【某撮影スタジオ】
P「おはようございます。」
早坂「あっ、プロデューサーさん、おはようございます!」
早坂「撮影の依頼ですか?今週は多いですね。」
P「ええ…おかげさまでね。」
早坂「それでは、早速写真を撮ってきますね。」
早坂「……お待たせしました!楽しそうなところが撮れましたよ!」
P「早坂さん。ちょっと。」
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早坂「どうかしましたか?」
P「どうしたも何も、また楽しそうなところ、ですか。」
早坂「ええ、普通の写真より良い仕事ができました。大当たりです!」
P「大外れだよ。」
P「今月何回依頼したと思っているんですか。また天井ですか?」
早坂「待ってください。300回くらい撮影すれば、調子が出てくるので。」
P「それを天井って言うんだよ。」
早坂「でも見てくださいよ。悪い写真じゃないでしょう?」
P「それはまぁ…そうですね。」
P「この写真とか良い笑顔だと思います。SRですが。」
早坂「ふふふ、他の依頼者からもよく褒められるんです。」
早坂「そらさんは良い表情や楽しそうなところを撮る天才だな、って。」
P「褒められてねーよ。皮肉言われてんだよ。」
P「あのですね、たまには最高の一枚を撮ってほしいんです。」
早坂「前回は撮ってみせたじゃないですか。」
P「確かに、前回はSSRを撮影していましたね。」
P「でも、あれって前にも撮った写真ですよね。」
早坂「…………。」
P「撮影したとか言っているけれど、ただの焼き増しでしょ?」
早坂「まさか!たまたま同じ構図で最高の一枚が撮れただけです!」
P「最高を塗り替えていけよ。」
P「知ってます?今、うちのアイドルが特撮のお仕事をやっているの。」
早坂「アイドルヒーローズですよね。もちろん知っています。」
P「だったら、その仕事の様子を撮ってくれてもいいんじゃ…。」
P「具体的には歌織さんとか真とか。」
早坂「撮ってますよ?」
P「えっ。」
早坂「桜守さんならこれ。菊地さんならこれとか良いですね。」
P「あるじゃないですか!これくださいよ!」
早坂「駄目です。」
P「どうしてですか!?」
早坂「撮ったには撮ったんですが、まだ満足できる出来じゃないというか。」
早坂「これを最高の一枚とするのはプロとして許せません。」
P「同じ写真を提出するプロが何言ってんだ。」
P「俺もプロです。プロとしての拘りというのは理解できますよ。」
P「ですが、最低限顧客が求める物を提供できてこそ、プロってものでしょう?」
早坂「…わかりました。ですが、この写真は出来損ないです。見せられないです。」
早坂「明日またここに来てください。最高の1枚をお見せしますよ。」
P「よろしくお願いします!」
【翌日】
早坂「みんなのエグい表情が撮れました!」
P「待って。」
P「あの…何て言いました?」
早坂「エグい表情が撮れました!」
早坂「言い換えると、苦しそうなところが撮れました!」
P「怖いよ!うちのアイドルに何があったんだよ!」
早坂「お腹を空かせて、楳図か◯お先生の画風の顔になっています。」
P「スニッカー◯コラボじゃねーか!」
早坂「それだけじゃないんですよ!本当に苦しそうな表情がいっぱいなんです!」
P「目を輝かせながら何言ってんだ!?」
P「まぁいいや。とりあえずスニッ◯ーズコラボ以外の写真を見せてください。」
早坂「はいどうぞ。いつも通り裏向きにお渡ししますね。」
P「あれ?写真の色がいつもと違いますね。いつもは銀とか金なのに。」
早坂「虹を忘れていませんか?」
P「虹なんて滅多に無いだろ。」
P「赤とか黒とか…これってどういうレアリティなんですか?」
早坂「R(レアリティ)じゃなくてR(レーティング)です。」
P「レーティング!?」
早坂「赤がR-15Gで、黒がR-18Gですよ。」
P「G!?うちのアイドルは無事なのか!?」
早坂「あれをアイドルと呼んでいいかは、少し疑問ですけどね。」
P「本当に何があったんだよ!?」
早坂「なんて、冗談ですよ。」
早坂「本当は、普段の写真と差別化するために色を変えているんです。」
早坂「赤がR、黒がSRと思ってください。」
P「それでもSSRは無いんですね。」
早坂「それだったら『最低の1枚が撮れました』って言いますよ。」
P「何だよ最低の1枚って。」
P「それじゃあ早速中身を見てみますね。」
P「…何ですか、これ?紬が頭を抱えていますが。」
早坂「バトルシーンで誤って頭をぶつけた時の写真ですね。」
P「これは?ジュリアが口から水を吐いていますが。」
早坂「撮影中に海に落ちた時の写真です。」
P「…これは?茜が目を回して倒れていますが。」
早坂「時計台から落ちた時の様子です。」
P「ただのNGシーンじゃねぇか!」
早坂「ちなみに、こういうシーンはまとめてエンディングで流すらしいですよ。」
P「アイドルのイメージが壊れるわ!ちょっと抗議の電話入れてきます!」
P「何というか、すごい写真ばかりですね。」
早坂「満足していただけましたか?」
P「すると思いますか?」
P「すみませんが、この写真はお返しします。」
早坂「えっ、どうしたんですか?レアリティに不満でも?」
P「それは今に始まった話じゃない。」
P「そもそも、最高の一枚をお願いしただけで、NGシーンなんて頼んでないです。」
早坂「このフグみたいに水吐いているシーンとか最高じゃないですか?」
P「そういう最高を求めてねぇんだよ。」
早坂「でも、確かにその通りですね。」
早坂「写真のインパクトばかりを優先して、被写体を活かすことを忘れていました。」
早坂「これじゃあプロのカメラマン失格ですね…。」
P「早坂さん…。」
早坂「お願いします。もう一度だけ、私にチャンスをくれませんか?」
早坂「明日こそは、最高に素敵な1枚をお渡ししてみせます…だから!」
P「…その本気の目、プロの目って感じがします。」
P「わかりました!俺、貴方を信じます!」
早坂「ありがとうございます!楽しみにしてくださいね!」
【翌日】
早坂「みんなの良い表情が撮れました!」
P「お前いい加減にしろよ。」
P「昨日あんなこと言っておいて、またそれですか!」
早坂「私はこういうカメラマンですから!」
P「開き直るな!」
P「まったく、いつもいつも良い表情って!それ以外出来ないんですか!?」
早坂「これしか、出来ない。これなら、負けない。」
P「負けてんだよ!」
P「もう結構です。俺、別のカメラマンを探しますから。」
早坂「あ、待ってくださいプロデューサーさん。」
P「何ですか?俺はもう貴方に頼むつもりは…」
早坂「これをどうぞ。今日お渡しする写真です。」
P「そういえば受け取っていませんでしたね。でも、どうせ金蝶々…。」
P「…あれ?」
早坂「どうですか?この桜守さんとか菊地さんとか。」
早坂「すごく『良い表情』でしょう?」
P「……早坂さん。」
早坂「何でしょうか?」
P「これからも、よろしくお願いします。」
───早坂そらを信じろ───
【終わり】
以上です。
俺の早坂そらは最強なんだ。
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