【安価】騎士を夢見て (194)
世界には四つの大陸があった。それぞれには異なる種族が住まい、支配していた。
北の大陸には人類、西の大陸には天使、東の大陸には魔族、南の大陸には亜人が、多様な文化を築いていた。
数百年も前の話だが、各々の思惑が交錯し、世界規模の戦争が勃発し、ものの数年で終結した。
その立役者が『勇者』と呼ばれる者。彼らは終戦後、世界各地に散らばり、一住人と化す。
「…その内の一人が、ここ『メンツゼ村』を作ったのさ。今から300年くらい前の話かねぇ」
「へー」
長老の話を聴き流す子供達。やれやれと首を横に振り、長老は微笑する。
「**や、つまんない話だったかい?」
大欠伸をしていた子供が頷く。ぽんぽんと頭を撫で、長老は言い聞かせるように口を開いた。
「お前さんは『模造勇者(レプリカ)』。つまり、『勇者』の力を宿した稀有な人間なんだ」
「婆さんは、お前さんには嘗ての勇者のように、沢山の人を救う偉大な人間になってほしいんだよ」
「どうしてゆうしゃだってわかるの?」
子供の問い応え、長老はある一点を指差す。その先には、件の子供の胸が。
「その聖痕さ。それは、力を宿した証明なんだよ」
「それに、お前さんは聖剣を引き抜ける唯一の人間だ。先週、こっそり扱ってたのは知ってるからね」
「え」
「はっはっは。別に怒っちゃいないさ」
長老の笑い声と時を同じくして、集会所の扉が開かれる。親が仕事から戻ってきたようだ。
「さ、今日の読み聞かせはお終い。早く親御さんのところに行きなさい」
「はーい」
元気な子供の声を合図に、子供たちは親の元に進む。その中でただ一人、集会所から動こうとしない子供がいた。
「**や。今日はブーモさんのところが預かってくれるようだから、早いとこ行っておいで」
「ん。わかったー」
模造勇者(レプリカ)の子供に、親はいない。彼だけが、その理由を知らない。
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その日の夜、聞き慣れない喧騒に目が醒める。身体に違和感を憶えながら、寝惚け眼を擦り部屋を出る。
「あれ?」
部屋を出ると、そこにはリビングが広がっている”はずだった”。
霞んだ瞳に映るのは、燃える家々と見知った顔の骸ばかり。血は流れ、臓物が撒き散らされる、惨憺たる光景。
「ばーさん?」
達磨になって転がっている長老の頬を突く。反応などあるわけがなく、冷たい感覚だけが指を伝う。
「なんでしんでるんだろ。ほかのひともぜんいん…」
「おいっ!生存者がいるぞ!!!」
「一人だけ、か…。酷いものだな…」
「…待て。”一人だけ”?」
子供の元に走り寄ろうとする騎士を、もう一人の騎士が制止する。
「何言ってんだ!?まずは救助が先だろが!」
「…そうだな。俺が周りを見張る。お前は子供を頼んだ!」
「解ってるっつの!」
「おい坊主!ここは危ないから兄ちゃんと一緒に…っ!?」
手で触れた瞬間、騎士の背筋が凍った。これは、この、感覚は。
「お…おい…坊主、お前…?」
「なーに?」
「何で、血塗れなんだ…?何で、傷一つ無いんだ…?」
「どういうこと?」
「鏡見てみろよっ!!!」
「あれ?ほんとうだ」
鏡に映る子供の顔は、赤黒く汚れていた。
「…その報告をする気か?荒唐無稽過ぎて、却下されそうだけどな」
「仕方ないだろう。状況証拠から推測すれば、こう判断せざるを得ない」
「いやいや…。『生存者の子供が、村に踏み入った賊を全員殺害する』って。御伽噺じゃあるまいし」
「…彼は模造勇者(レプリカ)だ。だとすれば、可能性はどうだ?」
「なっ…!?」
「それに、聖剣にも適合している。夥しい量の血液が付着していたから、それを用いたのだろう」
「…なら、あり得なくも無い、な」
それだけ言い、二人は黙りこくる。机の書類には、推薦書が置かれていた。
クッソ雑な導入お終い
主人公の名前を下2に募集
小さな子供だったエナメルは、成長して少年となった。村にあった聖剣は預かられたままだが、特に気にしてはいない。
「今日から騎士学校に入るのか。費用は全額負担してくれる…って、良いのか?」
一瞬だけ頭を過ぎった疑問だが、すぐにどこかへと消えていく。
思えば、村が壊滅した時もそうだった。年齢を抜きにしても、悲しく思うようなことも無かった。
自分はそういう人間なのだろうと納得する。気にしたところで、現状は変わらない。
「エナメル、時間だ。馬車に乗ってくれ」
「すぐそこなのに過保護なんですね」
「お前はワケありだ。なるべく一人の状況を作りたくない」
つんとした態度を崩さない騎士。もう一人の不良らしい方の方が、人付き合いが良く感じる。
分かりました、と返事をし、エナメルは荷物を持って馬車に向かう。
期待に胸を膨らませながら、馬車に乗るエナメル。その腰には、支給された鉄剣が差されていた。
下5までに同級生の名前と設定
魔法の属性は基本何でもありますが、光と闇だけは抜きです
属性はゲームでポピュラーなやつ(火とか水とか)に加えて『時』とか『剣』とかそういうのもあります
だから、なんでもです
教室に入ったエナメルはまず、落胆の溜め息を漏らした。悲しいことに、彼と同年代の人はいなかった。
最低でも、齢15を超える者のみが在籍するこの騎士学校。まだ12歳辺りの子供は、場違いでしかなかった。
「不満そうだな。好みの女子がいなかったか?」
ずいと近寄ってきたのは、艶やかな黒髪を伸ばした女性。華麗な装飾が施された鎧を着ていることから、貴族に連なる血筋であることは理解出来た。
「ああ、私は『ナルシア』と言う。よろしく頼むよ」
「…『ナルシア』。うん、憶えた。よろしくお願いします」
最低限の礼儀は、騎士達に教えられている。一礼したエナメルは、指定された席に座る。
「…あのような子供が入学するなど、贔屓されているとしか思えないが。それを言えば、私もそう言われてもおかしくない、か」
「複雑だ。私は、実力で勝ち取ったというのに…」
独り言ちたナルシアは、教師が来る前に席に着いた。
「髪、跳ねてるよ」
「うえっ!?マジ!?」
前の席に座る少年の髪が、大嵐に見舞われたが如く跳ねていた。
指摘して漸く気付いたようだが、逆に良く今まで気付かなかったものだ。
手櫛で髪を整えた少年は、椅子ごと回転させてエナメルの方を向く。からっとした笑顔で、素直に感謝を述べた。
「言ってくれてありがとな!俺は『アンリ』。雷魔法を得意としてる。お前は?」
「俺は…?」
エナメルは考え込む仕草をして、口を噤んだ。質問に答えようとしたが、回答を持っていなかった。
自問自答を繰り返し、数分。答えが出なかったエナメルは、名前だけを伝えて頭を下げる。
俺は、何が得意なのだろう。俺は、何なのだろう。そんな疑問だけが、頭の中でぐるぐると渦巻いていた。
始業の鐘が鳴り、教師が入室してくる。見知った顔の騎士が二人と、見慣れない顔が一人。
「先ずは諸君らに、感謝の言葉を贈らさせてもらおう。よくぞ、この道を選んでくれた」
俺は不可抗力だったけど。そう心の中で漏らすエナメル。そんな彼を知ってか知らずか、話は進んでいく。
「早速だが、皆にはある任務に携わってもらう。とは言っても、そこまで難しい話ではない」
「ただ、現時点での実力を識りたいだけだ。試験から2ヶ月経過している以上、何かしらの変化があるだろうからな」
「任務、とは具体的に何をするのでしょうか?」
クラスメイトの一人『セコナオット』が質問をする。うむと頷き、騎士は一枚の紙を見せる。
「簡単な話だ。皆には小隊を組んでもらい、こちらで取り決めた任務を成功させればいい」
「どれも難易度は変わらない。死ぬ可能性もあるが、その時はその時だ。実力不足だったと、諦めてもらう」
ぶっつけ本番とは酷い話だ。他の人は兎も角、自分は何も経験が無いというのに。
愚痴を漏らすが、誰も気に留めない。エナメルは溜め息一つ吐いて、配布資料に目を通す。
「任務は大まかに分けて3種。吟味して、選択するように」
それだけ言った騎士は、教室の片隅に移動した。
選択してください 下2です
1:リオグールス鉱山の探索
2:冥徒(ノスフェラトゥ)の討伐
3:北西の村の異変解決
ついでに3つ安価を
不良騎士、真面目騎士、教師の名前募集
不良が下2、真面目が下3、教師が下4で、教師は設定もお願いします
「んー…」
ペンを回し、天井を見上げる。どれにするか、迷っているのだ。
ざっくりと任務を見てみたが、どれも一筋縄じゃいかないような雰囲気がある。
その中で一番厳しそうなのは、3番だ。一つだけ、内容が不明確なのだ。
「ま、いっか」
だが、それを気にするようなこともなく。さっと数字を丸で囲み、提出する。
一人が提出すると、他の生徒も後に続き提出する。時間は20分ほど設けていたのだが、半分以下で事が済んでしまう。
手早く集計し、結果を発表する。ある者は喜び、ある者は落胆し。
その様子を、エナメルはぼんやりと眺めていた。
下2、3にエナメルとチームを組むキャラ
今までに出たキャラ限定(騎士と教師除く)です
「以上で、発表は終了する。昼には出発だ。数時間しかないが、準備を済ませて校門前に集合するように」
「では、解散」
騎士『カルロス』の号令とともに、一同は教室を飛び出す。傷薬の調達や物資補給。各々が為すべきと思ったことに勤しんでいる。
「ナルシアちゃんとエナメルくんかぁ。大丈夫なのかなぁ~」
身の丈以上の槌に身体を預け、ゆらゆらと揺れる『レイラ』。緊張している様子は無い。
「力量が分からない以上、絶対と断言は出来ない。だが、個々の責任を果たせば、解決出来るだろう」
「さて、私達はどうする?僅かだが、時間はある。何かしらの対策は出来るが」
「ご飯とか用意したいなぁ。村で調達出来ないかもだし」
「私としては、全員の能力を把握したい。指示を出すとしたら、私がやることになるだろうからな」
「君は何を望む、エナメル。意見を聞かせてもらおうか」
ふむと黙考するエナメル。どうするべきか、正しい答えを模索する。
1の技量不足が原因です ごめんなさい
一行が取る行動を下2に
「本当にあったねー」
「人一人入るのがやっとの大きさか。確かに、外から閉鎖するのは容易だな…」
「中に死体とかあるのかな?」
「否定は出来ないが、気にするところが違う。手掛かりを見落とさないよう、注意を払うんだ」
「「はーい」」
松明を灯し、狭い道を進む。ここまで狭いと魔物すら出てこず、すんなりと奥へ進めた。
滴る水音と鳴り響く足音だけが反響する。心地良くも感じられ、不気味にも感じられた。
「…まただ。また、変な感覚がした」
「…うー…。しんどいなぁ…」
亀裂を抜け、空洞に差し掛かると同時に、身体が違和感を覚える。入り口に向けて押しやられるような、迫力の無い威圧感に似た感覚だった。
ふと後ろを見てみると、レイラの顔色が少しだけ悪かった。ナルシアの表情は変わってないが、何故か所作の一つ一つにぎこちなさを感じてしまう。
「…何かあるな。この先に」
踏み締めた白骨が砕ける音とともに、ナルシアはそう漏らした。
まさか、この空洞が最深部だったとは。あまりにも小規模な洞窟で、思わず落胆した。
これでは洞穴だ。洞窟などと大それた名前を付けるべきではない。
「何を落ち込んでいる。寧ろ、これは好機だ」
「こんな小さな洞窟で村と同じような感覚に苛まされるなど、ここに秘密があると自白しているようなものだ」
「そこまで広くないから、探すのにも手間は掛からないしねー…」
「そういうことだ。怪しいのはこの一帯だ。虱潰しに調べるぞ」
ナルシアの指示の元、捜索を開始する。しかし、何の成果も得ることは出来なかった。
「おかしい…。ここに何かがあるはずなのに。無いとおかしいのに」
「でも、何も見つからなかったよぉ~」
「………」
エナメルは岩に座り込み、記憶を辿っていた。今までの情報の中にヒントがあるはずだ。
ここは儀式の現場で、幼子の死に場所。そして、供物を捧げる祭壇でもある。
何かが姿を現わすとしたら、供物が捧げられるその瞬間だ。その何かが元凶だという確証は無いが、今打てるのはこの一手のみ。
もし、他に出来ることが無いのなら。これをやるしかない。
この中で一番若い自身を餌にして、獲物を誘き寄せる。
タイムリミットまで残り2ターン
一行が取る行動を下2に
「ナルシアさん、ちょっといい?」
「なんだ?」
「俺さ、今日はここで寝ようと思うんだ」
床の亀裂を確認していたナルシアの動きが止まる。それと同時に、レイラの持つ大きな岩が砕けた。
「…理由を聞かせてくれ。話はそれからだ」
エナメルは頷き、事情を説明した。
「…君の推察が正しいとすれば、確かに、目標を引き摺り出せる…かもしれない。だが、これは仮説だ」
「もし『外れた』場合はどうする?その時は、私とレイラが死ぬよ」
「そもそも、その目標を斃せるかも分からない。これは分が悪い賭けだ」
「まぁ、そうだけど」
エナメルは欠伸をし、地面に寝転がる。それを見て、ナルシアは咳払いをした。
「…しかし、他に選択肢が無いのも事実。君の提案に乗る他無いな」
「レイラ、一回村の様子を確認してきてくれないか。気になることがある」
「はぁーい…」
レイラは槌を引き摺りながら、入り口へと戻っていった。
「…おかしいと思わないか?」
「え?」
ナルシアが不意に立ち上がり、壁際の骸を指差す。既に骨は風化しており、着ていたであろう服も、襤褸切れとさして変わらなかった。
「これのどこがおかしいの?」
「見て分からないか?外傷が『一つも無い』んだよ。それに、骨格に異常は見られない」
「つまり、ここで餓死したわけじゃない。村で亡くなった人と同じなんだ」
「………?そりゃ、村に悪さしてる奴と貢物を受け取ってた奴が同じなら、おかしくないよね?」
「…生き物というのは、死んでしまえばただの物体に成り下がる。人間なら、蛋白質や脂肪を蓄えた栄養源にな」
「目の前に上質なステーキが置かれて、それを好きに食べていいとしたら。君は食べるか?」
「当たり前じゃん」
「そういうことだ。ご丁寧に食べ物を置かれたのに、それには一切手を付けない…。それはおかしなことなんだ」
「目標の狙いは生命そのものだ。私達の身体には、何の興味も持っていない。だから、直接手を下そうとしないんだ」
「…そして、今回の異変が起きた原因。それは間違いなく、儀式が行われていないことにある」
「…目標と言うのも、何かと混同するかもしれないから控えよう。これからは…そうだな。『邪神』とでも仮称しておこう」
「儀式が潰えたのは100年前。それまでは、定期的に餌を貰っていたから、村には手を出さなかったのだろう。そう考えれば、突然異変が起きたのも頷ける」
「君が『邪神』の立場に立ったとして。毎年ご馳走を貰っていたのに、それが急に途絶えたらどう思う?」
「うーん、イラッとする気がする。すぐ近くに村があるから、お預けを食らっているようなものだよね」
「100年もの間お預けを食らい、我慢の限界に達した『邪神』が、欲を満たすために村を攻撃した」
「今、私達が攻撃を受けているのも、貢物だと勘違いしているからだろう。それ以外の目的もあるかもしれないが」
「例えば?」
「テリトリーに侵入されるのを快く思っていないから…とかか?」
「俺と二人で被害が違うのはなんで?」
「分からない。女の方が好みなのかもしれないな」
「…だったら、村のあの人が苦しむのはおかしいよ。何かある」
「それは、レイラが戻ってきたら解るだろうさ」
ナルシアは水を呷り、何やら書き物を始めた。
「ただいまー…。うぅ、やっぱりキツい」
「お疲れ様。…どうだった?」
「えっとね。こしょこしょ…」
「…分かった。なら、次にやることは一つだな」
にやりとナルシアが笑い、レイラは溜め息を吐いて槌を握りしめた。
「エナメル。ここで一夜を過ごす件だが、それは無理だ」
「何故なら、今ここで終わらせるからだ。そうしなければ、いけない」
「むぅーん…!」
槌を上に構え、レイラは力を込める。槌が黄土色の光を纏い、揺らめき始めた。
「武器を構えろ、エナメル。…さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
「え?え?」
「とりゃーっっ!!!」
全身全霊の一撃を、先程ナルシアが見ていた亀裂に叩き込む。
ミシミシと音を立てて亀裂は広がり、地面が砕け散る。
その先に広がる空間には。
「ゴガァァァァァアァァァァ……!??!!?」
青白い馬と同化した、人型の化け物が鎮座していた。その身には100を超える楔が打ち込まれている。
「『死の伝播者(ペイルライダー)』…!?こんな場所に封印されていたというのか!??」
「『ヨハネの四冥獣』だっけ…。あれ、光属性じゃないと殺せなかった?」
「ああ…!勇者でもない限り、殺すことは不可能だ!!」
「出来るのは、戦力を削いで無力化することだけだ…!!」
「グオオォォォンン!!」
咆哮とともに、異形はエナメルたちを屠ろうと動いた。
下1でコンマ判定です 1に近いほど悪く、9に近いほど良いです
0はバジリスクタイムです
「グルルルル…!」
馬の口から紫色の煙が漏れ出す。その量に比例して、人型の痙攣が激しくなっていく。
「レイラッ!」
「やあっ!」
ナルシアの合図を受け、レイラは地面に突き立てた槌で弧を描くように抉る。
すると、1mほど前方の地面が隆起し、即席の防壁となった。その後ろに三人は隠れ、攻撃をやり過ごそうとする。
「これでちょっとは保つはず。でも、これからどうしよう…」
「奴の呪いを解くのが先だ。でなければ、私達も村人達も全滅だ」
「…じゃあ、痛め付けないと駄目だよねぇ」
「それが出来れば良いんだがな。光属性を持つ人がいない以上、有効打を与えるのは無理筋だ」
「…エナメルだけは逃げるべきだ。まだ侵されていないなら、生存の可能性がある」
「いや、俺なら殺せるかも」
「何をとぼけたことを言っている!?」
「俺、模造勇者(レプリカ)って言われてるんだよ」
そう言って、エナメルは胸元のボタンを外し、胸部を露出させる。
胸骨の辺りに、円と十字架を組み合わせた赤色の模様があった。
「聖痕(スティグマ)…!?まさか、だが、本物なのか…?」
「初めて見た」
「模造勇者など、世界に数人いるかいないかだ…。なるほど、騎士学校に入れるわけだ…ッ!」
ナルシアが言い終わると、壁が揺れてひび割れていく。死の伝播者の攻撃に晒されたようだ。
「…なら、尚更生き残れ!そんな貴重な人間を死なせられるか!」
「いやいや。生き残ったところで、この任務を達成出来なかったら退学じゃん」
「俺も残るよ」
「わぁ…かっこいー」
「…巫山戯る暇があるなら、目の前の敵に集中しろ。来るぞッ!」
刹那、防壁を突破した怪物が眼前に迫った。
下1でコンマ判定です
序盤の敵だからよほど悪くない限りは勝てますのでご安心を
「づっ!」
「ナルシアちゃん!?」
腕と一体化した槍を剣の腹で受け止めるナルシア。膂力の差は歴然で、体勢が崩れていた。
追撃をさせまいと援護に回るレイラ。それに反応して、怪物は槍を振るった。
何度も鈍い音を立て、穂先と槌がぶつかり合う。無機質に動く相手とは違い、レイラの動きはどんどん悪くなる。
「動きを止める…!水の鎖(バインド・ウォータ)!」
透き通った水が全身に絡みつく。だが、怪物はそれを力にものを言わせて引き千切る。
エナメルも斬り掛かるが、全てを悉く往なされ、後ろ蹴りで吹き飛ばされた。
「うーん、どうすりゃ勝てるんだ…?」
「やはり、体力の消耗が…!」
「けほ…。あれ…一発も受けてないのに、血が出ちゃった…」
「…レイラは下がれ…!」
レイラの前で壁を作る二人。死の伝播者はくるりとこちらに振り向いた。
「ふぁ…。俺が前に行くべきかな」
「いや、多少の経験がある私の方が良い…」
「次に備えろ。まだ、攻勢は止まない」
ナルシアの言葉通り、死の伝播者は再度攻撃を開始した。
下1でコンマ判定です
2以下が出たら下29で別途判定で、これで3以下が出たらヤバいわよ
白刃と黒刃が輪舞曲(ワルツ)を踊り、魔力の奔流が周囲を貪る。
最初に脱落したのは、ナルシアだった。
「がっ…!?あ…っ…」
怪物の逆袈裟を受け止めたが、その直後の刺突には回避が間に合わなかった。
反射的に水塊を形成したことで、ダメージは減らすことが出来た。が、それでも行動不能にするには、充分だった。
鎧にひびが入り、装甲材の破片が地面に散らばる。吹き飛ばされたナルシアは、後ろにいたレイラに抱きしめられた。
「大丈夫…っ!?」
「まだ…死んではいない…。だが、体力の消耗が…」
「死の伝播者…あいつ能力がある限り…こちらは常に不利を背負っている…」
「エナメルが特別なんだ…。模造勇者とはいえ、勇者の力を持つのには変わりない…。邪な力を、魔力が全て打ち消している…」
「それが、私達と違って拒まれる感覚がした理由…?」
「だろうな…。あちらからすれば、天敵にも等しい存在だ。好ましいものじゃない…」
「私達はついてる…。あの巨体に打ち込まれた楔が、怪物の能力を抑え込んでいるんだ…」
「…昔見た文献では、死の伝播者が降臨した日に、3つの都市が滅んだそうだ」
「………っ!?」
「どうして、この洞窟に封印されていたのか。それは分からないが、今が奴を滅ぼす千載一遇の好機だ…」
「エナメルに託そう…。私達の…未来を…。皆の希望…を…」
目を閉じたナルシアから、レイラは視線をエナメルに移す。
勇者の模造品は、災厄の獣”で”遊んでいた。
「よっ」
「グ…ァァ!」
漆黒の槍の横薙ぎを屈むことで回避し、そのまま跳躍する。左右に二回斬り付けたエナメルは、穂先の腹を蹴ることで距離を取る。
握られた剣からは、光が溢れている。怪物の傷からも、同じものが漏れ出ていた。
「バーンさんやカルロスさんと組手をやってて良かった。魔法はまだ使えないけど、魔力を込めるくらいならいけるな」
「エナメルくん!上ー!」
「へ?」
力を抑えられていても、怪物は怪物。傷付いた程度では、止まらない。
槍が砕け、形を変え。幾十もの触手がエナメルの上から遅い掛かる。
それを全て斬り落としたエナメルだが、上に注意を払った結果、足元が疎かになる。
怪物はその隙を突き、地面から突き出た触手で捕縛した。
「………」
普通であれば、逆さ吊りにされて武器を突き付けられた時、恐怖を感じるのだろう。だが、エナメルには”それ”が無い。
死に無頓着な存在。それがエナメル。だから、こうして死を意識させられても、動きや思考は鈍らない。
「…俺さ。『メンツゼ村』の唯一の生き残りなんだよ。他は皆死んじまった」
「俺だけが生き残ったってんなら、何か理由が、意味があるはずなんだ。俺が生きることに」
「だからさ。それを見つけるまでは、死ぬ気は無いんだ」
「というわけで、お前はここで死ね。…邪魔なんだよ。化け物」
「………ッ!?」
触手を掴み、魔力を流し込む。原理は剣を使った時と変わらない。
穢れた身体を光が蝕む。どくどくと脈打っていた肉体が、枯れた葉のように形を失い、崩れていく。
拘束が緩むと同時に、手に持った剣で触手を全て薙ぎ払う。傷口から染み込んだ光が、全身の力を奪う。
「あだっ」
拘束から抜け出したエナメルだったが、怪物にダメージを与えること以外は考えてなかった。
至極当然と言わんばかりに、無防備なまま地面に墜落する。少しばかり痛いが、特に問題は無い。
蹌踉めく獣、ゆっくりと立ち上がる人間。どちらが優位に立っているか、一目瞭然だった。
下1でコンマ判定です
2以上が出たら勝ちます これで出なかったら恥ずかしいぞ
良かった、カッコつけてしくじる主人公はいなかった
さようなら、死の伝播者さん。お前はここで、今までのツケを払いやがれ。
光を帯びた剣を、怪物の胸に根本まで突き刺した。光が流れ込み、全身に浸透する。
乱暴に剣を引き抜いて、一度剣を振るって体液を振り払い、鞘に納める。それと同時に、死の伝播者の身体が崩れ、塵と化した。
「…これ、光魔法扱いしていいのかな。名前は…『聖勁(ディヴァインド・イオナイズ)』で良いか」
「…本当に、殺した。正真正銘の、勇者の力だ…」
「…あっ!ナルシアちゃん、身体の疲れが取れてるよ!」
「だな…。これで、生存者は皆助かった…!」
「任務達成だな。じゃあ、早く帰ろうよ。もう疲れた」
「それは翌日だな。もう夜だから、休まないと」
「いくら弱体化されてたとはいえ、ヨハネの四冥獣をやっつけるなんて。凄い人がクラスメイトになっちゃった」
「…そもそも、この力は俺自身のものなのかな。勇者様のものなんじゃないの?」
「当時の勇者が生きているはずがない。過程はどうあれ、その力は君のものだよ」
「むず痒い」
一行は何も残っていない洞窟を後にする。
誰もいない、虚無の空間の中。鈍色に輝く槍が、墓標が如く突き立っていた。
「…ってわけで、どの『冥徒(ノスフェラトゥ)』も闇属性を持っている。場合によっちゃ、他の属性も追加で持つがな」
「先生、冥徒は『四裂戦役(クアッド・ウォー)』の前にも確認されてたのですか?」
「ああ。最古の文献である『ヨハネの聖典』に冥徒に該当する存在が記されていた」
「聖典が書かれたのが、今から2000年くらい昔の話だ。それよりも前からいたんだろうな」
「発生機序は判明してないのかなぁ?」
「捕獲が難しいから、研究が進んでねぇんだよ。お前らだって知ってるはずだ」
「冥徒は光の下での生存が不可能…だから、光魔法が有効だってことを。だから、夜は灯りを点けるってことを」
ウルフの講義を受ける生徒たち。今回の内容は『冥徒』についてのことで、基本的な性質を学んでいる。
「また、一部の冥徒は『再誕(リバース)』という性質を持つ。これは、光属性でトドメを刺さなかった場合、世界のどこかで復活するって性質だ」
「知られている範囲では『ヨハネの四冥獣』が、この性質を持ってる。他にもいるんだが、まぁ、それは放っておく。カテゴライズされてねぇし」
「四冥獣はそれぞれ能力が異なってて、第一の獣『絶望の蹂躙者(ホワイトライダー)は…」
そこで、講義終了を告げる鐘が鳴る。話の腰を折られたウルフは、チョークを片付けた。
「魔物学の講義はこれで終わりだ。質問とかあれば、次回の講義までに来い」
「次は選択科目だ。遅れたりして、先生方に迷惑掛けんなよ」
「意味分からん」
「俺も」
「男二人は…」
「そ、そんなこと言ったら駄目ですよ…。ナルシアさん…」
「いや、俺は流石にヤバいと思うね」
「名家出身のお二方には分かるまい!俺達民間人の苦悩は!」
「何言ってるのアンリくん」
「マジトーンで返された!?」
休憩時間を過ごす六人。アンリとエナメルは椅子に座っており、他の四人はその近くで立ち話をしている。
「今日の科目、私は『魔術』にしよう」
「俺は『模擬戦』かな。どれだけ戦えるか知っておきたい」
「俺は『武術』!実戦でやらかさないようにならないと不味いからな…」
「事故で味方が死ぬかもしれないからね」
「おう…」
「私は『カウンセリング』です…。色々とはっきりさせたいものがあるので…」
「私は不参加かなぁ。絶対参加ってわけじゃないし」
「俺は…どうしよう。そこまで考えてなかった」
荷物を用意し始める皆をよそに、エナメルは天井を見上げて思考する。
どの科目を選ぶか下2に
魔術…魔力を用いるもの全般を学び、修練する。新魔法の習得も可能。『魔導』と呼ばれるものとは別物である。
武術…武器の扱いや体術など、戦闘に関わる技術を磨く。必殺技的なものを開発出来る。
模擬戦…実際に他キャラと戦う。経験を積む他、何かを識ることや仲を深めることが出来るかも。
カウンセリング…教師やカウンセリングの先生と話をする。アドバイスをもらえたり問題解決の一助になる。
フリー…自由時間。好きな行動を一回出来る。
魔術専門の先生が必要なので、教師の設定を下2に
「では、講義を始める…」
漆黒のローブ、如何にもといった三角帽子。傍目で見れば、魔女以外の感想が出ないほどに、魔女魔女していた。
一方で、こちらから両目を確認することは出来なかった。前髪や影が遮っているわけではなく、物理的に覆われ、隠されていた。
ローブと同じ色の包帯が巻かれており、その上で奇妙な紋様が描かれている。何か、悍ましい印象さえ受ける。
「…我は『ミーク』。別に憶えなくても構わん」
「手元のプリント通りに進めよ。我は寝る…」
それだけ言ったミーク先生は、穏やかな寝息を立てる。職務放棄だこれ。
そう思ったエナメル達だが、プリントを確認すると、講義中は寝ていることを堂々と書いてあった。
また、用があれば叩き起こせとも併記されている。機嫌を悪くしたりはしないだろうか。
「大丈夫なのかな。あの先生で」
「私達が口を言える立場じゃあないさ。…それに、彼女もまた、天才だ」
「『滅魔の聖賢』…それが、彼女の異名。ミーク女史によって滅ぼされた魔物の数は計り知れない」
「なんでそんな人が教師なんかやってるんだろう」
『…疲れただけだ。命を奪うことにな』
「うぇっ!?」
突然耳元で囁かれ、喫驚して思わず振り向いたエナメル。だが、そこには誰もいない。
「何か聞こえたのか?」
「…気のせい…なのかな?」
首を傾げるエナメルだが、時間が過ぎていることを気にして、練習台になる人形を取りに行く。
あの声は、ミークのものに似ていた。
魔法関係の特訓内容、または先生に尋ねたいことを下2に
人形に向けて、魔力の塊をぶん投げる。触れた途端に弾けたそれは、人形を壁まで吹き飛ばした。
魔法を受けることを想定しているからか、人形には傷一つ付いていない。
「うーん、しょぼい」
「ただぶつけるだけじゃあ、威力は出ない。形を変えたり、試行錯誤するべきだ」
そう言うナルシアの周りには、10個ほどの水の棘がある。ふわふわと浮いているそれには、一つずつ人形が刺さっている。
「とは言っても、こればかりは個人の問題だ。私が出来るアドバイスは無いだろうな」
「じゃあ、先生に頼むか。すみません」
「ん…。あ…ふぁ…ぁ……」
「…何の用だ」
見るからに不機嫌そうなミーク先生。叩き起こせと書いていたじゃあないか。
「俺、マトモに撃てる魔法を知らないので。だから、ヒントを掴むために…」
「…傀儡を作る。それと戦り合え」
そして、ミークはまた眠りにつく。その横では、黒い液体が集まっていた。
形を変え、カタチを持ち。目の前の先生と何ら変わらない人間が作り出された。
「好きな魔法を撃て。それに我が対応する」
「だから、その魔法を知らないんですけど…。まぁ、いっか」
ぽりぽりと頭を掻いた後、徐に投擲のポーズを取る。
「いきまーす。そらっ!」
エナメルの右手から、人の頭部と同じ程度の光球が放たれた。
下1のコンマが5以上でヒントを掴みます 8以上だと、魔法を一つ覚えます
「ふん」
何の小細工もしていないものが、何かを起こすはずもなく。ミークの手前で、光の球は塵と消えた。
お返しと言わんばかりに、ミークは同じものを撃ち出す。が、形は酷く歪だった。
例えるならと言うより、たらいそのものが飛んでいく。それは綺麗に、エナメルの顔面を直撃した。
「いったぁぁぁぁぁぁ!!?!?」
「ミーク女史、それは光魔法では…?」
「…真似事に過ぎんよ。そういう属性と思え」
「馬鹿げたことには、我がお灸を据える可能性があること、憶えておけ」
「…我は還る。貴様らも、真面目にするようにな」
この時、生徒全員がお前が言えることか。そう心の中で叫んだらしい。
「鼻が痛い」
「…そりゃあ、そんな真っ赤っかになってたらな」
「何をされたの?魔術を受けて、そんなことになるかな」
「光属性のたらいを食らいました」
「ギャグじゃあるまいし…」
昼休み。着替えを済ませ、教室に戻ってきたエナメル達。
エナメルはプチサイズのシュークリームを口に運んでいる。他の全員も、当然のようにそれをつまんでいた。
エナメルの行動を下2に
「偶には一人でゆっくりしたいよね…」
屋上行きの階段を登るエナメル。本人は気付いていないが、シニアが絶賛尾行中だ。
と言っても、本人がしているわけではないのだが。
「…よし、誰もいないな」
エナメルは落下防止用のフェンスに腰を掛ける。激しく吹き抜ける風が心地良い。
「んぅ…はふぅ…♪」
「………」
何か声がしたので、振り返ってみる。そこには誰もいない。
「ん………ぁ…………」
また声がした。今度は、音源の方に向かう。
向かった先は昇降口。その上にも、人が居られるスペースがある。
梯子をよじ登った先にいたのは。
「………♪」
「………」
自身の槌を抱き枕にして寝ていたレイラだった。
どんな行動を取るか、またはどんなアクシデントが起きるかを下2に
「………」
「んーふふー……」
槌をぎゅっと抱きしめたまま、ホワホワとした笑顔を浮かべるレイラ。どうやら、楽しい夢でも見てるらしい。
「ナルシアちゃん…ぬいぐるみ…」
「ぬいぐるみ」
『ナルシア』と『ぬいぐるみ』。水と油や光と闇といったように、決して共存しないであろう言葉。
エナメルの興味はその言葉に惹かれ、無為に時間だけが過ぎていく。
その後、二人は仲良く次の講義に遅刻した。
「話を纏めると、魔導ってのは魔力を用いた科学技術のことだ。今だと、魔導弓とか魔導炉心ってのがそれに該当する」
「魔力自体、かなりの力を秘めてるからな。それを用いる以上、相応の性能は保証されている」
「特に魔導弓については、魔力さえ持っていれば誰でも扱える上、威力も充分だ。尤も、消費も激しいからすぐに疲れるが…」
「まだ研究中の技術だが、頭の片隅に入れておいて損はねぇ。興味がある奴は、専門書を読んでおけよ」
「これで今日の講義は終わり。夜遊びとかしないようにな」
「終わったー!もう座学嫌!」
「そう言うなよ。騎士には必要なことだよ?」
「「………」」
「正座、そろそろ解いていいだろうな。ウルフ先生も、そんな目線を送っていた」
「足が痺れた…」
「あーうー………。助けてぇ……」
「回復魔法とか効かないですもん…。我慢してください…」
「やー……」
項垂れるレイラだが、足を動したらビクンと跳ね起き、蹲る。
スカートとかを無視してそうやっているのだから、相当堪えたのだろう。
かくいうエナメルも、1ミリも足を動かさずにいた。これで何か衝撃が来たら、死ぬ。
「あっ、ごめん!」
「ああああああああああああ!!!!!!!」
アンリが落とした水筒が、エナメルの足裏を直撃する。
痛みに堪えかねたエナメルは、芋虫のように地べたを転げ回った。
エナメルの行動を下2に
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