『これはNGテイクばい、プロデューサー！』

『1枚っきりのとっておき、門外不出やけん、プロデューサーが大切に持っとってよね！』

『お月さんへ、ばーりばりいっぱいのハートをこめて』

――Morning
事務所


ｶﾞﾁｬ

黛冬優子(以下、冬優子)「おはようございまーす！」

櫻木真乃(以下、真乃)「ほわっ、ふゆちゃん。おはよう」

冬優子「おはよう、真乃ちゃん。……あれ？」

冬優子(……プロデューサーは？)

冬優子「真乃ちゃん。プロデューサーさんやはづきさんは？」

真乃「はづきさんは社長さんとレッスン場に行ったかな。プロデューサーさんは……恋鐘ちゃんのお仕事先に行ったんじゃないかな？」

真乃「私が来た時恋鐘ちゃんの資料見てて……。電話取ったと思ったら事務所のカギ頼まれて飛び出ていっちゃったから」

冬優子「ふーん……。教えてくれてありがとうね！」

冬優子(だからあいつの机の上、いつもと違って乱雑なのね)

真乃「それでふゆちゃん、頼みたい事があるんだけれど……。私もレッスン行っちゃうから事務所お願いしてもいいかな」

真乃「多分もう少ししたら社長さん帰ってくると思うから……！」

冬優子「えっ、うーん……大丈夫だよっ。ふゆ、今日はお仕事午後からだから」

冬優子(あいつが今いたら、あわよくば送迎頼みたかったけどね……)

真乃「ふふっ。ありがとう、ふゆちゃん！」


―――――
――――
……

冬優子「……」

冬優子(さて、真乃がいなくなったけれど)ﾁﾗｯ

冬優子(あいつの机、恋鐘の資料や雑誌ばかりね。それと仕事先の名刺？)

冬優子(片付ける暇もなく出るなんて、よっぽど大きな仕事……)

冬優子(それとも恋鐘が何らかのドジでもしたのかしら)

冬優子(……あり得そうなのがあの子っぽいわね。あさひとは別の意味で危なっかしいわ)

冬優子「……まあ、たまにはお礼の返しでふゆが整頓してあげますか」


――――――
――――
……

ﾄﾝｯ

冬優子「ふう」

冬優子「一通り片付いたかな……」

冬優子(しっかしこう雑誌見ると月岡恋鐘、いやアンティーカ……)ﾊﾞｻﾊﾞｻ

冬優子(いろんな顔があるのね。料理にバライティ、この前のプリンセスやダークまで)ﾍﾟﾗｯ

冬優子(……なぜか恋鐘は水着姿をそこまで売りに出したがってないけど)

冬優子(唯一あの子のグラビア写真があるのはこのインタビューの一冊だけか)ｽｯ…

冬優子(夏合宿で見慣れたと思ったけれど、相変わらずすごい迫力ね……)

冬優子(持っている武器を最大限に使えばいいのに……。気持ちは分からなくはないけど分かりたくないわ)ﾍﾟﾗｯ

冬優子「……？」

冬優子(この雑誌……手作りのポケットがあるわね)

冬優子(中に何が……？)



冬優子「……」

冬優子「…………」




冬優子「……………………」

――Night


ｶﾞﾁｬ

P「お疲れ様でーす……」

七草はづき(以下、はづき)「あ、プロデューサーさん。お疲れ様です～」

P「はづきさんも夜遅くまでお疲れ様です」

はづき「真乃さんから聞きましたよ。私達が出てしばらくしたら大慌てで事務所飛び出した」

P「ははは……家に忘れ物してしまって」

はづき「プロデューサーさんもうっかりですね～」

P「ははは……、お恥ずかしい」

P(確かに今日は朝から動き回ったな……。本当は甘奈から急に電話が来て……)

P(なんだと思ったら事務所にプリント置き忘れてて届けに行って……)

P(甘奈も、その後の恋鐘の仕事にも間に合ったし良かった良かった)

P(近づいてきた甘奈の友達と言う子にもお礼言われたっけな)

P(……なんでお礼言われたあの時、甘奈が俺以上に嬉しがってたんだろ)

P(……ん？)

P「あれ、はづきさん。俺、机の上ちらかってませんでした？」

はづき「私が帰ってきた時はキレイでしたよ～。誰かが掃除してくれたかもですね」

P「そうですか……。誰なんだろう、お礼言わなきゃな」

P(資料が仕事先と事務所ので分けられてる。雑誌もナンバーごとに積められてあるし……・)

P(……)

P(……あれ)ﾊﾞｻｯ

P(……一冊無い？)

P(恋鐘の……グラビア特集の……？)



ﾋﾟﾛﾝｯ

P「あれ、メッセージ音」

はづき「私ではないですよ～」

P「てことは俺の携帯か……」ﾋﾟｯ


冬優子『プロデューサー、面と向かって相談があるんだけれど』
冬優子『個人的な話だからあんまり聞かれたくなくて。近いうちに人気がないところで話せない？』


P(……相談か)

P(……)ﾎﾟﾁ

P『俺でいいなら相談に乗るよ』
P『人気がないところで大丈夫そうなところだと、上階の倉庫とかになるがいいのか？』


ﾋﾟﾛﾝ
冬優子『あんたがそこでいいなら』
冬優子『長くなるかもしれないから、数時間は空けといてね』


P(長くなるか……。深刻な事かもしれないな)ﾎﾟﾁ


P『わかった。この日のこの時間なら冬優子も俺も空いている』
P『ここでいいか？ちゃんと付き合うぞ』

ﾋﾟｯ
冬優子『OK。じゃあお願いね』
冬優子『大切な時間になると思うから』


P「大切な時間……？」

P(……楽しく、とはいかなそうだが真摯に向き合わないとな)

はづき(そういえばイルミネの皆さんで今日やったタロットカード)

はづき(冗談半分でプロデューサーさんを占ってみたら審判の逆位置でしたが……)

はづき(まあ、無縁でしょうね～。このことは話さなくてもいいですか)