まほ「エリカの身体に痣があった」 (28)

更衣室

まほ「エリカ……その痣はどうしたんだ」

エリカ「え? あ、ああ……これですか?」 

エリカ「多分ですけど戦車道の時間に身体をぶつけたんだと思います」

まほ「……そうか。お前は綺麗な肌をしているんだ……こんな痣があってはもったいない」

まほ「それに次の試合だって近づいている。身体は大切にしておけ」

エリカ「はっ! 心遣い感謝します」パサパサ

まほ(それにしても戦車道で怪我をしたといっていたが)

まほ(痣の数は複数。それにエリカは優秀な隊員だ……戦車道の時間も転んだり何かにぶつかったような姿は見られなかった)

まほ(だとすればこの痣は別の理由あるようにしか思えない)

まほ(あまり認めたくないが次期副隊長候補ということで周りの生徒からいじめられている可能性もある)

まほ(注意したほうがいいかも知れないな)

まほ(そういえばみほと小梅は同じクラスだったか……)

まほ(一応さりげなく話を聞いておくか)


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みほルーム

まほ「ということがあったんだ」

みほ「そっか……エリカさんが大丈夫って言うなら気にする必要はないんだろうけど」

みほ「少し心配だね……」

まほ「みほは何か気づいたことはないか? エリカについて些細な変化があれば教えてほしい」

みほ「ごめんなさい」

みほ「私……あんまりそういうの分からなくて」

みほ「でもエリカさんは私と違って人気者だから……」

みほ「いじめとかはないと思うよ」

まほ「……そうか」

みほ「一応私も気をつけて見てみるね」

まほ「ああ……頼む」


まほ「それでこれはエリカの話とは違うんだが」

まほ「みほはその……いじめとかは受けてないんだな」

みほ「…………」

みほ「うん……大丈夫」

みほ「友達はまだ出来てないけど……イジメは受けてないよ?」

みほ「たまにだけど小梅さんとかも話しかけてくれるし」

まほ「そうか……」

まほ「少しずつでいいみほもクラスに馴染めるようにしないとな」

みほ「それはそうなんだけど……」

まほ「どうかしたのか? 何か悩みでもあるのか」

みほ「そうじゃなくって……お姉ちゃんはクラスに馴染めてるのかなぁって」

まほ「ああ……勿論だ」

みほ「でもお姉ちゃん戦車道の時間以外に他の人と話してるの見たことな……」

まほ「そ、それよりみほお腹空いてないか? 今日は時間もあるし私が作ろう。売店の弁当だけだと体に良くないからな」

みほ「ありがとう……お姉ちゃんのご飯美味しいから……」

まほ「そう言ってくれると私も作る甲斐があるよ」

まほ(昔はあんなに元気だったのに……)

まほ(いつからみほはこんなに元気が無くなってしまったんだろう)

まほ(最初は戦車道だって楽しんでいたはずなのにな)

まほ(私は分かっているんだ)

まほ(今のお前は私の真似をしているだけで本当にやりたい戦車道を全く出来ていないということを)

まほ(お前に……西住流は似合わない)

まほ(だからみほにはみほだけの戦車道を進んで欲しいと思っているんだが)

みほ「…………」

まほ(それには……まだ時間が掛かりそうだな)

まほ(私が卒業すればみほは隊長を引き継ぐことになる)

まほ(それまでには自分の戦車道を見つけてほしいんだがな)

教室

まほ「小梅……少し良いか?」

小梅「あ……隊長。どうかしたんですか? わざわざ教室まで来て」

まほ「聞きたいことがあってな」

まほ「エリカに関してなにか最近変わったことはないか?」

小梅「変わったことですか?」

まほ「ああ……誰かにイジメられたりとか……」

小梅「それはあんまり考えられないと思います」

小梅「エリカさんはクラスでも人気者でお友達も多いですから」

小梅「ただ……ちょっと」

まほ「……なんだ?」

小梅「あ……いえ大したことじゃないんですけど」

小梅「最近……エリカさんは休み時間に姿を消すことが多くて」

小梅「お昼休みもいつもは一緒にご飯を食べに行ってたんですけど」

小梅「最近は寄るところがあるとか予定があるとかで姿を消していて」

まほ「そうか……」

まほ「なるほどな。どうりでエリカの姿を見かけないわけか」

まほ「見かけないと言えばみほはどこにいるんだ?」

まほ「アイツの姿も見えないが」

小梅「みほさんのことはちょっと……」

まほ「そうか」

小梅「でもみほさんが教室から出ていくのも無理はないと思います」

まほ「……というと」

小梅「みほさんずっと色んな人にイジメられていたみたいだから」

小梅「そんな人たちが大勢いる教室はやっぱり居づらいのかなって」

まほ「イジメって……みほはいじめられているのか?」

まほ(イジメはないって……言ってたじゃないか)

まほ(みほ……私を心配させないように無理をして……)

小梅「黒森峰は厳しい校風ってこともあって暴力とかそんな目立つイジメはないですけど」

小梅「物を隠されたりプリントが配られなかったり……そういうのはあったんだと思います」

小梅「私……ゴミ箱に体操服が捨てられているのを見つけて」

小梅「それを拾ってみほさんに渡したことがあったんですけど」

小梅「その時のみほさんの反応がまたかぁみたいな感じで諦めたように笑ってて」

小梅「きっと初めてじゃなくてみほさんにとってそれは日常だったんだと思います」

まほ「……みほ」

小梅「ごめんなさい……私……何も出来なくて」

まほ「いや……小梅が謝る必要はないさ」

まほ「こうして伝えてくれた。それだけでも十分だ」

まほ「後は私で何とかするよ。黒森峰の生徒はみんな良い奴ばかりだ」

まほ「だからきっと話せば分かってくれるさ」

まほ「イジメだって無くなるに決まってる」

まほ「みほだって……クラスに馴染める……はずだ」

小梅「……隊長」

小梅「その……私も頑張ります」

小梅「ずっとみほさんと話すと自分もイジメられるんじゃないかって怖くて話せなかったけど」

小梅「やっぱりこんなの間違ってるって……そう思うから」

まほ「……ありがとう。きっとみほも喜ぶよ」

まほ「最後にもう一つだけ質問して良いか?」

小梅「私に答えられることなら」

まほ「エリカはみほがイジメを受けていることを知っていたのか」

小梅「はい。知ってましたし凄く怒ってました。こんなの黒森峰の生徒がすることじゃないって」

まほ「それだけ聞ければ十分だ。時間を取らせてしまいすまなかった」

まほ「みほのこと……よろしく頼むよ」

小梅「はい!」ピシッ

まほ(小梅の話を聞いて分かったことは)

まほ(みほはイジメを受けていた)

まほ(エリカはそのことに憤慨していた)

まほ(最近ではエリカが休み時間に姿を消すようになった)

まほ(ここから察するにエリカはみほのイジメを止めようとしたのだろう)

まほ(正義感が強いエリカのことだ。黒森峰でイジメがあると知れば放っておくわけがない)

まほ(となれば止めるために何か行動を起こしたはずだ)

まほ(きっとあの痣もその行動の結果起きたものに違いない)

まほ(そしてまだ休み時間に姿を見せない日が続いているということは)

まほ(その問題は解決していないと言うこと)

まほ(あまり上級生が出るべき問題ではないということは百も承知だが)

まほ(ここで妹も守れないようでは西住流が廃る)

まほ(西住流のためにも……みほのためにも私が出るしかないだろう)

次の日

エリカ「…………」

まほ(自分が教室に着くよりも速く先に行っていたらと不安だったが)

まほ(何とか間に合ったみたいだな)

まほ(教室を見る限りみほの姿はないようだが)

まほ(アイツはちゃんと授業に出てるんだよな?)

まほ(だとしたら授業が終わってすぐに教室に出ているってことか)

まほ(それだけ教室が辛いんだな……みほは)

まほ(いや……今は目の前にいるエリカに集中しよう)

まほ(それにエリカの問題を解決できればみほのイジメだって解決できるかもしれないからな)

エリカ「……待ったかしら?」

みほ「……大丈夫。私も今来たところだから」

みほ「同時だと怪しまれちゃうもんね……」

みほ「それじゃ……早速中に入ろっか」

みほ「私……凄く楽しみにしていたから」ニコ

エリカ「ええ。私だって楽しみよ」ニコニコ

まほ(二人とも戦車倉庫の中に入っていくぞ)

まほ(確かにあの場所なら他の生徒に見つかることはないが)

まほ(やはり……二人には何かしらの繋がりがあるみたいだな)

まほ(私の考えでは二人とも誰かにいじめられていると思ったんだが)

まほ(だが二人の様子を見る限りこれから楽しいことをやるそんな風に見えて仕方がないんだが)

まほ(あんなみほの笑顔……初めて見た)

まほ(もしかするとイジメの問題は解決していて二人で遊んだりしているのかもしれない)

まほ(とにかくしばらく様子を見てみるか)

エリカ「それじゃどっちから始めようかしら」

みほ「昨日は私からだったし今日はエリカさんからで良いんじゃないかな」

エリカ「決まりね。じゃあ早速始めるわよ!」

エリカ「えいっ!」

バキッ ボコッ ベキッ

まほ「……え?」

まほ(ど、どういうことだ……急にエリカがみほを殴り始めたぞ)

みほ「んっ……げほ……がはっ」

みほ「エリカさん……最高。最初に比べて凄く苦しいし腹パンも上手くなってる」

みほ「本当に意識がくらくらして飛んじゃうかと思っちゃった」

エリカ「ふふっ……苦しんで貰えたんなら私も殴り甲斐があるってもんよ」

エリカ「でもまだ終わってないわよ? まだ私は満足してないんだから」

みほ「エリカさん……」キュンキュン

エリカ「蕩けた顔してんじゃないわよ」バキッ ボキッ

みほ「あ……ああっ…………エリカさん激しい」

みほ「そんなに連続で殴られると息ができなくて……」

エリカ「でもみほはそれがいいんでしょ?」

みほ「う……それは」

エリカ「ほら……貴方のお腹殴って欲しそうにこっちを見てるでしょ」

みほ「ううっ……」テレテレ

まほ(…………な、何が起きているんだ)

まほ(てっきりエリカにイジメられているのかと思ったがそれにしてはみほの様子が変だ)

まほ(あんなに嬉しそうにして……まるで殴られることを望んでいるみたいに)

エリカ「ふぅ……やっぱりみほを殴るのは気持ちが良いわね」

エリカ「貴方を殴っていると頭が熱くなって気分が高揚するのよ」

みほ「……うん」

みほ「私もエリカさんに殴られるの好き」

みほ「エリカさんに殴られていると自分が必要にされてるんだって凄くドキドキするから」

みほ「それに最近のエリカさんは拳のキレが凄くて」

みほ「本当に苦しくて癖になっちゃいそう」

エリカ「みほに苦しんでもらうために最近ボクササイズを始めたのよ」

エリカ「その様子だと始めた甲斐はあったみたいね」

みほ「私の為にそんなことまでしてくれるなんて」

みほ「ありがとう。エリカさん……」

まほ(く、狂ってる……)

まほ(とりあえずこんなことすぐに辞めさせなければ)

まほ(これ以上。みほが殴られている姿もエリカが殴っている姿も見たくなーー)

みほ「それじゃ今度は私がするね!」

まほ「!?」

エリカ「ええ! お願いね!」

みほ「頑張れーボコー!」バキッボキッ

エリカ「ぐっ……ぁ…………ぅ」

みほ「負けるなー! ボコー!」ボコッ

エリカ「あ、あはは! オイラ負けないぞ~」

みほ「わぁ! ボコだ」ドカッ ゴキッ

エリカ「オイラはボコだからこんなのへっちゃらだー」

みほ「わぁい! エリカさんのそういうところ大好きー」ボコッバキッ

オイラボコダゼー ワーイボコダー バキッ ベキッ

まほ(な、なんなんだ……二人は何をしているんだ)

まほ(なんで二人はお互いを殴りながら殴られながら)

まほ(あんなに楽しそうなんだ)

みほ「はぁ……はぁ」ドキドキ

エリカ「…………ふふっ」ドキドキ

みほ「今日も気持ちよかったね」

エリカ「そうね。これからもずっとこうして一緒に楽しみましょうか」

みほ「うん!」

みほ「でもその前に……」

エリカ「そうね……その前に」

みほ「覗いてる誰かさんにお仕置きしないとね」

まほ「……え?」

みほ「お姉ちゃんそこに隠れても無駄だよ」

エリカ「隊長そこに隠れても無駄ですよ」

まほ「……降参だ」

まほ「他の生徒から二人の話を聞いてな。前の痣のこともあったし心配して後を付けてきたんだ」

まほ「黙って追跡したことは謝ろう。だがこれは一体どういうことだ」

みほ「……どういうことって」

まほ「どうして二人で暴力を振るい合っている? 私はてっきり二人がイジメに合っているものだと思って」

みほ「確かに私は嫌がらせとか受けてるけど」

みほ「もうそんなことどうでもいいの……」

みほ「だって私にはエリカさんがいるから」

まほ「……みほ」

エリカ「一応主だった嫌がらせは私が注意しましたしみほの面倒は見ているつもりです」

まほ「それは助かっている。だがみほに暴力を振るうのは明らかに異常な行為だ」

まほ「戦車道にお前たちは痣だらけで参加するつもりなのか?」

エリカ「服で隠せます。それにあの行為は私にとってもみほにとっても必要なものなんです」

みほ「最初はね。寂しさを埋めるためだったの」

みほ「私は誰にも必要とされなかったから……」

みほ「だからエリカさんに殴られることによってストレス発散の道具にしてもらおうって思ったんだけど」

みほ「エリカさんに殴られた時……息が苦しくってでも気持ちよくて痛くて癖になって色んな感情が混じって」

みほ「私……必要とされてるんだなぁって」

まほ「……みほ聞いてくれ。誰一人としてお前のことをいらないなんて思ってーー」

みほ「じゃあどうして私はみんなから避けられてるの?」

まほ「そ、それは……」

みほ「大丈夫。分かってるから……私なんて誰からも必要とされてない無価値な存在なんだって」

みほ「でもね……もう大丈夫。私にはエリカさんがいるから」

まほ「ま、待て……たしかにクラスメイトの中には心ない人もいるかもしれない」

まほ「でも小梅はお前のことを心配していたじゃないか」

みほ「小梅さんだって私がイジメられていても助けてくれなかったよ?」

みほ「心配そうにはしてくれていたけどそれだけだもん」

まほ「…………」

まほ「エリカ……お前はどうなんだ」

まほ「このままで良いと思っているのか?」

エリカ「はい」

エリカ「みほは弱いところがあるから……私がいてあげないと」

エリカ「意外と他人に頼られるのも悪くないですし」

エリカ「それにみほに殴られるのって凄く気持ちいいんですよ」

エリカ「圧倒的な暴力で支配されてみほのペットになる。この陶酔感を味わったらもう戻れません」

エリカ「逆にみほに暴力を振るうのも気持ちいいんです」

エリカ「あのみほが殴られる度に気持ち良さそうにしていて」

エリカ「まるでみほを自分の支配下に置いたみたいで……」

まほ「二人の言い分は分かった。二人の仲が良いのは私だって嬉しいさ」

まほ「だがこの関係は決して健全と言えるものではない」

まほ「お前たちのことはカウンセラー室の職員に告げて任せることにする」

まほ「分かったな」

みほ「…………」

エリカ「…………」

みほ「お姉ちゃん……何を勘違いしてるのかな」

まほ「……え?」

エリカ「隊長は私たちの秘密を見てしまったんです」

エリカ「無事に帰らせると思ってるんですか?」

まほ「二人とも何を言って……」

みほ「大丈夫。私はただ……知ってもらいたいってだけだから」

まほ「知るって……何を」

エリカ「暴力を振るう快感に暴力を振るわれる快感」

エリカ「隊長……不安がらなくても大丈夫です。最初は痛いですけど本当に気持ち良いんです」

まほ(二人とも目が虚ろでまともな精神とは言えないな)

まほ(このまま捕まればどうなるか分かったものではない)

まほ(ここはとにかく二人から離れーー)

みほ「今です!」

まほ「なっ……」

エリカ「捕まえましたよ。逃がすつもりなんてありませんから」ギュッ

まほ「くっ……離せ!」ジタバタ

エリカ「隊長……暴れてはダメですよ。大丈夫……私が一緒に付いていますなら」ナデナデ

みほ「それじゃボコボコ作戦を開始します!」

みほ「お姉ちゃんのお腹に向けてパンツァーフォー!」

まほ「や……やめろ…………やめーーう、うわぁぁぁぁあぁぁ」

次の日

小梅「あ、あの隊長……みほさんは大丈夫なんですか!?」

まほ「…………」

小梅「今日の体育の授業で……着替えをするみほさんの姿を見たんですけどその身体が痣だらけで……」

小梅「……私じゃ出来ることがあるか分からないですけどそれでも何か協力できることはありませんか?」

小梅「みほさんは優しい人だから……これ以上辛い思いをしてほしくないんです」

まほ「ああ……そのことについて丁度小梅に話したいことがあったんだ」

まほ「だがここでは他の生徒の目もあるこっちに来てくれないか」ギュッ

小梅「あ……はい。でもそんなに強く引っ張られるとちょっと痛くて」

まほ「ああ……すまなかったな。さ、こっちだ」テクテク

小梅「はい!」

小梅(あれ? 隊長の腕……痣がある)

これにてこのssは終了です!
皆さんここまで読んで下さりありがとうございます!
それではHTML依頼出しておきますね!

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