【ガルパン】エリカ「染めよっと……」 (36)





~黒森峰~

エリカ「隊長、おはようございます」

まほ「ああエリカ、おはよう」

エリカ「留学の準備はどうですか?」

まほ「万端……とはまだ言えないな。なにせ長期の留学なんて初めてだから」

エリカ「私にも手伝えることがあるのなら何でも言ってください」

まほ「気持ちだけ受け取っておくよ。それよりもお前は私よりも黒森峰の事を考えろ。お前が、次の隊長なんだから」

エリカ「……はい。けれど……正直、私どうすればいいのかわかりません」

まほ「……私が教えられることはもう全部教えた。だから、あとはエリカのやりたいようにやるんだ」

エリカ「……でも、やっぱり不安です。隊長、私は……どうですか?」

まほ「……質問の意味がよくわからないな」

エリカ「何でも良いんです。隊長から見て私はどうですか?直した方が良いところや、注意した方が良いところはありませんか?」

まほ「……そうだな、あえていうなら……お前は浮いてるな」

エリカ「……は?」

まほ「いや、エリカは浮いてるなって」

エリカ「……私、別に飛んではいないですよ?地に足のついた生活を心がけてます」

まほ「そうじゃなくて、他者との隔たりが出来ているってことだ」

エリカ「……マジですか」

まほ「マジだ」

エリカ「えっと……いや、確かに私キツめの性格しているとは思いますけど……」

まほ「自覚してるなら直せばいいのに。まぁ、原因はそれじゃないが」

エリカ「なら、なんですか?」

まほ「髪」

エリカ「は?」



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まほ「お前だけ髪が違う。文字通り毛色が違うというやつだ」

エリカ「えぇ……」

まほ「なんでそんな不満げなんだ」

エリカ「いやだって毛色って……もっとこう精神面とか心がけの面でなにか無いんですか?」

まほ「そういうのはお前が自分で見つけないと意味無いんだ。というか、うちの隊員大体黒か茶なのになんでお前銀髪なんだ」

エリカ「そんな事言われましても……両親から受け継いだとしか……」

まほ「純日本人なのになんでそんな髪色してるんだ?」

エリカ「ほかの学園艦の人にも言ってくださいよそれ。聖グロとか全員純日本人なのに黒髪一人もいませんよ」

まほ「うーん……集合写真でもお前だけなんか浮いてるんだ」

エリカ「生まれ持った容姿の事でどうこう言われても困りますよ……」

まほ「ああいや、決して悪い意味で言っているんじゃない。私も、お前の綺麗な髪が羨ましいよ」

エリカ「え……あ、ありがとうございます」テレテレ

まほ「まぁ、だからと言って良い事ばかりじゃないと思うが」

エリカ「え?」

まほ「お前の行きつけの美容院があるだろ」

エリカ「あ、はい」

まほ「そこの娘が黒森峰に通ってるんだが」

エリカ「そういえば、そんな事を美容師さんが言ってましたね」

まほ「お前の髪を売って儲けてるらしい」

エリカ「ちょっとティーガー借りますね」

まほ「ダメ」

エリカ「っ……人の髪で勝手に商売されてるんですよ!?」

まほ「証拠が掴めてない以上推定無罪だ」




エリカ「そんなん!!しばき倒して砲口の前に引っ張ってくれば吐きますよ!!」

まほ「落ち着け。それについては私も内々に調べてるんだ。下手に騒ぎを起こさないでくれ」

エリカ「……わかりました。それにしても、なんで私の髪なんか……」

まほ「なんでも、お前の髪は同量の金と同じ金額で取引されてるらしい」

エリカ「怖い。不相応な価値が自分の髪に付けられてるのが怖くて仕方がないです」

まほ「美容院の娘はそれで黒森峰女学院における影のフィクサーとして君臨してるらしい」

エリカ「やっぱ潰しましょうよ」

まほ「まぁまぁ。あまりそんなガミガミするな。それほどの価値を認められている髪だなんて羨ましいな。私は勘弁願いたいが」

エリカ「他人事だと思って呑気な事を……」

まほ「そう、そういう事だ」

エリカ「え?」

まほ「お前がくよくよ考える事なんて人から見れば呑気な事なんだよ」

エリカ「……」

まほ「大事なのはしっかりと自分を持つ事。まわりに振り回されるのではなく、まわりを振り回すぐらいの度胸を持て」

エリカ「……なるほど。そういう事ですか。流石です隊長」

まほ「え?あ、うん。わかってくれればいい。結局、アドバイスしてしまったな」

エリカ「でも私の原産物が勝手に売られているのは普通に大した事ですよね?」

まほ「……頑張れエリカ。お前がナンバーワンだ」

エリカ「誤魔化さないでもらえます?」





エリカ「……髪の毛ねぇ。そんなに目立つほどかしら?」ブツブツ…

小梅「エリカさんなに鏡に向かって独り言ちているんですか?」

エリカ「小梅?ちょうどいいわ。ちょっと聞きたいんだけど」

小梅「なんですか?」

エリカ「私の髪って変?浮いてる?」

小梅「ど、どうしたんですか急に」

エリカ「いいから。答えて」

小梅「……まぁ良くも悪くも目立っているとは思いますよ」

エリカ「そう……」

小梅「やっぱり見た目が派手だとそれだけで目に付くというか、黒森峰の場合パンツァージャケットが黒を基調としてるせいで余計にエリカさんの銀髪が映えるんですよ」

エリカ「あなたもやっぱり気になっちゃう?」

小梅「……そうですね。たまに試合中でも目が向いちゃって集中が乱れる時がありますねーなんて」

エリカ「……」ガーン…

小梅「でも、それはエリカさんの髪の毛がとっても綺麗だからであって私としては厳しい練習や試合の中での清涼剤みたいなものでほら、エリカさんパンツァージャケットすっごく似合ってるじゃないですか」

エリカ「……」トボトボ…

小梅「個人的には大洗のもかなり似合うと思うんですけどでもやっぱそこは黒森峰のですよ。略帽がちょこんと乗った姿は何とも可愛らしくて、なのにカッコよさもあって。風になびく銀髪の美麗さは他の追随を許さ……あれ?エリカさん?どこ行ったんですか?」




エリカ「やっぱり……悪目立ちしてるのね……仕方が無い、これも未来の黒森峰のためよ。……染めよっと」トボトボ







~翌日~


まほ「……」テクテク

「隊長、おはようございます」

まほ「ん?ああ、おはようエリ……カ……」

「……どうしたんですか?」

まほ「ど、どうしたはお前……その、髪……」

「……ああ、これですか?」

まほ「なんで、そんな真っ黒……」

エリカ(黒)「染めたんですよ。やっぱり、チームの和を乱すような事はしたくないですから」

まほ「え、え……?」

エリカ(黒)「隊長のアドバイスのおかげです」

まほ「え、私何か言ったか……?」

エリカ(黒)「私が髪色のせいでチームから浮いてるって教えてくれたじゃないですか。だから、みんなに合わせて染めたんですよ」

まほ「違……私、そんなつもりじゃ……」

エリカ(黒)「ふふっ、なんだか楽になった気分です。私もこれでようやく悪目立ちしなくなりますね」

まほ「いやお前周りを見ろ。明らかにお前見てざわめいているだろ」

エリカ(黒)「……?まぁ、いきなりヘアカラー変えたら目立つか。でも、そんなのすぐに収まりますよ」

まほ「……私のせいじゃないからな」



小梅「隊長、おはようございます」

まほ「あ、ああ、おはよう赤星」

エリカ(黒)「おはよう、小梅」

小梅「……?えっと、そちらの方は?」

エリカ(黒)「はぁ?何言ってるの、逸見エリカよ。それなりの付き合いなのにフルネームさえ覚えてないの?」

小梅「伊津三江 梨花さん?私の友達に名前が似ているんですね!よろしくお願いします!転校生ですか?」

エリカ(黒)「……冗談にしてはちょっと笑えないわよ?」

まほ「赤星、この子はエリカだ。逸見、エリカだ」

小梅「あはは、隊長何言ってるんですかーエリカさんの髪は黒じゃなくて、綺麗で美麗な銀髪で……」

まほ「……」

小梅「あはは……冗談ですよね?」

まほ「……」



小梅「え……だって、エリカさんの髪は……」

エリカ(黒)「染めたのよ。これでもうあなたも試合中に気が散る事もないでしょ?」

小梅「嘘、嘘……ああでも、そのツリ目は間違いなく……」

エリカ(黒)「そういえば、あなたにもお礼言わないと。小梅、あなたの率直な意見のおかげよ。ありがとう」

小梅「あ、あ、あ……」ガクガクガク…

エリカ(黒)「……どうしたの?」

小梅「嫌あああああああああああああああああああああっ!!?天岩戸は閉ざされた!!世に闇が満ち!禍が世界を滅ぼすんだあああああああああ!!」バターン!!

エリカ(黒)「ちょ、ちょ、どうしたの!?」

小梅「なんでこんな理不尽がっ!?予言の日は今日だったと言うんですかあああああああああああ!?」ゴロゴロゴロ!!

エリカ(黒)「小梅!?しっかりしなさいよっ!?」

まほ「っ……やはりこうなったか!!エリカ!!お前はもう今日は帰れ!!誰に会わないように裏道通って!!」

エリカ(黒)「はぁ!?何言ってるんですか!?こんな状態の小梅を置いて帰るなんて……」

まほ「その原因がお前だ!!いいから早く―――」



ねぇ、今、エリカって……

嘘……あれ、副隊長なの……?

いやいや、嘘嘘嘘。そんなわけ……嘘、だよね……?


ざわっ……

    ざわっ……



まほ「っ……手遅れだったか」

エリカ(黒)「えっと……何が起きてるんですか?」

小梅「誰かああああああああああ!!鏡と天手力男連れてきてくださああああああああああいっ!!」ゴロゴロゴロ!!






まほ「えー……赤星をはじめとして体調不良で早退したものが続出したため、今日の練習は休みとする」

エリカ(黒)「たるんでるわっ!!」

まほ「誰のせいだと思ってるんだ……」ボソッ

エリカ(黒)「なんですか!?私のせいだとでも言うんですか!!?他人が髪の色変えた程度で倒れる方がおかしいんです!!」

まほ「そうだけど事今回に限ってはお前が思い切り良すぎたのも悪い」

エリカ(黒)「知りませんよそんなの!!?」

まほ「とにかくっ!来週には練習試合もあるんだからみんな早く体調を良くするよう……あ」

エリカ(黒)「……どうしたんですか?」

まほ「エリカ、練習試合ってどことやる予定だった?」

エリカ(黒)「え?大洗とですよ」

まほ「……マジかぁー」

エリカ(黒)「……?」

まほ「みほに何て言えばいいんだ……」





~一週間後 大洗~



まほ「どうしよう……結局みほにエリカの事伝えないまま今日になってしまった……」

エリカ(黒)「気にしすぎですよ。別に私の髪色が変わった所でなんか思う子じゃないでしょ」

まほ「だといいんだが……」

エリカ(黒)「ほら、来ましたよ」


タッタッタッ


みほ「お姉ちゃん!待たせてごめん!!」

エリカ(黒)「遅いわよ」

まほ「いいさ。みほ、久しぶりだな」

優花里「黒森峰との練習試合なんて感激です!!」

麻子「決勝でも戦っただろ」

優花里「そうですけど!!でも感激なんです!!」

沙織「デートは何回やっても楽しいって感じ?」

華「したことあるんですか?」

エリカ(黒)「相っ変わらず騒がしい人たちね……」

みほ「あはは……お姉ちゃん、今日はよろしくね」

まほ「ああ。今年の優勝校はお前たちだからな。来年の為にも色々学ばせてもらいたい」

みほ「それは私たちも同じだよ。むしろ、学ばないといけない事は私たちの方が多いんだから」

エリカ(黒)「あら、よくわかってるじゃない。勝利に驕らず上を目指す態度は感心ね」

みほ「……?えっと、お姉ちゃんこちらの人は……」

まほ「……」

エリカ(黒)「……逸見エリカよ」



みほ「『It's me エンリケ』?ポルトガルの人なんですねっ!It's me ミホ!よろしくお願いします!日本には来たばっかりなんですか?」

エリカ(黒)「どんな耳してるのよ……」

まほ「みほ……その……」

みほ「そういえばエリカさんは?体調でも悪いの?」

エリカ(黒)「ここにいるでしょ……」

みほ「あはは、確かにエンリケさんはエリカさんにそっくりだね。でも、エリカさんは黒髪じゃなくて」

まほ「みほ……こちらが、エリカだ」

みほ「もーそういう嘘は良くないよ!エンリケさんにも失礼でしょ。ごめんねエンリケさん」

エリカ(黒)「……私、本当に髪しか見られてなかったのね……」

みほ「?」

まほ「みほ、彼女がエリカだ」

みほ「だからそういうのは……」

エリカ(黒)「染めたのよ」

みほ「え?」

エリカ(黒)「ほら、よく見なさい」ズイッ

みほ「わ、ちょ……え?」

エリカ(黒)「そっくりじゃなくて、本人よ。髪の色変えたぐらいでわからなくならないでよ」

みほ「………………………………………………エリカさん?」

エリカ(黒)「ご名答。学食の割引券あげましょうか?」

みほ「……………………」

エリカ(黒)「……みほ?」

みほ「」バッターン!

エリカ「ちょっ!?みほ!?」

沙織「みぽりん!?……みぽりんっ!?」

優花里「西住どのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

まほ「みほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

エリカ(黒)「なんでこうなるのよ……」







みほ「はっ!?」

沙織「みぽりん良かった!目が覚めたんだね!!」

まほ「本当か!?」

みほ「ここは……?」

沙織「保健室。みぽりん急に倒れたんだから」

みほ「そうですか……」

沙織「みぽりん大丈夫?」

まほ「とりあえず病院に行こう……どうしたんだ?ぼーっとして」

みほ「……私、夢を見てたんだ。本当に、ひどい悪夢を」

沙織「どんな夢?」

みほ「エリカさんの、綺麗な髪が、輝くような銀髪が、真っ黒に染められてて……」

エリカ(黒)「どんだけショックだったのよ……」

みほ「ああああああああああああああああああ地は裂け海は枯れ天の光は失われ、世界は暗黒に包まれた!!この世の終わりはすでに来ていたんだあああああああああッ!!」

エリカ(黒)「やだこの子怖い」

みほ「なんで!?なんでそんな事したの!?世を儚むにはまだ若すぎるよ!?」

エリカ(黒)「別に儚んじゃいないわよ……隊長にアドバイスしてもらったのよ。それで染めたの」

まほ「え、違」

みほ「お姉ちゃあああああんッ!!何してくれてるの!?」ガッ

まほ「い、いや私はただエリカが悩んでたからちょっとそれっぽいアドバイスをしているうちに自分でも何言ってるかよくわかんなくなったけどなんかエリカが『わかった感』だしてるからまぁいいかってなっただけで……」

エリカ(黒)「さりげなくひっどい事実が判明したわね……」

みほ「お姉ちゃん口下手なんだからもっと発言には気を付けてよ!?」

まほ「ごめんなさい!!」



みほ「お姉ちゃんのことは後で責任取らせるとして!!エリカさん!!」ガシッ

エリカ(黒)「何?」

みほ「髪戻そう?」

エリカ(黒)「え?嫌」

みほ「なんでっ!?」

エリカ(黒)「だって……髪色のせいでみんなから浮いてたらしいし……」

みほ「何繊細な感性発揮してるの!!?私に面と向かって嫌味を言ってた図太い神経はどこにいったの!?大丈夫だって!エリカさんは浮いてたんじゃない他者の目を惹いてただけなんだから。だから戻そう?世界に光あれ」

エリカ(黒)「嫌よ……だってガッツリ染めちゃったのをまた脱色とか髪の毛痛みまくっちゃうし……」

みほ「うっ……」

エリカ(黒)「染め直すにしろ脱色するにしろ当分は無理よ。ていうか、私はこのままの方が良いし」

まほ「と、言う訳なんだ。みほ、ここはエリカの気が変わるのを待って……」

みほ「う、ううううう……出てって!!みんな出て行って!!」グイグイ

まほ「ちょ、押すな危ない」

沙織「みぽりんってば!?」

エリカ(黒)「ちょ、どうしたのよいきなり」


ドン!カチャ


まほ「追い出された……」

沙織「みぽりーん!!鍵開けてー!!」ドンドン!

みほ『開けません!!私はここで世界の終わりを享受します!!』

エリカ(黒)「あなたの妹は何を言ってるんですか?」

まほ「みほ!!気持ちは分かるが保健室はお前の部屋じゃない!!」

エリカ(黒)「わかるのね……流石姉妹」

沙織「いや、姉妹でも普通わからないと思うよ……」

優花里「武部殿!!」

沙織「ゆかりん!!」

優花里「とりあえず他のチームの人たちには練習試合は延期と伝えてきました!!

    五十鈴殿たちも間もなく戻ってくると思います!西住殿の目は覚めましたか!?」

沙織「う、うん……でも……」

優花里「いったい何があったんですか?」

沙織「みぽりんが世界の滅びを受け入れたの……」

優花里「いったい何を言ってるんですか?」

まほ「……私から説明しよう」





~10分後~

まほ「……というわけだ」

優花里「いったい何を言ってるんですか?」

まほ「今説明しただろ」

エリカ(黒)「説明したからだと思いますよ」

沙織「とにかく、逸見さんが白髪染めしたせいでこんなことになっちゃって……」

エリカ「聞こえ悪いから普通に染髪したって言ってよね……」

優花里「うーん……とりあえずエリカ殿、うちに来ませんか?」

エリカ(黒)「え?」

優花里「私の家、学園艦で理髪店経営してるんですよ。髪の事ですし、とりあえず相談してみてはどうですか?」

エリカ(黒)「……そうね。それじゃあお邪魔するわ」






~秋山理髪店~


淳五郎「まさか優花里によその学園艦の友達が出来るなんて!!」

好子「お茶を用意するわね。ちょっと待ってて」

エリカ(黒)「あ、すみませんそれは結構です」

優花里「お母さん、エリカ殿の事でちょっと相談に乗って欲しいんだけど」

好子「……?」






~10分後~



好子「なるほどね」

エリカ(黒)「何か、頭皮や髪へのダメージを抑えて髪色戻す方法ないですか?」

好子「そうねぇ……とりあえずちょっと見せてもらってもいい?」

エリカ(黒)「あ、はい」

好子「ふむふむ……市販のやつで染めたわね?」

エリカ(黒)「え、ええ。勢いのままに……」

好子「これをダメージ無しで戻すのは確かに難しいわね……」

エリカ(黒)「そうですか……なら、仕方な―――」

好子「ほかの店ならね?」

エリカ(黒)「え?」

好子「丁度良いところに来てくれたわ。あなたの髪の輝き、取り戻してあげる。お代も結構よ」

エリカ(黒)「はぁ」

好子「この間なんとなーく適当に調合した結果生まれた薬品を使った秋山式トリートメント施術(タクティクス)を見せてあげるわ!!」

エリカ(黒)「いえ、お金払うんで普通に染め直しとついでに毛先揃えてもらえますか?」

好子「さぁっ!始めるわよっ!!」シャキーン!

エリカ(黒)「人の話を聞かない大人って怖いわね」

優花里「お母さん私部屋にいるから終わったら呼んで―」





~数時間後~



ビッカアアアアアアアアアア!!



エリカ(光)「あの」

好子(グラサン)「完っ璧ね!!」

エリカ(光)「そのサングラス外してから言ってもらえませんか?それと、直視したあなたの旦那さん気絶してるんですけど」

淳五郎「」チーン

優花里「おかあさーんエリカ殿の終わったのー?目がああああああああああああああッ!?」ゴロゴロガッシャーン

好子「いやー理容師人生で初めてよ!こんな逸材!!あなたの髪は国宝ね!!」

エリカ(光)「いやお宅の娘さんが今目を潰されて階段から転げ落ちた音がしたんですけど」

優花里「うぅ……いったい、何が……」ヨロヨロ……

好子「優花里、裸眼での直視はまずいわ。これ使いなさい」ポイッ

優花里(溶接面)「う、うん……」スチャ


ピッカアアアアアアアアアア!!


エリカ(光)「大丈夫なのこの光量。私の髪、どうなってるの?眼閉じてるのに眩しくて痛いんだけど」

優花里(溶接面)「た、体感でおおよそ100万カンデラ程度の光は出ていると思われます……」

エリカ(光)「閃光弾並みの光量が常時って……どっからそのエネルギー持ってきてるのよ……」

好子(グラサン)「おそらく極限まで高められたヘアパワーによってキューティクルが次元の断層と繋がり、そこから次元連結エネルギーが光となって漏れてるんでしょうね」

エリカ(光)「何言ってるんですか?」

好子(グラサン)「まぁ3日もすれば薄目で見れる程度には落ち着くわよ」

エリカ(光)「それ落ち着くって言わないと思います」

好子(グラサン)「とにかく!これで解決ね!良かったわ。あ、写真撮っていい?うちの施術でこんなに綺麗になりました!って宣伝に使いたいの」

エリカ(光)「良いですけど真っ白な画像にしかなりませんよこれ……」







エリカ(フルフェイスヘルメット)「後ろ髪の毛出てないわよね?……とりあえずこれでまわりへの被害は抑えられるかしら」

優花里(溶接面)「うう……結構いい値段した……」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「別に払うのに……」

優花里「それはいけません。私が連れてきたんですから」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「律義ねぇ……で、どうするの?」

優花里「……とりあえず西住殿のご要望には添えてるんじゃないかと。間違いなく輝いてますし」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……でもこのまま戻ってハイ円満解決!ってのも私だけ割り食った感じがしてムカつくわね……」

優花里「そこはこらえてください……それに、私のお財布にだってヘルメットのダメージが……ん?電話?」


pi!


優花里「もしもし?はい、はい……はい……あー……なるほど。わかりました。はい」


pi!


エリカ(フルフェイスヘルメット)「どうしたの?」

優花里「学校の方で動きがあったそうです。西住殿は再三の交渉を全て蹴り、保健室での籠城を続けているようです。もう自分に干渉するなと」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「要求のない立てこもり犯って最高にタチが悪いわね……」

優花里(溶接面)「そしてそれに焦れた生徒会の主導のもと特殊部隊(一名)が窓から保健室に突入、西住殿の確保を図ったらしいですが即制圧されました。『やっぱり無理だったよ柚子ちゃーん!!』が最後の通信だそうです」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「狭い室内なら銃器の類なんてあの子には効かないでしょうし、素手での確保なら猶更無理。やるなら催涙弾とか投げ込むしかないわよ」

優花里(溶接面)「出来る事なら穏便にしたいんですけど……」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……しょうがないわねぇ。このままあの子の我儘通すのも腹立つし、せっかくだから一発かましましょうか」

優花里「……何するつもりです?」

エリカ「ん?ヒーローごっこ♪」





~保健室~


ガッシャーン!!ゴロゴロゴロ!!


みほ「っ!?また河嶋先輩ですか!?今度は追い出すだけじゃすましませんよ!!あと、わざわざ割れてない窓から入らないでください!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……なるほど、随分暴れまわったみたいね」

みほ「その声は……エリカさん!?」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「髪で人の事見てたくせに声は分かるのね……」

みほ「素手での勝負じゃエリカさんに勝ち目は無いよ!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「私もそんなつもり無いわよ……みほ、今回の件。私にも責任の一端が0.000000001%ぐらいあるわ。だから、今大人しくお縄に付くならお説教で許してあげるわよ」

みほ「絶対嫌だ!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……はぁ、私の髪ってそんな綺麗だった?」

みほ「うん!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「そ、そう……即答って……」

みほ「でも!!あなたは自らその輝きを潰した!!このまま世界が闇に覆われるぐらいだったら、私が世界を滅ぼしてやる!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「過激派への転身速すぎでしょ……」

みほ「うるさいっ!!邪魔をするならエリカさんでもっ!」ダッ

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……交渉失敗。まったく…そんなに私の髪が好きだってんなら、見せてやるわっ!!」カポッ


ビッカアアアアアアアアアアアアアア!!


みほ「目がああああああああああああああああ!!」ドッターン!!

エリカ(光)「はい、確保。全く、手間取らせるんじゃないわよ」カポッ

みほ「う、うう……一体何が、急に、光が満ちて……」ピクッツピクッ…

エリカ(フルフェイスヘルメット)「なんか啓示を受けたみたいになってるわね……」

カチャ

エリカ(フルフェイスヘルメット)「ほら、もう大丈夫よ。立てこもり犯は確保したわ」

ガラララッ

沙織「みぽりーん!!うわ不審者!!?」

桃「誰だお前は!!大人しくお縄に付け!!」

まほ「みほから離れろ変質者!!なんだその黒森峰のパンツァージャケットにヘルメットって恰好は!!センスないな!!」

エリカ(フルフェイスヘルメット)「……」カポッ


ビッカアアアアアアアアアアアアアア!!


沙織・桃・まほ「ぎゃあああああああああああああああああああ!!?」ドッターン!!



エリカ(光)「意外と便利ねこれ……」








優花里『こうして、平和な大洗女子学園で起きた西住みほ殿による立てこもり事件、通称『西住の乱 in infirmary』は光の中に完結しました。

    けれど、エリカ殿の本当の戦いはこれからだったのです……』







~一週間後 黒森峰~



ピカー


まほ「エリカ、眩しい」

エリカ「髪に向かって言われるとハゲてるみたいですっごい不安になりますね……」

まほ「おろしたての蛍光灯みたいに眩しいな。LEDのやつ。ちょっと離れてないと目が痛くなる」

エリカ(LED)「これでも一週間前と比べるとだいぶ落ち着いたんですよ……最初の頃はアイマスク無いと夜も寝られない上に寝返りうってズレると目が潰れるかと思うほどの閃光が押し寄せますからね」

まほ「そうか。大変だったな」

エリカ(LED)「元を辿れば誰のせいだと……」

まほ「それについては学食でハンバーグ奢ったんだからもういいだろ」

エリカ(LED)「……はぁ。まぁ、いいですよ。私もちょっと焦りすぎでした。髪色を変えた程度でどうこうしようと思う事自体が間違いだったんですよ」

まほ「……色々押し付けている自覚はある。でも、私はエリカなら大丈夫だと思うから押し付けてるんだ。それは、分かって欲しい」

エリカ(LED)「……はい。だから、期待に応えたいんじゃないですか」

まほ「ならもう責めるなよ。その髪のせいで私あの後みほに全力で説教されたんだからな」

エリカ(LED)「あの子はあの子で私や武部さんたちに説教されたんでお相子でしょ……」


ヒソ…ヒソ…


ねぇ、あれって……

――様だね……





エリカ(LED)「……ところで、ちょっと気になる事があるんですけど」

まほ「なんだ?」

エリカ(LED)「最近、私を見ると拝む人がいるんですよ」

まほ「気のせいだろ」

エリカ(LED)「……小梅が変なお札を持ってたんですよね」

まほ「……」

エリカ(LED)「取り上げてみたら『逸見erika髪光尊』って書かれてたんですよ」

まほ「そ、そうか」

エリカ(LED)「……何か知ってますよね?」

まほ「……さぁ?」

エリカ(LED)「今度は隊長のお母様にお説教お願いしましょうか?」

まほ「私は何もしてない!!」

エリカ(LED)「なら、ね?」

まほ「……この間の一件でお前が急に輝きだした(発光)から一部の生徒たちの間で宗教が立てられたらしい」

エリカ(LED)「え」

まほ「現実世界で後光を見られたのがよほど衝撃的だったんだろうな。エリカを祀り上げて全学園艦統一宗教を目指すそうだ」

エリカ(LED)「早く潰しましょうよそんなカルト教団」

まほ「そこはほら、信教の自由だからな……」チラッ

エリカ(LED)「待ってください今ポケットから見えたのお札じゃないですか?」

まほ「あれだよ、ちょっと捜査しただけで。私は別にそういうんじゃないからさ」ナムー



生徒A「あれ、ご本尊様よ」ナムー

生徒B「あの輝きで世界を照らしてくれるのね」ナムー

生徒C「ご本尊様のおかげで宝くじに当たりました!」ナムー



エリカ(LED)「手を合わせないでくださいっ!!あなた達もやめろっ!!留学前のデリケートな時期に何カルトにハマってるんですか!!?」

まほ「私だって悩み事がいっぱいあるんだ。神に縋るくらいいいだろ」




エリカ(LED)「縋るにしてももうちょっともの選んでください!!大体神教と仏教どっちなんですか!?」

まほ「お前はホント細かい事を気にするな……」

エリカ(LED)「いったいどこのどいつが人の名前で勝手にカルト立てて小梅と隊長を誑かしたんですか!?」

まほ「……ほら、前に話した美容院の娘いるだろ?そいつだ」

エリカ(LED)「……もしかして」

まほ「ああ。そいつがエリカの光る抜け毛を集めてエリカを本尊として宗教を設立。それを『神の髪』として法外な値段をつけて信者に売ってるらしい。ていうか売ってた」

エリカ(LED)「ダジャレじゃないですか!!?……ていうかそれ、買ってないですよね?」

まほ「……カッテナイヨ」

エリカ(LED)「……」ジッ…

まほ「……いや、トイレの電球が切れたから代わりにと思って……別に他意はないから……思ってたほど高くなかったし……」


pi!


小梅『もしもしエリカさん?どうしたんですか?』

エリカ(LED)「小梅えええええええッ!!ティーガー用意しなさいっ!!シュトゥルムの方!!今日、黒森峰から美容院が一つ消えるわっ!!」

小梅『は?え?御本尊何言って……』


pi!


まほ「ま、待てエリカいくらなんでも勝手に戦車を出すのは……」

エリカ「隊長、この間私にこう言いましたよね?『まわりに振り回されるのではなく、まわりを振り回すぐらいの度胸を持て』って」

まほ「い、言ったが……」

エリカ「安心してください。私はあなたの後継として立派にやって見せます。その手始めとして―――カルト教団をぶっ潰しますね?」ニコッ

まほ「……うん、頑張って。隊長、応援してる」グッ






優花里『こうして、黒森峰で起こった丸一日に渡る武力行使、通称『火の24時間戦争~神の怒り~』により黒森峰に蔓延ろうとしていたカルト教団は滅されました。

    そのあまりにも過激な行いは様々な議論を巻き起こし、これを「宗教戦争だ」と言う者もいれば「いや、平和のための治安維持活動だ」。あるいは「信教の自由に真っ向から喧嘩を売った事件だ」。

    はたまた「エリカさんの光る髪の毛の在庫ってまだありますか?出来る事なら大洗に郵送してもらいたいんですけど」と口々に論ずる者が出るも、結局答えは出ないまま人々の記憶からカルト教団の存在は薄れていき、

    黒森峰の平和は保たれることとなりました」








優花里『いつだって共にある髪の毛の事で起きてしまった一連の事件。我々も色々考えないといけませんね』







優花里『髪は『長』い『友』達と書きます。皆さんも、自分の髪の毛は友達のように大切に付き合っていきましょう。……私も、縮毛矯正はしばらくはできませんね……』






やっべ!エリカさんの誕生日なのに何も誕生日ネタ思いつかねぇ!!




仕方ない……お蔵入りしたネタを手直しして出すか……


↓(突貫工事:約3時間)


これ全然誕生日関係ないな……まぁエリカさん主役だしいいか…



とういわけでバースデー感ゼロでしたが、何にしても逸見エリカさん誕生日おめでとうございます!!

読んでくれた方々ありがとうございました。



ちなみに別のスレになりますが、

【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」というスレをやってました。

これはこの間完結しましたが、3月23日(予定)に続きのスレを立てる予定です。めっちゃ長いので気が向いたらでいいので読んでみてください。

このスレじゃ出来なかったエリカさんの誕生日ネタもちょっとあります。


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