【ミリオン】莉緒「チャーミングフラッター」 (30)

みなさんこんにちわ。

今回は、百瀬莉緒のSSを書きました。


誤字脱字・キャラ崩壊・知識の誤り・設定違ってんよ!
などはご容赦ください。

作中、いくつか花言葉が登場します。知識不足で至らないところもございますが、
誤字・脱字などご容赦を。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1563183549



私は今日も待ち続ける。
彼からの返信を。
待てども待てども来ない彼からの返信。

またなにかおかしなことを書いちゃったかな。
でも後の祭り。


寂しい気持ちを誤魔化すためにグラスに注いだお酒を煽るけれど、
酔えやしない。


…そうだ。
彼、ライブの直前に言ってたな。
劇場の衣装室に返し忘れた、ある花の髪飾り。


彼、何を言おうとしたんだろう。

ちょっと調べてみようかな……







「え?私に新しい衣装を?」

「そうだ。今度の夏に、莉緒のソロライブが決まったんだ!
そのライブには莉緒に新しい衣装を着て歌ってもらおうと思ってるんだ」


彼から話があると呼び出されて伝えられる。


「それって…
とうとう私のセクシーな魅力がファンのみんなに認められたってことかしら!?」

私は1人はしゃいで彼へ詰め寄る。

「いや…まぁ、それもあるかもしれないが!

前にやってもらった莉緒の初センター公演が好評でな!
ほぼキープコンセプトでやることが決まった」


「えー、なにそれ!私のセンター公演って…」

そう。私のセクシーな魅力でなく、歌でファンを魅了してほしい…
という指示でやった初センター公演。
私の魅力であるセクシーを禁止されたライブが好評だったなんて、
ちょっとフクザツだけど…。


「でも、新しい衣装が用意されるんでしょ!?
どんな衣装なの?ねぇねぇ、知ってるんでしょう?教えてよー!Pくん!」


「それがな莉緒。今回の衣装テーマは、『花』なんだ」

「花…?」


話を聞くと、どうやら今回のライブ会場が植物園内でやるナイトステージみたいで、
スポンサーから『花』をモチーフにした衣装で頼みたいとオーダーが来たらしい。


「週末に現地の植物園で、ライブの打ち合わせをすることになってな。
そのときに莉緒も俺と同行してもらって……」

なるほど、と私も察しがつく。

「園内を見て回って、衣装のために私にピッタリの花を選んでほしい…ってことね?」

彼は、満足そうに頷く。




「分かったわ!Pくん!
ふふっ♪…そっかぁ。
週末はPくんと植物園デートかー♪」


「おいおい…全然わかってないじゃないか!あくまでも仕事だからな?」

分かってるわよ♪なんて生返事を返して、
週末へ向けての準備を考えてウキウキしてる自分がいる。
色々、スキンケアも考えなきゃね♪




週末。梅雨の真っ盛りという時期にもかかわらず、
今日は初夏を思わせる蒸し暑さ!


植物園側のスタッフとの検討事項もスムーズに話が進んで、
早々に打ち合わせは終わった。

「でも良かったじゃない。衣装のモチーフを探したいって言ったら、
好きなだけ園内を見ていってくださいって言ってもらって!」

「ああ… それにしてもバラの種類だけでこんなにたくさんあるなんてな!」


園内はとても広大で、どの花壇もキレイに花が咲き誇ってる。
すごくよく管理されている。
世の中には実に4万種類ものバラの品種があるらしく、私も驚く。




でも私はそんなことお構いなし彼へ詰め寄る。

「ねぇねぇ、Pくん!なんで私のメッセージに返信してくれないのよ!」

「…えっ!いや、だってアレは…」

「私、ずっと返事待ってたのにぃ〜!なんで!?」


私は植物園でライブをするということでまずは形から入ることにしたんだけど…


「そりゃ夜に『薔薇風呂なうー』って湯船に浸かってる写真とか、
胸元のはだけた花柄のパジャマの写真とか送ってくるからだろ!
返事も困る!」


えー!またやりすぎちゃってた!?私!
…でもお姉さんは知ってるんだぞ!


「…あーでもでも、ちゃっかり既読はついてたし、見てはくれてたんだ〜♪
ねぇねぇ、どうだった?聞かせてよー!」


彼は頬を少し赤く染めてそっぽを向いて話す。

「……Pとして、アイドルのメッセージを見ないわけがないだろ!」

もう、またはぐらかして。
なんて考えてると、彼は気を取り直したように話す。



「…青羽さんに聞いたんだが、
過去に作った衣装にもモチーフとして花を使ってきたそうなんだ」
例えば…と彼は聞きかじった知識を披露する。


未来ちゃんはあじさい、翼ちゃんはひまわり、静香ちゃんはスイレン…
それぞれ花をモチーフにした衣装があったり。


そう考えると、今まで見てきた衣装にも花があしらわれた衣装が多かった気がする。

「歌織ちゃんが着てた、4Luxuryの衣装にも!あれはバラだったかしら?」

「そうだな!バラは色によってその花言葉も変わる。
歌織さんは紫のバラだったな。えっと…
『誇り』『気品』『エレガント』だな!」

目の前のバラ園の解説表を読むPくん。
美咲ちゃんすごい!そこまで考えて衣装を作ってるのね!




「さて、今回は莉緒の衣装のモチーフの花を探しに来たわけで…」

親切にも、ここの植物園は花の横に名前と花言葉が表記されてる。
ふたりで植物園を歩いて花を見ていく。


「あっ、Pくん!これ、これよ!早速見つけちゃった!」

「どれ…『ヨルガオ』?
花言葉は…『妖艶』…『夜の思い出』!?

おいおい、なんて花言葉だ!」



「あら〜Pくん。私にマッサージしにきてくれて……
あーんなところやこーんなところを触ってきたあの夜…
忘れたなんて言わせないゾ♪」

私は彼の頬をツンツンする。


「ま、真面目に選べ莉緒!それにあれは足だけだったろ!」


「冗談だってばー、もーウブなんだから♪」



恥ずかしさからそっぽを向いた彼が、
何かを見つけて途端にニヤっと笑ってこちらを見る。


「おい、まるで莉緒みたいな花をみつけたぞ!」
「えっ!ほんと?どれどれ…
『デンファレ』ね…。
花言葉は…『わがままな美人』……って!!

ちょっと!どーいうこと!Pくんっ!」


私が怒ると彼がはははと笑う。
ほんと、失礼しちゃう!


それからふたりで夕方までいろんな花を見て回ったけど、
結局コレ!っていう花を見つけられなくて、
一周回って植物園の出入り口付近まで来てしまった。



彼との楽しい時間が終わるのが惜しくて、気を紛らわすために私は鼻歌を歌う。


「〜♪」

「……『WHY?』か?」

「…そう。いい曲よね!」

…歌いなれた私の曲。
最初に私の曲だぞ!って手渡されたとき、ちょっと困ったけど。


出入り口から少し歩いたところの、膝くらいの高さの花壇の縁に腰掛ける。
花壇にはたくさんの紫の花びらが主張するようにこちらを向いている。

名前は、分からない花。

風で落ちてしまった花びらを1枚手に取って匂いをかぐ。
ほんのり甘い香りが鼻孔をくすぐる。



「『Love you Love you 私のことどう 
Miss you Miss you 思ってるの?』」


彼の目を見てそういたずらに問いかける。
彼ははぐらかすように目をそらして花を見ている。

ズルい。

…でも答えが帰ってこないのは分かっていた。



「ねぇ、なんでこの曲を私に歌わせたの?」

「…なんでって、
意中の人からの返事を待ついじらしい女性の気持ちを歌った曲だろ?
結局返事が来たかは分からないけれど。
……莉緒に合ってると思ったから」


もしも本気でそう思ってるなら、彼は気持ち悪いくらい私のコトを分かってる。
分かってて、はぐらかしてる。




なぜ、私が特別なメールを彼だけに送るのか。
なぜ、私は彼だけにイジワルを言うのか。
なぜ、私が返事を待っているのに答えてくれないのか。


たぶん彼は私の気持ちを気づいていて。
でも私の気持ちに返事をしたら今の関係が崩れてしまうのもわかっていて。
だから彼ははぐらかすのだろう。


『分かってくれ、莉緒』
という無言のエクスキューズを送ってくる。


彼は、大人だ。




…まぁいいわ、と自嘲するように私は笑う。

「……今日、結局私の花、見つからなかったわね!」

「そうだな。青羽さんになんて言おうかな…」


「私、もう花は見飽きちゃった!

……だからPくん♪私にピッタリの花、ちゃんと見つけてくること!」


「おい莉緒、そりゃいくらなんでーーー」

そう言いかけた彼に、私は自分の唇に人差し指を添えてそれを制する。

「……これは宿題!Pくんが、ちゃーんと私のとこを分かってるかのテスト!
安易にバラとかにしちゃだめよ?」


そういって、持っていた紫の花びらにフッと息を吹きかけて
彼の顔に花びらを飛ばす。

ゆっくりと花びらの落ちていく軌跡を、彼は静かに目で追う。
いつまでも私の『WHY?』に答えをくれない、
ズルい、ズルーい彼への、

私なりの最後の抵抗(イジワル)!






ライブ当日。

あれから美咲ちゃんから衣装が出来上がって、試着もした。
衣装の名前は、

『チャーミング フラッター』


ピンク色の衣装なのに、随所にあしらわれた紫のラインが
可愛らしいだけじゃなくてどこか妖艶な印象。

背部についたフリルが動くたびにひらひらと舞って、
見る人を翻弄する魅惑的なドレス衣装。

この衣装の出来を見るに、彼はプロの仕事をしたことになる。それもとびきり一級品の!


…彼は本当にズルい。
普段、たくさんの文句があるのに、彼のした仕事でそれも黙らされてしまう。




「莉緒、準備はできているか?」

「あ…Pくん。うん!大丈夫」

私は舞台脇の控室の姿見で最後の衣装チェックをしていた。


会場は満員御礼。
『夜の植物園』をテーマにした催し物のひとつのナイトライブ。
ステージの周りはカラフルなたくさんの花々で覆われていて、
ステージがまるで花弁で覆われているよう。

花の香り漂うステージは、ライトアップされ、
お昼に見せる表情とはまた違った顔を見せる。
この衣装の初披露にこれほどまでにふさわしい舞台はないだろう!



彼も姿見を見て大きくうなずく。
「…うん、キレイだ。莉緒にすごく似合ってる」

お世辞じゃなくほんとにそう思っているんだろう。
彼の口から自然と言葉がついて出て来たのが分かる。

真っ直ぐすぎる言葉。
ちょっと…いやだいぶ照れくさい。



「……ねぇ、Pくん! このドレスの花って…」

「ああ、あのときの花だ。莉緒に合ってると思って」


この衣装や髪飾りには、紫の花のアクセサリーがあしらわれている。
あのとき、植物園の最後の花壇に咲いていた、あの紫の花。


「桔梗(ききょう)だ」

「桔梗…?なんでこの花なの?花言葉は?」



そう尋ねると彼はなぜか急に挙動不審になる。


「あ、あぁーそうだな…花言葉か…うん。いくつか意味合いがある花なんだ」





桔梗。
花言葉は『誠実』『気品』『清楚』
花言葉の由来は、戦が盛んな時代、キキョウという若く美しい娘が、
戦地に行った恋人を一生涯、ただただ待ち続けたという悲しい物語からつけられた花言葉だと彼は語った。


冗談きつい、と私は思った。
まるで私みたいな……いや、そのものと言っていい花。
しかも物語には先行きを占うような絶望的なオチ付き。
本番直前の今、この話を聞かせる彼は鬼か悪魔か、とも思う。



「……莉緒、顔が怖いぞ?」


「宿題の点数を言うわよ?100点満点中、120点よ!」


私は彼からプイっと顔をそらす。




「はは…でもな、今日のステージでは莉緒は、ファンにとっての桔梗になって欲しいんだ」

「え?どういうこと?」


「ファンにとってアイドルの姿を見ることは、
その日のために待って待って、待ち焦がれたものなはずなんだ。
だから今日は、莉緒自身が桔梗の花になってファンに
『誠実』に向き合って、
『気品』あふれ、
『清楚』な姿を、歌と一緒にファンに届けてほしいんだ!」



そう言い切る彼に、プッ!と私は吹き出してしまう。




「……あはは!!なにそれ!
Pくん、ずっとそんなこと考えてるの?
うまいこと言ってるつもりだろうけど、全然そんなことないわよ!
私が桔梗の花になるって!
あはは!」



あーおかしい…!
多分彼は真面目に考えていたんだろう。
だからよりおかしい。

怒ってた気持ちが霧散していくのを感じる。
むしろライブ前に清々しいくらい思いっきり笑わせてくれた彼に感謝だ。


笑われている本人は顔を真っ赤にして恥ずかしがってる。
……うん!この花を選んだ しかえし はできたかな?



顔を赤くした彼は、なにかに気がついたのか、私へ近づく。

「笑いすぎだ。髪飾りがズレてる」

そう言って、まだ赤い顔を私に近づけて桔梗の髪飾りを直してくれる。
近い…笑いすぎてメイク、変じゃないかな?
髪飾りを直しながら、彼は声を絞って話す。

「桔梗には、あと1つ大事な意味があってな…」


「え、なに?」

よし、と髪飾りを直し終わった彼は照れくさそうに頬をかきながら、
言いたいことがあるけれど言えない、そんなもどかしい顔で私を見る。





「それは…」



「百瀬さーん!もうすぐ出番でーす!」


彼の言葉を遮るようにスタッフの大声が響く。

「あ、はーい!じゃあPくん!行ってくるわね!」

彼はいまにも舞台へ走っていく私へ顔を向ける。


顔を赤くして、なんだかいまにも泣きそうで。
それでも、確かに笑って送り出してくれる。


「…ああ!行ってこい莉緒!」


…うん。その笑顔で送り出されたら、頑張るしかない。
ドレスのスカートのフリルをひらひらとたなびかせながら私は舞台へ駆ける。


私は、一夜限りの花になるーーー







彼からの返事はない。

今夜送ったメッセージは、いつものセクシーな写真付きじゃない。

『今度、近所の神社で夏祭りがあるの。一緒に行かない?』
みたいなメッセージ。
送って2時間、既読はつかない。


バッグから取り出した桔梗の髪飾り。
ライブの直前、彼が言った…

桔梗の花言葉の、もう一つの大事な意味。

ケータイのネットブラウザで調べる。




桔梗の花言葉



『誠実』

『気品』

『清楚』

そして、





『永遠の愛』






私は、コレを言おうとした彼の真っ赤に染まった照れくさそうな顔を思い出す。


……こんなの、ズルい。
いままでたくさん出した私の『WHY?』の返事を、
彼は一輪の花で全部答えてしまった。


ズルい。こんなのズルすぎる!




すると、持っていたケータイから電話の着信音が鳴る。


ーーーー彼からだ!


電話を掛けてくるなんて、珍しい!
ずっと待ち続けた彼からの連絡。
夏祭り、行けるかの返事もあるけど…、

でも今は………っ!



急いで電話を取ろうとするーーー、

しかし、ピタッと停まる。




けたたましく鳴りつづける着信音。
彼は今、私が電話をとるのを今か今かと待ってるのよね…






ケータイを置いて、頬杖をついて鳴り続けるケータイを眺める。





もう少し、待たせてやる!
私は自分のちっぽけな復讐心を満たす。



私の待ち時間に対して、
彼の待ち時間は精々30秒だろう。
割に合わない。
それは分かってる。



でも私は、この着信音を聞きながら、しばしこの幸せな時間を噛みしめる。




もうちょっと、待っていてね。
私の大好きな人。
今にとびきりからかってやるんだから!





着信音は、まだまだ鳴り止みそうにない……







ありがとうございました。

2019/7/14 からプラチナセレクションチケットセットにこのカードが交換対象に入ったため、書きました。
百瀬莉緒、どうでしょうか?

皆様のお暇つぶしになれば幸いです。

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