千歌「ポケットモンスターAqours!」 Part2 (460)

前スレ

千歌「ポケットモンスターAqours!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1557550388


■Chapter070 『聖良の野望』





──中層船尾。梨子たち。


千歌「──わわ!? なんか揺れてる!?」

曜「すごい揺れだね……なんか起きてるのかな……?」


艦内の揺れに驚く二人を尻目に、


 「ヨノワー……」

梨子「…………」


私は気絶して転がるヨノワールに視線を向ける。

すると、


 「ヨマワーー……」「ワルワルーーー……」


戦闘直前から、ヨノワールの近くをふよふよと浮いていたヨマワルたちが掻き消えて行く。

恐らく、親玉が倒されて逃げて行ったのだろう。


曜「ヨマワルたちが……」

梨子「たぶん……ヨノワールがゴーストポケモン騒動のボスだったんだと思う」

千歌「! それじゃあ……!」

梨子「うん。たぶん、地方内のゴーストポケモンたちが旗本を失った状態になったから、直に沈静化すると思う」

曜「それなら、街に安全が戻るのも時間の問題だね……!」

千歌「よかったぁ……」

梨子「……うん」


肯定の意こそ示すものの……安心する二人とは逆に、私は少し難しい顔をする。


千歌「梨子ちゃん?」

曜「まだ、何か気になるの……?」

梨子「……真姫さんが言ってたこと、覚えてる?」

千歌「真姫さんが言ってたこと……? なんだっけ……?」

曜「もしかして……ゴーストポケモンの大量発生の理由がわかってないって言ってたやつ?」

梨子「うん」


私は曜ちゃんの言葉に頷く。


梨子「原因は絶てたとは思う……だけど、理由はまだわかってない」

千歌「理由……かぁ」


せいぜい、この飛空挺で皆が戦ってきたポケモンは全て、聖良さんとやらの計画に加担したポケモンだった。


梨子「私が倒したスリーパーはグレイブ団を操るために配置されたポケモンだった」

曜「ブルンゲルはルビィちゃんを攫う役割があったし、ドヒドイデはサニーゴを食べて珊瑚集めをしてたんだもんね。……結果として集めた珊瑚は使われなかったみたいだけど」

千歌「オンバーンも同じかな……。メテノから“ほしのかけら”を集めるために居た」


他にもバリヤードは艦首の部屋への入口を塞ぐという、かなり明瞭な理由を持ち合わせていた。

だけど……。


梨子「このヨノワールは……なんで、ゴーストポケモンを呼び寄せていたんだろう……」

千歌「……地方全体を混乱させるため?」

曜「確かにジムリーダーたちはそれで街から足止めを食らってるわけだし……一応理には適ってるのかな……?」

梨子「まあ……それはそうだね」


……やっぱり、それが理由なのかな……。

ゴーストタイプのポケモンが大量発生したら確かにイメージ的にも危機として認識されやすくはあるだろうし……。

でも……なにか釈然としない。

再び考え込みそうになったとき──


千歌「──あっ!!!?」


千歌ちゃんが大きな声をあげた。


曜「千歌ちゃん!? どうしたの……?」

千歌「私、善子ちゃんのところに戻らなきゃ……!!」


そう言って、部屋を飛び出そうとした、瞬間──


 『その必要はないわ』


図鑑から、音声が聞こえてくる。

この声は……善子ちゃんだ。


千歌「! 善子ちゃん!」

善子『オンバーンなら、私が撃退したわ──』





    *    *    *





善子「──オンバーンなら、私が撃退したわ」

千歌『ホントに!?』


天から、ガラス片や瓦礫が落ちてくる中、私は通話に応じる。

 「ゲコガァ!!!」

ゲッコウガが絶えず、切り払ってくれているから、問題はないのだが。

戦闘を終え、アブソルは通常の姿に戻っていた。

どうやら、メガシンカは戦闘が終わると自動的に解除されるらしい。

実戦で使っていく最強戦力である以上、ちゃんとメガシンカを把握してかないとね……。

そんなことを考えながら、アブソルをボールに戻して、会話の続きに戻る。


善子「ええ。だから、これからずら丸の加勢に──」

 『みんなぁーっ!!!』


……っと、噂をすればね。

図鑑の通話音声から、ずら丸の声が割り込んでくる。


花丸『ルビィちゃんの救出!! 成功したずらー!!』

善子「!」


ずら丸の勝利報告と、ほぼ時を同じくして、

──pipipipipipi!!!!!!

と、図鑑が共鳴音を発し始める。


花丸『ずら!? ま、また鳴り始めたずら!?』


共鳴音は3つの図鑑が正しい所有者の手元にある場合しか鳴らない。

──と言うことは、


 『──みんな!!』


通話の先から聞き覚えのある声。


曜『その声……!!』

千歌『ルビィちゃん……っ!!』

善子「……全く、心配掛けさせんじゃないわよ、リトルデーモン」

ルビィ『花丸ちゃんからいろいろ聞いたよ。みんな、ありがとう……』


ルビィは通話の向こうでお礼を述べてくる。


千歌『もう! 何、水臭いこと言ってるの!』

曜『そうだよ! 私たち、学校の先輩なんだから!』

善子「……ま、まあ、リトルデーモンの危機に堕天使が手助けをしないわけにもいかないし」

ルビィ『えへへ……ありがと、千歌ちゃん、曜ちゃん、ヨハネちゃん。……それと、梨子さん』

梨子『! あ、その、いえ……! ルビィちゃん……? が無事でよかったよ』

ルビィ『はい……! 見ず知らずのルビィのために……ありがとうございます……!』


……言われてみれば、梨子とルビィって、これが初対面なのね。

いや、通話越しだから、まだ対面してないけど。

なんてことを考えていたら、

──ガタンッ!! と床が再び大きく傾く。


善子「わたたっ!?」

千歌『うわっ!? また、傾いた!?』


向こうも同じようだ。つまり、艦そのものがバランスを崩しているという証左。


花丸『あ、そうだったずら! ルビィちゃんの脱出の際に、制御室を壊しちゃったから、皆急いで脱出して欲しいずら……!!』

梨子『やっぱり……そういうことになってたんだね』

善子「そういうことは先に言いなさい!!」


私は上を見上げる。


天頂はオンバーンが吹き飛ばしてしまったため、視界の先には空が見える。

生憎、勝利にはやや相応しくない曇天だが……。


善子「私はこのまま、上から脱出するわ!」

千歌『じ、じゃあ、私たちは最初に入ってきた入口に戻って……!!』

梨子『い、急いで艦首の方に戻らないと……!!』

曜『あ、それなら、私が来た方に外に繋がる口があるよ!』

千歌『曜ちゃん、それホント!?』

曜『うん。ドヒドイデを倒した後、“ロッククライム”してるカイリキーに運んでもらう形で、壁とか天井を壊しながら、登ってきてたんだけど……その途中で、一度外に通じる外壁を間違えて壊しちゃって……危うく落ちかけたんだよね』


……曜から全然連絡がなかったと思ったら、そんなことになってたのね。


善子「……とにかく! 脱出経路があるなら、外で合流しましょう!」

千歌・梨子・曜『『『了解!』』』


通話を切り、ゲッコウガをボールに戻す。


善子「ドンカラス、まだ一仕事お願いね!」
 「カァーーーー!!!!!」


──堕天使は黒翼を開き、ガラス片の舞う天頂へ向かって飛び出したのだった。





    *    *    *





──クロサワの祠。鞠莉、ダイヤ、果南。


鞠莉「Oh...」


目の前では、圧倒的な存在感を示しているディアルガ。

そして、


 「バァァァァーーールッ!!!!!!!!」


怒り狂ったように、パルキアが暴れ始める。

パルキアが腕を乱暴に振るうと──


果南「鞠莉ッ!!! 危ないっ!!!」

鞠莉「!?」


果南が飛びついてくる、

押し倒される、形で退けたその場所は──


鞠莉「……!!」


空間が切除され、地面から壁に向かって、巨大な爪で引っかいたような跡が出来上がっていた。


鞠莉「ご、ごめん、ありがとう果南……!!」


私はすぐさま、視線を前方の敵へと戻す。


 「ディァァァ──」

鞠莉・果南「「!!」」


今度はディアルガが、僅かに開いた口に青白いエネルギーを収束している姿。


ダイヤ「ハガネール!!! メガシンカですわ!!!」

 「ンネェェーーーーールッ!!!!!!」


ダイヤの声と共に、光り輝くハガネールが地中から飛び出し、ディアルガの身体に巻き付いていく。


ダイヤ「“たたきつける”!!」

 「ンネェーーーーーールッッッ!!!!!!!」


メガハガネールが引き摺り落とすように、ディアルガを押し倒すと、


 「ディア──ガァァァァァ!!!!!」


ディアルガの顔が、その拍子に上の方を向き、収束したエネルギーは天井に向かって暴発する。


ダイヤ「鞠莉さんっ!! 果南さんっ!! 伏せてくださいっ!!」

果南「!! 鞠莉っ!!」

鞠莉「!」


ダイヤの大声を聞いて、果南が再びわたしに覆いかぶさってくる。

──────。

天井に向かって一閃する青白い光は、聞いたこともない、形容するのも難しい、不可思議な轟音を響かせながら、天井を貫く。

空気が軋み、岩石が消滅し、その衝撃が地面を転がるわたしたちの元まで届いてくる。

これが、時空すらも歪めると言われるディアルガの最強の一撃──“ときのほうこう”……!!

ディアルガからのエネルギー放射が止まると──

攻撃を受けた天井の岩肌は、まるで最初からそういう形だったかのように刳り貫かれ、その穴の遠くには小さく空が見えていた。


果南「じ、冗談みたいな威力……!!」

ダイヤ「鞠莉さん!! 果南さん!!」

鞠莉・果南「「!!」」


再びダイヤの声に視線を戻すと、


 「バァァァーーーール!!!!!!」


パルキアが暴れたまま、乱暴に尻尾を振るい、その衝撃波が迫っているところだった。


鞠莉「っ!! スターブライト号!!」
 「ヒヒィーーーンッ!!!!!!!」


咄嗟に、ギャロップのスターブライト号を繰り出し、果南の手を引き、半ば無理矢理、騎乗して走り出す。


果南「っ!!」


間一髪で、“アクアテール”の衝撃波から、逃れるが……。


鞠莉「伝説ポケモン二匹相手……っ……」

果南「さすがに私たちでも荷が重いね……!!」


唯一の救いは、野生に還ったパルキアは暴れているだけで、わたしたちを積極的に狙っているわけじゃないというところだろうか。


鞠莉「こんなことなら、さっさとスナッチするべきだった……!!」


スナッチマシーン自体、まともにチューンする暇もなかったから、どれくらいまともに動くかの問題もあって、出来れば使いたくなかったと言うのが、甘い考えだった。


果南「いや、結果としては、使わなくてよかったと思う」

鞠莉「……今、慰めなんか……!!」

果南「どっちにしろ、ディアルガの召喚は誰にも防げなかった。それに、マスターボールは一個しかないんでしょ?」

鞠莉「それは……そうだけど……っ!!」

果南「スナッチの対象がディアルガに移っただけだよ。パルキアは野生に還ったんだったら、普通に捕獲出来る。まだ失敗だって、嘆くほどじゃない」

鞠莉「果南……うん」


後悔している場合じゃない。

こうなったら、ディアルガをスナッチマシーンで捕獲し、パルキアを通常の捕獲で無力化する必要がある。


鞠莉「果南の言う通り、マスターボールは1個しかない。出来る限り、スナッチマシーンでディアルガに対して使用したいことを考えると、パルキアは通常のボールで捕獲するしかない」

果南「なら、パルキアは極力弱らせる必要があるね」


この状況で、出来るのか……?

わたしは思案しながら、スターブライト号を操りながら、二匹のポケモンの標的にされないように、大回りでダイヤの居る元へと走る。


ダイヤ「お二人とも……!! 無事ですか!?」


辿り着くと、ダイヤはメガハガネールへの指示のためか、ディアルガの方を向いたまま、声だけで安否の確認を求めてくる。


鞠莉「ええ、お陰様で!」

果南「それより、また聖良の様子、またおかしくない……?」


果南に言われて、聖良の方に視線を配ると、

彼女はわたしたちにも、ディアルガやパルキアからも背を向けた状態で、

祠に向かって──


聖良「──さぁ、どうですか!? ディアルガもパルキアもこの手に御した私を放っておいていいんですか!?」


そう叫んでいた。


鞠莉「……あれは、なにしてるの……?」

ダイヤ「わかりません……ですが、何かを企んでいるのは、確実ですわ……!」

果南「なら……先に潰すしかない……!! ラグラージ!!」
 「ラァグ!!!!!」


そう言って、果南が再びメガラグラージに飛び乗って、飛び出す。


果南「“アクアジェット”!!」
 「ラァグッ!!!!」


水流を身に纏い、ラグラージが加速する。

メガハガネールに組伏されたディアルガと暴れるパルキアの間を縫うように通りぬけ、聖良の元へ一直線に近付き、


聖良「──さぁ……!!」


依然、背を向け、祠に向かって声を張り上げる聖良に向かって、


果南「“アームハンマー”!!!」
 「ラァグッ!!!!!!」


拳を振り下ろした──が、

その拳は聖良に届くすんでのところで、突然現われた分厚い氷の壁に遮られる。


 「────シャラシャラ」


大きな雪の結晶のようなポケモンが、ラグラージの攻撃を防いでいた。


果南「フリージオ……!?」

聖良「……邪魔しないで貰えますか?」


その氷の壁はそのまま、防いだラグラージの拳を巻き込んで大きく氷結結晶化していく。


鞠莉「果南っ!!」
 「ヒヒィンッ!!!!!」


わたしはスターブライト号の横腹を足で打ち、走り出す。


 「バァァァーーールッ!!!!!!!」


幸いパルキアは、わたしたちとは全然違う方向を向いて、攻撃の構えを──


鞠莉「……え!?」

ダイヤ「!!? パルキアが攻撃しとうとしてるのは、入江の壁ですわ!!」

鞠莉「穴を開けて、外に逃げようとしてる……!?」


 「バァァァーーーールッ!!!!!!!」


パルキアが腕を振るうと、岩肌が豆腐でも切るかのように、切り裂かれ、

その隙間から外の光が差し込んでくる。


鞠莉「不味い……!! スターブライト号!! “ほのおのうず”!!」
 「ヒヒィィーーーンッ!!!!!!!!」


どうにか拘束しようと、技を放つが──

次の瞬間、今度は祠の方から、


──巨大な影が飛び出してきた。


果南「!?」

鞠莉「今度は何!?」


巨大な影──それは比喩ではなく、まさしく巨大な影の塊だった。

次から次へと起こる事態に、この場に居る人間は誰も頭が追いつかない。


聖良「……やっと、来ましたか」


聖良を除いて──。


 「──────」

果南「……な、に……これ……?」


まさにそれは巨大な影だった。

異様な雰囲気の影。

存在を感じないのに、圧倒的な存在感を示し、

啼いてもいないのに、その啼き声からは全身に重低音をぶつけられたような音圧を感じる。


ダイヤ「なん、ですか……あれは……?」

鞠莉「ま……さか……!?」


この異様なポケモンに対して、研究者の自分は、僅かながらだが、心当たりがあった。


鞠莉「──ギラティナ……」


影はどんどん大きくなっていく。


鞠莉「!! マフォクシー!! “かえんほうしゃ”!!」


──私は咄嗟に叫ぶ。


 「マフォッ!!!!」


ラグラージを捕まえている、フリージオ向かって、後方からマフォクシーが火炎を吹き付けるが、


 「────シャラン」


フリージオの分厚い氷は、マフォクシーの炎でもなかなか溶けない。


鞠莉「果南ッ!! 逃げてッ!!!!!」

果南「……っ!!」


私は叫ぶ。

直後、今度は、そんなわたしの背後から、通り過ぎるように、紫色の飛行体が、聖良の元へと飛んで行く。


鞠莉「……!?」


理亞「ねえさま!!」


ダイヤ「……! あれは……理亞さん……!?」


理亞はラグラージを凍らされ身動きが取れない果南を一瞥してから、


理亞「ねえさま……ごめんなさい、飛空挺。堕とされた……」


悔しそうに顔を歪めながら、謝罪をする。


聖良「理亞……大丈夫ですよ。計画は順調に進んでいます。見てください」


聖良はそう言いながら、目の前の影に向き直った。


聖良「この──ギラティナが……私たちを連れて行ってくれますよ」


聖良の言葉と共に、影は更に大きくなり、彼女たちを呑み込んで行く。

──もちろん、近くに居た果南ごと。


鞠莉「果南ッ!!!!!!」


わたしは叫んで、スターブライト号と共に飛び出す。


果南「ッ……!! ラグラージ!! “じならし”!!」
 「ラァグッ!!!!!」

鞠莉「!?」


だが、ラグラージの“じならし”で動きを止められる。


鞠莉「果南!?」

果南「鞠莉ッ!! 来ちゃダメ!!」

鞠莉「果南ッ!!!! 自分だけ犠牲になんて、許さないわよ……ッ!!!!」


叫ぶ。


果南「違う、そうじゃないッ!!」

鞠莉「ッ!?」

果南「もし鞠莉まで、いなくなったら、ディアルガとパルキアはどうすんの!? ダイヤ一人で相手するなんて無理でしょ!!?」

鞠莉「!!」


果南の言葉にハッとする。まだ戦闘は終わっていないんだ。


果南「私は絶対戻ってくるから!!! 鞠莉はダイヤと一緒にディアルガとパルキアを止め────」


言葉ごと喰い尽くすように、影は果南と聖良と理亞を飲み込んで……。

──消えてしまった。


鞠莉「!! 果南…………!!」


そこに残っていたのは、立派な装飾の祠だけだった。


 「ディアガァァァァ──」

 「ンネェーーール!!?」

ダイヤ「……っ!! ハガネール……っ!!」


“ときのほうこう”の反動で僅かに大人しくなっていた、ディアルガが再びパワーを取り戻し始めたのか、メガハガネールの拘束を振りほどく。


 「バァァァァーーール!!!!!!!」


パルキアは、自ら作った切れ目から、外に向かって乱暴に前進をしている。


鞠莉「…………何よ、どいつもこいつも」


果南も果南だ。いつも自分のことなんて顧みずに、わたしの気持ちなんて考えずに、一人で戦いに行ってしまうのだ。


鞠莉「……いいじゃない。やってやろうじゃない……!!」


わたしはボールを放る。


 「マフォッ」「サナッ」「──ウィー、ピコピコ」「──ブブブ」「ヒヒィーン!!!!!」


鞠莉「マフォクシー、サーナイト、ポリゴンZ、ビークイン、スターブライト号……!! やるわよ!!」


ありったけの手持ちを繰り出して。わたしは体勢を立て直したディアルガに向き直る。


ダイヤ「鞠莉さん……!!」


ダイヤがこちらに駆け寄ってくる。


鞠莉「ディアルガを最速で捕まえて……パルキアも追っかけて捕まえて……!! 果南を助けに行く……!!」

 「ディアガァァァァァァ!!!!!!!」


わたしは手持ちとともに、ディアルガに向かって──飛び出した。





    *    *    *





──飛空挺、脱出口。千歌たち。

曜ちゃんの案内で飛空挺の外へ飛び出す、私たち。


千歌「ムクホーク!!」
 「ピィィィーーーー!!!!!!」

梨子「ピジョット!!」
 「ピジョットォォォ!!!!!!」

千歌「曜ちゃん! 乗って!!」

曜「うん!!」


曜ちゃんを乗せて、ムクホークと一緒に飛び立つ。

──そこは見慣れた海の上空。


千歌「ここ……スルガ海!!?」

曜「……うん、すぐ近くにアワシマも見える……!!」


気付けば飛空挺は随分とクロサワの入江に近付いていたようだった。

そんな私たちの上に、ポツポツと──


梨子「……雨」


雨が降って来る。

──ポツポツと降って来た雨は、冗談のように、一気に雨足を強め。


千歌「わわ!? す、すごい雨……!?」


雲の中で雷がゴロゴロと音を立て始める。


善子「──千歌っ!!!」


そこへ声を掛けながら飛んでくる善子ちゃん。


善子「リリーも、曜も!! あれ見て!!」


善子ちゃんが入江の方を指差す──そこには。

大きな白い体躯に、肩関節に見えるのは大きな宝玉。

あのポケモンは──


千歌「パルキア……!?」

曜「あ、あれが……」

梨子「パルキア……!」

善子「ま、鞠莉たちが捕獲したやつ……よね……?」


善子ちゃんが顔を引き攣らせて、そう言う。


 「バァァァァッァーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


千歌「わぁーーーっ!!?」

曜「お、怒ってる……!?」

梨子「まさか、捕獲出来てない……!?」

善子「まあ……そうじゃないかとは思ってたわよ……!!」


パルキアは前進を初め、入江から海へと歩を進める。


善子「こっち来るわよ!! どうする!?」

梨子「ど、どうするって……!」

千歌「……私たちで止めよう……!」

善子「!? 千歌!? 本気!?」

曜「鞠莉さんたちがパルキアを追ってきてないってことは……追えない事情があるんだよね」


追えない事情……鞠莉さんたちの手が回らない何かが起きてる……。

だったら……ううん、だからこそ、


千歌「今あれを止められるのは私たちしかいない……!!」

曜「やるしかない……ってことだよね……!!」

梨子「千歌ちゃん……!! 行こう……!!」

善子「……あーもう、わかったわよっ!! 地獄の果てまで付き合ってあげるわよっ!?」
 「ロトッ!? ホントに行くロト!?」

善子「ロトム、あんたは私のバッグにでも隠れてなさい!!」
 「り、了解ロト……ッ」

 「バァァッァーーーーーール!!!!!!!!!!」

千歌「皆、行くよーーーーっ!!!!」


私たち4人はパルキアに向かって、飛び出した。




    *    *    *





──1番道路。


海未「──飛空挺が……」


見据える先、上空では、飛空挺が煙を上げて、墜落しそうになっている。

それも、こちら1番道路に向かって。


絵里「ふふ、千歌ちゃんたち、やり遂げたみたいね」

海未「……当然です」


敵旗艦を航行不能に追い込んだ。恐らく、ルビィの救出は成功したと判断していいでしょう。


絵里「じゃあ、ここからは私たちの仕事ね」

海未「ええ、お願いします。絵里」


こちらに向かって墜落してくる、巨大な飛空挺。

あんなものが地面に直撃したら、大きな被害になる。

だから、こうして待機していたのだ。


絵里「行くわよ! キュウコン!!」
 「コーーーンッ!!!!!!」

海未「エルレイド」
 「エルレッ!!!!」


──迫る飛空挺。


絵里「…………」


絵里が静かに前に躍り出る。

眼前の飛空挺に向かって──


絵里「──“ぜったいれいど”」


──飛空挺は、凍り付いて、止まった。

そして、その背後から、凍らせきれなかった大きめの瓦礫が飛んでくる。


海未「……“いあいぎり”!!」
 「エルッ」


その瓦礫を微塵に切り裂く。


絵里「……さすがね」

海未「絵里も、お見事です」


讃えあうが、その背後からは、まだ細々とした瓦礫が降って来ている。


海未「……骨が折れそうですね」


エルレイドと共に再び構える。


海未「この先……一片たりとも、通しませんよ」
 「エルレ!!!」


私の言葉と共に、エルレイドが刃を振るった──。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【スルガ海】【クロサワの入江】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o●| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./             ●回/         ||
 口=================口



 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.52 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:13匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.46 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.46 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:121匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.50 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.41 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:149匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.48 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.55 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:52匹

 主人公 鞠莉
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      ?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:??????
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:311匹

 主人公 ダイヤ
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:113匹


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 鞠莉と ダイヤは
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




■Chapter071 『決戦のスルガ海!』





──スルガ海、上空。

私たち4人はパルキアに向かって、一気に下降する。


 「バァァーーーール!!!!!!!!!」


動く影に気付いたのか、パルキアが顔をあげて、こちらを見てくる。


善子「梨子! お願い!」

梨子「ピジョット!! メガシンカ!!」
 「ピジョットォ!!!!!!!」


梨子ちゃんのメガブレスレットが光り、それに呼応するようにピジョットが七色の光に包まれる。


 「ピジョットォォォーーーーーー!!!!!!!!」


ピジョットの立派な冠羽が更に長く立派に成長し、羽がより鮮やかで美しく棚引く。


梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォーーーーー!!!!!!!」

 「バァァーーー!!!!!!」


メガシンカのパワーを載せた強力な“ぼうふう”でパルキアを牽制する。

その隙に私たちは、一気に海上まで急降下。


曜「千歌ちゃん、善子ちゃん、先に行くよ!」


曜ちゃんが真っ先に飛び出す。


曜「行け!! ホエルオー!!」


海上に向かって放たれたボールからは──


 「ボォォォォォォオォォォォォォ!!!!!!!!!」


巨大なホエルオーが現われる。

そのホエルオーの上に、私と善子ちゃんは曜ちゃんを追いかけて降り立つ。


 「バァァァァァァ!!!!!!!」

千歌・善子「「!」」


大きな雄叫びがあがる。

善子ちゃんと同時にパルキアの方を見ると、“ぼうふう”の中でもがきながらも、腕を振りぬこうとしている姿が目に入ってくる。

不味い──“あくうせつだん”だ……!!


善子「アブソル!!」
 「ソルッ!!!!」

善子「メガシンカ!!」


善子ちゃんはホエルオーの上でアブソルを繰り出すと同時に、メガシンカ。


善子「“かまいたち”!!」
 「ソォーーール!!!!!!」


七色の光の中から、アブソルが空気の刃をパルキアの腕に向かって飛ばす。

その刃は上から下に向かって振りぬこうとしていた、パルキアの腕を弾いて、技をキャンセルさせる。


善子「“あくうせつだん”を撃たせたらアウトよ!! 全員、パルキアの動きに注意しなさい!!」

 「バァァァーーール……!!!!!」


そんな善子ちゃんの方向にパルキアは顔を向けて、直後口に水の塊が収束されていく。


善子「い゛っ!? こっち狙うんじゃないわよっ!?」

曜「カメックス!! メガシンカ!!」
 「ガメェーーーー!!!!!!!」


二人に続くように、曜ちゃんが海上に繰り出したカメックスをメガシンカさせ──


曜「“ハイドロポンプ”!!!」
 「ガメェーーーーーッ!!!!!!」

 「バァーーーール!!!!!!!!」


パルキアとカメックスの“ハイドロポンプ”同士がぶつかり合う。

カメックスの三門の“ハイドロポンプ”を受けた、パルキアの攻撃は僅かに逸れて、ホエルオーの横辺りに着弾。

海上に大きな波を立てる。


曜「メガカメックスの攻撃で、逸らすのがやっとだよ……!! すごい火力……!!」

善子「逸らせただけで、十分よ!! とにかく一発でも食らったらアウトな威力なんだから!!」

 「バァァァァ!!!!!!!!」


パルキアが再び雄叫びをあげると、パルキアの周囲に無数の宝石のような輝きのエネルギー体が浮かび上がる。


善子「! “パワージェム”が来るわよ!!」

千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
 「グゥァ!!!!!」


私はルカリオを繰り出し、髪留めに触れながら、叫ぶ──。


千歌「メガシンカ!!!」


メガバレッタから七色の光が溢れ出し、それに呼応するようにルカリオがメガシンカする──!!


 「グゥゥォァアア!!!!!!!!」


気合いの雄叫びをあげながら、姿を変えたルカリオは、手足や体毛が一段階逞しくなった形で周囲に波導のエネルギーを散らす。


千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥゥゥォァァァ!!!!!!!!!」


メガシンカによってより強い波導をコントロールできるようになったルカリオから、複数の“はどうだん”が同時に発射され、空中で“パワージェム”と打ち合う。


千歌「よっし……!!」

善子「アブソル!! “サイコカッター”!!」
 「ソォル!!!!!」


その隙にアブソルが攻撃を撃ち込む。

……だけど、

──ッチと音を立てて、アブソルの攻撃はパルキアに届く前に消え去ってしまう。

どうやら、パルキアの周囲にある水色のオーラみたいなものに掻き消されてしまったらしい。


善子「あれ、もしかして“アクアリング”!? そういう技じゃないでしょ!!」


それと同時に、海上にいくつもの水柱があがる。


曜「海中から攻撃!? 海底火山の噴火っぽいよ、あれ!?」
 「ボォォォォォオォォォォォォオ」


どうにかホエルオーへの直撃はないものの、辺りにいくつもの水柱があがる。


曜「もしかして、“だいちのちから”!? エネルギーが海底から噴き出してきてる……!!」

千歌「こ、このままじゃホエルオーに攻撃が当たっちゃう……!!」


大きな体のホエルオーだ。このままじゃ、被弾するのも時間の問題。


梨子「──“エアスラッシュ”!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!」


すると上空から、梨子ちゃんとピジョットの攻撃がパルキアの頭部を掠める、


 「バァァァァァ!!!!!!!!」


梨子「防御してても、“とぎすます”で精度を高めた攻撃なら防ぎきれないよね!!」


私たちが打ち合いをしている間、梨子ちゃんは次の攻撃の準備をしていたようだった。

“とぎすます”は一旦集中することによって、次の攻撃が必ず急所に当たるようになる技だ。

お陰で、“だいちのちから”はストップしたけど──


 「バァァァル……!!!!!!」


パルキアが梨子ちゃんとピジョットの方に視線を向ける。


梨子「っ!!」

善子「バカッ!? リリー!! 一人で注意引いたら、狙い撃ちされるでしょ!!?」

 「バァァァァーーーール!!!!!!!!!」


パルキアが再び腕を、上から下に向かって薙ごうとする。

次は上空の梨子ちゃんとピジョットに狙いを定めて──


善子「アブソル!! “かまいたち”!!」
 「ソォォル!!!!!!」


最初同様アブソルがパルキアの腕に向かって攻撃を放つ。

高威力の空刃は、再びパルキアの腕を弾いて技を不発させたが、

──弾かれた腕とは、逆の腕も動いていた。


善子「!?」

千歌「!! 梨子ちゃん!? 逃げてっ!!!」

 「バァァァーーール!!!!!!!!」


パルキアから今度こそ、上空に向かって“あくうせつだん”が放たれる。


梨子「っ!! “オウムがえし”!!」
 「ピジョットォォォ!!!!!!!」


梨子ちゃんが指示を出すと、ピジョットからも空間を引き裂く刃が放たれ、攻撃がぶつかり合うが──


善子「ただ、コピーするだけじゃ張り合うのは無理よっ!!! リリーッ!!!」


善子ちゃんの言う通り、ピジョットがコピーして撃った“あくうせつだん”は一瞬で掻き消され、


梨子「避けてぇっ!!!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


梨子ちゃんの指示で全身全霊の回避行動に移ったピジョットは、身を捻りながら、ギリギリで直撃を避け……“あくうせつだん”はどうにか翼を掠めるまでに至った。

いや──あんなのは、もはや掠めたとは言えない。

空間が一瞬で引き裂かれ、爆縮した空気が弾けて、轟音を鳴らす。


梨子「っ!!!!!!」
 「ピジョットォォォォォォ!!!?!!?」


その衝撃は近くを掠めただけで、ピジョットを吹き飛ばす威力となる。

その先、遠方の天空で分厚い雨雲すら引き裂いて、それによって出来た割れ目から、遥か遠方で滝のように太陽の光が海上に向かって差し込んで来る。


曜「む、無茶苦茶すぎる!?」


そしてピジョットが吹き飛ばされた影響で、梨子ちゃんが空中に投げ出されてしまう。


梨子「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」

千歌「梨子ちゃんっ!!!」

曜「ホエルオー!! 梨子ちゃんの着地地点へどうにか先回りして……!!」
 「ボォォォォォオオオオォォォォォ!!!!!!!」


ホエルオーが全身を躍動させながら、泳ぎ始める。


梨子「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

千歌「しいたけっ!!」
 「ワフッ!!!!」


梨子ちゃんが落ちてくる地点を見極めて──


千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワフッ!!!!!!」


しいたけが一気に体毛を増やして膨らんでいく。

辺りに振っている豪雨の所為で、毛がすぐに縮んでしまいがちだが──


千歌「しいたけっ!!! 頑張って!!!!」
 「ワフッ!!!!!!」


しいたけは、どんどん膨らんで行き、

──ボスンッ

と、そこに梨子ちゃんが落下する。


千歌「梨子ちゃん!?」

梨子「っ゛……!」

千歌「大丈夫!? どこか傷むの!?」

梨子「……う、うぅん……びっくりしただけ……ありがと、千歌ちゃん……しいたけちゃん……」


どうやら、無事のようだ。


千歌「しいたけが居てよかった……」


安心したと同時にあることを思い出す──


千歌「……あっ」


しいたけは犬ポケモンだ……。


梨子「?」

千歌「り、梨子ちゃん、ご、ごめん!?」

梨子「え?」

千歌「え?」


梨子ちゃんから、当惑の声があがる。

どうやら気付いてない……?


千歌「い、いや気付いてないならいいのっ!!」

梨子「え? う、うん?」

善子「──あんたたち何遊んでんのよ!!」


善子ちゃんから、怒声が飛んでくる。

視線を戻すと、善子ちゃんは絶えずパルキアの攻撃を邪魔してくれている真っ最中だった。


梨子「そうだ、ピジョットは!?」


梨子ちゃんが焦り気味に立ち上がる。


曜「大丈夫!! 落下地点にラプラスに向かって貰ったから!!」


そう言いながら、曜ちゃんが指差すと、


 「キュゥゥゥゥーーーー」


背中にピジョットを乗っけたラプラスが声をあげた。


梨子「ほ……ありがとう、曜ちゃん……!」

曜「ヨーソロー!! 気にしないで!!」


どうにか梨子ちゃんとピジョットの無事を確認したところで、私は再びパルキアに視線を戻す。


 「バァァァーーーッル!!!!!!!!」


パルキアは雄叫びをあげながら、着水している部分から大きな波を発生させる。


善子「あれもしかして、“みずのはどう”!? 波動っつーより津波じゃない!?」

曜「カメックス!! こっちも“みずのはどう”!!」
 「ガメェーーーッ!!!!!!!」


カメックスも“みずのはどう”のエネルギーを出して、相殺しようとするが──


善子「い、威力が違いすぎる……!!」


一瞬でカメックスの攻撃ごと飲み込んで、ホエルオーごと高波に襲われる。


千歌「わわっ!?」

梨子「っ……!!」

曜「みんな、どうにか耐えて……っ!!」
 「ボォォォォォオオォォォォォ!!!!!!!!!」


全員どうにか身を伏せて、ホエルオーから振り落とされないようにするが、

……したが──。


千歌「……あ」


荒れ狂う高波の間から、一瞬だけ見えたのは──

こちらに向かって尻尾を振り下ろしてくる、パルキアの姿。


善子「“ドラゴンテール”!?」


──ダメだ。これじゃ全員やられる。

止めるしかない──!!


千歌「ルカリオォ!!!!」
 「グゥゥォァ!!!!!!」


ルカリオの名を呼びながら、一歩前に出る。


曜「千歌ちゃん!?」

梨子「ダメ、危ない!? さがって!?」


攻撃を受け止め、弾き飛ばす。

攻撃の軌道を、攻撃の呼吸を、読みきれ──!!

振り下ろされる尻尾に向かって、

真っ直ぐ指差す。


千歌「そこだ!! “はっけい”!!」
 「グゥゥォォッ!!!!!!!」

 「バァァァァァーーーーアル!!!!!!」


ルカリオの掌が、襲い掛かってくる、パルキアの尻尾とぶつかった、瞬間。

──轟音を立てながら、パルキアの尻尾を弾き飛ばす。

成功した。攻撃を弾いた、

弾いた……けど、


曜「千歌ちゃん!?」
梨子「千歌ちゃんっ!!!」
善子「千歌っ!!!!」


二匹の攻撃のインパクトの瞬間にすぐ近くに居た私は……弾ける二匹の攻撃の衝撃を受けて──


千歌「っ……!!」


吹き飛ばされていた──。

宙を浮いた体を制御する方法なんて、もちろんあるわけなくて、

私はそのまま、荒れ狂う海へと放り投げられるだけだった。





    *    *    *




曜「千歌ちゃんっ!!!!!」


曜がホエルオーの上から海へと飛び降りようとする、


善子「待ちなさいっ!!! 曜っ!!!!」


それを咄嗟に羽交い絞めにする。


善子「こんな状況で海に飛び込むなんて、自殺行為よ!!?!?」

曜「でもっ!!!! 千歌ちゃんがっ!!!!!」

善子「あんたが飛び込むなっ!!! せめて、みずポケモンに任せなさいっ!?」

曜「っ!!!」


曜はハッとした表情をして、ボールを放る。


曜「タマンタ、お願いっ!!! 千歌ちゃんをっ!!!!!」
 「タマッ!!!!!」

梨子「ネオラントッ!!! タマンタと一緒に千歌ちゃんを探してっ!!!」
 「ネオーーッ」


二匹のみずポケモンが荒海の中を潜っていく。

ただ、この度重なる伝説ポケモンの攻撃で狂った異様な海模様。正直一瞬でどこまで流されたかすら検討が付かない。

タマンタとネオラントのスピード追いつけるのかは甚だ疑問だ……。


曜「千歌ちゃん……っ……。千歌ちゃん……っ!!」


祈るように、千歌の名前を呼び続ける曜を見て、そんなことは言えなかったが……。

どちらにしろ、不味い。

千歌を失って士気が一気にガタガタになった。

特に曜の動揺が酷く、まともにポケモンの戦闘指示に戻れる状況だとは思えない。

カメックスとルカリオは独自の判断で、攻撃をしてはいるものの、どうしてもトレーナーの指示がないとピンポイントな相殺の質は落ちる。


梨子「チェリムッ!! “ウェザーボール”!!!」
 「チェリリーッ」


リリーも戦ってはいるが、ピジョットを失った彼女は遠距離攻撃の手段がほとんどない。

もはや、まともに撃ちあう戦力は、私とアブソルだけ……。

不味い。不味い。不味い。

このままじゃ直に全員やられる。

どうにか……どうにかしないと……!!




    *    *    *





──荒れ狂う海流の中で、身体が引き千切られそうだった。

すぐ傍で攻撃が弾けたせいなのか、それとも人間はこういう海流の中にいるとこうなるのか……どっちかわからなかったけど、身体は全く言うこと利かず、もがくことすらままならなかった。

……私……このまま、死ぬのかな……。

せめて……腰に付けたままのバクフーンとムクホークとルガルガンだけでも助かれば──。

なんて、考えていると、腰の三つのボールがカタカタ震えてるのだけはなんとなくわかった。

……ありがと、バクフーン、ムクホーク、ルガルガン。

私を助けるために、外に出せって言ってるんだよね。

でも、キミたち泳げないでしょ?

大丈夫……ボールの中に居れば、きっと死んだりしない。

戦いが終わったあとに、誰かが見つけて助けてくれるよ。

……だから、死ぬのは……私だけ……。

──もう自分が上に流されてるのか、下に流されてるのか。上下左右、前後ろすらも全くわからない。

……ああ、こんなことなら……。

泳げるポケモン──捕まえておくんだったな……。

……私の意識が、ぶくぶくと……海に沈んで行く、中で。


 「──ゼル……!!!」


聞き覚えのある鳴き声がしたと、思った──。





    *    *    *




曜「千歌ちゃん……」


あれから何分経った……?

5分くらい……10分は経ってない思うけど、激しい戦闘のせいで正確な時間の感覚を失っていた。

曜ちゃんの表情はどんどん絶望の色に染まっていく。


 「バァァァーーーールッ!!!!!!!」

善子「アブソルッ!!!! “かまいたち”っ!!!!!」
 「ソォォルッ!!!!!!!」

曜「千歌……ちゃん……」


絶望に染まった声をあげ続ける曜ちゃん。


善子「……いい加減にしなさい……っ!!」


その胸倉に、善子ちゃんが掴み掛かる。


梨子「善子ちゃん!?」

善子「いつまで、そうしてるの!? さっさと割り切って戦いなさいっ!!!」

曜「で、も……千歌ちゃん、が……っ……」


曜ちゃんは泣いていた。

彼女は海に詳しいと聞いた。海難事故についても人より詳しいのかもしれない。

もしかしたら……頭の何処かで、もう千歌ちゃんの安否が絶望的なのがわかってしまっているのかもしれない。


善子「泣きたいのは私だって同じよ……っ……!! 千歌は私にとっても……っ……!!」


善子ちゃんが言葉を詰まらせながら、曜ちゃんに向かって声をあげる。

ポロポロと涙を流しながら。


曜「善子……ちゃん……」

善子「でも、こんなところで私たちが黙ってやられること、千歌が望むわけないでしょっ!!!」

曜「……っ!」

善子「千歌が身を賭して残してくれたチャンスなのよっ!! 私たちは負けちゃダメなのっ!! お願い、だから……!!」

梨子「……善子ちゃん……」


きっと、善子ちゃんの心も、限界なんだ。


曜「……ごめん、戦う」


その様子を見て思うことがあったのか。曜ちゃんはよろよろと立ち上がる。


曜「ふー……カメックス……!! “ハイドロポンプ”……ッ!!」
 「ガメェーーー!!!!!!!」

善子「……アブソル!! “かまいたち”……!!」
 「ソォルッ!!!!!」


少しだけ立ち直ってくれたのか、曜ちゃんが加勢してくれるお陰で、多少攻撃が捌かれ始める。


曜「……ぅ……っ……ぐっ……っ……」

善子「……っ……」


曜ちゃんはその間、何度も何度も涙を拭っている。

善子ちゃんもきっとわかってはいるんだろう。親友が目の前で居なくなって。それでも戦えなんて言うのがどれだけ酷なことなのかくらい。


善子「でも……戦うって自分たちで決めたんだから……やらなきゃ……っ」


善子ちゃんが自身を鼓舞するために、声をあげた、

私は……。

──手を握った。


善子「……っ……?」

梨子「…………」

善子「リリー……?」


逆の手で曜ちゃんとも。


曜「梨子ちゃん……?」

梨子「大丈夫だよ」

曜・善子「「え……?」」


力強く、言う。


梨子「千歌ちゃんは……大丈夫」


自信有り気に、確信めいて。


梨子「千歌ちゃんは、こんなことじゃやられない。負けないし。諦めないし。挫けない」

曜「梨子……ちゃん……」

善子「…………」

梨子「無鉄砲で、いい加減で、無計画で、猪突猛進で、何にも考えてない……だけど……!!」


私は前を見据えて、


梨子「私たちが泣いてたら……すっとんで来て助けてくれる……それが、千歌ちゃんでしょ?」

曜「…………うん……っ!!」

善子「…………ええ、その通りよ……っ!!」


二人が私の言葉に頷く。


 「バァァァアァァァァァ!!!!!!!!」


パルキアが腕を振り上げた。私は──


梨子「──千歌ちゃーーーーーんっ!!!!」


叫んだ。

瞬間。

──水を巻き込んで二本の竜巻が海から巻き上がる。


 「バァァァルッ!!?」


急なことにパルキアが攻撃を中断する。


曜「これは、“うずしお”……!!」


そして、二本の“うずしお”の中央から──


 「ゼルルルルルッ!!!!!!!!!」


オレンジ色のポケモンの影、そしてその体に掴まるように、一緒に飛び出してきたのは、


善子「……バカ、心配させないでよ……っ」

梨子「……ね、言ったでしょ?」

曜「……よかった…………っ」


紛れもなく、どうしようもないくらい、


千歌「ごめん、みんなっ!!」


千歌ちゃんだった。





    *    *    *





千歌「いっけぇーーーー!!!」


“アクアジェット”の勢いで海中から飛び出して、肉薄する。


 「バァアァァァルッ!!!!!!!」


改めて、近付くと、めちゃくちゃ大きい。

けど……仲間が居るから、怖くない!!


千歌「“アクアブレイク”!!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!!!」


全身のみずエネルギーを込めて──フローゼルが、突進をかます。


 「バアアァァァァァッ!!!!!!!!」


頭部への急な突撃に、パルキアが仰け反った。

その反動を利用して、フローゼルに掴まったまま再び海上へと戻る。


 「ゼルッ!!!!!!」


フローゼルが尻尾のスクリューを全力で回転させ、パルキアの付近から全速力で離脱する。

荒れた海でも、すごいスピードで泳ぐ、フローゼル。


千歌「キミ……!! コメコで会ったブイゼル君だよね!?」
 「ゼルルルッ!!!!!」


フローゼルは頷く。


千歌「来てくれたんだね……っ!!」
 「ゼルッ!!!!」


あの後、どう過ごしていたのか、とか。

二匹の子供は元気か、とか。

聞きたいことはいろいろあるけど、


千歌「……戦いが終わったら、いろいろ教えてね……!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!!」





    *    *    *





梨子「メガニウム、“つるのムチ”」
 「ガニュッ」


メガニウムに引き上げてもらう形で、私はホエルオーの上に戻る。


千歌「ありがと、メガニウム」

 「ガニュッ」


メガニウムにお礼を言っていると、間髪居れず。


曜「千歌ちゃん!!!」

千歌「わっ!?」


曜ちゃんが抱きついてくる。


千歌「曜ちゃん……苦しいって……」

曜「よかった……ほんっとうに……よかった……」


曜ちゃんは心底安心したように声をあげる。


善子「千歌」


善子ちゃんが前衛で攻撃を捌きながら、声を掛けてくる。


千歌「ん」

善子「……戻ってきてくれて、ありがと」

千歌「うん」


善子ちゃんは言葉少なめに、それだけ言うと、


善子「アブソル!! 行くわよ!!」
 「ソォルッ!!!!」


再び攻撃を再開する。


梨子「千歌ちゃん」

千歌「……梨子ちゃん」

梨子「……信じてたよ」

千歌「……うん!」


私は前に歩み出て、


千歌「……最初はね、ホント絶望的な力の差だなって思ってた。でもね」


振り返る。


千歌「あのときのブイゼルが──フローゼルが来てくれた。皆が信じてくれた。……私が旅して、歩んできた道は繋がってたんだって、実感した。……そんな皆が傍に居てくれる。なんか、それだけで不思議と……勇気が湧いて来る……!!」


胸の内から、ふつふつと力が漲ってくる。


 「グゥォッ!!!!!」


それに呼応するように、メガルカリオの全身から波導のオーラが溢れ出す。


千歌「なんかチカ、今ね……負ける気がしない……!!」
 「グゥォッ!!!!!」

 「バァァァァァァーーーーールッ!!!!!!!!!!!」


パルキアが雄叫びをあげ、腕を振り上げる。

善子ちゃんとアブソルが、何度目かわからない攻撃姿勢に移る。


善子「アブソル!! “かまいたち”……!!」
 「ソルッ……!!!」


だが、攻撃が出ない。


善子「……っ!! パワーポイントが……!!」


もうPPが限界のようだ。

ずっと、善子ちゃんとアブソルが攻撃を防いでくれてたんだもんね。


千歌「大丈夫。後は私に任せて」

善子「……千歌……!?」


善子ちゃんの前に、ルカリオと共に歩み出る。


 「バアァァァァーーーールッ!!!!!!!!!」


パルキアの腕が袈裟懸けに振り下ろされる。

腕から発される“あくうせつだん”の衝撃波が空間を裂きながら、飛んでくる。

でも、不思議と──怖くはなかった。


千歌「波導の力を斬撃に──」
 「グォッ!!!!」


息を吸う。

必殺の呼吸。


千歌「──……“いあいぎり”!!」
 「グォァッ!!!!!!!」


一閃。

斜めに薙いだ衝撃波はそのまま真っ二つに割れて、ホエルオーの両サイドで波飛沫をあげる

私たちは“あくせつだん”の斬撃を──逆に切り裂いた。


曜「うそ……」

善子「え、すご……」

梨子「千歌ちゃん……!!」


三者三様、声があがる。


千歌「さぁ……反撃開始だよ……!!」


私はパルキアを見据えて、そう言うのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【スルガ海】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o●| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.54 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:150匹 捕まえた数:14匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.47 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:126匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.51 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:153匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.48 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:135匹 捕まえた数:52匹


 千歌と 梨子と 曜と 善子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter072 『決戦! ディアルガ!』 【SIDE Dia】





──クロサワの祠。ダイヤと鞠莉。


聖良さんたちが消えた祠で、わたくしたちはディアルガと対峙する。

わたくしは距離が離れてしまった鞠莉さんの元へ駆け寄り、


ダイヤ「鞠莉さん……!!」


声を掛けるが、


鞠莉「…………」


鞠莉さんからは返事がない。


ダイヤ「ま、鞠莉さん……?」

鞠莉「……ダイヤ、ちょっとの間、下がってて」

ダイヤ「……え?」

鞠莉「たぶん、巻き込むから」

ダイヤ「……!」


わたくしは、すぐにハンドシグナルでハガネールに一旦引くように合図を出す。


 「ンネェールッ!!!!!」


ハガネールは“あなをほる”ですぐさま地面に退避する。


 「ディアガァァァーーー!!!!!!!」

鞠莉「…………」


ディアルガと対峙し、右手に付けたミラクルシューターを調整している。

実のところ、鞠莉さんは基本的にバトルを好まない。

普段から朗らかな気性だし、荒事を好む性格ではないのだ。

実力はありながらも、バトル関係の職には就かず、博士になったのはそれが理由の一つです。

ただ……彼女は怒ると、それが一変する。


鞠莉「……ポリゴンZ、“ロックオン”!! サーナイト!! “ハイパーボイス”!!」
 「──ウィーカタカタ」「サーーーーーナァーーーーー!!!!!!!!」


ポリゴンZが標的を定め、その横でサーナイトが爆音を発する。


 「ディアガァァァァーーーーーーー!!!!!!!!!」


ディアルガも対抗するように“ハイパーボイス”を発する。

二匹の音攻撃が拮抗する中、


鞠莉「ポリゴンZ!! “はかいこうせん”!!」
 「ウィーーーーカタカタカタ!!!!!!!!」


開いたディアルガの口内に向かって、ピンポイントで超火力の“はかいこうせん”で狙撃する。


 「ディガァァァァァー!!!!!?」


ディアルガが後ろに仰け反った、瞬間。


鞠莉「スターブライト号! “ほのおのうず”!!」
 「ヒヒィーンッ!!!!!!!」


ギャロップが炎の渦で動きをホールド、倒れることすら許さない。


 「ガァァァァァァーーーー!!!!!!!!!」


だが、ディアルガは怯みきらず、口を開いたまま、応戦してくる。

発射されるドラゴンエネルギーの奔流──“りゅうのはどう”です。

ですが、鞠莉さんは迫る“りゅうのはどう”全く動揺することなく、ミラクルシューターからエネルギーアイテムをビークインに射出する。


鞠莉「SPガード6!! ビークイン! “ぼうぎょしれい”!!」
 「ブブブブブッ!!!!!!!」


ビークインが鳴き声をあげると同時に大量のミツハニーが彼女の下腹部から飛び出して、防御壁を成す。

“りゅうのはどう”がそこに直撃するが……。


 「ブブブブッ」 「ハニー」「ハニー」「ハニーハニー」


ビークインもミツハニーもまるでダメージを負っていない。

……詳しくないのですが、確かミラクルシューターのSPガード6は使ったポケモンの特防を即座に6段階上昇させるアイテムだったはず……。

鞠莉さん曰く4倍硬くなるとか。


鞠莉「サーナイト!! “かなしばり”!!」
 「サーナッ!!!!」

 「ディアアガァァァァァー!!!!!!!!」


サーナイトの念動力によって、その場に釘付けにされ、ディアルガは大声で鳴き声を上げるが、


鞠莉「マフォクシー!! “オーバーヒート”!!」
 「マフォ!!!!!」


炎熱エネルギーを容赦なくぶつける。


 「ディアガァァァァァァーーーーー!!!!!!!!!」


攻撃の被弾の衝撃か、ディアルガが再び口を開いて“ハイパーボイス”撃とうとした瞬間。


鞠莉「サーナイト、“ふういん”」
 「サナ」

 「ディ、ガ────」


ディアルガの攻撃を無理矢理封じる。そして再びシューターからエネルギーアイテムを射出。


鞠莉「フラットコール!」


“オーバーヒート”によって赤熱していた、マフォクシーから熱が引いていく。

確かフラットコールは、自分の下がった能力変化を元に戻すミラクルシューター専用のアイテムだ。


鞠莉「マフォクシー……!!」
 「マフォク……ッ」


マフォクシーの炎の木の棒が、より一層強い炎を宿す。

大技の兆候……!!


鞠莉「“ブラストバーン”!!!!」
 「マフォーーーーーーーーッ!!!!!」


先ほどの“オーバーヒート”が比較にならないレベルの炎熱が、一気に発射される。


 「ディガァァァァァァーーーーー!!!!!!!!」


ディアルガは爆熱に焼かれ、そのまま700kg近くある巨体が炎の勢いだけで聖域内の内壁まで吹き飛ばされる。

……いや、それどころじゃない。そのまま壁にぶち当たっても、攻撃は終わらず、ディアルガを焼き続ける。


鞠莉「…………」


相手は伝説のポケモンとは言え、全く容赦がない。

彼女は怒らせると、範囲攻撃や相手の動きを制限する技を徹底的に使用し、相手には攻撃の隙を与えず、一気に叩き潰す。

故に一緒に戦うと巻き添えを食らうため、こういうとき、わたくしや果南さんは一歩引くのです。

鞠莉さんの猛攻にディアルガは相当なダメージを負ったようですが……。


 「ディガァアァァァァァァァ!!!!!!!!」


炎に焼かれながらも、こちらに顔を向けて、口にエネルギーを収束している。


鞠莉「……」

ダイヤ「鞠莉さんっ!!」


ディアルガが攻撃を発射しようとした瞬間、


 「ディガッ!!!?」


ディアルガの頭部を上下に何かの力が急激に挟み込み、口を閉じさせた。


ダイヤ「!?」


そして、そのエネルギーが無理矢理閉じられたディアルガの口内で爆発する。


 「ディガァァァァアァァァ!!!!!!!!」


今の技は……まさか、


鞠莉「最初にサーナイトとマフォクシーが“みらいよち”を撃ってた。サーナイトが下から、マフォクシーが上からね」


相手が大技を撃つ瞬間を予測して、すでに攻撃を仕掛けていたらしい。


 「ディガァァァ……」

鞠莉「さぁ……これで、終わりよ……!!」


弱るディアルガに、最後の攻撃を放とうとした──瞬間。


 「──ディガァァァァ!!!!!」

鞠莉「な……!?」

ダイヤ「!?」


先ほどまで壁の付近にいたはずのディアルガが──鞠莉さんの目の前に立っていた。

まるで接近するのに掛かった時間だけを早送りでスキップでもしたかのように。

ディアルガは鞠莉さんに向かって、脚を振り下ろしてくる。


鞠莉「っ……!?」

ダイヤ「ハガネールッ!!!」


わたくしは咄嗟に叫ぶ、


 「ンネェーール!!!!!!」


ハガネールが地面から飛び出し、再びディアルガを巻きついて、拘束をする。


ダイヤ「鞠莉さん!! こっちですわ!!」

鞠莉「!」


その隙に鞠莉さんの手を引いて、聖域の外の横道に逃げ込む。


鞠莉「……」

ダイヤ「どうやら、一筋縄ではいかないようですわね……」

鞠莉「早く……倒さないといけないのに……」


鞠莉さんはイラついた口振りで言うが、


ダイヤ「負けてしまっては元も子もありませんわ! 落ち着いてくださいませ」


わたくしは鞠莉さんは嗜める。


鞠莉「……わかってる」


どうにも頭に血が昇ると、鞠莉さんは感情的になってしまう。

そこはわたくしが御さないと……。それこそ、鞠莉さんの身に何かあったら、後で果南さんに何を言われるか、わかったものではないですし。


ダイヤ「あれは……この場に召喚されたときも使っていた技ですわよね……?」

鞠莉「……たぶん、時間跳躍してるんだわ」

ダイヤ「時間……跳躍……?」

鞠莉「これを見て」


そう言って鞠莉さんが図鑑を開く。

 『ディアルガ じかんポケモン 高さ:5.4m 重さ:683.0kg
  時間の 流れを 自在に 操ることで 過去や 未来へ
  移動する ことが 出来る。 ディアルガの 心臓が
  動くと 時間は 流れていくと 言われ 信仰されている。』


ダイヤ「まさか……本当に時間を操っている……?」

鞠莉「シンオウ地方では時間の神なんて言われてるくらいだしね……」


成程どうして……。パルキアが空間を引き裂くほどの、とんでもポケモンであるのと同様。

それに並び立つとされるディアルガも、相当不可思議な技を扱えるようだ。

ですが……。


ダイヤ「……もし、自由に時間が操れるなら、勝ち目がないのではありませんか?」

鞠莉「……いや、本当に自由に操れるなら、もっとやりようがあるでしょ」


──やりよう。

つまり、本当に時間操作が出来るなら、もっと一方的な展開で、わたくしたちを倒すことが出来るという意味でしょう。


鞠莉「仮説の域は出ないけど……ディアルガ自身の心臓の鼓動でスピードが関係してるんじゃないかしら」

ダイヤ「鼓動のスピード……?」

鞠莉「図鑑の説明が正しいなら、ディアルガの心臓は時間の流れと結びついている……。速い鼓動なら時間は早回しに、遅い鼓動なら時間は遅くなるんじゃないか……そう思わない?」

ダイヤ「……成程」

鞠莉「心臓の鼓動を無理矢理筋肉で制御するとなれば、ディアルガ自身も相当身体に負荷がかかる。これなら、何度も時間跳躍を使ってこないことも説明が付く」


二人でディアルガの能力について考察をしていると、


 「ンネェーーーール!!!!!!?」


ハガネールがこちらに向かって、吹き飛ばされてくる。

拘束ももう限界だったようだ。


ダイヤ「ハガネール! 戻ってください!」


ハガネールをボールに戻す最中、


 「ディアガァァァァァ!!!!!!!!」


ディアルガが声をあげてこちらに迫ってくる。

鞠莉さんと二人で入江内へと走り出す。


鞠莉「これも仮説だけど……たぶん連発が出来ないこととか考えると、それ相応のタイミングがあるんだと思う」

ダイヤ「タイミングですか?」


走りながら、鞠莉さんが続きを話し始める。


鞠莉「最初の位置関係を元に戻したのは、寝起きでまだ心拍数が極端に低かったから出来た、とか。さっき一気に近付いてきたのは、炎で焼かれて熱で心拍数があがったから……って言えばそれっぽいかしら」

ダイヤ「……確かに、それっぽくはありますわね」


ですが……運動をすれば、普通の生き物は心拍数が上がる。

その理屈だと、攻撃をすればするほど、相手は加速していくことになる。


鞠莉「だから、いい按配で捕獲するしかない……!」

ダイヤ「……ですわね」


幸い、ダメージの回復などをしているわけではなさそうですし。

ダメージは既に鞠莉さんが相当食らわせている。


鞠莉「こっちにはマスターボールがある……確実に当てられるタイミングさえ来れば、捕獲は出来る。……ただ、ネックなのはスナッチだネ」

ダイヤ「時間が掛かるのですか?」

鞠莉「普通に投げるのに比べると、スナッチマシーンからエネルギーを送る時間があるから……持って、狙い定めて、そこからエネルギーを充填して投げるまでに5秒くらい掛かるわ」

ダイヤ「5秒……」


普通なら、長いと言う程長くはないですが……。


鞠莉「それに加えて、近くに他のポケモンが居ないことが条件になる……狙いを定めないとスナッチが上手く成功しない」

ダイヤ「時間を跳躍できるポケモン相手に5秒掛かるのは……相性が悪いですわね」


そうなると不意を付くしか方法はない。


鞠莉「…………」

ダイヤ「鞠莉さん?」

鞠莉「……ん、ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」

ダイヤ「……?」

鞠莉「それより、ダイヤ。いい作戦を思いついたわ」

ダイヤ「本当ですか?」

鞠莉「ただ、ちょっと準備に時間がかかるから……しばらく、一人で時間稼ぎとか出来る?」

ダイヤ「承知しましたわ」

鞠莉「……じゃあ、ちょっとお願いね!!」


そう言って、鞠莉さんは分かれ道のところで、わたくしとは別の道へと走っていく。


ダイヤ「そうと決まれば、わたくしはしっかりひきつけないとなりませんね……!!」


足を止め、背後を振り返る。


 「ディガァァァァーーーーーー!!!!!!!!」


ディアルガは身体のサイズ的に通れないような狭い入江内の通路を無理矢理壊しながら、こちらを追ってきている。

止まったわたくしを見て、口にエネルギーの収束を始める。

チャージを見る限り、真っ赤なエネルギー弾。

ですが……。


ダイヤ「防御はわたくしの専売特許ですわ!! ボルツ!!」
 「メレ……」


わたくしはメレシーのボルツを繰り出す。


ダイヤ「“ひかりのかべ”!!」
 「メレッ!!!!」

 「ディガアアァァァーーー!!!!!!!」


ディアルガの口から撃ちだされる球状のエネルギー弾。

サイズが大きいですが、恐らく“はどうだん”。

ボルツが作り出した、エネルギーを弾く“ひかりのかべ”にぶつかり、“はどうだん”が音を立てて火花を散らす。


ダイヤ「……っ!! さすがにすごい火力ですわね……!!」
 「メレッ」


普通の“はどうだん”程度なら、余裕で掻き消せているはずなのに……!!


 「ディガァァァァァァ!!!!!!!」


ディアルガはその後ろから、“はどうだん”ごと踏み潰す勢いで、前脚を降らせてくる。


ダイヤ「“リフレクター”!!!」
 「メレッ!!!」


今度は物理攻撃を弾く障壁を作り出す。

ディアルガの脚は壁で止まっていた“はどうだん”を踏み砕き破裂させ、“リフレクター”によって、止まる。

──だが、そのまま、何度もガンガンと前脚を叩き付けてくる。


ダイヤ「これは、“じだんだ”ですか……!?」


爪を立てながら、何度も“リフレクター”に脚を叩き付けている。

さすがに、これ以上の定点防御は持たないかもしれない。

そう思いボルツを引かせようとしたとき。


ダイヤ「……!!」


ディアルガの背後に鞠莉さんの姿を認める。

あの人……いい方法があるって言いながら、こっそり後ろから忍び寄る方法を取ったのですか……。

まあ、しかし。単純ながら悪い方法ではありません。

この入り組んだ入江の中でなら、その効果は何倍にも膨れ上がる。

ディアルガの背後の鞠莉さんが左手にボールを構えた。

──その瞬間。

ディアルガが尻尾を振るって──鞠莉さんの左肩より先を吹き飛ばした。


ダイヤ「……え?」


“リフレクター”の先で、鞠莉さんが左肩から大量の血液を噴き出して倒れる。


ダイヤ「……は……?」

 「ディガ……」


ディアルガは一瞬、背後の鞠莉さんを一瞥したが、


 「ディガァァァァッッ!!!!!!!」


背後の鞠莉さんが動かないことを認識すると、再び“リフレクター”を破壊しようと前脚を撃ちつけ始める。


ダイヤ「え……っと……な、何かの冗談……ですわよね……」


ディアルガの四本の足の隙間から見切れているのは、肩から先を吹きとばされ、大量出血しながら倒れている幼馴染の姿。


ダイヤ「鞠莉さん……嘘……ですわよね……?」


わたくしは思わずヘタリ込む。

助けにいかないと。

頭の中でそんなワードが浮かんでくる。

ただ、頭に行動が浮かんでは来るものの、何が起きたかを頭が受け入れてくれない。

そんなわたくしの動揺を知ってか知らずか、ディアルガの攻撃はどんどん激しくなっていく。

いや……。


 「ディガァァァァァァ!!!!!!! ディガァァァァァァ!!!!!!!」


ディアルガは意識的に、より一層強く攻撃を叩き付けてきている。

恐らく、わたくしが混乱し、戦闘に支障を来たす状態に陥っていることが、本能的にわかっているのだ。


ダイヤ「あ、はは……」


自分一人なら、何も怖くなかった。

程度の問題はあれど、多少の命の危険くらい、旅をしている間に何度か経験もした。

ですが……友人が目の前であんなことになる姿を見ることになるとは思わなかった。

情けない話ですが、腰が抜けて立てなかった。

ディアルガが怖くて……ではありません。

鞠莉さんがどうなったか、を考えるのが怖くて……動けなくなった。


 「ディガァァァァッ!!!!!!! ディガァァァァァァッ!!!!!!!!」


度重なる強力な攻撃で“リフレクター”にヒビが入る。

──ピシッ

音が鳴る。

光景がスローモーションになる。

ゆっくりとディアルガの前脚がわたくしに向かって降って来る。

人間、死に直面すると、脳内の細胞が活性化し、情報処理が加速して、光景がスローモーションに見えると言うのは……本当だったのですわね。

などと、考えていたら。


──パシュンッ。


ディアルガはそんな間抜けな音と共に、後ろの方に引っ張られ。


──カツーン……。


ボールのようなものに吸い込まれてしまった。

……いや、というか……。


ダイヤ「マスター……ボール……?」


わたくしはポカーンとする。


 「いやーダイヤが迫真の演技してくれたお陰で助かったよ~」


そのボールを拾い上げながら、いつも通りの気の抜けるような声で喋っているのは──


ダイヤ「鞠莉……さん……?」

鞠莉「ん、わたしだヨ♪」

ダイヤ「い、生きているのですわよね……そ、そうだ腕は!? 肩から先が……!?」

鞠莉「ああ、これね」


鞠莉さんは、破れた上着の袖を見せてくる。

さっきわたくしが視認したのと同じ位置から先がなくなっていた。

ついでに言うなら、切られた袖口が真っ赤に染まっている。


ダイヤ「え、ある……? さっき、切れて……飛んで……え……?」

鞠莉「あ、えーっと。探してるのはこれかしら?」

ダイヤ「……コレ?」


そうして、差し出して来たモノは。


ダイヤ「──ピギャッ!?!?」


腕だった。

切り飛ばされたはずの鞠莉さん腕。


ダイヤ「は……? は……??」

鞠莉「実はね、コレ……うぅん、この子はね」


鞠莉さんがこの子と言うと、

腕が溶けるように変形していき──薄紫の不定形のモノになる。


ダイヤ「まさか……メタモン……?」

 「メタァ…」
鞠莉「Yes! 最初から、スナッチマシーンの隙を稼ぐために、不意を突く作戦をいくつか練ってたのよ。だから、左腕は最初から上着の内側に隠して、左肩より先をメタモンに“へんしん”してもらってたのよ」

ダイヤ「じゃあ……あの血は……?」

鞠莉「あれは血糊よ。リアリティがないと意味がないからネ!」

ダイヤ「……そう」

鞠莉「…………あ、あれ? ……てっきり、『なんで先に言わないのですか!?』とか怒られると思ってたんだけど……?」

ダイヤ「……ぅ……っ……ぐす……っ……」

鞠莉「!? ダ、ダイヤ……!?」

ダイヤ「……ぅ……っ……ま、まりさんが……しんで、しまったのかと……おもって……わ、わたくし……っ……」

鞠莉「……!? ご、ごめん!!? い、生きてるから!! ほら、I'm fine!! すごい元気~!!? 死んだりなんてしないから!? ね!?」

ダイヤ「わ、たくし……っ……ひっく……っ……ほんとに……どうしたら、って……おもって……っ……」

鞠莉「ダイヤ!? ホ、ホントにゴメン!!? ほ、ほら敵を騙すにはまず味方から的な!? いや、だから、ホント、ゴメン泣きやんで!?」

ダイヤ「まりさぁん……っ……」

鞠莉「……あ、ぅ……よしよし……もういなくなったりしないから……」

ダイヤ「ぅ……ぅ……ぐす……っ……」


鞠莉さんの無事に感極まって泣き出すわたくしを見て、


 「メレ…」


ボルツが呆れたように一鳴きしたのでした。





    *    *    *




──スルガ海。


 「バァァァァァル!!!!!!!!」


飛んでくる、“あくうせつだん”。


千歌「──……そこっ!!」
 「グゥゥァ!!!!!!!!!」


再び、ルカリオが斬撃を切り裂く。

コツがわかってきた。それに加えて、今はすごく気分が高揚している。まるで失敗する気がしない。

ただ──かなりの集中力が居る防御戦法だから、さすがに攻撃しながらは出来ない。


曜「カメックス!! “ハイドロポンプ”!!」
 「ガメェーーーー!!!!!」

梨子「チェリム!! “ウェザーボール”!!」
 「チェリリッ!!!!!」

善子「ゲッコウガ!! “みずしゅりけん”!!」
 「ゲコガァッ!!!!!」


皆も攻撃を続けてはいるけど、ほとんどが“アクアリング”に掻き消されて、ほとんどダメージになっていない。


善子「く……もうこっちにまともに通る技が残ってない……!」

梨子「いくら千歌ちゃんが、攻撃を防いでくれるって言っても、このままじゃ……」

曜「ジリ貧……」


PPにも限界がある。

……どうにか、パルキアに通る攻撃が使えるポケモンが居れば……。





    *    *    *





──スルガ海、上空。


花丸「千歌ちゃんたち……苦戦してるずら……」

ルビィ「…………」


ルビィたちは上空から、千歌ちゃんたちの戦闘を見守っていました。


花丸「マルの手持ちも、もうほとんど戦闘出来る状態じゃないし……ルビィちゃんの手持ちも伝説のポケモンを倒せるようなパワーは……」

ルビィ「…………」

花丸「ルビィちゃん……?」

ルビィ「ねえ、花丸ちゃん」

花丸「な、なんずら?」

ルビィ「……ルビィ、また巫女の力を使ってたんだよね」


巫女の力……宝石を輝かせる力。


花丸「う、うん……辺りの氷とかを全部溶かしてた……」

ルビィ「……そっか」

花丸「…………ルビィちゃん、まさか」

ルビィ「……この力で……パルキアを、倒せないかな」

花丸「ダ、ダメずら!!」


花丸ちゃんはルビィの肩を掴む。


花丸「あれだけ、苦しい思いしたのに……その力を自分から使おうだなんて……!!」


花丸ちゃんはそう言うけど……。


ルビィ「ずっとね……考えてたんだ」

花丸「……?」

ルビィ「どうして、ルビィにこんな力があるのかなって……」

花丸「そ、それは、巫女の力を受け継いだからで……」

ルビィ「うぅん、そういう話じゃなくてね」


ルビィは静かに首を振る。


ルビィ「夢の中だったからね……おぼろげだったけど……ドクン、ドクンって誰かの熱が流れ込んでくるようで」

花丸「誰か……?」

ルビィ「あの力が、熱が流れ込んでくるとき……それって、どんなときだったかなって」


思い出す。

小さい頃、クロサワの入江でのときも、クリフでの理亞ちゃんとの戦いのときも、そして、飛空挺で無理矢理使わされたときも……。


ルビィ「ルビィね……守りたいって想ってたんだ」

花丸「守り……たい……」

ルビィ「……うん。悲しいときとか、怒ったときに、出てきちゃってたけど……それでも、この気持ちの真ん中にあったのは──いっつも、守りたいって想いだった。願いだった」


ときにメレシーたちを守りたかった。お姉ちゃんの誇りを守りたかった。……そして、夢の中でコランを──ずっと一緒に育ってきた、大切な家族を守りたかった。


花丸「……ルビィちゃん」

ルビィ「……そして、今、ルビィはまた守りたいって想ってる……皆を守りたい、助けたい」

花丸「…………」

ルビィ「ルビィのことを助けてくれた皆を……守りたい」


ルビィを想って、助けてくれる、皆を──。

そう願った瞬間。


 「──ピピ、ピピィ」


ずっと、眠ったまま、動かなかったコランが、鳴き声をあげる。


花丸「……!」


真っ赤な光を輝かせながら。


ルビィ「きっと……コランが今まで眠っていたのは──ルビィが自分の守りたいって気持ちにちゃんと気付けてなかったから。でも、今はちゃんとわかるよ」
 「ピピピィ」

ルビィ「……皆のことを守りたい。ルビィを大事に想ってくれる皆を守りたい。そんな皆が生きる、この世界をルビィは守りたい」
 「ピピピピピィ!!!!!!!」


閃光はどんどん大きくなっていく。

そして──ドクン、ドクンと体の中に熱い鼓動を感じる。


花丸「……ルビィちゃん……」

ルビィ「花丸ちゃん……だから……だからね──!」

花丸「──強くなったね……」


花丸ちゃんは、優しい声で、そう言った。


ルビィ「花丸ちゃん……」

花丸「マルはいつでも、ルビィちゃんの味方だよ……ルビィちゃんがしたいことは、全力で応援する」

ルビィ「うん……」

花丸「だから……お願い、皆を守って」

ルビィ「……うん!」


ルビィは力強く頷く。


花丸「ルビィちゃん」


マルちゃんは、いつでもルビィの背中を押してくれる。


花丸「いってらっしゃい」

ルビィ「いってきます……!!」


ルビィはコランを抱えたまま、パルキアと戦う皆の許へ向かって──飛び降りた。





    *    *    *




千歌「──……“いあいぎり”っ!!!!」
 「グゥォ!!!!!」

千歌「はぁ……!! はぁ……!!」


──突然、息が切れてきて、膝が落ちる。


曜「千歌ちゃん……!!」

千歌「ご、ごめ……ちょっと、立ちくらみ……」


立とうとするが、膝が笑っている。


千歌「あ、あれ……??」

梨子「ずっと集中してたから……」

善子「もう、限界か……」

千歌「た、戦えるよ……!!」

曜「千歌ちゃん……」


曜ちゃんに支えられながら、パルキアに視線を戻すと──。


千歌「え……あれ……?」


何かが空から降りてきていることに気付く。


梨子「え?」

曜「……あれって」

善子「……なんでここに……?」


三人も気付いたようで、

空から降りてきているのは、よく見知った人。


千歌「ルビィ……ちゃん……?」





    *    *    *




──ドクン、ドクン。

コランの光を通じて、熱が流れ込んでくる。

ただ、今までのような理不尽に身を焦がす熱というわけではなく。

何処か……懐かしくて、温かい感じがする。


ルビィ「そっか……キミはずっと、わたしのこと……見守ってくれてたんだね」


あの焼けるような熱も、わたしを守るため。

ずっと、わたしを守るために──ココに居てくれたんだね。


ルビィ「……でも、もう守られてるだけじゃないから」
 「ピピピピ!!!」


コランを抱きしめる。


ルビィ「今度はわたしと一緒に……守ろう……皆を──!!!」


真っ赤な光りが一気に膨れ上がり──。

光から、生まれるように、真っ赤な体躯が──。


 「バァァアァァァァァルッ!!!!!!!!!」


目の前には、パルキアが雄叫びをあげている。

──ルビィが、その熱と共に海上に降り立つと、海が音を立てて蒸発すると共に、

さっきまで空を覆っていた雲が掻き消え、“ひでり”によって太陽が顔を出す。


ルビィ「──……それがキミの本当の姿なんだね」
 「グラグラルゥ……」

ルビィ「うん……!! 行こう──グラードン!!」
 「グラァァァアァーーーー!!!!!!!!」


パルキアに対抗するように

──グラードンが、雄叫びをあげた。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【スルガ海】【クロサワの入江】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o●| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./             ●回/         ||
 口=================口



 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.57 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:151匹 捕まえた数:14匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:128匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:155匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.54 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:136匹 捕まえた数:50匹

 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:110匹 捕まえた数:40匹

 主人公 ルビィ
 手持ち アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.45 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:95匹 捕まえた数:9匹

 主人公 鞠莉
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:311匹

 主人公 ダイヤ
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:113匹


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸と ルビィと 鞠莉と ダイヤは
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter073 『クロサワの巫女・ルビィ』 【SIDE Ruby】





ルビィ「グラードン!!」
 「グラルゥゥッ!!!!!」

 「バァァァーーール!!!!!!!」


二匹の伝説のポケモンが対峙する。


 「バァァァァ……ッ!!!!!!!!」


パルキアが口元に水のエネルギーの収束を始めたところに、


ルビィ「グラードン!! “だいもんじ”!!」
 「グラァァァーーー!!!!!!」


対抗するように、こちらも炎熱攻撃を放つ。


 「バァァァァーーーール!!!!!!!!」


ワンテンポ遅れて収束を終えたパルキアから、“ハイドロポンプ”が発射され、炎と水がぶつかり合う。

二匹の攻撃は真正面からぶつかり、“ハイドロポンプ”は一瞬にして、“だいもんじ”によって蒸発していく。

“ひでり”による、ほのお技の威力の上昇によって、みずタイプの技にも全く押し負けない。


ルビィ「いけぇっ!!」
 「グラァッ!!!!!!」


大の字をした、巨大な炎が、太い水の柱を掻き消して、パルキアに襲い掛かる。


 「バァァァァッ!!!!!!!」


炎の直撃を受け、パルキアが叫ぶ。

そこに間髪居れず、背後から

何発かのエネルギーの弾がわたしたちを避けるように迂回しながら飛んできて、パルキアに立て続けに炸裂する。


 「バァァァァアァルッ!!!!!!!!」


──千歌ちゃんのメガルカリオの援護攻撃だ……!

“はどうだん”の直撃によって、パルキアが体勢を崩したところに、


 「グラグルゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


グラードンは重量級の体を躍動させて接近する。

そのまま救い上げるように、パルキアの胴体に拳を突き出す。


ルビィ「“ほのおのパンチ”!!!」
 「グラァァァ!!!!!!!」


腕を振るって、直撃させた炎の拳が、パルキアが更に後方に突き飛ばす。


 「バアァァァァルッ!!!!!?」




    *    *    *





曜「ルビィちゃん……すごい……!!」


曜ちゃんが驚きの声をあげる。


梨子「あれも……伝説のポケモン……」


私は梨子ちゃんの言葉を聞きながら、図鑑を開いた。

 『グラードン たいりくポケモン 高さ:3.5m 重さ:950.0kg
  雨雲を 吹き払い 光と 熱で 水を 蒸発させる 力を 持つ
  ポケモン。 洪水に 苦しむ 人々を 救った。 地底の マグマの
  中で 眠っていて 起きると 火山が 噴火すると 言われている。』


千歌「グラードン……!!」


ルビィちゃんとグラードンは、その重量級のパワーと炎熱で、パルキアを圧倒していく。


善子「……勝てる、勝てるわよ……!!」


善子ちゃんが歓喜の声をあげたのとほぼ同時に、私のポケギアが鳴り出す。


鞠莉『──千歌!! 聴こえる!?』

千歌「! 鞠莉さんっ!!?」


電話の相手は鞠莉さんだった。


鞠莉『もしかして、パルキアと戦ってる!?』

千歌「は、はい!!」

鞠莉『そのパルキアはもう野生よ!! 弱らせて捕まえられる!?』

千歌「! やってみます!!」


私は顔をあげると善子ちゃんと目が合う。


善子「今飛べるのは、私と千歌だけだからね。行くわよ……!!」

千歌「うんっ!」


私と善子ちゃんはそれぞれムクホークとドンカラスを繰り出して、決着のために空へと飛び出した。





    *    *    *





 「──ルビィちゃーん!!」

ルビィ「!」


背後から声がして振り返ると、そこには空を飛んでこっちに向かってくる、千歌ちゃんと善子ちゃんの姿。


ルビィ「千歌ちゃん! 善子ちゃん!」

千歌「あのパルキア、今から捕獲するよ!!」

善子「私が注意を引く!! ルビィ、その隙に動きを止められる!?」

ルビィ「わかった! やってみる!!」

善子「うまいことやりなさいよ……!! ドンカラス!! 行くわよ!!」
 「カァーーーーー!!!!!!」


善子ちゃんがドンカラスと一緒に飛び出す。

パルキアはグラードンの攻撃を食らって崩した体勢を持ち直そうとしている真っ最中だ。

その上から、


善子「ドンカラス!! “ちょうはつ”!!」
 「カァ!!!カァッ!!!!!!」


自分の方へ、攻撃してくるように促す。


 「バァァァァーーーー!!!!!!!」


上空のドンカラス向かって、パルキアが“ハイドロポンプ”を発射するが、

ドンカラスは踊るように、攻撃を掻い潜る。


善子「そんな余裕のない攻撃当たらないわよ!!」
 「カァカァーーーー!!!!!」


注意の逸れたパルキアに完全に隙が出来た……!!


 「グラグルゥゥゥゥ……!!!!!!」


グラードンが唸ると、辺りに地鳴りが発生する。


ルビィ「グラードン!! “だんがいのつるぎ”!!!」
 「グルグラアァァァァァ!!!!!!!!!!!」


グラードンの雄叫びと共に、海底から幾数本もの断崖の柱がパルキアの腕や足の間に割り込むように突き出してきて、動きを止める。


 「バアァァァァァァ!!!!!!!!」

千歌「今だ……!!」
 「ピィィィィィィ!!!!!!!」


ムクホークと一緒に飛び出した、千歌ちゃんが、


千歌「いっけぇ!! モンスターボール!!」


ボールを放る。

そのボールは一直線にパルキアの方に飛んでいく、が。


 「バアァァァァァッ!!!!!!!!」


パルキアは最後の力を振り絞って、モンスターボールを“ずつき”で弾く。


千歌「……!!」


弾き飛ばされたボールは放物線を描いて宙を舞う。

──そのボールの軌道を追う影。


 「ピピピピピィィィ!!!!!!!!」


それは、真っ赤の宝石を光らせながら飛び出したコラン。


ルビィ「コランッ!!! いけぇーーーっ!!!!」

 「ピピピィィ!!!!!!!」


コランは宙に浮くボールに渾身の“たいあたり”をかまして、

それに弾かれたボールが、再びパルキアの額を捉え、

──ぶつかった。


 「バァァァァァ──」


雄叫びごと、掻き消されるようにパルキアはモンスターボールに吸い込まれ。

突き出した“だんがいのつるぎ”の上に落ちて、揺れる。

── 一揺れ。

──二揺れ。

──三回、揺れて……。

──……ボールは大人しくなった。


善子「はぁ……はぁ……」

千歌「……はぁ……はぁ……」


二人は息を切らせながら、

ルビィの元へと飛んできて、


ルビィ「千歌ちゃん! 善子ちゃん!」


ルビィの立っている、グラードンの頭の上に降り立って、


千歌「ルビィちゃん!」

善子「ルビィ!」


そのまま、二人して抱きしめてくる。


千歌「やった!! やったよ、私たち……!!」

善子「……ホント、お手柄……!!」

ルビィ「うん……!!」


さっきまでの荒れ模様が嘘のように、雨雲は消え去り、快晴の陽光が差し込む中、


千歌「──私たちの……!! 勝ちだーー!!!!!」


千歌ちゃんの勝ち鬨と共に、伝説のポケモンとの死闘は終わりを迎えたのでした。




    *    *    *





花丸「ルビィちゃーん!!」

ルビィ「! 花丸ちゃーん!」


上空から、花丸ちゃんがフワライドに乗って降下してくる。

一方で手を振るルビィちゃんの足元では……。


 「グラルゥ……zzz」


先ほどの大立ち回りが嘘のように、グラードンは身を縮こませて眠り始めていた。


善子「……こいつは突然暴れだしたりは……しないわよね」


おっかなびっくり足元で寝ているグラードンに手を触れる善子ちゃん。


ルビィ「大丈夫だと思う。ホントはずっとルビィと一緒に居た子だし……」

善子「ずっと一緒に居た……?」

ルビィ「うん……ずーっと、ルビィの中で……ルビィのこと守ってくれてたんだよ」

善子「……なんかよくわかんないけど……堕天使っぽくていいわね、それ」

ルビィ「とりあえず、疲れて眠っちゃったからボールに入れてあげようかな……」


ルビィちゃんは花丸ちゃんの手を借りて、フワライドに足場を移しながら、黄緑色のフレンドボールを取り出した。

それを見て、私と善子ちゃんも再び自分の鳥ポケモンたちに掴まって、飛翔する。


ルビィ「ありがとう、グラードン……ゆっくり休んでね」


そう言ってルビィちゃんがボールを押し当てると、グラードンはそのままボールに吸い込まれていった。


曜「千歌ちゃーん!! みんなー!!」


下から声がする。曜ちゃんの声だ。

目を配らせると、ホエルオーがゆっくりとこっちに向かって泳いできていた。

全員でゆっくりとホエルオーの方へと飛んで行く……っと、その前に……。

私はグラードンが隆起させた、“だんがいのつるぎ”の方へと飛んでいき、

──その上で静かになった、パルキアのボールを手に取り、


千歌「もう、あんな風に暴れちゃダメだよ?」


そう言葉を掛けてから、ボールをポケットに入れた。

改めて、私も皆と合流するためにホエルオーの方へ、ゆっくりと降りていく。

ホエルオーの上では、先に合流したルビィちゃんが梨子ちゃんと話しているところだった。


ルビィ「えっと……梨子さん、初めまして……?」

梨子「は、初めまして……! 梨子です……!」

ルビィ「あ、ルビィです……!」

善子「いや、今更なにやってんのよ……」

梨子「い、いや……だって……」

千歌「ふふ……」


なんだか、気の抜けるやり取りに笑ってしまう。


千歌「梨子ちゃん! ルビィちゃん!」

梨子「千歌ちゃん……?」

ルビィ「千歌ちゃん……」


二人の手を取って、無理矢理握らせる。


千歌「はい、握手! もう、ここまで来たら初対面でも仲間でしょ?」

梨子「……ふふ、なにそれ」

ルビィ「あはは、千歌ちゃんらしいかも」


二人も笑い出す。


曜「とりあえず、この後は……?」

善子「そうね……一旦、入江の方に向かうのがいいんじゃないかしら?」

曜「了解! ホエルオー、全速前進!」
 「ボォォォォォーーー」


6人のトレーナーを背に乗せたホエルオーがゆっくりと入江に向かって泳ぎだす。


ルビィ「ねえ、みんな」


梨子ちゃんとのやり取りを追えたルビィちゃんが、私たち全員の前に躍り出る。


ルビィ「千歌ちゃん、梨子ちゃん、曜ちゃん、善子ちゃん……そして、花丸ちゃん」


ルビィちゃんは一人一人の名前を呼びながら、背筋を伸ばして、


ルビィ「改めて……ルビィを助けに来てくれて、ありがとう……」


頭を下げた。


曜「ピンチのときはいつでも呼んでって言ったからね! 当然だよ!」

千歌「あはは、私たちにとっては可愛い後輩だもんね」

善子「ま……最終的に助けられたのは私たちだったけどね。……あとヨハネだからね?」

梨子「ホントにね。ルビィちゃんが居なかったらどうなってたか……むしろ、こちらこそありがとうだよ」

花丸「……皆無事で、なによりずら」


ルビィちゃんの感謝の言葉にそれぞれが言葉を返す。


ルビィ「えへへ……うん!」


ルビィちゃんは満点の笑顔で頷くのでした。





    *    *    *





──さて、あのあと私たちは、入江のパルキアが出てきたところにホエルオーを着けて上陸していた。


千歌「……こんな入口、確かなかったよね」

曜「うん……パルキアが空けたってことだよね」


そこには、穴……というか、超巨大な爪痕のような割れ目があった。

硬い岩盤をこんな風にしてしまうなんて……改めて、自分たちが戦っていた相手の強大さを実感する。

そんなことを考えながら難しい顔をしていると、

その方向から、走ってくる黒髪の女性の姿。


ダイヤ「ルビィーーー!!!!」


ダイヤさんだ。


ルビィ「!! お姉ちゃん……!!」


ルビィちゃんも走り出し、二人は抱擁を交わす。


ダイヤ「ルビィ……よかった……」

ルビィ「お姉ちゃん……心配掛けて、ごめんなさい……」

ダイヤ「いえ……いいのです。こうして元気に帰って来てくれたなら……」


二人は声を掛け合って、より強く抱きしめあう。


善子「姉妹、感動の再会ね」

花丸「善子ちゃん、茶化さないずら」


善子ちゃんが肩を竦めて言いながら、それを花丸ちゃんが嗜める。


鞠莉「……ま、泣き出さないだけマシよ」


その様子を見ながら、鞠莉さんも顔を出す。


鞠莉「……まさか、ガチ泣きされるとは思わなかったわ」

ダイヤ「……っ/// あ、あれは、貴方が作戦を説明していなかったのが悪いのでしょう!?」


ダイヤさんが何故か頬を紅くする。


鞠莉「はいはいよしよし……もうどこにもいかないからねー」

ダイヤ「鞠莉さんっ!!」


鞠莉さんとダイヤさんはいつもの調子だけど……。


千歌「……果南ちゃんは?」


私は辺りをキョロキョロと見回す。


鞠莉「……っと、そうだ。遊んでる場合じゃない」

ダイヤ「……全く」

鞠莉「皆、付いてきて」


鞠莉さんに促され、私たちは入江の中へと歩を進める。





    *    *    *





入江の中に入ると、中は戦闘の後であちこちが凹んだり、崩れたりしていた。

ただ、そんな痛ましい状況に負けないような荘厳な存在感を放っている物体に目を引かれる。


梨子「あれは……祠、ですか?」


皆の視線の先にあるのは、たくさんの宝石を装飾された、絢爛豪華な祠の姿。


ルビィ「お姉ちゃん……いいの……?」

ダイヤ「……状況が状況ですから。──……ここは、クロサワ家に伝わる、ディアンシー様を祀っている祠ですわ」

千歌「ディアンシー……」

曜「ディアンシー……って、確か……」

花丸「ウラノホシの御伽噺に出てくる、メレシーの女王様のことずら」


また、ディアンシーの名前が出てきた。


善子「んで、それとここにいない果南と何が関係してるのよ? まさか、この祠の先に居るとか言わないでしょうね」

鞠莉「Yes. 善子、その通りよ」

善子「……はぁ?」

梨子「どういうことですか……?」


皆で祠に目を配るけど……とてつもなく豪華と言うことを除けば、特に変なところはなく、奥に空間がありそうとかそういう感じはしない。


ダイヤ「正確には、果南さんはここから……違う世界に連れて行かれてしまった。と言ったところでしょうか」

千歌「違う世界……?」

鞠莉「どうして、聖良がパルキアとディアルガを呼び出したのか……その理由がやっと判明した」


そう言って、鞠莉さんは自身の赤い図鑑を開いて私たちに見せてくる。

そこには──見たことのないポケモンのデータが表示されていた。

 『ギラティナ はんこつポケモン 高さ:4.5m 重さ:750.0kg
  常識の 通用しない この世の 裏側にあると 言われる
  破れた世界に 生息する。 鏡面から 静かに 現実世界を
  見守っていて 時折 古い 墓場などに その姿を 現す。』


千歌「このポケモンは……?」

鞠莉「……ギラティナって言う、ポケモン」

曜「ギラティナ……知ってる?」

梨子「うぅん……初めて聞いた名前かな」

善子「右に同じ。……まさか、この私が名前すら聞いたこともないなんて」

花丸「……マルもちょっと心当たりがないずら」

ルビィ「え? 花丸ちゃんも……?」

ダイヤ「無理もありません。わたくしも初めて聞いた名前だったので……」

鞠莉「知らなくて当然かしらね……。文献すら僅かにしか残ってないポケモンだもの。……ディアルガは時間の神、パルキアは空間の神。この二匹が時間と空間を司って世界を作ったとするなら、ギラティナはそれを裏側から支えているポケモンよ」

善子「裏側……まさか、アナザーディメンジョン!!」

花丸「別次元ってこと……?」

鞠莉「ええ、平たく言うとそうなるかしら」

善子「……え、マジで!?」


期せずして正解を言い当ててしまい、逆に動揺する善子ちゃんを傍目に、鞠莉さんは話を続ける。


鞠莉「ギラティナは表の世界のバランスが崩れないように、裏側から世界を見守っているポケモンなの。基本的には表には出てこないんだけど……稀にゴーストエネルギーの集まる墓場に姿を見せることがある他、世界の形が歪みそうなところに現われてそれを防ぐと言われてる」

曜「世界の歪みそうなところ……?」

鞠莉「今回みたいに、ディアルガとパルキアが同時に出現したら、周囲の時間と空間が大きく乱れる……だから、それを操る聖良を止めるために現われた」

千歌「もしかして……果南ちゃんは……」

ダイヤ「ええ……ギラティナが聖良さんを連れ去るのに巻き込まれて……」

鞠莉「ただ……聖良の様子を見てた限り、彼女の狙いはむしろギラティナだった」

梨子「……! だからか……!」


梨子ちゃんは何かに納得したように声をあげる。


善子「? 何が?」

梨子「地方中にゴーストポケモンが大量発生してた理由だよ。ゴーストエネルギーの集まる墓場に姿を見せるって、言ってましたよね」

鞠莉「ええ」

梨子「それって、少しでもギラティナが現われやすい環境を地方中に作るためだったんじゃ……!!」

鞠莉「たぶん、その通りよ」

千歌「だから、聖良さんはヨノワールを使って、地方中にゴーストポケモンを……」


やっと話が繋がってきた。


ダイヤ「聖良さんは……最初から、ギラティナと共に裏側の世界──“やぶれた世界”に行くことが目的だった……と言うことですわね」

花丸「うーんでも……そこに行って何をするつもりずら……?」

鞠莉「そこなのよね……。途方もない計画だとは思うけど……そこまでして、何がしたいのか……」


その場に居る全員が首を傾げる。── 一人を除いて。


ルビィ「──ディアンシー……」


ルビィちゃんが呟いた。


ダイヤ「ルビィ……?」

ルビィ「……理亞ちゃんはディアンシー様を探してるって言ってた」

千歌「! 確か、聖良さんも女王様を探してるって言ってた」


聖良・理亞姉妹が一緒に行動していたのはもう周知の事実だ。なら、この一致は、彼女たちの共通の目的と行動理念を示している。


ルビィ「理亞ちゃんたちは……その裏の世界にディアンシー様を探しに行ったんじゃ……!!」

鞠莉「……確かに、あえてこの祠に裏側の世界への入口を作るために、ここでディアルガとパルキアを揃える必要があったって言うなら……辻褄が合う。一番ディアンシーに近いのはどう考えてもこの祠がある場所だものね」

ルビィ「それだけじゃない……たぶん、その──“やぶれた世界”にディアンシー様が居るって、確信があったんだと思う」

鞠莉「どういうこと?」

ルビィ「その“やぶれた世界”って、表の世界を見守るためにあるんですよね?」

鞠莉「ええ、資料は少ないけど……伝承の通りならそうなるわね」

ルビィ「理亞ちゃん……小さい頃、グレイブマウンテンでディアンシー様に会ったことがあるって言ってたから……」

善子「グレイブマウンテン……あそこって昔から、厳しい自然のせいで人やポケモンの亡骸が多かったのよね」

花丸「……ずら! そっか、もともとあの辺りにはお墓に近いエネルギーが充満してて……!!」

梨子「ギラティナによって表と裏が繋がり安い環境だった……?」

ダイヤ「確かにもしディアンシー様がギラティナ同様、“やぶれた世界”から表の世界を見守っていると言うのが確信を持てる事実であるなら……グレイブマウンテンでディアンシー様が現われたのは、“やぶれた世界”を通ってと言うことに違いないとは思いますが……」

千歌「……そういえば!」

ダイヤ「千歌さん?」

千歌「ダイヤさん! この前、話してくれたメレシーのお話の中で……ディアンシー様が『せかいの うらがわへと そのすがたを かくしてしまいました。』って出てこなかった……!?」

ダイヤ「……! まさか、その“世界の裏側”と言うのが……!!」

鞠莉「……“やぶれた世界”のこと……!?」


完全に話が繋がった。


ルビィ「たぶん、間違いないと思う」


つまり、聖良さんはディアンシーに会うためだけに、この計画を……。

いや、でも、これでやっとわかった。


千歌「あのときの言葉は……やっぱり嘘じゃなかったんだ」


あのとき、ダリアシティで聖良さんが言っていたことを思い出す。


 聖良『──この宝石はディアンシーがまた会うために残してくれたもの……なんだと思って、ここまで研究を続けてきたので』


曜「じゃあ、果南ちゃんはそれに巻き込まれて……!!」

善子「……ちょっと待って」


結論が出て、方向性が決まりつつある場に善子ちゃんが口を挟む。


善子「聖良たちの目的はわかった。ここまでやってきたことの理由も説明が付いた。果南の居場所もわかった。……それはいいとして、どうやってその“やぶれた世界”に行くの?」

千歌「あ……」


言われてみればそうだった。


善子「また、ディアルガとパルキアを暴れさせて、ギラティナを無理矢理引きずり出すの? 私はまたあんなのと戦うのは嫌というか……たぶん、無理よ。今回は勝てたけど、次勝てる保証なんてどこにもない」

鞠莉「……それについてなんだけど。ダイヤ」

ダイヤ「はい」


ダイヤさんは鞠莉さんに促されて、祠の観音開きに手を掛け、

それを開け放つと──

祠の中、ディアンシーを模った像の前の空間に、

なにやら不思議な穴のようなものが空いていた。


千歌「これって……」

ダイヤ「……当たり前ですが、もともとこんなものはありませんでした。恐らく、ここにギラティナが現われた際に繋がった空間移動の穴の名残ですわ」

鞠莉「恐らくこの先が“やぶれた世界”よ」

梨子「……でも、この穴」


梨子ちゃんが眉を顰める。

それもそのはず、この穴は拳大くらいの大きさしかない。


曜「人が通るのは……どう考えても無理だよね」

善子「……なんか質量とか無視して、吸い込まれる類のワームホールとかってことは」

鞠莉「確認したわ」

善子「したの!?」


鞠莉さんがその穴に指を入れる。

その指は確かに空間内に存在していたけど、善子ちゃんの言うみたいに吸い込まれるようなことはない。


鞠莉「ちゃんと、くぐれないとダメ」

千歌「じ、じゃあ……」


ここまで来てまさかの手詰まり。


鞠莉「……いや、まだ方法はある。千歌、パルキアを捕獲したボール持ってる?」

千歌「え、は、はい……!」


私はポケットから先ほど捕獲したパルキアの入ったボールを鞠莉さんに手渡す。


善子「ま、まさか!? さっき言ったみたいに暴れさせるんじゃ……!?」

鞠莉「違うわ」

善子「……っほ」

鞠莉「ディアルガ、パルキア、ギラティナは3匹がそれぞれお互いと干渉しあいながら、バランスを保っている……ギラティナが異次元空間を行き来して、ディアルガとパルキアを止めに来るようにね」

ダイヤ「それなら……逆にギラティナが暴走した際にそのバランスを正すのはディアルガとパルキアのはず。それなら、ディアルガとパルキアの力を借りればギラティナの居場所に干渉が出来るのではないか……とは考えられませんか?」

梨子「なるほど……!」

鞠莉「……ディアルガとパルキアは、時空間を操ることが出来る。空間の歪で出来た、“やぶれた世界”への入口を拡げるくらいなら、きっと出来ると思う」


そう言って鞠莉さんは、バッグから真っ白な宝玉──“しらたま”を取り出す。


鞠莉「そして、パルキアへ直接指令を送れるアイテムもある」

ダイヤ「……ディアルガに対応する、“こんごうだま”が手元にないのは痛いですが……どうにか──」

鞠莉「いや、あるヨ」

ダイヤ「え?」


そう言って鞠莉さんは、バッグからもう一個宝玉を──“こんごうだま”を取り出した。


ダイヤ「い、いつの間に!?」

鞠莉「ふふん♪ 聖良たちが消える直前、聖良たちの方にマフォクシーが攻撃したでしょ?」

ダイヤ「……ラグラージを凍らせていた、フリージオへの攻撃のことですわね」

鞠莉「……さて、マフォクシーの特性はなんでしょう?」

ダイヤ「……! “マジシャン”ですか! 攻撃の際に、相手の道具を奪う特性……!」

鞠莉「Exactly! その通りでーす!」

曜「……えーと、つまり……」

善子「“やぶれた世界”に行くための準備は出来てる……ってことじゃない……!!」

梨子「……でも、問題は……」

花丸「誰が行くか、ずらね」

ダイヤ「もちろんわたくしたちが……と言いたいところなのですが」

鞠莉「……少なくとも二人は、ここでディアルガとパルキアに指示を出しながら、“やぶれた世界”への出入り口を拡げる役割がある」

ダイヤ「“しらたま”と“こんごうだま”を使って、直接指示を出すのですが……これはまだ、わたくしたちには未知の道具です。正常に操るには出来るだけ実力のある人間の方がいいでしょうし、体にどんな影響があるかもわからない。ですから、これはわたくしと鞠莉さんが担当します」


となると……突入するのは、私たち6人の中から──


ルビィ「ルビィが行く」


真っ先に名乗りをあげたのは、ルビィちゃんだった。


善子「は!? ルビィ、あんたホンキ!?」

ルビィ「うん。これがディアンシー様を廻る問題なら、クロサワの巫女であるルビィには、見届ける義務があると思う」


ルビィちゃんは力強い瞳でそう言う。


ダイヤ「ルビィ……」

ルビィ「それに理亞ちゃんのことも放っておけない……こんなやり方でディアンシー様に会っちゃ……ダメだよ」

ダイヤ「…………。……まさか、ルビィが自分から言い出すなんて……成長しましたわね」

ルビィ「……お姉ちゃん」

ダイヤ「……わかりました。ルビィ、お願いしますわ。あとは──」

千歌「──私も行きます」


私はそう言って一歩前に出る。


ルビィ「千歌ちゃん……!」

ダイヤ「理由は……セキレイシティで言っていたことですわね」

千歌「はい」


セキレイシティで言ったこと──


 千歌『──私、あの人の夢の話を聞いたんです。真っ直ぐな夢を、想いを、気持ちを……もしかしたら全部嘘だったのかもしれないけど……でも、私はそれが全部嘘だったとは思えない。聖良さんは、大きな力を手に入れて、それを見失ってるんじゃないかって……』


千歌「私が聞いた聖良さんの夢は純粋で……素敵だなって思った。それを達成するために頑張ってるのはすごいと思う。だけど……こんなやり方は間違ってる。私はそれを言いに行かなくちゃ……!!」


そして止めないと。


ダイヤ「……わかりました。それでは突入はルビィと千歌さんのお二人で──」

曜「ま、待って!」


ダイヤさんの決定に曜ちゃんが割り込む。


曜「別に人数の制限とかないよね!? だったら、私も行く……!! 千歌ちゃんやルビィちゃんは行かせて、自分は待ってるなんてできないよ!!」

善子「曜」

曜「何……!?」


善子ちゃんは何を思ったのか、しゃがみこんで──曜ちゃんの脚を指で軽く突っつく。


曜「──っ゛!?」


すると曜ちゃんは声にならない声をあげながら、善子ちゃん同様にしゃがみこんでしまった。


千歌「曜ちゃん!?」

善子「あんた、立ってるのもやっとでしょ」

曜「っ゛……よ、善子ちゃん、いつから、気付いて……」

善子「あれね……メガシンカ。素人が一日に2回も3回もやっていいもんじゃないみたいね。曜、あんた飛空挺の中でもメガシンカ使ったでしょ?」

曜「つ、使った……けど……」


そう言って善子ちゃんはそのまま尻餅をつく。


善子「私と曜は今日だけで2回メガシンカを使ってる。……あれ、トレーナーにも大きな負担がかかるみたいでね、そのせいで全身が酷くだるいのよ。立ってるのがやっと。正直、これ以上戦闘に出るのは無理よ」

曜「ぅ……」

善子「だから、私はパス。曜も、わかった?」

曜「……」


項垂れる曜ちゃん。私はそんな曜ちゃんの前にしゃがみ込み、手を握って、


千歌「曜ちゃん……大丈夫、絶対戻ってくるから」


そう誓う。


曜「千歌ちゃん……約束だよ……?」

千歌「うんっ! 指切りでもする?」

曜「……うぅん。千歌ちゃんは約束破ったりしないから……ここで待ってる」

千歌「……うん、ありがと、曜ちゃん」


私は曜ちゃんにお礼を述べる。


花丸「マ、マルは……」

鞠莉「図鑑で確認したんだけど……あなたはもう手持ちが全滅しかけてるでしょ?」

花丸「え!? 戦闘不能はカビゴンだけじゃ……」

鞠莉「いいえ、ドダイトス、カビゴン、キマワリ、イノムーは戦闘不能状態よ」

花丸「え……制御室では皆戦えてたのに……」

ルビィ「きっと……花丸ちゃんの気持ちに応えて、最後の力を振り絞ってくれたんじゃないかな……」

花丸「……そっか」


花丸ちゃんも参戦は無理だろうという判断。


梨子「……あとは私かな」

千歌「梨子ちゃんは……怪我の治療をした方がいいと思う」

梨子「……バレてた?」

千歌「なんとなく……」


上手に隠してはいたと思うけど……。パルキアとの戦いで空から落ちてきたとき、痛みに耐えながら、胸部の下の辺りを庇うような動きをしていた気がしていた。


鞠莉「梨子、怪我してるの?」

梨子「飛空挺で、ヨノワールから直接殴られたときに……」

鞠莉「ちょっと、ごめん」


鞠莉さんが梨子ちゃんのシャツを捲る。


梨子「!? ま、鞠莉さん!?///」


そして、そのまま梨子ちゃんが痛むと言う場所に触れる。


梨子「い、いたっ……!!」

鞠莉「……確かに、詳しく検査しないとだけど……肋骨に軽くヒビが入ってるかもしれないわね」

梨子「まあ、動けないほどじゃないですけど……」

鞠莉「ダメ。軽く見ると、大きな怪我の原因になる。あなたはここで休憩ね」

梨子「……はぁい」


……これで、決戦の地に赴く人間は決まった。


善子「ルビィ」

ルビィ「?」

善子「グラードンは連れて行くの?」

ルビィ「……うぅん。眠っちゃってるし、さっきみたいにちゃんと戦えるかわかんないから置いていくつもり」

善子「……そ。なら、手持ちの空いた部分に連れて行きなさい」


善子ちゃんはそう言って、ダークボールをルビィちゃんに手渡す。


ルビィ「このボール……ドンカラスの……?」

善子「飛行要員は居た方がいいでしょ?」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「可愛いリトルデーモンに……我が黒翼を貸し与えるのも悪くない。あと、ヨハネだからね」

ルビィ「うん……! ありがとう、ヨハネちゃん!」





    *    *    *





……さて。


ダイヤ「二人とも準備はいいですか?」

千歌・ルビィ「「はい!!」」

鞠莉「果南と一緒に、絶対に帰って来るのよ」

千歌・ルビィ「「はい!!」」

ダイヤ「……それでは鞠莉さん。始めますわよ」

鞠莉「OK.」


二人は祠の両脇に立ち、


ダイヤ「出てきなさい、ディアルガ!」

鞠莉「頼むわよ、パルキア!」


二匹の伝説のポケモンを繰り出す。


 「ディアガァ」「バァァル」


そして、それぞれ“こんごうだま”と“しらたま”を握り締めて。


ダイヤ・鞠莉「「────」」


瞑想する。


 「ディアガ」「バル」


二匹の巨体が、祠の方を向くと──


千歌「穴が……!!」

ルビィ「拡がってく……!!」


穴はどんどん拡大し、直に人が通れるほどの大きさになる。

私は──ルビィちゃんの手を握って。


千歌「──行こう……! ルビィちゃん!」

ルビィ「……うん!」


ルビィちゃんと共に──“やぶれた世界”に向かって、飛び込んだのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クロサワの入江】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./             ●回/         ||
 口=================口



 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.58 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:152匹 捕まえた数:15匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:129匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:156匹 捕まえた数:22匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:137匹 捕まえた数:53匹

 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:111匹 捕まえた数:40匹

 主人公 ルビィ
 手持ち アチャモ♂ Lv.39 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.51 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.28 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      ヌイコグマ♀ Lv.40 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ゴマゾウ♂ Lv.41 特性:ものひろい 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      ドンカラス♀ Lv.55 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:96匹 捕まえた数:10匹

 主人公 鞠莉
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      パルキア Lv.75 特性:テレパシー 性格:せっかち 個性:ちのけがおおい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:312匹

 主人公 ダイヤ
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
      ディアルガ Lv.75 特性:テレパシー 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:114匹


 千歌と 梨子と 曜と 善子と 花丸と ルビィと 鞠莉と ダイヤは
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter074 『やぶれた世界』 【SIDE Chika】





──昔々、ウラノホシにはメレシーというポケモンが棲んでいました。

メレシーは身体に宝石を持っている、それはそれは美しいポケモンで

人々は、そんなメレシーたちを大切に想いながら、仲良く暮らしていました。

そんなメレシーの中でも、一際美しいメレシーが居ました。

ピンク色のダイヤモンドを持ったメレシーで、その美しさに誰もが目を奪われました。

名をディアンシー。どんなメレシーよりも美しく、清いメレシーでした。

最も美しいメレシーの仲間・ディアンシーは、メレシーたちからも、人間からも、尊敬される存在でした。

いつしかディアンシーは、メレシーの女王と呼ばれるようになりました。

そんな女王様は少しだけ特別な力を持っていました。

女王様の光は怪我を治し、心を癒やしてくれる。

そんな女王様を人々は大層大事に扱っていました。


人々は女王様にお供えをして、そのお礼に女王様は人々に多くの癒やしと、輝きを与えました。

南の端に、色とりどりの宝石の洞窟を

東の海に、煌く珊瑚の楽園を

西の草原に、太陽と月の輝きを

北の山に、ダイヤモンドの儚さを

真ん中に、水晶の湖を

そして、聳える大樹に、光の果実を

世界は女王様と共に大きく発展し、より大きな輝きを得ていきました。


女王様の輝きの力で、大きく成長した居心地の良い大樹は、何時しか龍が棲み付き

その龍が大きな啼き声と、音で、人々とポケモンを見守っていたため、この一帯は“オトノキ”と呼ばれるようになりました。


平和な平和な地方でした。

発展し、より広く、多くの場所に人間が住む場所を移し、大きく広がっていきました。

それは本当に広く

……女王様の癒やしの光が届かない場所までも、広く拡がっていきました。


ですが、あるとき、光の届かない場所で、人々は気付いてしまいました。

あの光の美しさに。あの光の温かさに。あの光の尊さに。

次第に光の届かない場所の人々は、光を奪い合うようになりました。

絶えず争いが起きました。

そして、ついに光の源である、メレシーたちとその女王様を独り占めにしようとする人間が現われたのです。


女王様はその人間の穢れた心に、酷く哀しみを覚え。

世界の裏側へと、その姿を隠してしまいました。

女王様が身を隠すと、輝きはどんどんと小さくなっていき

こうして何時しか、世界から、美しい宝石の輝きが失われたのでした……。


姿を隠した女王様は、今でもこっそりと地方を見守っています。

女王様は直接、姿を現すことは滅多になくなりましたが

信頼出来るメレシーと、選ばれた巫女の前だけは

自分の気持ちを伝えに現われることがあるそうです──。





    *    *    *




千歌「──ん……」


──何か夢のようなものを見ていた気がする。

クロサワの祠から、開けてもらったホールを潜り抜けて、この場に辿り着くまで、

一瞬──永遠のような夢の中で……何かお話を聞いていた気がする。

──私は目を開いた。


千歌「──ここが……」

ルビィ「……やぶれた世界」


ルビィちゃんと二人で辺りを見回す。

そこは異様と言う他ない空間だった。

地面は浮き、その下には空が見える。

壁は床で、床は天井、天井は床になっている。

滝は下から上に落ちていて、見えない足場が見える。

自分でも何を言っているかわからないけど、“そう”なのだ。

ただ、それがおかしいものだとは何故か感じない。

この世界ではそれが常識だと言うことが感覚的にわかる。そんな世界。


ルビィ「千歌ちゃん」

千歌「……うん、進もう」


私たちはこの不思議な空間を進んでいく……。





    *    *    *





──やぶれた世界、奥部。


 「──ギシャラーーーーー」


見たこともないポケモンが周囲の足場の周りを高速で飛んでいる。

そのポケモンに向かって、


聖良「プテラ!! “ストーンエッジ”!!」
 「プテァァァ!!!!!!」


聖良が攻撃を撃っている。


果南「聖良っ!! これ以上、そのポケモンを狙わないでよ!!」

聖良「そういうわけには行きません。この世界の掌握はギラティナあってこそなんですから」


さっきからギラティナと呼ばれたポケモンを追い回している。

私はそんな聖良を壁を走りながら追いかけている。


聖良「巻き込んでしまったのは謝りますが、果南さんこそ邪魔をしないで貰えませんか?」


聖良が空から私を見上げながら、話しかけてくる。


果南「でも、ギラティナ嫌がってるじゃん!!」


嫌がってるし、攻撃をされて混乱している。

あちこちを無茶苦茶に飛び回り、ギラティナが啼き声をあげるたびに、

足場が出たり消えたり、重力が上下反転したりしている。

ギラティナがこの世界の掌握の鍵と言うのはどうやら事実らしいけど、正直あんな風に追い回していい存在だとは思えない。

まさに人の手に負えるようなポケモンじゃない。


果南「く……せめて、飛べるポケモンは連れてくるべきだった……!!」


鞠莉の言う通り、スワンナを連れてくるべきだったかもしれない。

とは言っても、飛行するにもどこからどこが地面で、どこからどこが空なのかよくわからない空間でうまく飛行出来るのかはわからないけど……。

聖良は器用にも、この理不尽な空間の癖を即座に暴き、うまく飛行している。

クロサワの入江では、ほとんどパルキアとディアルガの指示に時間を割いていて、まともなバトルにはならなかったが、彼女は頭も良く、相当な実力者なんだろう。

このままじゃ、追いつけない。


果南「くっそ……!!」


私は一旦足を止めて、考える。


果南「……ん?」


そこで気付く。猛スピードでギラティナを追って遠ざかっている聖良と、あまり距離が離れていかない。


果南「……なるほど」


ここではどうやら速い≠速いのようだ。


果南「ヤドラン!」
 「ヤド……?」


私はヤドランを繰り出す。

距離が変わらないなら、遅いヤドランを使っても変わらない。


果南「ヤドラン! “サイコショック”!!」
 「ヤード……」


ヤドランが念動力で作り出したブロックを聖良に向かって飛ばす。

──が、


理亞「チリーン!! “サイコショック”!!」
 「チリリィーーン!!!!」

果南「!」


理亞が浮いてる足場の影から飛び出して、私の攻撃と相殺させてくる。


理亞「ねえさまの邪魔をするな……!!」

果南「く……」


さすがにこのルール無用の空間で、聖良を追いながら、理亞を捌くのはキツイ。

私は周囲を見回しながら、どうにか策がないか考える。

この空間に連れてこられて、結構な時間、聖良を追っていたため、随分と下に登って来てしまった。

そのため、入口はすぐ近くにある。


果南「……ぐ、ああ、もう!! 頭の中がごちゃごちゃになる!?」


常識が摩り替わっているのか、考えていることと、見ていることと、認識していることがうまく噛み合わない。

こういう小難しい状況は本当に苦手だ。

そんな中──


 「果南ちゃーん!!」


千歌の声がする。


果南「……え!? 千歌!?」


驚いて、声のする方を見ると──いや居ないし。

たぶん、こういうときは……と思って逆を見ると、


千歌「果南ちゃーん!!」

ルビィ「果南ちゃん!!」


千歌とルビィちゃんがこちらに向かって、遠ざかって……ああもうどっちだ。


理亞「! まさか、ここまで追ってきた……!?」





    *    *    *





千歌「果南ちゃーん!!!」


声を張り上げて呼ぶほどに果南ちゃんは何故か、私たちが来る方向とは逆を向いている。

それは置いておいて、かなり下に登ったところに見える果南ちゃんとの間には理亞ちゃんの姿。

私とルビィちゃんは、壁を走って下に登っているんだけど……。

果南ちゃんとの距離感が全然詰まらないし、

位置関係上、果南ちゃんの間に居るはずの理亞ちゃんだけが何故かどんどん近付いてくる。


千歌「も、もうー!!! どうなってんのこれー!!!」


私が叫びをあげると、


ルビィ「ごめん千歌ちゃん! 先に行くね!!」


ルビィちゃんが前に飛び出す。


千歌「うぇ!?」

ルビィ「たぶんこの辺りは左に進むと果南ちゃんの方に前進するみたいだよ!!」


どうやら、ルビィちゃんは先にコツを掴んだらしい。

言われたとおり、左に向かって走ってみる。


千歌「おぉ、ホントだ!! 果南ちゃんがどんどん近付いてくる!!」


とにかく、この調子で果南ちゃんと合流しよう……!!





    *    *    *





ルビィ「理亞ちゃん!!」

理亞「っ!! ルビィ……!!」


理亞ちゃんと視線が交錯する。


ルビィ「コラン!! “ムーンフォース”!!」
 「ピピピピ」

理亞「チリーン!! “じんつうりき”!!」
 「チリーッ!!!!」


コランの撃った光が、“じんつうりき”で捻じ曲げられ掻き消える。

でも、ルビィはそんなのおかまいなしに、掻き消えた光を突き抜けながら、理亞ちゃんに向かって突進する。


理亞「!?」


そのまま、タックルするような形で理亞ちゃんを巻き込み、足場の外に飛び出した。


千歌「ルビィちゃん!?」


背後から千歌ちゃんの驚くような声が聞こえる。

が、私たちは重力に引っ張られ、上の方へと落ちていく。


理亞「は、はなせ!!」

ルビィ「千歌ちゃーーーーーん!! 果南ちゃーーーーーーん!!」


二人に聞こえるように、大きな声で叫ぶ。


ルビィ「理亞ちゃんはルビィがどうにかするからーーーーー!! 二人は聖良さんをーーーーーーー!!」

千歌「! わかったーーーーー!!!!」


──そのまま一気に急上昇して、上に向かって落ちていく。

空中に浮かぶ足場を5個ほど通り過ぎたところで、


理亞「放せって言ってんでしょ……ッ!!」


理亞ちゃんに思いっ切り蹴飛ばされて、一人で空中に投げ出される。


理亞「クロバットッ!!!」
 「クロバッ!!!!」


理亞ちゃんの肩を掴み紫の翼を広げるクロバット、


ルビィ「ドンカラス!!」
 「カァーーーー!!!!!!」


ルビィもドンカラスを繰り出す。ドンカラスは、その脚でルビィの小さな肩を鷲掴みにし、黒い翼で空を舞う。


理亞「ルビィ……ッ!!!! お前はどこまで私の邪魔を……!!!」

ルビィ「理亞ちゃんがこんなことをやめてくれるまでだよ!!!」

理亞「……上等ッ!! 今度こそ、完膚なきまでに叩きのめすッ!!!」

ルビィ「今度はルビィが勝つよ!!!」


──理亞ちゃんとの最終戦。その火蓋が切って落とされる。


ルビィ「コランッ!! “パワージェム”!!」
 「ピピピピ!!!!!」


下降するルビィたちに追いついたコランが、エネルギーの篭もった宝石を飛ばす。


理亞「……!!」


理亞ちゃんはボールを放り、


 「ゴォーーーーリ!!!!!!!」


“パワージェム”は飛び出したオニゴーリの眼前に作られた氷に壁にぶつかって止められる。

そして理亞ちゃんは間髪居れず、ルビィたちが飛んでいるすぐ近くにある横壁に、次のボールを放る。


 「グマァァッ!!!!!!!」

理亞「リングマッ!!!! ぶっ潰せ!!!」


リングマが大きな腕を振りかぶる。


ルビィ「コラン!! “てっぺき”!!!」
 「ピピピピッ!!!!!」


──ガインッ!!!

ルビィの間にコランが割り込むように飛んできて、リングマの拳を防ぐ。

だが、完璧に防ぎきれず、強烈な拳によってコランは空中をノックバックする。


理亞「チリーンッ!!! “テレキネシス”!!!」
 「チリリーンッ!!!!」

 「ピピピッ!?!?」
ルビィ「……!!」


そこに、コランが浮力を無理矢理与えられて、下に向かって吹っ飛んでいく。


ルビィ「コラン!! “じゅうりょく”!!」
 「ピピピィ!!!!!」

理亞「!?」
 「クロバッ!!?」


すぐに“じゅうりょく”で“テレキネシス”を無効化すると同時に、

空中に居た、ドンカラス、コラン、クロバット、チリーン、オニゴーリが“じゅうりょく”の影響で一気に上の床に向かって加速する。


理亞「オニゴーリッ!!!!! メガシンカ!!!!」
 「ゴォォォォォーーーーリ!!!!!!!!」


理亞ちゃんのメガブレスレットに呼応して、オニゴーリが光り、メガオニゴーリへと姿を変える。

強力な冷気を使って、自身の身体から氷柱を伸ばして、自分たちが落ちそうになっていた上方の床、リングマの立っている壁、そして下方の天井の三点に突き立ててその場に留まる。

一方ルビィは、“じゅうりょく”の言うがまま上方の床に向かって落ちていく。


ルビィ「アチャモッ!!!」
 「チャモォ!!!!!!」

ルビィ「“ブレイククロー”!!!」


ルビィは咄嗟にアチャモを繰り出して、オニゴーリが作り出した氷の柱に向かって爪を立てさせ、そのままアチャモの体に掴まる。アチャモは爪を引っ掛けて、落下速度を減速させる。

そして、続け様にボールから、


 「クーーーーマーーー!!!!!」


ヌイコグマを出して、今度はヌイコグマに掴まって、


ルビィ「ヌイコグマさん!!! “メガトンキック”!!!」
 「クーーーーマーーー!!!!!!」


思いっ切り前脚を氷柱にぶち当て、その反動でヌイコグマと一緒に、リングマの居る方の壁に飛ぶ。

すると、重力圏が上方の床から、横方向の壁に切り替わり、壁側に引っ張られる。


 「グマァァッ!!!!!!!」


もちろん、そこにはリングマが待ち構えている。


 「クーーーマーーーー!!!!!!」

 「グマァァァッ!!!!!!」


両者は同時に拳を構える。


ルビィ・理亞「「“アームハンマー”!!!!」」
 「クーーーーマーーーーー!!!!!!」「グゥゥゥゥマァァァァァ!!!!!!!!」


二匹の拳がぶつかり合う。

リングマの方が単純なパワーは上だけど……こっちは“じゅうりょく”の力を借りて振り下ろされた拳だ。

二匹の攻撃がほぼ同程度で相殺し、弾ける。

ルビィはその反動の勢いを借りて、リングマから距離を取りながら横壁に着地し、手持ちの状況を確認する。

上方床、コランが“じゅうりょく”で落ちながら。


 「チリリィーンッ!!!!!」「ピピピピッ!!!!!」


チリーンの“しめつける”に身を捻りながら応戦している。

ルビィの居る横壁では、


 「グマァァッ!!!!!!」「クーーーマーーーッ!!!!!!!」


再び、ヌイコグマとリングマが組み合う。ドンカラスは横壁に降りてきたルビィの肩を掴んだままだ。

──空間中央、理亞ちゃんはオニゴーリの作り出した氷に掴まって、氷柱に爪を引っ掛けているアチャモに向かって攻撃を放つ。


理亞「“こごえるかぜ”!!!」

ルビィ「アチャモ!! “ねっぷう”!!!!」

 「ゴォォォーーーーーリ!!!!!!!」「チャモォォォーーーーー!!!!!!」


二匹の風がぶつかり合う。


理亞「マニューラァッ!!!!!」
 「マニュッ!!!!!」


ただ、アチャモは単身。この期を逃すまいと、マニューラが飛び出す。


ルビィ「ゴマゾウさんっ!!!!」
 「パォォォ!!!!!」


ルビィの元からはゴマゾウが“ころがる”状態で氷柱を猛スピードで駆け上がりながら飛び出す。


理亞「邪魔だぁッ!!! オニゴーリ!! “ぜったいれいど”!!!」


そんなゴマゾウに向かって放たれる、“ぜったいれいど”。

アチャモにはマニューラが迫る。


ルビィ「みんなッ!!!!」


ルビィは叫ぶ。自分たちの手持ちに向かって、


ルビィ「ルビィはここで、理亞ちゃんを止める……ッ!!!! 絶対にッ!!!! だから──だから、力を貸してぇーーー……ッ!!!!!!」

 「クーマー──」「パォォォ──」「チャモォ──」

理亞「……!?」


ルビィの叫びに呼応するようにキテルグマ、ゴマゾウ、アチャモが光り輝く──これは、


理亞「このタイミングで三匹同時進化!?」


 「──クマァーーーーーーッ!!!!!!!」「──パァオォォォォォ!!!!!!!!!」「──シャモォッ!!!!!!!」

ルビィ「キテルグマッ!!!! “ぶんまわす”!!!」
 「クマァッ!!!!!!!」

 「グマァッ!!!?」


進化してパワーアップしたキテルグマが、組み合ったままだったリングマを持ち上げ“ぶんまわす”……!!

一方、ゴマゾウに迫っていた“ぜったいれいど”──だが、


 「パァァォォォォォォ!!!!!!!!」


その冷気を無視するように、ゴマゾウが進化した姿──ドンファンがオニゴーリに迫る。


理亞「!? しまった!? “がんじょう”!?」

 「ゴォォーーリッ!!!?」


進化して、一撃必殺を無効にする特性を得たドンファンが、オニゴーリに“ころがる”を直撃させる。

と、同時に──


 「マニュ!!!!!」


迫るマニューラを、


 「シャーモッ!!!!!」


ワカシャモが壁に引っ掛けるのを進化して得た前爪に切り替え、蹴りをかます。


 「マニュッ!!!!!!」


マニューラは長い鉤爪でガードをするが──

素早い蹴撃が更にもう一発……!!


 「マニュッ!!!?」


マニューラを蹴飛ばす。──“にどげり”だ。


理亞「ッ!!!! オニゴーリ!!!!」
 「ゴォォォオオーーーーリ!!!!!!」

ルビィ「!!」


“ころがる”を直撃させた、ドンファン。だが、オニゴーリはどうやら、大きな顎で噛み付いて、受け止めたようだった。


理亞「“こおりのキバ”!!! そのまま、凍らせろ!!!」

 「パ、パォォォ!!!!!」

ルビィ「ワカシャモ!!!!!」

 「シャモッ!!!!!」


マニューラの迎撃に成功した、ワカシャモが爪を引っ掛けながら氷柱を登り、オニゴーリに向かって飛び出す。


 「シャモッ──」


そして、その最中、再び光に包まれる──


理亞「……!? 二段階連続進化……!?」

ルビィ「──バシャーモッ!!!!!」

 「──バ、シャァーーーーモ!!!!!!!!」

ルビィ「“ブレイズキック”!!!!!」


炎の蹴撃が、オニゴーリ蹴っ飛ばす。


 「ゴォォォオォォーリ!!?!?」

 「シャーモッ!!!!!」


強烈な攻撃の衝撃に、オニゴーリが噛み付いていた顎が開き、ドンファンが解放される。


「パァァァォッ!!!!!」

理亞「……ッ!!!!」


更に“ブレイズキック”で怯んだオニゴーリに向かって、


 「クーーーーマッ!!!!!!!!」

 「グマァッ!!?」


キテルグマがぶん回していた、リングマをぶん投げた。


理亞「……!!!!?」

 「パァァォッ!!!!」「シャーモッ!!!!」


ドンファンとバシャーモは即座に離脱し、氷柱に体を押し当て減速しながら、上方の床に向かって滑り降りていく。


 「グマァッ!!!?」


リングマが氷柱に直撃し、氷柱が砕け散る。

これで、リングマと、オニゴーリを同時に──


理亞「……この程度でやられるわけない」

ルビィ「……!!」


そう言う理亞ちゃんの傍らでは、

 「ゴォォーーーリ……!!!」


オニゴーリ冷気で一瞬で作り上げた、巨大な氷の手で、リングマをキャッチしていた。


 「グマッ……」


リングマは戦闘不能に出来たけど、オニゴーリはまだ顕在……!!

そのタイミングで、体がフッと軽くなる。

“じゅうりょく”が切れたんだ……!!


ルビィ「キテルグマ!! 戻って!!」
 「クマッ──」


キテルグマをボールに戻して、

 「カァカァッ!!!!!」

ドンカラスと一緒に再び飛び立つ。


 「ピピピピィ!!!!!」「チリリィーーーンッ!!!!!」


上方の床で、攻防を続けるコランとチリーン。二匹が“じゅうりょく”から逃れてしまう前に──


ルビィ「コラン!! “だいちのちから”!!」

 「ピピピピピィ!!!!!!」


コランを中心に上方の床から、大地のエネルギーが沸きあがり、


 「チリリッ!!?」


チリーンを打ち上げる。


理亞「チリーンッ!!? っ……!! ……行け、カブトプスッ!!!」
 「カブトッ!!!!」


チリーンを戦闘不能にしたら、間髪居れずカブトプスが氷柱を蹴って、下から上の床に向かって降って来る。


 「マニュッ!!!!!」


体勢を立て直したマニューラもそれに続くように飛び出す。

ルビィは、全速力で手持ちたちが居る上の床に一気に降りて行き、

その最中で声を張り上げて、指示を出す。


ルビィ「バシャーモッ!!! 氷柱を根元から蹴り砕いて!!!」

理亞「……!!」

 「シャーーーモッ!!!!!」


バシャーモの脚に炎が宿る、

そのまま、軸足を使って、体を回転させながら、氷柱の根元に“ブレイズキック”を炸裂させる──。

──バキバキバギギッ!!!! と、派手な音を立てて、氷柱が傾きはじめる。


理亞「オニゴーリッ!! “ころがる”!!!」
 「ゴォォォーーーーリ!!!!!!」


オニゴーリが傾く氷柱を転がりながら、猛スピードで上に向かって下り始める。

理亞ちゃんはクロバットでその後を追いながら、


理亞「マニューラッ!!!!

 「マニュッ!!!!!」


上の床に向かって、氷柱を走り下っていたマニューラに指示を出す。


理亞「ルビィとドンカラスを狙え!!」

 「マニュッ!!!!!!」

ルビィ「!!」


上の床に向かって絶賛下降中だった、ルビィとドンカラスの方に向かって、マニューラが飛び掛ってくる。


ルビィ「……きっと、そうくると思ってたよ!!」

理亞「!?」


ルビィが構えたボールから、飛び出すのは──

 「アブリリリリッ!!!!!!」

巨大な“かふんだんご”を抱えたままボールから飛び出したアブリボンの姿。


理亞「“かふんだんご”!? ボールの中に居る間に作ってた……!?」

 「アブリッ!!!!!」


こっちに飛び掛ってくる最中で、もう空中での制御が利かないマニューラに向かって、特大の“かふんだんご”を投げつける。


 「マニュッ!!!?」


空中でマニューラに炸裂し、爆発する。

そして、追い討ちを掛けるように、


ルビィ「“マジカルシャイン”!!!」
 「アブリリリリッ!!!!!!!」


アブリボンから発せられた閃光がマニューラを焼く。


 「マニュゥッ……!!!!」


マニューラを撃ち落し、すぐに視線は上方の床、ドンファンへ、


 「カーーーブッ!!!!!!」


鎌を振りかぶって、ドンファンに向かって飛び降りてくるカブトプス。


ルビィ「ドンファン!! “みだれづき”!!」
 「パァァオォォォォ!!!!!!」


ドンファンが牙を振るって、鎌と撃ちあう。


理亞「“アクアブレイク”ッ!!!」


だが、カブトプスの全身を水のエネルギーが滾って、


 「パァァォッ!!!?」


そのまま撃ち合っていた、ドンファンを火力で打ち負かし、怯ませる。


 「──シャモッ」


──だが、怯んだドンファンを飛び越えるようにして、横薙ぎに突き出されるバシャーモの膝……!!


ルビィ「“とびひざけり”!!!」

 「カブッ!!!!?」


強烈な蹴りが、カブトプスの頭部にクリーンヒットし、何十メートルも吹っ飛ばす。


理亞「──うぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!!!」

ルビィ「!!」


カブトプスが戦闘不能になる最中、ルビィに向かって理亞ちゃんが雄叫びをあげながら降って来る。


理亞「クロバットッ!!! “クロスポイズン”ッ!!!!」
 「クロバァッ!!!!!!!」

 「カァッ!!!!!?」
ルビィ「っ!!!!」


ルビィの肩を掴んでいた、ドンカラスに不意の“クロスポイズン”が直撃する。


 「カァカァ!!!?!?」


ドンカラスはルビィを掴んだまま、回転して上の床に向かって墜落する。


ルビィ「っ゛……!!!」


そのまま、ドンカラスと共に床に身体を打ち付ける。

──でも、まだだ……!!

痛がってる場合じゃない。すぐさま、起き上がって状況を確認する。


 「カァ……ッ」


“クロスポイズン”の直撃を食らったドンカラス。アブリボンの特性“スイートベール”のお陰でどく状態にはならなかったが、ダメージが大きい。


ルビィ「アブリボン!! “かふんだんご”!!」
 「アブリリリッ!!!!!」


吹っ飛ばされたルビィたちを追いかけるように下降してきた、アブリボンが仲間用に作った“かぶんだんご”でドンカラスを回復させ、それを確認してからドンカラスをすぐにボールに戻す。

ドンカラスが動けなくなったら、ルビィの一切の飛行手段が絶たれてしまう。それは回避しなくちゃいけない。

──が、これは悪手だった。


理亞「全て……凍り付け……!!! オニゴーリ!!! “はかいこうせん”!!!!!」
 「ゴォォォォォォリィィィィィィ!!!!!!!!!!!」

ルビィ「!?」


回復の隙に、上空から、メガオニゴーリが“フリーズスキン”によって強化した、全てを凍らせる破壊の閃光を発射する。

──防御……!? 間に合わない……!!

ルビィは弾けるように飛び出して、バシャーモの元へ──


理亞「……あああぁあぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」


理亞ちゃんの気合いの咆哮と共に、“はかいこうせん”が着弾し、辺りが一気に凍りつく。


ルビィ「──……!!!」


──野太い大出力の“はかいこうせん”は着弾と共に、床の上を一気に拡がり、一面を一瞬で氷の世界に閉じ込めた。


 「シャーモッ……!!!」

全身から炎を発する、バシャーモを除く、全てを……。

──ガァァァァンッ!!!!!

大きな音を立てて、


 「ゴォォォォォォリ!!!!!!!!」


オニゴーリが自ら作り上げた氷の世界の床に着地する。


ルビィ「はぁ……はぁ……っ……」

理亞「はぁ……はぁ……っ……」


オニゴーリのすぐ後ろで、理亞ちゃんがクロバットをボールに戻し、飛び降りて、ルビィと同じように息を切らせている。


理亞「……はぁ……っ……はぁ……。……やる……じゃない……っ……」

ルビィ「は……はぁ……っ……、理亞ちゃんも……っ……!!」

理亞「……ふふ……生意気……!!」


理亞ちゃんはそう言って、何故だか笑う。

お互いの全てを懸けた、最後の戦いなのに。


ルビィ「……ふふ……」


──そこで気付いた。ルビィも笑っていた。


理亞「……最後は、私が……勝つ……!! ねえさまのために……私は……!!!」
 「ゴォォォォォォォ──!!!!!」


理亞ちゃんの気合いと共に、オニゴーリが一段と強力な冷気のオーラを放ち始める。


ルビィ「理亞ちゃんは……!!! わたしが勝って、わたしが止める……っ!!!!」
 「バ、シャァァァァァーーーーモッ!!!!!!!!」


バシャーモも同様に、燃え盛る炎熱を発する。

──恐らく次が最後の攻撃になる。そんな予感がした。


ルビィ「お姉ちゃん……!! 力を貸して──!!」


ルビィはポケットから──旅立ちのあの日に、お姉ちゃんから貰った“ほのおのジュエル”を取り出して、傍らのバシャーモに投げ渡す。


 「バ、シャモォッ!!!!!!」


ジュエルを受け取った、バシャーモをそれを拳に握り込み、割り砕く。

輝石が砕け、散った輝きが──そのまま、バシャーモの炎のオーラを爆発的に増強させ、脚にとてつもない大きさの炎を宿す。


ルビィ「──これで、最後だよ……!!」

理亞「……決めようじゃない……どっちが正しいか……!!」

ルビィ「お互い譲れないから……!!!」

理亞「……戦って決めるしか……ないっ!!!! 最後に立ってた方が……正義だ!!!!」

ルビィ「バシャーモッ!!!!!!」
理亞「オニゴーリッ!!!!!」


お互いの声と共に、


 「バ、シャァァァァーーーーーモッ!!!!!!!!」
 「ゴォォォォォーーーリッ!!!!!!!!!!!」


更に一段階、強化された炎のオーラと氷のオーラが──ぶつかり合う……!!


理亞「オニゴーリッ!!!!!! “ふぶき”ッ!!!!!!!」
 「ゴオオオォオォォォォォォォォーーーーーーーーリィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


オニゴーリから最大級の冷気が放たれる。

それを迎え撃つように、


ルビィ「バシャーモッ!!!!! “ブレイズキック”ッ!!!!!!!」
 「バ、シャァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーモッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


バシャーモが爆炎を宿した、左脚を薙ぐ。


理亞「凍り付けえぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!」

ルビィ「いっけぇぇーーーーーッ!!!!!!!!!!」


巨大な寒波が、迫る。

それを爆熱と爆炎が、迎え撃つ。

──灼熱と吹雪がぶつかり合い。爆ぜる。

お互いの攻撃が鍔競り合う。


 「バシャッ……ッ!!!!!」


だが、ある一瞬を境に、バシャーモの炎が僅かに翳りを見せる。

──火力が足りない。


理亞「!! 私の、私たちの……勝ちだぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
 「ゴォォォォォォォーーーーーーリッ!!!!!!!!!!!!!」


理亞ちゃんの気合いの雄叫びと共に、炎を掻き消して迫り来る“ふぶき”。


ルビィ「バシャーモッ!!!!!!!」
 「バシャモッ!!!!!!!」


左脚の炎は押し負けて掻き消された、

──だから、


理亞「……なっ!?」


バシャーモは先ほどまで使っていた左脚で思いっ切り大地を踏みしめ、

 「バ、シャァァァーーーーーモ!!!!!!!!!!」

それを軸足にして。さっきとは“逆の脚”で

──本当の本当に、ありったけ、全ての炎熱エネルギーを載せた──“右脚”の業炎で、


ルビィ「……いっけぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!」
 「バッシャアァァァァァァァァァーーーーーーモォッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


オニゴーリの冷気を──押し返す。


理亞「……くそ……っ」


爆炎はそのまま、理亞ちゃんとオニゴーリを飲み込んで──


理亞「……私は……こんなところで……っ……!!!!」


全てを、ありったけの焦熱と共に……蹴り飛ばした……──!!




    *    *    *





聖良「りあ、なにかほしいものはない?」

理亞「……ない」

聖良「……なにも?」

理亞「……ねぇさまがいればいい……ほかはなにもいらない」

聖良「…………」

理亞「ねぇさまいがいは……みんな、いなくなっちゃうし……なくなっちゃうから……」

聖良「りあ……」

理亞「……でも」

聖良「……?」

理亞「……もし……ずっと、そばにいてくれるなら……あったかいひかりがほしい」

聖良「……え……?」

理亞「……わたしは……また──」


………………

…………

……





    *    *    *




──なんだか……懐かしい夢を見た気がした。


理亞「──ねぇ……さま……」


目を開く──ぼんやりとする視界の先で、


ルビィ「理亞ちゃん……おはよう」


ルビィの顔があった。


理亞「…………」


私は、ルビィの膝の上で、目を覚ました。

そして──理解する。


理亞「……負けた」


辺りはバシャーモの炎熱によって、氷の結晶、一欠片すらも残さず溶かし尽くされたようだった。


理亞「……ルビィ」

ルビィ「ん?」

理亞「……あんた……なんでそんなに強くなってんのよ……」

ルビィ「……理亞ちゃんが居たからだよ」

理亞「……なにそれ」

ルビィ「ルビィの旅は……理亞ちゃんとの出会いから、始まって……理亞ちゃんを追いかけて、理亞ちゃんに負けないように、理亞ちゃんに想いを示すために……強くなって、ここまで来たんだよ」

理亞「…………」

ルビィ「ルビィ……そんなに強かった?」

理亞「……強かったわよ……バカじゃないの」

ルビィ「ふふ、そっか」


ルビィは微笑む。


ルビィ「……ねぇ、理亞ちゃん」

理亞「……なに」

ルビィ「ルビィが勝ったから……ルビィの言うこと聞いてくれる?」

理亞「…………そういう話だったから」

ルビィ「うん……ありがと。じゃあ……教えて」


ルビィは一呼吸置いて、問うてきた。


ルビィ「理亞ちゃん……本当はどうしたかった?」

理亞「……え?」

ルビィ「こういうやり方で……よかった?」

理亞「…………私は」


──私は、



──なんだか……懐かしい夢を見た気がした。


理亞「──ねぇ……さま……」


目を開く──ぼんやりとする視界の先で、


ルビィ「理亞ちゃん……おはよう」


ルビィの顔があった。


理亞「…………」


私は、ルビィの膝の上で、目を覚ました。

そして──理解する。


理亞「……負けた」


辺りはバシャーモの炎熱によって、氷の結晶、一欠片すらも残さず溶かし尽くされたようだった。


理亞「……ルビィ」

ルビィ「ん?」

理亞「……あんた……なんでそんなに強くなってんのよ……」

ルビィ「……理亞ちゃんが居たからだよ」

理亞「……なにそれ」

ルビィ「ルビィの旅は……理亞ちゃんとの出会いから、始まって……理亞ちゃんを追いかけて、理亞ちゃんに負けないように、理亞ちゃんに想いを示すために……強くなって、ここまで来たんだよ」

理亞「…………」

ルビィ「ルビィ……そんなに強かった?」

理亞「……強かったわよ……バカじゃないの」

ルビィ「ふふ、そっか」


ルビィは微笑む。


ルビィ「……ねぇ、理亞ちゃん」

理亞「……なに」

ルビィ「ルビィが勝ったから……ルビィの言うこと聞いてくれる?」

理亞「…………そういう話だったから」

ルビィ「うん……ありがと。じゃあ……教えて」


ルビィは一呼吸置いて、問うてきた。


ルビィ「理亞ちゃん……本当はどうしたかった?」

理亞「……え?」

ルビィ「こういうやり方で……よかった?」

理亞「…………私は」


──私は、


理亞「…………私は……もっと、皆が笑える方法で……ディアンシーに会いに来たかった」

ルビィ「……うん」

理亞「……でも、ねえさまが……私を抱えて、背負って、育ててくれた、ねえさまが……望んだから……私は……」

ルビィ「…………」

理亞「…………クリフでルビィから訊かれたこと」

ルビィ「……?」

理亞「どうしてあのとき、ルビィを入江に攫ったのか……ってこと」

ルビィ「……ぁ、うん」

理亞「あのとき……本当は、あの場で……ルビィに、ディアンシーに引き合わせて欲しかった……」

ルビィ「!」

理亞「そうしたら……こんな形にはならなかったのかな……って」

ルビィ「……」

理亞「ねぇ、ルビィ」

ルビィ「……なぁに?」

理亞「あのとき、頼んでたら……ディアンシーに会わせてくれた……?」

ルビィ「……うぅん。断ってたよ」

理亞「……そっか」

ルビィ「……うん。ルビィは──クロサワの巫女だから」

理亞「どっちにしろ……私はこうするしかなかったんだ」

ルビィ「……かもしれないね」

理亞「でも……もう、これで、全部終わり……私は負けたから……っ……」


自然と、涙が溢れてきた。

どこで間違えたのか。

いや……最初から、間違っていたのかもしれない。

ディアンシーに命を救われた、あの日、あのときから……。

そして、終わった……。

でも、ルビィは──


ルビィ「──終わりじゃないよ」


そう、言った。


理亞「……え?」

ルビィ「これからまた……頑張って、ディアンシー様に認めてもらえるように努力すればいい」

理亞「……ルビィ」

ルビィ「ルビィも協力する。……もちろん、簡単に引き合わせてはあげられないけど……私は──」

理亞「──クロサワの巫女だから?」

ルビィ「ふふ……うん」

理亞「……そっか」


全身から力が抜ける。なんだか、疲れてしまった。

帰ったら、恐らく檻の中だと思う。

これだけのことをしたのだから。

でも……いつになるかわからないけど……全てを償って、精算したら、また一からやり直すのも──何故だか、悪くないんじゃないかと、そう思った。


理亞「いつか……」

ルビィ「うん」

理亞「いつか……クロサワの巫女に……認めて貰えるようになって……ディアンシーと会う……それで、いいのかな」

ルビィ「うん……待ってるよ。理亞ちゃん」

理亞「……ありがと。……ルビィ──」


こうして私とルビィの長い長い戦いは……ようやく決着したのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【やぶれた世界】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 ルビィ
 手持ち バシャーモ♂ Lv.50 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.39 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      キテルグマ♀ Lv.46 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      ドンカラス♀ Lv.56 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:104匹 捕まえた数:14匹

 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.53  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.47 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.54 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.49 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.58 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.47 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:155匹 捕まえた数:15匹

 主人公 果南
 手持ち ラグラージ♂ Lv.75 特性:しめりけ 性格:やんちゃ 個性:ちからがじまん
      ニョロボン♂ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ギャラドス♀ Lv.74 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      ?????? ?? 特性:????? 性格:???? 個性:??????
      キングドラ♂ Lv.71 特性:スナイパー 性格:ひかえめ 個性:ぬけめがない
      ヤドラン♂ Lv.73 特性:マイペース 性格:ひかえめ 個性:ひるねをよくする
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:281匹 捕まえた数:137匹


 ルビィと 千歌と 果南は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




■Chapter075 『オトノキと音ノ木』






──コメコシティ。


花陽「フシギバナ!! “ねむりごな”」
 「バナァ」

 「サマヨー…」「ゴースゴス…zzz」


フシギバナの攻撃で、辺りのゴーストポケモンが眠っていく。


花陽「……これで、あらかた大人しくさせられたかな……?」


眠ったポケモンたちを一旦捕獲しようと、歩を進めた瞬間──。


 「カゲボー」「ジュペッ!!!」

花陽「!?」


眠ったポケモンたちの影に隠れていた、カゲボウズとジュペッタが飛び掛ってくる。


花陽「しまっ……!? “ふみん”の子が紛れて──!?」


慌てて身を引くが、間に合わない……!!

自分の顔を庇うように腕をあげ防御の姿勢を取ったが──


 「ブイブイッーーー!!!!!」「ゼリュリュリュリューーーッ!!!」

 「カゲボーッ!?」「ジュペッ!!!」


近くの小川の方から飛んできた“みずでっぽう”によって、カゲボウズたちは吹き飛ばされた。

攻撃が飛んできた方向に目を配ると──


花陽「! あなたたちは……!」

 「ブイブイ」「ゼリュゥ」


いつぞやのブイゼルの子供。

……いや、あのときよりも一回りも二回りも大きくなっていて、独り立ちの頃を迎えた姿をしていた。


花陽「ありがとう……お陰で助かりました……」

 「ゼリュ」「ブブイ」


もう少し周りに気を配りながら、慎重にやる必要がある……そう自分に言い聞かせながら、


花陽「……他の町は大丈夫かな……」


わたしは不安を隠せずに居た。

どうか、みんな無事で居てくれればいいんだけど……。

そのとき、


 「──────キリュリリュリシィィッ────!!!!」

花陽「……? 何……?」


遠くから、何かが聞こえてきた。




    *    *    *





──ダリアシティ。


 「プワーー」「プワワー」「プゥワー」


街中のあちこちをフワンテが飛び回っている。


ここあ「ピクシー!」
こころ「プクリン!」


双子姉妹が息を合わせて戦う後ろから、更に


にこ「トゲキッス!」

にこ・ここあ・こころ「「「“マジカルシャイン”!!」」」
 「キッスッ」「ピクシィ!!!」「プクリンッ!!!」


妖精の光で、追い払う。


ここあ「にこにーが居ると、戦いやすいー!」

こころ「やすいー!」


他の仲間の勧めで、私はダリアの防衛に参加していた。

あまりの数の多さに手間取りはしたものの……。


にこ「……だいぶ、数も減ってきたわね……」


あともう一息でどうにか事態も終息しそうだ……。


 「────────キリュリリュリシィィッ────!!!!!!」

にこ「!? な、なに、この音……? ……啼き声?」





    *    *    *





──ヒナギクシティ。


希「“サイコキネシス”!!」
 「フーーーッ!!!!!」

 「ゲ、ゲンガ…」「ランプゥ……」


フーディンの“サイコキネシス”で襲ってくるゴーストポケモンたちを大人しくさせる。

辺りを見回すと、あちこちでトレーナーたちが応戦している。

まとまりのない町やけど、逆に言うなら先鋭的な人の多いこの町は、こういう事態には強いということなのかもしれんね……。


希「……さて、あともう一踏ん張り……? ……何?」


急に第六感が、今までになかった大きな存在の気配を告げてくる。

それから数秒後に──


 「──────────キリュリリュリシィィッ──」


遠方から啼き声が響いてくる。


希「これは……」





    *    *    *





──ローズシティ。


真姫「海未、ローズの方は粗方片付いたわ。あとは住人の避難誘導と、安全確認くらいよ」

海未『そうですか、ありがとうございます。真姫』

真姫「ついでに……クロユリの方も概ね片付いたらしいわ」

海未『はい、こちらでも報告は貰っています。ですが、真姫、くれぐれも最後まで気を抜かないで下さいね』

真姫「ええ、了解」


私は報告を済ませ、ポケギアの通話を終える。


真姫「……それはそうと──」

 「────キリュリリュリシィィッ──!!!!!」


南から響いてくる、大きな啼き声。


真姫「これは……何……?」





    *    *    *





──ホシゾラシティ。


 「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!!」


町中に響き渡る、巨大な啼き声。

それは北の音ノ木の方から響いてくる。

でも……


凛「龍の咆哮……? でも、いつもと全然音が違う……これって……」


──prrrrrr!!!!!

突然鳴り出すポケギアに出る。


天文所職員『所長! 聴こえてますか!?』

凛「……うん、麓のホシゾラシティでも聴こえてるよ」


しかもその天を劈く音は、どんどんと降りてきている気がする。


天文所職員『音が大きくなるに連れて、反応も大きくなっているんですが……!!』

凛「反応……? なんの反応?」

天文所職員『巨大なドラゴンポケモンのエネルギー反応です……!!』

凛「……!? ……まさか、この音……そのポケモンの啼き声なの……?」





    *    *    *






──セキレイシティ東、9番道路上空。

カイリューに乗ったまま、フソウ~セキレイのルートの巡回をしていた私──ツバサは、


 「────キリュリリュリシィィッ──!!!!!」


突然天から降って来た、この啼き声を聴いて、海未さんに連絡を飛ばしていた。


ツバサ「海未さん……この音、そっちでも聴こえてる?」

海未『はい。恐らく、地方中に響いています』

ツバサ「……これ、何? 音ノ木のメテノの爆発──『龍の咆哮』とは全然音が違う……聞いたこともないような音なんだけど」

海未『……私は、これと同じ音──いえ声を、昔聞いたことがあります』

ツバサ「……! 本当!?」

海未『……はい。これは、恐らく──』


海未さんが正体を言おうとした、そのときだった。

私の背後から、大きなドラゴンのようなポケモンが通り過ぎて──


ツバサ「!?」


そのまま、音ノ木の方へ向かっていく。

そのポケモンの背中には、自分と同じくらいの年頃の女性の後姿。

そして彼女を載せているオレンジの体躯のポケモンは──。


ツバサ「……リザードン!? まさか……!!」


私はカイリューに指示を出し、猛スピードで発進する。




    *    *    *





──セキレイシティ。


 「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!」

ことり「この……啼き声……!!」


この声は……聴いたことがある。


ツバサ「──ことりさん……!!」

ことり「! ツバサさん!」


音を聴いて、立ち尽くしていた私の元にツバサさんがカイリューに乗ったまま、降り立つ。


ことり「あ、あのね……!! この啼き声は──」

ツバサ「それよりも、ことりさん!! あれ……!!」


ツバサさんが音ノ木の方を指差す。

釣られるように視線を泳がせて、


ことり「え……? ……え!?」


戸惑いの声は、すぐに驚きの声に変わった。


ことり「あのリザードン……!! まさか……!!?」

ツバサ「ことりさん、行って。セキレイの街は私が引き受ける」

ことり「! い、いやでも……!!」

ツバサ「今会わなくちゃ、次いつ会えるかわからない、だから行って」

ことり「……! わかった! ありがとう、ツバサさん!!」
 「チルゥッ!!!!」


わたしはチルタリスに飛び乗って、音ノ木へ向かって飛び出した。





    *    *    *





──1番道路。


ことり『海未ちゃん!!』

海未「……ことり?」


先ほどから、ひっきりなしに掛かってくる、異常事態を共有するために鳴っているポケギアを取ると、今度は焦り気味に叫ぶことりだった。


ことり『この音……!! わたしたちが小さい頃に音ノ木に登って聴いた声と同じ啼き声だよね……!!?』

海未「ええ、間違いありません」


幼い時分に、二人の幼馴染と登った、龍の住まう樹の守り神の声。


海未「龍神様──レックウザの啼き声です」

ことり『それとね!! 今、音ノ木の上空に向かって、リザードンが飛んでいったの!!』

海未「!? それは本当ですか!?」

ことり『うん……!! 今向かってる……!! 海未ちゃんも来て!!』

海未「……で、ですが」


私には全体指揮の役割がある。

ここで、私情を挟んで、飛び出すわけには──

と、思った矢先。ポケギアを隣の人物に引っ手繰られた。


絵里「ことり? 話は聞いたわ。海未もすぐに向かうから」

海未「え、絵里!?」

絵里「行きなさい、海未。残りの指揮は私が引き継ぐから」

海未「で、ですが……!!」

絵里「……こんなときしか、顔出さないんだから、あの子は」

海未「……絵里」

絵里「幼馴染なんでしょ? 心配掛けられてばっかなんだから、たまには説教の一つでもかましてやりなさい」


絵里はそう言いながら、通話を終えたポケギアを再び私に向かって投げ渡してくる。


海未「……恩に着ます。カモネギ、飛びますよ!!」
 「カァモッ!!!!」


私はカモネギに掴まって、飛び出した。





    *    *    *





1番道路から全速力で飛び立ち、音ノ木付近で垂直に上昇をしている、ことりとチルタリスを見つける。


海未「ことり!!」

ことり「! 海未ちゃん!!」


そのまま、横に並ぶ形で上昇して行く。

そして、その遥か上方に、人を乗せたオレンジ色の影──


海未「リザードン……!!」

ことり「うん!! ──穂乃果ちゃんが……穂乃果ちゃんが戻ってきてくれた……!!」

海未「全く、絵里の言う通りですね……こんなときしか、顔を見せないんですから。たまには文句の一つでも言わないと、こちらの気が済みません」

ことり「……えへへ、そうだね」


文句をつけることに対して同意している割に、ことりは嬉しそうに頷く。


海未「行きますよ、ことり!! 穂乃果のところへ!!」

ことり「うんっ!!」




    *    *    *





──音ノ木。頂上。

ここに来るのは何年振りだろう。

子供の頃に来た以来だ。

そして──


 「──キリュリシィィッ!!!!!」

穂乃果「キミに逢うのも……久しぶりかな?」


幼い頃、この音ノ木の頂上から、海未ちゃんと、ことりちゃんと一緒に、更に天の高いところを泳ぐレックウザを見た。


 「──キリュリリュリシィィッ──!!!!!」


レックウザは私たちに向かって、大きな啼き声を出して威嚇し──


 「キリュリシィィッ!!!!!!!」


そのまま、口から空気の砲弾を吐き出してくる。


穂乃果「! リザードン!」
 「ザードッ!!!!!!!!」


咄嗟にリザードンの火球で、攻撃を相殺、


穂乃果「待って! レックウザ! 私たちは戦いに来たわけじゃ……!!」


私は説得の言葉を投げかけるが、


 「キリュリリュリシィィィィィッ!!!!!!!!!」


制止の声は虚しく、レックウザは再び開いた口に“りゅうのはどう”の集束を始める。


 「ピッカッ!!!」


相手の闘気に反応したのか、一緒に乗っていたピカチュウがリザードンの頭部の辺りまで、その身を乗り出す。


 「キリュリシィィィィッ!!!!!!!!」

 「ピカッ!!!!!!!」


レックウザから放たれた“りゅうのはどう”とピカチュウの“エレキボール”が衝突して弾ける。

二つの攻撃が再び相殺し合う。レックウザは間髪居れず、身を捩って、


 「キリュリシィィィィ!!!!!!!」


こちらに向かって、飛び出してくる。


穂乃果「……!」


避ける……? でも敵対行動をしたいわけじゃないし……。

私の悩みを意にも介せず、突っ込んでくるレックウザ。


穂乃果「……いや、受け止めよう!! リザードン!!」

 「リザァーーッ!!!!!!」


突っ込んでくるレックウザを真っ向から掴まえるため、リザードンが両腕を開いた……が、そのとき──。


 「“フェザーダンス”!!」
  「チルゥゥッ!!!!!!」


大量の綿羽が飛んできて、


 「キリュシィィッ!!!!!!!」


レックウザの動きを鈍らせ怯ませる。

今の聞き覚えのある声は……もしかして……!


穂乃果「ことりちゃん!?」

ことり「穂乃果ちゃん……!!」


振り向いたときには、ことりちゃんはチルタリスから飛び出して、リザードンの上に居る私に抱きつこうとしているところだった。


穂乃果「わわっ!? ことりちゃん!?」


私はどうにか受け止める。


穂乃果「危ないよ、ことりちゃん!?」

ことり「穂乃果ちゃん……ずっと、会いたかったよぉ……」


ことりちゃんと再会の抱擁を交わす中、


 「キリュリリュリシィィィィィ!!!!!!!!」


“フェザーダンス”で怯んでいたレックウザが、再びこちらに向かって飛び出そうとしていた。


穂乃果「わ!? やばい……!!」

 「ストライク!!!」
  「ストラィッ!!!!!!」

穂乃果「!」


再び、聞き覚えのある声。

突っ込んでくるレックウザの斜め下から、


海未「“いあいぎり”!!!」
 「ストライクッ!!!!!!」


海未ちゃんのストライクが飛び出してきて、袈裟薙ぎに切り裂いてレックウザを迎撃する。


穂乃果「海未ちゃん!!」

海未「穂乃果!! 何ぼーっとしているんですか!!」

穂乃果「い、いやだってことりちゃんが……」

ことり「穂乃果ちゃぁん……」

海未「貴方が何年も顔を見せないからでしょう!!  穂乃果が悪いです!!」

穂乃果「ええ、理不尽……!!」


海未ちゃんがカモネギに掴まったまま、私を詰問してくるが、


 「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」


再び、威嚇の声をあげる、レックウザ。


海未「……言いたいことは山ほどありますが、今は先にレックウザですね。ことり!」

ことり「あ、うん……」


ことりちゃんは名残惜しそうに私から離れると、そのままチルタリスに飛び移る。


穂乃果「レックウザ、興奮してるだけだと思うんだけど……!!」

海未「わかっています! 龍神様は地方の危機に、姿を現したんですよね!?」

ことり「レックウザさん!! 異変はわたしたちが解決します……!! だから──」


ことりちゃんが説得の言葉を投げかけるが──


 「キリュリリュリシィィィィィ!!!!!!!!」


再び大きな咆哮をあげて威嚇し、


 「キリュリシィィィィ!!!!!!!」


周囲に二つほど巨大な“たつまき”を発生させる。


ことり「……っ!!」

海未「……話が通じる状態ではなさそうですね」

 「キリュリシィィィィ!!!!!!!」


レックウザが再び声をあげると、発生した“たつまき”はレックウザの意に従うかのように、こちらに向かって飛び掛かってくる。


海未「穂乃果っ!! 片方は任せますよ!!」

穂乃果「わかった!!」


そういった直後、海未ちゃんは目を瞑り──


海未「……そこです、ストライク。“いあいぎり”!」
 「ストラィッ!!!!!」


ストライクの一薙ぎと共に、“たつまき”が一つ掻き消える。


穂乃果「よし……私たちも!! リザードン!! “かえんほうしゃ”!!」
 「リザァーーーードッ!!!!!!!!」


リザードンが口からありったけの炎を放射し、その火力だけで、無理矢理“たつまき”を吹き飛ばす。


海未「……相変わらずでたらめな戦い方ですね」

穂乃果「え? 海未ちゃんの方がとんでも技だと思うんだけど……」

海未「とにかく火力で押し切る穂乃果の戦い方は合理的ではありません!」

穂乃果「そんなこと言われても……」

海未「全く……これで本当に強いんですから、困ったものです……」


困られても困るんだけど……。


 「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!」


レックウザは已然、威嚇の声をあげ続けるけど……。


穂乃果「あんまり、突っ込んでこないね……」

ことり「うん……驚かして追い払おうとしてる感じかも」

海未「……試しているんではないでしょうか」

穂乃果「試してる……?」

海未「今の私たちが……龍神様の力を借りずとも、この危機を振り払えるだけの力を持っているのかを、です」

 「キリュリシィィィィ……!!!!」


海未ちゃんの言葉にレックウザが唸り声をあげる。


穂乃果「……そういうことなら、遠慮なく……!! ピカチュウ!!」
 「ピカッ!!!!」


リザードンの頭の上に立つ、ピカチュウのほっぺの周りにパチパチと火花が走り、

それに呼応するように、周囲の雲が──ゴロゴロと、音を立て始める。


 「ピカッ!!!!!」


ピカチュウが鳴き声と共に、周囲の雲から一気に雷撃が光る。


穂乃果「ピカチュウ!! “かみなり”」

 「ピッカァーーーーッ!!!!!!!!!」


周囲一帯を巻き込む、強力な雷撃が、


 「キリュリシィィ!!!!!!!」


レックウザを巻き込みながら、周囲に雷鳴と稲光を轟かせる。


 「キリュリィ……!!!!!!」


雷撃に撃たれながらも、レックウザが反撃の意を示す。

周囲の空気を掌握し、そのままこちらに向かって、


 「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」


分厚い空気の壁をこちらに向かって飛ばしてくる。

──だが、

その空気の壁は私たちの前方で二つにわかれて、避けるように掻き消える。


 「ティニ……!!!!!」


私のポケモンの炎熱エネルギーによって……!!


穂乃果「ビクティニ!! “かえんだん”!!」
 「ティニィッ!!!!!!!」


ビクティニが作り出した巨大な火炎の弾が、レックウザに向かって飛び出す。


 「キリュリリュリシィィィィ!!!!!!!!!」


迎え撃つレックウザ、

“ハイパーボイス”の強力な音圧によって、“かえんだん”を揺らす。

その攻撃によって、“かえんだん”は徐々に小さくなり──最後は掻き消えてしまった、が。


 「ティニィィィィ!!!!!!!!」


その影から、額に灼熱の炎を灯した、ビクティニが飛び出す。


穂乃果「“Vジェネレート”!!!」

 「ティニィィ!!!!!!!」


最大火力まで宿った炎と共に、ビクティニがレックウザに突進攻撃をぶちかます。


 「キリュリィッ!!!!!!!!!」

 「ティニィッ!!!!!!!!!」


攻撃のインパクトと共に、炎熱エネルギーが解き放たれ──

周囲が閃光に包まれ、そのまま巨大な爆炎が巻き起こる。

さらに──


 「ピカピカピカァーーー!!!!!!!!」


ピカチュウが全身に電撃を纏い、まるで自身が稲妻になったかのように辺りを高速で移動する。

電撃エネルギーを自身に集中させて放つ、ピカチュウの最強技──“ボルテッカー”。


 「ピカァァァァーーーー!!!!!!!!」


そして、その電撃を更に集束させ、拳にのみ載せる、ピカチュウと一緒に編み出したオリジナルの必殺技──


穂乃果「ピカチュウ!! “ボルテッ拳”!!!!」

 「ピッカァァァァァーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!」

 「キリュリリュリシィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!」


飛び出したピカチュウの拳がレックウザに炸裂する。

インパクトと同時に、膨れ上がる雷のエネルギーが空気を轟かせ、至近距離でいくつもの雷鳴が響き渡る。


 「キリュリィッ!!!!!!!!」


レックウザはその反動で、音ノ木の頂きに向かって、叩き落された。


 「キリュリィ……ッ!!!!!!」


レックウザが墜落して、音ノ木の巨大な幹を揺らす。

レックウザはすぐに身を起こして、こっちを見上げていたけど……。


 「キリュリィ……」


先ほどのような威圧感のあるような声とは違った啼き声をあげた後、


 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


今度は地方全体に轟く様な、大きな啼き声を響かせる。

ただ……なんとなく、これは敵意のある声じゃないことはわかった。


海未「龍の止まり樹……そして、龍の咆哮の本当の正体……」

ことり「オトノキ地方を……ずーっと昔から見守ってくれてたんだね」


レックウザは長い長い、咆哮を終えた後、


 「──キリュリシィ」


私たちを一瞥してから、天へと飛び立って──消えていった。


穂乃果「……認めてもらえたってことかな?」

海未「……恐らくは」


戦闘が終わり、風の音だけが鳴り続ける音ノ木の上空。


穂乃果「……じゃ、リザードン、いこっか」
 「リザァ」


私はリザードンと一緒に飛び立とうとする。


ことり「ほ、穂乃果ちゃん……!!」

海未「……もう、行くのですか?」


そんな私に二人が声を掛けてくる。


穂乃果「うん。まだ全然冒険し足りないから……! この世界にはまだまだ、穂乃果の知らないことが、知らないポケモンが、知らない冒険が、たっくさんあるから!」

海未「……はぁ、貴方は自由ですね」

ことり「……でも、穂乃果ちゃんらしいかな」

穂乃果「だから……行くね!」


私は止まっていられないから……!





    *    *    *





──穂乃果が飛び去ったあと、


ことり「ねぇ、海未ちゃん」


ことりが話しかけてくる。


海未「なんですか?」

ことり「穂乃果ちゃん……今度はどこにいくのかな」

海未「……何処に行くんでしょうかね」


それはわからない。穂乃果のことだから、私たちには想像も出来ないような冒険をしているんだろう。


ことり「また、帰って来てくれるよね?」

海未「……ええ。そのうち、またひょっこり帰ってきますよ」


穂乃果はいつもそうだから。今回もそうだったし、次回があるならそのときもきっとそうなんだろう。


海未「私たちも地上に戻りましょうか」

ことり「うん、そうだね」


まだ、戦いは全て終わったわけではないのですから……。

レックウザに任されたこの地方をしっかり守るために、私たちは再び地上へと戻るのでした。





    *    *    *





──クロサワの入江。ダイヤ、鞠莉。


ダイヤ「──……っ゛」

鞠莉「ダイヤ……っ!! ディアルガのパワー……落ちてるわよ……っ!!」

ダイヤ「わ、わかってます、わ……っ!!!」


鞠莉さんから叱咤が飛んでくる。

わたくしは再び、足腰に力を入れ踏ん張り直して、掌の上に乗せている“こんごうだま”を握り込む。

すると、僅かに小さくなりかけていた、やぶれた世界へのホールがまた大きくなっていく。

そうは言っても鞠莉さんも顔を歪めながら、“しらたま”を握っている。


鞠莉「これ……っ!! 思った、以上に……っ きつい、わね……っ」


集中して、珠から命令を送っているだけのはずなのですが、


ダイヤ「脳が、焼き切れそう……ですわね……っ……」


流れ込んでくるディアルガの意識と同調させようとするだけで、頭の中が発熱して、壊れそうになる。


鞠莉「伝説の、ポケモンを、直接、操るのは……やっぱ、並大抵の……ことじゃ、なさそうね……っ」

ダイヤ「聖良さん、は……こんな、ことを……やりながら……っ……戦闘していたの、ですか……っ」


全身の筋肉が痙攣し、脂汗が滲んでくる。


鞠莉「でも……途中で、止めちゃ、ダメよ……!!」

ダイヤ「ええ、もちろん……っ!! ルビィたちが、戻ってくるまで、は……っ!!」

鞠莉「もし途中で、ぶっ倒れても……っ!! 叩き起こしてあげるから……っ!! 安心して……っ!!」

ダイヤ「ふふ……っ そのとき、は、お願いします、わ……っ!!」





    *    *    *




善子「…………」

曜「ダイヤさんたち、大丈夫かな……」


曜が不安そうに声をあげる。


花丸「マルたちはもう見守るしかないずら……」

梨子「手の出しようがないもんね……」


鞠莉も、ダイヤも、苦悶の表情を浮かべながら、パルキアとディアルガにそれぞれ指令を送っている。

ここまで来て戦力外通告をされた私たちにはもう出来る仕事はない。

あとは信じて見守るだけだ。

──と、思った矢先。

自分のバッグの中で何かがガタガタ震えていることに気付く。


善子「……?」


何かと思いながら、バッグを開け放つと、


 「ロトーーー!!!!!」


ロトムが飛び出してきた。

……そういえば、パルキアと戦う前にバッグに隠れるように言ってたのを忘れていた。


花丸「ロトム?」

 「大変ロトーーー!!!!!」

曜「ど、どうしたの?」

 「すぐ近くにポケモンの反応ロト!!!!!」

梨子「え!?」

善子「ポケモン……」


私は、咄嗟に辺りに視線を配る──すると、洞窟の暗がりの中に、ぼんやりと浮かんでいる闇色のポケモンたち。


 「──ヤミ」「ヤミラッ」「ヤミィ…」

善子「あれ……ヤミラミ……!?」

梨子「そんな……!? 親玉のヨノワールは倒したのに……!!」

花丸「たぶん、新しく呼び出せなくなっただけで、もともとこの洞窟に大量発生して潜んでたんじゃ……!」

曜「パルキアとディアルガから逃げてたのが、また出てきたってこと!?」


何匹いる……? 闇に溶けていて正確な数がわからない。

けど、目視出来るだけで少なくとも10匹はいる。


 「ヤミィッ!!!!」


そのうち一匹が飛び掛かってくる。


善子「!! ムウマージ!!」
 「ムマァーージ!!!!!」

善子「“シャドーボール”!!」
 「ムマァーーーージ!!!!!!!!」

 「ヤミッ」


すかさずムウマージを繰り出し、撃退する。

だが、


 「ヤミッ!!!!」


次が飛んでくる。


花丸「デンリュウ!! “10まんボルト”ずら!!」
 「リュゥウーーー!!!!!!」

 「ヤミィッ!?」


今度はずら丸が、撃退。

だが、堰を切ったように、ヤミラミたちが次々と飛び掛かってくる。


曜「ダダリン!!」
 「────」


曜がすかさず前方にダダリンを繰り出す。

ダダリンは重量感たっぷりに──ズシン、と音を立てて現われて、“とうせんぼう”でヤミラミたちの進路を防ぐ。

その背後から、


梨子「メブキジカ!! “しぜんのちから”!!」
 「ブルルッ!!!!」


リリーの指示。

メブキジカの“しぜんのちから”が“いわなだれ”になって、ダダリンの前方のヤミラミたちに降り注ぐ。


 「ヤミッ」「ヤミミッ」


それでも、数匹かが突っ込んでくる。


曜「ダダリン!! “アンカーショット”で薙ぎ払え!!」
 「────」


ダダリンが大きな錨を振るって、鎖とアンカーでヤミラミたちをまとめて吹き飛ばす。


 「ヤァミッ!!!!」「ヤミーーッ!!!!!」


それでも次から次へとヤミラミが飛んでくる。


花丸「き、キリがないずらぁ!!」

善子「っ……!!」


私は背後の鞠莉とダイヤを振り返る。


鞠莉「っ゛……!!!」
ダイヤ「……っ……!!」


二人は賢明にパルキアとディアルガに指示を送り続けている。

今ここを通すわけにはいかない。


善子「全員、気張りなさいっ!!! 千歌たちが戻ってくるまでの辛抱よ!!!」


私は声を張り上げた。

全員もうまともに戦う力が残ってないのは百も承知だ。

それでも、ここだけは通させない。


曜「ヤミラミくらい……!! いくら、襲ってきたって負けないよ……!!」

梨子「こっちは、さっきまでパルキアと戦ってたんだから……っ!!!」

花丸「ずらぁっ!! あともう一踏ん張りずらぁ!!」

善子「行くわよっ!!!」


──私たちは最後の防衛線に臨むのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クロサワの入江】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./             ●回/         ||
 口=================口



 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.50 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:133匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.44 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:159匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ムウマージ♀ Lv.48 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:138匹 捕まえた数:52匹

 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.34 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:113匹 捕まえた数:40匹

 主人公 鞠莉
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      パルキア Lv.75 特性:テレパシー 性格:せっかち 個性:ちのけがおおい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:312匹

 主人公 ダイヤ
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
      ディアルガ Lv.75 特性:テレパシー 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:114匹


 梨子と 曜と 善子と 花丸と 鞠莉と ダイヤは
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter076 『決戦! グレイブ団ボス・聖良!』 【SIDE Chika】





──やぶれた世界。


千歌「や、やっと……辿り着いた……」


私は上下左右がデタラメなこの世界にて、やっとの思いで果南ちゃんの元へと辿り着いたところだった。


果南「千歌……お疲れ様」

千歌「ここホントに無茶苦茶だよぉ……ムクホークで“おいかぜ”しても、風が吹く方向がめちゃくちゃで……」

果南「ホントにね……」


果南ちゃんも随分苦戦してるようだった。


果南「目に見えてることと、実際の向きがぐちゃぐちゃなのは正直困る……。……って、何してんの千歌?」

千歌「んー……ここまで近いと向きはあんまり関係ないんだなって思って」


果南ちゃんの前で右に左に踏み出したり、足を戻したりしてみるけど、この距離だとちゃんと思ったとおりに果南ちゃんに近付いたり離れたり出来る。


果南「距離が関係してるのかな……? 離れるほど、無茶苦茶になるとか。ヌオー、出てきて」
 「ヌオー」


そう言って果南ちゃんはヌオーをボールから出す。


果南「“マッドショット”」
 「ヌオー」


ヌオーが地面に手を付くと、泥の塊が飛び出す。

その泥たちはある程度の距離まで直進した後──急に進行方向を逸れて、右に行ったり左に行ったりしながら遠ざかっていく。


千歌「確かに……近くにある間はちゃんと前に進むみたいだね」

果南「“マッドショット”自体はちゃんと直進してるんだと思うんだよね。だから、私たちも前に進むと、あの泥とかと同じように右に行ったり左に行ったりするんだと、思う。たぶん」


果南ちゃんもこの空間の仕組み自体は苦手みたいだけど……私よりは長くいる分、ずっと考えてはいたみたいだ。


千歌「うーん……でも、それがわかってもなぁ……。せめて、風が目に見えれば」

果南「風……? どういうこと?」

千歌「あ、えっと……“おいかぜ”を使うと背中側から前に向かって、風が吹くでしょ? だから、“おいかぜ”の吹いてる方向さえ目に見えれば、前はわかるかなって」

果南「……それだ」

千歌「え?」

果南「千歌、もう一度“おいかぜ”出来る?」

千歌「う、うん。ムクホーク、“おいかぜ”」
 「ピィィィ!!!!!」


傍らで待機していた、ムクホークは翼を羽ばたかせて“おいかぜ”を発生させる。


果南「よし、ヌオー。“あまごい”」
 「ヌオー」


今後はヌオーが鳴きながら、欠伸をすると、ポツポツと雨が降り出す。

それはすぐに強い雨へと変わって行き──


千歌「……!」


その雨は“おいかぜ”に押されて、私たちの背中に横殴りになった雨となって降り注ぐ。

背中側から横殴りにされてる……ということは、


千歌「雨が“おいかぜ”の進行方向を示してる……!!」


私たちから離れたところで、雨はうねる様に進行方向を変えているのが見える。


果南「これなら、前がわかる」

千歌「うん!」

果南「随分と引き離されちゃったからね……これで、どうにか追いつかないと」


果南ちゃんが浮いている地面から、下方に目をやる。

ここまで辿り着くまでずっと、目にしていたけど、

そこでは、高速で飛び回る大きなポケモンとそれを追う人影が一つ。


千歌「聖良さんとギラティナ……!」

果南「千歌は聖良と話するんでしょ?」

千歌「! うん」

果南「じゃあ、一緒に行こうか。……って、言っても私今飛べないから……」

千歌「うん! ムクホークに乗って! 行こう、果南ちゃん!」


私は果南ちゃんに手を差し伸べ、うねる風雨の中を、飛び出したのだった。





    *    *    *





 「──ギシャラーーーッ」


ギラティナは已然、不気味な啼き声をあげながら、この異様な空間を自在に飛んでいる。


聖良「プテラ」
 「テラァッ!!!!」


指で逐一、方向を指し示しながら、軌道を修正する。


 「──ギシャラァァッ!!!」


ギラティナは逃げ回りながら、こちらを睨みつけるように目をギョロリと動かす。


聖良「驚くのも無理はありません。まさか、こうも自在にこの空間を追いかけてくるとは思ってもみなかったでしょうから。ただ、こちらはこの“やぶれた世界”に辿り着くために、何年も研究をしてきたんです。このくらいで撒かれたりしませんよ」

 「──ギシャラァ……!!!!」


そんな私の発言を聞いてなのか、ギラティナの目が光った。それと同時に──


聖良「……おっと」


プテラが明後日の方向に飛び始める。


 「──ギシャラァ」

聖良「……空間内の仕組みを変えられたようですね……。さっきとは更に左右だけが逆になった。貴方が本当にこの世界を支配している存在というのは間違いないようですね。……ですが」


すぐさま、その軌道を修正し、再びギラティナを追う。


 「──ギシャラァッ!!!!!」


再び、ギラティナは目を光らせ、空間の仕組みを組み替える──が、

今度は全く動じず、先ほどと同様にギラティナを追いかけ続ける。


 「──ギシャラァッ」

聖良「事象を逆転させられるのが、貴方だけの力だと思うのは過信だと思いますよ」


そう言う、私の背中から、小さなポケモンが顔を出す。


 「マーイーカ」
聖良「マーイーカの“ひっくりかえす”を応用すれば、何度この空間を組み替えられても、私の周囲だけは元に戻すことが出来ます。言ったではないですか、何年も研究をしてきたって……!」


一気にギラティナに距離を詰める。


聖良「覚悟してください──ギラティナ……!!」

 「──ギシャラァッ!!!!!」


いよいよギラティナに追いつこうか──というそのとき、


 「ルガルガン!! “ストーンエッジ”!!」
  「ワォォーンッ!!!!」

聖良「!!」


声と共に、背後から鋭い岩石が飛んでくる。


聖良「プテラ!!」
 「テラァッ!!!!」


プテラは“つばさでうつ”で岩石をいなす。


聖良「……また、貴方ですか」

 「聖良さん……!! もう、こんなことやめてください!!」


岩石が飛んできたルートを逆算して、目をやると、そこにはこの計画の間、期せずして何度も会うことになった少女の姿。


聖良「千歌さん」


千歌さんはムクホークで空を飛びながら、ルガルガンを従え、私の方へと迫ってくる。


聖良「……ここまで、追ってくるなんて、正直予想していませんでしたよ」

千歌「聖良さん……!! こんなことしても誰も笑顔になれないよ……!!」

聖良「それを決めるのは貴方ではありませんよ」

千歌「……っ」

聖良「……相手をしてあげたいところですが、生憎今はそれどころでは──」


言いながらギラティナに視線を戻そうとした瞬間。


 「──ギシャラァッ!!!!!!」

聖良「!」


逃げ続けることを観念したギラティナが襲い掛かってきているところだった。


聖良「やっと、来ましたか……!!」


ギラティナが胴体の爪を立てて、攻撃を仕掛けてくる──“シャドークロー”……!!

──だが、

ギラティナの攻撃は届くことなく、凍りつく。


 「──シャランシャラン」
聖良「フリージオは周囲の空気を凍らせて、その身を保っている超低温のポケモンです。掴まえましたよ……!!」

 「──ギシャラァッ!!!!!!」


ギラティナが叫びながら身を捩るが、氷はどんどん広がり、ギラティナの動きを封じる。


聖良「ついに、悲願が……!!」

千歌「バクフーン!!!」
 「バクフッ!!!!!!!」

聖良「!?」


背後からの声にハッとすると、同時に辺りの気温が炎熱によって一気に上昇する。

その“ねっぷう”はフリージオの氷の身体ごと溶かしつくし、


聖良「フリージオ!!」

 「──ギシャラァッ!!!!!」


ギラティナが解放されてしまう。


聖良「邪魔をしないで貰えませんか?」

千歌「言ってもやめてくれないなら……私は戦ってでも聖良さんを止めます」

聖良「……ほう」


威勢のいい少女に目を配る。


聖良「貴方が私に勝てるとでも?」

千歌「勝てるかじゃない……」

聖良「……」

千歌「勝つんだ……!!」


言いながら千歌さんが、ムクホークと共に飛び出してくる。


聖良「……いいでしょう、そこまで言うなら相手をしてあげますよ」
 「テラァッ!!!!」


私は自らの肩を掴んで飛行するプテラに指示を出し千歌さんの方へと飛び出す。

──と同時に、右方向に錐揉み回転をしながら、僅かに場所を横にずらす。

すると、そこに、


 「──ギシャラァァッ!!!!!」


背後からギラティアの巨大な爪が空を薙ぐ。

攻撃が外れると同時に、ギラティナは口に“シャドーボール”の集束を始め──放つ。


千歌「!」


──千歌さんの方へ。


千歌「ルガルガン!! “ドリルライナー”!!」
 「ワォンッ!!!!!」


辺りに浮かんでいる岩石を蹴りながら、ルガルガンが身を捻った突撃で、“シャドーボール”を粉砕する。


聖良「この空間に置いては貴方も招かれざる客に変わりありません……!! ギラティナの攻撃を避けながら、私を倒せますか……!?」

千歌「……くっ」

 「──ギシャラァッ!!!!!」


ギラティナが今度は千歌さんの居る方向に爪を立てようとした、瞬間。

──地面から腕が飛び出してきて、ギラティナの爪を掴んだ。


聖良「な!?」

果南「ラグラージ!! そのまま、押し出せ!!」
 「ラァグッ!!!!!」

 「──ギシャラァッ!!!!!」


地面から飛び出したラグラージが野太い腕で掴み、そのまま中を浮く地面から、ギラティナごと一気に寄り切る。


千歌「果南ちゃん!!」

果南「ギラティナは任せて!! 千歌は、聖良を……!!」

千歌「うん……!!」


そのまま、果南さんはラグラージと共に上方に向かって落ちている滝に、飛び込むようにしてギラティナを押し込み、その滝を“たきのぼり”でギラティナごと昇って行ってしまった。


聖良「……やってくれましたね」

千歌「……!」

聖良「……果南さん共々……貴方のような、ひよっこトレーナーが、私に勝てると本気で思っているんですね」

千歌「……行くよ、皆!!」
 「バクフッ!!!!!」「ピィィッ!!!!!」「ワォンッ!!!!!!」

聖良「いいでしょう……!! 目的の邪魔するなら、排除するしかないですからね……! 恨まないでくださいよ……!」





    *    *    *





千歌「バクフーン!! “かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーンッ!!!!!!!」


バクフーンが口から火炎を発射する。


聖良「マーイーカ、“ひかりのかべ”!」
 「マーイーカッ!!!!」


聖良さんはその炎を“ひかりのかべ”で半減させながら、


聖良「まずはその邪魔な炎を止めます……!! ツンベアー!!」
 「ベァァッ!!!!!」


飛び出したのは大きな体躯のシロクマポケモンのツンベアー。


聖良「“ゆきなだれ”!!」
 「ベアァァッ!!!!!!」


ツンベアーの足を踏み鳴らすと、冷気によって作り出された大量の氷雪が“かえんほうしゃ”を掻き消しながら、雪崩のように襲い掛かってくる。


千歌「ムクホーク!! 飛んで!!」
 「ピィィィ!!!!!」


ムクホークに掴まって私は地上から離脱し、


千歌「バクフーン!! “ふんえん”で吹き飛ばせ!!」
 「バクフーッ!!!!!」


“ゆきなだれ”に向かって、高熱の“ふんえん”で対抗する。


 「バクフーーーーッ!!!!!!!!」


背中の炎を激しく猛らせながら、迫り来る雪崩をどんどんと溶かす。


千歌「よし、そのまま……──!?」


──ふと、目を凝らすと、バクフーンの前にユラリと影が居た。


聖良「ヤミラミ! “ねこだまし”!」

 「ヤミッ!!!」


その影はヤミラミ。両の手をバクフーンの目の前で叩き、


 「バクフッ!!?」


バクフーンをひるませる。

そして、怯んで炎の勢いが緩んでしまったと、思ったら。

──空気中から氷の鎖が飛び出てきて、バクフーンに絡みつく。


千歌「な!?」

聖良「先ほど、貴方が溶かしたフリージオですよ」

 「────シャランシャラン」


フリージオは鈴の音ような鳴き声を出しながら、バクフーンを凍結させていく。


聖良「フリージオは溶けると水蒸気になって掻き消えてしまいますが、また温度が下がってくると元の形に結晶化して姿を現します。溶かしたのは悪手でしたね」


身動きの取れない、バクフーンはそのまま、“ゆきなだれ”に飲み込まれていく。


千歌「バ、バクフーン!! ……っく、ルガルガ──」

聖良「“つららおとし”!!」
 「ベァァーーー!!!!!」

千歌「!?」


気付けば、ツンベアーは次の攻撃行動、ルガルガンに向かって大きなつららを落として攻撃していた。


 「ギャゥッ!?」

千歌「ルガルガン!?」


大量のつららが直撃し、それに埋まっていくルガルガン。


聖良「余所見してる場合じゃないですよ?」

 「ピィィィッ!!!?」
千歌「!?」


今度はすぐ近く、自分が現在進行形で脚に掴まって飛んでいるムクホークから、声があがる。

慌てて、見上げると、そこには──先ほどバクフーンに攻撃をしかけたヤミラミがムクホークの背中の上に移動していた。


聖良「“イカサマ”!!」

 「ヤミッ!!!!」

 「ピギィッ!!!!?」


背中の上からヤミラミの攻撃を受け、ムクホークは為す術なく、地面に向かって墜落を始める。


千歌「くっそ……っ!!」


展開が速すぎて頭が追いつかない。

これが、実力の差だとでも言うんだろうか、

──でも、


千歌「負けるかぁ……っ!!!」
 「ピピピィッ!!!!!!!」


墜落寸前のところで、ムクホークは体勢を立て直し、中空に浮かぶ地面の上スレスレを飛びながら再び空中へと舞い戻る。

──だが、


聖良「気合いは認めますよ」

 「ベアァァッ!!!!!!」

千歌「……っ!!」


再び飛び立ったムクホークの進路には、ツンベアーの姿、

そのまま、大きな腕でムクホークを鷲掴みにし、


 「ピィィィッ!!!?」


ムクホークの脚に掴まっていた私ごと、まとめてさっき果南ちゃんがギラティナを押し込んだ滝に向かって、投げ飛ばされる。

──ザバンッ。

音を立てて、滝に飲み込まれ、そのまま下流に向かって流される。


 「ピ、ピィィィィ!!!!!」

千歌「っく……!!」


私は咄嗟に、泳げないムクホークを戻しながら、次のボールを開閉した。

──手持ちの力によって、水上に顔を出す。


 「ゼルルッ!!!!」
千歌「フローゼル!! “たきのぼり”!!」


上に向かって落ちている滝を登る。


聖良「今度は水中戦ですか? いいでしょう」

 「ベアァッ!!!!!」


ツンベアーが滝に飛び込んでくる。

そして、大きな腕で水を掻きながら、こっちに向かってくる。


千歌「!? す、水中もいけるの!?」


ツンベアーはものすごい勢いで、迫る。


聖良「ツンベアーの特性は“すいすい”です!! むしろ、泳ぐのは得意ですよ!!」


そのまま、大きな爪で襲い掛かってくる。


聖良「“きりさく”!!」


迫る爪に向かって、


千歌「“うずしお”!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルは尻尾のスクリューを回転させ、渦を作り出し、それをツンベアーに向けてぶつける。


 「ベァァッ!!!」

千歌「得意って言っても、みずタイプに勝てるほどじゃないよね……!? “ハイドロポンプ”!!」
 「ゼリュゥゥゥゥ!!!!!!!」


フローゼルは、激しい水流を口から吐き出して、ツンベアーを水中から追放する。


聖良「サメハダー!!」


だが、休む間もなく、新手のボールが放り込まれる。


 「シャァァァーーーー!!!!!!」

聖良「“アクアジェット”!!」

千歌「!!」


サメハダーが水中の私たちに猛スピードで突っ込んでくる。

避ける間もなく、水中で突撃され、


 「ゼルッ!!!!」


フローゼルが攻撃を受けて仰け反ったと、思った次の瞬間には、


千歌「……がっ!?」


Uターンしてきた、サメハダーの突進が今度は私の背中に突き刺さる。

衝撃に、フローゼルに掴まっていた手を放してしまうが、


 「ゼルルッ!!!!」


フローゼルが私の服に噛み付く形で、救出される。

──しかし、サメハダーの攻撃は終わらない。


 「ゼルッ……!!!」
千歌「……ぐっ……!! がぼっ……!!」


サメハダーの攻撃はどんどん“かそく”していく。

息継ぎのために水の外に顔を出す暇さえない。

──このままじゃ、ダメだ……!!

とにかく反撃……!!


 「ゼルゥッ!!!!!」


フローゼルがデタラメに“アクアテール”を振るう。


 「シャァァァッ!!!!!!!」


当然のように難なく避けたサメハダー──

が、避けたのは一本目。

フローゼルの尻尾は二本ある。


 「シャァァッ!!!?」

 「ゼルッ!!!!!!」


鼻っ面に“ダブルアタック”の二撃目を叩き込み、

その反作用を使って、どうにか滝の外に脱出する。

私たちはそのまま、近くの浮いている足場に落ちていく。


千歌「しいたけ!!」


私はその足場に向かってボール放る。


 「ワフッ!!!!」


しいたけはボールから出るとすぐさま、“コットンガード”で自らの体を膨張させ、私とフローゼルを受け止める形で、地面との激突を防いでくれる。


千歌「は……っ……はぁ……っ……」


息が切れる。……強い。


聖良「……力の差がわかりましたか?」


聖良さんはプテラに掴まったまま、こちらを見下ろして声を掛けてくる。


千歌「……どうして」

聖良「?」

千歌「どうして、こんな力を持ってるのに、それを誰かが哀しむ使い方をするんですか……!!」

聖良「……この期に及んで、説教ですか」

千歌「これだけの強さ……もっと他の使い方をすれば、もっといろんなことが出来るはずなのに……!」

聖良「そうかもしれませんね。ただ、私たちの目的がそういうこととは噛み合わなかった。ただ、それだけです」

千歌「その目的は、ポケモンを、人を犠牲にして、そこまでして叶える必要があるんですか……!?」

聖良「……そこまでする理由が私にはあるんです」

千歌「どうして……!!」

聖良「……千歌さん、貴方は幸せに生きてきたんですね」

千歌「……しあ、わせ……?」

聖良「世の中には、どうしようもない境遇の中で、気付けば全てを理不尽に取り上げられるしかなかった人も居る。親を失い、住む家も、毎日の食事にすら満足にありつけず……生まれてきたことを恨み、世界を憎み、生きるために強くなるしかなかった人間も居るんですよ」

千歌「……っ……だとしても、それは誰かを傷つけていい理由にはならないよ!!」

聖良「その通りです。これが良い事だなんて、ハナから思っていませんよ。それでも、私は目的のためなら、鬼にでも悪魔にでもなると、決めたんです。大切なものをこれ以上取りこぼさないために……」

千歌「それで得たものに本当に価値なんかあるんですか……!?」

聖良「それは、手に入れてみないとわからない……。ただ、何も知らず、何も出来ず、何も望めず、諦めるしかないまま、ただ失うなんて……バカらしいじゃないですか」

千歌「だから……!! それを皆で手を取り合って探せばいいって、言ってるんじゃないですか……!!」

聖良「……この話は平行線ですね。無意味です。裏切りからも、孤独からも無縁に生きてきた人間にはわかりませんよ」

千歌「……それはポケモン相手でもですか……!?」

聖良「…………」


私の叫びに聖良さんの動きが一瞬止まる。


千歌「確かに意地悪なことをしてくる人が世の中にいるのくらい私も知ってる……どうしようもないことしてくる人とか、嫌なことを言われることもある。そういうとき悲しくなったり、腹が立ったりする気持ちもわかる。でも、それはポケモンに対してもそうですか……?」

聖良「……何が言いたいんですか?」

千歌「人間みたいに、人の言葉を喋れるわけじゃないポケモンたちにも……同じように、恨みや憎しみを感じるんですか……?」

聖良「それは……」

千歌「……ツンベアーも、マーイーカも、フリージオも、プテラも、ヤミラミも、サメハダーも……聖良さんのことを信頼してるから、ここまで力を発揮出来る。それは聖良さんも同じで、自分のポケモンたちを信頼してるからじゃないですか……?」

聖良「…………」

千歌「寂しいとき傍に居てくれて……悲しいときは寄り添ってくれる……そんなポケモンたちを……信頼出来る仲間たちを傷つけてまで……やらなくちゃいけないことなんですか……?」

聖良「……うるさい」

千歌「……!」

聖良「……どうして、貴方にそんなことを説教されなくてはいけないんですか……? 何度も言ってるじゃないですか、恵まれて生きてきた貴方には何も──」

千歌「──私は……!!」


ただ、叫ぶ──自分が見てきた景色を、想いを伝えるためだけに、


千歌「世界は……!! いつも私たちが生まれてくるのを待っていてくれてると思う……!! 一緒にいるポケモンたちも、親しい人たちも、更に繋がる人もポケモンも、みんな望まれて生まれてくるから……!! 大切って想い合える存在なんだって……っ!!」

聖良「…………」

千歌「辛いこと、悲しいこと、いっぱいある。理不尽でやるせなくて、どうしようもないこともある……それでも最初はみんな誰かに望まれて生まれてくるんだよ……!! きっとそれは聖良さんたちも同じだよ……だから、どんな理由があっても、それを奪う権利なんて誰にもない……!!」

聖良「綺麗ごとを……」

千歌「もう、やめようよ……誰かから奪って手に入れたものの先に……明るいものなんて何もないよ……私たちにも、聖良さんたちにも、ポケモンたちにも……妹さんにも──」

聖良「黙りなさい」

千歌「……っ!」


冷酷な言葉が飛んでくる。


聖良「……今更、後に引けるわけもないじゃないですか。もう、いろんなものを犠牲にしてしまった。もう、全て手に入れるか、全て失うしかないんですよ」

千歌「聖良さん……!!」

聖良「私は全てを手に入れます……理亞のためにも。ギラティナを掴まえ、そして──ディアンシーを手に入れるために戦いますよ。貴方は……その目的の阻害をしている。なら、排除するしかない」

千歌「……っ」

聖良「……辞めて欲しいなら、力尽くで止めればいい……。私と、理亞は……ずっとそうやって手に入れてきたんですから、それを行使された上で文句なんて言いませんよ。出来るものならですが……!!」


聖良さんが、私に向かって指を突きつける。


聖良「プテラ!! “ストーンエッジ”!!!」
 「テラァッ!!!!!」

千歌「……っ!!」


鋭い岩がこちらに向かって飛んでくる。


千歌「ルカリオッ!!!」
 「グゥォッ!!!!!」

千歌「メガシンカッ!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!」


ボールから飛び出したルカリオが私のメガバレッタの光に呼応して、メガシンカする。

メガルカリオは波導の力によって作り出した武器で、“ストーンエッジ”を弾き飛ばす。


千歌「……みんなァッ!!」


私はバトルフィールド上に散らばる仲間たちに聞こえるように声を張り上げる。


千歌「わたしは……っ!! 聖良さんを止めたい……っ!! だから、みんなの力を貸してぇっ!!」
 「グゥォッ!!!!!!」


ルカリオがその声に呼応するように、後ろ手に構えた両手の間に、巨大な波導の弾を作り出す。

──それと同時に、先ほどまで居た、雪崩に巻き込まれた足場から、熱気が溢れてくる。


 「バクフーーーーッ……!!!!!!!」


氷を溶かしながら、バクフーンが立ち上がる。

一方で、大きなつららたちに沈んだ、ルガルガンが、


 「ワォォンッ!!!!!!」


つららを自身の鋭い岩で砕き割りながら、立ち上がる。

ガタガタと揺れる腰のボールから、


 「ピィィィ!!!!!!」


ムクホークが飛び出し、


 「ゼルルッ!!!!!」


フローゼルが、尻尾のスクリューを回転させながら、再び滝へと飛び込む。


 「ワフッ!!!!」


そして、しいたけが目を見開きながら、私の戦意に呼応するように鳴き声をあげた。


千歌「いくよ!!! みんなっ!!!!」
 「バクフッ!!!!」「ピィィィッ!!!!!!」「ワォーーーーンッ!!!!!!!」「グゥォッ!!!!!!!」「ゼルルッ!!!!!!!!」「ワッフッ!!!!!!!」


私は立ち上がって、ムクホークと共に空へと翔けだした。





    *    *    *




 「バクフーーーッ!!!!!!!」

 「────シャラン」


バクフーンが熱波で、再び一気にフリージオを蒸発させる。


聖良「……!! ツンベアー!! もう一度、“ゆきなだれ”──」

千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォォーンッ!!!!!!」


ルガルガンが足場を蹴って、ピンポン玉のように跳ね返りながら、


 「ベェァッ!!!!!」


神速の一撃をツンベアーに向かって叩き込む。


聖良「く……!! ツンベアー!!」

 「ベェァァッ!!!!!!」


だが、ツンベアーはそれだけでは倒れない、腕を振り上げた──

ところに、青い波導の球体が飛んでくる。


 「ベェァッ!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!」


先ほどからルカリオがチャージしていた、“はどうだん”を炸裂させた。

そして、今度は、


 「シャァァァッ!?」


サメハダーが滝の中から放り出される。

フローゼルが組み合って放り投げたのだ。


 「ゼルルルッ!!!!!!!」


そこに追い討ちをかけるように、体を回転させながら飛び出すフローゼル。


千歌「“スイープビンタ”!!」

 「ゼルルルルッ!!!!!!!」


そのまま、回転のエネルギーを利用して、連続で尻尾をサメハダーに叩き付ける。


 「シャアァァァーー!!!!!!」

聖良「フリージオ……!! ツンベアー……!! サメハダー……!!」


一気に三匹に手痛いダメージを与え、更に──


 「ヤミッ!!!?」

 「ワフッ!!!」


闇から近付くヤミラミを、しいたけが“かぎわける”で察知し、攻撃を受ける前に押さえつけているところだった。


千歌「……私は……私が、聖良さんを止めます……っ!!」

聖良「……それが千歌さんのホンキ……と言うことですね。いいでしょう。なら、私もホンキで貴方を打ち倒しましょう」


聖良さんはポケットから、指輪を3つ取り出して、左手の指にはめる。

その指輪は3つとも、宝石を付けられた指輪で……あれは──


千歌「メガストーン……!?」

聖良「ヤミラミ!! サメハダー!! プテラ!! メガシンカです!!」

 「ヤミッ!!!!」「シャァァァァ!!!!!!」「テラァッ!!!!!!!」


対応する3匹が聖良さんのメガリングに呼応するように光り輝く。

メガヤミラミは胸の宝石がシールドのように大きくなり、メガサメハダーは全身の牙やヒレがより鋭く大きくなった。メガプテラは全身に鋭利な岩が飛び出してくる。

──それよりも、善子ちゃん曰く、メガシンカはトレーナーにも大きな負担が掛かるから、日に何度も使えないと言っていた。

それが本当なら、三匹も同時にメガシンカを使ったら──


聖良「げほっ……げほっ……!!」

千歌「!! 聖良さん……!!」

聖良「敵の心配してる……場合ですか……?」


聖良さんが口元を拭うと、血の痕が口の端に見える。

吐血してる。


千歌「聖良さん!! そんな使い方したら死んじゃいます……っ!!」

聖良「プテラ!! “ストーンエッジ”!!」
 「テラァッ!!!!!」

千歌「ッ!!」


さっきとは比べ物にならない量と大きさの岩が降り注いでくる。

まるで岩の雨とでも言わんばかりだ、


千歌「ルカリオ!! ルガルガン!! バクフーン!!」

 「グゥォッ!!!!」「ワォンッ!!!!」「バクフーーッ!!!!!」


バクフーンが爆炎の勢いで岩を吹き飛ばし、ルガルガンとルカリオが足場を跳ね回りながら、岩を迎撃する。

三匹掛かりでどうにか攻撃を捌く。


聖良「死ぬ……結構じゃないですか。いつも通り、命を掛けて戦う、それだけのことです」

千歌「聖良さんっ!!」


気付けば聖良さんは、左目が真っ赤に充血し、涙のようにその左目から血が頬を伝っている。


聖良「サメハダー!! “かみくだく”!!」
 「シャアァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」

 「ゼルルッ!!!!」


再び始まった水中戦では、サメハダーがフローゼルに噛み付こうと迫ってきている。

そして、地上では、


 「ワフッ!!!!」

 「ヤミィッ……!!」


しいたけがヤミラミに組み付こうとしているが、大きな宝石に邪魔されてうまく攻撃が出来ていない状態。

空からは降り注ぐ“ストーンエッジ”。


千歌「ムクホーク!!」
 「ピィィィッ!!!!!!」


合図と共にムクホークがプテラに向かって飛び出す。

一方、フローゼルも、


 「ゼルルルッ!!!!!!」


尻尾に気を集中させている。


千歌「“かまいたち”!!!」

 「ゼルッ!!!!!」


私の指示の声と共に、滝が一気に縦に両断される。


 「シャァァァァッ」


そして、“かまいたち”によって縦に一閃された滝から、サメハダーが吹っ飛ばされて飛び出してくる。


聖良「サメハダー……!!」


同時に岩の嵐の中を飛ぶ、ムクホークから──私は手を放す。


 「ピィィィィィッ!!!!!!」


私を切り離して、身軽になったムクホークは、錐揉み回転しながら、右に左に、岩を掻い潜って、


千歌「“すてみタックル”!!!」

 「ピィィィィッ!!!!!!!」


落下しながら出す指示を聞いて、一気に加速する。


聖良「!!」


そのまま、聖良さんの肩を掴んでいるプテラに突撃する。


 「テラァッ!!!?」

聖良「くっ……!!」


致命傷にはならなかったものの、プテラを怯ませ、“ストーンエッジ”を中断させる。


 「ワォンッ!!!!」


そして、それと同時に、迎撃に飛び回っていたルガルガンが私の方に向かって、飛び出す。


千歌「ルガルガンッ!!!」
 「ワォンッ!!!」


ルガルガンの身体にしがみつくようにして、自由落下から救出してもらう。そして完全フリーになったルカリオが──


 「ヤミッ!!?」


しいたけと組み合うヤミラミのもとへ“しんそく”で接近し、


千歌「“はっけい”!!!」

 「グゥォッ!!!!!!」


必殺の“はっけい”を巨大な宝石の中央に叩き込む──


 「ヤミッ……!!!!」


ルカリオの攻撃は、宝石を貫通し、その背後に隠れていたヤミラミを吹っ飛ばす。


聖良「ヤミラミ!? ……っく、プテラ!!」


再び聖良さんがプテラに指示を出そうとした、瞬間。


聖良「が……っ……げほ、がほっ……!!!」


激しく咳き込む。

さっきよりも大量の血を吐いて。


千歌「……!! 聖良さん!! メガシンカを解除してください!!」

聖良「……っぐ……っく……私は……」

 「ピィィィィッ!!!!!!!」


プテラを上から抑え込むように、ムクホークが“インファイト”で全力攻撃を仕掛けながら、一気に地上まで追い詰め、


聖良「っく……!!」


聖良さんたちは、バクフーンのすぐ近くに墜落する。


聖良「フリージオ……ッ!!!」
 「────シャランッ」


さきほど、バクフーンに蒸発させられた、フリージオが聖良さんの声に呼応して、再び現われる。


聖良「全て……凍らせなさい……!!!」
 「────シャラン」


最後の力を振り絞るように、

辺りは一気に凍り付いて行く。

だけど──


千歌「バクフーン!!!!」

 「バクフーーーーーッ!!!!!!!!」


私たちは凍らない。

爆炎をその身に宿して、バクフーンがフリージオに向かって飛び出す。


聖良「私たちはこんなところで……終わらない……!!!」


──バキバキバキと音を立てながら、凍りつく地面を、


 「バクフーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」


全身に炎を纏った、バクフーンが走り抜ける。


千歌「いっけぇーーーーっ!!! “フレアドライブ”ッ!!!!!」

 「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!!!」


バクフーンは、周囲の冷気も纏めて、フリージオごと、爆熱で吹き飛ばした──。





    *    *    *





ルガルガンと共に、聖良さんたちのいる足場に辿り着く。


聖良「まだ……です……げほっ、げほっ……」


聖良さんは、血を口から吐き、


聖良「っ゛…………!!!」


左目は血色に染まり、止め処なく血が流れている。


千歌「聖良さん……」

聖良「まだ……です……。まだ……目的は……達成されて、いません……」

千歌「……もう聖良さんのポケモンはみんな戦闘不能です。……すぐメガシンカを解除して、降参してください」

聖良「……っ……マーイーカ!!」
 「マーイーカッ!!!」


マーイーカが私に向かって飛び出してきて、腕に“からみつく”。


 「マーイーカッ…!!!!」

千歌「……もう、戦わなくていいんだよ」

 「マイー…カー……」


そう告げると。

マーイーカは戦意を喪失したのか、大人しくなる。


聖良「マーイーカ……!!」

千歌「聖良さん……もうあなたの手持ちも聖良さんにこれ以上戦って欲しくないって……」

聖良「……っ!!」


主人が傷付く姿をこれ以上見ていられないんだろう。


聖良「まだ、です……まだ……私は……私たちの目的……は……」

 「──ねえさまっ!!」


そのとき、声が響いた。


聖良「…………理亞……?」

理亞「……ねえさま……もう、終わりにしよう……」

ルビィ「理亞ちゃん……」


ルビィちゃんに肩を貸してもらいながら、こちらに歩いてくる理亞ちゃんの声だった。


聖良「……ダメ……です……」

理亞「ねえさま……」

聖良「わたし、たちの……夢は……もう、すぐ、そこなんです……!!」


聖良さんは身体を引き摺るようにしながら、私から距離を取る。


理亞「ねえさま……!! もうやめて……!!」


理亞ちゃんが駆け寄ろうとした、そのときだった。

──聖良さんと理亞ちゃんのポケットの中から、眩い光が漏れ出していた。


理亞「え!?」

聖良「こ、これは……!! まさか……!!」


二人が慌ててポケットから、取り出したソレは──ピンク色の宝石。


ルビィ「……!! 女王様のダイヤモンド……!!」


そして、次の瞬間。

私たちの目の前の空間から、とてつもない眩さの光が溢れ出す。


千歌「……っ!?」

ルビィ「ま、まさか……!!」

理亞「っ!?」

聖良「……は、はは……やはり、貴方は私たちを選んでくれた……」


その光の中から出てきたのは──


 「──アンシー……」


巨大なピンク色の宝石をその身に宿したポケモン。


聖良「ディアンシー……!! やっぱりこの世界に……!! 私の仮説は全て正しかった……!!」

 「アンシー……」


聖良さんはディアンシーに向かって身を引き摺りながら近付いていく。


聖良「ディアンシー……覚えていますか……? あの日、雪山で私たちを選んでくれたことを……」

 「アンシー……」

聖良「さぁ、私たちと共に……行きましょう……貴方に選ばれた私たちとなら──」

ルビィ「ダ、ダメッ!! 聖良さんっ!!」

聖良「……!?」


ルビィちゃんが叫んだときには──

聖良さんは、ディアンシーから生み出された、宝石の嵐に吹き飛ばされていた。


聖良「……ぁ……っ……」

千歌「……っ!!」

理亞「ねえさまっ!!!!」


全身を硬い宝石の嵐で切り裂かれ、血を流しながらぐったりとする聖良さん。


 「アンシー……」


ディアンシーはそんな聖良さんを冷ややかな目で見つめている。


理亞「ねえさまっ……!!」


理亞ちゃんが真っ青な顔になって、聖良さんに駆け寄る。


理亞「ねえさまっ!!! しっかりして!! ねえさま……!!」


理亞ちゃんが声を掛けながら、聖良さんを揺する中、私は目の前で起こる予想外の出来事に対して、呆然と立ち尽くしていた。


聖良「り……ぁ……」

理亞「……!! ねえさま!!」

聖良「ごめん……なさ、い……ディアンシー……いま、つかまえ、ますから……」

理亞「……どうして……どうして、こんなになるまで……」

聖良「……あたり、まえ、じゃない……ですか……」

理亞「え……?」

聖良「なんにも……ほしがらなかった……り、あ……あなたが……はじめて、ほしがったん……ですよ……。……また、あのあったかい、ひかりが、ほしい……と」

理亞「……!」


理亞ちゃんが聖良さんの言葉に目を見開いた。


理亞「……う、そ……じゃあ……最初から……全部、私の為に……? たった、それだけの……ために……?」

聖良「それだけ……なんて、いわないで、ください……。たったひとりの……いもうとの、ねがい……なんです、よ……」


聖良さんはそう言って、ディアンシーに視線を向ける。


 「アンシー……」


視線に気付いた、ディアンシーの周囲に再び宝石が浮かび上がる。


理亞「……っ!!!」


咄嗟に理亞ちゃんが聖良さんに庇うようにして覆いかぶさる。

そこに向かって、ディアンシーの攻撃が……!!

──……飛んで行くことは、なかった。


理亞「…………?」


理亞ちゃんが顔をあげると──


ルビィ「…………」


二人とディアンシーの間で、ルビィちゃんが両手を広げて立っていた。まるで、二人を庇う壁を作るかのように。


理亞「ルビィ……!」

ルビィ「女王様……もう、やめてください……」

 「アンシー……」

ルビィ「あの人たちはもう十分に傷付いた……もう戦う力は残ってないです」

 「…………」

ルビィ「もし、まだ罰が必要なら……この場にこうして招きいれてしまった、巫女である、わたしの責任です……わたしが代わりに罰を受けます……だから、あの二人はもう許してあげてください……」

千歌「ルビィちゃん……」

理亞「ルビィ……」

聖良「…………」


そんなルビィちゃんの言葉で、怒りが収まったのか、どうなのか。


 「アンシー……」


ディアンシーの周囲に浮かんでいた大量の宝石が掻き消え──そして、それと一緒にディアンシーも掻き消えるように姿を消してしまった。


聖良「……ディアン、シー……」

ルビィ「……ディアンシー様は、最も美しいポケモンって言われています。誰よりも美しいディアンシー様は、綺麗な心の人間の前に現われて、心の穢れた人間は嫌います……。今の聖良さんの心を、女王様は認めなかったみたいです」

聖良「そん……な……まだ、わたし……は……」

理亞「ねえさま……もう、やめて……っ……」

聖良「まだ、あのひかり……を……りあ、が、ほしがった……ひか、り……を……」

理亞「……もうそんなのいらない……っ……!! 私は……私はねえさまが居てくれたらそれでよかった……それでよかったの……っ……」

聖良「りあ……。……ふふ……りあは……やさしい、ですね……」


そう言いながらボロボロの聖良さんは理亞ちゃんの頭を撫でる。


聖良「これで……ほんとう、に……ぜんぶ、おわり……みたい、ですね……」

理亞「ねえさま……」

聖良「りあ……いままで、ついてきてくれて……ありが、とう」

理亞「ねえさま……? なんで、そんな言い方……最後みたいな……っ……」

聖良「りあ……」

理亞「なに……っ……?」

聖良「……あいして、ますよ」

理亞「……っ……! 私も……っ……!! 私もねえさまのこと、愛してる……!!」

聖良「ふふ……ありが、とう──」


その言葉を最後に、理亞ちゃんの頭を撫でていた聖良さんの腕が力なく落ちる。


聖良「…………」

理亞「ねえさま……?」

聖良「…………」

理亞「ねえさま……っ!!」


理亞ちゃんが聖良さんの手を握る。強く……強く。


千歌「…………」

ルビィ「…………」


私とルビィちゃんは、そんな光景を立ち尽くして見ていた。

お互いがお互いのことを想い続けたが故に、間違ってしまった姉妹を見て……。

……だけど、やぶれた世界は戦いが終わったこの場で、立ち止まっていることを許してくれなかった。

──ゴゴゴゴゴッ! と大きな音を立てながら、世界が揺れ始める。


千歌「!? な、何!?」

ルビィ「わ、わかんない……!?」


ルビィちゃんと二人でオロオロとしていると、


果南「ごめん、千歌、ルビィ……!! 遅くなった」

千歌「果南ちゃん!?」


果南ちゃんがニョロボンと一緒に足場を乗り継いでよじ登ってきたところだった。


千歌「果南ちゃん、ギラティナは!?」

果南「とりあえず、大人しくはした……」

ルビィ「大人しくって……?」

果南「……怒って興奮して、もうどうしようもなかったから、とりあえず倒して戦闘不能に……」

千歌「じ、じゃあ、この揺れってもしかして……!!」

果南「たぶん、制御するギラティナが気を失ったから、この世界の機能自体が一時的に崩壊しかけてるんだと思う」

千歌「そ、そんな!? それじゃ、急いで脱出しないと!!? ルビィちゃん!!」

ルビィ「う、うん!! 理亞ちゃん!!」


ルビィちゃんは聖良さんに寄り添う理亞ちゃんへと声を掛ける。


理亞「……ルビィ」

ルビィ「脱出しよう!! この世界、このままじゃ崩れちゃうみたいだから……!!」

理亞「……いい」

ルビィ「……!? 理亞ちゃん!?」

理亞「……ここで、ねえさまと一緒に……」

ルビィ「…………」

理亞「……もう、私は……」

ルビィ「理亞ちゃん……ごめん」

理亞「……え?」


──パシッ。

乾いた音がした。


理亞「…………っ」


ルビィちゃんが理亞ちゃんの頬をはたいた音だった。


ルビィ「……そんなことしても、誰も喜ばない」

理亞「…………」

ルビィ「……むしろ悲しい。わたしも……きっと聖良さんも」

理亞「……ルビィ」

ルビィ「それに……またいつか、ディアンシー様に認められるように頑張るって、ルビィと約束したよね?」

理亞「…………。……ごめん、脱出しよう」

ルビィ「うん」


ルビィちゃんがヘタリ込む理亞ちゃんの手を取って、立ち上がらせる。


ルビィ「……ドンカラス!!」
 「カァーーーッ!!!!!」

理亞「……クロバット!!」
 「クロバットッ!!!!」


黒い羽と紫の羽が開く。

二匹の飛行要員はそれぞれ主人の肩を掴む。


理亞「ねえさま……少し我慢してね」

聖良「…………」

ルビィ「聖良さん……頑張って」


二人掛かりで聖良さんを支えるようにして飛び上がり、聖良さんの手持ちを回収しながら入口に向かっていく。


千歌「果南ちゃん! 乗って!!」
 「ピィィッ!!!!」


私もムクホークの背に乗る。


果南「ごめん、千歌!! お願い!!」


そして、私たち5人は崩れ始めたやぶれた世界を脱出するために飛び出した──。





    *    *    *




ダイヤ「……っ゛……」

鞠莉「ダイヤ……っ……生きてる……っ……?」

ダイヤ「……ええ……もちろん……っ……」

鞠莉「残念な報告……なんだけど……っ……」

ダイヤ「…………聞きましょう……っ……」

鞠莉「……もう、限界……かも……っ……」

ダイヤ「……き、ぐう……ですわね……わたくしも……意識が、飛びそう……でして……っ」

鞠莉「……ふふ、じゃあ……」

ダイヤ「……ええ……」

鞠莉「倒れたらぶん殴る……っ!!」
ダイヤ「倒れたら叩き起こして差し上げますわ……っ!!」

鞠莉「……何よ、余裕……あるじゃない……っ……!!」

ダイヤ「……お互い様、ですわ……っ……!!」


そのときだった──ホールの入口から、


 「──わぁぁぁ……!?」


声が聞こえて来た。


ダイヤ「!! 鞠莉さん……!!」

鞠莉「……Yes.」


鞠莉さんと顔を見合わせて頷きあう。

──と同時に、


千歌「だわぁっ!?」
 「ピピィ!!!?」

果南「うわっ!?」

ルビィ「ぴぎっ!?」
 「カァーッ!!!?」

理亞「……!?」
 「クロバッ!!!!!」

聖良「…………」


ホールから、5人の人間と3匹のポケモンが飛び出してきた。


ダイヤ「……ぐ……」

鞠莉「…………Ah……」


わたくしと鞠莉さんは同時に珠を手放し、膝から崩れ落ちる。


鞠莉「はぁ……はぁ……っ……死ぬかと……思った……」

ダイヤ「同感……ですわね……っ……」


息を切らせながら、二人でディアルガとパルキアをそれぞれボールに戻す。


ルビィ「お姉ちゃん……!!」

ダイヤ「ルビィ……! おかえりなさい……!」

ルビィ「うん……!! ただいま──」


腕を広げて待つ、わたくしの元に走り出したルビィが、

──途中で崩れるように倒れた。


ダイヤ「……!?」

理亞「ルビィ!?」


わたくしと近くに居た理亞さんが駆け寄ると、


ルビィ「…………くぅ……くぅ……」


ルビィは可愛らしく寝息を立てていた。


鞠莉「……寝てる?」

善子「……まさかの寝落ち」

花丸「ルビィちゃん……ずっと頑張ってたから、きっと疲れたんだよ」


祠の入口の方から、善子さんと花丸さんが歩いてくる。


曜「千歌ちゃん……!!」

千歌「わ!? よ、曜ちゃん……」


そして、案の定、曜さんが千歌さんに抱きつく。


梨子「祠に入ってこようとしていたヤミラミたちは、撤退していきました」


最後に梨子さん。


果南「……本当の本当に役割がなくなって、逃げ帰ったのかもね。ある意味、ゴーストタイプの王様だったみたいだからね、ギラティナは」


そんなことを肩を竦めて言う果南さん。


鞠莉「……果南」

果南「あ、鞠莉……お疲れ」

鞠莉「……お疲れじゃないわよ」

果南「……え?」

鞠莉「また、一人で無茶して……戻ってこれなかったらどうするつもりだったのよ……!!」

果南「あ、うーんと……まあ、戻ってこられたんだから、いいじゃん」

鞠莉「……バカ……っ」

果南「……悪かったって」


果南さんはバツが悪そうな顔をしながら、鞠莉さんに言葉を返す。

果南さんは、抱きついて安堵から涙を流す鞠莉さんの頭を撫でながら、しばらくの間、そうして慰めていたのでした。




    *    *    *





ダイヤ「さて、事情聴取……と行きたいところですが、とりあえず……怪我人多数ですので、まずは病院でしょうかね」

鞠莉「そうね……真姫さんに手配はしておいた」

果南「……聖良の応急処置も、とりあえずこれで大丈夫かな」

聖良「…………」

理亞「その……ありがとう……ございます」

果南「ま……ほっとくわけにもいかないしね」


お礼を言う理亞ちゃんに果南ちゃんが苦笑して返す。


善子「とにもかくにも……」

花丸「やっと終わったずらぁ……」

ルビィ「……すぅ……すぅ……」

梨子「あはは……なんだか私たちすごい経験しちゃったね」

曜「確かに……もう、二度とこんなことないかも」

千歌「……なにはともあれ……疲れたぁ……」


──こうして……後に、グレイブ団事変と呼ばれることになる、地方全体を巻き込んだ大事件は、

やぶれた世界での戦いをもって、

本当の本当に終息となったのでした。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クロサワの入江】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./             ●回/         ||
 口=================口



 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.55  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.48 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.55 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.52 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.59 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.50 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:163匹 捕まえた数:15匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.51 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.48 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.47 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.39 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.48 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 5個 図鑑 見つけた数:133匹 捕まえた数:13匹

 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.52 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.46 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.44 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.46 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.41 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.40 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:159匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:48pt

 主人公 ルビィ
 手持ち バシャーモ♂ Lv.50 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.39 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      キテルグマ♀ Lv.46 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      グラードン Lv.75 特性:ひでり 性格:すなお 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:105匹 捕まえた数:14匹

 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.43 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.40 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.37 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.33 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.30 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.40 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:114匹 捕まえた数:40匹

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.49 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.56 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.49 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.50 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.42 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.56 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:138匹 捕まえた数:52匹


 主人公 果南
 手持ち ラグラージ♂ Lv.75 特性:しめりけ 性格:やんちゃ 個性:ちからがじまん
      ニョロボン♂ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ギャラドス♀ Lv.74 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      ヌオー♂ Lv.70 特性:ちょすい 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      キングドラ♂ Lv.71 特性:スナイパー 性格:ひかえめ 個性:ぬけめがない
      ヤドラン♂ Lv.73 特性:マイペース 性格:ひかえめ 個性:ひるねをよくする
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:281匹 捕まえた数:137匹

 主人公 鞠莉
 手持ち マフォクシー♀ Lv.68 特性:マジシャン 性格:がんばりや 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ギャロップ♀ Lv.66 特性:ほのおのからだ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      サーナイト♀ Lv.70 特性:トレース 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      ビークイン♀ Lv.64 特性:きんちょうかん 性格:すなお 個性:うたれづよい
      ポリゴンZ Lv.64 特性:てきおうりょく 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      メタモン Lv.61 特性:かわりもの 性格:まじめ 個性:かんがえごとがおおい
      パルキア Lv.75 特性:テレパシー 性格:せっかち 個性:ちのけがおおい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:468匹 捕まえた数:312匹

 主人公 ダイヤ
 手持ち ジャローダ♀ Lv.69  特性:あまのじゃく 性格:いじっぱり 個性:まけんきがつよい
      メレシー Lv.66 特性:クリアボディ 性格:まじめ 個性:とてもきちょうめん
      ミロカロス♂ Lv.70 特性:かちき 性格:れいせい 個性:まけんきがつよい
      ハガネール♀ Lv.72 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      オドリドリ♀ Lv.63 特性:おどりこ 性格:おっとり 個性:とてもきちょうめん
      アマージョ♀ Lv.67 特性:じょおうのいげん 性格:さみしがり 個性:あばれることがすき
      ディアルガ Lv.75 特性:テレパシー 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:267匹 捕まえた数:114匹


 千歌と 梨子と 曜と ルビィと 花丸と 善子と 果南と 鞠莉と ダイヤは
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.




■Chapter077 『戦いの後』





さて……戦いが終わり。チカたちは満身創痍な状態でした。

善子ちゃんと曜ちゃんは極度の疲労困憊でローズシティの病院に着くと検査も待たずに待合室の椅子で眠ってしまいました。

梨子ちゃんと花丸ちゃんは直接ポケモンから攻撃を受けたため、その治療を。

花丸ちゃんはリングマに首を絞められたのと、ブルンゲルに掴まって溺れかけたことで検査を受けはしたものの、受けた傷自体は軽傷だったようです。

梨子ちゃんは鞠莉さんの簡易診断通り、アバラ骨に小さなヒビが入っていたそうなので、数日病院で過ごすことになるみたい。

……時間にして1~2時間ほどだったらしいけど、パルキアとディアルガに珠から命令を送り続けていた、鞠莉さんとダイヤさんも、検査も兼ねてしばらくの間、安静にするように言われたそうです。

そして私も……──。


千歌「──えっと……療養ですか?」

真姫「そ。一先ず検査では何も問題はなかったけど……。“やぶれた世界”に行ったことがある人間なんて居ないから、体がどんな影響を受けてるかわかったもんじゃないし。その観察も含めて1ヶ月くらいは休養しなさい。自宅とかでいいから」

千歌「ぅ……でも、旅の続きが……」

真姫「……どっちにしろ、しばらくは騒動のごたごたでジム戦とか、コンテストもロクに出来ないから。その間に家族に顔でも見せてきたら?」


真姫さんとそんなやり取りをしていると、廊下の方が騒がしい──


ナース「ま、待ってくださいぃ!!」
 「ラッキー!!!」

果南「無理!! 1ヶ月もじっとしてたら、それこそ死んじゃうって!!」


ドタバタと逃げる果南ちゃん。そして、それを追うナースさんと助手のラッキー。


千歌「……」

真姫「千歌……ああいう大人になっちゃダメよ」

千歌「あはは……」


──そして、やぶれた世界から戻ったあと、すぐに眠ってしまったルビィちゃんですが……。


ルビィ「……ぁ……千歌ちゃん……」

千歌「ルビィちゃん」


診察を終えて診察室から出てきたところ、廊下でルビィちゃんと鉢合わせる。


千歌「起きてて、大丈夫?」

ルビィ「ぅん……いっぱい、寝たから……ふぁ……」


そういう割にルビィちゃんは眠たそうにあくびをする。


ルビィ「千歌ちゃんは……このあとどうするの……?」

千歌「私はしばらく自宅療養だってさ。明日くらいには一旦ウラノホシに戻ろうかなって」

ルビィ「そっか……ルビィも早く戻りたいな」


ルビィちゃんは……あの戦いの後、丸二日間ほど眠っていました。

そして、今も一日の4分の3くらいは眠っているそうです。

理由は不明みたい。でも、メガシンカによる困憊に似ているらしく──ここまで症状が大きく出ることは稀らしいけど──グラードンを覚醒させたことによる反動なんじゃないかとのことです。

幸い体には何も異常は見つからないみたいで、本当にただたくさん寝ているだけみたいだけど……。


千歌「きっとすぐ戻れるよ」

ルビィ「うん、ありがと。千歌ちゃん……ふぁぁ……」

千歌「今はゆっくり眠って休んでね」

ルビィ「うん……そうする……」


ルビィちゃんと別れ……目的の病室へ──


千歌「──……失礼しまーす……」


ゆっくりとドアを開ける。


鞠莉「あら? 千歌っちじゃない」

ダイヤ「千歌さん、いらっしゃい」


訪れたのは、ダイヤさんと鞠莉さんの病室だ。


千歌「二人とも具合は……」


二人のベッドの間にある椅子に腰を掛けながら訊ねる。


ダイヤ「幸い体に目立った異常はないそうですわ」

鞠莉「強いて言うなら、全身筋肉痛が酷いわね……」

ダイヤ「……横になっていても、筋肉が少し痛むほどですから。歩いたり走ったりするのは、しばらくは遠慮したいですわね」

千歌「そっか……でも、二人には何もなくてよかった……」


私は心の底から安堵した。

──そう二人には、だ。


ダイヤ「……大丈夫ですわ。ルビィの過眠症状も恐らく一時的なものだと、診断はされていますし……」

鞠莉「まともに動けもしないのに、ルビィの病室に這ってまで行こうとしてたのは誰かしら?」

ダイヤ「ま、鞠莉さん! 余計な事を言わないでください!!」

千歌「あはは……うん、ルビィちゃんもそうなんだけど……」


私は口ごもる。


鞠莉「……聖良のこと?」

千歌「……はい」


聖良さんは……。あれから一度も目を覚ましていない。

外傷は見た目ほど酷かったわけじゃないらしいけど……。

メガシンカの乱用。伝説の珠の長期間の使用。そして、やぶれた世界での戦闘。

いろんなものが重なり……今のところ、目を覚ます気配がないそうだ。


鞠莉「メガシンカはトレーナーとポケモンの力を同調させて強化するからね……一度に三匹もメガシンカさせたら、体がどうなるかなんて……」

ダイヤ「それに、パルキアを“しらたま”で操る訓練も、かなり長い間、行っていたそうです……外から見てもわかりませんでしたが、彼女の精神には想像も出来ないくらい大きな負荷が掛かっていたのかもしれませんね」

千歌「そうですか……」

鞠莉「……ま、千歌っちが気に病むことじゃないヨ」

ダイヤ「……そう、ですわね。少し冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが……これも因果応報です。良くも悪くも、自分のやったことの代償は自分以外の人間に精算することは出来ませんわ……」

千歌「……はい。……えっと、理亞ちゃんは?」

鞠莉「……事情聴取のとき以外は聖良の病室に居るみたいだヨ」


──事情聴取。

この事件のあと、グレイブ団は組織そのものが解体となりました。

一部、研究員が捕まったりもしたそうなんだけど……ほとんどは聖良さんのカラマネロやスリーパーからの催眠暗示で動いていたことがわかり、完全に無罪放免……とまではいかないけど、その人たちはしばらく保護観察ということになるそうです。

……そして、理亞ちゃんも。

理亞ちゃんは取調べで「自分に全部の責任がある。罪は自分が全て背負う」とずっと繰り返しているそうですが……。

警察の見解としては、理亞ちゃんも聖良さんから洗脳を施されている可能性が高いと言うことで、手持ちを没収の上、彼女も他の団員同様、とりあえず保護観察処分になったそうです。

ただ、そんな警察が首を傾げているのは「ヤミラミや、ブーピッグの身体から宝石を直接抽出してるのは自分は一切知らなかった」と言う供述に対してで、むしろそのことについて聞かされたときは理亞ちゃんが一番驚いていたとか……。

洗脳されていたにしては、何故その部分だけは姉や団の研究員を庇う要素がないのかが疑問のようです。

……たぶん、聖良さんは理亞ちゃんにはそれがバレないように細心の注意を払っていたんだと思います。

もし聖良さん本人にそうした理由を聞いたら『悪魔は、自分だけで良い』……と、そう言っていたんじゃないかなと、私は勝手に思っています。

理亞ちゃんは当分、この病院内の特定スペース以外は自由な移動も制限されるらしいけど、真姫さんが自ら監視役を名乗り出てくれたお陰で、姉の聖良さんの病室への出入りだけは自由に出来るそうです。


ダイヤ「千歌さん」

千歌「?」


考え事をしていたら、ダイヤさんに声を掛けられて我に返る。

ダイヤさんの方を見ると、なにやら手招きをしている。


千歌「?? なんですか?」


ダイヤさんに近付くと、


千歌「──わ!?」


抱き寄せられた。

ぎゅーっと。

そして、頭を撫でられる。


千歌「だ、ダイヤさん……?」

ダイヤ「千歌さん……今回は本当に、よく頑張りましたわね」

千歌「え、あ、いや……そんな、夢中だっただけで……」

ダイヤ「貴方の勇気のお陰で、多くの人が救われました……こんな立派な教え子を持てて……わたくしは幸せ者ですわ」

千歌「ダイヤさん……」

ダイヤ「気付けば、貴方は……もう一人前のポケモントレーナーですわね」

千歌「えへへ……ありがと、ダイヤさん……。でも、もっともっと強くなるから……見ててね」

ダイヤ「ええ、もちろんですわ。期待していますわよ、わたくしの自慢の教え子さん」




    *    *    *





ダイヤさんと鞠莉さんの病室を後にして、次に訪れた部屋で、


千歌「えっと……こんにちは~……」


再びそろりそろりとドアを開ける。


理亞「……千歌」

千歌「こんにちは、理亞ちゃん」


部屋の中には理亞ちゃんの姿、そして……


聖良「…………」


眠っている聖良さんが静かにベッドに横たわって目を瞑っている。


理亞「……ねえさま、生命活動には何も問題がないみたい。呼吸もちゃんとしてるし……眠ってるから、点滴で栄養を補給するしかないけど。本当にただ眠ってるのと同じ状態。……目を覚まさないことを除けば」

千歌「……そっか」

聖良「…………」


静かに眠っている聖良さんを二人で見つめる。


理亞「……ねえさまと私がやったことは……きっと許されないことだと思う」

千歌「……」

理亞「ねえさまが目を覚ましたら……その罪を二人で償わなくちゃいけない」

千歌「理亞ちゃん……」

理亞「今はねえさまは眠っているから……足りないだろうけど、私の分だけでも……。本当に、ごめんなさい……」


理亞ちゃんはそう言って頭を下げる。

ここ数日。何度か理亞ちゃんの元を訪れているけど、何度もこうして謝罪をされている。


千歌「……理亞ちゃんたちには理亞ちゃんたちの想いがあったんだよね。それが良いことだったとは言えないけど……ちゃんと前を向いて反省していくつもりがあるなら、きっと大丈夫だと思う」

理亞「千歌……。……うん」

千歌「……あはは、ごめんね。なんか偉そうに」

理亞「いや……大丈夫」

千歌「……あんまり長居しても悪いから、もう行くね」

理亞「うん」


様子を見に来ただけだったし。私は踵を返して、部屋から出て行こうとする。

そのとき、


理亞「千歌」


理亞ちゃんに名前を呼ばれて、立ち止まる。


千歌「ん……なにかな?」

理亞「ねえさまを止めてくれて……ありがとう」

千歌「……うん、どういたしまして」


私は理亞ちゃんからのお礼に言葉を返して、今度こそ部屋を後にするのだった。





    *    *    *





聖良さんの病室から出た後、病院のエントランスに行くと。


海未「千歌」

千歌「! 師匠」


そこで海未師匠に声を掛けられる。


千歌「どうしたんですか?」

海未「私はそろそろリーグ本部に戻ろうかなと思っていたので……最後に千歌と会っておこうかなと」


海未師匠は、そう言いながら私の頭を撫でる。


海未「まず……よくやりましたね、千歌。さすが私の弟子です」

千歌「えへへ……今日はなんかすごい褒められる」

海未「それと報告ですが……1番道路の海岸沿いに墜落した飛空挺セイントスノウは、先ほど撤去作業を開始したそうです。加えて、中に居た団員やポケモンですが、負傷者こそ居たものの、重傷者や死者は出ていないとのことです」

千歌「そっか……よかった」


直後のパルキアとの戦いのせいでそれどころじゃなかったけど……かなり派手に堕としちゃったもんね。

大きな被害にならなかったのは間違いなく、海未師匠たちが地面への激突を防いでくれたお陰だろう。


海未「事件の調査に関しては適宜進めてはいるそうですが……如何せんほぼ全ての計画を聖良が主導で行っていたようで、彼女が目を覚まさないことにはあまり話が進みそうにありませんね……いつ目が覚めるかもわからない状態ですし」

千歌「……実験に使われてたポケモンたちは……?」

海未「ダリアの研究室、カーテンクリフのアジト、グレイブマウンテンの造艦基地と、飛空挺の中から、実験に使われていたポケモンは全て保護しました。衰弱個体もそれなりに居ましたが……とりあえず、保護したポケモンたちは、治療を施して一命は取り留めています」

千歌「そっか……」

海未「ですが……後遺症が残る子はいるでしょうし、全てが元通りとまでは行かないと思います。……それに、もう命を落としてしまったポケモンも居ますから」

千歌「…………」


その言葉を聞いて、思わず表情が曇る。


海未「千歌……そんな顔をしないでください。貴方たちが居たから助かった多くの命があることもまた事実なんですから……」

千歌「……はい」

海未「奪った命の責任は……いつか、目を覚ました聖良本人が償って行くしかありません。口で言うように、簡単に贖いきれるものなのかはわかりませんが……」

千歌「……今度、そのポケモンたちのお墓参りに行きたいな……」

海未「ええ、そうしてあげてください。希がグレイブガーデンにお墓を作ってくれるそうなので……」

千歌「……はい」


亡くなってしまった命は……もう戻らない。

だから、せめて、その魂だけでも……安らかに眠ってくれればなって……。


海未「……地方全体は順調に平和を取り戻しつつあります。各地のゴーストポケモンの数も平常に戻りつつあります。これも全て、貴方たちのお陰ですよ、千歌。ポケモンリーグ四天王の立場として直々に御礼を述べさせて頂きます。ありがとうございます」

千歌「えへへ……でも、みんなが頑張ったからこその平和だと想います」

海未「ふふ……貴方ならそう言うと思っていましたよ。……さて、それでは、私はウテナシティに戻りますね」


ウテナシティ……確かポケモンリーグがある街だよね。


海未「それでは、千歌。今度こそ……ポケモンリーグで会いましょう」

千歌「はい!」


そう言って海未師匠は病院から去って行くのだった。





    *    *    *





海未師匠と別れたあと、

私は自分の病室に戻ってきていた。

明日には一旦自宅に戻るために、荷物をまとめないとね。

私がそんなことを考えながら、病室の中に入ると。


曜「あ、千歌ちゃん」

善子「ん、千歌」

梨子「千歌ちゃん、おかえり」

花丸「おかえりずら~」

ルビィ「……すぅ………すぅ………zzz」


6人部屋の病室の中では、ベッドで安静にしている梨子ちゃんと花丸ちゃん。可愛らしい寝息を立てて眠っているルビィちゃんの姿。

そして、外着に着替えて、今まさにバッグを背負っているところの曜ちゃんと善子ちゃんが居た。


千歌「曜ちゃんと善子ちゃんはもう旅に出るの?」

曜「うん。私たちはそれこそメガシンカの疲労があっただけだし、もう入院してる理由もないから。とは言っても、私はことりさんのところに戻るだけだけど」

善子「ま、病院食も飽きたしね……これ以上、長居する理由もないし。私はちょっとあちこち回ってポケモンでも捕まえようかなって」

千歌「ポケモンの捕獲?」

善子「私の旅の目的はアブソルだったから……もう特段やることもなかったんだけどね。鞠莉から頼まれちゃって」

花丸「善子ちゃん、実は図鑑を貰った6人の中で一番捕獲データが揃ってたんだよね」

千歌「え、そうなの?」

善子「むしろこっちが驚きよ……ま、そういうことで図鑑データの捕獲収集を任されたってこと」
 「そうロトー行くロトー」


そう言って、善子ちゃんのバッグから、ふよふよと板状のものが飛び出してくる。


千歌「あ、ロトム」

善子「ついでに変なのにも懐かれちゃったし……」
 「変とは失礼ロトー」

千歌「ロトムは善子ちゃんと一緒に行くの?」

 「そうロト」
善子「鞠莉がね、捕獲に役立つと思うからって、しばらく貸してくれるみたい」

千歌「そうなんだ」

善子「そんじゃまぁ……そういうことだから、私は行くわね」


善子ちゃんはそう言いながら、ロトムを引き連れて、病室から出て行く。


善子「……あー……最後に、あんたたちに言っておきたいんだけど」

千歌・梨子・曜・花丸「「「「?」」」」

善子「……今回の戦い、あんたたちと一緒に戦えて……よかったわ。ありがと。……それだけ」


それだけ言うと、私たちの返事も待たずに善子ちゃんはそそくさと出ていってしまった。


花丸「最後まで素直じゃないずらね」

梨子「ふふ、むしろ最後だけは頑張って素直になったのかもよ?」

曜「まあ、善子ちゃんらしいかな」

千歌「かもね」


4人で顔を見合わせてクスクスと笑ってしまう。


曜「……さて、それじゃ私も行くね」

千歌「うん! コンテスト、頑張ってね!」

曜「千歌ちゃんもね!」

千歌「うん!」


曜ちゃんも善子ちゃん同様に出口の場所で一旦立ち止まり、振り返る。そして、私たち一人一人にゆっくりと目を配る。


曜「梨子ちゃん」

梨子「うん」

曜「花丸ちゃん」

花丸「ずら」

曜「千歌ちゃん」

千歌「うん」

曜「それと……寝てるけど、ルビィちゃんも」

ルビィ「…………すぅ……すぅ……」

曜「皆と一緒に戦えて、すっごく心強かった! その中で私はまた一つ強くなれた……ありがとう、皆」

梨子「どういたしまして」

花丸「いっぱい助けられたずら、ありがとね曜ちゃん」

千歌「えへへ、こちらこそ!」

曜「うん! それじゃ、またどこかで会おうね!」


そうして、曜ちゃんは手を振りながら部屋から出て行ったのだった。


千歌「……えっと、梨子ちゃんと花丸ちゃんはもう少し入院するんだっけ?」

梨子「うん、とは言っても本当に大事を取ってで、1週間くらいだけどね」

花丸「マルもあと何日かしたら退院するよ」

梨子「千歌ちゃんは明日には家に戻るんだっけ? さっきルビィちゃんが部屋に戻ってきたとき、そう言ってたけど……」

千歌「うん、そこから1ヶ月は自宅療養。だから、みんなよりも旅に戻るのは遅くなっちゃうかな……あはは」

梨子「……じゃあ、その間に追い抜かしちゃおうかな」

千歌「追い抜かす……ってことは」

梨子「うん、私はまた地方を回りながら、ジムを巡ろうかなって。ここからだと東のクロユリシティが近いからそっちに行くことになるかな」

千歌「そっか」

梨子「バッジ2個差くらいすぐに埋めちゃうからね?」

千歌「ふふん、別にそれくらいのハンデじゃ、チカ追い越されないけどね」

梨子「ふふ、言うね。あとで文句言わないでよ?」


二人で視線をぶつけ合い。


梨子「……ふふっ」
千歌「……あははっ!」


なんだか、可笑しくなって笑ってしまう。


千歌「花丸ちゃんはこのあとどうするの?」

花丸「ん、マルは……旅の目的がルビィちゃんと一緒に旅することだったからなぁ……」

ルビィ「……んゅ…………zzz」


確かにルビィちゃんの旅は理亞ちゃんが目的だった以上、全て決着がついたようだし、同時に花丸ちゃんも旅の目的がなくなっちゃったのかも。


花丸「……でも実は、鞠莉さんに助手にならないかって言われてるんだよね」

千歌「え!? ホントに?」

花丸「うん。……研究者もいいかもって思うし、本当に助手になるかは保留だけど、とりあえず鞠莉さんの研究所でしばらくお手伝いしようかなって考えてるずら」

千歌「そっかそっか……みんなちゃんと今後やることを決めてるんだなぁ……」


私が関心していると。


梨子「千歌ちゃんは?」


梨子ちゃんがそう訊ねて来る。


千歌「ん、私は変わらないよ──なんかすっごい感じになりたい!」

梨子「ふふ、なにそれ……」

千歌「私は自分が何になりたいのか、何をしたいのか……そういうものは、仲間たちと旅をしながら見つけられればいいかなって思うからさ」

梨子「そっか。千歌ちゃんらしいね」


梨子ちゃんは私の話を聞いて、楽しそうにクスクスと笑うのだった。





    *    *    *





──さて、今日はいろんな人たちとお話をして回ったけど……。

話をしなくちゃいけない相手がまだ残ってるよね。

私は病院の庭先に出てきて、


千歌「みんな、出ておいで!」


6つのボールを放った。


 「バクフー」
 「ワフッ」
 「ピピィ」
 「ワォン」
 「グゥォ」
 「ゼル」


それは、一緒に激闘を戦い抜いた仲間たち。


千歌「バクフーン」
 「バクッ」

千歌「ムクホーク」
 「ピピィ」

千歌「ルガルガン」
 「ワォン」

千歌「ルカリオ」
 「グゥォ」

千歌「フローゼル」
 「ゼル」

千歌「しいたけ」
 「ワフッ」


名前を呼んで、順番に抱きしめてから、


千歌「みんな、ありがとう……みんなが居てくれたから、ここまで戦えたよ」
 「バクフー」「ピピィ」「ワォン」「グゥォ」「ゼル」「ワフッ」


お礼を言った。


千歌「んでもって……これからもよろしくね!」
 「バクフー」「ピピィ」「ワォン」「グゥォ」「ゼル」「ワフッ」


これまでも、これからも……この仲間たちと旅をして、強くなるんだ。そう改めて胸の中で想いながら──ローズシティの日は暮れて行くのでした。




    *    *    *





──
────
──────
────────





    *    *    *




──……さて、あの事件から早くも1ヶ月が経過しようとしていました。

わたくしと鞠莉さんも、無事快復・退院をし、また故郷へと戻ってきていました。

そして、今日は鞠莉さんに呼ばれてオハラ研究所の鞠莉さんの部屋に訪れています。


ダイヤ「それで話とは?」

鞠莉「……あーうん、今回の見解を整理しておこうかなって思って」

ダイヤ「見解?」

鞠莉「……結局、伝説のポケモンと、彼らを制御する“たま”とは一体なんだったのかってこと」

ダイヤ「……あぁ」


鞠莉さんの自室には、大きな金庫のようなものが置いてあり……“こんごうだま”と“しらたま”は現在この中で厳重に保管されています。


鞠莉「……たぶん、製法に関しては聖良が見つけたものが答えだと思ってる」

ダイヤ「……答え……ですか」

鞠莉「もちろん抽出の方法とか細かい部分は、太古の時代に作られていたものとは違うだろうけどね……ただ、あれだけの力をあの小さな珠に籠める……と言う点に関しては合理的な方法だと思うわ。倫理的かはともかく」

ダイヤ「まあ、実際呼び出すことには成功してしまいましたからね……」


実際にパルキアもディアルガも姿を現してしまったし。結果として、鞠莉さんが二匹とも所持している。夢や幻などではなく、確実にそこに存在するポケモンを呼び出してしまったのだ。


ダイヤ「ですが……こうして、パルキアやディアルガを呼び出してしまった上に捕まえてしまってよかったんでしょうか? シンオウ地方は今神と呼ばれるポケモンが不在なのでは……」

鞠莉「あーそれなんだけどね……ちょっと興味深いことがあって」

ダイヤ「興味深いこと?」

鞠莉「ちょっとこれ見てくれる?」


そう言って鞠莉さんは机の上にあったパソコンの画面に、パルキアとディアルガの詳細データを表示する。

 『 パルキア  Lv.75 特性:テレパシー 性格:せっかち 個性:ちのけがおおい』
 『ディアルガ Lv.75 特性:テレパシー 性格:れいせい 個性:ぬけめがない』


鞠莉「これが、あの2匹の個体データなんだけど……」

ダイヤ「これが、どうかしたのですか……?」


確かにこれはあのときのパルキアとディアルガのデータだとは思いますが……。


鞠莉「特性……“テレパシー”よね」

ダイヤ「? はい」

鞠莉「あのあと、シンオウの伝説やら、ギンガ団の一見の調査報告とかを確認したんだけど……どの調書を見ても、パルキアもディアルガも、特性は“プレッシャー”だって言う結論しか導きだせなかったのよ」

ダイヤ「……え? じ、じゃあ、このパルキアとディアルガは……」

鞠莉「たぶん、シンオウの伝説のものとは別個体よ」

ダイヤ「そんなことが在り得るのですか……? 地方の神話が発祥とは言え、神と呼ばれるポケモンですわよ?」

鞠莉「わたしもそう思うけど……実際このポケモンたちは“テレパシー”を使ってたし」


……確かに実際わたくしたちは珠を通して、“テレパシー”で命令を送っていたわけですが。


鞠莉「聖良が珠を生成する過程の中で、異次元空間に生きている別個体のパルキアとディアルガが珠の波長に引き寄せられた……と言うところだと思う」

ダイヤ「……なるほど」

鞠莉「だから、きっと他の個体には他の個体に波長が合うような調整を施したものじゃないと効果がないんじゃないかしら。これを踏まえて、わたしが考えた仮説はこう。……太古の時代、強大な力を持った伝説のポケモンたちを制御するために……人々は多くのポケモンの命を犠牲にして、珠を作った」

ダイヤ「……」

鞠莉「そして、その珠の力を使って、人の手に余る伝説のポケモンたちを封印し……それと同時に、こんなおぞましい“どうぐ”の製法を後世に残さないために……一切の伝承を歴史の闇に抹消したんじゃないかしら」


それが誰かに伝わり、同じ悲劇が繰り返されることのないように……。

……ですが、


ダイヤ「一つ……わたくしの考えも聞いてもらってもいいですか?」

鞠莉「いいよ? 何?」

ダイヤ「犠牲になったのは……ポケモンだけではなかったんじゃないでしょうか」

鞠莉「……? どういうこと?」

ダイヤ「……この珠を使うだけでわたくしたちは命が削られるような感覚を味わいましたよね」

鞠莉「ええ」

ダイヤ「珠を扱い、伝説のポケモンたちの意に背くように封印をするというのは……使用者もどれだけ命を削ることになるのでしょうか」

鞠莉「……なるほど」

ダイヤ「この“たま”という道具は……ただ人間のエゴでポケモンたちを犠牲にしたものではなく。……人とポケモンが、手を取り合い、命を掛け、世界の秩序を守るために編み出した、知恵だったのではないでしょうか」


もちろん、これはわたくしの妄想に過ぎないのですが……。


ダイヤ「ただ、後世に伝えるべきではない、『おぞましい製法』だったということには変わりないでしょうけれど」

鞠莉「……そうだネ」

ダイヤ「それで……どうするのですか?」

鞠莉「……珠の今後のこと?」

ダイヤ「ええ。先人達に倣って、わたくしたちもこの珠を歴史の闇に葬るべきなのでしょうか」

鞠莉「……そうね。それが正しいのかもしれない。けど……」

ダイヤ「……けど?」

鞠莉「わたしはただ、封印して、抹消して、なかったことにしても……人の執念は、またいつか同じ物を見つけてしまうんじゃないかと思う。今回の聖良のように」

ダイヤ「…………それは」

鞠莉「だから……この“どうぐ”も、ポケモンたちも、ちゃんとわたしたちと共存出来るように、研究して、考えて行くことが、わたしたちが本当に伝えていかなくちゃいけないことなんじゃないかと思うわ」

ダイヤ「そうですか……。……そうかもしれませんわね」

鞠莉「そのために、もしかしたら協力してもらうこともあるかもしれないけど……」

ダイヤ「まあ……仕方ありませんね。世の為、人の為……そして、鞠莉さんの頼みですから」

鞠莉「ダイヤ……Thank you ネ」


鞠莉さんは苦笑しながら、お礼を述べてくる。


ダイヤ「それはそうと……わたくしからもお訊ねしたいことがあるのですが」

鞠莉「? なに?」

ダイヤ「ルビィのグラードンについてです」

鞠莉「……あぁ」

ダイヤ「あのグラードンは……結局どこから来たポケモンなんでしょうか……?」

鞠莉「ルビィ曰く……ずっと一緒に居たって言うことだからね。……強いて言うなら“ルビィのこころ”に生息していたんじゃないかしら……」

ダイヤ「……それこそ、そんなことは在り得るのですか? あんなに大きなポケモンが……実は心の中に居たなんて……」

鞠莉「伝説のポケモンが姿かたちを変えて、何かの中で眠っているってことは、大なり小なり伝承は残ってるのよ。イッシュ地方の勇者の話とかね。……詳しくはこれから調べるつもりだけど、巫女の力が作り出した精神世界のような場所で、ずっと目覚めの時を待っていたのかもしれないわね」

ダイヤ「巫女のメレシー──コランはその鍵だったということですか……」

鞠莉「恐らくね。あの真っ赤な宝石を持ったメレシーは“べにいろのたま”に近い存在なんだと思うわ。……わたしたち研究者もだけど、クロサワの家も自分の家にある伝承を一度調べなおした方がいいかもしれないネ」

ダイヤ「そうですわね……。それで、今そのグラードンは……」

鞠莉「ルビィがボールに入れて連れ歩いてるみたいだけど」

ダイヤ「大丈夫なのでしょうか……?」

鞠莉「まあ、ルビィ曰く、あの戦い以降グラードンはずーっと眠ってるって言ってる……定期的に検査はしてるけど、確かにずっと眠ったままなのは本当みたいだし」

ダイヤ「……ですが、ルビィの体調は」

鞠莉「……そうね。グラードンを呼び出して操っていたことによる副作用だとは思ってる。でも、最近はだんだん起きてる時間も伸びてきたんでしょ?」

ダイヤ「ええ、まあ……最近は一日に10時間ほどの睡眠で、少し長めではありますが……あとは元気に活動していますわ」

鞠莉「なら心配ないんじゃないかしら。この調子なら直にいつもの生活に戻れると思うし。それこそ、またルビィがグラードンの力に頼るような危機が起こらないように努めることが一番なんじゃないかしらネ」

ダイヤ「まあ……そうですわね」


また、今回のような、世界を揺るがすような危機が起きないように……秩序を守るために、尽力する。

それがわたくしたちに出来ることなのでしょう……。きっと。





    *    *    *





鞠莉「ダイヤ、ジムの調子はどうなの? 騒動後の復旧もだいぶ落ち着いてきて、挑戦受付再開してるんでしょ?」

ダイヤ「ええ。昨日丁度、梨子さんが挑戦に来たところですわ」

鞠莉「結果は?」

ダイヤ「わたくしも善戦はしたのですが……彼女、旅立ちの頃からは見違えるほど、強くなりましたわ」

鞠莉「最初は見てるこっちが不安になる感じだったものね。……ダイヤに勝利して──梨子のバッジも7個かしらね」

ダイヤ「そうですわね。クロユリシティのジム戦には既に勝利したとのことでしたので……」

鞠莉「確か……セキレイジムが残ってるって言ってたっけ?」

ダイヤ「ええ。ですが、セキレイジムに行く前に用事があると言っていましたけれど……」

鞠莉「用事?」

ダイヤ「なんでも……4番道路に向かうとか」

鞠莉「4番道路? ……コメコシティとダリアシティを繋ぐ道路だっけ、確かあそこって──」





    *    *    *




──4番道路。

広く長く続く道路、以前来たときは、千歌ちゃんと一緒に駆け抜けた、この道路、通称──


梨子「──ドッグラン……」


私はドッグランに再び訪れていた。


 「ブルル…」


メブキジカが心配そうに声をあげるが、


梨子「メブキジカ、大丈夫だよ」


私は息を整える。

この旅の中で、いろんな経験をした。

焦り、叱られ、窘められ、諭され、訓えられ、自分と向き合って、大切なことを思い出して、たくさんの仲間や友達と出会って、たくさん怒って、たくさん泣いて、たくさん笑った。

……そんな旅も、最後の1個のジムバッジを残すだけになった。

だから、最後に……自分の過去と──トラウマと向き合おうと、

ここに来た。


梨子「……行こう」
 「ブルル」


私は、ドッグランへと、足を踏み出した。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【4番道路】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |__●回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.56 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.51 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.50 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.45 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.54 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:142匹 捕まえた数:13匹


 梨子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter078 『家族』 【SIDE Riko】





──4番道路、ドッグラン。

私はここで、自分の過去と決別する。

そう意気込んでやってきた。

そして、私が今からやろうとしていること……それは。


梨子「……最後の手持ちをここで捕まえること」


ずっと空いている状態だった6匹目の手持ち。

それをここで手に入れることだ。

ダリアジムで千歌ちゃんと共闘したときに、触れたイワンコ。

そして……実は気付いていたのだけれど、パルキアとの戦いの際、落下する私を助けてくれた──トリミアンのしいたけちゃん。


梨子「私……犬に触れるようになってる」


もちろん、自分から進んで触りに行くことはまだ躊躇する。

だけど、パニックを起こしていた昔からは考えられないことだ。

きっと、自分の中で、あのときのトラウマを乗り越える準備が出来つつあるんだ。


梨子「とは言っても……」


ドッグランの辺りを見回すと、相変わらずあちこちを犬ポケモンたちが走り回っている。

最後の手持ち……適当に決めるのは憚られる。

割と近くに見えるのは、ガーディやポチエナの群れ。

遠方ではブルーが集まって日向ぼっこをしているし、その周囲ではラクライたちがマッスグマと競争するように猛スピードで走り回っている。

私は少し考えたけど……。

捕まえる捕まえないより前に、やるべきことがあると思った。





    *    *    *





──それは、私がここドッグランに訪れて、最初に挫折した場所。


梨子「……こんにちは、ムーランドさん」

 「…ヴォッフ」


ずっしりと構えるムーランド、その周りには相変わらずたくさんのヨーテリーやハーデリアがいる。

正直、これだけいると今でも少しだけ足が竦む。

けど、ここでとんぼ返りするようじゃ、本当に何しにきたのかわからない。


梨子「ムーランド、私のこと覚えてる?」

 「…ヴォッフ」


ムーランドは私の言葉に対して、首を縦に振る。

ムーランドは頭が良く、人に良く懐く。

案外、ここを通る人の顔を覚えているのかもしれない。

そして、そんなムーランドの元に訪れて、何がしたかったかなんて、言うまでもない。


梨子「ムーランド……──あのときは助けてくれて、ありがとう」


私はそう言って頭を下げた。


 「ヴォッフ…」

梨子「私……あのときは本当にビックリして、気絶しちゃったけど……。私が他のポケモンに襲われない様に、自分の近くで守ってくれてたんだよね」


千歌ちゃんに発見されたとき、私はムーランドのすぐ近くでヨーテリーとハーデリアに群がられていたと聞いた。

だけど、不思議なことに……こんなだだっ広く、絶えず野生のポケモンたちが言ったり来たりしている場所で、

怪我どころか、服も、リュックも、道具も……それこそ、一番狙われるであろう食料も、全てが気絶する前と何も変わらない状態のままで……。

それはどう考えても、このムーランドが守ってくれていたお陰だった。


梨子「あのときは怖がって……悲鳴をあげて……助けてもらったのに、お礼の一つも言えなくて……だから、ここに来たの」

 「ヴォッフ…」


私は一歩前に踏み出す。


 「ヴォッフ」


一歩ずつ近付く。

一歩近付くごとに、心臓の鼓動が少しずつ早くなっていく。

──大丈夫。

大丈夫。怖くない。

心の中で、自分に言い聞かせるように。

近付いて、


梨子「……ありがとう」


ムーランドの顔に触れた。


梨子「…………」

 「ヴォッフ…」

梨子「……さわれた」

 「ヴォッフ」

梨子「……さわれた……っ……」


その事実が、なんだか嬉しくて、


梨子「……よかった……っ……」


私は安堵の涙を流しながら、ムーランドに抱きつく。


梨子「お母さん……っ……私、もう大丈夫だよ……っ……」


幼少のときから、心に抱えていた傷を──やっと乗り越えることが出来た。


 「ヴォッフ」


ムーランドは、一人で勝手に安堵して泣きじゃくる私を咎めることはせず……涙が止まって落ち着くまで、ただ黙ってその場に鎮座してくれていたのだった。





    *    *    *





梨子「……ふぅ……なんか、いっぱい泣いたらすっきりしたな」

 「ヴォッフ…」


そして……決めた。


梨子「私はあなたを仲間にしたい」

 「ヴォッフ」

梨子「ムーランド、バトルしよう」


野生のポケモンと戦って、捕まえる。

トレーナーの基本だ。


 「ブルル…」


後方で見守っていた、メブキジカが私の傍に寄って来る。


 「ヴォッフ…」


ムーランドが立ち上がり、私たちの前に歩み出る。


梨子「私が勝ったら、仲間になって」

 「ヴォッフ」


ムーランドが鳴くと、周りのヨーテリーやハーデリアたちが、その場から離れていく。

一対一、正々堂々戦って捕まえる。


梨子「……行くよ!! メブキジカ!!」
 「ブルルッ!!!!」


メブキジカが私の声と共に飛び出す。


梨子「“ウッドホーン”!!」
 「ブルルッ!!!」


前方にツノを突き出して、突撃する。


 「ヴォッフッ!!!!」


一方ムーランドは、その場に留まったまま、攻撃を受け止める。

──攻撃が直撃したが、ムーランドはびくともしない。


 「ヴォッフッ!!!!」

梨子「……! でも、“ウッドホーン”は吸収技だよ!!」
 「ブルルッ!!!!」


メブキジカが突き刺したツノからエネルギーを吸収する。

だが、


 「ヴォフッ!!!」


ムーランドは、ツノを突き刺し動けないメブキジカに燃え盛る牙を突き立てる。

──“ほのおのキバ”だ……!!


 「ブルルッ!!!!」


攻撃が直撃し、メブキジカがひるんで後ろに下がる、そこに追撃を掛けるように、


 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドの“とっしん”攻撃。


 「ブルルッ……!!!」


大きな体躯をぶち当てられて、後方に仰け反るが、どうにか脚を踏ん張って持ちこたえる。


梨子「メブキジカ!! “エナジーボール”!」

 「ブルルッ!!!!」


少し離れた場所から、メブキジカが自然から集めたエネルギーを発射する。

だけど、ムーランドは臆することなく、


 「ヴォッフッ!!!!!」


“エナジーボール”に向かって突っ込み、


梨子「!?」


攻撃を耐えて、突っ切りながら、メブキジカに“ずつき”をかましてくる。


 「ブルルッ!!!!?」


さっきから、攻撃を避ける気が感じられない。

群れのボス故、彼にとって攻撃は避けずに受け止めるものなのかもしれない。

なら……。


梨子「こっちも真っ向勝負しよう」

 「ブルルッ!!!!」


メブキジカが蹄を鳴らし、ツノを前方に突き出しながら、駆け出す──


梨子「“メガホーン”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


その“メガホーン”に向かって、ムーランドは一歩も引かずに、


 「ヴォッフッ!!!!!!」


“アイアンヘッド”で対抗してくる。

メブキジカのツノが──ガインッ!! と鋼鉄の頭に弾かれ、


 「ヴォッフッ!!!!!」


そこに向かって今度は“こおりのキバ”で追撃を掛けてくる。


梨子「“とっしん”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


迎え撃つ、あくまで真っ向勝負の姿勢でメブキジカが飛び出す。

メブキジカが体をぶつけ、それをムーランドが踏ん張り、そのままメブキジカの頭部に牙を立てる。

牙から伝わる冷気が──パキパキと音を立てながら、メブキジカを凍らせていく。


 「ヴォッフッ」


ムーランドが鼻を鳴らす。

……でも、


 「ブルルッ……!!!!」


メブキジカはひるまない。


 「ヴォッフッ!!!!?」


頭を想いっきり振るって、ムーランドの身体の下に自らのツノを滑り込ませ、掬い上げるように持ち上げる。

ムーランドの大きな体躯が地面から離れ、


 「ヴォッフッ……!!!!」


メブキジカのツノの上でもがく、ムーランドを──


梨子「そのまま、打ち上げて!! “メガホーン”!!!」
 「ブルルッ!!!!!!」


先ほどとは違う方法でツノを下から上に向かって、想いっきり振るう。


 「ヴォッフッ!!!?」


空中に打ち上げられ、為す術のなくなったムーランドに向かって。


梨子「“すてみタックル”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


落下点にあわせて、メブキジカが駆け出す。

落下の力と、突進攻撃の力を掛け合わせ──


 「ヴォッフッ!!!!!!」


ムーランドを一気に突き飛ばす。

強力な攻撃が直撃し、弱ったムーランドに向かって、


梨子「いけ!! モンスターボール!!!」


私はボールを投げた。


 「ヴォフッ──」


ムーランドはボールに吸い込まれ……一回、二回、三回揺れたのち、大人しくなった。

私はそのボールを拾い上げて、


梨子「ムーランド……ゲットだね」


捕獲したムーランドをすぐにボールから出す。


 「ヴォッフッ…?」


ムーランドは少し不思議そうな顔をした。


梨子「ムーランド、私に付いて来てくれますか?」


私はそう訊ねた。

ポケモンにも、トレーナーを選ぶ権利があるから。


 「……ヴォッフ」


私の言葉にムーランドは頭を垂れた。


梨子「……うん、ありがとう。よろしくね、ムーランド」
 「ヴォフッ」


こうして、私は最後の手持ち──ムーランドを手に入れて……最後のジムへと向かいます。





    *    *    *




──ウラノホシタウン。


千歌「ふぁ……いい天気……」


私は我が家の屋根の上に寝転がって、日向ぼっこをしていた。

自宅療養期間中、特に問題らしい問題もなく。

明日にはまた旅立つことになっている。


美渡「千歌ーーー? どこだーーー?」


そんな私を呼ぶ声。


千歌「……美渡姉が呼んでる。行くべきか、行かざるべきか」


たぶん、旅館の手伝いだと思う。

せっかく可愛い妹が旅から帰って来てるというのに、人遣いの荒い姉だ。


千歌「こういうときは無視しよ、無視。私はりょーよーちゅーなんだから」


我ながら都合の良いときだけ、療養中と言い張っているなと思うけど、こうでもしないとせっかく休もうとしてるのに仕事でくたくたになってしまう。


美渡「お、しいたけ。千歌がどこいるか、知らない?」
 「ワフッ」

美渡「上……? また、屋根の上登ってんのか……オイ、バカチカー!!」

千歌「って、しいたけ!! 何教えちゃってるのさ!?」

 「ワフッ」

千歌「私と一緒に旅の中で築いた絆はなんだったんだ……くそぉ」

美渡「バカなこと言ってないで、早く降りてくるー!! お母さん待ってるよー!!」

千歌「へ……? お母さん?」





    *    *    *





言われて、部屋に降りてくると、


千歌「お母さん」

千歌ママ「千歌、久しぶりねー」


お母さんが部屋にいた。母は普段は遠方で仕事をしていることが多く、ほとんど旅館の仕事は二人の姉が切り盛りしているんだけど……。


千歌「どうしたの?」

千歌ママ「んー、千歌が旅から帰って来てるって聞いたから、顔でも見ておこうかなって」

千歌「ふーん……」

千歌ママ「冷たい反応ね……それに、志満がしばらく用事があって旅館を離れることになりそうって言うから、しばらくはこっちにいるつもりなのよ」

千歌「え? 志満姉が?」

千歌ママ「コンテスト……出るんだって」

千歌「そうなんだ……!」


志満姉は昔からポケモンコンテストが好きで、実力もある結構強い人らしいんだけど……本人に聞いてもあんまり話してくれないし、ここ最近はあんまり参加もしていなかったみたいだったから、その報せに少しだけ驚く。


千歌ママ「なんか近々大きな大会があるらしくってね。張り切ってたわ」

千歌「へー」

千歌ママ「千歌も負けてられないわね?」

千歌「ふふーん、もうすでに負けてないもんね! それどころか、私この前世界を救ったんだよ!」


胸を張って言う。


千歌ママ「あらそうなの。すごいわね」

千歌「……えー、それだけ……?」


自分で言うのはなんだけど、結構すごいことだったんだけどな……。


千歌ママ「千歌はいっつも気付けば、トラブルに巻き込まれてばっかりだからねー。あんまり危ないことしちゃダメよ?」

千歌「……むー。ホントに世界救ったんだけど。いろんな人に感謝されたもん!」

千歌ママ「……それは誇らしいことだけど……お母さんはあなたが五体満足に生きてくれていた方が何倍も嬉しいわ」

千歌「…………んっと……」

千歌ママ「……とは言っても、やめろって言ってやめてくれるんだったら、お母さんも苦労してないからね。多少の怪我くらいは目を瞑るけど、先にいなくなったりしないでね。あなたが死んじゃったら、あなたの人生はそこで終わり。どんなにすごいことに挑戦してても、頑張った結果が残るんだとしても、千歌が死んじゃったら、千歌はいなくなっちゃうんだから」

千歌「う、うん……わかった」


お母さんはそれだけ言うと、満足したのか、私の部屋を出て行ってしまった。


千歌「……娘が世界を救うよりも、生きててくれた方が嬉しい……かぁ」


私は少し考え込んでしまう。

ふと……聖良さんと理亞ちゃんのことを思い出す。

命を掛けて、理亞ちゃんの夢を叶えようとした聖良さんと、本当は聖良さんが傍にいてくれるだけでよかったと言う理亞ちゃん。


千歌「……確かに、お姉ちゃんたちがチカのために何かしてくれたんだとしても、それで死んじゃったら……嫌かな」


それが例え、かけがえのない何かをくれるようなことだったとしても。

いなくなっちゃったら……困るよね。


千歌「ま……志満姉ならともかく、美渡姉がそんなことするなんてありえないけど──」

美渡「何がありえないって?」

千歌「……」


気付けば背後に美渡姉の姿。


千歌「ウウン、ナンデモナイ」

美渡「……なんか、わからんが悪口を言われた気がする」

千歌「キノセイダヨ」

美渡「そういえば、そろそろお客さんが来るんだけど」

千歌「チカ、急に客間の片付けしたくなってきたっ!!!」

美渡「よろしい」


どたばたと部屋を飛び出して客間に向かう。

……やっぱり美渡姉に限って、そんな感じのことはなさそうだな、と改めて思ったのだった。





    *    *    *





──夜。

旅立ち前夜ということもあり、ちょっとだけ豪勢な食事をお母さんが用意してくれた。

もちろん、手持ちのみんなも一緒にご相伴に預かった。


千歌「志満姉のご飯もおいしいけど……やっぱり、お母さんのご飯が一番おいしいというかしっくり来るんだよなぁ……なんでだろ」


やはり子は親のご飯が好きなものなのかもしれない。

そんなことを考え一人腕を組みながら歩いていると、


美渡「しいたけ……千歌はどう?」
 「ワフッ」

千歌「……ん?」


今いる通路を曲がったところ、中庭に通じる廊下で美渡姉が月明かりに照らされながら、しいたけのブラッシングをしているところだった。

困ったな……さっきのことがあるから、今はちょっと対面では顔を合わせづらい……。


美渡「千歌、無茶してない?」
 「ワフ」

美渡「……って、してないわけないよなぁ……千歌だし」
 「ワフ」

美渡「何かあったときは……お前が助けてやってな」
 「ワフ」

美渡「……ってお前、なんか体が逞しくなったな……これも旅の効果か」
 「ワフ」

美渡「私も、旅……してみようかな」
 「ワォ?」

美渡「なんてね……今更旅って歳でもないか」
 「ワフ」

千歌「……」


そういえば、お姉ちゃんたちは旅に出たことはないんだ……。

チカがたまたま機会に恵まれたってだけで。


美渡「……千歌、強くなったんだなって、お前を見てるだけでわかるよ」
 「ワフ」

美渡「つい最近まで、あーんなチビスケだったのに……気付いたら立派に成長しちゃって……」
 「ワフ」

美渡「どんどん、千歌が遠くにいっちゃうな……」
 「ワォ…」


美渡姉……そんなこと考えてたんだ……。


美渡「昔はオニスズメに追い回されて、泣きながら逃げてた千歌が……気付いたら世界の命運を握った戦いしてるんだもんな。笑っちゃうよ。私なんかゴーストポケモン追い払うのに必死だったのに」
 「ワフ」

美渡「……きっと、これからもっともっと千歌は強くなって、私が考えられないような場所に行って、いろんな経験するんだろうな」
 「ワフ」

美渡「そう考えると……ちょっとだけ寂しいな」
 「クゥン…」

美渡「……でも、千歌が望むなら、応援してやりたいよね」
 「ワフ」

千歌「……!」

美渡「……確かに寂しいけど……千歌が頑張ってるなら嬉しいし、それはいいことだから」
 「ワフ」

美渡「……なーんて、こんなこと、千歌には言えないけどな」

千歌「おねーちゃん」

美渡「っ!? ち、千歌!?」

千歌「どしたの? そんなにビックリして?」

美渡「い、今の話聞いてた?」

千歌「話? しいたけとお話してたの?」

美渡「い、いや……聞いてないならいい」

千歌「そう? それよりさ」

美渡「ん?」

千歌「明日になったら、また旅に出ちゃうから……たまには一緒にお風呂でも入らない?」

美渡「……は? お前、なんか変なものでも食ったか?」

千歌「たぶん、美渡姉と同じもの食べてると思うけど……」

美渡「拾い食い、好きだろ?」

千歌「どんなイメージなのそれ……とにかく、お風呂。一緒にはいろ」

美渡「……まあ、いいけど」

千歌「せっかくだし、志満姉も誘って姉妹で……いや、せっかく帰って来てるし、お母さんも」

美渡「え」

千歌「うぅん、ここまで来たらお父さんも一緒で、家族みんなでお風呂に入ろう!」

美渡「待て待て!! お父さんは勘弁しろ!!」

千歌「えー? でもお父さん仲間はずれにされたら絶対スネるよ?」

美渡「ぐっ……た、確かに……いや、でもダメだ! いい歳した娘が父親と一緒にお風呂はキツいって!!」

千歌「なんでもいいから、早くはいろーよー……あ、しいたけも洗ってあげるからおいで」
 「ワフ」

美渡「はいはい……」

千歌「うん♪」

美渡「……なんか、機嫌いいな」

千歌「そう? 気のせいじゃない?」

美渡「……まあ、なんでもいいけど……」


──月明かりに照らされる我が家で、たまには家族との団欒を楽しむのも悪くはないかなって、そんな風に感じた夜だったのでした。




    *    *    *





──翌日、朝。


千歌「それじゃ、行くね」
 「ピィ」

美渡「おう、危ないことすんなよー」

志満「ふふ、行ってらっしゃい千歌ちゃん」

千歌ママ「たまには帰って来るのよ」

千歌「まさかお母さんに言われるとは……お父さんは?」

志満「お父さん……別れが惜しくて、離れられなくなるからって厨房に篭もっちゃったわ」

千歌「はは……相変わらずかも」


私はなんとなく、空を仰ぐ。


千歌「今日も、いい天気だなぁ……」


まるで、旅立ちのあの日と同じような、気持ちのいい快晴だ。


千歌「……よし! ムクホーク! 飛ぶよー!!」
 「ピィィィ!!!!!」


ムクホークの背中に飛び乗ると、ゆっくりと視界が上昇していく。


千歌「美渡姉ー! 志満姉ー! お母さーん! いってきまーす!!」

美渡「おう!」

志満「気をつけてねー!」

お母さん「いってらっしゃい、千歌ー!」


私は家族たちに見送られながら──新しい旅へと、再び飛び立つのでした。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウラノホシシティ】【4番道路】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |__●回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o●/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.55  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.48 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.55 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.52 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.59 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.50 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:162匹 捕まえた数:15匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.56 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.51 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.50 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.45 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.55 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.43 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:142匹 捕まえた数:14匹


 千歌と 梨子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter079 『水晶湖の輪舞』 【SIDE Chika】





ウラノホシタウンから飛び立ち、


千歌「よっと……ありがと、ムクホーク」
 「ピィ」


私は一旦ローズタウンに降り立った。

目的地は更に東のクロユリシティだけど、せっかく近くを通るから、お見舞いがてら病院に寄っておこうと思って、ここで休憩を挟む。

ムクホークをボールに戻して、そのまま病院へと入っていく──。





    *    *    *





──聖良さんの病室。


千歌「……失礼しまーす」


面会許可を貰って、静かな室内に足を踏み入れる。


聖良「…………」

千歌「こんにちは、聖良さん」

聖良「…………」


もちろん、眠っている聖良さんから返事はない。

腕からは今も点滴の管が伸び、響くのは無機質なバイタルチェックの音だけ。

ただ、静かに胸があがったりさがったりしてる姿は彼女が確実に生きていることを示している。この光景の中で唯一安心できることだろうか。

一人ぼんやりと、静かに眠る聖良さんを見つめていると……。

背後のドアが開く。


ルビィ「あれ……千歌ちゃん」

理亞「……千歌?」


そこに居たのはルビィちゃんと理亞ちゃんだった。


千歌「二人とも、こんにちは。近くに寄ったからお見舞いに来たんだけど……」

理亞「そうなんだ……ありがとう」

千歌「ルビィちゃんと理亞ちゃんは一緒に居たんだね」

ルビィ「うん、理亞ちゃんとお昼ご飯食べてたんだ」

理亞「病院食は味気ないし……お昼はよくルビィと一緒に食べてる」

ルビィ「ルビィたち、食事に気を使う必要があるわけじゃないしね……」


二人はそう言って苦笑いする。

確かに私も数日間は病院食を出してもらってたけど……味が薄くて食べた気がしなかった記憶がある。

それはともかく、外食していたということは……。


千歌「理亞ちゃん、外出出来るようになったんだね」

理亞「うん。事前の申請と、一人以上監視役の人間が傍に居ないとだめだけど……」

ルビィ「だから、ご飯のときはルビィが監視役の名目で一緒に食べてるんだよね」

理亞「うん」


そう言って親しげに頷きあう二人。どうやら、一緒に過ごす間に随分と仲良くなったようだった。


理亞「……とりあえず、タオル貰ってきたから、ねえさまの身体拭いてあげたい」

千歌「あ、うん。私はここでおいとまするね」

ルビィ「それじゃ、ルビィも……理亞ちゃん、また夜ご飯のときに来るね」

理亞「起きてたらでいいから。ありがと」


私は、ルビィちゃんと一緒に病室を後にした。





    *    *    *





千歌「──それじゃ、ルビィちゃんもそろそろ退院出来そうなんだね」

ルビィ「うん。やっぱり何度検査しても身体そのものに異常はないみたいだから……。最近は眠ってる時間も少しずつ短くなってるし。ただ、一度眠ると次が気付いたときに思った以上に時間が経ってるのは未だになれないかも……」

千歌「そっか。退院したら……また旅に出るの?」

ルビィ「……うぅん、当分はウチウラシティの方のお家で、お姉ちゃんのお手伝いをしようかなって……。旅してる間に長時間眠っちゃうのも困るし、お姉ちゃんも心配だろうから……」


確かに、旅の間は自由なときに眠れるわけじゃないし……それがいいのかもしれない。


ルビィ「あと……家に帰ってやりたいことがあるから」

千歌「やりたいこと?」

ルビィ「うん。ルビィね、正式にクロサワの巫女としてのお役目を継ごうと思ってるの」

千歌「巫女……それって……」

ルビィ「女王様と人の間に立って、両者の世界の中継ぎになる人……確かに血は濃く受け継いでたけど、正式にお役目を引き受けるかはずっと保留にしてたんだ。だけど、旅を通じて……改めて、これはルビィがやるべきことだと思ったから」

千歌「ルビィちゃん……」

ルビィ「だから、ルビィの冒険はここでおしまい。次の目標に向かってがんばルビィしないといけないから」

千歌「そっか」


ルビィちゃんはルビィちゃんで、旅の中で自分のやりたいことを見つけることが出来たのかもしれない。


ルビィ「千歌ちゃん」

千歌「ん?」

ルビィ「改めて……一緒に戦ってくれて、ありがとう」


ルビィちゃんはお礼と共に頭を下げる。


千歌「うぅん、私こそありがとう。ルビィちゃん、ホントに強くなっててビックリしたよ」

ルビィ「えへへ……でも、理亞ちゃんに負けないようにもっと強くならなきゃいけないから」


ルビィちゃんはそう言ってはにかむ。理亞ちゃんと言う良いライバルに出会うことが出来て、良い影響を受けたのかもしれない。旅立つ前の引っ込み思案が嘘みたいに、今は自信に満ち溢れているようだった。


ルビィ「あ、そうだ」

千歌「?」


突然何かを思い出したかのようにルビィちゃんが声をあげる。


ルビィ「善子ちゃんから千歌ちゃんに伝言があったんだ」

千歌「伝言?」

ルビィ「『水晶の湖に来い』って言ってた」

千歌「……それだけ?」

ルビィ「うん。会ったら伝えておいてって」

千歌「水晶の湖って……」

 「クリスタルレイクのことロトー」

千歌「うわぁっ!? ろ、ロトム!?」


急にロトムがルビィちゃんの背後から飛び出してくる。


千歌「あ、あれ……? 善子ちゃんと一緒に行ったんじゃ……」

ルビィ「大事な用事があるって、言ってたから……ルビィがロトムを一旦預かってるんだよ」

千歌「そうなんだ……」


でもロトムを置いていったってことは、捕獲とかじゃないんだよね……なんだろ?


千歌「……まあ、いいや。クリスタルレイクってここからすぐ近くの丘の上にあるおっきな湖だよね」

 「そうロトー」

千歌「行ってみれば、わかるよね。出てきて、ムクホーク」
 「ピィィ」

千歌「じゃ、クリスタルレイクに行ってみるね。ありがと、ルビィちゃん」

ルビィ「うん、またね! 千歌ちゃん!」


──手を振るルビィちゃんを尻目に、私はムクホークに乗って、クリスタルレイクへと飛び立ったのだった。





    *    *    *





──クリスタルレイク。

気付けば夕日が差し込む時間。

辺りに夕闇が迫ってくる。

辿り着いてから既に何時間か、善子ちゃんを探しているんだけど……。


千歌「善子ちゃん……どこだろう」


まるで見当たらない。

そろそろ西から差し込んでいる太陽が、山々の影に隠れようとしていた。

大きなオレンジ色の炎が、ゆっくりと大地に沈んでいく。

その光で辺りは燃えるように橙色に色づいていた。


千歌「綺麗……」


善子ちゃんは見当たらないけど、この景色を見に来たというだけでも、一旦クリスタルレイクに訪れたのはよかったかもしれない。

そんなことを考えていたら──

──すんすんと、


千歌「? ……人の、声?」


女の人がすすり泣くような声が背後から聞こえてくる。

辺りを見回していると、今度は、


 「キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

千歌「!!」


それは泣き叫ぶ声に変わる。


千歌「これって……」


私はこの声に心当たりがあった。

次の瞬間、突然──髪の毛を何かに引っ張られる。


千歌「わったた……」


少し後ろによろけたけど……私は自分の頭の後ろに手を回して、ソレを掴んで、自分の前に持ってくる。


千歌「──久しぶり、ムウマージ」

 「ムマァーージ♪」


そこに居たのはムウマージだった。

そして、それを見計らったかのように、空から声が降って来る。


 「──よくぞ見破ったわね!! とうっ!!」


声と共に、人影が飛び降りてくる。


 「シュタッ!!」


もう誰かなんて考えるまでもなかった。


千歌「善子ちゃん!」

善子「善子じゃないわよ!! ヨハネだって言ってんでしょ!?」


善子ちゃんは今日も絶好調のようだ。


善子「それよりも……よくぞ † 幽寂たる宵闇の魔女 † を察知したわね……さすが、リトルデーモン千歌……」


……一瞬なんの話かと思ったけど、たぶんムウマージのことだと思う。


千歌「そういえば、善子ちゃんと初めて出会ったときも、こんな感じの小高いところだったね」


あのときは見晴らしのいい流星山の頂上から、そして今度はクリスタルレイクのあるこの丘で。


善子「……そうね。思えば、遠くまで来たもんね、お互い」

千歌「そうだね」


各地のジムを回って、山を越え、森を抜け、大地を駆けて、海を乗り越え、空を飛び……ここまで来た。

自分の旅を思い返しながら、


千歌「それで用事って?」


訊ねる。


善子「くっくっく……よくぞ聞いてくれたわ」


善子ちゃんは、近くを旋回していたドンカラスとムウマージをボールに戻し。

そのまま、一個のモンスターボールを手に持ったまま、私に突きつけてくる。


善子「千歌……バトルしましょう」

千歌「……!」

善子「流星山では結局、途中でうやむやになっちゃったけど、決着ついてないし。もちろん、断ったりしないわよね?」

千歌「うん! トレーナー同士、目が逢ったらバトルするのが礼儀だもんね!」


私も善子ちゃん同様に、ボールを構えた手を前に突き出す。


善子「……お互い手加減なし。ホンキの勝負をしましょう」

千歌「うん、望むところだよ」


お互い突き出したボールがぶつかり──コツンと音が鳴る。

そしてボールを持ったまま、お互いの腕を曲げて交差させる。

内向きになったボールのすぐ向こうに善子ちゃんの顔が見える。

インチキなしのホンキの決闘。この状態からボールを落として、ポケモンが飛び出した瞬間が真剣勝負の開始の合図だ。


善子「……さぁ、サバトを始めましょう……私と同じように † 叡智の端末を扱いし者 † よ……!」


二人同時にボールから手を放し──交差させた腕を解いた。

──バトル……スタート!!





    *    *    *




──二つのボールが地面に着くと同時に開く。


善子「行くわよ!! † 激流の水蛙-スイア- † ゲッコウガ!!」
 「ゲコガァッ!!!!!」

千歌「バクフーン!!」
 「バクフーーッ!!!!!!」


飛び出したのはバクフーンとゲッコウガ。


善子「千歌なら最初はバクフーンで来ると思ってたわ!! “つじぎり”!!」
 「ゲコガァッ!!!!!」


ゲッコウガが水で作ったクナイを振るってくる。

バクフーンはそこに向かって拳を突き出す。


千歌「“かみなりパンチ”!!」
 「バクフーーーッ!!!!!!!」

 「ゲコガァッ!!!?」


クナイを通じて、バクフーンの拳から流れ出す電流がゲッコウガを襲う。

──と、思ったら、

ゲッコウガは──ボンと音と白煙を立て、気付けばバクフーンが殴ってるのは、可愛らしい人形のようなものに摩り替わっている。


千歌「っ!? “みがわり”!?」
 「バクフッ!!!?」

善子「そんな単調に行くわけないでしょ!! “ハイドロポンプ”!!」

 「ゲコガァッ!!!!!!」


上から鳴き声、と同時に“ハイドロポンプ”が降って来る。

──回避、ダメだ、間に合わない……!!

咄嗟に真上を指差し、


千歌「“かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーンッ!!!!!!!!」


“かえんほうしゃ”が“ハイドロポンプ”と真っ向からぶつかり合う。

……だけど、炎と水。すぐに“ハイドロポンプ”の勢力が上回り、どんどんバクフーンに迫る。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルルッ!!!!!」


フローゼルを繰り出し、バクフーンの足元に。

フローゼルもバクフーン同様上を向き、


千歌「“ハイドロポンプ”!!!」
 「ゼルルッ!!!!!」


“ハイドロポンプ”で応戦する。


千歌「バクフーンは戻って!!」


そして、役割をフローゼルにタッチしたところで、バクフーンは一旦控えに戻す。


 「ゼルルルルルッ!!!!!!!!」


次第に上から落ちてくる水が、押し上げられていく。


千歌「よし、押してる!! いけっ!!」
 「ゼルゥゥゥゥ!!!!!!!!」


そのまま、フローゼルの攻撃は降って来る水を完全に押しのけ──空を切った。


 「ゼルッ!!?」
千歌「!? ま、また消えた……!!」


またしても、ゲッコウガは身を隠してしまった。……というか──


千歌「善子ちゃんも消えた……!?」


慌てて周囲を見回す。

するとすぐ近くの湖の水面に──ポコポコと泡が立っている。


千歌「水の中!? フローゼル!!」
 「ゼルッ!!!!!」


水の中に逃げ込んだ善子ちゃんを追って、飛び出したフローゼル──その背後から、青白い炎が一閃して、フローゼルを吹き飛ばした。


 「ゼルゥッ!!!?」

千歌「……!?」


水の中の泡はブラフだ。

すぐさま気付いて、攻撃を仕掛けてきたであろう、シャンデラのいる方に振り返る──


 「──ムバァァアァァァァァ!!!!!!!」

千歌「わあぁぁっ!!!?」


──私のすぐ後ろには気付けば、ムウマージ。

目の前で“おどろかす”をされて、思わず足が縺れる。


善子「──ドンカラス!!」


善子ちゃんの声が──上から聞こえて来た。


千歌「!!?!?」

善子「“ふきとばし”!!!」
 「カァァァーーーー!!!!!!」


上を見上げると、脚に善子ちゃんをぶら下げたまま、ドンカラスが強風を叩き付けてくる。

ただでさえ脚が縺れていた私はそのまま、背後の湖へとお尻から飛び込む形で──


 「──ヒョォォ」

千歌「……っ!!」


これまた、聞き覚えのある鳴き声が背後からしてきて、

私の身体の一部が着水すると同時に、

──ピシリと、湖底の表面が氷漬けになる。


千歌「ユキメノコ……!!」

善子「……私の方が読みは上手みたいね!!」

千歌「フローゼル!!!」

 「ゼルル!!!!」


先ほど吹っ飛ばされて、水中に飛び込んでいたフローゼルが、湖に張った氷の下を泳ぎながら、私の方に向かってくる。


善子「フローゼルのパワーですぐに壊せるかしらね!? ムウマージ!! “シャドーボール”!!」
 「ムーーマァーーージ!!!!!!!!!」


迫る“シャドーボール”。


千歌「壊せるよ!! やるのはフローゼルじゃないけど!!」
 「ゼルッ!!!」

善子「……!?」


凍ってるのは湖の表面10cmくらいだけ、

なら、下半身のほとんどは水の中だ、


 「ゼルッ!!!」


フローゼルが水中で私の腰についているボールの開閉スイッチを押し込む。


千歌「ルガルガン!! “ドリルライナー”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」


ルガルガンが回転し、氷を掘削しながら、飛び出す。

自分の身体をホールドしていた氷が砕け、自由になったと同時に、私は氷の上を転がり、

そこに出来た穴から頭を出したフローゼルへの指示、


千歌「“ねっとう”!!」

 「ゼルルーーー!!!!!!」


フローゼルが口から噴き出した“ねっとう”が“シャドーボール”と衝突し蒸気が周囲を覆う。


千歌「……っ」


すぐに体勢を立て直して、上空の蒸気の先に居る善子ちゃんへと、視線を移す。


善子「上ばっか見てると、足元すくわれるわよ?」

 「──ゼルゥッ!!!!?」

千歌「……!?」


水上に顔を出していた、フローゼルが急に真上に吹き飛ばされる。

慌てて、視線を戻すと、波がうねる様にしてフローゼルを追い出していた。


千歌「“なみのり”!?」


波を発生させる攻撃──やっぱり、ゲッコウガは水の中に潜ってたんだ……!!


善子「──今度は下ばっか見て、田舎者丸出しね」

 「ギャゥッ!!!?」

千歌「……っ!!」


今度は上から、シャンデラの炎がルガルガンに直撃する。

──不味い、翻弄されてる……!!


善子「早くもチェックかしらね……!!」


……善子ちゃんの言動に惑わされるな。

相手はこっちを翻弄するために、わざと声を掛けて視線を誘導してる。

なら……。


千歌「ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオを繰り出し、私は──


千歌「……すぅ………………────はぁ……」


一旦、目を閉じて深呼吸。


善子「……っ!! 敵の目の前で目を瞑るって……舐めてるのっ!?」


集中しろ、感覚を研ぎ澄ませ、音をよく聴け──。

──ゴォォ。これは火炎の迫る音だ。

目を開くと同時に指差す。


千歌「そこ」
 「グゥォッ!!!!!!」


ルカリオが“しんくうは”を発生させて、シャンデラの炎を掻き消す。


善子「はぁ!?」


──まだ、気を抜くな。

全身の神経を集中しろ。

足元、氷の下から、僅かに振動を感じる。


千歌「そこの氷の下っ!! ルカリオ、“はっけい”!!」
 「グゥァッ!!!!!!!」


ルカリオが近くの氷の床に両手を付いて、水中に向かって衝撃を発生させる。

──数秒置いて、

──バキリッ、と音を立てて氷が割れる。


 「グゥォッ!!!!」


私はルカリオに抱えられたまま、割れた部分から、逃げるように離脱する。

そして、その直後、


 「ゲコ……ガ……」


割れた氷の穴からゲッコウガが戦闘不能になって、浮かんでくる。


千歌「やった……!!」


氷の上から貫通する波導攻撃が成功したようだった。


善子「シャンデラ!! “れんごく”!! ユキメノコ!! “れいとうビーム”」

 「シャンデラァーーーーッ」 「──ヒョォォォ!!!!!」

千歌「……!!」


どうやら、休んでる暇はない。


千歌「バクフーン!!」
 「バクフッ!!!!!」


再びバクフーンを繰り出し、


千歌「“かえんほうしゃ”!! フローゼル!! “うずしお”!!」
 「バクフーッ!!!!!」 「ゼルルルッ!!!!!!」


バクフーンは後方のユキメノコへ、体勢を立て直したフローゼルは先ほどルカリオが割り砕いた穴から水を巻き上げて、“れんごく”に応戦する。


千歌「大丈夫!! この状況なら、打ち合える!!」


氷に炎、炎に水。

最初とは打って変わって有利な打ち合いに持ち込めた……!!

と思った瞬間──


 「────–ਊ‡å—å̷̶̷̧̢̛̖̺͈̖̫̗̘̙̤̙̆̊̌̉̊̈͝͡æ̬̬̩͈̜̓̓̅̊͡カ̧̛̩̹̫̺̩̓ͣ̕͡ァ̨̞̼̗̤̽̂̄Œ–ã '」

千歌「っ゛!!?」


突然、身の毛もよだつような、歌声が響いてきて、耳を塞ぐ。


千歌「な、に゛……この、う゛た……っ!?」


顔をあげると、ムウマージが楽しげに歌っている姿。


善子「仲良く滅びましょう」


善子ちゃんも同様に顔を顰めて、耳を塞ぎながら、言葉を投げかけてくる。

……もしかして、


千歌「“ほろびのうた”……っ゛……!?」


場に出ている全てのポケモンを数刻後に戦闘不能にする、道連れ技だ。


千歌「み、みんな!! 一旦ボールに……!!」

善子「させるか!! “くろいまなざし”!! “とうせんぼう”!! “ほのおのうず”!!」
  「────」「──ヒョォォオ!!!!!」 「シャンディィィィ!!!!!!!」

 「ワォンッ!!!?」 「ゼルッ!!!!」 「バクフーンッ!!!!!!」


それぞれ、上空のドンカラスの“くろいまなざし”がルガルガンに、フローゼルにはユキメノコが抱きつくような形で動きを止める。バクフーンは周囲に炎が渦巻き、動きを制限される。

──全て交代を封じる技だ。


千歌「ルカリオだけでも、戻って!!」
 「グゥォ──」


不幸中の幸いか、私のすぐ傍に居たルカリオだけは、私自身が敵からの影になって、拘束技を受けずに済んだようだ。


善子「……っち、一匹逃がしたか」


善子ちゃんがそう言いながら、私の居る氷の上に飛び降りてくる。恐らくドンカラスが数刻後に戦闘不能になるからだろう。

その間も不気味な歌は響き続けているし、その行動は即ち、止める気がないということだ。


千歌「唄を止めればいいんでしょ……!! ムクホーク!!」
 「ピィィィ!!!!!!!」


ボールから飛び出したムクホークが、ムウマージに向かって一直線に突っ込む。


千歌「“ブレイブバード”!!!」
 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!」


唄に夢中なムウマージは猛進するムクバードの攻撃を避けることは出来ない……!!


善子「……読み通り」

千歌「!?」


善子ちゃんがニヤっと笑った。

そして、ムウマージを見て、ゾッとする。

ムウマージは全身に黒い闇のようなものを背負っている状態で、攻撃を待ち構えている。それだけじゃない、ムウマージが──


千歌「──唄って、ない……!?」


でも、尚も不気味な唄は響いている。


 「ピィィィィィ!!!!!!!!!」


ムクバードの一撃がムウマージを捉える。

──と同時に、


 「ムマァ……」
 「ピッ……ッ!!!!!」


ムウマージの闇がムクホークを巻き込むようにして拡がり、二匹は同時に地に落ちた。


千歌「え、あ……え、え……!?」


倒したのはこっちのはずだった。なのにムクホークもダウンし、しかも唄ってたはずのムウマージを倒しても“ほろびのうた”が止まらない……。

…………?


千歌「──あ、ちが……!? “くろいまなざし”、標的!? え、バクフーン!?」


仕掛けはわかったが、突然のことに頭が追いつかず、完全にてんぱってしまう。

咄嗟に目線を配ったバクフーンは“ほのおのうず”を食らっている。


千歌「ち、ちがっ──」

善子「残念、“くろいまなざし”を受けたのは……ルガルガンよ」

千歌「……ぁ」

 「ワゥ……」


ルガルガンが膝を折る。──時間だった。


善子「なんだかんだで気付いたのはさすが。でも、タッチの差だったわね」

 「バクフ……」 「ゼルゥ……ッ」

 「──ヒョォォ……」 「シャンディィ……」


そして、バクフーン、フローゼル。善子ちゃんのユキメノコ、シャンデラも倒れ。


 「カァカァ……ッ」


戦闘不能になったドンカラスも落ちてくる。

その際、ドンカラスは一瞬、私の方を見て、してやったりという顔をしていた。


千歌「……“ほろびのうた”を唄ってたのは……ムウマージじゃなかった。あれは……私を欺くための、口パク」

善子「ふふ、正解。本当に“ほろびのうた”を唄ってたのは、ドンカラスよ」


“くろいまなざし”も私が勝手に動けるドンカラスが使ったんだと思い込んでた……本当はムウマージが使っていたんだ。


善子「“くろいまなざし”のキャッチは使ってるポケモンが戦闘不能になったら、効果が切れちゃうから……もっと判断が早ければルガルガンは助かったかもしれないわね」

千歌「……っ」

善子「でも、わざわざムウマージをムクホークで狙ってくれたのは僥倖だったわ。“みちずれ”で更にもう一匹戦闘不能に出来た。……って言っても、他のポケモンたちは満足に身動きがとれなかったものね」

千歌「…………」


落ち着け……。善子ちゃんは元々トリックプレイを得意としている。

それはここまで一緒に戦ってきた中でも、ずっと見てきたことだ。

私を動揺させるために、わざわざ私のプレイミスを解説してるんだ。

実際、私は完全に善子ちゃんの発言に惑わされて、4匹を相討ちに持ち込まれた。

真っ向から、戦ってたら、また何を仕掛けられるか……。


善子「アブソル」
 「ソル…」


善子ちゃんは最後の手持ち──アブソルを繰り出す。


善子「千歌、ルカリオを出しなさい。最後はお互い、エースでぶつかり合いましょう」

千歌「…………」


どう考えても、この挑発には乗るべきじゃない。


千歌「行くよ、しいたけ!」
 「ワッフッ!!!!」

善子「……フラレちゃったわね。まあ、いいわ。……アブソル、メガシンカ!!」
 「ソルッ!!!!」


善子ちゃんのメガロザリオが光り輝き、呼応するようにアブソルが光に包まれる。


千歌「しいたけ!! “ずつき”!!」
 「ワフッ!!!!」


メガシンカの一瞬の隙に倒しきるしかない……!!

私の指示でしいたけが飛び出して、アブソルに“ずつき”をかます。


 「ワフッ!!!!」


頭を前に突き出しての突撃。

──ガスッ

鈍い音、


千歌「ヒットした……!! 畳み掛けて、しいた──」

善子「“カウンター”!!」
 「ソォルッ!!!!」

千歌「!?」


アブソルは“ずつき”の衝撃の反動を利用して身を捻りながら、尻尾を叩き付けてくる。

綺麗な“カウンター”だった。


 「ワォッ!!!!!!?」


自分の攻撃を倍返しにされて、後ずさる。


千歌「い、いったん引いて……!!」

善子「“ダメおし”!!」
 「ソルッ!!!!」

千歌「……っ」


だが、善子ちゃんは逃げることを許さない。アブソルが追撃しに前に出てくる。

なら……!


千歌「ガード!! “まもる”!!」
 「ワフッ!!!」


しいたけは“ファーコート”で攻撃を受け止める姿勢を取る。

守りに徹した防御なら、確実にこっちに軍杯が挙がる。


 「ソォル!!!!」


アブソルの追撃の“ずつき”が──しいたけのすぐ目の前を空振る。


千歌「へ……?」


思わず間抜けな声が出た──が、

この攻撃はそもそも“ずつき”じゃなかった。


 「ギャゥッ!!?」

千歌「……!?」


アブソルの、頭が空振り──追いついてくるように振りかぶられた頭の刃がしいたけを一閃する。

──これは“フェイント”だ。


善子「“まもる”対策くらいしてるわよ」

千歌「っ……!! しいたけ!!」


やっぱり、前に出るしか……!!


千歌「“かみつ──」

善子「“ふいうち”!!」
 「ソルッ!!!!!」

 「ワォンッ!!!!」
千歌「!!」


“かみつく”より前に決まる先制技、“ふいうち”。


千歌「ぐ……!! “つぶらなひとみ”!!」
 「クゥーン…」


なら、攻撃力を下げる先制補助技……!!


 「ワ、ワッフッ」


なのに、何故か逆にしいたけが怯まされる。


千歌「な!? なんで!?」

善子「メガアブソルの特性は“マジックミラー”よ。補助技は全て反射される」

千歌「っ……“コットンガード”!!」


苦し紛れの防御択。でも、時間稼ぎくらいには──


 「ワ、ワォ」


だが技が出ない。


千歌「!!?」

善子「“ちょうはつ”よ」

千歌「ぅ……」


また読まれてる。変化技を封じられた。

なら、防ぎようのない技で……!!


千歌「“ハイパーボ──」

善子「“さきどり”!!」
 「ソォォォォォォルッ!!!!!!!!」

千歌「うわっ!!!?」
 「ワォッ!!!!!」


私としいたけは“さきどり”で奪われた、“ハイパーボイス”の音圧で後ろに吹き飛ばされる。


千歌「くっそ……“とんぼがえり”!!」
 「ワゥッ!!!!」


しいたけじゃ、善子ちゃんのアブソルには対抗しきれない。

ここは一旦戻すしかない……。

しいたけは飛び掛かりはしたものの、


 「ソルッ!!!!」


完全にペースを掴まれている今、アブソルには完全に攻撃を見切られていた。

爪を立てて、飛び掛かるしいたけを、アブソルは頭の刃で弾き返す。


 「ワフッ」


その反動でしいたけがボールに戻ってきて、吸い込まれ──ようとしたところに、


 「…ソル」

 「ワ、ワゥ…」


気付けば、アブソルの攻撃が突き刺さっていた。


千歌「……う、うそ……」

善子「“おいうち”。ボールに戻る相手を確実にしとめる技よ」

 「ワゥ……」


ボールに戻ることも許されずしいたけは崩れ落ちる。


千歌「っ……」

善子「さ、ルカリオを出しなさい」


善子ちゃんの言う通りにしたら、また足元を掬われる……だけど、


善子「出さないの? 降参?」

千歌「ル、ルカリオ!!」
 「──グゥォッ!!!!」


もう手持ちはルカリオのみ。出すしかない。


千歌「メガシンカ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ボールから出すと共に、私のメガバレッタの光と反応して、ルカリオがメガルカリオへと姿を変える。

……だけど、


千歌「……っ」

善子「……攻撃してこないの?」


──動けない。

ことごとく全ての攻撃を読まれて、反撃された経験が刷り込まれてしまっている。

考えても考えても、アブソルを倒せるビジョンが想像出来ない。


善子「……勝負あったわね」

千歌「……なっ」

善子「ルカリオ、どんどんオーラが小さくなっててるわよ」

千歌「……!」


言われてルカリオを見ると、ルカリオの周囲の波導のオーラがどんどん弱くなっていく。


千歌「ル、ルカリオ、しっかりして──」

善子「──ルカリオは」


善子ちゃんが口を挟んでくる。


善子「トレーナーの戦意に呼応して、波導を増すんでしょ?」

千歌「……っ!!」


……つまり、


善子「ルカリオのせいじゃなくて……千歌、あんたが諦めてるだけよ」

千歌「……ぅ……」


図星だった。

いや、これも全て善子ちゃんの術中なのかもしれない。

どうにか考えろ、何か方法があるはずだ、何か……。

──でも、何を考えても、倒す術が思いつかない。


善子「……アブソル」
 「ソルッ」


アブソルの周囲に空気の渦が発生する。最大の攻撃の予兆。

避ける……? 無理だ、何度も見た技だけど、とてもじゃないけど、この距離で避けきれるスピードじゃない。


千歌「……一点読みきって、相殺するしかない……っ」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオが構える。

已然オーラは弱々しい。

でもやるしかない。


善子「……チェックメイトね。──“かまいたち”!!」
 「ソォォルッ!!!!!!」


アブソルが頭の刃を振るう。

巨大な空気の刃が飛んでくる。

── 一点!! 一点を見極めて──。


千歌「そ、そこ、いやちが……っ」


そこで気が付いた。

もう詰んでたんだと。

こんな気が動転した状態で、必殺の一撃が打てるような集中力を確保出来るはずもなかった。


千歌「……っ……ごめん、ルカリオ……っ」


私はもう……謝るしかなかった──。

巨大な空刃を真っ向から受けてルカリオは倒れて──。


 「……グゥォッ!!!!!」

千歌「え……」

善子「な……」


──倒れていなかった。


千歌「…………」


これは善子ちゃんも予想外だったようだ。

……いや、私もだった。


 「グゥォッ!!!!!」

千歌「!!」


ルカリオが鳴き声をあげる。

ルカリオはもうボロボロだった。

普段はオーラの力で攻撃を受け流し、どんなに強大な攻撃も私と力を合わせて粉砕してきたが……。

私がオーラを弱めてしまったせいで、いつものような防御も出来ず、鋼鉄の爪も、今の一撃を受けて、折られてしまった。

……でも、


善子「なんで立ってるのよ……!!」


なんで? ……なんでって、


千歌「……そうだよね」
 「グゥォ」

千歌「ずっと一緒に戦ってきて……ルカリオも強くなってきたんだもんね」
 「グゥォ」


例え相手が自分より強大であっても、打ち負けないように、逞しく。


千歌「一緒に戦って、一緒に修行して、一緒に鍛えて、一緒に考えて、一緒に負けて……そして、一緒に勝って来た」
 「グゥォ!!!」


そうだ……ただ、それだけのことだったんだ。


善子「ア、アブソル!! もう一発よ!!」
 「ソルッ」

千歌「ずっと一緒に戦って、経験して……強くなったんだ、技も、体も、心も……!!」
 「グゥォッ!!!!!」


そうだ。

いくら、相手に先読みされて、技が潰されようが、

いくら、相手が強力な技を使ってこようが、


千歌「私たちが積み上げてきた、経験が……なくなるわけじゃない!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!」


ルカリオのオーラが一気に膨れ上がる。


善子「っ!?」

千歌「相手がどんなに強くても、自分より頭が良くても、私は──私たちは、自分たちが経験して、身に付けた技を、強さを信じて戦うだけなんだ!!! 自信なんて……それだけあれば十分だッ!!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


更にオーラが膨れ上がる。


千歌「私たちはいつだって……そうしてきたっ!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!!!」


ルカリオが構える。

私も──構えた。


善子「っ……!! アブソル!!! “かまいたち”!!!」
 「ソォォォォォルッ!!!!!!!!!!!!!!!」


アブソルから、放たれた巨大な空刃が、迫る。


千歌「負けたら……また勝てるように頑張ればいい。負けたときのことなんて、今考えなくていいよね」
 「グゥォ」


ルカリオが頷く。


千歌「うん」


私も頷いた。


千歌「……波導の力を斬撃に──!!!」


気合いの掛け声と共に、


千歌「──“いあいぎり”!!!!!」
 「──グゥゥォッ!!!!!!!!!!!」


── 一閃した。




    *    *    *





善子「──……月、綺麗ね」

千歌「……そうだね」


私たちは湖に浮かんだまま仰向けになって、月を眺めていた。

湖に張った氷が、真っ二つに割れ、私たちは辺りに氷の破片が浮かぶ湖を漂っていた。

そして、近くを漂う大人一人が乗れるくらいのやや大きめ氷の上で──


 「ソル……」


倒れているアブソルと、


 「グゥォッ」


未だ立ったままのルカリオが、居た。


善子「土壇場で自信取り戻してるんじゃないわよ……」

千歌「……なんというかさ」

善子「……なによ」

千歌「やっぱり、私たちって一人で戦ってるんじゃないんだなって」

善子「…………」

千歌「私たちがポケモンの目になって、的確に指示して、ポケモンたちを導くみたいにさ。……私たちが自信をなくしちゃったときは、ポケモンたちが大丈夫だよって、信じてくれって、そういう気持ちを伝えて、支えてくれるんだなって」

善子「…………あー、やっぱ千歌には勝てないわ」

千歌「やっと気付いた?」

善子「調子乗んじゃないわよ……さっきまで自信喪失してたくせに」

千歌「ふふ……善子ちゃん」

善子「……なに?」

千歌「ありがと」

善子「……なによ、勝者の余裕?」

千歌「私、ちょっと自信過剰なところあるからさ……このバトルで、なんかちょっと反省出来た気がする」

善子「……はぁー、もー……勘弁してよ……ここで反省とか、どこまで強くなる気なのよ……」

千歌「……どこまでも、かな。仲間と一緒に、どこまでも強くなるよ」

善子「……そっか」

千歌「うん」


──ちゃぷ。善子ちゃんの方から水音。


善子「……千歌」


気付けば、善子ちゃんが近くまで泳いできていた。


千歌「んー……?」


そして、手を繋いでくる。

二人して、並んで月を見上げる。


善子「……一回しか言わないからね」


善子ちゃんは照れくさそうな声で、


善子「……私と出会って、旅して、戦ってくれて……ありがと。……本当に楽しかった」


そう言った。


善子「なんか負けたのに清々しい気持ちだわ……」

千歌「えへへ……うん。私も最高に楽しいバトルだったよ」

善子「そ……」


私たちは二人でぼんやりと、仰向けに湖に浮かびながら、空を仰ぐ。

満点の星空と、綺麗な月を眺め、光り輝く湖に浮かびながら。


千歌「月……綺麗だね」

善子「……ホントにね」


ただ、ぼんやり……。戦いの余韻に浸りながら、夜空を、眺めているのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クリスタルレイク】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ●        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.56  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.51 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.56 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.53 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.61 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.52 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:164匹 捕まえた数:15匹

 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.53 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.57 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.52 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.52 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.50 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.61 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:178匹 捕まえた数:88匹


 千歌と 善子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter080 『開催! フソウうつくしさコンテスト!』 【SIDE You】





ことり「──飛行手段が欲しい?」


ことりさんは私の言葉に首を傾げる。


曜「うん。前々から思ってたんだけど……ずっと誰かに相乗りさせてもらうばっかじゃよくないなって思って」


──グレイブ団事変から、数週間。

やっと地方内も落ち着きを取り戻してきて、明日からフソウタウンにてうつくしさコンテストが再開する。

今はそんなフソウタウンに向かうための荷造りをしている真っ最中だ。


曜「せめて、普段の移動くらい自分で自由に出来た方がいいかなって……」

ことり「……確かにそれはそうだけど……。曜ちゃんの手持ちってもう6匹居るよね? 誰か控えに回すの?」

曜「う……確かに……」


私の手持ちはカメックス、ラプラス、ホエルオー、ダダリン、カイリキー、タマンタで6匹埋まっている。

誰かを控えに回そうにも、自分の中でこの6匹がしっくり来てるため、今更誰かを控えにと言われると少し困ってしまう。


曜「7匹持つとかは~……?」

ことり「……別にダメなわけじゃないけど……ことりはあんまり好きじゃないかなぁ」

曜「……そもそも、なんで持ち歩くポケモンって6匹なの……?」


慣習的に6匹を連れ歩くし、フルバトルと言えば6匹。リーグの公式戦でも6匹から3匹を選んだりと、何かと6匹と言うことにこだわりを感じる。

だけど、何故? と言うことを考えると、なんで6匹なのかはよくわからない。


ことり「んー……理由はいろいろあるんだけど……トレーナーが一度に把握出来る手持ちが大体6匹くらいだからかな」

曜「把握できる……?」

ことり「一度に指示が出来る限界点とか……あとはポケモンのコンディションに回せる気とかね。ボールの中はある程度快適だけど、やっぱり入れたまま連れ歩いてるのに外に出さないままって言うのはポケモンにとってすごいストレスだし……」

曜「言われてみれば……」


──外に出さないままなのはストレス。

そういえば、梨子ちゃんと戦ったときも、それがことりさんが難色を示してた原因の一つだったんだっけ……。


ことり「あとは、そうだね……やっぱりあんまり多く連れ歩くと、愛情を注ぎきれなくなっちゃうことが大きいと思うかな。ポケモンは道具じゃない。仲間だったり、友達だったり、家族だから……人それぞれではあるけど、利便の為に手持ちを決めるのはあんまり褒められたことじゃないかな」

曜「……まあ、そうだよね」


そうなると……やはり、誰かを控えに送るしかない。


曜「……むむむむ……」

ことり「……あ、そうだ!」

曜「?」


ことりさんは何かを思い出したかのように手を打って、部屋の中の棚を探り出す。


ことり「……えっと……確かここにあった気が……」

曜「……?」

ことり「……あ、あった!」


そう言ってことりさんが取り出したものは──


曜「……笛?」


ことりさんが手に持っていたものは、少し不思議な形をした笛だった。


ことり「うん♪」





    *    *    *





──セキレイタウン東。9番道路。


ことり「それじゃ、教えた通りに吹いてみて」

曜「う、うん!」


私はことりさんから貰った笛に口を付けて──吹く。


──ミャーー。ミャーーー。


笛の音に似つかわしくない気の抜ける音が鳴る。

……が、しばらくすると、


 「ミャーー、ミャーー」「ミャーーー」「ミャーーー」

曜「……! 来た!」


キャモメたちの大群がその音を聞きつけて飛んで来る。


ことり「キャモメさんたち、こんにちは」

 「ミャーー」「ミャーーー」


キャモメたちは私たちの頭や肩に次々と留まって来る。

その際、ポケットから鳥ポケモン用の餌を取り出して、食べさせてあげる。


 「ミャーー」「ミャーーー」

曜「ちょっと……お手伝いしてもらってもいいかな?」
 「ミャーーー」「ミャーーーー」


キャモメたちが鳴きながら頭を縦に振る。


曜「それじゃ……ちょっとごめんね」


私はそういいながら、キャモメたちの脚に丈夫な紐を括り付ける。

その紐の逆端には、ハンモックのような構造で布で出来た腰をかけるスペースが作られている。


曜「……よっし。それじゃ……」


私は再び、笛に口を付ける。

──ミャァーー。ミャァーーー。

気の抜ける音と共に……。

キャモメたちが空を飛び──身体が宙に浮き始める。


曜「わっ! ほ、ホントに飛んでる……!!」

ことり「えへへ、うまくいったね♪」

曜「うん!」


──ことりさんから渡されたものは、鳥笛だった。

鳥ポケモンの鳴き声を模した音が鳴り、鳥ポケモンとのコミュケーションが出来るというものだ。

今回ことりさんから貰ったのはキャモメの鳥笛。

野生のキャモメたちを集めて、餌をあげる。その代わりに運んでもらおうと言う話だった。


ことり「キャモメなら、地方中だいたいどこにでもいるし……餌はわたしが調合した特製のもの。あとで作り方教えるね」

曜「うん!」


あとは鳥笛を吹きながら、うまく指示を出して運んでもらう。

それなりに高度を増してくると、後ろからことりさんがいつものようにチルタリスと一緒に飛行して追いかけてくる。


ことり「これなら、手持ちの枠を圧迫せずに“そらをとぶ”が使えるね」

曜「うん! ことりさん、ありがとう!」

ことり「ふふ、どういたしまして♪」


一部地域では、このようにポケモンを呼び出して移動の手助けをしてもらう、ポケモンライドと言う文化があるらしい。

これはそれに近いことのようだ。

何はともあれ……これで、私も普段の移動に限り、自分だけで飛行する手段を得ることが出来た。


曜「よーーっし!! キャモメたち、全速前進!! ヨーソロー!!」
 「ミャーーー」「ミャーーー」「ミャァー」


私たちは、空を飛びながら、フソウタウンへ向かいます。





    *    *    *





──フソウタウン。

旅立ちの後、初めて訪れたこの町は、もはやなんだか懐かしいとさえ感じる。

私のコンテストの始まりの場所だ。


ことり「わたしが曜ちゃんと出会ったのも、この町だったね」

曜「うん。……なんかもうすごい前のことみたい」


ことりさんと会話を交わしながら、会場に足を踏み入れる。

初めて来たとき、このエントランスであんじゅさんと偶然出会って。

会場の中で志満姉と遭遇して、絵里さんのパフォーマンスに魅了されて。

そして、ことりさんと出会ったんだ。

フソウでのビギナー大会から、コメコたくましさ大会、ダリアかしこさ大会、サニーかっこよさ大会、セキレイかわいさ大会を制覇して、


曜「……いよいよ、最後の部門だ」


ここ、フソウ会場に帰ってきた。フソウうつくしさ大会。

そして、今日この場で、私は乗り越えなくちゃいけない。

始まりのきっかけになった、壁を──。

受付に向かうと、そこには人だかりが出来ていた。

その中央に居るのは──金髪で長身の美女。


ことり「絵里ちゃん」

絵里「? あら、ことり。久しぶりね」


コンテストのスターが二人も同時に現われ、オーディエンスたちが少々ざわつく。


絵里「今日はどうしたの? あなたはもうグランドフェスティバル内定でしょ?」

ことり「うん。今日は私のお弟子さんの応援だよ」

絵里「弟子……?」


絵里さんはそう言って視線を揺らす。

すぐに、ことりさんの近くに居た私の姿を認めたようで、


絵里「あなた……もしかして、飛空挺に乗り込んでいた図鑑所有者の子?」

曜「! は、はい! 曜であります!」


思わず緊張して、背筋が伸びる。


絵里「曜さん……。そう、あなたが……。亜里沙から話を聞いたわ。妹がお世話になったみたいね」

曜「お、お世話なんてそんな……」

絵里「でも、私は亜里沙のようにはいかないからね」

曜「!」


……絵里さんは憧れの人だ。

だけど、同時に──今日はライバルなんだ。


絵里「あなた、ここまで4部門をストレートで制覇してきたと聞いてるわ。さすがことりの弟子……と言ったところだけど」

曜「……私は」

絵里「?」

曜「私はグランドフェスティバルに出場します。最後の一枠に入るのは、私です」


私は何故だか、そう口にしていた。


ことり「……!」


そんな私を見て、ことりさんが驚いたように目を見開く。


絵里「……宣戦布告ってことね。まあ、私もこれから5回は連続で優勝しないといけないから──」

曜「今日勝ちます」

絵里「……! ……嫌いじゃないわ。そういう姿勢」


絵里さんはそう言って手を差し出してくる。


絵里「お互い、良いコンテストライブにしましょう」

曜「はい!」


私も答えるように、手を握り握手を交わす。

氷のように冷たい絵里さんの手だけど、籠められた力から熱意や闘志を感じた。


絵里「……それじゃ、私は先に楽屋に行ってるから」


そう言って絵里さんは受付の先に消えていった。

絵里さんがいなくなった会場内。

私の宣戦布告に周りの人たちがざわついていたが……。

しばらく固まったままだった私を見て、徐々にその場を離れて行く。

一方、私は──


曜「…………やってしまった……」


頭を抱えていた。

つい勢いで宣戦布告してしまった。

グランドフェスティバルに出場するのは自分だ。今日勝ちますって……。

失礼にも程があるでしょ……。


ことり「曜ちゃん」

曜「ぅ……ことりさん」

ことり「頭抱えてる場合じゃないよ? ノーマルランクのエントリー済ませて、優勝しないと」

曜「…………よーそろ」


ことりさんに言われて、受付でぱぱっとノーマルランクの受付を済ませてしまう。

まあ、しかし。毎度のことながら、ノーマルランクでてこずるわけにはいかない。

目的はこのランクの上なわけだし。

受付を終えて、戻ってきた私に、ことりさんがさっきの続きを話し始める。


ことり「……ホントは、絵里ちゃんの言う通り、これから数回のうちにどこかで勝ちの目を掴めればいいと思ってたんだけど……」


確かに、ことりさんのプランでは最初からそういう話だった。

ここで苦戦するだろうから、ここまでを最短で抜けてきたんだ。

でも……。


曜「うぅん……それじゃダメなんだ」

ことり「……どうして?」

曜「私、ことりさんとホンキで戦いたい」


私のことを、一番近くで見て、一番近くで鍛えて、一番近くで育ててくれた、この人と。


曜「そのためには……真っ直ぐことりさんのところに追いつかなくちゃ」


足踏みしてる場合じゃないんだ。


ことり「ふふ、そっか」


ことりさんは笑いながら、私の背中をぽんぽんと叩く。


ことり「言うようになったね、曜ちゃん」


全力で駆け上がってきたステージ。

ことりさんが傍で見守って、鍛えてくれたから、ここまで来れた。

なら、その恩返しは──きっと、同じステージで戦うことだ。


ことり「なら……行っておいで。グランドフェスティバルで待ってるから」

曜「……勝ってくるね……!」


こうして私は、最後の部門──フソウうつくしさ大会へと臨む……。





    *    *    *





──数時間後、ウルトラランク会場内。


あんじゅ「ことり、来たわね」

ことり「あんじゅちゃん、久しぶり」

あんじゅ「……ホントにここまで一直線であがってくるとはね」


関係者席から、ステージを見つめるあんじゅちゃんはそう言う。


あんじゅ「ことりのプロデュース力には、脱帽ね……」

ことり「うぅん、違うよ。これは曜ちゃんの力だよ」

あんじゅ「……ふーん」

ことり「ステージを見てればわかるよ」

あんじゅ「……わたしたちと同じグランドフェスティバルに出場する人間に相応しいか、お手並み拝見といきましょうか」


徐々に会場が暗転していく……大会の始まりだ。





    *    *    *




──大会開始直前。

舞台袖。

暗転が始まり、コンテストライブのステージが始まろうと言うとき、


絵里「……ふふ」


すぐ近くに居た絵里さんから笑い声が漏れる。


曜「……?」

絵里「曜さん、貴方可愛いわね」

曜「……はい?」


絵里さんは私たちを見ながらクスクス笑う。


絵里「綺麗に着飾るの……素敵だと思うわ」

曜「え……あ、ありがとうございます」


何故か急に褒められる。


絵里「まあ……でも、それはコンテストライブの結果にはあんまり影響はないと思うけど」

曜「……」


お礼を返してから、エントランスでのやり取りに対する仕返しのような皮肉だったと気付く。

意外と大人げないなとは思ったけど……まあ、失礼なことを先に言ったのは私だし、しょうがないか。

ただ……。


曜「そんなことないと思いますよ」


私はそう言葉を返す。


絵里「あら、そうかしら?」

曜「ポケモンを魅力的に見せるのには衣装の力も大事だと思います」

絵里「貴方、ことりみたいなことを言うのね。……やっぱり師匠の影響なのかしらね」


この人はあまりポケモンの衣装を重視していない。

二次審査でのアピールに絶対的な自信があるんだろう。


曜「それを今日ここで証明します」

絵里「……楽しみにしてるわ」


いよいようつくしさ大会の、幕が上がる──。





    *    *    *




司会『レディース・アーンド・ジェントルメーン!! お待たせしました、コンテストの聖地、ここフソウタウンにて繰り広げられる、最もうつくしいポケモンを決めるコンテスト……フソウうつくしさコンテスト・ウルトラランクのお時間です!!』


毎度お馴染み眼鏡がトレードマークの司会のお姉さんの口上と共に、大会がスタートする。


司会『さて、早速出場ポケモンとコーディネーターの紹介です! エントリーNo.1……エーフィ&カズマ! エントリーNo.2……ミロカロス&コハル!』


今回の対戦相手は、エーフィ使いのエリートトレーナー。ミロカロス使いのおじょうさま。

ミロカロスが登場すると、早速会場が沸き立つ。

さすがミロカロス、うつくしさの代名詞とまで言われているポケモンなだけはある。

だが、その空気はすぐに一変する。


司会『エントリーNo.3……キュウコン&エリ!!』


司会の人の声と共に、絵里さんと真っ白なキュウコンにスポットライトが浴びせられると──会場は割れんばかりの声援に包まれる。

それだけ、ファンが多いのだ。

だけど──


司会『エントリーNo.4……ラプラス&ヨウ!!』


固定ファンの数で負けていても、構わない。

だって、それも含めて全てを魅了するためにここに来てるんだから……!!

ラプラスにスポットライトが浴びせられると──。

会場が逆に静まり返った。

──その、余りに儚く、うつくしい様相に、だと思う。

今回の衣装イメージは、ウェディングドレス。

真っ白なレースをベースとして、全身にあしらわれた生地が、スポットライトを反射して上品に光り輝いている。

頭にはマリアベール。そしてベールの内側にワンポイントで青い花を添えている。

首から上だけではなく、ラプラスの背中からも、だらしなくならない程度に生地を作り、ラプラスが僅かに身動ぎするだけで、軽いレース生地がふわふわと舞う。


司会『……はっ! 失礼しました。うつくしさの権現ことミロカロスが会場を魅了したかと思いきや、大人気コーディネーター・エリさんとキュウコンがその歓声を掻っ攫い、その後に現われた超新星コーディネーター・ヨウさんが気合いの入ったウェディングドレスによって、その歓声を静寂に変えてしまいました……!! かくいう私も見蕩れてしましましたね……』


好感触──いや、当然だ。

ことりさんと考えに考え抜いた、ラプラスのためだけに作られた衣装だ。

一次審査は絶対に貰う。そのつもりで来た。

もうすでに会場内はアナウンス前だというのに私の色の青があがり始めている。


絵里「…………」


一瞬、絵里さんが視界の端に入る。

腰に手をあてて余裕の表情だった。

……最初から一次審査には興味がないとでも言いたげだ。


司会『さあ、一次審査開始です! ミロカロスは赤、エーフィは紫、キュウコンは白、ラプラスは青でお願いします!』


司会のお姉さんの声と共に、会場は青く染まっていく。

白もそれなりに多く、次いで赤、紫が続く。

── 一次審査だけなら、私たちの圧勝だ。


司会『さあ、そろそろ集計を締め切りますよ! 皆さん、投票の色はあげましたか~?』


一次審査の集計締め切りのための最後の確認。


司会『それでは、ここで一次審査終了です! このまま二次審査へ進みたいと思います!』





    *    *    *





ことり「やった……! 曜ちゃんが一次審査は圧勝……!」

あんじゅ「そうね……でも、勝負はここから。絵里さんには……アレがある」





    *    *    *





──今回の戦いにおいて、私はそもそも一次審査で負けているようじゃダメなんだ。

絵里さんには……Z技がある。

全てを魅了する、まさに規格外のアピールが。


司会『二次審査開始です! アピールはラプラス、キュウコン、ミロカロス、エーフィの順でお願いします』

曜「いくよ……! ラプラス!」
 「キュウーーーー」

曜「“いやしのすず”!!」
 「キュゥ~~~~~~」

 《 “いやしのすず” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡ ◆
   ラプラス◆ +♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆★★★★】 》


鈴の音が響き渡る。

今回の大会、絵里さんという優勝常連が居る以上、先手を取るとひたすら狙われやすい。

アピールを特化したいところではあるけど、攻撃が来るとわかっていて守らないのもそれはそれでおかしいことだ。

まずは防御技の“いやしのすず”から。


司会『うつくしい鈴の音が会場を包み込みます! ラプラスはこの鈴の音に守られて、後続のアピールに備えるようですね!』


絵里「キュウコン、“オーロラベール”!」
 「コーーーン」

 《 “オーロラベール” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡♡ ◆
   キュウコン◆ +♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆★★★】 》


鈴の音に被せるように会場にオーロラが広がっていく。

絵里さんも自分が狙われるのは百も承知のようだ。

最初は手堅く守りの技で来た。


コハル「ミロカロス! “なみのり”!」
 「ミロォォ」

 《 “なみのり” うつくしさ 〔 アピールが 終わっている ポケモン みんなを 驚かす 〕 ♡♡ ♥♥
   ミロカロス +♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆★★】 》


ミロカロスの鳴く声と共に周囲に放たれた水のエネルギーが波となって押し寄せる。

自分より前のアピールを妨害する技だが……。


 「キュゥ」

 《 ラプラス◆
   Total [ ♡♡ ] 》


 「コーン」

 《 キュウコン◆
   Total [ ♡♡♡ ] 》


二匹のポケモンはしっかり守りを固めている。


カズマ「エーフィ!! “サイコショック”!!」
 「フィーーー!!!!!!」

 《 “サイコショック” うつくしさ 〔 自分の 前に アピールした ポケモンを かなり 驚かす 〕 ♡ ♥♥♥♥
   エーフィ +♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆★】 》


 「ミロッ!!?」

 《 ミロカロス -♥♥♥♥
   Total [ ♥ ] 》


逆にそこを付いたエーフィが“サイコショック”でミロカロスを驚かす。

ミロカロスは減点だ。


 《 1ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)
   ラプラス   ♡♡  [ ♡♡  ]
   キュウコン  ♡♡♡ [ ♡♡♡ ]

   ミロカロス  ♥   [ ♥   ]
   エーフィ    ♡♡  [ ♡♡  ]                     》


そのままコンテストライブは2ターン目に進む──。





    *    *    *





あんじゅ「キュウコン♡3、ラプラス♡2、エーフィ♡2、ミロカロスは♡-1 エキサイトは4」


あんじゅちゃんはカウントを始める。


あんじゅ「まあ、初手はこんなものよね」

ことり「うん」





    *    *    *





絵里「キュウコン! “あられ”!」
 「コーーーンッ」

 《 “あられ” うつくしさ 〔 アピールが 上手くいった ポケモン みんなを かなり 驚かす 〕 ♡♡ ♥
   キュウコン +♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】 》


キュウコンが鳴くと会場内に“あられ”が降り始める。

本来は妨害技だが、このターン一番手のアピールのキュウコンには関係がない。


司会『さあ、ポケモンたちのうつくしい技の応酬に盛り上がる会場を更に幻想的な雰囲気へと誘います!!』


降り注ぐ氷の粒たちはスポットライトを照り返して、キラキラと光る。

その光景を見て、観客の人たちが息を呑むのがわかる。

確実に会場の空気が出来上がりつつある中、大技ではなく“あられ”を使ったのは、コンボのためだろう。

審査員席から注目の視線が飛んできているのがわかる。

更に高まったエキサイトから繰り出されるのはもちろん──


絵里「キュウコン! ライブアピール!! “ぐれーす☆ファンタジー”!!」
 「コォォーーーーンッ」

 《 “ぐれーす☆ファンタジー” うつくしさ 〔 うつくしさ部門 フェアリータイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   キュウコン +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 》


キュウコンがフェアリーのオーラを放つ。

そのオーラは会場の情景そのものをまるで違うファンタジーへと塗り替え──会場は月夜に包まれる。

そのまま、キュウコンはさらに大量のオーラを放ちながら、優雅に月夜を歩く。


司会『まるでその姿は月下美人……!! フェアリータイプ特有の妖艶な雰囲気が会場をうつくしく彩っています!!』


ライブアピールは大成功、キュウコンは周りにどんどん差をつけていくが──負けていられない。


曜「ラプラス! “こおりのいぶき”!!」
 「キュゥゥゥーーーー!!!!!!!」

 《 “こおりのいぶき” うつくしさ 〔 盛り上がらない アピールだったとき 会場が とても しらけてしまう 〕 ♡♡♡♡
   ラプラス +♡♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆★★★★】 》


ラプラスは辺りを凍て付かせる息吹を口から吹き出す。


司会『ラプラスは“こおりのいぶき”で対抗です! 吐息が凍りつき、これまたうつくしい光の反射で会場を魅了します!』


エキサイトに関してはタイミング運もある。

変に意識せずに自分のアピールを手堅くやらないと。


カズマ「エーフィ! “にほんばれ”だ!」
 「フィィイイーーー!!!!!」

 《 “にほんばれ” うつくしさ 〔 会場が 盛り上がっている ほど アピールが 気に入られる 〕 ♡~♡♡♡♡♡♡
   エーフィ +♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆★★★】 》


そんな凍りの風景を掻き消すように日射が降り注ぐ。


司会『おっと、状況は一変!! エーフィも負けじとコンボのための“にほんばれ”を使います!』

コハル「ミロカロス、“みずのはどう”」
 「ミロォォーーー」

 《 “みずのはどう” うつくしさ 〔 観客の ほかの ポケモンへの 期待を なくすことが できる 〕 ♡♡♡
   ミロカロス +♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆★★】 》


そんな中ミロカロスの放った、“みずのはどう”が周囲の陽炎と霰を吹き飛ばした。

“みずのはどう”はコンボを掻き消す妨害技だ。


司会『そこにすかさず、コンボは許さないと言わんばかりの“みずのはどう”! 本日のウルトラランクは攻防が入り混じるレベルの高い戦いとなっております!』


絵里「──…………」


絵里さんを自由に動かさないのは、他の参加者全員の共通認識だ。

それでも、絵里さんは圧倒的にアピールが強い。だから、何度もこのランクで優勝している。

手堅く邪魔をされても、全く動揺を見せないのは、それくらいは絵里さん自身もわかっていると言うところだろう。


 《 2ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   キュウコン ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡  ]
   ラプラス   ♡♡♡♡♡     [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡      ]
   エーフィ   ♡♡♡       [ ♡♡♡♡♡         ]
   ミロカロス  ♡♡♡♡     [ ♡♡♡           ]      》


司会『さあ、3ターン目です! キュウコン、ラプラス、ミロカロス、エーフィの順でお願いします!』


順番は相変わらずキュウコンが一番手。

どうにも大きな動きがないまま、進行しているが──。

前のターンの始めに会場のボルテージは一旦MAXに達し、次の波が来るのはこのまま行けばラプラスの手番になる。

これが好機だ──


絵里「……ふふ」


絵里さんが微かに笑うのが見えた。


絵里「キュウコン! “スイープビンタ”!」
 「コォーーンッ!!!!!」

 《 “スイープビンタ” かわいさ 〔 だすときに よって アピールの 出来具合が いろいろと 変わる 〕 ♡~♡♡♡♡♡♡♡♡
   キュウコン +♡♡♡♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆★★】 》


曜「!?」


キュウコンが尻尾をかわいらしく振るう。

うつくしく、じゃない。かわいらしくだ。


司会『おっとぉ!? ここでキュウコン“かわいさ”アピールですっ! 部門こそ違いますが、技のキレはかなりのものです!』

曜「……っ やられた……」


エキサイト操作だ。

二番手につけている私が強力なアピールをすることを咎めるために、わざと“かわいさ”技を使ったんだ。

絵里さんはただ自分をアピールするだけでなく、自分のライバルと成り得る相手を素早く見抜いて、攻防を上手に切り替えるお手本のような対応型……。

……どうする?


曜「……ラプラス! “あられ”!」
 「キュゥゥーーー」

 《 “あられ” うつくしさ 〔 アピールが 上手くいった ポケモン みんなを かなり 驚かす 〕 ♡♡ ♥
   ラプラス +♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆★】 》


再び、会場内には“あられ”が舞い始める。

逃してしまったものは仕方ない。

私は次のターンへの布石を撒きながら、キュウコンのスイープビンタを妨害するように技を選択する。


 「コン…!!」

 《 キュウコン -♥♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡ ] 》


司会『さあ、ラプラスも負けていません! “あられ”でキュウコンの妨害をしながら、審査員の注目を集めます!』


コハル「ミロカロス、“アクアテール”!」
 「ミロォ」

 《 “アクアテール” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡♡♡♡
   ミロカロス +♡♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】 》


ミロカロスが優雅に尾ひれを振るうと、そこから水のエネルギーが漏れ出し、会場内に水しぶきが舞う。

細かい水の粒子は、これまた会場中の光を乱反射して、会場を沸き立たせる。

──私が逃した、ボルテージが最高潮に高まる瞬間。


コハル「“グレースブレッシングレイン”よ」

 《 “グレースブレッシングレイン” うつくしさ 〔 うつくしさ部門 みずタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   ミロカロス +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 》


“アクアテール”で会場中に舞った水のエネルギーが、上空まで舞い上がり雨となって会場をうつくしく彩る、ライブアピール。

上手く技を披露し、会場は大いに盛り上がっている。

──だが、目立つと言うのはリスクでもある。


カズマ「エーフィ! “サイコショック”!」
 「フィーーーッ!!!!」


 《 “サイコショック” うつくしさ 〔 自分の 前に アピールした ポケモンを かなり 驚かす 〕 ♡ ♥♥♥♥
   エーフィ +♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆★★★★】 》


 「ミロッ」

 《 ミロカロス -♥♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡ ] 》


ミロカロスは再びエーフィの“サイコショック”に怯まされる。

かなりアピールが上々だったため、減点を食らっても尚、ミロカロスの得点は大きいが……二匹がぶつかり合ってくれる分には助かる。

大会は後半戦へと突入する──。





    *    *    *





 《 3ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)
   キュウコン ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡ ♥♥♥♥   [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡ ]

   ラプラス   ♡♡♡             [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡      ]
   ミロカロス  ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡ ♥♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡       ]
   エーフィ    ♡♡              [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡          ] 》


あんじゅ「キュウコン♡15、ラプラス♡10、ミロカロス♡9、エーフィ♡7……エキサイトは1」

ことり「曜ちゃん……!」





    *    *    *





コハル「ミロカロス、“りゅうのはどう”!」
 「ミロォーーー」

 《 “りゅうのはどう” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡♡♡♡
   ミロカロス +♡♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆★★★】 》


ミロカロスが口から吹き出す波動がうねりながら会場の中空を舞う。

手堅いアピールから──


絵里「キュウコン! “でんこうせっか”!」
 「コーーンッ!!!」

 《 “でんこうせっか” かっこよさ 〔 この次の アピールを はじめの方に だすことが できる 〕 ♡♡♡ ①
   キュウコン① +♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆★★★】 》


キュウコンが身軽な身のこなしをアピールする。


曜「……っ!! ま、また……!!」


今度は“かっこよさ”技の“でんこうせっか”を使ってくる。

しかも、この技は次回のアピールが一番先頭になる。

絵里さんの定石は最後のターンに大技を真っ先に決めて圧倒するために、先手を取れる技を使う。

しかも、ここでエキサイトの調整を行い、それを磐石なものにする。


司会『さあ、キュウコン! いつものように、最後のターンは頭に出てきました! また、あの大技で全てを押し切る作戦なんでしょうかっ!』

曜「……“こなゆき”!!」
 「キュウウーーー!!!!!」

 《 “こなゆき” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡♡♡♡
   ラプラス +♡♡♡♡ CB+♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆★★】 》


“あられ”の舞うステージ上に、“こなゆき”を舞わせる。


司会『さあ、そんな中ラプラスはコンボを成功させます! “あられ”の中で舞い踊る“こなゆき”が綺麗ですね……!! これは高得点が期待できます!』


これで、ほぼキュウコンには追いついたはずだ……!

まだ、ステージは終わったわけじゃない……!!


カズマ「エーフィ! “マジカルシャイン”!!」
 「フィーーー!!!!」

 《 “マジカルシャイン” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡♡♡♡
   エーフィ +♡♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆★】 》


エーフィが閃光を放ち、これまた手堅いアピールで点を稼ぐ。

そして、コンテストライブは最終ステージへ──。





    *    *    *




 《 4ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   ミロカロス   ♡♡♡♡♡     [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡     ]
   キュウコン① ♡♡♡       [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡ ]
   ラプラス     ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡ ]
   エーフィ     ♡♡♡♡♡     [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡        ] 》


あんじゅ「……勝負あった……かしらね」

ことり「…………」

あんじゅ「ことり、Z技の評価点って知ってる?」

ことり「……絵里ちゃんが使うまで前例がなかったから、新しく評定基準が作られたんだよね」

あんじゅ「そうよ。1回しか使えない大技だけど……アピールポイントは他の超大技以上の♡11ってことになってる。それに加えてエキサイトが次のターンの最初のアピールでMAXに到達する。……♡17」

ことり「……」

あんじゅ「確かに強敵相手に健闘したとは思う……だけど、この時点でキュウコン♡18、ラプラス♡18、ミロカロス♡15、エーフィ♡12……ここで同点じゃ、曜に勝ち目はない。それこそZ技を越えるアピールをしないと」

ことり「うぅん」

あんじゅ「?」

ことり「曜ちゃんはきっと負けないよ」

あんじゅ「……?」





    *    *    *





司会『さあ、最終ターンです!! アピール順はキュウコン、ラプラス、エーフィ、ミロカロスの順です!!』


ついに最終ターン。


絵里「キュウコン!! 行くわよ!!」


絵里さんの腕輪が光り輝く。

掛け声と共に、横に、縦に、素早く、両腕を真っ直ぐ伸ばす。前にも見た鋭利な刃物のようなジェスチャー、

そして、それと共に腕輪の光は大きくなり、そのオーラがキュウコンに宿る。


絵里「キュウコン!! 全力のZ技!! “レイジングジオフリーズ”!!!」
 「コォォォォォオーーーーーンッ!!!!!!!」

 《 “レイジングジオフリーズ” うつくしさ 〔 1度しか 使えないが すごくアピール できる 〕 ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
   キュウコン +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ExB+♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】 》


キュウコンは透き通るような雄叫びと共に、足元から迫りあがる巨大な氷柱と共にステージの高所まで上昇していく。


 「コォォォォーーーーンッ!!!!!!」


そして、そこからステージ上に向かって一気に冷気を放ち、

周囲の空気を一気に凍て付かせ──。

巨大な氷の結晶を作り上げる。


絵里「キュウコン、フィニッシュ」
 「コォーンッ」


キュウコンが氷柱を駆け下りると同時に、氷の大結晶が砕け、大きな結晶が光を乱反射して会場を沸き立たせる。

そしてそこから、更に──


絵里「キュウコン、ライブアピール。“アイシクルグレース”……!」
 「コォーーーンッ」

 《 “アイシクルグレース” うつくしさ 〔 うつくしさ部門 こおりタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   キュウコン +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 》


キュウコンが追加で放った冷気が、落ちてくる結晶たちを再び凍て付かせ、

それが先ほどとは違う形で結晶化し、さきほどとは違う輝きで会場中に光を落とす。


 「コォーーーンッ!!!!!!」


そして、次の瞬間、キュウコンの鳴き声と共に、その結晶たちは粉微塵に割れ砕け、その破片がダイヤモンドダストのようなうつくしい光の宝石となって会場中を踊る。


司会『美しい……本当に美しいです……!! 今回もしっかり決めてきました、Z技・レイジングジオフリーズ!! さらにそこから、“アイシクルグレース”を繋げました!! 素晴らしい……本当に素晴らしいアピールです!!』

絵里「……ふふ」


絵里さんが得意気に笑いを漏らす。

会場はその技の作り出す幻想的な氷の情景に目を奪われ。

他の参加者も、


カズマ「……」

コハル「……」


言葉を失っている。

もうこの会場はキュウコンと絵里さんのもの。

そう言わんばかりの空気の中──

──……再び巨大な氷柱が迫り出した。


絵里「……!?」


今度はラプラスの真下に、


曜「ラプラスッ!!!」
 「キュゥゥゥーーーー!!!!!」


見よう見真似の刃物のようなジェスチャー、それに呼応するように光るラプラス。


絵里「そ、そんな!? まさか、Z技……い、いや違う、あれは……!!?」


そう、違う。この技はZ技ではない。

Z技の見よう見真似だ。


曜「“ものまね”!!」
 「キュゥゥゥゥゥーーーーー!!!!!!」

 《 “ものまね” かわいさ 〔 1つ前の ポケモンの アピールと 同じくらい 上手くできる 〕 ♡~
   ラプラス +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ【★★★★★】 》


ラプラスの冷気が、再び大きな氷の結晶を形作り、


曜「ラプラス、フィニッシュ!!」
 「キュウッ」


ラプラスが氷柱を滑り降りる。

最初から最後まで見よう見真似で再現された技で。

──バキリ、

と音を立てて、再び大結晶が割れ砕け、会場に更なるダイヤモンドの輝きを散らせる。





    *    *    *





あんじゅ「……!!!」


あんじゅちゃんが目を見開いて立ち上がる。


ことり「絵里ちゃんは自分たちの技を過信してた」


唯一無二の個性であるZ技の存在。

だけど──


あんじゅ「“ものまね”なら直前のポケモンと全く同じアピールが出来る……!!」

ことり「そして、二次審査で追いついたっていうことは……」





    *    *    *




 《 5ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   キュウコン ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡   ]
   ラプラス   ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡ ]
   エーフィ    ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡            [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡                  ]
   ミロカロス  ♡♡♡♡                 [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡                      ] 》


司会『──これにて全てのアピールが終了……結果発表へと移りたいと思います!!』


司会の人の言葉と共にモニターに、得票を表すメーターが現われる。

二次審査の得票を表す青ゲージ── 一気に伸びる二本のゲージはキュウコンとラプラスのもの。

それは同時に伸びるのをやめる。

──だが、


絵里「……うそ」


 《   ポケモン    一次審査 | 二次審査
   【 エーフィ 】 〔 ♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                                   〕
   【.ミロカロス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                               〕

   【キュウコン】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡             〕
  ✿【 ラプラス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 〕 》


── 一次審査の得票を表す赤いゲージは、ラプラスがぶっちぎりで1位の獲得していた。


司会『二次審査ではほぼ同率だった、キュウコンとラプラスですが── 一次審査の結果が明暗を分けました!! 今回のフソウうつくしさコンテスト・ウルトラランク優勝は──エントリーNo.4!! ラプラス&ヨウさんです!!!』


その言葉と共に会場が割れんばかりの歓声に包まれる。


曜「……っし!!!」
 「キュゥゥーーーー!!!!!」

曜「ラプラス……!! やったよ!!」
 「キュゥゥゥーーーー!!!!!!」


私たちはラプラスと抱擁を交わし、喜びを分かち合う。


司会『そして、同時に今回の優勝者であるヨウさんは5部門全てを制覇したため、規定通りウルトラランク全部門制覇による持ち点の倍増が行われます!!』


私も持ち点は今回この優勝を以って──60pt

その倍で──120ptだ。


司会『100ptを超えマスターランクへの昇格──現時点を以って、グランドフェスティバルへの出場権を獲得したことになります!!』


再びスポットライトが私たちに当たる。

それにあわせて大きな拍手と、歓声が私たちに浴びせられる。

ああなんか……こうして喝采を浴びるのはすごく、気分がいい。


司会『そして、この時点で現コンテストクイーンを含め、グランドフェスティバルへの出場権を得たコーディネーターが4人決定しました!! 2年振りに全てのコーディネーターの頂点を競う大会、グランドフェスティバルの開催が決定致しました!!』


本当に割れんばかりに拍手喝采が会場を包み込む。


司会『そんなグランドフェスティバルへの最後の切符を手に入れた曜さん!! 一言いただけますか!!』


そう言って、司会のお姉さんがマイクを向けてくる。

そのマイクを握って私は──


曜「──ここまで来たら……グランドフェスティバル!! 優勝します!!」

司会『おお!? 優勝宣言です!! 曜さん、ここで優勝宣言!! これはグランドフェスティバルが本当に楽しみですね……!! ということで、今回のフソウ大会はこの辺で────』





    *    *    *





曜「──やってしまった……」


あんじゅさんの楽屋に行ったときも、今日の絵里さんとの邂逅のときも、

どうして私は、こうビッグマウスを叩いてしまうんだろうか。

今日の大会、どう考えても、現クイーンのあんじゅさんも、前クイーンのことりさんも、見てたのに。

大会後、戻ってきた楽屋で頭を抱える。

そんなところに、


絵里「曜さん、ちょっといい?」


絵里さんが声を掛けてきた。


曜「え、あ、はい!」


だいぶ生意気言ったし……怒ってるのかも。


絵里「……曜さん」


絵里さんは、私の名前を呼んでから──

手を差し出して、


絵里「私の完敗よ」

曜「え」


握手を求めてきていた。

応じて、絵里さんの手を握る。


絵里「私……慢心していたわ。自分にしかない特別な技を過信して、コンテストというものを侮っていたみたい」

曜「い、いや、そんなこと……!」

絵里「いいえ……確かに私は自分の技には自信があったけど……。それに慢心して、他の部分を磨くことを忘れていたみたいだわ。今は、あなたのお陰で目が覚めた気分よ」

曜「……!」

絵里「衣装……そうね、あんまり器用じゃないから、どこまで出来るかわからないけど……。私も次コンテストのステージに立つときは、キュウコンをもっと美しく魅せられるように、あの子の衣装を考えようと思うわ」


──伝わった。

私の伝えたかった、魅力が伝わって。

一人の人の気持ちを変えたんだ。

それがなんだか、溜まらなく嬉しかった。


曜「はい……!! 楽しみにしてます……!!」


絵里さんと硬い握手をし、私のうつくしさ大会は幕を閉じたのでした。





    *    *    *





──エントランスホールに戻ると、


ことり「曜ちゃーん!!!」

曜「わわっ!?」


ことりさんが突進するように抱きついてくる。


ことり「信じてたよ! 曜ちゃん!!」

曜「わ、わー!! ことりさん、苦しいって!?」


ことりさんに抱きつかれて、ジタバタする私。


 「ことりちゃん、その辺にしてあげないと、曜ちゃんが困ってるわ」

曜「……!」


そして、そんなことりさんの背後から、聞き覚えのある幼馴染の姉の声。


曜「志満姉!」

志満「曜ちゃん、久しぶり。見てたわよ、素晴らしいコンテストライブだったわ」

曜「えへへ……照れちゃうよ」

ことり「とーぜんですっ!! ことりの自慢の弟子なんだから!」

あんじゅ「なんで、ことりが胸張るのよ……」


呆れながら、声を掛けてくるのはあんじゅさん。


曜「あ、あんじゅさんっ!」

あんじゅ「久しぶりね、未来のクイーンさん」

曜「ぅ……」


やっぱり、私の優勝宣言、聞かれてた。


曜「あ、あれはそのー……弾みというかー……テンションがあがりすぎてたというかー……」

あんじゅ「まあ……チャレンジャーはあれくらい元気がよくないと張り合いがないわ」


そう言って、あんじゅさんは手を差し出す。


曜「!」

あんじゅ「ようこそ……マスターランクのステージへ」

曜「……はい!」


あんじゅさんと握手を交わす。


志満「それにしても……本当についこの間コンテストを知ったばっかりの曜ちゃんがここまで来るなんて……」

曜「えへへ……これも全部ことりさんのお陰だよ」

ことり「うぅん、曜ちゃんと──ポケモンたちが頑張ってきたお陰だよ」


ことりさんはそう言って私の頭を撫でる。


あんじゅ「ことり、その辺にしておきなさい? 今度はその子と戦うことになるんだから」

曜「……そっか」


そうだ、次のコンテストライブのステージで戦うのは、ここにいるあんじゅさんとことりさんなんだ。


ことり「ん……そうだね。ライバル同士が戦いの前に必要以上に仲良くしてるのもあんまり良くないもんね」

曜「ライバル……」


ことりさんにライバルと言って貰えるくらいのステージまで、私は登ってきたんだと実感が沸いてくる。


あんじゅ「やっとね」

志満「……そうね」

ことり「曜ちゃんともだけど……やっと、二人とも戦える」

曜「……ん?」


二人とも……?

……?

私は少し頭を捻る。

前々から気になっていたけど……どうして、志満姉はことりさんやあんじゅさんとこんなに仲が良いのだろうか。

あんじゅさんの楽屋へも顔パスだったし……。

──いや、その答えはここまでに出てきた情報を整理すると、自然と導き出された。


曜「まさか……グランドフェスティバルのもう一人の出場者って……!」

志満「……ええ、私よ」

あんじゅ「言ってなかったの?」

志満「わざわざ言う必要もないかなって……」

ことり「志満ちゃんは、たくましさ、かっこよさ大会だと上位常連なんだよ~」

曜「そっか……そうだったんだ……!」


どうりであんなにコンテストが詳しかったわけだ。

……というか、私は期せずしてとんでもない人たちに目を掛けて貰って、ここまで来たのかもしれない。


あんじゅ「出場枠が全て埋まった時点で、近日中にグランドフェスティバルが開催する運びになると思うわ。現クイーンとして、この戦いに臨めることを嬉しく思うわ」

ことり「うん!」

志満「グランドフェスティバル……楽しみね」

曜「よ、よろしくお願いします!」


かくして──私はついに、グランドフェスティバルへの出場権を手に入れ、この地方のコーディネーターの頂点を決める大会へと挑戦できることになったのでした。




    *    *    *





──夜。

髪を拭きながら、ホテルのシャワールームから出てくると、


曜「あれ? ことりさん、どこかいくの?」


ことりさんが窓から、出掛けようとしているところだった。


ことり「あ、うん。ちょっとセキレイに用事があって、一旦戻るんだ」

曜「セキレイ……? グランドフェスティバルって、フソウの会場でやるんでしょ? しかも、近日中って言ってたし……」

ことり「まあ、そうなんだけど……ちょっと大事な用事だから。もちろん大会までには戻ってくるよ♪」

曜「そ、そうなんだ……」

ことり「この部屋は曜ちゃんが自由に使っていいからね。それじゃ」


そう言って、ことりさんは飛び出して行ってしまう。


曜「大事な用事……グランドフェスティバルの準備よりも……? ……なんだろう」


窓の外で、夜闇の中を飛んでいく、ことりさんの後姿をぼんやりと眺めながら、私はそんなことを呟くのだった。




    *    *    *





──
────
──────





    *    *    *




──セキレイシティ。


梨子「……戻ってきた」


私はセキレイジムに訪れていた。

旅の最中、ぶつかった大きな壁。

今回、オトノキ地方を旅して周って、自分を見直すきっかけになった、大きな壁のある場所に。


梨子「…………」


目を閉じる。

目を閉じて──自分の腰についているボールを順番に撫でる。


梨子「……ふぅ」


息を整えながら、


梨子「……ムーランド、メブキジカ、ネオラント、チェリム、ピジョット、メガニウム──」


仲間達の名前を確かめるように呼んでから、


梨子「……よし! 行こう、皆!」


私は、ジムの中へと踏み出す。


梨子「た、たのもぉーーーーっ!!!」


そして、慣れない感じの大きな声で、叫んでみる。

すると、奥で一人の女性が、待っていた。


ことり「──梨子ちゃん。待ってたよ」

梨子「……ことりさん、セキレイジムに挑戦しに来ました」


私はバッジケースを開いて、7つのバッジを見せる。


ことり「バッジ7つ……確かに。じゃあ、これが最後のジムバトルだね」

梨子「はい!」

ことり「わかりました。使用ポケモンは5体。交換は自由。相手の全てのポケモンを戦闘不能にした方が勝利です」

梨子「ち、ちなみに……また全部モクローとかってことは……?」

ことり「今回はことりもホンキの手持ちで戦うから、モクローはいないよ」

梨子「ほ……」


何故か安心してしまう。


ことり「ただ……モクローとは比べ物にならないほど強いからね?」

梨子「……はい! 望むところです!!」

ことり「ふふ、良いお返事です♪ それじゃ──」


ことりさんがボールを構える。


ことり「セキレイジム・ジムリーダー『ゆるふわハミングバード』 ことり。全力で行きますっ!!」

梨子「よろしくお願いしますっ!!」


お互いのボールが宙を舞う──私の最後のジム戦の火蓋が、切って落とされたのだった。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【フソウタウン】【セキレイシティ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     ●  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:161匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.56 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.51 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.50 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.45 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.55 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.43 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 7個 図鑑 見つけた数:135匹 捕まえた数:14匹


 曜と 梨子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter081 『見つけた答え』 【SIDE Riko】





──二つのボールが宙を舞う。


梨子「行くよ!! チェリム!!」
 「チェリー」

ことり「ケンホロウ! お願い!」
 「ケーーンッ!!!!!」


ことりさんの一番手はケンホロウ。


ことり「“エアスラッシュ”!!」
 「ケンホッ!!!!!」

梨子「! “ころがる”!」
 「チェリー」


開幕飛んで来る“エアスラッシュ”を全力で転がって回避する。

こちらは手持ちのタイプ的に相性が不利なのはどうにもならない。

となれば狙いうちをされないように、出来るだけ動き回る。


梨子「チェリム! “にほんばれ”!」
 「チェリー……チェリリーーーッ!!!!!」


“ころがる”で加速しながら、チェリムが天気を晴らす。

一番手のチェリムの役割は基本的には場作りだ。

そして、豊富な補助技による撹乱──。


梨子「“くさぶえ”!」
 「チェリーー♬♩♫」

 「ホ、ホロ……」


いくら鳥ポケモンが素早いとは言え、室内で音から逃げるのは難しいはず。

案の定ケンホロウはうとうとと、し始める。


梨子「“グラスフィールド”!!」
 「チェリリッ!!!!!」


辺りに草原が広がる。いい調子で場作りが出来ている。


梨子「よし、次は──」


次の指示を送ろうとした瞬間、


 「チェリッ!!!?」


転がるチェリムのすぐ横をとてつもない速度で空気が薙ぐ。


梨子「な、なに!?」


ケンホロウに視線を戻すと──ケンホロウの周囲に空気が渦巻いて、グラスフィールドを巻き上げている。これは……。


梨子「“かまいたち”!!?」


善子ちゃんのアブソルが使っていたのと同じ技だ。

でも、ケンホロウは眠っているはず……。


 「ケンホロ……zzz」


たしかにケンホロウは、寝息を立てている。

つまり……。


梨子「“ねごと”……!!」

ことり「やっぱり“ねごと”だと技の精度が落ちちゃうね……」


初見を回避出来たのは不幸中の幸いだった。

ただ、眠らせても攻撃が出来るとわかった以上、場作りだけに集中している余裕がない。


梨子「“ウェザーボール”!!」
 「チェリリッ!!!!!!」


チェリムから太陽のような、炎の塊が打ち出される。

“ねごと”が使えると言っても、自由に飛び回ることが出来るわけじゃない。


 「ホロォ……ッ……zzz」


攻撃はケンホロウをしっかりと捉え、ダメージを与える。

“ウェザーボール”だけでは倒すまでには至っていないが……。

今畳み掛けておくに越したことはない。


梨子「“はなふぶき”!!」
 「チェリィィィーーー!!!!!!!」


チェリムの周囲に花が咲き誇り、それが吹雪のようにケンホロウを襲う。


 「ホロォ……ッ……zzz」


再び攻撃がぶつかり、ダメージを与えているが……。

……何か変だ。

眠っている状態とは言え、ことりさんが余りに手を出してこなさすぎる。


梨子「チェリム、一旦ストップ!」
 「チェリッ」


攻撃の手を止めて、一旦観察してみる。

──すると、

ケンホロウは確かに眠ってはいるが……。無抵抗なまま攻撃の直撃を受けたにも関わらず、あまりに足取りがしっかりしすぎている。

よく見ると、ケンホロウの鶏冠に当たりが僅かに光っているようにも見えるし……それだけじゃない、飛んで来る花びらはダメージを与えているように見えて──


梨子「……弾かれてる?」


ケンホロウにぶつかる──というより、弾かれているように見える。

弾かれてるのは……翼にぶつかっている花びら……?


梨子「……! “はっぱカッター”!」
 「チェリッ!!!」


咄嗟に気付き、指差して“はっぱカッター”を飛ばす──ケンホロウの頭部に向かって、


ことり「ケンホロウ! ガード!」
 「ホ、ロォ……」


夢現の中、ケンホロウは翼で顔を庇う。すると──ガキンッと硬い音が鳴り響く。


梨子「や、やっぱり……!! “はがねのつばさ”で防御をあげてた……!!」

ことり「バレちゃったか……さすがに、顔は硬くできないからね……」


眠っているように見せかけて──実はずっと、止まったまま技を使っていた。

じゃあ、あの鶏冠の輝きは──回復技……?


梨子「“あさのひざし”か……!!」

ことり「む、そっちもばれちゃったか」


私が晴らせた太陽の光を使って回復をしていたようだ。

どうりでダメージの通りが悪い気がしたわけだ。

持久戦はダメそうだ。攻撃をしたところで回復されて受けきられてしまう。


梨子「チェリム! もどって!」
 「チェリ──」


なら一旦交代。


梨子「お願い、ピジョット!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!」


ボールからピジョットが飛び出す。


 「ホロォ」

梨子「!」


交換のタイミングにあわせて飛んできたのは“エアカッター”。


梨子「ピジョット! “エアスラッシュ”!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!」


それを同じような遠距離のひこう技で相殺する。

とにかく、一体……!


梨子「ピジョット! “ブレイブバード”!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!」


── 一気に加速した、ピジョットの突進攻撃。


ことり「ケンホロウ!」
 「ホ、ホロォ……」


ケンホロウは再び“ねごと”によって、夢現のまま、翼を前に掲げる。

硬質化した翼で受け止めるつもりらしい。


梨子「ピジョット!! メガシンカ!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


前進するピジョットが私のメガブレスレットの光に呼応するように光り輝き──そのまま突き抜ける……!!

──ガキンッ!!

ピジョットの嘴と、ケンホロウの翼が真っ向からぶつかり合い、硬い音を響かせる。


 「ホ、ホロッ……!!」


その衝撃でさすがに目を覚ましたのか、ケンホロウが踏ん張りを利かせてくる。


梨子「ピジョット!! こじあけてっ!!」

 「ピジョットォォォ!!!!!!」


ピジョットは無理矢理、嘴を振るい、ケンホロウの片翼を弾く。

ただ、直線的だった攻撃から無理矢理シフトしたため、“ブレイブバード”の勢いがその時点で死んでしまう。


ことり「ケンホロウ!! “つじぎり”!!」
 「ホロッ!!!!」


その隙にケンホロウは鋭利な足の爪でピジョットを切り裂く。


 「ピジョォォォォ!!!!!!!」


だが、ピジョットの特性は“ノーガード”。

回避をする気なんてさらさらない。

攻撃を真っ向から受け止めて、至近距離のまま次の攻撃へと移行する。


梨子「“ぼうふう”!!」

 「ピジョットォォォォ!!!!!!!!」

 「ホロッ!!!!!?」


目の前で大きな翼を羽ばたかせ、それは強風となり、そのまま“ぼうふう”になり、そして“たつまき”になって、ケンホロウを飲み込み巻き上がる。


ことり「! ケンホロウ!」

 「ホ、ホロォォォォ」

梨子「いけぇぇ!!!!!」


“ぼうふう”はそのまま一気に上空に向かって巻き上がり──ケンホロウを天井に叩き付けた。


 「ホ、ホロ……」

ことり「……! 戻って、ケンホロウ!」


ことりさんが力尽きて、落ちてくるケンホロウをボールに戻す。


ことり「……やっぱり、メガシンカ相手だとパワーで競り負けちゃうね。なら、出番だよ、チルタリス」
 「チルゥ!!」

ことり「メガシンカ!!」

梨子「!」


ことりさんのメガネックレスが光る。

そして、それと同じ光に包まれたチルタリスが、


 「チルゥーーー!!!!!」


メガチルタリスへと姿を変える。

ことりさんの使ってくるメガシンカがチルタリスだと言うのは聞いていた。

だから、この早いタイミングでチルタリスを引き摺りだせたのは却って僥倖だろう。


ことり「“りゅうのはどう”!!」
 「チィルゥゥゥゥゥーーー!!!!!!!」

梨子「“オウムがえし”!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


逆にメガシンカ相手だと、メガシンカしているピジョット以外ではパワー負けするというのはこちらも同じだ。

そうなると、ピジョットで何がなんでもチルタリスを突破しなくてはいけない。


 「ピジョォォォォ!!!!!!!」

 「チィルゥゥゥゥ!!!!!!」


二匹の“りゅうのはどう”が相殺し合う。

波動が爆ぜて、フィールド内に青白いエネルギーが舞う中、


梨子「“ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!」


畳み掛けるように、技を繰り出す。


 「チルッ!!!!!」


ケンホロウと同様に、チルタリスを飲み込み巻き上げようとした瞬間、


ことり「“ハイパーボイス”!!!」
 「チイイィィィィィィィィィルゥッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

梨子「!!」


チルタリスから発された爆音のエネルギーが、“ぼうふう”を掻き消しながら、ピジョットを襲う。


 「ピジョォォォォッ!!!!!?」


そこに向かって畳み掛けるように突っ込んでくるチルタリス。


ことり「“ドラゴンダイブ”!!」
 「チルゥゥゥゥゥ!!!!!!!」


回避──いや、“ノーガード”の体勢からじゃ間に合わない。


梨子「“フェザーダンス”!!」
 「ピジョォッ!!!!!」


体勢を立て直しながら、ピジョットから大量の羽毛が舞う。

その羽ごと押し潰すように、チルタリスが迫る。


 「チィルッ!!!!!!」

 「ピジョォォォォッ!!!!!!」


ピジョットはそのままプレスを食らって、チルタリス共々フィールド上の地面に叩き付けられる──が、


梨子「踏ん張って!!」
 「ピジョォォォォォ!!!!!!」


脚を踏ん張り、どうにか“こらえる”。


梨子「“つばさでうつ”!!」
 「ピジョォッ!!!!!」


無理矢理押しのけるように、翼を振るい、


 「チルッ」


その攻撃を回避して、後ろに下がったチルタリスに更に追撃、


梨子「“スピードスター”!!」
 「ピジョットォォッ!!!!!!」


ピジョットの振るった翼から、星型のエネルギー弾が飛んでいく。


ことり「“ムーンフォース”!!」
 「チルゥゥッ!!!!!」


それと相殺させるように再び攻撃が放たれる。

二つのエネルギーが爆ぜ散り、煙が巻き起こる。

視界は悪い──だからこそ、必中の“ノーガード”。


 「ピジョォォォォォ──!!!!」


ピジョットの周囲に光が収束していく。

煙の先──ピジョットが生来から持っている“するどいめ”でチルタリスを見据えながら、一気にエネルギーを解放……!!


梨子「“ゴッドバード”!!!」
 「ピジョォォォォォォォ!!!!!!!!」


ピジョットが一気に飛び出す。

煙を突っ切り、


 「チルッ!!?」


チルタリスを巻き込んでの最大級の攻撃、


梨子「いけえええーーーー!!!!!」

 「ピジョットォォォォォォ!!!!!!!」


ピジョットの突進をチルタリスに炸裂させながら、再び天井にたたきつけ──。

──ぼふっ


梨子「!」

ことり「……“コットンガード”」


綿羽がもこもこと膨らみ、天井に叩き付けられる直前でクッションを作られた。


梨子「ピ、ピジョット!! 後退──」

ことり「“はかいこうせん”!!」
 「チィィィィィィィィィィィルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!!」


──破壊の閃光が上空からフィールド上に向かって、放たれる。


梨子「……くっ!!」


その余波から、トレーナーのスペースまで、強い風が巻き起こり、

そこから数テンポ遅れて──

大きな音を立てて、ピジョットが地面に叩き付けられる。


梨子「ピジョット!!」
 「ピ、ピジョォォォォォ!!!!!!!」


どうにか、まだ立っている。

でも、至近距離から“フェアリースキン”で強化された“はかいこうせん”を食らったのは余りにダメージが大きい。


梨子「一旦戻って!!」
 「ピジョッ──」


ピジョットを戻す。


梨子「チェリム!!」
 「チェリリッ!!!!!」


再びフィールドに顔を出したチェリムが“つよいひざし”を浴びて、花開く。


梨子「“ソーラービーム”!!」
 「チェリリッ!!!!!!!」


そして、ノータイムで光線をお返しする。


 「チル……!!」


“はかいこうせん”の反動で動けないチルタリスに最序盤で使った“グラスフィールド”によって強化された“ソーラービーム”が直撃する。


 「チルゥッ……!!!!!」


タイプ相性はイマイチだけど、効果は十分……!! よろける、チルタリス。


梨子「よし、このまま──!!」

ことり「“だいもんじ”!!」

梨子「!?」

 「チルゥゥゥゥ!!!!!!!!」


上空から、大の字の業炎が降って来た。

しかも、“にほんばれ”で強化されている。


梨子「“ウェザーボール”ッ!!」
 「チェリリィッ!!!!!!!」


対抗するように、チェリムから打ち出される火の玉。

二つの炎技ぶつかり爆ぜる。

“だいもんじ”にぶつけるにはギリギリの火力──押し切れるかは僅かな差、

そう思った矢先──


 「チィィル!!!!!!」

梨子「!?」


そんな思考を無視するかのように、チルタリスが炎を突っ切って飛び込んでくる。


ことり「“ドラゴンダイブ”!!」

梨子「っく!! “はなふぶき”!!」
 「チェリリーーー!!!!!」


チェリムが大量の“はなふぶき”をぶつけるが、チルタリスの勢いは止まらない。


梨子「……っ!! “フラワーガード”!!」
 「チェリッ」


咲き誇る花びらたちが、今度はチェリムを守るために集まってくる。

それごと押し潰すように、


 「チルゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


チルタリスがのしかかってくる。


 「チルゥゥゥゥ!!!!!」

 「チェ、チェリリーーー!!!!!」


チルタリスの重量と、花びらによるガードの力比べ。

だけど、優勢なのはチルタリス。徐々に推されて行く。


梨子「“やどりぎのタネ”!!」
 「チェ、チェリリッ!!!!!」


周囲にエネルギーを吸収する、タネをばら撒く。

だけど──間に合わない。


ことり「そのまま、いっけぇえーーーー!!!」

 「チィィィィルッ!!!!!!!」


このままじゃ推し負ける、そんなとき、


 「チェリリッ」
梨子「……!」


チェリムが一瞬目配せをしてきた。


梨子「……うん!! 後は任せて!!」
 「チェリ──」


私のその言葉に安心するように、チェリムは崩れ落ちた。

そして、すぐさま後続のボールを放る。


梨子「ピジョット!!」
 「ピジョォォォォォ!!!!!!!」


再びフィールドに飛び出すのはピジョット。


ことり「な……!?」


強い輝きをその身に纏いながら、万全の体勢で──


梨子「“ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォォォォッ!!!!!!!!」


力の限り羽ばたいて、


 「チ、チルゥゥゥゥッ!!!!!!!」


至近距離のチルタリスを再び打ち上げる。


梨子「“はかいこうせん”!!」
 「ピジョォォォォォ!!!!!!!!」


そして、お返しの“はかいこうせん”を一閃。

中空で攻撃が直撃した、チルタリスは──


 「チ、チルゥゥゥ……」


ついに、力尽きて、戦闘不能になった。


梨子「……よしっ!!」

ことり「戻って!! チルタリス!!」

梨子「やった……チルタリスを倒した……!!」
 「ピジョォォォッ!!!!!」

ことり「……ピジョット、回復してるね。競り合いに推し負けたように見せて、チェリムが使ってたのは──」

梨子「はい。“いやしのねがい”です」


──“いやしのねがい”は自分の残りHP全てを捧げる代わりに、次に出てくるポケモンの体力を完全回復する技だ。

お陰でピジョットはフルコンディションに戻り、手負いのチルタリスを圧倒することが出来た。


ことり「……うーん……メガシンカしたポケモンをそのまま残しちゃったのはまずいなぁ」


ことりさんは困った顔をする。

どうにか、いいペースを作り出すことが出来ている。


ことり「……よし、次はこの子!」


そう言って、ことりさんが次に繰り出したのは──


 「カバシッ」
ことり「行くよ! ドデカバシ!!」


大きなクチバシを持った鳥ポケモン、ドデカバシ。

 『ドデカバシ おおづつポケモン 高さ:1.1m 重さ:26.0kg
  体内の ガスを クチバシの 中で 爆発させ 木のタネを
  発射。 そのパワーは 大岩も 粉々にする。 その際
  クチバシが 発熱し その温度は 100度を 優に 超える。』


ことり「ドデカバシ!」
 「カバシッ」


ドデカバシがことりさんの声に反応して、クチバシをガバッと開ける。


ことり「“ロックブラスト”!!」
 「カバシィッ!!!!!」

梨子「!!」


ドデカバシから、岩のような大きさのタネが飛び出してくる。


梨子「“ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォ!!!!!!」


それを防ぐために、繰り出すのはまたしても“ぼうふう”。

巨大な“たつまき”となって目の前に旋風を起こすが──。

猛烈な勢いで飛んで来る、“ロックブラスト”は“ぼうふう”域に入っても全くそのスピードを衰えさせず。


 「ピ、ピジョォォォーーーーッ!!!!!」


ピジョットに続け様にヒットする。

いわ技はピジョットには効果は抜群だ。


梨子「遠距離で戦うのは不味い……!! “ブレイブバード”!!」
 「ピジョットォォォーーー!!!!!!!」


接近戦に持ち込む……!!

ピジョットが指示と共に一気に飛び出す。

一方ドデカバシは──


 「カバシィ……」


堂々と攻撃を待っている。

ただ、少しだけ様相が変わっていた。

──大きなクチバシが真っ赤に赤熱している。


 「ピジョットォォォォ!!!!!!!」


ピジョットの攻撃がインパクトした瞬間。

──ジュウウウウウウ!!!

と何かが焼け焦げる音。


 「ピ、ピジョォォォォォッ!!!!!!!」

梨子「……!?」


そして、苦しそうに鳴き声をあげながら、反射的に後ろに飛び退くピジョット。


ことり「加熱したクチバシ……触ると熱いよ!」

梨子「……っ!」


先ほど岩を撃ち出した熱によって、加熱されたクチバシ。それに驚き、ピジョットは怯んで後ずさってしまっている。

ことりさんは、その隙を見逃してはくれない。


 「カバシィ」


再びクチバシを開くドデカバシ。


ことり「“くちばしキャノン”!!」
 「カバシッ!!!!!」


そこからさっきよりも大きく、更に真っ赤に赤熱した岩の弾が撃ち出されて飛んで来る。

怯んだ隙を突かれたため、回避も防御もままならないまま──


 「ピジョォォォォォォッ!!!!!!」


ピジョットに攻撃が直撃し、

後ろに吹っ飛ばされる。


梨子「ピ、ピジョット!!」

 「ピ、ピジョォォォォ……」


ピジョットは強烈な攻撃を正面から受けて、戦闘不能になってしまった。


梨子「……戻って、ピジョット」
 「ピジョ…」


ピジョットをボールに戻す。


梨子「ありがとう……ピジョット」


ボールに戻ったピジョットを労わりながら、腰に戻す。


梨子「……とにかく、あのクチバシをどうにかしなくちゃ……!!」


私は次のボールを投げる。


梨子「ネオラント!!」
 「ネオォォ~」


ネオラントは飛び出すと同時に全身を躍動させバネにして、“とびはねる”。


ことり「! ドデカバシ!」
 「カバシッ」


ドデカバシが中空のネオラントに視線を向け、再びクチバシを赤熱させ始める。

ネオラントは跳ねた勢いで回転しながら、大量の水を口から噴き出した。


梨子「“みずびたし”!!」

 「ネォォォォ~~~~」


その大量の水はドデカバシの全身を降りかかり、


 「カ、カバシッ」


──ジュウウウウウウと水が蒸発する音を立てながら、色が戻っていく。

そして、それと同時に、攻撃が中断される。


 「ネォォォ」


そのまま、ネオラントが空中から突進する。


 「カ、カバシッ」


ネオラントの攻撃によって吹き飛ばされながら、ドデカバシはクチバシを開くが──。

弾は飛び出さない。


梨子「熱が保てなければ、ガスを引火できない……!! それなら、技は使えない!!」

ことり「ドデカバシ!! “ふるいたてる”!!」
 「カバシィッ!!!!!」


ドデカバシはことりさんの指示で、音を立てながらクチバシを素早く開閉する。

すると、再びクチバシが赤熱していくが──


梨子「“みずでっぽう”!!」

 「ネォォォ~~」


そのクチバシに水を噴き掛けて、それを許さない。

そして、追い討ちを掛けるように、


梨子「“れいとうビーム”!!」

 「ネォォッ!!!!」


クチバシ目掛けて“れいとうビーム”を放つ。


 「カ、カバシッ」


狙い通りクチバシが凍りついた。


梨子「これで、当分は何も発射できない!!」

ことり「……っ でも、発射するだけがクチバシの使い方じゃないよ!!」
 「カバシィッ」


目の前を“はねる”ネオラントに向かって、ドデカバシが走ってくる。

──凍ったままのクチバシを高速で回転させながら、


ことり「“ドリルくちばし”!!」

 「カバシィッ!!!!!!」

 「ネオォォッ!!!!?」


鋭いクチバシがネオラントを捉える。


 「ネォォ……」

梨子「戻って!! ネオラント!!」


ネオラントは強烈な攻撃を受けて、戦闘不能になってしまったが……十分仕事はした、


梨子「行くよ!! ムーランド!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


そして、飛び出すムーランド。

そのまま、ドデカバシに向かって一直線で近付き。


梨子「“かたきうち”!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!!」


仲間のかたきを討つために、強力な体当たりをぶちかます。


 「カバシィィィッ!!!!!?」


体重を乗せた、苛烈な攻撃はドデカバシを一気にぶっ飛ばし、

ドデカバシはジム後方の壁に叩きつけられた後、


 「カ、カバシ……」


戦闘不能になった。


ことり「……戻れ、ドデカバシ」


さあ、残りの手持ちはお互い2匹。


ことり「お願い、バルジーナ!」
 「バルバァルッ」

梨子「バルジーナ……!」


 『バルジーナ ほねわしポケモン 高さ:1.2m 重さ:39.5kg
  骨を 拾い 集めて 巣を 作る。 空から 地上を 観察して
  弱った 獲物を 脚で つかみ 骨の 巣まで 軽々と 運ぶ。
  骨で 着飾る 習性を 持つ。 カラカラの 骨を 好む。』


ことり「バルジーナ! “ボーンラッシュ”!!」
 「バルジィーー!!!!!」


バルジーナが羽の中から器用に骨を取り出し向かってくる。

振り下ろされる、骨を──


 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドは噛み付いて受け止める。


梨子「“かみくだく”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


──バキリッ

音を立てて武器にしていた骨を“かみくだく”。

次の攻撃移ろうとした、瞬間、


梨子「!? い、いない……!?」


バルジーナが視界からいつの間にか消えていることに気付く。


 「ヴォッフ」


辺りを見回しながら、鳴き声をあげるムーランドの頭上に──影が差した。


梨子「!! 上!!」

 「ヴォッフッ!!!!」


頭上から飛来する影から、脚が伸びてくる、


ことり「“だましうち”!!」

 「バァーールバルッ!!!!!」


バルジーナは鋭い猛禽の脚で上から蹴りつけてくる。


 「ヴォッフッ…ッ!!!」


バルジーナはそのまま、すぐに離脱する、ヒットアンドアウェイの姿勢を取ろうとしてくるが、


梨子「逃がしちゃダメ!! “じゃれつく”!!」
 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドは絡め取るように、バルジーナの脚に“じゃれつく”。


 「バルバァルッ!!!!!」


バルジーナは振り払うように脚を振るうが、


 「ヴォフヴォッフ」


ムーランドは離れない。


ことり「“どくどく”!!」

 「バルバァルッ!!!!!」


咄嗟に離脱は無理と判断して、次の指示を飛ばすことりさん。バルジーナが、そのまま爪を突き刺し、もうどくを注入してくる。


 「ヴォッフッ!!!!」

梨子「!」


ムーランドが苦しげに表情を歪めるが──


梨子「ムーランド!! “からげんき”!!」

 「ヴァッフッ!!!!!!」

 「バルゥッ!!?」


思いっきり頭を振るって、渾身の“ずつき”でバルジーナを吹っ飛ばす。

ムーランドは更に畳み掛けるように、口を開き、牙を向いて突撃する。

パチパチと火花の爆ぜる牙で──


梨子「“かみなりのキバ”!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」

ことり「“そらをとぶ”!!」

 「バァルジッ!!!!!!」


だが、すんでの所で飛んで逃げられ、攻撃が空振る。


 「ヴォッフ……!!」


ムーランドは再び苦しそうに顔を歪める。

もうどくが徐々に回って来ている。

一方バルジーナは空で旋回している。

このまま、ムーランドが力尽きるのを待っているようだ。

──パチ、


ことり「……?」


──パチパチ、バチ、


ことり「な、なんの音……?」


ただ、もちろんこのまま手をこまねいているつもりはない。

ムーランドが先ほど、空振りした“かみなりのキバ”が音を立て、大きな火花を立てる──


梨子「“そらをとぶ”をしている相手にも、当たる技がありますよ!!」

ことり「……!?」


全身の毛を逆立て、牙から電荷を大気に放出──そして、それを雷撃として撃ち落す大技。


梨子「“かみなり”!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」

 「バァァァァルゥゥゥゥゥッ!!!!!!!!?!?」

ことり「バルジーナ!!!?」


空中でバルジーナの絶叫があがる。

突然空中に現われた放電現象に為す術もなく、感電し、


 「バ、バルゥゥ……」


黒こげになったバルジーナは、気を失って落下。


ことり「戻って!!」


すかさずことりさんはバルジーナをボールに戻す。


梨子「残り……一匹……!!」


ついに、ことりさんを追い詰めた。


ことり「……すごいね、梨子ちゃん。本当に前戦ったときとは別人だね」

梨子「……ことりさんに気付かせてもらったお陰です。私たちはいつだって、一人で戦ってるわけじゃない」


ポケモンと一緒に歩んで、ポケモンと一緒に考えて、ポケモンと一緒に戦う。

そんな当たり前のこと。


梨子「──みんながいるから……戦える」

ことり「……うん、そうだね」


ことりさんは最後のボールを掲げる。


ことり「……ことりの最後のポケモン──この子はわたしが旅に出るときに、最初に貰ったポケモン。一番大切なパートナーだよ」

梨子「……!」

ことり「行くよ!! ジュナイパー!!」


ボールが放られる。ボールからポケモンが飛び出した、と思ったら──


梨子「!?」


飛び出したポケモンの影が一瞬で掻き消える。


梨子「上!?」


先ほどのバルジーナ同様、一気に上昇したのかと思い上を見るが──

上空には文字通り、敵の影も形もない。

でも、なんらかの方法で姿を隠してるのは間違いないんだ。


梨子「“すなかけ”!!」

 「ヴォッフッ!!!!!」


フィールドを掘り、作り出した砂を辺りにばら撒く。

これで少しだけでも視界を奪って、次の攻撃に備える……!!


ことり「ジュナイパー、落ち着いて、“みやぶる”で狙いを定めて」


──ユラリ。

突然、ムーランドの足元の影が揺れた。


梨子「!? し、下!?」

ことり「“ゴーストダイブ”!!」

 「ジュナイッ!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!?」


足元の影から飛び出してきたジュナイパーは、そのまま“リーフブレード”でムーランドを切り裂いて、そのまま上昇する。


梨子「……っ!! “10まんボルト”!!」

 「ヴォッフッ!!!!!」


まだ空気中に残った電荷を掻き集めて、空へ逃げるジュナイパーに向かって電撃を放つ。

──だが、攻撃が当たると共にジュナイパーが掻き消える。


梨子「!?」


気付けば、空には数体のジュナイパーの姿。


梨子「今度は“かげぶんしん”……!」

 「ヴォッフ……!!!」


ムーランドが膝を折る。

もうどく状態が長い、そろそろ限界が近い。


梨子「狙いを定める……ムーランド! “かぎわける”!」

 「ヴォフ」


ムーランドが鼻を鳴らす。

すぐに、


 「ヴォッフヴォフッ!!!!」


宙を舞うジュナイパーのうち一匹を視線で追いかけ始める。


梨子「あれが本物……!!」

ことり「……!! 対応が早いね……!! なら、ジュナイパー!!」

 「ジュナイッ!!!!!」


ジュナイパーは逃げるのをやめて、元の一匹に戻り、羽から出した矢羽を番える。


梨子「ムーランド!! 攻撃来るよ!!」

 「ヴォッフッ」

ことり「ジュナイパー!! “かげぬい”!!」

 「ジュナイプッ!!!!!!!」


空中から矢が撃ち出される。

一直線に飛んで来る矢羽。

でも、正体を追いきった状態なら、一直線に飛んで来る矢は回避できる……!!


梨子「ムーランド!!」
 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドがすんでのところで、矢をかわす。

矢はムーランドの顔のすぐ横を掠めたが、

攻撃は完璧に回避できた。


梨子「よし……!!」


すぐに反撃へと移ろうとした瞬間、

異変に気付いた。


 「ヴォッ…フ」

梨子「……え?」


ムーランドの動きが固まっていた。


梨子「ム、ムーランド!? どうしたの!?」

 「ヴォッフ……」


ムーランドは苦しげな顔をして、その場に立ち尽くしている。

もうどくでもう動けない……? いや、そういう感じじゃない。


梨子「何かされた!?」


すぐさま周囲を観察する。

だけど、異常らしい異常なんて見当たらない。

地面には先ほど、ムーランドが避けた矢羽くらいしか……。


梨子「……いや、それだ……!!」


矢羽は、ムーランドの影に刺さっていた。

ことりさんの指示した技は──“かげぬい”。


梨子「影に攻撃して、動きを止める技……!?」

ことり「正解!! でも、もう遅いよ!!」

 「ジュナイッ!!!!!!!」


ジュナイパーがムーランドの頭上から一気に下降してくる。

加速した上空からの一撃、


ことり「“ブレイブバード”!!」

 「ジュナイッ!!!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!」


床に磔にされて、動けないムーランドは為す術もなく、その突進に吹っ飛ばされた。


梨子「ムーランド!」
 「ヴォフッ……」


……ムーランド、戦闘不能だ。


梨子「……戻って、ムーランド」
 「ヴォッフ…──」


私はムーランドをボールに戻し、

最後のボールを構えた。


梨子「……行こう!!」


ボールを放る。


 「ガニューーー!!!!!!」
梨子「メガニウム!!」


メガニウムは飛び出すと同時に“つるのムチ”を伸ばす。


ことり「! ジュナイパー!! 離脱!!」

 「ジュナイッ!!!!」


ジュナイパーがすぐさま上昇、“つるのムチ”はすんでのところでかわされる、が


梨子「空に逃がしちゃダメ!! “はなふぶき”!!」
 「ガニューーーー!!!!!」


逃げるジュナイパーに向かって、範囲攻撃を放つ。


 「ジュ、ジュナイッ!!!!!!」


四方八方から、花びらが襲い掛かってきて、うまく空に飛び立てないジュナイパーに更に追撃、


梨子「“マジカルリーフ”!!」
 「ガニューーー!!!!!!!」


今度は必中の技。

最序盤で使った“グラスフィールド”による、くさタイプの強化の影響もあり、ジュナイパーをうまく翻弄できている。


ことり「あくまで逃がさないってことだね……なら、“ブレイブバード”!!」

 「ジュナイッ!!!!!」


ジュナイパーは再び“ブレイブバード”で一気に加速し、今度はメガニウムとの距離を一瞬で詰めてくる。


 「ガニュゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


メガニウムはそれに対して、地面に向かって足を打ち鳴らす。

任せろ──と言わんばかりに、


梨子「メガニウム!! 信じてるよ!!」

 「ガニュウウウウウウ!!!!!!!!!!」


雄叫びをあげる、メガニウムにジュナイパーの攻撃が突き刺さる。


 「ガ、ニュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」


激烈な突進、だけど、メガニウムは脚を踏ん張り耐える。


ことり「ジュナイパー!!」

 「ジュナイッ!!!!!!!!」


ジュナイパーは身を捻りながら、推進力を作り出し、押し切ろうとする。


梨子「“ねをはる”!!」

 「ガニュゥゥゥッ!!!!!!!!!」


メガニウムは足の裏から根っこを伸ばし、その場に自身に身体をホールドする。


ことり「……!!」


次第にジュナイパーは追加の推進力を得ることが限界に近付き。


 「ジュ、ジュナイ」


“ブレイブバード”の前進が止まる。


 「ガニュウッ!!!!!!」


すぐさま、メガニウムは再び“つるのムチ”を伸ばし、ジュナイパーを捕まえようとする。


ことり「ジュナイパー!!」

 「ジュナイッ!!!!!」


だが、ジュナイパーもタダでは捕まらない。

目の前でサマーソルトキックをするように、丈夫な脚でメガニウムの顎を叩く。


 「ガニュッ!!!!」


一瞬、“つるのムチ”の勢いが弱まり、ジュナイパーは背後に向かって跳ぶ。


梨子「──“じしん”!!!」

ことり「“じしん”!?」

 「ガニュゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


メガニウムが根っこと繋がった地面を大きく揺する。


 「ジュ、ジュナ!?」


ことりさんもジュナイパーも動揺している。

空に逃げようとしている相手に、何故“じしん”……? と言った顔だが、

私の狙いは“じしん”による攻撃じゃない……!!

──ボンッ!!


ことり「!?」

 「ジュナッ!!!?」


ジュナイパーの背後で何かが爆ぜる。

──ボンッ!!!

今度は前方で──いや、

──ボンッ!!! ボンッ!!! ボンッ!!!!

続け様に周囲が突然爆ぜる。


ことり「な!? こ、これ!?」

 「ジュ、ジュナッ!!!!?!?」


大きな音に驚いて怯んだジュナイパーを、今度こそ“つるのムチ”で捕まえる。


ことり「“タネばくだん”……!? まさか、“いやしのねがい”の直前に使った“やどりぎのタネ”は……!?」


──そうだ、あれはフェイクだ。

地面にばら撒かれた“タネばくだん”は、今“じしん”によって打ち上げられた衝撃で破裂し、ジュナイパーの不意をついて怯ませた。

メガニウムはそのまま、蔓で捕まえたジュナイパーを一気に自分の元へと引き寄せる。


ことり「っ!! ジュナイパー!! “リーフストーム”!!」

 「ジュナァァァァィッ!!!!!!!!!!」


蔓で引き寄せられながらも、ジュナイパーを中心にした草の嵐が吹き荒ぶ。

だけど、


 「ガニュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!」


メガニウムは放さない。


梨子「ここまで、いろんなことを考えながら旅をしてきました……」

ことり「……!」

梨子「これが……その中で、仲間たちと向き合って、見つけた答えです!!」

 「ガニュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


メガニウムが声をあげる。

引き寄せられたジュナイパーに向かって、繰り出す──この一撃。


梨子「──“おんがえし”!!!!!!」
 「ガッニュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


──全てを込めた、全力の一撃を、一発の頭突きに込めて、ジュナイパーにぶちかました。


 「ジュ……ナ……」


脳天に渾身の一撃を食らったジュナイパーは、白目を剥いて、崩れ落ちた。


 「ガニュゥゥ……!!!!」
梨子「……やった……。……やった……!!」


私はフィールドに走り出す。


梨子「メガニウム!!!!」
 「ガニュゥッ!!!!!!」


私はメガニウムに抱きつく。


梨子「やった!!!! 私たち、勝ったよ!!!!」
 「ガニュゥゥッ!!!!!!」

梨子「みんなの力で……勝てたよ……っ……」
 「ガニュゥッ」


なんだか、急に力が抜けて、もたれかかるようになりながら、何故だか涙が溢れてきた。


梨子「ありがとう……っ……みんな……っ……。……ここまで、わたしと一緒に、たたかってくれて……っ……ありがとう……」
 「ガニュ」


そんな私の頬をメガニウムが舐めてくる。


ことり「……ふふ、“おんがえし”か」

梨子「! あ、ご、ごめんなさい……!! まだ、決着宣言が……」


バトルが終わる前に飛び出すなんて、少しマナーが悪かった。


ことり「うぅん。正真正銘、梨子ちゃんの勝ちだよ」


ことりさんはジュナイパーをボールに戻しながら、そう言う。


ことり「“おんがえし”はポケモンがトレーナーのことを信頼している程に威力を増す技……あれだけの威力を見せられたら、もう疑うことなんて出来ないね」

梨子「ことりさん……」

ことり「梨子ちゃんとポケモンたちの絆は……本物だよ」

梨子「……はい!」
 「ガニュッ!!」

ことり「ふふ、メガニウムもとっても幸せそうだね……」

 「ガニュッ」

ことり「梨子ちゃん」


ことりさんが私のことを真っ直ぐ見つめて名前を呼ぶ。


梨子「は、はい!!」

ことり「ここまで歩いてきた努力と、ポケモンたちとの揺るぎない信頼関係、そして疑いようのない実力を認め、あなたにこの──“ハミングバッジ”を進呈します」


ことりさんから差し出される、この地方での最後のバッジ。


梨子「はい!!」


私は力強く返事をしながら、そのバッジを受け取ったのだった。





    *    *    *





ことり「結局……全部ことりの取り越し苦労だったみたいだね」


ことりさんは恥ずかしそうに言う。


梨子「そんなことないです……あのとき、ことりさんに言われなかったら……私本当に大切なものを見落としたまま、この旅を終えていたと思います」


こんな素敵な景色に、世界に、経験に……そして、何よりも仲間たちにも気付かずに、だ。


梨子「今は……すごく素直に世界を見つめられてる気がします」

ことり「……そっか」

梨子「だから、ことりさん……!」


私はことりさんに礼を言おうと改めて向き直って──


ことり「梨子ちゃん」


──と、思ったらことりさんは私を抱きしめて、


ことり「ありがとう……」


そう言う。


梨子「こ、ことりさん……? お礼を言うのはこっちの方で……」

ことり「うぅん……ことり、まだまだ未熟だから……梨子ちゃんにそう言ってもらえて、今すごくホッとしてる……」

梨子「ことりさん……」

ことり「ちゃんと答え……見せにきてくれてありがとう……」

梨子「……こちらこそ、最後まで見てくれて、ありがとうございます」


私はことりさんの抱擁に答えるように抱き返した。

こうして、私は……やっとあのときの失敗の答えを出すことが出来た──そんな充足感に包まれながら、この地方の全てのジムを制覇することが出来たのでした。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【セキレイシティ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ ●__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.58 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.53 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.55 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.48 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.55 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.49 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:14匹


 梨子は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter082 『グランドフェスティバルに備えて』 【SIDE You】





──フソウタウン。ホテルの一室。


曜「……グランドフェスティバル評定基準一覧分厚い……」


私は来るグランドフェスティバルに備え、ルールの確認を行っているところだった。

グランドフェスティバルはここまでの部門ごとのコンテストと違い、かっこよさ、うつくしさ、かわいさ、かしこさ、たくましさの5つのコンディション全てが要求される。

そのため、基本は同じでも細かいルールがかなり異なるのだ。

ちなみに、ことりさんもセキレイシティから戻ってきたらしいが、今は別に部屋を取っている。

あんじゅさんも言っていたが、数日後に対等に戦う相手である以上、直近であまり一緒に行動しているのはお互いのためにもよくないからだ。


曜「えーっと……『グランドフェスティバルは5部門全てのコンディションがポイント化されます』……ふむふむ。『ただ、1匹のポケモンで全てのコンディションをまかなうことは難しいため、措置としてメインポケモン1匹の他に2匹のサポートポケモンの持ち込みが許可されています』」


サポートポケモン2体はメインポケモンのアピールの補助をする役割がある。

そうなると、自然とメインポケモンが弱い部門の補助をすることになると思うけど……。


曜「……と言っても私の手持ちはコンテスト要員じゃないホエルオー以外は全部部門が違うから、そこはあんまり考えなくてもいいかな……」


一応現時点ではメインはラプラス。サブにはカメックスとタマンタを置こうとは思っている。


曜「『一次審査……メインサブ含めた3匹の全てのコンディションを評価対象とし、部門ごとに客席からの投票を行います。』」


つまり、5部門それぞれの一次審査判定があるということだ。


曜「『一次審査の後、得票の合計点が発表され、得票率が高い順に二次審査の1ターン目のアピールをすることになります』……この得点は今までのコンテスト違って、可視化されるってことかな」


私はちょっとずつ内容を頭に入れながらコンテスト概要のページをめくる。


曜「『二次審査……二次審査は全6ターン。1~5ターンの間はかっこよさ、うつくしさ、かわいさ、かしこさ、たくましさの5部門のターンが順番に周って来ます。ただし、その順番はランダムでターンの開始時に発表されます。参加コーディネーターはターンのはじめにそのターンに使用する技をあらかじめポケモンに指示してください。他の参加者のアピールを見てからアピールする技を変えることは出来ません。』」


ターンの開始時に要求される部門が決定されるから、その場で素早く判断して、使う技を決めなくてはいけない。これは今まで通りだ。


曜「『また、全てのターンで全ての技が全ての部門コンディションごとに得票処理を行われます。オーディエンスのエキサイトは部門ごとに審査員が判定し、部門通りのアピールの場合に限り、倍に近いエキサイトが得られているものと判断します。またそのターンの部門に沿わないタイプのアピールをした場合、減少するエキサイトも倍下がるものと考えます。』……えーっと、つまり……」


常に使った技を全ての部門で計算して、それの合算値を得点として加算するということだ。

例を出すと、全ての部門エキサイトが1、ターン部門がうつくしさのときに“こなゆき”を使うとする。

この技は元々うつくしさタイプの♡4の技だ。

そうすると……。


かっこよさ:♡4 かっこよさエキサイト変動なし。Ex1のまま。 =♡4

うつくしさ:♡4 うつくしさエキサイト変動+2。Ex3。更にエキサイトボーナス点♡+2 =♡6

かわいさ:♡4 かわいさエキサイト変動なし。Ex1のまま。 =♡4

かしこさ:♡4 かしこさエキサイト1減少。Ex0。エキサイトの減少による減点で♡-1 =♡3

たくましさ:♡4 たくましさエキサイト1減少。Ex0。エキサイトの減少による減点で♡-1 =♡3

合計:♡4+6+4+3+3 = ♡20


ということになる。


曜「うー……思ったより複雑だな……」


常に全ての技が全ての部門ごとの判定を行われるだけでなく、エキサイトも部門ごとに存在するため、考えて操作するとなると、かなり複雑になる。

ただ、逆にこのルールは今までのコンテストでは生かし辛かった技も使えることになる。

具体的に言うなら、“うずしお”のような、ターン中のエキサイトを固定する技。

使ったタイミングでの判定は変わらないけど、それ以降ターン中のエキサイトは全ての部門において、上昇も下降もしなくなる。


曜「この技のエキサイト操作への影響力は今までのコンテストとは比べ物にならない」


次に“ふいうち”や“つららおとし”のような使う順番によっては、大きくエキサイトを上昇させる技。

前者“ふいうち”は1番目のアピール時に、後者“つららおとし”は4番目のアピール時にエキサイト上昇が倍になる技だ。

ターン部門と一致させれば、倍の倍でエキサイトは一気に4上昇。加えて?4のボーナスも貰える。


曜「エキサイト0のとき以外は4つ上昇させたら、確実にボルテージMAXまで行くから……かなりの得票が期待出来る……」


逆に“うそなき”や“こごえるかぜ”のような、部門外だった場合エキサイトを2段階下げてしまう技は複数の部門のエキサイトを無理矢理リセット出来る技にもなる。

部門ごとアピールについてはまだまだ考えられることはたくさんありそうだけど……ひとまず次に進もうかな。


曜「『6ターン目は部門が存在しない、フリーアピールとなります。』……ここまで5ターンと違って、特定の部門に偏らない純粋なアピールタイムってことだよね。『また、フリーアピール時のアピール順は技による順番の操作を除き、1~5ターンの総合点の高い順番にアピールをすることになります。』」


本当に最後の最後にするアピールということだ。


曜「『二次審査6ターンのうち、2匹のサポートポケモンは2回ずつ……合計4回サポートアピールをすることが出来ます』」


さて、大きな変更点サポートポケモンに対する説明項目。


曜「『サポートアピールは基本評定基準自体は前述のものと変わりませんが、合計点は0.5倍(切り上げ)されたものが加算されることになります。またサポートアピールは必ずメインポケモンより前に使用し、一匹のサポートポケモンが1ターンの間に2回アピール機会を消費することは出来ません』」


サポートポケモンの技はあくまでサポート。メインポケモンに比べてアピール出来る量は少なくなるようだ。


曜「『メインポケモンとサポートポケモンのアピールは基本的に独立しています。ただし、場全体に掛かる技からコンボ待機~それに続く技による評定は、メインポケモン、サブポケモンで統一した判定を用います』……えーっと、つまり……」


サポートポケモンのタマンタが“あまごい”を発動した直後に、ラプラスが“かみなり”を使うとこれだけでコンボが成立したことになる、ということだ。

逆に言うならメインとサポートで統一……ということは、前のターンにラプラスが“あられ”を使って、次のターンのサポートアピールでカメックスが“ふぶき”を使う。みたいなことも出来るけど……。

ただ、サポートポケモンの得票は半分として扱われるから基本的にはラプラスがコンボを決める方が得点的にはおいしい。


曜「一匹のサポートポケモンが1ターンの間に2回アピールすることは出来ない……ってことは1ターンの間に2匹両方でサポートアピールすることは出来るってことだよね」


これも頭に入れておいた方がいいかもしれない。


曜「『またサポートポケモンの防御技は、広範囲を守れるものなら、メインポケモンも一緒に守ることが出来ます』……つまり、タマンタで“ワイドガード”を使えば、ラプラスも一緒にガードされるっと……」


サポートの役割として重要な部分になる気がする。


曜「『サポートポケモンは妨害を受けず、仮に他のポケモンのアピールで驚いたとしても減点の対象にはなりません』……あくまでアピールを邪魔されたときに減点されるのはメインポケモンだけってことだね」


サポートポケモンは防御を意識しなくてもいい、ということだ。


曜「『同様にサポートポケモンによる妨害技は全てメインポケモンへ行います。出場者のサポートポケモン同士のアピール妨害は減点の対象とはなりません。同様に他の参加ポケモンの技に依存するアピール技は、全てメインポケモンを前回の行動者として参照します。』」


サポートポケモンでサポートポケモンを驚かしても意味ないよ、という話。ただ、低いリスクでメインポケモンのアピール妨害が出来ると言うのは頭に入れておこう。

ついでに“ものまね”のような他のポケモンの技を真似る技などを使ったときに、真似ることが出来る技はサポートポケモンのアピールを挟んでいても、メインポケモン同士で行われるということだ。

サポートポケモンで大技を出して、それを“ものまね”で繰り返すみたいな使い方は出来ないようだ。


曜「『調子をあげる技はメインポケモン、サポートポケモンは独立していて、お互いに作用することはありません』……まあ、そりゃサポートポケモンがビルドアップした能力が他のポケモンのものになるわけじゃないからね」


ただ、サポートポケモンが調子をあげて、次のサポートアピールに備えるということも出来なくはない。……えーと、次。


曜「『サポートポケモンのアピールによってもエキサイト評定は基本的に変動するものと考えます。ただし、ターン部門のタイプと一致していても、メインポケモンのように倍付けのエキサイト上下は起こらないと考えます』」


つまりうつくしさのターンのときに、うつくしさの技を使ってもサポートポケモンの技によって変動するエキサイトは1ということだ。


曜「『ターン中にエキサイトがMAXになったときに限り、メインポケモンがライブアピールを行うことが出来ます。ライブアピールは会場のボルテージが最も高い状態で行うことの出来る特別なアピールです。サポートポケモンのアピールでエキサイトがMAXになった場合、ライブアピールすることは出来ません。』」


サポートポケモンのときにエキサイトがMAXになってもライブアピールが出来ない……これは本当に頭に入れておかないといけない。

サポートポケモンのタイミングでエキサイトゲージを満タンにしたら、ライブアピールが不発して、そのままエキサイトゲージはリセットされてしまうのはかなり痛手になる。


曜「『ライブアピールは独立した技として判定せず、発動直前に使った部門技の該当部門点だけにボーナス点を追加します。他の部門点への追加ボーナスは発生しません。』」


ライブアピールは?5点分のアピールに相当する。

ただ、あくまで発動した部門アピール点が増すだけで、全部門点に5点ずつ追加されるということではないという注意だろう。


曜「『最終的に一次審査:二次審査=1:2の割合で最終ポイントが決定します。合計点が最も高かった出場者が優勝です。』……ここはだいたい今までのコンテストライブ通りかな」


大雑把なルールの把握はこんなもんかな……。

あとは……。


曜「同じコンテストライブで戦う相手のことか……」


現クイーンのあんじゅさん。

前クイーンのことりさん。

そして、私に最初にコンテストをレクチャーしてくれた志満姉。

三人とも実際にコンテストをしているところを見たことがないからなんとも言い辛いけど……。

性格や得意な部門から、ある程度の戦略は推測出来るかもしれない。


曜「まず志満姉……おっとりしたお姉さんだけど、得意部門はたくましさやかっこよさ……」


得意部門からすると妨害が強い技が多い。


曜「そういえば、昔は割とおてんばだったって、あんじゅさんが言ってたような……」


志満姉からの妨害は警戒した方がいいかもしれない。


曜「次はことりさん……」


ことりさんは私を教える間も常にアピール特化を強く教えてくれていたけど……。

あれは私の考えを尊重してくれていたからであって、ことりさん自体はバトルスタイルを見ていても……。


曜「ことりさんって基本的にまず相手が動いたのを見てから対応してるよね……。元々器用なオールラウンダーだし、対応型な気がする」


アピール妨害防御なんでもござれな対応型かな。


曜「あんじゅさん……」


正直あんじゅさんのことはほとんどわからない。

だけど、自信満々の喋り方が割と印象に残っている。

そういう人は自分の覇道を往く、アピール特化な気もする。


曜「イメージの域は出ないけど、三人ともタイプが違う……」


かくいう私も一応アピール特化だけど……どの方向性でも極めれば頂点の大会まで辿り着く可能性を持っていると言うことだろうか。

そんなことを考えながら頭を捻っていると、

──prrrrrr.

ホテルの室内に備え付けてる電話が鳴る。


曜「ん? ご飯の時間かな?」


随分と考え事をしていたため、ディナーの時間を伝えるためのフロントからの内線かもしれない。

そんなことを考えながら、受話器を取る。


曜「もしもしー」

あんじゅ『こんばんは、曜。あんじゅだけど』

曜「……!?」


電話の主はなんとあんじゅさんだった。


曜「あ、あんじゅさん!? ど、どうかしたんですか……?」

あんじゅ『本番前にごめんなさいね。ただ、ちょっと話しておきたいことがあって……』

曜「……話しておきたいこと?」

あんじゅ『直接会って話したいし……渡したいものもあるから、ちょっと出てこれるかしら?』

曜「……?」





    *    *    *





曜「……うわ、オシャレなカフェ……」


──あんじゅさんに呼び出されたのはフソウタウンの大通りから少し小道に入ったところにある、オシャレなお店だった。

……というか、カフェというよりここは……。


バーテンダー「いらっしゃいませ、お客様」

曜「あ、えっと……」


入るや否や、バーテンダーさんに声を掛けられる。

こういう場所には慣れてないから、しどろもどろしていると……。


あんじゅ「その子、わたしの知り合いなのよ~」


あんじゅさんが店の奥から歩いてくる。


バーテンダー「そうでしたか」

あんじゅ「カウンターの奥の席、使わせてもらっていい?」

バーテンダー「ええ、もちろんです」


バーテンダーさんは恭しく礼をすると、店の奥へと戻っていった。


あんじゅ「さ、こっちに来てくれる?」

曜「あ、はい……」


あんじゅさんに促されて、後ろをトコトコと付いていく。


曜「あのーあんじゅさん……」

あんじゅ「なにかしら?」

曜「ここ……バーですよね?」


通されたカウンター席の向こうでは、恐らくマスターらしき人がカクテルを作っているところだった。


あんじゅ「そうよ。行き着けの場所なの。落ち着いてお酒が飲めるから、つい足を運んじゃうのよ」

曜「……私、まだ未成年なんですけど」

あんじゅ「わかってるわ。別にお酒を飲ませるために呼んだわけじゃないから。マスター、この子にソフトドリンク貰える?」


あんじゅさんの言葉を聞くと、マスターと呼ばれた人が手際よく、ジュースを用意してくれる。


マスター「パイルの実をベースにした、きのみのブレンドジュースです」

曜「あ、ありがとうございます……」


一口飲んでみると──


曜「なにこれ!? おいしい……!!」


パイルの実の皮が持つ酸っぱい味のあとに、他のきのみの甘い味が口いっぱいに広がる。

でも、それでいてしつこくなくて、すごく飲みやすい。無限に飲んで居られそうな気がする。


マスター「ありがとうございます」

あんじゅ「マスターの作るカクテルやブレンドジュースは絶品なのよ。……っと、それはいいとして」


あんじゅさんはカバンから、封筒のようなものを取り出す。


あんじゅ「これを渡しておこうかなと思って」

曜「……? なんですか?」


封筒を受け取り、表を見ると、


曜「……え」


そこには『コンテスト運営委員会役員推薦状在中』と書かれていた。


曜「コンテスト運営委員会役員……?」

あんじゅ「そ。グランドフェスティバルの直前に渡すのもどうかな……とは思ったんだけど、ここまで来たら勝っても負けても、これを渡すに足ると思ったし」

曜「どういうことですか?」

あんじゅ「グランドフェスティバルは知っての通り、この地方のコーディネーターの頂点を決める大会よ。つまり今現在あなたは低く見積もって地方で4番目以上に優秀なコーディネーターってこと。間違いなくトップクラスのコーディネーターよ」

曜「トップクラスのコーディネーター……」

あんじゅ「ま、最も役員の中にはすでに永世クイーンになって殿堂入りした人もいるけど……現役コーディネーターの中では間違いなく、上位中の上位よ」

曜「……それと私が役員の推薦状を貰ってるのと関係が……?」

あんじゅ「……これはあくまでわたしの考えなんだけど、わたしはコンテストと言うものがもっと多くの人に広がって欲しいと思ってる」


言われてみれば、あんじゅさんはクイーンでありながら、率先してアクセサリー入れを配ったり、コンテストの布教をしていたことを思い出す。


あんじゅ「まだまだ、ポケモンと一緒にやることと言えばバトル……と言うのが主流だけど、わたしはポケモンの魅力はそれだけじゃないと思ってる」

曜「わ、私もそう思います!」

あんじゅ「ふふ、ありがと。……だからわたしはね、もっといろんな人にコンテストの良さを知ってもらう方法をいつも考えてるの」

曜「……」

あんじゅ「でも、一人じゃ知恵が足りない……だから、コンテストに真っ直ぐ向き合って、実力で持って上まで駆け抜けて来た仲間たちと一緒に、もっとよりよいものが作れないかなと思って、本当に優秀なコーディネーターにはこうして声を掛けているの。その人選のラインがグランドフェスティバル出場経験者ってわけ」

曜「……なるほど」

あんじゅ「実際、この考えにはことりも同意してくれててね。実はあの子も役員なのよ──……ってさすがに知ってるかしら?」

曜「……直接ことりさんの口から聞いたことはないですけど、薄々そうなんだろうなとは……」


ことりさんは出場するわけでもないのに、頻繁にコンテスト会場に足を運んでいたし、運営側に関わっているんだろうなと言うことは、なんとなく気付いていた。


あんじゅ「そういうわけで……どうかしら?」

曜「……う、うーんと……」


私は急に言われて困惑してしまう。

もちろん、すごく名誉なことだと言うのはわかってはいるけど。


あんじゅ「……もちろん、すぐに答えて欲しいってわけじゃないわ。グランドフェスティバル本番もあるわけだし」

曜「……そうですね……。ちょっと、少し考えさせてください」

あんじゅ「ええ、わかったわ」


あんじゅさんはカクテルに軽く口を付けてから──


あんじゅ「曜」


訊ねて来る。


曜「なんですか?」

あんじゅ「コンテストは好き?」

曜「……はい! 大好きです!」

あんじゅ「そう……なら、あのときあなたに布教してよかった」

曜「こちらこそ……ありがとうございます。あんじゅさんのお陰でコンテストに出会えました」

あんじゅ「ふふ、でもあなたなら遅かれ早かれこの世界に来ていたと思うけどね」


あんじゅさんはそう言って笑う。


あんじゅ「……ことりがね、言っていたの」

曜「?」

あんじゅ「まだコンテストライブは過渡期だって」

曜「過渡期……ですか」

あんじゅ「まだまだルールを洗練出来るし、もっともっとポケモンたちの魅力を伝えられる場として、もっともっと発展出来る可能性を秘めてる素敵な場所なんだって」

曜「ことりさんが……」

あんじゅ「ことりは、もっと多くの人が、ポケモンたちの魅力に気付ける場所にしたい、その機会と出会える場所にしたいって言っていた。それがあの子がコンテストに懸ける信念」


あんじゅさんは私の目を真っ直ぐ見つめながら、


あんじゅ「曜、あなたにとってコンテストは……どういう場所であってほしい?」


問うてくる。


曜「……私は──」


少し考える。

私にとってコンテストって、どんな場所だろう。

自分が考えた最高の衣装を皆に披露して、それを受け止めてもらって、認めてもらえる場所……。

……うぅん、ちょっと違うな。


曜「……笑顔になれる場所、かな」

あんじゅ「笑顔になれる場所?」

曜「……私がコンテスト会場に訪れた理由なんですけど……実は野生のポケモンとのバトルですごい怖い思いをして……バトルが怖くなって、この先どうしようか、すごく迷ってたんです」


スタービーチでのドヒドイデとのバトルで、本当に怖い思いをした。


曜「そんなときに、先輩トレーナーに薦められて、コンテスト会場を訪れて……そしたら、ポケモンもコーディネーターさんも……それだけじゃない、観客の皆もすごく楽しそうで、キラキラしてて……。気付いたら私もそのキラキラから目が離せなくなってて」


自分で言ってて、思い出して、気付く。


曜「私……コンテストがあったから、また笑顔になれた。……怖い思いしたけど、ポケモンを嫌いにならずに居られた」

あんじゅ「……そっか」

曜「だから……皆がキラキラ眩しい笑顔で笑って、ポケモンと一緒に何かを表現するのって、素敵なんだなって、そう思える場所になってくれたら……うぅん、そうあり続けてくれたら……嬉しいです」

あんじゅ「……ふふ、やっぱり、わたしの目に狂いはなかった……すごく素敵な考えだと思うわ」


あんじゅさんはわたしの言葉を聞いて優しく微笑んでくれる。


曜「あ、ありがとうございます」


なんかちょっぴり恥ずかしい。


あんじゅ「ますます、一緒にコンテストを作って行く仲間に欲しくなっちゃったけど……それは、グランドフェスティバルが終わってからにするわ」


そう言ったあと、あんじゅさんは手を差し伸べてきた。


あんじゅ「……グランドフェスティバル。お互い全力で、訪れた誰もが笑顔になれるような、素敵なコンテストライブにしましょう」

曜「……はい!」


私はその手を強く握る。

このあと二人でゆっくり談笑をしながら過ごす。

コンテストについて語るたびに、あんじゅさんは嬉しそうに話を聞いてくれて──。

そんなあんじゅさんたちと戦う最後の決戦のステージが……いよいよ、始まるんだ。

コーディネーターの頂点を決める大会、グランドフェスティバルが──

そんなことを考えながら、フソウタウンでの夜は更けていくのでした……。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【フソウタウン】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     ●  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 曜
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:161匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt


 曜は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter083 『開催! グランドフェスティバル!!』 【SIDE You】


司会『──レディーーース・アーーーンド・ジェントルメーーーンッ!!! 今宵、ついに……ついについに始まります!! ポケモンコンテストライブにおいて最強のコーディネーターの座を競い合う祭典──グランドフェスティバルのお時間です!!!!!!』


眼鏡がトレードマークの司会の声と共に、会場中は歓声と熱気に包まれ、最後の大会が幕を開ける。


司会『この栄誉ある大会にて、本日全てのコーディネーターたちの頂点を目指して競い合う、参加者たちとそのポケモンたちの紹介です!!!』


司会『エントリーNo.1!! もはやここに訪れている人間で、彼女とその相棒を知らない人は居ないと言っても過言ではないでしょう!!! 現クイーン!! 『うつくしさの覇者・ビューティフルバタフライ』──』


司会の声と共に、スポットライトが当てられる。


司会『──あんじゅ&ビビヨン!!!』

あんじゅ「はぁーーーい!!!! 皆ーー!! よろしくねーー!!!」
 「リィリリィ、リィリリリィ~」

司会『そして、サポートポケモン──バタフリー!! アゲハント!!』

 「フリーフリーー!!!」「ハーーーント」


紹介を受けた、三匹の蝶々があんじゅの周りを華麗に飛び回る。

──そのポケモンたちは小さな身体に美しいドレスを纏い、翅には“ぎんのこな”がライトを反射してキラキラと光っている。

頭には三匹おそろいの水色の小さなリボンを付けて飾っている。

それを見て、一気に盛り上がる会場内。


司会『あんじゅさんは今大会が三回目の防衛戦──即ち、今回優勝すれば、栄誉ある永世コンテストクイーンの称号が与えられます!!』


司会の言葉を聞き、会場が再び大きな歓声に包まれる。


司会『ですが、次の参加者もそんな、あんじゅさんに負けず劣らずな超実力派コーディネーター!!! エントリーNo.2!! バトルもコンテストも可憐にこなす前クイーン!! 『プリティー・ハミングバード』──』


現われた彼女がスポットライトに照らされ現われる。


司会『──ことり&チルタリス!!!』

ことり「みんなーーー!!! 今日は絶対に優勝するからーーー!!! 応援してねーーー!!!」
 「チィーーール」

司会『そして、サポートポケモンはジュナイパーとモクローです!!』

 「…ジュナッ」「ホーホー」


モクローはことりの頭の上で羽を開く。

天使のような真っ白な上着を羽織り、シンプルに着飾っている。

逆にジュナイパーは真っ黒なタキシードを象った姿。

メインポケモンであるチルタリスは頭に花冠を身に付け、真っ白な綿羽にあわせるような純白のドレスを身に纏っている。


司会『今回は花嫁をイメージした衣装で参戦!! 自前の衣装で着飾るという発想をコンテストに持ち込んだのは彼女とまで言われています!! 今回もその持ち味を存分に生かして、クイーン奪還を目指します!!』


会場中から黄色い歓声が飛んで来る。

彼女の作る衣装人気は、多くの女性ファンの心をわしづかみにしている。この歓声もそれゆえのものだ。


司会『さあ、エントリーNo.3!! この実力派の二人に長年喰らいつき、今回も再びこのグランドフェスティバルの場にて競い合います!! たくましさ・かっこよさコーディネーターと言えばこの人!! 『ジェノサイド・プリンセス』──』


──ズシン、ズシン。と重量感のある音とともに現われたのは、


司会『──シマ&ギガイアス!!』

志満「さあ……行きましょう、皆!」
 「ギーーーガイァッ!!!!!!」


そして、そんなギガイアスは二匹のポケモンを背負っての入場。


司会『ギガイアスに背負われている二匹の大型ポケモンはサポート枠!! ゴローニャとトリデプスです!!』

 「ゴローーニャ」「リデプス……」

司会『担がれている二匹の総重量は約450kg!! 入場だけでそのたくましさを体現しています!!』

 「ギガイァッ!!!!」


ギガイアスが声をあげて、二匹を下ろすと、その重量で──ドズン! と重鈍な音と共にステージにヒビが入る。


司会『ジェノサイド・プリンセスの二つ名に相応しく、たくましさコンテストにおいて最強の名を欲しいままにしている彼女! さっそく会場にヒビが入ってしまいましたね!』


それを見て、雄々しい歓声が飛んで来る。

そのたくましさは男性コーディネーターたちからも一目置かれている。


司会『この三人と牙を交えて争うことになるのは──エントリーNo4!! 行く先々でオリジナルの衣装を披露し、全ての部門をストレートで突破した、新進気鋭の超新星!! 『ワンダフル・ファッションマスター』──』


最後に現われ、スポットライトの照らされるのは、


司会『──ヨウ&ラプラス!!』

曜「優勝に向かって全速前進ーー!!! ヨーーーソローーー!!!!」
 「キュウウーーーーー」


ラプラスもチルタリス同様、花嫁のような真っ白なドレスのような衣装を身に纏っている。

頭には青い花のコサージュ、首には真珠のネックレスを身につけ、飾っている。


司会『そして、サポートポケモンはカメックスとタマンタです!!』

 「ガァーーメッ」「タマ~」


カメックスは黒いタキシードで身を包み、タマンタは真っ白なコートから羽を生やした天使コーデ。

まるで先ほどのことりのポケモンと同じような組み合わせだ。


司会『えー予め調べた情報によりますと、ヨウさんは今回の出場者であることりさんとは師弟関係に当たるそうですね。最後の最後に同じテーマの衣装を持ってくるのは流石師弟と言ったところでしょうか』


ことり(ウェディングドレス……晴れ舞台に一番相応しいもんね)

曜(ことりさんもきっと私と同じ考えで、このテーマ衣装を選んだんだ……でも、だからこそ、この勝負──)

ことり(──わたしが勝つよ)
曜(──私が勝つ……!!)


ことりと曜、師弟の間で無言の火花が散る。


あんじゅ(バチバチじゃない……でも、わたしも現クイーンとして、負けるつもりはない……!!)

志満(今度こそ、私もクイーンに……! あんじゅちゃん、ことりちゃん……そして、曜ちゃん。勝負よ……!)


それぞれの想いを胸に── 一次審査が始まる。




    *    *    *





司会『それでは一次審査に参りましょう!! お手元のパンフレットにもルールが記載されていると思いますが、グランドフェスティバルではかっこよさ・うつくしさ・かわいさ・かしこさ・たくましさ全てのコンディションを競い合います! オーディエンスの皆様には5つの部門ごとに一票ずつ投じていただきます! ご準備の程は宜しいでしょうか!!』


司会のその言葉に了解の意を示す歓声があがる。


司会『それでは……ビビヨン・バタフリー・アゲハントは赤、チルタリス・ジュナイパー・モクローは白、ギガイアス・ゴローニャ・トリデプスは黄色、ラプラス・カメックス・タマンタは青でお願いします!! まずはかっこよさから──』


司会の声と共に観客席からペンライトがあげられる。


曜(!? あ、圧倒的……!?)

あんじゅ(かっこよさは仕方ないか……)

ことり(やっぱり、そうなるよね……)


参加者全員が心の中でその様子に想いを描く。そんな中で唯一余裕の心持ちなのは──


志満(かっこよさとたくましさは譲らない……!!)


志満だ。

会場は黄色が6割近くを占めいている。

それに続く形で白→青→赤となっている。


司会『それでは、次はうつくしさです!! お願いします──』


会場の色が変わっていく。今度はうつくしさだ。


ことり(……これも予想通りかな)

志満(…………)

曜(うぐぐ……)


またしても、会場はある一色が大半を占めていた。


あんじゅ(──赤。当然よ。わたしはうつくしさで戦ってるんだから……!)


うつくしさ部門を得意とする、あんじゅの独擅場。

先ほどの志満の結果を上回って、7割ほどが赤色で染まっている。

引き離された形でそこに続くのは辛うじて青と白。黄色はほぼない状態だ。


司会『次はかわいさです!! 皆様、ご自分がかわいいと思ったポケモンに投票をお願いします──!』


次はかわいさ。


曜(! 割と多い!)

志満(三つの部門は仕方ないわね……)

あんじゅ(……流石と言ったところかしらね)


かわいさ部門で約半数の得票を得たのは──


ことり(やった! かわいさ部門なら負けないもん!)


ことりカラーの白色が目立っている。

そして、それを追う形で青、赤の得票。再び黄色はほとんどない状態だ。


司会『続いて、かしこさ部門です!! 皆様どうぞ色変えをお願いします!』


かしこさ部門への投票で、変わる会場。


あんじゅ(……! なるほど、そうなるのね)

志満(……確かに、ポケモンのイメージが強く出るから)

ことり(……やっぱりかしこさ部門は苦手だなぁ)


やや驚いた心持ちの出場者たちの中、もっとも多くの支持を得たのは──


曜(……え!? わ、私たち!? ラプラスのかしこいイメージが生きた……!!)


曜だ。会場は青が過半数を占めている。

それに続くのがことりの白、あんじゅの赤、そして本当に僅かに見える志満の黄色。


司会『そして、最後はたくましさ部門です!! お願いします!!』


ラストたくましさ部門。その覇者は──


あんじゅ(……ま、そうなるわね)

ことり(これはさすがに……)

曜(……だよね)


会場を埋め尽くすのは黄色のペンライト。


志満(……よし)


ギガイアス・ゴローニャ・トリデプスとたくましさを重視したポケモンたちで固めている志満の圧勝だ。

7割に及ぶ支持を得ている。

それにかなり引き離される形で1割強ほど、青と白、それに少し劣る形で赤の色が見える。


司会『ありがとうございます!! これにて一次審査を終了し、集計に移りたいと思います!! それではスクリーンに集計結果を表示します!!』


司会の声と共に、ドラムロールが鳴り響き──結果が一気に映し出される。


 《 かっこよさ

   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢                   〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢                〕
   【ギガイアス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢    〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢                  〕

  うつくしさ
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ 〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢                 〕
   【ギガイアス】 〔                       〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢♢♢                〕

  かわいさ
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢                〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢      〕
   【ギガイアス】 〔                       〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢             〕

  かしこさ
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢                 〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢              〕

   【ギガイアス】 〔 ♢                      〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢      〕

  たくましさ
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢                    〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢                   〕
   【ギガイアス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢♢                  〕 》


司会『格部門ごとに得票が偏っていますね。さて、これの総合点の発表に移ります! この点数順に一次審査の順位が決まり、二次審査のアピール順が決まります!! それでは、お願いします!!』


司会の声と共に総合点が映し出される。


 《 総合
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  〕
   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  〕

   【ギガイアス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  〕
    【 ラプラス 】  〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢   〕 》


司会『おーーっと!? これはー!?』


ことり(……!)

志満(全員……!)

あんじゅ(ほぼ──)

曜(横並びだ!?)


司会『参加者4人がほぼ横並びです……!! 一次審査から、接戦になっております!! ……この場合、二次審査のアピール順は、小数点以下の数字で決まることになります!!』


司会の言葉と共にステージが一旦、暗転する。


司会『さあ……二次審査のアピール順を発表します……!! 二次審査最初にアピールをするのは──』


再び始まるドラムロール……そして

── 一筋のスポットライトが、


志満「……よし……!」


志満に浴びせられた。


司会『一次審査を一位で抜けたのはエントリーNo.3! シマ&ギガイアスです!!』


あんじゅ(……く)

曜(し、志満姉が一位抜け……!)

ことり(……これはちょっと予想外かな……!)


司会『2番目以降のアピール順はビビヨン、チルタリス、ラプラスの順になります!!』


曜(く……さすが、グランドフェスティバル……一次審査が最下位なんて初めてだ……っ)


司会『それでは……二次審査、アピールタイムでございます!! 先ほども述べた通り、グランドフェスティバルは全てのコンディションを競い合います! そのため、今大会は全6ターンで1~5ターンの間はランダムでターンごとに部門が決まります!』


司会の説明と共にモニター上でルーレットが回り始める。


司会『さあ、1ターン目の部門は……!!?』


ルーレットが停止する。


曜(うわ……)

ことり(志満ちゃん……持ってるなぁ)

あんじゅ(展開的には最悪かしらね……)


司会『1ターン目はたくましさからスタートです!!』


志満「さあ……行くわよ!! ギガイアス!!」
 「ギガーーイァッ!!!!!!」


二次審査が開始した──。





    *    *    *




1ターン目──たくましさ。


志満「サポートアピール……トリデプス! “ワイドガード”!」
 「リーデプスッ」

  《 Support “ワイドガード” たくましさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡×5 ◆
          トリデプス +♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡
          Total [ ♡♡ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆★★★★】 》


トリデプスがギガイアスごと守る形でガードの体勢を取る。


司会『さあ、最初のアピールは一番手らしく、手堅い防御技です!』


あんじゅ(いや……でも、考えようによっては妨害技が使えない一番手に志満が回ったのは悪くないかもしれないわね)

ことり(むしろ、妨害を警戒しないといけない一番手だと、残りサポート回数を消費してでも守らないといけない……)

曜(ここで志満姉の得意部門を引いたのは逆にラッキーか……)


司会『続くメインアピールは……!?』


志満「ギガイアス、“のろい”」
 「ギーガ……」

 《 “のろい” たくましさ 〔 この次の アピールを 終わりの方に だすことが できる 〕 ♡×15 ④
   ギガイアス④ +♡×15 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆☆☆★★】 》


ギガイアスの体からオーラのようなものが立ち上り、パワーを上昇させる。その代わり目に見えて動きが鈍くなる。


曜(次のターン、後攻に回る技……!)

あんじゅ(しょっぱなから次ターンを最後尾に付けるって、妨害で荒らす気満々じゃない……)

ことり(……でも、妨害特化タイプではある意味定石かな……)


司会『さあ、ギガイアスはパワーを蓄えています! メインアピールのため、いつもよりもたくましさのエキサイトが激しく上昇しているぞー!!』


あんじゅ(……まあ、どっちにしろここまでは読み通り)


あんじゅ「ビビヨン! “たいあたり”よ!!」
 「リィリィッ!!!」

 《 “たいあたり” たくましさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡×20
   ビビヨン +♡×20 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆☆☆☆☆】 》


2番手、ビビヨンが翅をはばたかせながら、空に向かって突進のアピール。

加えて、たくましさのエキサイトは早くも最大値に達する。


あんじゅ「ライブアピール!! 行くわよ!」
 「リィリリリィッ!!!!!」

あんじゅ「“ハードトランスフォーム”!!」
 「リリリィッ!!!!!!」

 《 “ハードトランスフォーム” たくましさ 〔 たくましさ部門 むしタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   ビビヨン +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 》


ビビヨンが鳴き声をあげるとともに、ビビヨンが糸を吐き、自身の周囲に大きな繭を作り出す。

──そして、その繭が光り輝いたかと思った次の瞬間。

繭の内側から、煌くオーラを纏った巨大な翅がステージ上に大きく開かれた。


司会『繭の中から羽化をする瞬間、生命のたくましくを表現した技“ハードトランスフォーム”が決まりました!!! 1ターン目から、素晴らしいライブアピールです!』


曜(試合展開が普通のコンテストとは比べ物にならないほど早い……!)

ことり(あんじゅちゃんなら確実にエキサイトにあわせてくるのは、予想通り……!)


司会『さあ、次はチルタリスのアピールです!』


ことり(でも、わたしのアピールは、妨害やエキサイトの影響がなくても、ポケモンを信じてるから大丈夫……!)


ことり「チルタリス! “みだれづき”!!」
 「チールチルチルッ!!!!!」

 《 “みだれづき” かっこよさ 〔 だすときに よって アピールの 出来具合が いろいろと 変わる 〕 ♡×5~♡×40
   チルタリス +♡×40 ExB+♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【☆★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


チルタリスが素早くクチバシを突き出して、“みだれづき”を繰り出す。


司会『さあ、早くもターン部門以外の技が炸裂しています!! かっこよさ部門の“みだれづき”ですが、これはまた見事な技のキレです!!』


あんじゅ(いきなり博打技……でも、あの技のキレなら、最高得点ね)

曜(次は私たちのターン……!)


曜「行くよ! ラプラス!」
 「キュゥゥ~~~!!!!」


その直後、ラプラスも同じように、長い口を使って、空に向かって連続の突き──“みだれづき”を繰り出す素振り。


曜「“ものまね”!」

 《 “ものまね” かわいさ 〔 1つ前の ポケモンの アピールと 同じくらい 上手くできる 〕 ♡~
   ラプラス +♡×44 ExB+♡ ExP-♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


司会『さあ、ヨウさんはうつくしさ大会にて勝敗を決めた必殺技“ものまね”を一発目に持ってきたぞー!!! アピールが非常にうまく行ったチルタリスに便乗する形で一気に得点1位に躍り出ます!』


曜(滑り出しは悪くない……!)

あんじゅ(ただ、コンテストライブは始まったばかりよ……!)


 《 1ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   ギガイアス④ ♡×20 ♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡                              ]
   ビビヨン     ♡×22 ♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡                     ]
   チルタリス   ♡×41 ♥♥   [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡     ]
   ラプラス     ♡×45 ♥♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡ ] 》


司会『さあ、1ターン目終了です!! 次の部門は──』


再びルーレットが回り出す。


ことり(ここで一番よくないのは妨害がしやすくなる部門……)

あんじゅ(かっこよさが来るとちょっとまずいわね……)

曜(かっこよさ以外……かっこよさ以外……!!)


だが、三人の祈りは虚しく。


司会『次のターンはかっこよさ部門です!』


志満「……ふふ」


かっこよさ部門に決定した。




    *    *    *




2ターン目──かっこよさ。


司会『さあ、2ターン目、アピール一番手はラプラスからです!』


2ターン目は1ターン目とは真逆のアピール順。


曜(……さて、どうする……? 一番手のアピール……エキサイトをあげると、後続にライブアピールの機会を許す可能性が高い)

ことり(そもそも、曜ちゃんのラプラスはかっこよさ技はそんなに得意じゃないはず……)

あんじゅ(……三番手なら、狙いどころかしらね。……ただ)


志満「…………」


曜(志満姉が怖すぎる……)
ことり(志満ちゃんが怖すぎる……)
あんじゅ(志満が怖すぎるわね……)


妨害の主戦場の部門のターンで、最後尾につけた志満は全員警戒せざるを得ない。


曜「サポート! タマンタ、“ワイドガード”!」
 「タマ~~」

  《 Support “ワイドガード” たくましさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡×5 ◆
          タマンタ +♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆★★★★】 》


司会『さあ、このターンも一番最初はサポート枠によるガード技からです!』


曜「ラプラス! “サイコウェーブ”!!」
 「キュゥゥ~~~!!!」

 《 “サイコウェーブ” かしこさ 〔 だすときに よって アピールの 出来具合が いろいろと 変わる 〕 ♡×5~♡×40
   ラプラス◆ +♡×20 ExB+♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡                                            ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【☆★★★★】 Po【☆★★★★】 》


ラプラスから変動する念波が撃ち出される。

アピールの出来は──。


曜(まずまずか……でも、このターンは欲張れないよね)


続いて、チルタリスが動く。


ことり「チルタリス、“いやしのすず”」
 「チルゥ~~」

 《 “いやしのすず” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡×5 ◆
   チルタリス◆ +♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


チルタリスを心地のいい鈴の音が包み込む。


ことり(このターンは徹底して防御でいい……ほぼ確実に妨害が飛んで来る以上、サポート枠の技回数を消費するのももったいないし)


司会『さあ、またしても防御技です! 最後尾に回ったギガイアス、警戒されていますね! 次はビビヨンのターンです!』


あんじゅ(二人とも、かっこよさ技を使わないか……これは読み外したわね。……まあ、結果論。言ってもしょうがないか)

あんじゅ「サポート。バタフリー、“しんぴのまもり”」
 「フリーフリー」

  《 Support “しんぴのまもり” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても 一回 くらいは がまんできる 〕 ♡×10 ◆
          バタフリー +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


神秘のベールが出現し、バタフリーはビビヨンごと守る体勢に入る。

そして、そこから更にメインアピール。


あんじゅ「ビビヨン! “おいかぜ”!」
 「リィリィ!!!!!」

 《 “おいかぜ” かっこよさ 〔 この次の アピールを はじめの方に だすことが できる 〕 ♡×15 ①
   ビビヨン◆① +♡×15 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡ ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【☆☆★★★】 Be【☆☆☆★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ビビヨンが激しく翅をはばたかせ、“おいかぜ”を発生させる。


あんじゅ(どっちにしろ、こっちでもいいエキサイトにあわせられるわ)

曜(次のアピールが一番最初になる技だ……)


司会『さあ、三番目まで全員防御技を使った状態のまま、最後のアピール、ギガイアスの番です!』


志満(妨害はさすがに気取られてる。……でも、これは攻防一体技よ)

志満「サポート! トリデプス! “はかいこうせん”!!」
 「リーーーーーデプスッ!!!!!!!!!!!!!」

  《 Support “はかいこうせん” かっこよさ 〔 みんなの 邪魔を しまくって 次の アピールは 参加 しない 〕 ♡×20 ♥×20
          トリデプス +♡×20 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【☆☆☆★★】 Be【☆☆★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


トリデプスの口から、破壊のエネルギーが一気に撃ち出され、ステージ上を薙ぎ払う。

──が、

 「タマ~~」
 《 ラプラス ◆
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡                                            ] 》

 「チルゥ」
 《 チルタリス ◆
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡ ] 》

 「フリーフリー」
 《 ビビヨン① ◆
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡ ] 》


三匹ともガードを成功させ、妨害を防ぎ切る。


曜(……ほ)

あんじゅ(これは予想通り……)

ことり(でも、“はかいこうせん”の稼ぎはちょっと辛いかな……トリデプスはこれで、残りアピール回数がなくなっちゃったけど、まだゴローニャは何もしてないし)


志満「更にサポート! ゴローニャ、“にほんばれ”!!」
 「ゴローーーニャッ!!!!」

  《 Support “にほんばれ” うつくしさ 〔 会場が 盛り上がっている ほど アピールが 気に入られる 〕 ♡×5~♡×30
          ゴローニャ +♡×12 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【☆☆☆★★】 Be【☆☆☆★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ゴローニャが“にほんばれ”を使ったため、会場に強い日差しが差し込んでくる。


司会『シマさんは早くも三回目のサポートアピールの使用です!!』


志満「ギガイアス!! “ソーラービーム”!!」
 「ギガイァァァァッ!!!!!!!」

 《 “ソーラービーム” かっこよさ 〔 1つ前の ポケモンの アピールの 上手さに 影響される 〕 ♡×15~♡×30
   ギガイアス +♡×30 CB+♡×15 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡                           ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【☆☆☆☆☆】 Be【☆☆☆★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ギガイアスが太陽光を一気に集めて、発射する。

会場内に一閃する“ソーラービーム”に会場は一気に沸き立つ。


司会『直前のゴローニャの“にほんばれ”から、ノータイムでの“ソーラービーム”のコンボ!! 大技で大量に得点を稼ぎ、更にかっこよさのエキサイトがMAXへと達しました!!』


志満「ライブアピール!! “ブレイキングザコスモズ”!!」
 「ギガァァァァイァッ!!!!!!!!!」

 《 “ブレイキングザコスモズ” かっこよさ 〔 かっこよさ部門 いわタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   ギガイアス +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡                     ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 Be【☆☆☆★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ギガイアスが重鈍な体躯で足を打ち鳴らすと、巨大な岩石が足元から競りあがる。

高く持ち上げられた場所から、一気に岩を割り砕く、ライブアピールだ。


司会『さあ、ギガイアス!! 大技コンボに加え“ブレイキングコスモズ”も決めて、大量得点です!!』


 《 2ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   ラプラス    ♡×24 ♥♥♥   [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡                                            ]
   チルタリス  ♡×5 ♥♥    [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡
                                                                                ]

   ビビヨン①  ♡×23 ♥♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡
                                                                                ]
   ギガイアス ♡×70 ♥♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡                      ] 》


司会『コンテストは中盤! 3ターン目に移ります! ルーレットスタート!』


司会の声と共にルーレットが回転を始める。


曜(次は“おいかぜ”の影響であんじゅさんが一番手……)

ことり(残りはうつくしさ、かわいさ、かしこさ……)

志満(ここでここでうつくしさはちょっと不味いかしらね……)

あんじゅ(……何が来てもやることは変わらないけどね)


──そして、ルーレットが止まる。


司会『決定しました!! 3ターン目は──かわいさ部門です!』





    *    *    *





3ターン目──かわいさ。


司会『さあ、アピール順はビビヨン、ギガイアス、ラプラス、チルタリスの順です!』


あんじゅ「サポート! アゲハント! “しんぴのまもり”よ!」
 「ハーント」

  《 Support “しんぴのまもり” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても 一回 くらいは がまんできる 〕 ♡×10 ◆
          アゲハント +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰ ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


今度はアゲハントが守りの技を繰り出す。


あんじゅ(かわいさターンだけど……うつくしさで稼ぐ)


あんじゅ「ビビヨン! “エナジーボール”!!」
 「リィリィーーー」

 《 “エナジーボール” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡×20
   ビビヨン +♡x20 ExB+♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡                                     ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆☆】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


エネルギーの弾を打ち出し、それが空中で爆ぜてうつくしく光る。


あんじゅ「そのまま、ライブアピール!! “グレースインザスカイ”!!」
 「リィリリリィーーー」

 《 “グレースインザスカイ” うつくしさ 〔 うつくしさ部門 ひこうタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   ビビヨン +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡                               ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


間髪いれずにライブアピール。

空中を高速で飛び回りながら、僅かに残った“エナジーボール”の輝きを巻き込んで、会場を煌かせる。


司会『かわいさ部門ですが、ここでビビヨンがうつくしさのライブアピールを決めました!! ポイントを稼ぎます!!』


志満「ギガイアス、“のろい”」
 「ギガイァ」

 《 “のろい” たくましさ 〔 この次の アピールを 終わりの方に だすことが できる 〕 ♡×15 ④
   ギガイアス④ +♡×15 ExB+♡ ExP-♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡     ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【☆★★★★】 》


一方、志満は再び“のろい”を使う。


曜(また、最後尾に……!)

あんじゅ(ホント志満は敵に回すと、厄介ね……動きが制限される)


司会『さあ、ギガイアス再び妨害の準備でしょうか! 次のアピールはラプラスです!』


曜「ラプラス! “みずでっぽう”!」
 「キュゥーーー」

 《 “みずでっぽう” かわいさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡×20
   ラプラス +♡x20 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡                    ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ラプラスが口から水を噴き出す。

少量の水を一生懸命出すラプラスの姿に会場は癒やされる。


曜(ここは手堅くでいい……)


司会『かわいらしいアピールですねぇ……ラプラス堅実に点を稼ぎます。このターン最後のアピールはチルタリスです!』


ことり(タイミング……かみ合った!)


ことり「サポート! モクロー、“からげんき”!」
 「ホホー」

  《 Support “からげんき” かわいさ 〔 1番最後に アピールすると 会場が とても 盛り上がる 〕 ♡×10~♡×30
          モクロー +♡x30 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×15
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡                                                 ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆☆★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ことり「更にサポート! ジュナイパー、“くさむすび”!」
 「ジュナ……!」

  《 Support “くさむすび” かわいさ 〔 みんなの あとで アピールするほど すごい アピールに みせられる 〕 ♡×5~♡x30
          ジュナイパー +♡x30 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×15
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡                               ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆☆☆★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ことり「チルタリス! “なきごえ”!」
 「チルゥゥゥ~~」

 《 “なきごえ” かわいさ 〔 1番最後に アピールすると 会場が とても 盛り上がる 〕 ♡×10~♡x30
   チルタリス +♡x30 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡                                                        ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆☆☆☆】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ことりが立て続けにかわいさ技でアピールをする。

それによってかわいさエキサイトが一気のMAXまで達し──それと同時にことりのメガネックレスが光り輝く。


ことり「いくよー! “らぶりー☆ワンダリング”!」
 「チルゥゥゥゥ~~~」

 《 “らぶりー☆ワンダリング” かわいさ 〔 かわいさ部門 フェアリータイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   チルタリス +♡♡♡♡♡ MEB+♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡                                     ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


あふれ出るフェアリーのオーラと共に、チルタリスが一気に光に包まれ──


 「チルゥゥゥ~~~」


あふれ出るメルヘンなオーラと共に、大きく成長した綿雲を伸ばす。


司会『チルタリス!! ここでメガシンカです!! ライブアピールを成功させ、さらにメガシンカによるボーナスを得てトップへと躍り出ました!』


あんじゅ(タイミングが完璧ね……)

志満(一気にことりちゃんのペース……!)

曜(さ、さすがことりさん……!)

ことり(よっし……! かわいさ部門の間にアピールしないとだからね! 大成功!)


 《 3ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)
   ビビヨン     ♡×32 ♥♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                       ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡
                                                                                   ]
   ギガイアス④ ♡×16 ♥♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                       ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡

                                                                                   ]
   ラプラス     ♡×22 ♥♥    [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                       ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡

                                                                                   ]
   チルタリス   ♡×79 ♥♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                       ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                       ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡                                      ] 》


司会『さあ、4ターン目に移ります! ルーレットスタート!』


4回目のルーレットが始まる。


志満(これで4つ目の部門だから……このターンに出た部門で、残りの最後の部門も決まる)

ことり(ここで組み立てきれるかの勝負……!)


司会『さて、4ターン目は──かしこさ部門です!』


曜(かしこさ……)

あんじゅ(うつくしさは最後……いい流れじゃない)





    *    *    *





4ターン目──かしこさ。


ことり(かしこさは皆、比較的苦手なはず……)

あんじゅ(一次審査は曜のラプラスだったけど……あれも、イメージ先行よね)

曜「…………」


他の参加者がこのターンはうまく流そうと考える中、一人思案顔の曜。


志満(曜ちゃん、何か策があるのかしら……? でも、どっちにしろ最後尾につけてる私が、やることは一つ)


司会『さあ、4ターン目! アピール順番はチルタリス、ビビヨン、ラプラス、ギガイアスです!!』


ことり(ならここで強引に稼ぐのも手だよね……!)


ことり「サポート! モクロー、“にほんばれ”!! ジュナイパー、“こうごうせい”!!」
 「ホホーー」 「ジュナイッ」

  《 Support “にほんばれ” うつくしさ 〔 会場が 盛り上がっている ほど アピールが 気に入られる 〕 ♡×5~♡×30
          モクロー +♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
               ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰                                  ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


  《 Support “こうごうせい” かしこさ 〔 だすときに よって アピールの 出来具合が いろいろと 変わる 〕 ♡×5~♡×40
          ジュナイパー +♡×20 CB+♡×15 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×17
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
               ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡             ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【★★★★★】 Ge【☆★★★★】 Po【★★★★★】 》


モクローが天気を晴れにし、その陽光を使ってジュナイパーが回復をする。


司会『サポートポケモン同士でコンボを決めての点稼ぎです! ただ、“こうごうせい”自体のキレはまずまずと言ったところでしょうか』


ことり「チルタリス! “コットンガード”!」
 「チルッ」

 《 “コットンガード” かわいさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても がまんできる 〕 ♡×5 ◆
   チルタリス◆ +♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡        ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【☆★★★★】 Po【★★★★★】 》


ことり(もちろん、防御もちゃんとする……! 志満ちゃんは絶対妨害してくるもんね!)


あんじゅ「サポート。アゲハント、“あさのひざし”!」
 「ハーントーー!!!!」

  《 Support “あさのひざし” うつくしさ 〔 だすときに よって アピールの 出来具合が いろいろと 変わる 〕 ♡×5~♡×40
          アゲハント +♡×40 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×20
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡        ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


司会『さあ、こちらも部門を無視してのアピール! ですが、先ほどの“こうごうせい”よりも遥かにうまく行っていますね!!』


あんじゅ「さらにサポート! バタフリー“しんぴのまもり”!」
 「フリーフリー」

  《 Support “しんぴのまもり” うつくしさ 〔 ほかの ポケモンに 驚かされても 一回 くらいは がまんできる 〕 ♡×10 ◆
          バタフリー +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡  ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


あんじゅ(防御も固めて──更に、アピール)


あんじゅ「ビビヨン! “ふんじん”!」
 「リィリィ~」

 《 “ふんじん” かしこさ 〔 盛り上がらない アピールだったとき 会場が とても しらけてしまう 〕 ♡×20
   ビビヨン◆ +♡×20 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡                                    ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【☆☆★★★】 Po【★★★★★】 》


ビビヨンが“りんぷん”をばら撒き、“ふんじん”が会場を舞う。

本来はバトルで相手のほのお技を誘って、粉塵爆発によって自滅させる技だ。


司会『ビビヨン、ここでトラップ技です! トラップを仕掛けるのは頭の良い証拠ですね。手堅く得点を得ます!』


曜「…………」


司会『さあ、次はラプラスの番です! お願いします』


曜「タマンタ、“てだすけ”!」
 「タマタマ~~」

  《 Support “てだすけ” かしこさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡×20
          タマンタ +♡×20 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡         ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆★★★★】 Ge【☆☆☆★★】 Po【★★★★★】 》


タマンタが“てだすけ”の体勢に入る。


司会『これまたバトルで役に立つ、かしこい技です!』


あんじゅ(……このタイミングで?)

ことり(わざわざ、サポート回数を消費して“てだすけ”……?)


曜「……カメックス、“あくび”!!」

志満「……え!? “あくび”!?」


志満が驚きの声をあげた。


 「ガメェ~~……」

  《 Support “あくび” かわいさ 〔 このあと アピールする ポケモン みんなを 緊張させる 〕 ♡×10
          カメックス +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡♡♡♡♡
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡   ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【☆☆☆★★】 Po【★★★★★】 》


 「ギガイ……」


司会『おっとぉ!? ギガイアス、“あくび”に眠気を誘われてしまいました!!』


志満(逆に妨害された……!?)

ことり(……緊張狙いで曜ちゃんは防御せずに得点を稼いだ……?)

あんじゅ(いや……それだけじゃない……“あくび”、その手があったか)


曜「ラプラス!! “ゆめくい”!!」
 「キュゥゥゥ~~~」

 《 “ゆめくい” かしこさ 〔 1つ前の ポケモンの アピールと タイプが 同じなら 気に入られる 〕 ♡×10~♡×30
   ラプラス +♡×30 CB+♡×15 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡      ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【☆☆☆☆☆】 Po【★★★★★】 》


ラプラスが夢現な状態のギガイアスから夢を食べてアピールをする。


司会『“あくび”で眠気を誘ってからの“ゆめくい”!! これはかしこいコンボです!! ラプラスここでカメックスとのコンビネーションで後続を緊張させつつコンボを成立させました!!』


志満(し、しかも……)

あんじゅ(それだけじゃない……!)

ことり(かしこさエキサイトがMAXになった……!)


曜「“アブソリュートジニアス”!!!」
 「キュゥゥゥゥゥーーーーー!!!!!!」

 《 “アブソリュートジニアス” かしこさ 〔 かしこさ部門 こおりタイプの ライブアピール 〕 ♡♡♡♡♡
   ラプラス +♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡      ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【★★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【☆☆☆☆☆】⇒【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ラプラスが周囲に冷気を放つ。

氷付いた周囲の空気が氷の結晶となり、会場のライトを反射して、煌いている。


司会『こおりタイプのエネルギーを利用した、光のイリュージョン!! ライブアピールを成功させ、ラプラス大量得点です!! トップを走っていたチルタリスを僅かに追い抜き、トップに躍り出ました!! 一方、ギガイアスは緊張してしまっております……!!』


志満「……っ……。サポート! ゴローニャ!! “だいばくはつ”!!」
 「ゴローーーーニャッ!!!!!!!!」

  《 Support “だいばくはつ” うつくしさ 〔 すごいアピールに なるが このあと 最後まで なにも できなくなる 〕 ♡×40
          ゴローニャ +♡×40 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×20
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
               ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡                                       ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


サポート、ゴローニャは自爆技で得点を稼ぐが、

 「ギガイ……ァ……」
 《 ギガイアス 緊張して しまった
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡                                       ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆★★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


カメックスからの妨害で動けなくなったギガイアスはこのターンは行動できずにターンが終了する。


 《 4ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   チルタリス  ♡×27 ♥♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡         ]
   ビビヨン   ♡×49 ♥♥♥♥ [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡                                     ]

   ラプラス   ♡×69 ♥♥♥♥  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡        ]
   ギガイアス ♡×21 ♥    [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡                                        ] 》


司会『さあ、5ターン目は最後に残った部門! うつくしさです!!』


志満(最後尾につけてるから、まだ妨害は出来るけど……)

ことり(次のうつくしさターンは曜ちゃんから……!!)

あんじゅ(ここで、どうにかライブアピールを決めればまだチャンスはある……!! 曜の出方次第だけど)


曜「…………」





    *    *    *




5ターン目──うつくしさ。


あんじゅ(このターン……)

ことり(ライブアピールを逃がしたら痛い……)

あんじゅ・ことり((ここはうつくしさ部門の技しかない……!))


曜「サポート。カメックス、“しおふき”!!」
 「ガメェーーー!!!!!!」

  《 Support “しおふき” うつくしさ 〔 とても アピール できるが このあと 驚きやすくなる 〕 ♡×30
          カメックス +♡×30 ExB+♡ ExP-♥♥ ──[x0.5]→ ♡×15
          Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

               ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
               ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
               ♡♡♡♡♡¹⁵⁵♡♡♡♡♡¹⁶⁰♡♡♡                                              ] 》

        《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆★★★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


カメックスが上空に向かって潮を噴き出す。


曜(驚きやすくなる技だけど、サポートポケモンなら、それは心配しなくていい……!)

あんじゅ(順当にうつくしさ技を使ってきた……!!)

ことり(アピール順はラプラス、ビビヨン、チルタリス、ギガイアスの順番。あんじゅちゃんは確実にうつくしさ技を選んでるはずだから、曜ちゃんとラプラスがうつくしさ技を使うかどうかで、あんじゅちゃんかわたしのどっちがライブアピール出来るかが決まる……!)


曜「ラプラス……!!」

あんじゅ・ことり「「…………!」」


あんじゅとことりは自分たちの行く末を決める曜の行動に固唾を呑む。


曜「“うずしお”!!」

ことり「……あ」

あんじゅ(!? しまった!?)

 「キュゥーーー!!!!」

 《 “うずしお” うつくしさ 〔 このアピールの後 会場が しばらく 盛り上がらなくなる 〕 ♡×15
   ラプラス +♡×15 ExB+♡♡ ExP-♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁵⁵♡♡♡♡♡¹⁶⁰♡♡♡♡♡¹⁶⁵♡♡♡♡♡¹⁷⁰♡♡♡♡♡¹⁷⁵♡♡♡                            ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


曜(“うずしお”はこの状態のままエキサイトを固定する技!!)

ことり(エキサイトを固定されたら……!)

あんじゅ(このターンはライブアピールは出来ない……!!)

志満(しかも、現状で曜ちゃんはトップだから……)

あんじゅ(逃げ切られる……!!)


司会『さあ、“うずしお”によって、エキサイトが固定されてしまいました!! 次のアピールはビビヨンです!』


あんじゅ「“にほんばれ”!!」
 「リィリィーー」

 《 “にほんばれ” うつくしさ 〔 会場が 盛り上がっている ほど アピールが 気に入られる 〕 ♡×5~♡×30
   ビビヨン +♡×12
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡                     ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


あんじゅ(この時点で曜との得点差は50近い……サポートも残ってない)


ことり「チルタリス! “りゅうのはどう”!!」
 「チリュゥゥゥーーー!!!!!!!!」

 《 “りゅうのはどう” うつくしさ 〔 たくさん アピール できる 〕 ♡×20
   チルタリス +♡×20
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁵⁵♡♡♡♡♡¹⁶⁰♡                                                ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


ことり(曜ちゃんとの点差は17点……最後のアピール次第だけど……)


志満「ギガイアス!! “じわれ”!!」
 「ギーーガイアァッ!!!!!」

 《 “じわれ” たくましさ 〔 アピールが 上手くいった ポケモン みんなを かなり 驚かす 〕 ♡×10 ♥~
   ギガイアス +♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡                           ] 》

 《 エキサイトゲージ Co【★★★★★】 Be【☆☆☆☆★】 Cu【☆☆★★★】 Ge【★★★★★】 Po【★★★★★】 》


 「キュウッ!!!!」
 《 ラプラス -♥♥♥♥♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁵⁵♡♡♡♡♡¹⁶⁰♡♡♡♡♡¹⁶⁵♡♡♡♡♡¹⁷⁰♡                                    ] 》

 「リリリッ!!!!!」
 《 ビビヨン -♥♥♥♥♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡                              ] 》

 「チリュゥッ!?」
 《 チルタリス -♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
   Total [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

        ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
        ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
        ♡                                                             ] 》


志満(妨害は成功したけど……点差がありすぎる……)


 《 5ターン目結果 ([ ]内はこのターンまでに手に入れた♡合計)

   ラプラス    ♡×33 ♥×10 [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁵⁵♡♡♡♡♡¹⁶⁰♡♡♡♡♡¹⁶⁵♡♡♡♡♡¹⁷⁰♡                                     ]
   ビビヨン   ♡×12 ♥×7  [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰

                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡
                                                                                    ]

   チルタリス  ♡×20 ♥×10 [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                      ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰
                      ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡♡♡♡♡¹³⁰♡♡♡♡♡¹³⁵♡♡♡♡♡¹⁴⁰♡♡♡♡♡¹⁴⁵♡♡♡♡♡¹⁵⁰
                      ♡                                                              ]
   ギガイアス ♡×10      [ ♡♡♡♡♡⁵♡♡♡♡♡¹⁰♡♡♡♡♡¹⁵♡♡♡♡♡²⁰♡♡♡♡♡²⁵♡♡♡♡♡³⁰♡♡♡♡♡³⁵♡♡♡♡♡⁴⁰♡♡♡♡♡⁴⁵♡♡♡♡♡⁵⁰
                     ♡♡♡♡♡⁵⁵♡♡♡♡♡⁶⁰♡♡♡♡♡⁶⁵♡♡♡♡♡⁷⁰♡♡♡♡♡⁷⁵♡♡♡♡♡⁸⁰♡♡♡♡♡⁸⁵♡♡♡♡♡⁹⁰♡♡♡♡♡⁹⁵♡♡♡♡♡¹⁰⁰

                     ♡♡♡♡♡¹⁰⁵♡♡♡♡♡¹¹⁰♡♡♡♡♡¹¹⁵♡♡♡♡♡¹²⁰♡♡♡♡♡¹²⁵♡
                                                                                     ] 》


司会『さあ、これにて5ターン目終了です!! 最終ターンは部門なしのアピールです!』


あんじゅ(次の技を手堅く決められたらゲームセット……)

志満(曜ちゃんの最後のアピールは……!?)

ことり「…………」


司会『さあ、最後のターン!! アピール順はラプラス、チルタリス、ビビヨン、ギガイアスです!!』





    *    *    *




──この大会当日まで、ずっと考えていた。

皆が笑顔になれる……そんなコンテストライブにするにはどうすればいいだろうって。


司会『さあ、ヨウさん! 最後のアピールをお願いします!!』


曜「あの、司会のお姉さん」


司会『はい? なんでしょうか?』


曜「最後のアピールの前に……ちょっと、話をしてもいいですか?」

志満「……曜ちゃん?」

あんじゅ「……曜?」


司会『え、話ですか!? え、えーっと……コンテスト参加者がスピーチをするのは禁止……というわけではないですが……基本的にパフォーマンスはポケモンを通して行うので……』


ことり「いいんじゃないかな」


司会『え!?』


ことり「わたしは構わないよ。何か言いたいことがあるんだよね?」

曜「ことりさん……うん、伝えたいことがある」


司会『で、ですが……』


あんじゅ「いいんじゃないかしら」


司会『あんじゅさんまで!?』


志満「参加者全員が了承してるなら、問題はないと思うわ」


司会『シマさんも……まあ、そういうことでしたら』


曜「すいません!! ありがとうございます!!」


私は参加者、皆に礼を言って、ステージ前方に躍り出る。

会場内は私の行動にザワつき、騒然としていた。

コンテストライブの本番中にトレーナーが話をしたいなんて、前代未聞だろう。


曜「皆さん、今日はグランドフェスティバルのステージにお越しいただいて、本当にありがとうございます!!!」


まず挨拶。頭を下げる。

その様子にザワついていた会場は、少しずつ静かになる。


曜「わがままを承知で──皆さんにお願いがあります!!」


 「──お願い……?」「なにかしら……?」


あちこちから困惑した声が聞こえてくる。


曜「──私は……コンテストが大好きなんです!!」


曜「ポケモンが……コーディネーターが……一緒に手を取り合って、魅力的なステージを作るために一緒に頑張る……ポケモンコンテストが大好きなんです!!」


曜「見てるだけで……気持ちがキラキラして、わくわくして、嬉しくて、楽しくて……そんなコンテストに魅せられて、私もステージの上で輝きたくて……ここまで駆け上って来ました!!」


曜「私は……コンテストを見て、心の底から笑顔になれました!!! だから、見てる人たち皆に、その気持ちを知って欲しい。共有したい。私はコンテストライブを最後は皆で、笑顔で締めくくれるステージにしたい……!!」


ことり「……曜ちゃん」

あんじゅ「……ふふ、そう」

志満「……あらあら、若いっていいわねぇ」


曜「だから、最後は……皆で一緒に歌って、踊りませんかーー!?」


 「キュゥ~~~♬」


ラプラスが歌いだす。


曜「皆もーーー……!! 一緒に歌おうーーーーっ!!」


ことり「チルタリス! 歌おっか♪」
 「チル~♫」


チルタリスが綺麗なソプラノでラプラスの歌声にハモる。


あんじゅ「ビビヨン、“ちょうのまい”」
 「リィリィ~~♪」


ビビヨンが綺麗な鳴き声を載せながら、会場を舞い踊る。


志満「ふふ……ギガイアス、“パワージェム”」
 「ギガイァ」


“パワージェム”の輝きが歌に踊りにあわせるように、光り輝く。


会場はその光景に最初はざわついて、動揺していたけど……。


 「トップコーディネーターとそのポケモンたちと一緒に歌えるなんて……素敵じゃない?」
 「あんじゅ様とビビヨンと一緒に踊れるなんて……一生に一度の経験かも」
 「ことりちゃんーー!!! チルタリスー!!!! わたしもいっしょにうたうねー!!!」
 「ガッハッハ!! いいじゃないか、俺たちも一緒に歌って踊ろうじゃないか!!!」


徐々に歌声が、笑顔が広がっていく。

──私はコンテストを、笑顔が溢れる幸せな場所にしたかった。

これが、私がコンテストライブの中に見つけた、道。


司会「ふふ……長年、司会をやってきたけど……こんなコンテストライブ初めてね」


──気付いたら、


ことり「~~~~♪」
 「チル~~~♫」

あんじゅ「~~~♩」
 「リィリィ~~♪」

志満「~~~♬」
 「ガィァーーー」


 「~~~~♩」「~~♬」「~~♫」


参加者も会場中も、みんな声をあわせて、心を一つにして、大合唱をしていた。


曜「みんな……ありがとう……」
 「キュウ~~~~♪」


ラプラスが歌いながら、私に頬ずりをしてくる。


曜「……うん!! みんなーーーー!!! 最後まで、めいっぱいーーーー!! おっきな声でーーーーー!!! 歌おうーーーーーー!!!!!」


──名前も知らない人やポケモンが、集まったこの場所で、ただ歌を、踊りを通して、心を一つにする。

──噫、なんて……なんて、幸せなことなんだろう。

私は、皆と一緒に大合唱をしながら、

幸せを噛み締めながら、

ただ、笑顔で歌い続ける──





    *    *    *




──カランカラン。

ドアを押し開けると、小気味の良いベルの音が自分の来店を知らせる。


 「いらっしゃいませ」


わたしはそのまま、奥に歩いて──カウンター席に腰を降ろす。


ことり「──こんばんは」

マスター「ことりさん……お久しぶりです」

ことり「お久しぶりです♪ ちょっと今日は酔いたい気分なんで……強めのカクテル作ってもらっていいですか?」

マスター「珍しいですね……畏まりました」


マスターにお願いをしてから、横を見ると──


あんじゅ「……ことりがここに来るなんて珍しいわね」


あんじゅちゃんが赤ワインを嗜んでいた。


ことり「そうだねぇ……前に一緒に飲んだのって、結構前かもね。あんじゅちゃんも今日はカクテルじゃないの珍しいね?」

あんじゅ「酔いたい気分だったのよ」

ことり「ふふ……そっか。志満ちゃんは?」

あんじゅ「あー……志満なら、そこ」

ことり「……そこ?」


言われて、あんじゅちゃんの向こう側を見ると、


志満「……うー……」


机に突っ伏している、志満ちゃんの姿があった。


ことり「気付かなかった……」

あんじゅ「ま、もう潰れてテーブルと同化してるからね。しょうがないわ」

ことり「あはは……」

マスター「──どうぞ」


そんな話をしていたら、マスターが出来上がったカクテルを出してくれる。


ことり「あ。ありがとうございます~」


カクテルグラスを持って、あんじゅちゃんの方に差し出す。


あんじゅ「……飲みかけだけど?」

ことり「まあ……細かいことは、今日はもういいかなって」

あんじゅ「……それもそうね」

ことり・あんじゅ「「乾杯」」


二人でグラスを──チンとぶつける。

カクテルを煽ると、アルコールは感じるのに、とにかく飲みやすい。

これは本当にすぐ酔ってしまいそうだ。


あんじゅ「……それで?」

ことり「ん?」

あんじゅ「……新生クイーン様はどうしたの?」

ことり「ああ、うん」


──新生クイーン。

今宵誕生した、この地方の頂点のコーディネーター。


ことり「結果を友達に伝えるために、飛んで行っちゃったよ」

あんじゅ「クイーンになったって言うのに呑気なものね……全く、あの子には驚かされてばっかりよ」

ことり「そうだねぇ……」

あんじゅ「お客さんも巻き込んで皆で歌うなんて……あの大舞台でとんでもないことしてくれちゃって」

ことり「ふふ……わたしもびっくりしちゃった」


──でも。


ことり「楽しかったね……」

あんじゅ「……ええ」

ことり「あれが、曜ちゃんが見たかった景色だったんだね」

あんじゅ「そうね。……ことり」

ことり「ん?」

あんじゅ「コンテストは……まだまだ、進化出来るのね」

ことり「うん。会場に居るみんなが笑顔になれる……そんな舞台が作れると思う」

あんじゅ「……まだまだ、お互いやれることがありそうね」

ことり「ふふ……そうだね。今日は朝まで、コンテストの未来について、語り合おっか♪」

あんじゅ「ええ、そうしましょうか」

志満「ぐぅ……」





    *    *    *




──14番水道上空。

呼び出したキャモメたちに揺られながら空を飛んでいる。


曜「優勝……か」


グランドフェスティバルは終わった。

──私とラプラスの優勝と言う形で。


──最終結果
 《   ポケモン    一次審査 | 二次審査
   【 ビビヨン 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴

              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡                                     ⁵
                                                           ⁶〕

   【チルタリス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴

              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡     ⁵
                                                           ⁶〕


   【ギガイアス】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴

              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                  ⁵
                                                           ⁶〕

  ✿【 ラプラス 】 〔 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ ¹
              ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ | ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ²
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ³
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁴
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ⁵
              ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡                        ⁶〕 》


しかし、今日から晴れて、コンテストクイーンと言われても……。


曜「なんか実感沸かないなぁ……」


気持ちがふわふわとしていて落ち着かなくて……。

でも、この結果を一番大切な友達に直接伝えたくて、飛び出してきてしまった。


曜「……ま、実感なんて、そのうちついてくるか!」


そんなことよりも。

私はボールを手に取る。


曜「皆……ここまで、ついてきてくれてありがとう」


そして、愛おしい気持ちで相棒たちのボールを撫でながら、


曜「皆が居たから……私、ここまで走ってこれたよ」


ホエルオー、ダダリン、カイリキー、タマンタ、カメックス……そして、ラプラス。


曜「それと……これからもよろしくね、皆」


私の言葉に応えるように、ボールたちがカタカタと揺れた。


曜「ふふ……」


その答えが幸せで、笑みが零れた。


曜「それにしても、素敵な景色だったなぁ……」


皆の笑顔が溢れるステージで──私は……ついに、コンテストの頂点に立った。

最高のステージで……。

さて、次はどんなステージにしようかな? どんな気持ちを届けようかな?

そんなことを考え、胸に抱きながら……私はこれからも羽ばたき続けるんだ──




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【14番水道】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    ●  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:166匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt


 曜は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter084 『決戦! クロユリジム!』 【SIDE Chika】





千歌「──ふぅ、ようやく辿り着いたね!」

善子「ええ」


クリスタルレイクを東に抜けて──16番道路を途中で北上し、18番道路を行った先にある街。


千歌「クロユリシティ……!」

善子「……じゃ、私はそろそろ」

千歌「あれ? 善子ちゃんは街には入らないの?」

善子「別に私はこの街に用事とかないし……ってか、この街ジムしかないでしょ?」


言われて、街の方を見てみると、民家こそぽつぽつあるけど、確かに施設らしい施設はポケモンセンター、フレンドリィショップ……そして、ポケモンジムくらいしか見当たらない。


善子「私は千歌が途中まで一緒に行こうって言うから、図鑑埋めのついでについて来てただけよ」

千歌「そっかぁ……じゃあ、ここでお別れだね」

善子「ま……最後に一緒に過ごすのも悪くなかったわ」

千歌「……最後?」


私は首を傾げる。


善子「ここ1ヶ月くらいで地方は一通り回れたからね。私の旅はここで一旦終わりかなって」

千歌「そうなんだ……」

善子「何、暗い顔してんのよ」

千歌「いや、同じ図鑑所有者としてちょっと寂しいなって思って……」

善子「はぁ……別に地方から出ていくわけでもないし。いつでも会えるわよ」

千歌「……うん、それもそうだね。それじゃ──」


私は手を差し出す。


善子「……ん」


善子ちゃんはその手を見て、恥ずかしそうに頬を掻く。


千歌「握手」

善子「わ、わかってるわよ」


善子ちゃんは赤くなりながら、やや乱暴に私の手を握る。


千歌「ふふ……」


最後までちょっぴり恥ずかしがりやで、ぶっきらぼうな善子ちゃんに笑ってしまう。


善子「何笑ってんのよ!」

千歌「なんでもなーい」

善子「もう……何よ……」

千歌「ごめんごめん。……チカね、善子ちゃんが同じ図鑑所有者でよかったって思う」

善子「……褒めても何も出ないわよ」

千歌「そんなんじゃないよ。ホントにそう思ってる」

善子「…………ふーん」


善子ちゃんは目を逸らしながら、


善子「……ありがと。……私も……同じようなこと、思ってるわよ」


そう言ってくれた。


千歌「えへへ、うん!」


私ははにかんで頷いた。


善子「……千歌」

千歌「ん?」

善子「ここまで来たら……ジム制覇、ちゃんとしなさいよね。あんたはこの堕天使ヨハネを倒したトレーナーなんだから」

千歌「……うん!」




    *    *    *





──善子ちゃんからの激励を受け、その後私は……。

辿り着きました。


千歌「……ここが」


最後のジム──クロユリジムに。

私はドアの扉に手を掛けて、


千歌「たのもぉーーー!!!!」


声を張り上げながら、押し開ける。

ジムの奥には、赤紫のロングヘアーに、泣きボクロの印象的な女性が一人。目を瞑って、立っていた。


 「……ようこそ」


彼女は私が来たことに気付いたのか、目を開いて、そう言う。


千歌「ジム戦に来ました!! ウラノホシタウンの千歌です!!」

英玲奈「私は英玲奈。クロユリジムのジムリーダーだ。……とは言っても、ここまで来てバトルする以外に特に喋ることもないだろう」


そう言って英玲奈さんは、バトルスペースに歩いてくる。


英玲奈「バトルスペースに付くといい」

千歌「は、はい!!」


今までのジム戦の中で最もスムーズかもしれない。

すごく助かるけど……。


英玲奈「使用ポケモン5体。シンプルに相手のポケモンを全て戦闘不能にした方が勝ちだ。構わないかい?」

千歌「はい! よろしくお願いします!」

英玲奈「クロユリジム・ジムリーダー『壮烈たるキラーホーネット』 英玲奈。さあ、楽しい戦いにしようじゃないか」


二つのボールがフィールドに放られる。最後のジム戦、開始だ──





    *    *    *




千歌「行くよ、バクフーン!!」
 「バクフーー!!!!!」


こっちの一番手は、いつもの先発バクフーン。


英玲奈「行くぞ、ペンドラー!!」
 「ペンドォォォォ!!!!!!」


英玲奈さんの一匹目は毒々しい色の虫ポケモン、ペンドラー。

 『ペンドラー メガムカデポケモン 高さ:2.5m 重さ:200.5kg
  素早い 動きで 敵を 追い詰め 首のツメで 挟み込み
  身動きを とれなくしてから 猛毒を 与え 攻撃する。
  とても 攻撃的な 性格で とどめを 刺すまで 容赦しない。』


英玲奈「ペンドラー、“ハードローラー”!」
 「ペンドラァァ!!!!!」


バトル開幕と同時にペンドラーは身体を丸め、猛スピードで転がってくる。

直線的な攻撃──受けて立つ!!


千歌「“かえんぐるま”!!」
 「バクフーンッ!!!!!!」


こちらも回転しながら飛び出す。

二匹の回転突進が正面からぶつかって、お互いが弾かれる。

威力は同等……!!


英玲奈「“どくばり”!!」
 「ドラァーー!!!!!!」


弾かれた先で、体勢を立て直したペンドラーが即座に“どくばり”を飛ばしてくる。


千歌「“やきつくす”!!」
 「バクフーーンッ!!!!!」


すかさず、それを迎撃。


 「ドラァーーー!!!!!!」

千歌「!?」


だが、ペンドラーは迎撃の隙を突いて、火炎を迂回しながら猛スピードで距離を詰めてくる。


千歌「は、速い!?」

英玲奈「“ポイズンテール”!!」

 「ペンドラァァーーー!!!!!!」

 「バクフッ!!!!」


巨大な尻尾を横薙ぎに叩き付けられ、バクフーンが吹っ飛ばされた。


千歌「バクフーン!! 大丈夫!?」
 「バクフー!!!」


バクフーンはどうにか受身を取りながら、体勢を整える──が、


 「ドラァァ!!!!!」

千歌「っ!!」


ペンドラーは既に次の攻撃の為に距離を詰め終えていた。


英玲奈「“メガホーン”!!」

 「ドラァァァァ!!!!!!」

 「バクフゥッ!!!!!」


そのまま、頭の角で突き飛ばされ、バクフーンは地面を転がる。


千歌「バ、バクフーン!! 一旦距離を──」

英玲奈「“メガホーン”!!」

 「ペンドラァァァ!!!!!!!」

千歌「!!」


体勢を立て直す暇もなく、


 「バクフーーッ!!!?」


バクフーンに再び“メガホーン”が炸裂する。

──相手が速すぎる……!!

いや、というより……。


千歌「“かそく”してる!?」

英玲奈「……気付いたか、だが気付いても、もうこの速さには追いつけないだろう」


猛スピードでペンドラーが更なる追撃を迫ってくる。

どんどん“かそく”しているせいでもう手が付けられない。

……でも、


千歌「動きは読める!! バクフーン!!」
 「バクフッ!!!!」


逆に速すぎて曲がれないはずだ、


千歌「“ほのおのちかい”!!」
 「バクフーー!!!!!!」


バクフーンが地面を叩くと、目の前に火柱が発生する。

真正面から猛スピード突っ込んでくるなら、壁を作ってしまえばいい、


英玲奈「良い判断だ……だが」

 「ペンドラァァァァ!!!!!!」

千歌「……!!」


ペンドラーは雄叫びをあげながら、火柱の直前で直角に曲がって進路を逸らす。


英玲奈「速くなっても、回避くらい出来る」

千歌「……っ!!」


“ほのおのちかい”を避けて、コの字を描きながら、バクフーンの側面に迫るペンドラー。


英玲奈「終わりだ!! “すてみタックル”!!」

 「ペンドラァァァァァァ!!!!!!!!」


更にスピードを上げ、最後の一撃を叩き込みに来る、ペンドラー。


千歌「──足元!!」
 「バクフッ!!!!!」

英玲奈「!?」


私の指示で、バクフーンが前傾姿勢になる、

──最初から、炎の壁で倒すつもりだったわけじゃない。

一瞬、判断の時間を稼ぎたかっただけだ。


 「ドラァァァァ!!!!!!!」


迫るペンドラーに対して、掬い上げるように、前足を刺し込み、


千歌「“カウンター”!!!」
 「バクフッ!!!!!!」


ペンドラーを背後に向かって放り投げた。


英玲奈「何……!? ペンドラー!」

 「ドラァァァ!!!?」


とてつもないスピードのまま、背後に放り投げられたペンドラーは、

──ズドォン!! と大きな音を上げて、ジムの壁に激突した。


 「ド、ラァァ……」


ペンドラー、戦闘不能だ。


千歌「よしっ! ナイス、バクフーン!!」
 「フーンッ!!!」

英玲奈「……ふむ。ここまで勝ち抜いてきたトレーナーと言うだけはあるようだな。戻れ、ペンドラー」


英玲奈さんはペンドラーをボールに戻す。


英玲奈「次だ、行くぞ! オニシズクモ!」
 「シズ、ク」


二匹目はオニシズクモ。


 『オニシズクモ すいほうポケモン 高さ:1.8m 重さ:82.0kg
  普段は 水の中で 過ごす。 見かけに よらず 面倒見が
  良く 弱く 小さな 仲間を 見つけると 水泡の 中に 入れて
  守る。 水の 中でしか 呼吸できないので 水泡を 被っている。』


頭に大きな水の塊を被っているクモのようなポケモンだ。


英玲奈「オニシズクモ! “かみつく”だ!」
 「シズ、クモ」


指示を受けたオニシズクモが口を開けて、バクフーンに向かって前進してくるが、

さっきのペンドラーとは打って変わって、動きが遅い。


千歌「バクフーン!! “かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーッ!!!!!!!」


そこにすかさず攻撃を叩き込む。

動きの鈍いオニシズクモは一瞬で“かえんほうしゃ”に飲み込まれる。


千歌「……」


いや、いくらなんでもあっけなさすぎる。

警戒してよく見てみると──


 「シズ、クモ」

千歌「!?」


オニシズクモは“かえんほうしゃ”の中を全く怯まずに前進し続けている。


千歌「バクフーン!! 一旦後退!!」
 「バクッ!!!」


攻撃の手を止め、バクフーンは立ち上がり後ろに向かってステップを踏む。


英玲奈「“とびかかる”!!」
 「シズ…」


が、オニシズクモは今度は地面を踏み切って、跳び込んできた。


千歌「わ!? と、跳ぶの!? “だいもんじ”!!」
 「バックフーーーン!!!!!!!」


背中から爆炎を立てながら、バクフーンが最大級の火炎攻撃で迎撃する。

──が、


 「シズ、」


オニシズクモはまるで意に介さず、炎の中を一直線に突っ込んでくる。


千歌「炎が効いてない……!?」
 「バックフーーーーンッ!!!!!!」


バクフーンは雄叫びをあげながら、火力を増すが、

オニシズクモはその火力に押し負けることなく、どんどんこちらに接近してくる。


千歌「ま、まずい……!?」


もう離脱出来る距離感じゃない。


英玲奈「オニシズクモ!!」
 「シズ…」


炎を掻き分けながら、跳び込んで来たオニシズクモが至近距離で頭を振るう。


英玲奈「“アクアブレイク”!!」
 「クモ、」


攻撃はバクフーンに直撃すると共に、一気に水のエネルギーを膨らませ──


千歌「だわぁっ!!?」


とてつもない衝撃波になって、爆発する。


 「バクフッ!!!?」


バクフーンはその攻撃力で、バトルスペースから吹き飛ばされ、トレーナースペースにいた私のすぐ脇をすり抜け、ジムの背後まで吹っ飛ばされてしまった。


千歌「!! バクフーン!!」
 「バ、バクフー……」

千歌「……! 戻って、バクフーン」


戦闘不能だ。バクフーンをボールに戻す。

どう見ても、ただの頭突きだったのに……なんて威力だろう。


英玲奈「……オニシズクモの特性は“すいほう”。炎から受けるダメージを減らし、水の威力を倍増させる」

千歌「……っく……」


私の手持ちにはみずタイプに有利なポケモンが居ない。

……なら、


千歌「目には目をだよね! 水には水で! フローゼル!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルを繰り出す。


千歌「“ハイドロポンプ”!!!」
 「ゼーーールゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」


バクフーンを倒したばかりで、まだ距離の取れていないオニシズクモに向かって、フローゼルから強力な水流が放たれる。


英玲奈「“アクアブレイク”!!」

 「シズ、クモ」


だが、オニシズクモが再び水泡を被った頭を振るうと、


千歌「う、うそ!?」


大きな衝撃と共に、“ハイドロポンプ”を頭突きで消し飛ばす。


英玲奈「“とびかかる”!!」
 「シズ、ク」

千歌「……っ! “こうそくいどう”!!」
 「ゼルゥーー!!!!!」


跳びかかって来るオニシズクモの下をすり抜けるように、フローゼルがダッシュする。

さっきのペンドラーとは打って変わって、動きは遅いのに、こちらの攻撃がうまく通らない。


 「シズ、ク」


オニシズクモはフィールド中央に躍り出たフローゼルの方向へ、のそのそと振り返り、


英玲奈「“アクアブレイク”!!」

千歌「!?」

 「シズ、クモ」


その場で水泡を被った頭を地面に叩き付ける。

水泡から一気にエネルギーがあふれ出し、見た目からは想像の出来ないようなとてつもない衝撃波が放射状に広がり、ジム内の床ごと、巻き込んで──


 「ゼルゥッ!!!」


フローゼルを吹き飛ばした。


千歌「む、むちゃくちゃすぎる!?」


本当に冗談みたいな破壊力だ。

あんな破壊力の技、至近距離で食らったら、みずタイプのフローゼルでもひとたまりもない。


 「ゼ、ゼルゥッ!!!!!」


吹っ飛ばされながらも、どうにか体勢を立て直すフローゼルに向かって。


 「シズ、クモ」


オニシズクモが前進していく。

──どうする……?

動きは遅いが、火力が大きすぎて、避けることもままならない。

かといって、近接戦闘なんてもってのほかだ。


千歌「あの“すいほう”……厄介すぎる」


オニシズクモは頭に被った“すいほう”を自在に操って、攻防をこなしている。

あれがある限り、こちらは手も足も出ない。

……いや、


千歌「なら……“すいほう”を壊せばいいんじゃ」


フィールド中央で迫ってくるオニシズクモと対峙したままのフローゼルと目が逢う。


 「ゼルッ」


フローゼルは私の目を見ただけで、意を汲んでくれたのか、尻尾のスクリューを高速回転させ始める。


千歌「! わかった、やろう!!」

 「ゼルッ!!!!」


フローゼルは私の手持ちの中では、付き合いが一番短い。

海未師匠との修行にも参加してない分、必殺の一撃が使えるかの不安はあったが──


 「ゼルルルルッ!!!!!」


フローゼルの周囲で空気が渦巻く。


千歌「フローゼル!! キミのやる気を尊重するよ!」

 「ゼルルッ!!!!!」

千歌「……ふぅー……」


集中、位置関係を把握しろ。

オニシズクモは私とフローゼルに挟まれた立ち位置のまま、私に背を向けて、フローゼルにゆっくり迫っている。


英玲奈「……何かしようとしているな」


英玲奈さんが私たちの様子に何かを感づいたようだ。


英玲奈「だが、させんぞ……! オニシズクモ!! “アクアブレイク”!!」

 「シズク、モ」


オニシズクモが水泡を地面に向かって振り下ろす。

その瞬間、攻撃に移行しようとして、水泡内の水が一瞬だけ外に向かって溢れ出す──


千歌「──そこ!!! “かまいたち”!!」

 「ゼーールゥッ!!!!!!」


フローゼルの周囲の空気が刃となって飛び出した。


英玲奈「……!」


その刃はオニシズクモの“すいほう”の中に飛び込み、


 「シズ…」


水泡で守られていたオニシズクモの頭部を直接切り裂く。


 「シズ、ズ」

千歌「効いてる……!!」


やっぱり読みは外れてなかった。

攻撃の瞬間、あの水泡は外に向かってエネルギーを放出する。

その一瞬だけは、水泡の膜を通りぬけやすくなるんだ……!


英玲奈「なるほど、考えたな。だが」

 「シズ、クモ……」

英玲奈「威力不足だ」

 「クモ」


オニシズクモはそのまま、頭を振るって、


 「ゼルッ!!!」


“アクアブレイク”を地面に打ち付け、先ほど同様フィールドごと、フローゼルを吹き飛ばす。


千歌「……!!」

 「ゼルッ!!!!」


吹き飛ばされたフローゼルは地面に叩き付けられ、


 「ゼ、ゼル……!!!!」


もはや満身創痍だ。


英玲奈「……さあ、トドメだ、オニシズクモ!!」

 「ク、モ」


オニシズクモが再び、頭を揺らす──が、


 「ク、モモ」


オニシズクモの動きが止まった。


英玲奈「……!? どうした、オニシズクモ!?」

千歌「……ふっふっふ、さっきの“かまいたち”、ただ攻撃するためだけの技じゃないんですよ!」

英玲奈「なに……?」


気付けば、オニシズクモの“すいほう”の中に──


英玲奈「……気泡……まさか!?」

千歌「そう!! フローゼルがオニシズクモの“すいほう”の中に飛び込ませたのは──空気の渦です!!」


渦巻いた空気をそのまま、オニシズクモの“すいほう”に飛び込ませ、その暴れる空気は──


 「シズ、クゥゥモ」


オニシズクモの“すいほう”を内側から、破く……!!


英玲奈「!! オニシズクモ!!」

 「シズ、ク……」


内側から無理矢理“すいほう”の膜を破いた結果、針を刺された風船のように形を維持できず割れてしまう。

“すいほう”を失ったオニシズクモは、


 「シ、ズ……ク」


“すいほう”がなくなって呼吸が出来なくなったのが、その場に引っくり返ってしまった。


英玲奈「……戻れ」

千歌「……よし!!」

 「ゼルゥ……!!!」


二匹目、オニシズクモを突破。


英玲奈「……クワガノン!!」
 「クワガーーー」


英玲奈さんが次のボールを放る。


千歌「フローゼル!! 一旦戻っておいで!!」

 「ゼルッ」


息を切らしたフローゼルが、私の方へと走り出す。

だが、英玲奈さんはそれを許さない。


英玲奈「“エレキネット”!!」
 「クワガーーー」


クワガノンから、電撃を帯びたネットが発射され──


 「ゼ、ゼルゥッ!!!?」


上空で広がって、逃げるフローゼルを捉える。


千歌「フローゼル!! 尻尾のスクリューで吹っ飛ばして!!」

 「ゼ、ゼルゥゥゥゥ!!!!!」


電撃を食らいながらも、どうにか気合いで尻尾を振り回すが──


英玲奈「逃がすか……! クワガノン!」
 「クワガーーー」


クワガノンの突き出された顎の間にバチバチと火花が爆ぜ、エネルギーがチャージされていく。


英玲奈「“でんじほう”!!」
 「クワガーーー!!!!!!」


チャージされたエネルギーは電撃弾となって、ネットの中でもがく、フローゼルに向かって発射された。


 「ゼルゥゥゥゥゥ!!!!!?」

千歌「!! フローゼル!!」


強力な“でんじほう”を食らった、フローゼルは──


 「ゼ、ル……」


健闘虚しく戦闘不能だ。


千歌「……よく頑張ったね、フローゼル。ボールに戻って、休んで」


私はフローゼルをボールに戻した。

次のポケモンを繰り出す前に図鑑を開く。


 『クワガノン くわがたポケモン 高さ:1.5m 重さ:45.0kg
  腹部に 発電器官を 持ち 大アゴに エネルギーを 集め
  凄まじい 電気を 放つ。 アクロバティックな 飛行で 敵を
  撹乱しながら 放つ 電撃ビームは とりポケモンも 圧倒する。』


千歌「クワガノン……でんきタイプのポケモン」


英玲奈さんはここまでの手持ちを見る限り、どうやらむしタイプのジムリーダーのようだ。

だけど、むしタイプでありながらも、バクフーンにはみずタイプ、フローゼルにはでんきタイプと、もう一個のタイプで確実に弱点を突いてきている。

一匹一匹が純粋に強いだけじゃなく、手堅い指示と戦略で戦うトレーナーのようだ。

……さて、でんきタイプを無効化出来るじめんタイプの手持ちは持っていない。

なら、


千歌「ここからは切り札で圧倒する……!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオを繰り出す。そして、頭の右側で自分の髪を留めている“メガバレッタ”に触れる。


千歌「メガシンカ!!」
 「──グゥォ……!!!」


メガバレッタと共にルカリオが光り輝き、メガルカリオに姿を変える。


英玲奈「メガシンカ……!! いいだろう、クワガノン!! “かみなり”だ!!」
 「クワガーーー……」


クワガノンのアゴがバチバチとスパークすると、それに反応するかのようにジムの天井に稲光が走る。

──雷の予兆。


千歌「ルカリオ!」
 「グゥァッ!!!!!」


ルカリオは“ボーンラッシュ”の要領で作り出した、骨状に固めた波導を、

床に突き刺す、

次の瞬間──落ちてきた、雷は、


英玲奈「! なるほど……よく考えている」


──その骨に向かって落ちてくる。


英玲奈「即席の避雷針というわけか! クワガノン、“アクロバット”!!」
 「クワガーーー!!!!!」


今度はクワガノンが高速で飛び周り撹乱するような動きで近付いてくる。


千歌「ルカリオ、落ち着いて」
 「グゥォ」

千歌「落ち着いて……狙いを定めて──」
 「グゥァ」

千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!」

 「クワガッ」


“はどうだん”は飛び回るクワガノンをしっかり捉え、迎撃する。


英玲奈「っく……“でんじほう”!!」
 「クワガーーー!!!!!」


再び撃ち出される強力な“でんじほう”


 「グゥァッ!!!!」


ルカリオは先ほど突きたて、避雷針にした骨を引き抜いて、そのまま上に振り抜く形で──

──バチン! “でんじほう”を上に向かって弾き飛ばす。


英玲奈「“ハサミギロチン”!!」
 「クワガーーーー!!!!!!」


一撃必殺のアゴを構え、飛び出してくる。

──落ち着いて。

攻撃の軌道を読め──


 「クワガーーー!!!!!」

千歌「ルカリオ!! そこ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


開かれたハサミの丁度真ん中──


千歌「“はっけい”!!」
 「グゥォッ」


ルカリオの突き出した腕にぶつかると同時に、クワガノンはハサミを閉じ──る暇もなく、


 「ガーーーーッ!!!!!!」


波導のパワーによって、後ろの方に吹っ飛ばされたのだった。


英玲奈「クワガノン!」
 「クワ、ガーー……」


吹っ飛ばされ、ジムの壁に激突したクワガノン。戦闘不能だ。


英玲奈「……強力だな、メガシンカのパワーは」

千歌「私の自慢の手持ちです!」

英玲奈「……そうか、なら止むを得ない。だが、負けるつもりはない、行くぞシュバルゴ!!」
 「シュバーールゴッ!!!!!」


英玲奈さんの4匹目はシュバルゴ。

 『シュバルゴ きへいポケモン 高さ:1.0m 重さ:33.0kg
  高速で 飛び周り 鋭い 槍で 相手を 突く。 不利な
  相手にも 勇敢に 立ち向かう。 チョボマキから 奪った
  殻で 出来た 鋼鉄の よろいが 全身を ガードする。』


 「シュバルッ!!!!」


シュバルゴは図鑑通り、高速で飛びながら、ルカリオに迫ってくる。


英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「シュバルッ!!!!!」


シュバルゴは両手の槍を突き出しての刺突攻撃。


千歌「ルカリオ! 受け止めて!」
 「グゥォッ!!!!!」


それを真正面から、両の手で受け止める。

二本の槍はルカリオを刺すか刺されるかの競り合いになる。


 「シュバァァルッ!!!!!」


シュバルゴが気合いとパワーで一気に槍を前に突き出すが──


千歌「“アイアンヘッド”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは組み合った状態のまま、頭を使って、シュバルゴに頭突きをかます。


 「シュバッ……!!!」


相手が一瞬怯んだところに、


千歌「“ブレイズキック”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


炎の蹴撃を踵落としの要領で振り下ろす。


英玲奈「“てっぺき”!!」

 「シュバルッ!!!!」


シュバルゴは咄嗟に身体をちぢこませ、鎧で攻撃をガードする。

──ガインッ!! と硬いガードで弾かれ、ルカリオの脚が浮く。

その隙にすかさず、


英玲奈「“ドリルライナー”!!」

 「シュバッ!!!!!」


回転させた一槍がルカリオを襲う。

体勢を崩したルカリオは回避が出来ない。


千歌「ルカリオ!! 掴め!!」
 「グゥォッ!!!!!」

英玲奈「なに!?」


回転しながら、突き出される槍を──無理矢理グリップする。

その勢いでルカリオの身体が回転槍に合わせて、振り回されるが──


 「グゥォッ!!!!!!!!!」


丁度一回転して、自分の足が地面を向くタイミングで無理矢理着地し、震脚しながら、地面を踏みしめる。

無理矢理槍を握力で止めたことによって回転したままの槍を持ったシュバルゴは──


 「シュ、シュバアアア」


今度は彼自身がその回転によって、槍以外の部分が振り回されることになる。


千歌「上に向かって、投げ飛ばせ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


“かいりき”を使って、シュバルゴを無理矢理中空に放り投げる。


 「シュ、シュバァァァ」

英玲奈「シュバルゴ!! 落ち着け!!」


回転によって目を回し、更に空中に放り投げられ、体勢を整える余裕がないシュバルゴに向かって──


千歌「“スカイアッパー”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオが狙いを定めて飛び出し──鎧と鎧の間にアッパーを叩き込んだ。


 「シュ、バアアッ!!!!!」


攻撃がクリーンヒットしたシュバルゴは、回転しながら吹っ飛び、

──ズシン、と重鈍な音を立てながら、地面に墜落した。


英玲奈「……戻れ、シュバルゴ」

千歌「よっし!! ルカリオ!! 二匹抜き!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがクワガノンとシュバルゴを続けて倒したことによって、英玲奈さんの手持ちは残り一匹。


英玲奈「ふふ……君は強いトレーナーだな」


英玲奈さんは負けているのに何故だか楽しそうに笑う。


千歌「え? い、いやそれほどでも……」

英玲奈「なら……私も切り札を使わせてもらおう」

千歌「! 切り札……!」


英玲奈さんがボールを放る。


英玲奈「行くぞ、スピアー!!」
 「ブブブーン」

千歌「スピアー!?」


出てきた、英玲奈さん最後のポケモンはスピアー。

スピアーなら知っている。1番道路でもビードルの巣の近くだと稀に見るポケモンだ。


英玲奈「メガシンカだ!!」
 「ブブブーンッ」

千歌「!!」


英玲奈さんの腕にあるメガブレスレットが光り輝く。

そして、それに呼応するようにスピアーが光に包まれる。

光が晴れると──


 「ブブブーーンッ」


スピアーがメガシンカした姿。

丸っこい身体がスマートになり、硬く鋭いフォルムへと変貌し、

3本だった毒針は5本になる。


 『メガスピアー どくばちポケモン 高さ:1.4m 重さ:40.5kg
  メガシンカに よって 両手と お尻にあった 3本の 毒針が
  5本に なり さらに 強力な 毒素を 出すように なった。
  凶暴性が 更に 増し 相手が 動かなくなるまで 刺しまくる。』


千歌「メガシンカ……!!」

英玲奈「スピアー!! “ミサイルばり”!!」
 「ブブブーンッ」


スピアーがお尻と、真ん中の2本の腕──計3つの針先を撃ち出して飛ばしてくる。


千歌「ルカリオ!! 迎撃!!」
 「グゥォ!!!」


再び骨型波導の得物を手に持って、迎え撃つ。


千歌「“ボーンラッシュ”!!」
 「グォッ!!!!」


武器をブンブンと回転させ、飛んで来る針を撃ち落と──


 「グォァッ!!?」

千歌「!?」


──そうと思い、“ミサイルばり”を得物で弾いた瞬間、

思い描いていたような反射にならず、逆にその攻撃の威力に押され、得物を弾かれる。


千歌「ま、まずっ──!?」


そこに向かって、後続の針がルカリオに襲い掛かってくる。


 「グゥォッ!!!?」

千歌「ル、ルカリオ!!」


避けきれずに“ミサイルばり”が直撃し、吹っ飛ばされるルカリオに向かって、


 「ブブブーンッ」


スピアーが猛スピードで迫る。


 「グゥォッ!!!」


床を転がりながらも咄嗟に受身を取って、体勢を整える。


 「ブブーーーーンッ」


迫るスピアー。

逃げ場はない。


千歌「迎え撃て!! “はっけい”!!」
 「グゥォッ!!!!!」

英玲奈「“とどめばり”!!」
 「ブーーーーンッ」


スピアーがお尻の針を突き出してくる。

ルカリオは波導を腕に集中させ、構える。

──二匹の攻撃が交差した。

二匹がすれ違い、スピアーはルカリオの背後に飛び立ちながら、サマーソルトして英玲奈さんの前方辺りに戻って行く。

一方──


 「グゥ…ォ…」


ルカリオは膝から崩れ落ちた。


千歌「……ルカリオ!!」


咄嗟の指示でうまく相手の急所が見抜けなかった。

結果、逆に急所を晒し、スピアーに一方的に撃ち負けてしまったようだった。


千歌「……ごめんね、ルカリオ……私の判断ミスだ。戻って休んで」


ルカリオをボールに戻す。


英玲奈「……ルカリオが切り札だと言っていたな。切り札不在で私のスピアーを倒せるかな?」

千歌「……行くよ!! ムクホーク!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが私の元から飛び出す。


千歌「“すてみタックル”!!」
 「ピィィィ!!!!!!」


いつも通りムクホークが猛スピードで飛び出す。


英玲奈「スピアー!! “どくづき”!!」
 「ブブーーーンッ!!!!」


前方に突き出されるスピアーの毒針。

一直線に、ムクホークのクチバシとスピアーの毒針がぶつかり合い。

直後──ヒュン、と私のすぐ横を猛スピードで何かが通り過ぎた。


千歌「……え?」


目を見開く。

驚いたまま、振り返ると、


 「ピ、ピィィィ……」


ムクホークが倒れていた。


千歌「……え……え……?」


パワーが自慢のムクホークが、吹っ飛ばされていた。


千歌「完全に力負けした……? しかも、一撃で……?」


一瞬にして数の有利を詰められてしまった。


英玲奈「先ほどルカリオを倒した“とどめばり”という技を覚えているか?」

千歌「“とどめばり”……」

英玲奈「あの技は、相手にトドメをさせたとき、使ったポケモンの攻撃力を爆発的に上昇させる技だ」

千歌「……!」


ただでさえ、想像の何倍も上を行く攻撃力だったのに、それが更に上昇してしまったということだ。

だから、ムクホークのパワーでも歯が立たなかった。


英玲奈「……さあ、次が最後のポケモンだな」

千歌「……」


最後の最後で絶望的なパワーの差を見せ付けられる。

どうする……?

そのとき、

──カタカタと、腰のボールが震える。


千歌「……ルガルガン」


ルガルガンのボールだった。

戦いに出せと言っているのかもしれない。


千歌「……わかった、ルガルガン!! お願い!!」


私はルガルガンを繰り出す。

ボールから飛び出した、ルガルガンは──


 「……」


落ち着いていた。


千歌「ルガルガン……?」


戦闘に出ることを自ら望んでいたことから、勝手に戦意が高揚しているものだと思い込んでいたけど、


 「ワォン」

千歌「……」


ルガルガンは小さく鳴き声をあげながら、こちらに流し目を配らせてくる。

まるで、私に向かって「落ち着け」とでも言わんばかりに、


千歌「……そうだね。焦っても仕方ないもんね」


私は呼吸を落ち着けるために、


千歌「……すぅー…………はぁー…………」


いつものように深呼吸をする。

酸素が全身に巡ってきて、なんだか視界も思考も少しだけ、すっきりしてくる。

──相手の攻撃は猛スピードから繰り出される針による刺突攻撃。

避けるのは実際問題難しい。

なら受け止めるしかない。


英玲奈「……落ち着いているところ、悪いが、攻撃させて貰うぞ……!! “ミサイルばり”!!」
 「ブブブブーンッ!!!!!」


再び、“ミサイルばり”が飛んで来る。

私は目をしっかり開き、

真っ直ぐ指を指す。


千歌「……一発たりとも針を通さない」


飛んで来る針の先端に向かって──


千歌「“ストーンエッジ”!!」
 「ワゥッ!!!!」


ルガルガンが脚を踏み鳴らすと、フィールド上に鋭い岩が飛び出す。

その鋭い岩の頂点は──


英玲奈「……な!?」


“ミサイルばり”の頂点と完璧に頂点同士をぶつけ合い、威力を完璧に殺してみせる。

更に続け様に飛んで来る“ミサイルばり”に対しても、

同様に頂点を完璧にあわせて──


千歌「……これなら、いける!!」

英玲奈「完璧に見切ったということか……!! 面白い……!!」


“ミサイルばり”が通用しないとわかった瞬間、スピアーが突っ込んでくる。


英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「ブブブーンッ!!!!!」


スピアーは今度は両の腕の針で攻撃をしてくる。

……が、


千歌「ルガルガン……」
 「ワォンッ」


ルガルガンは自分の頭頂にある、長く鋭い岩のタテガミを構えて、

──コーンッ!!


英玲奈「……!!」


先ほど同様、完璧に真正面から頂点同士をぶつけると、小気味の良い音がフィールド上に響き渡る。

この音が、無駄なく刺突の威力を相殺できた証拠だ。


英玲奈「まだだ!!」


“ダブルニードル”の二撃目──

──コーンッ!!


千歌「……ふぅー……」


もっとだ──もっと集中しろ。

ルガルガンと息を合わせて、

相手の攻撃の軌道を見切れ、

一発でも食らったらダメなら、一発も食らわなければいいだけだ。


英玲奈「……そんなピンポイントな技が何度も続くわけないだろう……!! “みだれづき”!!」
 「ブブブブーンッ!!!!!」


スピアーが4本の腕を使って連続で突いてくる。

──そのとき、何故だか。

クリアな思考の中で、これからスピアーが攻撃してくる軌道が『わかる気がした』。

──コンッ、コンッ、コンッ、コーンッ!!!


英玲奈「な……!!」


──あぁ、この感じ、思い出した。

パルキアの攻撃を切り裂いたときと同じ感覚だ。

自分の集中が最大限まで高められて、

ポケモンと意識が同調している感じがする。

今なら──


千歌「……失敗する気がしない」

英玲奈「“ダブルニードル”!!」
 「ブーーーンッ!!!!!」


──コーンッ!! コーンッ!!

次の攻撃も綺麗に相殺し、


英玲奈「“とどめばり”!!!」
 「ブーーンッ!!!!!」


咄嗟に飛び出てきた、お尻の針に──


 「ワォン」


ルガルガンが綺麗に、一直線に、岩のタテガミをぶつけると、

──ピシリ、

スピアーのお尻の針にヒビが入る。

そして、そのまま──


 「ブゥ……ンッ……」


針の先から、身体の芯まで一直線に伝わる衝撃を全身に受けたスピアーは……静かに崩れ落ちた。


千歌「…………」

英玲奈「……なん……だと……」

千歌「……勝った」


勝利したという達成感か、安心したのか、急に足腰から力が抜けて、その場にへたり込む。


 「ワォン」


そんな私の元にルガルガンが駆け寄ってくる。


千歌「あはは、大丈夫だよ、ルガルガン。ちょっと安心したら、力が抜けちゃっただけだから……」
 「ワォン」


ルガルガンが身を寄せてくる。私は労うようにルガルガンを撫でてあげる。


英玲奈「……一つ聞きたい」


バトルフィールドを挟んで向かい側から、英玲奈さんがスピアーをボールに戻しながら訊ねて来る。


千歌「?」

英玲奈「どうして、キミは……あんなリスクのある技を何度も決められると思ったんだ? 本当に一発でも攻撃が通れば、こちらの勝ちは揺るぎなかった……」

千歌「どうして……か」

英玲奈「普通だったら……いかに選択肢を拡げて、どう対抗するかを考えるものだと思うのだが……」

千歌「……うーん」


そう言われて悩む。


千歌「……なんか、出来る気がしたから……?」


悩んだ末、私の中で出た結論はそれだった。

私の回答を聞いた英玲奈さんが、


英玲奈「……ふ──ふははははっ!! そうか、出来る気がしたのなら仕方ないな!」


頭に手を当てながら、可笑しそうに笑う。


英玲奈「キミは私が思った以上に強いトレーナーだったようだ」


英玲奈さんはそう言って、私の方に歩いてくる。

そして、上着のポケットから──ソレを取り出して、


英玲奈「千歌。キミをクロユリジム公認トレーナーとして、この──」


へたり込んだままの私の前で膝を折って、手渡してくれる。


英玲奈「──“スティングバッジ”を進呈しよう」

千歌「……はい!」


ハチの針を象ったような意匠のバッジを手渡される。


千歌「……これで、8つ目……!」


ついに、8つ目のバッジを手に入れた。


英玲奈「バッジを全てそろえたトレーナーとしての実力を認め、今後全てのポケモンがキミの言うことを聴くだろう。更に、その実力を認め、ここから東にあるウテナシティ、ポケモンリーグへの挑戦権が与えられる」

千歌「ポケモンリーグ……!」

英玲奈「ウテナシティは18番道路を戻り、16番道路を東に、そこから繋がる17番水道を北上した先、チャンピオンロードを言われる山道を抜けた先だ」

千歌「はい……!!」


ついに師匠が待つ、ポケモンリーグへと行くことが出来る……!


英玲奈「ポケモンリーグで四天王たちと……存分に覇を競うと良い」

千歌「はい!」


こうして、私はついに──オトノキ地方全てのポケモンジムを制覇し、全てのジムバッジを揃え……次の目的地、チャンピオンロードへと赴くのでした。





>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【クロユリシティ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    ●     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.58  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.52 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.57 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.56 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.61 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.54 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:169匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter085 『決戦! ライバル!』 【SIDE Chika】





──17番水道を北上していると……その先に見えてくる。


千歌「山……あれが、チャンピオンロード……!」
 「ゼル」


フローゼルの“なみのり”で移動しながら、やっと次なる目的地に辿り着く。

岸に着いた私はフローゼルをボールに戻しながら、思わず見上げてしまう。


千歌「おっきな山……!」


チャンピオンロードはポケモンリーグに挑むトレーナーたちの最後の壁として立ちはだかる険しい山だと聞いた。

確かに最後の壁と言うのに相応しい迫力がある。


千歌「……よし」


私は一人意気込んで、その山に向かって歩き出した。





    *    *    *





しばらく歩くと、大きな山の麓にぽっかりと大きな口が開けているのが見えてきた。

あの洞窟から入って、山道を抜けていくようだ。

山道らしく砂利の増えてきた道を踏みしめていると──


──pipipipipipipipi!!!!!


千歌「わ!? な、なに!?」


聞き覚えのある大きな音がポケットから聞こえてくる。

これって、確か……。


千歌「図鑑の共鳴音……?」


言いながら図鑑を取り出すと、確かにけたたましい音をあげて鳴っている。


千歌「……図鑑が共鳴音を鳴らしてる……ってことは……!」


私は自然と駆け足になる。

だんだんと近付いてくる洞窟の入口の前には──人影が二つ。


梨子「……やっときたね」

曜「千歌ちゃん、久しぶり!」

千歌「梨子ちゃん! 曜ちゃん!」


他の誰でもない。

私と一緒に図鑑と最初のポケモンを貰った、梨子ちゃんと曜ちゃんの姿だった。


千歌「二人ともどうしてここに!?」

梨子「ふふ、千歌ちゃんが来るのを待ってたんだよね」

曜「うん!」

千歌「私を……?」


首を傾げていてると、


曜「千歌ちゃん……これ見て!」


曜ちゃんがバッグの中から──荘厳な雰囲気のあるリボンを取り出した。


千歌「なんか……すごいリボン……」

梨子「そのリボン、コンテストで優勝してもらえるリボンなんだって」

千歌「コンテスト……優勝……ものすごいリボン……まさか……!」

曜「うん!」


曜ちゃんが嬉しそうに頷く。


曜「私……グランドフェスティバルで優勝したんだよ!」


グランドフェスティバル……確か、一番優れたコーディネーターを決める大会のことだ。前に志満姉がそんなことを言っていた気がする。

つまり──


千歌「曜ちゃん……この地方で一番になっちゃったってこと!?」

曜「えへへ……そうであります! オトノキ地方のコンテストクイーンです!」

千歌「すごい!! ホントにすごいよ、曜ちゃん!!!」


驚きの声をあげながら、思わずぴょんぴょん跳ねてしまう。


曜「うん!! えへへ、千歌ちゃんに早く報告がしたくて……チャンピオンロードの入口で待ってたら来ると思ってたから。……そしたら、梨子ちゃんも居てね」

梨子「──私と同じこと考えてたみたいで、曜ちゃんと二人で千歌ちゃんのこと待ってたの」

千歌「そっかぁ……ここまで来たってことは、梨子ちゃんも……」

梨子「……うん!」


梨子ちゃんはバッグから、バッジケースを取り出し、開いて見せてくれる。

──そこには、輝く8つのバッジ。


梨子「ポケモンジム。全部制覇してきたよ」

千歌「そっか……!!」


……あれ、でも……。


千歌「……? じゃあ、どうしてここで待ってたの? チャンピオンロードを越えないといけないのに……」

梨子「んっとね……それなんだけど」

千歌「?」

梨子「このチャンピオンロードを越えた先には、最後の街ウテナシティがあるって言うのは知ってるよね」

千歌「うん。そこにポケモンリーグがあるんだよね」

梨子「そうだね。そこで四天王と戦って……勝ち抜いたらチャンピオンになれる。……でも、私思ったの」

千歌「?」

梨子「チャンピオンになれるのって……一人だよね」

千歌「……まあ……そうなのかな……?」


チャンピオンってくらいだし……一人しかいない気がする。


梨子「それってつまり……私が先に四天王に挑戦して、仮に勝ち抜けたとしても、すぐに千歌ちゃんも挑戦に来るってことでしょ?」

千歌「……確かに」


お互い四天王に勝てるかはともかく、確かに最終的に行き着くのはチャンピオンの椅子だ。


梨子「だからさ……どうせなら、先にやっちゃってもいいかなって」

千歌「先に……?」

梨子「千歌ちゃんと私……どっちが強いかを」

千歌「……!」


……つまり……。


梨子「勝った方が四天王に挑戦する。……どうかな?」

千歌「……ふふ」

梨子「千歌ちゃん?」

千歌「チャンピオンってことは、この地方で一番強いトレーナーってことだもんね! ここで梨子ちゃんに負けるようじゃ、チャンピオンは名乗れないもん! いいよ! その話乗った!!」

梨子「ふふ、千歌ちゃんならそう言ってくれると思った」

千歌「でも、私。強いよ?」

梨子「あら? 1番道路で私にコテンパンにされたのは誰だったかしら?」

千歌「ふふ……あのときがもう随分昔な気がするね」

梨子「……そうだね」

千歌「……自分で言うのもなんだけど、あのときからは考えられないくらい強くなったよ」

梨子「うん。私も強くなった」


二人で自然とボールを腰から外して、お互いに突きつけるようなポーズを取る。


千歌「今回は負けないよ」
梨子「今回も負けないわ」


ここまで、一緒に旅に出て、ときに競い合い、ときに手を取り合い、一緒に戦った梨子ちゃん──ライバルとの最終戦。


曜「それじゃ、二人の最終戦はこの曜ちゃんが立会人になるよ!」

千歌「うん!」

梨子「お願いね」

曜「ルールはお互い手持ち6匹を自由に使って戦うフリーバトル! そして、バトルフィールドは──」


曜ちゃんが目の前に拡がる、大きな山を示すように、バッと両手を広げる。


曜「このチャンピオンロード全域!」


戦いのステージはこの険しい山道と洞窟、全てだ。


曜「なんでもありのフリーバトル!! 最後に立っていた方が勝ち!! それでいい?」

梨子「ええ、問題ないわ」

千歌「それが一番シンプルだもんね!」

曜「何かあっても私が介抱してあげるから、二人とも全力で戦って大丈夫だからね!」


立会人がいるお陰で本気でぶつかり合える。


曜「ふふ♪ こうして千歌ちゃんと梨子ちゃんが戦って、私が立会人して……なんか、本当に1番道路のときみたいだね」

千歌「あはは、そうかも」

梨子「ふふ、そうだね」


なんだか、なつかしくて三人で顔を見合わせて笑ってしまう。


千歌「梨子ちゃん」

梨子「ん?」

千歌「ホンキで行くよ」

梨子「ええ、もちろん!」

曜「二人とも準備はいい!?」

千歌「うん!」

梨子「ええ!」


改めて、二人でボールを構える。


曜「それじゃ行くよーーー!!! レディーーーーGO!!!!」


曜ちゃんの掛け声と共に──二つのボールが放られた。





    *    *    *




千歌「しいたけ!!」
 「ワォンッ!!!!」

梨子「メブキジカ!!」
 「ブルルッ!!!!!」


お互い最初の一匹目はしいたけとメブキジカ。


梨子「メブキジカ!! “メガホーン”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


先手はメブキジカ。ツノを前に突き出して突進してくる。


千歌「しいたけ!! “ずつき”!!!」
 「ワォンッ!!!!!」


真っ向から打ち合う……!!

しいたけも頭を下げて、前傾で突進する。

──ガスン!!

しいたけの頭と、メブキジカのツノが衝突し、競り合う。


 「ブルル……ッ!!!!!」

 「ワォンッ……!!!!」


梨子「メブキジカ! “タネばくだん”!!」

千歌「!」

 「ブルルッ!!!!!」


組み合った状態のまま、メブキジカが強引に頭を振るうと、ツノからタネが飛び散る。

──ボンボンボンッ!!! と周囲に飛び散ったタネが爆発を起こす。


 「ワゥッ!!!!」


爆発に怯むしいたけに、


 「ブルルッ」


メブキジカはステップを踏むように、背を向ける。


梨子「“とびげり”!!」

千歌「“コットンガード”!!」
 「ワッフッ!!!!!」


後方を強靭な脚力で蹴り上げてくるキック攻撃を、

──ボフンッ

体毛を膨張させて受け止める。


千歌「“かみつく”!!」
 「ワゥッ!!!!」

 「ブルルッ!!!?」


むしろ、そのまま受け止めた脚に噛み付いて反撃する。


梨子「焦らないで! “ふみつけ”!」
 「ブルルッ!!!!!」


メブキジカは噛み付かれたのとは逆の脚で、しいたけを足蹴にする。


 「ワゥッ」


それに怯み、しいたけが後方に押しのけられる。

次の瞬間、メブキジカが再び後ろ足で蹴り上げようとしてきて、


千歌「! しいたけ! また来るよ!」
 「ワッフッ!!!!」


すかさず“かみつく”の体勢。

だが、


 「ブルル」


メブキジカはあげようとしていた脚を下ろし、


千歌「!?」


そのまま、身を翻しながら、ツノを使ってしいたけの横っ面を引っぱたく。


 「ワッフッ!!!?」
千歌「くっ!? “だましうち”!?」


軽くノックバックをしつつ、地面を踏ん張るしいたけに、


 「ブルルッ!!!!」


再び、ツノを突き立ててメブキジカが突進してくる。


梨子「“ウッドホーン”!!」
 「ブルルッ!!!」


──ガスンッ と音を立て、再びメブキジカのツノが突き刺さる。

そのまま体勢を崩した、しいたけにツノを突きたてながら押さえつけてくる。


 「ワゥッ……!!!!!」

千歌「しいたけ!! 頑張って!!」
 「ワゥゥゥ……!!!」


どうにか根性で足腰にパワーを込めながら、少しずつ立ち上がるが、


 「ワッフッ……ッ」


しいたけの脚がガクリと落ちる。


千歌「しいたけ!!」

梨子「ふふ……“ウッドホーン”が効いてるね」

千歌「……っ HPを吸収されてる……っ!」

梨子「まるで、最初のバトルの再現ね……でも、今はこれだけじゃ終わらないわ!! “ギガドレイン”!!」
 「ブルルッ!!!!!」


更に身動きが取れない状態から畳み掛けるように、メブキジカはしいたけからエネルギーを吸収する。


 「ワ、ワゥ……」

千歌「しいたけ……!!」

梨子「さぁ、どうする、千歌ちゃん!?」

千歌「く、くそぉ……打つ手が……」


押さえつけられている上にHPを吸われ続けているせいで反撃が出来ない──


千歌「──なーんちゃって!」

 「……ブルルッ……」
梨子「!?」


メブキジカの膝が急にガクリと落ちる。


梨子「メブキジカ!?」

千歌「しいたけ!! “アイアンテール”!!」
 「ワゥッ……!!!!!」

 「ブルルッ……!!!」


しいたけは思いっきり全身を使って身体を回転させ、尻尾を振るい、今度こそメブキジカを追い払う。


梨子「い、いったい何を……!!」
 「ブルル……ッ」


苦しげな表情をするメブキジカを見て、


梨子「……これは……どく状態……?……まさか、“どくどく”……!!」

千歌「ふふん、正解っ!」


一瞬で見抜いてくるのはさすがだけど、こっちも組み合う形での吸収技に対してなら、とっくに対策が出来てるもんね!

ただ──


 「ワ、ッフ……!!!」


もう随分ダメージを負ってしまった。

そしてそれは、


 「ブルル……!!」


メブキジカも同様。


梨子「“もうどく”のダメージが大きい……」


お互いだらだら戦える状態じゃなくなってきたようだ、

なら……!!


千歌「しいたけ!!」
 「ワゥッ……!!!!」

梨子「メブキジカ!!」
 「ブルル……ッ!!!!!」


どうやら梨子ちゃんも同じ考えのようだ、


千歌・梨子「「“とっしん”!!!」」
 「ワゥッ!!!!!」 「ブルルッ!!!!!」


二匹が同時に走り出す。

小細工なしのただの“とっしん”だ。

──ドズン!!!

と鈍い音を立て、


 「ワゥッ……!!!」

 「ブルルッ……!!!!」


二匹がお互いの攻撃によって、同時に吹っ飛ぶ。


千歌「しいたけ!!」

梨子「メブキジカ!!」


梨子ちゃんともども、吹っ飛んだ自分の手持ちに駆け寄ると、


 「ワゥ……」

 「ブルル……」


二匹は今度こそ体力を使い果たし、気絶してしまった。


曜「しいたけ、メブキジカ戦闘不能!」


すかさず曜ちゃんがジャッジをする。


梨子「最初は相討ち……!」

千歌「……次!! 行くよ、ルガルガン!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!!」

梨子「!!」


私はしいたけをボールに戻し、すかさずルガルガンを繰り出す。


千歌「“ドリルライナー”!!!」
 「ワォォンッ!!!!!!」


ルガルガンが身を捩りながら回転し、突撃する。


梨子「ムーランド!! “かたきうち”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


飛んで来るルガルガンを、繰り出されたムーランドが前足で弾き飛ばす。


 「ワォンッ!!!!!」


弾き飛ばされ、進路をずらされたルガルガンは地面に爪を立てて勢いを殺しながら、ムーランドの向こう側で体勢を整える。


千歌「! そのムーランド、もしかして!」

梨子「ふふ、うん。ドッグランで千歌ちゃんと出会ったときに私を守ってくれてたムーランドよ」

千歌「じゃあ、梨子ちゃん……犬を克服出来たんだね……!」

梨子「うん、お陰様で。だから、ルガルガンも遠慮しなくて大丈夫だからね!」

 「ワォーンッ」


さて、二匹目はどうやらドッグラン出身の同郷対決のようだ。

ルガルガンVSムーランド。


 「ヴォッフ……」


ムーランドは毅然とした態度でどっしりと構えている。


千歌「…………」
 「ワォン」


ルガルガンも戦意は十分だが……。


梨子「……来ないなら、こっちから行くよ!! ムーランド!! “こおりのキバ”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


ムーランドが飛び出してくる。

キバに冷気を帯びさせ、


 「ヴォッフッ!!!!!」


そのままルガルガンに噛み付こうと大きく口を開く。

勢いを載せて突っ込んでくるムーランドに向かって──


梨子「──“カウンター”するつもりだよね」

千歌「!?」


──バレてる!?


梨子「ムーランド!! 地面!!」
 「ヴォッフッ!!!!」


ムーランドはルガルガンに攻撃せず、地面にキバを立てる。

キバを立てた地面に冷気が伝播し、

──バキバキバキ!! と音を立てながら、氷柱が地面から飛び出しながらルガルガンに迫る。


 「ワ、ワォンッ!!!?」


完全に“カウンター”の体勢を取っていたルガルガンは予想外の攻撃に完全に面食らっていた。


 「ワゥッ!!!?」


避ける余裕もなく、突き出る氷柱に突き飛ばされ、宙を浮いたところにすかさず、


梨子「“アイアンヘッド”!!!」
 「ヴォッフッ!!!!!!」


ムーランドの鋼鉄の頭突きが炸裂する。


 「ギャウッ!!!」

千歌「!! ルガルガン!!」


完璧に攻撃が直撃したルガルガンは一直線に洞窟の入口の方に吹っ飛んでいく。


千歌「っく……!!」


私は慌てて、ルガルガンを追いかけるために、洞窟の方へと走り出す。


梨子「ムーランド! 追うよ!」
 「ヴォッフッ!!!!」

曜「バトルフィールドは洞窟の中に……! カイリキー、サポートして!」
 「リキーッ!!!!」





    *    *    *





──洞窟内。

吹っ飛ばされたとは言え、あくまで一直線だ。

すぐにルガルガンを見つけた私は──


千歌「ルガルガン! 奥まで走るよ!」
 「ワォンッ!!!」


ルガルガンと一緒に洞窟内部へと走り出す。


梨子「千歌ちゃん!!? どこまでいくつもり!!?」


洞窟の入口の方から、梨子ちゃんの声が反響して届いてくる。


千歌「バトルフィールドはチャンピオンロード全体だよっ!!」


後方に向かってそう言葉を返す。


梨子「……ルガルガンの得意な岩場に誘い込もうとしても、乗らないわよ!! “ハイパーボイス”!!」
 「ヴォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「だわっ!!!?」
 「ワォッ!!!!!?」


雄叫びのような、爆音が洞窟内を反響しながら、強力な衝撃波となって飛んで来る。

それはまるで後ろから吹く強烈な追い風のように、私たちを更に奥へと吹っ飛ばす。


千歌「……つつっ」


洞窟内の岩肌の上でどうにか受身を取りながら体勢を整え、

入口の方に向かって、


千歌「反撃!! “ストーンエッジ”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」


反撃の岩を飛ばす。


梨子「っく……!!」


洞窟内、視界の悪い場所からの攻撃だからか、命中精度が悪い。

梨子ちゃんやムーランドの足元辺りに鋭い岩は落ちてしまうが、


梨子「“ハイパーボイス”!!」
 「ヴォォォォォォォォ!!!!!!!!!」

千歌「ルガルガン!」
 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンが足を打ち鳴らすと、地面から岩が迫り出してきて、ルガルガンの前方に壁を作る。


梨子「! 岩の盾ってわけね……」


岩場はさっき梨子ちゃんが言ったとおりルガルガンの主戦場だ。

ここなら防御に使える岩が大量にある。

更に……!


千歌「“ストーンエッジ”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」

梨子「っ!!」
 「ヴォッフッ!!!」


今度の岩はムーランドを掠める。

いくら命中率が悪くても、何度も打てば攻撃は当たる。


梨子「っく……地の利を取られてる」

千歌「さあ、梨子ちゃん!! 奥まで来ないと、そのうち直撃するよ!!」

梨子「……仕方ない。……その挑発、乗ってあげるわ!! ムーランド!!」
 「ヴォッフッ!!!!!」


ムーランドと一緒に洞窟内部へと走りこんでくる。


梨子「タダで、有利な場所に飛び込むつもりはないけどね!! “ギガインパクト”!!」
 「ヴォッフッ!!!!!!!!!」


ムーランドは最上級のパワーで周囲の岩を割り砕きながら、迫ってくる。


梨子「早く出てこないと、そこらへんの岩ごと粉砕しちゃうわよ!?」

千歌「言われなくても、出てくるよ!!」
 「ワォンッ!!!!!」

千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォンッ!!!!!!」


私の指示でルガルガンが飛び出す。

ただし、ムーランドの方ではない。


梨子「!? な、何!?」


ルガルガンは猛スピードで洞窟内の天井付近を跳ね回る。

その際に鋭い岩のタテガミで周囲の岩壁を割り砕きながら──


千歌「曜ちゃん!! 巻き込むかもしれないから、注意してね!!」

曜「ヨーソロー!!! 心配ご無用!!」
 「リキーーー!!!!!」


砕かれた大量の岩は、次なる攻撃となって爆走するムーランドに向かって降り注ぐ。


千歌「“いわなだれ”!!」

梨子「!!」


──ガラガラガラッと音を立てながら、大量の岩が降り注いでくる。


 「ヴォォォッフ!!!!!!」


ムーランドは依然、爆走を続けているが、

落ちてくる岩がぶつかる度に速度が落ちている。

でも──


千歌「今更止まれないよね!!」

梨子「……っ」


“ギガインパクト”で突っ込むしかなかったとは言え、技を引っ込めれば反動で動けなくなる。

なら、この瞬間はまたとない好機だ。


 「ワォンッ!!!!!」


天井から地上を走るムーランドに向かって、“アクセルロック”の勢いでルガルガンが飛び掛かる。


 「ヴォッフッ!!!!!!」


背中から、降って来る高速の一撃。

もちろん、避けることが出来るはずもなく、ムーランドの背中に直撃する。


千歌「よっし、そのまま──」

梨子「ムーランドッ!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」


梨子ちゃんが叫んだ瞬間。

ムーランドは身を捩り、勢いを殺さぬまま、強引にルガルガンに前足を引っ掛け、


千歌「なっ!!?」

 「ワォンッ!!!!?」


ルガルガンを無理矢理地面に引き摺り落とす。

二匹は猛スピードで移動したまま、組み合いになったため、もつれ合ったまま、洞窟内を転がっていく。

それと同時に、洞窟内の奥の方でやや視界が開けた広場のような場所が見えてくる。二匹が転がって行くその空間の先に見えるのは……。


千歌「水……!?」


巨大な水溜り。


梨子「! 湖!!」


そこに広がっているのは、巨大な洞窟湖。

洞窟湖の奥の方では、この巨大な水溜りに上流から水を供給している源である滝まで見える。


千歌「って、やば!?」

梨子「ムーランド!! そのまま、湖までもつれ込んで!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」

千歌「ルガルガンは水は苦手なんだって!!! ブレーキ!! ブレーーキ!!!!!」

 「ワォーーーーーンッ!!!!!!!」


ルガルガンは“かたいツメ”を地面に立てながら、ブレーキを掛ける。

──が、間に合わない。

二匹はそのまま、湖へと投げ出される。


千歌「くっそぉっ!!!」


私は二匹を追って、そのまま湖へと身を投げる。


梨子「千歌ちゃん!?」


梨子ちゃんはそんな私の姿を見て、驚いた顔をしていたが──

──ザブンッ!! と音を立てて、湖に潜る。

水中で目を開けると……。


 「ワ、ワォゥ……ッ」

 「ヴォッフッ!!!!」


水中でもなお組み合ったままの二匹。

ただ、ムーランドはやや余裕がある。

一方ルガルガンはジタバタともがきながら、今にも水底に引きずり込まれそうだった。

私は次なるボールを放る──


 「ゼルルル!!!!!!」


飛び出した、フローゼルにハンドシグナルでムーランドを指差して指示を出す。


 「ゼルッ!!!!!」


簡易的な指示を受けてフローゼルが飛び出す──“アクアジェット”!


 「ゼルルルッ!!!!!!!」

 「ヴォフッ!!!?」


水の中でルガルガンを引きずり込もうとしている、ムーランドに突進し引き剥がす。

その隙に、私は溺れかけのルガルガンをボールに戻してから、水上に顔を出す。


千歌「──ぷはっ!!」


水面に顔を出すと──


梨子「──ピジョット!! “エアスラッシュ”!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!!!」

千歌「!?」


背面上方から声が飛んで来る。

反射で咄嗟に後ろに向かってボールを放る。


千歌「ムクホーク!! “オウムがえし”!!」
 「ピィィィィ!!!!!!!」


飛び出したムクホークは即“エアスラッシュ”を真似て使用し、二匹の攻撃が空中でぶつかり合う。


千歌「……っ!!」


その隙に梨子ちゃんの声がした方に振り向くと──

ピジョットの脚に掴まって、湖の上を飛んでいる。

戦いの舞台は水中・空中戦に突入する。

── 一方で、


 「ゼルルルッ!!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!!!」


フローゼルがムーランドに噛み付きながら、滝つぼに向かってムーランドを引っ張っているところだった。


梨子「ムーランド!!? 今行くよ!!」
 「ピジョッ!!!!!」


梨子ちゃんが、ピジョットと一緒に滝つぼの方へ飛び出し──


梨子「フローゼルをどうにかしないと……!! ネオラント、お願い!!」
 「ネォ~~」


滝の方向に向かって、ネオラントを繰り出す。


千歌「ムクホーク! 私たちも追うよ!」
 「ピィィッ!!!!!」


水面近くまで寄ってきてくれたムクホークの脚を掴んで飛び出す。


曜「ラプラス! 滝の方まで距離を取りながら進むよ!」
 「キュゥ~~~」


背後では審判の曜ちゃんが追ってきている。

その周囲には、


 「タマ~~」


タマンタも従えて、もし私たちが溺れたりしたらいつでも助けてくれる準備が整っているようだった。

お陰で全力で戦える……!


梨子「ネオラント! “シグナルビーム”!!」

 「ネォォ~~~」


ネオラントがムーランドを引っ張って移動するフローゼルに向かって、ビームを放ってくる。


 「ゼルッ!!!?」


迫る極彩色のビームに気付いたフローゼルが声をあげる。


千歌「フローゼル!! ムーランドは無理して追い詰めなくていい!! 迎撃優先!! “スピードスター”!!」

 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルは指示を受け、ムーランドを放し、後方に迫る“シグナルビーム”に向かって“スピードスター”を放つ。

両者の攻撃が相殺する中、


 「ヴォッフッ!!!!!」


フローゼルから解放されて、自由になったムーランドが犬掻きで泳ぎながら、フローゼルへと攻撃を仕掛けてくる。


千歌「フローゼル! 後ろ! “スイープビンタ”!!」

 「ゼルルッ!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!?」


フローゼルは背後から跳びかかって来るムーランドの方は振り向かず、尻尾を高速回転させて、迎撃する。

──よし、どうにか前後から迫る相手をうまくいなせてる。

あとは上空のピジョット……!

視線をフローゼルから外し、辺りを見回すが、


千歌「あ、あれ!? 梨子ちゃんは!?」


梨子ちゃんの姿が見当たらない。


 「ピィィィィ!!!!!!!!」


そんな私を見かねてか、ムクホークが鳴き声をあげる。

釣られて、ムクホークの方を見ると──ムクホークの真上から影が迫ってきていた。


千歌「!! 上っ!!?」

梨子「“つばめがえし”!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!!」


梨子ちゃんとピジョットは私がフローゼルの指示に集中してる間にサマーソルトして、直上からの攻撃態勢に移っていた。

そのまま、ムクホークの背中に向かって翼を垂直に立て、


 「ピィィィィッ!!!!!!」


翼で攻撃を仕掛けてくる。

真上からの攻撃にムクホークは一瞬体勢を崩すが──

ムクホークはすぐさま、背面飛びに移行し、猛禽の爪を伸ばす。


梨子「!?」


梨子ちゃんが驚いた表情をする。何故なら、

──ムクホークが伸ばしてきた脚には今さっきまで私が捕まっていたはずだからだ。


梨子「まさか、飛び降りたの!?」

千歌「ムクホーク!!!! “インファイト”!!!」


空中を落下しながら、ムクホークに指示を出す。


 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!」

 「ピ、ピジョォォォォ!!!!!!」


そのまま、猛禽の脚でピジョットの首に掴みかかる。

そして、私は──ザブン!! と再び水中に落下し、


 「──ゼルッ!!!!」


すぐさま、下からフローゼルが私の身体を持ち上げる。


梨子「く……!!」

千歌「ムクホーク!! そのまま、湖まで引き摺り落としちゃえ!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!!」


空中戦は梨子ちゃんを運んでいる分、空中制御が利かないピジョットが不利な状態のまま、湖面に向かって墜落してくる。


千歌「行ける……!!」


そう思った矢先、


 「ネォォッ!!!!」

千歌「!?」


突然、目の前に飛び出してきた、ネオラントが激しく閃光した。


千歌「い゛っ!!!」


至近距離で強烈な発光に目を焼かれ、変な声が漏れる。


千歌「フ、“フラッシュ”……っ」


完全に予想外の方向から攻撃に全く対応が出来なかった。

無理矢理、目を開けるが──

視界がぼやけて、うまく見えない。


 「ピィィィィ!!!!?」

千歌「!? ム、ムクホーク!? どうしたの!?」


上空からムクホークの鳴き声。声がする方に顔を向けはするものの、目を潰されてしまって、何が起こってるのかがわからない。

──いや……ぼやける視界の中で、僅かに七色に光る眩い輝きが見て取れた。


千歌「……!! メガシンカ……!!」


あの輝きは、梨子ちゃんのメガブレスレットと反応して、姿を変えたメガピジョットのものだ……!!


梨子「ピジョット!! “ぼうふう”!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」

 「ピィィィィィィィ!!!!?」

千歌「……っ!!」


激しく空気が渦巻き、強風が吹き荒ぶ音。

そして、その音に飲み込まれるように微かにムクホークの悲鳴のような鳴き声が聞こえてくる。

せっかく、ムクホークを身軽にして有利を取ろうと思ったのに、逆に私の視界を潰され、その隙にメガシンカのパワーで圧倒されてしまった。

──だが、迷ってる暇はない。


 「ヴォッフッ!!!!!」


水音と共に、背後からムーランドの鳴き声。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルに合図を送って、一旦水中に潜る。

……まずは相手の数を減らすのが優先だ。

フローゼルは全身にみずタイプのエネルギーを集束させて──水面に顔を出すムーランドに向かって、水中から一直線に飛び出す。


 「ゼルゥッ!!!!!!」

 「ヴォッフッ!!!!?」


強力な突進攻撃を食らった、ムーランドは水上に打ち上げられる。


千歌「決まった!! “アクアブレイク”!!」
 「ゼルルッ!!!!」


うまく見えては居ないけど、手応えがあった。

数テンポおいて、──ザブン! ザブン! と二回着水音がする。

……2回?


曜「ムーランド、ムクホーク、戦闘不能!」

千歌「……!」


さっき“ぼうふう”に巻き込まれたムクホークは健闘虚しくココでリタイアと言うことのようだ。


梨子「ムーランド!」

曜「二匹は私が回収しておくから、二人はバトルを続行して!」

 「キュゥ~~~」


ラプラスの鳴き声がする。曜ちゃんがしっかり救出をしてくれるらしいので、悪い視界のままムクホークを探してボールに戻さなくていいのは正直助かる。

──が、


 「ゼルルッ!!!!」

千歌「え、何!? フローゼ──わぷっ!?」


フローゼルが急に水中に潜る。フローゼルに掴まったままの私も当然水中に潜ることになる。

ただ、ここまで急な行動。

恐らく、上空からメガピジョットの攻撃が飛んできたと考えて間違いないだろう。

その証拠に音が聞こえ辛い水の中だと言うのに、

──ズドン。ズドン。と何かが強く水面を叩くような音が聞こえてくる。

恐らく、ピジョットの“エアカッター”や“エアスラッシュ”をこっちに向かって飛ばしてきているんだろう。

水中ならどうにか攻撃は届かないが──

でも、ここにはネオラントが居る。

このまま、立ち往生してるのは危険だ。

──なら、


千歌「……!!」


私は滝の音が聞こえる方向を指差す。


 「ゼルッ!!!!」


フローゼルは意図を汲んでくれたのか、そのまま高速で泳ぎだす。

全速前進をしながら、少しずつ水面に近付き。


千歌「──……ぷはっ!!」


私は再び水上に顔を出す。


千歌「滝まで一直線!!! 進めーーー!!!」
 「ゼルルルッ!!!!!」

梨子「逃がさない!! ピジョット!! “たつまき”!!!」
 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


ピジョットが羽ばたくと、周囲の風は渦を撒き、水を巻き上げる“たつまき”に成長する。


 「ゼルッ!!!!」


体感でわかる。巻き上げられる水の流れのせいで、滝壺に向かって一直線に泳ぐフローゼルのスピードが殺されている。

そして、徐々に戻ってきた視界に飛び込んでくるのは──

巨大な“たつまき”。


梨子「これで私の勝ちだよ!! 千歌ちゃん!!」
 「ピジョットォォォォ!!!!!!!!」


上空から飛んで来る、梨子ちゃんの勝利宣言。

絶体絶命。……でも!!


千歌「まだまだぁ!! フローゼル!! “うずしお”!!」
 「ゼルゥッ!!!!!」


フローゼルが尻尾のスクリューを高速回転させ、水を巻き上げながら“うずしお”を発生させる。


梨子「相殺する気!? でも、それじゃ威力が足りないよ!!」


そう言う梨子ちゃん。

確かに真っ向からぶつけるだけじゃ、威力は足りないかもしれない、でも、


千歌「“たつまき”と逆回転だったら!?」

梨子「……!?」


二つの渦はぶつかり合う寸でのところで、お互い急激に進路を逸れて直進し、壁にぶつかって消滅した。


千歌「よし……!!」
 「ゼルッ!!!!!」


再び、フローゼルが全速力で、滝壺に向かって飛び出す。

そして、そのまま滝にぶつかる様に直進し──

そこから、直角に上昇する……!


千歌「“たきのぼり”!!!」
 「ゼルゥッ!!!!!」


フローゼルに掴まったまま、滝を上昇する。

そんな私の視界に再び飛び込んでくるのは、


 「ネォ~~~~」


水面から“とびはねる”で上昇中の私たちに迫ってくるネオラントの姿。


梨子「ネオラント!! “フラッシュ”!!」

 「ネォォ~~~~」


中空に居るまま、再び激しく閃光するネオラント。

私は──


千歌「──二度も同じ技は通用しないよ!!」

梨子「……っく」


もちろん、目を瞑って、閃光に目を潰されるのを防ぐ。


梨子「ピジョット!! “エアスラッシュ”!!」
 「ピジョォォォォ!!!!!!」


飛んで来る、ピジョットの攻撃に、私は腰からボールを放つ。

フローゼルに掴まったまま──


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオを繰り出し、メガバレッタに触れる。


千歌「ルカリオ!! 行くよ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


私は目を瞑ったままだったけど、ルカリオを通して、周囲の波導エネルギーが伝わってくる。

鋭敏になった全身の神経によって、迫る空気の刃が感じ取れる。


千歌「“いあいぎり”!!」
 「グゥォッ!!!!!」

梨子「!!」

千歌「パルキアの攻撃に比べたら、これくらいの攻撃、打ち消すのは簡単だよ!!」

梨子「く……!!」


目を瞑っているお陰で神経が研ぎ澄まされているのも、技の精度にいい影響を及ぼしている。

このまま、一気に上まで──

そう思って、再び目を開く、


 「ネォォ!!!!」


すると、すぐ下方から、ネオラントが急激に迫ってくる。


千歌「!?」


ネオラントの“たきのぼり”は、私とルカリオを運んでいるせいで、速度が低下しているフローゼルに追いついてきている。


梨子「“アクアテール”!!」

 「ネォォォ!!!!!」


ネオラントは滝を登りながら、無理矢理身を捻って、下から尻尾をたたきつけてきた。

荷物を大量に運びながらの“たきのぼり”で余裕のないフローゼルは回避なんて出来るはずもなく。


 「ゼ、ゼルッ!!!?」


下からの強烈な尻尾による殴打が直撃し、


千歌「だわぁっ!!!?」
 「グゥォッ!!!!?」


掴まったままの私とルカリオ共々、滝の外に吹っ飛ばされる。

そして、すぐに浮遊感に襲われる。

──落ちる……!!

そこからは反射だった。

フローゼルをすぐさまボールに戻し、


千歌「ルカリオ!! 跳べぇっ!!!」


私はルカリオにしがみ付いたまま、そう叫んだ。


 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは──


 「ネォォッ!!!!!?」


滝を登っている、ネオラントを無理矢理踏みつけて、


梨子「う、嘘!?」


その反動で一気に跳躍した。


──ダン!!!

着地の音が洞窟内に響き渡る。


千歌「はぁ……はぁ……た、助かった……」
 「グゥォッ」


私は逆さまの視界のまま、下方を飛んでいる梨子ちゃんたちを見つめる。

──そう、一気に跳躍したルカリオは、波導の力により上昇させたパワーで、無理矢理爪を立て、天井に着地したのだ。


梨子「ネオラントは!!?」


一方梨子ちゃんはこっちではなく、滝の方に視線を向けている。


曜「大丈夫だよー!! 戦闘不能だけど、カメックスが救出したからー!!」
 「ガーーメッ!!!!」


眼下ではカメックスとラプラスが私たちのポケモンを運びながら、“たきのぼり”をしているところだった。


千歌「……ふぅ」


とりあえず、一息。


千歌「……とりあえず、フローゼルもムクホークも戦闘不能……水上戦はもう出来ない……! 一旦水のない場所まで距離を取るよ!」
 「グゥォッ!!!」

千歌「“しんそく”!!」


ルカリオに掴まったまま、洞窟を出口に向かって先行する。





    *    *    *





千歌「よし……ここまで来れば大丈夫! ありがと、ルカリオ」
 「グゥォッ」


私はしがみ付いていた、ルカリオから離れ、洞窟内を走りだす。

戦闘しながらかなり進んできたせいか、視界の先の方に僅かに光が見えている。


千歌「出口が近い……」


ルカリオと併走しながら、呟いていると、

──背後から風を切る音が聞こえてくる。


千歌「! ……来たよ!」
 「グゥォッ!!!!」


もう周囲に湖はない。

安定した地形で迎え撃つ……!!


 「ピジョットォォォォォォォ!!!!!」
梨子「“ブレイブバード”!!」


空を切りながら飛んでいるピジョットが一気に加速する。

その際、梨子ちゃんはピジョットの脚から手を放して、


梨子「……やぁ!!」


声をあげながら、受身を取って地面に着地する。

ここからはメガシンカポケモン同士の真っ向勝負だ。


千歌「受けて立つ!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」

 「ピジョットォォォォォ!!!!!!!」


突撃してくる、ピジョットの嘴を──


 「グゥォォォォォッ!!!!!!」

梨子「!? 受け止めた!?」


真剣白刃取りでもするかのように、両手で挟み込み、受け止める。

ただ、勢いを完全に殺しきることは出来ず、ピジョットと共に後方に後ずさっていく。


千歌「ルカリオ!! “ともえなげ”!!」
 「グゥォッ!!!!」

 「ピジョッ!!!?」


その勢いを利用したまま、後方に投げ飛ばす。


梨子「“オウムがえし”っ!!!」

 「ピジョォォォッ!!!!!!」


だが、ピジョットは投げ飛ばされる瞬間に、無理矢理嘴でルカリオの手に噛み付き、


 「グォッ!!!?」

千歌「!!?」


こちらも勢いを利用して、逆にルカリオを天井に向かって投げ飛ばす。

──ダン!! と再び天井に着地したルカリオは、

間髪いれずにピジョットに向かって飛び出す。

だが、梨子ちゃんとピジョットの判断も早かった。


梨子「“ぼうふう”!!!!」

 「ピジョォォォォォ!!!!!!!」


すぐさま地上で体勢を立て直し、“ぼうふう”を起こす。


 「グゥォッ!!!!?」


ルカリオは“ぼうふう”に飲み込まれ、地上に辿り着くことなく吹き飛ばされる。


梨子「はぁ……!! はぁ……!!」


度重なる、激しい攻防に梨子ちゃんが息を切らせる。

ピジョットの“ぼうふう”は渦を巻き、再び大きな“たつまき”となって、天井に向かって巻き上がる。


梨子「ここまで、やれば……ルカリオ……でも……!!」

千歌「まだだぁ!!」

梨子「!!」


土煙を巻き上げる薄茶色の“たつまき”の中から青白い光が漏れ出てくる。


千歌「ルカリオ!! “たつまき”に逆らわなくていい!! その動きに波導を合わせるんだ!!」

 「グゥゥゥゥゥオッ!!!!!!!!!」


私の言葉と共に、“ぼうふう”から生み出された“たつまき”は──波導の嵐となって、一気に膨張する。


梨子「!? きゃ、きゃああああああああ!!!!?」

千歌「だわあああああああぁぁっ!!!?」


辺りを巻き込み、膨れ上がった波導の嵐に巻き込まれ、梨子ちゃん共々吹っ飛ばされる。


千歌「……いたた」


あまりの衝撃に地面を転がるハメになった。

だが、すぐにハッとなって顔をあげる。


千歌「ルカリオは!?」


あげた視線の先では、


 「グゥ……ォ」

 「ピ、ピジョ……」


巨大な波導の嵐に巻き込まれ戦闘不能になったピジョットと、

直撃した“ぼうふう”の威力を殺しきれず、戦闘不能になったルカリオの姿があった。


梨子「ピ、ピジョット……!」

千歌「相討ち……!」


数テンポ遅れて──


曜「ル、ルカリオ……!! ピジョット……!! せ、戦闘不能……!! ふ、二人とも……は、はやすぎ……」


曜ちゃんが息を切らせながら追いついてくる。


千歌「戻れ、ルカリオ」

梨子「戻って、ピジョット」


二人して、メガシンカできるエースをボールに戻す。

さて……私の残る手持ちは一体のみ、


千歌「……行くよ!! バクフーン!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」


一方、梨子ちゃんは、


梨子「メガニウム! チェリム! 行くよ!!」
 「ガニュゥーーー」「チェリリッ」


メガニウムとチェリムの二匹。


梨子「チェリム! “グラスフィールド”!!」
 「チェリ」


周囲に草が生い茂る。

チェリムはサポート重視のポケモンだ、放っておくのは不味い。


千歌「バクフーン! “かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーー!!!!!!」


吐き出される火炎。相手が二匹残ってるのは痛手だが、幸い相性はいい。

──だが、


梨子「チェリム!! “ころがる”!!」
 「チェリ」

千歌「うぇ!?」


チェリムは予想の反して突っ込んできた。

炎に全身を炙られながらも、猛スピードの“ころがる”によって強引に炎を突っ切ってくる。

完全に意表を突かれた私は完全に動揺してしまい、


 「バクフッ!!!?」


指示が間に合わず、バクフーンに“ころがる”が直撃してしまう。

猛スピードの突撃に、派手に後ろに吹っ飛ばされ地面を転がる。


千歌「バ、バクフーン!!」

梨子「メガニウム!!!」

千歌「!!」


そこに更に追撃を仕掛けようと、走りこんでくるメガニウム。

全身を使って、シンプルな突撃。


梨子「“おんがえし”!!!」

 「ガッニュゥゥゥ!!!!!!!」

 「バクフーーーッ!!!!!?」


シンプルだけど、とてつもない威力の突進攻撃。


千歌「バ、バクフーンッ!!?」


苛烈な突進により、一気に洞窟の外まで吹っ飛ばされる。


千歌「く、くそぉ……!!」


急いでそれを追いかけ、私も外へ向かって走り出す。

視界が開け、晴天の空の下に飛び出した。

そして、背後からも足音。

梨子ちゃんたちも外に出てくる。

すかさず、


梨子「チェリム!! “にほんばれ”!!」
 「チェリリーーーー!!!!!!!」


チェリムが天候を快晴にする。

それと共にチェリムの“フラワーギフト”が花開き、花びらが舞い狂う。


梨子「メガニウム!!! “はなふぶき”!!!」
 「ガニュゥゥゥゥゥーーー!!!!!!!」


迫る、花びらたち。


千歌「……バクフーン!!!」
 「バクフーーーー!!!!!!!」


私がバクフーンの元に辿り着いたと同時に発した呼びかけに反応するように、バクフーンが起き上がりながら、一気に熱波を発する。


梨子「……!?」


背中の炎をメラメラと滾らせ、飛んで来る花びらたちを近付く傍から、焼き尽くしていく。


千歌「天候が晴れになって有利になるのは梨子ちゃんだけじゃないよ!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!」


快晴の日差しはバクフーンの炎の威力も向上させる。

バクフーンはそのまま、口に火炎を溢れさせ──


千歌「“やきつくす”!!!」
 「バクフーーーーーッ!!!!!!!!」


苛烈な勢いの炎を吐き出す。


梨子「チェリム!! “フラワーガード”!!」
 「チェリリッ!!!!!」


舞い踊る花びらたちがチェリムたちを守ろうと寄って来るが──


 「チェ、チェリーーー」


その花びらたちを意にも介せず、火炎の勢いは止まらない。


梨子「……っ!!」

 「……チェリーーー!!!!」

梨子「!? チェリム!?」


そのとき、突然チェリムが炎に向かって飛び出した。梨子ちゃんの驚き様からして、恐らく独断。

大量の花びらを舞い狂わせながらの死に物狂いの突撃──“はなびらのまい”だ……!!

その甲斐あってか、バクフーンの火炎は、大量の花びらと──チェリムを焼き尽くすだけに至り。


 「チェ、チェリ……」

 「ガ、ガニュゥ!!」


メガニウムは巻き込まれずに済む。


梨子「チェリム……」

曜「チェリム! 戦闘不能!!」

梨子「……ありがとう、戻って」


梨子ちゃんは身を賭して仲間を守ったチェリムを労いながらボールに戻す。


千歌「これでお互い残ってるのは……!!」

梨子「一匹ずつ……!」

 「バクフーーーーッ──!!!!!!!」


再びバクフーンが背中の炎を滾らせながら、攻撃態勢に移る。

晴れが後押ししてくれる中、全てを焼き尽くす業炎──“れんごく”を撃つ体勢だ。


梨子「……千歌ちゃん」

千歌「?」

梨子「グレイブ団騒動のあと、私は千歌ちゃんより早く旅に戻ったでしょ」

千歌「うん」

梨子「先に旅に戻った私は……今日、この日のために……技を覚えてきた」

千歌「……技……?」

梨子「千歌ちゃんの“いあいぎり”みたいなのとは違うけど……! 私なりに、メガニウムと一緒に習得した、最強の技、見せるね──」
 「ガニュゥッ……!!!!」


梨子ちゃんが言うと、メガニウムから気迫があふれ出てくる。


千歌「……!」


何か仕掛けてくる。

でも……。


千歌「全部炎で吹き飛ばす!! バクフーン!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」

千歌「“れんごく”!!!」
 「バクフーーーーーンッ!!!!!!!」


灼熱の業炎がバクフーンから、噴き出す。

周囲の生い茂る草木を軽く撫でるだけで消し炭にする、最大級の火力。

──対するメガニウム。


梨子「行くよ、メガニウム!! 究極技!!」
 「ガニュゥッ!!!!!!!!」

梨子「“ハードプラント”!!!」
 「ガッニュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!」


メガニウムが雄叫びをあげると──


千歌「なっ!?」


巨大な樹木やとてつもない太さの蔦やら、巨大な花やらが、とてつもない勢いで地面から飛び出してくる。

その植物たちは、全てを焼き尽くすはずの業炎もものともせず迫ってくる。


千歌「“れんごく”が押し負けてる!?」

梨子「これが、私たちがこの旅で習得した、最強の技!! 千歌ちゃん……勝負よ!!!」


炎すらも飲み込みながら急激に成長し、襲い掛かってくる巨大な植物たちは、


 「バクフッ……!!!!!」


一瞬でバクフーンと私の周囲を取り囲む。


千歌「っく!? “だいもんじ”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!」


大の字に広がる業火の炎を至近距離でぶつけるが……。


千歌「う、うそ!? 全く、焼ききれない!?」


今も尚どんどんとその幹を太く大きく成長させていく目の前の植物は、相性なんておかまいなしにどんどん迫ってくる。

太い幹の所為で、炎はぶつかった傍から分散して掻き消されてしまう。


梨子「くさタイプの究極奥義だよ!! 簡単に焼き尽くされたりしない!!」

千歌「く……!!」


──どうする!?

炎で攻撃しても、植物が壁のようになって、防がれてしまう。


千歌「……いや!! 幹の外だからだ!! “ほのおのパンチ”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!」


迫ってくる、樹木にバクフーンが炎拳を突き立てる。拳はすぐに成長する植物たちに飲み込まれるが──


千歌「爆ぜろーーーー!!!!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!!!!!」


突き立てた拳の爆炎を植物の内部で一気に膨張させる。

すると──

大きな幹は内側から膨張し、爆炎を噴き出しながら粉砕される。


梨子「!!?」


それによって、出来た穴の向こうで梨子ちゃんが驚いている顔が見える。

そんな穴も、次から次へと地面から飛び出してくる、大自然の力によって塞がされて行くが──


千歌「ぶっといのを吹っ飛ばせたなら……OK!!」
 「バクフーーーーーッ!!!!!!!!」


バクフーンの口元に火炎がメラメラと漏れ出す。

炎はただ吹きつけるだけじゃ、簡単に広がって、掻き消される。

……なら、


千歌「一点を貫くように……炎熱でぶち抜く……!!!」


もう大量の蔦や草で埋まり、向こう側が見えなくなってしまったが……植物の壁の中では、確実に弱くなっているその部位に向かって──


千歌「“かえんほうしゃ”!!!!!!」
 「バクフーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの雄叫びとともに──直進する爆熱が飛び出した。

爆熱は目の前の植物の壁を一気になぎ払い──


梨子「……!! まだ!!!」
 「ガニュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


その進路を防ぐように、伸びてくる草木を蔦を樹木を焼ききりながら──


千歌「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

梨子「……!!」


 「──ガニュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!?」


“ハードプラント”の先、大技の反動で動くことの出来ない、メガニウムに、

──直撃した。


千歌「……はぁ……!! ……はぁ……!!」


焼け焦げる、植物の壁の向こう側で、


 「ガ…ニュゥ…」


メガニウムがゆっくりと崩れ落ちる姿が見えた。





    *    *    *




曜「……メガニウム戦闘不能。これによって、梨子ちゃんの手持ちは全員戦闘不能。よって──」


ジャッジが下される。


曜「千歌ちゃんの勝利!!」

千歌「……勝ったぁ……!!!」
 「バクフーーーーーンッ!!!!!!!!」


思わず拳を握り締める。


梨子「あはは……負けちゃった」


梨子ちゃんはそう言ってヘタリ込む。


梨子「自慢の技だったんだけどなぁ」

千歌「……正直、ヤバイと思ったよ」

梨子「土壇場で攻略法を思いついたの?」

千歌「うん。いくら外側が丈夫で炎すら通さなかったとしても、根本的には植物だから……内側からの爆炎には耐えられないかなって」

梨子「……あはは、やっぱり千歌ちゃんには敵わないなぁ」


梨子ちゃんは苦笑する。


梨子「……でも、千歌ちゃんとのバトル……楽しかったよ」

千歌「えへへ……私も、梨子ちゃんとのバトル。最高に楽しかった」

梨子「なんか……負けたけど、すっきりしちゃった……」

曜「二人とも全力で戦ったからかな」

梨子「ふふ、そうかも」


地面にペタンと座ったまま笑う梨子ちゃんに近付いて。


千歌「梨子ちゃん」


手を差し伸べる。


梨子「……うん」


梨子ちゃんがその手を取る。

私が引っ張りあげるようにして、梨子ちゃんが立ち上がる。

そして──ぎゅっと、硬い握手。


梨子「千歌ちゃん……」

千歌「ん?」

梨子「あなたがライバルで、友達で……本当によかった」

千歌「……えへへ! 私も! 梨子ちゃんがライバルで、友達で、本当によかった!」

曜「え、ずるい! 私は!?」

梨子「もちろん、曜ちゃんもだよ!」

千歌「うん!」


笑い合いながら、三人で抱き合う。


梨子「……千歌ちゃん、ポケモンリーグ、頑張ってね」

曜「ここまで来たら、チャンピオンだよ!」

千歌「……うん! 任せて!! 私、絶対四天王を全員突破して、チャンピオンになってくるから!!」

梨子・曜「「うん!」」


照りつける快晴の下で、抱き合いながら笑う、三人のトレーナー。

一緒の研究所から、一緒に始まった私たちの戦いはこれにて決着。

最高のライバルで有り、最高の友と言える関係になった梨子ちゃんとの戦いに制した私は──いよいよ、ポケモンリーグへと進んでいきます。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【チャンピオンロード】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂●|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.61  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.55 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.57 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.62 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.57 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:169匹 捕まえた数:15匹

 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.61 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.54 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.58 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.51 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.56 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.53 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:146匹 捕まえた数:14匹

 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.53 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.42 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:166匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt


 千歌と 梨子と 曜は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter086 『決戦! 四天王! ①』





千歌「──……さて」
 「バクフ」


チャンピオンロードを抜け、梨子ちゃん、曜ちゃんと別れて、歩くこと数十分。


千歌「ついに……辿り着いたね」
 「バクフー」


旅の終着点。


千歌「ウテナシティ、ポケモンリーグ……!」


ウテナシティ自体は正直、街と言えるのか怪しいほど、建物が少なく、ここまでにあったのはポケモンセンターだけだった。

ポケモンセンターで回復を済ませ、その先にある大きな建物──ポケモンリーグまで一直線に歩いてきた。

ポケモンリーグの建物は建物と言うよりは、山の中にくりぬかれて出来ているような形をしていた。

大きなモンスターボールを模した意匠の入口以外は岩石に覆われ、その先には山肌が続いている。

更にその山のずーっと先に、高い塔のようなものが見える。

その様相をぼけーっと眺めているわけだけど……。


千歌「……って、ここで立ち往生してても仕方ないよね」
 「バクフ」

千歌「行こう……!」
 「バク」


バクフーンを一旦ボールに戻し、建物に入ろうとすると……。

その入口に黒い衣装に身を包んだ、ショートボブのベージュの髪の女性が立っていた。恐らくポケモンリーグの門番だろう。

彼女は私の姿を認めると、


門番「ここはポケモンリーグです。これより先はオトノキ地方の全てのジムバッジを揃えた人しか通る資格がありません」


そう告げてくる。

私はごそごそとバッグの中からバッジケースを取り出して、開いてみせる。


門番「……“コメットバッジ”、“ファームバッジ”、“スマイルバッジ”、“ハミングバッジ”、“クラウンバッジ”、“ジュエリーバッジ”、“フォーチュンバッジ”、“スティングバッジ”……。確かに。オトノキ地方のジムバッジ全てを揃えていますね」

千歌「はい」

門番「……ポケモンリーグは待ち構える四天王全員に勝つか負けるまで外に出ることは出来ません。それをわかった上で、この先に進みますか?」

千歌「はい!」

門番「……わかりました。では、通ってください。……御武運を」


ペコリと頭を下げる女性の横をすり抜けて建物の中に足を踏み入れると、

──ゴゴゴ……。

と、音を立てて背後の扉が硬く閉ざされた。


千歌「……ここが、ポケモンリーグ……」


辺りを見回すと、球形に繰り抜かれた空間の中央に真円の足場。

更にその足場の丁度真ん中にエレベーターのようなものが存在し、さらに円状の足場の上半分からは熊手のように橋が伸びていて、それぞれその先に扉が見える。


千歌「……このエレベーターは」


まず中央のエレベーターに近付いてみるが……全く反応はない。


千歌「……エレベーターは動かないみたい……。となると……」


私の視線は四つの扉の方に向く。


千歌「……あの先にそれぞれ四天王がいるってことかな……」


特に順番の指定とかはないようだ。

よく見てみると、扉の上になにやらマークがある。

左から順にピンク色をした光が羽を広げたようなマーク、水色の氷の結晶のようなマーク、黒色の竜のようなマーク、そして白色の刃のようなマークだ。


千歌「……って言っても何も情報もないし……全員に勝たなくちゃいけないんだもんね。左から順番に進もう」


私はまずは一番左の扉から入ることにする。

──扉の前に辿り着いて。


千歌「……よし、行こう……!」


扉を押し開けた──。





    *    *    *




──扉の向こうにはポケモンジムでも見慣れたバトルスペースが拡がっていた。

ただ、その内装は非常にファンシーでピンク色が溢れている。

私はゆっくりと奥へと歩を進めると──奥に人影があった。


 「……やっと来たみたいね」

千歌「……え」


私に声を掛けてくるその人には……見覚えがあった。


千歌「にこさん……?」

にこ「ええ、久しぶりね、千歌」

千歌「?? どうして、にこさんがここに?? ここ、ポケモンリーグですよ?」

にこ「……あー、えーとね」

千歌「??? ここって四天王しか居ないんですよね??」

にこ「そうよ。つまり、そういうことよ」

千歌「……? どゆこと?」

にこ「……はぁ、あんたホントおばかなんだから……」

千歌「え、ご、ごめんなさい……」

にこ「わたしがその四天王の一人よ」

千歌「……え?」


一瞬ポカーンとしてから、


千歌「え!?」


驚く。


にこ「だから、ちゃんと勉強しておきなさいって言ったじゃないの……まあ、ここまで辿り着けたわけだし、別にいいけど。とにもかくにも、ここまで来たらやることは一つ、バトルのみよ」


にこさんはそう言って、6つのボールを放る。


 「クチ」「マリ」「フィー」「キッスゥ」「ミミッキュ」「クレフィー」

にこ「じゃあ、バトルルールの説明をするわね。確認するけど、この部屋が最初の挑戦?」

千歌「は、はい!」

にこ「わかった。最初に説明しておくと、このバトルルールは四天王全員で共通ルールだから忘れないようにしなさいよ」

千歌「はーい」

にこ「ここポケモンリーグでのルールは最初に6匹を見せ合って、そのあとにお互い3匹選出ポケモンを決めてから戦うわ。つまり使用ポケモンは3体。3体全てが先に戦闘不能になった方が負けよ。一度3匹のポケモンを決めたら戦闘中選ばなかった3匹と入れ替えることは出来ない。だけど、その3匹の中でだったら、一匹ずつ出しても、同時に出しても、いつ交換しても構わないわ」


まずお互い6匹を見せ合うってことは、こっちも全部手持ちを出さないといけないだろう。

私は6個のボールからポケモンを出す。


 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」


にこ「バクフーン、トリミアン、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルね。ちなみに、にこの手持ちはクチート、マリルリ、ニンフィア、トゲキッス、ミミッキュ、クレッフィの6匹よ」

千歌「はい! わかりました!」

にこ「じゃあ、全員ボールに戻してから……トレーナースペースに後ろの方に台座があるでしょ」


言われて見てみると、確かにトレーナースペースの後ろの方に台座がある。

そこには丸い3つの窪み。


千歌「ここに選んだ3匹のボールを置くんですね」

にこ「そういうこと。ルールは把握できたかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ相手に見えないように3匹選んで。選出できたら、言って頂戴」

千歌「わかりました!」


バトルスペース内のトレーナースペースに入り、にこさんに背を向けて台座を見る。

──3匹か……。

にこさんにはダリアシティでお世話になったから、そのときの手持ちは見られているし、バトルも見られてるから戦略が筒抜けな可能性が高い。

……となると、あのときまだ手持ちにいなかったルカリオとフローゼル、それと……。


千歌「うん、この3匹にしよう」


三つのボールをセットして振り返る。


にこ「準備は出来たかしら」

千歌「はい!」

にこ「それじゃ……始めましょうか」


にこさんが一歩前に歩み出る。


にこ「──四天王『大銀河宇宙No.1! フェアリーアイドル』 にこ! さぁ、ショータイムの始まりよ!!」


お互いの一匹目のボールがフィールド舞う──バトルスタート……!!





    *    *    *




千歌「行くよ!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!」

にこ「行くわよ! ニンフィア!!」
 「フィーー!!!」


にこさんの一匹目はニンフィア。


にこ「“ハイパーボイス”!!」
 「フィイィィィィィーーーーーーー!!!!!!!!!!」

千歌「わわぁ!!!?」
 「グゥォ!?」


開始早々、いきなりの大技が飛び出す。


千歌「ぐ、うるさ……」


耳がキーンとする。


千歌「ルカリオ、大丈夫……!?」
 「グ、グゥォッ!!!!!」


とりあえず、問題なさそうだ。

だけど、この狭い空間でこの技を連発させるのは不味い……!

速攻勝負するしかない……!


千歌「“バレットパンチ”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


踏み込み飛び出す、神速の弾丸拳。

ニンフィアは避ける暇すらなく拳が直撃する。


 「フィーーーッ!!!!?」


幸いニンフィアは火力はあるものの動きが速いわけではなさそうだ。

“バレットパンチ”が炸裂して軽く後ろに吹き飛ぶ、


千歌「畳み掛けろ!! “コメットパンチ”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


飛び出し、流星拳を叩き込もうとした瞬間、


にこ「マリルリ!!」

千歌「!」


にこさんが追加でボールを放って、マリルリを繰り出す。


 「マリーー」


──ガシッと、マリルリはルカリオの拳を真正面から、受け止める。


千歌「え!?」


そして、そのままルカリオの拳を掴んで、


 「グ、グゥォ!!!?」


持ち上げる。

可愛らしい見た目に反してなんというパワーだろう、


千歌「ま、まずい!! フローゼル!!」
 「ゼルルッ!!!!!」


私もすかさず二匹目を繰り出し、


千歌「“みずのはどう”!!!」
 「ゼルーーーーー!!!!!!」


後方からルカリオの援護をする。


 「マリ!!」


前方からの水波攻撃に気付いたマリルリは、


 「マリッ!!!!」


飛んで来る“みずのはどう”に向かって、ルカリオを投げつけてくる。


千歌「っく……! ルカリオ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


こっちに向かって吹っ飛ばされているルカリオは宙にいるまま、波動を操作し、

器用に自分には攻撃が当たらないように捻じ曲げる。


にこ「! ちゃんと、考えてるじゃない!」


“みずのはどう”なら波動攻撃だから、いざというときにルカリオも攻撃を操作できる。

こういう連携技は積極的に使っていかないと、

何せ──メガシンカは当分使えないからだ。

四天王は4人全員を勝ち抜かないといけないと門番の人は言っていた。

ただ、メガシンカは連発すると身体への負担が大きい。

それを考えるとメガシンカはもっと後に温存したい。

そんなことを考えていたら、


にこ「ニンフィア! まとめて吹っ飛ばすわよ!!」
 「フィーー!!!」


再びニンフィアが前に出てくる。

“ハイパーボイス”はダメだ!


千歌「フローゼル! “いちゃもん”!!」
 「ゼル、ゼルッル!!!!」


フローゼルがニンフィアに“いちゃもん”を付ける。

“いちゃもん”を受けたポケモンは同じ技が連発できなくなる。


にこ「封じてきた……! “ムーンフォース”!!」
 「フィーーー!!!!!!」


“ハイパーボイス”を封じられた瞬間、にこさんは咄嗟に技を変えてくる。

月のエネルギーを攻撃に変えたフェアリー技が飛んで来る。

エネルギー技なら撃ち合える……!!


千歌「ルカリオ! “ラスターカノン”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは対抗する形ではがねのエネルギーを集束して、発射する。

フィールド中央で二匹の攻撃がぶつかり合い──相殺する。

でも、これでまたニンフィアは“ハイパーボイス”が使える状態になってしまった。

とにかく、まずはニンフィアだ……!!


千歌「ルカリオ!! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


床を蹴って、ルカリオが飛び出す。


にこ「マリルリ!!」
 「マリッ」


再びフィジカル担当なのか、マリルリが前に出てくる。

こうしてニンフィアを守りながら、範囲攻撃で制圧するのが、にこさんの戦い方なんだろう。


千歌「なら……!! ルガルガン、行くよ!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」

にこ「! あのときのルガルガンね……!!」


私はルガルガンを繰り出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンは天井や壁を跳ね回りながら、軌道の読めない高速軌道で接近する。


にこ「速い……厄介ね」


 「グゥォッ!!!!!」「ワォーーーーンッ!!!!!!」

二匹のポケモンが軌道の読みにくい高速技で翻弄する。


にこ「なら……マリルリ、“ばかぢから”!!」
 「マリッ!!!!!」


マリルリが突然地面を殴りつける、

すると、


千歌「わわ!?」


建物がぐらぐらと揺れる。

それによって、


 「グォッ!?」 「ワゥッ!!!」


床や壁や天井を蹴って加速していた二匹の動きが一瞬鈍る。


にこ「確かに速いけど……少し鈍らせれば十分目で追えるわよ!!」

千歌「……っ!」


にこさんの対応が早い。

完全に見切られる可能性が高いが、一旦引く……?

いや、引いても“ハイパーボイス”が飛んで来るだけだ。


千歌「突っ込め!!」

 「グゥォッ!!!!」「ワォンッ!!!!!」


スピードダウンは痛いが、誤差だ。

そう自分に言い聞かせ二匹を突撃させる。


にこ「マリルリ!! “はたきおとす”!!」
 「マリッ!!!!」

 「グゥォッ!!!!?」

千歌「!? ルカリオ!!?」


マリルリに狙いを定めて飛び出したルカリオが綺麗に迎撃され、床に叩き落とされる。

──でも……!!

本当の狙いは、


千歌「行けぇ!! ルガルガン!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!」


ルガルガンでマリルリの後ろに隠れているニンフィアを攻撃すること……!

変則的な軌道で、マリルリを周り込むように突っ込んでいく。

ニンフィアを射程に捉えた……そのとき、

──ヌッと黒くて凶悪そうな、口が現われた。


千歌「!!!?」

にこ「“ふいうち”!!」
 「クチーーーッ!!!!!!」

 「ギャウッ!!!!?」


ルガルガンがその大きな口に食べられた。


千歌「ル、ルガルガン!!?」


その大きな口は──


 「クチーーー」

千歌「クチート……!!」


クチートの大アゴのようなツノだった。

 『クチート あざむきポケモン 高さ:0.6m 重さ:11.5kg
  大人しそうな 顔に 油断を していると 突然 振り向き
  バクリと 噛み付かれる。 鋼の 顎は ツノが 変形した
  ものだ。 噛み付くと 絶対に 放さないので 注意。』


にこ「ルカリオはマリルリが……ルガルガンはクチートが押さえたわ」

千歌「……っ」

にこ「じゃあ、今度こそニンフィア……!!」
 「フィァァ……!!!」


ニンフィアが息を吸う。“ハイパーボイス”の予兆。


千歌「──……それを待ってたんです!!」

にこ「……は?」


言葉と共に──ヒュン! と音がする。


にこ「!? な、なんの音……!?」


にこさんがキョロキョロと周囲を見回す。


にこ「……何もない……? こけおどしとは小細工使ってくれるじゃない!! ニンフィア、決めてやりなさい!! “ハイパーボイス”!!!」
 「…………」

にこ「……ニンフィア?」
 「フィ……ア……」


ニンフィアが突然、パタリと倒れる。


にこ「ニンフィア!?」


にこさんが傍らのニンフィアを見ると──ニンフィアは攻撃を受けて、戦闘不能になっていた。


にこ「攻撃!? いつのまに……!?」

千歌「確かに、ルカリオもルガルガンも速いけど……もっと速い攻撃があったとしたら? それこそ、“ハイパーボイス”みたいに!」

にこ「もっと、速い……空気の振動……まさか!?」

千歌「そうです! 空気です!!」
 「ゼルルルッ!!!!!!」


フローゼルが尻尾を高速回転させながら、声をあげる。

ニンフィアを攻撃したのは他でもない。──“かまいたち”だ。

音波で攻撃する、ということは攻撃の瞬間口を大きく開かないといけない。

口の中なんて、どう考えても急所でしかない。

固定砲台のように、大技を繰り出すニンフィアの急所に攻撃を叩き込むこと、フローゼルはずっとソレを狙っていたのだ。


千歌「“かまいたち”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


再度、フローゼルから空気の刃が飛び出し、


 「マリッ!!!?」


今度はマリルリを切り裂く。


にこ「っく……!! “アクアジェット”!!」
 「マ、マリッ!!!!」


距離を詰めるために飛び出そうとしてくるマリルリ──


 「マリッ!!?」


──がつんのめった。


にこ「!?」

 「グゥォッ!!!!」


先ほどマリルリに叩き落とされたルカリオが、足を掴んだのだ、


千歌「そのまま、上にぶんなげろ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがマリルリを真上に放り投げる、


 「マリィーー!!!?」


……更に──ギャギャギャッ!!! と金属を擦るような、嫌な音がフィールド上に響き渡る。


にこ「こ、今度は何よ!?」


にこさんが音のする方を振り返ると、


 「ク、クチーーー!!!!?」
にこ「!!?」


クチートの大アゴに噛み付かれたルガルガンが、アゴの中で高速回転を始めていた。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


無理矢理身を捩りながら、鋼のアゴを内側から──ぶち壊した。


 「ク、クチィィィ!!!!!?」


クチートの上顎をぶっ壊し、そのままの勢いで、空中にいるマリルリに向かって、


千歌「“アイアンヘッド”!!!」

 「ワォーーーーンッ!!!!!!」

 「マリィッ!!!!!?」


回転も加わった、鋼鉄の頭突きを炸裂させた。

玉突きのように吹っ飛ばされたマリルリは、その弾力のある身体で、室内の壁、床、天井を何度も跳ね回ったあと──


 「マ、マリ……」


気絶した。


千歌「よっし……!!」

 「ク、クチィ……」


残るはクチートだけだけど……。


にこ「……正確には、戦闘不能じゃないけど……上顎を吹っ飛ばされてるし、とてもじゃないけど、戦闘続行は出来ないわね。マリルリ、クチート、ニンフィア。わたしの手持ちは全て戦闘不能よ」

千歌「……じゃあ!!」

にこ「ええ、千歌。あなたの勝ちよ」

千歌「ぅやったーー!! ルガルガン! ルカリオ! フローゼル! 皆よくやったよー!!!」
 「ワォーンッ」「グォ」「ゼルーー」


3匹を抱き寄せる。


にこ「……まさかストレート負けするとはね……。ホントに強くなってここまで辿り着いたのね」

千歌「えへへ……」

にこ「……負けたのは悔しいけど……ま、最後にちゃんと戦うことが出来てよかったわ」


──と、にこさんが意味深なことを言う。


千歌「最後……? どういうことですか?」

にこ「あー……えっとね、わたし……近いうちに四天王をやめようと思ってるの」

千歌「……え!? なんでですか!?」


確かに今回のバトルの結果は私が3匹を残してのストレート勝ちだったとは言え、にこさんは紛れもない実力者なのには変わりないはず……。


にこ「あーいや、強さの問題じゃなくてね。グレイブ団の異変の間、結局わたしはダリアシティに付きっ切りで他の四天王みたいに地方全体の警護の仕事が出来なかったのよ。それで思ったのよ、まだダリアのジムをこころとここあに任せるのは早かったかなって……」

千歌「そ、そうですか……?」


こころちゃんとここあちゃんも相当手強かった記憶があるんだけど……。


にこ「強さよりも……単純に経験がね。ゴーストポケモンの撃退こそ問題なかったものの、街の人の避難誘導とかは、お世辞にもうまく出来てたとは言いがたかったのよ」

千歌「……なるほど」


確かにあの二人はかなり騒がしかったし、そういう誘導指示とかはうまく出来なさそうかも。


にこ「だから、にこがダリアのジムリーダーに戻って……その後どうするかをもう少し慎重に考えようと思ってね」

千歌「戻って……ってことは、にこさん昔はジムリーダーだったんですね」

にこ「ええ。後任は任せてくれって二人が言うから、ダリアのジムリーダーから、四天王に昇格したんだけどね。でも、やっぱり街の皆をちゃんと守れてこそだもの……」

千歌「そっか……」


ジムリーダーは街の人たちを守る役割もあるから、そういうことなら仕方ないのか……。


にこ「……ま、二人がもっと成長して大人になったら戻ってくるかもしれないから」


そう言いながら、にこさんは肩を竦める。


にこ「なにはともあれ……四天王一人目突破よ」

千歌「! はい!!」

にこ「にこの後ろにワープ装置がある。そこから、最初の広場に戻れるわ。次の部屋も頑張りなさいよ」

千歌「はい!!」


にこさんからの激励を受けて──私は次なる四天王との戦いに挑みます。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.61  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.55 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:173匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter087 『決戦! 四天王! ②』





千歌「──……よっ、と」


にこさんの部屋を突破し、ワープ装置で中央の広間に戻ってくる。


千歌「……お」


すると、にこさんの部屋に続く橋がぼんやりと光っているのが目に入る。

恐らく突破した証なんだろう。

その光はさっきまで居た部屋の方から中央のエレベーターへと伸びている。


千歌「この光が全部集まると、エレベーターが動くってことだね」


そしたら私は晴れてチャンピオンに……でも、


千歌「この上……何があるんだろう……?」


……まあ、いっか。

どちらにしろ、この先に進むには勝つしかないんだ。


千歌「よし、次の部屋に進むぞ」


私は左から2番目の部屋に向かって歩を進める──





    *    *    *





──二つ目の部屋に入って、まず思ったことは……。


千歌「さ、さっむ……っ!!」


とにかく寒かった。


 「あら? お客さんなんて、久しぶりね」

千歌「!」


凍えていたら奥から声を掛けられる。

そこに居たのは金髪で長身の女性。


絵里「こんにちは、私は絵里よ。こうして会って話すのは初めましてね、千歌ちゃん」

千歌「は、はじめまして! ……って、なんで私のこと知ってるの?」

絵里「あなたのことは、海未からよく話を聞かされてるからね……海未には会った?」

千歌「い、いえ、まだです」

絵里「そう……それじゃ残念ね」

千歌「え?」

絵里「あなたは海未に会うことなく、このポケモンリーグを去ることになるみたいだから……」

千歌「……!」

絵里「……なんてね」


絵里さんはいたずらっぽく舌を出す。


千歌「私は負けるつもりはありません!!」

絵里「ふふ、気合い十分ね……。それじゃ、皆出てきて」


絵里さんが6つのボールを放る。


 「シア…」「バニバニ~」「ジュラルー」「コーーン」「ドパン!!」「ジュゴ~ン」


絵里「私の手持ちはグレイシア、バイバニラ、ルージュラ、キュウコン、サンドパン、ジュゴンよ」

千歌「皆、出てきて!」
 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

絵里「千歌ちゃんの手持ちはその6匹ね」

千歌「はい!」

絵里「それじゃ……お互い選出に入りましょうか」


絵里さんはそう言ってポケモンをボールに戻す。

私も皆をボールに戻して、選出に入る。

見た感じ、絵里さんの手持ちはこおりタイプばかりだった。

道理で部屋も寒いわけだ。

ここはいわば敵地、きっとこのフィールドはそれぞれの四天王が戦いやすいようにチューンナップされているんだろう。


千歌「さて……今回はどうしようかな」


とりあえず、相手がこおりタイプなら……。

バクフーンを外す理由はない。後は同じようにこおりタイプに強いルガルガンと……。


千歌「へ、へっくち!!」


うぅ……寒い。

……暖かそうな子がいい。たぶん。


千歌「よし……この3匹で」

絵里「準備は出来たかしら?」

千歌「はい!」


ボールをセットし終えて絵里さんの方に向き直る。


絵里「それじゃ、始めましょうか。四天王『凍てつくアクアブルースノウ』 絵里。全力でぶつかり合いましょう!!」


お互いのボールが放たれる……バトル開始だ──





    *    *    *




千歌「行くよ! バクフーン!!」
 「バクフーーーンッ!!!!!」

絵里「キュウコン! サンドパン! GO!!」
 「コーーンッ!!!」「ドパンッ!!!!」


アローラキュウコンの特性“ゆきふらし”によって、フィールド内に“あられ”が降り始める。

そして、その中を──


 「ドパンッ!!!!!」


真っ白なアローラサンドパンが飛び出してくる。


千歌「は、速い!?」

絵里「“メタルクロー”!!」

 「ドパンッ!!!!!」


普通のサンドパンよりも発達している巨大な爪がバクフーンに切りかかる。


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフッ!!!!」


技を受けるために、炎を纏った拳を前に突き出す。

──ガイン、という硬いものを弾く音と共に、


 「ドパンッ!!!!?」


サンドパンの爪が炎拳に弾き飛ばされ、その衝撃で一瞬無防備な状態になる。


千歌「“かえんほうしゃ”!!」
 「バクフーーーー!!!!!!」


すかさず、追撃。

この至近距離で、こおりタイプのサンドパンが“かえんほうしゃ”を受けたら大ダメージは間違いないだろう。

──が、


 「ドパンッ!!!!」


サンドパンがキラキラと輝くオーラのようなものを纏って、炎の中から飛び出してくる。


千歌「っ!?」

絵里「“きりさく”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」


そのまま、バクフーンを切り裂く。


 「バクフッ……!!!!」


今度は完全に不意を突かれてしまったせいで、攻撃が直撃し、バクフーンが後ろに仰け反る。

だが、サンドパンの攻撃はそれだけでは終わらない。


絵里「“じしん”!!」

 「ドパンッ!!!!!!」


サンドパンは床に爪を突きたて、そのまま床ごとぐらぐらと揺する。


 「バ、バクフーー」
千歌「バクフーン、落ち着いて!!」


大きな揺れに動揺を見せるバクフーン。

私は揺れる足元に視線を落とし、転ばないようにしていると、


絵里「ふふ、足元ばっかり見てちゃダメよ」


絵里さんが意味深なことを言う。

直後──バキ、バキリ、と何かが砕けるような嫌な音が頭上から聞こえてくる。


千歌「……な、何!?」


咄嗟に天井を見上げると──いつの間にか天井に出来ていた大きなつららが、落っこちてきていた。

“つららおとし”だ……!!


千歌「“ふんか”!!」
 「バクフーーーーンッ!!!!!!!!!」


咄嗟に頭上に向かっての爆炎でつららを溶かす。

だが、炎を防御に使ってしまったために、前方からの攻撃に無防備に──


絵里「サンドパン! “アクアテール”!!」
 「ドパンッ!!!!!!」


サンドパンが身を捻って、みずタイプの尻尾攻撃を繰り出してくる。

避けきれない。


千歌「っく!!」


私はバクフーンとサンドパンの間に向かってボールを投げる。


 「ワッフッ!!!!」
千歌「しいたけ!! “コットンガード”!!」


飛び出した、しいたけが毛皮を膨らませ──ボフっと音を立てながら、サンドパンの尻尾を受け止める。


 「ド、ドパン……!!」


攻撃を受け止められ、焦ったサンドパンに向かって、


千歌「“ずつき”!!」
 「ワッフッ!!!!」


頭突いて反撃。

だが、


絵里「サンドパン!! “いかりのまえば”!!」

 「ドパンッ!!!!」

 「ワゥッ!!!?」


サンドパンは、まるで怯まず反撃してくる。

いくら、効果がいまひとつなんだとしても、ダメージが薄すぎる。

恐らく原因は──サンドパンの周りにあるキラキラと光るオーラのせいだ。

そして、それを使ってるのはさっきから攻撃してこない、後ろのポケモン。


千歌「キュウコンの技……!!」


思い至ってキュウコンの方を見ると、キュウコンの居る場所の上の方にはオーロラが広がっていた。


千歌「“オーロラベール”……!!」


確か、輝くベールで味方の防御と特防を一気に上げる技だ。


絵里「……ふふ」


絵里さんが不敵に笑う。

キュウコンを放っておくと攻撃がうまく通らない……!

サンドパンは前衛で食い止めている、なら今のうちに……!


千歌「ルガルガン!! お願い!!」
 「ワォーーンッ!!!!!」


ボールから繰り出したルガルガンが床を蹴って飛び出す。

ルガルガンはそのまま、壁を蹴って一気にキュウコンに肉薄する。


千歌「“アクセルロッ──」


 「──ドパンッ!!!!!!」

 「ギャゥッ!!!?」

千歌「んなっ!!?」


先ほどまで、しいたけと組み合っていたはずのサンドパンがルガルガンに追いつき、ぶっとい爪でルガルガンを押さえつけていた。


絵里「ふふふ、驚いてるわね」

千歌「……!」

絵里「サンドパンの特性は“ゆきかき”。あられが降るフィールドでは、素早さが倍増するわ」


つまり……そのスピードによって追いつかれたと言うことだ。


絵里「それに……キュウコンも攻撃は出来るわよ! “ふぶき”!」
 「コーーーンッ!!!!」


キュウコンの方から強烈な冷風が飛んで来る。


 「ワ、ワゥ…!!」


その冷気によって、パキパキとしいたけの足元が凍り始める。


千歌「っく……!! バクフーン、“ねっぷう”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


対抗するように、“ねっぷう”を撃つ。

どうにか相性のお陰で攻撃は拮抗しているが──


絵里「行くわよ、グレイシア!!」
 「シア」

絵里「“ふぶき”!!」
 「シアアーーーー!!!!!」


繰り出された3匹目、グレイシアからの追加の“ふぶき”で一気に劣勢になる。


千歌「ぐ……!!」


前衛では、


 「ワゥッ!!!!」

 「ドパンッ!!!!」


どうにか、爪を引き剥がし、自身のタテガミの岩でルガルガンがサンドパンと撃ちあっているが、

後衛同士の戦いは完全にパワー負けしている。


 「バ、バクフーー……!!!」

千歌「! バクフーン!!」


完全に“ねっぷう”が押し負け、“ふぶき”によってバクフーンも凍り始める。

いや、それだけじゃない──。


千歌「……っ」


自分自身の吐く息が白い。

気付けば私の足元も凍り始めている。

肺に刺さる冷たい空気と、凍て付く寒さが集中力をどんどん奪っていく。


千歌「……ぐっ……しっかりしろ!!」


頭を振りながら、自分を鼓舞する。


絵里「……こおりタイプの真髄は場の支配」

千歌「……っ……?」

絵里「寒さは相手の思考能力を奪い、全てを雪と氷に閉ざしていくわ。もうここは私たちが完全に場を支配している」

千歌「……ぐ……」


だんだん足に力が入らなくなり、床に片膝をついてしまう。

床はもう雪だらけで、ついた膝が冷たい。


 「ワ、ワゥ……!!!」

 「バクッフゥ……!!!」


二匹にもどんどん雪が降り積もり姿が見えなくなっていく。

指示を──出さなきゃ。

頭ではそう思ってるはずなのに、


千歌「は……はっ……」


もう、寒すぎて舌がロクに回らない。

手足が悴み、寒さがもはや痛い。


 「ギャゥッ!!!?」


──ルガルガンの悲鳴が聞こえる。

指示を全く出してあげられなかった所為で、ついにサンドパンに撃ち負けてしまったんだろう。


絵里「……雪に閉ざされて眠るといいわ。大丈夫、勝負がついたらちゃんと助けてあげるから」


千歌「ぐ……ぅ……」


もう……ホントに……ダメ、だ……。

何故だか、だんだんと眠くなってくる。

寒いと眠くなるってのは、どうやら本当らしい。

そんなどうでもいいことを考えながら──私の意識は落ちて行った。





    *    *    *





 「ワフ」


──声がする。


 「ワゥ、ワフ」


──昔から知ってる聞きなれた鳴き声。

その鳴き声はどんどん近付いてきて、


 「ワゥ」


その鳴き声がすぐ傍で聞こえるようになったとき、全身が暖かいものに包まれる。

──知ってる。この感覚。


千歌「しい……たけ……」
 「ワゥ」


しいたけの暖かい“ファーコート”。


 「ワゥ…」
千歌「えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……」
 「クゥーン…」


辺りは室内だと言うのに、強烈な“ふぶき”のせいで完全にホワイトアウトしていた。

これが四天王絵里さんの実力……。

こんな圧倒的なフィールド支配力……勝ち目があるんだろうか。

そんなことを考えていると、


 「ワォン」
千歌「わっ」


しいたけが身を寄せながら、頬を舐めてくる。


千歌「…………いや、まだだよね」
 「ワゥ」


バトルは3匹の手持ちが完全に戦闘不能になるまで続く。

まだこうして“ふぶき”が止んでいないのは、絵里さんもまだ戦闘が完全に終わってるとは思っていない証拠だ。


千歌「……最後まで、戦う……私が諦めちゃダメだよね」
 「ワッフ」


暖かい、しいたけが傍に居てくれるお陰なのか、だんだん頭が働くようになってきた。

……とは言ったものの、どうするか。

ルガルガンは恐らく既に戦闘不能だ。

バクフーンも雪に埋もれて、こおりづけ状態。

まともに動けるのは、しいたけのみだ。


千歌「……そういえば、しいたけ」
 「ワゥ?」

千歌「しいたけだけ……まだ、やってないよね」
 「ワゥ」

千歌「必殺技」
 「ワフ」

千歌「海未師匠は……のんびりやさんのしいたけには、向いてないって言ってたけどさ」
 「ワォ」

千歌「……やってみない?」
 「ワン」


しいたけが立ち上がる。


千歌「うん、ありがと。しいたけ」
 「ワッフ」


私もゆっくりと立ち上がる。

真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。

寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。

でも……。


千歌「私には……しいたけがいる」
 「ワォン」


誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。

──集中しろ。

吹き荒ぶ風の中だけど、耳を研ぎ澄まして、音を聞け。

きっと来る筈だ──

 ──ザッ

雪を掻きながら、トドメを刺しに──

 ──ザッザッ


 「──ドパンッ!!!!!」

千歌「──そこだ!!!! “かたきうち”!!!」
 「ワォンッ!!!!!」


飛び掛ってきた、サンドパンのボディに向かって──


 「ドパンッ!!!?」


しいたけが思いっ切り“ずつき”を叩き込む。

反撃されると思っていなかったのか、自分の飛び掛かる速度を逆に利用された一撃に、サンドパンは大きなダメージを負って雪の上を転がる。

そのまま、転がったサンドパンが何かにぶつかる。


千歌「……!!」


恐らくそのぶつかったのは、


千歌「バクフーン!! “かえんぐるま”!!」
 「──バ、ックフゥゥゥ……!!!!!!!」


バクフーンだ。


 「ド、ドパァァァンッ!!!!!?」


一気に加熱し、バクフーンは自分の身に火炎を纏って、サンドパンを巻き込みながら、氷を溶かして復活する。


千歌「バクフーン!!! ありったけの炎で!!! やるよ!!!」
 「バクフゥーーーーー!!!!!!」

千歌「“ふんえん”!!!」
 「バクフゥゥーーーーー!!!!!!!」


バクフーンの全身から、超高温の噴煙が噴き出す。

この技は味方を巻き込むから使うのを躊躇していたが、もうここまで来たら関係ない。

全身の炎熱エネルギーを一気に放出して、周囲の雪や氷を溶かしていく。


千歌「ここで炎を使い切るつもりで!!!! 一気に燃え上がれぇ!!!!」
 「バックフゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!」

千歌「“もえつきる”!!!」


バクフーンを中心に、なにもかも顧みずに発する超高熱が、周囲の“ふぶき”を一気に吹き飛ばす。


絵里「……なっ!!?」


晴れた先で絵里さんが驚いた表情をしていた。

急な超熱波がフィールド全体を一気に覆い尽くす。


絵里「ぐっ!!!? なんて、熱量!!?」
 「コーンッ!!!!!」

千歌「一気に全部焼き尽くせ!!!」
 「バクフゥゥゥゥーーーー!!!!!!!!!!!!」


爆炎が絵里さんたちに向かって拡がっていく。


絵里「!! キュウコン!! “ぜったいれいど”!!」
 「コーーーーーンッ!!!!!!」


キュウコンが全てを凍て付かせる冷気を放つが──

バクフーンの全てを掛けた爆熱はそれを上回り。


 「コ、コーーーンッ!!!!!?」


キュウコンを飲み込む。


絵里「キュウコン!!?」

千歌「いっけぇぇーーーーー!!!!!」


膨れ上がった爆炎が全てを飲み込んでいく。

……爆炎が晴れた先で、


 「コ、コーーン……」


煤まみれになったキュウコンが倒れていた。


千歌「……はぁ……はぁ……よしっ!!」


キュウコンを押し切った。


絵里「く……!!」


だが、


 「バ、クフ……」


バクフーンは──ぷすぷすと音を立てて、背中から煙を立てている。

全ての炎を出し切ってしまったせいで、もう炎が出せなくなってしまった。


絵里「……まさか、あそこからキュウコンを倒すなんて思ってなかったわ……。でも」
 「シア……!!!」

絵里「まだ、私にはグレイシアが残ってる……炎が使えなくなったバクフーンに、負けるなんてことはさすがにないわ」

千歌「…………」

絵里「……終わりよ、グレイシア、“れいとうビー──」


グレイシアが“れいとうビーム”を撃とうとした瞬間──


 「ワォッ!!!!」

絵里「!?」


グレイシアの足元から飛び出す真っ白な影、

絵里さんが目を見開いた。


絵里「──“あなをほる”!!!?」

千歌「しいたけ!!! “ギガインパクト”!!!!」

 「ワォンッ!!!!!!」


穴から飛び出した、しいたけが、グレイシアを真下から最大の攻撃力で突き飛ばした。


 「シアァァ!!!!?」


とてつもない勢いで全身をぶつけられたグレイシアは、そのまま天井に身体を打ち付け、


 「……シ、ア……」


──ドサッと音を立てながら、床に落下したのだった。


絵里「……うそ」

千歌「……か……勝った……」


私は気が抜けて、思わず尻餅をついてしまう。

そこに──


 「ワフッ」


しいたけが駆け寄り、飛び掛かってくる。


千歌「うわわっ!!? しいたけ!?」
 「ワゥ、ワォンッ」

千歌「あ、あははっ! もうくすぐったいっ!」


しいたけは勝てたことがよほど嬉しかったのか、私の頬を舐めながら、全力でじゃれ付いてくる。

そんな私たちの元に、


絵里「……まさか、あそこから負けると思わなかったわ」


絵里さんが歩み寄ってくる。


千歌「あはは……正直、私もあそこから勝てるとは思ってませんでした……」


絵里さんの言葉に苦笑する。


千歌「でも……」

絵里「でも?」

千歌「皆を信じて最後まで戦ったから……勝てました」

絵里「……そう」


絵里さんは私の言葉を聞いて、肩を竦める。


絵里「その硬い絆に負けてしまったと言うなら……仕方ないのかもしれないわね」


そう言って苦笑する。


千歌「えへへ……ずっと一緒にいた子だから」

絵里「その仲間との絆と……諦めない強さ……海未が認めた理由がわかった気がするわ。おめでとう、千歌ちゃん、四天王二人目突破よ」

千歌「……はい!!」


かなりの苦戦を強いられたけど、どうにか強敵、絵里さんとのバトルを制し──私は三人目の四天王の間へと進みます。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.59 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.58 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:179匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter088 『決戦! 四天王! ③』





千歌「──……ここが3つ目の部屋」


左から3つ目の部屋の中に入ると、なんだか随分と天井の高いフィールドがあった。

しかも中央のバトルステージは両側を橋に吊るされているような状態で、その下は大きな穴のようになっていて、底が見えなかった。


千歌「た、高い……」

 「いらっしゃい、挑戦者さん」

千歌「!」


室内の私が入ってきたのとは反対側から声が掛けられる。

栗色のショートヘアー、前髪はおでこを出しているのが特徴的な、綺麗な顔立ちの女性だった。


ツバサ「初めまして、私はツバサよ」


そう言ってツバサさんは6つのボールを放る。


 「マンダァ」「リュー」「サザンドーラ」「ヌメルゥ」「ジャランラ」「ガブ…」

ツバサ「もちろん、バトルをしに来たのよね」

千歌「はい!」


私も6匹のポケモンを出して見せる。


ツバサ「ここまで来たらやることは一つだものね。私の手持ちはボーマンダ、カイリュー、サザンドラ、ガブリアス、ヌメルゴン、ジャラランガの6匹よ」


全部ドラゴンタイプ……どうやらドラゴン使いのようだ。


ツバサ「さ……選出して、始めましょうか」


そう言ってツバサさんは選出準備に入る。


千歌「……」


このバトルへの移行がやたらスムーズな感じ……どこかで見たことがあるようなと思ったけど、英玲奈さんだ。

ここまで来たらやることは一つ──って物言いもなんか似てる気がする……まあ、それはいいとして、選出しないと。


千歌「……さて、と」


回復したとは言え、ルガルガンは一度休憩させてあげたい。だから、今回はお休み。

どちらにしろこの部屋の構造だと、壁や床、天井を跳ね回る戦い方が得意なルガルガンだと戦い辛いしね……。

バクフーンも炎が戻るまでもう少し時間が掛かりそうだし、今回は控えに回ってもらおう。

そうなると候補は4匹……。

この広くて高いこのバトルフィールド……どう考えても、飛行しながら戦うことを考えての構造だと思う。

ムクホークはいた方がいい。

同じ理由で、高所で自由が効くのは──ルカリオかな。

波導を使えばちょっとの間、壁にも貼り付けるし。

残るは……フローゼルか、しいたけか……。

どっちも飛ぶのは無理だけど……。

悩んだ末に──しいたけを選択する。

続投にはなってしまうけど、ここぞと言うとき頼りになるのは、なんだかんだで付き合いの長い、しいたけだしね。


千歌「……選出できました!」

ツバサ「そう、それじゃ始めましょう。四天王『飛翔する竜翼』 ツバサ。お互い全力で楽しみましょう」


──お互いのボールがフィールドを舞う。バトルスタート……!





    *    *    *




ツバサ「サザンドラ!!」
 「サザンドーラ!!!!!」

千歌「ムクホーク、行くよ!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが開幕と同時に飛び出す。


千歌「“すてみタックル”!!」
 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


一気に加速して、最高速に達し、サザンドラに向かって飛び込んでいく。


ツバサ「“りゅうのはどう”!!」
 「サザン、ドーーラッ!!!!!!」


サザンドラは一直線に向かってくるムクホークに向かって、ドラゴンエネルギーを渦巻かせながら放ってくる。

──ただ、ムクホークの戦い方に小細工は存在しない。

そのまま、“りゅうのはどう”に突っ込み──


 「ピィィィィィィ!!!!!!!!!」


ダメージを受けながらも、その中を突っ切って、サザンドラに肉薄する。


 「サザンッドラーー!!!!!」

ツバサ「……!」


そのまま、突撃し、サザンドラを後方に突き飛ばす。


ツバサ「そういう“すてみ”な戦い方、嫌いじゃないわ! “かえんほうしゃ”!!」

 「サザンッ!!!!」


サザンドラの三つの首が同時に炎を放射する。


千歌「“ブレイブバード”!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!」


でも、そんなの構いなしに再び突撃する。

メラメラと音を立てながら燃え盛る炎の中を突き抜けるように、


 「ピイィィィィィィ!!!!!!!」


再びサザンドラに肉薄し、クチバシを突き立てる。


 「サザンッ!!!!!」


そして、密着した距離のまま、一気に攻撃を畳み掛ける。


千歌「“インファイト”!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!」


そのまま、全身の膂力で無理矢理サザンドラを殴りつけ──


 「サザンッ……!!!!」


強引にぶっ飛ばし、サザンドラを壁に叩き付ける。


 「サ、サザン……」


壁に叩き付けられ、大ダメージを受けたサザンドラはヘロヘロと落下していく。


ツバサ「戻って、サザンドラ! いくわよ、ボーマンダ!」
 「マンダァ!!!!!」


早い試合展開。サザンドラを戦闘不能にし、次に出てきたのはボーマンダ。

そして、それと同時にツバサさんの首もとのネックレスが光る。


ツバサ「メガシンカ!!」

千歌「……!!」


──メガシンカを使ってきた。

光に包まれたボーマンダは──前足が極端に短くなる代わりに、立派な翼が更に巨大化する。


ツバサ「“すてみタックル”!!」
 「マンダァァッ!!!!!」


一気に最高速になって、ムクホークの方に飛び出すメガボーマンダ。


千歌「! 速い!!」

 「ピィィッ!!!!」


“すてみ”で戦った分手負いのムクホークは回避もままならず、


 「ピィィィィ!!!!!?」


“すてみタックル”が直撃し、今度は逆にこっちが壁に叩きつけられてしまった。


 「ピ、ピィィィ……」

千歌「戻って、ムクホーク!! ルカリオ、行くよ!!」
 「グゥォッ!!!!」


まずはお互いパワーファイトで一匹ずつ戦闘不能だ。

私は二匹目、ルカリオを繰り出す。


千歌「“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは空中を飛んでいるボーマンダに向かって、波導を球状に集束して発射する。


 「マンダァァーー!!!!!」


フィールド内を高速で飛行しながら、ボーマンダは避けようとするが──。

“はどうだん”は相手の波導を感知して追いかける技だ。

フィールド上空を旋回しながら飛び回るボーマンダをしつこく追尾する。

動きを制限したところで……。


千歌「追撃するよ!! “きあいだ──」

ツバサ「ガブリアス!! “ダブルチョップ”!!」

千歌「!!」

 「ガァーーーブッ!!!!!」


いつのまにか、繰り出されたガブリアスがルカリオに向かってチョップを振り下ろしてくる。


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオは咄嗟にお馴染みの骨状の武器を作り出して、ガブリアスのチョップを受け止める。


ツバサ「“アイアンヘッド”!!」

 「ガァブッ!!!!」


畳み掛けるように、繰り出される鋼鉄の頭突き。


千歌「“あくのはどう”!!」
 「グゥーーォッ!!!!!」


両手が塞がった状態のルカリオはその場で、ガブリアスの頭部目掛けて波導エネルギーを発射する。


 「グワブッ!!!!」


顔面に波導を食らって怯んだところに、


千歌「“ボーンラッシュ”!!!」

 「グゥォッ!!!!!」


得物を振り回して、ガブリアスに攻撃、


 「ガ、ガブッ!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “ドラゴンダイブ”!!」

 「マンダァッ!!!!!」

千歌「くっ!?」


だが、自由にはさせてもらえない。

空中を旋回していた、ボーマンダが“はどうだん”に追われたまま、高速で落下してくる。


千歌「ルカリオ!! “みきり”!!」

 「グゥォッ!!!!」


攻撃が当たる直前で飛び退き、ボーマンダの攻撃を回避、


 「マンダァッ……!!!」


ボーマンダはフィールドを凹ませながらも、攻撃が外れたことを理解すると、速度を保ったまま、再び上空へと高速で離脱していく。

このままじゃ、“はどうだん”は当たりそうもない。

──なら、

ボーマンダを追いかけて、フィールド上に降りてきた“はどうだん”を、


 「グゥォッ!!!!」


ルカリオの波導を操る力で持って、


千歌「標的を変える──!!」


 「ガァブッ!!!!?」

ツバサ「!! ガブリアス!!」


急激に進行方向を変えられ、ガブリアスは咄嗟に対応しきれず“はどうだん”が炸裂する。


千歌「“インファイト”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


畳み掛けるように、ルカリオが全力の“インファイト”を仕掛ける。


 「ガァブッ!!!!!!」


ガブリアスは咄嗟にガード姿勢を取る、そこに向かって、


 「グゥゥゥォァァァッ!!!!!!」


拳を、蹴りを、頭を、ありとあらゆる部位を使いながらルカリオが猛攻を仕掛ける。

ガブリアスは防戦一方でどんどん体力を削られていく──ように見えたが、


ツバサ「ガブリアス!! “げきりん”!!」

 「ンガアアアアアアアアアブッ!!!!!!!!!!!!!」

千歌「!?」


突然ブチギレるように、とんでもない雄叫びを上げ、それに呼応するように、ガブリアスを中心にフィールド上がひび割れる。

そのまま、ガブリアスが乱暴に腕を振るうと──

──バキ、メキ!! と音を立てながら衝撃波が発生し、


 「グゥゥォッ!!!!?」


ルカリオを吹っ飛ばす。

そして、ルカリオが吹き飛んだあと、余った破壊のエネルギーが更にフィールドに大きなヒビを入れる。


千歌「ぐ……凄い破壊力……!?」


組み合ったルカリオを強引にパワーだけで引き剥がし、

更に余ったエネルギーはフィールドすらも、めちゃくちゃに割り砕いている。


 「ガァァァブッ!!!!!!」


暴れたままのガブリアスが吹っ飛んだルカリオを追いかけて、飛び出してくる。

肉薄のために踏み切った足元すらも、ガブリアスの破壊的なパワーで──メキ、バキバキ!! と音を立てながら、ヒビ割れ、軋み、凹む。

デタラメなパワーだが──


千歌「怒りに任せた直線的な攻撃──見切れる!!」

 「グゥォッ!!!!」


ルカリオが飛び出してきたガブリアスに向かって手を翳す。

──必殺の一撃。


千歌「──そこ!! “はっけい”!!」

 「グゥゥォッ!!!!」


飛び込んできたガブリアスの胸部に向かって、波導のエネルギーを直接ぶつける。


 「グワァァァァァブッ!!!!!!!!」


“はっけい”が直撃した、ガブリアスが悲鳴をあげて、崩れ落ち──


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」

千歌「!!!?」


──ていなかった。


 「ガァァッァブッ!!!!!!」

 「グゥワッ!!!?」


ガブリアスは無理矢理、ルカリオに噛み付き、


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「ルカリオっ!!!」


噛み付いたまま、首を縦に振るって、ルカリオを地面に叩き付ける。


 「グゥワッ!!!!!」


叩き付けられ、浮いたルカリオに向かって、


 「ガァァァブッ!!!!!」


乱暴に尻尾を横薙ぎにし、フィールドの外側まで吹っ飛ばす。


 「グ、グォッ!!!!!」


ルカリオは、大きなダメージを負ったものの──ダンッ!! と大きな音を立てながら、どうにか波導を使って壁に着地する。


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!!」


怒り狂ったガブリアスは、そのまま、ルカリオに向かって飛び出す──


千歌「! ルカリオ! そこで待ってれば、ガブリアスは勝手に落ちるよ!!」

 「グゥォッ!!」


ルカリオはフィールドの外──つまり、ルカリオに向かって突っ込んでいけば奈落の底に落ちるだけだ。

──と、思ったら、


 「ガァァアァブッ!!!!!!!」


ガブリアスは手足を折畳み、


千歌「い゛っ!!?」


そのまま、飛び出した。


ツバサ「残念、ガブリアスは飛べるわよ」

千歌「き、聞いてない!!」

ツバサ「言ってないもの」


そのまま、音速を超えるスピードでガブリアスがルカリオに迫る。


千歌「“しんそく”!!」

 「グゥォッ!!!!!」


壁を蹴って、ルカリオが飛び出す。


 「ガァァァァブッ!!!!!!!」


直後、ルカリオが数瞬前に居た場所にガブリアスが突き刺さる。

それと同時に──バキバキッ、メキッ!! っとヤバイ音が響き渡る。

とつもないパワーで突き刺さったガブリアスを中心に、内壁がへしゃげて、一気にヒビが入っていく。


千歌「あ、当たってたらやばかった……!!」


ルカリオは“しんそく”で移動しながら壁を走る。

そこに向かって、


 「マンダァッ!!!!!」

千歌「!」


ガブリアスの“げきりん”に巻き込まれないように距離を取っていたボーマンダがここぞとばかりに襲い掛かってくる。


ツバサ「“ドラゴンクロー”!!」

 「マンダァッ!!!!!」


ボーマンダの爪が迫る。


千歌「ルカリオ!! 骨!!」

 「グゥォッ!!!!」


私の指示で、再び作り出した得物で爪を受け止める。


ツバサ「その悪い足場で戦えるかしら!!」


ツバサさんの言う通り、ルカリオが立っているのは壁だ。

空中を自在に飛べるボーマンダと打ち合うのは分が悪い。

だから、


千歌「骨!! 突き刺せ!!」

 「グゥォッ!!!!!」

ツバサ「!?」


爪を受け止めた骨が急にたわんで、その両端がボーマンダの腕に突き刺さる。


 「マ、マンダァッ!!!!!」


驚いて、飛び退くボーマンダ。

骨はあくまで波導のエネルギーだ。

硬化できるなら、軟化も出来る。

硬い先端だけ残して、得物を柔らかくし、攻撃をいなしながら、先端を突き刺した。

自前の武器だからこそ出来る芸当だ。

──だが、


 「ガァァァァッァブッ!!!!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!?」


そんなことを考えてる場合じゃなかった。

壁を抉り壊しながら、ガブリアスが壁に張り付くルカリオに、ジェット機のような速度でぶつかってくる。

猛スピードで突っ込まれたルカリオは──


 「グ、グォ……」


吹っ飛ばされ、呻き声をあげる。

二匹のドラゴンポケモンとずっと戦闘していたのだ、もう限界だ。


千歌「戻れ!! ルカリオ!!」


私はルカリオをボールに戻す。


 「ガァァァァァァブッ!!!!!!」


怒り狂うガブリアスはボールに戻ったルカリオを追いかけて、壁から飛んで来る。

ただ、何度も言うようにガブリアスは怒りに任せて直線的に突っ込んでくる。

軌道もタイミングも見切れる。


千歌「しいたけ──」
 「ワフッ」


繰り出した最後の手持ち、しいたけと共に迫るガブリアスの軌道を見切って、


千歌「“かたきうち”!!」
 「ワフッ!!!!」


ガブリアスを打ち上げるように、前傾姿勢から、後頭部による“ずつき”を下から上に向かって叩き付けた。


 「ガァァァァァブッ!!!!!!!」


音速で飛びながら、掬い上げられるように打ち上げられたガブリアスは──

──ドゴンッ!! と大きな音を立てながら、背後の壁面に激突し、


 「ガ、ァ、ブ……」


ついに気絶して、やっと大人しくなった。


千歌「や、やっと倒せた……」
 「ワフッ」

ツバサ「戻りなさい、ガブリアス」


残るはお互いトリミアンのしいたけとメガボーマンダ。


ツバサ「ボーマンダ!! “すてみタックル”!!」

 「マンダァッ!!!!!!!」


ボーマンダが飛び出す。


千歌「しいたけ! “コットンガード”!!」
 「ワフッ!!!!」


しいたけの得意技、“コットンガード”でしいたけが一気にもふもふと膨張していく。

──ドガスンッ と音を立てながら、ボーマンダが激突してくる。


 「ワ、ワォッ!!!!!」


強烈な突進に無傷まではいかないものの──しっかりと受け止める。


 「ワンッ!!!!」


頭を振るって、ボーマンダを追い払う。


ツバサ「! ボーマンダの攻撃を真っ向から受け止めるなんて、とてつもない防御力ね……」

千歌「それがしいたけの自慢なんで!」

ツバサ「でも、受け止めるだけじゃ、勝てないんじゃない?」


確かに、攻撃を受けるだけじゃ、ダメージは与えられない。でも……。


千歌「そうでもないですよ!」

ツバサ「……? 何言って……」


ツバサさんが訝しげに顔を顰めていると、


 「マン、ダ……ァッ……」

ツバサ「!? ボーマンダ!?」


ボーマンダは苦しげな表情をしている。


ツバサ「何!? こ、これは……どく状態!? いつの間に……!?」

千歌「さっき、攻撃を突き刺したときに……毒を注入しました!」

ツバサ「突き刺した……? ……ルカリオの骨か……!!」


──そう、ルカリオはただ怯ませるためだけに骨の形を変えて突き刺したわけじゃない。

あの骨を刺したのは、“どくどく”を決めるためだ。


千歌「そして、しいたけの防御力でボーマンダが力尽きるまで凌ぎきれば、私たちの勝ち!!」
 「ワォンッ!!!!!」

ツバサ「……なるほど。なら、もう残された選択肢はシンプルね!!」

 「マンダ……ァッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!! “げきりん”!!!」

 「マンダアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ボーマンダが怒りのエネルギーを解放して突っ込んでくる。


千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフゥッ!!!!!!」


さらにしいたけがもこもこと毛皮を増やして、防御を増す。

そこにボーマンダが突っ込んできて、爪や、尻尾、翼に、頭とあらゆる部位でめちゃくちゃに攻撃を仕掛けてくる。


 「ワッフッ!!!!!!」

 「マンダ、アァァァァアァァ!!!!!!!!!!!!」

ツバサ「攻撃を受けきれずトリミアンが倒れるのが先か!! もうどくが回ってボーマンダが力尽きるのが先か!!! 勝負!!」


盾と矛が全力でぶつかり合う。

メガシンカのパワーを載せた攻撃が、何度もしいたけに叩き付けられる。


 「ワッフッ……!!!!」


いくら防御が高いとは言え、至近距離で全力の攻撃を叩き込まれ続けるのは、さすがにかなりのダメージを貰う。


千歌「しいたけ!! 頑張って!!」
 「ワォーーンッ!!!!!!」

ツバサ「ボーマンダ!!! 怒りのパワーを全力でぶつけなさい!!」

 「マンダアァァァアァァァァァッッ!!!!!!!!!!!」


もうここまで来たら、本当に攻撃と防御の力比べ。


 「ワフッ!!!!!」

 「マンダアァァァァッ!!!!!!!!!」


防御を続けるしいたけ、暴れるボーマンダ、

不意に、

──ガスン、


 「キャゥンッ!!!!!?」


その内の一発が偶然、しいたけの急所を捉えてしまった。


千歌「しいたけ!!?」


しいたけの体が揺れる。


千歌「──頑張れっ!!!! しいたけっ!!!!!」
 「ワ、ォンッ!!!!!!!!!!!」


しいたけが私の声に呼応するように、気合いを込めて、地面を踏みしめる。


 「マンダ、アァァァァァッ!!!!!!!!!」


激しい攻撃は尚も続くが──次第に、


 「マンダ、ァァッ……!!!!!」


ボーマンダの雄叫びは力を失っていき、


 「マン、ダァァッ……!!」


そして、


 「マン、ダ…………」


毒によって、力尽きたのだった。


ツバサ「……よく頑張ったわ、戻って、ボーマンダ」


ツバサさんがボーマンダをボールに戻した。


千歌「しいたけ!!」


バトルが終わり、しいたけに駆け寄ると、


 「ワフ……」


しいたけは私の頬の頬をペロっと舐めたあと、


 「ワゥ……ッ」


ドサっとフィールドに崩れ落ちた。


千歌「……! ……しいたけ、ありがとう……よく頑張ったね……」
 「クゥーン……」


満身創痍の相棒を抱きしめる。


ツバサ「……本当にギリギリの戦いだったようね」


そう言いながら、ツバサさんがこちらに向かって歩いてきていた。


千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと望みます……。


>>380 訂正

千歌「はい……どっちが先に倒れてもおかしくなかった……」

ツバサ「……でも、一瞬でも長くフィールドに立っていた方が勝者。トリミアン──しいたけちゃんって言うのかしら? その子のガッツの勝利よ」

千歌「……はい!」

ツバサ「これで、四天王は何人目?」

千歌「えっと、ツバサさんで三人目です」

ツバサ「そう……じゃ、次が最後ね」

千歌「……最後──」


つまり、残るは……。


千歌「海未師匠……」

ツバサ「海未さんは強いわよ」

千歌「はい……知ってます」


他でもない、私を鍛えてくれた人。

海未師匠が居なかったら、ここまでは確実にたどり着けていなかった。

私にとっての恩師。

そんな海未師匠との約束──『ポケモンリーグで待っています』

やっとその約束が果たせる。


ツバサ「検討を祈るわ」

千歌「……はい……!!」


私は三人目の四天王を突破し──最後の戦いへと臨みます……。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ポケモンリーグ】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.62  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.59 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.65 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:185匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter089 『決戦! 四天王! ④』





──四つ目の部屋、入口に刃のマークがあった部屋。

踏み入れた部屋の奥では、


海未「────」


海未師匠が正座をして待っていた。


千歌「……」


私がバトルスペースにつくと、


海未「……来ましたか」


海未師匠はゆっくりと目を開ける。


千歌「師匠……」

海未「よくここまで辿り着きましたね、千歌。流石、私の弟子です」


海未師匠はすっと立ち上がり、ボールを放る。


 「ケンキ」「エルレ」「ストライ」「クワ」「──ギル」「──ムシャ」

海未「……今さら言葉は必要ありません」

千歌「……はい!」


私も手持ちを出す。


 「バクフ」「ワッフ」「ピィィ」「ワォン」「グォ」「ゼル」

海未「私の手持ちは見ての通り、ダイケンキ、エルレイド、ストライク、カモネギ、ニダンギル、グソクムシャの6匹ですが……」


海未師匠はそのうち三匹をボールに戻す。


千歌「……!」

海未「ここまで来て、手持ちを隠すような小細工をするつもりはありません。私はダイケンキ、ストライク、エルレイドの三匹で戦います」


手の内を包み隠さず、予め選出を私に教えてくる。……海未師匠らしい。


千歌「ムクホーク、フローゼル、しいたけ。戻れ」


私も3匹をボールに戻し。


千歌「私はバクフーン、ルガルガン、ルカリオの三匹で戦います!」

海未「……わかりました。他に何かありますか?」

千歌「海未師匠」

海未「なんですか」

千歌「……今日ここで、師匠を越えます」

海未「……いいでしょう。なら見せてください、貴方の実力を。四天王『剣心』 海未。いざ、尋常に……」


 「バクフー」

 「ケンキ」


お互い最初の手持ち、バクフーンとダイケンキが前に出る。──最後の戦いが、始まった。





    *    *    *




海未「ダイケンキ!」
 「ケンキ!!!」


海未師匠の一匹目ダイケンキは前足の鎧から刀を取り出す。

 『ダイケンキ かんろくポケモン 高さ:1.4m 重さ:94.6kg
  前足の 鎧の 一部が 大きな 剣に なっている。
  アシガタナと 呼ばれる 剣を 振るい 相手を 倒す。
  一睨みで 敵を 黙らせ 吼える だけで 敵を 圧倒する。』

どうやら、アシガタナと呼ばれる武器らしい。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーー!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾り、攻撃の態勢に入る。

──が、


 「ケンキ!!!!」


ダイケンキは一瞬でバクフーンに肉薄してくる。


海未「“シェルブレード”!!」

 「ケンキッ!!!!!」


アシガタナを振るって、斬りつけて来る。


千歌「“ブレイククロー”!!」
 「バクッ!!!」


その刀を、バクフーンが鋭い爪で受けるように切り裂くと──

刀は中腹から綺麗に折れてしまう。


海未「……!」

 「ケンキッ」


ダイケンキはすぐさまバクフーンから距離を取り、最初に取り出したのとは逆の脚から、もう一本のアシガタナを取り出す。


海未「“ブレイククロー”……炎熱の攻撃力を載せて、切断能力を向上させていますね」


師匠は切断され床に落ちたアシガタナを見てすぐさま分析をする。


海未「一筋縄ではいかなさそうですね……!! “れんぞくぎり”!!」

 「ケンキッ!!!!」


再びアシガタナを構え、ダイケンキが飛び出してくる。


千歌「もう一回!! “ブレイククロー”!!」
 「バクフーーー!!!!!」


再び、炎熱を爪に宿しながら、鋭い爪でアシガタナを受ける。

ぶつかる爪と刀、再び炎熱がアシガタナを──


海未「すぐに引いて、返しなさい!!」

 「ケンキッ!!!!」


攻撃が交わる瞬間、炎熱で焼ききれる前にダイケンキは刀を引き、


 「バクッ!!!?」


そして、目にも止まらぬスピードでバクフーンの籠手に当たる部分を上から叩く。


千歌「っ!! 速い……!!」


籠手を撃たれ、僅かに姿勢の崩れたバクフーンの喉元に──


 「ケンキッ!!!!」


ダイケンキのアシガタナが横薙ぎに一閃。


 「バクフッ!!!!!」


だが、バクフーンもただでは食らわない。

無理矢理、上半身を仰け反らせることによって、攻撃はバクフーンの首の皮一枚のところを薙ぐだけに終わる。


 「ケンキッ!!!!」


しかし、ダイケンキの“れんぞくぎり”は終わらない。横薙ぎに抜けた一閃がすぐに切り返して戻ってくる。


千歌「“ねっぷう”!!」
 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


だが、それが届く前にバクフーン体毛が爆発し、激しい“ねっぷう”を生み出す。

爆風を目の前で受け、ダイケンキが怯んだところに──


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バクフーーー!!!!」


炎を纏った拳を打つ。

その拳は──

──ガキンッ!


千歌「!」

 「ケンキッ」


ダイケンキの前足の鎧に防がれる。


海未「“メガホーン”!!」

 「ケンキッ!!!!」


そして、鋭いツノをバクフーンの鳩尾辺りに向かって、突き立ててくる。


千歌「……掴めっ!!」
 「バクフッ!!!」


バクフーンは身を引きながら、そのツノを両手で掴む。


海未「……そうこなくては!! “ハイドロポンプ”!!」

千歌「!」

 「ケンキィッ!!!!」

 「バクフッ!!!!」


ツノを掴んで無理矢理止めたところに、至近距離から“ハイドロポンプ”。

バクフーンは攻撃が直撃し、フィールドの後方まで一気に吹っ飛ばされる。


海未「畳み掛けなさい!! “アクアテール”!!」

 「ケンキッ!!!」


吹っ飛んだバクフーンに飛び掛かるように、追撃を仕掛けてくる。


千歌「バクフーン!! 走って!!」

 「バクフッ!!!!!」


バクフーンはすぐに起き上がり、私の背後を迂回しながら走り出す。

バクフーンが飛び出したすぐ後に──

──ビシャンッ! と音を立ててダイケンキの縦薙ぎ尻尾が床を打つ。


海未「“アクアジェット”!!」

 「ケンキッ!!!!」


海未師匠は攻撃を外しても冷静に追撃の手を打ってくる。


千歌「こっちも加速!! “ニトロチャージ”!!」

 「バクフーー!!!!」


二匹が走り回る中、考える。

ダイケンキは武器であるアシガタナと、自身の持っている鎧で攻撃を防ぐ、攻防のバランスが両立したポケモン。

それに加え単純にみずタイプであることも考えるとバクフーンの攻撃は遠距離でも近距離でも対応されてしまう。

じゃあ、どうするか……。


 「バクフッ!!!!」

 「ケンキッ!!!」


思案しながら、フィールドを駆ける二匹を目で追う。

その際──最初に斬り裂いたアシガタナが目に入る。

……相手が丈夫な鎧を持っていても、バクフーンの炎熱をしっかり伝えれば、攻撃は通る。

──梨子ちゃんとの戦いのときもそうだったけど、炎と言うのは分厚い壁などには正直あまり強くない。

炎が散ってしまうからだ。

対象全体を飲み込むほどの火力があれば別だけど、炎は壁に当たるとすぐに直進能力を失ってしまう。

普通の物理的な攻撃と違って、炎そのものに重さがあるわけじゃないからだと思う。

ただ……そんな炎でもって、梨子ちゃんとの勝負には勝利した。

そして、そこから一つのアイディアを思いつく。


千歌「……やってみる価値はある」

 「バクッ!!!」


いいタイミングでバクフーンが私の元に戻ってくる。


千歌「バクフーン!! やるよ!!」
 「バクッ!!!」


──集中。


千歌「……ふぅー……」


──拡がらないように──

── 一点に向かって──

──炎を通す──

イメージは──


千歌「……針のように──」
 「バクフ……ッ!!!!」

 「ケンキッ!!!!!」

海未「“メガホーン”!!」


ダイケンキが“アクアジェット”のスピードを載せたまま、ツノを突き立ててくる。

そのツノの頂点に向かって──指差した。


千歌「──“ひのこ”!!」
 「──バク!!!」


限界まで細く、集束した炎が飛び出し──


海未「……!」


ダイケンキのツノの先から、貝殻の兜を貫き進み──

──ボンッ!!!! と音を立てて、ダイケンキの鎧の内側で爆発した。


 「ケ、ンキッ……」


急に頭部に──しかも、兜の内側に爆発を食らったダイケンキは、白目を向いて、その場で気絶した。


海未「……あえて大きな火力の技ではなく、技の威力を絞って、一点を貫く精度を上げた……ということですね」


海未師匠はダイケンキをボールに戻しながらそう言う。


海未「行きなさい!! ストライク!!」
 「ストライーク!!!!」


前に出てきた二匹目、ストライクは、その場で“きあいだめ”を始める。


千歌「バクフーン!! もう一発……“ひのこ”!!」
 「──バクッ!!!!」


バクフーンが先ほど同様、鋭く“ひのこ”を放つ──が、


海未「──二度も通用すると思ってるんですか?」
 「ストライ──」


ストライクが構え、


海未「“しんくうは”!!」
 「ライクッ!!!!!」


真空を切り裂く衝撃波が、真っ向から“ひのこ”を掻き消し──


 「バクッ!!!!」
千歌「!」


そのまま、バクフーンもろとも、切り裂いた。


千歌「バクフーン!!」
 「バ、ク……」


バクフーンが倒れる。

今度は海未師匠の一撃必殺が決まる。


千歌「……戻れ、バクフーン」


私はバクフーンをボールに戻す。


千歌「ルガルガン!!」
 「ワォーーーンッ!!!!」


ルガルガンが雄叫びをあげながら飛び出す。


千歌「“アクセルロック”!!」
 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンは一気に加速し、壁や天井を跳ね回りながらストライクに迫る。

だが、海未師匠は猛スピードのルガルガンなど、大した問題だと思っていないのか、


海未「…………」


目を瞑っている。


 「ワォーーーンッ!!!!」


今まさにルガルガンが、ストライクに飛びかかろうと言う瞬間──


海未「──そこです、“かまいたち”!!」
 「ストライクッ!!!!」


── 一閃。


 「ギャウッ!!!」


空気の刃がルガルガンを捉え、切り裂いた。


千歌「……!! ルガルガン、大丈夫!?」

 「ワ、ワォンッ!!!」


どうにか耐えたようだ。

やっぱり海未師匠相手にただ速いだけじゃ、通用しない。

一点、正確に、相手の弱点をぶち抜く──。


千歌「“ドリルライナー”!!」

 「ワォンッ!!!!」


ルガルガンが回転を始める。

回転したまま、自身の鋭いタテガミの岩で──打ち抜く。これしかない。


海未「……シンプルですね、いいでしょう。受けて立ちますよ。ストライク!!」
 「ストライクッ!!!!」


真っ向から飛んで来るルガルガン、構えるストライク。


 「ワォォーーンッ!!!!」

海未「──“つばめがえし”!!!」
 「ストライクッ!!!!!」


二匹の攻撃が交差する。

結果──


 「ワォ……ン」


ルガルガンが静かに崩れ落ちた。


千歌「……くっ」


技の精度が足りなかった。


海未「……いえ、お見事です」

千歌「え?」

 「ストライ……」


数テンポ遅れて、ストライクも崩れ落ちる。


千歌「……!」

海未「相討ちですね」


これでお互い残るは一匹。


 「グゥォッ」

 「エルレ」


ルカリオとエルレイドが前に出る。


海未「……千歌」

千歌「なんですか」

海未「本当によくここまで辿り着きました。私は貴方がここまで辿り着き、今──師である私を越えようと全力で戦ってくれていることが何よりも嬉しいんです」

千歌「……」

海未「……ですので、私は師として……千歌、貴方の越えるべき壁として、エルレイドと共に私の磨き上げた心と、技と、体の全てをぶつけようと想います」


その言葉と共に、海未師匠が取り出したペンダントが七色に光る。

あれは──


千歌「キーストーン……!!」


──メガペンダントだ。

そして、呼応するようにエルレイドが光る。

大きな腕の刃がより一層大きく鋭くなる。


 「エルレ……!!!」

海未「さあ、来なさい!! 千歌!!」

千歌「はい!! ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」

千歌「メガシンカ!!」
 「グゥゥゥォッ!!!!!!!」


ルカリオが七色の光に包まれ、メガシンカする。

師匠と全力で戦うために──


海未「一撃です」

千歌「!」

海未「私は……次の一撃で貴方たちを仕留めるつもりで攻撃します。千歌、貴方もそのつもりで来なさい」

千歌「……はい!!」

 「グゥォッ……!!」

 「エルレ……」


二匹が構える。


海未「──……すぅー……」

千歌「──……ふぅー……」


トレーナーの私たちも呼吸を整え、集中。メガストーンを通して、ポケモンと意識を同調させる。


海未「──剣心一如……剣即ち、其れ心也」
 「エルレ」

千歌「行くよ、ルカリオ!! 波導の力を斬撃に!!」
 「グゥォッ!!!」


二匹が腕を引き、そして──斬る。


千歌・海未「「──“いあいぎり”!!!!」」
 「グゥォッ!!!!!!」 「エルレィッ!!!!!!!」


二匹の剣が── 一閃した。


千歌「…………」

海未「…………」


それは一瞬のことだった。

お互いの全力の斬撃がぶつかり合い──


 「グ……」


ルカリオが先に膝をつく。


海未「……勝負、ありましたね」


海未師匠が肩を竦めて、こちらに歩き出す。


海未「千歌──」

千歌「……」

海未「──貴方の勝ちです」

 「エル……レ……」


そして、ルカリオが膝をついてから数刻遅れて──エルレイドが崩れ落ちた。


千歌「……ありがとうございました!!!」


私は、ただここまで育ててくれた師匠に、万感の感謝を込めて──頭を下げるのだった。 





    *    *    *





海未「おめでとうございます、千歌。これで貴方は四天王を全員倒したことになります」

千歌「は、はい……えへへ、なんか実感沸かないな……」

海未「実感、ですか?」

千歌「だって、その……私、これでオトノキ地方のチャンピオンになったってことですよね……!?」


最強の四人のトレーナー、四天王を全て倒したと言うことはそういうことだろう。


海未「……ああ、そのことなんですが」

千歌「ふぇ?」

海未「まだ、貴方は戦わなくてはいけない相手が一人残っています」

千歌「え? どゆこと?」

海未「……現チャンピオンです」

千歌「……はっ」


そう言われて、梨子ちゃんが話していたことを思い出す。


 梨子『チャンピオンになれるのって……一人だよね』


だから、先に梨子ちゃんと決着を付けたわけだが、

最強の称号と言うのは、そのときの一番強い人、比較級で『最も』『強い』で『最強』なのだ。


千歌「すでにチャンピオンがいるのは、どう考えても当たり前……!!」

海未「広間に戻ると、中央にエレベーターがありましたよね」

千歌「あ、はい」

海未「四天王を全て倒した今、そのエレベーターで上の階へ昇れます。そこからチャンピオンの間に続く場所に行くことが出来ます」

千歌「わかりました。……ところで」

海未「なんですか?」

千歌「この地方で一番強いトレーナーって……」


誰なんだろうか……?


海未「……行けばわかりますよ」

千歌「……ま、それもそっか」

海未「千歌」

千歌「?」

海未「貴方は私の自慢の弟子です。次会うときは是非、新しいチャンピオンとして、会えることを祈っていますよ」

千歌「……! ……はい!!」





    *    *    *




中央広間に戻ってくると、


千歌「……あ」


それぞれの通路から光が伸び、中央のエレベーターへと集まっていた。


千歌「…………」


私がエレベーターの前に近付くと、

──ウイーンと無機質な音と共にエレベーターのドアが開く。

乗れということだろう。

私がエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり、勝手に上昇が始まる。

これから向かうんだ──チャンピオンのところに。


千歌「……っと、今のうちにポケモンたちの回復をしておかないと」


私はリュックから“きずぐすり”やら“げんきのかけら”やらを取り出して、ポケモンたちの治療を始める。


千歌「せっかくだから……最後にリュックの中の整理もしておこうかな……」


ごそごそリュックを漁りながら中身を確認していると──


千歌「ん……?」


なにやら赤い宝石のようなものを見つける。


千歌「……………………。…………なんだっけ、これ……?」


しばらく頭を捻って──


千歌「……あ、思い出した。旅立ちのとき、ダイヤさんから貰ったやつだ。えーと、確か……“ほのおのジュエル”だったっけ……? ほのおタイプの技を一回だけ強化してくれるってやつ」


すっかり存在を忘れていた。


千歌「今考えてみれば、使いどころが結構あった気がする……」


しかし、


千歌「今更使うタイミングあるかな……んー……」


バクフーンはここまでの戦いで炎の強化の仕方をいろいろと習得して来た。今更一発だけ威力が欲しいってタイミングがピンポイントに来るだろうか。

少し迷ったけど、


千歌「……まあ、なんかしら使えるかもしれないから、一応持っておこ」


私はとりあえずそのジュエルを上着のポケットに捩じ込んだ。

……間もなく、エレベーターは最上階へと辿り着く──





    *    *    *




エレベーターから出た先は、屋外だった。

ポケモンリーグの建物の遥か上、山から伸びた塔のような場所。


千歌「たっか……」


背後に目をやると、雲の向こうの眼下に小さくチャンピオンロードの山が見える。

そして、前方に視線を戻すと──

更に高いところへ続く階段が伸びている。


千歌「まだ昇るのか……」


私は階段を進んでいく。

その間はただひたすら階段で、他には特に何もない。

ただ、強いて言うなら周りに柵があるけど。

逆に言うなら柵しかない。

柵の向こうには空があって、そこからずーーっと下にポケモンリーグの建物が中にあった山肌が見える。

たぶん……と言うか確実に落ちたら死ぬな。

大人しく真っ直ぐ登ろう……。

しばらく階段を登っていると──大きな広場のような場所に出た。


千歌「うわ……何ここ」


そこは、庭園のような場所だった。

草木が生い茂り、奥の方には大きめの池があるし……しかもその池には滝まである。

滝を伝って上の方を見上げると、上にはまた少し小さめの庭園のような場所があるようだ。

そこにある池から水が落ちてきてるらしい。

そして──


千歌「……!」


そんな庭園の池のほとりに人影を見つける。


その人は、風に紺碧の髪を靡かせて、私を見つけると、優しく笑う。

──この笑顔は知っている。小さい頃からいっつも、私の傍で笑って見守ってくれていた存在。


千歌「──……果南ちゃん」

果南「や、千歌。よく来たね」


果南ちゃんは腰に手を当てて、にこにこしている。


果南「ここにお客さんが来るのは本当に久しぶりだよ。……それが、まさか千歌だなんて」


間違いない、つまり、


千歌「果南ちゃんが……チャンピオン……!」

果南「うん、そうだよ」

千歌「強いトレーナーなんだってことは、なんとなくわかってたけど……チャンピオンだったんだ」

果南「ま、わざわざ自分がチャンピオンだとか言わないからね……。それはそうと千歌」

千歌「なぁに?」

果南「……旅はどうだった?」

千歌「どう……。うーん……いろんなことがあった」

果南「例えば?」

千歌「楽しいこと、悲しいこと、大変なこと、怒ったり、泣いたり、笑ったり!」

果南「あはは、全然具体的に例えられてないね」

千歌「だって、一言じゃ言い表せないくらいいろんなことがあったんだもん……それと」

果南「……それと?」

千歌「……たくさんの人たち──友達、ライバル。そして、ポケモンたち──仲間たちと出会った」

果南「ふふ、そっか」

千歌「皆といろんな景色を見て、一緒に過ごして、一緒に笑って、一緒に戦って── 一緒に強くなってきた」

果南「…………」

千歌「旅に出て……本当によかった」

果南「そっかそっか。……ここはその旅の終着点」

千歌「……うん」

果南「千歌が見たもの、知ったもの、感じたもの──そして、ここまで辿り着いたその強さを、今ここで見せてよ」


果南ちゃんがボールを構える。


果南「難しいことは何一つない。ホンキで戦って、最後に立ってた方が、この地方のチャンピオンだよ」

千歌「……うん!」


私もボールを構えた。


果南「オトノキ地方『チャンピオン』 果南。千歌、全力でおいで! 私も全身全霊で戦うからさ……!!」

千歌「うん!!」


二つのボールが中を舞う。私の旅の終着点。本当の本当に最後のバトル──開始だ……!!




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【チャンピオンの間】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _●../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o回/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.65  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.62 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.60 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.61 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.67 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.59 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:190匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!

...To be continued.





■Chapter090 『最終決戦! チャンピオン・果南!!』





千歌「行くよ!! しいたけ!!」
 「ワンッ!!!」

果南「ニョロボン! 頼むよ!」
 「ニョロッ!!!!」


果南ちゃんのニョロボンが一気に飛び出して、拳を引く。


果南「“ばくれつパンチ”!!!」

 「ニョロボッ!!!!!」

千歌「“コットンガード”!!!」
 「ワッフッ!!!!!!」


──ガスン!! 強力な拳撃を自慢の毛皮で受け止める。


果南「しいたけ、久しぶりだね!! しばらく見ないうちに随分成長したみたいだね!」

 「ニョロォッ!!!!」


続け様に逆の手を使って、ニョロボンが拳を穿つ。

──ガスン!!


 「ワ、ワフッ」


二撃目、一瞬しいたけが怯む。


果南「二発じゃ足りない? じゃ、もう一発!!!」

 「ニョ、ロォッ!!!!!」


──ドガスン!!!!!

更に攻撃は止まず連続で最大級の攻撃がしいたけを襲う。


 「ワフッ!!!」


でも、


千歌「しいたけの防御は簡単には崩れないよ!!」


ここまででもずっとお世話になってきた私のパーティの最強の盾だ。

真っ向勝負で攻撃を受けることに関しては負けるつもりはない。


果南「──みたいだね!!」

 「ニョロッ!!!!」


四撃目──と、思ったらニョロボンは今度は拳ではなく、しいたけに掴みかかってくる。


千歌「!?」
 「ワ、ワォッ!!!?」


そして、ニョロボンはしいたけを掴んだまま、後ろ向きに転がり始めた。


果南「“じごくぐるま”から──」

 「ワ、ワォォ!!!?」

千歌「しいたけっ!?」


ニョロボンはしいたけを掴んで“じごくぐるま”で巻き込み、更に、


果南「“ともえなげ”!!」

 「ニョロボンッ!!!!!」


そのまま、投げ技に派生。しいたけは後方の池に投げ飛ばされる。


 「ワ、ワゥーンッ!!!!!!」


しいたけが鳴き声をあげながら──ザブーン! と大きな水しぶきをあげる。


果南「ニョロボン!! 一気に決めるよ!!」

 「ボンッ!!!!」


ニョロボンは受身を取りながら、素早い動作で体勢を立て直し、池に向かって走り出す。


千歌「ま、まずい!!」


いくら、しいたけの防御が自慢といっても、水中でニョロボンと肉弾戦をするのは、どう考えても無理だ。


果南「ニョロボン!! “ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!!」


またしても繰り出される“ばくれつパンチ”。


 「ワ、ワゥッ!!!!」


強烈な拳が水面に顔を出したまま無防備な、しいたけに襲い掛かる。

私は咄嗟に池向かってボールを投げた。


 「ボンッ!!!!!!」


強烈な拳が、池を打ち、しいたけが着水したときよりも大きな水しぶきがあがる。

──が、


果南「! 居ない!!」


拳を穿った先にしいたけの姿はなかった。


千歌「フローゼル!!」
 「ゼルルルルルッ!!!!!!」

 「ワ、ワフッ」


ボールから飛び出した、フローゼルが間一髪のところでしいたけを救出したのだ。


 「ワゥ!!!」


フローゼルの力を借りて、しいたけが岸に上がる、


フローゼルも池から飛び出し、岸からあがった瞬間、


 「ボンボンボンッ!!!!!!」


ニョロボンがクロールをしながらとてつもない勢いで二匹に迫る。


千歌「! フローゼル!! “れいとうビーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟にニョロボンが泳ぐ池に向かって、“れいとうビーム”を放つ。

冷凍光線は一気に池を凍結し──


 「ボン……ッ!!!!」


泳ぐニョロボンごと、こおりづけにするが──


果南「“ばかぢから”!!!」

 「ボォォンッ!!!!!」


果南ちゃんが指示を出すと、ニョロボンの全身の氷にヒビが入り、


千歌「う、うそっ!!?」


それどころか、

──バキバキバキ!!! と大きな音を立てながら、池に張った分厚い氷がニョロボンを中心にヒビが入り、割れ砕ける。


果南「氷なんて、誰でも気合いで砕けるよ!!」

千歌「そんなの果南ちゃんだけだよっ!!?」


なんて力任せな戦い方だ。

今まで戦ったどんなトレーナーよりもパワーに特化した強引な戦法だ。


千歌「っく!! フローゼル!! “ハイドロポンプ”!!」

 「ゼルゥゥゥーーーー!!!!!」


水中のニョロボンに向かって、激流による攻撃で牽制するが、


果南「ヌオー!!」

 「ヌオーー」


その二匹に間に放たれる、果南ちゃんの二番手、ヌオーが“ハイドロポンプ”を真っ向から防ぐ壁になる。

しかも──


 「ヌオーー♪」

千歌「き、効いてない!? というか、吸収してる!?」


“ハイドロポンプ”はヌオーに当たった傍から、どんどんとヌオーの肌に吸収されていく。


果南「ヌオーの特性“ちょすい”は水を一切通さず吸収するよ!」

千歌「……っ」


そして、ヌオーのフォローで自由になったニョロボンが、


 「ニョロォッ……!!!!!」

千歌「う、うそぉ!!?」


先ほど割り砕いた、馬鹿でかい池の氷を担ぎ、


果南「“なげつける”!!!」

 「ボンッ!!!!!!」

 「ワォッ!!!?」 「ゼルゥッ!!!!?」


岸に居る二匹に向かって投げつけてくる。


千歌「そ、それ防ぐのは無理!! ルガルガン!!」
 「ワォーーンッ!!!!」


私はルガルガンを繰り出す。ルガルガンは飛び出すと同時に身を捻って、回転して飛び出す。


千歌「“ドリルライナー”!!!」

 「ワォォーーーーンッ!!!!!!」


そのまま、落ちてくる巨大な氷塊に向かって突撃し、

──ギャギャギャギャッ!!! と大きな音を立てながら、空中で掘削する。

一気に氷塊の内部までドリルで穿ち、


 「ワォーーンッ!!!!!!」


──内側から粉砕する。


千歌「……よし!!」

果南「さすがだね! ニョロボン、“しんくうは”!!」

 「ボンッ!!!」


ニョロボンが水面に顔を出したまま、ルガルガンに向かって“しんくうは”を放ってくる。


千歌「っ!! “アクセルロック”!!」

 「ワォンッ!!!!!」


ルガルガンは砕けて舞い散る空中の氷の欠片を足場にし、

ピンボールのように跳ね回りながら、直進してくる“しんくうは”をギリギリで回避する。


千歌「ぶ、ぶな……っ!!」

果南「回避もさすが!! でも遅い!!」

 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」


回避に集中していた、その隙に池から飛び出してきたニョロボンが、気付けばフローゼルの目の前に走りこんできていた。


果南「“ばくれつパンチ”!!」

 「ニョロォッ!!!!!」


再び繰り出される、激烈な拳、


千歌「しいたけっ!!!」

 「ワォッ!!!!!」


私の咄嗟の声に反応した、しいたけが“コットンガード”を使いながら、再び攻撃を受け止めに前に出る。

──ドガスンッ!!!! と言う鈍い音と共に攻撃を受け止めるが──


 「ゥワゥッ……!!!!」

千歌「……!!」


しいたけが苦しげ表情を歪める。

昏倒まではいかなかったが、一度水に落とされたせいで、毛皮の膨張が弱く、ダメージを貰ってしまった。

そして、再び怯んだ隙に、


 「ボンッ!!!!!」


ニョロボンは素早く、しいたけに掴みかかる。


 「ワゥッ!!!?」

千歌「しいたけっ!!?」

果南「“ちきゅうなげ”っ!!!」

 「ボォンッ!!!!!」

 「ワォォォォン──」


ニョロボンはそのまま、真上に向かって、しいたけを投げ飛ばす。


千歌「ぐっ……!! “ソニックブーム”!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


だけど、私が思考を止めている暇はない。

前方のニョロボンに向かって、フローゼルが音速の衝撃波を放つ。


 「ボンッ!!!!!」


さすがに、攻撃に次ぐ攻撃の姿勢を取っていたニョロボンは対応しきれず、怯む。

そして次の指示は空中のルガルガンから──


千歌「ルガルガン!! そのスピードまま、ヌオーに突っ込め!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!」


ルガルガンが“アクセルロック”のスピードを維持したまま、岸辺でぼんやりとしているヌオーに向かって飛び出した。

まずは一匹だけでも……!!


果南「ヌオーは別にボーっとしてるわけじゃないよ!!」

千歌「っ!?」


この行動は読まれてた……!?


 「ヌ、オーー」


ヌオーが気の抜けるような声を出しながら、ルガルガンの方を見て、拳を引く。


千歌「!? や、やば!!?」


でも、もうルガルガンは止まれない。

一直線に突っ込むルガルガン、その鼻先に、


 「ヌオーーー」


ヌオーの腕が突き出てくる。


果南「“カウンター”!!!」

 「ヌオー」

 「ギャゥッ!!!!!?」


ルガルガンは悲鳴をあげながら、打ち返された。

自分のスピードが速すぎた故に、顔面に食らった拳のダメージが大きすぎる。

そして、それとほぼ時を同じくして──

──ズドンと大きな音を立てながら、


 「ワ、ワゥンッ……!!!!!!」


高く高く投げ飛ばされていた、しいたけが落下してくる。


千歌「しいたけ!! ルガルガン!!」

果南「ニョロボン!!」

 「ボンッ!!!!!」

千歌「!!」


ただ、果南ちゃんは畳み掛けるような展開の中、全く休む暇を与えてはくれない。

ニョロボンが再び拳を引く。

──“ばくれつパンチ”だ……!!

しいたけが投げ飛ばされ、狙われるのは当然目の前のフローゼル。


千歌「伏せて!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!」


咄嗟に叫ぶ回避の択。


 「ボンッ!!!!!」


拳が風を切りながら──奇跡的にフローゼルの頭上に抜けて行く。


千歌「!! や、やった!!!」


──が、


 「ボンッ!!!!」

千歌「!?」


ニョロボンはそのまま拳の軌道を強引に捻じ曲げて、打ち下ろしてくる。

──ダメだ、避けきれない……!!

そう思った瞬間、


 「ワォォォーーーーンッ……!!!!!」

果南「……!」


満身創痍のルガルガン飛び出してきて、


千歌「!!」

 「ギャゥンッ!!!!!」


フローゼルの代わりに拳にぶつかり吹き飛ばされる。


千歌「“アクアジェット”ォ!!!!」

 「ゼルルルゥッ!!!!!!」


その一瞬出来た隙に、前傾姿勢のフローゼルが一気に加速してニョロボンの足腰に向かって、至近距離から突撃する。


 「ボンッ!!!!?」

果南「しまった!? ニョロボン!!」


その進路は──


 「ワゥッ!!!!」


さっき落下してきた、しいたけのいる方だ……!!

しいたけが吼えながら走り出す。

フローゼルの“アクアジェット”によって、押されているニョロボンと挟み撃ちにするように、


千歌「しいたけ!! “ギガインパクト”!!!」

 「ワォォォーーーンッ!!!!!!!」

 「ボォォーーーンッ!!!!!!?」


ニョロボンの背中に向かって、最大級の破壊力をもって突進する。

その衝撃でニョロボンは派手に吹き飛んだ。


千歌「よ、よし……っ……まず、一匹……!!」


三匹掛かりでどうにかニョロボンを突破する。

だが、安心している暇は全くなかった。


果南「ヌオー!! “じならし”!!」

 「ヌオーーー」

千歌「だわぁっ!!?」

 「ワゥッ!!!?」 「ゼルッ……!!!」


ニョロボンを予想外の展開で討ち取られたと言うのに、果南ちゃんは全く動揺を見せずに次の手を打つ。

ヌオーがぐらぐらと地面を揺らし、私ともども咄嗟に対応出来ずに体勢を崩してしまう。


果南「“どろばくだん”!!」

 「ヌオーー」


ヌオーが、転んだ しいたけに向かって、泥で出来た巨大な爆弾を投げつける。

もちろん、体勢を崩した回避なんて出来るはずもなく。


 「ワッフッ……!!!!!?」


“どろばくだん”が、しいたけに直撃する。


千歌「しいたけっ!!」

 「ワ、ワゥ……」


しいたけ、戦闘不能だ。


 「ゼ、ゼルッ!!!」


だが、しいたけが狙われたお陰でフローゼルは立ち上がれた。


千歌「フローゼル!!」

 「ゼルッ!!!!!」


フローゼルは再び加速し、


 「ヌオーーー?」


ヌオーの横をすり抜け、


千歌「“たきのぼり”!!」

 「ゼルッ!!!!!!」


池に向かって落ちてきていた滝を伝って、上昇していく。


果南「へー、ここで逃げるんだ!」

千歌「……ぐ」


果南ちゃんが挑発してくるけど、我慢だ。

真っ向からのパワー比べじゃ勝ち目がない。

なら展開を有利に運ばせるために、一度高所を取る。

そして、更に、


千歌「行くよ!! ムクホーク!!」
 「ピィィィィ!!!!!!」


ムクホークが、ボールから飛び出し、脚を掴んだ私もろとも空に羽ばたく。

──果南ちゃんは飛べる手持ちを持っていない。

なら、高いところまで飛び立って、攻撃が届かない場所まで逃げてしまえばこっちが圧倒的に有利だ。


果南「なるほどね!!」


果南ちゃんは私の作戦の意図を汲んだのか、すぐさまボールを放る。

新手のようだが、構うもんか、


千歌「ムクホーク全力離脱──」


一気に上昇しようとした瞬間──


 「ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「!!!?」


ムクホークが何かの攻撃を食らって、


千歌「わぁぁぁっ!!!!?」


脚を掴んだままの私もろとも、吹っ飛ばされる。

回る視界の中、攻撃の飛んできた方向を、どうにか確認すると、


 「グドラ……!!」

千歌「キングドラ!!!?」

果南「キングドラ!! もう一発、“ハイドロポンプ”!!」

 「グドラッ!!!!!」

千歌「っ……!! “オウムがえし”!!!」

 「ピ、ピィィィィィ!!!!!!」


飛んで来る、“ハイドロポンプ”を強引に真似て返す──が、

ムクホークから飛び出した水砲はキングドラのものに簡単に掻き消され、そのまま“ハイドロポンプ”が迫ってくる。

相殺するには威力が全然足りない。


千歌「くっそ……!!!」


私は咄嗟に、ムクホークから手を放し、受身を取りながら地面に着地する。

身軽になった、ムクホークが“こうそくいどう”で急上昇し、

キングドラの攻撃は今度はどうにか掠る程度で済んだ。


果南「そう易々と、空に逃がすと思う?」

千歌「ぐ……!!」


その口振りから、やはり果南ちゃんは空までは追って来れないようだが、空に逃がさないように対策を打ってくる。一筋縄では行かない。

さらに気付くと、


 「ヌオーー」


ゆっくりではあるが、ヌオーが“たきのぼり”でフローゼルを追いかけ始めている。

もしこのままの状態で上側のフロアにヌオーが辿り着いてしまえば、お互いフローゼルにもヌオーにも指示が出来ない状態になってしまう。

五分の状態になれば、結局パワー負けすることが目に見えている。

だが、もうフローゼルは指示が届かない場所まで上昇してしまっている。

かえって、逃がしたことが仇になった。

気付いて、引き返してくれればいいけど……。いくらなんでも、それは都合が良すぎる。

とにかく……。

空中を旋回する、ムクホークに視線を戻す。


 「ピィィィィ!!!!!!」


高速で飛び周りながら指示を待つムクホーク。

高速軌道で回避体勢の今、どうにか次の作戦を考えなくちゃ──


 「──ピィィィィ!!!!!!?」

千歌「え!?」


ムクホークの悲鳴があがる。

原因は──見ていたからわかる。


 「グドラッ……!!!!」


キングドラによる狙撃だ。


千歌「ムクホークッ!!」

 「ピ、ピィィィィ!!!!!!!」


ダメージは負ったものの、どうにか無事で安堵する。

だが……。


千歌「あの動き回ってる、ムクホークを狙い撃ちしたの!!? 下から!!?」

果南「キングドラは“スナイパー”だよ。あれで回避してるつもりなの?」


果南ちゃんが得意気に言う。


 「グドラ……!!!」


キングドラが再び狙いを定めてくる。

──もうダメだ、考えてる暇がない。


千歌「“すてみタックル”!!!」

 「ピィィィィ!!!!!!!!!!」


避けられないなら、“すてみ”で戦う他ない。

ムクホークが十八番の突進攻撃で、空から一直線にキングドラに向かって急降下する。


果南「“ハイドロポンプ”!!!」

 「グドラァーーー!!!!!!!」


撃ち出される、水砲。

そこに向かって一直線に、


千歌「突っ込めぇぇ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!」


ムクホークは錐揉み回転しながら、“ハイドロポンプ”に突っ込み、

──撃ち出された激流の中を強引に突き抜け、一直線にキングドラに向かって落ちていく。


果南「うわっ、脳筋!?」

千歌「果南ちゃんに言われたくないよ!?」

 「ピィィィィ!!!!!!」

 「グ、ドラッ!!!!!!」


そのまま、“すてみタックル”が水面のキングドラに直撃する。

だが、威力をかなり“ハイドロポンプ”に殺されていたのか、全然致命傷になっていない。

もちろん、それは織り込み済みだ。

目的はあくまで肉薄。


 「ピィィィィ!!!!!!!」

 「グドラッ!!!?」


ムクホークは猛禽の爪を食い込ませながら、キングドラを掴み、持ち上げる。


果南「!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


甲高い鳴き声をあげて、気合いを入れながら、力強く羽ばたき、キングドラごと、一気に上空まで上昇していく。


果南「!? ま、まさか!!?」


天高くまで昇ったムクホークは、傍を落ちている滝よりも更に高高度で上昇したのち、

サマーソルトをして、地面に向かって急降下を始める。

重力のパワーを借りた、“すてみ”の一撃、


千歌「“いのちがけ”!!!!」

 「ピィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」


──ズドォォンッ!!!!! とド派手な音を立てて、ムクホークがキングドラもろとも、地面に落ちてくる。


果南「!! キングドラ!!」


その衝撃に、地面に亀裂が入り、砕けた地面が砂煙となって巻き上がる。

それが晴れると──


 「グ、ドラ……」

 「ピィィ……」


ムクホークとキングドラは気絶していた。

出来ればこのタイミングで道連れ技で自分の手持ちを減らしたくなかったけど……一方的にやられるよりは何倍もマシだ。


果南「……っく、戻れ」

千歌「戻って、ムクホーク!」


お互いポケモンをボールに戻し、次の手持ちを繰り出す。


千歌「行くよ、ルカリオ!」
 「グゥオッ!!!!」

果南「ヤドラン!」
 「ヤド」


こちらの5匹目ルカリオと果南ちゃんの4匹目ヤドランが対峙する。


果南「ヤドラン! “サイコキネシス”!」
 「ヤドー」


ヤドランが念動力を放ってくる。

自由を奪われるとめんどくさいこと、この上ない。


千歌「ルカリオ! “しんそく”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオは狙いを定められないように、一気に加速する。

そのお陰か、


 「ヤドーーヤドーー」


動きの鈍いヤドランは追いつけていない。


果南「……なら、“サイコショック”!!」
 「ヤドー」

千歌「“サイコショック”でも同じだよ!!」


狙いを定められないなら、当たらない。

──と、思った矢先。

──ガンッ!!!


 「グゥォッ!!!!?」

千歌「んなっ!?」


ルカリオが壁にぶつかった。

今の今までそこに壁なんてなかった……つまり、


千歌「“サイコショック”を設置した!?」


“サイコショック”は念動力を実体化させてぶつけて攻撃する技だ。

確かにこういう使い方をすれば、狙いが定められなくても当てられる。

“しんそく”で壁に激突し、怯んだところを、


果南「今度こそ捕まえた!!」
 「ヤド」

 「グゥォッ!!!!」


“サイコキネシス”で捕縛される。


千歌「ルカリオッ!!」


そのまま、サイコキネシスによって、ルカリオは空中を振り回される。


 「グ、グゥォッ!!!!!!」


そして、そのまま、水辺の辺りに思いっきり墜落させられる。


 「グ、ォ……!!!!」

千歌「ルカリオ!!! 大丈夫!!!?」


私はすぐさま、ルカリオに駆け寄る。


 「グ、グォッ!!!!」


どうにか無事のようだ。


果南「“サイコショック”!!」
 「ヤド」

千歌「!」


今度こそ、念波が私たちの周囲に具現化し、四方八方から、飛び掛ってくる。

回避──無理。

一瞬で判断を下し、決断。

やるしかない。


千歌「ふぅーーー……!!!」


呼吸を整え、ルカリオの波導と意識を同調させる。


千歌「撃ち抜け!!! “バレットパンチ”!!!」
 「グゥォッ!!!!!!」


──ダン、ダン、ダンッ!!!! と銃声のような音を響かせながら、弾丸拳が周囲の実体化した“サイコショック”を撃ち抜いていく。


果南「!! やるね、千歌!!」

千歌「……どういたし、まして……っ……!!」


集中して迎撃したため、軽く息を切らせながら、返事を返す。

そして、ルカリオは攻撃を退けた直後に、後方の池に片足をつけて、


千歌「“みずのはどう”!!」
 「グゥォッ!!!!!」


水を操り、一気に波立たせる。

それをヤドランに向かって飛ばすが──


果南「そんな技じゃ効かないよ!! “ドわすれ”!」
 「ヤド……」


ヤドランは更に気の抜けるような顔をする。


果南「“ドわすれ”は痛みすら忘れる技。そんな攻撃じゃダメージにならないよ」

千歌「……ぐ、“はどうだん”!!」
 「グゥォッ!!!!」


ルカリオから放たれた“はどうだん”が直撃するが、


 「ヤドォ……」
果南「無駄だって!」


ヤドランにはほとんどダメージがない。


果南「ま……“ドわすれ”はその分動きが更に鈍くなっちゃうのは玉に瑕だけど……」

千歌「……へー」

果南「……? 千歌、なに笑ってんの?」

千歌「……ふふん、いいこと聞いたと思って」

果南「……。千歌がそういう顔するときって大体ロクでもないこと考えてるんだよね。ヤドラン!! ルカリオが何かしてくるよ!!」
 「ヤァン……?」

果南「“ドわすれ”はもういいから!」


果南ちゃんはルカリオと私の動きをじっと見つめて確認する。


果南「……何してくるつもり? 千歌……!!」


──ヒュルルルルルルル。


果南「……? え、何この音?」


漫画にでも出てくるような、何かが落ちてくるような音があたりに響く。

その間も果南ちゃんは、私たちから目を離さない。


果南「何が落ちて…………──落ちてきてる!!!?」


果南ちゃんがハッとした顔で上を見上げた瞬間、


──ゴツンッ!!!

 「ヌオッ!!!!!」

 「ヤドッ!!!!!?」


頭上から落ちてきたヌオーの頭が、ヤドランの頭に直撃した。

二匹はそのまま、バタリと昏倒した。


千歌「ナイス!! フローゼル!!」

 「ゼ、ゼルゥッ!!!!!」


息も絶え絶え、ボロボロな状態のフローゼルが滝を降りながら、私に返事をしてくる。


果南「な……まさか、上からヌオーをヤドランの頭上に狙って堕とした……!?」

千歌「“かまいたち”で吹っ飛ばしてね!! フローゼルがまだ負けてなくて助かったよ!!」

果南「んなバカな!? トレーナーからの指示もなしにそんなこと出来るわけ……!!」

千歌「指示、してたよ」

果南「…………? ……まさか、さっきの“みずのはどう”……!!」

千歌「ニシシ、正解っ!」


そう、さっきの“みずのはどう”は攻撃のために使ったわけじゃない。

ルカリオの波導で作り出したシグナルを、池から滝を通じて、離れたフローゼルに指示を送るためだ。

もちろん、難しい指示は出来ないから、あくまで地上のヤドランの位置をなんとなく伝えて、ヌオーをそこに堕とす様に指示しただけだけど。


果南「……く、くく」

千歌「……?」

果南「まさか、こんな戦法使ってくると思ってなかったよ!! 面白くなってきたじゃん!!」


果南ちゃんは楽しそうに笑って、ヌオーとヤドランをボールに戻しながら、


果南「行くよ!! ギャラドス!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!」


5匹目、ギャラドスを繰り出す。


果南「“ぼうふう”!!!」
 「ギシャァァァァァ!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが雄叫びをあげると、突然周囲に“ぼうふう”が発生する。


千歌「ぐ……!!」


その“ぼうふう”は“たつまき”を巻き起こしながら、こちらに迫ってくる。


千歌「フローゼル!! “うずしお”!!」
 「ゼルッ!!!!!」


梨子ちゃんと戦ったときに使ったのと同様に、背後の水を巻き上げ、“うずしお”で相殺を狙う。

──が、


 「ギシャァァァァッァァ!!!!!!!」

千歌「いっ!!!?」


そんなことお構い無しに、“ぼうふう”と“うずしお”の向こう側から、巨大な尻尾が降って来た。


果南「“ドラゴンテール”!!!」

 「グゥォッ!!!?」 「ゼルッ!!!!」


二匹が尻尾の衝撃に吹き飛ばされる。

そのダメージで満身創痍だったフローゼルは、


 「ゼ、ゼル……」


さすがに倒れてしまう。


千歌「く……!! 戻れ、フローゼル!!」


ルカリオは……!?


 「グゥォッ!!!!」


まだ、立っている。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァ!!!!!!!」

千歌「!!」


ギャラドスが頭から突っ込んでくる。


果南「“かみつく”!!!」


突っ込んでくるギャラドスの頭には果南ちゃんが掴まっていて、すぐ傍で指示を出している。


 「グゥォッ!!!!!」


突進の勢いを載せたまま、ルカリオがギャラドスの大口に飲み込まれる。


千歌「ルカリオッ!!!」

 「グ、グォォォッ!!!」


だが、ルカリオは辛うじて、ギャラドスの大口の間で、両手両脚を上下に突っ張って耐えていた。


千歌「セ、セーフ!!」

果南「ギャラドス!! “かみくだく”!!!」
 「ギシャァァァッ!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!」


ギャラドスが顎に力を入れて、閉じようとする。


千歌「ルカリオ!! “かいりき”!!」

 「グゥゥォッ!!!!!」


動き回るギャラドスを走って追いかけながら指示を出す。

が、閉じる力とそれを開く力では圧倒的に抉じ開けるほうが不利だ。

“かいりき”のパワーでも押し負け始め、徐々に口がしまっていく。


千歌「ルカリオ!! メガシンカ!!」


メガバレッタが光り輝き、


 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオがメガルカリオへとメガシンカする。

一気にパワーを上昇させた、ルカリオが閉じられそうになるギャラドスの大口を押し上げる。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


雄叫びをあげながら、地面を這いずるように高速で移動する、ギャラドス。

ルカリオは一瞬片足だけ浮かしてから、ギャラドスが擦る地面に震脚をする。

そして、そのまま力を込めて──


千歌「“ともえなげ”!!」

 「グゥゥォァァァッ!!!!!!!!!」

果南「んなぁっ!!?」
 「ギシャァァァァァァ!!!!!!!!」


ギャラドスを下から掬い上げるように、後方に向かって投げ飛ばす。

──ズズン!! とギャラドスの巨体が地面を転がった。

その際にギャラドスに掴まっていた果南ちゃんも投げ出され、地面を転がる。


果南「いてて……」

 「ギシャァァァァァ!!!!!!」

千歌「よっし、ルカリオ!!」
 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオが地を蹴って飛び出す。


果南「!」


果南ちゃんは身を起こしていた最中だったため、指示が遅れる。

その隙に、ギャラドスの下顎から、上に向かってのアッパーカット。


千歌「“スカイアッパー”!!」

 「グゥォッ!!!!!」

 「ギシャァァァァァッ!!!!!?!?」


ギャラドスが大きく仰け反る。

地面に着地したルカリオは更に追撃のために、地を蹴り──


果南「──“げきりん”!!!」

 「ギャシャァァァァアァァァァァァァァアァッァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


──飛び出したルカリオを、ギャラドスが強引に身を捩り、体をぶつけて、


 「グゥォァッ!!!!!?」

千歌「ルカリオッ!!?」


ルカリオは地面に叩き付ける。

すぐに受身を取るが、


 「ギシャァァァァァァアァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂ったギャラドスは、回転しながら、頭からルカリオの方に突っ込んでくる。


千歌「“しんそく”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」


間一髪のところでルカリオはその場を離脱する。

──バガンッ!!! とド派手な音を立てて、ギャラドスが突っ込んだ地面は、


千歌「ひ、ひぇ!!?」


とてつもない威力の頭突きによって、綺麗な縦穴が完成する。


 「ギャシャァァァァァアァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


怒り狂うギャラドスは、すぐさまルカリオを追って飛び出す。


千歌「く……あれヤバイ!! 当たったら終わりだ……!!」


私もルカリオを追って走りだす。

その横で私と同じように果南ちゃんが併走してくる。


果南「ギャラドスーーー!!! “アクアテール”!!!!」

 「ギャシャァァァァァァァーーーー!!!!!!!!!!!」


ギャラドスが、大きな尻尾で広範囲を薙ぐ。


千歌「!? ルカリオ!! ジャンプ!!」

 「グゥォッ!!!!!」


ルカリオはどうにかジャンプをして回避するが、


千歌「指示聞こえてるの!!? あれで!!?」

果南「ま、大雑把な指示しか出来ないけどね」


果南ちゃんが得意気に笑いながら、鼻を鳴らす。

ただ怒り狂って暴れてるだけなら、どうにか怒りが収まるまで逃げ回ればいいと思ってたけど……。

大雑把でも、指示を聞けるなら話は別だ。

どこかで何かしらの攻撃が当たってしまう可能性が高い。

となると──


千歌「殴り勝つしかない!!! ルカリオ!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!!」


逃げ回るルカリオが、地面を踏みしめ、再び跳躍する。

身を捻りながら、背後に迫るギャラドスに膝を突き出す──


千歌「“とびひざげり”!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!!!」


思いっきり振るった膝蹴りが、ギャラドスの眉間に直撃する。


 「ギシャァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


ギャラドスは耳を劈くような鳴き声をあげる──が、

怯んでない。


 「ギシャァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」


そのまま、中空のルカリオに向かって、“ずつき”を繰り出す。


 「グゥォッ!!!!!!?」

千歌「ルカリオ!!!?」


ルカリオが“ずつき”によって地面に叩き落される。


 「グ、グォ……!!!!」


どうにか受身を取って、素早く立ち上がるが、もう限界が近い。

そんなルカリオに向かって、


 「ギシャァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


ギャラドスは“げきりん”が落ちついてきたのか、身を引きながら狙いを定める。


千歌「……!! 仕留めるつもりだ!!」


私は全身に思いっ切り力を込め、全身の筋肉をフルパワーで稼動させて、ルカリオの元まで全力疾走する。


果南「ギャラドス!!!」


果南ちゃんが指示を出そうとする。


千歌「──ルカリオ!!!」


私はルカリオの元に滑り込みギリギリで辿り着く。


千歌「やるよ!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!」

果南「“ギガインパクト”!!!!!」

 「ギャシャアァァァァァァァァッァァ!!!!!!!!!!!!!!!」


上から降って来る破壊の一撃、それに対抗するのは、もちろん──

私とルカリオの必殺技。


千歌「──“はっけい”!!!!!!」
 「グゥゥォッ!!!!!!!!!!!!」


両手をギャラドスの眉間にあわせ、突き出す。

インパクトの瞬間──ズ、ドンッ!!!! 大きな音を立てて、二匹の攻撃がぶつかる。

上から落ちてくるのがあまりの破壊力だったせいか、

受け止めているルカリオの足元が──ミシミシと音を立てて砕け始める。


千歌「ま、け、る、かぁぁ!!!!!」
 「グゥゥゥォァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」


強大なパワーが拮抗し、辺りに衝撃波を発生させながら、ぶつかり合う。


果南「ギャラドス!!! ぶっつぶせぇぇ!!!!!!」

 「ギシャアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「ルカリオォ!!!!!」
 「グゥゥゥゥォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


二匹の雄叫びがあがる。

死力を尽くした最大級の攻撃のぶつかり合い。


 「グ、ゥッ!!!!!!!!」


ルカリオが苦悶の表情を浮かべる。


千歌「大丈夫ッ!!!!」
 「!!!!」


私はルカリオの腕に手を添える。


千歌「集中して!!! 私たちなら絶対出来る!!!!」
 「グゥォッ!!!!!!!!!!!!!」


その瞬間、ルカリオの波導が一気に膨れ上がり──


千歌「いっけぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!」

 「──ギャシャァァァッァァァ!!!!!!!!!!!!」


轟音を轟かせながら、ギャラドスの頭が跳ね上がった。


果南「!! ギャラドス!!!」

 「ギャ、シャ、ァァァァァァ……」


そのまま、ギャラドスは後方に仰け反るようにして──ぶっ倒れたのだった。


千歌「は……はぁ……はっ……はぁ……っ……!!!」


どうにか、打ち勝てた。


千歌「ル、ルカリオ……やった、ね……!! ……ルカリオ……?」
 「…………」

千歌「……ルカリオっ……!!」


ルカリオは全てのパワーを出し切ってしまったのか、立ったまま気絶していた。


千歌「……ありがとう、よく頑張ったね」


労いの言葉と共に、ルカリオをボールに戻す。


果南「……まさか、ここまで追い詰められるか」


果南ちゃんもギャラドスをボールに戻しながら、そう言う。


私は立ち上がり、最後のボールを構える。

果南ちゃんも同様にボールを構え──


果南「お互い残るポケモンは最後の一体」

千歌「……うん」

果南「千歌の最後の手持ちはバクフーンだよね」

千歌「そうだよ。果南ちゃんは?」

果南「ラグラージだよ。……なんの因果かね、お互い最後は最初に貰ったポケモンで決着をつけることになるみたいだね」
 「ラグッ……!!!!!」


ラグラージがボールから飛び出す。

──最初に貰ったポケモン、と言うことは果南ちゃんはミズゴロウを貰って旅に出たということだろう。


千歌「バクフーン、行くよ!」
 「バクフーーー!!!!!」


私もバクフーンを繰り出す。


果南「千歌……これが本当に最後だ」

千歌「うん」

果南「一切の手加減なしの全力のぶつかり合い……!!」


果南ちゃんが左耳に掛かってた髪を手でかきあげると──そこには、貝殻の装飾のされたピアスがしてあった。

そして、その貝殻ピアスの内側に留められている珠が──七色に光る。

キーストーン。メガピアスが光っている。


果南「ラグラージ!! メガシンカ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!!」


ラグラージが光に包まれ──


 「──ラグゥッ!!!!!」


元から逞しかった身体は更に筋骨隆々となり、その中でも腕がより一層発達して、巨大になる。


果南「……さあ、全力で掛かってきな!!! 千歌!!!」

千歌「……行くよ!!! バクフーン!!!」
 「バクフーーーー!!!!!!!!!」


本当に本当の最後の一騎打ちの火蓋が──切って落とされた。





    *    *    *




千歌「バクフーン──」


集中する。

炎を一点に集中して打ち出す、この技。


千歌「“ひのこ”!!」
 「バクフッ!!!!!!」


集束された炎が一直線に飛んでいく。


果南「打ち返せ!!!」
 「ラァグッ!!!!!!」


ラグラージは拳を真っ直ぐ叩き込み──


千歌「いっ!!!?」


完璧に“ひのこ”を打ち返してくる。


千歌「わわわっ!!?」
 「バクッ!!!!」


私は咄嗟にバクフーンの身体に掴まり、直後バクフーンが走り出す。

──ドンッ!!!

私たちが今さっきいた場所に跳ね返ってきた“ひのこ”が炸裂し、爆ぜる。


千歌「な、なんで打ち返せるの!?」

果南「ラグラージはパワーがあるからね!!」

千歌「それだけで出来るわけないでしょ!!?」


たぶん、果南ちゃんはデタラメに攻撃を撃ってるだけじゃなく、あらゆる攻撃の精度がいいんだ。

高速・超威力の拳を振るいながら、“ひのこ”を芯で捉え、エネルギーのロスなく打ち返している。

ここまで必殺技を使い続けてきてわかったことだけど、完璧に攻撃が当たると、飛んで来た攻撃そのもののパワーを減衰させることなく綺麗に跳ね返すことも出来そうだとは思っていた。

それをいとも簡単やってくるとは思わなかったけど、


千歌「打ち返してくるんだったら、“ひのこ”で戦うのは向いてない……なら、“だいもんじ”!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!!!」


私を乗せて駆けながら、バクフーンが大の字の業炎を噴き出す。


果南「ラグラージ!! 構わず、ぶん殴れ!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージが力任せに拳を振るうと、“だいもんじ”すらも一発で掻き消されてしまう。

そして、そこからの反撃、


果南「思いっきり、振りかぶれ!!!」
 「ラァァァーーーァグッ!!!!!!!!」


ラグラージが空を拳で殴ると──


 「バクッ!!!!!?」
千歌「うぇぇ!!?」


バクフーンの身体が拳圧を受けて、後ずさる。


千歌「力任せすぎるでしょ!?」


メガシンカしてるとは言え、いくらなんでもパワーがデタラメすぎる。

恐らく遠距離で戦うのは無理だ。

……いや、ラグラージはどう見ても近距離タイプのポケモンだけど。

ただ、とてつもないパワー差があっても、近付けば近付くほど相手の呼吸も読みやすくなる。

私に勝機があるとしたら、そこの読み合いしかない。


千歌「バクフーン!! “ニトロチャージ”!!」
 「バクフッ!!!!!」


バクフーンは肉薄するために、一気に加速する。

“ニトロチャージ”は走り回りながら全身の筋肉を発熱させ、速度を向上させる技だから、掴まったままでは多少熱いが、今バクフーンから離れるわけにはいかない。


果南「!! 真っ向から来るんだね!! いいよ、来なっ!!」
 「ラァーーーグッ!!!!!」


向かってくるバクフーンに対して、ラグラージが大きな腕を引く。

またあの力任せの豪腕で殴り飛ばすつもりだろう。

──集中。

呼吸を整えながら、ラグラージをよく観察する。

恐らく威力を殺しきるには、あの拳の中心に向かって、こちらも大きな火力を叩き込む必要がある。

ただ、あれだけの火力をバクフーンの筋力だけで張り合うのは不可能だ。

だけど……一つ試してみたいことがある。

バクフーンの特徴の一つとも言えることが、技に応用出来るかもしれない。


千歌「ぶっつけ本番だけど……やるよ!!」
 「バクフッ!!!!!」

果南「ぶん殴れ!!!」
 「ラァァァーーーグ!!!!!!!」


ラグラージの拳が迫ってくる。

──あの拳の中心を完璧に狙え!!


千歌「“ほのおのパンチ”!!」
 「バァァーーークッ!!!!!!」


バクフーンがスピードを載せたまま拳を突き出す。

その拳はラグラージの拳とインパクトする瞬間に、

──ボォンッ!!!! と大きな音を立てて爆ぜる。


果南「!?」
 「ラグッ!!?」

千歌「!! 出来た!!」


ラグラージの腕を爆発する拳で弾き飛ばす。

──バクフーンの特徴……それは爆発する体毛だ。

これは火力の調整にも使っているし、バクフーンの戦いにはそもそも密接な要素だ。

もし、この爆発を一点に集中できたら……?

そう、


千歌「近接攻撃で火力が出せる!!」
 「バァァーーーークッ!!!!!」


バクフーンが続け様に拳を振るう。


果南「なるほどね!! 次から次へと、よく考えるね!!」
 「ラァァァーーーグッ!!!!」


ラグラージも再び拳で空を穿つ。

──ボゥンッ!!!

また、爆発する拳と相殺し合う。

二匹が超火力の拳を打ち付けあう。


千歌「──そこ!!」


──ボゥンッ!!!


千歌「──そこだっ!!」


──ボゥンッ!!!!


連続で攻撃の芯を見抜かないといけないのに果南ちゃんは何度も攻撃を連打してくるため、まったく休む暇がない。


果南「いいね、そういう風に新しい可能性を考えるの!!」

千歌「はぁ……!! はぁ……!!!」

果南「私も昔、チャンピオンと戦ったとき、誰も使ったことないような、見たことも聞いたこともない技でやられたこと、思い出すよ!!」

千歌「ぐ……っ!!! ──そこぉっ!!!」


──ボゥンッ!!


果南「結局一度も勝つことが出来ないまま、あの人はチャンピオン辞めてどっかに行っちゃったけどさっ!! でも、お陰で私も、あの人と同じように自分たちだけの技を……見つけたんだ!!」

千歌「自分たちだけの……!!! 技……!!?」


今、打ち合うのでも精一杯なのに、まだ上があるの……!?

一瞬ラグラージの攻撃が止み、


 「バクッ!!!!!!」


──ボゥンッ!!!!


バクフーンの爆炎拳が突き刺さる──が、


 「ラァァァァグッ!!!!!!!」


ラグラージは──ズン!! と、震脚しながら攻撃を堪える。

と、同時に──


果南「全部のみずのエネルギーを──拳に集めろ!!!」


どんどん、みずのエネルギーがラグラージの拳に集束していくのが目に見えてわかる。


千歌「……!!」


──あ、ヤバイ。

脳が警鐘を鳴らし始める。

この技はヤバイ。

直感でわかった。


果南「──ぶっとばせぇぇぇぇ!!!!!! “アクアハンマー”!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァァグッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」



──…………。

…………。


千歌「…………?」


気付いたときには、空が見えた。


千歌「な、にが……」


全身が痛い。

どうにか身を起こすと、


 「バ、ク……ッ」


バクフーンが倒れている。

バトルフィールドの奥の方で戦っていたはずなのに──私たちはフィールドの入口辺りに居た。


千歌「吹っ飛ば……された……っ」


遠くに居るラグラージに目をやると、


 「ラ、グ……ラグゥ……!!!!」


息を切らしたラグラージ、そしてそのラグラージの前方は爆弾でも落ちてきたのかとでも言わんばかりに、ラグラージの拳が炸裂した場所を中心に半球状に床が抉り取られている。


千歌「何、その……威力……っ」


ラグラージへの反動も大きいようだが、本当にとんでもない威力の技だった。


果南「ピカチュウの“ボルテッカー”を拳だけに集めて放つ技“ボルテッ拳”……それを参考にして作った技。本来“アクアテール”で使うエネルギーを“アームハンマー”に集束して、ね。……私たちだけのこの技に付けた名前は──“アクアハンマー”」


──のしのしと前方からラグラージが歩いてくる。


千歌「っ゛……バクフーン……っ!! 立てる……っ……?」
 「バ、クフーーーンッ……!!!!!」


バクフーンが力を振り絞り立ち上がる。


千歌「……行くよ……!!」
 「バクッ!!!!!!」


──私はバクフーンと一緒に走り出す。


果南「! まだ動けるのか……!!」
 「ラァァーーグッ」

果南「“アクアハンマー”は自分への反動もでかいから何発も連発出来ないし、チャージも必要だから無防備になる……一発で仕留めたかったんだけど」

千歌「“かえんほうしゃ”ァ!!!」
 「バクフーーーーッ!!!!!!」


バクフーンから噴き出す火炎。

だが、


 「ラグッ!!!!!」


またラグラージが拳で掻き消す。


千歌「っく……!!」

果南「……こうなったら、動き封じてもう一回やるしかないよね!!」

千歌「!?」

果南「“じしん”!!!」
 「ラァァーーーーグッ!!!!!!!!」


ラグラージが両の拳を思いっきり地面に叩き付け、床を粉砕しながら、大地を大きく揺する。


千歌「ぐっ!!?」
 「バクフッ!!!」


バクフーンともどもバランスを崩す、そこに向かって更に──


果南「“いわなだれ”!!!」
 「ラァァァーーーーグッ!!!!!!!」


粉砕した床を構成する岩石が雪崩れのように襲ってくる。


千歌「……!!!」


もうすでに満身創痍の私たちは避けることもままならず──

“いわなだれ”に飲み込まれる。


千歌「──ぐ……」
 「バク、フーーーンッ……!!!!!」


気付くと、

バクフーンが私の上に覆いかぶさるようにして、岩から庇ってくれていた。


千歌「バク、フーン……あり、がと……」
 「バク……」


周囲は岩に飲まれ、ほとんど身動きが取れない。

岩がない部分は天に一箇所だけ小さく見える穴だけだ。


果南「──千歌、生きてる?」


そこを通して外から、果南ちゃんの声が聞こえてる。


千歌「どうにか……ね……っ」

果南「……まだやる?」

千歌「もちろん……っ……!!」

果南「そ。……それ聞いて安心した……!!」
 「ラァァーーーグッ!!!!!!!」


ラグラージの鳴き声、そして穴の先から、ラグラージの大きな拳が再びみずエネルギーを充填している姿が見える。


果南「ラグラージ……行くよ!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!」


──“アクアハンマー”が来る……!!


 「バクフ」


バクフーンが小さく鳴いて、私の方を見る。


千歌「大丈夫……」


私は傍らのバクフーンを撫でた。


千歌「……私は最後まで、諦めない」


勝負が完全に決着する、その瞬間まで。


 「バクッ」


バクフーンが頷く。


千歌「いつだって……二人で励ましあって……最後まで戦ってきたもんね……」
 「バクッ!!!!」


バクフーンの背中から爆炎が噴き出す。


千歌「懐かしいね、この状況……まるで、キミがヒノアラシだったとき、初めてクロサワの入江で出会ったときみたいだね……」
 「バクフッ!!!!!!」


あのときは私は外にいたけど、


千歌「今は……一番そばで一緒に戦ってるね……」
 「バクフッ!!!!!!!!!!」


背中の炎が一気に火力を増す。


千歌「──私のことは気にしなくていいっ!!!!! 全力の炎でぶっ飛ばせ!!!!!!」
 「──バクフーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

果南「ラグラージ!!!! “アクアハンマー”!!!!!」
 「ラァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!」

千歌「バクフーン!!!!!! “ふんか”!!!!!」
 「バクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!」


上から迫る、水撃の拳と、下から噴き出す、業火の炎がぶつかり合う。


千歌「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「バクフーーーーーーンッ!!!!!!!!!」

果南「押し潰せぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 「ラァァァァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」


二匹の全力がぶつかり合い、衝突するエネルギーが競り合いながら一気に膨張する。

──だが、

優勢なのは──


 「ラァァァァァァァァアァァーーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──ラグラージだった。


千歌「……!!!!」


弾ける、みずのエネルギーが上から私たちを押し潰す。


千歌「──……がっ……!!!」
 「バ、ク……!!!!!」

果南「これで……終わりだぁぁぁぁぁ……!!!!!」
 「ラァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!!」


──エネルギーが膨れ上がる。……強烈な衝撃を直上から受けて、意識が飛びそうになる。


千歌「…………ぅっ…………」

果南「はぁ……はぁ……!!!」


私たちの動きを封じるために使った、“いわなだれ”の岩もほとんどが吹き飛んでしまう。

私たちが押しのけることすら出来なかった、あの岩たちが消し飛ぶほどの威力を叩きつけられた。


千歌「…………ぐ……」

果南「千歌……終わり、だね……っ」


メガシンカの同期のせいか、大技を使ったラグラージと同じように息を切らせる果南ちゃん。


果南「ホントに……強く……なった、ね……っ……うかうか、してたら……すぐに、追い抜かされ──」

 「バク、フ……」

果南「……! なんで……」

千歌「…………は、……ぁ……っ」
 「バ、ク……」

果南「なんでまだ立てるのさ……」

千歌「…………相棒が、まだ……立ってる、から……」
 「バク、フーーーーン……!!!!」

果南「もう、動けないでしょ」

千歌「……そんなの……知ら、ない……」

果南「わからずや……千歌のそういうところ、昔っから──大好きだよ」

千歌「……ふふ」


ラグラージの拳に再びエネルギーが集まっていく。


果南「……ラグラージ!!!!!」
 「ラァァァァーーーーーグッ!!!!!!!!!」


ラグラージの拳が──向かってくる。

もう身体がロクに動かない。バクフーンも同じだよね。

でも──


千歌「諦めたりなんか──するもんか……!!!」
 「バク、フーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中に炎が滾る。


千歌「──“かえんほうしゃ”!!!!!」
 「バクフーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」


至近距離、迫る拳に向かって、バクフーンの“かえんほうしゃ”が噴き出される。


 「ラァァァグッ!!!!!!!!!!!!!」
果南「これで、本当に終わりだよ……!!! 千歌ァッ……!!!!」

千歌「ま、だ、だァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 「バァァァクゥゥゥゥ、フゥゥゥゥッゥーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの雄叫びとともに、火力が倍──いや3倍、4倍、いやもっともっと大きな火力になる。


果南「ぐっ!!? 火事場の馬鹿力!? でも、それだけで私たちの“アクアハンマー”は越えられない!!!!」
 「ラァァァァァァアァァァァグゥゥゥゥッ!!!!!!!!!!!」


炎がどんどん押されて行く。


千歌「もっとぉ!!!!! もっとだぁぁぁぁ!!!!!!」
 「バァァァァァァクフゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


もっとだ、もっと火力を増すんだ、

──そのとき。

ポケットが熱くなる。


千歌「──“ほのおのジュエル”……!」


これは、ポケモンが使うものだった気がするけど……何故か、ジュエルは私に反応して、赤く、熱く──光っていた。


果南「!? な、なにっ!!?」

千歌「…………」


ジュエルを握り締める。

──ドクン。

ジュエルから、エネルギーが溢れてくる、そして、それが傍らのバクフーンに拡がって行く。

その中で、ふと──新しい技が見えた気がした。


千歌「バクフーン……」
 「──バクッ」

千歌「一緒に戦おう──最後まで……!!!!」
 「バクフーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!」


バクフーンの背中の炎が──さらに激しく、燃え上がる。


果南「くっ……!!!? ラグラージ!!!!!!」
 「ラァァァァァァァァグッ!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「果南ちゃんっ!!!!!! ラグラージッ!!!!!!」

果南「!!!」

千歌「これが、私と、バクフーンの!!!!!! 全身全霊、全力の炎だよ……っ!!!!!!!」
 「バァァァァァァァァーーーーーーーーーー」


バクフーンの噴き出す炎が更に勢いを増して、どんどん、どんどんどんどん膨張していく。

バクフーンとの絆が生み出した──最強の炎が、


千歌「────“ダイナミックフルフレイム”!!!!!!!!!!!!」
 「バァァァァク、フゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


膨れ上がった炎は、どんどん膨張し──


果南「……マジか」


全てを飲み込み──周囲全てを灼熱の爆炎と共に──吹き飛ばした──





    *    *    *




果南「…………」


果南ちゃんが大の字になって横たわっている。


千歌「………………ぅ……」


もう私も立っていることは出来なかった、ふらふらとよろけて、倒れそうになる。


 「バク」

千歌「……!」


そこをバクフーンに支えられる。


千歌「ありがと、バクフーン……」
 「バク」

果南「…………最後の最後で……Z技……使うなんて……」

千歌「……? ……Z技……?」

果南「……さっきの技……そういう名前なの。本来、Zクリスタル……ってのが、ないと……使えないはず、なんだけど……ね」

千歌「そう、なんだ……なんで、使えたんだろ……」

果南「さあね……ポケモンとの絆と、Zパワーリングって言う……強化アイテムで、使うらしいけど……土壇場で似たような、条件が、揃ったのかもね……」


辺りを見回す。

──Z技によって、庭園はもはや見る影もなく、丸焦げになっていた。

……いや、私たちが使った技だけど。

そして、その中で、


 「ラ、グ…………」


ラグラージが戦闘不能になって横たわっていた。


果南「…………ははは」


果南ちゃんが突然笑い出す。


千歌「……果南ちゃん?」

果南「ホント……ポケモンとトレーナーの可能性は、面白いね……っ」


果南ちゃんはそう言いながら、本当に可笑しそうに笑う。


果南「こんな戦いになるなんて……考えてもみなかった。……最後の最後で、ポケモンの新しい可能性を……見れた気がするよ」


そう言いながら、果南ちゃんは──


果南「い、つつ……っ」


起き上がろうとする。


千歌「か、果南ちゃん……!?」

果南「……千歌……っ」


果南ちゃんがよろよろと歩いてきて、

今にも倒れそうな足取りのまま私たちに近付いて──手を差し出してきた。


千歌「……!」

果南「本当に……本当に楽しい、最高のバトルだったよ……!!」

千歌「……うんっ!!」


私は、果南ちゃんの手を、握った。

もうお互い、まともに動くこともままならないはずだったのに、

その握手だけは──お互いの健闘を心の底から讃えあう、この握手は、

お互いとても力強い握手だったと言うことを、私は一生忘れることはないと想う……。




■FINAL Chapter 『でんどういり』





あのあと、ボロボロになった私たちは、戦闘後しばらくしてからチャンピオンの間に上って来た海未師匠の応急処置を受けて、やっとまともに動ける状態になりました。

それが、あの戦闘から半日経ってからのこと──


海未「本当に……ボロボロですね」


もはや元の原型がなくなってしまったフィールドを見て、海未師匠が肩を竦める。


果南「全くね……ま、私にはもう関係ないし」

海未「……淡白な物言いですね」

果南「“チャンピオンの間”は……もう新チャンピオンのものだからね」

千歌「え……いらない……」

果南「まあまあ、そう言わないの」


果南ちゃんはそう言いながらケラケラ笑う。


千歌「いやでも……もうただの瓦礫の山だし……」

果南「千歌がやったんじゃん」

千歌「いや、そうだけどさ……」

果南「それより、行こうか」

千歌「? 行く? どこに?」

果南「あそこ」


果南ちゃんが指差す先──ここチャンピオンの間の最奥から、更に上に続く階段。


果南「……あの先に、殿堂入りの間がある」

千歌「殿堂入りの間……」

果南「あそこで、千歌と、一緒に戦い抜いたポケモンたちを永遠に記録する」

千歌「!! ……うん……!」


私は殿堂入りの間に向かって、足を踏み出そうとしたとき、海未師匠がその場に棒立ちなのに気付き、


千歌「海未師匠は……?」


思わず訊ねてしまう。


海未「“殿堂入りの間”は歴代チャンピオンしか足を踏み入れることは出来ません。ここで待っていますよ」

千歌「そっか……行って来ます」


私はそう行って、階段を歩き出す。


果南「……海未」

海未「? なんですか?」

果南「長い間、世話になったね」

海未「……世話した覚えはありませんよ」

果南「……言われてみれば、世話された覚えもないや」

海未「よく言いますね」

果南「お互いね」





    *    *    *




──殿堂入りの間。

そこはだだっ広い空間の中央に──大きな装置が置いてあるだけの部屋だった。


果南「千歌、そこに手持ちのボールをはめてあげて。一匹ずつ登録するからさ」

千歌「……うん!」


一匹ずつ、ここまで戦ったポケモンたちを──登録していく。


    *    *    *



 『No.157 バクフーン♂/バクフーン
  :Lv.75 特性:もうか  おや:千歌
  おくびょうな 性格。
  Lv.5のとき クロサワの入江で 出会った。』


────
──

 『──ごめんね……。研究所にいたのに、突然こんなところ連れてこられて……初めて見る野生ポケモンに追いかけられて、怖かったよね……』
  『ヒノ…』

 『震えてたね……すっごい怖い思いしたんだよね……。ごめんね。もう少し早くチカたちが研究所に来てれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに』
  『…………』

 『……でも、もう大丈夫だから……今助けるから……!! ──私はキミのパートナーだから……!!』
  『ヒノ…!』



 『……こうさ──』
  『──ヒノオオオオオオ!!!!!』

 『!? あ、あっつ!!? ヒ、ヒノアラシ……?』
  『ヒノッ!!!』

 『──そうだよね……。……私、言ったもんね──一緒に強くなろうって……!!』
  『ヒノッ!!!』

 『──負けるもんかっ!!!!』
  『ヒッノォ!!────マグッ!!!』

 『ありったけの!!!!! “ひのこ”を!!!!!!』
  『マグゥゥゥッ!!!!!』

 『やきつくせえええええ!!!!!!』
  『マグウウウゥゥゥゥゥ!!!!!!』



  『マグゥ──バグフー…!!』

 『進化した……!! やったー!! バクフーン!!』
  『バクフーン!!!』



──
────


バクフーン。

ヒノアラシのとき、クロサワの入江で出会って、ずっとここまで旅をしてきた最初のパートナー。その炎でいつでも私の行く道を照らしてくれる最高のパートナー。




    *    *    *




 『No.676 しいたけ ♀/トリミアン
  :Lv.68 特性:ファーコート おや:美渡
  のうてんきな 性格
  ウラノホシタウンで タマゴから うまれたようだ。』


────
──

  『ワンッワォゥ!!』
 『わわ!? なんだ、しいたけか……』



 『しい……たけ……』
  『ワゥ』

  『ワゥ…』
 『えへへ……相変わらず、しいたけは暖かいね……』
  『クゥーン…』



 真っ白な視界。辺りは“ふぶき”による風の音しかしない。寒くて、冷たくて、前も見えず、何もわからなくて怖い。でも……。

 『私には……しいたけがいる』
  『ワォン』

 誰よりも心強い、ちっちゃい頃から私を守って、そばに居てくれた、しいたけが──。



──
────


しいたけ。

昔から、私の傍に居て、一緒に育ってきたポケモン。最後の最後までここぞというときに頼りになる子だった。




    *    *    *




 『No.398 ムクホーク♂/ムクホーク
  :Lv.65 特性:すてみ おや:千歌
  いじっぱりな 性格
  Lv.10のとき 2番道路で 出会った。』


────
──

  『ピィィィィィ!!!!!!』

 『……よし、決めた……!』

 『キミは絶対、チカが捕獲するんだから!』

  『ピィィィィィィ!!!!!!』



  『ピィ…』

 『ムックル? 寒いの……?? ど、どうしよ……!!』
  『ピ、ピィィィィ──』

 『…………あ。…………進化した……!!』
  『ピィーー』

 『えへへ! ムクバードーっ!』
  『ピピィ!』



  『ピィィイイイイイイイ!!!!!!!!!』

 『ムクホークー!! 調子どうー!?』
  『ピィイイイイイイイ!!!!!!!!』



──
────


ムクホーク。

ムックルのときに初めて自分の手で捕獲したポケモン。私の旅の切り込み隊長を努め、私の翼となってくれた。




    *    *    *




 『No.745 ルガルガン♂/ルガルガン(たそがれのすがた)
  :Lv.66 特性:かたいつめ おや:千歌
  わんぱくな 性格
  Lv.26のとき 4番道路で 出会った。』


────
──


  『ワンッ ワン』

 『──待て』
  『ワンッ』

 『お手』
  『ワン』

 『よしよし、いい子だね。食べていいよー』
  『ワンッ ワンッ』



  『クゥーン』
 『イワンコ……』

  『クゥン?』
『一緒に来る?』

  『クゥーン』
  『あはは、そればっか……。君はホントにマイペースだね……。……明日は良い天気になりそうだね……』

 『イワンコ、夕日好きなの?』
  『…』

 『夕日、綺麗だね』
  『…』



  『ふふ……』

  『ワンッワンッ!!!!』

 『──私たちはもう、キミの仲間だよね……っ!!! イワンコッ!!!!!』

  『ワンッ──ワォオーーーーーーン』

 『“アクセルロック”!!!』
  『ワォーーーーン!!!!!!』



──
────


ルガルガン。

最初はルガルガンの群れから追い出されたイワンコだった。進化先の姿がわからない子を引き取って、一緒に戦い、今の姿になって、ここまで前線で戦い続けてくれた。




    *    *    *





 『No.448 ルカリオ♂/ルカリオ
  :Lv.73 特性:せいぎのこころ おや:千歌
  ようきな 性格
  セキレイシティで タマゴから うまれた。』


────
──



──パキ、パキパキ。

 『ん──』
  『リュオ…』

 『か、かわいい……!』
  『リュォ…?』

 『リオル……かわいい』
  『リュオ』

 『! チカが“おや”だってわかるんだね』
  『リュォ』

 『リオル、よろしくね』
  『リュオ』



 『リオル!! 避けて!!』
  『リオ…』

 『リオル!!』
  『リオ…──』

 『な……』
  『──フー…』

 『進化……した……?』



 『皆が信じてくれた。……私が旅して、歩んできた道は繋がってたんだって、実感した。……そんな皆が傍に居てくれる。なんか、それだけで不思議と……勇気が湧いて来る』
  『グゥォッ!!!!!』

 『なんかチカ、今ね……負ける気がしない……!!』
  『グゥォッ!!!!!』

 『波導の力を斬撃に──』
  『グォッ!!!!』

 『──……“いあいぎり”!!』
  『グォァッ!!!!!!!』



──
────


ルカリオ。

メガシンカを一緒に経験し、ずっとエースとして頑張ってくれた相棒。ルカリオと切り開いた道は数知れない。きっとこれからも私の力になってくれることだろう。




    *    *    *




 『No.419 フローゼル♀/フローゼル
  :Lv.66 特性:すいすい おや:千歌
  ゆうかんな 性格
  Lv.47のとき スルガ海で 出会った。』


────
──



『そこに、キミの大切なモノがあるんだよね……!! でも、周りをただ攻撃するだけじゃ、ダメなんだよ……っ!』
 『ゼル…!!』

『ここに暮らしてる、いろんな人たちと、ポケモンたちと、助け合って一緒に守ろう……?』
 『ゼル…』

『怖く……ないから……ね?』
 『ゼル…』

『大丈夫……キミの大切なモノはきっと、チカにとっても大切なモノだから……』
 『ゼル…』



 ……私……このまま、死ぬのかな……。──もう自分が上に流されてるのか、下に流されてるのか。上下左右、前後ろすらも全くわからない。

 ……ああ、こんなことなら……。泳げるポケモン──捕まえておくんだったな……。……私の意識が、ぶくぶくと……海に沈んで行く、中で。

  『──ゼル……!!!』

 聞き覚えのある鳴き声がしたと、思った──。



 『キミ……!! コメコで会ったブイゼル君だよね!?』
  『ゼルルルッ!!!!!』

 『来てくれたんだね……っ!!』
  『ゼルッ!!!!』



──
────


フローゼル。

絶対絶命だったときに、コメコシティで知り合ったブイゼルが、進化して駆けつけてくれた。その後は一緒に道中を共にし、私が海を渡るときにその力を貸してくれた。


    *    *    *



千歌「バクフーン……。しいたけ……。ムクホーク……。ルガルガン……。ルカリオ……。フローゼル……。皆、ありがとう……。皆が居てくれたから、私……ここまで来られたよ……!」

果南「……そして、最後に」

千歌「……?」

果南「千歌も登録しないと」

千歌「わ、私……?」

果南「そうだよ。そのポケモンたちと一緒にここまで歩んできたのは、紛れもなく千歌なんだから」

千歌「……うん、わかった」


 『 千歌
   でんどういり おめでとう! 』


千歌「……えへへ」

果南「……さて、じゃあ帰りますか」

千歌「ん、帰る?」

果南「ウラノホシにね。報告することいっぱいあるだろうしさ」

千歌「……うん、そうだね! 皆! 出ておいで!!」
 「バクフッ!!!!」「ワン、ワォゥ!!!」「ピィィ、ピィィィィィ!!!!!!!」「ワォォーーーーンッ!!!!!!」「グゥォッ」「ゼルルッ!!」

千歌「皆! ウラノホシタウンまで競争だよ!!」

 「バクッ!!!!!」

 「ワンワゥッ!!!!」

 「ピィィィィィ!!!!!!!」

 「ワォーーーンッ!!!!!!!」

 「グゥォッ!!!!!!」

 「ゼルゥッ!!!!!!!」


一人と六匹で同時に駆け出す。


果南「って、走って帰るつもりなの!? ……まあ、いいけどさ」

千歌「さあ、みんな!!! 一緒に行こうーーーー!!!!!」


私たちは──どこまでも駆けて行く。

一緒に──どこまでも一緒に……。




>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウラノホシタウン】
 口================= 口

  ||.  |⊂⊃                 _回../||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||. ⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  ||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  ||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  ||
  ||.      /.         回 .|     回  ||
  ||.   _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||./              o●/         ||
 口=================口


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.75  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.68 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.65 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.66 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.73 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.66 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:192匹 捕まえた数:15匹


 千歌は
 レポートを しっかり かきのこした!





    *    *    *





──
────
──────
────────





    *    *    *




──全ての戦いを終え、それなりに時間が経ちました。

あの後、皆がどうなったのか……少しだけ話しておこうかな。

──まず梨子ちゃんの話。


梨子「お母さーん?」

梨子母「なにー??」

梨子「私のイーゼルどこあるか知ってるー?」

梨子母「イーゼル……なんでそんなもの失くすのよ……」

梨子「あはは……あっちこっちで絵描いてたから……」

梨子母「全く……私は知らないわ。ポケモンたちにでも探してもらいなさい。あ、メガニウムとチェリムは夕飯のお手伝いしてくれてるから、他の子に頼んでね」

梨子「……はーい」
 「ヴォッフ」

梨子「あ、ムーランド、もしかしてどこにあるか知ってるの?」
 「ヴォッフ」

梨子「ち、ちょっと待ってよー! 今いくから、服引っ張らないでってー……!!」


梨子ちゃんは旅が全て終わった後、タマムシシティに戻って行きました。

今でも頻繁に連絡を取り合っていて、最近はよく絵を描いたり、曲を作ったりしてるって言ってたかな。

なんか、いんすぴれーしょんが止め処なく溢れてきてしょうがないんだってさ。

──これは余談だけど、梨子ちゃんがこの旅で見て、感じた、想いや景色をまとめた一連の芸術群……タイトル『星』という作品たちは、後に芸術界で大きな反響を呼ぶことになるんだけど……それはまた別のお話──


 主人公 梨子
 手持ち メガニウム♀ Lv.62 特性:しんりょく 性格:いじっぱり 個性:ちょっぴりみえっぱり
      チェリム♀ Lv.56 特性:フラワーギフト 性格:むじゃき 個性:おっちょこちょい
      ピジョット♀ Lv.59 特性:するどいめ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ネオラント♀ Lv.52 特性:すいすい 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      メブキジカ♂ Lv.56 特性:てんのめぐみ 性格:ゆうかん 個性:ちからがじまん
      ムーランド♂ Lv.55 特性:きもったま 性格:ゆうかん 個性:しんぼうづよい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:163匹 捕まえた数:14匹



    *    *    *



──次は曜ちゃん。


亜里沙「宇宙みたいなイメージにしたいんですけど……」

曜「宇宙……もうちょっと具体的なイメージとかは?」

亜里沙「えっと、キラキラでビカビカーって感じで……」

曜「……よし、一旦絵に描いてみようか!?」

ことり「曜ちゃーん?」

曜「あ、ことりさん!」

ことり「この間の新作衣装のことについてなんだけど……あれ、亜里沙ちゃん」

亜里沙「こんにちは! ことりさん!」

ことり「……もしかして、お客さんとして来てるのかな?」

曜「うん、そうなんだ! 新作衣装については、あとで確認しにいくね!」

ことり「うん、よろしくね」


亜里沙「……それにしても、曜さんってホントすごいですね」

曜「え? 何が?」

亜里沙「だって、コンテストクイーンになったのに、いろんなコーディネーターさんの話を聞いて衣装作りのお手伝いしてくれてて……」

曜「……まあ、それが私の夢だからね」

亜里沙「夢……ですか?」

曜「うん! 皆が想い想いの衣装とポケモンたちで、最高のコンテストライブを作り続ける──それが私の夢だよ!!」


曜ちゃんはコンテストクイーンの座についた後、コンテスト運営委員会の役員に就任しました。

特にコンテストライブにおける衣装制作や一次審査の見直しについては、今でも頻繁に意見を出し、委員会内外問わず、多くのコーディネーターから一目置かれているそうです。

加えて最近はいろんなコーディネーターさんに衣装アイディアを出す、衣装デザイナーもやりながら、理想のコンテストを目指して日々邁進中。

旅の後はウラノホシからお引越しして、最近はセキレイシティを本拠地に活動を頑張っているみたいです。


 主人公 曜 ✿
 手持ち カメックス♀ Lv.54 ✿ 特性:げきりゅう 性格:まじめ 個性:まけんきがつよい
      ラプラス♀ Lv.47 ✿ 特性:ちょすい 性格:おだやか 個性:のんびりするのがすき
      ホエルオー♀ Lv.45 特性:プレッシャー 性格:ずぶとい 個性:うたれづよい
      ダダリン Lv.47 ✿ 特性:はがねつかい 性格:れいせい 個性:ちからがじまん
      カイリキー♂ Lv.44 ✿ 特性:ふくつのこころ 性格:まじめ 個性:ちからがじまん
      タマンタ♀ Lv.43 ✿ 特性:すいすい 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:170匹 捕まえた数:23匹 コンテストポイント:120pt



    *    *    *



──ルビィちゃん。


ルビィ「えっと……最近の採掘計画だと……」
 「ピピピ」

ルビィ「って、わぁ!? コラン、なんでジュース零してるの!?」
 「ピピピピ」

ルビィ「ピピピじゃないよ! って、あああーーー!!! 資料が、大切な資料がぁーーー!!!」
 「ピピピピピピ」

ルビィ「もうーーー!!! コランーーーー!!!!」
 「ピピピピピピーーーーー」

ルビィ「逃げないでよぉぉーーーー!!!」

ダイヤ「全く……騒がしいですわよ、ルビィ」

ルビィ「お、お姉ちゃーん……コランが資料にジュース零しちゃったぁ……」

ダイヤ「……はぁ……そんなことだろうと思って、控えを取っておきましたわ」

ルビィ「ホントに!? お姉ちゃん、ありがとう!!」


ダイヤ「全く……先が思いやられますわね……あれで本当に巫女なんて務まるのかしら……?」
 「メレ…」

ダイヤ「ボルツ……見守れって?」
 「メレ…」

ダイヤ「……はいはい、気長に見守るつもりですわよ……」
 「メレ……」


ルビィちゃんは事件後長くなっていた睡眠時間も、今ではすっかり健康なときと同じような状態に戻り、元気に過ごしてるみたい。

今はクロサワの巫女を継ぐ為に日夜勉強に励んでいるそうです。

ただ、ダイヤさん曰く、おっちょこちょいなところは旅立つ前に戻ってしまったなんて言っていて、お姉さん視点からだと相変わらず心配事が絶えないとかなんとか……。

ルビィちゃんのグラードンは今でも眠ったままで、普段はオハラ研究所にいるそうです。

空いた手持ちにはダイヤさんとお揃いの新しいポケモンを捕まえたって言ってたけど……まあ、これは余談だから、いつか別の機会に話そうかな。


 主人公 ルビィ
 手持ち バシャーモ♂ Lv.51 特性:もうか 性格:やんちゃ 個性:こうきしんがつよい
      メレシー Lv.53 特性:クリアボディ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすき
      アブリボン♀ Lv.40 特性:スイートベール 性格:のんき 個性:のんびりするのがすき
      キテルグマ♀ Lv.47 特性:もふもふ 性格:わんぱく 個性:ちょっとおこりっぽい
      ドンファン♂ Lv.45 特性:がんじょう 性格:さみしがり 個性:ものをよくちらかす
      オドリドリ♀ Lv.35 特性:おどりこ 性格:いじっぱり 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:141匹 捕まえた数:15匹



    *    *    *



──次に花丸ちゃん。


鞠莉「花丸ーいるー?」

花丸「なんずら?」

鞠莉「この間、研究発表会があったじゃない……」

花丸「ずら? 一昨日の?」

鞠莉「そうそれ……あのときの研究資料どこやったか知らない?」

花丸「また、失くしたずら!?」

鞠莉「いやー……なんか寝ておきたらどっかいっちゃって……」

花丸「そんなわけないずら!! ちゃんと探してください!!」

鞠莉「……ぅ……そんなに怒らなくても……」

花丸「あの研究は未来に繋がってく研究なんずらよ!!? もっとあの研究の重要さをちゃんと理解してください!!」

鞠莉「s...sorry...それはそうと花丸」

花丸「なんずらか!?」

鞠莉「頼まれてた、論文と書物が取り寄せられたわ」

花丸「……ホントずら!!? 超貴重な文献なのに……」

鞠莉「部屋に置いておくから、好きなときに読むといいわ」

花丸「はい!!! わかりました!!」


花丸ちゃんは鞠莉さんの助手になりました。

日々研究のお手伝いで忙しいみたいだけど……鞠莉さん曰く、最近お小言を言うことが増えてきたことがちょっと不満だとかなんとか……。

近いうちにダリア大学への入学も視野に入れて、推薦入学ための研究実績? みたいなもののために、毎日奮闘してるとか。


 主人公 花丸
 手持ち ドダイトス♂ Lv.45 特性:しんりょく 性格:のうてんき 個性:いねむりがおおい
       カビゴン♂ Lv.43 特性:くいしんぼう 性格:のんき 個性:たべるのがだいすき
      デンリュウ♂ Lv.41 特性:プラス 性格:ゆうかん 個性:ねばりづよい
      キマワリ♂ Lv.40 特性:サンパワー 性格:きまぐれ 個性:のんびりするのがすき
      フワライド♂ Lv.41 特性:ゆうばく 性格:おだやか 個性:ねばりづよい
      イノムー♂ Lv.42 特性:あついしぼう 性格:ようき 個性:たべるのがだいすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:189匹 捕まえた数:78匹



    *    *    *



──そして、善子ちゃん。


鞠莉「──そういえば……善子はどこ行ったの?」

花丸「え? 善子ちゃんなら、博士に頼まれごとをされたって言ってさっき出て行きましたけど……」

鞠莉「頼まれごと……? そんなの、してないわよ」

花丸「…………善子ちゃん、まさか」

鞠莉「……あの子はまたサボりなの!? ちょっと捕まえてくるわ!!」

花丸「いってらっしゃーい」


善子「……全く、鞠莉はこの堕天使ヨハネのことコキ使いすぎなのよ。今月だけでどれだけポケモン捕獲したと思ってるのよ」
 「そうロト。週休は8日制希望ロト」

善子「アンタは何しれっとついてきてんのよ……」

鞠莉「待ちなさい!! 善子ーーー!!! って、ロトムもいるの!!?」

 「ロトッ!!?」
善子「げっ!? もう、気付かれた!!? ドンカラス、逃げるわよ!!!」
 「カァーーーーー!!!!!!」

 「よ、善子ちゃん、待ってロトーーー」

鞠莉「待ちなさいっ!! 善子ーーーー!!!!! ロトムーー!!!!」

善子「あーーーもう!!! だから、わたしは!!!!! 善子じゃなくて、ヨハネだってばーーーーーー!!!!!!!」


善子ちゃんも成り行きで鞠莉さんの助手になったとか。

ただ、鞠莉さんとは意見が食い違うことも少なくなくて、よくケンカしていると言うのは花丸ちゃんの談。

まあでも……たまに会うとすごい生き生きしてる気はするかな。なんだかんだで鞠莉さんの助手をやってるのは好きみたい。


 主人公 善子
 手持ち ゲッコウガ♂ Lv.56 特性:げきりゅう 性格:しんちょう 個性:まけずぎらい
      ドンカラス♀ Lv.58 特性:じしんかじょう 性格:わんぱく 個性:まけんきがつよい
      ムウマージ♀ Lv.55 特性:ふゆう 性格:なまいき 個性:イタズラがすき
      シャンデラ♀ Lv.53 特性:もらいび 性格:れいせい 個性:ぬけめがない
      ユキメノコ♀ Lv.52 特性:ゆきがくれ 性格:おくびょう 個性:こうきしんがつよい
      アブソル♂ Lv.63 特性:せいぎのこころ 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:193匹 捕まえた数:100匹



    *    *    *



そして──私、千歌の話。


千歌「音ノ木……やっぱり、めちゃくちゃ高いな……。風つよ……」
 「バクフッ」

千歌「頂上……初めて来たかも」
 「バク」

千歌「!! ……うわぁーーー!! すごい景色っ!! 雲の下にアキハラタウンやセキレイシティがあんなにちっちゃくみえる……!!」

 「ここからの景色、絶景だよねー」

千歌「!」

 「あ、ごめんごめん。そんなに警戒しないで~……私も景色眺めてるだけだから」

千歌「あ、はい」

 「でも、すごいね。一人でここまで登って来るなんて……もしかして、腕利きのトレーナーさんなのかな?」

千歌「腕利き……えへへ、まあそれほどでも……。……あなたはいつもここに?」

 「うぅん、今日はたまたまかな。たまには故郷を見に戻るのもいいかなって」

千歌「そうなんですか」

 「うん」

千歌「ところで」

 「ん?」

千歌「あなたもポケモントレーナーですよね?」

 「…………ふふ、そういうことかー」

千歌「ポケモントレーナー同士、目が逢ったら……!!」

 「戦うのが礼儀だもんね!! いいよ!」

千歌「えへへ! 全力で行きますよ! 出番だよ、バクフーン!!」
 「バクフーーー!!!!!!」

 「私も負けるつもりないよっ!! 行くよ、リザードン!!」
  「リザァーーーー!!!!!!」


今日もこの地方のどこかで、ポケモントレーナーとして、

いろいろな人と、ポケモンと、出会い──そして戦い、競い合っています。

貴方もポケモンが大好きな人なら──もしかしたら、どこかで出会って戦うことになるかもしれないね……!

その日を楽しみにしてるよ。いつの日か全力で戦おうね!! いつの日か……──


 主人公 千歌
 手持ち バクフーン♂ Lv.81  特性:もうか 性格:おくびょう 個性:のんびりするのがすき
      トリミアン♀ Lv.75 特性:ファーコート 性格:のうてんき 個性:ひるねをよくする
      ムクホーク♂ Lv.69 特性:すてみ 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      ルガルガン♂ Lv.72 特性:かたいツメ 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      ルカリオ♂ Lv.80 特性:せいぎのこころ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
      フローゼル♀ Lv.71 特性:すいすい 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:200匹 捕まえた数:15匹





    *    *    *






──ポケットモンスター、縮めてポケモン。

動物図鑑には載っていない、不思議な不思議な生き物。

その姿は海に、山に、森に、川に、草原に、街に、ありとあらゆるところに生息し、その数は100...200...300...400...いや、それ以上いると言われている。

これはそんな世界で生きる、少女たちとポケモンたちの……出会いと絆の物語──





<THE END>

終わりです。お目汚し失礼しました。


長い作品でしたが、お付き合い有難う御座いました。

少しでもポケモンの世界で千歌たちと一緒に旅をしている気分を感じて頂けていればと想います。


……最後に。

ちょっとした余興として、

千歌の手持ち6匹。バクフーン、しいたけ、ムクホーク、ルガルガン、ルカリオ、フローゼルの6匹でレートに潜ってみました。

そのときそれぞれの子をちゃんと活躍させてあげられた回を何戦か、バトルビデオとしてあげておきますので、ポケモンUSUMを御持ちで興味のある方は見て頂ければ嬉しく思います。

パーティメンバーPGLリンク (QRコードもあります。ご自由にお使いください。)
https://3ds.pokemon-gl.com/rentalteam/usum/BT-4859-9000

 バクフーン
 【XP5G-WWWW-WWX6-PMTU】

 しいたけ
 【J5DW-WWWW-WWX6-PMXC】

 ムクホーク
 【55NW-WWWW-WWX6-PUAN】

 ルガルガン
 【3E7G-WWWW-WWX6-PM28】

 ルカリオ
 【LJ9W-WWWW-WWX6-PLQZ】

 フローゼル
 【KNCG-WWWW-WWX6-PU86】


最後に改めて、ここまで読んで頂き有難う御座いました。

また書きたくなったら来ます。

よしなに。


過去作

善子「一週間の命」
善子「一週間の命」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495318007/)

千歌「――私はある日、恋をした。」
千歌「――私はある日、恋をした。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491711229/)

ダイヤ「もう一人の妹?」 ルビィ「もう一人のお姉ちゃん?」
ダイヤ「もう一人の妹?」 ルビィ「もう一人のお姉ちゃん?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490808858/)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom