小日向美穂「恋愛相談Masque:Rade」 (18)


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美穂「…………うーん……うーん……」

智絵里「…………」ペラッ

美穂「大丈夫かなぁ……うーん……」

智絵里「……………………」ペラッ

美穂「…………大丈夫かなぁ、不安だなぁ……」

智絵里「………………………………」ペラッ

美穂「不安だなぁ! 今わたし、とっても不安ですっ!!」

智絵里「………………………………」

美穂「じーーーーーっ」

智絵里「……ど、どうしたんですか? 美穂ちゃん……」

美穂「あ、丁度いいところに智絵里ちゃんっ! わたし、今とっても不安なんですっ!」

智絵里「……そ、そうなんだ……」

美穂「うん、そうなんですっ!」



智絵里「…………」

美穂「…………」

智絵里「…………」

美穂「……えっ、何があったのか聞かないんですかっ?!」

智絵里「……えっと……何があったんですか?」

美穂「本当はナイショにした方が良いんだけど、智絵里ちゃんがそこまで言うなら話そうかな! えっとね?」

智絵里「その……ごめんなさいだけど、わたしこの後レッスンあるから……」

美穂「五分あれば話せるから! 聞いて?! ねっ?」

智絵里「相談、ですか……?」

美穂「惚気かもしれないけど」

智絵里「……お疲れ様でした、美穂ちゃんっ」

美穂「相談! とっても相談事なんですっ!!」

智絵里「……恋愛相談……?」

美穂「えっ、なんで分かったんですかっ?!」

智絵里「……………………あ、酸素美味しい」




美穂「でね、あのね?」

智絵里「相談だったら、えっと……わたしより、もっと適切な人がいると思うから……」

美穂「適切な人? あのね智絵里ちゃん、わたしは智絵里ちゃんを信頼してるから相談しようとしてるんですよ?」

智絵里「ど、どうして……そんな上から目線になれるのかな……」

美穂「そんな智絵里ちゃんが言うって事は、それこそプロのスーパー相談役とかじゃないと……」

智絵里「きっと、今の美穂ちゃんにピッタリだと思うから……」

美穂「誰ですか?」

智絵里「深紅の薔薇仮面です」

美穂「えっ、何ですかその女子高生の恋愛相談とは一切掛け離れた不安な要素しかない不穏な名前の人達」

智絵里「えへへ、美穂ちゃんが心の底から助けて欲しいって思えばすぐ駆け付けてくれると思います……っ!」

美穂「ほんと?」

智絵里「うん、多分……それじゃ、お疲れ様でした」

美穂「うん、レッスン頑張ってねっ!」




美穂(深紅の薔薇仮面……ぜ、絶妙にダサい……)

美穂(その場の嘘で騙された気が……ううん、智絵里ちゃんが教えてくれたんだもん。信頼しなきゃダメだよね!)

美穂(……名前、呼びたくないなぁ)

美穂(…………でもっ!)

美穂「助けて! 深紅の薔薇仮面!!」

「よし、今だよまゆ!」

「ですねぇ! 行きますよぉ加蓮ちゃん!」

「私が先に颯爽と現れるから、まゆは後からついて来て」

「え、まゆの方が先に登場するべきだと思いませんかぁ?」

「思わないけど。神秘の紅薔薇は私がサブリーダーだし!」

「名前間違えてる人がサブリーダーとか信じたくありませんよぉ。と言うか加蓮ちゃんがどうしてもって言うから、そんなダサい名前を渋々認めてあげたんですけどーー!!」

美穂「あ、ダメっぽい」




ガチャッ!!

深紅の薔薇仮面K.H「はい私の方が先に登場したー! まゆの負けー!!」

深紅の薔薇仮面M.S「知らないんですか? 真のヒーローは遅れて登場するものなんですよぉ?」

美穂「うわぁ、ダサい格好だねっ!」

深紅の薔薇仮面K.H「ごほんっ! 悩める子羊在るところに私たち在り!」

深紅の薔薇仮面M.S「人の恋路は蜜の味、し……深紅の……薔薇仮面参上……やっぱり名前変えませんかぁ?」

美穂「惨状の間違いだよね?」

深紅の薔薇仮面K.H「で、悩みは何?」

深紅の薔薇仮面M.S「まゆ達……深紅の薔薇仮面達にお任せですっ!」

美穂「うん、一回仮面外しませんか? わたし、事務所内に不審者がいるって知り合いを警察に突き出したくないから……」

深紅の薔薇仮面M.S「な、何の事ですかぁ? まゆ達は美穂ちゃんの事なんて何も知りませんよぉ?」

深紅の薔薇仮面K.H「そうだよ美穂。あんた誰? 名前は?」

美穂「…………何してるの? まゆちゃん、加蓮ちゃん」

深紅の薔薇仮面s「……………………」



まゆ「ごほんっ! 改めましておはようございます、佐久間まゆです。この度はスペシャル恋愛アドバイザー深紅の薔薇仮面をご利用頂きありがとうございました」

加蓮「恋愛の匂いがしたからね。となればやっぱり私たちの出番な訳じゃん?」

美穂「恋愛相談……うーん、まぁ、そうなんですけど……」

まゆ「むむむ、これは何やら煩瑣きわまる事情の様ですねぇ」

加蓮「煩瑣きわまる…………? え、あぁうん分かってるし? 小さい頃はよく煩瑣で遊んでたし!」

まゆ「もう少し上手い嘘を吐いて欲しいですねぇ」

加蓮「確かに、小さい頃は遊べるほど身体丈夫じゃなかったもんね」

まゆ「……ええと、あの……」

加蓮「バリケードな身体の問題に口出さないでよ」
 
まゆ「壁を感じますねぇ」
 
加蓮「デリカシーだっけ?」
 
まゆ「デリケートですからね?」

加蓮「で、健康な美穂はどんな悩みを抱えてるの?」

美穂「相談させる気ありますか?」





美穂「……えっと……これは、その……」

美穂(まゆちゃんや加蓮ちゃん相手だと、もしかしたら同じ人が好きな可能性があるから……)

美穂「……そう、お友達! わたしのお友達のお話ですっ!」

加蓮「あー、そういう切り出しって大体本人の話だよね」

美穂「…………友達のお話だもん……わたしの悩みじゃないもん……」

まゆ「そ、そうですよねぇ? アイドルは恋愛厳禁ですからねぇ? 美穂ちゃんのお友達のお話に決まってますよねぇ? 何を言ってるんですか加蓮ちゃんは……」

美穂「…………ですよね……分かってるもん……だから悩んでるんだもん……」

加蓮「あーまゆ泣かせたー」

美穂「泣いてないもん……お友達のお話だからわたしは悩んでないもん……」



美穂「えっとね? その女の子には、好きな人がいるんです」

加蓮「年収は?」

まゆ「まず最初に聞くのソレですか?」

加蓮「どこ住み? 趣味は? 調べてみました!」

まゆ「如何でしたかぁ? 何も分かりませんでしたけど、付き合えると良いですねぇ」

美穂「……でね? その女の子と、そのアイドルの子が好きなプロデューサーさんはちょっと事情があって、恋愛は基本禁止なんです」

まゆ「……アイドル……? プロデューサーさん……?」

美穂「あっ、えっ、ええっと……仮名ですっ!」

まゆ「なら大丈夫です」

加蓮「なーんだ、美穂とプロデューサーさんの話かと一瞬思っちゃったけどそんな訳無いよね」

まゆ「アイドルとプロデューサーが結ばれるなんて、決してあってはいけませんからねぇ」

加蓮「そんな決まりあったよね」

まゆ「それに、美穂ちゃんは草食系ですから」

加蓮「えっ、美穂って臆病な肉食系ってイメージあったけど草食系? 草食動物なの? 牛なの? ぶもっ、ぶもっ!」

美穂「…………でも! 勇気を出してこないだのバレンタインにチョコ渡したもん! 受け取ってくれたもん!! ……ってその子が言ってたもん!!!!」




加蓮「なるほどね、アイドルとプロデューサーって言う関係のせいで悩んでるんだ」

まゆ「ふむふむ……これは確かに難しい事情ですねぇ」

加蓮「分かるー、私も……私の友達もそんな悩み抱えてた気がする」

まゆ「まゆもその関係の壁のせいで四苦八苦してますよぉ」

美穂「うん……受け取ってはくれたけど、迷惑じゃなかったかなって不安で……授業中しか寝れなくて……」

まゆ「そうですねぇ、先ずは……」

美穂「先ずは……?」

まゆ「授業はきちんと受けましょう」

美穂「…………その子に伝えておきます」



美穂「他にも不安な事があって……プロデューサーさん(仮名)、色んなアイドルの子達からチョコを貰ってたんです」

まゆ「ありますよねぇ、義理チョコとかいう牽制と心理戦」

加蓮「って事は、そのプロデューサーさんって人は割と親しまれてるんだ」

美穂「うん、だから……わたしのチョコが、大人数から貰ったうちの一つになっちゃってたら嫌だな、って……」

加蓮「分かるー! 私も全く同じ事悩んでた! 私の友達が!」

まゆ「ちなみにですけど、その子はどんな風にチョコを渡したんですか?」

美穂「……は、恥ずかしくって言えませんっ!」

まゆ「……まさか、自分の身体にチョコを塗りたくって……」

美穂「そんなヘンタイさんみたいな事してないもんっ!」

まゆ「…………で、ですよねぇ? 落ち着いて考えればドン引きされる事くらい分かりますよねぇ? まゆだって分かってますよぉ? ……今なら」

加蓮「まぁ今それはいいや。反応はどんな感じだったの?」

美穂「『ありがとな、美穂。丁度甘いものが食べたかったところなんだ』って笑顔で受け取ってくれたんですっ!」

まゆ「……『美穂』?」

美穂「あっ、その子の仮名が美穂なんです」



まゆ「……惚気入ってません?」

美穂「気のせいじゃないかな?」

まゆ「美穂ちゃん、それお友達に惚気られてますよぉ」

加蓮「よく付き合ってあげてたね」

美穂「……の、惚気に付き合うのってうんざりしますよねっ!」

まゆ「ですよねぇ、ほんと讐って感じです」

加蓮「それなんて漢字? まぁでもなんとなく分かるけど」

まゆ「恋愛相談に見せかけた惚気話はほんっとうにうんざりします」

加蓮「美穂もさっさとその友達と縁切れば? 今後も事あるごとに惚気られると思うよ」

まゆ「まゆなら距離を置くかもしれません」

加蓮「私ラインブロックするかも」

美穂「……う、うぅぅ……」




まゆ「……うふふ、なぁんて、冗談ですよぉ」

美穂「へっ?」

まゆ「そのお友達って、美穂ちゃんの事ですよねぇ?」

加蓮「…………だよね!」

美穂「あ、あれっ? 気付いてたの?」

まゆ「当たり前です、気付かない訳がありません」←気付いてた

美穂「上手く誤魔化せてたと思ってたのに……」←本気で気付かれないと思ってた

加蓮「美穂分かりやす過ぎるし、私達がどれだけ美穂と付き合ってると思ってるの?」←本気で気付いてなかった



まゆ「美穂ちゃんが悩んでる事、アイドルであれば誰しも一度は通る道だと思います」

加蓮「でもほら、よく言うじゃん?」

まゆ「はい」

まゆ・加蓮「「バレなければ良い、って」」

美穂「……良いのかな……」

まゆ「良いんです、好きって気持ちに正直になる権利は女の子なら誰でも持ってます」

加蓮「どうせ恋するなら本気で恋しようよ」

美穂「……えへへ、ありがとうございますっ!」

まゆ「いえいえ、力になれたのであれば何よりです」

加蓮「で、美穂本当は誰が好きなの? 学校の友達?」

まゆ「お相手がどんな人であれ、まゆ達は協力しますよぉ?」




美穂「えへへ、ぷ、ぷろでゅ……な、内緒ですっ!」

まゆ「…………」

加蓮「…………」

まゆ「…………」

加蓮「…………」

美穂「でも……いつか、ちゃんと想いを伝えたいな……」

まゆ「やめましょう、やっぱりアイドルは恋愛厳禁であるべきです」

加蓮「恋愛するアイドルとかクソでしょ、あり得ないでしょ」

美穂「えっ? えぇぇっ?!」

まゆ「美穂ちゃんは深紅の薔薇仮面の協定を破るつもりですかぁ?」

美穂「そんなダサい名前の協定を結んだ覚えは……」

加蓮「は、ダサい? その発言、深紅の薔薇仮面条約第78条に違反してるけど」

美穂「だから結んだ覚えがありませんっ!!」

まゆ「まゆ達を呼んだ時点で美穂ちゃんももう深紅の薔薇仮面メンバーですよぉ!」

美穂「聞いてないもんっ!!」

加蓮「え、智絵里から聞いてないの?」

美穂「何も聞いてません!!」

加蓮「智絵里、リーダーの癖にそこらへんサボるしね」

美穂「今日一驚愕の事実!!」


以上です
お付き合い、ありがとうございました

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