ってろ」

円周「……あっ、もしもし。お寿司の特上を一つお願いしまーす」

数多「おいテメェ、何勝手にいいモン頼んでんだ!」

打ち止め「じゃあミサカも特上お寿司がいいー! ってミサカはミサカは要求してみたり」

円周「うんわかってるよ……あとお子様セット一つで」

打ち止め「ちょっとちょっとエンシュウー! ミサカも特上だよ! ってミサカはミサカは訂正を求めてみたり!」

数多「お子様セットで十分だろ。つーか円周ちゃーん? ちょっとその受話器寄越してみよぉか?」

円周「うん、うん、わかってるよ数多おじさん。『木原』ならこういうときはこうするよね」ダッ

数多「おらっ円周ぅ!! 逃げ回ってんじゃねぇぞコラッ!!」ダッ



バタバタドタドタパリーンガシャーン!!



ヴェーラ「……はぁ、また掃除しなきゃいけないわね」



ガチャ



オーソン「ただいま戻りました!」

ヴェーラ「あら、おかえりなさいオーソン」

オーソン「社長は?」

ヴェーラ「ご覧の通りよ」

オーソン「……あぁ」


数多「ったく、こう何度も高級料理を頼まれたらこっちの金が全部吹っ飛ぶじゃねぇか」

円周「ちっ、あともう少しでお寿司が手に入るところだったのに」

数多「テメェは唯一の野郎に金もらってんだろうが。それで好きなもん食ってろよ」

円周「私は『木原』だからね、他人のお金で食べるメシはうまい! って感じなんだよー」

数多「いつから『木原』っつーのはこんなに小さくなっちまったんだ?」

オーソン「社長! ただいま戻りました!」

数多「おう、特に問題はねかったか?」

オーソン「大丈夫です!」

数多「だったら昼休憩だ。適当に休んでろ」

オーソン「了解です!」

数多「あとマイクの野郎が帰ってきたら休みだって伝えといてくれ」

オーソン「はい!」



打ち止め「ねえねえ! エンシュウってそんなにお金持ってるの? ってミサカはミサカは好奇心を働かせてみたり」

円周「うん持ってるよ! ゲームショップに行ってゲームハードを全色全種類余裕で大人買いできるくらいは持ってるよ!」

打ち止め「おおっー! 何だかよくわからないけどすごそうだね、ってミサカはミサカはとりあえず驚いてみる」

円周「まあまあ『木原』にとってお金があるないなんて些細な問題だよねー」

打ち止め「キハラはいっつも金、金、言ってるような気がするけど、ってミサカはミサカは普段のキハラを思い出してみたり」

円周「数多おじちゃんはあれだよ、一時のテンションに身を任せてしまったから……このざまだぜ!」

打ち止め「可愛そうなキハラ……ってミサカはミサカはハンカチを取り出して嘘なきしてみたり」シクシク

円周「そうだねー可愛そうだよねー数多おじちゃん」

数多「本人のいる前で勝手に可愛そう判定すんじゃねぇよ! あと俺は身を滅ぼしてねぇ!」

打ち止め「結局ミサカの今日のお昼は何なのかな、ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

数多「寿司のお子様セット」

打ち止め「ぐわああああああっ!! まさかのお子様セットだとォおおおおおおっ!? ってミサカはミサカは床を叩きながら悔しがってみたり!」ドンドン

円周「ひどいねー数多おじちゃん。こんなイタイケな女の子のお昼ご飯をお子様セットにするなんて……児童相談所に訴えれば勝てるね」

数多「うるせぇよ、つーかそんなことで相談所は動くわけねーだろ」

円周「大丈夫だよ打ち止めちゃん。私の特上お寿司セットのガリ辺りを分けてあげるからね!」

打ち止め「わぁーい! ってミサカはミサカは喜ぶべきなのかわからないけどとりあえず喜んでみたり!」

数多「勘違いすんじゃねーぞ円周。テメェの分もお子様セットだ」

円周「まさに外道!」



~三十分後~


オーソン「……社長。寿司が届きましたよ」


数多「おう、そこに置いといてくれ」

打ち止め「わーい、待ちに待った昼食だ! ってミサカはミサカは飛びついてみたり」バッ

円周「って、何だこりゃー? 数多おじちゃんのお寿司が特上……だと?」

打ち止め「おやおや、それは本当ですかなエンシュウ? ってミサカはミサカは怪しい老人風に尋ねてみたり」

数多「当たり前だろうが。お前らガキ、俺大人。わかるかなーん?」

円周「うわーこれはひどい。大人という権力を行使して自分だけ甘い汁を吸おうとしてるよ」


数多「なぁにが甘い汁だ。これは俺のポケットマネーで買ったんだぜ? つまり当然の対価を払って手に入れてるっつーわけだ」

数多「お前らみてーにただ口を開けてエサを待ってるだけの雛鳥ちゃんとは違うんだよ」

数多「だから大人しくお子様セットの付属品のおもちゃで遊びながらぜいぜい安っぽい寿司ぃ楽し――ん?」


円周「うん、うん、やっぱり大トロはおいしいねー」モグモグ

打ち止め「タマゴでさえこのおいしさだと……!? ってミサカはミサカは特上品のおいしさに絶句してみたり」モグモグ




数多「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!! 何勝手に食ってんだクソガキどもぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」





円周「いやー数多おじちゃんの話が長すぎて待てなかったよ。ごめんねー数多おじちゃん」モグモグ

打ち止め「キハラ。世の中は弱肉強食だよ! 早いほうが強いんだよ! ってミサカはミサカは世界の理について語ってみたり」モグモグ



ゴッ!!



円周「ばごヴぇるごぶちゃえ!?」

打ち止め「あうっ!」


数多「……さぁーて、数多おじさん怒っちゃったよぉー、面倒臭せぇーけど怒っちゃったよぉ?」


円周「……う、うん、わわわかってるよあああまたおじちゃん。きききはらならここで――」ガクガクブルブル

打ち止め「あわわわわわわ」ガクガクブルブル



数多「今さら謝っても許さねーからなぁ? みっちり教育をしてやるよクソガキども」ゴキゴキ



打ち止め「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!! ってミサカはミサカは真後ろに向かって全速前進だっ!!」ドタドタ

円周「『木原』ならここですみやかに退場ぉー!!」バタバタ



数多「悪りぃがこの木原数多を怒らせた時点でテメェらに逃げ場はねーんだよぉ!!」ダッ



バタバタドタドタパリーンガシャーン!!



ヴェーラ「……また掃除をしなきゃいけないのかしら?」

オーソン「ちょっと吉野家行ってくる」スタスタ


―――
――




同日 13:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



数多「……さて、午後の仕事はデスクワーク。社蓄のように働けゴミども」



マイク「了解」カタカタカタ

ヴェーラ「はい、こちら『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』です。ご用件は?」

オーソン「…………」カキカキ


打ち止め「ふわぁー、この時間帯は暇な上に眠いねー、ってミサカはミサカは目をこすりながら呟いてみたり」

円周「何か眠気を吹き飛ばせるようなイベントがあればいいのになー」

打ち止め「例えば?」

円周「謎のテロリストがこの部屋に侵入してきたり?」

打ち止め「わー、あれだねー! テロリストの隙を突いて鉄砲とかを奪うんだね? ってミサカはミサカは中二的な発想をしてみたり」

円周「鉄砲を奪うのは情弱のすることだよ。情強はテロリストのアシを破壊して、逃げられなくなったところをじわじわといたぶってあげるんだよー」

打ち止め「……そもそも普通はいたぶるところができないから鉄砲を奪うんじゃないかな? ってミサカはミサカは反論してみたり」

円周「銃弾なんて余裕で避けられるよ。万が一のときはここの人たちを盾にすればオッケーだし」

打ち止め「それはどうかと思うけど……」

円周「そもそも侵入する前に叩くの理想だよねー、入り口とかに地雷とか仕掛けて」

打ち止め「……あれ? 仕掛けてないよね地雷!? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり!」

円周「はじめは仕掛けようとしたんだよー? でも数多おじちゃんに怒られちゃって」

数多「テメェは人の客を爆死させるつもりか」



円周「まあそんなわけで、ここの部屋はテロリストはおろか幼稚園児でも簡単に侵入をすることができるザルセキュリティってことだよー」

打ち止め「いや、さすがに幼稚園児は無理だと思うよ、ってミサカはミサカはすかさずツッコンでみたり」

数多「あぁ? 馬鹿言ってんじゃねぇよ、ここのセキリュティ舐めんな。テロリストはおろかテメェでも容易に侵入できねーよ」

円周「ええっーそんなー。あの程度のトビラくらいちょこっと道具を使えばすぐ打ち破れるよー」

数多「それは進入じゃなくて強行突破だろーが」

円周「同じだよー。よーはここに入ってくればいいんだしねー」

打ち止め「むむむ、ミサカには難しい話しすぎてさっぱりだぜ、ってミサカはミサカは諦めてオレンジジュースを飲んで一服してみる」ゴクゴク



ピンポーン



数多「あん? 客か? 珍しい」

円周「言ってて悲しくならないの数多おじちゃん?」

数多「うるせぇよ、おいヴェーラ出てこい」

ヴェーラ「わかりました」スタスタ


打ち止め「本当に珍しいよねー。初めてじゃないかなー? ミサカがここに来るようになってから、ってミサカはミサカは今までのことを思い返してみたり」

円周「それだけこの会社が信用されてないってことだよ。現に仕事のほとんどは裏の仕事だし」

数多「余計なこと吹き込んでんじゃねぇよ円周」



<ハーイドナタデ―キャッチョットアグッ!?



ガシャン!!




数多「あぁ?」

円周「ん?」

打ち止め「えっ!?」



イヌロボ達『…………』ウィーン



数多「……何だこいつら?」

打ち止め「い、犬だ! 犬型のロボットだよ! ってミサカはミサカは指差しながら報告してみたり」

円周「……五、六、全部で七体だねー」

数多「たしかこいつらって『T:GD(タイプ:グレートデーン)』とかいうヤツじゃねかったっけなぁ?」


イヌロボ1『……ふふふ、よくご存知ですね』


打ち止め「犬が喋った! ってミサカはミサカは素直に驚いてみたり」

円周「ロボットだから喋ってもおかしくないよー」

数多「んだぁ? ゾロゾロと人ン家の中に土足で上がりこみやがって、犬の散歩のコース間違えてんじゃねぇのか?」


イヌロボ1『こんにちは木原数多さん。今回僕がここにきたのはあるお願いがあるからです』


数多「お願い? いきなりじゃねぇか、そりゃ仕事っつー意味で捉えて構わねぇんだな?」



イヌロボ1『はい』



数多「なら言ってみろ。こちとら金さえ出せば何でもしてやるぜぇ?」





イヌロボ1「では『最終信号(ラストオーダー)』を引き渡してください』



打ち止め「……え」

数多「あん? このガキのことかぁ?」


イヌロボ1『ええ、そうですよ』

イヌロボ1『僕たちは上層部から依頼を受けてここまで来ました。内容はただ『最終信号(ラストオーダー)を回収せよ』と書いてあるだけでした』

イヌロボ1『そういうわけで引き渡して欲しいのですが。あなたも上層部を敵に回したくはないでしょう?』


数多「……あー、つまりあれかぁ? 俺のしようとしてたことを代わりにテメェらがやるってことかぁ?」


イヌロボ1『そう考えてもらって構いません』


数多「ったく、まだ懲りてねかったのかあの野郎は……」


イヌロボ1『では引き渡してくださいますか最終信号を』


数多「残念だがこの子は大事なお客様から預かってる子でねぇ、ただっつーわけにはいかねぇんだわ」


イヌロボ1『そうですか。では報酬を払うとしましょう。こちらもそれなりに予算が下りていますからね』


数多「ほぉ……いくらだ?」

打ち止め「……き、キハラ?」



イヌロボ1『……その子を引き渡してくだされば、あなたに三億円そのままを差し上げましょう』




打ち止め「さ、三億っ! ってミサカはミサカは驚愕の表情を浮かべてみたり」

数多「ぎゃはっ、サラリーマンの生涯年収分くれるってかぁ? 太っ腹だねぇお前ら」

打ち止め「えっ、キハラ……まさかミサカを売るつもりなの……?」

数多「いやいや俺だってさぁ、正直生きるのに疲れてたわけよ。残りの人生楽に過ごしてぇなんてこと思ってるわけだ」

数多「楽に過ごすってことは必然的に金が必要になる。その必要なモンがお前を向こうに差し出すだけで手に入る。利率がすげーことになるよなぁ?」

打ち止め「え、う、嘘だよね……キハラぁ、ってミサカはミサカは涙目になりながら尋ねてみる」

数多「……おい犬っころ」


イヌロボ1『何でしょう?』


数多「売ってやるよ、この視界に入るだけでうっとおしいクソガキをな」

打ち止め「!?」


イヌロボ1『懸命な判断ですよ木原数多。では最終信号を引き渡――』



数多「――ただしこいつの価格は『十億』だ」



イヌロボ1『じゅ、十億!? 何を馬鹿なこと言っているんですか!?』



数多「別に馬鹿なことは言ってねぇよ。人の命は金には換えられねぇとかクソくだらねぇこと言うつもりはねぇよ」

数多「だがあのクソガキがコイツにかけた金は十億っ! つまりこのガキはそれだけの価値があるってことだよなぁ!?」

打ち止め「……キハラぁ」グスッ

数多「あぁ泣くんじゃねぇよ。テメェを守ることが保護者様の依頼なんだからよぉ、クライアントの要望にはきちんと答えねぇとなぁ」


イヌロボ1『……交渉決裂……というわけですか?』


数多「あん? まさかテメェら『メンバー』はたった十億すら出せねぇ貧弱組織なのかぁ? 笑っちまうぜぎゃははははっ!」


イヌロボ1『……ほぅ、いつから気付いていたのですか? 僕たちが『メンバー』だと』


数多「そんな悪趣味なおもちゃ使うヤツらなんざ、あの趣味悪りぃクソジジィが率いてるテメェらぐれーだろうが」


イヌロボ1『いいでしょう。ここからは実力行使と行きましょう』



バキッ! ゴバッ!



マイク「ぐわっ!?」

オーソン「がはっ!?」


打ち止め「わっ、マイク! オーソン!」


イヌロボ1『T:GD(タイプ:グレートデーン)』七機。それに比べてあなたは一人。守りきれるかなー? そのクローンを!』



数多「……あー、わかってねぇなーお前」


イヌロボ1『何がだ?』


数多「そりゃ、お前……あれだろ」



数多「お前らは一体誰を敵に回しているのか、ってことをだクソガキ」ギロ



イヌロボ1『……やれ! 『T:GD(タイプ:グレートデーン)』!!』

イヌロボ2『!!』バッ



数多「下がってろクソガキ」

打ち止め「で、でも武器は!? 素手でどうするつもりなの、ってミサカは――」

数多「武器だぁ? いらねーよこんなゴミども相手になんか」



イヌロボ『!!』ウィーン



シュバババババッ



数多「よっと」スッ


イヌロボ2『!?』


数多「ひゃはっ、ほらよっ」



ガゴン!!



イヌロボ2『ジジージージー』キュイーン



イヌロボ1『な、なにぃ!? T:GDがパンチたった一発でっ!?』


数多「別に何も驚くことはねぇだろうが。外装をいくらガチガチのメタルで固めようが、中身のコンピュータはネズミでも破壊できるくれぇ脆い」

数多「だったら簡単だ。直接そのコンピュータ部分を叩けばいい」


イヌロボ1『わ、わけがわからないぞ……一体どうやってそんな……』


数多「どうやってって……そりゃ外側から殴った衝撃を、全部中身のコンピュータ部分に持っていきゃいい話だろ?」


イヌロボ1『ちょっとよくわからないです』


数多「ったく、これだから低脳相手に会話するのは疲れるんだよ。まず聞くが俺は誰だ?」


イヌロボ1『……木原数多』


数多「そういうことだ」


イヌロボ1『い、いやわけがわからないぞ!』


数多「小学校で習わなかったのかぁ? 『木原』は何でもできるスーパーマンだってなぁ」


イヌロボ1『そんなこと習うか!!』


数多「俺ぐらいの天才になるとなぁ、金槌のような打撃の力を顕微鏡クラスの精密レベルで操れんだよ」

数多「岩の上にいるカエルがいたとする。そのカエルだけ殴って下の岩だけ破壊するってことも余裕でできんだよ俺は」


イヌロボ1『そんな馬鹿な! そんな馬鹿なことがあるわけ――』


数多「まぁ、んなことどうでもいいけどよぉ、周り見てみろよ」


イヌロボ1『……えっ』





ゴキャッ、バキャ、メリッ、グシャ、ガキン!!



円周「……うん、うん、わかってるよ数多おじさん。『木原』ならバレないように相手の数を減らすことなんて造作もないことだよね」ピーガガガ



イヌロボ1『い、いつの間に!? T:GDが僕以外全滅っ!?』


数多「いやぁー間抜けな話だよな。敵と仲良く談話してたらあっという間に形勢逆転。ホント愉快愉快」


イヌロボ1『くっ、出来損ないの『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』に僕が負けるなんて――』


数多「あー違う違う。今はそーいう名前じゃなくて……」



ヴェーラ「私たちはッ!!」スッ

マイク「『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』だッ!!」バッ

オーソン「覚えとけタコッ!!」ゴゥ



イヌロボ1『ッ!?』



ガシャン!!!



数多「 ……『HsLH-02』か。随分と利口なモン使えるようになったじゃねぇか」





イヌロボ1『そ、そんな……』ガガガガガ


数多「ひゃはっ、まるで道路に貼り付いてるカエルの死骸みてーだなぁおい」ケラケラ


イヌロボ1『……お前は絶対後悔するぞ! 木原数多! お前を狙う刺客たちがさらに強力な戦力を持って再び襲い掛かるぞ!!』


数多「ぎゃはっ、おいクソガキ。じゃあ上のヤツラに伝えとけ」






数多「俺らを殺すんだったら第三位の『FIVE_Over(ファイブオーバー)』の百機くれぇ持って来い、ってなぁ!」スッ






ガシャン!!



数多「ま、その程度で殺されるほど楽な生き方してねぇんだけどな。なぁ、アレイスター?」



―――
――




同日 15:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



ピンポーン



芳川「こんにちは――って」



ボローン



芳川「な、何!? 強盗!?」


打ち止め「おかえりヨシカワー! ってミサカはミサカはお出迎えしてみたり」トテチテ

芳川「何があったの打ち止め?」

打ち止め「うーんと、ちょっとテロリストに襲われちゃったかな? ってミサカはミサカは簡潔に説明してみたり」

芳川「て、テロリストっ!?」

数多「ああ、芳川さんこんちはーす」

芳川「テロリストが来たって本当!?」

数多「テロリスト……って言えばテロリストかぁ? まぁゴミクズが来たのは本当だな」

芳川「だ、大丈夫? 怪我とかされてないですか?」

数多「別に問題ねぇよ。まだあのクソガキを相手にしたほうが楽しめる戦いでしたわぁ」

円周「大丈夫だよー! 私たちがいれば、打ち止めちゃんには傷一つ付かないからー!」

芳川「そ、そう。よかったわ……」ホッ




数多「…………っつーわけでこれからも『従犬部隊(オビディエンスドッグ)』をよろしくお願いしまーす」




――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

安定の擬音系バトル
タイトルで他の木原が出るとか思った人もいるかもしれませんがそんなことなかったぜ! すまん


次回『奨学金』


久しぶりにあわきん回
ではではノシ


投下します



15.奨学金


January Fourth Friday 16:00 ~放課後~

-とある高校・一年七組教室-


上条「よっしゃー! 今日は奨学金が振り込まれる日だー!」


土御門「よかったなぁカミやん。これで朝晩モヤシ生活を脱出することができるにゃー」

一方通行「バイトしててなおそンな生活を強いられるなンざァ、相変わらず元気にしてそォだな暴食シスターは」

上条「ああ本当に元気だぜ。正月の時は餅とかいろいろあったからマシだったけど」

青ピ「ほんま災難やなぁ、ウチなんて冷凍庫の奥底に謎のダークマター化した餅がゴロゴロ転がってるぐらい余ってるでー」

上条「くれっ! いらなくて捨てるくらいならくれっ!」

土御門「モヤシと餅を合わせてもおいしくはないと思うにゃー」

上条「モチを舐めんじゃねえぞ! あれの腹持ちのよさはすごいんだぜ。朝食に一つ食えば昼いらねえな」

青ピ「さすがにそれは言いすぎやろ」

上条「たしかに言い過ぎかもしれねーがあれはすげえぞ。実家から送られてきたときは泣いて喜んだな。インデックスともども」

土御門「向こうもそこまで喜んでくれるとは思わなかっただろうな」

一方通行「くっだらねェ」



結標「一方通行!」テクテク

一方通行「あァ? 何だ?」

結標「帰りにコンビニ寄っていい?」

一方通行「別に構わねェが……何か用か?」

結標「ちょっとね、手持ちが少なくなってきたからお金下ろそうかなって思って」

一方通行「カードでも作ればイイだろォが」

結標「いやよ、何か怖いし」

一方通行「何が怖いのかさっぱり理解できねェンだが」

結標「私の知識が『クレジットカードは恐ろしい!』と警告しているのよ」

結標「それに最近やけにカード会社から勧誘の資料が送られてくるから余計に怖いし……」

一方通行「使い方を誤らなけりゃ何の問題もねェよ」

結標「まあそうかもしれないけど……」

一方通行「別に無理にしろとは言わねェよ。オマエがしたいよォにすればイイ」

結標「……うん、じゃあ私は現金主義を貫くわ!」

一方通行「うわっ、効率悪りィ」

結標「何で速攻否定されるのよ!」



結標「というわけで今日はこれで帰るわ。じゃあね!」ノシ

吹寄「ばいばい! また月曜日ね!」

姫神「さようなら」

上条「またなー二人ともー」

土御門「じゃあなー」

青ピ「バイビー、アクセラちょわーん!」


一方通行「おォ。あと青髪ピアスは死ね」


青ピ「何でやー!アクセラちょわーん!?」


一方通行「俺の癇に障ってンじゃねェよ、ゴミクズ野郎」

上条「大体何だよちょわーんって」


―――
――




同日 16:30

-第七学区・とある高校付近のコンビニ-



ウィーン



店員「いらっしゃいませー!」



結標「じゃあちょっと行ってくるわねー」テクテク

一方通行「おォ、さっさと済ませろよ」

結標「わかってるわよ」タッタッ


一方通行「……はァ」

一方通行「……さァて、俺ァ缶コーヒーの補充でもすっかなァ、と」ガチャ

一方通行「…………」ガチャリガチャリ


一方通行「……おっと、そォいやここのコンビニはあの銘柄は置いてねかったっけなァ」

一方通行「しょうがねェ、前飲ンでたヤツで我慢するか」

一方通行「我慢っつっても一ヶ月前にハマってたヤツだからなァ。もしかしたらまたハマるかもしれねェ」

一方通行「世の中ポジティブにいかねェとなァ……」

一方通行「…………」

一方通行「我ながら似合わねェセリフだなァオイ」ハァ

一方通行「くっだらねェ、とっととコーヒー買うか」ガチャンガチャン




結標「――ええええええええええええええええっ!!?」




一方通行「あン?」ガチャンガチャン



結標「あわわわわわわわわわわわ」

一方通行「どォした結標? キャッシュカードでも飲まれたか?」

結標「あああ一方通行……」

一方通行「あン? 声震えさせてどォしたオマエ。マジで飲まれたかァ?」

結標「な、な、何か……増えてたの……」

一方通行「増えてた? 体重がか?」



ゴッ!



結標「んなわけないでしょうが!! 何でコンビニまで来てわざわざ体重なんて測らなきゃいけないのよ!!」

一方通行「痛ってェ……! 軍用懐中電灯で殴ンじゃねェよ、普通に人を殺せるレベルの鈍器だぞそれ」

結標「貴方が失礼なこと言うからでしょ! ……たしかにお正月のときはお餅とかちょっと食べ過ぎちゃったけど……」ボソ

一方通行「やっぱり増えてンじゃねェか体重」



ゴッ!



結標「ふ、増えてないわよ!!」

一方通行「わかったから殴ンじゃねェ!」



一方通行「で、何が増えたンだよ」


結標「その……わ、私はお金を引き出すために自分の口座を開いたのよ」

結標「そうしたら……増えてたのよ。残高が……!」


一方通行「…………」

結標「…………」

一方通行「…………はァ」

結標「…………?」


一方通行「当たり前だろォが!」


結標「えっ!?」ビクッ


一方通行「忘れたかァ!? 今日は奨学金が振り込まれる日だ!」

結標「わ、わかってるわよ! それを差し引いても増えすぎているのよ!」

一方通行「……どォいうことだ?」

結標「知らないわよ! 私の予想してた額の十倍は増えてる気がするわ」

一方通行「…………待てよ」

結標「何よ」

一方通行「オマエってもしかしなくてもレベル5だよなァ?」

結標「う、うん、まだ公には出てないはずだけどね」

一方通行「強度が上がったンなら奨学金の額も上がるのが自然だよな?」

結標「……まさか、私がレベル5になったからこんなにお金が増えてたってこと?」

一方通行「それ以外考えよォがねェだろォが」

結標「……しかしレベルがたった1上がっただけでこんなにも増えるものなの?」

一方通行「そりゃレベル5っつゥモンは貴重だからな。学園都市の中でオマエ含めて八人しかいねェンだから、それに大金つぎ込むのが普通だろ」

結標「まあ言われてみればそう、かな?」

一方通行「だから別に怪しい金とかじゃねェから安心しろォ。オマエが思ってるよォな詐欺とかじゃねェから」

一方通行(まァ、このレベル5ビイキ自体、怪しいっつゥレベルじゃねェけどな)

結標「……うん、わかったわ。じゃあ気にせずこのお金は使わせてもらうわ」

一方通行「しかしよォやくわかったな。やけにカード会社からの勧誘がくる理由ってのがな」

結標「どういうこと?」


一方通行「レベル5はこの学園都市の中じゃ大富豪みてェなモンだ。つまり一番高い買い物をするお客様ってことになる」

一方通行「その買い物でカード払いしたときに出てくる手数料、よォするにおこぼれがヤツらの利益だ」

一方通行「デカイ買い物をすればそれが大きくなるンだから、どの会社もそれが欲しィから我先にと契約を勧めるっつゥわけだ」



結標「……つまり私がレベル5になったってことがバレてるってこと?」

一方通行「そォなるな」

結標「な、何で!? これってたしか機密事項とか何とか書いてあった気がするんだけど!?」

一方通行「そりゃあくまで俺らにとってはだろ。そンな情報裏じゃもしかしたら一般常識かもしれねェぞ?」

結標「ううっ、ってことは私の個人情報とかももしかしたら……」

一方通行「流出しまくってるかもなァ?」ニヤァ

結標「ぎゃああああああああっ!! 何かぎゃああああああああああああっ!!」

一方通行「うるせェ黙れ格下ァ、オマエの個人情報なンざせいぜい迷惑メールとかにしか使われねェよ」

結標「それはそれでヤなんだけど!」

一方通行「気にする必要はねェよ。ここに住ンでる時点で個人情報なンざあってねェモンだからな」

結標「……疑心暗鬼になりそうね」

一方通行「だから気にするなっつってンだろォが。そォそォねェぞそれが原因の事件なンてよォ」

結標「……じゃあみんなはそれを知った上で生活してるわけ?」

一方通行「大半は知らねェだろォな」

結標「……聞かなきゃよかった……」

一方通行「また一つ賢くなったって考えりゃイイ、レベル5としてな」


一方通行「わかったらとっとと金下ろしとけェ。俺はレジで会計済ませてくる」ドサッ

結標「相変わらずのコーヒーの山ね」


―――
――




同日 16:45

-第七学区・街頭-


結標「…………うーん」テクテク

一方通行「なァに一人歩きながら唸ってンだオマエ? もしかしてべん――」ガチャリガチャリ



シュバッ!!



一方通行「おわっ!? 危ねェじゃねェかゴルァ!」

結標「あらごめんなさい。貴方が何だか失礼なことを言おうとしているように思えたから」

一方通行「チッ、で何一人難しい顔してンだよ」

結標「いやー、何だか一気に大金が手に入ったから変な気分になっちゃって」

一方通行「ああアレか。貧乏人が宝くじとかで百万くれェ当たっちまって戸惑ってる感じか」

結標「わからないけどたぶんそんな感じね」

一方通行「ンなことで戸惑ってたらこの先確実に壊れていくぞ? 金銭感覚っつゥのがなァ」

結標「……たしかにそうよね。よくよく考えたら毎月あんな大金が入ってくるってわけだしね」

一方通行「さらに言うなら、自主的に実験とかに協力すりゃ一年もありゃあっという間に億万長者だ」

結標「実験?」

一方通行「ああ。学校でするよォな能力開発をもっと突き詰めたよォなモンだ」

結標「へー、そんなものがあるのね」

一方通行「個人的にはお勧めしねェがな」

結標「どうしてよ?」



一方通行「そンな大金が入るよォな実験なンてロクなモンじゃねェよ。蛆虫どもに食いつぶされて、最終的には棄てられるだけだからな」

結標「……ねえ一方通行?」

一方通行「あァ?」

結標「ずっと前から思ってたのだけど、貴方って何でそんなに裏事情、みたいなことに詳しいのよ?」

一方通行「…………」

結標「何でよ?」

一方通行「…………はァ、そりゃまァいろいろあったからな」


一方通行「俺はガキの頃からクソみてェな世界を生きてきた」

一方通行「裏切り、強奪、虐待……場合によっちゃ人殺しなンてザラにあったかもしれねェな」


結標「…………」


一方通行「俺はそれを何とも思わずただ眺めていた。慣れてきちまったンだろォな」

一方通行「そンな生活を続けりゃ自然と最悪な人格破綻者、怪物扱いされるよォなクソ野郎になる。当然だろォな」


一方通行「…………そして、最終的に俺ァ…………」

結標「俺は……?」

一方通行「…………いや、何でもねェ。これ以上は知らねェ方がイイ、お互いにとってな」

結標「…………」


一方通行「まァ、実験に参加するにしろしないにしろ、よく考えて動け」

一方通行「向こう側の研究員の口から出てくる言葉に対しては全て疑ってかかれ。どォすりゃイイのかわからなくなったら俺に聞けばイイ」

一方通行「……もし、どォしよォもねェ事態に堕ちいったっつゥなら……、俺が全力でそれを叩き潰してやる」


結標「…………」

一方通行「まァ、ンなモンに参加しねェのが最良の判断なンだけどなァ」

結標「……うん、わかったわ。絶対にそんな実験ってやつには参加しないわ」

一方通行「ほォ、金はいらねェと」

結標「奨学金の時点でもう十分なんだから、普通に考えていらないでしょこれ以上は」

一方通行「……そォだよな。それが普通の人間の判断だ」

結標「それに……私はそんなことしてるほど暇じゃないしね」

一方通行「あァ? 帰宅部所属バイト無し絶賛ニート中の結標クンが暇じゃないってェ?」

結標「それは貴方も同じじゃない」

一方通行「うるせェよ。で、どォいう意味だよその言葉はァ?」

結標「……まあ、私にはやることがあるってことよ!」

一方通行「やることだァ?」

結標「そっ」

一方通行「何だそりゃ?」

結標「んーと、秘密?」

一方通行「ハァ?」



結標「女の子にはいろいろあるってことよ」

一方通行「女の子()」



ゴッ!



結標「じゃ、一方通行! たくさんお金入ったからどうせだから何か買い食いでもしない? 今なら奢ってあげるわよ?」

一方通行「……オマエ誰に向かってその口利いてンだ? 俺の総資金はオマエの何千倍もあるンだぜェ?」

結標「いいじゃない……そうだ! たしかここの近くの公園にクレープ屋さんがあったわよね? 行かない?」

一方通行「行くかよ。知ってンだろォが俺が甘いモン食わねェことぐれェよォ」

結標「大丈夫よ。たぶん苦いコーヒー味とかがあると思うし」

一方通行「わかってねェなァ、ああいうモンは女子供に売るために作られてンだ。絶対ェ甘めェに決まってンだろォが」

結標「食べてみないとまだわからないじゃない」

一方通行「イイや。コーヒーメインとかほざきながら生クリームとか入れるなアイツらは」

結標「……もう! つべこべ言わずに行きましょ?」ガシッ

一方通行「オイ、俺の手ェ握ってどォするつもりだ?」

結標「私の能力はご存知?」

一方通行「…………チクショウ」

結標「じゃ、無限の彼方へさー行くぞー!」

一方通行「こンな時に使うセリフじゃねェだろそれェ!?」



シュン



―――
――




同日 同時

-第七学区・とある路地裏-



ピュン! ピュン! ピュン!



スキルアウトA「あべし!」

スキルアウトB「ひでぶ!」

スキルアウトC「たわば!」



土御門「……これで片付いたか」ガチャリ



カッ!



スキルアウトD「うわらば!」



ピーリィー、グバシャッ!!



海原「そうですね……」




海原「どうやら彼らは行ったようですよ」

土御門「ったく、まさかここまで連中の動きが早いとはな。少し甘く見ていたか……」

海原「まさか結標さんを直接狙ってくるとは……愚作にもほどがあるでしょうけど」

土御門「だが結標の心に傷をつけるには十分すぎる策だ」

海原「はい。しかし、今はまだこのスキルアウトたちが使われているだけマシでしょうね。向こうが本腰を入れればあっという間にことが進むでしょう」

土御門「……チッ、とりあえず一度隠れ家に戻るとしよう。お姫様たちが待ってることだろう」

海原「お姫様? ふふっ、冗談はよしてください。そんな柄じゃないでしょ彼女たちは」

土御門「何を言っている? お姫様扱いしているじゃないか。少なくとも片方一人には」

海原「自分としてはそんなつもりはないのですが……」

土御門「もしあれが無意識の内の行動ならお前はパシリの才能があるな」

海原「そんな不名誉な才能があっても嬉しくはないですよ」



プップー!



海原「……おや、どうやら迎えが来たようですね」

土御門「そのようだな。じゃあさっさと帰って終わらせるとしようぜ、このくだらない仕事をな」

海原「そうですね……ああ、そういえば」

土御門「どうかしたか?」

海原「たしかあそこの隠れ家はお菓子のストックが少なかったはず……すみませんが一度コンビニによってもらっても構わないでしょうか?」

土御門「やっぱりお前はパシリの素質があるな」ガタン

海原「そんな素質もいらないですよ」ガタン



ブルルルー!



――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

実際に奨学金が振り込まれる日が月末かは知らん
てか今回の一方さんはデリカシーがなさ過ぎますね


次回『グループ』


最近忙しすぎて全然書けない。書き溜めが尽きてきている……
ではではノシ


投下しまーす



16.グループ

January Fourth Friday 17:00

-第七学区・とあるホテルの一室(グループの隠れ家)-



ガチャリ



土御門「おっまたせー! みんなのリーダー土御門さんが帰ってきたぜい!」



シーン



海原「……誰もいませんね」

土御門「にゃー、無視されるとさすがの土御門さんも傷つくぜい」

海原「心にもないことを言わないでください」ガチャ

海原「ふむ、やはり予想通りストックはありませんでしたね」ガサガサ

土御門「どーでもいいけどあんまりグループの予算を菓子で食いつぶすなよ。こちとら余計な食費に割く金なんてあまりないんだからな」

海原「役にもたたない開発部門にお金を回すからですよ。グループを結成してから一度でもまともなものを作りましたか?」

土御門「…………義手?」

海原「あんな悪趣味なものを作る予算があるなら、まだ彼女のためのお菓子やストラップを買ってあげたほうがいいとは思いませんか?」

土御門「残念ながら俺は戦力増強のほうが重要だと思うバトル脳だからにゃー。その意見には同意しかねるぜい」



ガチャリ



????「……あっれれー? 二人とも来てたんだー?」




土御門「……お前こそいたのかにゃー『番外個体(ミサカワースト)』」

番外個体「ミサカは最初からここに引きこもってたよー、ヒッキーはヒッキーらしくさー」

海原「……ッ!? ちょっ、何て格好をしているんですか貴女は!」

番外個体「あっ、ごめんごめん。ちょっとシャワー浴びててさー、着替えとか全部こっちに忘れてきちゃってたわけよ」

海原「何で貴女はこう……!」

番外個体「あれれー? 海原ァ? 顔赤くしちゃってー、照れちゃってんのー? もしかして勃っちゃったー?」

土御門「ほらっ、バスタオルだ」バサッ

番外個体「おっ、サンキュー、リーダーさん」ファサッ

海原「……というか早く服のほうを着てください! 露出狂か何かですか貴女は!」

番外個体「マイルームでそんなことを強要されるとは思いもしなかったなー」

海原「ここはグループの隠れ家の一つです。たしかに住居を目的として作られてはいますが、決して貴女の所有物ではありませんよ」

番外個体「ナ、ナンダッテー」

海原「わざとらしいリアクションはいいですから早く着替えてください!」

番外個体「はーい、じゃあタンスから着るもの適当にとってよ。そっちまで行くのダルいから」

海原「……まったく」ガサゴソ

番外個体「あっ、下着とかはそっちの引き出しだから。あなたのお好みなのをとっていいよー?」

海原「…………はい、どうぞ」スッ

番外個体「……ふーん、思春期真っ盛りよの海原クンはアダルトチックな黒色の下着が好みなのかにゃーん?」

海原「そういうわけではありませんよ。貴女に言われた通り適当にとっただけです」

番外個体「ま、そだよねー。海原の好きそうなタイプのミサカは持ってないよねー、例えばおこ──」

土御門「海原弄りをしているところ悪いが、もう一人はどうしたんだ番外個体?」



番外個体「んー? そういえば見当たらないね。どこ行ったのかなーあのコ」

海原「彼女のことですから、またどこかへ遊びにでも行っているのでしょう。招集時間のことを忘れて」

番外個体「ほほぉー、不良少女のミサカでさえここに来てるってのに遅刻してるワルっ娘が一人いるのかー」

土御門「何か知らないのか?」

番外個体「知らなーい。さっきも言ったけどミサカはアジトの警備員してたからねー。誰か来てたらわかるよ」

土御門「さっきのように気付いていないパターンがあるんじゃないかにゃー? 第一声が『二人とも来てたんだー』だったからな」

番外個体「そりゃないよ。ミサカだって多少ながら電磁波レーダー使えるんだから、誰かが入ってきてたらわかるよ」

土御門「精度はあまり期待できそうにないレーダーだがな」

番外個体「ま、そんなことは置いといて……今日のおやつは何かなー?」ガチャ

海原「あまり食べ過ぎないようにしてくださいよ。……太りますよ?」

番外個体「いいじゃん別にー、今までまともな食事なんて取らされなかったんだからさぁ。こういうときくらい自由を噛み締めさせて欲しいね」

海原「別に止めようとは思っていません。それについては同意見ですから」

番外個体「止められたところでミサカは止まらないけどねー。おっ、コンソメあるじゃんいただき」バリッ



ピンポーン



土御門「おっ? どうやら最後の一人が来たらしいぜい」

海原「……どなたでしょうか?」ピッ




??『──ふざけてんじゃねえよ。何勝手にカギ閉めてんだ、とっとと開けろ海原ァ』



海原「ここは仮にも暗部組織グループの隠れ家ですよ? 開けたまま放置する方がおかしいでしょう?」

土御門「というかグループ全員にカードキー渡してるはずだぜい? それを使って入ってくるといいにゃー」


『い、いや……アレだよアレ、カギをそん中に置いたままにしちまったんだよ』


番外個体「……おっ、ホントだ。テーブルの上に置いてある」ボリボリ

海原「あまりベッドの上に食べカスを落とさないでくださいよ」

番外個体「いいじゃん、どうせ掃除するのは下部組織の連中だし」


??『……つーかよぉ、いい加減開けてくれよ。遅れてきたのは悪かったからさぁ』


海原「駄目です。貴女は毎回毎回……、何回同じことを言うつもりなんですか? 遅刻した数なんて数え切れないんじゃないですか」


??『……って、オイ! 遅刻した回数&カードキー忘れた回数は番外個体もたいして変わんねーだろ!?』

??『それなのに番外個体に対してはいつもお前はおくすることなく笑顔のままロック解除してたじゃねーか!』


海原「彼女の場合能力で電子ロックをハッキングして入ることができます。それが原因で壊されたら困りますから」


??『ふざけんじゃねえっ! どう見ても贔屓じゃねーか、甘やかしてんじゃねーか!』


海原「関係ありませんよ。少しは外で反省したらどうですか? この機器の集音性なら十分話し合いに参加できるでしょう?」

番外個体「ぎゃはははっ、リアル廊下に立ってろ! ってヤツじゃんこれ! どうせなら水を満タンまで入れたバケツでも持ってこようか? もちろん二つ」






??『…………あァ、もォ面倒臭せェ』






土御門「……おおっと、お前ら一応扉から下がった方が良さそうだぜい?」

海原「ッ!?」

番外個体「?」ボリボリ






ドッゴォォォォォオオオッ!!






土御門「……あーらら、対能力者用に作られてる防護扉でもやっぱ大能力者(レベル4)クラスのチカラには耐え切れないかにゃー?」

海原「…………」

番外個体「あーあ、こりゃもうしばらくここ使えないねー」モグモグ





黒夜「ったくよォ、いつまでこの黒夜海鳥様を廊下に立たせるつもりだァー? ついブチッときちまって扉ァブッ飛ばしちまったじゃねェか」




海原「……そもそも貴女が遅刻してきたのが悪いのではないですか?」

黒夜「遅刻してねーよ。一度この部屋に入ってたっつーの」

土御門「入ってた? どういうことだ?」

黒夜「お前らがここに来る前にはすでにこの部屋に入ってたんだよ。ちょろーと小腹が空いたから腹ごしらえに行くためにな」

海原「あまりにもバレバレな嘘はつかないほうがいいですよ? 自らの品格を下げてしまうだけですから」

黒夜「嘘じゃねーよ。その証拠に……ほらっ、そこのベッドの枕の横に置いてあるだろうが。私のいつも持ち歩いてる『秘密兵器』がな」

番外個体「……おおっほんとだ! いつもクロにゃんが持ち歩いてるイルカの人形じゃん! あまりに背景に溶け込んでるからてっきりこの部屋の備え付け品かと思ったよ」

土御門「……ところで番外個体。お前は自分以外誰も入ってきてなかったと言っていなかったかにゃー?」

海原「そうですよ。レーダー使えるとか言っていたじゃないですか」

番外個体「…………あー、そういえばミサカも飲み物欲しくて外の自販機まで買いに行ってたの忘れてた」

土御門「…………」

海原「…………」

黒夜「ま、これで私の無実は証明されただろ? つーわけで土下座して詫びろ海原クゥン?」

海原「……ふっ、何を言っているのですか? 初めから来ていようが来ていまいが、集合時間にここに居なかった時点で遅刻は遅刻ですよ」

黒夜「ハァ? 馬鹿言ってンじゃねェよオマエ。あンま調子乗ってるとそのムカつくニヤケ顔ごと頭吹っ飛ばすぞゴルァ」

海原「できますかね? 正直掌から窒素を噴出するしかできないガキに自分を倒せるとは思えないんですが」ニコッ




黒夜「……上等だ。そンな舐めた口ィ利かしちまったことを地獄の底で後悔させて続けてやるよ」ゴゥウ

海原「いいでしょう。貴女のカラダ、どれが生身でどれが機械かわからないくらいバラバラに解体してさしあげますよ」スッ



ビリリリッ!



黒夜「ッ!? カラダがァ!?」



番外個体「ダメダメ、ダメだよクロにゃーん? あんまりおイタが過ぎちゃうとカラダの制御奪ったまま、全裸にしてから公園のトイレに四つん這いで放置しちゃうよ☆」



黒夜「番外個体ォ! ふざけてンじゃねェぞオマエ! 離しやがれゴルァ!!」

番外個体「海原はミサカの大事なパシリだからねー。クロにゃんなんかに殺されるとは思わないけど、一応ね」ビリビリ

黒夜「あばばばばばばばばばば、やめえええええええええええてえええええええええええ」ガクガク


海原「…………」

土御門「そーいうわけだ。だからその黒曜石のナイフはしまっておけ」

海原「はい。どうやら自分も少しばかり熱くなりすぎてしまったようですね」

番外個体「そーだよ海原。ミサカのおもちゃを勝手に壊しちゃいけないよ」

海原「……善処します」

土御門「さーて、人も集まったところで場所を変えるか」

黒夜「あン? 人がせっかく来てやったってのに場所を変えるだァ? 舐めてンのか潰すぞ」ギロ

土御門「そんな馬鹿っぽいセクシーポーズで言われても怖くないぜい」

黒夜「番外個体ォ! だから私のカラダで遊んでんじゃねェーよォ!!」

土御門「ま、それはそれでいいと思うぜい。ロリが少し背伸びしてセクシーポーズ……何かこうグッとくるものがあるにゃー」

黒夜「手をわきわきさせるな、こっちへ来るな、そンな目で私を見るな! つゥかイイ加減にしろ番外個体ィ!!」

番外個体「ええっー? じゃあミサカはどーすればいいのさー?」

黒夜「黙って私を開放しろ!」

番外個体「やだよーだ」ビリビリ



黒夜「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! スンマセン、マジでかんべんしてててててててててえええ」ガクガク



海原「黒夜にこの扉を壊されたおかげで、おそらくここの隠れ家はもう使い物になりませんね」

土御門「ああ。この物音につられて野次馬が来てもおかしくない時間帯だ」

海原「ではひとまず他の隠れ家へ移動しましょう。ここの代わりについてはあとでいいでしょう」

番外個体「りょーかーい。さあ行くよんクロにゃん28号、進め」ビビビ

黒夜「覚えてろよ番外個体おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」テクテク


―――
――




同日 17:40

-第七学区・とあるカラオケボックスの一室(グループの隠れ家)-


土御門「……さて、今日の議題だが――」


番外個体「クロにゃーん? どうせだから何か歌う? ミサカ的にはクロにゃんは猫っぽいから『はっぴぃ にゅう にゃあ』とかいいと思うんだけど」

黒夜「何だよその危ねェ臭いしかしねェ曲はよォ!? 私に一体何を歌わせるつもりだァ!?」

番外個体「一時期ミサカネットワークで流行ってた曲らしいよ? まあ、ミサカはネットワークに参加できないから詳しくは知らないけどね」

黒夜「ンなこたァどォでもイイ! それよりさっさと私のカラダを自由にさせろ!」

番外個体「ええっと……あったあった『はっぴぃ にゅう にゃあ』。海原ー、そこのパーティグッズから猫耳とって」

海原「了解しました」スッ

黒夜「オイイイイイイイイイイ!! 何つゥモン取り出してンだオマエらァ!!」

番外個体「それクロにゃんの頭に装着させてあげて」

海原「了解しました」ニコ

黒夜「やめろ海原ァ!! それだけは勘弁してくれェ!! さっきのこと謝るからマジでェ!!」

海原「黒夜……、貴女に謝れても正直自分は困るのですが」ニコ


黒夜「ぎゃあああああああああああああああああああっ!! やめてェえええええええええええええええええええっ!!」



ガチャン!!←猫耳装着音



黒夜「…………ぐすン」

番外個体「…………これでよし。はいクロにゃん、マイク」スッ

黒夜『あァ? 何だこりゃ』

番外個体「レッツシング!」

黒夜『は?』


『はっぴぃ にゅう にゃあ/芹沢文乃(伊藤かな恵)&梅ノ森千世(井口裕香)&霧谷希(竹達彩奈)』


黒夜『って何だこりゃァ!? どォみても暗部の人間が関わっちゃいけねェモンだろこれェ!?』

番外個体「レッツシング!」

黒夜『外道がァ!』



タータタタンタータタタタンタ♪ タータータータータタタタタタタタタン♪



黒夜『――――』スゥ


土御門「って、おい!!」ドン


黒夜『にゃあっ!?』

番外個体「ん?」

海原「…………」



土御門「お前ら何で普通にカラオケボックスに遊びにきたみたいな感じになっているんだ!? 遊びにきたわけじゃないんだぞ!」


番外個体「ええっー、カラオケボックスにきて歌わないとか、一体ここ何しにきたの?」

土御門「たまたまあのホテルから一番近い隠れ家がここだっただけだ! カラオケにきたわけじゃない!」

海原「そうですよ番外個体さん。あくまでここは話し合いの場として選ばれただけです。黒夜で遊ぶならそれが終わってからにしてください」

黒夜『オイふざけンな! 勝手に私を人柱にしよォとすンじゃねェ!』

海原「……黒夜。目的を達成するためには何かを犠牲にする必要があるのですよ」

黒夜『…………』

海原「…………」ニコッ


黒夜『チクショォオオオオオオオオオっ!!』


番外個体「クロにゃーん? 何だか口調がおかしいままだよ、もっと肩の力抜いたほうがいいんじゃないかにゃーん」

黒夜『誰のせェだ誰のォ!』

土御門「……いいからお前らは真面目に話を聞け。黒夜、お前はマイクを置いて頭についてる猫耳を外せ」

黒夜『ハァ? ンなモンできりゃあそォしてるよ! 早くこのビリビリ馬鹿にカラダの制御止めさせろ!』

番外個体「えっ? ミサカもうそんなことしてないよ」

黒夜『…………は?』

番外個体「さすがに制御奪われたままじゃ歌えないでしょ? だからマイクを渡した時点でクロにゃんは自由の身だったのにゃーん」

黒夜「…………」スッ

黒夜「あ、ほんとだ」

番外個体「つまりクロにゃんは自分の意思でレッツシングしようとしたわけってことだよ」ニヤニヤ

黒夜「は、ハァ!? べ、別に歌おォとか思ってねェし! 何か空気がそんな感じだっただけだしィ! 半ば矯正だったしィ!」

海原「後半の言い訳が歌おうとしたことに対してのものなんですけどそれは……」

黒夜「馬鹿なこと言ってンじゃねェ海原ァ! ミンチにされてェのかオマエはァ!?」

番外個体「実はこーいうの好きなんじゃないのかにゃーん? ク・ロ・にゃん?」


黒夜「好きなわけねェェだろォォがァァあああああああああああああああああああああああッ!!」


土御門「…………はぁ、いつになったら静かになってくれるんだろうなコイツらは……」



~しばらくして~


土御門「……さて、いいかげんに始めるぞ。無駄な時間を過ごしすぎた」


海原「まったくですね。おかげで御坂さんを見守るという自分の至福の時間が奪われてしまいました」

番外個体「ん? 呼んだ?」モグモグ

海原「いえ、貴女のことではありません」

黒夜「つーかさぁ、この遅延が全て私が悪いみてーな感じになってるみたいだけど大体このビリビリ女のせいだよな?」

海原「何を言っているんですか黒夜は? そもそも貴女が集合時間に遅れて……いえ、貴女が自分のカラダをサイボーグなんかにしなかったらこんなことにならなかったのでは?」

黒夜「散々弄ばれたうえに存在自体を否定されるなんてな。あァーマジでコロシタイ」

番外個体「で、リーダー。結局今日はミサカたちは何のために呼ばれたの? 別に仕事ってわけじゃないよね?」

土御門「ああ。これからのグループの方針について話し合うためだ」

黒夜「方針なんて勝手に決めてくれりゃいいのに、わざわざ私を巻き込んでんじゃねーよ」

海原「ならこれからの雑用を全て黒夜に任せる方針でいきましょう」

黒夜「ってオイ! 何勝手に決めてくれてンですかオマエはァ!?」

海原「貴女が勝手に決めてくれと言ったのでは?」

黒夜「私に実害が出ねェ範囲でだ! どォしてわざわざ私が下部組織の連中と肩を並べて雑用しなきゃいけねェンだよ!」

海原「肩なんて並べることはありませんよ。全ての雑用は貴女一人に一任しますから」ニコ

黒夜「随分ととンでもねェ方針を提案しやがるな海原クゥン!?」

番外個体「もーいいよ。これからはクロにゃんは一生ミサカの奴隷でーす。そーいう方針に決まりましたー☆」

黒夜「今までと変わらねェじゃねェか!」

番外個体「あれ? 自分が奴隷ってこと自覚してたんだ?」

黒夜「ッ!? 誰が奴隷だゴルァ!!」ゴウゥ

番外個体「はいはい大人しくしましょうねー」ビリビリ

黒夜「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」



土御門「……話が逸れているから戻すぞ」

海原「これからのグループの方針ですよね? それなら今までと変わらずで構わないのでは?」

番外個体「今までのグループの方針って何だったの? 雑用一生懸命頑張ります! とか?」

土御門「違うな。俺たちは今日までこれから起こるであろう暗部間の抗争を起こさせないように行動してきた」

番外個体「へー、あんなまさしく後始末! みたいな仕事をしているだけで防げちゃうような抗争なんだ。軽いね」

海原「いえ。あれもたしかにその一環ではありますが、重要部分のことは自分と土御門さんが処理しています」

黒夜「けっ、何のためにこんなつまらねーことしてんだお前らは?」

土御門「……どういう意味だ黒夜?」

黒夜「こンなツマンネー雑用してるよりはよォ、みンなで楽しくコロシアイしたほうが楽しィだろォが」

土御門「…………」


黒夜「あっ、もしかしてびびってンのかなァー土御門クン? まァそォだよなァ。周りの暗部組織には超能力者(レベル5)とかいうリーサルウェポンがいやがるわけだし」

黒夜「だがよォ、ンなこと関係ねェだろ。超能力者(レベル5)だろォが同じ人間、脳天に銃弾ブチ込めば即死しちまうよォな安っぽい命だ」

黒夜「その程度のこともわかンねェよォだったらグループのリーダー失格だぞ土御門ォ」


海原「…………」


黒夜「大体よォ。何でオマエがリーダーなわけ? 無能力者(レベル0)でロクなチカラも持たねェゴミクズみてェなヤツのクセによォ」

黒夜「そンなカス野郎より私の方がよっぽどマシなリーダーになれるぜェ? 私に任せてくれりゃあ、スクールだがアイテムだが知ンねェが全部叩き潰してやるよォ」

黒夜「それだけの力と知識は植え付けられてあンだよ私にはなァ……」



土御門「…………ふふっ」

黒夜「なっ、何がおかしい!?」

土御門「そんな格好して大口叩かれたらもう笑うしかないだろ?」

黒夜「はっ、何言って……」ギョロ


黒夜「って何だこりゃあっ!? いつの間にか私のカラダが勝手にコマネチのポーズとってンだけどォ!?」


番外個体「あはははははっ! だってクロにゃんがいきなり調子に乗り出すんだもん。ついついちょっかいかけちゃった☆」

黒夜「番外個体ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

番外個体「だいたいミサカにまったく歯が立たないクロにゃんがリーダーなんかになってもさー。間抜けなだけだよねー」

海原「ですね」クスッ

黒夜「笑ってンじゃねェ海原ァ!!」

番外個体「ま、クロにゃんの言いたいこともわかるよ。このいつまでも続く退屈な日々にもうミサカも飽き飽きしてきたところだしねー」

番外個体「ねえねえリーダーさん?」

土御門「何だ?」

番外個体「いつになったらミサカの本当の任務が始まるの?」

海原「…………」

土御門「……何のことだ?」


番外個体「またまたー、そんなはぐらかしちゃってー。そもそもミサカたちは別の用途で作られたものだよね」

番外個体「ミサカは第一位の殺害。クロにゃんは暗部組織が全て解体したときのバックアップ」

番外個体「こんな明らかに別ベクトルのミサカたちが、グループみたいなところに所属される時点でちょっとおかしいよね」


土御門「……今さらそんなことを言われても困るんだがな」

番外個体「ここに入って早四ヶ月くらいは経って、まあこんな生活も悪くないなーなんて思ってたけどやっぱ違うんだよねー。ミサカはそーいう風に作られてないから」

海原「番外個体さん……」

番外個体「ってことで、これからあの第一位殺しに行っていい?」

土御門「……ふっ、好きにすればいい……が」


土御門「俺はここでお前を殺してでも止めるぞ? それを乗り越えて行く覚悟がお前にあればの話だがな」


番外個体「…………」

土御門「…………」

海原「…………」ゴクリ




番外個体「ふふふっ。あはははははははははははっ! なーにマジになっちゃってんの? 冗談に決まってるじゃん」

土御門「…………」

番外個体「いくら不良のミサカでもさすがに上からの指示はちゃんと聞くよ。知ってるよ、まだ時期じゃないんだよねー」

黒夜「けっ、つまんね。てっきりここで楽しい殺戮ショーでも見れると思ったんだけどなー」

番外個体「それに、ここでミサカがグループ出て行っちゃったらクロにゃんが悲しむもんねー」

黒夜「ハァ!? 何でそーなるんだよ!?」

番外個体「ミサカのビリビリを受けすぎてクロにゃんはミサカなしでは生きていけないカラダに……」

黒夜「んなわけねーだろ。逆にアンタの電撃受けすぎて故障しちまう可能性の方が高いだろうが」

番外個体「相変わらずクロにゃんはツンデレさんだにゃーん」

黒夜「ツンデレじゃねーよ! 一度でも私がデレたことなんてあったか? あるわけねーよな常識的に考えて」

番外個体「またまたー、そんなこと言っちゃってー。悪い子にはおしおきだぜー」ビリビリ

黒夜「ひぐっ!? な、な、お、オマっ、な、何しやがった……」ビクッ

番外個体「少しいつもと違った趣向のビリビリをしてみました! ミサカじゃないと感じないカラダにし・て・あ・げ・る♪」ビリビリ

黒夜「ひぐぅぅっ、あ、あ、ふぁ、ひゃっ、ひゃめ///」


海原「…………」

土御門「まるでゴミ見るかのような目だな」

海原「まあゴミを見ていますからね」

土御門「ひどい言いようだにゃー」




ピピピピッ! ピピピピッ!



海原「……電話ですか?」

土御門「いいや。合図だな」

番外個体「んん? どーかしたの? 仕事?」

土御門「ああ。例のスキルアウトどもが動き出した。後始末の指令だ」

番外個体「はいはーい。ミサカたちも出なきゃいけないねー、じゃあクロにゃん行くよー」

黒夜「……ひょ、ひょっとま、って……こ、こしが」

海原「何を遊んでいるんですか黒夜? 早く立ってください」

黒夜「う、る、ひゃい……、こっち、うごけ、な」

番外個体「あー、動けないんだねー、じゃあミサカが操作してあげるよー」ビリビリ

黒夜「はぐぅぅっ!?」ビクンビクン

番外個体「あっ、出力間違えちゃった」

海原「使い物にならないサイボーグですね、ほんと」

土御門「……仕方がない。今回は三人で行くぞ」

番外個体「ええっー? クロにゃんがいないとつまんないじゃん!」

海原「大丈夫ですよ番外個体さん。早く仕事を終わらせてからあとでじっくりと黒夜で遊べばいいんですよ」ニコ

番外個体「そだね。じゃあ張り切ってカスどもの殲滅に向かうとするぜー!」

黒夜「…………お、ぼえ、うなば」

海原「まあせいぜいゆっくり休んでおいてください黒夜」ニコニコ



土御門「さて、グループ出陣だぜーい!」



――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

初めてこの二人をメインに書いてみたけど使い勝手がよくわからん
口調とかに違和感があったらスマソ



次回『調理実習』



ではではノシ


投下します

>>397
ちょっと訂正

×数多「いってらっしゃい桔梗おばちゃん!」ノシ

○円周「いってらっしゃい桔梗おばちゃん!」ノシ

これ気付いて吹いた人が何人いるのか……



17.調理実習


January Fifth Thursday 10:40 ~三時間目・家庭科~

-とある高校学生寮・調理室-



キーンコーンカーンコーン



一方通行「……さァて、こっからは地獄の始まりっつゥことかァ」

結標「……ええ」ゴクリ

一方通行「お互い生きて帰れるとイイな」

結標「……そうね」

一方通行「……何だかンだ言って楽しかったぜ。オマエと過ごした日々はよォ」

結標「私もよ。人生の中で貴方と過ごした時間が一番楽しかったわ……記憶なくて半年くらいの人生だけど」

一方通行「……よし、行くぞ結標ェ。戦場に、な?」

結標「うん!」キッ



吹寄「何やってるのよ二人とも? 早く行くわよー」



結標「あ、うん、了解吹寄さん!」タッタッタ

一方通行「あァークソ。面倒臭せェなァオイ」ガチャリガチャリ


―――
――





~一週間前家庭科の授業・回想~



家庭科教師「――というわけで、来週の家庭科の時間は調理実習を行います」



<おおっー!! <調理実習キタコレ! <ふふふ、ついに私の料理テクニックを見せ付ける時がきたのね <俺味見専門な!



家庭科教師「調理室に調理台は六つあるので、一グループ六、七人で六つのグループに分かれてもらいます」

家庭科教師「メンバーは各々自由に決めてもらっても構いません。よいチームワークを発揮できるかどうか、期待していますよ」


土御門「調理実習かー。夏休み前に一回やったきりだったかにゃー?」

青ピ「せやな。あの時はチャーハン作ったんやったっけ。なぁカミやん」

上条「お、おう……(記憶がないからわからないでござる)」

青ピ「あのときは大変やったなー、カミやんが盛大にずっこけて卵全滅させたからなー」

土御門「卵なしのチャーハンは結構寂しかった気がするぜい」

青ピ「今回は何をしでかしてくれるんかなぁカミやんは」

上条「何もしねーよ! あ、あのときの上条さんとは違うんですよ! 俺だった日々成長して……」

土御門「これと言って変わってないように見えるのは気のせいかにゃー?」

上条「うるせぇ!」



ワイワイガヤガヤ



吹寄「……ったく、授業中なのにうるさい連中ね」




姫神「調理実習……ふふ。いつもなら影の薄い私でも活躍できる唯一のイベント……!」

吹寄「何だか燃えてるわね姫神さん。そういえば姫神さんは二学期から転入してきたから調理実習初めてよね?」

姫神「私料理得意だから。すごく楽しみ」

吹寄「ふふっ、だったらおいしい料理を期待できそうね……そういえば結標さんたちも初めてよね?」



一方通行「何……だと……?」

結標「嘘……でしょ……?」



吹寄「……どうしたのよ二人とも」

姫神「まるで絶望の淵にでも立たされたような表情」

結標「……ちょ、調理実習ってあれよね? 料理とかしちゃうアレよね?」

吹寄「え、ええ、それ以外ないと思うけど」

一方通行「……俺来週仮病で病欠するわ」

姫神「それ。ただのズル休み」

吹寄「ってどうしたのよいきなり! 何かあったのアクセラ?」

一方通行「料理ってオマ……下手したら死人が出るぞ?」

姫神「死人?」

一方通行「ああ……そこのテレポーターが料理ができねェのは知ってるよな?」

吹寄「う、うんまあ……」

姫神「切りにくい鶏肉を柔軟剤で柔らかくしようとしたあれ?」

結標「ううっ、あまり蒸し返して欲しくはない黒歴史なんだけど……」

一方通行「コイツはドが付くほどの料理音痴だ。野菜炒めの材料からダークマターを製造できるぐれェのなァ」


一方通行「つまり来週のこの時間は……、地獄を見ることになるぞ……?」


―――
――





~そして現在に至る~



吹寄「……さて、今回我らFグループが作る料理を改めて確認するわ!」

吹寄「親子丼! 味噌汁! 以上よ!」


一方通行「確認するまでもねェ品数だなァ」

青ピ「それにどのグループも同じもん作るしなー」

上条「親子丼かー、まだ簡単な方で助かったな」

青ピ「卵を使う時点で難易度急上昇やないか? カミやんにとって」

土御門「親子丼がただの鳥飯にならないようにしないといけないにゃー」

上条「わかってるよそれくらい。大体上条さんは毎日自炊しているんですよ? それもこれといった失敗もなく」

上条「だから同じ料理なら上条さんに失敗はないのですよっ! 絶対にっ!」

一方通行「絶対=フラグ、これマメな」

姫神「マメ。じゃなくて常識」

結標「上条君は卵から離したほうがいいんじゃないかしら?」

一方通行「オマエは食材から離れたほォがイイと思うが」

結標「ひどい! べ、別にいいじゃない。いくら私でももうさすがに致命的なミスはしないわよ! ……たぶん」

一方通行「たぶンじゃねェンだよ、絶対じゃねェといけねェンだよ」


吹寄「はいはいみんな落ち着いてー!」




吹寄「とりあえず役割を決めましょ。どんなことにも役割分担して効率よく勧めていくことが大事よ」


上条「具体的にどう分けるんだ?」

吹寄「そうね。大まかに分けると親子丼チームと味噌汁チームね」

青ピ「じゃあボクは味見チームがいいでーす!」

土御門「俺も俺もー!」

吹寄「そんなチームはないわよ馬鹿ども! これは授業よ! サボリは許さないわよ!」

姫神「働かざるもの食うべからず」

一方通行「結標。オマエはどのチームがイインだ?」

結標「どのチームって聞き方はおかしくないかしら。たしか選択肢は二つのはずよ?」

一方通行「みンなが安心して料理できる味見チームを忘れてンじゃねェよ」

結標「どうあっても貴方は私に料理をさせたくないみたいね……」

一方通行「命には代えられねェ」


吹寄「じゃあ質問だけど、料理が人並みくらいにはできるって人はどれくらいいる?」


上条「まあ、人並みくらいには」ノ

姫神「毎日お弁当を作るくらいには得意」ノ


吹寄「……うん、あたしを含めて三人か」


一方通行「……青髪ピアス。オマエ料理できねェのかよパン屋に住ンでるクセによォ」

青ピ「いやいやその理屈はおかしいでぇ。ボクは下宿先がパン屋なだけで別にパン作りの修行をしとるわけやないでー。太陽の手とか持ってへんでぇ!」

土御門「だいたいパンが作れたからって料理ができるとは限らないんじゃないかにゃー?」

姫神「パン作りのほうが難易度が上のような気が……」

上条「それより一方通行が料理できないってのが意外だったな。何でも卒なくこなせそうなイメージがあるし」

一方通行「得意料理はカップ麺と冷凍食品でェす」ドヤ

結標「ドヤ顔するほどのものではないと思うけど。それにその程度なら私だって作れるわよ」

土御門「それって料理するって言わないんじゃないかにゃー、ってツッコミはいるー?」



吹寄「……よし。じゃあ三つのグループに分けるわ」


上条「三つ? 二つじゃなくてか?」

吹寄「この四十五分間という短い授業時間の間に作る、食べる、片付け、これを全て終えないといけないわ」

土御門「にゃー、たしかに前よりはキツイかもしれないな」

吹寄「だから親子丼チーム、味噌汁チーム、サポートチームの三つに分けるわ」


吹寄「まず親子丼チームはあたしと土御門でいくわ」


土御門「了解だにゃー」


吹寄「次に味噌汁チームは姫神さんと青髪ピアス」


姫神「わかった」

青ピ「わっほーいヒメやんとの初めての共同作業やなー!」

姫神「別に初めてではない。あとそんなつもりもない」ジトー

青ピ「おうふっ、ヒメやんの冷たい視線がっ! ンギモヂィィィ!!」



ゴッ!



吹寄「……はい。じゃあ最後のサポートチームが上条、アクセラ、結標さんでお願い」


上条「おう」

一方通行「妥当な判断だな」

結標「そうね。やっぱり料理はまず見て覚えないとね」

一方通行「オマエはそれ以前の問題だけどな」

上条「ところでサポートチームって何をすればいいんだ?」

吹寄「基本的には他のチームの手伝いよ。あと空いた時間があったら器具とかを洗ってちょうだい」

結標「まかせて! 洗い物は得意よ!」

一方通行「得意もクソもねェよ」


吹寄「……じゃあちょっと時間短くなってるからテキパキ動いてちょうだいね。ミッションスタート!」




~親子丼チーム~



吹寄「さて土御門。さすがに包丁は使えるわよね?」

土御門「ふっ、侮るなよ。俺の包丁捌きは、斬られた相手が斬られたと気付かずに死んでいくほどなんだぜい」

一方通行「元から生きてねェだろ食材どもは」

吹寄「あたしは割り下を先に作っておくから、あなたたちは食材を切っておいて」ガチャ

結標「割り下って何?」

土御門「簡単に言うなら親子丼の汁だにゃー。醤油をいろいろな調味料で割って下地を作る。略して割り下」

結標「へー、物知りなのねー」

土御門「まあな」

一方通行「そンなことを知ってても料理はできねェのかよ」

土御門「知識があるからそれが実行できるとは限らないんだぜい」

一方通行「オマエが本気を出したらこれくらい余裕で出来ンだろォよ」

土御門「その言葉そのままお前に返しておくぞ一方通行」

一方通行「チッ」

土御門「さて、あんまりお喋りしてたら吹寄に怒られちゃうぜい。作業に取り掛かるにゃー」

結標「了解。さあ頑張るわよ!」シャキーン

土御門「俺は玉ねぎと三つ葉やっとくから姉さんたちは鶏肉を頼む」

結標「と、鶏肉……忌まわしき宿敵であるあの鶏肉……?」

一方通行「鶏肉切りにくい(審議拒否)でお馴染みの鶏肉かァ。……ふっ」

結標「……今の私なら一瞬で貴方の頭に直接包丁をテレポートさせられるような気がするわ」

一方通行「それより早く俺が電極のスイッチを押すがな」


吹寄「ちょっと上条!」

上条「何でせう?」

吹寄「貴様は先にご飯を炊いといてちょうだい。二十分くらいで炊けるから早炊きでお願いね」

上条「おう、任せとけ」

吹寄「終わったら姫神さんたちのほうを手伝ってちょうだいね」

上条「了解了解。わかりましたよーと」テクテク

吹寄「…………上条当麻」

上条「まだ何かあんのか?」

吹寄「しくじるんじゃないわよ? これは絶対よ?」ギロ

上条「……わ、わかってますよ吹寄さん。あははー」テクテク




~味噌汁チーム~



姫神「材料は豆腐とわかめとネギ。つまりいたってシンプルな味噌汁」

青ピ「揚げがないやん!」

姫神「文句は先生に言って」

青ピ「じゃがいもないやん!」

姫神「なぜそこでじゃがいも?」

青ピ「あさりないやん!」

姫神「下ごしらえが面倒。というか時間が普通に足りないと思う」

青ピ「ヒメやんの腕なら余裕やと思うけどなぁ」

姫神「……そんなこと言ってもここにはあさりなんてない」

青ピ「せやな。ほな、ぼちぼち始めましょーかー」

姫神「うん」

青ピ「で、役割分担はどーすん?」

姫神「役割分担?」

青ピ「汁作るほうと具材切るほうとかあるやろ。向こうの親子丼チームみたいに」

姫神「……例えばだけど」

青ピ「うん?」

姫神「青髪君の言うとおりに役割分担をしたとしよう。豆腐は味噌汁が出来上がった最後の段階で切る。わかめはそのまま入れる。つまり……」

青ピ「切るもんネギしかないやん」

姫神「そういうこと。わざわざ分担する必要がないと思う」

青ピ「ほなヒメやん一人で十分っつーわけかいな?」

姫神「そう」

青ピ「ボクいらないやん!」ガーン

姫神「……まあとりあえずネギを刻んどいて。私は湯を沸かしたりして味噌汁を作っておくから」

青ピ「了解や」シャキーン




~サポートチーム~



上条「……ええっと、Fグループの炊飯器はーと」キョロキョロ

上条「あったあった。これか……」カパッ

上条「まず釜を取り出して軽く水洗いしてっと」ジャー

上条「そしてこの『すぐ炊ける、すぐ食べられる、すぐおいしい! 学園都市産特製無洗米』を水の入った釜に投入!」ザー

上条「たしか早炊きでよかったよな。時間的に……」ピッピッピ

上条「ほい完了!」ピッ

上条「あとは炊き上がるのを待つだけだな」

上条「さーて、姫神たちの方を手伝いに行きますか」テクテク



炊飯器『』シュゴーシュゴー



ピーピー!



炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止します』



ピー!





~親子丼チーム~



ギチッ……ギチッ……!



結標「……くっ、相変わらず切りにくいわねーこれ」ギチギチ


一方通行「まだ終わらねェのかよ」

結標「そういう貴方は終わったのかしら?」

一方通行「そりゃまァ、こンな肉塊俺にかかれば一瞬で細切れだしィ」

結標「おのれ! 能力を使いやがったわね!」

一方通行「使えるモンは使う。それが俺の主義だ」

結標「くっ、こうなったら秘密兵器を使うしかないようね……」

一方通行「まさかまた柔軟剤ぶち込むとかほざきやがるンじゃねェだろォなァ?」

結標「馬鹿ねぇ、私がそんな何度も何度も同じようなミスをするわけないじゃない」アハハ

一方通行「……じゃあ何なンだよ、その秘密兵器とやらは?」


結標「てってれー♪ 塩酸ー!」スッ


一方通行「…………ハァ?」

結標「この塩酸を使って鶏肉の繊維を溶かしてしまえば、包丁でもらくらく切り刻めることが出来るわ!」

一方通行「どっからそンなモン持ってきた?」

結標「ちょっと理科室から拝借してきたわ」

一方通行「…………」

結標「…………」ドヤ


一方通行「ドヤじゃねェンだよクソ野郎がァ!!」ドン


結標「ひっ、な、何よ?」

一方通行「塩酸なンて料理で使えるわけねェだろォがッ! 常識的に考えてッ!」

結標「そ、そうかしら? いいアイデアだと思ったのだけど……」

一方通行「とりあえずそれはしまえ。そしてあとでそれはもと合った場所に返して来い!」

結標「わ、わかったわよ……」スッ

一方通行「ったく」


土御門「おーい、こっちは終わったぜい」ジュズズ



一方通行「……オイオイ何涙垂らしてンですか土御門ォ。あまりの結標の無様さに号泣してンですかオマエはァ?」

結標「誰が無様ですって……?」

土御門「いやー、玉ねぎを切るなんて小学生のときの調理実習以来だからにゃー。涙がポロポロだぜい」

一方通行「グラサンでガードしろォ」

土御門「あれは匂いから来るもんだからな。よくアニメとかで見るゴーグルあるから安全みたいなのは間違っているんだぜい」

一方通行「どちらにしろ俺には反射があるから無問題だな」

土御門「で、結標の姉さんはまだ終わらないのかにゃー?」

結標「ごめんね。思いのほか手こずっちゃって」ギチギチ

一方通行「もォ諦めて能力使っちまえよ」

結標「……いや、ここで諦めてしまったら一生料理なんてできないような気がするわ」ギチギチ

一方通行「安心しろ。どっちに転がろうがオマエの作る野菜炒めはダークマターだ」

結標「うっさいわね!」ギチギチ

土御門「……ちょいといいかい姉さん?」

結標「ん? 何かしら?」

土御門「包丁ってのは押さえつけて切るもんじゃないぜい。手前に引いて使うものだにゃー」

結標「えっ、そうなの?」シュッ

結標「おおっ! 簡単に切れた!」

土御門「そうそう、うまいうまい」

結標「ありがとう土御門君! 貴方のおかげで料理スキル会得への道が開けたわ!」

一方通行「次は料理に入れていいものと入れちゃいけねェものの区別を教えてもらえばどォだ? 料理スキル会得までぐっと距離が近づくぞ?」

結標「い、いやさすがにその分別くらいわかるわよ! フライパンに入れる油はサンオイルとか灯油とかじゃなくてサラダ油よね?」

土御門(サンオイル……!? 灯油……!?)

一方通行「じゃあ甘口の卵焼きを作りたいです。さて調味料は何を入れればイイでしょォか?」

結標「卵焼きを甘くするのよね……甘くする……甘くする……」

土御門「…………」

一方通行「…………」




結標「……! そうだわかった! 青酸カリね!」



土御門「どうしてそうなる!!」

結標「えっ? だってこれ結構甘酸っぱい香りがするのよ? それに某小学生探偵がよくペロって……」

土御門「それはコラだ! 偽者の情報だ!」

一方通行「大体青酸カリは毒だろォが」

結標「あ、そっか」

土御門「なぜ無難に砂糖と真っ先にいえない……?」

結標「おおー、砂糖かー。その手があったわね」

一方通行「オマエの思考回路は一体どォなってやがンだ。つゥか何だよさっきからこの薬物縛り」

吹寄「材料切るの終わったー?」

結標「うん、言われたものは全部切ったわ」

吹寄「じゃああとはこっちでするから使わない器具とかの片付けやっておいて」

結標「了解!」

土御門「アクセラちゃーん、面倒だから能力使ってぱぱーと一気に洗ってくれー」

一方通行「面倒臭せェ。自分で洗え」

結標「使えるものは使うんじゃなかったの?」

一方通行「使う必要のねェモンは使わねェ。それが俺の主義だ」

結標「コロコロ変わりすぎでしょ貴方の主義」




~味噌汁チーム~



姫神「…………」


グツグツ


青ピ「……おぉーふ、ええ香りやなぁーお腹空いてくるでー」

上条「ほんとだよなー。今日朝メシろくに食ってねーから余計に腹が減るぜ」グー

姫神「…………!」キッ

姫神「豆腐!」

青ピ「はい、豆腐やで」スッ

姫神「…………」シャキーン



ズバッズバッズバッ



姫神「…………」ボトボト

上条青ピ『おおっー!』パチパチ

姫神「一分ほど煮たあとにわかめを入れる」

上条「さすが姫神だな。手つきが鮮やかだ」

姫神「伊達に毎日料理していない」

青ピ「ほんまやなぁ。正直ボクらおらんでも十分作れたんちゃうかなー?」

姫神「うん」

上条「つーか、そもそもこれくらいのレシピでこんな大人数いらねーよな?」

姫神「人数の関係上しょうがない」

青ピ「一クラスの人数多いわりに部屋は狭いってなー」




グツグツ



上条「……おっ、そろそろいいんじゃないか姫神?」

姫神「そうだね。青髪君」

青ピ「ほいきた! わかめ爆弾投下ぁ!」ボトボト

上条「……何かわかめ多くねーか?」

青ピ「せやで。ただでさえ量少ないんやから、この『学園都市製超増えーるわかめ』を大量投入しないとやってられんで」

上条「どっから持って来やがった、その危険臭しかしない名前のわかめ!」



モリモリ



姫神「……ものすごい勢いでわかめが増えてる」

上条「ぎゃああああっ! 味噌汁がわかめを味噌で煮たものになってるぅううう!」


吹寄「ちょっと上条!」


上条「はい? 何でせうか吹寄さん?」

吹寄「そろそろご飯が炊けた時間じゃないかしら? 確認してきてちょうだい!」

上条「はいはーい、ほいじゃ言ってきますよーと」テクテク



上条「さてさてー、本日の主役親子丼に欠かせないお米ちゃーんはちゃんと炊けてるかなー?」テクテク

上条「ええっと、Fグループの炊飯器は……ん?」



炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』



上条「…………んん?」



炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』



上条「…………は? エラー……? 停止……?」



炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』



上条「……何度見てもエラー……だと?」



吹寄「――ちょっと上条当麻! 一体何をやって……え?」



炊飯器『深刻なエラーを察知しました。機能を停止しています』



吹寄「…………ちょっと上条? これはどういうことかしら?」ギロ

上条「……ははっ、おかしーなー? ボクはちゃんとボタンを押したはずなんだけどなー」

吹寄「……上条。とにかく何か言うことがあるんじゃないかしら?」

上条「……不幸だー?」



吹寄「謝れ馬鹿者!」



ゴッ!



上条「ふがっ!?」




~親子丼コーナー~



土御門「……そろそろ食べときじゃないかにゃー?」

結標「そうね。あとは卵を乗せるだけね。レシピ通りでいけば」

一方通行「その前にご飯が来るのを待たねェといけねェだろ。卵が無駄に固まっちまうぞ」

結標「貴方がそういうこと言うのって何か変よね。『異の中に入ったら同じだろォが』って言った方がお似合いよ?」

一方通行「うるせェ、レシピに書いてあンだよ」


吹寄「――まったく……これから……どうする……?」ブツブツ


結標「あっ、吹寄さんが帰ってきたわ」

土御門「吹寄ー。お米ちゃんはどーしたんだ?」

吹寄「大変よ! 上条がまたやらかしたわ!」

上条「あれは俺のせいじゃねえよ! なぜだか停止していた炊飯器が悪りぃんだよ!」

吹寄「確認を怠っていた貴様のせいでもあるでしょうが!」

上条「理不尽だ!」

結標「どうしたのよ一体?」

吹寄「率直に言うわ。ご飯がまだ炊けてないのよ!」

一方通行「ンだと?」

吹寄「どうやら今の今までエラーで停止しているのに気付かずに、ずっと放置してたわけよ」

土御門「そりゃ一大事だにゃー。このままじゃ親子丼がただの家なし親子になっちまうぜい」

結標「今から炊きなおしたら間に合わないの?」

吹寄「間に合わないこともないけど、その場合後片付けの時間含めて五分くらいしか残らないわ」

土御門「五分かー、食えないことはないが片付けのほうはキツイかにゃー」

一方通行「…………」

結標「……一体どうすればいいの……?」

上条「……すまねえみんな。全部俺のせいだ。俺がちゃんと炊飯器の起動確認までしていれば……」

吹寄「いや、そういうところまで見てなかったあたしの責任でもあるわ。ごめんなさい……」

結標「…………」

一方通行「……あァ面倒臭せェなァくそったれが」ガチャリガチャリ

結標「! どこに行くのよ一方通行」

一方通行「ちょっと米炊いてくる」

吹寄「何を言ってるのアクセラ。ハッキリ言ってもう時間には……」

一方通行「……ハァ、オマエらわかってねェ、全然わかってねェよ。俺を誰だと思ってやがる」

上条「……学園都市第一位の超能力者(レベル5)……?」

一方通行「そォだ。全てのベクトルを操る、よォするに最強の能力者である俺によォ――」



一方通行「たかが米粒、炊けねェわけねェだろォが……ぎゃはっ」カチ





カパッ



一方通行「よっと」ジャポッ

結標「お米の中に手を突っ込んだ?」

上条「何をするつもりだよ」

一方通行「熱っつゥのはアレだ、分子や固体の中の原子が熱振動することで起こるモンだろォが。つまり――」



ゴポポッ!



吹寄「!? 水が沸騰した!?」

一方通行「俺のベクトルを操るチカラで無理やり水の中にある原子を高速で振動させれば、すぐさま水を沸騰させて水温を上げることなンざ他愛もねェだろ」

結標「……でもいくらすぐに沸騰させることができても、ふたが開いてるから蒸気とかが逃げちゃうんじゃ……?」

一方通行「その点も問題ねェ」



シュゴー



吹寄「……蒸気が炊飯器の入り口をまるで透明な蓋でもあるかのように中に戻っていってる……?」

一方通行「左手で水を操り、右手で蒸気を操る。そォすりゃ釜一つありゃ人間炊飯器が可能っつゥわけだ」

一方通行「それに学園都市製の最新の炊飯器の性能の高さって知ってるかァ?」

結標「……そういえば最近黄泉川さんがまた買ってたわね。たしかあれって五分もあれば炊き上がるんでしょ?」

上条「ご、五分!? すごすぎんだろそれ!」

一方通行「機械にそれが実現できるっつゥンなら、この俺に再現できねェわけがねェ」



ゴポポッ!



一方通行「こンなこともあろうかと、昨日の晩あらかじめあの炊飯器の仕組みを調べておいた」

一方通行「つまりこの米はあと五分もしねェうちに炊き上がるわけだ。蒸し時間だって余裕で確保できるぜェ?」

結標「……それじゃあ……!」

土御門「ああ。きちんと時間内に親子丼が食べられるにゃー!」

上条「よっしゃー! 助かったー!」

一方通行「チッ、うっせェンだよオマエら。気が散るだろォが」

吹寄「……アクセラ」

一方通行「あァ?」

吹寄「何というか……ありがとね」

一方通行「ンなこたァどォでもイイから他のモンの準備をしろォ。米が炊き上がり次第メシの時間だくそったれが」


―――
――




吹寄「――最後にご飯の上に盛り付けて……と」サッ



全員『完成ーッ!』



青ピ「うおーっし! ようやく食べもんにありつけられるでー!」

土御門「いやー長かったにゃー。とてつもなく長かったにゃー」

上条「何言ってんだよ。時間がやばくて焦ってただろ?」

一方通行「誰のせェだ誰の」

上条「か、上条さんだっていつも気をつけているんですよ不幸ってやつがいつ起こってもいいように! でも無理なんですー回避不可なんですースピードスターなんですー!」

一方通行「知らねェよ」

姫神「……はい。味噌汁」ゴト

上条「おおー、いい香りだなー。サンキュー姫神」

結標「はい一方通行」ゴト

一方通行「おォ、アリガトよ。一応聞いておくがナニも余計なモン入れてねェよな?」

結標「なっ!? さ、さすがの私も完成されたものに手をくわえるなんて無粋なことはしないわよ!」

青ピ「信用されてへんなー姉さん。こりゃ料理をきちんと学んでもアクセラちゃんには一生警戒されそーやな」

上条「いや、さすがに一生はねえだろ」

土御門「すでにトラウマを植えつけられてるってことかにゃー?」

結標「……なぜだか私がフルボッコされる展開に……?」

一方通行「オイオマエらそろそろイイ加減にしとけ。レベル5様がお怒りになられるぞ」

結標「貴方もレベル5でしょうが!」

吹寄「はいはい落ち着いて結標さん。食べて片付けるまでが調理実習よ。早く食べなきゃ」

結標「あ、う、うん。そうね」アセ

姫神「……お茶汲んできた」テクテク

青ピ「この騒ぎの中でいつの間に……?」

土御門「この俺が察知できなかっただと……?」

姫神「何を言っているのかわからないけど。すごく馬鹿にされているような気が……」

上条「無視しとけ無視」


吹寄「はい、じゃあ――」



『いただきまーす!!』



――――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

熱量はスカラーだけど原作で熱量操れるって書いてた気がするから別にいいよ間違ってたらスマン!
というか投下してたら本気で間違えてるような気がしてきた……というか間違えてるよねたぶん


次回『節分』


あわきんを料理音痴にしようとしたらただのキチガイになってたでござる
ではではノシ


投下します



18.節分


February First Sunday 10:00 ~節分~

-黄泉川家・リビング-



打ち止め「おにはーそと!」バッ


一方通行「あン?」



パラパラパラー!



一方通行「ッ!? 何しやがるクソガ──」


打ち止め「ふくはーうちー!」バッ



パラパラパラー!



一方通行「ぐっ、痛ッ、オイやめろ――」


打ち止め「おにはーそとー!」



パラパラパラー!



一方通行「だからやめろっつってンだろォが! このクソガキがァ!」カチ



キュイーン、パラパラパラー!



打ち止め「ぎゃあああああああっ! 投げた豆が全部反射されてきたー! ってミサカはミサカは全速力でこうた──痛っ! 痛い痛い豆痛い!」ビシッビシッ




打ち止め「……ううっ、体中に豆の当たった痕ができて痛いよー、ってミサカはミサカは涙を浮かべながら嘆いてみたり」

一方通行「自分がやられて嫌なことは他の人にやっちゃいけませン、って習わなかったのかオマエ」カチ

芳川「逆に聞くけど、キミはそんなこと習ったのかしら?」

一方通行「ンなこと教えてくれるヤツなンざいるわけねェだろ。ちなみに俺ァ『どうせやられたら倍返しにするんだから、やられる前に倍返ししとけ』って習った」

芳川「何それ怖い」

結標「一体貴方はどんな先生の下で育ってきたのよ」

一方通行「先生なンて高尚なモンじゃねェよ。ただのゴミクズだ」

結標「ひどい言いようね……」

一方通行「つゥか、どォしてこのクソガキは俺に大豆なンざぶつけてきやがったンだァ? またくだらねェ反抗期ごっこでもしてンのか? 十年以上早ェ」

打ち止め「ち、違うよ! ていうか早いってどういうこと! ってミサカはミサカはあなたの言葉に食いついてみたり!」

芳川「今日が何の日か知ってるかしら?」

一方通行「たしか今日は二月三日だろ? 何かあったか?」

結標「カレンダー見なさいよ。節分って書いてあるでしょ?」

一方通行「節分? そォいやそンなモンあったな」

結標「ほんと貴方ってそういうものに無関心よね」

一方通行「興味ねェンだからしょうがねェ。で、どォして俺はコイツに豆ェぶつけられねェといけねェンだ?」

芳川「節分には豆撒きっていう摩滅のために行う儀式みたいなものがあるのよ。鬼に豆をぶつけることによって邪気を追い払う、って感じにね」

結標「それで掛け声が『鬼は外! 福は内!』って感じになるらしいわ」

芳川「まあ地域によっては『鬼は内!』になっていることもあるけど、キミにとっては些細な問題でしょ?」




一方通行「……つまり何だァ? このクソガキは俺を鬼に見立てて豆を投げつけてたっつゥことか?」

打ち止め「イエス! ってミサカはミサカは指を二本立てて肯定してみたり」

一方通行「何で俺がそンな三下みてェな役割をしなきゃいけねェンだよ?」

芳川「いや、だって……ねえ」

結標「うん……まあ、そうね」

一方通行「何で目を逸らせてやがンだこのアマどもは……」

打ち止め「それはあなたが鬼役にピッタリだからだよ! ってミサカはミサカは簡潔に答えてみたり」

一方通行「ハァ? どこがピッタリだってンだよ」

芳川「そりゃ顔が怖いからに決まってるわよ……ぷぷっ」

一方通行「オイオイ、そンなクソみてェ理由で俺ァ豆を投げつけられねェといけねェのかァ?」

結標「まあこの家で貴方が唯一の男なわけだし、こういう役を買って出るのが普通じゃないかしら?」

一方通行「普通じゃねェよ。大体そンな男なら少々痛い思いをしてもイイみてェな風潮やめろよ。俺から見たらオマエらの方がよっぽど鬼だっつゥの」

芳川「そういうことをこの環境で言ったところで何だ、って話にならないかしら?」

一方通行「つゥか黄泉川はどこいったァ!? アイツこそまさしく鬼役にピッタリだろォが!」

結標「黄泉川さんならアンチスキルの仕事で出てるわよ。昼までには帰ってくるらしいけど」

一方通行「クソが! てか、そもそもこの儀式とやらはやらなきゃいけねェことなのかァ? 魔除けなンざオカルトをこの科学の街学園都市で」

結標「まあ一種のイベントのようなものだからいいんじゃない? 初詣みたいなものよ」

打ち止め「そうそう! イベントなんだから楽しまなきゃいけないんだよ! ってミサカはミサカ目を輝かせながら熱弁してみたり」

一方通行「オマエはとりあえず豆を投げつけてェだけだろォがクソガキが!」

芳川「もうキミのツンデレ展開は見飽きたからはい」スッ

一方通行「ツンデレじゃねェっつってンだろ。……って、何だこりゃ?」

芳川「鬼のお面よ」

一方通行「…………」



一方通行「…………わかった。鬼だろォが悪魔だろォと何でもやってやるよ」←鬼のお面装着

打ち止め「おおっ! 珍しくあなたが乗り気だね、ってミサカはミサカはあなたの成長ぶりに感心してみたり」

一方通行「うるせェよ。何でクソガキに感心されなきゃいけねェンだ」

結標「貴方のことだからさっさと終わらせて昼寝でもしようって魂胆でしょ?」

一方通行「当たり前だろ。せっかくの休日を寝て過ごさねェわけにはいかねェだろ」

芳川「普通の学生たちはみんなで集まって街で遊んでいると思うのだけど」

一方通行「普通ってのは他人が決めることじゃねェ。俺自身が決めることだ」

芳川「こうして自己中心的な考えしか持てないコミュ障が生まれるわけね」

一方通行「今すぐ『芳川は外』って言いながら、音速の三倍で豆投げつけてやろォか?」

芳川「いやね冗談よ。だいたい鬼役の人が豆を持っちゃダメじゃない」


打ち止め「じゃー気を取り直して再開しよう! ってミサカはミサカは再び豆を手にとって見たり」スッ

結標「そうね。一方通行も早く終わらせて欲しいようだし、こっちもできるだけ早く終わらせてあげないとね」スッ

芳川「ふふっ、久しぶりね。大豆をこんなに手に取るなんて」スッ


一方通行「……クソガキだけじゃなくオマエらも投げンのかよ」

結標「ま、どうせだしやってみようかなって」

一方通行「チッ、この『イベントならとりあえず参加しとこ脳』め……」



打ち止め「じゃー行くよー! せーの――」



打止結標芳川『おにはーそとー!』バッ



パラパラパラー!



一方通行「反射」カチ



キュイーン、パラパラパラー!



打ち止め「ぎゃあああああああああっ! なんでえええええええええっ!」ビシビシ

芳川「痛っ! 久しぶりに痛いっ!」ビシビシ



一方通行「鬼っつゥのは力の象徴みてェなモンだろ? よォするに学園都市最強のチカラを持つ俺はまさしく鬼っつゥわけだ」

一方通行「それを豆粒ごときで追い出そォなンざ考えが甘ェンじゃねェのかァ? あァン?」



シュン!



結標「随分と大人気ない鬼さんね」シュタ

一方通行「テレポートして逃げてやがったか。さすがだな」

打ち止め「ぶーぶー! ちゃんと鬼役してよー! ミサカたちに追い出されてよー! ってミサカはミサカは文句をたれてみたり!」

芳川「そうよ。ネタをネタだと思えない人には社会を生きていくのは難しいわよ」

一方通行「あぎゃはっ! だったらその豆粒で倒してみろよォ! この俺、一方通行をよォ!」

芳川「ぐぬぬ……まさか反射を本気で使ってくるなんて思わなかったわ」

打ち止め「こうなったら……ミサカが演算をストップさせて――」

一方通行「あ、そォしたら俺ぐれて寝るわ」

結標「汚っ!? 学園都市第一位が姑息な手を取り出したわ!」

芳川「このままではなすすべがないわ……」

一方通行「ぎゃははははははっ!! オラオラァ! どォしたかかってこ――」





数多「はい、おにはーそとー」スチャ




ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!



一方通行「ご、はっ……!?」

結標「一方通行ぁ!?」



数多「ったくよぉ、ザコの癖に調子に乗ってんじゃねぇよクソガキが」

打ち止め「あっ、キハラだ! 何その手に持ってるものは何? ってミサカはミサカは興味を示してみたり」

数多「ああこれかぁ? これはあれだ、大豆を弾丸として発射することが出来るアサルトライフル」

結標「あ、アサルトライフル!?」

数多「安心しろ、殺傷能力はねぇよ。まぁ、殺せねぇことはねーけどな」

芳川「……ところで何で大豆でアサルトライフルを? 節分だからかしら?」

数多「それもあるけどよぉ、実は最近FPSのゲームにはまっててさぁ」

打ち止め「FPS?」

数多「ファーストパーソン・シューティングゲーム。ようするに銃で相手を射殺するゲームのことだ」

数多「そのゲームでアサルトライフル使って遊んでてふと思ったんだよ。弾丸を別のものに換えたら面白くねーか、ってな」

結標「いや、わけがわかりませんよ」

数多「そこでたまたまテレビに映ってた大豆を弾にしてみよーと決めて」

数多「そこらへんに落ちてたアサルトライフル拾って撃てるように改造してみたっつーわけだ」

結標「……落ちてるの? アサルトライフル」

打ち止め「んーとね、よく武器みたいなものは置いてあったりするよ、ってミサカはミサカは思い出してみる」


一方通行「……木ィィ原クゥン」ヨロッ


数多「おーおーふらっふらじゃねーか。たかがあれだけの銃撃で根ぇ上げてんじゃねぇよクソガキ」

一方通行「上げてねェよ! つゥか何だよそれはァ! どォして俺の反射を通り抜けやがンだよ!」

数多「あぁ? そんなもんもわからねーのかテメェは」

一方通行「……まさかその弾丸は反射が発動する寸前に引き返す仕組みになってるとか言わねェだろォな?」

数多「んなわけねーだろ。そんな面倒臭せぇもん俺が作るわけねーじゃん。もっと簡単なもんだよ」

一方通行「……! この感覚……」

数多「やっとわかったか。このアサルトライフルにはお前専用のAIMジャマーが搭載されてんだよ」

数多「引き金を引いた瞬間、周囲二十メートル内の特定の数値を持つAIM拡散力場を乱すっつー仕組みだ」
                 アクセラレータ
数多「ようするにこれは対節分の鬼役用アサルトライフルっつーわけだ。わかったか?」

一方通行「変なモン作ってンじゃねェよ木原ァ!!」

数多「そゆわけで、せーの――」スチャ

一方通行「あン?」



数多打止結標芳川『おにはーそとー!』




ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!




―――
――





一方通行「」プスプス


数多「……あー、スッキリした。やっぱストレス溜まってるときはリアル銃撃戦だな」スチャ

打ち止め「床がすごいことに……ってミサカはミサカは一面に広がる大豆たちを眺めながら呟いてみたり」

結標「これは片付けるのに手間がかかりそうですね」

芳川「大丈夫よ。彼のベクトル操作を使えば一瞬で大豆が一箇所に集まるわ」

結標「その彼ですが今伸びますよ?」


一方通行「」プスプス


芳川「あら、少しやりすぎちゃったかしらね」

数多「チッ、しょうがねぇなぁ」スッ



プルルルルル、プルルルルルガチャ



マイク『はい! こちら従犬部隊です』

数多「出るの遅せぇんだよマイク。ワンコールで出ろビジネスの常識だぞテメェ」

マイク『しゃ、社長!? 一体どうして電話なんか……』

数多「お前ら社員全員、今すぐ掃除道具持ってこっちに来い。十秒以内な」

マイク『…………は? ちょっとおっしゃってることの意味が……』

数多「はい、じゅー」

マイク『!?』

数多「きゅー」

マイク『い、今すぐ参ります!』ガチャ

数多「はーち、ななろくごぉよんさんにぃ――」



ガラララ!!



マイク「それ十秒じゃないです!!」ゼェゼェ



数多「うるせぇよ。生き物ってのは体感時間がそれぞれ違うだろうが。ヒトにとっての一秒と虫けらにとっての一秒が違うようによぉ」

オーソン「社長はたしかヒトでしたよね!?」

ナンシー「ところでなぜ私たちは掃除道具などを持ってこんなところへ呼ばれたのでしょうか?」

数多「テメェらこれを見てみろ」



床『ダイズーン』



ロッド「うわっ、床が大豆だらけに!?」

オーソン「これってたしか昨日社長が作ってた改造アサルトライフルの弾じゃ……」

数多「さぁ、さっさとお前ら掃除しろ。今すぐ」

マイク「えっ、ちょ、これをたった四人でですか……?」

数多「十分すぎんだろ」

ナンシー「いや、箒と塵取り一個ずつしか持ってきていないんですが……?」

数多「掃除機持ってこないテメェらが悪りぃ」

ロッド「そもそもこれって社長が――」




ズドドドドドドドドドドドドッ!!




数多「いいからやれカスども」



社員達『はい』


結標(さらに散らかった……)


―――
――




同日 11:00

-黄泉川家・リビング-


一方通行「…………」ムクリ

一方通行「俺は一体何をしていたンだ……?」

打ち止め「あっ、おはよう! ってミサカはミサカはさっきまで気絶してたあなたに挨拶してみる!」

一方通行「気絶だァ? 一体何が……って、木原クゥゥン!!」ガバッ

結標「木原さんなら掃除が終わるなり帰ったわよ」

一方通行「あの野郎あとで絶対ェ殺してやる! つゥか今すぐ肉塊に変えに行ってやろォか!?」

黄泉川「そんなことよりおつかいに行って欲しいじゃん一方通行」

一方通行「……帰ってたのか黄泉川」

打ち止め「あなたが気絶している間にね、ってミサカはミサカは説明してみる」

一方通行「つゥか何で俺がおつかいになンざ行かなきゃならねェンだ?」

黄泉川「休みの日に部屋に引きこもってるのは体に悪いぞ? たまには外に出て新鮮な空気でも吸ってくるといいじゃん」

一方通行「芳川クゥン!? 出番ですよォ!?」

結標「芳川さんなら部屋に引きこもったわよ」

一方通行「クソが、またかよ!」

一方通行「……てか、学校のある日は外に出てンだから問題ねェだろ。そもそも外の空気なンてそンな綺麗なモンじゃねェし」

黄泉川「ごちゃごちゃ言ってないでとっととこのメモに書いてあるものを買ってくるじゃん」スッ

一方通行「……チッ、わかったよ。行ってくりゃイインだろ行ってくりゃ」パシッ

打ち止め「おおっ! 珍しくすぐに折れたね、ってミサカはミサカは少し驚いてみたり」

一方通行「粘ったところで行かされるのが目に見えてる。時間の浪費はしたくねェ」

結標「いつも昼寝して時間の浪費をしている人のセリフとは思えないわね」

一方通行「うるせェよ。だいたい睡眠っつゥのは人間に必要不可欠なモンだろォが。無駄な睡眠なンてねェ」

結標「貴方のは確実に惰眠を貪るタイプの無駄な睡眠よね」

一方通行「……まァイイ。じゃあ行ってくる」ガチャリガチャリ

打ち止め「わーい! ミサカも行くー! ってミサカはミサカは──」

一方通行「面倒臭せェから付いてくンな!」

打ち止め「ぶーぶー!」


───
──




同日 11:10

-第七学区・街頭-


一方通行「……さて、メモに書かれてるモンはお酢と巻き寿司用の海苔か」ガチャリガチャリ

一方通行「酢はコンビニに行きゃあ売ってるだろォが海苔の方はわかンねェなァ……」

一方通行「だいたい何で巻き寿司? よりにもよって今日なンだァ?」

一方通行「……まァイイ、スーパーにでも行きゃあンだろ。面倒臭せェがな……」ガチャリガチャリ



ワイワイガヤガヤ



一方通行「あン?」


女子高生A「…………」モグモグ

女子高生B「…………」モシャモシャ

女子高生C「…………」マグマグ


一方通行「……んだァ? 同じ方向を向いて巻き寿司を頬張ってやがる……? 何だこの異様な光景はァ、儀式か何かか?」



ハァハァ



一方通行「あァ?」



青ピ「巻き寿司を咥えとる娘がたくさんおるぅ! これは素晴らしい! 絶景や──」

一方通行「…………」

青ピ「はぁ、はぁ、なるほど、なるほ――」



ドパァー!!



一方通行「あァもしもしジャッジメントですかァ? 第七学区のカフェが並んでる辺りのところに変態が一匹いやがるンですがァ」カチ

青ピ「ちょっアクセラちゃん! やめてぇ! やめたげてぇ! 通報だけはせーへんといてー!」ボロッ

一方通行「こンなところで何してやがる変質者がァ」

青ピ「いやーちょっと恵方巻ウォッチングを少々……」

一方通行「恵方巻だァ? 何だそりゃ?」

青ピ「えっ、アクセラちゃん恵方巻も知らへんの? おっくれって──」



ゴッ



青ピ「ぎゃあああああああっ! 膝がああああああああっ! 膝の皿が割れたあああああああっ!」ゴロンゴロン

一方通行「で、一体何なンだァその恵方巻とやらはァ?」カチ

青ピ「膝の皿割れた言うとんのに平然と話しかけてくるなぁキミぃ」スタッ

一方通行「本当に割れたヤツは割れたなンて口では言わねェよ」

青ピ「せやろか?」



一方通行「うるせェよ。現にオマエは直立してンだから膝の皿は割れてねェだろォが。結局、恵方巻っつゥモンは何なンだよ一体ィ」

青ピ「恵方巻っていうのは節分の日に巻き寿司を食べると縁起がいい、って感じの風習やで」

一方通行「へェ、そンなモンがあったのか」

青ピ「マジで知らへんかったん? これ常識やで常識」

一方通行「そォいう環境で育ってねかったンだからしょうがねェだろ」

青ピ「環境云々言うてるけどなぁ、普通にこの時期ならコンビニとかに行ってたら見るやろ恵方巻くらい」

一方通行「……そォいえばあったよォな気がする」

青ピ「せやろ。つまり一見常識知らずに見えるアクセラちゃんやけど、実は結構知ってたりするんやで」

一方通行「いやその理屈はおかしい。つゥか知っていると常識があるはまた別の話だろ」

青ピ「まぁそうやけどな。現実は厳しいでー」

一方通行「そォいや忘れてたがオマエはどォして路上で発情してやがったンだァ?」

青ピ「そりゃ決まっとるやろ!! だって女の子が巻き寿司を口に咥えているんやで!!」

一方通行「わけがわからねェよ。オマエは食事中の女眺めてても興奮できるよォなどォしよォもねェ変態だったのか?」

青ピ「いやそれでも余裕でイけるけど違うで!!」

一方通行「イけるのかよ」

青ピ「だってアクセラちゃん!? 女の子が、大きくてぶっとい黒光りしたものを口に咥えているんやで!?」

一方通行「…………そォか。そォいうことか」

青ピ「おおっやっと気付いたかアクセラちゃん。ほんま鈍いねキミぃ、カミやんもビックリやでー」



一方通行「で、それがどォかしたのか?」

青ピ「なんやねんキミ! 興奮するやろ! あんなもん咥えとるところ見たら!」

一方通行「しねェよ。生憎だが俺はオマエみてェな変態野郎じゃねェからな」

青ピ「……もしかしてアクセラちゃん、もうアソコが枯れ果てて……」

一方通行「枯れ果ててねェよ!」

青ピ「……はっ! まさかホ――」

一方通行「それ以上言うとオマエの急所にベクトルパンチブチ込むぞコラ」

青ピ「そういえばアクセラちゃんはこんなところで何してん? 趣味は家に引きこもってニートするじゃなかったっけ?」

一方通行「誰がニートだ。面倒臭せェけど買いモンだよ買いモン」

青ピ「買い物? おつかいでも頼まれたんかいな」

一方通行「まァそンなところだ。酢と海苔……よォするにその恵方巻とやらの材料を買いに行かされているっつゥわけだ」

青ピ「…………ほほぉ、つまりアクセラちゃんの家ではこれから恵方巻パーチーが行われるってことでええんやな?」

一方通行「だろォな」

青ピ「なあなあアクセラちゃん。ちょっと頼みがあるんやけどなー」

一方通行「あン?」

青ピ「ボクもそのパーチーに連れて行ってくれへん?」

一方通行「断る」

青ピ「何でやっ! 頼む! 一生のお願いやから!」

一方通行「一生のお願いっつゥのはなァ、コイツならいつでもお願いを受け入れてくれるってヤツにしか使わねェンだよ」

青ピ「……? どゆこと?」

一方通行「つまり断る」

青ピ「何でやねん!」



一方通行「何でそンなに必死なンだよオマエ。巻き寿司ぐれェコンビニにでも行って買ってこいよ」

青ピ「それじゃあダメやねん!」

一方通行「ハァ? どォいうことだ」

青ピ「実はなぁボク、軽くホームシックになってしもうたんや」

一方通行「ホームシックだァ? 似合わねェこと言ってンじゃねェよ」


青ピ「似合わないことはわかっとる! でもなってしもうたんやからしゃーないやん!」

青ピ「アクセラちゃんはこれから家に帰っても温かく迎えてくれる人たちがおる。でもボクは違うんや」

青ピ「家に帰っても一人。誰もいない静寂だけが広がる空間。それはボクの心に空しさと寂しさを与えるだけやった……」

青ピ「だからなぁアクセラちゃん! ボクはただ温もりが欲しいだけなんや! それ以上のモンは望まん!」


一方通行「本当は?」

青ピ「黄泉川先生とか芳川さんとか結標の姉さんとか打ち止めちゃんとかが巻き寿司を咥えている姿が見たいですハァハァ」

一方通行「…………」

青ピ「…………あ」

一方通行「青髪ピアスクン?」

青ピ「はい」


一方通行「こっから先は一方通行だ大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて無様に元の居場所へ引き返しやがれ」カチ



ガァン!!



青ピ「えべぐりょ!?」



ヒューン、キラン



一方通行「…………さて、悪は潰えた」カチ

一方通行「とっととスーパーに行ってブツを買いに行くか」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 12:00

-黄泉川家・リビング-



ガラッ



一方通行「帰ったぞ」

黄泉川「おかえりじゃん。お昼できてるから手洗ってくるじゃん」

打ち止め「今日のお昼はちゃんぽん麺イン炊飯ジャーだよ、ってミサカはミサカは両手に箸を一本ずつ持ちながら待ち焦がれてみたり」wktk

一方通行「ほらっ、これでイインだろ?」スッ

黄泉川「おお、ありがとじゃん」

一方通行「チッ、面倒臭せェから二度と頼むンじゃねェぞ」

芳川「はいはい、これからは毎回おつかいを頼んで欲しいらしいわよ愛穂」ボリボリ

黄泉川「おっ、そうじゃん? だったら次からも頼もうかな?」

一方通行「オイ、何勝手なこと言ってンだオマエら。……つゥか、何ボリボリ食ってやがンだ芳川」

芳川「何って豆について決まっているじゃない」

一方通行「豆……?」

芳川「そう。節分の日に豆を歳の数だけ食べれば縁起がいい、っていう風習があるのよ」

結標「例えば私は十七歳だから十七粒って感じね」

一方通行「そォいえばオマエ十七歳だったっけなァ、同級生なのに」

結標「ううっ、あまりツッコンで欲しくないんだけど……」

芳川「そういうわけでキミも十六粒食べてみてはどうかしら?」スッ

一方通行「チッ、元担ぎなンざくだらねェ」

打ち止め「わーい! だったらその分はミサカがいただくぜー! ってミサカはミサカは大豆の強奪を試みてみたり」ダッ

一方通行「まだ一歳にも満たねェガキが何言ってンだ?」

打ち止め「ぜ、ゼロ歳でも四捨五入すれば一歳だし! お豆一つ分くらい生きてるはずだし! ってミサカはミサカは必死に反論してみる!」

一方通行「今年で二十歳の十九歳のヤツは酒を飲ンじゃいけねェ。あとはわかるな?」

打ち止め「ぐぬぬ、妙に説得力があるのが悔しい、ってミサカはミサカは歯噛みしてみる」

黄泉川「お前らー、豆を食べるのはいいけどこれからメシの時間なのを忘れるなよー」

芳川「わかっているわよ。子供じゃあるまいし、豆を食べ過ぎてご飯が食べられないなんてことあるわけないじゃない」ポリポリ

芳川「それにもう出してる分はもう残り少な──」

一方通行「オイ、オマエにしては豆の量が少なくねェか? 俺が増やしてやるよ」



パラパラパラー



芳川「…………」

一方通行「…………」

芳川「……これどういう意味よ」

一方通行「…………」ニヤァ



芳川「……ふふふっ、どうやらキミは私に喧嘩を売っているようね」ゴゴゴゴ

結標「お、落ち着いてください芳川さん!」

一方通行「あはっ、ぎゃはっ、笑いが止まらねェくれェ無様じゃねェか芳川ァ!」

芳川「幼女に豆を投げられるしか能のない煽り耐性ゼロのロリコン野郎が面白いこと言うわね……!」

一方通行「あァン!? 誰が煽り耐性ゼロだってェ!? つゥか俺ァロリコンじゃねェ!」

結標「いや、どう見ても煽り耐性ゼロじゃない」

一方通行「うるせェぞ結標ェ! ……どォやらオマエはここで片付けておかねェといけねェよォだなァ」

芳川「そうね。私もキミに言いたいことが山ほどあるわ」

一方通行「…………」

芳川「…………」



一方通行「都合の悪りィ時だけ引きこもってンじゃねェよニート野郎がァ!!」バッ

芳川「私はバイトしてるからニートじゃないって言ってるでしょうが、この引きこもり白髪モヤシウルトラマン!!」バッ



黄泉川「うるさい」



ガツン!!



黄泉川「これから昼メシだってのに暴れてんじゃないじゃん」


一方芳川『……すみません』


───
──




同日 18:00

-黄泉川家・キッチン-


打ち止め「──というわけで、何だかんだあって今から恵方巻をみんなで作りまーす、ってミサカはミサカはこれからの予定を簡単に説明してみたり」

黄泉川「一体誰に向かって説明しているじゃん?」

一方通行「つまり俺の昼寝の時間っつゥわけか」

結標「そんなわけないじゃない。というかもはや昼寝っていえる時間帯じゃないわよね?」

一方通行「つまりよい子が寝る時間っつゥことか。じゃあ俺も寝ねェとな」

結標「それにしても早すぎるわよ。まだ夕食の時間かどうかも怪しい時間帯だし」

芳川「そもそもキミはよい子じゃないわよね?」

一方通行「……つゥかよォ、どォしてこンなモンわざわざ俺が作らなきゃいけねェンだ?」

黄泉川「働かざるもの食うべからず、って言葉知ってるじゃん?」

一方通行「ああ。じゃあ俺食わなくてイイから働かねェ」

黄泉川「きちん三食食べなきゃダメじゃん」

一方通行「いや、だからいら──」

黄泉川「ダメじゃん♪」ニコッ

一方通行「お、おォ……」

芳川「何という笑顔の圧力」

結標「さすが黄泉川さんですね」

黄泉川「本日の恵方巻に入れる具材は無難にかんぴょう、キュウリ・シイタケ煮、卵、アナゴ、おぼろの七種類じゃん」

芳川「無難ね。ウィキペディアの概要辺りに載ってそうなくらい」

一方通行「何を言ってンだオマエは?」

結標「別にいいんじゃないですか無難で。奇抜な発想で不味くするよりは遥かに」

一方通行「奇抜過ぎる発想で料理をするオマエのセリフとは思えねェよな」

結標「ば、馬鹿にしないでちょうだい! 私はもう包丁で鶏肉をすんなり切ることができるくらい料理スキルが上がっているのよ! そんなことを言われる筋合いはないわ!」

一方通行「その程度でスキルが上がったとは言わねェよ。初歩の段階だ初歩の」

一方通行「それにオマエはもォ少し常識のスキルを身に付けたほうが遥かにイイと思うがな」

打ち止め「それについてはあなたも大概だと思うけどね、ってミサカはミサカは小さい声で呟いてみたり」ボソッ

一方通行「あァ? 誰が常識がないってェ?」ギロ

打ち止め「げっ、最近流行りの難聴スキルを持っていると思ってたけど別にそんなことはなかったぜ、ってミサカはミサカは顔を引きつらせながら後ずさりしてみたり」

芳川「まあ、事実だから仕方がないけど」

一方通行「灰にされてェのか芳川クン?」

結標「いい加減煽り耐性上げなさいよ」

打ち止め「そうだよ! そろそろ大人にならなきゃ、ってミサカはミサカはあなたの肩を叩こうと思ったけどやっぱり背が足りない」ヒョイヒョイ

一方通行「…………」

打ち止め「…………」ヒョイヒョイ

一方通行「……チッ、うっとォしい」

芳川「やはり幼女には勝てないようね」

一方通行「オマエあとでスクラップな」



黄泉川「はいじゃあ早速巻き寿司を作るとするじゃん」

芳川「まあ作ると言ってもただ巻くだけだけど」

一方通行「そォなのか?」

黄泉川「まあな」

一方通行「だったら俺いらねェだろ。何のために呼ばれたのかさっぱり検討もつかねェぞ?」

黄泉川「巻き寿司は準備さえできてれば作るのが本当に簡単じゃん。だから家族団欒で楽しめる優秀な料理じゃん」

一方通行「既に楽しめてねェヤツがいンだが……」

結標「楽しむ以前に何もやってないじゃない貴方」

一方通行「思い込みのチカラってのはすげェンだぜ?」

打ち止め「思い込みのチカラって? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」

一方通行「そォだな。例えばどンな安っぽい肉で作られたステーキでも、高級レストランのシェフみてェな信用度の高いヤツが『高級和牛』とか言えば馬鹿は騙されるンだよ」

結標「…………つまりどういうことよ?」

一方通行「俺が楽しくねェと思い込ンでるうちは何をやろォが面白くねェ」

結標「だったら早くこれは『楽しいこと』と思い込みなさいよ」

芳川「これだから中二病は……」

一方通行「くそったれが、黄泉川ァ! やるならとっととやれェ! コイツらがうっとォしくて敵わねェ!」

芳川「素直に巻き寿司作りたいって言えばいいのに」クス

黄泉川「おう、じゃあまずは私がお手本を見せてやるじゃんよ」スッ


黄泉川「まずは巻き寿司用のすだれの上に海苔を乗せる」スッ

黄泉川「んで、その上に酢飯を乗せるんだけどここであまり乗せすぎないようにするのがポイントじゃん」


打ち止め「何で? いっぱい乗せたほうが量が多くなるんじゃないの? ってミサカはミサカは少し疑問に思ってみたり」

芳川「単純に入れすぎると巻けないからじゃないかしら? ただ固めるだけのおにぎりとは違って、綺麗に巻いてこそ巻き寿司だから」


黄泉川「そうじゃん。あと少なめの量からスタートすれば調整もしやすいじゃんよ」

黄泉川「それにあらかじめこういう風に小分けにして乗せとけば均等に海苔の上に広げることができるじゃん」


結標「へー、勉強になりますね」

一方通行「本当かよ?」

結標「……何よ? 言いたいことがあるなら言ってみなさいよ」

一方通行「別に何でもねェよ」


黄泉川「で、あらかじめ下準備を済ませておいた具を上に乗せるじゃん」パッパッ

黄泉川「ここで真ん中より下の方に乗せておくと綺麗に巻きやすいじゃん」


打ち止め「おおっー、どんどん具が乗せられていく、ってミサカはミサカはすだれの上の状況を実況してみたり」

芳川「さすが愛穂ね。手際がいいわ」


黄泉川「褒めても何も出ないじゃんよ。そいじゃあここから巻きに入るじゃん」

黄泉川「具を抑えながらこうぐいーと」グイー



黄泉川「最後に形を整えて完成! ね、簡単でしょ?」


結標「……見てる分には簡単に見えますけど」

打ち止め「こーいうのは実際やってみると思ったようにいかないことが多いよねー、ってミサカはミサカは一つあるあるを言ってみたり」

黄泉川「まあ初めは誰だってうまくいかないもんじゃん。失敗を恐れずチャレンジしていくことが大事じゃん!」

芳川「そうね。チャレンジ精神を持つことはいいことよ」グイー

打ち止め「ってあれ? ヨシカワいつの間に……?」

結標「よ、芳川さん上手ですね……」

芳川「まあ学生の頃愛穂と一緒に作ってたしね。私はコンビニとかのでいいって言ってのだけど」

一方通行「えっ、オマエらの学生時代ってコンビニある――」



ゴッ! ガッ!



芳川「ハッキリ言って巻き寿司なんて卵焼き作るより簡単よ? よっぽどなことしない限り不味くならないわけだし」

黄泉川「そうそう。それに材料もたくさんあるし、レッツチャレンジ!」

結標「……よし! いざ尋常に――」

打ち止め「勝負! ってミサカはミサカは強敵と相対する気分で巻き寿司作りに挑んでみたり!」

一方通行「……面倒臭せェ」ズキズキ


―――
――





ボローン



打ち止め「うーん、やっぱりうまくいかないねー、ってミサカはミサカは腕を組んで考える素振りを見せてみたり」

結標「うまく形が整えられないわね。木工用ボンドでも使って固定させてみようかしら?」

一方通行「オマエ木工用ボンドの注意書きを読んでみろよ。出来れば二十回くらい」

黄泉川「頑張れー、今日の晩メシはそのまま自分が作ったものになるからー」

芳川「あんまり作りすぎるとすごい量の夕食になりそうね」

一方通行「地獄絵図になりそォだな」

結標「ところで貴方は巻き寿司作らないの? 何もしてないように見えるけど」

一方通行「あァ? 逆にこンなモン何個も作るモンじゃねェだろ」

打ち止め「? どういうこと?」

一方通行「一個作れば十分ってことだ」スッ

結標「なっ、その完璧な巻き寿司貴方が作ったの!?」

打ち止め「す、すごい! ヨミカワたちに引けをとらないくらいの完成度だ! ってミサカはミサカは驚愕してみたり」

一方通行「やり方を一回見れば余裕で作れンだろォが」

芳川「さすがは第一位のレベル5なだけあるわね。キミって本気を出せば大抵のことはできるよね? 面倒だから本気を出さないだけで」

一方通行「そりゃそォだ。俺を誰だと思ってやがる」

打ち止め「おおっー! ってミサカはミサカは賛美の拍手を送ってみたり!」パチパチパチ

結標「……ねえ一方通行?」

一方通行「あァ?」

結標「貴方能力使ったでしょ?」

一方通行「…………何を証拠にそンなこと言ってやがンだ?」

結標「だって貴方能力使わないとまともに両手使えないでしょ?」

一方通行「…………」

結標「…………」

一方通行「たいした推理だ結標名探偵」

結標「そんなことだろうとは思ってたわよ」


―――
――




同日 19:00

-黄泉川家・食卓-



打ち止め「よっしゃー! やっと綺麗に巻けたぜー! ってミサカはミサカは完成品を掲げながら喜びに浸ってみたり!」

結標「やったわ! ボンドがなくても固まったわ!」



黄泉川「よし、二人ともが完成したし、時間もいい頃だからメシの時間とするじゃん」

芳川「ようやく終わったのね。あまりに暇すぎてマインスイーパーの上級を三回もクリアしてしまったわ」カチカチ

一方通行「…………Zzz」

芳川「この子にいたっては昼寝をしているわね」

結標「下手すれば本眠に入ってしまいそうな時間ですよね」

打ち止め「おおーい! 晩ご飯の時間だよー! ってミサカはミサカは耳元に呼びかけてみたり」

一方通行「…………おォ、やっと終わったか。ふわァ……」

結標「……珍しくすぐに起きたわね」

芳川「まだ眠りが浅かったのでしょ」

黄泉川「じゃあ一方通行も起きたことだし、さっそく恵方巻といこうじゃん!」

結標「恵方巻って決まった方向に向かって食べるんですよね、たしか?」

黄泉川「そうじゃん。ちなみに今年は南南東じゃん」

一方通行「南南東…………あァ、あの異様な儀式はそォいうことだったのか」

打ち止め「どうかしたの? ってミサカはミサカは小首を傾げてみる」

一方通行「何でもねェ」



黄泉川「ちなみに恵方巻は一口で、それも無言で願いを思い浮かべながら食べるじゃん」

打ち止め「ひっ、一口……、ミサカにはちょっときついかも、ってミサカはミサカは巨大な恵方巻を前に愕然としてみたり」

芳川「間違ってるわよ愛穂。あくまでお願い事をしているときだけ咥えていればいいだけで、別に一口で食べろってわけじゃないわ」

黄泉川「ありゃ? そーだったけ?」

芳川「そうよ。だから極端に言えば一口かじったら、あとは輪切りにして食べたところで誰も怒らないわ」

一方通行「そもそもよォ、この科学の街学園都市で縁起がいいとか言ってる時点でおかしいだろ」

結標「別にいいじゃない。おみくじや占いみたいなものでしょ?」

一方通行「面倒臭せェ、こンなモン胃に入っちまえば全部一緒だろォが、ン」ガジッ

打ち止め「あー、すぐにかじっちゃった。願い事をしないなんてもったいないねー、ってミサカはミサカは哀れみの視線を送ってみたり」

一方通行「どォでもイイだろォがそンなモン」モグモグ

芳川「でもちゃっかり南南東には向いているツンデレ一方通行でした」

一方通行「……たまたまだ」


黄泉川「じゃあ私らもいただくとするじゃん、ん」パク

芳川「そうね」パク

結標「いただきまーす」パク

打ち止め「やっぱり結構おっきいかも、ってミサカはミサカははむっ」パク


一方通行「…………」モグモグ



青ピ『女の子が、大きくてぶっとい黒光りしたものを口に咥えているんやで!?』



一方通行「…………」


黄泉川「…………」ガジガジ

芳川「…………」マグマグ

結標「…………」パクパク

打ち止め「…………」ハムハム


一方通行「…………ハァ、くっだらねェ」ガジッ


――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

一方さんの『常識』を生贄に『話の展開』を召還!
実際一方さんって結構常識はありそうだよね原作では


次回『学内ラジオ』


【速報】書き溜めが尽きた\(^o^)/
ではではノシ


すみません、今日投下できそうにないので明日投下します


待たせてすみません、投下します

※軽くオリキャラ注意



19.学内ラジオ


February First Tuesday 12:29

-とある高校・放送室-



部員『──放送開始前三十秒前でーす!』



一方通行「…………」

部長「そんなに緊張しなくてもいいよー、肩の力抜いてリラックスリラックスー」

一方通行「……あ、あァ」


部員「十秒前でーす!」


一方通行(…………どォして)


部長「じゃ、マイクスイッチ入れて」カチ


一方通行(……どォして)


部員「5、4、3……」


部長「…………」スゥ



部長『とある高校の放送局ー!』



タッタッタララー♪



一方通行(どォしてこォなった……)


───
──





~一週間前の昼休み・回想~



部長『──はい、『とある高校の放送局』。どうやら終わりの時間が近付いてきたようです』



部長『本日はお忙しい中ありがとうございました雲川先輩』

雲川『こちらこそ。大変貴重な時間だったよ。お昼休みをゆっくり過ごせないのは難点だったけど』


青ピ「はい! ストレートキター!」

土御門「ふっ、甘いぜ! こっちはフルハウスだにゃー」

青ピ「な、何やて!? また土御門君の勝ちかいな」

土御門「まだカミやんがいるからわからないぜい。まぁ、でも……」

上条「…………」

青ピ「聞かなくてもわかるんやけどなー」

上条「……や、やった……!」

土御門「何?」

青ピ「ま、まさかつっちーより強い手札が……!」


上条「や、やっとカードが揃った!」


土御門「…………は?」

上条「見ろよこれ! 近年稀に見る2のワンペアだぞ!?」

青ピ「……たしかに見事なワンペアやなぁ、カミやんが揃えてるの初めて見るでー」

土御門「にゃー、カミやんがブタ以外なんて信じられないにゃー」

姫神「逆にこれまでカードが一枚も揃わない方が。確率的には難しい」



部長『では次回のゲストなのですが、雲川先輩お願いします!』

雲川『たしか友人や知り合いに電話をかければよかったか?』

部長『はい! その相手が次回のゲストとなります!』


一方通行「……ずっと疑問に思ってたンだけどよォ」

結標「何?」

一方通行「このラジオまがいの電話相手がゲストっつゥのはどォして成立できてンだろォな」

結標「どうして、って……別におかしくはないんじゃない?」

一方通行「こォいうのに出たがらねェヤツだっていンだろォが。電話先のヤツがそォいうヤツだったらどォすンだよ?」

結標「言われてみれば……」

吹寄「それなら問題ないわよ」

一方通行「どォいうことだ?」

吹寄「一応呼ぶのは基本友達とかになるから、事前に許可とかは取ってると思うわ」

結標「たしかにそうよね。ゲストとして出るのがわかってるのだから、あらかじめ『次はお前に電話かけるわ』みたいな会話があってもおかしくはないわ」

一方通行「ちなみにイタズラ目的でまったく聞かされてねェヤツがゲストになった場合は?」

吹寄「さあ? そんな話聞いたことないからわからないわ。まあでも、一度呼ばれたからにはたぶん強制参加よ」

一方通行「当人からしたら、迷惑極まりねェ話だなァ」


雲川『……ならば私は彼に次のゲストをお願いしようと思うのだけど』

部長『はい! では、お電話をお願いします!』


一方通行「大体、何でこの学校はこンなよくわかンねェラジオ紛いの放送を毎週やってンだァ?」

結標「たしかこの学校ってスタンダードを極めるのが方針だったわよね? パンフに書いてあったわ」

吹寄「よく知らないけど、そのスタンダードっていうのが嫌な学生たちが始めたことらしいわ。ラジオを放送する学校なんて珍しいでしょ?」
 
一方通行「初めからこの学校に入るなよ、そのラジオ創設者ども」

吹寄「まあそれなりに好評らしいし、先生たちついで連絡用に使えるから便利に思っているらしいし」

結標「そういえばよく最後あたりに連絡があるわね。避難訓練とかの」

一方通行「チッ、まァ今さら俺には関係ねェことだがな。ラジオなンざくだら――」


ピピピピッ! ピピピピッ!


一方通行「あン?」

吹寄「電話の着信音? 誰の?」

一方通行「俺のだ」スッ

結標「相変わらず味気のない着信音ね」

一方通行「うっせェよ……あァ? 非通知だァ?」

結標「非通知? どうしてそんな……」

一方通行「知るかよ。……もしもし?」ピッ


??『……やあ一方通行君。初めましてかな?』


一方通行「(女の声……?)誰だ?」




??『そう身構えなくてもいいと思うけど。私は君が思っているようなものではないよ』

一方通行「自分の名前も名乗らねェヤツからの非通知電話だ。怪しまねェわけねェだろォが」

??『私が誰、かという疑問はすぐに君の中から消え去ると思うけど……本当にすぐ、にな?』

一方通行「……一体何を――」


結標「ちょ、ちょっと一方通行ぁ!」


一方通行「あァ? 何だよ、今通話中だ――」

結標「あ、貴方の声が……」

一方通行「ハァ? 俺の声がどォ――」


一方通行(ラジオ)『――したァ?』


一方通行「ッ!?」

??『そろそろわかった? 君の電話相手が誰なのかを』

一方通行「…………雲川、 芹亜」

雲川『そう。私は泣く子も黙る雲川先輩だけど』

一方通行「……何の用かな雲川クゥン? わざわざこンなふざけた電話かけてきやがって……」

雲川『さっき言ったように私は君にとっての先輩、上級生なのだけど。その呼び方は少しイラつくものがあるな』

一方通行「チッ、何の用ですかァ? 雲川センパイ」

雲川『私が今君に電話をするということ、それは一体どういう意味なのか。君ならすぐにわかると思うけど』

一方通行「…………まさか」

雲川『そう、そのまさかだ……ではな』

一方通行「ちょ、待っ――」


部長『もしもし一方通行君? どうもこんにちはー!』


一方通行「…………」

部長『というわけで、来週のゲストは君に選ばれました! おめでとー!』

一方通行「いや、ちょ、俺ちょっと用事があるンでェ……」

部長『ちなみに拒否権はありません! じゃあ来週来てくれるかなー?』

一方通行「…………」



一方通行「つゥか、強制ならその質問意味ねェじゃねェかァああああああああああああああああああああッ!!」



───
──




同日 同時

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「……そろそろ始まる時間ね」

結標「うん。というか大丈夫かしらアイツ」

吹寄「まあ何とかなるんじゃない? たかが二十分のラジオだし」

結標「その二十分が長いと思うわ。彼にとって……」

姫神「たしかに初対面の人と一対一の会話は。かなりつらいものがある」


青ピ「たっだいまー!」

土御門「ふー、何とか間に合ったぜい」

上条「五百円玉落とした……不幸だ……」


結標「おかえりなさい三人とも」

吹寄「また上条はご飯を買えなかったたわけ?」

上条「いや、何とか焼きそばパン一つは買えたんだ。でも勘定のときに財布から……五百玉が……こう、人混みの方へと……」

姫神「ご愁傷様」

土御門「まあいつものことだけどにゃー」

青ピ「それより今ご愁傷様って言ってやらんといかんのはアクセラちゃんのほうやろ」

吹寄「少し疑問に思ったんだけど、雲川先輩とアクセラは一体どんな関係なんだろ?」

姫神「会話の内容を聞く限り。アクセラ君はこのことを知らないみたいだった」

上条「このことってラジオのこと出演のことか?」

姫神「そう」

結標「そう言えば一方通行が携帯に非通知で電話がかかってきた、って言ってたわ」

青ピ「ちゅーことは雲川先輩が一方的にアクセラちゃんの番号知っとったってことになるんかな?」

吹寄「あの反応ならそうかも知れないわね。何でここで電話がかかってくるんだ、って感じだったし」

結標「一体何者なの? その雲川先輩っていう人」

青ピ「さあ? 美人で巨乳で黒髪ロングが似合うクールでミステリアスな先輩、ってことは知っとるけど……」

上条「そーいや俺、よくあの人と話したりするんだけどクラスだとか学年だとか、そういうこと一切知らねーんだよな」

青ピ「ほぉ、さすがカミやんやな。クラスの女子だけでなく巨乳センパイまで手を広げていたなんて……あー憎らしい」

上条「何言ってんだお前は?」



キンコンカンコーン♪



土御門「おっ、どうやら始まったみたいだぜい。例のラジオが」




部長『とある高校の放送局ー!』



タッタッタララー♪



部長『どうもみなさんこんにちは! 今週も始まりましたとある高校の放送局!』

部長『本日もパーソナリティを勤めさせていただくのは、放送部部長、二年○組の××です!』


結標「まあとにかく、一方通行が放送部部長さんに変なこと言わないか心配だわ」

青ピ「むしろボクはガチガチに緊張して何も言えへんみたいな展開にならんか心配やけどな」

上条「緊張? あの一方通行がか? 想像できねーな」

結標「初対面の人との一対一の会話ができなくて、逃げ出したくなって私にテレポート要請してきたヤツよ? むしろ想像しやすいと思うけど」

姫神「そういえばそんなこともあった。一月くらい前のことだけど懐かしく感じる」

吹寄「たしか風斬さんと一緒の車だったのよね。隣同士で」

青ピ「たしかにあーいうタイプの娘との会話はキツイわなー。ボクでもちょっと手こずると思うでぇ」

上条「そうか? 別に普通に話せると思うけど……」

土御門「そりゃカミやんはそれなりに付き合いがあるからだろ? 初対面ってことを忘れちゃいけないぜい」

吹寄「まあでも、部長さんはラジオのパーソナリティをやっているのだからいわゆる話のプロ」

吹寄「初対面の人でも色々聞き出して会話に発展させていくのは容易だとは思うわ」

結標「でもそれってあくまで普通の人が相手に限る話よね?」

結標(人とのコミュニケーションが苦手な上に口が悪いし、問題をしでかさない可能性のほうが遥かに低いわよね……心配だわ)ハァ


部長『――さて、では早速本日のゲストを紹介しましょう!』

部長『七人しかいない超能力者(レベル5)の中でなんと第一位の高位能力者!』

部長『一年七組所属の一方通行君です!』


一方通行『…………』

部長『…………』

一方通行『…………』


部長『(…………ちょっと一方通行君! 挨拶挨拶!)』ボソ


一方通行『……あ、ど、どォも。い、一年七組の一方通行です』


青ピ「あはははっ、放送事故かと思うたやん~~! 面白っ~~!」

結標「…………はぁ、やっぱり」

上条「随分と緊張してるみてーだな」

吹寄「そういえばアクセラって、転入してきたときの自己紹介も下手糞だったっけね」

土御門「あー、姉さんに言われるまでずっと黙ってたもんな」



部長『今日はゲストの一方通行君と一緒にやっていきたいと思います』

一方通行『…………』

部長『よろしくお願いしますね、一方通行君』

一方通行『…………』

部長『…………』

一方通行『…………』

部長『ではとある高校の放送局。始まり始まりー!』


タララララー♪


青ピ「普段は二人組で仲良くやってるラジオにゲストで来たラジオ慣れしていない人並みに喋らへんやん」

上条「下手したらそれ以上だろ」

吹寄「問題なのはこれが一対一のラジオってところなのよね」

結標「アイツにとって長い二十分間になりそうね……」


部長『改めてこんにちは! ××です!』

一方通行『……一方通行です』

部長『まず最初に一方通行君の紹介から』

部長『現在一年七組に所属している十六歳!』

部長『先ほど言ったように学園都市の中で七人しかいない超能力者(レベル5)の中のなんと第一位!』

部長『能力名はええと……お名前と同じ一方通行(アクセラレータ)です!』

部長『たしか一方通行君は去年の十一月ぐらいに転入してきた転入生でしたよね?』

一方通行『……あ、あァ』

部長『ズバリ聞きます! 高位能力者である君がわざわざこんな平々凡々な学校へ転入してきた理由は!?』

一方通行『……別に大した理由なンてねェよ。家から近かったから、と同レベルの理由だ』

部長『ということは別に理由はないということですか?』

一方通行『いや理由がねェわけじゃねェよ。ただ話すまでもねェだけだ』

部長『?』


姫神「やっとまともに会話した」

土御門「会話かどうか怪しいけどにゃー」

吹寄「あれじゃあ弾む会話も弾まないわね」

青ピ「てか、ほんま姉さんらはどーしてウチに転入してきたん? ずっと疑問に思ってたんやけど」

上条「たしかにそうだよな。お前らならもっと上の学校に行けるだろうに」

結標「一方通行の言ったとおり別にこれといった面白い理由なんてないわよ。ただ面倒見てくれてる黄泉川さんが勤務してる学校だから、って感じに……」

結標(まあ本当はいつの間にか勝手に入れられてたんだけど、そんなこと言うわけにもいかないわよね)

吹寄「へー、中途半端な転入にはそんなわけがあったのね」

姫神「それを言えばいいのに。なぜアクセラ君はあんなにことはを濁しているのだろう?」

結標「彼のことだから、単純に面倒臭いだけじゃないかしら?」

姫神「納得」



部長『──では軽くゲストの紹介が終わったところでメールを紹介しましょう!』

部長『『ハンドルネーム:小萌先生に罵られたい』さんですね。ありがとうございます!』

一方通行(コイツ青髪ピアスじゃね?)

部長『××さん、ゲストの一方通行さんこんにちは! はいこんにちはー!』

一方通行『…………』

部長『……今日のゲストの一方通行さんはレベル5の中でも第一位というわけですが』

部長『少し汚い話になるんですけど……ぶっちゃけ月の奨学金はどれだけもらっているんですか?』

部長『差しさわりのない程度に教えてください! 以上、雀の涙くらいしかもらえないレベル0からでした!』

部長『……はい、ということで月の奨学金ですね。どうですか一方通行君?』

一方通行『そンなモン気にしたことねェよ』

部長『ほほぉ? お金がありすぎてどうでもいいということでしょうか?』

一方通行『金なンてあってもたいした使い道がねェしな』

部長『その発言。おそらく全校生徒を敵に回す発言だと思うよ?』

一方通行『どォでもイイ……そォだ。どいつかは言えねェが他のレベル5の奨学金の額は知ってる』

部長『ホントですか! プライバシーに関わりますから、大体で教えてくれませんか?』

一方通行『そォだな……サラリーマンの年収を鼻で笑えるくれェにはもらってるな』

部長『金持ち爆発しろ!』


結標「…………」

姫神「もらってるの? 鼻で笑えるくらい」

結標「あ、あははー何を言ってるのかしら吹寄さん。別にあれ私のことを言っているとは限らな――」

吹寄「でも結標さんのくらいしか、アクセラは知りようがないんじゃない?」

結標「…………」

青ピ「姉さん姉さん! ボク今度出るアニメのブルーレイボックスがほちぃ!」

土御門「義妹へプレゼントするコスプレ衣装の制作費がほちぃ!」

吹寄「自分でバイトして買え!」ゴゥ



バキッ!




部長『続きまして『ハンドルネーム:カナミンちゃんは俺の嫁』さんからです、ありがとうございます!』

一方通行(コイツ青髪ピアスじゃね?)

部長『××さん、一方通行さんこんにちは! はいこんにちは!』

一方通行『…………』

部長『……一方通行さんはレベル5なのでテストとかでも結構高得点を取れるくらい勉強できそうですが』

部長『一方通行さんにとって、苦手な教科はありますか? よかったら教えてください』

部長『というわけで、苦手な教科はありますか?』

一方通行『……そォだな。国語とか英語はなぜだか知らねェが満点が取れねェ。そォいう意味ではその系統が苦手だな』

部長『文系の問題が苦手ってことですね? ということは理数系の問題は?』

一方通行『ここの学校レベルなら解き終わるのに十分もかからねェ。一瞬で満点だ』

部長『ほほぉ、すごいですねー。私も一度くらいは満点を取ってみたいですよ』

一方通行『ハァ? オマエ取ったことねェのか?』

部長『ええまあ、八十点くらいならありますけど……』

一方通行『あの程度の問題でそれくらいしか取れねェのかよ』

部長『……もしかして君ってこの学校の生徒たちに喧嘩を売りにここまで来てる?』

一方通行『来たくて来てるわけじゃねェからな』


青ピ「全校生徒に堂々と喧嘩を売る……さすがアクセラちゃんやで!」

土御門「生徒どころか教員にも思いっきり売ってるぜい!」

結標「この学校の中アイツの好感度だだ下がりしてそうね」

上条「このラジオに出て、ここまでイメージダウンを謀るヤツ始めてみた気がする」

土御門「もともとのイメージがどんなもんか知らないけどにゃー」



部長『……ではふつおたが終わったところで次のコーナーに行きましょう!』

部長『第一火曜日はこのコーナー!』


部長『能力判定検査いたしますっ(非公式)ー!』


一方通行『非公式って何だよ非公式って』

部長『学園都市では能力開発によって生まれるチカラ、要するに超能力が重要視されています』

部長『超能力とは時には手から火を出したり、時にはある場所からある場所までテレポートしたり、時には身体能力を高めたり、と様々です!』

部長『なのでどんなチカラが超能力として判定されるのかわかりません』

部長『ですから『あれ? これ実は超能力なんじゃね?』と思った特技などをリスナーさんにメールで送ってもらい』

部長『それを私たちが無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)までの六段階で勝手に査定し、それに名前を付けちゃうのがこのコーナー!』

一方通行『ちょっと何言ってンのかわからねェ』

部長『別に難しく考えなくてもいいですよ。ただのネタコーナーですし』

一方通行『…………』

部長『まずは前回の能力をおさらいしてみましょう!』

部長『『ハンドルネーム:ボブ・サック』さんの『速攻の虹色忍者』大能力者(レベル4)!』

一方通行『は?』

部長『『ハンドルネーム:トンコツラーメン』さんの『十秒の壁が厚い!!』異能力者(レベル2)!』

一方通行『何だって?』

部長『以上の二つが前回紹介した能力です!』

一方通行『これ能力名だったのかよ。一体何をどォしたらこンなクソみてェな名前が生まれンだよ』

部長『ちなみにどんな能力だったかはさっぱり覚えていません! 一ヶ月前だからしょうがないよね』

一方通行『オイふざけンな気になって授業中もおちおち寝られねェじゃねェか』


吹寄「……たしか一つ目のは折り紙で鶴を速く折れる能力だったっけ?」

姫神「違う。たしか手裏剣」

結標「ああ、だから名前に忍者って付いてるのね」

吹寄「二つ目のが全然思い出せないわ」

青ピ「名前からして百メートルを十秒で走ることができる能力やないかな?」

上条「たしかにすげーけど、この街じゃ微妙じゃね」

土御門「まあそーいう特技を募集するのがこのコーナーだしな」

吹寄「でもそんな能力じゃなかったような気がするのだけど」

結標「思い出せやすい能力名付いたことないわよねこのコーナー」



部長『ところで一方通行君は何か能力はありますか?』

一方通行『ハァ? 何言ってンだオマエ? 超能力者(レベル5)なンだから能力がねェとおかしいだろ』

部長『そういうわけじゃなくて特技です特技』

一方通行『特技だァ? ンなモン考えたこともねェよ』

部長『何かないんですか? 例えば体が柔らかいとか……』

一方通行『ねェよ、そンなクソみてェ特技』

部長『……何かつまんないですねー』ハァ

一方通行『それがゲストに対する態度かクソパーソナリティー』

部長『やれやれ、しょうがないですねー。じゃあ君の持っている能力とかで構いませんよ。一方通行(アクセラレータ)って一体どんなチカラなんですか?』

一方通行『どォして特技がねェだけでこンな扱いを受けなきゃいけねェンですかねェ』ピキピキ

部長『まあまあ落ち着いてください。別に特技なんてなくても大丈夫ですって。だからそんなに自分を責めないで』

一方通行『俺がムカついてンのはオマエという存在そのものについてなンだけどよォ』

部長『……じゃあ時間も押してますしコーナーを進めましょう! まずは『ハンドルネーム:イケメガネ』さんです、ありがとうございます!』

一方通行『華麗にスルーしてくれてンじゃねェぞゴルァ』

部長『私の能力は授業中に暇な時にやるペン回しです! 最初は何気なくやってみてたのですが、今は何か神がかってます!』

部長『クラスメイトたちに見せると『お前の手、どうなってんの?』とドン引きされるほどです! こんな能力ですが能力判定おねがいします!』

部長『と、こんな感じですね。どー思いますか一方通行君?』

一方通行『……チッ、どォでもイイ』

部長『ペン回しですかー、私も結構やりますよ下手糞ですけど。よく床に落っことして先生に怒られますよあはは』

一方通行『真面目に授業受けろよ。俺が言うことじゃねェだろォがな』

部長『ちなみに一方通行君はこのペン回しみたいな授業中とかによくやることはありますか?』

一方通行『あァ? ああ、授業中は基本仮眠を取ってるか、寝てるかのどっちかだ』

部長『……ん? 仮眠を取ってると寝てる……ですか? 一体どう違うんでしょうか?』

一方通行『仮眠はわずかに意識は残して寝る。だから一応は教師の話を聞いてることになるわけだ。反対に寝るっつゥのは本格的に寝てる』

部長『え、そんなこと可能なんですか?』

一方通行『俺を誰だと思ってやがる? 学園都市最強のレベル5だぞ?』

部長『……さすがレベル5ですね! パネェです!』


結標「……そういえば寝てるわね、結構な頻度で」

姫神「小萌先生がよく涙目になってる」

青ピ「涙目の小萌センセかあいい!」

上条「俺も授業は結構寝ちまうなー」

土御門「授業中はメイドさん本を読むのに限るぜい!」

吹寄「どうでもいいけど、きちんと授業受けなさいよ貴様ら」



部長『ところでこのイケメガネさんに能力名とレベルを付けて上げなきゃなんですけど』

一方通行『あァ? 何で俺のほうを見やがるンだ?』

部長『まずは名前を付けましょう。何かいい案ありませんか?』

一方通行『ハァ? ンなモン俺に聞いてどォする?』

部長『一方通行君こういうの考えるの得意そうじゃないですか! だって『一方通行(アクセラレータ)』なんてかっこいい能力名を自分でつけてるくらいですから!』

一方通行『ッ!? オマエ、どォしてそれを知っていやがる……?』

部長『だってこういうあまり聞かないような能力名って自分で決めてるやつなんでしょ? 先生から聞いたことありますよ』

一方通行『ぐっ……ふざけやがって……』

部長『ほらほら、じゃあちゃっちゃと名前付けちゃってくださいよ。一方通行みたいなかっこいい名前を』ニヤニヤ

一方通行(このクソアマァ、人ォおちょくって楽しンでやがるな……)

一方通行『……そォいうオマエは何かイイ案ねェのかよ? オマエのほうが名前を付けた経験あンだろォが』

部長『えっ、私ですか? そーですねー、んー…………あっ!』

一方通行『何か思い浮かンだのか?』

部長『『くるくるペンシル』ってどうでしょうか!?』

一方通行『ハァ?』

部長『我ながらいい名前だと思うんですが……!』ドヤ

一方通行(だ、ダセェ……、そのままな上にものすごくダセェ……)

一方通行(そもそも読み方に擬音入れてる時点でヤベェって気付けよ。どォしてコイツはこンなにドヤ顔でいられンだ?)

一方通行(コイツ……もしかしなくても馬鹿か……? こンなのがよくラジオのパーソナリティーなンて務めることが出来るなァ……)

部長『ん? 黙りこくっちゃってどうかしました?』

一方通行『……いや、あまり素晴らしい名前だったモンでなァ。感動的過ぎて絶句しちまった』

部長『本当ですか! ならこのイケメガネさんの能力名はくるくるペンシルで決定ですね!』

部長『じゃあ何かペン回しが神がかってるようなのでレベルは超能力者(レベル5)にしましょう!』

一方通行『は?』

部長『じゃあイケメガネさんの能力は、『くるくるペンシル』超能力者(レベル5)に決定です! おめでとうございます!』ドンドンパフパフ

一方通行(何か知らねェが超能力者(レベル5)また一人増えた……)


吹寄「……相変わらずこの部長さんのネーミングセンスは壊滅的ね」

姫神「ゲストが名前を考えられる人じゃないと。必ずひどい名前になる」

上条「……能力名といえば結標? お前の『座標移動(ムーブポイント)』は自分で付けた名前なのか?」

結標「えっ? さ、さあ……記憶がないからわからないわ」

青ピ「そーいや姉さんの能力名って変わってるよなー、普通は『空間移動能力者(テレポーター)』やし」

土御門「カミやんも変わってるよなー、無能力者なのに『幻想殺し(イマジンブレイカー)』って能力名あるし」

上条「えっ、いや、そりゃちゃんと俺の右手にチカラあるし……」

青ピ「ん? あれ? もしかしてカミやんって無能力者じゃあらへんのちゃうん?」

吹寄「言われてみればそうね。能力を消す能力なんてよくよく考えたら普通に能力だし」

土御門「それなのに何で無能力者(レベル0)のままなんだろうなー?」ニヤニヤ

上条「……んなもんこっちが聞きてえよ! つーか誰か俺の右手を能力と認めてくれよ! せめて低能力者(レベル1)判定ぐらいちょうだいよ! 奨学金増額してくれよ!」ブワッ

姫神(……実は私も無能力者(レベル0)の能力持ちだけど。言ったら面倒臭いことになりそうだから黙ってよう)


部長『――さあて、お次の方は……へっ? 時間がないから切り上げろ? ええー、そんなー! まだ一つしかお便り読めてませんよー!』

一方通行(助かった……よォやくこのクソみてェなラジオからおさらばできる)

部長『……まあ、しょうがないですね。能力判定検査いたしますっ(非公式)のコーナーでした!』

一方通行『だから非公式って何だよ』


部長『ではお知らせです!』

部長『来週の水曜日からテスト週間が始まります。ですので部活動はお休みとなります』

部長『ちなみにこのラジオはテスト週間中でも流れますので心配しないでください。えっ? お前らちゃんと勉強しろって? テストなど知らんなぁ!』

部長『まあテストも大事ですが、来週は一大イベント、バレンタインデーがあります!』

部長『それについて生活指導の先生から一言もらっています。『お菓子を持ってくるのはいいが、学校で食い散らかすのはやめてくれ』だそうです』

部長『みなさんお菓子もらってはしゃいでも、食べるのは帰宅してからにしてくださいね』

部長『以上、お知らせでした』


部長『――はい、『とある高校の放送局』。そろそろ終わりの時間ですね!』

部長『さて、本日はありがとうございました一方通行君。初ラジオはどうでしたでしょうか?』

一方通行『…………』

部長『……あれ? 一方通行君?』

一方通行『…………Zzz』

部長『ちょっと一方通行君!? 何で放送中に寝てるの!? 別にお知らせそんなに長くなったよねーおい!』

一方通行『……あァ? ンだよオマエ?』

部長『それはこっちのセリフだこの野郎。ラジオこれで終わりますので感想聞いてんですよ』

一方通行『感想だァ? そォだな……面倒臭かったです』

部長『そーでしたかー! 楽しめてもらえて何よりです!』

一方通行『オイお前の耳腐ってンじゃねェか?』

部長『いやー本当に楽しかったですよこっちは。また来てくださいね一方通行君』

一方通行『来ねェよ。つゥか、もォ二度と呼ぶンじゃねェぞ』

部長『それは保証できませんねー、ゲストを決めるのはその日のゲストであって私じゃありませんから』

一方通行『チッ……』

部長『そういえば、先ほどお知らせでもあったように来週はバレンタイデーですね!』

一方通行『……は? 今何つった?』

部長『何って……バレンタインデーって言ったんですけど……?』

一方通行『バレンタイン……だと……?』

部長『ところで一方通行君はバレンタインデーにチョコをもらう予定はあるのかなー?』

一方通行『……! ン、ンなモンねェ……と思う、そォ信じたい……』

部長『? もしかしてあげる予定とかもあったりするのかなー?』

一方通行『何で男の俺がチョコなンざやらなきゃなンねェンだよ』

部長『いやー今逆チョコとか流行ってるみたいですし……』

一方通行『そンなくだらねェ流行になンて俺が乗るわけねェだろォが』

部長『ないのかー、ちぇーつまんないのー』

一方通行『ぶっ殺すぞオマエ』



部長『それじゃあ恒例のお次のゲストを電話で呼んでください!』

一方通行『ゲスト?』

部長『はい。携帯電話でお友達にTEL! その電話相手が来週のゲストです!』

一方通行(あ、ヤベェ、誰に電話するか決めンの忘れてた)

部長『……一方通行君?』

一方通行『お、おォ待ってろ』ピッ

一方通行(……ま、面倒だからコイツでいいか)ピッピッ



プルルルルルルル、プルルルルルル



吹寄「……一体アクセラは誰をゲストとして呼ぶんだろ……?」

姫神「もし呼ばれたら……嫌だな」

青ピ「あーどーしよー! ほんま呼ばれたら困っちゃうなーマジで」

結標「とか言いながら呼んで欲しそうね貴方」

土御門「ま、呼ぶとしたらこの中の六人以外いないんじゃないかにゃー?」

上条「ま、無難に吹寄辺りじゃねえか? 一番こういうのに慣れてそうだし」

吹寄「な、何を言っているのよ貴様! 何であたしが慣れてるって決め付けているのよ!」

上条「い、いや吹寄って大覇星祭の実行委員とかやってたし……」

吹寄「そんなの関係ないわよ! 勝手に決め付けてないで欲しいわ!」

上条「……何でそんなに怒ってらっしゃるのかわかりませんがすみません」

土御門「ま、ここで何を言ってもゲストを決めるのはアクセラちゃんだぜい。大人しく受け入れるにゃー」

姫神「ちなみに土御門君は出たいの? ラジオ」

土御門「正直面倒臭いにゃー! 昼休みくらいゆっくりしたいぜよ」

上条「俺もゆっくりしてーよ。ただでさえ昼休みの購買での死闘のあとだしな」

上条「ラジオなんて出てたらまともに休めねーよ。そんなのは絶対ごめんだぜ」

青ピ「あ、それフラ――」



ブーブー、ブーブー!



上条「ん、電話? 一体誰だ?」ピッ

結標「あ」



上条「もしもし?」


一方通行『よォ三下ァ?』


上条「」

 
                    ゲスト
一方通行『つゥわけで来週の犠牲者はオマエだ。よかったな』



上条「」


一方通行『じゃあ電話代わるぞ?』


上条「」


部長『もしもし上条君? こんにちはー!』


上条「」


部長『というわけで、来週のゲストは君に選ばれました! おめでとー!』


上条「」


部長『じゃ、来週は来てくれるかなー?』





上条「……ふ、不幸だァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」





吹寄「うるさい!」

土御門「……やっぱりこういう展開になっちゃったかにゃー」

姫神「まあ。なんとなくは読めてた」

青ピ「よし! 次はボクが出演させてもらえるようにカミやんに頼んでおこう!」

結標「やっぱり青髪君は出たかったのね、あはは」

結標(…………まあ、それより)



結標(……バレンタイン、か……)



――――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

今までこういうものがあったのかと思うくらい唐突なラジオでしたね
まるで映画のエンデュミオンみたいな……


次回『バレンタイン前日』


次回からバレンタイン編が始まる予定ですが書き溜めも何もしてません
つまり、前スレのスキー旅行編のときと同じ状況というわけだ
忙しい中ですがなんとか更新は途切れないようにしたいと思いますのでよろしくおねがいします

ではではノシ

すみません、明日試験があるので今日は休ませてもらいます
できれば明日、最悪明後日には投下します


すみません待たせました

短いですが投下します



20.バレンタイン前日


February 13,Wednesday 15:00 ~放課後~

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「……さて、いよいよ明日はバレンタインデーよ」

姫神「…………」

結標「…………」ゴクリ


吹寄「バレンタインデーは恋愛成就させるためには持ってこいのイベント!」

吹寄「ここで一気に距離を縮められれば……恋が実るなんてことがあれば御の字よ!」

吹寄「でもそのためにはそれ相応の準備が必要なのよ!」


結標「何だかえらく張り切っているわね吹寄さん」

吹寄「そりゃまあサポートするって決めたんだから、成功するまで全力でサポートするに決まってるじゃない」

姫神「……吹寄さん。私は……?」

吹寄「大丈夫よ! 倍率は高いかもしれないけど、 何だかんだ言ってクラスで一番あいつと交流してるのは姫神さんだもの!」

姫神(……吹寄さん。インデックスのこと絶対に忘れてると思う)

結標「で、私たちは一体どうすればいいのかしら?」

吹寄「ターゲットに渡すチョコレートを用意しましょう!」

結標「そうね。それがないと話ならないわよね、バレンタインなのだから」

吹寄「別にチョコレートじゃなくてもいいけど、まあシンプルイズベスト、無難でいいと思うわ」

結標「それじゃあ早速デパートにでも行って良さそうなものでも探しに行きましょうか?」

吹寄「ん? 何でデパート?」

結標「いや、デパートならちょっと高級な感じのチョコレート売ってそうでしょ?」

吹寄「……まさか既製品で済ますつもりじゃないでしょうね?」

結標「えっ、駄目なの?」

姫神「…………」

吹寄「……はぁ、まあ駄目じゃあないけど……ただ」



吹寄「たぶんだけど、相手にそのまま既製品を渡したところで気持ちは伝わりにくいと思うわ」

結標「……って、ことは?」

姫神「必然的に。手作りが好ましいことになる」

吹寄「というわけで今から作りましょう! アクセラに渡す手作りチョコレートを!」

結標「」

吹寄「どうかした結標さん?」

結標「……や」

姫神「矢?」



結標「やっぱりこういう展開かあああああああああああああああああああっ!!」



姫神「!?」ビク

吹寄「む、結標さん!?」

                                                              デビルコック
結標「て、手作りなんて駄目よ! だって私は野菜を炒めるだけで未元物質を生み出すことができる死の生産者なのよ!?」


姫神「うん。知ってる」

結標「ぐはっ、こ、こう当たり前のように返されたら結構傷付くわ……」

吹寄「大丈夫! そこまで自分を卑下する必要はないわ。結標さんはあくまで基本がわかってないだけよ! 決して料理音痴ってわけじゃないわ!」

結標「吹寄さん……」

吹寄「というわけで、早速材料を買い出しに行きましょ! バレンタインまで時間がないわ!」

結標「わ、わかったわ!」

姫神「……あの。吹寄さん」

吹寄「何かしら?」

姫神「今から結標さんに作り方を教えながら明日のチョコレートを作る。ってことでいい?」

吹寄「そうだけど、それがどうかした?」

姫神「わざわざ前日に教えなくても。もっと前から準備に取りかかっててもよかったんじゃ……?」

吹寄「…………」

結標「…………」

姫神「…………」

吹寄「……姫神さん」

姫神「何?」





吹寄「人間っていうのはギリギリになればなるほど大きな力を発揮できるのよ!」



姫神「今まで忘れていたのならそう言えばいい」

吹寄「しょ、しょうがないのよ! なぜだかわからないけど今の今まで忘れていたのだから!」

姫神「大宇宙の意志的な何かを感じる」

結標「な、何だかよくわからないけどすごそうね……!」

吹寄「面目ない……」

結標「だ、大丈夫よ吹寄さん。チョコレートなんて作るのそんなに時間はかからないでしょ……たぶん」

姫神「作るものによって違ってくる。まあ簡単に作れるものを選べばいい」

結標「そうね。簡単な方がこっちも大助かりだし」

姫神「でも時間がないのは事実。動くのは早い方がいい」

結標「じゃあ今すぐ出ましょ? 材料の買い出しに」

吹寄「……わかったわ。いつまでも失敗を引きずっててもしょがないものね!」

姫神「そう。そもそも大宇宙の意志的な何かなのだからしょうがない」

結標「で、材料はどこに買いに行けばいいのかしら? やっぱりスーパーとか?」

吹寄「スーパーでも別に構わないけど、正直良いものを作ろうと思ったら専門店とかに行った方がいいわよ?」

結標「うーむ、だったらスーパーとかでいいかもしれないわね。こんな壊滅的な料理センスで高級品だなんて猫に小判のレベルを超えてるわ」

姫神「やはり練習するのだから。業務用のものを買って。たくさん練習した方がいいと思う」

結標「うん、私もそれが良いと思う。その方が安くつきそうだし」

吹寄「だったらここから少し歩いたところにあるスーパーにでも行きましょう。あそこは結構安いから」

結標「わかったわ」



吹寄「あっ、でも飾り付けとかするのならやっぱり専門店とか行ったほうがいいかも」

結標「飾り付けか……その発想はなかったわ」

吹寄「別に業務用のチョコレートくらいなら、少し割高にはなるけど専門店のほうでも売ってるだろうし……どうする?」

結標「うーん……」

姫神「そこまで難しく考えることはない。単純にチョコレートを溶かして固めるだけなら。そういう店にわざわざ出向く必要もない」

結標「反対にいろいろデコレーションするのなら専門店とかに行った方がいいってわけね」

吹寄「まあ、あくまで作るものが決まっていたらの話だけどね」

姫神「何を作るか決めてる?」

結標「んー、正直どれが作れて、どれが作れないものなのかわからないのよね」

姫神「つまり。とくに何を作るかは決めてないってこと?」

結標「まあ……」

吹寄「だったら専門店とかに行った方が良いと思う。そこなら詳しいレシピ本とか売ってると思うわ」

吹寄「それにもしスーパーとかに行って本格的な飾りが必要になったら、結局そういう店に行かないといけないわけだし」

結標「……そうね。だったら専門店に行きましょ! 猫に小判とか言ってる場合じゃないわ」

姫神「通学路の少し遠回りに行ったところに一軒あるはず。そう時間はかからない」

吹寄「よし! じゃあ出発しましょ!」

姫神「うん」


結標(……ふー、て、手作りチョコレートか……なんか緊張するなぁ)


姫神「……そういえば」

吹寄「どうかした姫神さん?」

姫神「結標さんって……」

結標「……私がどうかした?」


姫神「今さらだけど。結標さんはサラリーマンの年収を鼻で笑えるくらいお金持っているのだから。別に安いとか考えなくても良いんじゃ……?」


結標「…………」

吹寄「…………」

姫神「…………」

結標「い、いやーまだレベル4の時の感覚が残ってて……」

吹寄「それでも十分お金持ちじゃない」


───
──




同日 15:20

-第七学区・とある公園-


一方通行「…………」


ピッ、ガチャコン!


一方通行「…………」スッ

一方通行「…………」ガチャリガチャリ

一方通行「…………」ストッ←ベンチに座る

一方通行「…………はァ」


一方通行「……バレンタイン、か」


一方通行(節分という風習を知らなかった俺でも、さすがにバレンタインぐらいはわかった)

一方通行(昔、十字教のとある司祭が死刑された日であり、向こうじゃ恋人やら親しい人やらに贈り物をする日)

一方通行(日本じゃ女が好きな異性にチョコレートを送るっつゥことになっている)

一方通行(正直馬鹿どもいくらハシャいだところで俺には関係ねェ、何も変わらねェただの平日だと、以前までの俺はそォ思ってた)

一方通行(だが今は違う。ある一つの懸念材料が俺の目の前に現れたからだ)

一方通行(結標淡希。八人目の超能力者(レベル5)であり、俺と同じ家に居候している同居人)

一方通行(同じところに住ンでいるせいか、俺のことをやけに気にかけやがる口うるせェ野郎だ)

一方通行(……おそらくアイツは明日、確実に俺へチョコレートを渡すだろう)

一方通行(別にアイツが俺に好意を抱いているなンて勘違いも華々しい妄言を吐くつもりはさらさらねェ)

一方通行(だがアイツが確実にこのバレンタインの波に乗る、そォ思える心当たりが俺にはあった)


一方通行(結標淡希は……『イベントならとりあえず参加しとこ脳』だ)


一方通行(アイツには今記憶喪失で思い出というものがあまりない)

一方通行(だからかヤツは思い出作りに対しては積極的に、熱心に行動するよォになった)

一方通行(まァ、半分俺のせいみてェなモンだけどな……)

一方通行(つまり、そンなヤツがこのバレンタインデーという一年間の中でも恐らくトップクラスに騒がれるイベントに参加しないわけがない)

一方通行(物事には熱心に取り組むンだから、必然的には用意されるチョコレートなどの菓子類は確実に手作りだろう)

一方通行(殺人級の料理を平然と行うヤツが作ったモンだ。確実に象一頭は容易に潰すくれェの兵器になってるに違いねェ)

一方通行(そンなモン食ったら、いくら学園都市最強の超能力者(レベル5)の俺でも瀕死、最悪死ぬ)

一方通行(今の内に遺言と遺産分配やっといた方がイイか? 俺の財産はクソガキにこれから必要になるだろォ金に全部充てる、みてェに)

一方通行(…………)

一方通行(馬鹿馬鹿しい。何で俺がンなことしなきゃいけねェンだ?)

一方通行(あァクソ、何だか面倒臭くなってきた……)


一方通行「……もォどォにでもなれってンだ」ゴロン


―――
――




同日 15:30

-第七学区・とあるチョコレート専門店-



ワイワイガヤガヤ



吹寄「やっぱり日が日だから混んでるわね」

結標「……何かみんな既製品の高そうなチョコ買ってるように見えるんだけど」

姫神「ほんとだ」

吹寄「あれはたぶん義理とかそういう類のものよ。さすがに義理を手作りとかは、本命の余り物とか以外そんなないと思うし」

吹寄「まあ、料理とかができない人は、既製品の値段を上げて本命の相手にアピールするんじゃないかしら?」

姫神「そもそも本命の人の分は。手作りする人ならもうとっくに作ってるだろうし」

結標「……や、やっぱり私も既製品にした方がいいかしら?」

吹寄「駄目よ! ここまで来たらもう材料買って手作りするしかないわ!」

結標「ええっー!? まだ余裕で引き返せると思うんだけど!?」

姫神「初めに吹寄さんが言ったように。手作りの方が既製品よりは心に伝わりやすい」

結標「……今さらだけどそういうの気にするヤツじゃないわよアイツ」

吹寄「まだわからないわよ! 外っ面はあんなでも内面はもっと純粋かも……!」

結標「うん、ないわね」

姫神「ない」

吹寄「やっぱり? まあでも、このバレンタインで少しでも料理を勉強できるいい機会じゃない」

結標「うっ、ま、まあそうかもしれないけど……でも」

姫神「でも?」

結標「仮に作れたとしてもそれがアイツにとって不味かったりしたら、『何で既製品にしなかったンだテメェ!』って怒り狂うに決まってるわ」

姫神「……そんなに厳しいの? アクセラ君」

結標「厳しいというか……、私の料理自体に拒否反応を示しているというか……」

吹寄「何があったのよあなたたちの間に……」

姫神「その場合。味を見てもらう前に口に入れてもらえないんじゃあ?」

結標「……なおさら既製品の方がよく感じてきたわ」

吹寄「ま、でも何とかなると思うわよ?」

結標「えっ?」



吹寄「だって別に結標さんが一人でチョコレートを作るわけじゃないじゃない」

吹寄「ちゃんとあたしが一から作り方教えるし、間違ったことはちゃんと指摘するし、絶対にあなたの言うようなことには絶対にさせないわ」

姫神「……もちろん私も協力する。料理は得意だから」

結標「…………」

吹寄「だから精一杯あたしたちを頼ってちょうだい! 絶対に力になってみせるから!」

姫神「…………」コクリ

結標「……ありがとう、二人とも。よし! 私頑張って、絶対に一方通行においしいって言わせてやるわ!」

吹寄「その意気よ結標さん! じゃあまず何を作るかを決めましょ?」

結標「どんなものがあるのかしら?」

姫神「ここにサンプルとかが置いてある」

吹寄「生チョコ、クッキー、ガトーショコラ、ブラウニー……、いろいろあるわね」

結標「ぐぬぬ、どれも難しそうなオーラをガンガン放っているわね……」

姫神「大丈夫。そういうオーラを放っていたとしてもそれは大体思い込み。いざやってみれば簡単だということもある」

結標「とは言っても……うーん、どれにしようか……」

吹寄「無難にクッキーとかどう? 簡単だし余程なことがない限りミスはないわ」

姫神「生チョコとかどうだろう? チョコを溶かして生クリームとかバターを混ぜて固めるだけ。簡単」

結標「うーん、どれもぱっとしないわね……ん?」

吹寄「どうかしたの?」

結標「この粉がいっぱい付いた丸っこいヤツって何?」

吹寄「ああこれ? これはトリュフよ」

結標「トリュフか……」

吹寄「気になる?」

結標「うん、まあ……これって作るの難しい?」

姫神「基本的に生チョコと作り方は変わらない。丸めるかどうかの違い」

結標「そう。だったら私でもできるかな?」

姫神「大丈夫。トリュフは結構基本的なお菓子だから」

吹寄「トリュフにするの?」

結標「…………うん! 私これを作りたいわ!」

吹寄「決定ね! 姫神さんは何を作るつもりなの?」

姫神「シンプルイズベスト。いろいろな味のチョコレートを溶かして加工したのにしようかと」

結標「加工……ってどうするの? ガスバーナーとかでばがぁーってやるの? チェーンソーでぎゅいーんってやるの?」

姫神「ガスバーナーは使わないけど。溶かしてから形を整えてから固める」

結標「へー、そんなことができるのねえ……」

吹寄「というか何でそんな実験道具や工具が話に出てくるのよ……」



吹寄「……うん。まあ姫神さんは作る段階では問題なさそうね」

姫神「問題ない」

吹寄「じゃあ早速材料を探しに行きましょ!」テクテク

姫神「うん」テクテク

結標「……そういえば吹寄さん?」

吹寄「何?」


吹寄「吹寄さんは誰かにチョコレート渡さないの?」


吹寄「…………えっ?」

姫神「……おお。たしかに気にはなっていた」

吹寄「な、何でそんなことが気になっているのかしら姫神さん?」

姫神「もし渡す人がいたのなら。人のサポートばかりで自分のことをしてないことになる。大丈夫?」

吹寄「あ、ああそーいうことなら大丈夫大丈夫。別にあたしは渡そうと思ってるやつなんていないから」

結標「ってことは義理も何もなしってこと?」

吹寄「え、ええまあ……」

結標「ええー、何かつまんないわねえ、私たちばっか」

姫神「うん。つまらない」

吹寄「別にあたしはつまらなくていいわよ? 今は二人の方が大事だし」

結標「せっかくだし吹寄さんも誰かに渡したら?」

吹寄「は? いやいやいいわよそんなの!」

姫神「どうしてそんなに拒否反応を示すのか」

結標「別に誰でも渡すだけなら誰でもいいんじゃないの? それなら土御門君とか青髪ピアス君とか……」

吹寄「ないないないないないないないないないないない。何であたしがそんな馬鹿どもにチョコレートなんて渡さなきゃいけないのよ」

結標「でも義理チョコってあれでしょ? 普段からお世話になってる人に送るものなんでしょ? あそこのポップに書いてるみたいに」

吹寄「ま、まあそうだけど、別にヤツらに世話になっているわけじゃないわよ」

結標「たしかに世話にはなってはいないかもしれないけど、学校だったら結構一緒にいるんだからそういう義理があってもいいんじゃないかしら?」

吹寄「い、いや別にそんなことは……」

姫神「私もそう思う」

吹寄「姫神さん!?」




姫神「打ち上げやスキー旅行にこの前の調理実習。何かとそういう縁があるのは事実」



吹寄「ぐぐっ……でも……」

結標「……うーん、まあ吹寄さんがそこまで嫌なら無理強いするのはかわいそうよね」

吹寄「へっ?」

姫神「うん。たしかに強いられるのはかわいそう」

吹寄「えっ?」

結標「私たちのバレンタインがあるように、吹寄さんにも私たちをサポートするというバレンタインがあるのよね」

姫神「そう。自分は表舞台には立たずに裏方に徹する。非常に残念なバレンタイン」


吹寄「……あああっもう! わかったわよ! 渡せばいいんでしょ渡せばっ!」


結標「さすが吹寄さん!」

姫神「必ず乗ってくれると信じてた」

吹寄「ただしこっちにも条件があるわ」

結標「条件?」

吹寄「たしかにヤツらにも世話になっているのかもしれないけど、それは上条やアクセラも一緒」

吹寄「だから渡すのはその二人を含めて四人よ!」

結標「…………ってことは?」



吹寄「もしあたしが作ったものより不味かったら、決して思い人にいい印象を与えない残念なバレンタインデーになるわね」ニヤッ



結標「そ、それは勘弁願いたいわね……」

姫神「大丈夫。負けるつもりはない」

吹寄「ということで結標さん。手作りのハードルがどんどん上がっていくわよ?」

結標「……今から既製品を買ってきてもいいでしょうか?」

吹寄「ダメです♪」ニコ

結標「あははー、ですよねー」


―――
――




同日 16:00

-第七学区・とあるチョコレート専門店前-


結標「……ふぅ、たくさん買ったわね」ドサッ

姫神「これだけ買えば。いくらでも作り直すことは可能」

結標「でもそれって逆に言えば一発で作っちゃうと、ものすごくチョコレートが余ってしまうってことよね?」

姫神「それはない。なぜなら一発で作れないから」

結標「ぐっ、否定できない自分が悔しい……」

吹寄「……というか本当にそのチョコでよかったの?」

結標「何が?」

吹寄「いや、だってそのチョコって……」

結標「……もしかしてこれじゃあトリュフ作れない……!?」

姫神「大丈夫。作るのには問題ない」

吹寄「でもそれでおいしくトリュフを作るのは正直難しいと思うわよ?」

結標「うーん、まあ何とかなるんじゃないかしら?」

吹寄「……まあ結標さんがいいのならいいけど」

姫神「嫌な予感しかしない……」

結標「あ、そういうのやめて姫神さん」

吹寄「さて、じゃあ部屋に戻って制作に取り掛かるとしましょ」

姫神「……待って」

吹寄「何姫神さん?」

姫神「戻るってどこの部屋に?」

吹寄「どこって……とりあえずあたしの部屋かな?」

姫神「吹寄さんの部屋のキッチンは三人で調理できるぐらいの設備がある?」

吹寄「えっと……ギリギリいけるんじゃないかしら?」



姫神「じゃあ器具は一通りある? 三人同時に作業をしても滞りなく勧められるくらいには」

吹寄「べ、別に三人同時に作るわけじゃないでしょ?」

姫神「私たちはそれぞれ違うものを作る。だからいろいろな材料を使う。つまり器具はたくさん必要」

吹寄「あ、洗えば問題ないんじゃない?」

姫神「洗う時間も入れれば余計な時間を取ってしまう。結標さんの練習時間が減る可能性もある」

吹寄「じゃ、じゃあ姫神さんの部屋から道具を取ってくれば……」

姫神「そんなにたくさんの道具を使えるスペースはあるの?」

吹寄「えっと……ないわ、わね」

姫神「だからこれからどうするかを考えたほうがいい。最悪三人バラバラになることも必要」

吹寄「それは色々と不味いわね……」

姫神「…………」

結標「あ、あの……」

吹寄「何かしら?」

結標「何だかよくわからないけど、ウチの部屋使えばいいんじゃないかなーって」

吹寄「結標さんの部屋、ってことは黄泉川先生の部屋ってことよね?」

結標「うん。ウチは結構広いし、そういう特殊な器具とかもたくさん備え付けられてるし。まあ埃は被ってるけど」

吹寄「……たしかに好条件ではあるけど」

結標「何か問題があるの?」

姫神「結標さんの部屋ということは。同時にアクセラ君の部屋ということにもなる」

結標「あ、そっか」

吹寄「一応、こういうのは男子には見られたくないものだし」

結標「……だったら一方通行がチョコ作ってる間ウチに帰ってこなきゃいいのよね?」

吹寄「うん、まあそういうことにはなるけど……」

結標「だったらたぶん大丈夫よ。私に任せて……!」スッ

姫神「?」


―――
――




同日 16:10

-第七学区・とある公園-


一方通行「Zzz――おァ?」ムクッ

一方通行「…………」ボー

一方通行「…………」キョロキョロ


一方通行(……いつの間にか寝ちまってたよォだな。二月の寒空だっつゥのにアホか俺ァ)


一方通行「…………ハァ」


一方通行(まァ、バレンタインとかいう面倒臭せェモンはもォほっとくか)

一方通行(俺がどォ行動しよォがおそらく未来は決まってンだ)

一方通行(ヤツの手作りチョコレートを食わされて……、おェ)


一方通行「…………帰るか」


上条「――おお! 一方通行じゃねえか!」


一方通行「……あン? 何だ上条か」

上条「何だとは何だ。こんなところで座って何やってんだよ?」

一方通行「公園のベンチに座ってすることなンざァ、営業サボるか休憩ぐれェしかねェだろォが」ズズズ

上条「あー、のんきに公園でコーヒーブレイクっつーことか」

一方通行「で、そォいうオマエは何をやってンだ三下ァ?」

上条「俺か? これからスーパーまで買出しに行こうと思ってな」

一方通行「そいつは大変だな。まァ保護者とかいううっとォしいヤツがいる俺には関係ねェ話だがな」

上条「つまり帰ったら温かいご飯が待ってるわけか……いいなぁ」

一方通行「ンだァ? もしかしてホームシックにでもなったかァ?」

上条「そういうわけじゃねえよ。ただウチに帰ったら料理が並んである、ってのは一人暮らしとかが長いと憧れてしまうんですよ」

一方通行「だったらオマエン家に住ンでるシスターに料理を教えてやればイイ。その憧れを実現することができるぞ?」

上条「……いや、やめとく」

一方通行「どォしてだ?」

上条「インデックスが料理を覚えたら、冷蔵庫の中身が常にゼロっていう無間地獄に陥りそうで怖い」

一方通行「随分と信用されてねェシスターだこった……」




ピピピピッ! ピピピピッ!



一方通行「……あン? 電話だァ?」スッ


一方通行「もしもし?」

結標『もしもし一方通行?』

一方通行「……何か用か? 帰りにコンビニ寄ってガキの菓子買ってこいっつったら切るぞ」

結標『あー、大丈夫そういう話をするために電話したわけじゃないわ』

一方通行「じゃあ何の用だよ?」

結標『ちょっとね、しばらく家に帰ってきて欲しくないのよ』

一方通行「……ハァ? 何だって?」

結標『だからしばらくの間家には帰ってきて欲しくないのよ』

一方通行「理由は?」

結標『え、ええっと……それはちょっと……』

一方通行「言えねェよォな理由か。一体何をやらかしたンだオマエは?」

結標『別になにもやらかしてはいないわよ!』

一方通行「だったら何なンだよ。俺がしばらく帰宅できねェ理由とやらはよォ」

結標『そ、その……と、とにかく! こっちが良いって言うまで絶対に帰ってこないでね! じゃ』

一方通行「ハァ? オイ、どォいうことだ結標。オイ!」



プー、プー!




一方通行「……チッ、うっとォしいヤツ」スッ

上条「何の電話だったんだ?」

一方通行「結標からだ。しばらく家には帰ってくるなとさ」

上条「ケンカでもしてんのかよ」

一方通行「別にそンなモンじゃねェよ。オマエには関係ねェ話だ」

上条「ふーん」

一方通行「……まァ、家を追い出された理由はどォでもイイが、許可が出るまでどォするかが問題だなァ」


一方通行(久しぶりにゲーセンでも行くかァ? いや面倒だからイイや)

一方通行(ビジネスホテルでも借りて、連絡が来るまで寝ておくか? いや手続きが面倒だからイイや)

一方通行(あえてここでまた寝る……、いやまたここで寝たら確実に風邪をひく自信がある)


一方通行「…………はァ、面倒臭せェ」

上条「……何だかよくわからねーけど、要するに結標から帰ってきていいって言われるまでの暇つぶしを考えてんのか?」

一方通行「あァ? まァそォいうことにはなるな」

上条「つまり、お前は今暇っつーことか?」

一方通行「ああ」

上条「…………」

一方通行「…………?」

上条「…………」ニヤ

一方通行「…………!? な、何だよ?」

上条「お前……暇ならさ――」



上条「連絡くるまで俺んち来るか?」



一方通行「…………ハァ?」


―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまでに見てくださった皆さんありがとうございます

これからバレンタイン編ってことで少し長くなると思います
そしてスキー旅行編みたいにたくさんキャラが出てくる可能性もあります
つまり、今回みたいな中途半端な投下が増える可能性が増えてきます
ワンシーン投下とかが増えるかもですがよろしくおねがいします


ではではノシ

既製品と手作りの材料、両方買えばいいのにあわきん
手作り成功なら既製品は自分で食べて、手作り失敗なら既製品を上げればいい
基本的に手作りは味見分が無い、なんて事にはならないし


投下しまーす

>>578
その発想はあったけど書くの忘れてた



同日 16:30

-第七学区・とあるスーパー-


ワイワイガヤガヤ!


上条「くっ、やっぱり大勢集まってたか……!」


一方通行「…………なァ?」


上条「こうなったら覚悟決めるしかねえかもしれねえな……」


一方通行「オイ三下?」


上条「……よし! 行くぞ一方通行ぁ! うおおおおおおおおおおおっ!!」ダッ


一方通行「オラァ!」カチ


ゴッ!


上条「痛てっ!? 何すんだよ一方通行!?」

一方通行「行くぞじゃねェンだよ、うおおおじゃねェンだよ。人の呼びかけ無視すンじゃねェぞこの三下がァ」カチ

上条「何か用か? 大した用じゃねえならあとにしてくれ、今忙しいから」

一方通行「あァ? もォ一発いっとくかァ?」カチ

上条「すんません話聞きますゆるしてくださいおねがいします」

一方通行「チッ、たったら質問だァ。たしか俺はオマエの部屋に来ねェか、って誘われたンだよなァ?」カチ

上条「ああ」

一方通行「だったら何で俺は今スーパーの精肉売場の前に立ってンだよ?」

上条「そりゃ、俺の買い物がまだ終わってなかったからな」

一方通行「だったら誘うンじゃねェよ。わざわざ一緒に仲良くショッピングする意味ねェじゃねェか」

上条「いやいや、意味ならちゃんとあるぞ?」

一方通行「あン?」

上条「今日の特売はステーキ用の牛肉が200グラムがお一人様限定で十円だ」

一方通行「ほォ、一体どンないわく付き牛肉なのか疑いたくなるくれェには安いな」

上条「おいやめろ」

一方通行「で、そのクソみてェな安物牛肉がどォかしたのか?」

上条「ふふふ、つまりだ。今俺は二十円でステーキ肉を400グラム買うことができるわけだ」

一方通行「……はァ、つまりアレかァ? 俺も無様に安肉を掴んでレジへ並べ、っつゥことかァ?」

上条「そういうことだ」ニヤッ

一方通行「そンなくだらねェことしねェといけねェくれェ、オマエは貧相な生活してるっつゥことかよ」

上条「うっせぇ! 貧乏人舐めんな! この金持ち野郎が!」

一方通行「チッ、まァイイ。だったらとっとと目的のモン買って、ここを出るぞ?」

上条「いやー、そうしたいのはやまやまなんだが……」

一方通行「……何だよ?」



上条「それを買うにはあれを突破しなきゃいけねえんだよ」



ワイワイガヤガヤドッガシャーン!!



モブA「おらっ! この肉は俺のもんだぁ!!」ゴッ

モブB「何言ってんのよ! これはあたしのよっ!!」ドガッ

モブC「ひゃっはっー! どけどけどけええええっ!!」グパァ



ワイワイガヤガヤグガガガーン!!



一方通行「……何やってンだこの馬鹿どもは……?」

上条「見ての通り限られた特売品の奪い合いだ。安い肉っつっても数には限りがあるからな」

一方通行「にしたってやりすぎだろこれ。軽く乱闘になってンぞ?」

上条「まあこれが特売のときの恒例行事みてーなもんだしな。店側も店内の商品に被害を出さない限り容認してるらしいし」

一方通行「チッ、どンだけステーキ食いてェンだよコイツら」

上条「そういうわけだから、そろそろ俺も参戦するとするぜ! 早くしねーと全部売り切れちまうからな!」ダッ

一方通行「あ、オイ」



上条「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」バッ



モブD「あん? また来やがったなウニ頭ぁ!!」

モブE「返り討ちにしてやるよ小僧!!」



上条「今晩、勝利のステーキを食べるのは、俺たちだあああああああああああああああああああああああああああッ!!」



ゴッ、バギッ、ゴバッ、ガゴッ、ドグシャ!!



上条「…………ふ、ふこ……うだ」バタッ

一方通行「なァに一人で正面から突っ込んで返り討ちにあってンですかオマエはァ?」

上条「あ、あはは、やっぱ今日は激しいわ。くそう……ちくわの特売のときはこうじゃなかったのに……」

一方通行「まァ、肉に比べれば倍率低そォだよな。ちくわ」

上条「む、無念……」ガクッ



一方通行「…………」

上条「…………」

一方通行「オラッ」ゲシッ

上条「ぐえっ! な、何しやがる!」

一方通行「いや、あまりにも滑稽で蹴りやすそォなモンが転がっていたモンで……」

上条「そんなわけのわからねえ理由で俺は蹴られたのかよ!」

一方通行「ンなことよりよォ、さっさと買いモン終わらせよォぜ面倒臭せェ」

上条「い、いや、だからあそこのステーキ肉を……」

一方通行「他に買うモンあるンじゃねェのか? 野菜とか飲みモンとか」

上条「そりゃあるけど……何でそんなこと今聞くんだ?」

一方通行「今からそれを買ってこい。肉は俺が手に入れる」

上条「お前……まさか能力を使う気か?」

一方通行「まァな。俺の場合使わねェとまともに行動できねェし。……まァ安心しろ殺しはしねェ」

上条「いや、それは当たり前だろ」

一方通行「ただ、そォだな……」カチッ


一方通行「静かに買いモンもできねェ馬鹿どもにマナーの教育ぐれェはしてやるよ」ニヤァ


~10分後~


一方通行「ほらっ、約束の牛肉二パックだ」スッ

上条「お、おう……」チラッ


モブA「はーい、欲しい方は二列で並んでくださーい」

モブB「そこっ! 勝手に列を外れてんじゃないわよ!!」

モブC「残り十パックでーす、押さないでくださーい!」


上条(……あの荒くれどもがすげえ丸くなってる……?)

上条「お前一体何をやったんだ?」

一方通行「あァ? 別に大したことはやってねェよ。まァ、そォだな。強いて言えば……」


一方通行「アイツらにちょっとした恐怖を与えてやったくれェだな」ニヤリ


上条「いいっ」ゾクッ

一方通行「まァ、教育すンのに一番便利なのは恐怖だって話なだけだ。ちょっと軽く演出してやっただけで全員ビビッて萎縮しやがって。面白れェ」

上条「たかが買い物にどんだけ無茶をしたんだよ」

一方通行「向こうが本気で殺りに来てンだから、こっちもそれ相応の対応を取らせてもらうのは当然のことだろ?」

上条(コイツを本気で怒らせたら俺は確実に死ぬ。いろいろな意味で……)

一方通行「おっ、コイツは今ハマってる缶コーヒーじゃねェか。オイ、あとで金払うから買っといてくれ」ガチャンガチャン

上条(俺はただただそう思っていたのだった……)


―――
――



同日 16:50

-黄泉川家・リビング-



ガラッ



結標「ただいまー!」

打ち止め「おかえりアワキお姉ちゃん! ってミサカはミサカはお決まりの挨拶を交わしてみたり……おっ?」


吹寄「……お、おじゃましまーす」

姫神「おじゃまします」


打ち止め「セイリお姉ちゃんにアイサお姉ちゃんだ! いらっしゃい、ってミサカはミサカは来客に歓迎の言葉を送ってみたり!」

吹寄「相変わらず元気そうね打ち止めちゃん」

打ち止め「うん! 相も変わらず元気だよ! ってミサカはミサカは飛び跳ねながら元気アピールをしてみたり!」ピョンピョン

姫神(……かわいい)

結標「ええっと……芳川さんは?」

打ち止め「ヨシカワなら今自分の部屋に篭ってネットしてると思うよ? ってミサカはミサカは現状報告してみる」

結標「うん、まあわかってたけどね」

打ち止め「ところでお二人さんは一体どうしたの? わざわざここまで来るのは珍しいよね、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

吹寄「ああ、明日バレンタインデーでしょ? それの準備をするためにここに来たのよ」

打ち止め「おおっそうだったんだ! ってことは手作りチョコレートとか作るの? ってミサカはミサカは目をキラキラと輝かせてみたり」キラキラ

吹寄「一体どうやって輝かせてるのよそれ? まあ、そういうことになるわね」

打ち止め「おおっー!!」キラキラ

結標「ま、そういうことだからちょっと台所がカカオ臭くなるかもよ?」



打ち止め「……ええと、もしかしてアワキお姉ちゃんも作るの? チョコレート……」

結標「ええ、まあ……」

打ち止め「え……大丈夫なの……アワキお姉ちゃん? だって」

結標「ああー、言わなくてもわかるから言わないで」

吹寄「そんな心配しなくてもいいわよ打ち止めちゃん。結標さんには私たちが付いているのだから」

姫神「大船に乗ったつもりでいるといい」

結標「……ほんとごめんね」

吹寄「別に謝らなくてもいいわよ。迷惑なんて思ってないし」

姫神「友達は。お互い助け合うもの」

打ち止め「いい話だなー、ってミサカはミサカはほろりと涙を浮かべてみたり」ポロッ

結標「あ、語尾では隠せてるようだけど相変わらず目薬差してるのはバレバレよ?」

打ち止め「バレちったかーてへぺろ! ってミサカはミサカはあざといドジっ子アピールをしてみたり!」テヘッ

結標「自分であざといって言ってどうするのよ」

吹寄「それじゃあ時間もあまりないし、ちゃっちゃと準備して始めましょうか?」スッ

結標「う、うん」スッ

姫神「段取りはどうする? まずは最初に結標さんに基本を教える?」ドサッ

打ち止め「おおっ! ものすごい量のチョコレートだ! すげえっ、ってミサカはミサカは夢のような光景を目の前にテンションアップを抑えきれなかったり!」

結標「あっ、晩ご飯の時間近いから食べちゃダメよ?」

打ち止め「ちぇー、別にチョコレートの一つや二つ、食べたところで影響はないと思うのに……」

結標「ゴミ箱にポテチの袋が入っているのだけど? あれ、打ち止めちゃんが食べたんじゃないかしら?」

打ち止め「おうふっ、バレたか、ってミサカはミサカはチョコレート天国を諦めてイスに座ってみたり」



吹寄「よし。まずは湯銭のかけかたからね」

結標「ゆせん? 何それ?」

姫神「ボウルとかの容器に刻んだチョコレートを入れて。それを温めて溶かすこと」

結標「何でそんなまどろっこしいことするのよ? 普通にフライパンで焼けばすぐ溶けるじゃない」

姫神「それは溶けるを通り越して焼けると思う」

吹寄「とりあえずチョコレートを溶かすときはそういう方法を使うってことは覚えてて」

結標「うん、わかったわ」

吹寄「じゃあまずチョコレートを溶かしやすくするために刻んで小さくしましょうか」

結標「刻むのね? 了解!」スッ

吹寄「こういう風に包丁で叩くように刻んでいって――」



ギコギコ



吹寄「ん? 何の音?」




結標「……よっと。鶏肉よりは切りやすいわね」つノコギリ




ギーコギーコ



吹寄「」



姫神「結標さん。わざわざそんなものを持ち出す必要はない」

結標「えっ、でも刻めるわよ? 普通に」

姫神「そういう問題ではなく。単純に危ない」

結標「包丁も十分危ないと思うのだけど?」

姫神「そもそも用途が違う」

結標「えー、切りやすいのになーこれ」つノコギリ

姫神「いや。というかどこから持ってきたのそれ?」

結標「こんなこともあろうかとあらかじめホームセンターで買って準備しておきました!」

姫神「どんなことを想定していたの? もしかして料理?」

結標「うん」

打ち止め「さすがアワキお姉ちゃん! 期待を裏切らないぜ!」

姫神「……頭痛い」

結標「?」

吹寄「え、ええっと、とりあえずそれしまってくれない?」

結標「えっ? 何で?」

吹寄「例えばテレビでやってる料理番組とかで、ノコギリなんてものを使っているシェフを見たことある?」

結標「うーん、まったくないけど……」

吹寄「つまり、普通はそういうものは使わないってことよ。わかった?」

結標「……でも普通じゃないからって全部否定することは私間違っていると思う」

吹寄「えっ?」


結標「例えば天動説が普通だった時代に地動説を唱えたガリレオ=ガリレイ!」

結標「はたから見たら常識知らずの普通からかけ離れた変人だったかもしれないわ!」

結標「でも実際は地球自体が動いてた。変人扱いされてたガリレオが正しかったわ! 違う?」


吹寄「た、たしかにそうだけど……」




結標「だから! 私はそういう常識に囚われない料理法! つまり、このノコギリを――」




姫神「それとこれとは話が違う」

結標「はい」


―――
――




同日 17:00

-第七学区・とある高校男子寮-


カッ、カッ。


上条「……はぁ、まさかエレベーターが調整中だなんて……不幸だ」

一方通行「たしか七階だったかオマエの部屋は?」

上条「ああ。階層が高いって結構不便だよな。登校時間はエレベーター混むし」

一方通行「まァ、ウチの十三階にある部屋よりは遥かにマシだろ。階段なンか使ったら一瞬で筋肉痛だ」

上条「うわっ、スゲェな。さすが高級マンション」

一方通行「オマエじゃ一生住むことができねェ場所だろォな」

上条「くそう、おのれ金持ちめ!」

一方通行「……しかし、俺はいつになったら帰れンだァ? 面倒臭せェ」

上条「しかしケンカじゃないなら一体何があったんだ? お前を家に入れたくない何かでもあんのか?」

一方通行「……ヒント。明日」

上条「明日? ええっと……今日が二月十三日だから……バレンタイン?」

一方通行「そォいうことだ。今ごろアイツは義理チョコという名の化学兵器を製造してるところだろォ」

上条「ひでえ言いようだな」

一方通行「事実だからしょうがねェ」

上条「まあでも、バレンタインにチョコをもらえる予定があるっていうのは羨ましい限りだなぁ……はぁ」

一方通行「化学兵器だぞ?」

上条「それでもだよ。よく言うじゃねえか、味が重要なんじゃない、大事なのは込められた気持ちだって」

一方通行「その気持ちでカバーしきれねェから兵器って言われてンだよ」

上条「……はぁ、誰かくれねーかなー。義理でもいいからくれねーかなー」

一方通行「安心しろ。俺の中でももらえるアテが五人くれェいるからよォ」

上条「は? んなもんいるわけねーだろアホか」

一方通行「オーケーオーケー。今から手すりの外へぶっ飛ばしてやるから覚悟しろォ」カチ

上条「ぎゃああああああああああああッ!! スンマセン!! 何で怒っておられるのかわかりませんがスンマセン!!」

一方通行「……チッ、まァつまり、もらえねェなンてこと絶対ェねェから安心しろっつゥことだ」

上条「……本当かよ? 不幸の塊上条さんだぞ? どう考えても青髪ピアス辺りに偽チョコ&偽ラブレターというドッキリを仕組まれる未来しか見えねえんだけど」

一方通行「どちらかと言えばオマエが集団暴行を受ける未来しか俺には見えねェがな」

上条「どちらにしろ不幸じゃねえかくそぅ」

一方通行「ま、こンな感じにくだらねェ世間話をしてる間に、あっという間に七階っつゥわけだ」

上条「帰ったらまずメシ作らねーとな。あっ、お前晩メシどうすんだ? 何なら作るけど?」

一方通行「いらねェよ。いつ帰宅命令が下るかわからねェからな」

上条「じゃあとりあえずお前の分も作っとくよ。もしいらなくなってもインデックスのヤツが食べるだろうし」

一方通行「チッ、余計なことしよォとしてンじゃねェよ三下が」

上条「ははは、別に遠慮しなくてもいいのに」ガチャ

一方通行「してねェよ殺すぞ」




-とある高校学生寮男子寮・上条当麻の部屋-



ガチャ



上条「ただいま帰りましたよーと」

一方通行「…………あン?」

上条「どうかしたか?」

一方通行「……あのシスター、ローファーなンか履くのか?」

上条「ローファー? いや、履かねえけど。つーかそんなもん買う金ねえよ」

一方通行「じゃあこれ誰の靴だよ」

上条「えっ、……ああ、どうやらお前以外にも客がいたようだぜ」

一方通行「ハァ?」



上条「おいーす、帰ったぞインデックスー!」テクテク


禁書「あっ、おかえりとうま」

スフィンクス「にゃー」トコトコ


一方通行「お邪魔しまァす」ガチャリガチャリ


禁書「……ってあれ? あくせられーた?」

一方通行「よォ」

禁書「どうしたの? あなたがこんなところに来るなんて珍しいね」

一方通行「いろいろあって今家に帰れねェからな。で、偶然上条と会って、スーパーを経由してここまで至ったわけだ」

禁書「ふーん、何かあったの? 家の人とけんかでもした?」

一方通行「してねェよ。何でオマエらは揃いも揃ってそっちの発想しかできねェンだよ」

上条「いや、普通はそう思うだろ」


??「……、え、えっと……その」



上条「あっ、やっぱりあの靴はお前だったか風斬」

風斬「その、えっと、お、おじゃましてます」ペコ

上条「おう、まあゆっくりしていけよ」

風斬「は、はい……あの」チラッ

一方通行「あン?」ギロッ

風斬「ひっ……!」ビクッ

禁書「あくせられーた! ひょうかは繊細なんだからそんな目で睨んじゃだめかも!」

一方通行「睨ンでねェよ。ただ目ェ合わせただけだろォが」

禁書「もっと表情を柔らかくした方がいいと思うんだよ。それじゃあみんな怖がって近寄ってくれなくなるかも」

上条「たしかにそうだよな。俺たちはいいけど、未だに一方通行のこと警戒してるクラスメイトとか結構いるしな」

一方通行「チッ、どォでもイインだよ。別に関わらなくても問題はねェだろォが」

禁書「人との繋がりがあるってことは大事なことなんだよ」

一方通行「うるせェよクソシスターが」

禁書「もう。またそんな威圧的な言葉遣いをして」

一方通行「ほっとけ」

風斬「…………、え、えっと」オロオロ

一方通行「……まァ、イイ。オイ」

風斬「!? あ、はい!」



一方通行「久しぶりじゃねェか……風斬」

風斬「…………、はい!」



―――
――



中途半端ですが今回はここまで
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

あと一、二回の投下で前日は終わると思います
問題は当日のことなんだがな……

というか打ち止めの使う二人称&三人称が安定しないなww
だからここで統一しとくわ

男→苗字呼び捨て

女(年下、同年代)→名前呼び捨て
女(年上)→名前プラスお姉ちゃん
※ただしババァはのぞ……おっとこんな時間に来客か?

ではではノシ

> 姫神「それとこれとは話が違う」
> 結標「はい」
可愛いなこの子ら
女子トリオはいいものだ

>>吹寄「吹寄さんは誰かにチョコレート渡さないの?」


>>吹寄「…………えっ?」


完全に第五位に操られてますねはい。

>>602
うわぁ、盛大に誤字った……

× 吹寄「吹寄さんは誰かにチョコレート渡さないの?」

○ 結標「吹寄さんは誰かにチョコレート渡さないの?」

ですねすみません


投下しまーす



同日 17:20

-黄泉川家・キッチン-


吹寄「…………」

結標「…………」

姫神「…………」


グツグツ



吹寄「……えっと、結標さん?」

結標「何かしら?」



グツグツ



吹寄「これ……たしかチョコレートよね?」

結標「うん、そうだけど」



グツグツ



吹寄「だったらさ、何で……」

結標「?」



チョコレートだったもの『俺は最強の業務用チョコレートだ! そう思ってた時期が僕にもありました』



吹寄「何でこんな緑色の物体が出来てるのよっ!?」




結標「いやー、気がついたらこうなってたわ、あはは」

吹寄「あはは、じゃないわよ。くっ、こっちが少し目を離してた間に一体何があったの……?」

結標「何があったって……普通に言われた通りに調理したつもりよ?」

吹寄「言われた通りにやったらこうにはならないわよ普通」

結標「ええっー? あれー? おかしいわねー?」

姫神「何か変わったものでも入れた?」

結標「えっ? 別にそんな変わったものは入れてないと思うけど……」

姫神「とにかく何を入れたか言ってみて」

結標「ええと……ゴーヤジュースの粉、ワカメ、ビタミン剤、その他諸々」

吹寄「あれ? 結標さんは今何を作っているんだったっけ!?」

結標「? 何ってチョコレートだけど?」

吹寄「そんな『何言ってんのコイツ』的や顔されても困るんだけど!」

姫神「……とにかく。今度は私たちがちゃんと見ながら教えるから。きっちり丁寧にやっていこう」

結標「わ、わかったわ!」

姫神「じゃあ。このチョコレートだったものは廃棄しよう。万が一誰かの口に入ったら一大事」ポイッ

結標「ああっ! 私の手作りチョコレートが……!」



打ち止め「…………」



~回想~



一方通行『超能力者(レベル5)っつゥのはなァ、必ずどっか頭のネジが数十本吹っ飛ンでる人格破綻者だ』



一方通行『まァ、よォするに変人の集まりってことだな。学園都市の上位能力者っつゥのはよォ』

打ち止め『うーん、あなたが言うとすごい説得力かも、ってミサカはミサカは静かにうなずいてみたり』ウンウン

一方通行『…………』ビシッ

打ち止め『痛っ!? ええっ!? 何でミサカ叩かれたの!? ってミサカはミサカは理不尽な暴力に糾弾してみたり!』

一方通行『うっせェ、俺の癇に障ったからだ』

打ち止め『むむっ、じゃあじゃあ、前も話したけどお姉様はどの辺りが破綻してるの? ってミサカはミサカは首を傾げながら尋ねてみたり』

一方通行『あァ? ああ、そォだな……あっ、そォ言えば』

打ち止め『なになにー?』


一方通行『アイツ平然と自販機蹴り飛ばして飲みモンタダ飲みしてたな』


打ち止め『……ああ、そういえばそんなこともあったね、ってミサカはミサカはしみじみ思い出してみたり』

一方通行『真似すンなよクソガキ』

打ち止め『し、しないよ! ってミサカはミサカは失礼なことを言うあなたに徹底反論してみたり!』






打ち止め「…………」ジー


姫神「さて。じゃあまたチョコレートを刻む作業から始めよう」

結標「うん、わかったわ。よし、切って切って切りまくるわよー!」つノコギリ

吹寄「……いい加減包丁を使うことを覚えたほうがいいわよ」

姫神「時間はあまり多く残されてない。早く刻み終えてしまおう」トントン

結標「や、やっぱり速いわね姫神さん……よーし、負けないわよ」ギコギコ

吹寄「あー、やっぱりこっちで刻んじゃうかー……ん? 何この臭い?」クンクン

姫神「……香辛料の香り?」クンクン

吹寄「んー、でもそんなもの使ってないわよね? というか普通使わないし」

姫神「うん。そうだけど……」

吹寄「…………」チラッ

結標「おりゃー」ゴリゴリゴリゴリ

吹寄「……結標さん」

結標「何かしら?」

吹寄「あなたは一体何を切り刻んでるのかしら?」

結標「何って……ただのチョコレートだけど?」



カレールー『板チョコちゃんだと思った? 残念カレールーちゃんでした!』



姫神「……どう見てもただのカレールーなんだけど?」

結標「えっ、本当? あっ、本当だ! 何か辛い臭いがすると思ったら……」

吹寄「というか何で今の今まで気付かなかったのか……」

結標「まあいいわ。似てるからこれで大丈夫でしょう」ゴリゴリ

吹寄「って、そのまま続けないで!! たしかにそれを間違うのは鉄板ネタだけどそのまま続行する人は見たことないわ!!」

結標「大丈夫よ。これちゃんと甘口のカレールーだから」ギーギー

吹寄「そういう問題じゃない!」



打ち止め「……なるほど! たしかに超能力者(レベル5)だ、ってミサカはミサカは勝手に納得してみたり!」



───
──




同日 17:30

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ピコピコ、キラーン!



禁書「ぐっ、この、あっ!」ポチポチ

一方通行「オイオイ構築が甘めェンだよクソシスターが」カチッカチッ

禁書「く、クソシスターじゃないんだよ! ……あっ、しま──」ポチポチ

一方通行「そんなンじゃ、俺には到底勝つことは不可能だ……ぜッ」ピッ



チャラララーン!



テレビ『1P:LOSE 2P:WIN』



禁書「ああ……負けちゃった」

一方通行「当然の結果だなァ。オマエの残念な脳みそと俺の最強の脳みそじゃ比べるまでもねェだろ」

禁書「私の脳みそは残念じゃないんだよ!」

一方通行「知ってるかァ? そォいうことを言うヤツは大抵自覚してねェンだよ」

禁書「ふふん。だったら私は関係ないかも」

一方通行「オマエ人の話聞いてたか?」


スフィンクス「にゃーごー! しゃー!」ピョンピョン

風斬「……ふふふっ」つ猫じゃらし

スフィンクス「ヒョオ────シャオッッ!」ザクッ

風斬「!?」ビクッ



禁書「しかしあくせられーた、てとりす強いね」

一方通行「そォか? 単純にオマエが弱いだけじゃねェのか? 俺これ初めてやったからな」

禁書「えっ、嘘っ!? それなのにあんなに軽快にボタンを押せるの!?」

一方通行「だから言ってンじゃねェか。頭の出来が違うってな」

禁書「ぐぬぬ、ひょうかとやったら負けなしだったのに……」

一方通行「ハァ? オマエそれマジで言ってンのか?」

禁書「うん。ねえひょうか」

風斬「……えっ? ええと、うん……」

一方通行「…………」

禁書「じゃあひょうかやろう!」

風斬「うん、いいよ」ニコ



~五分後~



チャラララーン!



テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』



禁書「わーい! 私の勝ちかも!」

風斬「あはは、負けちゃった」

一方通行「…………」

禁書「ほらっ、私だっててとりす上手なんだよ」ドヤッ

一方通行「……いや、殴りたくなるほどムカつくドヤ顔してるところ悪りィけどよォ」

禁書「何かな?」フフン

一方通行「誰がどォ見ても風斬が手加減してンじゃねェか」

風斬「えっ」

禁書「手加減?」

一方通行「ああ」

風斬「……べ、別にそんなことは……ないですよ」

一方通行「嘘ついてンじゃねェよ。わざとらしい操作ミスをしている上に、インデックスの画面の方へ異常な頻度で視線を移してだろ?」

風斬「!? どうしてそれを……?」

禁書「?」キョトン

一方通行「レベル5の観察力を舐めてンじゃねェよ。まァ、それ以前によォ」


一方通行「このクソみてェな機械音痴が、ゲームの対人戦で全勝なンて偉業成し遂げられるわけねェだろォが」



禁書「き、機械音痴じゃないんだよ! てれびのリモコンとえあこんのリモコンの区別がちゃんとつくもん!」

一方通行「ンなこと言ってる間は一生機械音痴だ」

風斬「え、えっと……」オロオロ

禁書「でも信じられないんだよ。ひょうかがわざと負けてるなんて」

一方通行「何なら俺とやってみるか風斬? 手加減とかなしでだ」

風斬「えっ?」

一方通行「そォすりゃコイツもいかに井の中の蛙だったかよくわかるだろ。あ、それ以前に俺に負けてるからこの言葉は使えねェか……」

禁書「……そんなこと言ってあくせられーた。ひょうかをいじめるつもりなのかな?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。ただゲームで対戦して遊ぶだけだ」

風斬「……あ、あの」

一方通行「つゥわけでコントローラーを持て風斬。俺相手に手加減なンて馬鹿みてェな真似しやがったらブン殴るぞ?」

風斬「…………は、はい」スッ



~五分後~



ピコピコピコ、キラキラーン、チャーン!



一方通行「…………」カチッカチッ

風斬「…………」カチカチ



ピコピコ、チャラリン! ドーン!



禁書「す、すごい……早すぎて何が何だかわからないんだよ……」

上条「何やってんだお前ら?」テクテク

禁書「見て見てとうま! 何かすごいんだよ二人とも!」

上条「ああ、テトリスやってたのか。……たしかにすげえな、俺じゃこんなの無理だな」



一方通行「……チッ、予想以上にやるじゃねェか」カチッカチ

風斬「い、いえ、そんな……」カチカチ

一方通行「ンなこと言いながら俺の攻撃平然とやり過ごしてンじゃねェよ」カチッ

風斬「…………」カチカチ

一方通行「……まァ、普通に考えたらうめェンだろォが……」カチッカチッカチッ

風斬「…………ッ」カチカチカチ

一方通行「だけど相手が悪かったな、これで詰みだ」カチッカチッ



チャラリン! チャラリン! ドーン! ドーン!



チャラララーン!



テレビ『1P:WIN 2P:LOSE』



一方通行「……ケッ、クソが。無駄に頭ァ使っちまったな」ボリボリ

上条「お疲れー。ほらよ、缶コーヒー」スッ

一方通行「ほォ、気が利く三下じゃねェか。アリガトよ」カチッ

上条「しかしさすがレベル5だな。やっぱゲームも上手いんだな」

一方通行「まァ、ものにもよるけどな。あまりに専門的なモンだとモノにするのに二、三十分かかる」

上条「レベル5パネェ……」


風斬「…………ふぅ」

禁書「ひょうか!」

風斬「! な、何?」

禁書「ひょうかって実はすごかったんだね! 知らなかったんだよ!」

風斬「……べ、別にそんなことないよ」

禁書「でも私とやるときは手加減してたのはちょっと許せないんだよ」

風斬「……ごめんなさい」

禁書「だから次からはちゃんと真面目にやって欲しいんだよ!」

風斬「…………うん!」


一方通行「まァ、その場合オマエが勝てる可能性はゼロになるっつゥわけだがな」

禁書「ううっ、それは言わないで欲しいかも……」


―――
――




同日 17:50

-黄泉川家・キッチン-



パァン!!



結標「ぎゃあああああああああっ! チョコレートが爆発したぁ!!」ベトッー

吹寄「何があったの……ってわっ!? 一面がチョコレートだらけじゃない!?」

結標「ううっ、制服がベトベトだわ……こんなことなら着替えてからすればよかった……」

吹寄「エプロン付けてても防ぎきれない爆発って、一体何をどうすればこうなるのよ?」

姫神「ほんの少し。ほんの少し目を離しただけだった。どうしてこうなった?」

結標「私は普通にしてるつもりなのにー!」

姫神「そんなことより早く着替えてきたほうがいい。今からなら洗えばまだ間に合うかもしれない」

吹寄「洗うって……今からクリーニングに出すつもり?」

姫神「さっきチラッと洗濯機が見えたけど。あれは超高性能の値段の高いやつだった。あれならたぶん制服とかでも一晩でいける」

吹寄「そういえばここ高級マンションだったわね」

結標「じゃあちょっと着替えてくるわね、ってにぎゃぁ!! チョコレート踏んだぁ!!」ネチャッ

吹寄「スリッパも新しいの持ってくるわね」テクテク

姫神「私はキッチンを掃除しておく」

打ち止め「ミサカも手伝うよー! ってミサカはミサカは華麗に参上してみたり――ってぎゃあっ!! ミサカもチョコレート踏んだぁ!!」ヌチャ

姫神「あまり不用意に動かないほうがいい。ここは戦場と同等の危険度」



ガラララ



黄泉川「ただいまー! おっ? 何か甘い香りがするぞー?」


打ち止め「あっ、ヨミカワおかえりー! ってミサカはミサカは……ぎゃうっ! またチョコレート踏んだぁ!」ネチャ

姫神「……お邪魔してます」フキフキ


結標『ぎゃー! 髪の毛もチョコレートだらけだぁ!!』

吹寄『一回シャワー浴びといたらどう? 下準備はあたしたちがやっとくから、というかまだ結標さんは下準備すらろくに終えてないわけだし』

結標『う、ご、ごめんねーホント』


黄泉川「…………どういう状況じゃん?」


―――
――




同日 18:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ

禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」

一方通行「あァ、よっと」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」

禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」

一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「あ、シスターのところで止まった」

禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」

一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」

禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」

一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」

禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」




ジュー



上条「…………ぐふふふ、久しぶりの肉だぜ」

風斬「……あの」

上条「どうかしたか風斬?」

風斬「何か手伝うことありますか?」

上条「うーん、別にこれと言ってはねえけど……何でだ?」

風斬「いえ、いつもお世話になっているので……」

上条「別に気にする必要ねーのに。逆にインデックスのヤツの相手してもらってんだからこっちがお礼を言いたいくらいだぞ?」

風斬「わ、私はそんな……」

上条「そうだ。どうせだからお前もメシ食っていけよ。今までのお礼っつーことで」

風斬「で、でもそれって大事なお肉なんじゃ……?」

上条「大丈夫だって。一方通行のおかげで全部で四百グラムあるんだ、一人百グラムで十分足りるだろ。インデックスは……うん」

風斬「……あはは」

上条「つーわけで食っていくだろ? 晩メシ」

風斬「…………じゃ、じゃあごちそうになります」

上条「おう、じゃあ向こうで待っててくれ。すぐにできると思うからよ」

風斬「はい!」


一方通行「……オイ」



風斬「!?」ビクッ

上条「どうかしたか一方通行?」

一方通行「缶コーヒーが欲しいンだがよォ、後ろ通してもらえねェか?」

風斬「ご、ごめんなさい!」ササッ

一方通行「おォ」ガチャリガチャリ

上条「で、結標から連絡は来たのか?」

一方通行「イイや、これっぽっちも来ねェよ。何やってやがンだアイツァ?」

上条「こっちからかけてみればいいんじゃねえか? 電話するの忘れてるだけかもしれねえし」

一方通行「アイツが忘れるよォなヤツとは思えねェけどな」

上条「一応だよ一応。それに進捗度のほうも聞いてみればどれくらいで帰れるかもわかるし」

一方通行「オマエ……それ本気で言ってンのか?」

上条「?」

一方通行「はァ……ま、とりあえず電話はかけてみるか」ピッピッ

上条「……ええと、俺なんか変なこと言ったか?」キョトン

風斬「え、その、あの、ええっと……」オロオロ

一方通行「オイ、肉焦げてンぞ」プルルルルル

上条「へっ?」



ジュー



上条「おわっ、マジだ! クソッ、不幸だっ!」

一方通行「くっだらねェ」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 18:20

-黄泉川家・結標淡希の部屋-


結標「あー、さっぱりした」←シャワー浴びたあと


結標「くんくん、うっ、あんなにシャンプー使って洗ったのにまだチョコの臭いが残ってるような気がするわ……」

結標「……ふぅ、しかしひどい目にあったわね……」

結標「まさかチョコレート作っててこんなことになるなんて思わなかったわね」

結標「これが手作りという名の戦いなのね、油断ならないわ」

結標「これからは一層気合を入れて挑まないとっ」グッ

結標「……というか今何時かしら?」キョロ

結標「って、えっ!? もうこんな時間!? 完全下校時刻余裕で過ぎてるじゃない!」

結標「ま、不味いわね。まさかチョコレート作りにこんなに時間を使うとは思わなかったわ」

結標「これ以上は吹寄さんや姫神さんに悪いわね。次で決めないと……」



タラララーン♪ タラララーン♪



結標「あっ、私の携帯! 誰かしら……?」カチャ



『一方通行』



結標「あ、一方通行? 何で電話なんか……って、あっ!」

結標「そういえばこっちが連絡するまで帰ってくるな、って言ってたの忘れてたわ」

結標「あわわわっ、今頃遅すぎって怒ってるんじゃないかしら……」アセ

結標「と、とにかく出ないと――もしもし?」ピッ



一方通行『……よォ結標クゥン? 俺に言えねェ用事とやら終わったのかなァ?』


結標「……ご、ごめんなさい。実はまだ終わってないのよ」

一方通行『……はァ、ンなことだろォとは思ってたがな』

結標「えっ、何で?」

一方通行『どォでもイイだろそンなことはよォ。それよりあとどれくらいで終わりそォだ?』

結標「え、ええっと……わかんない」

一方通行『つまり未だに迷走中っつゥことか。状況はよォくわかった』

結標「だ、大丈夫よ! すぐに終わらせてみせるから!」

一方通行『……とりあえず言っとくが、あンま頑張ンじゃねェぞ?』

結標「どういうことよそれ?」

一方通行『そのままの意味だ。無駄なベクトルの頑張りは意味がねェっつゥことだ』

結標「?」

一方通行『まァ、そォいうわけだ。また七時くれェにかけ直すから、それまでには終わらせとけよ』

結標「が、頑張るわ!」

一方通行『……チッ、じゃあな』ピッ

結標「うん、またあとでね」ピッ


結標「…………ふぅ」

結標「やっぱり迷惑だったかしらね? まあ突然だからしょうがないわよね」

結標「このお詫びのためにもちゃんとしたおいしいチョコレートを私が作らなきゃ」

結標「しかし一方通行の言ってることはさっぱりだったわね……何で私が頑張っちゃいけないのかしら?」

結標「まあとにかく、みんなのためにアイツのために早くこの戦いを終わらせないとね!」

結標「よし、いざ戦場へ!」テクテク



ガチャ



―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

何というかだんだんあわきんの料理音痴がガチの能力みたいになってるような……
まあしょうがないよね物語の進行上
たぶん次回でバレンタイン前日は終わると思います

ではではノシ


就活が忙しすぎて今週分は投下できそうにありません。すまぬ……

すまぬ……まだ書けてないから明日投下します
というかこれからは日曜日に週一更新でお願いします



同日 18:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「……そォ言えばもォ六時過ぎてンのか」チラッ

禁書「何やってるのあくせられーた? あなたの番だよ」

一方通行「あァ、よっと」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「……ええと何だァ? ランダムで誰か一人から五百万搾取できるだァ? 随分と気前のイイマスじゃねェか」

禁書「……何か嫌な予感がするんだよ」

一方通行「まァイイ、ほらルーレットだ」カチッ



カラカラカラカラカラー、タラン!



一方通行「あっ、シスターのところで止まった」

禁書「ぎゃあああっ! 案の定私のところで止まったぁ!!」

一方通行「まァ、三分の一の確率だしなァ。止まってもおかしくねェよ」

禁書「ううっ、これで借金が一千万になったんだよ……」

一方通行「何つゥか……上条の頭ばっか噛み付いてるから不幸が感染ったンじゃねェか?」

禁書「ぐぬぬ、言い返す言葉がないんだよ」


すみません↑はミスです


同日 18:25

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「…………はァ」ピッ


上条「どうだったんだ?」

一方通行「まだまだかかりそォな感じだな。どォやら苦戦してるよォだ」

上条「そうか。頑張ってんだな結標」

一方通行「そォだな。その頑張りで一体何を生み出してるのかわかったモンじゃねェけど」

上条「じゃあそろそろメシできるから、一方通行も向こうで待っててくれ」

一方通行「随分とメシの時間が早ェな。まだ六時半だぞ?」

上条「そうか? 別に普通だろ。あんまり遅くしてもアレだし」

一方通行「まァ、俺はいつだろォと構わねェけどな」ガチャリガチャリ


禁書「あっ、やっときた! 早くルーレットを回して欲しいかも」

一方通行「そろそろメシの時間だァ。あとルーレットニ、三十回分ぐらいありそォな人生をそれまで終わらせるのは不可能だろ?」

禁書「そういえばいい匂いがしてきたんだよ!」


グー


禁書「……いい匂いを嗅いだらおなかが鳴っちゃったんだよ///」カァ

一方通行「勝手にキャラ崩壊させてンなよ暴食シスター」

禁書「なっ、きゃ、キャラ崩壊って何かな!? 私だって一人の女の子であるわけで――」

一方通行「どこの世界に牛一頭食べられる女の子がいンだよ」

禁書「」ピキッ


禁書「……あくせられーた?」


一方通行「あン?」


禁書「普段は温厚で優しい聖女マリアのような広い心を持った私でも、今のはさすがにいらっときたんだよ」


一方通行「ハァ? 誰が聖女マリアだァ? ガキが何言ってンだか」

禁書「…………」プルプル

一方通行「…………」ズズズ

風斬「……え、えっと、その……」オロオロ

スフィンクス「にゃおー?」




禁書「がうっ!!」バッ



ガキン!!



一方通行「よっと」スッ

禁書「なっ、避けられたっ……!?」

一方通行「ぎゃはっ、三下なら無様に噛み付かさせてくれンだろォが、残念ながら俺を噛み付くなンざ不可能なンだよ!」ケラケラ

禁書「ぐぬぬぬぬっ、だったらもう一度――!」

一方通行「やめとけやめとけ。たとえその犬歯が俺の頭部に命中しよォが、皮膚に突き刺さる前に俺の『反射』っつゥ絶対的なチカラが働く」

一方通行「この歳で入れ歯を使いたくねかったら、大人しく下唇でも噛んでるンだな、ぎゃはっ」

禁書「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」

上条「……一方通行」

一方通行「あァ? 何だよ上条」

上条「…………」ポン

一方通行「…………は?」

上条「…………」

一方通行「……お、オイオイ何の冗談だヒーロー? その右手で触られたら能力が使えねェじゃねェか」

上条「…………」
.                      キラーバイト
一方通行「こ、これじゃあシスターの頭蓋粉砕を避けられねェ――」

上条「……一方通行」

一方通行「……ハァ!?」




上条「一度食らってみろって。すっげぇ痛てえから」ニコッ




一方通行「」


禁書「ふふふふっ、覚悟するんだよあくせられーた」キラン


一方通行「…………ふっ」






ガブリッ!!






―――
――





同日 18:30

-黄泉川家・キッチン-



ガララララ



結標「……さて、頑張らないとっ!」グッ


黄泉川「よぉ淡希」


結標「あっ、黄泉川さんおかえりなさい。帰ってたんですね」

黄泉川「話は聞かせてもらったじゃん。どうやら明日のバレンタインに向けて手作りチョコレートを作ってたようじゃんね」

結標「すみません、勝手にキッチン使っちゃって」

黄泉川「別にいいじゃん。明日は大事な日なんだろうからゆっくりじっくりやるといいじゃん」

結標「あ、ありがとうございます黄泉川さん!」

打ち止め「でもヨミカワー! それじゃあキッチンが使えないから晩ご飯作れなくなるんじゃないのー? ってミサカはミサカは空腹を感じながら尋ねてみたり」

黄泉川「んーたしかにそうじゃんね。だったら久しぶりに出前とか頼むか?」

打ち止め「おおっー! いいねいいねえー! 何頼むの!? お寿司!? ラーメン!?」

黄泉川「まあそれはおいおい決めればいいじゃん」

結標「……なんかすみません、ほんと」

黄泉川「そう何度も謝ることじゃないじゃん。子供は我が侭を言う権利があるんだからさ」


吹寄「結標さーん! こっちは準備できたわよー!」

姫神「ここまでやれば絶対に失敗はない。……たぶん」


黄泉川「ほら、友達が呼んでるじゃん!」

結標「は、はい!」テクテク



ワイワイガヤガヤ



黄泉川「……ふふっ、やっぱり青春ってのはいいじゃんね」

打ち止め「ヨミカワ! やっぱりミサカはお寿司がいい! それも特上!! ってミサカはミサカはお子様セットじゃないアピールをしてみたり!」

黄泉川「別にお子様セットでいいだろ」

打ち止め「やっぱり駄目かくそう、ってミサカはミサカは床を叩きながら悔しさを現してみたり」ドンドン


―――
――




同日 18:40

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


一方通行「痛っつ、少しは手加減しやがれクソシスターが……」ズキズキ

禁書「ふんだ! 少しは自分のやったことを悔い改めた方がいいと思うんだよ」

一方通行「へェへェスンマセンでしたワタクシめが悪ゥごさいましたよシスター様ァ」

禁書「ふふん。私は心が広いから許してあげるんだよ」

一方通行(ちょろっ……)

禁書「それじゃあ人生ゲームの続きしよ! あくせられーたの番からなんだよ」

一方通行「オマエさっきの話聞いてたか? これから晩メシだって言ってンだろォが」

禁書「そういえばそうだったんだよ。じゃあ一時せーぶっと……」ピッピッ

一方通行「まだこの出来レースを続けるつもりなのかオマエは?」

禁書「ところでとうまー! 今日のごはんは何かな?」

上条「……ふふっ、喜べインデックス! 今夜の晩メシは──」



ドン!



上条「──何とステーキだっ!!」

禁書「おおおおっー!! お肉だお肉ー!!」

一方通行「ただし、極めて安く、限りなく怪しいステーキ肉だがなァ」

上条「おいやめろ」

一方通行「事実を言ったまでだ」

スフィンクス「にゃーん」

上条「はいはいわかってますってスフィンクスさん。はい、いつものキャットフード」コトッ

スフィンクス「…………」

上条「……? どうしたスフィンクス?」

スフィンクス「……しゃおっー!! しゃー!!」

上条「ッ!? な、何だよ何怒ってんだよスフィンクス!?」




スフィンクス『俺様にも肉を寄越しやがれよこの三下ァ!!』




一方通行(とか言ってンだろォか……)



風斬「……えっと、お茶碗にご飯の盛りつけ終わりましたよ」コトッ

上条「あっ、悪りぃ風斬。お客さんなのに準備させちまって」

風斬「い、いえそんな……」

一方通行「お客様が甲斐甲斐しく働いてるっつゥのに、何もやってねェシスターさンがいるってのは面白れェ話だよな」

禁書「ぐっ、な、何もせずにこたつの中でぬくぬくしているあなたには言われたくないんだよ!」

一方通行「勘違いすンな俺は客だ。つゥかコタツでくつろいでンのはオマエも同じだろォが」

禁書「むむっ、そんなに言うんだったら私も準備するんだよ! とうま! 何か私にも手伝えることはあるかな?」

上条「別にいいって、下手に動かれて食器とか割られても困るし」

禁書「……とうま? それはどういうことかな?」キラン

上条「ま、待てインデックス、そこで歯を光らせるのはおかしいだろ!? 今までお前がドジで物壊しまくってきたことは事実だろ!?」

禁書「ドジじゃないんだよ! あれはたまたま運が悪くて転んだだけだもん!」

上条「そういうのをドジって言うんだよ!」



ワーワーギャーギャー!!



一方通行「…………うるせェ」

風斬「……ど、どうぞサラダです」コトッ

一方通行「おォ、すまねェな……って、えっ? サラダ?」

風斬「は、はい。そうですけど……?」

一方通行「何でサラダなンてモンが盛り付けられた皿が、俺の目の前に置かれてンだ?」

風斬「えっと、キッチンに置いてあったので……」

一方通行「いやそォじゃなくてよォ、何で一人一つずつサラダの入った皿が置かれてンだ? しかも一人分とは思えねェほど山盛り」



上条「ふっふっふ、解説しよう一方通行」ダラダラ

禁書「ふーっ、ふーっ」ガジガジ


一方通行「どォいうことだ三下ァ? あと頭からスゲェ量の赤い液体が流れてるけど大丈夫か?」


上条「一見、腹の足しにもなりそうもない野菜たちだが、実はその認識は間違っているのだ!」

上条「シャキシャキとした触感と程よい固さのおかげで食べるのに結構顎を使わなければならない」

上条「しかぁし! これは逆に満腹中枢を刺激してくれるので、結果的に腹いっぱいになるのを助けてくれるのだ!」

上条「キャベツやキュウリなどの緑黄色野菜はもちろん、安くて量多いことに定評のあるモヤシは我々貧乏人の味方なのだ!!」


一方通行「果てしなくどォでもイイ熱弁アリガトウ。つまりアレかァ、空腹をしのぐ悪あがきとしてこンなモン用意されてるっつゥわけか?」

上条「それだけじゃないぞ。普通に栄養もあるし、いろいろな料理に使えるし……」

一方通行「ンなこたァどォでもイイ。オマエこの量の雑草どもは野菜嫌いの俺に対しての当て付けかコラ」

禁書「あくせられーた! 好き嫌いをしちゃ駄目なんだよ!」

一方通行「うるせェよ、別に好き嫌いとかしねェし。食べる必要性が見いだせねェだけだし」

上条「さっき自分で野菜嫌いって言ったじゃねえか」

一方通行「……とにかく俺は野菜なンざ絶対ェ食わねェ」

上条「へー、まあそんなに言うなら許してやらねえこともねえか」

一方通行「ケッ、さすが三下だ。懸命な判断だな」

上条「…………何て言うと思ったか三下ぁ!」バッ

一方通行「何ィ!?」

上条「悪りぃがこのサラダは葉っぱ一枚たりとも残させはしねえよ! この野菜を作ってくださった農家の人の気持ち考えろコラァ!」

一方通行「機械のオートメーションで生まれてきたもん並べて何を言ってンだオマエはァ?」

上条「そういうことは関係ねえんだよ。『お残しは許しまへんで』っていう有名な偉人の言葉を知らねえのか?」

一方通行「それ言ったヤツが偉人かどォかは置いといて、よォするに作ってくれたヤツに感謝の気持ちを持てっつゥことだろ?」

上条「ま、まあそうだけど…… 」

一方通行「作ってくれてアリガトウ。だからサラダとかいう食の反逆者を残させてくれ」

上条「お願いの仕方の問題じゃねえだろ! つーか絶対感謝してねえだろテメェ!」


つんつん


上条「ん?」

風斬「……あ、あの」

上条「何だ風斬?」

風斬「早く食べた方が良いんじゃないでしょうか? せっかくの料理が冷めてしまいますし……」

上条「あ、ああそうだな。悪りぃ」

風斬「それに……」チラッ

上条「?」


禁書「──うん、うん、やっぱりお肉は美味しいんだよ!」パクパク


風斬「……もう食べ始めてるし」



上条「なっ、何勝手に食ってんだテメェは!」

一方通行「気のせいだと思うンだけどよォ、何か俺の分の肉が減ってるよォな気がすンだが!? つゥか気のせいじゃねェだろ暴食シスターがッ!」

禁書「それは気のせいなんだよ。あなたの勘違いなんだよ」

一方通行「ほォ、ステーキっつゥのは作る過程で自然と噛み千切られた跡が出来るモンなのかゴルァ」

上条「まあまあ落ち着け一方通行。少しぐらいいいだろ?」

一方通行「オマエの分にいたっては五割持っていかれてるからな」

上条「おいこらインデックス」

禁書「世の中には早いもの勝ちという言葉があるんだよ」

上条「それはある一定のルールが設けられてから適用される言葉だ!」

一方通行「……まァ、もォどォでもイイや。俺も食う」パクッ

上条「なっ」

一方通行「…………やっすい肉の味だなァ」モグモグ

禁書「そう? 普通においしいんだよ」グモグモ

一方通行「誰も不味いとは言ってねェ。及第点には達してる」ズズズ

禁書「相変わらず素直じゃないね、はむっ。……あともう少し量が欲しいんだよ」マグマグ

一方通行「人の肉奪ったヤツのセリフじゃねェよな」パクッ

禁書「奪ってないんだよ。気付いたら口に入ってたんだよ」

一方通行「やっぱりオマエが俺の肉食ったンだな」


上条「っておいいいいいいいいいいいいい!!」


禁書「!?」ビクッ

一方通行「あァ?」


上条「まだいただきますの挨拶してねえだろうがっ! 勝手に食い始めてんじゃねえよテメェら!」

一方通行「オマエのキレるところがいまいちわかンねェよ。肉奪われた方に怒りの比重を増やせよ」

上条「うるせえ。とにかく一度挨拶しとこうぜ? これ以上収拾がつかなくなる前に」

一方通行「真面目だねェ上条クン。小学校じゃねェンだからどォでもイイと思うけどなァ」

上条「けじめってのは必要だろ。何をするにしてもな」

一方通行「さすがはヒーロー様だ。言うことが違う違う」

上条「そんな大したヤツじゃねえよ俺は」

禁書「とうまー! するなら早く済ませちゃおうよ。早く食べたいかも」

一方通行「つゥかよォ、オマエは十字教のシスターさンだろォが。食前のお祈りはどォしたお祈りはァ?」

禁書「わ、私は修行中の身だから完全なる聖人の振る舞いができないから忘れてただけで、決して神に感謝の気持ちを持っていないわけじゃないんだよ!」

一方通行「ちゃンと修行しろエセシスターが」

上条「あーもううるせえ! メシが冷める前にとっとと食っちまうぞ! ほいじゃー」


『いただきます!!』


―――
――




同日 19:00

-黄泉川家・リビング-


芳川「……ところでこれはどういう状況かしら?」


打ち止め「見ての通りだよ、ってミサカはミサカはタマゴのお寿司を食べながら説明してみたり」モグモグ

芳川「…………」


吹寄「──そう。ここでチョコレートを一口大になるように切るのよ」

結標「てやっ!」バッ



ドグシャ!



吹寄「って、何でそこで包丁を叩きつけるのよ! 普通に切ればいいでしょ普通に!」

結標「ふ、吹寄さん怖い……」ガクブル

姫神「チョコレートが飛び散った。無残」

吹寄「はぁ、また作り直しか……」

結標「ごめんなさい……」

姫神「吹寄さん。これはなりふり構ってはいられない。スプーンですくってラクラク配分作戦を進言する」

吹寄「そうね。じゃあ今冷蔵庫に入ってるヤツが固まったらそれで行きましょう」


芳川「……つまり、明日のバレンタインに備えて手作りチョコレートを作っているのだけど、思った以上に苦戦している、ってことかしらね?」

打ち止め「おお、さすがヨシカワ! 的確な分析力だね、ってミサカはミサカは褒め称えてみたり」

芳川「ふふっ、ありがと。で、彼女たちがキッチンを使っているから今日の夕食はお寿司の出前ってわけね」

黄泉川「そうじゃん。ほい、これが桔梗の分」スッ

芳川「お寿司ならパソコン使いながらでも食べられ──」

黄泉川「ここで食べるじゃん」ニコッ

芳川「いや、今ちょっとネットが盛り上が──」

黄泉川「…………」ニコニコ

芳川「はい」



黄泉川「おーい、チョコレートばっか作るのもいいけどそろそろ何か食べたほうがいいじゃん!」

結標「はーい」

黄泉川「ほらっ、吹寄に姫神も」

吹寄「えっ、あたしたちもいいんですか?」

黄泉川「おう、別に遠慮する必要ないじゃん。というかもうお前らの買っちゃったから食べてくれないと逆に困る」

吹寄「すみません、ありがとうございます」

姫神「その分のお代払います」

黄泉川「別にそんな変な気使わなくてもいいじゃん。子供なんだから大人からの好意は素直に受け取るもんじゃん」

吹寄「は、はい、じゃあお言葉に甘えて……」

姫神「いただきます」


結標「……! ……!」モグモグ

打ち止め「どうしたのアワキお姉ちゃん? 何か食べるペース早いね、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

結標「もがもがまがまが」

芳川「……淡希、ちゃんと飲み込んでから喋りなさい。何言っているのかわからないし、何より下品よ」

結標「……ごくん。す、すみません」

打ち止め「結局、どうしてそんなに急いでるの? ってミサカはミサカはは同じ質問を問いかけてみたり」

結標「うん、私いまだにチョコレート完成してないから、早く再開したほうがいいかなっ思って」

黄泉川「あんまり焦ってもいいものができるとは思えないけどな。ゆっくりじっくり作ればいいと思うじゃん」

姫神「黄泉川先生の言うとおり。トリュフは作るのにそんなに時間がかかるものじゃない」

芳川「かと言って、あんまり遅いと困るんじゃないかしら? 吹寄さんや姫神にとっては」

吹寄「……そうですね。たしかに完全下校時刻もう余裕で過ぎてますし」

黄泉川「何なら私が車で送ってやるじゃん。あんま遅くなるのは許さないけど」

吹寄「いいんですか?」

黄泉川「おう」

芳川「でも愛穂? そんなこと言っちゃったらこの子たちが帰るまで貴女の生きる活力が飲めないわよ?」

黄泉川「ぐっ、い、いや大丈夫じゃん。生徒をきちんと自宅まで送り届けるまでが先生の仕事。仕事中に酒を飲んだりするわけにはいかないじゃん!」

芳川「……そういうわけで三人とも。今日愛穂が至福の時間を迎えることができるかどうかは貴女たちの手にかかっているわ。せいぜい頑張ってちょうだい」

結標「な、何か一気にプレッシャーがかかりましたね」

吹寄「結標さん。次こそ成功させましょう、ね?」

姫神「大丈夫。結標さんは頭がいいから絶対にできる。ただそのおかしな思考回路をどうにかすればいい話」

結標「褒めてるのか貶しているのかどっちかにして欲しいわね」

打ち止め「ひどい言われようだね、ってミサカはミサカは少し同情してみたり」



結標「…………!」モグモグゴクン

結標「よし食べ終わったわ。ご馳走様でした!」ガタッ

吹寄「なっ、食べるの早っ!?」

結標「悪いけど必ず成功するという確証がない以上、こんなところで時間を食うわけにはいかないわ」

姫神「何も知らずにこのセリフだけ聞いたら。料理の話なんてしてるとは思わない」

結標「そういうわけで先に行ってるわね。吹寄さんたちはゆっくりしてていいわよ」

吹寄「えっ、ちょ、結標さん!」

結標「大丈夫よ! 冷蔵庫の中のチョコレートはもう冷えてるはずだからすぐにでも作業に取り掛かれるわ!」

吹寄「いやそうじゃなくて、あたしたちがいないとまた何をしでかすかわかったもんじゃ――」

結標「わかってるわ、ちゃんとレシピ通り作ればいいのよね?」

吹寄「た、たしかにそうだけど」

結標「作戦は一刻を争うわ、今度こそ成功させてみせる!」ダッ

吹寄「あっ……」

姫神「…………」


吹寄「過ちは、繰り返させないっ!! ご馳走様でした!」バッ


姫神「……ご馳走様でした」バッ


黄泉川「はいはーい、頑張るじゃんよー」

打ち止め「しかし人の話を聞かないねーアワキお姉ちゃん。自分が料理音痴だって自覚はしてるはずなのに」

芳川「たぶんあれじゃない? 一つ一つできることが増えていくたびに変に自信を付けちゃって暴走、って感じ」

黄泉川「まだまだ若いんだから、今の内に失敗をするのはいいことじゃん」

芳川「彼女の場合成功の元になる失敗かはわからないけどね」

打ち止め「ふぅ、これじゃあいつになったらチョコレートができるのかわからないね、ってミサカはミサカは呆れながら首を振ってみたり」ヤレヤレ

芳川「……で、そういう貴女はバレンタインチョコは作ったりしないのかしら打ち止め?」

打ち止め「ふっふっふ、その点はアワキお姉ちゃんとは違って抜かりないよ、ってミサカはミサカは自信満々の表情を浮かべてみたり」

黄泉川「おっ、意外じゃん。てっきり何も考えてないかと思った」

打ち止め「明日のことはすでに今日、エンシュウと打ち合わせ済みなのだ! ってミサカはミサカは声を大にして発表してみる」

芳川「……何だか嫌な予感しかしないわね」


―――
――




同日 19:40

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



タッタラタッタッター♪



禁書「……おおっ! 何か騙されて買わされた宝くじが当たったんだよ!」

一方通行「おォおォスゲェスゲェ。上条クンには絶対ェ無理な芸当だなァ」

禁書「これで三千万円ゲット! もしかしたらあくせられーたに追いつけるかも」

一方通行「あァ? オマエ借金っつゥモン知ってっか?」

禁書「うっ、せっかくそんなの忘れてポジティブにゲームしてたのに……」

一方通行「借金っつゥのは忘れて許されるよォな甘めェモンじゃねェンだよ」



ジャバババババ!!



上条「……くっ、やっぱり肉の油汚れはしぶといな。一個十八円で売ってた超安物洗剤じゃ厳しいぜ」ゴシゴシ

風斬「……、……あの」ゴシゴシ

上条「何だ?」ゴシゴシ

風斬「これ……、本当に洗剤ですか?」

上条「ああ、歴としたスーパーで買った洗剤だぞ? 安物だけど」ゴシゴシ

風斬「……いくら安物といっても汚れ落ちなさすぎじゃ?」

上条「そうだよな。全然汚れ落ちる気しねーもん」ゴシゴシ

風斬「はい……」

上条「あ、そろそろ洗剤が少なくなってきたな。足さなきゃな……」カポッ

風斬「えっ」



ジャボボボボボボボッ!



上条「……これでよし」キュッキュッ

風斬「……もしかしていつも水で洗剤をかさ増ししてるんですか?」

上条「まあな。少しでも長く使いたいからな。上条さん物を大切にする主義ですから」

風斬「……それじゃあ落ちる汚れも落ちないじゃないですか。シャンプーじゃないんですよ?」

上条「な、何でシャンプーもかさ増ししてるってわかったんだ!?」

風斬「……、何となくです」



上条「……しかし困ったな。今まで肉の油汚れなんてなかったから、ここまで洗剤が弱体化してるとは思わなかったぜ」

風斬「わ、私が買ってきましょうか? ……洗剤」

上条「いや、そこまでしてくれなくてもいいよ。……うーん、ほんとどうしよ……」


一方通行「あァー、コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ


上条「あっ、一方通行」

一方通行「あン? 何いかにも三下だっつゥ顔でこっち見てきてンだよ?」

上条「い、いや別に……。そういや一方通行。お前の能力って何でもできる万能能力だよな?」

一方通行「何でもっても限度があるけどな。で、それがどォかしたか?」

上条「それがさあ、今この油で汚れまくった皿を洗ってんだけど洗剤が弱すぎてなかなか汚れが落ちねえんだよ」

一方通行「……何となく察した。よォするにこの俺に皿洗いをしろって言いてェンだな?」

上条「おう。お前のベクトル操作なら楽勝だろ?」

一方通行「まァたしかに俺からしちゃ楽勝だがよォ、正直能力使用モードになってまでンなことしたくねェンだよな」

上条「頼む! そこを何とか一方通行様!」

風斬「…………」

一方通行「……チッ、しょうがねェな。こっちとしてもどっかのシスターみてェにタダ飯食らいなンて言われたくねェからな」

上条「さすが一方通行! そこの流しに置いてあるヤツだ、よろしく頼むぜ!」

一方通行「……オイオイ何だァ? 学園都市製の洗剤で落ちねェ汚れって聞いてどンな重油クラスの油汚れかと思えば、ただの安肉からあふれ出てきた汚ねェ油汚れっつゥいかにもな三下じゃねェか」

上条「いや、一般的な家庭に重油で汚れた皿なんてあるわけねえだろ」

一方通行「ったく、こンなモンで俺を使うなンざオマエ、万札で額の汗拭うくれェの贅沢してンぞ?」

上条「それはたしかに贅沢だな! もしやってるヤツ見かけたらぶん殴りたくなるほど贅沢だな!」

一方通行「まァイイ、とっとと終わらせて缶コーヒーにあり付くとするかァ」カチ

風斬「あ、あの……これ、スポンジ」スッ

一方通行「あァ? いらねェよそンなゴミ。俺にはこの手とチカラがあれば十分だ」スッ


一方通行「さァて、お片付けの時間だァ。一瞬で終わらせてやる」


シュバババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!


一方通行「……ほらっ、終わったぞ」カチ

上条「お、おう……」

一方通行「? 何だよ」

上条「い、いや、何が起こったのかさっぱり理解できなかったら驚いてんだよ」

一方通行「原理はシャワーと同じだ。水を圧縮して皿に向けて高速で噴射して汚れを落としただけだ」ガチャ

上条「へー、でもそういうのって水流操作系のヤツらの専売特許じゃねえのか?」

一方通行「そりゃそォだろ。アイツらほど器用に水を操ることなンざ俺には出来ねェよ。俺はただ力の向きを操作してるだけだ」

上条「? よくわかんねえけどサンキューな。おかげさまで洗い物が終わったよ」

一方通行「ケッ、次からはンなこと頼むンじゃねェぞ、面倒臭せェから」ガチャリガチャリ

上条「ありがとなー」

風斬「…………」



一方通行「……チッ、くっだらねェ」ズズズ

禁書「どうしたの? 何かすごい音がしてたけど」

一方通行「俺が働いてやっただけだ。何もせず遊んでるだけのオマエと違ってな」

禁書「むぅ、またそんなこと言って。もしかしてあなたは私が嫌いなのかな?」

一方通行「さァな。少なくとも野菜よりかは嫌いじゃあねェ」

禁書「何だか微妙な立ち位置な気がするんだよ……」

一方通行「果てしなくてどォでもイイ」ズズズ

禁書「……ところであなたは会うたびいつもコーヒー飲んでるよね。好きなの?」

一方通行「好きじゃねェと飲まねェだろ」

禁書「おいしいの?」

一方通行「……ンだァ? あまりの空腹に俺のコーヒーにでも集る気になったかァ?」

禁書「そ、そんなことないんだよ! というか何でもかんでもそっちの方面に話を持っていってほしくないかも!」

一方通行「まずは普段の行動を見直すことから始めろ。そォすりゃ少しは俺のレスポンスも変わるかもな」

禁書「ううっ、ただ私はかんコーヒーって飲んだことないから少しどんなのか気になっただけなのに……」

一方通行「結局は自分の欲望に沿って動いてンじゃねェか」

禁書「で、でも私から食欲を奪ったら何も残らないと思うんだよ。つまりこの食欲こそが私の唯一のアピールポイントなんだよ」

一方通行「自分で悲しいこと言ってンなよ。つゥかアピールポイントなら完全記憶能力があンじゃねェか」

禁書「たしかにそうかもだけど、日常生活で活かせた覚えがこれっぽっちもないんだよ」

一方通行「豚に真珠とはまさしくこのことだな」

上条「何話してんだよお前ら」テクテク

風斬「…………」テクテク

一方通行「あァ? コイツの存在意義について話し合ってただけだ」

禁書「あれ? いつの間にそんな話題になったの?」

一方通行「自分で言い出したことだろォが。今こそ完全記憶能力を活かすときだ」

禁書「…………、あっ、ほんとだ」

上条「一体どんな会話が繰り広げられてたんだよ」

一方通行「他愛もねェ世間話だよ」

禁書「あっ、そういえばあくせられーたの番でずっと止まってたんだよ。早くルーレット回してほしいかも」

一方通行「まだやるつもりかよ面倒臭せェ。大企業の社長とフリーターじゃあスペック差がありすぎて面白くねェンだよ」

上条「つーかインデックス。ゲームばっかしてるのもいいけど、さっさと風呂入っちまえよ? そろそろお湯溜まってると思うから」

禁書「うん、わかったんだよ。一時せーぶっと……」ピッピッ

一方通行「まだやるつもりなのかよオマエ……」

上条「そういえば一方通行。結標から連絡は来たのか?」

一方通行「……あ、そォいや七時にかけ直すっつったのにかけ直すの忘れてた」

上条「今からでもかけてみれば?」

一方通行「そォする」ピッ



プルルルルルルル、プルルルルルル





ピッ



結標『……も、もしもし?』

一方通行「調子はどォかな結標クゥン?」

結標『あ、あはは、ま、まずまずかな?』

一方通行「で、用事とやらは終わったのか? まァ、その様子じゃ聞くまでもねェか」

結標『……ごめんなさい』

一方通行「つゥかよォ、俺は今上条の家で世話になってる最中なンだけどさァ」

結標『えっ、今上条君の家にいるの?』

一方通行「そォだ。だからイイ加減出て行かねェとここにいる人に迷惑にかけちまうンだわ」

結標『そ、そうね。もうこんな時間だし迷惑になるわよね』

一方通行「そォいうことだ。だからオマエが居間何をしてンのか知ンねェけどよォ、俺ァ今からそっちへ戻るぞ」

結標『えっ!? ちょ、ちょっとそれはタンマ! 待ってもうちょっと待って!』

一方通行「待てねェな。さっきから言ってるが上条に迷惑がかかるわけだし、何より俺が早く寝たい」

結標『そ、そこを何とか一方通行様ぁ! 第一位様ぁ!』

一方通行「無理」

上条「……なぁ一方通行?」

一方通行「あァ?」


上条「別に帰らなくても泊まって行きゃいいじゃねえか」


一方通行「……ハァ?」

上条「お前がよかったらの話だけどな」

一方通行「…………待て待て。一体どォしてそォいう話になったンだァ?」

上条「何でって、まだ結標の用事は終わってねえんだろ? だったらその邪魔をしてやるのは悪いと思って」

一方通行「オマエはそれでイイのかよ? こンなただでさえ狭っ苦しい上にインデックスとかいう居候を住まわせてる部屋に、俺みてェなヤツを止まらせることァできンのかよ?」

上条「別に今さら一人増えたところで変わんねえだろ。何とかなるって」

一方通行「…………チッ」スッ

一方通行「もしもし結標クン? どォやらここの家主のご好意で俺はここの部屋に一泊させてくれるらしい」

結標『えっ、ほんとなのそれ?』

一方通行「あァ。そォいうわけでその用事とやらをゆっくり終わらせることができるっつゥわけだ。よかったな」

結標『……で、でも何か悪いわ。ただでさえいろいろ迷惑かけちゃってそうなのに』

一方通行「そォ思ってンならその用事とやらを確実に終わらせろォ。その迷惑っつゥのを覆せられるくれェの完成度でなァ」

結標『……わかったわ』

一方通行「じゃ、切るぞ? せいぜい足掻くこったな」

結標『了解! じゃあね』ピッ



一方通行「…………」スッ

上条「で、どうすんだ?」

一方通行「そォだな。お言葉に甘えさせてもらうとするわ」

上条「そうか。じゃあ着替えとか用意しとかないとなー」

一方通行「チッ……、ってかいつの間にかコーヒーなくなってンじゃねェか。コーヒーコーヒーっと」ガチャリガチャリ

風斬「…………、あ、あの」

上条「何だ風斬?」

風斬「私、そろそろ帰ろうと思います」

上条「おう。何つーかいろいろありがとな」

風斬「い、いえ。私は別に何も……」

上条「おおーいインデックスー! 風斬が帰るってよー!」


禁書『うんわかったー!! またねひょうかー!!』


風斬「う、うんまたね……!」

上条「じゃ、途中まで送ってくよ」

一方通行「待て上条」

上条「ん? どうかしたか?」

一方通行「俺が代わりに行く」

風斬「…………!」

上条「どういう風の吹き回しだ? お前らしくねえこと言って」

一方通行「缶コーヒーのストックが切れた。それを買いに行くついでだ」

上条「あー、そういうことか……って、あの大量の缶コーヒーもう尽きたのかよ!」

一方通行「そォいうわけだ。つゥわけだ、行くぞ風斬」ガチャリガチャリ

風斬「は、はい……」タッタッ

上条「夜道には気をつけろよー」

一方通行「あァ? 誰に向かってンなこと言ってンのかわかってンのかオマエ?」

上条「ははっ、まあそうだよな」

風斬「お、お邪魔しました……」

上条「また来いよー」



ガチャリ



―――
――




同日 20:00

-黄泉川家・キッチン-


結標「…………ふぅ」ピッ


吹寄「電話どうだったの?」

結標「上条君のおかげでなんとかなったわ」

姫神「上条君? 何で上条君の名前が?」

結標「何か今上条君の家にいるらしくて、あまりに遅いからって泊まらせてもらえるようになったらしいわ」

吹寄「へー、そんなことがあったのね」

結標「まあこれで私のタイムリミットが少し延びたってことになるわね」

吹寄「そうね。じゃあせっかく上条が時間を稼いでくれたんだから、それを無駄にしないためにもさっき失敗したトリュフの元を作り直さないとね」

結標「……はい」

姫神「吹寄さん」

吹寄「何?」

姫神「たしかにタイムリミットは延びたかもだけど。あまりにも遅すぎると明日に支障が出るかもしれない」

結標「そ、そうよね。九時や十時まで付き合わせるわけにはいかわないわよね」

吹寄「別にそんなのあまり気にしなくてもいいのに。あたしたちの分はもうできてるわけだから、あとは帰って身支度してから寝るだけだし」

結標「それでもいつもより遅くなるのは確実だわ」

吹寄「まあそういう心配をしてくれるなら、ちゃんとあたしたちの言うこと聞いて早くチョコレートを無事完成させてほしいわ」

姫神「うん」

結標「…………次からは気をつけます」

吹寄「じゃあまず役割を分けましょ。最初はまずみんなでひたすらチョコレートを刻んでいって、あらかた終わったらあたしたちで湯銭をするわ」

吹寄「だから結標さんはそのままひたすらチョコレートを刻む作業に取り掛かってちょうだい」

吹寄「そのあと湯銭を終えた大量のチョコレートを一気に冷やして、そのあと総力戦にかかるわ。わかった?」

結標「りょ、了解!」

姫神「把握した」

吹寄「よし! じゃあまずは包丁で刻むわよ」シャキーン

結標「わかったわ」つノコギリ

吹寄「はいそこ! 言ったそばからこっちが言ったことを無視しない!」

結標「で、でも、私これのほうが使いやすい……」

吹寄「いいから包丁持ちなさい包丁を」

結標「……はい」

姫神「果たしてチョコレートは完成するのか。ものすごく不安になってきた」トントントン

吹寄「それは思っても口に出すのはやめたほうがいいわよ」トントントン

結標「ううっ」ドンッドンッ

吹寄「はい包丁を思い切り叩き付けない!」トントントン


―――
――




同日 20:10

-第七学区・街頭-



<ありがとうございましたー!!



一方通行「さァて、こンだけ買やァさすがに足りンだろ」ガチャガチャ

風斬「…………、それ、全部飲むんですか?」

一方通行「そりゃそォだろ。そのつもりで全部買ったンだからよォ」

風斬「……今日中にですか?」

一方通行「いや、そりゃねェだろ。さすがの俺でもこれを今日中に飲み切るなンざ無理だ。つゥか、そもそもそンな急いで飲む意味がねェよ」

風斬「た、たしかにそうですけど……」

一方通行「コーヒー、っつゥのはじっくり味わって飲むモンだ。缶コーヒーだろォが、キチンと豆から作られたコーヒーだろォがな」

風斬「そ、それであのペースで飲むんですか?」

一方通行「ああ」

風斬「……味わってるんですか?」

一方通行「ああ」

風斬「…………、そうですか」

一方通行「?」

風斬「…………

一方通行「…………」

風斬「…………」

一方通行「……つゥか、オマエってどこに住んでンだ? この学区内か?」

風斬「えっ?」

一方通行「今何となく道を歩いてっけどよォ、正直オマエがどこに住ンでるか知らねェからな」

一方通行「一応見送りっつゥことで歩いてる以上、どの辺りまで送ればイイか把握しときてェからな」

風斬「そ、そうですか。えっと……、い、一応この学区内です……、はい」

一方通行「……そォか」

風斬「は、はい……」

一方通行「…………」

風斬「…………」



風斬「あ、あの……」

一方通行「何だ?」

風斬「こ、この辺りまででいいですよ? もうここまで来ればすぐに帰れますから」

一方通行「本当か? もし俺に気ィなンてモン使ってやがったらブン殴るぞ」

風斬「い、いえ、そんなことない、です」

一方通行「そォか。なら別にイイけどよォ」

風斬「で、ではこれで――」


一方通行「…………いや、待て」


風斬「……? は、はい」

一方通行「オマエに話しておきてェことがある。少し時間イイか?」

風斬「話……、ですか……?」

一方通行「ああ」

風斬「……別にいいですよ、な、何でしょうか?」

一方通行「話しておきてェ……つゥか、実際は聞きてかったことだ。上条の家でオマエと再会したときからな」

風斬「…………」

一方通行「率直に聞くぞ」

風斬「は、はい」



















一方通行「結標にトラウマの壁を乗り越えさせ、チカラを与えたのはオマエか?」











風斬「…………!」

一方通行「…………風斬氷華……いや、『正体不明(カウンターストップ)』、っつった方がイイか?」

風斬「…………」


―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

今週で前日が終わると思いましたが終わりませんでしたすみません
次の投下では必ず終わらせたいです
あ、あと変なシリアス入ると思うからよろしくです


ではではノシ

風斬パートに苦戦してるので明日投下します、すみません



同日 20:15

-第七学区・街頭-



風斬「…………私のこと、知っていたんですか?」



一方通行「……ああ。話だけならだいぶ前から聞いたことがあった。昔、実験関係で霧ヶ丘女学院へ通っていたときがあって、その時にな」

一方通行「オマエと初めて会って名前を聞いた瞬間から、俺はこの噂を思い出していた」

一方通行「『虚数学区・五行機関』を知る鍵。それがオマエだってことをな」


風斬「…………」


一方通行「一般人から見たらオマエはただの人間かもしれねェ。だが、あらゆるベクトルを観測し操る俺の目から見れば、オマエがただの人間じゃねェことはわかる」

一方通行「能力者が無意識に発生させるAIM拡散力場。それによって構築されてるいわば全身異能の人間だ」

一方通行「上条当麻の右手から逃げるような立ち回りも、アレに触れたら即消滅させられるからだろ?」


風斬「……やっぱり、あなたには隠し通すことができないようですね」

一方通行「俺を誰だと思ってやがる」

風斬「じゃあ私に何かと気をかけていたのは、単に私の動向を探っていたから、ということですか?」

一方通行「否定はしねェよ」

風斬「…………」

一方通行「……チッ、まァ安心しろォ。オマエに敵意がねェっつゥことはすぐにわかったからな」

風斬「そう、ですか。それはよかったです」

一方通行「だが残念ながら今は違う。場合によりゃあこの首筋に付いている電極のスイッチを押すことになる」コンコン

風斬「……、さっき言った結標さんの件ですか?」

一方通行「ああ」

風斬「……だったらあなたは、何で私が彼女をを超能力者(レベル5)にしたと思ったんですか?」


一方通行「……そォだな。アイツがレベル5になったきっかけはスキー旅行のときの雪合戦だ」

一方通行「電極の充電が切れて絶体絶命になった俺をアイツは自分自身をテレポートさせることで救った」

一方通行「はたから見れば自分自身でトラウマを乗り越えて、壁を打ち破った女。そォいう風にしか見えねェだろォ」

一方通行「だが俺は感じたンだよ。演算補助を受けていなくて何が起こっているのか理解できねェ状態でも、アイツの周りから何か異質なチカラの動きがあったことをな」


一方通行「で、そのチカラの感じが何となくオマエから発せられるモンと似ていた。それがオマエがアイツにチカラを与えたと考える理由だ」

風斬「……単純に勘違いじゃないんですか? 演算補助を受けていない状態だからいろいろパニックのようなものに陥っていただけじゃ……?」

一方通行「いや、それはありえねェよ。ハッキリ言うがこの感じてるモンっつゥのは俺の能力とはまた別のモン、よォするに直感だ」

一方通行「俺自身のカラダが……言わば本能が感じとったモンだ。これこそ現実味のねェ曖昧な答えかもしれねェ。だが俺は俺自身を信じてる」

風斬「……そうですか。たしかに自分を信じることは大事かもしれません。けれど、それで私を犯人みたいに言われるのは……いやです」

一方通行「そォだな。オマエの言うとおり何の確証もねェただの憶測だ。だが俺を今キチンと確証を持ってオマエの前に立ってンだよ」

風斬「どういうことですか?」

一方通行「じゃあ仮にだ。オマエはアイツのトラウマ克服に手助けしてねェとしよォ」

風斬「……はい」




一方通行「だったら何でオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知ってンだ?」



風斬「!? そ、それはあ、あなたが――」

一方通行「俺がアイツが超能力者(レベル5)になった、って言ったからか? 悪りィが俺ァオマエの前じゃそンなこと一言も言ってねェぞ」

風斬「うっ……」


一方通行「さらに言うならこのことは重大な機密、っつゥことに一応なっている。だから俺らの間じゃこれは正式に発表されるときまで秘密にする約束をしている」

一方通行「オマエが一番関わりがあるヤツら、上条、インデックスの中でこれを知ってるのは上条だけだ」

一方通行「上条はこういうことをべらべら言いふらすような三下みてェなことをするヤツじゃねェ」

一方通行「だからオマエはアイツが超能力者(レベル5)になったことを知る手段はほぼねェっつゥことになる」


風斬「…………、…………」

一方通行「答えてもらうぞ風斬。どォいうつもりでアイツにこンな超能力者(レベル5)なンつゥ過酷な道に引きずりこンだのかを……」

風斬「…………」

一方通行「…………」

風斬「…………です」ボソッ

一方通行「あァ?」


風斬「…………、あの子を、あの子の取巻く環境を……守りたかったから……です」


一方通行「あの子……ソイツはインデックスのことか?」

風斬「……はい」

一方通行「どォしてインデックスの話になりやがンだ? それが結標の手助けをした理由にどォ繋がるンだよ」

風斬「…………もし、あのまま結標さんを助けずに、そのまま雪合戦を続けたとします。おそらくあなたは今をここに立っていないかもしれません」

一方通行「……俺が垣根に殺されてたっつゥことか?」

風斬「…………」

一方通行「……チッ」

風斬「……もし、そんなことになったら絶対にあの子は悲しみます。もしかしたら、まったく関係ないのに、自分のせいだと自分を責めてしまうかもしれません……」

一方通行「……それはありえねェ話だろ。俺みてェなクズが死ンだところでインデックスにはまったく関係のねェはずだろォが。ヤツと俺はまったくの他人なンだからよォ」

風斬「それは間違ってますよ。あの子はあなたの思ってる以上にあなたのことを信頼してますから」

一方通行「……わけがわからねェ、ありえねェよそンなこと」

風斬「……さっき、あなたはあの子に噛みつかれましたよね?」

一方通行「それがどォかしたか?」

風斬「あれって、あの子が本当に信頼してる人にしかやらないんですよ?」

一方通行「ハァ? そンなわけ……いや待てよ」


一方通行(たしかにアイツの噛みつき攻撃を食らってるヤツは基本的に上条だ)

一方通行(だけどスキー旅行ンときに、インデックスのヤツおちょくった回数が上条より圧倒的に多かったアホ二人、土御門と青髪ピアスがいる)

一方通行(けどソイツらがアイツの怒りの牙を食らったところなンざまったく見たことねェ。つゥか上条の方に全部行っていた……)

一方通行(……つまり、上条に噛付くことでしか鬱憤を晴らすことができない。それができるのは決してそのせいで繋がりが断ち切られることがねェって信じてるから……?)



一方通行「…………」

風斬「……思い当たるところがあったみたいですね」

一方通行「……ああ。……いや、やっぱりおかしいだろォが」

風斬「何がですか?」

一方通行「俺がアイツに一体何をしてやったンだと言うンだ? ただで食いモン食わせてやったことかァ? 一緒にゲームで遊ンでやったことかァ?」

一方通行「アイツがどォいう経緯で上条と一緒にいるのか知らねェが、俺は上条みてェなヒーローじゃねェっつゥことは周知の事実だろォが!」

風斬「……それは私にもわかりません。でもあなたにはあの子が信頼するに足る何かがあることは間違いないです」

一方通行「信じられるわけねェだろォが。インデックスが俺を信頼してるなンていうクソみてェな妄言はよォ」

風斬「……たしかに、この話はあなたの言うように妄言かもしれません。けど……」

風斬「あの子があなたに向けている笑顔は全部、あなたの言うようにまったく信頼されてない人に向けられているような笑顔ですか?」

一方通行「……笑顔なンざどォとでも作れる。外じゃ誰にでも満面の笑みを見せられるヤツなンざクソみてェにいるぜ? 全部目先の利益のためのな」

風斬「あなたにはあの子の笑顔がそういう風に見えるんですか?」

一方通行「……ああ」

風斬「なら、何であなたはあの子と一緒にいられるんですか?」

一方通行「…………ッ」

風斬「何でわざわざゲームで対戦をして遊んであげたりしたんですか? 何でお腹を空かせたあの子に食べ物を食べさせてあげたんですか? 何でお互い憎まれ口をたたき合うような意味もない会話をしてあげたんですか?」

風斬「あの子があなたの言うような笑顔をするような子だったら、あなたはここまでのことをしてあげないんではないですか?」

風斬「あなたも本当はわかってるんじゃないですか? あの子がそんなことを目先の利益なんてものを考えるような子じゃないってことを」

一方通行「…………」

風斬「インデックスは優しいですよ。私のことを『化け物』だと知ってても、何の曇りもない笑顔で私のことを『友達』と呼んでくれます」

風斬「そんな子だから、私は一人じゃないんです。私はここに存在できるんです」


風斬「だから、私は悲しませたくないんです……! 私に、生きる意味を与えてくれた友達を……!」


一方通行「…………オマエがどれだけアイツのことを想っているのかはわかった」

風斬「…………」


一方通行「だけどよォ、こっちからしたらだからどォしたっつゥ話になっちまうンだけどよォ? なァ?」


風斬「…………、そうです、ね。たしかに彼女には、結標さんにはひどいことをしてしまったのかもしれません。あなたの言いたいこともわかります」

一方通行「だったらこれからどォいう展開が繰り広げられるのか、っつゥのもわかってンだろ?」

風斬「はい……どうぞ、その電極のスイッチを入れてください」

風斬「私がそれだけのことをしたってことは、わかっていますから……それ相応の罰を受けなきゃいけないことも」

風斬「あなたに消されるのだったら、それも本望なのかもしれませんから……」

一方通行「…………そォか」

風斬「…………」

一方通行「…………」スッ

風斬「!」ビクッ


一方通行「…………はァ、ったくうざってェンだよ」

風斬「……え」



一方通行「ハナっからわかってンだよ。オマエが善人だってことは、アレに悪意なンてなくて純粋な善意しかねェってことはなァ……」

一方通行「ただ確認したかっただけだ。ロクなことにしか働かねェカンが外れてることを祈ってな」

風斬「……え、えっと」オロオロ

一方通行「そもそもこンな事体を引き起こしたのは全部俺のせいだ。俺が垣根なンざ速攻で潰せるくれェ強かったら、さらに言うならアイツを巻き込ンじまったりしなかったら……」

一方通行「俺がこンなにも無様だから、グループに、木原に、そしてオマエに力を借りなきゃいけなくなっちまったンだよ」

一方通行「だから別にオマエが気に病む必要もねェ。これは全部俺の責任だ」

風斬「え、そ、そんなことは……」オロオロ

一方通行「……ケッ、オイオイどォしたオマエ? さっきまでベラベラ喋ってたくせによォ、急に吃りだしてンじゃねェよ」

風斬「ご、ごめんなさい。さっきは……あの……その、必死でしたから」

一方通行「だろォな。まるで別人のよォに雰囲気が違ったな」

風斬「ううっ……」

一方通行「…………オイ」

風斬「……は、はい?」

一方通行「オマエさっき自分で自分のことを『化け物』って言ってただろ? アレもォやめろ」

風斬「な、何でですか……? だって私はばけ――」

一方通行「…………」カチッ

風斬「えっ」ビクッ

一方通行「『化け物』っつゥのよォ――」コツン





ドグッシャアアアッ!!




一方通行「――俺みてェなヤツのことを言うンだよ」カチ

風斬「…………」

一方通行「オマエみてェなただ人とちょっとカラダの造りが違うだけじゃ、何の話にもならねェよ。残念だったな」

風斬「…………」

一方通行「…………」

風斬「…………ふふっ」

一方通行「……あン? 何がおかしい?」

風斬「え、えっとあの……やっぱりあの子の言ったとおりだ、って思ってつい……」

一方通行「ハァ? あのクソシスターは一体何を言ってやがってンだ?」

風斬「あなたのことを『表には絶対に出さないけど、本当は優しくて思いやりのある人』。そう言ってました」

一方通行「……オイオイ何言ってンだあのクソ野郎が。頭に蛆でも湧いてンじゃねェか?」

風斬「そうですか? 私もそう思いますよ?」

一方通行「ここにも脳内お花畑野郎がいたか」

風斬「はい。だって私はあなたたち能力者の発するAIM拡散力場が集まってできているんですよ? だから、別に脳内お花畑でもおかしくはないですよね?」ニコッ

一方通行「…………チッ、うっとォしい」

風斬「ふふっ……」



一方通行「……つゥかよォ、一つ気になることがあるンだけどイイか?」

風斬「何ですか?」


一方通行「問いただした俺が言うのも何だけどよォ、何でこのことをオマエは俺に話したンだ?」

一方通行「霧ヶ丘で聞いたあの話も所詮は噂にしか過ぎねェし、風斬氷華っつゥ名前も偶然と言い張っちまえばどォにでもなる」

一方通行「隠そうとすればいくらでも隠せたンじゃねェのか? このことも、オマエのカラダのことも……」


風斬「……ふふっ、そもそも隠してもバレるんじゃないんですか? あなたさっき自分で言ってたじゃないですか、私が異質なことがわかるって」

一方通行「それはあくまで俺個人が勝手に言っているだけのことだ。大した証拠にもならねェよ」

一方通行「オマエぐれェの頭の良さだったら、本気で隠そうと思えばこォいうところを使ってこの場を逃れることもできただろ」

風斬「買い被り過ぎですよ。そんな私は頭良くないです。……まあ、たしかにさっきからあなたが言ってることには気付いてましたけど」

一方通行「だったら尚更気になってくンじゃねェか。一体どォして俺にこのことを話したのかをな」

風斬「そう……ですね、何と言えば良いのかわかりません。けどあえて言うなら……あなたのことを信じてたから、でしょうか」

一方通行「信じてた? まさかクソシスターが言ってた戯言をか?」

風斬「ええっと、それも少しはあります。けどその前に、あなたはこのことを知ってもなお、今までどおり変わらず接してくれるって思ってたから……」

一方通行「一体俺のどこにそォいうことを思える要素があるってンだよ?」

風斬「一方的な思い込みだからそんなに気にしないで欲しいんですけど、あなたは何となくあの人と似てると思ったので」

一方通行「あの人……誰のことだ?」


風斬「主義主張、性格、見た目、立場、そういうところは全然違うんですけど、根本的な部分はあなたたちはまったく同じように見えるんですよ」


風斬「だから、あなたもあの人と同じように接してくれる、そう思ったから話したんです」

一方通行「それこそ買い被り過ぎだ。俺はオマエの言うよォな人間じゃねェ」

風斬「はい、所詮は私が勝手にそういうことを思い込んでいたにすぎませんよ」

風斬「でも現にあなたは、今までと変わらないいつも通りのあなたを私に見せてくれてるでしょ?」

一方通行「……内心俺がオマエのことをどォ思ってるかなンてわかンねェンだぞ?」

風斬「はい!」ニコッ

一方通行「…………」

風斬「…………」ニコニコ

一方通行「……チッ、くっだらねェ」ガチャリ



一方通行「……さて、そろそろお開きとしよォぜ。引き止めて悪かったな」

風斬「いえ、これぐらい大丈夫です」

一方通行「つゥかオマエ、本当にここらで別れて大丈夫なのか? 時間的には結構遅せェだろ」

風斬「はい、大丈夫ですよ。というか、私の正体を知ってるんですから、別にそんなこと聞かなくてもいいんじゃ……」

一方通行「ケッ、ハイハイそォですねェ。つゥか急にデフォルトを饒舌に変えてンじゃねェようっとォしい」

風斬「え、ええっと、その、ご、ごめんなさい」

一方通行「戻してンじゃねェよ。逆にそれはそれでウゼェだろォが」

風斬「ふふふっ」

一方通行「チッ、じゃあな……」ガチャリガチャリ

風斬「……あっ、そうだ。最後にいいでしょうか?」

一方通行「あァ?」

風斬「さっき、あなたは私はただカラダの造りが違うからって『化け物』を名乗るな、って言いましたよね?」

一方通行「ああ、それがどォかしたか?」

風斬「……実は、私――」ヒュン

一方通行「ッ!?」カチッ





バチィ!! バチィ!!





風斬「あなたが思ってる以上に『化け物』かもしれませんよ?」





バチバチィ!! バチィ!!





一方通行「…………き、消えた……?」カチ


一方通行(な、何だよありゃあ。今までいろいろな能力を見てきたが、あンなモン初めて見る……)

一方通行(……一体何者だ? 風斬氷華……)

一方通行(そして、上条やインデックス、アイツらはこれを全部知ってたっていうのかよ?)


一方通行「…………クソッたれ、帰るか」ガチャリガチャリ


―――
――




同日 20:40

-黄泉川家・キッチン-


吹寄「……い、いよいよ最後よ」ゴクリ

結標「え、ええ……」

姫神「最後は。この丸めたチョコレートにの周りにチョコを塗って。それにココアパウダーをまぶすだけ……」

吹寄「む、結標さん。間違えちゃダメよ? 周りに塗るのはチョコレートを溶かしたものであって、それ以外のものはこの際全部なしよ?」

結標「わ、わかったわ。チョコレートね、チョコレート……」ブツブツ

姫神「……ところで。肝心なココアパウダーはどこ?」

吹寄「ココアパウダーは、ええっと……あれ? そういえばパウダー買ったっけ?」

姫神「そういえば。籠の中に入れた覚えがまったくない」

吹寄「……結標さん? ココアパウダーはちゃんと買ったの?」

結標「…………」

姫神「…………」

吹寄「…………」

結標「…………」ニヤァ


結標「もちろん買ってません!」ニコ


吹寄「」ガクッ

姫神「やっぱり。そんな気はしてた」

結標「い、いやだってそんなこっちは作り方知らなかったわけだし。だから必要な材料もわからなかったわけだし」

吹寄「大まかだけど作り方も説明したし、材料とかもちゃんと教えたわよ?」

結標「あ、あれー? そ、そうだったかしら?」

姫神「……まあ。私たちも忘れてたからしょうがない」

吹寄「たしかにそうね。今はこの危機をどう乗り越えるかが先決よ」

姫神「うん。ところで結標さん。この家にはココアパウダーはある?」

結標「え、ええっと、うん。たしかあったはずよ」

姫神「ならそれを使おう。今すぐ持ってきて」

結標「りょ、了解! えっと確かこの辺に……」ガサゴソ


打ち止め「……ふぅ、やっぱり体が冷えてる時のココアはすっごく美味しいぜ、ってミサカはミサカはコップを片手に酔いしれてみたり」フゥ


結標「……打ち止めちゃん?」

打ち止め「ん? 何アワキお姉ちゃん?」

結標「今貴女が飲んでるそれは何かしら?」

打ち止め「えっ、何ってただのココアだよ! ってミサカはミサカはコップの中を見せながら答えてみたり!」スッ

結標「…………えっと、じゃあそれを作るために必要なココアパウダーはどこかしら?」

打ち止め「ま、まさかアワキお姉ちゃんもココア飲みたかったの!? そ、そのココアパウダーは……」


ココアの空ビン『』



結標「」

打ち止め「え、えへへごめんね? アワキお姉ちゃんどっちかと言ったらコーヒー飲んでるから、まさかココアが飲みたいなんて突発的に言ってくるとは思わなくて……」

結標「い、いいのよ別に。打ち止めちゃんは何も悪くないわ」

打ち止め「で、でも……」

結標「大丈夫よ! ココアなんてなくても私は戦い抜いてみせるわ! 絶対に!」

打ち止め「? 何だかよくわかんないけど頑張ってね、ってミサカはミサカはエールを送ってみたり」


結標「……というわけでココアパウダーはなかったわ」

吹寄「そ、そう……それは残念だったね」

姫神「何か代用品でも使うか。それかもうこれを完成品とするか……」

吹寄「代用品って?」

姫神「例えば粉系ではなくソース系を使うとか」

吹寄「ホワイトチョコとかフルーツを使ったソース?」

結標「でもそれを作ってる時間はあるの?」

姫神「正直無理。ホワイトチョコは私が使うからって買ってはあるけど。そんなソースに出来るほど残ってはない」

吹寄「買いに行くとしても今の時間帯、大体閉める準備をしてるから買うのは困難ってことか……」

結標「…………」

姫神「…………やっぱり」

吹寄「そうね。もう、これで完成ってことにするしか……」

結標「……! そうだ!」ピコン

吹寄「な、何かいい案でも思いついた?」

結標「うん! 代用品ならちゃんとあるわ! この家の中に!」

吹寄「ほ、ほんと?」

結標「嘘はつかないわ!」

姫神「それが本当なら。ちゃんとしたトリュフを作ることができる」

結標「よし! じゃあ持ってくるわね」テクテク



~1分後~


結標「持ってきたわ! これが私が思いついた代用品よ!」バッ


吹寄「…………えっ?」

姫神「…………」

結標「あ、あれ? 我ながらいい案だと思ったのに微妙な反応ね」

吹寄「え、ええっと、何というか……」

姫神「思ったより結構まともなものが出てきてびっくりしてる」

吹寄「で、でもこれって正直微妙かもね」

結標「え、そうなの?」

吹寄「貴女が買ったチョコレートとそれを合わせたら、何だかすごいことになりそうよ。いろいろな意味で」

姫神「でも。一応こういうものも存在するから問題ない」

吹寄「たしかに存在はするけど……やっぱり果てしなく微妙なのになりそうよ?」

結標「二人が一体どういう会話をしてるのかわからないけど、とりあえずこれでオッケーってこと?」

吹寄「うーん、まあ結標さんがいいと思うならいいと思うけど……」

姫神「ただし必ずいいものができるとは保証はできない」

結標「……大丈夫よ! 何となくだけど、これでいいような気がするから!」

吹寄「……わかったわ! じゃあこれで作るとしましょう!」

姫神「早速作業に取り掛かるとしよう」


~十分後~


結標「――最後に綺麗に配置して」コソコソ


吹寄「…………」ゴクリ

姫神「…………」


結標「……これで、終わりっと」スッ


吹寄「……ってことは?」

姫神「うん」

結標「か、完成したの……?」

吹寄「や、やったわね結標さん!」

結標「私が、まともな料理を、完成させたの?」

姫神「うん。おかしなものは一つも入ってない。あなたが作った正真正銘のチョコレートだよ」

結標「…………や」ウルッ





結標「やったああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」







黄泉川「じゃ、帰り支度は済んだじゃん?」



吹寄「大丈夫です」

姫神「同じく」

結標「二人とも。こんな時間まで付き合わせちゃってごめんなさいね」

吹寄「いいよ別に。だってあたしたち友達じゃない!」

姫神「そう。お互い助け合うのは当たり前のこと」

吹寄「だから、そこはごめんじゃなくてありがとうって言ってほしいわ」

結標「う、うん、ありがとね! 吹寄さん姫神さん!」

吹寄「あ、あと言っとくけどバレンタインはチョコを完成させてゴールじゃないわよ? むしろやっとスタートラインに立てたと言っても過言じゃないわ」

結標「わかってるわ。渡してやっとゴールよね」

吹寄「それがゴールになるかスタートになるかは結標さん次第だけどね」

結標「えっ? それってどういう……?」

吹寄「とにかく頑張れってことよ!」

結標「が、頑張ります……」


黄泉川「ほいじゃあ、そろそろ出発するじゃん?」


吹寄「そうですね。じゃあ結標さん、また明日ね!」

姫神「また明日」

結標「うん、また明日!」ノシ



ガチャ



―――
――




同日 21:00

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ガチャ



一方通行「…………」ガチャリガチャリ

上条「おっ、一方通行おかえり」

一方通行「おォ……」

上条「? 何か元気がねえぞ? どうかしたか?」

一方通行「イイや何でもねェよ。オマエが知る必要もねェことだ」

上条「?」



禁書「あっ、あくせられーたおかえり!」←パジャマ姿



一方通行「…………誰だオマエ?」

禁書「ええっ!? 何で少し会わない間に私忘れられているの!? インデックスだよインデックス!」

一方通行「インデックスゥ? ……ああ、オマエインデックスか」

禁書「もう! もしかしてあくせられーたって忘れっぽい人かな?」

一方通行「ンなわけねェだろォが。大体オマエの特徴の九割を占めてる修道服を着てねかったから誰だかわからなかっただけだ」

禁書「あれ? 私ってそんなに特徴ないの? 修道服以外に?」

一方通行「ちなみに残り一割は外国人ってところだけだ。なお、イギリスとかに行ったらその特徴も潰される模様」

禁書「ううっ、何だかショックなんだよ……」

一方通行「あっ、そォいやまだ食欲っつゥ特徴があったな」

禁書「フォローにならないこと思い出してくれてありがとなんだよ……」

上条「ま、まあ気にすんなよインデックス。こいつがあまりに特徴的過ぎるだけだ。何なら俺なんてただ男子高校生だぜ? 特徴のとの字もねえくらい特徴ねえよ」

一方通行「自分で言ってて悲しくならねェか?」

上条「うるせえ。大体普通に生きてくならいらねえだろそんな特徴なんて」

一方通行「まァな。その無駄に特徴を持ったまま生きた結果が俺だからな」

上条「だったらそれは無駄じゃねえだろ。それがなかったらお前はここにいないわけだからな」

一方通行「チッ、くだらねェ」



上条「あ、そうだ。お前さっさと風呂入っちまえよ。着替えは中に置いてあるから」

一方通行「あァ? 別に風呂なンざ入らねェでもイイと思ってたンだがな。体表面の汚れは全部反射すれば終わりな話だし」

上条「たしかにそうかもだけど、風呂に入る入らねえだったら気分的に結構違うだろ」

一方通行「そォか?」

上条「そうだろ。だってさっぱりするんだぞ?」

一方通行「反射でもさっぱりすンぞ?」

上条「何つーかなー、その反射ってのをしたことねーからわかんねーけど、やっぱ風呂ってのはいいもんだぜ?」

一方通行「面倒臭せェなァ」

上条「……てか、お前まさか毎日風呂入ってねえのか?」

一方通行「いや、普通に入ってる」

上条「だったらその流れで普通に入れよ」

一方通行「何つゥか、他人の家の風呂に入るなンざ面倒臭せェ気持ちしか湧かねェよ」

上条「まあその気持ちわからないことはないけど」

禁書「そうかな? 私よくせんとうとか行くけど、別にそんな面倒臭いなんてことはないんだよ」

一方通行「銭湯はまた別だろ。まァどちらにしろ俺ァそォいうモンは嫌いだがな」

上条「文句言ってる暇があったら行ってきたらどうだ? あとがつかえてんだからさ」

一方通行「あァ? オマエまだ入ってねかったのかよ。つゥかオマエが先に入ればイイじゃねェか面倒臭せェ」

上条「いや、正直俺が最後に入ったほうがいろいろ都合が良いんだよ」

一方通行「一体どォいう都合だ」

上条「まあいいから先行けよ。ほらほらっ」

一方通行「わかったから押すンじゃねェ三下ァ! こっちは杖突いてンだから歩きにくいだろォが!」ガッチャガッチャ

上条「あっ、そうだ。中にあるシャンプーとかは適当に使っていいからな。でもあんま使いすぎんなよ!」

一方通行「ヘイヘイわかりましたよォと」ガチャリガチャリ

禁書「いってらっしゃい!」

一方通行「面倒臭せェ」


―――
――




同日 21:20

-黄泉川家・浴室-



ザッパーン!



結標「…………はぁ、疲れたぁ」チャプン

結標「まさかチョコレート一つ作るのにこんなに時間がかかるなんて思わなかったわ……」

結標「まあ……全部私のせい、ってことよね……はぁ」

結標「二人ともやることだっていっぱいあったのだろうし、それなのにこんな時間まで付き合わせて……」

結標「どうしてこう常識的な発想ができないのかなー私って」

結標「もし常識的な……普通で何の面白味のない考えを持ててたら、こんなことにはならなかったはずよね」

結標「…………」

結標「……やっぱり私も超能力者(レベル5)……人格破綻者なのかな、ははっ」

結標「…………」チャポン

結標「……とにかく、明日はバレンタインデー本番。明日の頑張りっぷりでスタートかゴールが決まるのよね」

結標「しかしバレンタインってどうやって頑張ればいいのかしら? ただチョコレートを渡すだけじゃいけないのかしらね」

結標「バレンタインなんてイベントは漫画とかでしか知らないけど、だいたいそういうのってうやむやになって終わるのよねー」

結標「……このままじゃ私もうやむやのまま終わってしまいそうね」

結標「んー、かといってバレンタインにかこつけて告白する勇気もないのよねー」

結標「でもこういうイベントごとで行かないと一生できるような気もしないわ」

結標「…………もし」

結標「もし告白したとして、一方通行は私のことを受け入れてくれるのだろうか……」

結標「普段があんなのだから、絶対に受け入れてくれない気がする……」

結標「そしたらそのあとずっと気まずい雰囲気のまま同じ家に住んで、同じ学校に通って、同じクラスで授業を受けないといけなくなるかもしれないわね」

結標「……だから、そうならないために明日のバレンタインがあるのか……」

結標「…………ふぅ」ジャポン

結標「……青髪ピアス君がよくやってるゲームみたいに、アイツの好感度がパラメーターみたいになって見えればいいのにな」

結標「そうすれば……いや、もしかしたら嫌われてる可能性もあるから逆にへこんでしまうかもれないわ……」

結標「…………」

結標「……そろそろ上がろ」



ジャバーン!



―――
――




同日 21:30

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


ガチャ


一方通行「……上がったぞ」ホカホカ

上条「了解。じゃあ俺も入るかなーと」テクテク

一方通行「……はァ、やっぱ他人の家の風呂は使い勝手がわからなくて面倒だわ」ガチャ

上条「そうか? 普通の風呂場だと思うけど」

一方通行「普通だろォと普通じゃなかろォと使いにくいのは変わらねェだろォが」ガチャリガチャリ


ガチャ


一方通行「…………はァ、面倒臭せェ」カチャ

禁書「……あなたっていつも面倒臭いって言ってるよね」

一方通行「そォか?」

禁書「うん、さっきの一連の流れだけでも二回は言ったよ?」

一方通行「……まァ、アレだ。何かと面倒臭せェと言うのは俺のアイデンティティだっつゥことで」

禁書「いやなアイデンティティだね……」

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……あァ、風呂上りのコーヒーうめェ」

禁書「……うっ」

一方通行「……どォした?」

禁書「……いや、何でもないんだよ」ジュルルル

禁書「ふぅ、やっぱりいちご牛乳は甘くて美味しいんだよ!」

一方通行「…………オマエ、俺の缶コーヒー勝手に飲ンだだろ」

禁書「えっ? な、何のことやらさっぱりなんだよ……」


一方通行「証拠第一。なぜだか冷蔵庫にある缶コーヒーの数が一つ減っていた」


禁書「と、とうまが飲んだんじゃないかな?」


一方通行「証拠第二。流し台が軽くだがコーヒー色に染まっていた。何者かがあそこにコーヒーを流した跡だと思われる」


禁書「ちゃ、ちゃんと掃除ができてなかっただけじゃないかな?」


一方通行「証拠第三。流し台にコーヒーを捨てたイコール自分には苦すぎた。その口直しといわンばかりに甘めェモンを摂取してる」


禁書「な、何を言ってるのかな? 私は単純にいちご牛乳が好きで飲んでるだけなんだよ」


一方通行「そしてこれが決定的な証拠だ。オマエ口の周りにコーヒーが付いてるぞ」


禁書「えっ、そんな!? ちゃんと拭いたはずじゃ……はっ」



一方通行「……ほォ、何でコーヒー飲ンでねェヤツがそンな口の周りに付いたコーヒーなンざ気にするンだ?」

禁書「えっえっと、それは……」

一方通行「キチンと白状すりゃ、罰を軽くしてやらねェこともねェ」

禁書「私が飲みました! ごめんなさいなんだよ!」

一方通行「有罪」ビシッ

禁書「あたっ、ううっ……ひどいんだよあくせられーた」

一方通行「何がひどいだ。勝手に缶コーヒー飲ンだあげくほとンど排水溝にぶち込みやがったヤツよりはマシだろ」

禁書「うっ、ま、まあそうだけど……」

一方通行「つゥかよォ、オマエは何で人のコーヒー勝手に飲みやがったンだ? やっぱりあの夕食じゃあ足りねかったのか?」

禁書「そ、そんなんじゃないんだよ! …………たしかにちょっとおなかは空いてるけど」ボソッ

一方通行「最後の呟きでますます言い訳の信憑性がなくなりそォだな」

禁書「え、えっと、今まで飲めなかったけど、もしかしたら今なら飲めるかなーと思って試しに飲みました」

一方通行「へー」

禁書「まあ言うならば、大人の階段を上ろうとした結果かも!」

一方通行「で、上れたのか大人の階段」

禁書「まだ私には早すぎるんだよ」

一方通行「だろォな。そもそもブラックコーヒーごときで大人の階段を上れると思ってる時点で、一生その階段を上りきることはねェだろォな」

禁書「いいもん! 私にはこの甘い甘いストロベリーミルクがあるからいいもん!」ジュルルル

一方通行「はァ……くっだらねェ」つリモコン


テレビ『――続いてのニュースです。今日はバレンタインデー前日だということがあり、各地のお菓子――』


一方通行「…………」

禁書「…………」ジュルルルル

一方通行「……なァ?」

禁書「何かな?」

一方通行「オマエは明日何の日か知ってるか?」

禁書「バレンタインデーでしょ? さっきテレビで言ってたとおり」

一方通行「そォだな。で、オマエは何か贈り物でもしよォとでも思ってンのか?」

禁書「うーんと、別にそんなことは考えてないよ」

一方通行「へェ、そりゃまた意外だな」

禁書「そうかな? まあでも日頃お世話になってる人に感謝の気持ちは伝えるつもりなんだよ。贈り物とかはお金を持ってないからさすがに無理かも」

一方通行「……やっぱオマエら外国人から見れば、日本のバレンタインデーは異質なのか?」

禁書「うーん、そうだね。違和感がないと言ったら嘘になるけど、文化っていうのは国によって違うから」

一方通行「そォか。俺からしちゃ違和感しかねェけどな」

禁書「あれ? あなたって日本の人じゃないの?」

一方通行「イイや日本人だ。ただそォいう環境にいなかっただけだ」

禁書「ふーん」ジュルルルル



一方通行「……まァでも」ゴロン



一方通行「そォいうことで騒げるよォな居場所にいれるっつゥだけで、それは幸せっつゥことになるンだろォな」



禁書「…………」

一方通行「……って、あァ? どォした?」

禁書「……ねえあくせあれーた。何か変なものでも食べた? 何か変だよあくせあれーた」

一方通行「安物の肉を食った」

禁書「へー、安物のお肉にそんな効果があったんだ……」

一方通行「真に受けてンじゃねェよ。……まァ、たしかにオマエの言うとおりちょっと頭がおかしくなってたよォだ」

禁書「まあそれでも何もない日常の中に幸せがあるってことに気付けたって事は、それはいいことだと私は思うんだよ」

一方通行「…………」

禁書「…………」ドヤ

一方通行「ケッ、くっだらねェ。寝る」ゴロン

禁書「あっ、あくせあれーた! コタツで寝ると風邪ひいちゃうよ!」

一方通行「俺には反射がある。つまり風邪ひかねェ」

禁書「んーと、それってその首に付いてるぼたんを押さないとできないんじゃなかったかな?」

一方通行「こまけェこたァイインだよ」

禁書「……んーたしかのそうだね。よーし」ゴロン

一方通行「あン?」

禁書「私もコタツで寝ようっと」

一方通行「風邪ひくぞ?」

禁書「ふふん。こう見えても私体は結構強い方なんだよ」

一方通行「とてもそォには見えねェンだけどなァ、まァどォでもイイけど」


スフィンクス「Zzz」


禁書「あれ? そういえば見ないと思ったらこんなところにいたんだねスフィンクス!」



禁書「ねえあくせられーた! スフィンクスがコタツの中で丸くなってるんだよ!」

一方通行「…………」

禁書「……? あくせられーた?」

一方通行「……Zzz」

禁書「って早っ! もう寝ちゃったの!?」

一方通行「Zzz」


禁書「…………ふふっ、じゃおやすみなさいスフィンクス。あくせられーた」ゴロリ



~数十分後~



ガラッ



上条「――ああ、いいお湯だった……ん?」



一方通行「…………」Zzz

禁書「……すぅ、すぅ……」Zzz

スフィンクス「……にゃぉ」Zzz



上条「…………どういう状況だ? これ?」

上条「まあでも、仲よさそうで何よりだ」


―――
――




同日 23:00

-黄泉川家・結標淡希の部屋-



ボフン!



結標「ふー、宿題終わった終わった」

結標「……というかアイツ宿題ちゃんとやってるのかしら」

結標「上条君の家で遊び倒してなきゃいいけど……」

結標「…………」

結標「……とにかく、明日は絶対頑張ろう」

結標「うまくいくかいかないかなんて全然わかんないけど、とにかく頑張ろう」

結標「せっかくのバレンタインデーなんだから楽しまないとね」フフッ

結標「…………」

結標「よし、じゃあ明日に備えて早く寝るとしますか」

結標「おやすみなさい……一方通行……」






こうして夜は過ぎていく。様々な人の様々な思いを抱いたまま。

そして彼ら彼女らは迎えることになる。ある人にとっては、もしかしたら人生のターニングポイントになるかもしれないこの日を……。





February 14,Thursday 00:00 ~バレンタインデー~





――――


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

やっとこさバレンタイデー前日が終わりました
続いてはバレンタインデー当日ということになりますね
というか流れは禁書の某バレンタインSSと結構似ちゃってたりするかもですが、そこは了承ください



次回『バレンタインデー』



ではではノシ


※風斬が『0930』事件を経てないのに天使の力を使えるのは、
 インデックスを守るために自分で身に付けたとか適当に思っててください

たびたびすみません、相変わらずリアルが忙しいので今週は休みです


ひゃっはっー!! 少量投下だすみません



21.バレンタインデー


February 14,Thursday 07:00

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



チュンチュン



一方通行「…………朝か」

一方通行「…………」キョロキョロ

一方通行「…………」ボー

一方通行「…………」


一方通行「……どこだここは?」


禁書「……すぅ……すぅ……」

一方通行「…………」

禁書「……ん、……むにゃ……」

一方通行「……あァ、そォいや上条の部屋に泊まってたンだっけか」

一方通行「…………朝のコーヒー」ムクリ


ガチャ


一方通行「…………」カチャ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「……つゥか上条どこ行った?」

一方通行(見たところベッドの中はもぬけの殻。コタツの中にはシスター一人だけ)

一方通行(こンな時間にどっかに出かけるなンつゥことは恐らくねェだろ)


一方通行「……だったらどこに行きやがったンだァ? 三下様よォ」


禁書「……んっ、……あ、さ……?」

一方通行「……起きたか」

禁書「……あれ、あくせられーた……?」

一方通行「あン?」

禁書「……何でここにあくせられーたが ?」

一方通行「寝ぼけてンじゃねェよ。キチンと完全記憶能力活用しろコラ」

禁書「……そういえばここに泊まっていたんだっけ?」

一方通行「聞かなくてもわかンだろこの状況ォみりゃ」

禁書「…………」

一方通行「…………」

禁書「……おはようあくせられーた」

一方通行「……おォ」



禁書「ところで今何時かな?」

一方通行「あァ? 大体七時くれェだな」


ぐー


禁書「…………」

一方通行「…………」

禁書「おなか空いたんだよ」

一方通行「今度はキャラ崩壊しねェのかよ」

一方通行「……つゥかよォ、上条の野郎はどこに消えやがったンだ? シスターの暴食に耐えかねて、ついに夜逃げでもしたかァ?」

禁書「そ、そんなことないんだよ……たぶん」ボソッ

一方通行「ほォ、じゃあンなことねェっつゥ理由を言ってみやがれ」

禁書「んんと、たぶんとうまはここにいるから……」ガラッ

一方通行「……ハァ? 風呂場?」

禁書「とうまー! 朝だよー! 起きてー!」

一方通行「……何やってンだコイツ」

禁書「おなか空いたんだよー! だから朝ごはん作って欲しいかもー! とうまー!」

一方通行「ったく、こンなとこに三下がいるわけ──」


ガチャ


上条「……はいはい、わかったから静かにしてくれインデックス」

一方通行「」

上条「……ああ、一方通行。お前も起きてたのか」

一方通行「」

禁書「とうまー、おなか空いたー!」

上条「へいへい、何か残ってたっけなぁ……?」

一方通行「……オイ」

上条「ん?」

一方通行「何でオマエ風呂から出てきてンだ……?」

上条「何でって……風呂で寝てたからに決まってんだろ?」

一方通行「…………は? 今何つった?」

上条「だから風呂で寝てたっつったんだよ」

一方通行「風呂でってアレか? 浴槽の中で無様に毛布に包まってガタガタ震えながら寝てたっつゥことか?」

上条「言い方はムカつくがそういうことだな」

一方通行「…………」

上条「?」

一方通行「は?」


―――
――




同日 07:20

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



禁書「――いっただきまーす!」


スフィンクス「にゃー」モグモグ

一方通行「……いただきまァす」

上条「おう、どんどん食えよ」

一方通行「…………」

上条「……どうした? 食わねえのか?」

一方通行「…………」



サラダ『盛られるぜー超盛られるぜー!』



一方通行(何で朝っぱらからグリーンマウンテンが出てきてンだよクソが)

禁書「とうまードレッシングー」

上条「ちょっと待ってろ……ほらっ、あんま使いすぎんなよ、特売じゃなかったら高いんだから」スッ

禁書「わかってるんだよ」ギュッ



ブパパパァ!!



禁書「……あ」

上条「あのーインデックスさん? 使いすぎんなって言ったそばから何盛大にぶちかましてくれちゃってんですか?」

禁書「ちょっと力加減を間違えたかも」

上条「不幸だ……」

一方通行「……オイ、さっさとこっちにもドレッシング寄越せ。かけまくってやらねェと食い切る自信がねェ」

禁書「はい」スッ

一方通行「って空っぽじゃねェかクソ野郎がァ!」

禁書「反省はしてるんだよ」



一方通行「……チッ、今はとにかく主食のパンだな」ガジッ

上条「ありゃ? ジャム塗らねえのか?」

一方通行「甘ったるいのは嫌いだ」

禁書「ええっー? こんなに美味しいのに……。人生の二割ぐらい損してるんだよ」

一方通行「ガキが人生語ってンじゃねェよ。まァ、俺はコーヒーがありゃ人生に不自由はねェ」

禁書「コーヒーじゃおなかは膨れないかも」

一方通行「コーヒーは空腹を凌ぐモンじゃねェよ。嗜好品だ嗜好品」

上条「……じゃあ結局お前はパンにジャム付けねえのか?」

一方通行「ああ」

上条「そうか。まあ上条さんもそっちの方が助かるけど……」

禁書「じゃあ私が代わりにあくせられーたの分二重に塗るんだよ!」ベチャベチャ

上条「無駄遣いしてんじゃねえよ! もったいないだろ!」

禁書「ええっー、もともと減る予定だったんだからいいと思うんだよ!」

上条「一方通行がいらないって言った時点でその予定はねえことになんだよ!」

一方通行「朝っぱらからうるせェンだよ。静かに食事もできねェのか馬鹿ども」ズズズ

上条「あ、すまねえ」

禁書「ご、ごめんなさい」

一方通行「チッ、わかりゃイインだよ。それじゃあ俺ァもォ食い終わったからごちそうさまさせてもらうぜ」ガタッ

上条「……一方通行」

一方通行「あン?」


上条「まだサラダ食ってねえじゃねえか」


一方通行「」


―――
――




同日 07:35

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



禁書「――ごちそうさま!」



一方通行「……おェっぷ、死ぬ……うェ……」

上条「大丈夫か?」

一方通行「大丈夫なわけ、ねェだろォが……。調味料なしサラダ……ぐはっ」

上条「どんだけ野菜嫌いなんだよお前。今までよく生きてこられたな」

一方通行「ウチには何かしら調味料っつゥモンがある、多種類な。それをかけすぎることによってことで何とか凌いできたわけだ」

上条「あんまかけすぎんのは身体によくないぞ? 塩分とか取りすぎて」

一方通行「うるせェよ。そォいうわけで何もかけられてねェクソ野菜どもには耐性がねェンだよまったく」

禁書「好き嫌いはだめだと思うんだよ」

一方通行「大体オマエがドレッシングを全部ブチ込ンだのが元凶だろォが!」

禁書「野菜が嫌いなのは自分のせいだと思うんだよ」

上条「どうでもいいけどさっさと学校行く準備しろよ? せっかく早く起きれたんだから遅刻なんてしたくねえからな」

一方通行「……あァ、もォそンな時間か」

上条「まだ時間的には余裕があるけど、もしものことがあるからな」

一方通行「能力使えば関係ねェからゆっくりするわ」

上条「おのれレベル5め!」

一方通行「……まァ何つゥか面倒臭せェな」

上条「何がだ?」

一方通行「こォ朝起きると別のヤツの家でしたっつゥ状況だと学校とか行く気なくなる」

上条「うるせえよ、とっとと準備しやがれ」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」




~身支度終了~




上条「……よし、じゃあそろそろ行くとしようぜ」

一方通行「面倒臭せェ」

禁書「とうま! 今日はあるばいとはあるのかな?」

上条「ああ。まあ一度ここには帰ってくる予定だから晩メシは心配しなくていいぞ?」

禁書「うん。わかった」

一方通行「今日の晩はバイトか。こンな平日までご苦労なこった」

上条「まあやらねえと生活していけねえからな」

一方通行「何つゥ人生ハードモードだ」

上条「別にそうでもねえだろ。この程度でハード言ってたら本当につらいヤツらに怒られちまうよ」

一方通行「ケッ……まァそォだな」

上条「ほいじゃインデックス。行ってくるよ」

禁書「いってらっしゃいとうま! あくせられーた!」

一方通行「俺は帰ってこねェがな」

上条「そうだ。昼メシは冷蔵庫にチャーハン置いてあるから、レンジで温めて食ってくれ」

禁書「了解なんだよ!」

一方通行「チャーハンを作れるだけの財力がオマエにあったのか」

上条「失礼な。それくらい上条さんのひもじいお財布の中身でも作ることできますよ……まあ、具はネギと卵だけだけどな……」

一方通行「悲しいチャーハンだな」



ガチャ



上条「あっ、もし出かけることがあったら、ちゃんと戸締りしとけよ」

禁書「もうとうま! そんなこと毎日毎日言われなくてもわかってるかも」

上条「わかった上で忘れそうだからこう何回も言ってんじゃねえか」

一方通行「まるで役に立たねェ完全記憶能力だな」


―――
――




同日 07:45

-とある高校学生寮・一年七組教室-



結標「…………」



シーン



結標(な、何か早く来過ぎちゃった……!?)

結標(い、いや、別にそんなに早すぎるってわけじゃないわよね? ぽつぽつと来てる人たちがいるもの)

結標(でもこのクラスの人たちは誰一人とも来てないわね……)


結標「…………とにかく。昨日の夜吹寄さんたちと考えた作戦を絶対に成功させなきゃいけないわね」

結標「一応、確認のために復習しておこうかしら。……ええっと――」



~回想~



ガチャ



結標「……ふぅ、さっぱりした。この短時間でお風呂に二回も入るとは思わなかったわ」

結標「まあ、お風呂入るの好きだからいいけど」

結標「ドライヤー、ドライヤーっと……」カチッ



ゴアアアアアアッ!!



結標「~~♪」



タラララララン♪ タラララララン♪



結標「? 電話? いや違うわ、チャットね」ピッ



吹寄『やっほー結標さん!』

姫神『……やっほ』




結標「どうしたの二人して?」

吹寄『ちょっと明日の打ち合わせをしたいと思ってね』

結標「明日の打ち合わせ?」

吹寄『そうそう。明日のバレンタインデーでチョコレートをどうやって渡すかの』

結標「……別に普通に渡せばいいんじゃないかしら?」

姫神『それは私も思った』

吹寄『普通って言うけどじゃあ例えば教室でみんながいる中で正々堂々正面から渡すの?』

結標「別にそれでも構わないけど」

姫神『同じく』

吹寄『……そんなんで向こうに想いが通じるとでも?』

姫神『どういうこと?』

吹寄『そういう渡し方だったら義理だと思われてもしょうがないってことよ?』

結標「なん……ですって?」

吹寄『そりゃそうでしょ。『あっ、バレンタインだからあげるー』みたいな風に捉えられてもおかしくなわよ』

姫神『……となると。一対一にどうにか持ち込むしかない』

結標「たしかにそうなるわね……」

吹寄『まあその一対一にする方法のは置いとくとして、あたしにちょっとした作戦があるんだけど』

結標「結構重要な方法を置いとくね……」

姫神『その作戦というものは何?』

吹寄「ちょっとしたドッキリみたいなものよ――」





結標「……たしか吹寄さんの義理クッキーを私たち三人からのプレゼントとして渡す」

結標「今年のバレンタインプレゼントはこれだけか、と油断させてからの本命の私たちのプレゼントをあとから渡す、だったかしらね?」

結標「……何というか、上条君には通じるかもしれないけどアイツには通じる気がしない作戦よね」

結標「まあ、何もせずにそのまま直接渡すよりはマシかもだけど……」

結標「…………」




ガララララッ



結標「!」


吹寄「おはよー! ……っと、早いわね結標さん」

姫神「おはよう」

結標「二人ともおはよう! 何か緊張しすぎて居ても立ってもいられなくて……」

吹寄「別にそこまで緊張する必要はないと思うけど? 必ず成功させなきゃいけないってわけじゃないし」

結標「そうは言われても、緊張するものはするわよ……」

吹寄「ま、でもそれだけ本気になれてるってことだからいいんじゃないかしら?」

姫神「うん。今は緊張してない私より遥かにマシ」

結標「えっ、緊張してないの姫神さん!?」

姫神「今はまだ。でも渡すときになったらどうなるかわからない」

結標「私渡すときになったら心臓爆破してるような気がするわ」

姫神「わかる」

吹寄「……はぁ、まあ緊張しとくのもいいけどどうやって一対一に持ち込むかも考えといた方がいいわよ? 昨日言ったように」

結標「うっ、すっかり忘れてたわ……」

姫神「…………」

吹寄「簡単な方法で行くなら呼び出しよね。ベタなところを言うなら校舎裏とか屋上とかにね」

結標「正直それができれば苦労しない、って言いたいわね」

吹寄「あはははっ、まあまだ時間はあるんだしじっくり作戦を練ればいいと思うわ」

結標「そうね。よし、じゃあ授業中にじっくり考え――」

吹寄「授業は真面目に聞いときなさい」


―――
――




今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

延長したからまだあと一週間あるから大丈夫だろ、思ってたら投下当日だった。何を言っ(ry
次はちゃんと投下できればと思います……すみません

最後にちょっと質問。のバレンタイン回は一方通行主人公の話とその他の話を考えてるのですが、
一度に一方通行回を終わらせて、そのあと外伝みたいにその他をやるのか、
一方通行回の中にちょこちょこ行間みたいにその他を入れるのはどちらがいいと思いますか? 意見ください

ではではノシ


お待たせしました投下します



同日 07:50

-第七学区・通学路-


一方通行「…………はァ」

上条「どうした? そんなため息ついて」

一方通行「あァ? ああ、何か木曜日って異様にダルいなァって思ってな」

上条「あー、それ何となくわかるわ。まあでもあと今日明日と行けば休みじゃねえか」

一方通行「そォだな……」

上条「つーか、土御門のヤツどうしたんだろうな? いつもならこの時間はまだ部屋にいるはずなんだけど……」

一方通行「オマエがあまりに遅刻ばっかするから巻き込まれたくねェから先に出たンじゃねェか?」

上条「何つう薄情なヤツだ」

一方通行「とりあえず遅刻するからしないかの境界線をうろうろするのをやめろ」

上条「違うんですよ、いつも決まって目覚ましがセットされてなかったり、携帯のマナーモード切るの忘れてたりという不幸が……」

一方通行「ただの不注意だろォが。何でもかンでも右手のせいにしてンじゃねェ」

上条「うっ、いや俺だってそれくらいわかってるって……」

一方通行「つゥかよォ、オマエンとこには居候が一人いンじゃねェか。インデックスの野郎に起こしてもらやイイじゃねェか」

上条「うーん、たしかにそれを考えてたこともあったけどさ、あいつも別にそんなに起きるの早くねえからな」

一方通行「アイツは本当にシスターなのか?」

上条「まあ俺よりは余裕で早いけどな」

一方通行「残念ながらフォローになってねェ」

上条「というかお前って実は早起きだったんだな。正直びっくりしたよ」

一方通行「寝付きが悪かっただけだ。たまたまだたまたま」

上条「お前が起きてくれたおかげで俺は今日こうやって余裕を持って登校できるわけだしな」

一方通行「そォいや起こしに行った時思ったンだけどよォ、何で風呂場で寝てたンだオマエ?」

上条「えっ? いや、まあ何つうか……なあ?」

一方通行「…………ああ、そォか。思春期真っ盛りの上条クンは、インデックスと一緒に寝ると色々な意味で大変なことになるから、わざわざ風呂場なンかで寝てンのか」

上条「ま、まあそういうことだな」

一方通行「つまり上条クンはロリコンということですねわかります」

上条「はあっ!? おまっ、何言ってんだよ!?」

一方通行「だってそォいうことだろ? あンなガキと一緒の部屋で寝るだけでムラムラきて寝られねェくれェだからな」

上条「いやお前ガキとか言ってるけどあいつも俺たちとあんま歳離れてない女の子だぞ? 逆に一緒にいて意識しねえヤツいんのかよ?」

一方通行「何も同じベッドで仲良く寝るわけじゃねェンだからよォ。別に余裕だろ」

上条「それは単にお前が異常なだけだろ」

一方通行「これが超能力者(レベル5)と無能力者(レベル0)の違いっつゥことだな」

上条「関係ねえだろそれ」



一方通行「……はァ、歩くの面倒臭せェ」ガチャリガチャリ

上条「やっぱ杖付きって大変なのか?」

一方通行「もォ慣れた。まァ面倒なのは変わりねェけどな」

上条「俺も松葉杖とかよく使ってたから何となくだけどわかる気がするなぁ……」

一方通行「ンなことわかられてもこっちが困ンだけどよォ」

上条「松葉杖突いてる時に料理するのって結構大変なんだぜ? 片方の手が使いにくいからな」

一方通行「知るか。何なら俺は杖で片腕奪われた上に能力なしで料理したことあるけどな」

上条「へー、器用なんだなー」

一方通行「いや、残念ながらその料理は悲惨な結果で終わっちまった。どっかの馬鹿のおかげでな」

上条「……ははっ、そいつが誰だかは聞かねえでおくよ」

一方通行「聞くまでもねェってヤツだ」

上条「そういや器用って言えば、清掃用のドラム型ロボットを乗りこなして移動をする器用な知り合いがいるんだぜ」

一方通行「は? 何だそりゃ? ンなヤツいンのかよ?」

上条「おうすげえぞ。この前人ごみの中を華麗に通り抜けていったのを見たけど、あれはマジでヤバかった」

一方通行「……オマエの周りにはどォしてそンな変なヤツばっか湧いてンだよ?」

上条「そうか? 別にそんな変じゃねえだろ」

一方通行「周りに変人が集まりすぎて感覚が麻痺しちまってンだろォな。学校じゃシスコン野郎とただの変態」

一方通行「学校から出りゃ暴食シスターに露出狂の女や自販機荒らし、そして今回のドラムロボ乗り」

上条「……言われてみればたしかに変だな。つーか露出狂って誰だよ?」

一方通行「冬休み明けの週にオマエが公園で一緒に歩いてたヤツだよ。ほら、ジーンズの裾が片足だけねェとかいう面白い格好してた女」

上条「……もしかしてそれ神裂のことか? まあたしかに変な格好だよなあいつ」

一方通行「変なことに首ばっか突っ込ンでるからンな変なヤツらに付きまとわれることになンじゃねェか?」

上条「そうかもしれねえな。でも俺はそいつらと出会えてよかったと思うよ。何だかんだあったけどお前ともな」

一方通行「……チッ、くだらねェ」

上条「そういやさっき言ったドラム型ロボの乗ってるヤツなんだけどさ」

一方通行「あン? そいつがどォかしたか?」

上条「そいつ、実はつちみ――」


??「あっ、いたいた。うーい、上条当麻ー」ウイーン



一方通行「…………は?」

上条「おお、舞夏じゃねえか。よーっす」

舞夏「おはよー、今日は珍しく早起きなんだなー」ウイーン

一方通行(な、何モンだコイツ? 本当に掃除ロボを操ってやがる……どォいう仕組みだ?)

上条「おう、こいつのおかげでな」

舞夏「んー? おおー? おおおー?」ウイーン

一方通行「……ンだよ?」

舞夏「あなたはもしかして一方通行ではないかー?」

一方通行「何で俺の名前を知ってンだ?」

舞夏「兄貴からいろいろ聞いてるからなー。『クラスに白髪で赤目で杖を突いた面白いヤツが転校してきた』ってなー」

一方通行「兄貴だと? コイツは一体誰だ……?」

上条「ああこいつ、土御門舞夏っていうんだよ」

一方通行「土御門……オイ、何だかものスゲェ聞き覚えのある苗字なンだけどよォ……まさか」

上条「そう、そのまさかだ。土御門の妹、もとい義妹がこいつだよ」

舞夏「兄貴がお世話になってるぞー、いつも馬鹿に付き合ってくれてありがとなー」

一方通行「……あのクソ野郎の妹とは思えねェほどしっかりしてやがる。いや、たしかに血は繋がってはねェけどよ」

上条「ところで俺に何か用か? ただ挨拶しに来たってだけじゃなさそうだし」

舞夏「ふふふっ、バレンタインデーに女子が男子に話しかける用なんて一つしかないんじゃないかー?」ニヤッ

上条「ん? 別に一つではない気がするんだけど……ってバレンタイン?」


舞夏「じゃじゃーん、チョコレートだぞー」バッ


上条「へっ?」

舞夏「ありがたく受け取るといいと思うぞー」

上条「…………くれんの? それ?」

舞夏「あげなきゃ何のために私はこれを差し出したんだー? ほい、ちゃっちゃ受け取りなー」グイグイ

上条「お、おう。……な、何つうかありがとな」

一方通行(……シスターといい超電磁砲といい、さらに今回は土御門の義妹。……コイツは一体どこまで手を広げてやがンだ?)ジロ

上条「……あのー一方通行さん? 何でしょうかそのゴミを見るような目は?」

一方通行「別に何でもねェよ。単純にオマエの手がどこまで及んでンのか興味が湧いただけだ」

上条「?」



舞夏「あははー、残念ながら私は兄貴一筋なんだぞー。というわけでほい」スッ

一方通行「…………何だそりゃ?」

舞夏「何ってさっきの流れ見てるからわかるだろー。チョコレートだぞー」

一方通行「何でそれを初対面の俺に渡してきやがるンだ? そォいうモンはいつも世話になってるよォなヤツに渡すモンだろ」

舞夏「兄貴といつも遊んでもらってるからなー、そのお礼だと思ってくれ。お歳暮みたいなもんだなー」

一方通行「……そォかよ。まァ、ありがたくねェけど受け取ってやるよ」スッ

上条「おまっ、せっかくものくれたんだから礼くらい言っとけよ」

一方通行「俺は甘ったるいモンが嫌いなンだよ。それにこンな大層なモンもらえるほどアイツとつるンでねェよ」

舞夏「おおっー、兄貴の言ったとおり本当にツンデレだー」

一方通行「は? 何言ってやがンだこのガキは」

舞夏「じゃあじゃあ私はもう行くぞー。勉強頑張れよー」ウイーン

一方通行「なっ、待ちやがれ! 俺はツンデレなンかじゃねェぞゴルァ!」

舞夏「ああ、そのチョコレート感想とか聞かせてもらえると嬉しいぞー」ウイーン

上条「おう、じゃあな舞夏ー」ノシ


一方通行「…………」

上条「…………」

一方通行「チッ、やっぱガキっつゥのはうっとォしくて敵わねェ」

上条「まあ別にいいじゃねえかあれくらい」

一方通行「とりあえず土御門はあとでシめる。ブチ殺し確定だあの野郎」

上条「つーかあれだな。不幸の塊の上条さんがチョコレートをこんな朝早くもらえるなんて、未だに信じられねえラッキーだ」

一方通行「……ちなみにその不幸な上条さンは去年はいくつもらったんだ?」

上条「えっ、去年? え、えーと……あんま覚えてねえなー、あはは」

一方通行「なるほど。数え切れねェほどもらったっつゥことか」

上条「い、いやそういうわけじゃねえけど」

一方通行「ケッ、まァ俺には関係のねェ話だな。行くぞ」ガチャリガチャリ

上条「お、おう……」


―――
――




同日 08:10

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


禁書「……むむむ」

スフィンクス「にゃー」トコトコ

禁書「……むむむむむ」

スフィンクス「にゃー?」

禁書「むむむー、やっぱり退屈なんだよ!」

スフィンクス「!?」ビクッ

禁書「お留守番歴は長いけどやっぱりこの退屈なのは慣れないんだよ」

禁書「ゲームもあらかたやったから飽きちゃったし、まんがも一回通り読んじゃったから全部一言一句覚えてるし」

スフィンクス「にゃー」

禁書「ああー! 暇なんだよスフィンクスー!」ゴロゴロ

スフィンクス「……にゃー」トテトテ

禁書「……うう、スフィンクスにまで見捨てられちゃった」

禁書「…………」グー

禁書「……何か暇過ぎておなかがすいた気がするんだよ」



ピンポーン!



禁書「! お客さん!? もしかしてひょうかが遊びに来てくれたのかな!?」ガバッ

禁書「はいはーい! 今出るんだよ!」タッタッ



ガチャ



舞夏「おはよー」

禁書「あっ、まいかだ! おはようなんだよ!」

舞夏「んー? どうしたんだ? 何だかいつもよりテンション高くないかー?」

禁書「さっきまでものすごっく暇だったんだよ! だからまいかが遊びに来てくれて嬉しいんだよ!」

舞夏「へー、別に遊びにきたわけじゃないけどそこまで喜んでくれるのなら嬉しいぞ」

禁書「遊びに来てくれたんじゃないの? 何か違う用事かな? ちなみにとうまはもう学校行っちゃったよ?」

舞夏「上条当麻ならさっき会ったから知ってる。私がようがあるのはお前だぞインデックス」

禁書「うん? 私?」



舞夏「はいこれ」スッ

禁書「おおっ! 何その高級感あふれる箱は!」ガシッ

舞夏「バレンタインチョコだぞー。お歳暮感覚でもらってくれー」

禁書「おせーぼ? 何それ?」

舞夏「いわゆるプレゼントだなー」

禁書「おおっー! これはあれだよね! 『ともちょこ』ってやつだね!」

舞夏「お歳暮知らないのにそういう文化は知ってるんだなー」

禁書「てれびで見たんだよ!」

舞夏「まあそういうことだから遠慮せず食べてくれー」


禁書「じゃあいただきます」バリッ

禁書「はぐっ」パクッ

禁書「もぐもぐ」


禁書「おいしいんだよ!」ペカー


舞夏「まさか玄関で接客しながら、しかもこんな時間に食べ出すとは思わなかったなー。でもおいしいって言ってもらえて何よりだぞー」

禁書「さっきから暇過ぎておなかが減っていたんだよ!」

舞夏「時間的にはさっき朝食を食べたばかりじゃないかー?」

禁書「細かいことはいいんだよ! それよりこのチョコほんとおいしいね! これは一体どこで売ってるのかな? 今度とうまに買ってきてもらうんだよ」

舞夏「ふふふっ、実は私が研究に研究を重ねたお手製の品なんだぞー、つまり非売品だなー」

禁書「ふーんまいかが作ったんだ。まいかは料理が上手だからおいしくて当然かも」モグモグ

舞夏「真のメイドさんはバレンタインチョコを美味しく作ることなんて造作もないんだぞー」

禁書「あれ? さっきけんきゅーにけんきゅーを重ねてとか言ってなかったっけ?」

舞夏「私はまだまだヒヨっ子メイドだからなー」

禁書「しかしほんとおいしいんだよこれ!」モグモグ

舞夏「全然話聞いてないなー、別にいいけど」

禁書「……ふぅ、ごちそうさま! そしておかわり!」

舞夏「お前にやるチョコレートはもう残ってないぞー。残念だったなー」

禁書「ううっ、ほんとに残念な気持ちを味わってる気分かも」



舞夏「そーいえばお前は上条当麻に何かあげたのかー?」

禁書「何かって何かな?」

舞夏「何ってバレンタインプレゼントに決まってるだろー」

禁書「あげてないよ。というかそんなものを用意するお金がないかも」ドヤッ

舞夏「ドヤ顔言うようなことじゃないと思うぞー」

禁書「うーん、やっぱり何かあげたほうがいいのかな? 一応感謝の気持ちを伝える気ではいるんだけど」

舞夏「そうだなー、男ってのは形あるものがほしいもんだろうしなー」

禁書「そうなの?」

舞夏「放課後ぐらいの時間になったら外に出てみるといいぞー。目をギョロつかせてる男がたくさんいるからなー」

禁書「へー、よっぽどバレンタインのプレゼントが欲しいんだねー」

舞夏「上条当麻も一人の男だからなー、きっと同じくそういうのが欲しいと思うぞー」

舞夏(まあさっき渡した時のリアクションはちょっと微妙だった気がするけどなー)

禁書「ぐぬぬぬ、無一文には辛い話なんだよ」

舞夏「まあでも日頃の感謝を伝えるってのはいいことだと思うぞー」

禁書「むーどうしようかな……」

舞夏「じゃあ私はこれで帰るとするぞー。そろそろ時間だしなー」

禁書「えっ、帰っちゃうのまいか?」

舞夏「私はこれから研修だからなー。メイド見習いはいろいろ忙しいのだー」

禁書「そうなんだ。頑張ってねまいかー」

舞夏「それじゃーあでゅー」ウイーン

禁書「ばいばーい!」ノシ



ガチャ



禁書「…………はっ!」

禁書「また暇になっちゃったんだよ……」

スフィンクス「にゃおー」ゴロゴロ

禁書「しかしプレゼントかー。どうしようかなー? ねえスフィンクスー」ゴロゴロ

スフィンクス「にゃあ」ゴロゴロ


―――
――




同日 08:20

-とある高校・昇降口-



ワイワイガヤガヤ



上条「……いやー何ごともなく無事学校にたどり着くことができたなーよかったよかった」

一方通行「嵐の前の静けさってヤツだな。これからどォなるかわかったモンじゃねェ」

上条「不吉なこと言うんじゃねえよ」

一方通行「用心しとけっつゥことだ」

上条「別にそこまでする必要はねえんじゃねえのか?」

一方通行「そォだな、俺もそォ思う。だが何が起こるかなンてわかンねェンだからよォ。ましてやオマエならな」

上条「まあそりゃそうだけどよ」

一方通行「ま、オマエがどォなろうと俺には関係ねェがな」

上条「さりげにひどいなお前」

一方通行「今さら何言ってンだこの三下は?」

上条「そういやバレンタインといえば」

一方通行「あァ? 唐突に話を変えやがるなァ、何だ?」

上条「漫画とかだったらサッカー部のエースのイケメン先輩とかの靴箱の中にはチョコレートがたくさん入ってた! っつーネタとかよくあるよな」

一方通行「あンま漫画読まねェから知らねェが、それがどォしたか?」

上条「実際にそんなことってあんのかな? 俺は見たことねえけど」

一方通行「知るか。そォいうモンはまともな学校生活を送ってきたヤツに聞け」

上条「学園都市第一位のレベル5っていわゆるそういうポジションだろ? そういうことなかったのかよ?」

一方通行「あるわけねェだろ。いつも言ってンだろォが俺はそンなモンに関われる環境になかったってな」

上条「でも今は違うだろ?」

一方通行「チッ。……で、その漫画のベタな展開がどォかしたのか?」

上条「いや、別にないならないでいいんだけどよ。たぶんそういうのはリアルじゃありえないってことだろうし」

一方通行「……つまりそォいうフリってことか?」

上条「? 何のことだ?」

一方通行「自分の靴箱には大量のチョコレートが眠っていますっつゥ」

上条「は? そんなわけねえだろ。残念ながら俺はサッカー部のエースでなければ誰もが憧れるような学校一のイケメンでもないんだぜ?」

一方通行「自分で言って悲しくねェのか?」

上条「…………言うな」



一方通行「ケッ、くだらねェ」

上条「まあでも、男ならやっぱり少しは期待しちまうよな。そういう夢のような展開。なあ?」スッ

一方通行「俺にそォいう同意を求めるな。つゥか残念ながらそンな面白れェ展開あるわけねェだろォが」

一方通行(でも、コイツの場合そォいう展開がありそォなのが困るよなァ、本気で)

上条「そーだよな。ま、期待はしないで開けてみるよ」

一方通行「靴箱開けるだけでどンだけ時間かけてンだよ」ガチャ

上条「いざオープン!」ガチャ

上条「…………」



上条の靴箱『中に誰もいませんよ』



上条「……はぁ。やっぱお前の言う通りだな。そんな面白い展開あるわけねえよな」

一方通行「……そォだな」

上条「じゃ、さっさと教室行こうぜ? みんないるだろうし」

一方通行「……そォだな」

上条「……どうした一方通行? 何靴箱の前で立ち尽くしてんだよ」

一方通行「……なァ上条」

上条「ん?」

一方通行「さっき俺はこンな面白れェ展開ねェっつったよな」

上条「おう、それがどうかしたか?」

一方通行「……これ見てみろよ」

上条「あ、ああ…………いいっ!?」



一方通行の靴箱『異物感がしゅごいよぉぉぉっ!!』



一方通行「…………」

上条「す、すげえ……漫画ほどじゃないけど結構入ってるぞ、これ」

一方通行「……さっき面白れェ展開っつったけど訂正させてもうぞ」


一方通行「何一つ面白くもねェよ、このクソ展開」



―――
――




同日 08:25

-とある高校・一年七組教室-


結標「…………遅いわね。上条君と一方通行」

吹寄「まさか上条の馬鹿に巻き込まれていまだにベッドの中、とかないわよね?」

姫神「それがありえるから困る」

結標「アイツも起こさない限り絶対起きない時あるから心配だわ……」

吹寄「まあ学校に来ないなんてことはさすがにないでしょ。普通の人なら起きるでしょうし」

結標「それで起きない可能性があるのが一方通行なんだけどね……あはは」

姫神「たぶん。いや絶対。学校には来るから大丈夫。心配はしないでいい」

結標「遅刻しないことは保証しないのね……」

吹寄「……しかし」



男子生徒A「…………」ギロッギロッ

男子生徒B「…………」ソワソワ

男子生徒C「…………」フンッフンッ



吹寄「……やっぱりこの日は男子どもの目の色が見てわかるくらい変わるわね」

姫神「それはしょうがない」

結標「これがリアルバレンタインの空気ってやつね。漫画でしか見たことないから初めてで新鮮ね」

吹寄「いつも馬鹿やってる人が今日に限って大人しかったりするのよね。反対にいつもよりテンションが高い人とかもいるし」

結標「何というかすごいわね」

吹寄「見てみなさい。あれがその中で一番バレンタインマジックの影響を受けてる馬鹿よ!」ビシッ



男子生徒D「ちっ、バレンタインとかくだらないぜ。なあ?」

男子生徒E「そうだな。バレンタインとか別に興味ねーし、チョコレートとかいらんし」

男子生徒F「お前もそう思うだろ? 青髪ピアス」



青ピ「~~♪ ん? 何か言った?」フッ




吹寄「…………あれ? 何か予想と違う」

姫神「そわそわしてるというか。どちらかというと余裕があるように見える」

結標「そうね。まるで勝ち組のような表情をしてるわ」

吹寄「……まさかとは思うけど、もうすでに誰かにチョコもらっとかないわよね?」

姫神「そんなこと。果たしてありえるのか……」

結標「あはは、そうね……」



男子生徒E「おいおいどうした同士青髪ピアスよ? 何でそんな余裕綽々って感じの顔してんだ?」

男子生徒D「…………お前まさか」


青ピ「ふふふっ、せやで! ボクはすでにチョコレートをもらってるんやでぇ! 勝者の切符をこの手に収めてるんやでぇ!」ドヤァ


男子生徒F「何だとっ!? このッ……裏切りもんがあああああああああああああああああああああああああっ!!」

男子生徒D「おい青髪のゴミ野郎がチョコをゲットしやがったぞ!」

男子生徒B「ぶっ殺す!!」



青ピ「ふふははははははははははははっ!! 神ならぬ身にて天上の意思に辿り着いたボクに、キミらみたいな凡人が勝てるわけないやろ!!」



男子生徒A「容赦すんな殺っちまえ!!」

男子生徒F「死ね!」

男子生徒C「ついに一子相伝の暗殺拳を使う時が来たようだな……」



結標「……どうやらすでに誰かにもらっていたようね」

姫神「すごい調子の乗り様。あっ。一発でノックアウトされた」

吹寄「というかあの馬鹿にチョコレートあげたの誰よ? 下宿先のパン屋の店員さん?」

姫神「その辺りが妥当」

吹寄「しかしあの馬鹿者がもらう信じられないわね。実はコンビニとかで自分で買ったやつじゃないの?」

結標「ひどい言われようね彼。てかそれ悲しすぎるでしょ」

吹寄「……ん? もう一人機嫌の良さそうなやつがいるわよ」



土御門「――舞夏は俺の嫁、いや俺の女神か? いや違うな。舞夏は……まさしく俺の人生ッ!!」




姫神「聞かなくても。あれは舞夏ちゃんからもらってる」

吹寄「うん、口走ってる戯言を聞けばわかるわ」

結標「……土御門君、ちょっといいかしら?」

土御門「うん? 何だ結標?」

結標「上条君がまだ来てないようなんだけど知らない?」

土御門「あー、カミやんな。最近はどうせ寝坊するだろうと思って勝手に学校行ってるから知らないにゃー」

結標「そう」

吹寄「それくらい待っときなさいよ。というか起こしなさいよ隣人なんだから」

土御門「いやー正直メンドイですたい。……というか姉さんはいるけど、アクセラちゃんが見かけないにゃー。どうかしたのか?」

結標「実はアイツ昨日上条君の家に泊まってたのよ」

土御門「な、何だってい!? まさか隣の部屋がそんなにオイシイことになってるとは知らんかったぜよ。くそう、からかいに行けばよかったにゃー」

吹寄「ま、そーいうわけで上条が来ないとアクセラも来ないってことになるわけ」

青ピ「…………何やー、エラく楽しそうに話しとるやん。ボクも混ぜてえや」ボロッ

結標「随分とボコボコにされたわね」

青ピ「いやーチョコレートもらったことが嬉しゅうてなぁ、つい」

土御門「へー、ピアスくんチョコレートもらったのかにゃー? よかったな」

青ピ「……まあでも、カミやん辺りが大量のチョコレートをカバンに詰め込んでおはようしてくる未来を想像すると、おちおち喜んではいられへんけどなー」



ガラララッ



上条「おし、余裕で間に合ったぜ」

土御門「おっ、噂をすればカミやんだぜい」

吹寄「余裕じゃないわよ。ギリギリよギリギリ」

結標「おはよー上条君!」

姫神「おはよう」

上条「おっす、どうしたんだみんなして集まって?」

吹寄「別に、いつもどおりの雑談よ」

青ピ「あれ? というかカミやん大量のチョコレートはどこなん?」

上条「んなもんあるわけねえだろうが。漫画じゃねえんだぞ」

土御門「まさかカミやんが全然もらえてないなんてな。今日は雪でも降るんじゃないかにゃー?」

姫神「別に季節的に降ってもおかしくはない」



結標「で、上条君。一方通行はどこかしら?」キョロキョロ

上条「……あー、あいつちょっといろいろ苦戦してっからな。もう少しで来ると思うぞ」

吹寄「苦戦って……一体に何に対して苦戦してるのよ」

姫神「もしかして。上条君の不幸に巻き込まれてしまった?」

上条「そりゃないよ姫神さん。いくら何でも傷つきますよ上条さんでも」



上条「まあ一目見りゃすぐわかると思うぞ」



ガチャリ、ガチャリ。



結標「ん? この変な杖の音は……」

吹寄「どうやら来たようね」

青ピ「おっはよおおおう!! アクセラちゃ……ん?」



一方通行「クソがッ。鞄に全部入り切らねェじゃねェかクソったれ」←たくさんの箱を持ってる



土御門「は?」

姫神「え?」

吹寄「なっ?」

結標「」

上条「ははっ、すげえだろこれ?」


一方通行「チッ、……あァ? ンだァその幽霊でも見てるよォな目はァ?」


青ピ「…………な」





「「「何じゃそりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」





―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

なぜ一方さんに急激なモテ期が訪れたのか……
それは次回話の中で解説したいと思います

ではではノシ



同日 08:50 ~一時間目・能力開発~

-とある高校・多目的教室-


男子生徒A「ぬおおおおおおおおおおおっ!!」グググ

男子生徒B「たあありゃああああああああっ!!」グググ

男子生徒C「まっがーれ」クイ


女教師「じゃあこのカードは?」スッ

女子生徒A「ええっと……〇ね!」

女子生徒B「ふふふっ、違うわ。これは……見えたっ! ☆ね!」

女教師「残念。□でした」


吹寄「……ふぅ、相変わらず能力なんて目覚める気配なんてないわね」

姫神「お疲れさま」

吹寄「あっ、そっちも終わったの?」

姫神「うん。相変わらず成果はない」

吹寄「あはは、しかし結標さんたちはすごいわよね。高位の能力者だから個別指導なんて」

姫神「私たちと違って。どんな能力かハッキリわかっているから」

吹寄「……ま、今はそんなどうでもいい話題は置いといて」

姫神「……」コクリ

吹寄「アクセラがあたしたちの予想以上にチョコレートをもらっていたことよね」

姫神「うん。まったく考えもしなかった」

吹寄「よくよく考えればレベル5の第一位でお金持ちでそこそこ顔がいいんだからおかしくはないわよね……ちょっと性格面がアレだけど」

姫神「でもほかのクラスや学年の人たちは。そういうところを全く知らない」

吹寄「つまりいわゆる白馬の王子様的な感じに見られてるって感じか……」

青ピ「せやなー、ほんま羨ましいでー」ウンウン

吹寄「ふん」ゴッ

青ピ「あいたっ!? 何やねんいきなり!」

吹寄「馬鹿がいきなり現れたらとりあえず迎撃するでしょ?」

青ピ「横暴やで! 暴力反対!」

姫神「無断で女子の中に割って入る。青髪君が悪いと思う」

青ピ「ええやん。ボクも混ぜてえや女子トーク」

吹寄「お前が混ざるだけで女子トークじゃなくなるでしょうが」



姫神「……そういえば青髪君。さっきチョコもらったって言ってたよね?」

青ピ「そうなんよぉ、いやーボクもついに勝ち組になったんやでえ!」

吹寄「何だかすごくムカつくわね……で、誰にもらったのよそれ?」

青ピ「舞夏ちゃんやでえ」

吹寄「舞夏ちゃん……って土御門の妹の舞夏ちゃん?」

青ピ「せやでー、まさか通学路で待ち伏せまでしてくれてたなんて思わへんかったわ。いやーモテる男はつら――」



ガシッ



土御門「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……切れちまったよ……」



青ピ「ちょ、土御門君……? この学校屋上開いてたっけ? いやまっ、やめっヘルプミー!!」ズザザザ

吹寄「……行っちゃったわね」

姫神「ご愁傷様」

吹寄「まあ舞夏ちゃんの本命は兄だろうから。青髪が哀れでしょうがないわね」

姫神「うん。そういうポジションだからしょうがない」

吹寄「しかしクラスメイトの目線から見ると、アクセラがあんなにチョコレートもらってるのに違和感があるわね」

姫神「どうして?」

吹寄「たしかに第一位だから人気あるのかもしれないわ。でもそれに反したマイナス点も結構知れ渡ってるはずよね」

姫神「……ああ。学内ラジオ」

吹寄「会話が全然いいようにできてなかったし、さらに言うなら授業中は大体寝てるっていうだらしない部分もアピールしちゃったわけだし」

姫神「……それはさほど問題ないのだと思う」

吹寄「えっ、何で?」

姫神「恋は盲目。という言葉があるぐらいだから。そういう部分は目に入らないのかも」

姫神「それに多少は欠点があったほうがいいのかもしれない。完璧超人には近寄り難いみたいに」

吹寄「うーん、そうなのかな? あたしは嫌よ、授業中に寝てるような馬鹿者は」

姫神「趣味嗜好は人それぞれ」

吹寄「……そうね。じゃあこれは許容したとしてもまだ疑問点があるのよね」

姫神「言ってみて」

吹寄「去年やったマラソン大会あるじゃない。その時にアクセラは結標さんをお姫様だっこをしながらゴールという、ものすごく恥ずかしいことがあったわよね?」

姫神「うん。あった。学校新聞にもでかでかと載ってた」

吹寄「あれって傍から見たら二人はそういう関係なんだなぁ、って見えるんじゃないかしら? 普通」

姫神「……うん。言われてみればそう」

吹寄「だったら普通はチョコレート渡したりなんかしないんじゃ……?」


土御門「にゃー、そいつは間違ってるぜい吹寄」



吹寄「終わったのねおかえり」

姫神「青髪君は?」

土御門「あの勘違いクソ野郎にはアスファルトの染みになってもらったにゃー」

吹寄「ふーん。で、何が間違ってるっていうの?」

青ピ「ちょっとおおおおおおおおおおおおっ!! 何かリアクション薄ぅないいい!?」

吹寄「あっ、いたの青髪ピアス」

姫神「気付かなかった」

青ピ「酷いでみんなぁ! ボクの存在は永久に不滅なんやでえ!」

吹寄「……で、何が間違ってるっていうのよ土御門」

土御門「そうだにゃー、例えばだな」

青ピ「ちょ、スルーはやめてっ!」

姫神「青髪君。ちょっとうるさい」

青ピ「……あい」

土御門「まず一つ言っとくが、二人がそういう関係じゃないっていうのは結構知られてると思うぜい」

吹寄「どういうこと?」

土御門「お前らがさっき話してたラジオのことを思い出してみるんだな」

吹寄「ラジオ……って学内ラジオのことよね?」

姫神「アクセラ君が。望んでかは知らないけど。イメージダウンに努めていたあれ」

吹寄「あのラジオでそんな話してたっけ……?」

土御門「……よーく思い出してみるんだな。あのラジオのエンディングトークの会話の内容をな」

姫神「……ああ」

吹寄「それって……まさか……?」



部長『ところで一方通行君はバレンタインデーにチョコをもらう予定はあるのかなー?』

一方通行『……! ン、ンなモンねェ……と思う、そォ信じたい……』



土御門「そう。この返答でアクセラちゃんと結標はそういう関係じゃないって認識になるんじゃないかにゃー?」

吹寄「い、言われてみれば……」



姫神「……でも。仮にだけど二人が付き合っていて。そういうのを隠していたとしたら。こういう嘘もつくんじゃないの?」

土御門「ま、そうだな。少しでも頭が回るヤツならそう考えるだろう。でも残念ながらバレンタインデーが近くて浮き足立ってる時期だぜい?」

吹寄「正常な判断ができない、ってこと?」

土御門「ああ。まあでも、気付いてても略奪愛上等みたいな考えを持ってるヤツには関係ない話だけどにゃー」

姫神「略奪愛……」

吹寄「何だか急にドロドロした話になったわね」

土御門「そういうわけで、アクセラちゃんにチョコ渡したヤツらは脳内お花畑のヤツらかNTR趣味のヤツらの二パターンだろうな」

吹寄「……もしかした純粋な気持ちで渡した人もいるかもしれないのにひどいこと言うわね」

土御門「で、いろいろ話を統合した結果、つまり何が言いたいかというと――」



青ピ「アクセラちゃん爆発しろ!」



土御門「というわけだにゃー」

吹寄「あー、そう」

青ピ「何か今日の吹寄さんいつもより冷たい気がするんやけど……」

吹寄「そう? いつもどおりでしょ」

姫神「……! そういえば。上条君へのチョコレートが少なかったのは。まさかのアクセラ君効果?」

土御門「それもあるだろうけど……まあでもカミやんも人気もんだからにゃー」

青ピ「みんなタイミングを計ってんやろうなー。だから靴箱なんていうベタなところに置かないんやろ」

土御門「姫神もカミやんに渡すんだったらよーく考えてから動いたほうがいいぜい。どうせ本命だろ?」

姫神「……う。うん」

青ピ「チッ、死ねカミやん」

吹寄「……で、その上条当麻が見えないようだけど、どこに行ったわけ?」

青ピ「ああカミやんなら別室に連れて行かれたで」

土御門「ある意味アクセラちゃんたちと同じ特別扱いだにゃー」

吹寄「こんな日まで大変ねほんと……」


―――
――




同日 09:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-



ガチャ



数多「あー、仕事するのだっる……」


ヴェーラ「おはようございます社長!」

ナンシー「おはようございます!」



数多「……あん? 何だお前らもう来てたのか。ついに仕事熱心な社畜になっちまったかぁ」



マイク「おはようございます!!」

デニス「おはようございますっ!!」

オーソン「はぁざいまっす!!」


数多「んだぁ? 今日はやけに集まるの早ぇなあ、何かあったか今日?」

円周「何って今日はバレンタインだよ数多おじちゃん」

数多「バレンタイン? あー、そーいやそんなもんあったわ。で、それがどーかしたかっつー話だけどな」

円周「相変わらずどうでもいいことにはとことん興味がないよね数多おじちゃん」

数多「しょうがねえだろ興味がねえんだからよ。もうもらえるかもらえないかドキドキワクワクしてる歳じゃねえんだからな」

ヴェーラ「社長! 少しよろしいでしょうか!」

数多「あぁ? 何だ」?」

ナンシー「あのぉ……これ! 受け取ってもらいたいんですが!」スッ

数多「……何だこりゃ?」スッ

ヴェーラ「今日がバレンタインというわけなのでチョコレートです。私とナンシーで作りました」

ナンシー「猟犬部隊が解体して路頭に迷った私たちを拾ってくださった社長への感謝の気持ちです!」

ヴェーラ「ちっぽけなものだと思いますが是非受け取ってください!」

数多「…………」

円周「よかったねー数多おじちゃん。今年のバレンタインチョコがお母さんだけ、って感じの悲惨な思いをせずに済んで」

数多「うるせえぞクソガキ。……まぁ、何つーか……ありがとよ」

ヴェーラ「ほかの皆さんの分もありますのでどうぞもらってやってください」




<っしゃああああああああああああああああああああああっ!! <いええええええええええええええええええい!! <キタコレ!!





数多「……ちっ、んなことでいちいちはしゃいでんじゃねーよ馬鹿どもが」

円周「もーそんなこと言ってー。いい歳いったおじちゃんがテレてるなんて面白い話だよねー」ニヤニヤ

打ち止め「そうだよねー、ってミサカはミサカは同意してみたり」ニヤニヤ

数多「……おい打ち止め。いつからここにいやがったんだ?」

打ち止め「ついさっきだよ。鍵が開いてたからいつでもウェルカム! ってことだと思って勝手に入ってきました! ってミサカはミサカは経緯を簡潔に説明してみたり」

円周「打ち止めちゃんが早めに来ることを見越してロックを解除しときました」ビシッ



ゴッ



打ち止め「そんなことより、はいキハラ!」スッ

数多「あん? ……何だぁ? またチョコレートかよクソッタレが」

打ち止め「ヨミカワとヨシカワからだよ。いつもお世話になってますー、って感じで渡してくれって言われましたー!」

数多「だったらいつもお世話になってますーって感じに渡せよ」

円周「おおっー、数多おじちゃんモテモテだねー」

数多「ちっ、くだらねえこと言ってねえで早くどっか行けクソガキども! 仕事の邪魔だ」


円周・打止『はーい!!』タッタッタ


数多「…………はぁ、面倒臭せぇ……ん?」

数多「そーいやあのガキども何でキッチンに行きやがったんだ?」

数多「何かロクでもねぇこと考えてんじゃねえだろうな?」スタスタ

数多「…………」スッ|д゚)


円周「――ふふふふふっ、いよいよ長年温めてきた計画を実行するときが来たよーだね」

打ち止め「実際は一週間前だけどここはツッコマないでおこう、ってミサカはミサカは口をチャックしてみたり」

円周「じゃあ始めようか打ち止めちゃん?」

打ち止め「うん!」




円周「これより『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』を!!」

打ち止め「開始する!! ってミサカはミサカは高らかに宣言してみたり!」




数多「…………すっげえ不安なんだが」


―――
――




同日 09:35 ~二時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



吹寄「……さて、どうやら全員集合したようね」



上条「何だよ? 一時間目が終わってから全員集合って?」

一方通行(嫌な予感しかしねェ……)

青ピ「次も移動教室やから早めに頼むでー」

一方通行「オマエが言う台詞じゃねェだろそれ。クソ似合わねェよ」

青ピ「いつもはおちゃらけてるキャラが急に真面目になるとポイント高くなるんやでー」

上条「テメェが真面目になっても気味悪りぃだけだよ」

青ピ「ひどい!」


吹寄「………………」ピキピキ

結標「ふ、吹寄さん! 落ち着いて!」

姫神「冷静さを欠いたら負ける」

結標「何に!?」


土御門「……で、結局何の用だにゃー?」


吹寄「ええっと、今集まってもらったのはこれを渡すためよ」スッ

青ピ「えっ? 何それ?」

土御門「一見可愛くラッピングされたクッキーが入った小袋のように見えるんだが……?」

吹寄「見えるも何もその通りよ」

上条「は? 何でそんなもんを吹寄が俺たちに渡してくんだよ?」

吹寄「何でって、今日はバレンタインデーだからに決まってるじゃない」

土御門「……へー」

吹寄「……何よその目は?」

青ピ「どう見ますかつっちーさん」

土御門「これは何かのトラップだと推測しますぜカミやんさん」

上条「そ、そうだよな。あの吹寄がそんなバレンタインプレゼントなんて女子らしいもん渡してくるわけ――」



ゴッ! ガッ! バキッ!




吹寄「貴様らの中であたしは一体どういう位置付けなのよ!!」

土御門「にゃー! これは罠にかかろうがかからまいが結果は一緒! すでに俺たちは吹寄の手の中で踊らされていたんだぜい!」

上条「くそっ! 俺たちはハメられたってのかよ!」

青ピ「吹寄制理……恐ろしい娘……!」

吹寄「ったく、バカのこと言ってないでさっさと受け取りなさいよ」スッ

上条「お、おう」

青ピ「あ、あざーす」

土御門「ごちになりまーす」


吹寄「あっ、ちなみにこれはあたしたち三人からよ? そこんとこ勘違いしないでちょうだいね」



パキッ!



青ピ「ん?」

一方通行「…………」ガタガタブルブル

青ピ「どーしたんやアクセラちゃん? そない固まったままクッキー握りしめてぇ。あんなにチョコもらったのにそんなに嬉しいんかいな?」

一方通行「い、いや、そォいうわけじゃねェよ……」



一方通行(こ、これかァあああああああああああッ!? 昨日俺を家から追い出してまで作り上げた化学兵器はァああああああああああああああああッ!?)



土御門「さて、小腹も空いたことだしちょっぴりいただくとするぜい」シュルル

一方通行「なっ!?」

青ピ「せやな。ボク今日朝メシ食べてへんかったからなぁ、いただくとしましょ」シュルル

一方通行「ちょまっ!?」

上条「おっ、何か食べる流れっぽいな。じゃあ俺も」シュルル

一方通行「ばっ!」



上条土御門青ピ『いただきまーす!』パクッ




一方通行「あ…………」

上条「…………」モグモグ

青ピ「……うん、うん、美味美味」モグモグ

土御門「なかなかのお手前だにゃー」モグモグ

吹寄「…………ほっ」

一方通行「…………は? どォいうことだ?」パクッ

一方通行「…………」モグモグ

一方通行「……普通だ」

土御門「相変わらずアクセラちゃんは素直じゃないにゃー」

青ピ「恒例のツンデレレータさんやでー」


一方通行(普通過ぎるだろ!? 塩の配分が少し多めで甘さ控えめになっててむしろ好感を持てるぐらいにな!)

一方通行(見たところ他のクッキーも全部普通だ。オイオイおかしいだろ、結標が武力介入して無事に完成される食いモンなンざ存在しねェはずだろォが)

一方通行(いや、逆に考えろ。吹寄と姫神がいろいろサポートしてこれを完成させたとする、とするとアレだ。つまり、バレンタインの恐怖はもォ去ったということになる)

一方通行(こればかりはあの二人に感謝すべきだな……)パクッ

一方通行(…………いや、待てよ?)バッ


結標(……さすが吹寄さんね)

姫神(吹寄さんが美味しいものを作ってくることはわかってた。だけど私も負けない)


一方通行(……コイツらがまだチョコレートを隠し持ってるっつゥことはねェか?)モグモグ

一方通行(姫神は料理の腕に自信を持ってる。そンなヤツが他のヤツと合作クッキーを作って満足するか? しねェだろ)パクッ

一方通行(そォ考えると必然的に結標もチョコレートを用意してるだろォ。つゥか、じゃねェと俺が外泊した意味がまったくねェ)モグモグ

一方通行(クソっ、まだ恐怖は始まったばかりっつゥことかよクソったれが……)パクッ


上条「……いつまで食ってんだ一方通行? とっとと次の授業の教室行くぞ?」

一方通行「あ、あァ、済まねェすぐ行く」モグモグ


―――
――




同日 10:00

-第七学区・とあるアパート-



浜面「……ごがぁ、すぴぃ……」Zzz



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「ふがっ!?」バサッ



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「何だぁ!? 電話ぁ!? こんな朝っぱらから誰だ?」スッ



『麦野沈利』



浜面「…………えー、何かすげえ嫌な予感がすんだけど」



ピピピピピピッ! ピピピピピピッ!



浜面「とりあえず出るか……」ピッ

浜面「もしもし?」


麦野『はーまーづーらー、電話に出るのがちょろーっと遅すぎるんじゃないかしらーん?』


浜面「はぁ? 別にいいだろ」

麦野『何言ってんだテメェ? 電話っつーのは2コール以内に出るのが常識でしょうが』

浜面「何でそんな会社のルールみたいなのをプライベートでもしなきゃいけねえんだよ」

麦野『社会人の常識よ? 仕事もプライベートも関係ないわ』

浜面「俺は一応学生だっつーの。学校には全然行ってねえけどな……」

麦野『中卒で働いてるヤツらは社会人だろ? つまりそーゆーこと』

浜面「へいへいわかりましたよ。で、何の用だよ? こっちは寝起きの頭だからあんまり難しいのは勘弁して欲しい」

麦野『もともとテメェの頭のスペックは低いでしょうが……へー、こんな時間までグースカ寝てるなんざいいご身分じゃないか』

浜面「昨日……つーか今日帰ったの朝の五時だぞ? 寝てなきゃやってらんねーよ」



麦野『ま、んなことどーでもいいわ。おい浜面。今日昼の十二時にいつものファミレス集合な』

浜面「は? 今何て言った?」

麦野『だから今日の昼十二時にいつものファミレス集合って言ったのよ』

浜面「……ええと、今日ってたしか仕事はなかったんじゃねかったか? まさかまた急に仕事でも入ったのかよ?」

麦野『いーや、今日のアイテムは休業よ。つーか、もし今日あの女から電話きたらソッコー拒否するから』

浜面「だったら休ませてくれよ。久しぶりの休みなんだからゆっくりさせてくれ」

麦野『うん、それ無理』

浜面「何でだよ」

麦野『だってアンタはアイテムの下部組織、いわば私たちの手足同然の下っ端でしょ?』

浜面「……そうだけど」

麦野『そんなヤツに拒否権なんて初めから存在するわけないじゃない。違う?』

浜面「…………はぁ。わかったわかったよわかりました。行きゃいいんだろ行きゃあ」

麦野『遅刻なんてしたら拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された粒機波形高速砲をひたすら避け続ける、リアル弾幕ゲーをしてもらうことになるから』

浜面「ははっ、初弾で蜂の巣になってる自信があるな……」

麦野『だいじょーぶ、もしものために漫画雑誌懐にしまわさせてやるから』

浜面「たしかに防弾チョッキの代わりになる展開よく見るけど、お前のビームの前じゃ何の意味もねえよ!」

麦野『そう? 友情、努力、勝利のパワーで案外どうにかなるかもよ?』

浜面「なるわけねーだろ。しかもそれジャンプ限定のパワーじゃねえか。マガジンとかじゃダメなパターンじゃねえか」

麦野『つまり何が言いたいかというと、きちんと遅れずに来いってことよ? わかった?』

浜面「はいはい」

麦野『じゃねー――ピッ』


浜面「……はぁ、くそっ、貴重な休日が……」

浜面「まあいいや。つーか今何時だ?」

浜面「……十時過ぎか。だったら少し仮眠の時間が取れるな」ゴロン

浜面「…………ごがぁ」Zzz


―――
――




同日 10:30 ~三時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「……さて、あたしはもう渡したわけだから次はあなたたちの番ね」

姫神「うん。まかせて」

結標「……うう、何というか緊張するわね」

吹寄「まだ緊張するのは早いんじゃないかしら? というか二人は渡す手段考えた?」

姫神「だいたいは」

結標「私は、その……まだかな?」

吹寄「まあ、そんなに焦る必要はないけどそんなんじゃあっという間にバレンタイン終わっちゃうわよ?」

結標「それはわかってるけど、何というかこういう作戦を考える、みたいなのが苦手なのよね」

姫神「でも。だからと言って何も考えないと。取り返しのつかないことになってしまうかも」

結標「えっ? そ、そんな大げさな……」

吹寄「たしかにそうね。上条並に……というか現時点では上条よりモテるとわかった以上放置するのは危険そうね」

結標「くっ、というかチョコ渡してる人から見たらあんな変人のどこがいいのかしら?」

姫神「結標さん。それブーメラン」

吹寄「ま、見たところアクセラはクラス内では人気はないようね。やっぱりどういう人か知ってるからか。……まあその代わり」


青ピ「でさぁ、そのロボット娘の喋り方が可愛くてなぁ」

上条「へー」

女子生徒A「ねえねえ上条君?」

上条「はい?」

女子生徒A「この前は委員会の仕事手伝ってくれてありがとね。はいチョコあげる」

上条「お、おう。サンキューな」

女子生徒A「じゃねっ」タッタッタ

上条「……はぁ、別にいいのになお礼なんて。なあ?」


青ピ「青髪グレートスペシャルアームストロング腹パンッ!!」ゴッ


上条「ごふっ!! な、何しやがる!?」

青ピ「とりあえず死んどけカミやん。それが世界のためや」

上条「何でだよ!」

女子生徒B「あのー上条君?」

上条「あ、はい。何だ?」

女子生徒B「この前備品の買い出し付き合ってくれてありがとね。はいチョコどーぞ!」





青ピ「がああああああああああああああああああああああああああッ!! この世は理不尽やあああああああああああああああああああああああああッ!!」






吹寄「…………こんな感じにクラス人気は上条の方があるようね」

結標「たしかこれで八個目だっけ? 吹寄さんの分を抜くと」

土御門「いーや、九個だぜい」

吹寄「ふん!」バッ

土御門「おっと危ない」サッ

吹寄「ちっ、青髪ピアスの馬鹿のようにはいかないか……」

土御門「にゃー、いきなり攻撃なんてひどいぜ吹寄ー」

吹寄「お前が唐突に現れるからでしょうが!」

姫神「……土御門君。九個目とはどういうこと?」

土御門「ここに来る前に舞夏が渡したらしい。さすが舞夏近所付き合いができるいい妹だにゃー」

吹寄「随分と余裕そうね。てっきりまたキレてるのかと思ったけど」

土御門「いやーよくよく考えたら俺と舞夏は絶対的な絆で結ばれてるからにゃー。いくらカミやんでもこれはどうしようもないぜよ」

姫神「それ。何てフラグ?」

結標「あ、でもそれじゃあもしかして……」

土御門「どうかしたかい姉さん」

結標「……一方通行も舞夏ちゃんにもらったんじゃないかしら?」

土御門「ふむ、言われてみればそうだな。今朝はカミやんと一緒に登校して来たみたいだし、心優しい女神舞夏が渡していてもおかしくはないな」

姫神「ライバルがふえるよ。やったね二人とも」

土御門「おいやめろ」

吹寄「絶対的な絆はどこいったのよ」

結標「ま、まあ大丈夫じゃない? た、たぶん二人とも初対面だろうし、か、上条君にも渡してるみたいだから義理だろうし」

吹寄「声が震えてるわよ」

土御門「だ、大丈夫だ! 俺と舞夏の愛のベクトルは! あの第一位のベクトル操作でも操ることはできないぜい!!」

結標「そ、そうよね! 頑張って土御門君!」

吹寄「土御門を応援する前にまず自分が頑張りなさいよ」

結標「……ううっ。ま、まだ刻が来てないのよ」

吹寄「そんな中二的なこと言われても」

姫神「……あ。そんなこと言ってる間に。アクセラ君に忍び寄る影が」

結標「えっ」



一方通行(……クソっ、油断するンじゃねェぞ俺ェ。いつあの野郎が仕掛けてくるかわからねェ)

一方通行(いや、しかしもしアイツが渡してきたとして俺は断れるのか?)

一方通行(『そンな生ゴミを渡してきてンじゃねェ』っつって一蹴することが出来ンのか?)

一方通行(…………)


一方通行「…………だったら」ボソッ

女子生徒D「えっ? 何?」

一方通行「…………」

女子生徒D「…………」

一方通行「いや、逆にオマエが何だよ」

女子生徒D「え、ええっと、急に喋りだすから……その」

一方通行「あン? ……つゥかオマエ」

女子生徒D「な、何?」

一方通行「どっかで見たことある顔かと思えば、前ドッジボールしたときに敵チームにいた念動使いじゃねェか。同じクラスだったのかよ」

女子生徒D「体育って同じクラスでしか滅多にやらないよね!? というか私はクラスメイトとすら認識されてなかったの!?」

一方通行「で、何だよ念動使い。演算の簡略化はイイ加減やめたのか?」

女子生徒D「あっ、それについてなんだけどちゃんとやめて今はきっちり演算してるわよ」

一方通行「そォか。そりゃ何よりだ」

女子生徒D「おかげさまで最近は結構能力の調子がいいのよね。こりゃ二年生になる頃には異能力者(レベル2)になっちゃうかもね」

一方通行「そいつはよかったな」

女子生徒D「…………、それで何だけどね。私がここまで成長できたのはいわばアクセラ君のおかげってわけよ」

一方通行「ンなこたァねェよ。成長できたのはオマエの努力のおかげだ。俺はきっかけを与えたに過ぎねェ」

女子生徒D「でもそのきっかけがないと私は成長できなかったかもしれないわ」

一方通行「チッ……」

女子生徒D「だからそのお礼、って言ったらおかしいかもしれないけど、これを受け取って欲しいのよ」スッ

一方通行「……俺はこンなモンもらうために助言したわけじゃねェぞ」

女子生徒D「うん知ってるわ。別にそれいらなかったら捨ててくれても構わないわ」

一方通行「…………」

女子生徒D「じゃ、ありがとね」タッタッタ


一方通行「…………」

一方通行「チッ、くっだらねェ」



結標「」

吹寄「な、何か漫画のヒロインからチョコをもらう主人公みたいだったわね……リアルで」

姫神「これは思わぬ伏兵。結標さんピンチ」

結標「ぎゃー! わ、わ、私も何かそういうシチュエーション考えたほうがいいのかしら!?」

吹寄「落ち着いて結標さん。大事なのは自分らしさよ!」

姫神「そんなこと言ったら。余計にハードルが上がるような気がするのは私だけ?」



キーンコーンカーンコーン



ガラララッ



家庭科教師「ちっ……。はーいみなさーん! 授業始めるから席着いてくださいねー!」


男子生徒A「(……おーおー家庭科の先生機嫌が悪そうだなー)」ボソッ

男子生徒B「(そりゃあれだろ。そろそろ行き遅れそうだからこういうきゃっきゃうふふしてるイベントにイラついてんだろうなー)」ボソッ


家庭科教師「そこっ! うるさいわよ! 私はまだまだ行き遅れないわようえーん!!」タッタッタ



ガララララッ!!



青ピ「あっ、せんせーどっか行ってしもーた」

土御門「……あーりゃりゃ。こりゃ今日の授業は中止かにゃー?」

吹寄「そういうわけにはいかないわ。ほらっ委員長。早く追いかけなさい」

青ピ「えっ、ボクッ?」

吹寄「お前以外に誰がいるのよ?」

青ピ「で、でも女子の方の委員長とかい――」

吹寄「いいから行きなさい」ゴキゴキ

青ピ「はい喜んでー! ちょっとフラグ立ててきますわー!」



ガラララッ



上条「相変わらず能天気だな」

一方通行「……はァ、そォだな」

上条「どうした一方通行? 元気がねえな」

一方通行「何でもねェよ面倒臭せェ」

上条「?」


―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

今回はちょっとモブという名のオリキャラが出しゃばりすぎましたねすみません
まあでもあわきんにはちょっと危機感持ってもらわないといけないよね!

ではではノシ

SS製作者にありがちなパソコン故障がついに自分にも起こりました……
一応スマホのほうにバックアップは取っているのですが、結構書き溜めが消えていきました
新しいパソコンを買おうと思ってはいるのですが、いつ買えるかわかりません
それまでかなり投下速度が下がると思うのでよろしくおねがいします、すみません


皆さんお待たせいたしました!
パソコンも買い直した&書き溜めが書けたので投下いたします



同日 10:45

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


ヴェーラ「はい、こちら従犬部隊です」

マイク「そいじゃあ、第八学区の方へ配送の仕事に行ってきます!」

ナンシー「いってらっしゃいマイク!」


数多「…………暇だ」

数多「何か退屈だなぁと思ったら、そーいやガキどもがキッチンに引きこもってっからか」

数多「いつもは周りではしゃぎまわってやがるからな。ま、別にどーでもいいけどよ」



ピンポーン



数多「あ? 客か?」

ナンシー「私が出てきましょうか?」

数多「おお。頼んだぞ」

ナンシー「わかりました。ではいってきます」スタスタ

数多「…………しかし、客がわざわざ直接出向くなんざ珍しいな。犬っころが散歩しに来た時以来か」

数多「まあまたあんな鉄クズが出向いてくるとは思えねぇけど、まあどうでもいいわ」

ナンシー「社長!」スタスタ

数多「どうしたナンシー」

ナンシー「いえ、お呼びですよ社長。マンションのエントランスからです」

数多「はあ? お客様は誰だったんだ?」

ナンシー「女性だったんですけど……ちょっとわかりませんでした」

数多「特徴は?」

ナンシー「ええと、つばの広い帽子を目深にかぶってて顔はよくわかりませんでしたが、服装は何というかパジャマみたいな服でしたね」

数多「パジャマ……?」

ナンシー「はい。あとカメラの角度的に車椅子か何かを使ってる方というのはわかりましたよ」

数多「…………」

ナンシー「知り合いですか?」

数多「さあな。ま、とにかく行ってくらぁ」スタスタ

ナンシー「いってらっしゃいませ」



数多「…………」ピッ


数多「あー、ただいま代わりました。社長の木原です」

女性『……あらあらすみません。わざわざ呼び出してしまって』

数多「いえいえ、大丈夫ですよ。何の御用でしょうか?」

女性『はい。実は私少し道に迷ってしまって……』

数多「たしかにこの辺りはちょっと道が複雑ですからねー。で、どこへ行きたいんですか?」

女性『ええと、第七学区の病院なんですけど』

数多「ああ、あのデカイ病院ですね? 大丈夫ですよ、すぐ部下に送らせます」

女性『あっ、その前に少しよろしいでしょうか?』

数多「はい?」

女性『私実はそこの病院に入院してて、病院から散歩感覚で街に出ていたら迷ってしまったんですよ』

女性『なので少しばかり疲れてしまったので……よかったら中で休ませていただけないでしょうか?』

数多「おーおー、そりゃ大変でしたでしょうなー。ここからだったら往復すりゃ軽くジョギングのコースになりますからなぁ」

女性『午前中なので寒さもあるので早く入れて欲しいです』

数多「はいはーい」

女性『…………』

数多「…………」

女性『……あの、早く玄関のロックを開けてもらえないでしょうか?』

数多「えっ? 何で?」

女性『あの、先ほど行った通り疲れているので少し休憩したいと……』

数多「あーそう」

女性『あーそう、って何ですか?』

数多「何つーか、正直に言わせてもらうが、俺は信用できねー人間をここに入れるほどお人好しじゃねーんだよ」

女性『信用出来ない? 私がでしょうか』

数多「ああ。テメェには不明瞭なところが腐るほどあるからな」

女性『そんなこと言われましても困ります。私のどの辺りが信用出来ないと?』

数多「そうだな。わかりやすいので言やあ何でこの会社に来たのかっつーことだな」

数多「普通に道に迷ったんならジャッジメントとかアンチスキルの詰め所に行きゃいいだろうが。こんなクソみてぇなところに来ずによ」

女性『あら? そうでしたか?』

数多「そりゃそうだろ。無償で丁寧に案内してくれる善人と端金をせびるゴミクズ、どっちを選ぶかなんて考えなくてもわかるよなぁ?」

女性『私はたまたまこの会社の看板を見かけたのでここに来ただけですよ。とくに意味なんてものはないんですよ』

数多「ほぉ、そりゃありがてえこったな」

女性『というわけで早く入れ――』

数多「断る」



女性『……まだ信用をいただいていないということですね』

数多「当たり前だろうが。言っただろ? 腐るほど信用ならねー点があるってな」

女性『何でしょうか?』

数多「テメェがここに来るのは早すぎんだよ」

女性『……何を言ってるのかわからないですね』

数多「病院からここまでの距離、最短距離で動いても片道一時間弱かかる。ましてやそんな車椅子じゃあな」

女性『今は十一時前ですよ。あの病院の外出許可時間が九時からなので別におかしくはないでしょう』

数多「ああ、普通なおかしくはねえなぁ」

女性『それにこの車椅子は電動ですよ。普通に歩くよりはよっぽど速度がでます』

数多「そうか。そんな面白いモン持ってたらさぞ生活するのに苦労はしなさそうだな」

女性『楽しすぎない程度には調整していますよ。それよりいい加減入れてもらえないでしょうか?』

数多「いや待て。あれれー? おっかしいなー?」

女性『何を突然言い出しているのですか? おかしいところはないと思いますけど』

数多「そーいや、たしか今日は午後から医者の大半は外に出る日じゃねかったっけなー? だから検診は午前中に行うから実質自由時間は十時からとかじゃねかったかー?」

女性『あらあ?』

数多「こっちは何でも屋やってんだよ。学園都市内の病院のスケジュールや入院患者、全部把握ししとかなきゃいけねえよなぁ?」

女性『あらあら』

数多「あの病院にテメェみてえな野郎が入院してるなんざ情報一つもねえんだよ。だからとっとと帰れカス」

女性『…………ふふっ』

数多『あぁ?』









女性『ば・れ・て・し・ま・っ・て・は、仕方がありませーん!!』ギュイン









ピ――――ガチャン!




数多「……電子キーをハッキングして開きがったか」

女性『と、いうわけで数多クーン! 私もここに入れてもらうことを『諦め』るので、あなたも私を追い返すことを『諦め』てくださーい!』

数多「はぁ、まあそう来るとは最初から思ってたけどな」

女性『おや? もしかして私が誰だかわかってましたかー?』

数多「そりゃそうだろ。だいたいこんなクソ寒い中パジャマだけで動きまわってるアホはテメェだけだろうが、木原病理」

病理『まあそんなことはどうでもいいんですよ。私にはまるで関係のない話ですからねー』

数多「帰れ」

病理『ではお邪魔しまーす!』



ギュイーン!!



数多「チッ、面倒臭せぇ……オイ円周!!」



ガラララ



円周「なにー? 今私は忙しいんだけど数多おじちゃん」

数多「お前アレだぁ、アレェ持ってこい!!」

円周「りょーかーい。ちょっくら取ってくるねー」テクテク

数多「…………」

円周「持ってきたよー」テクテク

数多「おお、それを今すぐ玄関前に仕掛けてこい。全部だ」

円周「はいはーい」テクテク

数多「…………」

ヴェーラ「あ、あのー社長?」

数多「何だ?」

ヴェーラ「私の目がおかしくなければアレって『地雷』ですよね?」

数多「そうだけど」

ヴェーラ「……あんなものこんな場所に仕掛けちゃ駄目じゃないですか」

数多「構わねーよ。建物自体に影響でねーように調整はしてる。この俺がな」

円周「数多おじちゃーん、五個全部仕掛けてきたよー。『木原』らしく踏んだ人は確実に木っ端微塵になるように配置したよー」ピーガガガ

数多「お疲れーぃ。もうキッチン戻ってもいいぞ」

円周「ところで何で突然地雷なんか仕掛けたの? 馬鹿なテロリストちゃんがまた懲りずに侵入しちゃった?」

数多「あー、テロリストちゃんだったらどれだけ楽だっただろうなー?」

円周「?」




ドガガガガガアアアアアアン!!





ヴェーラ「!?」ビクッ

ナンシー「えっ、何っ!?」

円周「あっ、獲物が引っかかったみたいだよ」

数多「そうみてーだな」



ピンポーン、ピンポーン!



円周「あれれー? 何か生き残っちゃってるねー、あれれー?」

数多「チッ、やっぱあの程度じゃ死なねーか」

円周「誰なの?」

数多「ゴキブリ並みにうっとおしいクソ野郎だ」

打ち止め「エンシュウエンシュウ!!」ドタドタ

円周「どーしたの打ち止めちゃん? そんなに慌てちゃって」

打ち止め「さっきの爆発音は何!? ってミサカはミサカは突然の出来事に慌てふためいてみたり」

円周「ゴキブリ並みにうっとおしいクソ野郎がウチに来たらしーよ」

打ち止め「ゴキっ!?」



ピピピピピンポーン! ピピピピピンポーン!



数多「急にリズム刻み始めやがってんじゃねえよ、ムカつく野郎だぜ」

円周「何なら私が行ってこーか? 扉を開けた瞬間ゴキブリの解体ショーを開いてあげるよ」

打ち止め「うぇー気持ち悪ぅー、ってミサカはミサカはバラバラのGを想像して気分を悪くしてみたり」

数多「だったら想像すんなよ。つーかやめとけ円周。テメェが行っても解体ショーどころかテメェが活造りにされるだけだ」スタスタ

円周「あれ? 数多おじちゃん行くの? 活造りにされちゃうんじゃないの?」

数多「俺がそんなアホみてーな格好になるわけねえだろ」スタスタ



ピポッポッポポーン! ピポッポッポポーン!



数多「ったくうっせーんだよ! 今出るっつってんだろうが! つか、それどうやって鳴らしてんだよそれ」ガチャ





キュイ――――――――ン!





病理「それって『フリ』というやつですよねー?」カチカチ



数多「あん?」

円周「あっ、病理おばさんだ!」

打ち止め「ぎゃあああああああっ!! 何かでっかい回転ノコギリが車椅子から生えてるぅぅぅ!?」

ナンシー「このままじゃ『社/長』にぃぃぃ!!」

ヴェーラ「社長逃げてええええええ!!」



病理「そんなに活造りになりたいのなら、お望み通り三枚におろして差し上げましょう!」カチ




キュイ――ガギッ、ガギギギギギギギギギ!!




病理「あらら? 動かない?」カチカチカチ

数多「知ってっか? 真剣白刃取りって別に両手使わなくたって出来るんだぜ?」


打ち止め「ノコギリを人差し指と親指でつまんで止めたっ!? ってミサカはミサカはまさかの光景に驚愕してみたり!」

円周「ふむふむ、マイクロマニュピレーターにはこーゆー使い方があるんだねぇ……」

ナンシー「さすが社長! 私たちにできない事を平然とやってのけるッ!」

ヴェーラ「別にそこにシビれたり、あこがれたりはしないけどね」


病理「……さすが数多クンですね。腐っても『木原』ですか」

数多「何の用だ病理? 用がねぇならさっさと帰りやがれ、この俺にぶっ潰される前にな」

円周「何か小物臭いよ数多おじちゃん」

数多「うるせぇよ!」

病理「久し振りですね円周ちゃん。相変わらずお元気そうで何よりです」

円周「うん! 久しぶり病理おばさん! 相変わらず滅茶苦茶だねー。その『Made_in_KIHARA.』の車椅子」

病理「『木原』は日々進化しているんですよー! そろそろこれにガトリングレールガンでも搭載してみましょうか?」

円周「それすごいね。きっとカッコよくなるよ!」


ナンシー「(……誰?)」ボソッ

ヴェーラ「(さあ? 社長や円周ちゃんと仲がいいみたいだからやっぱり『木原一族』の方じゃないかしら?)」ボソッ

ナンシー「(円周ちゃんはともかく、社長とは友好的には見えないんだけど……)」



打ち止め「…………」

円周「あれ? どーしたの打ち止めちゃん? そんな黙りこくっちゃって珍しいね」

打ち止め「えっ? ええっと、あの、その」アセッ

病理「あらあら、こんなところに『最終信号』がいるとは。いつでも例の計画を遂行できるようにするための準備でしょうか?」

打ち止め(計画……!?)ビクッ

数多「んなわけねーだろ。何でも屋の仕事の一環として保育園の代わりやってるようなもんだ」

病理「ですよねー。どのみち彼女は自分でチカラを目覚めさせたらしいですし、今となればまったくもって必要のない計画ですし」

数多「どうでもいい。俺には関係のねえ話だ」

病理「まーそうですよね。上からのオーダーに答えられずに、こんなところまで左遷させられた数多クンには関係のない話ですよ」

数多「何だテメェ、喧嘩でも売りに来てんのか?」

病理「いえいえ、そんなつもりはありません。というかあなたに売るよりどっかの無能研究員に売ったほうが高く買ってくれますよ」

円周「……ところで病理おばさんは何しにここに来たの? ただ遊びに来たってわけじゃないよね」

病理「はい。……実はあるものを届けるためにここへ来たのですよ」

数多「あるものだぁ? 何だそりゃあ?」

病理「これですよ」スッ

数多「…………は? 何だよそれ?」

病理「何と言われましても困りますね。今日はバレンタインデー。つまりバレンタインチョコということになりまーす」

数多「……いや、だから何だよこれ?」

病理「だからバレンタインチョコレートですよ、聞こえませんでしたか? 難聴キャラを演じるような柄ではないとは思いますが」

数多「そーいうわけじゃねえよ。何でこんなもん渡してきやがるんだって聞いてんだよクソ野郎が」

病理「日本には親しい友人などに義理チョコを渡すという文化が浸透していまーす。つまりそういうことです」

数多「別に親しくねえだろ俺らぁ」

病理「同じ木原一族仲良くしましょー」

数多「木原一族はそういう集まりじゃーだろうが!」

円周「数多おじちゃんはやっぱりモテモテだねー。いやーめでたいめでたい!」



ゴッ!



数多「で、本当の狙いは何だ? つーかこん中に何が入ってやがる?」

病理「開けてみるとわかるかもしれませんね」



数多「チッ……、あん?」ビリビリ

円周「おおっ、何という真っ白なチョコレート、まさしくホワイトチョコレートだね」

病理「頑張って作ってみました。思う存分味わってくださーい」

数多「食うわけね―だろ! てか、食いもんで遊んでんじゃねーよ! 何チョコレートに未元物質(ダークマター)混入させてやがんだよテメェ!」

病理「失礼ですね、混入などさせていませんよ。100%純粋な未元物質で出来たチョコレートですよ」

数多「第二位のチカラをそんなくだらねえもんに使ってんじゃねえ!」

円周「さすが病理おばさんだね。うんうん、『木原』はこうやってバレンタインチョコレートを作るんだね」ピーガガガ

数多「変なもん学習してんじゃねえよ円周ッ!」

病理「どうぞめ・し・あ・が・れ♡」

数多「語尾にハートマーク付けてんじゃねえ! 似合わねえんだよクソ気持ち悪りぃんだよ!」

病理「ひどい言われようですね。まぁしょうがないですかね。私も『諦め』のプロですから……」



病理「そのチョコレートを食べないという選択肢を選ぶことを諦めてもらいましょーか!」ガチャン



数多「うっせぇよ! 俺の全戦力投入してでもこのチョコを食うことを諦めさせてもらうぞゴルァ! つーかマジいらねそれ!」バキッボキッ




ゴキン! グァキン! ドドドドッ!! ズガァン!!




円周「うーむ、さすが『木原』同士の戦い。勉強になるなあ」

ナンシー「きゃあああああっ! オフィスがあああああああっ!」

ヴェーラ(これの後始末は全部私たちがやらされるんだろうな……)ハァ

打ち止め「…………」



~十分後~



病理「……さすが数多クン、やりますね。まさか私の搭載兵器全て破壊してしまうとは」

数多「チッ、当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」

ヴェーラ「しゃ、社長……」

数多「何だ?」



ボロボローン



ナンシー「これ、どうしましょうか?」

数多「あん? ああ、テメェらで適当にやっとけ」

ナンシー「は、はい……」

ヴェーラ(やっぱり……)ハァ



病理「さて、私もそれなりに多忙なのでさっさと帰るとしましょうか」

円周「そうなの?」

病理「はい。最近第二位のチカラが著しく向上していっているので、それの研究に大忙しなのですよ。ちなみにこのチョコもそれによって生まれた副産物です」

数多「一体第二位の小僧はどこへ向かってやがんだ? メルヘンルートに向かってんですかお菓子の国でも収書すんのかよ?」

病理「でも着実にチカラは付けていっていますよ。あなたの大好きな一方通行を圧倒できるくらいには」ニヤリ

数多「だろうな。あのクソガキはウキウキワクワクのスクールライフっつー、温すぎて笑える生活送ってっからな」

病理「そうですねー、表の世界を生かされてる者と裏の世界を生きる者、どうやっても埋められない差というものがありますから」

数多「……何か勘違いしてねえかテメェ?」

病理「はい?」

数多「たしかに圧倒されるかもしれねーよあのクソガキじゃあなぁ……まぁでも最後に勝つのはあのガキだぜ? いやーマジでムカつくけどなぁ」ニヤァ

病理「…………ほう、なかなか面白いことを言いますね数多クンは」ニヤリ


数多「…………」ゴゴゴゴゴ

病理「…………」ゴゴゴゴゴ


ナンシー(……な、何かすごいプレッシャーを感じる)

ヴェーラ(き、気不味い……)

円周「うーん、まぁつまり何が言いたいかというと、数多おじちゃんはツン痛いっ!」ゴキン

数多「誰がツンデレだ。ブチ殺すぞクソガキが」

円周「えっー? だって普段は嫌ってるくせに『最後に勝つのはあのガキだぜ(キリ』とか言ってるんだよー? 百人が百人ツンデレ判定するよねー」

数多「よぉーし、今からお前はウサギのぬいぐるみだ。壁に打ち付けて動けなくしてから俺のストレス解消グッズにしてやるよ」ゴキゴキ

円周「『木原』的にはウサギは嫌だから逃げるぜい!」ダッ

数多「チッ、後で覚えとけよクソガキが」

病理「ふふふ、では私はお暇させていただきますね」ギュイン

数多「おう、さっさと消えろ。そして二度と俺の視界に入ってくんじゃねえ」

病理「あっ、あとあのチョコレートの感想絶対にくださいね? でないとこのマンションにミサイル撃ち込みますから」

数多「オイヴェーラ、アレ持ってこい! 先手必勝が正論だっつーことをここで証明させてやる!」

ヴェーラ「え、ええとアレとは携行型対戦車ミサイルでよろしいのでしょうか?」

数多「ったりめーだろうが! んなこともわからねえのか!」

ヴェーラ「た、ただいま!」ダッ

病理「ではではー、私はこれでー」



ギュイーン!!




ヴェーラ「も、持ってきました!」ガチャ

数多「……おいおい遅せーんだよウスノロ! 射程から消えちまったじゃねえか!」

ヴェーラ「も、申し訳ありません!」

数多「チッ、だったらヴェーラ、ナンシー! 今から屋上に狙撃銃持って行ってあのゴミ狙撃してこい!」

ナンシー「え、ええっ!?」

ヴェーラ「無理です!」

数多「あぁ? つべこべ言わずさっさと行け! 言及すんぞコラ」



ナンシー「は、はいぃぃ!」ガチャリ

ヴェーラ「行ってまいります!」ガチャリ



円周「……そんなこと命令しちゃっていいの? もし本当に狙撃なんかしたらあの人たち確実に病理おばさんに殺されちゃうよ」

数多「その前にヤツを殺せば問題ねえ」

円周「無茶苦茶言うねー。まぁあの人たちが死んだところで私の『木原』的にはどうでもいいけど」

数多「チッ……」

円周「うーん、やっぱり数多おじちゃんは他の『木原』が来ると面白いよねー。ねぇ打ち止めちゃん」

打ち止め「…………」

円周「……打ち止めちゃん?」

打ち止め「え、あ、う、うんそだね」アセ

円周「どうしたの? 何だか病理おばさんが来た辺りから調子悪そうだね。もしかして病理おばさん嫌い?」

打ち止め「べ、別にそういうわけじゃないんだけど……でも」

円周「でも?」

打ち止め「何というか、あの人の雰囲気が何だか苦手かも。まるで初めてキハラと会ったときみたい萎縮しちゃった、ってミサカはミサカは正直に答えてみる」

円周「そりゃ『木原』だからしょうがないよねー。でもそれじゃあ数多おじちゃんが舐められてるってことになるねー、可哀想なおじちゃん」

数多「誰が可愛そうだって、可愛いうさぎちゃん?」ゴキゴキ

円周「おっふ……あ、数多おじちゃん……」


―――
――




同日 11:30

-常盤台中学・とあるクラスの教室-


常盤台生A「御坂様、ぜひこれ受け取ってください!」

常盤台生B「御坂様のために心を込めて作りましたわ」

常盤台生C「これがわたくしの気持ちですわ!」



ワイワイガヤガヤ



美琴「あ、あはは、ありがとねー。あっ、じゃあこれ私からお返しよ」



常盤台生A「ありがとうございます御坂様!」

常盤台生B「ま、まさか御坂様からもらえるなんて……うれしいですわ」

常盤台生C「我が家の宝にしますわ!!」



キャーキャー



美琴(つ、疲れた……あとこのやり取りを何回すればいいのよ?)

美琴(私がレベル5だからっていちいち律儀にこんなもの渡してこなくてもいいのに、これだからお嬢様学校ってヤツは……)

美琴(別にもらえてうれしくないってわけじゃないからいいけど……)

美琴(……ま、そんなことより、どうやってチョコレート渡そうかなー、アイツに……)



ザワザワザワザワ



美琴「ん? 何か騒がしいわね、何かあったのかしら?」





食蜂「みぃーさぁーかぁーさぁーん♪」タッタッタ





美琴(げっ、今日一番エンカウントしたくないヤツとこんな早い時間帯から遭遇しちゃった! てか、向こうからエンカウントしに来やがった!)



食蜂「んー? 何ぃー? その『今日一番エンカウントしたくないヤツと遭遇しちゃった!』みたいな顔はぁ?」

美琴「何で私の心読んでんのよ! アンタの能力って私には通用しなかったんじゃなかったっけ!?」

食蜂「通じないわよぉ、でも御坂さんの表情って結構わかりやすいからぁ、そういうの余裕でわかっちゃうんだゾ☆」

美琴「くっ、……で、わざわざ私のクラスまで来て何の用よ? まさかアンタまでチョコ渡しに来たとか言うんじゃないでしょうね?」

食蜂「あらぁ御坂さん、もしかして私のチョコレートが欲しいのぉ?」

美琴「いるか!」

食蜂「もぉーこれだからツンデレ力マックスの御坂さんはぁ、素直じゃないんだからぁ」

美琴「誰がツンデレよ! アンタいい加減にしないとそのムカつく顔電撃でぶっ飛ばすわよ!」

食蜂「いやぁー御坂さんがいじめてくるぅー、こわぁーい」



ざわ……ざわ……ざわ……ざわ



美琴「ッ!」

食蜂「うふふふ」ニヤニヤ

美琴「……じゃあバレンタイン関係の用じゃないのなら何の用なのよ?」

食蜂「あ、一応バレンタイン関係よ。世間話程度じゃ御坂さんにいつもみたいに邪険にされるだけだしぃ」

美琴「何だかそれだけ聞くと私がいつもは嫌なヤツ、って聞こえんだけど」

食蜂「事実じゃないのぉ?」

美琴「大体アンタのせいでしょうが!」

食蜂「責任転嫁はよくないと思うんだけどぉ」

美琴「アンタが元からそんなじゃなかったら、こっちもそれなりの対応するっつーの。勝手に責任転嫁とか言うな」

食蜂「ええっー? 私の人格全否定ぇー? ひっどぉーい!」プンスカ

美琴(う、うざい……! すっごく殴りたい……!)プルプル

食蜂「まぁ、そーゆーのは置いといて、本題に入りましょーか」

美琴「そうね。一刻も早く用を終わらせて、アンタに私の目の前から消えて欲しいし」

食蜂「ふふふっ、まだ休み時間は始まったばかりよ。のんびり行きましょ?」スッ

美琴「平然と私の席の前に座んじゃないわよ!」

食蜂「ところでぇ、今日はバレンタインじゃない?」

美琴「……唐突ね。それがどうかしたの?」

食蜂「バレンタインって今は友チョコやら逆チョコやらいろいろあるけどぉ、女性から男性に渡すってのが一般的じゃない?」

美琴「うーん、まあそうよね。ここにいたらそういうの忘れそうになるけど」

食蜂「嘘はダメよぉ御坂さん? さっきから乙女力全開の表情で窓の外眺めてたクセにぃ」

美琴「は、はあ!? 何を言ってんのよ、わけわかんないんだけど」アセ

食蜂「別に隠さなくてもいいのにぃ、可愛らしいラッピングよねぇこれ」ヒョイ

美琴「なっ、それ私のチョコレート! って何勝手に抜き出してんだお前はぁ!!」パシッ

食蜂「大切なモノなんだからちゃんと保管しとかないと駄目なんだゾ☆ 例えば金庫とか」

美琴「どこの世界に手作りチョコレートを金庫に隠す女子中学生がいるってのよ?」

食蜂「へー、これ手作りなんだぁー。へー」ニヤニヤ

美琴「ぐっ」



食蜂「でぇでぇ、そのチョコは一体誰に渡すのぉ? 気になるから教えてぇ?」

美琴「嫌に決まってるじゃない! 何でアンタなんかに教えなきゃいけないのよ!」

食蜂「えぇー教えてよぉー、私たち友達でしょー?」

美琴「アンタと友達になった覚えこれっぽっちもないんだけど」

食蜂「おーしーえーてーよぉー、一体誰条さんなのぉ?」グイグイ

美琴「ちょ、ちょっとスカート引っ張んないでよ! ってアンタ絶対誰かわかってるでしょ!」

食蜂「さぁ? 何のことかしらぁ?」

美琴「とぼけんなコラァ! どこでその情報引っ張ってきやがった!」

食蜂「私の能力を使えばぁ、噂程度の手軽さで国家機密を知ることができるわけだしぃ」

美琴「アンタってヤツは……!」

食蜂「てゆーかぁ、そんなことしなくてもわかるわよぉ。大覇星祭のときのあの御坂さんの乙女顔を見れば……ってあら?」

美琴「アーンーターはぁー」バチバチ

食蜂「……というわけで頑張ってね御坂さぁ――ってにぎゃっ!? ちょ、そんな上条さん感覚で電撃撃たないで死んじゃう!」ドタドタ

美琴「うっさい死ねぇ!!」



バチィン!! バリリリッ!! ズガァン!!



教師「コラァ!! 何やっとるか御坂ぁ!!」



~その頃一年生のとある教室~



<バチィン!! バリリリッ!! ズガァン!! <コラァ!! <キャーキャー



湾内「あら? 何だか二年生方の教室のほうが騒がしいですわ」

泡浮「何かトラブルでしょうか? 婚后さんが巻き込まれていなければ良いのですが……」

黒子(……絶対お姉さまですわ)


―――
――




同日 11:50

-第七学区・街頭-



キキィィィィ!! ギュオオオオオオオオオオン!!



浜面「だぁああああああああっ!! くそう!! 寝坊しちまったっ!!」

浜面「まぁ一時間くらい仮眠すりゃいいだろ、って思ったらこれだよ! どうしてあそこで寝てしまったんだ俺ぇ!」

浜面「チクショー! この時間ならまだ間に合うはずだ! とっとと車(盗難)をかっ飛ばして間に合わせなきゃ俺の命が……ッ!?」



信号:赤



浜面「どぉォォォしてだァあああああああああああああああああああああああああッ!!」ガンガン


浜面「どぉしてそこで赤くなるんだ!! もっと青くなれよォ!!」

浜面「このままじゃ間に合うもんも間に合わなくなるじゃねえか!! ふざけんなっ!! マジでふざけんなっ!!」

浜面「あぁぁぁもうどうすんだよこれぇ!! あーあ間に合ってたのにぃーこのまま行ってたら間に合ってたのにぃー」

浜面「……かくなる上は信号無視を――はっ!?」



警備員A「はぁ、今日はいろいろと問題が多い日ですなぁ」テクテク

警備員B「いやーほんとですよねぇ、私本来今日は休日のはずだったんですけどなぁ、はははっ」テクテク



浜面「アンチスキルゥうううううう!! 何で今登場しちゃうの!? 何でこんなに間が悪いの!? もしかして俺ハメられてんの、みんな打ち合わせ済みなのぉ!?」

浜面「ぐぐぐぐっ、このままじゃ、このままじゃ……!」



麦野『遅刻なんてしたら拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された粒機波形高速砲をひたすら避け続ける、リアル弾幕ゲーをしてもらうことになるから』



浜面「」ゾクッ

浜面「ヤバイよヤバイよヤバイよ! 俺の人生マジでジエンドじゃねえか! 俺の残機は一しかねえんだよクソッタレが!」

浜面「……はぁ、もうだめだぁ……おしまいだぁ……。俺の人生、これといって何もせずに終わっていくのかなぁ……ははっ」



信号:青(パッ



浜面「ってこんなことしてる場合じゃねえ!! このままじゃマジで麦野のディバイダー地獄だ!!」

浜面「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 間に合えぇ!! 間に合えええええええええええええええっ!!」



ブルルオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!



―――
――




同日 同時

-第七学区・とあるファミレス-



ワイワイガヤガヤ



絹旗「時間が時間ですので超混み始めてきましたね」

フレンダ「フツーは学校とかで授業受けてる時間なんだけどねー」

絹旗「いるのは大学生や研究者、あとあからさまなヤツらくらいですね」

フレンダ「ま、こっちからしたら学校なんてまったく関係ない訳だけどね」

絹旗「大学生というのは超ラクそうで羨ましい限りです」

フレンダ「学校にも行かずに暗部生活をエンジョイしてる絹旗のセリフとは思えないねー」

絹旗「別にエンジョイなんてしてませんよ。私も彼、彼女らみたいに映画ばっか気楽に見まくれる生活を送ってみたいです」

フレンダ「それだけ聞くと大学生はいつも映画ばっか見てるアホのように聞こえるんだけど……」


滝壺「ただいまー」テクテク

麦野「この麦野様が直々に注いできてやったソフトドリンクよ。ありがたく飲みなさーい?」


フレンダ「ジャンケンで負けたクセに何でそんな偉そうなのさー」

麦野「あん? たしかアンタってオレンジジュース顔面ぶっかけコース希望だったかしら?」スッ

フレンダ「すみません、ありがたく飲まさせていただきます」ハハァー

滝壺「二人は何の話してたの?」

絹旗「大学生が超羨ましいって話をしてました」

麦野「何をどう持っていけばそんな話になるのよ?」

フレンダ「アレだよほら、平日のこの時間帯のファミレスのお客さんってだいたい大学生じゃん」

麦野「まあそうだろうな。高校以下は基本校内でメシ食うのが決まりだろうし」

滝壺「それで何できぬはたは羨ましいなんて思ったの?」

絹旗「気楽に映画鑑賞ができる生活に超憧れます!」キラキラ

麦野「それは大学生が羨ましいんじゃなくてニートが羨ましいの間違いだろ」

絹旗「そうなんですか? 大学生っていつも超遊んでるようなイメージがありますけど」

滝壺「きぬはた。大学生も学生、学生の本分は勉強だよ。別に遊びに行くためにいくところじゃないよ」

絹旗「へー、じゃあ何でこんな平日の昼間から遊んでる大学生を超よく見るのでしょうか? 彼らはいつ勉強してるのでしょうか?」

滝壺「……さあ? 私はまだ大学生じゃないからあまり詳しいことは知らない。たぶん、それぞれ勉強する時間が違うんじゃないかな?」

絹旗「ふーん、そうなんですか麦野?」

麦野「は? 何でそこで私に話を振るわけ?」

絹旗「えっ? だって麦野って大学生……ですよね?」



麦野「私はまだ一応高校生なんだけど」




絹旗「へっ?」

フレンダ「ええっ!?」

滝壺「…………」


麦野「あぁ!? 何だテメェらそのリアクションはぁ!?」

絹旗「あ、いえ、すみません。麦野は正直もっと上かと超思ってました。こう……裏でタバコをすぱすぱ吸ってる感じな」 

フレンダ「いやー格好とかマジ大人っぽいというか何というか……ドレスとか着てワイングラス片手にパーティーとか行ってるイメージだった訳よ」

麦野「テメェら人を何だと思ってやがんだ。今本気で殺意が芽生えてんだけど……」プルプル

フレンダ「ぎゃあーっ! ゴメン麦野許してー!」ガタガタ

滝壺「大丈夫だよむぎの。私はわかってたから、麦野がまだ高校生ってこと」

絹旗「本当ですか? 実は内心大学生とかもっと上とか超思ってたんじゃないんですか滝壺さん?」

滝壺「…………思ってないよ」スー

絹旗「何ですかさっきの間はっ! あと目を超逸らさないでください!」

滝壺「……逸してないよ」スー

絹旗「だったらちゃんと私の目を見てくださいよ目を!」

麦野「テ・メ・ェ・ら」

三人『』ビクッ



麦野「そろそろオシオキ確定、する?」ニコッ



三人『』ガクガクブルブル

麦野「…………」ニコニコ

フレンダ「……そ、そうだ! は、浜面のヤツ何か遅くない?」

絹旗「た、たしかにそうですね。あの野郎こっちが超早く来てるってのに」

麦野「チッ、あんのバカ面が。予想してた通りやっぱり二度寝しやがったか」

滝壺「休日だからしょうがない」

フレンダ(な、何とか話がそれた……)ホッ

絹旗(助かりました……今だけは浜面に超感謝ですね)

フレンダ「結局、下っ端にやる休日なんてない訳よ」

麦野「……今時間は『11:59』か。こりゃシリコンバーン用意しとかなきゃいけないかな?」スッ

フレンダ「麦野。それやるとファミレス出禁ところの騒ぎじゃなくなるよ」

滝壺「……北北西から信号がきてる」





<キキィィィィィ!! <ブオンブオンブオォォォン!!



絹旗「ん? 何ですかこの超うるさい音は? 車……?」

フレンダ「だんだん音がこっちに近づいてくる……ってことは」

麦野「アホ面か!」



<ギュイイイイイイン!! <キキィィィィィ!! <ガチャン



フレンダ「うわっ、すごっ。結構大型のワゴンなのに綺麗にドリフト駐車した!」

絹旗「そして素早く車から飛び出してこちらへ超走って向かってきてますね」

滝壺「時間は?」

麦野「…………」



<ピンポーン <イラッシャイマセオキャクサマ…ッテチョットオキャクサマッ!?



タタタタタタタタタキキィィ!!



浜面「よっしゃあああああああああっ!! こりゃギリギリセーフだろっ!?」



麦野「…………」

フレンダ「…………」

絹旗「…………」

滝壺「…………」

浜面「…………」

麦野「…………」ニコ





麦野「二十三秒遅刻だ。オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・よ♪」





浜面「ちょっと待て麦野ォ! たかが二十三秒だろ? 大目に見てくれもいいだろ!」

麦野「浜面ァ、十二時までに来いっつったよなぁ? それを過ぎてるっつーのにそれで許してくれって面白いことを言うじゃない?」

浜面「いや、本当は間に合う予定だったんだぜ? 何つーか途中信号とかアンチスキルに邪魔されてさぁ」

麦野「言い訳するヤツほど見苦しいもんはねえよな?」

浜面「……そうだよな。わかってるよそれくらい……よし! ほいじゃあ男浜面! 潔くどんなバツでも受けてやるぜ!」

麦野「はいはーい」つシリコンバーン

浜面「スミマセン、やっぱ弾幕ゲーはやめてくれませんか」ドゲザ

絹旗「さっきの超男の宣言はどこにいったんですか?」

フレンダ「だっさ……さすが浜面って訳よ」

浜面「うるせぇぞお前ら! 正直俺はまだ死にたくねえんだよ! こんな特に何もなかった人生のまま幕を下ろしたくないんだよ!」

滝壺「大丈夫だよはまづら。そんな命乞いに必死なはまづらを私は応援する」

浜面「なんとでも言えっ! 俺は生きるッ!!」

麦野「ふーん、何浜面クン? 許して欲しいわけ?」

浜面「当たり前だろ! 俺はそんな死にたがり野郎じゃねえ! まだまだやりたいこととかいっぱいあるんだよ!」

麦野「……だったら許してあげないこともないわよ?」

浜面「本当かっ!? サンキューむぎ――」

滝壺(…………ん?)

麦野「ただし、一つ条件があるわ」

滝壺(これって……まさか……)

浜面「何だよ条件って」

滝壺「! しまっ」


麦野「浜面クンは今日一日私の奴隷な? それならこの遅刻は許してやるよ」


浜面「えっ、そんなことでいいの? よっしゃ、それぐらいなら別に構わないぜ」

麦野「はいそれじゃあけってー! つーわけで浜面、さっさとドリンクバー行って茶ぁ汲んで来い」

浜面「お、おう了解!」タッタッタ


麦野「…………滝壺」

滝壺「何?」

麦野「…………」フフン

滝壺「…………くっ」

絹旗「(……何か早くも超争奪戦が開催されてますね)」

フレンダ「(そだねー、しかし何で二人ともよりによって浜面なんだろうねー? あんなののどこがいいんだか)」

絹旗「(だいたいこういうのは自分でも超わかってないものですよ)」

フレンダ「(ふーん)」


麦野「…………」ゴゴゴゴゴ

滝壺「…………」ゴゴゴゴゴ


―――
――



同日 12:20 ~昼休み~

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



<よっしゃーメシだメシだー! <あー腹減ったー <今日は学食全品百円引きらしいぜー! <行こー行こー



一方通行「Zzz……おァ? いつの間にか昼休みか」

一方通行「さて、昼メシはどォすっかな……」

一方通行「…………」

一方通行「よし、面倒だ。寝よォ」ゴロン


青ピ「アっクセラちゃーん! ボクらぁと一緒に食堂行こーや!」


一方通行「あァ? うっとォしい、消えろ」

土御門「これが勝者の余裕ってヤツだろうにゃー。『負け組のテメェらとは一緒にメシも食いたくねェ』っつーことだろうぜい」

一方通行「ハァ? ワケのわからねェこと言ってンじゃねェ。大体本命一つもらってるオマエのほうがどちらかと言ったら勝ち組だろォが」

青ピ「ほぉ、それは俺も本命チョコ欲しいぃぃっ!! という意味で受け取っても構わないということですねわかります」

一方通行「どォしてそォなる。いらねェよそンなモン、興味ねェっつゥの」

青ピ「で、でたー! 自分はバレンタインなんて興味がねェって言ってるけどそれが逆に意識しちゃってるって意味してることをわかってないや――」

一方通行「長ェ」ゴッ

上条「なぁなぁ、そんなことより早く食堂行こうぜ? 早く行かねーと席埋まっちまうよ」

土御門「ふっ、これが勝者の余裕ってヤツだろうにゃ-。『チョコ食い過ぎてちょっと口がヤバイわー。早く安くなった学食で塩分摂りたいわー』っつーことだろうぜい」

上条「さっきと同じネタやってんじゃねえよ! つーかそんなこと一つも思ってねえし、チョコに飽きてもねえし!」

青ピ「ほぉ、カミやんはまだまだ女の子からのチョコをもらうことを望むと? 死ね」

上条「思ってねえよ! てか、ゴチャゴチャ言ってねえでさっさと行くぞ。ほら一方通行も」

一方通行「行かねェっつってンだろ。話ィちゃンと聞いとけよカスども」


―――
――




同日 12:30

-とある高校・食堂-



ワイワイガヤガヤ



土御門「おーおー案の定いつもより1.5倍(当社比)ぐらいの人だかりだにゃー」

上条「くそっ、やっぱり出遅れてたか!」

土御門「百円引きの効果恐るべし、ってところだな」

青ピ「もうね、アホかと。馬鹿かと。お前らな、100円引き如きで普段来てない食堂に来てんじゃねーよ、ボケが」

上条「いや、それお前にも言えることだろ」

青ピ「お前らな、100円やるからその席空けろと。食堂ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ」

上条「どんだけ食堂で食いてんだよお前。別に食堂そんな殺伐としてねえし、あとそのキモい口調どうにかしろ」

青ピ「カミやんひどい!」

土御門「んー、こりゃおとなしく食堂じゃなくて購買のパンとかにしといたほうが無難かもしれないぜい」

青ピ「ええっー、今日はオムライスの気分で来たのにー! いつもならラーメンとかの気分なのにあえてオムライスの気分で来たのにー!」

上条「テメェはいっつもパンだろうが」

青ピ「いやー食堂って言ったらラーメンやろ? あの安っぽい麺つこうとるヤツ」

上条「知らねえよ。しかしどーしよーかなー、俺も百円引きの学食の予定だったから財布の中身も百円引きだったからなー」

土御門「もういっそのことカミやん、今までもらったバレンタインチョコ食べればいいんじゃないかにゃー。言うなら全部タダってわけだし」

上条「アホか。何が悲しくて昼メシにチョコレートなんて食わなきゃいけねえんだよ。まあたしかにチョコはサバイバルとかでも使えるくらいいいってのは聞いたことあるけど……」

青ピ「でもそんなことしたら見せつけられてる、って思われてクラスのみんなにボッコボコにされるわけやけどなー」

上条「その一言で余計に食いたくなくなったな」

土御門「ま、正直俺はパンでも何でもいいぜい。よぉーするに百円引き効果で手薄になってるから、購買へ仕掛けるほうが得策だってことにゃー!」ダッ

青ピ「そうか! 今ならあのジャイアントコロッケパンとかも売れ残ってる可能性が微粒子レベルで……!? よし、ボクも行くでえ!!」ダッ

上条「テメェはオムライスの気分じゃなかったのかよ! せめてタマゴ系のパンねらえよ!」



ワーワーギャーギャー




上条「…………はあ」

上条「どうすかっかなー? 俺も購買で安いパンでも買って今日をしのぐかなー?」



トントン



上条「ん?」クル

雲川「ふふっ、こんにちは」

上条「あっ、雲川先輩こんちわっす」

雲川「こんなところで会うなんて珍しいけど。お前も百円引きに釣られた口か?」

上条「まあそんなとこっすね。先輩もですか?」

雲川「私がそんな安っぽい奴に見えるか?」

上条「見えないな。どちらかと言ったら百円引きに釣られた庶民どもを笑いに来た、ってところじゃないですかね?」

雲川「あながち間違いでもないけど。で、お前はその庶民どもと一緒に食券求めて行列を並ばないのかな?」

上条「最初はそのつもりだったけどこの通り出遅れちまったっつーわけですよ。そういうわけで今はガラ空きの購買狙いってわけだ」

雲川「懸命な判断だな。今並んだところでお前なら、自分の番になったとたん全品売り切れオア料理を買った瞬間昼休み終了のチャイムが鳴るなんて不幸は目に見えてるけど」

上条「そうっすねー、つーわけで俺そろそろ行くよ。このままじゃこの不幸でパンまで売り切れちまうかもしれませんから」

雲川「まぁ待ってくれ」

上条「何ですか? 俺に何か用でもあるんすか?」

雲川「そりゃ普通用がない人に話しかけたりはしないよ。……でもお前は別なんだけど」

上条「……つまり用があるのかないのかどっちだよ?」

雲川「今日は用があって話しかけたんだけど。まぁ長くはならないと思うから是非とも付き合って欲しい」

上条「いいっすよ。で、どんな用件ですか? 用具室に備品を運ぶの手伝ってくれとか言いやがったら、速攻購買へ逃げますよ」

雲川「私はそんなことは頼まないし、頼まれもしないよ。……そうだな、用というのはまあたぶんお前も察しているとは思うけど」

上条「?」

雲川「前言撤回。そういえばキミは上条当麻だったな。あまりの緊張にすっかり忘れてたけど」

上条「俺に用があんのに俺のことを忘れるってどんだけ緊張してんすか。つーか緊張するようなこと頼む気なのかアンタは!」

雲川「何しろこういう経験が皆無なのでな。知識はあっても経験がない、これほど歯痒いものもないんだけど」

上条「?」

雲川「い、いや待て。経験がない言っても全くというわけではないけど。ただそのときとは状況や思い入れが違うわけだ」

上条「……えっと」

雲川「そもそも相手がどうでもいいおっさんや親族だけだという時点で経験しようにも出来ないけど」



上条「……ちょっと何言ってんのかわからないんだけど。要するに先輩は俺にどういう用なんだ?」

雲川「そ、そうだな。よくわからない言い訳をグダグダ言うより、さっさと実行したほうがお互いのためということになるけど」

上条「んと、まあそうですね。俺もそろそろパン買いたいし」

雲川「……それじゃあこれを受け取って欲しいんだけど。は、はい」スッ

上条「これって……もしかしてバレンタインの……?」

雲川「…………」コクリ

上条「あ、ありがとうございます。というか何で俺なんかに?」

雲川「こんなに日にこんなに心臓をフル稼働させてこんな手作りのチョコを渡す理由なんてそうはないだろ?」

上条「え、えっと……それってつまり――」

雲川「……おっと、今日はこれまでのようだけど。これ以上はキミに被害が出る」

上条「へっ?」

雲川「ま、と言ってもどの段階でここを立ち去ってもキミに及ぶ被害は対して変わらないようだけど」クスッ



青ピ「なーにやっとるかなーカーミやーん」ゴゴゴゴゴ

土御門「俺たちが目を離してる隙に随分とラッキーなイベントに巻き込まれてるじゃないかにゃー」ゴゴゴゴゴ



上条「げっ、青髪ピアスに土御門! いや、これは何つーかその……!」

土御門「あっ、制裁の前にカミやんに一つ言っとかないといけないことがあるんだけどさぁ」

上条「な、何でせうか?」

土御門「購買のパンなぜだか全部売り切れたぜい、コッペパンすら」

上条「……は?」

青ピ「おもろいこともあったもんやなー、というわけでカミやん? 覚悟はいい?」





上条「ふっ、不幸だァああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」





雲川「……ふふっ、やっぱりこの学校は刺激に溢れて面白いところだけど」


―――
――



【悲報】主人公、出番がワンシーンのみ、なおヒロインは……


今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございます

一方さんとあわきんの出番が少ないのは話の都合上だからしょうがないね
てか、本編より再度ストーリーのほうが量が多いような気がしてきた……


ではではノシ

すみません、ちょっと報告です
今忙しくてあまり書き進められないのと、書きたい量に比べ残りレス数が足りているのかわからない状態です
あまり次スレに引き継ぎとか個人的にしたくないので、できればこのスレ以内に終わらせたいです
なので最後まで全部書き溜めて、調整した後に投下したいと思っています
ペースがクソみたいになるかもです絶対に今月中に終わらせるのでよろしくです

ではではノシ

すみません報告です
今ちょっと忙しくて書く時間があまりとれていない状況にあり、さらに書きたい量に比べ残りレス数が足りてるかわからない状態です
できれば次スレに持ち越しとかはやりたくないのでこのスレ以内に終わらせたいです
なので最後まで一気に書き溜めてから調整しつつ投下したいです
投下ペースがガタ落ちってレベルないくらい遅くなるかもですが、今月中には必ず終わらせるのでよろしくお願いします
ではではノシ

   _,,....,,_  _人人人人人人人人人人人人人人人_
-''":::::::::::::`''>   ゆっくり書き溜めてね!!!   <
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
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_,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7   'r ´          ヽ、ン、

::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `ヽ/`7 ,'==─-      -─==', i
r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,' ,ゝ レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
`!  !/レi' (ヒ_]     ヒ_ン レ'i ノ   !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i |
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 (  ,ハ    ヽ _ン   人!      | ||ヽ、       ,イ| ||イ| /
,.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イ  ハ    レ ル` ー--─ ´ルレ レ´



同日 12:40 

-とある高校・一年七組教室-


吹寄「……さて、そろそろ半日が経つわけだけど……いい加減渡す算段は出来たかしら?」

結標「ううっ、じ、実はまだ一つも考えてないです、はい」

姫神「私はバッチリ出来た。あとは時を待つだけ」

吹寄「というわけで結標さん、いい加減覚悟決めなさい。いつ考えるにしても渡すの今日だということは変わりないんだから」

結標「そ、そうだけど、何というか……その、渡すシチュエーションを想像するだけで頭の中がグチャグチャになるっていうか……」

吹寄「どんだけ想像力豊かなのよ……」

姫神「たぶん。例の完璧なシーンを見てしまったせいだと思う。自分の中で勝手にハードルを上げてしまっているのかも」

吹寄「別に気にしなくてもいいのに……さっきも言った通り大事なのは自分らしさよ?」

結標「自分らしさって言われても……正直何が自分らしいかなんてわかんないわ」

姫神「自分らしさというのは。たぶんだけど。自然体っていう意味だと思う」

吹寄「そうよ。いつもどおり行けば大丈夫よ」

結標「いつもどおり……じゃあこんな感じかしら!?」



結標「へいへーいアクセラちゃーん! ちょろーっと私のチョコレート食べてみなーい?」アセアセ



結標「どうかしら!?」

吹寄「果てしなくキャラが違うんだけど! あなたはいつもそんなじゃないでしょ!?」

姫神「駄目。悩みすぎて頭がおかしなことになってる」

結標「違うのか……それなら」



結標「私のチョコを食えぇー!!」アセアセ



吹寄「だからキャラが違う! てかテンパり過ぎでしょいくらなんでも!」

姫神「これはひどい」





ワイワイガヤガヤ



一方通行「Zzz……あン? 何だか騒がしいな」ムクッ



結標「このチョコレート、普通なら980円のところ、私の愛と一緒にを付けまして……ゼロ円! ゼロ円です!」アセアセ



吹寄「お金取るつもりだったの!?」

姫神「自分らしさを見つける話から。だんだんボケてツッコミいれるコントみたくなってきてる気がする」



一方通行「…………何やってンだアイツら?」

青ピ「ただいまぁー! アクセラちゃーん!」

土御門「今日の昼メシは焼きそばパンだにゃー!」

上条「……不幸だ」ボロッ

一方通行「あァ? 何だァオマエら食堂でメシ食うとか言ってねかったか?」

土御門「にゃっはー、ちょっと出遅れちまって並ぶの面倒だったから購買で買ってきたにゃー」

青ピ「カミやんは安定の買えないという不幸で今日の昼食はなしなんやけどなー」

一方通行「コイツの不幸はそれだけじゃなさそォだな。その様子からすると」

青ピ「不幸? はっ! あんな美人の先輩にチョコもらうのが不幸とは面白すぎる冗談やでえ」

一方通行「美人の先輩? 誰だそりゃ?」

土御門「雲川先輩だにゃー、美人で巨乳で黒髪ロングが似合うクールでミステリアスな」

一方通行(雲川か……一体どォいうつもりだ?)

青ピ「で、アクセラちゃんはどーやったん?」

一方通行「どォって何がだ?」

青ピ「ボクらがおらん間新しいチョコは手に入ったんか? 死ね」

一方通行「オマエらが帰ってくるまで寝てたからンなモンもらってねェよ。オマエが死ね」

土御門「ま、つまり昼休みでの勝ち組はカミやんオンリーってことだにゃー」

上条「いや、そんなことより俺の昼メシをどうするかを話し合わねえか? マジで腹減ってきたんだけど」

一方通行「雲川からもらったチョコレートでも食ってろ」


―――
――




同日 13:30

-第七学区・とあるホテルの一室-



黒夜「……すぅ……すぅ」Zzz



カチッ、カチッ、カチッ



黒夜「…………むにゃ」Zzz



カチッ、カチッ、ピピピッ! ピピピッ!



目覚まし時計『クロにゃーん! 朝だよおき――』



ゴパァ!! ガシャン!!



黒夜「うっぜェ、誰だこンなところに騒音グッズ置きやがったヤツ」

黒夜「…………朝、いや昼か……」ムクリ

黒夜「…………」ボー

黒夜「……とりあえず、適当にコンビニにでも行って昼メシとするかねーと」スタッ



-第七学区・とあるコンビニ-



黒夜「さーて、何食べようかな……ん?」



『今日はバレンタインデー! 日頃の感謝を伝えよう!』



黒夜「……そーいや今日バレンタインだっけか」

黒夜「バレンタインなんざくっだらねー。何が楽しくて他人にチョコレートなんて渡さなきゃならねーんだ?」

黒夜「そもそもバレンタインなんていうお菓子会社の陰謀に乗るヤツなんて馬鹿しかいねーよ」

黒夜「…………」

黒夜「なぁに私は独り言呟いてんだアホ臭っ。今日は鶏肉の気分だからフライドチキンにしよ……って売り切れだとッ!? ふざけンな!」

黒夜「…………まぁ、たまにはフランクフルトでもいいか。フランクフルト一本」



<アリガトウゴザイマシター



黒夜「さて、適当にブラつきながら食いますかー」テクテク



ウイーン




-第七学区・街頭-


黒夜「あー、しっかし暇だなー」パクッ

黒夜「…………」モグモグゴクン

黒夜「何か知んねーけど今日はグループの仕事ないからなー」パクッ

黒夜「…………」モグモグゴクン

黒夜「……ま、別にその分私がラクできるからいいけ――」パクリ



番外個体「クーローにゃん♪」ガシッ

 

黒夜「もがっ!?」バチィ

番外個体「おっーと抵抗しても無駄だぜー? 既にクロにゃんのカラダのコントロールはミサカがいただいた! まぁ、もともとクロにゃんはミサカのモノだけどねー」バチバチ

黒夜「あがっ、ふぁっ、むがっー!」モガモガ

番外個体「んー? 何かなクロにゃ……っておおっー! 何かクロにゃんの口にぶっとい肉棒がッ!」

黒夜「あふっ、ふっ、ああぅ!」フガフガ

番外個体「コイツはエロいぜゴクリ……写真撮ってモザイク加工してネットに流出させるべきだね、うん」

黒夜「ふがぁー! ぐがぁー! ふぁえー!」

番外個体「えっ? なんだって? ミサカちゃんと日本語で喋ってくれないとわかんなーい」

黒夜「んんんんんんっ!! んんんんんんんんんんっ!!」

番外個体「もーちゃんと喋られないことぐらいわかってるからそんな怒んないでよー……って何でそんな涙目になってるわけさ?」

黒夜「…………」ブワッ

番外個体「えっ、まさかのマジ泣き!? どーしたのクロにゃん何があったの!? まさかどっかのロリコン豚野郎に犯されっちゃったの!? うまく歩けなくなってるの!?」

黒夜「うっ…‥うえっ……」

番外個体「と、とにかく一度公園のベンチ辺りで休もう! そうだとりあえずクロにゃんのカラダ解放しないと……!」ビリビリ

黒夜「…………!」




黒夜「おえええええええええッ!! 辛っええええええええええええええええええええええええええッ!!」ジタバタ




番外個体「…………え?」





-第七学区・とある公園-


番外個体「――ふむふむなるほどよーするに、フランクフルトに付いてたマスタードがずっとミサカのせいで固定された舌に当たってて涙目になってたわけかー」

黒夜「チッ、そういうわけだ。つまりアンタがいなきゃこんなことにはならなかったってことだな、詫びろ番外個体ォ」

番外個体「メンゴメンゴ、まさかこんな面白いことになるなんて思わなかったからさー、今度からはちゃんと確認してからカラダの制御奪うね☆」

黒夜「謝る気も反省する気も改める気もねーな。うっとおしいヤツ」

番外個体「ミサカは悪い子だからね。しょうがないしょうがない」

黒夜「しょうがなくねェよ! ぶっ殺すぞテメェ!!」

番外個体「そーいえばクロにゃん、たしか暇人だったよね? ミサカも暇だからちょっと遊ぼーよ」

黒夜「華麗にスルーしてくれてンじゃねェよ! てか誰が暇人だゴルァ!!」

番外個体「ええっー? だってこんな時間に野外で肉棒咥えてる人が暇じゃないわけがないじゃん」

黒夜「言い方もう少し考えろ! 何かそれじゃあ私が昼間っから発情してる雌豚みてえじゃねーか!」

番外個体「じゃあエロにゃんは暇じゃないってこと?」

黒夜「誰がエロにゃんだ! と・に・か・く、私は暇じゃない! アンタみたいなのと遊ぶ暇なんてないよ」


ボイスレコーダー『あー、しっかし暇だなー。何か知んねーけど今日はグループの仕事ないからなー』


黒夜「…………」

番外個体「…………」ニヤニヤ

黒夜「何が目的だテメェ」

番外個体「ミサカはクロにゃんと仲良くしたいだけだよ?」

黒夜「……チッ、わかったわかったよ。面倒臭せェけどアンタに付き合ってやるよ」

番外個体「わーい、まあもともとクロにゃんには選択肢なんてないんだけどわーい」

黒夜「で、何して遊ぶんだよ? 愉快に楽しく殺し合うか?」

番外個体「えー、そんなことしても面白くないじゃん。レベル99の勇者でスライムぷちぷち捻り潰すくらい」

黒夜「どォいう意味だ……それ?」イラッ

番外個体「そーいうわけでクロにゃんと戯れるのはまた別の機会にするよ」

黒夜「だったら何するつもりなんだよ? 面白くねェ提案だったら私はアジトに帰るぞ?」

番外個体「うーんそだねー、海原にイ・タ・ズ・ラ・するのはどう?」 

黒夜「……ほう、ソイツは実に面白そうな提案じゃねーか」ニヤッ

番外個体「でしょ?」ニヤニヤ

黒夜「内容はどうする? ゴキブリの大群でも頭からぶっかけるかぁ? それともアイツの持ち物の中に猫の死体でも入れるかぁ?」

番外個体「……………」ゴッ

黒夜「痛っ! 何しやがる!」

番外個体「別にぃー、何か無性に腹が立ったから殴っただけだよ」

黒夜「何つー理不尽な……」

番外個体「まぁそのイタズラの内容についてはもう考えてあるよ。せっかくだし今しかできないことをやろう」

黒夜「今しかできないこと? それはつまりどういうことだ?」

番外個体「もぉークロにゃんは鈍いなー。今日は二月十四日。つまりバレンタインデーを利用したイタズラにしようぜ!」

黒夜「ば、バレンタインデーだァ!? 何でここでそンな言葉が出てきやがンだ!?」

番外個体「一年に一回のイベントなわけだし、どーせだからいろいろこじつけたイタズラがいいじゃん」



黒夜「ケッ、だいたいバレンタインを利用してどんなことができるってんだよ。プレゼントの中に爆弾でも仕掛けんのか?」

番外個体「そーだ! ここはクロにゃんが一肌脱いで『私をタ・ベ・テ・♪』的なドッキリを……!」

黒夜「断る。得するのはその滑稽な光景を見て笑うアンタだけな上に、身を削るのは私だけだ」

番外個体「ほほぅ、つまりミサカも脱げばクロにゃんも脱ぐ、と?」

黒夜「そういう話をしてんじゃねえよ! つーか脱がねえよ!? どんな状況になってもな!」

番外個体「ちっ、じゃあクロにゃんがバレンタインにかこつけて海原に告白するというドッキリで――」

黒夜「だから何で私が必ず犠牲になってンだよ! ふざけンじゃねェぞ番外個体ォ!」

番外個体「クロにゃん。何かを得るためには何かを犠牲にしなきゃいけないんだよ」

黒夜「私は何も得られてねェンだけどォ!? オマエしか得してねェンだけどォ!?」

番外個体「もう、クロにゃんはわがままだにゃーん。何でもかんでも文句言ってー」

黒夜「アンタの言うことは全部私に被害がいってんだよ! 拒否して当たり前だろ!」

番外個体「しょうがないなー、だったら各自勝手にチョコ作って海原に渡そうぜ。それならクロにゃん損ないでしょ?」

黒夜「は、ハァ!? 何をどこでどォ妥協すればそォいう答えが出るンだ!?」

番外個体「んー、誰も犠牲ならないイタズラがお望みなんでしょクロにゃん的には」

黒夜「い、いやそれはそォだろォけど……やっぱオマエの考えがよくわかンねェよ」

番外個体「ま、そういうことだから。時間がないからこれからお別れだね。また時間は連絡するからそれまでに作っといてねー」

黒夜「は? や、だから何で作らなきゃいけね――」

番外個体「作ってなかったらオ・シ・オ・キ・だからねー。ほいじゃー、バイビー」タッタッタ

黒夜「オイふざけンな!! 待ちやがれ番外個体ォおおおおおおおおおおッ!! っていねえどこいったアイツゥ!!」

黒夜「……どうしよう、これってアレだよな? この私が海原なんつーナヨナヨ野郎なんかにバレンタインのチョコ渡さなきゃいけねえってことだよな?」

黒夜「…………面倒だからコンビニで適当にポッキーでも買って渡しゃいいだろ。ってそもそも買ってやる義理もねえんだけどさ」

黒夜「だいたいこれのどこがイタズラなんだ? まったくアイツの考えてることはわからないな」



ピピピピッ! ピピピピッ!



黒夜「あん? メール? 誰からだ……」ピッ


From:番外個体

Sub :そーいえば言い忘れてたけど

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

コンビニとかで適当にポッキーとか買ってもダメだよ?

もしそんなことしたらクロにゃんの体中の穴という穴に

ポッキーぶっ刺しちゃうよ♪

だ・か・ら、手作り限定そいじゃーよろしくー(^^ゞ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


黒夜「」


―――
――




同日 14:40 ~七時間目前休み時間~

-とある高校・一年七組教室-



結標「決めたわっ! 私のチョコレートを渡すシチュエーション!!」バッ



吹寄「うん、と言ってももう七時間目よ? 後半戦の中でも終盤よ? 遅くないかしら?」

姫神「考えたと言っても。だんだんと選択肢が少なくなってきたから。仕方がなしに決めた感じがする」

結標「まだ何一つ発表していないのにひどい言われようね……」

吹寄「じゃあどういうシチュで渡すの? やっぱり無難に校舎裏とかそういう感じ?」

結標「いや違うわ。私がそんな安直な考えをするわけないじゃない」

吹寄「すごい自信ね。さっきの数学の授業で当てられてどこの問題を答えればいいのかわからなくて、開いてたページの問題をわざわざ全回答したかいはあったようね」

姫神「実は次のページのことを聞かれてて。結局怒られていたんだけどね」

結標「いやー、あははー」

吹寄「では、数学を犠牲に生み出した自信満々の作戦をどうぞ!」



結標「放課後の通学路で渡します!!」バン



吹寄「……あ、うん」

姫神「…………」

結標「あれ? 何この薄いリアクション!」

吹寄「いや、本当に苦肉の策で来るとは思わなくて……」

結標「く、苦肉じゃないわよ! 放課後の帰り道って結構いいと個人的に思うんだけど! 最初から最後まで同じ道だから事実上二人きりになりやすいだろうし!」

姫神「まあ。でも。普通の作戦には変わりない。私も人のことは言えないけど」

吹寄「ちなみに姫神さんはどうするの?」

姫神「放課後呼び出す→二人きり→渡す→終わり」

結標「何よ。姫神さんも私とあんま変わらないじゃない」

姫神「ふふっ。甘い。私は早い段階でこの作戦を立てていた。つまり何度もシミュレーションを脳内でしたということ……!」

結標「な、何だってー!?」

姫神「今さら決めたようなあなたとは経験の差が違いすぎる」フフン

結標「ぐぬぬ……言い返す言葉がないわ」

吹寄「いや、経験の差って両方まだ経験してないじゃない。差も何もあったもんじゃないわよ」

姫神「まあ。何回シミュレーターションしても。本番になったらあまり意味ないんだけどね……」ズーン

結標「それに関しては同意するわ……」ハァ

吹寄「……まあ、ここから先は頑張ってとしか言いようが無いわね」


―――
――




同日 15:00

-第七学区・とあるファミレス-


絹旗「――ということになって、最終的に主人公にお寿司にされちゃうって展開なんですよ!」

フレンダ「うわー、いかにもつまんなさそうな映画のことをよくそんな楽しそうに話せるよね」

絹旗「これだから素人は。批判というものはそれを超見てからしてください」

フレンダ「そんなもんで華の女子高生生活を無駄にしたくないって訳よ」

麦野「暗部にいる時点で華もクソもねーだろ」

絹旗「他にも最近見直した映画があるんですが、それではラスボスは豆にされて超倒されちゃってました」

フレンダ「何で結末から話しちゃうかなー? まずないだろうけどそれじゃあその布教活動に引っかかってくれる人いないよ?」

絹旗「すみません。ついつい超熱くなってしまいました。でもあのとき流れてたBGMは超本当に笑えましたよ」

滝壺「大丈夫。ツッコまれても話を続けるそんな一生懸命なきぬはたを私は応援してる」

浜面「あ、そーいや俺見たことあるかもしんねえな、その映画。結構前にしてた映画だよな?」

絹旗「おおっ! こんなところに同志がいましたか! 放映当時であのCGはなかなかだと超思いませんでしたか!?」バッ

浜面「そんな細かいところまで覚えてねえよ! それと見たことあるってだけで勝手に同志にすんな!」

麦野「浜面。肩もみ止まってんだけど」

浜面「いや、あのー麦野さん? そろそろ俺の手も疲れてきたというかー、喉も結構渇いてきたというかー」

麦野「あん? 奴隷のクセに何口出ししてんだ? つべこべ言わずに手ぇ動かす」

浜面「は、はいー!」モミモミ

絹旗「しかし浜面もすっかり下っ端、もとい奴隷が超板に付いてきましたね」

フレンダ「最初はスキルアウトの元リーダーうんぬんとか言ってたよねー? こっちからしたらだから何って話な訳だけど」

麦野「懐かしいねー。ま、板に付いてきたというよりはもともとそーゆーヤツだったってことじゃない? 浜面、私の鞄から携帯取って」

浜面「おい、普通に手に届く位置にあんじゃねえか! 自分で取れよ!」

麦野「一日奴隷」

浜面「へい……」スッ

滝壺「…………」ムス

フレンダ(……あからさまに滝壺の機嫌が悪い。隣に座ってるから余計に気不味いって訳よ)



ワイワイガヤガヤ



絹旗「……しかし、大学生というのはほんといつ超勉強してるんですかねー? さっきからずっと騒いでるじゃないですか」

麦野「今日は講義ってヤツがないんじゃない? それか卒業諦めてヤケになって遊んでる馬鹿ども」

浜面「ひでー言いようだな」

麦野「つまりアンタみたいなのをそのまま大学生に繰り上げただけのヤツらってことでしょ?」

浜面「うっせぇ! 学校なんて行かなくても生きていけんだよ!」

絹旗「……しかし卒業を諦める、ですか? あまり理解できない言葉ですね」

麦野「まだ中学生の絹旗ちゃんにはカンケーのない話よ」

フレンダ(……! そうだ! いいこと思いついたって訳よ!)



フレンダ「浜面浜面」

浜面「あんだよ?」


フレンダ「麦野って何歳に見える?」


絹旗「なっ!?」

滝壺「…………」

麦野「あぁ?」

フレンダ「……ふふふ」


フレンダ(悪いけど浜面には滝壺のためにここで華々しく散ってもらうって訳よ。というか正直麦野取られて悔しかったし)


浜面「……え、えっと、ええ?」

フレンダ「ほらほら早く答えて答えてー!」

麦野「フ・レ・ン・ダー」ゴゴゴ

フレンダ(ひっ!? 麦野からのプレッシャーがキツイ……! けれど耐えねば……)


浜面「ええっと……十八歳? 高三の」


麦野「!」

フレンダ「へっ?」

絹旗「うん?」

滝壺「…………」

浜面「……あれ? 何この雰囲気? 俺なんか変なこと言ったか?」

絹旗「いえ、別に間違ったことは言ってませんが……ただ」

浜面「ただ?」

絹旗「先ほど私含めて、ここにいる人たちが全員が麦野のことを超大学生くらいだと思っていた、という話で一悶着ありまして」

滝壺「ちょっと待ってきぬはた。私はむぎのが大学生くらいなんて一言も言ってない」

絹旗「まあ、そういうわけです。初見で麦野のことを見抜いた浜面は超変態というわけです」

浜面「何でだ! ……ってことはもし俺が変なこと言ってたら……」

絹旗「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い、されてましたね……」

浜面「……そうか」


浜面(あ、危ねえええええええええええええええええええええ!! 何の気もなく『ベテランOLさんに見えるッ!!』とか言わなくてよかったああああああああああああああああああ

あああッ!!)

浜面(前、たまたま麦野の学生証を見たことがあったのを覚えててマジでよかったああああああああああああああああああああああっ!!)


麦野「……浜面」

浜面「は、はひぃ!?」

麦野「アンタさっき喉乾いたとか言ってたわよね? この私が持ってきてあげようか? 何がいい?」

浜面「え、え、いやいいよ。それくらい自分で持ってくるって」

麦野「だったら私のあげようか? アンタ炭酸とか好きでしょ? ほらコーラよ、もちろん飲みかけだけどにゃーん♪」スッ

浜面「いやいやいやいやいいですよ!? そんな麦野様のお飲み物なんてワタクシめごときがモッタイナイでございますわよ!」



絹旗「……すごく機嫌が良さそうですね、麦野。語尾に超音符とか付けてそうです」

フレンダ「そ、そだね」

絹旗「ところでフレンダはなぜ一度踏んだ地雷をまた超踏みに行ったのですか? 私には理解できないのですが」

フレンダ「い、いやちょっとねーあははー」

フレンダ(まさか一発で当ててここまで麦野にデレさせるなんて……浜面仕上、恐ろしいコ!!)

滝壺「…………はぁ」ドヨーン

フレンダ(…………そして、さらに機嫌の悪くなる滝壺だった)


麦野「……さて、時間もいいぐらいだろうしそろそろ始めようかしら?」

絹旗「そうですね。小腹も超空いてきましたし」

滝壺「うん」

フレンダ「オッケー!」


浜面「ん? 何が始まるんだ……? つーか今日って何の集まりなんだ?」

麦野「何ってそれは浜面君一番わかってることじゃないかにゃーん?」

絹旗「二月十四日。つまり超バレンタインというわけです」

浜面「ば、バレンタイン? そ、そういやそうだったな。朝いろいろありすぎて頭から飛んでたぜ」

フレンダ「とか言って内心本当は期待してたんじゃない? いつもキモイことしか考えてないし」

浜面「別に考えてないよ!? つーか勝手にそんなこと決めつけてんじゃねえよ!」

滝壺「大丈夫だよはまづら。そんなはまづらを私は応援してる」

浜面「頼むから応援しないでくれ滝壺ー! ……って待てよ。バレンタインってことは今回の集まりはもしかしてわざわざ俺のために――」


麦野「んなわけねーだろうが、馬鹿かテメェは……あっ、そういや馬鹿だったな」

絹旗「これだから超浜面は……」ヤレヤレ

フレンダ「結局、そんなことしか考えられないよね浜面って……」

滝壺「大丈夫だよ。内心はまづらのこと馬鹿にしてるところもあるかもだけど、私ははまづらのこと応援してるから」


浜面「くそぅ……さすがの俺でもハートブレイク寸前だぞマジで」グスン

絹旗「ま、何も知らない浜面に超説明するならアイテムは毎年バレンタインデーはみんなで集まって、それぞれお菓子を持ち寄ってわいわいしよーって感じのイベントをするんですよ」

フレンダ「ちなみにそれは市販で売ってるヤツでもいいし、わざわざ手作りとかしてもどっちでもいいっていうルールなわけよ」

滝壺「ちなみにさっききぬはたは毎年と言ったけど、実際はまだこれ二回目だから」

絹旗「どうせこれから毎年恒例になってくるはずですから、別にいいではないですか」

麦野「つまりそーいうわけ。わかったかしら浜面?」

浜面「まーなんとなくわかったよ。よーするにいつも駄弁ってるときとあんま変わんねえってことだろ?」

麦野「まぁそうなるわね。持ってくるお菓子がバレンタインっぽいものに制限されてること以外は」

浜面「……ってことはお前ら全員チョコやら何やら持ってきてるってことか?」



絹旗「はい」ドサッ

フレンダ「当たり前って訳よ」バラバラ

滝壺「…………」カチャ

麦野「ほいっと」ガサガサ


浜面「……テメェらいい加減にここがファミレスだっつーことを理解しろよオイ!」


フレンダ「ええっー、正直それって今さらな話じゃん!」

絹旗「見てくださいよここの店員さんたち。もう慣れてるので私たちが超何をしようとノーリアクションですよ」

浜面「諦められてるだけじゃねえか! てか、お前らには居住性バツグンのアイテムのアジトがあんだろ! そこでやれよ!」

麦野「あん? 何でそんなとこまでわざわざ行かなきゃいけないわけ? ご飯食べるときくらいファミレスでいいだろ」

浜面「ドリンクバー以外全部持ち込みのくせに何でこんなにエラそうなんだよ……」


麦野「はいはーい! いちいちツッコまないと気が済まない浜面はほっといってさっさと始めちゃいましょう」


三人『わーわー!』

浜面「何これッ!? 俺が間違ってんの!? 俺が空気読めてないだけなの!? ねえ!」


絹旗「ではまず私から超行きましょう! 今回は私は皆さんで摘めるようにチョコチップクッキーを超作ってきました!」


フレンダ「おおっ! 絹旗今回は手作り? すごいじゃん!」

絹旗「私だって料理ぐらい超できるというところをそろそろアピールしなければならないと思いまして」

浜面「……しかし量が尋常じゃねえな。十人分ぐれーあるんじゃねえのか?」

絹旗「材料が余ってしまったので超もったいないから使い切ってしまいました」

浜面「にしたって限度があるだろ……」

麦野「まぁ別に食べきれなくてもクッキーだから、明日の明日で腐るみてーなことはないでしょ」

滝壺「……うん、美味しいよきぬはた」モグモグ

フレンダ「あっ、滝壺フライングってわけよ! 私も食べる!」バッ

絹旗「そんなに慌てなくても量だけはまだ超ありますよ」

浜面「……じゃ、じゃあ俺も……」

絹旗「えっ? 浜面超手なんか出して何をするつもりですか?」キョトン

浜面「何なのこれ! やっぱり俺だけ除け者にされんの!? 目の前で美味しそうにパクパク食べられてるのを黙って指くわてなきゃいけないの!?」

絹旗「嘘ですよ浜面。どうぞ食べてちゃってください」

浜面「い、いいのか……? じゃあいただきまーす!」パクッ

絹旗「…………」ワクワク

浜面「……おおっ! 普通にうまいな! 市販のヤツなんか目じゃねえくらい」

絹旗「そ、そうですか……それは超良かったです!」ニコッ

滝壺「…………」

フレンダ(ま、またプレッシャーが強くなった気がする……。まさか絹旗にまで……?)



麦野「えーと、じゃあ次は――」

滝壺「私の番だね」

浜面「滝壺か。一体何を持ってきたんだ? 楽しみだなー」

滝壺「……! 私は今日はこれを持ってきた」バッ

浜面「これって……カップケーキか? 滝壺らしいお菓子だな」

滝壺「いろいろとアレンジしやすくて便利だし、作るのも簡単だよ」

浜面「たしかにいろいろなのあって壮観だな。フルーツ埋め込んでるヤツとかいろいろ装飾されてるヤツとか」

フレンダ「た、滝壺まで手作りだと……? む、麦野はもちろん市販の何かだよね?」

麦野「あん? 私はこれ作ってきた。生チョコってヤツね」パカッ

フレンダ「」

浜面「すげえ! なんか高級っぽい!」

絹旗「生、って聞くと超難易度高そうに聞こえますね……」

麦野「別に大したことないわよ。溶かしていろいろ混ぜて固めただけよ」

フレンダ「な、何でみんなそんなマジで作ってきてんの……? 結局、これがバレンタインマジックってヤツな訳?」

滝壺「何言ってるのふれんだ? 別にそんな大したものじゃないよ」

麦野「そーそー。ま、せっかくだし久しぶりに菓子でも作ってみるかー、って感じのあれ。暇つぶしみたいなもんよ」

絹旗「そういえば二人の作ってきたものはそれぞれ超個装されてるようですね」

滝壺「うん、作ってるものがこれだからね」

麦野「絹旗みたいなお手軽お菓子じゃないから厳重に包装されるってことよ。ま、その分持ち運びとかには便利だと思うわよ」

滝壺「そういうわけだからみんなに配るね。はいはまづら」スッ

麦野「ほらっ、奴隷さん? せいぜい私の手作りチョコ食べて泣いて喜ぶことね」スッ

浜面「お、おうサンキューな二人とも」

滝壺「はい、きぬはたにふれんだ、むぎのも」スッ

麦野「別に不味かったら不味いって言ってもいいわよ? 生チョコなんて初めて作ったし」スッ

絹旗「ありがとうございます、麦野に滝壺さん!」

フレンダ「あ、ありがと……ん?」

浜面「しかし二人ともすげー作りこんでんな。こりゃ結構期待できそうだ!」

フレンダ(な、何か浜面の分だけやけに豪華なんだけど……?)

絹旗「二人とも超美味しいですよ! さすがですね!」


麦野「別にぃー、こんなん適当に作ってりゃできるっての」ゴゴゴゴゴ

滝壺「うん。所詮は普通の料理の延長。普通にしていれば何の問題もない」ゴゴゴゴゴ


フレンダ(……見えないところで戦ってるんだろうなこの二人は……)

絹旗「ちなみにフレンダは何を持ってきたんですか?」

フレンダ「ん? すぎのこ村のファミリーパック」

絹旗「何できのこでもたけのこでもないあえてそれを超選んだんですか! てかそんなものよく売ってましたね!?」


―――
――




同日 15:15

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-


禁書「…………」モグモグ


テレビ『さて、来週の超機動少女カナミンは?』


禁書「…………」モシャモシャ


テレビ『魔女狩り十字軍の手によって悪者になっちゃったイソギンチャクさんに翻弄されるカナミン!』


禁書「…………」ゴクゴク


テレビ『お願い、負けないでカナミン! あなたが今ここで倒れたら、あの子やみんなとの約束はどうなっちゃうの?』


禁書「…………」ボー


テレビ『魔力はまだ残ってる。ここを耐えれば、魔女狩り十字軍に勝てるんだから!』


禁書「…………」ナデナデ

スフィンクス「にゃぉぉ」


テレビ『――次回『カナミン死す』。デュエルス――』


禁書「…………よし!」スタッ


テレビ『この番組はごらんのスポンサーの提供でお送りしました』


禁書「行こ、スフィンクス!」スッ

スフィンクス「にゃー?」



タッタッタ、ガチャリ!



―――
――




同日 15:30

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


数多「……あー、しかし暇だわー何もすることないわー」

ヴェーラ「社長、お茶です」コトン

数多「おっ、サンキュー」スッ

ヴェーラ「いえ」

数多「……ぷはぁ、しっかしマジで暇だわー。一方通行にボコされたヤツが腹いせに俺んところに仇討頼まねぇかなー? そしたらちっとは暇つぶしになんだろうになー」



タッタッタッ、ガラララッ!



円周「話は聞かせてもらった! 数多おじちゃんは滅亡する!」


数多「あん? するわけねーだろ。つーか、こっちにバタバタ走ってきやがって何か用かクソガキども」

打ち止め「ふふふ、聞いて驚くことなかれ! ついに例のモノが完成したのだ! ってミサカはミサカは誇らしげにピースサインを出してみたり!」

数多「例のモン? あぁ、キッチンに二人で篭って作ってたモンのことか」

円周「そう。甘いモノ大好き甘いモノは別腹な女の子のために私たちが最強のチョコレートを開発する計画……」


円周・打止『それが『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』!!』


数多「どうでもいいけどちゃんと後片付けしろよ。使う前より美しくってなぁ」

打ち止め「もう! どうしてキハラはそんなリアクション薄いの? もっとミサカたちに興味を持とうよ、ってミサカはミサカは不満をぶちまけてみたり」

円周「そうだよ数多おじちゃん。何か何でもかんでも興味ないって言ってる最近の若者みたくなってるよオッサンなのに……」

数多「誰がオッサンだ。大体よぉ、何が『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』だ。バレンタインっつーのは誰かしらに送りモンをするもんだろうが」

数多「それなのにお前らときたら……女のためとかほざきながら結局は自分らのことしか考えてねえわけだ。言うなら自分へのご褒美とか言って鞄とかアクセサリーとか買って自己満足

する行き遅れ共と同じ発想なわけだ」

ヴェーラ「うっ」ズキ

ナンシー「ぐはっ」ズキ

円周「そんなこと言われても私たち子どもだからわかんないよー。若干二名ほどダメージを受けてるみたいだけど」

打ち止め「まあ変な屁理屈言ってる暇があったらこのプロジェクトによって作られたスーパーチョコレートを食ってみろって話だよ、ってミサカはミサカはガラステーブルの上にチョコ

レートを広げてみたり」パラパラ

数多「変なモンテーブルに広げんなクソガキ……うおっ、何だこのクソ甘い香りィ!?」

円周「私たちが研究開発したスーパーデリシャスチョコレートですけど何か?」

数多「そんな産廃取り出してきてんじゃねえよ。今すぐ三角コーナーへぶち込んでこい」

打ち止め「ええっー? 少しくらい食べてくれたっていいのにー、ってミサカはミサカは憤りを感じてみたり」プンスカ

円周「しょうがないよ打ち止めちゃん。こんな冴えないオッサンじゃこのスーパーデリシャスミラクルチョコレートなんて高尚すぎて口に入れることすら許されないんだよ」

数多「あぁん? 逆だろ逆。テメェらのゴミが格下、俺が格上オッケェー?」

円周「まーまー、そういう御託はいいから早く食べてよ。このスーパーデリシャスミラクルスペシャルチョコレートを」

打ち止め「そうだよ。いちいち文句ばっかり言ってもしかして反抗期抜けてない? ってミサカはミサカは少し心配になってみたり」

円周「いまさらだねー、こんな自己主張の激しい格好をした人が反抗期はおろか中二病さえ抜けてないわけないよ」

数多「冴えないオッサンって言ったり自己主張の激しい格好した人と言ったり、支離滅裂になってんぞクソガキが」




ガラララッ



オーソン「ただ今戻りましたー! ……はぁ、疲れたー」スタスタ


ヴェーラ「おかえりなさいオーソン」

円周「おかえりー。疲れてるなら甘いモノを取るといいよ、はい」スッ

オーソン「おっ、あざーす。さすが円周さんだ気が利きますねー」

円周「でしょー」

数多「おい、ちょっと待てオーソン」

オーソン「じゃあ遠慮無くいただきまーす!」パクッ

打ち止め「…………」ワクワク

円周「わくわく」



オーソン「……うん、うん、結構甘いけどおいし――ごっ!?」ガクッ



ヴェーラ「ッ!?」

ナンシー「オーソン!?」

オーソン「」チーン

ナンシー「オーソンに一体何が……!?」

数多「……オイクソガキ。これに何入れやがった?」

円周「別にぃー、ただの甘味料だよー」

数多「その甘味料、正式名称で言ってみろ」

円周「『AMA5UG12-AR0TA』」

数多「何だそのあからさまに危険な臭いがプンプンする薬品名は!?」

円周「そんな危ない麻薬とかじゃないよ? あくまで合法のものだよ」

オーソン「…………うっ」ビクッ

ナンシー「オーソン! 気がついたのね!?」

オーソン「……すぎ……わろ……」ブツブツ

ヴェーラ「えっ、何て?」



オーソン「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」



ヴェーラ「」

ナンシー「」

円周「ねっ? 普通の甘味料でしょ?」

数多「何が普通だぶっ殺すぞテメェ」



数多「大体よぉ、テメェら味見っつーモンはしたのか? まさか料理オンチ特有のぶっつけ本番でチョコレート公開してるわけじゃねーよな?」

円周「やだなー当たり前だよー。ちゃんと味見はしたよー打ち止めちゃんが」

数多「結局お前はやってねえのかよ!」

ヴェーラ「……ってことは打ち止めちゃんは……?」

打ち止め「…………」

ナンシー「…………」

数多「…………」


打ち止め「うんうんそうだね、甘いモノって最高だよね、ってミサカはミサカはこの甘さに確かな確証を得てみたり」トローン


数多「チクショウ、この部屋唯一の表の住人このザマだと? ふざけんな!」

円周「というわけで数多おじちゃんもスーパーデリシャスミラクルスペシャルヘブンズチョコレートを食べて幸せになろうよ?」

数多「いらねえよそんな幸せェ! てかさっきからチョコレートの前の枕詞増えすぎだろ! 最後のヘブンズとかあからさまに狙ってんだろこれ!」

打ち止め「甘いよー美味しいよー幸せになるよー、ってミサカはミサカは怪しい宗教風にチョコレートを勧めてみたり」トローン

数多「怪しい宗教風っつーか宗教だろこれ!」

オーソン「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

マイク「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

デニス「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

数多「なっ、マイクにデニス……いつの間に帰って……てかこんなもんに入信しやがった!」

ナンシー「……何かこのチョコ食べてしまったほうがこの場をラクに過ごせるんじゃないかと思えてきたわ」

ヴェーラ「早まってはダメよナンシー!」



ワイワイガヤガヤ



数多「……もう面倒臭せぇ、あーもしもしぃ?」ピッ

数多「今すぐに来い。今すぐだ! わかったな!」ピッ

ナンシー「だ、誰を呼んだのですか? アンチスキルですか?」

数多「んなモンじゃねーよ。大体そんなヤツら呼んだところでこの状況を解決することはできねえだろ」

ヴェーラ「じゃあ一体誰を……?」

数多「……そーだな。言うなら催眠のプロっつーところか?」

ナンシー「催眠の……」

ヴェーラ「プロ……?」


~5分後~


数多「…………そろそろか」

ヴェーラ「まだ五分しか経ってませ――」



パリーン!!



ナンシー「何っ!? いきなりベランダの窓ガラスが割れた!?」



数多「やっと来やがったか。遅せぇぞ木原乱数」




乱数「はいはぁーい!! あまりにもカオスすぎてカミサマもサジを投げそうな状況でぇ、この木原乱数ちゃんが豪快かつ華麗に参上でぇーっす!!」




ナンシー「ま、また『木原一族』の方が!?」

ヴェーラ「今日はよく来るわね……」

乱数「あーれれぇー? 何ですかこの反応ぅ? せっかくこの俺が来てやったんだから盛り上がって欲しーぃんですけど」

数多「そりゃそーだろ。散々待たせた上にこんなしょーもねぇ登場の仕方をしやがったら、そういうリアクションにもなんだろ」

乱数「数多先輩ちぃーっす! ひでー言いようですなぁ、こちとら二十三学区から飛ばしてやってきたんだぜ? むしろ褒めてくれもいいと思うんですけど」

数多「俺なら三分もありゃ来れるけどなぁ残念! テメェじゃあカップ麺が伸びちまうぜー?」

乱数「最近のカップ麺はそんな早く伸びねえっつーの。で、わざわざこの俺を呼び出すなんてどーいう用件?」

数多「コイツを見ろ」スッ

乱数「あん?」ジロッ


オーソン「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

マイク「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

デニス「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ!」

打ち止め「ぐへへへへへへへ。ぐふふふふふふふふふふ」トローン

円周「あっ、乱数おじさんだやっほーい!」ノシ


乱数「……何だこりゃ? 未知のウイルスにでも集団感染したかぁ? つか、約一名平常運転のアホがいんだけど」

数多「あー、アイツは違う。ただの首謀者だ」

乱数「そもそも俺は従犬部隊とかいう糞会社のボロオフィスに来たはずなんだけどなぁー。別にキチガイ隔離用の病棟に来たつもりねーのに」

数多「お前後で潰すわ。いいからこれをどうにかしろ、お前そういうの得意だろ」

乱数「たしかに乱数ちゃんからしたらぁ、そういう集団催眠的なモンは得意中の得意ですけど」

数多「じゃあやれ」

乱数「でもそぉいうのはタダでいかねーっつーか、頼みごとするってんならそれなりの対価っつーもんが必要じゃね?」

数多「ったくしょうがねえなぁ、何が望みだ?」

乱数「そーですなぁ、あそこでヘブン状態になってる『最終信号(ラストオーダー)』を一日貸してくんね? 一度ミサカネットワークってのを調べてみたかったんだよね」

数多「断る。あれは人様のモンだ俺のモンじゃねえ」

円周「『木原』的にはお前の物は俺の物、俺の物も俺の物って感じじゃないのー?」

数多「いつから『木原』ってのはそんなジャイアニズムに溢れるクズ野郎に成り下がったんだ? あと平然と会話に入ってくんな首謀者」

乱数「ま、あながちジャイアニズムってのは間違いじゃなくね? 科学は全て木原の物! つまり現代社会は全て木原の物ぅー! ってな感じで」

数多「チッ、テメェらがどう言おうがそこのクソガキはナシだ」

乱数「つまんねー。じゃあ第一位とか貸してくれよ」

数多「いいよ」

乱数「いいのかよ!!」ケラケラ

円周「こんなにあっさり売られるアクセラお兄ちゃんって……」



乱数「さーて、じゃあさっさとこのバイオハザードの原因探ってサクっと解決しますかぁーっ」

数多「探るも何もそこに落ちてるチョコレートが原因だ。さらに言うなら犯人はお前の隣にいるクソガキ」

円周「どうもー犯人でーす」

乱数「おいおい何なんですかこれぇ? 推理ゲームが始まったと思ったらいきなり凶器と犯人登場キャラに教えられたんですけどぉ? 犯人いきなり自白しやがったんですけどぉ?」

数多「ゲームと現実を一緒くたにするなっつーことだろ」

乱数「世の中をゲーム感覚で動かしてるヤツだっているってのになー。まあ別にぃ、この事件の全貌なんて初めからわかってましたけどぉー」

数多「前置きはいいからさっさとやれ。尺稼ぎなんてつまんねー真似すんなよ」

乱数「まーまー、ただ推理を聞いて驚くだけのエクストラキャラは黙ってろって。さて、まずこのチョコレートに入ってる成分の中に『AMA5UG12-AROTA』というものです



乱数「これは甘いものを接収すると発生する脳内麻薬を強制的に分泌、よぉするに甘党の『甘いものがないと生きていけない』という状況を無理やり引き起こす薬品なんだよ」

ヴェーラ「そ、そんなものがあったのね……」

ナンシー「でもその言葉の通りならこの状況はおかしくない? だって甘党の人って結構いるけどここまで変な人たちじゃないじゃない」

乱数「そおぅ、そこっ! コイツはもともと家族で食卓を囲む一家団欒、っていうのを人工的に再現できないかって研究の一環として生まれたもんだ」

乱数「そん中でこれのターゲットは『甘いもの大嫌い! 顔も見たくない! ノースイーツ、スペシャルライフ!』って感じのアンチ甘党なヤツなわけ」

乱数「コイツを体内に摂取するだけで一時的にだけどどんなヤツでもノースイーツ、ノーライフの甘党にできるってことだ」

乱数「ま、逆に甘党のヤツや普通に甘いモン食えるヤツがこれを摂取したら効果が強すぎて、こんなキチガイアイドルファンみてーなヤツらが生まれるってわけだ」

ナンシー「なるほど、ようするにすごい薬なのね!」

ヴェーラ「ナンシー……何か小学生並みの感想になってるわよ」

円周「じゃあじゃあ、薬の効果はわかったんだけどこれの治し方はどーするのー? それ聞く限り時間が経つのを待つしかないよーだけど」

数多「何で犯人自ら解決方法聞いてんだよオイ」

乱数「なーに簡単な話だ! 所詮アイツラは舌から感じる『甘い』という情報に踊らせられてるに過ぎねえ。だったらその『甘い』という情報を弄ってやれば面白れぇーことが起きるわ

けだよな?」カチッ

ナンシー「うん? 何それ試験官?」

数多「ナンシー下がってろ」

ナンシー「えっ」


オーソン「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘すぎワロタ! 甘すぎワ――ヴェオエエエエエエエエエエエ!! 辛れええええええええええええっ!?」ジタバタ

マイク「( ゚∀゚)o彡甘すぎワロタ! 甘す――ぎゃああああああああああああああああッ!! ベロがっ! ベロがああああああああああっ!!」ジタバタ

デニス「( ゚∀゚)o彡甘――くねえええええええええ!! いやぁだあああああああああああ!! やめてぇえええええええええええええええええええ!!」ジタバタ

打ち止め「あぎゃー! 今まで味わったことのない辛味があああああああっ!! ってミサカはミサカはおばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」ジタバタ


乱数「味覚から得られる『甘い』という情報を全部『辛い』に変換する化学物質。『TUR4R3-T4K4R4』」

ヴェーラ「ひっ、一体何が起こってるの!?」

乱数「さっき言った通りだ同じことは二度も言わねーぜぇ? あとこれはカビに乗せて空気中にばら撒いてるから俺より前に行かないほうがいいかもよ? ここ一週間飲まず食わずで生

活してたっつーなら別だけど」

数多「へー、お前こんなことできたんだな。専門は喜怒哀楽の感情だけだと思ってたが」

乱数「何言ってんだ先輩? 食い物の好き嫌いも感情の一種だろぅ? いつも寡黙なクールキャラが好きな食べ物を目の前にしたときにいきなりハシャギだすみてーな感じに」

乱数「それに本当に美味いモン食ったら自然と笑みが溢れるとかよく言うだろ? あれだって『旨い』と脳内が認識して喜びにつながるわけだからな」

円周「ふむふむ、勉強になりますなー」



数多「……つーか乱数、一つ疑問があんだけよぉ?」

乱数「何だぁ? 気が向いたら答えてやるよ」

数多「何でこの症状見ただけで薬品名わかったんだお前? こんな症状になるヤクなんて思い当たるだけ何百とあるぞ?」

数多「それにソッコーでこれに対する薬品も懐から出しやがって、初めからわかってここに来たようにしか思えねえよなぁ?」

乱数「そりゃまぁな。これ円周にあげたの俺だし。バレンタインデーに使うからちょーだーい、とか言ってきたからつい」

数多「……オイオイオイ、探偵が犯人と共犯なんて斬新すぎる推理ゲームじゃねえかこれぇ?」

乱数「いやいや共犯なんて濡れ衣にもほどがあるぜぇ? 俺はこんなことするなんて知らなかったわけだからな」

数多「つまりテメェがこんなモン円周に渡さなきゃこんな面倒臭いかつ面白くねぇ状況にならなかったってわけだよな?」

乱数「イエス! 簡単に正解を求められる問題だったな、『1+1』のほうがまだ考えること多いんじゃねーかなぁーっ?」

数多「つまり報酬のクソガキはなしってことになるな」

乱数「何でだよ! こんなの絶対おかしいよ! ノーギャラとか今どきのブラック企業とかでもさすがにやってねえぞ!」

数多「これを認めたらテメーが報酬目当てで好き放題いろいろ仕掛けてくるっつー無限ループが発生しちまうだろ? だから無理」

乱数「チッ、バレたか……」

数多「そーいうわけでとっとと帰れ! あとカビの掃除もしとけよな」

円周「そーだそーだー帰れ帰れー」

数多「……ところで何でお前ここにいんの?」

円周「ん? 何でこの建物の中にいるかって話かな? それならここに住んでるからとしか……」

数多「いや、何でカビの効力のない安全地帯にいるのかって話だよ」

円周「それは私が悪くないからだよー。だって私は純粋に甘くて美味しいチョコレートを作ろうと――」

数多「…………」ドン

円周「えっ、ちょまっ――辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い!!」

乱数「ま、俺の用はすんだよーだしぃ帰るとするわ。あっ、あとこの辛い地獄は数分で回復するから安心しな。カビもそろそろ自然消滅する時間だしよ」

数多「つべこべ言わずとっとと帰れ」

ナンシー「ちょ、ちょっと社長いくらなんでもひどすぎませんか?」

数多「相手は『木原』だぞ? これくらい当然だろ」

乱数「ひっでー先輩だな。ほいじゃあさいならー!」ケラケラ

ヴェーラ「ありがとうございました!」

ナンシー「……しかし割れたガラス掃除大変そうねー」

乱数「あっ、言い忘れてたけどあのガラス割れてねえから!」

ナンシー「えっ? いやそんなことはないはず……だってさっきそこのガラスが割れて――ない!?」

ヴェーラ「そんな! たしかに割れてたはずなのに!」

乱数「ああ、あれ俺のカビを使ったパフォーマンスだからぁっ!! つまり全部ゲ・ン・カ・ク・お疲れ様でしたぁーっと!!」

ナンシー「えっ、えええええええええええええええええっ!?」

ヴェーラ「うるさいわよナンシー」

数多「つーかお前らあんなのに引っかかってたのかよ。空気の流れの変化からカビが侵入してきてることぐらい気付けよ」

ヴェーラ「いや、普通に考えて無理です」


―――
――




同日 15:45 ~帰りHR~

-とある高校・一年七組教室-



小萌「――というわけなので今から勉強を頑張ってください。以上で連絡は終わりなのですが……」



ドン!



小萌「今日はバレンタインデーだということなので先生から皆さんにプレゼントがあるのですよー!」



男子生徒A「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

男子生徒B「女神だ! 女神がここにいた!」

男子生徒C「生きててよかったああああっ!!」


女子生徒A「ちょっと男子うるさいわよ!」

小萌「まぁまぁ、皆さんというのはもちろん女の子たちの分もありますよー」

女子生徒B「まじ? やった!」


青ピ「さすが小萌センセやでーヒャッホーイ!!」

土御門「しかもあれは見たところ全て手作り! やっぱり最高の先生だにゃー!」

上条「マジでかすげえな小萌先生!」


吹寄「……ったく、いちいち反応が過剰なのよね馬鹿っていうヤツらは」

姫神「…………」ソワソワ

吹寄「ん? どしたの姫神さん? そんなそわそわして……あっ、そういえばもうすぐ時間か」

姫神「うん……心臓がやばい」ドキドキ


一方通行「……ケッ、月詠の野郎もよくやるモンだ」

結標「そそそそうね」

一方通行「あン? 声震わせてどォした?」

結標「い、いえ何でもないわ!」

一方通行「ハァ?」

結標(ほほほほ本当にヤバイわ! なんか知らないけどあっという間に放課後じゃない! まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思わなかった!)


小萌「それじゃあ配りますので前の人から順番に受け取りに来てくださーい!」



ワイワイガヤガヤ




小萌「――というわけでホームルームを終わります。皆さんさようならなのですよー」


青ピ「おっ、何やこれ? 耳の形をしたチョコ……? いやよく見たらピアスしとるなこの耳」

土御門「俺のはグラサン型だぜよ。よーするに生徒一人ひとりの特徴を表してるんじゃないかにゃー?」

吹寄「あたしのはパーカー? ああ、大覇星祭の実行委員をしていたときのやつね?」

姫神「私は十字架。このペンダントのことかな?」スッ

結標「私のはこの懐中電灯の形をしてるわ。しかしすごい再現度だわ……」

一方通行「それぞれの特徴を出してるっつゥなら何で俺のチョコはホワイトチョコでギザギザの線を書いただけなンだよ。杖とかチョーカーとかもっとあっただろォが手抜きかよ」

結標「合ってるじゃない。いつもそんな感じの服着てるし」

土御門「しかしすごい先生だにゃー。こんなのを一人で全部用意したのか」

姫神「ほんと。さすが小萌先生。生徒思いのいい先生」

吹寄「そういえば上条当麻。あなたのチョコレートは何の形だったの?」

青ピ「カミやんのことやから右手とかか? それかまさかのツンツンヘアーのウニ型チョコとかか」ケラケラ

上条「それならまだわかりやすかったんだけどな。なぜだかハートの形をしたチョコなんだよな。これは一体俺の何を表してるってんだ?」

結標「こ、これって……まさか」

吹寄「たぶんそのまさかね、何となく予想はついてたけど」

姫神「おのれ小萌先生……やってくれる」ボソッ

上条「へっ? な、何だよ女子連中そのリアクションは?」

青ピ「カーミやーん。とりあえずBO・KO・BO・KOの準備はできとるかいな」ゴキゴキ

土御門「おーいみんなー! カミやんが小萌先生からハート型のチョコレートもらってるぜい!」


男子生徒D「あ゛ぁん!? 何だと!?」

男子生徒E「我らが女神小萌先生からハート型のチョコ、だと?」

男子生徒F「ちくしょおおおおっ!! 俺数学の円周率が得意って言ってたから『π』の形になっててちょっと興奮してたのが何か惨めに肝心じゃねえかゴルァ!!」


上条「えっ? えっ? 何この雰囲気?」


男子生徒G「黙れ! 今日は祝日となるだろう……上条死亡記念日だ!!」

男子生徒H「俺の拳が光って汗ばむ! お前を殴れと超泣き叫ぶ!!」

男子生徒I「きえええええええええええええええええええええええええええい!!」



ズドッ!! ゴシャ!! ズガン!! ドガァ!!



結標「……な、何かいつもの展開になったわね」

一方通行「くっだらねェ。帰る……」ガチャリガチャリ

結標「ちょ、ちょっと待って!」

一方通行「あン?」クルッ

結標「あの、えと……い、一緒に帰らない?」

一方通行「……別に構わねェが。つゥか同じところ住ンでンだから帰る道は同じだろォが。いちいち確認取ることじゃねェぞ」

結標「ご、ごめんなさい。ささっ、早く帰りましょ!」アセッ

一方通行「……あァ」ガチャリガチャリ



上条「」ピクピク


男子生徒J「ふぅ、スッキリした」

男子生徒K「裏切りモンはほっといて帰ろうぜー」



ワイワイガヤガヤ



上条「……チクショウ。上条さんが一体何をしたっていうんだ」ボロッ

姫神「上条君」

上条「何ですか姫神さん。この理不尽な暴力に屈してしまった上条さんに何か用ですか?」

姫神「理不尽かどうかは知らないけど。そんなに卑屈にならないほうがいい」


土御門「よっと、そろそろ俺らも帰るとしようぜい」

青ピ「おーいカミやーん! 帰ろ――ってあれおかしいなー足を動かしてるつもりなのに全然前に進まない」

土御門「奇遇だにゃーピアス君。実は俺もなんだ」

吹寄「ちょっと二人とも。こっち来なさい」グイグイ

青ピ「えっ何吹寄さん? もしかして告白!? 校舎裏とかでボクに告白するん!?」 

土御門「残念ながら吹寄、俺に舞夏という最高の妹がー」



ゴッ!!



吹寄「馬鹿言ってないできびきび歩く!」

土御門青ピ『……ふぁい』


上条「……何やってんだアイツら?」

姫神「吹寄さん。ナイスアシスト」ボソッ

上条「ん? 何か言ったか?」

姫神「何でもない。それより話がある。ちょっと来てもらえない?」

上条「話? 別にいいけど、ここじゃ駄目なのか?」

姫神「駄目。二人きりが好ましい」

上条「そーか。じゃあ行こうぜ」

姫神「うん」



吹寄(…………頑張ってね、二人とも!!)


青ピ「……で、ボクらは一体どこへ連れて行かれとん?」

土御門「さあな。もしかしたら吹寄のことだから裏の人身売買のオークション会場――」

吹寄「そんなとこ連れて行くか!!」


―――
――





同日 16:00

-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-


円周「――というわけで『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』はどーでしたか数多おじちゃん!」


数多「うっとおしかった。どうでもいいからさっさとキッチン掃除しろ。チョコとか砂糖とかでぐちゃぐちゃにしやがって」

円周「はーい」ゴシゴシ

打ち止め「というかエンシュウひどいよー! ミサカには記憶ないけど変な薬盛ったんだよね? ってミサカはミサカは頬をふくらませながら問い詰めてみたり」プンプン

円周「ごめんねー打ち止めちゃん。甘いもの大好きの幼女が食べたらどーなるのか気になってたんだよねー」

打ち止め「まったく! 他の個体からの話だと少しの間ミサカネットワーク上から上位個体のミサカが消えてみたいなんだよ」

円周「そりゃ大変だったねー。よく崩壊しなかったねネットワーク」

打ち止め「ま、でもエンシュウのおかげであの人に渡すチョコレートが完成したからね、許そう! ってミサカはミサカは寛大な心の片鱗を見せてみせてみる!」

円周「さすが打ち止めちゃんちょろい! もとい心が広い!」

数多「ツッコミどころがありすぎるが……オイ打ち止め」

打ち止め「何?」

数多「そのクソガキに渡すチョコっつーのは例の薬物が入ったモンじゃねーのかよ?」

打ち止め「違うよ。これはれっきとした普通のチョコだよ、ってミサカはミサカは保証してみる。ちゃんと味見もしたし、ってミサカはミサカはさらに裏付けてみたり」

数多「……どういうことか解せねーな。ようするにお前らが言う『オペレーション・ハニーハニースウィートバレンタイン』って何なんだ?」

打ち止め「おいしいバレンタインチョコレートを作ろうって計画だよ。予想外に早くチョコが完成しちゃったから暇だー、って言いながらエンシュウが変なことを始めちゃったけど」

数多「つまりあれかぁ? 最初は世界一のチョコレート職人に俺はなる! って感じだったけど後半は円周が『木原』的に場をかき回したと?」

円周「私だって『木原』だからねー。これくらい当然だよ」

数多「……はぁ、それで? お前は何かそれで得られたもんがあったのかよ?」

円周「んー何だろ? 出る杭は叩かれるってことかな?」

数多「そりゃ上出来だな」

打ち止め「というわけではいキハラ! ってミサカはミサカは両手大の箱を手渡ししてみたり」スッ

数多「あん? 何だそりゃ? 淡希おねーちゃん辺りからのお歳暮チョコレートか?」

打ち止め「違うよ。ミサカが作ったチョコレートだよ! つまり手作りバレンタインプレゼントってことになるね、ってミサカはミサカはにっこり笑顔を浮かべてみたり」ニコッ

数多「嫌な笑顔だな。是非とも受け取りたくなくなる」

打ち止め「お願いキハラ。もらって? ってミサカはミサカは小動物的なうるうる目で上目遣いになってみたり」ウルウル

数多「そんな手が通じるのはクソガキだけだぜ?」

打ち止め「…………」ウルウル

数多「…………」

打ち止め「…………」ウルウル

数多「チッ、しょうがねーな。これ以上やってもうっとーしぃだけだ。受け取ってやるよ」スッ

打ち止め「わーいありがとキハラー! ってミサカはミサカは喜びを体で表現してみたり!」フリフリ

円周「相変わらずのツンデレおじちゃんだねー。結局受け取っちゃうんだよねー」

数多「誰がツンデレだ。そろそろテメェに木原神拳最終奥義を使う時が来そうだな」

円周「それは一度見てみたいけどここは勘弁願うほうが正しい選択だよね」



打ち止め「き、キハラ!」

数多「何だよ」

打ち止め「べ、別に今すぐ食べて感想を聞かせて欲しいとか思ってないんだからね、ってミサカはミサカはキハラに対抗して安易なツンデレキャラを演じてみたり」

数多「よーする食えってことだろ?」パカッ

打ち止め「そうなんだからね! ってミサカはミサカはツンデレキャラのまま頷いてみたり」

数多「わぁーったからそのムカつくキャラやめろ」パクッ

打ち止め「…………」ワクワク

数多「…………何つーか、イラつく甘さだな」モグモグ

打ち止め「ええっ!?」

数多「例えるならホワイトチョコにメープルシロップ練り込んで、その上に砂糖まぶしたあとにホイップクリームでトッピングした感じに」

打ち止め「な、なぜミサカの使った材料がわかったし、ってミサカはミサカは驚愕してみたり!」

数多「本当に入ってたのかよ」

打ち止め「で? で? おいしかったのおいしくなかったの? ってミサカはミサカは運命の二択を挙げてみたり」

数多「マズイ」

打ち止め「ぎゃー! ソッコーで辛口コメントが来たー! ってミサカはミサカは精神的大ダメージを負ってみたりー!」

円周「さすが数多おじちゃん! 幼女が相手でも容赦がない!」

数多「甘党の連中が食ったら知らねーけど一般人の目線から見たらマズイ。残念ながら俺の口には合わねえな」

打ち止め「ううっ……って待てよ? キハラがこのリアクションならあの人なら……!?」

数多「三角コーナーに即投げ込むレベルだろ」

打ち止め「ナンテコッタイ! そんなところまで計算してなかった……ってミサカはミサカは自分の欲望に溺れたことを後悔してみたり」

円周「世の中には当たって砕けろという言葉がある。あとはわかるよね?」

打ち止め「も、もしかしたら甘すぎて一周回っておいしく感じてもらえる可能性が……!」

数多「ねーよ」

打ち止め「ううっ」


円周「ところで私からも数多おじちゃんへバレンタインチョコレートがあるんだけど?」スッ

数多「それはポリバケツさんの口に入れてやれ。喜んで食べてもらえるぞ」


―――
――




同日 16:10 ~放課後~

-とある高校・四階~屋上の間の階段-


姫神「…………」テクテク

上条「……おい姫神、一体どこまで連れて行くつもりだよ」

姫神「……この辺でいいか」

上条「この階段ってたしか屋上に繋がるやつだっけか、屋上にでも行くのか? たしかこの学校は基本開放してねかった気がするけど」

姫神「別に屋上なんかにいくつもりなんてない。ここで十分」

上条「そうか。で、話ってなんだよ? こんな人目のつかないところに呼ぶっつーことは大事な話なんだろ?」

姫神「うん。私にとってとても大事な話……」

上条「何か深刻そうな表情だな。まさかまた事件か何かに巻き込まれたんじゃねえだろうな!?」

姫神「それはない。あなたじゃないのだから」

上条「何か俺がいつも変な事件に巻き込まれてるみてえな言い方だな」

姫神「事実なのだからしょうがない」

上条「まあたしかにそうだけど……でも最近はマシになってきたほうだぞ、起きてもせいぜい路地裏の喧嘩レベルだし」

姫神「なぜあなたはそんなに首を突っ込みたがるのか……」

上条「別に突っ込みたくて突っ込んでるわけじゃねえよ。何ていうか気付いたら突っ込んでたというか」

姫神「見守る側からすると。よく怪我をしているのを見るととても心配になる」

上条「ああ、それについては悪いとは思ってるよ。でもさ、それで救われる人がいるってんなら俺はそれでもいいと思ってるぜ」

姫神「それであなたが傷つくのなら。元もこうもないと思う」

上条「ははっ、たしかにそうだよな。インデックスのやつにもよくそう言われて怒られるよ」ハハッ

姫神「…………」

上条「……あれ? 何でそんなむすっとした表情をしていらっしゃるのですか姫神さん?」

姫神「何でもない。それより話が逸れた。もとに戻す」

上条「お、おう……」

姫神「今日。ここに連れてきたのは。上条君。あなたに渡すものがあるから」

上条「渡すもの? 何だよこの前貸した漫画か? 別にまだいいのに」

姫神「違う。それに漫画はもう返した。面白かったよ」

上条「あれ? そうだったっけ……あー、何か返してもらったような気がしてきた」



姫神「私が渡したいものは。……これ」スッ

上条「えっ? これって……?」

姫神「うん。バレンタインのチョコレート」

上条「へっ、あれ? 何で? たしかお前らって吹寄たちと一緒に作ったの渡してこなかったっけ?」

姫神「あれはフェイク。本当は吹寄さんだけが作った義理。私と結標さんはまた別にチョコレートを作っていた」

上条(マジかよ……ひょっとすると一方通行危ねえんじゃねえか?)

姫神「そういうわけで。こっちが本命。受け取って欲しい」

上条「あ、ああ。ありがとうございます」

姫神「…………」フゥ

上条「というか何でそんなフェイクとかまどろっこしいことしたんだ? 別に普通に渡してくりゃいいのに」

姫神「吹寄さんの提案。今みたいに上条君を驚かせるための。サプライズみたいなもの」

上条「たしかに驚いた……まさか姫神こんなもんくれるとは思いもしなかったな」

姫神「それ……ほんとに?」

上条「? おう」

姫神「……そう。だろうね」ハァ

上条「よくわかんねえけど何か残念な目で見られてるような気がするんだが……」

姫神「ほんと。あなたは残念な人」

上条「ぐっ、正直過ぎじゃないですか姫神さーん!」

姫神「ふふふ。冗談。半分くらいは」

上条「つまり半分はそう思ってるってことかよ!」

姫神「それは……どうかな」

上条「おのれ……意味深なセリフを吐きおって……ってやべっ! もうこんな時間か!」

姫神「どうかしたの?」

上条「いや今日バイトがあってさ、だから早めに帰ってインデックスのメシ作ってやらねえといけねえんだよ」

姫神「…………」

上条「あれ? 何かまた不機嫌そうな顔をしてないですか姫神さん?」

姫神「別に。ならとっとと行くといい。シスターがあなたを待ってる」

上条「お、おう! じゃ、また明日な姫神! チョコありがとなっ!」タッタッタ


姫神「…………ふぅ。すっごく緊張した」

姫神「やはり。最大の壁はあのシスターってことか」

姫神「まあでも。負けるつもりなんて。少しもないから……!」


―――
――




同日 16:20

-第七学区・街頭-


結標(……さて、姫神さんはうまくいったのかしら? まあ姫神さんは私と違ってしっかりしてるし大丈夫だろう)

結標(そう。問題なのは姫神さんと違ってしっかりしていないこの私よね? だって――)


一方通行「……ふァー、眠みィ」ガチャリガチャリ


結標(どうやって話の展開を持っていけばいいのかさっぱりわからないいいいいいいいいいいいいいいいっ!!)

結標(あれ? 普段ってどうやって会話してたのだっけ? 何だかそれすらわからなくなってきたわ!)

結標(そんなんじゃ絶対本命チョコを渡すの流れを作るのなんて絶対無理じゃない!)


一方通行「……あン? どォした? そンな険しい顔してよォ?」

結標「あっ、えっ、やっな、何でもないわよあははははっ」アセッ

一方通行「……そォいやァよォ、今日のオマエらからのバレンタインのクッキー、味はなかなか良かったと思うぞ」

結標「そ、そう、そうよね。さ、さすが吹寄さんだわ!」

一方通行「ハァ? 吹寄?」

結標「あっと、違う、吹寄さんたち、よ! 二人が料理が上手なおかげであんなにおいしいものが出来たってわけよ」アセッ

一方通行「へー」


結標(あ、危なかったわ……危うくこのサプライズがバレちゃうところだったわ)

結標(というか何よコイツ? いきなりクッキーのこと褒めるなんて似合わないことして……!)


一方通行(……今のリアクションからして、あのクッキーは吹寄オンリーで作ったのは確定だな。そもそもあのクッキー内に異物が混入してねェ時点でわかってたことだが)

一方通行(つまり、コイツ製作の本命チョコレートはまだ手の中に残ってるっつゥことになるな。おそらく食った瞬間天使化しちまうかもしれねェくれェの兵器が)

一方通行(……そォなるわけにはいかねェな。絶対ェ回避してやるよ。俺の持てるチカラ全てフルに使ってでもな)


結標「……ええと一方通行? その、話があるんだけど――」

一方通行「あっ」

結標「な、何どうしたの!?」

一方通行「そォいや買った缶コーヒー全部上条ン家置いてきてたの忘れてたな。ま、イイか全部アイツらにくれてやるか」

結標「そ、そうなんだ……じゃなくて、えっと話が――」

一方通行「しゃーねェな。ちょっとコンビニ寄ってコーヒー買って来る」ガチャリガチャリ

結標「えっ、えっ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私も行くわ!」


一方通行(……へっ、楽勝なンだよ格下が。こォいう風に徹底的に話を逸らせて逃げ切ってやるぜ……このクソみてェなバレンタインデーからよォ!)


―――
――




同日 16:30

-第七学区・とあるファミレス-



初春「――御坂さん! 白井さん!」

佐天「ハッピーバレンタイン!! あたしたちのチョコレート受け取ってください!!」



美琴「あはは、ありがとう二人とも」

黒子「ありがたく受け取らせていただきますわ」

美琴「じゃあこっちからもお返しよ、初春さんに佐天さん」

黒子「遠慮無く受け取りなさいな」

佐天「おおっー! さすが白井さん! 高級感が半端ないですね!」

黒子「そんな大したものではありませんの。気にせずお召し上がりくださいな」

初春「こ、これはあの店のチョコレート……! ありがとうございます白井さん!」

黒子「大げさな……しかしわたくしのだけじゃなくちゃんとお姉様のにもリアクションしなさいな。お姉様お手製ですのよ?」

佐天「まぁ、御坂さんのは昨日一緒に作ったのでどんなのか大体わかりますし」

初春「ですねー」

黒子「は? お、お姉様? これは一体どういうことでしょうか……?」

美琴「いや、寮で私がチョコの手作りとかはちょっとマズイじゃない? だからまた佐天さんの部屋にみんなで集まって一緒に作ってたのよ」

黒子「聞いてませんよそんな話!! な、なぜ黒子もお誘いしてくれませんでしたの!?」

初春「だって白井さんは昨日ジャッジメントの仕事で忙しかったじゃないですか」

佐天「そーゆーわけで無理に誘って仕事の邪魔をしてはいけないということなので、ここはそっとしておくことにしたわけですよ」

黒子「ぐぬぬぬぬ、わたくしがいないところでそんな楽しいイベントがあったなんて……というかなぜ初春だけ昨日は非番でしたの?」

初春「そんなの決まってるじゃないですか。バレンタイン前日ですよ? 一ヶ月前から調整してちょうど今日明日が非番になるようにしたんですよ」

黒子「おのれ初春のくせにいいぃぃ!」グギギギ

美琴「まあいいじゃない別に。お菓子作りぐらいまた今度付き合ってあげるわよ」

黒子「本当ですかお姉様!? では、では、今度わたくしと二人きりで愛を育むお菓子作りを……!」

美琴「はいはい四人でねー」

黒子「ひどいですわお姉様! そうやって黒子をまた弄んで!」

美琴「弄ぶ気もアンタと愛を育む気もさらさらないんだけど」



佐天「さて、いつもの世間話からここで御坂さんのバレンタイン大作戦の話にシフトするわけですけど」

美琴「えっ、どうしてそうなるの?」

佐天「せっかくバレンタインなんですし、そういう話もしたくなりますよ。どうせ渡すんでしょ? 上条さんに」

美琴「えっ、ええっと……ま、まあ」

初春「ですよねー。作ってたチョコレートの中に明らかに力の入ったのがありましたし」

佐天「御坂さん! バレンタインのチカラは大きいですよ! ここで一気に決めてしまいましょう!」

美琴「き、決めるって……別にアイツはそんなんじゃ」

佐天「もう御坂さん! そんなんじゃ一生思いなんて伝わったりしないですよ!」

初春「そうですよ! たしかにツンデレは需要は多いかもしれませんが、結局は素直にならないと駄目なんですから!! デレなきゃいけないですから!!」

美琴「つ、ツンデレなんかじゃないわよ!」カァ

佐天(相変わらずのツンデレかわいいのー)ニヤニヤ

黒子「…………」ズズズ

初春「……あれ? 白井さん、珍しく上条さん関係の話で突っかかってきませんね。どうかしたんですか?」

黒子「ふん、黒子はもう大人になりましたの。あんな類人猿に右往左往される女じゃないんですの」

初春「ようするにやっと諦めた、ということですねわかります」

黒子「諦めてませんの!! ……わたくしはお姉様が類人猿に愛想を尽かし戻ってくるのを待つことにしましたの。待てる女はいい女ですのよ」

佐天「で、御坂さん? どういうプランで行くんですか? やっぱり無難に『チョコを渡す→告白』みたいな感じですか?」

美琴「こ、ここ告白ぅ!? し、しないわよ告白なんて!」

佐天「あれ? ここで決めるんじゃなかったんですか?」

美琴「佐天さんが勝手に言っただけじゃない。そ、それにさっき言った通りそんな関係じゃないし」

佐天「でもあげるんでしょ? チョコレート」

美琴「それは……うん、そ、そうだけど」

佐天「じゃあ何で上条さんにあげるんですか? チョコレート」

美琴「そ、それは、あ、アレよ! 義理よ義理! どうせアイツのことだから誰にももらえなくて涙ぐんでるだろうから、かわいそうだから私が仕方がなく恵んであげるのよ」

佐天「あれ? 前はアイツの周りにはいつも女の子がいる、とか言っていたような……」

初春「というより御坂さん。そんな仕方がなく渡す相手のチョコレートを何であんな本気な感じで作ったんですか?」

美琴「べ、別にそんな本気で作ってたわけじゃ……」

佐天「うっそだー! あんなに丁寧にデコレーションまでして、厳重かつかわいくラッピングしてたのにー?」

美琴「うっ、ちょ、ちょっとトイ――」

佐天「逃がしませんよ御坂さん!! いい加減に白状したらどーですかい!!」

美琴「ひっ、何か佐天さんいつもとキャラ違う……というか何を白状しろって言うのよ!」

佐天「そのチョコレートは本命なんだろ? そうなんだろう? こっちはネタが上がってんだよいい加減にしろぃ!!」

美琴「佐天さんが怖いわ! う、初春さん!」

初春「たまにはいいんじゃないですか? 一皮むけるチャンスですよ!」キラキラ

美琴「い、いらないわよそんなチャンス! く、黒子!? ちょっと助けてよ黒子!」

黒子「……お姉様」

美琴「な、何よ?」

黒子「わたくしは正直お姉様が腐れ類人猿をお慕いしているなどと絶対に認めたくありませんの。しかしこれだけは言わせて欲しいですの」




黒子「常盤台のエース御坂美琴がそんなんでどうするんですのおおおおおおお!!」ドン



美琴「!?」ビクッ

佐天「おおっ!」

初春「なぜだか知りませんけど白井さんがこっち側に来た! これで勝つる!」

黒子「わたくしの尊敬するお姉様はそんなグダグダと言い訳をしてるような人ではありませんの!! もっとドッシリ構えてズバズバとモノ言うのが黒子のお姉様ですわ!!」

美琴「…………」

黒子「さあおっしゃってくださいお姉様! どうしたいんですか!? 上条当麻のことをどう思ってらっしゃるのですか!?」

美琴「わ、私は……」

初春「さあもう一息ですよ!」

佐天「頑張れ御坂さん!」



美琴「わ、私はアイツに、私のチョコレートを受け取ってもらいたい……! そ、そして……アイツに想いを伝えたい……!」



佐天「よし言った!」

初春「御坂さんが完全に私たちに心を開いてくれました!」

美琴「ちょ、ちょっとリアクション大げさすぎない?」アセッ

黒子「ふふっ、よく言えましたのお姉様。それでこそ御坂美琴ですの」

美琴「……ありがとね黒子」

黒子「これで安心して……ごぱぁ!!」

美琴「黒子!?」

佐天「わっ、白井さん大丈夫ですか!?」

黒子「だ、大丈夫心配ご無用ですの……敵に塩を送るなんて柄じゃないことしてしまったので、体に負担がごふっ!!」

初春「し、白井さん! 無茶するからー」

美琴「……黒子。私、頑張るね!」

黒子「ふふっ……ご武運おぶぁ!!」


佐天初春『白井さん!!』



―――
――




同日 16:40

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ガチャリ



上条「ただいまー、ってありゃ? インデックスのやついねえのか?」

上条「つーかまた鍵閉めずに出かけやがったなあんにゃろう!」

上条「……さて、たしかバイトは五時半からだっけ? だったら適当にすぐ作れるもん二つくらい作れるか」


上条「えっと冷蔵庫には何が残ってんだ」ガチャ

上条「…………そうだなー、モヤシ残ってっからモヤシ炒めは確定。おっ、ウインナーの残りが奥から出てきた。コイツをモヤシ炒めと混ぜるか……」

上条「あとは安かったから買い溜めてたうどんでも湯がいとくか。あっ、そういやあいついなかったんだっけな……」

上条「ま、冷やして隣に麺つゆでも置いてざるうどんにでもしとけばいいか……」

上条「そんで学校行く前に準備してた炊飯器をスイッチオン。あらかじめ炊いとくと勝手に食いやがるやつがいるからなーははっ」

上条「よし、そいじゃあ上条さんの十五分クッキングのスタートだ」



~十五分後~



上条「よっと、ざるうどん完成っと……」

上条「こんだけ作りゃ頭蓋骨噛み砕かれることはねーだろさすがに」

上条「おっ、もうこんな時間か。軽く走っていきゃ余裕で間に合うか」

上条「そうだ書き置きしとかなきゃな。ええっと『レンジで温めんのはモヤシ炒めだけだ!! うどんは違うぞ!!』っと」カキカキ

上条「えーあとは鍵か。どうせアイツ持って出てないだろうな……。持ってたら普通閉めてくし」

上条「しょうがねー、いつもどおりポストの中入れとけばわかんだろ。仮にも完全記憶能力保持者なんだからな」

上条「おし、それじゃあいってきまーす、って誰もいねえのに何言ってんだろうな俺」



ガチャリ



―――
――




今回はここまでにしたいと思います
ここまで見てくださった皆さんありがとうございました

すみません大変おまたせしてしまいました
書き溜めは全部は出来てはいませんが目処が付いたので投下を再開します
9月までには完結させようとは思いましたが、進めるうちにドンドン面倒くさい展開になってしまった思うように進みませんでした
なので正直明日までに完結は難しいです申し訳ございません
主人公、ヒロインの出番より圧倒的にサブが多いというよくわからないことが起きてしまってますがよろしくおねがいします

ではではノシ



同日 16:50

-第七学区・とあるファミレス-


フレンダ「――つまり、結局そういう展開になってしまうって訳よ!」

絹旗「そうなんでしょうか? 私は別にそうなるとは超思いませんけど」

滝壺「まあ可能性で考えるとそうなるよね」

麦野「どうでもいいっつーの……あっ、飲み物なくなった。浜面ー持ってきてー」すっ

絹旗「私のも超お願いします!」

フレンダ「私のもおねがーい!」



浜面「ってお前らいつまでここに居座るつもりなんだよ!!」



滝壺「?」キョトン

麦野「あん? 何いきなりキレだしてんだお前?」

絹旗「あれじゃないですか? 最近の超キレやすい若者ですよ。時代の流れに超流されてますねー」

浜面「そういうのじゃねえよ! 大体ここに来て何時間経ってるってんだ! 他にすることねーのかよ!」

フレンダ「別にいいじゃん。誰にも迷惑かけてないわけだし」

浜面「どう見ても店側に迷惑だろうが! 今のところ売上ドリンクバーのみだぞ!?」

麦野「つーかお前いつの間にそんな優等生ちゃんになったんだ?  元スキルアウト現アイテムの下っ端のヤツとは思えねえ良い子ぶりよ?」

浜面「周りからの視線が何か痛いんだよ! ほらっ、またあそこにいる女子高生たちに変な目で見られた!」

滝壺「……別に気にならないけど?」

絹旗「そうですよ。超気にし過ぎなんですよ浜面は」

フレンダ「ていうか、浜面がそんな目で見られてるのはいつものことじゃん」

浜面「どういう意味だそれ! てか俺はお前らみたいにメンタル強くないの! ノミの心臓なの! ガラスのハートなの!」

麦野「似合わねえこと言ってんじゃねえよ。ったく、だったらそんなに言うならここ出るか? ドリンクバーの飲み物にも飽きてきた頃だし」

滝壺「そうだね。もう何回飲み物を汲みに行ったのかわからないくらい飲んだね」

浜面「それ汲みに行ったのは全部俺だけどな」

フレンダ「次からはクーラーボックスにいろいろ飲み物入れてからくればいいんじゃないかな? そうすれば飽きたりしないでしょ?」

浜面「お前はファミレスを何だと思ってやがんだコラ」



絹旗「ではこれから超どうします? 私的にはこれからみんなで映画の方にでも――」

麦野「却下」

浜面「別にこれで解散とかでもいいんじゃねえか? 無理に一緒いることもないだろうし」

麦野「あん? 何お前平然と逃げようとしてんだ? 今日一日奴隷なんだから帰らせるわけねーだろ」

浜面「べ、別に逃げようとか思ってねえよ!」

フレンダ「じゃあじゃあ、カラオケとか行かない? すぐ近くにあるしさ!」

麦野「カラオケェ? あー、そういやしばらく行ってねかったなーそういうとこ」

浜面「前行ったのはアイテムで忘年会したときの二次会だっけか?」

フレンダ「それに適当に食べ物頼めば今日の晩ご飯代わりにもなるし! まさしく一石二鳥な訳よ!」

麦野「ふーん、アンタにしては考えてるじゃない」

フレンダ「でしょでしょー」

滝壺「うん、私はいいと思うよ」

絹旗「個人的には映画館のほうがいいですが……まあこちらも異論はないですよ」

麦野「……それじゃあこれからの行き先はカラオケに決定っつーことで、おい運転手。さっさと準備してこい」

浜面「お、おう……ってここの支払いは?」

麦野「たかがドリンクバー五人分の支払いぐらい私が出してあげるわよ。いちいち割り勘とかすんの面倒だし」

フレンダ「さっすが麦野ー! ゴチになりまーす!」

滝壺「ありがとうむぎの」

絹旗「では私たちは先に車のほうへ超行っておきましょう! さあ、早く行って車の鍵を開けてください浜面!」

浜面「わ、わかったよ。じゃ、サンキューな麦野」タッタッタ



ワイワイガヤガヤ



麦野「……さーてどうやって遊んであげようかなー? ふふっ」


―――
――




同日 17:00

-黄泉川家・リビング-



ガララッ



一方通行「帰ったぞ」ガチャリガチャリ

結標(……け、結局渡せなかった。チャンスは結構あったのに……どうしてこうなった)

結標(なぜだかこっちが行こうとしたら向こうが話しかけてくるんだもん。間が悪いにもほどがあるわよ!)

一方通行「あァ? シケたツラしてどォした?」

結標「…………何でもない」ムスッ

一方通行「何勝手にムカついてンだか……」


打ち止め「あっ、もう帰ってたんだおかえりなさい! ってミサカはミサカは満面の笑みで二人を迎えてみたり」トテチテ


結標「打ち止めちゃん。帰ってたのね、ただいま」

一方通行「オマエまだ芳川が帰ってきてねェだろォが。木原ンとこいろよ」

打ち止め「ええっー大丈夫だよー! だって今はあなたがいるでしょ? ってミサカはミサカは至極当然のことを言ってみる」

一方通行「チッ、俺らが帰ってくる前にカスどもに襲われたらどォする気だよクソガキが」

円周「だいじょーぶだよー、打ち止めちゃんにはこの私が付いてるから」

一方通行「……木原円周か」

円周「お邪魔しちゃってるよーアクセラお兄ちゃんに淡希お姉ちゃん!」

結標「ああうんいらっしゃい円周ちゃん。珍しいわね貴女がこっちに来るなんて」

円周「うん。今日は二人に用が会って来たからね」

一方通行「あァン? 俺らに用だと?」

円周「そうそう。今日はバレンタインデーだからね。いつもお世話になってるって言うほどお世話になってないけどプレゼントを贈ろうと思ってねー」

一方通行「どォしてそォいう発想になってンのかまったくわかンねェンだが」

円周「細かいことは気にしないほうがいいよー。じゃあハイ二人とも」スッ

結標「あ、ありがとね円周ちゃ――」スッ

一方通行「待て」

結標「? どうしたの?」

一方通行「オイ、このチョコレートに何を入れやがった?」

円周「えっ? 別にーおかしなものは入れてないよー」

一方通行「嘘ついてンじゃねェぞクソガキ。俺の目にはハッキリ映ってンだよそのチョコレートから出てくる悪意を」

円周「…………」

結標「悪意? 何言ってんのよ、円周ちゃんがそんなことするはずないでしょ?」

打ち止め「そうだよ。さすがにそんな何度も同じネタをするほどエンシュウも馬鹿じゃないよ、ってミサカはミサカは呆れながら養護してみたり」

結標「前科があるの!?」

一方通行「いーや、そりゃ残念ながら間違いだ。コイツは一応は『木原』だ。逆に仕掛けてねェなンてことはありえねェンだよ」

結標「……ま、まさか本当なの円周ちゃん?」

円周「……ふふふ」




円周「あはははははははっ!! さすがアクセラお兄ちゃん! よく見抜いたねー! 実はこのチョコレートには『TUR4R3-T4K4R4』という化学物質が入ってるのだ!」



一方通行「何だそりゃ?」

結標「さあ? 聞いたこともないわね」

打ち止め「ってエンシュウ!? それってさっきランスウって人が使ってたアレだよね! ってミサカはミサカは唇の痛みを思い出しながら指摘してみる」ジワジワ

結標「何なの『TUR4R3-T4K4R4』って?」

打ち止め「そのときミサカは意識がなかったから詳しく知らないけど、『甘い』という味覚を『辛い』に換える薬らしいよ、ってミサカはミサカは簡単に説明してみたり」

一方通行「クソくだらねェ。しかもクソガキの言葉から察するに二番煎じかよ」

円周「『木原』は使えるものは何でも使うのだ、って感じでお願いしまーす」

一方通行(やっぱりそォいういところは『木原』の成り損ない、か……)

結標「……つまりそれ食べたら甘いチョコレートじゃなくてものすごく辛いチョコレートを味わうってことよね?」

円周「そだねー。さぁグイッとどうぞー」

結標「普通に嫌よ!?」

一方通行「つゥわけで帰れクソガキ。愛しの数多おじちゃンが部屋で待ってるだろォぜ」

円周「うーん、そんなことはないと思うけど、ここは潔く負けを認めて帰るとするよ。じゃねー!」テクテク

打ち止め「う、うんじゃあまたねーエンシュウ! ってミサカはミサカは手を振って見送ってみたり」ノシ

一方通行「何しに来たンだあのガキは?」

結標「さ、さあ?」


打ち止め「……まあというわけで、次はミサカのターンだぜ! ってミサカはミサカは意気込んでみる」フンッ


一方通行「今度はオマエか……」ギロッ

打ち止め「そ、そんな怖い目で睨んでこなくてもいいのに、ってミサカはミサカは怖気づきながらも懐から例のブツを取り出してみたり!」スッ

結標「あら? 随分と可愛い包装ね」

打ち止め「うんゲコ太だよゲコ太! 可愛いでしょ! ってミサカはミサカは見せびらかしてみる」

一方通行「そォだな。超電磁砲にあげりゃあハシャギ回りながら喜ぶだろォよ」

結標(あれ? 超電磁砲ってミサカさんのお姉さんのことよね? ってことは中学生なのよね? でも喜ぶって……あれ?)

打ち止め「さぁさぁどうぞ受け取ってみてよ二人とも! そしてできればここで食べてもらって感想とか聞きたいな、ってミサカはミサカはチョコを差し出しつつお願いしてみる」

結標「あ、うんありがとね、打ち止めちゃん」ニコ

一方通行「チッ、しょうがねェからもらっといてやるよ」

結標「相変わらず素直じゃないわね」

一方通行「あァ? 残念ながらこればかりは真面目にいらねェよ。地雷だってわかってっからな」

結標「本人がいる前でよくもそう平然とそんなこと言えるわね……」

一方通行「どォでもイイ」

打ち止め「うんうん、まああなたのツンデレはもうわかってることだからね。それより早く食べてほしいなー、ってミサカはミサカはにこやかスマイルでお願いしてみたり」ニコリ

一方通行「イイ加減人のことを勝手にツンデレ判定すンのやめろクソガキが!」

結標「もはや形式美ね」

一方通行「形式美言うな!」



結標「……じゃあ、とりあえずいただくわね打ち止めちゃん」スッ

打ち止め「どーぞどーぞー」

一方通行「無視してンじゃねェよコラ」

結標「…………!」モグモグ

結標「お、美味しいわ! ちょっと甘すぎるところがあるかもだけど十分食べれるわよ!」

打ち止め「おおっ! アワキお姉ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ、ってミサカはミサカはやっぱり嬉しいので素直に喜んでみたり!」

結標「……しかし、打ち止めちゃんでもこんなものを作れるなんて……いよいよ私って一体何なのかわからなくなってくるわね……」ボソッ

打ち止め「うん? 何か言ったアワキお姉ちゃん?」

結標「あ、あはは、何でもないわよ何でも……」アセッ

打ち止め「?」

一方通行「…………」

結標「……じゃ、そろそろ貴方も食べてみたら? 結構美味しいわよ?」

一方通行「断る。さっき言っただろォが、地雷だってわかってるってな。見えてる地雷を踏む馬鹿はいねェだろ?」

結標「何言ってるのよ? 食べてみたらもしかしたら美味しいかもしれないじゃない」

一方通行「そンなわずかな可能性にかけるほど俺は博打打ちじゃねェよ。諦めろ」

打ち止め「…………ぐすん」

一方通行「あ?」

打ち止め「ごめんね、やっぱりあなたの好みのものを作れなかったミサカが悪いよね? ってミサカはミサカは自己嫌悪に陥ってみる」

一方通行「や、別にそォいうわけじゃ……」

打ち止め「別に無理しなくてもいいよ。そんな大甘チョコレートやだよね? それそこら辺に置いといて、ミサカが処分しとくから」

一方通行「だからそォじゃ……」

結標「わー一方通行が打ち止めちゃん泣かせたー」

一方通行「うるせェぞ外野ァ! 俺ァそォいうつもりで言ったわけじゃなくてなァ……」

打ち止め「ごめんなさい。全部ミサカが、全部ミサカが悪いんだよ、ってミサカはミサカは反覆法を使って強調してみる」グスン

一方通行「こンのクソガキが……」ギリリ

打ち止め「…………」

一方通行「…………わかった」

打ち止め「えっ?」

一方通行「わかった食ってやるよクソったれが!! ガキの下手くそ創作料理ビビる第一位じゃねェンだよ俺ァ!!」ガサガサ

打ち止め「ほ、ほんとに……?」

一方通行(ぐっ、何だァこのチョコレートはァ? 俺を不愉快にさせる臭いが何種類も混ざり合ってやがる……!)



一方通行「……クソが」ゴクリ

結標「おっ、何か第一位様が怖気付いてるー」

一方通行「ふ、ふざけンな! 怖気付いてなンかねェよ!」

結標「だったら早く食べなさいよ。というか汗がすごいわよ?」

一方通行「ぐっ、ぐぐぐっ、ぐぐぐぐぐっ」

打ち止め「…………」ゴクリ

一方通行「す、スクラップの時間だッ!! クッソ野郎がァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



ガブリ



一方通行「…………」モグモグ

打ち止め「ど、どうかな? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり」

一方通行「……打ち止め」

打ち止め「な、何?」

一方通行「学園都市最強の座はオマエに譲って俺はもォ引退したほうがイイかもなァ」

打ち止め「……つまりどういうことなの? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「つまり……オマエは最高だ、っつゥことだ。ラストオ――」ガクリ

結標「あ、一方通行!? ちょっとしっかりしなさいよ!」

打ち止め「ぎゃあああああっ! やっぱりあなたには甘すぎたんだね! キハラの予想を遥かに超えるリアクションだよ、ってミサカはミサカは目薬を隠しつつ人命救助にあたってみたり!」

結標「やっぱり嘘泣きだったのね、わかってたけど。というかコイツ部屋に運んどいたほうがいいかもね。打ち止めちゃんちょっと手伝って?」

打ち止め「ガッテン承知だぜ!」

結標「よっと、あっ軽い……ごめん打ち止めちゃんやっぱいいわ。代わりに鞄持ってきて」

打ち止め「おうふっ、女の子一人に軽く運ばれるなんて……、ってミサカはミサカはこの人の体重に絶句してみたり」

結標「絶句した、って言ったらそれは絶句してないんじゃないかしら? 別にどうでもいいけど」

打ち止め「わっ、何か鞄の中可愛い箱がいっぱい入ってる! なんじゃこりゃー!」

結標「ああ、コイツが学校でもらったバレンタインのチョコレートよ」

打ち止め「え、ええっ!? まさかこの人そんなに人気があったの知らなかった、ってミサカはミサカは衝撃の事実に驚愕してみたり!」

結標「大丈夫よ。私も今日知ったから」

打ち止め「そういえばアワキお姉ちゃんのチョコレートはどれかな? もうあげたんでしょ? ってミサカはミサカは鞄の中を漁りながら尋ねてみたり」

結標「うっ、そ、その……」

打ち止め「?」


結標(ら、打ち止めちゃんですらちゃんとチョコレートを渡せてるっていうのに私ときたら……一体何をやってるんだろほんと……)


打ち止め「ど、どうしたのアワキお姉ちゃん!? そんな絶望の淵に立たされたような顔して、ってミサカはミサカは心配になってみる」

結標「な、何でもないわよ……あははは」


―――
――




同日 17:10

-第七学区・街頭-



タッタッタッタッタ



上条「よっ、ほっ、このペースなら余裕だな。さすがにこの状況で遅刻なんて不幸はいくら上条さんでもないだろ」

上条「…………」


上条(しかし、今日は何というか変な日だよなー。バレンタインっつーイベントがあるせいかもしんねーけど)

上条(でもやっぱり変っちゃ変だな。いろんな人にチョコもらったり、あの吹寄がクッキーくれたし、姫神がサプライズにチョコくれたし)

上条(で、一番気になるのはやっぱ雲川先輩、だよな。何だったんだあの最後の意味深な言葉は……)

上条(……もしかして、もしかすると、もしかしちゃったりなんですか!? 上条さん期待しちゃってもよかですか!?)

上条(いや待て落ち着け上条当麻。そうやってホイホイ誘われて実は勘違いでした、とかいうオチだったらどうするつもりだ……!)

上条(『ちょ、上条クンまさか勘違いしちゃった? ゴメンねー私はキミのこといい人だと思ってるけど、別にそんな目で見たことないけど。てゆーかキモッ』みたいなことになる可能

性もあるわけだ、つーか上条さんならほぼ間違いないそうに決まってる)

上条(もしそんなことになったらしばらく部屋に引き籠もれる自信があるね。人間不信がマックスになって廃人になれる可能性だって秘めてるよ)

上条(……まあでも、向こうもバレンタインだからって厚意で渡してくれたかもしれねーから一応ホワイトデーは普通に返しとこ)

上条(つーかホワイトデーとかそーいやあったなチクショウが!! 俺どんだけお返ししなきゃいけないんだよ上条家の家計が大ピンチの予感……! というより確定!!)

上条(……はぁ、今のうちからその軍資金を積み立てといたほうがいいか? それなら削るべきはやはりインデックスの食費なわけだが……)

上条(だが削ったら削ったでアイツ機嫌悪くなるだろうし、でもかと言ってしょうもないお返しして白い目で見られるだろうしなーホワイトデーだけに)

上条(どの選択肢を選ぼうが不幸のヤツは襲い掛かってくる……ふっ、実に上条さんらしいじゃありませんか)


上条「…………不幸だ」


??「……はぁ、出会って早々不幸発言とは相変わらずのようですね、上条当麻」


上条「ん? その声は……神裂か?」クルッ

神裂「どうもお久しぶりです。と言っても一月前に会ったばかりですけど」

上条「今日はどうしたんだ? また何か魔術的な問題でも起きたのか? 例えばバレンタインにちなんだ大型術式とか……」

神裂「い、いえそういうわけではありません。別にあなたの出張るほどの問題など起きてはいませんよ」

上条「そっか、そりゃよかった」

神裂「……というか私が会いに来るたびに魔術師絡みの事件を危惧するのをやめていただけませんか?」

上条「いや、だってお前ら魔術サイドがこんなところに来るのって大抵何かあるじゃねえか。まあ最近は魔術師のまの字も見ないけど」

神裂「たしかにそうですが……何だか疫病神扱いされてるみたいで嫌なんですよ」

上条「悪りぃ悪りぃ、これからは気をつけるよ」

神裂「まったく」



上条「……ところでそういう関係じゃなかったら今日は何の用で来たんだ?」

神裂「はい。じ、実は今日、あ、あなたに会いにきたんですよ」

上条「? 俺にか?」

神裂「ま、間違えました、正確には『あなたたち』、にです!」

上条「……ああ、俺とインデックスか」

神裂「今日はバレンタインデー、ということなので親友であるインデックス、そしていろいろと多大な『借り』があるあなたへの少しでも恩返しができればと思いまして」

上条「何か俺だけものすごく重く聞こえんだけど。別にいいよ借りなんて踏み倒せば」

神裂「いえ、そう言われましても私の気が済みません! そもそも踏み倒すことが許されるようなことではないほどの『借り』があなたに……!」

上条「お前が何でそんなに俺に恩みたいなのを感じてんのか知らねーけど、俺はそんなもんにお前を縛り付けるために助けたんじゃねーと思うぞ」

神裂「えっ、思う……?」

上条「!? や、な、何でもねえよ! つまり何が言いたいかというと別に気にすんなっつーことだよ!」

神裂「……ふふっ、やはりあなたはそう言ってくれるのですね。ありがとうございます。しかし、そうは言われてもあなたに『借り』があることは事実です」

上条「まだそんなこと言ってんのかよ。気にすんなっつってんのに」

神裂「ですから、気にするなと言われてもそう簡単に割り切れないものなんです! 余計に気になってしまうものなんですよ!」

上条「はぁ、……だったらこうしようぜ? いつか俺が本当に困ってどうしようもない状況に陥ったとき、そのときはお前が俺を助けてくれ。それでチャラでいいだろ」

神裂「そんな適当な……」

上条「適当なんかじゃねえよ。これから先、何が起こるかなんて誰にもわかんねえんだ。もしかしたら俺の心とかがズッタズタのボッコボコに折れてしまうみたいなことが起こるかもしれない」

上条「もしそんなことが起こったりなんかしたらさ、そんときは俺をそれから助けてよ。どうだ? 結構重要な役割だと思うけど」

神裂「…………」

上条「ありゃ? 神裂さんなぜにそんな険しい表情をされているのですか?」

神裂「…………、わかりました。あなたがどんな絶望的な状況に立たされても、わたしが真っ先にあなたを救うことを約束しましょう!! 我が魔法名にかけて!!」

上条(何か根本的な問題は解決してねーような気がしないでもないけど……ま、いいか)

上条「つーか神裂、俺のことばっか気にかけてるみてーだけど、自分の周りのこともちゃんと見てんのか?」

神裂「はい。それについては問題ないと思いますが……」

上条「じゃあお前いい加減天草式の連中とは和解したんだろうな?」

神裂「……そ、そういえば私と一緒にいたときのあの子は」

上条「はい唐突に話を逸らさない」

神裂「い、いえその、実は……まだ……その」

上条「ったく、いい加減観念しろよ。アイツらがどんな思いで頑張ってるか知ってんだろ?」

神裂「そ、それはわかっています! ……しかし、私は皆を捨てて今を生きています。そんな私に再び一緒になる『資格』などありません!」

上条「……まあ、踏ん切りが付かないのは何となくわかる。だからこれ以上は何も言わねえよ。だけど最後にこれだけは言わせてもらうぞ」


上条「仲間が『一緒にいたい』って言ってくれてるのを受け入れるのに『資格』なんてもん必要ないんじゃねえのか?」


神裂「……そう、ですか」



上条「…………」

神裂「…………」

上条「……って何だこの空気!? 悪りぃまた俺変なこと言っちまったか?」

神裂「いえ、そんなことはありません。あなたは正しいことを言っていますよ」

上条「そうか……そ、そういや神裂、お前インデックスにも会いにきたって言ってたけどもう会ってきたのか?」

神裂「あっ、いえ会えていませんよ。先ほど学生寮の方へ寄らせていただいたのですがどうやら留守のようで……」

上条「あー、そういやアイツ今どっか出かけてるんだったっけな。ったく、勝手にどこほっつき歩いてるのやら……」

神裂「ああそうだ、これをどうぞ」ドサッ

上条「うおっ!? 何だこの紙袋は……!?」

神裂「イギリスにあるお菓子をいろいろと集めたものです。あの子と一緒にどうぞ食べてください」

上条「お、おう、ありがとう……つーか多すぎだろ!!」

神裂「えっ? そうでしょうか?」

上条「この野郎、さすがにインデックス慣れしてやがる……!」

神裂「あとこれはオルソラの分、そしてこれはアニェーゼの分」ヒョイヒョイ

上条「わっと、まだあんのかよ」

神裂「オルソラから『いつか暇な時にでもこちらへ遊びに来てくださいね。精一杯のおもてなしをさせていただきますよ』という伝言を受け取っています」

神裂「アニェーゼからは『ここは日本流に合わせて、渡した分の三倍返しは期待しちまってもいいですよね?』とのことです」

上条「ははっ、アイツらも元気にやってるようだな……って三倍返しってふざけんなコラ!」

神裂「それは私に言わずシスター・アニェーゼに直接言ってください。……では私はこれくらいで失礼します」

上条「もう帰んのか? どうせならインデックスに会ってけよ? 俺の部屋にでもいりゃたぶんすぐ帰ってくると思うし」

神裂「いえ、私にはそんなに時間を与えられてはいない。すぐにでもここと出ていかなければなりませんので」

上条「そっか」

神裂「それに……『七閃』ッ!!」



ズバババババババッ!!



上条「ッ!? 何だぁ!?」

神裂「そこにいるのはわかっています。出てきなさい土御門!」


土御門「にゃー、バレちったらしょうがない。つか、いきなり七閃飛ばしてくるとか危なすぎでしょねーちん」


上条「つ、土御門!? こんなとこで何やってんだよ?」

土御門「いやーねーちんの平謝りショーから堕天使メイドが見れると聞い――」

神裂「……少し話をしましょうか土御門。あと私はそんな破廉恥なものは決して着ることはありません、決してッ!!」

土御門「ちょ、気付いてないと思うけどねーちん、そーいうのはフラグって言うんぜい」


上条「……何だったんだ?」

上条「というかやべえもうこんな時間じゃねえか! バイト遅刻しちまう急がねえと……って神裂からもらったお菓子重っ!?」ヨタヨタ


―――
――




同日 17:20

-黄泉川家・一方通行の部屋-


一方通行「…………あァ? ここは……?」ムクリ

一方通行「俺の部屋、か……つゥか何で俺はこンな場所で寝てたんンだ?」

一方通行「……口の中に感じるかすかな甘み、この感じチョコレートか?」

一方通行「そォいや何かさっき食ったよォな気がすンな。……あっ、たしかクソガキの激甘チョコレート食ったンだっけか」

一方通行「あの野郎何つゥモン作ってくれやがってンだ、俺の意識を飛ばすほどの甘さなンて真っ当なモンじゃねェだろ」

一方通行「……まァイイ、真の恐怖っつゥモンが後に控えてンだ。今さらクソガキをどォこォ言ったところで何も変わンねェよ」


一方通行「…………それより」



一方通行の鞄『も、もう食べられないっスはマジで……』



一方通行「この俺の鞄の中に無理やり詰められたチョコレートどもをどォすっかが問題だな」

一方通行「つゥか何で俺ァこンなモン大量にもらってンだ? 理解がまったく追い付いてねェぞ」

一方通行「……しかもこれ、おそらく全部クソガキのヤツのほどじゃないにしろ砂糖ガンガン混ぜ込ンでるアレだろ?」

一方通行「こンなモン全部胃の中にぶち込むなンざ絶対ェ無理だろ。普通に考えてしばらくの間廃人コースが確定すンぞ?」

一方通行「……いや待て。何で俺はいちいち律儀に全部食い切るなンて馬鹿みてェなこと考えてンだ?」

一方通行「俺はそンな善人じゃねェだろォが。コイツら全て踏みにじって処分することなンざ平気でできるゴミクズのはずだろォが」

一方通行「そォだ、そォだろ、そォじゃねェか。こンなモン、こンなモン全部俺が廃棄してやりゃイイ話じゃねェか」

一方通行「さて、と。俺が本気を出せばなァ、チョコレートごときで思考することなンてねェンだよ」ガサッ

一方通行「燃えるゴミ行き確定だ、じゃあな……」

一方通行「…………」



ビリビリビリ



一方通行「…………」パクリ

一方通行「……やっぱり甘ェ」

一方通行「……ハァ、どォすっかなァこれ……」


―――
――




同日 17:30

-第七学区・ファミリーサイド付近のコンビニ-


芳川「……ふぅ、早く帰りたいわ」

御坂妹「唐突に何を言い出すのですか? とミサカは勤労意欲を削がれたことへの弁明を求めます」

芳川「いえね、今日はとある動画サイトで最近流行ってるドラマの最終回直前の振り替え一挙放送をしてるのよ。早くそれに参加したいわ」

御坂妹「参加? ドラマなのだから視聴するの間違いでは? とミサカは首を傾げつつ何言ってんだこいつ的な視線を送ります」

芳川「その動画サイトはコメントっていうチャットみたいなものを介してリアルにみんなの感想とかがわかるのよ。だから私も早くそれに参加して一体感みたいなものを味わいたいの」

御坂妹「……よくわかりませんがミサカネットワークと何だか似ている気がします。この前テレビを見ている時に同じ番組を見ている個体が何人かいたのですが、それについて実況し合

いました」

芳川「ネットワークっていうくらいだからそういう部分はあまり変わらないんじゃないかしら? インターネットってやつと」

御坂妹「まあ、そういうどうでもいい話は置いといて、そろそろ彼が来る時間ですね、とミサカは華麗に流れを変えてみせます」

芳川「どうでもいい話、って言われた瞬間私に遺恨が残ったんだけど。華麗でも何でもないわよ」

御坂妹「そうですか。それはすみませんでした、とミサカはもうすでにあの人のことで心ここにあらずな状態で謝罪をしてみせます」

芳川「……はぁ、おでんの具の補充でもしとこっと」ガサガサ



ウイーン



上条「だぁっ!! ギリギリ間に合ったか!?」ダッ

芳川「いらっしゃいま……うん? あら、随分とギリギリの到着ね」

上条「ぜぇ、ぜぇ、ちょ、ちょっといろいろありまして……」

御坂妹「というか何ですかその大荷物は? とミサカは大きな紙袋を指さしながら問い詰めます」

上条「ああこれか? 知り合いにもらったバレンタインのプレゼントだよ」

御坂妹「バレンタインの……プレゼント、ですと……!?」

芳川「あらあら、モテモテじゃない上条君」

御坂妹「どれだけの女を引っ掛ければそれだけのものを得られるのか非常に興味があります、とミサカは軽蔑の眼差しをあなたに向けてみます」ジトー

上条「か、勘違いすんじゃねえぞ御坂妹! これは一人からもらったもんだ! しかもこれ俺とインデックス二人分! こんなにもらってねーよ!」

御坂妹「あのシスターの分も含まれているのですかそれなら納得です、とミサカは日頃の彼女の食欲を思い浮かべます」

芳川(勝手に納得してるようだけど、それでも彼の分も含まれてるってことに気付いてないのかしらこの子? ……ん?)

芳川「上条君。その大量のお菓子の中に一際目立ってるものが二つほどあるんだけど?」

上条「…………」

御坂妹「……もしかして、とミサカは――」

上条「――こんなところでいつまでも話してる場合じゃねえ! さっさと着替えてきます!」ダッ

御坂妹「いってらっしゃいませ、とミサカは不信感を抱きながら見送ります」

芳川「……あら、いいのかしら?」

御坂妹「何がです? とミサカは聞き返します」

芳川「彼にバレンタインチョコレートをあげないのかしら? もちろん用意してきているのでしょう?」

御坂妹「はいそれはもちろんです。何ならミサカはミサカネットワーク内で開かれた『第一回上条当麻へチョコレートを渡すミサカ選抜ジャンケン大会』で勝ち上がりここへ立っていますから、とミサカは誇らしげに胸を張ります」エッヘン

芳川「よくそんな大勢の中から勝ち上がることができたわね。ざっと数えて十三、四回勝ったってことよね?」

御坂妹「何かずっとパー出してたら勝てました、とミサカは勝利のパーを見せびらかします」



芳川「だったら早く渡さなくてもいいの? チョコレート」

御坂妹「今は仕事中ですよ。真面目にやってください、とミサカは優等生アピールをしながら注意をします」

芳川「アピールするべき人がいないアピールに何か意味があるのかしら?」

上条「お待たせしましたー、上条入りまーす」ドタドタ

御坂妹「おかえりなさいませご主人様、とミサカはメイドのようなにこやかスマイルでお出迎えします」ニヤリ

上条「全然にこやかじゃねえ! あ、あとそういうのあまり公共の場で言うな、お客様が変な視線を送ってくるからさー」



<……ざわ……ざわ…… <あの二人はすでにそういうプレイをしているということかうらやまけしからん



上条「ほらっ、すげえ誤解が生まれてるっ! このままじゃ俺女子中学生をたぶらかす犯罪者扱いされちまう!」

芳川「うわー上条君そういう趣味があったんだー」

上条「そういうこと口走るのやめてもらいませんか芳川さん! つーか、棒読みすぎんだろ演技すんならもっと真面目にしろ!」

芳川「真面目にしたら本気で捕まってもおかしくなくなるわよ?」

上条「それは勘弁して欲しいっす」

芳川(うふふっ、やっぱり彼をからかうのは楽しいわね……)ニヤニヤ

御坂妹「悪い顔をしてますね、とミサカは呆れながら率直な感想を述べます」

芳川「ところで上条君? ちょっといいかしら? この子がキミに渡したいものがあるらしいのだけど」

御坂妹「ッ!?」

上条「御坂妹が? 何だよ」

御坂妹「(ちょ、ちょっといきなり何を言い出すのですか! とミサカは突然の不可解な行動に戸惑いつつも小声で問いかけます)」

芳川「(いえね、何となく優等生が壊れていって不良になっていく様って私好きなのよね)」

御坂妹「(とても教職を目指している人の言葉とは思えませんね。で、それが今の奇行と何か関係が?)」

芳川「(仕事中だから渡せない、とか言ってる間には他の娘たちに先越されちゃうわよ? 彼の口ぶりからして結構もらってそうよバレンタイチョコレート)」

御坂妹「(むむっ、それは由々しき事態ですね、とミサカは歯噛みします。と言っても普通に予想はしていましたけど)」

芳川「(だからそんな消極的な真面目君のままだったら大人しく初戦敗退を迎えることになるかもよ?)」

御坂妹「(……というか一つ言わせてもらいますが)」

芳川「(何かしら?)」

御坂妹「いずれ絶対渡すんだからそういう話は関係ねーだろ。しかもこんな場所で渡したほうが確実に初戦敗退すんだろ、とミサカは真面目にレスポンスしてあげます」

芳川「あらバレた?」

御坂妹「当たり前です、とミサカは吐き捨てます」

上条「……何だかよくわかんねえけど話は終わったのか? で、何くれんだよ御坂妹」

御坂妹「たしかにミサカにはあなたに渡すものがあります。しかし今はそのときではありません。ということでもう少し待っていただけないでしょうか? とミサカは提案します」

上条「今仕事中だしそうだよな。じゃあ楽しみにしとくよ」ニコッ

御坂妹「は、はい、とミサカは少し戸惑いながらも業務に戻ります」アセッ

芳川「あっ、そろそろ二話が終わる頃かしら? あー、早く帰りたいわ」

御坂妹「まだそんなこと言っているのですか、というかもう帰れよ、とミサカは辛辣な言葉を叩きつけます」


―――
――




同日 17:50

-第七学区・とあるカラオケボックス-



ピンポーン



店員「いらっしゃいませー」


黒夜「……ったく、六時ぐらいにここ集合だ? 面倒臭くて敵わねーな」

店員「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」

黒夜「今日は七回歌うよ」

店員「……マイクを二本お付けしましょうか?」

黒夜「G35HD304E07」

店員「……こちらへどうぞ」


黒夜(はぁ、……ここはいちいち合言葉なんてガキの秘密基地染みたモン言わなきゃいけないから嫌なんだよな)

黒夜(ホテルとかだったらカードキー通すだけで何の苦もなく中には入れるわけだからな)

黒夜(しかし、それより面倒だったのはこれだな……その、バレンタインのチョコレート)スッ

黒夜(何でこんなもんをあのクソ海原のためなんかに私が作らなきゃいけないんだ? 何考えてやがんだ番外個体の野郎は……?)

黒夜(アイツが言うにはこれはイタズラらしいけど、私が見た限りそうは見えないね。どっちかと言ったらそのまんま素直にバレンタインってヤツを楽しんでるように見える)

黒夜(客観的に見れば、これを作ってるときの私は『好きな男のためにせこせことチョコを手作りする健気なアホ女』って感じに見えるな。お、思い出すだけで枕に顔埋めて足バタバタしたい)

黒夜(だけど個人的にはコイツは初めて作ったかがよく出来たほうだと思うね。ましてやこの短時間でだ)

黒夜(基本的な知識はだいたいこの頭の中にインプットされてっからな。まぁ、料理なんて慣れねえことはするモンじゃねえっつーのはよくわかったよ)

黒夜(……はぁ、しかし面倒臭せェ)


店員「……こちらです」

黒夜「ああ、もう着いたか」

店員「何かお飲み物をお持ちいたしましょうか?」

黒夜「何でもいいよ。別にカラオケボックスごときに質なんて誰も求めてないし」

店員「わかりました。他に何かありますでしょうか?」

黒夜「別にない。下がっていいぞ」

店員「ではごゆっくり」ペコッ


黒夜「……さて、行くか」スッ



―――
――




-第七学区・とあるカラオケボックスの一室(グループの隠れ家)-



ガチャ



黒夜「おいーす」テクテク


番外個体「おっ、クロにゃんいらっしゃい!」

黒夜「……随分といろいろ料理を頼んでんじゃねえか。これからパーティーでもすんのか?」

番外個体「んーん、何か暇だったからメニューのここからここまでを頼む! ってヤツをリアルでやってみたわけよ」

黒夜「アホか。グループの予算の無駄遣いしてんじゃねーよ」

番外個体「別にいいじゃん。必要経費だよ必要経費」

黒夜「明らかに必要ないだろこれ。知ってる? 生活費で真っ先に削減されんのは大体が食費なんだとさ」

番外個体「何だミサカには関係のない話か」

黒夜「カンケーあるだろ絶対ッ!!」

番外個体「もううるさいなー、ところでクロにゃんはちゃんとポッキー持ってきたのかなー?」

黒夜「は? ポッキー? 何だそりゃ? アンタたしかメールで手作り限定とか言ってなかった?」

番外個体「うん、そうだよ」

黒夜「それで何でアンタはポッキーのほうを期待してんだよ?」

番外個体「そりゃアレだよクロにゃん。『私ぃ料理とか出来ないからチョコレート作れないのぉ! だぁかぁらぁ、ポッキーでゆ・る・し・て♪』とか媚びてくるクロにゃんに二穴責めをしてあげようかなと思って」

黒夜「何がどうなっても私は絶対そんなこと言わねえよ! そして残念だったなッ! そんなクソみたいな展開にならなくてなァ!!」

番外個体「まぁいいよ別に。ミサカが本気を出せば二穴でも三穴でも何でも余裕でできるからね」

黒夜「チッ、アンタさえいなけりゃ私が天下を取れるような気がするんだけどよぉ」

番外個体「うーん、じゃあポッキーじゃないってことは素直に手作りで持ってきたってことかな? そのイタズラグッズは」

黒夜「まーな。で、これどういう風にイタズラに使う気なんだ?」

番外個体「どういうって……別に普通に使うに決まってるじゃん。何言ってんのクロにゃん?」

黒夜「えっ? あ、ああ、そうだよな悪りぃ変なこと聞いた」

番外個体「?」


黒夜(オイオイオイ、コイツはどォいうことだ? まさか本気で海原にチョコレート渡す気なのかよ!? しかも普通に!?)

黒夜(冗談じゃねェぞ!! ってことは私も必然的にあの野郎にチョコレート渡すってことになるじゃねェか!!)

番外個体「ポテトうまー」モグモグ

黒夜(見たところ何一つ取り乱さず食いモン食ってる普通の番外個体。つまりいつもどおりってことだ)

黒夜(一体何がなンだか私にはわからねェよ番外個体ォォおおおおおおおおおおおおおおッ!!)


番外個体「……んー、そろそろかな?」

黒夜「あァ? 何がだよ?」

番外個体「何って海原が来る時間。ミサカたちの集合時間より少し遅めにして呼んどいたんだ」

黒夜「そ、そっか。だからアイツここにいなかったンだな」

番外個体「それよりどうかしたクロにゃん? 何だか顔色悪そうだよ? 何か口調もおかしいままだし」

黒夜「何でもねェよ!」




トントン



黒夜「ッ!?」ビクゥ

番外個体「どーぞー」



ガチャ



海原「どうもこんにちは番外個体さん……って何ですかこの大量の料理は? 今日はパーティーか何かでしたっけ?」

番外個体「暇だから頼んでみた」

海原「まったく、またですか番外個体さん? 前も言いましたけどグループの予算だって無限じゃないんですよ。あまりこう無駄遣いしてもらっては困ります」

番外個体「はーい」

黒夜「オイコラ番外個体ォ! 私のリアクションとはえらい違いじゃないかオイ! つ、つゥか私のこと華麗にスルーしてンじゃねェ海原がァ!」」

海原「ああ、黒夜いたのですか。すみませんまったく気が付きませんでした」

黒夜「わ、私は最初からここいたぞ! 何ならオマエの視界に真っ先に入る場所にな!」

海原「ところで今日自分はなぜ呼び出されたのでしょうか?」

黒夜「む、無視してンじゃねェ!!」

番外個体「今日は海原にミサカたちからプレゼントを渡したいと思って呼び出しましたー!」

海原「本当ですか? それは楽しみですね、一体何なんでしょうか?」

番外個体「そだねー、じゃああんまもったいぶってもあれだし……クロにゃん?」

黒夜「な、何だよ?」

番外個体「例のもの、渡しちゃいなさい」ニヤリ

黒夜(あ、アレはあの野郎がうっとおしいことをするときの顔……? ま、まさかこれって海原へのイタズラじゃなくて私への……?)

番外個体「……? どうしたのクロにゃん? 早く早くー」ニヤニヤ

黒夜「えっ、ああ、そ、そうだな」

海原「……どうしたんですか黒夜。いつもより何というか、言葉に張りがありませんよ」

黒夜「なっ、何でもねェよアホ原ァ!!」

海原「いつもに増して言葉が幼稚ですね。まぁ、歳相応ということでしょうか」

黒夜「ぐっ、うるせェ!」

番外個体「にやにや」ニヤニヤ

黒夜(クソッ、マジで殺してェ……あの後ろでほくそ笑んでるゴミクズ野郎をマジで左右真っ二つにぶった斬りてェ……!)

海原「で、黒夜。自分にプレゼントとは何でしょうか? もしオマエの頭に窒素爆槍(ボンバーランス)とかふざけたこと言いましたら、貴女の身体をズタボロにしてさしあげますよ」

黒夜「ぐっ、そ、そんなんじゃねェよ。私もそんなんのほうがよっぽどよかったよ」

番外個体「クーローにゃーん、時間が押してるよー早く早くー」

黒夜「……覚えてろよ番外個体ォ。お、オイ、海原ァ!!」

海原「何でしょうか?」

黒夜「こ、ここ、これ、コイツをくれてやるよアホっ!!」スッ

海原「……? 何ですかこれは?」



黒夜「な、何って……わたっ、私の口から言わせる気かよオマエ!!」

海原「やはり歯切れが悪いというか……いつもの黒夜とは何かが違いますね」

黒夜「うるさい!! ばーか!! ばーか!!」

海原「よくわかりませんが、とりあえずこれ開けさせていただきますよ?」

黒夜「えっ、開けんのそれ?」

海原「駄目でしょうか?」

黒夜「い、いや何つーかその……」

番外個体「いいよいいよ海原ー。どうぞ開けちゃってー」

黒夜「番外個体ォ!!」

海原「では……」ガサゴソ

黒夜「ううっ……」

海原「……これは? もしかしてバレンタインのチョコレートでしょうか?」

黒夜「……そ、そうだよクズ!! 死ね!!」

海原「? なぜ黒夜がこんなものを……? ますます変ですねー今日の貴女は」

番外個体「まあまあ、そんなことより食べちゃったら海原? クロにゃんも食べて欲しーって顔してるし」

黒夜「してねェよ!! つーか食べンなよ海原ァ!!」

海原「じゃあ、遠慮なくいただくとしましょう」パクリ

黒夜「オイ、何で食べちゃうンだよ!!」

海原「…………ふむ」モグモグ

黒夜「うう……」

海原「……うん。美味しいですよ」

黒夜「えっ、そ、そうか……」

番外個体「うん?」

海原「形は歪ですが味は悪くはないですよ。ありがとうございます黒夜」ニコッ

黒夜「よ、余計な言葉付け加えてんじゃねーよ、普通にお礼しろっつーの……ったく、相変わらずムカつく笑顔なんだよクソが」ボソッ

番外個体「…………あれ? 何かおかしくないクロにゃん?」

黒夜「は? 何がだよ」

番外個体「ちょっと耳貸して」

黒夜「お、おう」

海原「?」


番外個体「(ねえねえ、アレってクロにゃんが作ったイタズラアイテムだよね?)」

黒夜「(あ、ああ、そうだけど)」

番外個体「(じゃあじゃあ、どこがイタズラアイテムなのさ?)」

黒夜「(…………は? ちょっとアンタの質問が理解できねェ)」

番外個体「(だってさ、イタズラなのに海原困ってないじゃん戸惑ってないじゃん。イタズラじゃないじゃん)」

黒夜「(えっ、これって渡すことがイタズラとかそんなんじゃなかったのか?)」

番外個体「(……はぁ、ヌルい、生ヌルいよクロにゃん。その程度でサプライズになるのはアホなガキだけだよ)」

黒夜「(は? ちょっと何言ってるかわからない)」



番外個体「しょうがないなー、ミサカがお手本を見せてあげるよ。海原ー!」

海原「はい、何でしょうか番外個体さん」

番外個体「今度はミサカの番だね。はい、バレンタインプレゼーント」スッ

海原「ありがとうございます番外個体さん! 早速ですが食べてみても……?」

番外個体「いいよーガッツリいっちゃってー」

海原「ではいただきます――ッ!?」パクリ

海原「ごっ、がっ、ぐはっ、ごほっごほっ!! な、何ですかこれは!?」

番外個体「ミサカ特製カレールーチョコレート。カレールーをビターチョコレートでコーティングした最強のイタズラだぜ!」

海原「げほっ、げほっ、な、何てものを食べせ……うえっ」

黒夜「な、何だこりゃ……?」

番外個体「これがバレンタインのイタズラってヤツだよークロにゃん♪」

黒夜「…………こ、こォいうことだったのかクソったれェええええええええええええええええええええええッ!!」

番外個体「あっれークロにゃん。もしかして勘違いしちゃってたー? というかミサカがバレンタインデーにただチョコレートを渡して終わるなんて面白くないことするわけ無いじゃん」

黒夜「クソッ、クソッ、そォいうことかよ! こっちはどンな思いでこれを……!」

番外個体「……あれ? その左手の人差し指に巻いてある絆創膏は何かな?」

黒夜「えっ、えーとその、これを作ってるときに誤って切っちまって、中から人口血液が流れ出てうっとうしくて……」

番外個体「へー、そんな痛い思いをしながらも海原のためにチョコレートを作ってたと、へー」ニヤニヤ

黒夜「…………」



パァン!! ガシャンガシャンガシャーン!!






黒夜「ミーサーカワァァストォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」←義手フル装備






番外個体「わおっ☆ クロにゃんの下克上だー。かっわいいー♪」ビリビリ



ズガガガガガガガガガッ!! バチバチバチン!! ゴパァァァン!!



海原「…………うがっ、ちょ、ちょっとトイレに……」ユラー


―――
――




同日 18:00

-第七学区・ファミリーサイド付近のコンビニ-



上条「以上で一五八〇円になります。一六〇〇円をお預かりいたします。二〇円のお返しになります。ありがとうございました!」ペコッ

御坂妹「カナミン肉まんでしょうか? 申し訳ありません、それは別のコンビニにあるのではないでしょうか? とミサカはため息混じりに答えます」

芳川「えっと、駅はここを右に曲がって、郵便局を過ぎたところに駅がありますよおばあちゃん」


上条「……ふぅ、とりあえず一旦落ち着いたか」

御坂妹「しかし今は客数が多い時間帯です。またすぐにたくさんお客様が来られますよ、とミサカは注意を促します」

芳川「あっ、もう私時間だから上がるわね」

上条「お疲れ様でーす!」

御坂妹「ドラマの一挙放送、どうぞごゆっくりお楽しみください、とミサカは真顔で皮肉を述べます」

芳川「やめて素直に楽しめなくなっちゃうから。というか普通に決められた時間まで働いたのにこの言われようないんじゃないかしら?」


上条「…………」

御坂妹「…………」

上条「……そういや、これからの時間は誰が来るっけ?」

御坂妹「たしか原谷さんですよ、とミサカは瞬時に答えて記憶力あるアピールをしてみます」

上条「そうか。お客さんがたくさん来る前に早く来て欲しいぜ」

御坂妹「……そうですね、とミサカは視線を逸らしながら同意します」

上条「?」


芳川「ちょっといいかしら?」

上条「ん? 何ですか芳川さん?」

芳川「これ買いたいからレジお願いできるかしら?」

上条「これってバレンタインのチョコですね。一方通行にでもあげるんですか?」

芳川「まあね。こういうところで少しでも恩を売っておけば何か良いことあるかもしれないし」

御坂妹「まぁ、そのチョコレートじゃ逆に恩なんて売れないと思いますけどね、とミサカは撃沈した上位個体のことを思い出しながら答えます」

芳川「あら、あの子駄目だったの?」

御坂妹「チョコレートを食べてもらうまではよかったのですが、あまりに甘すぎたのでどうやら気絶してしまったようです、とミサカは簡潔に答えました」

上条(何の会話してんだ?)



芳川「それより早く会計してもらえると助かるのだけど」

上条「あっ、すみません。えっとバレンタイン用のチョコレートを二つ……ん? 二つ?」

芳川「何か?」

上条「一つは一方通行のだとしてもう一つは誰のですか? 他の同居人の人に渡すって言っても数足りてないし」

御坂妹「あの、いちいちお客様の買い物に口出しするのはコンビニ店員としてどうかと思いますよ、とミサカはデリカシーの無さに呆れながら注意します」

上条「そ、そっかごめんなさい芳川さん」

芳川「別にいいのよ。お代はたしか一五九六円よね? はい二千円」スッ

上条「えっと二千円お預かりします。四〇四円のお返しになります。ありがとうございました!」

芳川「ありがとう。じゃあこれのうち一個をそのままはい」スッ

御坂妹「ッ!?」

上条「えっ? お、俺にですか?」

芳川「そう。ハッピーバレンタイン、と言っても残念ながらただの義理だけどね。だから安心してちょうだい、ね?」チラッ

御坂妹「……こっちを見て言わないでください、とミサカは変な目を向けてくるあなたに睨みつけます」

上条「? じゃ、じゃあありがたくいただきます」

芳川「それじゃあ私は帰るわ。お疲れ様ー」

上条「お疲れ様でーす!」

御坂妹「お疲れ様です、とミサカは労いの言葉で別れの挨拶をします」



ウイーン



上条「……さて、これここにあっても邪魔だろうし、ちょっとしまってくるよ」

御坂妹「了解です」



ブーブー、ブーブー。



上条「うん? 電話か?」スッ

御坂妹「どうかなさいましたか? とミサカは問いかけます」

上条「いや、ちょっと誰からか電話が来たみてーだ。えっと……あん? ビリビリ?」

御坂妹「ビ・リ・ビ・リ……? もしかしてお姉様ですか、とミサカは恐る恐る尋ねてみます」

上条「おう、お前らのお姉様だよ。悪りぃけどしばらく頼むぞ?」ピッ

御坂妹(くっ、おのれオリジナルめ……! やはりミサカの目の前に立ちはだかりますか……! とミサカは闘争心を燃やします)ゴゴゴゴゴ



ウイーン



原谷「お疲れ様でーす……ってミサカさん!? 何か顔が怖い無表情なのに!?」




ブーブー、ブーブー



上条「ここでいいか。……もしもし」ピッ


美琴『あっ、えっ、えっと、も、もしもし!?』


上条「……もしもし? どうかしたか御坂?」


美琴『あっと、あの、い、今大丈夫かしら?』


上条「かしら……? ああ、別に大丈夫だけど」


美琴『あ、ああそう、えっとじゃあ……その……今大丈夫?』


上条「いい、つってんだろーが! ちょっと落ち着け御坂。で、何の用なんだ?」


美琴『う、うん、い、今から会えない? いつもの自販機がある公園とかで』


上条「……悪い、無理。今ちょっとバイト中だからさ」


美琴『そ、そう……それって何時くらいで終わるわけ?』


上条「えーと、今日は八時半くらいに終わる予定だけど……悪いけどその用事明日とかにできねーか? 明日ならバイトないし」


美琴『ふ、ふざけんじゃないわよ!! そ、そんなの駄目に決まってるじゃない!!』


上条「えー、だってバイト終わってそんなとこまで言ったらたぶん九時回りますよ? 完全下校時刻なんてとっくに過ぎてるし、中学生が一人で夜遊びはさすがに駄目だと思うぞ」


美琴『うっさい!! 中学生だからって子供扱いすんな!! よ、余裕よ余裕、何時まででも待ってやろうじゃない!』


上条「はぁ、本当に今日じゃないといけないのかよ?」


美琴『あ、当たり前じゃない!! 今日じゃないと駄目なことくらいさすがのアンタでもわかんでしょ!?』


上条「ん? 何が?」


美琴『……とにかく九時!! 九時にさっき言った場所に集合!! 絶対ぜぇぇったい来なさいよね!! じゃあね』


上条「あっ、おい御坂!! もしもし!? もしもーし……勝手に決めて勝手に切りやがったあの野郎……」

上条「ったく、一体何の用だってんだ? はぁ……不幸だ」

御坂妹「電話は終わりましたか、とミサカは電話から耳を離しているあなたへ確認を取ります」

上条「おう、どうかしたか?」

御坂妹「急に客足が増えてレジがパニック状態です。ミサカと原谷さんでは捌き切れないので急いで戻ってきてください、とミサカは催促します」

上条「ま、マジでか!? わかった行くぞ御坂妹!!」ダッ

御坂妹「はい、了解です。……そういえば電話の内容を聞くの忘れてました、とミサカはうっかりミスに気付きました」


―――
――




同日 18:10

-第七学区・とあるカラオケボックスの一室(グループの隠れ家)-


黒夜「」プスプス

海原「……では、自分はそれそろ失礼したいと思います」

番外個体「ええっー? もう帰っちゃうのーつまんないのー」

海原「グループ自体は休みでも自分にはいろいろすることがあって忙しいんですよ。ここにもわざわざ時間を作って来たわけなんですから」

番外個体「そんなつまんないもんサボってこれ食べて遊ぼうよー、ミサカのホ・ン・メ・イ・チョコレート♪」

海原「ッ……いえ、いくら貴女の頼みでもサボタージュするわけにはいきません。というかその本命中身香辛料の塊じゃないですか」

番外個体「ちぇー、じゃあもう帰りゃーいいじゃん! 海原なんて知らない!」

海原「ぐっ……し、失礼いたします」ペコリ



ガチャ



番外個体「……あーあもう帰っちゃうなんて何て薄情なおもちゃだ。こうなったら……」


黒夜「」ピクピク


番外個体「もう一つのおもちゃで遊んじゃうしかないよねー」ワキワキ


黒夜「――ハッ、殺気ッ!?」バッ


番外個体「チッ、もう起きちゃったか」

黒夜「私は一体何を……って思い出した! よくも私に恥をかかせてくれやがったな番外個体ォ!!」ゴウッ

番外個体「ハイハイごめんねークロにゃんちゃーん」ビリビリ 

黒夜「ぐわっ、て、テメェまた私の上半身の支配を……!?」

番外個体「海原が帰っちゃったからすっごく暇なんだよねー。それと同時に勝手なおもちゃにイライラしてんだよねー」ビリビリ

黒夜「げっ、スゲェ嫌な予感がすンだけど……」

番外個体「よーし! 今日はオールで遊ぼうぜクロにゃーん? もちろん、アナタに決定権はあ・り・ま・せーん♪」

黒夜「い、嫌だ! 何が楽しくてアンタと夜を一緒に過ごさなきゃいけねェンだ!?」

番外個体「ほいじゃーホテル行こうぜホテルー。あそこにはクロにゃんのカスタムパーツとかいろいろあるから、それで着せ替えクロにゃんしようよ」

黒夜「勘弁してく、ぎゃあああああああああああああああああッ!! 動けねえええええええええええええええええええええッ!!」




-第七学区・とあるカラオケボックス-


店員「ではこちらの用紙にご記入ください」

浜面「えっ、ええっとー」

麦野「さっさとしろ浜面。ただでさえ移動で時間かかってたんだ、これくらいすぐに終わらせろ」

浜面「急かすんじゃねえ! たしかに道間違えたのは俺が悪いけど、これ記入するときくらいゆっくりやら――ぎゃー間違えたー!」

麦野「何やってんだテメェ!! 余計なタイムロスしてんじゃねえ!!」

浜面「す、スミマセン!! だからそんな怒らないでー!」


フレンダ「……はぁ、何やってんだか」

絹旗「おおっ! ここのカラオケにはあの映画の主題歌があるんですか! これは超歌いたいです!」

滝壺「見たことない映画だね」

絹旗「そりゃそうですよ! これはC級映画の中でも超C級、一般人でこれを知ってる人なんてまずいませんよ!」

フレンダ「それ、もはや映画にする意味ないよね。適当に広告貼り付けた動画サイトにでもアップしたほうがよっぽど儲かるって訳よ」

絹旗「わかってないですねー、こういうのは超スクリーンで見るのがいいんじゃないですか!」

フレンダ「はいはいそーですねー……ん?」

滝壺「どうかしたふれんだ?」

フレンダ「いや、何か叫び声が聞こえてきたような……」

絹旗「叫び声? もしかしてあれのことですか?」


浜面「ぎゃー!! ボールペンのインクが切れてるうううううううッ!!」


麦野「何やってんだはーまーづーらー!」

店員「も、申し訳ありませんお客様! すぐにお取替えを……!」


フレンダ「……んーん、あんなムサイ男の悲鳴じゃないよ。もっとガキ、っていうか……」

滝壺「カラオケのお客さんの歌声とか?」

フレンダ「いや、それとも違うっていうか……」



黒夜「いやぁあああああああだあああああああああああああああ!! やあああめええええてええええええええええええ!!」 



フレンダ「そうそうこんな感じ……ん? 何だあれ猫耳? 変な格好って訳よ」

滝壺「普通に考えてお客さんじゃないかな? ちょっと過激な」

絹旗「……あれは」ピクッ


番外個体「ほらほらー! とりあーえずホテルまでは猫耳クロにゃんで行こうぜー。どうせなら犬耳プラス首輪でお散歩プレイとかしたかったけどさすがにここにはなかったかー」

黒夜「首輪ならとっくに付いてンだろォが!! オマエの電気っつゥクソみてェ首輪がァ!!」

番外個体「ほほう、つまりミサカのことをご主人様と認めてくれたってことだねー。クロにゃんだけど犬みたいに忠実になってくれて嬉しいよー」

黒夜「クソッ、絶対ェコロス!! オマエいつか絶対コロス!!」

番外個体「今殺せないんならクロにゃんはこれからもずーとミサカを殺すことは出来ないと思う……ん?」




フレンダ「…………あはは」アゼン

滝壺「南南西から信号が来た」ボー

絹旗「…………」


番外個体「……ありゃりゃ、こんなところに余計なギャラリーがいるなんて思わなかったよ。クロにゃんの痴態が公衆に晒されちゃったー」

黒夜「オマエがいなきゃこンなことは絶対なかった気がするけどな!」

番外個体「まいっか。ちょっとそこ通りますねー」テクテク

フレンダ「あ、はい……」サッ

絹旗「…………」

黒夜「…………」テクテク


絹旗「……相変わらず超無様ですね。劣等生の黒夜海鳥ちゃん?」ボソッ

黒夜「良い子ちゃんは黙ってろよ。いずれちゃんと私がアンタごと全部ぶっ潰してやるからよお」ボソッ

絹旗「やれるものなら超やってみろって話ですよ。着せ替え人形に成り下がってるクソ野郎に何ができンのか超見ものですね」ボソッ

黒夜「せいぜェ笑ってろ。C級映画マニアらしく血だらけでグチャグチャなスプラッターな死体にしてやるから楽しみにしてろォ」ボソッ



ピンポーン



店員「ありがとうございました! またのお越しを!」


絹旗「…………」

フレンダ「……んーと、知り合い?」

絹旗「……まあ」

滝壺「何話してたの? 随分と険しい表情してるけど」

絹旗「何でもないですよ。他愛もない世間話です」

滝壺「そう」

絹旗「…………」

フレンダ(…………見たことない二人だったけど、あの匂いはどう考えたって――)


麦野「はいはーい、面倒臭せー手続きがやっと終わったわ。さっさと中入るわよー」


フレンダ「……う、うん! 待ってました!」

絹旗「はい、今行きます」

滝壺「…………」

浜面「? どうかしたのか?」

滝壺「別に。気にすることはないよ」

浜面「そ、そうか」


―――
――




同日 18:30

-第七学区・スクール隠れ家-



ガチャリ



ゴーグル「ちぃーっス」

心理定規「あら、いらっしゃい。今日は早いのね」

ゴーグル「さすがに今日遅刻すんのはマズイっスからね。そりゃ早く来ますよ」

砂皿「…………」カチャカチャ

ゴーグル「……砂皿さんっていつここに来てんスか? 俺が来たときには絶対先にいますけど」

砂皿「作戦二時間前には待機し、道具の整備をしている」

ゴーグル「に、二時間? さすが殺しのプロっスね、俺には真似できねーや」

砂皿「ふん……」

ゴーグル「……相変わらず愛想が悪いっスよねー、正規の構成員じゃない雇われの身だからしょうがないとはいえ」

心理定規「別にいいじゃない。口だけは達者で何もできないやつよりは遥かにマシだよ」

ゴーグル「そうっスね。まあ、そんなやつ垣根さんがスクールに入れるわけがないっスよ」

心理定規「前例があるから垣根もそうとうムカついたみたいだしね」

ゴーグル「そういえば垣根さんはまだ来てないんスか? 見当たらないみたいですけど」

心理定規「さあ? またどこかでほっつき歩いているんじゃない?」

ゴーグル「えーそりゃないっスよー、大事な任務だって言って早く来い、って命令してきたの垣根さんじゃないですかやだー」

心理定規「まあいいじゃない。彼が遅刻してもしその大事な任務とやらに失敗したら、それは彼自身の責任。私たちには関係ないよ」

ゴーグル「そーいうもんスかねー? と言ってもまだ集合時間来てないから何の問題もないんスけどね」

心理定規「……そうだ。今のうちに渡すもの渡しとこうかしら?」

ゴーグル「渡すもの……もしかしてバレンタインのチョコレートだったりしちゃったりしちゃいますか!?」

心理定規「……す、すごいテンションの上がりようね。もしかして期待してたのかな?」

ゴーグル「いやー正直暗部にいたら出会いとか全然ないじゃないスか。だから真面目に無のバレンタインを覚悟してたんスよ」

心理定規「別に暗部にいても出会いは普通にあると思うけど。街歩いてたら馬鹿どもがよく財布になってくれるわよ?」

ゴーグル「そりゃ心理定規さんは元からスペック高いし……というかたぶんですけど能力使ってますよね財布のために」

心理定規「最近は能力なしでどこまで行けるかとか努力はしてるのよ。ま、最終的にはどの馬鹿もホテルに連れ込もうとするから結局能力便りになるわけだけど」

ゴーグル「何か俺なんかとは遥かに次元の違う話をしてるように感じるっス」

心理定規「そうかな?」

ゴーグル「そうっスよ」



心理定規「まぁ、とりあえずはい」スッ

ゴーグル「あ、ありがとうごさいます!! やった! 獲得数1!!」

心理定規「もちろん義理だから安心して食べてね」ニコッ

ゴーグル「ええっー? そこは本命でもいいのにー」

心理定規「悪いけど趣味じゃないの。ごめんね?」

ゴーグル「バッサリっスね。まあわかってましたよチクショー」

心理定規「そんなこと言ってる暇があったら外出て女の子にでも声かけてきたら? もしかしたらバレンタイン特有の雰囲気で一人くらい引っかかるかもよ?」

ゴーグル「いや、時間的に無理でしょ。これから仕事だって言うのに遊びになんて行けねースよ」

心理定規「諦めたらそこで試合終了だよ? わずかな可能性でも全てをかけなさい」

ゴーグル「名言織り交ぜて無茶言わないでくださいよ! それに完全下校時刻過ぎてるから外行ってもほとんど人いないし!」

心理定規「夜遊び男遊びが大好きな娘ぐらい結構いそうだけど」

ゴーグル「そんな人とは是非ともお近付きになりたくないっス」


砂皿「……ふん、くだらん。大事な仕事前だというのにそんな話かできんのか貴様らは」カチャカチャ


ゴーグル「そんなこと言ってるけどこっちの話はきちんと聞いてんスね」

砂皿「聞きたくて聞いているわけではない。貴様らの声が大きすぎるだけだ」

心理定規「こんなせまい部屋でそんなこと言われるなんて思わなかったわ。これからはそっちをチラチラ向きながらひそひそ声で会話して、疑心暗鬼に陥れてあげようか?」

ゴーグル「うわっ、エグっ」

砂皿「その程度で壊れるほど脆くはない」

心理定規「ふーん、それは興味深い話ね」

ゴーグル「……そ、そういえば砂皿さん! 砂皿さんはチョコ獲得数どれくらいっスか? 学園都市だったら大人の男って結構モテそうっスよね」

砂皿「興味ない」

ゴーグル「ひ、人が話を振ってあげたというのに何スかこの人……!?」

心理定規「今さら過ぎてもはやどうでもいいよ。まぁでも、一個以上は確実よね砂皿?」

ゴーグル「あっ、そっか。心理定規さんが渡してんのか」

砂皿「…………」

心理定規「で、私以外にももらってるようだけど一体誰からなのかしら?」

砂皿「……何のことだ?」

心理定規「隠しても無駄よ。今日は珍しく貴方宛の荷物が届いてたわ。武器、というにはあまりに軽くて小さい箱だったし」

ゴーグル「ええっーマジですか!? も、もしかして外に住んでる彼女さんとかそんな感じっスか!? この任務が終わったら結婚するんスか!?」

砂皿「アイツはそういうヤツではない」

心理定規「あら? そんなことを言うってことはチョコレートをもらったことは否定しないと?」

砂皿「…………」

ゴーグル「こういうときって無口キャラって便利っスよね。黙り方ってのをわかってますから」

心理定規「ほんとね。しかしステファニー・ゴージャスパレスとは一体何者なんだろうね?」

砂皿「ッ!? き、貴様なぜそれを……! 荷物は差出人不明となっていたはず……!」

ゴーグル「おおっ、無口キャラには珍しいリアクション」

心理定規「私の能力は知ってるでしょ? とりあえず貴方と一番親しい距離にある女性の名前を言ってみただけよ。あとはそっちの自爆」

砂皿「おのれ……能力者め」



ゴーグル「へー、あの無口でお堅そうな砂皿さんにもそーいう人がいるんスねー」ニヤニヤ

砂皿「アレとは貴様らが期待しているような関係ではない」

ゴーグル「どんな人なんスか!? 美人さんなんスか!?」

心理定規「ステファニー・ゴージャスパレス。砂皿と同業者で、以前は学園都市でアンチスキルをしていたようね。画像はこれよ」

ゴーグル「おっ、どれどれ……うわっ、金髪美人!! うらやましいっス!!」

砂皿「貴様ら……本気で死にたいようだな。今なら無料で頭部狙撃に加え心臓を撃ち抜くサービスをしてやろう」カチャ

ゴーグル「ちょ、そんな物騒なもんこっち向けないでくださいよ!」

心理定規「別に向けるのは構わないけど引き金を引いたりなんてしないでよね、砂皿さん?」キッ

砂皿「ッ!? き、貴様能力を……!」

ゴーグル「さすが心理定規さん! 相変わらず悪質な能力っス!」



ガチャリ



垣根「うーす、お前ら揃ってるかー?」

ゴーグル「あっ、垣根さんちぃース」

砂皿「…………」

心理定規「うふふ……」

垣根「あん? 何だこの状況?」

ゴーグル「砂皿さんの彼女の話をしてたらこうなったっス」

砂皿「だから違うと言っている……!」

垣根「ったく、何つー緊張感のねえヤツらだ。大事な大事な仕事前だってのによ」

心理定規「その大事な仕事っていうのは何なのかしら?」

垣根「ああ、別に言うほど大事でもねーけどな。ただの雑魚の殲滅だ」

ゴーグル「そ、そんないつもどおりのお仕事だというのに、俺らは早めの集合を命じられたってことっスか?」

垣根「遅刻する馬鹿が出てこねえようにする対策だよ、なあゴーグル君?」

ゴーグル「ち、遅刻じゃないっスよ、ちょっといつもギリギリくらいになるだけっスよ」

心理定規「まぁ、垣根が来たことだし早く行きましょ? あまりダラダラしててもしょうがないし」

垣根「そうだな。そんじゃー準備しろテメェら。今日の獲物は大量だ。殺した数の多い順にボーナス配当な」

ゴーグル「げっ、そんなの垣根さんトップに決まってんじゃないスかー! どうせ金持ってんだろうし、少しは手加減してくださいよ!」

垣根「あん? こちとら『未元物質(ダークマター)』の実験でそれどころじゃねえよ。誤って壊滅させちまっても謝んねーからな」

心理定規「今日は何を見せてくれるのかしら? この前はカブトムシ型の戦車みたいのを出してたみたいだけど」

垣根「んーそうだなー、今日はちょっと楽しめそうなモンができると思うぜ?」

心理定規「そう。それは楽しみね」

砂皿「…………」カチャカチャ


垣根「よーし、最近調子に乗ってる勘違いクズどもの皆殺しツアーへ出発だ」


―――
――




同日 19:00

-黄泉川家・リビング-



ガチャ



黄泉川「ただいまー! ……あー、もう疲れたじゃん」ハァ


結標「あっ、おかえりなさい黄泉川さん」

打ち止め「どしたのー? いきなりそんな疲れた発言して、ってミサカはミサカは少し心配してみる」

黄泉川「あー、今は馬鹿がはしゃぐ時期だからな。つまりアンチスキルの私らがコキ使われる時期ってことじゃん」

結標「よくこの時間に帰ってこられましたね……」

黄泉川「お前らの晩ご飯作らないといけないから少し休憩もらってきたじゃん。またすぐ出て行かなきゃいけない」

打ち止め「大変そうだねアンチスキルはー。というかわざわざ帰ってご飯作らなくてもまた出前頼めば楽でいいんじゃないかな? ってミサカはミサカは提案してみる!」

黄泉川「そうはいかないじゃん。子どものうちから贅沢してたらろくな大人にならないからな」

打ち止め「そういう風に無理やり押さえつけたりするから反抗期で無茶苦茶する人たちが生まれると思うんだけどな、ってミサカはミサカはそろそろ時期かなと考えてみる」

結標「いや、まだ早すぎるでしょ……」

黄泉川「大丈夫大丈夫。むしろ歓迎するぞ打ち止め! そういう生意気なガキほど可愛がりたくなるものじゃん」

打ち止め「よし、これからも変わらずイイコでいよー、ってミサカはミサカは決心を固めてみたり」

結標「今までがイイコだったのか、っていう疑問はここで出すべきではないわよね」

黄泉川「そういや引きこもり二人組はどこじゃん? もう帰ってるんだろ?」

打ち止め「自分で引きこもりって言ったんだからわかってるでしょ、ってミサカはミサカは部屋のある方へ目を向けてみる」チラッ

結標「でも一方通行は部屋に引きこもるというよりはソファーに寝転んでるイメージのほうが大きいわね」

打ち止め「だねー」

黄泉川「だったら何で今日に限って部屋で引きこもってるじゃん? 別に深い理由とかないだろうけど」

結標「それは……まあ……」

打ち止め「うん、そうだよね……ってミサカはミサカは深く頷いてみたり」

黄泉川「? 何があったじゃん」



黄泉川「……ふむふむ、つまり打ち止めが作ったチョコレートがあまりに甘すぎて、それを食べた一方通行は気絶しまった、ってことか?」

打ち止め「そうそう、いやーまさかあんなことになるとは思わなかったなー、ってミサカはミサカは自作チョコを食べながら反省してみたり」モグモグ

結標「打ち止めちゃん。言っとくけど今晩ご飯前よ? というかどれだけ作ってるのよチョコレート」

黄泉川「ふーん、これが一方通行をねえ。どれどれ……んッ!? ごほっごほっ!! 甘ッ!?」

結標「えっ? そんなオーバーなリアクションするほどですか?」

黄泉川「い、いやあれだよあれ、普通のチョコレートとかの感じの味を予想してたから……ごほっ!」

打ち止め「で、ヨミカワ的にはおいしいのおいしくないの? ってミサカはミサカは率直に尋ねてみたり」

黄泉川「正直言わせてもらうと私の口には合わないじゃん。あんまり甘いもん食べないしなー」

結標「……つまり、普段の食生活によって変わるってことね。至極当たり前のことだけど」

黄泉川「たしかに普段から甘いもの食べない、ブラックコーヒーばっか飲んでるアイツからしたらこれは相当甘く感じたんだろうな」

打ち止め「ううっ、これは反省しないと駄目だね、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」

結標「ま、まあ美味しいと思う人には美味しいと感じてもらえるのだからいいじゃない。それに食べてもらえるだけいいじゃない。私が作ったものなんて絶対食べてもらえないわよアイツには……」ズーン

黄泉川「そーいや淡希。お前が作ってのって一方通行に渡すやつだろ? 渡せたのか?」

結標「えっ、何でそれを!?」

黄泉川「んー何となく? というかさっきのセリフからだいたい予想できるじゃん」

打ち止め「というかアワキお姉ちゃんの交友関係からして、あの人以外考えらんないよね、ってミサカはミサカは断定してみる」

結標「ぐっ、私ってそんなにわかりやすいの……?」

打ち止め「でもあの人にチョコ渡すのは結構難関だよねー。アワキお姉ちゃんにはいろいろ前科あるし、ってミサカはミサカは数々の伝説を思い出してみたり」

黄泉川「淡希。渡すんだったら早めに渡しとけよ? 今日だから伝えられる想いってのがあるだろうし」

結標「えっ、あっ、その、は、はい……」

黄泉川「ま、でも感謝の気持ちってのは常日頃から伝えてくれると嬉しいけどなー手伝いとかで。なぁ打ち止め?」

打ち止め「えっ? なんだって? ってミサカはミサカは露骨に難聴アピールしてみる」

黄泉川「あはははっ、じゃあそろそろご飯作んないとな。時間までちょっと待ってるじゃんよ」

打ち止め「はーい!」

結標「……は、はい」


結標(……あれ? これって私がアイツが好きなのこの二人は知ってるの? 知らないのどっち? というか打ち止めちゃんって――)


打ち止め「アワキお姉ちゃん!」

結標「な、何かしら打ち止めちゃん?」

打ち止め「チョコレートおいしいって言ってもらえるといいね! ってミサカはミサカはにこやかスマイルで応援してみたり」ニコッ

結標「う、うん。ありがとね」


結標(ま、まあとにかくまずは渡さなきゃ話にもならないわね……はぁ……)


―――
――




同日 19:30

-常盤台中学学生寮・二〇八号室-


美琴「……よし、そろそろ行くとしますか」

黒子「もうお出かけになるのですかお姉様? たしか九時集合とか何とか言ってませんでしたか?」

美琴「早めに行って呼吸とか整えときたいのよ。いざとなってテンパッてたりしたらやだし」

黒子「にしたって早すぎませんの? 今から行っても確実に一時間以上は待たなきゃ駄目ですの」

美琴「いいのよ。それくらい時間があったほうが嬉しいわ」

黒子「……わかりました。寮監の方はわたくしがどうにかして誤魔化しますので安心してください」

美琴「頼んだわよ黒子」

黒子「ですができるだけ早く帰ってきてもらえると助かります……いろいろな意味で」

美琴「あはは、わかってるって。さすがに昔みたいに夜通し追いかけまわすなんてことはしないわよ、たぶん」

黒子「……というかお姉様? くれぐれも過ちを犯すなどということがないよう注意してくださいまし。もし朝帰りなどされたときには――」

美琴「す、するかそんなこと―ッ!! ちゃんと今日中には帰ってくるわよ!!」

黒子「本当ですか? 黒子は信じますわよその言葉」

美琴「ま、任せときなさいよ……!」スイー

黒子「なぜだかものすごく不安なのですが……?」

美琴「と、とにかく! 私はこのチョコをどかーん、と渡してずかーん、と言ってやるだけ!」

美琴「そんなやましいことをする気はさらさらないし、あっ、でもアイツがその気とかだったらその……///」カァ

黒子「……はぁ、じゃあ寮の外へ送りますわよ?」

美琴「あっ、うんお願い黒子」

黒子「ではお姉様、最後に黒子から一言。お姉様はお姉様らしくぶつかっていけばいいですの。変に取り繕う必要はまったくありません」

美琴「……うん!」

黒子「それではいってらっしゃいませ! お姉様!」

美琴「行ってくるわ!」



シュン!



黒子「…………ふぅ、今日のわたくしはどうかしてますわ、ほんと」

黒子「…………ふふっ」

黒子「頑張ってください……お姉様」


―――
――




同日 20:00

-黄泉川家・リビング-


黄泉川「……よーし、じゃあ遠慮無く召し上がれ!」


打ち止め「いただきまーす! ってミサカはミサカは挨拶と同時にハンバーグを口に頬張ってみる」パクリ

結標「……いただきます」

一方通行「…………」ムスッ

芳川「……あら、随分と御機嫌斜めじゃない? どうかした?」

一方通行「……うるせェ。話かけンな」

結標「あはは、さっきまで部屋で寝てて、黄泉川さんに無理やり叩き起こされたから」

打ち止め「相変わらず変な時間に昼寝するよねーもしかして本眠だった? ってミサカはミサカは質問しながらも頭の中ではブロッコリーの攻略法を思案するのに夢中になってみたり」

一方通行「なら答える必要性がまったくねェな」

黄泉川「じゃ、私はこれからアンチスキルの仕事に戻るから、食べ終わった皿は水につけといてくれ。何なら洗っておいてくれると助かるじゃん?」

芳川「そうね。そのほうが愛穂も楽できるだろうし、ねえ?」

一方通行「……何だよ? やンねェぞもォ皿洗いなンざ面倒臭せェ」

結標「もう、って何よその皿洗いしたことありますよみたいな言い方。私見たことないのだけど貴方がそんなことしてるの」

一方通行「昨日やったばっかだ。まァ、あンなモン十秒で終わるけどな」

打ち止め「だったら今日はタイムアタックして十秒より早くできるようにすればいいよ、ってミサカはミサカは提案してみる」

一方通行「何秒で洗い切ろうが俺には何の特もねェよ。それに面倒臭せェ」

結標「いつもどおりの答えね」

黄泉川「あっ、そういやあれ渡すの忘れてた。はい」スッ

一方通行「あン? 何だ?」

黄泉川「バレンタインチョコレート」

一方通行「……はァ、またかよ」

黄泉川「何じゃんそのリアクション。こっちがデパート行ってわざわざ買ってきてやったってのに」

一方通行「余計なことしてンじゃねェ。俺の労力を増やすなよオイ」

芳川「あっ、私もわざわざコンビニに寄ってまで買ったバレンタインチョコレートあったの忘れてた。はい」スッ

一方通行「寄るも何もオマエそこ働いてンじゃねェか。いくら関係者だからって横領は駄目だぜ芳川クン?」

芳川「失礼な。きちんとお金出して買ったものよ」

黄泉川「というわけで一方通行。せいぜいお返しを楽しみにしてるじゃん?」

芳川「私あれがいいわ。学舎の園にあるあの店のチョコレートフルセット」

打ち止め「あっ、ミサカもそれがいい! ってミサカはミサカはセットという言葉に心惹かれてみたり!」

一方通行「うぜェよ、つゥか俺みてェな男が普通入ることができねェ学舎の園の中にあるモン要求してンじゃねェよ」

芳川「大丈夫よ。金さえアレば何でもできるわよ。そうでしょ?」

一方通行「うっとォしい野郎だなオマエ」




ワイワイガヤガヤ



結標(……やっぱり二人ともすごいな。あんなにあっさり渡せるなんて)

結標(私にもあんな思い切りがあればな……って、言ってる状況じゃなくなってきてる気がしてくる、というかなってるわ)


結標「…………はぁ」

打ち止め「どうかしたのアワキお姉ちゃん? 元気が無いね」

結標「あはは、何でもないわよ」

芳川「……ふーん、そっか」

結標「何ですかその意味深な頷きは?」

芳川「別に深い意味は無いわよ」

一方通行「…………」

黄泉川「じゃあ今度こそいってくるじゃん!」

打ち止め「いってらっしゃいヨミカワー!」

芳川「帰りがけに同僚連れて飲み屋とかに行くのはいいけど、あまり遅くならないようにね」

黄泉川「うっ、な、何のことじゃん?」

芳川「じゃあなぜ車のキーを持たずに平然と出かけようとしてるのかしらね?」

黄泉川「あはははー、いってきまーす!!」ダッ

打ち止め「あっ、逃げた」

一方通行「ったく、飲み屋行って飲み潰れンのは勝手だがそォいうのは週末だけにしとけっつゥの」

芳川「ところで一方通行。話に聞いたところたくさんプレゼントをもらったようね? どれくらいもらったのよ」

一方通行「プレゼントだァ? ただのテロの間違いだろ。大体そンなモンの数なンて数えねェよ」

芳川「じゃあそのもらったプレゼントと今キミのもってる箸が全然動いてないのとは何か関係ある?」

一方通行「……あるわけねェだろ」パクッ

打ち止め「ねえねえ、もしそのチョコレートたちが余ってたらミサカにもちょうだいな! ってミサカはミサカは乞食精神でおこぼれ頂戴を期待してみたり!」

一方通行「あンだけ甘ェモン食ってまだ食い足りねェのかよオマエは」


―――
――



今回はここまでにしたいと思います
ここまでみてくださった皆さんありがとうございました

このバレンタインでいろいろ犠牲になった人たちが……すまぬ
まあでもこのバレンタイン回は壮絶なエンドとかはないのであまり期待しないでください

次の投下はちょっと遅れるかも
ではではノシ


みなさんこんばんは
ラスト投下いきます



同日 20:30

-第七学区・ファミリーサイド付近のコンビニ-


上条「こっちはオッケー、こっちも問題なし、と」カキカキ

御坂妹「…………」

上条「……よっと、検品はこんなとこかな」ドサッ

御坂妹「八時半が来ました、とミサカは本日の勤務時間終了のお知らせをします」

上条「もうそんな時間か。じゃあぼちぼち帰る準備でもすっか」

御坂妹「そうですね、とミサカは残りの仕事が無いことを確認しつつ颯爽と更衣室へ足を運びます」テクテク


原谷「あっ、二人とも帰り? お疲れー」


御坂妹「お疲れ様です、とミサカは返事をしながら会釈します」ペコリ

上条「お疲れー、夜勤頑張れよー」

原谷「って言っても深夜組が来るまでだけどな。早く帰ってゲームがしたい……」

上条「ははっ、あんま夜更かしし過ぎて学校遅刻とかすんじゃねえぞ」

原谷「それはお前が言うなって言えばいいところ?」

御坂妹「というかなぜこのコンビニにはこんなに早く帰りたい人たちが集まっているのでしょうか、とミサカはため息混じりにぼやきます」


-第七学区・街頭-


上条「あー疲れた。やっとバイトが終わったか」ハァ

御坂妹「随分とお疲れのようですね、とミサカは少し心配してみます」

上条「今日はいろんなことがあったからな。……そしてこれからもっと疲れることがあるだろうしな……」ゲンナリ

御坂妹「お姉様ですか。それはお気の毒に……とミサカはこちらにイニシアチブがあることを確信すると同時に哀れなお姉様を腹の中でこっそり笑ってみせます」ニヤ

上条「いにし……何だって?」

御坂妹「何でもありませんよ。気にしないでください」

上条「お、おう」

御坂妹「ところで疲れてるのだったら甘いモノとか食べてみたらどうですか? あいにくその手には大量の糖分が握られてることですし」

上条「肉体的な疲れにも効くのかよ糖分?」

御坂妹「さあ? とミサカは首を傾げます」

上条「適当だな……」



上条「さて、とっとと御坂の用事とやらを終わらせて家に帰るとすっかなー」

御坂妹「ちょっと待ってください、とミサカはあっさり帰ろうとするあなたを呼び止めます」

上条「何だよ?」

御坂妹「あなたに渡すものがあります、とミサカは手に汗握りながら用件を言います」

上条「ああ、そういやさっきそんなこと言ってたっけな。で、何だよ渡すもんって?」

御坂妹「今日一日でいろいろもらってるだろうに、それなのになぜあなたはそうやって首を傾げることが出来るのでしょうか? とミサカは半ば諦めながら問いかけます」

上条「えっと……何が?」

御坂妹「……はぁ、まあいいでしょう。今さらここであなたを責めたところでこれからすることに変わりはないのですから」

上条「何かひどく馬鹿にされてる気がする……あっ」チラッ

御坂妹「というわけで、ミサカのバレン――」

上条「わかった! 今日はバレンタインだから御坂妹もチョコレートをくれるつもりなんだな?」

御坂妹「――タイン……へっ?」

上条「どうだ御坂妹? さすがの上条さんでもこれくらいわかりますってんだ」

御坂妹「……はぁ、まあ、今さらわかられたところで『はい、そうですか』というリアクションしかできませんよ。というか遅すぎるでしょう、とミサカは出鼻をくじかれた腹いせに文句をたれます」

上条「あっ、何か悪りぃ」

御坂妹「それにさっきあなたは自分の手に持ってる大量のバレンタインのプレゼント見て思い出したでしょう、とミサカは鋭い観察眼を遺憾なく発揮してみせます」キッ

上条「いやー何のことやらー」スー

御坂妹「……しかし、こんなんじゃムードもへったくれもあったもんじゃないですね、とミサカはこっそりとぼやきます」

上条「何か言ったか?」

御坂妹「何でもありませんよ。ではお代官様、どうかこいつをお納めくだせえ、とミサカは最近テレビで見た時代劇の真似をしつつチョコレートを渡します」スッ

上条「さ、サンキュー。つーか何だよその渡し方、全然バレンタインって感じがしないんだけど」

御坂妹「やけくそってやつですよ。何というかこういう展開になるのは何となく目に見えていたような気がします……」

上条「……よ、よくわかんねえけど元気だせよ」

御坂妹「こんなことなら一万人弱のシスターズ全員で突撃したほうが話の展開的に面白かったのでは? とミサカはメタ的な発言をします」

上条「ふざけんな! そんなことになったら上条さん絶対死んじゃう!」

御坂妹「ふふっ、冗談ですよ冗談ですよあはは」

上条「目がマジに見えるのは俺の気のせいだよな?」

御坂妹「さあ? どうでしょうか、とミサカは不敵な笑みを浮かべます」フフッ

上条「だからやめてくれそういう意味深な仕草……」



御坂妹「ところで時間はいいのですか? お姉様とこれから会うのでは? とミサカはミサカネットワークから現在『20:50』をお知らせします」

上条「げっ、もうそんな時間!? やっべっ、急がねえと……!」

御坂妹「ここからなら走って早くて十分。運が良ければギリギリ間に合いますね、とミサカは無理難題を言ってみます」ニヤリ

上条「たしかに運が良かったらとか上条さんにとっては無理難題だな……」

御坂妹「そんなこと言っている暇があったら走ったらどうですか? とミサカはミサカネットワークから現在『20:51』をお知らせします」

上条「なっ!? よし! 今すぐ行く!! ……つか神裂の分相変わらず重っ!?」

御坂妹「その状態で走るのは相当疲れそうですね、とミサカは率直な感想を述べます」

上条「くそっ、遅れたら何されるかわかったもんじゃねえな……! じゃ、俺行くよ!」

御坂妹「いってらっしゃいませご主人様、とミサカは同じネタをこりもせず繰り返します」

上条「だからそういうのやめろって……あっ、そうだ」ガサガサ

御坂妹「えっ、いきなりミサカの渡したチョコレートを開封して何を……? とミサカは問いかけます」

上条「…………」パクリ

御坂妹「!!」

上条「……うん、うまいうまい。やっぱ疲れた時には甘いモンだな」

御坂妹「えっ、ええっと……」


上条「ありがとな御坂妹。おかげで元気出たよ、またな!」ダッ


御坂妹「あっ……」



<ぎゃあああああああっ!! 神裂さんのお菓子たちが散らばってしまったー!!



御坂妹「…………」


御坂妹「……やっぱり、どんな状況でも彼は彼ですね、とミサカはやれやれと呆れながら彼の手伝いのため足を進めつつ、この胸の中の気持ちを抑えきれず思わず微笑み浮かべてしまいます」


―――
――




同日 21:00

-黄泉川家・結標淡希の部屋-



吹寄『えええええええええええっ!? まだ渡せてないですってえええええええええええええええええええええっ!?』



結標「ううっ、面目ないわ……」

姫神『吹寄さん。ひとまず落ち着いて。そしてイヤホンを使ってる私に謝って欲しい』

吹寄『ご、ごめんなさい姫神さん。というか結標さん、まだ渡してないってどういうこと? たしか放課後下校中に渡すとか言ってなかったっけ?』

結標「な、何というかいざその場に立つと緊張してなかなか話を切り出せなくて……それでも勇気を出して行こうと思ったら急に別の話を向こうがしだして……」

吹寄(何というかこれって……この作戦が気付かれた?)

姫神(アクセラ君にうまいこと話を逸らされてる。相当チョコレートを受けとりたくないと見た)

結標「ど、どうしよう二人共!」オロオロ

吹寄『と、とにかく今日中には絶対に渡すこと! もし日にちが変わっちゃったらそのそのバレンタインチョコレートはただのチョコレートに変わってしまう』

姫神『例えるなら。コンビニとかで売ってる。売れ残りのバレンタインのチョコのような』

吹寄『だから無理やりにでもアクセラに渡しなさい! 何なら無言でぶん投げても構わないから!』

結標「で、でもそんなことしたらアイツ絶対怒るわ……」

吹寄『日をまたいでしまうよりマシよ。とにかく何が何でも渡しなさい!! いいわね!?』

結標「……はい」

姫神『結標さん』

結標「な、何かしら?」

姫神『大丈夫。結標さんならちゃんと渡せる。だって私でも渡せたのだから』

結標「でも私、姫神さんみたいにしっかりしてないし……!」

姫神『そういうのは関係ない。いつもどおりに彼と会話して。いつもみたいにコーヒーを手渡しするみたいに。いつもと変わらないようにただ渡すだけでいい』

吹寄『そうよ、姫神さんの言うとおりだわ。そんな深く考えなくてもいいのよ。何もこれで全部決まるわけじゃないし』

姫神『アクセラ君なら。きっと受け取ってくれるよ。だから心配しなくてもいい』

結標「…………わかったわ、ありがと二人とも。何だか渡せるような気がしてきたわ!」

吹寄『その意気よ!! 大事なのは勢いよ、怖じ気付いたらそこで負けよ!』

姫神『うん。クリスマスにあのマフラーを渡せたのだから。今回も大丈夫』



ドンドン!



一方通行『オイ、風呂上がったぞ! さっさと入っとけ!』

結標「ひゃい!? わ、わかった!」

一方通行『?』


姫神(でもやっぱり)

吹寄(不安なものは不安ね……)


―――
――




同日 21:10

-第七学区・とある公園-


美琴「…………遅いッ!!」


美琴「何やってるのよアイツは、もうとっくに集合時間過ぎてるじゃない!」

美琴「こちとら集合時間一時間前にはここにいるってのに、何でアイツはまだ来ないのよ!」

美琴「三十分前行動とは言わないけど十分前行動ぐらいは心得なさいよ!」

美琴「…………」

美琴「や、やっぱりあの誘い方はなかったのかな……? 最後辺りはいつもみたいについカッとなっちゃってたみたいだし」

美琴「一緒にいた佐天さんや初春さんが『やれやれ』って感じになってたぐらいだし、やっぱり失敗だったのかな?」

美琴「……ううっ、もしこのせいでアイツ来なかったらどうしよう……」

美琴「せっかく佐天さんや初春さん、それに黒子まで応援してくれたってのに……」

美琴「…………」

美琴「……最低だ、私って……」グスン



<おおーい!! 御坂ー!!



美琴「……えっ?」

上条「はぁ、はぁ、わ、悪りぃ遅――」



バチバチ!!



上条「おわっ!? おまっ、会ってそうそう電撃飛ばしてきてんじゃねえよ!」バキン

美琴「アンタ来るの遅すぎるでしょ!! 三十分前集合ぐらい心がけなさいよ!!」

上条「いや無理だろこっち三十分前までバイトだったわけだし、これでも急いできたほうだぞ!」

美琴「うるさい! こっちはどんな気でアンタのこと待ってたか……」

上条「……あれ? もしかして御坂泣いてんのか?」

美琴「泣いてないわよ!!」バチバチ

上条「だから電撃撃ってくんな!!」バキン

美琴「あっ、ご、ごめん……」

上条(み、御坂が謝っただと……!? これは何か不幸の前触れか……って何かデジャブ感じる)

美琴「……何よその顔? 言いたいことがあるなら言いなさいよ」

上条「いや、何でもない。ところで用って何だ? わざわざこんな時間に呼び出すってことはよっぽど大事なことだっつーのはわかるけど」

美琴「えっ!? え、えっとその用ってのは……」アセッ

上条「どうした? 何かすげえ汗だぞ?」

美琴「ちょ、ちょっと暑いだけよ! き、気にしないでいいから!」

上条「……今二月だぞ?」

美琴「あ、あれでしょ地球温暖化ってヤツよ!」

上条「全力疾走して汗ダラダラだからそのせいもあるんだろうけど、今すっげえ寒いんだけど?」



美琴(や、ヤバイ……何というかいつもどおりな感じになっちゃってる気がする……このままじゃ駄目……!)


美琴「ちょ、ちょっとアンタ……ん? 何よその手に持ってる紙袋?」

上条「ああこれ? えっと知り合いにもらったバレンタインプレゼント?」


美琴「」


上条「ん? どうした御坂? おーい御坂さーん」

美琴(な、何よあのプレゼントの数……? アイツがいろんな女の子と一緒なのは知ってるけど、まさかあんなにもらってるなんて……)

上条「……ありゃ? 何か黙りこくっちまったな。おーい」

美琴(も、もしかしたら私なんかが作ったチョコレートなんてもらってくれないんじゃない……? それにあんなにもらってるんだからもしかしたら、もしかしたら告白なんてされてるかもしれない……)

上条「御坂さーん! 美琴さーん! みこっちゃーん!」

美琴(もしかしたら……その告白を受け入れて、コイツと恋人同士になってる人がいるのかも……?)

上条「……って、おいどうかしたか御坂!? そんなカップ焼きそばを流しにぶち込んじまったときみてえな顔してぇ!?」

美琴「し、してないわよそんな顔! というか流したことないし!!」

上条「ええっー、やったことないの? 上条さんなら八割の確率でやっちまうね、うん不幸だ」

美琴「ったく、人がいろいろ悩んでるってのにアンタは……」

上条「なーにそんなに悩んでんだよ? また何か変な事件にでも巻き込まれてんのか?」

美琴「い、いやそんなわけないじゃない! アンタじゃあるまいし……」

上条「ははっ、そうだな」

美琴(……し、しかし私がここでチョコを渡す……あまつさえこ、告白なんてしてもいいの?)

美琴(今日という日のおかげで恋人がいるかもしれない、いやもっと前から恋人がいるかもしれないコイツの幸せを私なんかが邪魔をしてもいいの?)

上条「……で、結局何で俺はここに呼ばれたんだ?」

美琴「ッ……そ、そのっ……」

上条「……ん、待てよ。そういえばこのパターンさっきも……? ってことは!」

美琴「ッ!?」ビクッ

上条「お前アレだな! 今日はバレンタインだっつーことで俺にチョコとか渡すつもりだろ?」

美琴「いっ!? あ、と……」

上条「……ありゃ? もしかして違ったか? ぎゃー何か上条さん自意識過剰みたいでカッコ悪りいぃ!!」

美琴「へっ、え、ええっと違わない、違わないわよ!」アセッ

上条「……あー、よかった。もし違ったら俺恥ずかしさのあまり一週間は家に引きこもれる自信はあったわ」

美琴「そんなことで引きこもられても困るわよ。というか、あ、アンタがそういうことに気付くなんて珍しい、っていうか初めてじゃない?」

上条「まあ何回もこういう状況になれば自然と気がつくわけですよ、はい」

美琴「何回もあったんこんな状況が、ふーん……」

上条(ッ!? 何となくビリビリの予感ッ!?)

美琴「……じゃあさ、そんだけチョコもらってたら一回くらい告白受けてたりしてんじゃないの?」

上条「はあ?」

美琴「そんでもってアンタはそれを受け入れて、めでたくカップリング成立ってことになったりしてるわけ?」

上条「…………」



美琴(……何を言ってるんだろ私。こんなこと聞いてどうするっていうのよ。向こうはもしかしたら聞かれたくないことかもしれないのに……)

美琴(なのに私は、こうズカズカと平気に人のことを……やっぱり私って、さいて――)



上条「……ぷぷっ、あっははははははははははははははっ!!」



美琴「えっ、な、何笑ってんのよ!」

上条「ははっ、だってよ、突然深刻そうな表情で何を言い出すのかと思えばそんなこと聞いてくるんだぞ? 笑うしか無いだろ?」

美琴「やっ、そんなことってこっちは……!」

上条「大体よぉ、俺がもらったヤツ多分全部義理だぜ? イコール告白なんてそんな甘酸っぱい青春イベント上条さんにはなかったってこと……うわっ、自分で言ってて泣きたくなってきた……」

美琴「へっ、う、嘘、そんなにもらってて?」

上条「それにこの紙袋は個人からもらったもんだぜ? 他にも学校でいろいろもらってたけど大体があのときはありがとう、って感じにくれたヤツなわけ」

美琴「……そう」ホッ

上条「つーかさ、こんな不幸の塊上条さんを好き好んで告白なんてしてくれるヤツいるわけねえだろ。……あれ? 何だか目から汗が……」ブワッ

美琴「そ、そんなことないわよ!! も、ももしかしたらいるかもしれないじゃない!! い、意外とすぐ近くに……///」

上条「はあ? あはは、ねーだろさすがに」

美琴「だ、だからさ……は、はいこれ!!」

上条「ん?」



美琴「……わ、わわわ私からの……ば。バレンタインプレゼント!!///」スッ



上条「…………」

美琴「…………ううっ」プルプル

上条「……そっか、そういうことか御坂」

美琴(も、もしかして私の気持ち伝わって……!)

上条「ありがとな御坂。俺を励ましてくれてんだよな?」

美琴「……へっ?」

上条「そうだよな。そんなどうせとか言って簡単に諦めたりとかしちゃいけねえよな!」

美琴「えっと、その、あの……」

上条「何となくだけど、御坂のおかげで夢と希望が湧いてきた気がするぜ。これからお前に言われた通りちゃんと周りを見てみるとするよ」

美琴「えっ、あ、うん」

上条「じゃ、そろそろ遅くなるだろうし帰るとするよ。いろいろとありがとな御坂! じゃあな!!」ダッ

美琴「うん、またね……」


美琴「…………失敗、かな?」

美琴「あーあ、これじゃあ佐天さんたちに怒られちゃうな、あはは」

美琴「…………でも、前までよりは前進できてるよね、きっと!」


―――
――




同日 21:30

-第七学区・スクール隠れ家-


垣根「あーあ、クソつまんねー仕事だったぜ」

心理定規「そうかな? こっちは第三位のファイブオーバーが三機出てきたりして戦慄を覚えたわ」

垣根「あんなおもちゃでビビるなんざ情けねえ。それでもスクールかよ?」

心理定規「みんな貴方のようなチカラは持ってないのよ? おかげでゴーグル君は病院送り、砂皿は武装の八割がスクラップ。随分な戦績じゃないかしら?」

垣根「そんなヤツらのことなんてどうでもいいっつーの。ここでリタイアするようなヤツらだってんならその程度だってことだ」

心理定規「薄情ね。そんな厳しい判断基準だったら誰も残れなくなっちゃうよ?」

垣根「ケッ、何が厳しいだ。そう言いながらもお前はきちんと生き残ってここに立ってんじゃねえか」

心理定規「まあね。私だってそれなりに残れるよう努力はしてるつもりよ。この環境は結構気に入ってるつもりだし」

垣根「へー、随分と似合わねえこと言うじゃねえか。お前が努力なんてよ」

心理定規「そうかしら? 私は私のこと常日頃から鍛錬を怠らない努力家って感じに見てるのだけど」

垣根「嘘臭せェ。お前とは付き合いそれなりに長いけど見たことねえよお前のそんな姿」

心理定規「女は見えないところで努力をするのよ。湖の上で優雅に漂う白鳥が、実は水の中では足を激しく動かしてるように」

垣根「その胡散臭い言い回しを聞かされて俺はどうすりゃいいんだ? 馬鹿みたいに騙されりゃいいのか? 心の中でほくそ笑んでりゃいいのか?」

心理定規「ふふっ、信じるかどうかは貴方次第ってところかな?」

垣根「何だそれ? くっだらねえ……」

心理定規「……ところで今日は何の日か知ってる?」

垣根「あぁ? 何だ唐突に……二月十四日セントバレンタインだろ、表の馬鹿騒ぎを聞きゃいやでもわかる」

心理定規「そう。そのバレンタインについてだけど、貴方はそのバレンタインのプレゼントはいくつくらいもらったのかしら?」

垣根「……チッ、何でそんなこと聞きやがるんだお前? くだらない世間話のつもりか?」

心理定規「うん、そうくだらない世間話よ。いかにホスト崩れみたいな外見したチンピラの貴方が何人女の子引っ掛けたのか気になってね」

垣根「オイ、それは俺に喧嘩を売ってんのか? それとも自殺志願か? どっちだよ」

心理定規「別にどっちでもないわ。好奇心に敵わないのは人間の性じゃないかな?」

垣根「それを抑えるために理性っつーモンがあんだろうが。どうやらテメェのはぶっ壊れてるようだけどな」

心理定規「どうやらいろいろと話を逸らそうとしてるようだけど、結局いくつもらったの?」

垣根「……結構な数だ」

心理定規「曖昧な返答ね。でも私が聞きたいのはそういうことじゃないわ。明確な数が知りたいの」

垣根「……すごい数だ」

心理定規「私の言ってる言葉が理解できなかった? まあでもあれよね、もしかしたら数えられないくらいもらってる可能性もあるのかな?」

垣根「……ああ、そうだ。ありゃ数えることを放棄しちまうくらいもらっちまったなー」

心理定規「ふーん、まあ貴方が今年もらったバレンタインプレゼントの数は『ゼロ』だってことはよくわかったわ」

垣根「ッ!? は、ハア!? な、何言ってんだよテメェ!! 何を証拠にそんな面白くねェ答えを導き出せるってんだよ!?」



心理定規「別に。貴女の返答が全部事実であると同時に見栄を張ってるって判断したからそういう答えを出しただけよ。深い意味は無いわ」

垣根「いやいやいや、ありえないな! だって俺結構な数もらってるし!」

心理定規「結構(ヤバい)な数もらってるのね」

垣根「すげえぞ!? 実際目の当たりにしたらビビるくらいすごい数もらってんぞ!?」

心理定規「(今どきこんなもらえないヤツとかいんの? ってくらい)すごい数もらってるのね」

垣根「……いや、ただ数えることを放棄しただけで――」

心理定規「(数える必要自体ないから)数えることを放棄してしまうほどもらってのね」

垣根「…………」

心理定規「ふふふっ」ニヤリ

垣根「殺す」バサッ

心理定規「あらごめんなさい。まさか図星だなんて思わなかったわ。謝るから許してちょうだい」

垣根「チッ、大体よぉ、暗部の世界なんかにいりゃそんなバレンタインなんていうイベントに関われるわけねえだろうが!」

心理定規「やっと白状したのね。でもそれに関わることが出来ないってことはないんじゃないかな?」

垣根「毎日毎日こんな掃き溜めみてえなとこに潜って血生臭い殺し合いをしてんだ。だから俺にはカンケーねえし、無縁なものだってことだ」

心理定規「……何ていうか、貴方ゴーグル君と同レベルのこと言ってるよ。これがレベル5の中でも第二位の能力者……ぷぷっ」

垣根「笑ってんじゃねえよ! よーし、お前死刑決定な? もう何言っても許さねえから」

心理定規「ふふっ、ごめんなさいね。貴方がノーマークってことがわかって嬉しくて笑っちゃった」

垣根「ハァ? 何言ってんだテ――」



心理定規「はい、私からのバレンタインプレゼント」スッ



垣根「…………は?」

心理定規「暗部にいるから関係ないとか言ってるけど、その暗部にも私みたいな女の子はいるんだよ? だからそんな情けないこと言わないでちょうだい」

垣根「…………」

心理定規「さあ早く受け取りなさい。貴方にとって今日は初めてのバレンタインを」

垣根「お、おう、サンキュー……」

心理定規「それと、ついでに言うとね、それって実は私のほんめ――」

垣根「……はぁ、何つうかアレだな。バレンタインデーに唯一もらったモンがションベン臭いガキからなんて情けねえ話だよなー」

心理定規「い……は?」

垣根「俺的にはもう少し大人の女とかからもらいてかったなー。チッ、散々なバレンタインだぜ」



心理定規「…………」プルプル

垣根「……あん? 腕プルプル震わせて何やってんだお前?」

心理定規「……ね……すとが」ボソッ

垣根「えっ? なんだって?」



心理定規「死ねッ!! このデリカシーなしエセホストがッ!!」ガチャリ



ドガァン!!



垣根「うおっ!? いきなりグレネードブチかましてきてんじゃねえぞテメェ!! 危うく死ぬところだったじゃねえかコラ!!」

心理定規「あーあー唯一のチョコレートが私みたいなガキで悪かったわね!! てか、そんな発想してる時点でお前もガキだろうがッ!!」ガチャリ



ドガァン!! ドガァン!!



垣根「だぁクソうっとおしい! よくわかんねえどころでキレやがって、これだからガキは嫌なんだよ!!」バサッ


~その頃アジト外の廊下~


ゴーグル「あー、何とか入院は免れることができてよかったっスよ。入院費ってアレ結構馬鹿にならないっスからね」

砂皿「…………」

ゴーグル「まあでもしばらく安静って言われてたし、暗部の活動に支障が出ることには変わりないかな」

砂皿「……ふっ、役立たずと認定され捨てられることを考えたほうがいいかもしれんな」

ゴーグル「ちょ、やめてくださいよ砂皿さん!! 冗談に聞こえないっスよ!!」

砂皿「…………」

ゴーグル「ちょっとー、そこで黙らないでくださいよ……ん? 何か向こうのほうが騒がしいっスね」

砂皿「くだらない痴話喧嘩でもしてるのだろ。ふん、くだら――」



ドガァン!!



ゴーグル「!? 爆発ッ!? 一体何が!?」

砂皿「」プスプス

ゴーグル「ちょ、砂皿さぁん!?」


―――
――




同日 21:45

-常盤台中学学生寮・二〇八号室-


黒子「…………」



ピピピピッ!! ピピピピッ!!



黒子「! お帰りになりましたのですね、お姉様!」ガバッ



シュン! シュン!



美琴「ふぅ、ただいま黒子」

黒子「おかえりなさいませお姉様! 寒い中お疲れ様ですの! ホットチョコレートがありますのでどうぞお飲みくださいな。身も心もあたたまると思いますの」スッ

美琴「ありがと、いただくわ」ニコッ

黒子「……ところで、どうでしたの? あの、類人猿とは」

美琴「えっ、あー、うーんと、どっちかと言ったら失敗、かな?」

黒子「そう……ですか」

美琴「で、でも失敗って言ってもアレよ! 私がテンパりすぎて告白までいけなかっただけっていうか、それでも今までよりは前に進んでる方っていうか……」

黒子「…………」

美琴「まあでも、佐天さんが言うみたいな勝負を決める、ところを見ると失敗よね。あはは」

黒子「……いいんですよお姉様。もし無理にことを進めて恋人関係になったとしても、そんな無理矢理な関係はあっさりと壊れてしまいますわ」

美琴「黒子……」

黒子「だから、何ごとにも地道に努力を続けることが大事ですの。お姉様が超能力者(レベル5)になられたときのように」

美琴「……うん、わかったわ! 私頑張るわ!!」

黒子「その意気です!」

美琴「……さて、そろそろお風呂に入って温まるとしようかな……ん? あれ?」

黒子「どうかなさいましたか?」

美琴(あれ? 何か身体が動かないんだけど……あれ? 指一本動かないんだけど……!?)

黒子「……ふふふっ、どうやら薬の効果が効き始めてきたようですね」キラン

美琴「なっ、あ、アンタまさかまた怪しいモンを……!」



黒子「ぐふふふっ、待てる女はいい女、だからわたくし待ちましたの。お姉様が油断し、わたくしの差し出したホットチョコレートを飲む瞬間を……!」

美琴「ぐっ、今日だけはまともだと思ってたのに……! やっぱりアンタはアンタか……!」

黒子「さて、本日はバレンタイン。わたくしからお姉様へのプレゼントはまだでしたわね」

美琴「……まさか、アンタ!!」


黒子「そう! わたくしからの甘い甘いバレンタインプレゼントはわたくし自身!! さあ受け取ってくださいませお姉様!!」シュン

黒子「そしてお姉様からのプレゼントはお姉様を希望いたしますわ!! そして二人で甘い甘い魅惑の世界へ……!!」ガバッ


美琴「このッ、野郎ッ!!」バッ

黒子「へっ、何で動いて――!?」

美琴「スタンナッコォ!!」バッ

黒子「う゛ぇ!?」



バチチチチン!!



黒子「オォォォォウ!! いつものキタあああああああああああああああああああうッ!!」ビクンビクン



バタン!!



美琴「……ぜぇ、ぜぇ、ったく、油断も隙もあったもんじゃない」

黒子「な、なぜ……動けるの……ですか?」

美琴「ん? 能力で無理やり電気信号送れば少しくらいは動けるわよ。これくらい知らなかったっけ?」

黒子「……な、何か知ってたような気もしないこともありませんわ……がくっ」

美琴「あー、そういえばこれやってると身体が常にスタンガン状態なの忘れてた。正直死にはしないだろうけど、この状態でお風呂に入るのはやめといたほうが良さそうね」

美琴「はぁ、もう面倒だからこのまま寝ちゃおうかな」ゴロン


黒子「」ピクピク


美琴「……はぁ、じゃあおやすみ黒子」


―――
――




同日 22:00

-第七学区・街頭-



<ありがとうございましたー!



絹旗「いやー久しぶり超思い切り歌いましたよ!」

滝壺「あー、声がガラガラになっちゃった」

フレンダ「滝壺はだらしないなー、私はまだまだガンガンいけるって訳よ!!」

麦野「何で一番はしゃいでたアンタが一番元気なのよ?」

浜面「…………」ゲッソリ

絹旗「ん? どうしたんですか浜面? そんな超ゲッソリしちゃって、お腹でも下しましたか?」

浜面「いや、んなわけねえだろ……、お前らの横暴に付き合って疲れてんだよ」

フレンダ「えっ、そんな横暴なんてあったっけ?」

浜面「何回ドリンクバー往復させるつもりだコラ! つーかあのカラオケドリンクバー遠すぎだろ、もう階段昇り降りし過ぎて足がパンパンだぞ!」

フレンダ「別にいつもどおりじゃん。場所が変わっただけですること自体は変わってないし、今さらそんなことで文句言われても……」

絹旗「足腰を鍛えるトレーニングになって超良かったじゃないですか」

浜面「何でわざわざカラオケに来て足腰のトレーニングしなきゃならねえんだよ」

麦野「はいはーい、じゃあ今日はここまでにしてお開きとしましょう」パンパン

フレンダ「ええっー? もう終わっちゃうのー? もうちょっといいじゃん!」

麦野「フレンダ。明日の仕事の時間は何時だったっけ?」ニコリ

フレンダ「え、ええっと……朝の七時?」

麦野「そう。別に遊びたきゃ遊べばいいけど、それのせいで仕事に支障がでることになったら……わかってるわよね?」

フレンダ「は、はい……」

麦野「じゃ、浜面?」

浜面「はいはい、わかってますよ。この奴隷めがみなさんを迅速に住処へお送りますよっと」


絹旗『早くしてください浜面。これから映画の超再放送があるんですよ。早く車を出してください』←in 車

滝壺『……ぐーすかぴー……』←in 車

フレンダ『って寝るの早っ!?』←in 車


浜面「アイツら車に乗り込むの早すぎだろ! つか、どうやってカギ開けたッ!?」

麦野「浜面ー。私の家は最後に寄ってくれない?」

浜面「えっ、何で? ここからだと一番お前の家が近いだろ」

麦野「いいからいいから、これも命令だから拒否権ないわよ奴隷君?」

浜面「りょーかい、じゃあさっさと車乗れよ。アイツらも待ってるようだし」

麦野「わかったわ。それじゃあヨロシクー♪」

浜面(……一体何を企んでんだアイツ……?)


―――
――




同日 22:15

-とある高校男子寮・上条当麻の部屋-



ガチャ



上条「ただいまー」コソー

上条「……ってあれ? 電気点いてない? もう寝てんのかな?」



カチッ



上条「うおっ、テーブルの上汚っ!? ったく、食器くらい流しにつけとけっつーの」ブツブツ


禁書「…………すぅ……すぅ……」Zzz


上条「……はぁ、食いたいだけ食って、眠くなったらそのままベッドに寝転ぶ……。とんだわがままお姫様っぷりだなーははっ」ガチャガチャ

上条「まっ、もう慣れたから別にどうでもいいけどな……ん? 何かテーブルの上に変なもんが置いてある……」スッ

上条「えっとこれは……見た目からしてたぶんバレンタインとかのチョコレートの包装だけど、たぶん俺のじゃないよな? こんなもんもらった覚えないし」

上条「じゃあ何なんだこれは……? あっ、何か紙が挟まってる」ペラッ

上条「えーと、なになにー?」



『これはとうまにわたすぶんだから、ぜったいにたべちゃだめなんだよ!!!!』



上条「……ははっ、おいおい面白いことが書いてあんじゃねえか。コイツはあれか? インデックスから俺へのバレンタインプレゼントっつーことか?」

上条「ったく、部屋にいないからどこほっつき歩いてんだよ、とか思ってたらこんなもん用意してたのかよ」

上条「…………」

上条「せっかくだし食べてみようかな? よっと」ガサガサ

上条「うわぁ、すげえ不格好だな。まさしく手作り感満載だな」

上条「……んじゃ、いただきます」パクッ

上条「…………」モグモグ

上条「うん、おいしい。何つうか意外だな、コイツこんなもん作れたのかよ?」

上条「……まぁ、でも正直嬉しいよ。ありがとなインデ――」クルッ



禁書「~~~~///」プルプル




上条「おわっ!? おまっ、起きてたのかよ!?」ガタッ

禁書「……そ、そりゃ、電気がついてて、物音が聞こえて、ぶつぶつと独り事言ってるとうまがいるんだから起きちゃうのも当然かも」

上条「……いつから起きてやがった。つーかどこから聞いてた俺の独り言!?」

禁書「『うおっ、テーブルの上汚っ!?』の辺りから……」

上条「ほぼ最初じゃねえか!! ぎゃー!! 独り実況を聞かれるほど恥ずかしいもんはねえぞおいぃぃ!!」

禁書「そ、そんなこと言ったって! 起きちゃったのはしょうがないんだよ!」

上条「あーヤバい、何か恥ずかしくて顔の熱半端ない」

禁書「それは私だって……何か恥ずかしかったんだよ……」

上条「あん何だって? 何でお前が恥ずかしがらなきゃいけないんだよ?」

禁書「だ、だって目の前で自分が作ったチョコレートを食べられて、そのまま感想言われて、恥ずかしくないわけがないんだよ……」

上条「……つーか、お前どうやってこんなもん作ったんだよ? ウチの材料じゃ絶対無理だろうし、新たに材料買う金なんてないだろうし」

禁書「こもえにお願いしに行ったんだよ! チョコレートの作り方教えて、って」

上条「小萌先生に? つーか帰るの早くないか小萌先生? 俺たちが帰ったらソッコー帰っちゃうのか?」

禁書「違うよ。私が自らとうまの通ってるガッコーに行って頼んだんだよ!」

上条「よく道に迷わなかったなお前」

禁書「完全記憶能力保持者を舐めてもらっては困るかも」

上条「だったら、地下街で迷子になって誰かしらに助けてもらうワンパターンなイベントをいつまで立ってもひき起こすの何でだよ?」

禁書「さ、さあ……たぶん魔術師の仕業かも……」スー

上条「……しかし、お前がこんなサプライズをしてくれるなんて思いもしなかったよ」

禁書「私だってこれくらいのことは平然とやってのけることができるんだよ」

上条「平然とやってのけた結果生まれたのが、このゴツゴツ不細工チョコレートか?」

禁書「うっ、み、見た目はたしかにあれだけど、大事なのは中身なんだよ! つまりおいしければ問題なしなんだよ!」

上条「うーん、でもそう言われてみると味の方もそんなでもないような……」

禁書「えっ!? そ、そんな……」シュン

上条「…………」

禁書「…………」グスン

上条「だぁー嘘だ嘘だ! おいしいよおいしかったよ世界一おいしかったですよー!」

禁書「むぅ、今そんなふうに言われても胡散臭さしかないかも……」

上条「……はぁ、嘘じゃねえよ。大体俺の独り言聞いてたんだろ? だったらこれ以上言わなくてもわかんだろ?」

禁書「……うん! あっ、そうだとうまとうまー!」

上条「あん? 何だよまさかおなか空いたーとか抜かしやがるわけないですよねインデックスさん?」

禁書「そ、そんなんじゃないんだよ……たしかにとうまの食べてるチョコレート見てるとちょっとおなかが空いてきたような気がするけど……」ボソッ

上条「おい」

禁書「あはは、まあこの話は置いといて……とうま!」

上条「はいはい何だ?」



禁書「いつもおいしいごはん作ってくれてありがとう!」ニコッ


上条「…………」

禁書「……あれ? もしかして私何か変なこと言ったかな?」アセアセ

上条「……いや、別に何も変なこと言ってねえよ。ただあれだ、ちょっと驚いただけだ」

禁書「驚いた? 何でかな?」

上条「だってさ、まさかお前がそんなお礼なんてもん言えるようになってたなんて思いもしなかったからさ」

禁書「むっ、何だか失礼なこと言われてる気がするんだよ。私だって常日頃からお礼はちゃんと言ってるんだよ」グルルル

上条「わ、わかったから噛み付きはなし! お願いしますインデックスさん!」

禁書「……ふふん、いいよ許してあげる。私の心は寛大なんだよ!」

上条「…………」

禁書「うん? 何か言いたそうな顔してるねとうま」

上条「やっ、別に何でもねえよ……」

禁書「……さて、私はまた寝ることにするんだよ」ゴロン

上条「待て。お前さっきの俺の独り言聞いてたんだろ? だったらこれからすることがあるんじゃねえか?」

禁書「…………ぐぅ」

上条「寝たふりしてんじゃねえよ!! 食器洗うの手伝えコラー!!」

禁書「えっー、だってお皿洗うのってとうま一人でもできるよね。わざわざ私が出る幕じゃないかも」

上条「お前は皿洗いの大変さがわかってない。でもたしかに一人でできないことじゃない。だけど二人でやればもっと早く終わるんだぜ?」

禁書「た、たしかにそうだけど……」

上条「つーわけでたまには手伝えよ。ほら、来い」グイグイ



ジャバババババ!!



禁書「むー、何でこんなことに……ふあぁ」ゴシゴシ

上条「つべこべ言わず手を動かす」ゴシゴシ

禁書「…………」ゴシゴシ

上条「あっ、そうだインデックス。俺からもいい忘れてた……つーか言えなかったことが一つあったな」

禁書「なーに?」ゴシゴシ


上条「チョコレート美味しかったよ。ありがとなインデックス」ニコッ


禁書「ふぇっ!?」パリーン

上条「ちょ、おまっ何やってんだよー!」

禁書「ううっ、とうまがいきなり変なこと言うからいけないんだよ!」

上条「はあ? 俺は別に何もおかしなこと言ってねえだろ! 人のせいにしてんじゃねえ!」

禁書「ぐぬぬぬっ、とうまの馬鹿!!」ガブリ

上条「ぎゃああああああああああああッ!! 理不尽だあああああああああああああああああああッ!!


―――
――




同日 22:45

-第七学区・麦野宅付近の街頭-



キキィー!!



浜面「……ほら、着いたぞ麦野」

麦野「んん? あーそう。ありがとね浜面」

浜面「……はぁ、疲れた。つーか、今まで生きて一番疲れた気がする……」

麦野「随分とお疲れのようね?」

浜面「まあな。はぁ、せっかくの休みだってのにまるで休んだ気がしなかった……」

麦野「ふーん、それは一体誰のせいなのかにゃーん?」

浜面「いっ、いや何でもない聞かなかったことにしてくれ!!」

麦野「まあ、いいわ。……そうだ浜面。そんな疲れてんなら少しウチで休んでいきなさいよ」

浜面「は? 何をおっしゃってられるのですか麦野さん?」

麦野「そんな状態で車の運転して事故られてもこっちが困るだけだし、少し休憩を入れたほうがいいと思うんだけど?」

浜面「た、たしかにそうだろうけど……でもわざわざお前の家に入らなくてもこっちは休めるぞ?」

麦野「何? 私のウチに来たくないっていうつもりかしら?」

浜面「いや、そういうわけじゃないけど……」

麦野「じゃあ決まり。早く車邪魔にならないところに停めなさい。そもそもアンタに拒否権なんてはないのよわかってる奴隷君?」

浜面「……はぁ、わかったよ。お邪魔すりゃいいんだろお邪魔すりゃ」

麦野「よろしい。素直な奴隷は大好きよ」

浜面「素直な奴隷、っつーか奴隷は素直じゃないと奴隷じゃないんじゃねえの?」

麦野「じゃあ浜面は奴隷失格だね。駄目じゃないちゃんと奴隷しなきゃー、調教しちゃうわよ?」

浜面「俺にそんなドM趣味ねえからやめてくれ」



-第七学区・麦野沈利の部屋-


浜面「……すっげー、まさしく金持ちの部屋ってヤツだなー」

麦野「何キョロキョロしてんのよ。そんな物珍しい物なんてないでしょ?」

浜面「いや、綺麗な部屋だなーって思ってさ。お前のことだからもっとグチャグチャしてんのかと思ってた」

麦野「ふーん、浜面は私に喧嘩でも売ってるつもりなのかにゃーん?」

浜面「ぎゃああああああっスミマセンスミマセン許して下さーい!!」

麦野「……ふん、別に怒ってなんてないわよ。適当にベッドの上にでも座ってなさい、何か飲み物取ってくるから」

浜面「えっ、いいよ床で。汚しちまうと悪いからさ」

麦野「私がいいって言ってるのよ。いいから言うとおりにしときなさい」スタスタ

浜面「お、おう」



ガチャ



浜面「…………」

浜面「しかし、女の子の部屋に来るなんて初めてだから、何ていうか緊張するな」ドサッ

浜面「うおっ、すげえこのベッド、ものすごいフカフカする!」フカフカ

浜面「やっぱ金持ちの持ってるもんは違うなー」

浜面「…………」


浜面(……こ、これってあれだよな? いつもアイツが使ってるベッドなんだよな? そのベッドに俺は腰掛けてんだよな?)

浜面(つーかそもそも俺麦野の部屋に今いるんだよな? ヤベえただでさえ緊張してるっつーのにさらに緊張してきた!!)

浜面(わー意識すんな意識すんな! 変に意識して変なことしちまったらブチコロシ確定じゃ済まねえぞ……!?)

浜面(……何かこの部屋いい匂いするな。そう、いつも麦野から漂うあのいい香り……っておい!! 何考えてんだ俺ェ!!)

浜面(やめろォ!! 変な考えを張り巡らせるな!! 無心になれっ!! 自然と一体化しろッ!!)

浜面(そうだ! 漫画とかで素数を数えると無心になれるとか何とかっていうのを見たことがある……! よし素数を数えよう)

浜面(ええっと、1、……あれ? そもそも素数って何? そんなもん習ったこともねえよチクショォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!)ジタバタ


麦野「……何やってんのよアンタ?」



浜面「はっ、む、麦野ッ……!? 違うんだこれは、別にお前のベッドでやましいことをしようとか思ってたわけじゃないんだ! ただ素数がわからなくて……!」

麦野「へー、浜面私のベッドでそんなやましいことしようと思ってたのかーへー」ニヤニヤ

浜面「ぎゃー申し訳ありません!! そんなもん一つも考えねえよと反論しようとしたけど、思っちまったからできなかったって何言ってんだ俺はァああああああああああッ!!」

麦野「うるさいわよ浜面。コーヒーでも飲んで落ち着いてなさい」スッ

浜面「あっ、おうサンキュー」ゴクゴク

麦野「ったく、人のベッドに顔面からダイブしようが、人の下着漁って盛ったりしても構わないけど、そういうのはバレないようにするものじゃないかにゃーん?」

浜面「い、いやそんなことするわけねえだろ! さすがの俺でもそんな変態的な考えを巡らせたりしねえよ!」

麦野「そうかしら? 何だか目が血走ってるように見えるんだけど」

浜面「勘違いするな。これは眠気がすごいから目が充血してんだよ。そんなエロいこと考えて目が血走るとか漫画じゃあるまいし……」

麦野「ふーん、そう」ズズズ

浜面「うわっ、すっげえ興味なさそう……人が必死に弁明してるってのに」

麦野「だったら私が興味を持てる話をしなさい。そしたらちゃんとした言葉のキャッチボールしてあげるわよ」

浜面「何という上から目線……そうだ、お前バレンタインのチョコレートくれたじゃねえか」

麦野「うん、それがどうかした?」

浜面「あれ、遊んでる途中食べてみたけどすっげえうまかったよ。お前って料理とか得意だったんだな」

麦野「へー、そりゃよかったわね」

浜面「……おい、お前の興味のハードル高すぎだろ。俺なんかの猿頭じゃ越えられる気がしないんだけど」

麦野「別に高くなんてないわよ。アンタが思ってるよりなんかは」

浜面「?」

麦野「……はぁ、まあいいわ。ところで浜面、この状況どう思う?」

浜面「……状況? それってどういうことだ?」

麦野「すっとぼけてんじゃないわよ。この一つの部屋に男と女が二人きり、この状況をどう思ってるのかってことを聞いてんのよ」

浜面「……べ、別に何とも思ってねえよ」

麦野「ふーん、本当?」

浜面「あ、当たり前だろ。そんなたかが男女二人きりごときでそんな変なことを考えるなんて、中学生じゃあるまいし」

麦野「……そう、だったら――」スッ



ドン!



浜面「痛っ!? な、なにしや……がる……?」

麦野「ふふっ」スッ



麦野「こんな風に押し倒されたりされても、浜面はそんなことを言えるのかにゃーん?」ニヤリ

浜面「……は、はあ? お、おまっ何やってんだよ?」

麦野「何って、この状況になってすることなんてそんなこと考えなくてもわかるんじゃないかしら?」

浜面「そ、そういうことを言ってんじゃねえよ! 何でこんなことになるんだって聞いてんだよ!」

麦野「率直に言うけど、私アンタのことが好きなんだよね」

浜面「…………は? えっ、なっ、わけ、わけわかんねえよ……」

麦野「まさかこれを説明しなきゃいけないほど馬鹿じゃないわよね、さすがにアンタでも」

浜面「どうして、どうして俺なんかを……?」

麦野「……さあ?」

浜面「さあ、ってお前……!」

麦野「別にいいじゃん理由なんて。月並にベッタベタなセリフだけど、私がアンタのこと好きなのには変わりないわけだし」

浜面「…………」

麦野「……さて、余計なこと喋ってシラケちまう前にヤることヤっちまうとしようかな?」スッ

浜面「なっ!?」

麦野「アンタは何も考えなくてもいいよ。全部私に任せとけばいい」

浜面「…………やめ」ボソッ

麦野「浜面、アンタは私の奴隷なのよ。だから黙って私の言うとおりにしとけばいいわ」

浜面「……やめろ」

麦野「浜面。私のモノになりな――」



浜面「――やめてくれ麦野ッ!!」



麦野「ッ――」ピタッ


浜面「……はぁ、はぁ、もう、やめてくれ……」

麦野「…………」


浜面「……たしかに、俺は今日一日お前の奴隷だ。それはわかってる。だからムカついたら蹴ったり殴ったり……殺してくれても構わない」

浜面「だけど、これだけは言わせてくれ……」

浜面「俺には……好きなヤツがいるんだ。そいつは俺のことなんて何とも思ってないかもしれない。それでも、俺はアイツのことが好きなんだ!!」

浜面「だから……俺はお前のモノになんてなれない……悪い」



麦野「…………そう」

浜面「ははっ、奴隷が主に逆らったら即刻死刑、だろ? 煮るなり焼くなり好きにしろよご主人様」

麦野「……ふーん、じゃあそうするわよ。裏切り者のクソ奴隷君?」キュイーン

浜面「……ぐっ!?」バッ

麦野「…………」

浜面「…………って、あれ? 何も起こらない?」

麦野「――ふふっ、あはははははははははははははははははははははっ!!」

浜面「へっ?」

麦野「何マジになってんだよお前? 冗談に決まってんだろバッカじゃねえのぎゃははっ!!」

浜面「じょ、冗談……? そ、それじゃあ……」

麦野「私がテメェなんかを好きになるわけないでしょうが。全部テメェのリアクションを楽しむためのドッキリだっての」

浜面「な、何だ……よかった……」

麦野「はぁ? 何そのリアクション。正直ムカつくからその顔面焼いてもいい?」

浜面「す、スミマセン嘘ですこれがドッキリなんて何たる不幸だー!!」

麦野「……はぁ、何かシラケたわ。もう帰っていいわよ浜面」

浜面「えっ、だって俺今日お前の一日奴隷だろ? まだ明日まで時間が――」

麦野「もともとこれをするためにアンタを奴隷にしたんだっつーの。つまりもう用済みってこと、だからさっさと帰った帰った」

浜面「へっ、あ、ああ、わかったよ……」


-第七学区・麦野宅付近の街頭-



キキキキキキッ!! ブルオン!!



浜面「……まあ、何ていうかいろいろありがとな。おかげでさまで目が覚めたぜ。居眠り運転なんてしようがないくらいにな」

麦野「じゃあもし事故したら死刑な」

浜面「お、おう、気をつけるとするよ」

麦野「……しかしぷぷっ、今思い出すだけでも笑えてくるよな。アンタのあの必死な顔」

浜面「そんなもん掘り返さないでくれ。そしてできればそれは墓の中へ持っていてくださいお願いします」

麦野「何でそんなもん私の墓なんかに持っていかなきゃいけないのよ。今すぐにでも捨て去ってやろうか?」

浜面「ひでえ!!」

麦野「ま、いいや。じゃあまた明日な。遅れたら三百六十度から浴びせられるオールレンジ原子崩しな」

浜面「うげっ、そりゃ怖ェ!! 絶対に遅れるわけには行かねえな……そんじゃ、またな」



ブブブブブーン!! 



麦野「…………はぁ、何というか変な感じね。別に悲しいわけでもないし怒りが収まらないわけでもない、かと言って嬉しいなんてこともないし」

麦野「……ま、でもこんな感じ、これから二度と味わうことなんてないんでしょうね……ねぇ、浜面?」


―――
――





同日 23:00

-黄泉川家・リビング-



結標「あ、一方通行! ちょ、ちょっと話があるんだけど……いいかしら?」


一方通行「…………ああ」



一方通行(チッ、完全に油断してた。寝る前にコーヒー飲もうとしてリビングに行ったら……クソッ)

結標(……やっぱり来ると思ってたわ一方通行。貴方は寝る前のカフェイン摂取をほぼ毎日欠かすことなく行ってる。だからここで待ち伏せさせてもらったわ)


一方通行(最後の最後で攻めてきやがったか……イイだろォ、受けて立ってやるよ格下がッ!)

結標(タイムリミットはあと一時間弱、もうあとがないわ。絶対に、絶対にここで渡してやる……!)


一方通行「……で、話って何だよ? 俺ァ今から缶コーヒーを飲ンでとっとと寝よォと思ってンだけどよォ。できる限り早く終わらせてくれよ」

結標「そ、そうだったのね。何だか悪いことしたみたいね、ごめんね。お詫びに……」



トクトクトクトク



結標「コーヒー沸かしといたわ。これでも飲みながらじっくり話しましょ?」

一方通行「オマエ人の話聞いてたか? 早く寝たいっつってンのに何でじっくりっつゥ言葉が出てくンだよ」

結標「はい、どうぞ」コトッ

一方通行「やっぱ話聞いてねェな。何ごともなかったかのよォにコーヒーカップ俺の目の前に置きやがった」

結標「あっ、そういえばお菓子とかいるかな? 黄泉川さんの食べさしのおせんべいがあるんだけど」スッ

一方通行「そンなモンまで用意して一体何時間話をするつもりだよ。つゥかアイツの食べさしとかいらねェ」

結標「あっ、私の分のコーヒー出すの忘れてた。ちょっとカップ取ってくるから待ってて」ダッ

一方通行「んなモンいらねェだろッ! 早く話を始めろコラ!」

結標「ご、ごめんなさい!!」トクトクトク

一方通行「謝りながら注いでンじゃねェよ! ……ったく」

結標「…………」トクトクトク

一方通行「…………」ズズズ



結標「……さて、準備ができたところでさっそく始めましょうか。真夜中ティータイム」

一方通行「ティータイム要素一つもねェけどな」

結標「……もう二月か。私たちが初めて出会ってから五ヶ月……だいたい半年になるのね」

一方通行「ンだァ? オマエもしかして昔話をするために俺を引き止めたのか? 最後の最後で総集編持ってきてンじゃねェよ」

結標「貴方が何を言ってるのかさっぱりわからないけど……まあようするにいろいろあったわよねって言いたいのよ」

一方通行「……まァな。たしかにいろいろあったな。クソみてェなイベントばっかだったけど」

結標「その中でもやっぱり学校に通い出したのが一番のターニングポイントかな、って思うわけよ」

一方通行「たしかにそォだ。良くも悪くも俺らの生活を一変させやがったンだからな」

結標「漫画とかで見た限りだったら、転校生ってのは何かと難しいポジションなわけじゃない」

一方通行「新しい環境で友だちたくさン出来るかな、ってヤツか。初っ端ミスしたら全部終わるシビアなポジションだな」

結標「貴方の場合初っ端からミスの連発してたじゃない」

一方通行「ハァ? ミスなンかしてねェだろ。あの完璧な自己紹介に何の不満があるってンだ」

結標「どこがよ。今でも鮮明に思い出せるわね、あのまばらな拍手と気不味い場の雰囲気」

一方通行「チッ、つゥかそンな話持ち出して一体何が言いてェンだオマエ?」

結標「……転入初日さ、職員室で貴方と同じクラスって言われたとき私そうとう怒ってたじゃない?」

一方通行「職員室だっつゥのに本気で叫ンでたしな」

結標「正直嫌だったのよ。みんなより年上だっていうのに私もその中の一員になるなんてって……」

一方通行「別にそれが普通の感覚ってヤツだな。俺だって嫌だからな、そンな年下のガキどもと仲良しこよしやるのなンてよォ」

結標「うん、私も最初はそう思ってた。でもね、一年七組というクラスのみんな、吹寄さんや姫神さん、上条君に土御門君に青髪君。みんなと出会ってからはそんな考えすぐに消え去ったわ」

結標「私がみんなより年上って知ったとき、たしかにみんな驚いてたわ。でも次の瞬間からそんなことなかったみたいにみんな私に接してくれたわ」

結標「だからこそ今思うのだけど、下手に二年生のクラスに入るよりも、この一年七組というクラスに編入できたってことのほうがよかったんじゃないかなって」

一方通行「……そォだな。真面目で優等生の集まってるクラスよりかは、今の何も考えてねェよォな馬鹿が集まったあのクラスのほうがよっぽど気楽にいられる」

結標「それに今の私があるのも、もしかしたらみんなのおかげな気がするもん」

一方通行「それは言い過ぎだろ。オマエはどこにいよォとオマエだろ」

結標「あくまで気がするだけよ。それだけ良いクラスってことよ」

一方通行「……で、オマエが一年七組信者っつゥことはよくわかったが、結局オマエは何が言いたいンだ?」

結標「信者、って嫌な言い方するわね」

一方通行「だってそォだろ? まるで怪しい通販番組の成功体験者のインタビューみてェな持ち上げ方だったじゃねェか」

結標「うっ、ま、まあ言われてみればそんな気がしてきたわ……でも思ってるの事実よ!」

一方通行「ハイハイわかったわかった。だからとっとと話ィ続けろ」

結標「そうね。じゃあ……あれ覚えてる? 十二月の半ばぐらいにあったマラソン大会」

一方通行「……あァ、そォいやあったな。そンなクソみてェなイベント」

結標「うん、いきなり開催するって聞いてみんなブーイングしてたあれ。あとから賞品があるって聞いてみんな眼の色変えてけど」

一方通行「それがどォかしたのか?」

結標「そのマラソン大会だけど、ある意味私の中だったらもうひとつのターニングポイントだと思ってるわ」

一方通行「人生の転機の安売りかよ、くだらねェ」

結標「しょうがないじゃない。たしかに貴方にとっては安売りに聞こえるかもしれないけど、私にとってはどっちも大事な出来事よ」



一方通行「チッ、で、それはどォしてそンな転機とやらになったンだ? 俺にとってはとてもじゃねェがそンなモンになりえるモンには感じなかったわけだけど」

結標「……そうね、学校への転入が新しい友達との出会い、マラソン大会は貴方のことをよく知れた気がした出来事、ってところかな?」

一方通行「ハァ? 俺を知れただァ? 何でオマエの口からそンな言葉が出るのか俺にはさっぱり理解できねェンだけどよォ?」

結標「まあ、あくまで知れた気がした、ってだけよ。そんな貴方のこと全部知ったってことじゃないからそこは勘違いしないでね」

一方通行「いや別にそンなアホみてェな勘違いしてるつもりはねェよ。ただマラソンごときで俺を知ったとか言い出すから首傾げてるだけだ」

結標「そう。まあホントにくだらないことよ」

一方通行「……気になる言い方だな。何を知ったって言うンだ言ってみろよ?」

結標「……言っていいの?」

一方通行「言え。このままじゃ気になって明日の授業中に寝られねェ」

結標「いや、そこは起きときなさいよ。……まあいいわ、貴方がそこまで言うなら言ってあげるわ」

一方通行「さっさと言え。ったく、くっだらねェ」ズズズ

結標「貴方がツンデレっていうところよ」

一方通行「ぶっ!? お、オマエェ喧嘩売ってンのかオラァ!?」

結標「別にそんなもの売ってるつもりはないのだけど」

一方通行「……チッ、オシオキはあとで取っておくとして、一体そのマラソン大会でどォやって俺がツンデレみてェな錯覚を起こしやがったってンだァ?」

結標「だって貴方私を助けてくれたじゃない。私が足を怪我してて」

一方通行「そりゃ知り合いが怪我して倒れてりゃ普通に助けンだろ。それのどこにツンデレ要素があるってンだよ」

結標「最初はスキーなんてくだらない、って言ってたくせに私を助けると同時にスキー旅行のために一位取ってくれたじゃない。これ結構ツンデレ要素あると思うけど」

一方通行「……アレはさっさとゴールに言ったほうが救護係が早く動いてくれると思ったからだ」

結標「そのためにわざわざ打ち止めちゃんに電話して能力を? 私がスキー行きたいって言ったあとに?」

一方通行「あァー、そォか、そォいうことか。よォするにオマエは俺をおちょくって遊びてェっつゥことか? ぶっ殺すぞ」

結標「…………違うわよ」

一方通行「ハァ? 何が違うってンだよ? どォみてもこの状況おちょくってるよォにしか見えねェぞ」

結標「単に私は……あのときのお礼が言いたいだけよ」

一方通行「お礼だァ? お礼のおの字もねかった気がすンだけど」

結標「さっき言ったマラソン大会ももちろんだけど、クリスマスにお正月、スキー旅行……学校行く前なら遊園地だって。この一年未満の記憶しかない私にたくさんの思い出が出来たわ」

結標「それは全部、たぶんだけど貴方がいたから出来たものだと思うのよ」

一方通行「……馬鹿言ってンじゃねェ。俺がいなくてもオマエには思い出なンていくらでもできる」

結標「そうかもしれないわ。でも貴方と過ごしてきた思い出は貴方がいたから出来たものよ」

結標「貴方が遊園地のパスを買ってきたから遊園地で一緒に遊べた。貴方がプレゼントをくれたからある意味思い出に残るクリスマスになった。貴方がいたから……トラウマを乗り越えることができた」

結標「その貴方からしかもらえないモノたくさんもらった。私はそのお礼をがしたいのよ……だから」スッ











結標「――受け取ってよ。私からのバレンタイン」







一方通行「…………」

結標「…………」

一方通行「……はァ、やっぱりそォいうことかよ」

結標「えっ、やっぱりって何よ?」

一方通行「この話の終着点はここだとあらかじめ予想してたっつゥことだよ」

結標「……えっと、それってつまり、このサプライズがバレてたってこと?」

一方通行「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」

結標「じゃあ不自然に話をそらしてたのって……?」

一方通行「オマエからそれを受け取らねェためだ。劇物を自分から口にしに行く馬鹿はどこにいるってンだ」

結標「ぐっ、た、たしかにそうかもだけど……」

一方通行「まァ、俺もまだまだだっつゥことだ。結局はこォして受け取ってしまってンだからな」スッ

結標「……ねえ」

一方通行「あァ?」

結標「それ……食べてみてよ」

一方通行「俺に死ねと?」

結標「いや、そういう意味じゃないけど……というか貴方ってとことん失礼よね」

一方通行「元からそォだろ」


結標「……たしかに私は料理は下手くそかもしれないわ。それも壊滅的に……でも、私はちゃんと最後までやり切ることができたわ、二人のおかげで」

結標「不味くて不格好で市販のチョコレート食べたほうがマシみたいなモノかもしれないけど、だからこそ食べてみてよ」

結標「これが……今の私の精一杯だから……!」


一方通行「…………」

結標「……あ、あと中には怪しいものなんてひとつも入ってないから安心して! 吹寄さんと姫神さんが保証するわ!」

一方通行「……はァ、いいことまがいのことを言ったと思ったら変な予防線を張りやがって……つゥか、二人に責任なすりつけてンじゃねェ」

結標「べ、別にそんなつもりは……!」


一方通行「……わかった。そこまで言うなら食ってやるよ。オマエの精一杯とやらをよ」ガサガサ


結標「……ありがと」

一方通行「…………」

結標「…………」ゴクリ


一方通行「……よっと」パクリ


結標「!!」

一方通行「…………」モグモグ

結標「…………」ガクブル

一方通行「…………」ゴクン

結標「…………ど、どどどう?」

一方通行「……チッ、何だこりゃ? ふざけてンじゃねェぞオイ」

結標「ひっ、ご、ごめんなさい!」ビクッ



一方通行「こっちはなァ、口に入れた瞬間意識を奪われるのを覚悟して口に入れたってのによォ、本当に何なンだよこれはァ?」

結標「や、やっぱり……私のじゃ……」

一方通行「俺の舌はついにイカれちまってのかァ? ったく、何だってンだよ何で――」



一方通行「何で俺の舌は……これをうまいと感じてやがンだよ……?」



結標「…………え」

一方通行「本当どォなってやがンだよこれは……」

結標「……今、何て言ったのよ……?」

一方通行「あァ? 何がだ?」

結標「いや、だからさっきうまいって……」

一方通行「ああ、別にオマエの耳がおかしくなったとかじゃねェから安心しろ」

結標「……嘘。もしかしてこれ、私の見てる夢とかじゃないわよね……?」

一方通行「残念ながら現実だ。本当に残念ながらな」

結標「…………ううっ、よかっ、た」グスン

一方通行「チッ、何泣いてやがンだオマエは? もしかしてアレかァ? マズイ方のリアクションをお望みでしたかァ? マズくしよォと作ったのがうまく作れててショックで涙目なンですかァ?」

結標「……ちが、うわよ。うれしいのよ……貴方おいしいって言ってもらえて……苦労したかいが、あったんだって思って……」

一方通行「ケッ、面倒臭せェヤツ」

結標「……うるさい」

一方通行「しかしよく考えたな。チョコレートにコーヒーの粉まぶすなンて奇行」

結標「ああ、それ? それ、本当はココアの粉使う予定だったけどなくて、どうせだから貴方が好きなもので代用しようかなって思って」

一方通行「コーヒー粉の量が大幅に減ってると思ったらこォいうことだったわけか」

結標「……あ、あと、あとね! 材料のチョコレートも貴方が甘いの駄目って知ってたから、カカオ99%っていう甘くなさそうなの選んだのよ!」

一方通行「オマエ、そこまで俺のことを考えて……」

結標「ふふっ、ど、どうよ? 私だって頑張ればこれくらいできるのよ? 少しは料理の腕は上達したのよ」

一方通行「……まァ、そォだな。ここは素直に褒めといてやるよ。前よりはマシになってた」

結標「ぐっ、相変わらず素直じゃないヤツ……何よ、今日くらいデレてくれてもいいのに」ボソッ

一方通行「そォいうのはキッチンに置いてる茶ばンだノコギリをしまってから言えェ」

結標「な、何のことかしら……?」アセッ

一方通行「……でもアレだな。オマエは相変わらずレベル5級に危険な食いモンを作ってるよォだな」

結標「ど、どこがよ? 今回はちゃんとしてるでしょ? 貴方も普通に食べてるし……」

一方通行「いいや駄目だな。大体これは一般人が食ったら即嘔吐するよォなシロモンだろォが」

結標「うぐっ、た、たしかにそうね……今思えばこのチョコの材料買うとき二人とも目をそらしてた気がするし」

一方通行「まァ安心しろ。今は俺にだけならまともな料理が作れるっつゥことだからな」

結標「……でもそれって結構レベルアップしたってことなんじゃないかしら!?」

一方通行「自惚れてンなよ格下が。所詮、今のオマエは産廃しか作ることができねェ三下っつゥことを忘れンなよ」

結標「……いいわよ別に三下で。それでも貴方がおいしいって言ってくれるなら」

一方通行「俺を実験動物にする展開は本気でやめてくれよ?」

結標「何よ実験動物って!」



一方通行「……ふァ、そォいやこれから寝るンだった」

結標「ああ、もう結構遅いわね。それじゃこれでお開きにする? 真夜中コーヒータイム」

一方通行「コーヒータイムという名の茶番だったけどな」

結標「茶番て……もっといい言い方なかったの?」

一方通行「だってそォだろ? オマエが俺にチョコレート渡すためだけに開かれた茶番。何だよ最初のあのくだらねェ思い出話」

結標「い、いやーああやって舌を先に慣らしておいたほうがいいかなって……」

一方通行「馬鹿馬鹿しい、寝る」ガタン

結標「あっ、私が後片付けしとくから、そのままにして部屋に帰っていいわよ」

一方通行「わかった。そォする」ガチャリガチャリ

結標「そこで『俺も手伝うぜ(キリ』とか言えないの貴方は?」

一方通行「言うわけねェだろ面倒臭せェ」

結標「ま、いいけど。じゃ、おやすみなさい」

一方通行「おォ、コーヒーとチョコレートごっつォさン、アリガトよ」ガチャリガチャリ

結標「はーい」



ガラララ



結標「…………ふぅ、すっごく緊張した」

結標「もうヤバいどっと疲れが出てきた……こんな緊張するのはもう懲り懲りね……」

結標「はぁー、でもこれにて任務かんりょー! ってところかしらね」

結標「……はぁ、明日は吹寄さんたちと反省会だろうし、さっさと後片付けして寝ちゃお」カチャカチャ

結標「…………」



結標「……ふふっ、よかった」ニコッ










結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」


              ~おわり~


というわけでこのスレはこれで終了です
これまで見てくださった皆さん本当にありがとうございました

最後辺り展開が雑になっていってるような気がしますが許してください
とうかバレンタイン思ったより長くなってビビったw
そもそも無駄イベント詰め込み過ぎた
本当は春休み終了までやろうと思ってたのに……

次スレは今忙しいのでいつになるかわかりません申し訳ない
またいつか会う時まで、ではではノシ

このSSまとめへのコメント

1 :  O   2013年09月03日 (火) 23:40:58   ID: w33uJ4tL

更新が来ない・・・

2 :  SS好きの774さん   2013年10月25日 (金) 23:55:11   ID: HuwFGbvE

乙!凄くよかった。

3 :  SS好きの774さん   2013年12月26日 (木) 18:12:21   ID: z8-idDWY

続編希望!

4 :  SS好きの774さん   2014年01月18日 (土) 18:03:38   ID: 8RDT1ObM

このSSって続編あるのかな?
それっぽいのが見当たらないんだが…
内容からして完結してる感じがしないし

5 :  SS好きの774さん   2014年01月22日 (水) 18:18:10   ID: hyogD1dk

これって結局続編ってあるの?
すでに書き込みできなくなってるし…

6 :  SS好きの774さん   2014年01月29日 (水) 17:39:42   ID: ePi94xs-

結局、海原の言ってた結標絡みの計画ってなんだったんだ?
最後の方はバレンタイン関係で有耶無耶になってるし…
是非、続編でそこんとこまとめてほしい

7 :  SS好きの774さん   2014年02月04日 (火) 22:14:23   ID: jvxqbdJx

ここで言っても無理だが、続編はよ

8 :  SS好きの774さん   2014年02月22日 (土) 18:04:21   ID: VslAFYIv

まだかな

9 :  SS好きの774さん   2014年03月23日 (日) 23:58:20   ID: IZMHMLuX

続き、待ってるぜ!

10 :  SS好きの774さん   2014年04月18日 (金) 20:13:38   ID: yJxD6SKs

まだ完結したって感じがしないな

11 :  SS好きの774さん   2014年05月07日 (水) 19:10:12   ID: W21xasMf

そろそろ続編来てほしい

12 :  SS好きの774さん   2014年05月11日 (日) 01:00:58   ID: CVzgAFnT

本編でもどんどん話が進んでるのに、こっちは続編の兆しがないな
はよ完結編というか続編お願いします!

13 :  SS好きの774さん   2014年05月14日 (水) 18:58:09   ID: 0rYa_h8w

続編まだか?

14 :  SS好きの774さん   2014年05月24日 (土) 09:37:47   ID: qAx41ITm

すごく面白かった!

15 :  SS好きの774さん   2014年06月01日 (日) 00:54:32   ID: VpkrMyAh

続編ほしい!結標の姉さんと一方通行がくっつくまでのが特にほしい!

16 :  SS好きの774さん   2014年06月04日 (水) 00:31:43   ID: -d4lC2Ff

このシリーズは「バカみてェな三下~」から読んでるけどとってもほのぼのした雰囲気が出てて楽しませてもらいました。
続編を書いていただければ最後まで応援します。

17 :  SS好きの774さん   2014年06月19日 (木) 02:49:57   ID: GwUwXmyA

これの続編ホントやってほしいな
最近のssは荒らされたり作者が途中で失踪したりばっかでつまらない
正直ここのssには是非再開してもらいたい

18 :  SS好きの774さん   2014年06月29日 (日) 19:22:12   ID: KXs_VqSO

続編来ーい

19 :  SS好きの774さん   2014年08月05日 (火) 16:52:32   ID: 7J379DnV

続編待ってる

20 :  SS好きの774さん   2014年09月05日 (金) 15:37:14   ID: H-FQqKB2

う~ん、そろそろ完結編書いてほしいな

21 :  SS好きの774さん   2014年10月04日 (土) 18:46:00   ID: Xnie4gNT

他のシリーズもここでやってほしい

22 :  SS好きの774さん   2014年11月01日 (土) 02:08:48   ID: GduN8sJJ

1年経ったな…今でも続編待ってるよ

23 :  SS好きの774さん   2014年11月14日 (金) 19:55:18   ID: vBMS-GNU

続編やって欲しいけど…その願いは作者の耳に届かないしな

24 :  SS好きの774さん   2014年12月29日 (月) 19:03:02   ID: sI1jAzwY

これの続編まだ?

25 :  SS好きの774さん   2015年09月14日 (月) 18:15:04   ID: MeiBl2mR

結局続編は水の泡か…

26 :  SS好きの774さん   2015年12月10日 (木) 08:43:46   ID: XzrPpnta

続編まだかのぅ〜…

27 :  SS好きの774さん   2016年07月29日 (金) 07:58:47   ID: LQvU4Yn3

続編待ってるぞ…

28 :  SS好きの774さん   2017年11月29日 (水) 19:07:27   ID: YYv_Id4z

1作目から読ませてもらって改めて思うのは、ここで終わるのはあまりにも勿体ないってことだな。
全体的にほのぼの、たま~にシリアス、時にギャグでホント楽しませてもらったよ

29 :  SS好きの774さん   2018年10月28日 (日) 02:40:47   ID: IhnQvRMH

結局完結させずに尻切れトンボの状態のままか…

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