ペコリーヌ「キャルちゃ~ん、コッコロちゃ~ん! こっちこっち~☆」
キャル「あいつは、まったく……。この人混みの中どんどん先に行っちゃうんだから」
コッコロ「申し訳ありませんキャルさま……。わたくしがモタモタとしていたばかりに、ペコリーヌさまと主さまから離れてしまって……」
キャル「はしゃぎまわってるあの馬鹿どもが悪いのよ。はぐれないようにしようなんて気、これっぽっちもないじゃない」
キャル「おかげであたしが子守りをする羽目になってるっつうの……。ま、お祭りで遊ぶなんて子供っぽい真似、あたしはしないからいいけどね」
コッコロ「キャルさま、キャルさま。向こうにかき氷の屋台が出ております……♪」
キャル「え? どこどこ?」
コッコロ「あちらです。ちょうど主さまたちも屋台の方に向かっている様子。わたくしたちも行ってみませんか?」
キャル「ま、まぁあいつらが行っちゃったんじゃ、あたしたちも向かわざるを得ないわよね~」
キャル「コロ助も目をキラッキラさせてるし? 通りがかりにいくつか買っていきましょうか。いくつか」
コッコロ「ふふ。さあ、わたくしたちも参りましょう。……できれば手を引いていただきたい」
キャル「ん? 当然でしょ。ほら、はやく手ぇ出しなさいよ」
コッコロ「……えへへ」
キャル「いい大人は子供から目を離したりしないものよ? あんたのこと、迷子にさせるようなヘマはしないから安心しなさい」
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ペコリーヌ「しゃくしゃくしゃくっ♪」
コッコロ「うっ……。頭がキーンって……あぅ~……」
キャル「むぐむぐ……。一気に食べるから頭が痛くなるのよ。ほら、こうしてかき氷の器をおでこに当ててやれば……」
コッコロ「……おぉ。少しずつ『キーン』が引いていきます」
ペコリーヌ「うわお! キャルちゃんって物知りなんですねっ! わたしもやってみよ~♪」
ペコリーヌ「あはぁ♪ みるみる痛みが引いていきます! やばいですねっ☆」
キャル「あんたも頭痛がしてたわけ? 平気そうにシャクシャク食べてたみたいだけど」
ペコリーヌ「えぇっと……? かき氷って、食べると頭が痛くなる食べ物ですよね? 当然頭痛はありましたけど、でもそういうものじゃないですか」
キャル「一気に食べるからだって言ってるじゃない! ゆっくり食べればキーンってならないの!」
キャル「つうか、食べると頭痛がするような危険な食べ物を当然のように食べちゃう奴なんてそうそういないわよ……」
コッコロ「わぁっ!? 主さま、かき氷をおでこに当てるのではなくて、器をおでこに……あぁっ……」
キャル「……なにやってんだか」
ペコリーヌ「あっ! 目当ての竹の木が見えてきましたよ! みんなでお願いをしに行きましょう♪」
キャル「みんなで一緒にね。ほら、ペコリーヌも手ぇ繋ぎなさい。ここまで来てはぐれるなんてまっぴらよ」
ペコリーヌ「でも……キャルちゃん、かき氷を持ってるせいで手が空いてませんよ?」
キャル「あぁ、それもそうか。ん~……」
ペコリーヌ「はぐれないようにするなら、腕を組んじゃいましょう♪ こうしてむぎゅっとしてぴとっとして……できました! がっちり~☆」
キャル「…………」
ペコリーヌ「えへへ。さてはキャルちゃん、照れてますね~? わたしもちょっとドキドキしてます♪」
キャル「て、照れてねぇわよっ……! あたしは別にドキドキもしてないし……」
ペコリーヌ「そうですか? 顔、真っ赤ですけど」
キャル「暑いからよっ! うるっさいわね!」
コッコロ「はて? かき氷を食べている最中に、そこまで暑く感じるとは……まさかお熱があるのでは?」
キャル「あっ、短冊を書くコーナーがあるー。みんなで行ってみましょー」
コッコロ「なぜ棒読み……もがもが。あ、主さま……? なぜわたくしの口を……もがもが」
ペコリーヌ「みんな、短冊は持ちました? ペンも大丈夫ですよね? ではではっ、短冊にお願いごとを書いちゃいましょう♪」
キャル「願いごとを書くって言ってもねぇ。他の客はどんな願いごとを書いてるのかしら?」
コッコロ「他人のお願いごとを覗き見るのはあまり感心できませんが……」
キャル「そんなの、見られたくないなら竹に吊るすなっつう話よ。どれどれ~……?」
キャル「『騎士クンと恋(×印) 深い仲になれますように』、『あのおかたの運命のお相手がどうか私でありますように』……やっぱり恋愛関係が多いわね」
ペコリーヌ「こっちには『弟くんと結婚できますように☆』ってありますよ? ステキですね~……!」
コッコロ「もぅ、ペコリーヌさままで……。盗み見はやめて、わたくしたちのお願いを書いてしまいましょう」
キャル「あはは、それもそうね。願いごとか~。願いごとねぇ。う~ん……」
キャル「【美食殿】としては、やっぱり食に関するお願いごとがいいかしら?」
コッコロ「ペコリーヌさまはやはり食べ物についてのお願いなのでしょうか?」
ペコリーヌ「え? わたしですか? わたしのはこれです! じゃじゃ~ん☆」
キャル「『国民みんなが笑って過ごせる国になりますように』? うっわ、つまんな」
ペコリーヌ「つまりますよっ!! 大事なことじゃないですか!」
キャル「コロ助は? あんたはどうせ主様が~とかでしょうけど」
コッコロ「わたくしのはこちらでございます」
ペコリーヌ「ふむふむ? 『皆さまのお願いごとが叶いますように』? わぁ~♪ 優しいお願いごとですねっ! コッコロちゃん偉いっ♪」
キャル「そんなこと書いたってあんたの願いごとが叶わないじゃない。ったく、クソ真面目ね~」
コッコロ「わたくしは、人々が幸せに、平和で暮らしている姿を見られるだけで幸せなのでございます」
コッコロ「……欲を言えば。わたくしが主さまを幸せへと導いてさしあげたい」
キャル「それを短冊に書けばいいのに。……って。まぁ、そういうのは叶えてもらうもんでもないか」
ペコリーヌ「一枚だけっていう決まりもないみたいですし、そのお願いも書いちゃいません? ほらほら、短冊取り放題ですよ?」
コッコロ「で、でしたら……もう一枚だけ……」
コッコロ「そ、それで、主さまのお願いはどんなものでございましょう?」
キャル「え? 『いつまでもみんなと仲良しでいられますように』? ふーん。一番つまんないわね。最下位よ最下位。ボツにしたいくらい」
ペコリーヌ「だけどきっと、一番叶う可能性の高いお願いだと思いますよ☆ う~ん、ナイスお願い! いぇ~い♪」
キャル「なぁんか綺麗にまとまってるのよね~。もっと素直に欲を出せばいいのに。そういうとこガキくさいわよね、あんたたちって」
ペコリーヌ「そういうキャルちゃんのお願いは何なんですか? あっ、お願いは短冊一枚につきひとつですからね?」
キャル「欲張る前提かっ! あたしのは、そうね……」
キャル「あたし、願いごとは自分の手で叶えたいわ。誰かに願ったって、どうせ叶わないから」
コッコロ「恥ずかしくて書けないのですね。でしたら、わたくしたちは向こうに行っていましょう。短冊を吊るしたら合流、ということで」
キャル「ち、違っ……! あたしはマジで……!」
ペコリーヌ「わたしにも、短冊に頼らずに叶えたいお願いはありますよ? けど、せっかくですし何かお願いしましょうよ♪」
キャル「……あんたにもそんなお願いがあるの?」
ペコリーヌ「はい。とても大事なお願いです」
キャル「……」
キャル「あたしも、短冊にお願いする。それと……あんたにも話したいことがある。とても大事なこと」
コッコロ「……主さま。わたくしとお祭りの屋台を巡ってくださいませんか? 主さまと一緒にこの夜を楽しみたいのです……」
ペコリーヌ「じゃあ、一時間後にこの竹の木の前で待ち合わせしましょうか。コッコロちゃん、あとで打ち上げ花火をみんなで一緒に見ましょうね♪」
コッコロ「はい。ペコリーヌさま……いえ、わたくしからは何も言いません。では、一時間後に」
コッコロ「おや? 主さま? なぜわたくしの前にしゃがんで……主さま? なぜわたくしを肩車して……主さまっ!? なぜ全力で走って……わぁぁぁぁ……!?」
キャル「……よし、書けた。コロ助たち、ちゃんと戻って来られるのかしら……?」
ペコリーヌ「キャルちゃん。向こうの原っぱに行きませんか? 静かで、星が綺麗に見える場所があるんです」
キャル「……へぇ。ほんとに星が綺麗ね」
ペコリーヌ「織姫様と彦星様はどれでしょうか? 二人はちゃんと会えたんでしょうかね?」
キャル「今日はそういう日なんだから逢えたんじゃない? 織姫と彦星は、えぇっと……ほら、あれと、あれよ。わかる?」
ペコリーヌ「あ、あれですか……? うぅんと……」
キャル「多分違うわね。もっとこっちに寄りなさいよ。……いい? あたしの指の先を追って、天の川があるでしょ?」
ペコリーヌ「キャルちゃん……ち、近い……」
キャル「あはは、なに照れてんだか。いつもは自分からひっついてくるくせに」
ペコリーヌ「……キャルちゃんは彦星様みたいです。それで、わたしが織姫様♪」
キャル「はぁ? 何を言いだすかと思えば……つうか、彦星はあんたの方じゃない? 男勝りだし」
ペコリーヌ「うぐ……」
キャル「魔物と平気で渡り合うところとか、行動に迷いがないところとか。人一倍よく食べるところとか。あの馬鹿よりよっぽど男らしいわよ」
ペコリーヌ「わ、わたしだって、女の子らしいところもあるんですからねっ……!」
キャル「そう? 例えば?」
ペコリーヌ「……好きな子の前だと照れちゃったり」
キャル「……ふ、ふーん?」
ペコリーヌ「た、七夕って……!」
キャル「ん?」
ペコリーヌ「ロマンチックだ、って……思いませんか?」
キャル「思わないわね。恋に溺れた二人の怠け者が、お仕置きされて反省する話じゃない」
ペコリーヌ「むぅ~……ひねくれ者~」
キャル「なんとでも言いなさいよ。とにかく。今日この日が、『恋人の日』みたいな顔してるのは気に入らないわ!」
キャル「……反省して頑張ってる二人が、一年に一度しか逢えないなんて間違ってる」
ペコリーヌ「そうでした。キャルちゃんはそういう人でしたね」
キャル「なによ。文句ある?」
ペコリーヌ「……大好きです。文句なんて、あるはずありません」
キャル「そ、そう……」
ペコリーヌ「キャルちゃん。わたしのお話、聞いてくれますか?」
キャル「あっ、いやっ、待って待って! あたしが……あたしが先に話したい……」
ペコリーヌ「わ、わかりました……。はい、ちゃんと聞きます。聞かせてください」
キャル「……」
ペコリーヌ「……」
キャル「あたし、さっきの短冊に『陛下が幸せになれますように』って書いたの」
ペコリーヌ「陛下……あの人ですか……」
キャル「あたしはあの方が好きなの。あの方のためならなんでもできるって思う。……なんでもしてあげたい」
ペコリーヌ「……はい」
キャル「でも。でもね?」
ペコリーヌ「……?」
キャル「あたしは陛下と一緒には歩んでいけないのよ。隣には並べない。そういう存在じゃないから」
キャル「幸せになってほしい。そのための支えになりたい。でも……見返りは求めない」
キャル「神様みたいなものなのよ。あたしにとっての陛下は。特別過ぎて、そばに居続けるのはあたし自身が許せない」
キャル「だから天に祈ったの。あの方が幸せになれますように……。今のあたしじゃ叶えてあげられないから」
ペコリーヌ「キャルちゃん……」
キャル「…………それでね。今度は、他の誰にも願わないお願い。あたしが叶える願いごと」
キャル「生まれて初めてね、恋をしたのよ。一緒に歩きたい人、歩いてほしい人を見つけたんだ」
ペコリーヌ「こ、恋……ですか……。そそ、それって……?」
キャル「あたしの願い。あたしの叶えたい願い」
キャル「ペコリーヌ。あたしと一緒に同じ道を歩いてほしいの。ぱ、パートナーになって……この先、ずっと……」
ペコリーヌ「キャルちゃん。そのお願いは、キャルちゃんが自分で叶えるお願いなんですよね?」
キャル「そ、そうよ……。だから、ペコリーヌ! あんたのお願いを、あたしが叶えてみせるわ! その代わり、あたしのお願いを叶える手伝いをして!」
ペコリーヌ「……えへへ♪ キャルちゃんなら絶対にそう言うと思ってました」
ペコリーヌ「わたしのお願い。実はわたし、『猫ちゃんが飼ってみたい』んです。だけど飼い方がわからなくって……」
キャル「ね、猫……? 猫ぉ……?」
ペコリーヌ「キャルちゃんと一緒に、何度か猫ちゃんたちと遊んだことがあったじゃないですか。それですっかり猫ちゃんの魅力に取り憑かれちゃって♪」
ペコリーヌ「何かあった時にすぐ相談に乗ってくれる人が近くにいてくれないと、不安で飼えないですし……困ってるんです……」
キャル「はぁ……? そんなのあたしが……あっ」
キャル「あたしが……あたしが叶えてあげる!」
ペコリーヌ「えっ? キャルちゃんが? 猫ちゃんを飼うためのお手伝いをしてくれるんですか?」
ペコリーヌ「あぁ……キャルちゃんなら猫ちゃんのことに詳しいですし、なによりとっても世話焼きで頼りになります!」
キャル「……はぁ。なによこの茶番」
ペコリーヌ「こうでもしないとキャルちゃんが素直にならないからですよ~だ!」
ペコリーヌ「ほらほら。わたしのお願いを叶えてもらったお礼、させてください。キャルちゃんのお願いはなんでしたっけ?」
キャル「……ったく、調子いいんだから」
ペコリーヌ「えへへ~♪」
キャル「いい? あんたがするのはあくまで『お願いを叶える手伝い』よ? 必ず叶えなくちゃいけないなんてことはないんだからね?」
ペコリーヌ「わかりました。自分の気持ちを捻じ曲げるようなことはしないって約束します」
キャル「ええ。約束よ」
キャル「…………」
キャル「………………」
キャル「『ペコリーヌと、恋人になりたい』……。好き……なの……。好き、だから……愛してほしい……」
キャル「お願いっ! あたしと付き合ってっ! これからは恋人としてあたしのそばにいて!」
ペコリーヌ「えへ……嬉しいです……♪ 勇気を出してお願いしてくれて、ありがとうございますキャルちゃん……♪」
ペコリーヌ「……わたしもキャルちゃんのことが大好きです。あなたと同じ道を歩きたい。これからも、ずっと。二人一緒に」
キャル「……っ」
ペコリーヌ「抱きしめてもいいですか?」
キャル「そんなのっ……。ペコリーヌっ……!」
ペコリーヌ「わっとと。……えへへ♪ 初めてキャルちゃんから抱きしめてくれました♪」
キャル「ぐすっ……ペコリーヌぅ……」
ペコリーヌ「ふふ。泣くほど喜んでくれてるんですか? そうならわたしもすっごく嬉しいです♪」
キャル「お願い、叶ってよかった……」
ペコリーヌ「それなんですけどね? わたしも元々キャルちゃんが好きだったわけじゃないですか」
キャル「……???」
ペコリーヌ「わたしがわざわざ叶えるまでもなく叶ってたっていうか……ぶっちゃけ、わたしなにもしてないんですよね」
ペコリーヌ「だから、キャルちゃん? もうひとつ、お願いごとはありませんか? そっちを叶えてあげたいなって思ってるんですけど」
キャル「……」
ペコリーヌ「……あるんですね? なんでも言ってください♪」
キャル「キス……。キス、したい──んむっ」
ペコリーヌ「……もう叶ってました♪ 他は?」
キャル「ばかぁ……!」
キャル「…………もっとしたい」
ペコリーヌ「えへへ♪ えへへへへ……♪ キャルちゃん──」
ペコリーヌ「……大好きです♡」
コッコロ「おや。主さま、ペコリーヌさまとキャルさまがやってきましたよ」
コッコロ「……おぉ。仲良く手を繋いでいらっしゃいますね。はぐれないように……というわけではないのでしょう。ふふ♪」
キャル「ご、ごめん! 待たせちゃった? 待たせちゃったわよね……」
ペコリーヌ「ちょっとゆっくりし過ぎちゃいました……。お待たせしちゃってごめんなさいっ」
コッコロ「ふむ。では遅れてきたお二人には、わたくしと主さまのためにひと働きしていただきましょうか」
キャル「ええ、そのくらいお安い御用よ。なんでも言ってちょうだい」
コッコロ「ふふふ。まずはこちらをご覧ください」
ペコリーヌ「わっ。たこ焼きに、チョコバナナ。お好み焼きにあんず飴~♪ ずいぶん買い込みましたね?」
キャル「買い過ぎよ……。こんなの食べきれないでしょ……」
コッコロ「そうなのです。そこで、お二人にはこれらの処理をお手伝いしていただきたい」
キャル「ん? それって……」
ペコリーヌ「わぁい♪ コッコロちゃんたち、わざわざ食べ物をこぉんなに買っておいてくれるなんて、やっさしぃ~☆」
コッコロ「えへへ。花火を見ながら皆でいただきましょう♪」
キャル「あんたってやつは……ったく。ありがと、コロ助。ついでにあんたも」
コッコロ「む。いけません、そろそろ花火が打ち上がる時間でございます。急いで場所取りを……」
ペコリーヌ「それならもう確保してありますよ♪ とっておきのポイントなんです☆ ねっ、キャルちゃん?」
キャル「ま、まあね……。人もいない穴場だし、花火をゆっくり楽しめると思うわ」
ペコリーヌ「たぁまや~♪」
コッコロ「うぅ……。花火とはこのように大きな音がするものなのでございますね……。主さま……抱っこ……」
キャル「……あーあー。花火に怯えるなんて、やっぱりまだまだガキねぇ。……って、あいつも一緒になってビビってるし!」
ペコリーヌ「あはは……今度から花火はもう少し遠くから眺めないと駄目みたいですね」
キャル「かもね。ほんと、世話の焼ける……」
ペコリーヌ「……♪」
キャル「なに? キスしたいの?」
ペコリーヌ「ち、違いますよっ……! ちょっと肩にもたれかかっただけじゃないですか! んもう、ビックリしちゃいますよぉ……」
キャル「……さっきした七夕の話」
ペコリーヌ「ロマンチックじゃない七夕の話?」
キャル「そ。あたしはやっぱり七夕の話は気に入らないわ。だからね──」
ペコリーヌ「ひゃっ、んっ……」
キャル「……お願い。あたしを離さないで? ずっとあんたのそばにいさせて? 離れ離れなんて……あたしには耐えられない……」
ペコリーヌ「大丈夫ですよ、キャルちゃん。そんな不安そうな顔をする必要はありません」
ペコリーヌ「さっきは結局、キャルちゃんのお願いを叶えてあげられませんでしたからね。……だからそのお願い、わたしが必ず叶えます」
ペコリーヌ「あっ。せっかくですし、このあと短冊にもお願いを書いていきましょうか。キャルちゃんはああいうの、あんまり信じてないみたいですけど」
キャル「……もう書いた」
ペコリーヌ「んん? さっきは違うお願いごとを書いたって……」
キャル「二枚……書いたの……」
ペコリーヌ「さてはキャルちゃん、ツンデレですね?」
キャル「も、物は試しっていうか、藁にもすがりたかったというか……! いいじゃない、別に……」
ペコリーヌ「えへへ……嬉しいです、そのお願いを既に書いていてくれたっていうのは」
ペコリーヌ「実はわたしも書いてたんです。二枚目の短冊に」
キャル「……っ。あっ、これ……ま、マジで嬉しいわね……」
ペコリーヌ「また顔が真っ赤になっちゃってますよ~? かんわいい~☆ ぎゅってしてもいいですかっ?」
キャル「あんたも真っ赤じゃない。あれ? あんたのそういう態度って、もしかして照れ隠し?」
ペコリーヌ「あー! 大きな花火がー! 綺麗ですねー! たーまやー!」
キャル「あはは。ごまかすの下手過ぎよ♪」
キャル「…………どうか、叶いますように」
『キャルちゃんとずぅっと一緒にいられますように♪』
『ペコリーヌがいつまでもそばにいてくれますように』
おしまい
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