タイムアップの笛は、次の試合のキックオフの笛である。
―――デットマール・クラマー
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主審「……。」ピーッ!!
ダルイゼン「…!?」ビクッ
副審1「……。」バッ
副審2「……。」バッ
第4審判「……。」[0:24] サッ
ダルイゼン「(………えっ………!?)」
実況「皆様、こんにちは。」
実況「今回ロスタイムに挑むのはビョーゲンズ幹部のダルイゼン選手!表示されたロスタイムは何と24分!短い!」
解説「死因は身体をボスのキングビョーゲンに吸収されたことによる消滅死だそうです。」
実況「果たしてダルイゼン選手は、このロスタイムで人生の何を清算するのでしょうか!?」
◆Profile
ダルイゼン -DARUIZEN-
年齢:?歳
職業:ビョーゲンズ幹部
タイプ:テラビョーゲン
死因:消滅
主審「……。」
ダルイゼン「(……誰……!?)」
副審1「……。」
副審2「……。」
第4審判「……。」[0:24]
ダルイゼン「(オレは……キングビョーゲンに吸収されたと思ったのに……!?)」
ダルイゼン「(何なんだ…この黄色い服の奴ら…!?)」
主審「…。」ピッピッ!!
実況「さあ、主審がダルイゼン選手に一旦起き上がるよう促します!」
解説「普段我々から見れば相反するタイプの選手ですが、ここは彼らしいプレーで頑張ってほしいです。」
ダルイゼン「………!?」キョトン
実況「これは……どうもダルイゼン選手も状況を読み込めていないようですね?」
解説「無理はありません。誰だって死というものを簡単に受け入れられない筈ですからね。」
実況「ましてや彼のようなビョーゲンズ幹部となると、そもそもサッカー自体を知らないはずではないでしょうか?」
解説「そうですねー、そこが一つのハードルにはなりそうなんですが。」
審判団「「「「……。」」」」ササッ
実況「おっと、一旦審判団が状況をジェスチャーで説明するようです!」
解説「いやいや、普通に喋ればいいだろ…」
………………
ダルイゼン「ということは…オレは…キングビョーゲンに吸収されて……」
主審「……。」コクッ
ダルイゼン「…嘘だ…そんなこと…」
主審「……。」ユビサシ
第4審判「……。」[0:23]
ダルイゼン「まさか…オレは、あとこれだけしか……!?」
主審「……。」コクコク
実況「さあどうやら状況を把握した様子!ただこの間にもロスタイムは刻々と過ぎていきます!」
ダルイゼン「(…だとしたら…今のこの状況は…!?)」
ズキッ…
ダルイゼン「ぐっ…」
審判団「「「「…!?」」」」
ダルイゼン「くそっ…身体が…」ズキズキ…
実況「ああー…ダルイゼン選手、これは相当な怪我を負ってませんか?」
解説「うーん、先ほど敵対するプリキュア勢に浄化技を受けた直後というのも影響しているでしょうね…」
ダルイゼン「……。」スック
実況「…おっと、そのまま何とか立ち上がったようです!」
ダルイゼン「(くそっ…何がどうなってるんだ…!?)」キョロキョロ…
キングビョーゲン「…………」
シンドイーネ「…………」
ダルイゼン「!?」
ダルイゼン「(何だよこれ…!?)」
ダルイゼン「(キングビョーゲンもシンドイーネも…時間を止められているのか…!?)」
ダルイゼン「(…そうだ、プリキュア達は…!?)」
審判団「「「「…!!」」」」
実況「さあダルイゼン選手、足を引きずりつつもゆっくり動き出しました!」
解説「ただ怪我している以上、結構移動に時間かかりそうですよ?」
審判団「「「「……!」」」」スタスタ
実況「ここは審判団もゆっくりと選手の周囲をついていきます!」
実況「さて移動の間に話を進めますが、今回の『24分』というロスタイム、平均と比べるとかなり短い時間ですね?」
解説「そうですね、彼の場合はビョーゲンズとしての使命にほぼ忠実だったから、というのもあると思います。」
実況「つまり、無駄が少なかった故に今回のロスタイムの短さなのではないか、という事でしょうか?」
解説「そういう事になります。ただ……」
実況「……『ただ』…?」
解説「手元資料の情報ですが、ロスタイム突入直前に理性を失ったまま怪物化してしまった時間があったそうです。」
解説「おそらくですが…これがロスタイムとして換算された可能性がありますね。」
実況「なるほど……おっと、その間に先程選手が居た展望台の頂上まで到着した模様です!」
ダルイゼン「(いた…!)」
のどか「…………」
ちゆ「…………」
ひなた「…………」
アスミ「…………」
妖精達「「「「…………」」」」
ダルイゼン「(まさか…プリキュア達まで、時間を…!?)」
第4審判「……。」[0:18]
ダルイゼン「(…そうだ…)」
主審「……?」
ダルイゼン「(…今なら…まだ…アイツの身体の中に…!)」
主審「…!!」ピピピ!!
ダルイゼン「!?」
主審「……。」イエローカードチラツカセ-
実況「おっと、主審がダルイゼン選手に何か警告してますが…?」
解説「あー…これは前もって他の選手の体内に寄生する行為がファウルだと警告しているのではないでしょうか?」
実況「それはどういうことでしょう……?」
解説「これも手元資料の情報ですが、彼のようなビョーゲンズ幹部の場合、元となるメガビョーゲンの種が他の選手に寄生する形で誕生しているのだそうです。」
実況「…ということは、彼が再度ほかの選手に寄生する行為が、ロスタイムのルール上はイエローカードとなってしまう、という事でしょうか?」
解説「はい、ただそうなると、生き延びることを思っていた彼にとっては、このロスタイムが逆に酷になってしまうのかもしれません。」
ダルイゼン「ちょっと待て…戻ったら…駄目なのか…!?」
主審「……。」コクコク
ダルイゼン「っ……!」
ダルイゼン「…だったら…何でこんな時間なんかくれたんだよ!?」
審判団「「「「……!?」」」」
ダルイゼン「オレだって……自分の体で…生きたいんだ…!」
ダルイゼン「なのに…結局生きられないんだったら…こんな時間…最初から要らねーんだよ……!」
主審「……。」
ダルイゼン「本当はお前ら人間だって…オレの事は排除したいんだろ…」
ダルイゼン「…さっさと消えてくれ。」
副審1「……。」
副審2「……。」
第4審判「……。」[0:16]
主審「…………。」ショボーン…
ダルイゼン「!?」
実況「ああー…主審かなり落ち込んでますね?」
解説「主審、さっきまでの威厳は何処に行ったのでしょうか…」
実況「ただこのままだと、ロスタイムで人生を清算する本来の目的が達成できなくなる恐れがあるのではないでしょうか?」
解説「うーん、ただでさえ短いロスタイムですから、このままだと展開としてもかなりまずいですね…」
主審「…………。」ズーン…
ダルイゼン「………。」
のどか『あなたが元気になったらどうするの!?』
ダルイゼン「……っ!?」
のどか『あなたは…私達を、地球を、二度と苦しめないの!?』
のどか『私はやっぱり、あなたを助ける気にはなれない!』
ダルイゼン「ううっ……」
ダルイゼン「(さっきの…フラッシュバックが…)」
………………
………………
………………
ダルイゼン「(やっと…収まった…)」
ダルイゼン「(……そうか……)」
ダルイゼン「(オレはあの時…何一つ…答えられなかった……)」
ダルイゼン「(もしこのまま…何も言い返せないまま…消えてしまったら…)」
主審「…………。」ズーン…
副審1「……。」ヨシヨシ
副審2「……。」ナデナデ
ダルイゼン「…わかったよ…」
審判団「「「「……?」」」」
ダルイゼン「どうせ…オレは最初から…この世界じゃ…生きることすら…許されない…」
主審「…………。」
ダルイゼン「だけど…最後に…悪足掻きぐらいはさせてくれ…!」
ダルイゼン「オレは…あのまま……簡単に終われない……」
主審「……。」
主審「……。」チョイチョイ
副審1・副審2・第4審判「「「……?」」」
ダルイゼン「…?」
主審「……。」ヒソヒソ
副審1「……。」ヒソヒソ
副審2「……。」ヒソヒソ
第4審判「……。」[0:16] ヒソヒソ
実況「おっと、審判団が何か協議し始めたようですが…?」
解説「一体何をするのでしょうか…?」
主審「……。」ピピッ
ダルイゼン「…?」
第4審判「……。」ササッ
『俺が残るから気持ちの整理をちゃんと付けて!!』
ダルイゼン「なっ……!?」
実況「おっと、どうやら第4審判を残して、暫く選手を1人にさせるということをカンペで説明してますね?」
解説「そのまま終わるよりは、自分なりに気持ちの整理をちゃんと付けてほしい、という事でしょう。」
解説「勿論、ロスタイムのルールを必ず守ること前提ですが…」
実況「…ここは主審がかなり裁量を利かせた感じでしょうか?」
解説「そうですね、ただ公平にジャッジしなければならない立場からすると、かなり難しい選択だと思います。」
ダルイゼン「そうか、わかった…」
ダルイゼン「終わったら…必ず、戻るから…」
主審「……。」コクッ
第4審判「……。」[0:14]
主審「……。」スタスタ
副審1「……。」スタスタ
副審2「……。」スタスタ
ダルイゼン「………。」
実況「さて、ここは第4審判以外の審判が一足先に最初の地点へと引き返していきます。」
解説「それより、第4審判のあのカンペ、いつから持ってたんですかね…」
実況「さあ……」
ダルイゼン「………。」チラッ
のどか「…………」
ダルイゼン「……キュアグレースの奴…」
のどか「…………」
のどか『あなたは…私達を、地球を、二度と苦しめないの!?』
ダルイゼン「くっ……!?」
ダルイゼン「(駄目だ……また…フラッシュバックが……)」
のどか『私、あなたを助けることは出来ない!』
のどか『都合のいいときだけ私を利用しないで!!!』
のどか『私の体も、心も、全部、私の物なんだから!!!!!!』
ダルイゼン「(くそっ……くそっ……!!)」ゼェゼェ
第4審判「……。」[0:10]
ダルイゼン「……やっぱり…お前らだって一緒だったじゃねえか!!」
のどか「…………」
ダルイゼン「お前には絶対死んでも分からねえだろうけど…!」
ダルイゼン「オレだって…オレだって…ちゃんと…生きたかった…!」
のどか「…………」
ダルイゼン「お前…本当は…オレが死んでいなくなった方が…スッキリするんだろ…!」
のどか「…………」
ダルイゼン「だったら…今すぐここから消えていなくなってやるよ!!」
のどか「…………」
ダルイゼン「だけど…オレを見捨てたことは…オレが死んでからも…ずっと後悔させるからな!!!」
のどか「…………」
実況「これは…どう言ったら良いのでしょうか…」
解説「…私達からは、下手に何も言わない方が良いと思います…」
解説「ただ、今は……彼の来世に、幸があらんこと祈るだけですね。」
実況「……そうですね。」
ダルイゼン「……!」ゼェゼェ
ダルイゼン「(……言ってしまった………!)」ゼェゼェ
ダルイゼン「(上手く…言えたかどうかは分からない……)」ゼェゼェ
ダルイゼン「(それに…アイツに、ちゃんと伝わったかどうかすらも……)」ゼェゼェ
ダルイゼン「(でも…これで…多少は心残りなく…)」 チラッ
第4審判「……。」[0:06]
ダルイゼン「(……時間、か……)」
………………
実況「さて、ダルイゼン選手が最初の場所へ戻って参りました。」
解説「難しい試合でしたが、やれるだけのことはやったと思います。」
ダルイゼン「………。」スタスタ
第4審判「……。」[0:02] スタスタ
主審「……!」
ダルイゼン「…待たせたな…」
主審「……。」ピピッ
副審1「……。」バッ
副審2「……。」バッ
ダルイゼン「…最初の仰向けの体勢になるのか…?」
主審「……。」コクッ
ダルイゼン「………。」
ダルイゼン「……。」スッ
ダルイゼン「(とにかく…やることはやった…ただ……)」
副審2「……。」
ダルイゼン「(オレはもうすぐ…キングビョーゲンに消されてしまう……)」
ダルイゼン「(こんな…あまりにも呆気ない形で……)」
副審1「……。」
ダルイゼン「(やっぱり…オレだって………自分で…ちゃんと…生きたかった……)」
第4審判「……。」[0:01]
ダルイゼン「……?」チラッ
主審「……。」
副審1「……。」
副審2「……。」
第4審判「……。」[0:01]
ダルイゼン「(…そうか…)」
ダルイゼン「(こいつらだけは…こんなオレですら見捨てず…多くの最期を見守ってきたのか…)」
ダルイゼン「なあ……」
主審「…?」
ダルイゼン「なんか…ありがとな……!」
主審「……。」
主審「……!」ニコッ
[0:00]
ピッ, ピッ, ピィ---ッ…
<おまけ:ビョーゲンズ幹部編II>
のどか・ちゆ・ひなた「「「…プリキュア・ヒーリングオアシス!!!」」」シュバババ
シンドイーネ「ヒーリングッバ……」
………………
………………
………………
シンドイーネ「……え……?」
主審「……。」ピーッ!!
シンドイーネ「!?」ビクッ
副審1「……。」バッ
副審2「……。」バッ
第4審判「……。」[6:55] サッ
実況「さあ笛が鳴りました!ビョーゲンズ幹部・シンドイーネ選手のロスタイムは6時間55分です!」
解説「いやー、立て続けにビョーゲンズ幹部がロスタイムに突入ですかー」
実況「因みにこの6時間55分、キングビョーゲンのことを妄想していた時間だそうです!」
解説「なるほどー、自分達のボスに色々と一途だったわけですね。」
実況「果たしてシンドイーネ選手は、最後に何を清算するのでしょうか!?」
主審「……。」
副審1「……。」
副審2「……。」
第4審判「……。」[6:55]
シンドイーネ「何なの……これ……!?」
つづかない
ちょっと無理やりなところもありましたが、以上で終わりです。ありがとうございました。
まずは、ビョーゲンズ達の来世に幸があらんことを…
因みに元ネタは深夜ドラマの『ロス:タイム:ライフ』ですが、あのルールだと主要人物ほぼ全員時間を止められてしまうのもあるので、かなり難しすぎました…
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