【百合】短編百合SS集【短編】 (220)

・百合です
・5レス~10レス程度の、短めサイズのSSが溜まってきたので、放出していきます
・別名発想の墓場シリーズ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570972581




~WindowsXP百合~









ザザーン

ザーン


ロボ娘「わぁ……」

助手「やっと着いたぁー……いやぁ、結構距離あったなぁ」

ロボ娘「マスター……あの、これは……」

助手「これが海だよ、ロボ娘」

ロボ娘「ウミ――……、これが……」

助手「どう? 感想は?」

ロボ娘「……」

助手「……キミのAIの人格モジュールの、そのモデルになったある人がいてね」

ロボ娘「はぁ……」

助手「ここは、その人の、大好きだった場所なんだ」

ロボ娘「……」

助手「どうかな? キミにも何か、感じるものがあるんじゃない?」

ロボ娘「――データベース内に、適合する感情ルーチンは見つかりませんでした」

助手「……そっか」

ロボ娘「新規演算を行います」

助手「……」

ロボ娘「……」

助手「……」

ロボ娘「……」

助手「……」



ザザーン

ザーン



ロボ娘「そうですね……、青いです」

助手「あはは、普通か。他には?」

ロボ娘「他には……水の量は測定不能ですが、色は青く、一定のペースで青く揺らいでいます。青くて。青は遠くまで青いようですが、距離は不明で青い」

助手「……うん?」

ロボ娘「青は際限なく青くて空が青くその先も青いため境界も青く青と青が青い青に青の青は青青青青青青青青青青青青青」

助手「うわぁぁぁぁんブルースクリーンー!!!」

ロボ娘「aoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoaoao」



ザザーン






テンテンテーン テンテーン







助手「はぁ……」

ロボ娘「失礼しました」

助手「うん……リブートしたからね、今度はゆっくり、一つずつやろう」

ロボ娘「了解しました、マスター」

助手「ゆっくりだよ……」

ロボ娘「……」

助手「……」

ロボ娘「……そうですね」

助手「……」

ロボ娘「……砂があります」

助手「うん……」

ロボ娘「たくさんの砂が、地形を形成して。そして水が押し寄せてきます」

助手「波だよ」

ロボ娘「波が――……押し寄せて、また戻って――……少し泡立って――白くなって――」

助手「うん」

ロボ娘「聴覚信号を解析……、不思議な音が――……、騒がしいのに……何故だ静かで……」

助手「……」

ロボ娘「あぁ……」



ザザーン

ザーン



ロボ娘「あぁ……、なんて……」

助手「どうだい? ロボ娘?」

ロボ娘「……」

助手「見れてよかった」

ロボ娘「……」

助手「この景色を。海の……、よく晴れた春の海の景色……」

ロボ娘「……」

助手「……あの人が」

ロボ娘「……」

助手「博士が大好きだった、この眺めを……」

ロボ娘「……」

助手「……」

ロボ娘「……」

助手「よかったよ」

ロボ娘「……」

助手「キミにも見せられて」

ロボ娘「えぇ……」

助手「……」

ロボ娘「本当に――……」

助手「……」

ロボ娘「綺麗だな、助手」

助手「……――は」

ロボ娘「お前にも」

助手「……はか」

ロボ娘「見てもらえて、よかった……」

助手「博士…………?」

ロボ娘「……」ニコ

助手「博士――……? 博士……!? はか……っ……」

ロボ娘「……どうしましたか? マスター?」

助手「あ……」

ロボ娘「……マスター?」

助手「……なんでも……、ないよ……」

ロボ娘「おかしな人ですね」

助手「うるさいポンコツ……」

ロボ娘「マスター?」

助手「何でもないったら……目に砂が入っただけだ……っ!」

ロボ娘「そうですか」

助手「そう、何でもない、何でもないんだ……」グイッ

ロボ娘「……」

助手「……」ゴシゴシ

ロボ娘「……ところで」

助手「……」

ロボ娘「ウミの水の情報が欲しいですね。冷たいのでしょうか。暖かいのでしょうか」トテトテ

助手「あっ、おいおい……! そんな急ぐと!」

ロボ娘「分かってますよー」トテテテ

助手「危ないから! 駄目だから! 海水ヘンなところに入るとヤバいからぁ!!」

ロボ娘「え?」グラッ

助手「あっ」

ロボ娘「あっ」



バシャーン!!




助手「あああああああああああああああああ」



ザザーン

ザーン





テンテンテーン テンテーン






~WindowsXP百合・終~






~マシュマロ女子百合~









西川「ん~、じゃあ……ヒメコちゃん?」

山田「ブー」

西川「高野さん」

山田「はずれ~」

西川「えぇ~……、じゃあ……坂本さん?」

山田「誰だよ」

西川「3年の。あの化学部の」

山田「あのって。知らないって。もう……はずれーっ!!」

西川「わかんないってぇー……」

山田「なんで分かんないかなぁ」

西川「……セナぴょん(笑)??」

山田「ばっか、お前……あれはちょっと、もう違うじゃん。妖怪ちゃんじゃん」

西川「だからイチ推しなんでしょ? デブ専的には」

山田「デブ専じゃないですぅ~! マシュマロ愛好家ですぅ~~!」

西川「くっそ知らんし」

山田「セナぴょんは分かるだろ。全然マシュマロって感じじゃないじゃん。なんか……ヨゴレだし。ほら、分かる? 分かれ」

西川「分からんのよ。変態山田のこだわりは」

山田「何で分からないかねぇ~……、あのボリュームのミリョクが……。お肉ちゃんから溢れ出るラブリーな可愛さとセクシーな空気がぁぁ――……」ワキワキ

西川「キモいってば、もう。……それで? 結局誰なの、アンタのイチ推しデb…………マシュマロちゃんは」

山田「……カオちゃん」

西川「……、えぇ~……」

山田「えぇ~って何だよ! なんだそのリアクションは!」

西川「だってさぁ……。普通だもん、変態のくせに。全然普通じゃんチョイスが」

山田「そう?」

西川「そうでしょ。カオちゃん普通に可愛いし。ポチャいけど。あと超イイコだし。優しくて」

山田「はっ」ハンッ

西川「一笑に付すなこの野郎」

山田「あっっさはかだなぁ~~、西川クンよぉ~~~」

西川「腹立つ顔だなぁ、変態のくせに」

山田「カオちゃんはなぁ、お前……カオちゃんはー……」

西川「……」

山田「……」

西川「……」

山田「…………」

西川「……」

山田「………………いいのよぉ?」ニチャア

西川「くっそキショい」

山田「ホントにね……、最初は超柔らかくて……指とかどこまでも沈んでいきそうなのに……、芯に弾力も感じられて……、揉むと――……」

西川「やめてーっ! 聞いてないからーっ! マジで聞かなくていいから変態の猥談はぁーっっ!」

山田「やわっこくて、あったかくて、イジめたいような甘やかされたいような…………」

西川「本気でやめれ!!」ビシッ

山田「あうっ」










カオル「んふふ、それでね、妹と猫動画シェアしあっててねー」

西川「へぇ、いいなぁー」

カオル「それでこの間のが、すっごく可愛くて―!」

西川「はぁー……」


西川(はぁ……)

西川(この子がねぇ~……)

西川(こんな子が山田のエジキになっちゃうなんてねぇ……)

西川「……」ジー

カオル「――これこれ、ソマリっていうんだけど、西川さん知ってる?」

西川「え~? 知らないぃ~?」ジーーーー



西川(何がソマリだよぅ、すけべなことなんて一個も知らないみたいな顔して)

西川(乱れたのかい? あの日あの夜、それはもう乱れてしまったのかい????)



カオル「でね、見て見て……。この動画なんだけど……」

西川「……」ジー

西川「……」



西川(あ~……でも、山田の言うことも何となく分かるかもなぁ……)

西川(実際、カオちゃんめっちゃ抱き心地よさそうだなぁ……)



カオル「このね、この子猫が――……」

西川「……」ギュ

カオル「?」



西川(ほら、お手手も柔らかいしさぁ……)



カオル「……」

西川「……」ムニムニ

カオル「あ、あの……」

西川「……」フニフニ



西川(……ってか、うわ……、すっごい体温高い……)

西川(あったけえ……)

西川(すべすべでモチモチで……、へぇぇ、手だけでこんな感じですかぁ……)



西川「……」サワサワ

カオル「……に、にし」

西川「……」サワワワ

カオル「にしかわさ……」



西川(フワフワ……、いやフカフカ……。なるほど、確かに山田の――……)



カオル「に、西川さんっ!」

西川「……!?」ハッ

カオル「あっ、あの……」

西川「ごっ……! ごめんっ!!」パツ

カオル「や、いや……全然いいんだけどねぇ」

西川「いやいや、めっちゃボーっとしてた。ごめんね。ごめんごめん」

カオル「ううん、全然大丈夫。いきなりだから、びっくりしちゃっただけで」アハハ

西川「いやー……、ごめんなさいね、本当に」

カオル「ホントに大丈夫だから。……でも……」

西川「ん?」

カオル「……西川さん、手つきちょっとヤラしくって、……ちょっと」

西川「……」

カオル「ドキドキしちゃった……」

西川「……」

カオル「な……、なぁんちゃってぇ~? あはは~」アセアセ

西川「……」





西川「……」ムラァ






~マシュマロ女子百合・終~



みたいなね?



今日はここまでです
こんな感じで書いていきます




~赤ちゃんは泣くのが仕事百合~



夕子「……」

赤ん坊「ンミャ、ンミャ」

トモ「はぁい、いっぱいミルク飲めましたね~、エラいでしゅね~」

夕子「……」

赤ん坊「ダー、ウー!」

トモ「あらあら、もうオネムですかぁ~? じゃあお昼寝しましょうね~」

夕子「……」

赤ん坊「ゥー……、ムグク、ムー」

トモ「はぁい、いい子、いい子……。おやすみなさい……」ナデナデ

夕子「……」

赤ん坊「……」

トモ「……」ナデナデ

夕子「……」

赤ん坊「……」Zzz

トモ「……」ナデ

夕子「……」

トモ「ごめんね、夕子。ちょっと、洗濯物畳みながらで悪いけど……」

夕子「はぁ~……」

トモ「どうかした?」

夕子「いやぁ……、すっかりママさんだなって、思ってさ」

トモ「やだ、何それぇ」

夕子「あのトモがねぇ……」

トモ「あのって何よう……。さてはちょっと、馬鹿にしてるな」

夕子「違う違う。実際すごいなって思ってさ。超がんばってるし、サマになってるし」

トモ「どうかなぁ……、全然だと思うけどね」

夕子「いやいや、偉いよ。さすがはスーパートモちゃん主将ですねぇ」

トモ「やっぱり馬鹿にしてるでしょ……もう」

夕子「してないってば、あはは」

トモ「久しぶりに会いたいなんて言って、遊びに来たかと思ったら、昔のネタで人をイジってさぁ。夕子の意地悪……」

夕子「ごめんって。拗ねないでよ、ね」

トモ「……今日、こっち帰ってきたんだっけ? しばらくこっちにいるの?」

夕子「いや、明後日戻る」

トモ「そっかぁ……」

夕子「……」

トモ「……東京だっけ?」

夕子「うん」

トモ「東京かぁ……」

夕子「……正月には、一週間くらいこっちにいるつもりだけど」

トモ「正月は私、旦那の実家だなぁ……。ふぅ、ちょっと休憩……」

夕子「……疲れた?」

トモ「ま、ちょっとね。何せ四六時中だから」

夕子「大変だなぁ」

トモ「大変よ」

夕子「……」

トモ「……」

夕子「……癒してあげよっか?」

トモ「何それ」

夕子「ストレス解消」グイ

トモ「あ――……」

夕子「ねぇ……トモもさ、溜まってるんじゃないの?」モゾ

トモ「やだ……もう、ちょっと……、駄目だったら」

夕子「おっぱいいつも、吸われてばっかりだもんねぇ」モゾモゾ

トモ「……」

夕子「吸っていいよ? 私の。昔みたいに」

トモ「ば……バッカじゃないの……。やっ、夕子っ、ほんと……あっ」

夕子「トモ……。トモは昔のまんまだね。その顔も、声も」

トモ「……」

夕子「ねぇ、ほら……、昔みたいな声、聞かせて」

トモ「ゆ……、夕子ぉ……」

夕子「トモ――……」



ンァァァーーーン ンァァーァン



トモ「っ!」バッ

夕子「ぁ……っ」

赤ん坊「アァァァーン! アァァー!」

トモ「ほ~~らよしよし、どうしましたかぁ~? よしよし、ママはここですよ~、よしよし~」

夕子「……」

赤ん坊「ギャァァーン!! ンギャー!!」

トモ「お~、いい子いい子。泣かないの……。オムツかな? あれ、違う?」

夕子「……」

トモ「よしよし、泣かないで、泣かないの」

夕子「……」

赤ん坊「アァーーーン!!! ンアァァーァン!!」

トモ「いい子、いい子。泣かないで」




夕子「……ぁー」

夕子(……泣きたいのはこっちだよ)





赤ん坊「ムアーーーン!! ンアァァーーーー!!」

トモ「お腹すいちゃいましたかぁ? 違うの? あれぇ? 何かなぁ~? どうしたんでちかぁ~~?」オロオロ



アァァーン ンアァーーンン






~赤ちゃんは泣くのが仕事百合・終~






~雄鶏理論百合~









先輩「いや、だから違ぇって!」

後輩「……」

先輩「あぁ、もう……つまり……、あぁ! なーんて言えばいいかなぁー!」

後輩「……」

先輩「いいか、よく聞け。たとえば、たとえばだぞ!」

後輩「……」

先輩「今、お前の目の前に、オスのニワトリが二羽いたとして……」

後輩「いないですね」

先輩「たーとーえーばーーー!! っつってんだろぉー! もぉー!」

後輩「はぁ……」

先輩「一羽が普通のオンドリでな。もう一羽の方のな、そのトサカが……」

後輩「……」

先輩「トサカが、こう……ぐわぁーっ!! ってなってたらだよ? めっっっちゃくちゃ大きいトサカが、バキーンってなってたらな、お前どっちに目が行くよ?」

後輩「別にどっちも見ないですね」

先輩「たとえばだっつってんのよ、本当にぃー!」

後輩「……」

先輩「つーかお前な! 想像してごらんなさいよ! マジでめちゃくちゃデカいトサカのオンドリをよぉ!」

後輩「……」

先輩「想像の倍くらいのサイズだよ、お前! 多分ハネよりデカいんだぞ!? そんなトサカが、ビンッ! バン! ドーン!!ってなってるんだからな!?」

後輩「ビンバンドーンですか……」

先輩「ビンバンドーンだよ! そんなオンドリいたらな、そんなんお前、絶対見ないわけねぇだろ実際! 普通に!!」

後輩「……はぁ」

先輩「だろぉ!?」

後輩「まあ、そうかもしれませんけど……」

先輩「そうなんだよ! そういうもんなんだよ人間!」

後輩「そういうもんって、どういうもんですか」

先輩「オンドリのトサカが超デカかったら、絶対目が行くんだよ! ニワトリに何もキョーミなくても!」

後輩「はぁ……」

先輩「見ちゃうんだよ、人間! 大きいものがイキナリ出てきたら、つい見ちゃうの!」

後輩「……」

先輩「電車にお相撲さん乗ってきたら見ちゃうだろ!? 散歩してるワンコがボルゾイだったら見ちゃうだろぉ!? そういうことなの!」

後輩「そういうことって、どういうことですか」

先輩「だから、つまり! 私がさっきの女の子のおっぱいジロジロ見てたのだって、おんなじことなの!」

後輩「……」

先輩「別にヤマしい気持ちで見てたんじゃねーのよ! オンドリのトサカと一緒!」

後輩「……」

先輩「つい! つい目が! 行っちゃう! だけなんだよ!」

後輩「……」

先輩「『うっわぁ、でっかいトサカだなぁ!!』それだけ! それだけのことなの! 別にお前が思ってるようなことは、全然何も――……

後輩「あっ、さっきのおっぱいちゃん」

先輩「えっ、嘘どこどこ?」キョロキョロ

後輩「……」

先輩「どこ? こっち? ど――……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……さよなら」

先輩「待って!! お願い待ってマイハニィィー!!!!」




~雄鶏理論百合・終~



今日はここまでです
なんかsageちゃってた




~デスマーチ百合~



先輩「……」カタカタ カタタタ

先輩「……」カタカタ

先輩「……」カタ

先輩「…………」

先輩「……」カタカタ カタタタタ カタカタ

後輩「……あの、先輩……」

先輩「……うーん?」カタタ カタカタ

後輩「その……、営業の〇〇さんなんですけど、5-0601のチケット、いつ完了するか急ぎで教えてくれって……」

先輩「んん~……?」カタ

後輩「あの……、5の、0601……」

先輩「あー……、5-0601、0601……」

後輩「……」



先輩(えーと、確か……)

先輩(2-1179の、修正の修正の修正の機能追加の――……)

先輩(……あ、あれは5-0602か)



先輩「あとで確認しとくわ。メモ残しといて」カタカタ カタタ

後輩「あ……で、でも……、〇〇さん、急いでるって……」

先輩「今、手ぇ放せないから。後で連絡する」カタタ

後輩「え、あの……、でもぉ……」

先輩「あーもう、うるさいなぁ!」

後輩「っ……」ビクッ

先輩「今それどころじゃないの! 見て分かんないかなぁ!」

後輩「……っ」

先輩「あとで確認するって言ってるじゃん!」

後輩「……」

先輩「分かったらそこ、置いといて!」カタカタ カタカタカタ

後輩「……」

先輩「……」カタカタカタ

後輩「……はい……」

先輩「……」

後輩「……すみませんでした……」ペコリ

先輩「……」カタタ










先輩「……」カタカタ

先輩「……」カタカタカタ

先輩「……ふぅ」



先輩(ちょっと……)

先輩(キツすぎた……かな、さっきの言い方……)

先輩(……あとでミルキー持ってって謝ろう)



先輩「……」カタ





先輩(……)

先輩(……そういや)

先輩(ずっと、取れてなかったな、二人きりの時間……)

先輩(あの子にも、悪いことしてるな)

先輩(たまには、ちゃんと優しく――……)

先輩(……そうだ。今の仕事が一段落ついたら、温泉にでも誘ってみようか)

先輩(あの子と、二人きりで)

先輩(ちょっといい宿選んで……、宿とディナーは、全部私モチでもいいかな……)

先輩(……)

先輩(喜んでくれるといいな……)

先輩(……提案してみよ)

先輩(この仕事が終わったら)

先輩(そう――……)













後輩「……」

後輩「……」

後輩「……」グスッ



後輩(また怒鳴られた――……)

後輩(あんな風な言い方、しなくたって……)



後輩「……」



後輩(先輩……)

後輩(前までは、あんなに優しかったのに……)

後輩(……この仕事のせいだ)

後輩(今のこの、地獄みたいな案件のせいで、先輩、変わっちゃったんだ……)

後輩(きっと、私も……)

後輩(うぅ……)

後輩(やめてやる、こんな会社……)

後輩(やめてやるんだ……。こんなところにいたら、もっと、ずっと酷いことになっちゃう)

後輩(……今の仕事が片付いたら、こんな仕事、すぐに辞めて)

後輩(会社のことも、友達のことも、……先輩の、ことだって……)

後輩(全部忘れて、投げ捨てて……、新しい生活を始めるんだ)


後輩(……)

後輩(…………)

後輩(………………構うもんか、先輩なんて)

後輩(全部捨てて、新しい私になるんだ)

後輩(この仕事が終わったら)

後輩(そう――……)













先輩(この仕事が終わったら――……)







後輩(この仕事が終わったら――……)









~デスマーチ百合・終~



今日はここまでです




~意識高い系百合~



女課長「えっ、新人ちゃん今日残業!?」

新人「はい、A社の〇〇さんから、本日のアポイントの際に、見積提案を急ぎでと依頼されましたので」

課長「あ~、いやぁ~、どうかなぁ~……。あんまりその……残業とか、止めといたほうがいいよぉ」

新人「……」

課長「新人のうちはねぇ~……、ウチは残業とかは、オススメしかねるけどなぁ……」

新人「……」

課長「そうだ、今回は主任クンに代わってもらったらどうかな? 私から彼に話つけておくけど――」

新人「……課長、お言葉ですが」

課長「うん?」

新人「確かに私は、まだ入社したての未熟者です」

課長「いやぁ、そんなつもりで言ったわけじゃ……」

新人「ですが、一度仕事を任された以上、責任をもってやり遂げることが、社会人としての……プロとしてのあるべき姿ではないでしょうか?」キリッ

課長「あー……、ええと……」

新人「私も、そのプロの端くれとして、任された仕事を他人にそのまま投げるような真似は、したくありません。それに残業というものも――……」

課長「いや、いやね、君……」

新人「闇雲に時間ばかりかけるような仕事や、自分の能力を超えた量の仕事をこなす残業……、私もこういった無意味な残業なら、やらない方がいい、やるべきではないと思っています」

課長「……」

新人「ですが、どうしてもやりきらなければならない仕事、果たすべき職務もあるのではないでしょうか?」

課長「……」

新人「一度引き受けた仕事を、責任持って果たす。そのためなら、多少の残業も進んで引き受けるべきだと、私はそう考えていますっ」キリリッ

課長「ぁ~……」

新人「ですから課長、この残業申請にハンコを……」

課長「いやね……、うん。分かる! 分かるよ、君の言ってること! おっしゃる通りではあるんだよ……」

新人「……」ムッ

課長「そう、大変正しいのは分かるよ! 分かるんだけどねぇ……」

新人「なんですか! ちゃんと説明されないと、納得できません! 私じゃこの仕事は任せられないって言うんですか! 」ムスーッ

課長「いや、そうじゃなくてぇ……はぁ、弱ったな……」

新人「課長!」

課長「あの……、出るんだよねぇ、このオフィス」

新人「……」

課長「夜中」

新人「……で――……」

課長「ほら、その換気口」クイッ

新人「……」ビクッ

課長「夜中になると、その換気口から視線を感じることがあって――……」

新人「……」

課長「ふっ、と見ると……、換気口の隙間からこちらを睨む、血走った目が……!」

新人「……ヒッ」

課長「……とかね」

新人「……」プルプル

課長「それから、換気口の真下に、女の長い髪が大量に落ちてたこともあって……」

新人「や――……」

課長「や?」

新人「やだぁぁぁ……」ボロボロ

課長「ああもう、泣かない泣かない」

新人「うぇぇぇぇ……」ヒックヒック

課長「ね、やでしょ?」

新人「やぁぁ……、怖いぃ……」グスングスン

課長「うんうん、だからね。今回は主任クンに任せましょ? カレお化けとか大好きな人だから」

新人「だめぇぇぇぇ……やらせてくださいぃぃ……」ボロボロ

課長「う~ん、真面目かぁ~」

新人「どうし……っ、どっ……どうしましょぉぉ~~……、課長ぉぉ~~~」グスグス

課長「分かった分かった。私も一緒にやるから、その仕事。ね?」

新人「課長……、がち゛ょ゛お゛ぉ゛ぉ~~……」グスグス

課長「うんうん、二人で残業がんばろうね」

新人「は゛いいぃぃ……」

課長「がんばって、10時までには帰ろうね?」

新人「はぃ。……10時ぃ……?」

課長「10時あたりから、変な声聞こえだすからね」

新人「う゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ」ボロボロ

課長「泣かない泣かない」ナデナデ




~意識高い系百合・終~



今日はここまでです




~バレンタインデー百合~



後輩「1、2、3、4……」

先輩「……」

後輩「5……うわ、マジですかこれ。ラッピングすごっ! イカツっ!」

先輩「あっはは、スゲーね」

後輩「こんなの絶対、ガチの本気のヤツじゃないですか……」

先輩「ん~、そう?」

後輩「そうですって、えーと……。6、7、8……あれ、何だっけこれ……何……。先輩、何でしたっけコレ?」

先輩「クラッシュバンディクー」

後輩「……何で?」

先輩「ん~……何でだろ? 多分、ツイッターの裏アカでずっとクラッシュバンディクー面白い面白い言ってたからじゃね?」

後輩「裏アカめっちゃバレてるじゃないですか……。おっかない……」

先輩「でもめちゃくちゃ上手いよな、このクッキー」

後輩「売ったら売れそうですけどね。……え~……9。9個……うわ、9個ですかぁ」

先輩「うっへっへっへ……」


後輩「マンガ以外で初めて見ましたよ、紙袋バレンタインチョコで一杯にしてる人」

先輩「いやぁー、モテる女はツラいねぇー!かぁーっ!!」

後輩「はいはい……、大したモテ子でございますね、っと」

店員「ご注文、お決まりでしたでしょうかー?」

先輩「地野菜とマッシュルームのトマトクリームリゾット」

後輩「生」

店員「以上でよろしかったでしょうかー?」












先輩「……飲むなよ」

後輩「いいじゃん」

先輩「いいけどさ」

後輩「いやぁ……、しかし、9個ですかぁ……」

先輩「なぁ、後輩ちゃんよぉ」

後輩「はい?」

先輩「こーゆーのはな、いくつもらったかとか、何をもらったかじゃねぇんだよ……」

後輩「……」

先輩「誰っ! からっ! もらったか! それが一番重要! そうだろ?」

後輩「はぁ……、なんか、それっぽく聞こえますけど……」

先輩「そうなんだよ! そういうもんなの!」

後輩「はぁ……」

先輩「うっへっへっへっ……」ニコニコ

後輩「……」

先輩「な、そう思うだろぉ? 後輩もさぁ……」ニコニコ

後輩「なにニヤニヤしてるんですか。気持ち悪い」

先輩「……」

店員「ご注文お待たせしましたーっ」

後輩「お、来た来た」

先輩「……」

後輩「えへへっ! じゃ先輩、失礼して……。カンパァ~イ!」

先輩「……」

後輩「グビグビグビグビ」

先輩「……」

後輩「……ぷっはぁ~~~……! あ~、この瞬間のため生きてる~っ!」

先輩「……」

後輩「……」グビグビ

先輩「……後輩、後輩。後輩ちゃん」

後輩「はい?」

先輩「……ん゛ッ! ぅ゛ん゛ッ!」

後輩「……?」

先輩「……いくつもらったかじゃない――……。誰からもらったかが、重、要、なんだ……、ぜっ!」ニッ

後輩「……」

先輩「なっ?」ニコニコ

後輩「さっきも聞きましたよ?」

先輩「だぁ~からさぁ~~~?」

後輩「……」グビ

先輩「9個もらおうが100個もらおうが、そんなの比較にならないくらい大切な1個ってヤツが! ほしいってわけなのよ私は!」

後輩「はぁ……?」

先輩「だからぁ……、んっ!」ニコ

後輩「……?」

先輩「んんっ!」ニコニコ

後輩「……? ……、大切な1個って――……あ!」

先輩「うっへっへっへ」

後輩「……」

先輩「後輩ちゃ~ん……! ん~~……んっ!」ニコォォ

後輩「……、いや、そんな顔されても、何も持ってきてないですよ私」

先輩「……え」

後輩「……」

先輩「えぇぇぇ~~~」

後輩「えぇ~、って……。いや、そういうの、キャラじゃないじゃないですか、私」

先輩「キャラが何だーっ! 壊していけよそういうあの、自分の殻をさぁぁ! 本当に? 本当になんもないの?」

後輩「はぁ」

先輩「あの……、アレでもいいよ? プレゼントはわ・た・し♪ ってやつ」

後輩「ラリってるんですか」

先輩「んんんんん~~~~~~」

後輩「そんなショック受けることないじゃないですか」

先輩「だってさぁぁ~~~~! この日をどれだけ、今か今かとねぇぇぇ~~~~!」

後輩「いや、でも先輩、そんな雰囲気出してなかったじゃないですか。全然、これっぽっちも」

先輩「それはさぁ……、ちょっとカッコつけたいっていうのさぁ……、あるじゃん……」

後輩「でもちょっとくらい、ちょびっとでもアピールあれば、さすがに用意してましたって! 『あ~、甘いもんがほしいなぁ~』とかでも言われてたら、絶対察してましたから!」

先輩「嘘だよぉ……、日中も酔っ払ってるもん後輩ちゃん……。察し力ゼロだもんよぉ……」

後輩「それ言ったら、先輩こそ」

先輩「あ?」

後輩「私にバレンタインの、何か用意してます?」

先輩「……ぁー」

後輩「ほらもう、完全にもらう気しかないじゃないですか!」

先輩「……」

後輩「あ~ヤダヤダ、これだからモテ人間は。プレゼントはもらう側で当然ってハラですか。はーまったく……支配者階級かよ、まったくもう……やれやれ……」グビグビ

先輩「……ぷ」

後輩「はい……?」

先輩「ぷれぜんと……、は……」

後輩「……」

先輩「プレゼントは……、わ・た・s――……」

後輩「……」

先輩「言えるかぁあ!!」ドンッ

後輩「うわぁぁ! 何ですかもう!」

先輩「言えるかこんなこっ恥ずかしい台詞ーっ! ラリってんのか私はぁー!!」

後輩「誰も頼んでないですけどね」

先輩「あぁぁもぉお! 後輩のチョコぉぉぉぉ!!」ガツガツガツ

後輩「リゾットですけどね、それ」










ありがとうございましたー!!



先輩「ぁー……」

後輩「はぁ……、さむ……っ」

先輩「結構飲んだな、お前」

後輩「たった9杯ですよ」

先輩「十分だろ」

後輩「まぁ……」

先輩「大丈夫? 帰れる?」

後輩「あー……、えーっと……」

先輩「うん」

後輩「あの……、先輩……」

先輩「おう」

後輩「ぷれ、プレゼント――……」

先輩「ん?」

後輩「……プレゼントは……ワ・タ・シ♪」

先輩「……」

後輩「……なんつってー」

先輩「………………………………」

後輩「ち、ちょっと飲みすぎましたかねぇ、若干ラリってきて――……」

先輩「……」グイッ

後輩「ひゃっ! やっ、ちょっと、先輩……っ」

先輩「……」モゾモゾグイ

後輩「あっ、待……っ、先パ……! ちょっと! 駄目、こんなところでぇ……っ! あぁぁっ――……






~バレンタインデー百合・終~






~広島の助っ人外国人百合~



ジュン「そういや、お前さー」

莉緒「なんです、先輩?」

ジュン「なんでお前、あだ名ロサリオなの?」

莉緒「あー……、いやぁ……深い事情がありまして」

ジュン「なになに? 何だよ」

莉緒「私ほら、名前『莉緒』じゃないですか」

ジュン「うん、まぁ。そこは分かるけどよ」

莉緒「それで苗字、『白砂』じゃないですか」

ジュン「ああ、そうだっけ? 確か」

莉緒「それで、クラス替えの初日に――……」










先生「えー、では次、19番……、シロサ、リオさん」

莉緒「先生」

先生「はい?」

莉緒「あの……、シラサゴです。シラサゴ、リオ」

先生「あ、そうなのね。ごめんなさいね。じゃあ次、20番――……」

莉緒「……」












クラス友1「白砂さん~!」

クラス友2「うぃ~」

莉緒「あ……、どうも」

友1「やー、なんか疲れちゃうねー、自己紹介みたいなのってさぁー」

莉緒「あはは……、まぁ、分かるかも」

友2「てかさ、白砂さん、名前間違えられてたね!」

莉緒「ああ……、まぁ、マイナーな読み方だし。しょうがないかな……」

友1「でもさぁ」

友2「ね」

莉緒「……?」

友1「シロサ・リオだと――」

友2「ロサリオじゃーん!」

友1「キャー!」

友2「キャハー!!」

莉緒「ロサリオ……」

友1「ロサリオーッ! カープアカデミー!」

友2「サイクルヒットー!!」

莉緒「んん……?」

友1「ね、ロサリオって呼んでもいいっ!?」

莉緒「いや……、まぁ……、別にいいけど……」

友1「キャー! ロサリオー!!」

友2「キャハーッ!」

莉緒「きゃはー……?」










莉緒「……――ということがありまして」

ジュン「何だそりゃ」

莉緒「それが広まって、今では親からもロサリオと呼ばれることすらあって……」

ジュン「エグ……。……――でもまぁ、私的には、ちょっと嬉しい、かな……」

莉緒「何でですか……」

ジュン「だってさ、『莉緒』って呼ぶの……、私だけってことだろ?」

莉緒「あ……、それはまぁ、そう……、ですけど……」

ジュン「何かさ、特別な感じがして……、ちょっと――……気分いい……」

莉緒「……な、なな、何ですか、それぇ……」

ジュン「……」

莉緒「……あ、あは、や、やだなぁもう、先輩ったら……。そんな……、もう……」

ジュン「……」カァ

莉緒「……」カァァ

ジュン「……、莉緒……」ジッ

莉緒「あわわ……っ、あ……っ、その……っ! せ、先輩は、あの、あだ名とかって……ないんですか!?」

ジュン「……私?」

莉緒「えぇ!私いっつも、先輩ってしか呼んでないから、知らなくって。 えっと……先輩、木村ジュンだから……、ええと――…… 」

ジュン「ソリアーノ」

莉緒「……」

ジュン「……」

莉緒「……」

ジュン「……」

莉緒「……私に剃られたから?」

ジュン「……お前に剃られたから」




~広島の助っ人外国人百合・終~



今日はここまでです

あの……、はい……




~落ちる百合~



文緒「夜に、ベッドの中でウトウトしてるとき」

夏実「……」

文緒「急にさ、高いところから落ちる感じがして、ビクッてなることって、ない?」

夏実「あー、確かに……。ちっちゃいころ、たまにあったかも」

文緒「あれはね、ジャーキングっていう、筋肉が勝手に、ブルッて震える現象のせいで起こるらしいんだけど」

夏実「へぇ」

文緒「正確には、その筋肉の震えを、頭が……脳が無意識に、高いところから落ちたって、勘違いしちゃうからなんだって」

夏実「ふぅん……。なんか不思議だね」

文緒「不思議だよね」

夏実「うん」

文緒「……でさ、私の場合は」

夏実「……」

文緒「子供のころ、事故にあって」

夏実「へぇ」

文緒「トラックにはねられちゃって、10メートルくらい、ポーンってなって」

夏実「うぇぇ、マジでぇ!」

文緒「うん。……で、身体の方は奇跡的に何ともなかったんだけど……」

夏実「……」

文緒「頭の方がね、後遺症が残って」

夏実「うわぁ……」

文緒「さっき言った、夜ベッド中で起こる、落下してるような感じ」

夏実「脳のカンチガイってやつね」

文緒「うん。その勘違いが、常に起きてる状態なの」

夏実「常に?」

文緒「そう。普通の神経の信号を、傷ついた脳の細胞が、間違って受け取って……」

夏実「……」

文緒「高いところから落ちてると、錯覚しちゃってるんだって」

夏実「つ……常に?」

文緒「常に」

夏実「常に……落ちてる感じってこと?」

文緒「そう」

夏実「……」

文緒「ずっと、ずっと……、果てしなく落ち続けてる感じ」

夏実「……大丈夫なの、それ」

文緒「意識してると、意外と大丈夫なものなんだよ」

夏実「意識してるとねぇ……」

文緒「ちゃんと廊下がある、ちゃんと足がついてる、ちゃんと歩けてる、みたいに……一つ一つ、意識しておけば」

夏実「……」

文緒「落下しながらでも、意外と生活できるんだよね」

夏実「すごいなぁ」

文緒「ただね……、急なハプニングとかがあって」

夏実「……」

文緒「身体ビクッてなって、頭真っ白になっちゃうと、もう……」

夏実「ぁー……」

文緒「もう、完全に『墜落』しちゃって」

夏実「ごめん……」

文緒「特にいきなり大声で『だーれだ』やられたときなんか――……」

夏実「ごめんってー」

文緒「……あー、あーあ」

夏実「ごめんよー、クラスの友達と間違えたんだよー。そんなつもりじゃなかったんだよぉー……」

文緒「ふふ……怒ってないよ。冗談、冗談」

夏実「よかった……、でも、ごめん」

文緒「いいったら」

夏実「……立てる?」

文緒「ちょっと、まだ……。まだ腰抜けてて……」

夏実「そっか」

文緒「別に、一緒に居なくても大丈夫よ?」

夏実「や、立てない人放置しちゃうのは、さすがに忍びなさすぎるでしょ」

文緒「優しいんだね。……えっと」

夏実「普通だと思うけど……、あ、私、市川夏実ね。2組の」

文緒「市川さん」

夏実「夏実でいいよー」

文緒「私、5組の佐野文緒」

夏実「5組? 理数クラスだ」

文緒「うん」

夏実「頭いいんだねー!」

文緒「別に、普通だと思うけど……。……よいしょ」

夏実「あ、文緒もう大丈夫なん?」

文緒「うん……何とか。ありがと、夏実」フラフラ

夏実「まだフラついてますけど!? ……あ、そうだ!」

文緒「?」

夏実「はいっ!」ギュッ

文緒「……どうしたの?」

夏実「こうやって、手ぇつないでればさ」

文緒「……」

夏実「落っこちてても、誰かに引っ張り上げてもらってる感じするでしょ!」

文緒「……」

夏実「崖の上で、ファイト―! いっぱーつ! みたいなっ!」

文緒「……」

夏実「ねっ」ギュッ

文緒「ふふ……、そうかもね」ギュウ

夏実「ね~♪」ニコニコ

文緒「……」ニコッ



文緒(本当は――……)

文緒(あなたと2人で、どこまでも落ちているみたいだって、伝えたら……)

文緒(そのときこの子は、どんな顔をするのでしょうか――……)






~落ちる百合・終~






~ピアニスト百合~





~バー~



カランカラン



後輩「はぁ、はぁ……っ! ふぅ、……す、すみません!」

マスター「……いらっしゃい」

後輩「このお店に、若い女の人、来ませんでしたか!? あの……背が低くて、髪が腰の……この辺まで伸びてて。ピンクか……えっと白のバッグを――……」

マスター「……」クイッ

後輩「……? ……あっ」

先輩「……ゥーン」

後輩「いた! 先輩! やっと見つけましたよ! 先輩っ!」

先輩「ぅー……?」グビ

後輩「先ぱ……ちょっと、もう……うわ、空き瓶だらけ……。どれだけ飲んだんですか」

先輩「ん~……? あ~~……? ぉ~……?」

後輩「はぁ……。先輩、飲みすぎましたね。もう帰りましょう」

先輩「……」

後輩「すみません! あの、お会計お願いします!」

先輩「後はぁ……い」

後輩「はい、何ですか?」

先輩「パンツ……どっか行ったぁ……」

後輩「えっ」

先輩「パンツ無くしたよぉ……」シクシク

後輩「…………ちょっと、失礼します」ピラリ

先輩「やん」

後輩「……下着どこやったんですか!」

先輩「なくしたぁ……」

後輩「なく――……っ」

先輩「ウッウッ……」グビグビ

後輩「……」ジロリ

マスター「……」

後輩「……あの」

マスター「……お客様の、カバンの中に……」

後輩「え」

先輩「……後輩ちゃん、もっかい見たい? ねえねえ」

後輩「先輩ちょっと黙ってください」ガサゴソ

先輩「……」

後輩「……、あった……」

マスター「……こちらのお客様、潰れる前に、自分で脱ぎ始められまして……」

先輩「……」フラフラ

後輩「……」

マスター「……ひとしきり騒がれた後、ご自分のカバンに仕舞われていましたので……」

後輩「えぇぇ……」

先輩「……ムニャ」

後輩「それは……、どうも、ご迷惑をおかけしまして……」

マスター「……お会計こちらになります」

後輩「お゛……っ、げ……! ……か、カードで」

先輩「……ムニャムニャ」










先輩「……」ヨタヨタ

後輩「先輩、ほら……、もうちょっとしっかり、掴まってください」

先輩「……ぅ~ん」ヨタヨタ

後輩「……先輩、本当に……何もされてないですか?」

先輩「じつはぁ……、あのマスター……」ヨタヨタ

後輩「……」ピク

先輩「私のこと、えっちな目でみてたぁ……」

後輩「……はぁ」

先輩「デヘヘヘェ」ヨロヨロ

後輩「まっすぐ歩いてください……」

先輩「……、……ぅ」

後輩「……?」

先輩「……ッく、うぅ……」グス

後輩「先輩? どうしました……? 大丈夫ですか?」

先輩「……グス、ふ……ぐっ、こ……はいぃ、私……、私さぁ……」グスグス

後輩「はい」

先輩「私ぃ……新曲、できたぁ……」

後輩「ほ……っ!? 本当ですか、先輩!」

先輩「ぅぅぅ……」

後輩「すごいです! よかったです! おめでとうございます、先輩!」

先輩「ぅぅ……だけどぉ、だけどさぁ……」グスッ

後輩「はい……?」

先輩「指がさぁ……、足りねぇんだよぉ……。あの曲を弾くための、指がぁ……」

後輩「……」

先輩「ひぃ、ふぅ、み……5本足りなくて――……あ、じゃあ腕か。腕が足りねぇんだ」

後輩「……先輩」

先輩「弾けねえんだよ! 腕が1本、足りねぇからさぁ! せっかく最高の……、世界最高の曲だ! 歴史に残る、いや歴史を変える曲が……っ」

後輩「……」

先輩「それが、たかが腕1本足りないせいで……っ! くそっ! くそがっ! くたばりやがれ! どいつもこいつもっ!」ガンッ

後輩「先輩、落ち着いて……」

先輩「……なぁ、後輩」

後輩「はい?」

先輩「お前の腕、1本私にくれよ」

後輩「……」

先輩「いいだろ! 世紀の傑作だ! 天才の私が言ってんだよっ! 間違いねぇから! そのためなんだから! なぁっ!!」

後輩「……」

先輩「お前よりも上手く使ってやるよ! なあ、どうせ大した演奏もできねぇお前よりもなぁ! 下手くそに上等な腕は2本もいらねぇだろ! ははっ! 言いすぎちゃった!? でもホントのことだもんな! だからくれ! くれよ! 寄越せ! 寄越せよお前のその――……」

後輩「いいですよ」

先輩「……」

後輩「私の腕でよければ」

先輩「……」

後輩「どっちにします? 右? 左? それとも……」

先輩「……バーカ」

後輩「……」

先輩「冗談に決まってるだろ、ボケ」

後輩「……」

先輩「バカ」

後輩「……新曲って」

先輩「だから冗談って言ってんじゃねぇか! バカ! このボケナス!」

後輩「……そっかぁ」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……ね」

後輩「何ですか?」

先輩「……ごめんね?」グスッ

後輩「いつものことじゃないですか。んふふ……、変な先輩」

先輩「怒った? ごめん、ごめんね……」グスグス

後輩「怒ってませんよ」

先輩「ごめんね、ごめん、ごめん。本当ごめん。いつもごめん。今日もごめん。ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、なさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――……」






~ピアニスト百合・終~



今日はここまでです!




~鯉のあらい百合~





女1「……」


ピーンポーン


はーい

トットットッ……



女1「……」



カチャカチャ ガチャン

キィ



女2「あっ、いらっしゃーい!」

女1「ごめんね、お待たせ」

女2「ううん、全然。さ、あがってあがって」

女1「うぃ、どうもね。おじゃまし――……おっと」ガタンッ

女2「あ、気を付けてね」

女1「バケツ? なに……えぇ? 何ナニ?」

女2「うふふ、何だと思う?」

女1「えぇ~、何だろ~……」ソー


チャプン

ピチャ



女1「……」ジー

鯉「……」パクパク


女1「わっ……」

女2「んふふ」

女1「うわ何これ、鯉?」

女2「そうなの~!」

女1「どしたの、これ」

女2「親戚のおじさまの知り合いがね、こういう、鯉とかを育てて、それを卸してる方で」

女1「はぇ~」

女2「それでおじさまが、その方から何匹かいただいたらしくて、これはそのおすそ分け」

女1「はぁー……。さすがお嬢様ってのは、おすそ分けすらレベルが違うねぇ」

女2「そうかしら?」

女1「うちなんて、おすそ分けって言ったら茄子とか白菜とかだよ……」

女2「い、いいじゃない、茄子。美味しくて」

女1「ほぉら、もう。ブルジョアの余裕ってやつッスかねぇ~? かーっ、かなわねぇなぁ」

女2「何よう、ちょっとバカにしてるでしょ」

女1「拗ねた顔も可愛いですよ、お嬢様?」

女2「やめてったら、もう!」

女1「へっへへ……」チラ


鯉「……」パクパク


女1「ん~……」ジー

女2「……立派な鯉でしょ?」

女1「だぁねぇ。でっけぇ」ジーー

女2「ふふっ」



鯉「……」パシャ

女1「……」ジー

鯉「……」クルリ

女1「……」ジーー

鯉「……」パク

女1「……あは」

鯉「……」パクパク パクパク

女1「……」


女1(ヘンな顔ー)

女1(でもちょっと……)


女1「かーわいー……」

女2「ねぇ、鯉、好き?」

女1「んー……、まぁ、割と好きかもー……」

鯉「……」パシャン

女2「うふふ、良かったぁ。じゃあ……」

女1「うん」

女2「さばくね」

女1「えっ」

女2「よいしょっと」ガタン ガチャ

女1「えっ」

女2「……大丈夫」

女1「えっ?」

女2「食用だよ」

女1「えっ、あっ」

女2「出来るまで、リビングでテレビでも見ててね~」

女1「あっ」

鯉「……」パクパク















……――国が滅びたのに、王だけ生きてるなんて――……


女1「……」

女1「……」ボケー

女1「……」

女1「……」


バタンッ


女1「!?」ビクッ


ビタンビタン バタタタッ!!

バタンッ


女1「……」

女1「……」チラッ


ガンッ!!


女1「っ!?」ビクーッ


ガン! ガンガンッ!!

ゴッ!!!


女1「……」

女1「……」



シーン……


女1「……」ドキドキ

女1「……」

女1「……」

女1「……?」



ゴリリッ


女1「……」ビクッ



ゴリッ バリッ

バリッ バリバリッ バリリッ


女1「……」

女1「……」ソワソワ


バキバキバキバキッ!!

メリメリメリメリ!!

パキッ!!

パキパキパキッ!!!


女1「……ハワ」

女1「……ハワワワワ」ガクガクガク

女1「……ヒエ」



シーン


女1「……」ドキドキ

女1「……」

女1「……」

女2「あ、そうそう」ヒョッコリ

女1「ヒッ」

女2「冷蔵庫にビール冷やしてるから、好きに飲んでね」

女1「アッ、ス。……ザッス。スンマセンッス」

女2「え、なんで敬語」





~鯉のあらい百合・終~






~老いらくの百合~





~老人ホーム~



職員「じゃー、今度はみなさんも一緒にぃ―! はいっ!」



むーすーんーでー、ひーらーいーてー


老婆1「……」ニコニコ


てーをーうってー、むーすんでー


職員「はぁい、みなさんお上手ですよーっ!」

老婆1「……」ニコニコ

職員「では次は、2人1組になってくださーいっ! どなたとでも結構ですよー!」


ガヤガヤ

ガヤガヤ


老婆1「……」ニコニコ



おーきなくりのー――……



老婆1「……」ニコニコ

老婆2「ちょっと、あんた」

老婆1「……あら、私?」

老婆2「そうよ、あんた。何ボサッとしてるのよ。2人1組って言われてたの、聞いてなかったの?」

老婆1「あらあら……。ごめんなさいねぇ、私、こういう施設は今日が初めてなものだから……。勝手が分からなくて」

老婆2「……あー、そう。いいから、早く組む相手探しなさいよ。ずっとボサッとしてると、あのレクの職員に、後でネチネチ絡まれるわよ。性格最悪なんだから、あの小娘」

老婆1「あらぁ、それは困るわねぇ……」ニコニコ

老婆2「だったらもっと、困った顔しなさいよ……」

老婆1「それじゃあ――……、はいっ」ギュッ

老婆2「……」

老婆1「一緒にやりましょう?」

老婆2「あんた……」ハァ

老婆1「あら……、駄目だったかしら?」

老婆2「……あのね」

老婆1「ひょっとして、お嫌だった?」

老婆2「別に、構いやしないわよっ! やってやるわよ! まったく、仕方のない……っ」

老婆1「よかったわぁ。……うふふ、ボサッとしてみるものね」ニコニコ

老婆2「何がよ」

老婆1「だって、こんな可愛らしいおばあちゃまに、声をかけてもらえるなんて」

老婆2「あ、あんたね……。あんた……、ほんと……」

老婆1「ふふっ、本当のことよ?」

老婆2「……ったく」ハァ

老婆1「今日から、仲良くしてくださると嬉しいわ!」ニコニコ

老婆2「……」

老婆1「ねっ、いいでしょ?」

老婆2「あー、はいはい。いいから、ほら。さっさとやるわよ、適当に」

老婆1「おーきなくりのー」

老婆2「……」

老婆1「きの、した、でっ?」

老婆2「逆よ、逆」

老婆1「あら、あら」

老婆2「それじゃ木の上になるでしょうが」

老婆1「あら、あらら」











~翌日~






老婆1「……」ニコニコ

老婆1「……」ニコニコ

老婆1「……」ニコニコ

老婆2「ちょっと、あんた」

老婆1「……あら、私?」

老婆2「そうよ。何ボサッとしてるのよ、こんなところで。もうお昼の時間よ」

老婆1「あら、あらあら……」

老婆2「……」

老婆1「ごめんなさいねぇ。私、こういう施設は今日が初めてなものだから、勝手が分からなくて」

老婆2「……あー、そう。いいから、早く行きなさいよ。タラタラしてると、空いてる席、なくなっちゃうわよ」

老婆1「あらぁ、それは困るわねぇ」ニコニコ

老婆2「だったらもっと、困った顔しなさいよ……」

老婆1「うふふ」

老婆2「何よ」

老婆1「ボサッとしてみるものねぇ。こんな可愛らしいおばあちゃまに、声をかけてもらえるなんて」

老婆2「……――あんたが」

老婆1「……?」

老婆2「……あんたなのよ、可愛いのは。ずっと……。昔から……、今だって――……」

老婆1「……何か、おっしゃったかしら?」

老婆2「……何も言ってないわよ。ほら、行きなさいな」

老婆1「えぇ」ギュッ

老婆2「……」

老婆1「一緒に行きません?」

老婆2「……はぁ、仕方のない」

老婆1「……」ニコニコ

老婆2「……分かったわよ!」

老婆1「うふふ……。今日から、仲良くしてくださると嬉しいわ」

老婆2「……はいはい」

老婆1「……♪」ニコニコ




~老いらくの百合・終~



今日はここまでです




~異世界転生百合~



女「えいっ、炎の魔法!」ボワァ!

女店主「うひゃあ!」

女「雷の魔法! 氷の魔法!」カキーン

女店主「つつ冷たぁい!」

女「ふふふ……、今のはほんのデモンストレーション……。本気の1万分の1も出していませんよ」

女店主「そ、そうなんだ……」

女「魔法だけじゃありません! 剣や弓、はては銃まで、ありとあらゆる武器のスキルも全てレベル上限突破!」

女店主「はぁー……」

女「さらに全てのステータスもカンスト済み!」

女店主「へぇぇ……」

女「この世界に転生するときに、ありとあらゆるチートを与えられたのです! まさに転生無双! この世界に私に敵う相手などいません!」

女店主「そ、そりゃすごいね……」

女「でしょう!? 私を雇えば、どんなモンスターが出ても、もう怯える必要もないんですよ!?」エッヘン

女店主「はぁ……、とは言えねぇ……」

女「……」

女店主「モンスターなんて出ないし……」

女「……」

女店主「あとウチ、コンビニだし……」

女「でーすーよーねぇーーーー!」

女店主「う、うん」

女「あぁぁー!!!」

女店主「だ、大丈夫?」

女「あー! せっかく! せっかく憧れの転生チートを手に入れたのに! なのに! なんで元の世界とほぼほぼ一緒なんですか!!」

女店主「えぇ……」

女「普通の街並み! 普通の眺め! 普通に電車が走ってるし、普通にサラリーマンが出勤とか……! 異世界なのに!!」

女店主「だってここ立川だし……」

女「しかも何なんですか、コンビニって! どうして異世界にコンビニがあるんですかぁ!!」

女店主「た、立川だから……、なんかごめんね……」

女「はぁ……。せっかくの転生チートなのに……。何も知らない現地民を相手に知識でも無双できると思ったのに……」

女店主「そ、それはよく分からないけど……」

女「はぁぁ……」

女店主「でも、とってもスゴい力なわけだしね、せっかくなんだから、その力を活かせる仕事を探した方がいいと思うけど。その……、コンビニバイトよりも」

女「……たとえば?」

女店主「え!? あの……、人や物を、その力で守ったりとか」

女「……」

女店主「えーと……建物とかも」

女「警備員ですよね、それ」

女店主「り、立派な仕事よ?」

女「そうだけど! そうですけど! でもチートいらないじゃないですか!!」

女店主「じ、じゃあ、魔法を活用するのは? 人前でやったら、みんなビックリすると思うし! テレビに出て大スターとか……」

女「……見世物にされて変な番組出されて、インチキ扱いされた挙句、SNSとかで炎上するのがオチですよ……」

女店主「ネガティブ過ぎない!? っていうか、そっちの世界にもSNSとかあるんだ……!」

女「むしろこっちにもあるんですか……」

女店主「……なんか、ほぼほぼ一緒ね」

女「だから、そうなんですって」

女店主「余談だけど、なんてトコから転生してきたの? 貴方」

女「チチイナ県ラブポス市」

女店主「う~ん、異世界だなぁ……」

女「全然、そんな感じしないですけどね」

女店主「……まあでも、どんな仕事にせよ」

女「……」

女店主「せっかくスゴい、チート? 持ってるんだから」

女「……」

女店主「もっとお賃金が良かったり、待遇が良いお仕事探した方がいいと思うけど……」

女「そもそも私……」

女店主「ん?」

女「こっちの世界に、戸籍も履歴もないですし……」

女店主「……あぁ」

女「そんなんで雇ってくれるところも、あるわけないですし……」

女店主「まぁ、それもそうねぇ……」

女「うぅぅ……っ!」グス

女店主「わっ、そんな、何も泣くこと――……」

女「お願いしますっ!」ガバッ

女店主「わっ!」

女「お願いです、ここで働かせてください!真面目に働きますから! フルタイムで週5いけますから!」

女店主「ちょ、ちょっと! ちょっと落ち着いて! っていうか週休2日は譲らないのね!」

女「チート能力もありますからぁぁ!!」

女店主「それは別にいいかな!」

女「うぇぇぇぇん!」グスグス

女店主「あぁ、もう。泣かないでよぅ」

女「うぅぅ……」グスグス

女店主「……そういえば、貴方、お家は?」

女「あるわけないじゃないですかぁ……」グス

女店主「ま、まぁ、そっか……。じゃあさ、あの……」

女「……?」

女店主「とりあえず……、私の家、来る……?」

女「え……」

女店主「しばらくウチにいてさ、落ち着いたら色々……、資格取ったり、仕事探してみたりしたら、いいんじゃないかな?」

女「そ、それは、ありがたいですけど……。でも……」

女店主「でも……?」

女「い、いいんですか? 私みたいな、どこの馬の骨とも知れないようなヤツを、そんな簡単に……」

女店主「困ったときは、お互い様。でしょ? それに――……」

女「それに?」

女店主「違う世界の女の子なんて、何だか素敵じゃない?」

女「……」

女店主「うふふっ」

女「……店主さんって、あの……結構変わってますね」

女店主「貴方に言われたくないわよぅ」

女「それじゃ、あの、えっとぉ……」モジモジ

女店主「はい」

女「ふ、ふつつかモノですが、よろしく、お願いします」ペコリ

女店主「ふふっ、こちらこそ。……あ、でも一緒に暮らすからには、家事とかはちゃんと、手伝ってもらうわよ?」

女「うぅぅ……が、がんばります……」

女店主「チート級のお料理スキル、期待してるんだから」

女「あ……、すみません、料理はこれっぽっちも」

女店主「チートって、何かしらねぇ……」

女「あぁぁぁん! やっぱり普通の異世界転生がよかったぁぁぁ!!」




~異世界転生百合・終~



今日はここまでです




~オカ研百合~



真知「アーーールーーー、エルステーーー、オリニレーーー」

サクラ「……」

真知「ナーーーメルステーー、ルクレーーーー」

サクラ「……」

真知「ニーーーレステーー、ニヤルスーーーー……」

サクラ「……」

真知「ウーニャ!!!!」

サクラ「うっさ! 声でかっ!」

真知「ちょっと、集中してよね! 今いいとこでしょ!」

サクラ「いいとこなんだ……。知らんけど……」

真知「何で知らないのよ。マニュアル作ってあげたじゃない。読んでないの?」

サクラ「ウチのパソコン、パワポ見れねえし」

真知「先に言ってよ……って、ああ! アセンション切れた! あーもう、また最初からだ……」

サクラ「なぁー、もういいじゃん。何も起きないってー。帰ろうぜー」

真知「何言ってんの。今日は10年に1度のペガサス座5次元時空大接近の日でしょ! このタイミングを逃すわけがないでしょ!」

サクラ「ペガサス座て。アンタね、それどんだけ遠いと思ってんだよ。いや、私もよく知らんけど」

真知「ペガサス座α星までの距離は、地球から約133光年よ」

サクラ「だろー? そんなん、もし仮にペガサス星人さんたちが、このトンチキ儀式見てたとしても、そのお返事が届くまでに何千年かかることやら……」

真知「ペガサス星人じゃなくて、ウニャ星人。彼らは高次思念生命で、その精神エネルギーは時間も空間も超越した、5次元概念粒子の波動だから、そのメッセージは、約133光年ならだいたい、1時間で到達するわ」

サクラ「げ……、まさか1時間も続ける気かよ」

真知「当然でしょ。っていうか、そういうのも全部、マニュアルに書いたんだから。ちゃんと読んでおきなさいよね」

サクラ「でもあのマニュアル、サイズが1ギガもあったんだけど……」

真知「はぁ……、いいから、ほらもう1回、最初から」

サクラ「あー……、えーっと? ニャーニャーニャーだっけ?」

真知「全然違う! 真面目にやんなさいよ!」

サクラ「えっへへ……」

真知「もう……。何で貴方みたいな人が、オカ研に来たの……」

サクラ「そりゃ、アンタがいるから」

真知「なっ……!?」

サクラ「マジでさ」

真知「ふ、ふざけな――……」

サクラ「いやー、こうやって密室で2人きりだなんて、感ムリョーだなぁー……」

真知「ば……ばばば馬鹿言ってないで、せせ、精神集中! アセンション高めて!」カァァァ

サクラ「へいへい」

真知「……はぁ、ふぅ……」スーハー

サクラ「……」

真知「……エーーーーウミャーーーー、ニャクテーーーー」

サクラ「あ、赤くなってる。可愛い」

真知「エニ……っっ!? ばっ、馬鹿ぁ!」カァ

サクラ「なぁ」ズイ

真知「っ!?」

サクラ「私と一緒って……、イヤ?」

真知「そ……っ!?」

サクラ「……」

真知「それは……!」

サクラ「……」

真知「……、その……」

サクラ「……」

真知「あの……、その……」

サクラ「……」ユラ

真知「……えと、えっと……」

サクラ「……」ユラユラ

真知「……」

サクラ「……ぅ」フラ

真知「……?」

サクラ「……ぅ、ぅ、うぐぅぅぅぅ……!?」ガクン

真知「えっ! な、何!?」

サクラ「わ……、分からない……っ! だ、誰か……誰かの声が、急に頭の中に……っ!」ガクガク

真知「そ、そんな……っ! まさか本当に……? ね、ねえ! ちょっとっ!」

サクラ「あぁぁっ! 私の……私の意識がっ、誰かに乗っ取られていく……っ! やめろ……ウゥゥゥッ!」

真知「ねえ! しっかりして! ねえったら!」

サクラ「……!」ガクン

真知「サクラ!」

サクラ「……」

真知「……」

サクラ「……」ユラァ

真知「……!」

サクラ「……アー、アー」トントントントン

真知「……」

サクラ「ワーレーワーレーハー……、ん゛っ! ん゛ン゛ッ」

真知「……」

サクラ「ワーレーワーレーハー、宇宙人ダー」トントントン

真知「1人じゃん……」

サクラ「コーヨーイー、キーサーマーヲー、アベ……、アデ――……、アトラクション、スールー」トントントン

真知「アブダクションでしょ……」

サクラ「……アブダクションスルー」トントントン

真知「……はぁ」

サクラ「成増マーデー、アブダクションスールー」トントントン

真知「なんで成増……」

サクラ「ワタシノ、アパートガアルカラー」

真知「……」

サクラ「夕飯モー、出シマスー」

真知「……はぁ」

サクラ「……」

真知「……もう」

サクラ「……」

真知「しかたないなぁ……」

サクラ「えっ」

真知「……いいよ」

サクラ「えっ、……えっ!」

真知「……アブダクション。してくれるんでしょ? 宇宙人さん!」

サクラ「する! するする! しますします!」

真知「あんまりヘンなことは、しないでよね?」

サクラ「しないしない! しません!」

真知「……だったら」

サクラ「……あ」

真知「いいよ。さらわれてあげる」

サクラ「うぉぉぉ! っショイ! っしゃぁ!」

真知「うっさ……」

サクラ「よし! なら行こう! すぐ行こう! 銀河を超えてペガサス座まで!!」

真知「成増でしょ……」

サクラ「私のハイテクUFOでー!!」

真知「東上線でしょ……」




~オカ研百合・終~



今日ハココマデデス




~メヌエット百合~





~♪ ~~♪♪

~♪



地味子「……」

令嬢「……ふぅ」

地味子「……」

令嬢「……」

地味子「ね、もう一回合わせない?」

令嬢「なぁ~んでよ~~~、もぉ~~~」

地味子「ごめん! もう一回だけ!」

令嬢「なんなのよ! 今ので完璧だったでしょ!」

地味子「う、うん……、そうなんだけど」

令嬢「もう日が暮れちゃうじゃない! 何なの!? 今日は学校に泊まってやるつもりなの!?」

地味子「ち、ちがうって。ほんと、最後一回だけだから……」

令嬢「コンサートは明日なのよ。今さらジタバタしたって、どうにもならないじゃない」

地味子「いや、分かってるけど、でも……」

令嬢「そもそも、3年間ずぅっと一緒にデュオやってきた曲よ? 普段の部活でも、コンクールでも、あの謎のお祭りでも……」

地味子「S町サボテン祭りは、30年続く由緒ある地域のイベントで……」

令嬢「100回聞いたわよ! なんなの!? どういう郷土愛!?」

地味子「じゃあ、ごめん、頭から――……」

令嬢「しれっとはじめようとしてるんじゃないわよ! ……もう、なんでコンクールでもない、ただの演奏会に、そんな必死になってるのよ……」

地味子「……う、うん、でも……、そうじゃなくて」

令嬢「なによ」

地味子「……明日が、最後だから」

令嬢「……」

地味子「人前じゃなくて、演奏するの……、今日で終わりだから」

令嬢「……」

地味子「……だから」

令嬢「チョップ!」ビシッ

地味子「あうっ」

令嬢「あのね! 私は! 最後じゃないの!!」

地味子「あ、そ……そうだよね。令嬢ちゃんは、音大だもんね……」

令嬢「そうよ! 春からは晴れて、花の音大生! ……ったく、やっとこんな田舎とサヨナラして、東京に戻れると思うと、楽しみで仕方ないわ」

地味子「す、すごいなぁ……、音大生なんて。さすが令嬢ちゃん」

令嬢「……あんただって」

地味子「え?」

令嬢「……あんたなら、その気になれば、音大くらい……、全然余裕で行けたんだから……」

地味子「そんなこと……」

令嬢「あんたは! ……あんたにはね、それだけの才能が……」

地味子「うふふ、うまいなあ、令嬢ちゃんは」

令嬢「私は本気で――……っ!」

地味子「……でも、決めちゃったから。看護学校行くの。……えへへ」

令嬢「……何がおかしいのよ」

地味子「だって」

令嬢「……」

地味子「令嬢ちゃん、いつも褒めてくれるから。私のこと」

令嬢「……」

地味子「私のクラリネット、好きだって言ってくれたのも……、令嬢ちゃんだけだから」

令嬢「……」

地味子「ありがとう」

令嬢「……どういうタイミングで言うのよ、それ……」

地味子「え、えへへ、そうだよね……」

令嬢「バカ……」

地味子「ごめん……」

令嬢「……」

地味子「……」

令嬢「……」

地味子「……」

令嬢「……終わりなんて」

地味子「え……?」

令嬢「終わりなんて、言わないでよ……。最後なんて……」

地味子「……だけど」

令嬢「奏者になれなんて、もう言わない。……でも、だけど……」

地味子「令嬢ちゃん……」

令嬢「私は……、私はまた、あんたと……っ」

地味子「……そうだね」

令嬢「……」

地味子「続けるよ、クラリネット」

令嬢「……うん」

地味子「誰にも聴いてもらえなくても、色んなこと、嫌になっちゃっても……。続ける」

令嬢「うん」

地味子「だから」

令嬢「……」

地味子「だからさ、5年後――……、ううん。10年後でもいい。20年、30年たっても」

令嬢「……」

地味子「一緒に、やってほしいな」

令嬢「……」

地味子「私と、この曲を」

令嬢「……バカ」

地味子「……」

令嬢「当たり前でしょ……」

地味子「……えへへ」

令嬢「いつかまた」

地味子「いつかまた、この曲を」

令嬢「この曲を、2人で」

地味子「えへへ……っ」

令嬢「……ふふっ」

地味子「……そうと決まれば! ねっ、もう一回! もう一回だけ!」

令嬢「結局それなのね、あんたは……」




~メヌエット百合・終~



今日はここまでです




~魔女の館百合~



女「……いやぁ、やっぱり昔と、全然変わったねぇ」

女友「そうかなぁ。全然でしょ。なーんもない、田舎のまんま」

女「いやいや、相当変わったって」

女友「ってか、そんな昔ってほど、昔じゃないじゃん。5年前くらいでしょ? 東京行ったのって」

女「6年だよ。中学からもう、向こうの学校だったわけだから」

女友「それにしてもよ」

女「でもほら、この用水路も」

女友「あぁ、確かに。子供のころはフェンスとかなかったかも」

女「そうそう。危なかったよね、人食い用水路とか呼ばれて」

女友「そうだった、そうだった」

女「あと、駅前の商店も、コンビニになってたし」

女友「あそこ、お婆ちゃんが亡くなってねー」

女「えぇー、そうなんだぁ……。ちょっとショックー」

女友「ま、あの当時からもう、いい歳だったしね」

女「……あ」

女友「ん?」

女「ここ……」

女友「あぁ……、『魔女の館』ね。昔、ちょっと騒がれたよね。心霊スポット的な感じで」

女「まだあったんだ……」

女友「そりゃあるでしょ。古いけど、立派なお屋敷だし」

女「……」

女友「普通に誰か、住んでるでしょ」

女「え……そうなの? 知ってるの?」

女友「え? いや、知らないけど。見たことないし」

女「……」

女友「でもほら、塀? っていうか柵? 格子になってるから、庭とか見えるじゃん。結構手入れとか、されてるっぽいし」

女「そっかぁ」

女友「……? どうかした?」

女「思い出した……。私さぁ」

女友「うん」

女「昔、入ったことあるんだよね。ここ」

女友「嘘っ!? なんでなんで!?」

女「探検的な? あ、建物は入ってないんだけどね。庭まで」

女友「うわぁ……。え、それって、いつくらい?」

女「小4とか、小5くらいの時だったかなぁ……」

女友「ヤンチャだねぇ」

女「昔はね」

女友「それで?」

女「ん?」

女友「どうだった? 中の感じとか」

女「……」

女友「……」

女「……あぁ」

女友「……?」

女「……」

女(そうだ……、思い出した。あの時は――……)













子供の頃の女『……』

女『よッ……』ヒョイ

女『……っと』

女『んしょ……』

女『……ほいっ』スタッ

女『……』ムフー

女『……』

女『……』



女(ここが……)

女(『魔女の館』……)



女『ふわぁ……』



女(でっかい)

女(ひっろい)



女『……』



女(ここには魔女が……、子供をカエルに変えちゃう、怖い魔女がいて……)



女『……』ゴクリ

??『あら!』

女『っ!?』ビクッ

少女『あらあら! お客様だわ! いらっしゃい!』

女『あっ、あぁっ』



女(魔女……!? 魔女……この世のものじゃなくて、ザンコクで……)

女(子供を……カエルに……)

女(私のことも……っ!?)



女『ひぇ、ふぇ……ご、ゴベンナ゛ザ――……』

少女『あら? どうかされたの?』

女『アノッ、アッ、ソノッ!』

少女『うふふ、さあさあ、こちらいらして! 可愛いお客様!』グイッ

女『あっ……!』


スタスタ

女『……』




女(女の子――……)

女(すごくキレイ……、お人形さんみたい。髪もフワフワで、キレイなドレスで――……)



スタスタ


女『あわっ、あわわわ』

少女『ちょうどお庭で、お茶をしていたところなのよ』

女『へ? あっ、え……っ』

少女『さ、おかけになって?』

女『えっ、で……っ、でも……』オドオド

少女『ねっ』

女『う……っ、ハ、ハイ……』

女(魔女……、魔女だ……。絶対そうだ……)

女(テーブルもイスも、こんなに立派で……)

女(並んだカップもお菓子も、映画みたいで……)



少女『さ、お茶をどうぞ?』スッ

女『……』



女(こんなところに、女の子がひとりきりなんて……、絶対におかしい……)

女(それに……)


少女『うふふ、たくさん飲んでね? おかわりもあるのよ?』

女『うぅぅ……』ゴクゴク

少女『ああ、本当に楽しいわ! これってお茶会ね!? お茶会にお客様が来てくれるって、なんて素敵なんでしょう!』



女(それに、こんなキレイな子が、本当にいるなんて! 絶対に! 普通じゃない!)


女『うぅ……っ!』

少女『ふふ、クッキーも召し上がってね』ニッコリ

女『……』

少女『いいのよ? 遠慮なさらなくても』



女(言うとおりにしないと……、なにされるか……っ)

女(カエルに……、カエルにされて……)



女『……っ!』サクサクサクサク

少女『うふふっ! ほっぺたいっぱいにして……、まるでリスさんみたいよ?』クスクス

女『……』カァァァ

少女『……ねえ、私とあなた、きっといいお友達になれると思わない?』

女『え……』

少女『そうよ! そうに決まってるわ! だって、あなたみたいな素敵な子が、ただの偶然にやってきて、一緒にお茶会をしてくれるはずがないもの!』

女『……っ』ゾワ

少女『そう……、偶然なんかじゃない……。私たちは、友達……いえ、親友? いえ、いいえ……。きっと――……』

女『ヒゥ』ゾクゾク

少女『……あら?』

女『ひっ』ビクッ

少女『ふふ……、ほっぺにクッキー、ついちゃってるわ』スッ

女『あ……っ』

少女『ン――……』ペロリ

女『……!?』

少女『……とれた。うふふふふっ』

女『っ!!!』ガタン! バッ

少女『あら』

女『……っ!!』ダッ



女(逃げなきゃ!)

女(逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)

女(捕まりたくない捕まりたくない捕まりたくない捕まりたくない)



女『……うッ、ぐっ!』ガタガタ! ピョンッ!

女『……っあぁ!』バサバサバサッ



女(いたい……っ! 痛い痛い痛い……! でも柵は越えられた……っ)

女(走れ! 走れ走れ走れ走れ!)



女『ヒッ、ヒッ、ハッ、ヒィッ!!』タッタッタッ


タッタッタッ…

タッタッ…














女「……」

女友「……」

女「……」

女友「……どうかした?」

女「……あっ、いや! 別に何でも……! ……中はね、別に何もなかったよ」

女友「えー」

女「……誰もいなかったし」

女友「なーんだ、つまらん」

女「……あはは」

女「……」



女(……そういえば、あの時は確か)

女(このあたりから、柵を乗り越えて――……)チラッ



少女「……」



女「……え」



少女「…………」ニコリ



女「ヒッ……!」

女友「わっ、どしたどした!?」

女「えっ! あっ!? 今――……」クルリ

女友「……?」

女「あ……」



女(……いない?)

女(けど、今確かに――……)

女友「なになに、どしたのよぅ」

女「……」



女(確かに……、あの時の……)



女友「……女?」

女「……な、なんでも。なんでも、ない……」

女友「……顔色悪いよ? 大丈夫?」

女「本当に……、何でもないから。ごめん……」

女友「そう? だったらいいけど」



女(そんなわけがない……)

女(あの時の女の子のはずがない……)

女(だって――……)

女「……」チラッ



女(あの時のまま、少しも変わらない姿でいるなんて、そんなはずが……)

女(そんなはず……)



女「……」ゴクリ



女(考えるな)



女友「どうする? 今日この後、昔のみんなで集まる予定なんだけど」

女「え? 私は……」


女(確かめてみたいだなんて……)

女(もう一度、見てみたいだなんて……)

女(そんなこと……)

女(けれど――……)



女「わ、私……、私は……」



女(私は――……)

女(私はきっと、もう一度――……)





~魔女の館百合・終~



今日はここまでです

5レス~10レス程度とはいったい…




~人類最後の百合(氷河期編)~



後輩「地下シェルターは静かだなぁ……」\



バタン! ガタッ! ドンッ!



後輩「お」

先輩「あ~~~! さむさむさむっ!」ガタガタガタガタ

後輩「先輩、おかえりなさい」

先輩「うい、ただいま。はぁ~……、さむかったぁ~!」ガタガタ

後輩「どうでした、外は?」

先輩「全然ダメ! 今日は収穫なし! 生き物も植物も、なんも見当たらねえでやんの」

後輩「そっかぁ……」

先輩「明日はちょっと、遠出してみようかね」

後輩「……ワシントンとの通信は?」

先輩「そっちもダメ。全然応答なしだわ」

後輩「これで10日間応答なしですか」

先輩「ま、最後の通信とか、完全に限界そうだったしな。さすがにもうムリじゃね?」

後輩「ベルリンもダメ、シドニーもダメ、ワシントンもダメ……、となると……」

先輩「そうなあ」

後輩「これはいよいよ……」

先輩「私たちが、最終走者って感じか」

後輩「……」

先輩「おいおい! そーんな暗い顔すんなよ! どっこい生きてるぜ、私とお前!」

後輩「そ、そうですね……」

先輩「そうそう! ……ってか、全然震え止まんないんだけど。ちょっと暖房失礼、っと」ピピッ

後輩「あっ!ちょっと、何してるんですか先輩!」ガシッ


ピーッピッ


先輩「あっ! おいっ、何すんだよ!」

後輩「燃料だって限りがあるんですよ! 大事に使わなきゃ!」

先輩「うーるせぇ! こっちはさっきまで、マイナス30度の世界にいたんだっての! ちょっとくらい暖かくさせろ!」ガシッ ピピッ

後輩「だーめですったら! 毛布あるから!」ガシッ ピーッピッ

先輩「足しなるかそんなもん!」ガシッ ピピッ

後輩「だーめーでーすー!」ピーッピッ

先輩「リモコンよこせぇーーっ!」ピピッ

後輩「かーえーしーてーーーー!!!」


ギャーギャー

ワーワー



後輩「あーもうっ! 先輩っ!」ガシッ

先輩「わひゃっ」

後輩「そんなに暖まりたいんだったら!」ガッチリ

先輩「こ、後輩?」

後輩「そんなに……、暖まりたいんだったら……、先輩……」

先輩「お、おい? なに? どうしたの後輩ちゃん……?」

後輩「だったら……」モゾッ

先輩「あっ、ちょ……」

後輩「私が……、暖めてあげますから、先輩の身体……」モゾモゾ

先輩「やっ、待っ……、だめ、そんな……っ、とこ……ぉ、んっ!」

後輩「ダメですよ、大人しくしてください……、すぐに、暖かくなりますから――……」












先輩「……――みたいなシチュエーションで、一発お願いします」

後輩「はぁ……、絶対やりませんけど」







~人類最後の百合(氷河期編)・終~






~人類最後の百合(パンデミック編)~



後輩「地下シェルターは静かだなぁ……」


ウィーン プシュー

――滅菌処理を開始します――


後輩「お」


ゴウンゴウンゴウンゴウン

シュバババババ

プシュー

――滅菌処理が完了しました――



先輩「……いやぁ、たまらんね、あの消毒ルームだけは」

後輩「先輩、おかえりなさい」

先輩「うい、ただいま。はぁ~……、しんどかったぁ~……」

後輩「どうでした、外は?」

先輩「どうもこうも……、行けども行けども死体ばっかり! 動物も植物も、残らず野垂れ死によ!」

後輩「そっかぁ」

先輩「どんな死に方するにしても、あんな風に、腐りながら徐々に徐々に死んでいくのだけは、絶対にノーサンキューだな」

後輩「亡くなった人を、そんな風に言ったら悪いですよ」

先輩「ごめんね! ……しかし、ワシントンもシドニーも通信はブラックアウト。こりゃいよいよ……」

後輩「……ま、まだ、そうと決まったわけじゃないです」

先輩「だといいけどな。……しかし、この防護服だけは、そろそろ勘弁してもらいてーなぁ」

後輩「先輩、いっつも言ってますよね、それ」

先輩「だってよー。しんどいんだもんこれ。重いし息苦しいし……」

後輩「だけど、これがないと、ウィルスがあっという間に侵入してきちゃいますから」

先輩「そうは言ってもよぉ、もう生きてるヤツなんて、羽虫一匹残っちゃいないぜ? こんな世界じゃ、ウィルスだって生き残れや……」

後輩「パパの研究によれば、ウィルスはカビなどの真菌に付着すると、隔膜分離を起こして休眠状態になるそうなので……」

先輩「カビを踏んづけたら、ウィルスが空気中にバッ! ってわけか。やるせないねぇ」

後輩「このクリーンルームと、この防護服だけが、私たちの安息の場所なんです」

先輩「分かってるって……、じゃ、その安息の防護服、片付けといてくれよ」

後輩「はぁ、もう……。それくら自分で…………ん……?」

先輩「どした?」

後輩「先輩……、防護服のココ……、破れて……」

先輩「……っ!」

後輩「……。……先輩」

先輩「ち、違う! 私は感染してない! ……そうだ、ほら! インナー! インナーもきちんと着込んでるから……っ」

後輩「ふふっ、本当ですかぁ? どうしたのかなぁ、先輩……そんな慌てちゃって」グイッ

先輩「うぁ……っ! や……、後輩……。ちょっと、なにす……」

後輩「本当に何ともないか……、ちゃぁんと調べさせてもらいますよ、先輩?」モゾッ

先輩「あ……っ、やめ……こうは……っ、後輩ちゃんってば……ぁ」

後輩「抵抗しないでくださいね、先輩……。体中、すみからすみまで、余すところなく調べてあげますから……」モゾモゾ

先輩「だ……め、あぁ! 後輩……くぅぅ!」

後輩「んふっ、こっちが真剣に調べてるのに、赤い顔で甘い声を出して……、仕様のない先輩ですねぇ……」

先輩「あっ、やぁっ、あぁ、あぁぁ――……」













先輩「……――みたいなシチュエーションで、一発お願いします」

後輩「……………………」

先輩「……あれっ!? まんざらでもない!?」

後輩「ちちち違いますっ! 違う! やりません! やらない! 絶対やらないですからねっ!」




~人類最後の百合(パンデミック編)~



終わりって入ってへんやんけ。な。



~人類最後の百合(パンデミック編)・終~




~人類最後の百合(巨大隕石編)~



後輩「地下シェルターは静かだなぁ……」



バタン! ガタッ! ドンッ!



後輩「お」

先輩「あ~、すごかったぁ~!」

後輩「先輩、おかえりなさい」

先輩「うい、ただいま。はぁ~……、とんでもなかったぁ……」

後輩「どうでした、外は?」

先輩「どうもこうも! どいつもこいつも乱痴気騒ぎ! ろーにゃくにゃんよとわず」

後輩「老若男女」

先輩「老若男女問わず、騒ぎまくってさぁ。街中クラブハウスみてーに、変な音楽ガンガン流れてるし、そこら中でヤリまくってるし……」

後輩「そっかぁ……」

先輩「いやぁ、みんな楽しそうだったなぁ」

後輩「……まぁ、マトモに絶望できる人は、みんな自殺しちゃったでしょうからね」

先輩「そういうこと。……あ、そうそう」

後輩「なんです?」

先輩「このシェルターの開発者に会えたぞ」

後輩「えっ! パパに!?」

先輩「おう」

後輩「ど……、どんな感じでしたか……?」

先輩「今から死ぬって」

後輩「……そう」

先輩「あとな、やっぱりな、この地下シェルターな、さすがに無理っぽいってさ。やっぱり」

後輩「あー、やっぱりー」

先輩「地殻が蒸発して、マグマの雲みたいになったヤツ……? それが来たら、このシェルターもオーブンだってよ」

後輩「オーブン。蒸し焼きですらなく」

先輩「確か、あと4時間くらいって言ってたかな……」

後輩「今からだと?」

先輩「もう、あと3時間くらいか」

後輩「3時間かぁ……」

先輩「あと、お前にプレゼントって」

後輩「え」

先輩「お薬」

後輩「えぇ……」

先輩「こっちが安楽死の薬でー」

後輩「……」

先輩「こっちがLSD」

後輩「……どっちもいらないです」

先輩「そう? 私は余った方で良かったんだけど。じゃあ捨てとくか」ポイ

後輩「そうですね」

先輩「……なあ、後輩」

後輩「はい」

先輩「……外、でちゃおっか」

後輩「え……」

先輩「どうせここにいても、外にいても、オチは一緒じゃん」

後輩「……」

先輩「どうせなら、最後は楽しくさ」

後輩「……」

先輩「最後のお日様も、拝みながらさぁ」

後輩「出てますかね、太陽?」

先輩「さっきは出てた」

後輩「そうですか……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……私は」

先輩「おう」

後輩「先輩と、2人がいいです」

先輩「……」

後輩「2人きりが」

先輩「……んー」

後輩「……」

先輩「そっか」

後輩「はい」

先輩「じゃ、ここでいっか」

後輩「はい」

先輩「でも、あと3時間かぁ……」

後輩「……」

先輩「……やることねぇな!」

後輩「身も蓋もないですね」

先輩「うーん、どうしよっか……」

後輩「先輩」

先輩「おう」

後輩「て」

先輩「て?」

後輩「手、握ってください」

先輩「おう」



ギュ



後輩「……」ギューッ

先輩「……」ギュ

後輩「……ずっと」

先輩「うん」

後輩「ずっと、握っててください」

先輩「うん」

後輩「ずっと、ずぅっと」

先輩「しょうがねえな、後輩ちゃんはよ」

後輩「絶対、離さないでくださいね」

先輩「離すもんかよ。世界が終わっても」





~人類最後の百合(巨大隕石編)・終~



これにておしまい!

お読みいただきありがとうございました

HTML化依頼出しておきます

おしながきです

01.WindowsXP
02.マシュマロ女子
03.赤ちゃんは泣くのが仕事
04.雄鶏理論
05.デスマーチ
06.意識高い系
07.バレンタインデー
08.広島の助っ人外国人
09.落ちる
10.ピアニスト
11.鯉のあらい
12.老いらくの
13.異世界転生
14.オカ研
15.メヌエット
16.魔女の館
17.人類最後の(氷河期編)
18.人類最後の(パンデミック編)
19.人類最後の(巨大隕石編)

またどこかでお目にかかれたら幸いです。それでは

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom