――おしゃれなカフェ――
北条加蓮「ずず……」
加蓮「ふぅ……」コトン
加蓮「……」
高森藍子「じ~……」
加蓮「……」
加蓮「……すっ」(少し右にズレる)
藍子「……?」(加蓮を目で追う)
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……すっ」(少し左にズレる)
藍子「……?」(加蓮を目で追う)
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レンアイカフェテラスシリーズ第91話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「鼻歌交じりのカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「秋のカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「お客さんの増えたカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「膝の上で ななかいめ」
加蓮「ふむふむ」
加蓮「……べちょ」(テーブルに突っ伏せる)
藍子「……?」(加蓮を目で追う)
加蓮「うわ。この角度だと藍子が見下ろしてくる。面白ーい」
藍子「はあ」
加蓮「この角度ってなんか見下されてる感あるじゃん。上から目線とか。そんな感じ」
加蓮「いつもはそんなこと絶対にしない藍子が、そういう目でこっちを見てくるから。なんか面白いなって」
藍子「な、なるほど……?」
藍子「見下す――ううん、見下ろすっていうなら、膝枕をしている時もそうじゃありませんか?」
加蓮「んー?」(起き上がる)
加蓮「んー。あれはちょっと違うかなぁ」
加蓮「膝枕してもらってる時は、藍子、顔ごとこっちに向けてくるじゃん。あんまり見下されてる感はないかも」
加蓮「それよりは見守ってもらってる感の方……ごめん今のなし」
藍子「そうなのかな……? 自分では、あまりよくわかりませんね」
加蓮「そういう表情の角度とか、見る側への印象とか、結構大事だよ? 撮影してもらってる時とかは特に」
加蓮「ほら、カメラマンさんとか、モバP(以下「P」)さんとか。よくそういうとこ指摘してこない?」
藍子「う~ん……?」
加蓮「あれっ」
藍子「撮影の時、撮る枚数が多くなっちゃうことはよくありますけれど、そういう……指摘? とかを受けたことは、あまりないような……?」
加蓮「えー」
藍子「ポーズや目線は、指示されますけれど、あとはそれで大丈夫って言ってもらえることが多いですから」
加蓮「ふーん。Pさん相変わらず藍子に甘いなぁ」
加蓮「カメラマンさんも甘いなー。世の中藍子に甘いようにできすぎてない?」
藍子「あはは……。あっ、店員さん」
加蓮「やっほー。空皿ありがと。……ほら、店員さんも藍子のこと好き過ぎるし」
藍子「今日は、まだ何もしていないと思いますっ」
藍子「加蓮ちゃんは、よく指摘を受けたり、Pさんにリクエストされたりするんですか?」
加蓮「……リクエストって言うとなんか言い方おかしくない? 結構色んな指示が入ったりするかな」
藍子「ふふ。それって、Pさんやカメラマンさんに期待されてるってことではないでしょうか」
藍子「何かで聞いたことがあります。学校の授業だったかな。それとも、お父さんが言っていたのかな……?」
藍子「ごほんっ」
藍子「相手から要求されるということは、それだけ、相手から期待してもらっているということで、あるっ♪」キリッ
藍子「だから、加蓮ちゃんはきっと、色んな人から期待されているんですよ」
加蓮「…………」
藍子「……あ。今、にこっとした♪」
加蓮「してない」
藍子「しましたっ」
加蓮「してないしてない。ううん、ごめん嘘ついた。実はした。藍子のドヤ顔が間抜けすぎたから噴き出した」
藍子「なっ、なんですかそれ~」
加蓮「左手でメガネをくいっと上げるエアポーズしてたから、今の動画にしてうちの事務所のメガネ屋さんに送りつけたら絶対面白いことになるだろうなーって思った」
藍子「眼鏡屋さん……」
加蓮「噂だけど、最近は休憩部屋の1つをメガネ屋にリニューアルするって陰謀が持ち上がってるんだって」
藍子「休憩部屋を眼鏡屋さんに!?」
加蓮「できあがったら行ってみたいよねー」
藍子「……あ。行ってみたいんですね。加蓮ちゃん」
加蓮「まぁ面白そうだし?」
藍子「ですねっ。加蓮ちゃんに似合う眼鏡を、1日中探すことになりそうっ」
加蓮「えー。藍子の方が似合うでしょ。メガネコーデ」
藍子「私は、眼鏡をかけても似合わないって加蓮ちゃんに言われましたもん」
加蓮「えっ言ってない。……もしかして、今からかったの根に持っちゃった?」
藍子「……」プイッ
加蓮「あははっ。なんかごめんね? お詫びに何か言うこと聞いてあげるから」
藍子「……それなら、加蓮ちゃんもやってみてください。眼鏡上げポーズ」
加蓮「だったら何か名言も用意しなきゃ」
藍子「名言……。よ、用意してくださいと言われて思いつくものではありませんよね」
加蓮「まあね。ああいうのって自然と出てくる物だと思うし?」
藍子「……あっ、今の、ちょっぴり名言っぽいかも?」
加蓮「……自然と出てきちゃったね」
加蓮「えーっと」スワリナオシ
加蓮「人の心を響かせる名言って、自然に出てくる物なんだよ」キリッ
藍子「おぉ~」
加蓮「……なんか違わない? 今のなしなしっ」
藍子「ううんっ。今の、すっごく格好良かったですっ」
加蓮「えー……」
藍子「動画にして、Pさんに送ってあげたら、きっとすっごく喜ばれていたと思いますよ。ふふ、残念♪」
加蓮「……次からはスマフォで録画しながらやらないといけないね」
藍子「あ。加蓮ちゃん、今にこっとした?」
加蓮「してないってばっ。なんなの今日の藍子は……」
……。
…………。
加蓮「何か食べる?」
藍子「何か食べましょうか」
加蓮「何にしよっかなー……」ヒョイ
加蓮「藍子は何にするー?」パラパラ
藍子「加蓮ちゃんと、おそろいのものでっ」
加蓮「ふーん。激辛パスタとかにしてやろ」
藍子「……確かそういうメニューはなかったと思いますよ?」
加蓮「ちぇ。やっぱり藍子贔屓だ。カフェ単位で藍子贔屓だ」
藍子「あはは……」
加蓮「何にしよっかなー……」パラパラ
藍子「……じ~」
加蓮「……」パラパラ
加蓮「……?」チラ
藍子「じ~」
加蓮「……」
加蓮「……すっ」(少し右にズレる)
藍子「……?」(加蓮を目で追う)
加蓮「……」
加蓮「……すっ」(少し左にズレる)
藍子「……?」(加蓮を目で追う)
加蓮「……」
加蓮「……すっ」(メニューで顔を隠す)
藍子「えいっ」(メニューを掴み取って加蓮の顔が見えるように上げる)
加蓮「???」
藍子「じ~」
加蓮「……」
藍子「じ~」
加蓮「……すみませーん。店員さん、プレーンワッフル2つ、お願いー」
加蓮「で」
藍子「じ~」
加蓮「……何?」
藍子「じ~」
加蓮「……」
藍子「じ~」
加蓮「…………説明しなさいっ!」ペシ
藍子「痛いっ」
藍子「笑わないで聞いてくださいね?」
加蓮「うん」
藍子「加蓮ちゃんの顔を」
加蓮「うんうん」
藍子「じ~、っと見たくなって」
加蓮「うん」
藍子「……じ~」
加蓮「……それは今の藍子を見れば分かるよ。なんでそうなったの? って聞いてるの」
藍子「あっ、そうですよね」
藍子「この前、学校のクラスメイトの1人からノートをお借りしたんです。ロケで、何日か学校を開けてしまって……。その間の分のノートです」
加蓮「そういえば1泊で行ってたよね。ホテルの温泉が気持ちよかったって呟いてた時の?」
藍子「はい♪ 本当に凄かったんですよ。浸かるだけで、全身がとろけて行くくらいに気持ちが良くて――」
藍子「って、今は温泉のお話ではありませんね」
加蓮「ノート。借りたんでしょ?」
藍子「はい。ノートをお借りしたんですけれど、その子は絵を描くのが好きなんです。ノートのはしっこにも、ちっちゃい動物の絵とか、あと先生の似顔絵とかが描かれていて……」
加蓮「暇な時によくやるヤツだー」
藍子「それが、すっごく可愛くてっ! あっ、写真を撮らせてもらえればよかったですね。そうしたら、加蓮ちゃんにもお見せできたのに」
加蓮「いいよいいよ。可愛かったってのは伝わったから」
藍子「でも本当に見てほしいんです。今度、その子にまたノートをお借りして、撮らせてもらいますね」
加蓮「だからいいってばー。手間でしょ?」
藍子「手間なんかじゃありませんよ。それなら加蓮ちゃん、実際に見に来てください!」
加蓮「……見に??」
藍子「私のクラスまで来て、その子にノートをお借りして、見てみてください。本当に可愛いんですよ♪」
加蓮「……」
加蓮「……はぁ、もう。わかったわかった。藍子がどーしても見せたがったのはわかったから。今度写真を撮って送って?」
藍子「はぁい」
加蓮「……なんで若干がっかりって顔してんの」
藍子「せっかくなら、加蓮ちゃんが遊びに来てくれたら面白いのになぁ、って思って……ねえ、加蓮ちゃん。たまには、同じ学校に通ってみませんか?」
加蓮「…………何言ってんのこの子?」
藍子「ノートの可愛い絵を見ていたら、私も何か描いてみたいなぁって思ったんです。その……ノートをお借りしたのがお昼休みだったので、その後の授業中に……」
加蓮「こっそり落書きをしちゃった?」
藍子「……」コクン
加蓮「あはははっ。授業中にノートに落書きしちゃったんだ。藍子、悪い子ー♪」
藍子「言わないで~~~っ。あれはっ、そのっ、ちょっとやりたかっただけなんです!」
加蓮「で、バレて先生に怒られちゃった、と」
藍子「ううん。ばれませんでした。お昼休みの後の授業だからか、先生もクラスメイトのみんなも、まったりしていて……。授業よりも、お喋りが多いくらいでしたから」
加蓮「あー、あるよねそういうの」
藍子「ふふ。ありますよね」
加蓮「授業の半分くらいが雑談で潰れたり?」
藍子「その時は、先生、男性の先生なんですけれど、男の1人料理だー、ってお話になって、男子のみなさんがとても楽しそうにしていました」
加蓮「それ面白そうっ」
加蓮「落書きかー。今度ノートにでも藍子の似顔絵でも描いてみよっかな?」
加蓮「それで先生に提出しちゃったりして。藍子のファンがまた1人増えそうだねー♪」
藍子「そう、それなんです!」
加蓮「わっ。びっくりしたー。それって、藍子のファン?」
藍子「ううん、そうではなくて。私も、加蓮ちゃんの似顔絵を描いてみたくなったんですっ」
加蓮「同じこと考えてる」
藍子「同じこと、考えちゃいましたね♪」
藍子「それで挑戦してみたんですけれど……。うまくいかなくて」
加蓮「あー」
藍子「代わりに描けたのが――」ガサゴソ
藍子「これです」スッ
加蓮「……ノートの端っこにポテトの絵が描いてある。しかもすごい上手」
加蓮「お腹減ってたの? お昼ご飯、足りなかった?」
藍子「お腹はいっぱいでした。なのに、加蓮ちゃんを思い浮かべていたらいつの間にか……」
加蓮「そんなに私=ポテトってイメージ強いのー?」
藍子「別のページには、健康になれそうなポテトも描いてみましたっ」パラリ
加蓮「健康になれそうなポテト!?」
藍子「これこれっ」
加蓮「……あー。これは健康になれそうなポテトだね」
藍子「はい。健康になれそうなポテトですっ」
加蓮「こことここの模様。これ野菜か何かでしょ」
藍子「加蓮ちゃんが前に食べていた、ヘルシーなポテトを描いてみたつもりですっ」
加蓮「ふぅーん……。うわ、他のページにも描いてある。これあれでしょー、私の行きつけのジャンクフードのでしょー。入れ物のマークまで描いてあるし」
藍子「……あはは……あの、加蓮ちゃん? あんまり色んなページを見られると、ちょっと恥ずかし――」
加蓮「藍子ってこういう感じでノート取ってるんだね。おっ、なにこれ。"ここがポイント!"って。犬の絵。可愛いー♪ 藍子のも十分可愛いじゃんっ」
藍子「わあああっ!? それっ、それはええとっ、前に風邪で休んじゃったクラスメイトにノートを見せてあげないといけなかった時でっ、そうしたら分かりやすいかなって思って……! こっ、これ以上は見るのダメです!」バッ
加蓮「いいじゃん。可愛いし、分かりやすいし。藍子の優しさだねー♪」
藍子「だめっ! う~っ」ナミダメ
加蓮「そんな目で見られても怖くないよー? あははっ」
□ ■ □ ■ □
加蓮「もぐもぐ……」
藍子「もぐ、もぐ……♪」
加蓮「ごちそうさまっと。いいなぁ藍子。ノートを借りたり貸したり。楽しそうにしてんじゃん、藍子」
藍子「ごちそうさまでした。……? はい、楽しいですよ?」
加蓮「私もそういうのにちょっと憧れるんだよね。ほら、私って借りるばっかりの立場だし?」
藍子「あ~……」
加蓮「っていうか昔は貸してくれる友達すらろくにいなくて、しかも加蓮ちゃん先生のこと大っ嫌いだったから、休んでる間のノートとかどうにもならなくてさー」
藍子「えと……」
加蓮「あはははっ。よく考えたら私ってどうやって中学校とか卒業したんだろ。あっはははー」
藍子「あ、あはははは……?」
加蓮「……話したい訳でもないし、話変えよっか」
藍子「……できれば、そうしてください」
加蓮「えーっと。で、まとめると、藍子ちゃんはノートに加蓮ちゃんの落書きを描こうとしたけど失敗しちゃった、と」
藍子「そうなんです……」
加蓮「だからさっきからじーっと見てたんだ。私の顔」
藍子「いつもなら、加蓮ちゃんの顔はすぐに思い浮かぶのに、なぜかその時はぜんぜん駄目で。家に帰ってからも挑戦してみたんですけれど、やっぱりうまく描くことはできませんでした」
加蓮「ふふ。落書き1つに真面目すぎー」
藍子「そうかもしれませんね。でも、なんだか不思議な違和感と、あと悔しい感じがしたからっ」
加蓮「不思議な感じ?」
藍子「だって、普段は加蓮ちゃんのことを思うだけで、自然と顔が浮かんできますもん」
藍子「これを見せてあげたら喜んでくれるかな? って思ったら、頭の中の加蓮ちゃんも、にこっと笑ってくれるんです」
藍子「……それなのに描こうとしたら思い浮かべられないなんて、なんだか気持ちが悪くて」
加蓮「……」
藍子「加蓮ちゃん?」
加蓮「……うん、まぁ、ありがと」
藍子「……? なにが?」
加蓮「加蓮ちゃんの顔はもうじっくり見たでしょ。どう? 描けそう?」
藍子「う~ん……。ちょっと、再チャレンジしてみてもいいですか?」
加蓮「いいよー。あっ、私が目の前にいたら意味ないよね。うーん」キョロキョロ
加蓮「あれ? あの2人、いつ来てたんだろ」
加蓮「いるならちょっかいかけちゃおっかな。藍子、私あの2人のとこに行ってるから、描き終わったら呼んでね?」
藍子「はい、分かりました♪ よ~しっ。がんばりますよっ」
加蓮「頑張ってねー」スクッ
<やっほー
<うわあああこっち来た!? どうしよう、私どうしたらいいと思う!?
<まるで敵みたいな扱いだな!? あ、えっと……こ、こんにちは、加蓮さん。お久しぶりです……うっわ、あたしまで緊張するぅ……!
<お久しぶりってこの前も会ったでしょ。……ねぇ?
<
<……すみません。至近距離で覗き込んでやるのやめてやってください。ソイツ死ぬので
藍子「~~~♪」
加蓮「……ただいまー」スクッ
藍子「~~あれっ? 加蓮ちゃん。まだ、絵、描けていませんよ?」
加蓮「緊張で口から魂が出ていくからって言われて追い返された」
藍子「そ、そうなんですか……」
加蓮「なんてね。私が行くと2人とも緊張しちゃってるっていうか、片方なんか気絶しちゃったし」
加蓮「カフェにいるのに緊張しちゃうなんて、損でしょ? だから少し離れとこかなって」
藍子「そうだったんですね。加蓮ちゃん、優しいっ♪」
加蓮「じゃあ私に影響を与えた藍子はもっと優しいってことで」
<はっ。あ、あれ? 今加蓮さんが迫ってくる夢を見たような気が……?
<はいはいお帰り。加蓮さん達ならあっちにいるよ? ってか、藍子さんだけじゃなくて加蓮さんでもそうなるんだね
加蓮「でもどうしよっかな……。そうだ、ちょっと外で電話してくる」
藍子「電話?」
加蓮「うん。特に用事ある人いないけど……。Pさん、は今日忙しいって言ってた気がするし、じゃあお母さんにでも電話してこよっかな」
加蓮「テキトーなところで戻ってくるから。じゃ」スクッ
藍子「あっ……」
藍子「……あはは。お話の流れでそうなるのは仕方ないですけれど……なんだか、寂しいな?」
藍子「……」
藍子「……~~~♪」カキカキ
――数十分後――
加蓮「ただいま、藍子」
藍子「お帰り、加蓮ちゃん」
加蓮「ねーもう聞いてよ。お母さんさ、電話に出るなり最初なんて言ったと思う?」
藍子「なんて言ったんですか? あっ、もしかして、体調のことを心配されちゃったとか」
加蓮「ハズレ。いや、それもあったんだけどさ」
加蓮「"藍子ちゃんに迷惑かけてない?"って言われたんだけど! 迷惑かけてないし、なんかいっつも迷惑ばっかりかけてるって思われてるみたいだし! そもそもなんでお母さん私が藍子と一緒にいること知ってんの!?」
藍子「カフェに行くって、加蓮ちゃんが加蓮ちゃんのお母さんに言ったから?」
加蓮「言ってないんだけど!?」
藍子「じゃあ……もしかしたら、察しているのかもしれませんね♪」
加蓮「ぬー……。そりゃー出る時にちょっと鼻歌歌ってたような気もするし、藍子と何話そーって独り言喋ってたかもしれないけど……」
藍子「……それはバレても仕方がないような?」
加蓮「じゃあそういう藍子はどうなのよ!」
藍子「私? 私は、お母さんに言ってからここに来ました。加蓮ちゃんとカフェに行くね、って」
加蓮「……ぬぬぬ。……え、てかわざわざ言ってるんだ」
藍子「はい。そうしないと……その、時間が時間になって迎えに来てもらう時に……」
加蓮「あぁ」
藍子「で、でも最近は明るいうちにちゃんと歩いて帰ってますから」
加蓮「手遅れな気はするけど……。まぁ確かにそうだよね」
藍子「加蓮ちゃん、随分と長い時間、電話していましたよね。他には、どんなお話をしたんですか?」
加蓮「えっと、今度のアイドルのお仕事のこととか……。あと、今日の晩ご飯は何がいいかって聞かれたー」
藍子「ふんふん」
加蓮「別に何でもいいよー、って言ったら怒られちゃった。それが一番困る! だってさ」
藍子「ふふ。それは困っちゃいますよ~」
加蓮「しょうがなくない? 今カフェにいるのに、晩ご飯のこととか。食べたいのがあったらここで食べちゃうって感じじゃん」
藍子「では、ここにないメニューをリクエストするのはどうでしょうか」
加蓮「……激辛パスタ?」
藍子「……食べたいんですか?」
加蓮「藍子に食べさせたい」
藍子「食べません」
加蓮「ねえ藍子、今日うちに来ない?」
藍子「行きませんっ」
>>26 申し訳ございません。1行目の藍子のセリフを修正させてください。
誤:藍子「加蓮ちゃん、随分と長い時間、電話していましたよね。
正:藍子「加蓮ちゃん、ずいぶんと長い時間、電話していましたよね。
加蓮「いや……藍子は今日うちに来るべきだ!」
藍子「……どうしてですか?」
加蓮「藍子がうちの台所に立って、激辛パスタではないものを料理する。そうすることで、藍子が激辛パスタを食べるという未来を回避できる」
加蓮「どう? 完璧な作戦でしょっ」
藍子「確かに、完ぺきな――じゃないですっ。そもそもがおかしいと思います!」
加蓮「だよねー」
藍子「加蓮ちゃん、私の料理を食べたいんですか?」
加蓮「?」
藍子「今のお話って、私に何か作ってほしいのかな? って感じに聞こえたから……。何か食べたいのなら、作りますよ? 加蓮ちゃんのお母さんがよければ、ですけれど」
加蓮「うーん……。別にそういうつもりじゃなかったけど……言われたらなんか欲しくなっちゃったかも」
藍子「では、今日お邪魔しちゃいますねっ」
加蓮「お母さんに言っておくね」ポチポチ
加蓮「……うわ、返信早っ。しかもメチャクチャ喜んでるし。ほら」スッ
藍子「本当ですね。絵文字がいっぱいついていて……喜んでもらえている、のかな? えへへ♪」
加蓮「藍子のファンがまたここに1人……。なんなの藍子。そのうち地球の征服でもし始めるつもりなの!?」
藍子「ええっ」
加蓮「ちょっと宇宙の敵を撃退できる力があるからって!」
藍子「撃退するつもりも征服するつもりもありませんっ」
加蓮「私はいつでも藍子の敵になる覚悟はあるんだからね!?」
藍子「ならないでください! もうっ」
加蓮「あははっ」
藍子「晩ご飯、何を作ろうかな~?」
藍子「う~ん」
藍子「……あはは。さっき加蓮ちゃんの言ったことが分かりました。カフェにいる間って、なかなか思いつきませんね」
加蓮「でしょ?」
藍子「晩ご飯のお話は、帰りながら相談しましょうか。その方が、必要な物を思いついた時にすぐ買うことができますよね♪」
加蓮「どうせならお菓子も買っていっていいよ。お金はぜんぶお母さんが出すから」
藍子「そんな。それは悪いですよ。私が食べるお菓子は、私が出しますっ」
加蓮「大丈夫大丈夫。お母さんなら喜んで出してくれる」
藍子「悪いですってば~」
加蓮「藍子、そんなところで損する必要はないよ。あのうるさいお母さんに痛い目を遭わせてやれっ」
藍子「それ加蓮ちゃんがやりたいだけじゃないですかっ」
藍子「それなら、加蓮ちゃんがお菓子を買って、それを加蓮ちゃんのお母さんに払ってもらってください。私の分は私が払いますっ」
加蓮「面白くないなー。……ねえ。忘れそうになってたけど、私の似顔絵の話は?」
藍子「あっ……。私も、忘れてしまっていました」
加蓮「描けた?」
藍子「はい、描けましたよ。……み、見ます?」
加蓮「うん。見せてー」
藍子「じゃあ……。……あ、あんまりじいっと見ないでくださいね? 恥ずかしいから……」
加蓮「よし。写真に撮ってこのカフェに飾ろう」
藍子「やめて!?」
加蓮「ふふっ。どれどれ――おー、似てる似てる」
藍子「そうですか……? よかった♪」
加蓮「うん、すっごく似てると思う。でもさ……。この絵の私、なんかちょっと子供っぽすぎない?」
加蓮「っていうか満面の笑顔……。私こんなに子供っぽく笑ってる?」
藍子「笑ってますよ♪」
加蓮「えー」
藍子「いつもの加蓮ちゃんは大人っぽくて、ときどき、同い年であることを忘れてしまいそうになるくらいですけれど――」
藍子「笑っている時の加蓮ちゃんは、すごく女の子って感じで♪ 可愛くて、あと、なんだか安心しちゃいます」
加蓮「納得いかないなぁ……。ちょっと笑ってみるからほら、絵と見比べてみるよ」
藍子「はい、いいですよ」
加蓮「絵を私の顔の横に置いて――」
加蓮「……」
加蓮「……くく、くくくくくくく……ふははははは……!」
藍子「…………加蓮ちゃん。もうちょっと可愛く笑ってください。私の言っている"加蓮ちゃんの笑顔"は、そんな邪悪なものではないです」
加蓮「はっ。つい。笑えって言われたから……」
藍子「撮影の時も、笑顔でお願いしますっ、って言われたら、そんな笑みを見せるんですか?」
加蓮「……地味に言うねー藍子」
加蓮「もー、分かったって。ちゃんと笑うから。……笑うけどさー」
藍子「?」
加蓮「何もなしに笑えってのもきつくない?」
藍子「確かに……。何か、楽しかった時のことを思い出すのはどうでしょう?」
加蓮「楽しかった時かぁ。ん……」
加蓮「……」
加蓮「……あははっ♪」
藍子「!」パシャリ
加蓮「こら、撮っていいなんて言ってな――」
藍子「ほら、ほら♪ 見てください、加蓮ちゃん。ねっ? 笑顔の加蓮ちゃん、すっごく可愛い♪」ズイッ
加蓮「ちょっ、もう……落ち着いて? 藍子の言いたいことは分かったから……」
藍子「♪」
藍子「……」ジー
加蓮「?」
藍子「やっぱり、頭の中で想像して絵を描くより、本物の加蓮ちゃんを見ている方が楽しいなぁ……」
藍子「あのっ。加蓮ちゃん、もう1枚似顔絵を描いてもいいですか? 今度は、加蓮ちゃんをじ~っと見ながら♪」
加蓮「あーあ。なんかスイッチ入っちゃった? まだ時間もあるし、いいよいいよ」
藍子「は~いっ。ノートの新しいページに……~~~♪」
藍子「あっ。ちょっとくらいなら、動いても大丈夫ですよ?」
加蓮「そう? じゃあコーヒーでも飲もっかなぁ。すみませーんっ」
藍子「~~~♪」カキカキ
加蓮「コーヒー2人分お願いー。……? うん。藍子が私の似顔絵を描きたいんだって」
加蓮「座ってるだけなのも結構ヒマでさー。あっ、じゃあ店員さん、話し相手に付き合ってくれる?」
藍子「~~~~♪」カキカキ
加蓮「……うん。お仕事中だもんね。分かってる。ならさ、もし藍子が同じことをお願いしてきたら?」
加蓮「はい逃げた。コーヒー忘れないでねー!」
藍子「~~~~♪」カキカキ
藍子「……、」チラ
加蓮「?」
加蓮「……。~♪」ニッコリ
藍子「♪」
藍子「~~~♪」カキカキ
藍子「……、」チラ
藍子「……」ジー
加蓮「ありがとねー店員さん。ずず……。ふうっ」
加蓮「……藍子ー? 手、止まっちゃってるよ?」
藍子「!」カキカキ
加蓮「ふふっ」
加蓮「ずず……」
藍子「~~~~♪」カキカキ
藍子「……、」チラ
藍子「……」ジー
加蓮「こーら。また手止まってるよ。……おーい?」フリフリ
藍子「あ……。ごめんなさいっ。~~~♪」カキカキ
……。
…………。
―― 3 時 間 後 ――
加蓮「……お母さんに迎えに来てって電話で言ったら、"わかった"って。すっごい低い声で言われたんだけど」
藍子「……………………」アセダラダラ
加蓮「もう7時前だし。外暗いし。お母さん、ブチ切れてたんだけど」
藍子「……………………」アセダラダラ
加蓮「いや、途中でちょっとだけうたたねした私も私なんだけどさぁ……」
加蓮「……藍子ぉ?」
藍子「……か」
加蓮「か?」
藍子「加蓮ちゃんの顔を見ているのが楽しくて、つい……」
加蓮「あぁ??」
藍子「ごっ、ごめんなさい~~~~~~っ!!」
【おしまい】
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