男「友達に宅飲み誘われた」 (35)

コンコン ガチャ
 
友「おお、来たな」
 
男「おう、来たぞ。久しぶり」
 
友「久しぶり。3年ぶりくらいか?」
 
男「もうそんなに経つのか。時間が流れんのは速いなあ」
 
友「なんだよ、歳食いすぎて感覚おかしくなったか?」
 
男「食いすぎったって俺たちまだアラサーだろ。これからの人生まだまだ長いんだからさあ」
 
友「そうかなあ。ま、とにかく大事なくて何よりだ」
 
男「最近世の中物騒だからなあ」

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友「寒いだろ。とりあえず上がれよ」
 
男「ああ、お邪魔します。ほらこれ」
 
友「なにこれ?」
 
男「酒。好きだったろ?」
 
友「飲めなくはないけど、日本酒はちょっと……」
 
男「いやお前じゃなくてさ」
 
友「ああ、あいつか。確かに好物だけどよく覚えてたな」
 
男「付き合いだけは長いからなあ」
 
友「そうだ、折角だしお前がやってくれよ」
 
男「ああ。じゃあ失礼して」ガタッ

友「あいつなんて?」
 
男「『男くん大好き!』だってさ」
 
友「嘘つけよ!」
 
男「ホントだよ!昔はよく言われてたもん!」
 
友「昔ってそれ幼稚園の頃とかだろ!」
 
男「いーや!小学校のときも言われてたね!」
 
友「大して変わんないだろ!」

男、友『はあ……』

男「お前の妹が死んでからもう5年か……」
 
友「なんだ、また時間の流れがーとか言い出すのか?」
 
男「もう言わねえよ!」
 
友「無限の時に消えるがいい!」キリッ!
 
男「時空の狭間で主人公を待つラスボス見てえだな!」

男「それにしても、死因が酔っ払って階段から転落死か」
 
友「情けないよなあ」
 
男「そんなことは無いけど。なんかこう……『酒豪』って感じがする死に方だよな」
 
友「依存症だっただけだよ」
 
男「俺まだ家族が死んだことってないからなあ。両親どころかじいちゃんばあちゃんもピンピンしてる。やっぱり寂しいもんなの?」
 
友「両親早くに亡くしてほぼふたり家族みたいなもんだったから結構寂しいかな。でもまあお互い一人暮らしだったし実感湧くまで時間かかったよ」
 
男「そういうもんか」
 
友「そういうもんだ」

友「さて、そろそろ飲もうぜ」
 
男「お、日本酒飲むか?」
 
友「だから苦手なんだって。それにとったらあいつに怒られちまうよ」
 
男「ああ確かに」

友「ビールがあるんだ。つまみも用意してるから、持ってくるよ」
 
男「手伝おうか?」
 
友「お前、俺が片腕……隻腕だからって侮ってないか?」
 
男「なんで言い直したんだよ」
 
友「なんかカッコイイだろ、隻腕」
 
男「そうかあ?」
 
友「それにしても不思議な気分だよ。世の中には俺みたいに片腕切断しても生きてるやつなんていくらでもいるのに、手首に切れ込み入れただけで死ぬやつもいる」
 
男「そうだなあ」

男「自動車事故だっけか」
 
友「バイクだよ。突っ込まれたんだ」
 
男「そっか。いやびっくりしたよ、お前が入院したって聞いた時は。あいつが死んでそんなに時間経ってなかったし、自殺でも考えたんじゃないかと……」
 
友「ま、もういいじゃん腕の話はさ。それに利き腕じゃなくて良かったよ。刃物も握れるしな」
 
男「刃物?」
 
友「つまみ、チャーシューなんだよ」
 
男「ああ」
 
友「切って持ってくから、ちょっと待ってろ」
 
男「はいはーい」

ちょっと短いですが今夜はこれで終わります
すいません

友「ほら」コトッ
 
男「美味そうだな。いただきます」パクッ
 
友「おい待てって!乾杯してからにしろよ!」
 
男「いいじゃんちょっとくらい」
 
友「ったく……どうだ味は」
 
男「んー……なんか酸っぱくね?腐ってんじゃねえの?」ムグムグ
 
友「そんなわけないだろ。どれだけ保存状態に気を使ってると思ってんだ」
 
男「業者かよ。大袈裟だなあ」
 
友「大袈裟じゃないって」

男「まあいっか。食えないほどじゃないし」
 
友「ちょっと気になる?」
 
男「ちょっとな」
 
友「おかしいなあ。ちゃんと冷凍しといたのに」
 
男「食ってみろよ」
 
友「おう」ヒョイパク
 
男「どう?」
 
友「全然気にならないぞ?」モグモグ
 
男「あれ?俺の舌がおかしいのかな」
 
友「後はまあ、慣れかな?」
 
男「慣れって、豚肉に慣れもくそもないだろ」
 
友「それは同感」
 
男「何言ってんだか」

友「よし乾杯しよう」
 
男「待ってました」
 
友「グラスは?」プシュ
 
男「缶のままでいいよ。どうせあとから面倒になる」プシュ
 
友「それじゃあえー、再会を祝してかんぱーい!」
 
男「かんぱーい!」
 
友「……」チビッ
 
男「……」グビッ
 
男「かぁー!やっぱビールは最高だ!」
 
友「相変わらず惚れ惚れする飲みっぷりだな」
 
男「そのまま惚れとけ。後悔はさせないぜ」キリッ

友「やだよ男なんて」
 
男「俺だってやだよ。あと2本目くれ」
 
友「はっやいなあ。そんなんだと早死するぞ」
 
男「いいんだ俺は。最期に飲むなら酒がいい。サンタクロースにお願いしとこう」
 
友「きっと叶うよ、その願い。今ビールあるし」
 
男「わかんねえぞ?もしかしたら100年後は無くなってるかも」
 
友「そんなに生きられないだろ」
 
男「真面目だなあ」

友「あいつもそうだけど、お前もなかなかの酒豪だな」
 
男「いやあ、あいつは俺より強かったよ」
 
友「一緒に飲んだことあるのか」
 
男「昔3人で飲んだろ?あいつが20歳になって、じゃあ酒飲んでみようって」
 
友「ああ……」

男「そんでお前が先につぶれて、俺とあいつでサシになって、それで……どうなったんだ?」
 
友「俺が知るかよ」
 
男「まあとにかく、あいつ俺より強かったんだよなあ」
 
友「あいつが20歳ってことは……もう10年近く前になるのか」
 
男「俺たちと1個違いだから8年前だな」
 
友「8年前か。そうか、あの時か……」
 
男「そうそうあの時だよ」グビグビ

男「あああ、飲みすぎたあ……」フラフラ
 
友「そりゃこんだけ飲めばな。冷蔵庫すっからかんだ」
 
男「水くれ水」
 
友「あいあーい」
 
男「ごくごく……ぷはぁ、あーだめだ。フラフラする」
 
友「自業自得だろ」

男「ちょっと夜風に当たってくるわ」
 
友「こうして謎の失踪者がまたひとり増えると」
 
男「俺流行には疎いんだよ。それにまだ失踪すると決まった訳でもないだろ?」
 
友「いやいや聞いて驚け。俺には未来が見えるんだ」
 
男「へーそりゃすごい(棒読み)」
 
友「1分先の未来見るのに1分かかるけどな」
 
男「どうしようもなく現在じゃねえか」
 
友「見えた。この先の未来でお前は死ぬ」
 
男「いつかは死ぬだろ」
 
友「釣れないなあ」

男「とにかく、死体で見つかったら骨は拾ってくれ」
 
友「まだ誰の死体も見つかってないらしいけどな」
 
男「じゃあ失踪もたまたまだな。いってきまーす」フラフラ
 
友「フラフラだしやめとけよ。あいつの二の舞になるぞ」
 
男「あー……そっか。じゃあなんか酔い醒ましになる話でもしてくれよ」

今夜はこのへんで終わります
多分明日には完結すると思います するといいなあ

友「じゃあこんな話を」
 
男「おうおう」
 
友「むかーしむかしあるところにクソビッチがおりました」
 
男「おいおい仏さんの前だぞ。呪われちまうよ」ゲラゲラ
 
友「クソビッチはそれはもうとんでもないクソビッチで、複数の男を股にかけては遊び歩いておりました」
 
男「あっはは!確かに会う度に違う男連れてたな!」ガハハ
 
友「酒も男も大好きなクソビッチは毎日が酒池肉林です」
 
男「そーいや男連れだしたのも酒飲むようになってからだったな!」ケラケラ

友「そんなクソビッチはある日、事故で亡くなってしまいました」
 
男「あっ……ああ」
 
友「酒好きのクソビッチは泥酔状態で階段から転落。頭を強くうちつけました。即死でした」
 
男「……」
 
友「しかしそれは真実ではありませんでした」
 
男「え?」
 
友「クソビッチの本当の死因は失血死。リストカットでの自殺でした」
 
男「お、お前……何言って」

友「クソビッチには1歳年上の兄がいました。唯一の身内である兄が亡くなった妹の身辺整理をしていると、日記を見つけました」
 
友「日記には元カレから脅迫を受けていることが記されていました」
 
友「兄は日記のバックナンバーを漁り、ついに元カレをつきとめ、そして殺しました。その際、左腕を切断しなければならないほど傷つけられたのは、兄にとっても誤算でした」
 
男「その腕、事故なんじゃ……」

友「怒りのままに元カレを殺したあと、冷静になった兄はひとつの疑問を持ちました。『元カレ』とは一体誰のことだったのかと」
 
友「自分の妹は天下無双のクソビッチです。『元カレ』と呼ばれるにふさわしい人物は複数人います」
 
友「だから兄は決めました。日記を遡り、元カレ全員を殺そうと」
 
男「そんなバカな……」
 
友「少しずつ日記を遡り、1人ずつ確実に殺していきました」

男「そんなバカなことあるわけないだろ!お前が何人も人を殺した?だったら死体はどうした!いつまでも見つからないわけがない!」
 
友「それ」
 
男「は、それって……?」
 
友「チャーシュー。だれが豚肉で作ったなんて言った?」
 
男「まさか……!」ゾクッ!
 
友「4人目の男だ。あいつと同い年で、結婚してたなあ。死に際うるさかったよ。妻と子供がどーとか、殺さないでくれーとかさ」
 
男「うぷっ」

友「殺してすぐの新鮮な状態のまま冷凍するんだ。言ったろ保存状態には気を使ってるって。それが腐ってるなんて言われて俺結構ショックだったんだぜ?」
 
男「ぜぇ……ぜぇ……」
 
友「食えない部分や骨は粉々のぐちゃぐちゃにするんだ。一人ひとり時間をかけてさ。警察も失踪してすぐの頃はゴミ箱漁るくせに中途半端に時間が経つと疎かになるもんだなあ」
 
男「くっ!」ダッ!
 
友「おいおいどこ行くんだよ。俺が人殺しなのがそんなにおっかなかったか?」
 
男「殺人鬼と一緒になんて居られるか!俺は家に帰るからな!」ガチャ!

友「いやあ逃げられないよ」ヒタ
 
男「は!?なんで開かないんだ!くそっ!なんでなんでなんでなんで!!」ガチャガチャ!
 
友「だーから逃げられないって言ってるだろ」ヒタヒタ
 
男「開け!開けよ!はやくはやく!なんで開かないんだよお!」ガチャガチャガチャガチャ!!!!
 
友「おっといい所に包丁が。ちょうど肉を切らしてたんだ。調達するのに持ってこいだなあ」スチャ
 
男「やめろ……くるな……くるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなああああああああああ!!!!!!!」
 
友「妹によろしくな」ニタァ
 
男「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

友「なーんちって☆」
 
男「あ゙ー、喉イカれるかと思った」
 
友「叫びすぎなんだよ」
 
男「いやあ迫真だったな」
 
友「迫真ってならお前こそだろ」
 
男「劇で主役やった事あるからな」
 
友「幼稚園のお遊戯会でな」
 
男「お前が木Gだったことも覚えてるぞ」
 
友「忘れろそんなこと」

友「でもまあ、あれは無いな」
 
男「あれって?」
 
友「俺は家に帰るーとかなんとか」
 
男「ああ。殺人鬼と一緒になんて居られるか!俺は家に帰るからな!ってやつね」
 
友「死亡フラグが露骨過ぎるよ。本当に怖がってるのかと思ったら、ただノリノリなだけだもんなあ」
 
男「そっちこそ最後のニタァ顔は反則だろ。本当に殺されるかと思ったわ」
 
友「ああ、あれな。何年か前に職場の忘年会でやったらバカウケだったんだよ。それに俺が殺人鬼だったとして、そいつは元カレを殺して回ってるだろ。関係ないやつは巻き込まないよ」
 
男「プロファイリングが生々しいよ」

友「まあいいじゃん。楽しかったし」
 
男「まあな」
 
男「さて、いい時間だし、お陰様で酔いも冷めたし、そろそろ帰るわ」
 
友「はあ?もう帰んのかよ。もうちょっと飲もうぜ」
 
男「いやもういいよ」

友「えーなんだよ。俺まだ話したいことあったのに」
 
男「ん?なんだよ」
 
友「いやまあ……ね?」
 
男「ね?じゃねえよ。話せって」
 
友「話せば長くなるんだよ」
 
男「じゃあ後で聞くわ」
 
友「いや今聞けよ」
 
男「今言えよ」

友「まだ帰んなって。ゲームとかあるし」
 
男「いやいいよ。遅くまで居ても悪いし」
 
友「気にしないってば。いーじゃんかよ」
 
男「そんなに俺といたいのか?まさかお前ソッチの気が……」
 
友「ねーわ」
 
男「ねーか」

男「まあいいさ。とにかく俺は帰るんだよ」
 
友「なんだよ急によそよそしくなって。なんか理由でもあんのかよ」
 
男「理由なんか……ないけど。そっちこそ、なんでそんなに帰らせたくないんだよ」
 
友「だってさぁ……」
 
男「だって?」


 
友「お前が最後の一人だからさ」ニタァ

おわり

おしまいです
読んでくださった方ありがとうございました
隻腕ラリアットのプロレスラーは知りません

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