あさひ「う~ん……」
P「どうしたんだ? あさひ」
あさひ「あ、プロデューサーさん! おはよっす!」
P「ああ、おはよう。で、あさひはどうしたんだ? 何か悩んでる様子だったが……俺に手伝えることなら聞くぞ?」
あさひ「あ、それなら聞きたいことがあるっす! いいっすか?」
P「おう、なんでもこい」
あさひ「プロデューサーさんって、彼女いるんすか?」
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P「……はい?」
あさひ「だから、プロデューサーさんって、彼女いるっす? あ、それとも彼氏さん? とにかく恋人! いるっすか?」
P「そ、それは……いない、が」
あさひ「? どうしてそんな変な顔してるんす? 苦いものを食べたときみたいな顔してるっす」
P「……あさひ。恋人がいるかどうかは、あんまり聞かないようにしような」
あさひ「なんでっすか?」
P「傷つく人がいるから、かな……」
あさひ「なんで傷つくんすか? でも、わかったっす。プロデューサーさんの言う通り、あんまり聞かないようにするっす」
P「そうしてくれ。……で、どうしていきなりそんなことを聞いたんだ?」
あさひ「……恋について知りたいんすよね」
P「恋?」
あさひ「はいっす! 恋って、すごいらしいじゃないっすか。だから、どんなものか知りたいんす!」
P「そういうことか……。少女漫画でも読んだか? いや、少女漫画だけじゃなく、色んな作品で……創作物だけじゃなく、どこでだって『恋愛は素晴らしい』ってことは言われてるか」
あさひ「そうなんすよね。でも、わたしは経験したことなくて……プロデューサーさんは、恋愛経験とかあるっすか?」
P「ぐっ……!」
あさひ「? どうしたんすか? プロデューサーさん」
P「……あさひ。恋愛経験があるかどうかも、あんまり聞かないようにしような」
あさひ「……? わかったっす」
P「ま、まあ、俺にも恋愛経験くらいある。それについての話ならできるぞ」
あさひ「ほんとっすか! さすがはプロデューサーさんっす!」
P「ははは。そうだろそうだろ」
P(……『恋した』経験ならあるからな。嘘じゃない)
P(そもそも、あさひが聞きたいのは『恋をしたときの感情』だろう。なら、恋人がいたかどうかは……関係ない……はず……)
あさひ「プロデューサーさん、どうしたんすか? なんか、また苦いものを食べたときみたいな顔してるっす」
P「な、なんでもない。そんなことより、聞きたいことがあるんじゃないのか?」
あさひ「それもそうっすね。早速っすけど、恋ってどんな感じなんすか? 気になるっす~!」
P「そうだな……うーん、どう表現すればいいか」
P「その人のことを考えるとドキドキして……胸があたたかくなったり、苦しくなったりして。ついその人のことを目で追っちゃったり、いつでもその人のことを考えるようになったりして……」
P「その人ともっと……ずっと一緒にいたい、って思うような気持ち……か?」
P(……こういうこと大真面目に言うと、なんか、恥ずかしいな)
あさひ「……ずっと、いっしょ……」
あさひ「……」
あさひ「……もしかしたら、わたし、恋してるかもしれないっす」
P「……は?」
あさひ「だって、わたし、プロデューサーさんとずっと一緒にいたいっすから」
P「は!?」
あさひ「でも、べつにプロデューサーさんのことを考えて胸が苦しくなったりはしないんすよね」
あさひ「……これって、恋、なんすかね?」
P「……そういうことか」
P「なら、それは恋じゃないと思うぞ。俺もあさひとずっと一緒にいたいからな。それだけだったら、それは恋とは言えない、と思う」
あさひ「そうなんすか? ……残念っす」
P「残念なのか……」
あさひ「これで恋の気持ちがわかった、って思ったっすから。これが恋なら納得だったんすけど……違ったんすね」
P「ん? 納得だったのか? 拍子抜けするんじゃなく」
あさひ「どうして拍子抜けするんすか?」
P「いや、だって……あさひは恋に期待してるんだよな?」
あさひ「そうっすね。すごいものなんじゃないかって思ってるっす」
P「それなら、俺なんかに対する感情が『恋』って言われたら『この程度か』って思わないか?」
あさひ「思わないっすよ? これが恋なら、確かにみんながすごいって言ってるのもわかるっす」
あさひ「……それとも、恋ってもっとすごいものなんすかね? ちょっと想像できないっす」
P「それは……ははっ」
あさひ「? どうしたんすか? プロデューサーさん」
P「いや……うん。ちょっと、嬉しかっただけだ」
あさひ「嬉しかった? 何がっすか?」
P「あさひがそう思ってくれてるってことが」
あさひ「わたしが……?」
P「ああ。……あさひ。いつか、あさひが誰かに恋をしたとき。そのときの気持ちがどんなものかは、俺にもわからない」
P「いま、あさひが俺に対して抱いてくれている気持ちと比べてどうなのか、ってことも、俺にはわからない」
P「だから、答えはそのときまでのお楽しみ、ってことにしておいてくれ。……個人的には、同じくらいだったりしたら嬉しいんだが」
あさひ「そのときまでのお楽しみ、っすか」
あさひ「……」
P「どうした? 待てないか? って言っても、待ってもらうしかないんだが……」
あさひ「あ、違うっす。ただ、ちょっと気になって」
P「気になる……? 何が気になるんだ?」
あさひ「……プロデューサーさんは、どうだったっすか?」
P「どう? どうって、何が?」
あさひ「恋の気持ちと、わたしへの気持ち。……比べたら、どんな感じっすか?」
P「あさひに……?」
P「……そうだな。俺の場合は……たぶん、今のほうが強いな」
あさひ「……!」
あさひ「そっか……これが……」
あさひ「プロデューサーさん。さっきのプロデューサーさんも、こういう気持ちだったんすね」
あさひ「胸の奥が、ちょっとくすぐったくて、ぽかぽかして……」
あさひ「……嬉しいんす。プロデューサーさんが、そう思ってくれてるってことが」
あさひ「わたしが、恋をしても……きっと」
あさひ「プロデューサーさんに対しての気持ちのほうが、強いっす」
P「……どうだろうな。もっとすごい気持ち、知りたくないのか?」
あさひ「それは知りたいっす! でも……わたし、それもプロデューサーさんが教えてくれるような気がするんすよね」
あさひ「――アイドルみたいに!」
P「……ははっ。それこそ、どうだろうな」
P「アイドルだって、俺が教えたわけじゃない。あさひが見つけたんだ」
P「でも……一緒に探すことくらいなら、できるかもしれないな」
あさひ「はいっす!」
あさひ「恋よりも……アイドルみたいに楽しいこと、いっしょに見つけるっす! プロデューサーさん!」
終
おわりです。ありがとうございました。
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