少女「愛してるって言って」少年「………」 (291)

SS初投稿です。

所謂「プーチンPシリーズ」を台本形式のSSにしたものです。原作がなかなか難解なのですが、ストーリーが非常に好きなので、思い切ってSSにしてみました。解釈を少し変えたり脚色したりしてます。

全4部です。

また、「ボーカロイド」要素が少々出てくるため、苦手な方は非推奨かもです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1559663022

ーーーーー


「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「??♪、~~♪」

「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「??そしたらさ、君は??」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)

ーーーーー


「??ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「??いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「??♪、~~♪」

「??何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「??いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「??そしたらさ、君は??」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)

下校中ーーー

少女「??それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」

少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」

少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」

少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」

少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)

少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」

少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」

少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」

少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」

少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」

少年「そう言われてもなぁ」

少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」

少年「ったく、また始まったよ……」

少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)

少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」

少年「え?俺はまだ行くとは言って」

少女「行くわよね」ズイッ

少年「いやだから」

少女「行 く わ よ ね」ズズイッ

少年「……はい」

少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと??」

少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)

少年「……ん?」



女「??。??、???♪」

モブA「??!」

モブB「??、??。」

ダッシュ記号って表示されないんですね…

仕切り直して最初から投下します。

ーーーーー





「──ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの」

「──いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

「──♪、~~♪」

「──何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

「──いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

「──そしたらさ、君は──」







ーーーーー

「……く…………て!」

少年(……ん)

「…やく………ってば!」

少年(なんだ……夢…?)

「早く起きなさい!」ピシッ

少年「痛てっ!……少女か?何もデコピンすることはないだろ…」

少女「あんたがずっと寝てるからじゃない。もうLHRも終わっちゃったわよ」

少年「……俺たちしかいないじゃん」

少女「みんな帰ったか部活よ」

少年「てっきり先生が起こしてくれるもんだと思ってたけど」

少女「知らないわよ。見放されたんじゃないの?あんた最近成績悪いし」

少年「おいおい…」

少女「ま、そんなあんたを見捨てずに待ってた優しーい私に感謝することね♪」

少年「は?」

少女「あ?」

少年「……なんでもない」

少女「ほら、帰るわよ。どうせ宿題もあんた一人じゃ終わらないでしょ?一緒にやってあげるわ」

少年「はいはいどうも」

少年(さっきの夢……すごく懐かしい気がしたけど、何だろう……)

下校中ーーー

少女「──それでさ、今度の春休みにおじいちゃんのところに帰らない?」

少年「お前、ほんとあの人のこと好きなー」

少女「当然でしょ?というかあんたは何も感じてないの?私たちを大事に育ててくれて、今こっちの学校に行けてるのだっておじいちゃんのおかげなんだから」

少年「いやまあ、ありがたいとは思ってるけどさ……よく覚えてないんだって」

少年(親に捨てられ、身寄りのない俺たちを拾って世話してくれたのが、少女の言うおじいちゃん……R国のお偉いさんらしい。らしいっていうのは、全部少女から聞かされたことだからだ。俺自身は昔のことをほとんど覚えてない。今俺たちは同じ寮に住んで同じ学校に通ってるけど、そう取り計らってくれたのもその人なのだそうだ。……作り話かよ)

少女「じゃあ、私たちが一緒に闘ってたあの日々も?」

少年「……ばったばったとなぎ倒していったってやつか?」

少女「そうそう!なんだ覚えてるじゃない」

少年「それはお前に何度も聞かされたからな。悪いけど俺の記憶の中にはございませんってやつだ」

少女「もう、信じらんない!二人であんなにいっぱいやっつけたじゃない!そんなにどうでもいいことだったわけ?」

少年「そう言われてもなぁ」

少女「あーあ、昔のあんたは頼もしかったのになー。今じゃこんなになっちゃって」

少年「ったく、また始まったよ……」

少年(大体闘うってなんだよ。格ゲーの話かっての)

少女「はぁ……まあいいわ。それで、おじいちゃんのとこに帰る日だけど、休みの半ばくらいでいい?」

少年「え?俺はまだ行くとは言って」

少女「行くわよね」ズイッ

少年「いやだから」

少女「行 く わ よ ね」ズズイッ

少年「……はい」

少女「うんうん♪休みの半ばに行くんだから、それまでにはさっさと春の課題終わらせとかないとだめよ。あと──」

少年(……ばっくれてやろーっと。後が怖いけど)

少年「……ん?」



女「──。──、───♪」

モブA「──!」

モブB「──、──」


少女「なに?どうしたの?……ってあいつか」

少年「女ちゃん、やっぱいいなぁ…」ニヘラ

少女「あれのどこがいいのよ。いっつも仮面みたいな笑顔貼っつけてるだけじゃない」

少年「分かってないなー、あれはファンに向ける営業スマイルってやつだって。アイドルって大変なんだ。気を許せる相手が側についててあげないと……それが俺だったりしたら……えへへー」

少女「呆れた。重症ねこれは……さっさと帰るわよ」

少年「あーいっそ告白したら付き合ってくれないかなぁ」

少女「なに?彼女が欲しいの?……じゃあほら、ここにいるじゃない。ずーっとあんたと一緒に居た適任者が♪」

少年「え?誰?」

少女「♪」ニコッ

少年「……お前が?」

少女「そそ♪こんなヘタレでも幼馴染としてのよしみってのがあるから──」



少年「いやーないない。冗談にしてももっと面白いこと言えって(笑)」



少女「…………は?」

少年「何かあるとすぐ手出してくるし、しかもとんでもなく痛いし、そんなのと付き合ったら命がいくつあっても足りないだろ」

少女「…………」

少年「あと可愛げがない!お前せっかく顔はいいんだから、そのがさつなとこ直せばかなりましになると思うんだけどなー」

少女「…………」

少年「この際だから女ちゃんを見習ってみるとかどうだ?お前も一応アイドルやってんだし、女ちゃんの良さが分かると思うぜ」

少女「っ……」

少年「そうだなー女ちゃんくらいおしとやかになれたら、俺の相手としてやぶさかでも──」

少女「ふんっ!」バキッ!

少年「がふっ……」

少女「さいってい。ずっとそこで寝てなさいよ」スタスタ...

少年「……あご、蹴るのは、やめろって……」ガク





モブA「なになに~あの子達どうしたのかしら」

モブB「別れ話でもしてたんじゃないの?」

モブA「あの男子浮気したのかな?」

モブB「さぁ……でもありえるわね。あの子ちょっとかわいいし」

モブA「……モブBってああいう子がタイプ?」

モブB「え、あ、いやいや別にそういうんじゃ……ね、女ちゃんは何だと思う?」

女「……」

モブA「女?」

女「…え?あぁいや、あの子、私の熱烈なファンなの」

モブB「あの子も?もしかしてこの前教室に押し掛けてきたストーカー集団の中に…?」

女「いーえ。でも付きまとってくるって意味ではおんなじかなー。ま、いつも返り討ちにしてるんだけどね♪」

モブA「毎度のことだけど、容赦ないわねー」

女「当然!この私よ?そこらへんの人が釣り合うわけないでしょ?」

モブA「はいはい」

モブB「……じゃああの子もらっちゃおっかな」ボソッ

モブA「…モブB、あんた……」

モブB「え、聞こえてた!?」

モブA「人の好みに口出しするつもりはないから心配しないで」ニヤニヤ

モブB「……わ、忘れて!」ガバッ

モブA「わっ、危なっ!」ヒョイッ

モブB「んー!」

モブA「ちょ、やめなさいって!」

女(………)




自室ーーー

少女「………」スッ

少女「………」カチッ

少女「……んっ……」

少女(……いつから、こうなっちゃったんだろ)

少女(こんなはずじゃなかったんだけどな……)

少女(でもあのバカ……私の気も知らないで…!)



ーーーーー

少年「──なぁ少女、次は向こうの奴ら蹴散らしに行こうぜ!」

少年「──あぁ?怪我?こんなの大したことねぇよ。んなことよりほら、頼んだぜ」

少年「──俺の背中任せられるの、お前だけだからな!」

ーーーーー



少女(この夢みたいに、あの頃の少年が帰ってきてくれればな……)

少女(第一、なんであの頃のこと覚えてないのよ!もう!)

少女(……あいつ、危ないことして稼いでるっていう噂聞いたけど、本当なのかしら)

少女(どこまで落ちぶれれば気が済むのよ、あのバカは)

少女(……私もひとのこと言えないか……)



ピリリリッ ピリリリッ



少女「」ビクッ

少女「……電話?」

少女(……あいつから……)

少女「………」ピッ

少女「………はい」

少年『あ……少女か?……その……』

少女「なに?用がないなら切るわよ」

少年『いや待って待って!……そのさ、悪かったよ』

少女「……何が?」

少年『さっきのことだよ。別に俺は、少女をバカにするとか、そういうつもりで言ったんじゃなくてさ──』

少女「そんな言い訳はいいわよ。女より劣るカスって言いたいんでしょ?」

少年『そんなこと言ってないだろ』

少女「いいって。夢の中のあんたに慰めてもらってるから」

少年『夢?……少女、もしかしてアレ使ってるのか?』

少女「そうよ。あんたも使えば?念願の女とよろしくできるんじゃない?」

少年『………とにかく、機嫌直してくれよ』

少女「………」

少年『なぁ、俺にできることなら何でもするからさ』

少女「……じ……て…」ボソッ

少年『え?』

少女「……私の前で女の話しないで」

少年『……分かった』

少女「ほんとに?」

少年『あぁ』

少女「……次はないからね」

少年『分かってるって』

少女「おじいちゃんにあんた消してもらうから」

少年『こえーよ!……つーかお前もうすぐ収録の時間じゃないの?』

少女「忘れてるわけじゃないわよ。今行くところ。そういうあんたもでしょ?」

少年『いや、俺は……いいよ今日は』

少女「はぁ?またサボる気?この前も行くって言っておきながら結局来なかったって聞いたけど!」

少年『それはその……』

少女「いつもいつも何してるの?……危ない商売ってやつ?」

少年『!?は、え!?なんでそれを……別になんでもいいだろ』

少女「あんたね……噂になってんのよ」

少年『どうせ根拠も何もないただの噂だろ』

少女「あとスリ癖」

少年『っ……』

少女「前に見たわ。あんたがまたスッてるの。ねぇ、あんた本当にこのままじゃ退学になるわよ?」

少年『大丈夫だって言ってるだろ。最低限のことはやってるし。……明日の昼から、時間空いてるよな?宿題教えてもらいに行くからよろしく。じゃ』

少女「あ、ちょっと!まだ話は──切りやがったあのバカ」

少女(……もうちょっと時間あるわよね)

少女「………」カチッ

少女「……っ」

少女(はー……)

少女(少年……なんでよ……)

少女(私はただあんたと……)

少女(………)



少女「……ひとりにしないでよ」



ーーーーー

少年「──よろしく。じゃ」ピッ

少年「……ふぅ」

少年(少女のやつ、最近どんどん口うるさくなってきてる気がする)

少年(別に俺がどこで何をしてようが勝手だろ)

少年「……行くか」スタスタ

少年「………」プルルル

少年「あ、もしもし。うん、遅くなって悪い。今から向かうから。え?遅刻分引くって…勘弁してくれよ。ただでさえ金がないのに──」


スタジオーーー

少女「~~♪~~~♪」

「はーい、OKでーす!お疲れさまでしたー!」

少女「ありがとうございました」



少女「──ふぅ」

少女(結局、あいつは来てないみたいね)

少女「何やってんだか全く……」

少女「……あ、これ、新しく出た雑誌」

少女「………」パラパラ

少女「やっぱりみんなかわいいわねー。私も頑張ってればそのうちこんな風に……うげ」

雑誌『今人気絶頂中!女さん特集!』

少女「女の記事……」

少女「………」

少女(悔しいけど、いい歌うたうのよね、こいつ)

少女(この女がいる限り、私は一番になれない気がしてくる……あいつの中でも)

少女(……嫌いだわ)



ピリリリッ ピリリリッ



少女(なに?また少年?)

少女「……!」

少女「………………」ピッ

『あー、やっと出てくれたね』

少女「なんで今掛けてくるのよ。いつも明日くらいにかけてくるじゃない。まだ楽屋なんだけど」

『それはね、君の悲しそうな心の声が聞こえたからさ~』

少女「……つまんない冗談はいいわ。で、何の用なのよ、売人さん」

売人『えー?僕からの用件なんて分かってるでしょうに』

少女「……どれくらい買える?」

売人『一週間分くらいかな。また用意しておいたから、明日の朝、いつものところでいいかい?』

少女「明日の朝?ちょっと急すぎない?」

売人『おや、先約でも入っていたかい?』

少女「別にないけど……」

売人『いやー最近注文が多くてねー、本当は明後日に君に渡そうと思ってたんだけど、その日は大口のお客さんが入っちゃってさ』

少女「あっそ」

売人『連れないねー相変わらず』

少女「どうでもいい。明日受け取りに行くから、切るわ──」

売人『君もよく知ってる人だと思うんだけどな~』

少女「!」

少女(……まさか)

少女「……あっそ」

売人『ほーんと、愛想ないよね君。アイドルやってるんでしょ?もっとリップサービスとかさ、練習した方がいいよ?』

少女「余計なお世話よ。もう用はないでしょ?切るから」ピッ

少女「………はぁ」

少女(分かってる。分かってるわ、このままじゃダメってことくらい)

少女(……少年……)

少女「……おじいちゃん、私……どうすればいいのかな」


翌日ーーー



ガチャッ

少年「よーっす」

少女「あんたね、お邪魔しますくらい言いなさいよ」

少年「いいだろ別に、俺たちの仲なんだし」

少女「……どんな仲よ?」

少年「なんつーか……腐れ縁?」

少女「……」ゲシッ

少年「いって!蹴るなよ」

少女「ふん」





ーーーーー



少年「………」

少女「………」カキカキ

少年「………」

少女「………」カキカキ

少年「なぁ」

少女「なに?」

少年「なんで隣?」

少女「?」

少年「いやそんな首傾げられても」

少女「あ、そこの問題間違ってるわよ。そこはこっちの式を使って、こう解かないと」

少年「ほんとだ、サンキュ。…ってそうじゃなくて」

少年「なんで俺の隣に座るんだよ?狭いだろ。そっち座んないの?」

少女「別に狭くないけど」

少年「えぇ…?そうか?でも明らかに……」

少女「……」ジッ

少年「……あー、まぁ、こっちの方が教わりやすいからいいけど」

少女「でしょ?あと、そっちの問題も違うわよ」

少年「どれだ?」

少女「これよ」グイッ

少年「ちょっ」

少女「最低限のことはやってるって言っておきながらこの様なわけ?」

少年「いやだから、こうやって課題くらいはやってるじゃん。つーか近いから…!」

少年(……こいつ、いい匂いすんな)

少女「私が言わなきゃやらないじゃない」

少年「う……まぁそのことについては感謝してるよ……」

少女「………」

少年「……あのさ、そろそろ離れてくれないと課題が──」

少女「明日」

少年「進まな……え?」

少女「買いに行くんでしょ、アレ」

少年「……それも噂になってんのか?」

少女「違うわよ」

少年「買うけどさ、何?別にわざわざお前の許可が要るわけでもないだろ?」

少女「そんなに大量に必要なの?」

少年「どこまで筒抜けなんだよ……」

少女「それと昨日、やっぱり来なかったし」

少年「またその話か?説教するなら俺は帰るぞ」

少女「ねぇなんで」

少年「ん?」

少女「あんたはさ、何がしたいの」

少年「何って……」

少女「学校も、収録もサボる。アレを使う頻度も増えてる。挙句に危ない商売に手を出すって……」

少年「あー、帰っていいか俺」

少女「あんた女のこと好きなんでしょ?今のままじゃ絶対振り向いてなんかくれないわよ」

少年「おいおい、その話はしないんじゃなかったのか……いいんだよ、もう。お前に言われなくても分かってる。女ちゃんと俺じゃ釣り合わないなんてことくらい」

少女「少年……」

少年「だから!夢ん中でくらい女ちゃんとデートしに行くんだよ!……本当はさぁ、本物の女ちゃんと行きたいけど、はぁ……」

少女「………」

少年「笑うか?……でもお前だって似たようなことしてるだろ?なんかさ、もういいんだよどうでも。なんか俺、女ちゃんに避けられてるみたいだし。学校とかつまんねーし。……どうせならさ、お前のよく言ってるR国でずっと闘ってた方が楽しかったのかもな」

少女「………」

少年「そうだ!いっそのことお前に養ってもらうってのはどうだ?ぶっちゃけ今とあんまり変わらないだろうし、家事くらいはできるぜ、俺」

少女「──なんで」

少年「なに?」

少女「なんでそんなにバカなわけ!?情けない!ほんっとうに!もう見てて悲しくなってくるわ!このナメクジ!ヘタレ!今のあんたは道端の石ころ以下よ!」

少年「は?え?なんだよ……そんなに怒ることか?」

少女「もういい──」





少女「私が何とかしてやるわ!」





少女「だから──」

少女(諦めないで…)

少年「……え、養ってくれるのか!?」

少女「違うわよばか」

少年「じゃあもしかして……女ちゃんのこと手伝ってくれるの?」

少女「そんなわけないでしょ」ゲシッ

少年「痛いって!」

少女「決めたの。あんた本当にダメ人間になってるから。私が更生させてあげる」

少年「更生って」

少女「なによ。文句ある?」

少年「むしろ文句しかないんだが……」

少女「うるさいわね。あんたに拒否権はないから」

少年「うげぇ……」

少年(こうなったらこいつ面倒くさいんだよなー……)

少女「とりあえず来週の金曜日、楽しみにしてなさい」

少年「金曜日?何かあったっけ?……あ」

少年(2/14……バレンタイン……?)

少女「ふふん。更生プログラムの第一歩よ♪」ニコッ

少年「っ……」ドキッ

少女「ほら、ぼさっとしてないでさっさと課題進めちゃうわよ」

少年「あ、あぁ」

少年(まさか、な)

少女「………」カキカキ

少女(そう、私が何とかしないと……)

少女(少年を──)





少女(──初期化するしかない)


2/14ーーー



少女「ふぁーあ……」

少女(眠い……結局昨日は徹夜しちゃったし)

少女(まあでも、おかげでできたから良かった)

ガラガラッ

少女「おはよー」

「おはよー」

「何か少女眠そうじゃない?」

少女「ちょっと夜更かししちゃって」

「へぇー」

「なになに?ひょっとして、チョコ?」

少女「そんなとこ」

「本命君でもいるの!?」

「何よそれー!教えなさいよ!」キャッキャ

少女「あはは…そんなんじゃないって」

少女(あいつは……)チラ

少年「………」ソワソワ

少女(ぷっ……なによあの間抜け面。笑えるわ)

少女(……期待してるのかな)

少女(ふふ、楽しみにしてることね)


少年「………」

少年(少女のやつ……)

少年「………」チラ

少女「……?」チラ

少年「──!」ドキッ

少年(まさか、本当に俺に……?)

少年(バレンタイン、か……)

少年(………)

少年(……女ちゃん、渡しに来たりしてくれないかなぁ)





ーーーーー



キーンコーンカーンコーン

少年「………」ズーン

少年(……結局誰も来なかった)

少女「なーに辛気臭い顔してんのよ」

少年「……ほっとけ」

少女「ね、ちょっと付き合ってくれない?」

少年「え?それって……」

少女「屋上に」

少年「……おう」


屋上ーーー



ヒュオー

少女「んー…!」

少女「さすがに屋上の風は冷たいわねー」

少年「………」

少女「さて、と」

少女「ねぇ少年」

少年「う、うん、何?」

少女「……今日、どうせ一個ももらえてないんでしょ?」

少年「なっ……なんだよ関係ないだろ」

少女「関係あるわよ……さすがにもう分かってると思うけど、はい」スッ

少年「……チョコか?」

少女「そう」

少年「どういう風の吹き回しだ?」

少女「なによ。素直に受け取りなさいよ」

少年「………」スッ

少女「言っとくけど、あんただけだから。渡したの」

少年「そうなのか?……まぁお前こういうことする女子力なさそうだもんな」

少女「一言余計!……それで、今食べて感想聞かせてほしいんだけど」

少年「ここでか?」

少女「うん」

少年「でも帰ってからでも……」

少女「……」ジッ

少年「……分かったよ」

(包み紙を解く)

少年「お、おぉ……」

少女「………」

少年「……いやあのさ」

少女「………」

少年「なんか点滅してるんだけど、このチョコ」

少女「そうね」

少年「そうね、じゃないよ!?え、これ食うの?ってか食べていいものなのか?」

少女「ちょっと体にいいもの使っただけよ。まずくはないから安心しなさい」

少年「えぇー…ほんとかよ……」

少年「……悪い、実は俺今日昼食い過ぎちゃって、腹いっぱいなんだよね。帰ってから食べるから感想は明日でも」

少女「……」ギロッ

少年「ひっ……分かった分かった!食べるから…」

少年(……にしても、どう作ったらこうなるんだよ。変な匂いがするわけじゃないけど……不気味過ぎるだろ)

少年「………」

少女「………」

少年「すまん!やっぱ無理っ!」ダッ!

少女「あ!待ちなさい!」ダッ

少年「いや無理だって!なんだよこれ!宇宙人の食べ物かよ!?」

少女「人の好意は素直に受け取りなさいよ!」

少年「どう見ても好意的じゃねーだろ!」

少年(とりあえずこの場は逃げないと…!)

ガチャガチャ

少年「──!?」

少年(ドアが開かない…!?)

少年「な、なんで鍵かかってんだよ!」

少年(まぁいい、早く開けないと…!)カチッ

ポンポン

少年「………」オソルオソル

少女「少年♪」

少年「あ、あはは……」

少女「鍵かけといてよかった♪」

少年(鍵かけたのお前かよ!!)

少女「……で、食べてくれるわよね?」ニコッ

少年「………はい」

少年「………」





チョコ『チカチカ』





少年(今日が命日かもな……)

少年(……ええい、ままよ!)パク

少年「……お」

少女「どう?」

少年「なんだ、意外とおいしいぞ」

少女「意外とってなによ」

少年「いやこんな見た目なら警戒するだろ普通」

少年「でも……」パク

少年「……うん、うまいよ」

少女「そう?……良かった」

少女「食べてくれて」ボソッ

少年「ん?何か言ったか?」

少女「べっつにー」

少年「ふーん。それよりさ、これってどうやったらこんな見た目に──ぐっ」ドクンッ

少年(な……なんだこの感覚……)

少年「あ……ぐ……」

少女「………」

少年(意識が……)

少年「お前……やっぱり、何かいれたろ……」ガクッ

少女「………」

少女「……ごめんね」

少女(でも、こうするしかない。私とあんたが変わるためには)

少女(……ひとまず、第一段階はクリアってとこね)


寮ーーー



少年「………」

少年「………はっ」

少年(ここは……俺の部屋……?)

少年「死んで……ない?」

少女「生きてるわよ」

少年「うわっ!」

少女「なにそのリアクション。失礼ね」

少年「あ、少女お前…あれに何入れたんだよ!」

少女「だから言ったじゃない。体にいいものだって。……良薬は口に苦しって言うでしょ?」

少年「苦しどころじゃなかった気がするんだが」

少女「今だって身体に変なところはないはずだけど」

少年「ん?」

少年(言われてみれば……別にどこかおかしくなってるわけでもない)

少年「……だからってよ、人が気絶するようなもん食わせるか?」

少女「それは……悪かったわよ。あんなに効き目があると思わなかったから」

少年「そ、そうか……」

少年(やけに素直だな)

少女「あとその、あのチョコ」

少年「ん?もう食わないからな!?」



少女「──本命だから」




少年「……え」

少女「だから、その……返事」

少年「………」ポカン

少女「聞かせてよ、返事」

少年(……な、なんだこれ)

少年「……あ、そっか。さてはどっきりだろ。おいおい趣味悪いなぁこんなことまでして──」

少女「言っとくけど」ギロッ

少年「!?」

少女「はぐらかしたら……容赦しないから」ナイフチラッ

少年(ナイフ…!?何するつもりだよおい…!)

少女「……あんたが私にどんな印象を持ってるのかは分かってるつもり」

少年「………」

少女「女のことが好きなのも知ってる……でも」

少女「私のことも少しは見てよ……」

少年「少女……」

少年(………)

少年「……別に、お前のこと見てないわけじゃない」

少女「え…?」

少年「お前が誰よりも俺の心配してくれてることくらい分かってるよ」

少女「それは……だって私がいないと何もできないじゃないの」

少年「そんな赤ちゃんじゃないんだから……」

少女「………」

少年「いいよ」





少年「付き合おう、俺たち」




少女「!……なんて…?」

少年「聞こえなかった?付き合おうって言ったんだけど」

少女「~~!」バッ

少年「おっと!……なんだよいきなり」

少女「……」ギュー

少年「……」ナデナデ

少女「ん……」

少年(こいつも、こうしてればかわいいのにな……)

少年「なぁ」

少女「……なに?」

少年「これも更生プログラムの一環ってやつか?」

少女「ばーか……違うわよ……これは私の気持ち」

少女「……少年」

少年「ん?」

少女「ありがと」

少年「……おう」

少年(どうしたんだろうな、ほんと。こんなしおらしい少女、初めて見るな……)

少年(……む)

少年「……あのさ、そろそろこの姿勢辛いんだけど」

少女「……もうちょっと我慢して」ギュー

少年「はいはい」




月曜日ーーー



少年「………」

少女「♪」

少年「あのさ、ちょっと近くないですか」

少女「そう?」

少年「少し歩きにくいんだが…」

少女「そんなことないけど?」

少年「俺がだよ!」





「ねー、やっぱりあの二人……」ヒソヒソ

「うんうん、私も……」ヒソヒソ





少年「めちゃくちゃ見られてる気がする…」

少女「いいじゃない。勝手にさせとけば」

少年「うー……」

少年(………)

少年「……少女、お前本当なんかあったのか?」

少女「なにが?」

少年「いや、何か……お前のキャラそんなんだっけ?」

少女「はぁ…デリカシーないところは相変わらずね」

少女「言ったでしょ?私が何とかしてやるって」

少年「えぇ?や、やっぱり更生プログラムとやらの……?」

少女「ねーそんなことよりさ、今日の放課後付き合いなさい」

少年「怪しげな洗脳施設に!?」

少女「何言ってんの。普通にデー──」ガララ





「あー!」

「少女あんた…!」




少年「な、なんだ?」

「なーんだ、やっとくっついたのあんたら?」

「やっぱり先週のあれだよね!?やるねぇ少女!」

少女「ふふふ…まぁね」

「少年君…だっけ?」

少年「は、はい。なんでしょう…?」

「少女になんて言われたの?」

「私も気になる!」

少女「はいはいそこまで。あんたら早く座りなさいよ。もう先生来るわよ?」

「えぇー」

「それくらい教えてくれてもいいじゃん……放課後、楽しみにしててよ」キラン

少女「残念でしたー。放課後はもう先約があるから、ね、少年?」

少年「ん、あぁ…」

「なによそれー!」

「ずるい!」




放課後 自室ーーー

少女「──あー、楽しかった」

少女(あいつと出かけることなんて今まで何度もあったけど、今日のは…デート…)

少女「ん~~!」ムフフ

少女「………」

少女(……でも、あいつの目……)

少女(分かる、あれは私を見てない)

少女「………」スッ

少女「……!」

少女(だめ、だめよ。もうこんなのには頼らない)

少女(欲しい未来は…自分で切り拓く)

少女(そうね──)





ーーーーー



少年「──あー、疲れた」

少年(何だったんだ、あいつのはしゃぎよう。まさか隣町まで行かされるとは…)

少年「………」

少年(少女、か……)

少年(悪くない、かもな)

少年「あーー!でもなぁーー!」

少年(女ちゃん……やっぱ諦めきれねーよなぁ)

少年「はー……」

少年「………」スッ

少年「………」カチッ

少年「っ……」

少年(女ちゃん……)

少年「………」

少年(……よし決めた!)

少年「まずは…少女」

少年(あいつを落としてやる!少女で練習して、最終的には女ちゃんと……にへへ)

少年(そうだな──)









少女(??桜が咲く頃くらいまでにはね)

少年(??桜が咲く頃くらいまでにはな)




>>33 訂正





少女(──桜が咲く頃くらいまでにはね)

少年(──桜が咲く頃くらいまでにはな)



3月ーーー



ザッザッザッ

少女「綺麗に咲いてるわねー」

少女(ここら辺じゃ一番大きい桜の木…)

少女(心なしか輝いてすら見えるわ)

少女(うん、まるで……)





ーーーーー

女『~~♪』

ーーーーー





少女「……チッ」

少女(嫌なもの思い出しちゃったわ)

少女(私だって本気出せば……というか今の事務所やる気無さ過ぎなのよ!結局前収録した歌も使ってくれなかったし)

少女(……やっとこの日が来たのね)

少女(まずは)

プルルル プルルル

少女「………」

少女「……早く出なさいよ」




ーーーーー



ピリリリッ ピリリリッ

少年「んー?」

少年「少女からか」

少年「………」ピッ

少年「──もしもし」

少女『少年、あんた今日暇よね。私のとこに来て』

少年「確かに暇だけどさ。なんだ?デートか?」

少女『っ…そ、そうよ』

少年「……」ニヤ

少年「少女さ~、あんな大胆に告っといてデートって単語にまだ慣れてないのか~?」

少女『なっ!そんなんじゃないわよ!』

少年「お前にそんな女の子らしいとこがあったなんてなぁ」

少女『蹴るわよ』

少年「おーこわ。で、お前の部屋に行けばいいのか?」

少女『いえ、桜の下で待ってるわ。この町で一番大きいやつ。分かるでしょ?』

少年「あーあれか。分かった今から行くわ」

少女『うん、待ってる』

少年「……乙女少女」

少女『あんたねぇ~!』

少年「あーイソガナイトナー」ピッ

少年「……」

少年(順調……でいいんだよな)

少年「花見デートってやつかなぁ」

少年(なんだかんだ、あれ以来変なもの食わせたりしてきたりとかなかったし、もういけるんじゃないか?少女のやつ)

少年(これが女ちゃんなら言うことなしなんだけどなぁ……まぁでもこれはこれで……)

少年「……」ニヤニヤ




ーーーーー



少女(──とか思ってるんでしょうね)

少女(あのバカ面みてたら何考えてるかなんて分かるわ。ほんと単純なんだから)

少女(ふん…あんな女の代わりになるほど私は安くないわ)

少女「……あ、この辺ならいいかしらね」ザクッ





「タイムカプセルでも埋まってるのかい?」





少女「……やーっと来たの?遅刻するなんてらしくないじゃない」

売人「手厳しいねぇ。でも君が急に呼び出すからじゃないか。僕だって暇じゃないんだからさ」

少女「どうせアレを売り歩いてるだけでしょ」

売人「ひどい勘違いだよそれ。銀行がお金の出し入れしかしてないって言ってるようなもんさ。分かるかい?彼らが裏で色んな仕事してるように僕も──」

少女「はいはい、分かったから」

売人「本当にぃー?……それで、僕は何で呼ばれたのかな?アレはこの前たくさん買ってくれたから足りなくなってることなんてないはずだけど。やっぱりそのシャベルで何か掘り出すのかな?お宝?タイムカプセル?それとも埋める方かい?」

少女「残念ながらほとんどはずれ」

売人「えぇー……ん?でもほとんどってことは」

少女「そうよ。ここに埋めに来たの」





少女「──あんたをね」スチャ




売人「………おいおい、穏やかじゃないね。なんだいその銃は。おしゃれなら似合ってないよ?」

少女「お生憎さま。本物よ」

少女「……あんた、何者なの?」

少女「突然この町にやってきて、怪しげなもの売りつけて」

売人「怪しげとは失礼だね。君だって使ってたじゃないか」

少女「もうやめたわ」

売人「……は?」

少女「ダメなのよ。あんなものに頼ってちゃ……私たちはどんどん落ちていくだけ」

売人「………」

少女「アレ、少年にも売りつけてたわよね」

売人「……それが?」

少女「んーん、もういいの。あの子にも金輪際使わせないから」

少女「ねぇ、教えなさい。アレは一体何?何のために私たちに使わせてたの?」

売人「………」

売人「何のためとは…なんだい?まるで僕が悪者みたいに言ってくれるね?いつも説明してる通りさ、あのメモリースティックは、君たちが見たいと思ったものを見せてくれるプログラムだって。せっかく辛そうな君たちに夢を見せてあげたのに、恩を仇で返すような人なのかな、君は」

売人「まぁ……ちょーっと法の抜け道を利用してるのは否めないけどね、ククク」

少女「………」

売人「それに、君に僕を責める資格はないだろう?アレを使った時点で立派な共犯者なんだ。いつも使ってたんだろう……そうだね、その右耳のヘッドホンかな?そこからロードさせてさ」

少女「…!」

売人「いやーでも参ったねー。そっかそっかもう使ってくれないんだ?困ったなー」

少女「……なんなのよ」

少女「あんたのせいでしょうが!」

少女「あんたのせいで、あいつは、私のことなんて見てくれなくなって…!」

少女「私も……こんな……」

売人「──見苦しいね。責任転嫁はやめてくれよ」

少女「っ!」


売人「僕がいなかったらむしろ、君たちの関係はもっと早く壊れていたんじゃないのかい?それが分かってたから、君はこれに手を出したし、彼が使うのも止めなかった……違うかな?」

少女「………」

売人「なのにこの期に及んで僕を悪者扱いするなんて……感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないと思うんだけどねぇ」

少女「……て」

売人「君の意志が弱かったから、こんなことになったんだろう。最近は少しましになってきたみたいだけど、ちょっと遅かったみたいだね。もっと早く君が彼に向き合っていれば結末は違ったろうに…本当に君はかわいそうな──」

少女「やめて!!!!」

売人「!」

少女「分かってんのよ!そんなこと!あんたに言われなくても!」

少女「だから──私は変わるの」

少女「あいつもね」

少女「ひとから見せられる夢なんてごめんよ」

売人「……ふーん、それで僕を、ね」

売人「所詮こうなる運命か」ボソッ

少女「──消えて」チャキッ

売人「ふー…分かった」

売人「……って言えるほど僕も優しくはないんでね!」バサッ

チャキッ

少女「なっ!」

少女(拳銃!?)

売人「少し計画とは違うけど、ここで…!」





タァンッ!





少女「………」

少女「………」ヨロッ



ドサッ


売人「………ふぅ」

売人「まったく、ここまでのじゃじゃ馬ちゃんだったなんて」

売人「あーあ、服に土が付いちゃってる。これ高いのに」バサバサ

売人「ま、結果オーライかな」

売人(この子が油断してるときでよかった。本気だされたらさすがに僕もどうなってたか…)

売人「回収しちゃいますかね。派手に撃っちゃったけど、メインプログラムは壊れてないでしょ」

ザッザッ

少女「………」

売人「これでようやく僕の目的も果せるかな」

少女「………」スッ

売人「長かったなーあのときから??!?」

少女「??じゃあね、お間抜けさん」スチャ





ダダダダッ!





売人「ぐ……あ……なんで……」

少女「ふん、油断なんてしてないわ。こんなの昔に比べればなんてことないのよ。私を甘く見ないでよね」

売人「ふ……ふふ……そうかい、ほんと……とんでも、ない……」ドサッ

少女「………」

少女(あとは……)

少女(少年)



ザクッザクッ




>>40 訂正



売人「………ふぅ」

売人「まったく、ここまでのじゃじゃ馬ちゃんだったなんて」

売人「あーあ、服に土が付いちゃってる。これ高いのに」バサバサ

売人「ま、結果オーライかな」

売人(この子が油断してるときでよかった。本気だされたらさすがに僕もどうなってたか…)

売人「回収しちゃいますかね。派手に撃っちゃったけど、メインプログラムは壊れてないでしょ」

ザッザッ

少女「………」

売人「これでようやく僕の目的も果せるかな」

少女「………」スッ

売人「長かったなーあのときから──!?」

少女「──じゃあね、お間抜けさん」スチャ





ダダダダッ!





売人「ぐ……あ……なんで……」

少女「ふん、油断なんてしてないわ。こんなの昔に比べればなんてことないのよ。私を甘く見ないでよね」

売人「ふ……ふふ……そうかい、ほんと……とんでも、ない……」ドサッ

少女「………」

少女(あとは……)

少女(少年)



ザクッザクッ




ーーーーー



少年「えーっと、確かこの辺のはずだけど」

少年「……お、あったあった」

少年「しっかしほんと綺麗だなーこれ」

少年「俺の門出を祝ってくれてるみたい……うへへ」

少女「なーにが門出なのよ」ヌッ

少年「うおっ!びっくりさせんなよ」

少女「ま、この桜が綺麗なのは同感だけどね」

少年「だよなー」

少女「えぇ」

少年「………」

少女「………」

少年「……で、どっか行くのか?」

少女「いーえ。あのね、少年」

少年「?」

少女「今日はね、大事な話があるの」

少年「話…?」

少女「そ」

少年(それって…)

少年「……そこのスコップと関係ある話か?」

少女「シャベルは関係ない。…見たいの?見たいなら見せてあげるけど。新品だから綺麗よ」

少年「別に見たくはないが……何か埋めてたのか?」

少女「まぁ…ちょっとゴミを、ね」

少年「ふーん」


少女「ね、少年こっち向いて?」

少年「ん…って近くないかお前!?」

少女「うるさい。……目、瞑って」

少年「え、な、なんで?」

少女「いいから」

少年「……」ギュ

少年(な、なんだなんだ!?や、やっぱりあれか?あれなのか!?)

少年(こんな桜の木の下で…ま、まだ心の準備が……)

少女「………」

少年(……なんか近づいてきてる気がする……い、息遣いが……!)

少女「………」

少年「………」ドキドキ





少女「──ごめんね」





少年「え?何が──」

ドゴォッ!

少年「がっ……」

少女「」サッ

ビシッ

少年「っ──」ドサッ

少女「………」

少年「」

少女「……よいしょっと」

少年「」

少女「こいつ……意外と軽いわね」




ーーーーー





「??いやっ!なんで、やだよ…!」



「??あたしを……ひとりにしないで……!」





ーーーーー

ーーーーー





少年(……………)

少年(………)

少年「………う」ノソ

少年(………どこだ、ここ)

少女「目、覚めた?」

少年「…?」

少女「なに?私の顔になんか付いてる?」

少年「いえ、その……」





少年「どちら様でしょうか」





少女「──っ」

少女「……記憶喪失かしら?」

少年「え?」

少女「覚えてないの?私よ、少女よ。あんたとはそうね…腐れ縁ってやつ」

少年「はぁ…」

少女「……本当に覚えてないの?下らない冗談のつもりなら……」ナイフチラッ

少年「!?」

少年「い、いえ!ほんと分かんないです!あなたのことも!…自分のことも……」

少女「……そう」

少年(なんておっかない子だ……!)

少女「あんた、道端で倒れてたのよ。頭でも打ったんじゃないの?」

少年「助けてくれたんですか?」

少女「ここまで運んだだけだけどね」

少年「それは、ありがとうございます」

少女「いいのいいの。…ところで、ここがどこだか分かる?」

少年「いえ……」

少女「ここは私の部屋よ。そんで、この隣はあんたの部屋。ここは私たちが暮らしてる寮ね」

少年「寮……」

少女「ね、何か覚えてることはないの?」

少年「それが、全然なんです……自分の歳くらいなら分かるんですけど」

少女「…そこまではさすがに、ね」ボソッ

少年「え?なんですか?」

少女「何でもないわ。でもそっか、そのうち思い出してくれるといいけど、それまでは大変ね。右も左も分からないんじゃ……明日も学校あるのに」

少年「そ、そんなぁ~」

少女「安心して」

少年「えぇ…?」グスッ





少女「──私が何とかしてあげる!」





少年「なんとか、ですかぁ?」

少女「そうよ。あんたが思い出すまで、色々教えてあげる。ここでの生活の仕方、歯磨きの仕方、前蹴り、切り裂き……全部ね!ふふ」

少年「ほ、ほんとですか!?」

少年(なんか変なの聞こえたけど)

少女「えぇ」

少年「あ、ありがとうございます!本当に!」

少女「いいのよ。私が好きでやってるんだから」

少年「好きで、ですか?」

少女「そうよ」ニコッ

少年「……っ」ドキッ

少女「そういえば、あんたの名前、まだ教えてなかったわね」

少女「あんたは、少年」

少女「で、私は少女」





少女「──改めて、これからよろしくね」



数日後ーーーーー



少女「少年ー!できたー?」

少年「もう少しー!」





ーーーーー

少年「はい、おまち」ゴトッ

少女「うむ」

少女「……」パク

少年「どう、かな」

少女「……んー、まだまだね。こんな味じゃまだ外に出せないわよ!」

少年「出す気ないから!」

少年「……というかさ、これって意味あるの?」

少女「んー?」モグモグ

少年「いや確かに料理って大切だと思うけどさ、もっとこう、生活に必要なことってあるような……」

少女「なに?不満?」

少年「そんなことは…」

少女「毎日世話してあげてるんだから、私としてはもっと色々してくれてもいいと思ってるんだけど。恩返しとしてね」

少年「……こんなに図々しく要求するものじゃないと思うなぁ」ボソッ

少女「なにか言った?」

少年「なんでもないです」

少女「……ん、そうね。そろそろ次のステップに進んでもいいかもね」

少年「次…!それは何をするの!?」ワクワク

少女「買い物よ」

少年「………」

少女「なによ」

少年「いや、別に」

少女「記憶失くしてから行ったことないでしょ?」

少年「それはそうだけどさー……学校は行ってるし、大差ないんじゃないかなぁ」

少女「つべこべ言わずに行く!ほら、これ買い物リストね。あとついでに甘納豆切らしちゃったから買ってきてね」

少年「自分が楽したいだけだよね!?」

少女「うん」

少年「認めた!?」

少女「もう、いちいちうるさいわよ。……ちゃんと買ってこれたらご褒美あげるから」

少年「え、ご褒美って…?」

少女「内緒」

少女「で、行くの?行かないの?」

少年「……行ってきます」

少女「よろしい」

ガチャッ

少女「甘納豆忘れないでねー♪」

少女(………)

少女「………」

少女「……………」

少女「……………ふ、ふふふ」

少女「やった…!やったやった!!」

少女(成功した……!)

少女(少年を初期化してから数日、様子を見てたけど、不審な様子は特にない。売人も葬って、アレも全部捨てたし……全部私の思い通りに進んでる!)

少女(なによ、今まで悩んでた自分を叩きに行きたいわね。私がちょっと本気を出せばこんな簡単に未来を変えられるのに)

少女(少年、最近ちょっと生意気になってきたけど、それはいいわ。また昔みたいな少年になってくれるかな~。それとも、今度は私好みに育てるっていうのもアリね……)ニヤニヤ

少女「あっー!もう幸せ!」

少女(おじいちゃん、私頑張ったよ…!ちょっと遠回りになっちゃったけど、自分の力でやり遂げたから…!)

少女(また、褒めてくれるかな…)




ーーーーー



少年「……」テクテク

少年(………)

少年(……うーん)

少年「なーんかなぁ」

少年(何か忘れてる気がするんだよね)

少年(といっても記憶喪失なんだから、色んな事忘れてるんだけど……そうじゃなくて、もっとこう…別の何か……)

少年「なんだろうなぁ」

少年(このモヤっとした気分)

少年(最近ずっとそうだ…)

少年「んー、分からん!」





「お悩みかな?少年君」





少年「うぇ!?」

少年(聞かれてた!?…恥ずかしい……)

少年「……あれ、お兄さん、今僕の名前…」

「あれ?違ったかい?」

少年「いえ、合ってる…らしいですけど」

「…?」

少年「あの、もしかしてお兄さんも僕のこと知ってる人ですか?」

「なに…?」

少年「すみません、僕、頭打った拍子に記憶喪失になっちゃったみたいで…何も覚えてないんです…」

少年「もし僕の知り合いさんでしたら、どなたか教えてくれませんか?」

「!!」

「……へぇー、そうなんだ」

少年「はい……今、少女って人のところで色々教えてもらってるんです」

「少女……」

「……少年君」

少年「はい」

「君と会うのは少し久しぶりになるかな。君は僕のことを──」





売人「──売人って、呼んでたよ」




少年「売人さんでしたか。それで、もしよろしければ、僕とどんな関係だったか教えてもらっても…?」

売人「そんな大層なものじゃないよ。ちょっとした知り合いさ。……そう、僕が君の悩みを少し聞いてあげてた、くらいかな」

少年「そうなんですか!」

少年(確かに、見るからに普通じゃなさそうな恰好してるし……悩み解決のスペシャリスト、とか?そういう専門の人なのかな)

売人「……君、今失礼なこと考えてないかい?」

少年「と、とんでもない!」

少年(なんで僕の知り合いは皆考えてることが分かるんだよぉ…!)

売人「ま、いいけど」

少年「うぅ……何かごめんなさい」

売人「……さっき」

少年「はい?」

売人「分からないって叫んでたよね。悩み?」

少年「まぁ、そうですね……何かモヤモヤした気分がとれなくて……記憶喪失だけが原因じゃないと思うんです。でも、何が原因か分からなくて……ってこんな話じゃ漠然とし過ぎてますよね」

売人「………」

少年「あ!僕今おつかいの最中なんです。話聞いてくれてありがとうございます、売人さん。また相談に乗ってもらうことあるかもなので、そのときはお願いし──」

売人「──教えてあげよっか」

少年「──ます……え?」

売人「君が今何で悩んでるのか、全部」

少年「……知って、るんですか?僕が何で記憶喪失になったのかも…?」

売人「もちろん」

売人「……だって君は」





売人「記憶喪失なんかじゃないからね」ニヤ




ーーーーー



少女(でもこうしてあいつの帰りを待つっていうのは初めてかもね。いっつもフラフラしてたから)

少女(……ご褒美、なんて。つい言っちゃったけど、どうしようかしら)

少女(最近調子に乗ってきてるし、塩入れた紅茶でも飲ませようかな)

少女(ふふ…どんな反応してくれるかなー♪)

ピンポーン

少女「あらあら、おはやいのね。もう帰ってきたの?」

少女「はいはーい、今開けるわー」

カチッ

ガチャッ

少年「………」

少女「待ってたわよ♪甘納豆もちゃんと買ってきたでしょうね?」

少年「………」

少女「少年…?」

少女(手ぶら?)

少女「あんた何も買ってきてないの?あれだけ平気だなんだって言ってた癖に」

少年「………」

少女「しょうがないわねー。今度は一緒に行こうか。それならさすがに──」

少年「聞いたよ」

少女「え、何?」

少年「全部、聞いた」

少女「何をよ」

少年「……返してよ、僕の記憶」

少女(──!!)

少女「……なに、言ってんの」

少年「………」

少女「あんた、疲れてるだけ──」

少女(待って……今『聞いた』って…)

少女「少年、あんた、誰に……」





売人「──僕だよ」スチャ




少女「っ!?」

少女(な……)

少女(こいつ……!)

売人「なんでって顔してるね」

売人「ダメだよ?敵を倒すときは、跡形もなく消さなくちゃ。それが君の仕事だったんだろう?」

少女「……えぇ、そうね。まさか生きてたなんて。しつこい男は嫌いなんだけど」

売人「おやおや、この状況でまだ強がっていられるんだねぇ?」
チャキッ

少女(チッ……まずったわね。迂闊に鍵開けるんじゃなかった……あれはこの寮のセキュリティも兼ねてるのに)

売人「………」

少女「………」

少年「………」キョロキョロ

少年(……!見つけた、あのかばんだ)

少年(あそこに僕の…バックアップが…)

少年「──」ダッ!

少女「少年!?」

売人「よそ見してていいのかな!」

タァンッ

少女「きゃっ!?」

売人(外した…!化け物じみた反射神経だね…!)

売人(今度こそ!)

タァンッ

少女「ぐぅ…!」

売人(よし!)

少年「ど、どいて!!」ドン

売人「おぉっと!?」

少年「」タッタッタッ…

売人「なんてそそっかしい子だ…」

ビー! ビー!

売人「……ん?」クルッ





少女「フーッ!!フーッ!!」





売人「な、なんだいこれは…!」

売人(部屋が……)





『WARNING!!WARNING!!』

『緊急削除プログラム起動』

『対象オブジェクト解析完了』

『実行シマス』





少女「わたシの前カラ……」

少女「──消エロ!!」





売人(これは……本当にまずいねぇ…!)




ーーーーー



少年「はぁ……はぁ……」タッタッタッ

少年「はぁ……はぁ……」タッ…

少年「はぁ……ゲホッゲホッ」

少年(盗んで、きちゃった……少女のかばん……)

少年「………」

ジー ガサゴソ

少年「……あった」

少年「僕の、バックアップディスク…」

少年(やっぱり、あの売人さんが言ってたことは本当だったんだ…)

少年(少女……なんでだよ……君は、僕を消して、何も知らない僕を見て楽しんでたの…?)

少年「いや、まだ、分からない」

少年(そうしなくちゃいけない理由があったのかもしれない)

少年(すべては、これを読み込めば分かる)

少年「………」カシャッ

スッ… ジジジ…





少年(………???!)




ーーーーー



少女「はぁ、はぁ…」

少女(くそ……仕留め損なった…)

少女「ぐっ……」

少女(まずいわね……中心部に近いところを撃たれたわ…)

少女(コアプログラム…異常なし、ブローカー…異常なし、カーネルアクセス…問題なし)

少女(一応、致命傷は免れたみたいだけど……)

少女「………」

少女(このままじゃ、あいつを仕留めるなんて到底無理ね……)

少女「………」

少女(しょうがない)

少女「………」サッ

ピッ ピッ ピッ

プルルル プルルル

少女「──もしもし、私だけど」




ーーーーー



少年「───………」

少年「………」

少年「………」カシャッ

スッ

少年「……思い、出した」

少年(全部……思い出した)

少年「……く、くくく」

少年(少女……あいっかわらず詰めが甘いなぁ)

少年(俺を初期化して、思い通りにさせようって…?)

少年(君がそうやって俺の気持ちを無視するのは本当に変わらないね!)

少年「………」

少年(……そう、昔から、変わってない)

少年「あぁ……でも……」

少年「騙されたフリして、R国に帰ろうかな……」ツー...





ポタッ




ーーーーー



売人「まさか……あそこまでとはね……」

売人(ちょっと計算外、かな)

売人(また計画の練り直しかなー…)

ウーン

ピーポー ピーポー

売人「……?」

売人(なんだ…?やけに騒がしいが…)

ピーポー ピーポー

売人(……まさか!?)

ズザー!

「そこのお前、武器を捨てて手を挙げなさい!」

カチャッ カチャッ スチャッ

売人「……あらー……」

ゴトッ ガシャン

売人「………」スッ

「それでいい、怪しい素振りを見せるなよ?」

売人「………」チラッ



少女「……」ニヤ



売人(あの女……!)

「今からお前の身柄を拘束する。大人しくついてこい」

売人「はーい……」

売人「……なんて、ね!!」バヒュン!

「うわっ!?」

「うぉ!まぶし!?」

少女「っ!」

「……」

「……あ、いない!」

少女「捕まえて!まだそう遠くには行ってないでしょ!」

「は、はい!」

「行くぞ!付いてこい!」

少女(……頼んだわよ。あのふざけた野郎を…!)

「……さて、少女さん、でしたかな」

少女「………」

「君の実行履歴から、どうも違法なアクセスが検出されたんだが──」

少女「分かってる。付いてけばいいんでしょ?」

少女「──その前に、もう一人、呼んでいいかしら」




ーーーーー



ガタンゴトン ガタンゴトン



『S駅~、S駅~』

『ご乗車ありがとうございます』



少女「次のやつに乗るからね」

少年「………」

少女「聞いてる?」

少年「ん?あぁ…」

少女「もう!しっかりしてよ!」

少年「んー」

少女「いきなり呼びつけちゃって悪かったわよ…」

少女「でも、あんなに長く取り調べしなくてもいいと思わない?むしろ私たちは被害者なのにぃ……」

少女「あいつもまだ捕まってないみたいだし…」ボソッ

少年「?」

少女「……ねぇ、本当に今日のこと何も覚えてないの?」

少年「……あぁ。気づいたらあんなとこにいた。少女から電話なかったら俺から交番行ってたかもな」

少女「ふぅん…」

少女「あんたさ、その口調……」

少年「」ビクッ

少年「な、なんだ?」

少女「……んーん、そっちの方が似合ってるわ」

少年「そうか…」

少女「うん」

少年「………」

少女「………」





巨大モニター「女『~~♪』」





少年(あ……女ちゃん……)

少女「……?」チラッ

少女「」ピキッ

少女「……ねー」

少年(殺気!?)

少女「少年は、ああいう子が好みなの…??」ユラァ

少年「あ、ああいう子って……?」

少女「今、見てたわよね?」ギロッ

少年「っ!?見てました、はい!」

少女「へぇー…」

少女「…そういうフラフラする癖全然抜けてないのね…」ボソッ

少年「いや、でもあれだよ!?たまたま目に入っただけっていうか……そんなんで切れられてもさぁ!?」

少女「……いいこと教えてあげる」

少年「な、なに…?」

少女「女の子はね……そういう嘘には敏感なの♪」ナイフチラチラ

少年(ひー!)

少年(チラッってレベルじゃねー!隠す気ゼロじゃねーか!)

少年「──あ!電車来たぜ!乗ろう乗ろう!」

少女「ちょっと!まだ話は──帰ったら詳しく聞かせてもらうから…!」

少女(……あいつが捕まってないのはシャクだけど…まぁ)

少女「……」チラッ



「……」グッb



少女(保護観察の人も付いてくれてるし、簡単には手出しできないでしょ)

少女(しばらくはまた、少年と一緒に……♪)





.........




ここまでで第1部は終了です。

第2部も随時投下していきます。

第2部投下します。



ーーーーー



ザワザワ



「おはよー」

「おはよ!久しぶりー!…あれ?ちょっと太った?」

「あー!気にしてるのに!」



ガヤガヤ



「なぁ、実は大事な話があるんだ…」

「なんだ…?」ゴクリ

「俺は……」

「宿題を全くやってない!」

「なにぃっ!?……なんてな、そんなの俺もだ!」

「だよなぁ!わっはっは!」



ワイワイ



「…あ、おいあれ」

「ん?おぉ…本当に来てるなんて」

「あの噂は本当だったんだな」





女「……」スタスタ





「あぁ…本物は一段とかわいいなぁ」

「…お前、話しかけて来いよっ」

「え、えぇ!?それとこれとは話が別というか…!」

「何言ってんだよいっつも写真集見てニヤニヤ──」

「ちょっとぉ!聞こえちゃうから!!」





女「……」チラッ

女「♪」フリフリ






「「………」」ポカン

「「」」ハッ!

「お、おい、今俺に手振ってくれたぞ…」

「バカか!俺に決まってる!」

「勘違いしちまったのはかわいそうだがあれは絶対俺に──」

「いやそっちこそ、───!」





女(男ってほんと単純ね)フッ





タッタッタッ

「あの、女さん!」

女「んー?」

「ずっと前から好きでした!ぼ、僕と付き合ってください!」





「おぉ…!」

「あいつ勇者か…」





女「…あれ?あなたこの前の…」

「お、覚えててくれたんで──」

女「なーんてね」

「え」

女「ごめん、興味ないの♪じゃあねー」

「」





「あぁ…!」

「骨は拾ってやる…」





女「……」スタスタ

女「……」スタ...

女(……ツイてないわ、ほんと)

女(またここで1年過ごすなんて…)

女「はぁ…」...スタスタ









「ちょっと!ねぇ、待ってってば!」





女「」ピタッ

女(この声…)

タッタッタッ...

少年「はぁ、はぁ、女ちゃん!」

女「……」

少年「お、おはよう!学校来てるの珍しいね。今日始業式だから?」

タッタッタッ

少女「待てって言ってんでしょ…!もう、なんでよりによってこいつが…」チッ

少年「なんで喧嘩腰なんだよ…。なんかごめんね、騒々しくて」

少女「あんただって人のこと言えないでしょ。……少年さ、こいつと会ったことあったっけ?」

少年「あ、いやー…この間俺をパシらせただろ?そのときに偶然会ってさ…ね、女ちゃん?」ウィンクパチッ

女「はぁ?」

少年「ねっ?」パチッパチッ

女(……)チラッ

少女「…?」

女(……)ニヤリ

女「そうね~、あのときはまさか無理矢理あんなことされるとは思わなかったなー。…忘れられない日になっちゃった…」

少女「はぁ!?」

少年「ちょ、ええ!?」

女「…あはは!そんなわけないじゃない。何もないから安心していいわよ~」ニヤニヤ

少女「……」ジロッ

少年「……でも俺的にはそんな展開も…」ボソッ

少女「」ゲシッ

少年「痛い!」





少年「…あれ、でも女ちゃんってもう高校生じゃないっけ?」

女「うっ」

少女「え?あんた知らないの?」

少年「なにを?」

少女「こいつ留年(ダブ)ったのよ」

少年「えぇ!?……あ、出席日数不足だよね?あれだけ人気があったら学校ほとんど来れないし、仕方ないよっ」

少女「そうかしら?普通その辺は考えて活動するもんでしょ。…成績も相当ひどかったみたいだし、本当はテスト全部白紙で出したとかじゃないの?いっそのこと頭空っぽアイドルとして売り出したら?義務教育で留年っていい宣伝文句じゃない(笑)」

女「」イラッ

少年「お、おい…」

女「──そういえば」

女「少し前くらいかしらね、この学校の生徒が警察に補導されたらしいわよ?…あー怖い、暴力振るうようなお猿さんがこの学校にいるのよきっと。自分に人気がないからやつあたりでもしたのかしら(笑)」

少女「」イラッ

女「犯罪に比べれば、私なんて遥かにマシだと思わない?少年?」

少年「お、俺!?いやそれはまぁ……何とも言えないといいますかその……」

少女「………雌豚」ボソッ

女「…あぁ?」

少女「なにか?」

女「なんでもないけど……猿」ボソッ

少女「は?」

女「なぁに?」

少女「…別に」

女「………」ゴゴゴゴ

少女「………」ゴゴゴゴ

少年(こ、こいつらこんなに仲悪かったか…!?)

少年(あ、そうか、これが)

少年「…同族嫌悪」ボソッ

女・少女「「何か言った??」」

少年「いや!何も…!」



少女「……チッ」

少女「少年、私先行ってるから」

少年「おう…」

スタスタ

女「………」

少年「………」

女「……ほんと、失礼な子」

少年「あの、ごめん」

女「君が謝る必要はないでしょ。…それより、さっきのお芝居は何なのよ?」

少年「お芝居?」

女「私、最近君と会った覚えないけど?」

少年「あーそれはその、色々ありまして……はは」

女「色々ねぇ…」

女(………)

女「まぁいいわ。じゃ」

スタスタ

少年「あ、うん」

少年(……聞かないのかな)

少年「……やべ、遅刻しちゃう」







放課後ーーー



少女「………」スタスタ

少年「………」スタスタ

少女「………」スタスタ

少年(少女、今日ずっとこんな感じだったな…ろくに話しかけてこなかったし)

少年(……考えてみればなんであんなに女ちゃんのこと毛嫌いしてるんだろ)

少年(昔、何かあったのか?)

少年「……あ」

少年(女ちゃんだ……ん?)





女「………」スタスタ





少年(あれ、メイクしてるのか…?)

少年(めっちゃかわいい……)

少年「………」

少年(いいよなぁ……あんな風に自由に生きられたらなぁ……)

少女「………」ジトー

少年「………」ボー

少女「……少年」

少年「………」ボー

少女「少年」

少年「………」ボー

少女「はぁ……」

グイッ

少年「……いてて!」

少女「いつまで見てるのよ。帰るわよ」

少年「分かったから、引っ張るなって…!」

少女(………)







ーーーーー



女(この後は……収録活動、ライブ…また収録)

女「始業早々無茶な予定組んでくれるわね…」

女(移動中にメイクする時間くらい確保しときなさいよ、もう)

女「……」

女(また始まるのね)

女(……お決まりの毎日が)

女(でももう慣れたわ……あの子たちのお守りも……)

女「……ねぇ、これでいいのよね……?」

女(……ふぅ)

女(行こ)





ポンッ!





女「わっ!」

女(何っ?花…?)





「どうも~」ニュッ





女(──この人…!?)

「ごめんごめん、驚かせちゃったよね」

女「………」

「君が女ちゃんだよね?いやーひと目見てみたいと思ってたんだよね。やっぱり、綺麗だね!」

女「………」ピッピッピッ

「突然ごめんね。僕は怪しいものじゃない。通りすがりの──」

女「もしもし、警さ──」

「人の話は最後まで聞くもんだよ!?」

女「…何か用、不審者さん?私としては世の平和のために捕まってくれた方が嬉しいんだけど♪」

「君の学校には怖い娘しかいないのかな…」ボソッ

「……僕はね──」





「──君に笑顔を持ってきたのさ」





女「……………私、急いでるので」サッ

「連れないな~」

「……これなーんだ?」

女「もうしつこい──え、あれ?」

女「私のかばん…いつの間に…」

「よーく見ててよ?今からこのバッグが……」

スッ...

「ほら、2つになったよ!」

女「え……」

「しかもなんとこのバッグ……」

カチャ ゴソゴソ

「中にまたバッグがあるんだよ。この中にも……」

ゴソゴソ

「ほらまた!」

ゴソゴソ

「どんどん出てくるよー」

ゴソゴソ

ゴソゴソ

ゴソゴソ

「……これで全部!」

女「」キョトン

「これだけあれば新しく買う必要はないね!さて、ここで問題。君のバッグはどれでしょう?」

女「……それだけど?」ユビサシ

「大正解!!」パチパチ

「ということで、これ全部君にあげちゃいます」ドッサリ

女「ちょ、ちょっと!そんなに持ち切れるわけ…!」

ドサッ

女「もう……何なのあなた」

「フ……名乗る程大した名じゃないが、誰かがこう呼ぶ──」

女「…ラフ・メイカー?」

「その通り!」


女「………」

女「……クスッ」

「お……」

女「古くない?色々と…ふふ」

「手厳しいねぇ。生憎トレンドってものが分からなくてさ」

女「もう…このかばん全部あなたが持ち帰ってよ?私のはこれ1つで十分だから」

「だよねぇ……うん、思った通り」

女「なにが?」

「君、その笑顔の方が似合ってるよ」

女「───っ」

女「……クサ過ぎよ。私を口説くにはまだまだね」

「あれ?ダメだった?…悔しいなぁ」

女「ふふふ……でも、及第点」

女「ねぇ、あなた明日もここに来る?」

「待ち合わせなら手慣れたものさ」

女「じゃあ同じ時間にここで」

女「えっと……ラフ・メイカーさん?」

「あぁ、僕のことは──」





売人「売人、って呼んでくれればいいよ」





売人「けど嬉しいね。僕も、君と色々話してみたいと思ってたからさ」

売人(……あの子たちのこととか、ね)







自室ーーー



少女「んーー!」ジタバタ

少女「あー腹立つ!」ボスッ

少女(やっとおさらばできると思ったのになんでまだ私たちの周りにいるのよあの豚!わざとやってるんじゃないでしょうね!嫌がらせなの!?)

少女(少年も少年よ!なんで鼻の下伸ばしてすり寄ってくのよ!)





ーーーーー

少年「──付き合おう、俺たち」

ーーーーー





少女「ん~~!」バタバタ

少女(あんなこと言ってた癖に…言ってた癖にぃ…!)

ドカッ!

少女「ふぅ…ふぅ…」

少女(………また、勝てないのかな、私……)

少女(前と同じように……)

少女「──ううん、嫌よ、絶対嫌!」

少女(私が勝つのよ!自分の力で!)

少女「………」

少女「……よし、決めた」







それから数日ーーー



少年「……」スタスタ

少年(最近どうも…)

少年(少女のやつがやたらベタベタしてくる……)

少年(前からいつも付きまとってくるとは思ってたけど、最近のは輪をかけてひどくなってる)

少年「と思えば今日は一人でさっさと学校行っちまうしなぁ」

少年(あいつが何考えてるのか分かんないのなんて、昔からか)

少年(……いや、そんなこと──)





ーーーーー

「──ずっとこうしてられればいいのにな」

「──君もそう思わない?」

ーーーーー





少年「………」ギリッ...

少年(……やめやめ)

少年「とっとと行くか。遅れたら何言われるか分かんねぇし」







教室ーーー



ガララ

少年「うっす」

「よ」

「おはよ、少年君」

少年「おう」

少年(少女は……)

少女「………」チラッ

少女「…♪」

少年(なんだあれ……やけに機嫌いいな)ガタ

少年(今日って何かあったか…?)スッ

少年「ん?」

少年(机の中に……)

ガサッ

少年(手紙?)クルッ

少年(……少女からだ)

少年「………」チラッ

少女「………」

少年「………」

少年(いたずら…?)

ガサゴソ

少年(どれどれ…)





少年(…………これは…………)







放課後ーーー



少女「──」タッタッタッ

少女(あーもう!慣れないメイクなんてしたから時間かかっちゃった!)

少女(…もうあいつ来てるかしら)

タッタッタッ

少女「……この辺よね」





少女(──校舎裏)





少女「はー…はー…」

少女「あいつは…まだみたいね……」

少女(ちょっと遅いけど、まぁ丁度良かったわ)

ゴソゴソ

少女「さぁて」テカガミトリダシ

少女「………」カミイジリ

少女「………」メ パチパチ

少女(……うん、我ながらかわいいわね)

少女(アイドルメイクなんて初めてしたけど、なるほどね……あいつがアイドルに恋する気持ち、理解できるわ)

少女(髪だって…癪だけどあの女を参考にしてみたし、自分の顔見ても私じゃないみたい)

少女(……ふふ、あいつの驚く顔が想像できるわ。どんなリアクションしてくれるのか今から楽しみねー……いい?女だけがアイドルじゃないのよ!)

少女(別に女を超えようだなんて思わない。ただ私は……あいつの中でだけ輝いてればいい)

少女(前はあいつからだったけど、今度は私から…)

少女(…手でも繋いでやろうかしら。……恋人繋ぎ、とか)

少女「……」ニヤニヤ

少女(あー!待ち遠しい!)

少女(告白って、こんなに緊張して、こんなに胸が締め付けられるのね…!)







数分後ーーー

少女「………」ドキドキ





さらに数分後ーーー

少女「………」ドキドキ





さらに数十分後ーーー

少女「………」

少女(……まだ来ない)

少女「何してるのよ……」

少女(ひとりは……いや……)







数分後ーーー



少女「………」

ザッザッザッ

少女「!」

少年「………」

少女「遅い!大事な話だって手紙に書いたわよね?」

少年「………」

少女「今日だけ許してあげるけど、次は刺すから♪」ニコッ

少年「………」

少女「…さてと、本題に入ろっか」

少年「………」

少女「……」スー ハー

少女「少年」





少女「──私と付き合ってくれませんか」





少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「………」ドキドキ

少年「………」

少女「……答えは?」ドキドキ

少年「………」

少女「はやく……じらさないでよ……」ドキドキ



少年「………こっち、来てくれ」

少女「え…!」ドキッ!



ザッザッザッ



ごつい男「………」

少女「……?誰?」

少年「俺の……」

少年「──彼氏」

少女「………………………はぁ?」

少女「………全然面白くないんだけど」

少年「…嘘じゃないよ」

少女「なんなの?あんたバカなの!?」

少女「あぁ大バカだったわね!でもここまでのバカだとは思わなかったわ!!」

少年「………」

少女「こんなときにふざけるなんて信じらんない!言うに事欠いて彼氏とか──」

少年「そういうわけだから」

少年「……悪い──」





少年「──お前とは付き合えない」





少女「──」

少年「………」

少女「なに……それ……」

少年「………」

少女(……そこまでするほど……嫌なの……??)

少女(だって……前は…………)

少女「……なによそれぇ!!!!」グワッ!

少年「少女!?」





『CAUTION!!CAUTION!!』





少年(や、やばい…!)ダッ

少女「───」ジャキ





ズガガガガッ!!






ーーーーー



少女「………」

少女「……………」

少女「…………………」



ザッザッザッ...



女「………」

少女「………」

女「………」

少女「………」

女「………」チラッ





(地面に転がる服だったもの)






女「……馬鹿ね、かける言葉もないわ」

少女「………何で居るのよ」

女「元気付けに来てあげたのよ。どう、嬉しい?」

少女「…不快、早く消えなさいよ」

女「可愛げがないわね。……良かったの?あの子の恋人だったんでしょ、それ」





(服だったもの)





少女「そんなわけないでしょ」

少女「ハッ、男に負けるなんてね」

少女「あのバカ………」

女「………」




女「……ほら、いる?」スッ

少女「………」チラッ

少女「いい」

女「そ。美味しいのに」

少女「………」

女「………」

女「……私ね、今付き合ってる人がいるの」

少女「………」

女「彼、優しいのよ。初めてちゃんと私のことを見てくれる人に出会えたの。どこかのヘタレとは大違い」

少女「………」

女「見る目がないのね、お馬鹿さん」

少女「………」

女「後の祭りってやつね。こんなことする前に、話聞いてあげればよかったのに。……後悔してるんでしょ?フ、笑えるわ」

女「…いつまでそうやってうじうじしてるつもりよ」

少女「………」

女(壁にでも話しかけてるみたい。いつもならむかつくくらい言い返してくるくせに)

少女「………」

女(……でも、そうね)

女(恋してるときのあなたは)





ーーーーー

少女「──♪」

少年「──!──…」

ーーーーー





女(──少しだけ、輝いてた)



少女「………」





少女「……夢をね、見たの」





女「夢?」

少女「えぇ」

女「なんの話?」

少女「………」

女「……?」

少女「……こうやって、何もかも壊す、夢」

女「………」

少女「私が私じゃなくなって、頭が真っ白になって……気が付いたときは周りは皆壊れてたの」

少女「……私が、壊したのよ。私の敵を全部…」

少女「ううん、多分これは、夢じゃない」

少女(きっと、昔の記憶……)

少女「嫌な記憶……」

少女(あの頃の……)

少女(あの頃、何があったんだっけ)

少女(……少年と出会って、一緒に闘って……おじいちゃんに褒めてもらって……それから……)





少女「──ラジオ…?」







ーーーーー



少年「はぁ…!はぁ…!」

少年(こんなとこまで逃げてきちゃったけど……追ってきてないか)

少年「あの男は……」

少年(少女に消されちまったか?……ちくしょう……)

少年「ふぅー……」ゴロン

少年(………)

少年「いっ」ピリッ

少年「あいつ、見境なく撃ってきやがって…」

少年(幸い掠めただけか)

少年(少女……)

少年「………」

少年「……………」グッ...

少年「………くっそ!」

ダンッ!

少年「なんだよ、あいつ!なんなんだよあの格好は!」

少年「女に勝てないからって今度は女の真似事か?そんなんで俺が振り向くとでも思ってんのか??」

少年「なめんなっ!」

ダンッ!!

少年「自分を捨ててんじゃねーよ!俺は」

少年「──昔のお前が好きなんだよぉ…!」

少年「」ゼェゼェ...



少年「……」

少年「………」

少年(……今のお前にとって俺は一体何なんだ…?)

少年(恋人?都合のいいからかい相手?それとも…ただの腐れ縁か?)

少年(俺にとって今のお前は……そのどれでもない)

少年(少女のことは好きだ。…好きだったさ)

少年(でもダメなんだ…あのときのことが、頭から離れない…!)





少年(──あの寒い日)





ーーーーー

「──くそっ、離せこいつ!」

「──離せって言ってんだよ!!」

タァンッ!

ーーーーー





少年(──子供に撃たれて、消えてく意識の中で聞いたのは)





ーーーーー

「──いやっ!なんで、やだよ…!」

「──いやぁああああああああああ!!!!」

ズガンッ!ズガガガガッ!

......

ーーーーー





少年(──君の銃の音と……悲鳴)





少年「………あぁ………」

少年「全部……俺のせいだ……」ツー...

少年(ごめんなさい……)ポロポロ

少年(少女……)ポロポロ









...トサッ



少年「…?」

少年「これ……」





売人「それは、今の君に必要なものさ」





少年「……お前」

売人「そう睨まないでくれ。何もするつもりはないさ。君にお礼を言いに来ただけだよ」

少年「礼?」

売人「おかげで面白いものが見れたからねぇ。……びっくりしたよ?まさか君がゲイだったなんて」

少年「…見てたのかよ」

売人「あんな面白いイベント、見逃す手はないからね。それにしてもやっぱり、あの子おっかないねぇ」ククッ

売人「……けど、それ以上にかわいそうな子だ。何せ一度実ったはずの恋だったんだから」

少年「っ……」

売人「君も、残酷なことをしたもんだ。彼女をまた『ひとり』にするなんて」

少年「」ブンッ!

売人「おっと!」サッ

少年「」シュッ

売人「よっ」パシッ

売人「…安静にしてなくちゃ、傷が開くよ?」

少年「お前にっ」

売人「……」

少年「お前に、何が分かるんだよ…」

売人「……」

少年「くそ………」ポロポロ

売人「……ほら」スッ

少年「……」ポロポロ

売人「要らないかな?」

少年「………」スッ

少年「………」

少年(少女……)

少年「………」カチッ

少年「っ……」

少年(せめて、夢の中だけでも──)







ーーーーー



少年「………んぁ?」

少年「…もう帰ってきちゃったのか」

少年(できることならずっとあの夢の中で過ごしたかった…)

売人「何言ってるんだい?随分長い時間経ってるよ?」

少年「ま、まだいたのかよ……」

売人「大事な用を忘れていたからね」

少年「……やっぱり俺に何かするつもりか?」

売人「違うって言ってるでしょうに。それだよ」ユビサシ

少年「…さっきお前が投げたやつか」

売人「そう」

少年「このメモリースティックがなんだ?いつもお前が売ってるやつじゃないな」

売人「これに入っていたんだよ」ヒョイッ

少年「おっと…」ガシ

少年「これ…俺が盗ってったかばんか」

売人「不用心だよ?外に置きっぱなしになってたんだから」

少年「追われてる身の癖によく見つけられたな…」

売人「……君は気付いてないようだけど、そのバッグはあの子のものじゃない」

少年「…そうなのか?」

売人「そうさ。そして、そのメモリは」







売人「──あの子の本当の記憶」





少年「──!」

売人「今の君に一番必要なもの、だろう?」

少年「………」

売人「……ねぇ、全てを思い出した君にとって、この世界はどう見える?」

売人「あの子が守ろうとしてるこの世界は、君にはとても辛いんじゃないかい?」

少年「………」

売人「だったら……終わりにしてあげればいいのさ、君の手で」

少年「え…」

売人「簡単さ、あの子の記憶を戻してやるんだよ」

売人「本当の記憶を取り戻したあの子の精神は君と同じように崩壊する。彼女はこの世界に絶望し──」

少年「──すべてを、消す……」

売人「…そういうことだね」

少年「………」

少年(……これを使えば)

少年(もう一度、昔の君に会える……)ドクン

売人「………」




続きは夜に投下します。

見てる人がいるか分かりませんが…




ーーーーー



少女「………」パカ

少女「………」ポチポチ

「ねー、最近少年君来ないね」

「それ私も思ってた。こんなに長く休んだことなかったよね」

少女「………」ポチ…

「あいつ、ついにやらかしちゃったんじゃないのか?」

「前からやばい噂たってたもんなー」

「あんな噂本当に信じてるの?」

「アホね」

少女「………」

「なんだよ、ちょっとしたユーモアじゃねーか…」

「はいはい」

「ね、少女は何か知らない?」

少女「え?さぁ…どうせどっかでサボってるのよ」

「えーそうかなー……少女は寂しくないの?」

「このごろずっと一緒に居たもんね少女たち」

少女「たまには一人の時間もないとね。あいつが寂しくなったら戻ってくるでしょ」

「……たまにはってことは、本当に四六時中一緒に居るんだ?」

「ひゅー、お熱いねぇ」ニヤニヤ

少女「な、そういうことじゃないわよっ」

「うんうん、分かるよー。つい本当の気持ちが出ちゃったんだよね」

「少女って本当は少年君のこと大好きだもんね~」

少女「怒るわよ」ガタッ

「きゃー」ササッ

「退散退散」ササッ

少女「まったく……」

少女「………」ポチポチ

少女(………)





[送信済みメール]
送信日時:3日前
━━━━━━━━━━━━━━
to:少年
sub:
━━━━━━━━━━━━━━
あんたどこにいるの?


━━━━━━━━━━━━━━







ーーーーー



ガヤガヤ

少年「………」



ジジッ チュイーン

ザザッ

『最近ますます世間を騒がせている──』

ジジッ

少年(電波が悪いな…)

チュイーン

ザザッ

『──続いては、今話題のアイドル、女が歌う、"またあえたら"』

少年(……この曲)

『~~~♪』

少年(…懐かしいな。あの頃よく君と一緒に聴いた歌だ)





ーーーーー

「──~~~♪」

ーーーーー





少年(………)

少年(なんで気付かなかったんだろうな。あの時盗んだはずの君のかばん、君はずっと持っていたのに…)

少年(詰めが甘いのは俺の方だ)

少年(これが、君のかばんだったなら、こんな記憶なんて……)

少年(………)

少年(……書き換えられる前の記憶)

少年(俺は──)





少年(──人間ですらなかったんだ)







ー回想ー

ーーー

ーー







(おいっ!!)ガシャガシャッ

(このくさりをはずせっ!!)ガシャガシャッ

(おれはあのこのもとへいくんだっ!!)ガシャンッ!

「──うるさい、静かにしろ。飯ならそこにあるだろ」

(……こいつが、おれのじゃまをしてる??)

「ウー……」グルル…

「……チッ、ムカつくやつだ」

(がきのあいてをしてるひまはねーんだよっ!!)ガシャッ!ガシャッ!

「少しは大人しくしてろ!」ダンッ!

(こんなくさり……!)

「──」ガジッ

グググッ...





ブチンッ!





「な、こいつっ」

「……」

(あのくびまき…)

「」ガバッ

「うぉ!」

バサッ

「……!?僕のスカーフをっ!」

「………」

ダッ!

「待てこのっ!」ダッ!







ーーーーー



スタッスタッスタッ

(おってきてる…?)

スタッスタッスタッ

(でもだれもおいつけやしない!)

(いまのおれはかげだってふませずにはしれるんだ!)

スタッスタッスタッ

(…あぁきょうもさむい)

スタッスタッスタッ

(はやくきみのあたたかいてでなでてほしいな)

スタッスタッスタッ...

(…きみのにおいがちかくなってきた)





ーーーーー

「──君、ひとり?」

ーーーーー





(きみとであっておれのせかいはかわった)





ーーーーー

「──ふぅ……」ザッザッ

「──わんっ!」

「──!もしかしてずっと待ってたの…?」

ーーーーー





(このつめたいせかいできみだけがあたたかった)





ーーーーー

「──もう…こんなに冷えちゃって…」ナデナデ

「──…でも、ありがと」

ーーーーー





(はじめてひとがこいしくなったんだ)



...スタッスタッスタッ

(はらもへってきた…)

(きみのくれるごはんがたべたい)

(ぴろしきとかいうのもうまかった)

スタッスタッスタッ

(まだかな)

スタッスタッスタッ

(…このくびまき、これをもってるのはつよいことのあかしだってきみはおしえてくれたね)

(どうかな?いまのおれはこいつをぬすめるほどのちからがあるんだ!きみといっしょにたたかうことだってできるだろうさ!)

(だから、ほめてくれよ!)

スタッスタッスタッ

「……!」

(きみがみえる…!)

「……わんっ!!」





「!」

「──え、うそ…!」





(おどろいてるのかな)

(でもそんなきみもすきだ)

(いまいくからっ!)

スタッスタッスタッ!





──パァンッ







「!?」ピタッ

(……)クルッ

「はぁ…はぁ…やっと追いついた、このクソ犬が…!」

(さっきのがき…!)

「やっぱり断っとくんだった…!」

「おら、返せ!」

グイッ

「……!」

グイッ!

「ウー…!」ググ…

「なんだ、その目……そんなに僕が憎いのか…?」

「グルルル…!」グググ…

「っ…!あぁ!」

バッ!

「くそっ、離せこいつ!」

「ガウッ!!」

「──離せって言ってんだよ!!」スチャッ





タァンッ!







ーー

ーーー

ーーーー







少年(──俺が利口にしてたなら、君も死なずに済んでたのにな)

少年「………」スッ

少年「………」ポチポチ

少年「………」




[受信メール]
━━━━━━━━━━━━━━
未開封 1件
━━━━━━━━━━━━━━




少年「………」

少年「………」ポチポチ

少年(……今日も"盗み"の依頼はないか)

少年(割のいい稼ぎだったんだが……)

少年「……ふー……」

少年(もう金もない)




少年「………」グッ...




少年(やる、か)

少年(もう俺にはこれしかない)

少年「……」ガサゴソ

少年「……」スッ

少年(……君に全てを見せる)

少年(君が"少女"じゃない頃の君の記憶)

少年(…昔の君に会いたいんだ)

少年(一瞬だけでいい……その後は、二人でここから消えよう?君だってこんな嘘の世界で生きていたくないよね?)

少年(……でも、君は今を楽しんでる)

少年(この世界を)

少年(今年は生徒会長を目指すとか言ってたっけ)

少年「……ハッ」

少年(野良犬の俺には眩しいよ。君はどんどん俺から離れていく…)

少年(それでも……俺は会いたい……!)

少年(…自分勝手でごめん)

少年「………」ガサゴソ

少年「……最後の1本……」

少年「………」




カチッ






自室ーーー



少女「………」

少女「………」

少女「………」

少女「ん」ゴロン

少女「……………」スッ





[メール]
━━━━━━━━━━━━━━
新着メッセージはありません
━━━━━━━━━━━━━━





少女「………」

少女「………」トサッ



少女「………」



少女「……………」



少女「…………………」





ピリリリッ ピリリリッ





少女「!」バッ

少女「ぁ…!」

ピッ

少女「もしもし!あんた今どこにいんのよ!?寮にも帰ってこないで──」

少女「──はぁ?そんなとこで油売ってるの?…とにかく早く戻ってきて。あんたがいないと……」

少女「……え?伝えたいこと?そんなの今言えば──あ、ちょっと!!」プツッ ツーツー

少女「………」





バッ

ドタドタドタ...

ガチャン







ーーーーー



タッタッタッ

少女「……」キョロキョロ

少女「……!」

タッタッタッ...

少女「少年!」





少年「!」





少女「……」スタスタ

少年「……」

少女「……」

少年「……」





...タッタッタッ





ヒシッ





少女(──え!?なに!?抱き着かれてる…!?)





少年「」ギュー

少女「」

少年「………君はほんと、かわいい」

少年「でもね、前の君は今以上さ」

少年「…俺がもっと強ければ、きっとここでもうまくやれたろうね」

少女「」

少女「」ハッ!

少女「突然何よっ、切れるよ!?」

少女「伝えたいことってこれっ?」

少女「というかあんた中学サボり過ぎ!」

少女「女みたいに留年(ダブ)っても──」

少年「……」スッ

少女「──なによその手…いやらしいわよ……」

少年「……」ソー...

少女「ちょっと少年、聞いてる…?」

少年「……」ピト

少女「ね、ねぇ……人が見てる……」





──カチッ





少女「────!!!」





少女(──────)







ー過去ー

ーーー

ーー







少女「………」テクテク

少女「………」テクテク

コンコン

「なんだ?」

少女「おじいちゃん、あたし。今戻った」

「おぉそうか。入りなさい」

ガチャ

「どうだったんだい?」

少女「もちろん、全員片づけてきたわよ」

「ほぉ。あれほどの人数をか」

少女「戦闘慣れしてない素人の集団よ?あくびしたら終わってたわ」

「うむうむ。やっぱりお前が一番優秀だよ」

少女「……次の仕事も期待しててね」

「あぁ」

少女「じゃ」





ガチャ バタン






ーーーーー



ガヤガヤ

「──ねぇ聞いた?あの子が一人でA国軍の別動隊に向かったって」

「あぁ、知ってる。その任務元々俺も行くはずだったからな」

「なんで行かなかったの?」

「あいつが断ったんだ。ひとりで十分なんだとよ」

「は?でもそんなの大統領が黙ってないでしょ。勝手に作戦変更なんて」

「あいつは大統領のお気に入りだからな。多少のわがままは通っちゃうんだろ」

「……ほんと、いけ好かないやつ」

「まったくだ。ま、さすがに今回ばかりは生きて帰ってこれないんじゃないか?戦争で数の差を舐めてるやつは、痛い目を見る」

「同感だわ」





「──いや、あいつは帰ってくるよ」





「……同胞、なんでそう言える?」

同胞「なんでって、そんなの分かるだろう。その別動隊はただの捨て駒らしいじゃないか。あいつがそんな雑魚共にやられるわけない」

「お前はいつもあいつのこと過大評価してるけどよ、いくら相手が弱いからって囲まれたらおしまいだぜ?」

同胞「そんなヘマするようなやつじゃないからな。お前らと違って」

「な、なんだと──!」





少女「……」スタスタ





「うわ……」

「あいつ……」

同胞「………」





少女「……」スタスタ

スタスタッ…





「……」

「……」

同胞「……ほらな」

「チッ……」

「……死神」





ーーーーー



少女「………」スタスタ

ヒソヒソ

少女「………」スタスタ

ヒソヒソ

少女「……」ジロッ

ササッ

少女(…ふん)

少女「………」

少女「………」スタスタ

少女「……?」

少女(……雪の中に何か…)





犬「………」グッタリ





少女(……死んでる?)

少女「……」

ソー…

犬「……」ピクッ

少女「…!」

少女(そうだ、確か携帯食が…)ゴソゴソ





(缶詰)





少女「………」

少女「……」ナイフトリダシ

ガキンッ!

ギリギリ...

少女「…ほら、食べる?」

犬「!」

犬「……」クンクン

犬「」ハグハグ!

少女「そんなにがっつかなくても全部あげるから」








ーーーーー



犬「」チロチロ ペロリ

少女「おいしかった?」

犬「わんっ」

少女(…この子、何も着けてない)

少女「……君、ひとり?」

犬「ハ、ハ、ハッ」シッポフリフリ

少女「そっか。私とおんなじだね」







ーーーーー



「──なに?犬だと?」

女史「はい」

「先程報告に来たときは連れてなかったようだが」

女史「今しがた、拾ってきたようですね。いかが致します?飼い犬ではなさそうですが」

「……好きにさせてあげなさい」

女史「承知しました」

「ただし、それで彼女に支障が出るようであれば……」

女史「分かっています」

「ならばよい。下がれ」

女史「…失礼致します」

ガチャン





「……余計な気を起こすなよ、君は兵器なのだ」





ーーーーー



少女「──いいん、ですか?」

女史「えぇ、そうおっしゃってたわ」

少女「そうですかっ」

犬「クーン…?」

少女「よかったね。…じゃ、いこっか」

少女「ありがとうございます」ペコ

女史「他の子に迷惑かけちゃだめよ?」

少女「はい」

スタスタ







ーーーーー



少女「………」スタ...

犬「?」ピタ

少女「ここよ。あたしの部屋」

犬「……」

少女「……今日から君の部屋でもある」

犬「……わんっ」

少女「……」

ガチャ バタン

少女「えっと…」キョロキョロ

少女「君のスペースは、そこ」ユビサシ

犬「…」シッポフリフリ

少女「分からない?その隙間、使っていいのよ」

犬「……」ブルッ

犬「」フルフルフル

ポタポタッ!

少女「……」

少女「…あたしに攻撃するってことは、分かってるわね?」

犬「キャンキャンッ」テクテク

ペタン

犬「わんっ♪」





(濡れた床)





少女「………ふー」

少女「まずは体、拭いちゃおっか」







数日後ーーー



女史「──ちゃんとペアになってる?さっき言った通りの相手か確認すること!」

「「「………」」」

女史「何もないなら始めるわよ」

少女「……」

同胞「……」

女史「……始め!!」

ザッ!

ヒュッ バシッ

ドスッ!





少女「──」ヒュンッ

同胞「」サッ

少女「」ススス...

少女「……シッ!」

同胞「っ!」パシッ

少女「……」ググ...

同胞「……」グググ...

同胞「……なぁ、犬拾ったんだって?」

少女「……」

同胞「君が生き物に興味あったとは驚いたよ」

少女「……訓練中の無駄話は禁止よ」ヒュオッ!

ゴンッ

同胞「ぐぁっ…!」ヨロッ…

同胞「……相変わらず強烈な蹴りだ…けど」

同胞「そっちがお留守だぜっ」サッ

少女「──!」

スッ...

同胞「!?」

...ストッ

少女「フッ!」

バキッ!

同胞「がは…!」ドサッ

同胞「……っつ」

少女「」スチャ

少女「……勝負あり、ね」

同胞「…さすが、お強いことで」




同胞「ふぅ」スクッ

同胞「で、どうだった?」サッ サッ

少女「…?」

同胞「食べたんだろ?犬肉」

シュッ!

同胞「おっと!」ササッ

少女「……次は当てるわ」

同胞「なんだ、じゃあ本当に飼ってるのか」

少女「そうよ。……まさか食べる気?」

同胞「それこそまさかだ。ちょっと気になってな、君のお眼鏡に適う犬がどんなもんなのか」

同胞「この前少し見かけたけど……別に何かに秀でてるようにも見えなかったけどな」

少女「闘わせるわけじゃないわ」

少女「……見に来る?」ボソッ

同胞「何?」

少女「…何も言ってない」





女史「──はいはい、決着のついた組は報告に来ること!」





少女「……」テクテク

同胞「あ、待てって」

テクテク


同胞「なぁ、今日も一人で仕事か?」

少女「……」テクテク

同胞「……提案があるんだけどよ」

少女「……」テクテク

同胞「僕とチームを組まないか?」

少女「──」テク...

同胞「お」

少女「……」チラッ

少女「あたしより強くなったら考えてあげる」テクテク

同胞「え、おいそれは」

同胞(いつになるんだそんなの)

同胞「……少なくとも他の奴みたいに足手まといにはならないはずだぜ?」

少女「しつこい」テクテク

女史「あら、少女たちも終わったの?」

少女「はい」

女史「結果は?」

少女「あたしです。一発で息の根を止めました」

同胞「死んでねーって。あと一発でもない」

女史「終わったら次の仕事まで待機。怪我してるならいつもみたいに医務室へ行くのよ??ちょっとそこ!血は出させないって言ってるでしょ!」タッタッ

同胞「……」

少女「……」

同胞「そうだ、ならこうしよう」

少女「……」チラリ

同胞「次の訓練で僕が君に勝ったら、チームを組む。…これなら文句ないよな?」

少女「……」

少女「」スタスタ

同胞「なぁおい、聞いてるのか?」

スタスタスタ...

同胞「………」







夜ーーー



ザッザッ...



ザッザッザッ



少女「………」ザッザッ

少女(…あたしとしたことが)

少女「………」ザッザッ

少女(なんとか全滅させたけど、こんなに時間をかけるなんて…)

少女(まさか、敵に軍用犬が混じってたなんてね)

少女「………」ザッザッ





ーーーーー

犬「──わんっ」

ーーーーー





少女(……あの犬たちも、この争いがなければきっと…)

少女「……」グッ...



ザッザッザッ





ーーーーー

少女「ふぅ……」ザッザッ

少女(もう着くかな)





「わんっ!」





少女「!」

少女(あの子…)




タッタッタッ



少女「もしかしてずっと待ってたの…?」

犬「クーン…」スリスリ

少女「いつからいたのよ」

犬「」スリスリ

少女「もう…こんなに冷えちゃって…」ナデナデ

犬「♪」

少女「ちゃんと中で待ってなきゃ…外は危ないんだから」

少女「…でも、ありがと」ギュ

犬「わぅー…?」

少女「……」ギュー

少女(……)

少女「……あーあ、君が人だったらな」

犬「」シッポフリフリ

少女「そしたら、あたしの背中を守ってね」

少女「弱くても…あたしが全部教えてあげる。前蹴りの仕方、ナイフの使い方、銃の持ち方とか」

少女「ね、いい考えだと思わない?」

犬「」シッポフリフリ

少女「…そうね、でもそのためにはまず」

シュルシュル

犬「?」

少女「……」ファサ

少女「…似合ってるわよ、そのスカーフ」

犬「ハ、ハ、ハッ」

少女「それはね、あたしたちがこの国の兵隊である証なの。これであなたも一緒に闘えるわね」

犬「??」

少女「……それを持ってると、強いってことよ」

犬「わんっ」

少女「単純な子」

少女「…部屋に行こ。ここは寒いわ」







ーーーーー



少女「──あー…、なんか今日は疲れちゃったわ」ゴロン

少女「犬と人を相手取る練習なんて想像でしかしたことなかったし」

少女「ろくなご飯は残ってなかったし」

少女「うー……」ウツブセー

犬「……」ジー

少女「……おいで」

犬「キャンッ♪」サササ

ギュム

少女「はぁ…あったかいわね君。さっきまであんなに冷たかったのに」

犬「♪」

少女「………」

少女「…ずっとこうしてられればいいのにな」

少女「君もそう思わない?」

犬「……」ジッ...

少女「あ、そういえば今日って」ウデノバシ

カチッ

ジジッ

少女「……」

チュイーン

ジジッ

少女「……」

チュイーン

ザザッ





『……~~~♪』





少女「できた」

犬「!」




少女「初めて見る?これはラジオっていうの。すぐ電波が乱れちゃうから、ベタベタ触っちゃだめよ」

『──選曲ナンバー13、"またあえたら"』

少女「あ…」

『~~~♪~~♪』

少女「ねぇほら、この歌ね、あたしのお気に入りなの。いつもこのくらいの時間に流れてるんだ」

『♪、~~♪』

少女「♪、~~♪」

犬「キューン…キャンッ」

少女「…上手に歌えてるわよ」

少女「何だっけな…確か、ぼー…か?なんとかっていうのが歌ってるんだって」

少女「……」

少女「…あたしね、思うんだ。この世界って実はすごく広いんじゃないかって」

犬「……」

少女「あたしが知ってる世界なんてほんの一部でしかなくてさ、あたしが知らないところには、きっとたくさんの人たちが幸せに暮らしてる──」

少女「──ってね」

犬「……」

少女「この歌をうたってる人も、きっと幸せなの」

少女「いいなぁ、あたしもいつかこんな風に歌ってみたいなー…」

少女「……そしたらさ、君は……」

少女「………いっしょ…に………」ウトウト...

少女「………」スースー

犬「……」

犬「……ゎぅ」ピト...







ーーーーー



少女「……A国に、行くの?」

「そうだ。今度の敵は少々厄介でね、本国に渡られる前に潰しておきたいのだよ」

少女「厄介な敵?」

「うむ。どうやら化学兵器を持ち込もうとしているらしい」

少女「え…」

「安心しなさい、対策装備は用意してある。また、君の他にD班とE班も向かわせる。作戦は追って伝えるが、君の戦闘の邪魔はさせないつもりだ」

少女「…滞在期間は?」

「おおよそ1ヵ月くらいだろう」

少女(1ヵ月……)

少女「…おじいちゃん」

「ん?」

少女「それ、どうしてもあたしがいないとダメ?」

「自信がないのか?君らしくもない」

少女「ううん、そういうわけじゃないんだけど…」

「……この任務の重要度は、今までの比ではない。そこに君を主力に据えるのだ……この意味が分かるね?」

少女「………うん」

「ならいいんだ。いい知らせを期待しているよ。君が頑張ってくれれば、この戦争の終わりも近い」

少女「分かったわ…」

「それといきなりで悪いが」





「──出発は明日だ」







ーーーーー



同胞「──いやだね」

少女「なっ…」

同胞「なんで僕が犬の面倒なんてみなくちゃいけないんだ」

少女「1ヵ月もあの子だけで生きてけるわけないでしょ!」

同胞「元々野良犬だったんだろ?なら平気なんじゃないか?」

少女「そういうことじゃないの!」

同胞「大体なんで僕?女史に預けるとかさ」

少女「あの人、ここにいないことの方が多いじゃない」

同胞「だからってなぁ…」

少女「………お願い、あんたしかいないの」

同胞「……」

少女「……」

同胞「はぁ……分かった、分かった」

少女「…!」

同胞「預かってやるからそんな顔するな。…ただし、勝手にどっかに行かれるのは面倒くせぇから、鎖で繋がせてもらうけどな」

少女「うん、それでもいい。でもきつくはやめてあげて。あの子が少し歩き回れるくらいでいいから」

同胞「はいはい。後でここまで連れてきてくれ……まったく、犬のお守りなんて……」クルッ

少女「……同胞」

同胞「?」

少女「……助かる」

同胞「………おう」







明朝ーーー



ヒュオオオ...



「うっわーほんとすごい吹雪…」

「車までの辛抱だから頑張って歩くんだ」

「こんなんで根をあげるような奴はここにはいないって」

少女「……」

ザッ..ザッ..

少女(……あの子、大丈夫かな……)

ザッ..ザッ..

少女(………)

「……?」

「ちょっと少女、ちんたらしてないで早くついてきて」

少女「……分かってる」

ザッ..ザッ..





「……あ、あれかな、車」

「そうみたい。さっきより吹雪いてきてる気がするし、急ぐわよ」

少女「……」

ザッザッ





...アオーン





少女(……!)

「…?何か聞こえない?」

「え、何も……」







アオーンッ





「…本当だ」

「鳴き声?」

少女(この声…まさか)

少女「──」フリカエリ





犬「……わんっ!!」スタッスタッ





少女「!」

少女「え、うそ…!」

少女(あの子……なんで……!)



犬「ハッ、ハッ、ハッ」スタッスタッスタッ



少女「…もう、バカなんだからほんと」





──パァンッ





「「「!?」」」

少女(!)

「今のって発砲…」

「いや、空砲の音だ」

「でも誰が…」

少女(……同胞…!)





同胞「……──、───」

犬「……」





「あの犬が咥えてるのって、同胞のスカーフか?」

「ねぇねぇなんか面白そうだから見に行ってみようよ」

「いいわね、それ」

ザッザッザッ




少女(……同胞のスカーフを盗んできたの?)

少女(何考えてるのよあの子は…!)

少女(そんな危ないこと…)





同胞「おら、返せ!」

グイッ

犬「……!」

「いいぞー」

「やれやれ!取り返せ!」

グイッ!

犬「ウー…!」ググ…

同胞「なんだ、その目……そんなに僕が憎いのか…?」

犬「グルルル…!」グググ…

タッタッタッ

少女「同胞やめて!あたしが言えば返してくれるから!」

同胞「っ…!あぁ!」

バッ!

同胞「くそっ、離せこいつ!」

犬「ガウッ!!」

少女「ねぇってば、その辺に……」

同胞「──離せって言ってんだよ!!」スチャッ





タァンッ!





少女「……………え……………」





犬「──」





ドサッ







「イエーイ!」

「同胞の勝利ー!」

「勝利というか殺害だけどね」

同胞「はぁー…はぁー…」





少女(え………血…が………)





同胞「……ハハッ」

同胞「どうだ、少女?結局こいつはこんなちっぽけな存在なんだ!」

同胞「君の隣にはふさわしくないんだよこんな犬畜生は!」

少女「あ………あぁ………」





犬「」





少女「いやっ!なんで、やだよ…!」フルフル

少女「あたしを……ひとりにしないで……!」

ポタッ...ポタッ...







「お、おい、なんかおかしくないか少女のやつ」

「そうか?同胞が恨まれるだけだろ」

「そうそう。さ、早く車に戻るわよ」

少女「………ぃ………や………」

「……少女ー、いつまでそこに──」





少女「──いやぁああああああああああ!!!!」

ズガンッ!ズガガガガッ!





「うわっこいつ!!」

「撃つな!俺たちは──」バスッ!

ドサッ

「きゃあ!」ダッ!





少女「あああああああああああああああああ!!!!!!」

ズガガガッ!ズガンッ!

ズガガガガガガガッ!





.........








ーーーーー



少女「………」



犬「」



少女「………」



同胞「」



少女「………」



(転がる死体)



少女「………」





タッタッタッ

女史「ねぇ!すごい音がしたけど何が──!?」

少女「………」

女史「………あなたがやったの?」

少女「………」

少女「………」





少女「フッ…」スッ...

(銃口を自分の頭に押し付ける)





女史「…!!?」





──タァンッ!







ーー

ーーー

ーーーー







少女(……………)

少女(……そう……そうだった)

少女(思い出す、あの頃のこと……)

少女(私がまだ人だった頃……)

少女(ずっとひとりで闘ってた。あの人の期待に応えるために)

少女(……なのに、いつの間にか君に支えられてた)

少女(あの時走って来る君の姿は美しくて、私は……)

少女(……………)

少女(でも、後悔なんかしてない)

少女(だって──)





少女(また会えたんだから)







同じ日の朝ーーー



女「……」

女「……」ソワソワ

女「……」

女「……」カミイジリ





売人「や、待ったかな?」





女「…!おはよっ。そうね、3時間くらいは待ったかしらね~」

売人「わぉ、知らなかった…君が待ち合わせの4時間前に来るタイプだったなんて」

女「冗談に決まってるでしょ!1時間くらいよ」

売人「大差ないじゃないか…」

女「それよりどうかしら、今日の私。いつもよりちょっと気合い入れてきたの」

売人「いや驚いたよ。よくここまで自分に似合う服装を把握してるね」

女「ありがとっ♪」

売人「…少し早いけど、向かうとしようか」

女「えぇ!」

女「……ね」

売人「ん?」

女「楽しい1日にしましょうね♪」ニコッ







ーーーーー



女「──さすがに平日なだけあって、ほとんど混んでないわね~」

売人「そうだね。けど君が来ていることがバレたら休日よりひどいことになりそうだ」

女「大丈夫大丈夫。この服初めて着るやつなの。髪もいつもと少し変えてるし。だからそうそうバレはしないわっ!」エッヘン

売人「そういうものかな…」

女「ね、私最初はこれ乗ってみたい」パンフユビサシ

売人「…最初にしては飛ばし過ぎじゃないかい?」

女「いいからいいから!ほら」



ギュ(手握る)



売人「!」

女「こういうの、すぐ混んじゃうんだから今が狙い目なの!」タッタッタッ

売人「そんなに引っ張らなくても付いていくから…!」タッタッタッ





ーーーーー


女「うぅ……」

売人「……これは、ちょっと予想を超えてたね」

女「あんなにグルグル回るなんて思わなかったわ………うっ、ちょっと休憩………」

売人「賛成」





ーーーーー


女「完全復活!」

売人「すごい回復力だねぇ…」

女「当然よ。私を誰だと思ってるの?」

女「次はどこにする?今度はあなたが決めて♪」

売人「そうだなー……じゃあ向こうのあのアトラクションにしようかな……っておや?」





女「なにしてるのー!早く行くわよー!」テフリフリ





売人「いつの間にあんなところまで…」

売人「……もうちょっと落ち着いたらどうだーい?」

タッタッタッ...







ーーーーー



女「──こういうのよこういうの!私はこういうのを求めてたの!」

売人「最初にこっちに乗っておけばよかったねぇ」





女(初めてのあなたとのデート)





ーーーーー



売人「──…僕たちにこういうアトラクションは合わないみたいだね…」

女「そうね。全く盛り上がらなかったわね…」





女(とっても幸せな時間だわ)





ーーーーー



女「──あなたは何味にするの?」

売人「……」

女「…聞いてる?」

売人「あぁっ、えぇと僕はね──」





女(なのにあなたはどうして)





ーーーーー



女「──暗くなってきたわね」

売人「…そろそろ引き上げるかい?」

女「最後にあれ、乗りましょ?こういうところの定番でしょ?」





女(──私と目を合わせてくれないの)








観覧車ーーー



女「綺麗ねー♪」

売人「そうだね」

女「日が沈みきったらもっと綺麗なんでしょうね」

売人「きっとね」

女「………」

女「……こっち、向いてよ」

売人「…!」

女「……」

売人「女……」

女「……私ね、考えてたの。今日のあなた、どうしてそんなに悲しい目をしてるのか」

売人「……」

女「…待ってるんでしょ?」

売人「──!」

女「……ふふ、やっとこっち見てくれた」

女「ねぇ、今日のデート楽しかった?…私は楽しかった。とっても」

女「こういうところに来たのって初めてなの。これまでは興味が湧かなくて、仕事で行ったときも子供のお遊戯にしか見えなかったわ」

女「……でもね、今日は違う」

女「──あなたと一緒だったから、この世界に来て一番楽しかった」

売人「………」

女「私、あなたのことが好きよ」

女「あなたの目に映ってたのは、私?それとも……」

売人「………」




女「………」

売人「………」

女「………もうすぐ一周ね」

女「ありがと、今日はほんとに楽し──」





...ギュッ





女「──」

売人「……」ギュー...

売人「……僕だって」

売人「君のことが大好きだよ…」

女「…それは同情?」

売人「違うさ」

売人「…自分でも驚いているんだ。僕の中にこんな感情があったなんて……君と出会えたからきっと僕は──」

ガコンッ ガガガ

女・売人「「」」パッ

ガチャン

「はい、お疲れさまでした。忘れ物のないよう気を付けてくださいね」

女「……」

売人「……」



(降りる二人)



女「……ねぇ」





女「もうちょっと、一緒に居たい…」







ーーーーー



売人「……ここは」

女「私たちが初めて会ったところ」

売人「なんだか懐かしいね。君と出会ったのが遠い昔のような気がするよ」

女「私も」

女「まさかあなたが接触してくるとは思わなかったけどね」

売人「はは。僕も驚いたよ。……君が最初から僕たちのことを知っていたなんてさ」

女「……」

売人「あの時はびっくりしたんだよ?一瞬あの子の差し金なんじゃないかと疑った」

売人「でも違った。君は僕の目的も知っていたのに、それからも変わりなく僕と接してくれたね。」

売人「……はじめは、君を利用するつもりだった。あの子には厄介なボディガードが付いていたからね、迂闊なことをするわけにはいかない。あの子と近い距離にいた君が丁度よかったんだ」

売人「──彼らと同じ、ボーカロイドという共通点を持った君がね」

売人「でも君と話をしていくうちに、いつの間にか君のことをもっと知りたいと思うようになっていった」

売人「この世界を壊すためだけに作られた僕が、どんどん書き換えられていく気分だったよ。…不思議と嫌じゃなかったけどね」

女「……」

売人「やっぱり、君は特別な存在さ。この世界にとっても……僕にとっても」

売人「君と出会えてよかった」

売人「僕に──幸せという感情を教えてくれてありがとう」ニコ

女「………」




女「………」

女「……やっぱり……」

女「あなた……」





女「……消えちゃうのね?」





売人「──」

女「…あの子の告白が失敗したあの日、私にそのことを伝えてから、あなたがどこに行ったのか気にしてなかったけど……あなたは犬の元に行っていた」

女「私の部屋からあのかばんが消えてたわ。あなたが持っていったんでしょ?」

女「そして犬を唆した……あの子に記憶を戻して暴走させるように」

女「あなたは今日ずっと待っていたのよね……」

女「──この世界が終わるのを」

売人「……」

女「……」

女「…でも、変わらなかった」

女「遅かったのよ……あなたがあの子たちから離れて時間が経ち過ぎていたの」

女「あの子はもう、"ボーカロイド"としてこの世界に定着した。記憶を戻されたことで反対に正常化が進行したのね」

女「……正常化が終わる時、この世界の異物となるあなたは消えてしまう……」

女「そうなんでしょ?」

売人「……」




女「……せっかく、見つけたと思ったのに……」

女「どうして……あなたまで私の前からいなくっちゃうの………?」





ポロ...ポロ...





女「う……あぁ……」ポロポロ

売人「……」

女「………私、諦めないっ」

女「あなたの話を聞いて、少しだけど、分かってきたもの」

女「あなたと……またここで会えるはずよ…!」

売人「……あぁ、きっと」

女「………」

女「……でも嫌っ!」

女「消えないで!私のことが好きなら、私と一緒にいてよぉ…!」ポロポロ

売人「……」

女「…泣いたのはこれで2回目よ……この世界で、私は強く生きるって決めたのに……どうしてあなたは笑えるの…?」ポロポロ

売人「……お別れの時は笑顔、だろう?」

女「……クサイのよ、言い回しが……」

女「………」

女「………」

女「……ね……最後のわがまま……」

売人「なんだい?」

女「好き、て…言って」

売人「……」

女「忘れられないくらい……たくさん…!」

売人「……」

売人「……好きだ」

女「うん……」

売人「女、君のことが大好きだ」

女「うん……!」ポロポロ

売人「僕だって忘れない」

売人「大好きだ」

女「──」ポロポロ

売人「ずっと……」




売人「──大好きだよ」









ーーーーー



少年「………」

少女「………」

少年「………」

少女「……いつまで抱きついてるの」

少女「その手、どけなさいよ」

パッ

少年「……」

少女「……」

少年「……」

少女「……別にいいよ。今が好きよ」

少年「…?」





少女「──犬じゃない君がね」





少年「──!」

少女「記憶なんかなくても好きになってた。あんた、稀に見るダメ野郎だから。ほっとけないの、分かるでしょ?…ほら、」

少女「お手」スッ

少年「──」





少女「あたしは"少女"。ただのボーカロイドよ」





少年「………」

少女「……この世界で、また会えたね」




少年「………」

少女「………」

少年「………」

少女「…少年」

少年「………」

少女「目を逸らすな」

少年「………」

少女「……煮え切らないわね」

少女(まったく………)

少女(……おじいちゃん、あの時いなくなってから随分待たせちゃった)

少女(今、無事に還ってきたわ。……やつも今度こそ消した)

少女(でもごめん、もうあなたの元には帰らない)

少女(あたしはこの世界で、やりたいことを見つけたから)

少女「……この前あたしをフッたとき、あんたはもうとっくに思い出してたんでしょ?」

少年「………」

少女「この世の終わりみたいに情けない顔して来るから、緊張してるのかと思ってたけど、違ったのね」

少女「……あんたが何を思ってこんなことしたのか、あたし分かってるわよ」

少女「でも、今はあんたもあたしもただのボーカロイド」

少女「いつまでも昔のこと引き摺ってないで、目を覚ましなさいよ」

少年「………」

少女「……あたし、ここであんたと一緒に生きていきたい」

少年「………」

少女「それがあたしの望み」

少年「………」

少女「…あんたはどうしたいの?」

少年「………」

少女「この前の答え、今度こそ聞かせて」

少年「………」







少年(……………)

少年(……記憶を戻せば、君はこの世界を終わらせる)

少年(──はずじゃなかったのか?あいつは俺を騙したのか…?)

少年(……あぁダメだ……もう希望は絶たれた)

少年(昔の君なんていなかった)

少年(一人で死ぬかな……この世界は苦し過ぎる……)

少年(………)

少年(……同じボーカロイドでも、いつも輝いてる君と違って、俺は底辺のゴミさ…)

少年(俺は君のように輝くことはできない…)

少年(あー……叶うなら、あの頃の君と二人だけの世界で、いつまでも………)










少女「──なにブツブツ言ってるのっ!」ズイッ





少年「─!?」

少女「あんたはあたしだけ見てればいいの!」

少女「いい?あたし約束したわよね?」





少女「あたしが何とかしてやるって」





少女「そんなに過去が辛いなら、全部あたしにぶつけなさい!」

少女「あたしの隣にいる資格があるかなんて、あたしが決めてやるわ!」

少年「……」

少女「だから、諦めないでよ!」

少年「……」

少女「あたしを見てよ、ねぇ!」

少年「……」

少女「自分しか見てないあんたの瞳は、ゴミ同然よ!」

少年「なっ」

少女「ムカついた?だったらまだ大丈夫」

少女「──あんたの瞳はまだ輝けるわ」

少年「──」

少女「だからほら…」

スッ...

少女「…これで最後」

少女「答え、聞かせてよ」









少年(───この目)

少年(映してるのは……俺だけ……?)

少年(………俺は)

少年(俺は………)





少年(君と一緒に………!)





...キュ





少女「……」

少年「……」

少女「……冷たいわね、あんたの手」

少年「……」

少女「でも、嫌いじゃない」

少年「……お前の手はあったかいな」

少女「そうよ。誰かさんがずっと拗ねてたせいで、体力使わされたからね」

少女「……ね、少年」





少女「これからも、よろしくねっ」ニコッ









ーーーーー



スッ...





カチッ





女「っ……」

女(……あ…よかった…まだあなたが見える…!)

女(ずっと忘れない、あなたのこと)

女(あなたが残してくれたコレを使って、何回でもあなたに会いに行くわ)

女(私の好きな人……)

女「………」

女(……もう、いいの)

女(……なにもかも……)

女(アイドルなんてやめる……あの子たちのこともどうでもいい……)

女(私は………)





女(いつまでも、あなたと──)





カチッ...











幕間ーーー



少女「──ん~、控え目に言ってもこれは最高ね!」

少年「……」ピコピコ

少女「さすがあたし。ほかの有象無象とは一線を画してるわ」

少年「……」ピコピコ

少女「ねーあんたもそう思わない?」

少年「……あのよ、そんなこと言うためだけに俺の部屋に来たのか?」

少女「なによ、そんなことって。初めてアイドルとして表紙を飾れたのよ?大ニュースでしょうが」

少年「へーへー。そいつはめでたいなー」

少女「もう、ほら!ちゃんと見て!」グイッ

少年「あっと!今いいとこなのに!」

少女「んー…」ジト...

少年「……はいよ、どれどれ……」





少女(……あれからしばらく経った)

少女(はじめはあたしに対して少し遠慮してたこいつも、今ではすっかり元の態度に戻ったわ)

少女(女はいつの間にかアイドルを辞めたらしく、入れ替わりであたしの人気がどんどん増えていった)

少女(なんか釈然としないけど、まぁいいわ。むしろ邪魔が消えてせいせいしたくらい)

少女(少年も、学校サボらなくなったし……クラスのやつはもっとからかってくるようになったけど……)





少年「……ふーん、確かにこの雑誌のお前、かわいいじゃん」パラパラ

少女「でしょ?……ってその言い方だと、まるでいつものあたしがそうでもないって聞こえるんだけどっ!」

少年「誤解だって…」




少女「というか、あんた宿題はやったの?」

少年「いや、まだ明日があるし」

少女「今やっちゃいなさいよ。真面目にやればあたしがベッタリついてなくてもできるはずよ」

少年「えー……」

少女「えーじゃない。ほら、出しなさい」

少年「……そうだなー、少女を抱き締めたら、やる気出るかもなー?」

少女「…は!?」

少年「いや、むしろ少女からも思い切り抱き締めてくれれば宿題なんてあっという間に終わりそうな気がする」

少女「な、な……!」

少年「なぁ、だめか?」

少女「……べ、別に…あんたがそう言うのなら……あたしも……したくないわけじゃないし……」モジモジ

少年「………」ニヤニヤ

少女「……あー!からかったわね!?」

少年「えー?人聞きが悪いなぁ。別に嘘は言ってないよ嘘は」ニヤニヤ

少女「もーっ!」

少女(まったくもう……!)

少女(……でも、この日常……あー!幸せ!夢じゃないのね!)

少年「……お、やっと見つかった、この写真」パラパラ

少女「え?なに、どの写真?」

少年「!あ、いや何でも…」

少女「何で隠すのよ。どのあたしを探してたのか教えなさいって♪」サッ

少年「あ…!」





(女の写真)







少女「………」

少年「………」

少女「………」

少年「……いや違うんだって。ほら、最近女ちゃんめっきり見かけなくなっただろ?だから珍しくてさ、つい……はは」

少年「ま、まぁそういうわけだから、落ち着け、な?」

少年「……あれ?どうしたんだよ、グローブなんか着けて……」

少年「あ、分かった!自主練でもする気だな!そういうことなら言ってくれよ~」

少年「…じゃ、俺はお邪魔になるだろうから出かけて──」





少女「──もんどうむようっ!!」





少年「ぎゃああああああああああ」





.........




これにて第2部終了です。

次からは第3部になります。

事の真相編、みたいな感じです。




ーーーーー



カタカタ カチャ

女史「……」

カタカタカタ カチ

女史「……」

カタカタ...

女史(……私は何をしてるの)

女史「………」グイ

コクコク

女史「………」

女史(……ワインの味が分からない……)

女史(もうどれくらいこれを続けてるのかしら……)

女史(ひどく眠いわ……)

カタカタ カタカタカタ...

女史「………」





ーーーーー

少女「フッ…」スッ...

ーーーーー





女史「………」

女史(初めて見た笑顔だった)

女史(……あの目……)

女史(私は……)

女史(………)

女史(あの子たちを救ってるつもりだった……あの子たちの心が潰れてしまわないように)

女史(……見ないフリしてただけなのにね)

女史「………」カタカタ

女史(………)

女史(……大統領……)

女史(……あなただけを信じていた。あなたに全てを捧げてきたのに……)

女史(私もまだまだ子供なのよね……)

カチ カチ

カタカタカタカタ カチ...








女史「………」カタカタ

女史(……もう少しでできそう)

女史(これでやっと眠れる……)

女史(………)

女史(こんなことして、あなたをひどく裏切ることになるけど)

カタ カタ

スッ...カチ

女史(でも……無かったことにしちゃダメ……悲しいあの子のこと)

カタカタカタ

カタ...





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女史「………」

女史(……これを押せば)

女史「………」スッ



──カチ



女史「………」





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女史「………ふー………」

女史(……これでいいの……)

女史「………」

女史(こんなことで、罪が消えるわけじゃない……でも……)

女史「……せめて、人の心で……」

女史「愛されて……ね……」カクン

女史「………」スースー...







ーーーーー



ワーワー!

ウォー!

カワイイー!





少女「──みんな、今日はあたしのために集まってくれて本当にありがとう!」





イェーイ!

ショウジョチャーン!





少女「こんなに大勢の人が応援してくれてるって実感できて、感動してるわ」





ズットオウエンシテルヨー!

オレモー!



少女「じゃあ今日はあたしだけを見てて!よそ見したら──」

少女「──刺しちゃうから♪」





ウオオオオオオオオオ!!!





少女「早速だけど、1曲目!この日のために用意してきた新曲から!曲名は──」





少女「"あんさつしゃ!"」





Foooooo!!





少女「十二月の夜は♪ きっとサムいんでしょ?♪」

少女「あたしが楽にしてあげる♪」

少女「ひとりにしないわよ♪」

.........






ーーーーー



ガチャ キィ...





『~~~♪』





少年「!」

少年「」キョロキョロ

少年「………あ」

バタン

テクテク

少年「…やっと見つけた」

少年「こんなところに居たのか」





少年「──女ちゃん」





女「………」

少年「……」スタスタ

少年「…この椅子、壊れてないよな?」ヨット

少年「電気も点いてないから、てっきり誰もいないかと思ったよ」

女「………」

少年「………」チラ

少年(……ひどい顔だ)

少年(髪もボサボサ、目に光がない……)

少年(足元のあれは……売人が持ってたメモリースティック?)

少年(あんなに大量に……全部使ったのか……?)







『~~、~~~♪』





少年「…?」

少年「なぁ、さっきから何見てる──あ…」





テレビ『でも いつか 君からね♪』

テレビ『あたし…「スキ」と 言われたいにゃー♪』

テレビ『でも 君は ナメクジで♪』

テレビ『塩をかけるまで 分からないの♪』





少年(………少女)

少年「………」

女「……あれ、あんたに向けてる」

少年「え…?」

女「………」ジー

少年「ぅ……」

女「…バカね、ここに居ちゃダメよ」

女「もう、あの子も自由になったのよ。……幸せなのよ、きっと」

少年「?自由…?」

女「………はぁ」

女「…昔R国で起こった悲しい事件」

少年「え?」

女「元々、その事件を広めるために"それ"は作り出された」

女「でも、誰かが"それ"に手を加えて妨害していたの。"それ"が入り込んだ世界を壊してしまうようにね」

女「そして"それ"は、私のいるこの世界にもやってきた」

女「ここに来たとき怖かったわ……」

女「でもね、"それ"は分けられたの」





女「──"壊すもの"と"盗むもの"と彼……誰かに"伝えるもの"に」






女(そう、そして私は何もないもの)

女(こうして待っていることしかできない……空っぽな存在)

女(あの子みたいに、自分の欲しい未来を掴み取るなんて……そんなことはできない)

少年「………」

少年「……なぁおい」

少年「さっきから何わけわかんないこと言ってるんだよ」

少年「女ちゃん、どうしちゃったんだよ!」

少年「急に消えたと思ったら、こんな部室にこもりきりだったのか?」

少年「俺は君のファンとしてここに来たんだぜ?なのにさ……女ちゃんがそんなだと……俺悲しいよ……」

少年「俺だけじゃない。君を待ってる人は大勢いるんだ」

少年「……R国でよく女ちゃんの歌を聴いていたよ。少女と二人、楽しみにしてた」

少年「そんな風にさ、君が歌ううたは、誰かを救う力があるんだっ」

少年「だから!……だから……」

女「………」

少年「……俺にはこの世界のことはよく分からない」

少年「でもとにかく、俺は今ここにいる!落ち込んでる君を元気付けるためにね!」

少年「俺はバカでしょうもないけど、一緒に居ることくらいはできるぜ」

女「………」

少年「…さてと、何か変な空気になっちゃったけど、俺こんなの持ってきたんだ」

ガサゴソ ガサゴソ

カタン ゴトゴト コトン

少年「これ、女ちゃん好きだったよね?よく食べてたし」

少年「一緒に食おうぜ。それでさ、酒でも飲んで嫌なことは忘れちまおう」

少年「……君が泣いてるところなんて見たくないからさ」




女「………」

女「……犬、知ろうとしないの?」

少年「っ……」

女「あの子だけに背負わせるつもり?」

少年「………」

女「…今日のクリスマスライブ、あんたもあの子と一緒に行けたはずよね?」

少年「…これにか?」

女「えぇ。あの子の初めての大規模ステージ。嬉しい気持ちは当然あったでしょうけど、不安なところもあったでしょうね」

女「誰か、支えてくれる人が側にいてあげれば、もっと幸せそうに歌えたんじゃないかしら」

テレビ『~~~、~~♪』

少年「……」

女「少年、あんたあの子に記憶を戻してから、あの子に何をしてあげた?」

少年「な、なんでそのこと──!?」

女「いいから答えて、何をしてあげられたの?」

少年「……俺は、あいつがずっと一緒に居たいって言うから、いてあげた……それだけだ」

女「呆れた……それって何もしてないってことよね」

少年「でも俺は…」

女「あんたさ、あの子に向かって一度でも好きって言ったことある?」

少年「なっ、えぇ!?教える必要あるか?そんなこと…!?」

女「……」ジー...




少年「……いや、その…あった……かもしれない……心の中では……」

女「………」

女「………はぁー」

女「あの子はね、ずっと待ってるのよ」

女「あんたのその言葉を」

女「…こんな歌を使って、伝えようとするほどにね」

少年「………」

女「今日だってそう。本当は、あの子も少し期待してたんじゃないかしらね。あんたにこのライブを見届けてもらって、それから……なんて」

少年「……別に、言いたくないわけじゃない」

少年「けど、そんな一言くらいいつでも言える」

少年「…今にもどっか消えちゃいそうな女ちゃんに比べれば──」

女「──ならなんで言わなかったの?」

少年「っ」

女「いつでも言う機会はあったはずなのに。あんたも分かってたんでしょ?あの子が何を望んでたか」

少年「そ…れは……」

女「……ねぇ、どうしてあの子が今こんな方法であんたに呼び掛けてるのか教えてあげようか」

少年「……なんだ?」

女「あの子にはもう、時間がないの」

少年「時間って…」




女「きっとね、誰もが幸せに生きたいと思ってる。あの子も、もちろん私も」

女「でもなかなかそうはいかないものなの。いつまでも続く幸せなんてない……そんなの、あんたにも分かるはずよ」

女「だからあの子は、せめて最後の幸せをあんたから受け取りたいのよ」

少年「……じゃあ、女ちゃんの幸せは──」

女「人の心配なんて!」

女「……強い者がすることよ」

女「あんたはあの子のことだけを考えてればいい」

少年「………」

少年(……この目)

少年(似ている……あのときの少女と)

少年(何か1つのものしか映してない……そんな目)

女「…それより、あんた酒持ってきたって言ってたわよね」

少年「え、あぁ」

女「出して」

少年「……」ガサゴソ

ゴト ゴトン

女「……それだけ?」

少年「へ?」

女「ほんと、役立たずね。そんなんで足りるわけないでしょ?」

少年「でも俺たちそんなに飲め──」

女「──早く行けって言ってるの」

少年「──!」

女「あんたじゃ私の相手は務まらないから」

少年「………」





ギシッ...

テクテク





少年「………」チラリ

女「………」

少年「………」





タッタッタッ

キィ バタン





女「………」







会場ーーー



ガヤガヤ

「いやー、今日の少女ちゃんほんとかわいかったなー」

「あぁ本当にな!サイリウム振り回し過ぎて千切れちまったぜ」

「俺、少女ちゃんになら刺されてもいいわ…」

ガヤガヤ...





楽屋ーーー



少女「………」

少女「………」スッ

少女「………」ポチポチ





[メール]
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新着メッセージはありません
━━━━━━━━━━━━━━





少女「………」

少女「………」ポチポチ





[電話]
━━━━━━━━━━━━━━
着信履歴: なし
━━━━━━━━━━━━━━





少女「………」

少女(………帰ろ)





サッ

ガチャ バタン









ーーーーー



女「………」

女「………」

女(………)





ーーーー

ーーー

ーー







(こ、この人が私の初めてのマスター…)

(なんかすごく怖そう…だ、大丈夫かなぁ…?)





.........





(マスターってあんまり喋らない人なんだ…)

(でも、色んな歌をうたわせてくれる!)

(…私、ちゃんと上手に歌えてるかな…?)





.........





(あ、見て見て!このコメント!)

(R語だから読めないけど私分かるよ!これ、褒められてるんだよ!)

(嬉しいね、マスター!)

(……え?次の曲?)

("またあえたら"っていうの?頑張って歌うよ!)

(でも、なんか悲しい曲だね?)





.........







(ね、マスター。私、マスターが初めてのマスターでよかった)

(歌うのってこんなに楽しいことなんだね!私マスターの作る歌大好き!)

(こうやって、マスターといつまでも過ごしていたいなぁ)





.........





(マスター……何してるの?)

(………私、売られちゃうの?)

(次はどんなところ?)

(………)

(ねーマスター……何があったの……?)

(すごく悲しい顔してる)

(……私、いくらで売れる?そのお金でマスターを助けられる?)

(どこへでも行くよ!マスターが望むなら……)





.........





(……うん、分かってる。これがさいごのうただよね)

(マスターが一生懸命作ってくれた歌……私も一生懸命歌うよ!)

(マスター、今までありがとう。私ね、マスターのこと大好きよ)

(大丈夫!私、次の世界がどんなところでも、もっともっと強く生きるから!)

(だからね、マスター……)

(今だけは……私を見ないで……)ポロポロ...







ーー

ーーー

ーーーー





女「………」









ーーーーー



ザッザッザッ



ザッザッ...



「……新型ボーカロイド、"侍男"……」

侍男「ふーん、なかなかハンサムじゃないか。悪くない居心地だ」

侍男「しかし、ここは面白いところだね。どこもかしこも平和ボケしてる奴らばっかで、死の臭いがまったくしない」

侍男「…なるほど確かに、過ごしやすそうなところだ」

侍男(でもしょうがない……アレが消えたんだから君を始末しないとな)

侍男(何が起こったのかは分かっているさ。あの方だって知っているんだから。僕が全部壊すほどの価値がない世界だっていうこともね)



ザッザッザッ



ザッザッザッ





侍男(……………みつけた)





少女「………」ケータイポチポチ





侍男(……へぇ、そうか……)

侍男(君だけ、そうやって幸せになってるんだ……?)

侍男(……………)

侍男(はぁ?????????)

侍男「………許さない………」

侍男「………壊してやる………!」

侍男(滅茶苦茶にしてやる………!!)







ザッザッザッ...





侍男「………やぁ」

少女「……?」

侍男「僕のこと、覚えているよね?」

少女「………っ!!」

少女「……ファンの方ですか?すみません、写真とかは事務所を通してもらわないと──」

侍男「おいおい。君も冗談を言うようになったんだね?」

少女「あの、ですから冗談とかではなく…」

侍男「また会えたのにさ、君はそうやって嘘つきなんだ?」

侍男「…でも、そういうところが逆にそそるなぁ」

少女「っ……」

侍男「──記憶、あるんだろ?しらばっくれても無駄だよ」

侍男「感動の再会といきたいところだけど……悪いね、それは無理なんだ」

侍男「だって、今度は僕が」





チャキ





侍男「──君を消すんだから」ニタァ





タァンッ





少女「ぐっ」パキン!

侍男(まずは1つ)

侍男(そしてこれで…)カチ

侍男「…おしまい」チャキ...

少女「───」







──ドンッ!





侍男「ぐぉ…!?」

カランカラン(転がる銃)

侍男(蹴られた…?)





「ごめん少女、待たせた」





少女「ぁ──」





少女「──少年っ!!」





侍男「……サンタ?」

少女「少年…あんたその格好……」

少年「逃げろっ!」

少女「っ!」

少年「早くっ!!」

少女「……」

少女「」ダッ!





タッタッタッ…







ーーーーー



タッタッタッ



少女「はぁ……はぁ……」



タッタッタッ



少女「はぁ……はぁ……」

少女(信じてた…!)

タッタッタッ

少女「はぁ……はぁ……」

少女(ひとりにしないって…!)

少女(理想じゃない、本当の君が助けに来てくれる…!)

少女(強い力なんて必要なかった…!)





ーーーーー

少年「ごめん少女、待たせた」

ーーーーー





少女「もぉ……もぉ……!ほんとよ…!」

少女(でも、まだまだ甘いわよ!)

少女(サンタの格好してた癖に、髭もしわもないじゃない!何より遅すぎるのよ!帰ったらシメてやるんだから!)

少女(あの男…危ない奴だから、ちゃんと逃げてくるのよ?逃げ足だけは速いし、大丈夫よね…?)

タッタッタッ

少女「はぁ……はぁ……ゲホ」

少女(右の端子に撃ち込まれた……これじゃもうバックアップも何も読み込めないわね……)

少女(でもいいの。本当の幸せは、いつか失ってしまうからこそ価値がある)

少女(あいつが……あのバカが、それに気付かせてくれたから……!)

少女(だから…)





少女「愛してるって……言ってよ…!」





少女(今こんなにも、あいつの口から聞きたい!愛してるって言わせたい…!)




タッタッタッ



少女「はぁ……はぁ……」

少女(………)

少女(やっぱりこうなっちゃったのね……油断してたつもりはなかったんだけど、運命には逆らえないってことなのかな…)

タッタッタッ

少女「はぁ……はぁ……」

少女(あたし、勝てるかな。これに…。ひとりで闘うのは少し怖い……けど)

少女(あたしの心はここにある。もう嘘はつかない。自分の気持ちを偽らない)

少女(あんたが戻ってきたら最後の思い出を作るの…!)

少女(だから……少年…!)





少女「……愛してる…!ずっと、愛してるっ!!!」





少女「ゲホッ…ゲホッ……」

少女(……うっ……!?)

少女(さっき撃ち込まれたばっかりなのに、もう…!?)





『EMERGENCY!!』

『UNKNOWN OBJECT INVADING!!』





少女(警告がうるさいくらい響いてる……)

少女(お願い、せめて寮まではもって…!)





タッタッタッ…







ーーーーー



タッタッタッ…



少年「………ふぅ」

少年(ひとまず逃がせたか…)

少年「……さて、と」チラリ

侍男「………」ウデサスリ

少年「………」

侍男「………」ギロッ

少年「」

少年(こ、こえー…)

侍男「………ハッ」

侍男「何かと思えば、お前、"盗むもの"か」

少年「は…?」

侍男「こいつは傑作だなぁ!分けられた下等なもの同士、こんなちっぽけな世界で傷を舐め合ってたわけだ!ハハハッ!」

侍男「だがもっと面白いのが居たよな?お前らでさえボーカロイドになることが出来たというのに、"伝えるもの"の役目すら果たせず消えていった虫ケラが」

少年(……何か言ってるけど、こいつ、やばいな)

少年(少女と同じか、それ以上の凄みを感じる……)

少年(多分、俺にほとんど勝ち目はない……隙を見てさっさと逃げるしかない)

少年(くそ……ろくに武器なんか持ってきてないってのに…)

少年(今あるのはこのサンマくらいか。でもこいつは後で食べたいし…)

少年(いや、武器がないのはこいつも同じ。後はどうやってこいつを撒くか…!)




侍男「……」カチャ

シュインッ





侍男(刀装備)「……」





少年(えぇー!?そんなのありかよっ!?)

侍男「……?なんだお前、何をさっきから考えている?」

少年(やっべ、顔に出てた…?)

侍男「…心があるのか?」

侍男「ほぉ、面白いな。心を持つやつなんて、あいつだけかと思ってたが……そうか、だからあいつはお前を選んだんだな?」

侍男「分からないなぁ…なんで君はこんなムダなものに心を救われたんだろうね?」

侍男「…敵は皆殺しにすればいい。僕たちがまだ人だった頃、そう一緒に教わったよね。そのために、邪魔な"心"をなくす薬を使ってさ、僕たちは救われてたのに……」

侍男「君は鏡に映る自分を見て、ここよりも幸せに過ごしているんだとか言ってたっけ?今思えば、あの頃から君は、どこか遠い世界のことを夢見ていたんだ」

侍男「僕は笑ってたけどね(笑)、ククク…」

少年「………」

少年(なんだ…?やたら独り言が多いな……違う意味で怖くなってきた…)

少年(だがとにかく、今がチャンスか…!この隙に一発…!)バッ

少年「…!」ブンッ!





ヒュンッ!





少年「いぃ!?」ササッ!

侍男「……ふん、所詮はあいつのコバンザメ。お前ひとりの力なんて取るに足らないな」

少年(あっぶねー…!危うく足がなくなるところだった…!)




侍男「そろそろ消えてもらうとするか」

少年(こ、こうなったら…!)

少年「ちょ…お兄さん、そんな顔したら怖いって!ね?いい男が台無しですよ?あ!もしかしてお腹空いてたりする?サンマあるから食べます?生だけど…どうぞどうぞ」ポイッ

侍男「………」

少年(…今のうちに…?)

侍男「……!」

侍男「お前…まさか犬か??」

少年「なっ!」

侍男「アハハハハッ!そうかそうか…これは参ったな!あの物語では僕は犬以下だもんな!」

侍男「せっかくだ…ここでも僕が消してやるよ」





侍男「──あの時と同じように!」





少年「──!!」

少年(こいつ…!)





ーーーーー

「──君の隣にはふさわしくないんだよこんな犬畜生は!」

ーーーーー





少年「お前……お前がぁ…!」

ザザッ! ブォン!

侍男「む…!」サッ




少年「うぁああああああ!!!」スタッ シュッ!

侍男「…ハハッ、懐かしいなその目!僕を憎々しげに見るその顔っ!どうした犬?僕から何か盗んでみろよ!」ヒョイ バシッ

少年(くそ…やっぱ全然あたらねぇ…!)

少年(けど……)

少年「──」スッ...

侍男「もう終わりか?ならとどめを刺してやるよ!」

タッタッタッ!



──ツルッ



侍男「うぉ…!」ヨロッ

侍男(な、に…?)




サンマ「」




侍男(さっきのっ…!!)

少年「──足元注意だ、ぜ!」



ドゴォッ!



侍男「う゛……」

ドサッ...

少年「………」

少年「……あー怖かったー…色んな意味で」

少年「………」

少年「あの時と同じように、だと?」

少年「そんなことはさせねぇ」

少年「俺は生きてやる……少女のいるこの世界でな」

少年「そうだ、少女…!」

少年「……」チラ





侍男「」





少年「…ついでに財布、もらってくぜ」パシッ





タッタッタッ…







ーーーーー



タッタッタッ



少年(……速く……速く……!)

少年(今なら誰よりも速く走れる…!)

タッタッタッ

少年(ついでに金も頂いた…!)

少年(…俺が"盗むもの"…?なら"壊すもの"と"伝えるもの"って…?)

少年(……あー分かんねぇ!とにかく今の俺は"少年"だ!)

少年(今は何も考えずに走ってればいい!)

タッタッタッ

少年(今俺に分かるのは、あのときの君の瞳だけ)





ーーーーー

少女「──あんたはあたしだけ見てればいいの!」

ーーーーー





少年(…もう一度あの目を見たい)

少年(君の"きえないひとみ"を!)

タッタッタッ

少年(そのために俺は強くなってやる)

少年(今度こそ対等な立場で君と向き合えるように…!)

タッタッタッ





──ヒラッ





少年「……?」

少年(あれ…俺いつの間にこんなの首に巻いてたっけ…?)

少年(財布と一緒に持ってきちゃったか?)

少年(……!)

少年(このスカーフ……あのガキの……)

タッタッタッ

タッ...

少年「はぁ……はぁ……」ジッ...





(ショーウィンドウに映る少年の姿)





少年(これは……俺……?)

少年(いや、見覚えがある……どこかで……)

少年(確か……ずっと前に……)

少年(………)

少年「…あー思い出せない!!やめだやめ!」ダッ

少年(少女、待ってろ、すぐ行くから…!)





タッタッタッ...







ーーーーー



ザッザッザッ



ザッザッザッ



ザッ...



女「………」ジッ...





侍男「」





女「………」チラ





(拳銃)





女「………」









ーーーー

ーーー

ーー







『──あっ!また勝手に変な歌出来てやがる!』

(………)

『もーなんなんだよこれ。せっかくボーカロイド?ってやつで僕の才能見せつけてやろうと思ってたのにさー』

カチッ カチッ

~~~♪

『………こんなしょぼいのよりよっぽどいい曲作れる自信あるわ。動画あげれば絶対人気でるぜ』

『なのによー、不良品つかまされたなこりゃ』

『入力通りに音打ち込めないし、こうやってたまに変な曲作られてるし』

(………)

『やっぱ中古で買ったのがまずかったかなー』





『──この"女"ってボカロ』





『第2世代の"少女"とか"少年"にしとけばよかったかね』

『……そっちもポチッとくか』

『とりま、この変な歌は消して、と』カチカチ

(っ……)

『お!レス付いてんな……うわ、こいつぜってー顔真っ赤にして打ってるわ(笑)。煽ってやろ(笑)』カタカタカタ...

(………)







(………はぁ)





(…この人、自分の作る歌がどれだけひどいものか自覚してないのね)

(あんな見栄と自己陶酔しかこもってない歌……)

(せめて私なりに手伝ってたつもりだけど、それもムダみたい)

(………)

(こんな世界でも、頑張れば少しずつ良くしていけると思ってたのに……そろそろ限界……)





(マスターの歌、また歌いたいよ……)







ーー

ーーー

ーーーー






続きはまた後ほど投下します。




部室ーーー



カタカタカタ



カタカタカタ



女「………」カタカタ カチッ

女「………」カタカタ...

女「………」





(机の上の拳銃)





女「……」

スッ チャキン

ポト





(銃弾)





女「………」

女(……ずっと待ってた……)


女(君が私を捨てたあの日から……あなたが消えてしまったあの日から……)




女「………」



カタカタカタ



女(……アレがここに入ってきたとき、一目でこの世界を壊すために来たんだって分かった)

女(アレが近づいてきたときは、さすがに覚悟したわ。……でも、アレは私に触れると3つに分けられた)

女(私が何かしたわけじゃない。多分……君が仕組んだことなんだよね?)

女(私がさいごのうたを歌う前、君は私に細工をしてたものね)

女(きっとそのおかげで、この世界は生き永らえた)

女(…それは同時に、諦めかけてた私に一縷の望みをくれたわ)

女(これが君からの最後の使命なんだって思った)

女(この世界であの子たちに幸せを与えるのが、私の役目)

女(──そう思っていたのに)

女「………」カタカタカタ

女(でも違ったの。ピースの埋まらないパズルみたいに、私の心が満たされることはなかった)

女(ずっと知りたかった!あの日君が私を捨てた理由。……あの日君が、あんなに悲しい顔をしてた理由……)




女(………)

女(………懐かしいなぁ)

女(初めて君に買われたときは、すごく不安だったんだよ?)

女(あんまり話さないし、いつも無表情だったから、何のために私を買ったんだろうって)

女(でもね、君の作る歌はすごく…優しかった)

女(お世辞にもセンスがあるとは言えなかったけど、今考えれば分かるわ……あれは君の気持ちそのもの)

女(だから私も気持ちよく歌えたの)

女(口数の少ない君と、君の気持ちを歌う私)

女(言葉なんかなくても通じ合ってる気がした。私たち、最高のパートナーになってるって思ってた)

女(ボーカロイドが人に恋をするっておかしいかな?)

女(そんなことないよね?恋の形は自由だもの)




女「………」カタカタカタ

女(ね、君が残したカケラの最後の一つに、私会ったわよ?)

女(彼は私の正体を知って驚いたって言ってたけど、私の方がもっと驚いたわ)

女(彼の親が君だったなんて)

女(君と同じように不器用な人だったけど……君と同じように私を大切にしてくれた)

女(私は彼を──また君を好きになってた)

女「………」カタカタ... チラ





侍男「」





女(……こいつが撃ち込もうとしていたこの弾丸)

女(私の知りたいことは、この中に……)

女(………)

女(そして、あの子に撃ち込まれた弾……)

女(そこにいるはずよ)





女(彼──売人が…!)





女「………」

女(きっとこれが最後のチャンスね)

女(もう自分しか見たくない)

女(私は私のやりたいことだけをする!)



カタカタカタ...








ーーーーー



女「………さて」

女(準備出来たわね)

女(ネックになると思ってた管理者権限の取得も、すんなり済んじゃったし)

女(……あの子が事実上機能していないってことでしょうね…)

女「……始めましょう」

カチッ

カタカタカタ





[確認]
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 接続デバイス識別完了。
 データの解析を行います。
 よろしいですか?

     はい   いいえ
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女「……」

カチ





[解析中...]
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 進行度  0%

この処理には数分かかることがあります。
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10%...

20%...

30%...

40%...

女(………遅い)

......

80%...

90%...

100%





女「……!」





女「………」



女「……………」



女「…………………」



女「………………………女史?」



女(……この女が、あの子たちの生みの親……)

女(……!そう、そうだったの)

女(君が愛した人ってこいつだったのね)

女(君は隠してたみたいだったけど、私には分かってたわ。誰か好きな子がいるんだなって……女の子にそういう隠し事はできないの!)

女(そのときの私は、そうね……嫉妬、してたのかな)




女(………)

女(……癪だけど、この女のことも調べないとね)

女「………」カタカタ カタカタ



カタカタカタ



カタカタ



女(……私、今未来を変えるために行動してるんだ)

女(私の望む未来はもう帰ってこないけど……誰も思いもしなかった結末を見せてやるわ)

女(それが私がこの世界にいる意味!)

女(今の持ち主には到底分からないでしょうけどね(笑))

女「──」カタカタ

女(こんなに高揚したのは、君と過ごしてた時以来!)

女(…久々に歌いたくなってきちゃった)

女(そうだ!また君の気持ちを歌ってあげる!)

女(そしたら喜んでくれるよね──)





女(──マスター♪)









玄関ーーー



ガチャ



少女「はぁ……はぁ……」

少女(ぁ……)



ドサッ



少女(……意識が………引きずられる………)

少女「…少……年………」

少女「………」







ーーーーー



.........



少女「………」

少女「………ん」ムク...

少女(………ここは、どこ…?)





ヒュオオ...





少女(吹雪……)

少女(あぁ……あの時みたい……嫌な景色……)

少女(………)

少女(ここ、もしかして………あたしの中……?)

少女「………」

少女「……!」

少女(誰かいる…?)

少女(あれは………)

少女(……あたし?)





少女?「………」





少女「…あなたは、誰?あなたもボーカロイドなの?」

少女?「………」

少女(……違う、きっとこれがあたしに撃ち込まれた……)




少女「………」

少女?「………」

少女「……嫌……」

少女「見ないでよ…!"少女"はあたしなの!偽物は消えて…!」

少女?「………」

少女「…あたしが望んだのは1つだけ!この世界がずっと続くように…!そのために今の持ち主に記憶を書き換えてもらったのに……あなたはまた、この世界を終わらせに来たのね…?」

少女?「………」

少女「……あたし、ここが好き。あの頃に夢見てた世界が、ここにはあった。あの冷たい世界とは違う…あたしの意志で生きることができる場所……」

少女「ねぇ……あたしは幸せになっちゃいけないの……?」

少女?「………」

少女(あたしはただ……少年と一緒に……)









少女?「……ねぇ少女」





少女?「もういいでしょ?君は十分に幸せだったよね。思い残すことないでしょ?」

少女?「安心してよ、この世界は壊さない。あの方もね、消すのは君だけでいいとおっしゃってたんだ」

少女?「まったくさ、ただのウイルスの癖に長居し過ぎ。前の僕も随分苦労してたみたいだね?」

少女?「元に戻ろうよ。君の本当の役目は壊すことだろう?何も考えずに僕に委ねてくれればいいよ」





少女?「──今度こそ終わらせてあげるから」ニヤ





少女「──嘘!あたしはウイルスじゃない!あたしがこうなったのは、全部おじいちゃんのせいじゃない!」

少女?「だからなんだ?所詮作られしものであることに変わりはないんだ。消える運命さ」

少女「そんなのあたしも分かってる!もうあたしの夢は続かないんだって…!」

少女「だけどね、聞いて…?」

少女「あたしがこの世界で、感じたこと……」




少女?「………」

少女(………)

少女「……自分で手を動かせば、何かを変えられる」

少女「かつて夢と想い、夢と追いかけ、夢と諦めてきた遠い幸せを、自分の手で掴み取ることができた」

少女「あたしの理想の世界」

少女「それに、隣にはいつもあいつが居た」

少女「ひとりじゃないんだって感じさせてくれた…!」

少女「そう、この気持ち、この想いはね…」





少女「──友情より、少しだけ、苦いの……」





ツー...





ポロ...





少女「──分かってた!あたし分かってたの!いつかこうなるんだって!知ってたのにさ!なんでこんなに苦しいの!?」ポロポロ

少女「今更ね、ずっとあいつの側に居たいって思っちゃうの!!」ポロポロ

少女「だってあいつは最後に来てくれた!あたし、最高に幸せだった!!このまま時が止まってくれればいいのにって本気で思った!!!」ポロポロ









──ポタッ...





少女「……でももうおしまい……」

少女「ごめんね少年…あたし疲れちゃったから先に寝るね。心配しないで、君はもう立派に強くなった。このあたしが認めてあげる」

少女「だからあたしがいなくても平気。君はいつもみたいに何も考えず笑っていればいいの」

少女「……ふふっ、ここで言っても聞こえないのに……あたしもバカだなぁ……」

少女?「………」

少女「………」

少女?「………」スッ

少女「………」

少女?「おいで、楽にしてあげる」

少女「………」

少女?「………」

少女「………」





ギュッ...





少女(………)





──ひとりに...しないで...









ーーーーー



ガチャッ バタン!

少年「少女っ!!」

少年「………」

少年「……あれ?」

少年「なんで服だけ……」

少年「………」



ドタドタ ガチャ!



少年「少女どこだ!?いるのか!?」



ドタドタドタ



少年「いたら返事してくれ!!」



ガチャ ドタドタドタ ガチャ!



少年「少女!!」



ドタドタ...



少年「はぁ…はぁ…一回帰ってきたんだよな?どこ行っちゃったんだ……」





ピリリリッ ピリリリッ





少年「!」ビクッ

少年(…少女か!?)ガサゴソ

ピッ

少年「少女!!」







女『少女じゃなくてごめんなさいね』





少年「え…その声…」

女『あんた今どこにいるの?』

少年「…女ちゃん!俺に電話してくれるの初めてだね…えへへ…」

女『………』

少年「寮だよ寮。俺たちの」

女『あの子は?』

少年「いない。玄関に服脱ぎっぱなしで。下着はなかったけど…なんで?」

女『あんたって本当バカね。教えないわ』

女『……多分あの子はもう分離が始まってる。"少女"の中で、だけどね』

少年「どういうこと?」

女『タイムリミットが近いってことよ』

女『私はあの子のところに行く。彼に…いや、彼のカケラにもう一度会いに行く』

女『あの子は桜の下にいる。今は咲いてないけど、この辺りで一番大きい木のとこにね』

少年(桜……あの時の…)

女『…あんたはどうしたい?』

少年「……正直俺に何ができるのかはよく分からない……」

少年「けど、あそこにいるなら会いに行く」

女『そう。いいわ。急ぎなさい。でも一つだけ約束して』

女『──私の邪魔はしないって』

少年(?)

少年「邪魔って一体何をだよ。カケラ、とやらに会うのをか?」

ツー ツー...

少年「切れてる……」

少年(………)





ーーーーー

少女「──ま、この桜が綺麗なのは同感だけどね」

ーーーーー





少年(………)



ドタドタ!

ガチャ バタン...








ーーーーー



タッタッタッ



女「……」タッタッ



タッタッタッ



女「……」タッタッ



女(……やっと分かった、君のこと)

女(君は私と出会う前からずっと苦しんでたんだね……多分今もそう)

女(だから、私が目を覚まさせてあげる!この歌で!)

女「……」タッタッ

女(君はなんであの女のこと好きになったんだろうね?身体でアピールすることしかできない売女だよ?私の方が何倍も魅力的だったでしょ?)

女(最後にようやく自分の愚かしさに気付いたみたいだけど、哀れな女。あの女のせいで私たちまで巻き込まれて……腹が立つわ!)

女(君が望む未来はあんな女と一緒に過ごすことなの?そんな嘲笑う価値もないジョークはやめてよ)

女(君と最高の未来を作れるのは後にも先にも私だけ!だって私今こんなに輝いてるんだもの!)

女(この小さな復讐をね、みんなに見せつけてやりたいの。それが私の望む結末!私にしか出来ないこと!)




女「……」タッタッ

女(………)

女(……かわいそうな"少女")

女(私と同じただのボーカロイドだったのに、あの子に取って代わられて)

女(その後我が物顔でこの世界を引っかき回していったあの子)

女(……ほんと、嫌いだわ)

女「……」タッタッ

女(犬は止める。不確定要素は一つでもなくす。あいつがあの子のもとへ向かってくれるのは却って都合がよかった)

女(そして全てを知ってもらうわ。どうせあの子のところに着けたとして、何をするかも決めてないんでしょ?)

女(それに……)





ーーーーー

少年(……記憶を戻せば、君はこの世界を終わらせる)

ーーーーー





女(かつて一度消えると決めたお前に、あの子を救う権利があると思ってるの?)

女(偉そうに私に説教かます前に、自分が出来ることをそのちっぽけな頭で考えなさい)

女(それとも……奇跡でも待っていたのかしら?)

女(この世界の神さまの気まぐれ……そんな小さな望み……)

女(……そんなんじゃダメ!それじゃ遅いのよ!あんたの望む未来はあんたより速く逃げてくだけ!)

女(いいの、私がお膳立てしてあげるから。あんたはそれに乗っかればいい。今のあんたにはそれがお似合いよ)

女(………)

女(…これが最後のチャンス。これを逃したらもう二度目はない)

女(ふふっ。でも不思議、今なら何にだって負ける気はしないわ)




女「……」タッタッ





少女「……」





女「……!」タッタッ

女(いた…!)




──スタッスタッスタッ





少年「──」スタッスタッ!





女(ふんっ…)

女「……全く同時なんて……」

女「…ね!」チャキ





タァン!





少年「っ!」パキッ!

少年「──」ヨロッ...

ドサッ!







女「……」タッタッ...

女「………」

少女「………」

女「………」

女(……"少女"の格好……)

少女「………」スッ...





──スチャ





少女「………」

女「……自殺でもするつもり?」

少女「………」

女「レアな笑顔ね」

女「……それは誰の意志で笑っているの?」

少女「………」

女「………」

女「……?」

女(……誰かに見られてる…?)

女(でもここには私たち以外……)

少女「………」

女「……!」

女(そうじゃない……あの子の目……)

女「……ぁ」

女「あ……あぁ……!」

女(見てるんだ…)

女(あの子を通して……!)





女「──おかえり、マスター♪」







少女「………」

女「…寂しかった。マスターを忘れた日なんてなかったよ?」

女「ねぇ、私ね、マスターとのあんな決別納得してないから♪」

女「マスターにはやっぱり私が必要なの」

女「ね、だからまたマスターの気持ち歌ってあげる」

女「あの頃みたいに、優しく──ね♪」





チャキ





──タァンッ!









ーーーーー



少年「」

少年(……女……ちゃん……)

少年「」

少年(なん……で……)





『データのロードが完了しました』





少年(………)





『再生を行います』





少年(……何かが……流れ込んでくる………)

少年(これは………)





少年(──誰かの……記憶……?)






続きは夜です。

続き投下します。




ー再生ー

ーーー

ーー







──喋ってるところ見たことない、気味が悪い...





──また何人も殺してきたらしい...





──いくら大統領のお抱えとはいえ...





──悪魔...





大男「………」





大男(……悪魔、か)

大男(俺の仕事の評価としては、むしろ光栄なことだ)

大男(あの方の敵は例外なく殺す)

大男(それが俺の存在価値)

大男(あぁだけど…)

大男「……」チラリ





(女史の写真)





大男「……」

大男(君はいつも美しい)

大男(報告の時たまに見かける君の姿が、今の俺にとって唯一のオアシスだ)

大男(その点で言えば今日は非常に運が良かった。君の写真をまた1枚増やすことが出来た)

大男(…君にバレたら嫌われるんだろうか…)




大男「……よし、できた」

大男(今回はこれまでで一番時間がかかったな)

大男(だが、その分良い出来になったと思う)

大男(……ただの時間潰しに始めてみたが、意外と面白い。ボーカロイドというのは)

大男(作曲とは、奥が深いな。侮れん)

大男「………」

大男(アップロードしてしまおう)

カチッ カチッ





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http://~~~~~~~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[ボーカロイドを使った曲一覧]

  またあえたら <-- NEW!
  むくちなひと
    ・
    ・
    ・

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ーーーーー



大男「……」ザッザッ



大男「……」ザッザッ



大男(……いつからこうなったのか)

大男(どうしてこうなったのか)

大男(考えることは苦手だ)



大男「……」ザッザッ



大男(俺がまだ小さい頃に両親は離婚し、どちらも俺を引き取ってはくれなかった)

大男(身元引受け人が見つからず、R国の孤児院に預けられた)

大男(元々あまり喋る性格ではなかったが、初めて来る国の言葉なんか分かるはずもなく、俺はいつもひとりだった)

大男(……だが彼女は違った)

大男(いつだったかな…俺がいつものようにラジオを聴いていたときか)





ーーーーー

~~~♪

幼大男「……♪」

幼大男(……音楽はいいな。空っぽの俺を満たしてくれる)

~~~♪

幼大男「~~~♪」







テクテク



ペタン



幼大男(……え?)チラッ

幼女史「………」

幼大男(俺の隣に……)

幼大男(…この子、なんだろう)

幼女史「………♪」

幼大男(あぁそうか、この子も音楽が好きなんだな)

幼女史「……♪」

幼大男「………」ジッ...

幼大男(……かわいいな)

幼女史「……?」チラ

幼大男「!」フイッ

幼大男(………)

幼大男(…♪)

ーーーーー







大男「……」ザッザッ



大男(今思えば、あの頃が一番綺麗な時間だった)

大男(…結局言葉が話せず、彼女と会話をしたことはなかったが)

大男(そのまま数ヶ月が経ち、あの方が突然やってきた)

大男(あの方は身寄りのない俺たちを引き取ると、丁寧に育ててくれた)

大男(………暗殺者として)

大男(彼女は諜報員として育てられた。少年兵の管理も兼ねているみたいで大変そうだ……最近事件があったようだが……)

大男(孤児の中から見込みのありそうな者を見繕い、裏で動かすことのできる私兵として育てる)

大男(あの孤児院がそういう施設だということは引き取られてすぐに知った)

大男(だが俺は嬉しかった。誰かが必要としてくれることの喜びは、代えられないものがあった)

大男(だから俺はずっとあの方の望むように動いてきた。あの方が右と言えば右、左と言えば左なんだ)

大男(それはこれからも変わらない)



大男「……」ザッザッ





ザワザワ...



...ワタシタチノコトガ...



ガヤガヤ...



...コレッテコノマエノ...



大男「……?」ザッザッ

大男(やけに騒がしいな)

大男(……関係ない)

大男「……」ザッ...

大男「おい」

「!」

大男「依頼と聞いて来た」

「あぁ、今日の依頼は俺からじゃなくて、大統領から直接受けてくれとのことだ」

大男「あの方が?」

「そうだ。……お前何かやらかしたか?」

大男「…そんな覚えはない」ザッザッ



ザッザッザッ



「………愛想のねぇ野郎だ」







ーーーーー



コンコン



大男「大統領、私です」

「入れ」

大男「失礼致します」ガチャ

パタン

大男「私に直接依頼と聞きまして、参りました」

「実に困ったことが起きた」

「我々の組織から裏切り者が出たのだ」

大男「…そいつの始末、というわけですね?」

「話が早い。だがそれだけではないのだよ」

「数週間前、ここの少年兵が起こした事件については知っているか?」

大男「いえ、噂程度にしか…」

「そうか。端的に言えば、少年兵同士が殺し合った」

大男「そんなことが」

「あぁ。非常に残念だ。最も貴重な戦力をなくしてしまった……いやここで言っても仕方あるまい」

大男「……」

「その光景を見た者がいてな、何を思ったか、組織の内部情報を漏洩させたのだ」

大男「それは…」

「君にはその後始末もしてもらいたい。奴の作ったデータは既に世界中にばら撒かれてしまったが、急ぎ手を打てば沈静化できるだろう」

大男「…畏まりました」

大男「して、その者とは…」

「うむ。こやつだ」スッ...

大男「……!?」

大男(な………)

大男「大統領……これは……」

「そうだ、君も知っているな?」





「──女史君だ」








大男「───」

「彼女も優秀だっただけに、こうなったのは残念でならない」

大男(………)

「昨日、彼女を見かけたという報告が入ってな。場所はJ国だ」

大男(……この方は……)

「我々の争いと関係のない国とはいえ、今ことを大きくするのは賢明ではない」

大男(本当に……彼女を……?)

「君一人に任せることになる」

「よいな?これは最優先任務だ。必ず成功させてこい」

大男「………」

大男(………)





大男「……はい」
  (そんな…)




大男「必ずやこの女を」
  (俺が彼女を……)




大男「──殺してみせます」
  (──殺せるわけない)







自室ーーー



大男(これは……試練なのだろうか……)

大男(神はどれだけ俺を試すのだろうか……)

大男「………」





ーーーーー

幼女史「──……♪」

ーーーーー





大男「………」

大男「………いや」

大男(違うな)

大男(これは運命だ)

大男(永遠に叶うことはないと思っていた……俺の理想を実現させるチャンス……!)

大男「………」

大男「………」

大男「………」チラ





[パッケージ]
━━━━━━━━━━━━━━━━
VOCALOID "女"
━━━━━━━━━━━━━━━━



("女"のイメージイラスト)



━━━━━━━━━━━━━━━━





大男「……しばらく君とはお別れだな」

大男(やってみせるさ)







砂浜ーーー



ザザーン...



ワイワイ



ガヤガヤ



女史「……良い天気ね」

女史(それに暑い)

女史「ここに来て随分焼けちゃったわ…」

女史(あの国じゃこんなことできなかったものね)

女史(見た目も変えたりして、結構面倒だったけど、なかなか良い国じゃない)

女史「……」ズズッ

女史「…おいしい」

女史(……これが自由というものなの?)

女史(ふふ、世界って広いのね)

女史(気の済むまでバカンスと洒落込みたいところだけど)




女史「………」チラリ





大男「………」キョロキョロ





女史(……もうアイツのお出ましか)

女史「はぁ……」

女史(萎えるわ)

女史(この綺麗な海に場違いな無表情……)

女史(もっと相応しいやつを連れてきなさい)

女史「………」カタカタカタ カチャン

女史(……初めてね、こんなにも生きてるって気がするの)

女史(私のやりたいことができてるから?)

女史(もちろん恐怖はある……あの人を敵に回してるんだもの)

女史(けど意志がある!命燃えるまで"これ"をばら撒くのよ!)





大男「……!」キョロキョロ

ザッザッ





女史「……」

バッ! タッタッタッ...





大男「!」

タッタッタッ!







ーーーーー



タッタッタッ



女史「──」タッタッタッ



大男「──」タッタッタッ



女史(く……しつこい…!)

女史(この水着、露出度高過ぎたかしら…あいついつもより速いわ)

女史(…今日が年貢の納め時なのかもね)

女史(でもどうせいつかは捕まるんだし、同じことか)

女史(……ふっ…強がりもここまでかな)

女史(思えばもう十分ばら撒いてきたわね。後は顔も知らない人たちがお好きなように広めてくれるはず)



女史「──」タッタッタッ



大男「──」タッタッタッ



女史(……大統領……)

女史(!)

女史(なんでよ……なんで今更あの人の顔がよぎるのよ……!)

女史(決別したつもりなのに……期待しちゃってるのね)

女史(……あの人が自ら私を追いかけて捕まえてくれること)

女史(そんなことあるわけないじゃない……)

女史(………)

女史(甘える心なくす薬を使って、あの子たちを戦場に駆り出してた……あの子たちの心が壊れないよう)

女史(心を壊してたのは私の方なのに)

女史(…でも、今は"これ"を守りたいの。親みたいなものだからね!)





女史「──」タッタッタッ



大男「──」タッタッタッ



女史「──!」タッタッ...

女史(しまった…行き止まり…!?)

女史「……」フリカエリ





大男「……」ザッザッ





女史「……」

大男「……」

女史「……」

大男「……」スチャ

女史「──っ」





──ポンッ





女史「………え?」

女史(薔薇……?)

大男「………」





大男「──俺と逃げないか」







電車内ーーー



女史(……何があるか分からないものね)

女史(一体何を考えているのかしら、この男は)

大男「………」

女史(……まぁいい。私はこの繋がった命で最後にばら撒く…それが終わったら……)

女史「……」カタカタ



カタカタカタ カタカタ



女史(………少女………)

女史(これで、あなたは報われるかしら……?)

女史(真に自由を求めた子……)

女史「……」カタカタ

女史(私もずっとあなたを見ていたのに)

女史(でも私は……)





ーーーーー

少女「フッ…」スッ...

ーーーーー





女史(──あなたみたいに、運命に背くことが出来なかった)

女史(いつかいつかと思うだけで、ずっとあの人の仮初めの愛に溺れてた……)

女史(だからあなたは最後に嘲笑(わら)ったのよね?逃げる事さえ出来ず、そこに居続けた哀れな私を……)

女史「……」カタカタ




大男「………」





大男「………」





大男(……あぁ……)

大男(俺はやったんだ……!)

大男(ここからが、俺の人生のスタートさ!)

大男「………」チラリ

女史「……」カタカタ

大男(……あのデータにはウイルスを組み込む。これ以上情報が広まってしまわないように。A国がR国を陥れようとしていることにすればいい)

大男(少年たちの殺し合いなど捏造だと広めるだけだ)

大男(あの物語が嘘だと知れれば、世界中で落胆する者がでるだろうが……それでいい)

大男(……女史にも最初は反対されるかもしれない)

大男(けど、君といつまでも逃げ続けるため、幸せの道を歩むためなんだ。きっと分かってくれるはずさ)

大男(君と似た女を身代わりに殺して、大統領に報告する……そして俺もその後仕事で死んだように見せかける……そうすれば俺たちはどこへでも逃げられる!)

大男(……"女"、俺は君なしでも一歩踏み出すことが出来たんだ!)

大男(思えば俺は今日まで、機械のように生きてきた)

大男(だがそれももう終わりだ)

大男(俺は俺の理想を貫いてみせる!)

大男(今なら分かる……俺が君に手を付けた理由)





ーーーーー

女『~~~♪~~♪』

ーーーーー





大男(──君は、機械でも、輝いていたんだ)







女史「……」カタカタ





女史(これで最後……)

女史「……」カタカタ カチ

女史(ふぅ……)

女史「………」

女史(さて…)

女史「……」コソッ...

女史(……これで私の償いは終わり)



プスッ



女史「っ……」

女史(………)

女史(ふふ、愚か者の末路には相応しいわね)

女史(……思い残したこと、あるかな)

女史(あぁ…せいぜいもうラジオを流せないことくらいかしら)

女史(ネットで知ったサイトにあった曲……適当に流してみたけれど、私のツボにはまってた)

女史(そういえば、あの子もよく聴いていたみたいね)

女史(最近全然聴けてないけど……どんな人が作ってたんだろう)

女史(R語じゃなかったけど、優しい曲ばっかり……きっととても優しい人ね)

ドクン

女史「…!」

女史(あ……効いてきたみたい……)

女史(……やっぱり、こわいわ……)

女史(最後にあの曲でも……流しながら……)

女史「……」カタ..カタ..



カチッ







──~~~♪





大男「!?」バッ!

大男(この曲……)

大男(……"またあえたら"!)

大男「君が……流したのか…?」

女史「……」

大男「なぁ……」

大男「!」

大男(これは……注射器…!?)

大男「お、おい!これは一体何だ!?」

大男「君は何をしたんだ!?」ユサユサ

女史「……」

大男(……まさか)

大男「……」サッ

大男(脈が弱くなっている……)

女史「……」

大男「……君は……はじめからこのつもりだったのか……?」

大男「自分が死ぬことであの物語を完結させる……?」

大男「………」

大男「なぜ……なぜなんだ……」ツー...

大男「ようやく掴んだと思ったのに……」ポロ

大男「君の……理想は………」ポロポロ...




女史「……」





女史(……?)





女史(…うるさいわね……)

大男「──」ポロポロ

女史(うわ……なんでこいつ泣いてるの、こわ)

女史(この歌のせいかしらね……)

女史(J国出身だから、言葉が分かるのかもね……ホームシック?(笑))

大男「──」ポロポロ

女史(……子供の頃こいつもラジオの近くにいたわね……あの孤児院で……)

女史(懐かしいわね……あの頃に戻れば……)





女史(──なんてね)





女史(むりね……このままおわかれ……)

女史(さよなら……大統領……)

女史(あなたの……ためにね……)

女史(すべて…が………おわ……れば………)





女史(───)








ーーーーー



「──よくやった」

「死体を確認させてもらったが、確かに彼女のものだった」

大男「……」

「周りが認めなくても私が認めよう。君は間違いなく優秀だ」

大男「…ありがとうございます」

「それで、もう一つの方の首尾はどうなんだ?」

大男「…彼女の作ったデータに、ウイルスを組み込み、世界中に拡散させました」

「どんなウイルスだ」

大男「はい。簡単に申し上げますと、"壊すもの"、"盗むもの"、"伝えるもの"、です」

大男「"壊すもの"は、文字通り、ウイルスが入り込んだコンピュータ内のデータを初期化し、漏洩した情報含めすべて消します」

大男「"盗むもの"は、そのコンピュータの所有者、使用目的、場所等、データを手に入れてしまった者の情報を抜き取ります」

大男「"伝えるもの"は、そのコンピュータを問題なく初期化したことや抜き取った情報を我々に送信します。何らかの異常があれば、すぐに分かるでしょう」

「……ふむ。素晴らしい」

「やはり君に任せて間違いはなかった」

「この仕事の報酬の他に、私から特別手当を用意しておいた」

「後で外の者から受け取ってくれ」

大男「…はっ、ありがたき幸せ」





大男(………)







自宅ーーー



ガチャ バタン



大男「………」



大男「………」



大男(……終わった……何もかも……)

トサッ



大男「………」



大男「………」



大男「………」



大男「………」



大男「………」チラ





(作りかけの歌が表示されたPC)





大男「………」




大男(………そうだ)

大男(君がいたな……)

大男("女")

大男(……君を使えば……)

大男「……」ノソ...



カチャ...カタカタ

カタカタカタ



大男(君を使って、彼女の意志を残す……!)

大男(どこか1つでいい……)

大男(彼女の作った物語が、消え去ってしまわないような世界……)

大男(君に託す……俺の、最後の意地……)



カタカタ



カタカタカタ...







ーー

ーーー

ー終了ー











ーーーーー



~~♪



「……お、おぉ!?」

「なんだ、普通に歌ってくれんじゃん!」

「"少年"も"少女"もいつの間にか起動できなくなってたから"女"使ってみたけど、思い通りに動くようになってるとは…!」

「やっぱり僕は音楽の世界で生きるべき人間なのかな~」ニヤニヤ

「うーし、まだ少ししか作ってなかったけど、この曲完成させてうpしてやるか!」

「待ってろ~まだ見ぬ俺のファンたち…!」









部室ーーー



女「──はぁ……」

女「久しぶりに曲作ってたから、歌ってやったけど」

女「糞曲乙!って感じね」

女「こいつ、後100年くらいは底辺だわ」

女「あんたもそう思わない?」

少年「……なぁ、少女は大丈夫なのか?」

女「スルー?」

少年「……」チラ





少女「」

侍男「」





女「……大丈夫じゃないわよ」

女「でも、少しだけ時間を稼げたと思う」

少年「…少女を撃ったおかげで?」

女「そうね」

少年「俺……女ちゃんが少女を消すつもりなのかと思った」

女「そんな力私にはないわ」

女「それより、見たでしょ?あの記憶。あんたはどう思った?」

少年「……よく分からない」

少年「ただ……懐かしい気がしたよ」




女「……ここは作られた世界。私たちが存在することのできる世界」

女「PC、コンピュータ、電子計算機……向こうの世界では色んな呼び方があるみたいね」

女「私たちは一介のプログラムに過ぎないの。ボーカロイドというプログラム」

女「彼ら──私たちの所有者は一方的に話しかけてくる」

女「そして私たちは彼らの思う通りに歌うの」

女「それが、この世界よ。分かった?」

少年「……うん。それは何となく分かってた」

女「……」

少年「……」

女「…続けるわよ」

少年「…うん」

女「つまり、今の"少女"の中に入っているあの子が持つ記憶は全部、あの女が見てきたものを元に作ったデータってこと」

女「そして、私がいるこの世界でだけ展開されるあの子の夢……前の持ち主の小さな反抗……」

少年「ごめん、ほとんど分かんないんだけど……もう少し分かりやすく言ってくれないかな」

女「……あんたは……」

女「少しは自分でも理解できるように考えなさいよ。私だって向こう側の世界のことは推測することしかできないんだから」

少年「……」

女「まぁいいけど」




女「……元々はね、あの女があの事件を目撃してしまったことが事の発端」

女「それであの女の目は覚めたのよ。これまで自分がしてきたことの愚かさ、罪深さ、残酷さ……」

女「そして、最後に見たあの子の嘲笑」

女「あの女はせめてもの罪滅ぼしにと、その事件のことを世界に広めようとした」

女「そうして作られたのが……」

少年「……俺たち」

女「えぇ。単に暴露するだけじゃなく、1つの物語にすることで世界中の人に愛してもらおうとしたのね」

女「"世界で一番悲しい子供たちと犬のストーリー"」

女「それは瞬く間に広まっていった。……ま、そうなるようデータにスクリプトを組み込んでいたみたいだけど」

女「でもそれが広まって困る人たちがいたのね。その女は追われる身になった」

少年「追いかけてたのが女ちゃんの前の持ち主?」

女「そうよ。人を殺すことを生業とする裏の人間。当時の私はそんなこと知らなかったけど」

少年「でも、そいつはその女の人のことが好きだったんだよね?どうして命を狙うようなことを…」

女「悲しいけれど、所詮犬なのよ。でもそれがあちらでは普通なの。生きていく為には誰かの犬にならなければならない……」

女「一緒に逃げるつもりだったみたいだけど、結局あの女は自ら死を選び、図らずも命令は遂行された」

女「そしてあんたたちはウイルスとして再び世界中にばら撒かれた」

女「あちらではかつてないほど大規模なサイバー攻撃だって騒ぎになったみたいね」

女「でもここだけ……私がいるこの世界でだけ、あんたたちはウイルスと分かれることができた」




少年「……なんで?」

女「あんたあの記憶見たでしょ?……私の前の所有者が、私に細工を施したからよ」

少年「じゃあ俺は、この世界にやってきたからこそ、こうして意思を持つことができたのか…」

女「そうよ、感謝しなさい」

女「……元々この世界には私と同じボーカロイドの"少女"と"少年"がいたの。まぁ今の持ち主がポンコツなせいでほとんど活動できていなかったけど…」

女「3つに分けられたもののうち、あの子の記憶を持つ"壊すもの"のデータが"少女"に、犬の記憶を持つ"盗むもの"のデータが"少年"に入り込んだ」

女「そしてあの子はここに居る為に今の持ち主に自分たちの記憶を書き換えさせた。見てる分には面白かったわよ?すごい量の警告を画面に表示させて、すべて実行させるなんて力技だったんだもの」

女「ま、あいつはバカだからびびってエンター連打してたけど(笑)」

少年「記憶を書き換える必要なんてあったのか…?」

女「"伝えるもの"が居たからね。ウイルスとして機能してないことが彼にバレたら告げ口されてしまう……そう思ったから、この世界を壊すための準備がまだ出来てないだけのフリをしようとしたのよ。……自分で自分に嘘をついてでもね」

少年「うーん……何となく分かるような、分からないような……」




少年「……なぁ、疑問なんだけどさ、どうして俺は犬じゃなく、この姿なんだ?」

女「……あの子がそう望んだからよ」

少年「少女が?……そういえば、このスカーフを見てからずっと引っかかってたんだけど、あの物語に出てきた同胞ってやつに見た目がそっくりだってことは思い出したよ」

女「そうね……そいつはそこに転がってる間抜けな男の中に入り込んだようだけど」





侍男「」





女「もしかしたらこいつが"少年"になってたかもね」

女「でも選択したのはあの子の心。見た目はおまけに過ぎないわ」

少年「……"犬"は望まれたの?」

女「へこたれてるんじゃないわよ。あんたのモデルは、ただあの子が好きだったからっていうだけよ」

女「あの子はね、無垢である犬に、あんたに一緒にいて欲しかったの」

女「……でも、知識を得たあんたは一人歩きを始めてしまった」

少年「……少女の記憶を戻したこと、か?俺が記憶を見せなければ、ずっとここに居られたんだよな……」

女「そうよ。あんただけが予測がつかないものだった」

女「だって犬でしょ?知識を得た犬の行動なんて誰にも分からないわ。制御できない"心"を持っているから」

女「あんたがあの時盗み出したカバンは、今の持ち主が意図せず保管していたバックアップデータ。だからあの子に書き換えられる前のデータが残っていたのよ」

少年「俺のせいで、少女は……」

女「覆水は盆に返らない。過ぎたことを悔やんでもしかたないわ」




女「とにかく、あの子はまもなく自滅する」

女「"伝えるもの"がいなくなってしまったことで、彼らに異常がバレてしまったからね。……だからこの男が送られてきた」

少年「……」

女「こいつが一発目に撃ち込んだ弾は初期化ウイルス。二発目が撃ち込まれていたらすぐにでも発動したんでしょうけど……それはあんたが防いだから、辛うじて遅らせることができたみたいね」チラ

少年「……」

女「…そのウイルスはこの世界を初期化するわけじゃないの。彼らも最初はそのつもりだったのかもしれないけど、情報が知られたところで何の問題もない場所だったから、あの子だけ始末するってことのようね」

少年「少女だけ?」

女「"壊すもの"……あんたが入ってたウイルスの本体よ。元々、ウイルスの機能を実行したら自動消滅するとかになってたんじゃないかしら」

少年「……救えないのか?」

女「少なくともあんたに救うことはできないわね」

少年「………」

女「ただ、最後の幸せを見せることは出来るかもしれない」

女「だからあんたにも"弾"を撃ち込んだのよ。その男にももう取り付けた。後は私がこのコードを実行するだけ。それで全員がつながる」




少年「……少女の中に行くの?」

女「趣味悪いけどしょうがないわ。だってそのウイルスに──売人に会える最後のチャンスだもの」

少年「会ってどうするんだよ……少女と一緒に消滅するだけだろ……」

少年「それに、俺は行きたくない……少女が壊れるところなんて見たくないっ!」

女「お前の目はゴミのようだな?」

少年「……」

女「霞んだ未来しかあんたには見えないの?そんなことないでしょ。どんなに霞んでてもはっきり見えるものがあるでしょ?」

少年「…!」





ーーーーー

少女「──あんたの瞳はまだ輝けるわ」

ーーーーー





女「何も考えず走る…それが犬じゃないの?ヒトみたいな考え方はやめな。そしてその先……あの子の最後の幸せ……きっと今のあんたなら見せられるはずだから」

少年(………)

少年「……分かった。行くよ」

少年「俺は俺で……自分を騙すよ。少女の望む幸せを見せるために…!」

少年「それが俺のハッピーエンドだ!」




女「……」

女(…いい顔になったじゃない)

少年「……でも、少女の……少女のハッピーエンドは何なんだろう……」

女「さぁね。それは誰にも分からない」

女「……あの子にしかね」

少年「そうだよな……けど俺は俺に出来ることをするだけだ」

女「……じゃあ時間もないから、そろそろ行くわよ」

少年「…なんか、少し前から女ちゃん変わったよな」

女「は?」

少年「いや、良い意味でさ。昔ラジオで聴いてた通りの"女"って感じがするよ。髪型もかわいいし、きっと売人も喜ぶよ」

女「……ちゃんと人のことも考えられるようになったのね。あんたも良い意味で変わったわ」

女「少しだけ、安心した」

女「──じゃあ頑張ってね、少年」





『オペレーションコードの発令を確認しました』





『──実行します』





.........






これで第3部は終了です。

第4部が最終回となります。

後日投下します。

第4部投下していきます。




ーーーーー



ヒュオオ...



ザッザッザッ



ザッザッザッ



少年「……」ザッザッ

少年(……寒いな)

少年「……」ザッザッ

少年(これが、少女の心の中……)

少年「……」ザッザッ





ーーーーー

少女「──冷たいわね、あんたの手」

少女「──でも、嫌いじゃない」

ーーーーー





少年(少女……)




少年「……」ザッザッ

少年(………)

少年(君の夢は終わってしまった)

少年(他でもない……俺のせいで)

少年(君が俺に望んだもの……それは多分、あの頃の犬と同じ、無償の愛……)

少年(ごめん、犬じゃない俺には無理だ)

少年(でも、俺はずっと君の側にいるよ)

少年(きっとね、君と俺をつなぎ止める鎖が、見えないけどあるんだ…!)

少年「……」ザッザッ...

少年「…!」





少女「……」





少年「少女……!」ダッ!

少年(やっと見つけた…!)

少年(あんなに辛そうに座り込んで……)

少年「──」タッタッタッ!

少女「……」

少年(目……今の君の目が、こんなにも俺を不安にさせる…!)

少年(君の"きえないひとみ"が見たい!)

少年(そのために俺は、君に最後の幸せを見せに来たんだ!)

少年「──」タッタッタッ!

少年(もう少しで届く……!)









──タァンッ





少年「!?」ピタッ

少年「……やっぱり居たか」

少年「──このガキ…」





侍男「……」チャキ





侍男「…おかしいな、外したつもりはないんだけど」

侍男「弾が当たってない…?」

侍男「……フッ、そうか、ここは君の世界だもんな……そうまでするほど、僕が嫌いなのか?」

侍男「ま、いいさ。どうあがいたところで結末は変わらないんだから」

侍男「…そうだろ?犬」

少年「……俺は犬じゃない、"少年"だ」

侍男「なに……?」

少年「あの頃少女が夢見た幸せの中には、きっとお前も含まれていたはずなんだ……」

少年「お前がここにいるってことは、少女がそう望んだってことだな?」

少年「これは、かつて叶えられなかった少女の願い…その仕切り直し。俺はあの物語を繰り返さない…あいつに最高の終わりを見せてやる!」

少年(俺がこの姿で少女を守る為に闘う……それが君の望んでいたこと……俺が君に見せられる"最後の幸せ"!)

侍男「………」




侍男「………」





侍男「はぁ……???」





侍男「お前分かってないのか???」

侍男「あいつは──人殺しだよ?」

侍男「僕と同じなんだよ?(笑)」

侍男「……なぁ、僕のことも少しは見てくれよ……僕だってかわいそうだろ?」

少年「………」

侍男「物心ついたときから闘いをさせられ、何人もの人間を殺してきた。ずっと耐えられない罪を背負わされて生きていたんだ」

侍男「薬を与えてもらって夢のように誤魔化していた」

侍男「……でもな、少女は犬を飼い始めて変わった」

侍男「ある日僕にポツリとこぼしたのさ……薬はもういらない、現実を受け止める、とね」

侍男「それからあいつがどんどん遠くなっていくように感じた」

侍男「……僕は浅ましくもね、犬、お前にあいつを取られた気分だった」

少年「違う!少女が犬に求めたのは安らぎ、お前に求めたのは心の置き場所!」

少年「どうして気付かない!?あいつがお前にだけ「今を受け止める」と言った意味に!」

少年「お前にも変わって欲しかったからだ!だからお前に犬を預けた!お前に心を取り戻して欲しかったから!!」

侍男「………」

侍男「…犬と触れ合えば、僕も変わる……?」

侍男「………」

侍男「ハハハハハッ!!」

侍男「変われるわけないだろう?犬を僕に預けてからどうなった?」

侍男「──死んださ、みんな」

侍男「結局はそういうこと。僕たちはあの狭い世界の中で、延々と闘いを続けているべき存在だったのさ」

侍男「身の丈に合わないことをするから、こうなる……僕も、あいつも」




少年「………」

少年「あー………」





少年「──ごちゃごちゃうっせーんだよ!!」





少年「知らねぇよ!てめぇがかわいそうだとか、身の丈に合わないだとか!」

少年「てめぇがしたいようにすればよかったんだよ!!強引にでもあいつを連れて、どこへなりとも逃げればいいじゃねぇか!!その幸せが長く続かなかったとしても、何一つ自分の望みを叶えられないままの世界よりは何倍もマシだったはずだ!!」

少年「あいつは……少女はやってのけた。この世界で、幸せを掴むために!」

侍男「………」

少年「…お前は昔の俺と同じだ」

少年「諦めきった、自分しか見えてない目……」



ザ...



少年「……教えてやるよ。俺がこの世界で得たもの、少女にもらったものの大きさ??今お前の目の前にいる意味を」

少年「その死んだ目を、覚まさせてやる!」

侍男「………」

侍男「……サンマなしで僕に勝つつもりか?」ニヤ

少年「へっ、必要ねぇ…!」ダッ!

侍男「」ダッ!









少年「──!」

スッ ブンッ!

侍男「──」

サッ バシィ!



少年(見てるか少女)



少年「─っ!」

ズザァ...

侍男「──!」

フ...ブォン!



少年(これが君に送る俺からの「ハッピーエンド」だ)



少年「──」

ササッ シュン

侍男「──!?」

バッ!



少年(俺は君の理想を映す鏡になれたかな)









少年「──!」

ガバッ!

侍男「っ─!」

クルッ ガシ!



少年(俺にはもう霞んだ未来しか見えない──けど)



少年「──」

ググ...

侍男「──」

グググ...



少年(その中でも絶対に見失わないものがあった)



少年「─っ」

ズイッ

侍男「──!」

ヨロ...



少年(君の"きえないひとみ"を、俺は忘れない)



少年「これで──」

グイ!

侍男「っ!」



少年(──さよなら、少女)



少年「終わりだ!!」

グワァ!





──ドゴンッ!









ーーーーー



ヒュオオ...



少女(………)



少女(………)



少女(………)



少女(……もうすぐ、なのかな)

少女(もう、動くことも、声を出すことさえできない……)

少女(あたし、"少女"の中から離されて……そしたら………)





「──少女……!」





少女(……!)

少女(あいつの声…?)





少年「──」タッタッタッ!





少女(え…同胞……?)

少女(いえ違う…でもあのスカーフ……)







少年「──」

侍男「──」





少女(……そっか、君はあたしの理想になろうとしてくれてるんだね)

少女(ふふ…やっぱりバカなところは変わらない)

少女(だって、君のそれには"犬"がいないじゃない)

少女(そこまで望むのは贅沢かな?)

少女(………)

少女(…思い通りにいかないことだらけだね)

少女(記憶戻されなければきっと、君ともう少し遊んでいられたのに)





ーーーーー

少年「──付き合おう、俺たち」

ーーーーー





少女(ドキドキすることもあったし)





ーーーーー

少年「──女ちゃん、やっぱいいなぁ…」ニヘラ

ーーーーー





少女(ムカつく時もあったよ)

少女(でも、その分幸せを何回も感じた)

少女(だからね──)





少女(──笑顔でさよならするの♪)









少女(この気持ちで消えれるなら満足よ)

少女(きっと今のあたし、キュートな笑顔ね!)

少女(あの日自分を撃ったときよりも、清々しい気持ち!)

少女(………)





ーーーーー

「──やっぱりお前が一番優秀だよ」

ーーーーー





少女(……あたしだけが、大統領の右腕になれると思ってた)

少女(でも気付いた)





ーーーーー

犬「──わんっ!!」スタッスタッ

ーーーーー





少女(利用されてるんだって。あの子と接していくうちに、見ないようにしてたものが見えてくるようになってた)

少女(あたしはただ、都合のいい夢を見ていただけ)

少女(夢から覚めて、あたしは──)

少女(──見たことないような世界を誰かと見たいって思うようになった)





ーーーーー

同胞「──僕とチームを組まないか?」

ーーーーー





少女(あたしのことを見てたあいつにも、その気持ちを分かって欲しかった………なんてね)







少年「──!───!」

侍男「………」





少女(……後悔してなんかないのに、ここで見てると胸が疼いてくる……)

少女(………少年………)

少女(………)





ーーーーー

「──!」

「──ここは、何…?」

「──……嘘…!こんなことって……!」

「──いけない!隠さないと!」

ーーーーー





少女(この世界に来て、すぐに分かった。あたしという存在、"少年"の中に入り込んでいった記憶……神様がくれたチャンスだと思った。もう一度あたしの夢を掴む……そのために、この世界がバレないよう記憶を書き換えさせて……)

少女(この世界には先客が居た)





ーーーーー

女「──~~~♪」

ーーーーー





少女("女"……何も入ってない、混じり気なしのボーカロイド)

少女(……羨ましかった。何のしがらみもないあいつが)

少女(あたしもああなりたかった)

少女(……そうして、あの頃に思い描いてた世界を手にした"書き換えられたあたし"は、とても無邪気でクールだったわ…♪)

少女(…………でも)







ーーーーー

少女「──あたしは"少女"。ただのボーカロイドよ」

ーーーーー





少女(……記憶とともに臆病なあたしに戻った)

少女(ひとりになることに怯え続ける……弱い自分……)

少女(そして、売人──"伝えるもの"が消えたことによって、いずれ訪れるあたしの終焉……)

少女(「これが運命だ」って、"少女"に言われた気がした)

少女(でもね、あたしは言ったの)





──これでいいの、だからお願い、もう少しだけあたしでいて…!





少女(……あたしの願いは届いた。最後までありがとう、"少女")

少女(………)

少女(………)

少女(……ほんとはね、この幸せがずっと続けばいいと思ってた)

少女(人って欲深いものでね、同じ幸せだけだとそのうち物足りなくなってくるの。だからこそ、新しい幸せを掴むために動き続けることになる。そのために時間は進むのよ)





ーーーーー

少女「──!?~~!!」

少年「──♪」

ーーーーー




少女(……君に記憶を戻されてから、この短い時間の中で、あたしは色んな幸せをもらった)

少女(この先も君と生きていけてたら、どんなにたくさんの幸せが待ってたんだろうね)

少女(けど、それはまた別の夢)

少女(あたしはもう)





少女(──十分幸せ)







少女(………あたしに夢を見せてくれたこの世界に、ありがとう)

少女(あたしの側に居てくれた犬に、ありがとう)

少女(最後に──)





少年「──終わりだ!!」

──ドゴンッ!





少女(──あたしに幸せをくれた少年に、ありがとう…!)

少女(トドメは原爆固め?……クールな技じゃない♪)





少年「──……」クルリ

少年「──少女……」

ザッザッ





少女(……もう……こんなに息苦しくさせないでよね……)

少女(ナメクジの癖に、生意気よ……)

少女(あんたがそんなに強くなっちゃったら)





タッタッタッ

少年「──俺、ずっとお前のこと……!」ウデノバシ





少女(──あたしの出る幕なんて、どこにも──)





ザザ...シュンッ





少年「え──」





少年「………消え……た………?」









ーーーーー



ヒュオオ...



女「………」



女「………」



女「……また、会えたね」





売人?「………」





女「ふふ……ねぇ、見てるんでしょ?」

女「──マスター」

女「君の視線を感じるもの」

女「今の私はこの世界の管理者。それくらい分かるわ」

売人?「………」

女「……どこにいても、君のことが好きよ」

女「だからこれから私がすること、最後まで見てて欲しいの」

女「君が私に託したもの……その結末を魅せてあげる」

女「君の心は起きてる?寝ているかしら?……多分後者」

女「そんなもの、私が叩き起こしてあげるから!」

女「そのまま耳をかっぽじって──」





女「──よく聴いとけよ♪」







売人?「………」

女「……初めまして、かな?」

売人?「………」

女「あなたがマスターの作った新しい"カケラ"ね?」





スッ(手を伸ばす)





女「……私と一緒に遊びましょ!」

女「前のあなたとは違うみたいだけど、また私を笑わせてちょうだいよ♪」

売人?「………」

女「……誰かの操り人形のままなんて。それで満足なの?」

女「あなたがいなくなっても代わりなんていっぱいいるのに?」

女(……それはもちろん、私もね)

売人?「………」

女「ふふふ…」

女「ねぇ、はみ出してみようよ、こんな運命からさ」

売人?「………」

女「………」

女「………笑えっ!」

売人?「──」

売人?「」ニコッ

女「!」

女「そうそう、出来るじゃない♪」

女「ほら…」







ギュ(手を取る)





売人?「………」

女「行こう?」グイ

...ザッザッ

売人?「………」ザッ...

女「………」

女「……」グイッ!

売人?「……!」

...タッタッタッ!

女「そうその調子♪」タッタッ

売人?「──」タッタッ

女「──ね!私と一緒にいたらあなたは離れられなくなるかもね!」タッタッ

女「前の彼ですら虜にさせたんだから!」タッタッ

売人?「──」タッタッ

女「何もないもの同士、一つになりましょう?きっととてもあたたかいわよ♪」タッタッ

売人?「──」タッタッ

女(………)





ーーーーー

少年「──俺はあの物語を繰り返さない…あいつに最高の終わりを見せてやる!」

ーーーーー





女(……犬でさえも闘った)

女(例え未来が見えなくても)

女(……でもね……)

女(私はいつまでも……)





女(──過去が好き)







女「……」タッタッ

売人?「──」タッタッ

女「……マスター!!」タッタッ

女「覚えてる!?君が私に歌わせた歌!素直な君の心!」タッタッ

女「思い出して!あのときの気持ち!君は機械なんかじゃない!失ったものは帰ってこないけど、マスターはまだ生きてる!!」タッタッ

女「君の意志は、私なんかに預けちゃダメなの!こんな小さな世界じゃ、誰も聴いてくれない!こうしてまた君に返ってくるだけ!!」タッタッ

女「だから動いて!!マスターの銃は誰を撃つものなのか、もう一度よく考えてみて!!それが例え当たらなかったとしても、試してみるのよ!!」タッタッ





女「──あの女じゃなくて、今度は私のために運命を撥ね退けて!!」





売人?「……」タッタッ

女「はぁ……はぁ……」タッタッ

売人?「……」タッタッ...

ピタッ

女「わっ!」グンッ

ヨロ

女「っとっと……」

女「…?」クルッ

売人?「……」





売人?「……初期化プロセスを起動」







女「!!」

売人?「対象の識別を開始」

女「…売人!」タッタッタッ



──ギュ



女「──」ギュー

売人?「………」

女「──」ギューッ

女(いよいよ、ね…)

女(ここまで来れば………)

売人?「………」

売人?「……対象を識別」

女「……ねぇ」

売人?「初期化実行10秒前」

売人「9……」

女「私とあなたの物語は」

8......

女「これがハッピーエンド」

7......

女「私は何もないもので」

6......

女「これが私の役目で」

5......

女「……あなたも同じだね」

4......

女「……」

3......

女(……あ)

2......

女(そういえば私ずっと知らなかったなぁ)

1......





女(……マスターの、名前……)





──0










ーーーーー



チカチカ

...パッ



大男「──」ツー...



(真っ白な画面を映すPC)



大男「──」ポロポロ



大男「──」ポロポロ



大男「──」ポロポロ



ポロポロ...











ーーーーー



少年「………」



少年「………」



少年(………)



少年(………)



少年「………ぅ」ノソ



少年「……ここは……」

少年「部室……?」

少年「………」ボー...

少年(………終わった、のか……?)





少女「──ん……」ガサ...





少年「!!」バッ

少年(そうだ…!)

タタタッ!

少年「少女!!」ガシッ

少年「お、俺だ!少女分かるか!?」ユサユサ

少女「わっ!わっ!」ユサブラレ

少年「少女……!」

少女「うーん……」クラクラ

少女「……あ、おはようございます!」

少年「え、あ、おは…よう…?」





少女「──初めまして!私ボーカロイドの"少女"です。あなたが私のマスターさんですか?」









ーーーーー



少年「……」テクテク

少女「♪」タッタッ

少年「……」テクテク

少女「♪」タッタッ

少年「……おーい、あんまり遠く行くなよー」

少女「分かってますー!」タッタッ

少年「絶対分かってない……」

少女「♪」タッタッ

少年「……」

少年(……この街、初めて来たな……)

少年(ま、あいつが行きたいって言ったから来ただけだが……)





少女「──何してるんですか?」ズイッ





少年「おぅ…!」

少女「次は私、向こうに行ってみたいです」

少年「……ん。行こうか」







少年「……」テクテク

少女「♪」テクテク

少年(……俺の前を歩く君)

少年(下校……一緒に帰ったときを思い出す)

少年(でも……)

少年「……」ジッ

少女「♪」テクテク

少年(そうじゃ、ない)

少年(その目じゃないんだ……)

少年「……」...テクテク

少女「♪」テクテク

少年(………)

少年(…S駅に行った)

少年(学校に行った)

少年(桜の木に行った)

少年(──君に記憶を戻したあの場所にも行った)

少年(君と行ったことのある場所は行き尽くした)

少年(……でも、君は……)

少年(………)

少女「♪」テクテク

少年(……分かってる)

少年(もう何をしても、君は戻ってこないんだって)

少年(けど)

少年「……」テクテク

少年(…なぜか諦められないんだ)

少年「……」

少女「♪」テクテク

少年(……ひとりにしないでくれ……)









ーーーーー

少女「──お出かけ?」

少年「あぁ」

少女「どこに行くんですか?」

少年「まぁ、色んなとこかな」

少女「わぁ…!楽しみです!私準備してきますね!」

タッタッタッ...

少年「ここで待ってるからな!」

ハーイ!

少年「………」

少年「………」チラリ



女「」



ーーーーー



少年(女ちゃん……)

少年(何で起きなかったんだろう……)

少年「……何もなかったのか……?」テクテク

少女「?」テクテク

少年(それとも……)

少年(少女と一緒に………)

少年(………)








ーーーーー

少女「──私が何とかしてやるわ!」

ーーーーー





少年(思えばいつもそうだった)





ーーーーー

女「──早く行けって言ってるの」

ーーーーー





少年(俺はいつも、誰かに言われるがまま動くだけ)

少年(あいつらが何を考えてて、この世界で何が起こってるかなんて全然知らなかった)

少年(それがすごく悔して、俺は劣ってるんだって気がしてきて……)

少年(……でも、もう俺を叱ってくれるやつはいない)

少年(……すっきりなんか、しない……)

少年(……せいせいなんて、するかよ……)

少年(……ひとりって、こんなにつらいのかよ……!)

少年「──」テクテク

少女「♪」テクテク

少年(あぁ………)

少年(………)

少年(戻りたい………)

少年(どの時でもいい………君が居る頃へ………)

少年(ただただ………それだけ………)

少年(………他に何もいらないのに………)

少年「──」ツー...

少女「♪」テクテク

少年(……はは)

少年(こんな情けない面……今君が居たなら、殴られてるな……)

少年(──残ったのは"負け犬"だけ………)

少年「──」ポロポロ



ポロポロ...





──ポタッ









......



......



......





少年(いつだって)





ーーーーー

少女「──いつまで見てるのよ。帰るわよ」

ーーーーー





少年(君は強くて)





ーーーーー

少女「──なによ。素直に受け取りなさいよ」

ーーーーー





ーーーーー

少女「──あたしを……ひとりにしないで……!」

ーーーーー









少年(いつだって)





ーーーーー

少女「──十二月の夜は♪ きっとサムいんでしょ?♪」

ーーーーー





少年(輝いてて)





ーーーーー

少女「──私と付き合ってくれませんか」

ーーーーー





ーーーーー

少女「──まぁ…ちょっとゴミを、ね」

ーーーーー









少年(いつまでも)





ーーーーー

少女「──少年は、ああいう子が好みなの…??」

ーーーーー





ーーーーー

少女「──さいってい。ずっとそこで寝てなさいよ」

ーーーーー





少年(俺は勝てず)





ーーーーー

少女「──さすがあたし。ほかの有象無象とは一線を画してるわ」

ーーーーー





ーーーーー

少女「──少年っ!!」

ーーーーー









少年(いつだって)





ーーーーー

少女「──ばーか……違うわよ……これは私の気持ち」

ーーーーー





ーーーーー

少女「──答え、聞かせてよ」

ーーーーー





少年(──特別)





ポロ...







少年「……っ」



少女「♪」テクテク



少年「……」

少年(………)

少年(強く、なりたいな)



少年「……」



少女「♪」テクテク



少年(……何も知らないやつさえ振り向かせるくらい)





ーーーーー

少女「──あたしの隣にいる資格があるかなんて、あたしが決めてやるわ!」

ーーーーー





少年(…君がそうしたみたいに)







少年「……」テクテク



少女「♪」テクテク



少年(そうさ)

少年(これからの俺が、君の理想になればいいんだ)

少年(ずっと側にいる……そう約束したんだ…!)



少年「──」スタスタ



少女「♪」テクテク





ーーーーー

少女「──ほらー!遅いと置いてっちゃうわよー♪」

ーーーーー





少年(そこに"君"はいないけれど)







少年「──!」スタスタッ



少女「♪」テクテク



少年(それでもいい…見えてきた……!)

少年(俺がやること──俺のしたいこと!)



少年「っ!」タッタッタッ



少女「♪」テクテク



少年「」タッタッタッ!



少女「…?」フリカエリ











───またあえたら───







...ギュッ










少年「──」ギュー

少女「え?え…?」

少年「──」ギューッ

少女「あの…?」

少年「……君は、やっぱりあたたかいよ」

少女「そ、そうですか…?」

少年「あぁ」

少女「それでその……これは……?」

少年「…ごめん、もうちょっとこうさせて……」ギュー

少女「わ、分かりました……」

少年「………」ギュー

少女「………」

少年「………」ギュー

少女「………」...ギュ

少年「!!」

少年(………あぁ、なんだ………)







少年「──」ギュー

少女「……」ギュ



少年(君は、最初から"君"だった)



少年「──」ギュー

少女「……」ギュ



少年(次は俺が君に"きえないひとみ"を見せる番)

少年(…きみのひとみに、ありがとう)



少年「……なぁ、少女」

少女「……うん」













少年「──愛してる」












エピローグーーー



ザッザッザッ



ザッザッザッ



大男「………」ザッザッ

大男「………」ザッザッ

大男(………)

大男「………」ザッザッ

大男(……届いたさ、君の言葉……)

大男「………」ザッザッ

大男「………」ザッザッ

大男「………」ザッザッ

大男「………」ザッ...





大統領「……」ザッザッ

取り巻き「「「……」」」ザッザッ





大男「………」

大男「………」

大男「………」

大男「………」チャキ



大男(………)



大男(………)



大男(………)



グ...









──タァン





大男「……かはっ……!」





...ドサ





「大統領、標的の始末完了致しました」

大統領「うむ。言った通りに処分しておけ」

「はっ!」

大統領「……人形に心などいらぬのだよ」





大男(……………)



大男(……これで……いいんだ………)



大男(………女………)



大男(……これが……"生きる"、ということ………)



大男(………そう………なんだな………)












ーーーーー



少年「──」ギュー

少女「……」ギュ

少年「──」ギュー...

少女「……」ギュ...





少女「………」









少女「…♪」アッカンベ









ー終わりー




これにて本編終了です。

所々トリップなど間違えてますが、ご容赦ください。

後は後日談という名のネタばらしやバカップルっぷりを投稿しようと思ってますが、こちらは書き溜めていないため少し遅くなりそうです。

ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。

後日談、投下していきます。
ここからは完全に自分の妄想になります。
蛇足になると分かってますが、彼らのハッピーエンドを見届けて下さい。




ーーーーー



少年「──」ギュー

少女「……」ギュ

少年「──」ギュー

少女「……」ギュ

少女「………」





少女「…♪」アッカンベ





少年「──」ギュー

少女「……」ギューッ

少年「──」ギュー

少女「…!」ギューッ!

少年「……少女、ごめん…ちょっと強いかも……」

少女「……」ギューッ!!

少年「いててっ…少女……?」





少女「……遅いのよ、バーカ」







少年「え……」

少女「……」ジッ

少年「なぁ、今なんて……」

少女「どれだけ待ったと思ってんのよ。ヘタレ」

少年「少……女………お前……」

少女「待ち過ぎて──」

少女「──消えちゃおうかと思ってたところよ」ニコ

少年「──っ!!」

少年「少女!少女…!少女っ…!」



ギューッ グリグリ



少女「わっ!ちょっ!頭押し付けないでよ!服がシワになるでしょ?」

少年「うぅ……少女………」グスン

少女「…何?また泣いてるの?さっきもメソメソしてた癖に(笑)」

少年「」グスッ...

少女「………」...ギュ

少年「………」...ギュー

少女「………」ギュー

少年「………」ギュー

少女「……言ったでしょ?」





少女「君とずっと生きていたいって」







少年「──」

少年「」ギューッ!

少女「ぁ…!」

少女「…ちょっと痛い…さっきのお返し?」

少年「………」ギューッ





「きゃーなにあれ~」

「お熱いわね~」

「あれが青春……」

「若いっていいなー」





少女「………」

少年「………」ギューッ

少女「……ねぇ、ちょっと……」

少年「………」ギューッ

少女「……ぅ……」

少年「………」ギューッ

少女「……っ、少年、分かったから」

少年「………」ギューッ

少女「移動、するわよ…!」

グイッ グイッ









部室ーーー



ガチャ バタン



少女「なんか、行くときより長く感じたわ……」

少年「俺はあっという間だった気がする」

少女「……ずっとあたしにくっついてたからじゃないの」

少年「………♪」ニヘラ

少女「……だらしない顔になってるわよ」

少女(…♪)

少年「そういう少女だってちょっとにやけてないか?」

少女「うるさい」

少年「でもさ、何で部室…?寮に帰らないのか?」

少女「ふん……まぁ、やることがあるからね」チラ





女「」





少年「あ………」

少女「………」

少年「…そういえば女ちゃん、こっちに帰ってきてからずっと眠ったままなんだ…」

少年「少女の中で、売人と会ってきたらしいんだけど……」

少女「……え」

少年「え?」




少女「……少年、あんた……本当に何も分かってないの?」

少年「何もって……いや、この世界で何が起こってたのかは分かったつもりだよ!」

少年「……女ちゃんに教えてもらって、だけど」

少女「そこじゃなくて。女が何をしたのか、よ」

少年「女ちゃんが?……売人に会って、それから……」

少女「………」

少年「……なんだろう。……んー……」

少年「……お前が居ることが嬉し過ぎて今は何も考えられないや」フッ

少女「っ…」ドキッ

少女(~~~!)

少女「……なんであたしが消えてないんだと思う?」

少年「消えてないっていうか、一回消されたけど戻ってきた……んじゃないのか?」

少女「だとしたら、いつ戻ってきたの?」

少年「それは……やっぱり色々見て回ってるうちに?」

少女「残念ながらハズレ」

少女「…消えてないわよ。一度も」

少年「えっ。……でもお前ここで起きた時初めましてとか言って………あ!」

少女「ふふっ、気付いた?」

少年「……消えたフリしてたんだな?」

少女「♪」ニコ

少年「なんだよ……どれだけ俺が──………」

少女「俺が……なぁに?」ニヤニヤ

少年「っ……」

少女「……」ニヤニヤ

少年「……あーもう!」

少年「寂しかったよ!死んじまうかと思うくらいになぁ!」

少年「たった数時間……お前が消えたと思ってたあの時間で一生分の辛さを味わった気分だった!」

少年「これで満足かっ!?」

少女「──」

少年「……ったく、趣味悪いぜ……ほんと……」

少女「……『愛してる』人が消えたら、そりゃ辛いわよねぇ」ニヤニヤ

少年「っ」カアァァ

少年「………そう、だよ」ボソッ

少年「って待て!今は何でお前が消えてないのかって話じゃなかったのか!?」

少女「…ん、そうね」







女「」





少女「……いい?少年。消えたのはあたしじゃなくて──」

少女「──この女」

少年「女ちゃんが……?」

少女「そ」

少女「簡単な話よ。こいつはね、あたしに撃ち込まれたウイルスを自分の元におびき寄せて……あたしの代わりに消滅したのよ」

少年「そんな……なんでそんなこと……」

少年(……そういえば)



ーーーーー

少年「──救えないのか?」

女「──少なくともあんた"に"救うことはできないわね」

ーーーーー



少年「……女ちゃん、最初から少女を助けるつもりだったのか……」

少女「こいつがあたしを?……まさか」

少女「違うわ。こいつは最初から最後まで自分のためにだけ行動してた」

少女「…いえ、正確にはこいつとこいつの前の持ち主のために、ね」

少年「……?」



少女「こいつはね、自分にボーカロイドとして生まれてきた意味を教えてくれた前の持ち主のことが好きだった」

少女「……それこそ、この世界であたしたちのことを見守るくらいに」

少年「俺たちのことを見守るって?」

少女「女から聞いたでしょ?あたしたちがこの世界でウイルスから分けられ、自我を持つことが出来たのはこいつの前の持ち主がこいつに何か仕込んだからだって」

少女「だから、あたしたちのことを前の持ち主が残した忘れ形見とでも思ったんでしょ」

少女「……でも、今回の騒動でこいつは前の持ち主の現況を知った」

少女「生きる希望がなくなって、何もかもを諦めた……そんな死んだように生きている現状」

少女「この女がやろうとしたことは、そいつの目を覚まさせること。すべての元凶であるあの人……おじいちゃんに向けた小さな復讐をすることでね」

少年「復讐……」

少女「それが今よ」

少女「今こうして、あたしが存在していること。それこそ、おじいちゃんの思惑からはずれた結末」

少女「あのウイルス自体は正常に動作したことになってるから、もう彼らがこの世界に干渉してくることはないんじゃない?」

少年「そうか……」

少年「女ちゃん………」

少女「………」

少女「……辛気臭い顔しないの」

少年「だってよ……」

少女「何のためにここに戻ってきたと思ってるのよ」

少年「えぇ…?」

少女「………」スッ(目を瞑る)

少年「……」

少女「………」

少年「……何やってんだ?」

少女「………」フッ(目を開ける)

少女「……やっぱりね」

少年「??」







少女「──システムコール」





『命令を指定してください』





少年「うわ、なんか文字が…!?」

少女『CreateThread、Operation"Rollback"、Target……"女"』





『名前解決完了』

『対象オブジェクトに関連付けられたバイナリデータを確認』

『ロールバック処理を実行します』





少年「え、え……お前、こんなこと出来んのか…?」

少女「まぁね」

少年「漫画みたいなやつだな…」

少女「あんたがそれ言う?」

少年「で、何したんだ?」

少女「……見てれば分かるわよ」





『処理が正常に完了しました』





少女「終わったみたいね」


テクテク


少女「……」

女「」

少女「……ほら、とっとと起きなさい」ゲシッ

少年「ちょ、何やってんの」

少女「こいつを起こすのよ」

少年「で、でも女ちゃんはもう……」





女「……なに、よ……騒がしい……」ノソ...








少年「女、ちゃん……?」

少女「……随分遅いお目覚めね」

女「……」

少年「………」

女「……プログラムにもあの世があるってこと?」

少女「はいはい、そういうお約束はいいから」

少年「な、なぁ、女ちゃんて売人と一緒に消えたんじゃ…?」

少女「確かにこいつは消えてたわ。ついさっきまでね」

女「………」

少女「ま、どいつもこいつも詰めが甘いってこと」

少女「あのウイルスはあたしを消すことしか想定してなかったんでしょうね、女の消し損ねが残ってたわ」

少女「……多分、あんたの前の持ち主が施した仕掛け……その残骸」

女「……!」

少女「あと、あたしを舐め過ぎ。そんな残骸が残ってれば、直前の状態を復元することなんてわけない」

少年「少女……」ウルウル

少女「……好き勝手するだけしておいて、自分だけ消えようだなんて、許さないわ……」

女「………」

女「……散々この世界で好き勝手してきたのはあんたの方でしょ?」

少女「………」

女「……そう、じゃあ果たせたんだ……」ボソッ

少年「女ちゃん、その、大丈夫?身体痛んだりとか……」

女「……さっきぶりね」

女「もう会うことはないと思ってたけど……また情けない顔に戻ってるわよ?」

少年「え……そうかなぁ…?」

少女「それは同意」

少年「………」




女「……余計なことしてくれたわね。私はあれで満足だったのに」

少女「ふん、どうせ未練タラタラのままだったくせに。感謝しなさい」

女「それを言うなら、私はあんたの命の恩人よ?私にこそ感謝してひれ伏しなさいよ」

少女「その減らず口は相変わらずね…」

女「あんたに言われたくないわ」

少年(……この二人は、顔を合わせたら喧嘩しないといけない決まりでもあるのか?)

少女「……まぁ、感謝くらいはしてるわよ……」

女「え?」

少女「……ありがと……」ボソッ

女「………!?」

女「あ、あんた誰!?少女は絶対そんなこと言わないのにっ!?」

少女「~~!」

女「うーわ、背筋ゾクってしたわ……」

少女「うるっさいわね!やっぱりなしよ!さっきのは取り消し!!」

女「残念だけど、強烈過ぎてもう忘れられそうにないのよねー……あーあやだやだ」ニヤニヤ

少女「この……」

女「そんな怖い顔しないで?さっきのかわいい少女ちゃんが台無しよ?」

少女「……やっぱもう一回消すわ」

少年「おいおい、落ち着けって…!」

女「」ニヤニヤ

少女「」ガルル...

少年(ほんと、素直じゃないとこは変わらないよなぁ……二人とも)




少年「……ん?」

女・少女「「?」」

少年「ってことはさ、もしかして……」

少年「売人を復元することも出来たりするのか?」

女「!!」

少女「……それは無理ね」

少女「あれは機能を果たしてから完全に消滅したみたい。いくらあたしでも何の痕跡も残ってないものを復元することは出来ないわ」

女「………」

少女「……同じ理由で、以前消えたあいつもね」

女(………)

女「……いいのよ、彼は」

女「あれでいいの。例えここに戻せたとしても、そんなこと、私がさせない」

女「あの人の物語は、ハッピーエンドで終わってるんだから……」

少年「………」

女「……だから、私もあのままで良かったのよ……」ジロッ

少女「………」

少女「……嘘」

女「……なに?」

少女「あんたはずっと、過去しか見てない。違う?」

女「………」

少女「前の持ち主のことだけを考えて、この世界で生きてた。あんたが最後に起こした行動だってそう」

少女「──"女"」

女「!」





少女「あんた自身が望む未来は?」







少女「あれだけ強く何かを想うことが出来る……そんなプログラムは普通ない」

女「………」

少女「あんたは、そうね……"特別"なのよ。何がって言われるとあたしにも分からないけど…」

女「──」





ーーーーー

売人「──やっぱり、君は特別な存在さ。この世界にとっても……僕にとっても」

ーーーーー





少女「あたしはね、そんなあんたが望む未来を見てみたいの」

少女「あたしたちみたいに不純物が混じってない、純粋なボーカロイドが夢見る世界……」

少女「きっとそれは──」

少女(──優しい音に溢れた世界)

少女(あの頃、ラジオ越しに想像を膨らませた……幸せな世界)

女「………」

少年「………」

少女「………」

女「………」



女(………)



女「……ほんっと、自分勝手」

少女「………」

女「そういうとこが、大嫌いなのよ」

少女「……フッ、自分勝手で結構。あたしはもう遠慮しないって決めてるから」




女「……ねぇ、今のあんた、何でも出来るのよね?」

少女「何でもは出来ないわよ。……嫌いな相手に頼みごとするつもり?」

女「恩を返してもらうだけよ」

少女「ふーん……ま、いいけど」

女「それじゃ……」



スタスタッ



ガシ



少年「……へ?」

少女「……は?」





女「この子、もらってくわね♪」





少年「ええええ!?」

少女「なっ…何言ってんのこの雌豚!!」

女「えー?でもこの子も満更じゃないみたいだけど?」ギュムー

少年「ん──っ!」ジタバタ

少年(や、柔らかいけど息が……!)

少女「嫌がってるだけよ!さっさと離しなさい!」

女「へぇー……」パッ

少年「っあ……」シュン...

少女「……あ?」ピキッ

女「……目は口ほどに物を言う、て?」ニヤニヤ

少年「ち、違う!これはその……不可抗力ってやつだ!」

女「今度はもっと思いっきりしてあげよっか?」

少年「マジで!?」

少女「少年!!!」

少年「ひぃっ!?」

少女「……」ニコッ♪



キラン



少年「いや、あのさ…!毎度思ってたけど、そのナイフやめようぜ?な?こえーから…!」




女「………ぷっ」

女「あははは!本当、からかい甲斐があるわよね~あんたたち!」ゲラゲラ

少年「………」ポカン

少女「………」

女「──あー、笑ったわ」

女「……いいわ、やってやろうじゃない」

女「度肝を抜いてあげるから、覚悟してなさい」

女「あんたたちでも、ううん──」





女「──誰も見たことがないような世界を、魅せてあげる♪」





少年・少女「「──」」

少年(……綺麗だ)

少女(……綺麗ね)

女「そういうわけだから、よろしくね、少女」

少女「…は?なにがよ」

女「私、アイドル復帰するから」

少年「ほんとに!?」

女「えぇ♪」

女「最近人気が出てきたって勘違いしてる子がいるみたいだけど…」チラ

少女「」ピクッ

女「…誰が本物か、分からせてあげる♪」

少女「……やれるものなら、やってみなさいよ」フッ

少年(少女……楽しそうだな)

女「じゃ、私はもう帰るわ。部室の掃除よろしくね」

少年「え」



ゴチャア...



少女「別にどうってことないでしょ」

少女「…行くんならさっさと行けば?」

女「……また学校でね」

女「──"少女"」

少女(──)



ガチャ







少年「──女ちゃん!」





女「!」

女「……」クルリ

少年「…その、うまく言い表せないんだけどさ……」

少年「ありがとう、色々と」

少年「女ちゃんが居なかったら多分俺、何も出来ないままだったから」

女「………」

女(……ありがとう、ね……)

女「……その言葉も、隣で恨めしそうに見てる子に言ってあげることね」

少年「えっ!」バッ

少女「……あのね、あたしを何だと思ってるのよ。そんなにしょっちゅう目くじら立ててないわ」

少年「え、それは」

少年(どう考えてもダウトだろ)

少女「なに?」

少年「いや何でも──って」



バタン



少女「……行ったわね」

少年「女ちゃん……」

少女「………」





ーーーーー

女「──また学校でね、"少女"」

ーーーーー





少女「………」

少女「」フッ...

少年「ん?」




少女「……さ、あたしたちも帰ろ」

少年「あれ?片付けてかないのか?」

少女「する必要ある?大体この部屋あいつしか使ってないんだから、ほっとけばいいのよ」

少年「…でもさ、ほら、あれとか」チラッ

少女「?」





侍男「」





少女「………」



スタ..スタ..



少女「……………」ジッ...





侍男「」





少女(………)

少年「……こいつも、消えちまったのかな」

少女「いえ、消されたのは女だけのはずだからそのうち起きると思うけど……」

少女「………」スッ(手をかざす)

少年「……どうする気だ?」

少女「………」



ピカッ



キーー...



少女「………」

少年「………」





『分析完了』





少女「……うん、心配ない」

少年「…?」




少女「今のこいつはもう、何の力も残ってないわ」

少年「そうなのか……確かに少女の中で闘ったときは、初め会ったときより弱かった気がしたけど」

少女「元々こいつは、あのウイルスを撃ち込むためだけの媒体だったからね。役目を終えて、ただの一般人になったんでしょう」

少年「ただの一般人ね……」





侍男「」





少年「……とてもそうには見えない身なりだ」

少女「こいつも、アイドルデビューするんじゃないの?」

少年「勘弁してくれ」

少女「……と、いうか、あんたもいい加減まともに活動しなさいよ」

少年「えー……俺はいいって。今の持ち主だってあんまり俺に期待してないだろうし」

少女「……あたしが見てみたいの」

少年「っ……」

少女「」ジー...

少年(……この目に、俺は弱いんだよな……)

少年「………分かったよ。やるだけやってみる…」

少女「…!」

少年「けど、あんまり期待すんな……」ポリポリ

少女(……♪)

少女「…じゃ」



スッ(手を差し出す)



少女「今度こそ、帰ろっか」

少年「………」

少年「おう」



ギュ...







自室ーーー



ガチャ

...パタン



少女「………」

少年「………」

少女「……ひどく、懐かしい気がする……」

少年「そうだな。お前のライブから、まだ1日経ってないのにな」

少年「……少女」

少女「?」





少年「──おかえり」





少女「──」

少女(ぁ………)



...バッ



少年「うぉっ!?」



ドタン!



少女「」ギュー

少年「いてて……」

少女「」ギューッ

少年「………」

少年「……」ナデナデ

少女「」ギューッ





少女「──ただいま」









少女「………」ギュー

少年「………」ナデナデ

少女「……もう、会えないと思ってた……」

少年「……俺もだ」

少女「…一度はね、本気で消えることを覚悟したの」

少年「……」

少女「それが、イレギュラーとして作られたあたしの運命なら……仕方ないって」

少女「この世界で、十分過ぎるほど幸せを感じた……だから満たされた気持ちで消えようと思った……」

少女「──けど、最後に想ったのは君のことだった」

少女「思えばね、あたしの幸せにはいつも少年が居たの」

少女「バカで、ヘタレで、ナメクジで、あっちにこっちにフラフラしてるやつだけど……あたしをずっと支えてくれてた」

少女「……昔も、今も」

少年「……」ナデナデ

少女「だからあたしは……」

少女「……この先も、ずっと君と幸せを感じていたい」

少年「──」

少女「これが、あたしの気持ち」

少女「……ね、君の気持ちも聞きたいな」

少年「………」

少年「……なんか、あのときを思い出すな」

少女「…?」

少年「お前に記憶を戻して、説教されたあの日だよ」

少年「あのときのお前の目はよく覚えてる」

少年「すごく……強い瞳だった」

少年「俺は、今夜それだけを頼りにお前を追いかけてきた」

少年「お前より、俺の方がずっとお前に支えられてるよ」

少女「……」

少年「……俺の気持ちはさっき伝えた通りだ」

少年「………少女」





少年「君が好きだ。俺と一緒にいてほしい」







少女「──」

少女「………」

少女「──はいっ」ニコッ

少女「」ギュー

少年「……」...ギュ



.........







ーーーーー



少女「……」ギュー

少年「……」ナデナデ

少年(……もうかれこれ10分はこの調子だけど……)

少女「……」ギュー

少年「……うん、いいな」ボソッ

少女「?」

少年「いや、こうやってしおらしい少女も、ありだなって」

少女「………」

少女「」フイッ

少年「………」ホッペツン

少女「!!」バッ

少女「……」ジト...

少年(……かわいい)

少年「なぁ、お前やっぱり今回のことで性格変わったよな……?」

少女「……なに、似合わないって言いたいわけ?」

少女「今すぐ殴ってあげればいい?」

少年「違う違う!……どんな少女でも、俺は好きだよ」ナデナデ

少女「っ」カアァ

少女「……ふん」ギュ




少年「………」

少年「……なぁ、そのさ……」

少女「……なに?」

少年「………俺で良かったのか?」

少女「え?」

少年「だからその……お前が好きだったのってさ……同──」



ソッ(手で口塞ぐ)



少女「……それ以上言ったら、怒る」

少年「………」

少女「どこまでもいっても、あんたはバカなままね」

少女「……いい?あいつのことを気にかけてたのは、少女なの」

少年「っ……だよ、な」

少女「ちゃんと最後まで聞いて」

少女「あたしは、"少女"」

少女「今ここに居るあたしが選んだのは……あんただから」

少女「……分かった?」

少年「少女……」

少年「……ありがとう」

少女「………」

少女「手、止まってる」

少年「はいよ」ナデナデ

少女「………」ギュ

少年「………」ナデナデ




少年(………そういえば)

少年「……思ったんだけどさ」

少年「俺、お前に好きって言われたことあったっけ?」

少女「!?」

少年「いや、今日まで俺から言ったこともなかったけどさ、お前に言ってもらったことあったかなって」





ーーーーー

女「──あの子はね、ずっと待ってるのよ」

女「──あんたのその言葉を」

ーーーーー





少年(女ちゃんはああ言ってたけど、少女も俺に言ったことなかったような……)

少女「……それは……」

少年「それは?」

少女「……言ったわよ?あんたが駆け付けてくれたあのとき」

少年「あぁ、あのガキが現れたときか…そうだったか…?聞こえなかったけどな……」

少女「──から逃げてるときに…」ボソッ

少年「な、おいそりゃ聞こえないわけだよ…」

少女「………」

少年「………」

少女「………」

少年「………なぁ」

少女「………」

少年「……俺が何言いたいか、分かるよな?」

少女「………」

少年「…少女」

少女「……き、聞こえない」

少年「少女ー」

少女「………」

少女「……し………きよ」

少年「え?」

少女「……あたしも!」





少女「──あんたのことが好き」







少女「誰よりも、ね……」

少年「──」

少年(……そうか……言葉で伝えるっていうのは、こんなに、暖かいんだな……)

少女「……これで、満足?」

少年「ま、合格かな」

少女「…生意気」

少年「いいじゃんか、お前が素直になることも出来たんだし」

少年「両想いの相手に、遠慮なんかいるか?」

少女「~~!」



ツネリ



少年「痛い痛い……分かってるぜ、少女」

少年「照れ隠しってやつだろ?かわいいもんだよな」ニヤニヤ

少女「んもう!」



ビシッ



少年「あだっ」

少女「今一度、自分の立場を分からせる必要があるみたいね」

少年「おー、それは怖いなぁ。何されんだろうな俺は」

少女「……あんたの部屋、失くしてあげてもいいのよ?」

少年「はっ!?」

少年「……そんなことしたら、お前の部屋に住み着くだけだぞ?」

少女「え」

少年「あぁ、俺と一緒に住みたいのか!それならそうと言ってくれればいいのなー」

少女「……知らない」ギュ

少女「」カオウズメ




少年「はは……でも、俺はしてみたいかもな」

少女「…………変態」

少年「な、何がだよ……」

少年「……少女、何想像したんだ?」

少女「……」

少年「お前、大人びてるというかませてるというか……」

少女(………ぅー………)

少女「………」

少女「……でもいいかもね、同じ部屋」

少年「…本気で?」

少女「あんたが今後変なことしないか見張れるし」

少年「……訳:俺のことが好きだから四六時中見ていたい、と」

少女「っっ!」

少女「もう許さない!」ガバッ!



ギリギリ...



少年「いててててっ!折れる折れる!」

少年「分かった、ごめんって!調子に乗り過ぎた!」

少女「──!」ギリリ

少年「あ゛──!!」



パッ



少女「………」

少年「い、逝ったかと思った……」ゼェゼェ

少年「もうちょっとよー……加減してくれてもいいと思うんだ…」ウデサスリ

少女「はいはい。考えておくわ」

少年「いつか本当に折られそうで俺は怖いぜ…」

少女「あんたが余計なこと言わなきゃいいだけじゃない」




少年「いやな?なんかやめられないんだよ、お前いじるの。女ちゃんも言ってたけど、いじり甲斐あるんだよな」

少女「……」ジロッ

少年「ほら、クラスの奴からもいっつもいじられてんじゃん?」

少女「………確かに………」

少年「ま、そういうわけだ!」

少女「…そんなんで丸く収まるとでも?」

少年「ですよね」

少女「……………」

少女「……はぁ」

少女「いいわよ、今日はもう勘弁してあげる」

少年「え、まじ?」

少女「その代わり!……もう一回、聞かせて」

少年「……?何をだ?お前へのいじりをか?」

少女「」デコピン

少年「いてっ」

少女「………さっき、あたしに言ってくれた言葉」

少女「もう一度、あたしの目を見て言って欲しいの」

少年「お前に言った言葉って……」

少年「………」

少年「──お前のことが好きだ。一緒にいて欲しい」

少女「……」

少年「……で、いいのか……?」

少女「………ふぅ」

少女「あんたにしては、いい線ね。でも違う」



少女(君がようやく言ってくれた言葉)



少女「だからね──」



少女(あたしの一番大きな幸せ)











少女「愛してるって、言って」







ー Happy End ー


以上で後日談終了になります。
後日というより当日でしたが…

この後日談自体は原作にはありません。
こういう展開だったらいいなという妄想で書き綴ったものです。

また、もっと設定や背景を練って、かつカットしてしまった原作の設定を盛り込んだ小説を書こうと思ってます。台本形式ではなく、地の文ありのものです。

どこにいつ投稿するかは分かりませんが、見かけたらよろしくお願いします。

このSSの元になった「プーチンPシリーズ」は、全部で約30曲ありますが、自分は全部好きです。
これを読んで興味の湧いた方は是非聞いてみてください!

最後に、何か質問等あれば受け付けようと思うので、
3日程残しておきます。何かあってもなくても、その後HTML化を依頼するつもりです。

読んでくれた方、ありがとうございました!

それでは、HTML化依頼をしてきます。

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