まほ「鋼鉄の死神」 (52)

~黒森峰女学園~

VUOOOOOM……

まほ「全車、パンツァーカイル戦闘隊形!」

エリカ「4号車、遅れてるわよ!」

まほ「目標まで距離2000、任意に砲撃開始」


BAM! BAM! BAGOOM!!


エリカ「2号車、標的撃破」

まほ「6号車、11号車外したぞ、11号車はこれで4回目だ、次はない」

 『11号車了解です!』


BLAM! DOM!


エリカ「7号車、標的撃破」

まほ「9号車ハズレだ、当たると確信するまでは撃つな、勘に頼るのはよせ」



※まほさん過去回想話、短いです

※キャラ崩壊が含まれる可能性があるのでご注意ください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384738409


まほ「全標的撃破、全車整列して降車、集合しろ」

 『了解!』

エリカ「命中率は…60%というところです」

まほ「よくないな」

エリカ「特に初弾を当てた車両は少ないですね、仕方ないかもしれませんが」

まほ「当ててくれなければ困る」

エリカ「…ですね」

まほ「止まった的でこれなら試合ではもっと低くなる、向こうもこちらも動くからな」


まほ「皆ご苦労だった、午後からは試合形式の練習を行う、昼食は各自しっかりとっておけ」

まほ「それと、11号車の車長は私のとこへ来い、以上だ!」


 「あー疲れた…」 「やっとお昼だね」 「お腹すいたー…」



まほ「呼ばれた理由はわかってるな?」

生徒「は、はい!」

まほ「結局5発連続で外したな、命中率も最下位だ」

生徒「申し訳ありません…」

まほ「35(t)のリベットを数えるのと格納庫の清掃はどっちがいい?」

生徒「へっ?え、え~と……清掃がいいです」

まほ「よし、練習が終わったら清掃してから帰るように、他の乗員にも伝えておけ、行っていいぞ」

生徒「はい!失礼します!」


~隊長室~

まほ「…暑い」

まほ(もう冬だと言うのにこう暑いと指示するだけでも疲れるな、いつ北上するんだったか)

まほ(上着を脱いでしまうか……いや、下級生に示しがつかないし…)

まほ(まあいい、どうせ部屋の中だけだ)バサッ

 コンコンッ

まほ「」ビクッ

エリカ「隊長、午前中の訓練の詳細結果ですが…」

まほ「あぁ、なんだエリカか……入れ」

 カチャッ

エリカ「……えらい格好ですね」

まほ「勘弁してくれ…」


エリカ「一年生に見られないようにしてくださいよ?」

まほ「わかってる、部屋の中だけだ」

エリカ「それで、データですが」

まほ「そこに置いておけ、後で確認する」

まほ「……今日はすまないな、一年生のみの練習に付き合ってもらって」

エリカ「いえ…私から申し出たことなので」

まほ「ふふっ、真面目だな」

エリカ「笑わないでくださいよ、隊長こそ、大会も終わったのにこうして休日に出てきて指導してるじゃないですか」

まほ「一応まだ隊長だからな、しばらくしたらお前に全部任せる」

エリカ「面倒な仕事は済ませておいて下さいね」

まほ「それはどうかな」


まほ「しかしどうしたものかな、一年生には」

エリカ「戦力になるのは全体の3割くらいですかね」

まほ「実力の問題だけじゃない、私が一年の頃はなんというか…みんなもう少し緊張感があったと思う」

エリカ「隊長が一年生のころですか…想像できません」

まほ「失礼だな」

エリカ「あ、いえ!そんなつもりでは……でも気になります、どんな生徒だったんですか?」

まほ「別に今と大して変わらない、真面目なだけの生徒だったよ」

エリカ「一年から黒森峰の隊長を?」

まほ「最初から、というわけじゃないがな」


まほ「きっかけになったのは…上がりたての頃のグロリアーナとの練習試合だったか」

エリカ「ではあの話は本当なんですか?」

まほ「話?」

エリカ「隊長のティーガー1両でグロリアーナの戦車を30両撃破したって話です、チームで知らない人はいませんよ」

まほ「はっ、いつの間にか増えてるな、30両は嘘だ、エイブラムスでもなければ無理だろう」

エリカ「でも、1両でグロリアーナを相手にしたのは事実なんですよね?」

まほ「一応な、でも結局火力と装甲に頼った戦い方だったし、あまり自慢するような話じゃない」

エリカ「詳しく聞かせて頂いても?」

まほ「気は進まないが…お前だけだからまあいいか」

まほ「私が普段乗ってるあのティーガーで試合に出たのはそれが初めてだった」

まほ「今思えば、私にとっては運命の出会いだったのかもしれないな、もっとも私は今でもパンターの方が好みだが」


~黒森峰女学園~

  --2年前--



隊長「傾注!本日の訓練ご苦労だった、一年生諸君に朗報があるぞ、聖グロリアーナとの練習試合が決まった、日時はちょうど2週間後だ」

隊長「一年生を中心に編成し実力を見極めることになる、心の準備をしておけ」

隊長「敵は巡航戦車を中心に編成された機動力の高い強敵だ、咄嗟の判断力を鍛えるため編成は公開されない、こちらも同じ方針で行くが……詳しい編成などは追って伝える、以上だ」

「Weggetreten !」(解散!)



生徒「グロリアーナかぁ…勝てるかな」 

生徒「私たち一年生にはチャンスだよ、試合に出られたらの話だけど」

まほ(機動力重視…か、私の出番はなさそうだ)

生徒「お疲れ様西住さん」

まほ「ああ、お疲れ様」

まほ(私も帰るか……あれ?帽子がない、車内に忘れたか?)


~格納庫~


まほ「早めに戻らないとな…見つかると面倒だ」

まほ(ん…?)

まほ「これは…ティーガー…?」

まほ(凄いな、新品同様じゃないか、角型の防盾、色気のあるダークイエローに8.8cm……間違いなさそうだ)

まほ(212…?待てよ、確かどこかで…)


 「おい!そこで何してる!」


まほ「っ…まずい」

隊長「……西住か?」

まほ「お疲れ様です、隊長」カンッ

隊長「珍しいな、まだ残ってたのか、一体何の用だ?」

まほ「忘れ物を」

隊長「じゃあ何故ここで突っ立ってた」

まほ「いえ、その……」チラ

隊長「…ああ、こいつが気になるのか?」


まほ「新しく導入された戦車ですか?」

隊長「ああ、貴重なⅥ号戦車だ、詳しい事は知らないが、なんでも欧州のどこかから引き取ってレストアしたらしい」

まほ「ますます重戦車への偏重が進みますね」

隊長「言うじゃないか、実際、今回の練習試合はそれを危惧しての事もある、結局無駄に終わるかもしれないが」

隊長「…乗ってみるか?」

まほ「いえ、私はすぐに帰りますので」

隊長「そうじゃない、こいつで試合に出てみるかと言ってるんだ」

まほ「は?いえ、しかし……よろしいのですか?一年生にこんな貴重な車両を」

隊長「名家出身のスーパールーキーをいつまでも突撃砲に乗せておくほど私はバカじゃないぞ」


隊長「日ごろの練習を見るにその資格は十分ある、反対するやつもいないだろう」

まほ「…ありがとうございます」

隊長「決まりだな、君のチームにも伝えておいてくれ、足りない乗員はこっちで確保しよう」

隊長「試合までには88に慣れておけよ、期待してる」

まほ「了解しました、全力を尽くします……本当に無駄に終わりそうですね」

隊長「はっ、違いない」


まほ「そうして、私はあのティーガーに乗って試合に出ることになった」

エリカ「最初はⅢ突に?」

まほ「G型だったな、悪い車両じゃないがやっぱり砲塔が回るほうがいい」

まほ「肝心の試合だが、序盤は最悪だった、相手の土俵で勝負するのだから仕方ないかもしれないが、クロムウェルを中心とした部隊に機動力で完全に圧倒された」

まほ「ガタガタになった黒森峰は一時後退して故障した車両の応急修理と残った戦力の再編をすることになった」

エリカ「でも、後退する余裕はありませんよね?巡航戦車相手ならとても……」

まほ「ああ、そこでティーガーの出番だ、私たちは一両でグロリアーナを相手にすることになった」

一旦ここまで、土日にはまた上げます

投下いたします


 VOOOOM!

まほ「よし、生垣に車体を隠せ、ここなら見通しもいい、エンジンも切っておけ」

装填手「連中まだやってきませんね、お茶でも飲んでるんでしょうか」

まほ「そのうち来るさ、向こうも待ち伏せを警戒して迂闊に進めないのかもしれない」

通信手「こっちをナメてるだけかも」

砲手「有り得ない話じゃないな、あいつらいつも上から目線で鼻に付くんだ、『お嬢様』はどう思います?」

まほ「その呼び方はやめろと言ってるだろう」

砲手「どうして、本当のことだろ?」

まほ「それでもダメだ」

砲手「了解、車長殿」


操縦手「でもなんでこんな小さな村に陣取ったの?ちょっと進めば大平原、起伏はあるにしても見通しが良すぎる」

まほ「だからこそだ、ティーガーの装甲は確かに厚いが1度に何両も相手できるほどじゃない、囲まれれば終わる」

まほ「こいつが得意なのは長距離砲撃だ、8.8の高い精度と質のいい照準器で敵の数を減らす」

砲手「距離が遠ければ貫徹力も落ちるが巡航戦車の装甲なら問題ない、逆にこっちは撃たれても安心ってわけ」

操縦手「回り込まれたら?」

まほ「周囲一帯は湿地だ、簡単にはいかないだろうが、いずれは横を突かれるな」

操縦手「なるほど、上手くいけば良いけど」

まほ「あくまで足止めが目的だ、時間を稼げば十分さ」

通信手「んー、ここがマジノ線ってことかな」

砲手「せめてジークフリートにしてくれ」


装填手「そうだ、コーヒー飲みます?今朝淹れたばかりなんです」

まほ「代用コーヒーじゃないだろうな」

装填手「ちゃんとコーヒー豆からですよ、ビスケットもどうぞ」

砲手「私のも頼む」

通信手「あ、私も私も!」

操縦手(呑気なもんね……)

まほ「…美味しい」ズズ

装填手「はは、それはよかった」


まほ(ん…?)モグモグ

まほ「……!来たぞ!準備しろ!」

通信手「もう!?まだ全部飲んでないのに!」

まほ「距離4000!」ゴクゴク

砲手「ようやくお客様のご来店か」

操縦手「ウェイトレスは足りないけど?」

まほ「無駄口たたくな!エンジン始動!」


操縦手「暖機運転よし!アイドリング正常!」

まほ「通行税の高さを教えてやろう、徹甲弾装填!」

砲手「敵は?」

まほ「砲塔11時!3両来るぞ、クロムウェル…おそらくMk.Ⅲだ、距離3000!」

まほ「左から順に照準!」

砲手「了解!」

砲手「綺麗な横隊だ……随分余裕そうに走ってるな、奴らもう勝ったつもりでいるらしい」

まほ「そのようだ、では教育してやるか」


まほ「距離2000!撃て!」


 BRAM!

 BUH-KOOM!!

クロムウェル「」シュパッ


まほ「1両撃破!次発装填急げ!」

装填手「装填完了!」SHCOM!


 BAM! BAGOOOM!


まほ「2両目撃破!まだこちらに気づいていないようだ」

砲手「くそ、稜線の陰に隠れた!」

まほ「落ち着け、先に動くと不利だ」


まほ「敵の本隊が接近中、かなりの数だな、まだ増えるぞ」

操縦手「そろそろ後退?」

まほ「いや、まだここで踏みとどまる」

まほ「グロリアーナは別働隊を出したはずだ、あまり悠長にはやってられないが」

砲手「どれから狙えば良い?」

まほ「先頭のクルセイダー、距離2500!」


 DOOM! BAGOM!!


まほ「よし、3両目だ!」


 DOM! BAOM!


まほ「さすがに気づかれたか」


 QUWAM!


通信手「ひぃっ!」

まほ「この距離なら大丈夫だ、安心しろ」

まほ「砲塔1時!さっきのクロムウェルだ」

 QUiiiiii……

砲手「照準よし!」

まほ「Feuer!」


 BRAM! DOOOMM!!

クロムウェル「」シュパッ


まほ「砲塔1時クルセイダー、距離2000!撃て!」


 BAKOM! BTHOOOM!


砲手「よーし、やった!」

まほ(妙だな、いくらなんでもこんな馬鹿正直に突っ込んでくるか…?)

まほ「ん……?」

まほ(…っ!あれは…!?)

砲手「車長!まずいのがいるぞ!」

まほ「わかっている!」

 ZUVO! BAOM!

まほ「くそ!ファイアフライだ!」


まほ「スモーク散布!村の中まで後退するぞ!」

 POMPOM!

まほ「操縦手!全速!」

操縦手「Jawohl!」

 VUOOOOOMM!

まほ「一本道でもう一度迎え撃つ、瓦礫で車体を隠せ」

装填手「ここまで入ってくるでしょうか」

まほ「向こうも急いでるだろうからな、通信手!本隊の状況は?」

通信手「あと30分はかかるって!」

まほ「急がせろ!5分でも長過ぎる!」


 VOOOOOM!

まほ「来たぞ!撃て!」


 DOM! BAKOOOM!


まほ「一両やった!次!」

砲手「数が多過ぎる!」

まほ「前方に3両!右に照準!撃て!」

 DOOOOM! 

クロムウェル「」シュパッ


まほ「増えてきたな、反転しろ、路地へ逃げ込め!」


 VUOOOOOMM! ZUVO! DOM!


操縦手「その後はどうするの?」

まほ「今考えてる」

操縦手「頼もしいわね」

まほ「うるさいな……」


まほ「Halt!Halt!」(停止!)

操縦手「…見失ってくれたかしら」

通信手「だといいけどね」

まほ(もう少し粘れると思ったが、まさかファイアフライがいるとはな…)

まほ(どうするか…クロムウェルだけならまだしもコメットも数両見えた、飛び込むにはリスクが高い)

まほ(6ポンドだって絶対に貫通しないわけじゃない、この状況で正面からは…)

装填手「大丈夫ですか?」

まほ「……あぁ」

装填手「そうは見えませんけど」

まほ「焦ってるように見えるか?」

装填手「見えますよ、今までで一番怖い顔してます」


砲手「大事な試合で緊張するのは分かるけどしっかりしてくれ」

まほ「お前に言われなくても…」

操縦手「らしくないわね、常に冷静、冷徹、冷血ってイメージだけど」

まほ「サイボーグじゃないんだぞ」

砲手「なんにせよ、お前がいないと私達は戦争が出来ないんだ」

まほ「…ああ、お前には私の守護天使になってもらう」

砲手「喜んで」

まほ「ふー…よし、中速前進、側面から飛び込む」

操縦手「了解」

装填手「危険過ぎるのでは?」

まほ「リスクを恐れていては結果は得られない」

装填手「『計算されたリスク』ってやつですか」

まほ「ジョージ・パットンか、良い言葉だな」

砲手「らしくなってきたじゃないか、温室育ちは困るね」

まほ「お前は少し黙ってろ」


VRROOOOOOMM!!

まほ「増速!Los!Los!」

操縦手「敵の車列!」

まほ「最後尾にぶつけろ!増速!」

操縦手「つかまってて!」


CRASH!!


聖グロ車長「うわわ!倒れるぞ!」

聖グロ生徒「くそ!ジャガイモ野郎め!」



まほ「コメットに照準!撃て!」

BRAM!!

コメット「」シュパッ


まほ「次!右だ!」

装填手「装填完了!」SHCOM!

まほ「撃て!」

BAM!


クロムウェル「」シュパッ


DOM! QUWAM! ZUVO!


まほ「どうした撃ち返せ!」

砲手「無理だ!今ので照準器がダメになった!」

まほ「ちっ、零距離!右6度修正!」


まほ「Feuer!」


 BUH-KOOOOM!!


まほ「上出来だ!逃げるぞ!」


 VUOOOOM!


聖グロ車長「なんって奴らなの!」

聖グロ生徒「さっきからあれ一両にやられてます!」

聖グロ車長「ダージリンは!?」

聖グロ通信手「今到着したそうです!」


 VORRRRRR……

砲手「どうするんだ?まともに照準もできないんじゃ限界がある」

まほ「機を見て再度突入する」

砲手「照準器が壊れたって聞こえなかったか?」

まほ「敵を混乱させ続けるほうが重要だ、接射なら狙う必要もないだろう」

操縦手「撃って逃げての繰り返しか、いいの?」

まほ「勝算もないのに正面から出て行っておしまいか?」

操縦手「ってことはまだ勝算はある?」

まほ「多分な」

 GAM! QRRRRR

通信手「な、なに!?」

操縦手「動かない!履帯が逝ったかも!」

まほ「……転輪ごと外れてる、こんな時に!」


 VORRRRRR……

砲手「どうするんだ?まともに照準もできないんじゃ限界がある」

まほ「機を見て再度突入する」

砲手「照準器が壊れたって聞こえなかったか?」

まほ「敵を混乱させ続けるほうが重要だ、接射なら狙う必要もないだろう」

操縦手「撃って逃げての繰り返しか、いいの?」

まほ「勝算もないのに正面から出て行っておしまいか?」

操縦手「ってことはまだ勝算はある?」

まほ「多分な」

 GAM! QRRRRR

通信手「な、なに!?」

操縦手「動かない!履帯が逝ったかも!」

まほ「……転輪ごと外れてる、こんな時に!」


操縦手「無茶し過ぎたわね、こいつのサスペンションは余裕がないし」

砲手「これでも勝算はあるって?」

まほ「さっき黙れと言ったな!命令はまだ有効だ!」

砲手「はいはい」

装填手「リカバリーの時間なんてありませんし、このままでは……」


VORRRRRR―――……


まほ「……!前方敵戦車!早く乗れ!」

砲手「なんだ?見慣れないな」

操縦手「あの戦車…チャーチルとは違うみたいだけど…」

まほ「ブラックプリンスだ、後続にチャーチルもいる、まずいな…」


~ブラックプリンス車内~


ダージリン「前方に敵車両、例のタイガーね」

ダージリン(あら、履帯が…?)

操縦手「接近しますか?」

ダージリン「そうね……APDS装填!」

 DOM!  KAM!

装填手「撃ってきましたね」

アッサム「発砲許可を!」

ダージリン「待ちなさい、あの砲ではこちらの正面装甲は貫けないわ」


 BAM!  QUWAM!

まほ「…ダメか」

砲手「クソ!あのタンニン中毒共!練習試合だってわかってるのか!?」

操縦手「次に期待ね」

砲手「次があってたまるか!」

通信手「ティーガーで暴れてる私たちも大概じゃないかな……」

装填手「なんで向こうは撃ってこないんでしょう?」

まほ「わからないな、砲弾を積み忘れたか」

操縦手「正々堂々が登録商標らしいわよ、ホントかどうか知らないけど」

 BRAM!  GUM!

砲手「埒が明かない!」

まほ「装填手!硬芯徹甲弾装填!」

装填手「了解!」KOM!

砲手「そんなもの積んでたのか、貫けるのか?」

まほ「カタログスペックではギリギリな、まぁ賭けだ」

砲手「不利なオッズだと思うけど…」

まほ「配当は大きいぞ」

 VORRRRRR……

砲手「なんだ…?停止したぞ」

操縦手「車長が出てきた」

まほ「一体なんのつもりだか……砲手、いつでも撃てるようにしておけ」ガコン

砲手「jawohl!」


ダージリン「あなたが車長ね?」

まほ「…なにか?」

ダージリン「そちらは身動きが出来ない上、こちらの装甲を貫けるほどの火力が無いとお見受けしましたが」

まほ「どうかな」

まほ(この距離なら……いけるか)

ダージリン「我々は騎士道精神を重んじていますの、降伏をお勧めするわ」

まほ「……」

まほ「左3度修正、俯角2度」ボソボソ

ダージリン「…お返事は?」

まほ「…高射砲でも撃ち抜けない戦車を用意するのはどうかと思うが」

 Quiii……

砲手「照準完了」

ダージリン「あら、こんな言葉をご存知かしら?『All is fair in love and war.』愛と戦争には――――」

まほ「Feuer!!」


 BAGOOOOOMM!!


ダージリン「え…?」

まほ(どうだ…!)


ブラックプリンス「」シュパッ


砲手「やった!間抜けで助かった!」

通信手「ちょ、ちょっと卑怯じゃない?」

操縦手「あんなもの持ってくるほうが汚いわよ」



ダージリン「そ、そんな……」

まほ「まだ終わってないぞ!」


まほ「砲塔7時ファイアフライ!旋回急げ!」

操縦手「奴らご丁寧に待機してたみたいね」

砲手「ダメだ!間に合わない!」


 BAM!  DOOOOMM!! 


ティーガー「」シュパッ



まほ「ゲホッゲホッ…ああっ、くそっ……全員生きてるな」

砲手「あー、返事は後でな……」

通信手「頭ぶつけた…」

操縦手「見事にやられたわね」

まほ「12号車より1号車へ、聞こえるか?」

黒森峰生徒『こちら1号車、どうぞ』

まほ「すまないが撃破された、そちらの状況は?」

黒森峰生徒『たったいま全て終わったところです』

まほ「よかった、では後は任せる、幸運を」

黒森峰生徒『はい、お疲れ様でした』

まほ「とりあえず義務は果たしたか……」

装填手「これだけやれば上出来だと思いますよ」

まほ「そう思いたいな、みんなよくやった、降りて破損箇所を調べておこう」


まほ「よっ…と」ストン

砲手「血が出てるぞ、大丈夫か?」

まほ「ああ…小石か何か跳ねたんだろう、着弾の衝撃で頭が少しふらつくが問題ない」

砲手「いつまでも頭を出してるからだ、消毒くらいはしておいたほうがいいんじゃないか」

まほ「嬉しいな、お前が私を心配してくれるとは」

砲手「お嬢様のお顔に傷がつけば誰だって心配しますよ」

まほ「馬鹿言え」

操縦手「あ~あ、こりゃひどいわね、エンジンに直撃してる」

通信手「整備の人たちから文句言われるよ」

砲手「手伝う羽目になりそうだな…めんどくさい」

まほ「自分の車両くらい自分たちで整備できたほうが都合がいいさ」


ダージリン「失礼、少しよろしいかしら」

アッサム「どうも」

まほ「あ…さっきの…」

砲手「相手にすると面倒くさそうだな、任せる」ポン

まほ「あ、おい!」

ダージリン「あら…あなたまさか西住流の?」

まほ「ええ、まあ…それが何か?」

ダージリン「いいえ、もっと正々堂々とした戦いをするものだと思っていたからちょっと意外で」

アッサム「こ、こら、やめなさいよ」

まほ「チャンスを最大限活用しただけだ、それに『一度抜いた剣は勝つか死ぬまでは棄てるな』と言うだろう、確かチャーチルの言葉だったと思うが」

ダージリン「こ、これは一本取られましたわね……まぁいいわ、実力は確かみたいだし」

ダージリン「貴女、紅茶は好きかしら?」

まほ「……?いや、どちらかといえばコーヒーのほうが」

ダージリン「なら丁度いいわ、あんな泥水はやめてこっちにしなさい」サッ


ダージリン「オススメの茶葉よ、お口に合えばいいけれど」

まほ「……どうも」

ダージリン「ミルクは先入れのほうが美味しいわよ、それじゃあ、また戦う日を楽しみにしてるわ」

まほ「ああ」

アッサム「ごめんなさいね、彼女も悪気はないんだけど…」

まほ「別に気にしてない」


砲手「どうだった?」

まほ「なんだかよくわからないが、茶葉をもらった」

砲手「茶葉?紅茶の?」

まほ「それも随分高そうなやつだ、ほら」

砲手「はは、確かにお嬢様にはコーヒーよりそっちの方が似合うな」

まほ「からかわないでくれ、大体紅茶の淹れかたなんて知らないぞ」

砲手「今から練習しておいたらどうだ、男にモテるかも」

まほ「冗談だろう……」


まほ「……それからすぐに本隊が到着してグロリアーナを奇襲する形になった」

まほ「ティーガーが暴れまわって混乱した状態だったから対処が遅れたんだろうな、向こうも一年生ばかりだったから無理もない」

エリカ「試合の結果は?」

まほ「なんとか勝ったよ、ティーガーはエンジンを撃ち抜かれておまけに無茶をやり過ぎて足回りもボロボロだった、延々と愚痴を聞かされながら修理を手伝ったのは良い思い出かな……」

エリカ「結構な泥仕合だったんですね…」

まほ「『期待してたのと違う』か?」

エリカ「へっ?え、ええ、まあ……」

まほ「ふっ、所詮そんなものだ」


まほ「いつも思うことだが、私はあまり指揮官には向かない性格なんだろうな」

エリカ「……そんなこと隊長が言ったら、私はどうなるんです」

まほ「お前のほうが素質はあるんじゃないか?もう少し落ち着けばの話だが」

エリカ「え?」

まほ「私は優秀な指揮官の下で戦ってるほうが好きだ、ある程度自由にやれるしな」

まほ「エリカは判断が早過ぎるんだ、悪いことじゃないがもう少し冷静になったほうがいいぞ」

エリカ「う…わかっているつもりなんですけどね……」


まほ「さ、はやく昼食をとって練習に戻ろう、いい時間だ」

エリカ「そういえば、午後からは試合形式の練習でしたよね?」

まほ「ああ、どうかしたか?」

エリカ「隊長のティーガーと一年生で試合するのはどうです?」

まほ「馬鹿言うな、そもそも乗員が足りないだろう」

エリカ「私が砲手やりますよ、あとは優秀な一年生を選んで隊長の実力を見せ付けてやりましょう」

まほ「見せ付けてどうなる、まったく……さっさと食べるぞ、ちょっと飲み物を買ってくる」ガタッ

エリカ「あ、待ってくださいよ!いいじゃないですか、たまには変則的なルールでも…」ガタン

まほ「役に立たないことを練習しても仕方ないだろう」

エリカ「一対多での戦闘のなんたるかを……」

まほ「私はヴィットマンじゃないんだ、無茶言うな」



その日の午後、8.8cmの砲声と一年生の悲鳴が晴天に鳴り響いた


 完

お付き合い頂いた方ありがとうございました、投稿をミスるうえにオチが弱いですが勘弁してください

カッコいいお姉ちゃんを書こうと思ったら随分男っぽくなったけど元々男前だからしょうがないね

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom