【安価】禁忌の工学者 (225)

このスレはファンタジー的な世界で兵器とかを作って自由に過ごそう、というコンセプトのスレです。
一から作るのも良し、人とか動物を攫って改造するも良し。ご自由にどうぞ。

テンプレート

《Name》名前。○○型☆☆が基本となります。Ex.探索型サガース。
《Ability》特殊能力。
《Appearance》容姿。
《Weapon》装備。
《Summary》概要。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1563415736

森林の奥深く、人跡未踏の地に建つ木造住宅。その中では、新たな命が造られる。

「これを組み込んで…っと…」

動力となる結晶体を埋め込み、カバーをかける。子気味いい音を立て、綺麗に嵌まり込む。

男は満足げな表情で、椅子に座り込む。後は、起動するのを待つだけだ。

古代の技術。忘却され、歴史の中に埋もれた禁忌。男はそれに触れ、魅せられた。

世界に疎まれ、否定され。どうにか追手を撒いた男は、誰も寄り付かない土地に住み着いた。

「ひでぇもんだよなぁ。俺はただ、物を造りたいだけなのに」

元は高名な学者であったが、それはもう昔の話。今では、指名手配されている危険人物に過ぎない。

くああ、と欠伸をすると、動力音が聞こえる。どうやら、起動が完了したようだ。

開発された兵器のレポートを提出してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。
また、ゾロ目が出た場合は、そちらを特別枠として受理されます。

「システム起動、待機モードに移行します」

目覚めた鋼鉄の乙女は、安置されていたベッドに座して命令を待つ。ふむ、と男は自身の顎を撫でる。

「自分の名前と、俺が何かを言ってみろ」

「私は《I型アイ》。目の前にいる殿方は、私のマスターです」

言語プログラムは問題なし、と。男は手元のレポートに要点を記入していく。

アンドロイドに質問を二、三投げ掛けるが、模範的な回答を返す。良く出来た女だ。

「…良し。最後の質問だ。アイ、お前は何を憶えている?」

しん、と静まり返るアイ。正しい答えを模索しているのか、動力音だけが耳に入る。

「該当するデータ無し。回答は不可能です」

少女の亡骸を基にしたとはいえ、彼女自身の意識があるわけでもない。憶えていないのは、当たり前のことだ。

「まぁ、想定の範囲内だ。試作機第一号にしては悪くない」

男は頷き、満足そうに眠りにつく。

「マスターの就寝を確認。必要機材を用意します」

アイは男にブランケットを掛け、スリープモードに移行した。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。また、次回開発可能まで、3ターンのクールタイムを要します。

兵器である、機械である以上、無機質な行動をするのは当然のこと。だが、それでは現行の機械と変わらない。

古代の技術は、今あるものを凌駕している。それは、扱っている自分が一番知っていることだ。

そんな超技術が、この程度のことを出来ないはずがない。感情を理解し、模倣すること。その程度は可能なはずだ。

さて、どうする。どうやって、感情を理解させる。持たざる者に理解させること。それがどれほど難しいか。

理解する能力は持っていても、伝える側に理解させる能力が無い。何とも恨めしいものだ。

「…そうだな。俺には無理なら、他の奴にしてもらえばいいか」

男は腰を上げ、本棚から一冊の本を取り出した。

「マスター」

「ん?」

黙々と本を読んでいたアンドロイド《I型アイ》は、男の方に向き直る。

「どうして、ロミオはジュリエットを殺害しないのですか?」

「あん?」

「両家は敵対しています。数的不利も無く、膂力で勝るロミオが、一人だったジュリエットを殺害しない理由は無いと思われます」

「そりゃ、2人が愛し合ってるからだ。その愛を否定することは出来なかったのさ」

「理解不能です」

表情も声色も変えることなく、淡々と言ってのけるアイ。男ははぁ、と溜め息を吐く。

「…ちと手間が掛かりそうだな」

復読するアイをよそに、男は頭を掻きながら笑った。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

「これが金だ。基本的に、これの受け渡しによって物品交換を行う」

「金銭についての記憶は完了しました。次の命令を」

一般的な知識、特に、義務教育を受けるのと同程度のものを教えていく。情報処理能力は高いためか、すんなりと覚えていく。

これくらい素直に感情も学んでくれたら。そう思った男だが、概念を簡単に理解出来たら苦労しない、と半ば諦念の感情を抱いている。

学者が必死こいて研究しているものを、専門としていない自分が教えるなど、無理がある。当てずっぽうでも、地道にでも。試していくしかない。

「で、えーと。無闇矢鱈に他人を傷付けないようにな。お前とは違って、人間は脆いんだ」

「脆い、ですか」

「ああ。例えば、お前が俺をぶん殴ったとする。試算しただけだが、8割の確率で俺は内臓破裂諸々が起きて御陀仏だ」

「機構を使用した場合は、間違いなく死ぬ。そういう設計をしてるんだからな」

アイに内蔵された大量の火器は、一つ一つが必殺となる。右手のマシンガンに、左手の剣。

両足のヒールバンカーと、背中に取り付けた2対のワイヤーブレード。何れも、直撃すれば臓物をぶち撒けるような火力を持つ。

そもそもの話、150kgもある彼女が突撃するだけで普通に逝く。機械故にパワーもダンチなのだ。

「まぁ、つまりだ。俺が命令する時以外での攻撃は禁止する。いいな」

「了解しました」

取り敢えず、これだけ教えれば問題は起こさないだろう。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

《I型アイ》は感情の理解、及び獲得までに至っておりません。あと二、三回程度の交流を実行することが必要です。
↓1に実行したい行動を記入してください。

「マスター、その奇っ怪な服装は何ですか?」

「奇っ怪言うな。変装してるんだよ」

男は絶賛指名手配中。それも国際的なもので、どこまで僻地の町に行こうと、自分の名前は聞いた。

そのため、世界と隔絶されたこの土地に身を潜めている。変な噂が立てば忽ち、無数の軍勢に囲まれるだろう。

「ここまで服と髪を弄ればいいだろ」

普段の白衣から、冒険者が着ているような一般的な物に取り替え、ボサボサの髪を手櫛で整える。

眼鏡も外し、隈を隠して。面影が無くなるよう最大限の配慮をする。

「マスター、ですよね?」

「ああ。お前も着替えるんだな」

男は紙袋を投げつける。その中には、子供用の服が詰まっていた。

「いったい、何をするつもりなのですか?」

「町に出掛けるんだよ。でなきゃ、俺はこんなおめかしなんかしねぇ」

理解不能。その文字列で、思考プログラムが埋め尽くされる。

機械と出掛けるなんて、分からない。どれだけ考えても、アイはこの行為の意味を理解出来なかった。

「準備完了。次の命令を」

じゃあ出発だ、と返し、男は家の扉を閉める。厳重に鍵を掛け、足を進めた。

鋼鉄の乙女も、護るべき主人の隣を進む。その最中も思考を続けるが、理解は出来ない。

私の役目は、マスターを護ること。ただ、それだけなのに。

意味の無い行動ばかりする、我が主人。その意図がさっぱり分からない。

「あ、そうだそうだ。アイ、お前は町に出てる間、マスターと呼ぶのはやめろよ」

「何故でしょうか?」

「あのな、俺は指名手配されてんの。変なこと出来ねぇの」

「だから、そんな変な呼び方をされるわけにはいかない。男って呼ぶのも厳禁だ」

「了解しました。ですが、そうなれば別の呼称が必要となります」

「分かってる。それは決めてるから安心しろ」

機械に安心しろ、とは、変なことを言うものだ。

冷たい身体をした自分を、人のように扱う意図。それもまた、分からない。

男の偽名を募集します。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

「鴉ですね」

「思いついたのがこれだったんだよ」

男が名乗る偽名は『クロウ』。なお、これを選んだ理由は特に無い。

それなりの時間を掛けて、辺境の町に到着する。早朝には出たのだが、到着した頃には既に日が高く昇っていた。

「活気がありますね」

「まぁ、ここはダンジョンに近い町だからな。王都までも一直線だし」

大渓谷の入り口を塞ぐように存在するこの町は、古くから商業地として栄えている。

ダンジョンに向かう者、王都に向かう者。どちらも利用するこの町が栄えるのも、当然と言えよう。

その分、負の側面も持っていることになる。人が増えるということは即ち、ならず者や訳ありの者も流れてくることを示す。

「あれは、市場ですか?」

「そうだな。日用品に武器や防具、奴隷に用心棒に麻薬。何でもござれってね」

光と闇の坩堝。そう形容される市場が眼前にあった。

町での行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。合計で2回行動した後、自宅に帰投します。

購入したサングラスを掛け、市場を練り歩く。男の視線は、店員や商品に向けられている。

「マ…クロウ。何を見ているのですか?」

「物色だ。何か使える奴や物は無いかってな。性分だから、どうにもならないのさ」

視線を悟られないために、サングラスを掛けている。多少の違和感は感じても、捕まったりはしないはずだ。

「そうですか」

淡々と返事をし、アイは出店に視線を注ぐ。全てを記憶しようとしているようだった。

「さて、何を買うかねぇ」

特に決めている物は無いが、せっかく来たのだから何かしらを買っておきたい。それが、アイが感情を持つヒントになるかもしれない。

思いつきとはいえ、デートをしようと決めたのは自分だ。なら、贈り物をするのが道理なのかもしれない。

ふむ、と男は思考に耽る。

購入する物品を選択してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。一つのレスにつき3つまで選択可能です。

雑誌に目を通してはいたのだが、女性への贈り物で何が適当なのか、皆目見当もつかない。

色恋沙汰とは無縁だったのが悪いのか、そういうものに興味が無いから悪いのか。どちらかは定かではないが、考えても無駄なことは分かる。

「…ピーンときたのをあげれば良いか」

目に映った一つの髪飾り。それが数多のアクセサリーの中で、唯一輝いて見えた。それがある、と認めた瞬間、身体は既に動いていた。

「これ、付けてみろ」

「データとの照合開始。類似品に《コサージュ》がヒットしました」

「正解」

アイに手渡したのは、『氷郷の薔薇』と呼ばれる植物を模したコサージュ。水色で半透明な、繊細な細工が施された一輪の薔薇。

恐る恐る、といった感じで胸元に取り付けるアイ。なるほど、良く似合っている。自分の勘も捨てたものじゃあない。

「わ、私、は」

コサージュを見て、男を見て。それを繰り返し、言葉に詰まる。ここまでは想定外だったらしい。

「こういう時は『ありがとう』というもんだ」

「あ、ありがとうございます」

また一つ学習したのか、不自然な挙動が元に戻る。そして、ぼそりと呟いた。

「…やはり、理解出来ません…マスターの考えが…私のことが」

それが分かる日が来た時は、その時は。私も、人間になるのでしょうか。

アイの抱いた疑問は、文字列の波に呑まれ、処理された。

提供された試食を味わい、バスケットにフルーツを放り投げる。新しい物を作った後に、御褒美として頂こう。

「この果物は《帝堕紅玉》ですね。非常に稀少な林檎だったと思われます」

「ダンジョンで採れたらしいな。良く見つけたものだ」

濃厚な蜜と、爽やかな酸味が魅力の貴重品。ある時代には、これを食した皇帝が虜になり、職務に手が付かなくなって帝政が崩壊したという。

「お前、試食しなかったよな。食べられるのに、どうしてかねぇ」

「動力は安定稼働中です。食事をしても、得られる出力は微量ですので」

「人間らしく振る舞うなら、そういうのも必要だろ」

「そう、でしょうか」

人間らしく振る舞う。その言葉を否定せず、熟慮を始めるアイ。思考パターンが変わったようだ。

「…っと、そうだ。忘れるところだったな。ほれ」

「鍵。これは、クロウの自宅の物ですね」

「場合によっては、留守にする時がある。その時にあった方が、何かと便利だと思うぞ」

「なるほど。クロウの好意に感謝を送ります」

町での行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

「あ゛ー疲れたー」

荷物を椅子に置き、ベッドに身体を預ける。全身を柔らかな感覚が包む。

「周囲に生体反応無し。外界からも遮断されていますので、変装を解いても問題無いと思われます」

「つっても、服を着替えるくらいしか今は出来ないからな。このままでいいよ」

男の返答を聞き、壁際に立つアイ。待機モードになったようだ。

大欠伸をする男は、眠そうな表情で水を飲む。こんな場所でやれることなど、たかが知れている。

故に。何も出来ないことが原因で、強烈な眠気が男を襲っていた。

宿屋での行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

夢を見た。とても懐かしい夢を。

『はぁ。もう辞めてぇわこの仕事』

『何言ってんすか!?先輩に憧れてウチはここに来たんすよ!その想いを裏切るつもりっすか!?』

機械人形を稼働させ、だらしなく椅子にもたれかかる男。それにぶうぶう、と女性が文句を垂らす。

『だってよぉ、面白くないだろ。同じようなことを繰り返しばかりで、新しい発見なんか何もねぇし』

『うわ、新技術の特許持ってる人が何か言ってる』

『穴があった部分を改善しただけだ。大したことはしてねぇっつの…』

研究所で毎日のように行われていた愚痴り合い。それも、遠い昔のことだった。

夢を見た。今思い出しても、興奮が止まない夢を。

『このモノリス…これ、もしかして…っ!』

幾百もの時が過ぎた廃墟の地下、研究所と思しき施設の中に、巨大な石版があった。

古代文字など、てんで分からないが。ご丁寧にも図解されていたお陰で、理解することは出来た。

『なるほど…この技術があったから、『コヨーティ』や『ベヒモシア』とかの機械獣が生み出せたわけだ…!』

『だが、ここの設備はもう使えない。今ある技術で再現出来りゃ、更に機械技術は進歩する…!』

『ぅわっ!…そろそろ崩れるか。写しを取る時間は無い…逃げねぇと!』

見るもの全てが新鮮だった、廃墟探索。あの時ほどに心が躍った日は無かった。

夢を見た。思い出すことすら厭う、嫌な夢を。

『ゲ…ホッ…オエッ…』

腹に大穴の空いた男は、雨の中を這いずる。既に、手持ちの機械人形は全滅した。

『…っのやろぉ…。とんでもない化け物造りやがって…。気になるじゃあねぇか…』

乾いた笑い声を上げながら、少しずつ進む。朱い液体は流れ続け、道を染めていく。千切れた臓物が、道を飾っていく。

『…先輩』

ゆらり、と角から出てきた女性。その傍らには、数体の機械人形が。

『…年貢の納め時か…。俺ぁ、ただ技術を試したかっただけ…なのによぉ…』

這い蹲りながら、男は声を絞り出す。意識を保持しておくのも、そろそろ限界だ。

『…ウチは何も言わないっすよ』

『サヨナラ、先輩』

微笑んでいた女性。その眼から流れていたのは、雨か、それとも。

「マスター、マスター」

「ん…ぁ……。アイ…か…」

身体を揺すり、声を掛け続けるアイ。その感覚に呼び戻され、男は目を覚ました。

「…酷い夢を見たな。あぁ、頭が痛ぇ…」

「水、頼む。キンキンに冷えた水な」

「了解しました」

アイは飲み物を取りに、部屋を出て行った。1人になった部屋の中で、男は独り言ちる。

最後の言葉、どういう意味だったんだよ。なぁ。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。クールタイムが終わったので、開発が可能となります。

本日はここまで。

「今日の検査項目はこれだ。30分以内に解答して、俺のとこまで持ってきてくれ」

「了解しました」

アイに手渡したのは、自作の計算問題。初等教育で学ぶものから、最近学者が解き明かしたものまで、バラエティ豊かな品揃え。

男は椅子に座り、開発予定の兵器の設計図を書き直す。設計に不備があれば、完成品にも問題が生じてしまう。

「終わりました」

「はえぇんだよぉ!?」

開始して僅か数分で、アイは答案を提出する。ペンを走らせる時間しか掛かっていない気がした。

目に映った、認識した瞬間に計算を終えているとしたら、その速度にも納得だが。どんなに高性能な機械人形でも、ここまで速く解くことは不可能だ。

「全問正解…」

見たら分かる。当たってる奴やん。感嘆の声を漏らしながら、男は無意識のうちにアイの頭を撫でていた。

「あの、えっと」

わたわたと動くアイをよそに、男は満足げな表情をする。

やはり、古代技術は素晴らしい。今あるものなど、ガラクタにしか見えないほどに。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

「家事、ですか」

書類整理をしていたアイは、不意に聞こえた言葉に首を傾げる。

理解不能。主人が何を思い、自分にそんな命令を出しているのか。まだ分からない。

分からないが、少しずつ拒否感が薄まっていくのを感じる。これも、分からない。

無数の知識がインプットされているのに、分からないことだらけ。世界とは、不思議なものだ。

水晶の双眸が揺れる。戸惑っているのか、思考しているのか。本人にさえ分からないが、嫌がってはいないように見える。

「この書物に書かれている通りにやれば良いのですね」

子供用のエプロンを着け、アイは台所に向かった。

アイの家事スキルを判定します。↓1コンマが高いほど、優秀となります。

「終わりました」

「ここはいつからホテルになったんだ」

呼ばれたので、リビングに男は入るのだが。見知った場所だったはずなのに、その面影はどこにも無い。

汚部屋に片足突っ込んでいたものを、徹底的に掃除して、新築時の美しさを取り戻している。当初がどんな姿だったのかは知らない。

丁寧に敷かれたテーブルクロスの上には、どこから取り出したのか不明なディッシュが置かれ、料理が飾られている。

それも、一流レストランで振舞われるようなものだ。こんな家で食べられるようなものじゃない。

「………」

パクリ、と一口頂く。うん、美味しい。王都に招待された時の料理よりも美味い。

本当に良く出来た娘だ、と頭を撫でる。娘のような、愛着に似た感情が芽生えている。これには、男自身も少し驚いている。

「ふふ…。変な方ですね、マスター」

「………!?!!!?!?」

アイが、笑った。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。

「………」

使用済みの食器を洗うアイ。僅かにだが、その表情は綻んでいる。

感情を理解しきったわけではないが、なぜ笑っているのかは分かる。

褒められた。その事実に、胸が躍っていた。喜びを感じる心など、機械には無いはずなのに。

「心は生まれるものなのか。全てが持っているけど気付いていないだけなのか。私には解答出来ませんが」

食器洗いを終え、手を拭う。胸元のコサージュに、ゆっくりと手を添える。

「私にはあるのでしょう。《感情》と呼ばれるものが。だから、笑っているのでしょう」

初期プログラムの中には存在しなかった『感情』というコード。これが、古代技術の本質だとしたら。

いや、そんなことを考える必要は無い。私は、主人の命に従うだけで良い。そう造られているのだから、そうすれば良い。

でも、我儘を言うならば。言っていいとしたならば。

もっと、頭を撫でてほしい。抱き締めてほしい。

私に《愛》を、ください。

「次は、何をすれば良いのでしょう」

手持ち無沙汰になったアイ。指示を受けるために主人の元に向かってもいいのだが、今は作業中。迷惑を掛ける可能性を否めない。

ならば、と寝室の掃除に向かおうとする。だが、それは叶わなかった。

「………!?」

システムエラー。障害が発生しました。その文字列だけがプログラムに溢れかえる。

正常な命令が送れない。思考しようにも、エラーが邪魔をしてままならない。

そんな中、一つの映像が再生される。あるはずの無い、出会ったことのない人間が映っている映像が。

「こ、れは」

分からない。判らない。解らない。解りたくない。

これが何なのか、自分は知っている。だが、認めたくない。

私は《I型アイ》。それ以外の何者でもない。主人に生み出された機械に過ぎないのに。

大きな体躯の男に嬲られる光景にも、鏡に映る少女の顔にも、見覚えがあった。正確に言うならば、該当するデータが断片的にあった。

この少女は、私だ。少なくとも、そう記録されている。

私は《I型アイ》。主人に生み出された機械。でも、これが偽だとしたら。

私はいったい、何?

乱れる電気信号。正常な動作を許さない中で、必死に判断をする。

今はまだ、優先すべき問題ではない。その時が来るまで、封印しよう。

アイは自身の判断で、データにプロテクトを施し、データの奥深くに隠した。

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。行動決定時に、開発対象を選択することは出来ません。

レポート提出時に、開発対象を選択してください。

00が出てしまいましたね。特典は特に考えておりませんでした。

何かのイベントと開発(クールタイム無し)を特典としたいと思います。

「何かあった時はお守りよろしく」

「了解しました」

偶には外の空気を吸わなければ、と提案を受けた男は、普段着の白衣のまま外に出る。

護衛のために隣を行くは、鋼鉄の兵士。外見は人間と何ら変わらないが、その小さな肉体は殺戮に特化した武器(ちから)を秘めている。

鬱蒼と茂る木々の中に、男の家はポツン、と建っている。数歩歩けば、大自然の中に放り込まれる。

「うおっ、うるせぇな」

「叫びましたね」

どこからともなく聴こえてくる咆哮。粗方、森の主だろうが。

アイがいればどうにかなる、と考えている男は、気にすることなく散策を続ける。

「にゃん」

「あら可愛い」

「マスター、こんなところに普通の猫がいるはずありません。魔物ですよ」

「速攻で頸斬ったな」

サーチ・アンド・デストロイ。アイは動物たちと存分に戯れた。

森でのイベントを決定してください。↓2までに来たものを全て実行します。00の特典なので、コンマで判定はいたしません。

「マスター、お下がりください」

「ほいほい」

アイが前に出ると同時に、男が後退する。突如、夥しい数の小刀が飛来した。

「迎撃行動を開始します」

それをアイは難なく無力化する。左手の剣一本で、全てを打ち落とした。

「流石でございますな。凡百の絡繰とは次元が違う」

「どーも」

木の陰から躍り出たのは、黒ずくめの兵士たち。特徴的な剣と、額当てをしている。

「拙者はオオワシ。隣の男が」

「シラヌイと申します。どうぞ、お見知り置きを」

「男殿。我らと共に『ヒノモト』に参っていただきたい」

「やだよ。お前らが欲しいのは、古代技術だろ。用が済んだらポイじゃん」

男は聞く耳を持たず、頑なに否定する。溜め息を吐いた忍者たちは、刀を抜いた。

「では、力尽くで」

「マスター、いかがなさいますか?」

「殲滅しろ。俺がいることが知られちゃ不味い」

「了解。殲滅モード、起動します」

アイの両目に、紅い光が灯った。

「チェストーッ!」

先陣を切った忍者が、高速で接近して斬り込む。それを片手で防ぎ、アイは右手をもう一人の忍者に向けた。

「機構解放。殺戮銃《ガーンディーヴァ》発射」

瞬きの間に、華奢な右腕は銃身に形を変える。完全に不意を突かれた忍者は、回避することが出来なかった。

「ウボァァァァ!?!」

「シラヌイィ!?」

先程投擲された小刀を優に超える数の銃弾が、忍者の全身を食い破る。血が吹き出て、肉が千切れ。人の形をしていたものは、ただの肉塊に成り下がった。

「殺戮剣《カリブルヌス》展開。脅威の排除を完遂させます」

耳鳴りのような音を立て、剣が光る。刀でそれを防ごうとするが。

「なっ……に……ぃ………」

嘲笑うかの如く、刀ごと両断した。そのまま返す刀で頸を断ち、頭を串刺しにする。

「戦闘終了。マスター、次の指示を」

「指示は無し。しかし…いやぁ、強いなお前」

古代技術の素晴らしさ。それには、いつも驚かされてばかりだ。

敵を撃破し、散策を再開する二人。程なくして、ここに在住する男すら足を踏み入れたことのない、秘境へと辿り着く。

「ここまで来たことは無いんだよな。俺ぁ戦えねぇから」

「魔物には襲われませんでしたが」

「…だって、お前がヤバいもん。皆ビビるに決まってる」

「ビビる。恐怖している、ということですか?」

「ああ」

アイの質問を肯定すると、アイは悲しげな表情をする。

「…マスターは、私に恐怖を抱いてますか?」

「いや全然。寧ろ、感動してる」

「こんな凄い技術を再現出来てる…それだけでもう涙が出るね」

「そう、ですか」

嫌われていないことを確認したアイはクスリ、と微笑んだ。

更に奥まで足を踏み入れると、あからさまに風景が変わってきた。自然の中に、人工物が紛れ始めたのだ。

「瓦礫がチラホラ見受けられる。ここに建物があったのは確定だな」

「…マスター。あちらにあるのは、いったい」

「ありゃあ…機械人形だ。それも、数千年前の代物だ」

瓦礫に身を隠すように、機械人形が眠っていた。反応も無く、損傷も激しい。普通であれば、修理を投げ出すほどである。

だが、男はこのレベルなら、何度も修理してきた。現代式の機械人形のみの話だが。

「アイ、こいつを運べるか?」

「問題ありません」

主人の意思を汲み取り、従者は行動を開始した。

回収された兵器のレポートを提出してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。
また、ゾロ目が出た場合は、そちらを特別枠として受理されます。

今回は男が製造していないので、名前に○○型は無くても大丈夫です。

「くぅーん」

「…人格とかインストールされてねぇのかよ」

修理を終えた機械人形を作動させる。起き上がったと思ったら、速攻で顔面を舐めに来た。

舐める。めっちゃ舐める。とにかく舐める。これは躾が必要だ。

「お座り!」

「わんっ!!!」

「お手!」

「………!」

めっちゃ利口だ。ここまで犬を再現しているとは。

組成を分析してみたが、一から十まで全て人工物。つまり、アイと同じく純粋な機械人形なのだ。

アイの場合は、死体の少女の外観を基にして作っただけに過ぎない。この機械人形も同じなのだろうが。

「きゅ~ん…」

足に頭を擦り付ける犬。可愛いじゃないか。

「………」

部屋の片隅で、アイは不貞腐れていた。

特典枠の開発を行います。開発された兵器のレポートを提出してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。
また、ゾロ目が出た場合は、そちらを特別枠として受理されます。

「俺、天才かもしれんわ」

サイズの都合上、外で開発された機械龍。今は設定中のため動くことは出来ず、塒を巻いている。

「来たぁ!」

ゆらり、と首を振り、身体を起こす。機械龍は品定めするような目つきで、こちらを覗く。

「グゴゴゴゴ……。貴様が、我を造りし者か…?」

「はいそうです。お名前をよろしくお願いしまーす」

「我はドラグ…。《契約型ドラグ》だ」

「はいオッケー。それさえ分かってるなら問題無い。ドッグは吠えるな」

燥ぎ回るドッグを抱え、男はレポートをファイルに閉じる。龍は男に、質問を投げ掛けた。

「何故、我を造った。この力が必要か?」

「造りたいから造ったってだけ。力に興味は大して無いな。造れただけで大満足」

「え、マジ?我の力があれば、国くらいは滅ぼせるぞ?」

「滅ぼすメリット無いじゃねぇか。お前はこの家を守ってたらいいよ」

「えぇ…。我の存在意義、それだけなのか…」

「マスター、これだけ大きいと、良からぬ輩を引き寄せると思います」

「こんなところに人なんか来ないからヘーキヘーキ。最悪殺せば良いんだし」

行動を決定してください。↓2までの中でコンマが高い方が受理されます。
今回の開発は特典のため、クールタイムが存在しません。

「………」

「何だ、機械仕掛けの人形よ」

「いえ、美しい剣だと思いまして」

真っ直ぐと向けられる視線。それは主に尾の大剣に注がれているのだが、悪い気はしなかった。

「そうかそうか。貴様は良い目をしている」

「ありがとうございます」

「…して、人形よ」

人形と呼ばれることに不満を持ったのか、アイは語気を強めて警告をする。

「私は《I型アイ》。アイ、と呼称するようにお願いします」

「相分かった。アイよ、貴様は戦闘用に造られた存在か?」

「はい。戦闘用の機構を搭載しております」

「ふむ。ならば、我とドッキングしてみないか?」

「ドッキング、ですか」

「うむ…。我の肉体を分離させ、貴様の身体を覆う外骨格とする。火力、機動力、防御力。何れの上昇が見込めよう」

「考えておきます」

そう言ったアイは、ドラグの頭に乗る。くつくつ、と笑い、ドラグは羽根を休めた。

「ふむふむ。見つかったのは三つか…」

解析結果では、近辺に確認されたダンジョンは三つ。何れも時空の歪みが激しく、相当厳しい場所であることが分かる。

一つは『エクイバレント』。無限に同じ道を進ませられる回廊が複数存在するダンジョンで、予想外の消耗をするかもしれない。

次は『サンドメイズ』。ピラミッドを模したダンジョンで、幾つもの隠し通路で構成された、迷宮だ。

最後は『スクリューパイルドライバー』。どこぞの格闘技の技の名前を冠するだけあって、螺旋状に地下へ降りて行くダンジョンだ。

変な名前であるが、一応最難関と呼ばれるだけあって、時空の歪みが激しい。

「何れも何があるのか未知数なダンジョンだ。どんな初見殺しがあっても、不思議ではなかろう」

「魔法を学びたい」

「マスターの望みの通りに戦うのが、私の役目です。命に代えてもお守りします」

「自分は火を噴くくらいしか出来ませんが」

「わんわん」

「どうしましょ」

正直言って、幾ら機械人形を連れているからといって気軽に向かえる場所ではない。

最低でも、二人は破壊される覚悟をしておいた方が良い。

設計図は残っているが、同じものを造れる保証は、出来ない。

向かうダンジョンを決定します。二票先取したダンジョンに向かいます。

行かない、という選択肢ももちろんありです。

「じゃあ、探索と行こうか。いいアイテムとかがあったら、忘れずに回収しとくれよ」

「了解しました」

煉瓦造りの小部屋内にあるみすぼらしい祠に手を触れると、チキチキ、と音を立てて空間が黒く塗り潰される。

音が止み、闇が消える。すると、今までに良く見た遺跡のような光景が広がっていた。

「ほぅ…。綺麗なもんだ」

再度地図を印刷してもらい、間取りを確認する。

どうやら、無数のブロックが螺旋状に繋がり、地下に向かって延びているようだ。

一つ一つのブロックが迷宮になっており、その一つを踏破するだけでも、かなり面倒になっている。

「ドッグがいるお陰で、多少の迷路なら楽に攻略出来る。魔物にだけ注意するぞ」

「我の身体では先に進めそうにない…。仕方ない、やるぞ。アイ」

「もうですか?」

「この先に何があるか、我も見たいし。ここで留守番もつまらん」

「分かりました」

ズカズカ、と前に進む男の後ろで、二人は何やら話をしていた。

ダンジョンの深度と踏破階数を判定します。↓1コンマがダンジョンの深度(50以下の場合は50に書き換え)、↓2コンマ一桁が踏破した階数となります。

↓2までに発生したイベント、アクシデントのレポートを提出してください。コンマが大きい方が採用されます。

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