ペコリーヌ「ようやくキャルちゃんが帰ってきてくれました!」 キャル「う~……」 (29)

アメス「あぁ、来てくれたんだ。ごめんね~、急に呼び出しちゃって」

アメス「そ。用事よ、用事。どうしても伝えておかなきゃいけないの。すぐに済むからちゃんと聞いてね」

アメス「いい? これからあんたが体験するのは『メインストーリー』13章、今体験できる最新話の後の出来事よ」

アメス「もし経験してないなら、ところどころ何のことか分からなかったり、混乱しちゃうかもな~って思って。こうして無理矢理来てもらったってわけ」

アメス「まぁ結局、なんてことないいつもの騒がしい日常なんだけどさ。それも……実際にあるかどうかも分からない、夢みたいなもの」

アメス「でもほら。体験してない未来を知っちゃうのって、あんまり気持ちのいいものじゃないじゃない? ネタバレとか、悲しくなるわよね~」

アメス「うん。じゃあ、それだけ。……なーに? あんたの顔が見たくて呼び出したとでも思ったの?」

アメス「そうねぇ。あんたのとぼけた顔を見るのも、たまにはいいわよね~。四六時中一緒だと疲れそうだけど」

アメス「あっはは♪ 冗談よ、じょーだん♪ そんなにガッカリしなくてもいいじゃない。あんたの周りには、かわいい女の子が何人もいるんだし」

アメス「なになに? あたしはトクベツ? ぷぷっ……! な~によ、真面目な顔しちゃって~♪」

アメス「はいはい、もういいから。さっさと目覚めちゃいなさい。はーい、またね~」

アメス「……ちゃんとまた来るのよ? じゃあね、ばいば~い♪」

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キャル「……ふぇ」

ペコリーヌ「むむっ!」

キャル「ぐすっ……ふぇぇ……」

コッコロ「いけませんっ……! キャルさまがまた発作を!」

キャル「ふぇぇぇん……!」

ペコリーヌ「コッコロちゃんは頭をよしよししてあげてください! わたしは抱きしめて優しい言葉をかけますから!」

コッコロ「は、はい。では……キャルさま~頭をなでなでいたしますよ~……♪ よし、よし……♪」

キャル「んっ……」

ペコリーヌ「キャルちゃん、もう大丈夫ですよ~♪ すぐにぎゅってしてあげますからね☆ ほぉら♪」

キャル「ぎゅー……」

ペコリーヌ「かわいいキャルちゃん。わたしたちの大切なキャルちゃん……心配しなくても、ずぅっとそばにいますから♪」

コッコロ「寂しいなどと思う必要はありませんよ。愛しいキャルさまを、わたくしたちが見捨てるはずありません」

キャル「う~……でもぉ……」

キャル「あたしなんて、みじめなばっちぃ野良猫でしかないし……それに、すぐ裏切るし……」

ペコリーヌ「あらら……。今回はよっぽど我慢しちゃってたみたいですね?」

コッコロ「そのようでございますね。我慢せずに素直に甘えていただきたいと、何度もお伝えしているのに……」

ペコリーヌ「寂しすぎちゃうと一気に爆発しちゃうんですよね~、キャルちゃんは」

ペコリーヌ「そのくせ素直じゃないんですから。まぁでも、そこがまたかわいいんですけどね☆ よしよし♪」

キャル「だ、だって……あたしなんかに甘えられても、みんな困っちゃうだけじゃない……!」

コッコロ「キャルさまが悲しそうにしている方が嫌ですよ。さあキャルさま。おててをつなぎましょう♪」

キャル「あたしの手なんか握ったら、あんたの手が汚れちゃうわよ……。あたしの手は……ち、血にまみれてるんだから……!」

ペコリーヌ「んもぉ、キャルちゃん? 何回も言ってますけど。わたしもコッコロちゃんも、それにこの人だって、血が出るような怪我なんてしていませんってば」

キャル「殺す気で魔法を撃ち込んだのよ……!? 本気で全員殺すつもりだったんだから……!」

コッコロ「その結果、血を吐いたのはキャルさまでございましたね。命を削ってまで魔法を使用したキャルさまのお身体は、たいへん危険な状態にまで至りました」

キャル「あぁ……あたしってほんとダメな子……。いっそ、このまま猫になりたい……。にゃーん……」

ペコリーヌ「わぁっ!? コッコロちゃん、もっとキャルちゃんの頭をよしよししてあげてください~!」

コッコロ「あわわ……。わたくしが余計なことを言ったばかりに……。なでなでなで……」

キャル「あたしには猫缶がお似合いよ……。ううん、カリカリで充分なんだから……」

コッコロ「でしたら、わたくしもカリカリをいただきましょう。キャルさまと同じものを食べるのが、わたくしは大好きですから」

キャル「そ、そんな……。コロ助にそんなもの食べてほしくない……! あんたはちゃんと美味しいものを食べなさいよ……!」

ペコリーヌ「ふふ。じゃあキャルちゃんも、ちゃぁんと美味しいご飯を食べないとですね♪」

キャル「……食べさせてくれるなら食べる」

コッコロ「おぉ……キャルさまが少しだけ前向きに」

ペコリーヌ「やっぱり、気持ちが沈んだ時にはみんなで食卓を囲むのが一番です♪ キャルちゃんの根っこにも、それが染みついてるんですねっ☆」

キャル「あは、は……。あんなに幸せな日常……あたしにはもったいないくらいよ……。楽しむ資格なんて……」

コッコロ「ふむ。もうひと押し、という感じなのですが……おや? 主さま? なにやらお部屋の隅を熱心に指差して……?」

キャル「な、なに……? 何かいるの……? まさか、オバケ……!? きっとダメダメなあたしを迎えに来たんだわ……! ペペペ、ペコリーヌぅ~……」

ペコリーヌ「わわっ、大丈夫ですよ! オバケなんかいません! もしいたとしても、わたしが追っ払っちゃいますから☆」

コッコロ「あっ……巨大な虫がカサカサと……」

コッコロ「主さまは虫嫌いなキャルさまを心配して、虫の存在をわたくしに教えてくれていたのですね。さっそく、あの虫を外へ逃がしてしまいましょう」

ペコリーヌ「キャルちゃ~ん? ちょっとだけ耳を塞いでいましょうね~♪ はぁい、ぎゅっ、ぎゅ~♪」

キャル「ふぇぇん……何も聞こえないじゃなぁい……。寂しくて死んじゃいそうよ~……」

ペコリーヌ「目も塞いじゃいましょうか。さあキャルちゃん、わたしの胸に飛び込んでおいで~♪ むぎゅ~っ☆」

キャル「うぶぶぶぶ……」

コッコロ「……キャルさまの安全が確保されたようですね。わたくしたちも、元気に這いまわるあの虫を捕獲してしまいましょう」

コッコロ「えいっ……! えいっ……! むむ、素早い……! 主さま、わたくしを強化してください!」

コッコロ「しゅばっ……! しゅばっ……! ……ふぅ。なんとか捕まえることができましたね」

ペコリーヌ「すっごいカサカサいってましたね~。今はガサガサいってますけど……」

コッコロ「このまま外へ逃がして参りますので、ペコリーヌさまは引き続きキャルさまのことをお願いいたします」

キャル「ぐすんぐすん……」

ペコリーヌ「はーい」

ペコリーヌ「……キャルちゃん、もう安心ですよ? 怖いのはコッコロちゃんたちが追い払ってくれましたから♪」

キャル「ふぇ……」

ペコリーヌ「あらら、かわいいお顔が涙でグシャグシャです……。あぁんもう、かわいそうに……!」

キャル「あ……。ご、ごめんなさい……! ペコリーヌの服、汚しちゃって……! ごめんなさい……! ごめんなさい……!」

ペコリーヌ「そんなの気にしないでください。汚れたなんて思っていませんから。だから、もっと──」

キャル「わぷっ……!?」

ペコリーヌ「もっとわたしにくっついていいんです。抱きしめてあげますから。いっぱい、い~っぱい♪」

キャル「あたし……あたしは……」

ペコリーヌ「くっつくな~なんて言う、ツンデレなキャルちゃんも大好きです。大好きですけど……たまには素直に甘えてください」

キャル「……いいの?」

ペコリーヌ「いいんです♪」

キャル「う~……。えーん……ペコリーヌ~……」

キャル「すりすりすり……」

ペコリーヌ「よしよし、いい子いい子……♪ 」

キャル「ずび~……」

ペコリーヌ「キャルちゃんはもう自分を責めなくていいんです。自分のことを傷つけるようなこと、もうしないでください」

キャル「あたし、悪い子なのよ……? 誰もあたしを正してくれないなら、自分で罰するしかないじゃない……」

ペコリーヌ「わたしがやります。お姉さんですから」

キャル「歳なんてっ……!」

ペコリーヌ「年齢なんて関係ありませんよね。けど、わたしはお姉さんなんです。キャルちゃんが頼ってくれる限り、歳なんて関係なくお姉さんなんです」

キャル「ペコお姉ちゃん……」

ペコリーヌ「だから……もしキャルちゃんが悪いことをしちゃった時には、心をこわぁい鬼にして、プンプンって叱っちゃいます!」

キャル「あはっ……。あんたにできんの? 底抜けに優しいあんたが?」

ペコリーヌ「それは……う~ん……。これから一緒に成長していきましょう☆」

キャル「何よそれ。あはは……♪」

キャル「……うん。頼りにしてる」

コッコロ「ただいま戻りました。主さまの服の中に虫が侵入してしまったせいで、帰りが遅くなってしまいましたが……」

ペコリーヌ「おかえりなさ~い♪ あはは。彼、お顔が真っ青になっちゃってますね☆」

キャル「おかえり。あんたたち、二人揃ってどこ行ってたの?」

コッコロ「虫を野に返しに……と、それよりもキャルさま」

コッコロ「発作は無事に治まったのですね。ペコリーヌさまにピットリとくっついてはいるようですが、ひとまず安心いたしました」

キャル「発作って言うな! 仕方ないじゃない、寂しくなっちゃうんだから!」

コッコロ「ふふ。今まで寂しい思いをしてきた分、愛情を求めてしまうのは当然というもの。決しておかしなことではないと思いますよ」

ペコリーヌ「よぉしよしよし~♪」

キャル「んふふふふ……すりすり……」

コッコロ「主さま。わたくしたちもキャルさまをたくさん甘やかしてさしあげましょう」

コッコロ「なで、なで……♪」

キャル「ふにゃぁ~……」

ペコリーヌ「キャルちゃんキャルちゃん。このあとお出かけする予定はありますか?」

キャル「ん……ないけど。あんたたちが出かけるならあたしも行く」

ペコリーヌ「着替えちゃいましょう☆」

キャル「え? ちょっと、着替えるって? ま、待ちなさい……! こらっ、脱がすなぁっ!」

コッコロ「主さまー、おめめをお隠しいたしますねー」

ペコリーヌ「……じゃじゃーん! キャルちゃんの新しい専用装備です♪ ぱちぱちぱち~☆」

キャル「装備って……パジャマじゃない」

コッコロ「フリフリのワンピースでございますね。キチンと尻尾が出せるように、お尻のところに切れ目が入っている様子。よくお似合いです。とても可愛らしい♪」

キャル「うわぁ……黒猫の顔がウジャウジャ描いてある……」

ペコリーヌ「んふ~♪ かんわいぃ~☆ 押し入れに仕舞っちゃいたいくらいかわいいです♪」

キャル「し、仕舞うな! ちゃんと一緒のベッドで寝なさいよ……!」

コッコロ「う~……抱きしめたい……。普段の厳しくて意地悪なキャルさまではない今なら……ごくり」

キャル「普段……なんですって? ねえ、コロ助~?」

コッコロ「ひぇ……」

ペコリーヌ「全員パジャマに着替えましたね? いざ、パジャマパーティーの始まりです!」

コッコロ「しくしく……。キャルさまに身ぐるみを剥がされ、むりやり水玉模様の寝巻きに着替えさせられてしまいました……」

キャル「あんただってあいつの服引っぺがしてたじゃない。鈍いあいつもさすがに顔真っ赤にしちゃってたわよ?」

コッコロ「わたくしが着替えた以上、主さまにもお着替えしていただかなくてはいけません。そして、主さまをお着替えさせるのはわたくしの役目ですので」

ペコリーヌ「男の子らしい紺色のパジャマです。カッコいいですよっ♪ いぇいいぇい☆」

キャル「ペコリーヌはおにぎり柄なのね。よくそんなの見つけたもんだって関心するわよ、まったく」

コッコロ「あの、キャルさま……? そろそろ離してくださいませんか? ずっと抱っこされているというのも、その……照れてしまいます……」

キャル「イヤ」

コッコロ「そうですか……」

ペコリーヌ「キャルちゃんばっかりずるいです! わたしも混ぜてくださいよぉ~! ぎゅぎゅぎゅ~っ♪」

コッコロ「わぁ……!? あ、主さま~……お助けくださいまし~……」

キャル「くすぐってやる」

コッコロ「あっ、ふふっ。きゃ、キャルさま、おやめくだ、ふふふっ、ふふふふふ……」

ペコリーヌ「……えへへ、幸せです♪」

ペコリーヌ「ぎゅ~っ☆」

キャル「ぎゅ~」

コッコロ「キャルさまがわたくしを背後から抱きしめ、そのキャルさまをペコリーヌさまが抱きしめているこの状況……」

コッコロ「あまりにも謎の多い状況に、主さまが所在なさげにオロオロと固まってしまっています」

キャル「あんたも混ざればいいじゃない。いっつもコロ助とベタベタしてるんだしさ」

ペコリーヌ「わたしがぎゅ~ってしてあげたいところなんですけど……キャルちゃんが寂しくなっちゃいますから」

キャル「そういうことよ! ふふん、あんたにペコリーヌはもったいないわ!」

キャル「ま、まぁ? あんたがどうしてもっていうんなら、あたしが撫でてあげないこともないわ?」

コッコロ「キャルさまにはわたくしをなでなでする責任がありますので。さあ主さま。わたくしのお膝においでくださいまし♪」

ペコリーヌ「……あれれ? 来ませんね? 遠慮してるんでしょうか? お~い?」

コッコロ「にこやかに両手の親指を立てて……? ふむ。どうやらわたくしたち三人で楽しんでほしい、とのことかと」

キャル「なによそれ……。相変わらず変なヤツ」

ペコリーヌ「あなたも大事な仲間で、お友達なんですからね? 寂しくなっちゃったらすぐに輪に入ってきてください♪」

コッコロ「本来なら、ガイド役であるわたくしが主さまのおそばへと向かうべきなのですが……あぁ、なんとも抗いがたい幸福感が……ふぁ~……♪」

失礼、投稿順ミス
>>11は無かったことにしてください

キャル「……つうか、なんでパジャマなわけ? 寝るの? まだ日も沈んでないけど」

ペコリーヌ「パジャマって落ち着きません? 全身の力がすぅ~っと抜けちゃうみたいな」

コッコロ「わたくしも全身に力が入りません。これがリラックスというものなのですね」

キャル「あんたのそれはくすぐられすぎて力が抜けてるだけよ」

ペコリーヌ「キャルちゃんはどうですか? 落ち着いてくれてますか?」

キャル「そうね……うん。なんだか、受け入れてもらってるって感じる。落ち着くわ……♪」

キャル「……そっか。あたし、旅以外で誰かの家に泊まるのって初めてなんだわ。遊びで外泊なんて、許してもらえなかったし……」

ペコリーヌ「これからはいつでも泊まりに来てください♪ こうしてキャルちゃん用のパジャマも用意したわけですし」

キャル「ふ、ふんっ! 万が一、何かの拍子にたまたま気が向いたら来てあげなくもないわ!」

ペコリーヌ「……キャルちゃんが元気になってよかったです♪」

キャル「そりゃ元気にもなるわよ。……これだけ大事にされてるんだもん」

コッコロ「わたくしのことも大事にしていただきたい」

キャル「してるじゃない。足りない?」

コッコロ「足りません。もっとたくさん、優しく抱きしめていただかないと……♪」

ペコリーヌ「ぎゅ~っ☆」

キャル「ぎゅ~」

コッコロ「キャルさまがわたくしを背後から抱きしめ、そのキャルさまをペコリーヌさまが抱きしめているこの状況……」

コッコロ「あまりにも謎の多い状況に、主さまが所在なさげにオロオロと固まってしまっています」

キャル「あんたも混ざればいいじゃない。いっつもコロ助とベタベタしてるんだしさ」

ペコリーヌ「わたしがぎゅ~ってしてあげたいところなんですけど……キャルちゃんが寂しくなっちゃいますから」

キャル「そういうことよ! ふふん、あんたにペコリーヌはもったいないわ!」

キャル「ま、まぁ? あんたがどうしてもっていうんなら、あたしが撫でてあげないこともないわ?」

コッコロ「キャルさまにはわたくしをなでなでする責任がありますので。さあ主さま。わたくしのお膝においでくださいまし♪」

ペコリーヌ「……あれれ? 来ませんね? 遠慮してるんでしょうか? お~い?」

コッコロ「にこやかに両手の親指を立てて……? ふむ。どうやらわたくしたち三人で楽しんでほしい、とのことかと」

キャル「なによそれ……。相変わらず変なヤツ」

ペコリーヌ「あなたも大事な仲間で、お友達なんですからね? 寂しくなっちゃったらすぐに輪に入ってきてください♪」

コッコロ「本来なら、ガイド役であるわたくしが主さまのおそばへと向かうべきなのですが……あぁ、なんとも抗いがたい幸福感が……ふぁ~……♪」

ペコリーヌ「ぐるるるる~……ぐぎゅるるるるる~……ぐるるるる~……」

キャル「……めちゃくちゃお腹鳴ってるけど」

コッコロ「ご自分のおにぎりパジャマを見て、お腹がぺこぺこになってしまったのでは?」

ペコリーヌ「おにぎり……じゅるり♪」

キャル「このままだとパジャマを食べそうね……。こいつがすっぽんぽんになる前にご飯にしましょ」

コッコロ「ではわたくしが支度を。……あの」

キャル「なに?」

コッコロ「離してください……」

キャル「イヤ」

コッコロ「抱きしめられたままではお食事の支度ができません……」

ペコリーヌ「あはは♪ わたしが、さっと作ってきちゃいますよ。仲良く待っていてくださいね☆」

キャル「あっ……ペコリーヌ……」

コッコロ「む……。わたくしを離すまいとしながら、いかにも残念そうなその反応」

コッコロ「キャルさま、お話があります。やはり一度その手を離してください」

キャル「えっ、ちょっと……? 怒っちゃったの? ご、誤解よ……! あたしはみんなと一緒がいいってだけで……」

コッコロ「分かっています。怒ってなどいませんし、キャルさまのお気持ちはしっかりと理解しているつもりです」

キャル「だったら──」

コッコロ「いいえ。いい機会ですので、わたくしからキャルさまに、ひと言言わせていただきたい」

キャル「え、ええ……。分かった……離す……」

コッコロ「……こほん」

キャル「うぅ……。嫌われちゃった……嫌われちゃった……嫌われちゃったぁ……」

コッコロ「キャルさま……ぎゅっ」

キャル「うにゃっ……!? こ、コロ助……?」

コッコロ「キャルさまから見れば。たしかにわたくしはまだまだガキで、面倒を見なければいけない頼りない存在かもしれません」

コッコロ「ですが……こうして向かい合い、抱きしめてあげることだってできるのですよ」

キャル「……うん」

コッコロ「キャルさまを愛するのはペコリーヌさまの特権ではありません。わたくしにだって、キャルさまの心を癒すことができるはず」

キャル「そんなの……当たり前じゃない……。あたしがあんたにどれだけ助けられてると思ってるのよ……」

キャル「どれだけ……愛されてると感じてるか、気づきなさいよ……。ほんっと、ガキなんだから……!」

コッコロ「……正直なところ、本当は少し腹を立てていました。子供扱いされるのは、少しだけ寂しいです」

キャル「そんなの仕方ないでしょ。実際、コロ助はまだまだ子供なんだし」

キャル「でもね。あたしがあんたに目をかけるのは、それだけ大切だからよ? ちっちゃいから~とか、ガキだから~なんて理由じゃなくてね」

コッコロ「キャルさま……。そのように思っていてくださったのですね……!」

キャル「あんたたち三人とも、いっつもフラフラしてるけど。コロ助の場合は特によ。危なっかしいったらないわ!」

キャル「ペコリーヌのやつは大抵自分でどうにかしちゃうけど、あんたはそうじゃないでしょ? グズグズしてたり、モタモタしてたり。見てられないわよ、まったく」

コッコロ「うぅ……お恥ずかしい限りです……」

キャル「そんなあんただから……素直に甘えるのは、やっぱり少し恥ずかしいのよ。偉ぶるつもりはないけどさ、しっかりしたあたしを見ててほしいし」

コッコロ「背伸びはお互いさま、でございますね」

コッコロ「では、甘えるのもお互いさまといたしましょう。わたくしが甘えたぶん、キャルさまもわたくしに甘えてください♪」

キャル「……すでに散々甘えてるでしょ。今更格好なんてつかないわよ。伝わりづらいのは……そうね。そういうもんだって諦めて」

コッコロ「ふふ……♪ 相変わらず、不器用で天邪鬼なのですね。そうとわかっていれば愛らしゅうございますが」

キャル「ふんっ、コロ助のくせに生意気言っちゃって。ねえ……もっと強く抱っこして」

コッコロ「はい……♪ では主さま、わたくしを強化してくださいまし」

キャル「えっ? 強くって言っても限度が……あ痛たたた!? や、やっぱりまだまだガキじゃないのーっ!」

キャル「ったく……酷い目に遭ったわ……」

コッコロ「ペコリーヌさまのように強く抱きしめることができればと思い……。申し訳ありません……」

キャル「あんたはあんたのままでいいのよ。……付き合わされるあたしの身がもたないし」

キャル「しっかしあいつ、そういうところはしっかりしてるのよね~。ちょうど安心する強さっていうか」

コッコロ「ふむ、たしかに。ペコリーヌさまに抱っこしていただくと、こう……ふにゃりと」

キャル「なんなのかしら。慣れてるとか? あいつ、お姫様なわけじゃない? すれ違いざまに抱きしめるような、妙な習慣があったりして」

コッコロ「ない、とは言い切れないのがなんとも……。現に、わたくしや主さまも出会い頭に何度も抱きしめられていますし」

ペコリーヌ「お待たせしました~! 特製ライスボールです♪ いぇ~い☆」

コッコロ「噂をすれば、でございますね。食事のお支度ありがとうございます、ペコリーヌさま」

キャル「ライスボールって。ただのおにぎりじゃない」

ペコリーヌ「んもぉ、失礼ですね! ただのおにぎりじゃありませんよ? 愛情たっぷりの特製ライスボールなんです!」

コッコロ「普段は愛情たっぷりではないのですね……。残酷な現実を知り、わたくししょんぼりです……」

ペコリーヌ「そ、そんなことありませんよ!? 普段も愛情たっぷりですけど、今回はさらに増量で~……!」

コッコロ「……ふふ♪ 冗談ですよ、ペコリーヌさま♪ 意地悪がしたい気分だったので、つい」

ペコリーヌ「んなぁっ……!? こ、コッコロちゃんがキャルちゃんみたいになっちゃいました……!」

キャル「どういう意味よ!」

コッコロ「ともあれ。せっかくホカホカのおにぎりを握っていただいたのです。冷めて硬くなってしまわないうちに召し上がりましょう」

キャル「……そうね。ご飯に罪はないわよね」

ペコリーヌ「ほっ……」

コッコロ「それでは両手を合わせて──」

全員「いただきまーす!」

キャル「はむはむはむ……♪」

ペコリーヌ「もぐもぐもぐっ♪」

コッコロ「むぐむぐ……♪」

キャル「ほらコロ助、口元に米粒ついちゃってるわよ。取ってあげるからおとなしくしてなさい?」

コッコロ「むぐ? むぐぐ、ふがふが」

キャル「飲み込んでから喋りなさいよ。あ~あ~、どれだけ頬張ってんだか。小動物みたいなほっぺになっちゃってるじゃない」

ペコリーヌ「ンま~い☆ このおにぎり、実はプリ米を使ってつくったんですよ~♪ すっかりお気に入りになっちゃいました♪」

キャル「飲み込んでから喋れ! あぁもうっ! 米粒まみれになっちゃったじゃない! あんたはそうやって、いつもいつもぉっ……!」

ペコリーヌ「ふぇ~ん……わたしにだけ厳しいですよぉ~……!」

コッコロ「わたくしのおにぎりはおかかでございました。キャルさまのは何の具だったのでしょう?」

キャル「あたしのは……梅干し」

コッコロ「ひと口いただいても?」

キャル「え、ええ……。えぇっと、どうやってひと口分ければいいかしら……?」

ペコリーヌ「ぱく~っ☆」

キャル「あっ!」

コッコロ「はむっ♪」

キャル「ちょ、ちょっと! それ、あたしの食べかけよ? ……って、あんたたちはそんなの全然気にしないんだったわね」

ペコリーヌ「えへへ~♪ 代わりにわたしのもあげますね☆ わたしのは、魔……お肉です」

コッコロ「わたくしのもどうぞ。さあキャルさま。あ~ん、してくださいまし」

キャル「あ~んって……。ま、まぁたまには……。あ~ん……♪」

コッコロ「どうぞ、キャルさま……♪ あ~ん……」

キャル「ん、むぐむぐ……。あっ、美味しい……」

ペコリーヌ「おぉ~。なんだかいつもよりいいお顔ですね、キャルちゃん♪」

キャル「うん……。美味しいのよ……何故だかほんとに、美味しい……。ふふっ……♪」

コッコロ「『ひとり』では感じることのできない美味しさ……理屈ではない何かを、ようやく感じることができたのでしょうか? あぁ、本当に……よかった♪」

キャル「い、いちいち大げさよ! ……けど、ええ。よかった、かもね。ほんのちょっぴり」

ペコリーヌ「ではでは! その流れでわたしのおにぎりも~♪」

キャル「待って。待ちなさい。あんたのそれ、ほんとは何が入ってるのよ?」

ペコリーヌ「ぎくっ……! お、お肉ですってば……あはは……」

キャル「肉って、なんの?」

ペコリーヌ「えぇっとぉ……」

キャル「……美味しい?」

ペコリーヌ「は、はいっ! それはもう、ほっぺが落ちちゃうくらい美味しいです!」

キャル「お腹壊さない?」

ペコリーヌ「安心安全な魔物のお肉です☆ 安い! うまい! 安い! の、大人気食材なんですよ~? やばいですね☆」

キャル「やっぱり魔物か……。大人気だっていう割に『安い』ばっか売りにしてるし、きっとロクな食べ物じゃないわね……」

キャル「じゃあ、はい。あ~ん」

ペコリーヌ「た、食べてくれるんですか……? 魔物のお肉なんですよ!?」

コッコロ「普段食べるよう勧めているわたくしたちが言うのもなんですが……無理して食べなくても……」

キャル「なによ。美味しいんでしょ? だったら、あたしも食べる。ちょっと……ん~ん、かなり怖いけど……」

キャル「同じの、食べてみたいし……」

ペコリーヌ「キャルちゃんっ……♪ よくぞ勇気を出してくれましたっ! わたし嬉しいです! 感激です! キャルちゃん大好きっ♪」

コッコロ「キャルさまが好き嫌いを克服し、またひとつ尊敬できる立派なお方に……♪ やはりキャルさまは素敵なお方……♪」

キャル「ほ、ほ~らぁ! 褒めるのは食べたあとにしなさい! あたしの気が変わっちゃったらどうするのよ!」

ペコリーヌ「えへへ~♪ じゃあキャルちゃん、あ~ん☆」

キャル「うっ……。いざとなると勇気がいるわね……。なんか嗅いだことのないニオイがするし……」

キャル「でも大丈夫よ、あたし……。ペコリーヌもコロ助も、あたしに酷いことなんてしないわ……!」

コッコロ「ファイトです、キャルさま! 主さまも両手でちっちゃな旗をフリフリして見守っていますよ!」

キャル「う~……! 覚悟を決めて……! あ、あ~ん……!」

キャル「……ぱくっ」

コッコロ「ついにお口に……! 食べた感想は……? ど、ドキドキいたしますね……」

ペコリーヌ「どうですか? もし気分が悪いようなら……」

キャル「お……」

コッコロ「美味しい、でしょうか……?」

ペコリーヌ「おぇぇ……かもしれません……!」

キャル「お、おっ──」

ペコリーヌ「ゴクリ……」

コッコロ「あわわ……」

キャル「……おかわり」

ペコリーヌ「へっ……?」

コッコロ「おかわり、と仰ったのですか……?」

ペコリーヌ「お、おかわりですねっ! はい、ど~ぞ☆」

キャル「はむはむ♪」

ペコリーヌ「コッコロちゃん……! コッコロちゃんっ、これって……!」

コッコロ「は、はい……! ついに……!」

ペコリーヌ「ついにキャルちゃんが魔物料理を笑顔で食べてくれました~♪ うわぁい☆ やったやったぁ~♪」

コッコロ「涙目で、あるいは苦虫を噛み潰したようなお顔で苦虫を食べていた、あのキャルさまが……」

キャル「思えばあたしも散々な目に遭ってきたのね……」

キャル「売りものになってるような魔物の肉が、贅沢品にすら思えるような……。うぅ~……思い出したら鳥肌がたってきちゃったわ……!」

ペコリーヌ「キャルちゃんっ♪ ぎゅーっ☆」

キャル「あははっ。キライだったものが好きに変わるのって、結構いいもんよね~。あんたの強引さも案外役に立つじゃない?」

コッコロ「今後も少しずつ慣れていけるとよいですね。具体的には、見た目がおぞましいものなどに」

キャル「そ、そうね……。あんたたちが毒味したあとなら……う~ん、でもやっぱり……」

ペコリーヌ「いつでも背中を押しますよ♪ ドーンと崖から飛び降りちゃいましょう☆ もちろん、わたしも一緒です♪」

コッコロ「でしたら、わたくしは落下地点でお二人を受け止めましょう。最後は笑顔で終われるように」

キャル「あたしは崖から飛び降りる前提か! あたしの意思はどこ行ったのよぉ……」

ペコリーヌ「わたしは自力で着地できますから、コッコロちゃんはキャルちゃんをキャッチしてあげてください☆」

コッコロ「では主さまがペコリーヌさまを……おや? 逆の方が安心なのでは?」

キャル「……『陛下』にも、いつか。いつか知ってほしいな……」

ペコリーヌ「キャルちゃん?」

キャル「ううん、なんでもない。それよりペコリーヌ? どうせ挑戦するなら、あたしは崖より海がいいわ♪」

コッコロ「ふふ。今年の夏も、また全員で海へ行きたいですね。昨年はひと騒動ありましたが、今も胸にきらめく大切な思い出となりました」

キャル「お出かけ、か……。ね、ねえ、ペコリーヌ! コロ助! それからあんたも!」

ペコリーヌ「改まってどうしたんですか? キャルちゃん?」

キャル「あたし、またみんなで遊びに行きたい! いろんな美味しいもの食べ歩いたり、買い物なんかもしてさ!」

キャル「これまでと同じじゃなくて、これからは……あたしも仲間として、友達として……! やり直したいのよ! だからっ、改めて言わせてちょうだい!」

ペコリーヌ「……」

コッコロ「……」

キャル「あたしを、ギルドに……【美食殿】に入れてください! それからっ、あたしと友達になってください!」

ペコリーヌ「ダメです」

コッコロ「そうですね。キャルさまは何もわかっていません」

キャル「ふぇぇ……」

ペコリーヌ「私たちは、今までもずぅっと同じギルドの仲間で、お友達です。キャルちゃんがどう思っていても、わたしは何度だって言いますよ♪」

キャル「そこは空気読んでよ……! 改めてよろしく~、でいいじゃなぁい……」

コッコロ「だめです」

キャル「どぉしてよぉ~……」

ペコリーヌ「これまで積み重ねてきたキャルちゃんとの思い出も、ちゃんと大事に持っていたいですから。……だからね、キャルちゃん」

コッコロ「関係を改めて、新しく始めるのではなく。過ちを改めて、今より前へと進みたい……ですので、キャルさま」

キャル「んぅ~……。二人して抱きつくなぁ……!」

ペコリーヌ「ここから。四人でたどり着いたこの場所から。もう一度歩き出しましょうよ」

コッコロ「美味しいものも、楽しいことも……辛いことや苦しいことだって。皆で分けあい、平らげましょう」

ペコリーヌ「キャルちゃん自身のこと、ちょっとだけでも信じてあげてください。とっても優しい、いい子なんですよ? やり直す必要なんてないんです!」

キャル「…………」

キャル「ふ、ふんっ! ちょぉっとしおらしくなってみれば、好き放題言ってくれちゃってさ!」

キャル「そこまで言うんだから、当然覚悟はできてるんでしょうね! あたし、かなりめんどくさいヤツよ!?」

コッコロ「ふふ♪ 今更でございましょう。気難しいキャルさまにも、もうすっかりと慣れてしまいました」

ペコリーヌ「それに、めんどくさくなくなっちゃったらキャルちゃんじゃありませんよ♪」

キャル「うぐっ……さっきまで褒めてくれてたのに……。つうか、ちょっとは否定しろ……! あんたたちだって充分めんどくさい性格のくせに!」

ペコリーヌ「えへへ……♪」

コッコロ「ふふっ……♪」

キャル「まったく……ふふ♪」

キャル「……って。な、なんか照れくさいっ! 離れなさい! 今すぐ! ほら、はやく!」

ペコリーヌ「え~……。もうちょっと抱きしめさせてくださいよぉ~♪ このこの~☆」

キャル「鬱陶しいってぇの! さっさと離れろっ!」

コッコロ「以前ペコリーヌさまの仰っていた『つんでれ』というものですね。この場合は……ぎゅう♪」

キャル「げっ、コロ助までっ!? ……ったく、これじゃあ逃げられないわね。観念するしかないわ」

ペコリーヌ「ふふ。ちゃっかりわたしたち二人の背中に手を回してくれてるくせに~♪」

キャル「う、うるさいっ! 手のやり場に困っただけよ! 他に意味なんてないんだから……」

コッコロ「おぉ……なんと分かりやすい……」

ペコリーヌ「キャルちゃんが反応を返してくれるの、実はすっごく嬉しいんです♪ 特にこうして抱きしめ返してくれる時なんて……えっへへ~♪」

キャル「あんた、よくそんな恥ずかしいことさらっと言えるわね……。あたしなんて自分の気持ちすら……」

キャル「気持ち……伝えたい、気持ち……」

ペコリーヌ「わたしの場合は、想いが口から溢れちゃってるだけですから♪ キャルちゃんは焦らなくても大丈夫ですよ?」

キャル「べ、別にあたしは……!」

コッコロ「無理に言葉にせずとも、伝わる想いはあると思います。ですが、わたくしはあえて背中を押させていただきます」

コッコロ「キャルさま。キャルさまの胸にあるお気持ち、聞かせてはいただけませんか?」

キャル「……」

キャル「…………大好き」

キャル「あんたたちのこと、大好きよ」

ペコリーヌ「……っ」

キャル「敵だって思ってたし、いつか殺さなきゃいけないって思ってたけど……ずっと、ずっと好きだった。あたしはただ、気づかないフリをしてただけ」

キャル「あんたたちに『大好き』って言われるのも、ほんとは嬉しくて──ペコリーヌ?」

ペコリーヌ「……ぐすっ。うぅっ……ひっく……」

キャル「ペコリーヌ……」

キャル「……お、思い切って話してみるものね~! まさかこんな珍しいものが見られるなんて♪」

コッコロ「キャルさまこそ、滅多に見ることのできないお顔をしていらっしゃいます……♪」

ペコリーヌ「うぅ~……キャルちゃぁん……コッコロちゃぁん……!」

キャル「あはは。多分こんなこと、あたしの性格からしたら、もう二度と言えないけどさ」

キャル「ううん、言えないだろうからさ。せっかくだから今全部聞いてよ。その代わり、あんたたちのことも教えて?」

コッコロ「ふふ。秘密の女子会というものですね。主さまもいらっしゃいますが」

ペコリーヌ「ぐすぐすっ……。今日はお泊まり会なんです、朝まで語り明かしちゃいましょう☆ わたしの獄中生活のこととか、聞きたくありません?」

キャル「そ、その話はあたしの心をえぐるからまた今度にして……」

コッコロ「心温まるお話といえば、やはり主さまのエピソード。ここはわたくしが語り手となって……」

キャル「いきなりめちゃくちゃになりそうな雰囲気じゃない!」

キャル「いいからまずはあたしの話を聞きなさいよ。伝えたいこと、いっぱいあるんだから! ……まずは、そうね──」



おしまい

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