前川みく「Pなんて大っ嫌いにゃ」 (109)

俺は馬鹿だ。子供だ。
きっと一生馬鹿で子供のまま生きていくんだと思ってた。
でもいつまでも子供ではいられない、そんな日が俺にもやってきた。


P「始めまして、今日から君の担当プロデューサとなりました***です」ペコッ

みく「よろしくお願いします。前川みくだにゃ」

P(少し嫌な顔しているのは気のせいだと思おう、それより)

P「だにゃ、ですか?」

みく「ん、どうかしたのかにゃ?」

P(何で事務所内でもこんなにキャラが濃いんだ?)

P「いえ、何でもないです」

P(気になるけど、嫌われたりしたら大変だしな。先輩のお陰でようやく仕事が見つかったんだ、クビになるわけにはいかない)

P(それにしてもアイドルって凄え可愛いのな)ジ-ッ


みく「今度は何なのにゃ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425572088

P「自分の担当するアイドルの事はしっかり知っておかねばと思いまして、前川さんを見つめていました」

みく「ふふん、良い心がけなのにゃ」

みく「…馬鹿っぽいのに!」ハッ

P(何故無理に馬鹿にする)

P「はっ、ありがとうございます!!」

P(これで15歳かー、すっげーエロい)ジ-ッ

みく「なんだか視線がエロいのにゃ」

P「ファンの目線で見てるだけです!」ビシッ

みく「な、なら仕方ないのにゃ」

P(ちょろすぎて不安だな)

P「それでは軽い顔合わせが済んだら、先輩に戻って来るようにと言われておりますのでこれで失礼します」

みく「…えっと」

P「なにか?」

みく「***さんは、プロデューサを辞めるつもりはないですか!?」ズバッ 

P「…あ、ありません」

ー社内の自販機横ー

P「という事が早速あったんですが」

先輩P「馬鹿野郎っ」ビシッ

P「!」ブハッ 

先輩「汚ねっ、人が買ってやったジュースこぼしやがって!」

P「先輩が叩くからです!」

先輩「お前がロリコン野郎で、初日からセクハラするからです」

P「いやでも、あれはロリコンじゃなくても欲情しますよ。凄く可愛いしエロい!」

先輩「アホ」バシッ 

P「った…いてっ!いてっ!」

先輩「うるせえ、騒ぐな餓鬼か。それより本当に嫌われるような事をするなよ、信頼関係がないと色々困るからな」

P「…はい、分かりました」

先輩「あともう少し社会人らしくなれ。そしてコーヒーぐらい飲めるようになれ」

P「えーっ、コーヒー飲まないと駄目ですか」

先輩「よそに行ってコーヒー出されるたびに、僕飲めないんですーって言うのか?」

P「んーっ、この年まで周りの意見に流されず我をすら抜いたのに。なんか凄い敗北感です」

先輩「何にだよ?」

P「え、社会に?」

先輩「…負けてるじゃん」

P「ハハ、確かに」

先輩「じゃあ仕事を簡単に教えてやるから行くぞ」

P「はーい」

P(先輩とは高校の軽音部の時からの付き合いだ。定職を探していたけど、高卒で何の資格も無い俺が困っているところ、この仕事を紹介してもらった。何でも敏腕プロデューサーだから、多少の無理は聞いてくれる、と本人から聞いた)

ー1時間後ー

先輩「まあ、こんな感じだ。あとはやってみろ」

P「え、やってみろ?」

先輩「そうだ、どうした不安なのか?無謀さがお前の数少ない長所だったはずなのに」ハハン 

P「俺の長所はまだたくさんありますし、全然余裕ですよ」カチン

先輩「なら頑張れ」ニコッ 

P(まんまと乗せられた。というか単純すぎるだろ俺は)

P(取り敢えず、プロデュースするアイドルの事を知らないとな。今までの活動記録を見てみるか)

P(前の担当…先輩から貰ったデーターによると、前川さんは一年前のオーディションを受けに来てから、この事務所に所属したらしい。向上心も強く才能も感じる。努力の甲斐あって、今ではアイドル好きにはそこそこの知名度があるらしい)

P「つまり、今が大事な時期だよな。またなんでそんな時に俺に任せるかね?」

P「…で、次は何をすればいいんだ?いくら、なんでも研修期間が一時間ってのは酷いだろう。だよな、んー社会経験がゼロだからよく分かんないけど」

P「…やっぱり分からない!先輩に聞くしかあるまい!…やだけど」

P「ということで、もう少し仕事を教えて下さい」フカブカ-

先輩「よし、ちゃんと聞きに来たな。偉いぞ、最初から一時間で出来るとは思ってないから」

P「え、虐め?」

先輩「違うよ。お前意地っ張りだから、分かんなくても勝手にやりそうだからさ。分かんない時はちゃんと聞くようにって、お前から来なかったら俺から行ってたよ」

P「なんか俺、バカにされてますよね?」

先輩「だって馬鹿じゃん、だから不安なんだよ」

P「…」

先輩「そんなに怒るなって、これも俺の愛だよ?」

P「別に怒ってないですし、早く仕事を教えて下さい」

先輩「そういうすぐにムキになるとこが不安なんだよな」

P(その後一週間、先輩が前川さんのプロデュースをするところを後ろで見る事になった)

ー1週間語ー

先輩「お前は社会性は無いけど器用だから後はやってたらすぐに分かるだろう」

P「余裕ですね」

先輩「失敗したらすぐに俺に言うんだぞ、分かってるな?」

P「分かってますね」

先輩「…まあ、頑張れ」

P「頑張ります」フフンッ 

ー事務所の屋上ー

P「ということで、改めてよろしくな!」フフンッ 

みく「えっとー、急に屋上に呼び出したのと、急に馴れ馴れしくなったのはなんでにゃ?」  

P「屋上に読んだのは気合がはいるかなーっと思ったからだ!急に馴れ馴れしくなったのは、気合が入りすぎました。すいません」

みく「…よろしくにゃ、そして寒いから戻るね?」

P「待つにゃ!」

みく「うぇっ!?」

P「今日から俺は本格的にみくにゃんのプロデューサになるにゃ!だから信頼関係を築くためにも、馴れ馴れしくなろうと思うにゃ!!良いかにゃ!?」フフンッ  

みく「いや、馴れ馴れしくなくても信頼関係は築けると思います。中学生でも先輩には敬語で信頼関係を築けますが、プロデューサは馴れ馴れしくならないと無理なんですか?」

P「おっしゃる通りだと思います。調子に乗りましたね、すいません」

P(やはりというか、何か前より嫌われているっぽいにゃ…まだ殆ど関わってないのに何故にゃ?)

みく「では失礼するにゃ」

P「…にゃっ」

みく「みくの事、馬鹿にしてます?」クルッ 

P「滅相もございません」

みく「…では」スッ  

P「……」

ガタンッ 

P「…にゃあ」ショボ-ン 

ー居酒屋ー

P「なんか俺嫌われてるんですけど」

先輩「セクハラするからだろう」

P「いや、なんかそんな感じではないんですよ」

先輩「じゃあなんで?」

P「…なんか気に食わないとか?」

先輩「お前、みくにゃんは」

P「え、みくにゃん?」

先輩「おう、みくにゃん」

P「先輩も普通に前川さんって呼んでましたよね?」

先輩「仕事の時は前川さん、プライベートではみくにゃん。俺、プロデューサ兼ファンだから」

P「はは、キモい」

先輩「まあ、それは置いといて。みくにゃんはそんなヤンキーみたいな理由で嫌わないって。凄く良い子なんだから」ニヤニヤ 

P「先輩、割とマジでキモいです」

先輩「はあ?みくにゃん可愛いだろ」

P「いや、みくにゃんは可愛いけど」

先輩「はぁ、みくにゃんと結婚したい」

P「…まあ、頑張るしかないか」

先輩「そうだぞ」




その日、俺は懐かしい夢を見た気がする。
その中で少女と出会った。

その少女は僕に言った。

お兄さん、約束だよ。

俺は訳の分からないまま、不安げな少女を安心させたくて約束をした。



ー事務所ー

P「おはようございます前川さん!」

みく「おはようございますにゃ。気合い入りすぎてうざったいにゃ」

P「オハヨウゴザイマスマエカワサン!!!!」コソッ!

みく「いや、なんか違うにゃ」プルプル

P(前川さんが笑いそうだ!)

P「ソレジャ-、レッスンジョウニイクニャ-!!!」コソッ!!

みく「みくの真似はよすにゃ」キリッ

P「調子に乗りました、すいません」

P(口調を真似ると怒るにゃ)ショボ-ン

ーーーー

P「」カタカタ 

ピロン

P「ん、メールだ。えっとー、再来週の収録の出演者に空きが出て、前川さんにまた出て欲しいと。んー!?この番組超有名じゃん!てかこれに出た事あるんだ」カタカタ

P「すぐにメール返さなきゃ!…文が作れない。…ググるか」カタカタ
  
P「ふっーふっーん、これで前川さんの好感度アップ狙えるか?いや、俺が頑張った訳でもないから無理か」

P「よーし、自分でも仕事を取るか!」

P(前川さんの知名度が既にそこそこあるので、仕事を探すのはそんなに難しくなかった)

P(というか気合いを入れすぎてスケジュール入れすぎたにゃー)

P「…謝ればきっと許してくれるさ☆」

先輩「おい***遊んでるなら俺のコーヒー買ってこい」

P「かしこまりました、ちなみに僕の分も買ってよかですか?」

先輩「コーヒーなら買ってよかですよ」

P「…良いですよ。先輩に奢ってもらうなんて恐れ多い」

先輩「ほんの少し前の自分の言動も覚えられないのか?」

P「ふっふっーん☆」ブ-ン

ー自販機前ー

P「あのケチ野郎め」ガコンッ

みく「独り言とか怖いにゃ」

P「うわっ!前川さん!!」ビクッ

みく「驚き過ぎにゃ」

P「はいっ、えー、レッスンお疲れ様です。そしてすいません!」

みく「えっ、どういうこと?」

P「えっとー、決してワザとではなくて、僕としては一所懸命前川さんの事を考えた結果、空回りしてー」

みく「簡潔に言って」

P「仕事を入れ過ぎて暫く休みがありません」

みく「…まあ、仕事があるのは良いことにゃ。それにプロデューサなりに頑張った…じゃなくて最悪にゃ」

P(なんか理由は分からんが、無理に俺を嫌いすぎていて逆に可愛く見えてきた。これはこれで良いかもしれない)メザメ-

みく「な、なんだにゃ、その目は?」

P「いえ、それより悪い事だけではなく、良い話もあるんです」

みく「なににゃ?」

P「なんと再来週に※※※の収録が決まりました」フフン 

みく「えっ!本当にゃ!?何でそんな急に」

P「何でも急に出れなくなった出演者がいて、前回好評だった前川さんに出演をして欲しいと」

みく「やったにゃー…あれ、その収録はいつにゃ?」

P「丁度再来週の二時からです」

みく「えっとー、その日は雑誌の取材が入ってなかったにゃ?」

P「…え?そんな筈は、だって先輩から貰ったスケジュールには。あれ?」

みく「プロデューサ?」

P「あれ、なんで?さっき見たときは、嘘、見間違えた」ブルブル

みく「…落ち着くにゃ」

P「そうだ、落ち着くんだ。どうしよう、分からない。よし先輩だ」

みく「プロデューサ、雑誌の取材は確か○○○だよね?」

P「え?あー」ペラペラ

P「はい」

みく「その雑誌は長い付き合いだし、お願いしたら前日にずらしてくれると思うにゃ」

P「…えっと、前日の予定は」

みく「オフにゃ」

P「あ」

みく「プロデューサがしっかり仕事を入れてくれたおかげで、ここしばらく唯一のオフとなる日にゃ」

P「…本当にすいません!!」バッ


みく「別にいいにゃ、プロデューサに期待してないから」

P「…すみません」

みく「…」スタスタ

P「…くそっ、情けない」

P(それにしても、再来週の予定までしっかり覚えてるのか。本当に真面目なんだな)

P(これじゃあ俺は邪魔者でしかないのかな?)

ー居酒屋ー

P「ということでさらに嫌われました」

先輩「がはははっ!いいぞ!もういっそもっと嫌われろ!俺のみくにゃんを奪った罰にゃー!」

P「先輩がここに入れてくれて、先輩が前川さんの担当にしたんでしょう」

先輩「いや、そうだけどさー。だってお前、他の娘任せれないから。今回だってみくにゃんだからフォロー出来たんだぞ」

P「すみません」

先輩「ふふ、もっと傷つけ!俺のみくにゃんを奪った罰だぁ!」

P(酔っ払いうぜえ)

P「俺、絶対にプロデューサ向いてないです」

先輩「プロデューサとかじゃなくて、社会人に向いてないんだろ」

P「うっ、確かにそうですよ」

先輩「社会人の中ではプロデューサはまだ合う方だと思うぞ」

P「そうっすかあ?」

先輩「そしてその中でも前川さんのプロデューサはお前に合ってるよ」

P「俺が頼りないから?」

先輩「それもあるけど。お前と前川さんは何か芯の部分が似てるんだよ」

P「いや、全然違うと思いますよ。俺みたいなんとは」

先輩「似てるよ。何ていうかな、妙に真っ直ぐなんだよ。自分の大事な気持ちに対して」

P「妙に、ですか」

先輩「妙だよ。普通はそんなに真っ直ぐなれない。大事な事ほど慎重に、臆病になって、真っ直ぐとは向かえないもんだ。それを前川さんだってトップアイドルになるという目標に驚くほど真っ直ぐと向かえるんだ」

P「…俺は折れましたよ」

先輩「いや、違うだろ。こうなったのだって、お前が大事な事に真っ直ぐだから、すぐに就職したんだろ」

P「…真っ直ぐねぇ。俺はもう少し器用に生きたかったですけど」

先輩「俺はもっと不器用に生きてみたいけどね。器用な奴ほど一番大事な物をびびって手に入れなかったりすんのよ。一番じゃない物を失う事を考えたりして」

P「…それは、何の話ですか?」

先輩「ふふーん、色々な話」

P「…まあ、明日も頑張るか!」

先輩「その意気だ!」





また同じ夢を見た。

少女は僕の事を睨んでいた。

きっと約束を破ったからだろう。

しかし、仕方がなかったのだ。

それを少女に説明しようとして、俺は動けなくなった。

少女の名前が出てこない、少女の顔がわからない。
こちらを睨んでいることは分かるのに、その顔は分からない。



ー事務所ー

P「おはようございます!今日も凄く可愛いですね前川さん!」

みく「セクハラにゃ。担当替えを要求するにゃ」

P「そんなー、デモにゃんにならないで」

みく「わけ分かんない事言わないで下さいにゃ」

P「はい、失礼しました」

P(やっぱり似てるとは思えない)

P「よーし!今日は一緒に営業行きますぞー!!」オ-

みく「一人で行けるのにゃ。プロデューサは事務所で仕事しとくのにゃ」

P「…はーい!」ショボ-ン!


P「どうやったら、もっと仲良くなれるのかな?」

先輩「取り敢えずそのテンションをやめて、暫く真面目にしたら?」

P「やだな先輩。根暗な奴は女の子にモテないんですよ」

先輩「頭のおかしい奴は信用されないんですよ、後輩」

P「そっかあ、確かにな。ありがと先輩。よし、前川さんが入ってくるまで俺は仕事するか」

先輩「帰ってきたら仕事しねえのかよ」

P「帰ってきたらコミュニケーション取りに行くんです」

先輩「どうせバッドコミュニケーションになるぞ」

P「それでも男には退けない時があるのです」

ー4時間後ー

みく「お仕事終わったのにゃー」

かな子「お疲れ様、みくちゃん」

みく「ふんふん、何かいい匂いがするのにゃ」

かな子「えへへ、今日はクッキー焼いてきたの」ガサガサ  

みく「わあ、美味しそうなのにゃ。食べてもいいの?」

かな子「どうぞ、食べて食べて」

みく「とっても美味しいのにゃー」パクパク

P「本当に美味しいですね、可愛い上にお菓子も作れるだなんて、アイドルなだけあってかな子さんはとても魅力的な女の子ですね」

かな子「そんなぁ、褒め過ぎですよぉ」

みく「何でいきなり現れて口説いてるの?」

P「前川さんとのコミュニケーション前のウォーミングアップです」

かな子「えっ、ウォーミングアップに口説かれたんですか?というかさっきのは口説かれてたんですか?」

P「誤解ですよ。口説いてるんじゃなくてコミュニケーションです」

かな子「ですよね」

みく「美味しかったのにゃー。かな子チャンありがとね、今度お返しにランチを奢るのにゃ」

かな子「いやいいよー、私が好きで作ってきただけだから」

みく「私も、好きでかな子ちゃんに奢るだけだよ。だから断らないで欲しいのにゃ」

かな子「うーん、それじゃあ悪いけどご馳走になろうかな?」

みく「それでいいのにゃ」

P「私も今度ランチを奢りますよ」

みく「やだ」

P「…奢らせて下さい!」

みく「絶対にやだ」

P「…じゃあ何なら奢らせてくれるんですか!?」

みく「なんで奢る前提なのにゃ」

P「だって奢りたいんですよぅ、仲良くなりたいんですよぅ」シクシク

みく「その奢る事によって仲良くなろうという卑しさがもう無理にゃ」


P「ちくしょう!!!」ダッ 

かな子「…みくちゃん、なんでそんなにプロデューサの事を嫌ってるの?」

みく「…昔、騙されたにゃ」

かな子「え、前からの知り合いなの?」

みく「違うよ、ただの他人だよ。他人だけど騙された事があるにゃ」

かな子「それじゃあプロデューサさんが悪いのかなぁ?でもそんなに悪い人には見えないけど。謝ってもらったりはしてないの?」

みく「…謝るも何も、きっと覚えてないにゃ」

かな子「それじゃあ教えてあげようよ。だってあんなに仲良くしようとしてるのに、可哀想じゃない」

みく「…嫌にゃ。それに謝られても許せない事だし」

かな子「そんなに…」

みく「そうなのにゃ。みくとって、本当に大事なことだったのに…」グッ 

先輩「…」カタカタ

ー夜ー

P「…」カタカタ   

先輩「おい、そろそろ帰らないか」

P「すみません、もう少し」カタカタ

先輩「少しなら待ってるぞ」

P「あー、すいません。やっぱ少しじゃないです」

先輩「そっか、じゃあ頑張れな」

P「すみません、それと暫く飲みに行くのも無理っぽいです」

先輩「おう。そういえば今日みくにゃんが言ってたんだけど、お前昔みくにゃんを騙したってな」

P「え?そもそも会ったこともないと思いますけど」

先輩「はあ?みくにゃんを嘘つき呼ばわりすんの?」

P「いや、そうじゃないですけど、多分勘違いとかじゃないですか?」

先輩「…まあ、お前が知らないならそうかもな。それじゃ、頑張れよー」

P「お疲れ様でーす」カタカタ

P「…」カタカタ

P(…気になる。本当に会ったことないよな?うん、ないだろ。正直かなりタイプの子だから忘れないだろうしなー)

みく「…」ジ-ッ

P「実は幼い頃に会ってて!結婚の約束してたとか!!」ガッ

P「…馬鹿か、んなわけねぇな」


みく「ほんと馬鹿にゃ」ボソッ 

P「ん?」

みく「」サッ 

P「…気のせいか」カタカタ 






夢の中の少女に名前と顔が生まれた。

でもそれは、あの話を聞いたからなだけではないだろうか。

そう思うと少女の顔が見れない、少女の名前が呼べない。

もしも間違えてしまったら、少女は永遠に俺の事を許してくれない気がしたから。

ー次の日の事務所ー

P「おはようございます、前川さん」ピシッ

みく「おはようなのにゃ、プロデューサ」ジ-ッ

P「どうかしました?」

みく「いや、何でもないのにゃ」

P「そうですか」

みく「…ちゃんと寝てる?」

P「あ、はい。ぐっすりと」

みく「本当に?」

P「はい」

みく「ふうん、なら良いけど。なんだか妙に頑張ってるから少し気になっただけにゃ」

P(もしかして)

P「心配してくれたんですか?」

みく「ち、違うにゃ!ただ倒れらられたりしたら、またみくに迷惑がかかるから、だから…」

P「だから心配してくれたと?」

みく「ーうるさいにゃ!レッスンに行ってくる」プンスカプンスカ  

P(なんか俺の事は嫌いみたいだけど、それでも優しいんだな。本当に良い子だ)

P(そんな子が上手くいかなかったら俺のせいだよな)

P「よし、今日も頑張るぞーっ」

ーーー
P「ちゃんとみくの休みを取りつつ、ダブルブッキングを気をつけて…と」ブツプツ

ーーーー
P「」カタカタ

ーーーーー
先輩「じゃあ、お疲れー」

P「お疲れ様でーす」

P「」カタカタ

ちひろ「お疲れ様です、プロデューサさん。どうぞ」コトッ 

P「うおっ、あっ、はい、ありがとうございます」

P(前から気になってた、可愛い事務員さんだ!)

P「って、ん?これは栄養ドリンクですか?見たことない種類ですね」

ちひろ「はい、実はこれ当社オリジナルのスタドリという商品なんです!」フンッ 

P「へぇー、そんな事までやってるんですね」ゴクゴク

P「ん、うまいっ!」プハ-ッ

ちひろ「そうですっ!美味しいんです!!」ガバッ 

P「あっ、はい」

ちひろ「その上美味しいだけではないんですね。栄養ドリンクは体に悪いと言いますが、このスタドリは本当に健康に良いんです!!仮初めの元気ではなく、真の元気を提供してくれます!!!これさえあればもはや人類に睡眠は不要!!これからの人類はスタドリと共にっ!!!!」

P「…」

ちひろ「…少しはしゃいじゃいました。これからスタドリよろしくお願いしますね」テヘッ

P「はは、はい」

P(んー、すごく可愛いのになー。スタドリに対する意識が宗教じみてて怖いな。事務員なら手を出してもOKだろうに、実に惜しい)

P「」カタカタ

ー※※※の収録日ー

P「よしっ、頑張るんだぞ前川さん!前川さんなら余裕のよっちゃんだ!!」フ-ッフ-ッ

みく「何でプロデューサがそんなに緊張してるの、それに来なくていいって言ったのににゃ」

P「よし、俺も頑張るぞ!」

みく「騒がないでよ」

P「心の中で一生懸命応援してるぞ!!」

みく「…ふふっ、馬鹿じゃないの」

スタッフ「では前川さん、スタンバイお願いします」

みく「よろしくお願いしますなのにゃ!」

P(フレー、フレー、みっくっにゃん!!)

ーー

芸人「ところで前川さん喋りにくそうだけど、普通に喋ってもいいんだよ?」

みく「言ってる事がよく分からないにゃ?言っておくけどこれは素なんだよ?」

ーー

司会「ということで、勝者にはこの高級の魚のソテー。負けた方には生魚を自分で調理して食べてもらいます!」

みく「え、なんでみくを殺しにかかってるにゃ?ピンポイント爆撃すぎるにゃ!」ガ-ン 

芸人「大丈夫、俺が代わりに食べてあげるから」

みく「それでも失うものがないけど得るものもないのにゃ」ショボ-ン

ーーー

みく「ふにゃー!」





P(やたらとイジられるな。まあ前川さんって少し虐めたくなるしな、リアクションも可愛いし。それだけ愛されているということで)

ジジイ「お兄さん、お兄さんは前川さんのプロデューサかね?」

P(なんだこの薄汚いジジイは、どっから湧いて出たんだ?)

P「はあ、そうですけど。なにか?」

ジジイ「…最近の若いもんは口の聞き方がなってないのー」カチンッ

P「あの失礼ですが、どちら様でしょうか?」

ジジイ「このテレビ局の社長だ」

P(ウソ、こんな薄汚いジジイが?)サ-ッ

P「すみません!僕は本当に馬鹿で、失礼な態度をお許しください!」バッ

ジジイ「こ、これは見事な土下座!こいつはもはやあの伝説の謝男《シャーマン》」

P「何でもします!何なら俺の事抱きますか!?」

ジジイ「い、いやいいよ。それにそんなに怒ってないから」

P「本当ですか?」

ジジイ「本当だよ」

P「…後からやっぱり抱きたいっなっても知りませんよ?」

ジジイ「お前はそんなに抱かれたいのか?」

P「いえ、結構です」

ジジイ「お前、面白いのぉ。だいぶ頭がおかしい」

P「すみません」

ジジイ「いいよ、いいよ、むしろ気に入ったわ。お前さんのとこのアイドルが気に入ってて声をかけたんだけれど、プロデューサまで個性的だとは」ハハハ

P(前川さんの事が気に入って声をかけた?お偉いさんが?それって…枕の誘い!?)

P「すみません、前川さんは勘弁して下さい。俺ならいくらでも抱かれますから」シクシク

ジジイ「俺を性獣かなんかだと思っとんのか?」

P「では、何の御用なんですか?」

ジジイ「…前川さんのグッズが欲しいなーって」

P「…今度たくさん送るんで、連絡先を」

P(お偉いさんの連絡先GETだぜ☆)

ーーー

みく「お疲れ様でしたー!」

芸人「お疲れー、今日も可愛かったよー」

みく「ありがとうございますなのにゃー。スタッフさん達もお疲れ様でしたー!」

スタッフ「お疲れ様です、また機会があったら来てくださいね」

みく「出れたら、喜んでまた来るのにゃ!」

みく「」スタスタ 

P「お疲れ様です」

みく「」バシッ 

P「痛っ!えっ、何ですか?」

みく「何ですかじゃないのにゃ、社長さんに土下座してるのみたのにゃ」

P「え、でも、最終的には気に入られました!連絡先もGETしましたよ!!」

みく「なら一発で許してやるのにゃ」

P「あ、ありがとうございます」

みく「帰るのにゃ」

P「はい」

P(日に日に前川さんとの距離が広がる)

ブロロロロ

ー車内ー

みく「」ブス-ッ

P(今回は凄く怒ってらっしゃる)

みく「…プロデューサ」

P「はい!」

みく「プロデューサを辞めるのにゃ」

P「すいません」

みく「答えになっていにゃ。プロデューサとか絶対に向いてない、だから辞めるのにゃ」

P「すいません」

みく「…ふんっ」

ブロロロ 

P「…なら逆に、俺には何が向いてると思いますか?」

みく「え、それは…まともな社会人以外」

P「はは…まあ、その通りですけどね。でも、まともな社会人にならないといけないんですよ」

みく「そんな決まりないよ。アイドルだって、まともな道じゃないよ。そんな決まりがあったら、みくはアイドルを諦めなくちゃ駄目になっちゃうにゃ…」

P「別に皆がそうしなくちゃとは思いませんよ。ただ俺はそうしなくちゃいけないんです」

みく「みく、プロデューサの事嫌いにゃ」

P「はは」

P(直接言われちゃった)ガ-ン

ー居酒屋ー

P「という訳ですよ!嫌われちゃったー!って元から嫌われてたー!!」ガハハ 

先輩「どうしたよ、しばらく飲みに行かないって言ってたのに」

P「だってだって悲しくてー」

先輩「んー、まあもう好かれようとするのは諦めた方が良いかもな」

P「えーだって、信頼関係とか言ってたじゃないっすかー」

先輩「お前が仕事を出来るようになれば、嫌いでも信頼はしてくれるだろう」

P「んー、でもー、なんかそんなドライな感じ嫌ですー」

先輩「だってお前かなり嫌われてんだもん」

P「もっとウェットな関係が良いー」

先輩「プロデューサにとってアイドルは何だ?」

P「え、えーっと…パートナー?」

先輩「商品だよ」

P「言いたい事は分かるけど、響きが嫌です。それに先輩、本当にみくにゃんの事商品だと思ってたんですか?」

先輩「みくにゃんは俺の女神様だ馬鹿野郎!殺すぞっ!!」

P「えー」

先輩「…でも、前川さんは商品だ」

P「オンオフの切り替え良すぎてひきますわ」

先輩「プロデューサの仕事はアイドルを売ることだ。その手段としてアイドルとはそりゃ仲が良い方がいけれど、それが仕事な訳ではないから。お前の仕事は前川さんと仲良くなる事じゃなくて、前川さんをアイドルとして成功させる事だろう?」

P「そうですけどー」

先輩「だからもう好かれようとするのは止めろ。これからはただ仕事をちゃんと出来るようになる事だけ考えろ」

P「やだー」

先輩「お前のそういう馬鹿なとこ好きだけどさ、もう馬鹿してられないから就職したんだろ。クビにならない為にもちゃんとしろよ」

P「…んんー」





少女は言った

お前の事なんか嫌いだと

嘘つきのお前は大っ嫌いだと

俺はひどく悲しい気持ちになったけど、それを顔には出さないで別れの挨拶をした

思い出せなくてごめん、約束を守れなくてごめん

でももうさようならだ、僕は大人にならなきゃいけない理由が出来た

少女のすすり泣く声を後にその場から去った

ー事務所ー

P「おはようございます」

みく「おはようございまずにゃ」

P「それでは今日は営業の後にレッスンですが、今日は僕がついていった方が良いですか?それとも一人の方が良いですか?」

みく「ええっ、えっと、一人で行けるにゃ!」

P「それでは頑張って来てください」カタカタ

みく「い、言われなくても頑張るにゃ!」

P「」カタカタ

先輩「出来るじゃん、ドライな感じ。そういうお前初めて見た」

P「クビになるわけにもなりませんから」カタコタ

============

ーレッスン場ー

みく(何にゃ!何にゃ!あの感じ!!急に冷めちゃって。いや、こちらが近寄らせなかった訳だけど!もっと頑張るにゃ!それでも男か!?)

トレ「前川、遅れてるぞ!」

みく「はっはい!」

幸子「…」

ーーー

トレ「どうした前川、今日は全然集中できてなかったな。お前らしくないぞ」

みく「すいません」

トレ「…まあそういう日もあるか、明日からはしっかり頼むぞ」

みく「はい」トボトボ 

幸子「」バッ 

みく「ふにゃ!」

幸子「みくさん!何か悩み事ですか?可愛くて頼りになるボクに相談すると良いですよ!」ドヤァ

みく「…悩み事?」

幸子「はい、何だかそういうように見えましたけど、違いましたか?」

みく「…いや、確かに悩み事があるにゃ」

幸子「ぜひ頼ってください!」フンフン

みく「…あのね、みく、憧れの人がいたのにゃ」

幸子「ふんふん」

みく「みくがアイドルを始めれたのもその人のお陰なのにゃ、それで最近その人に偶然また会って」

幸子「運命的です!」

みく「違うよ!そういうのじゃないにゃ!…ただの憧れ。それよりも問題はその人がすっかり変わっちゃってたの」

幸子「どんな風にですか?」

みく「え、どこがと言われると分かんないけど、前までのあの人ならこんな事してる筈がないのにゃ!」

幸子「じゃあそれって思い込みの可能性もありますよね。だってどこが変わったのか分かんないですから。本人ともっとちゃんと話してみたらどうです?」

みく「む、無理にゃ!…あっちはみくの事覚えてないし。それに絶対に変わってる!」

幸子「分かんないですよ。そうやって思い込みで人を嫌うのはみくさんらしくないかと」


みく「嫌ってる訳じゃないにゃ、ただショックなの」

幸子「どちらにしろ本人に聞くのが一番だと思います」

みく「必要ないにゃ!だって変わってなければプロデューサなんてしてる筈ないもん!!」

幸子「…あの新しいプロデューサさんですか」

みく「…そ、そうにゃ」

幸子「へぇ、ああいうのが良いんですか。変人ですよね、意外ですね」

みく「そういうのじゃないって言ってるし!それにプロデューサは変だけどとっても優しいのにゃ!それに面白いし!」

幸子「…ならそういう事にしときましょう」

みく「妙な含みを持たせないで欲しいのにゃ」

幸子「ふふんっ、喜んで下さいみくさん!」

みく「何にゃ?」

幸子「ボクがみくさんの代わりにプロデューサの事調べて上げます!」

みく「えっと、どうやって」

幸子「本人に聞いてきます!」ドヤア 


ー事務所ー

幸子「初めまして、プロデューサさん!」ドヤア 

P「は、初めまして。えっと、確かに輿水さんでしたよね」

幸子「ボクが可愛すぎてボクの事はもう調べてたんですね」ドヤァ


P「…そうですね、あまりの可愛さに調べてしまいました」

幸子「えっと、それは、ボクの可愛さも罪ですね」

P「本当に犯罪級の可愛さです」

幸子「ふふ」テレテレ

みく(アホにゃ!簡単にあしらわれてるにゃ!)


P「ところでどういった御用ですか?」

幸子「あ!そうですプロデューサは前までは何をしてたんですか」

P「…駄目人間です」

幸子「そうですか!駄目人間だったんですか。じゃあなんで駄目人間を止めたんですか?」

P「…いつまでも子供で入れませんから」ニコッ 

幸子「そうですか、そうですか!それでは失礼します!」

ー自販機前ー

幸子「本人の話によるとむしろまともになったのでは?」

みく「本人談なんてアテにならないにゃ。それに」

幸子「それに?」

みく「みくは、駄目人間の頃のプロデューサに憧れたんだにゃ」

幸子「えっ、ダメ男好きですか?それは駄目ですよ!幸せになれませんよ!」

みく「ほっとくにゃ」

幸子「でもみくさん!」

みく「うるさいにゃ」

「みく」

みく「えっ?」クルッ

「プロデューサのとこまで案内しなさい」

みく「えっ、何で。何でここにいるの?お父さん」

父「お前が言う事を聞かないからだろう。だからわざわざここまで来てるんだ」

みく「言う事を聞かないって、それはお父さんが約束を守らないんでしょ!」

父「もうお前と話す気はない。プロデューサのとこに案内しなさい」

みく「…」

幸子「」オロオロ

ー事務所ー

ガチャ  

P「ん?前川さん、そちらは?」

父「初めまして、前川みくの父です」

P「初めまして、前川さんの担当プロデューサの***です。ところで今日はどういった御用でしょうか?」

父「娘のアイドル活動を止めさせに来ました」

P「えっ?」

父「前から辞めるようには言ってたのですが、一切話しを聞かないもので、私が直接言いに来たのです」

みく「」フルフル

P「…」

父「と言う訳で」

P「すみません、少し娘さんと話させてくれませんか」

父「分かりました」

P「それでは少し失礼します」スッ

父「ここで話さないんですか?」

P「娘さんがお父さんの前だと、萎縮してるようなので」

父「はは」

P「すみません失礼します」ガチャ 

父「生意気な」ボソッ 

ー屋上ー

みく「寒いにゃ」

P「寒いですね」

みく「…お父さんは前から辞めろって言われてたのにゃ」

P「なんで事務所の人に言わなかったんですか」

みく「だって、みくは約束を守ってるのに…約束を破ってるのはお父さんにゃ!みくは悪くないのっ!」

P「約束とは?」

みく「アイドルを始めたいって言った時に、それを許す条件として常にテストで上位10%にいる事だったにゃ。だからみくはずっと勉強もちゃんとしてるのに…お父さんが急にやめろって」

P「お父さんの言い分は?」

みく「ただ辞めろって」

P「…そっかぁ」

みく(でも、もう良いかな。最近はもうよく分かんないし)

P「じゃあ辞めるなよ」

みく「えっ?」

P「いや、だってそうでしょ。前川さんは悪くないじゃん」

みく「でもじゃあどうするの?」

P「辞めたくないなら、俺が何とかしてやる。だからさ、教えてよ。前川さんはどうしたい?」

みく「私は…」

P「…」

みく「分かんない」

P「えっ!?」

みく「少し前までなら、即答したよ。辞めたくないって。でも最近はどうしたいのかよくわかんないの」

P「…なら続けなきゃ。分かんない内は続けようよ。いま辞めたら後悔するよ」

みく「…プロデューサがそう言うなら、そうするにゃ」

P「!」ドキッ

みく「どうしたの?」

P「いえ、何も」

みく「…その変に堅苦しい感じ、止めるのにゃ。なんか、気に食わないにゃ!」

P「…分かったよ、前川さん」

ー事務所ー

P「お待たせしました」

父「説得してくれましたか?」

P「いえ?何故僕が説得を?話しを聞いていただけです」

父「…それで」

P「はい、みくさんは辞めたくないとの事ですが、お父さんが認めないようなので諦めて貰おうかと思います」

みく「うぇっ!?」

P「前川さんには大きくなってから、またアイドルを目指してもらうしかありませんやね」ハハハ

みく「ふにゃあー!?」ウルウル

父「随分物分かりが良い人で助かります。正直さっきまでは気に食わない奴だと思ってたんですけど」

P「別に気に食わなくて良いですよー、僕もお父さんの言い分は気にくわないですしー」

父「」カチン

P「まあ、それはそれですから。親の同意がない以上仕方ありません」

父「はは」

P「ですから一年後にアイドルを止めてくださって結構ですよ。ということでそれでは」

父「ちょっと待て!」

P「はい?」

父「なぜ一年後?」

P「だって2年契約ですから…」

父「いや!それがおかしい!!確か一年契約だったはずだぞ。だからもうすぐ契約が切れる今、来ているんだ」

P「いやいや、勘違いでしょう。ほら」ピラッ




父「あれ!?…うん確かに俺のサインとハンコだ」

P「まあ、間違いは誰にでもありますよっ☆」

父「…くそっ、帰る!」

P「さようならー☆」

バタンッ

みく「確かに一年契約だったはずにゃ。もしかしてプロデューサ」

P「うん、偽造した。仕事早いだろ」

みく「サインは?」

P「普通に真似した」

みく「ハンコは?」

P「消しゴムで同じの作った」

みく「無駄に手先が器用にゃ」

P「へへへ」

みく「ていうかヤバくないのにゃ?」

P「へへへ、かなりやばい。だから秘密だぞ」

みく「いやいやいや!馬鹿にゃ!!プロデューサは馬鹿にゃ!!」

P「確かにな」

みく「どうするつもりにゃ!今年の契約更新だって」

P「また俺が偽造する」

みく「それでも来年になればバレるにゃ!」

P「簡単な話だよ。その時までにみくがトップアイドルになれば良い。そうすればあの親父はむしろ俺に感謝するさ。辞めさせなくて良かったですぅーって」

みく「…」

P「どうした、俺の素晴らしい機転に驚いた?」

みく(こいつホンマモンのアホや!!)

みく「馬鹿にゃ、プロデューサは馬鹿にゃ…」

P「知ってるよ、今まで飽きるほど言われてきた。流石に自覚ある」

みく「じゃあなんでこういう事するの?バレたら笑い事じゃ済まないんだよ?分かってるの?」

P「それも知ってるよ。それでもやっちゃうんだよ、だから馬鹿なんだ」

みく「なんでそこまでするの?」

P「だって気に入らなかったから。こんな終わり方はヤダよ。だから終わらせなかった、それだけの事だよ」

みく「…」ボ-ゼン

P「俺は馬鹿だから、馬鹿な人生を送るんだって。変に利口な生き方してたら、きっと死ぬ時に後悔するから」

みく「ふふっ…あはは!プロデューサは馬鹿にゃー」

P「そうだって言ってるでしょ」

みく「あはははは」




夢を見た。

懐かしいあの日の夢を見た。

。。。。。
そんなに勉強して楽しいの?
クラスメイトの子にそう聞かれた。
私は「そんな訳ないじゃない。ただお父さんがやれって言うから」そう答えると、その子は嘲笑うかのように「いい子だね」と言った。

いい子の何が格好悪いのだろうか、何が可笑しいのだろうか。

この年頃の子には悪いものがかっこよくて、真面目なものはカッコ悪い、そういう図式がある。
だけどそんなものは絶対に間違っている。そう思うけれど、それを口にすると余計にみんなから馬鹿にされてしまう。

だから私は「そんな事ないよー」と恥ずかしがるように答えた。

あの子達は馬鹿だと思うけれど、その一方であの台詞自体には酷く悩まされる。

最近の私の悩みを突いている台詞なのだ。

真面目がかっこいいだとかかっこ悪いだとかそういうのじゃなくて、なぜ私は真面目なのだろうと思うのだ。

私はお父さんに、言われるがまま幼い頃から勉強をしてきた。そしてきっとお父さんのように真面目な、まともな大人になるのだと思っていた。

けれどふと思ったのだ。
何故そうしなくてはならないのだろうと。

お父さんがそう言うから、それ以外の理由は上手く浮かんでこない。
こんな考えはきっと多感な思春期のせいで、後になれば恥ずかしくなるような思想なのだろうとこの悩みを吹き飛ばそうともする。
でも本当にそうしていいのだろうか、とこの悩みは妙に私に纏わりついてくるのだ。

親の敷いたこの正しく立派なレールの先には何が待っているのだろう。それで私は後悔をしないのだろうか、と。

そんな私のストレス解消法は野良猫を探して遊ぶことだった。

ねこカフェ巡りも良いけど、いつも行っているとお金が足りなくなる。
だから最近は野良猫探しをするようになった。

親が猫を嫌いなので、家では飼えないが私は猫が大好きだった。
猫を撫でていると幸せな気持ちになって、私の悩みなど遠くの何処かに投げ捨ててくれる。
まあ一時的なもので、家にでも帰るといつの間にか私の悩みは私のすぐそばにひょっこりと顔を出すのだけれど。

「ふにゃあー、可愛いにゃー」

「お嬢ちゃんの方が可愛いよー」

猫に話しかけていると、突然後ろから声をかけられた。

「ふにゃあっ!!」

驚いて私の体は猫のように跳ね上がる。

「うわっ」

男の人が持っていたジュースが溢れて、私の制服は濡れてしまった。

「ごっ、ごっ、ごめんなさい!」

「いや、俺の方こそごめんな。驚かせるつもりじゃなかったんだ」

男の人は後ろに二歩下がった。
きっと痴漢だと思われるのが怖かったのだろう。その動きで、私は少し落ち着けた。
悪い人ではなさそうだと。

「ただこんな人気のないとこに、こんな可愛い子がいたら危ないと思って」

周りを見渡すといつの間にか、人気のない路地裏まで来ていた。猫を追いかけるのに夢中でちっとも気付かなかった。

「す、すみません」

「いやいや、本当にごめんな。これクリーニング代」

そう言って男はお金を差し出した。

「いえっ、私がぶつかったのに貰えません!」

「でもこちらも悪いしなー」

男はしばらく悩んで、何かを閃いて自分のポケットを漁りだした。

「これ!」

そう言って差し出したのは、ライブのチケットだった。

「俺のバンドのチケット、今からライブあるからおいでよ」

「えっ!でもぉ」

「遠慮しないでよ」

「絶対に面白いから!楽しませる自信あるよ!!」

男は急に興奮して近寄ってくる。

「こ、怖いです」

「あっ、ごめん!…怖いって、俺が?ライブが?」

「…両方です」

「はは、結構正直だね。まあ、嫌ならいいよ。無理に来ることはない、君にあげたチケットだ君が決めればいいよ」

「すみません」

男の人はライブが始まるからと言って去っていった。

「少し怖かったね」

「にゃー」

私は猫に話しかける。

「でも優しかったね」

「にゃ?」

「それと少しカッコよかったかも」

私は生まれて初めてライブに行く事になった。

中に入ると思ったより落ち着いていて安心した。ただこちらを伺っている男の人達が
何人かいて、少し居心地が悪かった。

そして最初の演奏が始まると、ここに来たことを後悔した。
ロックは今までちゃんと聞いた事がなくて、ただなんだかうるさい音楽だなぼんやりと思っていただけだった。しかし今、そのぼんやりとした思いはしっかりとした形になった。

とにかくうるさい、と。
観客たちはこのうるさい音に喜んで体を動かしている。私の目には奇妙に映った。
私にはこの音楽は騒音にしか思えなかった。

もう帰ってしまいたかったけれど、ここまで来たのだからあの人の演奏を聴いてから帰ることにした。

結局その人が出てきたのは一番最後だった。
ステージから疲弊しきった私を見つけて、その人は嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、私よりも無邪気に笑うんじゃないかと感じた。

その人はマイクを構えた瞬間に、表情がいきなり変わった。その人は囁くように歌い始める。楽器隊は動かないで、その人の声に聞き惚れているようにも見えた。
細く柔らかい声なのに、すぐ隣で歌われているかのように飛んでくる。
その人が深く息を吸うのを合図のように、激しい演奏が始まる。

さっきまでと同じような激しい演奏なのに、何故か嫌悪感はなかった。
むしろ心地よさを感じていた。

正直、歌詞は何を言ってるのか分かんないような事を言っていた。
ただその言葉じゃなくて、それに乗せられた想いが直接響いてくるような歌だった。


みんなが同じような表情でその人を見ている。さっきまで奇妙に見えた光景も、凄く優しいものに見えた。

あの人からはこの光景が、どんな風に見えているんだろうと思った。

ーーー

「どうだった?楽しかった?」

「何言ってるか分かんなかったです」

「あははは」

しかし男の人は嬉しそうだった。もしかしたら楽しかったと思っていたのが表情に出ていたのかもしれない。
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。

「普段は何をしているんですか?」

「え、バイトとバンドの練習」

「…大人ですよね?」

「もう23歳です☆」

「私は大人って、やりたい事だけやってるんじゃ駄目だと思うんですけど」

「じゃあ子供でいいさ」

「いつまで子供でいる気ですか?」

「死ぬまでかな」

「…駄目な人ですね」

「ははは、確かにそうかもね。みんなから駄目な奴だって見られるよ。でも俺はそんなに変な事をしてるつもりはないんだけどね」

「変ですよ」

「でも成功したら、この今みんなから馬鹿にされている過程も、素晴らしい努力、になるんだろう?俺からしたらみんなのが変だけどね」

「なんで、叶わないような夢を追いかけるんですか?」

「別に叶うかどうかとか、難しいか簡単かで考えてないからだよ。ただ、こうしたいって思う事に向かってるだけだよ」

「なんで?」

「だって死ぬ時に後悔したくないじゃん」

その人の言葉が私の心の奥にズシンと届いた。
今の私の生き方は、死ぬ時にどう思うのだろう。後悔するのだろうか。
簡単に言い放ったその言葉を実行するのは、とても簡単な事ではないと思う、だって。

「でも叶わなかったら、後悔するでしょう?」

「そうかもね、確かに失敗したら後悔するかもしれない。あの時普通の人生を選んでればって。でも普通の人生を選んだら、失敗しなくても死ぬ時に後悔すると思うんだ。失敗してないのに後悔する人生は馬鹿みたいじゃないか。確かにもっと普通の人生を生きれたらって思う事もあるけれど、良くも悪くも俺が普通の人じゃなかったんだ仕方がないことだよ」

私もきっとそうだと思った。

本当は私もこの人と同じタイプの人間だと。

私の心の奥にはいつも、レールの上を良い子に歩く私を恨む気持ちがあった。

小さな頃に持っていた本当の気持ち。

大きくなるにつれて、それがいけない事に思われて自分からもそっと隠した想い。
でも私にはそれを貫けるだけの強さはなかった。

だから。

「お兄さん、約束をしてくれませんか?」

「ん、約束?」

「そうです、約束」

「なんて?」

「お兄さんは絶対に夢を諦めないことを誓うんです」

「君は?」

「私も夢を諦めないです」

「へぇ、どういうゆめなの?」

「秘密です」

「なんだそれ」

「でもお互いが夢を叶えたら、有名になるから私の夢も分かりますよ」

「じゃあ、その時まで楽しみにするよ」


そう言ってプロデューサの小指と私の小指が絡み合った。

臆病だった私の背中を押す約束を交わした。

===========

ーP宅ー

P「」ムクッ

P「思い出した、やっぱりあの子は前川さんだ」

P(ぼんやりとしか覚えてなかったし、前川さんが色々と成長し過ぎて分かんなかった。胸とか身長とかおっぱいとか)

ー事務所ー

P「おはよう、前川さん!」

みく「おはようなのにゃ」

P「どうした?眠たそうだぞ」

みく「何でもないにゃ」

P「ちなみに俺も寝不足だぞ!夢で前川さんが出てきて寝かしてくれなくてな」ハハハ  

みく「セクハラにゃ!」

P「お前と俺の仲だろう!」

みく「本当に調子乗らないで欲しいにゃ」

P「すいません」

P「よし!今日のスケジュールはー、前川さんはレッスンオンリーですね!」

みく「なんでまた妙にハイテンションなの」

P「もうすぐー、春だから!」

みく「もういいにゃ」スタスタ

P「…良しっ、仕事するかー」カタカタ 

先輩「なんだ、少しは仲良くなったじゃないか?」

P「前川さんがようやく俺の魅力に気付いたんですよ」

先輩「寝言でもんな事言うな」ピキッ 

P「すいません」

ーーーー

みく「もうクタクタにゃー」

P「お疲れ様ー、で今日はもう事務所に用はないんじゃないか?」

みく「忘れ物にゃー」

P「そっか」

みく「お疲れ様なのにゃー」

P「…チョット待って、前川さん」

みく「何にゃ?」

P「丁度イイからミーティングをしよう。実は大きなライブが決まってな」

みく「驚いたにゃ、プロデューサがそんな仕事を持ってくるとは」

P「ははは、やれば出来る子なんだよ」

P(ほぼあの社長の協力のお陰だけど)

ー屋上ー

みく「なんでまた屋上なのかにゃ?」

P「高いとこは好きだからだ!」

みく「馬鹿と煙はなんとやらにゃ」

P「ところでさ、いきなり本題から逸れるけど」

みく「いきなり本題から逸れるだなんて、高レベルなバカトークにゃ!一生本題に辿り着ける気がしないのにゃ!」

P「いや、いつかは辿り着くよ」

みく「いつ?」

P「逸れる道がなくなれば」

みく「その発想がもう恐ろしいのにゃ」

P「まあまあ、ともかく俺が言いたいのはだな。つまり、謝罪をな」

みく「謝罪?」

P「そう、あれだよ、約束を守れなかったことについて。…謝罪」

みく「…覚えてたんだ」

P「というか、思い出した」

みく「…なんでプロデューサなんてしてるの?」

P「まあ色々あってな、それは置いといて。約束守れなくて、ごめんな」

みく「なんで?」

P「ん?」

みく「なんで、嘘をついたの?諦めないって言ってたじゃない」

P「嘘をついたわけではないんだ。ただ状況が変わったんだ」

みく「もういいよ」バッ
ガチャンッ  

P「…また嫌われた。てか本題を話してないよ」

先輩「この野郎っ!」バシッ 

P「痛っ!えっ、どこに隠れてたんですか!?」

先輩「お前、みくにゃんと会った事ないって言ってたじゃないか!何だ今の会話!俺に嘘ついたろ!説明しろー!」ビシッビシッ

P「分かりました!分かりましたから落ち着いて!!」

ーーーー

先輩「え、なんで説明しないの?」

P「いや、その方が良いと思って」

先輩「なんで?」

P「だって前川さんは混乱はしてるけど、本当にアイドルを辞めたい訳ではありませんから。別に俺なんて、今の前川さんの気持ちにはさほど関係ないんですよ。ただのきっかけです」

先輩「んー?よく分かんないけど、ならそう言えば」

P「俺から正論を言ったって反発しちゃいますよ。嫌いな奴から言われた正論なんて、いくら前川さんが大人びてるといってもまだ子供ですし」

先輩「だから事情を説明したらそもそも嫌われないだろう」

P(俺が夢を諦めたのには理由がある。父親が交通事故で死んだのだ。だから、2人の弟の生活費を稼ぐ為に、自分の夢を諦めたのだ。確かにそれを説明したら、前川さんは俺の事を嫌わないかもしれない。でも)

P「…それは、多分俺の事を嫌ってる方が良いかと思って」

先輩「は?」

P「俺を嫌ってる方が、見てろよこの野郎っ、て感じで頑張れると思ったので」

先輩「…へー、というかお前ってそんなに考えてたんだ」

P「別に俺は考えなしな訳ではないですよ。ただ思考がズレてたりするから馬鹿扱いされるだけで」

先輩「へー、にしてもそこまで考えてるのはクビになりたくないから?それともみくにゃんの事好きになったとか?」


P「…もしも後者と言ったら」

先輩「殺す」

P「クビになりたくないからです」

ーレッスン場ー

みく(あんな嘘つきの事もう知らないにゃ!)

トレ「前川!テンポが早すぎるぞっ」

みく「はい!」アセッ

トレ「1、2、3、4.1、2、3、4」

みく「…ふっ、、ふっ」

トレ「1、2、3、4.1、2、3、4」

みく(どうせそれっぽい事を言ってカッコつけてただけなのにゃ!)

トレ「前川!!どうした、またズレてるぞ!?」

みく「す、すみません」

トレ「最近どうしたんだ、すこし変だぞ?」

みく「…すみません、体調が悪いので少し休みます」

トレ「おお、それならしっかり休め。無理はしたら駄目だぞ」

みく「はい、すみません」

トレ「よし、始めるぞ!1、2、3、4」

みく(じゃあみくはそんな嘘を憧れて夢を目指したの?)

幸子「…」ジ-ッ 


ーーーー

幸子「大丈夫ですか?みくさん」


みく「あ、お疲れ様。うん、みくは大丈夫だよ。少し疲れてただけみたい」

幸子「まだ、悩んでるのですか?」

みく「…少し」

幸子「じゃあ頼って下さい!」ドヤアッ

みく「あの、幸子ちゃんに質問していいかな?」

幸子「可愛いボクの事が気になるのですか?ふふん、まあ仕方のないことです!何でも聞いて下さい」

みく「幸子ちゃんはどうしてアイドルを目指したの?」

幸子「え、ボクが可愛いからです。だってこんなに可愛いボクがアイドルじゃない方が不思議じゃないですか」

みく「…そ、そうだね」ハハ 

幸子「そうです!」ドヤアッ 

みく「…ありがとう、役に立ったにゃ」

幸子「……ボク、ボクの両親は真面目な人なんです」

みく「私と一緒だね」

幸子「それで中学校から受験させられて有名な学校に入ったんです」

みく「…私も。私達少し似てるのかもね?」

幸子「そうかもしれませんね、みくさんもボクに近いほどの可愛さを持ってますし!」

みく「あ、ありがとう」

幸子「でもボク、親から褒められた事がなかったんです」

みく「一度も?」

幸子「小さい頃はあるかもしれませんが、ボクの覚えてる限りは一度もないです」

みく「それは、寂しかったね」

幸子「ボクは凄く可愛いので平気でしたけどね!…でも少しは寂しかったです。そんな時にアイドルにならないかってスカウトされて、そんな理由です。可愛いって褒められて、嬉しかったんです」

みく「じゃあ今も可愛いって言われるためにアイドルをしてるの?」

幸子「違いますよ、ボクはいつだって成長してるんです!今は違う目的がありますよ!」

みく「なに?」

幸子「…お、お父さんとお母さんに褒めてもらうんです。と、トップアイドルになれば、きっと褒めてくれるかなって」

みく「そうなんだ……幸子ちゃんは本当に可愛いのにゃー」ダキッ 

幸子「わっ、と、当然ですよ!ボクは可愛いんです」

みく(そうにゃ!きっかけが大事なんじゃない。大事なのは今の気持ちと何をするかにゃ!)

みく「可愛いにゃー」ナデナデ 


ー事務所ー

みく「疲れたにゃー」

P「お疲れ様です、前川さん。あのさっき話しそびれた…」

みく「何でまたよそよそしくなってるのにゃ?気持ち悪いのにゃー!」

P「えっ、はい」

みく「それより屋上に来いなのにゃ!」

P「はい?」

ー屋上ー

みく「確かに、みくがアイドルを目指したきっかけはプロデューサにゃ!プロデューサの生き方に憧れて夢を目指したにゃ!」

P「…」

みく「でもそれはきっかけに過ぎないの!今は違うにゃ!アイドルの楽しさをいっぱいしったの!そしてもっと上に行ったらきっともっともっと楽しい事が待ってるにゃ!だからプロデューサがただの屑でも!みくのきっかけが間違ってても!今のみくがアイドルを頑張る気持ちには何の関係もないのにゃ!!」ビシッ 

P「…」

みく「ふーっ、ふーっ」

P「…そっか、それじゃあ一緒に頑張ろうな」

みく「おうっ!よろしく頼むにゃ!」

P「それじゃあ、よろしくの握手をしよう!」スッ

みく「よろしく頼むにゃ!」ガシッ 

P「…驚くほど小さな手だな」

みく「プロデューサちゃんが大きいだけにゃ!」

P「プロデューサちゃん?」

みく「よろしくの印にゃ!」

P「そっか、じゃあ俺は…みくにゃん!」

みく「調子に乗らないで」

P「あ、すいません…前川さん」

みく「何にゃ?」

P「約束しませんか?」

みく「プロデューサチャンの信用はゼロにゃ!」

P「それでも…してくれませんか?」

みく「…言ってみるにゃ!」

P「俺は絶対に前川さんがトップアイドルになるまで諦めません。だから、前川さんもトップアイドルになるまで諦めないで」

みく「…約束にゃ」


そう言って前川さんはいま一度、僕の手を強く握った。
僕が交わした小さな約束が、小さな少女を立派に成長させたように、この約束が僕にとってそういうものになれば良いなと思った。

終わり

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