P「夏葉と樹里」 (58)

夏葉(私の名前は有栖川夏葉、世界一以外は目指さない283プロダクションのアイドルよ!)

樹里「おーい、夏葉ー」

夏葉(そして、こちらは西城樹里。とても頼りになる私のユニット仲間よ!)

樹里「話ってなんだよ?アタシだけじゃなく、プロデューサーまで呼んで…」

P「何かあったのか?」


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果穂「心配です…」

樹里「…って、果穂までいんのかよ!?」

夏葉「ええ、プロデューサーに相談してるところを聞かれてしまってね…まあいずれはユニットの全員に相談しようとは思ってたし…」

樹里「なるほどな…で?話ってなんだよ?」

夏葉「実は私…許婚ができそうなの」

樹里「い、許婚!?」

果穂「…ってなんですか?」

P「まあ平たく言えば『婚約者』かな…結婚の約束をする相手ってことだ」

果穂「夏葉さん!!?結婚しちゃうんですか!?」

夏葉「そんなにすぐにはしないわよ。少なくとも20代のうちは…」

樹里「ならどうして…」

夏葉「ほら、うちは家が家じゃない?だから独身でいるのはともかく、相手がいないというのは体裁が悪いって言うのよ…」

P「まあ夏葉ほどのお嬢様になるとそうなるか…」

夏葉「もちろん結婚するまで存在は伏せていていいとは言ってくれているんだけど…」

樹里「…まあ普通は嫌だよな」

夏葉「そうなのよ、まあうちの両親的には『相手がいない』のが問題らしいから、相手さえいれば解決するんだけど…」

樹里「…プロデューサー、しっかりやれよ」

P「え?俺?」

樹里「そうだよ、もうアンタしかいないだろ」

果穂「え!?プロデューサーさんと夏葉さんが結婚するんですか!?」

樹里「何も本当に結婚しなくてもいいんだよ、夏葉が本物の相手を見つけるまでフリをしてりゃいいんだ」

果穂「なるほど!!!!名案です!!!」

夏葉「残念ながらそれは無理ね…既に私はプロデューサーのことを紹介してしまっているもの」

P「担当が決まってすぐだったな」

樹里「?それくらい別にいいだろ?」

夏葉「それがね…最初に連れて行った時にだいぶ…その…疑われたのよ」

果穂「…?何をですか?」

P「いや、まあその…アイドルのプロデューサーなんて、まぁ言ってしまえば胡散臭いだろ?夏葉の家の財産目当てで近づいたんじゃないのかって目で最初は見られてな…」

樹里「あぁ…なるほどな…無い話じゃねえな」

P「まあ今では放クラも売れてるし、わかってはもらえてるんだがな…」

果穂「そんなことがあったんですね…」

P「そんでもって結局はお付き合いしてますなんて言ってみろ、今まで築いてきた信頼がパアだ」

夏葉「それは私としても避けたいのよ」

樹里「なるほどなぁ…じゃあ誰か適当な相手を見繕うしかねぇか…」

夏葉「ダメよそんなの。仮にも私の相手なのよ?それ相応の相手じゃないと…」

樹里「めんどくせぇな!?そんなにこだわんなよ!」

P「いや、しかしそれはそうだろう。夏葉の性格を知ってる両親を騙すためには、夏葉好みの相手である必要がある」

果穂「たしかに…」

樹里「ならその好みをさっさと聞いて見つければいいな」

P「夏葉はどんな男性が好みなんだ?」

夏葉「別に多くは望まないわよ」

P「そうだな、そうしてくれると助かる」

夏葉「ただ両親的にはそこそこの容姿は求めるでしょうね…」

P「まあ可愛い愛娘の相手だしな…」

夏葉「私としては、芯があって、優しくて、頼りがいのある相手がいいわね、将来子育てをすることを考えれば子供の面倒見が良ければ言うことはないわ」

樹里「いや、そりゃねえだろうよ!」

夏葉「収入は…私は気にしないけれど、両親は気にするかしらね…」

P「そうなると…容姿が良くて、収入もそこそこ、芯があって、優しくて、頼りがいがある子供の面倒見がいい男…」

樹里「そんな完璧超人がその辺にいるかぁ!」

夏葉「そんなの私にもわかってるわよ!でも仕方ないじゃない!」

果穂「…容姿がよくて…」

樹里「ったく、どうすんだよ…そもそもこの事務所で男っていやぁ、他には社長くらいしか…」

夏葉「絶対に嫌」

樹里「ちょっ!?やめろよ!可哀想だろ!」

果穂「収入がそこそこあって…」

夏葉「だって…なんかお金の匂いがするじゃない…」

樹里「協力してもらう相手になんてこと言うんだ!」

果穂「芯があって…」

夏葉「それに…新婚生活も甘くはなさそうだし…」

樹里「やかましいわ!」

果穂「優しくて…」

樹里「大体夏葉だって、新婚生活甘くなさそうじゃねえか!筋トレとか絶対してるだろ!」

夏葉「な!?筋トレは別にいいじゃない!」

樹里「いいけど甘くはないだろって言ってんだよ!」

果穂「頼りがいがあって…」

樹里「でも、ほんとそうなったら他にいねぇぞ?」

夏葉「そうなのよ…」

果穂「子供の面倒見がいい…」

樹里「やっぱプロデューサーに…」

夏葉「だからそれだけはダメ!」

樹里「じゃあどうすんだよ!こんな相手いねぇよ!」

果穂「居ました!!!!!」

夏葉「え?」

樹里「は?」

P「そんな男いたか?」

果穂「はい!ぴったりの人がいます!!!」

夏葉「本当に?」

樹里「どこにいるんだよ、そんなやつ」

果穂「ここにいます!!!」

P「ここ?」

夏葉「果穂、だからプロデューサーは…」

果穂「違います!樹里ちゃんです!」

夏葉「え?」

樹里「あ、アタシぃ!?」

果穂「はい!樹里ちゃんは、かっこよくて優しくて面倒見もいいです!」

P「いや、たしかにそうだけど…」

果穂「それに可愛いです!芯もあるし、あたしたちの面倒もよくみてくれてます!」

夏葉「なるほど…収入も私とほぼ同じ…」

樹里「いやいやいやいや!果穂!アタシは女だぞ!?」

果穂「?でも男の人よりもかっこいいですよ?」

樹里「うぐっ!?い、いや、そういうんじゃ…」

夏葉「たしかに…樹里が相手なら…」

樹里「いや夏葉も!何真剣になってんだよ!」

夏葉「でも樹里が相手なら条件が全てクリアできるのよ!」

樹里「だから一番大事な前提がすっぽ抜けてるんだっての!」

P「…いや、アリだな」

樹里「はぁぁあ!?あんたも何言ってんだよ!」

P「下手に男が関わると、事実とは異なる報道をされる可能性もある。しかし、樹里が相手なら最悪の場合でもリカバーが可能だ」

樹里「それはそうだけど!」

夏葉「そうと決まれば…」

果穂「早速着替えましょう!」

お着替え後

P「お、おぉ…」

樹里「ど、どうなんだよ…」

夏葉「メイクと服装でここまでできるものなのね…」

果穂「かっこいいです!!!!」

P「宝塚ともまた違う…なんだ…これ…」

樹里「ま、まぁ、悪くはない…のか?」

P「悪くないどころか、男の八割は樹里に負けてるレベルだぞ」

樹里「大袈裟だな…」

夏葉「いえ!大袈裟じゃないわ!いける!これでいけるわよ!」

ガチャ

凛世「おはよう…ございます…」

智代子「おはよー!」

果穂「あ!凛世さん!チョコ先輩!おはようございます!!!」

智代子「おはよう果穂…って、その人は?」

樹里「おいおい、チョコ、酷いじゃねぇか」

果穂「樹里ちゃんです!!!」

智代子「えぇぇ!?じゅ、樹里ちゃんなの!?」

凛世「まぁ…まるで…麗しい殿方のような…」

智代子「もうこんなことしたらただのイケメンじゃん!?」

樹里「何だよただのイケメンって…」

凛世「しかし…何故このような姿に?」

夏葉「私がお願いしたのよ。両親に交際の報告をしないといけないからね」

凛世「は?」

智代子「こここここ交際!?」

樹里「あぁ、それは…」

夏葉「さあ!善は急げよ!それじゃあ後は頼むわよ、プロデューサー!」

樹里「…って、うわぁ!?ちょっ!?夏葉!」

果穂「行っちゃいました…」

P「何もあんなに急がなくても…」

凛世「しかし…交際とは…」

智代子「…んで…」

凛世「…智代子さん?」

智代子「…なんで…夏葉ちゃんなの…?」

P「何で…って言われても…」

果穂「夏葉さんがお願いしたから…ですかね?」

凛世「なるほど…夏葉さんの方から…」

智代子「なら私でもいいじゃん!!!」

凛世「は?」

P「え?」

果穂「?」

智代子「樹里ちゃんのバカ!!!」ダッ

果穂「ちょこ先輩!?どこに行くんですか!?」

凛世「智代子さんは私が追いかけます!お二人は夏葉さんたちにこのことを…」

P「わかった!…なんかめんどくさいことになりそうだな…」

凛世「智代子さん!」

智代子「凛世ちゃん…」

凛世「はぁ…はぁ…ど…どうされ…たのですか?…いきなり…走り…はぁ…だして…」

智代子「いや、だって…樹里ちゃんと夏葉ちゃんが…」

凛世「たしかに…交際されているというのは驚きましたが…」

智代子「夏葉ちゃんも、樹里ちゃんもかっこよくて可愛いのに…美人で絶対に男の人にモテるのに…」

凛世「…それらを超える…何かがあったのでしょう…」

智代子「そんなの…酷いよ、私たちに内緒で…そんな…」

凛世「誰にでも…受け入れられることでは…」

智代子「だとしてもだよ!私たちってそんなに浅い仲だったの!?」

凛世「智代子さん…」

智代子「特に…樹里ちゃんなんか…あんなにカッコいい格好しちゃってさ…」

凛世「智代子さん…」

智代子「女の子でいいなら私を選んでよ!!!」

凛世「…智代子さん?」

智代子「あんなにかっこいい樹里ちゃんが隣にいるなんて羨ましい!!!」

凛世「智代子さん?お気を確かに…」

智代子「どうして…?オッケーのサインなら私も出してたよ!?」

智代子『私お腹がすくと人恋しくなるタイプなんだぁ』

智代子『樹里ちゃん、今日は月が綺麗だね』

凛世「それは…サインなのでしょうか?」

智代子「一刻も早く二人を見つけないと…手遅れになる前に…」

凛世「この行いは…正しいのでしょうか…?」

夏葉「ほら、こっちよ、樹里」

樹里「わかったわかった!だからもう少しゆっくり歩けよ」

智代子「いた!追いかけるよ!凛世ちゃん!」

凛世「…はい」

樹里「はぁ、緊張してきた…」

夏葉「あら?何をそんなに緊張することがあるのよ?」

樹里「そりゃするだろ!女同士で交際の挨拶しようとしてんだぞ!」

夏葉「『女同士』なんて言わなければいいじゃない。私は男でも女でも、最高にかっこよくて美しい『西城樹里』を選んだのだから」

樹里「な!?おま、お前はまたそうやって…」

智代子「夏葉ちゃん…樹里ちゃんに色目を…」ギリッ

凛世「落ち着いてください…お二人に…バレてしまいます…」

樹里「…ん」

夏葉「?どうしたの?」

樹里「その…付き合ってるって言うんならよ…手くらい…繋がねぇと…」

智代子「いやぁぁぁぁあ!?私の樹里ちゃんがぁぁぁぁあ!?可愛いぃぃい!?可愛い過ぎるぅ!最高ぅ!!!」

凛世「お、落ち着いてください…」

夏葉「ふふふ…ハズレよ」

樹里「え?」

夏葉「いい?恋人同士は…こう繋ぐのよ」

樹里「あ、あぁ…」

智代子「許せない!!!私の…私の樹里ちゃんに!!!」

凛世「樹里さんは…智代子さんのものでは…ないかと…」

智代子「くっ…まさか私がこんなに嫉妬深かったなんて…樹里ちゃん…どこまで私を狂わせるの…」

凛世「果たして…原因は樹里さんでしょうか?」

智代子「このままじゃ夏葉ちゃんに盗られちゃうよ!」

凛世「いえ…盗られるも何も…」

智代子「このままだったら…」

夏葉『樹里…もう…私たまらないの…」

樹里『あっ…そ、そんな…』

夏葉『ふふふ、あら、貴女こっちの方はバッドガールじゃないのね?』

樹里『そ、そんな恥ずかしいこと言うなぁ!?』

智代子「みたいなことになるのも時間の問題…」

凛世(…せめて…逆…ではないのでしょうか?)

智代子「けど、もうそろそろ夏葉ちゃんの家に着いちゃう…どうすれば…」

パシャッ

樹里「は?」

夏葉「何の音?」

阿久井「へへへ、『有栖川夏葉、熱愛発覚』撮らせてもらいましたよ」

凛世「これは…」

智代子「ダメ!こんなの記事にされたら…」

阿久井「ま、そういうことで…」

樹里「待…」

夏葉「待ちなさい!!」

阿久井「何ですか?言っておきますがこれが記事になっても偶然…」

夏葉「私はいいわ。けれど相手は一般人よ?」

阿久井「ふふふ、それくらいモザイクでどうとでも…」

夏葉「あら、私の実家が決めた許婚だってわかって言ってるの?」

阿久井「許婚?」

夏葉「そう、つまり有栖川家が『対等以上』と認めた家柄よ…そんなところを敵にするなんて…ねえ?」

阿久井「ま、まあ今回は…その…記事にしなくてもいい…かなぁ…」

夏葉「ならばここにカメラを置いてすぐに立ち去りなさい」

阿久井「い、いや、それは…流石に…」

夏葉「あら?聞こえなかった?これはあなたのためなのよ?」

阿久井「で、でも…カメラは…」

夏葉「ほら、これで足りるかしら?」

阿久井「は、はいぃい!?し、失礼しましたぁ!!」

智代子「…」

凛世「智代子さん?」

夏葉「ふぅ、全く…油断も隙もないわね」

樹里「な、なあ夏葉」

夏葉「あら?どうしたの?」

樹里「あんなことしなくても…普通にアタシの正体バラしたら良かったんじゃねぇか?」

夏葉「…そうかしら?」

樹里「そもそもプロデューサーがこの案を推してたのはそういうことだろ?いざって時に言い訳がつくし…余分な金だって払わなくても…」

夏葉「そう…ね、その通りだわ…でもね…」

樹里「?」

夏葉「何故だかとっても…腹がたったの…私のために一生懸命にやってくれてる樹里を…あんな風に撮られるのが…」

樹里「夏葉…」

智代子「…負けた」

凛世「…はい?」

智代子「負けたよ…好きな人の一人も守れなかった…今の私に人権はない…」

凛世「な、何もそこまで…」

智代子「だけどね、いつか必ず樹里ちゃんを落としてみせるから…覚悟しててね!夏葉ちゃん!」

凛世(その日…私は…考えることを…やめました…)

その後、有栖川家に着いた二人は、重度の樹里ファンである夏葉の母親に秒速で姿を見破られるのだが、それはまた別のお話

終わり

ありがとうございました
元ネタ貼っておきます

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