【ミリマスR-18】木下ひなた(経験済)にPが迫られてしまう話【要注意】 (20)

こんばんは。

【注意】
「北海道の田舎で暮らしている間にもう経験済み」な木下ひなたさんが登場します。
倫理的には非常に問題アリな話だと思うのですが、それでも大丈夫な方はよろしくお願いします。
14レス分続きます。

 スケジュール通りならば日帰りで済むはずだった地方ロケの仕事は、結局泊まり込みになってしまった。大寒波の影響で記録的な大雪が見込まれており、既に激しい降雪が観測されている地域もあったために新幹線も止まってしまっていたのだ。家が雪に沈むかもしれないという声すら、駅からの道中で聞かれた。陸の孤島から無理矢理帰ることのできるルートが無いものか。手を尽くしてはみたものの、社長からの鶴の一声で、宿泊先を確保する方が先決となった。

「悪いな、ひなた。明日学校を休ませることになってしまって」
「大丈夫だよぉ。お仕事だからしょうがないべさ。それにね、お天気が悪いときにはあんまし無理しない方がいいんさ」
「……ひなたがそう言うと、説得力があるな」

 見込まれている、という予報だった雪は、ここ富山には既に降り始めていた。街灯やガードレールにはもう、うっすらと白いベールがかかっている。逃げるようにして宿泊先のホテルに到着した俺のビジネスコートにも、ひなたのダウンジャケットにも、斑点のように雪がついていた。息をする度に視界が白くなった。北陸の雪は北海道よりも水分が多く、この分だと、積もった雪の重みで潰れる建物も出てしまうかもしれない、とひなたはこぼしていた。祖父母から教わったらしかった。

 落ち着いた色合いのロビーはひっそりと、閑散とすらしていた。この悪天候の中、日が落ちてからホテルへチェックインしようとする宿泊客もそういないだろう。フロントの従業員に事情を説明してチェックインの手続きを済ませ、二人分のルームキーを受け取った。都合よく二つ並んで空いていた部屋を割り当てられたようだ。
 フロントで着替えになるものが売っているだろう、という俺の予測は見事に外れた。撮影地だったショッピングモールで間に合わせを購入していくことを提案してきたひなたが正解だった。ランドリーサービスは当然頼むものとして、今夜一晩過ごすだけなら浴衣やらバスローブやらがあれば十分だと俺は思っていたが、ひなたにそうさせるわけにはいかなかった。

「ひなた、これを」

 ホテル内のレストランで夕食を済ませ(一応領収書は切ってもらったが、経費になるかどうかは分からない)、客室に戻る前に、もらったもののお裾分けをしようと思ってひなたを呼んだ。

「わあ……これ、みんなあたしがもらっていいのかい?」
「今日のひなたはいつも以上によく頑張ってたからな。ちょっとしたご褒美だと思ってくれ」

 撮影現場で差し入れとしてもらったチョコレート詰め合わせだ。モールのイベントでやってきた有名店の、並ばないと買えないような品物だったらしい。ウイスキーボンボンも箱でもらっていたが、アルコールの入っているそちらは俺が引き取るつもりだった。

「したっけ、また明日ねぇ」とほくほく顔で自室へ入っていくひなたを見送って、俺もカードキーを読取部に当てた。

 スケジュール通りならば日帰りで済むはずだった地方ロケの仕事は、結局泊まり込みになってしまった。大寒波の影響で記録的な大雪が見込まれており、既に激しい降雪が観測されている地域もあったために新幹線も止まってしまっていたのだ。家が雪に沈むかもしれないという声すら、駅からの道中で聞かれた。陸の孤島から無理矢理帰ることのできるルートが無いものか。手を尽くしてはみたものの、社長からの鶴の一声で、宿泊先を確保する方が先決となった。

「悪いな、ひなた。明日学校を休ませることになってしまって」
「大丈夫だよぉ。お仕事だからしょうがないべさ。それにね、お天気が悪いときにはあんまし無理しない方がいいんさ」
「……ひなたがそう言うと、説得力があるな」

 見込まれている、という予報だった雪は、ここ富山には既に降り始めていた。街灯やガードレールにはもう、うっすらと白いベールがかかっている。逃げるようにして宿泊先のホテルに到着した俺のビジネスコートにも、ひなたのダウンジャケットにも、斑点のように雪がついていた。息をする度に視界が白くなった。北陸の雪は北海道よりも水分が多く、この分だと、積もった雪の重みで潰れる建物も出てしまうかもしれない、とひなたはこぼしていた。祖父母から教わったらしかった。

 落ち着いた色合いのロビーはひっそりと、閑散とすらしていた。この悪天候の中、日が落ちてからホテルへチェックインしようとする宿泊客もそういないだろう。フロントの従業員に事情を説明してチェックインの手続きを済ませ、二人分のルームキーを受け取った。都合よく二つ並んで空いていた部屋を割り当てられたようだ。
 フロントで着替えになるものが売っているだろう、という俺の予測は見事に外れた。撮影地だったショッピングモールで間に合わせを購入していくことを提案してきたひなたが正解だった。ランドリーサービスは当然頼むものとして、今夜一晩過ごすだけなら浴衣やらバスローブやらがあれば十分だと俺は思っていたが、ひなたにそうさせるわけにはいかなかった。

「ひなた、これを」

 ホテル内のレストランで夕食を済ませ(一応領収書は切ってもらったが、経費になるかどうかは分からない)、客室に戻る前に、もらったもののお裾分けをしようと思ってひなたを呼んだ。

「わあ……これ、みんなあたしがもらっていいのかい?」
「今日のひなたはいつも以上によく頑張ってたからな。ちょっとしたご褒美だと思ってくれ」

 撮影現場で差し入れとしてもらったチョコレート詰め合わせだ。モールのイベントでやってきた有名店の、並ばないと買えないような品物だったらしい。ウイスキーボンボンも箱でもらっていたが、アルコールの入っているそちらは俺が引き取るつもりだった。

「したっけ、また明日ねぇ」とほくほく顔で自室へ入っていくひなたを見送って、俺もカードキーを読取部に当てた。

 一人分にしては広い。部屋の内装も、思っていたより上品だ。どうせ小さなユニットバスだろうとたかをくくっていたが、バスルームの浴槽で体を伸ばすぐらいはできそうだ。天候に恵まれず帰れなくなるとは不運だったが、居心地のいい夜を過ごすことができそうなのは僥倖だった。

 暖房の効いた部屋の中は十分に暖かく、上半身はTシャツだけで十分だった。折角ホテルに泊まるのだから、こっそり一杯やりたかった。チョコレートに合う酒……とネットで軽く検索してみると、ワイン、日本酒……というラインナップの中にビールが混ざっていた。意外だった。

 果たしてどうなんだ、と疑問に思いつつ、自販機コーナーから調達してきたのは、何となく色合いが似ていたからというだけの理由で選んだ黒ビールだった。どうやら相性はさほど悪くないらしいが、酒の入ったチョコレートを酒で迎えるのも如何なものか。まあいいか。

 部屋に戻ってきて、ビールの缶を開けて一口。その一口が美味くて、ついごくごくと音を鳴らして飲み下してしまう。仕事でくたびれた精神に、滑らかな喉越しが沁みる。エンジンに熱が入るような、体にアルコールの回る感覚も心地よい。
 さてツマミに、とウイスキーボンボンの箱を開けようとしたが、蓋の中に広がっているのは、色とりどりの紙に包まれた、バリエーション豊かなチョコレートの群れだった。こっちは詰め合わせの方だ。ということは。

 飲み込んだばかりのビールが腹の中で更に冷たくなった。未成年飲酒の片棒をかついでしまったかもしれない。ひなたに手渡してからそれほど時間は経っていないが……。

 考える余裕を根こそぎ奪い取るかのように、ドアをノックする音がした。扉の向こうにいるのは、さっき廊下で別れたばかりのひなただった。

「ひなた、ちょうどよかった。すまん、間違って、ウイスキーボンボンの方を渡しちゃったみたいなんだ。渡そうとしたのはこっちだったよ」

 頭一つ低い所から、ひなたが俺を見上げた。

「そうだったのかい? 何か変だとは思ったんだよぉ。甘いと思ったらなんかヒリヒリするものが入ってたからねぇ」
「あっ……食べちゃったか?」
「二、三個ぐらい摘まんだけども……でも、美味しいねぇ、あの店のチョコレート。チョコって、甘ければどれも同じだと思ってたよぉ」

 二、三個食べた。確かにひなたはそう言った。表情を窺う。露骨な赤ら顔ではない。いつも通りの、健康的な顔色だ。皮膚の下を走る血管から浮き出るヘモグロビンの色が、ぴちぴちした白い肌をうっすらと桃色に染めている。

「気分は大丈夫か?」

 うん、と頷きながら、ひなたはまだ部屋と廊下の境目で立ち尽くしている。互いの持っていたチョコレートの箱を交換したとき、ほんのりとアルコールの匂いがした。ウイスキーボンボンの箱が妙に軽い。

「プロデューサー、あのね……ちょっこし、お邪魔してもいいかい? まだ寝るには早いし、お話したいなぁって」
「ああ、いいよ」

 一人用の客室だからか、テーブルに備え付けられた椅子は一脚だけ。自分の向かいに座らせるつもりでベッドに腰かけたが、ひなたは俺の隣に腰を下ろしてきた。

「えへへ……」

 スズランを思わせる上機嫌な笑顔。そのあどけなさに、思わずこちらも頬が緩んでしまった。シャワーか風呂を既に済ませているのか、シャンプーの香りが濃く漂ってくる。少々距離が近かったが、彼女の広いパーソナルスペースでは、これぐらいが普通だった。ひなたが買ってきたと思しき、モコモコしたルームウェアが前腕に触れてくすぐったい。

「ひなた、酔ってないだろうな」
「ん~……平気だよぉ。お酒飲んだことなんてないっけ、分からんけどねぇ」

 もう一度顔を確かめた。赤くはない。隙を窺って軽くスマホで調べてみた限り、アルコールを含むチョコレートは酒類には該当しないため、法律上は未成年飲酒として大問題になることは無いようだった。だから、もしひなたが酔っていたとしても、鎮まるまで見守っていればよかった。
 夜に寝るのも早いと言っていたひなたのことだ。話し相手になっている内に眠くなって、部屋へ戻っていくだろう。

 だが、収録の話、レッスンの話、学校の話と、舌足らずのゆったりした口調ながら、ひなたは饒舌に話し続ける。話せば話すほど、酸素と一緒に活力を取り入れているみたいだった。

「ひなた、随分元気だな。眠くないのか?」
「眠くないよぉ、だって……」

 無邪気に俺の顔を見上げていた瞳が妖しく光った。今のは、見間違いだろうか。「え」と間の抜けた間投詞を口からぶら下げながら覗き込む。いや、見間違いなんかではなかった。

「これから、プロデューサーと遊ぶんだからねぇ」
「なっ……遊ぶ……って、何をして――」

 小さな掌が、太腿を撫でた。内側へ忍び寄ってきた。そのまま、脚の付け根を目がけてよじのぼってくる。数センチ空いていた隙間が詰められた。寄りかかってきたひなたの体温は高い。

「そんなの、決まってるべさ……」

 くすくす、と無邪気なはずの笑みが、ひどく艶めかしい。舌なめずりをしながら、ひなたがフリースパーカーのファスナーを一息に下ろした。ふわっとしたそれは、音も無くベッドの下に落ちた。下にシャツは身に着けていない。グレーのスポーツブラと、電灯の光に照らされた真っ白な肌とのコントラストが、虹彩を射抜いた。

 嘘だろう。あんな純朴で、清浄潔白の象徴みたいなひなたが。

 ひなたが、男を誘い込む表情をしていた。

 あまりの光景に、思考回路が幾つか焼け切れてしまったかもしれない。ひなたのしようとしていることと、俺の脳裏に「そんなのありえない」とよぎったものは――恐らく、寸分違わず一致していた。
 ぐらぐらする俺をよそに、ひなたはさっさとショートパンツも下ろしてしまった。視界に入れてしまった。男物のボクサーブリーフみたいなショーツは、ブラとお揃いのグレーだった。

「ちょ、ちょっと待て、ひなた」
 
 やっとのことで喉から絞り出せた一言だった。大慌てで視線を背けたが、下着しか身に着けていない発展途上のシルエットは、もう瞼の裏にくっきりと焼きついていた。ひなたの肌は傷一つなくて、つるつるしていた。

「ほら、服を着て。いきなり脱ぎだすなんて何を考えてるんだ」
「何を考えてるんだ……って、あたしはプロデューサーと遊びたいだけだよぉ?」
「こんな遊びがあるわけないだろう」
「男と女でこういうことをするのは普通のことっしょ。早い子は小学校の高学年に上がる頃にはもう済ませててねぇ、あたしは中学に上がるぐらいの頃だったから、周りと比べても遅い方だったんさ」

 絶句した。思わず首をひねって、ひなたと視線を合わせてしまった。瞳孔が広がってキラキラと潤んだ瞳――目蓋の縁が男の本能に語りかけてくる――いや、そんな生易しいものではない――掌握してくるかのようだ。口角がゆっくりと上がった。肉の交わりあいを知っている女の顔だ。この年齢の少女がする顔ではない。

「翼ちゃんにね、『初めてはいつだったのかい?』って聞いてみたことがあるんだけども、すっかり黙り込んで、顔を真っ赤にしてたんだよぉ。めんこかったけども、都会の子って、そういう所は遅れてるんだろか?」

 背筋に寒気が走った。嫌悪感からではない。声色に溶け込んだ淫らな誘惑に乗ってしまいそうな自分がいることへの恐れだった。

「ひなた、こういうことは、将来、大事な人とすることなんだ」
「それは知ってるよ。そういう人と出会った時のために、お友達でいっぱい経験積んで、慣れておくのが普通だっしょや」
「……っ」

 二の句を注げなかった。

 ひなたの口ぶりからすると、彼女の出身地ではそうする慣習があるのかもしれない。頭ごなしにこちらの――人口比率的には多数派の――常識を押し付けるのは簡単だ。しかし、ひなたの生きてきた世界を「間違っている」と断言できるだけの自信は、どれだけ頭の底を漁っても見つかりそうになかった。

「で、でも……」
「そんなに深く考えないで、楽しもうよぉ」

 耳に入り込んでくる、のんびりした語り口。その調子はいつもより甘えを若干含んでいるに過ぎないはずなのに、精神の奥底に閉じ込められているリビドーを強く揺さぶってくる。
 どうやって制止すればいい。どくんどくんと心臓が鼓動を強めている。心の内に突風が吹き荒れている。止めなければ、と警鐘がけたたましく鳴っているのに、その手段を思いつかずにまごついている俺の顔が、ひなたのぱっちりした瞳に映りこんでいた。

「どうしても嫌なら、やめとくけども……」
「俺はひなたのプロデューサーで、ひなたは――」

 両手が伸びてきて、視界が暗くなった。両手で顎を掴まれたのだと認識した時には、唇が塞がり、俺の抵抗は、ひなたの口に飲み込まれていた。

「さすがにね、誰にでもこったらことしないよ。あたしが特に仲良くしてる人だけだべさ。でもね、こっちに来てからはそういう人も全然いなくてねぇ……。あたしが訛ってて田舎っぽいせいか、東京の男の子とはうまく馴染めなくて……。それで、ちょっこし人肌が恋しいんだわ」

 俺を縫い付ける双眸に曇りが生じた。「人肌が恋しい」と呟いたひなたの顔は、故郷を思い出して寂しがっている時に似ていた。下の瞼がじわりと湿り気を帯びたのが見えた。縋り付くように、指がシャツの裾をつまんでいる。

 まだ義務教育も終わっていない年齢の中学生をスカウトして東京へ呼ぶことを決定した責任は、プロデューサーの自分が負っている。本人も含めた関係者各位の同意の元とはいえ、他の上京組と近づけて住まわせることもできず、愛する家族と離れた暮らしを強いることになってしまった。
 笑顔を絶やさない健気さの一方で、故郷を偲んで涙を流している姿を何度も目にした。後ろめたさが、いつも腹の中にあった。情も移っていた。だからこそ、ひなたに寂しい顔をさせるのは、己の中で最も我慢ならないことの一つになっていた。

 とはいえ、こんな形でその空虚感を埋めるなんて。だが、ここで俺が拒絶してしまったら、ひなたは一体どうしてしまうのだろうか。自分の中で葛藤が始まっていた。

 唇が触れた時に感じたチョコレートの甘さの中には、ウイスキーの香りが残っていた。ひなたの顔が鼻先数センチの所にあって、息がかかる。チョコレートの粒の中に入っている量など大したことは無いと高をくくっていたが、そもそもウイスキーは度数が高い。けろっとした顔をしているが、酩酊したことの無いであろう人間が素面なのか酔っているのかなんて、分かりようがない。

「酔った時の言動や行動は、抑圧された本性である」とよく言われているが、俺はそれが一つの真実だと信じていた。酒は時に、人の心の箍(たが)を外してしまう。もしもひなたが、チョコレートの中に含まれる僅かなウイスキーに囚われてしまったとするならば……。

 ひなたから迫られているという異常事態に加えて、濃いスキンシップを求める内心に隠された溝を垣間見てしまった。冷静な判断力はすっかりドロドロだ。心を揺らがせる迷いに加え、これを招いたのが自分の不注意からだという、けじめとも負い目ともつかない何かが、両手両足に重い枷をはめていた。

 掌に何かふにっとしたものが当たった。とられた手がひなたのささやかな膨らみに添えられていたのに気が付いたのは、視覚がそれを捉えた数秒後だった。こちらから触ろうとしなくても、向こうから押し付けられてくる。
 半分のしかかるようにして、耳たぶを甘噛みされ、首筋や背中を撫で回された。いつだったかも定かでは無かったが、最後に女を抱いた時の記憶が、皮膚を伝う刺激に呼び起こされつつあった。

「大人の体って、がっしりしてるんだねぇ」

 熱い息がかかる。唾液を乗せた舌が、ぺちゃ、と鎖骨をなぞる。くすぐったさが背筋に走った。その衝撃に下半身もぴくりと反応していた。こんなことをしているのはあのひなたなのだ。だが、脳神経の電気的な反応が起こっただけで、体に力を入れて押し退ける指令は途中で詰まってしまった。それどころか、乾ききってひび割れた地面に雨が染み込むように、この刺激に歓喜している自分すらいる。

「ひなた……よせ……」
「そんなに弱弱しく言われたら、余計にやめられないっしょ」

 布地越しに乳首を引っ掻かれた。幼さすら残る顔つきはそのままなのに、ひなたは色香をまとったオンナの表情をしている。妖艶さの溶け込んだ眼差しを受け入れてしまいそうになるのが怖くなって目を閉じれば、皮膚から伝わってくるビリビリした刺激が何倍にも増幅されてしまう。股座のオスが、出番を求めて準備運動を始めている。あろうことか、胸板をいじっていたひなたの手が、腹から脇腹へと下ってくる。

「わぁ、大きい」

 硬くなりかけていた股間へ、ひなたは躊躇なく手を乗せた。感嘆の声に恥辱を煽られて、顔が熱くなる。こちらがその気にならない所を分からせれば途中で手を止めるだろうか、という期待は、あっけなく粉々になった。

「大人のは初めて触るけども……やっぱり、全然違うねぇ」

 男であることを恨めしく思った瞬間だった。掌でぐりぐりと圧迫されるのに反応するように、血液が集まってくる。自分の意思とは正反対に、言い逃れのできない状況を自らの下半身が完成させてしまっていた。

「っく……ひなた……」
「プロデューサーも、本当はその気なんだぁ。よかったよぉ」

 ひなたは手慣れていた。ベルトが外れ、ファスナーの下りる音が生々しく耳朶を叩く。ぴんと張ったテントが飛び込んできて、肉体の反応が目の前に突き付けられた。前開きの穴からひんやりした指が忍び込んできて、部屋の空気の中へ引きずり出された。既に燃料はかなり入り込んでいて、臨戦態勢は目前だった。
 俺が何か口答えをしようとする前に、ぷにっとした掌が裏側から亀頭を包み、優しい力加減でくにくにと揉みしだいてくる。静電気を浴びせられたように、腰が跳ねた。勝手に前へ出た腰を慌てて引くと、ひなたの手も追いかけてくる。俺の反応をつぶさに観察して、新しく手にしたオモチャみたいに、弄んでいる。馴染みの無いサイズらしいそれの扱いに試行錯誤しながら、大人の性器の手触りをひなたは愉しんでいる。未知の器官にふれるたどたどしい手つきなどそこには無く、男の気持ちいい所を知っている者の愛撫があった。

「あッ……ひ、ひなた……っ」
「男の人って、興奮するとどんどん硬くなるから、どんなこと考えてるのか、分かりやすいんだわ」
「ち……違……」

 焦り続ける心とは裏腹に、下半身は馬鹿正直に答えている。尿道から溢れ出した先走りが掌に広がって、擦れ合う皮膚の滑りが徐々に良くなっていく。一人での性処理すらロクにしていなかったツケと、担当アイドルに性器を弄ばれる背徳感が、巨大な快感になって理性をガリガリと削り取っていく。

「うぐ……うっ……」
「あっ、やっぱり、裏っ側のこの辺、反応が分かりやすいよぉ」

 俺の我慢を一笑に付すかのように、ひなたの手コキは巧みだった。一体何度、手だけで男を射精まで導いてきたのだろう。握り締められた幹から、にちゃ、にちゃと卑猥な音が漏れるようになる頃になると、腰が浮いてしまわないように我慢することばかりに意識が行ってしまい、道理を説いてひなたにペッティングを止めさせようとするのに割くリソースが、頭から飛んでしまっていた。

「ふふっ……すっかり熟してるべさ。大人のおちんちんっておっきいねぇ。……あのね、こうされてる時の男の子って、なまらめんこいんさ。プロデューサーみたいな男の人でも、そういう所って変わらないっしょ」

 やめさせなければ――その意思は、倫理道徳は、ごりっごりっと男の最大の弱点を扱かれて、一滴また一滴と鈴口から排出されていく。一番刺激の強い裏筋にはぴったりと肌が張り付いていて、ひなたが手を上下させる度に、ぬるぬるになった亀頭が、劇薬のような快楽にびくびくと震えている。そのままだと汚れてしまうからやめてくれ。そう言っても無意味だった。既にひなたの愛らしい掌は、涎にまみれてしまっていた。

「汚れないようにしてあげればいいかい?」

 体を預けて、隣から手を伸ばしてペニスを責めていたひなたが、床に下りた。俺の腰と水平な位置に、まだ僅かに湯浴みの湿り気が残るひなたの頭がある。

「えへへ……お口に入るだろか……?」
「ひなた、何を……っっお――」

 妖しく笑うひなたの、柔らかな唇が性器に触れた。血管の浮き出たペニスがびくんと仰け反った。温かくとろとろしたものが、神経の集中する粘膜を包み込んでくる。脳内で、期待感が道徳観を上回り、粘液に濡れた亀頭へ、ちゅる、と吸い付かれた瞬間、刺激を求める衝動が、意識の乗っ取りを敢行した。

 ちゅっ、つぷ、じゅっ、ぴちゃ、ずるっ、ずるっ……

 漏れているのか、わざとなのか。ペニスを咥えこんだひなたの頭が前後する度に、粘っこい音がする。半ば無意識に跳ねるペニスが膨れ上がる瞬間を狙って、口の中がぎゅうっと窄まって、ぬらりと舌が舐りあげる。口の中に溜まった先走りと唾液のカクテルを時折こくっと嚥下しているのが、蠕動を通して伝わってくる。

 劣勢になった理性が断末魔の悲鳴をあげている。歯が当たったりして意識が冷える可能性を微かに期待していた。だが、皮肉なことに、今まで体を重ねてきたどの女よりも、ひなたはフェラチオが上手だった。導火線に点いた火が、もう少しでダイナマイトを破裂させてしまいそうだ。

「遠慮しなくていいからねぇ。こんだけ元気いっぱいだったらば、一回出しちゃうぐらいが丁度いいっしょ」

 ずるずるっと唇から剛直と引き抜いて俺を見上げるひなたに、悪戯っぽい表情がよく似合っていた。

 もう、ひなたから目を逸らすことができなくなっていた。男を愛撫するだけでは足らない。その先までを待ち侘びている。下から浴びせられる上目遣いの視線がそう物語っている。ひなたがいやらしい顔をするなんてひどくミスマッチだが、だからこそ、たまらなく扇情的だった。
 口に出すから全部受け止めてくれ。言葉にこそ出さなかったが、ひなたの後頭部を抑えて腰を押し付ける情けないオスは、きっとそう言おうとしていた。

「うぁ……ひなたっ……!」

 劣情の溶け込んだ体液がどばっと解き放たれた。威厳などもう無かった。仮にあった所で、子種と共に体外へ排出されている。自慰すらしていなかったが故の長い熟成期間。そのブランクを埋めるように精をぶちまける快感の暴力の前に、あらゆる大切なものは棚上げにされてしまった。
 いたいけな少女の口内でどくどくとザーメンを吐き出している。飲み下すことを命じるかのように、ひなたの頭に添えた掌を離そうともせず、俺は犬のようにだらしなく呼気を吐いていた。そして、ひなたはむせかえることもなく、身勝手に放たれた怒涛のような白濁液を、小さな口いっぱいに受け止めている。

 ひなたが天井を仰ぎ見て、口を抑えた。剥き出しの細い喉が、蠢いている。空気と一緒に口の中の物を飲み込んだのが音からも分かった。

 射精してしまった。ひなたの舌の上に。さらにそれを飲ませてしまった。その光景を目の当たりにしてなお、グロテスクな男性器は次の戦いに備えて武者震いしている。自分の信じてきた道徳観が、ガラガラと崩れ去ってしまいそうだ。いや、もうとっくのとうに……。ほんの僅かに蘇った冷静さで、かろうじて考えたのはそんな程度のことだった。

「えへへ……たんまり出たねぇ。大豊作だよぉ」

 一仕事終えてご満悦なひなたが唇からぺろりと出した舌には、まだ白い粘液がうっすらとこびりついている。認めたくなかったが、今までで最も深く、大きな絶頂だった。

「あのね、プロデューサー……」

 ゆっくりと床から立ち上がったひなたが、俺の右手に触れた。

「あたしのも、触って欲しいんだわ……」

 ベッドに左手と左膝をついて、俺の手を腹部へと導こうとしている。女性器への愛撫を、ひなたが求めている。ついさっき、身体的な感覚を伴って射精させられたばかりだというのに、現実感が無かった。さんざん理性を揺さぶられたからだろうか。それとも、俺の中に、こうしたいという欲求があったのだろうか。

 俺は、ショーツの内側へ手を差し入れていた。

「ひゃっ……!」

 生えているのかいないのかも曖昧なぐらいに薄い陰毛の向こう側は潤っていた。体格同様、小陰唇も大陰唇も発展途上で小さい。触っただけでそれが分かる。だがそこは、自分が何を受け入れるのかをしっかりと理解しており、そのための準備も着々と進めていた。

「……指、入れても大丈夫だよ……ううん、入れて欲しいんさ」

 少し伸ばした中指に、潤いの源泉があった。奥へ続いている。俺が突き入れようとするよりも先に、ひなたが腰を沈めてきた。

「んっ……うんんっ……」

 火傷しそうなほどに中は熱くなっている。狭苦しさを感じこそすれど、拒絶は無い。経験を積み、開発が進んでいることをうかがわせた。

「やっぱり、プロデューサーの指、長いねぇ。思ってたよりも太いし……ね、動かして……あっ、ああ……」

 気が付けば、グレーの布地の内側で、俺は手をもぞもぞとさせて、ひなたの大事な所をまさぐっていた。ここまでずっと受け身でいるばかりだったのに、とうとう、自分から応じてしまった。ここまで来てしまえばもう手遅れだったし、俺が欲求を呼び起こされてしまったことは、股座でいきり立った愚息が証明してしまっていた。無責任の最低野郎だという投げやりな開き直りも、どこかにあった。

 それを認めた瞬間、ひなたの空いた手で扱かれる肉茎からの快楽は、より一層甘美なものとなった。左手をひなたの胸元へ伸ばして、頼りない下着をめくりあげる。

「ん……ちっこくて、ごめんねぇ」
「謝るようなことじゃない」
「その内、あたしのも、グラビアアイドルみたくなるだろか……」

 華奢な体の中にあってなだらかな膨らみを備えた胸は、しかしながら確かに女性のそれだった。揉むのは少々難しかった。裸を見られることに恥じらいを感じているようではあったが、撫でられているだけでもハァハァと息を荒げているし、充血した乳首を掌が掠める度にひなたは肩を震わせ、狭い膣内が不規則に収縮した。

「あのね……プロデューサー、もういいよぉ」
「どうした。痛かったのか?」
「ううん、ずっと我慢してたっけ、刺激が強すぎてね、指でされてるだけで、気をやっちゃいそうなんだわ。そうなる前にね……えへへ、お、おちんちん、欲しくって」

 ひなたの手の中で、「おちんちん」が大きく膨張した。ぷく……と、先走りが玉になっている。鼓動が加速する。長らく忘れていたセックスの味を思い出した本能は、飢餓を声高に主張していた。

「だが、ひなた――」

 掌に、なじみ深いシルエットの小さな薄い袋が落ちてきた。

「……なぜ、これを」
「東京って、こういうのも便利な所だねぇ。わざわざ山の中を自転車で何十分も走らなくたって、少し歩いただけでも、自動販売機があるんだもの」

 そう言って俺に避妊具を手渡すと、ひなたはルームウェアの上着を畳んで、ベッドの端に置いた。ひなたの地元では、これを使うのが互いの約束事にでもなっていたのだろうか。
 改めて見てみても、ひなたの小さな体で俺を受け止めることができるのか、分からなかった。だが、「こんなにおっきいの、入るだろか」と呟いた当のひなたの目は、不安よりも興奮に染められていた。

「座っててねぇ。あたしが……上になるから……」

 脱ぎ捨てたショーツが、ルームウェアの上へぱさっと落ちた。ベッドへ腰かける俺に跨ってくるひなたには、セックスへの期待を滲ませるメスが潜んでいた。

 ふう、と大きく深呼吸して、裸にスポーツブラが曲がってひっついただけのひなたが体を沈めてきた。天井を向いた杭が少しずつ温かさに包まれていく。温かさはすぐに、焼けるような熱に変わった。結合部に視線を落とすと、まだ大人になりきれていない女性器が、目いっぱいに広がって男を飲み込んでいる。

「ん……ちょっこし、待って……。こんなに奥まで、入ってきたの、初めてでねぇ……」
「苦しくないのか?」
「お腹、すっごい押されてるけども、大丈夫だよぉ。ふふ、苦しくってもいいよ。あたし、プロデューサーとこうしたいって、思ってたからねぇ」
「ひなた」
「それじゃ……動くよぉ」

 肩を掴んでいた手が背中に回ってきた。ぴったりとくっついていた下腹部が擦れ始める。入口からの浅い部分は柔軟に拡がってつるつる滑っていたが、奥の方はやや痛みを感じるぐらいに圧力が強い。その部分を少しでもスムーズにしようとしているのか、ひなたが腰を揺する度に愛液が分泌されていく。徐々にこなれていく膣内は、次第に男を貪るように、ランダムなうねりを見せる。

 対面座位で密着するひなたは、器用に腰を使っている。体格差があることへの懸念は肌のぶつかり合う音と共に空気中へ発散されていき、より深い交わりあいを求めて意識の隙間が埋まっていく。襞を押し広げる鉾は、欲深いことに、血液を集めて中でもっと膨らもうとしている。大きなグラインドが無くても、一番の性感帯である先端部を、ひなたの若い、まだ若すぎる内壁は力いっぱいに抱き締めてくる。そのまま全てを甘受していたら弾けてしまいそうだ。

「ん……深い……あ……あっ……」

 恥じらいを含んだ、控えめな嬌声だった。だが、俺の知る限りで最もそんなことをしそうにないひなたが、セックスでよがって卑猥な声をあげている。目の前に横たわるその倒錯した現実はあまりに強烈で、劣情を煽ってたまらなかった。

 声に呼応するように、女性器がオスを歓待する。分泌されてきたひなたの体液が、膣の限界を超えて溢れてきた。くっついた肌が離れ、そしてまたくっつく度に、びちゃっと品の無い音がする。

 積極的だったひなたの動きが、緩慢になってきた。最奥の壁にコツンと当たると、濡れそぼった内壁を何度もひくひくさせて、そこで動きを止めてしまう。ぐるぐると円を描いて腰を回すこともしなくなってしまい、ただ密着することだけを求めるように、下半身をぴったりと押し付けてくる。

「あの……プロデューサー……」
「どうした?」
「よ……よすぎて、動けないんさ……お願いだよぉ」
「……いいだろう」

 自分でできることは自分でやろうとする本人は意識していないだろうが、ひなたはいつだって甘えるのが上手だ。上目遣いになって懇願されてしまおうものなら、断るのは至難を極めた。

 胸と同様に肉付きの薄い尻を掴んだ。体重の軽いひなたを持ち上げるのは難しくなかった。半ば抱えるようにされて抜けていくペニスが内壁を引っ掻き、しがみつくひなたの腕に力が入った。

「ああぁっ! あっ、んんっ!」

 ぺちんぺちんと肌がぶつかり合う。ひなたの膣は与えられる刺激へ過敏なまでに反応する。受け入れた男をナカでもてなす様は、もう大人の体と変わりないように思えた。

「ひゃっ、あはっ……あっ、あのね……いってしまっても……いいかい?」

 太腿の裏に、足の指が握られているのが見えた。いいよ、と一声かけてすぐに、奥にぶつけるように突き上げる。ともすれば痛がりそうなそれを、ひなたは歓迎していた。水音を立てながら、メスも悦んでいる。

「んっ……うっ……~~~~~っっ!!」

 言葉にならない声をあげながら、ひなたが背筋を弓なりにぴんと伸ばした。一緒に天辺まで上り詰めよう、とでも誘うように、秘肉が複雑に捻じれる。急激に射精欲求が込み上げたが、閾値を超えるすんでの所で、波は治まってしまった。

 ひなたの力が抜けている内に、とろけた秘肉に突き込んでいた杭をゆっくりと引き抜く。内部で蜜をたっぷりと塗りこめられていたラバーの表面は、ベッドサイドのランプからの灯りを反射して、てかてかと光っている。掻き混ぜられていた愛液は、所々が泡立っていた。

 紅潮した頬でぽーっとしているひなたを、ベッドに横たえる。白いシーツの上にだらんと四肢を投げ出したその姿からは、男女の秘め事の残り香が色濃く立ち上っていた。

「もう、寂しくないか」
「うん……」

 絶頂の余韻に酔う女がそこにいた。これが木下ひなただなんて、抱いた後でもまだ信じられない。それ以上に信じられなかったのは、ひなたが醸し出す色気にいざなわれるままに欲情してしまった、自分自身だった。

「あのね、プロデューサー」

 力無く伸びていた脚が、左右に開かれていく。

「また、入れて欲しいんだけども……ダメだろか?」

 ひなたが指で広げたそこからはまた粘液が染み出している。薄い大陰唇の内側の、赤みがかったピンクの粘膜は、セックスの続きを求めてぱくぱくと収縮していた。射精の途上にあった男がこうもえげつない性を見せつけられてしまっては、据え膳に手を伸ばさずにいるなんて到底不可能だった。

「あ……っァ……おっきい……!」

 正常位で組み敷いたひなたの体は、半分近くが自分の体の陰に隠れている。夢見心地な溜息と共に、ほぐれた膣口は大口を開けて俺を迎え入れた。奥まで辿り着くのに、熱烈な締め付けこそあれ、抵抗らしい抵抗は無かった。

 ほんの数十秒前まで滞在していた秘所はまだキツキツだ。それでていて、ストロークの大きなピストンも、粘膜がしなやかに伸びて受け止めてくれる。引き抜こうとすれば、思い切り吸い付いて奥へ引っ張り込もうとしてくる。甘えんぼな粘膜がちゅうちゅうと絡みついてくる。
 一度味わったら魂に焦げ付き、二度と忘れられなくなる美酒。それを何度も何度も、性行為に耽溺する女と化したひなたから汲み取っては飲み干した。あまりの心地よさに、他の女が過去のものになってしまうような気すらした。取り返しがつかない、もう後戻りできない、そんな喪失感にも似た何かすら、この悦楽を高める質のいいスパイスでしかない。

 奥を突かれる度にひなたは目を閉じて、シーツをぎゅっと握りしめている。腰をぶつける度に、肌がぶつかりあう。肌がぶつかりあう度に、粘膜が卑猥な音を立てる。粘膜が卑猥な音を立てる度に、ひなたが喘いだ。そして甘ったるく溶けた嬌声が響く度に、竈門で燃える情欲の炎に薪が投げ入れられていく。

「……ナカで、ふくらんでるべさ……」
「……そろそろだ」
「あたしも……」

 休憩できたのは一分にも満たなかったから、挿入してから間もなくスペルマが込み上げてきていた。射精の準備をするペニスが膨らんだ分、絡みついてくる肉襞のカーテンも、より密着して強く扱き上げてくる。裏筋から鈴口にかけてちゅうちゅうと吸い付かれて、睾丸が持ち上がる。
 上り詰めようとして腰に鞭を入れる。先に達したのはひなたの方だった。不規則にうねって、腹の中へ引き込もうとしてくる粘膜に止めをさされた。程なくして、張り詰めた風船が弾ける。

「っぐ……あ……」

 情けない呻き声が漏れる。射精の瞬間、男は理性ある人間であることを辞めてしまう。尿道を押し広げて放出される精液がもたらすエクスタシーが、意識を一色に塗りつぶしていた。

 やがて剛直の拍動は止まり、名残惜しさを覚えたが、ひなたの意識同様に緩んだ洞窟から抜け出した。ゴムの先端がこうも膨れているのを見るのは、初めてだった。

 口を結んだコンドームの処理を済ませ、汚れてしまった所をティッシュで拭う。ひなたはピロートークでどんなことを話すのだろうか、なんてことを考えていると、当の本人は仰向けになったままでウトウトし始めている。もう日付も変わっていた。

「ひなた、そのまま寝たら風邪ひくぞ。外は雪降ってるんだから」
「あ……うん、そうだねぇ……」

 緩慢な動作でブラを直したひなたは、ベッドの隅へ手を伸ばし、ショーツをのそのそと履いていた。時折目を擦りながら、膨らんだ生地のルームウェアを着直す頃になると、もうすっかり、見慣れた無垢な天使がそこにいた。

「あのね……こっちで寝ても、いいかい?」
「ああ」

 同じベッドで寝る以上のことをしてしまったのだ。もう今更議論の余地も無かった。結局、ひなたのこの変わりようは一体何だったのだろうか。チョコレートの中に含まれていたウイスキーがもたらしたものだったのかどうか、すやすや寝息を立て始めたひなたに今更それを訊ねることはできなかったし、自分一人で考えていても結論を出せるようなことでもなかった。

 何より、急激にのしかかってきた睡魔が、それ以上考える時間を奪い去ってしまった。

 翌朝、目が覚めると鼻で呼吸をするのが酷く苦しかった。いや、呼吸をするのが苦しかったのではなく、呼吸できなくなって目が覚めたのだ。昨晩は何とも無かったはずなのに、鼻詰まりを起こしていた。頭痛、腹痛、関節の痛み……いずれも無い。念のために鞄の薬袋から取り出した体温計を脇に挟む。程なくしてアラームが鳴ったが、至って平凡な三五.八℃だった。

 妙に冷える。横になる前に感じていた温かさが無い、と思ったら、ひなたの姿が無かった。俺が寝ている間に部屋に戻ったのだろうか。鼻をかみたくてティッシュペーパーを取ろうとしたが、昨晩引き出した形跡が残っていないことに気が付いて手が止まった。ゴミ箱には丸めたティッシュどころか、コンドームも無い。
 テーブルの上には、ウイスキーボンボンの箱が置かれている。封は解かれていたが、手渡された時に比べて重かったような気がした。蓋を開くと四つほど無くなっていたが、俺も摘まんだのだから、もっと減っていなければおかしい。詰め合わせチョコレートの箱はここに無いのだから、昨日ひなたと箱の交換をしたのは確かだ。ビールの缶も、飲み干したそのままの位置に残っている。

 脳裏に鮮明に残っているはずのひなたのあられも無い姿に、霞がかかり始めた。中途半端に昨日の痕跡が残っているのに、あるはずのものが無くて、無いはずのものがある。体には、女を抱いた後特有の気怠さがまだ残っている……ような気がするが、それも不確かに思えてきた。ベッドに残り香があるかどうか、詰まった鼻では確かめようも無かった。力の限りに鼻をかんだ後でさえも、普段通りの嗅覚は戻ってこなかった。

 頼んでおいたランドリーサービスから着替えを受け取って身支度を整える内に目が覚めてきた。だがそれでもモヤモヤした気分のままでロビーに向かうと、ひなたは先にソファーへ腰かけて待っていた。

「あ、プロデューサー、おはよう」
「ああひなた、おはよう」
「ありゃあ、なんだか鼻声だねぇ。風邪でもひいてしまったかい?」

 のんびり話すひなたは、疑いようも無く木下ひなただった。

「チョコレートの詰め合わせ、美味しかったよぉ。少し食べてすぐに寝てしまったっけ、残りはお家に戻ってから食べるねぇ」
「すぐに……」
「?? どうかしたかい?」
「いや、何でもない。それより、そろそろ出ないとな。チェックアウトまではまだあるけど、東京に戻るまでは時間がかかるから」

 朝食をどこでとろうか、お土産は事務所にどのぐらい持っていくか、そんな話にひなたは素朴な相槌を打っている。ほんわかした雰囲気に鼻の調子まで元に戻りそうなぐらいだったが、同時にそれは、あの熱い夜が夢か何かだったのではないかと疑う――あるいはそう解釈したがる――心理も生み出していた。

 しかし、宿泊先を後にするとき、木下ひなたは、囁くように……確かにこう言った。






「プロデューサー、またあたしと……ナイショで遊ぼうねぇ」







終わり

>>2 >>3は二重投稿になっていました。すみません。

それはそれとして、以上になります。ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございます。

ネタが降ってきた、というのが動機の一つでしたが、渋のタグ数を(簡単に)調べた所、木下ひなたのR-18小説は10本と少々しか現存せず、そういった過疎の領域に一本投げ入れてみたかったという好奇心もありました。「田舎は性体験が始まるのが早い」とは耳にしますが、実際にはそういったことは、いわゆる創作物の中だけの話かもしれません。

感想とか頂けると嬉しいです。また何かできたら書きにきます。

ひなたの所の子どもやべぇな。そして、初体験の相手羨まし過ぎる
乙です

木下ひなた(14)Vo/An
http://i.imgur.com/ZuEi0LZ.jpg
http://i.imgur.com/vAdN7Bb.png

ラストの一言からするに、ひなたはシラフで誘ってきたのか、それともおせっせの最中に酔いが覚めたのか。
朝から元気にさせられてしまった。今後も楽しみにしてるよ。

育は壊したい。桃子はイチャラブしたい。環は初めての人になりたい。星梨花は前後上下四穴同時に犯したい。杏奈は道具でイカせたい。紬は外で散歩させたい

……等、願望はあるけど、ひなたは守ってあげたいが一番にくるからなあ

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