幼馴染「死んじゃった…」 (15)
────────
男「いやー!初デート、晴れてよかったな」
幼馴染「ちょ、ちょっと!そんな声高にデートだって事をアピールしないでよ!…恥ずかしいじゃん…一部の哀れな人々が嫉妬するだろうし」
男「そうか?後者はともかく、俺は別に気にならないけどなぁ。むしろ初デートなんだし、もっと気分上げていった方がええじゃないかええじゃないか!」
幼馴染「あんたが良くても私が嫌なの!恥ずかしいからもう止めて!」
男「はいはい分かった分かった」
幼馴染「全くもう…あんたのそういうデリカシーのなってないところ、私昔っから嫌いだわ」
男「す、すまん…」
幼馴染「…それでもやっぱり、あんたが好きなんだけどね…」
男「!!」キュッ
男「全くもう~むふふ、一々可愛い奴だぁ」ナデナデ
幼馴染「えへへ…って、こ、こら!撫でるな~っ!」
男「むふふふ…おっと、お前のあまりの可愛さについ路上でイチャイチャしてしまいそうになったが、今日はデートなんだし折角ならプランに沿って存分にイチャイチャした方が吉だな」
幼馴染「してしまいそうになるどころかもうしっかりとイチャイチャしたよね…それと自然体でちゃっかり私の事可愛いって言うの止めてくれる?…まあ嬉しいんだけどさ…」
幼馴染「…で、結局どこ行くの?私待ち合わせ場所以外デートについて一切知らされなかったんだけど、大丈夫なんでしょうね?」
男「大丈夫さ、必ず最高のデートにしてみせる」
幼馴染「…約束だよ?」
男「勿論さ。…さて、それじゃあまずはここに行こ…」
キキ-ッ!!
幼馴染「…え?」
ドォォォン
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───────
ピッピッ…………ピッ…………ピッピッ………ピッ………
男「…」(頼む…息を吹き返してくれ幼馴染…)
ピッ…………ピッ…………ピ──────
医者「…対光反射は…なし」
医者「…心音も…なし」
医者「◯月×日12時46分…幼馴染さんがお亡くなりになられました」
男「そ…そんな…」
医者「我々も精一杯手を尽くしたのですが…救命に至らず、申し訳ございません」
男「は…はは…は…」
────────
僧「…故説、般若波羅蜜多呪。即説呪曰、羯諦羯諦、波羅羯諦…」
男「…」(幼馴染ぃ…すまない…あの時俺が咄嗟に助けに出ていれば…うぅ…)グスッ
────────
僧「…それでは、最後のお別れを」
…………
…………
…………
…………
僧「さあ、次は男さんの番です」
男「……」テクテク
男「幼馴染…あっちの世界でも、達者に暮らせよ…それじゃあな…」
────────
メラメラメラメラ
幼馴染「…う、うーん……はっ」
幼馴染「…私、何してたんだろ」
幼馴染「確か黒塗りの高級車に跳ね飛ばされて…それから…」
幼馴染「うーん、駄目ね…思い出せない」
幼馴染「それにしても、何だか随分とあっついなぁ…」
幼馴染「何かが燃えてる時みたいにぱちぱちって音が聞こえるし…ん、燃えてる?」
メラメラメラメラ
幼馴染「ひ、火!?ひえええええ!!」ジタバタ
幼馴染「何でこんな危ない所にいるのかは分からないけど、とにかく急いで脱出しなきゃ…って、ん?これは…」
幼馴染の遺体「」
幼馴染「わ、私!?しかも死んでる!?」
幼馴染「…って事は…」
幼馴染「ここは火葬場!?それに私は霊的な何かになっちゃったって訳!?」
幼馴染「と、とにかく。凄まじく熱いから、ひとまずここを脱出しよう!霊なら棺の一つや二つはすり抜けられるはず…」フワフワ
スッ…
幼馴染「やっぱり!このまま火葬場からも脱出しよう!そして男に息災(?)だって事を伝えなきゃ!」フワフワ
スッ…
幼馴染「ふふふ…待ってなさい男、あんたの事だから今頃きっと悲しみにくれて泣きべそかいてるだろうけど、直ぐに笑顔にしてあげるからね…!」フワフワ
undefined
────────
男「うぅ…グスッ…幼馴染ぃ…」ポロポロ
男「何で…一体何の因果で…グスッ…死んだんだよ…」
幼馴染「あぁ…元より私に起こった不幸ながら、そんな後腐れに満ちた様子で泣かれると、こっちが罪悪感を感じるなぁ…」
幼馴染「もういたたまれなくなってきたから…男!私はここにいるよ!」
男「うぅ…グスッ、今日幼馴染と一緒にマッド・マックス観ようと思ってたのに…」
幼馴染「うーん、聞こえてないか…ってか、デートの日とあろう物に彼女に何観せようとしてんだよ、これは後でお仕置きね」
幼馴染「…それじゃあ、今度はもっと大きな声で…すぅぅぅ」
幼馴染「おーとーこー!!私はここにいますよー!!」
男「うぅ…グスッ、でもやっぱりマッド・マックスはまずかったかなぁ…ベティ・ブルーの方があるいは…グスッ」
幼馴染「やっぱり聞こえてない…霊だからかな?…ってか、そのセレクトさっきよりも確実に悪化してるじゃん…初デートな男女が身を寄せ合って視聴する様な映画じゃねえだろそれ?これでまたお仕置き案件が一つ増えたわね」
幼馴染「それにしても…うーん、聴覚的な干渉が叶わないなら…視覚的な干渉を試みるしかないなぁ…ポルターガイストちっくに」
幼馴染「それじゃあまずは…お、ちょうどいいとこにペンが」
幼馴染「でも最初の問題は霊体でこれを掴めるかどうか…よし、掴めた」
幼馴染「そしてこれをお仕置きも兼ねて男の頭に投げつけるッ…それっ!」ブン
ヒュゥゥゥゥ
コツン
男「痛っ!…あれ、何でペンが飛んできたんだろう…」ポリポリ
男「おーい、誰かいるのか?」
幼馴染「いるよー!ここにー!」ブンブン
男「…いない、か。しかし、一体全体どうしてペンがいきなり飛んできたんだ…」
幼馴染「チクショー!あのにぶちんめ!更なるお仕置きも兼ねてもう一回ポルターガイストしてやるぅ!」
幼馴染「今度は…何故かあったクロスロードホンダー(のミニカー)だッ!」ブン
ヒュゥゥゥ
ゴツン
男「痛ェ!ったく、誰だよ!しんみりしてる時に!」
男「…はぁ、また反応なしか…って、これクロスロードホンダのミニカーじゃん…なんでこんなとこにあるんだ?」
男「…ま、どうでもいいか。あるもんはあるんだろうし」
幼馴染「どういう理屈よそれ」
男「…ん、待てよ。さっきからやたらと俺目掛けて物が飛んでくるし、本来ここにあるはずのないものがあったりする…こ、これはまさか」
幼馴染「あ、もしかして気付いてくれたのかな?」ワクワク
男「お、おおおおおおおお化け!?!?!?」
幼馴染「……」
幼馴染「うーん、間違ってはないんだけど…望んでたのとは別の反応が返ってきたなぁ」
男「ま、間違いない…きっと昔、この火葬場で生きながらにして焼かれてしまった人がいたんだ…」
幼馴染「推測で物語んなよ」
男「で、その人は…生きながらに火葬された、という自らの身に起こった惨事に対する怨みから怨霊となってしまい、それ以来この火葬場に訪れる生者達を嫉妬して呪っているんだ…そうだ、きっとそうに違いない」
幼馴染「火葬場に対するとんでもねぇ風評被害だな」
男「に、逃げないと…今すぐここから逃げないと…こ、殺される…勝てるわけがないよ…っ」
男「もうダメだぁ、おしまいだぁ!!」タッタッタッ
幼馴染「あっ、逃げて行っちゃった」
幼馴染「うーん、そういえばあいつが怖がりだって事忘れてたなぁ…やっぱり生き返るなり何なりして、面と向かって直接話せる様にならないとダメかぁ」
幼馴染「…でもその為には、どうしたら良いのかな?」
幼馴染「…地獄に赴いて、十王様らと直談判?いやいや、流石にそれは無謀過ぎるか…」
幼馴染「こうなったら…>>9」
男の中に入れば心の中でお話できないかな
幼馴染「男の中に入れば…もとい、男に取り憑けば心の中でお話し出来ないかな…」
幼馴染「…うん、我ながら悪くはない案ね」
幼馴染「そうと決まれば早速男の後を追わなきゃ…!」フワフワ
────────
男「ひえええええ!!怖いいいい殺されるゥゥゥゥ!!」タッタッタッ
幼馴染「はぁ…まだ悲鳴あげてるよあの意気地なし…」
男「の、の、呪われ、うわっ」コケッ
幼馴染「あ、こけた」
男「ぐえっ」バタン
幼馴染「はぁ…全く、だらしないなぁ…でも、これは私にとっての好機でもある。今の内に男に近付いて…」フワフワ
幼馴染「…中に入る」スッ
男「…ん?何か今一瞬、冷気に当てられたかのような感覚が」
幼馴染「よっしゃ!成功!」
幼馴染「ではでは…こほん」
幼馴染「男ー!私は帰ってきたぞー!」
男「!?」
男「…はは、気のせいかな、今死んだはず幼馴染に似通った声が聞こえた気がしたんだが…」ポリポリ
幼馴染「気のせいじゃないよーあんたの中にいるよー」
男「…おかしいな、また聞こえる…はっ、これはまさか…」
幼馴染「お、きたかな?」
男「か、火葬場の怨霊の呪詛に当てられて、俺の精神が狂っちまったんだ…そうだ、きっとそうに違いない」
幼馴染「え、ちょ、ちょっt」
男「ぎゃああああ!!助けて寺生まれのTさあああああん!!呪われちゃったよおおおおお!!!」タッタッタッ
幼馴染「ああんもう、このドアホ!彼女の心ぐらい汲めよ!」
男「ぎゃああああ!!まだ聞こえるぅぅぅぅ!!!このままじゃうら若いまま幼馴染の後を追ってしまうううう!!!」タッタッタッ
幼馴染「あたかも私が年寄りであるかのような言い様やめてくんない!?」
僧「…何やら騒がしいですな」
男「あっ!!寺生まれのTさん助けて下さあああい!!」
僧「私は寺生まれではないしイニシャルがTという訳でもありませんが、相談なら乗りますぞ?…おや?」
幼馴染「?」
男「ど、どうされました?」
僧「こ、これは…大変だ、貴方に霊が取り憑いている!それもかなり強力なのが!」
幼馴染「!?」
男「や、やっぱり!!」
僧「今お助けしますぞ…臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!!」バッ
幼馴染「く、九字!?きゃあ!!」
男「な、何か漫画やアニメでよく出てくる術的な物ですねそれ…」
僧「九字護身法です!単純な法術ですがかなり強力で、これで大抵の怪異は祓い退ける事が可能です!」
男「おー」パチパチ
幼馴染「も、もしかして…私成仏しちゃう!?成仏しちゃうの!?」
僧「怪異よ…成仏せよ!」バッ
幼馴染「い、いやー!成仏はいやーっ!!」フワフワ
僧「……ううむ」
男「ど、どうなりましたか」
僧「ご安心ください、貴方の身に取り憑いていた霊は退けました…が」
男「が?」
僧「成仏させる事は叶いませんでした…このまま放置していればますます力を付けて、いずれ厄介な騒ぎを起こす可能性があります」
男「えぇ!?」
僧「ですので、私は霊の後を追跡しようと思います。仲間達に、私が仕事に行ったという旨を伝えておいて頂けませんか?」
男「は、はい」
僧「ご協力感謝します。それでは…」
タッタッタッ
男「…何がなんだかさっぱり分からん…」
────────
幼馴染「はぁ…はぁ…はぁ…間一髪だった…」
幼馴染「もう少し逃げ出すのが遅ければ問答無用であの世行きだったわ…全く、あのお坊さん強すぎでしょ…」
幼馴染「……」
幼馴染「あのお坊さんを撒かない限りは、当分男に近づけないなぁ…」
幼馴染「…いや、でも事情をかくかくしかじかして何とか誤解を解くって手もあるか…」
幼馴染「うーん、どうしよ…」フワフワ
?「ちょいとそこのお嬢さん、お待ちなはれや」
幼馴染「はいはい何のご用でしょう…って、え!?」クルッ
?「ふむむ…やはり、私の見立て通り非常に端正な顔立ちをしておられる」
幼馴染「その格好を見るに…か、神主さん?」
神主「おまけにスタイルも良いし…特にこことか」ワシャ
幼馴染「きゃ、きゃあ!?変態!!」バッ
神主「ぬほっ!?」バシッ
神主「痛い痛い…何も打たなくても」スリスリ
幼馴染「初対面の男にいきなり胸鷲掴みにされて打たん奴がおるかこのドアホ」
神主「ふむふむ…少々ばかり…いや、かなーり口の悪いとこも私の趣味嗜好をくすぐる…」
幼馴染「何なのこの人…」
神主「なーに、しがない変態神主だよ」
幼馴染「自覚してるのね…」
神主「…ところで、私が貴方を視覚的に認識し、その上滞りない会話による意思疎通を難なく行えている事に対しては、些かなりとも疑問を抱いたりはしないのかな?」
幼馴染「いや…だって、神主さんだし私の存在を息をするように把握出来てもおかしくないのかなーって」
神主「ほほう、可憐な外貌と違って、案外順応力に長けているんだね。私の見立てでは貴方は霊になってまだ間もないといったとこだったんだが」
幼馴染「凄い…そんな事まで見抜けるんですね」
神主「これでもそれなりに出来のいい神主だからね。何だったら貴方の下着の色も見事当ててみてしんぜy」
幼馴染「死ね変態!!」バッ
神主「ぬほっ!?」ベシッ
神主「イタタ…今の平手打ちには荒削りながらかなりの霊力が籠もっていたね…私も油断していたら危うく気を失っていた事だろう」
幼馴染「れ、霊力?私に?」
神主「おや、気付いていないのか?貴方は霊の才能があるんじゃないかって程強大な霊力を有しているんだよ」
幼馴染「そうなんですか?」
神主「そうなんですそうなんです。だって貴方を霊足らしめている精神力が非常に強力だからね」
幼馴染「霊力の礎は精神力…つまり、その精神力が莫大だから比例して霊力も凄まじいって事ですか?」
神主「そうそうそうそうその通り。…美しい上に聡明とは、お嬢さんは本当に素晴らしい女性だ」
神主「…それにしても、なぜそこまでの精神力を?」
幼馴染「うーん…何でだろ…私もこれといって心当たりは…あ」
神主「どうやらあった様だな。出来れば、詳しく聞かせて欲しいんだが…」
幼馴染「うーん、そうですね…一言で言い表すなら…愛の力?なんちゃって…」
神主「……」
幼馴染「あ、あのー…」
神主「……」
幼馴染「む、無言やめて頂けます?意識して恥ずかしくなってきちゃうじゃないですか…てか今思ったら、私ったら何て恥ずかしい事を…///」カァァァ
神主「…す」
幼馴染「?」
神主「すんばらすぃぃぃぃ!!愛の力とは何と尊い、いやー尊い!!私は貴方をますます気に入った!」
幼馴染「そ、そんな叫ばなくても…」カァァァ
神主「お嬢さんの忸怩する顔も拝めた事だし、良かろう、私が精一杯貴方に助力してしんぜよう!!」
幼馴染「あ、ありがとうございます!…まだ助けてくれとか一言も言ってないんだけど…」
神主「あ、それと」
幼馴染「?」
神主「上下共に黒であのデザインとは…外貌に見合わず中々大人っぽいしたg」
幼馴染「死ねクソボケ!!」バッ
神主「ぬほっ!?」ビシッ
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