本作は、ゲゲゲの鬼太郎第4期のSSとなります。
以下は、読む前に把握して欲しい事です。
1.タイトル通り、ねこ娘が鬼太郎にお返しのプレゼントを探そうという内容で、一応キタネコのつもりです。
2.世界観はアニメ本編が終了してから年月が経った2019年現在という設定ですが、鬼太郎達は妖怪なので当時と姿は変わっておりません。
3.4期以外のキャラクターやネタも出てきます。
以上を把握の上で、ご覧下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1556683643
―妖怪アパート―
砂かけ婆「なに?鬼太郎にお返しをあげたいとな?」
ねこ娘「うん、そうなの。けど、どうにもいいのが思い浮かばなくて……」
砂かけ婆「だから、わしらに相談しに来たわけか」
子なき爺「しかし、何だって急にそんな話しになったんじゃ?その辺の経緯を説明してくれんか」
ねこ娘「実はこの間、あたしの為に新しいリボン買ってきてくれたの」
「ほら…前の奴、長年ずっと着けてて、ボロボロになっちゃってたから」
子なき爺「言われてみると、確かに前のより綺麗なリボンになっとるな」
砂かけ婆「要するに、そのリボンに見合ったお返しがしたいんじゃな?」
ねこ娘「うん。だから、お婆に子なき爺、何かいい案ない?」
砂かけ婆「う~む……」
子なき爺「そうじゃのお……」
ねこ娘の話しを聞き、しばし考え込む2人の老人妖怪。
すると子なき爺が「そうじゃ!そういう時は、これを使おう」と言って、
何処からか灰色の携帯らしき機械を取り出した。
砂かけ婆「何じゃそれは?」
ねこ娘「それってもしかして、スマートフォン?」
子なき爺「そうスマートフォン……縮めてスマホじゃ」
砂かけ婆「すまほじゃと?」
子なき爺「何じゃ砂かけは知らんのか?だったら説明してやろう」
「コイツは今時の人間が使っている、パソコンやゲームが出来る携帯電話みたいなものじゃ」
「例えば、ここをこうしてこうやって……」
「ほれ」
子なき爺は慣れた手つきでスマホの画面を操作したのち、ねこ娘達に画面を向ける。
その画面には、『SS速報GEP』というインターネットのサイトが表示されている。
砂かけ婆「な、なんと!」
ねこ娘「へえ……これ、ホントにインターネットできるんだ」
砂かけ婆「お前さん、パソコンだけでなくこんなものまで持っておったのか」
子なき爺「これも時代の流れじゃよ」
ねこ娘「けどこの、えっと……」
子なき爺「SS速報GEP(エスエスそくほうゲップ)」
「人間達が自分が思い付いた話とか書いて投稿する所で、わしのお気に入りのサイトじゃよ」
「不特定多数が書き込んでおるだけあって、当たりはずれがあったり、ネタが被ってしまう事もあるが……」
「それでも良質なスレは山ほど眠っておっての、それを探すだけでも楽しいもんじゃわい」
ねこ娘「それは分かったど、インターネットに繋いでどうするの?」
子なき爺「すまん…話しが、脱線してしまうところだったわい」
罰の悪そうな顔をしながら、子なき爺は今開いているサイトを閉じると、
『Geegl』というサイトを開き、話しを本題に戻す。
子なき爺「インターネットに繋げられるという事は、調べたい事をその場で調べられるという事じゃ」
「まず、この検索エンジンで、今回のお返しに相応しそうなものが売っていそうな店を検索してと……」
これまた慣れた手付きでスマホの画面を操作して、お返しを買うのに打って付けな店を検索した。
子なき爺「…………お!」
「出たぞ……」
「どうやら、最近調布市でできたショッピングモールに、品揃え豊富なギフトショップがあるそうじゃ」
「若者に人気で、リピーターも多いようじゃから、この店で探してみるのはどうじゃ?」
ねこ娘「調布市のこのお店ね?分かった、そうしてみるわ」
「ありがとう、子なき爺。やっぱりあなた達に相談して正解だったわ」
子なき爺「なあに、困った時はお互い様じゃ」
ねこ娘「じゃあ、ちょっと行ってくるね!」
子なき爺「おう、行ってこい」
砂かけ婆「気を付けるんだよ」
こうして、ねこ娘は鬼太郎へのお返しを求め、出掛けていった。
砂かけ婆「ところで、子なき。それ(スマホ)の使い方教えてくれんか?」
子なき爺「なんじゃ…砂かけも気になるのか?」
「えぇぞ、わしがたっぷり教えてやるわい」
そう言って、子なき爺は砂かけ婆にスマホの使い方を教える事になった。
その後、砂かけ婆がスマホにのめり込む事になったのは、言うまでもない。
―調布市某所―
若い男A「おい、知ってるか?最近この辺で、行方不明になってる奴が増えてるらしいぜ」
若い男B「その話し知ってる!なんか、お化けに襲われたんじゃねえかって、ネットで噂になってるんだよな?」
若い男A「お化けかはともかく、物騒な世の中だよなぁ」
若者達が噂を飛び交わせる街中を通り、ねこ娘は目当てのショッピングモールに到着した。
ねこ娘「うわぁ…思ってたよりおっきい……」
想像していた以上の建物の大きさにねこ娘は思わず圧倒されるも、
気持ちを改めてショッピングモールの中へと足を踏み入れた。
ねこ娘「えーっと…ギフトショップはっと……」
目的のショップを探すねこ娘であったが、なかなか見つからない。
ねこ娘「あれ?何処だったっけ…」
「最近、こういう大きなお店にあんまり来なかったから、全然分かんないや……」
あの時、店舗のあるフロアと位置をろくに確認しないまま、
即決で出てきてしまった事をこの時ねこ娘は激しく後悔した。
…とはいえ、今更後悔しても仕方がない。
ねこ娘は、ギフトショップの場所を確かめる為、
案内マップを探し出し、ショップがあるフロアと位置の確認を始める。
ねこ娘「ギフトショップ…ギフトショップ……」
マップの色々な場所に人差し指を向けながら、ギフトショップを探すねこ娘。
そこに、「君、どうしたの?」と後ろから誰かに声をかけられる。
声をかけられたねこ娘は、後ろを振り返ると、
犬の尻尾のようなおさげを左肩からちょこんと突き出させた、
中学1~2年くらいの少女が立っていた。
このモールで何か買ったのだろうか、
手には何かが入ったビニール袋を下げている。
少女「地図見てるけど、どうしたの?迷子なの?」
そう聞いてくる少女。
恐らく、自分の事を迷子の小学生だと思っているのだろう。
大人への憧れを持つねこ娘は、子供扱いされて少し悲しい気分になったが
相手は何も知らない人間の女の子、そのような事を気にしてもしょうがない。
ねこ娘はそのような気持ちを隠しつつ、
「ううん、違うよ」と言って、ギフトショップを探している事を説明した。
少女「あぁ、そのお店なら、そこのエスカレーターで上の階に上がって、そのまま真っ直ぐ行って右に曲がればあるわよ」
ねこ娘「そうなの?ありがとう、えっと……」
少女「私の名前は、まな。『犬山まな』よ。よろしくね」
ねこ娘「よろしくね、まな姉さん。そしてありがとう」
まな「ところで、君。このお店は初めてかな?」
ねこ娘「そうだけど」
まな「だったら、一緒に着いてってあげるよ」
ねこ娘「え…そんな、大丈夫だよ」
まな「ダメダメ!君みたいな小さくて可愛い子を、こんな広いお店で一人歩かせるわけにはいかないわ」
「だから…ね?一緒に行きましょ」
ねこ娘「……」
また子供扱いされてしまって悲しくなったねこ娘であったが、
一方でこの犬山まなと言う人間の少女は、
本気で自分の事を心配してくれているのだという事も理解できた。
見ず知らずの女の子でしかない自分相手に、
ここまでしようとするなんて、とても優しい人なのだろう。
そう思ったねこ娘は、さすがに断りきる事ができず、
彼女と共にギフトショップへと向かった。
―ギフトショップ―
まな「ここよ」
ねこ娘「よかった…やっと着いた……」
まな「で…このお店に何するの?お買い物?」
ねこ娘「うん、そうだよ」
まな「誰かにプレゼントするの?」
ねこ娘「プレゼントっていうか、お返しかな?」
まな「ふーん、誰にお返しするの?」
ねこ娘「幼馴染の男の子よ」
まな「それって、ボーイフレンド?」
ねこ娘「いや…そこまでの関係じゃないよ。けど、大切な人……かな」
まな「ふぅーんそうなんだ……」
女子トークを繰り広げながら、
ギフトショップの中を歩いて回り、鬼太郎へのお返しを探す2人。
子なき爺が言った通り、リピーターが多い店だけあって品揃えは豊富で、
どれもお返しにはもってこいな物ばかりなのであったが……
ねこ娘「……」
ねこ娘は、悩ましい表情を浮かべるばかりで、買いたいものを決めかねている様子であった。
まな「…どうしたの?」
ねこ娘「確かに、お返しにできそうなのいっぱいあるんだけど…」
「いっぱいありすぎて、どれにしたらいいのか、かえって分かんなくって……」
まな「あー…その気持ち分かるわ。いっぱいありすぎて、決め兼ねちゃうってよくあるよね」
ねこ娘「本とかにした方がよかったかなあ?」
まな「君のお友達、本が好きなの?」
ねこ娘「うん。読書が好きなんだけど…」
「けど、被っちゃったりとかしたらいけないし……」
まな(本か……)
(男の子の好きそうな本と言ったら、『ユメコ ノ ユメ』『魔法少女ザンビアちゃんとワイルド☆オオカミネイリスト』そして『吸血三世代』だけど…)
(漫画やラノベとかで釣るのは、ちょっとズルイし……)
(せめて、その子の好みが分かればなぁ……)
~着信音:鏡の中から~
と、まなが考えてたその時であった。
服のポケットから、着信音が聞こえてきたので、
まなはそこからスマホを取り出し、画面に目を向ける。
まな「あ…!」
見覚えのある名前が表示されていたらしく、まなは急いでスマホの電話に出る。
すると、電話の向こうから『こらぁ!まなー!』と言う少女の怒声が響く。
電話の相手『あなた、今どこいんのよ?!』
まな「あ…ご、ごめん美琴!授業の材料買いに、ショッピングモールいるんだけど…」
「今日の授業の事忘れてた!」
美琴『だったら今すぐこっち来なさい!来てないのアンタだけよ!』
まな「うん、分かった…すぐそっち行くから、もう怒らないで」
美琴『えぇ、今すぐ来て頂戴。それじゃあ』
美琴と呼ばれた人物は、電話を切った。
会話を横で聞いていたねこ娘は「どうしたの?」とまなに尋ねた。
まな「友達からよ。今日はみんなで集まって授業する日だったんだけど、すっかり忘れちゃってた……」
ねこ娘「じゃあ、今すぐ行ってあげたら?後は自分で決めるから」
まな「うん…そうするよ。じゃあね、えっと………」
ねこ娘「あ…まだ名前教えてなかったね」
「あたし、ねこ娘っていうの」
まな「ねこ娘…?」
ねこ娘の名前を聞いたまなは、何故か意味深に首を傾げた。
ねこ娘「どうしたの?まな姉さん」
まな「いや…なんか、どっかで聞いた事あるような気がして……」
ねこ娘「そうなの?」
まな「うん、けど……」
ねこ娘「けど?」
まな「それって名前なの…?」
ねこ娘「え…?」
まな「いや、だって…猫娘って、猫の女の子の事だよね?」
ねこ娘「そうだよ。だってあたし、猫妖怪だし」
まな「よ、妖怪…?え……?」
自分は猫妖怪だと語るねこ娘に、まなは混乱した。
妖怪とは無縁の生活を送ってきた、普通の人間なのだ、
いきなりそんな事を言われて、混乱しなはずがない。
まな「ま…まあいいや。君の事は、一応ねこちゃんって呼んでいいよね?」
ねこ娘「いいよ。それより……」
まな「わ、分かってるよ。じゃあね、ねこちゃん」
腑に落ちないものを感じつつも、まなはその場から立ち去ろうとした。
だが……
まな(ん…?ちょっと待って!)
(妖怪かどうかはともかく、あの娘って幼馴染へのお返しがしたいのよね?)
(だったら……!)
何か思い付いたらしく、まなはねこ娘の方へと引き返す。
まな「ねえ、ねこちゃん。買いたいもの、決まりそうにないよね?」
ねこ娘「うん、まあ……」
まな「じゃあ、私と一緒に来なよ」
ねこ娘「え?なんで?」
まな「実はお返しにできそうなものに、心当たりがあるの。だから、一緒に来て」
ねこ娘「そ、そうなの?けど……」
まな「遠慮しないで…ほら、行くわよ!」
ねこ娘「あ…ちょ……!?」
まなはそう言ってねこ娘の手を取ると、半ば強引にある場所へと連れていく。
それは、住宅街の中にある一軒家であった。
ねこ娘「ここは…?」
まな「知り合いのおばさんの家。ここで友達と集まって、ある物作る練習やってるのよ」
「それが、君が欲しがってるお返しにピッタリかもしれないの」
ねこ娘「そうなの?けど…あたしみたいな知らない人がいきなり入ってきて、迷惑じゃない?」
まな「そんな事ないよ。練習に来てる友達はみんな、私が連れてきた人達ばかりだから、またひとり入ったところで問題ないよ」
????「こらぁ!まな!」
その時であった。家の中から、まなと同い年くらいの長い黒髪の少女が怒りながら出てきた。
まな「あ、美琴……」
美琴「『あ、美琴……』じゃあないわよ!」
「もう20分も遅刻よ!」
まな「だからごめんって…ちょっと訳があって……」
美琴「それってどんな言い訳?」
まな「言い訳じゃなくって……」
ねこ娘「あ、あのぉ……」
美琴「ん?この娘は?」
まな「さっき、ショッピングモールで会った娘よ」
「幼馴染の男の子へのお返しに困ってたから、今日の授業に飛び入り参加してもらおうと思って連れてきたの」
美琴「あなた…私達だけじゃ飽き足らず、小学生の女の子まで勧誘してきたわけ?」
まな「いや、勧誘じゃないから!困ってたから、助けてあげようと思っただけだから」
美琴「……まあいいわ。あなた、名前は?」
ねこ娘「ねこ娘……」
美琴「ねこ娘?それ、名前なの…?」
ねこ娘「そうだけど」
美琴「か、変わってるわね……」
まな「でしょ?」
美琴「それに…今時、おかっぱ頭……?」
まな「言われてみると、ちょっと変わってるね……」
ねこ娘(あたし、そんなに変わってるかな…?)
2人の反応に、怪訝そうな表情を浮かべるねこ娘。
一方、美琴と言う少女は『小野崎美琴』と名乗り、まなと同じクラスの生徒であり学級委員長であると説明した。
美琴「とにかく、2人とも中に入って。おばさんと華ちゃんが待ってるわ」
まな「うん。さ、ねこちゃんも……」
ねこ娘「う、うん……」
引っ張られるままに着いて来たが、本当に大丈夫なのだろうか……
そんな不安を感じつつも、ねこ娘はまな達に家の中に案内される。
美琴「華ちゃーん、せんせーい!まな、やっと来たわ」
そして、リビングにまで来ると同時に、美琴が大きな声でまなの到着を知らせた。
リビングではテーブルを前に、まなや美琴より年上と思われるポニーテールの少女と30代前後の女性が待っていた。
ポニーテールの少女が美琴が言っていた『華ちゃん』で、奥にいる女性が彼女達が言う『おばさん』だろう。
ねこ娘(あのおばさん、どっかで見たような……)
ねこ娘は、どういう訳かおばさんに謎の既視感を覚えた。
まな「おばさん…華先輩、遅れてごめんなさい」
華「別にいいのよ、遅刻なんて誰だってあるし……」
美琴「甘いわよ華ちゃん!」
「元はと言えば、この教室に私ら誘ってきたのまななんだから、この教室にとっての先輩が遅れちゃ訳ないでしょ!」
おばさん「美琴ちゃんったら、相変わらず生真面目ね……」
「…?」
美琴の真面目さを確認したおばさんは、急にねこ娘に目を向けた。
おばさん「その娘は?」
美琴「まながまた勧誘してきた娘よ。ねこ娘って言うらしいわ」
まな「だから勧誘してないってば!」
おばさん「ねこ娘……」
おばさんは、聞き覚えのある名前を聞いたかのように
ねこ娘の名前を呟くと、ねこ娘の前に歩み寄り、そしてその姿をじっと見る。
ねこ娘が困惑する中、おばさんはやっぱりといった様子でこう言った。
おばさん「あぁ…やっぱり、ねこ娘さんね。懐かしいわぁ……」
ねこ娘「え?あの…やっぱり、何処かで会いました?」
おばさん「あら、忘れたの?私よ…『村上祐子』よ」
ねこ娘「村上裕子…!ゆ、祐子ちゃん?!」
祐子「そうよ、久し振りね」
ねこ娘「う、うん…!大きくなってたから、分からなかった」
祐子「当り前よ、結婚してこんなおばさんになっちゃったんだから……」
美琴「え…?」
まな「ど、どういう事…?」
久し振りの再会を喜び合うねこ娘と祐子を前に、
事情を知らない3人の少女は、どうにも状況を呑み込めない。
なので祐子は、ねこ娘とは小学4年生の頃に会った、鬼太郎の仲間の妖怪だと説明した。
華「へえ…ねこ娘ちゃんって、妖怪さんなんだ」
まな「そっか…なんか聞いた事ある名前だなって思ったら、祐子おばさんが随分前に話してた妖怪の事だったんだ……」
「あの時は半信半疑だったけど、妖怪って本当にいたのね」
美琴「けど、おばさんが小学校の頃って何十年も前じゃない。なんで子供のままなの?」
「常識的……いや、科学的にありえないんだけど」
華「妖怪さんだからだと思うわ。妖怪さんって、すっごい長生きだって聞いた事あるし」
まな「へぇ~いいなあ……何年経っても年を取らないなんて」
ねこ娘「人間からしてみたらそうかもしれないけど、すぐに大人になれないってそんなにいい事でもないわよ」
まな「そうなの?」
ねこ娘「あたしはそうなの」
そう返すねこ娘の表情は、少し曇りがちだ。
祐子はその事に気付いたのか、「さ、ねこ娘さんの事はここまでにしましょ」と言って、話題を切り替えた。
祐子「まなちゃん、ねこ娘さんをここに連れてきたって事は、ねこ娘さんにぬいぐるみ作りの授業を受けさせるつもりなのね?」
まな「はい、そうです。幼馴染の男の子へのお返しに困ってたので…!」
祐子「それって鬼太郎さんの事かしら?」
ねこ娘「うん…ていうか、ぬいぐるみ作りって?」
祐子「結婚してから子供の為に自作のぬいぐるみを作ってたら、その内はまっちゃってね。例えば、ほら……」
「コレ、『ユメコ ノ ユメ』の主人公の天童夢子ちゃんのぬいぐるみ」
祐子はそう言いながら、ゆるゲゲ風の夢子のぬいぐるみをねこ娘に見せた。
ねこ娘「うわ~可愛い!」
まな「でしょう?私もたまにぬいぐるみ作ってるんだけど、その材料買いにデパートでおばさんと会って…」
「私もぬいぐるみ作りやってるんだって言ったら、作り方のコツとか色々教えてくれてね、そのままおばさんの弟子になったの」
美琴「で…私と華ちゃんは、言葉巧みにまなに勧誘されて、おばさんの弟子にさせられちゃったわけ」
まな「勧誘って……美琴も先輩も、お父さんやお母さんへのプレゼントに困ってるっていうから、誘ってあげただけじゃん」
「大体、そんな事言いながら、美琴だってすっごい乗り気だったじゃないの!」
美琴「あれ~?そうだったかしら~?」
まなの指摘に対し、美琴は白々しく返してみせた。
ねこ娘「ねぇ、コレ…あたしにも作れる?」
祐子「もちろんよ。練習すれば、ねこ娘さんにだって出来るわ」
「鬼太郎さんに喜んでもらえるような、可愛いぬいぐるみを作りましょう」
ねこ娘「…うん!」
こうして、ねこ娘は祐子やまな、美琴、華の指導の元、鬼太郎のお返しのぬいぐるみを作る事となった。
普段、ぬいぐるみを作ると言った事をあまりしなかったため、
出だしは順調という訳にはいかず、特に縫う段階では針で何度も指を刺してしまい、
怪我するような事が何度もあった。
だが、その度に祐子はもちろんまな達も優しく教え、
そして励ましてくれた為、ねこ娘は決して諦める事はなかった。
数時間後……
ねこ娘「で…出来たぁ……」
ついに、鬼太郎へのお返しのぬいぐるみが完成した。
それは、ゆるゲゲ風の鬼太郎親子のぬいぐるみ。
初めて作ったものだという事もあって形は少々歪であったが、
特徴や原型はしっかり保たれていた。
まな「可愛い~!」
美琴「初めてにしては上出来ね」
ねこ娘「けど、喜んでくれるかな…?」
祐子「大丈夫よ。こういうのはね、感謝の気持ちが大事なの」
「それにねこ娘さん、一生懸命に作ってたじゃない。きっと大丈夫よ」
ねこ娘「……」
「……うん、そうだね」
まさか、祐子に励まされる日が来るとは、ねこ娘も思ってもみなかっただろう。
それだけ、彼女は大人になったという事である。
ぬいぐるみ作りを終えたねこ娘は、祐子達と別れ、ゲゲゲの森に変える事となった。
別れ際、『暇があったら、いつでもぬいぐるみ作り教室に来ても構わない』と、
祐子らに言われたのは言うまでもないだろう。
家路に就いたねこ娘は、最初に噂話をしていた若者達がいた路地を通り掛かる。
外はいつの間にか夕暮れ時で、人も少なくなり出しており、先程の若者達の姿もない。
ねこ娘「……きゃっ!?」
だが、その時であった。
突然、何処からともなく髪の毛が伸びてきて、
まるで蔓のように彼女の体に絡みつき、そして真っ暗な路地裏に引きずり込む。
いったい何事かとねこ娘は、自分を引きずり込んできた髪の毛が伸びる先に目を向けると、
そこには、髪の毛を伸ばした日本人形の頭部が浮遊していた。
そのものが、髪の毛の主なのは、どう見ても明らかであった。
ねこ娘「あ、アンタは!?」
麻桶毛「我が名は『麻桶毛』。この日本人形に宿る者よ」
ねこ娘「ま、まゆ毛?それって、目の上の……」
麻桶毛「その眉毛ではない!『麻桶の毛』と書いて『麻桶毛』だッ!」
麻桶毛「……ま、まあいい!それより貴様、人間の女子(おなご)ではないな?」
ねこ娘「そ、そうだけど?」
麻桶毛「くくく…これは丁度いい!」
「この辺の人間の生気は薄汚れていて、全然美味くなかったから、餌場を移そうと思っていたところだったのだが…」
「最後の最後で、飛んだ上玉がかかったものだ!」
ねこ娘「!? そ、それってもしかして……」
麻桶毛「その通り…貴様の生気を吸ってやろうというわけだ」
「安心しろ、生気を吸った後は、『そこにいる奴ら』の仲間に加えてやるからな」
そう言って麻桶毛は、路地裏の奥の方に顔を向け、ねこ娘にそちらを見るよう促す。
促されるまま、ねこ娘は路地裏の奥に目をやると、そこには沢山の日本人形が無造作に転がっている。
ねこ娘「アレって…!」
麻桶毛「生気を吸った人間どもだ…私に生気を吸われた者は、皆ああなるのだよ!」
「さあ…貴様も我が餌となるがいい!」
ねこ娘「!!!」
自分も、アレの仲間入り?そんなの嫌だ!
だが、髪の毛を切り裂いて脱出しようにも、体が両手ごと縛られていては叶わない。
絶体絶命の大ピンチ。
こんな時に、鬼太郎がいてくれたら……!
麻桶毛「ぎゃあ!?」
ねこ娘がそう思ったその時、何処からともなく下駄が飛んできて、麻桶毛を跳ね飛ばす。
その一撃で縛る力が緩み、ねこ娘はドスンと地面に落っこちた。
ねこ娘「いたた……」
落っこちた際に打ち付けたところをさするねこ娘。
そこへ、失われた左目を髪で隠した1人の少年が「大丈夫か?ねこ娘」と言って駆け寄ってくる。
『ゲゲゲの鬼太郎』だ。
ねこ娘「鬼太郎…来てくれたの?」
鬼太郎「行方不明事件の犯人を探してたら、こっちの方から妖気を感じてね…」
「君の妖気も混ざっていたから、事件に巻き込まれているんじゃないかって思ったんだ」
ここに来た経緯を説明する中、麻桶毛はギョロリと鬼太郎に目を向けた。
麻桶毛「鬼太郎……貴様も妖怪か?」
鬼太郎「お前が、行方不明事件の犯人か!?」
麻桶毛「そうだと言ったら?」
鬼太郎「どうしてこんな事をするんだ?」
麻桶毛「久し振りに外に出たから、腹が空いた」
「ただそれだけの事よおッ!」
人間を襲う理由を喋ると、麻桶毛は髪を伸ばして鬼太郎を攻撃しようとするが、
鬼太郎はすぐさまねこ娘と共に回避し、一旦距離を置く。
それを見計らったかのように、鬼太郎の髪の毛の中から『目玉おやじ』がひょっこり顔を出す。
目玉おやじ「鬼太郎、気を付けろ!奴は麻桶毛じゃ」
鬼太郎「麻桶毛?」
目玉おやじ「生気を吸った者を人形に変えてしまう妖怪じゃ」
「奴の毛に絡めとられでもしたら、さすがのお前でもひとたまりもないぞ!」
鬼太郎「はい、父さん!」
「ねこ娘、父さんを頼む」
ねこ娘「うん!気を付けて、鬼太郎」
鬼太郎は、ねこ娘に目玉おやじを任せると、単身麻桶毛に立ち向かう。
最初に髪の毛針で攻撃するも、相手の髪の毛に払われたり、避けられたりし、
リモコン下駄も、さっきのようにはいかないと言わんばかりに回避される。
麻桶毛も、鬼太郎を絡め捕ろうと執拗に髪の毛を伸ばして応戦する。
だが、思いの外、戦況はすぐに鬼太郎の方へと傾き始め、
麻桶毛は隙を突いた鬼太郎が投げた霊毛ちゃんちゃんこで人形の頭と髪の毛ごと包み込まれ、
更に念押しと言わんばかりに、妖怪オカリナによるオカリナロープで
ちゃんちゃんこの上から縛り付けられ、完全に動きを封じられる。
鬼太郎「よし!ちゃんちゃんこ、麻桶毛の妖気を吸い取ってしまえ!」
鬼太郎の指示を聞くかのように、ちゃんちゃんこは麻桶毛の妖気を吸収。
麻桶毛は「ぎやあぁー!」と悲鳴を上げながら、ちゃんちゃんこの中でどんどん小さくなっていく。
そして、麻桶毛が完全に小さくなったところで、
鬼太郎はオカリナロープもちゃんちゃんこも引っ込めると、
そこには禿げ頭になった日本人形の頭と、小さな1本の髪の毛が残っていた。
ねこ娘「あれは?」
目玉おやじ「アレが麻桶毛の本当の姿じゃ」
「神社に祀られていない一筋の髪の毛の妖怪が、人形にとり憑いた存在……それが奴の正体じゃよ」
目玉おやじが説明すると、鬼太郎は小さい髪の毛になって動かなくなった麻桶毛を拾い上げた。
鬼太郎「父さん、この髪の毛は何処かの神社に祀ってもらいましょう」
目玉おやじ「あぁ、そうしてやれ。そうすれば、こやつも二度と人を襲う事はなくなるじゃろう」
鬼太郎「しかし、何故今になって麻桶毛は現れたんでしょうか?」
目玉おやじ「恐らくこやつが宿る人形を、何も知らない人間が人形供養の神社から持ち出したか、捨ててしまった事で封印が解けてしまったのじゃろう」
「人形の頭だけで活動しておったところを見るに、胴体は隠れるのに邪魔で、何処かに置いてきたのかもしれん」
鬼太郎「じゃあ、大切に祀ってくれそうな人を探す必要がありますね」
目玉おやじ「それがよかろう……む?」
鬼太郎「どうしました?」
目玉おやじ「鬼太郎、アレはなんじゃ?」
鬼太郎は父が指差した方向を見ると、そこにはある物が落ちていた。
それは、ねこ娘が作った鬼太郎親子のぬいぐるみだ。
麻桶毛から解放された拍子に、落としてしまったのだろう。
ねこ娘「あ…」
鬼太郎「父さん…これは、僕達でしょうか?」
目玉おやじ「なんとも可愛らしいのう……誰の手作りじゃ?」
ねこ娘「……」
鬼太郎「……」
もしかしてと思い、鬼太郎はねこ娘に目を向ける。
一方、ねこ娘は何も言わずに目を泳がせており、
その指には、縫ってる際の怪我をした証拠である、絆創膏が貼られている。
それを見て、鬼太郎はこれが誰が作ったものなのかを理解した。
鬼太郎「コレ…君のだね?」
ねこ娘「う、うん…この前のリボンのお返し」
「初めて作ったから、ちょっと変になっちゃったけど……」
鬼太郎「そんな事ないよ。よく出来てるよ?」
ねこ娘「けど…ちょっとふにゃふにゃだし……」
鬼太郎「確かにそうだけど、それがかえって可愛らしいよ」
ねこ娘「ほ、本当?」
鬼太郎「僕の為に作ったんだろ?それだけでも充分嬉しいよ」
「だからコレも…大事にするから」
ねこ娘「約束だよ?大事にしてね」
鬼太郎「もちろんさ」
苦労して作った努力が実った事を実感し、ねこ娘は胸が熱くなるのを感じた。
その直後、路地裏の奥に転がっていた人形が光ったかと思えば、大勢の人間に姿を変える。
男性「あれ…?」
女性「あたし達、何でこんな薄暗いとこにいんのかしら?
鬼太郎「父さん、麻桶毛が力を失ったから、生気を吸われた人達が戻ったようですね」
目玉おやじ「うむ…これで一件落着じゃ。わしらも森に帰るとしようかのう」
鬼太郎「そうですね、父さん…それに、ねこ娘」
ねこ娘「うん!」
元気で曇りのない笑顔でねこ娘は返事をすると、鬼太郎の横に並んでゲゲゲの森に帰っていく。
こうしてアクシデントがあったものの、ねこ娘は無事にリボンのお返しを鬼太郎にあげる事ができたのであった。
~終わり~
ここからは、本作に登場させた小ネタやキャラクターの補足です。
犬山まな・・・鬼太郎ファンの方なら説明不要かもしれませんが、現在放送中の第6期の人間ヒロイン。
今回はねこ娘の物語であると同時に、鬼太郎シリーズのヒロインの夢の共演も兼ねて登場させました。
また、ねこ娘の鬼太郎へのお返しが、ゆるゲゲ風鬼太郎親子のぬいぐるみになったのは、
初期エンディングのアニメで彼女が鬼太郎ファミリーの人形を作っていたシーンから着想を得たものです。
(なので今回ねこ娘が作った鬼太郎親子のぬいぐるみは、このアニメに出てた奴がちょっぴり歪んだ形になったものを想像していただければ幸いです)
無論、彼女は4期世界のまなであり、6期のまなとは別存在。妖怪と縁のある家計の生まれという設定もありません。
なのでキャラクターも、ねこ娘との関係性も若干異なります。
華・・・第5期の劇場版に登場した人間ヒロインです。
今回あんまり触れられていませんが、苗字もちゃんと風祭です。
無論、彼女も5期とは別存在で、この世界ではヤトノカミを封じた一族の子孫ではなく
お寺のお嬢さんで、まなの小学生時代の先輩の高校生。そして、美琴の幼馴染という設定のつもりで書いています。
まなと美琴で、彼女に対する呼び方が違うのはそのせいです。
尤も、まなが彼女を先輩呼びしてるのは、人間ヒロインとしての先輩と言うメタ的な意味合いもあったりするんですが。
ちなみに、日本爆裂は未視聴なので、影が薄くなってしまい申し訳ありません……
祐子おばさん・・・第4期に登場した村上祐子が成長した姿。
祐子と言ったら一応は人間ヒロインの1人ですが、友達の男子2人ともどもあんまり目立たなかった事で有名です。
今回の祐子は、結婚しているので苗字は村上ではなくなっています。また、年齢は32歳であるつもりで書いています。
小野崎美琴・・・第6期第43話のゲストとして登場したキャラクター。
国立大学の研究員『小野崎彰悟』の娘で、まなの同級生の真面目な学級委員長。
彼女も6期世界の美琴とは別存在で、キャラが異なります。まな達とは『今のところ』普通に過ごしていますが、父親が研究員であるという設定は同じです。
今回の話において場違い感がありますが、実は次に考えている作品の前振りのつもりで出させてもらいました。
『ユメコ ノ ユメ』『魔法少女ザンビアちゃんとワイルド☆オオカミネイリスト』『吸血三世代』
『ユメコ ノ ユメ』は、第3期地獄編最終話の夢子の台詞
『魔法少女ザンビアちゃんとワイルド☆オオカミネイリスト』は、第5期の魔女ザンビアと狼男ワイルド
『吸血三世代』は、第5期の初代ドラキュラ伯爵とドラキュラ二世とドラキュラ三世が元ネタです。
また、『ユメコ ノ ユメ』の主人公である天童夢子はいうまでもなく、3期の人間ヒロインの夢子です。
今回ゆるゲゲ風の人形として登場しましたが、これは祐子がぬいぐるみにする際にアレンジしたもので、本来は3期と同じデザインであるという設定です。
麻桶毛・・・ねこ娘を襲う役の敵妖怪。
伝承は麻桶の毛と言う名前で、「『麻桶の毛』と書いて~」のくだりはそれを意識したもの。
原作にも登場した妖怪ですが、鬼太郎ファンならば第6期に登場したのが記憶に新しいと思います。
実はねこ娘を襲う妖怪は、特に考えていなかったんですが、鬼太郎へのお返しがぬいぐるみ=人形となった事、
とりあえず、ねこ娘が縛られてピンチ→鬼太郎に助けられる展開が必要という事で、彼を抜擢しました。
その後は描写していませんが、ちゃんとした神社に祀られたのでご安心下さい。
なお、子なき爺がパソコンも持っているという設定は、第88話で実際に言及されたものです。
もしも今の時代で4期鬼太郎が展開されていたら、スマホ持ってたんだろうなと思いながら設定しました。
『Geegl』という検索エンジンは、第6期に登場したGooglそっくりの検索エンジンサイト。
『SS速報GEP』は『SS速報VIP』を鬼太郎風にアレンジしてみたものです。
以上でおしまいです。
前回の相棒の目撃者の後日談、前々回の相棒と聲の形のクロスオーバーと
刑事ドラマ+αという重めな作品を投下したので、
今回はまったくの別作品、4期鬼太郎を原作にしたシンプルで短めのSSとなりました。
ほっこりする感じの話を目指したのですが、どうでしょうか……
今回も色々間違えてるような気がしないでもないですが、それでもよかったというのであれば幸いです。
なお、補足の美琴の部分でも触れた通り、
次の4期鬼太郎の作品の構想も一応考えてはいますが、すぐにはできませんし、
下手をすればそのままやらず、永遠の伏線状態になってしまう可能性もある事をご了承下さい…
(できるならやりたいですが……)
しばし様子見してからHTML化の依頼を出しますんで、
それまで感想がありましたら、どうぞお気軽に……
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