レオン・S・ケネディ「想像していた初日とは全く違うな……」 (28)

ラクーンシティ 道路 車内

運転手「ふんふふーん」

『嘘じゃない! この目で見たんだ!』

『ええ、信じますよ。もちろん。もっと詳しく話していただけますか?』

『先週の金曜の夜、パブから帰る途中……女が歩いてきたんだ……。ふら付いているから酔っていると思った』

『ハッハッハッハ。自分こそ酔っていたんじゃないんですか? 何杯飲んだんです?』

『いや、一滴も飲んでなかった』

『またまたぁ』

『まぁ聞いてくれ。その女が近づいてきたから、そいつの目や鼻を見たんだ。まるで顔全体が腐ってるようだった。まるで死人さ! 歩く死体みたいで!』

運転手「ハハッ。カミさんみたいだ」

『この世のものじゃない! その夜はねむれ――』ガガッピーッ

運転手「ん? 故障か? なんだよ、いいとこだったのに!」カチッカチッ

運転手「ふわぁ……眠い……。今月も残業は100時間ぐらいいきそうだなぁ……」

バァン!!!

運転手「なっ……!? やっちまった!?」

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運転手「そんな……!」

女性「……」

運転手「嘘だ……そんな……そんな……はぁ……はぁ……」

運転手「いき、てるか……?」

女性「……」

運転手「あ……あぁ……」

運転手「なんてこった……あぁ……神様……」

運転手「どうしたらいい……。どうしたら……」

運転手「逃げるか……会社の所為にしちまうか……。そうだ……そうしよう……」

女性「……」ムクッ

運転手「大体、殆ど眠らずにこんなクソ田舎まで行かされて……こうなることだって会社は予測できたはずだ……」

運転手「だから、こんな見ず知らずの人が俺のカミさんそっくりな顔になっちまったんだ……!!」

運転手「全部……全部、あのクソ社長がわりぃんだ……!!」

女性「ウゥゥ……」

運転手「え――」

ガゾリンスタンド

レオン(結構遠いんだな……ラクーンシティ……。そろそろ燃料が切れそうだ)

レオン「この辺りにガソリンスタンドが……。ああ、あった」

レオン「……」

レオン「おい、誰かいないのか?」

レオン「……」

レオン「勝手に給油させてもらうぞ?」

レオン「……」

レオン(セルフとは書かれていないが……。田舎になるとサービスまで落ちるものなのか?)

レオン「街灯もないし、夜のガソリンスタンドは気味が悪いな……」

レオン「ん? パトカーが止まってるな。何か事件が――」

パリンッ!!!

レオン「ん?」

レオン「なんだ……?」

レオン(何か起こっていそうだな。初日にして初任務がここになりそうだ)

店内

レオン「……」ガチャッ

レオン「誰か、いないのか?」

店員「うぅぅ……」

レオン「大丈夫か?」

店員「い、いきなり……客が……」

レオン「客?」

店員「あ、あっちに……警官もいる……」

レオン「わかった。動かないで。すぐに戻る」

店員「ぐっ……うぅぅ……」

レオン(救急スプレーがあればよかったが……。店内にあるだろうか……)

警官「じっとしてろ!!!」

客「うぅぅぅ……!!!」

レオン「どうかしましたか?」

警官「だ、誰だ!? いや、大丈夫だ! 下がってろ!!」

客「うおおおおお!!!!」

警官「うわぁ!?」

レオン「おい!! 何をしている!!」

客「おおおおおおお!!!!」

警官「うわぁぁぁ!!!」

レオン「やめろ!! 離れるんだ!!!」

グチュ! ブチュ! ブリュ!

警官「たすけ――」

レオン「なんなんだ……!?」

客「み、たな……」

レオン「とまれ!! 撃つぞ!!」チャカ

客「うぅぅぅ……」

レオン「仕方ない!!」

バンッ!!

客「うっ!? うぅぅ……」ヨロヨロ

レオン(威嚇射撃でも動じないのか……!!)

客「うぅぅぅ……」

レオン(怪我人もいる……。ここは一度外にでて、応援を呼ぶか……。弾薬にも限りがあるしな……)

レオン「ここで待っていろ!!」

客「うぅぅぅ……」

レオン「なにがどうなっている!?」

店員「うあぁぁ……」ヨロヨロ

レオン「おい!! どうした!?」

店員「うわぁぁ……」

レオン「これは……」

レオン(俺の想像もつかないことが起こっているようだな……)

レオン「今はとにかく外へ――」

ガチャッ

レオン「……!!」チャカッ

クレア「撃たないで!!」

レオン「しゃがめ!!!」

クレア「きゃぁ!?」

バァン!!!

「うおっ!!」

レオン「大丈夫か!?」

クレア「ええ、なんとか……。ありがとう」

レオン「礼を言うのはまだ早そうだ」

「おぉぉぉ」

「うわぁぁ」

「うぅぅぅ」

レオン「君の連れかい?」

クレア「まさか。もっと力強い人が好みなの」

レオン「だったら、逃げるしかないな。あのパトカーに乗り込むぞ」

クレア「わかった!」

「おぉぉぉ!!」

車内

レオン「なんとか振り切ったな」

クレア「何が起こってるの?」

レオン「分からない。俺もついさっきこの街に来たばかりでね」

クレア「あぁ……。そうだったの」

レオン「レオン。レオン・S・ケネディ。君は?」

クレア「クレア・レッドフィールド。あなた、警官?」

レオン「ああ。今日が初日だった」

クレア「大変ね」

レオン「全くだ。君は何故、あいつらに追われていたんだ?」

クレア「お腹を押さえて座り込んでる人がいたから声をかけたの。大丈夫ですかって。そしたら、いきなり、がおーっ!って」

レオン「よくわからないな」

クレア「私も」

レオン「君は何しにこの街へ?」

クレア「兄を捜しにきたの。彼も警官。ああ、そうだ。ねえ、レオン? クリス・レッドフィールドって人のこと聞いたことない?」

レオン「すまない。先輩の名前はまだ誰も知らないんだ」

クレア「そっか……。ありがとう」

レオン「署に行けば何か分かるだろう。送っていく」

クレア「レオンに出会えて幸運だったかも」

レオン「かもな」

クレア「ふふっ」

レオン「しかし、油断はしないほうがいい」

クレア「でしょうね。だって――」

『市民の皆さん、大規模な暴動が発生したため、ラクーンシティ警察署へ避難することをお勧めします』

クレア「普通、こんな放送聞けないもの」

レオン「ああ……。どういうことなんだ……。街もめちゃくちゃだ……」

クレア「嘘でしょ……。信じられない……」

レオン「もうすぐ署につく。そこで情報を集めよう。クレアはどうする?」

クレア「兄がいてくれたらいいけど……」

レオン「この状況だと交通整理にも借り出されてはいないだろうな」

ラクーンシティ

レオン「バリケード……。車ではこれ以上、進めそうにないな」

クレア「どうする?」

レオン「歩くしかなさそうだ」

「うぅぅぅ」

「おぉぉぉ」

クレア「走る、の間違い?」

レオン「ああ、そうだな」

「うおぉぉぉ!!」

「わぁぁぁ!!!」

レオン「なんだ!?」

クレア「ちょっと!?」

「うわぁぁぁ!! あぁぁぁぁぁ!!!」ガンッ!!ガンッ!!!

「たすけ……て……ぇぇぇ……おまわり……さぁぁ……!!!」ガンッガンッ!!!

クレア「レオン!! 早く、バックして!!」

レオン「ああ!! 掴まってろ!!」

ブゥゥゥン!!!

クレア「え……? レオン!! 後ろ!!」

レオン「なに……!?」


運転手『やべぇ……!! あれはカミさんみたいになった女じゃなくて、カミさん本人じゃねえか……!! なんでこんなところにいるんだよ……!!』


クレア「突っ込んでくる……!?」

レオン「マジか! 降りるんだ! 早くしろ!!」

クレア「そんなこといっても……!?」ガチャガチャッ

「うわぁぁぁ」

クレア「開かない!!」

レオン「くそっ!!」

「たすけ……てぇぇ……」


運転手『はぁ……はぁ……。さすがにもうふりきった――』

『だれが……くさったかおですってぇぇぇ……!!』ガバッ

運転手『ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!』


レオン「ぶつかる――」

ガシャン!!

レオン「ぐっ!?」

レオン(い、今の内に……外へ……)

レオン「はぁ……はぁ……」

ドォォォン!!!

レオン「ぐっ……!? 車が……!! クレア!! 無事か!!」

クレア『レオーン!! 私は平気!! あなたは!?』

レオン「俺も大丈夫だ!!」

クレア『よかった!』

「うわぁぁ……」

「おまわりさぁぁん……」

レオン「ここは危険だ!! 早く離れろ!!」

クレア『ええ! 警察署で会いましょう!!』

「うぅぅぅ」

「おぉぉ」

レオン「くそ……。どうしてこんな……!!」

レオン(とにかく今は警察署に向かうしかない)

レオン「すぐそばのはずだ……!!」


クレア「レオン……。無事でいてね……」

クレア(こんなところにクリスがいるの……?)

クレア「もし居ないにしてもどこに行ったのか手がかりぐらいは見つけないと。お母さんも心配してるし」

「おぉぉぉ……」

「たすけ……たすけ……」

クレア「まずは自分の身を守らないとね」


運転手「うぅぅ……はぁ……はぁ……にげないと……にげ……」

「ゆる……さない……」

運転手「だ、だれかぁぁ!!」

警察署内

レオン「はぁ……はぁ……。なんとか、辿り着いたな……」

レオン「誰か!! 誰かいないのか!!」

レオン「……」

レオン(警察署なのに誰もいないなんて、あるか……?)

レオン「ん? これは……」カタカタ

レオン「署内の監視カメラか? まだ誰かいるはずだ」

エリオット『デビット!! マービン!! みてるか!!』

レオン「これは……」

エリオット『脱出路がわかった!! ここに!!』

エリオット『だから、はやく!! 東の廊下だ!!』

レオン「彼を見つけないと……」

レオン「東の廊下はこっちか」

レオン(彼なら何か知っているはずだ)

レオン(今ここで、何が起こっているのか……)

廊下

レオン「こっちのはずだが……」

エリオット『開けてくれ!!! 早く!! 開けろ!!!』

レオン「こっちか!」

エリオット『頼むからシャッターをあけてくれ!! 誰かー!!!』

レオン「今開ける!!」

エリオット『だ、誰だ!?』

レオン「自己紹介はあとだ! すぐにあける!!」

エリオット『こ、この際誰でも良い!! 早く開けてくれ!!!』

レオン「わかった!! 待っていろ!!」ガシャンッ

レオン「くっ……。かなり重いな……」

エリオット『頼む!! はやく!! 助けてくれ!!』

レオン「すまない!! 一緒に持ち上げてくれないか!! 一人では難しい!!」

エリオット『そ、そんなことできるわけないだろ!! たのむ!! なんとかもちあげてくれぇ!!』

レオン「そんなに逼迫してるのか!? わ、わかった、なんとか持ち上げる!! くっ……うっ……!!」ググッ

エリオット『はやく!! もう……!!』

レオン「ぐっ……!!」ガシャンッ

レオン「よし!! 少しだけもちあがったぞ!!」

エリオット「はやく!! はやく!!」

レオン「つかまれ!!」ガシッ

エリオット「た、たのむ!!」

レオン「こちらに引っ張る!! そっちの手も!!」

エリオット「あ、あぁ――」

ブチュ!! バチャ!! グチュ!!

エリオット「あぁぁあああああああ!!!! うわぁぁああああああああああああ!!!!

レオン「しっかりしろ!!」

エリオット「お、おれのことはいい!! もういけ!! これを、この手帳をマービンに……!!」

レオン「諦めるな!!」

エリオット「もう手遅れだ!!! あぁ……あぁああああああああああああああ!!!!」

ブチュチュ!! グチュ!!

レオン「な……!?」

エリオット「う……おぉぉ……」ピクッピクッ

レオン「なんだ……なんなんだ……」

レオン「この手帳……。なにか描かれているが……」

レオン「マービンか……。必ず、渡す」

エリオット「おっ……おっ……」ピクピクッ

バンッ!!

レオン「なに!?」

警官「うぁぁぁ……!!」

レオン「ちっ!!」ダダダッ

警官「うぁぁぁ」

レオン「この世界はどうなったんだ!!」

バリーン!!!

レオン「窓からもか!?」

「うぅぅ……たすけ……てぇぇ……」

メインホール

レオン「はぁ……はぁ……。」

マービン「シャッターを閉める。どけ」

レオン「え?」

ガシャン!!

マービン「こうしておけば、しばらくは安全だ。はぁ……はぁ……」

レオン「助かった……」

マービン「マービン・ブラナーだ」

レオン「レオン・ケネディ……。もう一人、警官がいた……でも……」

マービン「お前は悪くない、レオン」

レオン「しかし……」

マービン「俺は再三忠告した。その先は地獄だぞってな。エリオットはこの先にきっと脱出路があるからと聞かなかった」

レオン「そう、なのか」

マービン「向こうの廊下にはないからな……。そんなことより、お前の制服が届いている。着るか?」

レオン「ああ。雨ですっかり濡れてしまって、着替えたいと思っていたところです」

レオン「着替えました」

マービン「よく似合ってる」

レオン「ありがとうございます。あの、こうなった原因は?」

マービン「さぁな。分かっているのはここじゃ用心していないとやられちまうってことだけだ」

レオン「先週から出勤のはずが待機命令が出て……」

マービン「俺が出した」

レオン「何故?」

マービン「ご覧の通りだからだ」

レオン「もっと早く来ていれば……」

マービン「命令も守れない新米に助けを求めた覚えはない」

レオン「警部補……!!」

マービン「ここから出る方法を探せ。エリオットが調べてくれたようだからな」

レオン「では、一緒に」

マービン「俺のことはいい。放っておいてくれ。ぐっ……!! うぅぅ……」

レオン「置いて行くわけには……」

マービン「いいんだ」

レオン「しかし、ずっと腹部を押さえていますし……。ここを出て病院に――」

マービン「いいか!! これは命令だ!! お前は自分の身を守れ!!」

マービン「俺が行けば足手まといになる……。いや、俺はここから動くこともできない……」

レオン「警部補……」

マービン「新入りに餞別だ。このナイフをもっていけ」

レオン「でもこれは……」

マービン「受け取れ」

レオン「……」

マービン「俺の二の舞にはなるな」

レオン「……!」

マービン「うっ……ぐぅぅ……うぅぅ……」

レオン「行ってきます。脱出路が見つかれば報告します」

マービン「必要ない。行け」

レオン「……了解」

ラクーンシティ 市内

エイダ「酷い有様ね……」

エイダ「ウィリアム……それからアネット……。良い仕事するわね……」

シェリー「はぁ……はぁ……ママ……パパ……」

エイダ「あれは……。間違いない、アネットの……」

シェリー「この街、どうなってるの……だれか……助けて……」

エイダ「シェリー・バーキンね」

シェリー「え!? だ、だれ……?」

エイダ「私はこういうものよ」

シェリー「えふ、びー、あい……?

エイダ「一緒に来てもらおうかしら」

シェリー「ど、どうして?」

エイダ「あなたのママに用事があるからよ」

シェリー「や、やだ!」タタタッ

エイダ「逃げられると思ってるの?」

エイダ「逃げられちゃったわ……。逃げ足だけは早いわね。母親譲りかしら……」

エイダ「かくれんぼは終わりよ!! 出てきなさい!!」

シェリー(やだ……きっと悪いおばさんなんだ……隠れなきゃ……隠れなきゃ……)

エイダ「こんなことしている時間はないのに……」

ズンッ……ズンッ……

エイダ「あら、懲りないのね」

タイラント「……」

シェリー(な、なに……? あの大きな人……!?)

エイダ「捕まえてごらんなさい」

タイラント「……」チラッ

シェリー「……!?」

シェリー(目が合った……!?)

タイラント「……」ズンッズンッ

エイダ「ほら、こっちよ」タタタッ

シェリー(あ、れ……? 今、見つかったと思ったのに……気のせいだったのかな……?)

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